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皇軍(明治〜WW2)がファンタジー世界に召喚されますたvol.26

1名無し三等陸士@F世界:2017/01/29(日) 10:52:34 ID:ci0mzTRQ0
自衛隊ではない日本の軍隊のスレッドです。
議論・SS投下・雑談 ご自由に。

ローテク兵器VS剣と魔法

戦国自衛隊のノリでいて新たなジャンルを開拓すべし
銃を手に、ファンタジー世界で生き残れ!

・sage推奨。 …必要ないけど。
・書きこむ前にリロードを。
・SS作者は投下前と投下後に開始・終了宣言を。
・SS投下中の発言は控えめ。
・支援は15レスに1回くらい。
・嵐は徹底放置。
・特定の作者専用スレは板として不可。
・以上を守らないものは…疫病と戦争、貧苦と死に満ち溢れたファンタジー世界に召喚です。 嘘です。

2名無し三等陸士@F世界:2017/01/29(日) 10:53:16 ID:ci0mzTRQ0
暫定ガイドライン(分家皇軍Ver.)

1.「皇軍がファンタジー世界に」とあるように、あくまで「大日本帝国の軍事組織」が「ファンタジー世界」に関わる話であること。
2.大日本帝国というからには、日本軍の組織・装備は実在もしくはその延長上にあるものに限る。
実在しないが延長上にあるものを出すには、そこに至る流れを説得力のある理由つけてハッタリかますこと。
3.核兵器(含む動力源)・大陸間弾道弾・人工衛星、巨大人型兵器・海底軍艦・飛行戦艦・陸上戦艦など当時の日本が配備するにはナンセンスなものは極力避ける。
しかし確信犯(誤用)的トンデモ架空戦記としてならまた別かも知れない。
4.あくまで「ファンタジー世界」の話であり、F世界側の設定は作者が自由に決めることが出来る。
ただしそれ単独でパワーバランスを大きく揺るがす存在(兵器・魔術・キャラクター等)は作らない事が望ましい。
5.日本・F世界双方の人間をきちんと描写する方が好ましい。
一方の主観という演出などであえて描写しないのはこの限りで無い。
6.戦略・戦術としてありえないものを避ける。例えば一人の帝国陸軍軍人が軍刀一本で100人斬りとか。
7.萌え・エログロはあくまで表現手段であり、目的ではない。安易に狙ったり、しつこく要求するのは流石にウザイので自粛すべき。
どうしてもそれ主体でやりたい場合は各専用スレでやる事。
8.叩き・煽り・嵐は徹底放置。嵐認定を受けた後に、かまった者も同罪とする。
9.SS作者は、抽出がしやすいようにトリップ装着を推奨。
なお、二次創作の可否については原SS作者の判断に一任とする。現在、SS「帝國召喚」では公序良俗を乱す作品でない限り問題なし。
10.感想書き込む人も節度や口調を考えるべし。作品が気に食わないなら透明あぼーん汁

3名無し三等陸士@F世界:2017/01/29(日) 10:54:22 ID:ci0mzTRQ0
過去スレ
01 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1116672903/
02 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1125644871/
03 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1130199183/
04 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1134983039/
05 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1139108925/
06 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1142596115/
07 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1145757330/
08 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1148549150/
09 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1151766955/
10 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1155287974/
11 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1157915129/
12 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1161151313/
13 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1167373446/
14 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1173192902/
15 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1179579011/
16 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1187842098/
17 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1194994629/
18 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1204087700/
19 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1208419952/
20 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1229327978/
21 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1247310050/
22 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1259054639/
23 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1267228901/
24 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1278940501/
25 ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1321658639/

4名無し三等陸士@F世界:2017/01/29(日) 10:55:27 ID:ci0mzTRQ0
SS「帝國召喚」関係

ここまで読んだ氏による公開済み設定まとめWiki
帝國資料館
ttp://www12.atwiki.jp/kokomadeyonda/pages/1.html

注意
『帝國召喚の記述に矛盾が生じた場合、HP掲載時に設定が修正された可能性があります。
もし気になられた場合、お手数ですがHPをご確認ください。』

5名無し三等陸士@F世界:2017/01/29(日) 10:56:02 ID:ci0mzTRQ0
SS「昭南疾風空戦録」関係

黒綿棒様のサイト
黒綿棒の世界
ttp://sansho.dayuh.net/index.html

6303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/05(日) 13:37:54 ID:54bd7AQo0
スレ立てありがとうございます。
外伝的掌編ですが、投下します。


前スレ>996-999

「フィクションだから」という前提と「チートあり」というご都合主義を受け入れない限り、
アメリカだろうがロシアだろうが中国だろうが生きていくのは無理だと思っています。
『ゲート』のように、常に地球と繋がりのある状態ならともかく、科学技術が中世レベルのF世界に単独転移は死刑宣告のようなものかと。
常に地球世界と繋がりがあったらあったで、それはそれで面倒臭くなるのですが。

7303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/05(日) 13:40:43 ID:54bd7AQo0
傭兵ギルドからの催促が凄い。

内容は決まっている。
大口の仕事が欲しい。大口の仕事を紹介しろ。
傭兵ギルドはこんなに有力な組織だから云々かんぬん。
早くお帰り願いたい。


リンド王国の傭兵ギルドだから、リンドに敵対的な国や組織と契約を結ぶ事は禁止されているが、それ以外であればリンド王国専属の傭兵である必要はない。
つまりリンド王国から見て直接利害関係に無い第三国同士の戦争に加勢しに行くとか、リンド王国の同盟国に加勢しに行く分には問題ない。
また国家や地方領主のレベルでなくても、個人や組織が雇用主となっても何も問題ない。
有力商人が商品や現金輸送の護衛に傭兵を雇う事は珍しくないし、珍しいところでは平民個人が決闘の代理人を立てる為に傭兵を雇った話もある。

個人から契約可能といっても、ギルドにとって金になるのは大口の顧客、つまり国家だ。
王国が戦争をするからと数万の傭兵をかき集めてくれれば、大勢の傭兵隊長の懐が潤う。
だがそれも昔日の話。近年は国王や宮廷といった中央だけでなく地方まで王国軍が中心に考えられており、傭兵ギルドは苦難の時代だ。
傭兵隊長を辞めて、王国軍の連隊長になった者も居れば、軍事官僚になった者も居る。大所帯だった傭兵隊ほどその傾向が強い。
かつては王国内に数百人は居た傭兵ギルド員も、今や百人を割ろうかとしている。この傾向が続けば傭兵ギルド自体の存続が危うい。
人員が減れば組織の政治力が弱まる。政治力が弱まれば人員が減る。組織の命脈を保つのに必死なのだ。

だから、歴史的大敗で金欠となってしまったリンド王国の代わりに、リンド王国の同盟国となっている皇国に契約を迫っている。
身形の良い軍服で、気前良く金貨や銀貨を支払う皇国軍の主計隊を見れば、ここで大口契約の一つでも取り付けたいと思うだろう。

だが、皇国としても皇国軍としても、そこまでの大口契約は必要ないのだ。
ここぞという場面で、村を出入りする度に現地の村人を雇うような事をせずに済む、自活可能な道案内が欲しいのである。
リエール傭兵隊のように地元の地理に詳しく、しかも正規軍と出会っても自力で戦闘や退却が可能な、数十人規模の傭兵隊が、師団あたり5、6個もあれば良い。
数百人から数千人の傭兵隊なんて、纏めて派遣されても扱いに困る。数百人の纏まった傭兵隊を分割しても、相応の指揮官が居ないから使えない。
皇国軍の案内として働く分賠償金を減額するという条件で、リンド王国軍の残存部隊が幾らか付いてきているので、尚更今以上の傭兵隊なんて要らない。

皇国軍は、異世界の大陸で活動するにあたり、大きく分けて三種類の人々を、軍属または軍属相当の現地協力者、軍人による軍事協力者という形で募っていた。
一つ目は、農民や猟師や行商人などで、村の近隣など限定された地域に限り、行軍を補佐する形の協力者。
二つ目は、自称冒険者や小規模傭兵隊で、軽装備で自衛戦闘くらいは可能で、終始行軍に付き従う形の協力者。
三つ目は、正規軍の大隊や中規模傭兵隊で、ある程度自活可能(積極的な戦闘可能)で、終始行軍に着き従う形の協力者。

このうち、傭兵の出番は二つ目と三つ目の場合だが、どちらにしても剣と銃で武装した軽歩兵的な戦士が必要とされている。
傭兵隊の中には皇国軍の欲する軽歩兵的なところもあったが、逆に槍兵専門のようなところもあって、そちらは流石に使い所に困る。
銃歩兵傭兵隊ばかりが使われる事になると、槍歩兵傭兵隊から、自分たちも使えという声が出る。
特定の傭兵隊に仕事が固まらないように、全部の傭兵隊になるべく平等に仕事が回るようにするのが
傭兵ギルドの仕事なので、数週間毎にローテーションして使って欲しいという“要請”が出てくる訳だ。

8303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/05(日) 13:41:40 ID:54bd7AQo0
既得権益というものは、御上が無理やり取り上げても反発を受けるだけだし、
仕方なく取り上げるにしても、それに対する補填が無ければ上手く行かない。

形式的には、傭兵ギルドを潰すのは簡単だ。
女王が傭兵ギルドを解体する旨の署名をし、ギルドの勅許状を取り上げれば(失効させれば)いい。
しかしそれは抜かずの宝刀。強引なギルド潰しを実行すれば他のギルドから不信感を持たれる事は間違いなくなる。
それにそんな事をすれば、法的地位を失った百人余の元傭兵ギルド員と数万人の元傭兵が市井に解き放たれることになる。

傭兵ギルドの傭兵隊、傭兵達は、公共事業の側面もあった。
職の斡旋という分かりやすい理由だけでなく、王国軍の予備役プールとしての存在。
動員がかかってから兵士を徴募して訓練するのではなく、訓練経験や実戦経験のある傭兵を兵士や下士官、中隊長や連隊長として数千から数万の規模で募れる。
リンド王国の強さの一つとして、長らく王国軍と傭兵ギルドが持ちつ持たれつの関係にあった事は否定できない。

それまで、国軍の補助部隊や地域や都市の治安維持組織としてあった傭兵ギルドが無くなれば治安が乱れる。
ギルドという公的特権を失った武装勢力が牙を剥けば、皇国における西南戦争か、最悪、武力革命だ。

だから傭兵ギルドを潰すなんて出来ない。

傭兵ギルドに所属する傭兵その他の人員は、最盛期にはリンド王国だけで十数万も居たので、これでも減ったと言える。
ギルドに所属する傭兵が減った最大の理由は、地方の村落の生産力が上がって食い扶持に困らなくなった事。
また、それと並行して、地方や中央の税収が上がったので、常備軍や地方警察組織の維持が可能になった事。
これらが重なって、傭兵に頼らずとも国家(国王)や地方領主が持つ独自の戦力に頼れるようになった。

ただし、十数万も居た傭兵というのは、傭兵ギルドに直接所属する傭兵隊長に雇われた下級傭兵や人夫まで含めた数だ。
規模の大きな傭兵隊であれば、1人の傭兵隊長に数百、数千の人員というのも珍しくなかったのだが、それが現代では珍しくなっている。
傭兵隊の規模が全体的に小さくなっているだけで、ギルド登録されている傭兵隊の数自体は実はそれほど減っていない。
傭兵隊長は世襲だったり、持ち回りだったり、縁故だったりで選ばれ、傭兵ギルドの職員から“転職”する輩もいる。
傭兵隊の数はあまり減っていないのにギルド員の数はかなり減った。
という事はつまり、以前はかなり多数の“役員”や“顧問”が居たという事だし、それだけ組織に余裕があったという事でもある。
羽振りの良い商業ギルドなどは今でもそんな感じだ。

今日ではどの国でも規定されている武装結社の禁止。その例外が傭兵ギルド。
かつて、それが切実に必要とされた時代の残滓。

昔日は傭兵業で一財産築いた傭兵隊長も居たが、現代ではそんなの夢物語だ。
傭兵隊長でさえそうなのだから、下っ端の傭兵にとっては一攫千金の機会など無い。
国王や地方領主にとっては、もはや傭兵に頼らず自力で解決出来るのが武力問題。
傭兵隊長への依頼、契約の回数は自然と減り、そうなれば多数の人員を抱えた傭兵隊は倒産する。
倒産しないためには身持ちを軽く、つまり人員を削減し、少数精鋭の組織運営にするしかなくなる。

9303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/05(日) 13:42:12 ID:54bd7AQo0
しかし、これが逆に傭兵隊が傭兵隊として、国軍とは別に存在し続けていられる要因ともなっている。
小回りが利く訳だ。
皇国軍もその利点を評価していない訳ではない。

ただ、何十もの傭兵隊を雇う余裕は無いのと、雑多過ぎるのが問題だった。
ポゼイユ侯爵が全額負担して雇用し、それを皇国軍に派遣して無期限で指揮下に入れるという形になったリエール傭兵隊のような好条件は例外。

基本的には傭兵の雇用費は皇国が全額負担するのだから、せめてギルドは顧客側の意見くらい聞いてくれてもいいだろう。
そんなに難しい要求をしているつもりはない。戦術的に小回りの利かない槍兵はやめてくれ、ギルドの都合で勝手に編成を変えないでくれ。

2〜3週間経つと、傭兵隊が勝手に列を抜けて、別の傭兵隊が入ってくる。どの傭兵隊が来るか皇国軍は選べない。
その土地の地理や風俗に詳しいものという条件は最低限守ってくれているが、契約条件に反しない限りで好き勝手だ。
前線部隊から評判の良かった特定の傭兵隊との専属契約にしたければギルドに違約金を支払わなければならない。

最初に契約を結んだ際に契約内容の確認が甘かった皇国軍の師団経理部の落ち度と言えるのだが、時既に遅し。
例えば「常に傭兵隊1隊が皇国軍に付き従う事」という文言、皇国側からすると当然、基本的には同じ傭兵隊が従属するというつもりだった。
交代するにしてもある地域から離れたので地理に疎いとか、部隊に損害が出たとか、そういう理由を考えていた。
特に理由のない交代という状況は、皇国側は失念していたといっても良い。
「已む無き理由なしに皇国軍の指揮下を離脱する事を禁ずる」という文言もこの件に関しては死文化している。
「傭兵ギルドの都合で交代するのは十分な理由」と言われ、リンド王国軍の法務官も傭兵ギルド側の理屈は正しいと言う。

皇国軍は傭兵ギルドとの契約数を最低限に絞っている。
しかしあの傭兵隊が良いだのあの傭兵隊は嫌だの、色々と文句をつけるので、傭兵ギルドは「だったら契約数増やせばいい」と言ってくる。
大口契約にすれば、傭兵隊あたりの単価は安く抑えられるし、多くの傭兵隊を様々に使えるから便利になると。

あまり傭兵ギルドに好き勝手されると、足手纏いになる。だが当面の間、傭兵の協力は欲しい。
腑に落ちないが違約金を払うしかないか?
違約金を払うくらいなら大口契約した方が後々便利ではないか?
こんな事なら傭兵ギルドを買収してやりたい!
砲撃の間違いじゃないか?

そんな口論が皇国軍の司令部で起きている事など、皇国の名誉の為に秘匿されなければならないのだ。

10303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/05(日) 13:42:53 ID:54bd7AQo0
投下終了です。
今年もスローペースになると思いますが、よろしくお願いします。

11名無し三等陸士@F世界:2017/02/05(日) 16:22:26 ID:duMIjbdY0
投下乙でした。
傭兵ギルド側の言い分もある程度はわかる気はします。
とはいえ、日本人も割と頭に血が上りやすいですから、そのうち傭兵ギルドが粛清されるかもしれませんね(汗

12名無し三等陸士@F世界:2017/02/05(日) 19:09:15 ID:ME6n/qvE0
明治の御一新の時はどうしたんだったかなとか言い出す参謀本部

13名無し三等陸士@F世界:2017/02/07(火) 16:03:17 ID:I97TxQ6c0
傭兵なんて潰してRONINになられても困るし大変ですな

14303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/08(水) 06:08:42 ID:54bd7AQo0
今日は非常に短いですが、幕間的な感じで本編の続きを投下します。


あと筆者なら本文で書いとけという話なのですが、少し補足を。

F世界の列強で軍事面で最強なのはリンド王国。これは、初期設定のかなり早い段階から決まっていました。
ただ、何故強いかはかなり曖昧だったので、独自の傭兵ギルド文化があった、みたいな完全な後付設定をでっち上げました。
他国にも傭兵ギルドはあるけれど、リンド王国ほどの質や規模はないという設定(後付)です。
中央集権と国民軍の充実によって、その最大手のリンド傭兵ギルドすら落ち目の時代だと。

対皇国戦の時は何してたの? というと後方支援業務と、兵の補充(動員協力)です。
完全に後付設定になりますが、数十万の王国軍の為に短期間のうちに多数の物資倉庫を用意して、
飛竜陣地を用意して、ユラ神国に勝つ気で居られたのは彼らのお陰という事にしておいて下さい。
そして敗戦によって契約金の不払い(未払い)も発生していて、とても不味い状況にあります。

平時は限定的な徴税特権で維持できても、戦時にはそれではとても足りない!
商人ギルドから、皇国は金払いが良いと聞いたぞ! 皇国軍に取り入ってパイプを作ろう! ←今ここ


リンド王国という国名からして「ベルリン+ロンドン⇒ベルリンドン」からですし、王都ベルグは「ベルリンドン-リンド=ベルン」を捩ったものです。
ベルンってスイスの首都だから、傭兵国家として発展した経緯があるとしてもいいよねと、数年の時を経て気付きました。

「傭兵ギルド」というファンタジー世界でおなじみのギルドは何かの機会に書きたいと思っていましたが、漸くでした。
「冒険者ギルド」や「盗賊ギルド」というのもありますが、私の中では、傭兵ギルドが冒険者ギルド的な性格も持っていると考えています。
拙作中で、冒険者というのは公的な裏付けのある地位や職業ではありません。あくまでそう自称しているだけです。

薬草採取クエストとか、そんなの自分でやれという話ですが、必要な薬草があるのが野獣や紛争等で危険な地域だったりすれば、傭兵ギルドに声がかかる事もあるでしょう。
本来ギルドは各都市ごとのもので、首都などに本部があって各地に支部があるような全国、全世界で統一的な
制度のギルドはファンタジー世界にしか無いと思うのですが、そこはファンタジーのお約束優先という事で。

盗賊ギルドというのは盗賊の勅許状を持っている組織、という事は私掠船団とか「敵対国に対する盗賊許可証」を持ってる人達なら合点が行くのですが。
ギルドを自称しているだけで公的な認可を受けた組織ではない犯罪結社という身も蓋も無い解釈もありでしょうが、
当局に公認されている反社会組織という意味ならば「指定暴力団」そのものではないかという節もありますね。

15303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/08(水) 06:10:05 ID:54bd7AQo0
ザラ公国の首都ポカまで後退を余儀なくされたマルロー王国軍の“准将”は、受け取った伝令報告を見て表情を難くした。
『北部戦線にてノイリート要塞が降伏せり。南部戦線の諸将は皇国・リンド王国軍への圧力をより一層強め、戦域の確保を継続すべし』

先日、ザラ公国の使者が同盟脱退と単独降伏の通告をしてきたばかり。
正式な降伏調印となるとまだ時間がかかるだろうが、ザラ公国軍は“大打撃を受け作戦の続行が不可能になった為、戦列を離れる”と、全軍を本国に引き上げている。
こうなれば軍事的な圧力をより一層強めるどころか、現状維持すら危うくなる。
しかも北部ノイリート要塞が陥ちたというのだから状況は最悪だ。

実際問題、要求される最低ラインである現状維持すら出来ていないのだ。
ザラ公国を下した皇国軍が居座っているから、前線は後退しており、ポゼイユ侯爵領に対する圧力は無くなったも同然。
むしろ立場は逆転して前進基地の筈だったザラ公国が皇国軍の直接的脅威下にある。

ザラ公国対して懲罰的武力行使を行うべきか? あるいは経済制裁か?
同盟内でも有力な国がマルロー王国と碌な協議もせず勝手に単独降伏し、リンド王国と皇国への包囲網の一角を崩したのだ。
何の御咎めも無しで済ませては示しがつかない。国際秩序が乱れる。

しかし、マルロー王国本国はそれどころではなかった。
ザラ公国の“裏切り”に構っている暇はないというくらいに。

16303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/08(水) 06:10:50 ID:54bd7AQo0
投下終了です。

ノイリート要塞陥落を日本で例えると、敵が南西から攻めてきて、九州南部や四国を防衛線にしていたら、いきなり佐渡が占領されて
このままでは新潟から関越道で東京まで一直線じゃないか、新潟からなら空中給油なしでも戦闘機の航続距離も足りるし、みたいな感じです。

ちなみに、距離とか角度とか相当あやふやですが、この方面の簡易地図はvol.24の>777にあります。
厳密な意味での領土だけでなく、およそその勢力圏にある地域も含まれます。
現実で言えば、リヒテンシュタインをスイス領としているような感じです。


>>11

契約したのに全然働かない、とかではありませんから。
ギルド独自ルールはあっても、その範囲内で真面目に働くのがギルドです。
だからこそ勅許状があるし、安易に潰せない組織になってるのですが。

粛清という程の荒療治ではないと思いますが、リンド王国軍が壊滅したので、それの再編に傭兵ギルドを突っ込んで、合併させて解消。
という案をリンド王国が画策し、皇国も密かに支持しています。

やり方が不味いと王国軍の連隊なのに実質は傭兵隊のようになりかねないので、あくまで主導権は
王国軍側としたいけれど、兵員不足で困っているのは王国軍側だから、傭兵ギルドに強気に出られず難しい。
そして仮にある傭兵隊を第777連隊として既存の第66連隊と合併させると、「第66=第777軽歩兵連隊」みたいのが大量に生まれる予感。
連隊旗(傭兵隊旗)も既存のままか新しくするか、デザインで揉めそう。
傭兵ギルドは異世界版PMCとして存続の道を歩めるか!?


>>12

昭和10年代に40代くらいの年齢の方々は、生まれた時には明治時代で、江戸時代の風俗とか各地にまだ残ってはいるものの、
基本的には明治以降の教育を受けて明治以降の制度の中で暮らしてきた人達ですから、実感としては分からないでしょうね。
それより若ければ明治末とか大正生まれも居るので、幕末から明治初期はもう祖父か曽祖父世代の出来事です。

皇露(日露)戦争経験者くらいが現役の限界で、西南戦争経験者なんてもう80〜90代ですよ。
しかも明治維新のやり方を参考にしても上手く行くかどうか……明治維新自体が近代史の奇跡みたいなものですから。


>>13

傭兵隊長とかは貴族や騎士、平民富裕層の二男や三男だったりするので、何か別の職を斡旋してやらないと路頭に迷います。
長男に全てを相続させる為、相続権放棄に同意する代わりに手切れ金として幾らか纏まった金を貰い、それを元手に傭兵業やる、とかですね。
商人やる人もいれば、学がある人なら医師とか学者になる人もいるでしょうし、傭兵ではなく王国軍の士官になる人も居ます。
勿論、そういう家系の女性も傭兵として居るでしょう。ファンタジーだから!
結婚相手が嫌な奴で私は自由に生きるんだと、持参金持ち逃げしてしれっと傭兵隊長してる元貴族令嬢の女戦士とか。

下っ端傭兵は、皇国が港湾建設事業、鉄道建設事業の人手として雇うとかで一時的には
失業者対策になるかも知れませんが、日雇い仕事ですし、皇国基準の作業ができるかですね。
杭一本打つだけでも「もっと丁寧にやれー馬鹿者ー!」とか、そういう職場に耐えられるか。
元傭兵「傭兵として鞭で打たれてた方がまだマシだった。なんだこのブラックな職場」

17303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/11(土) 18:42:49 ID:54bd7AQo0
いつも雑談やまとめ等の応援ありがとうございます。
本編の続き、投下します。

18303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/11(土) 18:44:28 ID:54bd7AQo0
東大陸北方、極北洋のシテーン湾に面するセソー大公国。

セソー大公家は、正式な王家ではないが、王家に准ずる毛並みの良さを誇る。
何せ、リンド王国の王子と、マルロー王国の王女の婚姻によって築かれ、発展した国だ。
言わばリンド王国とマルロー王国の共同の分家であり、“王家ではない王族”である。
『公爵』ならぬ『大公爵』であるのも、理由無き事ではない。
継承順位は低くとも、両王国の国王となり得る血筋。
仮にリンド王国やマルロー王国の王家の血筋が途絶えても、
セソー大公国が“予備”を確保している限り、正統な王家は続くのだ。

東大陸の北西をリンド王国、北東をマルロー王国で、北部中央を
セソー大公国が治める事で、この地域も大分平和になった。
人口も優に300万を超え“准列強国”と見做される北の大国である。
人口だけで見れば、大内洋のオレス王国やリロ王国に匹敵する。
経済力でも、十分に周辺諸国の中心的存在である。
リンド王国とマルロー王国の間にあった広大な“辺境地域”を
“文明開化”した国が、他ならぬセソー大公国なのだ。


セソー大公国領、ノイリート島。
シテーン湾内の大陸から北へ120km程に位置する皇国の佐渡ほどの大きさの島だが、この高緯度にあっても
一年を通じて凍結しないために重要な軍港が建設され、合わせて要塞化された島は軍艦島とも呼ばれる。

ノイリート島の飛竜基地には常時20騎以上の飛竜が駐留しており、
最大級の航空爆弾である10バルツ爆弾以上の12バルツ爆弾といった
特殊兵器も極少数だが配備されている程、軍備が整っている。

対空砲、対艦砲、野戦砲共に最新鋭の砲が配備され、この島を攻略するには
列強国でも陸海空合わせて数万の大軍が必要になるだろうと言われている。

今、その強大な守備力を誇る要塞を必要とする敵はリンド王国、そしてその背後にある皇国だ。
セソー大公国は大陸北部方面の二大国であるマルロー王国、リンド王国の間の
緩衝地帯のような地勢であり、両王国に対して一定の政治的距離を保って来たが、
皇国進駐という事態に旗色を鮮明にし、マルロー王国側としてリンド王国を牽制しだした。

前リンド国王の采配が不味かったという分を差し引いても、少なくとも数的には
東大陸で最も強大だったリンド王国軍すら半年も経たずに消滅させてしまった
皇国軍を擁する皇国の勢力と、マルロー王国は直接国境を接したくない。
特にリンド王国、マルロー王国とセソー大公国が面する
シテーン湾が皇国の勢力下に入るのは面白くないのだ。
大内洋から極北洋が、全て皇国の海になってしまう。

セソー大公国としても、先行き不透明な段階でリンド王国
のように簡単に皇国勢力に下るという選択肢は無い。

異界から現れた未知の勢力を相手に、あっという間に膝を屈した
リンド王国を前に、両国とも過剰防衛というか恐怖心が先行していた。
皇国は狡猾で貪欲だから、いずれ自分達も……という恐怖心だ。

19303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/11(土) 18:45:02 ID:54bd7AQo0
要塞に設置されている大型対艦砲の射程は、実用的な命中率が見込める距離であれば1000m。
限界まで装薬を使って、とにかく砲弾が飛ぶ距離であれば3倍以上の3500〜4000mといった所だ。
逆に、海側からは臼砲艦のような特殊艦を使わない限り、高所の要塞に有効な打撃を与える事は難しい。
戦列艦の舷側砲では、仰角や射程距離の問題で要塞の主要部分に砲弾を飛ばすことすら難しいからである。
臼砲艦や揚陸艦が近づこうとしても、要塞砲や防衛艦隊に阻まれて要塞自体に攻撃を加える事は至難である。

シテーン湾に面するリンド王国の港町セルシーは、軍港としての機能は限定的であるものの、
フリゲート3隻を主力にコルベットやスループ等の小型艦艇が十数隻、母港として投錨している。
この艦隊は近海の哨戒や海賊対策、海難救助を主任務とする物で、ノイリート島を攻略するなど考えられていない。
軍事上の要請でノイリート島の攻略が必要となれば、大内洋に展開している主力艦隊を持ってくる手筈だったのだ。
であるから、それだけでは陸兵を詰め込んだ所で1000人程の揚陸が限度だろう。
その他の民間船や漁船を徴発しても、倍の2000人を運べれば上出来。
さらに、近隣に有力な飛竜基地や飛竜陣地は存在しないから、
ノイリート要塞は何も恐れる必要はない……筈だった。

しかし事態は急展開。
セルシー港に展開した皇国海軍の水上機と飛行艇が、ノイリート島の航空偵察を始めたのだ。
迎撃に飛び立った飛竜は、追い付く事は愚かその高度に達することすら出来ない。
遂に、恐れていた事が現実になったか……。ノイリート伯爵は今後を考える。

ノイリート伯爵は島の行政長官であると共に、要塞司令官でもある純然たる武家貴族だ。

皇国軍に偵察されるという事は、陸兵による攻略軍を送ってくる前触れである公算が高い。
今の所は、上から眺められているだけで物的損害は無いが、もしあれが爆弾を抱えて来たら?
特に大型の方(飛行艇)の巨大さは地上から眺めても解るほどだから、さぞ大量の爆弾を搭載可能なのだろう。

それに物的損害は無くても、上空から見下ろされて何も抵抗出来ないというのは、実質的に軍事的な損失だ。
ノイリート島の軍事的な価値は、北方諸国の上流階級であれば誰でも知っているから、
リンド王国を手にした皇国軍が狙ってくる事は十分に考えられる。
むしろ、皇国軍が何の興味も示さなかったら逆に不自然だ。

噂に聞く大規模空襲と砲撃を受ければ、容易に陸兵の上陸を許し、ノイリート島は皇国軍の手に落ちるだろう。

ノイリート軍港には、セソー大公国海軍の有力な戦列艦11隻のうち4隻が停泊している。
マルロー王国海軍とセソー大公国海軍が共同し、全力を以てセルシーを
攻めれば、セルシーを守備するリンド王国軍を討ち破る事は可能だろう。
リンド王国軍は、戦力の主力を南向きに配備してきたから、最北の
この地域は陸軍も海軍も空軍も、それ程有力な部隊が存在しない。
マルロー王国軍が大挙上陸すれば、守備軍の少ないセルシーは1週間も粘れまい。

しかし、セルシー攻撃が失敗して、艦隊が壊滅したら?
ノイリート島だけでなく、セソー大公国本土も危ないだろう。
セソー大公国軍は、最大限に動員しても10万の兵が精々。うち陸軍は7万程度。
それだけでは、恐らく皇国陸軍の圧倒的な戦力を押し止められない。

セソー大公国海軍の戦列艦は、総旗艦たる108門艦デリセリア号以下、90門艦が2隻、74門艦が8隻。
飛竜母艦は保有しないが、2層48門の重フリゲートを1隻と、24門から36門のフリゲートを25隻、
等級外も多く保有しており、極北洋の制海権はセソー大公国にあると言って過言ではない。

しかし、伝え聞く所に拠る皇国軍艦の射程距離は、要塞砲の倍以上。
炸裂弾を使っているため、破壊力も単純な焼玉弾の比ではない。
その炸裂弾も、リンド王国製の炸裂弾の比ではない破壊力。
そして海は繋がっているから、そのような軍艦が大内洋から極北洋へ来ないとも限らない。
今は、攻略軍の準備としてシテーン湾の調査をしている段階なのだろう。

調査が終わり、攻略軍の編成が成れば、ノイリート島は皇国の海空戦力で
要塞の防衛力をズタズタにされた後、陸兵が悠々と上陸して来るのだ。

セルシー攻略を事実上フュリス公国に任せる形として黙認しているのは、
皇国からの反撃を分散する“リスクシェアリング”の意味からである。
マルロー王国の盾として、皇国軍の火力を一手に引き受ける役回りは御免被る。
そういう前提で大陸北方諸国同盟は動いていたのだが……。

20303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/11(土) 18:46:41 ID:54bd7AQo0
今日も、皇国軍の大型飛行機がノイリート島上空にやって来た。
また“定期便”か……。
迎撃用飛竜と対空砲の準備はさせても、実際に飛ばす事はしない。
どうせやっても無駄だから、それで毎回飛竜を消耗させる事もないだろう。

だが、今日は様子が違った。
飛行機から、何かがばら撒かれたのだ。
一つは2バルツ爆弾。もう一つは紙吹雪。
特に大量の紙吹雪は島全体に降り注いだ。

束ねられた2バルツ爆弾は地表よりも上空で炸裂するように着火して投下された。
今回は警告であり、次は本格攻撃だという内容の紙吹雪と共に。

ノイリート要塞や飛竜基地にも落ちて来た紙吹雪はつまり“伝単”だ。
部下に手渡されたビラを読んだノイリート伯爵は、血相を変えた。
ビラの内容は、皇国に対するノイリート島の無血開城。
平たく言えば降伏を促す文書で、実質的な“降伏勧告”だ。
まだ直接、矛を交えていない段階で、降伏して島を明け渡せとは……。

シテーン湾に展開するリンド王国軍の海空戦力と、マルロー王国側の北方
諸国同盟軍の海空戦力を比較すれば、リンド側が圧倒的に不利なのは誰でも解る。
だが、リンド側に存在する皇国軍という因子によって、この戦力比は容易に覆るだろう。

何せ皇国軍のある所、制空権は完全に皇国軍のものだ。
たった1機の偵察機すら、飛竜では阻止出来ない訳だから、逆に言えば皇国軍は
たった1機の偵察機を展開するだけで、敵軍に相当な不利を強いる事が可能なのだ。

降伏をする場合、3日以内に要塞司令部に“白旗”を揚げ、1週間以内に全将兵の武装解除を恙無く行うべしと書かれてある。
3日経っても白旗が掲げられない場合、ノイリート島に戦禍が及ぶとも。
期限付きの降伏勧告……。

海軍や空軍の偵察によると、確かにセルシー周辺では皇国軍やリンド王国軍の動きが活発なようだ。
マルロー王国軍とセソー大公国軍が中心となってシテーン湾の哨戒とセルシー港周辺への偵察が
行われているが、あまり近づくと皇国軍の設置した沿岸砲(76.2mm高射砲の転用)で攻撃されるので、
遠目から望遠鏡で観察するしか無いが、皇国製と思しき超大型船が停泊しているのは確認された。
あれ程の超大型船なら、1隻で1個旅団を運べると言われても信じられるくらいだ。
猛爆撃の隙に、陸兵を満載して攻めて来られたら、要塞はどうなるだろう?

ノイリート島に駐留する軍人と軍属、領民を全て合わせれば島民は3万人近い。
その大勢の人々の命を、司令官として領主としてどう扱うか?
戦うとすれば、非戦闘員を本土に避難させる事から始めねばならない。
彼らの命を守るだけでなく、要塞の“食い扶持”を減らすためにも必要だ。
武器弾薬、食糧や水も、1日分でも多く確保する必要もあろう。

だが、それでノイリート島が持ち堪えても、援軍が来なければ結局は“白旗”を掲げる事になる。
大陸最強だったリンド王国軍を、鎧袖一触で“滅ぼした”皇国軍に
対抗可能な“有力な援軍”の当てなど、同盟軍にあるのだろうか?

ノイリート伯爵の気持ちが揺らいでいるのを察した要塞司令官は言う。
「閣下、これは単なる脅しでしょう。臆する事はありません」
「単なる脅しではなく、本当に爆弾を落とされ兵を上陸されたら、貴公が責任を取るか?
 皇国軍に“我々の常識”は通用しないという事は、リンド王国が証明したのだぞ」
「それは――」
「皇国軍にとって、大陸から最短で100マシル。リンド領から300マシルという距離も、
 “飛竜”の航続圏内である事は貴公も重々承知だろう。制空権がどちらにあるのか」
「しかし本土の大公殿下の許可無く、島が独自に降伏となれば……」
「梯子を外す事になろうな。殿下だけでなく、マルロー国王陛下に対しても」
「閣下、この島が皇国軍に利用されれば、それこそ北方諸国同盟軍が瓦解します!」
……瓦解しても良いのではないか?
ノイリート伯爵は、マルロー国王やセソー大公が
今度の戦争を仕掛けたがっていたのを理解出来なかった。

実質的にリンド王国が皇国に取り込まれてしまっている。
という現実を認めたくないのは解るが、ここまで勝つ見込みの
薄い戦争を自ら仕掛けた大国というのは、史上初ではないか?

リンド王国の場合、皇国の事をよく知らなかったから、相手はユラ神国のみで、だったら勝てる。
という考えに至ったのは自然な事で、自分がリンド王だとしても、そう判断していただろう。
まあ、前国王の采配が不味く、引き際を誤ったという大失点はあるが……。

21303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/11(土) 18:48:57 ID:54bd7AQo0
だが、今や皇国軍の人知を超えた精強さは誰もが知る所だ。
それを過剰に恐れるあまり、皇国が準備万端整えて、
大陸東方に食指を伸ばしてくる前に一発お見舞いしてやれ!
というだけで事を始めてしまったのは、少し思慮が足りないのではないか。

リンド王国軍は壊滅したから、相手がリンド王国“だけ”なので
あれば、マルロー王国やセソー大公国側に十分な勝ち目がある。
だが、その強力なリンド王国軍を壊滅させた張本人を相手に、
マルロー王やセソー大公は勝算を持っているのだろうか?

開戦前と開戦直後に行われた軍議では、納得のいくような展望は得られなかった。
何とかなるだろう、何とかなって欲しい、何とかなるに違いない、何とかするのだ。

リンド王国のように、死に体になるまで奮戦して、莫大な賠償金と
属国同然の立場を受け入れざるを得なくなるくらいなら、むしろ先手を
打ってこちらから皇国に和親通商交渉を持ち掛けても良かっただろうに。

しかし今や、その可能性は潰えた。
戦争を始めてしまった以上、どこかで終止符を打たねばならない。
それも、なるべく良い方向で終わらせねばならない。

リンド王国とマルロー王国が皇国の下に合同し、『皇国主導による世界平和』が
達成されれば、それはそれで人類の歴史的偉業になるかもしれない。
セソー大公国だって、東西の両王国の緩衝材として常に距離を測りつつ微妙な政治を行う必要が無くなる。
勿論、その正反対になる可能性も否定は出来ないが。

「皇国軍の航空偵察の頻度が高くなっている事は報告済みだろう。
 マルロー国王陛下やセソー大公殿下からの援軍はどうなっている?」
「特に何の連絡も、援軍もありません」
「ここが陥落すればシテーン湾沿岸が全体的に危うい事を理解されているのか……」
「こうなったら島民を徴兵して武装させますか?」
「いや。その必要は無い」

小銃は予備を含めても島民分無いが、普段使っている農機具を武器にしたり、
木の棒にナイフを括り付けたりすれば即席の武器になる。最悪ただの棒でもいい。
だがノイリート伯爵はその提案を却下した。

セソー大公家は、元を辿ればリンド王家であり、マルロー王家。
過去、シテーン湾とノイリート島の覇権を巡り、リンド王国とマルロー王国の間で
血で血を洗う戦争が幾度もあったが、両大国もさすがに疲れ、無為な戦を止めるために
この海の平和の証しとして王子と王女の婚姻が為され、セソー大公国が建国されたのだ。
セソー大公国は、シテーン湾の平和と安定を両王国から“委託”された訳だ。
再び、この島と海域に血を吸わせるのは、ノイリート伯爵の本意ではない。

この期に及んで局外中立が不可能なのはノイリート伯爵だって良く解っている。
セソー大公国は、正に父と母の夫婦喧嘩に巻き込まれる無力な子供の立場なのだ。

むしろ、ここは心を鬼にして、皇国軍の進駐を認め、ノイリート要塞に皇国の軍旗が
はためくという事実を内外に知らしめれば、無用な争いを早期に終結可能なのではないか?
夫婦喧嘩を止めさせるのに、子供が泣きながら駄々を捏ねるしか無いのならば……。

「皇国軍への降伏の準備を。白旗と、将兵の武装解除を恙無くな」
「閣下……!」
「裏切り者の汚名なら受ける。叛逆の処罰も受ける。それで良いか?」
「はい……それが、閣下の熟慮の結果なのであれば……」

シテーン湾の最重要拠点は、戦わずして白旗を掲げる事となった。

22303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/11(土) 18:49:28 ID:54bd7AQo0
投下終了です。
久々に纏まった量の本編が投下できました。

23303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/11(土) 19:02:03 ID:54bd7AQo0
投下して早々ですが、訂正です。

>>19
誤「2層48門の重フリゲート」
正「2層艦に迫る48門の重フリゲート」

2層なのは74門だろぉ?

24名無し三等陸士@F世界:2017/02/11(土) 22:51:28 ID:I8vK1fvg0
さ、39話?

25名無し三等陸士@F世界:2017/02/11(土) 23:39:37 ID:XUtx.FGw0
どう見ても既出の39話そのまんまです本当に(ry

26303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/12(日) 00:34:20 ID:54bd7AQo0
>>24-25

すみませんすみません。
以前に投稿していたものですね。
自分で投下したの忘れてるって恥ずかしすぎる……。

新規分と以前の分の書き直しを並行してやっていた結果がこれだよ!
これの、続きを投下しないといけないんだ!

仰るとおり一年と少し前に投下したまとめの方の39話なのですが、書き直してるから微妙に違うんですよね。
大陸と島の距離とか、どういう扱いにすればいいのか困った……。
今のところは、誤爆という事にさせて下さい。

という訳で、本当の続きを投下します。
こちらは大丈夫なはず!

27303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/12(日) 00:35:10 ID:54bd7AQo0
リンド王国の都市セルシーには、皇国海軍の水上戦闘機部隊が進出していた。

艦上機の零戦を基に水上機として開発された二式水上戦闘機。
水上機母艦や潜水母艦の上空直掩用と離島防衛用に150機程が生産されたのだが、
正直、これを本当に主戦力として使う場面が来ると思っていた関係者は少ない。
“本来の想定”では、皇国海軍は陸軍や海軍の基地航空隊と空母航空隊の傘の下で
活動する事を前提とし、水上戦闘機が必要になる程に逼迫した戦況は考え辛かったからだ。

皇国近海で、基地も空母も当てに出来ない状況って何? という事で、
水上戦闘機は技術的冒険とか、物の試しに造ってみた感も大きかった。

セルシー方面も、本音を言えば陸軍や海軍の陸上機を運用可能な飛行場を建設したい。
だが、そんな各地にポンポン飛行場を整備するような設営部隊も資材も時間も無い。
そうすると次に挙がる候補は当然空母艦隊だが、これも台所事情的に苦しい。
リンド王国海軍との戦いで、一航艦が全力出撃したというだけでヘトヘトなのだ。
一航艦は現在、戦隊や中隊ごとに搭載機を新式の彗星や天山に更新中であり、
その意味でも、今すぐ急なお呼びがかかっても遠征は無理であった。

勿論、これが対ソ連における“国運を賭けた全面戦争”となれば話は別だが、
そういう訳ではないから、出せるとしたら軽空母を中心とした艦隊になる。
だが1隻あたり30機として、4隻出してやっと120機程度では少し力不足ではないか?
軽空母は小型な分、飛行機運用のための燃料や弾薬もそう多く積めないので、長く留まって戦闘するには
それだけ支援のための補給艦を手配してやる必要があり、瞬間最大風速を買うとしても効率的ではないだろう。
さらに決して数の多くない軽空母には、陸海軍の飛行機輸送や航路防衛のための護衛空母としての役目もある。
この重要任務を疎かにしてまで、打撃力だけを期待するのは国家や軍全体の運営効率を下げる事になってしまう。

そうすると、水上機と飛行艇しか無いではないか……海軍は迷ったが、
まあ以前から大内洋には水上機母艦と飛行艇部隊は進出していたから、
それで良いなら支援部隊の少しの強化で極北洋への進出は可能だ。
数的にも質的にも、陸上機や空母機には及ばないが、当該方面で戦う陸軍にとって、
10機でも友軍飛行機の傘があるのと無いのとでは、戦闘の趨勢が変わってくる。
現状、友軍航空戦力はリンド王国空軍のみだったのだから、信頼感が違う。

だが、セルシーに水上機を進出させても、燃料や弾薬は容易に補給出来ない。
大内洋に展開する水上機母艦や補給潜水艦から、輸送飛行艇が極北洋へピストン輸送する事になる。

水上機母艦搭載分と、巡洋艦から分派された分を合わせて二式水戦が9機、
零式水偵が8機、九五式水偵が8機、九七式飛行艇が3機、九一式飛行艇が5機。
一応、数的には33機で、零式水偵と二種の飛行艇は爆撃能力も期待出来る。
二式水戦は勿論だが、九五式水偵も飛竜相手なら空戦も可能だろう。
つまり空戦用途には二式水戦と九五式水偵を。
偵察と爆撃用途には零式水偵と飛行艇を主に使う事になる。

頭数としては最低限揃い、支援部隊と共に燃料や弾薬も最低限揃った。
しかし、あくまで“最低限”だ。
毎日のように全力出撃など到底不可能。
爆弾も、250kg爆弾は50発程度しかなく、500kg爆弾はたったの10発しか存在しない。
30kg爆弾や60kg爆弾を含めた全体でも30t分くらいしか無い。爆弾が存在しないのと同じだ。
出し惜しみして10日くらいならこれでも行けるが、以降は爆撃任務が不可能になる。
毎日補給される爆弾は500kg分。多くて1t分が精々だから、持久戦になっては不利。

爆弾無しでは、地上を銃撃するくらいしか航空支援にならない。
やるなら3、4日で使い切る覚悟で全力出撃して、後は陸軍の奮闘に期待するか。

28303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/12(日) 00:36:18 ID:54bd7AQo0
『駄目で元々、ノイリート島に降伏勧告をしてみて出方を伺ってみても良いのではないか?』

そんな時、何となくその場の流れで、そういう意見が出てきたのだ。
虫が良すぎるとは誰もが思ったが、威圧してみるだけならタダだ。
駄目なら爆撃をして、再度降伏勧告。それから海兵隊投入でもいい。
ここは押さえておきたい要衝、殴り込むなら滑空機を使う手もある。

だが、現実は意外と単純なのかも知れない。
「本当に降伏してくるとは……」
「こちらの準備がまだなのですが、ぎりぎり1週間粘って欲しかったですな」
降伏したとなれば、軍を派遣して制圧し、軍政を敷かねばならない。
皇国軍は“セルシー防衛”のために海兵隊1個中隊と陸軍の1個大隊を準備していたが、
これを“ノイリート島防衛”のために転用する必要が出てきた。

「海兵隊は全部出しましょう。あとは陸軍さんですが……1個中隊が限度でしょうね」
「合わせても400人にすらならないが……向こうは陸兵だけで10倍以上だぞ」
「リンド海軍に応援してもらいますか?」
「要塞を相手に、28門フリゲートで何か有力な支援が期待出来るか?」
「ではリンド軍の海兵隊にも……本来、これは彼等の問題ですから」
「数十人増えたところで何も変わらん。むしろ“裏切り者のリンド兵”に対して
 悪感情を持たれたらどうする。悪者になるなら、我が将兵だけで十分だ」

陸海軍の参謀は、降伏を確認したら捕虜を取らずに全員をセソー大公国の本土に送還し、
無人となったノイリート島の食料と武器弾薬のみを戦利品として調達すべしと進言した。
またこの地で、数千の敵将兵を養う事になれば負担で身動きが取れなくなるから、
セソー大公国の軍艦や商船に乗って帰ってもらうのが一番良いという事だ。

軍艦はともかく、島に駐留する飛竜部隊に関しては、本土に帰らせるのは危険が増えるという判断は当然あった。
だが、決して広くない島に重爆撃機が発着可能な飛行場を建設して運用する事になれば、彼等は邪魔になる。
戦利品とした上で食肉として利用するという案は却下だ。
飛竜の味は良くない上に、何より“神聖な”飛竜を食用に解体
などしたら、列強各国への示しが付かない。蛮族扱いへ逆戻りだ。

遺憾だが、部隊維持にかなりの場所と物資を必要とする飛竜達は帰って貰い、
空いた土地を飛行機部隊の基地とすべく工兵隊を派遣する事となった。

29303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/12(日) 00:36:58 ID:54bd7AQo0
皇国軍の離着水可能(!)な飛行機械によりノイリート伯爵に届けられた手紙の内容は、俄には信じ難かった。
『皇国軍の将兵が降伏を確認しに上陸するから、武装解除した将兵は全員本土へ帰るように』
伯爵と一部の将兵は、事後処理や皇国軍将兵の案内のために居残りを
命じられたが、他の大多数の将兵は捕虜に取らない上、最終的には
伯爵と主要な随員以外、全員の本土帰還が望ましいというのだ。
飛竜兵だけでなく、飛竜自体の本土送還も許可されている。
降伏した敵軍の飛竜を戦利品としないとは、想定外だった。

処遇は島の地下牢ではなく、本土の大公や軍司令官に委ねられる事になる訳だ。
伯爵と主要な人員だけが島に残されるのは、本土に帰れば重要人物である彼が
真っ先に処刑されるのが目に見えているから、その予防措置という事らしい。
敵国である皇国が、ノイリート伯爵の命を保障する側になろうとは。

「一杯食わされたな。皇国に」
「は?」
「皇国は我々の処遇を本土の殿下や将軍に丸投げし、土地と備蓄物資だけは戦利品として押収出来る。
 本国に“裏切り者”に払う身代金は無いだろうから、皇国も我々を捕縛して交渉材料には出来ない。
 だが捕虜を殺す事も売却する事もせず、自由の身にするのだから我々も文句を言える立場に無い」
「皇国の丸儲けですか……では、降伏の話は無しにしますか?」
「馬鹿を言うな。一度結んだ約束を違えるような騎士道に反する行いをするなど、名誉の失墜だ。
 それにな。皇国軍が上陸して来た時、それを背後から襲ってみろ。どんな報復が行われるか。
 そんな事になれば、皇国軍は苛烈な報復をする正当な権利がある事になるのだぞ?」
「はっ……失言でした。部隊の統制を厳にし、恙無く降伏と送還が行われるよう。小官も全力を尽くします」
「うむ。大公殿下にも部下達に責任は無いという事は理解して頂かねばならん。
 彼等は本土に帰った後は、そちらの防衛軍として働いて貰わねばならないからな」
「はい」

皇国軍からは陸軍の歩兵中佐と海兵少佐がノイリート島に上陸し、ノイリート要塞の降伏と武装解除の確認を行った。
偵察機は飛ばしていたと言え、最前線からは離れていたから、そこまでピリピリした雰囲気ではなかったのが救いか。
リンド王国との戦争の話が伝わっているせいか、末端の下級将校や兵士ほど抵抗の素振りは無い。
むしろ上級将校の方が駄々を捏ねて抵抗しそうであったが、ノイリート伯爵が
皇国軍の指揮官に剣を渡し、改めて降伏の意思を伝えると、それも収まった。
数時間に渡って上空を飛行機が飛び回っている効果もあるだろう。

多くの将兵達は、ノイリート島に停泊中であった軍艦に分乗して本土へ帰っていく。
彼らは軍服と最低限の荷物を除いて手ぶらだ。
皇国軍の命令によって、武器も食料も島に置いていく事になる。

ノイリート要塞の物資類は食料から爆弾まで全て皇国軍が接収した。
ここで大規模な物資類を手に入れた皇国軍は、占領した新たな島を拠点に北方諸国同盟への圧力を強め、
ノイリート島を奪還されないよう守備を固めると同時に攻勢計画を前倒ししつつ検討に入った。

マルロー国王も、ノイリート伯爵と同じように聞き分けが良いなら春を待たずにすぐに終わるだろう。
しかしそうでなければ、春を見据えての計画だ。

本国では空母が、東大陸では大内洋に停泊中の旧式戦艦にもお呼びがかかった。
泥縄ではあるものの、せっかく得た機会を逃すわけにはいかないのだ。

30303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/12(日) 00:38:08 ID:54bd7AQo0
短いですが投下終了です。
今度こそ、下手打ってないですよね?

31名無し三等陸士@F世界:2017/02/12(日) 13:51:23 ID:7On4xicw0
いつも有り難う、拝読しました

32名無し三等陸士@F世界:2017/02/14(火) 12:16:17 ID:I97TxQ6c0
一杯食わされたって言ってるけどノイリート伯爵にとって理想的な状況って何だったのだろう?

33303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/14(火) 22:52:35 ID:54bd7AQo0
近世兵器の資料を見ていて、19世紀の仏12cm砲をなんで英語では12ポンド砲と呼ぶのか理解に苦しみました。
12cm砲の砲弾重量は9ポンドじゃねーか! 素直に12cm砲のままか4・3/4インチ砲のように訳せば分かりやすいだろうに、何か理由があったのでしょうか。


>>31

こちらこそ、ありがとうございます。


>>32

部下の将兵と島民の命は保障され、セソー大公にプレッシャーを与えた訳ですから、現状はほぼ理想どおりです。

ただ部下の将兵に関しては、島の捕虜収容施設か、皇国軍が東大陸に用意している捕虜収容所に移送されると思っていたのが、本土送還となったので驚いたのです。
皇国はリンド王国戦で下級兵士も含めた大量の捕虜を集めて、捕虜返還で現金を要求しているので、きっとそうするだろうと考えていました。

実際は大量の捕虜の扱いが負担で仕方なかったので、皇国軍はリンド戦後に、当面は(大量の)捕虜は取らないという通達を出しています。
降伏勧告しておいて捕虜の面倒を見ないのは無責任といえば無責任ですから、そういう意味で一杯食わされた……という感じです。

『ハーグ陸戦条約 第二章 俘虜』
「第10条:俘虜ハ其ノ本國ノ法律カ之ヲ許ストキハ宣誓ノ後解放セラルルコトアルヘシ
 此ノ場合ニ於テハ本國政府及之ヲ捕ヘタル政府ニ對シ一身ノ名譽ヲ賭シテ其ノ誓約ヲ嚴密ニ履行スルノ義務ヲ有ス
 前項ノ場合ニ於テ俘虜ノ本國政府ハ之ニ對シ其ノ宣誓ニ違反スル勤務ヲ命シ又ハ之ニ服セムトノ申出ヲ受諾スヘカラサルモノトス」

今回の皇国軍の行為は、この条文にある宣誓解放に当たると思うのですが、大丈夫でしょうか。

セソー大公国の偉い人がノイリート要塞関係者を処罰したくても、下級将兵を罪には問えませんし、
問うたとしたら士気が下がってただでさえ孤立無援なのに自分の首を絞める事になります。

34名無し三等陸士@F世界:2017/02/15(水) 22:34:17 ID:ci0mzTRQ0
投下おつです!

35名無し三等陸士@F世界:2017/02/19(日) 19:15:06 ID:XiyVDv5E0
35:54

10:40
ttps://www.youtube.com/watch?v=WTdY7h129Mk

ttps://www.youtube.com/watch?v=8R0luOy8ce8

36名無し三等陸士@F世界:2017/02/23(木) 00:00:15 ID:w2nCsok60
>19世紀の仏12cm砲をなんで英語では12ポンド砲と
ライットシステムを使った砲の事かな?
12cmナポレオン砲も後にこの前装式旋条(ライフリング)砲に
改造されています。
ライフリングを施せば12ポンドナポレオン砲でも砲弾重量は4.1kgから
11.5kgまで増やすことが出来ます。
何となくですがこの表記での「ポンド」はヤード・ポンド法でのポンドじゃ
なくてメートル法のキログラムを表現しているのかなぁと。
日本でも四斤山砲の砲弾重量はポンド表記では無くて、メートル法の
キログラム表記になってますからね(斤はキログラムの和訳)。

37303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/25(土) 23:15:22 ID:54bd7AQo0
>>36

そうです「12ポンドナポレオン砲」と呼ばれるタイプの物ですが、そういう理由があったのですね。

時代は違いますが、睦月型駆逐艦の12cm砲の砲弾重量が20kgらしいので、砲口径からすれば
12cmで11.5kgの砲弾はおかしくないというか、現代の弾頭と比べるとむしろ軽いくらいですね。

球形弾だと4.1kgの砲弾重量ですが、ライフル砲で弾頭形状が変われば砲弾重量も増えますね。
この仏製大砲はアメリカの南北戦争でも(ライフリング化されたものが)使われたようですが、
12ポンド砲という言い方はどちらかというとイギリスよりアメリカでの呼称なのでしょうか。

12cm砲から約12kgの砲弾を発射していた時期があって、それが一般的になったと。
でも、約12kgを12ポンドと言うのは……現場や兵站が混乱しなかったのしょうかね。
11.5kgならまだ25ポンドと言った方が分かりやすい気がするのですが。
1ポンドと1kgだと重量は倍以上違うし、本当に12ポンド(約5.5kg)の砲弾を使う12ポンド砲もこの時代は現役でありましたよね。

OF17ポンド砲は口径3インチで本当に17ポンドの砲弾を発射する対戦車砲ですし。

あと18〜19世紀だと英ポンドと仏ポンドが微妙に違い、発祥の仏国もまだメートル法が浸透していないので、かなり混乱します。
1800年前後の時期は、メートル法を制定した当のフランスでさえメートル法に振り回されてた感があります。壮大な社会実験中というか。

ヤードポンド法だと、オンスやパイントはドリンクの量とか、グレーンは火薬の量で、現代でも使われていますが……。
現代は基本メートル法で統一されていて本当に良かったと思います。

四斤山砲の場合は「きん」と「キロ」は音が似ているし、馴染みのない「瓦」を使って四瓩山砲とするよりは分かりやすかったのかな? とか。
戦国時代や江戸時代に銃や砲の単位として使われていたのは、匁や貫が多かったですよね。
1貫が約1.3ポンドだから、換算も直感的に分かりやすい……のか?


あと、これはおそらく私の勘違い(記憶の改竄?)なのですが、英軍はWW1かWW2の頃まで、現代的なライフル砲であっても、
例えば口径3インチの大砲があったら、そこに古式の球形弾を入れたと仮定した命名を行っていたと、どこかで見た記憶があるんです。
でも口径3インチをその方法で換算すると4ポンド砲になりますし、40mm砲が2ポンド砲になる訳もないですよね……。

38名無し三等陸士@F世界:2017/03/05(日) 14:55:01 ID:w2nCsok60
>四斤山砲
この部分は元々幕府軍の洋式軍隊「伝習隊」などがフランス式を元にして
いるためもあったからかと思います。
教練を受けたのがフランス軍だったから、その装備で使われている単位も
メートル法にならったのかと。教えられている側からすれば「これがデファクト・
スタンダードですよ」と言われたからそれに合わせようという思惑もあった
のかもしれません(私個人の憶測です)。
四斤山砲に関して言えば、幕府軍や敵である薩摩軍でも盛んにコピーされ
ていましたのでメートル法で統一されていれば砲弾などにもある程度の
互換性がとれますからね。

有名な仏式伝習隊は、幕府がフランスから招致した軍事教官団
(シャノワンヌ参謀大尉以下、士官6名、下士官12名)の指導をもとに
編成された優良部隊ではありましたが、参加した藩兵の中には満足
な装備を揃えられずにいた兵も多々あったそうです。

39303 ◆CFYEo93rhU:2017/03/12(日) 11:46:37 ID:4623vdPQ0
>>38

> 四斤山砲

洋式幕府軍が教練を受けたのがフランス式だったからメートル法というのはわかるのですが、
「キログラム」に「斤」の字を当てたのは何故だろうか? というのが気になる部分です。
「両」や「貫」よりはキログラムに近いとはいえ、誤差は結構あります。

両とか匁と同じく、斤だって元々あった日本の度量衡で、本来の「斤」とキログラムの意味の「斤」では倍くらい差があるのに。
キログラムの意味の「斤」は洋式大砲(四斤山砲)に限って使われる単位だったからそんなに問題は発生しなかったというだけでしょうか。

> 仏式伝習隊

江戸時代には公式な外交ルートを持っていたのはオランダだけで、西洋的な学問も蘭学というほどオランダを優遇していたのに、
幕末から明治期になると急に英仏独米あたりが出てきて、日本の近代化は殆どこの辺りから来ていますから、オランダの影が……。
まあ19世紀後半のオランダは、欧米の中で相対的に弱体化はしていましたから、これから西洋化しようという時にわざわざ中堅レベルを目標にはしないでしょうが。
産業レベルはともかく、国土と人口(植民地を除く本国領域)だけで言えば欧米の一等国に並ぶから、オランダは参考に出来ないというところもあったでしょうし。

幕末〜明治初期にかけては、普仏戦争でプロイセンが勝ったという事でプロイセン式を参考にしてみたり、良く言えば柔軟で臨機応変、悪く言えば場当たり的で無節操ですからね。

横須賀の海軍工廠(造船所)も最初は江戸幕府がフランス技師を招いて始められたけれど、いつのまにか日本海軍はイギリス海軍の一番弟子(自称)みたいな感じになってましたし。
日清戦争の主力艦(?)たる三景艦は仏式で、この頃までは英仏どちらかに偏り過ぎないように軍艦発注してましたよね。
日本の近代化遺産や日本軍から仏式の影が急速に消えたのは、三国干渉と日英同盟の影響でしょうか。

その後も機関銃や野砲、戦車や飛行機といった個々の分野で仏式を模倣や参考にする機会はあっても、軍の骨子は陸軍=独式、海軍=英式でしたよね。

40名無し三等陸士@F世界:2017/03/12(日) 15:11:23 ID:duMIjbdY0
でも明治のお雇い教師はオランダ人が多かったわけで。

プロイセンを参考にしたのは、明らかに格上の仏に勝ったのを、途上国の日本自身に重ねたのかも。

フランスは、幕府寄りだったから明治政府からの印象が良くなったという話も。
あと、三景艦は日本の無茶な要望に何とか応えようとした奇才のが設計したけど、
要望した日本側が「これは実用的じゃない」とか言い出して、奇才を怒らせて契約途中帰国させたという流れもあったような…。
ただドッグなどの設備の充実はフランスのおかげではあったり。

フランスって対独政策の関係で伝統的に露と仲が良いから、対露に頭を悩ませる日本には微妙な部分があるし。

41名無し三等陸士@F世界:2017/03/17(金) 02:52:57 ID:w2nCsok60
>>39
>「キログラム」に「斤」の字を当てたのは何故だろうか?
これ高校時代の私も気になって、古文の先生や現代国語の先生にも聞いた
事がありまして結局詳しい由来まではわからなかったのです。
「斤」という文字は本来舶来品などに使用する場合イギリスポンド(英斤(
えいきん)を元にしたという事まではその時にわかったのですが、何故斤の
字をポンドに当てたのかという由来はわかりませんでした。
なお、「斤」は現代の常用漢字での代用字で本来の字は「听」(国字)です。

>良く言えば柔軟で臨機応変、悪く言えば場当たり的で無節操ですからね。
この時期は世界的に見ても様々な兵器や戦術、科学技術の発展上の過渡期に
あり何が最適解なのかという事までは分かっていない時代でしたので
一概に当時の日本国の選択を「場当たり的で無節操」って言っちゃって
いいものかと思う所です。
船の動力にしてもレシプロエンジン搭載だったものがほんの10年程で
蒸気タービン搭載へ移行していったりという風に列強国でも様々な変化と
試行錯誤があった時代でした。
特に当時の日本は工業力も技術も低くそして何よりカネが無いw
金はないけれど隣国の軍事的脅威には対抗しないといけませんでしたので
カネが無いなりに色々やった結果のフランス式からの変遷という部分も
あったであろうという感じではないでしょうか。
船に搭載されていたボイラー1つにしても、日清戦争ではスコッチボイラー
だったのが日露戦争ではより高温高圧に耐えられる水管ボイラーに変わって
いますし。

ただまあ、三景艦自体は「ある意味」当時あったある種の流行に形から入ろう
とした日本なりの解釈の仕方であったかもしれません。
比較的小型の軍艦に巨砲を1門か2門だけ搭載するという形式の軍艦は19世紀
後半の列強各国でも見られましたし、日清戦争に至る前の時期に起きた
征台の役の翌年に清朝が日本への対抗策としてレンデル砲艦を多数
購入したのも何しかの流行が関係していたかもしれないです(でも、さすが
にレンデル砲艦は金の無駄遣いな気がする)。

42303 ◆CFYEo93rhU:2017/03/18(土) 20:37:41 ID:4623vdPQ0
くそぅ、大悪魔様かわいいなぁ。
「悪魔的行為」なんてものを見ると、安楽椅子に座らせて食器台に縛り付けたくなる。
口にメロンパンねじ込んで異端審問したい……。


>>40

> オランダ

医療用語とか、一部の専門用語にはオランダ語の影響も残ってるようですね。
あと、もう完全に日本語化してしまった言葉にも、オランダ語あたりの影響があった……と、どこかで。
天ぷらとかビー玉とか。ポルトガル語だったかもしれません。

幕末の頃、洋式の技術だとか国のありかたといったものも、初期はオランダからの指導や影響も確かにあったようですね。
しかしそれが、明治に至り大正、昭和の頃には日本が目指すべき西洋とはほぼ米英仏独の事で、蘭?
ああそんなのも居たね。昔はお世話になったようだけど、今目標とすべき先進国はアメリカだよね。
といった感じになってませんでしたか?

オランダの軍学関係者というと、浅学なのでマウリッツくらいしか知らないのですが、幕末とは250年くらい違いますよね。
グスタフ・アドルフも、フリードリヒも、ナポレオンも、元を辿ればマウリッツの用兵術。
マウリッツの方法を自己流に改良したに過ぎない。なんて話も聞きますが。

> フランス

スエズ運河を造ったのはフランス人で、パナマ運河も途中まで同じフランス人でしたよね。
18世紀頃の戦列艦とかの木造軍艦ではイギリス製よりフランス製の方が高性能だったという話ですし、何だかんだいってフランスの実力は高いですよね。
19世紀後半、イギリスが建艦競争で他国をリードしていた既存のバカ高い蒸気式装甲艦を無価値にしてしまうのではと危惧された水雷艇を作ったのもフランスでしたね。

そういえばマスケット銃に装着する銃剣を作ったのもフランスでしたね。
ミトライユーズのような時代を先取りしすぎた兵器なんかも作ってますし、イギリスで開発された戦車を現代的な単一砲塔式にしたのもフランスでした。
WW1で激しい航空戦を経験したからでしょうが、独立空軍、戦闘機なんかもフランスは決して劣ってない筈。

現代では結果論的に愚かだったと批判される事があるマジノ線も、ドイツに対する国防の考え方としては必ずしも間違ってない。
実際にドイツ軍の主力部隊はマジノ線を避けて攻めてきた訳で、それに上手く対応して防御が成立していれば、ドイツ軍は
初期の攻撃の勢いを削がれて半年もしないうちに膠着状態になって、そうしたらイタリア参戦も無かったかもしれないし、
ドイツはソ連に攻め込む余裕なんて無くなっただろうし、1941年頃には英仏の反撃を受けていたかもしれない……?
フランスが降伏しなければ日本の仏印進駐も無かっただろうし、ドイツの勝ち馬に乗るという前提の博打も打てなかったかもしれない?

ファンタジー系の創作資料などだと、中世のフランスの騎士がイングランドのロングボウ兵に負ける話が良く出てきませんか?
そりゃあ、壕と杭を巡らした陣地に正面から突撃したら誰だって負けるよって思うのですが。
フランスの騎士がロングボウに負けたのが、武田勝頼が無能みたいに語られるのと似ていて、ちょっと可哀想。

43303 ◆CFYEo93rhU:2017/03/18(土) 20:38:15 ID:4623vdPQ0
> ドイツ

日本だと逆にドイツが過大評価されてる感じがある気がします。
WW1で負け、WW2で負け分割統治されながらも、再統一し、今では戦勝国のフランスを差し置いてEUのリーダー格やってるドイツは確かに凄いですけど。

でもドイツが本当に凄かった、強かったのはビスマルクとモルトケが政治と軍事で舵取りしてた頃だけなんじゃないかという疑問も。
神聖ローマ帝国(笑)時代をドイツの帝国に含めるなら帝国の時代は長いですが、事実上のドイツ帝国は大日本帝国の歴史より短いですし。

> イギリス

薩摩藩が親英で、かつイギリスは反露的な大国だったから、日本としては長く付き合うならイギリスが都合良かったのでしょうね。
といってもイギリスはイギリスで、対仏や対独に関しては親露的ですから、欧州情勢で互いに牽制し合ってるのをどう生かすか、難しかったんだろうなぁ。とは。
あとは欧州全体に距離を取っていたアメリカになりますか。こう見ると、米英を同時に敵とした頃の日本がいかに外交的に八方塞だったか……。

ネタで英国面という言葉があるくらい珍妙な兵器を作る事で一部有名ですが、それと同じくらい手堅く保守的な兵器も好むんですよね。
それに戦車だって最初は実用性に疑問符が付く珍妙な新兵器だった訳ですし、想像力のある限り、とりあえず作ってみてから考える
というある種の無鉄砲さが、世界中に船団を送って植民地支配していた国のフロンティアスピリッツの源泉なのかもしれません。

典型的な海洋国家だけど陸軍が意外と強いというのも、海軍だけ強くても陸軍が強くないと駄目だという実証のようですね。

ファンタジー系の話だと、イングランドのロングボウは中世最強! みたいな向きもありますが、
だったらなんでイングランドはスコットランドとの戦争でマスケット銃兵使ってるんですかね。

> アメリカ

南北戦争で内戦に専念していた時期を除けば、19世紀後半から20世紀にかけて急速に台頭してきた新進気鋭の新たな大国ですね。
幕府が攘夷ではなく開国を選択したきっかけの一つはペリーの黒船ですし。


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