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( ,,^Д^)プラスチックの心臓が痛いようです 最終話
363
:
名無しさん
:2025/05/15(木) 01:02:36 ID:fuoI/clc0
switch2外れました。おかしいよこの世界マジやってられん。
364
:
名無しさん
:2025/05/15(木) 04:01:22 ID:uyNDuSYQ0
乙
こんなときのために積みゲーがあるのだ
365
:
名無しさん
:2025/05/17(土) 12:00:54 ID:UJIERfdE0
乙乙
躊躇無くキャラ変されたキャラ>解せぬ
北海道のお土産美味しいよね
パッケージもお洒落だし
366
:
名無しさん
:2025/05/23(金) 02:54:39 ID:e4oB02520
『春のパン祭り』 15/99
o川;゚ー゚)o「うわぁ…最近、お米がやけに高い!今までの倍近いじゃないですか!」
o川;゚ぺ)o「いつの間にか週末恒例のお米割引キャンペーンもなくなってるし…どこのスーパーも厳しいんですねぇ」
o川;- -)o「どうしよ…安い方にしますかね?でもお米の味が下がるのはノーセンキューだし、安いって言っても比較的な話で、もうお手頃価格のお米なんてないし…」
o川*゚ー゚)o「……うん?」
『本日限定!パン全品半額!』
o川*゚ワ゚)o「パンが代わりに安い…そうだ!しばらく朝食はパンに変えて、お米の消費量を減らせばいいのでは!?」
o川*゚ー゚)o「今日の晩ご飯はパンに合う洋風メニューに変えればいいし、明日の朝にも回せるし!いや〜やっぱり私ってば高性能!そうと決まればちょっと多めに……!」
o川*゚ぺ)o「…ありゃ?なんか数字の書かれたシールが……」
o川*゚ー゚)o「ほほう、シールを集めたらお皿が貰えるんですね。あ、この形、ちょうど欲しかったタイプのお皿だ……」
o川*゚ー゚)o「…」
o川*- -)o「……」
o川;゚ー゚)o「………安いのは、今日だけ!!」
367
:
名無しさん
:2025/05/23(金) 02:56:13 ID:e4oB02520
〜夜 マンション〜
(;,^Д^)「…それで、またこんなに大量のパン買ったのか?」
o川;>ー<)o「だ、だって、お皿のためには30点分のシールが必要でして…必要経費だったんですよぅ!」
(;,^Д^)「普通に皿買った方が安かったんじゃ……」
o川*゚ー゚)oっ○「そういうのじゃないんです!ほら見て下さいよ、うちにない形の可愛いお皿だし、それに、壊れにくくて丈夫らしいですよ!」
o川;゚ー゚)o「……もちろん私に壊せないお皿なんてありませんけどね!?」
(,,^Д^)「いや別にそんな心配してないけど」
368
:
名無しさん
:2025/05/23(金) 02:58:46 ID:e4oB02520
(,,^Д^)「まぁ、食費について考えてくれるのはありがたいし、別にいいよ。むしろ、いつもありがとうな」
o川*^ー^)o「いえいえ、マスターのためですから!それに、パンに合った料理を作るのもちょっと新鮮で楽しいですし!」
o川*゚ー゚)o「しかし改めて考えるとパンってありがたいですねぇ。安いし、お腹いっぱいになるし、日持ちするし、更にはおやつにもなりますし!」
(,,^Д^)「基本的にどんな食材にも合うし、余って困ることもあんまりないからな」
(,,^Д^)「それで、今日の夕飯って何なんだ?」
o川*゚ワ゚)o「はい!今日はですね、トースターで焼いたパンに、ゆで卵のサラダ!そして貰ったお皿には、春野菜たっぷりのビーフシチューです!」
o川*^ー^)o「ビーフシチューはですね、パンに付けても楽しめるようにとろみを多くつけておりまして……!」
o川*゚ー゚)o「…………あ」
369
:
名無しさん
:2025/05/23(金) 03:04:55 ID:e4oB02520
o川;゚ー゚)o「……」
(,,^Д^)「ん?キュート、どうした?」
o川;゚ー゚)o「……あのですね、お皿使いたくて、お皿の形にもパンにも合うビーフシチューにしたんですけど……」
(,,^Д^)「うん」
o川;゚ー゚)o「……お皿、一枚しかない、ので……足りない、です、ね……」
(;,^Д^)「……」
o川;゚ー゚)o「……」
(;,^Д^)「………いや、まぁ、別のお皿使えばいいんじゃ」
o(゚ー゚;川o「ちょっともう30点分パン買ってきます!!」バッ
(;,^Д^)「いや要らないって!!てか似たような形の皿ぜったい何処かで売ってるから!!」
o(゚Д゚;川o「ああっパン半額って確か今日限定だ……!緊急事態です、もう飛んでくしかない!!」
(;,^Д^)「話聞いて……ちょっ、キュート!?止まれって!!」
o(>ー<;川o三「うわあぁ私としたことが!急げいそげ〜!!」ダッシュ
(;,^Д^)っ「キュート〜!?」
〜おしまい〜
370
:
名無しさん
:2025/05/30(金) 17:32:05 ID:4SLJ3XTg0
本編読んでここまで追いつきました!素晴らしい作品ありがとうございます!!!
371
:
名無しさん
:2025/06/08(日) 01:40:58 ID:PcZlMQe60
更新乙です!
372
:
名無しさん
:2025/06/11(水) 09:32:21 ID:oe7hiBzg0
乙
373
:
名無しさん
:2025/06/11(水) 09:34:59 ID:rt.RunqI0
乙乙
374
:
名無しさん
:2025/07/18(金) 23:46:27 ID:97ayFyBY0
『くら寿司』 16/99
o川*゚ワ゚)o「わ〜!ここがくら寿司ですか!外観も店内も綺麗ですね〜!」
(,,^Д^)「言っとくけど、ここ食べ放題じゃないからな」
o川;゚ー゚)o「わ、分かってますよ!ちゃんと食べたいだけ食べます!」
(;,∩Д-)「いやそれじゃダメなんだって……」
o川*゚ー゚)o「あれ?ここ、流れてくるお寿司にカバー着いてるんですね」
(,,^Д^)「そうだよ。だから流れてるお寿司も新鮮さが失われてないんだ。あっ、今流れてきたカツオ取ってくれ」
o川*゚ワ゚)o彡っ○ヒョイ「カツオ……これですね!どうぞ!」
(,,^Д^)っ○「ありがとう。キュートも好きなの取っていいんだぞ」
o川*゚ー゚)oっ○「好きなの……じゃあこのマグロで!やっぱりお寿司と言えばマグロですよね!」
o川*^ー^)o「美味しい〜!じゃあ次は玉子とエビと海老天!ネギトロ、あわび……へぇ牛カルビ!これも頼みます!」
(;,^Д^)「相変わらずめちゃくちゃ食べるな……」
o川*゚〜゚)o「エネルギーが必要なので!」モグモグ
375
:
名無しさん
:2025/07/18(金) 23:47:38 ID:97ayFyBY0
(,,^Д^)「あ、5皿貯まったな。じゃあキュート、そこにお皿入れてみな」
o川*゚ぺ)o「えっ?いいんですか?お皿ってお会計の時に数えてもらわないといけないんじゃ……」
(,,^Д^)「くら寿司はこういうシステムなんだ。ほら」
o川*゚ー゚)oっ○「はぁ……じゃあ入れてみます」
<ガシャン
Σo川;゚ー゚)o「わ!なんかアニメが始まりました!」
(,,^Д^)「なんか今コラボやってるみたいだな」
<ハズレ…
(,,^Д^)「あちゃー…今回は外れたけど、当たったらキーホルダーとか缶バッジとかが貰えるんだ」
o川*゚ワ゚)o「なるほど……!他のお寿司屋さんにはないシステムですね!コラボしてるキャラも可愛いし、一つ欲しいです!」
<プルルル
(;,^Д^)っロ「あっ……ごめん、ちょっと仕事の電話だ。食べてていいぞ」
o川*゚ー゚)o「はーい! なるべく早く戻ってくださいね!」
(^Д^,,)三ピュー
376
:
名無しさん
:2025/07/18(金) 23:50:14 ID:97ayFyBY0
o川*゚ワ゚)o「さぁーて、また5皿入れて……あっ、さっきと映像違う!これはもしや……!」
o川;゚皿゚)o「……ってまたハズレですか!こうなったら当たるまでやってやります!」
o川*゚ー゚)o「どうせならフェアのやつ頼みましょう。北海道産のサーモンに天然ぶりに穴子……あっほたてと大トロも美味しそう!これも入れて……よし5皿です!」
o川*^ー^)o「美味しいお寿司食べながらガチャも楽しめるなんて、素敵なお店!よ〜し、マスターが帰ってくるまでに当たり引いてビックリさせちゃいますよ〜!」
〜数十分後〜
(;,^Д^)「めちゃくちゃ電話長引いてしまった……キュート、怒ってるかな」
(,,^Д^)「ただいまキュート、ごめん遅くなって……って、え?」
o川*゚ワ゚)oっ人「あっマスター!見て下さいよコレ!可愛いキーホルダー!」
(,,^Д^)「えっ……あ、当てたのか?マジで?」
o川*^ー^)o「はい!しかも主人公の子ですよ!ラッキーでした!」
(*,,^Д^)「凄いな、コレ全然当たらないって評判なのに……」
(;,^Д^)「…………いや待て」ゾッ
o川*゚ー゚)o「?」
377
:
名無しさん
:2025/07/18(金) 23:51:27 ID:97ayFyBY0
(,,^Д^)「……キュート、お前何回びっくらぽんやった?」
o川*゚ー゚)o「10回目で当たりが出たので、そこでちゃんと止めましたよ!」
o川*^ー^)o「いくら回転寿司がリーズナブルとはいえ、塵も積もれば山となりますからね!腹八分目ともいいますし!」エッヘン
(,,^Д^)「10回って、え?確か5皿で1回だよな?それを10回って、ことは……」
(ll;,^Д^)サァッ
(;,^Д^)っ『注文履歴』ポチッ
Σ(;,^Д^)「…………1万円、超えとる!?」
o川*゚ワ゚)o「ほら、マスターも食べてくださいよ!あっ出来ればお寿司頼んでくださいね!またガチャしたいので!」
(;,^Д^)「……いや、俺はもういいかな……」
o川*゚ぺ)o「えっ何でですか?ガチャ出来るのに!」
(,,^Д^)「だからだよ」
〜おしまい〜
378
:
名無しさん
:2025/07/19(土) 20:12:38 ID:QFXxwVGQ0
『うなぎ』 17/99
o川*- -)o(今日は土用の丑の日。要するに、うなぎを食べるべきだとされている日)
o川*- -)o(私は今までうなぎを食べたことがそんなにありません……せいぜい、お寿司屋さんに流れてくる薄〜いヤツくらいです)
o川*゚ー゚)oカッ(ですがそれも今日まで!私は今日、ついに本物のうなぎを食べます!)
o川*゚ワ゚)o「まさか、本当に有名なお店に連れてきてくれるなんて!ありがとうございます、マスター!」
(;,^Д^)「……まぁ、確かに『良いうなぎを食べに行こう』って言ったのは俺なんだけどさ」
『次は名古屋に停まります。その次は京都、新大阪の順に――』
(;,-Д-)「まさか本当に名古屋まで来ることになるとは……」
o川*^ー^)o「初めてのうなぎは良いやつが食べたいので!日帰りプチ旅行ってやつですね!マスター!」
379
:
名無しさん
:2025/07/19(土) 20:13:18 ID:QFXxwVGQ0
〜うなぎ屋"うな焼き"さんにて〜
o川*゚ぺ)o「このうなぎ屋さんって他のお店とどう違うんです?」
(,,^Д^)「ドクオから聞いたんだけど"青うなぎ"ってのを使ってるらしい。俺も詳しくないんだけど、うなぎの中でも特に上質で貴重なんだってさ」
Σo川;*゚ー゚)o「ほほう、それは期待しちゃいますね……あっマスター、あっち見て下さいよ!本物の炭火ですよ!」
(,,^Д^)「焼いてるのがここから見えるようになってんだ…。めちゃくちゃ迫力あるし、凄いな」
o川*゚ー゚)o「ご所望でしたら家でも出来ますよ?」
(;,^Д^)「いや望んでない要らない止めて」
o川*^ー^)o「そんなご遠慮なさらず!なんでしたらアマゾンで良い備長炭を購入しますよ!」
(,,^Д^)「言っとくけどウチのキッチンの壁、まだ焦げたまんまなんだからな」
380
:
名無しさん
:2025/07/19(土) 20:14:09 ID:QFXxwVGQ0
@*゚ヮ゚))っ○「お待たせしましたー!肝入りうな丼、二つです!」
Σ(;,^Д^)「おっ来たきた……ってうわ!ボリュームすごっ!」
o川;゚ー゚)o「一切れがめちゃくちゃ分厚いですよ!回転寿司で流れてるうなぎと全然違います!」
o川;*゚∩゚)oモグモグ「……うわっ、お、美味しい!パリパリなのに、中ふわっふわ!」
(*,,^Д^)「肝焼きも、初めて食べたけど凄いな!全然臭みがないし香ばしい…日本酒欲しくなる…!」
o川*゚ワ゚)o「炭火でカリっとなった食感から、全然しつこくない甘味を含んだ油が溢れてくる!いくらでもご飯食べられますよコレ……!」
(*,,^Д^)「コレが"青うなぎ"ってやつか……この為だけに名古屋来る価値あるな。ここまで美味しいとは」
o川;*゚ー゚)o∩「すいません!おかわり!」
(,,^Д^)「うなぎ屋でおかわりって……いやもう全部食べたのか!?早っ!」
@*゚ヮ゚))「もしよろしければ、タレではなく塩でサッと焼いたうなぎ本来の味をより楽しめる白焼きは如何ですか?」
o川*゚ワ゚)o「タレじゃなく、塩……!?それもお願いします!」
(;,^Д^)「商売上手過ぎる!ちょ、ちょっと待てキュート!もうちょっと遠慮してくれー!」
381
:
名無しさん
:2025/07/19(土) 20:15:20 ID:QFXxwVGQ0
〜翌日・東京〜
o川*-ワ-)o「はぁ〜昨日のうなぎ、美味しかったですねぇ。まさにご馳走って感じでした……」
(;,-Д-)「年に一回の贅沢ってやつだな……あぁ〜クレカの明細見たくない……」
o川*゚ー<)o「ご安心くださいマスター。土用の丑の日って今月二回あるらしいですよ!」
(,,^Д^)「その発言の何に安心しろってんだ」
o川*゚ー゚)o「まぁ、うなぎだけじゃなく調理環境にも拘ってたっぽいですからね。あのレベルは流石に店まで行かないと……」
(,,^Д^)「……ん?」
o川*゚ぺ)o「マスター?急に立ち止まってどうし……って」
『うな焼き・東京店』
(;,^Д^)「あれって……え?お、同じ名前ってだけか?」
o川*゚ー゚)o「あー……。いえ、今検索してみたんですけど、どうやられっきとした支店みたいですね」
o川*゚ー゚)o「というか、大阪とか京都とか、色んな所に支店があるみたいです。何なら東京には二店舗あるそうで」
(;,^Д^)「えっじゃあ、俺たちがわざわざ名古屋まで行った意味って……」
o川*゚ー゚)o「……」
(,,^Д^)「……」
o川*゚ワ゚)o「……前向きに考えればホラ、気軽にあのうなぎが食べられるってことでは!?」
(,,^Д^)「んな訳あるか」
〜おしまい〜
382
:
名無しさん
:2025/07/21(月) 00:28:38 ID:bamU65K20
『方を付ける』 18/99
2回ほど、ドサドサと物が落ちる音で目が覚めた。
頭まですっぽり覆っていた薄手のカーディガンを退け、机に突っ伏していた自らの上体をゆっくり起こす。
床にはさっき落ちたのであろう数冊の本と、写真立てが転がっている。そして、微かに聞こえるエアコンの稼働音と冷気が部屋を満たしていて、カーテンの隙間からは日光が差していた。
部屋の壁にかけてある時計の長針は五時に差し掛かろうとしている。どうやら深夜の作業中、すっかり寝落ちしてしまっていたらしい。
頭をポリポリと掻きながら、床に落ちている本を再び立たせ、写真立てを元の位置に戻した。
虚ろな目で写真を見る。ずっと前、友人から貰ったチケットで訪れた、都内の水族館で撮ってもらったツーショット。
何とも言えない寂寥感と郷愁感を覚えながら、どうにか頭を回転させようと自らの頬を数回叩く。
何か夢を見ていたような気もするが、上手く思い出せない。
ただ、なんとなく、幸せな夢だったような気がする。
383
:
名無しさん
:2025/07/21(月) 00:29:56 ID:bamU65K20
昨日、仕事から家に帰ってからのことを脳内で再生する。
夕飯や風呂などの雑務を終わらせ、最近は随分とサボってしまっていた部屋の掃除と片付けを済ませ終わったのが深夜。
そこからさっさと寝ればよかったのに何を思ったのか、買ってきたばかりの便箋を広げて、手紙の執筆に勤しみ始めてしまったのだった。
ついさっきまで自分の顔が乗っていた机には、可愛らしいシロツメクサの意匠が目立つ便箋と、愛用している万年筆が転がっていた。
自分の手を確認してから、汚れがつかないよう慎重に手紙へと手を伸ばす。
家に余りがないことに気が付いて、新しく買いに行ったのが昨日の仕事帰りの夜。
手紙のデザインと紙質が気に入ってからは、ずっとこの便箋のシリーズを用意することに決めていた。
途中で文章が止まっている便箋に改めて目を通す。
深夜の自分が途中まで書いていたにしては、支離滅裂な内容にはなっていない。
便箋を棄ててまた書き直す、なんて作業は必要なさそうなことに安堵の息が漏れた。
書いている内容は特段珍しいものでもない。
今年の夏は去年より暑い気がするだとか、夜が来るのが遅いだとか、夜の雲が高く見えるだとか、どれもわざわざ文章にして認める必要もないようなことばかりだ。
こうして手紙を書き続けて、もう何年になるのだろう。
なんとなく始めた行為だが、一向に終わる気配がない。何か伝えたいことが出来たらすぐに便箋を買いに入っているし、少なくとも季節が変わるごとにこうして手紙を書いてしまっている。
意味があるのかと問われれば、正直無い。一向に文字は綺麗にならないし、面白い文章が書けるようになった訳でもない。
最近は随筆だのエッセイだのが流行っているらしいが、数年続けてもこの程度の文章しか書けない自分には縁遠い話なのだろう。元来、他の人に見せる予定のある手紙でもないが。
万年筆を手に取り、再び便箋に向き直る。万年筆内にあるカートリッジは新品に変えたばかりだから、今ある便箋を使い切ったとしてもインクは保つはずだ。文字が霞む心配をする必要はない。
目を瞑り、最近あった出来事をゆっくり想起していく。
楽しかったこと。面白かったこと。少しムッとしたこと。悲しかったこと。綺麗だと思えた風景。季節の話。そんな何でもない話たちを脳内で整理してから、ゆっくりと文章に落とし込んで、万年筆を動かしていく。
お世辞にも自分は字が綺麗な方じゃない。まぁ彼女は優秀だったから、どれだけ稚拙な文字でもきっと読めるだろうが、それでもやっぱり出来ることなら綺麗な文字を届けたい。そう願いながら一文字ずつ、ゆっくりと時間をかけて言葉を足していった。
384
:
名無しさん
:2025/07/21(月) 00:31:03 ID:bamU65K20
数十分。いや、数時間かけて手紙を書き終える。
軽く手で風を扇いでインクをしっかりと乾かし、改めて自ら書いた手紙を最初から読んでいく。
丁寧に時間をかけて書いた筈なのに、やっぱり綺麗な文字とは言えない。内容についても特に面白みがなく、近況報告に少し毛が生えた程度のものだ。もしも自分が貰う立場だったとしたら、返信には更に数十時間かかるだろう。
きっと笑われてしまうだろうな。
そんな自嘲染みた考えが頭を過る。それでも、どこか満足感があった。
誤字脱字がないか最低限のチェックだけ完了させ、便箋を整え、丁寧に畳む。
今回は合計10枚。いつも大体10枚前後になるのは狙ってやっている。短すぎると読み応えがないし、長すぎると冗長になってしまうだろうから。
便箋同様、花の豪華なデザインが縁に施された封筒に紙を入れ終わる。
そして、傍に置いてあったシーリングスタンプ風のシールを一枚手に取り、手紙に封をする。封筒に貼るのはこのシールだけで、切手などは要らない。何故なら特定の住居に送る類の手紙ではないし、ポストに投函する訳でもないからだ。
一息ついてから封筒をクリアファイルに入れる。届けるまでに鞄の中で折れたりしないように。
時計を見ると、もう朝の七時になろうとしていた。
今日は祝日だから仕事もない。休日の朝ならばきっと比較的涼しいし、あの公園の人通りも多くはないだろう。手紙を出しに行くのなら、今がベストタイミングに違いない。
385
:
名無しさん
:2025/07/21(月) 00:33:23 ID:bamU65K20
手早く夏服に着替え、大学生の頃から使っている鞄を肩から掛ける。中に手紙入りのファイルを仕舞うことも忘れずに。
最低限の身嗜みは整えようと、玄関前の全身鏡を見る。
寝ぐせはない。着ている服に目立つ皺などもない。
だが、どこかに小さな違和感があった。
何かを忘れているような気がする。
そう思い、改めて自分の全身を見つめ続けることに数分かけて、ようやく気が付いた。
リビングへと戻り、机の隅に置いたままの小さな箱に手を伸ばした。
純白と表現すべき真っ白な箱を開く。
中には、いつかの景色を思い出させるような、桜色に輝く指輪が入っていた。
宝石の類はついていない。日付や名前なども刻まれていない。
数年前。また一人暮らしに戻ってしまった頃。
とある金属製の髪飾りを原料に、職人さんに作ってもらった指輪だ。
流石にお風呂に入る時には外すことにしているのだが、外してから失くすのは絶対に嫌だから、どれだけ急いでいる時も必ずしっかり箱の中に片付けることにしているのだ。
指輪を取り出し、左手の薬指につける。
既婚者でないどころか、パートナーも恋人もいないのに指輪を付けるなど、傍から見れば異端者そのものだろう。
気狂いと思われても仕方がないし、事実、会社の同僚に指摘されたこともある。
それでも、誰に何を言われようとも、この指輪を手放す気にはなれなかった。
386
:
名無しさん
:2025/07/21(月) 00:34:31 ID:bamU65K20
自分の手元に遺った彼女の物は、振り返ってみるとそう多くはなかった。
彼女の私物は木製の小箱に全て収まってしまう程度の数しかなかったし、クローゼットに未だかかっているレディースの服も、自分が身に付けられる類の物じゃない。
肌身離さず身に付けられるような彼女の物は、未だ自分の胸の奥で拍動を重ねる心臓を覗くと、これしかなかった。
夜桜が舞ったあの春の日。いつの間にか、手元にあった髪飾り。
自分は男だ。髪飾りを付ける習慣などない。
髪を伸ばしてみようかと思ったが、勤めている会社の規則でそれも出来ない。
そんなこんなで困っていたある日、髪飾りの材質が特殊な金属であることに気が付いて、ふと思い立ったのだ。
「そうだ。指輪にしてしまおう」と。
アイデアが浮かんでからの行動は早かった。
信頼できて腕のある職人を探し、自分と彼女の分の指輪を二つ作った。
一つは手紙と共に送り、もう一つは自分の指に着けることにした。
左手の薬指にした理由は、まぁ、そこしかないと思ったから。
もし彼女がいたのなら、なんと言ったのだろうか。
喜んでくれたのだろうか。それとも、呆れたのだろうか。年単位の時が経っても未だに執着し続ける自分を見て、彼女はどんな顔をするのだろうか。
勝手なことをしている自覚はある。こんな話をしたところで誰も分かってくれない。もしかしたら彼女にすらも引かれてしまうかもしれない。
だけど、そもそも先に勝手なことをしてきたのは向こうだ。
キッチンの壁を焼き、物を捨て、散々こちらを振り回した挙句、心臓を押し付けてきて、いなくなった。
ならば、こちらが勝手に生涯を誓ったところで特段問題はないだろう。彼女がしてきたことに比べたら可愛いものだ。
387
:
名無しさん
:2025/07/21(月) 00:35:50 ID:bamU65K20
薬指で光る指輪を確認してから、再び玄関へと戻る。
向かうのはいつもと同じ、あの大木がある公園。
先日買ったばかりのスニーカーを履き、鞄の中身をチェックしてから、ドアノブに手をかける。
外に出ると、すっかり昇りきった太陽が眩しく輝いていた。
後ろ手で玄関に鍵をかけ、一度だけ深呼吸をする。
澄んだ早朝の空気が肺を満たし、心臓の鼓動が少しゆっくりになる。
休日の朝、柔らかな陽の光に包まれた街並みが驚くほど綺麗に見える。
なんとなく、初めて彼女と出会った夏日のことを思い出した。
〜おしまい〜
388
:
名無しさん
:2025/08/05(火) 22:20:37 ID:yJuy4IZ20
『バッティングセンター』 19/99
o川*゚ー゚)o「マスター、手軽に野球が出来る場所ってここですか?」
(,,^Д^)「そうだよ、バッティングセンターっていうんだ。俺もあんまり来たことないけど……」
(,,^Д^)「ここにお金入れるとあの機械からボールが飛んでくるんだよ。ストレス発散とかによく使われてるらしい」
o川*゚ぺ)o「えぇ〜機械が投げるんですか?私がテレビで見た野球はちゃんと人が投げてたのに…なんだか物足りないです!」
(,,^Д^)「手軽さ重視だからな。ほら、上の方に『ホームラン』って書かれたマークあるだろ?あそこのボールを打ち返すと景品が貰えるんだ」
o川*゚ワ゚)o「景品……わぁ!魚沼産コシヒカリ5kg!?めちゃくちゃ太っ腹じゃないですか!」
(,,^Д^)っl「あそこをピンポイントに狙って打ち返すってプロでも難しいらしいから、景品も豪華なんだろ。ま、とりあえず一回やってみな。結構楽しいから」ハイ、バット
o川*^ー^)oっl「よ〜し!お任せくださいマスター、今日の夜からはお米が美味しくなりますよっ!」
389
:
名無しさん
:2025/08/05(火) 22:21:45 ID:yJuy4IZ20
/◎ ) =| )ウイーン
o川*゚ー゚)o「ほほう、アレがピッチングマシーン……同じロボット同士ですが手加減はしませんよ!この第三世代アイである私が、あなたの性能を見極めてあげましょう!」
(,,^Д^)「キュートー!頑張れー!」
o川*^ー^)o「はーいマスター!見てて下さいね!今から甲子園球児もバットを捨ててグラウンドから逃げ出すレベルのプレーを披露してみせますから!」
/◎ ) =| )ノ○ ウイーン
(;,^Д^)「いや別にそこまでは求めてない……って、おいキュート!前向け前!」
o川*゚ー゚)o「へ?」
(;,^Д^)「もうボール飛んでくるぞ!」
/◎ ) =| )ノ三三○ ビュン!!!←140キロ
390
:
名無しさん
:2025/08/05(火) 22:22:18 ID:yJuy4IZ20
o川*゚ー゚)oっ○「あぶなっ」 パシッ
(;,^Д^)「は?」
Σ/;◎ ) =| )
o川*゚ぺ)oノ⌒○「なんですか、私がマスターとお喋りしてる途中に……イマドキ、機械でも空気読めなきゃスクラップ行きの時代ですよ?」ポイッ
(;,^Д^)「いや……キャッチじゃなくて、バットで打つゲームなんだけど……」
o川*゚ー゚)o「へ?これでアウトじゃないんですか?」
(;,^Д^)「普通の野球じゃないからコレ!バットで打った時の爽快感を味わう遊びなんだよ!」
o川;゚Д゚)o「え〜それじゃあ本当にお手軽野球もどきじゃないですか!ゲッツーとかないんですか!?」
(;,^Д^)「ないわ!てか最初からそういうゲームだって言っただろポンコツ!」
391
:
名無しさん
:2025/08/05(火) 22:23:30 ID:yJuy4IZ20
/◎ ) =| )ノ三三○ ビュン!!!←160キロ
o川;゚ー゚)oっl「えいっ……!あぁもう、バットには当たるのに全然ボールが飛ばない!」コンッ
(,,^Д^)「なんだかんだ160キロに上がったボールにも毎回絶対当ててるの凄いな……」
o川;゚ー゚)o「野球選手の体の使い方なんてプログラムされてませんし…あぁもう!」
o川;- -)o「私があんなボールを射出することしか能のない機械に負けるなんてあってはなりません!マスターの前で恥をかく訳には……!」
/◎ ) =| )ノ三三○ ビュン!!!
o川;゚ー゚)oっl「ええいっ……あぁ、違う方向に飛んじゃった!次が最後の一球……どうすれば……!」コンッ
(*,,^Д^)「おっ、結構飛ばせるようになってきたな。いいぞキュートー!」
392
:
名無しさん
:2025/08/05(火) 22:23:57 ID:yJuy4IZ20
o川*゚ー゚)o「………まてよ?」ピコン
o川*゚ー゚)o(……要するに、あのホームランの所にボールが当たればいいんですよね)
o川*゚ー゚)oっー「………」コトン
(,,^Д^)「お、おいキュート?バット置いて何してるんだ?」
o川*゚ー゚)o「……」ジッ
(;,^Д^)「……まさかアイツ、そのまま――」
/◎ ) =| )ノ三三○ ビュン!!
o川*゚ー゚)oっ○パシッ
o川* ー )oっ"○"ググッ…
o川*>ー<)oノ三三三○「えいっ!!」ビューン!!
<パッパラー! ホームラーン!!
(;,^Д^)「やりやがった……」
393
:
名無しさん
:2025/08/05(火) 22:24:45 ID:yJuy4IZ20
o川*゚ワ゚)o「わーい!見てましたかマスター、ホームランです!凄くないですか!?」
(,,^Д^)「今のをホームランって言えるお前のメンタルが凄い」
o川*゚ー゚)o「え?だって要するにあそこにボールをぶつければいいお話ですよね?」
o川*^ー^)o「じゃ、ホームランの音鳴ったし、景品のお米貰ってきますね〜!」
o(^ワ^*川三ピュー!!
(,,^Д^)「いや多分お前は……ってもういないわ」
〜数分後〜
o川*゚ー゚)o「ズルですって」
(,,^Д^)「だろうな」
〜おしまい〜
394
:
名無しさん
:2025/08/06(水) 07:42:06 ID:S9TCfWJo0
乙
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