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バトルロワイアルぺティー

183リズコ </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/04/28(水) 00:04 ID:1Nf1VncU
以前の行動>>176

 日は半分ほど暮れかけて、夜が訪れようとしていた。御柳寿(男子十九番)はすっかり疲れ果てて、その場に座り休憩をしているところだった。

寿は耳をすませた。どこからか、物音が聞こえた。
どうやら、この付近に誰かがいるらしい。しかも、かなり近くだ。


その時、人影が見えた。ただ、夕日が真正面から当たっているので、顔は確認出来なかった。
寿は念のため、ブーメランを握りしめて(これほどサマにならない武器も珍しいな。と寿は思った)、人影の方に向かった。

割と近くまできた時、その人物の顔が見えた。


寿はその人物を見て、あんぐりと口を開けた。


そこには――肩まで切り揃えた茶色い髪に、キリッとした目、寿が誕生日にあげたネックレスを首に飾っている――鈴木菜々(女子十六番)がいたのだ。

奇跡だ。寿はそう思った。こんな広い公園の中で、会いたくてたまらなかった菜々がここにいる。こんな偶然、あってたまるか!

寿は夢中で駆けだしていた。



「菜々!」

その声に、菜々はビクッとして武器を向けた。
だが、声の主が寿だとわかると、驚いたように目を開いた。
「寿?」
それと同時に、菜々は寿の方に駆け寄ってきた。


菜々は言った。「何でここに?」
「さあ、奇跡かな」
菜々はクスッと笑った。「会えると思わなかったよ。嬉しい」

寿は菜々を抱きしめた。「会いたかった……」
菜々は、寿の胸に顔を埋めた。
「私もだよ」小さな声が聞こえた。

寿は幸せを噛みしめていた。
このまま二人で逃げ出せればいいのに。本気でそう思っていた。



それから二人は、D=9の森の中に座り込み、今までどうしていたかについて、話した。

菜々は言った。「本当は、寿を待ちたかったけど、門の前に田辺君の死体があったし――怖くてつい逃げちゃったんだ。ごめんね」
「いいよ。むしろ、当たり前だよ。そんなの」寿は更に続けた。
「生きてたんだから、それで十分」
菜々との穏やかな時間。それだけあれば、もう十分だと思っていた。

寿は水を飲みながら、支給のパンをかじった。
「ところで、それ何?」
寿は、菜々の手に握られている物を指さして、尋ねた。菜々はそれを、寿に見せた。それは、ゆるやかなフォームを描いた、きゅうすだった。

「何か間抜けな武器だよね。こんな物で人が殺せるのかな」菜々は言った。
寿はきゅうすを観察した。これは、殴れば結構なダメージになるんじゃないかな、と思った。
菜々の手には、きゅうすの柄を握った跡が、赤く、くっきり残っていた。

どうやら不安を感じていたのは、寿だけではなかったらしい。
寿は菜々をまた、愛おしく思った。
「まだいいよ。おれなんかこれだぜ?」ブーメランを菜々に見せた。
菜々は、目を丸くして、その木片を見て笑った。
そして、寿に言った。「よかった。寿が殺人鬼になってたらどうしようかと思った」
「そんなわけねーだろ」
「よかった……」

菜々は寿に両手を差し出した。
寿は手を取って、それから、菜々を力強く抱きしめた。

菜々は震える声で言った。「何で、こんなことになっちゃったんだろうね」

わからない。多分、政府の気まぐれだ。
そんなことで死ななくてはいけないことに、怒りを覚えた。
「おれは、今菜々に会えたから、悔いないかも」
「嘘だー」菜々は笑った。
そして、少し声音を変えて、囁くように言った。

「私ね、デイバックの中からこれが出てきた時から、決めてたことがあったんだ。でも、決心つかなくて。やっぱ怖くなって逃げちゃった」
意味がわからなかった。
「何が?」

「気にしないで。私もパン食べよう。お腹空いちゃった」菜々は明るい調子で言った。
「食いすぎるなよ。太るぞ」
それを聞いた菜々は、口を尖らせながら言った。「大丈夫だよー。これくらい」

寿はホッとしていた。どんな状況でも、菜々は菜々だ。この時間が、ずっと続けばいいのに……。寿は心からそう思った。


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