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( ^ω^)Secret Gardenのようです
41
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:23:53 ID:15xn.t.w0
17:50
暗くなった道を歩きながら、僕は考える。
( ^ω^)(図書室のカーテンはかなり傷んでいたから、早く新しいものにしてあげたいお。)
( ^ω^)(レースカーテンの方は、スケッチをしたら、家のパソコンでパーツを作っておくお。作り終えたら会社でまとめて発注するお。)
会社でもう長くベテランの枠に入っている僕が、このように仕事を家で進め過ぎるのはあまり良くない事だ。
仕事量に差が出て、新人や家庭を持つ社員へのプレッシャーになる。
けれど家に帰っても、家事以外他にする事がないのだ。
平日の食事は外でとるか、街の飲食店の弁当を取り扱う無人コンビニで済ませているし、洗濯は休日にまとめて出来るように替えの服には余裕がある。
家の床がバリアフリー仕様のため、ロボット掃除機もほぼ全ての部屋を走る。
特別大変な事は、秋に庭に落ちる葉の掃除くらいだろうか。
何より花のスケッチは、僕の学生の頃からの唯一の趣味だ。
だからあの庭を見たら、何かに留めておきたい。そう思うのは当然だ。
( ^ω^)(家で作業した分は、会社でマニュアル作りの時間にでも充てれば良いお。)
( ^ω^)(……。)
不思議な庭と屋敷に、不思議な人達。
( ^ω^)(…いや、デレさんは人じゃないそうだけれど…。)
僕は、その人達が喜ぶようなカーテンを作れるのだろうか?
【 第一話 ネモフィラの咲く庭 】
終わり
42
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:24:56 ID:15xn.t.w0
【登場人物】
( ^ω^)
内藤文高
カーテンメーカーの営業兼デザイナー
アラフィフ
平均よりも背が低い
ζ(゚ー゚*ζ
デレ
人ではないらしい
アンティークドレスを着ている
見た目は20代半ば〜後半
背が高い
('A`)
ドクオ
小さな金属製品の修理屋
年齢はデレと同じくらいの見た目
背がとても高い
43
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:26:15 ID:bsQbGWnk0
続きが楽しみだー!!
乙
44
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:27:01 ID:15xn.t.w0
【バタフライカップケーキ】
・バター 70g
・てんさい糖70g
・卵SMまたはMサイズ2個(Lは1.5)
★薄力粉120(うち20gは分離防止用に分けておく)
★ベーキングパウダー小さじ1
★スキムミルク5g
★牛乳大さじ2
★バニラオイル10滴
□生クリーム100ml
□てんさい糖大さじ1/2くらい
【作り方】
1.バターと卵を常温にしておく。作り始める頃にオーブンを180度に温めはじめる。
2.常温にしたバターとてんさい糖をフードプロセッサーに入れて混ぜる。
3.そこに溶いた卵を4回くらいに分けて入れる。2回入れたら小麦粉を20gほど入れると分離防止になる。
4.小麦粉(残100g)、ベーキングパウダー、スキムミルク、牛乳、バニラオイルを入れてフープロ混ぜ。
5.かなり膨らむので、液はカップの半分まで。180度のオーブンで約20分焼く。
【飾り付け】
1.ケーキの粗熱をしっかり取る。
2.生クリームは、砂糖を入れながら固めに立てて冷蔵庫で冷やしておく。
3.ケーキの上部を包丁で丸くくり抜き、半分にカット(半円状になる)。
4.ケーキの穴にスプーンか絞り袋でクリームを埋める。
5.半円の生地を蝶に見立てて置き、好みで粉砂糖を振る。(生地の置き方を内カーブにするか外カーブにするかで雰囲気が変わります。作中は外カーブ。)
45
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:28:48 ID:15xn.t.w0
最後の連載なので、ゲームをしましょう。
・全話の作中に登場した花を、品種まで全て知っていたら
・もしくは内藤が車のラジオで聴いた曲が当てられたら
お好きな花とキャラクターで短編を書いてプレゼントフォーユーします。
よろしくお願いします。
絵やレシピは各話有ったり無かったりです。
絵は撮った写真から線画を起こし、描き足した物が多いです。塗り絵だけしてたいです。
46
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:31:16 ID:15xn.t.w0
あ、あと準備中にずっとしくれがと呼んでいたので、そう呼んで頂けたらとても喜びます。
47
:
名無しさん
:2024/06/20(木) 07:18:32 ID:hj1yl5Rs0
乙!!優しい世界観ですね。あと、イラストが上手い。
48
:
名無しさん
:2024/06/20(木) 21:52:11 ID:D2vuZELQ0
最後!?
49
:
名無しさん
:2024/06/20(木) 21:56:24 ID:AvX.tj9U0
乙乙
雰囲気いいねぇ
バタフライカップケーキおいしそう!絵もめちゃ好き
花も曲も詳しくないくやしい
そして最後の連載寂しい…
50
:
名無しさん
:2024/06/20(木) 22:08:40 ID:ap0DLUYk0
おつ
素敵な雰囲気
51
:
名無しさん
:2024/06/25(火) 00:28:50 ID:yPo9iWtM0
乙!綺麗なイラストと雰囲気めちゃ好き!
52
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:05:43 ID:uUhGkg420
>>43
ありがとうございます!
ゆっくり進行ですが、よろしくお願いします!
>>47
ありがとうございます!
水彩でスプレーワークという技法に挑戦しました〜
>>48
はい!早く支援側に回りたくて全力で書いてます!
>>49
ありがとうございます!
バタフライカップケーキはちょっとした工夫の飾り付けなのに、食べるとなんだか倍幸せな気持ちになるのでぜひお試しください。
曲は最後のタイトルヒントから別のヒントを逆算するといけるかも!
居座ります
>>50
ありがとうございます!
行ってみたいブーン系観光地上位目指します!
>>51
ありがとうございます!
そう言って頂けると、絵も用意して良かった!
今もある場所と、もう無い場所がモデルになってます。
コロナのせいです。
53
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:09:57 ID:uUhGkg420
皆さんいかがお過ごしでしょうか?
知っている花ゲームは、(プリムラ)ウィンティーで何割かは仕留められたのではないでしょうか。
ノーマルなプリムラもゲームの世界から飛び出してきたような可愛らしさがありますが、ウィンティーはふんわりと儚げなところが素敵なお花ですよね。
【曲ヒント1】
その曲は、軽やかなアコースティックギターで始まります。(楽器に詳しくないのでおそらくですが)
曲ヒントは投下した日に1つ追加されます。
ヒントでその歌手にピン!ときたら、発表曲のリストを遡れば確実に当てられるようなヒントを最後に出す予定です。
予想は投下後の乙と同じタイミングで書き込んで頂けるとチェックしやすくて助かります!
その際は「◯◯の〜」、と歌手の短縮名や苗字を軽く添えてください。
予想タイム中は反応せず、曲名は最終話まで明かしませんが、最初に的中させた方のみ、完結後にご希望のお花とキャラクターを伺いに参ります。
仕上がり次第このスレか、ご希望であれば総合に短編として投下する予定です。
月一の投下を目指し、全9話くらいで7回の投下になる予定です。
よろしくお願いします。
54
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:13:07 ID:uUhGkg420
(∩^ω^)∩ パシャパシャ
( ∩ω∩) フキフキ
( ^ω^)「ふぅ…。」
( −ω−)人 ナムナム
( ^ω^)「…」
( ^ω^)「ツン。僕は顔を洗ったそばからテカテカになっていくおっさんになってしまったお。」
( ^ω^)「…。」
( ^ω^)「君はいつまでも、綺麗なままだおね。」
僕は、白いドレスを着て微笑む妻の写真に向かって、そう言った。
( ^ω^)「行ってきます。」
55
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:15:37 ID:uUhGkg420
【 第二話 かすみ草の時 】
https://imgur.com/a/H2ygCI8
.
56
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:17:00 ID:uUhGkg420
(*゚ー゚)「えへへ…。」
『今度の水曜日は、腕時計などの小さな時計を持ってきてください。』
先生がそう言っていたのを、お母さんに言うのをわすれたわたしは、こっそりとお母さんの小さな"かい中時計"をポケットの中に入れてきた。
金色で、とってもキレイ。
手をポケットに入れると、シャランとすてきな音がする。
(*゚ー゚)(家に帰ってから、すぐにもどせばいいよね…?)
三(,,゚Д゚) 三(-@∀@)
三(-@∀@)「やーいやーい!のっろまっのし〜ぃは!」
三(,,゚Д゚)つ「ちっこくっする〜!!」
(;>ー<)「きゃっ!!」バンッ!
うしろから、いつもの二人にランドセルをたたかれた。
57
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:17:58 ID:uUhGkg420
(*゚ぺ)q「のろまじゃないもん!!」
走るのがクラスで一番おそいから、二人にはそんな悪口を言われる。
(*゚ぺ)(あーぁ、朝からイヤな気分。男子ってどうしてこんなにコドモなの?)
だけど、いいもん。
きっと私の時計は、クラスで一番キレイなんだから。
( ^ω^) テクテク
( ^ω^)「おや、お嬢さん。ハンカチを落としましたお。」
( ^ω^)つ□「はい。可愛いひまわりの柄ですお。」
∑(*゚ー゚)「あ!ありがとうございます!」
いつの間にか、かい中時計の反対がわに入れていたポケットから落ちちゃったみたい。
( ^ω^)ノシ「いえいえ。お勉強、頑張ってくださいお。」
(*゚ー゚) 「…」
(*゚ー゚)「…ステキな人…。」
58
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:19:04 ID:uUhGkg420
( ^ω^) テクテク
4月も後半に入る頃。
民家の花々が彩りを見せ、僕の前を歩く子ども達は今日の休み時間は何で遊ぼうかと相談をしている。
ζ(^ー^*ζ「おはようございます。」
( ^ω^)「おはようございます。」
ドクオさんからのオーダーを受けて以来、僕は家で朝食をとり、小学校の通学路でもあるこの道から通勤するようになった。
それは毎朝ここを通れば、デレさんが門の近くまでやって来て挨拶をしてくれるからだ。
ζ(゚ー゚*ζ「行ってらっしゃい。」
(*^ω^)「行ってきますお。」
朝の光を浴びながら誰かに『行ってらっしゃい』と言ってもらえると、清々しい気持ちになる。
59
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:20:11 ID:uUhGkg420
( ^ω^)「おはようございますお。」
( ´∀`)「おはようモナ。内藤、今日は僕と一緒にシュールさんのお家に挨拶に行く日だモナ。」
( ^ω^)「はいですお。」
_____
___
__
( ´∀`)「おはようございます。」
( ^ω^)「おはようございます。」
車を少し走らせて着いたのは、立派な和風の家だ。
モナーさんが門のインターホンを鳴らすと、70代くらいの和服を着た女性がゆっくりとやって来た。
lw´‐ _‐ノv「おはよう。さぁさ、上がって。」
( ´∀`)「お邪魔します。」
60
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:21:58 ID:uUhGkg420
lw´‐ _‐ノv旦「ほら、玄米茶。」
( ^ω^)「ありがとうございますお。」
( ´∀`)「シュールさんの玄米茶は香り高いモナ。」
lw´‐ _‐ノv△「おだてても、おにぎりしか出ないよ。」
( ´∀`)「頂きます。」
お茶請けとして、梅干しのおにぎりが出された。
( ^ω^))「塩気が絶妙で、仕事を忘れてしまいそうなほど美味しいですお。」モグモグ
lw´‐ _‐ノv「私も、遊びに来たのかと思ったよ。」
lw´‐ _‐ノv「それで、今日は何?」
61
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:23:46 ID:uUhGkg420
( ´∀`)「今日は、挨拶とお伝えする事があり伺いました。」
( ´∀`)「僕はいよいよ社長になります。それで、今後のシュールさんの担当は、内藤がさせていただくこととなりました。」
モナーさんは公共の施設や、昔からの縁がある邸宅への営業、デザインを担当している。
現社長の息子で、僕よりも少し歳上だ。
入社当初は緊張したけれど、この人がこののほほんとした態度を崩したところを、僕は一度も見たことがない。
lw´‐ _‐ノv「私のお迎えなんてもう少しだし、うちだけ最後まで付き合ってくれてもいいじゃないか。」
( ´∀`)「そうはいきません。急ぎ仕事で済ませないのが、御社のモットーですモナ。」
( ^ω^)「よろしくお願いします。」
lw´‐ _‐ノv「しょうがないね。よろしく。」
廊下の房掛けにタッセルで纏められている朱色のカーテンは、広げると雲や鶴、富士の柄が現れる。
モナーさんが前回制作したものだ。
62
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:25:46 ID:uUhGkg420
( ´∀`)「今年もここの梔子は、随分と早く咲きますモナ。」
モナーさんが、お茶を啜りながら庭を眺めた。
lw´‐ _‐ノv「ああ。植えてもらった時からそうなんだよ。だからといって早く散る訳でもない、庭孝行な花さ。」
シュールさんが庭がよく見えるようにと、窓を開けてくれた。
僕達は廊下まで行ってそれを眺めると、甘い桃のような香りが鼻まで届いた。
( ´∀`)「梔子の香りは、待ち合わせをしている恋人が僕に気付いて駆け寄ってきてくれた時の香りと、そっくりだと思いますモナ。」
モナーさんが、背中に手を組みながら言う。
lw´‐ _‐ノv「それはモナーと奥さんで想像しろという事かい?いきなり大昔の惚気話を始めるんじゃないよ。」
( ´∀`)「それ以外に例えが思い付きませんでしたモナ。」
( ´∀`)「…この屋敷と庭に、僕は育てて頂きました。本当に、ありがとうございました。」
lw´‐ _‐ノv「そんなこと言って、たまにはここへ来るんだろう?」
( ´∀`)「はい。お茶を飲みに来ますモナ。」
63
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:26:54 ID:uUhGkg420
_____
___
__
( ^ω^)「モナーさんは、キザですお。」
車内は、モナーさんがシュールさんからもらった梔子の盆栽の香りで満ちている。
僕は運転をしながら、モナーさんを少しからかった。
( ´∀`)「思った事は、悪い事じゃなければ言うモナ。そうしないと誰にも見付けてもらえないモナ。」
( ^ω^)「…」
聞いた人がどう噛み砕けば良いか分からないような事を、モナーさんは時々言うのだ。
( ´∀`)「さあ、戻って仕事するモナ。」
( ^ω^)「そうですね。」
64
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:28:20 ID:uUhGkg420
____________________________
_____
___
__
(*゚ー゚) テコテコ
わたしが持ってきた時計を、となりのせきのヒートちゃんが『カッコいい!』って、すごくほめてくれた。
今日はとってもいい日だったな!
(*゚ー゚)(早く帰って、バレないようにもどさなくちゃ。)テコテコ
三(,,゚Д゚) 三(-@∀@)
三(-@∀@)「おっせ〜!おっせ〜!のっろまっのし〜ぃは!」
三(,,゚Д゚)つ「かっえれっない〜!!」
(;>ー<)「きゃっ!!」バンッ!
カシャンッ
(;*゚ー゚)「あっ…!!」
(;,,゚Д゚)「えっ…」
三(;-@∀@)「いこーぜ!」
65
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:29:37 ID:uUhGkg420
(;*゚ー゚)「どうしよう…こわれちゃった…!」
かい中時計が道路に落ちて、中の部品がちらばってる。
全部集めたけど、どうやってくっつければいいのか分からない。
(*;ー;)「元通りにならない…どうしよう…。」
お母さんが、おじいちゃんからもらった時計なのに。
(*;へ;) グスッ…ヒック…
(*;ー;)「……あれ…?」
(*;ー;)(朝まで、畑だったところが葉っぱでいっぱいだ…。)
もう家に帰らなくちゃいけないのに、どうしてもそのお庭が気になる。
(*;ー;)(どうせおこられちゃうもん。ちょっとより道しちゃお…。)
_____
___
__
____________________________
66
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:31:03 ID:uUhGkg420
16:15
((ヽ‘ω`)ゲソ…
僕は未だに慣れないファンシーな案件に苦戦し、精神を削って退社した。
後輩の芹沢さんにはよく、『乙女男子』と評される僕だ。
確かに先進的な機械のデザインよりも淡い色の花を見た時の方が心躍るし、工場に駆り出されてミシンを踏んだ事もある。
だけど流石に十代の女の子がメイン層の、キラキラとしたイメージに沿うのには骨が折れる。
その子達の気持ちになって、尚且つ三歩は先を行かなければいけない。
いくつか案を作って送ったので、そこから反応の良い部分をまとめて仕上げるしかない。
((ヽ^ω^)(こういう時は、自信失くすおね…。今日はちょっとだけ、ドクオさんのお庭に寄らせてもらうお。)
67
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:32:27 ID:uUhGkg420
_____
___
__
ζ(゚ー゚*ζ「内藤さん!」
門に入ろうとしたところ、デレさんが僕を見付けて駆け寄ってきた。
デレさんが走る度に、ドレスが左右へと少し揺れる。
その時、フワッと梔子の香りが、僕を包んだ気がした。
(;^ω^)
____________________________
( ´∀`)「梔子の香りは、待ち合わせをしている恋人が僕に気付いて駆け寄ってきてくれた時の香りと、そっくりだと思いますモナ。」
____________________________
僕は、今朝のモナーさんの言葉を思い出して戸惑った。
(;^ω^)(僕の服に、香りが付いていたのかお…?)
68
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:33:44 ID:uUhGkg420
ζ(゚ー゚*;ζ「こんにちは!」
今日はシニヨンをふわっとさせたような髪型をしているデレさんが、息を切らし気味で僕に挨拶をした。
( ^ω^)「こんにちはですお。今日もスケッチにお邪魔してもよろしいでしょうか?」
ζ(゚ー゚*;ζ「大丈夫ですが、ちょっと困った事がありまして…。」
( ^ω^)「?どうかされましたか?」
ζ(゚ー゚*;ζ「先ほどお客様が一人いらっしゃったようなのですが、見付からないんです。」
そう言いながら、デレさんは辺りをキョロキョロと見回している。
( ^ω^)「そうなんですかお?よろしければ、一緒に探しますお。」
ζ(゚ー゚*;ζ「ありがとうございます。よろしくお願いします。」
69
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:35:31 ID:uUhGkg420
僕はデレさんと二手に分かれて探し始めた。
メインの道から逸れた場所を、一つずつ見ていく。
木製のベンチと、トレニアの鉢。
こぼれるように咲くポリゴナムと、まっすぐに育った虹色のルピナスを横目に進む。
(;^ω^)ゞ(カラフル過ぎて、僕まで迷子になりそうだお…。)
そう思い、立ち止まった時。
何かが僕の横を通り過ぎた。
(;^ω^)(…!ミヤマカラスアゲハかお…!?)
昔図鑑で見た、高地に棲息する珍しい蝶に似ている。
黒と、光るような青緑の色。
けれど翅にはいくつか穴が空いており、どこか蝶番を思わせた。
その蝶が、桃色のラナンキュラスの辺りで留まろうとしていた。
だけど僕が気になったのは、その先のベンチだ。
茶色い鞄が置かれている。
70
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:36:34 ID:uUhGkg420
( ^ω^)「お…?」
(;*゚ー゚)
近付いてみると、かすみ草に囲まれて、しゃがんで困ったような顔をした女の子。
その目線の先には、モシャモシャと何かの葉を食べている子兎。
だけどその耳は、金属で出来ているようだった。
( ^ω^)(そしてこの子は…今朝の子だお。)
( ^ω^)「お嬢さん、どうされましたかお?」
∑(;*゚ー゚)「あ…朝の…!」
(;*゚ー゚)「あの…時計がこわれてしまって…」
(*;ー;)「学校の近くに知らないお庭があったから入ってみたら…時計がウサギになっちゃって…」
(*;Д;)「どんどん遠くまで走っていくから、まいごになっちゃった…!」
∑(;^ω^)「だ、大丈夫!僕が来た道を戻れば帰れるお。」
71
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:37:30 ID:uUhGkg420
(;^ω^)つ ソーッ…
(;^ω^)「捕まえたお…ベンチの鞄を持ってくださいお。道を戻りますお。」
(;*゚ー゚)「は…はい…。」
兎が驚いて飛び跳ねないように、僕が小声でそう言うと、女の子は素直にそれに従った。
(;^ω^)(…我慢だお。)
ラグラスのような尻尾が、手首に当たってくすぐったい。
72
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:38:57 ID:uUhGkg420
本筋の道に繋がったところで、デレさんが合流した。
ζ(゚ー゚*;ζ「良かった…!」
(;^ω^)「デレさん、この子の時計が壊れてしまったそうなんですお。」
そう言いながらそっと、胸に抱いた兎を見せた。
ζ(゚ー゚*ζ「ドクオさんのお客様ですね。ご案内いたします。」
デレさんはしゃがんで、女の子に目線を合わせた。
ζ(゚ー゚*ζ「お名前を聞いても良い?」
(;*゚ー゚)「しぃ…です。」
ζ(゚ー゚*ζ「しぃちゃん。ここは修理屋さんだから大丈夫よ。時計、直してもらおうね。」
(;*゚ー゚)「は、はい…。」
73
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:39:54 ID:uUhGkg420
屋敷の中に入ると、ドクオさんがどこかの部屋から出てきたところだった。
ζ(゚ー゚*ζ「ドクオさん。こちらの方の時計を修理してほしいんです。」
デレさんがそう言うと、僕の胸にいた兎はドクオさんの肩へとピョンと飛び移った。
(;*゚ー゚)「あの…お金は…」
( ^ω^)「僕が立て替えておくお。」
おそらく修理代は、小学生の小さなお財布では払えないような額だろう。
(;*゚ー゚)「でも…。」
('A`)「……」
僕達のやり取りを聞いていたドクオさんが、口を開いた。
('A`)「…図書室の掃除を。」
____________________________
74
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:41:32 ID:uUhGkg420
_____
___
__
( ^ω^)「しぃちゃんはこれを持っていってお。」
僕は案内された事務室の掃除用具入れの中から羽根ばたきを取り出して、しぃちゃんに手渡した。
それから掃除機と雑巾を持って、図書室に向かう。
ζ(゚ー゚*ζ ))「こちらを、真っ直ぐです。」
('A`)つ「…デレは、こっち」
そう言ってドクオさんが、デレさんの腕を軽く引いた。
ζ(゚、゚*ζ「えー…」
ζ(゚ー゚*ζ「お二人とも、後から行きますね。真っ直ぐ突き当りにある部屋です。」
( ^ω^)「分かりましたお。」
75
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:43:29 ID:uUhGkg420
図書室の中に入ると奥は窓で、少しクリームがかった壁に木の床と暖炉がある。
先程開けた扉の両サイドには、大きな本棚が1台ずつと、その近くには1人分の椅子とテーブル。
僕は遮光用のカーテンを取り付けるため、つい最近もこの部屋に入った。
( ^ω^)(本棚も窓も、高さがあるお。しぃちゃんには低い場所と…掃除機を頼むことにするお。)
電気を点け、窓を開けて換気をした。
窓の外からは草花の瑞々しい香りがして、まるで僕を庭へと誘っているようだった。
( ^ω^)「僕は脚立を持って来るお。しぃちゃんは手の届く高さまでで良いから、壁の木枠に付いている埃をはたきで取っておいてほしいお。」
そう言い残して、僕は先程の事務所に向かった。
( ^ω^)「…」
その途中で、僕がドクオさんと初めて会った時の部屋を通る。
ドクオさんとデレさんが、少し前に入っていった部屋だ。
((( ^ω^)(…とても仲が良さそうだったお。)
76
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:44:11 ID:uUhGkg420
('A`)「……………ダメか」
ζ(゚ー゚*ζ「…。」
.
77
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:46:44 ID:uUhGkg420
僕が図書室に戻るとしぃちゃんは頼んだ通りに、一生懸命羽根ばたきを振るっていた。
( ^ω^)「ありがとうだお。今度は僕が窓の埃を落とすから、それが終わったら窓側から本棚に向かう感じで掃除機をかけていってほしいお。」
(*゚ー゚)「はい。」
やる事が出来たからなのか、しぃちゃんは少し元気を取り戻したようだ。
僕は窓の埃を落とし終わり、脚立を持ってシャンデリア、それから本棚へと移動した。
(;^ω^)(掃除機に追いつかれないように、急がないといけないお。)パタパタ
本棚の中にはブックブラシが備えられていたため、それを使う。
まじまじと見ないようにはしているが、タイトルが自然と頭の中に入ってくる。
( ^ω^)(…花やお菓子の本以外は、僕でも知っているような有名な小説ばかりだお…。)
国内で発表された、わりと最近の本が多い。
この屋敷の本棚の中身としては、少しアンバランスな印象だ。
( ^ω^)(右下の棚に…小箱があるお。この部屋自体そこまで掃除が必要でもない状態だけど、この辺りは特に埃がないお…。)
埃取りが終わると、僕はバケツと水が必要な事に気付いて事務室へと向かった。
( ^ω^)「デレさん。」
ζ(゚ー゚*ζ「あっ。」
その途中には、図書室とは反対方向に向かうデレさんがいた。
ζ(゚、゚*ζ「すみません。ドクオさんに用事を頼まれたので、まだそちらに向かうには時間がかかります。」
( ^ω^)ノシ「あとは全体を拭けば終わりなので、大丈夫ですお。お気になさらず。」
78
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:50:24 ID:uUhGkg420
僕が必要な物を持って図書室に戻ると、掃除機をかけ終えたしぃちゃんが待っていた。
( ^ω^)「これから僕は、窓拭きをするお。しぃちゃんはまず机に椅子と、部屋の中の木枠を拭いてほしいお。終わったら僕も手伝って、最後は一緒に床を拭くお。」
(*゚ー゚)「分かりました。」
( ^ω^)つ□ キュッキュッ
タッセルでまとめられた緑色のカーテンの横の、窓を拭く。
そこから見えた庭は、少しだけ日が傾いていた。
( ^ω^)(庭もだけど、屋敷も英国風だお。)キュッキュッ
( ^ω^)「…そういえば、しぃちゃんの時計は、もとはどんな見た目なんだお?」
少しでも緊張が解れるようにと、話しかけてみる。
(*゚ー゚)「金色の、かい中時計です。丸くてつるんとした…」
( ^ω^)「それは素敵だお。懐中時計なんて、僕よりずっと前の人が持っていたような物だけど、最近の物かお?」
(;*゚ー゚)「いえ、お母さんの時計で…学校で使うのに今日だけ…ないしょで持ってきてたんです…。」
( ^ω^)「そうだったのかお…。」
してはいけない事ではあるが、今日が初対面の僕がどうこう言う話ではない。
大人の持ち物を羨ましがる年頃なのだろうと、僕は自身の子供時代の失敗と照らし合わせてしみじみとした。
(;*゚ー゚)「だけど、同じクラスの男子にせなかをはたかれて落としちゃって…」
Σ(;^ω^)「えぇっ!?それは酷いお!」
79
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:51:51 ID:uUhGkg420
(*゚、゚)「…。あーぁ、クラスの男子もおじさまみたいにやさしければいいのに…。」
(;^ω^)「…?おじさまって?」
(*゚ー゚)σ「おじさまですっ!朝もステキでした!」
そう言って、しぃちゃんは僕をうっとりするように見つめた。
ドクオさんのような、若い人相手ならまだ分かる。
しかし、アラフィフの僕に向けるような目ではないのだ。
(;^ω^)「気が付いたら、みんなする事だお。」
(*゚、゚)「そんな事無いです。知らない子だったら、私…勇気出ないかも…。」
(;^ω^)ノシ「いやいやそんな。」
( ^ω^)「…」
( ^ω^)「…そういえば。僕もその男の子達みたいな頃があったお。」
(;*゚、゚)「えー!?」
(;*゚、゚)「ほんとにっ?」
しぃちゃんが目を丸くして、僕を見た。
( ^ω^)「そうだお。女の子の手を強く引っ張って、困らせてしまった事があるお。」
(;*゚、゚)「えぇー、ちょっとイヤかも…。」
(;^ω^)「ウッ…」グサッ
80
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:53:42 ID:uUhGkg420
ζ(゚ー゚*;ζ「お待たせしました。」パタパタ
デレさんが、早歩きで図書室にやって来た。
( ^ω^)「もう、終わるところですお。」
しぃちゃんと一緒に雑巾がけ競争をしていたら、あっという間に床は綺麗になった。
( ^ω^)「広くてダンスが踊れそうなお部屋ですお。」
2台の本棚と机セット以外は、ほぼ何もない部屋だ。
ζ(゚ー゚*ζ「持て余してしまいますよね。ここ、今は私の部屋なんです。」
(;^ω^)「そうなんですかお?知らずにお掃除してしまいましたが…」
ζ(^ー^*ζ「お気になさらず。ありがとうございます。」
(*゚、゚) ムム…
しぃちゃんがパタパタと近付き、僕達の間に立った。
(;^ω^)「あっ、暇だったおね。ごめんお。」
ζ(゚ー゚*ζ「修理も終わったそうなので、行きましょうか。」
そう言われても、しぃちゃんは何故だか不機嫌そうな表情を変えず、今度は僕の横に立った。
ζ(゚ー゚*ζ「あらあら…。うーん…?」
ζ(^ー^*ζ「…恋敵ですかね?私。」
デレさんがそう言って悪戯っぽく首を傾げた。
僕は苦笑いして、『流石に違うと思いますお』という視線をデレさんに送った。
ζ(゚ー゚*ζ「だけど、日が暮れきる前に帰りましょうね。」
(*゚ー゚)「はい…。」
デレさんが先頭に立って、僕達は図書室を後にした。
ζ(゚ー゚*ζ「……」
ζ(^ー^*ζ「…ふふっ!」
デレさんは自分で言った言葉がツボだったのか、時間差で笑っていた。
81
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:56:58 ID:uUhGkg420
('A`)「…」
僕達が事務所の水道で手を洗い廊下に出ると、ドクオさんが待っていて兎をしぃちゃんに手渡した。
(*゚ー゚)「わ…」
時計の針のような形の金属の耳が、カチカチと小刻みに一定の音で動いている。
( ^ω^)(さっき僕が連れてきた時は耳は動いてなかった。…ということは、直ったみたいだお。)
ζ(^ー^*ζ「一番最初に来た門から出れば、もとの懐中時計に戻るよ。」
(;*゚ー゚)「えっ…?あ、ありがとうございます…?」
しぃちゃんがドクオさんに、よく分からないままお辞儀をしてお礼を言った。
未だに身体はふわふわとした兎の形で、本当に本来の物として直っているのか、確認の仕様がないのだろう。
それからデレさんが僕達を玄関へと向かうように促し、僕とデレさんでしぃちゃんを門まで送る事にした。
( ^ω^)「ウサギさん、大人しいお。」
(*゚ー゚)「はい。それに、あったかいです。」
しぃちゃんは胸に兎を抱いている。
(*゚、゚)「だけど、なんで時計がウサギになっちゃったんだろう…?」
( ^ω^)「不思議だおねー。」
ζ(^ー^*ζ ニコニコ
82
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:59:29 ID:uUhGkg420
(*゚、゚)σ「…あれっ?あの花、ウサギに似てる!」
(;^ω^)「おっ!?本当だお!」
しぃちゃんが指差した小さな植木鉢には、本当に兎の形をした花が咲いていた。
ζ(゚ー゚*ζ「名前もウサギゴケと言いますよ。とても小さくて、可愛いですよね。」
ζ(^ー^*ζ「ちなみに、食虫植物です。」
(;^ω^)「お…」
どう返せば良いのか分からなかった僕は、気不味さを隠すために自分の腕時計を見た。
( ^ω^)(もう、17時半だお。)
( ^ω^)「しぃちゃん。ここは明るいけれど、門を出ると図書室で見た時のお庭みたいに、少し暗くなっていると思うお。良かったらお家の近くまで送っていくお。」
(*゚ー゚)「あ!大丈夫です!すごく近くだし、GPSもあるし…」
(;^ω^)「でも…」
ζ(゚ー゚*ζ「ウサギさん。しぃちゃんがお家に着いたら、ドクオさんに教えてくれますか?」
デレさんがしぃちゃんの抱く兎に顔を近付けて、そう話しかけた。
すると兎は、耳を忙しなく動かして『まかせて!』と返事をするような仕草をした。
ζ(^ー^*ζ「ありがとうございます。これなら大丈夫ですね。」
83
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:00:43 ID:uUhGkg420
( ^ω^)?「どうして大丈夫なんですかお?」
僕は気になって、デレさんに聞いてみた。
ζ(゚ー゚*ζ「ドクオさんはお客様の持ち物とお話が出来るんですよ。」
ζ(゚ー゚*ζ「来る時なんかも、遠くにいる時点から『行くよ』と物が教えてくれたり、会話したりするそうなんです。」
Σ(;^ω^)「ええっ!?」
(;^ω^)「そうなのですかお…。それは凄いですお。」
もはや、嘘だなどと疑う事もない。
ここはとても不思議な場所なのだから。
(*゚、゚) ムム…
気付けばしぃちゃんがまた、不機嫌そうな顔をしていた。
ζ(゚ー゚*ζ「あ。しぃちゃん、これ良かったらお家で食べてね。」
そう言ってデレさんが透明な袋に入った焼き菓子をしぃちゃんに手渡した。
中の小さな瓶には、ジャムも入っているようだ。
(*゚、゚)「…ありがとうございます。」
嬉しいのにそれを隠すような複雑な顔をして、しぃちゃんはそれを受け取っていた。
84
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:02:23 ID:uUhGkg420
(*゚ー゚)「かい中時計を直してくれてありがとうございました。さようなら。」
ぺこりとお辞儀をして、しぃちゃんは門から家へと帰っていった。
( ^ω^)ノシ ζ(゚ー゚*ζノシ
ζ(゚ー゚*ζ「内藤さん。ちょっと遅いですが、よろしければお茶を飲んでいきませんか?」
( ^ω^)「では、ありがたく。」
こういう時は予め用意しておいてくれて誘うものなのだ。
少しお腹も空いていたし、お言葉に甘えてしまおう。
_____
___
__
(*゚ー゚)(…。フシギなところだったなぁ…。)
お花がいっぱいのお庭に、大きなお家。
それから、ステキな朝のおじさま。
(*゚ー゚)「…あれっ?」
私はだっこしていたウサギが急にいなくなったのにびっくりして、下を見た。
(*゚ー゚)「時計に戻ってる…。」
____________________________
85
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:04:56 ID:uUhGkg420
(*^ω^)「…今日も、凄いですお。」
前回と同じく、庭のテーブルセットのある場所に通された僕は、周りのその美しさに感嘆の声をあげた。
ζ(^ー^*ζ「アルメリア バレリーナホワイトに、ラナンキュラス ラックスです。ウラノスなど、絶妙な色合いが素敵ですよね。」
(*^ω^))「大人が好きな色ですお。」
86
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:08:00 ID:uUhGkg420
ζ(゚ー゚*ζ「それでは本日は、メレンアッサムとスコーンです。」コトッ
デレさんが屋敷に戻り、ワゴンを持ってきてお茶を僕の前のテーブルに置いてくれた。
( ^ω^)「ありがとうございますお。頂きますお。」
( ^ω^)) コクリ
( ^ω^)「…アッサムはミルクティーのイメージがあったけれど、ストレートもとても美味しいですお。」
(*^ω^)「このメレンアッサムというお茶は、半音上がって華やかになった感じの味がする気がしますお。飲みやすいですおー。」
ζ(^ー^*ζ「それは良かったです。」
ζ(゚ー゚*ζ「インドにあるメレン茶園は、アッサムの中でも特に歴史のある茶園なのだそうです。」
( ^ω^)「そうなのですかお。風味に古めかしさを全く感じないので、驚きましたお。」
ζ(^ー^*ζ「そうですよね。私、アッサムの中ではこれが一番好きです。」
https://imgur.com/a/YAMntb5
.
87
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:11:08 ID:uUhGkg420
お茶の温度がもう少し下がるまで、僕達は話をする事にした。
ζ(゚ー゚*ζ「お茶のセットを取りに行った時に、しぃちゃんは無事お家に着いたとドクオさんが教えてくれました。」
( ^ω^)「それは安心しましたお。」
( ^ω^)「…デレさんも、遠くからドクオさんと会話をする事が出来るのでしょうか?」
ζ(゚ー゚*ζ「いいえ。私は人の姿ですし普段ドクオさんの近くに居るからなのか、普通に会話をしに行かないと話せません。」
ζ(^ー^*ζb「もしかしたらドクオさんとの会話の手段は、一種類しか持てないのかもしれませんね。」
デレさんは今思い付いたのか、楽しそうにそう言った。
ζ(゚ー゚*ζ「私は他の物達との会話も、ちゃんと出来ている訳ではないんです。だけど言いたい事などは、なんとなく分かります。」
( ^ω^)「そうなんですかお。程度はあっても、デレさんは人や物とお話が出来るなんて羨ましいですお。」
ζ(^ー^*ζ「ふふ。ありがとうございます。」
僕は、『自分が作ったカーテンなら一体どんな話をしてくれるのだろうか?』と、少し気になった。
88
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:14:24 ID:uUhGkg420
ζ(゚、゚*ζ「…だけど、お話相手は少ないです。門から外を眺めていても、ここにやって来るお客様しか私は見たことがありません。」
( ^ω^)「ここを出た場所は、通学路で人通りが多いはずなのに…。不思議ですお。」
ζ(゚、゚*ζ「はい…。すぐ近くに学校があるのは、門から見えるのですが…。」
( ^ω^)(外の景色は、僕やしぃちゃんが見ているものと同じ…。)
( ^ω^)∂「…ではデレさんは、僕の事がなぜ毎朝見えるのでしょうか?」
この場所に来ない日でも、僕達は朝に顔を合わせて挨拶をしている。
ζ(^ー^*ζ「おそらく、ご縁がある間は継続してお会い出来るのでしょう。」
( ^ω^))「なるほど。ドクオさんから依頼されたお仕事の間、という事ですかお。」
そう話しているうちに、お茶を一杯飲みきってしまった。
ζ(゚ー゚*ζ「内藤さん、よろしければミルクティーでもアッサムを試してみてください。」
( ^ω^)「ありがとうございますお。」
89
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:15:30 ID:uUhGkg420
ζ(゚ー゚*ζ「失礼します。」
そう言いながら、デレさんは空になった僕のカップにミルク、紅茶の順で注いだ。
その動きは自然だが、じっとよく見ると機械的で、彼女も何かしらの「物」である証のようであった。
ζ(゚ー゚*ζ「ミルクを先に入れるのは、熱によるタンパク質の変質を防ぐためなのだそうですよ。」
( ^ω^)「そうなのですかお。僕はコーヒーにもミルクを入れるので、家でも試してみますお。」
ζ(^ー^*ζ「ぜひ。」
( ^ω^)「では、まだ頂いていなかったスコーンから。」
僕はデレさんに倣いスコーンを手で半分に割り、クロテッドクリームとジャムを塗った。
90
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:17:37 ID:uUhGkg420
ζ(゚ー゚*ζ「こちらのジャムは、ラズベリーです。やっぱりイチゴやブルーベリーが主流かもしれませんが、個人的に延々と食べられるのはラズベリーですね。」
( ^ω^)「僕はスコーンをラズベリーで食べるのが初めてなので、楽しみですお。」
そう言ってスコーンに目を落とすと、暗い赤紫のジャムがピカピカとしていて綺麗だ。
僕は一口でジャムに辿り着くように、大口で食べることにした。
( ^ω^)) モグッ
(*^ω^))「サクほくですお。」ホクホク
素朴で、ボリュームがある。
ラズベリージャムは少し酸味があるけれど、甘みと共に主張が控えめで、そこが小麦の風味を引き立てている。クロテッドクリームがお菓子を食べている満足感を後押しして、僕はもう一口と頬張った。
口いっぱいに味わいが広がると、そろそろ飲み物が欲しくなってくる。
( ^ω^)) コクリ
(*^ω^)フゥ…
ティーコゼーで保温され、よく抽出されたメレンアッサムはミルクティーにしてもなお芳香で、僕は思わず目を閉じた。
https://imgur.com/a/YAMntb5
.
91
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:19:59 ID:uUhGkg420
_再び開けた目が、デレさんの目と合った。
ζ(゚ー゚*ζ「そういえば、内藤さん。ドクオさんが今度は3段のお皿でお菓子を用意してくれるそうですよ。」
pζ(゚ワ゚*ζq「アフタヌーンティー形式です!」
Σ(;^ω^)「!?」
(;^ω^)ノシ「いえいえ!僕はこのくらいで、お腹がいっぱいですお!手間もかかりそうなので悪いですし!!」
ドクオさんは、どうして僕をここまでもてなしてくれるのだろう?
もしかしてお菓子作りが得意なことを、誰かに披露したかったのだろうか?
ζ(゚、゚*ζ「……そうですか…。」
期待を裏切られたのか、デレさんは残念そうな顔をしている。
ζ(゚、゚*ζ「内藤さんは、クリームティー派でしたか…。」
( ^ω^)「クリームティー…?」
ζ(゚ー゚*ζ「こんな風に、スコーンと紅茶がセットのおやつの事です。」
(;^ω^)「そうですお。クリームティー派ですお!」
92
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:20:55 ID:uUhGkg420
ζ(゚ー゚*ζ…内藤さん。よろしければここにいらっしゃる間、私の話し相手になってくれませんか?」
( ^ω^)「僕が…ですかお?」
(;^ω^)∂「若い女性が好まれるような話を、こんなオジさんが出来るか不安ですお…。」ポリポリ
ζ(゚、゚*ζ「そんな事ないです。…実は私、外の事がとても気になるんです。」
ζ(゚ー゚*ζ「ドクオさんはめったに家から出ないですし、修理のお客様も頻繁には来ませんし…。」
人ζ(>、<*ζ「お願いします!一生のお願いですっ!」
デレさんが子供のようなお願いの仕方をするので、僕は思わず笑ってしまった。
(*^ω^)「良いですお。」
93
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:21:21 ID:uUhGkg420
【 第二話 かすみ草の時 】
終わり
94
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:22:05 ID:uUhGkg420
【登場人物】
lw´‐ _‐ノv
素直珠瑠
立派な日本家屋に住んでいる
米料理が絶品
(*゚ー゚)
詩衣(しぃ)
小学校中学年
内藤を格好良いおじさまだと思っている
小柄
95
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:28:10 ID:uUhGkg420
途中で画像載せる場所ミスっちゃった
紅茶ってもし仮に、最初にミルクで飲んで次にストレートで飲みたくなった時、カップは変えてくれるものなんですかね?
いくつか紅茶の本を読んでも謎のままです…
96
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:30:13 ID:uUhGkg420
( ^ω^)「外の事というと、この街の事でよろしいでしょうか?」
ζ(゚ー゚*ζ「はい。内藤さんやしぃちゃん、ここにいらっしゃるお客様がどんな場所に住んでいるのか。それが知りたいです。」
( ^ω^))「分かりましたお。」
97
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:30:45 ID:uUhGkg420
【 第三話 ルピナスの街 】
.
98
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:32:35 ID:uUhGkg420
僕はスコーンにジャムを塗りながら、何から話そうかと考える。
デレさんもスコーンにたっぷりのクロテッドクリームを塗っては、美味しそうに頬張っていた。
( ^ω^)「…僕が住んでいる街は、農地と、他と比べれば大規模とまではいかない工業地域の間にある土地なんですお。」
( ^ω^)「ここは、その両方の地域を支えるような業種の人達のベッドタウンだったそうなのですが、元々の住宅街からずれた場所に大学と駅が建ち、再開発によってだんだんと賑わいが出て、近年は観光地としての知名度も上がってきていますお。」
( ^ω^)「僕は、大学が設立されて間もない頃に進学でこの街へ来て、そのまま定住しました。」
ζ(^ー^*ζ
デレさんは、時々頷きながら聞いてくれる。
( ^ω^)「僕が学生だった頃はまだ、大学の近くは広い道路に歩道、学生寮とお店が少しあるくらいで…。新たな店が開店する度に、学生達がこぞって行くほどでしたお。」
( ^ω^)「それが今では、お店ばかりの街になったんですお。主に小規模で、各々にコンセプトがあるような。」
99
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:34:57 ID:uUhGkg420
ζ(゚ー゚*ζ「小さなお店、ですか?」
( ^ω^)「はい。飲食店が主ですが、美容室、服屋に雑貨屋、専門店など。街の人が始めたものが殆どなので、小さなお店が多いんですお。」
( ^ω^)「古い住宅街方面にはスーパーやチェーン店もありますが、駅周辺の大通りは車を使わずに見て回る事が出来るようなお店が多いですお。」
( ^ω^)「駅前には古い建物を再利用して、小さなお土産屋がひしめき合う場所もありますお。そこでは街の特産の薔薇を使ったお菓子が人気ですお。」
ζ(゚、゚*ζ「古い建物…。それは、『北野工房のまち』のようなものでしょうか?」
Σ( ^ω^)「ご存知なのですかお!?」
だいぶ離れた土地の例を挙げられたので、僕は驚いた。
ζ(^ー^*ζ「庭師さんの奥さんが、読み終えた本を私にくださるんです。実際にお会いした事はありませんが…。」
ζ(゚ー゚*ζ「その頂いた本の一つで、登場していました。」
( ^ω^)「そうでしたかお。あそこまで立派ではないですが、そんな感じですお。」
100
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:37:35 ID:uUhGkg420
( ^ω^)「他の特徴といえば、高さ制限がある事ですお。消防技術は近隣の工業地域に重点を置いているため、この街は省エネで救助活動が出来るようにとシンプルな街の造りになっていますお。」
( ^ω^)「高さ制限の都合で、丘の上にある白くて大きな図書館が目立つので、学生の間ではふざけて『神殿』などと呼んでいましたお。」
ζ(^ー^*ζ「ふふっ。」
( ^ω^)「そして図書館や公園などには見事な花が咲いていますお。最近始まった街おこしらしくて流石にこの庭ほどの規模ではありませんが、それこそがこの街が観光地となった一番の理由なので、とても綺麗ですお。」
( ^ω^)「まとめると、ロケーションとショッピングを楽しめる、日帰り旅行にぴったりな街ですお!」
(*^ω^)∂「そして僕は、この街のお店のカーテンをデザインするような仕事をしていますお。」
僕は照れ隠しで、戯けるようにそう締め括った。
101
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:38:54 ID:uUhGkg420
ζ(^ー^*ζ「それはとても素敵ですね!」
Σζ(゚ー゚*ζ ハッ
人ζ(゚ワ゚*ζ†+「もしや、街中のカーテンが内藤さんのデザインだったり…!?」
( ^ω^)「いいえ。でも、遠からずですお!街のカーテンの殆どは、僕の働く会社で手掛けているんですお。僕の他にも数名のデザイナーがおりますお。」
ζ(^ー^*;ζゞ「あら、そうでしたか。えへへ。」
ζ(゚ー゚*ζ「…子供っぽくてダメですね。そうだったら楽しいのにという想像を、すぐしてしまう癖があるんです。」
( ^ω^)「構いませんお。僕の話をよく聞いてくださって、嬉しいですお。」
102
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:40:26 ID:uUhGkg420
( ^ω^)「あっ。」
ζ(゚、゚*ζ「どうされましたか?」
(;^ω^)「危なかった…。予定を忘れるところでしたお。今夜は仕事で、夜に飲食店に伺う予定があるんですお。」
ζ(゚、゚*;ζ「そうでしたか!引き止めてしまって、すみませんでした…!」
( ^ω^)「いいえ、時間に余裕はあるので大丈夫ですお。閉店直前に行く約束ですので。」
ζ(゚、゚*ζ「…遅くまでお仕事、大変ですね。」
( ^ω^)「こういう事はたまになので、大丈夫ですお。」
( ^ω^)「最近は就業時間も短くなったし、こうやってお邪魔させてもらう余裕もありますおw」
ζ(^ー^*ζ「そうだったのですね。来てくださって、嬉しいです。」
( ^ω^)) コクッ
僕は、ミルクティーの最後の一口を飲み干した。
( ^ω^)「ご馳走様でしたお。そろそろ帰りますお。」
ζ(゚ー゚*ζ「お見送りいたします。」
103
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:43:17 ID:uUhGkg420
_____
___
__
僕達は、青紫の花が咲くローズマリーとオルレアが並ぶクネクネとした道を抜け、ハナビシソウとかすみ草の広場を横目に進み、門の前までやって来た。
( ^ω^)「ありがとうございましたお。ドクオさんにもご馳走様でしたと、よろしくお伝えください。」
( ^ω^)「それでは、また。」
ζ(゚ー゚*ζ「さようなら。」
((( ^ω^)
僕は日が暮れて暗くなった帰り道へと、歩きだした。
°·∴ζ(>Д<;ζ「ブェ゙ッぐショイィィぃぃ!!!」
∑(;^ω^) ビクッ!!
(;^ω^)「大丈夫ですかおっ?」
駆け寄って、デレさんに声をかけた。
ζ(゚∩゚*;ζ「すびばせん…お見苦しいところを…。」ズズッ
(;^ω^)「いえ…。」
104
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:44:13 ID:uUhGkg420
ζ(゚ー゚*ζ「…」
( ^ω^)「…デレさん?」
ζ(^ー^*ζ「お話を聞いたら…。私も街に行って、内藤さんの作ったカーテンを見てみたくなってしまいました。」
昼間のような明るさの庭を背に、そうデレさんは微笑んだ。
( ^ω^)「…。」
( ^ω^)「…僕の休日でよろしければ、お連れしますお。」
ζ(゚ー゚*ζ「…」
ζ(゚ー゚*ζ「…しぃちゃんの兎は、ここを出たらもとの姿に戻ります。」
___________________________
105
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:49:18 ID:uUhGkg420
_____
___
__
21:30
( ^ω^)「ご馳走様でしたお。とても美味しかったですお。」
(,,^Д^)「改めて、本日はお越し頂きありがとうございます。」
僕はデミグラスソース仕立てのポークカツレツを堪能し、タカラさんにお礼を言った。
タカラさんは、西洋料理店のオーナーシェフだ。
ここは居抜きの建物で、今までは昼のみの営業をしていた。
それをお子さんが大きくなった事を期にディナータイムの営業へと切り替え、その際に夜の印象に合わせるカーテンをオーダーしてくれたのだ。
(,,^Д^)「お伝えした通り、明るさが気になるのです。吹き抜け天井のライトからの光は程良いはずなのに、なんだか料理が美味しそうに見えなくて…。」
(,,^Д^)「今より少しでも明るければ違うのか。もとの白いカーテンに戻すべきなのかと…。」
( ^ω^)「そうでしたかお…。配慮が行き届かず、申し訳ありませんでした。」
僕は席を立ち、タカラさんに頭を下げた。
(,,^Д^)「いえ!カーテンは気に入っているので、出来れば替えたくないのですが、何か知恵をお貸し頂けたらと…。お願いします。」
( ^ω^)「分かりましたお。」
106
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:50:54 ID:uUhGkg420
( ^ω^)(…。)
僕は店をゆっくりと見渡してから、天井を見上げた。
( ^ω^)(明るさや色温度がそこまで悪いという訳ではなさそうだけど…。夜に料理を美味しそうに見せるには、もう少し工夫が必要なのかもしれないお。)
タカラさんがオーナーになる以前のこの店は、昼間のみの営業をしていたそうだ。
( ^ω^)(…ん?)
卓上に点々と置かれている蝋燭。
( ^ω^)(あれなら…。)
( ^ω^)「…天井よりも、お料理に近い場所をもう少し明るくするのはどうでしょうか。」
( ^ω^)「例えば…こちらの蝋燭の器を、もっと光を拡散させるような硝子の器に変えるのはいかがでしょうか?」
( ^ω^)「僕が以前担当したお店で、良さそうな品を取り扱っていますお。一つ借りて試せないか、明日聞いてみますお。」
(*,,^Д^)「本当ですか!よろしくお願いします。」
____________________________
107
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:53:12 ID:uUhGkg420
_____
___
__
16:40
((( ^ω^)
世の就業時間は、僕が働き始めた頃よりも1時間短くなった。
それは大人を早く家に帰して子どもの睡眠や生活のリズムを整えるための政策であるけれど、この街の場合は寄り道による各々の店の収入アップの効果もあるのだそうだ。
僕も例に倣い、今日は大通りで買い物をしてからドクオさんの屋敷へと向かう事にした。
いつもお茶やお菓子を頂いてばかりなので、お返しの気持ちとして土産を用意するためだ。
( ^ω^)(えーと…営業時間がC形態なら、あの店にするかお。)
飲食店の場合、営業時間がモーニングからブランチまで、ランチとティータイム、遅いティータイムからディナーまで等と区分がある。
観光寄りの店や、一般客向けの店もそれに近い営業形態を取っているため、知らない店に行く時などは一度営業時間を調べてから行かなくてはいけない。
_____
___
__
ζ(゚ー゚*ζ「こんにちは。」
( ^ω^)「こんにちは。今日も少しだけ、寄らせて頂きますお。」
ζ(^ー^*ζ「はい。」
108
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:55:09 ID:uUhGkg420
僕は最初に、ドクオさんがいつも居る大広間を訪ねた。
( ^ω^)「こんにちは。」
( ^ω^)「いつも美味しいお茶とお菓子をありがとうございますお。ドクオさんは甲殻類がお好きだとデレさんから聞きましたので、よろしければこちらをどうぞ。」
そう言って、僕はいくつかのパウチが入った紙袋を部屋の入口にあるテーブルに置いた。
海に隣接していない県で畜産の食材を扱う店の方が多いため、土産に魚介類を選ぶという選択肢がこの街にはあるのだ。
( ^ω^)「蟹のクリームスープですお。」
( ^ω^)「以前食べて美味しかったので、ドクオさんにもぜひと思いましたお。」
('A`)「…」
ドクオさんが、テーブルの紙袋をチラッと見た。
('A`)「大した事は、してない。」
( ^ω^)「そんな事はありませんお。こんなに素敵なお庭でお茶を頂けて、もっとお礼をした方が良いくらいですお。」
('A`)「…」
____________________________
109
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:58:03 ID:uUhGkg420
_____
___
__
ζ(゚ー゚*ζ「カーテンの進行は、どうでしょうか?」
デレさんがプリンを掬った手を止めて、僕に聞いた。
( ^ω^)「あとちょっとですお。メインの花をどれにしようかと悩んでいるところですお。」
ζ(゚ー゚*ζ「でしたら、薔薇はいかがでしょうか?」
( ^ω^)「薔薇、ですかお…?」
僕は、辺りを見回した。
( ^ω^)「薔薇の木は、無いようですが…。」
ζ(^ー^*ζ「5月になったらすぐ咲きますよ。ぜひいらしてくださいね。ご案内しますから。」
(;^ω^)「…分かりましたお。」
どういう事なのか分からないけれど、デレさんが言うのだからきっと正しいのだろう。
110
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:59:52 ID:uUhGkg420
(*^ω^))「今日のおやつも、とても美味しいですお。」
器に溢れそうなほど盛られた、たまごの風味も感じられる硬めかつしっとりなプリン。
頭には帽子のようにホイップクリームが乗っていて、器の底にもクリームとベリーが数種類敷かれている。
紅茶はウバ・ハイランズで、爽やかなサロメチール香がプリンの甘味を邪魔しない。
ζ(゚ー゚*ζ「生地にも、生クリームが入っているんです。」
(*^ω^))「それは豪華ですお。全部の層をすくって食べると、ケーキみたいですお。」
ζ(^ー^*ζ「幸せな気分になれますよね。」
(*^ω^))「はいですおー。」モグモグ
https://imgur.com/a/OlHmjnJ
.
111
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 03:03:38 ID:uUhGkg420
話を聞きながら、僕は庭に生えている昼咲月見草に目をやった。
ζ(゚ー゚*ζ「昼咲月見草は、桃色月見草とも呼ばれています。」
ζ(^ー^*ζ「この花を見ていると、なんだかしぃちゃんを思い出しますよね。」
( ^ω^)「確かにピンク色で丸くふわっとしていて、しぃちゃんの髪型みたいですお。」
しぃちゃんはチョコレートのような髪色だけど、日が当たる部分はピンク色に見えるような髪色だった。
ζ(^ー^*ζ「しぃちゃんはたまにここに来てくれるのですけれど、習い事が内藤さんの来る曜日と被っていて、やきもきしてるみたいです。」
(;^ω^)「え…?あの、しぃちゃんの時計は直って、もうここに用事はないのでは…?」
ζ(゚、゚*ζ「そうなんですよね。言われてみれば…何故でしょう?」
ζ(^ー^*ζ「ここの門は、可愛い子に弱いのかもしれませんね。」クスクス
112
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 03:04:38 ID:uUhGkg420
( ^ω^)「しぃちゃんはここに来て、何をしているんですかお?」
ζ(^ー^*ζb「私と押し花を作ったり…。あっ、この間はお庭の花でブーケを作りました!」
ζ(゚ー゚*ζ「しぃちゃん、何かと競争にしたがるんですよね。何故でしょう?」
(;^ω^)q「うーん…何故でしょうね…?」
113
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 03:08:56 ID:uUhGkg420
_____
___
__
19:30
( ^ω^)「ふぅ…。」
庭がずっと昼間なせいか、時間も忘れてついデレさんと話し込んでしまった。
玄関を開けて、家の中に入る。
鞄を置いた僕は、下駄箱の上に置かれた白くて丸い花瓶の埃を取るために雑巾を探した。
もうずっと使っていない花瓶なので洗った方が良いと思い、途中で台所へと向かった。
( ^ω^)つ ススッ
( ^ω^)「よし、だお。」
デレさんから貰ったブーケを、花瓶に挿した。
(*^ω^)「丁度いい花瓶があって良かったお。」
それから僕は部屋着に着替えて、パソコンの前に座った。
二間続きの和室で、ダイニングキッチンからすぐの方の部屋にパソコンと本棚を置いている。
( ^ω^)「えっと…取り込んでない絵はまだあったかお?」
スケッチブックを捲った。
デレさんからもらった栞が挟んであるので、どこまで済んでいるのかが、すぐに分かる。
( ^ω^)「…。」
『しぃちゃんの兎は、ここを出たらもとの姿に戻ります。』
( ^ω^)(…お客さんが修理に持ってくる物達は、ドクオさんと話が出来ると言っていたお。)
( ^ω^)(人の姿でなくとも、デレさんが物の状態で外の様子を見る事は出来ないのだろうか…?)
だけどきっとあれは、断りの言葉だ。
僕は、デレさんから貰った栞をしばらく眺めていた。
114
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 03:09:54 ID:uUhGkg420
【 第三話 ルピナスの街 】
終わり
.
115
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 03:14:04 ID:uUhGkg420
【プリン】
(150mlカップ約2個分)
※プリン液がなみなみなので、カップは3個用意しても良いです。
カップはフッ素樹脂加工の物、またはガラスのカップを使用。
[カラメル]
てんさい糖 20g
水 大さじ1
バター 少量
①砂糖と水を鍋に入れて混ぜ、中火で加熱、動かさない。
③キッチンペーパーを使いプリンカップにバターを塗っておく。
②茶色っぽくなったらなべを揺すり、好みの色になったらヘラで鍋端に集めつつプリンカップへ。カラメルはカップ底に綺麗に伸ばさなくても良い。
116
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 03:18:23 ID:uUhGkg420
[プリン液]
全卵2個
卵黄1個
てんさい糖37g
牛乳190g
生クリーム40g
バニラオイル10滴(またはエッセンス。あれば。)
①ボウルに卵を全て入れほぐし混ぜる。
②小鍋に牛乳と生クリーム、てんさい糖を入れフツフツとし始めるまで温め混ぜ、バニラオイルと共に卵液へ少しずつ加える。
③出来た液を網で濾す。濾した液をカップに入れていく。
④キッチンペーパーで表面の泡を取り除き、カップにアルミホイルを被せる。
⑤鍋に並べたカップの半分くらいの高さになるまで水を入れ、カップを取り出し水だけを沸騰させる。(水の量を調節する工程)
⑥沸騰した鍋底に布巾を敷き、カップを並べる。蓋をして中火で加熱。グラグラしだしたら弱火4分からのとろ火4分。(計8分。IH使用時の時間です。)
⑦予熱で5分くらい放置。取り出して表面が固まっていたら全て引き上げ、粗熱が取れるまでキッチンに放置。
表面が緩かったらまたグラグラ+弱火で少し加熱する。
⑧粗熱が取れたらよく冷えるまで冷蔵庫に入れる。完成!
*ポイント
鍋で作る場合、水からではなくお湯からカップを置く事で、すが出来にくい。
鍋だと硬めに出来るので、牛乳はお好みで10〜20g増やしても良い。
117
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 08:19:27 ID:uUhGkg420
市販のラズベリージャムなら、明治屋がおすすめです。
是非一度スコーンとお試しください。
118
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 11:46:53 ID:JqNjJpSI0
おつ
素晴らしい空気感
続きをどんどん読みたくなる!
119
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 19:43:15 ID:6uKV1jww0
乙です
120
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 22:55:27 ID:TOOVocQo0
待ってたぜ
乙
121
:
名無しさん
:2024/07/16(火) 00:45:33 ID:eIMBzCgs0
乙 めっちゃ雰囲気好きだ
花は無理そうだから曲当てに賭けるぜ!!
122
:
名無しさん
:2024/07/19(金) 17:22:18 ID:yM7nOYYA0
乙
このスレほんと良い香りする
ウサギゴケ初めて知った。すごくかわいい!
イラストのお菓子たちがとても美味しそう
美味しそうな絵を描けるのってすごい尊敬する
123
:
◆vgPkwiFs66
:2024/07/20(土) 01:29:13 ID:Af9zJ.yQ0
乙!!
124
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 05:13:20 ID:eT9BLvak0
>>118
ありがとうございます!どんどん投下します!
>>119
ありがとうございます!
>>120
待っててくれてありがとう!
>>121
好きと言ってくれてありがとう!
ぜひ当ててくれー!
>>122
香りまで想像出来るの凄いです!お花屋さんみたいな匂いしますか?
同じようなのでクリオネもあるそうです。そっちも似てます。
ありがとうございます!焼き色を意識して描いてます〜
>>123
ありがとう!!
もう色々と天候が不安定で恐怖なので、絵は後で投下するという感じでガンガン進めて行こうと思います!
125
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 05:17:55 ID:eT9BLvak0
皆さん、いかがお過ごしでしょうか?
前回の仕留め役になったであろうウサギゴケは、ミニチュアのように小さな植物です。
私もいつか、実物を見てみたいです。
【曲ヒント2】
その曲の発売日は2010年ですが、2014年に一度だけドラマのEDとして使われました。その歌手のその頃は、色々な曲をカヴァーしている事の方が有名だったかもしれません。
126
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 05:18:48 ID:eT9BLvak0
从 ゚∀从「いらっしゃいませー。待ってたよ。」
( ^ω^)「よろしくお願いしますお。」
【 第四話 モッコウバラの祝福 】
.
127
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 05:22:16 ID:eT9BLvak0
从 ^∀从「本当に掛け持ちで来てくれるなんて、嬉しいよ。」
( ^ω^)「これもご縁ですし、内装がお客さん側からどう見えるのかも体験してみたかったんですお。」
僕が選んだのは、薔薇のカーテンの半個室だ。
全体が白く、背景となる鳥籠状のカーテンの中に縫い付けられた立体の薔薇にだけ色がある。
三畳より少し広い程度のスペースだが、実際よりも広く感じる上に静かな空間で、僕は雑誌を手に取らずに瞑想や空想にでも浸ろうかと考えた。
从 ゚∀从「それで今日は、どんな風に切る?」
( ^ω^)「えっと…僕に似合うような髪型はありますかお?」
从 ゚∀从「シーンは仕事?デート?」
(;^ω^)「えっ…?」
僕は一瞬、デレさんの姿を思い出した。
从 ゚∀从「おっ?」
(;^ω^)「…ビジネスベースで、ちょっと今風にも挑戦してみたい…ですお。」
从*゚∀从「…へぇ…?ビジネスねぇ…?」
(;^ω^)「そうですお…。」
从*゚v从 ニムニム
ハインさんは僕の僅かな動揺を逃さず、かといって失礼になるからと不自然に上がる口角を隠そうと戦っているようだった。
从*゚v从「内藤さんの天パは、後ろに流すようにコンパクトにすると良さそうなんだよな。」
从*^∀从d「よしっ!パーマもかけてみよーぜ!」
Σ(;^ω^)「ええっ!?」
128
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 05:23:05 ID:eT9BLvak0
_____
___
__
爪;'ー`)y‐「急に滞在時間を増やしちゃってすみませんね、ウチのが…。」
(;^ω^)「いいえ…。」
爪'ー`)y‐「初パーマは、疲れたでしょう?」
爪'ー`)y‐「今度仕事の帰りにでもお立ち寄りください。2、3通りワックスの付け方を教えますから。」
(;^ω^)「お願いしますお。」
129
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 05:25:15 ID:eT9BLvak0
_____
___
__
13:30
昼食をとった僕は、再び街へと繰り出した。
( ^ω^) スッキリ
いつもより纏まりのある髪を見ると、今度は服が買いたくなってきた。
( ^ω^)(休日用の服を買うなんて、何年ぶりだお?)
( ^ω^)∂ ヒーフーミー…
(;^ω^)(5年ぶりだお…。)
以前モナーさんが担当したカジュアル紳士服の店に着いた僕は、店内をグルっと見て回った。
そこで僕は、店に入ってすぐのマネキンが着ていた物とは色違いの、紺色無地のポロシャツを試着する事にした。
(;^ω^)(男性物ってバリエーションが少ないおね…。質はともかく、学生の頃に着ていたような型とそんなに変わらないお。)
(;^ω^)(今はその頃より1サイズ違うけど…。)
行くたびに髪型が違うデレさんとは、大違いだ。
____________________________
130
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 05:28:23 ID:eT9BLvak0
_____
___
__
10:00
翌日、僕は屋敷へと向かった。
カーテンのメインを埋める最後のスケッチをするためだ。
((( ^ω^)(もう庭に薔薇が咲いているのだと言うけれど…。僕がまだ見ていない場所に案内されるのかお?)
今まで僕が見てきた場所は、庭の半分ほどだろうか?
屋敷とは別方向の道にも、まだまだ庭は続いていそうだ。
僕の家から屋敷までは5分もかからず着くため、門はすぐに見える。
( ^ω^)(あれ?門の前に車が…?)
入って右手の石畳のスペースに、茶色のバンが停まっている。
その車体には、ベージュ色の文字がプリントされている。
( ^ω^)(ショ…ボーンヌ…?)
Σ(;^ω^)「って、…えぇっ!?」
門の先には、溢れんばかりの薔薇が奥まで続いていた。
131
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 05:30:54 ID:eT9BLvak0
ζ(゚ー゚*ζ「内藤さんっ!」
僕がポカンと口を開けて立ち止まっていると、デレさんが駆け寄るようにやって来た。
かと思うと、いつもの距離より3歩前の位置で立ち止まった。
ζ(゚、゚*ζ「…。」
(;^ω^)「こんにちは。」
デレさんは数秒間僕を眺め、満面の笑みになった。
ζ(^ー^*ζ「素敵ですっ!」
(*^ω^)「ありがとうございますお。」
(*^ω^)ゞ テレテレ
髪型か…、それとも新調した服装まで気付いてくれたのだろうか?
気恥ずかしいけれど、久しぶりにお洒落をして良かった。
( ^ω^)「デレさんも、今日は凄いですお。髪にお花が編み込まれていますお。」
今日のデレさんの髪型は、低めのサイドポニーだ。
耳上の大きなコーラルピンクの薔薇を始めとして、毛先まで小さな生花が編み込まれている。
ζ(^ー^*ζ「ありがとうございます。庭の花が綺麗だからと、ドクオさんが編み込んでくれました。」
(;^ω^)「ドクオさん、何でも出来て凄いですお…。」
132
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 05:35:30 ID:eT9BLvak0
( ^ω^)「デレさんが言った通り、本当に薔薇が咲いていますお…。」
僕はいつもより更に遅い足取りで庭を歩いた。
ここに来ると見る場所が多くて、ついそうなってしまうのだ。
迷路のように辺りを隠す薔薇は白く、それでいて中央から淡いピンクがグラデーションに広がっている。
カップ状に咲いているものが多く、その可愛らしさに僕は見惚れた。
ζ(゚ー゚*ζ「この薔薇は、『フランシス バーネット』という品種です。海外の小説家の名前が由来ですよ。」
( ^ω^)「秘密の花園の作者ですかお?僕は社会人になってから読みましたお。」
ζ(゚、゚*ζ「大人になってから、ですか?」
児童書ではないのかと、デレさんは小首を傾げた。
( ^ω^)「僕が営業の仕事からデザイナーも兼任するようになった時に、上司が『Secret Garden』と名付けてくれて、それがきっかけでしたお。」
( ^ω^)「うちの会社は、デザイナーそれぞれにシリーズ名が付くんですお。僕は会社の通販用に自由に作って良いという時は、草花ばかりなので。」
ζ(^ー^*ζ「そうでしたか。」
僕の話を聞き終えたデレさんは、再び薔薇に目線を戻した。
ζ(゚ー゚*ζ「フランシス バーネットは、ロサ・オリエンティスという国内のブランドで、日本の気候でも育てやすい品種なのだそうです。」
133
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 05:36:44 ID:eT9BLvak0
( ^ω^)「デレさんの髪に飾られている薔薇は、何という品種なのでしょうか?」
ζ(゚ー゚*ζ「『イーハトーブの香』です。こちらも日本で作出された品種ですよ。」
( ^ω^)「そうでしたかお。鮮やかながら可愛らしさもあるお花ですお。」
その薔薇は、デレさんのラテ色の髪に似合っている。
( ^ω^)(って、あれ…?)
道の先から、誰かがやって来る。
134
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 05:42:17 ID:eT9BLvak0
(´・ω・`)「ん?ドクオのお客さんか?」
筋肉質で若い男性だ。
ドクオさんやデレさんよりも、少し年上のように見える。
男性はポケットの沢山付いたエプロンを身に着けていて、専用の台車で何かの苗を運んでいる。
ζ(゚ー゚*ζ「ショボンさん。こちらは、図書室のカーテンを作ってくれている内藤さんです。」
ζ(゚ー゚*ζ「内藤さん、こちらは庭師のショボンさんです。お庭の花は全てショボンさんが手入れしてくれているんですよ。」
ζ(^ー^*ζ「そして以前話した図書室の本は、ショボンさんの奥さんに頂いているんです。」
( ^ω^)「そうでしたかお。初めまして。」
(´^ω^`)「よろしくな。」
ショボンさんは、溌剌とした笑顔で挨拶してくれた。
( ^ω^)「とても素晴らしいお庭ですお。でも、ついこの間までは別の花が咲いていたのに、今日来てみたら薔薇がこんなに咲いていて…驚きましたお。」
(´・ω・`)「ここは特別な庭だからな。薔薇なら赤子みたいな苗でも植えれば3日くらいで見頃になるんだ。」
(;^ω^)「3日…!?」
135
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 05:46:02 ID:eT9BLvak0
(´・ω・`)「大体の花もそうさ。流石に樹木なんかは1ヶ月くらいかかるけどな。」
(;^ω^)「とんでもなくハイペースですお…。」
(;^ω^)「…あの、そういう話は僕なんかにしても良いのですかお?」
(´・ω・`)「ああ。デレの茶飲み友達なんだろ?最近ドクオが練習した茶菓子を子どもの土産にってくれるようになったから、知ってるんだ。」
(´・ω・`)「デレが屋敷に現れてから三年くらい経つけど、ここまでお客さんに懐いてるのは初めてだ。きっとあんたは良い人なんだろ?」
(;^ω^)ゞ「え?うーん…。どうでしょう。」
(´・ω・`)「ここへはドクオの客もたまにしか来ないし、特別な場所だからあまり外の人には話せないんだ。一人で作業してると、合間に無性に気分転換したくなる。」
(´^ω^`)「だから俺とも友達になってほしいってワケだ!あっはっは!」
(*^ω^)「そうでしたか。ぜひ。」
僕が続けてお客さんと遭遇したのは、珍しい事だったようだ。
( ^ω^)「あの…。デレさんが現れて三年くらいとは?それ以前はここに居なかったのですかお?」
ζ(゚ー゚*ζ「…。」
二人に聞くように顔を向けたが、デレさんから話そうとする素振りはなかった。
(´・ω・`)「そうだ。俺が丁度この庭を再生し終えた頃に、いきなり現れたんだ。」
136
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 05:47:59 ID:eT9BLvak0
( ^ω^)「いきなり…ですか。」
ζ(^ー^*ζ
デレさんは普段と同じ表情で、ふんわりと微笑んだ。
(´・ω・`)「ドクオからは何も聞いてないけど、この屋敷の古くからの調度品なのかもしれないな。祖父の手入れした庭を真似たから、きっと懐かしくて出てきたんだろう。」
(´・ω・`)「間は空いてるけど、ドクオとは長い付き合いなんだ。」
ショボンさんは、近くにあった木製のベンチに寛ぐように腰掛けた。
ζ(゚ー゚*ζ「お茶をお持ちしますね。」
それを休憩と判断したデレさんは、屋敷へと向かっていった。
僕もショボンさんの隣に座って、話の続きを聞くことにした。
137
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 05:54:56 ID:eT9BLvak0
(´・ω・`)「俺は子供の頃から、庭師の祖父に連れられてここへ遊びに来ていたんだ。と言っても、ドクオはドクオのじいちゃんに引っ付いててちょっかいかけても反応悪くてさ。」
(´^ω^`)「今でも仕事と頼まれ物以外は、こっちが喋りどおしだけどな。ガハハ!」
( ^ω^)「…」
確かにドクオさんは、僕に対してもそんな感じだ。
かといって無愛想な訳ではなく、こちらから話す挨拶の延長のような短い雑談に、いつも一言は返事をくれる。
(´・ω・`)「俺が中学生の頃に祖父が亡くなった。本家の方で跡を継ぐ人もいなかったから、庭師は廃業したんだ。」
(´・ω・`)「その頃はそんな気全くなかったんだけど、俺の進路と就職先は祖父の仕事に近い花屋になった。ジワジワと良さがわかってきたんだな。」
(´・ω・`)「隣の県の花屋で働いてた時に客だったカミさんが同郷だったのが縁で知り合って、結婚した。それからすぐにコウノドリが来てな。」
(´・ω・`)「三つ子だって分かった時は、嬉しい気持ち以上に途方に暮れたよ。核家族だし金銭的にも育てられない。何より多胎児はカミさんが死んじまう確率がうんと上がるんだ。」
( ^ω^)「…」
(´・ω・`)「幸い全員無事に産まれてくれたし、カミさんのご両親の協力が得られる事になった。俺だけが職場のある街で暮らすことになったけれど、その頃この街は花屋があまりなかったし、職を変えるか俺だけ都会に出て出稼ぎするかなんて、買い物の帰り道で悩んでいた時さ。」
(´・ω・`)「懐かしいこの庭を見付けたんだ。」
138
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 05:59:09 ID:eT9BLvak0
(´・ω・`)「といっても、記憶にある庭とは別物だった。庭の中に入ってすぐのド真ん中に、立派な松が植えてあったからな。」
(;^ω^)「松…ですかお…?」
(´・ω・`)「ああ。ドクオのじいちゃんが屋敷の隅で育てていた盆栽を、全部庭に植えちまったらしい。横には昔と変わらない位置に洋風のアンティークファニチャーが置かれてた。」
(´・ω・`)「俺はドン引きしたね。祖父の造った庭とは、かけ離れてたから。屋敷に入ってみるとドクオだけ居たから、せめて入口だけでも整えさせてくれって頼んだ。」
(´・ω・`)「実家から水やりがあまりいらないような植物を持ってきて、職場の余りを貰って。こっちに来るついでにちまちまと植えていった。」
(´・ω・`)「そしたら、そこでようやくこの庭が変な事に気付いた。いつ来ても昼間だし、花の時期が終わりきっても、植えた花がまだ見頃なんだ。」
139
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 06:02:56 ID:eT9BLvak0
(´・ω・`)「思えば土が豊かといえど、夏場に週一しか来ない場所で水やりの事も気にせず植え続けた俺も変だった。特に俺がいじってた入口には乾きやすい小さめな花壇も多かったし、焼け石に水だ。」
(´・ω・`)「庭の奥にあるキッチンガーデンだけ使ってるドクオに聞いてみたら、ここは植物の成長速度も尋常じゃなかった。」
(´・ω・`)「葉物は翌日に収穫出来るし、ニンジンなんか3日で穫れるときたもんだ。連日来れる日に観察したら、花も大体そのくらいのペースで咲くようだった。」
(´・ω・`)「俺はショックだったね。今までやってきた事や、学んできた事は何だったんだと。」
( ^ω^)「そうですおね…。」
いつ自分の仕事がAIに取って代わられるのかと、ヒヤヒヤしている僕だ。
自分が無力だと感じる恐ろしさは分かる。
140
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 06:04:39 ID:eT9BLvak0
(´・ω・`)「ムカついたから3日で育った薔薇を101本、カミさんにプレゼントしたんだ。そしたら食べられる品種だったから、ジャムやらクッキーにしてくれた。」
(´・ω・`)「忙しいのに無理すんなって言いたいのを我慢して食べたらさ、すっげぇ美味かった。」
(´・ω・`)「じいちゃんに付いて回ってた頃にかいだ香りだ。ちっこくて、時間がたっぷりあった頃の。」
(´・ω・`)「久しぶりに茶を飲んで、ゆっくり甘い物を食べた。そうしたらカミさんが隈作った顔で笑って、『お疲れ様』って言ってくれた。」
(´・ω・`)「離れたままじゃ駄目だって、思ったんだ。」
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