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異界大戦記のようです
1
:
名無しさん
:2023/04/01(土) 23:39:57 ID:mfVt/ZZU0
世界の縮図が変わろうとしていた。
魔法を操り、自らを神の僕と信じるエルフ達が支配するこの星。
その中の3大大陸に存在する5つの列強と呼ばれる国が衝突する寸前にまでなっていた。
きっかけは列強最強の国家と名高いルナイファ帝国と、同じく列強のニータ王国との国境で起こった小さな事件であった。
それぞれがその犯行の責任は相手側にあると主張しあっていた。
互いに堂々と国として主張をしていたがその内情は全く異なるものであった。
ルナイファに関しては元から周辺国家を攻め落とし、支配する典型的な侵略国家であった。
列強クラスの国との戦いはなかったものの、同大陸に存在し隣接する小国はほぼすべて支配していると行っても過言ではない。
そして大陸統一のためにも同じ大陸で国境を接しているニータはいつかは落としたいと考えていたことから、この機会に攻め込むのが良いと言う意見で国が固まりつつあった。
521
:
名無しさん
:2023/08/19(土) 22:59:28 ID:oefSvpLU0
おつ!
流石兄弟めっちゃ優秀だな
しかし上層部がめちゃくちゃにしそう
522
:
名無しさん
:2023/08/19(土) 23:24:13 ID:rOUqMBAw0
兄者、名将すぎんか?
523
:
名無しさん
:2023/08/20(日) 09:12:57 ID:VOonrgkg0
乙
524
:
名無しさん
:2023/08/26(土) 11:58:33 ID:udmqBVI.0
ルナイファ帝国 帝城
1463年3月4日
(;´-_ゝ-`)「申し訳、ございません。全て私の責任です」
大粒の汗をかき、死人のような顔で頭を下げる男の姿がそこにあった。
原因はもちろん、本土防衛の失敗である。
一会戦は耐えきれるようにと、回せるだけの戦力を回していたはずであった。
確かに敵が強力であり、多大な被害、それこそ全滅に近い被害が出ることは予測していた。
それでも敵の上陸だけは防げるはずであった。
それだけの戦力はあったはずであり、準備を進めてきたはずであった。
/ ,' 3「......」
(;´-_ゝ-`)「どのような罰も、受ける覚悟です」
525
:
名無しさん
:2023/08/26(土) 11:59:14 ID:udmqBVI.0
しかし敵の作戦により、それは呆気なく崩壊した。
力だけでなく、戦術でも後れを取っていたのだ。
これによりまともに戦うことも出来ずに消えていった戦力も少なくない。
その責任の重さから、デミタスは今日、死ぬ覚悟でここに来ている。
/ ,' 3「......ロマネスクよ」
そんなデミタスの様子を眺めながら、口を閉ざしていたアラマキがようやく言葉を発する。
その声は、至って冷静そのものであった。
( ФωФ)「はっ、何でしょうか」
/ ,' 3「此度の敵を、貴様はどう見る?」
( ФωФ)「......どう、とは?」
526
:
名無しさん
:2023/08/26(土) 12:00:39 ID:udmqBVI.0
/ ,' 3「奴等は......噂では我が国よりも遥かに強力と聞く。貴様から見ても、間違いないのか?」
( ФωФ)「えぇ、間違いございません」
ロマネスクはアラマキの問いかけに対して即答する。
力強く、間違いないと。
そして、続けた。
( ФωФ)「我々が召喚した人間達は、怪物です。世界最強であると断言できます」
/ ,' 3「何故そう言いきれる?」
( ФωФ)「初めは、確かに我々は彼等を侮っていましたが、ムー奪還作戦、そして今回の本土防衛戦、そのどちらも間違いなく本気でした。それでも勝てないのです。世界最強と吟われた我らが全力を尽くしても、です。この事実のみで、十分なのではないですか?」
/ ,' 3「......ふむ」
527
:
名無しさん
:2023/08/26(土) 12:01:10 ID:udmqBVI.0
そうしてまた、暫くの沈黙が辺りを包み込む。
アラマキは手を口元にあて、深く考え込むような仕草をする。
その体勢のまま、再びの質問を投げ掛けた。
/ ,' 3「では質問を変えよう。我々は奴らに勝てるのか?」
( ФωФ)「......勝つ、という定義によりますな」
/ ,' 3「......そうか」
その言葉だけで、何かに納得したのだろう。
アラマキは深くため息をつき、頭を抱える。
/ ,' 3「我々は世界で間違いなく最強であったはず......それを自ら異界から呼び出したもの達によって崩すことになるとはな」
( ФωФ)「......陛下」
528
:
名無しさん
:2023/08/26(土) 12:01:59 ID:udmqBVI.0
/ ,' 3「デミタスよ」
(;´・_ゝ・`)「は、はっ!」
/ ,' 3「頭を上げよ。今回の件は、貴様のみの責任ではない。不問とする」
(;´・_ゝ・`)「ですが......」
/ ,' 3「ロマネスクよ、聞くところによると今回の敗戦で海軍は壊滅状態と聞くが真か」
( ФωФ)「はい。南方は壊滅。他の地方についても今回の迎撃のために多くの艦が引き抜かれ、大幅な弱体化。これまでの敗戦により予備戦力も少なくないため、領海をカバーしきれません」
/ ,' 3「なるほどな。では再建のために、優秀な人材を失うわけにはいかんな」
(;´・_ゝ・`)「陛下......」
/ ,' 3「とはいえ、次はないと思え。間違いなく、成し遂げてみせよ」
(;´-_ゝ-`)「ははっ!」
529
:
名無しさん
:2023/08/26(土) 12:02:50 ID:udmqBVI.0
/ ,' 3「とはいえ敵はこちらを待ってはくれまい......そこでだ。重要なのは、ここからだ。二人ともに、意見を聞きたい」
( ФωФ)「は、何でありましょうか?」
/ ,' 3「......この状況、最早和平の道を探すしかないと考えるが、どうかね?」
(;´・_ゝ・`)「っ!?」
(; ФωФ)「なっ!?」
その言葉に二人は息を飲む。
和平の道を探す、つまりは敗けを認め、降伏すると言っているのに等しいことである。
そんな言葉がまさか、陛下の口から飛び出すなど予想もしていなかったのだ。
530
:
名無しさん
:2023/08/26(土) 12:03:22 ID:udmqBVI.0
(; ФωФ)「和平、ですか......」
/ ,' 3「意外か?」
(; ФωФ)「いえ......いや、そう、でありますな」
/ ,' 3「そうであろうな。だが......このまま我が国が突き進んだ先に何があるか、貴様らにも分かるだろう?」
(´・_ゝ・`)「......えぇ」
/ ,' 3「そしてそれは、余も分かっている。何としても防がねばならないのだ」
( ФωФ)「陛下......」
/ ,' 3「此度の事態、元を辿れば奴らを呼び出し戦うことを決めた、そして国の至るところが腐りつつあることに気付きながらも、それを見てみぬふりをしてきた余の責任である。その責任は、果たさねばならぬ」
アラマキとてプギャーを初めとした無能な者達に気づいていないわけではない。
だがそんな無能達でも成果を上げられるほどにルナイファという国は強大であり、それで問題なく国家として成り立ってしまっていた。
ゆえに、それを問題として見ていなかった。
やはりそのツケが返ってきたのだと、アラマキは確信する。
531
:
名無しさん
:2023/08/26(土) 12:05:11 ID:udmqBVI.0
アラマキ自身、自分が優秀などとは思ったことはない。
もし歴史に名を残すのならば愚王としてだろうと考えるほどであり、事実、現時点の事態を考えればそれも妥当だろうとも感じていた。
だが、それを理由に王の職務を放棄するほど愚かではない。
/ ,' 3「民や貴族からの反発はあるだろう。さらに我等は一度、敵からの申し出を断るどころか、不意打ちに近いことまでしてしまっている。信頼など、されないかもしれぬ......問題が山積みなことは、理解している」
(´・_ゝ・`)「......」
/ ,' 3「だが......どうにか、和平の道を見つけてくれ。この国のために、そして、民のために」
( ФωФ)「......了解、いたしました」
(´・_ゝ・`)「全力を、尽くします」
/ ,' 3「すまぬな。ではまずは国内をまとめることから始めるとしようか」
532
:
名無しさん
:2023/08/26(土) 12:06:16 ID:udmqBVI.0
こうして、ルナイファは和平の道を探り出すことになる。
だが和平への道程はあまりにも険しい。
まず国内をまとめる必要があるという点である。
ここまで戦況が悪いというのにプライドからか、現実が見えていないのか、または自身の保身か利益のためか、継戦を叫ぶものたちが多くいる。
それも国内で力を持つものたちが多いのだ。
こんな状況で下手に降伏を押し進めてしまえば、反感は免れない。
つまり王への不信に繋がることとなるのだ。
さらに絶対的な存在であるはずの帝王が敗北を認めるとなれば、それも事実がどうあれ人間相手に負けたともなれば力が弱まることは避けられない。
帝王を中心とするはずのこの国でそれが意味するのは崩壊である。
これを防ぐためにも時間をかけてでもある程度根回しを行い、味方を作らなくては降伏は出来ないであろう。
533
:
名無しさん
:2023/08/26(土) 12:06:56 ID:udmqBVI.0
そしてもう一つの問題は敵との関係。
これまでルナイファのやってきたことで敵からの心証は最悪と言ってもいい。
そんな状態で交渉の場に呼び出すことがどれだけ難しいか。
それもまともな外交ルートどころか連絡手段すらない状態である。
このような状況からこの場にいる三人全員、この件に関しても長い時間が必要だろうと考えていた。
ーだが彼等は知らなかった。
講和に向けた話し合いの呼び掛けは今この時にも来ており、しかしそれはたった一人の男によって握り潰されていたということを。
その呼び掛けに答えるだけで、この問題は簡単に解決できたであろうことを。
そうとは知らず、直接連絡する手段がない、それもこちらの印象は最悪どころではない相手にどう講和を持ちかけるのか、そしてそれが成立するまでどのように国を守るのか。
そんな無理難題に頭を悩ませることになるのであった。
534
:
名無しさん
:2023/08/26(土) 12:07:37 ID:udmqBVI.0
ルナイファ帝国 軍務省
( ^Д^)「全く......あの無能共が......」
同日、部屋の中で一人、プギャーは最早恒例行事のように怒りに震えていた。
またしても人間達に自国の軍は敗れ、あろうことか敵の本土への侵攻を許してしまったのだ。
この現実に怒りを覚えず、平然としていられるものなどいないだろう。
そしてさらにこの事に敵は調子に乗り高飛車な要求を突き付けてくるかもしれない。
自分が握り潰しているとはいえ、再三送られてくる敵からの連絡、それがまた来るかと思うとそれだけでも怒りで血管が切れそうになる。
535
:
名無しさん
:2023/08/26(土) 12:08:52 ID:udmqBVI.0
( ^Д^)「......だからあのとき、こちらから攻撃を仕掛けていれば良かったものを!!」
―あの無能どもめ!
そうプギャーは心の中で叫ぶ。
自分の提案を退け、万全の体制で望んだはずの防衛戦。
最強であるはずの我が国がただひたすらに守りに入るという耐え難い屈辱。
そしてそれでまだ勝つならまだしも、敗北したというのだ。
―これを無能と呼ばずに何と呼ぶのか!
536
:
名無しさん
:2023/08/26(土) 12:09:48 ID:udmqBVI.0
( ^Д^)「やはり、進めておいて正解だったな」
そう呟き、机の上に積み上げられた書類を眺める。
そこには彼の考える、自国を救うための作戦関する情報がところ狭しと詰められていた。
もしものためにと考えていたが、この状況。
そして噂によれば、陛下まで腑抜けになったという話まであるのだ。
(# ^Д^)「腐ったものは周りも腐らせるというが......デミタス、ロマネスク......あいつ等が陛下をっ!!」
間違いなく、奴らの影響でおかしくなったのだと、プギャーは確信する。
思えば自国がここまで負けることがそもそもおかしいのだ。
537
:
名無しさん
:2023/08/26(土) 12:10:15 ID:udmqBVI.0
では、その原因は何なのか。
奴らのような、腐ったもの達が国のトップに君臨しているから悪いのだ。
そう、全ては奴らの責任なのだ―
( ^Д^)「......成功させなければな」
彼の瞳に炎が灯る。
それは決意の灯火。
( ^Д^)「まずは......国民からだ」
自らの行動が国を救うと信じ、彼は動き続ける。
538
:
名無しさん
:2023/08/26(土) 12:11:23 ID:udmqBVI.0
ムー国 捕虜収容所
1463年3月25日
( ´_ゝ`)「......これから、どうなるものやら」
降伏の後、ルナイファ内では捕虜を置いておけないと遥々ムーへと移管されてきた。
その間も何時拷問されるか、またイタズラに殺されるのかと身構えてはいたものの何事もないまま船旅は終わりを迎えた。
そしてたどり着いた先はおそらく牢獄を利用したであろう建物であった。
ただ一般的に思い浮かべる牢獄に比べ、色々と手を加えられているのか劣悪というほど酷いものではない。
1パーセントでもいいから生き残れる可能性をと考えていたアニジャにとってそれは非常に有り難いものの、なぜここまでと理解に苦しむ程にこの世界の常識からしたら高待遇と呼べるものであった。
それゆえこれからどんなことをされるか、言葉も常識も違う彼等人間が望むのか分からない今、どれだけ冷静を装うとも恐怖を完全に消すことはできなかった。
539
:
名無しさん
:2023/08/26(土) 12:12:40 ID:udmqBVI.0
だが、そんな恐怖を忘れるほどの衝撃が走る。
(; ´_ゝ`)「む、ムー奪還部隊の生き残りがいるだと!?」
まさか生き残りがいるとは、考えもしなかった。
だがその事実にほんの少しだけ、安心をする。
生き残りを殺すことなく生かしているということは、敵の人間達は無闇にこちらを処刑するということはない、ということだろう。
その事実に胸を撫で下ろしつつ、アニジャは牢獄の中を見渡す。
大部屋となっているそこには複数のエルフが囚われていた。
その多くが自分と同じく、ルナイファにて降伏してきた者であったが、一人だけ見知らぬ男がいた。
( ´_ゝ`)「失礼、あなたは......ムーの生き残りか?」
( ´ー`)「......ぁ?」
540
:
名無しさん
:2023/08/26(土) 12:14:12 ID:udmqBVI.0
その男は声に反応し、顔を上げる。
特に興味が無さそうな反応と共にアニジャを見つめる。
だがしばらくアニジャの顔を眺めた後に、生気のない顔が驚愕した顔へと変貌する。
(; ´ー`)「あ、アニジャ、様?な、なぜ、ここに......」
( ´_ゝ`)「恐らく君と同じだ。人間に敗れ、捕虜としてここに来たのだ」
(; ´ー`)「......敗れ......一体、どこで......」
( ´_ゝ`)「......本国だ」
(; ´ー`)「っ!?」
その男、シラネーヨは更に驚愕する。
敵が強いことは彼も知っていた。
文字通り、身をもって知っている。
だが、だからと言ってまさか本国にまで攻めいられているとは夢にも思っていなかったのである。
それゆえ彼の身体に雷に打たれたかごとく、凄まじい衝撃が走る。
541
:
名無しさん
:2023/08/26(土) 12:15:25 ID:udmqBVI.0
(; ´ー`)「本国で、敗れた?まさ、か、そんなっ!!」
( ´_ゝ`)「そうだ。すまない、君達が戦い、敵に多くの損害を与えたことは知っている。だが、それを俺は活かすことが出来なかった」
(; ´ー`)「それは......いや、俺は、何も、出来なかったんです......」
( ´_ゝ`)「ムーでの戦いは伝え聞いている。勇敢な作戦を立案し、前線を駆け抜け、戦い抜き、そこを生き抜いたと。胸を張って、誇っていい。君は立派な戦士だ」
(; ´ー`)「ちが......俺は、俺は......」
(; ´ー`)(......俺は)
一体、何をしているのか。
あのとき、死の呪いを使い突撃を行ったあの瞬間。
シラネーヨは死ぬはずであった。
その覚悟はしていたし、何より確かに敵の攻撃を喰らい、意識を手離していた。
そのまま死ぬのだと、確信していた。
542
:
名無しさん
:2023/08/26(土) 12:16:41 ID:udmqBVI.0
だが、それがどういうことか。
目が覚めれば見知らぬ白い部屋で治療され、生き残ってしまっていた。
国を守るため、敵を一人でも道連れにしようとしたにも関わらず、それを失敗したどころか敵に助けられたのだ。
そうして敵を殺すことも、死ぬこともできずに、ただ無為に時間を過ごすことしか出来ないでいる。
守るべき国は今、その敵により窮地に立たされているというのに、だ。
―嗚呼、神よ。何故俺をあそこで殺してくれなかったのか。
そう、思わずにはいられない。
決して自分一人の命だけで戦況を変えることなど出来はしなかっただろう。
だがこんな思いをするくらいならば、皆と、そしてハインと共に死にたかったと思わずにはいられない。
そうして敵を一人、道連れに出来れば誇りとものに死ぬことが出来たはずなのだ。
全てを知らないまま、国の誇りを胸に死ねれば、まだ幸福であったはずなのである。
543
:
名無しさん
:2023/08/26(土) 12:17:16 ID:udmqBVI.0
しかし現実はどうか。
自分の魔法の才を、全て捨てて得られたものが、これなのか。
あまりに、あまりに残酷過ぎるのではないか。
( ´ー`)「......」
( ´_ゝ`)「だが......良かった。我々以外にも生き残りがいてくれたとは。それも、君のような戦士が生きていてくれたことを誇りに思う。今後、国の建て直しには一人でも多くの者がいる。そしてなにより、あの人間達のことを知るものが多いのは今後のためになる筈だ」
アニジャはシラネーヨの様子には気付かないまま、話を続ける。
その話は、国の未来を見たものであった。
だがその話はシラネーヨの心を動かすことはない。
いや、むしろその逆であった。
もう、彼にとって未来はどうでも良いことなのだ。
未来を見るということは、この残酷なまでの現実を全て受け入れろということに他ならない。
彼に、そんな余裕などあるはずがないというのに。
544
:
名無しさん
:2023/08/26(土) 12:17:39 ID:udmqBVI.0
その言葉は心を殺しきるのに、十分すぎるものであった。
( ´ー`)(......もう、何でもいい。知らねぇよ、何もかも)
再びシラネーヨの顔から生気が失われていく。
そしてそれはもう、二度と戻らないであろう。
(; ´_ゝ`)「......む?へ、平気か?」
ようやくシラネーヨの異変に気が付き、声をかけるがもう彼は反応しない。
彼は確かに生きている。
身体の傷は癒えている。
だが心はもう、死んでいたのだ。
(; ´_ゝ`)「何が......」
何が起こったか分からないまま、アニジャは呆然と立ち尽くすことしかできなかった。
545
:
名無しさん
:2023/08/26(土) 12:17:59 ID:udmqBVI.0
続く
546
:
名無しさん
:2023/08/26(土) 12:40:22 ID:8oyDBu3o0
乙乙
これはこれからのプギャーさんの大活躍に期待しなければ
547
:
名無しさん
:2023/08/26(土) 22:47:31 ID:4WPHmhds0
戦犯プギャー大元帥爆誕しそう
548
:
名無しさん
:2023/08/27(日) 21:33:38 ID:.SqKyfwE0
乙
549
:
名無しさん
:2023/08/28(月) 19:30:18 ID:6QvLqXLs0
おつ!
プギャーさんか自分なりに考えて動いてるのが意外だったロクなことにならんだろうけど
アラマキはまともだったのになぁ…
550
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 17:09:41 ID:HBIJijrw0
ルナイファ帝国 南方都市テタレス
1463年3月12日
帝都の南、そして南方港の北、その中間辺りに存在する都市テタレス。
この国の帝都の次に栄えている場所と言われており、本来であれば多くのエルフが集まる場所である。
だが現在。
少しでも早くこの都市から脱出しようとするものたちで溢れかえり、混乱を極めていた。
帝都が怒りで震える一方で、こちらは恐怖で皆が震えているのだ。
敵を倒すために出兵していったものたちは、皆死ぬかボロボロとなり帰ってくる。
空は守護者であるはずのワイバーンは全て肉塊と化し、代わりに謎の高速飛行物体が飛ぶ。
明らかにこちらに敵意がある者たち、それも圧倒的な力を持つ者たちが目前まで迫っていると知ったのだ。
551
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 17:10:33 ID:HBIJijrw0
これまで戦争は遠方の地の出来事であり、かつこちらが圧倒的であったから誰もが賛成していた。
そこには負けないという、大前提があったからこそである。
だがそれが覆り、なおかつ自分に危害があるかもしれないとなれば話は別である。
帝都のようにまだ距離があり、直接敵を見ていない者はまだ強気に出れるであろう。
だが自分を殺しうるものがすぐそこにいるというのは、これまで真の戦争の恐ろしさを知らなかったルナイファの民にとってとてつもない恐怖であり、このテタレスでは急激に厭戦思想が広がっていた。
脅威が直前に迫るまでは、あまりに現実感がないことから、妄想をそのまま言葉にし、行動することが出来た。
だが実際に脅威を、そして圧倒的な力の差を目にしたならば話は別である。
誰もが死ぬのは御免なのだ。
552
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 17:11:13 ID:HBIJijrw0
そして皆が少しでも敵から遠ざかろうと北に向かおうとするが、移動用のゴーレムの数もまた動かすための魔石も足りず、かといって馬車も足りない。
さらに多くの者が一気に動こうとするために街道は渋滞を起こし、慌てたものが事故を起こしては更なる移動の停滞を引き起こす。
そこに北方からの兵の大規模な移動も加わり、さらにそれが優先されてしまうことから、民は逃げれない絶望感を前に完全な混乱状態であった。
そもそも簡単にこの地から動けるようなものばかりではなく、どうか明日も何事も起きない事を祈り、震える事しか出来ないものも多くいる。
そこに世界最強のプライド等というものはなく、教会にはただひたすらに戦いが終わることを願う者で溢れていた。
553
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 17:12:20 ID:HBIJijrw0
爪;'ー`)「......くそっ、これじゃあ動けねぇ」
そんな中、多くの子供を連れ避難を進めるフォックスもこの混乱に巻き込まれ、身動きが取れなくなっていた。
彼一人ならば逃げ出すことも可能だろうがそんなことは出来るはずもない。
しかし、子供も連れて移動するとなるとかなりの物資と移動手段が必要である。
そんな大規模な移動となればこの混乱に巻き込まれるのは必須である。
爪;'ー`)(どうする?もう移動用のゴーレムを動かそうにも魔石が限界......だが徒歩はあり得ねぇ。この街に留まるのも危険すぎる)
子供を守れるのはここにいる自分だけ。
そうだというのに、まともな手段は思い付かず、無為に時間だけが過ぎていく。
敵の強さを鑑みるにいつここに攻め込んできてもおかしくはない。
むしろ、未だ敵の本格的な侵攻がないのは奇跡であろう。
爪'ー`)(普通に考えるなら......大規模な攻勢の準備、か?一気にこちらを攻め落とす算段......となると)
敵の思考を何とか読もうと考える。
そうして浮かんだ可能性から、やはり出来る限り遠くまで行く必要があるとフォックスは結論付ける。
554
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 17:13:02 ID:HBIJijrw0
ただの一般兵であるフォックスと、多数の戦闘経験などない子供がいたところで戦況が変わるはずもない。
このままだと、何も出来ぬままに死体になるのみなのだ。
その命運を自分が握っていると考えるだけでフォックスは嫌な汗が止まらなかった。
(;´・ω・`)「......僕たち、どうなるんだろ」
そして、そんな様子を見た子供たちの不安は増すばかりである。
誰もがフォックスのように震え、そして中には泣き出すものも少なくなかった。
そんな子供の一人であるショボンも大粒の汗を流しつつ、友の心配をする。
自分と同じくこの戦争に参加してしまった、女の子であるツン。
彼女はショボンとは異なる配属のため、今この場にはいない。
かつては彼女の配属を羨む事もあったが、今考えればより前線に近いところに配属となっていた彼女は自分よりも危険と言えるだろう。
555
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 17:13:58 ID:HBIJijrw0
そしてもう一人は帝都に残っているはずのブーン。
彼はこの戦争には参加していないはずであるため問題ないとは思うが、魔信から流れるニュースを聞けば、志願兵の募集が様々な都市で行われていると言う。
もし彼がそれに巻き込まれでもしたら―
(;´・ω・`)「......何事も、ありませんように」
二人とも、叶うことならばこの戦争とは無縁の場所にいますように、と。
他のテタレスの民と同じように、彼もまた必死に何かに対して祈りを捧げていた。
556
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 17:15:06 ID:HBIJijrw0
ルナイファ帝国 軍務省
1463年3月18日
( ^Д^)「......はぁ」
この日、プギャーは珍しく怒りではなく、落胆した表情を浮かべていた。
手元には自分の信頼する部下に命じて調べさせた報告書があった。
そこに書かれていたのは、秘密裏に行われていたアラマキ達の会話の記録であった。
( ^Д^)「まさか......陛下まで奴らに洗脳されてしまうとは......」
その記録ではこの国が降伏に向けて動き出しているという彼にとって信じがたい内容であった。
それも、帝王であるアラマキが反対するどころかそれを推し進めているというではないか。
陛下ならばこの国の事を考え、正しい道を進んでくれるとプギャーは考えていた。
だがアラマキが選んだ道は、プギャーが信じる正しい道と正反対のものである。
陛下だけはまともであると信じていたプギャーにとってそれは、これまで信じてきた国に裏切られたに等しい出来事であった。
557
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 17:17:08 ID:HBIJijrw0
( ^Д^)「くそっ、民の声も操作したというのにっ!」
忌々しいと舌打ちをしながらも、プギャーはどこか寂しげにそう呟く。
そう、現在ルナイファで民衆の間に流れている怪情報に近い煽動はプギャーが主導したものであった。
これにより臆病者達を民衆の声で潰し、国を継戦へと傾けようとしていたのだ。
全ては国のため、つまりは陛下のためであった。
彼の善意からの行動だったのだ。
それほどまでに彼はこの国を愛していたはずであった。
( ^Д^)「だが......」
道を違えるのならば、仕方ない。
彼は覚悟を決め、前を見つめる。
( ^Д^)「幸い、現地の偵察隊からの報告から考えるに敵の大規模侵攻はまだ先のはず......それまでに北方の兵の移動が完了すれば良いが」
558
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 17:18:34 ID:HBIJijrw0
計画には多数の兵が必要となるし、そもそも南方の敵を迎撃するためにも多くの兵が必要がある。
しかし既に南方の主力は殆どが潰され、まともに戦える状態ではない。
そのための大規模な配置転換が行われているのだ。
北方等遠く離れた場所からも可能な限り戦力を引き抜き、全てを南方に向かわせている。
さらには民衆が沸き立っている今、多くの志願兵を集めている。
プギャーとて南方にいるものたちがどれほどの力を持っているのか、分からないわけではない。
だからこそ彼は考え、ある計画を建てたのだ。
この国の運命を変えるそれは、着実に進行している。
( ^Д^)「さて、計画が奴らにバレるわけにはいかんからな。邪魔をされては困る......となると、奴が邪魔になるな」
その計画の先に待つ未来は、まだ誰にも分からない。
559
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 17:19:56 ID:HBIJijrw0
ソーサク連邦 モナー宅
(; ´∀`)「......クソッ!!」
その日、モナーは自宅で頭を抱えていた。
思い返されるのはおよそ二ヶ月前にドクオとした話。
人間達と戦うと大見得を切ったあの日からそのための研究を進めてきた。
敵の強さは理解しており、その上で勝ち目はあると考えていたからこそ、出た言葉であった。
だが研究を進めれば進めるほど、敵の強大さが明らかになっていき、どうすれば良いのか分からなくなってしまっていた。
そのいい例が人間達への有効手段として考えられていた雷槍である。
初めは敵との力の差はあれど、敵に届きうる力はあるのだから部分的ではあるもののすぐにでも追い付けると考えていた。
だがいざ研究を始めてみても簡単に改良など出来るはずもない。
またもし敵に届きうる攻撃まで改良できたと仮定した場合に必要な魔法の技術を試算してみると、この世で誰も扱うことが出来ないと思われるようなものとなってしまうのだ。
560
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 17:21:19 ID:HBIJijrw0
そもそも雷槍が敵に当たった経緯を調べてみれば、とんでもなく低い確率、それこそ奇跡とも呼ぶべき現象であったのだ。
その事実を知ったときは遠くても背中が見えていたと思っていたが、それがとんでもない勘違いであるということを嫌というほど思い知らされた。
そうして研究は完全に暗礁に乗り上げ、敵に追い付くどころか追う手段すら分からなくなったその時、一つの連絡が入る。
それは、雷槍を改良に非常に役立つ情報であった。
だが、その情報を知ったときモナーは喜ぶどころかこの世の終わりかのような表情を浮かべていた。
(; ´∀`)「『れーるがん』、か」
何故ならその情報の元が、人間達の技術から来たものであったからである。
561
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 17:22:29 ID:HBIJijrw0
これまで数多くのこちらを凌駕するようなものを繰り出してきた人間達。
だがこの雷槍だけは魔法が人間達を凌駕し、それゆえに敵へ届きうる刃になったのだと考えていた。
しかし、それは違った。
人間達は同じようなものを作り出していたというのだ。
それでも始めは実用化はまだ先だという話から似たような技術はあってもこちらがまだ優位なのだと考えていた。
しかしよくよく聞けば、こちらのスペックを遥かに超えるものを作り出し、研究レベルとはいえ使用しているという。
ただ単にこちらが考える実用に足るレベルと人間達が考えるそれが違うだけという事実に、魔術師として、技術者として完全なる敗北感を味わうこととなったのだ。
562
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 17:24:46 ID:HBIJijrw0
(; ´∀`)「勝てないのか?......魔法では、奴らの技術に......」
そうしていつしか、彼の心は折れかけていた。
どんなものを作り出しても、人間達がそれを上回るのではないかという感覚に陥り、完全に意気消沈してしまったのだ。
人間達を上回るために必死に考えてきた魔法も、それらですら人間達の技術であれば出来てしまうのではないか。
そんなことになれば、いつまで経っても人間達に追い付くことなど不可能ではないか。
どんな魔法も、人間達の技術で作り出せるのだとしたらー
(; ´∀`)「......うん?」
しかしそうしてしばらく考え込んでいたとき、ふと自分の考えに妙な引っ掛かりを覚える。
563
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 17:27:54 ID:HBIJijrw0
魔法を人間達の技術で再現出来る。
現に雷槍は『れーるがん』という名で人間達の手で作り出されている。
この事実から人間達の技術であれば、魔法を別の何かの力にて作り出せるということなのだろう。
だが、それは逆に言えば。
ーもしかすれば人間達の技術を、魔法で再現出来るということなのではないか?
( ´∀`)「......もう、手段は選んではいられない、か」
その閃きは、魔法を絶対とする彼にとってかなり屈辱的なものであった。
だがそれでも他に道はないのだと、彼に新たな道を決意させる。
( ´∀`)「まだ、負けたわけではない。魔法が、負けるはずがない......これが可能ならば奴らと戦う力を得ることができるはずだ」
そう呟き、彼はあるものの試作に取り組むのであった。
564
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 17:28:45 ID:HBIJijrw0
ソーサク連邦 新魔法開発研究室
1463年3月21日
新魔法開発研究室。
その名前の通り、新たな魔法を開発することを目的としたその一室にこの日ドクオは訪れていた。
情報室の職員として働く彼にとって、魔法の開発は遠いことではない。
この国がいくら魔法に優れていると言っても何でも出来るわけではなく、他国の魔法の中にはこの国にない発想から産まれるものもある。
そのためそのような魔法が生まれればその情報を得ては、自国の技術にしようとすることも珍しくない。
だが今日、彼、ドクオはそのような新しい魔法に関する情報など特に持ち合わせていない。
というのに呼び出されたことに首を捻りつつも、仕事だからと出向いていた。
565
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 17:29:45 ID:HBIJijrw0
そしてこの部屋にはもう一人、見慣れた人物がいた。
( ´∀`)「さて、ドクオ君。見て欲しいのはこの魔道具なのだよ」
自分の上司であり、凄腕の魔法使いでもあるモナーであった。
だがそんな彼がわざわざここに呼び出すなど一体何事かとさらにドクオは首を捻る。
('A`)「魔道具、ですか。えっと、どんなもので......ん?なんですか?その金属の筒と......粒?なんか、団栗?のような形ですが」
( ´∀`)「まあ見ていたまえ」
そういうと、モナーは掌にそれらを魔方陣が描かれた筒にいれ、離れた的に向ける。
一体何事かと目を凝らしたその瞬間。
パンッ!!
一瞬の出来事であった。
大きな破裂音が鳴り響くと共に、的が穴が開く。
その光景は、ドクオの見たことのないものであった。
そしてこの光景に似た魔法すら聞いたことがないものである。
566
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 17:30:20 ID:HBIJijrw0
だが、知らないわけではない。
むしろ最近よく話を聞き、よく知っている。
何度も、何度もクーから聞いたものだ。
それは魔法ではなく。
(;'A`)「じゅ、『じゅう』!?」
人間の技術。
本物を見たことがあるわけではない。
だがその特徴である、音と共に対象を穴だらけにするという金属の嵐。
まさにその通りの光景が、目の前で再現されたのだ。
( ´∀`)「......なるほど、話には聞いていたが実際に目にすると中々に興味深いなこれは」
ドクオが驚愕に身を固めている一方で、モナーもその自身が産み出した光景に唸っていた。
彼もまた、報告に恐ろしさを聞かされていたが、実際に再現したものを目にしたことで再認識させられたのだ。
567
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 17:31:01 ID:HBIJijrw0
( ´∀`)「予めの加工と輸送面は問題だが、使用する際の魔石は火や雷を産み出し操るよりは効率的......なによりこの安定性と貫通力だ。何故こんな形のものが安定して飛ぶのか分からんが......本物はより高威力で高精度かつ連続で金属を撃ち出すというが一体どんな仕組みなのか......」
(;'A`)「な、なぜこんな......」
( ´∀`)「......君も分かっているだろう。現時点であの人間たちの力は我々を越えている。そして、なにより未知の力だ」
(;'A`)「......」
( ´∀`)「未知......そう、我々は知らない。追いつくため、追い越すためにもまずは奴らを知らなくてはならない」
('A`)「っ!」
( ´∀`)「悔しいが、奴らの技術は本物だ。魔法に匹敵するものであり......それを知らない我々は学ぶ必要がある。だがそのまま、奴らの技術を取り入れることは難しい。私もだが、この国は魔法により成り立つ国であり、皆が魔法に対してプライドを持っているのだから」
淡々と語るモナーではあったが、その言葉の端々からは悔しさが滲み出ていた。
しかしついこの間まで魔法以外を認めず、人間を頑なに認めようとしなかった彼から考えればその姿は劇的に変わったと言えるであろう。
それほどに人間の技術は彼にとって衝撃的なものであり、それを知らずに、否、気付きつつもプライドからそれを見えないフリをし、下手な事を進めようとしていた自分とそして国に焦りを感じていたのだ。
568
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 17:32:16 ID:HBIJijrw0
( ´∀`)「では、どうすれば我が国でもあの力を取り入れることが出来るか......ここまで言えばわかるかな?」
('A`)「......それが、この、魔法による人間達の技術の再現、というわけですか」
( ´∀`)「そうだ。これならば、魔法として取り込むことが出来る。そうしていけばいつかは奴らに追い付ける......奴らに、勝つことが出来るはずだ」
魔法に対するプライドはある。
だが現状、人間の技術は魔法を超える現象を引き起こすのだ。
伝え聞くその技術が全て本当ならば、これからの世界に変化を与えていくであろうことに疑いはない。
その変化の流れに置いていかれれば、技術を根幹に成長してきたこの国は世界から取り残されることになるであろう。
しかし人間の技術をそのまま取り入れるわけにも、国内の事情から簡単にはいかない。
だからこそ人間の技術を魔法で再現、もしくは改良することで魔法技術として取り入れ、発展させる。
それがモナーのたどり着いた答えであった。
569
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 17:33:17 ID:HBIJijrw0
('A`)「......なるほど」
その考えはドクオも悪くないのではないかと考えていた。
確かにこの方法であれば、人間の技術をそのまま受け入れた場合に生じる、技術の違いによる衝突は少なくなるであろう。
そして形はどうであれ自国の知らない技術を手に入れることは、直接自国の発展に繋がるのだ。
その先で目指すものが戦いなのを除けば、彼も両手を挙げて賛同していただろう。
ドクオは非戦派であり、エルフと人間の対立に拘らず、戦わない道を進むことが理想である。
とはいえ、ただ戦わずに近づければ良いという考え方とは異なる。
その理由はふたつあり、ひとつは国の多くのものが人間国家と仲良く出来るはずがないと考えている現状、無理に近づこうとすればトラブルになるであろうということ。
初めはどうにか架け橋になれないか等、色々と作戦を考えていたが、あまりのストレスにすぐに限界を迎えてしまい、早々に諦めてしまった。
それほどまでに現在この国で人間たちとの友好関係を結ぶことは難しいのだ。
570
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 17:34:07 ID:HBIJijrw0
そしてもう一つの理由は、今のまま近づきすぎれば国として危険であるからである。
技術のレベルの差があまりにも大きすぎるまま近づくことになれば、その技術により現在の技術は下手をすれば淘汰されてしまう。
そうなれば多くのものが仕事を失い、国は混乱するし、なによりその技術を支えられるのは技術を提供した相手となる。
それは国の根幹が技術力に支えられているソーサクでは致命的といえる。
言い換えれば、国を支える根幹を敵に握られるに等しい状態になりかねないのだ。
もしそうなれば、二度と相手から逃れることもできなければ逆らうことも出来ない。
表向きは良くても経済的な植民地となりかねないのだ。
ではどうすれば良いか。
彼が出した答えは一つ。
人間たちの国に並びたつ国となり、互いに敵対したくならないような力を持ち合いそれを理解し合う、言わば均衡した状態となること。
そうなればお互い手を出しにくくなる、抑止力になるはずである。
そうしてようやく、真に平等の関係を築くことが出来る。
そんな奇跡ともいえるようなバランスによる平和が、彼の望みであった。
571
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 17:35:19 ID:HBIJijrw0
そのために独自に敵の持つ力の中で、最も抑止力となり得るものを独自に調査を進めていた。
その力が手に入れば、人間達も無理に敵対することはなくなり、万事が解決するはずであると考えたのだ。
しかしその成果はあまり芳しいものではなく、そもそも情報が手に入ったところで実物を得られるわけではない。
人間の技術を情報のみから作り上げることも不可能に近いため、理想が叶うことは無いと諦めかけていた。
だが目の前にある光景は、その問題を解決しうるものであり、まさにその理想的な未来への第一歩と言える。
確かに魔法へのプライドが高いこの国の者たちが、そのまま人間の技術を受け入れるとは考えづらかった。
だがそれを魔法で置き換えることが可能ならば、話は別である。
魔法としてならば、自国の民も素直に受け入れることが可能であろう。
人間の技術を我が国の技術としつつ、国の根幹である魔法を守り、そして発展することができる。
そうしていけばいつしか、抑止力となりうる力を魔法として作り上げ、人間達と並びたつ日が来るであろう。
理想的な、ドクオの望む世界である。
572
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 17:35:50 ID:HBIJijrw0
('A`)(......とはいえ)
現状、ルナイファで手一杯であるからこそ特にこちらへの手出しはないが、将来もし技術を無断に模倣していることを知られれば、相手にいい印象は与えないはずである。
流石に直接手を出してくるとは思えないが、少なくとも信用はなくなるだろう。
そしてその信頼を回復しようにも、鎖国に近い体制のせいで外交が弱いため、現在の力関係から考えるに交渉による解決は全く期待できない。
敵対までいくかは不明であるが、関係を下手に悪化させたくないドクオにとってそれは喜ばしいことではない。
そもそも、形だけは見よう見まねで真似できたとしてもその根幹の技術を理解できるとは言い難く、それらを自分達の力に出来るまでにはとてつもない時間が必要となるであろう。
見た目だけならば並びたつ日も近いかもしれないが、そんなハリボテに騙されるほど相手は馬鹿ではない。
573
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 17:36:29 ID:HBIJijrw0
さらに理論上再現可能でも、その魔法を使える魔術師をどれほど産み出せるかという問題もあるのだ。
魔法は個人の才能がものをいうのだ。
それは良くも悪くも個人に左右されてしまうため、運が悪ければ魔法は作れたが誰一人として使うことが出来ないなどということもあり得なくない。
なんにせよ他の選択肢よりは若干マシとはいえ、まだまだ国が安泰といえる日は遠いという結論に辿り着き、小さくため息をつく。
そもそも大きく力が離れている相手に追い付こうとすることが困難なのだから仕方のない部分はあるのだが、それでも明るい未来が見えないというのは非常に心にくるものがあるのだ。
だが、少なくともこの国の中でも力を持つモナーが無理な敵対はしない方向に進むであろうことに、突然の心境の変化に驚きを感じつつも若干の安心感が生まれていた。
( ´∀`)「......さて、ドクオ君。本題に入ろう」
('A`)「本題、ですか?これを見せるためではなかったのですか?」
( ´∀`)「勿論それも目的ではあるが、これはあくまでも説明のためだ」
('A`)「......説明?」
574
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 17:37:05 ID:HBIJijrw0
( ´∀`)「先ほどので、人間の技術は我々の魔法で再現可能ということがわかっただろう?」
('A`)「えぇ、それは確かにそうですが......それが?」
( ´∀`)「では、君が再現するとしたら、何を再現するかな?仮に何でも再現できるとするならば、だ」
('A`)「それは......」
本当に何でも再現できるとするならば。
その仮定に一つの考えが頭をよぎる。
人間の国との力を拮抗させるために必要な力。
すなわち、人間でも恐れるものを再現できたとすれば。
その先に待つものは、ドクオが思い描いた世界に限りなく近づくのではないか―
('A`)「そう、ですね。人間が持つ、彼らがもっとも恐れる兵器、でしょうか」
( ´∀`)「......やはり、見込んだ通りだ。優秀な男だよ、君は」
('A`)「え?」
575
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 17:37:35 ID:HBIJijrw0
( ´∀`)「他のものに同じ質問をしてもこれまでに手に入った情報の中にあった兵器や道具を挙げるばかりであったが......君は違う。ちゃんと、あの国のことを考え、理解できている」
('A`)「......」
( ´∀`)「ドクオ君、君が反戦派なことは知っている。どうにかして、対立しない道を探しているのだろう?」
(;'A`)「っ!?そ、それは......」
( ´∀`)「ああいや、別に排除しようというわけではない。君は優秀だし......利害も一致しているわけだからね」
(;'A`)「どういう......」
意味ですかと聞く前に、モナーはドクオへ一つの魔道具を取り出す。
通信用の魔道具に似たそれは、簡易的な記録用媒体であり、ペアとなる魔石に記録したものを瞬時に共有することのできるものであった。
('A`)「......これは?」
( ´∀`)「ドクオ君、君に任務を与える。任務はただ一つ、君がさっき言っていたものを、探すのだ。人間がもっとも恐れる兵器の情報を」
(;'A`)「な!?」
576
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 17:38:22 ID:HBIJijrw0
( ´∀`)「それをこれに記録してくれ。そうすればその情報は私に伝わり......いつの日か、それを再現、もしくは対抗するものを作り出して見せよう」
(;'A`)「......」
( ´∀`)「君はこの国に他国を牽制できる力が欲しい、そして私は人間たちを滅ぼせる力が欲しい......そのどちらも満たすことができる。どうかね?」
(;'A`)「......なぜ、それを」
( ´∀`)「それくらい、君のあの答えを聞けばすぐに分かるさ。まあ、すぐに回答が欲しいわけではないから安心したまえ」
敵対することを前提に考えている者に、そんなものを渡せるはずがないー
そう叫びたいドクオであったが、その言葉でる前にモナーもその事が分かっているのか、ニヤリと笑いつつ言葉を続けた。
( ´∀`)「ただ......よく考えたまえよ?もし人間たちの兵器に関する情報が手に入ったところで君では作れないし、だからといって兵器そのものを手に入れるのは不可能なことくらい、君も分かっているんだろう?自分達が恐れるものを他国に渡すほど奴らは馬鹿ではない。つまり、情報を手に入れた上でそれを自国で再現できる技術を持つ仲間が必要だ。違うかな?そんな味方が君にいるのかね?」
(;'A`)「ぐっ......ぅ」
577
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 17:38:53 ID:HBIJijrw0
( ´∀`)「まあ君もこの国の世論は知っているだろう?いくら私でも、もしもの事があれば、庇いきれないかもしれないからな」
そう耳元で囁かれたのち、魔石をドクオの胸ポケットに滑り込ませ、そのまま部屋から出ていく。
一人取り残されたドクオは自身がとんでもない状況におかれていることを今更になって知り、絶望する。
彼自身はただの職員であったはずなのだ。
それが何の因果なのか、気づけば国を動かすような重大な無理難題ばかり押し付けられている。
(;'A`)「......何で俺ばっかり、こんな目に......」
様々なものたちから板挟みのような状態になり、また自身の考える理想からも押し潰されそうな現状。
最早動くことすらできないほどの重圧に、ドクオは何度も嘔吐した。
578
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 17:39:17 ID:HBIJijrw0
続く
579
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 18:23:52 ID:HBIJijrw0
>>550-577
投下する話を間違えました・・・最悪すぎる
後程本日投下予定であった話を投下します
580
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 18:42:50 ID:HBIJijrw0
話の順番としてはこれから投下する話→
>>550-577
の流れになります
分かりにくいですが脳内補完をお願いします
581
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 18:43:46 ID:HBIJijrw0
ルナイファ帝国 帝都
1463年3月5日
その日、帝都に激震が走った。
理由は様々な放送をする魔信より流れた、一つのニュースである。
―帝国本土に、侵略者現る。
帝国に歯向かう者がいるだけでも驚きだというのに、まさか本土に侵攻し、それを成功させたというのだ。
これまで数多くの驚くべきニュースを聞いてきたものも、このニュースには驚愕を隠せない。
そして、詳しく聞くと誰もが怒りに震えた。
曰く、その正体は我々が召喚した人間であると。
曰く、慈悲深く譲歩したにも関わらずその手を振り払うどころかこのような事態を引き起こしていると。
曰く、エルフの神に歯向かう悪魔の力を借りている世界の敵であると。
582
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 18:44:12 ID:HBIJijrw0
もはや噂なのか何なのか、ニュースと呼んでもよいか分からないものも含まれていたが、厄介なことにこの世界では皆、神も悪魔も信じられている。
そのためそれを聞いた帝国民の心は一つとなる。
―奴らを滅ぼせ、神に仇なす者達に鉄槌を!
燃え盛るかのごとく、その怒りの炎は伝播していき、皆が敵を倒せ、人間を滅ぼせと叫ぶ。
時折、冷静なものが悪魔の力を持つような相手と戦い勝つことが出来るのか、そもそも本当に悪魔が現れたのかと疑問を持つものもいたが、既に怒りの炎を消すには遅く、そのもの達の声が逆に消されていった。
583
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 18:45:20 ID:HBIJijrw0
(;=゚ω゚)ノ「異常すぎるよぅ......」
そしてそんな様子を、ソーサクの諜報員、イヨウが潜伏先の家より見ていた。
デモのように多くの帝国民が列を成し、兵を集めろ、武器を作れ、奴らを殺せと唾を撒き散らす。
その声を聞いたものがまた一人、また一人と列に増えていき、もはやそこに参加しないものは非国民とも言えるような、明らかに異常な空気が生まれていた。
(;=゚ω゚)ノ「......ルナイファは、滅ぶつもりなのか?」
原因ははっきりしている。
この放送である。
敗北したという事実を、嘘で脚色し自らの正当性を訴え続けるそれは、情報を知るイヨウにとっては怪情報以外の何物でもない。
だが何も知らない者達にとってはどうか。
それも自分達に絶対の自信と高いプライドを持ち、国からの情報を嘘と疑わない帝国民であったとしたら。
答えは、目の前の光景である。
584
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 18:45:56 ID:HBIJijrw0
与えられた情報が彼等の中で真実となり、それ以外の情報を与えられても決して受け入れることはないだろう。
それも自分達に不都合な情報だとすれば、例え真実であったとしてもそれを拒むことは容易に想像できる。
狂った歯車は歪んだまま回り続け、そして更に歪み、もう元には戻らない。
その先に待つものは一つ。
ただ、破滅に突き進むのみ。
(;=゚ω゚)ノ「このタイミングでプロパガンダ......ということはもう、講和する気はない?正気とは思えないよぅ」
そう、正気の沙汰とは思えない。
帝国民は確かに敵を知らない。
だからこそ、敵を倒せと叫ぶことが出来る。
絶対に勝てると信じているからだ。
585
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 18:46:27 ID:HBIJijrw0
だが、国はどうか。
もう十分すぎるほど敵の驚異をわかっているはずである。
なのに国民の怒りを増幅させ、退路を絶つ理由が分からない。
この状態ではいくら国が降伏しようとしても国民が許すことはなく、暴走を続けるだろう。
もはや自分から滅びに行っているのではないかとすらイヨウには感じられてしまう。
そうなるともう一つ、考えられる可能性が浮かび上がる。
(=゚ω゚)ノ「どこかの......工作員の仕事?」
だとしたらとてつもなく上手い手である。
自らの国は何もせず、他国だけで勝手に争わせ、暴走させ、疲弊させる。
理想的ともいえる手段である。
(=゚ω゚)ノ「だとしたら一体何処が......」
もしかしたら自国以外にも動いているかもしれない。
十分に、気を付けなければ。
そう気を引き締め、彼は再び仕事へと戻っていった。
ー最も、放送の元がこの国のとある阿呆によるものと知ることになり、拍子抜けすることになるのだがそれはまだもう少し先の事であった。
586
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 18:46:56 ID:HBIJijrw0
ムー大陸 迎賓館
1463年3月6日
今、自分は現実を見ているのだろうか。
フィレンクトはそんな感覚に陥っていた。
ムーに訪れた際に目にしたのは異様とも言える光景であった。
まだまだ戦火の跡が目立つ中、一際目立つ摩訶不思議な物達。
まず目に入ったのは国に入国する際に港に泊まっていた巨大な艦。
基本的に船は大きければ大きいほど強力である。
その大きさの分だけ魔方陣を積むことが出来るのだから当然の常識とも言える。
だからこそ、150mという巨大な艦を作れるルナイファやソーサクは強大な国家として名前が挙げられるのだ。
大きな艦を持つと言うこと、そしてその大きさはそのまま国家の力の大きさを表し、それに比例すると言っても過言ではない。
587
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 18:47:39 ID:HBIJijrw0
それが、どういうことか。
この南方の僻地とも言えるこの国にはその倍近いと思われる艦が泊まっていたのだ。
単純に考えれば、ルナイファやソーサクの倍の力を持つと言うことかとあまりの現実感の無さに笑ってしまうほどであった。
更にその艦が載せている物も問題であった。
到底生き物には見えない、翼を持つ金属の塊。
何かのオブジェクトかと思えば、『ひこうき』なる空を飛ぶ物という。
あのようなものが空を飛ぶのかと驚愕したが、更なる衝撃がすぐにフィレンクトを襲うこととなる。
それは、その『ひこうき』が飛ぶ瞬間を見たときであった。
この世ならざる速度で飛び出すそれは、一目だけでこの世界の空を支配することに疑いはない。
事実、フィレンクトはあの『ひこうき』を落とすどころか、追い付く手段すら想像の世界ですら作り出すことが出来なかったのだから。
588
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 18:48:18 ID:HBIJijrw0
(;‘_L’)「ルナイファめ、とんでもない国を呼び出してくれたな......」
滴る汗を拭いながら、ルナイファに対して悪態をつく。
どう考えてもこれから自分が相対するのは、怪物である。
それも、異界の怪物。
一体どう話をすれば良いのか、分かるはずもない。
そしてなにより、頭を悩ませていること。
それは、相手のエルフへの偏見。
いや、ルナイファがしでかした事を考えれば偏見といって良いかは分からないが少なくとも好印象はないであろう。
彼らからすればエルフはこの世界に勝手に連れてきては服従を要求し、断れば戦争を仕掛けてくる存在である。
どう考えても、まともにこちらの話を聞いてもらえるとは思えない。
(;‘_L’)「くそ......ルナイファめ」
それもこれも元を辿れば全て、元凶はルナイファである。
だからこそ、先ほどから何度も何度も繰り返し、フィレンクトはルナイファへの悪態をつく。
589
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 18:48:52 ID:HBIJijrw0
とはいえ、そんなものを繰り返したところでなにも変わらない。
もうここまで来てしまったのだから、何としてでも話をつけなければならない。
例え、どんな対価を支払うことになったとしても。
勿論、手札は用意している。
相手が欲しがるであろうものを予測し、揃えては来ている。
だが相手は異界の民なのだ。
どこまでこちらの常識が通じるか。
そしてどれほどこちらに怨みを持っているのか。
それに、全てがかかっている。
とてつもない、プレッシャーであった。
(;‘_L’)「......せめて」
せめてルナイファよりは、話が通じますように。
そんな儚い希望を抱きつつ、彼は異界の民との交渉に向かうのだった。
590
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 18:49:53 ID:HBIJijrw0
アリベシ法書国 北方基地
『我が国はヴィップと和解し、共にこの大陸を発展させると共により良い未来を―』
静かな基地内に、魔信から流れる放送が響きわたる。
その内容に多くの者が涙を流す。
色々と話は続いてはいるものの、結局それが表すものは、敗戦。
そう、今日この日、アリベシは負けたことを認め、ヴィップに屈することとなったのである。
( ・∀・)「......」
そして、その放送をモララーは無表情に聞いていた。
だがその胸の内はぐちゃぐちゃであった。
戦争で死ぬかもしれない思いをし、それを運よく生き残り、そしてもう戦わなくて良いという喜び。
因縁の相手に負け、多くの仲間達を殺され、これからは敗戦国として生きていかなければならないという悲しみ。
そしてなにより、神の御告げである法書の導きであったにも関わらず、この無惨な現実は何なのか。
591
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 18:50:28 ID:HBIJijrw0
法書は国を導き、モララー達を幸せへと導くものだと、そう信じていたからこそ彼らはどんなに無茶な御告げにも従ってきたのだ。
それが一体何故、こんなことになってしまったのか。
モララーはいくら考えても、その答えが分からないのだ。
( ・∀・)「......」
いや、本当は一つの可能性に気が付いている。
だが、その可能性を無理矢理封じ込めているのだ。
本当は法書、神の御告げなどはまやかしであり、自分達の信じる神などいないのではないか―
592
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 18:50:57 ID:HBIJijrw0
そんな自国を否定する考えなど、ただでさえ追い詰められた彼らが出来るはずがない。
否、そのような考えに至ったものもいたが、その考えに耐えきれずに命を自ら絶っていた。
彼らにとって神は絶対であり、全てなのだ。
( ・∀・)「......どうして」
もう、この呟きも何度目か分からない。
だが、呟いてしまう。
この沸き上がる感情をどうすれば、何処にぶつければ良いのか分からない。
だから、教えてくれと。
何故こうなったのか、そしてこの感情のぶつけ先を。
放送は続き、泣き声も途切れることはない。
導きを失った彼らは、今はただ泣くことしか出来ないのだから。
593
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 18:52:33 ID:HBIJijrw0
ルナイファ帝国 東方基地
1463年3月9日
(´<_` )「......アニジャ達の安否は、未だ不明、か」
ルナイファ帝国の東側、対ソーサクを考えられ作られたその基地にオトジャはいた。
あの南方での戦いの際、攻撃に直撃するギリギリでなんとか転移魔法が発動し、飛ばされた先がここであった。
ここに飛んできたのには勿論理由がある。
東の強敵、対ソーサクを意識して作られているため、艦の修理や補給を行うための設備がルナイファのなかでも特に優れていること、また南方が敵に奪われた根性、召喚地方面へ再度出撃が必要となった場合に最も動きやすいことが理由として挙げられる。
とはいえ、艦への被害が酷いものも多いためすぐには動けそうもなければ、あんな化け物ともう戦いたくないと精神を病んでしまう兵士まで出ているのだ。
先の戦いの際、次はと言ったものの誰もが本音ではもうあんな戦いは御免であった。
594
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 18:53:50 ID:HBIJijrw0
無論、オトジャもあんな敵と再度戦うことは避けたい限りではあるが、敵が侵攻してきてこちらが兵士である以上、なにもしないわけにもいかないだろう。
そしてもし、アニジャが敵に討たれているのだとしたら―
(´<_` )「......ここで、止まれるわけがない」
決して怒りに身を任せるようなことをするつもりはない。
だが、それでも全て受け入れられるはずもない。
もしもの時、その時の覚悟は出来ている。
とはいえ、そんなときが来なければ、アニジャが無事でいてくれればと祈るばかりである。
(・∀ ・)「......少し、よろしいですか?」
その時、不意に声を掛けられる。
はっと顔を上げるとそこにはマタンキがいた。
彼もまた、あの敵にやられここに撤退してきたものの一人である。
ムー奪還作戦の際に敵に一撃を与えて動揺した隙に撤退出来た、数少ない生き残り。
同じ敵を知るもの同士と何かと話をする、不思議な縁が出来つつあるような関係であった。
595
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 18:54:30 ID:HBIJijrw0
(´<_` )「あぁ、マタンキさん。えっと、なんでしょうか」
(・∀ ・)「いえ、艦のことで相談がありまして。実は私にプギャー様からの命令が入ったのです」
(´<_` )「プギャー様から?」
その言葉にオトジャは猛烈に嫌な予感がする。
そんなオトジャの様子に気づかないのか、マタンキは話を続けた。
(・∀ ・)「えぇ、近々艦が多数、必要になるやもしれないのです。それも、召喚艦が」
(´<_` )「召喚艦?......ワイバーンでどうにかなる相手ではないと思いますが」
(・∀ ・)「プギャー様からの命令ですのでそこについては私は知りませんな」
(´<_` )「......そうですか」
596
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 18:55:21 ID:HBIJijrw0
マタンキは言ってしまえば、ある意味でこの国の最も軍人らしい考え方を持つ者ともいえるであろう。
エルフのプライド、そしてルナイファのプライドを第一に考えつつ、自らの利益のために動く一方で国を守るためという考えなど持ち合わせていない。
事実彼は、ムーではプライド第一に無理な特攻を仕掛けたくせに、自身だけは一撃を与えてプライドを守ることに成功したからと上陸した味方の支援もせず撤退してきたのだ。
今回についても恐らくはプギャーから何かしらの報奨や裏金を貰っているのであろう。
だからこそあんな無能の命令をこんな大惨事ともいえる事態に陥った今でも、特に反対や意見をすることもなく行おうとしている。
あんな無能を祭り上げてどうするんだとオトジャは心の中で呟きつつも、それは決して表に出さずに小さく頷く。
(´<_` )「上からの指示ならば、仕方ありませんな。艦の整備を優先させてほしいと言うことでしょう?」
(・∀ ・)「えぇ、そうなります」
597
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 18:56:04 ID:HBIJijrw0
(´<_` )「分かりました。まあ元より、こちらは再度出撃できる見通しは立っておりませんから問題ありません」
(・∀ ・)「そうでしたか。ならば良かった」
では、そういうことでとマタンキは整備順の指示に向かうのだろう、オトジャから離れていく。
その後ろ姿を眺めつつ、オトジャは考える。
―この指示、一体何が目的なのか。
海戦で敵に勝つことはほぼ不可能であると、流石のプギャーも分かっているはずである。
だがそれでも多数のコストがかかる召喚艦の整備を、それも至急取り掛からせるとは何を狙っているのか全く分からない。
598
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 18:56:34 ID:HBIJijrw0
そもそも海軍として崩壊寸前のところだというのに、これ以上、何をしろと言うのか。
拭えない嫌な予感。
それは決して消えることない。
(´<_` )「アニジャなら......分かるのだろうな」
自分より優秀な兄。
今何処に、そして無事かも分からないその名を呼ぶ。
何時もならば、問いかければすぐに答えてくれる彼は、今はいない。
何一つ明るい兆しがないのである。
それがオトジャの、そしてルナイファの現在であった。
599
:
名無しさん
:2023/09/02(土) 19:01:39 ID:HBIJijrw0
本日投下予定であった話がこちらです
この後に
>>550-577
が続く形となります
今回の話は私のミスで非常に分かりにくい形となってしまいましたが今後も読んでくださると嬉しいです
書き溜めが死にましたが頑張ります
600
:
名無しさん
:2023/09/03(日) 08:19:44 ID:qVLILsAk0
おつおつ!
こちらとしては2話分読めたから得でしかない
モナー怖いけど天才だな…
601
:
名無しさん
:2023/09/03(日) 16:57:13 ID:1cmrFcs20
乙津
602
:
名無しさん
:2023/09/03(日) 19:34:18 ID:m1AK2STU0
乙乙
ドクオの胃がついに限界を……
プギャー様の事を阿呆扱いする輩は許されませんねぇ
603
:
名無しさん
:2023/09/09(土) 12:25:05 ID:TsDhJ0GQ0
ルナイファ帝国 帝都
1463年3月22日
―天に仇なす人間を滅ぼせ。
そんなスローガンのもと、多くの志願兵が帝都に集まってきていた。
誰もが愛する国を守るため、侵略してきた野蛮な輩を叩き潰すと決意をし、ここに来ている。
その顔は誰もが怒りに満ち溢れ、すぐにでも戦いに出向こうとするものも少なくない。
さてそんな殺気に溢れる志願兵だが、その年齢層はとても広い。
かなりの年配のものからまだ学生であろう子供まで集まっているのだ。
通常であれば、兵が十分にいたルナイファでは不要な存在である。
ましてや魔法は個人の才能に左右されるのだ。
むやみやたらに集めたところで兵として役に立つものなど一握りだけであるため、試験などで不要なものは弾かれるのが普通である。
才能のないものも受け入れてしまうと、その分増えるコストを考えれば割に合わない。
604
:
名無しさん
:2023/09/09(土) 12:26:25 ID:TsDhJ0GQ0
しかし今は一人でも兵が欲しいのか、志願したもの全てが受け入れられる勢いである。
それほどまでに追い詰められている、ということなのだがそれに気付くものはいないのか、誰も気にする様子もなく、戦いに向けて訓練をし、来る日に備えていた。
そうして訓練を続けるものを見たものが、また一人と志願し兵が増え、またその志願したものに近いものが、まだ志願していないものを非国民だと後ろ指をさし噂することで、耐えきれなくなったものがまた一人として志願する。
そんな国家としてもはや末期に近い状態になりつつあるなか、また今日も一人の男が志願兵として、この帝都に現れていた。
( ^ω^)「......」
その男、ブーンは友が皆戦場に行き消息を絶ってしまった現在、彼の周りも、また彼自身もなぜ彼だけ戦いに赴いていないのかと考えていた。
605
:
名無しさん
:2023/09/09(土) 12:28:47 ID:TsDhJ0GQ0
元々戦場に行くことを反対していた親は相変わらず反対していた。
そのため本来であれば戦争などに参加せずに生活を送ることは不可能ではなかったはずである。
しかし彼自身が周りからの圧力、そして自分の考えに耐えきれなくなり、自分も戦うのだと、友のように国を救うために働くのだと家を飛び出しここに来たのだ。
( ^ω^)「......皆、見ててお」
これから、何をするのかは分からない。
だがこれでようやく、友に顔向けできる。
そんな安堵と共に、友を殺したかもしれない敵への怒りが沸々と沸き上がる。
―絶対に、殺してやる。
そんな黒い決意を胸に、ブーンは訓練の輪のなかに消えていった。
606
:
名無しさん
:2023/09/09(土) 12:29:34 ID:TsDhJ0GQ0
ムー国 迎賓館
1463年3月25日
交渉は、呆気ないほどスムーズに進行した。
あまりの拍子抜け具合にフィレンクトは逆になにか罠なのではないかと感じたほどであった。
確かに初めて人間たちと顔を合わせた際は丁寧な対応をされたものの、そこに隠れていた敵意に近い、恨みのような感情が空気で伝わってきていた。
それに対しフィレンクトは、ルナイファとは関係無いとは言え、同じエルフとして謝罪し、頭を下げた。
その行動が良かったのか、頭を下げた瞬間、険悪であった空気が一気に変わっていた。
エルフにもこんなにも話ができるものがいるのか―
そう暗に言われているようにも感じられ、フィレンクトはあまりの恥ずかしさ、そして情けなさに顔から火が吹き出るのではないかという思いであった。
607
:
名無しさん
:2023/09/09(土) 12:30:51 ID:TsDhJ0GQ0
野蛮だ、蛮族だと言っていた相手に対し、こちらがそのように思われおり、またそれにも関わらずこの人間たちはこちらを丁寧に扱おうとしてくれていたのだ。
このようにするのが文明のある、知性のある生物だと言わんばかりのその姿に悔しいがフィレンクトは相手の方が優れた考え方を持っていると認めざるを得なかった。
さらに付け加えるならば、まともな外交を出来たことも衝撃的であると同時にまたもや情けない気分にさせた。
この世界の国々の大国を見れば、暴君であり交渉の手段を戦争と脅迫しかしらないようなルナイファ、鎖国し築き上げた魔法技術の高さに比例するようなプライドを持つためにまともに話ができないソーサク、法書なるもののお告げならば自国より強い国とすら戦争をするような狂人の集まりのアリベシ。
まともな大国と言えばヴィップ位のものであり、対等でまともな交渉ができるのもこの国くらいのものである。
そんな中、自国よりも明らかに強力であり、かつこちらに恨みがあるであろう人間達は対等な立場での外交を望んだのだ。
608
:
名無しさん
:2023/09/09(土) 12:31:26 ID:TsDhJ0GQ0
勿論、互いに譲れないものなどでの牽制等もあったが、これこそまともな外交だとフィレンクトは歓喜した。
持ちあったカードを切り合い、相手の要求、そして妥協点を見極め、より良い条件を引き出し合う。
力ではなく、頭脳と言葉による戦争。
本来あるべき世界の姿がここにあるとすら、フィレンクトは感じていた。
(‘_L’)「......良かった」
気づけばフィレンクトはそうポツリと呟いていた。
それはまちがいなく本心であった。
シラヒーゲがこの国と接触し、また友好的に交流しようとしたこともそうであるし、このようにまともでかつ優秀な者と互いに言葉を尽くし合えたことが幸せであった。
自分の力を遺憾なく発揮できる機会に、ようやく巡り合うことが出来たのだ。
609
:
名無しさん
:2023/09/09(土) 12:32:19 ID:TsDhJ0GQ0
とはいえ、懸念点もある。
今回の交渉を通じて理解したが、相手はフィレンクトよりも遥かに経験が上であるということ。
このような対等な立場での交渉に長けているのだ。
対しフィレンクトはというと、そもそも交渉できるような相手がいないのだから経験の積みようがない。
そのため交渉はスムーズに進んだのはいいものの、相手にほぼ常にイニシアチブを握られていたのだ。
一応、納得できるような条件を引き出せてはいたものの、今後の事を考えればこのまま主導権を奪われることは好ましくない。
だからこそ、フィレンクトは最後のカードを切った。
彼が考えうる限りで最も人間たちが欲しがっているであろう、そのカードを。
610
:
名無しさん
:2023/09/09(土) 12:33:33 ID:TsDhJ0GQ0
(‘_L’)「......陛下」
そうして彼は魔信をかける。
全ての交渉がまとまったこと、そうして決まった事を伝えるために。
(‘_L’)「予想通りの結果となりました。相手も恐らく、想定していたのでしょう。また『えいせい』なるものでこちらの動きも見られていたらしく、かなり行動が早かったです。えぇ......予想以上に、手強いです」
その報告に魔信の先のシラヒーゲも喜びの声を挙げる。
全て、自分達の理想通りの展開となっているのだから、当然だろう。
(‘_L’)「ですが......彼等は味方となってくれました。そして我が国は、事前にお伝えしたとおりに......」
世界は、更なる変化の時を迎えていた。
611
:
名無しさん
:2023/09/09(土) 12:34:12 ID:TsDhJ0GQ0
アリベシ法書国 北方難民キャンプ
1463年3月28日
(# ・∀・)「悪魔が逃げたぞっ!追えっ!!」
民たちの怒りが、限界を迎えてしまった。
絶対であるはずの神の御告げを聞き、その意思に従ってきたはずであった。
全ては正しい道を進んできたはずなのだ。
それが一体どこで間違えたのか、幸福になるどころか国は疲弊し、多くのものを失ってしまったのだ。
しかし、神が示す道がこのような結末を迎えるはずがない。
神は完璧であり、そして示される道もまた完璧なのだから。
612
:
名無しさん
:2023/09/09(土) 12:35:22 ID:TsDhJ0GQ0
ではなぜ、こんなことになったのか。
様々な考えが生まれては、耐えられない考えは切り捨てるか、はたまた本当に耐えきれなくなり自殺するものも現れ、そうしてようやくひとつの考えにまとまろうとしていた。
―何者かが、神の意思を妨害したのだと。
アリベシの民はその考えに至ると、何故こんな簡単なことに気付かなかったのかと狼狽した。
神は完璧なのだから、もし間違いが起きたのだとしたらそれは間違いなく、それを阻止しようとしたもの達がいたのだと。
そうなると次の疑問が浮かんでくる。
一体誰が、どうやって自分達を妨害したのか。
その問に対する、アリベシの民の答えはひどく単純で、そして酷いものであった。
自分達の中に神へ反逆する者たちがいる。
そしてそれらは自分達を邪魔する、悪魔の手先なのだ、と。
613
:
名無しさん
:2023/09/09(土) 12:36:52 ID:TsDhJ0GQ0
(# ・∀・)「見つけたぞ!異端者だっ!!」
そうして始まったのは、異端審問。
少しでも疑わしいものがいれば、どれだけ親しい仲であっても、戦争で苦楽を共にした相手でも迷わず捕らえる。
国民皆がお互いに疑い合い、捕まえ合い、そして―
(# ・∀・)「吊るせっ!吊るせっ!こいつらのせいで、国が、神が冒涜されたんだっ!!」
命を、奪い合っていた。
もはや国は暴走状態に、いや国として呼べるか分からないほどの無法地帯となり、荒れていた。
だがそんな状態でも皆の心は不思議とひとつであった。
それは、神への忠誠心。
誰もが神のため、正しい事をしていると信じて疑わない。
だからこそ誰も止まるはずもなく、いるかも分からない悪魔を探すため、異端審問は続いていく。
614
:
名無しさん
:2023/09/09(土) 12:38:13 ID:TsDhJ0GQ0
戦勝国であるヴィップも、ここまで荒れ狂った国の面倒を見きれるはずもない。
またアリベシが大国であったために物理的にも支配しきることが不可能であり、さらに得られるリターンが少なすぎるため、勝手に自滅し再び攻め込んでこなくなるならとそのまま放置する方針で固まりつつあった。
とはいえ、今後完全に国として崩壊したときに大陸の情勢を考えればなにかしらの対策はしなくてはと頭を抱えることになっているのだが、簡単に解決できることでなく、そして現時点でなにもできないことに変わりはない。
ゆえにもう彼らを止められるものはなにもなく、狂気はさらに増していく。
そして怒りは未だ収まる様子はなく、それどころか加速度的に増幅されているようにも感じられる。
狂った者達は、もう止まれないところまで来てしまっていた。
615
:
名無しさん
:2023/09/09(土) 12:39:40 ID:TsDhJ0GQ0
『......なぁ、あの噂、知ってるか?』
( ・∀・)「......うん?」
『法書についての噂なんだがな』
( ・∀・)「なんだそれ?」
そんなところに、見知らぬ者たちからのとある噂が飛び込んでくる。
情報源すら怪しい情報。
しかしそれすら、もう誰も疑うことなく、理性ではなく感情で突き進んでいく。
狂気は、さらに加速する。
616
:
名無しさん
:2023/09/09(土) 12:40:14 ID:TsDhJ0GQ0
ルナイファ帝国 デミタス宅
この日、デミタスは自宅で仕事をしていた。
陛下から任された任を果たすべく、もう何日も部屋に引きこもり、仕事を続けている。
誰にも邪魔はされたくないと、わざわざ一人になれる自宅に籠って作業を進めていた。
そんな彼が今やっているのは多大な被害を受けた海軍の情報を改めて整理し、今後どのように動くべきかを再検討するため、見たことないほどに積み上がった書類に目を通し、熟考することであった。
それらを読めば読むほどいかに無謀な戦いをしてきたかを再認識させられる。
一体どれだけの金と時間をつぎ込めば元の状態に戻せるのか分からなくなるほどの酷い有り様であった。
617
:
名無しさん
:2023/09/09(土) 12:41:24 ID:TsDhJ0GQ0
(;´・_ゝ・`)「......うーむ」
そうして問題になるのは、今後海軍を復興である。
広大すぎる自国を守るには、大量の艦が必要不可欠。
だがそんなものを急に用意できるはずもない。
さらにはそんな資金も無から沸いてくるはずもない。
むしろ降伏のために多額の賠償として資源やらを渡すことになるであろうことから再建への道は厳しいと言わざるを得ない。
また相手側がこちらを危険と考え、軍事力に規制を掛けてくることも十分に考えられる。
流石に国として崩壊することになればルナイファが存在するこの大陸どころか世界全てが混乱することとなり、賠償どころではなくなる。
そのため、混乱を防ぐためにも自国を最低限統治できるだけの力は持たせてはくれるだろう。
しかしその程度の戦力だけでも準備するのには時間はかかるし、なによりこれまでの政策上、周囲に敵国が多すぎるため最低限の戦力では不安は潰えない。
618
:
名無しさん
:2023/09/09(土) 12:43:12 ID:TsDhJ0GQ0
(´・_ゝ・`)「やはり......土地を渡して奴らの軍を、我が国に入れるしかないか」
他国の軍を、自国に入れる。
それはもはや土地を明け渡し、居座るのを容認することに等しい。
下手をすれば永久にその土地を他国に明け渡すことになり、かつこの大陸への足掛かりとなるため、常に首元に武器を突き付けられるようなものである。
基地を作ることになれば恐らく治外法権や軍事費の負担などを認めることになることも予測され、自国にとって相当苦しいものとなることは間違いない。
だがその代わりに、あれほどの力を持つ戦力がこの国にあると示すことができるため、むやみやたらに攻め込まれることもないであろう。
苦渋の選択とはいえ、ただでさえ混乱が予測される戦後、自国の外のことなど考える余裕がないであろうことから他に選択肢等ないのだ。
619
:
名無しさん
:2023/09/09(土) 12:44:29 ID:TsDhJ0GQ0
(´・_ゝ・`)「......」
もう何度目か分からないため息をつきつつ、再度資料に視線を戻す。
考えても考えても、明るい未来など見えることがない。
だが、目を閉じてもその未来が変わることない。
ならば目を反らすわけにはいかないのだと、資料を黙々と読み進めていく。
(´・_ゝ・`)「......うん?」
そうしてかなりの時間が経った頃、ある資料でピタリと手が止まる。
それは最近の艦隊の動きに関する報告であった。
(´・_ゝ・`)「召喚艦が、なぜ東方に集められている?」
そんな指示を出した覚えはない。
勿論、現場の兵が勝手に動かすにしても規模が大きすぎるため、その可能性もないだろう。
620
:
名無しさん
:2023/09/09(土) 12:45:29 ID:TsDhJ0GQ0
そうなれば可能性は一つ。
艦隊を動かせるほどの力を持つものが、自分の知らないところで動いている。
(´・_ゝ・`)(......プギャーか?)
そしてその条件に合うもので心当たりと言えばプギャー、ただ一人である。
軍のトップでかつ多くのコネを持つプギャーであれば、不可能ではない。
だがそうなると、問題が一つ浮かんでくる。
―なぜ、隠してまでこんな行動をしている?
明らかに何かを狙った行動。
目的がないということは、まずあり得ない。
では一体なぜ、召喚艦などを使うのか。
プギャーとて、ワイバーンをいくら召喚したところで人間達に勝てないことくらいは分かっているはずである。
これまでの戦いで一切、役に立っていないのだ。
今更、どんな価値を見出だしたというのか。
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