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みんなで世界を作るスレin避難所2つめ

1名無しさん@避難中:2010/06/11(金) 21:04:38 ID:Y1a78MZw0
ここは、みんなでせかいをつくるスレのひなんじょです▼

現スレ:http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1275122105/
wiki:http://www26.atwiki.jp/sousaku-mite/pages/286.html

ほんスレではなせせないようなこともこっちではなしてね!ふぇふぇ▼

129名無しさん@避難中:2010/06/28(月) 23:05:38 ID:7fKWgQjw0
蔑みすぐるwww
おいらは正義の定義好きだぜ

130名無しさん@避難中:2010/06/28(月) 23:21:15 ID:R21GAoaM0
>>129
ttp://a-draw.com/contents/uploader2/src/a-draw1_22468.jpg

131名無しさん@避難中:2010/06/29(火) 00:05:53 ID:aVRsRanQ0
あえて言うなら三点リーダは……が1セットということかな

132名無しさん@避難中:2010/06/29(火) 21:00:26 ID:HapMQPPEO
>ふぇ
ずっとキャラ名と英雄番号の関連を考えてるんだが…もしかして、ない?
イラストは俺もしっくりきたw

>エリカ様
夏。そしてジロキチw
前回『夏祭り』というイベントフラグが出てたけど、またそろそろイベントもいいね

以上感想、よければどなたか本スレに代理レスよれしく

133名無しさん@避難中:2010/06/29(火) 21:07:34 ID:XqyFGFrY0
ほいきた

134名無しさん@避難中:2010/06/29(火) 21:09:09 ID:v7l4Mgxs0
投下して感想代行すると自演に見えちゃう、ふしぎ!

135名無しさん@避難中:2010/06/29(火) 21:11:03 ID:XqyFGFrY0
ふしぎなせかい!

136名無しさん@避難中:2010/06/29(火) 21:13:20 ID:X5Dt5hgM0
>>132
キャラ名12天将っぽくね?
初めて出た時は安倍の系列だと思ってた

137名無しさん@避難中:2010/06/29(火) 21:57:36 ID:HapMQPPEO
代行アリガトです!!

138名無しさん@避難中:2010/06/29(火) 22:55:22 ID:HapMQPPEO
>>136
十二天将ググてみた。なるほどね…

そして無関係な絵
http://imepita.jp/20100629/821680

139名無しさん@避難中:2010/06/29(火) 23:11:55 ID:vq1X3Rf6O
代行お願いします

>狸よ踊れ〜
田貫のキャラがツボるなぁww続き期待だわ〜

>地獄百景
やばいこういう運命じみた話好きだ
何かリリベルちゃんがいつもよりしおらしくて良かった。最後はいつも通りだったけど

>ふぇ
もうトエルはコスプレ幼女で良いだろw
後ヘタレな北条院さんが好きになった

>はいから
もうジロキチの存在で笑うなこれは…
というかこの薬ってもしや…
そんな事よりタバサちゃん人化フラグか?

以上です。

後ふぇの英雄関連は十二天将で合ってると思う。そもそもデバイス名がそのまんま十二天将の名称だし。

140名無しさん@避難中:2010/06/30(水) 00:14:21 ID:WJEAkW.EO
代行感謝

141名無しさん@避難中:2010/06/30(水) 07:38:28 ID:dt1hzghs0
>>138
夏服えろすぐるwww
どことなく大人のふいんきトエルもいいなあ。
それにしてもタバサちゃんはぁはぁ

142名無しさん@避難中:2010/06/30(水) 16:45:06 ID:OQ23oxxg0
改めて相関図見たけどあれ見やすいね
閉鎖都市と地獄世界の相関図も欲しいな〜…

143名無しさん@避難中:2010/06/30(水) 19:16:05 ID:kDXw2aNg0
なにげに閉鎖は複雑な気がするね

144名無しさん@避難中:2010/06/30(水) 21:31:47 ID:iMQLzBrMO
>>143
同意。キャラのビジュアルとなると更に大変そうw
異形はその点じゃいちばん充実してるな

145名無しさん@避難中:2010/06/30(水) 21:57:13 ID:aOlhsnvc0
書き手さんたくさん居るしね
羨ましいナリー

146白狐と青年 ◆mGG62PYCNk:2010/06/30(水) 23:46:54 ID:UHiKXEiw0
おおう?!
スレ容量オーバーしたww
ちょっと立ててきます

147名無しさん@避難中:2010/06/30(水) 23:47:28 ID:IitPcC5Y0
まさか越えるとは思わなかった

148名無しさん@避難中:2010/06/30(水) 23:49:08 ID:UHiKXEiw0
ホスト規制されてて立てれない……
これはもう今日は寝ろという託宣か

149名無しさん@避難中:2010/06/30(水) 23:49:29 ID:IitPcC5Y0
仕方ないな。少し待ってるがいい

150名無しさん@避難中:2010/06/30(水) 23:50:07 ID:UHiKXEiw0
わーい

151名無しさん@避難中:2010/06/30(水) 23:51:53 ID:IitPcC5Y0
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1277909484/
クララ すたんどあっぷ

152名無しさん@避難中:2010/06/30(水) 23:52:58 ID:UHiKXEiw0
>>151
感謝です!

153 ◆mGG62PYCNk:2010/07/01(木) 00:00:00 ID:CDTxQ46M0
スレ立て&支援ありがとうございました!

154名無しさん@避難中:2010/07/01(木) 19:37:35 ID:ZnUKJEL2O
おおう知らぬ間に新スレ移行!?
白狐〜は出自不明異形の気配でバトルの予感!?
ともあれスレ立て&投下乙でした!!

155名無しさん@避難中:2010/07/01(木) 22:04:48 ID:Ts9f1jGM0
☆質問コーナー☆

>甘味処作者さん
シンダラさんはガチロリなんですか?

156名無しさん@避難中:2010/07/01(木) 22:40:35 ID:ppp/UujQO
ロリでなくロリコンだと思うんだ
細かいが、重要なんだぞ?
獲物と捕食者の違いがあるから
シンダラさんがロリだったら俺常連になるぜwwww

157名無しさん@避難中:2010/07/01(木) 22:45:11 ID:Ts9f1jGM0
ああ、それは確かにw

>甘味処作者さん
シンダラさんは極めて幼女愛好者ですか

158名無しさん@避難中:2010/07/03(土) 00:36:48 ID:KdnWXHVM0
真達羅「極めて心外です。根も葉もない誹謗中傷は止めていただきたい」

桃太郎「むかーしむかし、ある所に真達羅という異形がいました」

真達羅「そういうの止めません、店長?」

桃太郎「人間に好意的な真達羅他、十一騎ほど徒党を組んでいた異形の一派は一次掃討戦後の京近くのある都の防衛に尽力します。真達羅の担当は西の方角」

真達羅「ちょ、待って、ストップ! タイム! マジだこの人!」

桃太郎「守戦に回った際の十二騎の連携はまさに鉄壁。攻撃ウンコのくせに蟻も通さぬまさにベルリンの壁。当時都の一角を攻めていた異形の集団は手をこまねていていました」

真達羅「おい、カメラ止めろ」

桃太郎「さてその最中、どっかの酉の異形が幼女と仲良くなりました。一緒におやつを食べる約束とかしました。一緒におやつ作る約束とかしました。一緒に遊ぶ約束とかしました。「わたし おおきくなったら しんだらのおよめさんになるー」とか言われてました。そのせいで十二騎の連携がちょっとだけ滞った事があって異形が普通に攻めてきました。全部真達羅が幼女といちゃいちゃしてたせいです」

真達羅「やめてー!」

桃太郎「そこに颯爽と駆けつけたイケメン イズ 俺。以降、真達羅は俺にロリコンとなじられます」


的な昔話がったとかなかったとか。
美女と野獣、だった真達羅をからかう感じです。
その、一緒にいた幼女の騎士気取りという風です。

159名無しさん@避難中:2010/07/03(土) 00:41:43 ID:771o6yB60
真達羅ェ……

160名無しさん@避難中:2010/07/03(土) 07:39:15 ID:AC6GgfdEO
手長「おんなのなかにーロリコンひとりー♪」
足長「おっんなのなっかにーロッリコンひっとりー♪」



真逹羅「店長…」
桃太郎「団子買ってくれたお客さんだ、我慢しろ」

161名無しさん@避難中:2010/07/03(土) 08:20:59 ID:EP5EC2.s0
鬼ヶ島は異形のすくつだな!

162名無しさん@避難中:2010/07/04(日) 08:49:40 ID:akEuwW8E0
>158
遅れたけどありがとう!
超把握した

163名無しさん@避難中:2010/07/04(日) 19:55:33 ID:ZZj8JLsE0
>>160
きちんと金だしてくれるのか、この二匹ww

164名無しさん@避難中:2010/07/04(日) 19:57:24 ID:akEuwW8E0
明らかにもってないw

165名無しさん@避難中:2010/07/04(日) 19:59:43 ID:8YzhyE3k0
金って何?とか言いそうだww

166名無しさん@避難中:2010/07/05(月) 00:07:54 ID:.0RCQJ7EO
出来れば代行を↓

秀逸な技法でタバサの愛らしさがまた急上昇www

167名無しさん@避難中:2010/07/05(月) 00:18:39 ID:QmQN4G2A0
代行行ってきます

168名無しさん@避難中:2010/07/05(月) 00:32:50 ID:QmQN4G2A0
行ってきました

169名無しさん@避難中:2010/07/05(月) 02:33:20 ID:.0RCQJ7EO
↑代行感謝です
↓代行お願いしますw

>>『狸よ躍れ〜』
狸化の解呪が可能とは…そして地獄はなんでも旨いのを把握w
しかし、このスレ本当に軽妙な名文書き手が多いな

170名無しさん@避難中:2010/07/05(月) 17:37:07 ID:MtFpHkZg0
遅れたけど代行いってきたよ!

171名無しさん@避難中:2010/07/05(月) 21:08:26 ID:.0RCQJ7EO
>>170
有難うございました!!

172見て^^:2010/07/05(月) 21:30:04 ID:7WyAuZi.0
一見、普通の女の子の日記ですが、
ある事をした後に更新しています。
かなり中毒性が高いので注意が必要かもしれないです。

ttp://stay23meet.web.fc2.com/has/

173名無しさん@避難中:2010/07/05(月) 21:56:46 ID:82BnJjeA0
狐、猫、狸……次はなんだ?

174名無しさん@避難中:2010/07/05(月) 22:21:15 ID:qhfXK7uo0
子豚が抜けてる?

175名無しさん@避難中:2010/07/06(火) 01:10:45 ID:hWrfZYZcO
ねずみ、牛、虎、兎、竜、へび、馬、猿、鳥、羊、犬、猪

176名無しさん@避難中:2010/07/06(火) 01:12:23 ID:9uzV0kKE0
真達羅が酉、摩虎羅が猿、招杜羅が犬だな

177名無しさん@避難中:2010/07/06(火) 01:23:50 ID:FsM5IkOw0
ジロキチがねずみでな

178 ◆GudqKUm.ok:2010/07/06(火) 12:13:20 ID:oi3pE6bMO
『狸よ躍れ〜』作者様にお願いです。藤ノ大姐を次回『地獄百景』に少し拝借したいのですが如何でしょうか?
『狸よ躍れ〜』本編には展開上影響しない、と勝手に思う位置付けなのですが、不都合があれば中止にしますので質問お返事等、いつでも結構ですから宜しくお願いします。

179名無しさん@避難中:2010/07/06(火) 22:11:37 ID:okcXfm9UO
>>178
不都合なんてとんでもない
ふつつかなババアですがよしなにしてやってください

180名無しさん@避難中:2010/07/06(火) 22:17:06 ID:HPCAnBQQ0
勢いで描いた
努力は認めて欲しい

http://loda.jp/mitemite/?id=1223

181名無しさん@避難中:2010/07/06(火) 22:22:47 ID:HPCAnBQQ0
と思ったけど、人によったらえろいかも知れないので削除
俺は一体何をしているんだ

182名無しさん@避難中:2010/07/07(水) 07:28:58 ID:UZLhDOmo0
みんな気をつけろぽんぽこ!
ここは呪われているぞぽんぽこ!
どんな呪いかと言うと麗しの藤ノ大姐をババア呼ばわりすると狸になってしまう呪いがかかっているぽんぽこ!










花蔵院に咲く美しく麗しい藤の方 嗚呼何卒この身の愚かさをお赦し下さい
御身の御髪は どれ程上質の絹も敵わぬ滑らかさ
御身の御肌は どれ程丹念にこねた餅も敵わぬ瑞々しさ
その御姿は まさにうら若き童女
嗚呼何卒 我が身の愚かさをお赦し下さい 我が身の浅はかさをお赦し下さい

183名無しさん@避難中:2010/07/07(水) 18:50:30 ID:iwEAd4vUO
>>『狸よ躍れ〜』作者様、快諾有難うございます!!
そして毎度すいませんが、どなたか代行お願いします…

地獄百景『鈍色の繭』

184『鈍色の繭』 ◆GudqKUm.ok:2010/07/07(水) 18:52:18 ID:iwEAd4vUO


「…遠い所をお運び頂き申し訳ありません…」

「…よい。」

深々と頭を下げる獄卒隊副長、蒼燈鬼聡角の言葉を遮り、少女はむっつりと扉をくぐった。ここは閻魔庁の鬱蒼たる中庭に聳える特別棟、限られた獄卒幹部しか入室を許されぬ警戒厳重な一室だ。

「…して、『奴』は?」

自らの倍を越す体躯の鬼たちに向けて、少女はぶっきらぼうな問いを発する。芳しい花の香りを纏う彼女の髪からも、ちらりと短い角が覗いていた。

「…は、このままでは恐らく肉体の再構成に失敗し、消滅するのみかと…」

恭しく少女を案内しながら答える聡角は獄卒隊随一の知略家だ。彼が少女…ほかならぬ師、花蔵院藤角の助力を乞うなど珍しい出来事だった。
『藤ノ大姐』として知られる鬼、未だあどけない童女としか見えぬ花蔵院藤角は聡角の示す先に安置された球体を見上げる。脈打つ幾つかの管に繋がれた楕円形のそれは、柔らかく透き通った卵にも似ていた。

「…よく見えぬ…」

「しょ、少々お待ちを…」

藤角の呟きに獄卒のひとりが慌てて踏み台を運ぶと小さな女鬼はちょこんと台に登り、かつての友、『我蛾妃』の繭に険しい顔を寄せた。

「…自ら魂を圧縮する際に、何らかの手落ちがあったのでしょう。羽化出来ぬままで腐り始めました…」

無言で繭を睨み続ける藤角の眼には正視に耐えぬ物体が映っていた。凶悪な女妖我蛾妃…その今は無力な幼生は虫とも人ともつかぬ奇怪な姿で薄い膜のなか呻吟している。
濁った粘液のなかで捻れ絡み合う昆虫の脚と、苦悶を表情を貼りつけビクビクと痙攣する嬰児の顔。策に破れちっぽけな毒虫として捕らえられた彼女の、自業自得とはいえあまりに哀れな姿だった。

「…殿下は?」

185名無しさん@避難中:2010/07/07(水) 18:53:02 ID:iwEAd4vUO
師の質問の意味をしばらく思案し、聡角は低く答えた。我蛾妃の魂を滅さぬことは閻魔羅紗弗殿下、すなわち次なる地獄界の意志と協議した結果のものだ。
今は自領に暮らすかつての師を急いで呼び寄せたのも、この悲惨な境遇から地獄界の仇敵、我蛾妃を救う為なのだから。

「…殿下は私に全てを委されました。師よ、我蛾妃を助けることは可能でしょうか?」

いつになく無口に不気味な繭を見つめ続ける師の心中を察し、聡角もまたしばらく唇を閉じた。
混沌と無秩序を信条とし、宇宙の理を否定する為に暴虐の限りを尽くした我蛾妃と、厳粛な法の守護者花蔵院一族の藤角が親しい友であったことを知る者は少ない。
そしてまた幾多の仲間を失いながらも我蛾妃を捕らえ、永遠の虜囚として地獄の塔に封じたのがこの『藤ノ大姐』であることも。

「…退っておれ…」

重い呟きとともに藤角の小さな掌が、我蛾妃の病める繭にそっと触れた。

186名無しさん@避難中:2010/07/07(水) 18:54:17 ID:iwEAd4vUO

「…しょせん宇宙など汚物の堆積、生命などそれにたかる蠅に過ぎぬ…」

幾千の罪無き魂を喰らい、その不浄な生を長らえ続けた我蛾妃の言葉だ。だが藤角の知る限り、彼女は生まれ落ちたときからこの信念を持っていた訳ではない。
妖蝶の変異種として生を享け、幼くして輝くような美貌と類を見ない魔力を備えていた彼女。野辺を舞い遊ぶには余りに桁外れの力は、遠く藤角の暮らす冥府の地にも届いていた。
まだ魔と人の境すら曖昧な昔、腕白で好奇心旺盛な少女だった藤角が我蛾妃を訪ね、二人が親しい友となるのに時間は掛からなかった。
光溢れ、花咲き乱れる地上の世界と同じくらい自由闊達で無邪気な妖蝶の姫に、若かりし藤角はたちまち魅了されたのだ。

『…地上は良いな…明るくて、賑やかで…』


『…いや、まだまだこの世界にも昏い場所がある。まあそのうちに妾が、全てを眩く照らしてみせるがの…』

我蛾妃の言葉は偽りではなかった。遥かな高次で世を司るという神仙たちより、地の底で厳格な戒律を守る藤角たち鬼よりも、彼女は迅速かつ大胆に人界に平安をもたらしたのだ。
天災や疫病を容易く退け、まだ未開の山野を闊歩していた野蛮な魔を一瞬で滅する彼女は、まさに人々が想い描く『女神』だったかもしれない。
朝露の雫を浴びて虹を追い、壮麗な夕日を並んで眺めた二人の遠い日々。しかしその平安は長く続かなかった。無尽蔵とも思える我蛾妃の魔力は、その成長と共に危険なものとまでになったからだ。
地獄界に座し、ただ罪のうち生を終えた魂を迎え入れることが果たして鬼である自分の唯一の務めなのか。全ての鬼が直面するその苦悩は、藤角にとって我蛾妃のかたちをしていた。

187名無しさん@避難中:2010/07/07(水) 18:55:20 ID:iwEAd4vUO
『…蛞蝓神たちにも幾らかの理はあった!! 一族に至るまで皆殺しにする必要はなかったであろう!?」

『…お主ら鬼が世の為に働こうとせぬからじゃ。天命、とは怠け者にはまこと都合の良い言葉かも知れんの…』

藤角の額をチョンと小突き、傲慢な笑みで彼女を見下ろす我蛾妃の肉体は、すでに妖艶な女の色香を備えていた。同族たちを臣下に従え、『我蛾妃』を名乗りだしたのもこの頃だ。
それからひとつの世紀を終えずして恐怖の象徴となったその名。彼女が正義の旗印のもとに次々と起こした戦はいつしか無慈悲な殺戮の舞台と化し、地獄界からの調停者として再び我蛾妃の前に立った藤角は、旧友を蝕む狂気の源を見たのだった。

『…天は…天は呆けておるのか!? 地の底で安穏と暮らす貴様ら鬼どもが若さを失わず、いつか全能の神ともなれる妾が老いてゆくなど…おかしいではないか!?』

妖蝶は魔物としては短命な種だ。その美貌と魔力の絶頂を超え、早過ぎる肉体の衰えを感じた我蛾妃は無慈悲な宇宙の摂理に憤怒していた。
世界を美と調和に導く理想の力が、脆く儚い器に宿る不条理…宇宙に法など無い。その憤りは鬼としても稀有な存在、年経てなお瑞々しい肌と快活な瞳を失わぬ友に向けられたのだった。

『…見ておるがよい藤角、愚かな天が妾を誅せるか、ひとつ試してみようぞ…』 

さらに幾年月、菫色の瞳にただ虚無を映し、虹色だった羽根を暗褐色に染めた魔物は、天を冒涜するためだけに虐殺を繰り返し、抑え難い羨望のまま地獄界を憎悪する人喰いと成り果てた。
生き長らえる為に夥しい魂を啜る『邪神』の名すら相応しい魔物と、地獄界の長きに渡る闘い。迷える心の隙を我蛾妃に魅入られ、無明の闇へと堕ちた鬼も数え切れない。

188名無しさん@避難中:2010/07/07(水) 18:56:42 ID:iwEAd4vUO
だが我蛾妃の信じがたい蛮行に天は怒りの鉄槌を下さず、ただ人と鬼と魔物だけがその血を夥しく流した。それでも自分が天を疑わなかったのは何故だろう、と藤角はいつも思う。
もしかすると誰にも窺えぬ天命の執行者として、揺るぎなく寡黙に討伐の指揮を続けた閻魔大帝の姿こそが、藤角にとっては唯一確かな『天』の姿であったのかも知れない。

『…役にも立たぬ家来共をみな喰ろうてみたが…それほど若返った気もせぬ。藤角、貴様を喰えば少しは精気もつこうかの…』

戦慄すら感じさせる退廃の美に包まれて決戦地に立った我蛾妃の前には、数百年を経て変わらぬ姿の藤角がいた。突き刺さる嫉妬、憧憬、悲嘆…そしてもはや我蛾妃にとって血肉の殆どを占める憎悪。
もはや馴染み深いその全てを静かに受け止めた藤角は、遠い日の可憐な妖蝶を想い出すように眼を閉じると、恐るべき禁断の技で旧友をしっかりと封印したのだった。

『…行こうぞ繭姫、我が故郷、地獄へ…』

189名無しさん@避難中:2010/07/07(水) 18:58:41 ID:iwEAd4vUO

…サクリと繭を破って歪んだ幼体に触れた藤ノ大姐の指を、聡角たち獄卒は固唾を呑んで見守る。この偉大な鬼がいかなる想いを秘めて眼を閉じ、複雑な術式を諳んじているのかは長年彼女に師事した聡角にも判らなかった。

「ク…ゥ…」

藤ノ大姐の指先で醜い幼体が鳴く。たとえ短くとも、健気に羽ばたく蝶のごとくただ一度の生を全うしていれば、今頃彼女はまた生まれ変わり、軽やかに地上を舞っていたかも知れない。

(…そうではない…我らがかつて姉妹であったことも、こうして再び向かい合うことも全ては天の意志。繭姫…いや我蛾妃よ、そなたもまた天の愛し子…)

誰にも聴こえぬ心の呟きと同時に藤ノ大姐は小さな吐息を震える肉塊に吹きかけ、長く複雑な『変形(へんぎょう)の術』を終えた。

「おおっ!?」

彼女が裂けた繭から抱き上げたもの、それはぐっしょりと濡れ、力なく額の触角を垂れてはいるものの、確かに規則正しい呼吸を繰り返す愛らしいひとりの幼女だった。

「…どのように育つかは判らん。しかしこやつは幼くとも我蛾妃、くれぐれも注意を怠ってはならぬぞ…」

獄卒たちの驚きに混じる喜びの色を戒め、藤ノ大姐は眠る幼児をそっと寝台に降ろした。つかつかと立ち去りながらも、どこか切なげな師の様子に、蒼灯鬼聡角は少しだけ首を傾げる。

「…お疲れでしょう。あちらに部屋を用意してあります。お帰りまでお休みに…」

「…いいや、城もずいぶん久しぶりじゃ。色々と寄りたい所もあるゆえ、誰か付き合いってくれんかの…」

涼やかな少女の声。悪戯っぽい微笑みを浮かべて弟子を見上げる藤ノ大姐の顔はもう、聡角のよく知る気紛れな師のものだった。


おわり

190 ◆GudqKUm.ok:2010/07/07(水) 19:00:32 ID:iwEAd4vUO
以上です。

191名無しさん@避難中:2010/07/07(水) 19:08:41 ID:GFI5O4pg0
いってくらぁ!

192名無しさん@避難中:2010/07/07(水) 19:23:41 ID:GFI5O4pg0
たでえま!

193名無しさん@避難中:2010/07/07(水) 20:40:56 ID:iwEAd4vUO
有難うございました!!

194名無しさん@避難中:2010/07/08(木) 18:09:10 ID:XiZ4JSeoO
代行お願いします↓

>>『甘味処〜』
三獣がバビル二世の下僕みたいでやたらかっこいいw
しかし『何かしら』って…

↑代行依頼ここまで

『狸〜』作者様、もう一話ほど藤ノ大姐お借りするかもです…

195名無しさん@避難中:2010/07/08(木) 18:29:34 ID:2yZhTmOE0
いってきたよ!

196名無しさん@避難中:2010/07/08(木) 19:03:30 ID:XiZ4JSeoO
まいどお世話掛けます!!

197名無しさん@避難中:2010/07/08(木) 19:16:01 ID:2yZhTmOE0
先週まとめをし忘れたと思ったが、今さらすぎてなんともないぜ。
ところでカード化スレで「白狐と青年ノベルゲ風表紙」の使用許可願が出てたよ。
作者さんは行ってあげるといいかも。

マジック・ザ・モナリングin創発板
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1230763934/

198名無しさん@避難中:2010/07/08(木) 22:00:01 ID:VMu/YZME0
>>194
全然構いませんとも
こちらとしても構想を広げやすくなりますしありがたいです

199名無しさん@避難中:2010/07/09(金) 22:48:40 ID:mlW9USP6O
本スレ投下乙!!
珠やん危機一髪!!次回はどうなるか…
そして七夕とはまた旬。異形は夏祭りが楽しみだ。

200名無しさん@避難中:2010/07/10(土) 21:44:42 ID:nmKuRExgO
>『ゴミ箱〜』
日常茶飯事であろう情報捏造に、いい意味で肩透かしな酔客の処理。こういう『静』の描写が見事なんですわ…

>『白狐〜』
そろそろ悪役登場か!? 異形クロスもますます賑やかになってきたなw

201名無しさん@避難中:2010/07/10(土) 21:46:56 ID:nmKuRExgO
↑代行依頼をわすれたよ!!

202名無しさん@避難中:2010/07/12(月) 05:36:25 ID:YzADuFrEO
キッコ様と一緒にクズハたんのつむじクンカクンカしたい

203名無しさん@避難中:2010/07/12(月) 22:11:39 ID:hIOaKlvQ0
全鯖規制始まったよ!すごいね!
正義の定義、投下します。代行お願いいたします…

204正義の定義:2010/07/12(月) 22:12:13 ID:hIOaKlvQ0
 「ひゃっひゃっひゃ…なんだここ…?地下に人間が沢山いるぞオ〜!」
 「久々にごちそうタイムといきますかア〜アハッアハッアハッ!」


第八話
 「LOST WORD」


 おやまあ、あなたもココアですか、奇遇ですね。いやはや、深夜はやっぱり胃に優しいココアに限りますな。
こんな夜中に、貴方はどちらへ?はるばる北国から?それはそれは、ご苦労様です。
 それにしてもあれですね。今や季節の節目節目の改編期の真っ只中。
新しいものへと無理矢理シフトチェンジさせられている空気が滲み出るような。

そんな雰囲気を感じませんか?

 何をそんなに急かすのか?まだ前期アニメも消化していないでしょーに。人はそう簡単には変われない。
変化を嫌う人もいるだろう…しかして!人は変化せずにはいられないものなんです。
己の内なる変化に戸惑えど、人は嫌でも変わっていく…要はその変化を受け入れるかどうか。
え?そうなの?そうなんです!ある種、はじめてお股に毛が生えてきた時の心境を思い浮かべていただきたい。
 …正にそれですよ!変化は突然やって来ます。戸惑うこともあるかもしれない。でも、やっぱり気が付いた
頃には受け入れるしか選択肢がないという場合が圧倒的多数を占めるのでどうしようもないんですねぇはい。
……おやおやもうこんな時間ですか、それでは私は次の電車に乗らなければなりませんので…ごきげんよう……

―――…

 「ふぇ…?なんだキサマァ…?」
 「君が12番目か。まさかこんなに幼いとは……いや、機械に年齢は関係ないか……」
 「…不快。邪魔しないで」
 「そうはいかないな。英雄同士の闘いを黙って見ているわけにはいかない。君達、無駄な事はやめなさい」
 
 血気滾る一人と一機を止める一人の男。手に負えぬ状況の中舞い降りた救世主のその姿は、
正に「英雄」の名に相応しきものに見えた…


 「…興冷。部屋に帰る」
 刹那の攻防に突如として介入した第二英雄王鎖珠貴。両手に小冴えた二振りの剣がトエルと天草の動きを牽制する。
 自身にとって面白く無い展開になってきたと感じた天草は一言呟くと、腕のデバイスを外し、
紅き鎧が粒子状にサラサラと解けていく中、王鎖の事を厭うようにして去っていった。なんとも専横な初登場であった。
 天草の様子を見て、王鎖も武装を解除する。解除した武装は光となって一点に集まり、
見慣れた黒い箱へと姿を変える。
 何はともあれ、騒動は無事収束。敵襲でもないのに一階本部は嵐がさった後のごとくズタボロで
コレを補修する人間が哀れでならない。注意すべき相手は味方の中にいたというわけか。
 「…おまえだれだ?いきなりわってはいってきやがってふぇふぇ」
 一頓挫後、突如現れた王鎖に警戒するトエル。面識がないので警戒するのは当然だった。
 トエルは礼儀を知らないロボ幼女なので初対面の相手に無礼な態度を取るも、王鎖は決して怒らず、寛大な心で応える。
 「私が第二英雄……王鎖珠貴だ」
 「ふぇ?おまえが?」
 「そうだ。君のことは局長から聞いている…我らの技術力の集大成。人間の人間による人間のための夢機械」
 「ふえぇ…よせやい、てれる」
 小っ恥ずかしいという仕草を見せるトエルに王鎖は驚愕する。まるで人間だ…と言わんばかりの顔である。
 「人間の科学はついにここまで来たか…素晴らしいな」
 王鎖思わずそう、感嘆の声をあげる。人間の積みあげてきた物、自分達が創り上げてきたものがこのような
形になっていくのは中々感傷深いものがあるのだろう。しかし、そんな事など当の本人であるトエルは知る由もなかった。

205正義の定義:2010/07/12(月) 22:15:05 ID:hIOaKlvQ0
 「王鎖さん、ご苦労様です〜」
 「全く、君達……何故彼女達を止めなかったのです?おかげでこのフロアは酷い有様だ」
 「面目ない…」
 騒動が収まり、一段落したところで他の英雄達、白石・青島は王鎖のもとへ労いの言葉を掛けに行くも早々
に的確な指摘を受け反論の言葉も出ない様子。そりゃあんたは平気だったろうけど自分達が止めに入ったら
確実に腕一本は持って行かれるレベルですって…と、いうのが白石達の本心であったが、
王鎖に何を言われるかわからないので黙っていたとか。
 「君達は弛んでいるな。よし、折角の機会だ…私が直々に稽古をつけてあげよう」
 どっちにしろ面倒なことを言われるのには変わりないようであったが。
 「王鎖さんと稽古とか…マジきついっす」
 青島は王鎖の提案を聞いて、呟かずにはいられなかった。機関でも随一の実力を誇る第二英雄・王鎖。
対して強さに順位をつけると自分は下から数えたほうが早いという青島。一応己の力量は理解している
ようで、とてもじゃないが王鎖の相手など青島はしたくなかった。
 「お、王鎖さんも帰ってきたばかりでおつかれでしょう?そんな俺達の為にそこまでしてもらうなんて悪いですって…なあ白石?」
 「そ、そうだべさ〜!」
 なんとか王鎖との稽古を回避したい二人はあくまでも建前上は王鎖の体を心配してという理由で上手いこと
断ろうかと話を合わせていたが、王鎖の「私はここ数年疲労を感じたことはない」という一言で無残ににもその
目論見は水泡とかしてしまう。
 「さあ、君達は地下訓練場へ向っていてくれ。私もすぐに行く」
 「とほほー」
 「くはぁ〜…あんまりだぜ……おら、北条院、お前いつまで壁に埋まってんだ、行くぞ」
 トボトボと訓練場へと向かう白石・青島と先程まで埋まっていたため事情を把握出来ていない北条院。
北条院に限っては色々ご愁傷さまとしか言いようがない。悪い事というのは連鎖するものなのです。
 「ふう…このフロアは後で戦闘員達に直させるか…ところで…トエル…だったかな?君は」
 「ふぇ!」
 「…君は……何故天草くんと戦闘行為に及んでいたのかな?」
 事情がわからず仕舞いでは困る。事の発端位は知っておきたいと思った王鎖トエルに動機を聞く。すると
トエルからはこんな答えが返ってきた。
 「ふぇ?あいつからいぎょーのはんのうがしたから!とゆーか、あいつほんとにえいゆーだったの?」
 「天草くんから……異形の?」
 (彼女は人間のはずだ……一体どういう事だ…?)

 ―――…


 「誰も……いないよね…?」
 どんなにモノを口にしていなくとも、溜まるものは溜まるし出るものは出る。生きている限り老廃物は
溜まるもの。したがって、篭っていた陰伊がトイレに行く為、部屋から出る事は何らおかしいことではない。
 陰伊は誰とも会いたくないのか、人気が無い事を確認し廊下へと用心深く足を踏み出す。
廊下に出た陰伊は前後に人がいないか警戒し、トイレへとそそくさと向かっていった。
廊下は数m毎に鏡が設置してあり、歩くごとに己の酷く消沈した顔が写る。
何故自分がこんな事をしているのかと陰伊は己が情けなくなった。今の惨めな状況が、
罪の意識に苛まれ沈んだ陰伊の気持ちをさらに沈め、彼女の心はもはや底着き。気分はさながら深海魚。
暗くて寒くて、虚脱感だけが体を支配する。
 「何やってるんだろう……私」
 「これからどうすればいいんだろう?」
 「私に……何が出来るんだろう…」
 陰伊は手違いとは言え、殺意を持って人を殺した。彼女の中で"人殺し"とは到底償いきれぬ罪として存在している。
消えることはない罪に、陰伊は絶望していたのだ。優しすぎる彼女の事だ、罪の意識は
尚更重くその身にのしかかっていることだろう。

―そろそろ…陰伊さんも大人にならなくちゃね…

 冴島の言った言葉が陰伊の頭を過る。先のことは、英雄としてその役目を全うしたの上での事故だったと、
割り切らなければならない事なのかもしれない。
しかし陰伊には……そう簡単に納得出来るものではなかった。
 思考が堂々巡りする中、陰伊はトイレの前までたどり着いていた……

 「キヒヒヒ…」

206正義の定義:2010/07/12(月) 22:18:18 ID:hIOaKlvQ0
―――…

 「かくして、王鎖さんのスパルタ指導を受けるため私達三人は地下訓練施設へとやってきた訳です」
 「おい白石。誰に向かって話してんだよ」
 「無駄話はやめなさい。訓練とは言え気を抜いてはいけない」
 白石の説明よろしく、王鎖の突発的な思いつきで演習を行うこととなった白石・青島・北条院の三人。
色々異議申し立てたいところではあるがこの王鎖という男にはなんとなく逆らえなかった。そもそもからして
この王鎖に物言いできる人間はそう多くない。彼が特別えらい人間というわけでは断じて無いのだが。
 「一体この状況はどういう事ですのかしら?」
 「北条院さん語尾がおかしい」
 先程頭を強く打ち付けられたのが堪えたのか、北条院の呆けが著しく顕在化する。もともとネジが数本
緩んでいるような頭をしている北条院だが、言語にも異常が出ているのはさすがに打ちどころが悪かったのかもしれない。
 「私語は慎むこと。なんだ?まずは北条院君からか?」
 「だから、何の話……だっピ?」
 「コロコロでまだ連載してんのかなあれ」
 「……ふざけるのはやめなさい」
 「北条院さん、演習するんだよ今から」
 「あひんっ…そうだったのぉぉぉぉぉ!?」
 何だか面白いことになっている北条院。白石としては非常に絡みづらい事この上なく。
 「今度はみさくら語ですか。ちょ、誰か何とかしてー」
 なんて助けを求める始末。
 「ここまで口調がアレになると誰かわからなくなるな」
 「青島くんは口調の特徴とか無いから特に分かりにくいよね」
 「そんな事言ったらお前の"だべさ"とか"でしょや"とか不自然だろうが」
 「人の口調にケチつけるのかなぁ…?良くないな…そういうの…」
 「しゅごいのおおぉぉぉぉぉぉ!!」
 「君達、ちょっと…頭冷やそうか」

―頭冷やしタイム―

 「すいませんでした」
 「ですわ」
 「だべさ」
 「では気を取り直して、北条院君からか」
 「……演習って、一体何をするのです?」
 王鎖に名指しされ、一歩前に出た北条院はそんな疑問を王鎖にぶつけた。
 「演習と言ったらやることは一つ、戦闘訓練だ」
 「せ、戦闘訓練っ!?」
 何をそこまで驚くことがあるのか、王鎖は小首を傾ける。戦闘自体あまり好きではない北条院は、
こんな事なら部屋で写真の整理でもしていればよかったと悔いたが、後悔先立たず。開き直った北条院は
やああぁぁぁぁってやるぜぇ!ヤリパンサー!と言わんばかりに息巻き、血気に疾り武装展開した。
ヤリパンサーと言うのはラムネ世代。だからなんだって?特に意味はない!
 「第六英雄、北条院佐貴子。正義の名の下、成敗します!」
 「お前にゃ無理だ北条院」
 茶茶を入れる青島のことなど無視して、北条院はいざ参らんと大剣を振りかざす。相手は機関で最も強いと
言われている王鎖だ。小心者の北条院がビビっていない訳がない。しかしこうも青島に馬鹿にされては彼女の
自尊心が黙ってはいなかった。
 「……君は…ちょっと私の相手には不足だな」
 「へ?」
 「ふむ、君の相手は私の部下にしてもらおう。一真、一菜!」
 王鎖が誰もいない廊下奥の暗がりに向かって名前を呼ぶ。よく目を凝らすと、暗がりには二つの人影が
蠢いているのが確認できる。
 暗がりから出てきたのは二人の男女。先程、王鎖の後ろをぴったりとくっついていた黄髪の二人組だ。
 「平民一真(ひらたみかずま)只今参上しました!隊長!」
 「平民一菜(ひらたみかずな)同じくさんじょうしまっした!たいちょー!」
 「へ…あ…?」
 突然現れた二人が何を意味するのか。北条院は普段使わぬ頭を捻り、状況を整理する。
 "君は私の相手には不足"と言われ、"この部下に相手をしてもらおう"と出てきたのがあの黄髪の二人組で
つまり私(北条院)じゃ王鎖さんの相手をするのは弱すぎるから代わりの相手を……
 「プライド崩壊!!」

207正義の定義:2010/07/12(月) 22:20:41 ID:hIOaKlvQ0
 明らかに自分の力を過小評価されていることに気がついた北条院はテンションだだ下がりでリストラされた
中年サラリーマンのごとく負のオーラを纏いだした。正直、評価されるほど能力が高いわけでもないが。
 「君には私の直属の護衛……平民兄妹と戦ってもらう。彼らの腕は私も買っている」
 「……いくら王鎖さんのお墨付きでも、英雄デバイスの相手にはなりませんわ。舐められたものです!」
 英雄デバイス……機関が開発した最新鋭の戦闘兵器。その力を身を持って知る北条院は王鎖に忠告する。
 「ふっ……それなら心配には及ばない。一真、一菜、見せてあげなさい」
 王鎖の一声により、平民兄妹は懐から黒い小箱を取り出す。瞬間、北条院の顔色が変わる。当然といえば
当然。英雄デバイスは十二個しか無いはず。しかし二人が手にしているそれは?見紛う事無き英雄デバイスであった。
 「どういうことですの……それは!」
 「俺から説明しますよ、オープン!」『"セットアップ"』
 オープンデバイスと同じように発光したそれは、宙を舞い……武装となって一真の体に装着される。一見、
オープンデバイスのような外面をしているようだが…?
 「これは『汎用デバイス・量産試作型』、英雄デバイスの機能軽量版です」
 「試作……量産!?」
 北条院だけではなく、白石や青島もその事実に驚く。英雄デバイスがよもや量産されていたなどとは
知りもしなかったためである。
 「とはいっても〜…まだまだ試作段階だし、量産しているわけじゃないけどね!オープン!」『"セットアップ"』
 妹の一菜も武装展開し、その身を無骨な武具で固める。ここで一つ注釈を入れておこう。英雄システムと
異なり、彼らの汎用デバイスにはメイン武装が存在しない。代わりに"カッティングトリガー"と呼ばれる拳銃に
小ぶりな刃物が装着された武器が備わっている。その上オープンデバイスの機能もそこそこ実装
されてはいるがほぼ下位互換な出力効果となっているようだ。そんなかんじらしいよ!
 「まあ劣化模造品って所……ですの?」
 「その劣化模造品の力……見てみるかい?」
 対峙する両者。準備は整い、後は戦闘開始の合図を待つばかり。
 「彼らを甘く見ないことだな。武装解除させるか参ったと言わせれば勝負有りだ。では、早速始めなさい!」
 「あら、私を甘く見ないで欲しいですわね?コレでも私、"英雄"ですし?」

―戦闘開始!!―
 
 「行くぞ!一菜!」
 「うん!お兄ちゃん!!」

 「……え?ちょっとまって二人相手なn」

 カッコつけた手前、北条院が一層ヘタレに見えました。


―――…

 (……鬱憤。イライラする)
 施設内を無意味に徘徊するゴスロリ少女、天草。彼女には謎が多い。
 天草は一人でいることが多く、その心の中は誰にも明かさない。
 (だれか遊んでくれないの?つまんない)
 機関でも特に異質な彼女は決して集団に馴染むことは無い。正義のために戦うこともない。
 「……っ…」
 ここで、何かを察知した天草は立ち止まる。懐のデバイスが震える。狂い、疼く。侵食された本能が告げる。

 ―異形が現れた―

 「……好機。丁度暇だったし」
 「行きましょう。餌の時間よ『天后』…」

 そう言って、天草は足取り軽く闇へと溶けていく。彼女の姿はもう見えない。

208正義の定義:2010/07/12(月) 22:22:42 ID:hIOaKlvQ0

―――…

 「はぁ!せいッ!」
 「うおっと!」
 「大丈夫お兄ちゃん!?」
 ぐるんぐるんと振り回される大きな剣。いかんせん大きすぎるため太刀筋が分かりやすい。
 北条院もその事を痛感していた。戦闘を開始してから数十分は経つが、自身の刃が平民兄妹に当たる
気がしない。おもしろい程よく避けられる。
 「ありゃー……だめだめだな北条院」
 北条院の戦いっぷりに、青島は思わずそう言葉をこぼさずにはいられない。怠けてきたツケである。
 「五月蝿いですわ!今から巻き返すところなんだから見ていなさい!」
 『"オーラ""ソード"』
 このままではいけないと危機感を顕にする北条院。攻勢に出る為、コードをデバイスに入力する。
電子音と共に発せられる青き光。それは北条院の大剣の刀身を包み、さらに巨大な刃と化す。
 「どうです!」
 「さらに大きくしてどうすんだよ……」
 「くらいなさい!!」
 ぐあっと、振り下ろされる蒼き刃。平民兄妹は後方へと後ずさり回避する。そして間を置かず北条院に
向かって射撃を行った。
 「!?」
 無駄のない動きに焦る。訓練された動きだと、北条院には思えた。
そしてそれは北条院の思い過ごしなどではなく、本当にこの二人、平民兄妹は数多の特訓を乗り越えてきた
精鋭である。それくらいの力量がなければ、とても王鎖の護衛など務まらないのだから。
 「一菜!?ケガはないか!?」
 「大丈夫だよお兄ちゃんっ!」
 「あーよかった!それじゃあこのまま一気にカタをつけるぞ!」『"ラピッド"』
 「うん!」『"ラピッド"』
 コードを入力し、北条院にむかって駆け出す二人。矢の如しスピードを誇る特攻に北条院は内心動揺しつつも
大剣で迎え撃つ構えを取った。迫り来る二つの影。息を飲みその影を睨む。北条院の取る行動は一つ、前後
への回転斬り。二人という利点を彼らが活用しないわけがないと北条院は踏んでいた。となれば前後からの攻撃が濃厚であると考えた為である。

 …しかしその考えも、突然に響くアナウンスによって無駄となってしまう。

 『全戦闘員に告ぐ全戦闘員に告ぐ!侵入者反応有!異形である可能性大!直ちに索敵行動へと移行してください!繰り返します―』

 「なんだ…?」
 本部施設全域に流れるアナウンス。それは王鎖達の演習を止めるのには十分なものだった。
 「侵入者……ですって?」
 「何かヤバげじゃねぇ?」
 「でしょや」
 相変わらずボケーっとしている白石たちとは相反し、王鎖は何時にも増して顔を強ばらせ、平民兄妹に指示を
出していた。アナウンスを聞いて半ば条件反射的に瞬時、適切な判断をするところはさすがとしか言いようがない。
 「演習は中断だ。悪い鼠が迷い込んだらしい」
 「でしょうね」
 「私たちは早速侵入者の捜索に当たる。君達も各自行動に移ってくれ」
 「ふぁーい」
 「おいーっす」
 王鎖から演習中断の旨が伝えられ、白石と青島は一安心して返事をする。王鎖と戦うくらいなら異形と戦った
方がマシなのだろう。
 「……ふ、ふん!全く、あと少しで勝てるところでしたのに」
 冷や汗を拭い、作ったような残念顔で言う北条院。そんな彼女のある一点を見つめ、白石と青島は「ああ…
これは負けていたな…」と呆れるのだった。
 「さ、なにをしていますの!私たちも行きますわよ!」
 そう言った北条院の下半身は、パンツ一丁であった。

209正義の定義:2010/07/12(月) 22:24:50 ID:hIOaKlvQ0
 「はぁ……」
 トイレの鏡に向かって溜息をつくのは陰伊女史か。その億劫な表情が彼女の心理状況を物語っている。
苦悩に縛られ重くなった心の蟠りを吐き出すように深い溜息を出そうと彼女の心は一向に晴れることはない。
 「私は……私がわからない……何をすべきなのか…わからない……」
 ただひたすらに繰り返される自問自答。答えのでない自らへの問いかけに、苛立ちだけが募る。
 「もういっそ……死んだら楽になれるかな……?」

―「いいねぇ!そうしなよ……」―

 「!?……誰ッ!」
 自分以外誰もいない筈のトイレに響く他者の声。陰伊は一気に警戒を強める。声の主は何処だと陰伊は室内
全域を見回すが……それらしき姿はない。
 「ど、何処?……出てきなさいっ!」
 「ここだよ」
 「ッ!?」
 耳元で声がしたかと思い、陰伊は後ろを振り向こうとするも、自身の首が何かに掴まれていて振り向くことができない。
腕だ。紫色の腕が陰伊の首を掴んでいる。そしてその腕は、鏡の中へと繋がっていた。
 「か……は……!?」
 「ひっひっひ…くるしいか?おりゃおりゃ!」
 首を締める腕が片手から両手へ増える。ギリギリと締められる己の華奢な首に危機を感じる陰伊。
抵抗しようと手を振り回すも相手には当たらない。何故なら陰伊の首を締めている紫色の腕の持ち主は、
鏡の中に居るのだから。
 「おでの名前は紫鏡……どうしてこんな事になってるかワカンネだろ?おでは鏡の中を移動することがデキンダヨ」
 「な……!?」
 「このままおとなしくおでに喰われろヤ?アハハハ!」
 首を締める力が一層強くなる。落としにかかっているようだ。それを分かっていて、陰伊は抵抗をやめた。
 (ああ……ここで死ぬのかな……でも…もういいや……死ねば……許してもらえるよね……)
 「ごめ…なさい…おと…さん…あかあ…さん…」
 ごめんなさい……陰伊…三……!
 陰伊の大事にしていたカエルのお守りがポトリと床に落ちる。そんな時だった。

 「ちょおおおおおおっとまったあああああああ!!」
 『"ブレイブ""クロウ"』

 鉤爪が、トイレの鏡を割る。紫色の腕はいつの間にか陰伊の首から消えていた。
 ふと、目の前の少女と目が合った。そこには、陰伊の見知った顔があった。
 「幸ちゃん……!」
 「助けに来たべさ」
 白石幸。第十一英雄白石幸である。
 陰伊はすぐにでも「ありがとう」と言いたかった。しかし先程まで無視していた手前、素直になれない。
 「な、なんで助けに来たの…っ!別に……あのまま死んでも……」
 これでは感謝どころか、その逆だ。
 「……陰伊ちゃん」
 「……な、なに?」
 「馬鹿っ!大馬鹿者!」
 「っ!?」
 「愚か者!未熟者!世間知らず!自意識過剰!社会不適合!被害妄想!」
 「…………」
 「クズ!ゴミカス!ゴキブリ!ビッチ!ゴキブリ!ビッチ!ゴキブリ!ゴキブリ!ビッチ!」
 「ちょっとそれ言いすぎじゃない」
 「うん言い過ぎた」

210正義の定義:2010/07/12(月) 22:27:37 ID:hIOaKlvQ0
 「……何で、死んでもいいなんて言うのさ?」
 白石は陰伊に問う。その言葉の真意はなんなのか、白石には判りかねた。
 「私は……人を殺したんだよ……生きている価値なんて無いよ……」
 「そういうこと……陰伊ちゃん?死んだからって罪は消えないよ?」
 「じゃあ……どうしろっていうの!?わ、私にはこれしか……!」
 「逃げるつもり?」
 「逃げる…?」
 「逃げてるだけだよ、それは。死んで楽になろうだなんて……ホント甘いよね陰伊ちゃんは」
 「そ、そんな事思ってない!」
 「思ってるよ。陰伊ちゃんは現実と向きあおうとしてない。嫌なことから逃げるのが許されるのは子供の間だけ」
 「陰伊ちゃんはいつ大人になるの?」
 「!!」
 陰伊の肩がビクっと震える。まるで自分の心臓を掴まれているような感覚に陥る。
白石はまっすぐと陰伊の瞳に目を合わせていた。幼子を叱る母のように。きびしい目で。
普段とは対照的な白石の様子に、陰伊は戸惑っていた。白石のこんな顔、陰伊は見たことがない。
陰伊には、今の白石が自分よりも遥かに大人に見えた。それと同時に、己の幼さを実感した。
 「人はいつか、変わらなくちゃいけない時があるんだべさ……陰伊ちゃん」
 「ひ、人はそう簡単には変われないよ……私はどうすればいいのか……わかんないよ…」
 「それは……」
 「いーっつまでくっちゃべってんのかなぁ!?アア?」
 そう言って廊下の鏡の中から現れる紫色の皮膚の異形"紫鏡"。針のように先の尖った人差し指をゴムの
ように伸ばし、白石を襲う。白石のゴーグルに紫色の物体が一直線に伸びてきているのが映る。
白石は目を見開き、感覚を研ぎ澄まさせる。単調な動きだ、白石にはそれの動きが手に取るようにわかった。
 「寧ろ何で今まで待っててくれたのか疑問なんだけど〜!そおいッ!」
 「うギィ!?」
 白石の目の前まで来たところで、異形・紫鏡の人差し指が切り落とされる。緑色の血飛沫があがる。
自若とした、確実に見切った一撃。いつものおちゃらけた白石の顔は、もう何処にもなかった。
 「ヤッてくれるじゃん……!」
 人差し指を切り落とされ苦痛に表情を歪ませる紫鏡は逃げるように鏡の中へと引っ込む。
 白石はすかさず腰のハンドガンで鏡を射ぬいた。
 「やったしょや?」
 「それって生存フラグだからさぁマジデぇ〜」
 別の鏡から上体を覗かせる紫鏡。そこからまたしても指を伸ばし、白石の肩を掠める。
 「くっ…!」
 「まだまだいくぜえぇぇぇぇ!!?」
 調子づいた紫鏡は攻撃の手を強める。鏡から出て白石の身を切り裂いては鏡にまた戻る。
ヒットアンドアウェー、効果的な戦法だ。別名チキン戦法。しかしこれで白石が攻撃できない事もまた事実。
 「うぐ……!卑怯でしょや……!!」
 「卑怯もらっきょも大好きだぜええええ!!」
 攻撃はどんどん激しくなっていく。どんなに切りつけられても、血反吐が出ても、白石は決して膝を折らなかった。
 「幸ちゃん……!」
 (私は…何のために英雄になったの?……あの子との約束を守るため……だったかな……?きっかけは
そうだったかもしれない……何が正しいのかわからないし……どう罪を償っていけばいいのかもわからないけど…でも…!)
 「うあッ!?」
 一方的にいたぶられていた白石は紫鏡の強力な一撃により陰伊の横まで吹き飛ばされた。
衝撃のあまり、武装も解けてしまう。
 陰伊の足元に転がる白石のオープンデバイス。そのすぐ近くでキラリと何かが光った。それは陰伊の大切な
カエルのお守りだった。
 それを見た陰伊は何かを決心したかのような真剣な面持ちとなり、お守りと白石のデバイスを拾う。
 「陰伊……ちゃん?」
 「幸ちゃん……私、もう逃げない」
 強く、自分に言い聞かせるように言う陰伊。瞳に宿る光が、意志の強さに反映されより一層輝きを増した。
 「私は今でも何が正しいのか、正義がなんなのかよくわからない。……でも、変わらなくちゃいけないんだ。
弱いままの自分じゃいられない」
  「戦うのは嫌だ……また誰かを傷つけてしまうかもしれないから…でも…それ以上に……」

―目の前で誰かが傷ついているのを見たくない!!―

 「英雄『大陰』・『白虎』…出ます!!!」

211正義の定義:2010/07/12(月) 22:32:16 ID:hIOaKlvQ0

 二つの黒い箱が宙を舞う。
 眩い光が、陰伊を包む。熱くたぎるような強い光。内なる闘志が燃え上がり、純血の血流が脈打つ。
魂の慟哭。敵を討ち滅ぼさんと鼓動が高鳴る。
 武装展開。光が収まり、装備に身を包んだ陰伊の腕に握られていたものは、いつもとは違う三枚刃の双剣。
 「か、陰伊ちゃん……何か武器いつもとちがくない?」
 「喧嘩って言うのはね……ノリが良い方が勝つんだよ(CV.関○彦)」
 『"ブレイブ""ダブルセイバー・トリブルブレイド"』
 そう言い陰伊はコードを入力する。三枚刃の双剣が振動する。
 「はああああぁぁぁぁぁッ!!」
 怒声と共に斬り込む陰伊。等間隔に立て掛けられた鏡に写る陰伊の姿は徐々に速度を増して、鏡に写る
時間が約一秒未満になったところで陰伊は紫鏡に斬りかかった。
 「無駄だねッ!!」
 紫鏡は余裕の表情を浮かべ、鏡の中へと入っていく。
 「逃がさない!!」
 陰伊はハンドガンで紫鏡の入った鏡を射抜く。しかしそれでは紫鏡を倒すことはできない。
調戯うように紫鏡は他の鏡から顔を出す。今度はそっちかと陰伊が射抜く。するとまた紫鏡は別の鏡……
この流れが数十回繰り返された。
 「陰伊ちゃん……(ホントはどうするかわかってるけどお約束的に)このままじゃ埒があかないべさ」
 そもそもこの手の相手の攻略法となると手段も限られてくるわけで、白石も薄々陰伊のしていることに気がついていたが。
 「まぁ見てて。私の作戦はもう成功してるよ」
 とまぁ、ノリに乗っている陰伊に水を差してはいけないと黙っておいた。
 『"ゲール""ダブルセイバー・トリプルブレイド"』

 「くっくっく……次はこっから顔出してやるか……!」
 陰伊の背後の鏡から攻撃を仕掛けようと鏡の外に上半身を出す紫鏡。彼は確実にやれると思っていた。
その心中は張り裂けそうなほど興奮しており、快楽の堤防が正に今決壊せんとしているところだった。がしかし!
 「そこだっ!」
 「何ぃ!?」
 陰伊は振り返りざまに紫鏡を一閃する。なんかお約束な流れになってきたよっ的な確変タイムである。
 「ぐあぁぁぁぁぁっ!?貴様ァ!何故おでが後ろから出てくると……!?」
 「あなた……馬鹿だよね。最初に"鏡の中を移動できるって"自分の能力をばらしちゃうなんて……」
 「ぐっ…!」
 「幸ちゃんと貴方の戦いを見てて疑問があったの。そしてそれは実際に戦うことで確信に変わった!」

 「貴方は、鏡に写った鏡にしか移動できない!!」

 陰伊は確固たる事実を紫鏡に突きつけた!
 「だから貴方の移動できる範囲を徐々に減らすため、誘導しつつ鏡を割っていったの。もう貴方は逃れられない!観念しなさい!」
 「く……畜生!!ここは逃げるが勝チィ!」
 「甘い!」
 紫鏡が動くよりも早く、陰伊の刃が紫鏡を斬り裂く。紫鏡は壊れたラジカセのような情けない声を発し、
鏡の中へと沈んでいった。
 
 「……やったね、陰伊ちゃん」
 「変われたかな……私?」
 陰伊は白石に聞く。自分から見ただけじゃ変化はわからない。白石は答える。見たままの、ありのままの答を。
 「変わったよ。見違えた」
 人は変わらなくてはいけない。だが、変わることが正しいというわけじゃない。
 (正しいことなんてわからない…だけど…)
 「今自分にできることを、やっていきたいんだ」
 「陰伊ちゃん……」
 「これが人殺しの償いになるかわからないけど……何もやらないよりはマシだと思うから……私は、苦しむ人々の為に戦う!」

 (……もう逃げない…そう、決意したんだから!!)

212正義の定義:2010/07/12(月) 22:35:13 ID:hIOaKlvQ0

―――…

 「はあ、はぁ……何だってんだよ…!?」
 満身創痍ながらも、紫鏡は生きながらえていた。惨めに敗走する中、内なる憎悪だけが増幅する。
 「くそーー…アイツウ……今度会ったら…!!」
 「……無理。二度目はない」
 「!?……誰だお前は!?」
 紫鏡の前に立ちふさがるゴスロリ少女・天草。その手に握られている紅いデバイスが禍々しく光る。
 「…雑魚に名乗る名前なんて無い。変身・装着」
 『"Fusion Load"』
 朱肉に覆われる天草。しばらくしてそれを突き破るようにして現れる紅い鎧。
 「今日はイライラするから、貴方で遊ぶことにする」
 「な……お前……!?」
 「ねえ、これ、あなたに耐えられる?」
 『"Predation Load"』
 くぐもった声がどこからか発せられる。瞬間、天草の左腕が肉の管に包まれ、獣のものとも昆虫のものとも
つかぬ大きな口へと変化する。紫鏡はその身の毛もよだつ風貌に声を上げそうになった。だがその声を上げる
口には既に肉の管が巻きついており、声が出せない。そしてその管は天草の左腕の口の中へと繋がっていた。
 「……っ…!?ッ…!!」
 「『天后』の糧となれ」

―――…

 「天草くんについて?」
 「ふぇ!」
 天草との戦闘後、気にかかることがあったトエルは大和局長にそのことを尋ねていた。
 「なぜ……天草くんの事を?」
 「あいつ、いぎょーのはんのうがしましたし!」
 「なるほど、そういうことか……ふむ、君には彼女の事を離してもいいかもしれないな」
 「ふぇ?」
 「まず、天草くんののデバイス。あれは"奴"が開発した…通称"フュージョンデバイス"……成長するデバイスだ」
 「せい…ちょう?」

―――…

 ぐちゃ……ぐちゃ……

 「雑魚。全然強くなった気がしない」 
 血肉を啜り、紫鏡だったものを喰らう天草の左腕。
 「これじゃあ全然足りない。もっともっと、強くならなくちゃ」

 その様相は、異形そのものであった。

 …かくして、十二人の英雄が舞台にあがり、いよいよ物語は次の局面へと移行する。
はてさて、彼らを待ちうけるものとは……?

                                  続く

213正義の定義:2010/07/12(月) 22:38:30 ID:hIOaKlvQ0

―次回予告―
……姉さん、事件です。

 「火燐たーーーん!!」
 「うせろ!」

私、変態に拾われてしまいました。

 「火燐たんは……生理とか、まだなの……?」
 「……何でそんな事聞くんだ…?」
 「え…だって経血……あ、やっぱなんでもない」
 「経血!?一体何するつもりだよ!!」

毎日のように節操の危機を感じています。

 「私天才ですから!!パンツぐらい被るわぁ〜!」
 「そんなに被りたきゃ自分のパンツかぶれよ!!今すぐ私のパンツを脱げ!」

それでもなんとか、人並みに生きています。 

次回。正義の定義・第九話
 「超弩級変態魔法少女ひととせたん!春夏秋登ー場ッ!!」
はっぴーらっきーみんなにとーどけ!!

214名無しさん@避難中:2010/07/12(月) 22:41:10 ID:hIOaKlvQ0
投下終了。最近色々忙しくて投下ペースが落ちている気がする。
以下キャラ設定

王鎖 珠貴(おうさ たまき)♂
《第二英雄・齢(25)
使用デバイス・【朱雀】
国のために正義を貫く愛国者。お固い性格で、冗談が通じない。人望厚く、部下に慕われる
良い上司。みたいな人。茶髪の長髪。整った顔立ちで女性組員からの人気も高い。
異形を心から憎み、人々が安心して暮らせる世の中を作るため日々尽力する。
ちなみに、隊を率いることの出来る人間は彼だけである。
武装は【イレブンソード】。11本の異なる剣を浮かせたり飛ばしたり自在に操る事ができる。

平民一真(ひらたみかずま)♂
《王鎖直属護衛・齢(20)
使用デバイス・汎用デバイス(試作型)
王鎖の護衛。深く王鎖の事を慕う濃い黄髪の青年。シスコン。

平民一菜(ひらたみかずな)♀
《王鎖直属護衛・齢(16)
使用デバイス・汎用デバイス(試作型)
王鎖の護衛。ちょっぴりやんちゃで好奇心旺盛な黄髪の少女。ブラコン。

大和局長(やまときょくちょう)
《最高責任者・齢おそらく60以上
再生機関立ち上げ当初から期間の要職に就くエライ人。長いヒゲが特徴。
戦国武将のような顔立ちの男。機関内のまとめ役だが最近勢力が分断し始めてとても苦労している様子。
基本異形に対していいイメージは無いようだが、無闇な異形の殺戮は好まない。

駄文長文御免

215名無しさん@避難中:2010/07/12(月) 22:44:10 ID:6bJoivb60
行ってくる

216名無しさん@避難中:2010/07/12(月) 23:07:41 ID:6bJoivb60
投下終了
北条院ェ……

217名無しさん@避難中:2010/07/12(月) 23:32:56 ID:hIOaKlvQ0
圧倒的感謝…ッ!

218名無しさん@避難中:2010/07/13(火) 19:07:51 ID:LcoC8npo0
投下の代理をお願いします

219甘味処繁盛記 感謝編:2010/07/13(火) 19:10:12 ID:LcoC8npo0


昔の夢だ。
いわゆる神の視点。
自分がいる、と桃太郎を薄らぼんやり記憶の中の自分を見つめる。
対するは二刀流。
御伽の国の、最後の作品。
最強。
武蔵と呼ばれた男。

桃太郎から、切り出した。
手を上げる。

『よう』
『よう』
『めちゃくちゃだな、ここ。加減ぐらいしろよ?』
『いや、局所的な地震と台風と津波と自然発火が不幸にもいっぺんに起こってな。いつも善行を積んでいる俺以外何もかも壊れて全員死んだ』
『まぁ、お前が暴れたら自然災害みたいなもんだからな。いや、前、クレーターみたいな穴開いてたな。やったな宇宙災害クラスじゃねぇか』
『俺にも人権を認めてくれ』
『勝ち取れよ……いや、お前は、お前だけは、お前だけが、御伽の籠の中で勝ち取ったんだな……』
『謙遜するな、お前も俺と同格さ。ケンカするならお前だといつも思ってた』
『お前の方が強いよ』
『お前の方が長いよ』
『ずっと戦い続けては、いたな』
『じじいが頑張ったもんだ』
『だからこれにて頑張るのはお仕舞いだ。団子でも売って暮らすさ』
『第三の人生だな。俺はこれから人生が始まるぜ、大先輩』
『目的は?』
『戦う事』
『何と?』
『強い者』
『いつまで?』
『いつまでも』
『なぜ?』
『そりゃ、お前、決まってるだろう、』

声がそろう。

『『面白いから』』

『さしあたって北に行く』
『何か狙いがあるのか』
『御伽噺の真似して生まれた俺たちだ。本物に挑んでやろうじゃねぇか』
『本物?』
『白面金毛九尾の狐』
『殺生岩のアレか』
『皮剥いで土産にしてやるよ』
『青森でリンゴ採ってきてくれ』
『自分で作れよ、果実』
『必要最低限しか、もう作らん』
『恐いか?』
『いや、恐くはない』
『ほう?』
『三人、ついてきてくれるやつらがいるんだ』
『どいつもこいつも、群れるのが好きな事だ。鶴女は子供に情をかけすぎ、女男は俺と兄弟になりたいとよ、笑わせる』
『つうとかぐや……まだ生きていたか』
『どうでもいい。そして、お前も異形と群れるか』
『お前と違ってみんな弱いのさ』
『謙遜するな、と言った。龍種相手にバチバチやったんだろう?』
『俺が異形の天敵ってだけだ。例えば機械でできた戦闘幼女が襲ってきたら死ねる』
『天敵なのに異形とつるむか』
『俺も異形だ』
『お前は人だ』
『なら、あの三人も人さ』
『なぜ、寄り添う』
『弱いからだ』
『強弱は問題ではないな。思いの問題だ』
『なら当人にしか計りしれんぜ』
『聞かせろよ』
『…………家族をな、もう一度欲しいと思った』

220甘味処繁盛記 感謝編:2010/07/13(火) 19:10:51 ID:LcoC8npo0


「おい! おい!」

天を衝かんばかりに成長した樹。
今なお、自然界に存在しえない速度で健やかに、伸びやかに大きくなる根元から。
一人の男が這い出ててきた。
いや。
二人だ。

「桃太郎以外にも誰かいたぞ!」

片や和泉武装隊、通称番兵筆頭。
隊長、門谷 義史。

そしてもう片方は。
干からび、ひなびて痩せ縮み、枯れ木よりも枯れた――老人の姿。
赤子よりも軽い、もはやミイラと見まがうしなびたその男を担いで、門谷は出てきたのだ。

「……主殿!」
「た、大将!」
「店長!」
「何ぃ!? これが?!」

いまだ奮闘を続ける魔犬が明らかな喜色を声に滲ます。
同じく、倒れ付す怪鳥も。
樹に埋もれ、もがく妖猿も。

水分という水分を失い、腕も細り、肉が削げ、髪もなくなったしわくちゃのソレ。
人と認めるにも難儀してしまう。
それが、あの活力にあふれた桃太郎だと。

「うははは、うははははは! 良し! 良し! 隊長、一生感謝する!」
「いや、しかしお前……これじゃあ」
「心配御座ざらん。本来の年齢に追いついただけで御座る」
「後は、……後はあの果実を……!」

怪鳥が身を起こす。
そして、妖猿が、見るからに消耗した疲労の顔つきなのに無上の喜びを咆哮に乗せるのだ。

「もう、キモイ吸収される必要もねぇ! 招杜羅、実ぃ頼むぞ!」
「承知!」

妖猿が、一層激しく身をよじる。
そして耳をつんざく裂帛の気合と共に、右腕を根の束縛から解き放ってみせた。
五指に……五爪に、荘厳な白いきらめきを宿し。
樹に突き立てた。

光が広がる。
まばゆい、白い光。
息を呑むほどに美しいのに、その光源に裂かれる樹が朽ちていく。
まるで錆び、壊れていくように。

散々の労力を果たし、それでもなお適わなかった樹の脱出をそれで簡単に妖猿は成す。
樹が震える。
まるで摩虎羅を吐き出すように。
それでも光は止まない。
錆びていくように、樹が腐り爛れ……滅びていく。

221甘味処繁盛記 感謝編:2010/07/13(火) 19:14:17 ID:LcoC8npo0
「俺はもういい。あいつらにも食わせてやれ」
「しかし……」
「今回はほとんどがあいつらの生命だからな。返してやってくれ」
「……承知」

招杜羅が、他の二騎へと駆けよれば。
桃太郎は門谷たち武装隊の面々へと向き直るのだ。
ほとんどの武装隊員の眼から、いろいろな感情がよく分かる。

「さて、何から話したものかな」
「お前らの経緯だ」

無論、応じるのは門谷だ。
桃太郎が頷いた。

「俺は一次掃討作戦よりも以前に死にかけていてな、そこを変人に助けられたんだ」
「変人?」
「まぁ、いわゆるマッドサイエンティストと言うと分かりやすいか。その時分で俺はすでにじじいでな」
「……さっきの干からびていたような、か?」
「あぁ、あれぐらいが実年齢だと思ってくれて多分問題ねぇくらいだ。で、そのマッドサイエンティストにな、植物の異形を移植されて生き延びた」
「移植だと?」
「移植だ」
「待て、一次掃討作戦より以前の話なのだろう?」
「そうだ。無論、魔素に対して理論も論理も確立されていない。異形は正真正銘の正体不明」

治療と言うには無謀が過ぎる。
そしてざわつく武装隊たちを見渡し、桃太郎は皮肉そうにこう言った。

「……だからこそ面白い」

門谷が目を丸くする。

「はぁ?」
「と、そのマッドサイエンティストは言っていたよ」
「狂ってるな」
「まぁ、俺はそれでそれで一命取り留めたわけだがな。しかもそれだけじゃなく、若返りまでしてな。以降ずっと異形の討伐やってた。さっきあの三人が滅ぼした樹、あるだろう」
「あれが、お前に移植された植物の異形か」
「そうだ。あれはどうも異形を食う異形らしくてな、二次掃討作戦までずっと戦いっぱなし……いや、食い散らかしてきたわけだ」
「異形の天敵というわけか、お前は」
「もともと、それを狙って移植がされたわけじゃないんだがな」
「摩虎羅たち、……あの三人については?」
「一次掃討作戦の後に出てきた異形でな。人間に好意的な異形で徒党を組んでいた中の三人だ」
「京都のようにか」
「もともと、各地を転々としていたのが、集まってできた徒党らしい。最終的には京都の一角を十二人で守護するに落ち着いていたな」
「……各地を転々としていた理由は、やはり、」
「そうだ、人に好意的だと言っても信じられなかったからだ。あいつらにとって京は天地だった」
「お前と会ったのも京か」
「ああ、共同戦線を張った間柄でな、二次掃討作戦が終わって、……目的がなくなってな。団子売り歩く俺のぶらり旅についてきた」
「……その、理由は?」

少し、桃太郎が考える仕草をした。
そしてまだ怪鳥と妖猿は横たわったままなのを確認したのだ。

「……家族だ」
「……ん?」

222甘味処繁盛記 感謝編:2010/07/13(火) 19:14:45 ID:LcoC8npo0
か細い声であった。
元の活力精力を取り戻した桃太郎にあるまじき、小さな声音。
もう一度、桃太郎が真達羅たちが横たわっているのを確認して、

「あいつらとはもう、家族みたいなもんだから、だ」

照れを隠せずこう言った。

「……そうか」
「なに笑ってやがる」
「お前のそういう表情は、始めて見るな」
「恥ずかしがり屋なんだよ」
「厚顔のくせによく言う」

桃太郎が笑う。
門谷も笑った。

さて、存在感が二つ、増す気配。
見やれば真達羅と摩虎羅が人の身に化けていた。
怪鳥の本性、妖猿の正体と比べて随分と縮んだが、しかし分かる。
疲労困憊してた先程よりも圧倒的に元気になっている事が。

桃太郎が作る果実は異形にとって極上の栄養だ。
異形そのものを果実に変えているに等しいのだから当然と言えば当然なのだが、
桃太郎以外の異形が摂取しても問題ない。

この性質を利用し、かつて瀕死の真達羅たちを、自分を後回しにして完全に回復せしめている。
これもまた真達羅たちが桃太郎を慕う理由の一つだろう。

三騎がそろって桃太郎の後ろに控えた。
桃太郎の頭が下がる。
同じく、三騎も。

「最後に迷惑をかけた。そして、……俺の命を助けてくれて感謝する」
「最後……?」
「和泉に来たのはな、割りと体力がカツカツだったからなんだよ。それもさっき戻った」
「……つまり」
「また旅に戻るさ」
「……行く先は」
「さて、な。言ったろ、真達羅たちは最初転々としてたって。それと同じさ」
「何? 待て、それじゃあ、お前ら、異形だから、旅してるってのか」
「そうだ」
「なぜだ?」
「異形だから、だ」
「そうじゃねぇ。なぜ京に留まってない」
「……いろいろあってな。真達羅たちの仲間に龍がいる。こいつが二次掃討作戦中に暴走してな、俺が封印はしたがいずらくなっちまったんだ。留まっているのは封印を見ている虎だけだ」
「……なぜ、和泉に留まらねぇ」
「異形だから、だ」
「理由にならねぇ。おい、なぜ俺がお前を助けたか分かるか?」
「番兵だから、だろう」
「そうだ。番兵だからだ。番兵は誰を守るか、分かるか?」
「……身内だ」
「つまりお前らは、もう身内だっつってんだよ」

桃太郎が、目を閉じる。
三騎は口を挟まない。

223甘味処繁盛記 感謝編:2010/07/13(火) 19:16:34 ID:LcoC8npo0
「異形は…… 「もう、一組いるんだよ、和泉にゃ」
「……クズハという少女か」
「そうだ。その娘とな、ある男が家族なんだよ」
「……聞いてはいる」
「血じゃねぇつながりだ。むしろ、血を流してできたつながり……お前らも、そうだろう」
「そうだ」
「分かるか。もう、そんな土台がある。お前ら一人二人増えて、問題あるかよ」
「あるだろう」
「和泉ナメんじゃねぇ。誰が隊長をやってると思ってる」

うつむく桃太郎の顔は、しかし穏やかだった。

「こいつらは、和泉にいてもいいのか」
「ああ」
「俺は、和泉にいてもいいのか」
「ああ」
「……俺は 「そろそろ、うぜぇぞ、おい。お前は誰のおかげで助かった」
「隊長だ」
「なら、恩人の言う事ぐらいは真に受けとけ」

桃太郎が笑った。

「そうだな」





<甘味処 『鬼が島』>
本日休業
不在:桃太郎、真達羅、摩虎羅、招杜羅

<お品書き>
 ・吉備団子
 ・きなこ吉備団子

 ・カルピス

<お品書き・裏>
 ・吉備団子セットA
 ・吉備団子セットB
 ・吉備団子セットC

224名無しさん@避難中:2010/07/13(火) 19:17:22 ID:LcoC8npo0
以上の代理をお願いします

225名無しさん@避難中:2010/07/13(火) 19:29:09 ID:IhYHr8X60
行ってくる

226名無しさん@避難中:2010/07/13(火) 19:34:29 ID:IhYHr8X60
おっと、1レス目が長すぎて行数制限に引っかかってた
分割か何か対処を頼む

227名無しさん@避難中:2010/07/13(火) 20:58:12 ID:LcoC8npo0
おっと、それでは下な感じでお願いします

228名無しさん@避難中:2010/07/13(火) 20:58:33 ID:LcoC8npo0


昔の夢だ。
いわゆる神の視点。
自分がいる、と桃太郎を薄らぼんやり記憶の中の自分を見つめる。
対するは二刀流。
御伽の国の、最後の作品。
最強。
武蔵と呼ばれた男。

桃太郎から、切り出した。
手を上げる。

『よう』
『よう』
『めちゃくちゃだな、ここ。加減ぐらいしろよ?』
『いや、局所的な地震と台風と津波と自然発火が不幸にもいっぺんに起こってな。いつも善行を積んでいる俺以外何もかも壊れて全員死んだ』
『まぁ、お前が暴れたら自然災害みたいなもんだからな。いや、前、クレーターみたいな穴開いてたな。やったな宇宙災害クラスじゃねぇか』
『俺にも人権を認めてくれ』
『勝ち取れよ……いや、お前は、お前だけは、お前だけが、御伽の籠の中で勝ち取ったんだな……』
『謙遜するな、お前も俺と同格さ。ケンカするならお前だといつも思ってた』
『お前の方が強いよ』
『お前の方が長いよ』
『ずっと戦い続けては、いたな』
『じじいが頑張ったもんだ』
『だからこれにて頑張るのはお仕舞いだ。団子でも売って暮らすさ』
『第三の人生だな。俺はこれから人生が始まるぜ、大先輩』
『目的は?』
『戦う事』
『何と?』
『強い者』
『いつまで?』
『いつまでも』
『なぜ?』
『そりゃ、お前、決まってるだろう、』


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