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( ^ω^)運命と戦う仮面ライダーのようです part2

25318話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:19:27 ID:koJKWyzA0


 トレイに収納されていたカード……それは、♣のカテゴリーA。
 蜘蛛のアンデッドが封印されているカード。

 カードを目にした瞬間、ドクオの目の前を"闇"が覆い始めた。
 広がる闇の中に見えるのは、縦横無尽に張られた蜘蛛の巣。
 たくさんの小さな蜘蛛の子が巣の上で蠢いている。

 そして、ドクオの前に、封印されたはずのカテゴリーAが姿を現した。


(;'A゚)「うわあぁあっ!!な、なんだ…??なんだ!?!?」

( \品/)『コノ時ヲ待ッテイタ……』


 ドクオの頭の中に、カテゴリーAの歪な声が響く。
 聞き覚えのある声に、悪夢が再び蘇る。


(;'A゚)「あ……あ……!お前は……ッ!!!」

(;'A゚)「な、な……何で!?封印されたんじゃなかったのか…!?」

( \品/)『俺ヲ真ニ封印スル事ナド、出来ハシナイ…!』


 カテゴリーAの発した無数の蜘蛛の糸が、ドクオの身体を縛り上げる。
 身動きの取れず、ただただ恐怖のみが募ると同時に……意識が遠のいていく。
   

(;'A`)「助けてくれ……ぇ……!」

(; A )「ブーン……」


( \品/)『サァ……俺ヲ受ケ入レロ……!!』


.

25418話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:19:50 ID:koJKWyzA0










( A )「………」


 ドクオの表情から色が消えた。

 愛用していたはずのバイクにも乗らず、導かれるように何処かへと歩き出す。





 ――右手に、レンゲルのベルトを握り締めながら。





.

25518話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:20:13 ID:koJKWyzA0





 ――――― 
 



.

25618話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:21:25 ID:koJKWyzA0


 一方、未だ眠ったままのでぃを介抱しているブーンとクー。
 でぃが目が覚める時を、ただただ待っていた。
 

( ^ω^)「………」

川 ゚ -゚)「………」


 お互いに言葉を発さず、重苦しい空気が家の中に漂う。
 一波乱あったせいもあり、余計にそう感じるのかもしれない。


川 ゚ -゚)「……おい」


 その沈黙は、意外な事にクーから破られた。


( ^ω^)「なに?」

川 ゚ -゚)「……この子を、頼む」

( ^ω^)「は……?」


 唐突過ぎる言葉に思わず拍子抜けしてしまった。
 クーは一言だけそう残すと、座敷から立ち上がり家を出ようとした。


( ^ω^)「ちょ、ちょっと待ってお!どこ行くんだお??」

川 ゚ -゚)「この子の元に私が居ては、迷惑が掛かる」

( ^ω^)「え……」

25718話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:21:56 ID:koJKWyzA0


川 ゚ -゚)「元はと言えば、私が此処に住もうとしたばかりに奴を封印する事になってしまった。
     理由はどうあれ……でぃちゃんにとって、奴は家族のような存在だった」

川 ゚ -゚)「やはり私は……人と共に居てはいけないらしい」


 バーボンハウスを出た理由と同じ事を言っている。
 クーなりに、モスの封印に至ってしまった事への罪悪感を感じているようだった。

 人に心を開いてしまえば、その人に迷惑を掛ける事になる。

 悲しいアンデッドの運命を、改めて実感していた。



(#っ ;;-)「んん……」


 クーが家を出ようとしたその時、でぃが深い眠りから覚めた。
 目を擦りながら、ゆっくりと上半身を起こす。


( ^ω^)「でぃちゃん!目が覚めたかお……!」

川 ゚ -゚)「………」

(#゚;;-゚)「あれ…お兄さん、いつから居たの?」

( ^ω^)「えっと…ついさっき来たばっかだお」


 先程の状況とは打って変わっているにも関わらず、目覚めたばかりのでぃはとても落ち着いているように見える。
 そして、次にでぃが発した言葉に、ブーンとクーは心を強く打たれる事になる。



(#゚;;-゚)「お姉さんも、どっか行っちゃうの??」

25818話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:22:26 ID:koJKWyzA0


川 ゚ -゚)「……!」

( ^ω^)「でぃちゃん…?」


 クーの無機質な表情が、露骨に変化を見せた。
 確信に迫ったような言葉に、どんな顔をすればいいか分からないといった表情だ。


(#゚;;-゚)「……モス、いなくなっちゃったんだね」

川 - )「でぃちゃん……モスは――」

(#゚;;-゚)「私が眠ってる時……モスの声が聞こえた気がしたの」



(#゚;;-゚)「もう、でぃとは一緒にいられないんだ……僕は遠いところに行かなきゃならなくなっちゃった。
    僕を助けてくれてありがとう、僕みたいな化け物を…愛してくれてありがとう。って」



( ´ω`)「………」

川  - )「……すまない、本当に……」


 胸がギュウッと締め付けられるように痛い。

 アンデッド同士の戦いのはずなのに、こんなに苦しいのは何故なのだろう。
 モスを封印してしまう時も、似たような気持ちになった。
 カテゴリーQが言っていたように、戸惑いがあったのかもしれない。

 本当の自分を見失っているのか。それとも、新しい自分へと生まれ変わろうとしているのか。
 
 複雑な思いが、クーの心の中で絡まっていた。

25918話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:23:09 ID:koJKWyzA0


( ´ω`)「……でぃちゃん、これ……」


 ポケットから、先程拾った紙を取り出しでぃに差し出す。
 紙を受け取ったでぃは、丁寧に紙を広げていき、紙に書かれた文字に目を通す。


(# ;;- )「……ッ……」

(#;;;-;)「ぐすっ……」


 紙には、お世辞にも綺麗とは言えない字が書かれていた。
 文字を書き始めた幼稚園児、それと同等な程に汚い字で一言。


 ――『でぃ だいすき』、と。



(#;;;-;)「うううぅ……っ、うええええええええええええん!!モス……モスぅ……!!」

( ^ω^)「モスは、でぃちゃんの心の中にちゃんといるお……」


 モスの遺した手紙を抱き締め、泣き崩れた。
 でぃの背中に手を添え、宥めるようにぽんぽんと優しく叩く。


( ^ω^)「そうだおね、クーさん」

川 ゚ -゚)「………ああ」


 モスが封印された♥8のカードを取り出し、カードとでぃを交互に見遣る。
 言い表しがたい感情に、クーの心は支配されていた。
 理由はどうあれ、この悲しい現状を生んでしまったのも自分なのだから、と。

26018話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:23:44 ID:koJKWyzA0


(# ;;- )「……ぐすっ、ちょっとだけ…一人にさせて」

( ^ω^)「…うん、分かったお」


 溢れる涙を拭いながら、涙声で訴える。
 今はそっとしておいてあげた方がいい…そう判断し、素直に聞き入れると大人しく家の外へと出た。

 外に出た二人は家から距離を取り、そびえ立つ木に凭れ掛かる。


( ^ω^)「これからどうするんだお…?」

川 ゚ -゚)「さぁな……ただ、私は私の戦いを続ける事に決めた」

( ^ω^)「……ねぇクーさん、僕達一緒に戦う事は出来ないのかお?」

川 ゚ -゚)「……」


 ブーンの問いに答えず、無言で向けた視線。
 その視線が何を意味しているかはすぐに理解出来た。
 

( ^ω^)「その目は……無理って目をしてるお」

川 ゚ -゚)「私は私の為の戦いをするだけだ。お前とも馴れ合いをするつもりはない……でも」

( ^ω^)「……でも?」

川 ゚ -゚)「君に助けられた事は……感謝する」
 

川 ゚ -゚)「……ありがとう」

26118話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:24:26 ID:koJKWyzA0


( ^ω^)「え…」

( *^ω^)「……ふふふ」


 思いがけないクーの感謝の言葉に、一瞬呆然としてしまったが、すぐに嬉しさや喜びは実感出来た。
 
 これまで、身近な存在でありながらクーとは敵対を余儀なくされていた。
 クーがアンデッドである事を知った時は激情に駆られた事もあったが、自分を信じてよかったとも思える一瞬だった。


( ^ω^)「でも…バーボンハウスに戻らないって言うなら、せめてでぃちゃんの傍に居てあげた方がいいお」

川 ゚ -゚)「それは……」

( ^ω^)「駄目だお!迷惑迷惑って、自分で居させてってお願いしたんだからその責任くらい果たせお」

川 ゚ -゚)「………」


 答えに迷うクーだが、内心は少しほっとしている。
 自分は、此処に居ていい。そう思えたからだ。


( ^ω^)「今日は僕も泊まるから…クーさんが夜に抜け出さないように監視するお」

川 ゚ -゚)「……お前にそんな事されなくても、私は抜け出したりしない」


 結局ちゃんとした答えは出さなかったが、ブーンへの返事こそが答えでもある。
 
 背を預けた木から離れ、クーは一人でぃの家へと戻って行った。

.

26218話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:24:57 ID:koJKWyzA0


 ――――――
 ――――
 ――


 ――その日の夜。

 暗闇に包まれた森の中で、一人の若い女が妖しく笑みを浮かべている。
 その女の前には、一体の歪な化け物。

 
(*゚∀゚)「アヒャヒャ……あの女も悪い事教えてくれるなぁ〜本当」

『ビェヤアアアアァ……!』

(*゚∀゚)「あ、戦う気はないよ〜?アンタにお願いしたい事があってさぁ……」

(*゚∀゚)「街中にね、カリスが大事に大事にしてる人間がいるのよ〜。
     そいつ等攫って、カリスを襲って欲しいんだよね〜」

(*゚∀゚)「あ、出来ないってのは無しね?もし逃げたりしたら――」


 一瞬だけ、カテゴリーQのシルエットが変わった。
 頭部に多数の角を持ち、三つ並ぶ顔が見え……。


(*゚∀゚)「――アンタをボコボコにして、ライダー達の前に放り投げてやるから」

『………!!』

(*゚∀゚)「フフフフ……アヒャヒャヒャヒャ!!!」


.

26318話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:25:28 ID:koJKWyzA0





 ―――――




.

26418話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:26:01 ID:koJKWyzA0


 ――翌日。

 家主のいない夜を過ごしたブーンの家には、モララーとギコが集まっていた。
 ソファに座っている二人の前には……ジョルジュが一人、床に座らされている。

 _
(;゚∀゚)「本当に……本当にすみませんでした!!」


 床に額を付け、土下座をする。
 モララーは落ち着いた様子だが、昨日ジョルジュに口を酸っぱくしていたギコは怒り心頭だ。
 

(,,゚Д゚)「何故レンゲルのベルトを使った?」
 _
(;゚∀゚)「……それは……」

(,,#゚Д゚)「お前……あれ程言ったのに何故分からない!?」

ξ゚⊿゚)ξ「!?」


 ソファから腰を上げ、土下座をするジョルジュの頭を強引に上げさせ胸倉を掴みかかった。


( ・∀・)「ギコさん、落ち着いてください!」

(,,#゚Д゚)「……ッ!」
 _
(;゚∀゚)「………」


 モララーの制止に従い、ギコはジョルジュの胸倉を離す。
 だが、その場に留まり依然として怒りを露にしたままだ。

26518話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:26:38 ID:koJKWyzA0

 _
( ゚∀゚)「……レンゲルのベルトを手にした時には、もう俺の意志じゃなかったんです」

(,,゚Д゚)「なに?」
 _
( ゚∀゚)「カテゴリーAのカードを見た時……目の前に、急に闇が広がったんです。
    そこには、すげぇ数の蜘蛛の巣があって……」
 _
( ゚∀゚)「何か、意識が蜘蛛の糸に絡め取られるっていうか……全然動けなくなって。
    だって俺、レンゲルのベルトが引き出しに入ってたなんて知らなかったっすから」
 _
( ゚∀゚)「変身してる時も、自分の意識はありました……でも身体が言う事を聞かなかった。
    何かこう、違うものに俺の意志を支配されてる感覚で……」


(,,゚Д゚)「……それこそが、カテゴリーAの支配だ」


 ジョルジュが語る内容、全部がカテゴリーAの手によるもの。
 ロマネスクが危惧していた事が、全て現実となっていたのだ。

 だが、話を聞いていたモララーには、一つだけどうしても分からない事があった。


( ・∀・)「ちょっと待ってください。ジョルジュお前、カードを見たらそうなったのか?」
 _
( ゚∀゚)「はい…」

( ・∀・)「……所長から聞いた話では、レンゲルに変身した時にカテゴリーAの邪悪な力が反映される。というものだった」

( ・∀・)「でも、カードを見た時点でお前はカテゴリーAの支配を受けた……。
      何故だ?アンデッドは封印されてしまえば、自ら外部へ力を発信出来ないはず」

ξ゚⊿゚)ξ「確かに、何か変だったわ。こいつカードを見てすぐにおかしくなったもの。
      私の事、お構いなしに突き飛ばして……」
 _
(;゚∀゚)「そ、それは…うん、すまねぇ。意識はあったけど、それも俺の意志じゃないんだ」

26618話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:27:41 ID:koJKWyzA0


( ・∀・)「……俺の封印に、不手際があったのか?」


 問題となっているカテゴリーAを封印したのは、モララーだ。
 感覚的には、それまで行ってきたアンデッド封印の方法とまったく一緒だった。
 不手際があったと自分の所為にする事は簡単だが……肝心な不手際に心当たりが無いまま。


( ・∀・)「だとしたら……俺の所為だ。俺が、自分の力でちゃんと封印していれば……」

ξ゚⊿゚)ξ「そんな事は……!」
 _
( ゚∀゚)「そうだよ、モララーさんは悪くねぇ!悪いのは俺だ。
    俺が、ライダーへの憧れを捨て切れてなかったから……」

(,,゚Д゚)「やめろ、罪の被り合いをしたところで何も解決しない。
    菱谷の話も気掛かりだが……レンゲルのベルトを見つける事が先決だ」

(,,゚Д゚)「だがジョルジュ、お前は関わるな。またカテゴリーAがお前を狙うかもしれないからな」
 _
( ゚∀゚)「……はい」

( ・∀・)「俺も協力します。レンゲルのベルト探しを…」


 ジョルジュの前から立ち上がったギコは、今度はモララーに詰め寄り始めた。
 

(,,゚Д゚)「…一日経ったが、まだお前の心は変わらないのか?」

( ・∀・)「何がですか?」

(,,゚Д゚)「とぼけるな。ギャレンに戻るつもりはないのかと聞いてるんだ」

26718話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:28:24 ID:koJKWyzA0


( ・∀・)「………」


 ライダーを辞めると告げてから一日が経ったが、モララーの心は変わっていなかった。
 ギコの問いに答えず、思わず目を背けてしまった。


(,,゚Д゚)「アンデッドはまだたくさん蔓延っている、レンゲルという脅威も生まれてしまったんだぞ。
     ブレイドだけでどうにかなると思うのか?」

( ・∀・)「……すみません、俺にライダーはやれません」

(,,゚Д゚)「……真面目過ぎるのはお前の悪いところだぞ、菱谷」

( ・∀・)「はい…すみません」

ξ゚⊿゚)ξ「モララーさん……」


 ――その時、アンデッドサーチャーの警報音が室内に鳴り響いた。
 緊迫感迫る警報音に、全員の視線が集められる。
 
 すかさずPCの前にツンが移動。キャッチした情報の詳細に目を通す。


ξ゚⊿゚)ξ「アンデッドの反応を確認!場所は街中……バーボンハウスが近い!?」
 _
( ゚∀゚)「バーボンハウスに!?」

ξ゚⊿゚)ξ「待って!何処かへと移動してるわ…私はブーンに連絡する!
       ジョルジュ、あんたはバーボンハウスに連絡して危険を報せて!」
 _
( ゚∀゚)「分かった!」

 
 ツンの後ろでアンデッドサーチャーの反応を見ていたギコは、引き出しからギャレンバックルを取り出し、
 ソファで佇むモララーに差し出した。

26818話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:28:46 ID:koJKWyzA0


(,,゚Д゚)「どうする?人が襲われているぞ、この期に及んでもまだライダーを拒むのか?」

( ・∀・)「………俺は……」
 

 ギコの言う通り、こうしている間にも人が襲われているかもしれない。
 だが、差し出されたギャレンバックルを受け取る事はせず、モララーは顔を伏せてしまった。


(,,゚Д゚)「……そうか」


 差し出したギャレンバックルを掴む右手を引き戻す。
 ギャレンに戻る事を拒んだモララーに対して、あっさりと退いたギコ。
 
 すると、ギャレンバックルを懐へとしまい……


(,,゚Д゚)「もういい、お前がどうしても拒むというのなら……」




(,,゚Д゚)「……俺が行く!」

.

26918話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:29:12 ID:koJKWyzA0


( ・∀・)「……!」

ξ゚⊿゚)ξ「えっ…!?」
 _
( ゚∀゚)「ギコさん!?」

(,,゚Д゚)「ギャレンのレッドランバスは俺が預かるぞ!」


 ギャレンバックルを持ったまま、ギコはブーンの家を出て行ってしまった。
 今までモララーが愛用していたレッドランバスに乗ったギコが、排気音を鳴らしながら走り去って行く。


ξ゚⊿゚)ξ「だ、大丈夫なの!?」
 _
( ゚∀゚)「大丈夫だろうけど……いいのかよ、モララーさん」

( ・∀・)「……ギコさんなら、ギャレンを使いこなせる。俺なんかよりもずっと頼りになる」

( ・∀・)「これでいいんだ。俺にはもう……ライダーの資格は無いよ」

ξ゚⊿゚)ξ「………」


 二人の目から逃れるようにして、窓の縁に立ち外の景色を眺めた。
 
 これでいい。
 そう言い切るモララーの目に、どこか強がりさえ感じられた。

 胸の内に潜む、本心を押し殺したような……。


.

27018話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:29:47 ID:koJKWyzA0


 アンデッドの反応を掴んでいたのは、ツン達だけではなかった。


川 ゚ -゚)「――!!」

( ^ω^)「どうしたお?」


 クーの脳内に、声が流れ始める。
 不気味さを感じる、アンデッドの歪な声が。


『――カリス……』

川 ゚ -゚)「アンデッド……!」

( ^ω^)「!?」


 己の存在を知らしめるべくクーを呼ぶ声。 
 アンデッドの声の後……クーの脳内に、ひとつの映像が送り込まれて来た。


川;゚ -゚)「!!!」


 カメラを通して映像が送られるかのように、アンデッドの目に映る光景が広がっている。
 
 薄暗い廃墟。その中に倒れた人間。
 大人の男性と、少女の二人組……。
 
 二人の姿が見えた途端、クーの顔は青ざめ狼狽え始めた。
 顔を見ずとも、目の前に倒れている人間が誰かを、クーが一番良く知っているからだ。



川;゚ -゚)「ショボンさん……あまねちゃん……!!」

.

27118話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:30:20 ID:koJKWyzA0


( ^ω^)「二人がどうしたんだお!?」

『――キサマ ノ 弱点 ハ コノ人間ドモ ダ……』

川;゚ -゚)「やめろ……その人達に手を出すな!!」

『――ナラバ 来イ… コノ人間 ノ 命ハ 無イゾ……!』

川;゚ -゚)「よせ!おい…?おい!!」


 ――ここでアンデッドの声は途絶えた。
 クーの声は聞こえているはずだが、それ以上の答えは返っては来ない。

  
川;゚ -゚)「くっ……!」


 向かわねば、ショボンと渡辺の命は無い。
 
 二人のものを離れ、縁を断ち切ろうとしたはずだった。
 しかし今、自分の所為でその二人に危険が迫っている。

 何より、二人の命を助けたい…その一心が、クーの冷静さを奪い熱く突き動かした。

 
( ^ω^)「クーさん!何があったのか教えてくれお!」

川;゚ -゚)「あまねちゃんとショボンさんが、アンデッドに攫われた……」

( ^ω^)「何だって!?」

27218話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:30:44 ID:koJKWyzA0


川;゚ -゚)「でぃちゃんを頼む……!」

( ^ω^)「えっ、ちょっと…!」


 ブーンの返事を待つ時間は無い。
 血相を変えたクーは、戸を乱暴に開けては慌ててでぃの家を出た。
 直後、外からはバイクの排気音がけたたましく聞こえる。

 何も言えずクーの背中をただ見送ってしまったブーンのスマホに、着信が入った。
 ツンからの電話だ。恐らく、クーが感じ取ったアンデッドの反応だろう。


( ^ω^)ロ 「ツン!アンデッドがショボンさんとあまねちゃんを攫ったかもしれないお!」

[ えっ、何でその事を…!?確かに今キャッチしたアンデッドは、バーボンハウス付近に出没したわ。
 その後、何処かに移動したのを確認出来た!]

[ 駄目だ、ショボンさん電話出ねぇよ!]


 電話の向こうから、焦り交じりのジョルジュの声が聞こえた。
 クーの言っていた事が本当なら、既に手遅れという事だ。


( ^ω^)ロ 「やっぱりそうなのかお……!」

[ 今、ギコさんがアンデッドのもとへと向かったわ。ブーンも行ってあげて!]

( ^ω^)ロ 「う……でも、今は……」





(#゚;;-゚)「お兄さん、行って」

27318話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:31:09 ID:koJKWyzA0


( ^ω^)ロ 「でぃちゃん…?」


 部屋の奥で一人落ち込んでいたでぃが、ブーンのもとへとやってきた。
 ブーン達の会話が、何を意味しているのか。
 モスとの事を体験したでぃには、多少なりとも理解出来ていたらしい。


(#゚;;-゚)「あのお姉さんの大事な人が、化け物に捕まっちゃったんでしょ?助けに行ってあげて、もう私は大丈夫だから」

(#゚;;-゚)「……もう、私とモスみたいな悲しいお別れが起きるのは…嫌だから」

( ^ω^)ロ 「………」

[ ブーン?どうしたの??]

( ^ω^)ロ 「ツン、今から僕も向かうお!」


 でぃの言葉で迷いは吹っ切れた。
 ツンに一言告げ一方的に電話を切ると、でぃに向かい合い頭を撫でる。


( ^ω^)「終わったらすぐ来るから、心配しないで?でぃちゃんはもう一人じゃないお!」

(#゚;;-゚)「………」


 特に反応も見せず、ただ撫でられる。
 そんなでぃに満面の笑みを向け、クーに次いででぃの家を出た。





(#゚;;-゚)「……これも、モスが遺してくれた事なんだよね」

(#゚;;-゚)「ありがとう……」

.

27418話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:31:38 ID:koJKWyzA0





 ―――――




.

27518話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:32:09 ID:koJKWyzA0


 ――所々穴の空いた天井から、薄暗い廃墟に光が差し込む。
 中はひどく朽ちていて、瓦礫は床に散らばっていて埃に塗れている。
 部屋を構築していたであろう壁は崩れ切っている為、全体が大きな空間と化していた。
 とても人が出入りするような場所ではない。
 
 そんな廃墟に、気を失い瓦礫の上で横たわるショボンと渡辺がいた。
 

(´-ω-`)「んん……」

(´・ω・`)「……なんだ此処、何処なんだ…?」


 目を覚ましたショボン。
 見覚えのない場所・光景が目に飛び込み、すぐに不安を覚えた。
 隣で眠る渡辺の身体を何度も揺さぶる。


(´・ω・`)「あまね、あまね!起きて!」

从- -从「ん……」

从'ー'从「ショボンさん…!さっきの化け物は!?」

(´・ω・`)「分からない…どうやら、連れて来られたみたいだね……」

::从;'ー'从::「や、やだ…怖いよぉ……!」


 アンデッドに襲われた記憶が最後だった。
 加えて、目が覚めたら全く知らない場所にいる。
 こんな時こそ冷静に……というショボンに対し、逆に混乱に陥ってしまった渡辺。
 身体を震わせながら、恐怖のあまり強くしがみ付いた。


(´・ω・`)「大丈夫だよ、あまね。僕がついてるから…!」

::从;'ー'从::「クーさん…!クーさん、助けて……!」

27618話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:32:30 ID:koJKWyzA0


『ビェエアアアアアアア……』

Σ从;'ー'从「ひっ…!」

Σ(;´・ω・`)「!?」


 突如、廃墟内にうるさく鳴り響く不快な羽音。
 自分達以外の、不気味な唸り声も聞こえてきている。

 そして、恐怖を煽る音を発している正体が、上空からショボン達の前に舞い降りた。
 その姿を見るなり、二人は恐れおののく。


 全身を覆う多数のトゲ。
 歯を剥き出しにしたような不気味なデザインの黒い仮面。
 襟元からは、背中にかけて蜻蛉のような薄い羽が生えている。

 不快な羽音は、この羽を羽ばたかせて飛行していた事によるものだった。


(;´・ω・`)「どうするつもりだ…こんな所に連れて来て!」

从 ー 从「――……」

(;´・ω・`)「あまね!?あまね!!」


 渡辺を抱きながら、近付く蜻蛉のアンデッドから後退りする。
 あまりの恐怖に、渡辺は再び気を失ってしまった。
 
 
『ビイイイイィ……、……!』


 言い表しがたい鳴き声を発しながら近付くアンデッドの足が止まった。
 そして、表から聞こえるバイクの排気音にいち早く気が付き、再び羽を羽ばたかせ浮遊しながら廃墟の外へと出た。

27718話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:33:28 ID:koJKWyzA0


 外に出た蜻蛉のアンデッドは、こちらに迫るバイク……そしてその正体を確認。
 地上に降り立ち、待ち望んでいた人物の到来に敵意を見せ始めた。


 蜻蛉のアンデッドの前にまず現れたのは、挑発を受けたクー。
 バイクから降りると、脱いだヘルメットを乱暴に投げ捨てた。
 二人を攫われ、自分を釣る為のエサにされた事で、怒りは頂点に達していた。


川#゚ -゚)「――貴様、死にたいらしいな」


 腰にはカリスラウザーを召喚。
 カードを右手で取り出し、鋭い目で睨み付けながら蜻蛉のアンデッドへと歩み寄る。


川#゚ -゚)「望み通りにしてやる…!変身!!」
   っ□


    【 -♥CHANGE- 】


 カリスへの完全な変身を待たず、過程のオーラを浴びながら駆け出した。

 変身を終えたカリスは、カリスアローの弓矢を前方に射出しながらアンデッドに接近。
 羽を羽ばたかせ宙に浮上する事で弓矢を回避するアンデッドだが、その回避行動は既に予測されていた。

 迅速にカリスラウザーを武器にセットし、一枚のカードをラウズする。

 
( <::V::>)『逃がさん!!』


    《-♥7 BIO-》


 カードの力を吸収した右手から、三本の太い蔓を放出。
 空中を飛ぶアンデッドの脚を捕獲し、力任せに己の方へと牽引した。

 自身の力以上に牽引する力が強く、為すがままに空中より引き摺り下ろされる。

27818話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:34:13 ID:koJKWyzA0


 降下の途中でもカリスの攻撃は絶えなかった。
 カリスアローを上空のアンデッドに構え、弓矢を絶え間なく射出。
 身動きが取れないアンデッドに、無数の弓矢が被弾した。


『ビイイイイィッ…!!』

( <::V::>)『はっ!!』


 矢の攻撃を浴びながら、アンデッドはすぐにカリスの眼前まで接近。
 激突寸前まで引っ張ると、カリスアローを横薙ぎに振り払い斬り付けた。

 斬撃を受けながらも、前転し受け身を取り転倒は免れた。
 だが、起き上がったばかりの隙をカリスが見逃す訳が無い。


( #<::V::>)『貴様は簡単に眠らせてはやらんぞ…!!』


 既に接近していたカリスは、カリスアローを思いのままに振るい始める。
 俊敏に躍動する両刃が、アンデッドの異形の身体を幾度となく刻む。
 
 刃が肉を切り裂く度に周囲に飛び散る緑色の血。
 カリス自身も返り血を浴び、顔面や胴体に飛沫を付着させながら、それでも華麗に舞い続けた。


 目にも留まらぬ執拗な連撃で、しばらくカリスの攻勢は続く。
 反撃の隙も無く攻撃に晒され続けるアンデッドは、早速片脚のバランスを失い始めた。


( <::V::>)『てやあぁッ!!』

『グギャアアアァァッ……!』


 カリスアローを斜め上に振り上げ、連撃の最後を飾る大振りな一撃がアンデッドを吹き飛ばした。
 力無く吹き飛び、アンデッドは受け身も取れず地面に転がる。

27918話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:34:46 ID:koJKWyzA0


 そこに、クーの後を追ってきたブーンが到着した。
 変身を済ませており、既に繰り広げられている戦闘を前にブレイドは剣を抜いた。

 此処に来るはずのないブレイドの存在に気付き、カリスは思わず振り向く。


( <::V::>)『お前、何故来た!?』

( OwO)「でぃちゃんに頼まれたんだお。これ以上、自分と同じ悲しい別れは見たくないって!」

( OwO)「僕もでぃちゃんと同じだお。クーさんとあまねちゃん達の別れは、見たくない!」

( <::V::>)『………』


 ブレイドの言葉を通して、でぃの声が聞こえた気がした。
 自分の手でモスを封印し、でぃを悲しみに突き落としてしまったたカリスには、その言葉は痛い程に突き刺さっている。

 今、二人が危険な目に合い自分が激情しているように、きっとでぃも同じ気持ちだったのだろうか……。


『……ッ!』

( OwO)「あっ!?」


 突如、不愉快な羽音がカリスの背後から喧しく聞こえ始める。
 ぐったりと倒れていた蜻蛉のアンデッドが宙に浮き、逃げ出してしまった。

 ぼんやりと考え込んでしまったカリスの隙を突き、衰弱した蜻蛉のアンデッドは逃亡を図ったのだ。
 

( <::V::>)『ちっ、まだ逃げれるだけの余力はあったか…!』

( OwO)「急いで追わないと!」

( <::V::>)『私が追う、お前はあまねちゃん達を頼む!』
 
( OwO)「えっ……分かったお!」


 でぃの善意を受け取ったのか、ブレイドに二人を任せカリスは単身アンデッドの追跡を開始。
 脳波で呼び寄せたシャドーチェイサーに飛び乗ると、疾風の如く速さで走って行った。

28018話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:35:16 ID:koJKWyzA0


 残されたブレイドは、ツン達に応援を依頼した後、二人が捕われている廃墟の中へと入った。
 邪魔な壁をぶち壊し、瓦礫を掻き分けて進む。
 やがて広々とした空間に出ると……そこに、不自然に佇む二人の人間を見つけた。


( OwO)「ショボンさん!!あまねちゃん!!」

(´・ω・`)「!?この声は、ブーン君…!?」


 ブーンの声がするな否や、ショボンは声のする方へと視線を向ける。
 だが、視線の先に居たのはブーンではなく、見た事の無い人の形をした何かだった。
 仮面ライダーの姿を見たことがないショボンにとっては恐怖でしかなく、近付いて来るブレイドに対し警戒する姿勢を見せた。


( OwO)「安心してください!僕です、剣藤ですお!」

(´・ω・`)「ブーン君……!?その姿はなんだい!?」

( OwO)「後で説明しますお、とにかく今は逃げましょう!立てますかお?」

(´・ω・`)「ああ、僕は大丈夫だ…それより、あまねが気を失ってしまっているんだ」

( OwO)「僕が背負いますお!」


 ブレイドは気を失ったままの渡辺をひょいと楽々背負い、二人が怪我をせぬよう慎重に廃墟の外を目指す。
 
 やがて廃墟の外へと出ると、応援を依頼したツン達が既に廃墟前に待機していた。
 中には、モララーの姿も見える。

28118話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:35:59 ID:koJKWyzA0


ξ゚⊿゚)ξ「ショボンさん!大丈夫ですか!?」

(´・ω・`)「ツンさん、ジョルジュ君も……助けに来てくれたのかい?」
 _
( ゚∀゚)「二人がアンデッドに攫われたと思って、ブーンの連絡受ける前にこっちに向かってました」

(´・ω・`)「すまない、ありがとう…本当に助かったよ」

( OwO)「あまねちゃんが気を失ってる、早く車に乗せてあげて!」
 _
( ゚∀゚)「おう!」


 モララーが後部座席の扉を開け、ツンとジョルジュの手を借りながらゆっくりとシートの上に寝かせた。
 

( ・∀・)「剣藤、アンデッドは?」

( OwO)「逃げました。さっきク……いや、カリスが追って行きましたお」

(´・ω・`)「そのアンデッドっていう化け物、最近ニュースでよく取り上げられてる奴かい?何でそんなのが僕達を狙ったんだ……」

( OwO)「………」


 理由は知っているが、言えるはずもない。
 困惑するショボンをひとまず車に乗せ、ツンとジョルジュは二人を安全な場所に避難させる為、先に出発した。

 残ったブレイドとモララーは、逃亡した蜻蛉のアンデッドを追う事に。


( ・∀・)「ギコさんが一人で向かったはずなんだ、まだ見てないか?」

( OwO)「ギコさんが?僕が来た時には、カリスがアンデッドと戦ってるだけでした」

( ・∀・)「そうか……俺達も急ごう」

( OwO)「はい!」

.

28218話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:36:26 ID:koJKWyzA0

 ――――――
 ――――
 ――


『ゼェ……ゼェ……』


 逃亡に成功したものの、身体のダメージは大きく逃げるにも負荷が掛かりすぎた。
 息を切らしながら壁に凭れ、わずかな休息を取る蜻蛉のアンデッド。
 身体の至る所から血は流れており、滴り落ちた血を辿ってカリスが来てしまうかもしれない不安があった。
 自然治癒にも、大幅に時間を掛けなければならない。

 もう少しばかり休みたいところだが、無理を推してでも離れなければ。

 痛む身体に鞭を叩き、再び逃亡を再開しようとした時だった。


『ビイイィッ…!』


 眼前から、バイクが向かってくるのが見える。
 カリスとは別の、赤いバイクに乗った生身の人間が。

 アンデッドの前に停車したバイクから、乗車している人間が降りる。

 そして、アンデッドの前に立ちはだかった。







(,,゚Д゚)「アンデッド……貴様等に生きてる資格は無い!」

28318話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:36:56 ID:koJKWyzA0


 懐より取り出したギャレンバックルとカード。
 カードを慣れた手付きでバックルに装填し、腰にギャレンバックルをあてがう。
 本来の持ち主ではないギコの腰に、ギャレンバックルは進んで装着を迎え入れた。

 待機音が鳴り響く中、ハンドルに右手を掛け、そして……。


(,,゚Д゚)「変身!」


    【 -♦TURN UP- 】


 ターンさせたバックルからゲートを射出。
 モララーやブーンとは違い、歩きながらゲートを潜り抜け――ギャレンへと変身を遂げた。


『!?』

( OMO)「……コイツを纏うのも久し振りだな」


 当時、ギャレンの適合者として最初に選ばれたギコ。
 あの時変身して以来の感触、忘れようとしても忘れられなかった。

 両手を見つめ、今自分が再びギャレンに変身している事を実感する。

 あの時と違うのは……ライダースーツを纏い、アンデッドとこうして対面している事くらいだ。


( OMO)「これでもアンデッドとの戦いは初心者なんだ……お手柔らかにな…!!」
 

 拳と掌を強く打ちつけ、首をボキボキと鳴らす仕草からは信用ならない言葉だった。
 足をゆっくりと交互に前へと出しながら、徐々にそのスピードを上げ、果敢にアンデッドへと立ち向かった。

28418話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:37:23 ID:koJKWyzA0


 ギャレンとアンデッドが戦いを繰り広げ始めた時、後を追い掛けて来たカリスが到着した。
 

( <::V::>)『あいつは……』


 ギャレンの姿を見た瞬間、クーの頭に敗北の記憶が蘇る。
 府坂の言いなりと化していたモララーが変身したギャレンに、ほぼ一方的に打ちのめされた記憶が。

 だが、ギャレンの動きにどこか違和感を感じていた。
 戦い方が、モララーのそれとは違っていたからだ。



( OMO)「ふっ!……はっ!」

『ビギイイィッ…!』


 蜻蛉のアンデッドが突き出す拳、それらを全て的確に防ぐ。
 カウンターで繰り出されるのは、一発一発繰り出す速さが素早く重たい拳。
 アンデッドの胸部に拳が叩き付けられる度に、重く鈍い音が響く。

 一突きの勢いで後退りしたアンデッドが、ここで再び逃亡を図った。 
 大量の蜻蛉がアンデッドの周囲に召喚され、一斉にギャレンへと飛び掛かる。

 蜻蛉を囮にし、その間に逃げようという魂胆らしい。


 だが、ギャレンは蜻蛉の群れの襲撃を前転し回避。
 回避中にホルスターより引き抜いたギャレンラウザーを両手で構え、片膝を着きながら、
 逃亡せんと飛び立ったばかりのアンデッドに向け銃撃。


『グギイィッ!?』

 
 一発の弾丸がアンデッドの羽を貫き、見事に撃ち落した。

28518話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:37:49 ID:koJKWyzA0


( OMO)「逃がさん!」


 地に落としたアンデッドに向かい走り出すギャレン。
 起き上がろうとするアンデッドの頭部に、接近したギャレンはボールを蹴るかのような容赦のない蹴りを見舞った。

 今度は後ろ首を掴み無理矢理起き上がらせ、腹部に膝を何発も叩き込む。


( OMO)「どうだ…ッ!貴様等が与えてきた全ての痛みを味合わせてやる!!」

『グギィッ!グギャアアァッ!!』


( <::V::>)


 ギャレンの非情とも言える戦い方を、カリスはただ眺めているだけ。
 中身がギコである事は知る由も無いが……ギコの戦い方から、ひとつ見出したものがあった。


「クーさん!!」


 すると、カリスの背後から、ブルースペイダーに乗ったブレイドとモララーが到着。
 二人はブルースペイダーから降り、カリスの横に並び立つ。

 そして、アンデッドと戦うギャレンに視線は釘付けになった。


( ・∀・)「ギコさん…!」

( OwO)「あれが、最初の適合者が変身したギャレン……」

28618話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:38:36 ID:koJKWyzA0


( <::V::>)『何故ギャレンに変身しているのが貴様ではない?』

( ・∀・)「それは……」


 モララーに気付いたカリス。今度こそギャレンに敗北を喫した記憶が一致した。
 ブーンの隣に並ぶモララーに、赤い眼の鋭い眼光が向けられてる。

 睨まれている事を直感的に感じたのか、カリスに対して気まずさもあるモララーは目を逸らした。


( <::V::>)『……どうやら、貴様程には使いこなせていないようだぞ』

( ・∀・)「何…?」

( OwO)「クーさん、どういう事だお?」

( <::V::>)『あの戦い方を見て何も感じないのか?』


 カリスの言葉の直後、二人はギャレンの繰り広げる戦い方に注目する。





( OMO)「はあッ!」

『グウウウゥ……!』

( OMO)「どうした!?この程度の事では貴様等の罪は消えんぞ!!」


 最早、自分の力で立ち上がるのがやっとな程に弱ったアンデッドを、何度も何度も強引に起き上がらせている。
 そして、同じ箇所をこれでもかと言わんばかりに殴り続けていた。

28718話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:39:12 ID:koJKWyzA0


( <::V::>)『奴の戦い方からは、アンデッドを倒す為という目的が感じられない。
      真にアンデッドを憎んでいるからではない。
      まるで水を得た魚……力を得て、戦える事に活き活きとしている』

( ; ・∀・)「………」


 認めたくないが、カリスの言う通りに見えてしまう自分がいた。
 アンデッドを倒すのであれば、ライダーとしての力の使い方というものがある。

 だが、既に弱体化したアンデッドにトドメも刺さず、執拗に殴り続けるその様は……。


( OwO)「ギャレンという力を得て、その力を楽しんでる……?」

( ; ・∀・)「そんな事は有り得ない!ギコさんは意志の強い人間だ、そんな事は…!」

( <::V::>)『貴様が扱った方がより良い物であったろうにな。それに……』

( <::V::>)『私は貴様に借りがある、さっさとアレを取り戻して私と戦え。今度はぶちのめしてやる!』

( ・∀・)「………」

( OwO)「ちょ、待ってくれおクーさん!モララーさんはもう前とは違って……」

( <::V::>)『お前には関係ない。そいつと私の問題だ』

( ・∀・)「大丈夫だよ。俺はもう無駄な戦いはしない…それに、俺はライダーじゃない」

( OwO)「んぐぐ……」

( <::V::>)『……そろそろ私の獲物を返してもらうぞ』


 シャドーチェイサーから降りると、二人をその場に残し高々と跳躍。
 ひと飛びでギャレンとアンデッドのもとまで辿り着き、自ら戦いの中に加わって行った。

.

28818話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:39:43 ID:koJKWyzA0


( <::V::>)『そいつは私の獲物だ!!』

( OMO)「!?ぐはあッ!!」


 カリスの存在に気付いた時には、もう遅い。
 アンデッドに攻撃を加え続けていたギャレンの横っ面に、カリスの回し蹴りが直撃。
 

( OMO)「何だお前は…!?」

( <::V::>)『そいつは挑発してまで私を誘き寄せた、だから私の獲物だ。貴様には渡さん!』

( OMO)「誰の獲物とか、そんな事は関係ない!
      アンデッドは全て害悪に過ぎん、誰の手であろうが駆除するのが我々の役目だ!」

( <::V::>)『ならば何故さっさとトドメを刺さない?もうコイツに戦える程の力は無い』

( OMO)「念には念を押しているだけだ、お前こそ邪魔をするな!」


 いがみ合う両者。距離を取りながら警戒する。
 互いに武器を持ち、ギャレンはギャレンラウザーの銃口を。カリスはカリスアローを向け合う。


『………ッ!』


 この隙を狙い、ふらふらな状態のアンデッドはおぼつかない足取りで逃亡を再開する。
 散々痛めつけられ、最早飛行移動をする事さえ出来なくなっていた。

28918話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:40:21 ID:koJKWyzA0


( OwO)「ああもう、結局そうなってるじゃねぇかお…!」

( ・∀・)「このままではアンデッドを逃してしまう…剣藤、行け!」

( OwO)「了解!」


 二人を見かねたブレイドは、代わりにアンデッドを封印する為に動いた。
 その場から助走を付け大きく跳躍し、アンデッドの前に立ちふさがろうとした。


( OwO)「逃がさないお!僕がお前を――」


 ――その時。

 空中を移動している途中のブレイドに、一台のバイクが空中を走行しながら接近。
 

( OwO)「なっ!?」

( ・∀・)「!?」


 バイクの存在に気付くも、避ける事など出来はしない。
 明らかに衝突するタイミングで近付くバイクは、ブレイドの側面に容赦なく激突をかました。


( ; OwO)「どぅわあっ!?」

( ・∀・)「剣藤!!」

( OMO)「何だ!?」

( <::V::>)『……来たか』


 激突を受け、アンデッドの前に着地する前に落下してしまう。
 前触れなく現れた存在に、ブレイドとモララー、いがみ合うギャレンとカリス、アンデッド…全員の視線は嫌でも集まった。

29018話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:40:45 ID:koJKWyzA0


 ブレイドに激突したバイクは、全員に背を向けるようにして着地。
 
 そのバイクには見覚えがあった。


( OwO)「……!!まさか……!」


 緑色と金色のボディ、カウルには紫のクラブ。
 ライダー達の乗るバイクと類似したそれは、ジョルジュが最初に乗り付けていたものだ。


( ・∀・)「あれは…!?」


 ボトルグリーンのスーツに、金色の装甲。
 広々とした背中を持ち、スーツ越しに浮かぶ肉体は逞しい。

 腰に下げた棍棒のような武器を手に持ち、ゆっくりとブレイド達へと振り向く。
 
 

 そこに現れたのは……






( OHO)


( ; OwO)「レンゲル!?何で…誰が変身してるんだ!?」

29118話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:41:18 ID:koJKWyzA0

 
 再び姿を現した、第四の仮面ライダー・レンゲル。
 
 レンゲルのベルトは、ジョルジュがカテゴリーAに操られ変身をして以来消えたままだった。
 そのはずなのに、今こうして誰かが変身をして、目の前に現れている。


( ・∀・)「今度はジョルジュじゃない……一体誰が!?」

( OHO)


 全員の注目など気にする素振りは無い。
 レンゲルはアンデッドの前に立ちふさがり、じっくりと歩み寄る。


『ビイィイ……!!』


 新たな障害が出現し、身の危険を感じたアンデッド。
 磁力が反発するように、後退りをしている。


 右手に持った棍棒の武器を左手に持ち替え、脇に尖端部を抱えながら逆さに持つ。
 空いた右手で、右腰のカードケースを開きカードを一枚取り出す。
 柄の後端に備わったラウザーと思わしき部分に、カードをラウズさせた。


    《-♣6 BLIZZARD-》


 カードの紋章を受けたレンゲルの身体に、湯気が発つように冷気が纏い始める。

29218話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:41:45 ID:koJKWyzA0


( OHO)『ふっ!』


 アンデッドに向けその右手を伸長した瞬間、全身に纏った冷気が放出。
 咄嗟の回避も出来ないアンデッドは、レンゲルより放たれる冷気を正面から受けた。


『ウウゥギャアァア……!?』


 すると、冷気を受けたアンデッドの身体は……一瞬にして凍結された。

 ほんの一瞬の出来事だった。
 レンゲルの放った冷気に包まれた瞬間、アンデッドは凍て付く氷の中に閉じ込められたのだ。


( OwO)「アンデッドが、氷漬けにされた…!」


 氷のオブジェと化したアンデッドの腰にあるバックルは、開かれた状態となっている。
 
 レンゲルは再びカードを一枚取り出すと、アンデッドに向けカードを投擲。
 氷に突き刺さり、氷越しに蜻蛉のアンデッドの封印を始めた。

 カードにみるみる吸収され、氷ごとアンデッドは消失。
 レンゲルの手の中に帰還したカードには、"♥4 FLOAT"と記され蜻蛉の絵が描かれた。
 


( OHO)『……さぁ、次はお前達だ』


 カードケースにカードを収納すると、レンゲルは目の前の全てのライダーに向け指を差す。

29318話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:42:20 ID:koJKWyzA0


( OwO)「君は誰なんだ!?」


 レンゲルの得体が知れず、警戒しながらも問い詰める。


( <::V::>)『無駄だ。そいつもまた、カテゴリーAの支配下だ』

( OwO)「またカテゴリーAかお…やっぱり、レンゲルに変身すれば支配されるだけなのか……!」

( <::V::>)『貴様にも借りがある。正体は知らないが…貴様を倒す事には変わり無いな、カテゴリーA!』

( OHO)『来い…!』


 果敢にもレンゲルへ積極的に挑むカリス。
 初見時に一方的に打ち負かされた事が、悔しさとして残っているようだ。

 カリスアローを持ち直し、カリスはレンゲルへと突進。
 距離を一気に詰めカリスアローを振り下ろすと、レンゲルは武器でこれを防御する。
 
 鍔迫り合いとなると、カリスは体重を前に掛け強引に押し込む。
 力に押されてか後退するレンゲルだが……、


( OHO)『……どうした、カリス』

( <::V::>)『!?』


 武器を器用に駆動させカリスアローを絡め取ると、三枚刃が重なった鋭利な尖端でカリスを斬り付けた。
 

( ;<::V::>)『くっ…!』

( OHO)『もっとだ…もっと戦いを求めろ!』


 手放してしまったカリスアロー。
 攻撃を防ごうとする前に、レンゲルの武器は幾度もカリスを斬り付ける。
 戦いを求めろ……そう口にしながら、何かカリスに向け訴えるかのように。

29418話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:42:51 ID:koJKWyzA0


( OHO)『フンッ!』

( ;<::V::>)『うぐあぁッ!?』


 腹部に押し込むような蹴りを受け、後方へと押しやられる。
 受け身を取り咄嗟に立ち上がるカリスの横に、ブレイドが並び立った。
 ブレイラウザーを引き抜き、カリスは左手にカリスアローを呼び戻す。


( <::V::>)『チィッ…!』

( OwO)「やるしかないかお…!!」


 ブレイラウザーのオープントレイを展開し、"♠4 TACKLE"のカードを引き抜いた。
 同時にレンゲルもカードを二枚引き抜き、ブレイドよりも先に一枚のカードをラウズした。


    《-♣10 REMOTE-》


 もう一枚…先程封印したばかりの"♥4 FLOAT"のカードを宙に放り投げるレンゲル。
 ブレイドがレンゲルに続き、カードをラウズしようとした……。

 その時だった。

 レンゲルがラウズした"♣10 REMOTE"のカードから、ブレイドのカード・宙に投げたカードに向け二本の光線が射出。


( OwO)「うわっ!何だ!?」

( <::V::>)『あのカードは…まさか!?』


 光線を受けたカードは意志を宿したかのように宙に浮上。
 紫色の紋章が浮上するカードを通過した途端、カードが緑色に発光。
 カードの中より漏れ出す緑色の光。徐々に光の量は増幅し、光は異形の形を成し始め、そして――。

29518話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:43:28 ID:koJKWyzA0


『ビイイイィィィッ!!』

『グオオオオオォオオオッッ!!』


 ブレイドとカリスの前に、歪なその姿を現した。
 先程封印されたばかりの蜻蛉のアンデッドの身体には傷一つ無い。
 そして、元々封印されていた"♠4 TACKLE"からは、イノシシのアンデッドが解放された。


( ; OwO)「なっ!?」

( ; ・∀・)「アンデッドの封印が……解放された!?」

( OHO)『行け…!』

 
 解放された二体のアンデッドは、レンゲルの命令を受けブレイドとカリスに襲い掛かる。


( ; OwO)「ぐっ…!何でアンデッドの封印が!?」

( <::V::>)『奴が使ったカードの能力だ!封印を解き、操る事が出来る…!』

( ; OwO)「アンデッドを操るだって…!?」


 レンゲルが使用した"♣10のREMOTE"…カードに封印されたアンデッドを解放し、意のままに操る事が出来る能力を持つ。
 使い道さえ誤らなければ、心強い力になり得る。
 が……その使い道を誤れば、極めて危険なカードだ。

 二体のアンデッドの襲撃を受け、二人はアンデッドの相手をせざるを得ない状況となってしまった。




 その傍らで、戦いに加わらず混戦を見つめるギャレン。
 だが、ギャレンが本当に見ているのは混戦ではない。


( OMO)「あれが、レンゲル……」


 混戦の向こう側に見えるレンゲル、その勇壮たる姿をただ呆然と見つめていた。

29618話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:45:53 ID:koJKWyzA0


 ライダーとアンデッドの混戦の中、レンゲルが動いた。
 棍棒のような武器を両手に持ち、右手を後端に添える。

 すると、両手を反対側に引き、シャフト部に収納された武器の柄を伸長。
 最大まで柄が伸びたと同時に、尖端の三枚刃が♣のような形状に展開。
 棍棒と思われていた武器は、杖状の武器へと変化した。


( OHO)『ぬうああああぁッ!!』


 錫杖の武器――レンゲルラウザーを右手に構え、アンデッドと交戦するライダーに向け駆け出す。


( ; ・∀・)「剣藤!後ろだ!!」


 イノシシのアンデッドの相手を担っているブレイド、その背中を三枚の刃で叩き付けた。
 刃が背中を斬り付けた瞬間、錫杖の遊環が弾き合うような、透き通った音が響く。


( ; OwO)「うあぁッ!?」


 アンデッドに気を取られ背面の警戒を怠っていた。
 レンゲルラウザーの殴打に体勢を崩し、ブレイドは地に倒れた。

 レンゲルが戦いに介入した途端、二体のアンデッドは戦いを譲るかのように後退りを始める。


( <::V::>)『どうした!?全員まとめてでも構わないぞ!』

( ; OwO)「クソ…ッ!レンゲル……一体誰なんだ!?」


 ブレイラウザーを地面に突き刺し、杖にしながら立ち上がる。
 ブレイドとカリス、二人のライダーがレンゲルに対し戦闘の構えを取った。


( OHO)『過去の仮面ライダー共……最強のライダーの前に散るがいい!』


 カテゴリーAを封印した事で、ひとつの大きな脅威は去ったかと思われた。
 だが……封印されて尚、ライダー達を蹂躙する。

 蜘蛛の巣の罠は、既に至るところへと張り巡らされていたようだ……。

.

29718話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:46:15 ID:koJKWyzA0





     【 第18話 〜張り巡らされた蜘蛛の巣〜 】 終




.

29818話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:46:39 ID:koJKWyzA0

==========

 【 次回予告 】


(*゚∀゚)「つーか…あのレンゲルって奴、ちょっとばかり鬱陶しいなァ。アタシの事あんな軽く飛ばしてくれちゃってさ……」

「そろそろ、私達が動きましょうか」

(*゚∀゚)「だーかーら、最初からそうしようっつってんじゃん?雑魚差し向けたってこうなんのがオチよ」

「あれはお手並み拝見よ。少なくとも私が動く為の事前収集にはなったわ」

(*゚∀゚)「はいはい…汚れ役は全部アタシだもんね。別にいーけど」

(*゚∀゚)「じゃ……そろそろ本格的に動くとしますかァ」


 遂に、カテゴリーQが動き出す。

29918話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:47:17 ID:koJKWyzA0


(;'A`)「何でこんなに蜘蛛が…!?どうなってんだよ俺…!?!?」


 ドクオの身体から溢れる、蜘蛛の子の大群。
 カテゴリーAの意志を宿したレンゲルバックルが、ドクオに迫った。


    『――俺ヲ受ケ入レロ……』

(;'A`)「ッ…何で俺なんだよ!!俺はライダーになんかなりたくないんだって!!

    『――受ケ入レロ…俺ノ、力ヲ…!』

(;'A`)「やめろ……やめてくれ!!!」

(;'A`)「ッ――!!!」

30018話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:47:44 ID:koJKWyzA0


( OwO)「お前…!何を企んでんだお!」

(*゚∀゚)「企んでなんかないよ?もうそういうのアタシはやらないって決めたからさぁ。面白くないし?」

(*゚∀゚)「本当に面白いモノ、知ってたけど我慢してたんだよねェ。だから……」

(*゚∀゚)「今日は、楽しみに来ちゃった……!!」

(*>∀<)「フォオオオオオオオオオオオオオウッ!!!!」

( ・∀・)「!?」

( OwO)「それが、お前の正体か…!」


 アンデッドとしての正体を見せたカテゴリーQが、ブレイド達の前に現れる。
 府坂に続く上級アンデッドの力とは…!?

  、、
@*゚皿゚)@『さァて……楽しませてくれよなァ!!』

30118話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:48:19 ID:koJKWyzA0


(,,゚Д゚)「変身……!」


    【 -♣OPEN UP- 】


 そして、レンゲルバックルを手にしたギコが、自らレンゲルに変身してしまう事態に。


( OwO)「はっ…!?」

(;'A`)「ッ…!!」

( ; ・∀・)「ギコさん……!?何で!?」


 自分の意志でレンゲルへと変身したギコの目的とは?
 
 ギコさえも、敵となってしまうのか!?


 次回、【 第19話 〜操られる心〜 】

 ――今、その力が全開する!


==========

302 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:50:46 ID:koJKWyzA0
しおり

>>9 第15話
>>84 第16話
>>152 第17話
>>234 第18話

来週も投下できればします。
けどゴルフ中継で休止する可能性高いです。

303名無しさん:2017/12/10(日) 16:00:23 ID:c8UhxzcM0
おっ来てた来てた
乙!

304名無しさん:2017/12/10(日) 19:34:40 ID:ot0cYMdk0
りんごジュース飲みながら読も

305名無しさん:2017/12/11(月) 01:07:00 ID:j8uSiatQ0
レンゲル跳梁跋扈

306名無しさん:2017/12/11(月) 08:23:40 ID:ePn7iwB20
さりげなく草加のセリフ混ぜるのやめてちょっと笑う
来週も来てくれたら嬉しい

307名無しさん:2017/12/11(月) 09:44:51 ID:Z3e00BIA0
クーがちょっと打ち解けてきてるの嬉しい

308 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:25:04 ID:Naxzm9FU0





     【 第19話 〜操られる心〜 】




.

30919話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:25:39 ID:Naxzm9FU0


( OHO)『おおおおおおおおおおッッ!!』


 レンゲルラウザーを軽々と振り回し、ブレイド達に攻撃を仕掛けるレンゲル。
 ヒュンヒュン、と風を切る音が鳴り、武器同士が打ち合う激しい音が響く。


( ; OwO)「ぐうッ…!迂闊に近付けないお!」

( <::V::>)『くっ…!』


 長柄武器特有のリーチを活かし、相手の動きを牽制し続けている。
 二対一…その上、相手には戦いの巧者であるカリスが居るにも関わらず、全く引けを取らない。
 
 最強のライダーと称するに恥じない腕と力を、存分に見せ付けていた。


( ・∀・)「強い……あの戦況の中で、カリスにあれだけ善戦するなんて……」


( OwO)「何とかして止めないと…!」

( OHO)『ふんッ!!』

( ; OwO)「うわああぁっ!!」


 柄でブレイラウザーを弾かれ、ブレイドの顔面にレンゲルラウザーの後端による突きが命中。
 続いて流れるように横薙ぐレンゲルラウザーの三枚刃が、胴体を斬り付けた。

31019話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:26:04 ID:Naxzm9FU0


 ブレイドを攻撃している隙に背後に迫ったカリス。
 無言で迫るカリスの気配に気付き、レンゲルは振り向きざまにレンゲルラウザーを大きく上へと振り上げた。


( ;<::V::>)『ぐああぁッ…!!』


 位置まで予期していたかのように的確に振り上げたレンゲルラウザーが、カリスの胴体を切り裂く。
 
 斬撃に怯んだ隙を突いたレンゲルが怒涛の追撃を開始。
 軽やかな身のこなし、華麗な槍捌きの如く長柄の武器を思うままに操りカリスを圧倒する。


( OwO)「クーさん…!やめろってんだおォ!!」
 
( OHO)『ふっ、カリスを庇おうというのか?愚かな…!』


 攻撃に晒されるカリスを突き飛ばし、自らが身代わりとなり立ちはだかった。
 レンゲルは嘲笑い、斬撃と殴打の嵐をブレイドに対して再開。
 繰り出される三枚刃と後端、そして蹴りが成す術なく身体に打ち付けられた。
 

( OHO)『弱過ぎる…これが貴様等の力なのか!?』

( ; OwO)「ううぅッ…!あああ゙あ゙ッ!!」

( ・∀・)「クソ、このままでは………!」
 

 レンゲル一人に、劣勢を強いられているこの状況。
 長引けば長引く程、本当に打ち倒されてしまうかもしれない危機感を、何も出来ず傍で見ていたモララーは抱いていた。

 そんな中、戦いに加わっていないギャレンにモララーの視線は向けられた。

31119話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:26:32 ID:Naxzm9FU0
 

( ・∀・)「ギコさん、ブーン達と協力してレンゲルを止めてください!」

( OMO)

( ・∀・)「ギコさん…?」


 先程から、ただ一人呆然と戦いを見つめているギャレン。
 モララーの呼びかけにも応じず、動きは未だ止まったままだ。

 見かねたモララーはギャレンのもとまで移動し、その肩を揺すった。


( ・∀・)「ギコさん!!どうしたんですか!?」

( OMO)「…あ、ああ。すまん、少し困惑してしまっていた…俺に任せろ」

( ・∀・)「……?」


 ようやく反応したかと思えば、思いついたかのように動き始めた。
 催促を受けたギャレンは、戦いの中へと駆け出す。

 らしからぬ様子を目の当たりにし、走る背中を不安そうな目で見つめた。

31219話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:27:04 ID:Naxzm9FU0


( OHO)『仮面ライダーブレイド…口ほどにも無い、貴様から倒してやる!』

( ; OwO)「うああああっ……!」


 ブレイラウザーでレンゲルラウザーの猛威を防ぎ止めたが、腹部に押し込むような蹴りが叩き込まれる。
 体勢を崩しそのまま倒れ込んでしまったブレイド。その顔面に、尖端が突き付けられた。
 
 頭上に翳したレンゲルラウザー、三枚刃の尖端が太陽の光を眩しく反射する。
 倒れたブレイド目掛けて振り下ろされようとした時。


( OMO)「そこまでだ!」

( OHO)『……?』


 こめかみ部分に突き付けられる銃口。

 レンゲルの横に辿り着き、ギャレンラウザーを構えるギャレンの姿があった。
 振り下ろそうと構えた体勢そのままに、レンゲルは銃の持ち主に視線を向ける。


( OMO)「これ以上の争いはさせん!」

( OHO)『お前は………』

( ; OHO)「―――ッッ!!」


 突如、レンゲルに異変が起きた。

 頭上に翳していたはずのレンゲルラウザーが地面に落ちる。
 両手はふるふると震え出し、自身の頭を抱え始めた。
 何かにもがき苦しむかのように、後退りしながら悶えている。

31319話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:27:36 ID:Naxzm9FU0


( OMO)「なんだ…?」

( ・∀・)「レンゲルの様子が…どうしたと言うんだ!?」

( ; OwO)「ぐ……ッ、もしかして……自我を戻し始めた……?」


 レンゲルの苦しみ様は、ブレイドが以前見た時と同じだった。
 唐突に戦意を失い苦しみ出したかと思いきや、操られていたジョルジュの意志が表れたのだ。
 その時と同じように、レンゲルに変身した者の意志がカテゴリーAの支配を潜り抜け、表れようとしていた。


( ; OHO)「ううううぅッ…!ブーン……俺を、止めてくれェ……!」

( OwO)「え………」


 助けを求める声は、ブレイドに変身しているブーンの名を紡いだ。
 その声に聞き覚えどころか馴染みすらあるブレイドは、レンゲルに変身している人物が誰なのか分かってしまった。


( OwO)「まさか……お前!?」


 痛む身体を起こし、助けを求めるレンゲルに手を差し出そうとした瞬間。


      《-♥SPINING WAVE-》


 響いた電子音声。
 風が吹き荒ぶ音が聞こえた瞬間、視界の横から風を纏ったカリスが現れた。
 

( ; OwO)「はっ…!クーさん待って!!」

( <::V::>)『はあああああッ!!!』

31419話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:28:10 ID:Naxzm9FU0


 レンゲルの正体など知りもしない、カリスにとっては興味すらないだろう。
 颯爽とレンゲルの前に再び姿を現し、風の力を帯びた鋭い手刀で悶え苦しむレンゲルを容赦なく斬り付けた。
 

( ; OHO)「うわあああああああぁぁっ!!」


 手刀を受け、足をばたつかせながら吹き飛んだ。
 壁に激突した瞬間、レンゲルバックルのゲートが強制的に閉じられる。
 射出された紫のゲートが、力無く倒れたレンゲルの身体を覆った。


 変身が解除され、遂に正体が現れる。
 ブレイドは既に把握している、その正体は……













(;'A`)「がはっ!うあ……痛ェ……ッ!」

( #OwO)「やっぱり……お前かお、ドクオ!!」

31519話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:28:50 ID:Naxzm9FU0


 倒れたドクオに詰め寄ったブレイドだが、身体を気遣う様子はない。
 寧ろ胸倉を掴み強引に上体を起き上がらせると、ドクオに激しい怒りを見せた。

 ブレイドの怒りの理由を知ってか、ドクオは早速許しを請おうと姿勢を低く見せている。


::(;'A`)::「ま、待ってくれ……!」

( #OwO)「待たねぇお!!なんでお前がレンゲルのベルト持ってんだ!!
       危うくみんなやられるところだったんだぞ!?!?」

::(;'A`)::「ち、違うんだよ!!俺はただバイクのシートに置かれてたのを手に取っただけで……」

( #OwO)「変身しといてそんな言い訳はないだろ!?何ですぐに僕達に届けようとしなかったんだお!!」

( ・∀・)「落ち着け剣藤!彼は悪くない、それに変身したのも彼の意志じゃない!」

( OwO)「え……?どういう事ですか?」


 二人の間に割って入ったモララーの言葉に意識が向き、胸倉を離した。
 身体中に走る痛みを受け入れる間も無く詰め寄られたドクオは、息を切らし地に伏せる。
 

(;'A`)「うぅっ…!はぁ…はぁ……」

( ・∀・)「このカテゴリーAはカードに封印されながら、自分の力を外部に発信しているんだ。
      ジョルジュもそうだ、カードを見た途端に支配され意のままに操られてしまった」

( ・∀・)「変身する以前に、カテゴリーA自身に操られてしまっているんだ」

( OwO)「何ですか、それ…!?封印されてるのに何で!?」

( ・∀・)「分からない……カテゴリーAを封印したのは俺だ。原因があるとすれば……俺にある」

( ・∀・)「俺が、力に溺れて正しく戦わなかった所為だ…」

( OwO)「モララーさん、別にそんな事は…」

31619話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:29:58 ID:Naxzm9FU0


( OMO)「おい待て!!」


 ギャレンの大きな声が、一斉に視線を寄せ集めた。 


『ッシャアアッ!!』

( <::V::>)『!?』

( OMO)「くっ、逃がしたか…!」

 
 蜻蛉のアンデッドが召喚した蜻蛉の大群が、カリスとギャレンの目を暗ました。
 その隙に、二体のアンデッドが逃亡。
 ドクオの変身が解けた事でアンデッド達は主を失い、意のままに動き出したのだ。


( #<::V::>)『チッ……!』


    《-♥2 SPIRIT-》


 クーの姿へと戻ると、全てを狂わせてくれた地に伏したままのドクオのもとへと歩み寄り、首を掴み強引に身体を起こした。


(;'A`)「ぐがッ…!?」

川 ゚ -゚)「単刀直入に聞く、私と戦う気はあるか?」

(;'A`)「へ、へえっ…!?」

( OwO)「クーさん!これには訳が…」

川#゚ -゚)「そんな事は私には関係無い、興味も無い!」


 アンデッドを取り逃がした事。自分の手で倒す事が出来なかった事。
 何より、渡辺達を餌に使われた事への不満・怒りが収まらない。

 当のドクオはこの状況に理解など追いつくはずもなく、混乱している様子。
 まさに、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている。

31719話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:30:26 ID:Naxzm9FU0


 八つ当たりとも言える矛先を向けられ、ドクオは完全に怯えきっている。


川#゚ -゚)「戦う意志が無いのなら今すぐ消え失せろ!貴様と言いあの男と言い、何なんだ!?」

川#゚ -゚)「覚悟も無く本当にただの傀儡と化しているのなら、二度と関わるな!
     また現れようものなら、次は貴様の命もろともカテゴリーAを倒す!」

::(;'A`)::「ひっ…!」


 突き飛ばされたドクオはブレイドの腕の中に収まる。
 バーボンハウスに通い詰めていたドクオも、クーの事は前から知ってはいた。
 だが、ここまで露骨に表情を変えた彼女を見るのも、これ程までに怒る姿が怖いと感じるのも初めてだった。


( OwO)「クーさん落ち着いて!本当にごめん、僕がしっかりレンゲルを管理するから…。
      とにかくドクオ、一旦ウチまで来るんだお。いろいろ話を聞かなきゃならない」

(;'A`)「ッ……」

( ・∀・)「俺が預かるよ。行こう」

( OwO)「お願いしますお」


 どうする事も出来ないまま、ドクオはモララーへと引き渡された。
 地に落ちたレンゲルバックルを拾い、ギャレンの変身を解いたギコのもとへと移動する。

31819話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:30:46 ID:Naxzm9FU0


( ・∀・)「ギコさん、行きましょう。彼を剣藤の家まで送ってやってください」

(,,゚Д゚)「………」


 反応が無い。
 立ち尽くしたまま、一点をボーッと見つめている。


( ・∀・)「ギコさん?」

(,,゚Д゚)「…ん、ああ。分かった」


 二度目の声にようやく反応した。
 ドクオの肩を支えながら、レッドランバスのもとへと歩き始めた。


( ・∀・)「ギコさん、どうしたんだ…?さっきから何か変だ」


 レンゲルが介入してきた時から、ギコの様子が露骨におかしい。
 その理由が不明なだけに、常に冷静であったはずのギコに疑問を募らせていた。

31919話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:31:20 ID:Naxzm9FU0


 その一方で、ブレイドの変身を解いたブーンは自身のバイクのもとへと戻るクーを追いかけていた。


( ^ω^)「ねぇクーさん、さっきのアンデッドってもしかして……」

川 ゚ -゚)「そうだ、私を狙っていた」

( ^ω^)「やっぱり……」

川 ゚ -゚)「分かっただろう……私が居れば、迷惑が掛かるだけだ。私が不幸にしてしまうんだ……」


 先程まで怒りをその顔に表していたが、今では何処か切なげな表情をしていた。
 理由は一つ。
 助けに来たはずの渡辺やショボンの様子が気になりながらも、彼等に近付いてはいけないという葛藤。


川 ゚ -゚)「だから私は居てはいけない。でぃちゃんの傍にも……あの二人の傍にも――」

( ^ω^)「そうじゃないだろ!?」


 話を遮るブーンの声はとても強かった。
 背を向けて歩いていたクーも、思わず振り向いてしまう程に。


( ^ω^)「クーさんが離れてた間にあまねちゃん達は襲われただろ?クーさんが傍に居れば、少なくともこんな事にはならなかったはずだお」

( ^ω^)「あの二人がクーさんを必要としているように、クーさんだってあの二人の事が大切なんだろ?だったら君が守れ!
      君が遠ざかってもあまねちゃん達が襲われるなら……傍に居て守れよ!」

( ^ω^)「――守れよ、クーさんが!!」

川 ゚ -゚)「……!」


 真っ直ぐな眼差しと向けられる言葉に胸を打たれたのか、クーは言葉を返す事が出来ない。

 単なる優しさでは済まされない。
 アンデッドという相容れない化け物。その存在を否定する事無く、寧ろブーンはクーを信じている。
 そんなブーンに対し、今まで感じた事のない気持ちが芽生え始めていた。
 
 それ以上言葉を交わそうとはせず、クーはバイクに乗るとブーンを置き去りに一人走り去って行った。


.

32019話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:33:07 ID:Naxzm9FU0





 ―――――




.

32119話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:33:32 ID:Naxzm9FU0


 ――街中のとある小さな公園にて。

 夕方にも関わらず、既に日が暮れ始め辺りは薄暗くなって来た。

 それでも、元気に公園内を駆け回りながら楽しそうにはしゃぐ子供。
 片隅で、子の親達がしている世間話や、帰宅中の学生達の話し声でガヤガヤと騒がしい。

 そんな光景に不釣合い過ぎる派手な格好をした一人の若い女が、ブランコに座り揺さぶられながら遊ぶ子供達を見つめていた。


(*゚∀゚)「あーあ、失敗してやんの……マジクソよわ。つっかえないなぁ……」


 正体は人間などではない。カテゴリーQだ。
 脅しをかけた蜻蛉のアンデッドが、封印された上に再び解放された事を感じ取っていた。


(*゚∀゚)「つーか…あのレンゲルって奴、ちょっとばかり鬱陶しいなァ。アタシの事あんな軽く飛ばしてくれちゃってさ……」





「そろそろ、私達が動きましょうか」


 カテゴリーQの乗るブランコの後ろに、一人の女性が現れる。
 背中が女性に軽くぶつかり、前後に緩く揺れていたブランコが止まった。


(*゚∀゚)「だーかーら、最初からそうしようっつってんじゃん?雑魚差し向けたってこうなんのがオチよ」

「あれはお手並み拝見よ。少なくとも私が動く為の事前収集にはなったわ」

(*゚∀゚)「はいはい…汚れ役は全部アタシだもんね。別にいーけど」




(*゚∀゚)「じゃ……そろそろ本格的に動くとしますかァ」

.

32219話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:34:22 ID:Naxzm9FU0





 ―――――




.

32319話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:34:48 ID:Naxzm9FU0


 日が暮れて、外はすっかり真っ暗になってしまった。

 アンデッドに攫われた後、ブーン達の手によって助けられたショボンは、この日のバーボンハウスの営業を急遽休む事にした。
 理由も分からず化け物に襲われ、渡辺は精神的なショックを受けている。
 クーがいなくなってから元気のない渡辺には、よりダメージが大きい。

 客が誰一人いないカウンターに突っ伏す渡辺の隣に寄り添うように、ショボンが座っていた。


(´・ω・`)「大丈夫かい、あまね」

从' - '从「うん……」

(´・ω・`)「もし何かあっても、ブーン君達が助けてくれるから大丈夫だよ。僕も傍にいるから」

从' - '从「……クーさん、もしあんな化け物に襲われてたらどうしよう……」

(´・ω・`)「………」


 自分が襲われたにも関わらず、クーの心配ばかり。
 彼女がいなくなってからの数日間、どれだけ貴重な存在であったかを思い知らされていた。 
 警察に捜索届を提出しようともしたが、そもそもクーは最初から身元が分からない故に期待も出来なかった。


(´・ω・`)「ちょっと外の様子見てくるよ、此処に居てね」

从' - '从「ショボンさん!すぐ戻って来るよね!?」

(´・ω・`)「大丈夫だよ、安心しなさい。何処にも行ったりしないから」


 数時間前にあんな事があったばかりで、渡辺は一人になる事への恐怖を強く覚えてしまっている。
 立ち上がったショボンの腕を取る渡辺の頭を、宥めながら優しく撫でた。

32419話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:35:25 ID:Naxzm9FU0


 店の扉に手を掛ける。
 ベルの音を鳴らしながらゆっくりと扉を押し、外へ出ようとした。


(´・ω・`)「……!!!」


 だが、ショボンの足は動かない。
 扉を開けた瞬間、目に入ってきた姿に驚き、扉に手を掛けたまま固まってしまった。

 そこに居たのは……、



川 ゚ -゚)「……ショボンさん」

(#゚;;-゚)


 手紙だけを残し、突然行方を眩ましていたクーがそこ居た。
 クーの後ろには、見慣れぬ少女の姿も。


(´・ω・`)「クー…!!」

「えっ…!」


 店の奥から、ドタドタと走る足音が聞こえる。
 すぐに足音は近付き、ショボンの脇下を潜りその姿を見せた。


从' - '从「クーさん……!!!!」

川 ゚ -゚)「………あの、実は――」

32519話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:35:58 ID:Naxzm9FU0


 何かを話そうとしたが、突然抱き付いてきた渡辺によって遮られてしまう。
 一度背中に回した右手を戻し拳を作ると、クーの胸を何度も叩いた。

 胸に顔を埋めていて表情までは見えないが、鼻をすする音と震える声で、泣いているのが分かった。


从;ー;从「ばか!クーさんのばか!!心配掛けないでって約束したの忘れたの!?」

川 ゚ -゚)「うん……ごめん」

从;ー;从「戻って来てくれたんでしょ…??だったら、ただいまって言って!」

川 ゚ -゚)「………」

从;ー;从「言って!!」


 ぎゅう…と、クーの服を掴む力が強い。
 離すまいとする渡辺の想いが、自然と手に加わっていた。

 渡辺に言葉を促される度に、クーの心は揺れ動く。


川 ゚ -゚)「………ただいま」


 「ただいま」。……その言葉が言いたくて、つい口が動いてしまった。
 隠そうとしてきた本心が、制御出来ずにクーの心と身体を動かしていた。


从'ー'从「…ぐすっ、おかえり!」

(´・ω・`)「おかえり、クー」


 何も聞かず、クーの帰りを受け入れる二人。
 ショボンがクーと渡辺の肩を抱き、満足そうに笑みを浮かべた。

32619話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:36:34 ID:Naxzm9FU0


(#゚;;-゚)「………」


 その後ろで、でぃは三人の仲睦まじい姿を見つめていた。
 血の繋がりがなくとも、家族同然に想い合う、憧れたその姿を。


(´・ω・`)「…クー、この子は?」


 でぃの存在に気が付いたショボンが、でぃの目の前で屈み目線を合わせる。


川 ゚ -゚)「私がこの家を出ている間、この子にお世話になってました。でも、この子も身寄りが無くて…」

(´・ω・`)「そうなのか……お名前、言えるかな?」

(#゚;;-゚)「でぃだよ」

川 ゚ -゚)「それで……あの、二人にお願いがあって――」

从'ー'从「でぃちゃんかぁ、私はあまね!よろしくね?」

(´・ω・`)「僕はショボンっていうんだ、好きなように呼んでいいよ。これからよろしくね。とにかく、外は寒いから早く中に入ろう」

川 ゚ -゚)「えっ…あ、あの」


 クーの話も聞かず、二人は勝手に話を進めた。
 あまりにも流れるように進み出す事態に、好都合にも関わらずかえって困惑してしまうクー。


(´・ω・`)「言わなくても分かってるさ。新しい家族だろう?」

从'ー'从「クーさんがお世話になったんなら、今度は私達がお返ししなきゃ!」


 全てを聞かずとも、二人はクーの言いたい事などお見通しだった。
 だが、当のでぃは、二人の底抜けな優しさに戸惑ってしまっていた。

32719話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:38:06 ID:Naxzm9FU0


(#゚;;-゚)「本当に、いいの?」

(´・ω・`)「もちろん。僕達はね、血の繋がりなんかなくたって家族なんだ。でぃちゃんとも素敵な家族になれるはずだよ」

从'ー'从「そうそう〜、大事なのは心だから!だからでぃちゃんは、今日から私達と一緒にご飯食べて、一緒に寝るの!
     ちゃんとお風呂も入って、お話したりもするんだよ?」

(#゚;;-゚)「………」

川 ゚ -゚)「……でぃちゃん、此処は本当に温かい場所だよ。きっと気に入ってくれると思う」

(# ;;- )「………ありがとう」


 小さな唇をキュッと噛み締め、零れそうになる涙をこらえる。
 目に溜まった涙をゴシゴシと拭い顔を上げ、クー達に向け笑顔を見せた。


(#^;;ー^)「……うん、よろしく!」

从'ー'从「ふふ、何かお腹空いちゃったな〜!ショボンさんのご飯はねぇ美味しいんだよ〜?」

(#゚;;-゚)「そうなの?」

(´・ω・`)「はは、でぃちゃんの口に合えばね。今日は寒いしシチューでも作ろうか」

(#゚;;ー゚)「シチューかぁ、食べたい!」

从'ー'从「食べたいね〜!早く作ってよぉ早く早く〜〜」


 元気の無かった渡辺に、太陽のように眩しい笑顔が戻った。
 楽しそうに話しながら、店の中へと入って行く三人。
 クーはその後ろ姿を見つめながら、一枚のカードを取り出し……でぃの隣に寄り添わせるように翳した。


川 ゚ -゚)「――お前の願いは叶えたぞ、モス」


从'ー'从「クーさん何してるの〜?早く!」

川 ゚ー゚)「……ああ、今行くよ」

.

32819話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:38:46 ID:Naxzm9FU0

 ――――――
 ――――
 ――


 平穏が訪れたクー達とは逆に、ブーンの家では張り詰めた空気が漂っていた。
 クーを除いた先刻の面々が集結している。

 何も分からず、無抵抗のまま連れて来られたドクオを取り囲むようにソファに座る一同。
 

(;'A`)「………」

 
 重苦しく漂う空気。
 全ての目線がドクオに集められ、気まずさのあまりただ俯いていた。
 自分がしてしまった事の重大さには、何となくだが気付いている様子。


( ^ω^)「まず、このベルトを何処で見つけたのかをもう一度説明してくれお」

('A`)「あ、ああ……」

( ・∀・)「釘を刺すようで悪いけど、嘘はつかないでくれ」

ξ゚⊿゚)ξ「ちゃんと正直に答えてね、大事な事だから」

(;'A`)「わ、わかってます!でも、信じてもらえるか不安ですけど……」
 _
( ゚∀゚)「ちゃんと話せばいいんだ。お前の気持ちは分かるから、心配すんなよ」

(;'A`)「わかった……」

32919話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:39:23 ID:Naxzm9FU0


('A`)「えっと…今日、ブーンが働いてるスーパーに買い物に行ったんだ。まぁ特に何も買わなかったんだけどさ…。
   んで、帰ろうと思ってバイクのとこまで来たら……シートの上に置かれてたんだよ」

ξ゚⊿゚)ξ「シートの上に置かれてた??」
 _
( ゚∀゚)「お前…本当かよそれ?素直に拾ったって言えよ」

(;'A`)「本当だって!誰かが置いてった人陰があった訳じゃないし、誰の仕業かは知らないけど…戻ったら置いてあったんだよ!」

(;'A`)「大体、そんなとこに置かれちゃあ嫌でも手に取るだろ?」
 _
( ゚∀゚)「まぁ……」


 ブーンとジョルジュの前から姿を消し、行方不明となっていたレンゲルバックル。
 それがドクオのもとに届いていたとしたら、随分出来過ぎた話であり、信憑性に欠ける話であった。


( ^ω^)「あの時、レンゲルのベルトは確かに消えた……それが何でドクオのところに?」
 _
( ゚∀゚)「そうだよ。ベルトが自分の意志でドクオのとこに来たっていうのか?」

(;'A`)「そんなの知らないよ!俺が聞きたいくらいだし…」

('A`)「それで……おもちゃかと思って適当にいじってたら、何かトレイみたいなとこにカードが入ってて……」

( ・∀・)「カテゴリーAか……」

('A`)「こっからなんすよ!こっから信じられないような事が起きて……」

33019話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:40:09 ID:Naxzm9FU0


('A`)「カードを見た瞬間、辺りがこう……なんていうか、闇に包まれるというか……」
 _
( ゚∀゚)「――!!」

( ・∀・)「闇に包まれる…それで!?」

('A`)「え、えっと……見渡したら、たくさんの蜘蛛の巣が張られてて……身体が蜘蛛の糸に縛られて」

ξ゚⊿゚)ξ「ジョルジュと同じだわ……」
 _
( ゚∀゚)「だろ!?俺もそうなったんだよ!意識はあるのに身体が言う事聞かなくなっただろ!?」

('A`)「そう!それだよ!自分の意識があって…でも、ブーン達に攻撃してる自分を止められなくて……」

( ・∀・)「やはり、カテゴリーAの支配によるものだったか」

( ^ω^)「カードと目を合わせた瞬間、意識を支配されるっていうのかお……」

('A`)「よく分かんねぇけど……」


 それまで言葉を発さなかったギコが、テーブルの上に置かれたレンゲルバックルに手を伸ばす。
 手に取ったベルトを、ドクオから引き剥がすように、食卓の上へと置いた。


(,,゚Д゚)「……とにかく、君はもうこの事に関わらない方がいい。レンゲルは危険すぎる」

(;'A`)「も、もちろんです!そんなもの着けたくも持ってたくもない!」



('A`)「俺は、コイツみたいに戦う事なんか出来ないし……俺が仮面ライダーになったって、人助けなんて無理ですから……」

( ^ω^)「………」

33119話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:40:56 ID:Naxzm9FU0


( ・∀・)「一度意志を操られても、変身が解けてしまえば解放されるみたいだね。
      カテゴリーAにさえ接触しなければ大事にはならないという事か」

(,,゚Д゚)「そういう事になるな」

ξ゚⊿゚)ξ「だったら尚更隠しておかないと…これ以上被害を増やす訳には行かないわ」


 ツンが立ち上がったのと同時に、ギコはモララーの目の前にギャレンバックルを置きながらソファに座る。
 

(,,゚Д゚)「改めて聞くが、戻る気は無いんだな?」

( ・∀・)「……ギコさんがいれば、大丈夫です」

(,,゚Д゚)「…そうか。今此処でギャレンの戦力を失う訳には行かない、俺が引き続き受け持つ」
 _
( ゚∀゚)「モララーさん、本当にいいのかよ?」

( ・∀・)「いいんだ。俺もドクオ君と一緒さ、ライダーには向いてない」

('A`)「でも、俺と違ってすごく戦えるじゃないですか……」

( ・∀・)「君には理解出来ないかもしれないけど…戦える事だけが強さじゃないんだ」

( ^ω^)「モララーさん……」


 モララーの言葉に安堵すると同時に、複雑な思いを抱えていたブーン。
 頑なにライダーを拒む姿は、本当にライダーを諦め切れていないようにも見えていた。


ξ゚⊿゚)ξ「あれ…?無い…!?」
 

 しんみりとした空気が流れる中、ツンの声が部屋中に響き渡った。
 その声に、一斉に全員の視線が向けられる。


( ^ω^)「どうしたお?」




ξ゚⊿゚)ξ「無いの……レンゲルのベルトが無い!!」

33219話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:41:40 ID:Naxzm9FU0


( ^ω^)「ええ…!?」

(,,゚Д゚)「ついさっき俺がそこに置いたばかりだぞ?」

ξ゚⊿゚)ξ「だけど無いんです!さっきギコさんが置くのも見てたけど…どうして!?」


 食卓に置いた張本人であるギコ。
 すぐに立ち上がり移動すると、確かに置いたはずのテーブルの上を撫でる。

 だが、確かに無くなっていた。
 ついさっき、一分も経たぬ間に……レンゲルバックルは忽然と姿を消した。


(,,;゚Д゚)「何故だ…!?誰かが取った訳ではないよな!?」
 _
( ゚∀゚)「そ、そんな事しないっすよ!つか俺ずっと座ってたし!」

(;'A`)「おっ、俺も違いますよ??俺はもう見たくもないくらいなんですから…!」

( ^ω^)「……もしかして、ベルト自身に意志が宿っているのか?」

( ・∀・)「ベルト自身に??」


 二度もレンゲルバックルが消失した場面に直撃したブーン。
 これまでの話を踏まえた上で、不可解なこの現象に心当たりがあった。


( ^ω^)「ジョルジュが操られて変身した時も、レンゲルのベルトは勝手に消えましたお。
      カテゴリーAの力を反映するベルト…それはつまり、ベルトすらも自分の意志で動かしているんじゃ?」

( ^ω^)「どれだけ人の手の届かないところに隔離しても、自分の意志で動いてしまう……適合者を求め続けて」

( ・∀・)「確かに、今はそうとしか説明がつかない…だとすると、また誰かの手に渡ってしまう可能性がある!」

(,,゚Д゚)「話は後だ!とにかくベルトを探すぞ!」

ξ゚⊿゚)ξ「私も探します!」
 _
( ゚∀゚)「俺も!」


 消失したベルトを探す為、ツンとジョルジュは家の中を。ギコは外に出て探し始めた。

33319話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:42:22 ID:Naxzm9FU0


('A`)「あの……俺は」

( ^ω^)「お前は関わったら駄目だお。また操られる可能性がある」

('A`)「そ、そうか……じゃあもう、帰っていいか?」

( ・∀・)「もういいんじゃないかな、彼には散々忠告した訳だし」

( ^ω^)「…そうですね。見て分かるだろうけど、今立て込んでるから送ってはやれないお」

('A`)「気にすんなって!大丈夫大丈夫、歩いてバイク取りに行くって」

('A`)「色々迷惑掛けて悪かった……じゃあ、後頼むな」


 二人の顔色を伺いながらも、解放された途端足早に去って行くドクオ。
 一刻も早くこの状況から脱したいといった様子だ。

 
 ドクオが家を出るなり、モララーはソファに深く座り頭を抱え始めた。


( ・∀・)「俺のせいで、こんな事になってしまってる……全部俺のせいだ」

( ^ω^)「何もそうやって、全部自分で背負い込む事ないじゃないですか」

( ・∀・)「そうだな……俺は、弱い男だからな」

( ^ω^)「モララーさん、そんな事は……」

( ・∀・)「いや……俺はむざむざとギャレンを捨てておきながら、今もこうして君達の周りをうろついている。
      結局、一人になるのが怖いんだよ……俺にはもう、君達しかいないから……」

( ^ω^)「………」


 今までの行いが全て、裏目となって表れている。
 状況的にも、それはモララーの精神的にも言える事だった。
 
 自虐とも取れる言葉の連続に、それ以上の言葉を紡ぐ事が出来なかった。

33419話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:43:56 ID:Naxzm9FU0


( ^ω^)「モララーさん……正直に言いますお」


 モララーの隣に腰を掛け、神妙な面持ちで話し始めた。


( ^ω^)「僕は今でも、モララーさんにはギャレンとして一緒に戦って欲しい気持ちがあります」

( ^ω^)「頑なにギャレンを拒む理由は、モララーさんが感じてる責任感からじゃないですか?
      モララーさんが感じてる、今までしてきた事への後悔や、情けないっていう気持ち…」

( ・∀・)「………」

( ^ω^)「色々あったけど、モララーさんは本当の自分に気付けたじゃないですか。
      自分の事を弱いって言うのは素晴らしい事だと思いますお。だって、自分の弱さを知っているんだから。
      モララーさんは今、自分の弱さと向き合ってる。向き合う事が大事だと僕は思いますお」

( ^ω^)「弱さを知らない人間は、強くはなれませんお」

( ^ω^)「それに、モララーさんは一人じゃない。僕達が居ます!
      だからモララーさんも、僕達と一緒に居ればいいですお」


 暗い面持ちのモララーに向け笑顔を見せる。
 真っ直ぐ過ぎるブーンの心が、モララーの強張った表情を自然と弛緩させた。


( ・∀・)「……ありがとう」


 心の荷が少しだけ降りたような感覚。
 肩が軽くなり、ソファから立ち上がる動きも軽やかになった。
 

( ・∀・)「ギャレンの返答は、まだ直ぐには出来ない……でも」

( ・∀・)「今は一緒に探そう、レンゲルのベルトを!」

( ^ω^)「……はい!」

33519話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:44:30 ID:Naxzm9FU0

 ――――――
 ――――
 ――


 ブーン達が消失したレンゲルのベルトを探す一方。
 

('A`)「はぁ……とんでもない事に巻き込まれちゃったな……」


 ブーンの家から抜け出したドクオは、とぼとぼと歩きながらスーパーVIPに向かっていた。
 とんでもない事に首を突っ込んでしまった自覚はあるようで、ひどく落ち込んでいる。
 
 全てが現実味の無い出来事。本当に起こった事なのか疑ってしまう程に。
 だが、友人であるブーンを傷付けた感覚が、目に、頭に、両手に鮮明に残っている。


('A`)「何てことしちまったんだ、俺……本当に……」


 自分の意志で身体が動かない…あの戦いに身を置く者達によれば、封印された化け物によるコントロールによるものだと。
 それにしては随分と生々しく残った感覚に、身震いするばかりだった。
 

('A`)「絶対に関わらない…もう二度と関わりたくない…!」


 首を左右に振り、そう心に強く決める。

 化け物と戦うなど、絶対に出来ない。
 自分がライダーになったところで、足手まといになるだけ。誰一人助ける事も出来やしない。

 
('A`)「無理だ……俺にはそんな自信ない……」

33619話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:45:02 ID:Naxzm9FU0


 歩いてどれ程経っただろうか。
 日が落ちて、辺りはすっかり暗くなっている。
 時間も確認せずにひたすら歩き続け、ようやくスーパーVIPに辿り着いた。
 

('A`)「やっと着いた……」


 バイクでの移動手段が増えたせいで、30分程度歩いただけで足はパンパンだ。
 街灯や車の明かりを頼りに、自分が停めたバイクのもとへと向かう。

 すると、


「おい」

('A`)「??」


 背後から何者かの声が聞こえる。
 誰かを呼ぶような声に反射的に反応してしまい、ドクオは振り返った。


 そこに居たのは、エプロンを身に着けた青年の姿。




(-_-)「………」

33719話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:45:35 ID:Naxzm9FU0


(;'A`)「あっ……す、すみません!決してその、都合良く駐車をした訳じゃ……!」


 エプロン姿が、すぐにスーパーVIPの店員である事を知らせてくれた。
 怒られるかもしれないと悟ったドクオは、慌てて謝罪をする。
 駐車場を、ただの駐車スペースとして利用した……そう思われているに違いない、と。


(-_-)「そんな事はどうでもいい」

(;'A`)「へ……?」


 明かりに照らされ、影が差すヒッキーの表情は、とても睨んでいるように見えた。
 硬直するドクオに詰め寄る。そして……、
 

(-_-)「覚悟を決めろ」

('A`)「え……」

(-_-)「お前は完全に取り憑かれちまった。これは、お前自身の力で乗り越えなきゃならない」

('A`)「な…何を言ってるんだ?」

(-_-)「お前自身の戦いは、もう始まっている」






(-_-)「――カテゴリーAに、屈するなよ」


(;'A`)「!?!?」

33819話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:46:33 ID:Naxzm9FU0


 ドクオにそう言い残すと、ヒッキーは背を向けスーパーへと戻って行く。

 "カテゴリーA"のワードで、何を意味しているのかを悟ってしまったドクオをとてつもない恐怖感が襲う。
 両手はガクガクと小刻みに震え、防衛本能が無意識に引きつった笑顔を作っていた。


(;'∀`)「……は、はは……何だよアイツ、意味分かんねぇ……」


 笑顔で誤魔化し、心の中で自分に都合の良いように言い聞かせた。


(;'A`)「俺は関係ねぇ……関係なんかないんだから……」


 歩いた疲れを上回り、不安によって重くなった足取りでバイクのもとへと再び歩き出す。

 そして、ようやく辿り着いたバイクの前で、ドクオは突如立ち尽くした。


('A`)「………」

('A`)「何で……?」

(;'A`)「え……何で……!?」



 ドクオの目に映るバイク。

 そのシートの上にある………、




(;'A`)「何であるんだよ……!レンゲルのベルトが!?!?」

33919話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:47:55 ID:Naxzm9FU0


(;'A`)「はっ……はっ……」


 心臓の鼓動が高鳴り、息が苦しくなってくる。
 全身から血の気が引き、首を左右に何度も振り続ける。


(;'A`)「もうやめろ……本当にやめてくれよぉ!!!」


 大声で叫びながら、ドクオはバイクのもとへと駆け寄る。
 シートの上に置かれたレンゲルバックルを掴むと、持てる力全てを出し遠くへと投げた。

 車道へと放り投げられたレンゲルバックル。
 通り過ぎる車。いずれ、大型トラックやダンプカーに潰されるだろう。
 

(;'A`)「そのまま潰されちまえ…!もう俺に関わ……」


 背後のバイクから、気配を感じる。
 ドクオが恐る恐る振り返ったそこには……レンゲルバックルが、シートの上に置かれていた。


(;'A`)「………」


 もはや言葉も出ない。
 たった今、確かに投げ捨てたはずなのに、シートの上には同じようにレンゲルバックルが。

 あまりの恐怖に動きが固まり、歩く事も視線を移す事も出来ない。
 ただ静かに、ポケットのスマホへと手を伸ばし、ゆっくりと取り出す。

 そして、ブーンへと助けを求めた。


「どうしたお?」

(;'A`)ロ 「……助けてくれ……」

「何があったお!?」

(;'A`)ロ 「レンゲルのベルトが……俺の目の前に……!」

「なんだって!?消えたベルトが何でドクオのとこに!?」

(;'A`)ロ 「早く来てくれ…!俺もう、怖くて動け……ううッ!!」

34019話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:48:28 ID:Naxzm9FU0


 ドクオの身体に異変が起きた。
 身体中を、無数の何かが蠢いている。


(;'A`)「何だ…!何だこの感覚……ッ!!」


 地に伏せ、耳に当てたスマホを手から落とす。
 両手を地面に着くと、蠢く何かが腕を伝い服の裾へと近付いてきた。
 小さく細かい足が、肌を擽る。


(;'A`)「……何だ、これ…!?」


 裾からゆっくりと姿を現したのは、黄金色の小さな蜘蛛の子。
 一匹だけでなく、二匹、三匹、四匹、五匹…それ以上に、身体の中にまだ沢山居る。
 わらわらと、ドクオの身体から蜘蛛の子の群れが現れた。
 

(;'A`)「何でこんなに蜘蛛が…!?どうなってんだよ俺…!?!?」

    『――俺ヲ受ケ入レロ……』

(;'A`)「……!!!」


 レンゲルバックルから、声がする。
 とても歪で、邪悪な気すら感じれる声…カテゴリーAの声が。


(;'A`)「ッ…何で俺なんだよ!!俺はライダーになんかなりたくないんだって!!

    『――受ケ入レロ…俺ノ、力ヲ…!』

34119話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:49:41 ID:Naxzm9FU0
 レンゲルバックルが、カテゴリーAの意思を受け浮遊。
 紫色のオーラを纏い、宙に舞うバックルがドクオに向かい合った。


(;'A`)「やめろ……やめてくれ!!!」


 こっちに来る。
 ドクオの本能がそう告げていた。
 立ち上がり、バックルから逃げるように後退りをする。
 
 レンゲルバックルが背を向けた瞬間、ドクオの腹部に目掛け飛翔。


(;'A`)「ッ――!!!」


 思わず手をかざしたドクオの腹部に、レンゲルバックルが装着されてしまった。
 自らの意思とは関係なく……バックルのシャッターが、勝手に開かれた。


    【 -♣OPEN UP- 】


(;'A`)「嫌だ!やめろ!!離れろよ!!」


 ベルトを掴み、強引に引き剥がそうとするが、ベルトは微動だにしない。
 開かれたシャッターより射出された紫色のゲートがドクオの前面に展開。
 
 ゆっくりと接近するゲートに、心が蝕まれそうになる。


(;'A`)「やめろおおおおおぉッ!!!」


 抵抗も空しく、ドクオは紫色のゲートに覆われた。
 ゲートが通過したドクオの身体は……再び、レンゲルのスーツに身を包まれた。


( OHO)『……来い、グリンクローバー』


 闇夜に現れた、呪われしレンゲル。

 レンゲルから聞こえる声は、以前と同じようにドクオの声ではない。
 "グリンクローバー"……レンゲルがそう呟いた瞬間、遠方から人の乗っていない緑色のバイクが姿を見せた。
 
 瞬く間にレンゲルのもとへと到着したグリンクローバー。
 グリンクローバーに跨ったレンゲルは、そのまま何処かへと走り去って行った。

34219話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:51:07 ID:Naxzm9FU0
 ――――――
 ――――
 ――


( ; ^ω^)「……まずいお」

( ・∀・)「どうした??」


 電話の奥から聞こえていた一部始終。
 何が起きたかは容易に予測でき、危機感はすぐに駆り立てられた。


( ; ^ω^)「ドクオが…またレンゲルに変身しました…」

( ・∀・)「なに!?」

( ; ^ω^)「消えたベルトは、ドクオのもとに戻ってたんですお!!」

( ・∀・)「どういう事なんだ…!?」


 その時、アンデッドサーチャーの警告音が鳴り響いた。
 警告音と同時に、家中を探していたツンとジョルジュが二階から駆け下りてくる足音が激しく響く。
 一足先に、モララーがPCの前に着き反応を確認した。


( ・∀・)「アンデッドだ!場所はしたらば跨線橋……レンゲルが接近してる!」

( ; ^ω^)「ドクオ……」

( ・∀・)「行こう!」

ξ゚⊿゚)ξ「アンデッド!?気を付けて!!」


 ツン達がリビングに着く前に、二人は家を飛び出した。
 表でレンゲルバックルを探していたギコが、二人の慌て具合から事情を察知する。


(,,゚Д゚)「アンデッドか?」

( ・∀・)「はい、すぐに行きましょう!」

(,,゚Д゚)「分かった!」


 ブルースペイダー、レッドランバスに乗る二人。
 ブーンの後ろへとモララーが乗ると、急いでアンデッドの反応があった場所へと向かった。

34319話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:51:31 ID:Naxzm9FU0





 ―――――




.

34419話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:51:51 ID:Naxzm9FU0


 飛び出したブーン達は、したらば跨線橋へと到着。
 バイクから降り、目の前で繰り広げられている状況を確認する。
 
 既に争いの音が聞こえている場所には、レンゲルが解放した二体のアンデッドが。
 それと、自分自身が解放したはずのアンデッド達と戦う……レンゲルの姿があった。


( ^ω^)「ドクオ…!カテゴリーAに操られてるのかお!」

( ・∀・)「辛いだろうけど、もう力ずくで止めるしかない」

(,,゚Д゚)「今はアンデッドの封印が優先だ。やるぞ、ホライゾン君!」

( ^ω^)「ッ……はい」


 ブーンとギコが、それぞれバックルと取り出した時だった。
 後からもう一台のバイクが現れ、三人の背後に停まった。

 現れたのは、アンデッドの気配に駆け付けて来たクーだ。


( ^ω^)「クーさん!」

川 ゚ -゚)「…またあの男か」

( ^ω^)「クーさん、まずはアンデッドを先になんとかしないと…」

川 ゚ -゚)「お前に指図される筋合いはない」


 ブーンがバックルを装着する前に、クーの腰にはカリスラウザーが召喚される。
 それに続いて、二人もブレイバックルとギャレンバックルをそれぞれ装着。

 そして、三人同時にレンゲルとアンデッドのもとへと走り出した。


((( ^ω^)(((,,゚Д゚)「「変身!」」

((川 ゚ -゚)「変身!」
    っロ


    【 -♠TURN UP- 】 【 -♦TURN UP- 】 【 -♥CHANGE- 】

34519話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:52:37 ID:Naxzm9FU0


 一斉に変身したブレイド、カリス、ギャレン。
 並走する三人の中で、カリスが真っ先に戦いの中へと切り込んだ。

 最初の標的に定めたのは、渡辺達に危害を加えた蜻蛉のアンデッド。
 レンゲルに意識が集中し切っているせいか、カリスの接近には気付かない。


( <::V::>)『まずは貴様からだッ!!』


 一際大きく跳躍したカリスは、左手にカリスアローを召喚。
 蜻蛉のアンデッドの頭上を飛び、身体を回転させながらすれ違いざまに頭部を斬り付けた。


『ギエエエエェェェッ!!』


 斬撃に怯んだ蜻蛉のアンデッドが、耳を劈く悲鳴を上げながら倒れた。
 咄嗟に受け身を取り起き上がったが、カリスの怒涛の追撃が既に待ち構えていた。


( <::V::>)『記憶が消えても、貴様の罪は消えない!その命で償え!』

『グギャッ!ギエヤァアアアッ!!』


 縦横無尽に斬り付けるカリスアローの両刃が、蜻蛉のアンデッドの身体を食い破ろうとしている。
 軽快な身のこなし、洗練された武器捌きが、あっという間に追い詰めていく。




 その一方で、ブレイドとギャレンは二人掛かりでイノシシのアンデッドと交戦していた。


( OMO)「ぐうッ…!今だ、やれ…!」

( OwO)「うおおおぉッ!!」

 
 ギャレンが突進を受け止めている間に、ブレイドはその背中をブレイラウザーで攻撃。
 怯んだ隙に、ギャレンが豪快な打撃を繰り出し、着実に追い込む。


『グオオオオォォッ…!』

34619話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:55:03 ID:Naxzm9FU0
 人数で勝るライダー達は、二体のアンデッドに対し圧倒的有利に戦況を進める。
 ライダー達が協力してアンデッドと戦うという、かつてない光景には胸打たれるものがある。

 ……と、いう訳にもいかなかった。


( OHO)


 三人の参戦によって、レンゲルは一人ブレイド達の背後で立ち尽くしていた。
 戦いに加わろうともせず、じっと。
 アンデッドとの戦いに夢中で、ブレイド達はレンゲルを怪しむ様子はない。
 傍で戦いを見ていたモララーは、レンゲルの不可解な行動を見逃さなかった。


( ・∀・)「レンゲルに注意しろ!何をするか分からないぞ!」

( OwO)「えっ――」

( OHO)『ふんっ!!!』


 時すでに遅し。
 モララーの警告に気付いてすぐに、レンゲルはシャフトを伸ばしたレンゲルラウザーを、ブレイドの背中に叩き込んだ。


( ; OwO)「ああ゙ッ゙!!」 

( ; ・∀・)「剣藤!」


 レンゲルは、続いて交戦中のギャレンに襲い掛かった。
 接近に気付いたギャレンはアンデッドを一蹴し向かい合うが、レンゲルラウザーの三枚刃が先にギャレンの胸を突いた。


( ; OMO)「ぐふっ…!」

( OHO)『ヌウヴヴゥア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッ!!!』


 後端で頬を殴り、尖端で胸を切り裂く。
 リーチを活かされた攻撃に、ただ晒される事しか出来ないギャレン。
 腹部にレンゲルラウザーの後端を刺した後、レンゲルの豪腕が力任せにギャレンを放り投げた。


( ; OMO)「がはあっ!!」


 宙を舞い、背中から地面に叩き付けられるギャレン。
 ギャレンを蹴散らしたレンゲルが次に標的を定めたのは……、

34719話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:56:51 ID:Naxzm9FU0

( <::V::>)「ていやあぁッ!!」

『ビイイィィィッ…!』


 連撃の末に、大振りの一撃を受け蜻蛉のアンデッドは吹き飛ばされた。

 右手に持ったカリスアローを、ヒュンヒュンと回転させながら持ち手を変更。
 ラウザーをセットし、右腰のケースより引き抜いた二枚のカードをラウズした。 


    《-♥5 DRILL-》 《-♥6 TORNADE-》

        《-♥SPINING ATTACK-》


 刹那、カリスの足元から風が巻き上がる。
 勢いは徐々に増し、身体を覆いながら竜巻へと変わる。
 吹き荒ぶ竜巻を纏い、地面を蹴る。
 宙に浮いてすぐ両足を揃え真っ直ぐ伸ばし、竜巻の勢いを受け身体をドリルのように回転させるとアンデッドに向け突進。


( <::V::>)『ふッ!』

『ギャアアアアアアッ!!!』


 断末魔の叫び。
 蜻蛉のアンデッドの胴体に錐揉み回転蹴りが炸裂し、その胸を突き破った。
 内側のどす黒い肉が露呈され、胸から大量の緑血を噴出させながら、アンデッドは地に倒れた。
 仰向けに倒れたアンデッドの腰、バックルが左右に展開。中に刻まれたスートとカテゴリーが露見される。

 今度こそ、自らの手で封印を。 
 カリスがカードを一枚アンデッドに向け投擲し、歪な肉体に突き刺さったカードが封印を始めた。
 カードに吸収され、アンデッドは再び実態を失っていく。
 やがて完全に蜻蛉のアンデッドは封印され、カリスの手にカードは帰還した。


( <::V::>)『これで、ようやく――!?』


 すぐに別の気配を感じ取った。
 咄嗟に振り返り、気配のする上部…橋の下路アーチへと目を向ける。

 ――そこには、また新たな別の刺客が、ニヤリと妖しげな笑みを浮かべていた。



(*゚∀゚)「アヒャヒャヒャ!今日もやってるねェ〜♪」

34819話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:57:14 ID:Naxzm9FU0


( <::V::>)『貴様…!』

( ・∀・)「何だあの女は…?」

(*゚∀゚)「よいしょ、っと!」


 橋のアーチに腰掛け、両足をぷらぷらとさせているカテゴリーQの姿。
 一同の注目を浴びた事を確認すると、何の躊躇いも無くアーチより飛び降りた。
 人の身であれば、大怪我を負ってしまうかもしれない高さだ。


( ・∀・)「…アンデッドか、あの女」


 そんな高さを諸ともせず、華麗に着地してみせる様からすぐに正体は見抜けた。


(*゚∀゚)「さっきから見てたけど、そこのカテゴリーAしかアタシに気付かなくってさァ〜超寂しかったんだよ??」

( OHO)『………』

 
 ご機嫌そうに笑みを絶やさず、カリス達に近付く。
 ギャレンを一蹴したレンゲルが目を付けていたのは、既にこの場に居たというカテゴリーQだった。


( OwO)「お前…!何を企んでんだお!」

(*゚∀゚)「企んでなんかないよ?もうそういうのアタシはやらないって決めたからさぁ。面白くないし?」

(*゚∀゚)「本当に面白いモノ、知ってたけど我慢してたんだよねェ。だから……」


(*゚∀゚)「今日は、楽しみに来ちゃった……!!」

(*>∀<)「フォオオオオオオオオオオオオオウッ!!!!」


 奇声を上げながら片手を天に伸ばすカテゴリーQの身体に、別のシルエットが浮かび上がる。
 重なるシルエットに合わせ、カテゴリーQの人間の身体は歪に形を変えていく。

 そして、遂に本当の姿をブレイド達の前に現した。

34919話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:58:11 ID:Naxzm9FU0

( ・∀・)「!?」

( OwO)「それが、お前の正体か…!」
  、、
@*゚皿゚)@『アヒャヒャ、やっぱりこっちの姿の方が伸び伸び出来ていいわ〜』


 阿修羅のように、三つの顔がある頭部。
 左右の顔から一本ずつ捩れた角、正面の顔からは、反った角が二本。
 両肩にも角が生え、複雑に角が入り乱れた上部。

 身体の中心から左右非対称の白と黒の色。
 コートを羽織ったような出で立ちは、まるで府坂を彷彿とさせる。

 首回りや顎、腰には毛が伸びていて、その姿は山羊を連想させた。

  、、
@*゚皿゚)@『さァて……楽しませてくれよなァ!!』

( OwO)「!?」


 地面を蹴ったカテゴリーQ。
 既に、その場に姿はない。

 次の瞬間には、ブレイドの視界の上から姿を現していた。


( ; OwO)「なっ…!」
  、、
@*゚皿゚)@『アヒャヒャ!』


 動きが予測出来ておらず、咄嗟の対応に遅れが出た。
 カテゴリーQの右手に握り締められた三日月状の刃が、ブレイドの身体を切り裂いた。


( ; OwO)「あうッ…!!」
  、、
@*゚皿゚)@『ほいほい、どんどん行くからさァ!着いて来いよ仮面ライダーさんよォ!!』


 言って、三日月状の刃を宙に放り投げる。
 ブーメランの如く飛翔する刃は、カテゴリーQの念力を受け勢いを落とす事なく舞い続ける。

 素手となったカテゴリーQは、ブレイドに対し法則の無い打撃を素早く繰り出し始めた。
 両手に伸びた爪で引っ掻くような殴打から、氷上で踊るスケートの如く身体を回転させながらの蹴り。
 見た目からは想像し得ないトリッキーな動きが、ブレイドを翻弄する。

35019話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:58:52 ID:Naxzm9FU0


( ; OwO)「ぐうっ…!こいつ、何だこの訳分からない動きは…!?」
  、、
@*゚皿゚)@『どうしたんだよブレイドォ!もっとやれるんじゃないの〜!?』

( OwO)「クソッ…止まれ、この山羊女――」
  、、
@*゚皿゚)@『ふっ、バーカ』


 鼻で笑い、人差し指をくいっと引く。
 その時、宙を舞い続ける三日月状の刃が、ブレイドに向け躍動を始めた。

 ブレイラウザーを翳したブレイドの背中を、刃が斬り付ける。


( ; OwO)「うああぁッ!?」
  、、
@*゚皿゚)@『アヒャヒャヒャ!!やっぱ自分で手ェ出した方がおもしれェ…!!』


 三日月状の刃は、舞いながら執拗にブレイドを斬り続ける。
 ブレイラウザーで防ぐ場面もあるが、自在に飛び続ける刃の餌食となっていた。
 カテゴリーQは動きを止め、独特の笑い声を高らかと上げながらその様を眺めている。

  、、
@*゚皿゚)@『……ん〜?』


 左右に生えた捩れた角が青白く発光し始める。
 色濃くオーラを纏った角から、身体の向きを変えず背後に向け衝撃波を放った。


( OHO)『ふんっ!』


 その衝撃波を、レンゲルラウザーで全て振り払うレンゲル。
 カテゴリーQの背後には、静かにレンゲルの魔の手が迫っていた。

  、、
@*゚皿゚)@『カテゴリーA……この前は随分な事してくれたじゃん?アタシの事殴ってくれちゃってさァ』

( OHO)『メス山羊が、巣に磔にして食い散らかしてやる』
  、、
@*゚皿゚)@『……どうかな?まだ完全に制御出来ない癖して』

( OHO)『何だと……ぐっ!』

35119話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 10:59:39 ID:Naxzm9FU0


( ; OHO)「うッ……!ぐうううぅ……!」

( ・∀・)「レンゲルの様子が……まさか」

( ; OwO)「ドクオ!?」


 レンゲルに、再び変化が表れ始めた。
 レンゲルラウザーを片手に握り締めたまま、もう片方の手で頭を抑えながら、身体をふらふらとさせている。

 
( ; OHO)「うううううッ…!俺を、出せ…ッ!俺を勝手に……使うなぁ…!!」

( OHO)『ええい…!貴様、大人しく俺に身体を差し出せ!』

( ; OHO)「嫌だ…!俺は、俺だ……ッッ!!」

( OwO)「ドクオ、目を覚ませ!!ッく…邪魔だお!」


 翻弄する三日月状の刃をようやく捉え、ブレイラウザーで強引に叩き落した。
 
  、、
@*゚皿゚)@『おっと…?ちょっと見物に回りたい展開になってきたなぁ…アヒャヒャ』

( <::V::>)『待て!逃がすか!!』
  、、
@*゚皿゚)@『逃がさせてよ〜面白くなりそうなんだからさァ! ハアアアァッ!!』


 イノシシのアンデッドを蹴倒し、逃亡を図るカテゴリーQに向け走り出すカリス。
 だが、カテゴリーQは異常なまでの脚力で空高く跳躍しながら、近付くカリスに向け口から青白い炎を吐き出し動きを牽制。


( <::V::>)『ぐうッ!』
  、、
@*゚皿゚)@『アヒャヒャ!じゃあね〜♪』


 追い討ちに三日月状の刃をカリスに向け投擲し、アーチの上を飛び移りながら去って行った。
 すかさずカリスアローで弾き落とし、姿が遠くなるカテゴリーQを目で追っては舌打ちをした。

35219話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 11:00:04 ID:Naxzm9FU0


 分が悪いと判断してか、イノシシのアンデッドも目を付けられないうちに退散した。
 残ったのは、カテゴリーAのコントロールから逃れようともがき苦しむレンゲルのみ。


( OwO)「ドクオ、しっかりしろ!目を覚ませ!」


 カテゴリーQの攻撃から解放されたブレイドは、苦しむレンゲルに近付く為に駆け出した。
 もしもこのまま支配から逃れられなければ、その時は力ずくで止めるしかない。

 覚悟を決め、レンゲルに手を伸ばした。




 その時だった。



 レンゲルに投げ飛ばされ、倒れたままだったギャレンが突如、素早く起き上がった。
 
 与えられた攻撃のダメージなど端から皆無と言わんばかりに走り出す。
 向かう先は、レンゲル。
 右拳には、灼熱の炎が――。


( OMO)「ッはあ!!!」

( ; OHO)「うわあああああッ!!!」

( OwO)「!?」


 ブレイドが着く前に、レンゲルに近付いたギャレン。
 腹部に燃え盛る炎を纏う右拳を叩き込み、自我を取り戻そうとしているレンゲルを吹き飛ばした。

 
( ; OHO)「うぐぅぅ……ッ!」


 地に崩れ落ち、ドクオとしての意識が痛みに苦痛の声を上げながら縮こまる。


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