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SSスレ(萌え)8
40
:
名無し三等陸士@F世界
:2012/05/17(木) 00:46:55 ID:JFpt2wLk0
蟲に囚われたエルフたち…世界樹のあのねを思い出しました
41
:
名無し三等陸士@F世界
:2012/06/02(土) 17:39:48 ID:WX3D6F9E0
世界竜会議について、以下のような事態が発生しないか?
オット駐日ドイツ大使「吉田大使、本日は世界竜会議に関して、ヒトラー総統からの訓令をお伝えに参りました」
吉田茂竜担当大使「ほう、総統閣下は何と?」
オット「本日付をもちまして、小官を駐日大使兼任のままドイツ帝国副総理に任ずるとのことです」
吉田「は……(つ、つまりオット大使をチャーチルやルーズベルトと対等に話せる地位に就けて、会議や裏協議からドイツを排除できないようにしようというわけか)」
オット「さらにフランス(ヴィシー政権)のペタン元帥も、世界竜会議にフランス代表を参加させたいとドイツ外務省に申し出てきました。これに関してシャルル・アルセーヌ=アンリー駐日フランス大使をやはり大使兼任のままフランス副首相に任命するとのことです」
吉田「フランスまでもが?」
オット「はい、フランスもアジアに植民地を持っており、この件には重大な利害を有しております。現にフランス領インドシナへの日本軍出兵に際しては、フランスとの了解の上ではありませんでしたか」
吉田「確かにそうですが・・・・・・(くそ、松岡洋右が余計な真似をしてくれたおかげで!)」
オット「さらに独仏両国は、マリアナの竜に対して南洋竜国の国家承認と太平洋宣言の承認式典を開催したいと思います。当然、同盟国としてご協力いただけるでしょうな」
この時期、フランス本国はパリを含む全土の5分の2をドイツに占領され、中部ヴィシーを首都とする対独協力派政権(ヴィシー政権)が成立していました。日本を含む海外駐在フランス外交団の大部分とフランス領インドシナ総督府はヴィシー政権に忠誠を誓っており、日本もヴィシー政権を承認していました。フランス領インドシナへの日本軍への出兵も当時の松岡外相とシャルル・アルセーヌ=アンリー駐日大使との協定に基づくものです。つまり当時のヴィシー政権は(ドイツの傀儡であるにせよ)日本にとって準同盟国に等しい存在であり、無視できない存在でした。ドイツがフランスと一緒になって英米と対等な立場を要求してきたら、外交音痴の日本としてはどうなるのか。撫子とメイヴがどう出るのか、興味がありますがいかがでしょうか。
42
:
竜神様の中の人
◆NdgHDvOgik
:2012/06/02(土) 23:52:15 ID:WMjW7XmA0
>>41
さん
凄く面白いネタありがとうございます。
おかげで作業を修羅場からの逃避……げふんげふん。息抜きになりました。
で、気になったのは、これが外交交渉という点でマリアナと同じく元首から信任状が必要になります。
人間運ぶより手間が減りますが、この信任状をめぐって英独の工作員が死闘を演じるとか……運んでいるUボートを撃沈する為に英国駆逐艦が集まるとか……書きたい。凄く書きたい。
外交関係については外交関係に関するウィーン条約(1961年ですが、その前から国際慣習法として確立しておりそれのとりまとめみたいなものです)のページを発見していたので参考までにアドレスをつけておきます。
ttp://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/mt/19690523.T1J.html
要するに産業でまとめると、
1)竜会議は外交交渉です
2)よって、外交官として元首の信任状持ってこい
3)その妨害でインド洋が熱い
しかし、うちの話は兵器や戦闘より産業とか条約とか仮想戦記でもニッチ路線を突っ走っているが大丈夫なんだろうか……?
では。
43
:
名無し三等陸士@F世界
:2012/06/03(日) 02:52:54 ID:F9QyG0m60
「フラグが立った」イタリア、どうするんでしょうね。
思いついた可能性は、
1.シチリア竜に同行する形で安全を確保
2.枢軸陣営からの離反工作として、連合国がイタリアを竜問題の当事国として認め、往来の安全を保証する
3.駐日大使を相応の地位に任命して会議に出席させる
1.の場合、シチリア竜の同意が必要。
2.の場合、”誰を”招請するか...ファシスト政権ではなく王室を指定する可能性も。
3.の場合は信任状をどうするか。
44
:
名無し三等陸士@F世界
:2012/06/03(日) 05:27:09 ID:rWVZsjfs0
竜会議、竜を反キリストの存在とみなしている教皇庁は看過するのだろうか。
「竜に迎合する信者は破門」とか喚きかねない様な。
竜との対決のため、プロテスタント諸派や正教会、はては異端までとも結ぼうとしているのに。
英国の竜に対する対応を見る限り、英国国教会は教皇庁とは協調しなさそうだけど。
45
:
名無し三等陸士@F世界
:2012/06/03(日) 12:50:26 ID:WX3D6F9E0
41です。もうひとつ思いついたので書いてみます。
某日。外務省の一室にて。
クレイギー駐日英大使「吉田大使、本日は私とグルー米大使を呼び出して、どういう御用でしょうか」
吉田茂竜担当大使「実は先日、英米両国が通告されたチャーチル首相とルーズベルト大統領の訪日に関して重大な懸念が生じまして」
グルー駐日米大使「懸念とは何ごとです? よもや両首脳の安全が保障できないと?」
吉田「それとは別件です。グルー大使、外交儀礼抜きでお尋ねしますが、アメリカはハワイの竜に対してマリアナと同じ形での対応を認める意思がありますか?」
グルー「……それはつまり、ハワイをあの人喰い竜の領土として認め、わが国の主権を放棄せよと?」
吉田「おっしゃる通りです」
グルー「あり得ません! かの竜はハワイだけでなく西海岸に何度も侵攻し、多数のアメリカ市民を虐殺しているのですぞ! それを容認せよと日本政府は言うのですか!?」
吉田「これはアメリカのために申し上げているのです。撫子様のお話により、ハワイの竜について恐るべき情報が入ったものですから」
グルー「恐るべき情報?」
吉田「撫子様がハワイの竜を説得できないと言われたのは、かの竜はかつて自分たちの世界にいた当時、たった一匹――いや、一柱でユーラシア大陸の半分にあたる面積を焼き尽くしたほどの力を誇っているためとのことなのです」
グルー、クレイギー「は……(ユ、ユーラシア大陸の半分を一匹で焼き尽くしただと?)」
クレイギー「そ、それは事実なのですか?」
吉田「これまで撫子様が偽りを申されたことはありません。それに、このまま何もせず放置しておけば実証されるでしょう。撫子様の話では、ハワイの竜は売られた喧嘩は千倍にして買う性格で、そう遠くないうちにアメリカ全土を焼き払うだろうとのことでしたので」
グルー「な、な、な……」
吉田「当然、アメリカと他の国々の区別をつけるはずもないでしょうから、カナダやメキシコも含む北米一帯が焦土と化すのは確実と……」
クレイギー「な、な、な……」
吉田「撫子様が今回、東京竜会議を提案されたのも、マリアナで知り合ったアメリカ人に対し悪い感情を抱かれなかったからこそ、調停の労をとろうとしたからです。これに対してアメリカが、一切の譲歩をしないと最初から言明していては、まとまる話もまとまらないのではありませんか」
グルー「し、しかしこれは外交問題であって、いきなりわが国を焼き払うなど許されることではありませんぞ!」
46
:
名無し三等陸士@F世界
:2012/06/03(日) 12:51:09 ID:WX3D6F9E0
上の続きです。
吉田「人間が相手ならそうでしょう。しかし、竜に人間の常識や外交交渉が通用しないのは、両国ともマリアナで痛感されたのではありませんかな?」
グルー、クレイギー「う……」
吉田「まして最高責任者である大統領が同じ東京にいながら、自分たちは譲歩しない、さっさとハワイから出て行け、損害賠償を要求するなどと主張したら――アメリカ国民は喜ぶでしょうが、その先はあまり想像したくない事態になりかねません」
グルー「だが吉田大使、ハワイ譲渡などを認めたら、ルーズベルト政権は即退陣です。それほどアメリカ国民の、竜に対する怒りは強いのです」
吉田「わかっています。それでもあえて訪日されるのなら、相当な覚悟と決断を求められることになるだろうとルーズベルト大統領にお伝えいただきたい。これは日本政府からの友情による忠告ですから」
グルー「(友情だと? よくも白々しく……しかし、話半分だとしてもとんでもない事態だ。これはもはや外交問題ではなく、最高指導者の政治決断にかかわることだ)」
吉田「クレイギー大使。カナダの安全を守るためにも、アメリカ政府とよく協議されるようチャーチル首相に申し上げてください」
クレイギー「(つまりわが国に対し、アメリカにハワイ独立を認めろと説得しろと? そうなれば英米両国に決定的な亀裂をもたらしかねない。この難問を解決するには、いったいどうしたら……)」
グルー「……すると以前、マリアナでわが国のケネディ代表に対して、日本の竜が『アトランティスを海に沈めた』と言われたのは事実だったのですな?」
吉田「さあ、その件は何も聞いておりません。しかし、日本政府としては英米両国に対し、積極的に情報を開示したのです。わが国の善意を信用していただきたいですな」
英米大使退出後、メイヴが入室してくる。
吉田「あれでよかったのですか、メイヴ殿」
メイヴ「はい。英米両政府は東京竜会議への対応をめぐって大混乱に陥るでしょう。会議はあくまでも撫子様が主催して、この地にやってきた竜たちの立場を固めるためのもの。われらを勝手に利用しようとする外国政府など、ご遠慮願いたいのです」
吉田「しかし、日本はすでにあなた方を相当利用していますが?」
メイヴ「それでも大日本帝国とわれわれは、英米に比べてはるかに利害の一致する面が多い。それに撫子様と真田少佐の結びつきもあります。いわば共存共栄なので」
吉田「ここで英米に威しつけておけば、あちらは竜に対しておとなしくなる。その間に竜は日本の力を利用して、竜の存在を各国に認めさせるようもっていくわけですか。地球規模の砲艦外交というわけですな」
メイヴ「あら、竜には人間の常識や外交交渉は通用しないのではなかったのですか?」
吉田「ということにしておきましょうか、お互いのために(汗)」
メイヴ「おほほほほ……」
47
:
名無し三等陸士@F世界
:2012/06/04(月) 21:57:56 ID:WX3D6F9E0
さらに上の続きです。
吉田「まあ、チャーチルとルーズベルトが来日するのは、日本政府にとっても好ましい話ではありませんからね。小磯首相が彼らに伍して国際外交を展開するなど期待するだけ無駄ですし、親独派のクーデター計画も大詰めの段階でしょうし」
メイヴ「はい、私の得た情報では両首脳を人質にしての対英米宣戦布告を主張する過激派も一部にあったそうです。さすがにそれは『日本の武士の名を辱めるやり方だ』との反対意見が出て、引っ込められましたが」
吉田「どうも軍人というのは基本的に理系人間なので。物事を白か黒か明確に判断しないと気がすまない者が多い。人間の思惑に満ちた政治や外交の世界などは、それこそ常に変わりやすい渦のようなものだと理解できないのです。困ったものだ」
メイヴ「ならばクーデター鎮圧後は士官学校でしたか、そこの教育を根本的に改める必要がありますね。もっと軍人に人間について教えるようにしなければ。時間はかかりますが、必要なことです」
吉田「耳の痛いご意見ですな。とにかくクーデター鎮圧後に東京竜会議開催と、竜州本格進出による日本が枢軸にも連合国にも属さない第三極を事実上宣言するという政治日程は、これで確定したわけですか」
メイヴ「はい。クーデター派には私の手の者が潜入しておりますので、決行日時を誤ることはありません。石原閣下が用意された後藤田警部指揮下の警察特殊部隊に、いつでも対応できるよう指示を出しておいてください」
吉田「わかりました……これからが本当の昭和維新ですな」
48
:
竜神様の中の人
◆NdgHDvOgik
:2012/06/13(水) 10:38:10 ID:WMjW7XmA0
バイオな竜神様投下
49
:
竜神様の中の人
◆NdgHDvOgik
:2012/06/13(水) 10:40:23 ID:WMjW7XmA0
辰馬達が拠点として使っている館は元が貴族の別邸だった事もあって、この屋敷は壁に囲まれた正門から入って中央の庭には噴水があり、水音が雰囲気を醸し出している。
その庭の先に館があり、右には馬などの家畜小屋、左には使用人の家があり、壁と一体になっている使用人の家には裏口がついている。
館は三階建てで、中央に吹き抜けの広間があり、一階は浴室に食堂など生活空間以外は娼館として使用された名残で個室が並び、二階は高級娼婦用の生活空間兼仕事場となっていた。
で、館の主人兼娼館主人の空間は三階に作られ、辰馬達の司令部はその三階におかれている。
「で、第二便も来て物資の搬入が終った今夜が一番狙われるという事なんだが、準備はどうなっている?」
辰馬の言葉にリールが即座に答える。
「今日やってきた第二分隊は女達と遊んでいる最中。
同じく今日やってきた第三分隊は警戒に入る代わりにここに残らせて予備とする予定」
このあたりのさじ加減はさすがメイドと言った所。
とはいえ、なんで盗賊が来るのがわかっているのに男達が女と遊んでいるかというと、その盗賊達の狙いが遊んでいる女達に他ならないからである。
何しろ数少ない娯楽である女だけに、遊ばせないと士気が下がるという理由もあったり。
話がそれた。
リールの報告を補う形でアンナが口を挟む。
「今日の捕り物に使えるのはメイド隊および第一と第三分隊に冒険者達です。
リール様のメイド隊は本部つきで控え、第一分隊と第三分隊は私とナタリーが率います」
指揮系統から壮絶にまずい一言が飛び出るが、この二人の能力は間違いないのでリールも含めて野戦任官の形でこの訓練時に限り特務曹長にしていた。
それもこれも、今回のピクニック……もとい盗賊討伐の実務を取り仕切っていた二人の影響力がでか過ぎた結果である。
手配に準備に兵の選抜、あげくにその選抜時に体を使った面接という形できっちり兵のほとんどを穴兄弟にしているあたり、抜かりはないというかそこまでするか君達はというか。
なお、メイド二人は表に出たら『戦死』か『行方不明』という事で話がちゃんとついている。
何しろ、彼女達を狙っていたのは海軍も同じであり、竜神様とその眷属のメイヴと竿姉妹の契りで結ばれている彼女達は人を辞めて人権が無いくせにその地位は高かったからである。
色々駄目な理由以外にも兵達がこの二人の英独メイドを認めたのが、この二人が欧州大戦の実戦経験者というのもある。
兵にとって上官が馬鹿だと己の生死に関わる。
だからこそ、この選抜に来た兵は実務を掌握するこの二人のメイドを見て、その命を駆ける事を誓ったのである。
その意味では、辰馬すら凌駕する影響力を握っていたと言ってもいいだろう。
もっとも、同じ実戦経験者である辰馬はこれ幸いと丸投げするつもり満々だったりするのだが。
「冒険者達は?」
辰馬の言葉にベルが答える。
気合が入っているのだろう。
ピンと立った猫耳が凛々しい。
50
:
竜神様の中の人
◆NdgHDvOgik
:2012/06/13(水) 10:41:37 ID:WMjW7XmA0
「私が監視する予定で、使用人の家と裏口を固めさせているわ。
残りで正門と館の警備をお願い」
黒板に書いた館の見取り図の使用人の家にチョークでベルは丸を書いた。
それを見ていたアンナがベルに質問する。
「家畜小屋は?」
「今、腰を振っている家畜(黒長耳族)は館の中だし、残っているのは馬と牛だけよ。
無視して良いんじゃない?」
それを聞いたナタリーが口を挟む。
彼女は考えられる可能性のその上を行かれた事を欧州の戦場で学んでいた。
「館で押さえる防衛線は作ります。
これで黒長耳族を連れ出されたら後悔しきれないから」
それを辰馬は了承する。
「わかった。
第一分隊は門、第三分隊は館で深夜二時に持ち場を交代。
ベル・アンナ・ナタリーの三人は話し合って誰か二人が常に起きている形にしてくれ。
俺とリールも交代で休む。
ベル。
考えられる盗賊で一番やっかいな状況を教えてくれ」
顎に手を置いてベルが考えうる最悪の状況を語る。
「相手がただの盗賊ならいざ知らず、魔術師がいる可能性もあるわ。
眠りの雲で見張り全員夢の中とか、従者形成魔法による囮とか……
とにかく一人魔術師がいるだけで、危険度は格段にあがるのよ」
今度はリールが提案する。
「各分隊にそれぞれ一人ずつメイドを送るから対魔術戦闘用に使ってください。
メイド隊はお二人以外は対魔戦闘経験者です」
「それでいこう。
何も無かったらいいが、多分何かあるぞ」
辰馬のあてのない確信は見事的中する。
51
:
竜神様の中の人
◆NdgHDvOgik
:2012/06/13(水) 10:44:25 ID:WMjW7XmA0
深夜 使用人の家
「来た」
シルドアがかけていた感知魔法に何かが引っかかる。
ガノンがティターロを起こし、ハイラムがフェルナを起こす。
ベルは休んでいた組だったが、シルドアが起こす前に起きて獲物の投げナイフを手に持っていた。
「何処?」
「屋敷の角の所。
多分、ウッドゴーレム。三体」
「相手に魔術師がいるのが確定……っと。
囮の可能性が高いけど放置するわけにはいかないわね……今、テレパスでリールに連絡を取った。
こっちに増援四人が来るから、来たらウッドゴーレムを片付けてくれって」
ベルの言葉にティダーロが肩をすくめる。
「気楽に言うが、館の警備薄くして大丈夫なのか?」
「ま、雇い主のお手並み拝見といきましょ……ふぁ。
私たちは私たちの仕事をするまでよ」
五分もしない内にアンナが兵士二名とメイド一人を連れてやってくる。
その時、正門前にもウッドゴーレムが三体現れて、ナタリーがその排除を命じていた。
「アンナ。
ここお願い。
私は本命の所に行くわ」
ベルが館の中に戻ろうとするので、アンナは一つだけ尋ねた。
「で、本命は何処から来ると思うの?」
「決まっているじゃない。
上か下よ」
ベルの予想したとおり、盗賊ジャミルナは空からやってきた。
彼女の立てたプランはこうだ。
ギルドとは無関係な冒険者から魔術師を雇い、『夜中にウッドゴーレムを館に向かって歩かせてくれ』と頼む。
当然、見張りはそっちに警戒するし、雇った魔術師も捕まるだろう。
で、その隙に空から進入する。
ダークネスの魔法をかけて闇と同化し、飛行魔法で一気に屋敷の中に入り家畜小屋に降りる。
もちろん、ダークエルフ達が使われているのは承知の上だ。
「……ダークエルフは館っと。
不思議なものよね。
この小屋を焼くだけで金貨十枚ってんだから。
牛や馬の焼肉でも御所望なのかしら?」
だったら、空からファイヤーボールでもぶっ放せばいいのだが、街中での攻撃魔法使用は明確な犯罪になる。
衛視だけでなく盗賊ギルド、魔術協会まで敵に回す愚はさけないとナブレスの中での活動は著しく制限されるからだ。
それに、盗賊名乗っているのにダークエルフというお宝をまったく触らないというつもりはない。
小屋を焼くのが依頼であって、ダークエルフについては自由にしていい言質をもらっていたのだった。
「ほう。
こっちの世界では焼肉は高級料理だったのか」
ジャミルナは聞こえてきた声に向けて投げナイフを放つが、当たった音どころか落ちた音すら聞こえないので掴まれたと判断する。
毒をナイフに塗っているのでそれにひっかかったらとも思うが、そんな甘い考えは淡々と続く声によって否定せざるを得ない。
「一手、ご教授願おうか」
「断る」
眠りの雲を発動させてその場を離れると、さっきジャミルナが投げたナイフがジャミルナが居た場所に刺さる。
眠りの雲から飛び出る拳をかわしたジャミルナが家畜小屋から飛び出る。
「侵入者だ!」
「家畜小屋で誰かが暴れているぞ!」
館の入り口に眠りの雲を打ち込み、出てきた兵士が銃を手放して次々と倒れこむ。
その隙にファイヤーボールを家畜小屋に叩き込み、その結果を見る事無くジャミルナは飛行魔法を使って二階のガラスを割って二階に飛び込んだ。
「家畜小屋に火がついたぞ!消せ!」
「賊は何処に行った!」
「二階のガラスが割れてる!」
「逃がすな!」
ジャミルナは最初からこの館の見取り図を入手しており、この高級娼婦用の部屋には隠し通路が地下水道まで繋がっているのを知っていた。
もちろん、この隠し通路は相手も知っているだろうが、この通路を安全に使う為に仲間がいるはずなのだが……
52
:
竜神様の中の人
◆NdgHDvOgik
:2012/06/13(水) 10:46:17 ID:WMjW7XmA0
「悪い。
しくじった」
「はい。
良かったらおとなしくしてくれないかな」
ベルのショートソードが首筋に当てられて仲間のタハールが両手をあげている。
「なにやっているのよ……まったく……」
ジャミルナもナイフを落として両手をあげる。
こうして捕り物は終わり、家畜小屋は一部が焼けたが馬と牛の火傷は治癒魔法で治るレベルに収まった。
なお、女も抱かずに戦闘を楽しみにしていた塩田先生がなんであの場所に居たかというと、
「何、空気が違っていた所があったから追っていったまで」
という理由に辰馬一同はじめとして呆然。
それを聞いたジャミルナすら、
「勇者が居るなんて聞いてない!」
と叫んだとかなんとか。
一方、その勇者の従者として前に出たがったリールは今回の一件で、辰馬に前に出る事を押さえられてついに前に出なかった。
「大将が前に出て討ち死にしたら元も子もないだろ。
おとなしくみんなの成果を期待しろ」
という辰馬の理屈を一応聞いたらしいが、尻尾がえらくぱたぱたして内心丸分かりだったらしい。
「家畜小屋を焼きに来たという事は、足を奪いに来た訳だ」
「この盗賊討伐、もう一枚ぐらい裏がありそうですよね」
「まぁ、考えれば最後の一枚の裏なんて見当がつきますけど」
尋問でジャミルナから得た情報をまとめて頭を抱える辰馬とアンナとナタリー。
どう考えても、盗賊退治の妨害行為であり、背後にカルタヘナ王国の影がちらつくからである。
カルタヘナから見ると、この街道の安定はロムルス国家連合に入る物資の安定供給に繋がる訳で、それを頭に入れると目標の盗賊すらカルタヘナの人間の可能性も考えねばならない。
「これ、本当に進めていいのか?」
竜神様 バイオハザードなネタ話 08
53
:
竜神様の中の人
◆NdgHDvOgik
:2012/06/13(水) 10:46:56 ID:WMjW7XmA0
投下終了。
レス返しはまた今度。
では。
54
:
名無し三等陸士@F世界
:2012/06/15(金) 05:33:25 ID:1a5J9rvw0
中の人、投下乙です!
質問なんですが水源はどうなっているんでしょうか?
将来的には2000万人が使う飲料水は莫大なものになりますが、撫子様に水源地を探してもらうか
エルフの森の水脈(将来虫退治などで荒野を緑地化し森林の面積拡大等)に余裕がうまれそこから確保するのでしょうか。
人魚さんはがんばって帝國に勧誘して魚類貝類の大量養殖できたら面白そうですね。
執筆活動など忙しいようですが応援してます!
55
:
名無し三等陸士@F世界
:2012/06/15(金) 20:22:06 ID:11OFUlpA0
中の人、投下乙です。
なんか、美味しい所だだもらいの塩田先生。
勇者とは違うんですが・・・・
達人クラスともなると、勇者と勘違いの粋になるのですね。
56
:
名無し三等陸士@F世界
:2012/06/16(土) 00:48:10 ID:b7ZCIkKE0
投下乙。
外交を考慮した戦闘。
日本にとって一番苦手な分野じゃないだろうか。
英独メイドの苦労が続きますね。
57
:
陸士長
:2012/06/21(木) 12:56:37 ID:vylzbKeg0
投下乙です。
指揮を振ったり腰を振ったり大忙しですねビッチメイド達。
そしていよいよ焦臭くなるバイオハザード。国家が後ろに居りゃ面倒臭い展開にもなりますよねぇ。
つか、冒険者達も雇用金額に合わない仕事になりそう。やはり上手い話には裏があるw
久し振りに投下ー。
投入時期幾らなんでも早すぎねぇとかは自分も想います。
だけど、新型機に無茶苦茶蹂躙されるのが大好きなのは誰か理解してくれると信じて。
尚、中の人の二次創作ですので直接の関与はございません悪しからず。
58
:
陸士長
:2012/06/21(木) 13:01:53 ID:vylzbKeg0
東部ドイツの飛行場
コンクリートで構成された長大な滑走路から一機の邀撃機が飛び立とうとしていた。
他の迎撃機は既に離陸済みで、こちらに向かっている英国空軍重爆撃機隊への邀撃に向かっているだろう。
滑走路に誘導された邀撃機が、速度を上げながら滑るように前へ進んでいく。
しかし、プロペラの音は聞こえない。代わりに劈くような甲高い音が響くのみだ。
滑走路脇に積まれたコンクリートブロックと土嚢の向こう側で、メッサーシュミット社の技術員や空軍将校達が息を飲んで見守る。
彼らの思いは1つだった。幾ら何でも早すぎないか。まだ、試験が足りなすぎないか。そして、あのパイロットで大丈夫なのかと。
そんな、不安と不審の視線しか向けられない事も気にならないとばかりに、機体が発する音が高まり速度も急速に高まっていく。
機体はフワリと宙に浮き、見る間に飛行場から遠離っていく。
『こちらハーゼⅠ、離陸に成功。機体やエンジンに異常なし。このまま邀撃任務へと向かう』
ほっとした空気が辺りを覆う。
だが、まだ始まりをクリアしただけに過ぎない。
本来であれば、まだ試験飛行も充分に行ってない機体、しかも新型エンジンで邀撃任務を行うなど無謀極まりないのだ。
戦闘飛行中の過負荷、エンジンの異常などで戦闘終了前に機体が発火するかバラバラになっても全くおかしくない。
だが、命令である以上、それこそこの帝国での最高位からの命令である以上、実行する以外にないのだ。
「頼む……無事に帰って来てくれよ」
機体にも、そしてパイロットにも。
『東部の黒鬱金香、西部の黒兎』
その日、ルール工業地帯を戦略爆撃すべく英国本土から飛び立った英国空軍重爆撃機隊は、密集体型で防御を組みつつドイツ内陸へと侵攻していた。
量産が開始された期待の新型爆撃機であるアブロ・ランカスター爆撃機を中核とした百機近くの大編隊だ。
否、だった。沿岸で警戒網に引っ掛かった彼らは進む先々で高射砲と邀撃機(bf109f)の歓迎を受け、十機が撃墜され五機がトラブルを起こし投弾して引き返した。
行きの段階で既に一割超えの損耗はかなり深刻であったが、それでも任務は続行された。
1942年の段階で英国はドイツ本土への戦略爆撃において任務を必ず達成させる必要があった。
米国は当てに成らず来るはずだった米国産爆撃機は滞り、Uボートの妨害で航空機用燃料の貯蔵も思うように集まらなかった。
基本、戦略爆撃を実行すれば数十機から数百機の大型爆撃機は燃料を馬鹿食いする。
一機落ちれば新しく生産するのに資材と機材を多大に消費し、ランカスターで言えば七人の乗員が喪われる。
今の所英国がドイツに効果的な打撃を与えられるとすれば、ドイツ本土、もしくは占領地に対する戦略爆撃しかない。
例え、それが戦時における英国の国力と国民と兵士に対する多大な負担となってもだ。
ランカスター隊を誘導する編隊指揮機の指揮官は嘆息した。
ああ、米国が参戦していてくれりゃあなぁ。と。
今頃連中が馬鹿みたいに送ってくれる機材でガンガン爆撃機を作り、タップリの燃料でタップリ訓練し。
ナチ野郎共の本土に爆弾の雨を存分に降らして連中の首を良い具合に締め上げてやれたのにと。
だが、現実は常に無情である。漸く最後までへばり付いていた五機のBf109fが高度を下げて去っていく。
恐らく次の高射砲の陣地群に入るからだろう。だが、もう少しでライン工業地帯へたどり着ける。
そうすればドイツの心臓部に爆弾を思うさまぶち込み、身軽になったら即座に英国へと戻ればいい。
基地に帰ったらギネスでも飲んで、フィリップスの野郎から今度こそ負けた分のポーカーを取り返してやる……。
「編隊後部より敵機接近! 一機です!!」
無線からの報告を受け、考え事を中断させられた編隊指揮官は不愉快そうに呟いた。
「密集体型で集中射撃し撃退せよ。どうせ遅れてきた間抜けなキャベツ野郎だろう。たった一機だ。どうとにでもなるさ」
そう編隊指揮官が言い終わった瞬間、けたたましい飛行音と共に何かが重爆撃機編隊の真下を緩降下で降下していった。
59
:
陸士長
:2012/06/21(木) 13:04:19 ID:vylzbKeg0
「た、大変です! 三番機がやられました、右翼から炎上……ああ、右翼が、折れた!!」
後部銃座の乗員は見た。物凄いスピードで通過した敵戦闘機(双発だった?)が通り抜け様に八番機のランカスターに銃撃を浴びせ、右翼をへし折ったのを。
彼には与り知らぬ事だが、機首に集中配備されたMG 151/20機関砲3門の弾幕は頑丈極まりない筈のランカスターの右翼を軽々と穴だらけにしてへし折ったのだ。
翼を喪ったランカスターは高度を下げながら雲の下へと消えていった。パラシュートは……見えなかった。
「なんだあれは!」
「Bf109でも、Fw190でもない……」
「双発だった、Bf110か!?」
「バカヤロウ、Bf110があんな速度で飛ぶわけねぇだろ!!」
あまりの事態に混乱した各機の無線が悪戯に飛び交う。
普通なら叱責して落ち着かせる役割である編隊長も、未だ状況に追いついていない。
だが、その未確認機は爆撃機群の混乱が落ち着くのを親切に待つつもりはないようだ。
大きく旋回して浮上、再び編隊の背後に回り込み始めた。
「うわ、また後ろから来るぞ気をつけろ!!」
「撃ちまくれ、後ろを撃てる銃座は全部撃て、いいから撃つんだ!!」
機体上部の回転銃座も後方を向き、迫り来る敵機に向かって撃ちまくる。
当たらずともいい、せめて敵機の進行方向を逸らすことが出来れば……。
数十機の密集した爆撃機の防御射撃は凄まじかった。レシプロ戦闘機であれば落ちていただろう……そう、レシプロならば。
弾幕など気にもした様子もなく、敵機は突っ込んできた。
凄まじい加速により銃座は捕捉も連携も取れず、ただ闇雲に機銃弾をばらまくだけだった。
そして再度の敵機通過。編隊機指揮機の前方を飛んでいた11番機に機関砲弾が縫い付くように撃ち込まれエンジンから火が噴いた。
胴体にも重大な損傷を受けたのだろうか。11番機は見る間に高度を下げ編隊から脱落していく。
「今度は11番機が喰われた、畜生!!」
「銃座は何をやってるんだ!!」
「早すぎて敵機を捕捉できません!!」
「11番機より通信、我操舵不能、我操舵不能!!」
もはや爆撃機隊は、パニック状態になりつつあった。
同じ被害でも相手が良く知る戦闘機なら、これ程混乱は起きないだろう。
だが、あれは一体何者だ? あまりにも圧倒的すぎる速度に防御射撃すらもままならない。
「くそ、くそ、ナチの化けものめ、お前は一体なんなんだ!?」
「て、敵機、前方に……ひ、こ、こっちに来ます!!」
「う、撃て、撃て、撃てぇ!!」
機長は上擦った声で叫びながら何とか機体を回避させようした。
しかし……その瞬間、ランカスター内部の搭乗員は自失呆然となった。
彼らが撃ちまくっていた機銃弾が……敵機の傍で停止したのだ。
機銃弾の速度と敵機の異常な速度の為、何が起こったのか一瞬しか解らなかった。
他者が観測すれば何とか解ったかもしれないが、爆撃機隊は混乱状態であり落ち着いているものなどいなかった。
気付かなかった。敵機の進行上に這入り込もうとした機銃弾が悉く停止し、敵機通過後にまた動き始めた事に。
その為に幾ら撃ち込もうが、一発たりとも有効打を敵機に与えられない事も。
「一体、お前はなにm」
迫り来る敵機……黒い双発機に向かって機長は問うた。
返事は20mm砲弾の雨だった。
機首をボロボロに破壊された編隊指揮官機は胴体から火を噴きながら高度を落としていく。
しかし、誰も知ることもないが機長は死ぬ直前に確かに見た。
迫り来る二機のプロペラが付いてないエンジンを搭載した漆黒の機体を。
赤く塗られた尾翼に浮かぶ隻眼の黒うさぎを。
そして―――操縦席。
フィールド・グレーのパイロットスーツに身を包んだ小柄な人影。
人影の眼部を覆うスモークゴーグル。
その左側から、黄金の光が漏れ出ていた……。
パイロットの口元に冷ややかな笑みが浮かび、そして20mm機関砲弾が機長の視界を永遠に奪った。
彼が最後に見たもの、それは人為らざる黄金の煌めきだった。
三機のランカスター重爆撃機を撃墜した黒い戦闘機は、それ以上攻撃を行わず高度を下げ去っていった。
「ランカスター重爆撃機を三機撃墜……燃料の残量僅か。これより帰投する」
凛とした、冷たく可憐な言葉が発せられた後。
黒い戦闘機は切り裂くような音を立てて基地へと帰投していった。
後に本土爆撃を行う英国空軍のパイロット達から死に神の如く恐れられる、『黒兎』の初陣であった。
おわり
60
:
陸士長
:2012/06/21(木) 13:08:01 ID:vylzbKeg0
投下終了。
試作3号機であるMe262Vは42年の7月に試験飛行を終了させているし、武装なども基本的に搭載が行われてるので大丈夫だと思った。
本当ならガーランドさんが乗って賞賛する試作4号機まで待ちたかったけどすみません早漏で。
61
:
陸士長
:2012/06/21(木) 13:12:09 ID:vylzbKeg0
あ、Jumo004エンジンが不安定で戦闘なんて出来ないだろうって問題ですが。
この機体に積まれるエンジンだけ特注品で、何処かから回収してきた不思議な金属を混ぜて作った部品を使用したらすげぇ耐久力が上がったって事にしておいてください。
ミスリルとかオルハリコンとか便利だよね。謎っぽいからw
62
:
竜神様の中の人
◆NdgHDvOgik
:2012/06/23(土) 14:22:08 ID:WMjW7XmA0
本編投下。
そろそろ本気で保管庫を何とかしないと……
63
:
竜神様の中の人
◆NdgHDvOgik
:2012/06/23(土) 14:29:30 ID:WMjW7XmA0
疲れきった顔を隠さずに山本五十六軍令部総長が友人である堀悌吉中将の所に顔を出した時、彼の副官である遠藤大尉とその自称性奴隷のフィンダヴェアと共にする事もなくお茶を飲んでいた。
で、山本の口から出てきた一言を無碍もなく断る。
「防空、対潜改造した5500トン四隻回すから、海上保安庁長官を受けてくれ」
「だが、断る」
本当になり手のいない海上保安庁長官職就任を断られてがっくりする山本軍令部総長だが、ある意味自業自得である。
まぁ、それを散々煽っていた堀中将にも責任が無い訳ではないが、彼自身はこれを機会に徹底的に膿出しをするつもりだったから首を縦に振るつもりはない。
「どうしてだ?
海上保安庁には二等駆逐艦だけでなく睦月型から前の船まで回して、5500トン四隻つけたのに何がたりないんだ!」
「空母と基地航空隊」
「出せるか!
馬鹿野郎!!」
まぁ、叫びたくなるのは当然だが、仮にもインド洋や大西洋でお仕事をすると考えたならばそれでも足りないのは目に見えている。
なお、戦争が回避されたのを良いことに、この回した船を穴埋めする過程で『量産型駆逐艦でそろえてコストを抑えよう派』と『島風いっぱい作ろう派』と『面倒だから夕雲でよくね?派』の三派に分かれて醜い暗闘が繰り広げられているのは言わぬが花である。
ちなみに、同じく内閣直轄で作られた航空自衛隊はその出仕からして海の物とも山の物ともつかない組織だったのだが、それゆえに、航空自衛隊長官として山下奉文という稀有の人材を得た事で急速にその組織を整えていた。
彼が最初に手をつけたのが、同盟国独逸を手本にした帝都防空網の整備と帝都周辺の高射砲部隊の空自化だった。
竜会議という外交イベントを控えて本土防空網についての議論が始まる前に提唱されたこの提案に小磯首相が乗っかったのも、己が自由に動かせる戦力の確保と同時に対竜対策としての防衛整備を考えていたからに他ならない。
万一、どこぞの馬鹿竜のお仲間がまた帝都に無断進入なんぞしようものならば、今度腹を切るのは小磯首相なのだからある意味当然だろう。
対英米戦争突入寸前までに整備が進められていた高射砲部隊は、内閣直属の航空自衛隊という上部組織によって統一運用される事で急速に本土防空網の整備に邁進する事ができた。
なお、高射砲部隊を取られる形になった陸軍だが、そこは山下長官の説得と部隊の移管が本土限定(つまり何かあったら腹を切るのは山下長官だという事)という所から最後は折れたという。
このあたり、馬鹿竜の帝都侵入未遂は陸海軍に深刻なトラウマを植えつけたのだから罪深い。
そのため、英独にとも良い顔をしている帝国が双方に求めた軍事技術は防空関連技術が多く、中立国という皮をかぶった資源輸出という手札を持っている独逸からかなり高度な技術情報を仕入れる事に成功していたのである。
帝都を四方八方に取り囲むレーダー網の整備に着手し高射砲塔の建設を進め、羽田に帝都防空司令部と名づけた戦闘オペラハウスの建設など、話がまったく進んでいない海上保安隊とくらべるのも失礼なぐらい。
一方、警察予備隊の方も東京を中心に関東各地に部隊を配置しだしており、組織としての立ち上げは海上保安隊よりはるかに先に進んでいる。
話がそれるが、現状における航空自衛隊の最大の功績は帝都防空に限り、陸海軍航空隊の指揮権を無視して関東在住の基地航空隊に命令を出すことができるという破格のものだった。
当然、この決定に陸海軍共に激しく抵抗したが、山下長官の、
「竜神様に陸軍と海軍の違いがわかるのか?」
という当たり前の質問にあえなく撃沈。
馬鹿竜帝都進入未遂事件では関東各地の基地指令や航空隊指令の首が飛んだ前例があるだけに、ついに抵抗する事をあきらめたという経緯がある。
64
:
竜神様の中の人
◆NdgHDvOgik
:2012/06/23(土) 14:32:42 ID:WMjW7XmA0
なお、この話を聞いた当の本人が、
「馬鹿にするでない!
赤い丸のついた飛行機を落とさぬぐらいわかっておるわ!!!」
と憤慨して図らずも山下長官の疑問が的中した事を露呈。
あげくに馬鹿竜様の飼い主が確認の為に差し出した英国航空機の写真を見て、
「落としてはいけないのであろう。
ほら、ここに赤い丸がついておる」
と予想の斜め下ぶりを見せた結果、間違いなくこれは何かやらかすと確信した陸海軍が己の保身の為に権限を差し出したという。
『俺が腹を切る』と責任を明示した結果、横紙破りを可能とする権限を得てしまう日本官僚機構の構造的欠陥に山本と堀は頭を痛めるが、実は山本についてはある種自業自得な故に怒るにも怒れない。
何しろ、対英米戦開戦寸前までハワイ作戦という博打を強引に推し進め、馬鹿竜様飛来と共にいち早く囲い込んだ結果現在の軍令部総長の地位がある訳で。
第二第三の山本が現れないとも限らないし、連合艦隊司令部という現場の権限が強くなりすぎた結果、軍令部との間で摩擦が絶えなかっただから笑うに笑えないのが実情である。
「仮にも地球の裏側で戦争しようというのに、必要なものがなくて戦争なんてできないだろうが」
堀の当たり前の正論に山本も言葉を濁す。
このあたり、山本は己の組織である海軍軍令部を守らねばならないのだから、すさまじきは宮仕え。
「想像以上に抵抗が強いんだ。
困った事に頭のいい馬鹿が多すぎる」
海上護衛については本来軍令部下で海上護衛総隊が設立される予定だったが、連合艦隊はこれを己の下に入れようと画策しており、あげくに内閣直下の海上保安隊がお目見えしてから完全に収集がつかないようになっていた。
海軍からすれば、近海航路の護衛任務を丸投げ出来る組織が別に作られる事で戦時の護衛任務に充当する艦を考慮しなくてもよく、正面装備の充実に予算を回せるというのが多分最大の利点になるのだが、その相手組織がインド洋や大西洋まで出張って護衛任務に充当された場合、海軍そのものの存在意義にまで踏み込まれると判断していたのである。
それはまったく正しく、警察予備隊・海上保安隊・航空自衛隊の三組織が内閣直下に置かれた事は『陸海軍、つまり大本営抜きで戦争をする』と宣言しているのに等しいのだから。
これも大陸政策で事態収拾に動きながら戦火は拡大し続け、ついには対英米戦突入寸前という所にまで追い込まれていた内閣側の強い危機感から出ていたのだが、その喧嘩に関係していないと思っている海軍側は、はっきりと内閣が喧嘩を売っているのにその内閣に従うという方がおかしいというのが空気が主流を占めていたのである。
こんな状況を独逸側が見逃すはすがなかった。
出しうる最大の切り札を持って海軍を篭絡しようと動いたのである。
「人造石油……ねぇ……」
「魅力ではあるな。
東南アジアに出張らなくてすむ」
石油なしでは戦えないこの世界大戦において、独逸がここので奮戦しているのはルーマニアの油田だけでなく、独逸国内にて作られていた人造石油によっても賄われていた。
石油資源の乏しいが石炭についてはある程度確保できる帝国にとってこの技術は喉から手が出るほど欲しい技術であり、人造石油製造事業法を制定して昭和15年に福岡県の大牟田と北海道の滝川に工場が建設、生産が開始されたが期待される量を生産できていなかったのである。
ちなみに、開戦を回避した帝国の石油備蓄量はマリアナの竜捜索やインド洋全域の対潜護衛活動などで消費量は急上昇しているが、シンガポールにて英国やオランダ経由で購入できた事で収支はとんとんか僅かに上向いているという所。
これに、対ソ人道支援の代金として北樺太油田の石油が入りだした事によって石油備蓄量は上昇に転じ、竜神様によって発見された北満州油田も試掘が始められている。
独逸がこの技術を出すとしたら今が最後のかつ最大の売り時なのだろう。
実際に、インド洋まで出向いた事で石油消費量の急拡大に目を丸くし、英国からある意味ぼったくりに近い価格で石油を買わされている事に怒りの声を上げていた海軍関係者には技術にぐらついた者が多かったのである。
65
:
竜神様の中の人
◆NdgHDvOgik
:2012/06/23(土) 14:33:29 ID:WMjW7XmA0
「馬鹿な奴らだ。
そのほったくりすらついこの間まで買えなかった事を綺麗に忘れてやがる」
山本のぼやきに堀は苦笑するしかないが、その後で出てきた堀の言葉に山本の顔が驚愕にゆがむ。
「だが、人造石油関連の技術、たいした物が出てくる事はないぞ」
と。
実に、居心地の悪い時間が流れるが、先に沈黙を破ったのは山本だった。
「説明、してくれるんだろうな?」
「まぁ、とあるご友人という事にしておこう。
そのご友人からのありがたいお言葉だ。
人造石油関連技術を持つIGファルベン社なんだが、ここと米国スタンダード石油がカルテルを結んでいるらしい」
その時の山本の顔は驚愕どころか殴られてもそんな顔をしないだろうというぐらいに歪んでいた。
まぁ、最初に聞いた時に堀も同じ顔をしていたのは内緒である。
「考えてみれば当たり前の話だな。
人造石油が広がれば、わが国よろしく自前でなんとかすると考えるやからが出てくる訳で。
それは現在油田を持っている会社からすると面白い訳がない。
おまけに、アメさんから見るとナチスというのは『反共の砦』として財界に支持者が多かった。
何のことはない。
わが国が今英独にやっているような事をはるか前に米国がやっていたという話さ」
「『欧州情勢は複雑怪奇』。
俺も軍令部総長を辞めたくなってきたよ」
今までの会話を黙って聞いていた副官である遠藤が疑問の声をあげる。
「よろしいでしょうか?
米国が英国について参戦するというのは欺瞞なのでしょうか?」
「それは間違いないが、これも簡単な話でな。
独逸につくより英国についた方が金が分捕れるからだ」
一同堀の言葉に呆れるばかり。
世の中金かよと言いたくなるが、まったくそのとおりなのだから返す言葉もない。
かつての超大国であった英国はその超大国であった時に築いていた資産を湯水のように消費してこの戦いを続けていた。
そして、その湯水のように消費した金のほとんどが米国の懐に収まっていた結果、独逸を切り捨ててもおつりが来るまで膨らんでいたのである。
「もう少し補足をするとだ。
独逸が欧州を取りすぎたせいで反共の砦の役割が小さくなっている。
モスクワを奪われ、苦戦を続ける共産勢力が勢力回復するのに時間がかかるという判断だ。
で、これもまた石油がらみなんだが、米国はソ連の油田が独逸に取られるのを恐れている」
基本は同じ。
カルテル外に大規模な油田の存在を許したくないのだ。
そして、ある事に気付いた山本が堀に問いただす。
66
:
竜神様の中の人
◆NdgHDvOgik
:2012/06/23(土) 14:34:19 ID:WMjW7XmA0
「ちょっと待て。
その論理で行くと、満州の油田も邪魔されると?」
「だから、とあるご友人曰く、『うちのカルテルに入りませんか?』だそうな。
『そちらの面子を考えて、資本関係は49%で構わない』だと」
きっと、とあるご友人というのは英国在住の人なのだろう。間違いなく。
で、こんな話を漏らすという事は、米国参戦に向けて米国内の反対勢力を切り崩す腹に違いない。
竜会議でハワイの竜の事が解決できるならば、米国の対独参戦は限りなく近くなる。
そういう意味でも、竜会議という馬鹿げたイベントは、間違いなくこの戦争の何かを変えたのだ。
それをこの場の一同は嫌でも感じざるを得なかった。
「もう一つ、そのとあるご友人から面白い話があるんだが聞くかい?」
「まだあるのかよ。
そのご友人は物知りだな」
ここまで来てそのとあるご友人というのが、ロイター通信社の特派員という皮をかぶった英国情報部のイアン・フレミング氏だというのは皆気付いている。
何しろマリアナまで撫子と一緒についていった仲で、海軍内部の撫子閥のトップと思われる堀に接触する事で、海軍の親独傾向を抑える腹積もりなのだろう。
「そのご友人のご友人にバンコクに勤める商社の方がいらして、試しで出していた金剛級四隻の派遣について面白い話が出た。
『金剛級二隻に一個水雷戦隊をつけてアレキサンドリアに派遣して頂けたなら、英国とオランダは対日経済制裁の全面解除解除を約束し、米国の対日制裁解除に協力する』だと」
その言葉の意味を理解するのに堀以外の皆は少しの時間を要した。
それでも皆の頭の中でその意味を理解する事を拒否するぐらいの英国が持てる最大のかつ最強のカードを提示してきたのである。
「何でも、ニューヨーク在住のご友人のご友人からのお話だと、ルーマニアからの石油の流れが不自然なぐらいフランスとイタリアに流れているそうな。
それも艦船を動かす重油が」
その言葉に山本がぴんと来る。
竜会議は『全ての竜』が東京に集まる。
では、その間シチリアで睨みを効かせていた地中海はどうなるか?
「クレタ島を英国が奪還して、ルーマニアの油田に爆撃機が飛び出して独逸の足を地味に引っ張っている。
で、このクレタの爆撃機を排除したいが、独逸の航空勢力でクレタを叩き潰すのは無理だ。
上陸するにもアレキサンドリアの英国地中海艦隊が邪魔だ。
ならば、手は一つしかないだろう。
幸いな事に、何かやらかしかねない竜神様はこの帝都に来ているはずだからな」
「伊・仏海軍によるクレタ島砲撃か、英艦隊排除の後のクレタ島上陸作戦……」
遠藤の言葉に堀も頷いた。
67
:
竜神様の中の人
◆NdgHDvOgik
:2012/06/23(土) 14:35:11 ID:WMjW7XmA0
「艦隊一個アレキサンドリアに来いというのは、体の良い見せ金だろうよ。
英国とてまだ同盟国であるフランスやイタリアの艦隊と当てたらこちらの感情が悪化するのは分っている。
それに、今から地中海なんて間に合わないからな。
だが、見せ金だからこそたとえ海戦が勝とうが負けようが、戦艦がアレキサンドリアで鎮座している状況はさぞ居心地が悪いだろうね。
誰でも日本海海戦ができる訳が無い以上、それだけの規模で潰しあいをすれば確実に伊・仏海軍の方が先に音をあげる」
それが分かっているからこそ、英国はそれを受けて立つつもりなのだ。
だからこそ、その後の話をほらでもいいから膨らませる必要があった。
「で、ほらというのは大きければ大きいほどいい。
他にも、ハワイの竜対策では微妙に使い所の悪い太平洋艦隊の戦艦を買い取るとかなかなか剛毅な話もあるそうな。
このほらを信じるのはたった一人だけ、第三帝国総統閣下だけでいい。
あのお方、大きなものには浪漫があるらしく、こちらが流した陸上巡洋艦とかに目を輝かせていたじゃないか。
そして、これを発表するだけで、独逸以下向こうの海軍は混乱するだろうよ。
ちなみに、何でそのあたりの話がだだ漏れなのかはご友人いわく『秘密』だそうな」
さいころが蓋の中にあるからこそ、丁半の賭けは成立する。
間違いなく、英国は自国の勝利という博打に乗るかどうがで帝国を追い詰めようとしていた。
「おい。
この話、誰かに……」
山本の真顔な忠告に堀も苦笑で返す。
「言えるか。こんな事。
俺だって命は惜しいからな。
だが、この一件は海上保安隊にとっては避けては通れんぞ。
地中海の状況はこの一戦にありだからな」
掘は苦笑するが、相変わらず海上保安隊長官職を受けるとは言わなかった。
そりゃそうだ。
もう一省庁の役職どころではない帝国の将来がかかっている役職になりかねないからだ。
ならばこそ、それに相応しい戦力と権限を寄越せと暗に言っていると山本は理解したのである。
「地中海の状況はこの海戦にありですか……」
フィンダヴェアが遠藤に対してぽつりと呟く。
その後に続く質問に遠藤だけでなく山本も堀も固まろうとはフィンダヴェアはまったく思っていなかった。
「けど、それってこちらの言葉で言う『決戦』と言いませんか?」
帝国の竜神様 ナンバー未定
68
:
竜神様の中の人
◆NdgHDvOgik
:2012/06/23(土) 14:50:45 ID:WMjW7XmA0
投下終了。
という訳で、レス返し。
>>「フラグが立った」イタリア、どうするんでしょうね。
という訳で、帝国以上に切羽詰まっていましたという話。
ここで地中海の制海権が握れれば……なんか半世紀ほど前に太平洋で聞こえたような言葉が(苦笑)
>>41
さん
投下乙です。
このあたりの会話、こちらの設定と合わせた上で使わせていただいてよろしいでしょうか?
凄く面白かったので。
>>質問なんですが水源はどうなっているんでしょうか?
とりあえず、アマゾン川をイメージしてください。
でそれを河口から本流を線に半分でぶったぎると、北半分がエルフの森、南半分が虚無の平原になります。
虚無の平原そのものには水が流れていますが、その多くは地下水脈としてです。
>>なんか、美味しい所だだもらいの塩田先生。
けど、実話の方がしゃれになっていないのがこの人。
実際に合気道を教えてもらって、これ凄いと実感しまくりです。
>>英独メイドの苦労が続きますね。
大丈夫。苦労する人が辰馬と海軍陸戦隊の谷浦大尉と二倍に。
あれ?リールは?www
>>陸士長さん
投下乙です。
欧州方面でついに決戦が発生しますよ〜。
こんな新鋭機が飛ぶ空のはるか洋上にて、
ソードフィッシュを追い回す仏伊水上機>その仏伊水上機を追い掛け回す英フルマー複座艦上戦闘偵察爆撃機
あれ?何か時代が違う……
では。
69
:
名無し三等陸士@F世界
:2012/06/24(日) 01:07:08 ID:WX3D6F9E0
41です。
ぜひ使ってください。私の妄想で、竜神様の物語が面白くなるのなら読者としては望むところです。
70
:
陸士長
:2012/06/24(日) 13:17:13 ID:vylzbKeg0
やっぱり米国さんに自由な動きをして貰っては日本も困りますね。
ゆくゆくは首根っこ押さえつけようと米英で画策しているのが見え見えでw
英国はあめ玉を山のように並べていますが、数年後にはゴミの山になる危険性もありそうです。
>「落としてはいけないのであろう。
ほら、ここに赤い丸がついておる」
駄目だこの龍……もうどうにもならない。
ところで、地中海に集結中の英国連邦の艦隊はどれくらい居るでしょうか?
戦艦数隻、空母2〜3隻、補助艦艇多数と言った感じでしょうか。バルカン諸島への侵攻も考えてるのであれば輸送船も多数抱えてそうですね。
71
:
名無し三等陸士@F世界
:2012/06/24(日) 21:02:28 ID:r/HRY4OE0
>>70
>>「落としてはいけないのであろう。
> ほら、ここに赤い丸がついておる」
>
> 駄目だこの龍……もうどうにもならない。
何の疑問も持たなかった私は,蛇の目にどっぷりとハマっているんだろうか?
72
:
陸士長
:2012/06/29(金) 14:05:52 ID:vylzbKeg0
>>58
の余談です。投下します。
73
:
陸士長
:2012/06/29(金) 14:07:12 ID:vylzbKeg0
「よくもまぁ保つものだ……まるでガラスの靴の様な機体なのに」
エンジンを新品のものと交換中のMe 262V2を見詰める男が居た。
男はアドルフ・ガーランド少将。このプロジェクトに関わる空軍将星である。
前々から聞いていた新世代型戦闘機、しかも既存のレシプロ戦闘機を大きく凌駕する性能。
生粋の戦闘機乗りであり、日々強敵と化していく英国戦闘機に対し決定的な優位を欲していた彼にとってMe262は非常に魅力的だった。
「しかし、本来なら半年後にようやくデモンストレーションを行えるかという試作機を実践に投入するだなんてな」
ガーランドの表情に苦みが走る。
彼の視線の先には、メッサーシュミット社の技術者達と操縦席に座ったまま話している少女の姿があった。
「幾ら、異能の代弁者たる魔女とはいえ、あんな小さなフロイラインに扱いを少し誤っただけで爆発する機体で戦え、等とは……な」
銀色の髪、左目を覆う眼帯、抜けるような白い肌。身長140cmにも満たない小柄な身体。
誰が想像できるだろうか。不安定極まりないMe262v2で欧州の空を駆け抜け、たった2回の出撃で五機の重爆撃機を撃墜。
自分に向かってくる弾丸すら把握しそれを空間ごと『止めてしまう』異能者である事を。
まるでガラスの靴を履き、ガラスのステージで踊る舞姫のようだとガーランドは思った。
彼女の履く靴は何時砕けるか解らない。何時彼女を駆ける空から引き摺り落とすか解らない。
彼女の持つ能力は人の身に余るもの。多用すれば身体に非常な負担をかけ磨り減らす諸刃の剣。
普通のレシプロ戦闘機に乗っても充分な戦果を上げられるだろう。
だが、敵の攻撃を防ぐ力は有限。そしてレシプロ戦闘機が敵機に近付くまでの時間は長い。
その点で言えば、ガラスの靴たるMe262v2はその能力と高い適性を帯びていた。
時速800kmを超えて飛ぶかの機体は、僅かな能力発動だけで敵の攻撃を避けるのに最適だ。
だからこそ、2回の出撃で敵攻撃による損傷は掠り傷すら存在しなかった。
2回の邀撃任務における運用データは無傷で手に入り、Me262の開発は前に向けて大いに弾むだろう。
だが、ガーランドの心は晴れない。幾らそれが新鋭兵器を一日も早く実戦配備する為の措置だとしても。
異能故に彼女がMe262の試験パイロットとして扱われるのが軍にとって正しい判断だとしても。
そう言った判断は、祖国の勝利という大義の前に肯定されるべきだと解っていても。
「よし、決めたぞ」
火気厳禁な格納庫から出て、葉巻を吹かしながらガーランドは心に決めた。
Me262を一刻も早く安定した機体にしようと。そして、その為には我が身をMe262へ乗せる事も躊躇わないと。
Me262V3は年末には調整完了し新たな試験機として登場するだろう。複数機製造されると聞いている。ならば……。
「隻眼の兎と葉巻をくわえた鼠でシュヴァルム戦法ってのも悪くないな」
そう言えばジェット機内で煙草を吸っても大丈夫だろうか、後で聞いてみようと思いながらガーランドは去っていった。
大いなる野望を胸に秘めて。
74
:
名無し三等陸士@F世界
:2012/06/30(土) 07:38:54 ID:rWVZsjfs0
中の人、陸市長氏、乙です。
危険な機体というと、シュワルペよりコメートの方がより凶悪そうです。
秋水でストラトス・フォーやれそう。
ガーランドと聞くと、M1ガーランド、あるいはバイクから変形するロボットを
つい連想してしまいました。
75
:
名無し三等陸士@F世界
:2012/07/02(月) 16:04:55 ID:qJ6WMSIk0
シュヴァルベのエンジン問題は耐熱合金の製造と開発に依る部分や、
熟練工の不足、生産拠点の喪失などによる物もある点と試作品故の
粗さ脆さもあるでしょうね。
運用面でもコンクリート製の滑走路が必要となるので、野戦飛行場
などでは使いにくい、航続距離が短く交戦時間があまり取れないなども
あげられるでしょうか。
>秋水でストラトス・フォーやれそう。
秋水は言っちゃあなんですがコメートのデッドコピーですよ。
あれにオリジナル並の性能を求めてもらってもちと困るかと。
Me 163コメート・エンジンの実物は大阪の交通博物館に展示されてますが
ヒョロい代物でさぁ。
私も過去に何度か同博物館に行って(近隣都市住民なので)このエンジンを
見ましたが「えっ」と思ってしまうほど実際は頼りない外見です。
ttp://upload.wikimedia.org/wikipedia/ja/f/f8/Me163_PICT3028-2.JPG
まだ、近くに展示されているベルX-1のロケットエンジンの方が立派に
見えますよ。
ここの博物館には、東京の交通博物館にあった「誉(ハ-45)」も移設
・収蔵されておりますので機会があれば見ておくと色々勉強になります。
76
:
陸士長
:2012/07/04(水) 14:52:23 ID:vylzbKeg0
>>74
さん
感想どうもです。
確かにコメートは飛行場回避されてあっさり出番が消え去ったりパイロットが溶解したりと正直よろしくありません。
拙作では初の実用ジェット戦闘機でああるシュワルぺに活躍して貰っています。
問題は山積みでしたが驚異的なスペックで連合軍を脅かした代物ですので。
今の所黒兎を倒すには、燃料切れ寸前で着陸しようとした所を送り狼してきたモスキートで地上撃破、ぐらいでしょう。
>>75
さん
エンジン問題に関しては怪しぃ金属を混ぜて強化しています。試験機用で量産にはとても回せないとても少ない貴重品ですけどね。
問題は黒兎が無事に持ち帰ってくる機体で洗い出されデータと問題点が出て来てますがやはり量産と舞台運用は時間がかかるでしょうねぇ。
戦法は燃料の消費や機体特性を考慮して高速をいかした一撃離脱。
>秋水
コメートの扱いづらさと脆さを考えると、日本軍が運用できたとは思えないんですよねぇ。
劣化の凄まじい機体とエンジン、膨大に消費される化学燃料、ちょっとしたトラブルで爆発やら炎上。
勢いを利用してB-29の体当たりにしか使えそうにない……途中でバラバラにならなければだけど。
これも余談ですが、ハンナ・ライチュさんもぢつは魔女であり、黒兎とは別のMe262の試験機で試験パイロットしてます。
コメートの試験飛行で大事故を起こして重傷(史実でも同じ)以来、怪しい能力に目覚めました。
77
:
名無し三等陸士@F世界
:2012/07/05(木) 20:56:24 ID:qJ6WMSIk0
トンデモ兵器といえば大戦中にドイツで計画されていた「36cm無反動砲」
搭載対艦攻撃機とかありましたなぁ。
ttp://img249.imageshack.us/img249/5189/ju288cannone261sk1.jpg
ttp://www.ww2incolor.com/forum/showthread.php?4127-Luftwaffe-Cannons-amp-Machineguns/page11
地上での発射試験の様子
下のサイトには実際の機体に搭載した場合の様子なんかも描かれていたり。
何と云いますか色々と斜め上ですよね。
78
:
名無し三等陸士@F世界
:2012/07/05(木) 21:12:41 ID:qJ6WMSIk0
上で紹介したサイトには他にも「斜め銃」ならぬ「斜め無反動砲」搭載機
とかまであります。
ttp://img214.imageshack.us/img214/9449/sg113ft9.jpg
Hs-129B-0 WrkN 0016 機体中央上部に付いている突起に無反動砲を設置
ttp://img253.imageshack.us/img253/2285/sg113arribapm7.jpg
拡大画像 六連式無反動砲(排気側)
下向きに無反動砲を撃ち、トップアタック攻撃を行う対戦車攻撃機です。
擦過性の攻撃を行うのに比べると撃墜の可能性は高いのが難点ですが
攻撃時はルーデルほどの技量は必要とされないと思います。
ttp://img214.imageshack.us/img214/739/erradobd8.jpg
試射の様子(こちらは失敗の図)
ttp://img80.imageshack.us/img80/585/impactoyu5.jpg
こちらは成功
ttp://img174.imageshack.us/img174/1163/zellenhp6.jpg
Zellendusche
もはや何が何やら・・・「わけがわからないよ」。
独逸軍はどんだけ無反動砲が好きなんでしょうか。
79
:
名無し三等陸士@F世界
:2012/07/05(木) 21:52:17 ID:WyJS/Nzg0
コメート、形だけは愛くるしいんですけどねえ。たまごヒコーキの元ネタなだけあって。
基地除けられたらそれまでって辺りが悲しすぎますよね。
新谷かおる「RAISE」に出て来た、ニトロチャージャー搭載Bf109みたく、危険な魔改造機も良いかも。
そういや真田/遠藤は、すっかりパイロットという設定が忘れられている様な...
コメートの愛くるしさに魅せられた竜神様に、乗って見せてくれと駄々をこねられて恐怖する真田とか。
80
:
名無し三等陸士@F世界
:2012/07/06(金) 10:16:29 ID:fuUXY1gs0
>>79
> 基地除けられたらそれまでって辺りが悲しすぎますよね。
ドイツ機ファンの書いた書籍だと「敵は避けて通った。戦わずして勝ったのだ、ドイツ技術すごい!」と書いてあるものがあってな……。
81
:
F世界逝き
:F世界逝き
F世界逝き
82
:
F世界逝き
:F世界逝き
F世界逝き
83
:
F世界逝き
:F世界逝き
F世界逝き
84
:
名無し三等陸士@F世界
:2012/07/07(土) 06:54:34 ID:11OFUlpA0
陸士長様、投下乙です。
その後、伊丹隊の代わりに『撫子探検隊』がテュカを保護、撫子の正体を知ってガクブル展開ですか?
イタリカ支援、空中騎兵隊無い分、ピニャ殿下は耐え忍びが長くなりそう・・・・
85
:
名無し三等陸士@F世界
:2012/07/07(土) 11:17:30 ID:z74cbJCk0
>80
コメートって要は空港+専用設備がないと運用できない有人再利用可能
中距離対空ミサイルだからなあ。
今のSAMの運用方針も基本的には敵に避けられてナンボというところがあるからなあ。
そう言う意味では短航続距離迎撃機というジャンルそのものがSAMに食われて消えた感じかも。
86
:
名無し三等陸士@F世界
:2012/08/01(水) 19:27:09 ID:jhZ6iaSA0
むむ?
87
:
名無し三等陸士@F世界
:2012/08/19(日) 22:12:54 ID:cPKdMWrg0
“竜神様”の世界とか“彼の地にて、斯く戦えり”の世界とリンクしたら丁度良くなりそうな世界観のやつを見つけた
AA形式だけど・・・
やる夫に男友達ができたようです まとめ
ttp://arutema47.blog92.fc2.com/blog-entry-4.html
88
:
竜神様の中の人
◆NdgHDvOgik
:2012/08/20(月) 17:47:23 ID:ky4ce2A.0
バイオな竜神様 投下
89
:
竜神様の中の人
◆NdgHDvOgik
:2012/08/20(月) 17:48:05 ID:ky4ce2A.0
メイド二人曰く『森へのピクニック』がお宝を引き当てたという報告は即座に撫子三角州において陸海軍の連絡会議に発展した。
黒長耳族か獣耳族か分らないが、推定100人規模の生存情報。
おまけに、彼女らは盗賊たちに捕らわれており虐待されているという。
『カルタヘナの関与か?』という情報もしっかり伝えたはずなのだが、こっちにまでちょっかい出してこないだろうとあっさりと流された。
「まぁ、なんとかなるだろう」
それで大陸で色々と大火傷を負っていたはずなのだがあまり学習していないらしい。
では、情報に長けたてた黒長耳族がこれについて何も言わなかったのも実は、
「まぁ、なんとかなるんじゃないでしょか」
だったりするが、彼女達はちゃんと分析をした上での発言である。
「撫子様もいますし、アニス様もいらっしゃいます。
ロムルスと戦争をしている以上、こちらに勇者を送り出すとは考えられません。
下手に手を出して帝国を敵に回す事は考えているかどうかわかりませんが、この案件でロムルスが押せばカッパドキア共和国を敵に回しかねません。
我々は表向きは新参の国家としてカッパドキアの影に隠れさせてもらいましょう」
で、ここで話が現地部隊の方に移る。
「敵勢力の見積もりは中隊規模。
陸軍は小隊規模で、海軍は大淀に中隊規模の陸戦隊を乗せている。
陸軍は増援を出すのか?」
うまくいっているとはいえそこはお役所。
面子というものがあるから、陸軍に花を持たせようと海軍の連絡士官が話を振るが、陸軍の連絡士官は首を横に振った。
「準備はさせているのだが、現場指揮官はそれよりも連絡線が維持できるかを心配しております」
何しろ数千キロ先での戦場である。
そんな所でどんぱちなんて真剣に考えてなかったので、現場ともどもうろたえているというのが真相だったりする。
廃墟の砦に巣食う盗賊なんぞ吹き飛ばしてしまいたい所だが、それをすると捕らわれている肝心の黒長耳族や獣耳族まで吹き飛んでしまう。
ならば、手持ち火器でなんとかするしかないのだが、弾は使えば無くなるのである。魔法と違って。
「現在の物資量だと、半月持ちません。
元々短期間の作戦行動ですから、大急ぎで火薬にせよ食料にせよ調達する必要があります。
これも現場指揮官からの報告なのですが、既に滞在地のナブレスの生活を圧迫しつつあり、海軍陸戦隊が活動を始めると住民の不満が出かねないと危惧しております」
現場指揮官である辰馬があげた『ナブレスの生活を圧迫』というのは足の問題である。
小隊規模ですら馬が揃わずに牛や山羊まで手配したのだ。
これが中隊規模になると、有り余る金貨を武器に交易馬車あたりを徴発しかねない。
そんな事をすれば、このナブレスが飢える。
そして、これらの物資を兵に持たせるとこんどは正面戦力が薄くなる事を意味しており、現状で増援は来ても邪魔なだけという状況になっていた。
「現状、大淀からあるていどの食料なり物資なりを融通できるとしても先を見据えて九七式大艇による補給の継続をお願いしたい」
「了解した」
90
:
竜神様の中の人
◆NdgHDvOgik
:2012/08/20(月) 18:23:57 ID:ky4ce2A.0
で、その現場なのだが、大淀の到着を待つ方針に切り替えたために時間ができた事もあって、本来の任務であるピクニック……じゃなかった、メイド隊に近代戦闘を叩き込むというのをナブレス郊外にてやっていた。
冒険者+2つきで。
「つーかさ、寝返ったとはいえ私らまで加えるって、あんたお人よし?」
「まったくだ。
俺達が何もしないなんて考えていないよな?」
捕まった後で大金にて雇われたジャミルナとタハールが呆れ声でこの訓練を指揮する辰馬にぼやく。
もちろん、ねっさ冷めた視線でベルが睨みつけ、監視というか飢えた餌を眺める視線で塩田先生が控えているので手が出せるわけもなく。
なお、彼女達の前の任務は『家畜小屋を焼く』だったから成功扱いでちゃんと後払いの報酬も得ていたり。
その上で、彼女達を雇っているのだから、これ以上ないあてつけである。
同時に、これ以上すると何が起きるか分らない現場レベルでの判断の限界ともいえよう。
「使えてかつ使い捨てて構わない人間が安く手に入ったんだ。
何も問題はないだろ」
「それ、私の前で言う?普通」
ジャミルナがぼやくが、実質的な捕虜扱いである。
このまま砦攻めの斥候に使い潰す気満々だったりするが、捕まった当日に即効で『殺そう』と言ってきたベルよりは穏便な判断だったりするが色々となんというか。
一方の冒険者達は冒険者達で、こっちの世界のメイド隊と組んで小隊と戦闘をしていたのだが近代戦の洗礼をたっぷり受けている最中だったりする。
「はい。戦死」
「待てよ!
こんな遠距離で死ぬのか!俺!!」
そりゃ、小銃の射程距離を知らないとティダーロが文句を言うのも無理はない。
その後、兵の一人が適当な的に小銃を撃って黙ってもらったが。
「ならば、打撃軽減魔法をかけて突貫……」
シルドアからシールド魔法をかけてもらったガノンとハイラムが突貫する。
彼らの戦闘パターンなのだろうが、それはただの的になるというが分らないから仕方ない。
「はい。戦死」
「なんでですか!」
自分のシールド魔法に自信があったシルドアが食ってかかるも、同じく実際に適当な的にかけたシールド魔法が銃弾に貫通される様を見せ付けられて黙る。
もっとも、冒険者達+メイド隊の一方的敗北などではない。
フェルナの弓は魔法の加護もあって小銃並みの射程と百発百中で分隊を壊滅に追い込んだのだが、いかんぜん数に押されて潰された。
メイド隊は撫子三角州にて共に住んでいた事もあって、小銃の脅威というものを知っていたしリールという鬼軍曹じゃなかった戦闘メイドの指導の下で対小銃訓練をつんでいたのである。
「石人形を盾にしてつっこんで来るぞ!
手榴弾持って来い!!」
「ちっ!
飛んで来たと思ったら、背後に跳び(空間転移)やがった!
後ろが二人やられた!」
「撃つな!同士討ちになる!」
ああ、なるほど。
リールと同じように育てたというのはこういう事か。
辰馬が哀れみの視線をアンナとナタリーに向けると、心底疲れきった目で同情された。
そのままリールを見ると、表面上無表情だけど尻尾が『褒めて!褒めて!』とわっさわっさ揺れてやがる。
いろいろと実り多い訓練を数日続けた結果、大淀がナブレスの港に入ってくる。
それが、まどろんでいた状況が急変する幕開けでもあった。
帝国の竜神様 バイオハザードなネタ話 09
91
:
竜神様の中の人
◆NdgHDvOgik
:2012/08/20(月) 18:24:53 ID:ky4ce2A.0
投下終了。
久しぶり投稿なのでリハビリを兼ねて。
レス返しはまた今度。
では。
92
:
名無し三等陸士@F世界
:2012/08/20(月) 19:44:44 ID:6a7k2hSY0
中の人、投下乙です。
93
:
名無し三等陸士@F世界
:2012/08/20(月) 21:34:33 ID:11OFUlpA0
投下乙です。
最近、また1話から読み始めました。
いつ読んでも、馬鹿ップル二人の掛け合いは面白い!
やはり、何処まで行っても兵站の問題が付きまとう帝国・・・・
そんな中でも、現地では特訓が着々と身に付いているようですね。
わっさわっさのリールがw
94
:
竜神様の中の人
◆NdgHDvOgik
:2012/08/21(火) 01:53:16 ID:ky4ce2A.0
思いつきの小ネタ。
九七大艇の運用だが、継続的な往復は機体にもパイロットにも負担を強いる。
どこか都合の良い中継地があればいいのだが、あいにく引きこもりを前提にしていたからその手の作戦計画もない。
で、後方参謀こと真田少佐は頭を抱える。
「イッソスだろうなぁ……
あそこならば燃料を置ける商館もあるし」
(ひーまーなーのーじゃー)
とテレパス駄々漏れでじゃれつく馬鹿竜を猫じゃらしで適当に遊びつつ考えをまとめる。
(わらわは猫ではないのだぞ!!)
怒るならば、まずその猫じゃらしを目で追うのは止めた方がいいと思う。
ついでにじゃれる気満々なのも控えた方がいいと思う。きっと。
なお、この馬鹿竜様は猫じゃらしの攻略の為によりにもよって猫耳族に教えを請うてこの世界に猫じゃらしが広がってしまうだが、まあどうでもいい話。
「水上機母艦でもイッソスに常駐させるか……待てよ……」
それから二週間後 イッソス
イッソスの住民は奇妙奇天烈な帝国の船がやってくるのを見慣れつつあったが、今回のキワモノには大いに目を丸くする事になった。
鉄の船の後ろに何か変なものを積んでいたと思ったらその変なものが空を飛んだではないか。
一応カッパドキア共和国には事前通達をしていたのだが、慌ててペガサスライダーやグリフォンライダーが飛んで来たのはいい笑い話。
こうして、ハワイ攻撃のための飛行艇に補給するために作られた飛行艇母艦『秋津洲』はイッソスにやってきて、飛行艇の修理や補給だけでなく、撫子三角州とイッソス間の無線基地としても活躍し長くイッソス住民に親しまれたという。
この話をバイオの前に入れるか後に入れるかでちょっとシナリオが変わるので悩み中。
では。
95
:
名無し三等陸士@F世界
:2012/08/21(火) 20:26:32 ID:b7ZCIkKE0
乙乙
秋津洲は結局船体規模が小さくてその上通商破壊戦で輸送力不足で飛行艇母艦よりも大型クレーンがあるからと輸送艦扱いが史実だったからまだ本来の使い方で幸せだったかも。
艦長はやはり黛大佐が左遷されてそのままだったりして。
その内二式大艇の輸送機版が引き抜かれるのかな?
96
:
名無し三等陸士@F世界
:2012/10/14(日) 11:43:22 ID:eOztz1hQ0
リハビリついでの短い本文投下。
97
:
名無し三等陸士@F世界
:2012/10/14(日) 11:51:42 ID:eOztz1hQ0
東洋の魔都。上海。
そのとある飯店の一室に二人の男が寛いでいた。
とはいえ、紳士に見える二人以外に人はおらず、互いに酒を酌み交わしながら苦々しそうな顔を隠そうとはしない。
正確には、この飯店の中にいる人間は彼ら二人のみ。
日本が抱え込んだ諜報関係種族たる黒長耳族対策として、彼ら英米のエージェントが取った苦肉の解決策である。
それすら危険と考えて、重要な情報交換は互いの意思を漏らさない手紙でのやり取りで行っていたのを変更してのこの会談。
いい話である訳が無い。
「で、今回私を呼んだ理由は?」
呼ばれた男の表向きの職は、国民党への軍事顧問団という肩書きになっている。
だからこそ、現在敗走どころか壊走している国民党軍の内情を本国に悲鳴のように送り続けていた。
「川向こうの共産主義者についてですよ」
呼んだ男は香港在住のビジネスマンという肩書きである。
その肩書きに間違いはない。
ただ、ちょっとそのビジネスの相手が政府であるというぐらいなものだ。
「あの調子に乗っている奴らですな。
それが何か?」
北京無血開場から始まった共産党の躍進はドミノ式に国民党内の各軍閥を共産党に走らせ、国民党軍は淮河で食い止めようとあがいているが、もはやどの軍が忠誠を期待できるか国民党内部ですらわからなくなっていた。
軍事顧問団に属している男は『信頼できる部隊の派遣を--つまり、合衆国のさらなる介入を--』と報告を送っているが、現状それが不可能である事をその男自身が一番良く知っていたのである。
そんな男がさらに絶望する言葉を、ビジネスマンはさらりと口にした。
「ロシア人と本格的に手を握りましたぞ」
「!?」
もともと中国共産党はソ連と協力関係にあったのだが、モスクワ陥落とスターリン粛清にともなう集団指導体制の混乱で関係に変化が出始めていた。
ソ連の弱体化で中国共産党も弱まると判断していた英米はここで読みを盛大に外し、そのつけを今ここで払う事にななっている。
「ロシアには資源と人があるが武器がない。
それを貴国をはじめとしたレンドリースで補っていたのだが……」
「……そのルートがこの大陸を使う事になった為に、川向こうの中国人にも武器が流れるようになって頭痛の種となっていたのはこの間話したばかりだろう?」
淡々と話す男二人。
間など気にしない阿吽の呼吸はこの二人が同じつけを払う同胞意識ゆえか。
一人で払うならば発狂するが、相手がいるなら不幸も山分けという所だろう。
「その中国人どもが義勇軍としてナチと戦うのはご存知で?」
「そうきたか」
ソ連はスターリン亡き後集団指導体制に入っていたが、暗闘も激しいらしく詳しい事はこちらに伝わってはない。
それは、同時に強権を持って人民に死ねと言いにくくなった事を意味する。
とはいえ、かの国にとって人の価値などまだ英米に比べてはるかに安いのだが。
「要するに、我らが支援する国民党が腐りきっていたという事だ。
武器を持ったまま無傷で寝返り続けるから、共産党もそいつらの処遇に頭を痛めていたと。
恩を売って、元国民党軍を厄介払いできるならばやすいものだ」
さすがに、中国人どもを独逸軍の弾の盾に使うほど彼らも愚かではない。
だが、ウラル以西の穀倉地帯や工業地帯を独逸に抑えられたソ連にとって、中国人という使い潰していい労働力はいくらでも欲しがる場所があるのだ。
そして、その分の人員が兵士となって独逸軍に押し寄せる。
「で、ソ連が共産党に払う代価は?」
「資源・及びレンドリース横流しの黙認。
で、資源は満州国で日本人に売るらしい」
つまり、筋書きを書いていたの日本らしい。
そして、その情報はこちらに届いていない。
二人は知らない。
はなから日本本土にそんな意思も能力もなく、黒長耳族もまだ現状把握できていない現場が暴走しているだけという事を。
98
:
名無し三等陸士@F世界
:2012/10/14(日) 11:52:30 ID:eOztz1hQ0
「忌々しい。
送られる哀れな中国人の数は?」
「第一陣が三十万。
最終的には百万を超えるだろうな」
聞かされた男が立ちくらみを起こしそうになるのをぐっとこらえる。
三十万だと?
その兵があれば夏季攻勢の失敗の補充に十分ではないか。
それが最終的に百万以上だと?
おそらく、竜会議の後に起こる独ソ戦はソ連からの冬季攻勢によって幕を開けるのだろう。
独逸はまだ夏のモスクワ防衛戦の戦力が回復していない。
おそらく、クリミア半島の戦いよろしく最終的には独逸に押さえ込まれるが、それ以上の攻勢はできない。
それはこの話を伝えた英国人にとっては喜ばしい事だろう。独逸が負けるのだから。
問題は、我ら合衆国だ。
英国の戦時国債で黒字が出るとは言え、この中国市場を日本から狙っていたのは紛れもない事実だった。
それゆえに、一番手っ取り早い日本を引きずり込むという手が打てない。
「そろそろ本題に入ってもらってよろしいか?」
いらつきながらご語気を強める男に、紳士よろしく招いた男は本題を切り出した。
「我らとしても、この地に赤い旗が翻るのを望むつもりはありません。
そこで提案なのですが、中華民国に満州国を承認してもらえないでしょうか?
そして、国民党軍崩壊の段階で、信頼できる者のみを連れて満州国に亡命してもらう」
その提案を告げた時も紳士よろしく上品にかつ優雅に彼はその陰謀を紡ぐ。
「満州国を内部から乗っ取ってしまうのです」
99
:
名無し三等陸士@F世界
:2012/10/14(日) 11:54:13 ID:eOztz1hQ0
投下終了。
工作員の名前が決まらずに苦労したのだけど、割り切ってモブに。
本編に組み込めたらという話なので、ナンバーはなしで。
では。
100
:
名無し三等陸士@F世界
:2012/10/20(土) 08:47:03 ID:HknBTtZw0
乙です。
中の人ですよね?
最終的に国共内戦では国府が勝利した旨、以前の話にありましたので、結末に至るプロセスを期待します。
101
:
名無し三等陸士@F世界
:2012/10/21(日) 19:18:24 ID:AQrXXOp20
ふと思った事。
500年前にF世界が滅んだ時に撫子達がこちらの世界に来ていた場合、F世界は500年でどう変わるんだろうか。
ダークエルフ達がF世界側に一人もいないと仮定して、殲滅戦が奴隷獲得戦に変わるのが500年早まってたりするのかな。
102
:
101
:2012/10/27(土) 18:10:09 ID:AQrXXOp20
まとめサイトの設定を読んで少し考えてみた。
まずダークエルフ達がF世界に一人もいないなんて事は基本無いと思ったけど、ダークエルフが500年前の大崩壊の影響で生まれたのならそうでもないのかな(千数百年前から人権が認められていないとの記述もあるけどこれはエルフの事?)。
奴隷獲得戦になるとしてもあの設定だと第二の大崩壊が起きるとかしないと変わらない(エルフによる地力の底上げが凄すぎる)。
変わるのはこちらの世界。
日本については年貢とは収穫高ではなく納税額という事が分かってきたのでダークエルフ達の処遇は大体大丈夫(黒巫女とか烏観音とかカチガラス巫女とか呼ばれそうな)。
中国(地域名だと支那)だと……明なのか(1368年 - 1644年)……この時代の中国人女性、数が減ったら減ったままの様な……。
インドではヴィジャヤナガル王国時代(1336年 - 1649年)。この王国のあとはイスラム教のムガル帝国だけど、王国のまま明とビルマ(ミャンマー)辺りで戦争になる気がする。
欧州では気候変動で小氷河期(中氷河期?)がいきなり来るのでひどい事になる(魔女狩りやポグロムで済むのか? もう一度黒死病が流行った様な被害が出そうな感じ)。
南北アメリカは……インディアンが北アメリカを、インカ帝国がアマゾンまで統べる?
シルクロードはモンゴル軍が鉄を作る為の燃料にするまではオーク(ドングリが生る方)の森だったとすると、森が復活して通り易くなりそうな。
103
:
龍神様の中の人
◆NdgHDvOgik
:2012/11/30(金) 12:35:12 ID:n8RJjnbg0
久しぶりの本編投下
104
:
龍神様の中の人
◆NdgHDvOgik
:2012/11/30(金) 12:36:38 ID:n8RJjnbg0
ロイター通信社横浜支局は横浜港に停泊している貨客船ヘクターに置かれていた。
もちろん、この船が仮装巡洋艦でロイターの皮をかぶった英国情報局の出先機関というのは、帝国内外の情報関係者には知られているのだが。
そんな場所にふらふらと遊びに来た馬鹿竜とその飼い主と従者に一人の男。
まぁ、馬鹿竜と従者とその飼い主ははったり要員なのだが。
「久しいの。
遊びに来たぞ」
「ご無沙汰しております。撫子様に真田様にメイヴ様。
こちらの方は?」
もちろん、英国情報部にいる身から彼の正体は知っているのだが、知らないフリをするのが英国紳士のたしなみである。
とうぜん、それを分かっているけどあくまで向こうが知らないという振りのまま自己紹介をするのもまた、英国を師に持つ海軍軍人のたしなみといえよう。
「はじめまして。
バンコク商会、いや、もうすぐ北崎通商に名を変えるのでした。
そちらに出向しております大井篤と申します」
差し出された手を握りながら、英国紳士も偽りの身分を名乗る。
「ロイター通信社の特派員イアン・フレミングと申します。
表向きは」
最後の一言が出るあたりは一応信頼しているというサインなのだが、それが丸見えの某馬鹿竜様はそれゆえにその機微がわからない。
なんでも見えるとかえってわからなくなるいい例だろう。
「こんな所にいらっしゃるなんて、何用で?」
ヴィクトリアンメイドに茶菓子を用意させながらフレミングが尋ねる。
もちろん、お茶の時間に強襲を提案したのは茶菓子狙いの馬鹿竜様に他ならない。
「何、知人と茶を飲み、茶菓子を前に話を咲かそうと思ってな。
もしかして邪魔だったか?」
優雅にティーカップを持ってフレミングを見つめる撫子はその瞬間のみまるで女王のごとし。
茶菓子を食べだしたら暴落するのがとてももったいない。
「いえいえ。
撫子様でしたらいつでも大歓迎ですよ」
とは言いつつ、東京竜会議の開催に向けて現在各国諜報機関は阿鼻叫喚の真っ最中だったりする。
欧州大戦真っ只中という事もあって東京に情報関係者を送り込む事自体が結構難しく、国内監視について反体制者から蛇蝎のことく嫌われている特高や対外カウンターパートになった神祇院のお膝元で活動するのは難しい事この上ない。
まあ、その神祇院の大物である馬鹿竜様の従者が目の前にいる以上何を言っても無駄というもの。
なお、フレミングが今日ここにいる事を漏らした覚えはない。
情報世界のささやかなご挨拶というやつである。
「何、この大井とやらが賭け事をするらしく、その賭け金を払いにきたそうな。
わらわ達は大井に賭けているので、ちと協力しようと思ってな」
龍神様のお言葉によって、今回の要件がバンコク商会における帝国艦船のレンタルについての事だとあたりをつけたフレミング。
海軍艦船が海上保安隊に移行するとはいえタイ国籍の艦船は多く、その海上護衛エリアはインド洋全域に広がっている。
105
:
龍神様の中の人
◆NdgHDvOgik
:2012/11/30(金) 12:38:57 ID:n8RJjnbg0
「それで、いかほど賭けるので?」
フレミングの言葉に大井は予備役に送られた四隻の戦艦――扶桑・山城・伊勢・日向――の書類を机の上に差し出す。
これも、某博奕打ちの友人による振り付けというのが気に食わない所だが。
ついでに、その海軍参議官にて暇を謳歌している某中将がまだ海上保安隊長官職をまだ受けないあたり腸が煮えくり返っているのだが。
「扶桑、山城、伊勢、日向。
最初のオファーでは、金剛級四隻とのお話でしたが?」
フレミングの言葉に大井が苦笑して答える。
その言葉に疲れが混じっているのを誰が責められようか。
「当初予定の変更など、この界隈でならよくある話ではないですか。
一応レイズしているんですよ。こちらは」
レイズの内容がまた莫大なので大問題になっていたりするのだが。
竜会議開催前に英米首脳を交えて行われる南洋竜国承認式典の公表と、帝国議会で取り上げられた満州国における対ソ援助物資横流しの暴露は激震となって世界中に広がっていたのだ。
南洋竜国については馬鹿竜様大暴走を放置した結果だから仕方ないとは言え、貴族院議員である銀幕更衣ことダーナが内偵の結果暴露してしまった満州国での物資横流しは本土が把握してなかった事が露呈。
陸軍の対ソ戦強硬派が激怒して調査をしたら、その陸軍を追放された士官達で構築されている満州国軍にぶち当たって、見事なまでのブーメランに陸軍内部は大混乱に陥っていたのである。
この帝国外交の180度方針転換に独逸総統は大島大使を呼んで猛然と抗議したのだが、この激震の前にクリミア半島にてソ連軍の反撃によって後退に追い込まれていたという負い目もあるから言質を取る事に失敗していた。
その上、その戦艦四隻のバンコク商会派遣。
竜会議前に行われるだろう第三次クレタ沖海戦前に帝国の親英米派はオールインしてきたのである。
まぁ、金剛級四隻とどっちがましかといえばこっちなのだろうが。
それにしてもフレミングはほぼ把握しているとは言え、日本海軍内部の深刻な対立は根深い。
海上保安隊発足にともなう将官・士官の不足解消からこの四隻の人員を引き抜て穴埋めした結果、この四隻は予備役とされそのまま雨晒しとなるはずだった。
そこを、海軍戦力の維持を目論む井上海軍次官と、英国からのアレキサンドリア派遣というベットに全力で食いつきたい博奕打ちこと山本軍令部総長の妥協の産物。
「伊勢と日向はシンガポールにて整備を、扶桑と山城は竜州で整備をした後にシンガポールに送る予定で四隻そろうのは年を超えてからになるでしょう。
伊勢と日向が手付金と思っていただけたらと」
ちなみに、扶桑と山城については竜州にて蟲を吹き飛ばすために陸上戦艦化という案も出ていたりする。
純粋にドックが足りない日本の現状と某天才幼女鍛冶師への生贄という政治的側面まではフレミングも知らない。
「ま、いまからそちらが何をしようとも地中海での決戦に間に合わないのですが、その誠意を確かに受け取りました。
で、我々に何をさせたいのですか?」
これだけの賭け金を出したのだから配当もかなりのものになる。
何を要求されるのやらと身構えていたフレミングは大井のあけずけな言葉に虚をつかれる羽目になる。
106
:
龍神様の中の人
◆NdgHDvOgik
:2012/11/30(金) 12:41:50 ID:n8RJjnbg0
「近く、この国においてクーデターが勃発する。
少なくとも政府はそれに備えかつ鎮圧の準備をしている。
その邪魔をしないでくれれば十分だ」
帝国国内の与論の分断に対独対英米の外交方針の迷走とこの国がどうにもならなくなっているのは知っていたし、フレミングはそれを煽っていた側の人間である。
その彼にここまで政府内の一派が打ち明けるという事は、この竜会議を頂点に一気に動くつもりらしい。
マリアナからここまで撫子をはじめとした繋がりがここで効いてくる。
暗に、親独派の排除に協力しろと言っている大井に紳士面を崩さない最大限の笑顔でフレミングは了承したのだった。
「もちろん。
ああ、友人の一人に声をかけてよろしいですかな?
撫子様も一緒にカードを楽しんだダレスなんですが?」
「かまわぬぞ。
宴は多ければ多いほど楽しいものじゃからの」
お茶会がおわったその帰り道。
「博之もメイヴも黙ったままだったのじゃ。
せっかくの茶の席なのだから、何か話せば良かっただろうに」
「俺はクーデターなんて生臭い話を肴に茶飲み話なんてしたくはない」
「同じく」
帝国の龍神様 ナンバー未定
107
:
龍神様の中の人
◆NdgHDvOgik
:2012/11/30(金) 12:43:15 ID:n8RJjnbg0
投下終了。
97-98は私です。コテ忘れていました。
では。
108
:
名無し三等陸士@F世界
:2012/11/30(金) 17:37:44 ID:cMo2lsLM0
お久しぶりです。
遂に歴史が大きく動くのですね。
その結果良くなるのか悪くなるか見当がつきませんけれど。
109
:
名無し三等陸士@F世界
:2012/11/30(金) 20:51:14 ID:KwXqUoJI0
投下乙です。
にこやかな外面とは一転、まさに生臭い裏話・・・・
扶桑と山城の陸上戦艦化構想。
超弩級戦艦wktk
110
:
陸士長
:2012/12/01(土) 10:58:32 ID:WRqvC3DI0
片手で握手して片手でナイフを握る。まさしく腹黒紳士。
このまま連合側についても、枢軸打倒後に難癖付けて敵対されるのは満州の件からして明か。
連合側に良いように利用されている感じですね現状では。
ほくそ笑むフレミングの顔がルフィに全力腹パンされたエネルみたいな面になるシーンが早く見たいです。
111
:
名無し三等陸士@F世界
:2012/12/07(金) 07:23:44 ID:jXa1oKq.0
アトリエシリーズに入ってトトリたんとにゃんにゃんしたいれす^q^
112
:
陸士長
:2012/12/09(日) 10:35:25 ID:yJ1o4Wh.0
短いけどリハビリ代わりに
113
:
陸士長
:2012/12/09(日) 10:36:12 ID:yJ1o4Wh.0
クレタ島の南方 リビア海
「帰ってしまうな……畜生、港に着くまでずっとアイツが頭上に居ればいいのに」
頭上を哨戒機が通過して去っていくのを、アレクサンドリアから出航しクレタ島に向かう大型タンカーの見張りは不安そうに見送った。
「アイツが出勤してきたトコまでもうすぐだ。この辺はクレタ島に常駐している対潜部隊の哨戒範囲だから大丈夫さ」
「そうだと良いがなぁ……」
数回大西洋航路のタンカーに乗船し、一度は被雷して海に投げ出された事もある見張りは尚も不安そうだ。
もう1人の見張り、シンガポールから印度の航路で勤務していた所為か緊張感が足りない男が笑いながら言う。
「ほら見ろ、夕暮れが綺麗だぜ。アジアの日暮れも良いが地中海も悪くないな」
「今は見張りの時間だぞ、良いからしっかり見張れ……んっ!?」
「どうした!?」
双眼鏡を覗いてた片方が慌てた口調で言葉を途切れさせ、もう1人も慌てて双眼鏡を覗きこむ。
「なんだ、イルカか……」
「イルカかよ、そんなもんで騒ぐんじゃねぇよ」
「だってあのでかい尾びれが急に海面に浮いたから潜望鏡かと思ったんだ……」
2人がそう言い合っている間、イルカはタンカーの側面と並行するように泳いでいる。
近寄ったり離れたり、先行したり背後に回ったりと忙しなく泳ぎ回っていた。
「お、アイツ、こっちをじっと見ているぞ」
「ハハ、俺達をお仲間と勘違いしてるのかね。可愛いもんだ」
「バーカ、こんなでかいイルカが存在するかっての!」
「居るかもしれないぞ? ドラゴンや吸血鬼なんてファンタジーな生き物が存在するんだからな」
軽口を叩き合っていると、何時の間にかイルカは姿を消していた。
良く見れば遠くの方で海面上に跳ねる姿が夕暮れの朱に混じって見えた。
「行ってしまったな」
「ああ、俺達のクレタとは違う方向みたいだけどな」
少し寂しく感じたが、2人は気持ちを切り替えて双眼鏡を覗きこんだ。
「お、おい!」
「今度は何だよ、鯨でも出たか?」
「ち、違う、雷跡だ!! 2、3……魚雷が3本来る!!」
慌てて片方がブリッジへの受話器を取る。
「右舷から魚雷が3本接近して来ます!! 直ちに回避を!!!」
しかし、彼らの発見は遅すぎた。
巨体のタンカーでは舵の効きが遅く、3本の魚雷は船体の横っ腹で大爆発を引き起こした―――。
そしてその爆発とタンカーの最後を、海面から顔を出した先程のイルカがじっとみていた。
「1番、2番、3番命中を私の使い魔が確認。目標は機関停止の上、爆発炎上傾斜しつつあり。
喜べ諸君、今日のディナーは10000級の大型タンカーだ。腹一杯食えるぞ」
閉じていた目蓋をゆっくりと開き、ルツィア・ヘンデルバンド大尉は精神集中を解いてイルカとのパスを切った。
ウルディアーナ級の『Ⅶ』を率いる女艦長は、脂汗を拭い獰猛な笑顔を浮かべて部下達に告げる。
「代わりに、クレタの英国空軍はガス欠で腹ぺこになる訳だがな。
厨房に伝えてくれ、祝杯はトゥーロンに戻ってだが、夕食は特配だとな!」
司令室に抑え気味の黄色い歓声が響き渡った。
114
:
陸士長
:2012/12/09(日) 10:37:08 ID:yJ1o4Wh.0
投下終了
イルカはリアルでもよく軍用としての利用が試みられてますが、こーやって使われたら凶悪な事になりそうっすね。
特にこういった使い魔として偵察用に使われ、それに対する対抗策が無い場合だと。
115
:
名無し三等陸士@F世界
:2012/12/09(日) 11:31:15 ID:naPJVg8g0
この世界のシーーシェパードは「イルカを殺せ!」と叫ぶんだろうか・・・。
116
:
陸士長
:2012/12/09(日) 12:17:14 ID:yJ1o4Wh.0
あ、いかんいかん。Ⅶは大西洋シフトでした。
ルツィア・ヘンデルバンド大尉の乗艦はトゥーロン所属のⅧです。
117
:
41です
:2012/12/30(日) 19:21:49 ID:WX3D6F9E0
ちょっと思いついたので、久々に投稿します。お気に召しますか……。
118
:
41です
:2012/12/30(日) 19:22:27 ID:WX3D6F9E0
「帝国の龍神様」サイドストーリー
「は? あの、それはどういう意味なのでしょうか……」
「そんな顔をするだろうと思っていたがね、事実なのだよ。悲しい男の性というべきか」
竜州から東京に一時帰国した足で海軍省へ顔を出した俺、真田博之少佐は、面白くてたまらないといった表情の堀中将から聞かされた話に絶句してしまった。そんな俺の様子に、同道していた撫子は不思議そうに眉根を寄せる。
「別におかしくはないであろうが。好きなだけ女を抱ける土地に行きたいと思わぬ男のほうが異常じゃぞ。それとも、この世界には男が好きな男が多いのか?」
「いや撫子、それは激しく誤解だ――し、しかし閣下、彼らは本気なのですか? 帝国に忠誠を誓うふりをして、実際は破壊工作員とかスパイなのでは……」
「まあ、そんな連中もいるだろうが、大部分は本当に竜州行きを熱望しているらしい。男と生まれたからには男の天国で暮らしたいと断言する連中が押し寄せて、外務省などは頭を抱えているよ。いったん情報が洩れたら、収拾がつかなくなってしまった」
しまいには愚痴になった堀中将の話とは、世界各国で「自分も竜州に行きたい」と志願する者が日本の在外公館などに殺到しているという事実であった。
例によって防諜意識皆無の日本政府内部から「竜州には性奴隷になりたがる最高の美女がたくさんいる」という情報――事実なのだから否定しようがない――をキャッチした各国政府は、真っ青になって隠し通そうとした。そんな話が知られたら、男性国民の相当部分が「自分たちも行きたい」と思い立つのが目に見えていたからだ。その懸念は無理もなかったが、これほどの情報を隠せるはずがないのもまた当然の話で。戦争という重苦しい現実に押さえつけられていた世界は、一気に釜のふたが吹き飛んでしまった状況なのだ。
「各国にある日本の出先機関は、竜州への入国許可を求める現地の男たちで十重二十重に囲まれて身動きできない状況だ。慌てて政府は『竜州はまだ開拓初期段階で、派遣しているのは軍隊だけである』との公式声明を出してすべて断っているが、日本は竜州を他国も自由に行き来できるようにせよとの主張が各国の新聞雑誌にあふれ返っている有様だ。しかも竜州に行けるのなら、日本軍の傭兵になっても構わないと迫る者が続出しているとか」
「うむ、男として、しごくまっとうな反応じゃの」
頼むから黙っていてくれ、この馬鹿竜。世界各国で(日本を含めて)どれほどの人間が頭を抱えているか、想像もできないのだろう。いままで日本政府だけが脳髄を絞っていたのが、いまや世界中の首脳が苦悩する破目になってしまったのだ。
「先日、米国議会に『日本に竜州の門戸開放を求める』決議案が出されたよ。もっともホワイトハウスが、本当に門戸開放されたらどうなるかという『まともな』反対意見で議員を説得したおかげで棚上げになったがね。それに、あの国では女権拡張論者も強いから、そんな決議に賛成した議員は次の選挙で落選しかねないからな。現にニューヨークの日本総領事館前では、竜州行きを求める男たちと、彼らを非難する女性のデモ隊がぶつかって大騒乱になっている」
119
:
41です
:2012/12/30(日) 19:23:06 ID:WX3D6F9E0
ダレス氏が届けてきたという米国の新聞を眺めながら、俺はもはや何も言う気力もうせた。一面にはプラカードを掲げた男女の集団が、棒で殴り合ったり投石している写真が大きく掲載されている。そのプラカードに書かれた内容といえば……。
「われわれは竜州の女を求める!」
「西部に続いて竜州の開拓こそ、アメリカ人のフロンティア!」
「ジャップが竜州の女を独占するのは独占禁止法違反だ!」
「竜州の女性解放こそ文明の責任!」
「アメリカの男を竜州に流出させるな!」
「竜州に男を行かせるくらいなら欧州戦争に参戦せよ!」
……どこか激しく間違っていると思うのは俺だけだろうか。
「しかし、こうなると米国が竜州欲しさに対日宣戦布告をしてくる恐れもあるのでは」
「それはないだろう。現状ハワイの竜を何とかしなくては、対日戦争などできまい。撫子様の話では、ハワイの竜は簡単に米軍に負けるようなタマではないようだし」
「当然じゃ。あやつを大人しくさせられるなら、わらわも竜会議など提案せんぞ」
口を挟むな。いばって言う話ではないだろうが、この馬鹿竜が!
「馬鹿竜ではないのじゃ! そもそも竜州に日本人しか来たがらないはずがなかろうが。すべての国が領土や植民地を欲していると、教えてくれたのは博之であろう」
「それはそうだが――各国と言われましたが、具体的には」
「現在、大戦のただ中にある欧州各国はもちろん、米国や南米、その植民地であるインドや東南アジア、さらに南米やアラブでもだ。満州や北樺太では、士官級を含めてソ連軍からの投降者が激増している。連中は口を揃えて、もう国には帰れないから安心して暮らすために竜州へやってくれと要求しているらしい。部隊が丸ごと投降とかもあったそうで、先日、上京した満州国軍の辻大佐が、数が増えすぎて面倒見切れないから何とかしてくれと参謀本部に泣きついたそうだ」
「あの辻が泣きついてきた……」
「陸軍から回ってきた報告書を読んだが、投降者の供述によればドイツとの戦争と秘密警察による粛清の恐怖が蔓延しているソ連軍内部では、竜州はある種の夢の国、異世界の楽園のように語られているらしい。おまけに辻大佐の足元の満州国軍でも、現地人兵士から竜州駐留を求める声が強くなって、日本人士官たちも抑えかねているようだ」
俺は初めて辻に、陸軍に同情を覚えた。今まで散々やりたいようにやってきた奴が、今度はヤリたい連中を必死になだめなくてはならないのだから。
120
:
41です
:2012/12/30(日) 19:23:47 ID:WX3D6F9E0
「それにしても、竜州には怪獣のような巨大な蟲がうようよしているとか、現地の国同士で戦争が起こっているとの情報は知られていないのですか?」
「いや、ここまできたらと山本が海相や陸相と協議して、竜州軍が襲われて大損害を出した事実も含めて公表した。すぐその話も流れたが、竜州行きを求める声は一向におさまる気配がない。戦争で死ぬのも怪物と戦うのも同じ。ならばいっそ……というわけらしい」
その点は、貧乏百姓の小せがれだった俺にもわからないでもない。基本的に兵士や労働者になるのは中下層階級の男たちであり、裕福さと縁がない彼らは戦争に行かされたりきつい労働に従事するよりも、好きなだけ女を抱けるなら多少危険でも竜州のほうがマシと考えるだろう。しかし、彼らがごっそりいなくなってしまえば、特に戦争中の欧州各国は国として存続できなくなり、権力や体制が崩壊してしまう。だからこそ各国は当初、必死で情報を隠したのだろうが。
「しかも、竜州行きの志願者が一番多い土地はどこだと思うかね?」
「はあ、女好きならイタリアあたりでしょうか。それとも南米かインド……」
「いや、朝鮮と中国だ」
「え、でも朝鮮は植民地ですが独立運動は今も根強いと聞きますし、中国からも撤兵したとはいえ、反日機運は激しいものがあるはずでは……」
「独立も反日も、女を好き放題にできるという甘い餌の前では雲散霧消してしまうようだな。朝鮮総督府や満州国駐在大使館などには、日本軍に入隊するにはどうしたらよいかという現地人からの問い合わせが殺到しているそうだ。辻大佐によれば満州で反日活動をしていたソ連系の朝鮮人共産ゲリラ幹部が、竜州行きを条件に投降と情報提供を打診してきたとか。日本国内に住んでいる朝鮮人たちも、各地の基地に入隊志願に来て困っていると東条内相が話していたぞ。内心はともかく表向きとはいえ朝鮮人たちが『天皇陛下に忠義を尽くすために兵士になりたい』と言うのを無碍にはできないしな」
愛国心とか反日運動よりも自分たちの欲望を優先するとは、朝鮮人や中国人の実利第一主義を褒めるべきか。いくら頭が切れる山本軍令部総長も、どうしたよいか決断しかねているのだろう。その愚痴が堀中将を通じて俺たちに伝わっているわけか。
121
:
41です
:2012/12/30(日) 19:24:26 ID:WX3D6F9E0
「あと、これは極秘情報だが、満州国皇帝陛下から黒長耳続の女を後宮に迎えたいとの意向が伝えられてきた。ほかに満州国政府の中国人高官からも、関東軍司令官に同じ要請があった。こちらの一存では断れず、撫子様に話しておくと返事したが……」
「満州国皇帝が? しかし一国の宮廷に異世界の女を招き入れるなど」
「日本に移ってきた黒長耳族の女性たちが、大陸で出征部隊にすごい慰安をしただろう。そこにいた対日協力者の中国人から情報が伝わったらしい。国内でもいくつかの有力華族様から、何とかならないかと及川や山本に言ってきている」
海軍を女衒のように使うとは。お偉いさん方に猛烈に腹が立ってきたが、意外にも堀中将は大して怒っていないようだった。
「この先、欧米の権力者や王侯貴族、富豪たちからも同様の話が来るのは確実だぞ。英国のフレミング氏など、世界の有力者に竜州の女を愛妾として差し出せば、日本の国際的地位は保証されると力説していた。英国をはじめとする欧州各国の王室には、本物の娼婦が王の愛妾として迎えられた例は珍しくないそうだから、今度も歴史は繰り返すという程度にしか思ってないようだ。何でもルーズベルト大統領は女性についてまだまだ現役だから、来日の際に味を覚えさせれば日米戦争はなくなると断言したよ。山本が呆気にとられた顔を見たのは久しぶりだったな」
「はあ……彼は英国の工作員として、日米戦争を起こさせるのが任務だったのでは?」
「間もなく東京竜会議が開催される。これを機に日本を通じて撫子様をはじめとする竜と友好関係を結ぶことで、英国の立場を強化しようとしているというのが吉田大使の見立てだ。ドイツもシチリアやアイスランドの竜と誼を通じようと必死になっているから、そうさせてなるものかというわけだ。実際に世界の有力者に竜州の女が愛妾として提供されたら、骨を折ったのはわが英国ですと一言ささやけばいいからな」
はい、ドロドロな国際外交の裏面解説をありがとうございました。撫子と付き合ってからこの手の話はしょっちゅう聞くが、どうしても慣れない。俺がまだ、健全な精神の持ち主だからと信じたいが……しかし、ルーズベルトにダークエルフの女を提供したら、彼女たち欲しさに対日戦争を仕掛けてくるのではと思えてしまう。そのときはメイヴさんに頼もうか。彼女ならルーズベルトを親日派にしてくれることぐらい、できるのではないか。
122
:
41です
:2012/12/30(日) 19:24:57 ID:WX3D6F9E0
「うむ、メイヴならルーズベルトの相手をしても大丈夫じゃろう。この手のことならアニスのほうが熟練しておるが、そなたたちの言葉でいえば日本にとって政治的な信頼度が低いからの――どうしたのじゃ、博之? ぽかんとわらわを見おって」
「いや、馬鹿竜から信じられないセリフを聞いたような気がして」
「馬鹿竜ではないと言っておろうが! とにかく、わらわとしては日本人以外の人間が竜州に来ようと構わぬぞ。広い未開地があるのじゃから、いくらでも受け入れたらよかろう。アメリカ人もロシア人も朝鮮人も中国人も、みな日本に忠誠を誓ってくれると言っとるのに、何を遠慮することがあるのじゃ?」
「そんなに簡単にいくか。小磯首相は竜州を新たな日本領と宣言して、最終的には二千万人規模の移民を送り込む計画だ。そこに大量の外国人を入植させるとなると、国民感情が納得しない。それに口では何とでも言えるが、連中が竜州に入ってから故国の命令で日本に反逆したら手が付けられないだろうが」
「心配ない。もし反逆なぞしおったら、全員に女体化の秘薬を投与してやればよかろう。それで二度と元に戻さないで、他の男たちに分け与えてやれば終わりじゃ。違うか?」
……あのー撫子さん、とっても凶悪かつ無慈悲なセリフを笑顔で言われると、ものすごく心臓に悪いのですけど。堀中将も固まっているではありませんか。
「初めて会ったときじゃったか、辻が人を殺すのはそれなりに重労働なので、それを簡単にできるわらわを陸軍に引っ張りたいと言いおったの。人間は戦争で殺しあっているくせに、実際に殺すのは苦手らしいと、わらわも気付いておったぞ。だから殺さずにすむ方法を教えてやったのに、それを凶悪だの無慈悲だのとはけしからんではないか!」
いや確かに殺さなくてすむけれど、あまりといえばあまりにエグいやり方でしょうが。ヒトラーやスターリンでも絶対に引くぞ。石原参謀長は……まあ、大笑いして「いい考えだ」と頷くところが想像できてしまう。満州国を造ったほどの人間は、アトランティスを海に沈めた竜と意気投合できる部分が多いのか。
「それに、わらわの眷属を各国の有力者に愛妾として差し出すのも悪くない考えじゃな。もともとダークエルフは男に抱かれるのが大好きじゃし、あらかじめメイヴに教育させておけば、どんな男も寝かせずに狂わせるほどの技術を身に付けられるぞ。それで日本も竜も得をするなら、誰も損をせぬではないか」
確かにそうだろうが、「日本は女のアソコで国際的地位を買った」などと、どこぞの国の歴史教科書に書かれるだろうなと思えてしまう俺は、まともな思考を保っているのか。
「のう博之、このまま世界中から竜州に女が欲しい男どもを受け入れていけば、世界は平和になるぞ。どの国も戦争したくてもできなくなるからの。しかも今、この地と竜州をつなげられるのはわらわだけじゃ。そもそも女体化の秘薬を投与しなくとも、女が欲しい連中など向こうで問題を起こした者は即刻強制送還すると釘を刺しておけば静かになるであろうし、逆に英国や米国でもドイツでもソ連でも、日本以外が竜州に軍隊を送り込めないのじゃぞ。アンナとナタリーが本国から逃れておるのと逆に、竜州に来た者どもは本国から隔離しようと思えばできるのじゃ。そうなればスパイも本国からの指示を受けられず、情報も送れぬであろうが。わらわの言うことが間違っておるか?」
さてこの話、どういう結末を迎えるのか――。
123
:
41です
:2012/12/30(日) 19:45:03 ID:WX3D6F9E0
実は上の話は複数のエンディングを考えたのですが、どれを書いてもぴったりこなかったのでボカしました。皆さんで考えてみてください。
124
:
F世界逝き
:F世界逝き
F世界逝き
125
:
龍神様の中の人
◆NdgHDvOgik
:2013/01/08(火) 16:42:44 ID:xVyd9URs0
遅くなりましたがあけましておめでとうございます。
今年もアリのように歩みは遅いですが『帝国の龍神様』をどうかよろしくお願いします。
で、久々のレス返し。
>>国共内戦
地味に帝国に影響を与えている大陸情勢。
国民党の瓦解とその再起は帝国に甚大な影響を与えることになります。
>>黛大佐
陸上巡洋艦や陸上戦艦にてお仕事が回ってくるかもしれない。
多分、陸軍との話し合いの結果だけど、
陸上戦艦二隻と陸上巡洋艦一隻(陸軍も金を出して巨砲が欲しいね案)
陸上戦艦一隻と陸上巡洋艦三隻(陸軍も金を出しての妥協案)
陸上巡洋艦五隻(陸軍も金を出して数が欲しいね案)
陸上巡洋艦三隻(海軍予算のみ)
もちろん、陸軍が金を出す想定戦場は満ソ国境からシベリア。
海軍が想定する戦場は大西洋から欧州上陸という同床異夢。
>>101-102
入ってきてすんなり落ち着きそうなのが、シベリアやアラスカの大森林地帯。
ただ、この二つだと後の列強の植民地獲得戦争に巻き込まれる諸刃の剣。
魔法の概念がインディアンに伝わって、そりゃもう楽しい事に。
>>陸士長さん
投下乙です。
これは防ぐの難しいよなぁ‥‥‥
このあたりを独逸が出してこれるのならば、某パンツじゃないアニメのウィッチ達がそろそろ欧州の空を舞ってもいいかもしれない。
アメちゃんが対独宣戦した時にお出迎えするのが彼女たちとか少し胸熱。
>>41
ですさん
投下乙です。
大いに笑わせてもらいました。
博奕打ちの借金のカタで取り上げた極上娼婦『でしかない』サキュバス(ダークエルフ上位種)ディアドラが竜会議でお披露目が決定。
ネタ作ってそのまま放置が多いけど、こう言う感じで再利用できるものは修正して再利用しようと。
では。
126
:
41です
:2013/01/29(火) 22:49:19 ID:aYo7HUbE0
「帝国の龍神様」サイドストーリー掌編
その夜、大原伯爵邸へ戻った俺は、先に帰宅していた綾子に堀中将の話を――するわけがない! 聞いたら最後、目を三角にして強烈な怒気を発しながらの説教フルコースが待ち受けているのだから。しかし、「どんなに痛い目に遭っても三歩歩いたら忘れてしまう」鳥頭の馬鹿竜に注意しておくのを忘れたため、俺が伯爵に呼ばれて話し込んでいた間に撫子が「あかれんがとかで面白い話を聞いたのじゃ」と、得々と喋ってしまったのだ。
応接間に戻った俺は、綾子の爛々と輝く両の目にすべてを察した。ああ、また二時間も怒声を浴びながら正座させられるのかと頭がくらっとなりかけたが、意外にも綾子は「それがどうかしましたか?」とのたまわったのだ。
「おい綾子、怒らないのか?」
「今さら何を。お兄様と一緒に竜州まで行った者なら、その程度で怒っていては生活する時間がありません。少なくとも撫子さんがこちらの世界に来られてからの経験で、男とは救いようもなく愚かなけだものであると思い知りましたから」
冷たい笑いを貼り付けた綾子の眼差しに冷や汗を流しながら、俺は猛烈な時化の海で駆逐艦に乗っているような気分だった。怒っているじゃないか! 深く静かに、底の底まで、ブリザードのような絶望が吹き荒れる怒りに凍りついてしまいそうだ。うはあ、さっき伯爵が「綾子は戻ってきてから目つきがすっかり変わってしまった。あちらで何かあったのかね」と聞いていたが、こういうわけだったのか……。ようやく撫子も察したのか、テレパスで(ひろゆき〜、こわいのじゃ〜)と告げながら、ぶるぶると震えて後ずさってやがる。遅いんだよ、この馬鹿竜が!
かくしてその夜は、予想通りの綾子の怒髪天説教フルコース――にはならなかった。目は全然笑っていない綾子に、能面のような笑みを浮かべて「お兄様、撫子さん、前々から考えていたことがあるのですが」と言われて断れるわけがないだろう。
「実は私、地球規模のクーデター計画を練っておりますの。このくだらない戦争を一刻も早く終わらせて、全世界を平和にするための……」
「撫子さんが言われたように、男という名の愚かなけだものは残らず竜州へ送り込んでしまうのです。彼らは竜州で好きなだけ戦争をやればいい。そして地球は、平和を愛する女性だけの世界にする。どうでしょう……」
「手始めにルーズベルトだけでなく、チャーチルもヒトラーもムッソリーニもローマ教皇も蒋介石も小磯総理も、自分たちが世界の指導者だと思い込んでいる愚かなけだものどもすべてを、ダークエルフで骨抜きにして何でも言うことを聞かせてしまうのです。反対する連中は、フクジョウシとやらにしてやればよろしいでしょう。撫子さんのお話では、そのくらいわけないのではありませんか。彼らも幸福な最後をとげられるなら、殺人などではないでしょう……」
「もうこれ以上、愚かなけだものどもに政治や戦争を任せてはおけません。それでも愚昧な男たちがいいという女も竜州にやってしまえば、人類の理想である平和と正義が実現するではありませんか。そして撫子さん、あなたがた竜は、その新世界の神となるのです。何とも魅力的な構想ではありませんか……」
当然のように正座させられ、延々と酔ったような綾子の言葉を聴かされるのは説教よりも精神に響いた。ああ、あの純真で清楚な綾子はどこに行ってしまったのか。最後のほうは気が遠くなりながら、ナチス親衛隊の黒い制服をまとって地球を踏みつけ、男たちに鞭をふるう綾子の姿を幻視していた。
(うう、ひろゆき〜、綾子はわらわなど足元にも及ばぬ悪の暗黒女帝なのじゃ〜)
(全部お前のせいだ! 少しは懲りやがれ、この馬鹿竜が!)
(馬鹿竜ではない……いや、これほど綾子を怒らせたわらわは確かに馬鹿竜なのじゃ。アンナとナタリーが戻ってきたときのことを、すっかり忘れてしまっておったから……)
すごいぞ綾子、撫子が反省している! それだけでもお前は、コイツの調教師として最高の技術を誇っていい。しかし綾子の奴、「腹上死」の意味を知ってて使っているのかは疑問だが。
「お兄様、何かおっしゃりたいのですか?」
「イイエ、マッタクナニモゴザイマセンデス」綾子もテレパスなのか――。
あとから思えば、こんなのは実にほほえましく楽しい平和な時代だったわけだ。やがて開催された東京竜会議と世界列強首脳会議の裏側で、俺も撫子も綾子も想像もしていなかった人外どもが暗躍する影の世界の暗闘に巻き込まれることになったのだから。
127
:
41です
:2013/01/29(火) 22:54:36 ID:aYo7HUbE0
※「例の話を聞いた綾子」というアイデアが浮かんだので、素早くまとめました。「綾子のライト化」どうでしょうか。
128
:
名無し三等陸士@F世界
:2013/01/30(水) 12:11:47 ID:Vms3478.0
二次創作なのにどうして上から目線なのでしょうか?
そこが気になります。
129
:
名無し三等陸士@F世界
:2013/02/01(金) 16:39:32 ID:9AsJcFl20
ここには読みに何度も足を運んでいるんだが
シェアードワールド型の創作をする場所じゃないん?
Wikiより
>シェアード・ワールドにおける各作品は原則として完全に同じ世界上の出来事とされ、歴史の流れもまた相互に尊重される。
>>127
の綾子のライト化とかダメっしょ・・・・
もしやるのなら二次創作っていうのを宣言してからやって欲しい
(本音言うなら、ここからも外れてやって欲しい。けど、SSスレ(萌え)ってスレで建前上は独占の場所じゃないから言えん)
130
:
名無し三等陸士@F世界
:2013/02/01(金) 21:44:07 ID:Jn9M/Ao6O
41による原作蹂躙がはじまるのか……過疎化が進むね
131
:
名無し三等陸士@F世界
:2013/02/02(土) 00:55:19 ID:qw95jBLg0
>>130
ますます、寂れるね。
正直他所でやって欲しい気がする。
132
:
名無し三等陸士@F世界
:2013/02/02(土) 01:48:56 ID:EbYHsVxA0
中の人基準でおもしろければ採用するんだし、ティンとこなければ採用しないんだからいちいち突っかからなくてもいいじゃないか。
自分の考えと違うんだから無視しとこうぜ。
133
:
名無し三等陸士@F世界
:2013/02/06(水) 23:03:03 ID:lad/JiLY0
そう
134
:
竜神様の中の人
:2013/02/16(土) 23:23:16 ID:xVyd9URs0
久しぶりにバイオな竜神様投稿。
135
:
竜神様の中の人
:2013/02/16(土) 23:25:37 ID:xVyd9URs0
ナブレスの沖に錨を下ろす二隻の帝国艦船にナブレスの住民は釘付けとななった。
皆の視線を集めているのが軽巡洋艦大井。
その大きさから、後ろにいる測量艦筑紫はそれゆえに目立ってはいないが、筑紫もナブレスに停泊する木造帆船に比べればはるかに大きいのだが。
大淀の会議室で神堂辰馬は何気なく思う。
「陸軍の神堂大尉です」
「海軍陸戦隊の谷浦大尉と申します」
「大淀艦長。富岡大佐だ」
「筑紫特務艦長。山高大佐」
今の帝国を端的に表しているなと辰馬が思うのは、それぞれの後ろに異世界人がついているあたり。
辰馬の後ろに犬耳族のリールがメイド姿で、海軍連中の後ろには黒長耳族が巫女服姿で佇んでいる。
「今回は海軍の実験に便乗させてもらい、感謝しております」
「いや、こちらもナブレスに拠点があるのとないのではおおいに違う。
協力に感謝する」
異世界において陸海軍の行動が円滑に進められているのは、彼女たち異世界娘達のおかげである。
アンナとナタリーからメイヴ経由で海軍に話が行った以上、断れる訳もなく。
ましてや、陸軍というより辰馬が主導権(何しろ森のピクニック)を早々に放棄していた事もあって、その最初の打ち合わせは実に穏やかに進んでいたのだった。
なお、ナブレスと近郊情報はリールからテレパスで既に後ろ二人の黒長耳巫女に伝えられている。
「こちらが砦の航空写真になります。
ナブレスの町および近隣の地図はこちらになります。
バートン大公領の資料はここに」
「助かる。
表敬訪問なんてものをしないといけない身だとな。
要約しておいてくれ」
富岡大佐が辰馬から手渡された資料を後ろにいる黒長耳族の娘に手渡す。
もちろん、同じものは山高大佐と谷浦大尉にも渡す予定だ。
大淀艦長である富岡定俊大佐は、海大を首席卒業した切れ者で軍令部や海軍省の要職を順にこなしていたエリートである。
同時に対米強硬派の一人でもあり、対米戦が竜神様によって非戦となった結果、竜州に島流しという形でこんな所に来ていたりするのをメイヴからアンナとナタリー経由で辰馬は知っていた。
とはいえ、本人は腐っている訳でもなく、
「尉官時代の陽の当たらない配置に比べれば、一国一城の主。
何を腐る事があろうか」
と本人の言葉。
島流しだろうと、自分の仕事はちゃんと弁えている人らしい。
大航海時代前のこの世界において富岡大佐は一つ男爵位を持つ華族という武器を有しており、これがある種の交易船の側面を持つ異世界交易においてかなり重宝しているとか。
事実、バートン大公への表敬訪問のあとの晩餐会において、バートン大公の紹介でロムルス国家連合の元老院議員と会う段取りだとか。
本土は外務省が太平洋宣言から竜会議という外交環境の大激変で竜州にまで手が回らず、引きこもり政策をするならば付き合いは最低限でいいよねとまるで維新前の幕府のような、やっている事はペリーの黒船そのままの政策をとっている帝国にとって、島流しどころか適材適所になっているあたりいろいろとダメな感じ漂うがこの際置いておく。
136
:
竜神様の中の人
:2013/02/16(土) 23:27:47 ID:xVyd9URs0
「では、こちらは測量を始めます。
神堂大尉。測量班はナブレスの屋敷に滞在させてもらって問題ありませんか?」
「大丈夫です。山高大佐」
測量艦筑紫特務艦長である山高松次郎大佐は、ずっと現場一本の海の男である。
しかも軍艦だけでなく今回の筑紫みたいな軍艦以外の船の経歴も長く、前職は給炭艦(病院設備つき)室戸だったりするので仕事がはやい。
後で聞いた話だが、今回の航海において治癒魔法が使えるからと軽視していた黒長耳族を叱りつけて、大淀に医者と看護婦を載せたのは山高大佐の功績だとか。
で、大淀艦長である富岡大佐との関係が悪くなっていないあたりで山高大佐の才能はわかろうというもの。
「谷浦大尉。
竜州軍製90式四脚歩行砲試作二型の具体的な実験は?」
陸戦隊を率いる谷浦英男大尉は、辰馬の言葉に顔を横に背けた。
あ、なんか地雷を踏んだ。
なお、この実験そのものが実は陸軍考案の兵器に黒長耳族を抱える海軍が食いついたというもので、これの代償というかたちで森のピクニックはこうやって助けの手を差し伸べられたとかなんとか。
「考案者の前田繁治整備兵と操縦者のベルカが大淀に乗って最終調整をしているのですが‥‥‥」
「ですが・・・・・・?」
「酔うそうです。派手に。
それに、戦車と比べたら遅い」
当たり前である。
四足で歩くということは、安定性が増すが同時に移動時の縦横の揺れが激しくなる事を意味する。
もちろん、魔法でなんとかなるにはなるのだが、当たり前のように制御を魔法で行っている90式四脚歩行砲試作二型においてそれに魔法を振り分けたら他の所が足りなくなる事もある訳で。
ならば、何で持ってきたかというと、バートン大公領にはったりかますのにちょうどいいものであったという裏事情が。が。
「地図と航空写真を見る限りでは、運用に適しているとは言い難いが、使わないといけないのだろう?」
「ご推察の通りで。
とりあえずあれならば、オークの棍棒で殴られても凹むだけで済みますから。
陸戦隊はナブレスの邸宅に?」
「そこに合同司令部を置きたいがよろしいか?」
「結構です」
かくして、陸海軍双方がナブレスに揃った翌日、物資輸送に携わっていた九七式飛行艇が砦から攻撃を受けて消息を断つという報告が飛び込むまでつかの間の休息を楽しむ事になる。
帝国の竜神様 バイオハザードなネタ話 10
137
:
竜神様の中の人
:2013/02/16(土) 23:29:20 ID:xVyd9URs0
投稿終了。
ネタを拾っている身からすると、ネタの枯渇は本気で困るので萎縮せずみんなで仲良くお願いします。
では。
138
:
名無し三等陸士@F世界
:2013/02/17(日) 18:31:53 ID:b7ZCIkKE0
投下乙。
軽巡大井。一瞬重雷装艦も左遷かと思いました。
ロボットで乗り物酔いというとえっちなコスの某エロゲよりもパトレイバーを思い出したのはおっさんの証か?
139
:
名無し三等陸士@F世界
:2013/02/19(火) 05:28:00 ID:M0EL4QAI0
ディードのデザイナーなのでエルフ繋がりでは?
140
:
名無し三等陸士@F世界
:2013/02/21(木) 13:21:48 ID:f8cLGwg.0
投下乙です。
平地での運用を考えて足先に駆動輪とか付けたりしてたら、
いずれタ○コマの原型が生まれるかもですね。
141
:
名無し三等陸士@F世界
:2013/03/18(月) 01:00:53 ID:q9TBglB.0
殆ど胴体部を動かさずに歩行可能な2足歩行のが乗り心地よさそうだな。
142
:
竜神様の中の人
:2013/03/28(木) 00:32:34 ID:xVyd9URs0
ある時、メイドのリールと英独メイドが派手に揉めた。
「だから、何でも一人で片付けようとしないでください!」
「仮にも上の人間はちゃんと下に仕事を振るのも仕事なんです!」
「じゃあ何をしろと言うんですか!
愛国丸一隻の掃除ぐらい、一人でできなくてどうするんですか!」
不老も視野に入り長寿前提ゆえの固体万能主義を貫いているこの世界、すべて一人でできてはじめて一人前と言われる訳で。
そのアイデンティティの危機に、尻尾をぴんと立てて抗議するリールに英独メイドはため息をつくばかり。
「リール様一人で、万の兵を相手にできますか?」
「できるとも!」
たとえが悪かったと頭を抱える独逸メイドに対し、英国メイドは面積で攻めた。
「リールさま一人で国を消す事ができますか?
文明を滅ぼすことができますか?
人には限界というものがあるのです。
だから人を使ってその限界を・・・・・・」
「ぐぬぬ」と聞いていたリールの後ろから馬鹿竜が飛び出した。
「わらわならできるぞ!
万の人を殺し、国を消し、文明を滅ぼして見せるぞ!!!
どうじゃ!
わらわはすごいじゃろう!!!」
「はいはい。
博之様が勉学中なので暇なのはわかりましたから・・・・・・」
「ま、待つのじゃ!
わらわの出番これだけか!?」
ドヤ顔を決める馬鹿竜をなれた手つきで引っ張ってゆくその眷族。
ぱたんとドアが閉まった後に、英独メイドが声を合わせて一言。
「「ああなりたいですか?」」
「・・・・・・考えさせてください」
帝国の竜神様 小ネタ
多分これがあって、この犬耳メイドはバイオな話に繋がるのかなと。
思いついたので投下。
143
:
名無し三等陸士@F世界
:2013/03/28(木) 16:51:48 ID:YJw4hvmI0
・・・夜叉の眼ってこんな感じなんかな・・・(男キャラですが)
ttp://blog.livedoor.jp/ikesanfromfr/archives/7759838.html#more
144
:
F世界逝き
:F世界逝き
F世界逝き
145
:
taka
:2013/04/05(金) 14:58:17 ID:oSBGX77E0
馬鹿龍俺だー、この花粉をどうにかしてくれー。
人の限界以前の俺の鼻腔の限界が来ているー。
久しぶりに投下。黒ウサギの過去と厨二病発症。
146
:
陸士長
:2013/04/05(金) 14:59:34 ID:oSBGX77E0
少女にとって始まりは唐突だった。
大恐慌の煽りで家族が離散し、孤児院へと放り込まれた。
自閉症で人との繋がりが作れず、やせ細った体は小さいままだった。
祖国で極右が台頭し、再び欧州をかき回す存在へと変貌を続ける間も同じだった。
隣国を次々と吸収し、忌まわしい東方の国を一ヶ月足らずで落とし、英仏を西欧から駆逐してもそうだった。
十代後半になった彼女が、文字通り『変貌』したのはあの日だった。
極東で龍が出現し暴れても、少女の居る田舎町にとっては関係の無いことでしかなかった。
彼女、以外にとってはだったが。
孤児院のシスター、そして神父は子供たちの泣き声に慌てふためいた。
子供たちが逃げ出した部屋を覗き、同じように悲鳴を上げた。
少女の髪は銀色に変貌していた。
少女の肌は不自然なほどに白く透き通っていた。
見開かれた目は右目は赤色で左目は金色。
彼女は唖然としたまま、『自分に降りかかる筈だった食器棚が横倒しに吹き飛んでいる』のを見つめ続けていた。
少女は反省室へと閉じ込められた。
少女へ行われていた陰湿ないじめについても棚上げにされた。
それが、食器棚をぶつけようとするなどといった悪質なものであっても。
子供たちはおびえきり、彼女を執拗に苛めていたグループにいたってはまだ泣き続けていた。
神父たちも少女を閉じ込める以上のことはできず困り果てていた。
青白い光と共に、かなりの重さの食器棚が少女と接触する直前に弾かれ横倒しに吹き飛んだ。
そんな芸当が出来る少女を子供を閉じ込める程度の頑強さしかない部屋で閉じ込めたところでどれ程の意味があるのだろうか。
神父たちの苦悩は、数日後にやってきた親衛隊の将校たちによって解決された。
『悪魔憑き』の少女の姿は、孤児院から消えたのだった。
少女は笑顔を浮かべていた。
ニーベルングの指環の間奏を鼻歌で楽しみながら愛機で宙を切り裂いて飛んでいく。
「君はまるでブリュンヒルデのようだな」
「ブリュンヒルデ?」
「ああ、ワルキューレの一人だ。死んだ戦士たちの魂をヴァルハラへと送る。空を駆け敵を落としその魂を刈り取る。まさに女神じゃないか」
親衛隊将校の戯れの言葉が、何故かハーゼⅠと呼ばれる少女の気持ちを高揚させる。
敵機の、アブロ・ランカスター爆撃機の背後へ悠々と着く。
必死に放たれる機銃弾の嵐は遠い。見る間に迫る敵機に濃厚な四連の20mm機関砲弾を浴びせて離脱する。
間奏が切れた。再び歌いなおす。
燃料の警告灯が着いたのでそのまま高度を下げて離脱する。今日は3機落とした。まずまずだ。
ドーンという音と共に、ハーゼⅠの遥か後ろで機体から黒煙を大量に噴出した爆撃機が錐揉み状態で墜落していく。
後10機落としたらご褒美に『ニーベルングの指環』の演奏会に連れて行って貰える。
レコードで暇さえあれば聴いているが、実際の演奏も是非観てみたと思っていた。
「でも、その前に……」
滑空するように飛んでいた機体を素早く横に流す。
大量の7.7mm弾と20mm機関砲弾が横を通り抜けていく。
高度を下げて戦場から離脱し始めてから、首の後ろに嫌な違和感を与えていた存在が通り過ぎた。
双発の大型戦闘機。最近になって偵察や強襲爆撃に運用され始めたモスキート。
どうやら損害に耐えかねて、刺客を送り込んできたようだ。
「お前を刈らないと」
一気に加速する。
相手が驚愕したような気配を感じる。
戦闘機は楽だ。チョロチョロ逃げ回るけど、後ろ向きに銃弾が飛んでこないから。
相手が回避行動を取ろうとする。フォッケか普通のメッサーなら何とかなったかもしれないが…遅い。
モスキートの主翼が吹き飛び、勝負はついた。
血塗れの風防が開かないまま、機体は地上から数百メートルまで落ちて爆散した。
少女は勝利と陶酔に満ちた笑みを、その色素の薄い唇でゆがめてみせた。
彼女はもはや孤独な少女でも、悪魔憑きの少女でもない。
「恐れることを知らないしか、私を倒せない。なぜなら、私はブリュンヒルデなのだから」
何者にも討てぬ空駆ける女神の嘲笑が、欧州の空に響き渡った。
147
:
陸士長
:2013/04/05(金) 15:00:28 ID:oSBGX77E0
投下完了。別の場所の名前で打っちゃった(・ω<) テヘペロ
148
:
名無し三等陸士@F世界
:2013/04/12(金) 22:30:56 ID:kFOVoUwU0
物語は唐突に氏、そろそろ・・・
149
:
パトラッシュ(旧41です)
:2013/04/21(日) 21:14:16 ID:t.N5V0vk0
「帝国の龍神様」サイドストーリー2(政治編)
大日本帝国の中枢たる帝都の霞が関一帯は、うなりをあげて全力で回転していた。つい数箇月前までは陸海軍省のみ元気よく他の官庁はついていくだけの状態であったが、いまや神祇院を抱える内務省を筆頭に異世界貿易で得た金貨が積み上がる大蔵省、ダークエルフたちを使った国土再開発計画を推進する商工省、戦争が回避されたことで出番再びと張り切る外務省などが若手官僚を先頭に活況を呈している。米内光政元首相につながる懐疑派もいるにはいたが完全な少数派で、大多数は「やりたいことをやれるうちにやってしまえ」とイケイケドンドンで走りながら政策を考え、実行している有様だった。
特に東京竜会議の開催に加えて英米首脳の来日という歴史始まって以来の事態が確定した外務省は、後に「陸軍省より戦争状態だ」と回想されるほどの多忙さにあった。ほとんどの官員が連日泊り込みで各国との連絡や大使館との協議、代表団の宿泊地設定まで途切れることのない仕事に取り組み、過労で倒れる者も続出していた。それでも外務官僚は、事務局長役を担う吉田茂竜担当大使の「いまや戦争から外交の時代だ」という激励を受けて頑張っていた――もっとも同じ時期、在外公館は竜州行きを求める現地人男性の勢いが一向に衰えず、仕事もできない状況が続いていた。インドとブラジルでは日本の外交官が拉致され、犯人側から「竜州行きを認めるなら解放する」という脅迫状が届く事件が発生し、現地警察が大慌てしていたが。
ある夜、ようやく仕事に一段落ついて葉巻を吸っていた吉田は、首相官邸に行っている重光葵外相から至急の呼び出しを受けて駆けつけた。
「吉田さん、中国の汪兆銘政権および蒋介石の国民政府、それにイタリアからも東京竜会議に正式参加したいとの要請がありました。また、オーストラリアとニュージーランドも、マリアナに引き続いて今回も出席する権利があると言ってきたのだが、撫子様はどう思われるか意見を聞かせてください」
官邸執務室で小磯国昭首相と重光に問われて、吉田は腕を組んだ。政治レベルの問題を実務担当者の自分に聞くとは異例だが、何しろ相手は竜である。現在、海軍を除けば日本政府内で最も竜と親しいとされている自分から判断材料が欲しいわけか。
「マリアナの会合に英米のほかオーストラリアとニュージーランドが参加を求めた際も、撫子様は拒みませんでした。今回、人間側の参加国が増えても同じでしょう。最終的に竜側が決めたことに人間が異議を唱えようとも無駄ですから」
「しかし、それでは帝国の国益も脅かされるのではないかね?」
小磯が大きな目玉をぐるぐるさせながら尋ねる。ずっと朝鮮総督を務めて外地にあり、首相就任まで撫子や竜州について詳細を知らなかったので、まだピンとこないようだ。
「撫子様は海軍の真田博之少佐と事実上の夫婦関係にありますので、その点は心配ありません。また、帝国は撫子様の要請により、その眷属多数を竜州で奴隷状態から解放しており、彼女らは揃って帝国に忠誠を誓っています。従って各国の参加問題については、帝国の外交面で判断して問題はないかと。私見を申し上げるのならオーストラリアとニュージーランドはマリアナの前例もあるので正式参加を認める一方、イタリアと汪兆銘政権はオブザーバー扱いとし、国民政府の参加は認めないというあたりですか」
150
:
パトラッシュ(旧41です)
:2013/04/21(日) 21:16:27 ID:t.N5V0vk0
困惑したような視線を交わす小磯と重光に、吉田は新たな厄介ごとが起こったのを察した。やがて外交官としては吉田の後輩に当たる重光は、言いにくそうに言葉を探した。
「吉田さん、私もその意見に賛成なのだが、簡単にいかない事情が出てきたのです。実は汪兆銘だけでなく蒋介石までもが、来日してもかまわないと言ってきまして」
「それはまた……確かに蒋訪日が実現すれば、今後の中国情勢は日本の意向が大きく反映できてしまう。あっさり断るには惜しい話です。いきなり切り札を出してくるとは、国民政府も相当追い詰められていますね」
「撫子様が日本の味方をして三峡を塞ぐほどの力を示したため、新たな中国の竜を目指す蒋介石にすれば立場がありませんから。しかもベルリンからの情報によれば、ムッソリーニがヒトラーに泣きついてイタリアが正式参加できるよう外交工作しているとのことで、三国同盟絡みもあって断るのは難しい。どう線引きしても、不満が残るのは確実ですよ」
「なるほど、シチリアの竜を抱えるイタリアとしては、ここは何としても他国に先駆けて誼を結びたいところでしょう。というか、ドイツがフランスに続きイタリア参加も容認するのは、自国の影響下にある国が竜と友好関係を結べればとの思惑があるようです。そうなれば、自分たちにも竜州への道が開かれるのではと期待して」
「吉田さん、それはつまり……?」
「英米独仏も、また中国やその他の国々も、最も恐れているのは撫子様以外の地球にやってきた竜すべてが日本に味方する事態です。そうなればどの国も日本に膝を屈せざるを得なくなるし、今後も日本が竜州を独占する形で開発を進めればあらゆる利権から締め出される。しかし、満州と違って竜州への道は最初から日本が独占している。各国としては何とか竜に接触し、自分たちの味方となるか少なくとも中立を保つよう説得できないか、また竜州開拓に自国も参加するために撫子様以外の竜を使えないかと考えている。戦時中にもかかわらず最高首脳が訪日する理由は、まさにそれなのです」
総理執務室は、痛いほどの沈黙に包まれた。存在それ自体が強大な兵器である竜は、これまでの軍事バランスを完全に崩したのみならず、広大な未開拓のフロンティアである竜州の存在は各国の領土占領欲を強烈に刺激した。もし欧州大戦が始まっていなかったら、全世界が日本に向けて戦争を仕掛けてくる事態もあり得たのだ。
(そうなっても撫子様や「歌妃」アニスの力で日本が勝つだろうが、数千万単位の死者が出ていたかもしれない。いくら戦争でも、そんな事態は避けたいしな)
151
:
パトラッシュ(旧41です)
:2013/04/21(日) 21:17:12 ID:t.N5V0vk0
考え込んでいた重光は、やがて小磯を振り返った。
「総理、吉田大使の予測が正しいなら、各国は総力をあげて竜と接触し竜州での利権を得ようとするでしょう。英米独仏だけでも利害調整がややこしいのに、中小国まで面倒は見切れません。ここは会議を紛糾させないためにも、参加国を絞るべきだと思います」
「同感だな。各国に厳しい条件をつけて、参加を断念するよう仕向ければ……」
「そうですね。国民政府には汪兆銘政権と満州国の承認を、オーストラリアには白豪主義政策の撤回を要求すればいい。豪州が不参加ならニュージーランドも取りやめます。イタリアとフランスは参加を認めても傍聴者的な扱いにとどめておき、また、英米独仏の代表団にも厳重な行動制限をつけて――」
「お待ちください」吉田は重光を遮った。「それは非常にまずいと思います。公然たる内政干渉で日本だけが各国の恨みを買うことになり、今後の外交に影響が出るでしょう。会議が多少もめても、要は竜が日本側の希望を最大限に取り入れた決定を下せばよいのです。そうすれば最初に申し上げた通り、どの国も異議を唱えられませんから」
「つまり吉田さんは、参加希望国すべてを受け入れるべきだと?」
「その代わり日本も、満州国代表を参加させればいい。そうなれば英米首脳と蒋介石は竜と接触する機会を得るためにも、日本の傀儡政権と非難してきた満州国と同じ会議のテーブルにつかざるを得なくなる。これは事実上、三国による満州国承認となり、リットン調査団報告は無効化されてしまいます」
小磯と重光も、ようやく吉田の言いたいことを理解した。リットン報告をきっかけに国際連盟を脱退した日本が、再び国際世界に復帰する最高の舞台として東京竜会議を使えと。
「英米が進んで満州国を事実上承認するとなれば、ハルノートも撤回されたに等しくなる。日米戦争の前提条件が消滅するというわけになります」
「な、なるほど……」
「総理は先の施政方針演説で、竜州の開発を国策とする旨を世界に宣言されました。そのためにも、本土が戦争状態にならないことが保証されるのは結構ではありませんか」
ようやく小磯の表情に明るさが戻った。
「今回、日本は竜会議と並行して、列強を含む世界十カ国との首脳会議を主催することになります。過去の外国首脳の訪日はハワイ女王と満州国皇帝だけで、これほどの数の首脳が東京に集結した例はありません。彼らが陛下を表敬すれば皇室の国際的立場もいや増しに高まり、歴史に残る外交成果と申せましょう。現内閣に反感を抱く者も、この点に反対できません」
重光の進言に、小磯は強く頷いた。両者とも皇室崇敬の念は誰にも負けないとの自負があり、自分たちがそれに立ち会えると思うだけで心が躍る。しかし、吉田としては一言釘を刺しておかねばならなかった。
「もっとも総理や外相には、大変な苦労が待っていますが」
「わかっています。外交の大舞台を取り仕切るのは簡単な仕事ではありませんから」
キャリア外交官出身の重光は歴史に残る国際会議の主催者となるのは望むところとあって、苦笑しながらも目を輝かせていた。一方、外交経験皆無の小磯は日本代表として海千山千の各国首脳と渡り合わねばならない立場を想像し、憂鬱そうだった。
152
:
パトラッシュ(旧41です)
:2013/04/21(日) 21:18:05 ID:t.N5V0vk0
「無論、英米独仏以外の各国にはすぐに参加を認める必要はありません。散々じらして、相手の忍耐の限界を超えない程度まで日本に有利な条件を引き出してからにすべきです。そのあたりの交渉は外相にお任せすればよいかと。私は撫子様側と協議して、日本側の考えを認めてもらいます。その線でいかがでしょうか、総理」
「わかった……あと吉田君、撫子様以外の竜を味方につけ、竜州への新たな道を開くのが各国の狙いだと言っておったが、阻止する方法はあるのかね?」
「ご懸念はもっともですが、撫子様とマリアナのセドナ殿以外の竜がどんな要求を出してくるか見当もつかないので、日本が他国に先んじて残る竜と接触できるよう撫子様に頼もうと思っています。特にアメリカに敵対しているハワイの竜は相当きつい性格のようで、本気で怒らせたら単独でアジア大陸ほどの面積を単独で焼き尽くすほどの力を持つとか」
「アジアを焼き尽くす力だと――」
小磯が蒼白になってあえぎ、重光も唇を震わせた。グルー米大使らと同様の反応だが、意味するところは逆だ。米英の大使は本国や植民地が焼かれてしまう可能性に恐怖しての震えであったが、首相らは今さらながら撫子が自分たちの味方であることのありがたさを思い知らされたようであった。
「しかし今回、すでにハワイの竜と軍事衝突している米国の大統領が竜会議で同席するのだろう。ルーズベルト大統領は祖国を焼く覚悟で竜と対決するかな?」
「この会議で最も苦しい決断を迫られるのはルーズベルトでしょう。ハワイの竜の機嫌をとるような真似をすれば全国民の激烈な非難を浴びるが、逆なら国家が消滅しかねない。最悪の場合、その決断から逃れるため非常手段を取る可能性もなしとは申せません」
「非常手段とは……」
「帝都に集まった竜を皆殺しにするのです。どんな卑怯なやり方を使ってでも」
「何だと? だ、だが最高度の警戒態勢を敷く予定の帝都で、そんな真似ができるのか。下手をすれば自らの命も失いかねないのに」
「いえ、間違いなくルーズベルトは万が一に備えた準備をしています。彼は露骨ではないが、明らかな人種差別主義者です。神に認められて世界を支配している白人種が、竜などというキリスト教からすれば異端そのものの存在を背景にした黄色人種の日本に敗北するなど、許せるわけがありません。不愉快極まりないですが、それが普通の白人の思考というものです。あるいはルーズベルトが国家のために竜との和解を決断しても、それに反発する米国人が同じ行動に走るかもしれません。自国の大統領もろとも竜を皆殺しにしろと」
「まさか、そこまでやるか……」
「総理、申し上げにくいのですが満州国建国の際、当時の内閣が不拡大方針を決めたのに関東軍が暴走して既成事実を作り上げたではありませんか。米政府や軍内部にいる竜への反対勢力が、関東軍と同じ思考をしたらどうします? 東京でルーズベルトもろとも竜を皆殺しにし、責任をすべて日本政府に押し付けて一気に攻撃をかけてわが国を占領し、ついでに竜州をも奪えればなどと安易に考える輩が米軍にいないと、誰が断言できましょう。帝都と政府が壊滅した日本は反抗できず、蹂躙されるがままになってしまいます」
最悪の予想を提示されて、小磯もたじろいだ。一兵卒から陸軍大将にまで上りつめた軍人として戦場に立つことは厭わなくとも、テロに等しい攻撃を仕掛けられたら反撃の手段が思いつかない。
「そう、だな。今回の竜会議と列国首脳会議を無事に成功させることに、文字通り帝国の生死がかかっている。内外のいかなる反対派の暴走を押さえ込まなければ、皇室に累を及ぼしかねない……吉田君、直ちに陸海相と内相を加えた五相会議を開き、帝都の安全保障について協議する。君も参加して、先ほどの件について説明するように」
今夜は徹夜だな……と内心ぼやきながら吉田は頷いた。三人中で最年長の彼もまた、大きな活躍の場を与えられて血をたぎらせる外交官のひとりであった。
吉田の推理は正しかった。世界には東京竜会議開催に反感を抱き、公然とではないが妨害や中止に追い込むべく策動する勢力がいくつも存在しており、すでに吉田はメイヴや東条英機内相、石原莞爾竜州軍参謀長とひそかに協議を重ね、帝都圏治安警察機構の創設や「歌妃」アニスによる絶対防空体制の構築などを進めていたのだ。ただ、神ならぬ身に思いもかけぬところで動きはじめた陰謀を見通す力まではなく、やがて「東京の暗黒決戦」と国際外交の裏面史で語られる大事件に発展しようとは想像もできなかった。
153
:
名無し三等陸士@F世界
:2013/04/24(水) 11:43:11 ID:KsurmZCg0
これはまた、実にありそうな展開が。
政治家も役人も軍警察関係者もみながみな倒れてしまいそうですね(汗
154
:
竜神様の中の人
:2013/05/18(土) 08:42:00 ID:xVyd9URs0
バイオの方投稿。
泥沼式に増援を送り込むの図。
155
:
竜神様の中の人
:2013/05/18(土) 08:43:25 ID:xVyd9URs0
「九七式飛行艇が落ちたって?」
「はい。
ナブレスに駐留している部隊より緊急伝です。
どうも、事故ではなく撃墜された可能性があり、海軍の方も確認しています」
来るべきものが来たといやでも思うと同時に、まさかの思いもあった。
とはいえ、この異世界の魔法技術が飛行機を落とせるのはこちらに来た勇者が実証して見せたではないか。
竜州軍石原参謀長はしばらく目をつぶって意を決すると、副官である瀬島少佐に声をかけた。
「上海でたしか似た様な事やっていただろ。
あれで増援を送ろう。
瀬島。お前が指揮をとれ。
部隊の選定は任せる」
「了解しました。
臨時編成の独立大隊の指揮をとります」
この時瀬島少佐が用意したのは、竜州軍で数少ない信頼ができる挺進連隊だった。
空飛ぶメイドと高級娼婦に降下中に全滅させられたが、それが兵のしての能力が劣っている証拠ではない。
そして、掃き溜めである竜州軍において彼らは信頼できる連度と士気を持っていた。
更に、撫子三角州に襲ってきた蟲の教訓から、八九式戦車中隊を借りて独立大隊を編成する。
そこまでの仕事をし終え石原に報告すると、石原は指で外を指して言った。
「ちょっと海軍さんの所に顔を出してくる。
お前もついてこい」
海軍の方も撃墜報告にてんやわんやになっていた。
何しろ、状況は竜州から千数百キロの果てとはいえ、この程度の距離でうろたえる海軍では本来は無い。
蟲相手に無双していた驕りがこの醜態と言っていいだろう。
もっとも、上になればなるほど落ち着いているので、いずれば収まると石原は思いつつ竜州艦隊司令長官の大川内中将の執務室のドアを叩いた。
「邪魔をする。
九七式大艇が落ちた事は聞いている。
で、こっちは増援を送る事にしたんだが、そっちはどうするのか?」
「現状、陸戦隊が展開しているがこれ以上の増援を送ると、向こうで飢えるという話は言っていると思うが?」
上海の日本租界の警備にあたる上海海軍特別陸戦隊の司令官として第二次上海事変を経験していただけあって、彼もまた腹はすわっている男だった。
現状の増援の問題点を指摘した大川内に対して石原はにやりと笑う。
「承知の上だ。
こいつを使う」
156
:
竜神様の中の人
:2013/05/18(土) 08:44:45 ID:xVyd9URs0
瀬島少佐が用意していた資料と写真を差し出す。
それを大川内が確認するのを見て石原は言葉を重ねる。
「秘蔵で向こうでの貨物輸送にも使えないんで、こっちに送ってもらうつもりだった。
海岸線近くの拠点作りに使うつもりだったが、こういう時に役に立つ。
本土から呼んで、竜州で編成した独立大隊を積んで向こうに着くのはおよそ一週間後。
後は、一週間の間持ちこたえる事ができるかという所か。
九七式大艇の輸送は継続できるのか?」
「一週間?
ここからイッソスまで四日かかるはず。
それを考えたらナブレスに着くのは下手したら十日はかかるはず」
戦場はここからはるか離れた地である。
増援を送るのはいいが着いた時には全て手遅れなんて事態はさけないといけない。
「撫子様のお力をお借りする。
転移呪文で送ってもらうのだ」
その手があったかと大川内が手を叩こうとしてその手を止める。
万能転移呪文にも制限がある事を思い出しだのだ。
「たしか、転移呪文は術者がその場所を知っている事が条件のはず」
「だから、撫子様が行った事があるイッソスに飛ばす。
イッソスからナブレスまで早ければ三日だ。」
ちゃんと対処手があったかと大川内が思いつつ石原の質問に答えた。
「九七式が落とされた以上、安全の確保が再開の条件になります」
常時飛ばせるだけの数がある訳でもない。
即応で現地部隊に補給や増援が遅れる九七式はか細い命綱であるだけに、慎重を期さないといけないと考えての発言である。
それを理解した石原は安全の確保について即座に手を打った。
「そいつは落ちた九七式の探索と同時に向こうの部隊に任せよう。
大淀にはどれぐらい武器や弾薬、食料の余裕がある?」
「半月程度は。
一週間で着くのでしたら、十分そちらの船が間に合うまで持つと推測します」
石原は満足そうに頷く。
「戦争は数だ。
で、向こうで飛行機が落とされたという事は、こっちに敵対的な輩がいるという事だ。
向こうからの報告だと、敵勢力の見積もりは中隊規模。
こっちは小隊規模で、海軍は大淀に中隊規模の陸戦隊を乗せている。
城攻め三倍じゃないが、何かあったときの為に大隊規模の増援を送りたい」
「こちらからすればありがたいのですが、東京には何と?」
「何、100人規模の黒長耳族と獣耳族の救出作戦だ。
大蔵の試算だと、こちらが全滅してもおつりが来るという保障つき。
止めやしないよ」
(そうやって満州事変起こしたんだろうなぁ)
という大川内のつっこみに気づいていながら気づかないふりをする。
それに気づいても気づかないふりをした石原にあわせてその話題をスルーした大川内も話の続きを優先した。
「決まりだ。
こいつ、神州丸で大隊をナブレスに送り込むぞ」
竜神様バイオハザード11
157
:
竜神様の中の人
:2013/05/18(土) 09:04:42 ID:xVyd9URs0
投下終了。
ゾンビに襲われるねたをテーマにしたのに、近代軍強すぎがこの醜態。
やっぱり、クローズド・サークルにしないと駄目だね。
という訳でレス返し。
>>軽巡大井
大淀の間違いorz
ちなみに、とある赤城さんが慢心してドックから出てこなかったりするゲームをゃっているのですが、出てこないのです。こいつorz。
無課金だとリアル日本海軍オンラインが楽しめてお勧め。
なお課金だと米帝プレイ。
>>タ○コマの原型
スタート時から完成している訳ではなくて、試行錯誤や戦訓なんて取り入れられたらと。
今回の神州丸もいろいろ戦訓を得て次の船に生かすのでしょう。陸軍が。あれ?
>>陸士長さま
投下乙なのです。
次の本編投稿は状況整理の為にクレタ戦のまとめと今後の地中海情勢の予測をする予定。
とりあえず、決まっている事は、
枢軸 クレタ奪還もしくは砲撃
連合 北アフリカからの枢軸勢力駆逐。起点はエジプトから
>>パトラッシュ(旧41)さん
投下乙です。
そうか。このタイミングで国民党が満州国を承認すればいいのか。
ちなみに、今の国民党南京や上海が守りきれないと危惧するぐらいやばいです。
共産党への寝返りによって。
これが結構史実路線だからあの国は・・・・・・
では。
158
:
F世界逝き
:F世界逝き
F世界逝き
159
:
F世界逝き
:F世界逝き
F世界逝き
160
:
名無し三等陸士@F世界
:2013/05/20(月) 18:28:06 ID:cbJwYWIE0
基本的に日本が不利な世界観ですが、果たして救援は間に合うのでしょうか。
と色々考えさせられながら続きを待ちます。
161
:
F世界逝き
:F世界逝き
F世界逝き
162
:
パトラッシュ
:2013/06/08(土) 21:09:45 ID:WsRTftk.0
「東京の暗黒決戦」の震源となる策謀のひとつは東京で吉田らの密談が行われる少し前、中華民国臨時首都が置かれた四川省重慶市郊外の古ぼけた民家から始まっていた。みすぼらしい外見にはおよそ不釣合いに巨大な太極旗が掲揚され、白木の板に『大韓民国臨時政府』と大書された看板が館の主を示している。この日、国民政府陸軍旗の小旗をつけた米国製高級車が滑り込んできたことが舞台の開幕となったのだ。
「帝国の龍神様」サイドストーリー3(陰謀編:某作品とのクロスオーバー)
「そ、それは本当なのか? 彼がチョッパリ(日本人の蔑称)の味方に転向したなど……」
「間違いありません、主席。京城に送り込んだ間諜からの情報です」
重慶市郊外にある古い中国家屋。壁に大きな太極旗が飾られた一室で「閣議」を開いていた大韓民国臨時政府主席の金九は、趙素昴外務部長の報告に絶句した。同席の「閣僚」たちも、信じがたいニュースに声もなく顔を見合わせる――『反日運動の闘士として有名な任侠団体「鐘路派」の若き頭目である金斗漢が、天皇への忠誠と日本の朝鮮総督府への無条件協力を公に表明した』と。
「しかし、金斗漢の光復(独立)にかける熱情は本物だった。日本軍の武器庫を爆破したり、日本の暴力団と抗争して叩き潰すなどの活躍は、知らぬ者はいないぞ」
「ソウルの総督府で記者会見した金斗漢は『独立運動に協力してきた自分は間違っていた。天皇陛下の慈愛溢れる統治こそ朝鮮に必要なのだ』と述べて、親日派の中央日報の記者すら唖然とさせたそうです。表向きの理由はそれで通しておりますが……」
「拷問か買収でやられたのか? そんなもので売国奴になり下がるとは思えないが」
「申し上げにくいのですが、京城の裏社会では金斗漢は竜州行きを約束されて光復の志を捨てたとの噂がもっぱらだと――」
金九の顎が、がくりと落ちた。他の臨時政府閣僚も呆然としている。
「つ、つまり金斗漢は、あの竜の支配する異世界とやらで女を好き放題にできることを、光復の志より優先したのだと? そんな馬鹿な!」
「残念ですが主席、竜州には性奴隷になりたがる美女がたくさんいるという例の噂が世界を駆け巡って以来、総督府の警察はそれを利用して独立運動家に対し、日帝に従えば竜州に行かせてやるとささやいているのです。その悪魔の誘いに金斗漢だけでなく多くの同胞が飛びついてしまい、朝鮮全土で独立の気運が急速にしぼんでいます……それだけでなく、竜州行きを目指して日本軍に志願する同胞が激増しているのも事実です。ただでさえ少なくなっていたわが臨時政府への献金も急減しておりますし。状況は満州や日本の在留同胞でも同じとのことです」
「おのれチョッパリめ、卑怯な真似をして、わが民族を貶めおって!」
吐き捨てる金九に、閣僚たちも口々に日本を非難する。しかし、話はこれで終わりではなかった。
163
:
パトラッシュ
:2013/06/08(土) 21:11:03 ID:WsRTftk.0
「それに在米の李承晩元主席から、米国外交筋を通じて連絡がありました」
「李承晩が? 今さら何用だと言うのかね」
金九の表情が一気に険しくなる。かつて臨時政府主席だった李承晩は、路線を巡り臨時政府内部での政治闘争に敗れてからアメリカへ移り、政界へのロビー活動に専念している。一貫して反李承晩派に属してきた金九にすれば、日本人の次に許しがたい政敵であった。
「実は在米同胞にも日本が手を伸ばしているらしいのです。日本に味方すれば竜州へ行かせてやるぞと。李元主席の側近がひとり、誘いに転んで情報を流していたとか。まことに恥ずべき話だが、そちらでも裏切り者が出ぬよう気をつけてほしいとのことでした」
会議室の空気が一気に冷え込んだ。いくら政敵とその同調者でも、金斗漢に続き同じ民族の同胞が日本の策略に引っかかって独立運動を裏切るとは、情けなく悔しい話だ。しかも、転向した理由が拷問や買収ならともかく、好きなだけ女を抱ける世界に行きたいからだとは恥ずかしくて声も上げられない。
「日本を非難するために公表するわけにもいきませんな。韓国人はその程度の民族だと日本側に返されたら、恥の上塗りになるだけだ……」
「ええい、世界の中心であるはずのわが韓民族の誇りはどこに行ってしまったのだ! 光復よりも女を取るとは」
「ふん、そんなことを言って、実は自分も竜州とやらに行きたいのではないかね」
「何だと貴様、その侮辱は許せんぞ――」
「やめたまえ! われわれが喧嘩して分裂するなど、日本を喜ばせるだけだ!」
金九の一喝に、閣僚たちは沈黙した。いくら独立運動の闘士とはいえ、臨時政府の小さな組織内部にも激烈な党争(派閥争い)は存在する。かつての李氏朝鮮内部で当たり前のように繰り広げられていた党争は、韓民族の宿命的な業病ではないかと最近の金九は思えてならない。かつて豊臣秀吉の朝鮮侵略時、唯一日本に勝利した李舜臣将軍も党争に巻き込まれて地位を追われ、その間に朝鮮水軍は大敗して亡国の瀬戸際に追い込まれたのだ。
情けなさに押しつぶされそうな表情の金九に、内務部長が手をあげた。
「……それにしても主席、この先どうしましょうか。残念ながら今後も、竜州行きというエサにつられてチョッパリどもへ寝返る同胞が増えるのは確実です。わが臨時政府としては放置できぬ事態ですぞ」
「どうしろと言われても――女より光復こそ第一だと、内外同胞に訴えるしかあるまい。愛国の志こそ民族の栄光そのものであると理解させなくては」
「しかし、そのための活動資金はどうします? 現状、わが臨時政府は組織維持のための費用すら賄えていません。国民政府からの支援金は、二箇月も滞ったままではありませんか。何とか揃えた光復軍部隊のわずかな人員さえ、装備や訓練にもこと欠く有様です」
内務部長の発言は事実であった。大韓民国臨時政府の財政は当初、内外の朝鮮人同胞からの献金によって支えられていたが、組織が拡大するにつれていくらあっても足りなくなり、やがて満州などで日本企業や日本人を対象にした恐喝・強盗を起こして資金を得るようになっていった。このため関東軍や満州国警察による厳しい取り締まりに遭ったほか、日本政府の外交圧力もあって外国からの送金も困難になり、この当時は蒋介石率いる中華民国の中国国民党政権(国民政府)からの支援に頼りきりの状態であった。
しかも龍神の出現以降、国民政府が日本との関係改善に力を入れているため、支援も先細り気味となっている。この場の誰も口にしないが、臨時政府が重慶中心部の比較的立派なビルから住宅街に近い古家へ移転を余儀なくされたのも、ひとえに金がないせいだ。
貧乏所帯の臨時政府の面々は、戦争とは金でするものと骨身にしみていた。さらにジリ貧となれば、自分たちは自然消滅してしまう。それこそが日本の狙いだとすれば――。
全員が言葉もなく下を向く。静まり返った会議室の扉が叩かれ、秘書が顔を出した。
「国民政府軍の周遠峰中校(中佐)が来られました。至急、主席にお会いしたいと」
「周中校が? わかった、閣議は休憩とする」
164
:
パトラッシュ
:2013/06/08(土) 21:12:15 ID:WsRTftk.0
主席執務室に戻った金九は、周遠峰が同道してきた男に目を剥いた。いや、ペトロというクリスチャンネームを持つキリスト教徒としては見慣れた姿だが、国民政府の軍人とカトリック神父という組み合わせはあまりに奇妙すぎた。
「初めましてぇ金九主席ぃ、アレクサンド・アンデルセンと申しますぅ」
がっしりとした長身と刈り上げられた金髪。流暢な広東なまりの中国語を話す口許には優しげな笑みを浮かべているが、分厚い眼鏡の奥底で少しも笑っていない眼差しが鋭い光を放つ。野太い声に無精髭を生やした姿は、屈強な古参兵が間違って法衣を着ているようだ。差し出された手を握った金九は、神父の握力の強さに顔をしかめた。
「それで周中校、聖職者とご一緒の用向きとは何なのです?」
「主席、こちらのアンデルセン神父はバチカンの外交官で、カトリックの教宗(教皇の中国語表現)猊下よりの提案を携えてこられました。その提案を蒋介石総統はわが国民政府のみならず、大韓民国臨時政府にも極めて有益なものと判断されたので、主席にお話しするよう総統の命を受けてきました」
「バチカン、ですと――」
カトリックの総本山に対して、これまで臨時政府側から接触したことはないし、逆に関係者と話すらしていない。困惑する金九を、アンデルセンは正面から見据えた。
「ご存知のように間もなくぅ、地球に来た五匹のドォラゴンどもがぁ東京に集まってぇ会議を開きますぅ。ナデシコとかいう日本のドォラゴンが主導してぇ、ドォラゴンと人間との平和共存を模索するためとされていますがぁ――まぁだ公表されていませんがぁバチカンが得た情報によるとぉ、実はこの会議に英米両国首脳が参加するというのですぅ」
「な!……」金九は自分の顔が蒼ざめるのをはっきりと感じた。「英米の首脳というと、チャーチル首相とルーズベルト大統領が訪日すると言うのですか?」
「ええ。しかもぉ英国と戦争中のドイツとフランスもぉ、ヒトラー総統やペタン元帥が訪日できないためぇ、両国の駐日大使を副首相に任命して政府高官が参加する形をとろうとしておりますぅ。いわばドォラゴンたちの会議はぁ、同時に日米英独仏五カ国の首脳会議にもなるわけですぅ。これがぁどういう意味かぁ、閣下にはおわかぁりでしょうぅ」
アンデルセン神父のもたらした驚くべき情報を吟味した金九は、何とか気持ちを立て直した。間もなく対日戦争に突入すると踏んでいた英米両国の首脳が、敵国に等しい日本を訪れるとは。竜という巨大な存在と何とか折り合いをつけようとする大国の思惑がうかがえるが、弱小亡命政権幹部を長年務めてきた金九には即座に最悪の想像が頭に浮かんだ。
「……竜が来たことで日米戦争はあり得なくなり、スターリンが死んで大混乱の渦中にあるソ連は事実上世界の大国から脱落している。そこで新たな力である竜の参加する首脳会議で、世界の権益を再配分しようというわけか」
「おっしゃる通りです。そしてわが中華民国は、その場に招かれておりません」周中校が口を挟んだ。「ソ連はともかく、かの五カ国にとって中国など無視して構わないとしか思われていないのです。わが国さえそうならば、大韓民国臨時政府はどうなりますかな」
どうもこうもなかった。臨時政府の存在などハナにもひっかけられず、せいぜい日本のご機嫌をとるためにテロリスト集団扱いされるのが関の山だ。日米開戦と同時に対日宣戦布告を行い、米国に味方することで独立回復を図るという臨時政府の目論見が潰えるどころか、米英にまで弾圧される事態になっては救いようがない。
165
:
パトラッシュ
:2013/06/08(土) 21:13:24 ID:WsRTftk.0
失神したくなるのを気力でこらえながら、金九は必死に考えをめぐらした。
「そ、それで、この件にバチカンがどう関係してくるのでしょうか?」
「わぁがバチカンとしてはぁ、ドォラゴンの存在など認めるわけにはいきません。奴らは人を惑わす魔法や魔術を使うだけでなくぅ、シチリアのドォラゴンなどは眷属たる吸血女ドラキュリーナを情報収集のため全欧州にばらまいておりますぅ。おかげでぇ欧州各地ではぁ、恐慌に陥った無知な者どもが無実の女たちが大勢殺している有様ですぅ。このようなぁ主の教えを辱める真似をして恥じぬドォラゴンは、断じて許せません。そのため教宗猊下はぁ、ドォラゴンどもに対する十字軍の発動を決断されたのですぅ」
「じ、十字軍ですと……」
さすがの金九も、十字軍などという前時代的なセリフを平然と口にするアンデルセン神父の正気を疑った。しかし、隣の周遠峰はまじめな表情を崩さず、神父の言葉に頷いている。そういえば周は、蒋介石側近中でも特に熱心なクリスチャンであったが。
「今回の十字軍はぁ、カトリック単独ではありません。プロテスタントや正教のみならず、ユダヤ教からイスラームなどに対してもぉ協力を呼びかけておりますぅ。世界中の宗教が一致団結して、ドォラゴンどもを倒すため戦おうとぉ。十字軍と申しましたがぁ、正確には世界宗教連合軍の結成を目指しておるのですぅ」
「対ドラゴンの宗教連合軍……し、しかし、そのようなものが本当に実現するので? 私も一クリスチャンとして、カトリックとプロテスタントの抗争は幾度も目撃してきました。まして他の宗教が、対ドラゴンのためとはいえカトリックに協力するとはとても」
「難しいのは承知しておりますぅ。昔のように教宗猊下の命令一下、忠実な信徒が馳せ参じる時代ではありませんしぃ、日本の軍事力も侮れませんからぁ。だぁが各宗教はどこも異端者や敵国から教団を守り、神のために命を投げ出す者を揃えておりますぅ。今回はぁそうした力を結集してぇ、ドォラゴンどもを退治する軍団を組織するつもりなのですうぅ」
各宗教の私兵軍団による対竜殲滅作戦――あまりにも壮大な構想に、金九はめまいを覚えた。ただひとつ光復という目標のみに邁進してきた自分などには、間違っても思いつけない話だ。もし実現すれば世界全体を巻き込む大戦争が発生し、日本も否応なく巻き込まれる。日米戦争で目指していた、自分たち大韓民国臨時政府も光復のため戦う機会を改めて獲得できよう。だが、キリスト教との結びつきが強い中国国民政府はともかく、宗教とは無縁の自分たち臨時政府のような極小で無力な存在が、世界宗教連合軍の中でどのような役割を果たせるというのか。
「バチカンの主張はわかりました。しかし、問題は英米独仏というキリスト教世界で最も影響力があり、かつ神の教えより自国の政治的利益を最優先する諸国が、宗教連合軍の結成や目的を認めるかです。チャーチル英首相は、ドイツとヒトラー政権を倒すためなら悪魔とでも手を組むと公言しました。その悪魔とはスターリンのことかと思っていましたが、彼が死んだ今となってはドイツ打倒のため竜と結ぼうと考えるのではありませんか?」
笑っていなかったアンデルセン神父の眼差しが、一気に凍りつく。金九は息をのんで肘掛けを強く握り、周もごくりと喉を鳴らした。
166
:
パトラッシュ
:2013/06/08(土) 21:14:32 ID:WsRTftk.0
「英国国教会はぁ、今回の教宗様の呼びかけに応じないでしょう。あの連中はぁ成り立ちの経緯もあってぇ、長年にわたりカトリックと敵対してきましたからぁ。国教会の組織はあくまで英国王室に忠誠を尽くしぃ、訪日するチャーチルを守る立場をとるでしょうぅ。つまぁり、彼らはわれわれの敵になることが確定しておるのですぅ」
「すると英国以外のプロテスタントなどは、バチカンの提案に賛同していると?」
「まぁだ打診の段階ですがぁ、前向きな感触は得ておりますぅ。アメリカで独自に発展したプロテスタント諸派はぁ、われわれ以上に主イエス・キリストを否定するドォラゴンに反発しておりますのでぇ、日本がドォラゴンの力を得たことは断じて許せぬと真っ先に賛成してきましたぁ。ルーズベルトも彼らの反感を買っては選挙に勝てませんしぃ、ハワイ以来のドォラゴンに対するアメリカ国民の憎悪は変わっておりませんのでぇ、まず黙認するでしょう。バチカンと最も激しく敵対してきたルター派やカルヴァン派もぅ、ドォラゴンという共通の敵の出現に危機感を感じているのは同様ですぅ」
「で、ではそれ以外の宗教はどうなのです?」
「イスラームもアッラーがドォラゴンによってないがしろにされるのではと怯えているので、協力する方向ですぅ。正教会はギリシャの有力聖職者が賛同の意向を示しておりますがぁ、中心地であるロシアや東欧諸国の大部分がドイツの占領下にあり、ヒトラーがドォラゴンとの協力を進める方針のためぇ、反ドォラゴンの姿勢を明確に打ち出せていません。しかしぃ、ドイツ政府内部にもカトリックへの協力者は大勢いるのでぇ、間違いなく味方になってくれると予想されておりますぅ。ただユダヤ教徒はドイツの苛烈な弾圧を受けている最中のためぇ、余裕はないようですがぁ」
世界宗教連合軍の実現に向けて、バチカンは着々と手を打っているらしい。あらゆる場所に信徒のいる巨大宗教の力に、金九は圧倒される思いだった。かつてスターリンはカトリック教会を嘲笑し、「バチカンは何個師団持っているのだ?」と言い放ったという。自分も何となくスターリンの意見に同感していたが、ここにきて教皇の意志は大軍に等しい力があると思い知らされた。竜州行きの切符に引きずられて独立の機運が急速にしぼみ、味方だったはずのアメリカが頼りにならぬ現状、バチカンの構想に参加する話は魅力的だが、臨時政府を率いる立場としては簡単には乗れなかった。
「竜とその眷属に戦いを挑む、ですか。しかし、竜の力には恐るべきものがあります。恥ずかしながらわが同胞も、多くが竜の力に屈して日本に従う道を選びました。米国もハワイの竜に手も足も出せぬではありませんか。とても世界宗教連合軍に勝算があるとは……」
「金九主席ぃ、化け物どもを殺して何が悪いのですかぁ!」
腹の底から響く大喝に、金九はのけぞった。椅子の肘掛けで身を支えたが、あやうく意識が飛びそうなほどの強烈な威圧感に冷や汗を流す。独立運動や政治闘争であまたの修羅場をくぐってきたが、アンデルセン神父は格が違いすぎた。彼は外交官などではない。その手で数え切れないほど直接殺していると、金九は恐怖とともに確信した。
167
:
パトラッシュ
:2013/06/08(土) 21:15:12 ID:WsRTftk.0
「教宗猊下は化け物どもをこの地上から一掃するためぇ、あえてプロテスタントやイスラームなどの異端者や異教徒と手を結ぶという苦汁の決断を下されましたぁ。教宗様の思いに応えずして、誰がクリスチャンと名乗れましょうかぁ。ましてぇ中国や韓国の敵である日本は、ナデシコなるドォラゴンを完全に味方につけておるのですぞぉ。今度の会議でぇシチリアやアイスランドのドォラゴンまでもが同じく日本の味方となり、ドラキュリーナのようなきゃつらの眷属がすべて日本の手先となったらぁ、どぉうなると思いますかぁ?」
「ドラゴンの力を背景に、日本が世界を支配する……」
「いかにもぅ。そんな事態を英米独はドォラゴンとの話し合いで避けようと考えておりますがぁ、甘いとしか言えません! 神をないがしろにする化け物は、滅ぼさねばならないのです。さもなくば朝鮮が再び独立国となる日も来ないでしょう」
確かに竜が日本の味方である限り、光復はあり得ない。女をエサにされた同胞が次々と親日派に転向している状況は、アンデルセンの言葉そのものではないか。額に脂汗を浮かべた金九は、指の震えを押さえながら神父の強烈な眼差しを見返した。
「そ、それでバチカンは、わが臨時政府に対して何を求められるのです?」
「ドォラゴンとの戦いは、われわれ宗教連合軍が担当しまぁす。しかぁし、われらは日本における足場があまりない。日本の言葉や風俗習慣を解する者も少なく、何よりあの国で外国人は目立ちすぎるぅ。そこでぇ、貴殿らには日本での後方支援をお願いしたぁい。多くの朝鮮人が日本に住んでおりぃ、不本意でありましょうがぁ怪しまれにくいでしょう。その見返りにバチカンは、臨時政府を外交的に支援する。いかがですかなぁ?」
「わ、わかりました。直ちにバチカンの提案を閣議に諮りましょう……日本に有利に傾きつつある国際情勢を打破するためにも有効な手段であると、私も思います」
金九としては、他に言いようがなかった。
「……アンデルセン神父、最後にひとつお聞かせください。恐るべき力を誇る竜に、果たして世界宗教連合軍が本当に勝てるのでしょうか。いや、無論あなたがたの信仰や信念を疑うわけではありませんが、世界最強の軍事国家である米国も竜を打倒できないでいる現実から目を背けるわけにはいかないのです」
再び怒声を浴びるかと肘掛けをつかむ金九に、アンデルセンは子供に接するような笑顔で頷く。しかし、その口から発せられた言葉は、優しげな口調にもかかわらず金九も思わず失禁しそうな威圧に満ち満ちていた。
「我らは唯一絶対なる神の代理人、神罰の地上代行者としてぇ、我が神に逆らう愚者どもを、その肉の最後の一片までも絶滅することが使命なのですからぁ。塵に過ぎぬドゥラゴンどもは塵に帰るべきなのですぅ。主は勝利し、主は支配し、主は君臨される。主を愛さぬ者あらば呪われよ! 我らの主よ、来たりませぃ!――父と子と聖霊の御名において、AMEN(エイメン)!」
168
:
パトラッシュ
:2013/06/08(土) 21:15:52 ID:WsRTftk.0
「総統閣下、大韓民国臨時政府は今回のバチカンからの提案を受諾いたします」
「ありがとうございます、主席。これが成功すれば、わが中華民国もようやく日本と共産党に反撃する足がかりがつかめます。立場上、公然とはできませんが国民党としても全力で支援いたしますので」
「感謝します。当然ながら、この件は私と閣下だけが知っており、双方が個人的に動かせる人員だけを使うということでよろしいですね?」
「無論です。特に英米には絶対に知られてはなりません。主席と私の連絡役は周中校だけが担当し、どのような些細な件も他の者には洩らさぬようお願いします」
その夜、国民政府陸海総司令部を訪ねた金九は、蒋介石に臨時政府の決定を伝えた。今回のアンデルセン神父の来訪について臨時政府内部には、反ドラゴンを訴えるバチカンの主張を内外の同胞に発信するよう要請されたと説明していた。費用もバチカンが出す話を受けようという金九の提案を、閣議は一も二もなく承認した。カトリックの総本山を外交的後ろ盾に持てるという見返りは、窮状にある臨時政府の面々にとってこの上ない魅力であったのだ。無邪気に喜ぶ閣僚たちに「反ドラゴンのための世界宗教連合軍構想」などという真実を伝えても、正気を疑われるだけであろう。
それに、金九としても個人的な野心に駆られていた。今回のバチカンからの依頼をひとりで動かせたら、アンデルセン神父が約束したカトリック教会の後ろ盾を自分が独占できる。それは臨時政府の完全掌握につながり、今後の光復運動において大きな政治的資産になろう。失敗すればすべてを失うが、先の見えない現状を打破するためにもやってみる価値はあると決断していた。
(竜……すべては竜が日本に味方などしたからだ。ことここに至っては手段など選んでいられない。たとえ国民政府が滅んでも、我々が生き残るために。何よりも、この作戦が成功すれば光復後の祖国は私を絶対指導者として迎えることになる。私こそが朝鮮の新たな竜たるにふさわしいと誰もが認めるだろう……)
169
:
パトラッシュ
:2013/06/08(土) 21:17:18 ID:WsRTftk.0
中国人には古代より竜への信仰が深くしみついており、歴代皇帝は竜の生まれ変わりとされてきた。その竜が日本の味方をしている現実は、次の「竜」たる中国の支配者を目指す蒋介石と国民政府への支持を失わせるに十分な理由だった。竜とて不死身ではないと民衆に知らしめねば、国民政府の立場がない。その点は共産党も同じなので、情報が洩れても妨害はなかろうと蒋介石は踏んでいた。スターリンが死んでソ連が弱体化している現在、共産党は国民政府以上に行き詰まっているのは明らかなのだ。
「ところで総統閣下、あのアンデルセン神父とは何者ですか? 周中校のお話ではバチカン国務省の使者とのことですが、とても外交官などとは思えません。上海や香港の暗黒街の住人ですら、あれほどの恐ろしさは感じさせなかった……」
蒋介石は周遠峰と視線を交わした。周が頷くと、態度を改めた蒋は身を乗り出した。
「金九主席、あなたの見立ては正しい。彼は外交官などではありません。アレクサンド・アンデルセン神父の正体は、バチカンの擁する秘密戦闘部隊の指揮官です」
「バチカンの秘密戦闘部隊……」
「カトリック教会が過去に多くの異端者や魔術師と見なした者、さらに異教徒を苛烈に弾圧してきたのはご存知かと。当然、相手も黙ってやられるわけがなく、死に物狂いで反抗しました。敵対者と千年余にわたって知られざる戦いの歴史を重ねてきたバチカンが数世紀をかけて整えてきた戦力こそ、アンデルセン神父の所属するローマ教宗直属の闇の組織、通称イスカリオテ機関なのです」
「イスカリオテですと……何と不吉な! 裏切り者ユダの名を冠した組織がバチカンにあるなど、とうてい信じられませんが」
そう言いながら、ようやく金九はアンデルセンと会見した際に感じた圧迫感の正体が理解できた。あれは狂信者と対していたからだ。自分とて祖国の独立を強く信じているが、弱肉強食が当たり前の世界で弱小亡命政権を率いて苦労を重ねた経験から、国際政治や外交で一方的な狂信など百害あって一利なしであるとは心得ている。しかし狂気をまとったアンデルセンは、バチカンがいったんこうと決めたなら、どのような妨害も叩き壊して突き進んでいくだけなのだ。「神のために死ぬことが自分たちの使命」と信じて疑わない死兵の群れ。理想的だが恐るべき兵士といえる。
「これは世界の支配層にしか知られていない極秘事項です。私も最近ごく一部を知った程度で、とても熟知しているとは言えません。一方、対立する英国国教会もバチカンに対抗すべく王家に忠誠を誓う国教徒による実戦部隊を組織しており、イスカリオテ機関と世界の裏側で戦ってきました。創設者の名を取ってヘルシング機関と呼ばれているとか」
「ヘルシング――では、彼らが日本でチャーチル首相の護衛に付くわけですな」
「はい、竜と共に最大の敵となる相手です。心してかかってください。それからこれは申し上げるまでもありませんが、イスカリオテ機関やヘルシング機関については一切他言無用に願います。うっかり口を滑らせたら、双方の刃が主席に向けられるでしょう。そうなっても私たちも、かばうつもりはありませんから」
首ふり人形のように頷きながら、金九はバチカン支援のための作戦を考え続けていた。確かに日本国内には百万人を超える朝鮮人が住んでいるが、日本の警察や憲兵隊に疑われることなく任務を遂行できる能力と立場を兼ね備えた人材は限られる。まして今回は、自分の手の及ぶ範囲内から有能な者を選抜しなくてはならない。自然と金九の思考は、数名の人物に絞られていった。
(実働部隊には信頼できる人物を選ばねば。日本側に疑われず、むしろ信用される者を。そういえば朴正煕は満州国軍少尉として、東京の陸軍士官学校に留学していたな。彼は優秀な軍官だし、祖国のためと説得してみる価値はある。あと、日本に忠誠を誓っている同胞が支援してくれたらなおいい。旧李王家や朝鮮貴族などは最初から論外だが……まてよ、洪思翊は先年、日本陸軍少将に昇進したと聞いた。彼に使者を送ってみるか)
※金九、金斗漢、朴正煕、洪思翊=Wikipedia参照
※続きを書けるとは、ワタクシも思っていません。
170
:
名無し三等陸士@F世界
:2013/06/08(土) 22:13:22 ID:3.P8WlhM0
投稿乙
世界を人の手に有るべき姿にと言うのは同意、人の世に忌むべき力、一国のみが手にしたチート
を封じるべく動くのは必然だが・・・世界宗教連合とは・・・なんと言うかご愁傷様としか言え
ないよ・・・・
アンデルセンいい味出しすぎ、ワロタw
171
:
名無し三等陸士@F世界
:2013/07/19(金) 12:00:21 ID:YJw4hvmI0
殺伐とした魔女狩り中の欧州に天の助けが!
ttp://oyoguyaruo.blog72.fc2.com/blog-entry-5725.html
……凄い所だなスペインは(;・∀・)
172
:
名無し三等陸士@F世界
:2013/12/20(金) 15:01:04 ID:8gVXQwng0
竜神様読み始めたら面白いくてここまできてしまった
中の人早くきてくれー!
173
:
竜神様の中の人
:2013/12/22(日) 21:58:58 ID:NCJO571U0
読んでいた人いたのか。
という訳で久しぶりの突発一レス更新。
バイオ11の小話。
石原がその話を撫子に持っていった時、石原も博之もおつきのメイヴも同じ幻想を見るハメになった。
つまり、『尻尾ふりふりで遊びに連れてってもらえるわんこ』という。
「安心せい!
わらわの力を持ってすれば、盗賊の砦の一つや二ツや三つや四つまとめて大地に沈めてくれるわ!!!!!」
「人の話はちゃんと聞きやがれ!この馬鹿竜が!!」
ああ。さっきまでのドヤ顔からしゅんとしていじける姿へ。
またその背中が比べ物にならないぐらい哀愁を誘う。
そんな事は皆おくびにも出さないが、どうせテレパスでばれているのである。
「で、近くやって来るこの船をナブレスに飛ばすと?」
「はい。メイヴ殿。
後はこちらでなんとかしますゆえ」
「わらわならば何とかどころか、何でもできるのじゃぞ。
ここでわらわの力を見せ付けて、博之にいろいろごほうびもらうというわらわの企みがぁ・・・・・・」
人は優しさを持つ生き物である。
馬鹿竜様の嘆きを聞かなかった事にして事は淡々と進むのであった。
リハビリがてらに小話投下。
色々手を広げすぎたので、竜神様は優先順位的に後回しになりがちなのでご容赦を。
これが大友の次に資料調べるの大変なので。
174
:
名無し三等陸士@F世界
:2014/05/26(月) 21:33:17 ID:.5cjn02k0
艦これをやってたら無性に読みたくなったので久しぶりに、
撫子に船を艦むすにしてもらえばトラックなり電車で移動できて国内の移動分の油節約できるんじゃねとか考えた
海軍士官さんとかいないかなとか考えてみたり。
ゴーレムに担がれてテンションあがった那珂改二とか面白そうだなとか思ったり
175
:
詰めた鋳物
◆ywVgXTwd3Q
:2014/06/02(月) 21:09:42 ID:DzQGRXgA0
「帝国の龍神様」の一部再編集版が、小説家になろうにて「帝国士官冒険者となりて異世界を歩く」ttp://ncode.syosetu.com/n7036ca/ として掲載された事に伴い、
同作の二次創作作品として萌スレ7にて当方がUPした二次作の一編を、「ノモンハンの亡霊」ttp://ncode.syosetu.com/n2192cd/のタイトルにて、小説家になろうに転載しました。
小説家になろうの二次創作作品に関する規約に従い、中の人の許諾済です。
176
:
名無し三等陸士@F世界
:2014/08/28(木) 10:43:12 ID:1inbxKUk0
なろうの方、完結乙でした。
177
:
F世界逝き
:F世界逝き
F世界逝き
178
:
名無し三等陸士@F世界
:2014/11/08(土) 13:21:24 ID:M/9deZXc0
若輩でも大丈夫。
この手順ならオトせると思うよ。
基本、女子も考えてること一緒っすからね。
ttm2t.com/er9/1108.jpg
179
:
F世界逝き
:F世界逝き
F世界逝き
180
:
F世界逝き
:F世界逝き
F世界逝き
181
:
F世界逝き
:F世界逝き
F世界逝き
182
:
竜神様の中の人
:2015/08/16(日) 14:27:35 ID:nOwQ22HA0
大日本帝国において魔法兵という兵科が登場した時、その混乱は陸海軍に留まらない悲喜劇を発生させた。
理由は簡単。
あまりにも汎用性が高いことだった。
武器を持たずに間接攻撃が打てる。
人間以上の身体能力で攻撃が行える。
水中から空中までその行動範囲の尋常ではない広さ。
どれをとっても、何処に押し込めても問題が発生することが分かっていたからだった。
だが、世界は世界大戦の真っ只中。
異世界植民地竜州を維持するためにも、現地志願兵の使用は待ったなしな状況になっていたのである。
で、この厄介極まりない状況を帝国は以下のように解決しようとしたのである。
まず、竜神とその眷属達が太平洋宣言以降帝国内国家扱いになった事で、満州国方式を取ろうと考えた。
竜神は神ゆえに国家元首にせず、その下の眷属たる長耳族と黒長耳族を元首とする国家樹立を考えたのである。
竜神によって与えられた地の隣にある大森林地帯。通称緑州はこの方針によって緑州竜国として書類上独立することになった。
この緑州独立の滑稽極まりない点は、その緑州がある異世界人類と竜および竜の眷属達が決定的なまでに敵対しており、そのような国をまったく認めようとはしなかった事にある。
だが、地球にある大日本帝国は、南洋竜国の建国に合わせて欧米列強にハッタリをかます為だけにこの方針を押し通した。
これが巡り巡って国名変更に繋がるとは誰も考えなかったのである。
大日本帝国は後に『日本帝国および諸竜国連合』通称『日本連邦』と名乗ることになるのだが、その始まりはハッタリによって始まったのである。
こうして、緑州竜国軍が設立し、その下に魔法兵を入れることにしたのたが、その実態は現地軍事行動だけでなく行政面にも介入している竜州軍の一部隊でしかなかったのである。
緑州竜国軍の兵力は、二個師団規模で、現地召集の兵士などを組織し臨時の連隊として現地民を受け入れる所から始めたのである。
緑州竜国軍 第一師団
長耳族第一連隊
黒長耳族第二連隊
獣耳族第一連隊
獣耳族第二連隊
緑州竜国軍 第二師団
緑州歩兵第一連隊
緑州歩兵第二連隊
183
:
竜神様の中の人
:2015/08/16(日) 14:28:17 ID:nOwQ22HA0
長耳族連隊、つまりエルフだが、彼女たちは森から離れるとその強大な力を失うという特性を持つ。
緑州の中心たる世界樹の警護もある事から、実質的に動かすことができないので、近衛連隊扱いとして国境警備等に活躍してもらう事にした。
黒長耳族連隊、つまりダークエルフだが、エルフのような制約がないので、実質的な魔法兵連隊の中核を担うことになった。
魔法兵の研究はこの黒長耳族第一連隊から始められたのである。
獣耳族連隊、ワーウルフ等をはじめとする獣人たちなのだが、もとの動物の特性を受け継いてでいるので、魔法より肉体攻撃に特化している種族が多い。
その身体能力と、エルフには劣るが魔法使用ができるという特性を近代戦に馴染ませる教導連隊としての役割を期待されていた。
第一師団はその種族的特性から全て女性で構成されているのに対して、第二師団の歩兵連隊は日本人男子によって構成されることになる。
別名、緑州の女に誑かされた勝ち組とも言う。
後に、竜州開拓において傭兵としてやって来ることになった異世界の冒険者達の為に歩兵第三連隊が創設される事になるが、それは後の話である。
こうして、器は作られた。
その上で、魔法兵という兵の使い方に議論が進んでゆく。
まず、議論上に上がったのが、勇者と呼ばれるような高位魔術師連中を何処に入れるかである。
今は、黒長耳族や長耳族、獣耳族程度しか居ないが、竜州植民が勧めば2000万の帝国臣民がかの地にて生活することになる。
その時に、彼女たちを娶ったハーフに魔法適正が出る可能性を考えると、魔法兵の議論は避けては通れなかったのである。
陸軍も海軍も一人でも多く取ろうと暗闘を繰り広げた結果、後のクーデター未遂によって政治的影響力を失墜。
統帥権問題が首相就任時に復活させた太政大臣位を首相に贈るという鬼手と、同じく復活させた兵部省によって解消された事で兵部省直轄部隊として一括管理される事になった。
これによって、核魔竜冷戦時における実質的な日本の戦術核部隊として諸外国に認識されるようになったのである。
184
:
竜神様の中の人
:2015/08/16(日) 14:29:41 ID:nOwQ22HA0
投下終了。
なろうに吐き出したのもこっちに乗せておこう。
しかし、修正や一回の投稿文量とか考えるとやっぱり小説投稿サイトは便利だわ。
基本こそっとUPしてゆく予定。
185
:
名無し三等陸士@F世界
:2015/09/06(日) 22:20:21 ID:MUILovw20
おやまあ、竜神さまだw
186
:
名無し三等陸士@F世界
:2016/07/06(水) 22:29:39 ID:9k5QTiKY0
なろうに行ってたのか・・・・・・!
187
:
名無し三等陸士@F世界
:2017/02/19(日) 19:14:37 ID:XiyVDv5E0
35:54
↓
10:40
ttps://www.youtube.com/watch?v=WTdY7h129Mk
ttps://www.youtube.com/watch?v=8R0luOy8ce8
188
:
名無し三等陸士@F世界
:2017/02/19(日) 23:46:56 ID:4t3sG4S60
これか
修羅の国九州のブラック戦国大名一門にチート転生したけど、周りが詰み過ぎてて史実どおりに討ち死にすらできないかもしれない
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