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∵ Three dot ∴
48
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 11:07:14 ID:9OubR0lk0
<ヽ`∀´>「うーん……」
(∪^ω^)「わん?」
なんださっきからこの男ジロジロ見やがって。私の愛らしさに見惚れたのか?
悪いが男に撫でられる趣味はない。あの煩い二人と比べれば少しはマシな野郎とは思うがね
<ヽ`∀´>「汚いニダね……」
(∪^ω^)「お……?」
なんだテメェこの野郎失礼じゃねえかその平べったい鼻噛みちぎるぞオオン??????
<ヽ`∀´>「ショボン、ドク!!ちょっとこの子達にシャワー浴びさせてくるニダ!!」
(#゚;;-゚)「……」
('A`)「お?おー……」
(´^ω^`)「変な事すんじゃねえぞ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
<ヽ`∀´>「誰かと違って子供に欲情するほどクズじゃないニダ」
('A`)「真っ先にその言葉出てくる辺りマージ気持ち悪いわ。死ねよ」
(´・ω・`)「冗談じゃん……」
(∪^ω^)「わん?」
ちょっと待て、シャワー?今こいつシャワーって言ったか?
49
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 11:09:12 ID:9OubR0lk0
(∪;^ω^)「わんわわんわんわんわわん!!!!!!!」ダバババババ!!!!
<ヽ;`∀´>「ちょ……暴れちゃダメニダ!!綺麗にしないと!!傷だってあるかもしれないのに!!」
余計なお世話だこのダボがぁ!!!!!!!その謎の粘液を私に擦りつけるんじゃねえフレグランスな体臭が落ちるだろうがァ!!!!!!!
(∪;^ω^)「ウォウウォウォウォ……」
<ヽ;`∀´>「どんな感情したらそんな鳴き声出るニカ……?」
( ∵)「ゴェェェエエエエ♪」ワッシャワッシャ
( ∴)「ゴェェェエエエエ♪」ワシャワッシャ
<ヽ;`∀´>「キミらはノリノリニダね……ちゃんと身体洗えるんだ……」
チクショウこいつらは降り注ぐ熱湯に耐え切れるどころか楽しめると言うのか!!
人間の頭の悪い行為など良く真似が出来るものだ!!呆れて言葉も出ないな!!!!
(∪;^ω^)「ピィーーーーピィピィピィ……」
<ヽ;`∀´>「せつなっ……すぐ終わるから……」
早く終わらせろ!!!!!カスが!!!!!!!!!!!!!!!!
<ヽ;`∀´>「……」
(∪;^ω^)「ピィ?」
私の愛されボディを汚い手で弄りながら何処を見ているこの男?ああ……
(#゚;;-゚)「……」
『バスタブ』とかいう拷問器具に沈めたあの子か。子供と言えどメスだ。はしたない人間はすぐに欲情すると聞く
やれやれ、交尾に発展しようものなら少々痛い目を見てもらうとするか
50
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 11:10:18 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「……キミらは、一体どこから」
(∪;>ω<)そ「ギャウッ!?」
<ヽ;`∀´>そ「あっ!?」
目ぇあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!?????????????????
( ∵)「ゴエッエッェwwwwww」
( ∴)「クサwwwwwwwwwwwwwwwww」
<ヽ;`∀´>そ「今喋っ……あ、泡が目に入ったニダね!?ごめん直ぐに……」
(∪#^ω^)「ギャウウウウウウウ!!!!!」ガブゥ!!!!
<ヽ;`∀´>そ「いでででででで!!!!!!」
全く人間とはロクな事をしない!!仕返しに手に噛みついてやったが、私の億分の一程度の痛みで泣き叫ぶとはなんと情けない!!
まぁ私は寛大だし?飯の恩もあるし?下僕の粗相をこの程度で済ませてやった私に感謝して欲しいみたいな?
<ヽ;`∀´>「っつ〜〜〜〜……ご、ごめんニダ……」
(∪^ω^)「……フスッ」
おや、身の程を弁えている下僕だな。これまで私が噛みつこうものなら手や足や、場合によっては棒なんかが飛んできたものだが
犬に個性があるように、人も様々と言う事だろうか。これは一つ発見だな。下等種族も日々進化しているらしい
51
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 11:12:04 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「あーあー……バスルームで良かったニダ」
( ∵)「ゴェ……」
( ∴)「ゴェ!!」
<ヽ;`∀´>「とりあえず洗って消毒……」
(#゚;;-゚)「!!」ザパァッ
<ヽ;`∀´>「えっ?」
(∪^ω^)「……」
おやおや、もうネタばらしか。粗相してしまったのはどうやら私のようだ
せっかく都合の良さそうな下僕が見つかったというのに、これじゃ元の木阿弥だ
<ヽ;`∀´>「ど、どうしたニカ?」
(#゚;;-゚)「……」
少女が下僕の手を掴む。私も一度救われた『力』。行く先々で何度か目の当たりにしたが
『怯えなかった人間』は一人もいなかった。これも例外ではないのだろう
52
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 11:12:53 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「ッ……!?」
(#;゚;;- )「っ……っっ……!!」
あの感覚は、何と言うのだろうな……『巻き戻った』か。痛みが傷を受けた直後の『最大値』に巻き戻され、すぐさま無痛となる
<ヽ;`∀´>「傷が……!!」
するとどうだ?何事も無かったかのように『消えてなくなる』
私も『事故』による致命傷を受けて、このように元気で愛らしく生きていられるのも彼女の力によるものだ。但し――――
(#゚;;- )「っ……っっ〜〜〜〜……!!」
<ヽ;`∀´>そ「ああっ!?」
その傷は全て、力を使った『彼女』の身へ還る事となる
53
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 11:15:44 ID:9OubR0lk0
(# ;;- )「フーッ……フーッ……」
<ヽ;`∀´>「……キミが……って、大丈夫ニカ!?」
(∪^ω^)「?」
おや、これまでの人間とは一味違う反応だな?
<ヽ;`∀´>「血が……あれ、でも、止まってる……傷もそこまで大きくない……けど」
(#゚;;-゚)「……」
( ∵)b「ゴェエエ」
( ∴)b「ゴェェェェエ」
<ヽ;`∀´>「……『苦痛』を、請け負う、精霊……」
ふむ……『コレ』の正体を見抜いたクズと同じく、異常事態に対して冷静さを欠かず頭を回せる人間のようだな
これまで声をかけてきた連中は、どれもこれも取り乱したり腰を抜かすばかりで役に立ちはしなかった
<ヽ;`∀´>「……」
(∪^ω^)「……」
( ∵)「!?」
( ∴)「ゴェッ!!ゴエッ!!」
<ヽ;`∀´>そ「うわっ!?ど、どうしたニカ!?」
おっと、どうやら今夜はゆっくりと眠れそうにない。少し怖いが、この鬱陶しい泡を取ってしまわねば
(∪^ω^)「わんお!!」ダッパァン!!
<ヽ;`∀´>そ「おぎゃあ!?なんなのキミらさっきから!?」
バスタブの熱湯でサッと『水浴び』をして、水気を『ブルブル』で取っ払う。お?なんか毛並みが軽い
グズグズしてる場合では無くなった。これは『警鐘』の鳴き声だ。恐らく直に……
54
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 11:16:12 ID:9OubR0lk0
『ピンポン♪』
ほら、おいでなすった
55
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 11:17:43 ID:9OubR0lk0
―――――
―――
―
部屋に響くチャイムの音に、これからどうするかを話し合っていた二人は身構える
(;´・ω・`)「……」
('A`)「……俺が出る」
『間』の悪さ、あるいは『良さ』に、否が応でも警戒心は湧いて出るものだ
ただの強盗なら、腕に自信があるドク一人でも、『ある物』を持ったショボン一人でも対処が出来る
ドクが自ら申し出たのは、踏んだ場数が育んだ度胸によるポーカーフェイスが効力を発揮すると踏んだからである
('A`)「はいよー、どちらさん?」
平静を装いながら扉を開けると、片田舎のモーテルには相応しくない美女が二人
如何にも『あからさま』な訪問者に、彼の口角はヒクリと歪んだ
(゚、゚トソン「こんばんわ。夜分遅くに申し訳ございません」
('A`)「あー……ピザは頼んでないし、新興宗教なら興味ない。受け付けならあっちだおやすみ良い夜を」
56
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 11:19:31 ID:9OubR0lk0
一方的に話を切り上げ扉を閉めようとしたが、ブロンドの女が強引に足を入れてこじ開ける
右腿に吊り下げられた『ホルスター』が、ただの一般人では無い事を如実に表していた
|゚ノ ^∀^)「あらあら?こんな真っ暗闇の中、訪ねて来た女性二人を蔑ろにするワケ?」
('A`)「ホラー映画の見過ぎでな。色気に惑わされてどっかの『ホステル』に連れ去られたくはないんでね」
|゚ノ ^∀^)「ふぅん?」
(゚、゚トソン「お時間は取らせません。単刀直入にお伺いします。こんな姿をした『生き物』を拾いになられたのではないでしょうか?」
【 ( ∵) 】
【 ( ∴) 】
差し向けられたスマホの画面には、正しく議題の中心となっている珍妙な生き物の、最も特徴的な部分が映し出されていた
57
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 11:21:28 ID:9OubR0lk0
('A`)「最近の逆ナンは斬新だな」
(゚、゚トソン「迅速な回答を。此方も余計な時間を使ってはいられませんので」
('A`)「知らねえよ。イカレに構ってるほど暇じゃねえんだ」
(⁻、⁻トソン「……そうですか。残念です」
一軒一軒、身元も明かさず必要最低限の質問を投げかけているのではないのだろう
恐らく何らかの方法で『確証』を持って、ピンポイントで訪ねて来たに違いないと踏んだドクは
彼女たちが打つ『次の一手』を迎え撃つ心構えをした
|゚ノ ^∀^)「ふぅ……骨折り損ね。帰ろっ……か!!」
右手がホルスターに伸びる『予想通り』の行動。拳銃を抜かせない事も出来たが
正当防衛の大義名分を得るために、あえて『握らせる』所までは見逃した
(#'A`)「シッ!!」
|゚ノ;^∀^)そ「!?」
持ち上げた瞬間、肩口に容赦なく打ち込まれた拳に面食らう。腕は大きく振り下がり、掌から拳銃が離れてアスファルトを滑る
ドクは襟首と袖を掴んで身体を引き寄せ、ブロンドの頭を扉に叩き付け手早く失神させた
(゚、゚;トソン「フリーz」
('A`)「断る」
ワンテンポ出遅れたもう一人の拳銃の標準が定まるのを待たず、スライドを掴んで捻り取る
(#'A`)「そらよっ!!」
裏拳を顎先に掠めるように打ち込むと、此方も膝から崩れ落ち意識を失った
58
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 11:23:20 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「口ほどにもない奴め」
('A`)「それ俺のセリフ。一晩と経たず追手が現れるたぁな」
(´・ω・`)「身元を調べるか?」
('A`)「いや、とっとと逃げた方が良いかもしれねえ。荷物を纏めろ。それと……まぁこれは車内で話す」
(´・ω・`)「違和感か?」
('A`)「ああ、ちょっとした相違点をな」
<ヽ;`∀´>「今の音な……ちょっと待って身体拭かせて!!」
(∪^ω^)「わんわんお!!!!!!」
騒ぎを聞いてか、バスルームから飛び出したニダーと犬に、思わず二人の気が抜ける
(´・ω・`)「今夜はゆっくり寝れそうにねえ。直ぐに出るからお前は拾いモンを連れてこい」
<ヽ;`∀´>「え?わ、わかったニダ。ドライヤー使う時間は?」
(´・ω・`)「ねえよアホ。ドク、車回して来てくれ」
('A`)「オーケイ」
59
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 11:23:45 ID:9OubR0lk0
投げ渡されたキーを片手でキャッチし、倒れた女を跨いで駐車場へと向かう
そこにはもう一台、見覚えのないキャデラックが停まっていた
('A`)「ふむ……」
エンジンは掛かっておらず、スモーク仕様のパワーウィンドウも閉じられている
中の様子は覗う事は出来ないが、しばらくジッと観察していると車体が僅かに揺れた
表には出てこなかった『三人目』が、見つからないよう座席の下にでも隠れたのだろうと推察したドクは
('A`)「ハァー……」
そのキャデラックに近づき
(#'A`)「オルァッ!!!!!!!」
ガラスが突き破れるほどの乱暴な『ノック』をした
60
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 11:24:48 ID:9OubR0lk0
川;д川「ひぃッ!?」
脅しにしては少し酷だろうか。座席の下で頭を抱えて蹲る女を見て、ドクは僅かな反省をした
しかし、身元も明かさず銃を突きつけようとした連中に向ける優しさなど持ち合わせていないと、すぐさま払拭する
ロックを解除せず、ドア越しで勘弁してやるだけ温情だが、掛ける言葉には最大限の『圧』を加えなければならない
('A`)「お仲間に伝えとけ。何の因縁で追っかけてくるかは知らねえが、ここから先は怪我だけじゃ済まさねえ。とっとと帰って『バチェラー』でも観とけってな」
川;д川「ヒッ……ハヒ……」
(#'A゚)「返事はァッ!!!!!????」
川;д川「わか、わかりましたァ!!」
声色にも態度にも『演技』の色は見えない。何故この女があの二人と同行しているのかが気になったが
今は何よりこの場から離れるのが先決と、ドクはミニバンのロックを解除して運転席に乗り込んだ
('A`)「……」
歯に物が挟まったような気持ち悪さは、拭えぬ一方であった
61
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 11:35:09 ID:9OubR0lk0
―――――
―――
―
ブンマルに到着したのは午前三時頃。女の子と犬、そして『人形もどき』はスヤスヤと寝息を立てていたが
図らずも厄介な事件に巻き込まれた三人はとてもじゃないが眠れるような状態ではなく
一先ず二十四時間営業のダイナーに身を寄せ、車内にてドクとニダーが話したそれぞれの『異常』について会議を開く事にした
(;´・ω・`)「えーと……女の目当ては女の子と犬じゃなく、あの謎の生き物……っつったな?」
('A`)「ああ、的確な似顔絵まで見せつけてきてな」
(;´・ω・`)「そんでそっちが……『Rebel』は謎の生き物じゃなく女の子の方……と?」
<ヽ;`∀´>「犬に咬まれた傷が女の子の方へ移ったニダ……あの傷跡の多さも、恐らく他人の傷を請け負ったんじゃないかって……」
(;´⁻ω⁻`)「あー……やべえ頭働かねえー……」
疲労と非現実感が集中力を奪い取る。角砂糖を五つ入れた甘いコーヒーは大した効力を発揮しなかった
何はともあれ、彼らは『受け入れ』『抵抗し』『逃げ出した』。早急に答えを出し、行動に移さねばならないのだ
('A`)「『Rebel』があの女の子として……じゃあアレはなんだってなるよな」
<ヽ`∀´>「犬と謎生物」
('A`)「……犬とはあながち無関係じゃねえかもな」
(;´⁻ω⁻`)「ハァーン……?」
('A`)「事故を起こした保健所の車の、『乗客』の一人だとしたら?」
行方不明者と、逃げ出した野良犬。ビラに載っていた、凡そ同列に扱うべきではない両名が
もしも『同じ車』に乗って、『同じ場所』に連れられようとし、『同じタイミング』で逃げ出したとしたら
('A`)「55号線沿いには保健所は無いっつったよな?つまり、犬は拘置及び殺処分以外の目的でどこかに連れて行かれようとしてたのかもしれない」
(´・ω・`)「女の子も一緒にか」
('A`)「ああ。そう考えると同じビラに載っていた理由もある程度の説明が付くし、野良犬と共に行動しているのも納得が出来る」
62
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 11:36:51 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「何処へ、何をしに……は、考えてもわからないから置いておくとして、あの女の人たちは『謎生物』を探してたニダね?」
('A`)「そこも解せねえ点の一つだな。捜索願が出されてる方はともかく、傍から見りゃメルヘン拗らせた探しモンを大真面目に、それこそ拳銃突き付けてまで聞き出そうとしてたんだ」
来客を告げるドアベルに釣られ、背後をチラリと振り返る。常連であろうくたびれたドライバーが、ため息交じりに店主に挨拶を投げかけていた
脅しの効果か、それともまだ目を覚ましていないのか。追手の気配は未だ感じられない。窓辺から見えるミニバンにも動きは無かった
('A`)「連中の目当てが『Rebel』の女の子だとしたら、それに付属する生き物を尋ねるのはまぁーお門違いだ。それなら警察騙って怪しい野郎三人が部屋に女の子連れ込んだ云々と問い詰めた方がマシだろうよ」
(´・ω・`)「そうしなかったのは……あのビッチ共は女の子と犬については何も知らねえのかもしれないな」
<ヽ;`∀´>「『別件』扱いになってるって事ニカ?」
(´・ω・`)「かもな。そんで、ビラの製作者とも無関係の可能性すらある。検問も怪しいぜ?薬物取締っつーんなら、荷物漁るより尿検査した方が手っ取り早いしな」
('A`)「トランクを検めたのは、『隠し子』を見つける為か。確かに混雑してるとはいえ、雑な仕事ぶりだったな」
<ヽ;`∀´>「つまり……僕らは今現在、二つの組織に追われる身になった?」
(´^ω^`)「頭賢いなお前ェ!!!!!!!!!」
('∀`)「まぁ内一つは俺が事態をややこしくしたようなもんだけどなぁ!!!!!!!!」
<ヽ;`∀´>「アハハハハハ出発して一日も経ってないのに既に拗れてる!!!!!!!!」
一頻りゲラゲラと笑った後、三人はスンと押し黙る。談笑していた店主とドライバーの訝しげな視線を感じたが、構っている余裕はなかった
未知とロマンを求める旅の筈だったが、ゴールに辿り着くよりも遥かに早く向こうから出向いてくるとは思いもしなかったのだから
そして何かしらの良からぬ事情と物騒な追手まで付いてくる。彼らの許容値を遥かに上回っている。だからこそ
('A`)「『らしくなってきたじゃねえか』」
三人は『笑った』
63
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 11:38:15 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「全くだ。これくらいのスリルがねえとやり甲斐がねえ」
彼らは、危険が間近に迫った所で、怯えて逃げ隠れするような子供では無く
<ヽ`∀´>「何方にしろ、僕らを頼ってきたのなら応えてやらなきゃ男が廃るニダ」
厄介ごとを他所に放り投げて危機回避するほど、賢い大人でも無かった
('A`)「成し遂げて、見届けようぜ。『伝説』の行末をな」
危険とスリルあってこその『冒険』。心配や恐れといった後ろ向きな感情が入る余地などない
彼らの心身を支配するのは、『眠気』さえ吹き飛ばすような高揚感
握り締めた拳が歓喜に震えるほど、『待ち望んでいたシチュエーション』だった
(´・ω・`)「そうと決まりゃ、道草食ってる場合じゃねえな」
<ヽ`∀´>「うん。最短距離でセブンクロスに向かうニダ」
('A`)「よっしゃ、行くか」
テーブルに代金とチップを置いて、スタートラインを切るような気持ちで店を出た
白み始めた空すら突き抜けそうなほどの、期待感を胸中に抱きながら―――――
64
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 11:40:47 ID:9OubR0lk0
―――――
―――
―
|゚ノ #^∀^)「あんのブサイクよくもやってくれたわね……」
苛立たしくハンドルを指で叩き、アクセルをベタ踏みしながら吐いた悪態は
『拳で突き破ったかのように』割れた窓から吸い込まれ、朝の空気と混ざって消える
右肩と頭はまだズキズキと痛み、それが余計に神経を逆撫でした
|゚ノ #^∀^)「追いついたら徹底的に痛めつけた後に『ハロー』に引き渡してやるんだから!!クソッ!!クソッ!!」
(゚、゚トソン「窓に当たるのはやめなさい。これ以上風通しを良くしなくても結構です」
|゚ノ ^∀^)「っるっさいわねぇ!!ボスからの指示はまだなの!?」
(゚、゚トソン「たった今届いたばかりですが、そう頭に血が昇っては話もロクに理解できないでしょう?先に落ち着いてください」
助手席の相方をジロリと睨みつけたが、極めて冷静な視線に貫かれ怒りを収めようと努力を始める
鼻息荒く深呼吸を行い、法定速度を二十キロ近くオーバーしている車のスピードを緩めた
|゚ノ ^∀^)「……オーケー、フゥ、もう大丈夫。話して」
(゚、゚トソン「結構。対象確保の為に『12シスターズ』全員の出動を許可されました。配置については我々に一任されています」
|゚ノ ^∀^)「ワーォ、大ごとじゃない。そこまで躍起になるような代物なの?」
(゚、゚トソン「女性とはいえ、拳銃を持つ相手に先手を取って昏倒させるような男性はそうそういませんし」
|゚ノ ^∀^)「車まで傷物にされたしね。身元は?割れたの?」
(゚、゚トソン「はい」
65
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 11:43:02 ID:9OubR0lk0
タブレットには、本部に調査依頼を出した『三名』の資料が映し出されている
犯罪歴のない一般人の情報だ。検索には多少の時間が掛かると踏んでいたが、異例のスピードで送られてきた
(゚、゚トソン「『ドク・オーツ』。シタラバ最大の格闘道場を構えていたオーツ家の三男ですね」
|゚ノ ^∀^)「あ、それヒートから聞いたことあるかも。確か三年前に閉館したんじゃなかったっけ?」
(゚、゚トソン「ええ。経営方針の転換が主な理由と囁かれていますが、実際は『身内による道場破り』に依るものです」
|゚ノ ^∀^)「……つまり、そいつが家族全員叩きのめしたって事?」
(゚、゚トソン「進路について揉めていたらしく、会長である祖父、師範の父、免許皆伝の二人の兄を、心が折れるほど徹底的に『説き伏せた』そうです」
|゚ノ ^∀^)「とんでもない脳筋家族ね……もう一人の色男は?」
(゚、゚トソン「『ショボン・バーデラス』。シタラバでも有数の大牧場『バーデラスファーム』の次男です」
|゚ノ ^∀^)「さっきからビックネームが続くわね……」
(゚、゚トソン「驚くべきはそこではありません。兄の『シャキン・バーデラス』はイエローリストに登録されている要注意人物です」
|゚ノ ^∀^)「っ……なるほど、ボスが『変人集団』の総動員を許可するわけね」
(゚、゚トソン「あら、まるで自分は違うとでも言いたげな口振りですね」
|゚ノ ^∀^)「そーいうとこ意地悪だなぁ」
単に返事が愉快だったのか、自嘲が込められていたのか、『変人集団』のリーダーはクスリと微笑みを漏らす
しかしすぐさま何時もの涼しい表情を取り戻し、話を続けた
66
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 11:44:23 ID:9OubR0lk0
(゚、゚トソン「彼に関しては二年前に消息を絶っています。上層部は『死亡』扱いにしていますが、ボスは水面下で活動していると確信しているようですね」
|゚ノ ^∀^)「イエロー止まりなのは、お上のボンクラ共による慢心ってワケね。これじゃウチらも報われないわ」
(゚、゚トソン「あの三人の行動がシャキン・バーデラスの指示に従ったものである可能性は高いでしょう。サダコが目覚め次第、待ち伏せを配備させます」
|゚ノ ^∀^)「追うウチらと待ち伏せる子達。挟み討ちの形になるわね。シャワーを浴びていたもう一人は?」
(゚、゚トソン「顔こそ見ていませんが、ルームシェア相手の『ニダー・コクソン』に間違い無いかと」
|゚ノ ^∀^)「変わった名前ね。シタラバ人じゃないの?」
(゚、゚トソン「いえ、国籍はシタラバです。血筋は南コリャーですが」
|゚ノ ^∀^)「ふーん。で、その子は?」
(゚、゚トソン「ごく普通の家庭に産まれた、ごく普通の男です。経歴はね」
|゚ノ ^∀^)「じゃー、他に何かあるワケ?」
(゚、゚トソン「面白い特技をお持ちのようでしてね……あら?」
67
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 11:46:05 ID:9OubR0lk0
川д川「……」
|゚ノ ^∀^)「おはよう眠り姫さん。馬車の揺れ心地はいかが?」
川д川「スピード出し過ぎ……」
後部座席で眠っていたサダコが、掛けられていた毛布を丁寧に畳んで座席に置く
トソンはいつものように、タブレットの地図アプリを起動させて、タッチペンと共に手渡した
(゚、゚トソン「目的地は?」
川д川「セブンクロス……経由地はここ、ここと、ここ……」
丸で印を付けられた街は『ブンマル』『ブンゲー』『オムライス』の三地点
タブレットを受け取り、確認したトソンはもう一点、オムライスからセブンクロス山脈へ向かう唯一のルートにチェックを入れた
(゚、゚トソン「ブンマルには既に到着済みでしょうね……」
川д川「でも……発ってはいないんじゃないかしら……多分……」
(゚、゚トソン「それは朗報です。幸い、近くに待機班がいるので対応を依頼しましょう。立ち寄る場所などはわかりますか?」
川д川「ええ……私からしょ、詳細を伝えるわ……」
『12シスターズ』随一の予知能力に、レモナは関心したかのように口笛を吹く
これまでも行方知れずの超常保護対象を見つけ、その道取を予め『夢』で見てきたのだ
魔法もファンタジーも幻想の生物もいない、退屈で平穏な世界を維持する為には無くてはならない人員だった
|゚ノ ^∀^)「さっすがぁ☆これで見た目が根暗のナードじゃなきゃ様になんのにね」
川#д川「一言多い!!」
(゚、゚トソン「二人とも、気を引き締めなさい。私たちは彼らに一度出し抜かれているのです。これ以上の失態を重ねればボスに顔向けできません」
表情は険しく、視線は獲物を狙う『狩人』のように鋭く前を見据える
抑え込んでいた静かな『怒り』が漏れ出し、サダコは思わず寒気に身震いをした
(゚、゚トソン「反撃開始です。人々の安寧を護る者の挟持を、思い知らせて差し上げましょう」
68
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 11:51:13 ID:9OubR0lk0
―――――
―――
―
成功と破滅が同居する、シタラバが誇るギャンブル都市『ブンマル』
かつては『金塊を求める者』達が足を休める砂漠のオアシスに過ぎなかったこの土地は、賭博合法化による莫大な収益を目論んだマフィア達によってカジノやホテルが乱立
後に法律と取り締まりの強化により、裏社会の人間はそれらの経営から手を引くが、大手不動産や大富豪が引き継ぎ現在に到る
賭博、観光、ホテルによる利益は世界でもトップクラスであり、ある者は一晩のスリルと幸運を求めて。ある者は人生の一発逆転を目論んで
煌々と光るネオンは、年中無休で人々の歓声と悲鳴を聴き続けている
('A`)「こんなもんかな」
その中心街から少し離れた商業エリア。日頃から世話になっている大手チェーンマーケットで買い物を済ませたドクは、両手いっぱいの紙袋を抱えて自動ドアを潜った
主に女の子の衣服や野良犬の餌。予定外の出費だが、懐は大して痛まなかった
('A`)「異常なしっと」
両腕からずれ落ちそうになった荷物を抱えなおす。立体駐車場へ踏み出す前に、軽く辺りを見回したが特に目立った異変は見当たらない
行動するにあたって、街中では出来るだけ人気の多い場所を行こうと決めたのは彼だ。古い言葉にもあるように、『木を隠すなら森の中』だ
加えて、人の目が集まる往来では騒ぎは起こしにくいだろうという魂胆もある
69
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 11:52:11 ID:9OubR0lk0
<ヽ`∀´>「ほい、お帰り」
('A`)「おう、サンキュー」
車内から後部座席のドアが開かれ、ニダーに紙袋を渡す。ショボンは運転席でアイマスクとイヤホンを付け眠っていた
('A`)「異常なしか?」
<ヽ`∀´>「御覧の通り」
(∪^ω^)「グフーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!グフーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
(#゚;;-゚)「……」
( ∵)「ゴエエエエエエエエエエ」
( ∴)「ゴエエエエエエエエエエ」
('A`)「いやわかんない」
<ヽ`∀´>「いびき」
('A`)「ああいびき……太々しいなこいつら」
70
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 11:53:54 ID:9OubR0lk0
暢気な『拾い物』達とは裏腹に、三人はこれから襲い来る大きな負担に頭を悩ませていた
得体の知れない組織に追われ、逃げるという経験など、恐らく殆どの人間が経験したことのない事態だ
計画の変更に休憩時間の配分。どこから現れるかわからない刺客への警戒。四六時中気を張り詰めなければならない緊張感
どれもこれも三人にとっては未知の領域だ。一晩明けてようやく、この『チャレンジ』の過酷さが身に染みていた
('A`)「奴さんは今頃躍起になって俺らを探し回ってる頃かね……」
紙袋からモンスター・エナジーを取り出し、一息に煽る。独特な匂いと強烈な甘みに、思わず顔を顰めた
(;'A`)「まっじぃ……」
<ヽ;`∀´>「なんで買ったニカ……」
(;'A`)「効くかなって……所でお嬢の服だが、こんなもんでいいか?」
七分丈の夏物ジーンズに、コンバースのスニーカー、無地のTシャツと長袖のサマーニット、鍔広のブリムハット
やや厚着ではあるが、全身の傷跡を隠すには必要最低限と思われる服装を見繕っていた
<ヽ`∀´>「上々ニダ。いつまでも男物のシャツ着せるわけにもいかないしね」
('A`)「俺らなんか悪い事してるんじゃねえかって思えてきた」
<ヽ`∀´>「それを言うな。『ディ』、自分で着れるニカ?」
(#゚;;-゚)「……」
女の子、『ディ』は買い与えられた服を胸元に引き寄せ、小さく頷いた
着替えを見るのは野暮と、男二人は目を逸らし、ドアを閉めようとする。すると―――
(∪^ω^)「ウォフッ」
('A`)「おっと、オメーもか『ビィ』」
( ∵)「ゴエエエエエエエ!!!!!!!!」
( ∴)「ゴエ!!!!!!」
<ヽ;`∀´>そ「キミらは出ちゃまずいって!!『ビコ』、『ゼア』!!」
不思議な生き物、『ビコ』と『ゼア』を背に乗せた『ビィ』が、スルリと車を降りた
71
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 11:55:26 ID:9OubR0lk0
女の子と犬の『仮名』の由来は、シリアルバーのメーカー『B&D』から
生き物たちは顔の三つの点が、それぞれ数学記号の『∵(何故ならば)』『∴(故に)』に見えることから
気に入っているのかどうかはわからないが、それぞれが自身に付けられた名前であると認識はしていた
('A`)「ジッとしてろってのも酷だぜ?こいつらだって小便もクソもしてえだろうしな」
<ヽ;`∀´>「そ、それもそうニダね……ディも着替えたら連れて行かないと」
('A`)「俺が見とくよ。オメーはこいつらとちょっと息抜きしてこい」
<ヽ;`∀´>「……体よく面倒を押し付けようとしてない?」
('A`)「おおよくわかったな。フンは持ち帰れよ」
<ヽ;`∀´>「ハァ……アイ・サー」
(∪^ω^)「フスッ」
『行くぞ』とでも言いたげに鼻を鳴らしたビィに続き、ニダーは助手席から自身の手荷物を持って街へ向かう
その背中を、ドクは車にもたれ掛かり姿が見えなくなるまで見送った
('A`)「……」
買い物客が車に乗って、出口のスロープまで走らせる。入り口側からは、駐車スペースを探す別の買い物客がカーブを曲がった
賑やかな街の喧騒と、店内から漏れ出すポップなオリジナルBGM、出ては入る車のエンジン音に耳を傾け
('A`)「……そろそろ良いだろ」
他人の姿が見えなくなった時を見計らい、ドクは『何者か』に語りかけた
72
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:03:05 ID:9OubR0lk0
('A`)「どうやら、俺に御用のようだな。話なら手短に頼むぜ?寝不足が祟って居眠りしちまうかもしんねえからな」
階を記す『3F』のパネルが貼り付けられた柱の影が揺れ、『何者か』はゆっくりと姿を現せた
ノパ⊿゚)「……」
跳ねっけが強く、炎のような赤髪に、気合の入った鉢巻を締め
同じく赤いタンクトップと短いボトムを、女性特有のしなやかな筋肉に纏っている
一見、コスプレイヤーの類にも見えるが、拳のバンテージの巻き方は素人に容易く行えるものでは無かった
('A`)「……」
ノパ⊿゚)「押忍!!」
('A`)「押忍じゃねえ」
多少の変人である事は覚悟の上だったが、『ストリート・ファイター』にでも出てきそうな女だったのは想定外で
いつもの軽口も頭からすっぽ抜けてしまい、ごく普通の返ししか出来なかったのを悔いた
('A`)「あいや、失礼。コミコンの会場はここじゃねえぞ」
ノパ⊿゚)「ドク・オーツ!!!!!!!!」
見ず知らずの他人、それもあからさまに『格闘技やってます』とアピールしているような手合いに本名を呼ばれる
ドク個人にとって、それは面倒ごとの前触れであった。不快感を洗い流そうとモンエナで口内を満たすが、気に入らない味はより一層の増長を促した
ノパ⊿゚)「並びに、ショボン・バーデラス!!!!!!ニダー・コクソン!!!!!我らがボス『C』の名において、速やかな投降を求める!!!!!!!」
('A`)「知らねえカノジョに着いてっちゃいけねえってママに教わったんでな。そりゃ聞けねえよ。それに、ニダーは今し方散歩に出かけたばっかだぜ?」
ノパ⊿゚)「承知!!!!!!!我に下された指令はドク・オーツ!!!!!!!!お前の無力化だからだ!!!!!!!後の事は『ハイン・タカオカ』に任せてある!!!!!!心配無用!!!!!!!!」
('A`)「……仲間の名前、ベラベラ喋ってもいいんか?」
ノハ;゚⊿゚)「しまったあああああああああああああああああああッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!」
『なんでこんなアホを俺に寄越したんだろう』。ドクは自身が軽く見られているように思えて酷く心外であった
73
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:04:53 ID:9OubR0lk0
ノハ#゚⊿゚)「おのれェ!!!!格闘家にあるまじき卑劣な誘導尋問!!!!!恥を知れ!!!!!!」
('A`)「格闘家なんざ名乗った覚えはねえし、今のはアンタの自爆だろうが」
ノハ#゚⊿゚)「問答無用!!!!!!」
('A`)「最初から問答する気には見えなかったがなぁ」
彼女の顔は見る見るうちに髪と同じ色に染まっていく。煽り易い人間だった。それ故に、大した面白味も無い
『やぁ、困ったぞ』と旋毛を中指で掻きながら、ドクはこのけったいな女を送った組織について推理をする
正直な話、人海戦術に任せて多勢で攻められた方が此方としては厄介であった。そうしなかったのは、単純に『人数が少ない』から
『少数精鋭』とも言い換えられる。モーテルでの出来事にしろ、現状にしろ、これほど的確に居場所を特定出来るなら、それほど人手を割く必要もない
ノハ#゚⊿゚)「悪党はよく口の廻るモノ!!!!!!これ以上貴様のお喋りに付き合ってやる義理もなし!!!!!!!」
ダン、と一歩踏み締め、空手の構えを取る。コンクリートの床に僅かなヒビが走った
頭は賢くないようだが、自身の生い立ちを知って挑むだけの実力と自信はあるらしい
『少数精鋭』の線は濃くなった。ニダーを追う『ハイン・タカオカ』とやらも、何かしらの特技を持っているに違いない
('A`)「ちょっと待て」
ノハ#゚⊿゚)「命乞いか!?」
('A`)「ちげーよ」
ドクはポケットからスマホと財布を取り出し、助手席のドアを開いて投げ入れる
ついでに、飲みかけのモンエナをドリンクホルダーに納めた。ふと、運転席に目をやると、アイマスクから寝ぼけ眼が覗いていた
74
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:06:18 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「……異常か?」
('A`)「いんや、別に?」
(´・ω・`)「そうか」
短くそれだけ交わすと、ショボンは再び仮眠へと戻る。後部座席では、着替えを済ませたディが行儀良く座っていた
('A`)「少し待ってな。野暮用済ませたらアイスでも食いにいこうぜ」
(#゚;;-゚)「……」
相変わらず返事はなく、女のいる方とは逆の窓に目を向けて、代わり映えしない景色を眺めた
何事に対しても興味は薄いらしい。ドクは気まずそうに瞳を流すと、助手席のドアを軽く閉じた
ノハ#゚⊿゚)「その少女は何者だ!!!!?????ゆ、誘拐したのか!!!!!?????」
('A`)「悪いな。ガッコのセンセじゃねえもんで、なんでもかんでも教えてやれねえんだ」
ノハ#゚⊿゚)「っ……戯言をッ!!!!!!!」
『やはり』。頭は悪いが、彼女は有力な情報を与えてくれた
ディとビィについては認知されていない。追っているのは、ビコとゼアに絞られる
的確な探索能力も、恐らくあの二体を起因にしたものだろう
75
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:08:01 ID:9OubR0lk0
('A`)「とっとと済ませちまおうぜ。この後、デートの予定があるんだ」
ノハ#゚⊿゚)「フン!!!!!貴様のような醜男に、靡く女がいるものか!!!!!」
心無い言葉に、ようやくドクの神経がピキリと苛立つ
売り言葉に買い言葉と言ってしまえばそれまでだが、気の合う友人でもない初対面の女に容姿を貶されるのは、誰だって快いものではない
頭も悪ければ、礼儀すら知らない。『女性だから』という理由で手心を加える義理はたった今失くなった
('A`)「ハァー……聞いてるか聞いてないか知らねえけどよ、俺はアンタらのお仲間に『追ってくるなら容赦しねえ』って忠告してやったんだぜ?」
ノハ#゚⊿゚)「フン!!!!!!容赦しないのは此方のセリフだ!!!!!!大人しく身柄を引き渡せば痛い目に遭わず済んだものを!!!!!!」
('A`)「ハハ、恐いねえ。一度も拳を合わせてない相手に対して、根拠の無い自信を振りかざせる傲慢さがよ」
ノパ⊿゚)「……根拠が無いかどうか、試してみるか?」
意外にも、彼女の血の気は急激に引いていく。このまま激昂させようとしたが、オンオフの使い分けは出来るらしい
『少数精鋭』。人数の少なさをカバーし、更に凌駕するだけの実力を持った選ばれし部隊。只者ではないのは、肌感覚で伝わってくる
('A`)「……ああ、それも良いかもな」
76
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:09:18 ID:9OubR0lk0
車から離れ柱を背にすると、右腕を前、左腕を後、掌は握らず自然に開かせた
肩幅と踵を揃え、腰から背骨にかけては真っ直ぐ伸ばし、膝はやや曲げる
『空手』と同じく東洋の武術。世界最大の人口と歴史を誇る『チャイニー』発祥の――――
ノパ⊿゚)「『詠春拳』」
('A`)「……まぁ、それを元にしたオリジナルだけどな」
移民国家であるシタラバには、血と同じく多くの文化も流れ着く。『格闘技』もその中の一つであり
ドクの曾祖父が独自の解釈を加えて編み上げたのが『オーツ流格闘術』である
ノパ⊿゚)「……偉大な格闘家の血を引き継ぎながら、先祖代々築き上げた道場の幕を引いた男が」
ズリ、ズリと、互いに摺り足で距離を詰める
ノハ#゚⊿゚)「この期に及んでッ!!親兄弟より授かった技を使い続けるなどッ!!恥さらしも良いところだ!!」
('A`)「アンタの価値観なんざ知ったこっちゃねえしどうでもいい。聞く気もねえしすぐ忘れるからな」
ノハ#゚⊿゚)「……今だけは、『仕事』よりも優先しよう。貴様の師とッ!!『武』を学ぶ居場所を奪われた格闘家候補生達の無念を晴らすことをッ!!!!!」
('A`)「そりゃご立派で」
ノハ#゚⊿゚)「『ヒート・バニング』ッ!!参るッ!!!!!!!!!!!!」
77
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:10:57 ID:9OubR0lk0
拳の射程圏内に入るとすぐさま『ヒート』が仕掛ける。中段、正拳突き
('A`)「……」
真正面から受け止めるようなことはせず、大きく真横へ逃げる
鋭い『拳筋』がTシャツと、その下の薄皮を切り裂く。通り過ぎた拳骨は、鉄筋コンクリートの柱に小さなクレーターを作った
('A`)「ヒュゥッ!!やるじゃねえか!!」
ノハ#゚⊿゚)「フン!!今のはほんの小手調べに過ぎない!!上手く逃げたようだが、次の一撃で貴様は我が『鉄塊拳』によって地獄へ墜ちるのだからな!!!!!!」
('A`)「なるほど」
なんと口の軽い女だろうか。それも自信の裏付けなのだろう
『鉄塊拳』。気を練り上げ、人体に行き渡らせることで筋肉を『鉄』のように硬化させる武術。当然、格闘技の世界に身を置いていたドクもその名に聞き覚えはあった
しかし『気』などという曖昧なエネルギーを真に理解する者は少なく、実戦で使用するには莫大な歳月を要するとも聞く
才能もあるだろうが、やはり鍛錬によって積み重ねられた納得の一撃。ドクは素直に称賛を贈りたい気分だった
('A`)「いや、思わず避けちまうほどの迫力だったんでな。次は真面目に食らってやるよ」
ノハ#゚⊿゚)「……『傲慢』など、よくも嘯けたものだな!!貴様に似合いの言葉だ!!」
('A`)「さっきから待ってんだけどまだ打たないの?」
ノハ#゚⊿゚)「ッ……この一撃でッ!!!!!その減らず口ごと打ち砕いてくれるわッ!!!!!!!!!!」
再び、中段正拳突き。肋骨中央部に向かって真っすぐ進んでくる。宣言通り『真面目に食らえば』、ドクと言えど重傷は免れない
だが彼は誇り高い格闘漫画の主人公でもなければ、試合中のアスリートでもない。頭にあるのは無傷で、労力を使わず、最短で、この『無駄な時間』を終わらせる事だけ
78
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:11:19 ID:9OubR0lk0
('A`)「シッ!!」
ノハ;゚⊿゚)そ「!?」
右手で手首を掴み、力と速度に逆らわず身体を捻りつつ斜めに『流す』。ヒートの身体はズルリと引っ張られる形となった
引いた右腕の遠心力により、左肩は前に出る。伸びきった彼女の右肘に、自身の左肘を当て――――
('A`)「よっ」
ノハ; ⊿ )そ「うっ……!!!!!」
『押し出す』。ポコポコンと気の抜けた音に反して
ノハ; ⊿ )「あああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!!!!!!!」
『脱臼』により肘が逆方向に曲がったヒートは、悲痛な叫び声を上げた
79
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:12:28 ID:9OubR0lk0
('A`)「……オーツ流武術、『骨抜き』」
手首を放すと、外された橈骨の先端が、肉と皮膚を下から突き上げ隆起を形成していた
踏み込みによる体重移動を、小さな『支点』に集中させて間接を外すオーツ流のサブミッションである
:ノハ; ⊿ ):「なっ……ハッ、ヒィ、なっ……」
浅い呼吸を繰り返し、蹲って力の入らなくなった右腕を抑える彼女に、先ほどまでの威勢は全く見られない
『何故?』という言葉一つすらまともに話せないヒートに向かって、ドクは変わらない声色でネタばらしをした
('A`)「鉄塊拳。いや、見事な出来栄えだったよ。だがアンタ、『鉄』っつーもんを理解してねえ」
:ノハ; ⊿ ):「……?」
('A`)「案外な、脆いんだよ。硬ければ硬いほど、力を加えれば簡単に折れちまうほどにな。アンタ真面目そうだから多分、徹底的に『硬さ』を追求したんじゃねえのか?」
:ノハ; ⊿ ):「っ……うう……!!」
('A`)「鉄塊拳は『サムライ・ブレード』のように、硬い外の『皮金』と柔らかな内の『心金』が揃って初めて他に類を見ない攻撃と防御が可能になる。つまり、『良い加減』で硬さの鍛錬は止めとくべきだった」
:ノハ; ⊿ ):「うううううう……!!!!」
痛みか、それとも軽蔑していた相手に教えを説かれる悔しさからか。足下にはポツリポツリと水玉が出来上がる
ドクはヒートに近づくと、屈んで視線を合わせた。それは決して、スポーツマンシップに則った言葉を贈る為では無く
80
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:13:04 ID:9OubR0lk0
('A`)「よくもまぁ、その程度の腕前で『無念を晴らす』とイキれたもんだ」
ノハ; ⊿ )そ「ッ!!」
宣言通り、『怪我だけでは済ませない』為であった
81
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:14:21 ID:9OubR0lk0
('A`)「ご立派だよ。格闘家を代表して『恥さらし』の俺に目に物を見せてやろうした姿勢はな。相手の力量も計れず、根拠のねえ自信を抱いて、テメーの手の内をベラベラとくっちゃべりながら、それでも勝てると踏んだんだろう。尊敬するよ、その厚顔無恥な生き様に」
:ノハ; ⊿ ):「違っ……」
('A`)「いるんだよなたまに。俺のクソ家族と直接の関わりもねえ『誇り高きファイター』が、アンタと同じように『無念無念』と息巻きながら喧嘩売ってくんの。足りねえ頭じゃ、他所の家庭事情にズカズカと踏み込んでくるのはタブーだってわかんねえか?なぁ?」
:ノハ; ⊿ ):「……」
('A`)「逆に教えて欲しいんだがよ、やりてぇ事を否定され、親兄弟が決めた将来を強制させられたら、アンタらならどうする?黙って言いなりになるか?ならねえよな。人を殴る事しか能のねえ連中が、素直に聞き入れるわけねえもんな」
('A`)「俺は格闘家じゃなくて『学生』で、『冒険家』だ。世界で一番強くなりたいわけじゃねえし、熱いバトルとライバルとの友情も望んじゃいねえ。格闘術は手段の一つであって目標じゃねえ。お家を潰したのも、俺が俺のしたいようにする為に『仕方なく』やったに過ぎねえ」
('A`)「わざわざ説明すんのも面倒だから、二度と歯向かう気が起きねえくらい完膚なきまでに叩き潰すんだがよ。アンタしつこそうだし頭も悪いから懇切丁寧に教えてやるぜ」
ドクはヒートの髪を鷲掴みにし、無理やり顔を上げさせる
涙と鼻水でグチャグチャになった顔面に、唾でも吐きかけんばかりの侮蔑の表情を向けてこう言い放った
('A`)「喧嘩の一つもマトモに出来ねえ雑魚が、俺らに関わってくんじゃねえ」
:ノハ ;⊿;):「ッ……う、あああああああああああああ!!!!!!」
『格闘家』のプライドは、全て自らの強さに乗っかるものだ
彼らの心を折るには、『敗北』だけでは事足りない。そこに『言葉』を上乗せしなければ、更に強くなろうと研鑽するからだ
ヒートがもしも、対戦相手に敬意を払い、謙虚な精神を持っていたならば、言葉による効果も薄れただろう。だが
:ノハ ;⊿;):「あ、あ、ああああああああああああ!!!!!!」
傲慢な『心』で臨み、付け焼き刃の『技』に傲り、努力の方向性を違えた『体』で挑んだ彼女にとって
ドクの言葉は、脱臼の痛みを遥かに上回る『激痛』となって、プライドをズタズタに切り裂いた
82
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:15:55 ID:9OubR0lk0
('A`)「失せろコスプレガール」
投げ棄てるように髪を放すと、シャツの切れ具合を確かめながら車へと戻る。お気に入りではないが、もう着れそうには無かった
ドアを閉めると、ショボンはアイマスクを取ってエンジンを吹かす。長居すれば面倒になる
現に、ちらほらと野次馬は増えていた。警備員が駆けつけるのも時間の問題だろう
(´・ω・`)「相変わらずえげつねえな」
('A`)「安静にしてりゃ直に治る怪我だ。後遺症だって残らねえよ」
(´・ω・`)「モテねえワケだよ」
('A`)「やかましい」
スマホを手に取って簡単なメッセージをニダーへ送ると、窓辺に肘を突いて小さく蹲るヒートを眺めた
心を折った手応えはあった筈だが、意外にも此方へ向けてくる視線は怒りと怨嗟が込められている
だからと言って、特に深い感慨もない。ドクにとっては路端の石ころを蹴飛ばしたら、爪先に跳ね返ってきたようなものだからだ
冷めた表情を崩さぬまま、彼はマーケットから出た時と同じ言葉を呟いた
('A`)「異常なしっと」
『くわ』と欠伸をして、残ったモンエナを流し込み、しかめ面をした
分かり易い待ち伏せをしていた刺客より、不味い飲料の方が彼にとっては脅威であった
83
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:17:33 ID:9OubR0lk0
―――――
―――
―
車は好かない。乗っていなくとも、アレは尻から嗅ぐに堪えない『屁』をずっと放き続けているからだ
それにデカくて速くてすぐには止まれない。前に一度、喧嘩相手が車に衝突されて二度と動かなくなった
奴の迂闊さによる自業自得ではあるが、あの時ばかりは少々不憫に思えたものだ
(∪^ω^)「ヘッヘッヘッ」
<ヽ`∀´>「あっついニダね……」
当然、賢い私はそのような無様を晒すような真似はしないし
首輪とリードを着けられないとまともに外も歩けないような駄犬とも違う
ビュンビュンと通り過ぎる車を横目に、初めて通る街並みを優雅に散歩するなど造作も無い
( ∵)「ゴエエエエエエエ!!!!」
( ∴)「ゴエッエ!!!!」
テメーらは自分で歩けよ
(∪^ω^)「フスッ」
「やだー、何あの子かわいいー♪」
「よく出来た人形だなぁ」
「お兄さん、写真撮っていい?」
<ヽ;`∀´>「えっ、あっ、ごめんなさい!!」
と、ここで私の愛くるしさに魅了された見る目だけはあるクソ人間共が何人か話しかけてきたが
この不躾な男は慌てた様子で私達を抱き上げ走り出す。なんだお前私を独り占めする気か?
<ヽ;`∀´>「ヤバいヤバい堂々と歩いてたら大丈夫と思ってたけど絶対SNSに投稿される!!」
(∪#^ω^)「ヴルルルル……」
<ヽ;`∀´>そ「ちょっと我慢して!!」
84
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:18:18 ID:9OubR0lk0
人気のない路地裏に身を隠すと、ニダーと名乗る男は息を切らせながら腰を下ろした
車以上の乗り心地の悪さだった。不快感を振り払う為に身震いをする。毛が軽いな水責めも悪くない
<ヽ;`∀´>「ちょっと油断し過ぎニダね……ビコ、ゼア、鞄に入ってて貰えないニカ?」
(∵ )ミ「ゴエッ!!」プイッ
(∴ )ミ「ゴエッ!!」プイッ
<ヽ;`∀´>「嫌そう……」
(∪^ω^)「フヌッ……」
私はウンコをした
( ∵)「エンガチョ」
( ∴)「センエンガチョ」
なんだその鳴き声
85
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:19:30 ID:9OubR0lk0
(∪^ω^)「わんお」
砂は無いが、一応脚で地面を掻き上げて『儀式』を済ます
ウンコが原因で人間に追われる事もあるのだ。したら、隠す。これが出来る名犬の嗜みだ
<ヽ;`∀´>「よいしょっ……すげーするじゃんキミ」
なんでこの男は私のウンコを袋に入れたのだろうか。後で食べるのだろうか
私はとんでもない変態共を下僕にしてしまったようだ。これは教育の必要があるな
( ∵)「ゴエッ!!」
( ∴)「ゴエゴエ!!」
(∪^ω^)「?」
なんだ急に?空なんて見上げて。フライドチキンでも降ってくるわけじゃあるまいし……
「いっただきぃ!!」
<ヽ;`∀´>そ「えっ!?」
雌の声と共に、砂埃が巻き上がる。目が痛い!!!!!
前脚で必死に拭って彼らに向き直ると、先程までいた場所から忽然と消えていた
<ヽ;`∀´>「な、ななななな……」
「フフ、フハハハハ!!何者かと問われれば、答えぬワケにはいくまいな!!」
人間の『毛皮』に疎い私でも、この騒々しい街中に似合わないとわかる格好をした頭の可笑しそうな女は
手に持つ『友人』を高々と掲げて、呆気に取られる私と下僕に向かってこう吠えた
86
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:20:28 ID:9OubR0lk0
「闇に生き、闇に溶け、闇を愛する暗黒のアサシン!!ジパング産まれシタラバ育ちの俺の名を、とくと心に刻み込め!!!!!」
从 ゚∀从「我こそはニンジャ、『ハイン・タカオカ』!!!!!明日の平和を守る為、この超常保護対象は頂戴致す!!!!!!」ドッカァァァン!!!!!!!!!!
<ヽ;`∀´>「……」
(∪^ω^)「……」
変態のお手本みたいな奴が出た
87
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:21:56 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「いや、あの……今、お昼過ぎニダ」
从 ゚∀从「そうだな!!!!!」
<ヽ;`∀´>「ごめん思った以上に混乱してる今の無し。ご用件は?」
从 ゚∀从「用件ならたった今済んだ所だ!!!!呆気なかったがな!!!!ノコノコとお散歩なんてしてるからだヴァーーーーーーーーーーーーーーーカ!!!!!!!!!!!!」
<ヽ;`∀´>「どうしようビィ、返す言葉がない」
知らんがな
从 ゚∀从「我々にとって一番の脅威である『ドク・オーツ』と目標が分断されたのは幸運だった!!と言っても、今頃『12シスターズ』屈指の燃えて萌える格闘ガール『ヒート・バニング』にコテンパンにされているだろうがな!!!!」
<ヽ`∀´>「えっ?もしかして、ドク相手に刺客送った?」
从 ゚∀从「その通りさ!!!!ざまぁみろヴァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーカ!!!!!!!!!」
<ヽ;`∀´>「今すぐ呼び戻した方が良いニダ!!」
从 ゚∀从「世迷い言をほざくくらいならお友達の心配した方が良いぜ!!」
<ヽ;`∀´>「ドクを喧嘩が出来るだけのブサイクだと思ってるならお門違いニダ!!あいつの一番ヤバい所は顔m……二度と立ち上がれないくらい心をバキ折る口の悪さニダ!!」
(∪^ω^)「……」
確かに奴は犬の私からしてみても可哀想なくらい醜いが、仮にも友人の事をすげー罵るじゃんこいつ
从 ゚∀从「そっか!!!!あの子『奴には格闘家としてわからせないといけない』ってメスガキに舐められる竿役おじさんみたいな事言ってたけど逆に……」
从;゚∀从そ「み……操の危機!!!!!!?????」
<ヽ;`∀´>「そこまでクズじゃないニダ!!」
喋ってねえで早くあいつら取り戻せよ
88
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:23:13 ID:9OubR0lk0
从;゚∀从そ「ハッ!?そもそもあの子が勝てば何の問題もない話じゃんか!!危うく薄い本展開に発展してしまう所だ!!」
<ヽ;`∀´>「ねぇキミさっきから何の話してんの!?ジパングの呪文!?」
从;゚∀从「ちょ、ちょっと待ってろ!!電話して確認するから!!」
<ヽ;`∀´>「え、あの、その子たち返して……」
( ∵)「……」
( ∴)「……」
何を顎杖着いてんだあいつら余裕か?
<ヽ;`∀´>「ど、どうしようか……?」
(∪^ω^)「ウルン」
私に訊くなよ
89
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:23:46 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「と、とにかく、こっちからも連絡を……」
下僕はポケットから『スマホ』と呼ばれる板を取り出すと、一目見て瞼を閉じた
<ヽ;´∀`>「遅かった〜〜〜〜〜……」
(∪^ω^)「わんお」
どうやら危惧していた事態は既に終わっていたらしい。ブサイクにボコボコに打ち負かされて言い負かされるのってどんな気持ちなのだろう
从;゚∀从「ひ、ヒーちゃん!?ねえ大丈夫!?酷い事されてない!?え!?脱臼!!!!?????」
<ヽ;´∀`>「わぁ……」
(∪^ω^)「ウォウ?」
<ヽ;´∀`>「すげー痛い怪我ニダ」
(∪^ω^)「フスッ」
多分まともな方法で『つがい』は見つからないんだろうなあの男
90
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:25:27 ID:9OubR0lk0
从;゚∀从「うん……うん……わかった。こっちは上手くやるから」
向こうの話も終わったらしい。さっきまでのやかましさは何処へ行ったのだろうか
そんなに酷い目に遭わされたのだろうか。顔も酷ければやる事も酷いとは。やはり人間はクソ
从;゚∀从「……」
<ヽ;´∀`>「その……お気の毒に……」
从;゚∀从「いや……此方こそ失礼があったみたいで……」
(∪^ω^)「……」
何だこの時間
从;゚∀从「申し訳ないんだけど急いで戻らないと……ごめんね!!今度埋め合わせするから!!」
<ヽ;`∀´>「う、うん!!気にしないで!!此方こそご迷惑かけてごめんニダ!!」
从;゚∀从「じゃっ!!」ビャッ!!
<ヽ;`∀´>「その方に謝っといてー……って」
<ヽ#`∀´>「ビコとゼアは置いてくニダァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」ダッ!!!!!!!
<チクショウこのままビャッと逃げられると思ったのによォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!
(∪^ω^)「……」
なるほど、これが『茶番』か。私はまた一つ賢くなった
91
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:26:07 ID:9OubR0lk0
(∪^ω^)「グゥ」
人間どもはあっという間に走り去り、見えなくなる。どんくさい男だと思っていたが、存外足が速い
さて、私はどうするか。正直な話、義理は果たした。これ以上彼らの面倒を見ずとも責められはしまい
(∪^ω^)「……」
反対側へと歩き出そうとしたが、何故だか前足は進まない
私ともあろう犬が、情に絆されたか?フン、まさか。ただもう少し―――――
(∪^ω^)「わんわんお!!!!!」
もう少しだけ付き合ってやった方が、『面白そうだ』と思っただけさ!!!!!!
92
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:28:36 ID:9OubR0lk0
―――――
―――
―
https://res.cloudinary.com/boonnovel2020/image/upload/v1588208777/47_rxablb.jpg
<ヽ;`∀´>「ごめんなさいごめんなさい!!通して!!」
お気に入りの革靴は、全力疾走に向いていない。ニダーは『ハイン・タカオカ』たる女性を見失わないので精いっぱいだった
言い訳をしても仕方が無いのは重々承知だが、せめていつもの『シューズ』に履き替えておくべきだったと後悔する
ギャンブルで稼いだ金を回収するブランド店が立ち並ぶショップ街を、『忍衣装』の女は場違いな恰好も気にせず駆けていた
从 ゚∀从「案外しつこいアンちゃんだねぇ……ついて来れるもんならッ!!」
<ヽ;`∀´>そ「赤信号っ……!!」
歩道の信号が『赤』に代わり、値段と燃費がバカ高い高級車が環境に悪臭を吐いて左右から発進する
从 ゚∀从「追いついてみなァッ!!」
『勝手に赤になった信号が悪い』とでも言わんばかりに、遠慮なく横断歩道を通り抜ける
クラクションと怒号が鳴り響き、急ブレーキを踏んだ車が新たな障害物となって立ち塞がった
<ヽ;`∀´>「ったく!!」
ニダーは速度を落とさず、車のボンネットに手を突き飛び越える
目を丸くさせる運転手と目が合うが、一言謝罪する間も無く対向車が迫る
<ヽ;`∀´>そ「うわわっ!!」
着地と同時に強く踏み込み、大きく跳躍。踵がバンパーに掠ったが、歩道へと無事に辿り着く
その代償として、慌ててハンドルを切った車が消化栓に衝突し、破損部から激しく水が噴き出した
<ヽ;`∀´>「ま、待てーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
誰もが目を引く派手な事故だったが、『盗難』を大義名分にニダーはその場から更に早く走り去ったのであった
93
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:29:54 ID:9OubR0lk0
从 ゚∀从「やるぅ!!そんじゃあお次は……!!」
街灯のポールに飛びつき、スルスルと上る。頂上に辿り着くと、建物の屋根に飛び移った
<ヽ;`∀´>「猿じゃあるまいし……!!」
从 ゚∀从「じゃーなー!!!!!!」
<ヽ;`∀´>「クソッ!!」
『ニンジャ』の恰好と名は伊達ではないらしい。多少のロスになるが、テラスのあるカフェテリアのタープを使って後を追おうとして
<ヽ;`∀´>「ッ!?」
ピタリと立ち止まった。彼女が登った街灯の根元に、見覚えのある色が転がっていたからだ
( ∵)「……」
( ∴)「……」
<ヽ;`∀´>「えっ……?」
( ∵)「アホゴエ」
( ∴)「アホ」
<ヽ;`∀´>「……」
落としてた
<ヽ;`∀´>「アホで助かった!!!!!」
<あああああああああああああああああああああああああああああああ落としちまったああああああ!!!!!!」
<ヽ;`∀´>そ「ほら早く逃げるニダよ!!」
立場は一瞬にして入れ替わった。ビコとゼアを胸ポケットにねじ込んで、今度は逃げる為に走り始めた
94
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:31:17 ID:9OubR0lk0
从#゚∀从「この野郎!!人の物を取ったら泥棒なんだぞ!!」
<ヽ;`∀´>「どの口が言うニダ!!」
盗人猛々しいセリフに言い返すついでに、ニダーは振り返って距離を確認した
間隔は十メートル強。足の速さは向こうが若干勝る。その上身軽で臆さないと来た
<ヽ;`∀´>「捕まるのはっ……時間の問題ニダね」
ただ道を突っ走るだけではいずれ距離を詰められるだろう。完全に撒くためには『立体的』な逃走経路が求められる
土地勘が無い場所では出たとこ勝負でやるしかない。幸いにも、目星は間近に迫っていた
改修工事中であろう四階建てビル。『組立足場』が張り巡らされたそこはニダーにとっては得意なステージだった
<ヽ;`∀´>「失礼します!!」
コーヒーとタバコで休憩中の作業員に謝りを入れ、鉄パイプに手と足を掛け外側を這い上る
瞬く間に三階まで到達すると、両足から骨組の隙間に身体を滑り込ませ内側へと侵入し、開け放しの窓からビルの中へと入った
从#゚∀从「待てオラ!!」
<ヽ;`∀´>そ「うわぁやっぱ速い!?」
中はレストランのリフォーム中なのだろう。若干のシンナー臭と、壁の保護の為にビニールが貼られている
バーカウンターを飛び越し、奥にある観音開きのドアを体当たり気味に開く。ここはまだ手がつけられていないのか、油と食材の臭いが染みついたままだった
从#゚∀从「食らえ!!」
<ヽ;`∀´>そ「ッ!?」
咄嗟にコールドテーブルに身を隠すと、頭上を特徴的な『星形』が通り過ぎる
三つほど飛翔したそれは、壁に刺さってキンと甲高く空気を震わせる
<ヽ;`∀´>「手裏剣!?殺す気ニカ!?」
从#゚∀从「死にゃしねえよ!!ただちょっと毒で身体の自由が利かなくなるだけだ!!」
<ヽ;`∀´>そ「どっちにしろタチ悪い!!」
从#゚∀从「とか言ってる間に確保ーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
95
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:32:55 ID:9OubR0lk0
当たりはしなかったが、結果的に足は止めてしまった。追い付いたハインの手にはいつの間にか鉤爪が装着されている
『死にはしない』と言った割には全力で殺しにきている。身の危険を更に感じたニダーは、タイミングを合わせ
<ヽ#`∀´>「させるかァッ!!」
从;゚∀从そ「あ痛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーだぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!???????」
コールドテーブルのドアを勢いよく開け、脛にぶち当てた
<ヽ#`∀´>「ヴァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーカ!!!!!!!!!!!!!」
从; ∀从「ぐおお……俺の台詞だぞ!!!!!!」
従業員用の厨房出入口へ駆け込み、階段を駆け上る。ハインも追ってきているが、脚のダメージからかやや引きずっている
一気に最上階まで駆け上がり、屋上に続く扉を開ける。乾いた風がシャツの内側に入り込み、汗ばむ身体を冷やした
<ヽ;`∀´>「よし、よし!!」
隣の建物とは三メートルほどの間隔が置かれている。ただし高低差は五メートル。人が一息に飛び越えられる高さではない
外階段やバルコニーはなく、排水パイプと幾つかの小さな窓が等間隔ではめ込まれているだけの、ほぼ断崖絶壁に近い壁が反り立っている
96
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:33:19 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「おおおおおおおおっしゃあああああああああああ!!!!!!」
助走を付け、一片たりとも躊躇せずビルの縁から跳躍
<ヽ;`∀´>「っとォ!!」
窓辺を両手で掴み、両足で壁を踏みつけブレーキを掛ける
<ヽ;`∀´>「フッ!!」
今度は右側にあるパイプに飛び移り、抱き着くようにしっかりと掴む。すると
从#゚∀从「逃がさねえぞダボがァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」
<ヽ;`∀´>そ「うわあああああああああああああああああああああああ!!!!!!??????」
跳躍し、鉤爪を振り上げるハインがすぐ背後まで迫っていた
97
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:35:00 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「いっよいしょぉ!!!!!!!!」
パイプから更に右側の窓枠へと跳び移り、ギリギリの所で回避。繰り出された鉤爪はビルの壁に深々と刺さる
<ヽ;`∀´>「殺す気ニカ!?」
从#゚∀从「乙女だから勢い余る事もあるんだよ!!!!」
<ヽ;`∀´>「それで殺されちゃ堪ったもんじゃねえニダ!!!!!!!」
从#゚∀从そ「あっやべえ抜けねぇ!!ちょっと待ってろ!!」
<ヽ;`∀´>「誰が待つかヴァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーカ!!!!!!!!!!」
从#゚∀从「ムカつく〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!」
千載一遇のチャンスだったが、パイプを伝って階下に降りるプランは潰された
再び工事中のビルへと戻るのも手だが、騒ぎを起こした後だ。作業員に捕まる可能性もある
結果、ニダーは窓を伝ってこのビルの屋上に上がることを選択。斜め上の窓辺へと跳躍し、右、左とジグザグに上がる
从;゚∀从「クソッ、聞いてた通り『パルクール』じゃ名の馳せたユーチューバーだってのは嘘じゃねえみてえだな!!」
<ヽ;`∀´>そ「わぁ黒歴史!!!!!人の事情どこまで把握してるニカ!?」
かつてのハイスクール時代の思い出が蘇り、ニダーは表情を渋くさせる
ハイスクール時代にイキって危険な場所や立ち入り区域で撮影を行い、匿名で動画を投稿していたのだ
結局、特徴的な口調から身元がバレてしまい、親や教師にボロクソに叱られあわや退学寸前まで追い込まれたのは今でも苦い思い出だ
<ヽ;`∀´>「昔の趣味が……こんな形で役立つと……はっ!!」
屋上の縁を掴み、上半身を乗せて転がるように登りきる。階下を確認すると
从#゚∀从「うおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!忍術、壁登り!!!!!!!!!!!!」
鉤爪を壁に突き刺しながら、気合と根性、そして力業でハインが迫ってきていた
98
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:36:07 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「怖ぇよもう!!」
休む間もなく立ち上がり、階段室の扉へと向かうが
<ヽ;`∀´>「Fack!!!!」
内側から鍵が掛けられているのか、ドアノブは硬く回らなかった
( ∵)「ゴエ!!」
( ∴)「ゴエエ!!」
<ヽ;`∀´>「何!?」
パニックになりかけたニダーの胸を、小さな生き物はポンポンと叩く
二体は同時に、同じ方角へと腕を指し伸ばしていた。ハインが上る壁とは、反対側の位置
<ヽ;`∀´>「っ……この際何でも!!」
神にも縋る気持ちで走り寄り、下を覗く。そして
<ヽ;`∀´>「は……はは」
乾いた笑いが漏れ出した
从#゚∀从「オラァ甘寧一番乗りィ!!」
苛立ちで疲労をかき消しながら、登りきったハインへとゆっくりと振り返る
呼吸を整えながら、即席で『台本』を考える。安っぽくても構わない。目の前の女を『慌てさせれば』良いだけだ
99
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:37:11 ID:9OubR0lk0
从#゚∀从「なんだァ?もう観念したのかよ?」
<ヽ`∀´>「別に。ただ、飽きちゃっただけニダ」
从#゚∀从「そーかいそーかい。だったらサッサとそいつを寄越しな」
<ヽ`∀´>「フゥ……」
胸ポケットから、ビコーズとゼアフォーを抜き取る。二体はしっかりと手を繋ぎ合い、ニダーに向かって『頷いた』
この『お膳立て』を予想していたかのような素振りに、抜け目のない奴らだと鼻で笑い―――
<ヽ`∀´>「取りに行けよ」
从;゚∀从そ「なっ……お前!!」
空き缶でも投げ捨てるかのように、階下へと放り投げた
从;゚∀从「馬鹿野郎ォォォーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!」
地上まで凡そ二十メートル。人ですら落ちればタダでは済まない高さだ
彼女の脳裏には地面と激突し、破裂した二体のイメージが鮮明に浮かび上がっているに違いない
現に、彼女はニダーに脇目も振らず、全力疾走で屋上から飛び出した。が
<ヽ#`∀´>「フンッ!!」
从;゚∀从そ「おわっ!?」
足首を掴まれ、決死のヘッドダイビングは空中で止まる。そして――――
从; ∀从・'.。゜「ガビラッ!?」
振り子運動の要領で、顔面から壁に激突。逆さまの状態で気を失った
100
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:38:27 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「重っ……ぐぬぬぬ!!」
勿論、このまま頭から落ちれば命は無い。引き上げるのに、この日一番の気合と体力を使った
<ヽ;`∀´>「ふぅ……恨むなよ。勝手に飛び込んだのはアンタの方ニダ」
クタリと力の抜けた彼女を、エアコンの室外機にもたれ掛からせる
すると、忍装束の懐から覗いていたスマホがポップな着信音と共に震え始めた
画面には『トソン・バートン』の名前と、顔写真が表示されている。ドクが気絶させた女の顔と一致していた
<ヽ`∀´>「……」
まさか追手がここまで愉快な連中だとは思っていなかったが、苦戦は強いられた
それに、ハインは属するであろう組織を『12シスターズ』と名乗っていた。単純にこれがメンバーの数だとしたら
<ヽ`∀´>「残り七人……?」
『道行く先々でこのように面白い格好した危ない女に襲われるのか』。暑さの所為では断じて無い、ささやかな頭痛に襲われた
<わんわんお!!
<ヽ`∀´>「おっと」
『立役者』の鳴き声に呼ばれ、ニダーは階下を覗き込む
(∪^ω^)「わんわんお!!」
( ∵)「ゴエエエエエエエエエエエエ!!!!!」
( ∴)「ゴエエエエエエエエエエエ!!!!!」
<ヽ`∀´>「ハハ……ナイスキャッチ」
101
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:39:31 ID:9OubR0lk0
地上で『ビィ』が待機していたのには驚いたが、元より賢い犬だ。臭いか騒ぎを追って来たのだろう
ビコとゼアが彼の存在を知らせた時、そして彼を見た時、この即席の策を思いついた
二体は互いに、空中で離れないように手を繋ぎ合う。落下時にはスカイダイビングのように両手を繋ぎ合わせ、全身を広げて空気抵抗を受けながら落下
ビィは落下位置を予測しながら移動し、背中をクッションにして受け止める。
衝撃によるダメージが気になったが、両者共に元気な鳴き声を上げているのを見るに、懸念で済んだようだ
<ヽ`∀´>「あ」
ビィの傍らには、追い、逃げるのに必死でいつの間にか手放していたニダーのバッグが鎮座している
手厚いアフターサービスに、思わず敬服の念を抱く。なんてしっかりした犬だ。ルームメイトにも見習って欲しい。と
(∪#^ω^)「わんお!!!!!!!!!」
<ヽ;`∀´>「わ、わかったわかった!!すぐ降りるニダ!!」
もはや犬にすら頭の上がらない自身の情けなさに辟易しながら、降りる手段を探す
<ヽ;`∀´>「あ」
すると、屋上の端に外付けの螺旋階段があるのに気づく。危険を冒さずとも、まだ逃げられたのだ
機転を利かせて上手く撃退出来たとは言え、焦りから周りが見えていなかった事を反省した
<ヽ;`∀´>「うーん……ま、結果オーライニダね」
今だ流れ続ける着信音を背に、『早く降りろ』といきり立つ彼らの下へと足早に向かう
ビルの間を飛び越えずとも、安全に地上へ降りれる『階段』の恩恵を、しっかりと足下に感じながら――――
102
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:40:56 ID:9OubR0lk0
―――――
―――
―
<ヽ;`∀´>「気づいてたんなら忠告くらいしろニダ!!」
('A`)「わり。アイス食えよ」
迎えに来たバンの扉を開き、怒りを込めた第一声に、ドクはチョコチップとラムレーズンのダブルアイスで返答した
傍らにはうっすらと血が染みついたTシャツがビニール袋に詰め込まれているが、青痣や切り傷と言った目立った怪我は見当たらない
安堵するよりも先に、ニダーはストロベリー・アイスを舐める少女に目を向けた。他者の傷を吸い取り、自らの物にする不思議な力を持つディに
<ヽ;`∀´>「お前ッ!!」
('A`)「ちゃんと断った。擦り傷みてーなもんだすぐ治るってな」
<ヽ;`∀´>「っ……悪い。治して貰った僕が言えた立場じゃないニダ」
('A`)「気にし過ぎだ。アイス食えよ。お前らはこっちな」
非人間用に用意していたカップアイスを、それぞれに差し出す
ベチャベチャと品のない音を立てながら貪り食うのを見て、ようやくニダーも冷たい甘みを舌に乗せた
(´・ω・`)「相手は?」
<ヽ`∀´>「ハイン・タカオカって名前の女ニンジャだったニダ」
(´・ω・`)「『クノイチ』か。一度オプションで頼んだことあるわ」
<ヽ;`∀´>「何のオプションかは説明しなくていい。そっちは?」
('A`)「ああ、格闘家を名乗るただのオタクだった」
(´・ω・`)「ただのオタクはコンクリ粉砕しない」
<ヽ;`∀´>「やっぱボロクソにしたニダね……」
103
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:42:41 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「そんで、収穫はあったか?」
シェイクを片手にハンドルを切るショボンに、ニダーは肩をすかせて応える
<ヽ`∀´>「『12シスターズ』。そう名乗ってたニダ」
('A`)「まだ七人残ってんのかよ。もう次は折るぞ」
<ヽ;`∀´>「折んな。そっちは?」
('A`)「憶測に過ぎんが、少数精鋭なんじゃねえかと。それと、やっぱ狙いはビコとゼアだな。ディについては把握してなかった」
('A`)「あー、後、俺の家庭事情とかも掴んでたな。それでイラついてパキョっとやっちまったんだが」
<ヽ;`∀´>「相手さんドン引きしてたニダよ?にしても、昨日の今日でこうも的確に居場所を特定されるのは厄介ニダね。GPSニカ?」
(´・ω・`)「いんや、車を軽く調べてみたがその手のもんは見つからなかった。ドクとも話し合ったんだがよ、これだけ正確ならそんなもんに頼るまでもない探索手段を持ってんのかもしれねえってな」
('A`)「それかもしくは、『こいつらの腹の中』にそれらしき機器が埋め込まれてる、とかな」
( ∵)「ネェエエエエエ!!!!」
( ∴)「ネェエエエエエ!!!!!」
('A`)「ねえってよ」
(´・ω・`)「バケモノ同士意思疎通出来んのか。すげえな、顔が」
('A`)「脱臼ってどんくらい痛いか試すか?」
(´・ω・`)「ま、とにかくコソコソしたってしょうがねえってこったよ」
大きな通りに出ると、アクセルを踏み込む。行き先の案内標識には、『ブンゲー』と記載されていた
ホテルやカジノ場は瞬く間に後ろへと流れていく。元より、一介の学生である彼らには縁の無い場所だ。長居はしていられない
(´^ω^`)「顔上げて胸張って堂々と進もうぜ!!それが奴らにとって一番の煽りにならぁ!!」
『ドクもドクだが、こいつも大概性格がクソだな』。指摘しようか迷ったが、冷えた舌を回すのが煩わしかったので、心の内に留めておいた―――――
104
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:43:56 ID:9OubR0lk0
―――――
―――
―
从;'ー'从「はわわ〜、酷い怪我ですぅ〜!!」
新緑色の修道服を着た女の鼻にかかった甘い声に、レモナは小さく舌打ちをした
それを窘めるように、トソンは脇腹を肘で突く。ファンデーションで隠されているが、疲れの色は『目の下』に浮かんでいた
(゚、゚;トソン「たった数人に……などと言えた立場ではありませんが、まさかここまで手酷くしてやられるとは想定外ですね」
从;⁻∀从「面目ねえよ……だけど、あいつら結構『慣れてる連中』だった。ちょっと痛い目見てもらおうとしたらこのザマさ」
|゚ノ ^∀^)「重症なのは、アンタよりヒートの方ね……」
ノハ ⊿ )「……」
自由の利かない右手を抱えながら、一言も話さず俯いたまま動かずにいる
修道女は心配そうにのぞき込むと、掌を合わせて擦り合わせる。すると、摩擦部から徐々に光が溢れ出す
从;'ー'从「はい、これ見て〜」
掌を開くと、光は『球体』となってぼんやりと浮かんでいる。ヒートがそれに目を向けると、酩酊したかのように気が抜けた表情になった
サダコと同じく超能力を持つ彼女は、この球体による『催眠術』を得手としている。ただし人を意のままに操るなどと言った便利なものではなく
意識を朧気にして痛みを感じなくさせる、所謂『麻酔』の効果に限られている
从;'ー'从「入れるよ〜?せぇ〜のぉ〜!!」
間延びした声とは裏腹に、外された手首と肘の間接を一息に繋ぎ治してしまう
彼女の真骨頂は催眠能力ではなく、この類稀なる『治療技術』であった
105
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:45:27 ID:9OubR0lk0
|゚ノ ^∀^)「それでー……女の子と、犬を連れていたって話だけど」
从;゚∀从「ああ、ヒーちゃんは車内に女の子を。俺はニダーって野郎が犬と一緒に歩いてるのを見てる。オメーらからの報告には無かったが、どういう事だ?」
|゚ノ ^∀^)「ウチらもモーテルの室内に上がり込んだワケじゃないからねー。サダコの予知夢にも現れてないみたいだし」
(゚、゚トソン「その点に関しましては、既に調査依頼を出しました。そもそも、サダコは病的なまでの『異形フェチ』。見た目が普通の女の子や犬ならば、歯牙にもかけないでしょう」
从 ゚∀从「当のサっちんはどこにいんだよ?」
|゚ノ ^∀^)「趣味の悪い店でお買い物よ。調査結果は?」
(゚、゚トソン「『ソウサク』にて、警察が女の子と犬をいっしょくたに載せたビラを配布していたそうです。ハイン、此方に見覚えは」
タブレット端末を受け取ったハインは、一目見て力強く頷く
从 ゚∀从「この子だ。アホそうに見えて意外とクレバーな犬だった」
|゚ノ ^∀^)「女の子の方は?」
从 ゚∀从「そっちは直接見ちゃいねえからな……ただ、ヒーちゃんが言うには『目立つ傷跡があった』って話だ」
|゚ノ ^∀^)「傷跡、ねぇ……」
【 (,,゚-゚) 】
ビラに写る少女は、不愛想ではあるがヒートが証言した『目立つ傷跡があった』という特徴とは一致しない
もしも件の三人組が、女の子を誘拐して『傷物』にするような連中であるならば、猶更確保を急がねばならないだろう
しかし、レモナの焦燥とは相反して、彼女たちのリーダーは『別の懸念』に注視していた
(゚、゚トソン「これらの犬は事故を起こした保健所の輸送車から脱走したものらしいのですが、不思議な事に『作業員』は全治半年の重傷を負ったにも関わらず、負傷、もしくは死亡した犬は一匹も見当たらなかったそうです」
从;゚∀从「お、おお……そりゃ喜ばしいけどよ、野良犬だろ?足引きずって逃げたとかじゃねえの?」
(゚、゚トソン「かもしれませんね。所で、ニュースは御覧になりましたか?まだでしたら此方を」
ニュースサイトから事故現場の写真を拡大し、二人の前に差し出す
横転した輸送車が左車線を塞ぎ、長い渋滞を作り出す原因となっている。あわや炎上一歩手前といった悲惨さだ
106
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:46:33 ID:9OubR0lk0
从;゚∀从「お、おお……結構な、アレだな」
(゚、゚トソン「他に思う所は?」
从;゚∀从「え?うーん……」
|゚ノ ^∀^)「左車線」
(゚、゚トソン「ご明察」
答えを聞いてもいまいちピンと来ないハインに『やれやれ』とため息を吐きながら、レモナは説明を始める
|゚ノ ^∀^)「いい?もし対向車が車線を外れて突っ込んできたら、どっちにハンドルを切る?」
从 ゚∀从「そりゃー……右だな」
|゚ノ ^∀^)「そう。歩道があろうとも、反射的に『逆側』にハンドルを切るものなのよ。危機回避の為にね」
从 ゚∀从「でもよ、それなら歩道からの飛び出しもあり得るだろ?」
(゚、゚トソン「ええ、可能性としてはありますでしょう。ただ、ハンドルを『左に切らざるを得ない状況』がもう一つあるんです」
从 ゚∀从「え?わかんない」
|゚ノ;^∀^)「アンタ本当に考えてる?」
从;゚∀从「頭使うのはオメーらの仕事だろォ!?早く教えろよ!!」
(゚、゚トソン「背後からの、襲撃です」
107
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:47:18 ID:9OubR0lk0
(゚、゚トソン「前部座席の間から運転手へと襲い掛かった場合、身体は必ず逆方向へ逃げようとします。その弾みにハンドルを切ったとしてもなんら可笑しな話ではありません」
从;゚∀从「つまり……?」
(゚、゚トソン「車内にいた誰か、もしくは『何か』に襲われた結果、事故に繋がった可能性もあると言う事です」
単なる不注意、あるいは『檻のロックの締め忘れ』で片づけられる事故ではあるが
三人組が捜索中の『犬』を引き連れている事実は、単なる偶然で起こったものでは無いとトソンは確信していた
|゚ノ ^∀^)「ウチらが負う超常保護対象と関りがある存在かもね」
(゚、゚トソン「ええ。捜索願が出されているにも関わらず、警察に届け出ない点も不審です。何にせよ、彼らの目的が達成される前に確保せねばなりません」
从;゚∀从「じゃあこんなとこで油売ってる場合じゃねえだろ!!」
(゚、゚トソン「当然、ちゃんと手は打ってあります。元より、サダコの予知夢で彼らの通過点は既に確認済み」
と、ここでタブレットにメッセージ着信の通知タブが浮かぶ
残りの『12シスターズ』メンバーが、配置に着いたという報告であった
(゚、゚トソン「執拗な追跡と予測不可能の襲撃。疲弊した所で美味しく掻っ攫う……」
手ごたえのある相手に、彼女のもう一つの側面が顔を覗かせる
(^、^トソン「これ則ち、『狩りの基本』ですよ。ハイン」
細く、緩やかな曲線を描いた瞼の奥の瞳は、真夏の太陽すら凍てつかせるような輝きを放つ
ハインは生唾をゴクリと飲み込んだが、付き合いの長いレモナはもう一度溜息を吐いた
|゚ノ ^∀^)「大人しく従っとけば、恐い目に遭わずに済んだものを……」
獲物の三人組に、ほんの僅かな同情を抱きながら――――
108
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:50:09 ID:9OubR0lk0
―――――
―――
―
('A`)「作戦変更?」
(´・ω・`)「ああ」
ブンマルを出発してから丸一日が経過。ブンゲーまで残り数十キロ地点のガスステーションにて
ショボンはカフェテリアで購入した朝食のミラノサンドを齧りながら、傍らのドクへと提案した
(´・ω・`)「俺らは『追われてる』立場。だからこそ急いでセブンクロスに向かわなきゃならない。これが当初の予定だったな」
('A`)「まぁ……そうだな」
(´・ω・`)「逆にだぞ?もう先に潰しちまえば後はゆっくり向かってもいいんじゃねえかって思ったんだよ」
('A`)「エンカウントしてからバタバタするより、常に迎撃する心持で居るって事か?」
(´・ω・`)「間違いじゃねえが、もっと具体的な方法だ。『あえて待つ』んだよ」
ドクは顎を擦りながら、ウウムと唸って首を傾げる。攻めに転ずる姿勢は嫌いではないが、ブンマルでは『待ち構えられていた』
この作戦はむしろ彼方が取っている作戦であり、その為の舞台を追われている側の自分たちが用意するのは難しいのではないかと
('A`)「アテはあるのか?」
(´・ω・`)「実家」
('A`)「実家……あー……あ?」
(´・ω・`)「実はもう連絡もしてある」
(;'A`)「いやっ……ちょ、許可取れたのか?」
(´・ω・`)「おいおい誰の親父だと思ってんだ?」
109
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:50:29 ID:9OubR0lk0
_人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人_
> (´^ω^`)「頭可笑しいから二つ返事に決まっとるやろがーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!!!!!!!!」 <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
(;'A`)「お前の家系どうなってんの?」
110
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:52:57 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「知っての通り、俺ん家はシタラバでも有数の牧場主。それだけに意味わからん組織も手を出しづらい……」
(´^ω^`)「……んじゃないかな!!知らんけど!!」
(;'A`)「オイオイ……」
(´・ω・`)「いや別に根拠が無いわけじゃねえよ。実際、あいつらは俺らの身元を調べておきながら『家族を人質』にする方法は今の所取っていない」
('A`)「ああ……」
ヒートにしろハインにしろ、モーテルでのやり取りにしろ、彼女達は真正面からビコとゼアを奪いに来ている
家族とは絶縁となったドクは兎も角として、ニダーとショボンに関しては『人質』という方法はある程度の効力は発揮するだろう
そうしないのは、血縁と言えど無関係の者達への配慮か。それとも、彼らが知らぬ内に既に手を回しているのか
少なくとも、ショボンの反応から見るに、後者の可能性は薄いとドクは前向きに捉えることにした
('A`)「確かに……あの女は俺の事を『悪党』呼ばわりした。どちらかと言うと、『義は我に在り』って感じの集団かも知れねえな」
(´・ω・`)「だろ?それに、あの格好も『ヒーロー』を意識してるようにも見える。様式美にこだわりを持っているなら、汚い手は使い辛い」
('A`)「俺が相手した奴も、ニダーが出会ったクノイチとやらも、わざわざ名乗りを挙げてるしな……そう考えると、俺らとんでもなく頭ハッピーセットな組織に追われてんじゃねえか?」
(´・ω・`)「まぁ面白……若干厄介なのは間違いないんだがよ」
('A`)「本音よ」
ミラノサンドを食べ終えたショボンは、包み紙を丸めてくず入れへと投げ入れる
ソースとパンくずを包んだ即席のボールは、『ゴール』の縁に当たって地面へと落ちた
('A`)「はずれ」
(´・ω・`)「Fuck」
('A`)「先に車戻ってるぞ」
(´・ω・`)「あー」
111
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 12:54:16 ID:9OubR0lk0
ゴミを拾おうと身を屈めた瞬間、くらりと眩暈が襲う。ここ数日の寝不足のツケが回っていた
(;´⁻ω⁻`)「っ……」
『よく食って寝る』。モーテルで発言した自身の言葉が身に沁みる
追手を迎え撃つというこの作戦には、比較的安全な場所で十分な休息を取るという目的も隠されている
刺客を撃退したドクやニダーの実力には信頼を置いている。しかし『疲労』には誰も勝つことが出来ないのだ
(;´・ω・`)「案外、疲れるもんだな……」
ゴミを確実に捨て、眉間を指で揉み解しながら車内へと戻ろうとしたその時
<ぎゃあ!!
<ぐあっ!?
(;´・ω・`)そ「ッ!?」
あちこちで、短い悲鳴が立て続けに響いた
112
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:04:39 ID:9OubR0lk0
(;´・ω・`)「……」
売店に目を向けると、従業員と利用客がカウンターや地面に平伏し、動いていない
『ここでも待ち伏せされていたか』。ヒーロー気取りの連中とタカを括っていた考えを改める
安否が気がかりだが、この現象の原因を知らぬまま近づくのは危うい
(;´・ω・`)「……ド」
車に戻った友人の名前を呼ぼうとしたが、『コツン』と踵に何かが当たって言葉を詰まらせる
見ると、拳大の色鮮やかな橙色の『ボール』。誰しも口にした事がある果実、『オレンジ』であった
(;´・ω・`)「……」
スーパーマーケットならともかく、ガススタンドに置かれているような物ではない
蹴飛ばすのも気味が悪いので、そっと離れようとしたその時
(;´・ω・`)そ「うおっ!?」
なんの前振りもなく、ショボンの顎を目掛けてオレンジが勢い良く『跳ねた』
身体を引いていたのが幸いして、前髪を掠めただけで済んだものの、まともに食らえばオレンジといえど一撃で卒倒する速度だった
(;´・ω・`)「ふざっ……けんなよ!!B級映画かっての!!」
トマトが襲いかかってくるカルト映画を思い出し、ショボンは車へと一目散に走ろうとするが
(;´・ω・`)「ぐっ……!!」
その通り道を、いくつものオレンジが転がり塞いだ
113
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:05:28 ID:9OubR0lk0
(;´・ω・`)「ドkうおお!?」
大砲も無く砲弾が、一斉に射出。補給機の影に転がり込んでやり過ごす
盾となった補給機は、ボコボコと鈍い打撃音をたてながら凹んでいく
(;´・ω・`)「ああそうだよな!!不思議が一個あんなら他にも沢山あるだろうよ!!」
ドクが相手した格闘家は『鉄塊拳』。ニダーが追われたニンジャは『身軽さ』を武器にしていた
しかしそれは、才能の有無も関わるだろうが訓練次第では誰でも手に入る代物だ。だからこそ『見誤った』
超常の存在を追い求める者が、『超常の能力』とは無縁と限らないのだから
(;´・ω・`)「『超能力の持ち主』だって……いるだろうさ!!」
売店の窓ガラスが割れ、オレンジが飛来する。頭を抱えながらその場から飛び出す
補給機にまた一つ、新しいクレーターが出来上がる。故障と異常を検知したのか、ガスステーションの看板に備え付けられたパトランプが光った
114
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:06:35 ID:9OubR0lk0
(;'A`)「ショボ……うおッ!?」
(;´・ω・`)そ「くっ……!!」
異変に気付いたドクが助手席から呼びかけてきたが、また別のオレンジが妨害をするように扉に衝突する
丸く凹んだ板金が、その威力を思い知らせる。運転席のニダーがエンジンを掛けて車を寄せようとしたが
(;´・ω・`)「来るなッ!!離れろ!!」
(;'A`)そ「ハァ!?」
ショボンはあえて『拒んだ』
(;´・ω・`)「車がオシャカになったらそこでもう『詰み』だ!!」
(;'A`)「ッ!!」
12シスターズの目的は『ビコとゼアの確保』であり、三人の身柄ではない
つまり『オレンジを操る超能力者』は最低でも足止めさえ達成してしまえば、事を優位に運べるのだ
(;'A`)「チッ……わかった!!とっとと済ませてこい!!」
(;´^ω^`)「おお余裕だぜぶっ殺してやらぁ!!!!!!!」
狙いを読まれた焦りからか、オレンジはUターンする車に目標を変えて弾け跳んだ
リアにいくつもの凹みを作ったが、走行の妨害までには至らず車は走り去る
ガスステーションの敷地外に出た段階で、オレンジは射出を止めて目標を再びショボンへと戻した
(;´・ω・`)「やっべ!!」
補給機から移動し、停まっている車の影に身を隠す。サイドミラーが果汁と共に吹き飛び、床を舞う
(;´・ω・`)「クソ、クソ……フゥー……」
呼吸を整え、動悸を抑え込む。『落ち着け、俺の番が来ただけだ』と自分に言い聞かせ、冷静さを取り戻していく
115
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:07:52 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「フゥー……」
オレンジの猛襲が、嵐が過ぎ去ったように止まる。フロント越しに観察してみると
(´・ω・`)「ん……?」
ラジコンのように不規則な動きで敷地内を転がっている。目標を見失っているようにも見えた
補給機を盾にした時は迷いなく襲ってきた。この『違い』を見極めれば、勝機はある
(´・ω・`)「探知の基準は何だ……?」
頭の中でざっと候補を挙げてみる。『視覚』『聴覚』『触覚』『温度感知』。その中から一つずつ選択肢を絞る
『触覚』。例えば空気の動きに反応するとしたら、無差別な方向へと射出して狙いが定めにくいのではないか?
『温度感知』。高温に反応するとしたら、日光に曝されている地面や車のボンネット。エンジンの方を優先するはず
『聴覚』。的を『話し声』など人間が発するモノに絞れば無い事はない。しかし今しがた走り去る車に向かっていったばかりだ
(´・ω・`)「となればやっぱり……」
『視覚』。それも、ガスステーション内に限られる。操作範囲の限界とも捉えられるが、この敷地内限定で有効な確認手段がある
(´・ω・`)「『監視カメラ』」
補給機を見下す形で設置されたカメラは、何かを探すかのように首を左右させている
ショボンが逃げ込んだ車の影は、偶然にもカメラの視覚外に位置していた
(´・ω・`)「すると……」
カメラの映像を頼りにしているのならば、自ずと敵の居場所は突きとめられる。恐らく売店の中にある『バックヤード』
気絶させた従業員をロッカーにでも放り込んでポテチでも摘まみながら『モニター』を注視しているに違いない
しかし『ミスリード』という可能性も捨てきれない。売店に踏み込めば最後、オレンジの集中砲火を受けてあえなくリタイアなんて事も在り得る
116
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:08:57 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「……」
だがこうも思考の時間を与えられるのも腑に落ちない。死角に逃げ込んだのは向こうにもわかっている筈
車に攻撃を与え続けて表に出ざるを負えない状況を作り出す事も出来るだろう。そうしないのは何故か?『それが出来ない』のは何故か?
(´・ω・`)「『弾数』に限りがある」
サイドミラーを破壊したオレンジは、果肉と果汁を曝け出して爽やかな香りを放ちながら微動だにしない
『球体』の形を保て無くなれば、操作は出来ないのではないだろうか?もしそうなら、彼方も『無駄撃ち』は出来ない
操れるオレンジを全て『撃ち尽くせば』、後に残るのは果物で遊んだ罰当たりな痕跡だけだ
(´・ω・`)「だとすると……俺から動く必要もねえな」
『虎穴に入らずんば云々』という諺があるが、手に入れたい『虎児』も居ないのに突っ込むのは自殺行為に他ならない
元より、焦っているのは『能力者』の方なのだ。こうして膠着している間にも、目的は遠くへと逃げている
コソコソと隠れて様子を窺い続けているよりかは、直接確認してオレンジを叩きこんだ方が手っ取り早い
(´・ω・`)「……」
それに、『補給機』の故障から警備会社、もしくは警察に警報が届いた可能性もある
此方は『襲われている』立場なのだ。その何方かが到着すれば、堂々とその庇護に収まればいい
向こうもすっとぼける事は出来るだろうが、このままFPSのスナイパーのように『芋っていれば』言い逃れも出来なくなる
(´・ω・`)「ハハ。なんだよ、ジッとしてりゃ勝つなんて楽な戦いだぜ」
このまま何事も無く時間が過ぎれば、目論見通りこの戦いはある意味での『不戦勝』を迎える
能力者は連行されるかコッソリと逃げるかの二択を迫られてしまうだろう。当然、向こうもそれを理解している
(´・ω・`)「まぁ……そう上手くはいかねえよな」
売店から聞こえた『ガラスを踏みしめる音』が、淡い期待を打ち砕く
顔こそ見ていないが、しっかりとした足取りから件の能力者だと察した
117
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:10:21 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「……」
「出てこいっぽ」
(´・ω・`)「断る、と言ったら?」
返答の代わりに、背にもたれ掛かる車に『ドン』と強くオレンジが衝突する
(´・ω・`)「おーおー、有無をも言わせねえってか」
ショボンはスマホを取り出し、素早く画面をタップして尻ポケットに収めた
そして両手を上げながら、ゆっくりと車の影から抜け出す。オレンジ襲い掛かってくることは無かったが、代わりに『一つの場所』に集まっていた
(*‘ω‘ *)「……」
(´・ω・`)「ワオ、こいつは眩しいな。太陽が女の形をしたらアンタみたいになるだろうよ」
悪魔的な赤い唇と、刺激的なモカの日焼け肌。ビキニとホットパンツといった刺激的なスタイルに、ショボンは思わず口笛を吹く
半ば本音と欲望を交えた口説き文句に、女は短く刈り上げた髪をサッと掻き上げて受け流した。足下には、二十を超えるオレンジが雛鳥のように寄り添っている
118
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:11:54 ID:9OubR0lk0
(*‘ω‘ *)「悪いけど、ナンパに付き合う暇はないっぽ。大人しく人質になるならば、大怪我は勘弁してやるっぽ」
(´^ω^`)「いーいねぇ〜〜〜〜〜!!!!強引な女は最高に好みだ!!一晩じっくり苛めてくれるなら考えてやっても」
(*‘ω‘ *)「チッ!!」
(;´゚ω゚`)そ「うおおあっぶねえ!!!!!!!!!!!」
股下を通り抜けたオレンジは、料金機に衝突して弾け飛ぶ。当たれば同じように『潰れて』いたに違いない
(#´゚ω゚`)「何しやがんだクソアマァッ!!!!!!!!!!優秀な遺伝子殺す気かオオ!!!!!??????」
(*‘ω‘ *)「フン。ゲスな男を抱く趣味はないっぽ。次は確実に当てる」
(;´・ω・`)「ま、待て待て!!悪かったよ真剣になる!!な、何が望みだ!?金か!?」
(*‘ω‘ *)「知れた事。お前たちが『ビコ』『ゼア』と呼ぶ超常保護対象。並びに、女の子と犬。その身柄っぽ」
(;´・ω・`)「ハァ!?ディとビィもか!?関係ないんじゃねえのか!?」
(*‘ω‘ *)「答える必要はない」
(;´・ω・`)「オイオイ見くびって貰っちゃ困るぜ。俺ァ確かにゲスだが、得体の知れねえ組織に追われているかも知れないガキと犬を『はいそうですか』と渡す程クズ」
(;´゚ω゚`)・'.。゜「ジャゴホォ!?」
119
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:12:54 ID:9OubR0lk0
ショボンの鳩尾に衝突したオレンジは、役目を終えたと言わんばかりに地面を転がる
痛みと呼吸困難により、腹を抱えてその場に蹲る。女は抵抗出来なくなったショボンに近づくと、ブーツの底で頭を踏みにじる
(*‘ω‘ *)「お前の人間性などどうでもいい。ただ一言、『渡す』と言ってお友達を呼び戻せ」
(;´ ω `)「ゲホッ、ゴホッ!!」
(*‘ω‘ *)「それとも、渡せない事情があるのかっぽ?『お兄ちゃん』が、関わっているとか」
(;´ ω `)「ッ!!」
(*‘ω‘ *)「おっと」
『お兄ちゃん』という単語に反応を示したショボンの頭を、警告の意味も込めて更に強く踏みしめる
(*‘ω‘ *)「心当たりがあるようだな。そう、お前の兄には超常保護対象の私的利用疑惑が懸けられているっぽ」
(;´ ω `)「……」
(*‘ω‘ *)「沈黙は肯定と受け取るっぽ。何が目的で、どのような利益に目が眩んで愚行を犯したのかは、『一晩じっくり虐めて』聞き出してやるっぽ」
(;´ ω `)「……」
(*‘ω‘ *)「まぁ、協力次第では手心を加えてやらんでもない。色男のまま日常に戻りたいのなら……」
オレンジが一つ、ショボンの目と鼻の先へと転がる。何の変哲もない果実が、銃口にも似た恐ろしさを放っていた
(*‘ω‘ *)「『奴らを呼び戻せ』」
(;´ ω `)「わかった」
.
120
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:15:19 ID:9OubR0lk0
いとも呆気なく要求に応じ、女は目を丸くさせた。確かにこれまでも我が身可愛さにあっさりと超常保護対象を手放した連中は数多い
しかし、ショボンの一言にはこれまでとは違う、『奥の手』を感じさせる力強さが籠っていた
(*‘ω‘ *)「……何を企んでいるっぽ?」
(;´ ω `)「『シャキン・バーデラス』は贖罪の機会を求めている」
(*;‘ω‘ *)そ「!?」
支離滅裂な返答は、彼女たちが危険視する人物の『核心』に触れる発言だった
女の反応など構わずショボンは話を進めていく
(;´ ω `)「アホの兄貴がアンタらに迷惑を掛けたん事については、弟として心から謝罪する」
(*;‘ω‘ *)「そんっ……なの、どうだっていいっぽ!!贖罪とは一体なんだ!?」
(;´ ω `)「さぁな。知ったこっちゃねえよ。ただ、俺達家族の元に届いたのは、『スリー・ドット』の資料と『必ず送り届けろ』っつー短いメッセージだけ」
(*;‘ω‘ *)「スリー・ドット!?何の、何の話をしている!?」
(;´ ω `)「さぁな。それを追い求めて俺は行動を起こした」
(*;‘ω‘ *)「ッ……ならば猶更、我らが保護すべき存在だっぽ!!」
(;´ ω `)「お前らが悪意の無い団体と証明できるのか?有無を言わさず襲い掛かって来た、お前らが?」
(*;‘ω‘ *)「黙れ!!」
(;´ ω `)「ハハ……ハハハハハ!!」
(*;‘ω‘ *)「何が可笑しい!?」
笑わずにはいられなかった。これだから、女を手玉に取るのはやめられない
それが無様に地べたに這いつくばり、頭まで踏みつけられる屈辱の極みにいるのなら猶更だ。と
121
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:22:35 ID:9OubR0lk0
(;´^ω^`)「奴らを呼び戻せ?言われるまでもねえ。迎えに来てもらわねえと俺は先に進めねえからな」
(*;‘ω‘ *)「この期に及んで、アタイに勝つ気でいると?」
(;´^ω^`)「その通りさミス・オレンジ!!ハンサムの華麗な逆転劇で、物語の中盤を艶やかに彩ってやるよ!!」
(*;‘ω‘ *)「……付き合って、られないっぽ。シャキン・バーデラスについては身体に直接聞くことにする」
目の前のオレンジが、独りでに楕円状に変形した。発射前の『クラウチング』の姿勢に見て取れた
至近距離で弾丸が放たれようというのに、ショボンは尚もヘラヘラとした薄気味悪い笑顔を止めようとはしない
女は不快感と共に不気味さを覚え、自身の能力で手早く片を付けようとし――――
(*; ω *)そ「ッ!?」
ストンと膝を着き、倒れた
(´・ω・`)「いてて……ナイスタイミング」
拘束から逃れられたショボンに手が差し伸べられる。それをしっかりと握り、土ぼこりを払いながら立ち上がる
彼を起こした張本人は、額に浮かんだ汗を拭い、止めていた息を大きく吐く。荒く呼吸を繰り返し、地面に唾を吐いた
(;'A`)「ハァー、ハァー……『走って戻ってこい』なんて、無茶な注文だぜ」
(´^ω^`)「めんごめんご!!!!!!!」
('A`)「置いて行けば良かった」
(´^ω^`)「悪かったってオレンジ食えよ!!」
('A`)「いらねえ……」
ショボンは女と対峙する直前、ドクに『走って戻ってこい』とメッセージを送信していた
自身が残った時点で、女の目的が『確保』から『人質による交渉』に切り替わったのは目に見えていた
そこであえて目立つ抵抗は行わず会話による時間稼ぎを行い、特定のワードを小出しにすることで冷静さを欠かせ
格闘術に優れるドクが背後から忍び寄る隙を作って無力化させる、他力本願の心理戦に打って出たのだ
122
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:23:44 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「いやはや、持つべきもんは友達だなぁオイ」
('A`)「たまたま上手くいったがよ、俺らが遠くに逃げてったらどうするつもりだったんだよ」
(´・ω・`)「『逃げろ』とは、一言も言った覚えねえぞ?」
(;'A`)「良い根性してるぜ……」
当然、信頼が無ければ一か八かの作戦に打って出れない。実際、ショボンの意図を読み取れず遠くまで逃げてしまったかもしれない
だが彼らは直前でこう会話を交わしたのだ。『先に潰してしまえば、後はゆっくり進める』と
(´・ω・`)「どっちにしろ『逃げる』なんて選択肢、最初から頭に無かっただろ」
('A`)「まぁな……」
『叩き潰す』。このスタンスを予め共有していたからこそ、ドクは『逃げる』を良しとはしなかった
('A`)「で、こいつはどうするよ?」
(´・ω・`)「ほっとこうぜ。証人なら幾らでも『寝ている』からな。それに、カメラの映像が残っているなら俺らの正当性は主張できる」
('A`)「ハッ、お優しいこって」
(´・ω・`)「時間があったらガバガバにしてたけどな」
('A`)「何がとは聞かない。サッサとフケるぜ。面倒ごとが増える前にな」
(´・ω・`)「そうだな。急ごうか」
123
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:24:07 ID:9OubR0lk0
足早にガスステーションを去ろうとし、一度だけ振り返る
(* ω *)「」
(´・ω・`)「……良いもん見せて貰ったよ」
夢でも見ていたかのような数分間だったが、腹に残る鈍い痛みは紛れもない現実のもの
初めて目の当たりにした『超能力』は、心躍らせるに相応しい体験だった
(´・ω・`)「じゃあな。太陽の女」
ガスステーションから出ると、早速タバコを取り出して火を着ける。煙を存分に吸い込むと、まだ胸に残る興奮と共に
『オレンジ』のような太陽に目を眩ませながら吐き出したのであった―――――
124
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:25:15 ID:9OubR0lk0
―――――
―――
―
ブンゲーには三つの顔がある。一つは『黄金』、一つは『西部劇』、そしてもう一つは『牧場』である
元々は黄金を求める開拓者達の集落であったが、ゴールドラッシュの時代が終わると産業を『映画』にシフトした
当時に雰囲気を色濃く残す街並みは、かの名作『荒野の用心棒』や『ペイルライダー』『許されざる者』と言った数多くの西部劇の舞台セットとして使用された
アメコミ映画が大規模な売り上げを記録する昨今に置いても、西部劇は一定の層に需要がある。全盛期と比べて数は減った物の、撮影は頻繁に行われているという
<ヽ`∀´>「元から帰る気はあったニカ?」
(´・ω・`)「軽く顔出す程度に留めるつもりだったがな。事情が事情だ」
('A`)「クッソ広ぇー……これ全部お前んちの土地か?」
(´^ω^`)「金持ち金持ち!!!!!!!!!!!金持ち最高!!!!!!!!!」
('A`)「じゃあ旅費も出せるしルームシェアしなくても良いとこ住めるだろ」
(´・ω・`)「生活費に関してはバイトで稼げって言われてんだよ。クソだろウチの親」
('A`)「俺みたいにボコって必要経費カツアゲしたらよかったのに」
<ヽ`∀´>「キミらどんな家庭環境で育ったら肉親相手にそこまで非情になれるの?」
その中心街から更に車を走らせること数十分。車外には柵で囲われた牧場が見渡す限り広がっている
馬の群れが並走して駆ける姿を、ディとビィは静かに。ビコとゼアは相変わらず奇怪な鳴き声を上げながら騒がしく眺めていた
('A`)「良いとこだな」
(´・ω・`)「シティボーイにとっちゃな。隣の芝生は青いもんだぜ?」
('A`)「ああ……それでデビューに失敗してそんなんになっちまったのか」
(´・ω・`)「隙あらば俺の人格を攻め立てるのやめろ」
125
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:26:06 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「到着っと。ようこそ我が家へ」
『バーデラスファーム』の看板が掲げられたログハウスは、広大な土地と比べると随分と小ぢんまりとした佇まいだったが
隣接するガレージには財力を誇示するように嫌味ったらしく高級車が並べられ、素朴な家屋とのミスマッチを演出していた
('A`)「あー……」
<ヽ`∀´>「あー……」
(´・ω・`)「何を納得してんのか知らねえが俺だってやめて欲しいよこのクソみてーな展示」
<ドジャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!!!!!!!!!!
(∪^ω^)そ「ワフッ!?」
(#゚;;-゚)そ「!!」
外付けのスピーカーから、耳がキンと鳴るほどの大音量でBGMが流れ出し、車を降りた全員が顔を顰める
<バーデラスバーデラスバーデラスファーム♪肉とか牛乳とかいっぱい作るー♪
<ヽ;`∀´>「何!?怖い!!」
(´・ω・`)「ウチのテーマソング」
<シタラバ市場の食肉、乳製品の約三十パーセントはウチの製品ー♪キミの街のスーパーにも並んでるぜイェイェイウォウォ♪
<フンフーンフンフフーン♪
('A`)「おいうろ覚えじゃねえか」
(´・ω・`)「親父がふざけてんだろ……親父ーーーーーーーーーーー!!!!!」
126
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:26:52 ID:9OubR0lk0
(´^_ゝ^`)「なーーーーーーーーーーーーーーにーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!??????????」ドッドドドドドッカァアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!!
ログハウスのドアを蹴飛ばし、マイクスタンドを手に現れたショボンの父親
もとい、バーデラスファーム代表取締役『デミタス・バーデラス』のファーストインプレッションは
('A`)「遺伝か……」
<ヽ`∀´>「遺伝か……」
『間違いなくショボンの親父だわ』であった
127
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:27:47 ID:9OubR0lk0
(´^_ゝ^`)「パパだよーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
(´・ω・`)「……」
('A`)「……」
<ヽ`∀´>「……」
(∪^ω^)「フンフンフンフン」
(#゚;;-゚)「……」
( ∵)「ウルサ」
( ∴)「キモ」
(´^_ゝ^`)「……」
冷たい視線に、髪の薄い頭も冷えたのか。マイクスタンドを戸口に立てかけると
(´・_ゝ・`)「ンンッ、待っていたよ。遠い所を遥々とよく来たね」
と、取り繕った
128
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:28:23 ID:9OubR0lk0
('A`)「いや、もう手遅れっす」
<ヽ`∀´>「ドン引きです」
(´・_ゝ・`)「目上の億万長者に失礼とは思わんのか?」
('A`)「やっぱクズは遺伝だったんすね!!」
<ヽ`∀´>「子が子なら親も親ニダ!!」
(´・_ゝ・`)「オイどうなってんだショボンオラ。これが初対面の友人の父親に対する態度か?」
(´・ω・`)「先ず気づいて欲しいんだが、テメーの奇行で俺にまで飛び火してんだよ」
('A`)「いや日頃の行いだろ」
<ヽ`∀´>「父親の所為にすんな」
129
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:29:20 ID:9OubR0lk0
(´^_ゝ^`)「うーーーーーーーーん父として恥ずかしい生き方をしてるようで何よりだ!!人を殺しても俺はびた一文保釈金を払わんからな!!」
(´・ω・`)「そいつはどーも。上がるぜ。一晩世話になる」
(´^_ゝ^`)「お前んちだ世話もクソもあるか。さ、キミらも上がってくれ。お茶を淹れよう」
( ∵)「ゴエエエエエエエエエエエ!!!!!!」
( ∴)「ゴエエエエエエエエエエ!!!!!!!!!!」
(´^_ゝ^`)「うんうんゴエゴエ!!!!!!!!何その生き物こっわ」
家内に通されて最初に彼らを迎えたのは数多くのムービースターとのツーショットとサインが入った額縁の数々
ドクとニダーは思わず立ち止まり、ポカンと口を開けて見上げていると、デミタスがグラスに並々と注がれた琥珀色の液体を二人に差し出した
(´^_ゝ^`)「ウェルカムドリンクだ!!!!!!!!!!」
<ヽ;`∀´>「あ、ああ……お気持ちだけ」
('A`)「どうも」
ドクは一息で呑み切ると、ニダーの分も立て続けに流し込む
空になったグラスを突き返されたデミタスは、余りに機械的で躊躇いの無い飲酒に目を丸くした
('A`)「お茶は?」
(;´^_ゝ^`)「お、おお……まだ飲むの?」
('A`)「いや別にウィスキーでも構わないけど」
<ヽ`∀´>「所で……あー、バーデラスさん」
(´^_ゝ^`)「水臭ぇなデミーで良いよ!!!!!!!!」
<ヽ;`∀´>「あ、いや、そこまで親しくなるつもりはないんで遠慮しときます」
(´^_ゝ^`)「ショボンーーーーーーーーーーー!!!!!こいつぶん殴っていいかーーーーーーーーー!!!!!????」
<親父が悪い
(´・_ゝ・`)「お前ら俺が嫌いか?」
130
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:30:08 ID:9OubR0lk0
<ヽ`∀´>「その、従業員の方はいらっしゃらないのですか?見た所、ここは事務所も兼ねているように思えるのですが」
(´・_ゝ・`)「ああ、今日はもう全員上がって貰った」
('A`)「牧場ってそれで回んの?」
(´・_ゝ・`)「回んねえけど……?まぁお産の畜生もいないし……」
('A`)「畜生て」
<ヽ;`∀´>「畜産農家が吐いていい台詞じゃないニダ」
(´・_ゝ・`)「いや、喧嘩すんだろ?ここで」
二人は同時に応えようとして、言葉に詰まる。話が早すぎて、頭が着いて行かなかったのだ
そんな彼らを興味深そうに眺めたデミタスは、ポンと背中を押して奥へと案内する
(´・_ゝ・`)「ちゃんとワケは話すよ。その上で、キミ達を巻き込んだ事を謝罪させてくれ」
('A`)「……」
<ヽ`∀´>「いえ、そんな……」
(´^_ゝ^`)「え!!!!!??????許すって!!!!!!!?????」
<ヽ`∀´>「そういう所」
リビングに通されると、既にショボンは暖炉の前のソファーに深々と座って寛いでいる
ディとビコ、ゼアはテーブルでドーナツとミルクを。ビィはその下でジャーキーを楽しんでいた
(´⁻ω⁻`)「ハァー……」
(´・_ゝ・`)「キミらも自由にしてくれ。紅茶で構わないかな?」
<ヽ`∀´>「はい」
(´^_ゝ^`)「オーケー。とびきり美味いお茶を振舞おう」
131
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:32:25 ID:9OubR0lk0
遅れて来た二人も、テーブルの空いた席に腰を下ろす。ドクはビコとゼアが溢したドーナツのカスを摘まみ上げ、空いた皿に落とした
手持無沙汰になったニダーは、どうにも落ち着けずリビングを見渡す。すると、暖炉の上にある写真立てが目に入った
【 (´^ω^`)凸 凸(`^ω^´) 】
<ヽ;`∀´>「……」
カメラに向かって中指を立てる子供の頃のショボンと、彼によく似た年上の少年の姿
家族写真にしては少々刺激的な『ピースサイン』も気になったが、恐らくショボンの『兄』らしき人物に話の焦点を当てることにした
<ヽ`∀´>「お兄さんニカ?」
(´⁻ω・`)「あ?まぁな……もう三年くらい行方不明だが」
('A`)「……何をしでかしたんだ?」
(´⁻ω・`)「……」
ショボンは灰皿を引き寄せると、タバコを取り出して一服を始める
天井に紫煙がうっすらと立ち込め、鼻腔がキュッとしまるような臭いが漂い始めた頃、ようやく語り始めた
132
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:33:15 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「まぁ……兄貴個人が起こした問題じゃ、ねぇとは思うんだけどよ……兄貴が通ってた大学では、ちょっとした学生運動が盛んでな。所謂、アクティビズムって奴だ」
('A`)「要望通すために絶食するバカが集まるサークルか。もしくは、使命感で頭キラキラ股ユルユルの女との乱交スポットか」
(´・ω・`)「多分、どっちにも属するんだろうよ。で、当時付き合ってた彼女がそいつにズップシハマっちまってな」
(´・_ゝ・`)「表立っては言えなかったけど、正直クソアマだったねアリャ。はい、お茶だよ」
<ヽ;`∀´>「あ、ありがとうございます……それで?」
(´・_ゝ・`)「その頃、連中の矛先はブンゲーに向けられていてね。ゴールドラッシュ時代、シタラバ先住民を迫害して得た土地と財産を彼らに返せとSNSや動画サイトで抗議を行っていた」
(´・ω・`)「遥々ウチの牧場で大騒ぎするバカもいてな。親父も俺もアレだから何回かぶっ殺そうとしたんだが、その度に兄貴が仲裁に入った」
('A`)「堪ったもんじゃねえな……」
<ヽ`∀´>「ですが、迫害に関しての謝罪と賠償は既に済んでいる筈です。現存するシタラバ先住民が更なる要求をしただなんて話も聞きませんし」
(´・_ゝ・`)「あの手の活動は大概が自己陶酔か利権絡みだ。クラブで酒飲んで騒いでるのと殆ど変わらないよ」
<ヽ;`∀´>「偏見入ってません?」
('A`)「で……その頭ハッピーセットサークルと『俺らを巻き込んだ』って話はどう関係してんだよ」
133
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:35:06 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「ある日、兄貴から連絡があった。『セブンクロスの先住民と話を付けに行った彼女含むメンバーが帰ってこない』と」
('A`)「やったじゃん」
<ヽ;`∀´>「不謹慎ニダ!!」
(´・ω・`)「いや、俺らもドクと同じ返事をした。辟易してたからな。今夜からは枕を高くして寝れると喜んだ」
(´^_ゝ^`)「その日の酒は格別だったよ!!!!!」
<ヽ;`∀´>「ほんっとクズ親子だなアンタら!!!!!」
(´・ω・`)「まぁ、それで兄貴が納得するわけがなくてな。俺らの制止も聞かず、単身セブンクロスに乗り込んだ。それがちょうど三年前だ」
ショボンはここまで語り終えると、タバコを揉み消し、口の中を紅茶で洗い流す
('A`)「訊くまでも無いが……警察には?」
(´・_ゝ・`)「勿論、捜索を出して貰ったさ。僕も私財を投じて隊を送った。だけど、今日に到るまで一向に手がかりは掴めなかった」
<ヽ`∀´>「だけど、それだけ大規模な行方不明者が出ているならニュースになって然るべき事件です。隠蔽が?」
(´・_ゝ・`)「ああ、あったんだろうね。大学は元より、メンバーの家族、友人ですら口を噤み始めた。まるで最初から居なかったかのように振舞った」
(´・ω・`)「連中と兄貴の相違点を上げるとするならば、兄貴はグループに在籍しておらず、セブンクロスにも『後続』という形で出向いた。だから、俺ら家族だけはずっと納得いかないままだった」
('A`)「……それが、『スリー・ドット』に関連していると?」
(´⁻ω⁻`)「ああ……白状しよう。あの資料は大学からパクって来たもんじゃねえ。兄貴から送られたものだ」
いつも騒がしいビコとゼアが空気を読むほど、室内はシンと静まり返る
口火を切ったのは、意外にも
<ヽ`∀´>「あ、やっぱそうニカ?」
あっけらかんと返事をしたニダーだった
134
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:36:34 ID:9OubR0lk0
(´・_ゝ・`)「え?」
<ヽ`∀´>「え?」
('A`)「どういう事だニダー?」
<ヽ`∀´>「え?いやだって資料庫から持ち出したって言ってたけど、どこにも大学の印が押されてなかったし、資料にしちゃ文章がちょっと稚拙だったし」
(´・ω・`)「気づいてたのかよ」
<ヽ`∀´>「嘘が下手ニダ。それと、出発直後のキミはどこか『セブンクロスに着きたくなさそうな』雰囲気があった。話を持ち掛けて来たにも関わらず、『観光がてらのんびり行こう』だなんて口走ったり」
(;´⁻ω・`)「あー……しくったな。女は兎も角、野郎をだまくらかすスキルは備わって無かった」
<ヽ`∀´>「やかましいわ」
135
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:37:38 ID:9OubR0lk0
('A`)「それで……お前ら家族は、兄貴の足取りを掴むために俺らを巻き込んだと?」
(´・ω・`)「半分正解で、半分間違いだ」
('A`)「そうか」
返事は軽かったが、ドクの持つマグカップの取っ手がビキリと音を立てて捥ぎ取れる
思わず『高いんだぞ!!!!!!!』と文句を言おうとしたデミタスも、無言の圧力に口を閉ざす他なかった
(´・ω・`)「確かに仲間は欲しかったさ。親父に頼めば傭兵だって用意してくれた。お前らの実力を頼りにしてたのも確かだ。打算が無いと言えば嘘になる。だがな……」
ショボンはもう一度、噛み締めるように『だがな』を繰り返すと、いつもの腹立たしい笑顔を浮かべた
(´^ω^`)「何よりも、面白ぇ連中と一緒に危ねぇ橋を渡りたかった。それが一番の理由だ」
理由としては傍若無人で自分勝手であり、事実この数日間で何回も襲われている
ハッキリ言って納得出来る理由ではなく、信頼関係の崩壊も在り得る態度に、デミタスは白目を剥いた
(´ ゚_ゝ゚ `)「ピィ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
(#゚;;-゚)そ ビクッ
しかし、人を小馬鹿にしたような理由を口走ったショボンに対し、当の二人は
('∀`)「はは……はっはっはっはっはっはっは!!!!!!!!」
<ヽ*`∀´>「はははははははははは!!!!!!!!」
大いに『笑った』
136
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:38:50 ID:9OubR0lk0
(´^ω^`)「文句あるか!?ええ!?」
('∀`)「いいや、無いね!!一言でも謝罪すりゃぶん殴ってた所さ!!!!」
<ヽ*`∀´>「それでこそ、僕らの良く知る『ショボン・バーデラス』ニダ!!!!」
(´^ω^`)「だっるぉおおおおおおおおおおおお!!!!!!!?????」
遠くなったデミタスの意識は、三人の若者の馬鹿笑いによって引き戻される
薄れていく驚愕と、家族の問題に巻き込んでしまった無関係の友人二人に対する罪の意識は、安心感と納得に変わっていった
(´・_ゝ・`)「……」
最初から、息子にはこの展開が見えていた。だからこそ、正直に『スリー・ドット』の出先について打ち明けたのだろう
人との繋がりとは、恐らく誰もが一生を懸けても解けない謎だ。女によって行方不明になった兄もいれば
(´^ω^`)「だーーーーーーーーーーーーーーーーーっはっはっはっはっは!!!!!!!!」
信頼と友情を築き上げた仲間と共に、その行方を追う弟もいる
(´^_ゝ^`)「ハハ……」
これまで息子たちに優劣を着けた事は一度も無かったが、この一点だけはショボンに軍配が上がった
弟が得た、『友』という心強い武器は、兄には得られなかったモノだったからだ
(´^_ゝ^`)「……」
しかしこうも考える。もしもシャキンが生きていて、何か大きな存在に必死に抗っている最中ならば
願わくば、あの気持ちの良い若者二人と同等の仲間と共に在って欲しい。とも―――――
137
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:39:36 ID:9OubR0lk0
―――――
―――
―
(∪^ω^)「ゲフゥ」
ああ、これはいけない。鼻と舌が贅沢を覚えてしまった
しかし誰が抗えると言うのだろうが。目の前に差し出された、肉汁と脂滴る極上のステーキに!!
( ∵)「ゴエ」
( ∴)「エ」
私と同じく、腹を存分に膨らませた彼らも、その余韻を噛み締めている
無理もない。あの『デミタス』とか言う男、素行はともかく美味い肉を振舞うだけの甲斐性はあるらしい
この誇り高い私が思わず『この家の犬になっちゃうワン』と媚を売る所だ。まぁ?向こうがその気ならやぶさかじゃないけど??????
゚
(#‐;; -)゚ 「……」
(´・ω・`)「おっと、お姫様はオネムと来たか。ベッドに運んでくる」
('A`)「死ねよ……」
(´・ω・`)「なんで今のでアウトになるんだよお前が死ね」
ディが寝床に運ばれていく。まぁ奴もこの期に及んで交尾なんて馬鹿はしでかさないだろう
私も用意されたフワフワクッションで一眠りしよう。飢えと凍えの心配なく眠れるこの贅沢を享受しない手は無い
138
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:40:20 ID:9OubR0lk0
(∪^ω^)「フスッ」
( ∴)「ゴエエエ」
何だよ寝ようとしてたのにうるせえなボケナス
( ∴)「ゴエ!!!!!」
(∪^ω^)「?」
ああ、なるほど。何処からかパクってきた『頭のリボン』を自慢しにきたのか
彼らにオスメスの概念があるのか疑問だが、人のメスは交尾の為に着飾るのが好きとも聞く
ええと確か……『オシャレ』と言ったか。ビコが一向に興味を示さないのを見るに、きっとゼアは『彼女』に当たるのだろう
(∪^ω^)「わんお」
( ∴)「ゴエ!!!!!」
『見分けが付きやすくなって良かったじゃないか』と伝えると、満足したのかビコの下へ帰っていく。やれやれ、ようやく眠れる
(∪^ω^)「……」
いや、なんだか催してきたな。先に出すもん出しに行くか
139
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:40:57 ID:9OubR0lk0
(∪^ω^)「わんお」
<ヽ`∀´>「ん、どう……トイレニカ?」
おっ、中々わかるようになってきたじゃないか下僕一号
この家のドアは小柄な私には開けられないからな。こういう時こそ役に立って貰わねば
(´・ω・`)「お、どこ行くんだ?」
<ヽ`∀´>「彼のお手洗いついでに、外の空気を吸いに」
(´・ω・`)「ああ……付き合っても?」
<ヽ`∀´>「それはビィに訊いて欲しいニダ」
(∪^ω^)「わんお」
なんだこいつら雁首揃えて。そんなに私の排泄が見たいのか
変態の性癖に付き合わされて堪るか。来るんじゃねえ死ね
(´・ω・`)「良いってさ」
やっぱ人間ってクソだわ
140
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:42:15 ID:9OubR0lk0
<ヽ`∀´>「はい、どうぞ」
(∪^ω^)「わんわんお」
着いてきたら半殺しにしてやろうと思ったが、奴らは棲み処の前に置かれてある椅子に腰を下ろした
変態趣味は無いようでホッとしたが、これはこれで逆になんか腹が立つ。やっぱり人間はクソ
(∪^ω^)「フヌッ……」
私はウンコした
<ヽ`∀´>「糞の始末は?」
(´・ω・`)「牧場だぜ?」
<ヽ`∀´>「ああ、そう……」
用を足して戻ったが、どうやらこいつらはしばらく戻る気は無いらしい。ショボンはあの臭い棒に火を点した
私としてはサッサとあのフカフカクッションに沈み込みたかったが……ふむ、だがこの場所の匂いと涼しさはまた心地良い
今まで『自動車』の屁と人間の喧しさが支配する環境に身を置いていたのだ。静寂を楽しむのもまた一興だろう
141
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:42:46 ID:9OubR0lk0
<ヽ`∀´>「……」
(´・ω・`)「フゥー……」
(∪^ω^)「……」
<ヽ`∀´>「……セブンクロスに」
(´・ω・`)「ん?」
<ヽ`∀´>「セブンクロスに向かうのが、今でも怖いニカ?」
(´・ω・`)「……そうだな」
ショボンが吐いた煙が、部屋と月の灯りに照らされ、夜空へと消えていく
あの臭いだけはどうにも気に食わないが、見る分には面白いものだ
(´・ω・`)「やっぱ……確証ってもんは掴めなかったからな。家から遠く離れた大学で、資料を基に一から調べ上げても、得られたのは仮説だけだ」
<ヽ`∀´>「……」
(´・ω・`)「もしかすると、資料は兄貴からのもんじゃなくて只の悪戯だったかもしれないし、セブンクロスに辿り着いたとしても、そこには何も無いかもしれない」
(´・ω・`)「だから……言い出せなかった。純粋に冒険を望んでいるお前らに、無粋な問題を背負わせちまうんじゃねえかってな。だがよ」
142
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:44:11 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「このワン公がモーテルを訪れて……ディを介抱して、ビコとゼアが資料を引っ張り出したあの時、俺は神と兄貴に感謝したよ」
(´・ω・`)「俺は自信を持って、『未知』へ挑戦してもいいと言って貰えた気がした。あの瞬間から怖さは熱意へと変わったし、こうしてお前らにも打ち明けることが出来た」
<ヽ`∀´>「ハハ、とんだお調子者ニダ」
(´^ω^`)「勘違いしてもらっちゃ困るが、俺だって冒険はしたかったんだぜ?こんな事言っちゃアレだが、兄貴が行方不明になったお陰とも言える」
<ヽ`∀´>「いやそれは人として終わってる」
(∪^ω^)「わんお」
何を今更
(´^ω^`)「ダハハハハ!!だから俺ァ、無事に兄貴と再会したら面と向かってこう言ってやるんだよ!!『楽しい冒険だった』ってな!!」
<ヽ`∀´>「そりゃ……ゴキゲンなエンディングになりそうニダ」
(∪^ω^)「……」
『冒険』か。そう言えば、私もこいつらと同行してから、街中のゴミ溜めで暮らしていた時とは違う……なんというか、食事や交尾以外の『快感』を得られている気がする
だからこそだろうか。人間嫌いの私がここまで着いてこれたのは。ああ、ダメだダメだ。静寂なんてやはり性に合わない。余計な事まで考えてしまう
143
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:44:31 ID:9OubR0lk0
(∪^ω^)「わんお!!」
(´・ω・`)「おっと……少し肌寒くなってきた。今日は早めに休もう。見張りなら親父がしてくれる」
<ヽ`∀´>「そうニダね。久々のベッドニダ」
腰を上げた連中に続いて、私も家の中へ戻ろうとした
(∪^ω^)そ「ッ!!」
<ヽ`∀´>「どうしたニカ?」
(∪^ω^)「……」
『いる』な。だが、まだ仕掛ける気は無いらしい。やれやれ、熟睡できると思ったのだがな
(∪^ω^)「フスッ」
今夜は私も、少々気張らねばならないみたいだ――――
144
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:46:35 ID:9OubR0lk0
―――――
―――
―
(;´・_ゝ・`)「……」
デミタス・バーデラスはこれまで三度の命の危機を経験している
一つは幼少の頃、馬の尻の穴を火掻き棒で突いたら後ろ足で腹を強く蹴られた時
二つは学生時代、四股した『恋人たち』に拉致監禁され、睾丸を切り取られそうになった時
三つはショボンが生まれて間もない頃、妻が財産目当てに殺し屋を送り付けた時
いずれも持ち前の強運と根性で乗り切ってきたが、今夜ばかりは――――
(;´・_ゝ・`)「ふぇえ……こわぃぃ……」
『ボンテージファッション』のメガネ美女と、ゴシックロリータ姿の少女二人に詰め寄られている今夜ばかりは
大牧場を経営する代表取締役という権力と財力を以てしても、その余りの現実味の無さに『いよいよ年貢の納め時』と観念する他なかった
⌒*リ´・-・リ「動くななの」
*(‘‘)*「フリーズですの」
音も無く現れた侵入者に対し、せめてもの抵抗として向けようとした散弾銃は飴細工のように折り曲げられ今やただのオブジェクトとしてしか機能しない
それをいとも容易く行った二人の少女は、身の丈ほどもある『斧』と『剣』を、処刑人よろしくデミタスの喉元へと沿わせていた
(´;^_ゝ^`)「め、滅相もございませんでゲス!!お、お金なら用意いたしますでゲス!!」
ハハ ロ -ロ)ハ「ン〜……」
ボンテージファッションの女は、『プレイには適さない』一本鞭の柄先で頬をなぞる
ハハ ロ -ロ)ハ「ミスター・バーデラス。やり手の経営者と聞いていましたガ、駆け引きは上手じゃないようですネ」
(´;^_ゝ^`)「ゲヘヘヘ、面目ないでゲスゥ」
ハハ ロ -ロ)ハ「シッ!!」
145
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:47:20 ID:9OubR0lk0
鞭がしなり、デミタスは思わず目を瞑る。しかし、音速を超える事で生じる破裂音は聞こえず
(´;^_ゝ・`)「な、なにぃ〜?」
ハハ ロ -ロ)ハ「ふむ……『犬の毛』」
『巻き取られた』であろうクッションが、彼女の手に収まっていた
ハハ ロ -ロ)ハ「それと乾ききってない涎の跡ガ、彼らがここに訪れていたという揺ぎ無き証拠でス」
(´;^_ゝ^`)「いやぁ〜〜〜〜〜〜〜?????何のことかさっぱりでゲスなぁ〜〜〜〜〜〜〜??????」
ハハ ロ -ロ)ハ「どこに隠しましたカ?」
(´;^_ゝ^`)「ゥチわかんなぃ。マヂムリ。通報しょ……」
ハハ ロ -ロ)ハ「ヘリ」
*(‘‘)*「はいですのオ゙ッッッラ゙ァ!!!!!!!!」
野太い声と共に振り落とされた斧は、テーブルと床を粉砕。高級家具がもはや薪にしか役立たない木片と化した
(´;^_ゝ^`)「ぅゎょぅι゛ょっょぃ」
ハハ ロ -ロ)ハ「我々の手に掛かれば、貴方の住まいをキャンプファイアーの組み木にしてしまうなどオチャンコサイライなのでス」
⌒*リ´・-・リ「このあばら家ぶっ壊して隅から隅まで探し出してやるの」
*(‘‘)*「それが終わったらガレージの車ですの」
(´;^_ゝ^`)「あひぃご勘弁くださいでゲス〜〜〜〜〜〜〜!!!!!あれ壊されるくらいなら息子の命の方が安いんでゲス〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
ハハ ロ -ロ)ハ「Good!!では居場所を教えてくださイ。ミスター・バーデラス。彼らの車も表に停まっていル。この家から出ていないのはわかっているのでス」
146
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:50:03 ID:9OubR0lk0
(´;^_ゝ^`)「アッアッアッアッ……あの、多分何か勘違いされていらっしゃると思うんでゲスがね……」
ハハ ロ -ロ)ハ「What's?」
(´;^_ゝ^`)「恐らく貴女方、下調べも無しに時間帯だけを狙って侵入して来た輩でゲス?だからちょいとレクチャーをさせて欲しいのでゲス」
⌒*リ´・-・リ「腕行くの」
*(‘‘)*「はいですの」
(´;^_ゝ^`)そ「ワーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーォヘイヘイヘイストップストップ!!すぐ!!すぐ教えるから!!」
ハハ ロ -ロ)ハ「Hurry up!!」
(´;^_ゝ^`)「急いだ方がいいのはアンタらの方だぜボンテージ・クイーン。ゴールドラッシュ時代、我が一族は金を求める連中の『食』を支えるために牧場を立ち上げた」
ハハ ロ -ロ)ハ「?」
(´;^_ゝ^`)「だがそれを良しとしない連中も多くてな。ならず者から命を狙われるなんてしょっちゅうよ。だからこそ牧場を、ひいては命を守るために策と『逃げ道』を作った」
『ヒヒン』と馬が上げた嘶きを聞いて、ボンテージは舌打ちをする
表に停めっぱなしだったミニバンはブラフ。彼らは何らかの『抜け道』からコッソリと逃げ出し、『牧場ならでは』の移動手段に切り替えたのだと気づいたのだ
(´^_ゝ^`)「さぁどうする?ここでおじさんと遊んでても良いが、その間にもあいつらは先に進んでいくぜ?」
ハハ;ロ -ロ)ハ「Hory Shit!!出し抜かれましタ!!追いますヨ!!リリ、ヘリ!!」
⌒*リ´・-・リ「ハロー、オッサンの息の根は止めないの?」
*(‘‘)*「ミンチですの」
ハハ;ロ -ロ)ハ「そんなノ後で幾らでもできまス!!せっかく奴らが足を止めたのに逃がしたとあってハ、我ら『サディスティック・スリー』の名折れでス!!」
(´^_ゝ^`)「だっさ」
ハハ#ロ -ロ)ハ「フゥン!!」
(´ ゚_ゝ゚ `)そ「あ゙っっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!」
今度こそ鞭の先端は音速を超え、破裂音と共にデミタスの頬がパックリと裂けた
147
:
◆UYqRtHH4DY
:2020/05/06(水) 13:51:17 ID:9OubR0lk0
(´ ゚_ゝ゚ `)「あっ……が……」
ハハ#ロ -ロ)ハ「食わせ者ガ!!貴様は後でじっくり可愛がってやル!!」
(´ ゚_ゝ゚ `)「ぐぅ……!!」
ハハ#ロ -ロ)ハ「追うゾ!!」
⌒*リ´・-・リ「はいなの!!」
*(‘‘)*「了解ですの!!」
デミタスの拘束を解いた三人は慌ただしく部屋を出た
残されたデミタスは、ボタボタと溢れ出す血を、カーテンで抑えて止血を施し
(´;^_ゝ^`)「ハ、ハハ……クソガキ共が、よくもこの俺を出汁に使いやがって……」
喉の奥から、『心底面白そうに』クツクツと笑った
(´;^_ゝ^`)「存分に暴れやがれ『冒険者』共。ここは俺の牧場、俺の街だ……一つ、盛り上げてやるぜ」
血で染まる指でPCを立ち上げ、ミュージックアプリをクリックする
選んだ選曲は、映画『ボヘミアン・ラプソティ』で再ブームメント巻き起こした『Queen』の名曲
♪Queen - Don't Stop Me Now
https://www.youtube.com/watch?v=HgzGwKwLmgM
外のスピーカーから、夜明け前の牧場へと響き渡った―――――
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