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バトルロワイアルぺティー

142リズコ </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/04/06(火) 23:26 ID:1Nf1VncU
以前の行動書き忘れました;>>125

 そこには、背が高く、顔が端正に整った男がいた。
田阪健臣(男子七番)は、ゆきの存在を認めると、近付いてきた。


ゆきは少し警戒した。逃げるべきか、でも、もしこいつに敵意がなかったら―――
ゆきは、深く考えることが出来なくなっていた。

健臣は、ゆきをジッと見ていた。形のいい大きめの冷たい瞳に見つめられ、ゆきは少したじろいだ。

でも、もう逃げるのも面倒くさかった。疲労は限界に達していた。
ゆきは思った。もし、こいつが銃を持っていたら、すぐに私を撃ってるよね。敵意はない。そう判断した。極度の疲労と暑さは、ゆきの思考能力をも奪っていた。


健臣は、ゆきの一メートルほど近くにきた。そしてゆきをチラッと見ると、訊いた。「何してんの?こんなとこで」

ゆきは健臣の意図が掴めないまま、言った。「私の・・・私のデイバックを探してるの」
その瞬間、思った。もう、デイバックは見つからないかもしれない。水をもらえないか、頼んでみようかな。一か八かだ。


健臣は少し眉を持ち上げた。「デイバックって、これ?」背中に背負っていたデイバックのうち、一つを下ろした。

「あっ、何で持ってるの?」ゆきは駆け寄って、デイバックの中身を探った。
水がない。

「ごめん、捨ててあんのかと思って。でもここだと危ないから、とりあえず持っていこうかなーと思って持ってきた」
「大した物は入ってなかったでしょ?水返して」
言い方がきついかなと少し思ったが、水が欲しくてそれどころではなかった。

健臣はデイバックの中から口の開いてない水を取り出して、ゆきの方に向かって投げた。


ゆきは犬のように飛びついて、夢中で封を切った。礼を言うのも忘れ、水を飲んだ。

おいしかった。世界で一番おいしい水だと思った。どれだけ飲んでも、まだ足りなかった。

水を返してくれた健臣が(元々ゆきの物なのだが)、神のように見えた。ああ、なんていい人なんだろ。今まで気づかなかった。ごめんなさい。

健臣はクラスでナンバーワンの美形だったにもかかわらず、特別興味がなかった(だって私は千嶋君一筋だし)。でも、見直した。私、田阪君に乗り換えちゃうかもしれない。だって、こんなおいしい水をくれるんだもん。


夢中で水を飲み続けるゆきを、健臣は黙って見つめていた。
健臣の様子がいつもと違うことには、ゆきは全く気づかなかったのだろう。


半分ほど飲み終わった時、ようやくゆきは口を離した。
本当はもっと飲みたかったが、これ以上飲むのはまずいと考えた。

ゆきは健臣の方を見て、「ありがとう」と言った。
「いいよ。ってか、梅原さんのだなんて知らなくて、ごめん」健臣は口元だけで笑った。
ゆきは、少しドキドキした。

思った。田阪君の彼女になる人は幸せだな。かっこいいし、優しいし。まあ、千嶋君も優しかったけど、私はもう嫌われちゃったからな。

和輝のことを思いだして、また胸を痛めた。でも、もう仕方ないか。このゲームの中では、好きだの嫌いだのという感情は、無意味なのかもしれない。


健臣はゆきの様子を伺いながら、訊いた。「その肩の傷、どうしたの」

ゆきはハッとした。そうだ、新島が田阪君に会ったら、また問答無用で撃つかもしれない。そんなの、許せない。

ゆきは答えた。「新島だよ。完全にゲームに乗ってるみたいだから気を付けて」
健臣は少し考えた後、「わかった」と頷いた。

健臣は訊いた。「水、うまかった?」
「うん。まだ飲み足りないけどね」
「そっか、よかったじゃん」

ゆきは緊張しながら、健臣と話していた。健臣と二人きりで話すのは初めてだし、間近で見ても格好いいので、どうしても戸惑ってしまう。
それでも、ゆきは幸せだった。ほんの少しの間だったが。


健臣は少し間を空けて、言った。「でも、梅原さん、災難だったよな」
「そうだよね。まさか新島に会うなんて。その後禁止エリアに引っ掛かりそうになったし」

ああ、また喉が渇いてきた。ゆきは、ペットボトルの蓋を開けようとした。

「そっか、でも一番の災難は―――」

手を止めた。ゆきの視線は、健臣の手元に釘付けになっていた。


健臣は、銃口をまっすぐにゆきに向け、続けた。「俺に会ったことかもな」
【残り34人】


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