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( ^ω^)Secret Gardenのようです
1
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 22:31:20 ID:15xn.t.w0
7:40
(;^ω^)「ハァッ…ハァッ!」
僕は、珍しく寝坊をした。
いつもならば大通りで朝食をとり終えて、会社に着いている頃だ。
(;^ω^)(…仕方ない。近道するお。)
流れる汗を袖で拭い、足の向きを左斜めにクルッと変えて、また走る。
この道は小学校の通学路でもあるため、速度を緩めて小走りだ。
(;^ω^)(あれ…。あんなの、あったかおっ?) ハァッハァッ
小学校の左斜め向かいに、洋風の生垣が続いている。
2
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 22:32:23 ID:15xn.t.w0
(;^ω^)(もう随分とこの道を通っていないけれど…。ここには平屋と、あまり大きくない畑なんかがあったはずだお。そこから、奥の住宅街が見えるような…。)
(;^ω^)(レストラン…?いや、こんなに立派な生垣だから、ホテルかお?でも駅からは離れているし…。)
そんな事を考えていたら、煉瓦と黒のアイアン造りの門が見えてきた。
( ^ω^)(…ちょっとだけ…。)
答え合わせがしたくて、目線はそのままにした。
( ^ω^)(門の中も、これまた緑…だけど…)
ζ(゚ー゚*ζ
中にいた女性と、目が合ってしまった。
(;^ω^)「あっ…。すみませっ…!」
3
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 22:33:13 ID:15xn.t.w0
その女性は、こう言った。
ζ(^ー^*ζ「夕方、お会いしましょう。」
.
4
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 22:33:56 ID:15xn.t.w0
https://imgur.com/a/DWbCEoc
( ^ω^)Secret Gardenのようです
.
5
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 22:35:08 ID:15xn.t.w0
( ´∀`)「今日は随分とお寝坊さんだモナ。」
(;^ω^)「おはようございますお。」
なんとか遅刻せずに済んだ僕は、ロッカーに置いていた替えのシャツに着替えて、急いでタイムカードを押した。
からかう上司に挨拶をして、朝礼が終わってから外回りの準備をする。
今日は一ヶ月点検が一件と、納品が二件だ。
( ^ω^)「行ってきますお。」
行ってらっしゃい、と事務所に残る人達から返事をもらった。
6
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 22:35:34 ID:15xn.t.w0
( ^ω^)ガラガラ
(;^ω^)つ□「よいしょっと!」
一時保管室から品物を探し出しては台車で運び、社用車に乗せる。
台車を戻して車に乗り込みエンジンをかけると、聴き覚えのある軽快なイントロがラジオから流れ出した。
( ^ω^)「随分と懐かしい曲だお。」
7
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 22:38:07 ID:15xn.t.w0
_____
___
__
从*゚∀从「いやー、内藤さんに頼んで良かったよ!」
( ^ω^)「ありがとうございますお。空調との相性は、いかがですかお?」
从 ゚∀从b「そっちもバッチリ!」
( ^ω^)「それは良かったですお。ではこれから、点検に入らせて頂きますお。」
从 ゚∀从「ああ、よろしく頼むよ。」
『onnellisuus』は、美容師のハインさんとヘアケア品を取り扱うフォックスさん夫妻が経営する美容室だ。
色とりどりの商品がずらりと並ぶ受付の奥には、木枠で仕切られた半個室が3つある。
それぞれの入口の天井には半円状の枠が取り付けられていて、そこからオーガンジー素材のカーテンを垂らす事で、カット台の鏡から見るとまるで鳥かごの中にいるように見えるのだ。
ハインさんが子どもの頃に描いた夢を叶えるため、オーダーカーテンを取り扱う我が社に依頼を出したのは、1年近く前の事だ。
「今の私の雰囲気とは違うから」と悩んでいたハインさんのために、内装業者と案を出し合いながら調和を図った。
二重で袋状のカーテンの中には花火や鱗、薔薇の立体素材を縫い付けており、それぞれの部屋で違う様相が楽しめる。
( ^ω^)「異常無しでしたお。数値としては閉めていても問題なかったのですが、ヘアカラーやパーマの時はカーテンを片方にまとめておいた方が安心ですお。」
从 ゚∀从「ああ、そうするよ。」
从 ^∀从「内藤さんも、良かったら切りに来てくれよ。
旦那のヘアセットレクチャー付きだぜ。」
( ^ω^)「ありがとうございますお。掛け持ちで通わせてもらいますおw」
从 ^∀从「ああ。よろしく!」
( ^ω^)「それでは失礼しますおー。」
____________________________
8
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 22:39:44 ID:15xn.t.w0
_____
___
__
( ^ω^))(うーん…。)モグモグ
一件の納品を残して、かなり早めの昼食をとる。
空腹のまま取り付け作業をしたので食事に集中したいところだけど、考えるのは今朝の事ばかりだ。
( ^ω^)?(あの人は、誰だったんだお…?知り合いや、お客様ではないお…。)
この仕事に就いてからおよそ25年の記憶を掘り起こしても、思い当たる人はいなかった。
( ^ω^))(もしかして、お客様のお子さんやお孫さん…?うーん…違う気がするお。)モグモグ
(;^ω^)(二十代半ば…いや、後半くらいの女性。しかも、ドレスを着ていたお。…もしかしてあの場所は結婚式場か何かで、PRイベントでもしていたのかお?)
(;^ω^)(…あんな朝早くに…?しかも呼び込むのが、アラフィフの僕かお…?)
もしかして、仕事関係で呼ばれていたけれど僕が忘れていただけなのだろうか。
さわらの塩焼きをほぐしながら考えても、何も思い出せなかった。
( ^ω^))(…とにかく、行ってみれば分かるお。もしも後ろの人に声をかけていたとか、そんな人違いだったのであれば謝れば良いだけだお。)モグモグ
( ^ω^)ゴクン
( ^ω^)「さて、午後の仕事だお。」
____________________________
9
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 22:41:24 ID:15xn.t.w0
_____
___
__
残り一件の納品を済ませ、会社に戻り後処理を終えた僕は、パソコンで専用のソフトを立ち上げた。
( ^ω^)(今日の報告と次回の打ち合わせがしたいし、今週中に工場の方に顔を出すお。手土産のお菓子、何が良いかおー。)
僕が主に担当している個人店向けのデザインカーテンは、雰囲気や技法がその都度変わる。それを毎度形にしてもらっているので、工場の方々には頭が上がらないのだ。
(;^ω^)(その後に来てる依頼は、若い女性向けのポップな雑貨屋さんかお。僕に務まるのかお…?)
(;^ω^)) チラッ
後輩の芹沢さんが代わってくれないかと、机を見る。
ミセ;゚Д゚)リ 「うぉりゃぁぁ!!」カチカチカチ
(;^ω^)(修羅場中っぽいから話しかけられる雰囲気じゃないお…。)
____________________________
10
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 22:42:54 ID:15xn.t.w0
_____
___
__
16:20
ほぼ定時に仕事を終えた僕は、寄り道せずに今朝の通りまでやって来た。
( ^ω^)「…。」テクテク
小学校から出てきた高学年の子供達が、ワイワイと下校している。
誰もこの立派な生垣には、興味がないようだ。
( ^ω^)(ここを見て物珍しく思うのは、僕だけなのかもしれないお。)
( ^ω^)(…もう着くお。)テクテク
11
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 22:43:52 ID:15xn.t.w0
門まで来ると、花かごを持った今朝の女性がこちらに気付いて駆け寄ってきた。
ζ(゚ー゚*ζ「お待ちしておりました。」
(;^ω^)「…こんにちは。」
ζ(^ー^*ζ「こんにちは。どうぞお入りください。」
そう言われても、足を動かすわけにはいかない。
(;^ω^)「えっと…」
(;^ω^)「あの…。僕はあなたの事を知りませんお。人違いではありませんかお…?」
ζ(゚ー゚*ζ「いいえ、間違いありません。」
ζ(゚ー゚*ζ「ここにいらっしゃる方は、ドクオさんに用がある方か、ドクオさんが用がある方ですから。」
( ^ω^)「ドクオさん…?」
ζ(゚ー゚*ζ「はい。屋敷に案内しますので、ついてきてください。」
(;^ω^)「はぁ…。」
12
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 22:44:52 ID:15xn.t.w0
ζ(゚ー゚*ζ (^ω^;)) テクテク
僕は、女性の後ろを歩いた。
彼女は背が高い。
しかし生成りがかったドレスの丈はそれよりも長く、彼女が石畳の道を歩く度に、ドレスの裾がするすると滑っている。
( ^ω^)(…60、70年代風のアンティークドレス…。やっぱり、ここは式場か何かなのかお?)
ジロジロと見たつもりはなかったが、職業柄少しは知識があるのだ。
( ^ω^)(…!)
13
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 22:47:08 ID:15xn.t.w0
進んだ先で、溢れんばかりのネモフィラが僕を囲んだ。
そこには少しスノーポールが混じり、奥には数色のチューリップがランダムに咲いている。
(*^ω^)(綺麗だおー…)
視線を前に戻すと、道の先にはボーダーガーデンが延々と広がっている。
(*^ω^)(こっちは、すずらんにクリスマスローズとオダマキに…ネメシアかお。)
( ^ω^)(奥の木は…クラブアップルかお?桃色の花が咲いているお。)
(*^ω^)(こんな場所があったなんて…知らなかったお。)
僕の住む街は、近年花の名所として紹介されるようになった。
ちょっとした公園や図書館などの公共施設が、ガイドブックに載るほどだ。
それでも、これほどまでに豊かな場所は今まで一度も見たことがなかった。
(*^ω^)(…って…)
∑(;゜ω゜)「えぇっ!??」
ζ(゚、゚*ζ「…?どうしましたか?」
女性が、石造りの装飾鉢に植えられたイベリスの前で立ち止まった。
14
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 22:49:03 ID:15xn.t.w0
(;^ω^)「あの…僕が知っている以前のこの土地は、すぐ隣に住宅街があって…こんなに広いはずは…ないんですお。」
ζ(゚ー゚*ζ「そうなんですか?」
ゆっくりとはいえ、もう2分近く歩いている。
それなのに、まだ目的地には着かない。
もしかして、住宅街ごと買い取られてここが出来たのだろうか?
だけどこの場所が何らかの施設だとすると、公共か商業かを問わずとも、もっと人がいても良いはずだ。
それに壁や所々に置かれた庭椅子も、なんだか昔からあったように、年季が入っているように見える。
(;゜ω゜)
不思議な事は、他にもある。
庭を飛ぶ蜂や蝶。
よく目を凝らして見ると、それらが金属で出来ているように見えるのだ。
(;^ω^)(僕は、夢でも見ているのかお…?)
15
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 22:51:14 ID:15xn.t.w0
( ^ω^)(あ…。)
更に少し進んだところで、やっと二階建ての屋敷が見えてきた。
茶鼠色で、石造りの屋敷だ。
そのアプローチには、一人で立ち止まっている老人が見えた。
ζ(゚ー゚*ζ「こんにちは。修理は無事に終わりましたか?」
女性が歩み寄り、そう聞いた。
( ´W`)「ああ。よぅーく、見てもらったよ。」
( ´W`)「悪いけれど、少し庭を歩いても良いだろうか?ここに来た時の楽しみでね。」
そう言いながら老人は、曲げた指を見せた。
翅がほんのりと青い蜻蛉がとまっている。
それは、どこか眼鏡を思わせるようなべっ甲と硝子の蜻蛉で、老人の指先に留まっては飛びを繰り返している。
ζ(゚ー゚*ζ「それでは私が、ご案内いたします。」
僕達が歩いてきたのは、所々でカーブのあるメインらしき通り道だったが、その間には横に逸れる道がいくつもあった。
少し隙間のある石畳もあり、足の動きにもたつきのあるその人を一人で散策させるのは心配なのだろう。
だけど彼女の案内がなくなったら、僕はどうすれば良いのだろうか。
(;^ω^)「あの…」
ζ(゚、゚*ζ「申し訳ありませんが、ここからはお一人で。ドクオさんは人が多いのが苦手ですし、丁度良いです。」
ζ(゚ー゚*ζ「玄関からホールに入り、正面から右に2つ目の部屋です。大きな扉なのですぐ分かりますよ。」
(;^ω^)「はぁ…。」
16
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 22:52:37 ID:15xn.t.w0
二人の後ろ姿を見送った僕は、玄関扉の前に数段ある石段を登った。
(;^ω^))(インターホンが見当たらないお…。)キョロキョロ
(;^ω^)「……失礼しますおー…。」
(;^ω^)つ| カチャ…
硝子が嵌め込まれたアーチ型の木製扉をゆっくりと開けると、下駄箱とスリッパが置かれた玄関がある。
僕は靴を脱ぎ、スリッパに履き替えた。
17
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 22:54:21 ID:15xn.t.w0
( ^ω^)つ|「…。」
先程と似たような扉を開ければ、ここが玄関ホールか。
床一面には煉瓦色の絨毯が敷かれており、白塗りの壁に焦茶の柱、美しい木製階段。
それらが、木が豊かであった時代に造られた建物である事を示している。
( ^ω^))「…。」
見回しただけでも、8つは部屋があるようだ。
(;^ω^)(2階もあるんだおね…。もしかして、街一番の豪邸じゃないかお…?)
(;^ω^)σ(えぇっと…右に2つ目は…。あそこだお。)
他の部屋よりも大きい両開きの木製扉には、薔薇の花や蔦が彫られている。
( ^ω^)(見事だお…。)
( ^ω^)q コンコン
シーン
(;^ω^)
何度か扉をノックしたが、返事はない。
( ^ω^)(…扉が厚いから、聞こえないのかもしれないお。)
( ^ω^)つ| カチャ…
( ^ω^)「あの…失礼しますお…。」
18
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 22:56:03 ID:15xn.t.w0
( ^ω^)「…」
20帖ほどの、広い部屋だ。
( ^ω^)(……?)
( ^ω^)(…何だろう…この音…?)
どこか遠くで、クリスタルボウルやガムランがゆっくりと鳴っているような…不思議な音がする。
( ^ω^)(それに…この壁と床は、一体どんな素材で出来ているんだお…?)
壁と床には金や銀、銅色の柄が広がっている。
その中央に、胡座で座り込む男性の後ろ姿があった。
19
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 22:57:32 ID:15xn.t.w0
( ^ω^)「あの…。」
そう声をかけても聞こえないのか、男性はぴくりともしない。
男性が何か工具を持って手を動かし始めた、その時。
∑(;゜ω゜)「わっ…!!」ヨタタ…
アラベスクか何かだと思っていた壁や床の柄が歯車のように回りだし、僕はよろけた。
目がぐるぐると回り、乗り物酔いのような感覚になったため、僕はたまらず大声を出した。
(;^ω^)「あのっ!!すみませんおっ!!!」
20
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 22:58:18 ID:15xn.t.w0
男性の動きと、部屋の歯車が止まる。
僕がホッとして瞬きをした瞬間。
(;^ω^)「……えっ?」
部屋の内装が、深紅の壁に純白の天井、木製の床へと様変わりしていた。
('A`)「…」
気付けば男性が手をつき身体をひねって、こちらを見ている。
21
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 22:59:26 ID:15xn.t.w0
(;^ω^)「あの…お庭にいる方に案内されて、ここまで来たんですお。」
そう言い切ったと同時に、男性が早足に近付いてきた。
('A`) サッサッ
(;^ω^)「…?」
男性は僕の横を通り過ぎ、どこかへ行ってしまった。
すると三十秒もしないうちに何かを持って戻ってきて、部屋の奥の硝子のキャビネットを開き、小瓶を取り出した。
('A`) コポコポ
( ^ω^)(水の入ったコップに何かを入れているお…。常備薬か何かかお…?)
それをグイッと飲み、袖で口を拭うと、男性はまたこちらにゆっくりと近付いてきた。
22
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:00:32 ID:15xn.t.w0
( ^ω^)「…」
年齢は、先程の女性と同じくらいだろうか。
女性以上に背が高く、僕を見下ろしている。
縁が金色の華奢な丸メガネをかけていて、年季の入っていそうな柔らかいシャツとウールのズボンを身に着けている。
ズボンはサスペンダーで吊るしており、今時というよりはセピアの写真から出てきたような出で立ちだ。
黒髪で目が隠れ、表情は分からない。
( ^ω^)(え…この匂い…)
(;^ω^)(酒…!?)
一瞬、甘いリキュールのような匂いがした。
23
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:01:46 ID:15xn.t.w0
('A`)「…」
(;^ω^)「…。」
男性は、何も喋らない。
(;^ω^)「…貴方がドクオさん…ですおね?」
(;^ω^)「お庭にいた方が、言っていたんですお。ここに来る人は、ドクオさんに用があるか、ドクオさんが用があると…。」
( ^ω^)「僕は貴方とは初対面ですお。僕からの用事はないので、もしかしたら僕の仕事と関係があるのかもしれませんお。」
( ^ω^)「僕はカーテンを作る会社に勤めているんですお。今、名刺を…」
('A`)「ああ」
男性は、思い出したように言った。
('A`)「図書室のカーテンを作ってくれ。内藤さん。」
24
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:03:11 ID:15xn.t.w0
_____
___
__
ζ(゚ー゚*ζ「いかがでしたか?」
玄関を出ると、女性が僕を待っていた。
( ^ω^)「仕事のご依頼でしたお。図書室にカーテンを作ってほしいとのことですお。」
( ^ω^)「明日またプラン決めと、計測に伺いますお。」
ζ(゚ー゚*ζ「そうでしたか。では、入口までご案内いたします。」
( ^ω^)「よろしくお願いしますお。」
来た時と同じく、僕は女性の後ろを歩く。
途中、すずらんの葉にとまる銅色の天道虫を見かけた。
やはりこの場所は変だ。
けれど、不思議と嫌な感じはしない。
家で勉強をしていただけなのに、窓から吹く風が心地良くて不思議と心が躍った学生時代の春休みのような。
そんな感覚に似ている。
それはきっとこの庭から、春の匂いがするからだろう。
25
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:04:22 ID:15xn.t.w0
( ^ω^)「…」
( ^ω^)「あの…その裾…、傷んでしまいませんかお?」
ζ(゚ー゚*ζ「え?」
( ^ω^)「ドレスですお。土で汚れたり、石畳で擦れたり…」
ドレスの裾は、既にほつれや擦れが所々に見られる。
ζ(^ー^*ζ「お気遣いありがとうございます。ですが、そうなった事はありませんので、大丈夫です。」
( ^ω^)「え…?」
26
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:06:00 ID:15xn.t.w0
ζ(゚ー゚*ζ「私は先程の蜻蛉や、庭の蜂や蝶と同じようなものです。この庭と屋敷の中では、生き物の形をしているのです。」
ζ(゚ー゚*ζ「元は別のかたちをしていて、この姿は比喩のようなものです。ですから、大丈夫なんです。」
(;^ω^)「はぁ…。」
話からすれば、『この女性も人ではない』という事になる。
にわかには信じがたいが、僕の心配については問題がないそうなので、ひとまず安心だ。
(;^ω^)「あの…ここは一体どんな場所なんですかお?」
ζ(゚ー゚*ζ「ここは、ドクオさんのお家。小さめな金属製品の修理屋さんです。」
ζ(゚ー゚*ζ「庭をお花屋さんに貸していて、そちらの方が主な収入源なので、地主さんと言った方が正しいかもしれませんが…。」
(;^ω^)「そうなのですかお…。」
27
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:06:55 ID:15xn.t.w0
_____
___
__
ζ(゚ー゚*ζ「それではまた明日、お待ちしております。」
( ^ω^)「はい。本日は案内して頂きありがとうございましたお。それでは失礼しますお。」
ζ(^ー^*ζ「さようなら。」
( ^ω^)「さようならですお。」
門から一歩外に出ると、外はもう真っ暗だった。
( ^ω^)(四月といえど、まだまだ日は短いおねー…)
( ^ω^)(あれ…?でもたった今までいた庭は明るかったはず…)
(;^ω^)??
____________________________
28
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:08:44 ID:15xn.t.w0
_____
___
__
翌日も僕は、仕事帰りに屋敷へ寄った。
ドクオさんと一緒に図書室まで行って、今使っているカーテンを見せてもらうと、経年の傷みがだいぶ見られた。
( ^ω^)(確かに…そろそろ取り替えた方が良さそうだお。)
計測も済ませ、僕はドクオさんにどのプランにするかを聞くことにした。
('A`)「丈夫な物の中から、なるべく早いプランで。」
( ^ω^)「では、こちらのベーシックベルベットと、レースカーテンはいかがでしょう。今の雰囲気に近いと思いますお。」
('A`)「…」
('A`)「…これは?」
ドクオさんが、右下のプランを指差した。
( ^ω^)「あ、そちらはカーテンのオーダーですお。僕が個別でデザインをするので、お渡し予定日は先程の提案よりもふた月近く先になりますが…。」
('A`)「…じゃあこれで。」
( ^ω^)「よろしいのですかお?」
( ^ω^)「…。あの、それではレースカーテンのみオーダーされるのはいかがでしょうか?」
( ^ω^)「『なるべく早く』とのご希望は、今お使いのカーテンの傷みが気になるからですおね?」
( ^ω^)「遮光用のカーテンは在庫の有る物なら明日明後日にはご用意できますので、先にそちらだけ設置する事も出来ますお。」
('A`)「それで構わない。」
( ^ω^)「ありがとうございますお。」
29
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:09:50 ID:15xn.t.w0
_____
___
__
ζ(゚ー゚*ζ「お疲れ様でした。」
玄関から出ると、女性に声をかけられた。
今日も屋敷まで案内してくれたのだ。
( ^ω^)「ありがとうございますお。すぐ決めて頂けたので、とっても助かりましたお。」
( ^ω^)「デザインカーテンをオーダー頂きましたお。」
ζ(^ー^*ζ「そうでしたか。よろしくお願いします。」
ζ(゚ー゚*ζ「よろしければ、少し休んでいかれませんか?ドクオさんがお茶の用意をしておりますので。」
( ^ω^)「では…。せっかくなので、ありがたく頂きますお。」
ζ(^ー^*ζつ「こちらを進むとテーブルがあるので、座ってお待ちください。」
女性が、横の小道へと目を向けるよう促した。
( ^ω^)「わかりましたお。」
30
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:10:52 ID:15xn.t.w0
言われたままに、道を歩く。
( ^ω^)(この道は、ハーブがメインのようだお。使い切れないくらい取れそうだおー。)テクテク
( ^ω^)「…」テクテク
( ^ω^)「…!」
円状に開けた場所だ。
中央には2人用の、真っ白なテーブルセットが置かれている。
白いクロスがかけられた円卓と、背もたれが装飾されている椅子。
ネモフィラにウィンターコスモス、ウィンティーや色とりどりのデルフィニウムが、それらを囲むように咲いている。
(*^ω^)「…」
僕は見惚れながら、椅子を引いて腰掛けた。
31
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:12:03 ID:15xn.t.w0
ζ(゚ー゚*ζ「お待たせいたしました。」
少しして、女性がティーセットをトレーに乗せて戻ってきた。
( ^ω^)「ありがとうございますお。えっと…なんとお呼びすれば…」
ζ(^ー^*ζ「デレです。」
デレさんはそう言いながら、僕のティーカップにお茶を注いでくれた。
( ^ω^)「デレさん。ありがとうございますお。」
ζ(^ー^*ζ「いえいえ。」
そう言いながらデレさんは、向かいの椅子に腰掛けた。
( ^ω^)「あの…ドクオさんは?」
ζ(゚ー゚*ζ「ドクオさんは来ません。どうぞ、お召し上がりください。」
(;^ω^)「そうなんですか…。頂きますお。」
もしかしてドクオさんは忙しい中お茶の用意をしてくれたのではないかと、申し訳ない気持ちになった。
32
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:12:44 ID:15xn.t.w0
ζ(゚ー゚*ζ「どうぞ。ディンブラです。」
( ^ω^)「ありがとうございます。頂きますお。」
( ^ω^)) コク
(*^ω^)「美味しいですお。」
ζ(^ー^*ζ「ディンブラは、渋みや甘み、香りなどのバランスが良い茶葉だと言われています。」
(*^ω^)「確かに紅茶と言われて想像する味はこんな感じですお。」
33
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:13:36 ID:15xn.t.w0
( ^ω^)「こちらのカップケーキは、とても可愛らしいですお。」
お茶請けに、小さめなカップケーキが2つ。
ケーキに乗ったクリームの上には、ケーキと同じ生地で作られたリボンのような飾りが乗せられている。
ζ(゚ー゚*ζ「バタフライカップケーキです。こちらもドクオさんが作りました。」
( ^ω^)「それはそれは…。次に伺った時に、お礼を言いますお。」
ζ(^ー^*ζ「きっと喜ぶと思います。」
https://imgur.com/a/iHO6lwD
34
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:14:31 ID:15xn.t.w0
( ^ω^)(…そうか、これは蝶を模した飾りだったのかお。)
僕はカップケーキの紙を少し広げて、一口食べた。
( ^ω^)) モグ…
(*^ω^))「これは、とてもクリーミーですお。クリームもなのですが、生地自体も。」
市販のカップケーキよりも、やや重めで素朴な味だ。
ほんのりとバニラの香りもする。
ζ(゚、゚*ζ「きっとスキムミルクですね。ドクオさん、何にでも入れるんですよ。もう充分大きいのに。」
( ^ω^)「ふふ。今から伸びるならどんどん入れてほしいですお。」
35
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:15:29 ID:15xn.t.w0
( ^ω^)「あの…。失礼ですが、デレさんは食べ物を食べても大丈夫なのでしょうか?」
頬に手をあて、うっとりしながらカップケーキを食べるデレさんに聞く。
ζ(゚ー゚*ζ「私が、人ではないからでしょうか?」
(;^ω^)「昨日、そう聞いていましたから…。」
ζ(゚ー゚*ζ「意外と平気なんですよ。なんならこのケーキも、10個はいけそうです。」
(;^ω^)「凄いですお…。」
ζ(゚、゚*ζ「だけどドクオさん、あまり数は作ってくれないんですよね…。」
(;^ω^)「きっと修理屋さんとケーキ屋さんは、兼業不可なんですお。」
36
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:17:01 ID:15xn.t.w0
ζ(゚ー゚*ζ「内藤さん、お茶のおかわりはいかがでしょうか?」
( ^ω^)「お願いしますお。」
ζ(^ー^*ζ「では、少々お待ちください。」
(;^ω^)つ「あ…」
てっきりティーポットの中にお茶が残っているのかと思ったが、新たに用意をしてくれるようでデレさんは屋敷に戻っていってしまった。
(;^ω^)、(悪いことをしてしまったお…。)
また少しするとデレさんが戻ってきて、先程とは色が違うお茶を注いでくれた。
ティーポットは陶器製から、丸く透明な物へと変わっている。
( ^ω^)「ありがとうございますお。」
ζ(゚ー゚*ζ「ペパーミントティーです。苦手ではありませんか?」
( ^ω^))「いいえ。ミントティーはたまに飲みますお。」ゴク
(*^ω^)「爽やかですおー。」
ζ(^ー^*ζ「良かったです。」
37
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:18:25 ID:15xn.t.w0
ζ(゚ー゚*ζ「ミントティーには抗炎症作用や、胃の不調を助ける効果があるのだそうです。」
( ^ω^)「そうなのですかお。ガッツリ食べ過ぎた時なんかに、意識して飲みたいですお。」
ζ(゚、゚*ζ「ガッツリした物、よく召し上がるのですか?」
( ^ω^)「ああ、繁忙期などは気が抜けて、割とそうかもしれませ」
°·∴ζ(>Д<;ζ「ブェ゙ッぐショイィィぃぃ!!!」
∑(;^ω^) ビクッ!!
(;^ω^)「大丈夫ですかお…?」
ζ(゚∩゚*;ζ「すびばせん…お見苦しいところを…。」ズズッ
(;^ω^)「いえ…。」
(;^ω^)(びっくりしたお…。)
__物も、風邪や花粉症になるのだろうか?
38
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:19:31 ID:15xn.t.w0
ミントティーに明るい庭。
あまりにも爽やかで、僕は思わず時計を確認した。
( ^ω^)(もう、17時半近いお…。)
( ^ω^)「デレさん。このお庭は、ずっと昼間のままなのでしょうか?」
ζ(゚ー゚*ζ「いいえ。庭に誰も居なくなれば、季節の日没通りに暗くなりますよ。」
ζ(゚ー゚*ζ「私がお客様を見送り終えて、屋敷の扉を閉める時。扉の向こうがだんだんと暗くなっていくのが見えます。」
( ^ω^)「そうでしたかお。花にも夜は必要ですし、あまり長居してはいけませんね。」
( ^ω^)「…」
ミントティーで頭がすっきりしたからか、僕はドクオさんのオーダーカーテンの案を思い付き、カップを置いた。
39
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:20:42 ID:15xn.t.w0
( ^ω^)「ご馳走様でしたお。一度戻ってドクオさんにお願いしたい事が出来たので、今日はこの辺で…」
ζ(゚ー゚*ζ「よろしければお伝えしますよ。」
( ^ω^)「えっと、ドクオさんからのご注文のカーテンは、この庭をイメージしたものにしようと思うんですお。」
( ^ω^)「それで一度、この庭をスケッチする機会を頂けたらなと…」
ζ(゚ー゚*ζ「それならきっと、許可を取らなくても大丈夫ですよ。」
ζ(゚ー゚*ζ「ドクオさんから内藤さんに伝言があるんです。『いつでも来てください』と。」
(;^ω^)「…。それは、社交辞令では…?」
ζ(゚、゚*ζ「いいえ。『何なら毎日でも』と言っていましたし…。」
∑(;^ω^)「毎日、ですかおっ!?」
ドクオさんの雰囲気からは想像も出来ないような、フレンドリーな言葉だ。
ζ(^ー^*ζ「はい。」
(;^ω^)「…ではお言葉に甘えて、しばらく週に一度ほどお邪魔しますお。」
ζ(^ー^*ζ「分かりました。伝えておきます。」
40
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:21:25 ID:15xn.t.w0
ζ(゚ー゚*ζ「内藤さん、よろしかったらこれを。」
門の手前で、デレさんに呼び止められた。
( ^ω^)「…?何でしょうか?」
ζ(゚ー゚*ζ「栞です。今年のネモフィラで作りました。」
(*^ω^)「…とても綺麗ですお。ありがとうございますお。」
花だけではなく、かへいや葉も含まれるその栞は、植物標本のようで美しかった。
ζ(゚ー゚*ζ「さようなら。またお待ちしております。」
( ^ω^)「さようなら。」
41
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:23:53 ID:15xn.t.w0
17:50
暗くなった道を歩きながら、僕は考える。
( ^ω^)(図書室のカーテンはかなり傷んでいたから、早く新しいものにしてあげたいお。)
( ^ω^)(レースカーテンの方は、スケッチをしたら、家のパソコンでパーツを作っておくお。作り終えたら会社でまとめて発注するお。)
会社でもう長くベテランの枠に入っている僕が、このように仕事を家で進め過ぎるのはあまり良くない事だ。
仕事量に差が出て、新人や家庭を持つ社員へのプレッシャーになる。
けれど家に帰っても、家事以外他にする事がないのだ。
平日の食事は外でとるか、街の飲食店の弁当を取り扱う無人コンビニで済ませているし、洗濯は休日にまとめて出来るように替えの服には余裕がある。
家の床がバリアフリー仕様のため、ロボット掃除機もほぼ全ての部屋を走る。
特別大変な事は、秋に庭に落ちる葉の掃除くらいだろうか。
何より花のスケッチは、僕の学生の頃からの唯一の趣味だ。
だからあの庭を見たら、何かに留めておきたい。そう思うのは当然だ。
( ^ω^)(家で作業した分は、会社でマニュアル作りの時間にでも充てれば良いお。)
( ^ω^)(……。)
不思議な庭と屋敷に、不思議な人達。
( ^ω^)(…いや、デレさんは人じゃないそうだけれど…。)
僕は、その人達が喜ぶようなカーテンを作れるのだろうか?
【 第一話 ネモフィラの咲く庭 】
終わり
42
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:24:56 ID:15xn.t.w0
【登場人物】
( ^ω^)
内藤文高
カーテンメーカーの営業兼デザイナー
アラフィフ
平均よりも背が低い
ζ(゚ー゚*ζ
デレ
人ではないらしい
アンティークドレスを着ている
見た目は20代半ば〜後半
背が高い
('A`)
ドクオ
小さな金属製品の修理屋
年齢はデレと同じくらいの見た目
背がとても高い
43
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:26:15 ID:bsQbGWnk0
続きが楽しみだー!!
乙
44
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:27:01 ID:15xn.t.w0
【バタフライカップケーキ】
・バター 70g
・てんさい糖70g
・卵SMまたはMサイズ2個(Lは1.5)
★薄力粉120(うち20gは分離防止用に分けておく)
★ベーキングパウダー小さじ1
★スキムミルク5g
★牛乳大さじ2
★バニラオイル10滴
□生クリーム100ml
□てんさい糖大さじ1/2くらい
【作り方】
1.バターと卵を常温にしておく。作り始める頃にオーブンを180度に温めはじめる。
2.常温にしたバターとてんさい糖をフードプロセッサーに入れて混ぜる。
3.そこに溶いた卵を4回くらいに分けて入れる。2回入れたら小麦粉を20gほど入れると分離防止になる。
4.小麦粉(残100g)、ベーキングパウダー、スキムミルク、牛乳、バニラオイルを入れてフープロ混ぜ。
5.かなり膨らむので、液はカップの半分まで。180度のオーブンで約20分焼く。
【飾り付け】
1.ケーキの粗熱をしっかり取る。
2.生クリームは、砂糖を入れながら固めに立てて冷蔵庫で冷やしておく。
3.ケーキの上部を包丁で丸くくり抜き、半分にカット(半円状になる)。
4.ケーキの穴にスプーンか絞り袋でクリームを埋める。
5.半円の生地を蝶に見立てて置き、好みで粉砂糖を振る。(生地の置き方を内カーブにするか外カーブにするかで雰囲気が変わります。作中は外カーブ。)
45
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:28:48 ID:15xn.t.w0
最後の連載なので、ゲームをしましょう。
・全話の作中に登場した花を、品種まで全て知っていたら
・もしくは内藤が車のラジオで聴いた曲が当てられたら
お好きな花とキャラクターで短編を書いてプレゼントフォーユーします。
よろしくお願いします。
絵やレシピは各話有ったり無かったりです。
絵は撮った写真から線画を起こし、描き足した物が多いです。塗り絵だけしてたいです。
46
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:31:16 ID:15xn.t.w0
あ、あと準備中にずっとしくれがと呼んでいたので、そう呼んで頂けたらとても喜びます。
47
:
名無しさん
:2024/06/20(木) 07:18:32 ID:hj1yl5Rs0
乙!!優しい世界観ですね。あと、イラストが上手い。
48
:
名無しさん
:2024/06/20(木) 21:52:11 ID:D2vuZELQ0
最後!?
49
:
名無しさん
:2024/06/20(木) 21:56:24 ID:AvX.tj9U0
乙乙
雰囲気いいねぇ
バタフライカップケーキおいしそう!絵もめちゃ好き
花も曲も詳しくないくやしい
そして最後の連載寂しい…
50
:
名無しさん
:2024/06/20(木) 22:08:40 ID:ap0DLUYk0
おつ
素敵な雰囲気
51
:
名無しさん
:2024/06/25(火) 00:28:50 ID:yPo9iWtM0
乙!綺麗なイラストと雰囲気めちゃ好き!
52
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:05:43 ID:uUhGkg420
>>43
ありがとうございます!
ゆっくり進行ですが、よろしくお願いします!
>>47
ありがとうございます!
水彩でスプレーワークという技法に挑戦しました〜
>>48
はい!早く支援側に回りたくて全力で書いてます!
>>49
ありがとうございます!
バタフライカップケーキはちょっとした工夫の飾り付けなのに、食べるとなんだか倍幸せな気持ちになるのでぜひお試しください。
曲は最後のタイトルヒントから別のヒントを逆算するといけるかも!
居座ります
>>50
ありがとうございます!
行ってみたいブーン系観光地上位目指します!
>>51
ありがとうございます!
そう言って頂けると、絵も用意して良かった!
今もある場所と、もう無い場所がモデルになってます。
コロナのせいです。
53
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:09:57 ID:uUhGkg420
皆さんいかがお過ごしでしょうか?
知っている花ゲームは、(プリムラ)ウィンティーで何割かは仕留められたのではないでしょうか。
ノーマルなプリムラもゲームの世界から飛び出してきたような可愛らしさがありますが、ウィンティーはふんわりと儚げなところが素敵なお花ですよね。
【曲ヒント1】
その曲は、軽やかなアコースティックギターで始まります。(楽器に詳しくないのでおそらくですが)
曲ヒントは投下した日に1つ追加されます。
ヒントでその歌手にピン!ときたら、発表曲のリストを遡れば確実に当てられるようなヒントを最後に出す予定です。
予想は投下後の乙と同じタイミングで書き込んで頂けるとチェックしやすくて助かります!
その際は「◯◯の〜」、と歌手の短縮名や苗字を軽く添えてください。
予想タイム中は反応せず、曲名は最終話まで明かしませんが、最初に的中させた方のみ、完結後にご希望のお花とキャラクターを伺いに参ります。
仕上がり次第このスレか、ご希望であれば総合に短編として投下する予定です。
月一の投下を目指し、全9話くらいで7回の投下になる予定です。
よろしくお願いします。
54
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:13:07 ID:uUhGkg420
(∩^ω^)∩ パシャパシャ
( ∩ω∩) フキフキ
( ^ω^)「ふぅ…。」
( −ω−)人 ナムナム
( ^ω^)「…」
( ^ω^)「ツン。僕は顔を洗ったそばからテカテカになっていくおっさんになってしまったお。」
( ^ω^)「…。」
( ^ω^)「君はいつまでも、綺麗なままだおね。」
僕は、白いドレスを着て微笑む妻の写真に向かって、そう言った。
( ^ω^)「行ってきます。」
55
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:15:37 ID:uUhGkg420
【 第二話 かすみ草の時 】
https://imgur.com/a/H2ygCI8
.
56
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:17:00 ID:uUhGkg420
(*゚ー゚)「えへへ…。」
『今度の水曜日は、腕時計などの小さな時計を持ってきてください。』
先生がそう言っていたのを、お母さんに言うのをわすれたわたしは、こっそりとお母さんの小さな"かい中時計"をポケットの中に入れてきた。
金色で、とってもキレイ。
手をポケットに入れると、シャランとすてきな音がする。
(*゚ー゚)(家に帰ってから、すぐにもどせばいいよね…?)
三(,,゚Д゚) 三(-@∀@)
三(-@∀@)「やーいやーい!のっろまっのし〜ぃは!」
三(,,゚Д゚)つ「ちっこくっする〜!!」
(;>ー<)「きゃっ!!」バンッ!
うしろから、いつもの二人にランドセルをたたかれた。
57
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:17:58 ID:uUhGkg420
(*゚ぺ)q「のろまじゃないもん!!」
走るのがクラスで一番おそいから、二人にはそんな悪口を言われる。
(*゚ぺ)(あーぁ、朝からイヤな気分。男子ってどうしてこんなにコドモなの?)
だけど、いいもん。
きっと私の時計は、クラスで一番キレイなんだから。
( ^ω^) テクテク
( ^ω^)「おや、お嬢さん。ハンカチを落としましたお。」
( ^ω^)つ□「はい。可愛いひまわりの柄ですお。」
∑(*゚ー゚)「あ!ありがとうございます!」
いつの間にか、かい中時計の反対がわに入れていたポケットから落ちちゃったみたい。
( ^ω^)ノシ「いえいえ。お勉強、頑張ってくださいお。」
(*゚ー゚) 「…」
(*゚ー゚)「…ステキな人…。」
58
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:19:04 ID:uUhGkg420
( ^ω^) テクテク
4月も後半に入る頃。
民家の花々が彩りを見せ、僕の前を歩く子ども達は今日の休み時間は何で遊ぼうかと相談をしている。
ζ(^ー^*ζ「おはようございます。」
( ^ω^)「おはようございます。」
ドクオさんからのオーダーを受けて以来、僕は家で朝食をとり、小学校の通学路でもあるこの道から通勤するようになった。
それは毎朝ここを通れば、デレさんが門の近くまでやって来て挨拶をしてくれるからだ。
ζ(゚ー゚*ζ「行ってらっしゃい。」
(*^ω^)「行ってきますお。」
朝の光を浴びながら誰かに『行ってらっしゃい』と言ってもらえると、清々しい気持ちになる。
59
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:20:11 ID:uUhGkg420
( ^ω^)「おはようございますお。」
( ´∀`)「おはようモナ。内藤、今日は僕と一緒にシュールさんのお家に挨拶に行く日だモナ。」
( ^ω^)「はいですお。」
_____
___
__
( ´∀`)「おはようございます。」
( ^ω^)「おはようございます。」
車を少し走らせて着いたのは、立派な和風の家だ。
モナーさんが門のインターホンを鳴らすと、70代くらいの和服を着た女性がゆっくりとやって来た。
lw´‐ _‐ノv「おはよう。さぁさ、上がって。」
( ´∀`)「お邪魔します。」
60
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:21:58 ID:uUhGkg420
lw´‐ _‐ノv旦「ほら、玄米茶。」
( ^ω^)「ありがとうございますお。」
( ´∀`)「シュールさんの玄米茶は香り高いモナ。」
lw´‐ _‐ノv△「おだてても、おにぎりしか出ないよ。」
( ´∀`)「頂きます。」
お茶請けとして、梅干しのおにぎりが出された。
( ^ω^))「塩気が絶妙で、仕事を忘れてしまいそうなほど美味しいですお。」モグモグ
lw´‐ _‐ノv「私も、遊びに来たのかと思ったよ。」
lw´‐ _‐ノv「それで、今日は何?」
61
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:23:46 ID:uUhGkg420
( ´∀`)「今日は、挨拶とお伝えする事があり伺いました。」
( ´∀`)「僕はいよいよ社長になります。それで、今後のシュールさんの担当は、内藤がさせていただくこととなりました。」
モナーさんは公共の施設や、昔からの縁がある邸宅への営業、デザインを担当している。
現社長の息子で、僕よりも少し歳上だ。
入社当初は緊張したけれど、この人がこののほほんとした態度を崩したところを、僕は一度も見たことがない。
lw´‐ _‐ノv「私のお迎えなんてもう少しだし、うちだけ最後まで付き合ってくれてもいいじゃないか。」
( ´∀`)「そうはいきません。急ぎ仕事で済ませないのが、御社のモットーですモナ。」
( ^ω^)「よろしくお願いします。」
lw´‐ _‐ノv「しょうがないね。よろしく。」
廊下の房掛けにタッセルで纏められている朱色のカーテンは、広げると雲や鶴、富士の柄が現れる。
モナーさんが前回制作したものだ。
62
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:25:46 ID:uUhGkg420
( ´∀`)「今年もここの梔子は、随分と早く咲きますモナ。」
モナーさんが、お茶を啜りながら庭を眺めた。
lw´‐ _‐ノv「ああ。植えてもらった時からそうなんだよ。だからといって早く散る訳でもない、庭孝行な花さ。」
シュールさんが庭がよく見えるようにと、窓を開けてくれた。
僕達は廊下まで行ってそれを眺めると、甘い桃のような香りが鼻まで届いた。
( ´∀`)「梔子の香りは、待ち合わせをしている恋人が僕に気付いて駆け寄ってきてくれた時の香りと、そっくりだと思いますモナ。」
モナーさんが、背中に手を組みながら言う。
lw´‐ _‐ノv「それはモナーと奥さんで想像しろという事かい?いきなり大昔の惚気話を始めるんじゃないよ。」
( ´∀`)「それ以外に例えが思い付きませんでしたモナ。」
( ´∀`)「…この屋敷と庭に、僕は育てて頂きました。本当に、ありがとうございました。」
lw´‐ _‐ノv「そんなこと言って、たまにはここへ来るんだろう?」
( ´∀`)「はい。お茶を飲みに来ますモナ。」
63
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:26:54 ID:uUhGkg420
_____
___
__
( ^ω^)「モナーさんは、キザですお。」
車内は、モナーさんがシュールさんからもらった梔子の盆栽の香りで満ちている。
僕は運転をしながら、モナーさんを少しからかった。
( ´∀`)「思った事は、悪い事じゃなければ言うモナ。そうしないと誰にも見付けてもらえないモナ。」
( ^ω^)「…」
聞いた人がどう噛み砕けば良いか分からないような事を、モナーさんは時々言うのだ。
( ´∀`)「さあ、戻って仕事するモナ。」
( ^ω^)「そうですね。」
64
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:28:20 ID:uUhGkg420
____________________________
_____
___
__
(*゚ー゚) テコテコ
わたしが持ってきた時計を、となりのせきのヒートちゃんが『カッコいい!』って、すごくほめてくれた。
今日はとってもいい日だったな!
(*゚ー゚)(早く帰って、バレないようにもどさなくちゃ。)テコテコ
三(,,゚Д゚) 三(-@∀@)
三(-@∀@)「おっせ〜!おっせ〜!のっろまっのし〜ぃは!」
三(,,゚Д゚)つ「かっえれっない〜!!」
(;>ー<)「きゃっ!!」バンッ!
カシャンッ
(;*゚ー゚)「あっ…!!」
(;,,゚Д゚)「えっ…」
三(;-@∀@)「いこーぜ!」
65
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:29:37 ID:uUhGkg420
(;*゚ー゚)「どうしよう…こわれちゃった…!」
かい中時計が道路に落ちて、中の部品がちらばってる。
全部集めたけど、どうやってくっつければいいのか分からない。
(*;ー;)「元通りにならない…どうしよう…。」
お母さんが、おじいちゃんからもらった時計なのに。
(*;へ;) グスッ…ヒック…
(*;ー;)「……あれ…?」
(*;ー;)(朝まで、畑だったところが葉っぱでいっぱいだ…。)
もう家に帰らなくちゃいけないのに、どうしてもそのお庭が気になる。
(*;ー;)(どうせおこられちゃうもん。ちょっとより道しちゃお…。)
_____
___
__
____________________________
66
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:31:03 ID:uUhGkg420
16:15
((ヽ‘ω`)ゲソ…
僕は未だに慣れないファンシーな案件に苦戦し、精神を削って退社した。
後輩の芹沢さんにはよく、『乙女男子』と評される僕だ。
確かに先進的な機械のデザインよりも淡い色の花を見た時の方が心躍るし、工場に駆り出されてミシンを踏んだ事もある。
だけど流石に十代の女の子がメイン層の、キラキラとしたイメージに沿うのには骨が折れる。
その子達の気持ちになって、尚且つ三歩は先を行かなければいけない。
いくつか案を作って送ったので、そこから反応の良い部分をまとめて仕上げるしかない。
((ヽ^ω^)(こういう時は、自信失くすおね…。今日はちょっとだけ、ドクオさんのお庭に寄らせてもらうお。)
67
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:32:27 ID:uUhGkg420
_____
___
__
ζ(゚ー゚*ζ「内藤さん!」
門に入ろうとしたところ、デレさんが僕を見付けて駆け寄ってきた。
デレさんが走る度に、ドレスが左右へと少し揺れる。
その時、フワッと梔子の香りが、僕を包んだ気がした。
(;^ω^)
____________________________
( ´∀`)「梔子の香りは、待ち合わせをしている恋人が僕に気付いて駆け寄ってきてくれた時の香りと、そっくりだと思いますモナ。」
____________________________
僕は、今朝のモナーさんの言葉を思い出して戸惑った。
(;^ω^)(僕の服に、香りが付いていたのかお…?)
68
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:33:44 ID:uUhGkg420
ζ(゚ー゚*;ζ「こんにちは!」
今日はシニヨンをふわっとさせたような髪型をしているデレさんが、息を切らし気味で僕に挨拶をした。
( ^ω^)「こんにちはですお。今日もスケッチにお邪魔してもよろしいでしょうか?」
ζ(゚ー゚*;ζ「大丈夫ですが、ちょっと困った事がありまして…。」
( ^ω^)「?どうかされましたか?」
ζ(゚ー゚*;ζ「先ほどお客様が一人いらっしゃったようなのですが、見付からないんです。」
そう言いながら、デレさんは辺りをキョロキョロと見回している。
( ^ω^)「そうなんですかお?よろしければ、一緒に探しますお。」
ζ(゚ー゚*;ζ「ありがとうございます。よろしくお願いします。」
69
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:35:31 ID:uUhGkg420
僕はデレさんと二手に分かれて探し始めた。
メインの道から逸れた場所を、一つずつ見ていく。
木製のベンチと、トレニアの鉢。
こぼれるように咲くポリゴナムと、まっすぐに育った虹色のルピナスを横目に進む。
(;^ω^)ゞ(カラフル過ぎて、僕まで迷子になりそうだお…。)
そう思い、立ち止まった時。
何かが僕の横を通り過ぎた。
(;^ω^)(…!ミヤマカラスアゲハかお…!?)
昔図鑑で見た、高地に棲息する珍しい蝶に似ている。
黒と、光るような青緑の色。
けれど翅にはいくつか穴が空いており、どこか蝶番を思わせた。
その蝶が、桃色のラナンキュラスの辺りで留まろうとしていた。
だけど僕が気になったのは、その先のベンチだ。
茶色い鞄が置かれている。
70
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:36:34 ID:uUhGkg420
( ^ω^)「お…?」
(;*゚ー゚)
近付いてみると、かすみ草に囲まれて、しゃがんで困ったような顔をした女の子。
その目線の先には、モシャモシャと何かの葉を食べている子兎。
だけどその耳は、金属で出来ているようだった。
( ^ω^)(そしてこの子は…今朝の子だお。)
( ^ω^)「お嬢さん、どうされましたかお?」
∑(;*゚ー゚)「あ…朝の…!」
(;*゚ー゚)「あの…時計がこわれてしまって…」
(*;ー;)「学校の近くに知らないお庭があったから入ってみたら…時計がウサギになっちゃって…」
(*;Д;)「どんどん遠くまで走っていくから、まいごになっちゃった…!」
∑(;^ω^)「だ、大丈夫!僕が来た道を戻れば帰れるお。」
71
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:37:30 ID:uUhGkg420
(;^ω^)つ ソーッ…
(;^ω^)「捕まえたお…ベンチの鞄を持ってくださいお。道を戻りますお。」
(;*゚ー゚)「は…はい…。」
兎が驚いて飛び跳ねないように、僕が小声でそう言うと、女の子は素直にそれに従った。
(;^ω^)(…我慢だお。)
ラグラスのような尻尾が、手首に当たってくすぐったい。
72
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:38:57 ID:uUhGkg420
本筋の道に繋がったところで、デレさんが合流した。
ζ(゚ー゚*;ζ「良かった…!」
(;^ω^)「デレさん、この子の時計が壊れてしまったそうなんですお。」
そう言いながらそっと、胸に抱いた兎を見せた。
ζ(゚ー゚*ζ「ドクオさんのお客様ですね。ご案内いたします。」
デレさんはしゃがんで、女の子に目線を合わせた。
ζ(゚ー゚*ζ「お名前を聞いても良い?」
(;*゚ー゚)「しぃ…です。」
ζ(゚ー゚*ζ「しぃちゃん。ここは修理屋さんだから大丈夫よ。時計、直してもらおうね。」
(;*゚ー゚)「は、はい…。」
73
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:39:54 ID:uUhGkg420
屋敷の中に入ると、ドクオさんがどこかの部屋から出てきたところだった。
ζ(゚ー゚*ζ「ドクオさん。こちらの方の時計を修理してほしいんです。」
デレさんがそう言うと、僕の胸にいた兎はドクオさんの肩へとピョンと飛び移った。
(;*゚ー゚)「あの…お金は…」
( ^ω^)「僕が立て替えておくお。」
おそらく修理代は、小学生の小さなお財布では払えないような額だろう。
(;*゚ー゚)「でも…。」
('A`)「……」
僕達のやり取りを聞いていたドクオさんが、口を開いた。
('A`)「…図書室の掃除を。」
____________________________
74
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:41:32 ID:uUhGkg420
_____
___
__
( ^ω^)「しぃちゃんはこれを持っていってお。」
僕は案内された事務室の掃除用具入れの中から羽根ばたきを取り出して、しぃちゃんに手渡した。
それから掃除機と雑巾を持って、図書室に向かう。
ζ(゚ー゚*ζ ))「こちらを、真っ直ぐです。」
('A`)つ「…デレは、こっち」
そう言ってドクオさんが、デレさんの腕を軽く引いた。
ζ(゚、゚*ζ「えー…」
ζ(゚ー゚*ζ「お二人とも、後から行きますね。真っ直ぐ突き当りにある部屋です。」
( ^ω^)「分かりましたお。」
75
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:43:29 ID:uUhGkg420
図書室の中に入ると奥は窓で、少しクリームがかった壁に木の床と暖炉がある。
先程開けた扉の両サイドには、大きな本棚が1台ずつと、その近くには1人分の椅子とテーブル。
僕は遮光用のカーテンを取り付けるため、つい最近もこの部屋に入った。
( ^ω^)(本棚も窓も、高さがあるお。しぃちゃんには低い場所と…掃除機を頼むことにするお。)
電気を点け、窓を開けて換気をした。
窓の外からは草花の瑞々しい香りがして、まるで僕を庭へと誘っているようだった。
( ^ω^)「僕は脚立を持って来るお。しぃちゃんは手の届く高さまでで良いから、壁の木枠に付いている埃をはたきで取っておいてほしいお。」
そう言い残して、僕は先程の事務所に向かった。
( ^ω^)「…」
その途中で、僕がドクオさんと初めて会った時の部屋を通る。
ドクオさんとデレさんが、少し前に入っていった部屋だ。
((( ^ω^)(…とても仲が良さそうだったお。)
76
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:44:11 ID:uUhGkg420
('A`)「……………ダメか」
ζ(゚ー゚*ζ「…。」
.
77
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:46:44 ID:uUhGkg420
僕が図書室に戻るとしぃちゃんは頼んだ通りに、一生懸命羽根ばたきを振るっていた。
( ^ω^)「ありがとうだお。今度は僕が窓の埃を落とすから、それが終わったら窓側から本棚に向かう感じで掃除機をかけていってほしいお。」
(*゚ー゚)「はい。」
やる事が出来たからなのか、しぃちゃんは少し元気を取り戻したようだ。
僕は窓の埃を落とし終わり、脚立を持ってシャンデリア、それから本棚へと移動した。
(;^ω^)(掃除機に追いつかれないように、急がないといけないお。)パタパタ
本棚の中にはブックブラシが備えられていたため、それを使う。
まじまじと見ないようにはしているが、タイトルが自然と頭の中に入ってくる。
( ^ω^)(…花やお菓子の本以外は、僕でも知っているような有名な小説ばかりだお…。)
国内で発表された、わりと最近の本が多い。
この屋敷の本棚の中身としては、少しアンバランスな印象だ。
( ^ω^)(右下の棚に…小箱があるお。この部屋自体そこまで掃除が必要でもない状態だけど、この辺りは特に埃がないお…。)
埃取りが終わると、僕はバケツと水が必要な事に気付いて事務室へと向かった。
( ^ω^)「デレさん。」
ζ(゚ー゚*ζ「あっ。」
その途中には、図書室とは反対方向に向かうデレさんがいた。
ζ(゚、゚*ζ「すみません。ドクオさんに用事を頼まれたので、まだそちらに向かうには時間がかかります。」
( ^ω^)ノシ「あとは全体を拭けば終わりなので、大丈夫ですお。お気になさらず。」
78
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:50:24 ID:uUhGkg420
僕が必要な物を持って図書室に戻ると、掃除機をかけ終えたしぃちゃんが待っていた。
( ^ω^)「これから僕は、窓拭きをするお。しぃちゃんはまず机に椅子と、部屋の中の木枠を拭いてほしいお。終わったら僕も手伝って、最後は一緒に床を拭くお。」
(*゚ー゚)「分かりました。」
( ^ω^)つ□ キュッキュッ
タッセルでまとめられた緑色のカーテンの横の、窓を拭く。
そこから見えた庭は、少しだけ日が傾いていた。
( ^ω^)(庭もだけど、屋敷も英国風だお。)キュッキュッ
( ^ω^)「…そういえば、しぃちゃんの時計は、もとはどんな見た目なんだお?」
少しでも緊張が解れるようにと、話しかけてみる。
(*゚ー゚)「金色の、かい中時計です。丸くてつるんとした…」
( ^ω^)「それは素敵だお。懐中時計なんて、僕よりずっと前の人が持っていたような物だけど、最近の物かお?」
(;*゚ー゚)「いえ、お母さんの時計で…学校で使うのに今日だけ…ないしょで持ってきてたんです…。」
( ^ω^)「そうだったのかお…。」
してはいけない事ではあるが、今日が初対面の僕がどうこう言う話ではない。
大人の持ち物を羨ましがる年頃なのだろうと、僕は自身の子供時代の失敗と照らし合わせてしみじみとした。
(;*゚ー゚)「だけど、同じクラスの男子にせなかをはたかれて落としちゃって…」
Σ(;^ω^)「えぇっ!?それは酷いお!」
79
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:51:51 ID:uUhGkg420
(*゚、゚)「…。あーぁ、クラスの男子もおじさまみたいにやさしければいいのに…。」
(;^ω^)「…?おじさまって?」
(*゚ー゚)σ「おじさまですっ!朝もステキでした!」
そう言って、しぃちゃんは僕をうっとりするように見つめた。
ドクオさんのような、若い人相手ならまだ分かる。
しかし、アラフィフの僕に向けるような目ではないのだ。
(;^ω^)「気が付いたら、みんなする事だお。」
(*゚、゚)「そんな事無いです。知らない子だったら、私…勇気出ないかも…。」
(;^ω^)ノシ「いやいやそんな。」
( ^ω^)「…」
( ^ω^)「…そういえば。僕もその男の子達みたいな頃があったお。」
(;*゚、゚)「えー!?」
(;*゚、゚)「ほんとにっ?」
しぃちゃんが目を丸くして、僕を見た。
( ^ω^)「そうだお。女の子の手を強く引っ張って、困らせてしまった事があるお。」
(;*゚、゚)「えぇー、ちょっとイヤかも…。」
(;^ω^)「ウッ…」グサッ
80
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:53:42 ID:uUhGkg420
ζ(゚ー゚*;ζ「お待たせしました。」パタパタ
デレさんが、早歩きで図書室にやって来た。
( ^ω^)「もう、終わるところですお。」
しぃちゃんと一緒に雑巾がけ競争をしていたら、あっという間に床は綺麗になった。
( ^ω^)「広くてダンスが踊れそうなお部屋ですお。」
2台の本棚と机セット以外は、ほぼ何もない部屋だ。
ζ(゚ー゚*ζ「持て余してしまいますよね。ここ、今は私の部屋なんです。」
(;^ω^)「そうなんですかお?知らずにお掃除してしまいましたが…」
ζ(^ー^*ζ「お気になさらず。ありがとうございます。」
(*゚、゚) ムム…
しぃちゃんがパタパタと近付き、僕達の間に立った。
(;^ω^)「あっ、暇だったおね。ごめんお。」
ζ(゚ー゚*ζ「修理も終わったそうなので、行きましょうか。」
そう言われても、しぃちゃんは何故だか不機嫌そうな表情を変えず、今度は僕の横に立った。
ζ(゚ー゚*ζ「あらあら…。うーん…?」
ζ(^ー^*ζ「…恋敵ですかね?私。」
デレさんがそう言って悪戯っぽく首を傾げた。
僕は苦笑いして、『流石に違うと思いますお』という視線をデレさんに送った。
ζ(゚ー゚*ζ「だけど、日が暮れきる前に帰りましょうね。」
(*゚ー゚)「はい…。」
デレさんが先頭に立って、僕達は図書室を後にした。
ζ(゚ー゚*ζ「……」
ζ(^ー^*ζ「…ふふっ!」
デレさんは自分で言った言葉がツボだったのか、時間差で笑っていた。
81
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:56:58 ID:uUhGkg420
('A`)「…」
僕達が事務所の水道で手を洗い廊下に出ると、ドクオさんが待っていて兎をしぃちゃんに手渡した。
(*゚ー゚)「わ…」
時計の針のような形の金属の耳が、カチカチと小刻みに一定の音で動いている。
( ^ω^)(さっき僕が連れてきた時は耳は動いてなかった。…ということは、直ったみたいだお。)
ζ(^ー^*ζ「一番最初に来た門から出れば、もとの懐中時計に戻るよ。」
(;*゚ー゚)「えっ…?あ、ありがとうございます…?」
しぃちゃんがドクオさんに、よく分からないままお辞儀をしてお礼を言った。
未だに身体はふわふわとした兎の形で、本当に本来の物として直っているのか、確認の仕様がないのだろう。
それからデレさんが僕達を玄関へと向かうように促し、僕とデレさんでしぃちゃんを門まで送る事にした。
( ^ω^)「ウサギさん、大人しいお。」
(*゚ー゚)「はい。それに、あったかいです。」
しぃちゃんは胸に兎を抱いている。
(*゚、゚)「だけど、なんで時計がウサギになっちゃったんだろう…?」
( ^ω^)「不思議だおねー。」
ζ(^ー^*ζ ニコニコ
82
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:59:29 ID:uUhGkg420
(*゚、゚)σ「…あれっ?あの花、ウサギに似てる!」
(;^ω^)「おっ!?本当だお!」
しぃちゃんが指差した小さな植木鉢には、本当に兎の形をした花が咲いていた。
ζ(゚ー゚*ζ「名前もウサギゴケと言いますよ。とても小さくて、可愛いですよね。」
ζ(^ー^*ζ「ちなみに、食虫植物です。」
(;^ω^)「お…」
どう返せば良いのか分からなかった僕は、気不味さを隠すために自分の腕時計を見た。
( ^ω^)(もう、17時半だお。)
( ^ω^)「しぃちゃん。ここは明るいけれど、門を出ると図書室で見た時のお庭みたいに、少し暗くなっていると思うお。良かったらお家の近くまで送っていくお。」
(*゚ー゚)「あ!大丈夫です!すごく近くだし、GPSもあるし…」
(;^ω^)「でも…」
ζ(゚ー゚*ζ「ウサギさん。しぃちゃんがお家に着いたら、ドクオさんに教えてくれますか?」
デレさんがしぃちゃんの抱く兎に顔を近付けて、そう話しかけた。
すると兎は、耳を忙しなく動かして『まかせて!』と返事をするような仕草をした。
ζ(^ー^*ζ「ありがとうございます。これなら大丈夫ですね。」
83
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:00:43 ID:uUhGkg420
( ^ω^)?「どうして大丈夫なんですかお?」
僕は気になって、デレさんに聞いてみた。
ζ(゚ー゚*ζ「ドクオさんはお客様の持ち物とお話が出来るんですよ。」
ζ(゚ー゚*ζ「来る時なんかも、遠くにいる時点から『行くよ』と物が教えてくれたり、会話したりするそうなんです。」
Σ(;^ω^)「ええっ!?」
(;^ω^)「そうなのですかお…。それは凄いですお。」
もはや、嘘だなどと疑う事もない。
ここはとても不思議な場所なのだから。
(*゚、゚) ムム…
気付けばしぃちゃんがまた、不機嫌そうな顔をしていた。
ζ(゚ー゚*ζ「あ。しぃちゃん、これ良かったらお家で食べてね。」
そう言ってデレさんが透明な袋に入った焼き菓子をしぃちゃんに手渡した。
中の小さな瓶には、ジャムも入っているようだ。
(*゚、゚)「…ありがとうございます。」
嬉しいのにそれを隠すような複雑な顔をして、しぃちゃんはそれを受け取っていた。
84
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:02:23 ID:uUhGkg420
(*゚ー゚)「かい中時計を直してくれてありがとうございました。さようなら。」
ぺこりとお辞儀をして、しぃちゃんは門から家へと帰っていった。
( ^ω^)ノシ ζ(゚ー゚*ζノシ
ζ(゚ー゚*ζ「内藤さん。ちょっと遅いですが、よろしければお茶を飲んでいきませんか?」
( ^ω^)「では、ありがたく。」
こういう時は予め用意しておいてくれて誘うものなのだ。
少しお腹も空いていたし、お言葉に甘えてしまおう。
_____
___
__
(*゚ー゚)(…。フシギなところだったなぁ…。)
お花がいっぱいのお庭に、大きなお家。
それから、ステキな朝のおじさま。
(*゚ー゚)「…あれっ?」
私はだっこしていたウサギが急にいなくなったのにびっくりして、下を見た。
(*゚ー゚)「時計に戻ってる…。」
____________________________
85
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:04:56 ID:uUhGkg420
(*^ω^)「…今日も、凄いですお。」
前回と同じく、庭のテーブルセットのある場所に通された僕は、周りのその美しさに感嘆の声をあげた。
ζ(^ー^*ζ「アルメリア バレリーナホワイトに、ラナンキュラス ラックスです。ウラノスなど、絶妙な色合いが素敵ですよね。」
(*^ω^))「大人が好きな色ですお。」
86
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:08:00 ID:uUhGkg420
ζ(゚ー゚*ζ「それでは本日は、メレンアッサムとスコーンです。」コトッ
デレさんが屋敷に戻り、ワゴンを持ってきてお茶を僕の前のテーブルに置いてくれた。
( ^ω^)「ありがとうございますお。頂きますお。」
( ^ω^)) コクリ
( ^ω^)「…アッサムはミルクティーのイメージがあったけれど、ストレートもとても美味しいですお。」
(*^ω^)「このメレンアッサムというお茶は、半音上がって華やかになった感じの味がする気がしますお。飲みやすいですおー。」
ζ(^ー^*ζ「それは良かったです。」
ζ(゚ー゚*ζ「インドにあるメレン茶園は、アッサムの中でも特に歴史のある茶園なのだそうです。」
( ^ω^)「そうなのですかお。風味に古めかしさを全く感じないので、驚きましたお。」
ζ(^ー^*ζ「そうですよね。私、アッサムの中ではこれが一番好きです。」
https://imgur.com/a/YAMntb5
.
87
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:11:08 ID:uUhGkg420
お茶の温度がもう少し下がるまで、僕達は話をする事にした。
ζ(゚ー゚*ζ「お茶のセットを取りに行った時に、しぃちゃんは無事お家に着いたとドクオさんが教えてくれました。」
( ^ω^)「それは安心しましたお。」
( ^ω^)「…デレさんも、遠くからドクオさんと会話をする事が出来るのでしょうか?」
ζ(゚ー゚*ζ「いいえ。私は人の姿ですし普段ドクオさんの近くに居るからなのか、普通に会話をしに行かないと話せません。」
ζ(^ー^*ζb「もしかしたらドクオさんとの会話の手段は、一種類しか持てないのかもしれませんね。」
デレさんは今思い付いたのか、楽しそうにそう言った。
ζ(゚ー゚*ζ「私は他の物達との会話も、ちゃんと出来ている訳ではないんです。だけど言いたい事などは、なんとなく分かります。」
( ^ω^)「そうなんですかお。程度はあっても、デレさんは人や物とお話が出来るなんて羨ましいですお。」
ζ(^ー^*ζ「ふふ。ありがとうございます。」
僕は、『自分が作ったカーテンなら一体どんな話をしてくれるのだろうか?』と、少し気になった。
88
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:14:24 ID:uUhGkg420
ζ(゚、゚*ζ「…だけど、お話相手は少ないです。門から外を眺めていても、ここにやって来るお客様しか私は見たことがありません。」
( ^ω^)「ここを出た場所は、通学路で人通りが多いはずなのに…。不思議ですお。」
ζ(゚、゚*ζ「はい…。すぐ近くに学校があるのは、門から見えるのですが…。」
( ^ω^)(外の景色は、僕やしぃちゃんが見ているものと同じ…。)
( ^ω^)∂「…ではデレさんは、僕の事がなぜ毎朝見えるのでしょうか?」
この場所に来ない日でも、僕達は朝に顔を合わせて挨拶をしている。
ζ(^ー^*ζ「おそらく、ご縁がある間は継続してお会い出来るのでしょう。」
( ^ω^))「なるほど。ドクオさんから依頼されたお仕事の間、という事ですかお。」
そう話しているうちに、お茶を一杯飲みきってしまった。
ζ(゚ー゚*ζ「内藤さん、よろしければミルクティーでもアッサムを試してみてください。」
( ^ω^)「ありがとうございますお。」
89
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:15:30 ID:uUhGkg420
ζ(゚ー゚*ζ「失礼します。」
そう言いながら、デレさんは空になった僕のカップにミルク、紅茶の順で注いだ。
その動きは自然だが、じっとよく見ると機械的で、彼女も何かしらの「物」である証のようであった。
ζ(゚ー゚*ζ「ミルクを先に入れるのは、熱によるタンパク質の変質を防ぐためなのだそうですよ。」
( ^ω^)「そうなのですかお。僕はコーヒーにもミルクを入れるので、家でも試してみますお。」
ζ(^ー^*ζ「ぜひ。」
( ^ω^)「では、まだ頂いていなかったスコーンから。」
僕はデレさんに倣いスコーンを手で半分に割り、クロテッドクリームとジャムを塗った。
90
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:17:37 ID:uUhGkg420
ζ(゚ー゚*ζ「こちらのジャムは、ラズベリーです。やっぱりイチゴやブルーベリーが主流かもしれませんが、個人的に延々と食べられるのはラズベリーですね。」
( ^ω^)「僕はスコーンをラズベリーで食べるのが初めてなので、楽しみですお。」
そう言ってスコーンに目を落とすと、暗い赤紫のジャムがピカピカとしていて綺麗だ。
僕は一口でジャムに辿り着くように、大口で食べることにした。
( ^ω^)) モグッ
(*^ω^))「サクほくですお。」ホクホク
素朴で、ボリュームがある。
ラズベリージャムは少し酸味があるけれど、甘みと共に主張が控えめで、そこが小麦の風味を引き立てている。クロテッドクリームがお菓子を食べている満足感を後押しして、僕はもう一口と頬張った。
口いっぱいに味わいが広がると、そろそろ飲み物が欲しくなってくる。
( ^ω^)) コクリ
(*^ω^)フゥ…
ティーコゼーで保温され、よく抽出されたメレンアッサムはミルクティーにしてもなお芳香で、僕は思わず目を閉じた。
https://imgur.com/a/YAMntb5
.
91
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:19:59 ID:uUhGkg420
_再び開けた目が、デレさんの目と合った。
ζ(゚ー゚*ζ「そういえば、内藤さん。ドクオさんが今度は3段のお皿でお菓子を用意してくれるそうですよ。」
pζ(゚ワ゚*ζq「アフタヌーンティー形式です!」
Σ(;^ω^)「!?」
(;^ω^)ノシ「いえいえ!僕はこのくらいで、お腹がいっぱいですお!手間もかかりそうなので悪いですし!!」
ドクオさんは、どうして僕をここまでもてなしてくれるのだろう?
もしかしてお菓子作りが得意なことを、誰かに披露したかったのだろうか?
ζ(゚、゚*ζ「……そうですか…。」
期待を裏切られたのか、デレさんは残念そうな顔をしている。
ζ(゚、゚*ζ「内藤さんは、クリームティー派でしたか…。」
( ^ω^)「クリームティー…?」
ζ(゚ー゚*ζ「こんな風に、スコーンと紅茶がセットのおやつの事です。」
(;^ω^)「そうですお。クリームティー派ですお!」
92
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:20:55 ID:uUhGkg420
ζ(゚ー゚*ζ…内藤さん。よろしければここにいらっしゃる間、私の話し相手になってくれませんか?」
( ^ω^)「僕が…ですかお?」
(;^ω^)∂「若い女性が好まれるような話を、こんなオジさんが出来るか不安ですお…。」ポリポリ
ζ(゚、゚*ζ「そんな事ないです。…実は私、外の事がとても気になるんです。」
ζ(゚ー゚*ζ「ドクオさんはめったに家から出ないですし、修理のお客様も頻繁には来ませんし…。」
人ζ(>、<*ζ「お願いします!一生のお願いですっ!」
デレさんが子供のようなお願いの仕方をするので、僕は思わず笑ってしまった。
(*^ω^)「良いですお。」
93
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:21:21 ID:uUhGkg420
【 第二話 かすみ草の時 】
終わり
94
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:22:05 ID:uUhGkg420
【登場人物】
lw´‐ _‐ノv
素直珠瑠
立派な日本家屋に住んでいる
米料理が絶品
(*゚ー゚)
詩衣(しぃ)
小学校中学年
内藤を格好良いおじさまだと思っている
小柄
95
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:28:10 ID:uUhGkg420
途中で画像載せる場所ミスっちゃった
紅茶ってもし仮に、最初にミルクで飲んで次にストレートで飲みたくなった時、カップは変えてくれるものなんですかね?
いくつか紅茶の本を読んでも謎のままです…
96
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:30:13 ID:uUhGkg420
( ^ω^)「外の事というと、この街の事でよろしいでしょうか?」
ζ(゚ー゚*ζ「はい。内藤さんやしぃちゃん、ここにいらっしゃるお客様がどんな場所に住んでいるのか。それが知りたいです。」
( ^ω^))「分かりましたお。」
97
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:30:45 ID:uUhGkg420
【 第三話 ルピナスの街 】
.
98
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:32:35 ID:uUhGkg420
僕はスコーンにジャムを塗りながら、何から話そうかと考える。
デレさんもスコーンにたっぷりのクロテッドクリームを塗っては、美味しそうに頬張っていた。
( ^ω^)「…僕が住んでいる街は、農地と、他と比べれば大規模とまではいかない工業地域の間にある土地なんですお。」
( ^ω^)「ここは、その両方の地域を支えるような業種の人達のベッドタウンだったそうなのですが、元々の住宅街からずれた場所に大学と駅が建ち、再開発によってだんだんと賑わいが出て、近年は観光地としての知名度も上がってきていますお。」
( ^ω^)「僕は、大学が設立されて間もない頃に進学でこの街へ来て、そのまま定住しました。」
ζ(^ー^*ζ
デレさんは、時々頷きながら聞いてくれる。
( ^ω^)「僕が学生だった頃はまだ、大学の近くは広い道路に歩道、学生寮とお店が少しあるくらいで…。新たな店が開店する度に、学生達がこぞって行くほどでしたお。」
( ^ω^)「それが今では、お店ばかりの街になったんですお。主に小規模で、各々にコンセプトがあるような。」
99
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:34:57 ID:uUhGkg420
ζ(゚ー゚*ζ「小さなお店、ですか?」
( ^ω^)「はい。飲食店が主ですが、美容室、服屋に雑貨屋、専門店など。街の人が始めたものが殆どなので、小さなお店が多いんですお。」
( ^ω^)「古い住宅街方面にはスーパーやチェーン店もありますが、駅周辺の大通りは車を使わずに見て回る事が出来るようなお店が多いですお。」
( ^ω^)「駅前には古い建物を再利用して、小さなお土産屋がひしめき合う場所もありますお。そこでは街の特産の薔薇を使ったお菓子が人気ですお。」
ζ(゚、゚*ζ「古い建物…。それは、『北野工房のまち』のようなものでしょうか?」
Σ( ^ω^)「ご存知なのですかお!?」
だいぶ離れた土地の例を挙げられたので、僕は驚いた。
ζ(^ー^*ζ「庭師さんの奥さんが、読み終えた本を私にくださるんです。実際にお会いした事はありませんが…。」
ζ(゚ー゚*ζ「その頂いた本の一つで、登場していました。」
( ^ω^)「そうでしたかお。あそこまで立派ではないですが、そんな感じですお。」
100
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:37:35 ID:uUhGkg420
( ^ω^)「他の特徴といえば、高さ制限がある事ですお。消防技術は近隣の工業地域に重点を置いているため、この街は省エネで救助活動が出来るようにとシンプルな街の造りになっていますお。」
( ^ω^)「高さ制限の都合で、丘の上にある白くて大きな図書館が目立つので、学生の間ではふざけて『神殿』などと呼んでいましたお。」
ζ(^ー^*ζ「ふふっ。」
( ^ω^)「そして図書館や公園などには見事な花が咲いていますお。最近始まった街おこしらしくて流石にこの庭ほどの規模ではありませんが、それこそがこの街が観光地となった一番の理由なので、とても綺麗ですお。」
( ^ω^)「まとめると、ロケーションとショッピングを楽しめる、日帰り旅行にぴったりな街ですお!」
(*^ω^)∂「そして僕は、この街のお店のカーテンをデザインするような仕事をしていますお。」
僕は照れ隠しで、戯けるようにそう締め括った。
101
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:38:54 ID:uUhGkg420
ζ(^ー^*ζ「それはとても素敵ですね!」
Σζ(゚ー゚*ζ ハッ
人ζ(゚ワ゚*ζ†+「もしや、街中のカーテンが内藤さんのデザインだったり…!?」
( ^ω^)「いいえ。でも、遠からずですお!街のカーテンの殆どは、僕の働く会社で手掛けているんですお。僕の他にも数名のデザイナーがおりますお。」
ζ(^ー^*;ζゞ「あら、そうでしたか。えへへ。」
ζ(゚ー゚*ζ「…子供っぽくてダメですね。そうだったら楽しいのにという想像を、すぐしてしまう癖があるんです。」
( ^ω^)「構いませんお。僕の話をよく聞いてくださって、嬉しいですお。」
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