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( ^ω^)運命と戦う仮面ライダーのようです part2

15317話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 09:53:54 ID:/ejLF8tk0


 ギャレンが府坂を封印した一方で、ブレイドは府坂の洗脳により動いている武装者達の相手をしていた。
 相手をすると言っても片っ端から殴り倒す訳では無い。
 ライダーが人間を本気で殴れば、それこそ死に至らしめてしまう。

 
「撃て!もっと撃て!!」

「クソッ、全然効かない…!」

( OwO)「いい加減目を覚ませ!あなた達は操られているんだ!!」


 "♠7 METAL"の力を使い、銃弾から更に強く身を防御している。
 先程から身体に無数の銃弾が被弾しているが、痛くも痒くもない。
 そして、武装者のうち一人の銃を取り上げ、強引にへし折った。

 ブレイラウザーを引き抜き近寄っても、逃走しようとしない武装者。
 

( OwO)「ふんっ!」

「うわっ!?」


 銃身を雑に斬り落とし、強引に発砲不可な状態にする。
 しかし今度はナイフを取り出し、それでも尚立ち向かおうと構え出した。


( OwO)「何でだ…!?そんなに府坂の洗脳は深いのか!?」

15417話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 09:54:28 ID:/ejLF8tk0


 ナイフを構えブレイドに挑もうとする武装者達。
 だが、突然武装者達の身体がガクンッと跳ね、全員が戦う構えを解いた。


「はっ……」

「ああ…俺達は一体何を……!」

( OwO)「え…目が覚めたのかお??」


 我に返ったような台詞を口にする武装者達。
 持っていたナイフをその場に落とし、一目散に逃げて行った。


( OwO)「どういう事だお??まさか……モララーさんが府坂に勝った…!?」


 唐突な出来事に困惑するブレイドだが、その理由として一つ思い浮かぶ事はあった。
 府坂の洗脳が無くなったとするならば……洗脳者がいなくなった可能性が高い。
 すると、通信機能を通してツンの声が耳に届いた。


[ ブーン!やったわ!モララーさん府坂を倒した!!]

( OwO)「やっぱり…!てことはモララーさん…無事なんだ……!!」

[ そうよ!本当によかった……早くモララーさんのもとに行ってあげて!]

( OwO)「わかったお!」


 遂に、府坂が封印された。
 モララーが無事である事実に心の底から喜ぶと同時に、それまで張っていた気が一気に抜け脱力感に襲われた。
 洗脳された人達が気になるが、何処に行ったかも分からない。
 急いでモララーのもとへと向かおうとした時だった。

15517話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 09:54:55 ID:/ejLF8tk0


( OwO)「ん…?」


 奥に停車しているトラックから、白衣を着た数人の人が降りてくるのが見えた。
 

「私は何てことをしていたんだ……!」

「何処だここは…?」


 研究員達も府坂の洗脳が解け、我に返っている様子。
 迷っている人達を見捨てる事は出来ず、ブレイドは研究員たちのもとへ駆ける。


( OwO)「大丈夫ですか!?」

「おっ……そ、その姿は……!」

「ブレイド!?」

( OwO)「僕を知ってるんですかお??」


 研究員達は、ブレイドの姿を見ると口々にその名を紡ぐ。
 初めて見た反応とはまた違う。何故?といった疑問に近い反応。
 
 すると、遅れてもう二人がトラックから降りてきた。
 スーツを着た中年の男性と、30代前後に見える男性。

15617話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 09:55:20 ID:/ejLF8tk0


「そうか……私達は府坂に洗脳されていた……」

「どうやらそのようです…」


 中年の男性ともう一人の男性の会話からするに、知り合い同士のようだ。
 これで全員だろうか。府坂に操られ、悪事に加担させられていた人達は…。


( OwO)「そちらさんも大丈夫ですかお?」


 ブレイドの声に反応し、二人が振り返る。


(,,゚Д゚)「あ、ああ…………!?ブレイド!?」


 もう一人の男性が答えるが、この男性も研究員達と同じような反応を見せる。
 男性の言葉に反応し、中年の男性も素早くブレイドに振り向いた。

 だが……ブレイドは、この中年男性の顔を見て、絶句する事になる。



( ФωФ)「ブレイド……!」

( OwO)「え………」





( OwO)「父………ちゃん………?」


.

15717話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 09:55:51 ID:/ejLF8tk0


( ФωФ)「ブレイド…!まさか、我々がこのような状況になっている間に適合者が見つかっていたのか…!」

( ; OwO)「………」


 ブレイドに近寄り、驚いた様子の中年の男性。
 ブレイド……その中にいるブーンは、それ以上に驚いている。

 小さな声で"父ちゃん"と呼んだ人物――そう、この人物は…この人物こそ、
 ブーンが幼い頃、カーチャンとブーンを…家庭を捨てた、ブーンの実父……"内藤ロマネスク"だった。


(,,゚Д゚)「驚きました……一体、君は誰なんだ?」

( ФωФ)「安心してくれ、我々はそのライダーシステムを開発した者である。
        ギャレン…菱谷とは会ったか?解放されたアンデッドは封印出来てるのか!?」

( ; OwO)「ッ……!!!!」

( ; OwO)(父ちゃんが……ライダーシステムの、開発者……!?!?)


 気を休める暇も無く、突き付けられた衝撃の事実。
 家庭を顧みず、仕事を選んで自分達を捨てた父が……BOARDの人間だったとは。
 

(,,゚Д゚)「落ち着いて下さい所長、彼が戸惑ってしまいます」

( ФωФ)「ああ…そうだな、すまない。…頼む、君の正体を見せてくれないか?」

( OwO)「………分かったお」


 このまま逃げられる訳がない。
 意を決して、自分の正体を見せよう。
 実の父……ロマネスクから距離を取り、ハンドルを引く。
 放出したゲートがブレイドの身体を潜り…その正体を見せた。

15817話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 09:56:15 ID:/ejLF8tk0


( ; ФωФ)「―――ッ!!!」

(,,゚Д゚)「君は…?」


 ブーンの姿を見た瞬間、ロマネスクの顔色が変わった。
 目を見開き口を大きく開け、ひどく吃驚している。


( ^ω^)「剣藤……ホライゾン。この内藤ロマネスクの……息子です」

(,,;゚Д゚)「何…!?」

「所長の息子さん!?」


 研究員同士が顔を見合わせ、一同も驚いている様子だ。


( ; ФωФ)「何故、お前がブレイドに……!?」

( ^ω^)「こっちが聞きたいお、父ちゃん――いや、あなたがライダーシステムの開発者ってどういう事だお?」

( ; ФωФ)「………」

( ^ω^)「まさかこんな形で会わなきゃならないなんて……あなたが僕達家族を捨てた理由って、これかお!?」

( ; ФωФ)「……ホライゾン、聞け」

( #^ω^)「いいや……もう聞く事はないお。元々あんたと会いたいなんてこれっぽっちも思ってなかった!
       あんたが僕達を捨てた理由がBOARDにあったなんて……また偉い皮肉な話だお!!」


 ブレイバックルを見せ付け、自分達家族を捨てた憎き実父に激しい怒りを覚える。


( ФωФ)「聞けと言っているのである!!」

( #^ω^)「ツンやジョルジュ、モララーさんは信用出来る……けどあんたは信用出来ない!」

( ФωФ)「待て!廣瀬や白岡も無事なのか!?菱谷も生きているんだな!?」

15917話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 09:56:36 ID:/ejLF8tk0


( #^ω^)「生きてる、みんな必死に戦ってる!僕もモララーさんも戦いの日々だ!!
       本当に皮肉だ……僕はあんたが作ったコレに変身して、人間を守る為に戦ってるだなんて!!」

( #ФωФ)「いい加減にしろ、ホライゾン!!」

(,,゚Д゚)「落ち着いて!とにかく今は状況を整理する方が先決です!」


 ヒートアップする二人の間に割って入る男性。
 引き離されたブーンは全員に背を向け、立ち去ろうとする。


( ФωФ)「どこに行くんだ!」

( ^ω^)「モララーさんのとこだお!モララーさんは府坂と戦って、酷く悲しみ傷付いてる!早く行かなきゃ…」 

(,,゚Д゚)「菱谷が近くにいるのか!?」

( ^ω^)「いますお。でも僕一人で行きます!」

( ФωФ)「そういう訳には行かない!我々は府坂に操られ、これまでの状況を把握していないのである。
        これは人命にも関わる問題だ、お前が嫌でも我々は知る義務と権利がある!」

( ^ω^)「ぐぐ……なら着いて来いお…!」


 ロマネスクに諭され、それ以上の反発は出来ない。
 悔しいが、的を射ているからだ。

 ブーンはモララーのもとに向かい走り始める。
 ロマネスクと男性もブーンに続き、走り出した。

16017話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 09:57:27 ID:/ejLF8tk0


( っ∀・)「………ふぅ」


 一人海を見つめながら、ひとしきり涙を流した目を拭う。
 溢れ出した気持ちが一旦収まりが着き、涙も止まった。
 深く息を吐き、気持ちを切り替えようと試みる。 


「モララーさーん!!」

( ・∀・)「??剣藤……?」


 名を呼ぶ声のする方へ振り向くと、ブーンが走りながら此方に向かって来るのが見えた。
 一人武装者を相手にしたブーンが無事そうで、一安心する。

 モララーの視線は、ブーンの後ろに着いて来る人間へと向けられた。
 そして、その二人の存在に目を丸くする。


( ・∀・)「あれは…!!所長に、ギコさん…!?」


 モララーのもとに三人はすぐに着き、ブーンがまず笑顔を見せた。


( ^ω^)「モララーさん、やりましたね!!」

( ・∀・)「ああ……」

( ФωФ)「菱谷…!」

(,,゚Д゚)「生きていたか、菱谷!」
 
( ・∀・)「所長…無事だったんですか!?ギコさんも!」

16117話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 09:57:53 ID:/ejLF8tk0


 三人はモララーの前に立ち並び、モララーはそれぞれに視線を合わせ笑顔を見せた。
 

( ФωФ)「ああ…府坂に操られ、我々は動かされていたらしい……」

(,,゚Д゚)「俺達が今こうしてるって事は、奴を封印したのか?」

( ・∀・)「……はい、ここに」


 落としたカードを拾い上げ、府坂を封印した♦Jのカードを見せた。
 モララーがライダーとして不安要素を抱えていた事を知っていただけに、ロマネスクは嬉しげな顔だ。
 モララーの肩をポンと叩き、何度も頷く。


( ФωФ)「上級アンデッドを封印するまでに成長したか…よくやった、菱谷」

(,,゚Д゚)「ギャレンをお前に任せてよかった」

( ・∀・)「………」

( ^ω^)「やめてくださいお!モララーさんは今……」


 二人の褒め言葉を貰っても、モララーに笑顔はない。
 ブーンはその理由を知っている、だから止めた。

 モララーは、ロマネスクに向け重たげに口を開いた。


( ・∀・)「……所長、聞いてもいいですか?」

( ФωФ)「なんだ?」

( ・∀・)「何で、俺をギャレンに…仮面ライダーに任命したんですか?」

16217話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 09:58:42 ID:/ejLF8tk0


( ФωФ)「それはお前が一番理解しているはずである」

( ・∀・)「分かりません。俺のように弱い人間は、アンデッドの力を利用したライダーシステムを制御する事は出来ない。
       初期段階の融合係数が高くても……意志の強いギコさんであれば、俺みたいな無様な事にはならなかった……」

( ^ω^)「どういう事だお?この方が、って…」

( ・∀・)「ギコさん…久利生ギコさんは、ギャレンの最初の適合者だ」

( ^ω^)「えっ…!?てことは、ツンが話してたギャレンの前任者というのは……!!」


 ツン達と知り合って間もない頃、モララーの前にギャレンの適合者が居たという話を聞いた事がある。
 その人は行方不明となり、生死も分からないような状況だったと。


(,,゚Д゚)「よせ……過ぎた話だ」


 そう、ロマネスクと現れたこの男性――"久利生ギコ"こそ、ギャレンの最初の適合者。
 だが、その紹介を受けるギコは少し嫌そうだ。


(,,゚Д゚)「しかし、お前は上級アンデッドを封印する程にギャレンを使いこなしてる」

( ・∀・)「使いこなせてなんかいませんよ、俺は自分の恐怖心に負け…道を踏み外した」

( ・∀・)「……府坂に、大切な人の命を奪われたんです」

( ФωФ)「……!」

(,,゚Д゚)「もしかして……お前が言っていた、ヒートさん…か?」

( ・∀・)"


 言葉を返さず、無言でゆっくりと深く頷く。
 以前からヒートの話を聞いていた二人は、ヒートの訃報に驚いている様子だ。

16317話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 09:59:46 ID:/ejLF8tk0


( ・∀・)「俺の所為です、俺が自分の事ばかりで…剣藤達の言葉も、彼女の言葉も聞き入れようとしなかった。
       弱くて、どうしようもない俺の所為で……」

( ^ω^)「そんなことないですお…!」

( ・∀・)「彼女を失った怒りが、俺とギャレンの融合係数を高めただけです。だから俺は……」


 ギャレンバックルと、♦のカテゴリーAのカード、そして♣のカテゴリーAのカードを取り出す。
 三つのアイテムを両手で一纏めに持ち……ロマネスクに向け差し出す。
 ロマネスクが片手で受け取り、曇る表情のモララーを見た。


( ФωФ)「何だ、これは……」


 一歩下がり、ロマネスクに向け深々と頭を下げる。
 そして……、







( ・∀・)「――仮面ライダーを、辞めさせてください」



( ^ω^)「え……!?」

(,,゚Д゚)「菱谷!?」

16417話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:01:12 ID:/ejLF8tk0


( ФωФ)「……何故だ、菱谷」

( ・∀・)「俺は元々、自分はライダーに向いてないって思っていました。それを改めて感じたんです」

( ・∀・)「でもそれは、ライダーをやりたくないからではなくて……。
      己を制御出来ない者に、ライダーの資格は無い。そう思ったからです」

( ; ^ω^)「そんな……アンデッドはまだいっぱいいるんですお?これから力を合わせて――」

( ・∀・)「ごめん、だとしても時間が欲しいんだ。今はどうしても………」


 受け取ったギャレンバックルを持ったまま両手を後ろに組み、モララーの横を通り過ぎる。
 目の前に広がる海を見つめながら、モララーの質問に答えた。


( ФωФ)「……菱谷、吾輩がお前をギャレンに選んだ理由は、融合係数が高いだけではない」
 
( ・∀・)「え…?」

( ФωФ)「初めてライダーシステムをお前に披露した時、お前は力への欲望を見せなかった。
        力を前にしても、それに惹かれる事のない心……それが一番の理由である」

( ・∀・)「………」

( ФωФ)「だが…吾輩の判断の所為でお前をとても辛い目に合わせてしまった。
        ヒートさんを失う事になってしまったのも…吾輩の責任である」

( ФωФ)「すまない……」

( ・∀・)「……違います、頭を上げてください」


 モララーに向け頭を下げるロマネスク。
 その両肩に手を添え、下げた頭を上げさせた。

16517話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:02:21 ID:/ejLF8tk0


( ^ω^)「モララーさん……本当に駄目なんですか?考え直してはくれないんですかお…」

( ・∀・)「剣藤…君には、本当に沢山の苦労を掛けてしまった。謝り切れないよ。
      そんな俺を見捨てないでくれて……ありがとう」

( ^ω^)「……モララーさん」

( ・∀・)「ギコさん……お願いします。ギャレンを引き受けてくれませんか?」

(,,゚Д゚)「馬鹿な事を言うな…ギャレンの資格を持つ者は、この世でたった一人」

(,,゚Д゚)「それは、お前だ」

( ・∀・)「……ありがとうございます、ギコさん」


 全員に頭を下げ、モララーは一人立ち去ってしまう。
 波打ち際で足元を濡らしながら、着いた足跡は消えていく。

 小さくなってしまったように見える背中を見つめる三人。
 誰一人、モララーを止める言葉を掛けられなかった。


( ФωФ)「菱谷、吾輩は信じてる。お前が戻ってくれる事を……」


 モララーの背中を見つめながらギャレンバックルを握り締め、小さくつぶやいた。

16617話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:02:59 ID:/ejLF8tk0


( ^ω^)「……これからどうするんだお」


 無愛想に父であるロマネスクに声を掛ける。


( ФωФ)「お前達に伝えなければならない事がある。廣瀬達に会わせてくれないか?」

( ^ω^)「ツン達なら僕とカーチャンの家で一緒に暮らしてるお」

( ФωФ)「……来て欲しくないという事であるか」

( #^ω^)「当たり前だおッ!!今更土足でズカズカと上がられるなんて…たまったもんじゃないお!」

( #^ω^)「あんたの所為で僕達は…!カーチャンは大病を患って今も病気と闘ってるお!!」


 ロマネスクの胸倉を掴み怒りを露にする。
 自分達が捨てられ、それまで味わった苦労を考えると、どうしても許せなくなってしまうようだ。


(,,゚Д゚)「落ち着いてくれ!気持ちは分かる、だが今は…今だけは話を聞いて欲しいんだ。
     頼む、モララーがいない以上尚更重要な事だ…!」

( #^ω^)「……ッ!」

( ФωФ)「………」


 再び割って入るギコの制止に、渋々胸倉を掴む手を離した。
 それ以上ロマネスクと視線を合わせる事はなく、ギコとのみ目を合わせた。


( ^ω^)「分かりましたお……じゃあ、着いてきてください」



.

16717話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:03:39 ID:/ejLF8tk0





 ―――――




.

16817話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:04:05 ID:/ejLF8tk0


 ――ブーン達が府坂との因縁を終え、新たな展開へと進んでいる頃。

 
 カテゴリーQの脅迫を受け、カリスに襲い掛かったモス。
 睨み合っていた二人は、未だ不本意のまま対立をしていた。


『シイイイィイイィィッ!!』

( <::V::>)『やめろ!!お前とは…ッ戦うつもりはない!』

『――情けを掛けるな……!!』

( <::V::>)『お前を生かす為じゃない!あの子の為に戦わないだけだ!』

『……シュウゥウッ!』


 口吻から毒矢を吐き、腕に着いたヒレのような羽を振るい続ける。
 モスの攻撃を躱し、防ぎ、防戦一方のカリスだったが、反撃しようと思えばいくらでも出来る。

 しかし、頭に浮かぶでぃの顔がカリスの戦意を制御していた。
 モスを傷付ければ、でぃがひどく悲しむ。


( <::V::>)(このままでは埒が明かない……やむを得ないが、やるしかない!)

( <::V::>)『ふっ!』

『シュオオォッ…!?』


 片腕で攻撃を防ぎ、カリスアローの刃先でモスの胸部を突き刺した。
 すぐに後退し距離を取る。
 カリスアローの突きを受けたモスの胸部からは、緑色の血が流れた。

16917話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:04:37 ID:/ejLF8tk0


 カリスラウザーをカリスアローに装着。
 カードを一枚選択し、カリスラウザーにカードをラウズした。


    《-♥7 BIO-》


( <::V::>)『はっ!』
 

 伸ばした右手から、三本の太い蔓がモスに向け放出。
 全ての蔓がモスの身体を幾重にも巻き付け、完全に拘束した。
 

( <::V::>)『少しばかり大人しくしてもらうぞ!』


 右手で三本の蔓を操り、縛り上げたモスを浮遊させる。
 そして、地面に向かい力強く何度も叩き付け始めた。
 ドスン!ドスンッ!と、軽い地響きを起こし生え並ぶ木々の枝が揺れている。
 モスを叩き付けた地面は抉られ、修復が必要な程になってしまった。


『シュゴオオォオオッ…!!』


 カリスが行ったのは、手荒くはあるがモスを弱らせる作戦だ。
 致命傷は与えず、その場を凌ぐためのもの。
 カリスの攻撃を受けたモスは、最後に地面に放り投げられ道路を転がった。

 この場から立ち去るなら今しかない。

 カリスの脳波を受けたシャドーチェイサーが無人走行しカリスのもとへと移動。
 来着したシャドーチェイサーに飛び乗ると、倒れたモスをそのままに一人立ち去った。

.

17017話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:05:00 ID:/ejLF8tk0


 モスの襲撃を退け、急遽でぃの家へと戻る。
 
 カテゴリーQは、でぃを人質にモスを脅迫しカリスを襲わせた。
 まだ幼い子供を手を抜けばを殺すと言い放つような残虐性を持ち合わせている。
 
 あのような上級アンデッドが、一体いつ何をしているか分からない。
 もしかすれば、この間にでぃに接近している可能性も十分に考えられた。



 でぃの家に到着し、既にカリスの変身を解いていたクーは急いで家へと向かった。


川 ゚ -゚)「でぃちゃん!!」


 名前を呼びながら勢いよく戸を開け、家の中を確認する。
 
 そこには……

 



(#゚;;-゚)「おかえりなさい、どうしたの?」


 火を焚き、米を炊いていたでぃが居た。
 クーの慌てた様子にきょとんとしている。

17117話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:05:21 ID:/ejLF8tk0



川 ゚ -゚)「無事か?何もなかったか??」

(#゚;;-゚)「え??何もないよ、どうかしたの??」

川 ゚ -゚)「そうか……いや、何もないならいい」


 どうやら、カテゴリーQの魔の手は"まだ"でぃには伸びていないらしい。
 一安心し、家の中に入ると勢いよく開けてしまった戸をゆっくりと閉めた。


(#゚;;-゚)「ねぇ、そういえばモス見なかった?」

川 ゚ -゚)「……!」

(#゚;;-゚)「何か急に飛び出して行っちゃったの、早く戻りなよって言ったんだけど」


 先程クーに襲い掛かったモスの話を受け、言葉に詰まる。
 まさか、モスに襲われたとも言える訳なく…適当なその場凌ぎの言葉を頭の中で適当に作る。


川 ゚ -゚)「いや……見てない」
 
(#゚;;-゚)「そっかぁ、一人で大丈夫かなぁ」

川 ゚ -゚)「………」


 何が起きているかも知らないで、ただモスの心配をするでぃ。
 素直に言えばこの子が傷付き、モスも傷付く。
 そんな事を考えると、何故か胸の辺りがモヤモヤするような、痛むような感覚を覚えた。


川 ゚ -゚)(……これも、人らしさなんだろうか?)

.

17217話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:05:43 ID:/ejLF8tk0





 ―――――




.

17317話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:06:04 ID:/ejLF8tk0


 ――自宅に着き、ブルースペイダーから降りるブーン。
 ロマネスク達は、府坂の利用していた黒い車に乗りブーンに続いて家に到着した。

 黒い車から降りると、ロマネスクは久しぶりの家をじっくりと見つめる。


( ФωФ)「……久方振りであるな、この家も」

( ^ω^)「もう二度と来て欲しくなんてなかったお、本当は」

( ФωФ)「………」


 相変わらず、ロマネスクには冷たい対応だ。
 久方振りなどと口にされるだけで、ブーンは苛々していた。


 玄関の扉を開け家の中へと入り、ツン達が居るであろうリビングへと向かう。
 一方、リビングに居るツン達は複数の足音に気付き、現れる人物達を待つ。



( ^ω^)「ただいま…」

ξ゚⊿゚)ξ「おかえりなさい!モララーさん、どうだった??」

( ^ω^)「………」
 _
( ゚∀゚)「どうしたんだ??」


 ツンの質問に答えず、表情を曇らせる。
 ジョルジュがブーンの様子に気が付き声を掛けるが……。
 それもそのはず。二人に父親が来たなどと言い難くもあり、言いたくもなかった。

17417話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:06:24 ID:/ejLF8tk0

 _
( ゚∀゚)「誰か来てるんじゃないのか?」


 ジョルジュの言葉の後に、ブーンの後ろからロマネスクとギコがリビングへと入った。


ξ゚⊿゚)ξ「え……??所長!?!?」
 _
( ゚∀゚)「ギコさん…!?!?」


 二人を見るなり、ツンは口を抑えながら、ジョルジュは食い気味にとても驚いて見せた。


( ФωФ)「廣瀬……よかった、生きていたんだな…!」

(,,゚Д゚)「白岡、お前も無事でよかった」

ξ゚⊿゚)ξ「所長達こそご無事だったんですね…!!はぁ……よかった……」


 今まで、ロマネスクがBOARD襲撃時になくなったものとばかり思い込んでいた。
 無事を知り、こうして目の前にした事で安心してしまったのか、ツンは大きく溜息を吐きほっとしている。

 _
( ゚∀゚)「今まで何処に行ってたんですか!何で何の連絡もしてくれなかったんすか!?」

( ФωФ)「すまない、今はそんな事より君達に話さなければならない事がある」


 ツン達の心配を余所に、ロマネスクはソファへと腰掛ける。
 そして、懐から何かを取り出した。

17517話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:06:52 ID:/ejLF8tk0


( #^ω^)「おい!勝手に座ってんなお!!それはカーチャンが買ったソファだ!!」

( ФωФ)「悪いな、でも今だけは許してくれ」

( #^ω^)「チッ……とっとと話したら帰ってくれお」


 あまりにも横暴な態度を取るブーンに、関係を知らないツン達が割って入った。


ξ゚⊿゚)ξ「え……ちょ、ちょっとブーン!何言ってるのよ!」
 _
( ゚∀゚)「そうだぜお前!この人は――」

( ^ω^)「こいつが僕等を捨てた父親だった奴だお、だから気にしないでくれお」
 _
( ゚∀゚)「は……???」

ξ゚⊿゚)ξ「ええええっ!?!?!」

( ФωФ)「今はそれどころではないのである、話をするぞ」

ξ;゚⊿゚)ξ「え……あ……」
 _
(;゚∀゚)「いきなり忙しすぎて状況全部読みきれてねぇ…」


 唐突に突き付けられる事実を飲み込む間も無く、ツン達はソファへと腰掛けた。
 近くに居たくないのか、ブーンは一人食卓の方へと座った。

 ロマネスクは、懐から取り出したものをテーブルの上に置き、それを見せる。

17617話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:07:18 ID:/ejLF8tk0


ξ゚⊿゚)ξ「何ですか、これ?」


 置かれたものにツン達と、一人食卓に座るブーンの視線が釘付けになる。
 テーブルに置かれたのは……、


( ФωФ)「これは、新たに作られてしまったライダーのベルト――"レンゲル"である」

( ^ω^)「!!!」
 _
( ゚∀゚)「新しいライダー……レンゲル!?」

ξ゚⊿゚)ξ「……もしかして、府坂が作ったライダー?」


 ロマネスクがテーブルに置いたのは、新しいライダーのバックルだった。
 だが、形状はブレイドやギャレンのものとは大分異なる。
 バックルのハンドルを引く事でターンさせるものではなく……見たところ、バックルがゲートのように閉じている。

 金と黒が目立ち、ゲート部分は紫色で塗装されていた。


( ФωФ)「我々は府坂に操られ奴の言いなりとなり…断片的な記憶しかないが、このベルトを作らされていたようだ…」


 府坂が散々口にしていた"最強のライダーを作る"。
 開発には府坂が加わっていた事に間違いはないが、アンデッドにライダーシステムを開発する技術はない。

 そこで府坂は、ロマネスクや生き残りであるBOARDのライダーシステム開発に携わったBOARD研究員たちを利用し、
 新しいライダーのベルトを作成したという訳だ。


( ФωФ)「そして……菱谷が封印した、♣のカテゴリーA。どうやらこのカテゴリーAに合わせて作られたらしい」


 モララーから受け取った♣のカテゴリーAのカードを、新たなバックルの横へと置く。

 ♠のブレイド、♦のギャレン、♥のカリス……そして遂に、♣のレンゲルが誕生してしまった。
 ♣のレンゲルはアンデッドの意志の元で作られたライダーシステム。当然、これは歓迎出来るものではない。
 
.

17717話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:08:06 ID:/ejLF8tk0

 _
( ゚∀゚)「……これが、♣スートのライダー……」


 ジョルジュが伸ばした手でバックルを掴み、自分のもとへと引き寄せる。
 バックルを真剣な眼差しで見つめ、しばらくそのまま動かなかった。


( ФωФ)「菱谷が封印したスパイダーアンデッド…カテゴリーAの中でも凶暴性の高いアンデッドだ。
        府坂は、スパイダーアンデッドの邪悪な意志を色濃く反映される様にこのベルトを開発した。
        変身者はカテゴリーAの邪悪な力の影響を受けられるように出来ている」

( ФωФ)「そいつは……とても危険なベルトだ」

( ^ω^)「アンデッドが封印されて尚、生き続けられるように……?」

( ФωФ)「そういう事だ」

( ^ω^)「アンデッドによるアンデッドの為のライダーって事かお……」


 テーブルの上に置かれた、♣のカテゴリーAのカードに視線が集まる。
 封印された♣のカテゴリーAは、アンデッドではなくライダーとして生まれ変わるという事。
 詳しく説明をしなくとも、それが如何に危険かは容易に想像出来た。


ξ゚⊿゚)ξ「そんなの絶対駄目よ…このベルト、どうにか処分出来ないかしら…」

( ФωФ)「無駄である。ライダーシステムは特別な力が加わっている、人間の力ではどうにも出来ない」


 レンゲルのベルトをとても危険視する四人。
 そばに置いておく事すらおぞましく、とても不穏な空気が漂う。

 _
( ゚∀゚)「あの………」


 先程からレンゲルのベルトを見つめてばかりのジョルジュが口を開いた。
 


 _
( ゚∀゚)「……このベルト、俺に使わせてください」

17817話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:09:02 ID:/ejLF8tk0


ξ゚⊿゚)ξ「はぁ!?何言ってんのあんた!今の話聞いてたでしょ??」


 危険性を語られた上での言葉に思わず呆れてしまう。
 だが、事実を突き付けられる度にレンゲルのベルトを握る手の力は強くなる。
 ジョルジュは思わずソファから立ち上がり、全員に向け話し出した。
 
 _
( ゚∀゚)「ああ、聞いてたさ。でも俺はアンデッドの意志なんかには屈しねえ!」

( ФωФ)「白岡、それだけは許可出来ない。カテゴリーAの力はただでさえ強力である。
        下手をすれば、お前はカテゴリーAに操られ――」
 _
( ゚∀゚)「俺は操られませんよ!カテゴリーA…どれだけの意志かは知らねぇけど、俺が捻り潰して使いこなしてやる!」

ξ゚⊿゚)ξ「あんたねぇ、いい加減にしなさいよ…」
 _
( ゚∀゚)「俺はマジだ!!今回ばかりは全てを賭けてもいい!!」

ξ゚⊿゚)ξ「………」


 全てを賭ける……真剣なジョルジュの気迫に圧されてしまった。
 新しい力を前にして情熱を見せるジョルジュに……静観をしていたギコが、遂に口を開いた。


(,,゚Д゚)「白岡……お前ずっとライダーになりたがってたな」
 _
( ゚∀゚)「そうですよ、俺は今でもライダーになりたいって思ってる!」

(,,゚Д゚)「何故だ?何故そんなにライダーになりたい?」
 _
( ゚∀゚)「そんなの……決まってるじゃないっすか、全てのアンデッドを倒す為に――」

(,,#゚Д゚)「それだけでライダーになれるなら苦労はしない!!」

17917話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:09:27 ID:/ejLF8tk0

 _
(;゚∀゚)「ッ!!!」

( ^ω^)ξ゚⊿゚)ξ「!?」


 それまで穏やかそうだったギコが、怒気を含んだ声でジョルジュを怒鳴りつけた。
 ブーンやツンが吃驚したのか、思わずギコに視線を向ける。


(,,゚Д゚)「ライダーになって戦いたい、解放されてしまったアンデッドを倒したい……それはな、当時の俺と同じだ。
     お前のその気持ちが間違ってるとは俺は思わない」

(,,゚Д゚)「だがな…ライダーになりたい、ライダーへの憧れを抱いてしまった時点でお前はライダーになるべきじゃない」
 _
( ゚∀゚)「何でだよ!アンデッドを倒す為にライダーになりたいって思うのは当然だろ!?」

(,,゚Д゚)「分からないのか?ただアンデッドと戦う為にライダーになるのなら……。
     お前は力に溺れる、そしてカテゴリーAに支配される!」

(,,゚Д゚)「ホライゾン君や菱谷がライダーシステムを自分の物にしているのは、融合係数だけの問題じゃない。
     この意味が分からないなら、迂闊にレンゲルに…いや、ライダーになりたいなどと思うな!」



(,,゚Д゚)「――ギャレンにもブレイドにもなれなかった俺から、それだけは言っておいてやる」


 _
( ゚∀゚)「………分からねぇよ、俺には!」


 ギコの言葉に、返す言葉が見つからない。
 俯いてしまったジョルジュはレンゲルのベルトをテーブルの上に置き、捨て台詞を吐きリビングから去ってしまった。
 階段を上る足音が聞こえる事から、二階の自室へと向かったのだろう。

18017話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:11:09 ID:/ejLF8tk0


(,,゚Д゚)「……大声を出してすまないな」

( ^ω^)「いえ……大丈夫ですお」

( ФωФ)「久利生、お前……」

(,,゚Д゚)「気にしないで下さい、所長。今更後悔はありません」


 一度はギコをギャレンに任命したロマネスクだが、その後ギャレンから降ろしたのもロマネスク自身だ。
 ギコの話を聞いて思うところがあったのか、申し訳無さそうな表情をしている。

 一人食卓に座っていたブーンが立ち、ソファへと移動してきた。
 ジョルジュが置いたレンゲルのベルトを手に取り、それを軽く眺める。


( ^ω^)「これ、どうするつもりなんだお?」

( ФωФ)「保管しておくしかないであろうな。紛失など絶対にしてはいけない」

( ФωФ)「レンゲルは、誰にも扱えない……扱ってはいけない。
        これ以上、過酷な運命を背負わせる訳には…」

( ^ω^)「………」


 一通り話を聞き、ロマネスクが本当にライダーシステムに精通している事を実感する。
 レンゲルに変身してしまう事のリスク、それらを全て理解し、
 それによる被害者を出したくないという思いを聞き、今まで隔てていた父親との壁に、ほんの僅かだが穴が開いた。

18117話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:11:38 ID:/ejLF8tk0


( ^ω^)「……行く場所ないだろ。泊まってけお」

( ФωФ)「どうしたんだ、急に」

( ^ω^)「嫌なら今すぐ出てってくれて構わないお」


 ソファから立ち、収納家具の引き出しを開けレンゲルのベルトとカテゴリーAをしまった。 


( ^ω^)「このベルトはうちで預かるお。あんたが良い方法を思いつくまでは」
       それまでは……取り敢えず、うちで保管すればいいお」


 息子からの思いがけない言葉に、思わず表情が緩みそうになった。
 ロマネスクは、次いでモララーから預かったギャレンバックルをテーブルの上に置く。


( ФωФ)「我々は、残ったBOARDの研究員達と力を合わせ、
        アンデッドを封印する為により良い開発を再開するつもりだ」

ξ゚⊿゚)ξ「より良い開発…?」

( ФωФ)「うむ。もう誰にもこの技術を悪用させはしない……お前の気持ちは嬉しいが、我々は出て行くよ」

( ^ω^)「そうかお」

( ФωФ)「このギャレンバックルは、いつか菱谷が再び立ち上がった時に渡してやって欲しい」

( ФωФ)「頼むぞ、ホライゾン」

( ^ω^)「……言われなくてもそうするつもりだお」

( ФωФ)「何かあればすぐに連絡する。これからは、協力してアンデッドを封印しよう」


 やはり、ブーンの常に素気ない態度は変わらない様子。
 それでも、久し振りに再会を果たした恨みを持ち続ける父に対して、唯一気を許した所だけはあった事は確かだ。
 差し出されたギャレンバックルを預かると、ロマネスクとギコは二人に頭を下げリビングを出た。

18217話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:12:11 ID:/ejLF8tk0


 すると、何か思い出したかのようにロマネスクがリビングに戻りブーンに声を掛けた。 


( ФωФ)「……ホライゾン」

( ^ω^)「なんだよ」

( ФωФ)「その……母さんの容態はどうであるか?」

( #^ω^)「知る必要はないお」

( ФωФ)「でも、重い病気なんだろう?」
 

 実の息子に対し、不器用に話すロマネスク。
 母親の事に触れられるのを嫌に感じるのか、再びブーンは強い態度になってしまった。


( #^ω^)「どうせあんたには関係ないお。僕らがどうなろうと…」

( #^ω^)「間違ってもカーチャンに会おうだなんて思うなお、僕も絶対あんたを会わせたりしない!
       もう二度とカーチャンの事に触れるな。分かったら早く帰ってくれお!」

( ФωФ)「……すまない」


 それ以上言葉を返す事が出来ず、ブーンの言葉にただ落ち込んだ。
 一言謝罪を残し、ロマネスクは今度こそ家を出て行った。

 見かねたツンが、憤るブーンに声を掛ける。


ξ゚⊿゚)ξ「ブーン……何もそこまで言わなくても」

( ^ω^)「いいんだお、あいつの所為で僕らはたくさん苦労したんだ。
      この程度の事言ったって罰は当たらない……当たってたまるかお」

ξ゚⊿゚)ξ「………」

18317話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:12:44 ID:/ejLF8tk0





 ―――――




.

18417話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:13:07 ID:/ejLF8tk0


 モスを脅迫し、クーを襲わせたカテゴリーQ。
 いつカテゴリーQがこの場所に現れるかも分からない事を危険に思い、クーはアンデッドの事を軽く話す事にした。


川 ゚ -゚)「でぃちゃん……ちょっと聞いてくれ」

(#゚;;-゚)「なに?」


 でぃの前に立ち、しゃがみ込んで視線を合わせた。


川 ゚ -゚)「もしかしたらの話だよ?もしかしたら……モスみたいな格好をした人が現れるかもしれない。
     その時は、モスと同じように優しい子だと思っちゃ駄目だ」

(#゚;;-゚)「知ってるよ」

川 ゚ -゚)「え?」

(#゚;;-゚)「だって、モスは本当は化け物だもん。だからあのお兄さんはモスをやっつけようとしたんでしょ?」

(#゚;;-゚)「それに……」








(#゚;;-゚)「……本当は、モスと同じ化け物がお父さんとお母さんを殺したのも、知ってる」


.

18517話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:13:41 ID:/ejLF8tk0


川 ゚ -゚)「!!!」


 でぃの口から、両親の真実が語られる事に驚きを隠せない。
 無表情であるクーは目を見開き、一瞬口も開いたが、息を飲みすぐに口を閉ざした。


川 ゚ -゚)「……何で、それを……」

(#゚;;-゚)「だって、そうやって化け物が私に言いに来た事があるから」

川 ゚ -゚)「なに…!?」

 
 クーの予想を超えた衝撃の事実があった。
 両親を殺害したアンデッドがわざわざでぃに近付き、でぃの両親を殺害した事を自白していた。
 当然、罪悪感からなどではない。面白がっているのだろう。


川 ゚ -゚)「それって、どんな見た目してた!?」

(#゚;;-゚)「うーん…顔が三つあったよ。山羊みたいな角生えてて……」

川 ゚ -゚)(山羊……カテゴリーQだ……!)


 でぃが話してくれる特徴だけで、正体が分かった。
 モスを脅迫し、カリスを付け狙う若い女に擬態したアンデッド。カテゴリーQだ。

 その時、家の戸がガラガラと開く音がした。


 戸の方に視線を向けると………、



 
(*゚∀゚)「あらぁ、アタシの話してくれるなんてうれし〜♪」

18617話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:14:06 ID:/ejLF8tk0


川 ゚ -゚)「貴様ッ!!」


 ついに、魔の手がこの家まで迫ってしまった。
 盗み聞きをしていたのだろうか、自分の話をしている事を何故か嬉しそうにしている。

 カテゴリーQの登場にクーの警戒心は突如最大限に。
 でぃを庇うようにして立ち、鋭い目付きで威嚇した。


(#゚;;-゚)「今度は誰なの??」

川 ゚ -゚)「こいつだよ、その化け物は!こいつが君の両親を……」

(#゚;;-゚)「えっ…」

(*゚∀゚)「そんな丁寧に紹介してくれるの??優しいなぁ〜カリスは」

川#゚ -゚)「黙れ!!」


 平和でゆったりとしていた家の中に、殺伐とした空気が流れ始める。
 でぃは状況が読み込めず、戸惑っている様子だ。


(*゚∀゚)「ちょっと落ち着いてよ、アタシはあんたとやらないよ??」

(*゚∀゚)「あんたをやるのはアタシじゃなくて……コ・イ・ツ♪」


 家の外から何かを引っ張るカテゴリーQ。
 引っ張ったものを、家の中へと無造作に放り込んだ。

18717話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:14:46 ID:/ejLF8tk0


『シュウウゥッ……!』

(#゚;;-゚)「モス!?!?」


 放り込まれたのは、ボロボロになったモスだった。
 クーはモスに対して一時的に攻撃を行ったが……モスの身体は、明らかにその時以上に傷付いている。
 
 傷だらけになったモスを見るなり、でぃはクーの背後から出て倒れたモスへと近付いた。


(*゚∀゚)「なっさけないよねぇ、ちょっとやられたくらいでへばっちゃってさ〜」

川 ゚ -゚)「貴様がやったんだな、この傷…」

(*゚∀゚)「気を引き締めさせる為だって!気張らないとあんたを倒せそうにないし」


 モスの身体を気遣っていたでぃが立ち上がり、台所に置かれた大き目のすり棒を取った。
 そして、カテゴリーQの前に立ち、視線を上げ睨んだ。


(#゚;;-゚)「……私の大事なモスをいじめるな!!」

『……!!』

川;゚ -゚)「よせ!危ない!」 
 
(*゚∀゚)「ええ…?ちょっと、アタシの事殴るつもりなの??やだ怖ーい……!!」 

(;#>;;-<)「きゃあっ!?」


 すり棒を掲げたでぃの右手を掴み、軽々と引っ張り上げる。
 左腕のみででぃの身体を抱え……右手に持った三日月型の刃を、でぃの首元に押し付けた。


.

18817話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:15:26 ID:/ejLF8tk0


(;#゚;;-゚)「ひっ…!」

川;゚ -゚)「でぃちゃん!!」

(*゚∀゚)「アヒャヒャヒャヒャ!!!さァて、アタシの可愛いモスちゃん……言う事聞くしかなくなっちゃったねェ」

『………』

川 ゚ -゚)「待てッ!!」


 遂に強行策に出た。
 自分の手ででぃを人質に取り、屋外へと去るカテゴリーQ。
 どうしてもモスの手でクーを倒させたいらしい。

 カテゴリーQを追いクーも外へと出る。
 表には、相変わらずでぃの首に刃を突き付ける姿があった。


川#゚ -゚)「その子を離せ!!」
 
(*゚∀゚)「はい分かりました!って言わない事くらい分かってるっしょ??」

(*゚∀゚)「もう逃げられないよ、あんたもカテゴリー8も……此処で二人仲良くくたばるのさ!!」

川#゚ -゚)「ッ………!!」

(*゚∀゚)「あんたも下手に動いたら…このガキの首落としちゃうかもよ?」


 下卑た笑みを浮かべながら、でぃの命を盾にモスを、クーをも脅し始めた。
 下手に動けばでぃの命はない。
 憎き眼前のアンデッドへ手を出せない歯がゆさに怒りが募る。

18917話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:16:21 ID:/ejLF8tk0


(*゚∀゚)「さァ、早くコイツをやれ!!」

『シュゥウ……ウオォオオオオオッ!!』


 カテゴリーQの命令を受け、モスが動いた。
 でぃを気遣うクーに手を出したくはない。だが自分が逆らえば、でぃが殺される。
 葛藤に苦しむ心、それを振り切るように雄叫びを上げ空中を軽やかに飛んだ。

 クーに向け飛翔したモス。
 反動的に防御の構えを取ったクーに突進し、軽々と吹き飛ばした。


川 ゚ -゚)「ぐうっ…!」

(#゚;;-゚)「お姉さん……!!モス何してるの!?やめて!!」

『……ッ……!』


 でぃの制止を求める声が胸に突き刺さってとても痛い。
 何も知らずに止めようとするでぃに、悪魔が囁く。


(*゚∀゚)「あれがアタシ達の本当にやるべき事なんだよ?お嬢ちゃん。
     あんた達人間と、平和に仲良く暮らすだなんてあっちゃいけないの」

(*゚∀゚)「どう足掻いても戦いの運命にあるっつーのに……それから逃げて自分だけ平和に過ごそうってか?」

(#゚∀゚)「ふざけんじゃねぇよ……!!そうやってテメェ等は互いに傷付け、潰し合う事こそアンデッドの宿命なんだよ!!」

(#゚∀゚)「だからアタシはその宿命に従って勝ち残る!!どんな卑怯な事をしたってなァ!!!」

『ガアアッァアアァァッ!!』

川;゚ -゚)「うぐッ……!」


 悲痛とも取れるアンデッドの宿命を語る声に、怒気が帯びている。
 その声に呼応するように、モスの攻勢は徐々に激しさを増していく。
 カリスに変身する事が許されないクーは、ただモスの攻撃を受ける事しか出来なかった。


.

19017話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:18:06 ID:/ejLF8tk0
 ――――――
 ――――
 ――


 その頃、ブーンの家では、アンデッドサーチャーがモスの攻撃の反応をキャッチしていた。
 ツンがPCの前に座り、詳細を確認している。


ξ゚⊿゚)ξ「アンデッド出現!場所は…以前カテゴリーAの反応を捉えた山の中よ!」
 
( ^ω^)「山の中……もしかしてクーさんかお?」

ξ゚⊿゚)ξ「ブーン、急いで!」

( ^ω^)「了解!」


 カテゴリーAの反応を捉えた山の中と言えば、クーを介抱したでぃの家に近い場所だ。
 クーの怪我の具合がどうなったか分からないが、とにかく一人で相手をさせるのはまずい。
 ポーチを手に持ち、ツンの催促を受けブーンはリビングを出ようとした。

 が、一つの不安が脳内に過ぎる。


( ^ω^)「あっ、ツン!ジョルジュに絶対あのベルト触らせんなお!」

ξ゚⊿゚)ξ「もちろんそのつもりよ。だから心配しないで、早く行って!」

( ^ω^)「おう!!」


 レンゲルを使用する事を拒まれ、部屋に閉じこもったジョルジュの事だ。
 きっとこの騒ぎは部屋の中まで聞こえているに違いない。
 変な気を起こさせないようにツンに注意を促し、今度こそ家を出た。



ξ゚⊿゚)ξ「……カテゴリーA。一体どんな力を持ってるのかしら」


 手元に置いた♣のカテゴリーAのカードを一瞥し、再びPCに集中する。

19117話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:18:42 ID:/ejLF8tk0

 _
( ゚∀゚)「………」


 ブーンが家を出てから少し経った後、部屋に篭っていたジョルジュがリビングに戻ってきた。
 PCの前に座り状況を確認中のツンがリビングに入るジョルジュを目にすると、途端に警戒心を強めた。

 _
( ゚∀゚)「アンデッドだろ?俺も行って戦う、ベルトをよこせよ」

ξ゚⊿゚)ξ「駄目だって言ったでしょ、何が起こるか分からないのよ?」
 _
( ゚∀゚)「俺はアンデッドを封印する為に戦うんだ!」

ξ゚⊿゚)ξ「あんたの気持ちは分かるけど…もしそれで混乱を招いたらどうするのよ?」


 ツンの手元に置かれた♣のカテゴリーAのカードを手に取り、それを睨むジョルジュ。
 
 _
( ゚∀゚)「誰がアンデッドなんかに……俺はこんな奴に支配なんか――!!」


 突然、ジョルジュの言葉が途絶え勢いを失った。
 カードを睨む目は緩み、無言でカードを見続けている。


ξ゚⊿゚)ξ「何……どうしたの??」
 _
( ゚∀゚)「………」


 ツンの問いにも答えず、ジョルジュは収納家具前まで移動する。
 そして、知りもしないはずのベルトが収納された引き出しを開け……ベルトを取り出してしまった。


ξ゚⊿゚)ξ「な、何でそこにあるのが分かったの!?ちょっと、駄目…ッ!」
 _
( ゚∀゚)『退ケ……!』

ξ;>⊿<)ξ「きゃあっ!?」


 ベルトを奪おうとするツンを、容赦なく突き飛ばすジョルジュ。
 機械的に言葉を発するジョルジュは、ツンの事など気にも留めず家を出て行ってしまった。

19217話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:19:33 ID:/ejLF8tk0


 ――――――
 ――――
 ――


『シイイイイィィッ!!』

川;゚ -゚)「ううっ…!」


 モスに顔面を殴打され、地面に転がる。
 無抵抗のままひたすら攻撃を受け続け、蓄積された痛みに声が漏れてしまう。
 殴られ続けた頬は赤くなり、口の端からは緑色の血を流している。


(;#゚;;-゚)「もうやめて…!!そんなにしたら死んじゃうよぉ!!」

(*゚∀゚)「死にゃあしないさ、たくさん傷付いて弱る事はあっても……アンデッドは死なない」

(;#゚;;-゚)「私のモスはそんな事する子じゃないよ!!だって…だって……」






(#゚;;-゚)「化け物に襲われた私を一生懸命守ってくれたのは……モスでしょ!?」

(#゚;;-゚)「私全部知ってるよ!私をあの家に隠したお父さんとお母さんを殺した化け物から…私を守ってくれてたんでしょ!?」

『………!!』


 知らないとばかり思っていた真実が、でぃの口から語られる。
 クーを一方的に攻撃し続けた動きが止まり、ひどく動揺している。

19317話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:20:22 ID:/ejLF8tk0


(*゚∀゚)「ああー……あの時かぁ、そういえばそんな事あったねぇ」


 でぃの話に付け加えるように、カテゴリーQが当時の話をし始めた。


(*゚∀゚)「せっかくあんたをやれる機会だったのに……馬鹿な人間の家族が現れて水差してくれちゃったよねぇ。
     あの時すっっっごく腹立っちゃってさぁ…別にアタシは人間殺す事に興味は無いけど」

(*゚∀゚)「邪魔されてイライラしたから、殺したんだっけなぁ〜?
     そしたら、このガキを守ろうとして命辛々ボロ家に押しやってさ。親の愛ってやつ?泣けるわ〜」

(# ;;- )「………」

(*゚∀゚)「フッ…でも邪魔してくれた人間をまず殺そうと思ったらさぁ…コイツ、このガキ守ろうとしてアタシに挑んできたんだよ!
     アヒャヒャヒャ!!マジで滑稽だよ!だからガキ殺す代わりにコイツの事ズタボロにしてやったのさ!!」

(*゚∀゚)「そしたらコイツ、このガキと一緒に暮らし始めて………」

(#゚∀゚)「………マジで笑えない」


 右手に持つ刃を、でぃの首に更に押し付ける。
 鋭利な刃先が肌に食い込み、今にも突き破ってしまいそうだ。


『!!……ヤメ、ロ…!!』

(#゚∀゚)「あー……ムカついてきた。もうこのガキ殺しちまうか??」

川;゚ -゚)「やめろ!!約束が違うぞ!!私が狙いなんじゃないのか!?」



(# ;;- )「……いいよ、殺しても」

.

19417話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:21:17 ID:/ejLF8tk0


 首に押し付けられる刃に痛みを感じながらも、恐怖は無くなった。
 でぃが静かに口ずさんだ言葉に、でぃ以外の三人は啞然とする。


『!?』

(*゚∀゚)「……へーえ?」

川;゚ -゚)「何を言っているんだ!?」


 三人の反応を余所に、でぃは淡々と話し始める。
 だが、どこか肩が震えているようにも見える。


(# ;;- )「お父さんとお母さんを奪われて……友達もいない私に、やっと出来た大切な友達…。
     友達よりももっと大事……モスと家族になったと思った」

(# ;;- )「お姉さんも一緒になって、本当の家族みたいだって思ったの……」


 でぃを抱えるカテゴリーQの腕に、ポタポタと雫が落ちる。


(#;;;-;)「それなのに…私の所為でせっかく出来た家族をまた奪われちゃうくらいだったら……」

(#;;;-;)「もう……生きてたくないよ!!死んだほうがマシだよ!!また独りになっちゃう!!」

川 ゚ -゚)「……でぃちゃん……」


 頭を上げたでぃの顔は、とめどなく流れる涙でびしょびしょになっていた。
 子供らしく泣きじゃくりながら訴えるでぃの言葉に、心が締め付けられる。
 でぃの泣き顔を見ながら、モスも立ち尽くしてしまった。


 だが――幼い子の心の叫びなど、悪魔には響きもしない。




(*゚∀゚)「そうかぁ……じゃあ、死ぬか…!?!?」

19517話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:22:05 ID:/ejLF8tk0


 首に突きつけた刃を離し、大きく腕を振りかぶる。
 そして……振りかぶった腕を勢い良く、でぃの首目掛けて振り下ろそうとした――。


(*゚∀゚)「あの世で待ってる両親と会ってきなぁ!!」

(# ;;- )「お父さん、お母さん……やっと会えるね――」


 目を瞑り、己の死を覚悟するでぃ。
 だが、カテゴリーQの動きは、突如木霊した声によって止められた。



『ウアアアアアアアアアアアアアァァアッ!!!!』

(*゚∀゚)「!?」


 身動きが取れず立ち尽くしていたモスが、獣のように雄叫びを上げた。
 でぃを抱えたままのカテゴリーQに向け片手を伸ばし、鱗粉を発生させる。


(#゚;;-゚)「……?あれ、何か……眠い……」

(#-;; -)「………Zzz」


 鱗粉による何らかの異常は、カテゴリーQには見受けられない。
 効き目があるのは……鱗粉に塗れた途端に深い眠りに着いたでぃだけ。

 でぃが眠りに着いた事を確認すると、モスはクーに襲い掛かった。
 クーの胸倉を掴み、そのまま間近で睨み続ける。

19617話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:22:43 ID:/ejLF8tk0


 ♪カリス激情 - https://www.youtube.com/watch?v=n3jX-dEtcqQ


『ヴァアアアアアアァァァッ!!!』


 山の中に響く叫び声は、もはや理性を失ったただの野獣だ。
 前触れなく凶暴化するモス。
 その心の訴えは、クーにしっかりと届いていた。
 

川 ゚ -゚)「変身!!」
   っ□

    【 -♥CHANGE- 】

 
 構えたカードをカリスラウザーにラウズし、カリスへと変身。
 獲物を狩らなくてはいけない準備は出来た。
 背を低く構え、距離を作りながら互いに睨み合う。

 そして、両者同時に地面を蹴った。


(*゚∀゚)「……なーんだ、やる気あるんじゃん。最初からやってよね〜」


 モスの凶暴化を目の当たりにしたカテゴリーQが、でぃを殺めようとした腕の動きを止めた。

 二人を余所に、カリスとモスは真っ向から敵対を始める。
 今度は、以前のようにその場凌ぎのものではない。
 どちらかが倒れるまで、戦いは続く。

19717話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:24:12 ID:/ejLF8tk0
ひとつ抜かしちゃったんで>>195の続きから

19817話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:24:33 ID:/ejLF8tk0


『シイ"イ"イ"ィィッ……!!』

川 ゚ -゚)「ッ……!………お前………」

『オオオオオ"オ"オォッ!!』

川 ゚ -゚)「くっ!」


 ただの唸り声に聞こえるその声は、何かを訴えている。
 抵抗せずその声を聞くクーの表情が戸惑いの色に変わり、合わせていた視線を外し泳がせる。
 曖昧な反応をするクーを振り払うように、モスは上空へと投げ飛ばした。


 投げ飛ばされたクーは地面に華麗に着地。
 片膝を着いた身体をゆっくりと起こし、俯いたままの顔を上げる。


川 ゚ -゚)「……そうか」

『………』


 前方のモスを見つめ、一言呟く。
 その時、クーの腰にカリスラウザーが浮かび上がり、腰にベルトを装着させた。
 カテゴリーAのカードを取り出し、それを構える。


川 ゚ -゚) 「それがお前の願いだというなら……」
   っ□

19917話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:31:40 ID:/ejLF8tk0


 ♪カリス激情 - https://www.youtube.com/watch?v=n3jX-dEtcqQ


『ヴァアアアアアアァァァッ!!!』


 山の中に響く叫び声は、もはや理性を失ったただの野獣だ。
 前触れなく凶暴化するモス。
 その心の訴えは、クーにしっかりと届いていた。
 

川 ゚ -゚)「変身!!」
   っ□

    【 -♥CHANGE- 】

 
 構えたカードをカリスラウザーにラウズし、カリスへと変身。
 獲物を狩らなくてはいけない準備は出来た。
 背を低く構え、距離を作りながら互いに睨み合う。

 そして、両者同時に地面を蹴った。


(*゚∀゚)「……なーんだ、やる気あるんじゃん。最初からやってよね〜」


 モスの凶暴化を目の当たりにしたカテゴリーQが、でぃを殺めようとした腕の動きを止めた。

 二人を余所に、カリスとモスは真っ向から敵対を始める。
 今度は、以前のようにその場凌ぎのものではない。
 どちらかが倒れるまで、戦いは続く。

20017話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:32:00 ID:/ejLF8tk0


( <::V::>)『はあっ!』

『グシイイィッ!』


 カリスが突き出した拳で先手を打った。
 拳を打ち付けられ圧されるモスは、再びカリスに向け疾走。

 頭部を狙って大きく振った腕をカリスは頭を下げ躱し、カウンターのパンチを胴体に打撃。
 すぐに左拳を脇腹に入れ、反撃しようとするモスの腕を掴み、延髄切りをモスの側頭部に叩き込んだ。


『ウウゥッ……!』

(*゚∀゚)「おーい、しっかりしてよ〜!そんなんじゃ負けるよ〜??」

『ヴォオオオオオオォォッ!!』


 右手に召喚したカリスアローの照準をモスに合わせ、光の矢を放射。
 モスは両手を広げ、大量の毒鱗粉を発生させる。

 すると、モスに向け放射したはずの光の矢が、無数の毒鱗粉によって掻き消されてしまった。


( <::V::>)『矢が消えた!?』

『シイィッ!』


 口吻から鋭い毒矢をカリスに向け発射。
 カリスアローで弾き落としながら再び光の矢で応戦するが、やはり毒鱗粉が光の矢を掻き消してしまう。


( <::V::>)(あの鱗粉が攻撃を無効化しているのか……)

( <::V::>)(ならば接近戦に持ち込み、打撃を与えるしかない!)

20117話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:32:49 ID:/ejLF8tk0


 遠距離での攻撃が無効化されるのであれば、近付いて叩けばいい。
 そう考えたカリスは、モスの毒矢を躱しながらモスへと素早く接近。
 跳躍での勢いを付け、カリスアローを振り下ろした。

 直後、モスの全身が毒鱗粉に覆われた。
 すると、確実にモスへと振り下ろされたはずのカリスアローが、何かに弾かれた。


( <::V::>)『なに…!?』

『ヴォオオォオッ!!』

( <::V::>)『ぐうっ!』


 カリスアローの攻撃が通らず困惑するカリス。その胸部に、モスの右腕のヒレによる斬撃が入った。
 後方へと一飛びし、一度距離を取る。


( <::V::>)『そうか……その鱗粉は矛でもあり、お前自身を守る盾でもある』


 遠距離・近距離どちらも防がれた時に必ずあったのは、モスが放っている毒鱗粉。
 この毒鱗粉は、攻撃をする手段にもなり揺るがぬ防御にもなる。
 防ぐ対象が近距離攻撃であれ遠距離攻撃であれ、全てを防ぐ。

 だが、カリスはこの無敵とも思える毒鱗粉の決定的な欠点を既に見破っていた。


( <::V::>)(空間的に発生させる事は出来るが、それ故の弱点はある)
 
( <::V::>)(奴の口から発する毒矢…周囲を全て鱗粉で覆ってしまえば、毒矢の攻撃も私にまでは届かなくなる)




( <::V::>)『お前の弱点は――"口"だ!』

.

20217話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:33:14 ID:/ejLF8tk0



『シュウウウゥッ!』


 カリスに向け再び口吻より放った毒矢。
 毒矢を躱す前に、カリスアローの光の矢をモスに向け放った。

 毒矢の真横を横切り、直線を描いて進む光の矢。
 光の矢が一直線に向かうのは、毒鱗粉に覆われていないモスの"口吻"。

 毒矢を回避するカリスに対し、モスは光の矢の存在に気付くも毒鱗粉による防御を間に合わせる事が出来ない。
 モスの伸びた口吻に光の矢が直撃し……、


『ジュゥオオオォオオオッ……!?!?』


 奇声を上げながら、モスは力無く崩れ地に両膝を着いた。
 発生させていた毒鱗粉は全て消え、モスを守る物は何も無い。


(#-;; -)


 膝を着いたモスが真っ先に目を向けたのは……今も尚カテゴリーQの腕の中で眠り続けている、でぃ。
 そんなモスを横目に、カリスは武器にカリスラウザーを装着させ、カードを二枚引き抜いた。


( <::V::>)『………』


 引き抜いたカードをラウズしようとしたカリス。
 だが、モスがでぃに目を向けている事に気付き、その手を止めた。

20317話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:33:34 ID:/ejLF8tk0


(*゚∀゚)「おいおいどーした??何で急に止まっちゃうの??」

( <::V::>)『お前……』

『……ディ……チャン……』


 拙い人間の言葉で、でぃの名を紡ぐ。
 その姿が自分自身と渡辺に重なって見えてしまい、手が動かない。
 でぃの名を口にするモスの気持ちが、何となく分かる気がしていた。
 ……きっと、自分の最期を悟って、愛する者の事が恋しくなっているのだ、と。



『………』


 モスの頭の中に、でぃとの思い出が走馬灯のように走り出す。

 でぃと共に食べた、初めての人間の食事。
 おにぎりは米粒がボロボロしていて、食べにくかった。
 ジュースという飲み物。りんごジュースはとても甘く、やみつきになる味だった。

 まだ寒さが残っていた時期、夜は寄り添って寝た事もあった。
 
 言葉を話せない自分に、幼子ながら言葉を教えようとしてくれた。
 今では、挨拶や返事、いただきますも言える。でぃの名前を呼ぶ事も出来るようになった。

 持ちにくい筆で、文字を書く事も。


 でぃの言葉を理解出来るのに、最初は自分の意志を伝えられなかった。
 それなのに、でぃはでぃなりに自分の事を理解しようとしてくれて、
 今では言葉こそ交わせずともお互いを理解出来るようになっていた。

20417話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:34:04 ID:/ejLF8tk0


 アンデッドとして生まれた命、生き残りを賭け、ただ戦うだけの存在。
 それでも、争いを好まない自分は特殊なのかと思い続けてきた。
 
 そんな時、でぃと出会い……初めて平和な日々を送る事が出来た。
 全てが新鮮で、穏やかな日々で、楽しかった。

 何より――絶対相容れないと思っていた人間が、アンデッドである自分を受け入れてくれた事が嬉しかった。


『………ウアアア"ア"ア"ア"ア"ア"ァアアア!!』


 片足を着き、ゆっくりと立ち上がる。
 俯いたままの顔を上げ、再び雄々しく叫んだ。
 

( <::V::>)『――覚悟を決めろ』


 冷酷に言い放った言葉は、自分にも言い聞かせているのか。
 二枚のカードを握ったまま止まってしまっていた手を動かす。
 ラウズする度に発せられる電子音声が、無情に響き渡る。


    《-♥5 DRILL-》 《-♥6 TORNADE-》

       《-♥SPINING ATTACK-》
 

( <::V::>)『せめて、楽に終わらせてやる……!』


 両手を広げ構えたカリスの足元から風の渦が発生。
 地面に散らばる木の葉を巻き上げながら、全身を覆うようにして風の渦は竜巻となった。

20517話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:34:33 ID:/ejLF8tk0


 竜巻を全身に纏い駆け出した。
 カリスが前に進む度に、風に揺られた木々が頭上で踊る。
 
 地面を蹴り身体を宙に浮かせ、両足をモスへと向ける。
 竜巻の勢いを受けドリルのように身体を素早く回転させながら突進した。



『ググ……ディ、チャン……』


 目の前に迫る竜巻を前にして、地にしっかりと両足を着く。
 逃げる事も、抵抗する事もしない。
 ただ、最期まででぃの姿をその目に――。


( <::V::>)『はぁっ!!』


 モスの身体に、強烈な錐揉み回転蹴りが突き刺さった。
 カリスの必殺を受けた直後に、一枚の紙が投げ捨てられる。
 蹴りの衝撃で突き破られたモスの身体からは、緑色の血が大量に噴出。
 

『………』


 痛みに声を上げる事もなく、静かに最期の一撃を受けた。
 地面を転がりうつ伏せに倒れたが……最後の力を振り絞り、自ら仰向けになった。
 そして、モスの腰元にあるバックルが左右に開かれる。


( <::V::>)『………』


 着地したカリスは振り返り、倒れたモスを見る。
 何も言葉を発さず、カードを一枚取り出し投擲。

 血を流す身体に刺さったカードが吸収をはじめ……、


 モスは、カリスの手によって封印された。  

.

20617話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:35:11 ID:/ejLF8tk0


 モスを封印し、"♥8 REFLECT"と記され、毒蛾の絵が描かれたカード。
 手元に戻るが、改めて封印したカードを見る事はない。


( <::V::>)『……次は貴様だ』


 カリスが視線を向けたのは、既に飽きている表情のカテゴリーQ。
 

(*゚∀゚)「あーあ、やられてやんの……やっぱ下級ごときじゃあんたには勝てないよね〜。
     なーんか面白くなくなっちゃったなぁ、あーつまんな」

(*゚∀゚)「このガキももういいや、返すわ」


 苦渋の選択を選んだカリスに対し、軽い口調で挑発的な態度を取り続ける。
 あろうことか、未だ眠ったままのでぃを乱暴に放り投げてみせた。


( <::V::>)『でぃちゃん!!』


 落下するでぃを受け止めようとするが距離的に間に合わず、吸い込まれるように地面に落ちてしまった。
 地面に倒れながらも、でぃの眠りは未だ覚める事はない。
 落ちたでぃの頭を支え起こし、カテゴリーQを睨んだ。


(*゚∀゚)「だーかーら、何で人間ごときにそんな熱くなんの?あんたアンデッドでしょ?
     つーか、下級の雑魚封印するにも少し戸惑ったでしょ」

(*゚∀゚)「あんたは中途半端なんだよ。アンデッドである事を貫こうとしてる割には、人間に媚びたりアンデッド倒すのに戸惑ったり…」

(*゚∀゚)「あんたは全部が矛盾してんだよォ!!」

20717話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:35:51 ID:/ejLF8tk0


( #<::V::>)『黙れ!!貴様に何が分かる!?』

(*゚∀゚)「分からないし分かりたくもないんですけど〜、人間になりつつあるあんたの事なんかね……!!」

( #<::V::>)『言わせておけば…!!』


 でぃの頭をそっと地面に置き、カリスアローを構える。

 カテゴリーQの言葉に激しい怒りを見せるが、心の中では痛く刺さっていた。
 まさに自分に対して抱き続けている疑問そのものを代弁されてしまったからだ。


 そこに、一台のバイクの排気音が響き渡る。
 争う寸前のカリスとカテゴリーQ、その場に現れるブルースペイダーに二人の視線は寄せられた。
 アンデッドサーチャーの反応を確認したブーンが、ようやく到着した。

 ブルースペイダーから降り、目の前に展開する状況を見つめる。


( ^ω^)「クーさん!ここでアンデッドの反応が……」

(*゚∀゚)「あー!昨日の!えーっと確か……仮面ライダーブレイドって言ったっけ??」


 全てを言い終える前に遮ったカテゴリーQの言葉で、ブーンは状況を把握した。
 カリスに変身したクーが若い女に向け牙を向いている光景は、端的には常軌を逸しているが、
 この戦いに身を置いていれば、決して間違っていない光景だと理解出来る。


( ^ω^)「……こいつかお、反応があったアンデッドは!」


 ブレイバックルを取り出し、変身の準備をする。
 だが、カテゴリーQは"もう一人"の存在が接近している事に気付いた。

20817話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:36:25 ID:/ejLF8tk0


(*゚∀゚)「ん……?これ……」

( <::V::>)『……!!この気配は…!』


 それはカリスも同様。
 もう一人……いや、正確には人を介して動いている存在。
 カリスとカテゴリーQが、その気配の方へ同時に視線を向ける。


( ^ω^)「クーさんまでどうしたんだお!?」


 二人に釣られて、同じ方向に目を向ける。
 視線の先に現れた人物は……、






 _
( ゚∀゚)



 現れたのはジョルジュ。
 しかも、全く見覚えのないバイクに乗って此方に接近してきている。

 緑と金が目立つボディに、紫色のクラブを模したカウル。
 ブルースペイダーやレッドランバス、シャドーチェイサーと並び立っても遜色がない。
 まるで、ライダーが乗るようなバイクが……。

20917話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:56:57 ID:/ejLF8tk0


 特殊なバイクに乗ったジョルジュはあっという間にブーン達の前に到着。
 ヘルメットを外したジョルジュの顔を見て、ようやく誰なのか認識出来た。


( ^ω^)「ジョルジュ!?何で此処に…!」
 _
( ゚∀゚)「………」

( ^ω^)「ジョルジュ……?」


 ブーンの問いに答えようとしない。
 常に表情に色があったはずのジョルジュに、全く色がない。
 明らかに様子が違うジョルジュに、ブーンはすぐに気が付いた。


( <::V::>)『無駄だ、こいつは今自我を失っている』

( ^ω^)「えっ…」

(*゚∀゚)「あらら〜……その人間支配しちゃってんの?カテゴリーAさん」

( ^ω^)「カテゴリーAに支配…?……まさか!?」


 父であるロマネスクの話を思い出す。
 カテゴリーAの邪悪な意志……新たなライダーに変身すれば、操られる事も――。


( ; ^ω^)「……ジョルジュ、やめるお」


 嫌な予感がする。

21017話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:58:06 ID:/ejLF8tk0

 _
( ゚∀゚)『カリス……そして、カテゴリーQ……』


 機械的に話すジョルジュ。
 カリスとカテゴリーQにそれぞれ視線を向け、左手にある物を取り出した。


( ; ^ω^)「!!やめろジョルジュ!!」


 嫌な予感は的中した。
 ジョルジュの左手に握られたのは、新たなライダーのベルト。
 そして、右手にはカテゴリーAのカード。

 このまま変身させてはいけない。
 ベルトを強引にでも取り上げようと、ブーンはジョルジュに掴みかかった。

 _
( ゚∀゚)『邪魔をするな!』

( ; ^ω^)「うおっ!?」


 強引に振り払われ、地面に転倒する。

 ジョルジュは左手に持ったバックルからトレイを引き出し、カテゴリーAのカードを装填。
 トレイをカチャンッ!と押し戻しバックルを腰に当てた瞬間、紫色のカードがベルト状に展開。
 腰にベルトが装着され、歪みのある待機音が響く。


( ; ^ω^)「ジョルジュやめろ!!変身したら駄目だお!!」


 必死に呼び止める声は届かない。
 ブーンの制止も虚しく、ジョルジュは左手をバックルに添え……閉ざされたゲートを左にスライドさせた。



 _
( ゚∀゚)『変身!!』


    【 -♣OPEN UP- 】

.

21117話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 10:59:42 ID:/ejLF8tk0


 開いたゲートから覗く、♣のマーク。
 ブレイドやギャレンと同じように光り輝くゲートが射出するが、禍々しささえ感じる紫色に発光している。
 射出したゲートに向けジョルジュは動こうとしない。
 ブレイド達が変身を解除する時のように、ゲートからジョルジュの方へと向かっている。

 やがてゲートがジョルジュの身体を通過してしまい……


( ; ^ω^)「はっ…!?」

( <::V::>)『とうとう姿を見せたな、府坂の怨霊が……』


 そこに現れた姿は……、




( OHO) 


 グリーンのスーツに黄金色の装甲、胸部には♣のマークがあり、
 赤紫色の眼をした仮面は、蜘蛛が六本の脚を広げ張り付いたような多角形を構成している。
 スーツが作る身体のシルエットが、ジョルジュのものとは思えない程に筋肉が膨張。
 右腰にはカリスと同じくカードケースが着いており、腰の後ろには棍棒のような武器が下げられている。

 府坂が遺した、最新かつ邪悪なライダーシステム。
 とうとう、その姿を現した。
 
 その名は、仮面ライダー……


( ; ^ω^)「……レンゲル……!」

.

21217話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 11:00:14 ID:/ejLF8tk0


(*゚∀゚)「…お〜っと、これは流れが変わってきちゃったなぁ……っと!」


 レンゲルの姿に…カテゴリーAに威圧され、さりげなく逃亡を図った。
 ゆっくりと後退りし、両足で地面を蹴り宙に浮かんだ。


 その時、レンゲルがカテゴリーQに向け疾走。
 飛び跳ねたばかりのカテゴリーQの腹部に、重たい右拳を叩き込んだ。


( OHO)『ふんっ!』

(;*゚∀゚)「がふっ…!!」


 腹部に掛かる圧に押され、遠くへと吹き飛ばされるカテゴリーQ。
 地面にバウンドする事で勢いは緩和されるが、そびえ立つ木に背中から打ち付けられた。


(;*゚∀゚)「うああぁ……っへへ、何アイツ……やば……!」


 衝撃的な力に思わずこみ上げる笑い。
 腹部を押さえながら立ち上がるまでに時間は掛からなかったが、拳一発による威力に開いた口が塞がらない。
 
 吹き飛んだカテゴリーQを追う気配はない。
 この隙に逃亡せんと、前方を警戒しながら今度こそ飛び去って行った。




( ; ^ω^)「今のパワー、なんだお……」


 人間態だとしても、アンデッドをいとも容易く吹き飛ばすレンゲルの力に気圧されてしまっている。
 カテゴリーQを一蹴したレンゲルが次に目を向けたのは……。

21317話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 11:01:00 ID:/ejLF8tk0


( #<::V::>)『何だ……今は機嫌が良くないぞ…!!』


 カテゴリーQに煽られ好戦的な姿勢を示すカリスに、レンゲルが一瞬で迫った。
 顔面に向け放った正面からの蹴りを躱すカリスに対し、レンゲルは素早く裏拳を振り抜く。

 この攻撃は本能的に予測出来た。
 両手で防御の構えを取り、レンゲルの裏拳を防いだはずだった。
 だが、カリスの防御越しに、再びレンゲルの力が炸裂。
 両腕程度の防御など意味を成さず、裏拳の力のみでカリスが軽く吹き飛ばされた。


( ;<::V::>)『ぐっ……!!』

( ; ^ω^)「クーさん!!」

( OHO)『これが……ライダーの力か……!』


 己の両手を見つめ、漲る力を身体で感じる。力を得た事に何処か嬉々としている様子が伺えた。
 しかし、その声はジョルジュの声とは似ても似つかない声で。


( OHO)『そうだ……俺は何度でも貴様等の前に姿を現す。そして誰にも負けはしない』

( OHO)『――俺の名は仮面ライダーレンゲル。最強の仮面ライダーだ……!』

( ; ^ω^)「最強の……ライダー……」


 腰に着いた棍棒のような武器を手に取り、ブーンに向け突きつける。
 圧倒的な力を誇る新たなライダーを前に、思わず威圧されてしまった。

 遂にその姿を見せた仮面ライダーレンゲル。
 そして、新たな上級アンデッド達の存在。

 府坂が消えても、一時の休息が訪れる事などありはしない。
 
 休む間も無く迎えてしまった新たな運命は、今まで以上に過酷なものとなる――。

.

21417話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 11:01:27 ID:/ejLF8tk0





     【 第17話 〜新たなる運命〜 】 終

21517話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 11:01:50 ID:/ejLF8tk0


==========

 【 次回予告 】


 レンゲルに変身をしてしまったジョルジュ。
 カテゴリーAに操られ、見境のない敵意はブーンにも向けられる。


( OHO)『仮面ライダーブレイド、今此処で貴様を殺し―――!!!』

( ; ^ω^)「!?」

( ; OHO)「……ッ…」

( ; OHO)「うぅ……っ、ぐうう……!やめろおおぉ……!!」

( ^ω^)「ジョルジュ……!?」

( ; OHO)「やめてくれェ……!俺は……ッあ゙あ゙ぁ…!!」
 
( ^ω^)「ジョルジュ……!戻って来いお!目を覚ませ!!」

21617話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 11:04:25 ID:/ejLF8tk0


(;'A゚)「うわあぁあっ!!な、なんだ…??なんだ!?!?」

( \品/)『コノ時ヲ待ッテイタ……』

(;'A゚)「あ……あ……!お前は……ッ!!!」


 平穏の日々を取り戻したはずのドクオに、再びカテゴリーAの恐怖が襲いかかる。


(;'A゚)「な、な……何で!?封印されたんじゃなかったのか…!?」

( \品/)『俺ヲ真ニ封印スル事ナド、出来ハシナイ…!』

(;'A`)「助けてくれ……ぇ……!」

(; A )「ブーン……」

( \品/)『サァ……俺ヲ受ケ入レロ……!!』

21717話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 11:05:08 ID:/ejLF8tk0


『ビイイイィィィッ!!!』

(,,゚Д゚)「アンデッド……貴様等に生きてる資格は無い!」


 現れた新たなアンデッドの前に立ちはだかるギコ。
 その手にはギャレンバックルを持ち……。


(,,゚Д゚)「変身!」


    【 -♦TURN UP- 】


『!?』

( OMO)「……コイツを纏うのも久し振りだな」

( OMO)「これでもアンデッドとの戦いは初心者なんだ……お手柔らかにな!!」


 モララーではなく、ギコがギャレンへと変身を果たした。
 ギャレンの第一人者であったギコは、アンデッドと戦う事が出来るのか?

21817話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 11:06:31 ID:/ejLF8tk0


( OHO)『もっとだ…もっと戦いを求めろ!』


 そして、再びブレイド達の前に姿を現すレンゲル。


( ; OwO)「レンゲル!?何で…誰が変身してるんだ!?」

( ・∀・)「今度はジョルジュじゃない……一体誰が!?」

( ; OwO)「クソ…ッ!レンゲル……やらなきゃ駄目かお…!」


( OHO)『過去の仮面ライダー共……最強のライダーの前に散るがいい!』


 棍棒から杖状へと形を変えた武器――レンゲルラウザーを構え、ライダー達へと攻め込む。

 新たな脅威となってしまったレンゲル。ブレイド達の運命は…!?



 次回、【 第18話 〜張り巡らされた蜘蛛の巣〜 】

 
 ――今、その力が全開する!


==========

219 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/12(日) 11:10:07 ID:/ejLF8tk0
しおり

>>9 第15話
>>84 第16話
>>152 第17話


年末に差し掛かってちょっと忙しくなって来たのでしばらくマイペースに書き溜め期間に入ります。
投稿できる時はするつもりなんでよろしくお願いします

220名無しさん:2017/11/12(日) 11:13:32 ID:8RnvdxZM0

逃亡しなきゃ私は一向に構わんッ!!

モスやん…(´;ω;`)

221名無しさん:2017/11/12(日) 11:25:09 ID:AG5k40OQ0
モス…
りんごジュース飲も…

222名無しさん:2017/11/12(日) 13:16:56 ID:PGwkKJ..0
乙!

223名無しさん:2017/11/12(日) 17:47:59 ID:YWVor.P60
今週も来てた!おつ!
原作なぞるだけじゃなく、オリジナル要素うまく入ってるのいいよね

224名無しさん:2017/11/12(日) 17:57:56 ID:fGrmb./c0
上級アンデッド達とのオリジナル絡み合いはいいっすね

225名無しさん:2017/11/12(日) 19:56:07 ID:Y.JhN1.Q0

モスやん切ねえ……

226名無しさん:2017/11/13(月) 12:32:25 ID:uUKBH91M0
悲しい別れが続くなぁ・・・

誰かこの支援を描く強者はおらんのか

227名無しさん:2017/11/13(月) 20:05:13 ID:HtgPnIBQ0
呟いたアイディアを現実にする力ないからなぁ

228名無しさん:2017/11/19(日) 16:21:47 ID:Wp2yoB3g0
今日は第2ラウンドないのね(´・ω・`)
いや通達はしてあったけどさ

229 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/05(火) 21:10:45 ID:N.EplV6c0
言い訳がましくなりますがクソ忙しくてクソムカつく毎日です。

書き溜めなんてろくに出来てませんが、10日の日曜に続き投下しますのでよろしくお願いします。

230名無しさん:2017/12/05(火) 21:26:28 ID:TFyJhQUA0
おっ
楽しみにしてます

231名無しさん:2017/12/05(火) 22:13:57 ID:LOhCzhBs0
ヤダもー楽しみ
https://i.imgur.com/1IAf968.jpg

232名無しさん:2017/12/05(火) 22:31:49 ID:zfWTpesE0
よっしゃ久々のニチアサだな

233名無しさん:2017/12/05(火) 22:42:04 ID:nyhiZth.0
ニチアサ第2ラウンド予告キタ━(゚∀゚)━!

23418話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:07:32 ID:koJKWyzA0





     【 第18話 〜張り巡らされた蜘蛛の巣〜 】




.

23518話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:08:09 ID:koJKWyzA0


 府坂の遺した新たなライダーのベルト――"レンゲル"は、とても危険なベルトだった。
 ♣のカテゴリーA、封印されても尚その力を強く影響させるように作られている。
 府坂に操られレンゲルを作らされたロマネスクから、決して使用してはならないと注意喚起を散々促された。

 ……だが、ライダーへの憧れを捨て切れずにいたジョルジュは、その危険な力を手にしてしまった。

 そして今、その力を身に纏い、ブーン達の前に姿を現している。


( OHO)『変身しろ……そして戦え』


 手に持った棍棒のような武器、三枚の環状の刃が重なった鋭利な先端を突きつけながら、
 ジョルジュの声とは思えない程に歪で、且とても威圧的な声でブーンに迫る。


( ; ^ω^)「何言ってんだジョルジュ…!?目を覚ませお!!」

( OHO)『俺以外のライダーは全て消す。そして最強たる所以を貴様等に教えてやる……!』

( ; ^ω^)「お前、本当にカテゴリーAに支配されてんのかお……!」


 これまでの脈絡なく戦いを求めるジョルジュの言葉が、カテゴリーAの支配によるものと察知する。
 すると、数歩程度の足音が聞こえた直後、跳躍したカリスがレンゲルの陰から姿を見せた。
 レンゲルに向け、カリスアローを勢いよく振り下ろす。

 レンゲルがカリスの接近に気付き背後へ振り向くと、手に持った武器でカリスアローの斬撃を受け止めた。


( #<::V::>)『まだこの程度では終わらんッ!』

( OHO)『まずはお前からだ、カリス!』

23618話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:08:49 ID:koJKWyzA0


 武器で受け止められたカリスアローが、力任せに振り払われる。
 レンゲルの加わった力を利用し、振り払われた方向へと身体を回転させると延髄切りを放った。


( #<::V::>)『せやああッ!!』

( OHO)『――フン』

( <::V::>)『ッ!?』


 側頭部を狙った延髄切り、それを押し返すようにしてレンゲルの片手に脚をガシィッ!と掴まれた。
 的確にカリスの脚を掴むだけでなく同時に延髄切りを防ぎ、鼻で笑う。
 握った武器を手から放し、両手でカリスの脚を掴むと、


( OHO)『ぬうゔぅあ゙あ゙あ゙あぁッッ!!』

 
 猛々しい雄叫びと共に、背面に向け強引にカリスを地面に叩き付けた。
 正確にはカリスの正体はアンデッドだが、まるでハンマーで地面を殴打するような勢いだ。


( ; <::V::>)『がは……ッ!?』


 身体の正面から地面に叩き付けられ、痛覚と息苦しさが全身に広がる。
 
 地に伏せられたカリスの胸部に軽く右足の爪先を入れ、勢い良く蹴り上げる。
 蹴りの衝撃で釣り糸に引かれるようにカリスの身体が浮上。


( OHO)『ッふん!!』


 浮いたところに、レンゲルの強烈かつ重厚な左足の足刀蹴りが叩き込まれた。

.

23718話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:09:27 ID:koJKWyzA0


( ;<::V::>)『ぐはああぁっ!!』


 蹴撃による衝撃凄まじく、吹き飛ばされた末に一本の木に背中から衝突。
 木にはカリスの衝突した部分から横目に亀裂が入り、ミシミシ…と音をたて、半分に折れていく。
 支柱を失った木の上半分は、バキバキ!と激しい音を放ちながらゆっくりと地面に倒れた。


( ; ^ω^)「クーさん……!」

( OHO)『どうしたカリス、この程度な訳がない…』


 落とした武器を拾い、折れた木に凭れぐったりと弱るカリスに近付こうとするレンゲル。
 ブーンは両手を広げレンゲルの前に立ちはだかり、行く手を阻んだ。


c( ^ω^)っ「ジョルジュもうやめろ!!目を覚ませ!!」

( OHO)『さっさと変身しろ、ブレイド』

c( ^ω^)っ「お前と戦うつもりはない……!早くジョルジュを解放しろ!」

( OHO)『ふん……ならば、戦わずして死ぬがいい!』

( ; ^ω^)「!?」


 要求聞き入れぬブーンに対し、レンゲルが武器をゆっくりと振り上げた。


( OHO)『仮面ライダーブレイド、今此処で貴様を殺し―――!!!』


 そして、掲げた武器をブーンに目掛け――

23818話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:09:48 ID:koJKWyzA0


( ; >ω<)「ッッ……!!」

 
 両目を閉じ、意味がないと分かりつつも反射的に両腕で眼前を覆った。
 振り下ろされる武器を防ごうとする為に。

 しばらくその構えのまま、レンゲルの攻撃が直撃してしまうのを待ってしまった。


( ; ^ω-)「……?」


 だが、いつまでもレンゲルの武器が直撃する様子はない。
 恐る恐る両腕の構えから顔を覗かせ、片目で目の前の様子を見た。

 すると……、




( ; OHO)「……ッ…」


 ブーンを攻撃するはずだったレンゲルの動きが、ぴたりと停止している。
 武器を掲げている右手はぷるぷると震え始め、左手で頭を抑え始めた。
 

( ; OHO)「うぅ……っ、ぐうう……!やめろおおぉ……!!」

( ^ω^)「ジョルジュ……!?」


 武器を手から落とし、両手で頭を抑えながら後退りするレンゲル。
 その声は、先程までの歪な声ではなく……何かに苦しむジョルジュの声になっていた。


( ; OHO)「やめてくれェ……!俺は……ッあ゙あ゙ぁ…!!」
 
( ^ω^)「ジョルジュ……!戻って来いお!目を覚ませ!!」

.

23918話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:10:24 ID:koJKWyzA0


( OHO)『……チッ、やはり駄目か。まぁいい…これで――』

( ; OHO)「うあああああぁあああッ!!!」


 一瞬だけ歪な声になり、何かを言いかけた。
 すぐにジョルジュの声に戻り、苦しみに悶える声を張り上げた。

 両手を広げながら叫ぶレンゲル。
 すると、バックルの開かれたゲートが誰の手も加えられずに閉ざされた。
 ♣のマークは再び閉ざされたゲートの下に隠れ、紫色のゲートがレンゲルの前に射出。
 ゲートからレンゲルへと迫り……レンゲルの変身は、強制的に解除された。

 _
(;゚∀゚)「うあああぁッ………!」


 変身を解かれたジョルジュは、ぐったりと膝から崩れ落ちる。
 腰に装着していたレンゲルのベルトは外され、地面に落下した。


( ^ω^)「ジョルジュ!!」
 _
(;゚∀゚)「はぁ……はぁ……、……ブーン……?」


 息を切らすジョルジュのもとに歩み寄り、ふらふらになった身体を支える。
 心配もあったが、それ以上にレンゲルを持ち出した事への怒りが勝っていた。
 

( ^ω^)「大丈夫かお!?」
 _
(;゚∀゚)「あ……ああ、大丈夫だ……」

( #^ω^)「お前なんでレンゲルのベルトを…!あれは危険だから使うなって散々言われただろ!?」

24018話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:11:07 ID:koJKWyzA0

 _
(;゚∀゚)「違うんだ、聞いてくれ…!」

( #^ω^)「何が違うんだお!!お前が持ち出したからこうやって変身したんだろうが!!
       カテゴリーAに操られて、僕にまで襲い掛かろうとしたんだぞ!?」
 _
(;゚∀゚)「それは……っすまねぇ……」

( ^ω^)「とにかくレンゲルのベルトはもう持つなお!このベルトは僕が――」


 ジョルジュの腰から落下したレンゲルのベルトは、ジョルジュの足元に転がっている。
 二度と持たせまいと厳しく𠮟咤し、落ちたベルトを拾い上げようと、足元へと視線を下げた。
 
 だが……、


( ^ω^)「……あれ?」


 足元には何もない。思わず自分の目を疑った。
 慌てて周囲を見渡し、自分の背後をも確認する。


( ; ^ω^)「無い……!レンゲルのベルトが無い!!」
 _
( ゚∀゚)「は…?」

( ; ^ω^)「お前まさか隠し持ってるのか!?」
 _
(;゚∀゚)「も、持ってねぇよ…!今変身が解けて落ちたままだったろ!?拾ってもなかっただろ!?」


 何度も確認するが、レンゲルのベルトの姿が見えない。
 立ち上がり何度も何度も見渡した。それでも、見つかることはなかった。
 確かに足元に転がったままだったはず。誰も手を付けてもいない。

 と、すれば…現実的にはおかしな話ではあるが、これしか考えられない。


( ; ^ω^)「……ベルトが、消えた……!?」

.

24118話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:11:46 ID:koJKWyzA0


( ;<::V::>)『うぐぅ……ッ!』


 レンゲルに変身したジョルジュによって吹き飛ばされ、木に凭れたままだったカリスが動き出した。
 地面を片手で叩いた力で瞬時に立ち上がる。
 カリスの発てた物音に、ブーンとジョルジュの視線が向けられた。


( ^ω^)「クーさん…大丈夫かお!?」

 
 そして、ブーンのもとで膝着くジョルジュに、カリスの怒りに満ちた赤い眼光が突き刺さった。
 途中で落としたカリスアローを拾い上げ、ゆっくりとジョルジュへと迫る。

 _
(;゚∀゚)「ッ……!!」

( #<::V::>)『どうした…まだ終わってない、カテゴリーAの力をもう一度使え』
 _
(;゚∀゚)「わ、わわわ悪かったって!!不可抗力だったんだよ!!」

( #<::V::>)『黙れッ!!!』
 _
(;゚∀゚)「ひっ…!」
 

 カテゴリーAの支配から解放されたジョルジュとは対照的に、カリスの本能である闘争心には火がついてしまっていた。
 鬼気迫るカリスに、普段から威勢の良いジョルジュも思わず尻込みしてしまう。


( ^ω^)「ちょ、ちょっと待ってクーさん!こいつには僕から厳しく注意しておくから……!
       それより今は、でぃちゃんを介抱する方が先だお!ここは僕に免じてさ…ね??」

( <::V::>)『………』


    《-♥2 SPIRIT-》


 ブーンの言葉に、疼いて仕方が無い本能は徐々に鎮められていく。
 しばらくジョルジュを睨み付けていたが、ようやく落ち着いたのか、カリスはカードを一枚バックルにラウズさせた。

.

24218話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:12:30 ID:koJKWyzA0


 カリスの変身が解かれクーの姿に戻った事によって、仮面の下の表情が露になった。
 既に痛いほどの視線を感じていたが、二つの目が露呈された事で、当然視線の痛さは更に倍増する。


川#゚ -゚)「……前から貴様の事は気に入らないと思ってた」
 _
(;゚∀゚)「……」

川#゚ -゚)「その程度の心構えで、次また私に手を出してみろ……二度と粋がれないように貴様の四肢をもぎ取るぞ!」
 _
(;゚∀゚)「わ……わかったよ……!」


 誤魔化しの効かない程に怯えたジョルジュの、精一杯の反抗心による返事。
 その返事すら気に障り、クーは地面を軽く蹴りジョルジュの顔面に土をかけた。

 _
(;゚∀゚)「うおっ!!ぺっぺっ!!」

川 ゚ -゚)「ふん」


 口の中に土が入ったのか、懸命に唾を飛ばしている。
 滑稽な姿を見ながら鼻を鳴らし、クーは背を向けでぃのもとへと走っていった。


( ^ω^)「ジョルジュ、取り敢えず家に帰るんだお。僕はまだ此処に用があるから。
       ……あと、ベルトは僕が探すから。もうレンゲルの事には関わっちゃ駄目だお」
 _
( ゚∀゚)「………」
 

 返事を待たずして、ブーンはクーの後を追いでぃのもとへと走る。

 _
( ∀ )「……俺は、ライダーに向いてないのか……」

 
 一人取り残されたジョルジュは、両膝を地面に着いたまましばらく呆然としていた。
 強く意志を持っていたはずが、容易にカテゴリーAに支配され己を制御出来ない始末。
 
 口の中に広がる土の味が、悔しさと不甲斐なさをより実感させた。

.

24318話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:13:11 ID:koJKWyzA0


 ブーンがでぃのもとへと着いた時には、クーが既にでぃを両腕で抱えていた。
 家へと向かい歩くクーの横に着き、未だ眠っているでぃの顔を覗く。


( ^ω^)「でぃちゃんは!?」

川 ゚ -゚)「まだ眠っている」

( ^ω^)「どうして寝てるんだお…?」 


 でぃが深い眠りに着いている理由をブーンは知らない。
 アンデッドサーチャーの反応を辿ってきたが、到着するまで此処であった争いを目にしていない。


川 ゚ -゚)「でぃちゃんに懐いていたアンデッドによるものだ」

( ^ω^)「え……そういえば、さっきからモスが見当たらないけど」

川 ゚ -゚)「……私が封印した」

( ^ω^)「は…?封印した!?なんで!?」


 冷静に答えるクーに、思わず声を荒げた。
 人間であるでぃに心を許し、争いを好まずクーとも意気投合したと思っていた。
 そんなモスが封印されたと知り、相手がアンデッドであるにも関わらず衝撃を受ける。


川 ゚ -゚)「さっきの女…カテゴリーQがでぃちゃんを人質に、私を襲えと奴を脅した」

川 ゚ -゚)「奴は自ら私に倒される事を望んだ。だから倒しただけだ」

( ^ω^)「そんな……クーさんと同じだと思ったのに……」

24418話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:14:13 ID:koJKWyzA0


 ブーンが発した言葉に、クーの足がぴたりと止まった。
 自分とモスが一緒……その言葉の意図が理解出来なかった。


川 ゚ -゚)「私と同じ、だと?」

( ^ω^)「……僕は、アンデッドが完全な悪だと思ってた。アンデッドは皆、人間を脅かすだけの脅威に過ぎないって」

( ^ω^)「でも、クーさんがあまねちゃん達を愛するように…モスもでぃちゃんを愛してたお。
      だから、アンデッドの中にも人間を襲わない良いアンデッドがいるのかもしれない。って…」

川 ゚ -゚)「アンデッドの善悪など考えるだけ無駄だ」

( ^ω^)「どうして!?現にクーさんは、そうやってでぃちゃんを助けてるじゃないかお!
      モスを封印したって凄く冷静に言うけど……本当は、モスの想いを背負ってるんじゃないのかお?」

川 ゚ -゚)「……お前がそう思い込みたいだけだろう」


 冷たくあしらい、再び家に向け歩き始める。

 認めたくはないが、あながち間違ってもいない憶測だった。

 だが、アンデッド同士、戦いの"運命"から逃れる事は出来ない。
 此度のように、どれだけ逃れようとしても戦い続ける運命にある。

 その渦の中にいるクーからすれば、ブーンの言葉はただの綺麗事に過ぎないとも思えた。


( ^ω^)(そうかもしれない……でも……!)


 都合の良い方に思い込みたいだけ…それだけでは済まない想いが、胸の中に芽生え始めている。

 アンデッドであるクーを、信じてみたいという想いが――。

24518話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:14:56 ID:koJKWyzA0


( ^ω^)「……ん?」
 

 ふと、地面の上に不自然に落ちている一枚の紙に目が留まった。
 落ちているゴミにしては随分と綺麗に折りたたまれている。

 それを拾い上げ、たたまれた紙を順番に広げていく。



 その紙は……モスがカリスの攻撃を受ける直前に投げ捨てた紙だった。


( ^ω^)「……!!これ……」

( ´ω`)「……ッ……」

 
 広げた紙には文字が書かれている。
 その文字を読み上げたブーンの表情が、瞬時に悲しみに満ちた表情へと変わる。
 
 紙を折り目のついている通り順番にたたみ、ポケットにしまう。
 
 既に家の中へと戻ったでぃとクーを追い、そう遠くない距離を走った。


.

24618話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:15:19 ID:koJKWyzA0





 ―――――




.

24718話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:15:48 ID:koJKWyzA0


「いらっしゃいませー」


 声を張り過ぎない適度な挨拶が耳に届き、安心感が生まれる。
 特に返事をする訳でもないが、やはり接客時の挨拶はとても重要だと感じる。


('A`)「ふぃ〜……」


 気の抜けた溜息を吐きながら、店内をうろつくドクオ。
 目的の品を探す為に、ドクオは単身スーパーに訪れていた。
 
 ドクオが訪れているスーパー……今は長期休暇中のブーンが働いている、スーパーマーケット『 VIP 』だ。


<ヽ`∀´>「いらっしゃいませ〜」

('A`)「声ちっさ」


 ドクオの横を通り過ぎた店長であるニダーの挨拶に、思わず本音が漏れてしまった。
 
 足を運んだのは、お酒売り場。
 棚に並べられた色とりどりのアルコールを、じっくりと眺めている。


('A`)「たまにはワインでも買うか〜……」


 ワインが並べられた棚の前に移動し、目に留まったワインのボトルに手を伸ばした。

24818話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:16:36 ID:koJKWyzA0


「いらっしゃいませ〜、ドクオさま」

('A`)「げ……」


 ボトルを掴もうとした時、背後から女の店員の声が名指しで声を掛けて来た。
 ドクオはこの声の主を知っている。
 気まずそうな声を漏らし、渋々後ろへと振り返った。


*(‘‘)*「あんた何してんの?」

('A`)「ヘリカル…何してんのって、客に言う言葉じゃないぞ」


 声を掛けていたのは、ブーンの同僚であるヘリカルだった。


*(‘‘)*「連絡してもほとんど返事しないくせにね〜、こういう機会でしか話せないでしょ?」

('A`)「あー……そうそう!スマホ壊れたんだよ!今新しいの買いたくてさぁ」

*(#‘‘)*っ< 「しょうもない嘘を付くなよお客様〜…?だったら普通その事恋人には言いますよねぇ??」
   ムギュウゥゥ

っ<;'A`)「あいででででっ!おい客だぞ客!?客にこんな事していいと思ってんのかよ!?」


 この二人、実は恋人関係である。
 互いの共通の知り合いであるブーンには秘密に……というよりは、言うタイミングを失ってしまっていた。
 
 ヘリカルとの連絡を控えているドクオ。
 その理由は、親のようにあれこれ𠮟咤されるのを嫌っての事だった。
 
 つまり、ドクオがブーン宅でツンに言った事は、実質浮気に相当していたのだ。

24918話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:17:10 ID:koJKWyzA0


*(‘‘)*「まぁいいわ……ねぇ、最近ブーンはどう?」

(;'A`)「ってて……ブーン?ああ、あいつ休暇取ってるんだってな」

*(‘‘)*「うん……休暇取る直前の彼、何かすごく思いつめてたようだったから心配で」

('A`)「………」


 思いつめてた理由は知っている。
 仮面ライダーとしてアンデッドと戦う日々で身体はボロボロになり、
 何らかの因果に巻き込まれ、心もボロボロになってしまっているブーンを、ドクオは知っている。
 
 だが……それを自分の口から伝えてしまう事への抵抗があった。


('A`)「ああ…まぁ、何とかな。確かに何か辛そうだったけど…あいつ何も話してくれないんだ」

*(‘‘)*「そうなの……今度様子見に行ってみようかなぁ」

(;'A`)「えっ!?いや、今はそっとしといてやろう……俺が行ってもあまり歓迎してくれなかったしさ?」

*(‘‘)*「本当に?」

(;'A`)「マジマジ!俺が嘘つくように見えるの??もうヘリちゃんもっと見てよこのキューティクルでトゥルーなアイを!」

25018話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:17:37 ID:koJKWyzA0



*(‘‘)* ジイイイイ


+('∀`) ホレホレ


*(‘‘)* ジイイイイイイイイイイイイイイ


('∀`) メチャクチャキュートダロ?シンジツカンジルダロ?


*( ‘ ‘ )* ジイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ


(;'∀`) ……







*(‘‘)*「見える」


(;'A`)「………」

.

25118話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:18:15 ID:koJKWyzA0


(;'A`)「と、とにかくマジだから!付き合い長い俺が言うんだからマジだって!」

*(‘‘)*「……まぁ、無理に行っても負担掛けるだけよね。そうする」

('A`)「流石ヘリカル、理解が早くて助かるわ〜……っつー訳でまたな!!」

*(‘‘)*「あっ、ちょっと待ちなさいよ…ッ!もう!!」


 買おうと思ったワインは諦め、すぐにこの場を離れたい。
 ヘリカルが気を緩めた瞬間を狙い、ドクオは颯爽と走った。



('A`)「んだよ、あいつ今日出勤日だったのかよ…!いないと思ったのに……」


 ぶつぶつと独り言を呟きながら、駆け足で自動ドアを潜り抜ける。


(-_-)「ありがとうござっした〜」


 店の外で品物を並べていたブーンの後輩・ヒッキーが、軽い口調で挨拶をした。
 いつものように、客を一瞥し首を突き出すように頭を下げる。


(-_-)「――……!!」


 だが、突如ドクオに再び目を向け直し、その背中を見つめた。




(-_-)「あいつ、まさか……!」

.

25218話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/10(日) 11:18:42 ID:koJKWyzA0


('A`)「ふう〜……ん?」


 愛用のバイクのもとへと着いたドクオだが、明らかな違和感に気付く。
 
 バイクのシートの上に、何かが置かれているのだ。


('A`)「何だこれ…おもちゃか??」


 シートの上に置かれたものに手を伸ばし、それを掴む。
 目の前に引き寄せ、じっくりと見回す。


 ――金と黒、そして紫の三色塗装が目立つ固型。


 おもちゃにしても、用途の分からない物体を不思議そうに見つめる。 


('A`)「ったく俺のじゃねぇっつの、誰だよ置いた奴……」

('A`)「どうやって遊ぶんだこれ……お、何か引けるぞこれ」


 玩具の後ろに、トレイのようなものを発見した。
 困りながらも、見た事のない玩具に好奇心が生まれてしまっている。

 そして、そのトレイを迷わず引いてしまった。
 



('A`)「……あん?このカードって……」

(;゚A゚)「―――!!!」

.


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