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lw´‐ _‐ノv浴室奇譚のようです
1
:
名無しさん
:2020/05/06(水) 23:29:26 ID:Zl1yTEtg0
私の家の浴室には、ちょうど六日前から円形の大きな黒い穴が空いている。
浴室の正面、シャワーや鏡がある方とは反対側の壁に、突如として現れたのだ。
本来その位置に空洞があれば、そこからはキッチンが見えるはずだ。
けれどクー姉の料理姿は眺められず、穴からいくら覗いても暗闇が見えるだけだった。
初日は驚いたが、特に実害もなかった。
むしろその穴の向こうに何があるのか想いを巡らせ、ゆっくりと入浴を楽しんでいる。
今ではクー姉も、その穴のフチにフックを引っ掛け、スポンジなどを吊るしている。
黒い穴のことを友人たちに話すと、
(゚、゚トソン「ついに異界の門が開かれてしまいましたか。異形の兵士が押し寄せるのも、時間の問題ですね……」
と、いかにもファンタジーめいた設定を真顔で呟かれてしまった。
表情の読みにくい、とそっとした彼女の顔立ちも手伝って、冗談なのか本気なのか分からない。
o川*゚ー゚)o「異形って、どんな奴らなの?」
同じく私の話を聞いていた、キュッと締め上げられた髪型の友人がそう訊ねる。
髪に痛覚がないことは分かっていても、横髪のアクセサリーでキューっと締められている部分は、見ていて痛そうだ。
2
:
名無しさん
:2020/05/06(水) 23:31:05 ID:Zl1yTEtg0
(゚、゚トソン「……邪悪な魂を持ったカピバラですね」
o川*゚ー゚)o「カピバラ!? カピバラの兵士なの?」
そこを詰められるとは予想していなかったのか、友人は言葉を濁しながらとそとそと答える。
(゚、゚トソン「……ええ、カピバラの、何か、そういう商店街から来ました」
目元がシュッと閉じ気味の私としては、カピバラの来訪はどうも懐疑的に思える。
私は手を挙げて会話を制止し、黒い穴について話題を戻す。
lw´‐ _‐ノv「どうしたら穴を閉じられると思う?」
(゚、゚トソン「異界の門に投げ込むんです、カピバラの好物を」
o川*゚ー゚)o「えー、閉じなくていいじゃん! カピバラ可愛いよ!」
すっかり彼女たちの間では、我が家の浴室の黒い穴からは、可愛らしいネズミが現れることになっている。
普段から私は自覚して適当なことを言っていたため、浴室の穴は冗談として捉えられてしまったのだろう。
私の考え方がおかしいのか、彼女たちはいつも逆のことを話すように感じる。
黒い穴から何かが現れるのではなく、私が穴の中へと向かうのだ。
内部に潜入して無事に帰れた暁には、たくさん土産話を披露しようと、私は二人のカピバラ談義を聞きながら決めていた。
3
:
名無しさん
:2020/05/06(水) 23:31:36 ID:Zl1yTEtg0
lw´‐ _‐ノv浴室奇譚のようです
.
4
:
名無しさん
:2020/05/06(水) 23:33:13 ID:Zl1yTEtg0
高校から帰宅した私は、すぐさま制服から汚れてもいいジャージへ着替え、スリッパを履く。
私の部屋は、そこかしこにボルトや機械の部品やらが転がっているので、踏むと痛いのだ。
一口サイズのおはぎを口に放り込み、乱雑な机の上からヘアゴムを探し出す。
見つかったゴムで後ろ髪を縛れば、お気に入りの作業用ゴーグルを掛けて準備完了だ。
lw´‐ _‐ノv「オッケー、グーグル、アレクサ、クローバー、横堀」
(//‰ ゚)「……おはようございマス、シューお嬢様」
部屋の隅で待機状態だった、サイボーグ横堀が動き出す。
横堀以外の端末は設定していないので、特に起動していない。
自律型二足歩行メカ、サイボーグ横堀。
紺のTシャツにベージュのスラックスを着せているので、パッと見は人間に見えるだろう。
が、近づいて眺めれば、メカメカの塊であることが一目瞭然だ。
顔の表面の半分ほどが、皮膚を模した白いシリコンで覆われ、残りは金属の外装そのまま。
製作途中で、「あっ、これ、私の造形技術だとグロくなるな……」と思い、人に似せるのを断念したためだった。
親は出張や赴任が多いため、どうしても私と姉に家事の負担が掛かる。
少しでもラクをしようと、私は帰宅部特権の有り余った時間を駆使して、サイボーグ横堀を製作したのだ。
5
:
名無しさん
:2020/05/06(水) 23:34:38 ID:Zl1yTEtg0
(//‰ ゚)「タブレットとの同期を開始シマス」
横堀が安定した膝曲げ歩行で、スクールバッグへと近づく。
それから私が高校に持ち込んでいるタブレットを取り出し、壁に寄りかかって座った。
タブレットにある新規データ、思いついたことをなんでも記したメモなどを、横堀はBluetooth接続で取り込んでいる。
私は机の下から必要な工具類と、炊飯器大の脚式ロボットを手元に引き寄せた。
現在製作中のこの炊飯器ロボットは、その命名権を姉に譲っている。
パーツ代やなんやかんやをお小遣いでは賄いきれず、聡明で美しいお姉様に出資して頂いているためだ。
とはいえ名前が無いのも不便なので、密かに私は仮の名称を付けている。
lw´‐ _‐ノv「プロジェクト歯車王を続行するよ」
(//‰ ゚)「かしこまりマシタ、シューお嬢様」
お嬢様という呼称は、ちょうど私が、"お嬢様と呼ばれてみたいっ娘"最盛期に製作したためだった。
私自身はどこかの令嬢でも何でもないが、泣く泣く家事をこなしていた頃は、優雅な公爵家暮らしをよく妄想したものだった。
https://res.cloudinary.com/boonnovel2020/image/upload/v1588208807/117_dvfa3r.jpg
6
:
名無しさん
:2020/05/06(水) 23:35:27 ID:Zl1yTEtg0
lw´‐ _‐ノv「あれ? タイミングチェーンの合わせマークどこに付けてたっけ?」
(//‰ ゚)「第二サーボ下部とありマス」
lw´‐ _‐ノv「あったあった、ありがとー」
私のメカメカながら、サイボーグ横堀はとても優秀だ。
横堀のAI構築については、主にディープラーニングを行うソフトウェアを利用している。
音声、画像認識、データ分析共に、GUIツールで作成したために、プログラミング面ではさほど苦労はしていない。
とはいえここまでくるのに、どれほどのトライ&エラーを繰り返してきただろうか。
やはり記憶に新しいのは、あのパンツ事件だろう。
画像認識がうまくいかず、横堀は私と姉のパンツの違いを認識出来なかったのだ。
そして彼によって洗濯物が取り込まれるたび、私のパンツがクー姉のチェストへと飲み込まれていった。
何年も履いていない女児パンツを身に纏い、風呂上りに居間をウロウロとしていたところ、
川 ゚ -゚)「シュー、その下着懐かしいな」
lw´‐ _‐ノv「他のパンツが行方不明なんだけど、クー姉のところに行ってない?」
7
:
名無しさん
:2020/05/06(水) 23:36:38 ID:Zl1yTEtg0
川 ゚ -゚)「ん……」
lw´‐ _‐ノv「……」
川 ゚ -゚)「ああっ、あれはシューのか! 近頃なぜか増えたような気はしてたんだが」
クー姉の画像認識もうまく働いていなかったらしい。
天体観測以外に殆ど興味を持たない、姉らしいといえば姉らしかった。
川 ゚ -゚)「好きなショーツを持っていっていいぞ、見分けが付かないからな」
lw´‐ _‐ノv「うん」
私も人様のことをどうこう言えない性格をしているが、クー姉も恐らく変人の類いだった。
姉は星空を眺めるために、わざわざベランダから脚立を掛けて屋根に登り、そこで一夜を過ごすこともよくある。
たまに気まぐれで姉に付いて行くも、私はすぐに飽きて手持ち無沙汰になってしまう。
lw´‐ _‐ノv「あれがデネブ、アルタイル、ベガ……」
適当な星を指差して、どこかで聞いたことのある呪文をそう唱えると、
川 ゚ -゚)「違う。あれはスピカ、アークトゥルス、デネボラだ」
lw´‐ _‐ノv「あれ、そんな歌詞じゃなかったっけ?」
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