Black Sheepの分析を行い、宝木の結論と一致したプロチームは、揃って同じ感想を抱く事となる
『舐められている』。ジャパンカップという大舞台で、今や誰も見向きしないアビリティを抱えて挑まれている
競合相手の実力を安く見積らねば出来ない決断は、そのまま『挑発』として捉えられる。例えそれが意図したモノでは無いにしても、『生意気でデカい口を叩くポッと出の新人』というイメージは避けられない
蟒蛇はラスト・ワン主義の超攻撃型プロ集団。売られた喧嘩は常に買う。明日行われる大規模な予選三回戦で、やろうと思えば早々に決着をつけられる
徳雄に執着する気持ち悪いキャプテンと、『憎悪を隠そうともしない新しいジョッキー』とは違い、フラットな柊木は『その方が都合が良い』と考えた
Black Sheepの宣戦布告が、彼らの思惑以上に広まっているならば、明日は本戦以上の激戦を強いられる筈である。その機に乗ずれば、ライバル候補を楽に蹴落とせるのだ
バジリスクのキャプテンである『宝木 蕗也』は新たなジョッキーに、徳雄の過去に関わりある人物を指名した
プロ選手でありながら、三対一、それも相手はキャプテン落ちという圧倒的な戦力差で臨みながら、公衆の面前で屈辱的な敗北を喫した、ネットニュースにすら上がった半年前の一戦
Black Sheep結成前から『擬似的な6shooter+スピンミキサー』の砲撃を、その身と頭に刻み込まれた唯一の対戦相手
Black Sheepの進路を妨害するかのように地面が爆ぜる。クワイエットとバジリスクを警戒して少し離れた場所に降り立った他チームが、この機を逃さんと砲撃を開始した
「Black Sheepへ集中砲火!!休む暇は与えられません!!」
(´・_ゝ・`)「どのチームかな?」
(;@з@)「59番『歩苦歩苦』、8番『インビジブル』、31番『三木ONE』にござる!!」
Black Sheepに向かって正面、変形機能を持つ『歩苦歩苦』。右側面に光学迷彩装甲によるステルス戦法を得意とする『インビジブル』
そして左方に車体を黒と赤のカラーリングで二分し、砲塔に二つの円形レーダーを耳のように搭載した、何がとは言わんがミッキーマウスを彷彿とさせる『三木ONE』が待ち構えている
尚、2121年現在、黒赤カラーのミッキーはパブリックドメイン化している為、杞憂は不要である
Black Sheepへの『ヘイト』は鎮まることなく、二強と離れたことで散り散りになっていた他チームがこれ幸いと集い始めていた
ジャパンカップのルールはソロプレイ前提だが、利害一致による一時的な共闘は暗黙の了解とされている。よほど悪質で無い限り、咎められる事はない
既に三チームも下したBlack Sheepは、『私刑』の大義名分として通用するほど充分な脅威なのだ