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異界大戦記のようです

1名無しさん:2023/04/01(土) 23:39:57 ID:mfVt/ZZU0
世界の縮図が変わろうとしていた。

魔法を操り、自らを神の僕と信じるエルフ達が支配するこの星。
その中の3大大陸に存在する5つの列強と呼ばれる国が衝突する寸前にまでなっていた。

きっかけは列強最強の国家と名高いルナイファ帝国と、同じく列強のニータ王国との国境で起こった小さな事件であった。
それぞれがその犯行の責任は相手側にあると主張しあっていた。
互いに堂々と国として主張をしていたがその内情は全く異なるものであった。

ルナイファに関しては元から周辺国家を攻め落とし、支配する典型的な侵略国家であった。
列強クラスの国との戦いはなかったものの、同大陸に存在し隣接する小国はほぼすべて支配していると行っても過言ではない。
そして大陸統一のためにも同じ大陸で国境を接しているニータはいつかは落としたいと考えていたことから、この機会に攻め込むのが良いと言う意見で国が固まりつつあった。

550名無しさん:2023/09/02(土) 17:09:41 ID:HBIJijrw0
ルナイファ帝国 南方都市テタレス
1463年3月12日

帝都の南、そして南方港の北、その中間辺りに存在する都市テタレス。
この国の帝都の次に栄えている場所と言われており、本来であれば多くのエルフが集まる場所である。

だが現在。
少しでも早くこの都市から脱出しようとするものたちで溢れかえり、混乱を極めていた。
帝都が怒りで震える一方で、こちらは恐怖で皆が震えているのだ。

敵を倒すために出兵していったものたちは、皆死ぬかボロボロとなり帰ってくる。
空は守護者であるはずのワイバーンは全て肉塊と化し、代わりに謎の高速飛行物体が飛ぶ。
明らかにこちらに敵意がある者たち、それも圧倒的な力を持つ者たちが目前まで迫っていると知ったのだ。

551名無しさん:2023/09/02(土) 17:10:33 ID:HBIJijrw0
これまで戦争は遠方の地の出来事であり、かつこちらが圧倒的であったから誰もが賛成していた。
そこには負けないという、大前提があったからこそである。
だがそれが覆り、なおかつ自分に危害があるかもしれないとなれば話は別である。

帝都のようにまだ距離があり、直接敵を見ていない者はまだ強気に出れるであろう。
だが自分を殺しうるものがすぐそこにいるというのは、これまで真の戦争の恐ろしさを知らなかったルナイファの民にとってとてつもない恐怖であり、このテタレスでは急激に厭戦思想が広がっていた。

脅威が直前に迫るまでは、あまりに現実感がないことから、妄想をそのまま言葉にし、行動することが出来た。
だが実際に脅威を、そして圧倒的な力の差を目にしたならば話は別である。
誰もが死ぬのは御免なのだ。

552名無しさん:2023/09/02(土) 17:11:13 ID:HBIJijrw0
そして皆が少しでも敵から遠ざかろうと北に向かおうとするが、移動用のゴーレムの数もまた動かすための魔石も足りず、かといって馬車も足りない。
さらに多くの者が一気に動こうとするために街道は渋滞を起こし、慌てたものが事故を起こしては更なる移動の停滞を引き起こす。
そこに北方からの兵の大規模な移動も加わり、さらにそれが優先されてしまうことから、民は逃げれない絶望感を前に完全な混乱状態であった。

そもそも簡単にこの地から動けるようなものばかりではなく、どうか明日も何事も起きない事を祈り、震える事しか出来ないものも多くいる。
そこに世界最強のプライド等というものはなく、教会にはただひたすらに戦いが終わることを願う者で溢れていた。

553名無しさん:2023/09/02(土) 17:12:20 ID:HBIJijrw0
爪;'ー`)「......くそっ、これじゃあ動けねぇ」

そんな中、多くの子供を連れ避難を進めるフォックスもこの混乱に巻き込まれ、身動きが取れなくなっていた。
彼一人ならば逃げ出すことも可能だろうがそんなことは出来るはずもない。
しかし、子供も連れて移動するとなるとかなりの物資と移動手段が必要である。
そんな大規模な移動となればこの混乱に巻き込まれるのは必須である。

爪;'ー`)(どうする?もう移動用のゴーレムを動かそうにも魔石が限界......だが徒歩はあり得ねぇ。この街に留まるのも危険すぎる)

子供を守れるのはここにいる自分だけ。
そうだというのに、まともな手段は思い付かず、無為に時間だけが過ぎていく。

敵の強さを鑑みるにいつここに攻め込んできてもおかしくはない。
むしろ、未だ敵の本格的な侵攻がないのは奇跡であろう。

爪'ー`)(普通に考えるなら......大規模な攻勢の準備、か?一気にこちらを攻め落とす算段......となると)

敵の思考を何とか読もうと考える。
そうして浮かんだ可能性から、やはり出来る限り遠くまで行く必要があるとフォックスは結論付ける。

554名無しさん:2023/09/02(土) 17:13:02 ID:HBIJijrw0
ただの一般兵であるフォックスと、多数の戦闘経験などない子供がいたところで戦況が変わるはずもない。
このままだと、何も出来ぬままに死体になるのみなのだ。
その命運を自分が握っていると考えるだけでフォックスは嫌な汗が止まらなかった。

(;´・ω・`)「......僕たち、どうなるんだろ」

そして、そんな様子を見た子供たちの不安は増すばかりである。
誰もがフォックスのように震え、そして中には泣き出すものも少なくなかった。

そんな子供の一人であるショボンも大粒の汗を流しつつ、友の心配をする。
自分と同じくこの戦争に参加してしまった、女の子であるツン。
彼女はショボンとは異なる配属のため、今この場にはいない。
かつては彼女の配属を羨む事もあったが、今考えればより前線に近いところに配属となっていた彼女は自分よりも危険と言えるだろう。

555名無しさん:2023/09/02(土) 17:13:58 ID:HBIJijrw0
そしてもう一人は帝都に残っているはずのブーン。
彼はこの戦争には参加していないはずであるため問題ないとは思うが、魔信から流れるニュースを聞けば、志願兵の募集が様々な都市で行われていると言う。
もし彼がそれに巻き込まれでもしたら―

(;´・ω・`)「......何事も、ありませんように」

二人とも、叶うことならばこの戦争とは無縁の場所にいますように、と。
他のテタレスの民と同じように、彼もまた必死に何かに対して祈りを捧げていた。

556名無しさん:2023/09/02(土) 17:15:06 ID:HBIJijrw0
ルナイファ帝国 軍務省
1463年3月18日

( ^Д^)「......はぁ」

この日、プギャーは珍しく怒りではなく、落胆した表情を浮かべていた。
手元には自分の信頼する部下に命じて調べさせた報告書があった。
そこに書かれていたのは、秘密裏に行われていたアラマキ達の会話の記録であった。

( ^Д^)「まさか......陛下まで奴らに洗脳されてしまうとは......」

その記録ではこの国が降伏に向けて動き出しているという彼にとって信じがたい内容であった。
それも、帝王であるアラマキが反対するどころかそれを推し進めているというではないか。
陛下ならばこの国の事を考え、正しい道を進んでくれるとプギャーは考えていた。
だがアラマキが選んだ道は、プギャーが信じる正しい道と正反対のものである。

陛下だけはまともであると信じていたプギャーにとってそれは、これまで信じてきた国に裏切られたに等しい出来事であった。

557名無しさん:2023/09/02(土) 17:17:08 ID:HBIJijrw0
( ^Д^)「くそっ、民の声も操作したというのにっ!」

忌々しいと舌打ちをしながらも、プギャーはどこか寂しげにそう呟く。
そう、現在ルナイファで民衆の間に流れている怪情報に近い煽動はプギャーが主導したものであった。
これにより臆病者達を民衆の声で潰し、国を継戦へと傾けようとしていたのだ。

全ては国のため、つまりは陛下のためであった。
彼の善意からの行動だったのだ。
それほどまでに彼はこの国を愛していたはずであった。

( ^Д^)「だが......」

道を違えるのならば、仕方ない。
彼は覚悟を決め、前を見つめる。

( ^Д^)「幸い、現地の偵察隊からの報告から考えるに敵の大規模侵攻はまだ先のはず......それまでに北方の兵の移動が完了すれば良いが」

558名無しさん:2023/09/02(土) 17:18:34 ID:HBIJijrw0
計画には多数の兵が必要となるし、そもそも南方の敵を迎撃するためにも多くの兵が必要がある。
しかし既に南方の主力は殆どが潰され、まともに戦える状態ではない。
そのための大規模な配置転換が行われているのだ。

北方等遠く離れた場所からも可能な限り戦力を引き抜き、全てを南方に向かわせている。
さらには民衆が沸き立っている今、多くの志願兵を集めている。
プギャーとて南方にいるものたちがどれほどの力を持っているのか、分からないわけではない。

だからこそ彼は考え、ある計画を建てたのだ。
この国の運命を変えるそれは、着実に進行している。

( ^Д^)「さて、計画が奴らにバレるわけにはいかんからな。邪魔をされては困る......となると、奴が邪魔になるな」

その計画の先に待つ未来は、まだ誰にも分からない。

559名無しさん:2023/09/02(土) 17:19:56 ID:HBIJijrw0
ソーサク連邦 モナー宅

(; ´∀`)「......クソッ!!」

その日、モナーは自宅で頭を抱えていた。
思い返されるのはおよそ二ヶ月前にドクオとした話。
人間達と戦うと大見得を切ったあの日からそのための研究を進めてきた。
敵の強さは理解しており、その上で勝ち目はあると考えていたからこそ、出た言葉であった。
だが研究を進めれば進めるほど、敵の強大さが明らかになっていき、どうすれば良いのか分からなくなってしまっていた。

そのいい例が人間達への有効手段として考えられていた雷槍である。
初めは敵との力の差はあれど、敵に届きうる力はあるのだから部分的ではあるもののすぐにでも追い付けると考えていた。

だがいざ研究を始めてみても簡単に改良など出来るはずもない。
またもし敵に届きうる攻撃まで改良できたと仮定した場合に必要な魔法の技術を試算してみると、この世で誰も扱うことが出来ないと思われるようなものとなってしまうのだ。

560名無しさん:2023/09/02(土) 17:21:19 ID:HBIJijrw0
そもそも雷槍が敵に当たった経緯を調べてみれば、とんでもなく低い確率、それこそ奇跡とも呼ぶべき現象であったのだ。
その事実を知ったときは遠くても背中が見えていたと思っていたが、それがとんでもない勘違いであるということを嫌というほど思い知らされた。

そうして研究は完全に暗礁に乗り上げ、敵に追い付くどころか追う手段すら分からなくなったその時、一つの連絡が入る。
それは、雷槍を改良に非常に役立つ情報であった。

だが、その情報を知ったときモナーは喜ぶどころかこの世の終わりかのような表情を浮かべていた。

(; ´∀`)「『れーるがん』、か」

何故ならその情報の元が、人間達の技術から来たものであったからである。

561名無しさん:2023/09/02(土) 17:22:29 ID:HBIJijrw0
これまで数多くのこちらを凌駕するようなものを繰り出してきた人間達。
だがこの雷槍だけは魔法が人間達を凌駕し、それゆえに敵へ届きうる刃になったのだと考えていた。

しかし、それは違った。

人間達は同じようなものを作り出していたというのだ。
それでも始めは実用化はまだ先だという話から似たような技術はあってもこちらがまだ優位なのだと考えていた。

しかしよくよく聞けば、こちらのスペックを遥かに超えるものを作り出し、研究レベルとはいえ使用しているという。
ただ単にこちらが考える実用に足るレベルと人間達が考えるそれが違うだけという事実に、魔術師として、技術者として完全なる敗北感を味わうこととなったのだ。

562名無しさん:2023/09/02(土) 17:24:46 ID:HBIJijrw0
(; ´∀`)「勝てないのか?......魔法では、奴らの技術に......」

そうしていつしか、彼の心は折れかけていた。
どんなものを作り出しても、人間達がそれを上回るのではないかという感覚に陥り、完全に意気消沈してしまったのだ。

人間達を上回るために必死に考えてきた魔法も、それらですら人間達の技術であれば出来てしまうのではないか。
そんなことになれば、いつまで経っても人間達に追い付くことなど不可能ではないか。
どんな魔法も、人間達の技術で作り出せるのだとしたらー

(; ´∀`)「......うん?」

しかしそうしてしばらく考え込んでいたとき、ふと自分の考えに妙な引っ掛かりを覚える。

563名無しさん:2023/09/02(土) 17:27:54 ID:HBIJijrw0
魔法を人間達の技術で再現出来る。
現に雷槍は『れーるがん』という名で人間達の手で作り出されている。
この事実から人間達の技術であれば、魔法を別の何かの力にて作り出せるということなのだろう。

だが、それは逆に言えば。

ーもしかすれば人間達の技術を、魔法で再現出来るということなのではないか?

( ´∀`)「......もう、手段は選んではいられない、か」

その閃きは、魔法を絶対とする彼にとってかなり屈辱的なものであった。
だがそれでも他に道はないのだと、彼に新たな道を決意させる。

( ´∀`)「まだ、負けたわけではない。魔法が、負けるはずがない......これが可能ならば奴らと戦う力を得ることができるはずだ」

そう呟き、彼はあるものの試作に取り組むのであった。

564名無しさん:2023/09/02(土) 17:28:45 ID:HBIJijrw0
ソーサク連邦 新魔法開発研究室
1463年3月21日

新魔法開発研究室。
その名前の通り、新たな魔法を開発することを目的としたその一室にこの日ドクオは訪れていた。

情報室の職員として働く彼にとって、魔法の開発は遠いことではない。
この国がいくら魔法に優れていると言っても何でも出来るわけではなく、他国の魔法の中にはこの国にない発想から産まれるものもある。
そのためそのような魔法が生まれればその情報を得ては、自国の技術にしようとすることも珍しくない。

だが今日、彼、ドクオはそのような新しい魔法に関する情報など特に持ち合わせていない。
というのに呼び出されたことに首を捻りつつも、仕事だからと出向いていた。

565名無しさん:2023/09/02(土) 17:29:45 ID:HBIJijrw0
そしてこの部屋にはもう一人、見慣れた人物がいた。

( ´∀`)「さて、ドクオ君。見て欲しいのはこの魔道具なのだよ」

自分の上司であり、凄腕の魔法使いでもあるモナーであった。
だがそんな彼がわざわざここに呼び出すなど一体何事かとさらにドクオは首を捻る。

('A`)「魔道具、ですか。えっと、どんなもので......ん?なんですか?その金属の筒と......粒?なんか、団栗?のような形ですが」

( ´∀`)「まあ見ていたまえ」

そういうと、モナーは掌にそれらを魔方陣が描かれた筒にいれ、離れた的に向ける。
一体何事かと目を凝らしたその瞬間。

パンッ!!

一瞬の出来事であった。
大きな破裂音が鳴り響くと共に、的が穴が開く。

その光景は、ドクオの見たことのないものであった。
そしてこの光景に似た魔法すら聞いたことがないものである。

566名無しさん:2023/09/02(土) 17:30:20 ID:HBIJijrw0
だが、知らないわけではない。
むしろ最近よく話を聞き、よく知っている。
何度も、何度もクーから聞いたものだ。

それは魔法ではなく。

(;'A`)「じゅ、『じゅう』!?」

人間の技術。
本物を見たことがあるわけではない。
だがその特徴である、音と共に対象を穴だらけにするという金属の嵐。
まさにその通りの光景が、目の前で再現されたのだ。

( ´∀`)「......なるほど、話には聞いていたが実際に目にすると中々に興味深いなこれは」

ドクオが驚愕に身を固めている一方で、モナーもその自身が産み出した光景に唸っていた。
彼もまた、報告に恐ろしさを聞かされていたが、実際に再現したものを目にしたことで再認識させられたのだ。

567名無しさん:2023/09/02(土) 17:31:01 ID:HBIJijrw0
( ´∀`)「予めの加工と輸送面は問題だが、使用する際の魔石は火や雷を産み出し操るよりは効率的......なによりこの安定性と貫通力だ。何故こんな形のものが安定して飛ぶのか分からんが......本物はより高威力で高精度かつ連続で金属を撃ち出すというが一体どんな仕組みなのか......」

(;'A`)「な、なぜこんな......」

( ´∀`)「......君も分かっているだろう。現時点であの人間たちの力は我々を越えている。そして、なにより未知の力だ」

(;'A`)「......」

( ´∀`)「未知......そう、我々は知らない。追いつくため、追い越すためにもまずは奴らを知らなくてはならない」

('A`)「っ!」

( ´∀`)「悔しいが、奴らの技術は本物だ。魔法に匹敵するものであり......それを知らない我々は学ぶ必要がある。だがそのまま、奴らの技術を取り入れることは難しい。私もだが、この国は魔法により成り立つ国であり、皆が魔法に対してプライドを持っているのだから」

淡々と語るモナーではあったが、その言葉の端々からは悔しさが滲み出ていた。
しかしついこの間まで魔法以外を認めず、人間を頑なに認めようとしなかった彼から考えればその姿は劇的に変わったと言えるであろう。
それほどに人間の技術は彼にとって衝撃的なものであり、それを知らずに、否、気付きつつもプライドからそれを見えないフリをし、下手な事を進めようとしていた自分とそして国に焦りを感じていたのだ。

568名無しさん:2023/09/02(土) 17:32:16 ID:HBIJijrw0
( ´∀`)「では、どうすれば我が国でもあの力を取り入れることが出来るか......ここまで言えばわかるかな?」

('A`)「......それが、この、魔法による人間達の技術の再現、というわけですか」

( ´∀`)「そうだ。これならば、魔法として取り込むことが出来る。そうしていけばいつかは奴らに追い付ける......奴らに、勝つことが出来るはずだ」

魔法に対するプライドはある。
だが現状、人間の技術は魔法を超える現象を引き起こすのだ。
伝え聞くその技術が全て本当ならば、これからの世界に変化を与えていくであろうことに疑いはない。
その変化の流れに置いていかれれば、技術を根幹に成長してきたこの国は世界から取り残されることになるであろう。

しかし人間の技術をそのまま取り入れるわけにも、国内の事情から簡単にはいかない。
だからこそ人間の技術を魔法で再現、もしくは改良することで魔法技術として取り入れ、発展させる。
それがモナーのたどり着いた答えであった。

569名無しさん:2023/09/02(土) 17:33:17 ID:HBIJijrw0
('A`)「......なるほど」

その考えはドクオも悪くないのではないかと考えていた。
確かにこの方法であれば、人間の技術をそのまま受け入れた場合に生じる、技術の違いによる衝突は少なくなるであろう。
そして形はどうであれ自国の知らない技術を手に入れることは、直接自国の発展に繋がるのだ。

その先で目指すものが戦いなのを除けば、彼も両手を挙げて賛同していただろう。
ドクオは非戦派であり、エルフと人間の対立に拘らず、戦わない道を進むことが理想である。

とはいえ、ただ戦わずに近づければ良いという考え方とは異なる。
その理由はふたつあり、ひとつは国の多くのものが人間国家と仲良く出来るはずがないと考えている現状、無理に近づこうとすればトラブルになるであろうということ。

初めはどうにか架け橋になれないか等、色々と作戦を考えていたが、あまりのストレスにすぐに限界を迎えてしまい、早々に諦めてしまった。
それほどまでに現在この国で人間たちとの友好関係を結ぶことは難しいのだ。

570名無しさん:2023/09/02(土) 17:34:07 ID:HBIJijrw0
そしてもう一つの理由は、今のまま近づきすぎれば国として危険であるからである。
技術のレベルの差があまりにも大きすぎるまま近づくことになれば、その技術により現在の技術は下手をすれば淘汰されてしまう。
そうなれば多くのものが仕事を失い、国は混乱するし、なによりその技術を支えられるのは技術を提供した相手となる。
それは国の根幹が技術力に支えられているソーサクでは致命的といえる。
言い換えれば、国を支える根幹を敵に握られるに等しい状態になりかねないのだ。

もしそうなれば、二度と相手から逃れることもできなければ逆らうことも出来ない。
表向きは良くても経済的な植民地となりかねないのだ。

ではどうすれば良いか。

彼が出した答えは一つ。
人間たちの国に並びたつ国となり、互いに敵対したくならないような力を持ち合いそれを理解し合う、言わば均衡した状態となること。
そうなればお互い手を出しにくくなる、抑止力になるはずである。
そうしてようやく、真に平等の関係を築くことが出来る。

そんな奇跡ともいえるようなバランスによる平和が、彼の望みであった。

571名無しさん:2023/09/02(土) 17:35:19 ID:HBIJijrw0
そのために独自に敵の持つ力の中で、最も抑止力となり得るものを独自に調査を進めていた。
その力が手に入れば、人間達も無理に敵対することはなくなり、万事が解決するはずであると考えたのだ。
しかしその成果はあまり芳しいものではなく、そもそも情報が手に入ったところで実物を得られるわけではない。
人間の技術を情報のみから作り上げることも不可能に近いため、理想が叶うことは無いと諦めかけていた。

だが目の前にある光景は、その問題を解決しうるものであり、まさにその理想的な未来への第一歩と言える。
確かに魔法へのプライドが高いこの国の者たちが、そのまま人間の技術を受け入れるとは考えづらかった。
だがそれを魔法で置き換えることが可能ならば、話は別である。

魔法としてならば、自国の民も素直に受け入れることが可能であろう。
人間の技術を我が国の技術としつつ、国の根幹である魔法を守り、そして発展することができる。
そうしていけばいつしか、抑止力となりうる力を魔法として作り上げ、人間達と並びたつ日が来るであろう。
理想的な、ドクオの望む世界である。

572名無しさん:2023/09/02(土) 17:35:50 ID:HBIJijrw0
('A`)(......とはいえ)

現状、ルナイファで手一杯であるからこそ特にこちらへの手出しはないが、将来もし技術を無断に模倣していることを知られれば、相手にいい印象は与えないはずである。

流石に直接手を出してくるとは思えないが、少なくとも信用はなくなるだろう。
そしてその信頼を回復しようにも、鎖国に近い体制のせいで外交が弱いため、現在の力関係から考えるに交渉による解決は全く期待できない。
敵対までいくかは不明であるが、関係を下手に悪化させたくないドクオにとってそれは喜ばしいことではない。

そもそも、形だけは見よう見まねで真似できたとしてもその根幹の技術を理解できるとは言い難く、それらを自分達の力に出来るまでにはとてつもない時間が必要となるであろう。
見た目だけならば並びたつ日も近いかもしれないが、そんなハリボテに騙されるほど相手は馬鹿ではない。

573名無しさん:2023/09/02(土) 17:36:29 ID:HBIJijrw0
さらに理論上再現可能でも、その魔法を使える魔術師をどれほど産み出せるかという問題もあるのだ。
魔法は個人の才能がものをいうのだ。
それは良くも悪くも個人に左右されてしまうため、運が悪ければ魔法は作れたが誰一人として使うことが出来ないなどということもあり得なくない。

なんにせよ他の選択肢よりは若干マシとはいえ、まだまだ国が安泰といえる日は遠いという結論に辿り着き、小さくため息をつく。
そもそも大きく力が離れている相手に追い付こうとすることが困難なのだから仕方のない部分はあるのだが、それでも明るい未来が見えないというのは非常に心にくるものがあるのだ。

だが、少なくともこの国の中でも力を持つモナーが無理な敵対はしない方向に進むであろうことに、突然の心境の変化に驚きを感じつつも若干の安心感が生まれていた。

( ´∀`)「......さて、ドクオ君。本題に入ろう」

('A`)「本題、ですか?これを見せるためではなかったのですか?」

( ´∀`)「勿論それも目的ではあるが、これはあくまでも説明のためだ」

('A`)「......説明?」

574名無しさん:2023/09/02(土) 17:37:05 ID:HBIJijrw0
( ´∀`)「先ほどので、人間の技術は我々の魔法で再現可能ということがわかっただろう?」

('A`)「えぇ、それは確かにそうですが......それが?」

( ´∀`)「では、君が再現するとしたら、何を再現するかな?仮に何でも再現できるとするならば、だ」

('A`)「それは......」

本当に何でも再現できるとするならば。
その仮定に一つの考えが頭をよぎる。
人間の国との力を拮抗させるために必要な力。
すなわち、人間でも恐れるものを再現できたとすれば。
その先に待つものは、ドクオが思い描いた世界に限りなく近づくのではないか―

('A`)「そう、ですね。人間が持つ、彼らがもっとも恐れる兵器、でしょうか」

( ´∀`)「......やはり、見込んだ通りだ。優秀な男だよ、君は」

('A`)「え?」

575名無しさん:2023/09/02(土) 17:37:35 ID:HBIJijrw0
( ´∀`)「他のものに同じ質問をしてもこれまでに手に入った情報の中にあった兵器や道具を挙げるばかりであったが......君は違う。ちゃんと、あの国のことを考え、理解できている」

('A`)「......」

( ´∀`)「ドクオ君、君が反戦派なことは知っている。どうにかして、対立しない道を探しているのだろう?」

(;'A`)「っ!?そ、それは......」

( ´∀`)「ああいや、別に排除しようというわけではない。君は優秀だし......利害も一致しているわけだからね」

(;'A`)「どういう......」

意味ですかと聞く前に、モナーはドクオへ一つの魔道具を取り出す。
通信用の魔道具に似たそれは、簡易的な記録用媒体であり、ペアとなる魔石に記録したものを瞬時に共有することのできるものであった。

('A`)「......これは?」

( ´∀`)「ドクオ君、君に任務を与える。任務はただ一つ、君がさっき言っていたものを、探すのだ。人間がもっとも恐れる兵器の情報を」

(;'A`)「な!?」

576名無しさん:2023/09/02(土) 17:38:22 ID:HBIJijrw0
( ´∀`)「それをこれに記録してくれ。そうすればその情報は私に伝わり......いつの日か、それを再現、もしくは対抗するものを作り出して見せよう」

(;'A`)「......」

( ´∀`)「君はこの国に他国を牽制できる力が欲しい、そして私は人間たちを滅ぼせる力が欲しい......そのどちらも満たすことができる。どうかね?」

(;'A`)「......なぜ、それを」

( ´∀`)「それくらい、君のあの答えを聞けばすぐに分かるさ。まあ、すぐに回答が欲しいわけではないから安心したまえ」

敵対することを前提に考えている者に、そんなものを渡せるはずがないー
そう叫びたいドクオであったが、その言葉でる前にモナーもその事が分かっているのか、ニヤリと笑いつつ言葉を続けた。

( ´∀`)「ただ......よく考えたまえよ?もし人間たちの兵器に関する情報が手に入ったところで君では作れないし、だからといって兵器そのものを手に入れるのは不可能なことくらい、君も分かっているんだろう?自分達が恐れるものを他国に渡すほど奴らは馬鹿ではない。つまり、情報を手に入れた上でそれを自国で再現できる技術を持つ仲間が必要だ。違うかな?そんな味方が君にいるのかね?」

(;'A`)「ぐっ......ぅ」

577名無しさん:2023/09/02(土) 17:38:53 ID:HBIJijrw0
( ´∀`)「まあ君もこの国の世論は知っているだろう?いくら私でも、もしもの事があれば、庇いきれないかもしれないからな」

そう耳元で囁かれたのち、魔石をドクオの胸ポケットに滑り込ませ、そのまま部屋から出ていく。
一人取り残されたドクオは自身がとんでもない状況におかれていることを今更になって知り、絶望する。

彼自身はただの職員であったはずなのだ。
それが何の因果なのか、気づけば国を動かすような重大な無理難題ばかり押し付けられている。

(;'A`)「......何で俺ばっかり、こんな目に......」

様々なものたちから板挟みのような状態になり、また自身の考える理想からも押し潰されそうな現状。
最早動くことすらできないほどの重圧に、ドクオは何度も嘔吐した。


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