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( ^ω^)運命と戦う仮面ライダーのようです part2

35219話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 11:00:04 ID:Naxzm9FU0


 分が悪いと判断してか、イノシシのアンデッドも目を付けられないうちに退散した。
 残ったのは、カテゴリーAのコントロールから逃れようともがき苦しむレンゲルのみ。


( OwO)「ドクオ、しっかりしろ!目を覚ませ!」


 カテゴリーQの攻撃から解放されたブレイドは、苦しむレンゲルに近付く為に駆け出した。
 もしもこのまま支配から逃れられなければ、その時は力ずくで止めるしかない。

 覚悟を決め、レンゲルに手を伸ばした。




 その時だった。



 レンゲルに投げ飛ばされ、倒れたままだったギャレンが突如、素早く起き上がった。
 
 与えられた攻撃のダメージなど端から皆無と言わんばかりに走り出す。
 向かう先は、レンゲル。
 右拳には、灼熱の炎が――。


( OMO)「ッはあ!!!」

( ; OHO)「うわあああああッ!!!」

( OwO)「!?」


 ブレイドが着く前に、レンゲルに近付いたギャレン。
 腹部に燃え盛る炎を纏う右拳を叩き込み、自我を取り戻そうとしているレンゲルを吹き飛ばした。

 
( ; OHO)「うぐぅぅ……ッ!」


 地に崩れ落ち、ドクオとしての意識が痛みに苦痛の声を上げながら縮こまる。

35319話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 11:00:35 ID:Naxzm9FU0


 すると、レンゲルバックルのシャッターが、またも勝手に閉ざされた。
 同時にバックルより紫色のゲートが射出され、うずくまるレンゲルの身体を覆いながら通過する。
 
 レンゲルは、強制的に変身を解除された。
 現れたドクオの腰から、レンゲルバックルが転げ落ちる。


(;'A`)「ぐあぁ…っ、がはっ…!」

( OwO)「ドクオ!!」


 これで二度目だ。
 親友が理不尽に巻き込まれ、痛め付けられる姿は見るに耐えないものがある。

 変身が解除された事で、ドクオはカテゴリーAの支配から解放された事は確かだ。
 急いで倒れたドクオに近付こうとするブレイド。


 その行く手を――ギャレンの銃撃が遮った。


( ; OwO)「うあああぁっ!?」

( ・∀・)「!?ギコさん!?!?」

( OMO)「………」


 銃撃に見舞われ、地に倒れるブレイド。
 何も言葉を発さず、ブレイドを見る事もなく、ギャレンはドクオへと歩み寄る。


( ・∀・)「ギコさん、何を…!?」

(;'A`)「うっ……や、やめてください……!」


 無言で近付くギャレンに気圧され、ドクオは腹部を抑えながら許しを請う。
 だが、何も言わない。モララーの言葉にも耳を貸さない。

 ドクオの前に着いたギャレンは、ゆっくりとドクオに向け手を伸ばした。
 反射的に両腕で頭を覆い、身構える。


(;'A`)「ひいいっ…!!」

35419話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 11:02:01 ID:Naxzm9FU0

(;'A`)「………?」


 何も起きない。
 恐る恐る顔を覆う両腕を退かし、ギャレンを見た。

 そこには、左手にレンゲルバックルを持ち、じっと見つめるギャレンが。


( ・∀・)「ギコさん……?」

( OMO)「………」


 すると、ギャレンはギャレンバックルに手を掛け、ハンドルを引いた。
 射出されたゲートに覆われ、変身を解除する。

 装着が解除されたギャレンバックルを右手で持つと――

 ギコは、それを雑に投げ捨てた。 


( ・∀・)「!?」

(,, Д )「………ククク」

(,,゚∀゚)「ハハハハハ!!」


 暗闇の中、街灯に照らされずはっきりと見えないギコの表情。
 そんな中で高らかに笑う姿は、狂気すら感じられた。


(,,゚Д゚)「菱谷…俺にギャレンを託してくれて、感謝する」

( ; ・∀・)「ッ………」

(,,゚Д゚)「……さぁ、本来の主のもとへ来い」

(;'A`)「―――ッ!!!」


 ドクオの服の裾から、大量の蜘蛛の子が姿を現した。
 群れを成した蜘蛛の子は、ギコの靴を登りスーツの中へと住処を移す。


( <::V::>)『……なるほど、そういう事か』

( ; OwO)「うぐっ…どういう、事だお…!?」

35519話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 11:02:50 ID:Naxzm9FU0


 左手に持ったレンゲルバックルを腰にあてるギコ。
 紫色のカードがベルト状に展開され、ガチャンッ!と音をたて装着された。

 ……歪な待機音が鳴り響く。

 ギコは、モララーを向きながらニヤリと笑みを浮かべる。
 そして――。


(,,゚∀゚)「変身……!」


    【 -♣OPEN UP- 】


 レンゲルバックルのシャッターを、自らの手で開いた。
 射出された紫色のゲートを、両手を広げ喜んで迎え入れる。

 ゲートに身体を覆われたギコは、レンゲルへと変身してしまった。


( OwO)「はっ…!?」

(;'A`)「ッ…!!」

( ; ・∀・)「ギコさん……!?何で!?」


 誰も予想しなかった…したくもなかった。
 レンゲルに変身したジョルジュを𠮟咤し、一番にその危険性を唱えていたギコが…今、レンゲルに変身している。

 衝撃は大きく、カリスを除いた全員は……特に、ギコに一番の信頼を置いていたモララーは一際大きく驚いていた。


( OHO)「菱谷……お前は特別だ。元後輩のお前には教えてやる」

( OHO)「俺は、最初からこれが目的だったのさ……!」

( ; ・∀・)「え……」


 ギコの声だ。カテゴリーAの歪んだ声ではなく、ギコ自身が言葉を発している。
 ドクオやジョルジュの時のように、支配に苦しむ様子もない。

35619話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 11:03:50 ID:Naxzm9FU0


( OHO)「お前もよく知ってるだろう?府坂って奴の事をな」

( ; ・∀・)「……!!」


 知らないはずもない。
 忘れる事も出来ないであろうその名は、聞くだけでギコの語りに絶望を添えてくれる。


( OHO)「俺は、奴に呼び出された。新しいライダーシステムの適合者として君を選びたい。とな」

( OHO)「BOARDの連中を手下にしていただけあって、どうやら俺の事も知っていたようでな……最初は耳を疑ったさ」

( OHO)「何せ俺は……ギャレンにもブレイドにもなれず、正義の燃えカスが残って腐りきっていたからな……!」

( ; ・∀・)「………」

( OHO)「だが、すぐに喜びに変わった」

( OHO)「俺はライダーになれる…しかも、最強のライダーの力を手にする事が出来る。ってな!
      どうだ!?ライダーになれなかった俺が、最強のライダーとなる…ギャレンもブレイドも凌駕する、レンゲルに!」

( ・∀・)「………」

( OHO)「……そう思った矢先、お前が府坂を封印した。
      それだけじゃない。あろうことか…洗脳の解けた所長がレンゲルのベルトを回収してしまった。
      お前達が邪魔して、奪う事もままならなかった」

( OHO)「だから俺は、お前達に協力するという形で潜み機を伺っていたのさ。
      そして今…その時が訪れた。俺は、レンゲルの力を手に入れる事が出来た…!」

( OHO)「今思えば、お前がライダーを辞めると言ってギャレンを俺に託したのは、予定外の好機だった。
      お前が俺を信頼してくれていたお陰で、俺は――」

(  ∀ )「ッッッ……!!」

( OwO)「やめろ!!!」

35719話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 11:05:47 ID:Naxzm9FU0

 ブレイドの怒号が、裏切りの言葉を遮った。


( OwO)「最初から、僕達の事を利用していたんですかお……」

( OwO)「ツンも、ジョルジュも、ドクオの事も……」

( #OwO)「――父ちゃんの事も…!モララーさんの事も!」


 こみ上げる怒りで、握る拳が震える。
 ブレイラウザーに手を掛け、仮面の下でレンゲルを睨む。


( OHO)「君のお父さんにはたくさん世話になった、感謝してるよ」

( OHO)「この俺を……ギャレンやブレイドなどではなく、レンゲルにまわしてくれた事をな!!」

( #OwO)「ッ―――!!!!」


 怒りが頂点に達した。
 仲間を傷付けられ、利用され…人の平和を守る為にライダーシステムを作った父親すら、自分の欲望の為に利用された。

 ブレイラウザーのトレイを展開し、三枚のカードを引き抜いた。
 ♠LIGHTNING SONICを発動させる為の、三枚のカードだ。

 それと同時に、レンゲルも一枚のカードを引き抜いた。
 ブレイドがカードをラウズする前に、そのカードをレンゲルラウザーの後端にラウズする。


    《-♣10 REMOTE-》


 "♣10のREMOTE"のカードが、ブレイドの手札三枚のカードに向け光線を射出。
 

( ; OwO)「しまった!」

( <::V::>)『来るぞ!』


 "♠5 KICK"、"♠6 THUNDER"、"♠9 MACH"。
 それぞれに封印されたアンデッドが、REMOTEの力を受け解放されてしまった。

 ブレイドが初めて封印したイナゴのアンデッド。
 続いて、シカのアンデッドと豹のアンデッドが、同時にブレイド達の前に姿を現した。

35819話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 11:06:53 ID:Naxzm9FU0

(;'A`)「うっ、うわああぁっ!!」
 
( ; ・∀・)「………」

( OHO)「貴様も来い…そして奴らを叩きのめせ!」

『シャアアアアアァッ!!!』

『グオオオオオオオオッ!』


 レンゲルの意思に従い、三体のアンデッドはブレイドとカリスに襲い掛かった。
 同時に、先刻退散したはずのイノシシのアンデッドがレンゲルの声に応え舞い戻り、三体のアンデッドに加勢。
 シカとイナゴのアンデッドがブレイドに、イノシシと豹のアンデッドがカリスを挟撃する。


( ; OwO)「くっ…!四体の相手はちょっとやばいお…!」

( <::V::>)『迂闊にカードを使うな!あのリモートの力に際限はないッ!』


 カテゴリーAの支配を受けずに、ギコ自らの意思でレンゲルを使いこなしている。
 アンデッドの挟撃に応戦する二人に向け、レンゲルラウザーを構えたレンゲルは戦いへと身を投じていった。


( ; OwO)「うあッ!?」


 交戦中のブレイドを殴打し、強引に戦いの中を突き進む。
 進んだ先に見えるは、同じく交戦中のカリスの姿。


( OHO)「ふんッ!!」

( <::V::>)『ッ!貴様……!』


 レンゲルラウザーの大振りな一撃をカリスアローで受け止め、互いに睨み合う。


( ; ・∀・)「ギコさん…何故だ、どうして……!」


 モララーの目にうつるレンゲル――ギコの姿は、過去の自分を見ているようだった。
 力に溺れ、振るえる事に喜びを感じている。そんな風に見えてならない。

 あれだけ意志の強いはずのギコが、何故……。
 戸惑いに揺れるモララーの心。ただ、ギコの変わり果てた姿を見ている事しか出来ずにいた……。

35919話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 11:07:16 ID:Naxzm9FU0




         【 第19話 〜操られる心〜 】 終




.

36019話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 11:07:41 ID:Naxzm9FU0

==========

 【 次回予告 】


( OHO)「ふんっ!ッはあ!」

( <::V::>)『チィ…ッ!こいつ、カテゴリーAの力と共存しているのか…!』

( OHO)「やはり……」

( <::V::>)『……?』

( OHO)『――やはり、貴様は弱くなっている!』

( ;<::V::>)『うあっ!?』


 レンゲルに変身したギコは、圧倒的な力でライダー達を次々と攻撃していく。


( OHO)『人間の臭いがするぞ、カリス…!アンデッドでありながら人間に魂を売り、腑抜けになったようだな!』

( ;<::V::>)『ぐっ!ううぅッ…!!』

( OHO)『強さを失った貴様などもはや俺の敵ではない!カテゴリーAの最強は、この俺だ!!』

.

36119話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 11:08:22 ID:Naxzm9FU0


(;A;)「ッ……??」

 『――モット強クナリタイダロウ…コンナ奴等、オ前自身ノ手デ踏ミニジリタクハナイカ?』


 ドクオの忌々しい過去。
 夢の中で、ドクオが心の奥底に閉ざしていた"闇"に、蜘蛛が接触してしまう。


(;A;)「………」

 『――オ前ハ正シイ……弱者ガイタブラレルノガ、世ノ常。ナラバオ前ガ、強者トナレ。
  ソシテ……コノ憎イ奴等、オ前ヲ蔑ム奴等、オ前ガ気ニ入ラナイ奴等全テヲ薙ギ倒セ!』

 『――俺ガ、オ前ノ助ケトナロウ』

(;A;)「……!」

(;A;)「ぼくは………いや、俺は……」

 『――ソウダ…俺ノ力ヲ受ケ入レロ!オ前ハ、最強ニナルノダ!』

(#'A`)「俺は……!俺を舐め切った、好き放題いたぶった貴様等を許さない……!!!」

36219話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 11:09:11 ID:Naxzm9FU0


( ・∀・)「……あなたの正義は、情熱はどうなったんですか!?」

( ・∀・)「あなたは頼もしい先輩として、俺達に厳しく…時に優しく指導してくれました。
      ギャレンとして俺が戦って来れたのも、ギコさんが居たからです!」

( ・∀・)「もしもの時、ライダーとして人を守れるのはお前達しかいないと……そう熱く教えてくれたのはギコさんじゃないですか!」

(,,゚Д゚)「そんなもの…最初からどうでもよかったのさ」

( ・∀・)「え……?」

(,, ー )「レンゲルの力をこの目で目の当たりにし、この手で力を感じた時……俺は気付いた。
     正義なんてな、力を振るう為の言い訳にしか過ぎないんだよ」

(  ∀ )「……やめてください」

(,,゚∀゚)「フッ…ククク、俺はただ……力を振るいたかっただけだったのさ!!」

( #・∀・)「やめてくれ!!!」

36319話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 11:10:51 ID:Naxzm9FU0


 レンゲルとなったギコが、再びブーンやモララーに襲い掛かる。


( OHO)「菱谷!お前が戦わなければコイツが倒されるだけだぞ!」

( OwO)「モララーさん!僕はモララーさんを信じてますッ!モララーさんなら戦えるって…!」

(  ∀ )「……俺は……」
 
( OwO)「モララーさんなら――出来る!!」

( #・∀・)「俺は―――戦う!!!」


 遂に、ギャレンとして戦う事を決めたモララー。
 暴走するレンゲル…ギコを止める為に、レンゲルの前に立ちはだかった!


( OMO)「あなたが託してくれた想いを胸に、俺は戦う!」

( OMO)「あなたをそうさせたのが俺だと言うのなら……俺の手で、あなたを止める!!」

( OHO)「そうだ、それでいい!ギャレンとして…俺と戦え菱谷!!」


 モララーは、ギコを救う事が出来るのか!?

 そして、主を求め彷徨うレンゲルの行末はどうなるのか!?


 次回、【 第20話 〜託された想い〜 】

 ――今、その力が全開する!


==========

364 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/17(日) 11:13:53 ID:Naxzm9FU0
しおり

>>9 第15話
>>84 第16話
>>152 第17話
>>234 第18話
>>308 第19話


なんだかんだ投下できました
また次回よろしくお願いします

365名無しさん:2017/12/17(日) 11:24:11 ID:jQZ74PBE0


366名無しさん:2017/12/17(日) 12:36:51 ID:HPPlL2t20
あーギコ……乙
原作知らないから全然展開読めない

367名無しさん:2017/12/17(日) 14:03:25 ID:wI2HdQNQ0
モスの話マジで涙腺刺激してくるからやめてほしい…

368名無しさん:2017/12/18(月) 00:23:31 ID:kiQPc5eY0
おつおつ
毎回読み応えあって引き込まれる
ヒッキーのポジションが気になるな

369名無しさん:2017/12/18(月) 12:18:02 ID:tDy5f3Ok0
乙!
ギコはもうあかん
ヒッキー嶋さんポジか

370名無しさん:2017/12/19(火) 17:13:48 ID:OrSEP/GU0
新スレ探すの忘れてた…今更ながら乙

原典通りヒートは助からなかったのが残念だな
しかしバーニングザヨゴキックにレスが間に合わなかったのが悔やまれる…
バーニングヒートキック…
なんだろう、スゲーふつーの必殺技って感じ

ドクオの過去は…なんか原典と違いそうだな
近いうちに確変ギャレンがまた見れそうだし、来週からまた楽しめそうだ

371名無しさん:2017/12/19(火) 17:48:35 ID:jwy4lrXk0
原作追うだけじゃなくてキャラの設定とかエピソードとかオリジナル要素入れてくれてるの好き
モスやんの話とか良い話

原作劇中では使用されなかったカード使って戦うのは愛を感じる

372 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:23:00 ID:/vPk1WvQ0





         【 第20話 〜託された想い〜 】




.

37320話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:23:40 ID:/vPk1WvQ0


 カリスとレンゲルの交戦によって、カリスと対峙していた二体のアンデッドまでもがブレイドに襲い掛かり始めた。
 四体のアンデッドに囲まれるなんて事は、未だかつてない危機だ。
 場数を踏んできたとは言え、流石に気持ちの面で不安になってしまうであろう。


『グウオオオオォッ!』

( OwO)「ふっ!ぅおらァッ!!」

『シャアアアァアッ!?』


 シカのアンデッドの振るう角の剣を弾き、迫る豹のアンデッドを蹴り飛ばす。
 並走して迫っていたイナゴのアンデッドには斜めにブレイラウザーを振り下ろし、振り向き様に弾いたシカのアンデッドを横薙ぎに斬撃。
 

( OwO)「はあッ!!」

『グルルルルッ…!?』


 突進するイノシシのアンデッドを、後ろに回し蹴り見事蹴散らす。
 苦戦を強いられるかと思いきや、ブレイドは冷静に四体のアンデッドと渡り合っていた。

 四体のアンデッドを前にしても、決して引けを取らない実力。
 これまでの戦いの中で、誰に戦い方を教わる訳でもなかったが、経験を重ね着実に戦士としての成長を見せていた。

 

 その一方で、歴戦の猛者であるカリスは、レンゲル一人を相手に押されていた。

37420話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:24:04 ID:/vPk1WvQ0

 
 豪快に振られるレンゲルラウザーをカリスアローで弾く度、武器を持つ左腕に痺れに似た感覚が走る。
 力が強すぎて、その衝撃が腕にまで伝わっていたのだ。


( OHO)「ふんっ!ッはあ!」

( <::V::>)『チィ…ッ!こいつ、カテゴリーAの力と共存しているのか…!』

( OHO)「やはり……」

( <::V::>)『……?』

( OHO)『――やはり、貴様は弱くなっている!』


 レンゲルの意志が、カテゴリーAに代わるのを感じた。


( ;<::V::>)『うあっ!?』


 鍔迫り合いを力で強引に押し退けられ、カリスアローを弾かれた。
 水面を蹴られ体勢を崩したと同時に胸に叩き込まれたレンゲルラウザーの三枚刃が、カリスを地に叩き付ける。


( ;<::V::>)『ぐうっ…!!』


 胴体を片足で踏みつけられる。
 まるで、身体に重りがずっしりと乗っかったような感覚。身動きが取れない。
 レンゲルは、ラウザーの後端で動けないカリスの顔面を、何度も何度も顔面を殴り続ける。


( OHO)『人間の臭いがするぞ、カリス…!アンデッドでありながら人間に魂を売り、腑抜けになったようだな!』

( ;<::V::>)『ぐっ!ううぅッ…!!』

( OHO)『強さを失った貴様などもはや俺の敵ではない!カテゴリーAの最強は、この俺だ!!』


 釘を打つ金槌の如くひとしきり殴り続け、踏みつけた足でカリスの脇腹を蹴飛ばす。
 蹴られたボールのように地面を転がり、壁にぶつかる事でようやく止まる事が出来たが、カリスはぐったりと倒れたまま。

37520話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:29:33 ID:/vPk1WvQ0


( OwO)「クーさんッ!!」

( ・∀・)「やめろ!!!」


 モララーの制止を求める声に、レンゲルの動きが止まる。


( ・∀・)「ギコさん!!もうやめてください!!!」

( OHO)「ふん、俺を止めたいか?」

( ・∀・)「あなたは……あなたはそんな人じゃなかったはずです!」

( OHO)「……クッ、ハハハハハ!何を言い出すかと思えば……。俺を止めたければ、お前が俺を止めてみろ!」

( OHO)「お前が戦え。ギャレンとして……お前がな」

( ・∀・)「ッ……」

( OHO)「引き上げるぞ!」


 レンゲルの声と同時に、ブレイドを囲む四体のアンデッドは攻撃の手を止めた。
 

( OwO)「はっ……はっ……!?」


 鳴り響くバイクの排気音。
 階段を駆け上がり、橋の上までグリンクローバーが姿を現した。

 レンゲルは、無人で走行するグリンクローバーに飛び乗ると颯爽と走り去って行ってしまった。
 アンデッド達も、その後を追って撤退を開始。

 
 突然の退却に戸惑うブレイドと、怯えきったドクオ。
 レンゲルに打ちのめされたカリス、そして……消えたレンゲルの背を見つめるモララー。


( ・∀・)「………」

37620話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:30:06 ID:/vPk1WvQ0


( OwO)「クーさん!大丈夫かお!?」

( ;<::V::>)『うっ……ぐ、……私に触るな……ッ!』


 差し伸べばされた手を叩き落とし、助けを拒む。
 ふらふらながらも自力で起き上がり、カリスの姿のままシャドーチェイサーのもとへと必死に歩いて行く。


( ;<::V::>)『……私が、負けるだと……?あんな、奴に…ッうう……!』

( ;<::V::>)『ふざけるな……!!二度とあんな事は言わせない……ッ』


 レンゲルに言われた事が、心の奥底に根強く残っていた。
 カリスにとっては、すべてが侮辱に値する言葉。
 敗北を喫した悔しさと相まって、どうしようもない怒りだけがこみ上げて来る。


( OwO)「クーさん……」


 ブレイド達の心配を余所に、シャドーチェイサーに乗ったカリスは一人走り去ってしまった。
 
 
(;'A`)「………」

( ・∀・)「………」


 残された三人の間には、重苦しい空気だけが流れていた――。

37720話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:30:28 ID:/vPk1WvQ0





 ―――――




.

37820話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:30:54 ID:/vPk1WvQ0

 
 レンゲルの奪取に成功したギコは、夜の海を眺められる運河に足を運んでいた。

 
( OHO)「………」


 レンゲルバックルのシャッターを閉じ、レンゲルの変身を解く。
 右手に持ったバックルを見つめ、薄く笑みを浮かべた。
 

(,,゚Д゚)「遂に俺は手に入れた…レンゲルという最高の力を」


 変身を解いても、ジョルジュやドクオのように異常はない。
 自らの意志で変身し、自らの意志で変身を解いたギコは、カテゴリーAの力を受け入れているようだ。


(,,゚Д゚)「アンデッドもライダーも、皆俺の手で潰す…!」

(,,゚Д゚)「俺は、最強の仮面ライダーだ…!!」


 目の前に広がる、闇夜を映す海を眺める。

 ライダーになれなかった自分が、最強のライダーに――。
 最強の力を得て、心の底から湧き出る喜びを噛み締めるギコ。


 グリンクローバーに乗ると、ギコは一人闇夜の中へと消えていった。

37920話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:33:51 ID:/vPk1WvQ0





 ―――――




.

38020話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:34:27 ID:/vPk1WvQ0


ξ゚⊿゚)ξ「そんな……!じゃあ今、レンゲルのベルトは……」

( ・∀・)「ああ……レンゲルは今、ギコさんの手の中にある」
 _
( ゚∀゚)「………」

ξ゚⊿゚)ξ「……なんで、ギコさん……」


 ブーンの家へと戻っていた三人。
 跨線橋であった出来事を聞いたツンは、戸惑いを隠せない様子。
 ジョルジュに限っては、言葉を失ってしまっていた。


ξ゚⊿゚)ξ「……でも、もしかしたら」

( ^ω^)「もしかしたらって、何だお」

ξ゚⊿゚)ξ「もしかしたら……ギコさんなら、レンゲルを使いこなせるかもしれないんじゃ?」

( ・∀・)「………」

ξ゚⊿゚)ξ「自分の意志をしっかり持ってる人だから、カテゴリーAに打ち勝てるかも…だって現に自分の意志で戦ってたんでしょ?」

( ・∀・)「無駄だよ」

ξ゚⊿゚)ξ「どうして?」

( ・∀・)「……俺達の知ってるギコさんじゃなかった。正義に溢れた、熱い人間のギコさんはもう……。それだけだ」
 _
( ゚∀゚)「……許せねぇ」


 自身の膝を拳で叩き、怒りを露にする。

 _
( ゚∀゚)「俺にあれだけの事言っといて…あれも嘘だったってのか!?力に支配されてんのは自分じゃねぇか!
     俺はギコさんみたいな力の望み方はしてねぇんだよ……!!」

38120話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:34:52 ID:/vPk1WvQ0


 ジョルジュが怒るのも無理はない。
 レンゲルの使用を強く望んだジョルジュに、断固として認めなかったのがギコだ。

 もっともらしい事を言っていたくせに、ギコ自身がその力に飲みこまれていた。
 その事実に、腹を立てずにはいられなかった。


( ^ω^)「……モララーさん」

( ・∀・)「ん?」

( ^ω^)「明日、またギコさんに会ってみませんか?」

ξ゚⊿゚)ξ「何するつもりなの?」

( ^ω^)「説得するんだお、ベルトを返してくれって」
 _
( ゚∀゚)「返すわけねぇだろ、どうせ拒むに決まってる」

( ^ω^)「そうだとしても……このまま野放しするのは違うお」


( ^ω^)「それに、思うんですお。ギコさんを説得出来るのもモララーさんしかいないんじゃないかなって」

( ・∀・)「………」


 腕を組み、下を見たままのモララー。
 ブーンの提案には、素直に頷ける自信がなかった。

 こんな自分に、ギコを説得する事が出来るのか。
 
 そもそも……ギャレンの座を奪ってしまったばかりに、こんな事になってしまっているのではないか?


 考えれば考える程、自分への責任を強く感じてしまっていた。

38220話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:35:32 ID:/vPk1WvQ0


('A`)「……あの、俺はどうすれば?」

( ^ω^)「もう時間も遅いし、今日は泊まってけお」

( ^ω^)「それに、お前には色々注意しなきゃならなくなった訳だし……ここまで来ちゃった以上、もうお前も関係無いなんて言ってる場合じゃないお」

('A`)「………そう、だよな」

ξ゚⊿゚)ξ「可哀想だけど…誰かに危害が加わってからじゃ遅いから」

('A`)「うん、分かってる……でもこれだけははっきりさせたいから言わせてくれ」

('A`)「俺は、仮面ライダーには絶対になりたくない。俺なんかがなっても足手まといだし……そもそも向いてないから。
    何でカテゴリーAが俺を選んで追い掛け回してたのかは知らないけど……とにかく、俺は早くこの問題を解決したい」

('A`)「だから……それまでは、協力するよ」

( ^ω^)「うん、分かったお」

( ・∀・)「君を巻き込んでしまって……本当にすまない」

ξ゚⊿゚)ξ「……さ、みんな疲れたでしょ?今日はとりあえずご飯食べて休みましょ。
      今日は寒いから、豆乳鍋にでもしようかと思って!」
 

 重たい空気を断ち切るように立ち上がったツン。
 キッチンに向かい、既に食卓に用意された土鍋と器に盛られた野菜を見せた。


( ^ω^)「おー、いいね!寒い日は鍋に限るお」

('∀`)「……そうだな。かわい子ちゃんが用意してくれた鍋でも食って、とりあえず元気出すとするか!また明日考えるわ!」
 _
( ゚∀゚)「………」


 無理に気さくな態度を作り、ドクオは先に食卓に座った。
 本当は、食事など喉に通らない程追い詰められている。
 ジョルジュとモララーも、未だ暗い表情のままだ。
 
 五人はツンが用意した豆乳鍋をつつき、心が晴れないままその日の夜を過ごした。

38320話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:36:06 ID:/vPk1WvQ0


 ――――――
 ――――
 ――


 寒さが部屋の中に蔓延する深夜。
 全員が眠りに着いた頃――ドクオは一人、リビングのソファで眠っていた。

 
(-A-) Zzzz……


 全員が就寝する為に部屋に向かった後、すぐに眠りに着いてしまった。
 たった一日で、今までこんなに疲れた事がないと言っても過言ではない。
 それほど、肉体的にも精神的にも疲れていたのだ。

 いびきはしていないが、口をボーッと開きながら寝てしまっている。


(-A-)「………ん、んん……」

(;-A-)「……やめ、ろ……」


 深い眠りに着いているはずのドクオが、呻き始めた。
 眉間に皺を寄せ、苦しんだ様子を見せる。

 誰もいない深夜のリビングに、ドクオの小さな声が響く。




 ドクオは、夢に魘されていた。

38420話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:36:34 ID:/vPk1WvQ0


 ――ドクオが見ているのは、自分が小学生だった頃の夢。

 黒のランドセルを背負い、学校の帰り道を俯きながらとぼとぼと、一人歩いている。


「おいドクオ!」


 背後から、同級生らしき男の子達が駆け寄ってきた。
 ドクオの前に回り込み、行く手を塞ぐ。


「お前のせいで今日のサッカー負けたじゃねぇかよ!」

「そーだよ!お前がちゃんとパス出来てれば負けなかったのに!」

('A`)「……ごめん」

「てかお前いっつも足引っ張りやがってさ、邪魔なんだよ!」

「暗いしマジできもい。何で学校来てんの?」


 同級生達の悪意ある言葉が、幼いながらのドクオの心を酷く傷つける。


('A`)「………」

「なんとか言えよ!」 ドンッ

(;'A`)「うっ…!」


 目の前の一人に突き飛ばされ、地面に尻餅を着いてしまった。


 ドクオが見ているのは……小学生の頃、いじめられていた時の思い出。

38520話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:36:58 ID:/vPk1WvQ0


「お前友達いないだろ?友達いないやつは学校来んなよ!」

「お前みたいな奴絶対友達になりたくねー!」

「ほら、どうした?やり返してみろよ!」


 座り込んでしまったドクオを囲み、同級生達はそろって足で蹴る暴行を加える。
 幼い子供は痛みを知らない。
 故に蹴りは強く、ドクオの腕や腹部・背中を蹴り続けた。


(;A;)「やめてよぉ…!痛いよぉ!」

「はあ?こんくらいで痛いとかよっわ」

(;A;)「うううううぅ……ッ!」


 怖い、痛い、悔しい……憎い。
 すべての感情を抱いた時、目から溢れる涙。
 抵抗する事も、仕返しする事も出来ない。ただずっと、蹴られ続けるしかなかったあの頃。


(;A;)(……っ何で……)

(;A;)(何でいつもぼくばっかりなんだよぉ……!)


 心の中で強く叫んだ。
 
 何で、いつも自分ばかりいじめられるのか。
 どうして、自分はこんなにも無力なのか。
 
 強くなりたい。
 強くなって、こいつらに仕返ししたい。見返してやりたい。

 強さが欲しい。誰にも踏みにじられない、強い力が欲しい――




 『――ソウダ、力ヲ求メロ』

38620話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:37:32 ID:/vPk1WvQ0


 目を閉じて広がる闇の中から、声が聞こえる。


(;A;)「ッ……??」

 『――モット強クナリタイダロウ…コンナ奴等、オ前自身ノ手デ踏ミニジリタクハナイカ?』

(;A;)「………」

 『――オ前ハ正シイ……弱者ガイタブラレルノガ、世ノ常。ナラバオ前ガ、強者トナレ。
  ソシテ……コノ憎イ奴等、オ前ヲ蔑ム奴等、オ前ガ気ニ入ラナイ奴等全テヲ薙ギ倒セ!』

 『――俺ガ、オ前ノ助ケトナロウ』

(;A;)「……!」


 ――知らぬ間に右手で握っていた、レンゲルバックル。
 
 バックルから聞こえる声に、ドクオの心は奪われていく。

38720話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:38:11 ID:/vPk1WvQ0


(;A;)「ぼくは………いや、俺は……」

 『――ソウダ…俺ノ力ヲ受ケ入レロ!オ前ハ、最強ニナルノダ!』

(#'A`)「俺は……!俺を舐め切った、好き放題いたぶった貴様等を許さない……!!!」


 ドクオの腰に装着されるレンゲルバックル。
 蹴り続ける同級生達を振り払い立ち上がったドクオの姿は――今の大人の姿になっていた。


(#'A`)「変身…ッ!!!」


    【 -♣OPEN UP- 】


( OHO)「俺は…俺は強くなる!この力で、誰よりも強くなってやる!!」

「うわあああぁっ!?」
 

 怯えた同級生達に向け、レンゲルラウザーを大きく振りかざし、そして――


( #OHO)「うおおおおおああああああああアァァァァァッ!!!!!!!」



.

38820話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:38:40 ID:/vPk1WvQ0


(;'A`)「ッ―――!!!!」


 飛び起き、呼吸を乱す。
 寒さが際立つというのに、全身にはびっしょりと汗をかいている。


(;'A`)「はぁ…はぁ…、ったく……何だって今更こんな夢見てんだ……?」


 夢である事を知り、ほっと深く一息。
 
 記憶の片隅に押しやっていた、思い出したくもない過去。
 今の情けない自分があるのも、忌々しい過去の記憶のせいだ。
  
 今まで、過去の思い出が夢という形で現れた事なんて一度もなかった。
 
 夢の中に現れたカテゴリーAが、ドクオの芯に接触してきたように思えてならない。


('A`)「……俺は、強くなれるのか?変わる事が出来るかもしれないのか?」


 レンゲルの力を使い、自分をいじめていた奴等を倒した時…夢の中だが、確かな喜びを感じていた。
 
 自分のような非力でどうしようもない人間が、仮面ライダーとしての責務を果たす事は不可能。
 そんな責任を背負いたくも無かった。

 
 ――しかし、"仮面ライダー"という力を手にすれば……自分は、生まれ変われるのではないか。
 ましてや、レンゲルの圧倒的な強さを、この目で確かめている。


('A`)「………あの力さえ、あれば……」


 頑なに拒んでいたカテゴリーAの力。

 だが……ドクオが抱えている"闇"の部分に、とうとう触れてしまった。

38920話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:39:02 ID:/vPk1WvQ0





 ―――――




.

39020話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:39:24 ID:/vPk1WvQ0


 ――翌日。


 ブーンとモララーの二人は、NEO運河へと足を運んでいた。

 本来なら自宅に招いてもよかったが、どうなるか分からない。
 人陰のない場所で、もしもの事態に備える為に外に出た。

 ある人物と、話をする為に。


( ・∀・)「もし何かあったら、その時は……頼む」

( ^ω^)「……はい」


 そこに、丁度良く待ち合わせの約束をした人物が現れた。

 コンクリートの細い通路の前に停車する、グリンクローバー。
 それに乗った、白いスーツを着た男。

 ヘルメットを取り、ブーン達を遠くから見つめながら近付いて来る。


( ・∀・)「ギコさん……」


 現れたのは……モララー達を裏切り、レンゲルの力を奪ったギコだ。


(,,゚Д゚)「何の用だ、こんな朝早くから…」

( ・∀・)「あなたに話があります」

(,,゚Д゚)「話なんて俺にはない。そんな事より、俺と戦う気になったのか?」

( ・∀・)「何を言ってるんですか!?何で俺がギコさんと戦わなければならないんですか!」

( ・∀・)「単刀直入に言います。レンゲルのベルトを返してください」

(,,゚Д゚)「……何故?」

( ・∀・)「ギコさんだってレンゲルの危険性は知ってるでしょう…!そのベルトは危険過ぎます!」

39120話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:40:44 ID:/vPk1WvQ0


(,,゚Д゚)「………」

( ・∀・)「お願いですギコさん、ギャレンに戻ってください。そしてレンゲルのベルトを――」

(,,#゚Д゚)「ふざけるな!!!」

( ・∀・)「!?」

( ^ω^)「……!」


 ギコの怒号が、耳に聞こえる波音を掻き消す。
 迫力ある怒鳴り声に、思わず萎縮しそうになってしまった。


(,,゚Д゚)「ライダーになれなかった俺の……俺だけの為に作られた力だ!やっと手に入れた力だぞ!!」

(,,゚Д゚)「俺にジョルジュやドクオのような悩みも弱さもない。俺とカテゴリーAの意志は完全に一つだ!」

(,,゚Д゚)「昨日も言ったが、俺はアンデッドもライダーも全て倒す。
     そこにいるブレイドや、カリス……そしてお前もだモララー!それが、俺とお前が戦う理由だ!」


 もはや何も見えていない。
 自分自身でレンゲルの力を使う事が出来ても、結局は力に捕らわれ、傀儡と化してしまっている。
 
 モララーの表情も、段々と厳しくなってきていた。


( ・∀・)「……あなたの正義は、情熱はどうなったんですか!?」

( ・∀・)「あなたは頼もしい先輩として、俺達に厳しく…時に優しく指導してくれました。
      ギャレンとして俺が戦って来れたのも、ギコさんが居たからです!」

( ・∀・)「もしもの時、ライダーとして人を守れるのはお前達しかいないと……そう熱く教えてくれたのはギコさんじゃないですか!」

( ・∀・)「なのに……今のあなたは何ですか!?ギャレンの座を奪ってしまった俺を許せないからですか!?」

(,,゚Д゚)「………」

( ・∀・)「答えてください!!」

39220話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:42:46 ID:/vPk1WvQ0


(,,゚Д゚)「そんなもの…最初からどうでもよかったのさ」

( ・∀・)「え……?」


 不気味な笑みを浮かべるギコ。
 どこか、恍惚そうにも見えるその顔は…残酷さすら感じられた。


(,, ー )「レンゲルの力をこの目で目の当たりにし、この手で力を感じた時……俺は気付いた。
     正義なんてな、力を振るう為の言い訳にしか過ぎないんだよ」

(  ∀ )「……やめてください」

(,,゚∀゚)「フッ…ククク、俺はただ……力を振るいたかっただけだったのさ!!」

( #・∀・)「やめてくれ!!!」

(,,゚Д゚)「………」


 聞くに耐えれない。
 尊敬していた人の、人とも思えない言葉は、モララーの耳に通ることを拒んだ。


( ・∀・)「聞きたくない…そんな言葉、あなたからは聞きたくない!!」

(,,゚Д゚)「なら俺と戦え!!」

( ; ・∀・)「ッぐ!?」

( ^ω^)「!!」


 ギコに胸倉を掴まれ、強引に突き飛ばされた。
 尻餅を着くモララーに、傍で構えていたブーンが身構え始める。

 座り込みながら見上げるモララーの目を、真っ直ぐと見つめるギコ。


(,,゚Д゚)「戦え!ギャレンとして……戦え、モララー!」

(,,゚Д゚)「――お前なら、出来るはずだろう!」
 
( ・∀・)「………」

39320話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:44:54 ID:/vPk1WvQ0


(,,゚Д゚)「俺は、お前の答えを待っているぞ」


 言い残し、ギコは去って行った。
 立ち上がったモララーは暫く、姿が消えるまでギコの背を見つめた。

 完全に姿が見えなくなると、停めてあるレッドランバスに寄りかかった。
 説得出来なかったどころか、目の当たりにしたくなかったギコの今の姿を見てしまった。


( ^ω^)「モララーさん……」

( ・∀・)「……ごめん、やっぱり何も出来なかったよ」

( ^ω^)「違います……ギコさん、自分の意志でレンゲルを操ってなんかいませんお。
       あれは間違いなく、カテゴリーAに飲みこまれてる気がします……」

( ・∀・)「そう、だといいな……あんなギコさんは、見たくなかったから」

( ^ω^)「……やっぱり、ギコさんの事救えるのはモララーさんだけですお。
      ギコさんの本当の声が、最後の言葉に漏れてたように感じます」

( ・∀・)「本当の、声……?」

( ^ω^)「はい、お前なら出来るって言ったギコさんの言葉は……もしかしたら、閉ざされてしまったギコさんの本当の心かもしれません」

( ^ω^)「あれは、モララーさんに助けを求めてるようにも聞こえましたお」

( ・∀・)「………」


 ブーンの言葉に、可能性を見出しそうになる。

 だが……何も出来やしない。
 こんな自分に、ギャレンとして戦う資格なんてない。 

 未だに根強く持った思いが、可能性を塞ぎこんでしまう。


(・∀・ )「やめてくれ……俺には何も出来ないよ」

(・∀・ )「俺に、何が出来るっていうんだ……」

( ^ω^)「………」

39420話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:46:02 ID:/vPk1WvQ0





 ―――――




.

39520話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:46:27 ID:/vPk1WvQ0


 モララーがギコの説得に失敗してしまった頃。

 留守番組のツンとジョルジュ、そしてドクオはリビングに会していた。


ξ゚⊿゚)ξ「はぁ……説得出来るかしら、モララーさん」
 _
( ゚∀゚)「無理だよ。それだけ力に憧れてたんなら手放したくない気持ちも分かるっていうか……」

ξ゚⊿゚)ξ「ギコさんがレンゲルを使いこなして、私達と一緒に戦ってくれさえすればいいのよ」

('A`)「………」


 深夜に例の夢を見てから、ドクオの様子に異変が起きている。


('A`)(――レンゲル……レンゲル……)


 あれだけレンゲルを拒んでいたはずが、今ではレンゲルの名をずっと心の中で呟き続けている。

 恋にも似た心。

 レンゲルをこの手に持ちたい。
 レンゲルの力を、この手にしたい。


 ――カテゴリーAに、会いたい。

 _
( ゚∀゚)「お前、もう平気か?」

('A`)(レンゲル……レンゲル……レンゲル……)
 _
( ゚∀゚)「おい」

('A`)(レンゲル……レンゲル……レンゲル……レンゲル……)

ξ゚⊿゚)ξ「ドクオさん??」

('A`)(レンゲル……レンゲル……レンゲル……レンゲル……レンゲル……レンゲル……)

39620話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:46:53 ID:/vPk1WvQ0

 _
( ゚∀゚)「おい!聞いてんのかよ!?」

('A`)「――っへ?あ、ああ……今日も寒いなぁ」
 _
( ゚∀゚)「あ?平気かどうかって聞いてんだよ」

('A`)「え、あ…ああ!もう全然平気だよ。24時間で200キロ走れちゃいそうなくらい平気だよ」
 _
( ゚∀゚)「耳は難聴になっちまったっぽいけどな?」

('∀`)「いやぁ実は俺、耳の良さが失われた代わりに全部性格に良さが来てるからさ〜。英国の姫が俺に惚れちゃったくらいだぜ?」
 _
( ゚∀゚)=3 「はいはい、平気だな」

('∀`)「うっす」


 持ち前の軽いノリで、何とか誤魔化せた。
 呆れ返ったジョルジュは鼻を鳴らし、リビングを立ち去った。


ξ゚⊿゚)ξ「ふふふ、私洗濯物しちゃうから席離れるわね」

('A`)ノ「おう、頑張って〜」


 同じくツンも、日課となった家事を行う為にリビングから出て行く。
 ドクオは一人、取り残された。


 ――この時を、待っていたのだ。

39720話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:47:42 ID:/vPk1WvQ0


('A`)(今しかねぇ…!)


 誰もいない事を確認し、ソファから立ち上がる。
 周囲を警戒しながら、なるべく足音を立てずに、ドクオは収納家具の前に立った。


 そこは、レンゲルバックルを保管していた場所。

 他にも……モララーより預かった、ギャレンバックルが保管されていた。


('A`)(ここにあるはずだ…あのベルトが…!)


 引き出しに手を掛け、摩擦の音を最低限に抑えながら手前に引く。
 すると…保管されているギャレンバックルが、引き出しより姿を見せた。


('A`)(よし、あったぞ…こいつを持ってけば…!)


 あろうことか……ドクオはギャレンバックルに手を伸ばし、引き出しより取り出した。
 ゆっくりと引き出しを戻すと、早足にリビングを。

 靴を履き、玄関をそろりと開け……ブーンの家を抜け出した。


('A`)「よし…!急ぐぞ……」

('A`)「感じる……レンゲルのベルトの気配を……!!」


 自身のバイクに乗り、慌てたように走り出す。

 レンゲルに引き寄せられるように、ギコのもとへと……。


.

39820話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:48:03 ID:/vPk1WvQ0





 ―――――




.

39920話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:48:55 ID:/vPk1WvQ0


 街外れにある、廃れた施設の前に……異形の群れは居た。

 建造されて、然程年数は経っていないように見える施設。
 だが、捨てられて手入れも補強もされず、ただ時を過ごす廃墟と化した施設は、確実に傷み、老朽化が進んでいた。


『グルルルル……』

『シャアアアア……』


 幾重にも重なって聞こえる歪な呻き声。
 欲望のままに人を殺め、本来であれば互いに戦うべき敵であるアンデッド同士が、肩を並べて立っていた。

 すると、アンデッドの群れを掻き分け、廃墟と化した施設の前に立つ一人の男。


(,,゚Д゚)「………ここから、全ては始まった」


 モララー達の説得を拒み、明確な敵意を示したギコだ。
 レンゲルの変身を解いて尚、自身の手で解放したアンデッド達を僕として従えているようだ。


 目の前の廃墟を見上げながらそう呟くギコは、この施設の本当の姿――"BOARDの第一研究所"での思い出を遡っていた。

 
(,,゚Д゚)「所長が提唱したライダーシステムの第一号…ギャレンの適格者として、俺はBOARDにスカウトされ職員となった」

(,,゚Д゚)「長い鍛錬、修行を経て…俺はギャレンの最大限適合した人間として選定された……はずだった」

40020話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:49:48 ID:/vPk1WvQ0


 ……だが、当時研究員として働いていた後輩であるモララーに、融合係数が上回っているとしてギャレンの資格を剥奪された。
 
 その後、BOARDは協議の末、ギャレンだけでは最悪の事態に対処し切れぬと判断。
 現在ブーンが変身している、ライダーシステムの第二号・ブレイドが開発された。
 
 ギャレンに適合していただけあって、ブレイドの適合者としてのギコの期待は高かった。

 そして、適格者として、ブレイドの変身実験に臨んだギコだったが……、


(,,゚Д゚)「俺は……変身出来なかった。あの時の事故で、俺の左腕は……」


 スーツの裾をたくし上げ、左腕を露出させる。
 晒されたギコの左腕は……生身の人間のソレではなく、鋼の義手。
 
 ブレイドの変身実験中に、ライダーに変身する為に射出するゲート――オリハルコンエレメントに衝突した際、ギコは左腕を失ってしまっていたのだ。

 これにより、BOARDと当時所長だったロマネスクは、ギコをライダーシステムへ関与する事を一切禁じてしまった。
 
 ツンやジョルジュにも心配され…何より、後輩であったモララーが彼を一番気にかけていた。
 ギコはそんなモララーにも笑って見せ、自分の代わりにライダーとしての使命を背負って欲しいと、想いを託した。

 
(,,゚Д゚)「しかし……結局俺に残ったのは、ライダーへの捨て切れぬ憧れと…行き場の無い正義感だけだった…!」

(,,゚Д゚)「腕を失い、何も出来ず……惨めな俺は誰にも言わずにBOARDを去った」

40120話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:50:48 ID:/vPk1WvQ0


 懐に義手の左手を忍ばせ、レンゲルバックルを取り出す。


(,,゚Д゚)「だが……俺はコイツを手に入れた。俺の為に作られた、この最強の力を…!」

(,,゚Д゚)「腐り切った俺を、コイツが救ってくれたんだ…!コイツが俺に求めてくる…全ての者を倒せと。
     俺はその声に応える……そして、全てのライダーを倒す!」


 バックルよりトレイを引き、カテゴリーAのカードを装填。
 腰にベルトを装着し、BOARDの研究所だった廃墟に背を向けた。

 自分の中に残った正義の燃えカスを、この廃墟に託して――。


(,,゚Д゚)「変身!」


    【 -♣OPEN UP- 】


 スライドしたシャッターより現れた♣のマーク。
 バックルより射出する紫色に発光するゲート――スピリチアエレメント。
 対象のギコにゲート自らが接近し身体を覆うと……ギコを、レンゲルへと変身させた。


( OHO)「さぁ来い……菱谷」

( OHO)「お前の手で、俺を終わらせてみせろ…!」

『グオオオオオオオッ!!』


 レンゲルとなったギコの意志を受け、四体のアンデッドは躍動する。
 それまで肩を並べていたのに、突然、互いに争い始めた。

 まるで、自分の居場所を伝えるかのように――。

40220話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:51:15 ID:/vPk1WvQ0


 ――――――
 ――――
 ――


( ^ω^)ロ 「――分かった、すぐに向かうお!」


 サーチャーの反応を確認したツンより、アンデッド出現の報を既に受けていた。
 詳細を聞き電話を切ると、レッドランバスに凭れていたモララーがブーンに駆け寄る。


( ・∀・)「アンデッドか!?」

( ^ω^)「はい。あと、レンゲルの反応も……詳しい場所まで特定出来たみたいで、モララーさんなら分かるって言ってましたお」

( ・∀・)「何処だ?」

( ^ω^)「今は廃墟となってるはずの、BOARDの第一研究所だって」

( ・∀・)「BOARDの第一研究所?何でそんなところに……確かに場所は分かる。とにかく急ごう!」

( ^ω^)「はい!」


 それぞれのバイクに乗り、モララーを先頭にBOARDの第一研究所に向け走り出す。

 アンデッドの反応、そしてレンゲルの反応があるという事は、そこにギコが居る事になる。
 何故、今更そんな場所に居るのか。
 人もいない場所でのアンデッドの反応は、何を意味しているのか。

 ギコの思惑に疑問を抱きながら、モララーは急いだ。


 ――しかし、レンゲルのもとへ向かっていたのは、この二人だけではなかった。


.

40320話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:52:07 ID:/vPk1WvQ0


 ――――――
 ――――
 ――


( OHO)「……?」


 アンデッド同士が争い、打ち合う中に混じって聞こえるバイクの排気音
 この排気音が、モララーやブーンのものではない事をすぐに理解するレンゲル。

 視線を向けた先から近付いて来ていたのは……ギャレンのバックルを盗み出て行った、ドクオだった。


(;'A`)「ッ……」


 バイクを停めたドクオは、戦うアンデッド達にびくびくと怯えながらも、レンゲルに歩み寄る。

 その手に、ギャレンバックルを握り締めながら。


( OHO)「何の真似だ?」

(;'A`)「た……頼む、そのベルト……俺に返してくれ!」

( OHO)「何…?」

(;'A`)「代わりに、ほら!これやるからさ……な?頼むよ!」


 恐る恐る、ギャレンバックルをレンゲルに差し出す。
 差し出す手は、恐怖でぷるぷると震えている。

 だが、恐怖よりも、目の前にあるレンゲルのベルトが欲しい。

40420話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:53:32 ID:/vPk1WvQ0


( OHO)「ふん……そんなものはいらない。俺にはこの力が有ればそれでいい」

(;'A`)「何でだよ…!あんたはこれにも変身出来るしいいじゃないか!」

(;'A`)「俺は…俺は自分を変えたいんだよ!びくびくしてばっかで、自信が無くて前に進めない自分を変えたいんだ!!
    そのベルトがあれば……俺は強くなって、変われるんだ!」

(;'A`)「そうすれば……俺はもう、誰にも踏みにじられたりする事なんてなくなる!!」


 もう、溢れ出た欲望を抑える事が出来ない。
 心の中に潜む"闇"が、暴走して止まらない。

 自分の中の弱さが、邪悪な力を欲している。


( OHO)「くだらない、そんな事の為にライダーになりたいと言うのか!?
     いつまでも人のせいにして、立ち向かわずに逃げ回っているだけでは自分を変える事など出来やしない!」

( OHO)「それに……」


 突如、レンゲルの声が穏やかになった。


( OHO)「ギャレンの資格がある者は、この世でたった一人……それは、俺ではない」

(;'A`)「そんな…頼むよ!俺には必要なんだよレンゲルの力が……!」

( OHO)「失せろ!」

Σ(;'A`)「うゔっ!?」


 詰め寄ったドクオを、容赦なく突き飛ばした。
 ギャレンバックルが手から滑り落ち、遠くへ転がり落ちる。

 すると、先程まで争っていたはずのアンデッド達が、互いを傷つける手を止めた。
 そして……地面に倒れたドクオに、四体のアンデッドが迫る。


(;'A`)「ひっ…!や、やめろ……!!」

40520話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:54:20 ID:/vPk1WvQ0


 そこに、別のバイクの排気音が響いて来た。 
 その音に視線を向けたレンゲルは、今度こそ待ち望んでいた人物の到来を確信する。

 ブルースペイダーとレッドランバスがアンデッドの前に泊まり、二人はドクオを庇うようにして立ちはだかった。


( ^ω^)「何でお前がここにいるんだ!?」

(;'A`)「そ、それは…」

( OHO)「菱谷……!」

( ・∀・)「………」


 モララーの姿を見るなり、レンゲルは落ちたギャレンバックルを拾うと、モララーに投げ付けた。
 足早に歩み寄り始める。
 その行く手を、ブレイバックルを腰に装着したブーンが塞いだ。


( ^ω^)「ギコさん、今度こそあんたを止める!!」

( OHO)「いいだろう、まずはブレイド…お前から倒してやる!」

( ^ω^)ψ「変身!」
    /

    【 -♠TURN UP- 】


 バックルより射出するゲートで、レンゲルの動きを牽制する。
 ブーンは雄叫びを上げながらゲートに向け走り、ブレイドへと変身。

 走る勢いのまま、正面からレンゲルに右拳を突き出した。


( OwO)「うおおおおおおおおおおッ!!」

( OHO)「ふっ、良い拳だ…君も戦いの中で大きく成長をしたようだな!」


 ブレイドの正面からの突きを、容易く左手で受け止める。
 素早く懐に潜り込み背を向けると、ブレイドの二の腕辺りを右手で掴み、一本背負いのような形で地に投げ付けた。


( ; OwO)「うおっ!?」

.

40620話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:55:15 ID:/vPk1WvQ0


 反射的にすぐ立ち上がったところに、レンゲルがすかさず攻め寄る。
 ブレイドの空拳が繰り出す攻撃を完全に見切り、手で払い落とす。


( OHO)「ふんッ!はっ!」

( ; OwO)「モララーさん……ぐあッ!戦ってください!」


 両の手で交互に裏拳を叩き込み、身体を回転させた勢いでブレイドの頬に強烈な拳を見舞った。
 レンゲルと交戦しながら、ブレイドはただ黙って見守るモララーに、戦いを促す。


( ・∀・)「………」

( OHO)「菱谷!お前が戦わなければコイツが倒されるだけだぞ!」


 促されても尚、動こうとしないモララー。
 見せ付けるようにして、ブレイドを攻め続けるレンゲル。


( OwO)「モララーさん!僕はモララーさんを信じてますッ!モララーさんなら戦えるって…!」

( OHO)「うおおおああああっ!!」

( ; OwO)「ぐふうッ…!!」

40720話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:55:37 ID:/vPk1WvQ0


 大きく振り上げた回し蹴りが、ブレイドの側頭部に叩き込まれた。
 体勢を崩しふらついた身体に、レンゲルの打撃による追い討ちは止まらない。


( ; OwO)「大丈夫です…っ!モララーさんは…弱さを知った強さを、心の中に持ってるから!!」

(  ∀ )「………出来るのか、俺に……」


 俯き、足元に転がるギャレンバックルを見つめる。
 
 
( OwO)「モララーさんなら――出来る!!」

(  ∀ )「――!!」


 ブレイドの言葉に、ギコの言葉が重なる。
 
 ――その時、モララーの頭の中に、様々な過去と、声が流れ始めた。

40820話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:56:04 ID:/vPk1WvQ0


 ――それは、ギコがブレイドの変身に失敗し、入院していた時の事。



 ―――――――――― 


 (,,゚Д゚)「菱谷……お前に、聞いて欲しい頼みがある」

 ( ・∀・)「はい…?」

 (,,゚Д゚)「俺は、仮面ライダーにはなれないようだ……とても悔しいが、こうなっちゃあ仕方がない……」

 (  ∀ )「……ギコさん、すみません……俺のせいです」

 (,,゚Д゚)「馬鹿な事言うな、真面目過ぎるんだよお前は」

 (,,゚Д゚)「……もしも、アンデッドが世に放たれしまった時。人を助けられるのは、お前しかいない」

 (,,゚Д゚)「俺の想いをお前に託す。俺の代わりに……ライダーを背負ってくれ」

 ( ・∀・)「ギコさん……」

 (,,゚Д゚)「…お前なら、出来る!」

 ( ・∀・)「………はい」


 ――――――――――

.

40920話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:57:00 ID:/vPk1WvQ0

 
 ――――――――――


 ( ^ω^)「僕は今でも、モララーさんにはギャレンとして一緒に戦って欲しい気持ちがあります」

 ( ^ω^)「頑なにギャレンを拒む理由は、モララーさんが感じてる責任感からじゃないですか?
       モララーさんが感じてる、今までしてきた事への後悔や、情けないっていう気持ち…」

 ( ・∀・)「………」

 ( ^ω^)「色々あったけど、モララーさんは本当の自分に気付けたじゃないですか。
       自分の事を弱いって言うのは素晴らしい事だと思いますお。だって、自分の弱さを知っているんだから。
       モララーさんは今、自分の弱さと向き合ってる。向き合う事が大事だと僕は思いますお」

 ( ^ω^)「弱さを知らない人間は、強くはなれませんお」

 ( ^ω^)「それに、モララーさんは一人じゃない。僕達が居ます!だからモララーさんも、僕達と一緒に居ればいいですお」

 

 ( ^ω^)「――モララーさんなら、出来る!」


 ――――――――――

.

41020話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:58:11 ID:/vPk1WvQ0


 ――――――――――

 
 「――モララー」

 ( ・∀・)「!?ヒート……!?」


 ノパ⊿゚)「今度は何を迷ってるのかな?」

 ( ・∀・)「……俺に、ライダーになる資格……あるのかな?」

 ( ・∀・)「君を、守れなかった俺が……」

 ノパ⊿゚)「まったく、相変わらず真面目だなぁ君は。資格なんてもの、なくたっていいじゃないか」

 ノパ⊿゚)「今の君には、心強い仲間がいる。大切にしたい友がいる。守りたいものがあるはずだよ」

 ノパ⊿゚)「資格なんて見出そうとする前に、まずはその人達の為に戦って。
      そうすれば……君にも、その資格とやらが見つかるはず」

 ノパー゚)「それに私は、君が今大切なものの為に悩んでいる事が何より嬉しい……私はそれだけで十分だよ」

 ( ・∀・)「ヒート……」

 ノパ⊿゚)「……ほら、しっかりしろ!自分のためにも、みんなのためにも、戦えモララー!」

 ノパー゚)「君なら……出来る!」


 ――――――――――

41120話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:59:21 ID:/vPk1WvQ0



(  ∀ )「………」

( OHO)「やれ!」

『ガアアアアアアアアァァッ!!』

『グオオオオオォッ!!!』


 レンゲルの指示を受け、アンデッドが動き出した。
 アンデッド達が狙うのは……ギャレンバックルを前にし、立ち尽くしたモララー。


( ; OwO)「モララーさん!危ない!!」


 レンゲルの猛攻を受けながら危機を伝えるも、モララーは動かない。

41220話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 11:59:53 ID:/vPk1WvQ0



(  ∀ )「……俺は……」


 ポケットに入れた右手。
 その中で強く握っていたのは、ヒートの最期に譲り受けた、赤いお守り。

 
 今の自分には、大切にしたいものがある。

 けど、守れなかったものがあった……失ってしまったものがあった。
 その責任から、本当の想いを塞ぎこんでしまっていた。

 しかし、自分が大切にしたいと思っていた者達に、守られている事に気付いた。
 こんなな避けない自分の事を想い、守ってくれる仲間が――。

 だからこそ、今度こそ……この手で守りたい。



 何も無くなってしまった場所で、抱きしめた想い。
 その想いを、自分を、動き出していた時間の中で見失ってしまっていた。

 生まれ変わる度に強くなり、新しい強さで想いは蘇る。


 胸の内で熱く猛る想いが今――閉じこもっていた殻を、思い切り突き破った。






( #・∀・)「俺は―――戦う!!!」
 
.

41320話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:00:33 ID:/vPk1WvQ0

 ♪覚醒 - https://www.youtube.com/watch?v=ktrFxQEDJWc


『グガアアアアアアァァッ!!!』

( ・∀・)「ッ――!!」


 迫り来るアンデッドの攻撃を躱し、前転しながらギャレンバックルを拾い上げる。
 だが、モララーに迫ったアンデッドは一体だけではない。
 豹のアンデッドが、右手の鈎爪を光らせ、モララーに向け振り下ろした。


( ・∀・)「はあッ!!」

『ガアアァ!?』
 

 鈎爪が届く前に、モララーの足刀蹴りが豹のアンデッドの顎に炸裂。
 
 次に迫ったシカのアンデッドによる剣撃。
 瞬間的に、三日月を描くようにして宙を後転し、剣撃を回避した。

 着地したモララーは、ギャレンバックルにカテゴリーAを素早く装填。
 腰に押し当て、ベルトを装着した。


 一斉に迫るアンデッドの群れ。
 モララーは立ち上がり、群れに向けバックルのハンドルを引いた。


o( #・∀・)「変身!!」


    【 -♦TURN UP- 】


 バックルより射出したゲートで、迫り来るアンデッド達を迎撃。
 弾かれ分散したアンデッドの群れの中に展開するゲート。

 モララーは恐れる事なく、そのゲートに向け走り出した。

41420話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:01:55 ID:/vPk1WvQ0


 葛藤を経て、遂にギャレンに変身を果たしたモララー。
 ホルスターより引き抜いたギャレンラウザーで、四体のアンデッドに向け銃撃を見舞いながら駆け抜ける。


『グギャアアアッ!?』


 ギャレンが向かう先は、たった一つ。
 邪悪な力に溺れ、心を支配されたレンゲル――ギコのもとへ。


( OHO)「うおおおおっ!!」

( ; OwO)「くっ……!」


 ブレイドに向け、レンゲルラウザーが振り下ろされようとした時。 


( OwO)「……モララーさん!!」

( OMO)「これ以上、俺の仲間を傷つけさせない!!」

( OHO)「待っていたぞ……ギャレン!」


 レンゲルの眉間に銃口を向けながら、ブレイドを庇うように立ちはだかった。 
 

( OMO)「俺はもう…ライダーである事から逃げない。
      ヒートや剣藤、そして…あなたが託してくれた想いを胸に、俺は戦う!」

( OMO)「あなたをそうさせたのが俺だと言うのなら……俺の手で、あなたを止めてみせる!!」

( OHO)「そうだ、それでいい!ギャレンとして…俺と戦え菱谷!!」

41520話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:02:40 ID:/vPk1WvQ0


 瞬間、横に薙いだレンゲルラウザー。
 間一髪で躱したギャレンだが、レンゲルの後ろ回し蹴りが右手に直撃。
 ギャレンラウザーは、右手から弾き落とされてしまった。


( OHO)「この時を待ち侘びた!お前が戦ってくれる時をな!!」

( #OMO)「俺はあなたを助ける為に戦うんだ!力を求めて振るうだけの戦い、そんなものはこれで……これで終わりにする!」


 素手となったギャレンは、レンゲルの猛攻を流し、防ぎ続けた。
 自在に操るレンゲルラウザーの殴打は、防ぎながらもギャレンに着実なダメージが蓄積されていく。


( OMO)「くっ、コイツを防ぎ続けるのは厳しいな…!」

( OHO)「ふんッ!!」

( ; OMO)「ぐうっ!?」


 隙を突かれ、後端がギャレンの腹部に叩き込まれる。
 レンゲルの強靭な肉体から放たれるその力が、腹部への衝撃だけでギャレンを突き飛ばした。


( OwO)「モララーさん!」


 地面を転がるギャレンに駆け寄ったブレイドが、レンゲルに立ち向かおうとする。
 だが、伸ばした手でブレイド胸を押しやり行動を阻止。


( OMO)「手を出すな!このケリは俺の手でつける!!」


 途中でギャレンラウザーを拾い上げ、再びレンゲルに向かうギャレン。
 もう一度薙ぎ倒さんとするレンゲルが、レンゲルラウザーを振るい始めた。

41620話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:03:05 ID:/vPk1WvQ0


 先程とは打って変わって、読みきったかのように攻撃を躱し続ける。
 大振りに振られたレンゲルラウザーを頭を下げ回避した瞬間、ギャレンの右拳がレンゲルの頬を捉えた。


( OHO)「くっ…!」

 
 身を翻しながら、ギャレンラウザーを向け胴体に銃撃を数発ずつ、的確に撃ち込む。
 右手で攻撃を防ぎ、左拳を叩き込む。
 斜めに振り下ろされたレンゲルラウザーを後退して躱し、得意の足刀蹴りで顎を強烈に蹴り上げた。


( OMO)「はあぁッ!!」

( #OHO)「ぐうぅっ…!菱谷イィィッ!!」

( #OMO)「うおおおおおおおッ!!!」


 ギャレンに押し付けた後端で、力任せに上空に放り投げた。
 レンゲルの頭上を飛ぶギャレンは、投げられながらもギャレンラウザーの銃口を向け、背中から地面に落ちるまで銃弾を浴びせ続けた。


( ; OHO)「ぐああああぁぁあっ!?!?」


 レンゲルの黄金の鎧から、火花が激しく散り続ける。
 地面に落ちても、ギャレンの銃撃は止まらない。
 体勢を整えながらも、銃口はレンゲルを捉えたまま。

 止まない銃弾の雨に撃たれ、レンゲルの動きが完全に抑制される。
 何も出来ず、ただ撃たれる事しか出来ない。


( OMO)「ギコさん……許してください……!」


 大義はあれど、ギコを痛め付けている事に変わりはない。
 撃ち続けながら、ギャレンは胸を痛めた。

 
( ; OHO)「があっ…!っう…が、ぐはぁっ…!!」

41720話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:03:30 ID:/vPk1WvQ0


( OMO)「はぁ……はぁ……」


 ギャレンラウザーよりトレイを展開し、カードを三枚引き抜く。
 ラウズしようとした瞬間、レンゲルは右腰のケースに手を伸ばした。


( ; OHO)「ぐうっ…させるか…!」

 
 恐らく、"♣10 REMOTE"のカードを使い阻止しようという企みだ。
 だが、ギャレンはそれを予測していた。


( OMO)「ふっ!」

( ; OHO)「がああああ"あ"あ"あっ!?!?」


 伸ばした右手に、的確に被弾する銃弾。
 痛みに声を上げ、レンゲルラウザーを落とし右手を抑える。

 レンゲルの行動を制御し、今度こそ三枚のカードをラウズした。


    《-♦5 DROP-》 《-♦6 FIRE》 《-♦9 GEMINI-》

          《-♦BURNING DIVIDE-》


( OMO)「これで終わりだ……ギコさん!!」


 ギャレンラウザーをホルスターに収納し、両足を揃え高く跳躍。
 空中で身体を分身させ、両足に灼熱の炎が燃え盛り始める。 
 宙返りをしながら身体の向きを変え、炎の残像を描きながら、レンゲルに向け落下を始めた。


( #OMO)「でいやあああああああぁぁぁぁッッ!!!!!」

( ; OHO)「うああああああぁぁぁっ!!!」


 炎を纏った二人の両足が、レンゲルの肩から胴体を抉るように叩き込まれた。
 必殺技を正面から食らってしまったレンゲルは、断末魔の叫びを上げながら吹き飛ばされた。

41820話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:04:23 ID:/vPk1WvQ0



( OMO)「はっ…はっ……ギコさん!」


 着地したギャレンは、吹き飛ばされたレンゲルの方へと視線を向ける。
 

( ; OHO)「……っく……はあっ……!」

( OMO)「何……!?」


 吹き飛ばされこそしたが……レンゲルは、しっかりと二本の足で立っていた。
 必殺技を受けても、立っていられるレンゲルの強靭振り。

 だが、ギャレンが与えたダメージは凄まじく、立っているのがやっとだった。


( ; OHO)「ぐうっ……う……」

( OMO)「ギコさん!!」


 今にも転びそうな程にふらふらとした足取りで、レンゲルは廃墟の中へと必死に歩いて行く。
 後を追おうとするギャレンだが、


『グガアアアアアッ!!!』

( OMO)「クソッ…邪魔をするな!!」


 ブレイドと応戦していたアンデッドの内二体が、ギャレンに襲い掛かった。
 レンゲルが、アンデッド達に二人を妨害するよう指示を下していたのだ。


( OwO)「モララーさん!先にこいつらを封印しないと埒が明きません!」

( OMO)「仕方無い、やるぞ!」

41920話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:04:49 ID:/vPk1WvQ0


( OMO)「剣藤、こいつを使え!」


 ラウザーのトレイより引き抜いた一枚のカードを、ブレイドに投げ渡す。
 咄嗟にキャッチしたカードを見る。

 ギャレンから渡されたカードは、"♦6のFIRE"。
 ギャレンが軸にして使っている、炎の力を得るカードだ。


( OwO)「これは…!」

( OMO)「そいつを組み合わせて一気に仕留めるんだ!」

( OwO)「…そうか!」


 言葉に閃いた。
 今、ブレイドが必殺技を繰り出す為のアンデッドは全て目の前にいる。
 故に、雷の力を使う事も、キックを繰り出す事も出来ない。

 ブレイラウザーより、二枚のカードを選択。
 ギャレンより受け取ったカードと合わせ、計三枚のカードをラウズした。


    《-♦6 FIRE-》 《-♠2 SLASH-》 《-♠8 MAGNET-》


 ラウズしたブレイラウザーに、燃え盛る炎が纏い出す。
 そして、"♠8のMAGNET"で磁界を操る力を得たブレイドは、イナゴ・シカ・豹のアンデッドの動きを制御。


『ググッ!?』

( OwO)「うおおおおおおおおおおッッ!!!」

42020話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:05:18 ID:/vPk1WvQ0


 動きを制御したアンデッド達に向け疾走する。
 "♠2のSLASH"でブレイラウザーの斬撃の威力を高めた炎の剣で、三体のアンデッドを順に斬り捨てた。


( OwO)「ッはああっ!!」
 
『ギャアアアアアアァァッ!!!』


 バックルが左右に展開し、腹部から緑血を噴き上げながら身体を炎に包むアンデッド達。
 ブレイドはすかさず振り返り、三枚のカードを同時に投擲する事で、一度に三体同時に封印した。


『グウウウウウゥゥゥ……!』


 一度に三体のアンデッドを倒すブレイドの力に、恐れを抱くイノシシのアンデッド。

 一対ニでは、形勢不利だ。
 自分に分がないと悟ると、イノシシのアンデッドは一人逃走を図った。


( OwO)「待てッ!!!」


 追った瞬間には、もう遠くへとあっという間に走り去って行ってしまった。
 

( OwO)「くそっ、逃げたかお…!」

( OMO)「ギコさん…!」


 余韻に浸っている暇はない。
 封印したのを見届けると、ギャレンは急いで施設の中へと向かった。

42120話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:06:21 ID:/vPk1WvQ0


 ――――――
 ――――
 ――


( ; OHO)「はぁ…っ、はぁ……」


 施設内に入るなり、これ以上両足だけでは支え切れない身体を壁に凭れさせ、一時の休息を取る。
 全身に感じる痛み…全て、ギャレンによるものだ。

 モララーの予想を超えた強さには、ただ驚くばかり。
 レンゲルという最強の力を得ながら、圧倒されてしまったのだから。


( OHO)「ックソ……菱谷、強くなったな……」


 『――モウ貴様ニ用ハ無イ』


 突如、頭の中に響くカテゴリーAの声。
 

( OHO)「何…?うッ……!!」


 頭が痛い。こめかみを両側より押され、圧迫されるような痛み。
 耳からなのか、頭の中で響くのか分からない、キイイィィィン――と鳴る耳鳴り。
 

( ; OHO)「ううっ!貴様……俺を見限ると言うのかァ…ッ!」


 頭を抑えもがき苦しむレンゲル。

 すると――バックルのシャッターは、自分の意志とは関係無く閉ざされた。
 射出するゲート。迫り来るゲートを、ただ迎え入れる事しか出来ず……ギコは、レンゲルの変身を解かれた。

 バックルの装着が解除され、支えのないレンゲルバックルは床に転がり落ちる。

42220話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:06:43 ID:/vPk1WvQ0


(,,;゚Д゚)「はぁ……はぁ……」


 レンゲルバックルを拾う事もせず、ギコは壁で自身を支えながら廊下の奥へと進む。


(,,;゚Д゚)「……?」


 コツ、コツ……施設内に響く、床を叩く靴の音。
 息を切らし、壁に片手を着きながら、足音の方を見る。


('A`)


 歩いて来ているのは、ドクオだった。
 慌てふためいた先程とは打って変わって、ゆっくりと、落ち着いた様子で。

 ギコに近付く手前で、足は止まった。
 
 ――床に落ちたままの、レンゲルバックルの前で。


(,,゚Д゚)「……!」


 足元に落ちたレンゲルバックルに手を伸ばす。
 静かに顔を上げ……ギコを睨んだ。


('A`)「……来い」

(,,;゚Д゚)「ぐっ…!うぅ……!」


 呼びかけた声と同時に、ギコの足元の裾より蜘蛛の子の群れがわらわらと出現。
 大群は小さな足で床を伝い、住処を元の場所に戻す為に移動を始める。

 やがてドクオの足元まで辿り着くと、慣れ親しんだ場所のように次々とドクオの身体の中へと潜って行く。

42320話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:07:14 ID:/vPk1WvQ0


 手に取ったレンゲルバックルを腰に当てる。
 紫色のカードがベルト状に放出され、ドクオの腰にバックルが装着。


(,,;゚Д゚)「………」

('A`)「ああ……分かってる、俺はお前を受け入れるよ」


 今この場には、ギコとドクオしかいない。
 そのギコは何も話し掛けていないのに、ドクオは誰かに返事をしている。
 

(#'A`)「だから……お前の力、俺に預けろ!!」


 目の前のギコを鋭く睨みながら、ドクオの大声が響く。


 肘を屈折させ、同時にバッ、と前に両腕をL字のように構える。
 左手を腰元へ。頭より高く上げた右手をゆっくりと下げ、口元を隠すようにして右手を翳す。

 歪な待機音が、薄暗い廃墟の中に不気味に鳴り響く。




('A`/)「――変身!!」



    【 -♣OPEN UP- 】


 そう強く叫んだ瞬間、腕を顔の前でクロスさせ、勢い良く下げると同時に左手でバックルのシャッターを叩くようにスライド。
 開いたバックルから覗く、♣のマーク。

 バックルより紫色に発光するゲートが射出され、薄暗い施設の中を妖しく照らす。

 両手を腰元で構えながら、ゲートが自分の身体を覆うのを待つ。
 意志に応えるように、ゲートはゆっくりと接近。

 ドクオの身体をゲートが覆い通過し……ドクオは、自らの意志でレンゲルへと変身した。

42420話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:08:04 ID:/vPk1WvQ0


( OHO)「……レンゲルは返してもらった」

(,,;゚Д゚)「ッ……お前、その力を使う事が何を意味するのか分かってるのか!?」

( OHO)「あんたがレンゲルを奪ってた間、カテゴリーAが俺にこう言ったのさ。
      強くなって自分自身を変えろ…その手助けは俺がしてやる、ってな」

( OHO)「やっぱり、カテゴリーAが選んだのは俺だった……それだけの事だろ」


 背を向け、歩き出す。
 レンゲルの広い背中が、ドクオの弱き心を隠す。


(,,;゚Д゚)「ライダーになるだけで……本当に強くなれると思うのか?」

( OHO)「その答えは、これから自分で見つけるさ……レンゲルとしてな」


 自分の言葉で、自分の声で話す。
 言って、レンゲルは施設を後にした。
 
 カテゴリーAの思うままの傀儡と化し、自らの意志ではどうにもならなかったドクオ。
 邪悪な力を拒み、ライダーになる事を拒んだ。
 使命を背負うのも、責任を負うのも嫌だった。そんな自分が一番嫌いだった。

 しかし今、カテゴリーAの力を受け入れた事で、ドクオはその力を自分の意志で扱う事を可能としたのだ。


(,,;゚Д゚)「………」


 ――レンゲルの正式な適合者が、今ここに誕生してしまった。

42520話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:09:01 ID:/vPk1WvQ0


「フフフ……」

(,,゚Д゚)「誰だ!?」


 人が居るはずのない施設に、女の笑い声が響く。
 近付くと足音と共に、奥から人影が現れた。

 背丈は小さく、少女のような影。


(,,゚Д゚)「君は…?こんなところで何を――」

「ねぇ……私と、おともだちになってよ」

(,,゚Д゚)「………?」


 女の方から、何かが飛翔したのが見えた。


 突如、腹部に感じる違和感。

 恐る恐る、自分の腹部に視線を移した。



(,,;゚Д゚)「があッ……なにぃ……!?」

42620話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:09:25 ID:/vPk1WvQ0


 ――ギコの腹部に刺さる、真空の刃。
 背中をも突き破り、身体を貫通している。
 
 真空の刃は、空間に吸い込まれるように消滅。
 途端に、穴の空いた腹部よりとめどなく溢れる血。

 驚きと戸惑いを隠せぬまま、傷口を片手で抑えながら……ゆっくりと床に崩れ落ちた。


 近付く少女。
 無垢な笑顔を浮かべながら、倒れたギコを見下ろす。


o川* ー )o「あーあ、また――」


 少女の背丈以上のシルエットが浮かび上がり、一瞬にして可愛らしい少女の姿が変貌する。
 







、\ ノ
( ゚,皿,゚)『――おともだち、できなかった』

42720話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:10:03 ID:/vPk1WvQ0


 ――――――
 ――――
 ――


 アンデッドを封印し、施設に侵入したブーン達。
 ギコの行方を捜し、薄暗い施設の中を、スマホのライトで足元を照らしながら進んで行く。


( ・∀・)「そんなに奥の方には行ってないはず…!」

( ^ω^)「ギコさーん!!……ドクオの奴も何処かに行きやがって!」


 ギコの名を叫ぶ声が廊下の奥まで反響する。
 懸命に探す二人だったが、ギコの姿を見つけるのにそう時間は掛からなかった。


( ^ω^)「……!!モララーさん、あれ!!」


 何故なら……人のいないはずの施設の中に、血を流して倒れているのは、ギコ以外ありえなかったからだ。


( ・∀・)「ギコさん!?!?」


 倒れたギコのもとへ駆け寄り、うつ伏せに倒れたギコの身体を揺する。


( ; ・∀・)「ギコさん!?ギコさん!!」

(,,;゚Д゚)「……菱谷か……」

( ; ・∀・)「どうしたんですか…何があったんですか!?どうしてこんな傷を……」

(,,;゚Д゚)「やられてしまったよ……新しい、ごほっ……上級アンデッド、かもな……」

( ^ω^)「上級アンデッド…!?まだ此処に居るんですかお!?」

(,,;゚Д゚)「いや……、何処かへ行ったよ……」

42820話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:11:48 ID:/vPk1WvQ0


( ; ・∀・)「待ってください、すぐに救急車を――」

(,,;゚Д゚)「無駄だ……もう、俺は駄目だ……」

( ; ・∀・)「……!!」


 ヒートの最期が重なってしまった。
 あの時も、どうする事も出来ずに、こうやって……。


( ; ・∀・)「何を言ってるんですかギコさん…諦めたら駄目です!!」

(,,;゚Д゚)「そんな事より……気をつけろ」

(,,;゚Д゚)「ホライゾン君の友達……彼は、レンゲルのベルトを持って行ってしまった……」

( ; ^ω^)「なんだって…!?また操られてるのかお!?」

(,,;゚Д゚)「いや、あれは……完全に自分の意志――ゲホッ、ゲホッ!」


 咳き込んだ瞬間、口から血反吐を吐き散らす。


( ; ・∀・)「もう喋らないでください!」

(,,;-Д-)「……ふっ、情けない面しやがって……お前は、いつまでも気が弱い奴だ……」

(,,;゚Д゚)「菱谷……お前には、言いたい事がある……聞け」

( ; ・∀・)「………はい」

42920話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:13:27 ID:/vPk1WvQ0


(,,;゚Д゚)「俺はな……お前が、羨ましかったんだ……ギャレンとして、俺の代わりに選ばれたお前が……。
     妬ましくて、悔しくてな……俺の方が、きっと上手くやれるのにって……思ってたんだ」

(,,;゚Д゚)「左腕を失って、俺は自分を恨んだよ……。そして、お前達の前から去った俺に残った正義の燃えカスが、自分を腐らせてしまった……」

(,,;゚Д゚)「でもな、お前と戦って……気付いたよ……。俺は……ライダーの資格なんてなかったんだ。ってな……」

( ・∀・)「………」

(,,;゚Д゚)「これでよかったんだ……俺は、カテゴリーAに飲み込まれながらも……お前に助けを求めてた。
     お前は……俺を救ってくれた。感謝するよ……」

(  ∀ )「何を…何を言ってるんですかギコさん……!」


 ギコの声が、徐々に弱々しくなってきた。
 途切れそうになる意識を必死に繋いでまで、伝えたい言葉がある。


(,,;゚Д゚)「責任なんか、一人で抱えるな……お前には……立派な仲間が、いるじゃないか。
     変に悩む必要なんかないんだよ……」

(,,;゚Д゚)「もっと馬鹿になれ……真面目過ぎるんだよお前は……ッハハ」

( ;∀;)「……ッ……ぐすっ」

(,,;゚Д゚)「結局……お前には、敵わなかったってことさ……でも」


 モララーの手に、己の左手を重ね持てる力で弱々しく握り締める。
 


(,,; Д )「なりたかったな……俺も、お前と共に戦う……仮面ライダーに……」

(,,; ー )「………ライダー、に……―――」

(,, ー )


 ………握っていた手に、力が無くなった。

43020話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:15:31 ID:/vPk1WvQ0


(,, ー )

(  ω )「クソォ……ッッ!!!」

( ;∀;)「……ギコさん……ッ!」


 拳を握り締め、助けられなかった悔しさを床にぶつける。

 また守れなかった。
 守りたいものを守ると決めて、ギャレンに戻ったはずなのに……。

 やりきれない思いと悔しさが、また自分の心を苛もうとしている。


(  ω )「モララーさん……」

(  ∀ )「分かってる」


 悲しみに浸る間はない。
 頭を上げ、握り締めたギコの手を見つめる。


( ・∀・)「俺は逃げない……俺はこれからもギャレンとして戦い続ける。ギコさんが、俺に託してくれた想いがある。
      もう二度と、こんな悲しみを起こさせはしない……その為に……」

( ・∀・)「だから剣藤…もう一度、俺と一緒に戦ってくれ!」

( ^ω^)「……一緒に戦いましょう、モララーさん!ギコさんの想いと共に!」


 モララーは再び、アンデッドとの戦いに身を投じる決意を示す。
 今度こそ、二人の間に堅い結束が結ばれた。
 
 ギコの想いは、しっかりと後輩達の胸に届いていた――。

43120話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:20:13 ID:/vPk1WvQ0





     【 第20話 〜託された想い〜 】 終




.

43220話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:20:38 ID:/vPk1WvQ0


==========

 【 次回予告 】

 _
( *゚∀゚)「い、いやぁ…!その〜……ケガとかしてませんか?どこか痛いとことか……」

ミセ*゚ー゚)リ「私は大丈夫です、そちらは…?」
 _
( *゚∀゚)「俺っすか?お、俺は全然!生まれてこのかたケガなんてしたことないんで!本多忠勝の生まれ変わりなんで!!」

ミセ*゚ー゚)リ「???」
 _
( ; ゚∀゚)「あ…!ああ、分かりにくいよな!ごめんごめん、とにかく何もないならよかった!
     いやぁ本当すみません、酔っ払っちゃって……」

ミセ*゚ー゚)リ「みたいですね、とても顔が赤いから」
 _
( *゚∀゚)「あ〜……そうっすね」

ミセ*^ー^)リ「…ふふふ」
 _
( *゚∀゚)「あ……あははは」

43320話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:21:03 ID:/vPk1WvQ0


( ´_ゝ`)「お前もいつまでそうしていられるかな?」

(-_-)「……あ?」

( ´_ゝ`)「狙われるぞ?カテゴリーAに随分懐かれてるみたいだからなぁ、お前」

( ´∀`)「あー、そうだった!君がちゃんと相手にしてあげないから、構って欲しくてしょうがないんだよきっと」

(-_-)「知るかよ、俺は興味ないっつってんだ。誰が一番強いとか万能の力とか……そんなもの興味ない」

( ´∀`)「君って本当に珍しいよね、僕達と"同じ"なのにさ」

(-_-)「同じでも、生まれ持った性分はどうしようもない……もういいか?出来ればお前等の顔も見たくないんでね。
     俺は戦わない、このままひっそりと過ごさせてくれよ……頼むから」


 上級アンデッドであろう二人と接触するヒッキー。
 VIPで働くただの人間であるはずの彼に、冷酷な刃が向けられようとしていた!

43420話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:21:48 ID:/vPk1WvQ0


( ・∀・)「ッおい、やめろ!君は変身するな!」

('A`)「俺だって……俺だって戦う為にコイツを受け入れたんだ!!」

( ´_ゝ`)「ほう、早速レンゲルが現れてくれるのか?さて、新生レンゲルはどんな力なのかな」

('A`)「ッ……力を貸せよ、カテゴリーA!!」


 自らの意志でレンゲルに変身し、上級アンデッドに果敢に挑むドクオ。


( OHO)「………うおおおおおおおおおッッ!!!!」

( ´,_ゝ`)「じゃあ、早速挨拶と行こうか……!」

 (  。)
<メ、゚ M゚,>『俺はダイヤのカテゴリーキング。ダイヤスートを統べる王様、ってところだ…!』

43520話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:22:36 ID:/vPk1WvQ0


( ´∀`)「僕はスペードスートのカテゴリーキングだよ。キングモナーって呼んでよ」

( ^ω^)「カテゴリーキング…!?アンデッド!?!?」


 変身し立ち向かうも、一蹴されるブレイド。
 

( ´∀`)「しつこいなぁ、だから無駄だって言ってるだろ?」

( ; OwO)「何でだお…!?コイツどうなってんだ!?」

( ´∀`)「キングってどういう意味か分かる??」

( ; OwO)「何…?」

( ´∀`)「キングってのは王様って意味。要するに……僕が一番強いってことさ!」

( ; OwO)「うああああぁぁあぁッッ!?!?」


 遂に、アンデッドの中でも最強クラスであるカテゴリーキング達が動き出した!
 絶対的な力を前に、ライダー達はどうなってしまうのか!?
 そして今こそ、力を集結することが出来るのか!?



 次回、【 第21話 〜光なき闇〜 】


 ――今、その力が全開する!


==========

436 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 12:24:47 ID:/vPk1WvQ0
しおり

>>9 第15話
>>84 第16話
>>152 第17話
>>234 第18話
>>308 第19話
>>372 第20話

437 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 13:16:44 ID:/vPk1WvQ0
・ここまでの登場人物まとめ



――――――――――――【 仮面ライダー 】――――――――――――

( ^ω^) 剣藤ホライゾン / ( OwO) 仮面ライダーブレイド
 22歳。主人公。ブーンという呼び名で親しまれている。
 スーパーマーケット『 VIP 』の一社員としてこつこつ働いている青年。
 幼少期に両親が離婚し、女手一つで育ててくれた重い病を患った母親の為に日々働いている。
 また、自分達を見捨てた父親に激しい恨みを持つ。
 正義感が人一倍強く、率先して人助けや動物を助けたりしているが、その強い正義感が災いしてトラブルを生むこともしばしば。
 仮面ライダーブレイドに適合し変身出来たことから、仮面ライダーとして人を守る為にアンデッドとの戦いに身を投じることになる。


川 ゚ -゚) 愛川クー / ( <::V::>) 仮面ライダーカリス
 23歳。ブーンやドクオがよく通う飲み屋『バーボンハウス』で働く女性。
 常にクールで寡黙、何を考えているか分からないが情に熱いところがある。
 出生は謎に包まれているが、その正体はアンデッド。
 記憶を喪失しアンデッドである事も忘れていた時は、人間の自分とアンデッドの自分で意識が分かれていた。が、渡辺を強く想う心が記憶を戻らせた。
 渡辺とショボン、2人への愛情を抱きながら、その愛情と人間らしい感情を持つ自分に疑問を抱き続けている。
 アンデッドとしての本能・運命から戦いを求めてしまい、自分を制御出来ない一面もある。


( ・∀・) 菱谷モララー / ( OMO) 仮面ライダーギャレン
 25歳。BOARDの元研究員。
 BOARD壊滅後は、生き残りのツン達と共にアンデッドの封印を行っていた。
 真面目で純粋な性格だが、純粋さ故に利用されやすい。
 一般人でありながらブーン/ブレイドの活躍と潜在能力、そして自身の不調に焦りと嫉妬心を覚え、道を外してしまったことも。
 ヒートの死をきっかけに本当の自分を取り戻し、仮面ライダーとしてブーンとの共闘を誓った。
 本人曰く「自分は仮面ライダーに向いてない」とのこと。


('A`) 三葉ドクオ / ( OHO) 仮面ライダーレンゲル
 22歳。ブーンとは中学からの付き合い。フリーター。
 ブーンとは対照的で、普段からやる気が無くだらだらしている。
 内なる義心を持ちながら、自分に自信がなく普段から行動に移せないでいる。
 スパイダーアンデッドに魅入られてしまい、心に抱えた闇に浸け込まれレンゲルになってしまう。

438 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 13:19:02 ID:/vPk1WvQ0
――――――――――――【 BOARDメンバー 】――――――――――――

ξ゚⊿゚)ξ 廣瀬ツン
 21歳。
 モララーと同じく壊滅したBOARDの元研究員。
 崩壊したBOARDの施設から使える機材やブレイバックルを頂戴し、PCや端末を用いてアンデッドの探知を行いライダーをサポートする。。
 周りを気遣う事の出来る性格で、常に気を配っている優しいお姉さんタイプ。
 だが、芯を強く持った女性でもある。

 _
( ゚∀゚) 白岡ジョルジュ
 23歳。BOARDの元警備員。
 警備員時代からライダーになることへの憧れを抱いている。
 BOARD壊滅後、適合者のいないブレイドへの変身を試みるも適合出来なかった。
 ブーンに対して不信感や嫉妬心を持つも徐々に認め始め、自分の出来る事でライダー達の手助けをする。
 生意気な口調や態度が目立つが、仲間思いな一面がある。


(,,゚Д゚) 久利生ギコ
 29歳。元BOARD職員で、モララーの先輩。
 最初、ギャレンの適合者に選抜されるもモララーの融合係数の方が高く、ギャレンの資格者を降ろされる。
 ライダーシステム2号として開発されたブレイドの適合者であったが、不慮の事故により左腕を失い二度もライダーになれなかったショックから失踪。
 その後の消息を絶っていたが、ロマネスクと共にブーン達の前に現れひそかにレンゲルを狙っていた。
 最期は、スパイダーアンデッドに見限られた上に、アンデッドに殺害されてしまう。


( ФωФ) 内藤ロマネスク
 48歳。BOARD所長。
 表向きは科学者だが、裏の顔はライダーシステムの開発者。ブーンの実父。
 BOARD壊滅と同時に行方を暗ましていたが、府坂の洗脳を受けレンゲル開発に協力してしまっていた。
 洗脳が解けた後は、生き残りのBOARD研究員達と共にライダーの支援をすることに。

439 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 13:20:38 ID:/vPk1WvQ0
――――――――――――【 その他の関係者 】――――――――――――

(´・ω・`) 栗沢ショボン
 33歳。飲み屋『バーボンハウス』の店長。
 1階が店、2階は自分の家となっていて、渡辺とクーと共に暮らしている。
 みんなが心安らかに楽しくをモットーに経営している。やかましく騒ぐ連中や酔っ払いは徹底的に追い出すスタイル。
 ある日、大雨の嵐の中、山から転げ落ちてきたクーを介抱し、身寄りのないクーを自分の店に置くことに。


从'ー'从 渡辺あまね
 14歳。飲み屋『バーボンハウス』の看板娘。中学2年生。
 ショボンとクーと暮らしていて、中学校から帰ると何も無い限りはお店の手伝いをする。
 3歳の頃に母親を亡くし、父親には捨てられ、親戚の友人であったショボンが引き取ることに。
 クーに母親の面影を重ねていて、とてつもなく懐いている。


ノパ⊿゚) 深沢ヒート
 25歳。モララーの恋人。同じ大学院を卒業した同級生でもある。
 不安を抱えているモララーを気遣い、また大切に想っている。
 府坂に目をつけられ殺害されてしまうが、この事がきっかけでモララーは自我を取り戻す結果になる。


(-_-) 引田ヒッキー
 20歳。スーパーマーケット『 VIP 』のブーンの後輩。
 軽いノリが特徴で、常にブーンにちょっかいを出している。
 レンゲルに悩まされるドクオに意味深な言葉を投げ掛けた、謎多き人物。


(#゚;;-゚) でぃ
 10歳。山奥の廃れた家に一人で住んでいた少女。
 ギャレンに敗れ、山の中で気絶したクーを介抱する。
 両親をカテゴリーQに殺され、その後はモスと呼ぶ♥のカテゴリー8と共に住んでいた。
 後にクーに連れられ、バーボンハウスで暮らすことに。

440 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 13:21:03 ID:/vPk1WvQ0

J('ー`)し 剣藤カーチャン
 ブーンの母親。
 仕事ばかりで家庭を省みない夫のロマネスクに悩まされ、ブーンが小学4年生の頃に離婚を決意する。
 ブーンを女手一つで育ててきたが、ブーンが中学生に上がった時に重い病気を患ってしまう。
 それから入退院を繰り返し、現在では何十度目かの入院をしている。


*(‘‘)* 沢近ヘリカル
 23歳。スーパーマーケット『 VIP 』のブーンの同僚。ドクオの彼女。
 周囲を見れる頼れるお姉さん的存在。
 職場の中では一番にブーンを気遣い、その気遣いが結果的にブーンを仮面ライダーに集中させた。


(゜д゜@  新谷田おばさん
 スーパーマーケット『 VIP 』のパートのおばさん。
 店長であるニダーを本当に嫌っている。


<ヽ`∀´> 羽矛ニダー
 ブーンが働くスーパーマーケット『 VIP 』の店長。
 店長であるにも関わらず現場の社員・パートの声をほぼ聞かず本部の言いなりであるため、信頼はゼロ。

441 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 13:22:50 ID:/vPk1WvQ0

■カテゴリーA

( \品/) スパイダーアンデッド
 クラブスートのカテゴリーA。蜘蛛の祖。
 当初は自身の適合者を探し求め、蜘蛛の子を吐き出していた。
 上級アンデッド達とは違い人間に擬態は出来ないが、人間の言葉を流暢に話す程の高い頭脳を持つ。
 封印されて尚、自らの意志を外部に発信しており、ドクオを都合の良い媒体として目をつけ執拗に後を追い続けた。


■カテゴリーJ

ミ,,゚Д゚彡 府坂 / ミ,,゚王゚彡 ピーコックアンデッド
 外見30歳半ば。
 黒いレザーのロングコートが特徴的な全身黒ずくめの男。サングラスを常にしている。
 正体はダイヤスートのカテゴリージャックで、上級アンデッド。クジャクの祖。
 再び始まった古の戦いの真実にいち早く気付き、仮面ライダーを利用して有利に進めようと画策する。
 また、レンゲルの開発をした張本人。
 人間を下に見過ぎた事が災いし、モララーの激しい怒りを招き封印されるも、最期まで人の強さを理解する事はなかった。


■カテゴリーQ
             、、
(*゚∀゚) つー / @*゚皿゚)@ カプリコーンアンデッド
 外見10代後半。
 パンク系の派手な格好をした女に擬態している。
 正体はスペードスートのカテゴリークイーンで、山羊の祖。
 でぃの両親を殺害した張本人であり、ライダーを潰す為にでぃを人質にモスを脅迫するなど、手段を選ばない残忍さを持つ。
 

从 ゚∀从 ハインリッヒ
 外見20代後半。
 スート不明のカテゴリークイーン。
 カテゴリーQの中でも最強、と言われていた。

442 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 13:28:58 ID:/vPk1WvQ0
■カテゴリーK
            ( 。)
( ´_ゝ`) 兄者 / <メ、゚ M゚,> ギラファアンデッド
 外見20代半ば。
 メガネを掛け、落ち着きのあるクールな青年の姿に擬態する。
 ダイヤスートのカテゴリーキングで、ギラファノコギリクワガタの祖。
 自分自身は目立った行動をせず、何らかの目的の為に暗躍している。

 
( ´∀`) モナー
 外見10代後半。
 スペードスートのカテゴリーキング。
 兄者と共に行動しているが、その意図は不明。

              、\ ノ
o川*゚ー゚)o キュート / ( ゚,皿,゚) ???
 外見10代半ば。
 スート不明のカテゴリーキング。
 
 
■カテゴリー8

( ) モス / モスアンデッド
 ハートスートのカテゴリー8。毒蛾の祖。
 争いを好まない性格で、人間も襲わず自ら戦う事を嫌う心優しき下級アンデッド。
 つーに狙われ逃げていたところ、遭遇してしまったでぃの家族を巻き込んでしまう。
 残されたでぃを命辛々守り、その後は共に暮らしていたが、再びつーに狙われカリスを襲えと脅迫を受ける。
 最期は、でぃを救う為に凶暴化したように見せかけ、自らカリスに封印された。

443 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/24(日) 13:31:54 ID:/vPk1WvQ0
次は少しネタというかギャグというか、割とまったりな回になります
また来週できれば投下しますのでよろしくお願いします

444名無しさん:2017/12/24(日) 13:34:11 ID:dqp3zE8M0
乙!
レンゲルや上級アンデッド出てきて渦巻いてるね
ギャグ回…たこ焼き名人…ウッ…頭が…!

445名無しさん:2017/12/24(日) 16:48:42 ID:zXQvJKNo0
乙乙

446名無しさん:2017/12/24(日) 19:05:51 ID:RAdSoUw20
わーいクリスマスプレゼントだー今から読むぞー
乙ー
悲しみが怒りになるー自分に限界があることー知らさせーてるー

447名無しさん:2017/12/25(月) 06:06:17 ID:SxPHDHJw0

またモララー株急上昇しやがって・・・

448名無しさん:2017/12/25(月) 08:31:24 ID:EiFtTdgU0
おつおつ!
この作品のおかげで原作よく知らないのに特撮板覗くようになったよ
次回はたい焼き回を期待していいのかな

449名無しさん:2017/12/25(月) 14:13:29 ID:YIe.q50Q0
スペードとダイヤのKもう出るのか、原作に比べてずいぶん早いな
上級アンデッドの出てくる順とか、原作にいない上級アンデッドとか、その辺結構変わってきたりするのかな?

あと、AAがモナーだとスペードよりも五年後に出てきたハートのKってイメージが浮かぶ…

450 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/25(月) 16:06:51 ID:SxPHDHJw0
いつも乙やご感想ありがとうございます

すみません、いつもよりはまったりした回になるよってことを言いたかっただけです
たいやきは予定してませんが書くとしてももうちょい先になりそう

カテゴリーKの早期出現については、特撮特有のボスキャラを演出したかったからです
スート不明と表記してるキャラに関しては、まだはっきりと登場するに至ってないので不明と表記してます
が、原作通りには間違いないので知ってる方は想像出来ると思います
想像するのは楽しい時間なんで、よければ楽しんでください

451名無しさん:2017/12/26(火) 09:31:01 ID:f7LjgkEA0
おつ!
これモララー主人公じゃね?

452名無しさん:2017/12/27(水) 12:22:17 ID:IW18i.fc0
まぁ主人公どうこうってのはこれからの怒涛の展開を待っとけって

次はまったり回か
コレクッテモイイカナ?
原作とオリジナルがいい塩梅で混ざってて予想するのも楽しい

453 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:01:24 ID:Vg4XVt6s0
吾輩はあしたも仕事なんで今日投稿します
今回の投稿が年内最後になります

454 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:01:48 ID:Vg4XVt6s0





     【 第21話 〜光なき闇〜 】




.

45521話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:02:39 ID:Vg4XVt6s0


(-_-)「お疲れ〜っす」

(゜д゜@ 「あらやだヒッキー君、お疲れ様!」


 休憩室に入るなり、おばさんのがっついた挨拶がヒッキーを出迎えた。


 世間は正月に向けての準備に追われて大忙しだ。
 
 スーパーVIPでもそう。
 年末に差し掛かれば差し掛かる程、忙しさには拍車が掛かってくる。
 今年、最後の山場だ。

 例年であればブーンが筆頭に動いてくれていた。
 けど今年は、その肝心な頼りになる張本人はいない。もう年内に復帰する見込みもない。
 
 この事態に率先して動いて出たのは、思いがけない人物のヒッキーだった。


 普段の彼と言えば、どこかチャラいイメージで無気力さを強く感じると言った印象が濃く、パートからの評判は良くなかった。 
 だからこそだろうか、自ら進んで働く姿を見せ始めた彼に、パートや社員からの目は大分変わっていた。

 小言を言う癖は相変わらずだが。


(-_-)「あ〜つっかれた……早く年明けてくんねぇかなぁ、もう無理だわ……」

*(‘‘)*「なーにぶつぶつ言ってんの」


 弱音を言いながらロッカーの前まで移動すると、財布とスマホを持ったヘリカルが居た。
 同じタイミングで休憩に入ったようだ。

45621話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:03:21 ID:Vg4XVt6s0


(-_-)「だってクソ疲れますもん……マジで俺だけじゃどうにもなんねぇ」

*(‘‘)*「まぁいつもだったらブーンが動いてくれてたから…でもあんたも今年入ったばかりの割には良くやってるわ」

(-_-)「あ、大丈夫っす。自分が一番それ分かってるんで」

*(‘‘)*「はあ?自分で言う??」


 自動販売機に並び、互いにホットドリンクを購入。
 ガタンッ!と受取口に落ちてきた、熱を帯びたボトルを取るとテーブルに向かい合って座った。


*(‘‘)*「にしても、もう正月かぁ……あんたいつも正月は何してんの?」

(-_-)「………いや、特に何も」

*(‘‘)*「何も??実家に帰るとか大晦日は彼女と過ごすとかさぁ、なかったの??」

(-_-)「え、ああ……まぁ……もう俺の話はいいんで。ヘリカルさんは?」

*(*‘‘)*「え……私?聞いちゃう?」

(-_-)「聞いちゃうってか言いたそうっすけどね」

*(*‘‘)*「しょーがないなぁー答えてあげる!今年の大晦日はぁ、私デートなんだぁ。
     しかもしかも!向こうから付き合って初めて誘ってくれたんだ〜!」

(-_-)「……あの、ヘリカルさんの彼氏って確かドクオって人ですよね」

*(‘‘)*「そうだよ、ブーンの友達でもあるけどね」

(-_-)「………」

*(‘‘)*「どうして?ドクオがどうかしたの??」

(-_-)「いや、別に何も……ちょっと買い物して来ますわ」

*(‘‘)*「はいよ」


 言って、ヒッキーは休憩室を出た。

45721話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:03:52 ID:Vg4XVt6s0

 
 本当は買い物などするつもりはない。
 ただ、何となく、あの時のように駐車場に向かいたくなった。

 ドクオ――数日前の夜、この店の駐車場で話した人物で間違いはない。
 あの時の様子が、鮮明に思い出される。

 カテゴリーAに翻弄され、苦悩と恐怖に苛まれ混乱するドクオの姿が。


(-_-)「………」


 風が僅かに吹いた。
 ヒッキーの前髪を撫で、冷たい風が肌を刺す。

 目を閉じ、風の吹く音に耳を澄ませる。


(-_-)「―――あいつ、とうとう手にしたか……さてどうなる事やら」


 遠くで起きた出来事が、風に乗り伝わってくる。
 ドクオが、とうとうレンゲルの力を手にした事が
 

「――何をしてるんだ?」

「君、こんなとこで毎日過ごしてるんだねぇ」

(-_-)「はぁ……何だよ」


 風の音を遮って、二人の男の声が聞こえた。
 その声や気配から、自分に話し掛けている事が分かると、ヒッキーは大きく溜息を着いた。




( ´_ゝ`)「俺達と話すのが嫌そうだな?」

( ´∀`)「連れないなぁ、せっかく来たっていうのに」

45821話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:04:19 ID:Vg4XVt6s0


(-_-)「別に来いって言った覚えはないけどな……」

( ´_ゝ`)「だが、俺達はいつか必ず相見えなければならない運命だ」

(-_-)「そうかな?いなくなっちまえばまず会う事はないだろ」

( ´∀`)「それって、要するにこの中の誰かが……"封印される"って事かな?誰が最初なんだろ?面白そう!」

(-_-)「悪いけど、俺には大分悪趣味に見えるよ」


 二人に背を向け、スーパーに戻ろうとする。
 その足は、青年の言葉によって止められた。
 

( ´_ゝ`)「お前もいつまでそうしていられるかな?」

(-_-)「……あ?」

( ´_ゝ`)「知ってるんだろう?クジャクの馬鹿野郎が残した新しいライダーの誕生を」

(-_-)「だから何だよ」

( ´_ゝ`)「狙われるぞ?カテゴリーAに随分懐かれてるみたいだからなぁ、お前」

( ´∀`)「あー、そうだった!君がちゃんと相手にしてあげないから、構って欲しくてしょうがないんだよきっと」

(-_-)「知るかよ、俺は興味ないっつってんだ。誰が一番強いとか万能の力とか……そんなもの興味ない」

( ´∀`)「君って本当に珍しいよね、僕達と"同じ"なのにさ」

(-_-)「同じでも、生まれ持った性分はどうしようもない……もういいか?出来ればお前等の顔も見たくないんでね。
     俺は戦わない、このままひっそりと過ごさせてくれよ……頼むから」


 今度こそ、スーパーに向かい歩き出した。着けられないように、足早に。
 

( ´_ゝ`)「ふっ、相変わらず戦いを忌み嫌っているな……信念を持たない出来損ないが」


 ヒッキーの背が見えなくなる前に、二人もこの場を後にした。

 運命の冷酷な刃は――すぐそこに迫っているのかもしれない。

45921話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:04:42 ID:Vg4XVt6s0





 ―――――




.

46021話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:05:06 ID:Vg4XVt6s0


 時を同じくして、ブーンの家では、モララーを含めた三人がPCの前に集まっていた。

 本来なら今、この家には家主であるブーンを含め四人いるのだが。
 ビデオ通話を通して、画面の向こうに映る人物と顔を合わせたくない為に、ブーン一人だけはソファ席に座って声だけを聞いていた。


|( ФωФ)|[久利生が……そうか……]

( ・∀・)「すみません、所長……俺のせいで……」

|( ФωФ)|[お前が謝る事じゃない、そればかりはどうにもならなかった……誰も悪くない]

|( ФωФ)|[最期に言いたい事も言えて、支配されかけた心をお前に救ってもらえたんだ。久利生も本望だったであろう……]

( ・∀・)「そう、だといいですが……」

|( ФωФ)|[それと…レンゲルの事に関してだが]

ξ゚⊿゚)ξ「その事なんですけど、今ドクオさんに家まで来てもらうように頼みました。もうすぐ来ると思います」

|( ФωФ)|[うむ、何とか説得して返却してもらうのである。……ホライゾン、頼むぞ」

( ^ω^)「言われなくても分かってるお」


 画面越しのはずなのに、すぐそこにいる気がして無性に腹が立つ。気まずい。
 聞こえるロマネスクの声に無愛想に返事をするブーンに、ツンやジョルジュは呆れ顔だ。


|( ФωФ)|[……君達にいくつか伝えたい事がある]

( ・∀・)「はい」

|( ФωФ)|[まず、君達にアンデッドサーチャーの小型端末を送った。サイズは、スマートフォンと同じくらいの大きさである。
           一個しかないが……無いよりはマシだろう。菱谷、君が使ってくれ。
           アンデッドとの戦いは、きっとこれからも激しさを増す。廣瀬のアンデッドサーチャーだけでは尻尾を掴めぬだろう」

( ・∀・)「分かりました」

|( ФωФ)|「それと、アンデッドサーチャーの改良版を廣瀬のPCに送る。
           今まではアンデッドの反応のみをキャッチしていたが、アンデッドのスートやカテゴリーをも特定出来るように改良した]

ξ゚⊿゚)ξ「本当ですか!?だとしたら、出現したアンデッドが何かすぐに判別出来る!助かります、所長!」

46121話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:06:05 ID:Vg4XVt6s0


|( ФωФ)|[最後にもうひとつ。これはまだ完成していないが……ライダーを強化させる新たなシステムを開発する」
 _
( ゚∀゚)「ライダーの強化??」

|( ФωФ)|[うむ、菱谷が封印した府坂のカードを調べたが……。
           上級アンデッドのカードは、下級アンデッドのカードように戦闘力を付与する能力を備えていない。
           ラウザーにラウズしても、ただラウザーのポイントをチャージするだけだ]

|( ФωФ)|[我々は、上級アンデッドのカードには更なる可能性を秘めていると見ている。
           その可能性を極限まで引き出し、ライダーのパワーアップに繋ぐ事が出来る新たなシステム――"ラウズアブゾーバー"を開発するのである]

( ・∀・)「ラウズアブゾーバー……」

ξ゚⊿゚)ξ「それを使えば、上級アンデッドの秘めた力を使う事が出来る…?」

|( ФωФ)|[その通りである]

|( ФωФ)|[アンデッドはまだまだ数多く潜んでいる。彼等の力はとても強大、苦戦を強いられる時があるかもしれない。
           その時、ラウズアブゾーバーで上級アンデッドの力を引き出し、更に強い力でアンデッドとの戦いに臨める]
 _
( ゚∀゚)「そんな事、可能なんですか?」

|( ФωФ)|[可能にするのである。一日でも早くアンデッドを全て封印し、人々を魔の手から守る。
           その為には、まず実現に向け動かなくてはならない。
           君達が命を懸けて戦っているように、我々も、我々が出来る事で君達と共に戦おう!]

( ・∀・)「……はい!」
 _
( ゚∀゚)「そうだな!俺達、力を合わせてアンデッドなんかさっさと倒しちまおうぜ!」

ξっー゚)ξ「……ぐすっ、……えへ」
 _
( ゚∀゚)「な、なんだよ…泣いてんのか?」

ξっー゚)ξ「何か……BOARDが戻ったみたいで、ちょっと嬉しくて……」

 
 意気込む男達の傍ら、唯一の女性であるツンがすすり泣く。
 モララーも加わり、ロマネスクや生き残りであるBOARDの開発部の人達との共同戦線。
 
 この戦いに直面するのが自分達だけでないという安心感。
 ようやく生まれた結束に、熱く心を打たれてしまった。

46221話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:07:26 ID:Vg4XVt6s0


( ・∀・)「BOARDはもうないが……俺達には、新しい仲間もいる」

ξ゚⊿゚)ξ「……うん」

( ^ω^)「ん?」
 _
( ゚∀゚)「そうだな」

( *^ω^)「……おっおっ、なんか照れちゃうお」


 一斉に、ブーンへと視線が向けられた。
 意味を知ってか、照れつつも素直に嬉しそうに笑ってみせた。


|( ФωФ)|[皆、どうか吾輩の……いや、ホライゾンをよろしく頼むである]

ξ゚⊿゚)ξ「よろしくされてるのは私達の方なんで、全然大丈夫ですよ!」

|( ФωФ)|[……ホライゾン]

( ^ω^)「なんだお」

|( ФωФ)|[本意ではないが、お前にブレイドを任せる。頼むぞ]

( ^ω^)「……はいお」

|( ФωФ)|[だが無理はするなよ。決して命を投げ捨てるような事だけはするな]

( ^ω^)「自分の命くらい自分で管理してるお」

|( ФωФ)|[ふむ……では、吾輩はしばらく開発に専念する。また何かあれば連絡してくれたまえ]


 ビデオ通話は、ロマネスクの方から切られた。
 画面からロマネスクの顔が消えたと同時に、偶然にも家のインターホンが鳴らされた。

 誰の来訪かはあらかた予想がつく。呼び出したドクオだろう。


( ^ω^)「僕が出てくるお」

46321話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:08:00 ID:Vg4XVt6s0


 言って向かったブーンが、玄関の扉を開ける。
 開いて現れたのは、いつもと変わらぬ様子のおちゃらけたドクオだ。


('∀`)「あっ、こんにちはNHKです〜集金に来たんですが〜」

( ^ω^)「テレビないのでお帰りください」

('A`)「本当ですか?ちょっと確認させてください」

( ^ω^)「契約してませんので」

(#'A`)「携帯にワンセグないか確認させろ!!契約結ばないと裁判起こすぞ!!」

( ^ω^)「警察呼びますよ??」

('∀`)「すみませんまた来ます」

( ^ω^)「入れお」

('A`)「うっす」

46421話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:08:26 ID:Vg4XVt6s0


('A`)ノ「やぁみなさん!ご機嫌いかがかな?」

ξ゚⊿゚)ξ「ドクオさん、こんにちは!」

('∀`)「ツンちゃん今日のお顔可愛いねぇ〜、その唇の形最高!あとその今日の顎のラインも!」

ξ;゚⊿゚)ξ「私レザーフェイスとかじゃないんだけど……」

( ・∀・)「……彼って普段あんな感じなの?」 ヒソヒソ
 _
( ゚∀゚)「そうっすね、今日は何か無駄に元気ですよ」 ヒソヒソ

( ・∀・)「へぇ……意外だな」


 家の中に招かれるなり、全員に向け一方的な挨拶を送る。
 相変わらずと言えば相変わらずの軽いノリと態度は、ある意味安心出来る事ではあった。
 
 レンゲルのベルトを持っていながら、自分らしく居るのだから。

 だが、ドクオの性格を知りつつもその事実を把握しているブーンからすれば、不安でいっぱいだった。


('A`)「んで、何か話があるとかないとかあるとか?」
 っロ

( ^ω^)「ああ……」


 ソファに座り、目の前に出されたコップを持ちまずはお茶を一口。
 

( ^ω^)「単刀直入に聞くお」

( ^ω^)「……ベルト、お前が持ってるんだろ?」

46521話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:09:18 ID:Vg4XVt6s0


('A`)「………」


 一瞬の間が空いた。
 ブーンの質問に、それまで調子づいたドクオの顔は固まったように素の表情を見せる。


('∀`)「……ベルト??もしかして、レンゲルのベルト?」


 ゆっくりとテーブルにコップを戻すと、早速とぼけてみせた。
 

( ^ω^)「とぼけても無駄だお。もうみんな知ってるんだ……お前が持ってるってことは」

('A`)「………」

( ^ω^)「……ついでに言うと、そのすぐ後にギコさんは……」

(;'A`)「え……嘘だろ!?!?」

( ^ω^)「………」

(;'A`)「アンデッドに、殺されたっていうのか…!?」

( ^ω^)「……なんで殺されたって分かるんだお?」

( ^ω^)「そもそも、僕が言った"すぐ後"って、どの時の事を思って反応したんだお?」

(;'A`)「あ……」


 まんまと誘導に掛かってしまった。
 確かに、ブーンは具体的にどの時かの説明をしていない。
 本当に知らなければ、アンデッドに殺されたという想像にも至らないはずだ。


( ^ω^)「当ててやろうか?ギコさんが変身解除した後、その場に現れたお前がレンゲルのベルトを取って去った後の事…そうだろ?」

(;'A`)「ッ………」

( ^ω^)「……お前は嘘が下手なんだから、誤魔化そうとするなお」


 ただただ、焦りの表情に変わっていく。
 視線は無駄に泳ぎ、動揺しているのが丸分かりだ。

46621話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:09:58 ID:Vg4XVt6s0


( ^ω^)「何で取ったんだお?お前散々カテゴリーAに操られて酷い目見たこと、忘れたわけじゃないおな?
       それに、ライダーになりたくないって頑なに拒んでたお前が、何でレンゲルのベルトを持ち出すんだ?」

('A`)「……それは……」
 _
( ゚∀゚)「それもそうだけど、お前それ持ってて平気なのかよ。今日の様子見る限りじゃ操られてるようには見えないし」

('A`)「………」


 もう誤魔化せない。そう悟ったのか、否定する事はしない。
 だが、その質問に対しては中々答えようとはしなかった。


( ^ω^)「答えたくないって顔してるけど、そういう訳にも行かないお。事情が事情なんだお」

('A`)「分かってる、分かってるよ……自分でも矛盾してんのは分かってんだ」

( ^ω^)「だったら何で……」

('A`)「変わりたかったんだ!」

ξ゚⊿゚)ξ「変わりたかった…?」

('A`)「ああ……」


 自分のバッグの中を、ごそごそと漁り始めた。
 そして――中から取り出されたレンゲルバックル。

 確信的かつ言い逃れようのない証拠が出てきた。


( ・∀・)「やっぱり君が……」

( ^ω^)「変わりたかったって、どういう事だお?」

('A`)「……お前なら分かるだろ、俺がどういう人間か。俺が、自分に自信無くて何をやるにも一歩出せないような奴だって事を」

('A`)「俺が、昔いじめられてたってことも……」

( ^ω^)「知ってるけど…それがどう関係あるってんだお」

46721話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:10:42 ID:Vg4XVt6s0


( A )「俺は……その記憶が今でも消えないんだよ。忌まわしくて、消したくて、思い出にすらしたくない過去……。
    そいつに今でも引っ張られ続けて、俺は自分がどうしようもない奴だって思い続けてる!」

('A`)「だから、俺みたいな何も出来ない人間がライダーなんかやったって誰も助けられないって……そう思った。けど……」

('A`)「何で俺のもとにこのベルトがやってきたかを考えた……カテゴリーAは、俺を選んだんじゃないかって。
    頑なに拒んでたから、俺はコイツに操られた。でも…コイツを受け入れた途端に、俺は操られるような事もなくなった!」

('A`)「俺は思ったんだ…今はまだ慣れてないけど、いつかは俺もこの力を使いこなせるようになるって!
    俺は、コイツのおかげで何も出来ない自分を変えれるかもしれないって――」

( #^ω^)「何言ってんだお前!?僕達に襲い掛かったのを忘れたのか!?」


 ドクオの自分勝手な理由に、思わず声を荒げてしまった。
 気持ちを汲みつつも、元々素人でありながらライダーの使命を胸に戦ってきたブーンからすれば、憤ってもおかしくはない。


( #^ω^)「カテゴリーAがお前を選んだのは、そんな事の為じゃない!ただ自分の思い通りに動く身体が欲しいだけなんだお!!」

(;'A`)「ッ……」

( ^ω^)「お前とは長い付き合いだから言うお。
      お前の苦悩は分かってるし、変えたいっていう気持ちも分かる。
      でも…仮面ライダーは自分の為にあるものじゃない、アンデッドから人を守る為にあるものなんだお!」

( ^ω^)「それを、自分を変えたいっていう理由だけで…しかもそんな危険なベルトを使わせるわけにはいかない!
      もしまた僕達を襲って、まだ慣れてないからしょうがないなんて言い訳を僕達の前で出来るのか??
      僕だけならまだいい。でも、モララーさんやクーさん、ツンやジョルジュにまで手を出したらどうするんだお!?」

(;'A`)「……そうかもしれない」

( ^ω^)「分かってるんなら返せお。お前の為でもあるんだから……お前だけでも元の生活に戻れお。
      ライダーになるっていうのは、今まで歩んできた自分を全部捨てる事にもなるんだから」


 ドクオに向け、片手を差し出した。
 段々、力みきった表情から力が抜けているのが分かる。
 
 右手に持ったレンゲルバックルを、差し出されたブーンの手に向けゆっくりと伸ばす。

46821話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:11:46 ID:Vg4XVt6s0


 ブーンの掌にバックルが届くまで、あと少し。
 だが……完全に預けるまでには、まだ至らない。

 そして――、


( A )「………………悪い、やっぱり出来ない!!」


 伸ばした手を引き戻し、隣に置いたバッグを無造作に掴む。
 ソファより立ち上がると、逃げるようにして家を出て行ってしまった。

 _
( ゚∀゚)「あっ、おい!」

( ^ω^)「ドクオ!!!」


 逃げる背を追おうとするブーンを、モララーが引き留めた。


( ・∀・)「待て!俺が行って、彼を説得してみるよ」

( ^ω^)「でも…!」

( ・∀・)「頼む。少し俺に任せてくれ」


 引き留めたブーンを追い越し、ドクオに続いてモララーが家を出た。


ξ゚⊿゚)ξ「ドクオさん、大丈夫かしら…」
 _
( ゚∀゚)「あいつ、絶対止めないとまずいな」
 _
( #゚∀゚)「つーかムカつくぜ……そんなんでライダーになろうとするなんてな……」

( ^ω^)「……何でだお、ドクオ!!」

 
 説得出来なかった悔しさ、理解してもらえなかった事への腹正しさが残る。
 ライダーとしての信念に反し、ましてや自分を変えようとする事を理由に、ライダーになろうとするドクオが許せなかった。

46921話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:12:09 ID:Vg4XVt6s0


 ――――――
 ――――
 ――


('A`)「はぁ………」

 ブーンの家から飛び出し、近くの河川敷まで逃げてきた。
 バイクから降り、河川敷の草原の上に腰を落とす。

 出来れば、バレずに過ごしたかった。
 いずれはバレてしまう事だろうが、せめてその時までに自分がライダーとして戦えるようにはなっていたかった。
 

('A`)「アイツと会いにくくなっちゃうな……しょうがない」

('A`)「俺がしっかりコイツになって、認めてもらうしか」


 バッグの中から出したレンゲルバックルを、悠々と流れる川を背に翳す。
 
 ドクオは考えた。

 戦うには一体何をしたらいいのか?
 正しいパンチやキックの型も知らないし、あんな激しい動きをする自信はない。
 がむしゃらに打てば何とかなるものなのか?

 
('A`)「……アイツ、よくライダーやってるな。スゲェわ」


 考えれば考える程、マイナス思考になっていく。
 その点、全くの初心者であるブーンの戦い振りには感心せざるを得ない。

 ……やっぱり、無理なんじゃないか?


('A`)「ッいやいやいや!違う、それじゃコイツを受け入れた意味がない!俺は戦うんだ…コイツの力で変わる為に……」 

( ・∀・)「おい」

('A`)「?」

47021話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:12:58 ID:Vg4XVt6s0


( ・∀・)「探したよ」

(;'A`)「やべッ……!!」


 声がしたと思えば、隣にはいつの間にかモララーが立っていた。
 よく見ると、レッドランバスが留まっている。
 考え事に夢中になっていて、バイクの音にすら意識が向かなかった。

 モララーを視認するなり、ドクオは慌てて逃げ出そうとする。
 が、その肩を掴まれてしまった。


( ・∀・)「待ってくれ!どうして逃げるんだ?」

(;'A`)「だ、だって……」

( ・∀・)「話を聞いてくれ、君から無理矢理奪おうとは思ってない。信じてくれ」

('A`)「………はい」


 渋々ではあるが、説得に応じ再び腰を下ろした。
 

( ・∀・)「君、さっきは自分を変える為にって言ってたね」

( ・∀・)「聞きたいんだけど……自分を変えて、どうしたい?
      その危険な力は、君が変わることにどう影響を与えてくれると思ってる?」

('A`)「……それは……」

( ・∀・)「君の気持ちは、少しは理解出来るよ。俺も似たような事があってね」

47121話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:13:21 ID:Vg4XVt6s0


( ・∀・)「俺は、最近まで剣藤と対立してた。ツンやジョルジュ達ともね」

( ・∀・)「ライダーシステムってさ、人の精神や心の弱さを反映するんだ。
      俺は最初はライダーになりたくなくて、ライダーとしての責任感の重圧に圧されて、ひどかったよ」

( ・∀・)「そんな自分を、力を得て戦うことで誤魔化そうとしてた。暴力的な力で自分を変えようとしたんだ」

( ・∀・)「でも……それが間違ってたことに気付いたのは、とても遅かった。
      その間に俺は………大切な人を失ってしまった」

('A`)「大切な人……」

( ・∀・)「力を望むことは簡単だ、手に入れた力をどう使うかはその人次第になる。
      だけど、踏み間違えれば取り返しのつかないことになる。今はまだよくても、いずれは必ずその時が来る」

( ・∀・)「……俺と同じ道を、君に歩ませたくないんだ」

('A`)「………」

( ・∀・)「もしまだ心の中に迷いがあるなら…返して欲しい。
      そのベルトを介すカテゴリーAは、人の闇に浸け込む邪悪な力を持つ。君自身を乗っ取ってしまうかもしれない」

('A`)「………」

( ・∀・)「頼む、返してくれ」


 言って、ドクオに向け伸ばす右手。

 自らの経験から、ドクオに対しどこか同じ境遇を感じた。
 だからこそ、進もうとしている道がとても危険な事を理解出来る。

 ブーンとは違い、内側から解すような形での説得を試みたモララー。


('A`)「……俺は……」



「やぁ、仮面ライダー諸君」

47221話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:14:07 ID:Vg4XVt6s0


 背後からの声に振り返る二人。

 そこに立っていたのは、一人の青年。


( ´_ゝ`)「こんなところで日向ぼっこかい?」

('A`)「……あの」

( ´_ゝ`)「そうそう、君達にお祝いの言葉があるんだ。聞いてくれ」

( ´_ゝ`)「――レンゲル誕生、おめでとう。心からおめでたく思うよ……憎たらしい程にな」

( ・∀・)「……お前、アンデッドか!?」


 男が放つ異様な雰囲気、確信を突くような言葉に気付いた。
 咄嗟に立ち上がり、ドクオの前に出るモララー。

 男はクスクスと笑い出し、無言で頷く。


( ・∀・)「ドクオ君……離れろ」

( ´_ゝ`)「そうだな……別に君達を倒そうなどとは思ってないから、まずは安心してくれ」

( ・∀・)「何を馬鹿なことを――」


 男に向かい合い、ギャレンバックルを取り出そうとした、その時。
 背後に匿っていたドクオが、モララーを退かしアンデッドの前に立ちはだかった。

 その手には――レンゲルバックルが握られている。
 

( ・∀・)「ッおい、やめろ!君は変身するな!」

('A`)「俺だって……俺だって戦う為にコイツを受け入れたんだ!!」

47321話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:14:42 ID:Vg4XVt6s0


( ´_ゝ`)「ほう、早速レンゲルが現れてくれるのか?さて、新生レンゲルはどんな力なのかな」

('A`)「ッ……力を貸せよ、カテゴリーA!!」


 レンゲルバックルより引き出したトレイに、カテゴリーAを装填。
 トレイを叩きバックルに押し戻し、腰にバックルを装着。

 ドクオの中に巣食う恐怖心。
 まだ、自分があの化け物と戦うことに恐れを抱いている。
 鳴り響く待機音が弱い心を刺激し、迷いを促した。


(;'A`)「……ッ……」

( ´_ゝ`)「どうしたんだ?怖くて戦うことが出来ないか?」

('A`)「ッ……う、うるせぇ!俺はやれる…俺にはコイツがいる!!」

('A`/)「変身!!」


    【 -♣OPEN UP- 】


 変身の構えを取った両手を展開させ、バックルのシャッターを叩き開く。
 現れた♣のマーク。紫色に発光するゲートを射出し、レンゲルへと変身した。


( OHO)「………うおおおおおおおおおッッ!!!!」


 両手で拳を作り、力を込め自らを奮い立たせる。
 目の前の未知なる恐怖に逃げ出してしまいそうになる自分を抑え込んで。

 レンゲルラウザーを手に取り、シャフトを伸ばし杖状に形状を変化させる。
 両手でしっかりと柄を握り締め、不器用に突っ走り始めた。


( ´_ゝ`)「……ふっ、なんて弱々しい気迫だ」


 言って、男は右手を己のこめかみ辺りに手をかざす。
 そして、驚かざるを得ない光景がレンゲルやモララーの目に飛び込んだ

47421話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:15:13 ID:Vg4XVt6s0


 男がかざしたこめかみ部分から、剣の柄が姿を見せた。 
 出てきた柄を右手で掴むと……一息にそれを引き抜く。


( ・∀・)「!?」


 こめかみより引き抜いたのは……クワガタの大アゴを模したかのような、ニ又の黄金に輝く剣。
 

( OHO)「ッ…!?」


 異様な光景に思わず、駆ける足を止めてしまった。
 頭部より剣を引き抜くという、狂人じみた行為が、男の凶暴さと残酷さを嫌でも物語らせた。
 

( ´,_ゝ`)「じゃあ、早速挨拶と行こうか……!」


 ニヤリと笑みを浮かべる男の身体が、オーラに包まれた。

 男の腹部から現れる金色の肌。
 侵食するように全身に広がり、人の形状から徐々に歪な形に変化していく。
 
 金色に輝く身体。
 もはや、装甲と言っても過言ではない程の強靭な肉体。
 歪な怪物ながら、見惚れてしまいそうになる造型。
 特に目についたのは……頭部に伸びた、クワガタのようなアゴの角。

 眉間には、紅く煌くダイヤが、埋め込まれるように存在していた。


( ; ・∀・)「その姿、そのダイヤ……お前は!?」
 (  。)
<メ、゚ M゚,>『そうだな…お前が持ってるカテゴリーAに強く関係しているかもしれないな』
 (  。)
<メ、゚ M゚,>『俺はダイヤのカテゴリーキング。ダイヤスートを統べる王様、ってところだ…!』

( ; ・∀・)「カテゴリーK……!!」


 カテゴリーK…各スートの王。
 それだけで、このアンデッドが秘める力は容易に想像出来る。
 いや、想像を遥かに超えた力を有しているかもしれない。

 出で立ちや、堂々とした姿。府坂やカテゴリーQに勝る何かを、本能が感じ取っている。

47521話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:16:02 ID:Vg4XVt6s0

 (  。)
<メ、゚ M゚,>『どうした?カテゴリーA。こんな雑魚にやらせないでお前が戦え』
 (  。)
<メ、゚ M゚,>『でないと…わざわざ足を運んで挨拶しに来た意味がないんでね』

( OHO)「な……な、何言ってんだ!俺は、カテゴリーAの力を完全に――ッッ!?」

( ; OHO)「ううっ…!!!」


 突如、レンゲルを襲う激しい頭痛。
 頭を押さえ、ひどく苦しみ出した。


( ・∀・)「ドクオ!?どうした!?」

( ; OHO)「うゔゔぅッ……ぐあああアァァァァアァァアッ!!」


 痛みにもがき苦しんだ末、レンゲルラウザーを構え再びカテゴリーKに向け走り出す。
 レンゲルをよく見ると……額にある♣状の宝石が紫色に強く輝いている。


( OHO)「うおおおおあああああッッ!!!」


 雄叫びをあげながら、構えたレンゲルラウザーをカテゴリーKの頭部目掛け振り下ろした。
 だが、片手の剣で攻撃は簡単に防がれてしまう。

 (  。)
<メ、゚ M゚,>『ふん、あくまでコイツを操ることに力を注ごうとするか…。 はァッ!』

( ; OHO)「うああぁっ!?」


 レンゲルラウザーを弾き、ニ又の剣でレンゲルの胸部に一太刀浴びせた。
 黄金色の装甲に、深い傷跡が形成される。

 たったの一太刀を受けただけで、レンゲルは吹き飛ばされてしまった。
 装着者が戦いの素人であるドクオだとしても、レンゲルとしての体重やスペックは変わらない。
 
 それをも凌駕する凄まじい力が、カテゴリーKにはあった。

47621話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:16:28 ID:Vg4XVt6s0


( ・∀・)「ドクオ!……変身!!」


    【 -♦TURN UP- 】


 このままレンゲルに戦わせれば、死に至らせてしまうのは目に見えていた。
 ギャレンバックルを装着したモララーは、カテゴリーKに向けゲートを射出。
 ギャレンに変身するため、ゲートに向け走り出した。

 だが……、

 (  。)
<メ、゚ M゚,>『お前が相手になった方が見せしめになるらしいな……そんなわけで』
 (  。)
<メ、゚ M゚,>『これが俺からの挨拶だ…!!』
 

 モララーに剣先を向けた二又の剣が、紅く光を放つ。
 高々と頭上に剣を掲げ、ゲートに向け振り下ろす。 
 
 (  。)
<メ、゚ M゚,>『セイヤア゙ア゙ァ゙ァッッ!!!』

( ・∀・)「うっ…!?」


 荒々しい声と共に、振り下ろされた剣から放たれる斬撃波。
 虚空を斬り裂き、足元の草を削りながら、ゲートに向け一直線に飛翔する。

 モララーは、本能的に足を止める。
 これが正しい選択となった。

 カテゴリーKが放った斬撃波は、モララーがバックルより放ったゲートを――粉々に粉砕した。


( ; ・∀・)「…ッ!?オリハルコンエレメントが、破壊された…!?!?」


 変身をする為に放つゲートは、防衛的な役割を果たす事も可能。
 その証拠に、アンデッドにぶつければ吹き飛ばす事が出来た前例もあり、攻撃を防ぐ手段として用いる事も出来る。
 大概の事では、ゲートが突き破られる事など有り得ないのだ。

 ……しかし、そのゲートが、目の前で砕け散った。

47721話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:17:01 ID:Vg4XVt6s0


( OHO)「うぅ……ッ!うおおおおおおおおッッ!!」


 無謀にも、がむしゃらに再び立ち向かった。
 構えたレンゲルラウザーを、今度こそカテゴリーKの肩に叩き込んだ。

 (  。)
<メ、゚ M゚,>『……くどい!』


 全く動じない。
 片手でレンゲルラウザーの柄を掴み、二又の剣で横薙ぎに斬りつける。
 いくらでも防ぎ様はあったが、敢えて受ける事でレンゲルを蹴散らした。


( ; OHO)「うぐうぅ…ッッ!?」

 
 草原の上に転がり、川辺の方へと落ちるレンゲル。
 
 すると、レンゲルバックルがカテゴリーAの意志を受け自我を持ち始めた。 
 バックルのシャッターは勝手に閉ざされ、紫色のゲートが出現。
 転がり続けるレンゲルの身体を無理矢理通過し、変身を解いてしまった。


(;'A`)「うううぅッ…!あ…ぐ……!」
 (  。)
<メ、゚ M゚,>『フン、どうやらレンゲルは大したことなさそうだ……当分の間はな』


 言って、カテゴリーKは人間態へと姿を戻す。
 転げ落ちるドクオなど見向きもしないが、モララーへの興味はあるようだった。


( ´_ゝ`)「お前達がライダーを続ける以上、いつかは戦う時が来るだろう。だが、今ではない」

( ´_ゝ`)「俺は、この戦いに隠された"真実"を探している。それが見つかるまで、お前達とは戦わない。
       血を流しても報われぬ戦いなど、する意味がないからな」

( ・∀・)「真実だと…?」

( ´_ゝ`)「それまでは、せいぜい雑魚共と血気盛んな奴等の相手でもするんだな。その方が俺も助かる」


( ´_ゝ`)「――お前とは、いずれ決着をつけることになりそうだな。ふっ……」

47821話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:17:47 ID:Vg4XVt6s0


 カテゴリーKの姿が、フッ…と消えて無くなった。

 気配は感じない。
 本来は追わなければならないが、姿が消えた事にどこか救われた気持ちを覚える。


( ・∀・)「あれがカテゴリーKの力……なんて力なんだ……」

(;'A`)「ッうう……クソ……!」

( ・∀・)「ドクオ!」


 川辺の方で苦しむドクオの声。
 下り坂を下りながら、起き上がろうとするドクオに駆け寄った。

 地に両手と両膝を立てながら、レンゲルバックルを見下ろしている。


(;'A`)「何でだよ…!何で、力を貸してくれなかったんだ…!?」

( ・∀・)「確かにレンゲルを受け入れたことで、君は心の中に凶暴な力を住み着かせたかもしれない。
      だが、力を自由に使いこなすこととはまた話が違うようだな」

(;'A`)「そんな……!」

( ・∀・)「今のうちに止めたほうがいい、そのベルトは危険過ぎる。また誰かを傷つけてしまうかもしれない」

('A`)「ッ……でも選ぶさ、カテゴリーAは絶対に俺を選ぶ!ただ……今はまだ気まぐれなだけで――」

( ・∀・)「気まぐれなんて話では済まない!カテゴリーAは君を弄んでいるだけだ!
       いつか自分自身まで失ってしまうかもしれないんだぞ!?」

(#'A`)「失ってもいい!こんな弱い自分なんかなくなればいい!俺は強くなりたい……強くなりたいんだよ!!」

( ・∀・)「ドクオ!!上辺だけの力を求めても、何も得るものはないぞ!!」


 モララーの説得を振り切るように、力強く張り上げた声。
 レンゲルバックルを両手に抱え、痛みに悲鳴をあげる身体を叩き起こし逃げるように走り去る。

 その背中に向け言葉を掛けるが……ドクオの気持ちは、どこか理解出来る部分がある。
 我を忘れる程に強さを求める姿勢。まるで、過去の自分を見ているようだった。

 
( ・∀・)「……強くなりたい、か」

.

47921話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:18:53 ID:Vg4XVt6s0


 ――――――
 ――――
 ――


 一方、モララーに任せながらもブーンもドクオの行方を捜しに出ていた。
 ひとまず先にドクオの自宅に来てみたものの、本人はまだ帰宅はしていない。


( ^ω^)「どこ行ったんだおドクオ……」

「こんにちは」

( ^ω^)「こんにちは〜」


 バイクに乗ろうとすると、後ろから一人の少年が歩いてきた。
 職業病とでも言うべきか、少年の挨拶には笑顔で応える。

 その少年は、ブーンの前に立ちはだかり、一切視線を外そうとせず見続けている。


( ^ω^)「……あの、なにか?」

( ´∀`)「ブレイドだね?」

( ^ω^)「え……?」

( ´∀`)「やっぱりそうだ!ブレイドだ!本物だ……すごい!一緒に写真撮らせてよ!」


 言うなり、ポケットからスマホを取り出しブーンの肩に手を組んできた。
 さすがのブーンも、見ず知らずの人から馴れ馴れしくされるのはあまり好ましくは思わなかった。


( ^ω^)「ちょ、ちょっと待ってくださいお。なんですか??」

( ´∀`)「ああ、ごめんごめん。自己紹介しなければいけないね」

( ´∀`)「僕はね、スペードスートのカテゴリーキングだよ。キングモナーって呼んでよ」

( ^ω^)「カテゴリーキング…!?アンデッド!?!?」

48021話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:19:13 ID:Vg4XVt6s0


 己の正体を軽々しく明かす、キングモナーと名乗る少年。
 アンデッドである事を素早く察知した途端、ブーンはキングモナーを突き飛ばしバイクから降りる。


( ´∀`)「あ、何すんのさ!僕は何もしてないのに!」

( #^ω^)「ふざけんな!アンデッドが僕に近付くってことはそういうことだろ!?」


 ポーチに手を掛け、ブレイバックルを取り出した。
 カードを装填したバックルを腰に装着し、迷い無くハンドルを引く。


( ^ω^)「変身!」


    【 -♠TURN UP- 】

 
( ´∀`)「よっ、と!ちょっと待ってくんない?戦うつもりなんかないんだけど」

( #^ω^)「そんな言葉信じられるか!!」


 射出したゲートをひらりと躱すキング。
 既に戦いに心が備わっているブーンは、言葉に耳を貸すことなくゲートに向け走りブレイドに変身。

 走る勢いそのままに、人間の姿をしたキングに右拳を突き出した。


( OwO)「おらあっ!!」


 しかし……、


( ; OwO)「なっ……!?」 

( ´∀`)「やめときなよ、通じないから」


 キングを守るようにして、ブレイドの突き出した拳に盾が発生する。
 当の本人は己を守ろうとする為に行動を起こしたのかと思いきや、何もしていない。
 ただ腕を組んで立っているだけだ。

48121話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:19:41 ID:Vg4XVt6s0


( OwO)「うおおおおおおっ!!」


 それでも殴り続けり。
 この盾が発生しない場所が、必ずあるはず。
 そう信じて、何度も何度も殴り続ける。


( ; OwO)「ックソ……これならどうだ!!」


 ブレイラウザーを抜き、キングの脳天目掛け真っ直ぐに振り下ろす。
 
 だが、盾はキングの頭上を守るように上向きに発生。
 ブレイラウザーの剣を、打ち合う鋭い音と共に防いだ。


( ´∀`)「しつこいなぁ、だから無駄だって言ってるだろ?」

( ; OwO)「何でだお…!?コイツどうなってんだ!?」

( ´∀`)「キングってどういう意味か分かる??」

( ; OwO)「何…?」

( ´∀`)「キングってのは王様って意味。要するに……僕が一番強いってことさ!」


 キングがブレイラウザーを片手で掴んだ瞬間、ブレイドの身体に異変が起きる。


( ; OwO)「うああああぁぁあぁッッ!?!?」


 掴んだ手からラウザーを伝い、ブレイドの身体に流れる衝撃。
 何が流れているかまでの特定は出来ない。
 
 だが、それは確実に、ブレイドの身体に何らかのダメージを与えていた。

48221話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:20:54 ID:Vg4XVt6s0


( ´∀`)「はい、おあいこ。君から先に手を出したんだから正当防衛だよ」

( ; OwO)「はあッ…!ぐう、ああ……!」


 パッ、と手を離したと同時に、ブレイドの身体に流れる衝撃は途絶えた。
 それでも身体の中に蓄積されたかのように、未だに痛みは身体を蝕み続けている。
 両足で立っていることが出来なくなり、ブレイドは地に崩れ落ちた。


( ´∀`)「話は聞くもんだよ、ちゃんとね」

( ; OwO)「ごほっごほっ!…だったら、お前の目的はなんなんだお……!?」

( ´∀`)「目的??んー、ただ挨拶をしたかっただけって感じかな??
      もう一人のカテゴリーKが、今君のお仲間に挨拶をしに行ってるとこだよ」

( ; OwO)「もう一人のカテゴリーKだと…!?僕達を同時に倒すのが目的かお!」

( ´∀`)「だからさ…戦うつもりないって言ってるだろ??
      アイツは考えがあって動いてるだろうけど、僕は別に何も考えちゃいないよ。
      ただ、この戦いを掻き乱して掻き乱して……滅茶苦茶にしてやりたいだけさ」

( ; OwO)「……ぐっ!」

( ´∀`)「でも勘違いしないで欲しい、少なくとも僕は人間を恨んだりとか敵に見たりとかしてないから。
      かと言って味方をするつもりもないんだけどね」

( ´∀`)「そう、全部全部狂わせてやりたいだけだ……僕達が戦っても意味がない戦い。
      だったら全部滅茶苦茶にして、面白くしてやるだけさ…!」


 あどけなさが残る表情に、残忍さが垣間見える。
 本能のままに破壊を求める心こそ、恐れるべきものはない。


( ´∀`)「……会えてよかったよ、ブレイド。君とはまた必ず会うはずだ」

( ´∀`)「その時は――よろしく」

( ; OwO)「………」


 姿が消えた。
 モララーと同様にブレイドも、今までのアンデッドとは格段に違う力を肌身で感じていた。
 
 カテゴリーK。各スートの王。
 ついに、王自らが動き出したのだった。

48321話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:21:56 ID:Vg4XVt6s0




 ―――――



.

48421話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:22:16 ID:Vg4XVt6s0


 ――この日の夜は、ブーン宅にたくさんの客足があった。
 バーボンハウスの一同や、後輩のヒッキーが遊びに来ていたのだ。

 テーブルには、腕を振るった豪勢な料理と飲み物が並んでいる。

 今日は大晦日。明日からは新しい年になる。
 今年は、特に夏場からの半年間は、皆が皆非常に濃い時間を過ごしただろう。

 決して良い事があった訳では無い、悲しいことや辛いことばかりだった。

 けれど、不幸中の幸いと言うべきか、人との縁を深める事にも繋がった。
 その形として、今年最後の夜を共に楽しもうと、たくさんの人が集まっていた。

48521話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:22:44 ID:Vg4XVt6s0


(´・ω・`)「みんな、この間は本当にありがとう。君達のおかげで何とか店も続けられてるよ」

ξ゚⊿゚)ξ「いえいえ、ショボンさん達が無事だったことが本当何よりですよ」

(´・ω・`)「しかしびっくりしたな、ブーン君が仮面ライダーだったなんて。こんな身近に正義のヒーローがいたとはね」

从'ー'从「本当だよ〜。ブーンさん頼りなさそうって思ってたけど、ちょっとカッコイイって思っちゃった!」

(#゚ -゚)「へえ〜、あれが仮面ライダーだったのかぁ……すごいんだねブーンのお兄ちゃん」

ξ゚⊿゚)ξ「すごいでしょ〜?悪いやつらをやっつけてるんだよ、ブーンは」

(#゚ -゚)「うん、モスのことはいじめないでくれたもん」

(´・ω・`)「モララーさんもありがとう、こんな近くに仮面ライダーが二人もいれば心強いよ」

( ・∀・)「いえ、元はと言えば我々の責任でもありますので……」

(´・ω・`)「我々の責任?」

( ・∀・)「あ、いや…何でもないです」

(-_-)「そっか……だから休んでたわけか」
 _
( ゚∀゚)「広めんなよ?ここにいるって事は少なからずアイツに信用されてるってことなんだからよ」

(-_-)「ジョルジュさん、口軽そうって言われません?俺は言われませんけど」
 _
( ゚∀゚)「否定するだけで随分嫌味な言い方しやがんなおめぇ」

48621話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:23:44 ID:Vg4XVt6s0

 _
( ゚∀゚)「そういやブーンのやつ、もうすぐ帰ってくるな」

ξ゚⊿゚)ξ「そうね、年末だからお母さん連れて帰って来るって言ってたけど」
 _
( ; ゚∀゚)「ああ……なんか緊張しちまうな、俺達居候だし……」

ξ;゚⊿゚)ξ「ま、まぁそうね……出てけなんて言われたらどうしよう」

(´・ω・`)「ブーン君がそろそろ来るんじゃ、もうからあげ作っていいかもね」

(´・ω・`)「クー、もう揚げちゃっていいよ」

川 ゚ -゚)「はい」


 バーボンハウスの一同には、もちろんクーもいた。
 指示を受けると、一人でキッチンに立ち下味をつけた鶏肉に衣をつけ始める。


ξ゚⊿゚)ξ「クーさん、何か手伝うことある?」

川 ゚ -゚)「大丈夫」
 _
( ゚∀゚)「へえ〜、料理するとこ見れるなんて斬新だなぁ」


( ・∀・)「あの人、料理するのか?人間が食べれるもの作るんだろうな?」 コソコソ
 _
( ゚∀゚)「どうなんすかね?アンデッドのから揚げだったりして」 コソコソ


川#゚ -゚)「聞こえてるぞ。貴様等に借りがあること忘れてないだろうな?」
 _
( ; ゚∀゚)「あっ……うっす」

( ; ・∀・)「無駄口は叩かないほうがいいね」

48721話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:24:31 ID:Vg4XVt6s0


 玄関の開く音と共に、ブーンの声が聞こえる。
 いつもならすぐに家の中に入って、玄関のドアも閉じられるのだが、今日は中々閉まる音がしない。
 

( ^ω^)「ただいまお〜」
 _
( ; ゚∀゚)「帰ってきた!おい帰ってきたぞ!」

ξ゚⊿゚)ξ「落ち着きなさいよ!私出るから!」
 _
( ; ゚∀゚)「いっいや、俺も出るって!」


 廊下に出て玄関に向かうと、ブーンの他に車椅子に乗った女性がいた。
 その女性こそ、入院していたブーンの実母だった。


J('ー`)し「あら、可愛らしい子に優しそうな子じゃない。こんな子達にお世話になってたなんてねぇ」
 _
( ; ゚∀゚)「あっ、お…お母様!は、はじめまして!わたし白岡ジョルジュと申しまして…」

( ^ω^)「慣れないかしこまり方すんなお」

ξ゚⊿゚)ξ「すみません、勝手に居候させていただいてまして……」

J('ー`)し「そんなかしこまらなくていいのよ、話はずっと聞いてたから知ってるわ」

J('ー`)し「むしろ、ウチの子の面倒を毎日見てくれてありがとうねぇ」

ξ゚⊿゚)ξ「そんな…!お世話になってるのは私達の方です、いきなり住まわせてもらっちゃって……」

( ^ω^)「もう挨拶はいいから早く中に入ろうお。腹ぺこぺこだお!」

( ^ω^) クンクン

( ^ω^)「この臭い……クーさんのから揚げのにおいだお!」

48821話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:24:53 ID:Vg4XVt6s0


( ^ω^)「ただいま〜!おーみんなそろってるお!」

从'ー'从「おかえりなさ〜い」

(#゚ -゚)「おかえり〜」

( ^ω^)「みんなに改めて紹介するお。ウチのカーチャンだお」

(´・ω・`)「お母さん、今日はありがとうございます。息子さんにはいつもお世話になってます」

J('ー`)し「こちらこそ、いつもご迷惑おかけしてます」

( ・∀・)「お身体は大丈夫ですか?」

J('ー`)し「ええ、楽しそうな息子の顔見てたら…なんだか元気出ちゃいましたよ」

J('ー`)し「そちらのお嫁さんも、いつもありがとね」

川 ゚ -゚)「……私が、嫁?」

( ; ^ω^)「ちょ、ちょっとカーチャン何言ってんだお!クーさんとは別にそんなんじゃ」

J('ー`)し「分かってるわよ、あんたにはもったいない美人さんだもんねぇ」

( ^ω^)「うぐぐ……」

48921話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:25:32 ID:Vg4XVt6s0


J('ー`)し「それにしても……まぁ」



  _
 ( ゚∀゚) ξ゚⊿゚)ξ (#゚ -゚) 川 ゚ -゚) (´・ω・`) 从'ー'从 (・∀・ ) (-_- )




J('ー`)し「こんなたくさんの人と繋がりが持てて……幸せ者のアンタを息子に持つカーチャンも幸せだよ」

( *^ω^)「そ、そうかお?……確かに」

( ^ω^)「辛いこともたくさんあったけど……今は今で幸せかもしれないお」

( ^ω^)「本当はドクオも呼びたかったんだけど……」

ξ゚⊿゚)ξ「うん……そうね」
 _
( ゚∀゚)「……つーわけで!今日は忘年会も兼ねてるわけだし、ブーンに始めの挨拶してもらおうぜ!」

( ^ω^)「おっおっ、いいのかお?」

(´・ω・`)「もちろん、この中心は君だからね」

( ・∀・)「そうだよ、剣藤がいなかったら…俺もきっとここにいなかった」

ξ゚⊿゚)ξ「私達、きっとバラバラになってたかもしれないわ」

( ^ω^)「……じゃあ僭越ながら、僕が挨拶を務めさせていただきますお」

49021話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:26:15 ID:Vg4XVt6s0


( ^ω^)「みんな、今年は大変お世話になりました」

( ^ω^)「今年は初めてのことばかりの年だった……僕としては、人生の中で一番濃い時間を過ごしてる」

( ^ω^)「戦って、傷付いて……ここにいる数人の人達とぶつかり合うこともあったお」

( ・∀・)「……」

川 ゚ -゚)

( ^ω^)「辛いこと、悲しいこと、出会いや別れ…この半年間で多くを経験したお。
      きっとこの辛さを忘れることなんて出来ない、残り続ける。これからもきっと、苦しいことは待ち受けてると思う」

(#゚ -゚)「…うん」

( ^ω^)「でも、今やってることに後悔はしてないお。苦しいことも悲しいことも全部受け入れて、前に進み続けたい。
      みんなと一緒に進んで行きたいって思ってるお」

( ^ω^)「みんなと一緒なら僕は大丈夫!これからも、人を守り続ける為に戦える!
      どんな"運命"が待ち構えようとも、僕はその"運命"と正面から戦いたい!」

( ^ω^)「だから、来年もみんなよろしく頼むお。
      そのためにも、今日はたくさん飲んで食って楽しんで!都合の良い嫌なことだけを忘れちまおう!」
 _
( ゚∀゚)「おう!ブーン大将!」

( ^ω^)「てわけで、みんなお疲れさまでした!乾杯!!」
  っロ



「「乾杯〜!!!」」

49121話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:26:59 ID:Vg4XVt6s0


 酒を飲みながら、ソファに座るいつもの四人はドクオの話題になった。
 

( ・∀・)「そういえば、ドクオのことだけど……」

( ^ω^)「分かってますお。アイツのことだから何となく、応じなかったんだろうなって思ってました」

ξ゚⊿゚)ξ「大丈夫なの?ドクオさん」

( ^ω^)「うーん……大丈夫ではないと思うお。これに懲りずに僕も説得してみます」

( ・∀・)「いや、思ったんだけど…レンゲルのベルトはカテゴリーAの意志を受けて、何度もドクオのもとに戻っただろ?
      もし無理矢理ベルトを奪ったところで、またドクオのもとに戻ってしまうんじゃないかな?」

( ・∀・)「カテゴリーAはきっと、自分の思うままに動くことが出来る媒体としてドクオを選んだ。
      引き剥がしたところで、何度でも彼のもとに戻る……そんな気がするんだ」
 _
( ゚∀゚)「じゃあ、レンゲルはアイツに渡したままにしとくしかないってのか…?」

ξ゚⊿゚)ξ「彼、またブーンやモララーさんに襲い掛かるかもしれないのよ?」

( ^ω^)「そうなったらもう力ずくで止めるしかないけど……どうしたらいいのかなぁ」

( ・∀・)「さっきもアンデッドと戦った時、最初は自分の意志でレンゲルとして動いてた。
      でも……すぐにカテゴリーAのマインドコントロールを受けそうになってた」

( ・∀・)「カテゴリーAの力を受け入れたことで、常に自我を保てるようにはなったのかもしれない。
      けどそれはカテゴリーAを押さえ込んだということではなくて、ただ自分の心の中に住まわせているだけに過ぎない」

( ^ω^)「だとしたら、尚更どうすれば……」


 八方塞がりのような状況。思考を巡らせど解決策が思いつかない。
 何をしたところで、レンゲルバックルはドクオのもとに戻り続ける。
 破壊さえ出来ればそんなことも無くなるが、簡単に破壊出来るのならとっくにしているであろう。

49221話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:27:47 ID:Vg4XVt6s0


 どうにか引き剥がすことだけを考える三人とは違い、モララーはひとつの案を思い浮かべていた。


( ・∀・)「剣藤、よかったら彼のこと俺に任せてくれないかな?」

( ^ω^)「任せるって…何か良い案でもあるんですか?」

( ・∀・)「彼は、弱い自分を変えたいって強く願っているんだ。そのためなら、本当の自分を失ってもいいとも言ってた。
      きっとレンゲルに希望を強く抱いてるんだと思う」

( ・∀・)「昔いじめられた経験から、彼は心に闇を抱えたまま大人になってしまったと考えるのが一番だろうね。
      普段はあんな感じでおちゃらけてても、心の中には誰にも見せない闇があるんだ。
      カテゴリーAは、その心の闇に触れたんだろう。そして意のままに動かそうとしている」

( ・∀・)「だったら、彼自身がカテゴリーAと戦うしかない。自分の心の闇と向き合って、邪悪な意志を制御するしか」
 _
( ゚∀゚)「それって……アイツにレンゲルとして戦わせるってことかよ!?」

( ・∀・)「元々彼はそれを望んでる、だから自分からレンゲルを受け入れた。そんな真似はさせたくないのは大前提の話だよ。
      でもこうするしかない。剣藤にとってはあまり良くない話かもしれないけど……」

( ^ω^)「………いや、そうしましょう」

ξ゚⊿゚)ξ「本当にいいの…?」

( ^ω^)「アイツもそこまで馬鹿じゃないお、ライダーになるってことがどういう事なのか少しくらいは分かってるはず。
      自分から変身をしたってことは、その覚悟の表れな気がするんだお」

( ^ω^)「もし中途半端なことを言い出したら、その時は僕がアイツを何発でもぶん殴ってやりますお」

( ・∀・)「ありがとう。なんとか彼の閉ざした心の扉を、開いてやれないかな……」

49321話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:28:26 ID:Vg4XVt6s0


从'ー'从「お待たせしました〜」

( ^ω^)「おっ、来た来た!」


 二枚の皿を両手に持った渡辺。
 からあげの盛り付けられた皿を、ブーンとツン、ジョルジュとモララーの前にそれぞれ配る。


( *^ω^)「お〜!待ってたおこれ」

从'ー'从「あ、そうそう〜。クーさんが言ってたけど、こっちはブーンさんとツンさんで食べてって言ってたよ。
      ジョルジュさんとモララーさんは絶対こっちのだけ食べろってさ〜」
 _
( ゚∀゚)「ん?まぁそのつもりだけどな」

( ^ω^)「早速いただくお」


 伸ばした箸でからあげ一個を掴み、添えられたマヨネーズを軽くディップ。
 一口で頬張り、じっくりと噛みほぐしていく。

 
( *´ω`)「おっおっ……これだおこれ」 モグモグ


 口の中に広がる香り。
 カラッと揚げられた衣の食感と、鶏肉のジューシーな味わい。
 そして、マヨネーズが奏でるまろやかなコクが美味しさに深みを与える。
 あまりの美味しさに、自然と口元が緩んでしまう。


ξ*゚〜゚)ξ「ん〜!なんか久しぶりに美味しいって思いながら食べてるかも」

49421話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:28:48 ID:Vg4XVt6s0

 _
( ゚∀゚)「んじゃ俺も一口……」 パクッ
 _
( ゚〜゚) モグモグ
 _
( ゚〜゚) 
 _
( ; ゚〜゚) 
 _
( ; ゚〜゚)「……おい」

ξ゚⊿゚)ξ「なに?」
 _
( ; ゚〜゚)「いや、その……」 ゴクン
 _
( ; ゚∀゚)「おい、お前らこれ……美味いか??」

( ^ω^)「は?何言ってんだお?めちゃくちゃ美味いお!」

ξ゚⊿゚)ξ「そうよ、美味しいけど?」
 _
( ; ゚∀゚)「いや、このから揚げ……めちゃくちゃ甘いんだけど??」

( ^ω^)「甘くないお、普通のから揚げだけど」
 _
( ; ゚∀゚)「いやいや、食ってみろってじゃあ!嘘ついてねぇって!」

( ^ω^)「何だお前、味覚が馬鹿になってんのかお?どれどれ……」 パクッ



( ^ω^) モグモグ

( ^ω^) 

( ; ^ω^)「……あれ?めっちゃ甘い??砂糖菓子食ってる??」
 _
( ゚∀゚)「だろ!?甘いだろ!?!?

49521話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:29:26 ID:Vg4XVt6s0


ξ゚⊿゚)ξ「本当に言ってんの?じゃあ私も……」 パクッ

ξ;゚∩゚)ξ「あ……これだめ……だめな奴だこれ」

( ; ^ω^)「ちょ、ちょっと…クーさん!?」

川 ゚ -゚)「……なんだ」

( ; ^ω^)「こちらのから揚げ、なんかこっちのと全然味違うんだけど……」

川 ゚ -゚)「君達は目の前のから揚げだけ食べればいい、隣に手を出すな」
 _
( ゚∀゚)「おい、ちょっとこれどうなって――」

川#゚ -゚)
 _
( ; ゚∀゚)「……いや、何もないっす」











川 ゚ -゚)(ふん……馬鹿め、お前達にはせめてもの復讐として、砂糖を大さじ20杯くらい味に加えてやったのさ)

川 ゚ -゚)(この程度で済むだけありがたいと思え)

49621話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:30:13 ID:Vg4XVt6s0

 _
( ゚∀゚)「モララーさんも食えって、絶対甘いから!」

( ・∀・)「じゃあ、いただきます……」 パクッ

( ・〜・) モグモグ

( ・〜・) モグモグ

( ・∀・) ゴクン
 _
( ゚∀゚)「な?甘いだろ??」

( ・∀・)



















( ・∀・)「普通に美味しいと思うけど」

 _
( ゚∀゚)「は……???」

( ; ^ω^)「えっ……」

ξ;゚⊿゚)ξ「嘘でしょ…??」

川 ;゚ -゚)(………何、だと……?)

49721話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:31:20 ID:Vg4XVt6s0


川 ;゚ -゚)(馬鹿な…アンデッドの私でさえ受け付けないぞ、この味は)

( *・∀・)「うん、美味い!剣藤の言う通りだ!」

( ; ^ω^)「い、いや違うよ、その味じゃないおモララーさん……」

川 ;゚ -゚)゙ 「おい……ちょっと来い」

( ^ω^)「何だお?」 スタスタ




川 ;゚ -゚)「アイツの味覚はどうなってるんだ…?頭がおかしいのか?」 ヒソヒソ

( ^ω^)「いやぁ、モララーさんと食事するようになったの最近だし好みが分からないけど……って」

( ^ω^)「やっぱりクーさん何かしたのかお!?」

川 ゚ -゚)「少し……砂糖を入れてやっただけだ」 ヒソヒソ

( ; ^ω^)「あのなぁ……」

川 ゚ -゚)「襲わないだけマシだろう、あいつ等は私に手を出したんだぞ?」

( ^ω^)「……っはは、まったく……」





( *・∀・)「食べないのか?じゃあこれ全部食っていいかな??」

ξ;゚⊿゚)ξ「本当においしいの!?」
 _
( ; ゚∀゚)「あんたおかしいよ……」

.

49821話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:31:55 ID:Vg4XVt6s0
.

(#゚ -゚)「クーおねえさんこっち来て!」

川 ゚ -゚)「ん、ああ」

从'ー'从「クーさんこれ食べて!私とでぃで、家で作ってきたの!」

川 ゚ -゚)「二人で作ったの?じゃあ食べてみようかな」

(#゚ -゚)「絶対うまいよ〜、すごい美味しく出来たもん」

川 ゚〜゚) モグモグ

川 ゚ -゚)「うん、美味しい」

(´・ω・`)「最近クーが思いつめた顔してるから、二人が何かして喜ばせようとしててね」

川 ゚ -゚)「私のために……?」

从'ー'从っ 「そうだよ〜、クーさんはクールな顔もいいけど〜……えいっ」
   ムニィ

川 ゚ -゚ >c 「うっ」

从'ー'从「笑った顔のほうが素敵なんだから〜」

川 ゚ -゚)「っはは、こういうの初めてでさ……でも」

川 ゚ー゚)「うん……なんだか暖かいって感じるよ」

从'ー'从「その顔その顔〜、笑顔が一番だよ〜」

49921話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:32:28 ID:Vg4XVt6s0


( ^ω^)「やってるかお?」

从'ー'从「やってるよ〜、クーさんが笑顔になるくらい楽しいよ!」

( ^ω^)「ほほう、クーさんが??」

川 ゚ -゚)「なんだ……見るな」

( ^ω^)「いいじゃんかお、こういう席くらい」

(#゚ -゚)「前から思ってたけど、二人ってどういう関係なの?仲良くなさそうで良さそうな感じ」

(´・ω・`)「確かに最近二人は接点あるね……もしかして」

( ^ω^)「え、ああー……いやその」

川 ゚ -゚)「そんなことないですよ、言うほどブーンさんとは関わりないですから」

从'ー'从「ほんと〜?ブーンさんより私のこともっと構ってよ〜」

川 ゚ -゚)「うん、もちろんそのつもりだよ」

( ^ω^)「なんだかさっきから僕に得がないような……」

50021話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:32:58 ID:Vg4XVt6s0
.

J('ー`)し「うちのホライゾンはしっかりやってましたか?」

(-_-)「はい、一番頑張ってますよ。みんなの先頭に立って動いてくれますし」

J('ー`)し「ならよかった、いつも話でしか聞かないからちょっと心配でねぇ…」

(-_-)「お母さんが心配することないですよ。先輩はああ見えてすごくしっかりしてますから
     うちの店長がまっったく使えなくて…本当に困ってるんすよ」

(-_-)「でも先輩が率先してみんなを率いてくれるんで、うまくやれてた感じですね。今は本当きついっす。
     きっとお母さんの教えが良かったから、あんな立派な人になったんですよ」

J('ー`)し「まぁ、そんなこと言ってくれるの?嬉しいけど……嬉しいわねぇ」

(-_-)「素直に喜んでください、褒めてますから」

( ^ω^)「なに生意気言ってんだお」 ゴツン
   っ

(-_- )ゞ 「いって!久しぶりなんだから手加減してくださいよ」

( ^ω^)「店は今どうなんだお?」

(-_-)「まぁ、俺の頑張りでなんとかって感じですかね」

( ^ω^)「ほー!お前が頑張ってるだなんて意外だお」

(-_-)「やらないだけでやればできるんで」

( ^ω^)「自分で言うかお?」

50121話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:33:43 ID:Vg4XVt6s0


 心休まる、楽しい時間。
 普段では絶対に無い、愉快な騒がしさがある。たくさんの笑顔がそこにあった。

 大人達の…特に騒がしそうな男達は、酒に酔い顔を赤らめ上機嫌だ。
 
 _
( *゚∀゚)「次飲むぞ〜!次〜!!」

ξ゚⊿゚)ξ「もうやめときなさいよ!それにお酒はあまり用意しなかったんだから」
 _
( *゚∀゚)「なにぃ???酒が飲めねぇで人生やってられっかよ!なぁモララーさんよぉ!!」

( *・∀・)「ジョルジュ…人生なんて何があるか分からないぞ。酒が無くても生きてれば良いことある、また酒も飲めるぞ!」

ξ゚⊿゚)ξ「もう、モララーさんまでやめてよ!」

J('ー`)し「若いうちは飲めるときは飲んだほうがいいわよ〜」
 _
( *゚∀゚)「そうですよね!飲まないと!酒がないなら自分で買ってくるわ!」

ξ゚⊿゚)ξ「そんなふらふらで大丈夫なの?道端で吐いたりしないでよね」
 _
( *゚∀゚)「大丈夫だって!布団におねしょするような歳でもないんだからよ」

ξ゚⊿゚)ξ「よくわかんないそれ」
 _
( *゚∀゚)「んじゃちょっくら近くのコンビニ行ってきますわ〜」


 上着を羽織り、酔いでおぼつかない足取りで家を出た。

50221話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:34:12 ID:Vg4XVt6s0

 ――――――
 ――――
 ――


「ありがとうございましたー」


 店員の挨拶を背に受けながら、コンビニの自動ドアを出る。
 購入した追加の酒が入ったコンビニ袋を手に提げ、ぶるぶると身体を震わせた。

  _
::( ゚∀゚)::「ううっ…!さみぃ〜!酔いも冷めちまう勢いだぜ…!」


 真冬の夜は極めて寒いもの。
 特に、酔っ払った状態での外の寒さと言ったら最高だ。 

 _
( ゚∀゚)「ふい〜、何時だ今……」


 上着のポケットに手を入れ、歩きながらスマホで時間を確認する。
 
 下を見ていて前を見ていない状態。
 しかも酔いが回っているせいで、正面から近付く存在に気が付くことが出来なかった。


   ドンッ
 
 _
( ゚∀゚)「うわっ!?」

「きゃっ!」

50321話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:34:44 ID:Vg4XVt6s0


 誰かとぶつかってしまった。
 声からするに、相手は若い女性。
 これにはさすがに、酔いも瞬間的に冷めてしまった。

 _
( ; ゚∀゚)「あっ、すんません!大丈夫ですか!?」

ミセ*゚ー゚)リ「ごめんなさい!こちらこそちゃんと前を見てなくて…」
 _
( ゚∀゚)「いえいえそんなことは――」
 _
( ゚∀゚)「っ……!!」
 _
( ゚∀゚)「………か………」
 _
( *゚∀゚)(かわいい…!!)


 思わず見惚れてしまった。
 その女性は、ジョルジュの好みど真ん中を突いた。

 黒髪で清楚な、可愛らしいながらもどこか大人な雰囲気を醸し出す容姿。
 見た感じ、大学生くらいだろうが。
 理想に限りなく…理想そのものと言っても過言ではない。
 
 _
( *゚∀゚)「しかもめちゃくちゃ良いにおい…」

ミセ*゚ー゚)リ「??あの……」
 _
( *゚∀゚)「……へ?あっ、ああいや、なんでもないです!べっべつに臭いを嗅いだとかじゃなくて!
     なんか良いにおいだなぁと思って…!」

ミセ*゚ー゚)リ「…ああ、香水ですかね?つけすぎちゃってくさいかなって気にしてて…」
 _
( *゚∀゚)「いや!全然ありっすよ!めっちゃいいっす!」

ミセ*゚ー゚)リ「え、そ…そうですか?あはは…」

50421話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:35:13 ID:Vg4XVt6s0

 _
( *゚∀゚)「い、いやぁ…!その〜……ケガとかしてませんか?どこか痛いとことか……」

ミセ*゚ー゚)リ「私は大丈夫です、そちらは…?」
 _
( *゚∀゚)「俺っすか?お、俺は全然!生まれてこのかたケガなんてしたことないんで!本多忠勝の生まれ変わりなんで!!」

ミセ*゚ー゚)リ「???」
 _
( ; ゚∀゚)「あ…!ああ、分かりにくいよな!ごめんごめん、とにかく何もないならよかった!
     いやぁ本当すみません、酔っ払っちゃって……」

ミセ*゚ー゚)リ「みたいですね、とても顔が赤いから」
 _
( *゚∀゚)「あ〜……そうっすね」

ミセ*^ー^)リ「…ふふふ」
 _
( *゚∀゚)「あ……あははは」




 _
( *゚∀゚)(……これ、いけるんじゃね??)

50521話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:35:41 ID:Vg4XVt6s0

 _
( *゚∀゚)「あ、あの〜……」 

ミセ*゚ー゚)リ「はい?」


 ♪テケテンテンッテンテンテンテンテンッ

 _
( ゚∀゚)「あ……」

ミセ*゚ー゚)リ「お電話鳴ってますよ?」
 _
( ゚∀゚)「あ、はい……」

ミセ*゚ー゚)リ「ケガがないのならよかったです……本当にごめんなさい。
      お電話の邪魔しちゃいけないので、失礼します」


 .....ミセ*゚ー゚)リ スタスタ

 _
( ゚∀゚)「………」
 _
( #゚∀゚)ロ 「んだよ!良いとこだったのに邪魔しやがってよ!!!」

ξ#゚⊿゚)ロ [ 何怒鳴ってんのよ!遅いから心配してたのに!もう知らない!勝手にのたれ死ねバカ!!]

 ブツッ
 _
( ゚∀゚)「あっ…なんだあいつ!切りやがった!」
 _
( ゚∀゚)「……今更コンビニ戻って声かけんのも不自然だよなぁ」
 _
( -∀-)=3 「はああぁ……帰るか……」

.

50621話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:36:22 ID:Vg4XVt6s0


 楽しい時間は過ぎて行く。
 こうやって、誰かと笑いながら過ごせる時間が今ではとても大切に思えた。
 
 戦いを忘れたわけではない。
 忘れていないからこそ、時にはこんな当たり前な時間も必要だ。
 人を守る彼等もまた、同じ人である。

 だから、今だけはこの楽しい時間に浸っていたい。
 ずっとこんな時間が続けばいいと、心の片隅に思ってすらいた。









 ――だが、魔の手は既に背後に迫っている。

50721話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:36:45 ID:Vg4XVt6s0


(*゚∀゚)「楽しそうだねぇ……人間とアンデッドが仲良く食事だなんてさァ」


 冷たい風吹く闇夜の中、電柱の上に一人の女の影。

 数多の家から光が漏れ、煌々と光る街並みを見下ろす。
 その中に存在するブーン宅を、ただ見つめていた。


(*゚∀゚)「ま、せいぜい今を楽しめばいいさァ……」

(*゚∀゚)「お前等には、すぐに地獄を見せてやるよ…!」

(*゚∀゚)「クククク……アヒャヒャヒャヒャヒャ!!!」


 甲高い不気味な高笑いが響き渡る。
 電柱の上に真っ直ぐに立つと、両手を広げ背中から後方へ、暗闇の中へ落ちていく。

 そして、カテゴリーQは姿を消した。

50821話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:37:09 ID:Vg4XVt6s0


 別の場所では、邪悪な力がその爪を研いでいた。

 一切の光が差さない、闇に満ちた部屋。
 電気も点けずに真っ暗な部屋の中で、ドクオはレンゲルバックルと向き合っている。
 

('A`)「……そうか、アイツがそうだったのか!」

('A`)「だから俺にあんな注意をしてきたって訳か……」


 蜘蛛の声が聞こえる。
 蜘蛛の声が、"あの男"の本当の姿を伝えてくる。


 レンゲルの力を手にしても、未だその力を制御する事が出来ない。
 人間の身体を手にしても、未だ思いのまま動かす事が出来ない。

 互いに制御出来ずにいる状況。それを打開する為の、唯一の方法。

 
('A`)「アイツを倒せば、俺はお前の力を操る事が出来る。そして……もっと強くなれるんだな?」


 蜘蛛の声が聞こえる。

 "――あの男を倒せ"、と。


('A`)「………倒す、アイツを倒す……そして俺は強くなる……!」


 心の中の闇は広がり、蜘蛛は増殖する。
 
 差し伸べられる光も手もない。
 差し伸べてくれるのは、一本の蜘蛛の糸だけ。

 ドクオは蜘蛛の糸を掴み、深く深く、闇の底に沈んで行く――。

50921話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 18:37:39 ID:Vg4XVt6s0





     【 第21話 〜光なき闇〜 】 終




.

51021話 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 19:00:53 ID:Vg4XVt6s0
しおり

>>9 第15話
>>84 第16話
>>152 第17話
>>234 第18話
>>308 第19話
>>372 第20話
>>454 第21話

511 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/30(土) 19:01:45 ID:Vg4XVt6s0


( ^ω^)「読んでくれているみんな!いつもありがとうだお!」

( ^ω^)「今年最後ということで、今日は挨拶するために次回予告はなしだお」
 _
( ゚∀゚)「次が用意出来てないだけだろ」

( ^ω^)「Shut up」


( ^ω^)「自分で思ってた以上に毎回乙や感想いただけて嬉しい限りだお!これはめちゃくちゃ励みになってるお」

( ´ω`)「自分の好きなもので書いてるから楽しくやれてるけど、やっぱりオーバーヒート気味なときもあるなって感じるお」

( ^ω^)「間隔空くときもあるだろうけど、書いてるときは楽しいしまだまだ自己満足でやり続けるお」

( ^ω^)「これからもよければ見てやってほしいお!オナシャス!」

( #・∀・)「でないと……俺の身体はボロボロだ!!」

川#゚ -゚)「読まないなんて言ってみろ……私は貴様をムッコロス!!」

('A`)「これが最強のライダーの脅し方だ」 キリッ

( ^ω^)「てわけで来年もよろしく!!」

ξ゚⊿゚)ξ「よいお年を〜」

512名無しさん:2017/12/30(土) 21:54:40 ID:BQY3A72Q0
乙津

513名無しさん:2017/12/31(日) 06:54:03 ID:nfPMKFGk0
気づいたら来てた!乙

コレクッテイイカナ?いただきましたー!
https://i.imgur.com/TLs90Tr.jpg

514名無しさん:2017/12/31(日) 08:06:13 ID:JKXcv88w0


515名無しさん:2017/12/31(日) 09:08:24 ID:rVopRs3U0
ディチャンゲンキソウナニヨリウレシイ

516名無しさん:2017/12/31(日) 15:42:27 ID:6Gvs7wsw0


先々週ようつべでの剣本編配信終わったけど、あの〆方はとても良かったね
こっちのラストはどうなんのかな?本編や、あるいは劇場版のようになるのか、はたまた違う終わり方するのか
まだまだ先になるだろうけど着地点に期待してます

517名無しさん:2017/12/31(日) 17:36:04 ID:.J86raKs0
故人的には本編がいいな
まぁこの作者なら別の終わりでも上手くやりそうだけど

518名無しさん:2017/12/31(日) 17:42:46 ID:JKXcv88w0
過去作品とかあれば知りたいなーなんちゃって

519 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/31(日) 20:36:46 ID:JKXcv88w0
過去じゃないけど、面倒だからご飯に乗っけるやつと今年の挨拶をシコりながらしました

520 ◆7MnOV.oq7w:2017/12/31(日) 20:38:43 ID:JKXcv88w0
知ってほしくて自演してみました

521名無しさん:2017/12/31(日) 20:41:48 ID:.J86raKs0
何してんだw
疲れんのか?w

522名無しさん:2017/12/31(日) 22:20:07 ID:OI0J3VNI0
変態が本性だったか

523名無しさん:2018/01/01(月) 02:53:14 ID:VmOgSqps0
バイオテロお前かよ今年一番の驚きだよ
そういう意味ではこっちは安心して読めるから次回も楽しみにしてる

524名無しさん:2018/01/03(水) 16:06:44 ID:ch9uQ6uo0
>>519
仮面ライダー書きながらバイオテロで飲酒運転させんなよwwwww

5251/14(日) ◆7MnOV.oq7w:2018/01/12(金) 20:29:21 ID:9lqObZtA0
==========

 【 次回予告 】 https://www.youtube.com/watch?v=Yyh12l21WkA


(#゚ー゚)「すごーい!!すごいきれい!!」

( ^ω^)「おおー……」
 _
( ゚∀゚)「まぁ確かに綺麗だけど、男の俺にはやっぱ退屈だな…」

(#゚ -゚)「ねぇ温室見たい!温室行く!」
 _
( ゚∀゚)「あっ、おい!ちょっと待ってでぃちゃん!」

(#゚ -゚)「早くしてよ〜!」
 _
( ; ゚∀゚)「頼むよ!俺の命は君にかかってるんだからさ!!」

( ^ω^)「ちゃんと見てろお〜」


 入院を控えたカーチャンの為に、植物園に遊びに来たブーン達。
 ゆったりと流れる時間を、心安らかに楽しんでいた。

5261/14(日) ◆7MnOV.oq7w:2018/01/12(金) 20:29:54 ID:9lqObZtA0


(-_-)「うちの店は特徴ないけど、同じ商品でも安さが売りっすから是非また来てくださいよ」

川 ゚ -゚)「…どうも」


 スーパーVIPへ買い物に訪れたクー。
 ヒッキーと接触し、その本性を知ってしまう。


川 ゚ -゚)「―――!!!」

(-_-)「おっと、別に言う必要ないだろ」

川 ゚ -゚)「何者だ…少なくともお前の本当の姿は分かる」

川 ゚ -゚)「アンデッドだな、お前…!」

(-_-)「言うなっつってんのに……」

5271/14(日) ◆7MnOV.oq7w:2018/01/12(金) 20:30:40 ID:9lqObZtA0


 人を襲うアンデッドの前に、ギャレンとレンゲルが立ちふさがる。


( OMO)「ドクオ…カテゴリーAに操られているわけではないのか!?」

( OHO)(力を感じる…戦い方が分かる!)

( OHO)(カテゴリーAが、俺に戦い方を示してくれてるんだ…!)

( OHO)「戦える…俺は戦える!!」
 
( OHO)「貴様らを封印して俺の力にする!!」

『ゴオオォゥウッ…!?』

( OHO)「うおぉおらあぁッ!!」


 それまでとは違う様子を見せるレンゲル。
 自らの意志で動いているように見えるドクオに、何があったのか!?


( OMO)(いつの間にあんなに戦えるようになったんだ…?)

5281/14(日) ◆7MnOV.oq7w:2018/01/12(金) 20:31:48 ID:9lqObZtA0

  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『さぁブレイド、変身を解きなさい』
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『さもないと…分かってるでしょう?あなたの大事なお友達が真っ先に殺されてしまうの。
       あなたなら必ずその剣を置くわ、それがあなたの優しさだから!』

( #OwO)「この卑怯者……!!」
 _
( ; ゚∀゚)「ッ……ブーン、俺のことは気にするな!二人のことだけを気にしろ!」


 植物園に現れた新たな上級アンデッド。
 ジョルジュやカーチャン、でぃ達を人質に取られ、手も足も出ないブレイド。
 指示に従い、変身を解いてしまうのだった。


( ^ω^)「これでいいだろ…!?」
 _
( ; ゚∀゚)「なっ…!なんでだよブーン!!俺のことなんか気にするなよ…!」
  、、
@*゚皿゚)@『おお〜?マジで変身解いちゃったよ……自分が死ぬだけなのにさァ!』

( ; ^ω^)「ぐふっ…!」


 上級アンデッド二体を前に、成す術ないブーン。
 果たして、起死回生の一手を手にすることが出来るのか!?


 次回、【 第22話 〜甘い花の罠〜 】

 ――今、その力が全開する!


==========

529名無しさん:2018/01/12(金) 20:37:09 ID:XWcBg.8Y0
おっし

53022話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 10:55:02 ID:QzhOKDJ.0





     【 第22話 〜甘い花の罠〜 】




.

53122話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 10:56:16 ID:QzhOKDJ.0


 年が明け、新たな年を迎えてから早くも数日が経った。
 この数日間、ブーン達の心情を察してくれたかのようにアンデッドの出現は報告されておらず、久しぶりにゆっくりした時間を過ごしていた。
 けれども、楽しい時間、穏やかな時間ほどあっという間に過ぎてしまうもので、年始の休みを終え世間は動き始めた。

 家に一時帰宅していたカーチャンも、明日には再び病院に戻らなければならない。


( ^ω^)「はぁ……もう休みも終わりかお、なんか休んでる気がしないお」

ξ゚⊿゚)ξ「まぁね、休みっていう定かな予定の中で動いてるわけじゃないし」

( ^ω^)「はああ……」


 ソファに寝転がり、深く溜息。

 決して休みが終わる世間を気にして憂鬱になっているわけではない。
 ただ、自分の母親がまた居なくなってしまうことに寂しさを感じていた。

 こう言えば、よく返ってくる心ない言葉は「マザコン」だの「良い歳して親離れできない」だの。
 自分を女手一つで苦労しながら育ててくれて、今は病気を患ってしまった母親を何より大切にするのは何ら間違ったことではない。
 むしろ誇りに思うべきなのだ。


J('ー`)し「ホライゾン、準備出来たよ」

( ^ω^)「はいお。あとはジョルジュがでぃちゃん連れて来るのを待つだけだお」

53222話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 10:56:51 ID:QzhOKDJ.0


 この日は、花を見たいという母親の希望で植物園に行く予定だ。
 バーボンハウスで暮らすでぃも同行したいとの願いがあって、ジョルジュが車で迎えにあがっている途中だった。

 外出する準備が出来たと同時に、窓からジョルジュが運転する車が停まるのが見えた。
 車のドアが開かれ、ジョルジュとでぃが降りる。


( ^ω^)「おっ、来たお。そんじゃ行ってくるお!」

ξ゚⊿゚)ξ「行ってらっしゃーい、気を付けてね」

J('ー`)し「二人とも、お留守番お願いしますね」

( ・∀・)「はい、安心して楽しんで来てください」


 母親の乗る車椅子を押しながら、二人に見送られながら玄関を出た。
 外では、車を降りたジョルジュ達がブーンとカーチャンを待機している。


(#゚ -゚)「こんにちは!」

J('ー`)し「こんにちは、でぃちゃん。今日はお洋服も髪型も可愛いねぇ」

( ^ω^)「でぃちゃん、今日はばっちり決めてきたおね」

(#゚ -゚)「うん、あまねお姉ちゃんと一緒に洋服見てもらったし、髪もセットしてくれたの」
 _
( ゚∀゚)「そりゃ可愛くなるわけだ!じゃあお母さん、俺も手伝うんで乗りましょうか」

J('ー`)し「苦労かけてごめんなさいねぇ、ほんとに…」
 _
( ゚∀゚)「なーに言ってんすか!そんなこと気にしなくていいですって!」


 ブーンやジョルジュの手を借りながら、車の助手席に乗る。
 手慣れた動きで車椅子をトランクに収納すると、ブーンは運転席に乗り、後部座席にはジョルジュとでぃが乗り込んだ。
 ハンドルに手を掛け、ドライブにギアをチェンジしサイドブレーキを外すと、植物園に向け車を出発させた。

53322話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 10:57:18 ID:QzhOKDJ.0


( ^ω^)「でぃちゃんはお花買うのかお?」
   っ回c

(#゚ -゚)「うん、買うよ」
 _
( ゚∀゚)「誰かにプレゼントするのか?」

(#゚ -゚)「モスにお供えするの」
 _
( ゚∀゚)「モス?」

( ^ω^)「ああ……友達だおね、でぃちゃんの」
   っ回c

(#゚ -゚)「うん、モスはお花大好きだったから。クーさんにそのこと話したら、これで買ってあげなってお金くれたの」

( ^ω^)「……ふ、やっぱり優しいとこあるじゃんお」
   っ回c

(#゚ -゚)「モスがいなくなっちゃってから何もあげれてなかったから、お花あげたいなって」

( ^ω^)「そっか……」
   っ回c

J('ー`)し「きっと喜んでくれるわよ、そのお友達も」

( ^ω^)「うん、そうだお。絶対喜んでくれるお!」
   っ回c

(#゚ -゚)「だといいなぁ……」

53422話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 10:57:56 ID:QzhOKDJ.0


 ――――――
 ――――
 ――


 車内で会話をしながら走り続けると、すぐに目的の植物園に到着した。
 車椅子用の駐車場に車を停車させ、車から降りトランクより車椅子を下ろす。
 助手席に乗った母親を支えながら、ゆっくりと車椅子に乗せ替えた。


( ^ω^)「ふー、着いたお」
 _
( ゚∀゚)「休み明けだから人がたくさんいるって感じでもねぇな」

( ^ω^)「そのほうが気楽でいいお。行こ、カーチャン」

J('ー`)し「うん、そうだね」
 _
( ゚∀゚)「でぃちゃん、見たかったら自由に動いていいけど俺から離れるなよ?」

(#゚ -゚)「はーい」
 _
( ゚∀゚)「じゃねぇと俺が後でひどい目に合わされちまうから……」 ポソ

( ^ω^)「何か言われたのかお?」
 _
( ゚∀゚)「直接何かを言われたわけじゃねーけど……」
 _
( ; ゚∀゚)「バーボンハウスの守り神様の目線が怖くてよ…あの目は間違いなく"何かあったら許さない"って訴えてきてた」

( ^ω^)「じゃあ尚更注意しないといけないおね」
 _
( ゚∀゚)「ああ、そうするよ」

53522話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 10:58:27 ID:QzhOKDJ.0


 園内に入ると、広々とした空間を色鮮やかに彩る植物達がブーン達を迎え入れた。
 それぞれの種類を楽しめる庭園がいくつも造られ、中にはカフェで美しい花々を眺めながらくつろぐ人もいる。
 寒い冬だからこそ人気な温室には人が出入りするのがよく見え、植物園はほどよく賑わっているようだった。


(#゚ー゚)「すごーい!!すごいきれい!!」

( ^ω^)「おおー……」
 _
( ゚∀゚)「まぁ確かに綺麗だけど、男の俺にはやっぱ退屈だな…」

(#゚ -゚)「ねぇ温室見たい!温室行く!」
 _
( ゚∀゚)「あっ、おい!ちょっと待ってでぃちゃん!」

(#゚ -゚)「早くしてよ〜!」
 _
( ; ゚∀゚)「頼むよ!俺の命は君にかかってるんだからさ!!」

( ^ω^)「ちゃんと見てろお〜」


 子供は元気だ。
 ジョルジュもまだまだ若いが、子供特有の底抜けな明るさや活発さには敵わない。
 温室に向け駆けるでぃを、困った表情で追いかけて行くジョルジュ。


J('ー`)し「クスクス、子供は元気ねぇ」

( ^ω^)「そうだな〜」

( ^ω^)「カーチャンは見たいとこあるかお?」

J('ー`)し「そうねぇ…とりあえずゆっくり観て歩きたいわ」

( ^ω^)「じゃあ僕達はゆっくり観て回るお」

53622話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 10:58:58 ID:QzhOKDJ.0

 ――――――
 ――――
 ――


( ^ω^)「うわぁすごいおこれ、花のアーチだお」

J('ー`)し「綺麗ねー……」

( ^ω^)「入院中に飾る花は買うのかお?」

J('ー`)し「そうねぇ、せっかくだし何か欲しいわ」

( ^ω^)「じゃあじっくり花見たら、買いに行くお」

J('ー`)し「……ホライゾン」

( ^ω^)「なんだお?」

J('ー`)し「あんた、何か隠してることないかい?」

( ^ω^)「え」

J('ー`)し「ないならいいんだけどね、何かすごく大事なことを隠してる気がしてねぇ」

J('ー`)し「カーチャンも馬鹿じゃないよ?あんたが何かと身体を張って戦ってることくらい何となく分かるよ」

( ; ^ω^)「……いやぁ、何もないお別に!ほら、世の中風当たり厳しいけどそういうのと戦おうって意味だお」

J('ー`)し「まぁそういうことにしとこうかしらね」

( ; ^ω^)「おっおっ………」

53722話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 10:59:21 ID:QzhOKDJ.0


 一方、温室に向かったジョルジュは、でぃの後をいそいそと追いかけていた。


(#゚ -゚)「すごーい……なんかおとぎ話の中にいるみたい」
 _
( ; ゚∀゚)「ちょっと、もうちょいゆっくり観ないか?ていうか観れてるか?」

(#゚ -゚)「観てるよ?あ!あっちもすごい!!」
 _
( ; ゚∀゚)「観てねぇだろ……」


 目に飛び込んでくる光景すべてが楽しくて仕方が無い。
 あちらこちら急いで見て回る楽しそうなでぃは、子供本来の姿だった。
 ジョルジュのことなどお構い無しに、次へ次へと向かってしまう。

 _
( ; ゚∀゚)「次に行くのが早すぎるんだよ……」

「……あれ?」
 _
( ゚∀゚)「ったく、元気な子供にはかなわねぇな〜」

「あの……すみません」
 _
( ゚∀゚)「はい?」


 背後から女性に声がする。
 声のする位置的にもかなり近く、自分に声が掛けられているのが分かった。
 
 振り返ると、そこには……。

 
 
ミセ*゚ー゚)リ「あの…以前お会いした方ですよね?」

53822話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 10:59:52 ID:QzhOKDJ.0


 声を掛けてきていたのは、大晦日の日にコンビニ前でぶつかってしまった時の女性だった。
 会いたいとは思っていたが、本当にまた会えるとは思わなかったのだろう。
 あまりの偶然と驚きと嬉しさに、一瞬声が喉で詰まった。
 
 _
( *゚∀゚)「あっ…!あ、あっ…!あのときの!」

ミセ*゚ー゚)リ「はい、その節は本当にすみませんでした…」
 _
( *゚∀゚)「いっいやいや!いいんですってそんなこと、全然気にしないでください!ていうかこんなところで会うなんて……」

ミセ*゚ー゚)リ「はい、すごい偶然ですね」
 _
( ゚∀゚)「あの〜……誰かと来てるんですか?」

ミセ*゚ー゚)リ「大学の友達と来てたんですけど、急用とかで帰っちゃって今は一人です」
 _
( ゚∀゚)「そ…そうなんですか!」



 _
( ゚∀゚)(これ……)
 _
( *゚∀゚)(これチャンスじゃね!?!?二度目のチャンス到来か!?!?!?)

53922話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:00:27 ID:QzhOKDJ.0

 _
( *゚∀゚)「あっあの!よ、よければ一緒に観て回りませんか??」

ミセ*゚ー゚)リ「いいんですか…?そちらこそ、どなたかと一緒じゃないんですか?」
 _
( ゚∀゚)「あ」


 すっかり忘れてしまった。
 観ることに夢中でどんどん先に進んでしまうでぃは、もう何処に行ったかも分からない。

 _
( ; ゚∀゚)「や、やべぇ……」

ミセ*゚ー゚)リ「どうしました?」
 _
( ; ゚∀゚)「いや……小学生の子に付き添ってたんですけど、どんどん行っちゃって……」

ミセ*゚ー゚)リ「あっ……ごめんなさい!私が変に声をかけたせいで…」
 _
( ; ゚∀゚)「違います違います!あなたは悪くないです!でも……まずいな」

ミセ*゚ー゚)リ「あの、探すの一緒に手伝います。どんな子ですか?」
 _
( ゚∀゚)「えーっとえーっと…小学四年生くらいの女の子で、白いジャケット着てる子です」

ミセ*゚ー゚)リ「じゃあこの温室をまた集合場所にしましょう、そう遠くには行ってないはずですし」
 _
( ゚∀゚)「すんません、マジで……五分後くらいにまた集まりましょう」

ミセ*゚ー゚)リ「はい!」
 _
( ゚∀゚)「あっ、あの!お名前聞いてもいいですか?俺は白岡ジョルジュっていいます」

ミセ*゚ー゚)リ「あっ…義永ミセリです、よろしくお願いします!」
 _
( ゚∀゚)「ミセリさんっすね、了解っす!じゃまた!」



 _
( *゚∀゚)(どさくさだけど名前聞けたぜ…!ラッキー!)
 _
( ゚∀゚)ロ 「あっそうだ、ブーンに電話しとかねぇと……」

54022話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:00:57 ID:QzhOKDJ.0


 ♪テケテンテンッテンテンテンテンテンッ


( ^ω^)「あ、ちょっと待ってお」 ゴソゴソ

J('ー`)し「うん」

( ^ω^)ロ 「どうした?」
 _
( ゚∀゚)ロ [わりぃ!でぃちゃん見失った!]

( ^ω^)ロ 「は!?お前注意しろって言っただろ!」
 _
( ; ゚∀゚)ロ [だ、だってよ!どんどん行っちゃってちょっと目を離したらいなくなっちまったんだよ!」

( ^ω^)ロ 「分かったお、こっちも探すから!お前もちゃんと探せお!」

( ^ω^)「はぁ……まったく」

J('ー`)し「どうかしたのかい?」

( ^ω^)「でぃちゃんを見失ったって電話だお」

J('ー`)し「あら、それは大変ねぇ…カーチャン大丈夫だから探しに行ってあげて」

( ^ω^)「いやぁ、でも…」

J('ー`)し「大丈夫だから、ほら早く」

( ^ω^)「………わかった、ちょっとここにいてくれお!もしくはどっかの店の中とかに!」

J('ー`)し「はいはい」


 車椅子から手を放し、見失ったでぃを探しにブーンは走り出す。

54122話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:01:30 ID:QzhOKDJ.0


J('ー`)し「カーチャンも一緒に探してあげられたらね……」


 一人その場に残ったカーチャン。
 自身の膝に手を乗せ、思うように動かない足を撫でる。


 ――そこに近付く、一人の人間の影。

 
(  )「………」


 気付かれないように、ゆっくりと背後から忍び寄る影。


J('ー`)し「入院、したくないわねぇ……」
 

 背後から忍び寄る影に気付かず、目の前に広がる景色をただ見つめている。
 
 やがて車椅子のすぐ後ろにまで近付き……その人影は、車椅子のハンドルを握った。


(  )「………」

J('ー`)し「??誰?」




.

54222話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:01:54 ID:QzhOKDJ.0


( ^ω^)「でぃちゃーん!どこだおー!」


 園内の中、でぃの名を叫びながら探し回るブーン。
 そこに、でぃを見失った張本人のジョルジュが慌しい様子で合流した。

 _
( ゚∀゚)「ブーン!」

( ^ω^)「お前…!」
 _
( ; ゚∀゚)「わりぃ…マジでちょっとだったんだ、ちょっと目を離したら……」

( ^ω^)「ちょっとってどんだけだお!本当に目を離しただけかお?」
 _
( ; ゚∀゚)「……じ、実は、大晦日の夜コンビニ行ったときに、肩ぶつかった女性と偶然出会っちゃって、それで……」

( #^ω^)「このアホ!何考えてんだおお前!?」
 _
( ; ゚∀゚)「で、でもその人にも手伝ってもらってんだ!五分後くらいに温室にまた集合しようって」

( ^ω^)「多方面に迷惑かけて何やってんだお!マジでクーさんに食らわされるぞお前は!」
 _
( ; ゚∀゚)「いっいや!それだけは頼む!勘弁してくれ…!」

( ^ω^)「とにかく探すお、散らばった方が見つけやすいし――」


 ひとしきりジョルジュを叱り、再びでぃを探すために動き出そうとした。
 その時だった。



「アヒャヒャ、こ〜んに〜ちは〜♪」

54322話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:02:14 ID:QzhOKDJ.0


(*゚∀゚)「やっほ〜、新年のご挨拶に来ましたぁ〜♪ってか?」

( ^ω^)「お前…!?」
 _
( ゚∀゚)「??」


 つー……またの名を、カテゴリーQであるカプリコーンアンデッドだ。
 特徴的な笑い方が聞こえた時点で、ブーンの本能が既に警戒を呼びかけていた。


(*゚∀゚)「さぁてブレイドちゃん、早速私とお遊びしましょ……?」

( ^ω^)「こんなところで…!?どれだけの人に被害が出ると思ってんだお!?」

(*゚∀゚)「アッヒャヒャヒャヒャ!そんなの……」


 つーのシルエットが、一瞬にして異形の者の姿へと切り替わる。

  、、
@*゚皿゚)@『アタシが気にするとお思いか〜??』

( ^ω^)「クソッ…!」
 _
( ゚∀゚)「!?アンデッドか…!!」

( ^ω^)「ジョルジュ、急いでみんなを避難させるお。カーチャンのことも頼む!急いで!」
 _
( ゚∀゚)「あっ、ああ!」


 ブーンの催促を受け、ジョルジュは足早に人影のある方へと走った。
 残されたブーンはバックルを取り出し、カードを装填し腰に装着。つーと睨み合いながら距離を取った。


( ^ω^)ψ「変身!」
    /

    【 -♠TURN UP- 】


( OwO)「被害を出さないためにも、お前をここで封印する!」
  、、
@*゚皿゚)@『フォオオオウ!!さァて、お遊びの時間だァ……!』

54422話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:02:45 ID:QzhOKDJ.0





 ―――――




.

54522話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:03:07 ID:QzhOKDJ.0


 場所は変わって、スーパーVIP。
 時間は、ブーン達がアンデッドとの戦いになる少し前に遡る。
 
 ここには、ショボンに買い物を頼まれたクーが一人で来店していた。 
 買い物カゴを片手に店内を歩き、簡単な調味料等を調達しに来ている。


川 ゚ -゚)(後足りないものは、確か……)

川 ゚ -゚)(ああ、そうだ…これだ)


 棚を眺め、詰め替え用の塩を一つ手に取ろうと掴むが、手から滑り落ち床に落ちてしまった。

 すぐにしゃがみ込み、それを拾おうと手を伸ばす。
 だが、自分の手で掴むより先に、誰かの手が落ちた塩を拾った。


川 ゚ -゚)「すみません」


 お礼を口にしながら見上げる。
 そこには、つい最近見たばかりの顔があった。


(-_-)「いえいえ」

川 ゚ -゚)「あ…」

(-_-)「この間はどうも」


 スーパーVIPに勤務するヒッキーだ。
 大晦日にブーンの家で忘年会を開いた時、互いに会話はなかったが顔くらいは覚えていたようだ。

54622話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:03:51 ID:QzhOKDJ.0



(-_-)「ここに買い物来るの初めてじゃないっすか?」

川 ゚ -゚)「まぁ……」

(-_-)「うちの店は特徴ないけど、同じ商品でも安さが売りっすから是非また来てくださいよ」

川 ゚ -゚)「…どうも」


 言って、拾った塩をクーに差し出した。
 
 無愛想に返事をしてしまうのは、決して悪気があるわけじゃない。
 本来、バーボンハウスに住むショボン達以外の人間には中々心を開こうとはしない。
 返事をしながら軽く頭を下げ、差し出された塩を手に取った。

 
川 ゚ -゚)「―――!!!」


 手に取った塩…正式には、ヒッキーが掴む物体を通して、クーは全身でそれを強過ぎる程に感じた。
 だが、クーを以ってしても一体それが何なのかを明確に感知することが出来ない。

 ただ、ひとつだけはっきりと分かることがある。
 

(-_-)「おっと、別に言う必要ないだろ」

川 ゚ -゚)「何者だ…少なくともお前の本当の姿は分かる」






川 ゚ -゚)「アンデッドだな、お前…!」

54722話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:04:32 ID:QzhOKDJ.0


(-_-)「言うなっつってんのに……」

川 ゚ -゚)「誰なんだ?ここまで自分の気配をうまく隠せるということは……ただの上級ではないな」

(-_-)「知ってどうするんだよ、俺を封印するってのかい?俺はこのスーパーに務めるただの店員さ」

川 ゚ -゚)「ふざけるな」


 アンデッドだと判明した途端、ヒッキーを見るクーの眼が鋭くなった。
 買い物カゴをゆっくりと床に置き、睨み付ける。


(-_-)「やめろよこんなとこで……大体俺は戦う気はない」

川 ゚ -゚)「何…?お前の目的は何だ?」

(-_-)「おいおい、自分のこと棚に上げてそんなこと聞くか?じゃあアンタは何の目的で人間と暮らしてんだ?」

(-_-)「人間の生活に溶け込んで、内側から滅ぼそうってか?」

川#゚ -゚)「何だと…?」

(-_-)「ほら、そういうことだよ。俺だって一緒なんだよ。
     別に俺は戦いなんか望んじゃいないんだ。それは今に始まったことじゃない、一万年前からそうだ」

(-_-)「だけど、どいつもこいつも俺に気付けば戦え戦えって……お前等と一緒にすんなってんだよ」


 ヒッキーからは、確かに敵意も戦意も感じられない。
 この言葉から、クーは過去に戦いを忌み嫌うアンデッドが居たか、記憶を巡らせる。

 ♥のカテゴリー8…モスではない。この男は、間違いなく上級アンデッドだ。
 そうなると、思い当たるのは一人……。


川 ゚ -゚)「お前、まさか……」

「よぉ、カテゴリーKさんよ」

54822話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:05:39 ID:QzhOKDJ.0


('A`)「まさか、あんたがカテゴリーKだったとはな」

(-_-)「……はぁ、面倒くせぇことになりそうだな」


 声の主はドクオだった。
 カテゴリーK…ヒッキーの正体を知っても尚、以前のように恐れる様子はない。
 しかし、どこか強がっているようにも見えなくはない。
  

('A`)「カテゴリーAが教えてくれたよ。あんたが♣のカテゴリーKだってことをな」

(-_-)「チッ……どういうつもりだ?」

('A`)「あんたを倒すつもりだよ」

(-_-)「俺の言ったこと忘れたのか?まんまとカテゴリーAに取り込まれたってわけか」

川 ゚ -゚)「そうか…お前が正式なレンゲルになったのか」

('A`)「クーさん、悪いけどこいつだけは譲れないな。
    こいつは俺が強くなる為に必要な、大切な獲物なんだよ…!」

川 ゚ -゚)「ほう……こいつを倒すことが、何故お前が強くなることに繋がる?」

('A`)「俺とカテゴリーAの意志は、今や完全にひとつだ。カテゴリーAとレンゲルの力があれば俺は誰にも負けない」

('A`)「……けど、互いに互いを制御出来ない状態なんだよ」

('A`)「だから、カテゴリーKを封印して互いを繋ぎ止めるための……」

川 ゚ -゚)「くだらないな」


 すべてを言い終える前に、クーの言葉が遮った。
 もはや聞くにも値しない言葉に耳を傾けるつもりはない。そう言ったような言葉だ。

54922話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:06:14 ID:QzhOKDJ.0


(-_-)「確かにくだらねぇ」

(#'A`)「なんだと…!?」

(-_-)「そんなものが本当の強さだと思ってることがくだらねぇっつってんだよ」

(-_-)「それって結局誰の強さだ?カテゴリーAやレンゲルの強さであって、お前の強さじゃないだろうが」

(#'A`)「ッ…うるせぇ!いいから俺と戦え!お前をここで封印してやる…!!」

(#-_-)「……てめぇいい加減にしやがれ!」

('A`)「ッ!?」


 喜怒哀楽の表現をあまり露にしないヒッキー。
 だが、そんなヒッキーが露骨に怒りを露にしている。
 ドクオの胸倉を掴み、睨み付けていた。


(#-_-)「今日は休みだからいねぇけど…ヘリカルさんだって働いてる場所なんだよ!
      仮にもここはてめぇの恋人が一生懸命働いてる場所じゃねぇのかよ、ああ!?」

(;'A`)「っ……」

<ヽ;`∀´>「ちょ、ちょっと引田君!何してるニダ!!」


 都合良く、通りすがった店長のニダーが揉め事に気付いた。
 とても驚いた表情で、ヒッキー達のもとに駆け寄ると胸倉を掴む手を強引に引き離した。


<ヽ;`∀´>「申し訳御座いませんニダ!うちの従業員が大変失礼を致しましたニダ!」

<ヽ#`∀´>「引田君!早く君も謝りなさいニダ!」

(-_-)「チッ…」

('A`)「………」

55022話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:07:03 ID:QzhOKDJ.0

 ――――――
 ――――
 ――


「うー寒い……」


 スーツに身を包んだ男性。
 仕事が始まってしまい、これから今年初の出勤だ。
 外の寒さに身を震わせながら、会社に向け重たい足を引き摺るようにして歩く。

 また、世間は仕事に追われる日々が始まる。


 ……その男性を獲物として睨むアンデッドが、すぐ近くに。


『グルルルルルル……』


 イノシシのアンデッドは、世に放たれたまま未だ潜伏していた。

 アンデッドは肉を好む。
 何の肉であろうと、食えればいい。

 腹を空かしたアンデッドは……血肉を求め、人間狩りを始める。


『ブオオオオオオオォォォォッ!!!!』

「えっ…!?!?うっ…!うわああああぁぁぁっ!!」


.

55122話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:07:38 ID:QzhOKDJ.0


川 ゚ -゚)「…!!」

(-_-)「アンデッド…!」

 
 アンデッドの気配に、二人はいち早く気が付く。
 たった今別の場所で人間を襲ったイノシシのアンデッドの気配だ。


川 ゚ -゚)「一体…いや」

(-_-)「二体だな」

('A`)「なんだと?」


 二人はもう一体の微かな気配も見逃さなかった。
 クーは買い物カゴをそのままに走り去って行く。向かう先はもちろん、アンデッドのいる場所へ。
 ドクオは後を追おうとするが、ヒッキーによって動きを止められた。


(-_-)「おい」

('A`)「何だよ」

(-_-)「俺はお前の中に、人のために戦いたいと思える心があると信じてる」

(-_-)「正義のために戦いたいと心のどこかで思ってるはずだろ。
     それでいいんだよ、その心をしっかり持とうとしろ。力に捉われるな」

('A`)「………」


 ヒッキーの言葉は届いているのか、それは分からない。
 ただ、少しだけ。少しだけドクオの表情が、戸惑いに揺れた気がした。

55222話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:08:02 ID:QzhOKDJ.0

 ――――――
 ――――
 ――


 男性のスーツは、無残に破り捨てられている。
 スーツの破れた破片を残し、そこにいたはずの男性の姿はない。
 あると表現するとすれば……今、イノシシのアンデッドの胃袋の中にいるだろう。


『ピチャ…ピチャ…』


 口のまわりに付着した血を舐め取り、美味くもない衣服を投げ捨てる。
 すると、近くに感じる気配。


川 ゚ -゚)「味を知らないとは可哀想なイノシシだ」

『!?』

 
 視線を向けた先に、アンデッドを睨みながらクーが立っていた。
 腰には、銀に輝くカリスラウザーを装着させながら。


川 ゚ -゚)「変身」
   っロ

    【 -♥CHANGE- 】

55322話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:08:30 ID:QzhOKDJ.0


『ブオオオオォォォオッッ!!』

( <::V::>)『以前は取り逃がしたが、今度は逃がさん!』


 左手に召喚するカリスアロー。
 両手を広げ、イノシシのアンデッドに向け一直線に突き進む。
 アンデッドによるアンデッド狩りが始まった。

 十分な加速の乗った状態で、カリスは前へと跳躍。
 敵のもとへ着地するのは計算済みで、着地間際にカリスアローで斬りつける。
 すかさず振り向きながら、素早い斬撃をもう一発。


『グウウゥゥッ…!』


 一度カリスの攻撃に嵌まれば、抜け出すことは容易ではない。
 カリスアローの隙のない連撃が、着実に命をすり減らしていく。


    《-♥3 CHOP-》


 後ろ回し蹴りを腹部に叩き込む。
 怯んだところに詰め寄り、ラウズしたカードの力を得た右手刀をアンデッドの腹部に叩き込んだ。


( <::V::>)『ふっ!』

『グオオォオッ!?』

55422話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:08:53 ID:QzhOKDJ.0


( <::V::>)『終わりだ』


 腰のケースよりカードを三枚引き抜く。
 勝敗はもう決した。
 これ以上の攻めを加えずとも、この一撃で倒せる自信がある。
 
 カリスアローに装着されたカリスラウザーに、カードをラウズしようとした時だった。


( <::V::>)『……もう一体来たか』


 手が止まった。
 目の前で倒れるイノシシのアンデッドとは別に、もう一体のアンデッドが近付いている。
 それは地上からでも、空中からでもない。

 足元からだ。
 両足をつけた地の下から、その気配は伝わってきた。

 足の裏に地響きのような振動を感じる。
 地震が起きているわけではない。
 ただ、足元から、何かが掘り進んできている。



 ………………。

 …………。





( <::V::>)『そこだッ!!』

55522話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:09:15 ID:QzhOKDJ.0


 背後から、地面が突き破られた。
 崩れる轟音鳴り響きながら、気配を感じ取っていたそのアンデッドが姿を見せる。

 カリスは振り返った瞬間、地面に向け構えたカリスアローから光の矢を射出。
 矢はアスファルトの地面を抉り現れたアンデッドに被弾し、出鼻を挫いた。


『ゴオオオォッ!?』


 地面より現れたアンデッドは、矢を受け地に放り出された。

 異常なまでに発達した右手の爪。左手には腕を覆うようにして装備された盾が。
 顔面には、両目と口に位置する三つのドリル。
 全身には鋼鉄の鎧を装備し、しっかりと身を守っている。

 一見、何の生物の祖かは判断出来ない外見だ。
 地面を潜り現れる……強いて言うなら、"モグラ"だろうか。


『グルルルルル……!』


 出鼻こそ挫いたが、イノシシのアンデッドとの間に挟まれ数的不利な状況となった。


( <::V::>)『二対一か……面白い!』

55622話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:09:37 ID:QzhOKDJ.0


 ここ数日間、血が滾るような戦いはなかった。
 何かと邪魔が入ったり、レンゲルの妨害を受けることもあった。

 レンゲルに完敗を喫してからというもの、自らの存在をアンデッドだと強く思い込むようになったカリス。
 あの時、カテゴリーAに浴びせられた屈辱的な言葉が忘れられない。
 その怒りや悔しさは、未だ晴れてはいない。
 全てを、戦いでぶつける。


( <::V::>)(二度とあんなことは言わせない…私はアンデッドとして全てを倒す!)

( <::V::>)『はああぁッッ!!』


 襲い来る二体のアンデッド。
 片方を飛び蹴りで迎撃しつつ、蹴りを入れたアンデッドを踏み台に背後のアンデッドを斬りつける。
 前後より繰り出されるアンデッド達の攻撃を、身体を翻しつつ次々と躱し、隙をついては斬撃を与え続けた。



 そこに、アンデッドの反応を辿り駆けつけたモララーが到着。
 同時にクーの後を追ってきたドクオも合流した。


( ・∀・)「二体のアンデッド…!」

('A`)「本当に二体いる…あの人何者なんだ!?」

( ・∀・)「ドクオ…?何故君がいるんだ!」

55722話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:10:06 ID:QzhOKDJ.0


( ・∀・)「変身!」


    【 -♦TURN UP- 】


 バイクから降り、戦いの中に向け走りながらの変身。
 前面に射出されるゲートを瞬時に纏い、ギャレンに変身した。

 カリスへの攻撃に夢中で気付かないイノシシのアンデッド。
 ギャレンラウザーを引き抜き、その背中に銃撃を見舞った。


『グギャアアァウッ!?!?』
 
( <::V::>)『ッ…!?邪魔をするな、こいつらは私の獲物だ!』

( OMO)「そんなこと言ってる場合か!?アンデッドを封印するのが俺の役目だ!」

( <::V::>)『なら貴様も相手にしてやろうか!?』

( OMO)「やめろ!俺は無駄な戦いを…ッ!するつもりはない!」


 数的には対等になった。
 だが、カリスの滾る闘志は敵味方の区別をつけようとはしない。
 迫り来る者すべてが敵。ギャレンに関しては、その意識が尚更強くなる。

 当のギャレンは、もはやそんな戦いには興味を持ってはいない。

 しかし、一触即発な状態。いつカリスがギャレンに襲い掛かってもおかしくはない。

55822話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:10:31 ID:QzhOKDJ.0


('A`)「………」


 戦いを見つめるドクオ。
 レンゲルバックルを手に握り締めたまま、動こうとしない。

 頭の中に響く声に耳を傾けていた。
 それはドクオに言い聞かせるように、歪な声は何度も何度も呼びかける。
 

 ――戦え、目の前のすべてを倒せ。お前はその力を持っている。


( A )「………」


 ――戦え。全てがお前の敵だ。


( A )「………」


 ――戦え…戦え!!

55922話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:11:03 ID:QzhOKDJ.0

 ♪勇壮たるレンゲル - https://www.youtube.com/watch?v=QqNaFe0UPpw


(# A )「………う」

(#'A`)「うああああああああああああ――」

(#'A`)『――あああああああぁぁぁッッ!!!!』

( OMO)「!?」


 途中、雄叫びをあげるドクオの声が、歪な声へと変貌したのを聞き逃さなかった。
 カードを装填したレンゲルバックルを腰に装着し、変身の構えを取る。


('A`/)「変身!!」

 
    【 -♣OPEN UP- 】


 開いたバックル部分より射出されるゲート。
 近付くゲートに身体を覆われ、レンゲルへの変身を果たした。


( OMO)「ドクオ…!」
 
( OHO)「……うおおおおおッ!!!」


 ゆらりと身体を動かし、徐々に走り出す。
 右手に握ったレンゲルラウザーを振るい両手に持ち直し、尖端でモグラのアンデッドの顔面を殴打した。


『グオオォウフッ…!』

56022話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:11:36 ID:QzhOKDJ.0


( #<::V::>)『どいつもこいつも、何度も邪魔をしてくれる……!!』


 ギャレンとレンゲルの乱入に、カリスの怒りは増幅するばかり。
 手に持った三枚のカードは本来アンデッドに向けて使用するつもり、だった。

 しかし、目の前にいる者全てが、今の自分にとっては敵だ。
 すべてに向けてこの攻撃を与えんと、カードを再びラウズしようとした時。



 「――…す……て……」

( <::V::>)『――はっ…!』


 声が聞こえる。
 その声に、カリスの手は止まった。
 ぼんやりと聞こえた声はやがて明確に聞こえ始め、その声の主も分かった。


 「――たす…けて…!」






( <::V::>)『でぃちゃん…!?』

( <::V::>)『……行かないと……!』

56122話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:12:12 ID:QzhOKDJ.0


 その声がでぃのものと判断した途端、カリスの怒りは突如収まり始める。
 そして、助けを求めるでぃに何が起きているかを感知することが出来た。

 目の前のアンデッド達より一際強い気配。
 間違いなく、上級アンデッド。
 でぃに…いや、ブーン達にも何かが起きている

 でぃちゃんが助けを求めている。
 でぃちゃんのもとへ行かねば。
 目の前の敵より、自分の怒りより、守ることを優先して。
 

( <::V::>)『ここは譲ってやる!』


 カリスの脳波を受け、無人走行するシャドーチェイサーが出現。
 すかさず飛び乗ると、進路を邪魔するレンゲルを側面から容赦なく跳ね飛ばした。


( <::V::>)『どけ!!』

( ; OHO)「ぐはあっ!?」

( OMO)「何だアイツ…どうしたんだ!?」


 自分の獲物だと言い張り敵意を見せていたにも関わらず、呆気なく去ってしまったカリスに戸惑いを覚えずにはいられない。
 だが、呑気に背中を見送っている状況ではない。
 目の前には二体のアンデッド。ここで封印しなければ、また人が襲われてしまう。


( OHO)「チィッ…!アンデッド、俺が残らず封印してやる!!」


 シャドーチェイサーの衝突を受け吹き飛ばされながらも、レンゲルはぴんぴんしていた。
 レンゲルラウザーを構え、モグラのアンデッドに向け突っ走り始める。

56222話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:12:36 ID:QzhOKDJ.0


( OMO)「ドクオ…カテゴリーAに操られているわけではないのか!?」


 イノシシのアンデッドを相手にしながら、ギャレンは横目でレンゲルを見た。
 レンゲルに変身前、確かにドクオの声が変化したのを耳にした。
 しかし、今のレンゲルはドクオ自身の意志で動いているように見える。

 
( OHO)「貴様らを封印して俺の力にする!!」


 一度伸長したシャフトを縮め、棍棒状態に戻したレンゲルラウザーを軽々と振るう。
 短くなった分身軽に扱え、アンデッドの大きな腕を振るった攻撃をラウザーで防ぎつつ、蹴りや一枚刃にまとまった尖端で斬りつける。


『ゴオオォゥウッ…!?』

( OHO)「うおぉおらあぁッ!!」


 アンデッドが怯んだ瞬間、ラウザーのシャフトを再び伸長。
 長柄特有のリーチを活かしながら三枚刃に展開された尖端・後端で攻め続ける。
 強引に押し込むような攻め。
 戦い方こそ粗さが目立つが、それでもアンデッドに善戦していた。


( OMO)(いつの間にあんなに戦えるようになったんだ…?)


 モグラのアンデッドに対して、まったくの素人であるはずのレンゲルが引けを取っていない。
 ブレイドになりたてのブーンの時より、まともに渡り合っている。

 もとある秘めた才能なのか、それとも自主的な鍛錬を積んだのか。
 何にせよ、思わず感心すらしてしまいそうなレンゲルの姿。

56322話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:13:23 ID:QzhOKDJ.0


( OHO)(力を感じる…戦い方が分かる!)

( OHO)(カテゴリーAが、俺に戦い方を示してくれてるんだ…!)

( OHO)「戦える…俺は戦える!!」


 漲る自信。自然と声にも力が入った。
 レンゲルラウザーを逆手に持ち、腰にあるカードケースを開く。
 一枚のカードを引き抜き、後端のラウザー部分にラウズした。


    《-♣2 STAB-》


 "♣2のSTAB"。このカードは、レンゲルラウザーの刺突・貫通力を強化するカード。
 ♠や♦の2と同じく、武器の威力を強化するカードだ。

 ラウザー全体に光が纏い始める。
 力を得たレンゲルラウザーを、持てる力全てでモグラのアンデッドに向け振り下ろした。
 
 
( OHO)「どりゃあああああッッ!!!」

『ゴオオオオッ!!』

( OHO)「なにっ!?」


 だが、レンゲルラウザーはただ虚空を斬っただけだった。

 振り下ろした先……確かにいたはずのモグラのアンデッドがいない。
 煙幕が発生している下に視線を向けると、そこには穴が形成されていた。

 アンデッドは、レンゲルの攻撃を地面に潜り身体を隠す事で回避したのだ。


( OHO)「クソッ…!出て来い!!」


 レンゲルの声は届かない。
 モグラのアンデッドは、地面に潜ったまま逃亡してしまった。
 当然、地面に潜った相手の追跡など出来もしない。

56422話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:13:51 ID:QzhOKDJ.0


 一方、イノシシのアンデッドと対峙していたギャレン。
 こちらも優勢に戦いを進め、ギャレンの勝利は目前。


( OMO)「はあッ!!」

『グゴ…ッ!!』


 得意の足刀蹴りがイノシシのアンデッドの顎を捉え、アンデッドはぐったりと倒れる。
 この隙にギャレンラウザーのトレイを展開し、必殺技を発生させるための三枚のカードを選択。


    《-♦5 DROP-》 《-♦6 FIRE-》 《-♦9 GEMINI-》


 ラウザーにカードを順にラウズし、ホルスターに収めた。
 両足を広げ、構えた左手でギュッと拳を握り締める。


      《-♦BURNING DIVIDE-》


 瞬時にそろえた両足。
 地面を蹴り、宙に高々と跳躍。
 空中で分身すると、両足に紅蓮の炎を纏った二人のギャレンが身体を翻し、アンデッドに向け落下。


( OMO)「でいやああぁッッ!!!」

『グオオオオオオオオオォォォォッ!!』


 炎が残像を描きながら、四つの蹴りがイノシシのアンデッドの身体を抉る。
 背を向けながら着地するギャレンの背後で、イノシシのアンデッドは炎に身体を焼きながら、抉れた部分から緑血を噴出。
 断末魔の叫びをあげながら、力無く地に倒れた。

56522話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:14:26 ID:QzhOKDJ.0


 倒れたアンデッドに対し、ギャレンは静かにカードを投擲。
 身体に突き刺さったカードがアンデッドの封印を終えると、ギャレンの掌中に帰還した。

 元々はブレイドが所持していたカード。♠3のTACKLE。
 レンゲルによって解放されてから、年が明けてようやく封印に至った。


( OMO)「……助けられなかったか、クソ…!」


 アンデッドによって捕食され、無残に捨てられた残骸である服を見つめる。
 人を助けられなかったことに、ギャレンはひどく胸を痛めた。

 変身を解こうとベルトに手を掛ける。

 ……だが、近付く足音でその手はすぐに離された。



( OHO)「うおおおおおおおッ!!」

( OMO)「!?」


 ギャレンに目掛け振り下ろされるレンゲルラウザー。
 瞬時に受け身を取る事で回避は出来たが、あまりにも唐突な襲撃に驚きは隠せない。


( OMO)「ッ…何の真似だ!?お前、自分の意志で動いてるんじゃないのか!?」

( #OHO)「そのアンデッドは俺の獲物だった、横取りしやがって…!」

( OMO)「お前まで何を言ってるんだ!?」

( #OHO)「そいつをよこせ…俺の力をよこせ!!」

( OMO)「なんだと……?正気か!?」

( #OHO)「うおおおああああああああッッ!!!」

56622話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:14:57 ID:QzhOKDJ.0





 ―――――




.

56722話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:15:22 ID:QzhOKDJ.0

 _
( ; ゚∀゚)「はっ…はっ…、クソッ!でぃちゃんもブーンのカーチャンもどこだ!?」


 ブーンに頼まれてから、必死で園内を走り回っているジョルジュ。
 しかし、探せど探せど何処にも見当たらない。
 もう園内隅々まで探したはずなのに、らしき影すら見れない。

 _
( ; ゚∀゚)「こんなことになっちまうなんて…やべぇよ、早く見つけないと!」

ミセ*゚ー゚)リ「ジョルジュさん!」
 _
( ゚∀゚)「ミセリさん!」


 二手に分かれて探していたミセリと、温室外で偶然遭遇した。
 ミセリも走り続けていたからだろうか、ジョルジュ同様呼吸を荒くしている。


ミセ;゚ー゚)リ「はぁ…はぁ…」
 _
( ; ゚∀゚)「ミセリさん、大変なんだ!今この園内に最近ニュースとかでやってる化け物がいる!」

ミセ;゚ー゚)リ「やっぱり、本当にいたんだ…!」
 _
( ; ゚∀゚)「えっ…どういうこと?」

ミセ;゚ー゚)リ「見つけました、でぃちゃんって子…その子が言ってたんです!」
 _
( ゚∀゚)「へっ??」

56822話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:16:06 ID:QzhOKDJ.0


ミセ;゚ー゚)リ「化け物が居て、怖いから隠れてたって…本当にいたら危ないから、まだ隠れてもらってます」
 _
( ゚∀゚)「そっそうか!いたか!よかった……案内してくれ!」

ミセ;゚ー゚)リ「はっ、はい!急ぎましょう!」


 息を切らしながらも、でぃが隠れているという場所へ二人は急いだ。
 ことは一刻を争う。
 もし化け物に見つかったりなどすれば……何をされるか分からない。

 _
( ; ゚∀゚)「ミセリさんがいなかったら今頃マジで危ないことになってました…!」

ミセ;゚ー゚)リ「いえ…っ、はっ…はっ…もとはと言えば私の責任ですから…!」
 _
( ; ゚∀゚)「もし化け物が襲い掛かってきたら、でぃちゃんを連れて逃げてください!」
 _
( ; ゚∀゚)「俺が囮になって二人を逃がしますから!」

ミセ;゚ー゚)リ「そんな…!そんなことできませんよ…!」
 _
( ; ゚∀゚)「万が一はそれしか手はねぇんだ!大丈夫だって、俺逃げ足は速いから!!」

ミセ;゚ー゚)リ「っ…そんなことにならないように、ちゃんと逃げます!一緒に!」
 _
( ゚∀゚)「……っへへ、よっしゃ!!」

56922話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:16:36 ID:QzhOKDJ.0

  、、
@*゚皿゚)@『よっ、とぉ!!』

( OwO)「チィッ!ちょこまかと鬱陶しいお…!」


 つーと対峙しているブレイドは、トリッキーな動きに翻弄されていた。
 軽快なステップで、ブレイドの攻撃を容易に躱すつー。
 
  、、
@*゚皿゚)@『アヒャヒャヒャ!当ててごら〜ん???』

( OwO)「このォ…ッ!!」


 ブレイドの蹴りを側転で避け、両足で着地した瞬間に地面を蹴り上げ跳躍。
 綺麗にそろえた両足を伸ばし、ブレイドの顔面に打点の高いドロップキックを叩き込んだ。

  、、
@*゚皿゚)@『フンッ!』

( ; OwO)「のわあぁっ!?」


 顔面を押し込まれ、地面に転がる。
 すぐさま起き上がりブレイラウザーを引き抜き、再び立ち向かった。


( OwO)「うおおおおっ!!」
  、、
@*゚皿゚)@『悪いけどさァ、そこらの雑魚と一緒にしてもらったら困るんだよねェ!』
  、、
@*゚皿゚)@『そんな攻撃アタシに当たるわけないでしょうよ!! ッはああぁ!!!』

( ; OwO)「ぐああぁっ!!」


 剣撃を躱しながら三日月を描くように高々と後転。
 後ろへ回転しながらも、つーは口より青白い衝撃波を吐き出す。
 衝撃波はブレイドに直撃し、吹き飛ばされた。

57022話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:17:02 ID:QzhOKDJ.0


( ; OwO)「ううっ…!」
  、、
@*゚皿゚)@『まだまだ終わらないよ〜??そォれッ!!』


 右手に召喚してブーメラン型の刃。
 それを宙に投げ捨てた途端、刃は水を得た魚のように空中を自由に泳ぎ始める。
 
  、、
@*゚皿゚)@『さぁさぁ、もっと遊ぼうよブレイド…!!』
  、、
@*゚皿゚)@『アヒャヒャヒャヒャヒャァ!!!!』

( ; OwO)「クソォ……!」


 この刃の攻撃は一度見たことがある。
 故に、思い立って行動に移すことが出来ない。

 きっと、つーにとって都合の悪い動きはあの刃によって妨害されるに違いない。
 だとすると、動こうとすれば自分が無駄なダメージを負うだけ。
 ゆっくりと身体を起こしながら、仮面の下でつーを睨み付ける。

  、、
@*゚皿゚)@『分かるよ〜…今アタシのこと睨んでるでしょ?いいねェその目!そそるわぁ…!』

( ; OwO)「こんなとこで、僕が負けるわけにはいかないんだお…!」
  、、
@*゚皿゚)@『一応聞いてみるけど、なんで〜?』

( ; OwO)「僕がお前を倒さない限り、ここにいる人たちに被害が――」
  、、
@*゚皿゚)@『はいお終い』

( ; OwO)「うああっ!?」


 答えている途中で、宙を舞う刃がブレイドの身体を斬りつけた。
 
  、、
@*゚皿゚)@『正義の勇者ごっこは見てて虫唾が走るんだよ…!』

( ; OwO)「ぐぐッ……!」

57122話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:17:52 ID:QzhOKDJ.0


ミセ*゚ー゚)リ「こっちです!もうすぐ!」
 _
( ゚∀゚)「ああ!」


 もうすぐ辿り着く。
 でぃを見つけた後は、すぐにブーンのカーチャンを探さなくてはならない。
 協力してくれるミセリも、早く安全な場所に避難させなければ。

 ジョルジュは、責任感と使命感を強く感じていた。
 
 本当なら、自分もライダーとしてアンデッドと戦いたい。
 戦って、人を守りたい。
 
 けど、自分はライダーになることは出来ない。

 今はそれを受け入れ、自分の出来る事で人を守りたいと思うようになった。
 その思いが今、一際強くなっている。



 ミセリの後を追っていて気付いた。

 _
( ゚∀゚)「ここ、ブーンのとこに戻ってきてねぇか…?」
 _
( ゚∀゚)「こんな近くにいたってのかよ…!早くしないとでぃちゃんが危ない!」

ミセ*゚ー゚)リ「はい、急ぎましょう!」

57222話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:18:17 ID:QzhOKDJ.0

 ――――――
 ――――
 ――


ミセ*゚ー゚)リ「着きました…!この辺です……!!」


 でぃが隠れているという場所に到着した二人。
 だが、二人がそこで目にしたのは……。


  、、
@*゚皿゚)@『アヒャヒャヒャァッ!!』

( ; OwO)「うわあああぁっ!!」


 つーと戦うブレイドの姿。
 ジョルジュの思った通り、最初の位置に戻って来ていたのだ。

 _
( ゚∀゚)「やっぱり戻って来てる…!」

ミセ;゚ー゚)リ「もしかして…あれが化け物ですか…!?」
 _
( ゚∀゚)「そうだ、あれがアンデッドだ…!」
 
ミセ;゚ー゚)リ「……あれは、仮面ライダー?」
 _
( ゚∀゚)「ああ、アンデッドを倒すことの出来る唯一の希望だ…早く探さないと!」

ミセ;゚ー゚)リ「………ッ」
 _
( ゚∀゚)「ミセリさんはここにいてくれ!」

57322話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:18:46 ID:QzhOKDJ.0


ミセ;゚ー゚)リ「……はい、ここにいます」

ミセ;゚ー゚)リ「でも……」
 _
( ゚∀゚)「俺は大丈夫だ!安心してくれ!」

ミセ;゚ー゚)リ「……ごめんなさい」
 _
( ゚∀゚)「へっ?」


 その時――ジョルジュの両足に、何かが巻きつかれた。

 _
( ゚∀゚)「っ!?なんだこれ!?」


 足元に視線を向ける。
 そこにあったのは……トゲの生えたツタ。
 ジョルジュの両足を巻きつくのは、トゲの生えたツタだった。


ミセ; - )リ「ごめんなさい、ジョルジュさん…」


 ただ謝りながら俯くミセリ。
 徐々に顔を上げるその顔に……一輪の笑顔。


ミセ* ー )リ「でも、私……」



ミセ*゚ ヮ゚)リ「あなたを騙したこと……後悔してないわ!!」

57422話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:19:29 ID:QzhOKDJ.0

 _
( ゚∀゚)「へっ……?」

ミセ*゚ー゚)リ「ウフフ……ジョルジュさんって素敵なのね、あなたが人間じゃなかったらきっと惚れてたわ…!」
 _
( ; ゚∀゚)「……ッ、どういうこと――うわあっ!?」


 再びツタが伸び、今度はジョルジュの首と胴体に巻きついた。
 きつく締め上げられ、痛みと苦しさが同時に襲いか掛かる。

 ジョルジュの声に反応し、ようやくブレイドは二人の存在に気付いた。


( OwO)「ジョルジュ…!?」
  、、
@*゚皿゚)@『あらら〜?余計なことしてくれちゃってェ…』

ミセ*゚ー゚)リ「あなたがモタモタしてるのが悪いわ」
 _
( ; ゚∀゚)「うぐううぅッ…!ミセリさん……これは……!?」

ミセ*゚ー゚)リ「ジョルジュさん、まだ分からないの…?あなたは私に利用されたのよ?」
 _
( ; ゚∀゚)「っ…!?!?」

ミセ*゚ー゚)リ「まだ信用しきれないみたいね……じゃあこれならどう!?」


 ミセリの身体が、無数の花びらに包まれる。
 花びらが作り上げるシルエットは、ミセリの人の形から膨張し、異形のものへと変化していく。
 やがて花びらは風に乗るかのように去っていき……ミセリは、その姿を露にした。

57522話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:20:03 ID:QzhOKDJ.0


( ; OwO)「なに…!?」
 _
( ; ゚∀゚)「………そんな………」


 女性らしい顔とシルエットを残す真っ赤な身体、その左肩や左腕に身につけている鋼の装甲。
 頭部には髪のように広がる花びら。後頭部には、白く塗られたもう一つの顔が存在している。
 花びらは右腕全体をも覆い、人並以上に腕の長さは発達。
 花びらから覗く爪の伸びた大きな右手は、化け物らしさを物語っている。
  
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『これで分かったでしょう?私はカテゴリーQのアンデッド』
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『あなたを利用して、最初からこうするのが目的だったのよ…!』
 _
( ; ゚∀゚)「うっ……ぐう……!」

( OwO)「やめろ!!」
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『動くな!この男の命がなくなってもいいのかしら?』

( ; OwO)「ぐっ…!」
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『それに、私が捕まえてるのはこの男だけじゃないのよ…!』

( ; OwO)「何…!?」


 人の手の形をした左手で、パチン!と指を鳴らす。
 すると……頭上から吊り下げられるようにして、二人の人間が姿を現す。
 その姿を見た瞬間、ブレイドとジョルジュの動きは完全に止まった。

 _
( ; ゚∀゚)「……!!!」

( ; OwO)「でぃちゃんに……カーチャン……!?」

57622話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:20:35 ID:QzhOKDJ.0


(#; - )「ううっ……」

J( ー )し


 ツタに吊り下げられたでぃからは、うめく声が小さく聞こえる。
 だが、カーチャンからは何の反応もない。気を失っているようだ。

 _
( ; ゚∀゚)「……最初から、あんたが二人を……?」
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『そうよ?私がこの人間二人を捕まえたの。あなたが必死に探してたときにはもう……フフフフ』
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『そして今、あなたもその一人になったの。ブレイドが動けないようにするための囮としてね!
        でも平気よね?あなた、囮になるってさっき言ったもの…!』
  、、
@*゚皿゚)@『アヒャヒャヒャヒャ!!ほんとーにこの女恐ろしいよなァ…!』
 _
( ; ゚∀゚)「………」

( OwO)「………」


 言葉が出ない。
 自分が一目惚れしてしまった相手が、アンデッドだった。
 そして……自分の甘さのせいで、でぃを、そしてブーンのカーチャンを危険な目に合わせてしまった。

 今まさに自分自身も危険な状態。
 だが、それ以上に責任を強く感じてしまっていた。

57722話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:21:02 ID:QzhOKDJ.0

  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『さぁブレイド、変身を解きなさい』
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『さもないと…分かってるでしょう?あなたの大事なお友達が真っ先に殺されてしまうの。
       あなたなら必ずその剣を置くわ、それがあなたの優しさだから!』

( #OwO)「この卑怯者……!!」
 _
( ; ゚∀゚)「ッ……ブーン、俺のことは気にするな!二人のことだけを気にしろ!」
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『黙れ!』
 _
( ; ゚∀゚)「ううううぅぅッ……!!」


 ジョルジュの身体に巻きつくツタが、更に強く締め付ける。
 胴体、首に深くツタがめり込み、ジョルジュの呼吸をより苦しくさせる。
 このままもっと締め付けられてしまえば……死に至るのはそう難しくはない。


( ; OwO)「ジョルジュ!!………分かった!」


 武器を捨てれば、間違いなく自分が狙われるだろう。
 抵抗することも同じだ。
 だが……仲間や、ましてや母親の命に代えることは、到底出来るはずもなかった。

 バックルに手を掛け、ハンドルを引きゲートを射出する。
 変身を解除し、バックルを地に投げ捨てると、両手をあげ無抵抗の意思を示した。


( ^ω^)「これでいいだろ…!?」
 _
( ; ゚∀゚)「なっ…!なんでだよブーン!!俺のことなんか気にするなよ…!」

57822話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:21:27 ID:QzhOKDJ.0

  、、
@*゚皿゚)@『おお〜?マジで変身解いちゃったよ……自分が死ぬだけなのにさァ!』

( ; ^ω^)「ぐふっ…!」


 腹部に強烈な拳が叩き込まれ、うずくまった背中を何度も何度も拳や肘で叩かれる。
 ライダーの装甲を纏っているならともかく、生身の姿で受けるアンデッドの打撃は倍の痛みを身体中に走らせた。
 すぐに立ち上がることも出来ず、痛みに身体を抑えることしか出来ない。


( ; ^ω^)「うううっ…!」
  、、
@*゚皿゚)@『健気だねぇ、仲間想いってヤツ?』
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『いい人よねぇ、ブレイドって。でもその優しさが命取りになるのよね……お前もな!』
 _
( ; ゚∀゚)「ッ……ブーン……お前が死んじまう!!やめてくれよ!!」

( ; ^ω^)「がはっ……心配すんなお、僕は…ッ死なないお……」
  、、
@*゚皿゚)@『フォオオオウッ!!』

( ;メ ω )「があっ…!」
 _
( ; ゚∀゚)「ブーン…!!」


 後ろ首を掴まれ強引に上げられると、つーの鋭利な右手がブーンの顔面に直撃。
 頬に赤い切り傷が形成され、力無く地面に倒れた。

57922話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:21:57 ID:QzhOKDJ.0


( ;メ ω )「死んで……たまるかってんだお……僕は……こんな奴らに、負けてられない……!」

( ;メ ω )「それに……お前は、僕の大事な仲間だ…!仲間を引き換えになんて、僕には出来ない…!」

( ;メ ω )「でぃちゃんも、カーチャンも…お前も…ッ僕が守る……!!」


 口の中が切れ、唇の間から血が覗く。
 今まで何度も味わってきた痛みだが、これを受け続ければジョルジュの言う通り死んでしまうだろう。
 ミセリの目的が最初からこれだとすれば……本当に死を受け入れなければならないかもしれない。

 _
( ; ∀ )「……バカヤロウ…!!」
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『まだ喋れる元気があるみたいよ?少し手を抜きすぎなんじゃないかしら?』
  、、
@*゚皿゚)@『はい?そもそもこんなの頼んでないんだケド?アタシの自由にやらせてよ』
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『フン、まぁいいわ……安心しなさいブレイド。
       あなたを殺したあとに…このお友達も、あなたの母親も、すぐに送ってあげるから!』
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『フフフフフ……アハハハハハハハ!!』

( ;メ ω )「ぐううッ……!!!!」 


 ミセリの残酷な高笑いが、園内に響く。
 身体中ボロボロで、立ち上がろうとするにもあちこちが痛みに悲鳴を上げる。
 ただ、ミセリの無慈悲な言葉だけが何も出来ないブーンの耳に届く。
 悔しさに歯を食いしばり、拳を強く握り締めた。

58022話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:22:36 ID:QzhOKDJ.0

  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『ちょっと…いつまで遊んでるつもり!?早く殺しなさいよ!』
  、、
@*゚皿゚)@『ッさいなぁ、もともとアタシの獲物なんだけど?』
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『せっかく私が最高の舞台を用意したっていうのに……もういいわ、私が殺るから』
  、、
@*゚皿゚)@『……お前調子に乗るなよ?確かに勝ち残るために手を組むとは言ったよ。
       けどお前の指示に従うと言った覚えはないなァ…!』
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『なんですって…?』
  、、
@*゚皿゚)@『大体アンタが最初から手を貸せば、こんなヤツらとっくの昔に全部殺してたのによ…!』
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『このメス山羊が…!!』

( ;メ ω )「ッ……く、う……」


 今しかない。
 内輪揉めしている間に、投げ捨てたブレイバックルを拾うには。
 そうすれば、まだチャンスはある。

 地面を這いつくばりながら、目の前のブレイバックルに懸命に手を伸ばす。

  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『何をしてるの?人間如きが!!』

( ;メ ω )「ああ゙あ゙あ゙あ゙ぁ…ッ!!」


 気付かれてしまった。
 ミセリの足がブーンの伸ばす手を踏みつけ、グリグリと踏み潰すように体重をかけられる。

58122話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:23:24 ID:QzhOKDJ.0
 
 _
( ; ゚∀゚)「ブーン……!!」

(#;゚ -゚)「もうやめて……!死んじゃうよぉ!」
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『あらでぃちゃん、死んじゃっていいのよ?だって……殺すんだから!」

( ;メ゚ω゚)「うあああああッ!!!」


 ブーンの背中を、全体重を乗せストンピングする。
 アンデッドの体重は人間の倍以上だ。
 それほど重たいものが思い切り圧し掛かれば、痛みも苦しさも凄まじい。

 _
( ; ∀ )「クソッ…!クソォ……!!」

(#; - )「なんでそんなことするの!?許さない……モスにひどいことしたお前も、ブーンさんを痛めつけるお前も許さない!!」
  、、
@*゚皿゚)@『アヒャヒャ…まだ根に持ってるのかぁ。そんなにあのアンデッドのところに逝きたいのかなァ」
  、、
@*゚皿゚)@『なら……逝かせてやるよ!!』

(#;゚ -゚)「ひゃあっ!?」


 宙を舞うブーメラン型の刃が、吊り下げられたでぃのツタを切り裂く。
 そのまま地面に落下し、受け身も取れずでぃは叩き付けられた。


(#;゚ -゚)「ううっ…!」
  、、
@*゚皿゚)@『じゃーな……でぃちゃん!!!』


 ブーメラン型の刃を持った右手が、でぃに向け振り上げられる。


(#; - )(助けて……クーさん)

(#; - )(助けて……!モス!!)

58222話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:24:07 ID:QzhOKDJ.0








    《-♥8 REFRECT-》

58322話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:24:30 ID:QzhOKDJ.0

  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『!?』


 どこからか響く音声。
 音声が響いた直後、でぃの周囲に発生する鱗粉。
 
 この鱗粉は、どこかで見たことがある。
 
  、、
@*゚皿゚)@『死ねやああァァッ!!』

(#;>-<)「ッ!!」


 子供に向け放つ言葉こそ、まさに区別もない残虐性を感じられる。
 つーが腕を思い切り振り下ろした。
 狙うは、幼いでぃの脳天一直線。

 だが……、

  、、
@*゚皿゚)@『うわっ!?なんだ!?』

(# >-゚)「ッ……??」
  、、
@*゚皿゚)@『跳ね返された…!?なんだコイツ!このッ!!』


 つーが確かに振り下ろしたはずの刃は、鱗粉によって明らかに跳ね返された。
 何度も何度も刃を振るも、鱗粉がでぃを守る鉄壁の盾となって、一切の攻撃を通すことを許さない。

  、、
@*゚皿゚)@『この鱗粉……まさか……!』

(#゚ -゚)「――モス……?」

58422話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:25:00 ID:QzhOKDJ.0


( <::V::>)『はあああああああぁッ!!!』
  *∧Λ*
∠*;゚`ー´)ゝ『なっ…うあぁっ!?』

  
 吹き荒ぶ竜巻を纏ったシャドーチェイサー。
 上空を飛翔しながら現れ、勢いのままミセリに突進。
 突然の出現に対応できず、ミセリは遠くへ吹き飛ばされた。

 着地し、アクセルターンさせながら停まる。
 シャドーチェイサーから降りたカリスは、召喚したカリスアローでつーに向け光の矢を射出。

  、、
@*゚皿゚)@『ちょいちょいちょい…ッ!』


 でぃから距離を取ったことを確認すると、今度は吊り下げられたツタに向け矢を放った。
 矢は、カーチャンが下げられたツタに的確に命中。
 ツタは切れ、支えを失ったカーチャンはそのまま下に落下を始める。


( <::V::>)『ふっ!』


 疾走するカリス。落下するカーチャンを両腕で受け止め、抱えこんだ。
 ゆっくりと地にカーチャンを寝かせると、今度はジョルジュを縛り上げるツタの根元すべてに向け矢を放つ。

 _
( ゚∀゚)「うおっ…!」


 カリス一人で、捕まったすべての人が救出された。
 うずくまるでぃのもとへ近付き、怯える肩にそっと手を添えた。

58522話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:25:30 ID:QzhOKDJ.0


( <::V::>)『ケガはない?』

(#゚ -゚)「クーさん…?」

( <::V::>)『もう安心して、大丈夫だから。走れるね?』

(#゚ -゚)「……うん」
 _
( ゚∀゚)「あ…あんた……」

( <::V::>)『突っ立ってる暇があるなら急いで二人を避難させろ!』
 _
( ; ゚∀゚)「はっ、はい!」


 催促を受け、我に返ったジョルジュは急いででぃとカーチャンのもとへ駆け寄る。


( <::V::>)『勘違いするな、別に貴様の命などどうでもよかった。二人の命を確保するのに貴様が必要だっただけだ』
 _
( ゚∀゚)「わ、分かってるよ…!」

( ;メ^ω^)「はは……よかった、みんな、無事で……」

( <::V::>)『立て』

( ;メ^ω^)「はいお……しかし、今のはさすがに、マジでやばかったお……!」


 倒れたままのブーンに手も貸さず、不器用に声を掛ける。
 身体中を蝕むひどい痛みに耐えながら、ブーンも懸命に起き上がった。
 足元はフラフラで、どこもかしこもボロボロだ。
 だが、ブーンはカリスを見ながら笑ってみせた。

58622話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:26:07 ID:QzhOKDJ.0

  、、
@*゚皿゚)@『アヒャヒャヒャ!アンタも来たのかァ、こりゃ面白くなりそうだ…!』
  *∧Λ*
∠*#゚`ー´)ゝ『クッ……カリス……!!!』

( <::V::>)『山羊は譲ってやる、お前が封印してみせろ』

( <::V::>)『貴様の相手は私がしてやる!』
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『チッ……面倒なのが来たわね……!』


 カリスはミセリに向け矢を発射させながら接近。
 矢を右手で弾き落としながら、ミセリはどこかへ誘うように後退。
 恐れることなく、カリスは後を追って行った。

  、、
@*゚皿゚)@『あああ…!だから余計なことすんなっつったんだよ、あのバカ!!』
 _
( ゚∀゚)「ブーン!!」


 この隙に、ジョルジュは拾い上げたブレイバックルをブーンに向け投げ渡す。

 _
( ゚∀゚)「二人は俺に任せろ!そいつを頼むぜ!」

( メ^ω^)「そっちは頼んだ、こっちは任せろ!」
 _
( ゚∀゚)゙「おう!」

( メ^ω^)゙「おう!」


 ジョルジュがカーチャンを背中に背負い、でぃを連れて植物園の外へと避難していくのを見届ける。
 そして、目の前のつーと真正面から睨み合った。

58722話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:26:56 ID:QzhOKDJ.0

 ♪華麗なるブレイド - https://www.youtube.com/watch?v=3XSRSJjGU-0
 
  、、
@*゚皿゚)@『ハッ、まぁこれで邪魔がいなくなってせいせいしたわァ…!』

(#メ ω )「ああ…そうだな」
 

 身体中の痛みなど気にならないほどに、ブーンの中に激しい怒りが渦巻く。

 仲間を傷付けられ、幼い心を弄び、大事な母親を人質に取られた。
 沸々と湧き上がっていたブーンの怒りが、最頂点に達する。


(#メ^ω^)「覚悟しろ…!!アンデッド!!!」


 カードを装填したバックルを腰に装着。
 鋭い目で眼前の敵を捉えながら、ブーンは声を張り上げた。


(#メ^ω^)ψ「変身ッ!!!」
     /
    
     【 -♠TURN UP- 】


( #OwO)「うおおおおおおおおおおおッッ!!!」


 つーに向け駆けながら引き抜くブレイラウザー。
 最初の一太刀は躱されるが、避けた先に向け放った蹴りがつーに命中。
 怯んだところに、すかさずブレイラウザーを振り下ろした。


( OwO)「ッふん!はあッ!!」
  、、
@*;゚皿゚)@『うぐっ…!…へぇ、良い気迫してんじゃん…!!』

58822話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:27:28 ID:QzhOKDJ.0


 ミセリを追ったカリスは、広場に誘い込まれる。
 逃げ続けたミセリだが、この広場で遂にカリスに向き合った。


( <::V::>)『観念しろ、蘭女!』
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『ええいっ…!あなたの相手は望んでないわ!』

( <::V::>)『黙れ!貴様の罪は深い!!』


 カリスアローを振るい、ミセリを着実に攻め込む。
 払い除けこそする一面もあるが、カリスの素早い動きにすべての行動が追いつかない。
 防ぐ腕には大量の切り傷が形成され、右腕の花びらは幾つも裂かれている。

  *∧Λ*
∠*;゚`ー´)ゝ『くうっ…!』


 怯むミセリを見て、カリスは武器にカリスラウザーを装着。
 一気に攻め込み、終わらせようという考えだ。
 かなりの強行手段だが、一撃で仕留めることは可能。
 腰のカードケースに手を伸ばした

  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『ふんっ、あなたの相手はここまでよ!』


 その時、ミセリの顔が反転し後頭部の顔と入れ替わった。
 次の瞬間、入れ替わった顔の口から大量の花びらが噴射。


( <::V::>)『くっ!逃げるのか…!』


 花びらはカリスを覆うようにして集まり、視界を遮る。
 その間に、ミセリ自身も身体を花びらに包み込んだ。
 そして、風に乗る花びらと一緒に、ミセリも忽然と姿を消した。

58922話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:28:54 ID:QzhOKDJ.0

 ♪Rebirth - https://www.youtube.com/watch?v=SgXC5Z4R3-c


( OwO)「うおおああああぁっ!!」
  、、
@*;゚皿゚)@『うあぁッ!?……チィッ!!』


 右腕にすべての力を込め、一撃一撃の重い剣撃を浴びせる。
 それまで不規則な動きで翻弄していたはずのつーを、思い通りに動かさない。
 避ける先が目に見えて分かる。そこに剣を振り、すべての攻撃を当て続けた。


( #OwO)「お前達を絶対に許さない…!」

( #OwO)「でぃちゃんの心を弄んで、ひどく傷つけた!モスの気持ちを踏みにじった!」
  、、
@*;゚皿゚)@『うぐっ…!うあぁっ!?』

( #OwO)「大切な仲間の…ジョルジュの気持ちを利用しやがって!!」

( #OwO)「カーチャンにすら手を出した貴様らを!!僕は絶対に許さない!!!」

( #OwO)「はあッ!!」
  、、
@*;゚皿゚)@『ッッ!!あぐぁッッ…!!』

 
 身体を回転させながら斬りつけ、剣先による刺突で胸を貫く。
 突き破られた背中から、剣先に押しやられるように緑血が噴き出る。
 突き刺したままブレイラウザーのトレイを展開し、一枚のカードを抜きラウズさせた。


    《-♠3 BEAT-》

59022話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:29:25 ID:QzhOKDJ.0


 "♠3のBEAT"。ライオンのアンデッドが封印されているカード。
 このカードの使用した者の腕力を強化する効果を持つ。
 ブレイドの右腕から拳にかけて、光が纏い始めた。

  、、
@*;゚皿゚)@『ぐうっ…図に乗りやがってェ!!』


 宙を舞うブーメラン型の刃を操り、ブレイドに向け飛翔させるつー。 
 だが、背後から迫り来る刃を、決して見逃さない。


( OwO)「ふっ!」
  、、
@*゚皿゚)@『ううッ…!』


 ラウザーを引き抜きつつ、回し蹴りで刃を迎撃。一寸の狂いなく足で刃を蹴り落とす。
 そして、回転の勢いそのままに強化された強烈な拳を、つーの顔面に叩き込んだ。
 

( OwO)「食らえッ!!」
  、、
@*;゚皿゚)@『うあああぁッッ!!!』


 角をも砕く拳が顔面にヒットした衝撃で吹き飛ばされ、地面を転がりやがて草花の中に埋もれる。

59122話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:29:48 ID:QzhOKDJ.0

  、
@*;゚皿゚)@『何だコイツ…!あれだけ傷付いたはずなのに、まだこんな力を残してたのか…!?』


 先刻とは打って変わった気迫、力を前に圧倒されてしまう。
 ブレイドに対して、ここまでの力も迫力も感じて来なかった。
 しかし、今感じているのは……レンゲルのそれをも上回るような――。


( OwO)「終わりだ!」


 もう一度トレイを展開し、今度は三枚のカードを選択。
 慄くつーを前にして、ブレイドはカードをラウズした。


    《-♠5 KICK-》 《-♠6 THUNDER-》 《-♠9 MACH-》

       《-♠LIGHTNING SONIC-》

  、
@*;゚皿゚)@『負けてたまるか…アタシは、この戦いを勝ち残るんだから…!』
  、
@*;゚皿゚)@『前は生き残れずに負けちゃったこの戦い…!今度こそ、どんな手を使っても勝つって決めたんだよ!!』

( #OwO)「そのために人を犠牲にしたお前達を、僕は倒すッ!!」


 突如、驚異的な速度で疾走するブレイド。
 一秒も経たぬ間に吹き飛ばしたつーのもとに接近し、片膝をついたつーを左足で上空に蹴りあげる。

  、
@*;゚皿゚)@『ぐぅッ…!?速い…!!』

( OwO)「はぁッ!!」

59222話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:31:12 ID:QzhOKDJ.0


 目にもとまらぬ速さで距離を取り、両足をそろえ高々と跳躍。
 空中で青白い雷を纏った右足を伸ばし、放たれる弓矢が如く速度で宙に浮くつーに向け接近。
 
  、
@*;゚皿゚)@『ひっ……!!』

( #OwO)「うぇえええええええええええいィッッ!!!」
  、
@*;゚皿゚)@『ギャアアアアアアアアアアァァァァッッッ!!!!』


 一瞬の閃光。
 つーの身体に強烈な蹴りが炸裂した瞬間、全身に感電する雷。
 必殺技の強大な威力に耐え切れず、蹴りの勢いに吹き飛び地面に叩きつけられる。
 そして、不愉快な悲鳴と共に、大きな爆発を引き起こした。


( OwO)「ッはぁ……はぁ……!」
  、
@*;゚皿゚)@『……う、あぁ……』


 上級アンデッドの黄金に輝くバックルが左右に展開し、"♠ Q"と彫られた文字が露呈される。
 着地したブレイド。すぐにカードを一枚取り、倒れたつーに向けカードを投擲。

 カードが身体に突き刺さり、つーは緑色に発光を始める。

  、
@*; 皿 )@『クソッ……許さない…仮面、ライダー……!』
  、
@*; 皿 )@『アタシ達の戦いを……邪魔しやがっ……てェ……―――』


 捨て台詞を残したつーは封印され、カードはブレイドの掌中に帰還。
 カードには二頭の山羊が対をなすように描かれ、"♠Q ABSORB"と記された。

59322話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:31:52 ID:QzhOKDJ.0


( OwO)「はぁ…はぁ…、上級アンデッド……倒した……!」


 遂に自らの手で上級アンデッドを倒せた。
 きっとジョルジュ達の存在なくしては倒せなかっただろう。
 仲間を想う気持ちが怒りとなり、ブレイドの力をより良く引き出すことが出来た。

 バックルに手を掛けハンドルを引き、変身を解除する。
 ブーンの姿へとなった途端に、全身の力がふっ、と抜けてしまった。

 _
( ゚∀゚)「ブーン!!」

( メ^ω^)「ジョルジュ……無事でよかった、ケガはないかお…?」
 _
( ゚∀゚)「……ったく、こんな時まで人の心配かよお前は。自分のこと心配しろ!」
 _
( ゚∀゚)「お前達のおかげで、俺達も生きてるよ…!」

( メ ω )「ならよかった……お」


 足元から崩れ落ち、ブーンの意識が途絶えた。
 力が抜けてしまい、必死に保ってた意識を自分から手放したのだろう。

 _
( ゚∀゚)「おい、おい?ブーン!どうしたんだよ!?おい!!」


 そこに、車椅子に乗ったカーチャンがクーに押され現れる。
 倒れたブーンを見つめ、どこか悟ったような表情を浮かべた。


J('ー`)し「……ホライゾン……あんた、こんなことしてたんだね……」

59422話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:33:43 ID:QzhOKDJ.0
 ――――――
 ――――
 ――


 植物園での戦いが終結を迎えた頃。
 カリスの手から逃れたミセリは、ある場所へ来ていた。


ミセ* ー )リ「……ふふ、封印されちゃったみたいね。あの山羊女」


 つーがブレイドに倒された事を、風の便りが報せてくれる。
 協力関係にあったものの、結局はアンデッド同士。もとは敵だ。
 つーが封印されたところで、微塵の悲しみも感じない。


「何の用ですか?」


 そこに、スーツ着た一人の男が現れる。
 耳にはピアスをし、腕には鷲のブレスレットを着け、更には指に輝く指輪も。
 身に着けたアクセサリーが多く見られる。
 

( ゚д゚ )「俺に何か話があると聞きましたが」


 現れたのは、以前上級アンデッドの集会に現れたうちの一人の男性。
 彼もまた、上級アンデッドであることが伺える。


ミセ*゚ー゚)リ「あなたに伝えたいことがあるの」

ミセ*゚ー゚)リ「……カリス、のことなんだけど」

( ゚д゚ )「!?カリスの…?カリスがどうかしたのか!?」

ミセ*゚ー゚)リ「それはね……フフフフ……」


 また一つ、他者を利用した新たな企みが生まれようとしている……。

59522話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:34:28 ID:QzhOKDJ.0





     【 第22話 〜甘い花の罠〜 】 終




.

59622話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:34:54 ID:QzhOKDJ.0

==========

 【 次回予告 】 https://www.youtube.com/watch?v=Yyh12l21WkA


( OHO)「ふうっ!!うおああぁッ!!!」

( OMO)「おい…ッ!ドクオやめろ!」

( #OHO)「俺の力だ!俺の力をよこせェッ!!」


 ギャレンの封印したアンデッドの力を求め、理性をなくし暴れ出すレンゲル。


( #OHO)「ぬぅおおおあァッ!!」

( ; OMO)「ぐあっ!?」

( ; OMO)「ッドクオ…!」

( #OHO)「さぁ、早く俺によこせ……そのアンデッドの力を!」

59722話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:35:17 ID:QzhOKDJ.0


( ゚д゚ )「俺のために酒を運んでくれる日が来るとは、夢にも思いませんでしたよ」

( ゚д゚ )「久しぶりですね、カリス。逢いたかった」

川 ゚ -゚)「……アンデッドか」


 また新たな上級アンデッドが動き始める。


( ゚д゚ )「…カリス、あの日交わした約束、今度こそ共に果たそう」

川 ゚ -゚)「約束……?」

( ゚д゚ )「ええ、一万年前の約束ですよ」


 クーとアンデッドとの間に交わされた約束とは一体?

59822話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:36:19 ID:QzhOKDJ.0

 *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『何!?』

( <::V::>)『……?』

( ^ω^)「なんだ…!?」
    。
ミミ/ ゚王゚)『おおおおおおおおッッッ!!』


 自らカリスに襲い掛かったミセリ。
 その手を阻み、カリスを守るようにして現れた新たな上級アンデッド。

    。
ミミ/ ゚王゚)『カリスに手を出すな!!』
  *∧Λ*
∠*;゚`ー´)ゝ『クッ、どういうつもり…!?』

( ^ω^)「どうなってんだお…?アンデッドがカリスを助けた!?」

59922話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:36:58 ID:QzhOKDJ.0


( OwO)「仮面ライダーとしての使命、お前にも背負えるようになったみたいだな!」

('A`)「どうかな……まだ俺にもわからない。でもこれだけは言える…!」

('A`)「俺は、仮面ライダーとしてみんなの笑顔を守りたい!!」


 そして、アンデッドとの戦いに自らの意志で身を投じようとするドクオ。
 その心に秘めた想いは、正義か、悪か。


('A`)「けど……今なら俺は自分の名を堂々と言える!」

('A`)「俺は、三葉ドクオ!そして……仮面ライダー……」

(#'A`)「仮面ライダー、レンゲルだ!!!」


    【 -♣OPEN UP- 】


( #OHO)「うおおおおおおおおおおおおッッ!!!」


 レンゲルに変身し、果敢に立ち向かうドクオ。
 果たして、正義のために戦うことが出来るのか!?


 次回、【 第23話 〜輝く勇気〜 】

 ――今、その力が全開する!


==========

600 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/14(日) 11:39:46 ID:QzhOKDJ.0
しおり

>>9 第15話
>>84 第16話
>>152 第17話
>>234 第18話
>>308 第19話
>>372 第20話
>>454 第21話
>>530 第22話


またそのうち

601名無しさん:2018/01/14(日) 18:26:21 ID:LSdCCzbg0


602名無しさん:2018/01/14(日) 22:14:08 ID:eSZ.mNCs0
おお、ジョルジュもかっけぇ。騙されてたけど


603名無しさん:2018/01/16(火) 17:55:39 ID:POqxCq.U0
おぉ乙!
加速して入り乱れてきたねぇ
モスやんのカード使ってでぃちゃん守るの熱いわぁ

604名無しさん:2018/01/18(木) 12:19:06 ID:x8qsNRlI0

最近ブーンに味方が出来てきてなにより
序盤はモララーブレブレだわクーにゃんは襲ってくるわギコは裏切るわでろくなことなかったからなぁ…

60523話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:38:32 ID:iHA3g/GI0





     【 第23話 〜輝く勇気〜 】




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60623話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:39:12 ID:iHA3g/GI0


( OHO)「ふうっ!!うおああぁッ!!!」

( OMO)「おい…ッ!ドクオやめろ!」

( #OHO)「俺の力だ!俺の力をよこせェッ!!」


 ギャレンが封印したアンデッドのカードを求め、暴徒と化すレンゲル。
 力への執着を露骨に見せ、相手が敵でもないギャレンであろうと構わず襲い掛かる。

 レンゲルラウザーによる攻撃を防ぎ、躱しながら制止の声を掛け続ける。
 しかし、その声は届かない。
 

( #OHO)「ぬぅおおおあァッ!!」

( ; OMO)「ぐあっ!?」


 "♣2のSTAB"の力を保有したままのラウザーの尖端が、とうとうギャレンの胸部を突いた。
 弾き飛ばされながらも、受け身を取りすぐに体勢を立て直す。


( ; OMO)「ッドクオ…!」

( #OHO)「さぁ、早く俺によこせ……そのアンデッドの力を!」


 尖端をギャレンに向けながら、ゆっくりと近付く。
 だが、すぐにレンゲルラウザーはギャレンから逸れた。
 こちらに近付く、一人の男の存在によって。

60723話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:39:44 ID:iHA3g/GI0


(-_-)「もういいだろ、その辺にしとけよ」

( OHO)「……ほう、あんた直々に来てくれるとは話が早いな」


 この状況を察して、ヒッキー自らが駆け付けて来た。
 正体をカテゴリーKだと見破り、その力を一番に欲するレンゲルは、当然その来着を喜んだ。
 レンゲルラウザーを構え、ギャレンを捨てヒッキーに向け走り出す。


( ; OMO)「おい…何をするつもりだドクオ!?彼は人間だぞ!?」

( #OHO)「お前の力が一番欲しいんだよ、俺もカテゴリーAもなァ!!」

( ; OMO)「よせ!!やめろドクオ!!」

( #OHO)「ああああああああああッッ!!!!」


 狂ったように声を張り上げながら、構えたレンゲルラウザーをヒッキーの脳天目掛け一気に振り下ろす。
 だが、眼前まで接近するレンゲルを見ても尚、ヒッキーは引き下がろうとしない。


(-_-)「……チッ、本意じゃないが仕方ねぇ」

(-_-)「わがまま坊やには少しお灸を据えてやらなきゃならないみたいだな…!」

( OHO)「なにッ!?」


 左腕を頭上に翳し、振り下ろされるレンゲルラウザーの尖端を受け止める。
 よく見ると、生身のヒッキーの左腕を覆うようにして風が纏っている。

 そして、攻撃を受け止めたままのヒッキーの姿が、一瞬にして異形の姿へと変貌を遂げた。

60823話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:40:45 ID:iHA3g/GI0


( ; OMO)「何だと……!?彼もアンデッドだったのか!?」

( OHO)「それがお前の本当の姿だな…!」
   。
< \゚皿゚/>『ああ、だが俺はお前と戦うつもりはない』

( ; OHO)「ぐふっ!」


 レンゲルラウザーを払い、異常なまでに発達した右腕から伸びる爪でレンゲルの顔を殴打する。

 遂にアンデッドとしての姿を露にしたヒッキー。
 スパイダーアンデッドを彷彿とさせるような、それに近い姿。
 紫色の身体に、橙色の左腕。
 スパイダーアンデッド同様、橙色のフードが顔を隠している。
 肩に生えた、蜘蛛の足を象った触角。その太さは、まるでタランチュラの如く。


( OHO)「この野郎…ッ!!」


 殴られた頬を抑え、もう一度襲い掛かる。
 ヒュンヒュン、と振るいレンゲルラウザーを構え直し、今度は跳躍しながらの攻撃。

   。
< \゚皿゚/>『はっ!』

( ; OHO)「うっ!?」


 宙に飛ぶレンゲルに向け伸長する左腕から、ヒッキーは蜘蛛の糸を射出。
 蜘蛛の糸が全身を絡め取るように拘束し、身動きが取れなくなったレンゲルはそのまま落下。

 ヒッキーが放った蜘蛛の糸は、拘束を目的としたただの粘着質な糸ではない。
 毒の成分を含み、これに触れた者の身体を麻痺させる効果を持つ。

60923話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:41:28 ID:iHA3g/GI0


( ; OHO)「ぐっ…!か…身体がァ…ッ!」
   。
< \゚皿゚/>『ちょっと苦しいかもしれないが、そのまま大人しくしてろ』


 倒れるレンゲルを見下ろしながら、ヒッキーは人間の姿へと戻る。
 レンゲルは身体が麻痺し、強引に糸をぶち破ろうにも力が入らない。

 苦しむレンゲルをそのままに、ヒッキーは呆然としたギャレンに近付く。
 アンデッドとしての姿を見た以上、ギャレンも警戒心は持ったようで、すぐに立ち上がりヒッキーとの距離を取った。


(-_-)「おいおいやめてくれよ、俺はそういうの嫌いなんだ」

( OMO)「どういうつもりだ、何故人間社会に潜んでいる?」

(-_-)「はぁ……俺は戦いとかしたくないから。争うのも嫌だし、アンデッド同士の戦いなんて昔っから御免なんだよ」

( OMO)「なんだと?」

(-_-)「俺みたいなのは、こうやって平和に過ごす方が性に合ってるってことだ」

( OMO)「……剣藤は知ってるのか?」

(-_-)「知るわけないっしょ。あんたにしろ他の連中にしろ、俺の正体知ったらどうせ警戒するくせに」

(-_-)「俺だってな、一応人との絆は大事にしたいんだよ。
     自分の姿が原因で、せっかく作った関係を崩すのは……嫌なんだよ」

( OMO)「………」


 今ここで全てを否定することが出来なかった。
 ヒッキーのように、人との生活に溶け込んでいるアンデッドを、もう一人知っているから。

61023話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:42:48 ID:iHA3g/GI0


(-_-)「まぁ…信じる信じないは任せる、アンデッドを全て倒すのがあんたらの役目だろうしな」

(-_-)「でもひとつだけ忠告だ」

( OMO)「…なんだ」

(-_-)「そこの坊やには注意しとけ、そいつはカテゴリーAの意志にまんまと乗せられてる。
     そいつがそれを乗り越えるには、そいつ自身の心を強くする必要がある」

(-_-)「そいつの心の闇に光を差してやれ。無理に闇を消す必要はない。
     両方抱えるってことを、あんたらが教えてやれよ」

( OMO)「……何故そこまでドクオを気にかける?」

(-_-)「決まってんだろ?こっちは平和に暮らしたいのに、そいつのせいでそれが脅かされてんだ。
     しっかり管理してくれないと俺が困るんだよ」

(-_-)「じゃ、俺そろそろ仕事戻るから」


 言って、ヒッキーは軽く手を振りながら店に戻って行った。
 ヒッキーの背中を見届けると、ギャレンは変身を解除。
 モララーの姿に戻り、倒れたままのレンゲルに近付く。


( ・∀・)「……ドクオ」

( OHO)「………こんなんじゃ、俺はライダーとしてやってけない」


 レンゲルの身体を拘束していた蜘蛛の糸は、溶けるように消滅。
 上体を起こし、バックルのシャッターを閉じレンゲルの変身を解除する。

61123話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:43:29 ID:iHA3g/GI0


 変身を解除したドクオの顔は、どこか思いつめた表情をしていた。


('A`)「俺は……確かにあいつの言う通り、どこかで正義のために…人を守るために戦いたいって思ってるところがある」

( A )「でも……今の俺は弱い、そのためには力が必要だろ!?
   カテゴリーAが戦い方を示してくれるけど、それだけじゃ駄目なのは俺だって分かるよ!」

( A )「俺にも良く分からないんだよ…!さっきみたいに、力を欲しがるあまり我を忘れるんだ!
   目の前が真っ暗になるみたいに何も見えなくなる!
   でも今は、それが我を忘れてたんだって理解出来る……」

( A )「俺は昔から、何度も人を助けようと思っても行動に移せなかった。自信がないんだ…。
   どうせ何か言われるとか、俺みたいなのに何が出来るんだとか思うと……」

( ・∀・)「……そうか」

('A`)「……けど、どこかでこうも思ってる自分がいる」

('A`)「過去に俺を寄って集って殴り、いたぶり、蔑んだ奴らを許せない…って。
   奴らを見つけ出して、俺が受けたいじめと同じことを…いや、それ以上の報復をしてやりたいって」

('A`)「もう過ぎたことだから…なんて済ませられる程、俺にとっては簡単なことじゃない。
   今目の前に現れて謝られても……許せない自信がある」

('A`)「そんな俺の心に抱えた闇の部分に、カテゴリーAが触れてくるんだ。
   そうすると、許せないって思いが強くなって、強くなり続けて……力を求めて動き出したくなる。
   自分を抑えられなくなって、無性に戦いたいって最近思うようになった……」

( ・∀・)「………」


 ドクオの口から語られる真実。
 カテゴリーAがドクオに及ぼす影響は、やはり悪い方向にしか進んでいないことは確かだ。
 モララーが想像していた以上に、ドクオの問題は深刻だ。

61223話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:45:04 ID:iHA3g/GI0


 だが、決心は着いた。
 これで、きちんとドクオと向き合えるかもしれない。


( ・∀・)「ドクオ」

('A`)「…はい」

( ・∀・)「正義のために、人の為に戦いたい……そう言った君が俺は嫌いじゃない」

( ・∀・)「けど、君はまずライダーとして強くなろうとする前に、人として強くなるべきだ。
      人を救いたいのなら、まず自分の抱える弱さに左右されない精神を持たなきゃならない。
      自分に迷いのある人間が、他の人を救うことなんて出来ないぞ」

( A )「……じゃあどうすればいいんだ!」

( ・∀・)「俺が君に戦い方を教えてやる」

('A`)「え……?」

( ・∀・)「剣藤にもこう言って、結局あいつには何も教えなかったな……。
      でも、あいつは戦いの中で自分の戦い方を身に着けた。君にも出来るはずだ」

( ・∀・)「自分が強くなれば、自分自身の迷いも打ち消せるはず。
      だからまずは君が強くなれ、ライダーの力云々ではない。君自身が強くなるんだ」

('A`)「……出来るのかな、俺に……」

( ・∀・)「やる前から弱音を吐くな!やりもしないで変わることなんて何もないぞ!」

('A`)「……!」

( ・∀・)「どうした、やるのかやらないのか。答えは待たない、今すぐ決めろ」

61323話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:45:45 ID:iHA3g/GI0


('A`)「………やります」

( ・∀・)「聞こえないぞ?」


 一筋の光を見出した。
 未だ身体は痺れるが、それでも強引に起き上がりモララーの前に立つ。
 その真剣な眼差しで、モララーを見つめた。


('A`)「ッ…やります、俺はやる!俺は変わりたい、強くなりたい!
    どんな辛いことにも耐える、耐えて耐えて…そして生まれ変わりたい!!」

('A`)「俺に、戦い方を教えてください!モララーさん!!」


 両手を腿につけ、指先を伸ばし頭を深々と下げる。
 それまでドクオを厳しい目付きで見ていたモララーだったが、ドクオの肩を叩きようやく笑顔を見せた。


( ・∀・)「……その言葉を待ってた」

( ・∀・)「焦らなくて良い、ゆっくりでいいんだ。君が強くなってカテゴリーAを押さえ込め」

('A`)「モタモタしてたらまた誰かがアンデッドに襲われる…ゆっくりなんてしてられません!」

( ・∀・)「……そうだな、君の言う通りだ。剣藤達と共に戦うライダーとして、一日でも早く成長しよう。
      俺も君と一緒に、もう一度鍛錬を積むつもりで臨もう!」

( ・∀・)「お前なら、出来る!」


 かつて、尊敬する先輩や頼もしい仲間、愛する者から言われた言葉。
 今度は、自分がこの言葉を託す番。


('A`)「はい、お願いします!」

61423話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:46:12 ID:iHA3g/GI0





 ―――――




.

61523話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:46:35 ID:iHA3g/GI0


 ――翌日。

 とうとう迎えた母親の再入院日。
 ツンとジョルジュを連れ、見慣れた病室へとやってきた。

 昨日の植物園は、再入院を控える母親との思い出作りにとって最悪な惨事となってしまった。
 もはやゆっくりと観覧することも出来ず、すぐに家に引き返しブーンはケガの治療に努めた。
 でぃは、あの後クーと一緒に別の花屋で、モスに手向ける花を買ったらしい。


J('ー`)し「みんな、荷物まで持たせちゃって悪いわねぇ」
 _
( ゚∀゚)「いいんですってば、まったくお母さんは気ィ遣いだなぁ」

ξ゚⊿゚)ξ「あっという間でしたけど、たくさんお話出来て楽しかったです。
      これからは私達もお見舞いに来ていいですか?」

J('ー`)し「もちろん、来てもらえるだけでありがたいわ」

ξ゚⊿゚)ξ「よかった!何か欲しいものとかあったら遠慮なく言ってくださいね?」

J('ー`)し「ありがとね、ツンちゃん。ジョルジュくん」

( ^ω^)「本当助かるお、僕も来れるときは来るつもりだけど…」

J('ー`)し「……ねぇ、ちょっと息子と二人で話してもいいかしら?」

ξ゚⊿゚)ξ「あっ、はい。じゃあ私達は表で待ってるね」

( ^ω^)「ん?おお」

61623話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:47:10 ID:iHA3g/GI0


 自分の息子が仮面ライダーであることを打ち明けない理由は知っている。
 心配を掛けまいと、あえて言わないのだ。
 自分が育ててきただけあって、考えてることが手に取るように分かる。

 だからこそ、こちらから解いてやるべきだと考えた。


J('ー`)し「ホライゾン」

( ^ω^)「なんだお?」

J('ー`)し「あんた、カーチャンに隠してあんな危ないことしてたんだね?」

( ; ^ω^)「え……何がだお?」


 昨日の戦いのあとでも、ブーンはあえてカーチャンに言わなかった。
 自分がライダーであることを。
 聞かれもしなかったからか、きっとバレてない。勝手にそう思い込んでいたようだ。


J('ー`)し「カーチャンを前にして嘘をつくのはやめな、あんたは嘘はつけないんだから」

( ; ^ω^)「………」

J('ー`)し「あんたが何で隠してたかは分かるさ、心配掛けたくなかったからだろう?
     でもね…あんたが心配なのはいつもの事だよ」

J('ー`)し「さぁ、全部カーチャンに話しなさい」

( ^ω^)「………実は」

61723話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:47:42 ID:iHA3g/GI0


 すべてを話した。
 仮面ライダーになったきっかけ、ツンやジョルジュ達との本当の関係。
 ニュース等で報道される化け物がアンデッドだということ。
 そして……父親であり、カーチャンの元夫であるロマネスクが、仮面ライダーの開発をしていたこと。


J('ー`)し「……そうなんだね、あの人が……」

( ^ω^)「父ちゃんの事もあったから余計言いにくかったんだお」

( ^ω^)「今まで黙っててごめんお…」

J('ー`)し「話してくれたんだから、いいんだよ」

( ^ω^)「……僕は今でも父ちゃんを許せないって思う。周りに止められたけど、きっと殴ってもおかしくなかった」

( ^ω^)「カーチャンは、父ちゃんのこと今はどう思ってるんだお…?」

J('ー`)し「そうねぇ……あの人が何かのために一生懸命になってるのは知ってたよ。
     でも、それと私達の両立が出来なかったのかもしれないね。
     あの人も器用な方ではないから……カーチャン達のことを想って出て行ってしまったのかもね」

J('ー`)し「カーチャンは、今ではなんとも思ってないよ」

( ^ω^)「そっか……」

J('ー`)し「今度はカーチャンが聞く番ね。
     あんたは、仮面ライダーっていうのやってて自分でどう感じてるんだい?」

61823話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:48:41 ID:iHA3g/GI0


( ^ω^)「僕は……仮面ライダーをやって、よかったって思ってるお」

J('ー`)し「……そんなにボロボロになってもかい?自分が死ぬかもしれないんだよ?」

( ^ω^)「大丈夫だお、僕は死なない。それに……」


( ^ω^)「仮面ライダーって、みんながみんななれる訳じゃないんだお。
      僕がその仮面ライダーになれたのは、偶然なんかじゃなくて"運命"だと思ってる」

( ^ω^)「最初はそりゃあ怖かったお……アンデッドだって怖かったし、剣を握るのだって怖かった」

( ^ω^)「でも怖がってる暇なんてなかった。僕が怖がってる間に、目の前の人が傷つき、殺されてしまう……。
      僕達が人間を守らないと、アンデッドによって次々と人が殺されてしまう。
      そんなのは、絶対に見過ごせないって思ったお」

( ^ω^)「だから、ライダーになった僕は人を守らなきゃならない。僕にはその使命があると思ってる。
      どれだけ傷付いても、苦しいこと悲しいことがあっても、全部乗り越えたい」

( ^ω^)「……けど、そんな自分に矛盾してることがあるんだお」

J('ー`)し「なんだい?」

( ^ω^)「カーチャンだから言うお。……クーさんって人、あの人は人間じゃないんだ」

J('ー`)し「え……?」

( ^ω^)「あの人はアンデッドなんだお。人間の姿を借りたアンデッド…僕達が倒さなきゃならない相手なんだお」

( ^ω^)「アンデッドは人間の敵なのに……僕は、クーさんがショボンさん達に抱いてる愛情を信じてしまってる。
      一度は信じることをやめようとして、衝突したこともあった。けど……無理だったお」

( ^ω^)「どうしたらいいのかな……僕は、クーさんを倒したくない。
      でも、アンデッドはいつか必ず倒さなきゃならない……全てのアンデッドを封印するのが僕達の仕事だから」

61923話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:49:15 ID:iHA3g/GI0


J('ー`)し「……まったく、そんなことかい?」

( ^ω^)「そんなこと、って……真面目に悩んでるんだお!」

J('ー`)し「要するに、クーさんはアンデッドでも人間になろうとしてるってことじゃないのかい?」

( ^ω^)「……!」

J('ー`)し「人間だってそうだろう?本当に大事に思ってるものっていうのは、どんな理由があろうと手放せないものだよ。
     アンデッドっていうのがどんなものか知らないけどねぇ…カーチャンは感じたよ」

J('ー`)し「クーさんは無口で自分の感情を表現するのが上手じゃないけど、本当は優しい心の持ち主だ。ってね」

J('ー`)し「仕事とか使命とか、そんなものを考えるから駄目なんじゃないか。
     あんたはクーさんをどうしたいんだい?その答えは、もうとっくに自分で見つけてるはずだよ」

( ^ω^)「………」

J('ー`)し「いいかい?自分が本当に信じたいものを信じなさい。
     形だけに捉われたら、本当に大事なものも見えないよ」

J('ー`)し「自分が本当に後悔しない道を選びなさい」

( ^ω^)「本当に大事なもの……後悔しない道……」


 仮面ライダーであることの使命、それに反する許されない想いに挟まれ、どうしていいか分からなかった。
 けれど、カーチャンの言葉でどこかふっ切れたような、そんな気持ちになった。
 曇っていた心が、晴れた気がする。

62023話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:49:44 ID:iHA3g/GI0


J('ー`)し「あんたがボロボロになりながら戦う姿、カーチャンは誇らしいよ。
     けどね、自分の子が痛い思いをするのはどんな親でも心配するものだよ」

J('ー`)し「だから……無茶だけはしないでおくれよ」

( ^ω^)「……うん、分かってる」

( ^ω^)「僕は一人じゃない。ツンやジョルジュ、モララーさんもいる。何より……僕にはカーチャンがいるお」

( ^ω^)「みんなを守るのが僕の仕事だお、だから…僕は絶対に死なない」

J('ー`)し「うん、ならいいよ」

( ^ω^)「……きっと、父ちゃんとも力を合わせることになると思う」

J('ー`)し「いいじゃないか。あんたももう、過去を引きずらないで前を向きなさい。
     いつまでもあの人に当たり強くしたってしょうがないことだよ」

( ^ω^)「……出来るかなぁ、そんなこと」

J('ー`)し「人を守るため、でしょう?」

( ^ω^)「うっ……痛いとこ突かれたお」

J('ー`)し「ふふふ」


 
 こうして、カーチャンは再び家を離れ、病院に戻った。
 ライダーとしての戦いに明け暮れ、まともに時間を作れなかったブーンにとって、とても充実した時間となった。
 抱えていた悩みも……これで全部ふっ切れた。
 
 また心を新たに、戦いに臨むことになるだろう。

62123話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:50:11 ID:iHA3g/GI0





 ―――――




.

62223話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:50:38 ID:iHA3g/GI0


 その日の夜。
 営業中のバーボンハウスは、いつものように静かに賑わっていた。
 誰も喧しく騒がず、皆が心地良く居られる空間。

 カウンターには、注文を受けた酒をグラスに注ぐショボンの姿が。
 渡辺は客席で注文を伺っている。
 姿の見当たらないクーは、でぃの買い物に付き添い外出中だった。

 ベルを鳴らしながらドアが開かれる。
 ちょうど、買い物に出ていたクー達が帰ってきた。


(#゚ -゚)「ただいま〜」

川 ゚ -゚)「戻りました」

(´・ω・`)「あっ、クーちょっと来て」

川 ゚ -゚)「はい」

(´・ω・`)「帰って来て早々悪いんだけど、あちらのお客様にこのお酒運んでもらっていいかな?」

川 ゚ -゚)「分かりました」


 ショボンの頼みを聞き入れ、用意されたトレーにグラスを置き、指示された客席のもとへと運ぶ。
 その客は、奥の方に一人で座っている。
 背中を向けていて分からないが、ぱっと見た印象では、スーツを着た男性のようだ。 


川 ゚ -゚)「お待たせ致しました」


 トレーの上のグラスを手に取り、客の前にそっと置く。


「ありがとうございます、カリス」

川 ゚ -゚)「……え?」

62323話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:52:32 ID:iHA3g/GI0


( ゚д゚ )「俺のために酒を運んでくれる日が来るとは、夢にも思いませんでしたよ」

( ゚д゚ )「久しぶりですね、カリス。逢いたかった」

川 ゚ -゚)「……アンデッドか」


 カリスの名を強調するこの男……。
 上級アンデッドの集会にも現れ、ミセリと話をしていた男だ。
 クーの顔を見つめると、少しだけ笑ってみせた。


( ゚д゚ )「もちろん、俺達は人間じゃない」

川 ゚ -゚)「私と戦いたいのなら姑息な真似はするな。いつでもやってやる」

( ゚д゚ )「まさか…俺はあの女のような卑怯な真似は嫌いだ。
    誰かを人質に取った平等ではない戦いなど恥ずべきもの。俺達は誇り高き戦士であるべきなのだから」

川 ゚ -゚)「分かっているならいい」

( ゚д゚ )「…カリス、俺があなたの前に現れたのは他でもない

( ゚д゚ )「あの日交わした約束、今度こそ共に果たそう」

川 ゚ -゚)「約束……?」

( ゚д゚ )「ええ、一万年前の約束ですよ」

川 ゚ -゚)「何のことだかさっぱり分からないな」

62423話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:53:41 ID:iHA3g/GI0


 そこに、渡し忘れたお通しを持ったショボンが近付く。


(´・ω・`)「クーごめん、お客様にお通し出すの忘れ――」

( ゚д゚ )「カリス……何を言っているんですか!?俺達は確かに一万年前、約束したはずだ!」

川 ゚ -゚)「知らないと言っている、私は一万年前に他のアンデッドと馴れた覚えは無い」

(´・ω・`)「っ……!」


 だが、ショボンは反射的に足を止める。
 そして、自分の存在がバレないように、物陰に隠れた。


(´・ω・`)(……何を話してるんだ?)


 話している内容が、普通の会話ではないことは理解出来た。
 言い争っているというよりは、何かについて話している。
 内容からしても、二人はお互いに顔見知りだと察する。


( ゚д゚ )「……忘れてしまったというのですか。
    俺達は友であり、互いに認め合う好敵手だったはず…思い出してください」

川 ゚ -゚)「お前の妄想に付き合うつもりはない。……相手ならいつでもしてやるが、また今度にしてくれ」

( ゚д゚ )「そうだ…あなたは何故人間などと暮らしているのですか?こんな下等生物共と…」

川 ゚ -゚)「酒を飲んだら帰れ」

62523話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:54:35 ID:iHA3g/GI0


 それ以上の言葉を無視して、クーは早足で立ち去った。
 男はクーの背中を見つめると、差し出された酒を一気に飲み干す。


( ゚д゚ )「……ふん、確かに美味い。人間の食い物、そして酒は……」

( ゚д゚ )「カリス…何故だ、何故あのように変わってしまった?
    人間など、この地球に生きとし生ける命を無駄にするろくでもない種族ではないか…!」

( ゚д゚ )「あの女の言葉など信用するつもりはないが……」

(´・ω・`)(どういうことだ……一万年前の約束?好敵手?)


 二人の会話は、ただ謎を深めるだけだった。
 だが、同時にクーへ隠し持っていた疑念が、更に増幅する。

 柱に隠れるのをやめ、改めてお通しを男の席へと運び出す。


(´・ω・`)「お客様、こちらお通しになります。遅くなってしまい大変申し訳ございません」

( ゚д゚ )「いえ、急用を思い出したので…私はこれで失礼します。お気遣いいただき感謝します」

(´・ω・`)「あ……いえ」


 男は席を立ち、会計へと向かう。
 あわよくばクーのことを聞こうと身構えたあまり、反応が遅れてしまった。

 疑問を抱きつつも、触れてはいけないと思っていたはずなのに。
 クーが何者なのか…その答えを、求めてしまいそうになる自分がいた。

62623話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:55:37 ID:iHA3g/GI0

 ――――――
 ――――
 ――


( ^ω^)「こんな時間から?」

( ・∀・)「うん、ドクオの希望だからね」


 戦い方を教える。ドクオとそう約束したモララーは、ジャージを着込み夜の訓練に出る準備をしていた。
 時刻は既に21時を回っていて、もちろん他の三人は心配した。


ξ゚⊿゚)ξ「大丈夫なの?」

( ・∀・)「大丈夫かどうかを考えるのは後にするよ、今は自分の出来ることに最善を尽くす。それしか考えてない」

( ^ω^)「ドクオのやつ、本当にやる気なのかお」

( ・∀・)「俺に強く願い出たあいつの心を、俺は信じたいと思ってるよ」
 _
( ゚∀゚)「んだよ、モララーさん急に立派になりやがって」

( ・∀・)「はは、だろ?甘えてばかりだった分、今度は俺が動かないとな」

( ^ω^)「無理しないでくださいお、夜は冷え込むし…アンデッドもいつ現れるか分からないし。
      モララーさんいないと僕一人じゃ大変なんですから」

( ・∀・)「分かってるって、心配するな。一応ベルトとサーチャーは持ってくけど、何かあったら連絡してくれ」

ξ゚⊿゚)ξ「気を付けてね!」


 荷物を纏め上着を羽織ると、言ってモララーは外に出て行った。

62723話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:56:26 ID:iHA3g/GI0

 _
( ゚∀゚)「本当に大丈夫か?ドクオの奴」

( ^ω^)「さぁ……でも、自分でやりたいって目標が見つかったんなら良いことだお」

ξ゚⊿゚)ξ「後はドクオさんの気持ちの問題ね、投げ出したりしなければいいけど」

( ^ω^)「まぁ、モララーさんに任せるお。僕は戦い方とか訓練とかそういうの教えられないし……」


 そう話しながら、ブーンは冷蔵庫の前に移動。
 扉を開け、中から白い箱を取り出すと自分の顔の前にかざし、にやけた。


( *^ω^)「モララーさんには悪いけど、僕はこの間にケーキ食っちゃうお」
 _
( ゚∀゚)「……そうだな」


 ブーンに乗り気になるわけでもなく、静かにそう呟く。


ξ゚⊿゚)ξ「あんた昨日から元気ないけど…まだアンデッドの女のこと引きずってるの?」
 _
( ゚∀゚)「そんなんじゃ……あるよ」

ξ゚⊿゚)ξ「あるんじゃん」
 _
( ゚∀゚)「だってよ…!一目惚れした女がアンデッドだったなんて、ショックだろ……」
 _
( ゚∀゚)「それに俺のせいで大事になっちまったんだ……」

62823話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:57:24 ID:iHA3g/GI0


( ^ω^)「あの女は僕も許せないお。弱みを握ろうとして人を騙して…山羊のアンデッドより残忍な奴だったお」

( ^ω^)「見つけ出したら必ず封印してやるから、ケーキでも食って元気出せお。ほら」


 白い箱からショートケーキを三枚の皿に一個ずつ乗せ、ツンとジョルジュの前に配る。
 椅子に座ると、ふんわりとしたケーキにフォークを通し、一足先に頬張る。

 _
( ゚∀゚)「はぁぁ……あれだけ俺を嫌ってたクーさんにも助けられるしよ、マジで立場がねぇよ……」

ξ゚⊿゚)ξ「はいはい、でもよかったじゃない」
 _
( ゚∀゚)「何がだよ」

ξ゚⊿゚)ξ「クーさん、何だかんだ言ったってあんたも助けてくれたんでしょ?言うほど嫌ってないのかもよ」
 _
( ゚∀゚)「俺を助けたほうが都合が良かったって言ってたぜ……」

ξ゚⊿゚)ξ「それはそれよ、助けられたのは事実でしょ」
 _
( ゚∀゚)「そうだけどよぉ……」

( ^ω^)「もういつまでもウジウジしてんなお、お前のケーキ食っちゃうお」
 _
( ゚∀゚)「ッふざけんな!これは俺のだろ!」

( ^ω^)「じゃあとっとと食って忘れるんだお、男らしくないぞ」
 _
( ゚∀゚)「………ああクソ!」


 自棄になりながらフォークを持ち、ケーキのど真ん中に突き刺す。
 大きな口を開けると、一口で無理矢理ケーキを押し込んだ。

62923話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:59:01 ID:iHA3g/GI0


 一方、ドクオとの特訓をするため待ち合わせ場所に向かったモララー。
 到着すると、そこには既にドクオが待機していた。


( ・∀・)「悪いな、待たせて」

('A`)「いえ、こんな時間なのにありがとうございます」

( ・∀・)「剣藤も言ってたよ、応援してるって」

('A`)「そうですか…よかった、俺のこと嫌いになったかと思ってたから」

( ・∀・)「みんなお前を応援してる。その気持ちにも応えてやらないとな」

('A`)「はい!」

( ・∀・)「さて、早速だけど行きたい場所がある。着いてきてくれ」


 何の変哲もない場所。
 特徴をあげるなら、目の前に何かしらの建物の裏口らしきドアがあるくらいだ。

 すると、モララーがそのドアの前に立つ。
 ポケットから何やらパスのようなものを取り出すと、ドア上部に張られた"立入り禁止"の張り紙にパスをかざした。
 パスを読み込んだのか、ピー、という機械音が鳴ると、鍵の開く音がした。

 ドアノブに手を掛け、その扉を開ける。


( ・∀・)「行くぞ」

('A`)「は……はい」

63023話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 10:59:33 ID:iHA3g/GI0


 中に入ると、まず目に飛び込んできたのはひとつのエレベーター。
 ドクオは戸惑いながらも、モララーに導かれるままにエレベーターに乗り込む。
 パネルには、一階と地下一階を指すボタンのみ。
 現在地は一階、地下に行くのだろう。


('A`)「あの……どこに行くんですか?」

( ・∀・)「今の君に全てを明かすことは出来ない。けど、君が鍛えるための場所ということだけは言える」


 より不安が募る。
 一体、何が待ち受けているのか。

 地下に到着し、エレベーターのドアが開く。
 落ち着かぬまま、ドクオは先にエレベーターから降りた。

 そして、目の前に広がる光景に驚愕することになる。


('A`)「うわ……なんだここ……!」


 灰色の壁に覆われた、広々とした地下施設。
 スポーツジムなどでよく備えられている、身体を鍛えるための器具が立ち並び、剣や槍を模した棒がいくつもある。
 マットや、バッティングセンターのような設備まであるこの空間。
 ドクオには、とても異端な光景に見えた。


( ・∀・)「ここは、俺が前にいた組織がつくった施設だ。鍛える場所でもあり、訓練を行う場所でもある。
      特別に使用許可をいただいた。君にはここで己を鍛えてもらう」

('A`)「すげぇ……」

( ・∀・)「厳しいものになるぞ、覚悟は決めたか?」

('A`)「…はい、やります!」

63123話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:00:29 ID:iHA3g/GI0

 ――――――
 ――――
 ――


 モララーがドクオを案内したのは、バッティングの設備。
 しかし、手にはグローブを着けている。


( ・∀・)「動体視力…俺がギャレンになるために積んだ基礎訓練のひとつだ」

('A`)「動体視力…?バッティングでですか?」

( ・∀・)「見てろ」


 球を投球する機械が稼動を始める。
 先端に球を乗せたアームがゆっくりと上昇し、一気に振りかぶった。
 豪速球の球が、モララーに向け猛突進していく。

 モララーは動かない。
 100km以上は必ず出ているであろう速度で迫る球。だが、彼にはとてもスローに見えている。


( ・∀・)「―――3!」


 言って、グローブで球をキャッチした。


('A`)「…??」


 何をしているのかさっぱり分からず、困惑すら覚える。
 しかし、モララーがキャッチした球をドクオに向けた瞬間、ドクオは絶句した。

63223話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:01:09 ID:iHA3g/GI0


(;'A`)「!?」

( ・∀・)「分かったか?」

(;'A`)「あんだけ速い球に書いてある数字を……読んだのか……!?」


 見せられている球には、確かに数字の"3"と書かれている。
 モララーが何をしたのかを理解し、驚きが隠せない。
 そして、今からこれを自分がやると考えた途端、諦めの心が生じてしまった。


( ・∀・)「150kmの速球だ。投げられる球に書かれた数字を読み取れ」

(;'A`)「……は、はい……」


 困惑しながらも、渋々手にグローブを装着。
 モララーの立っていた場所にドクオが立ち、今から投げられるであろう豪速球に怯えながら、その時を待つ。

 
 球が投げられた。
 向かい合うにはとても恐ろしい速度の球が、ドクオにあっという間に迫った。


(;'A`)「ごっ、5!!」

( ・∀・)「7!」

(;'A`)「うわっ!!」


 球をキャッチせず、恐怖に耐えかね避けてしまった。
 後ろのネットに跳ね転げ落ちた球をモララーが拾い、ドクオに見せ付けた。

63323話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:02:13 ID:iHA3g/GI0


( ・∀・)「でたらめを言うな。その目でちゃんと視認出来るまで答えるな」


 モララーは、ドクオの後ろで投げられた球の数字を答えていた。
 球に書かれた数字は……"7"。


(;'A`)「ちょ、ちょっと待ってください…!いきなりこれはさすがに無理ですよ!」

( ・∀・)「諦めるのか?出来ないことをすぐに無理と決め付け、簡単に諦めてしまう。それがお前の弱点だ」

(;'A`)「でも……!」

( ・∀・)「でも?だって?ちょっと?そんなことを言うために来たのか?その弱い心がカテゴリーAにつけ込まれるんだ!」

(;'A`)「っ………」

( ・∀・)「最初から出来ることなんて何もない、出来ないから出来るようにするんだ。
      一日も早く成長したいと望むのであれば、このくらいのことやり遂げてみせろ!」

( ・∀・)「でなければ、君はずっと辛い思いをしたままだぞ」

('A`)「………やります」

('A`)「俺は変わりたい……こんな弱い自分と、決別したい!」

( ・∀・)「そうだ、変わりたいという心を持ち続けろ。これは自分との戦いだ、自分の弱い心に抗い続けろ!」

('A`)「はい……!」

63423話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:02:58 ID:iHA3g/GI0


 その日から、ドクオは毎日毎日欠かさず懸命に特訓に励んだ。


( ・∀・)「終わりか?」

(;'A`)「ッ……まだだ!!」

( ・∀・)「ふっ!」 バシィッ!

(;'A`)「うあっ!」

( ・∀・)「立て、まだ棒は俺が持ってるぞ。奪ってみせろ」

(;'A`)「うっ……クソ……」

( ・∀・)「どうした、そんな弱腰で本当に自分の力でアンデッドと戦えると思うのか!?」

(;'A`)「ぐうううう……!!!」

( ・∀・)「行くぞ!」

(;'A`)「ううっ!ああっ…!」


 汗をかき、時には血を流し、悔しさや辛さで涙を流すこともあった。
 モララーの付き添いのもと、厳しい言葉を浴びせられながら。

 それでも、諦めてしまいそうになる心に鞭を打ち続けた。
 変わりたい……そう強く願い、己の心を鍛え続けた。

63523話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:03:39 ID:iHA3g/GI0


 ――――――
 ――――
 ――


 一週間以上が経ち、ドクオは自らバッティングに再び立つ。
 グローブを手に装着し、両足をしっかりと地に着け目の前を見据える。
 

('A`)(来い…!)


 豪速球を生むアームが、球を投げた。
 真っ直ぐドクオに接近する球。
 以前までは、この球にすら怯えて避けてしまっていた。
 しかし、ドクオに避ける様子はない。

 そして……


('A`)「8!」


 パシンッ!と音を放ちながら球をキャッチした。
 球を手に取り、書かれた数字を確認する
 

('A`)「………」

('∀`)「……よし!」


 球には確かに、"8"と書かれていた。
 当てずっぽうでも、感覚でもなんでもない。ドクオの目に、確かに"8"の字が見えた。

63623話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:04:16 ID:iHA3g/GI0


 今度は棒術の訓練。
 モララーが棒を持ち、再びドクオに襲い掛かる。

 以前までは、一方的に殴打されまったく歯が立たなかった。


( ・∀・)「はっ!」

('A`)「――ッ!」


 顔に向け突きつけられた棒先。
 ドクオには見える。モララーが振るう棒の動きが。

 首と身体を瞬時に傾け、突き攻撃を躱す。
 続いて振り下ろされる棒を軽々と避け続け、横薙いだ棒は頭を下げ回避。

 今度は胸部を狙った突き攻撃。
 ドクオはそれを避けつつ……その棒を掴んだ。


( ・∀・)「!!」

('A`)「ふっ!」


 掴んだ棒でモララーを振り払い、返しながら的確に頬を殴打した。


( ・∀・)「うっ…!」

('A`)「見えた……!確かに見えた!」

63723話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:04:50 ID:iHA3g/GI0


( ・∀・)「いいぞドクオ、一週間程度でそこまで身につけるのは素質があるよ」

('A`)「……そ、そうですかね?」

( ・∀・)「もっと素直に喜べ、やっぱり君はやれば出来るんだから。
      君は毎日、長い時間自ら進んで特訓に励んだ。その強い姿勢が…努力が実を結んだんだ」

('A`)「………」


 奪い取った棒を見つめる。
 ドクオには、この棒がレンゲルラウザーに重なって見えていた。
 

('A`)「俺、自分の力で戦えるかな……」

( ・∀・)「そのために今はひたすら努力をするんだ。そうすれば、必ず自分の意志で戦える」

( ・∀・)「だが、まだまだ特訓は終わらないぞ。特訓を続けて、その感覚を磨くんだ」

('A`)「はい!」

( ・∀・)「さて、次は―――」


 次の訓練に臨もうとした時、モララーの荷物から音が鳴り響く。
 ロマネスクより送られた、小型のアンデッドサーチャーだ。
 いち早く音に気付き、荷物の置かれた場所まで走り、サーチャーを確認。


( ・∀・)「アンデッド…!」

('A`)「アンデッド?現れたんですか!?」

63823話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:05:11 ID:iHA3g/GI0


( ・∀・)「ああ、ここからだと近い…君はここで待ってろ!」

('A`)「ッ…俺も行きます!」

( ・∀・)「まだ駄目だ!君は自分を鍛えるのが先だ!いいな!?」

('A`)「でも…!」


 逸るドクオを強引に押さえつけ、モララーは急いでエレベーターへと向かった。
 
 単身残されたドクオは、荷物よりレンゲルバックルを取り出す。
 手に持ったままの棒とバックルを交互に見つめ、唇を噛み締めた。


('A`)「……そうだな、焦るな。一日でも早く成長するために、今は自分を鍛えるんだ」


 アンデッドと戦いたい……不思議と心に湧き上がる戦意。
 それがカテゴリーAによる影響だと、理性を持って察することが出来ただけでも大きな成長だ。
 
 自分にそう言い聞かせ、戦いたい欲望を押さえ込む。
 ドクオは一人、並べられた器具のもとへと移動を始めた。

63923話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:05:33 ID:iHA3g/GI0





 ―――――




.

64023話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:06:42 ID:iHA3g/GI0


 モララーがキャッチした反応とは別の場所でも、アンデッドによる争いが展開されようとしていた。
 それは、クーがセルフガソリンスタンドにて、バイクにガソリンを給油している時に起きた。


川 ゚ -゚)「………」


 相変わらずの無表情だが、少しだけ不機嫌さが伝わる。
 ガソリン特有の不愉快な臭いが鼻につき、自然と眉間に皺を寄せていた。


「随分器用なのね、人間の暮らしにすっかり馴染んじゃって」

川 ゚ -゚)「……逃げた分際でおめおめと私の前に現れたのか」


 クーにかけられる女性の声。
 振り返らずとも、あえて発してきている気配で誰なのかは分かった。
 その瞬間、僅かに不機嫌そうだった顔が、露骨に不機嫌な表情へと変わる。


ミセ*゚ー゚)リ「そんな言い方しなくてもいいじゃない。今日はあなたと話がしたくて来たの」

川 ゚ -゚)「私にはお前とする話はない」

ミセ*゚ー゚)リ「ねぇ……私と手を組まない?」

川 ゚ -゚)「……答える価値も無いな」

ミセ*゚ー゚)リ「そうかしら。あなたと私が手を組めば…他のアンデッドなんて全員…人間だって簡単に滅ぼせるわ」

川 ゚ -゚)「断る」

64123話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:08:03 ID:iHA3g/GI0


 給油を終えキャップを閉じ、一度もミセリを見ることなくバイクに乗るクー。
 ハンドルにかけたヘルメットに手を伸ばした瞬間……、


ミセ*゚ー゚)リ「まったく強情ね……知ってたけど!」

川 ゚ -゚)「!!」


 植物による触手が、クーの手首に巻きついた。
 触手はバイクに乗ったクーを引き摺り下ろそうと力を込め、強引に牽引を始める。

 されるがままに引き摺り下ろされ、硬い地面に受け身を取りながら落下。
 すぐに腰にカリスラウザーを召喚し、バックルにカードをスライドさせた。


川 ゚ -゚)「変身!」
   っ□

    【 -♥CHANGE- 】


ミセ*゚ー゚)リ「やっぱりあなたとの交渉は無理みたいね……ならせめて――」

「――!?うわああぁっ!!」


 全身に花びらを纏い、アンデッドの姿に変化。
 周囲にいた人々がミセリの姿を目にした途端、悲鳴をあげながら一目散に退散。

  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『あなたの持つそのカードだけでもいただくわ…!』

( <::V::>)『話だけではないなら最初から言え……すぐにでも封印してやる!』

64223話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:08:40 ID:iHA3g/GI0


 そこに、サーチャーの反応を駆け付けたブーンが現れる。
 たまたま近くに居合わせ、すぐに到着することが出来たようだ。

 カリスと戦っているのは……植物園でジョルジュ達を人質に取ろうとした、ミセリ。


( ^ω^)「あの蘭アンデッド……!」


 目に入れただけで怒りが沸々と湧き上がってくる。
 バイクから降り、ポーチからバックルを取り出す。
 

  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『さぁ、お前の持つカードをよこせ!!」

( <::V::>)『っく…!』

( ^ω^)「クーさん…!今行くお!」


 ミセリの後頭部にある色白な不気味の顔と入れ替わり、口から無数の花びらを吐き出す。
 接近したタイミングで視界を眩ませられ、カリスは思わず顔を覆った。
 そして、ミセリはゆっくりと近付く。

 危機を感じたブーンは、カードを装填しながらカリスのもとへと駆け出した。


 ――だが、別の何かが、カリスへの障害を取り除いた。

64323話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:09:14 ID:iHA3g/GI0


 突如、上空より吹き荒ぶ風。
 ミセリが吐き出す花びらを容易に吹き返し、カリスを覆っていた花びらは瞬時に消え失せた。

  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『何!?』

( <::V::>)『……?』

( ^ω^)「なんだ…!?」


 上空を見上げる一同。

 そこに見えたのは、カリス達に向け飛翔する別の存在……アンデッドだ。
 骨と化した翼を広げ、猛スピードで接近している。

    。
ミミ/ ゚王゚)『おおおおおおおおッッッ!!』
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『お前は……!ああっ!?!?』


 カリス達の頭上まで接近し、両手でミセリの肩を掴み持ち上げる。
 そのまま再び上空へ飛翔すると、地に向け一直線に落下を開始。
 隕石が如く急降下するアンデッドは、地上に衝突する寸前で手放し、脳天からミセリを突き刺した。

  *∧Λ*
∠*;゚`ー´)ゝ『ううっ……!!』
    。
ミミ/ ゚王゚)『カリスに手を出すな!!』
  *∧Λ*
∠*;゚`ー´)ゝ『クッ、うう……っどういうつもり…!?』
    。
ミミ/ ゚王゚)『やはりお前の言うことなど信用しなくてよかった、俺に隠れてカリスを襲おうとは…!』

( ^ω^)「どうなってんだお…?アンデッドがカリスを助けた!?」

64423話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:09:58 ID:iHA3g/GI0

  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『ふん、お前も使えない……!』


 伸ばした右手から、数本の触手を伸長。
 カリスを守ったアンデッドに、蠢く触手が襲い掛かる。

    。
ミミ/ ゚王゚)『フンッ!』


 だが、アンデッドは腕に装着した鋭く長い鈎爪にて迎撃。
 軽やかな身のこなしで、すべての触手を払い落とした。

  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『チッ……そう上手くいかないものね……』
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『けど忘れないほうがいいわ、私の言った事は事実よ!』
    。
ミミ/ ゚王゚)『黙れ!お前は俺が必ず倒してやる!』


 アンデッドの背後に浮遊しながら現れるいくつもの羽根。
 府坂が得意とした羽根の投擲刃を彷彿とさせるその羽根。
 違う点と言えば、投擲刃というよりは手裏剣に近い大きさであること。
 羽根手裏剣が一斉に射出され、敵であるミセリに襲い掛かる。

 対するミセリは、身体を無数の花びらで覆うことで己の身を防御。
 羽根手裏剣が花びらの防御に当たり全て落ち、花びらが風に乗り飛んで行くと同時にミセリも姿を消した。



 姿が消えたことを確認したアンデッドは、呆然と見ていたカリスに近寄る。

    。
ミミ/ ゚王゚)『カリス……ようやくその姿に出逢えた』

64523話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:11:03 ID:iHA3g/GI0


 手や足の形、頭の形や嘴を象る仮面から、鳥であることが伺える。
 両腕に装備している長い鈎爪は、戦士として戦うべく作られたもの。
 骨と化した翼を背に広げ、鋭い目やその出で立ちから気高さを感じる。
 まるで、凛々しい鷲のようなアンデッドだ。

    。
ミミ/ ゚王゚)『思い出してください、一万年前の約束を。今度こそ果たす時が来たのです』

( <::V::>)『お前は、この間の……』
    。
ミミ/ ゚王゚)『俺はミルナという名でこの世界に潜り込んでいます。また何かあれば――』

( ^ω^)「おい!!」


 不可解な状況に、ブーンは思わず動いた。
 ミルナと名乗るそのアンデッドは、ブーンに気付くと上空に飛び立ち、カリスのもとから離れた。
  
    。
ミミ/ ゚王゚)『チッ…約束だぞ、カリス!また逢おう!』


 地上のカリスを見下ろしながら、交わしたという約束を強調する。
 身体を翻し、自在に宙を舞いながらどこかへと飛び去って行った。


( ^ω^)「今の上級アンデッドだよな?何でクーさんを守ったんだお?」

( <::V::>)『………』


    《-♥2 SPIRIT-》


川 ゚ -゚)「………」

( ^ω^)「……前々から思ってたけど、そのカードはなんだ?なんで人の姿に戻るのにカードが必要なんだお?」

64623話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:12:03 ID:iHA3g/GI0


( ^ω^)「それに…約束ってなんだお?あのアンデッドとどういう関係なんだお??」

川 ゚ -゚)「………」

川 ゚ -゚)(何なんだ、あのアンデッドと交わした約束とは……)


 何も語らず、クーはガソリンスタンドに置いたままのバイクへと向かう。
 約束という問いに関しては、本当に答えられなかった。
 ミルナの存在は把握していたにしても、一万年前にミルナと向き合った覚えはない。


( ^ω^)「はぁ……だんまりかお」


 相変わらずの無愛想を貫いた態度。
 分かりながらも、その背中を見つめながら溜息を吐いてしまった。
 
 ブルースペイダーのもとへと戻ろうとした時、ポケットのスマホが着信を報せる。
 

( ^ω^)ロ 「ツン、モララーさんの方はどうだお?」

ξ;゚⊿゚)ξロ [それが……]


 スマホ越しに聞こえるツンの声に、不安の色が帯びているのが分かる。
 

ξ;゚⊿゚)ξロ [ギャレンの反応がなくなったと同時に……アンデッドの反応も消えたの]

( ^ω^)ロ 「え……!?」

ξ;゚⊿゚)ξロ [倒したとしても、こんな反応の消え方はありえないわ……何かあったのかもしれない……!]

( ^ω^)ロ 「急いで行く!引き続き反応を確認してくれお!」

64723話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:12:36 ID:iHA3g/GI0


ξ;゚⊿゚)ξロ [それだけじゃないの!アンデッドが出現した場所、どうやらデパートの中みたいなの。
        さっきまでギャレンと通信してたけど、建物の中は崩壊したまま人の救助が出来てないみたい!]

( ^ω^)ロ 「なんだって…!?建物の中じゃ、アンデッドと戦いながらの救助は難しいお…!」

( ^ω^)ロ 「……分かったお、何とかする!」


 返事を待たずして電話を切った。

 デパートの中…崩壊状況は把握出来ぬものの、内部は決して広くはない。
 ましてや、崩壊したとするなら明かりもないだろう。
 
 そんな状況下で、アンデッドと戦いつつ人命救助は厳しい。
 消防隊を呼ぶ事態にはなるだろうが、来着するまでの救助が肝心。

 




 ツンとの電話を切り、すぐに他の人物に発信するブーン。

 彼は思いついた。
 ギャレンの消息が絶たれ、ブレイドしかいない今……レンゲルの手が必要だと。

64823話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:13:24 ID:iHA3g/GI0


 その発信は、己を鍛えている途中のドクオのスマホに入った。
 着信音に反応したドクオが、汗を拭いながら急いで荷物の置かれた場所まで走り、スマホを取る。

 発信者は、ブーン。
 あれからブーンとのコンタクトを取っていないドクオは、どこが気が重く感じていた。


('A`)ロ 「……よぉ、ブーン」

( ^ω^)ロ [ドクオ、今すぐモララーさんのところへ行け!]

('A`)ロ 「え…?」

( ^ω^)ロ [モララーさんが、ギャレンがアンデッドとどこかに消えたかもしれない!]

('A`)ロ 「なんだって!?」

( ^ω^)ロ [場所は創作デパート、中はアンデッドが暴れたせいで相当荒れてるらしい。
        脱出出来ずにいる人がたくさんいるかもしれないんだお!
        頼む……お前の手が必要だお!]

(;'A`)ロ 「お……俺に人助けをしろってのか!?無理だよ!それに俺はモララーさんに待機してろって言われてんだ」

(;'A`)ロ 「……だいいち、俺に人助けなんて……出来やしない」


 磨いたはずの心に、再び影が差した。
 一週間とは言え、自分の弱さを押し殺して鍛えることに臨んできた。
 先程のように、戦いたいという衝動を抑えることが出来るようになったのは確かだ。

 ドクオに足りないものは、経験。
 今こうして人助けを求めらたことで、経験の無さがドクオの不安を煽ってしまっていた。

 人のために戦いたいと、強く願ったはずなのに。


('A`)ロ 「俺は……どうせ誰も助けられない、人の命なんて救えない……」

('A`)ロ 「俺が助けようとしたって、その人達は――」

64923話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:14:05 ID:iHA3g/GI0


( #^ω^)ロ [いつまで甘ったれてんだお前!!!]

(;'A`)ロ 「ッ……!」

( ^ω^)ロ [お前は人のために戦いたかったんじゃないのか?そのために今自分を磨いてるんじゃないのかお!?]

( ^ω^)ロ [モララーさんはお前を信じた。誰よりも一番、お前が生まれ変われると信じた!
       そんなモララーさんの気持ちをお前は無駄にするのか!?]

( ^ω^)ロ [お前が背負っているのは、自分だけのことじゃないんだ!
       人の命、人の幸せや、人の想い……お前がなりたがってる仮面ライダーってのは、それを守るのが仕事だ!]

( ^ω^)ロ [目の前に救える命があるのに、お前はそれでいいのか!?今やらなくていつやるんだ!?いつ変わろうとするんだ!!]

('A`)ロ 「………」

( ^ω^)ロ [ドクオ、お前の本当の気持ちに正直になれ。お前なら出来る!モララーさんがお前を信じたように僕達も信じてる!]

( A )ロ 「………俺………」

( ^ω^)ロ [頼むドクオ!僕達に力を貸してくれ!]

( ^ω^)ロ [レンゲルの力じゃない……お前が胸に秘めたその想いの力を、僕達に貸してくれ!]

( A )ロ 「…………」


 モララーの想いに目覚めさせられ、ブーンの言葉に気付かされた。
 ドクオの中に渦巻く不安や恐怖は、すべて拭えたわけじゃない。

 しかし今、心の中に広がる闇に――光が差した。


('A`)ロ 「……行くよ、俺。モララーさんのところへ!」

65023話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:14:51 ID:iHA3g/GI0


( ^ω^)ロ [……その言葉待ってたお!]

('A`)ロ 「創作デパートって言ったよな?今すぐ行ってみる…!」

( ^ω^)ロ [僕も後から向かう!先に行ってみんなを助けるんだお!]

('A`)ロ 「分かった…!」


 覚悟を決めた。
 荷物の中から覗くレンゲルバックルを取り出し、カードを見つめた。

 蜘蛛の声が聞こえる。
 
 "――お前は戦うだけの存在であるべきだ。" と。


( A )「うるせぇ……!」

( A )「もうお前の邪悪な力は借りない……お前の指示にも従わない!」



(#'A`)「俺は、自分で変わらなきゃならないんだ!!」


 自分の意志で、心に語りかけてくるカテゴリーAの声を振り切った。
 バックルとカードを持つと、ドクオはエレベーターへと乗り込み、急いだ。
 
 自分の助けを必要としている人々のもとへ。

65123話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:15:46 ID:iHA3g/GI0





 ―――――




.

65223話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:16:45 ID:iHA3g/GI0


 訓練所を出て到着した創作デパート。

 建物自体を外から見る限りでは、何の問題もないように見える。
 だが、建物の中より逃げ出したと思わしき多くの人々が、デパートをただ見つめている光景は異常だった。

 人込みを掻き分け、ドクオは建物の前にグリンクローバーを停める。
 そこには、モララーが乗っていたであろうレッドランバスも停めてあった。


('A`)「モララーさん…!」


 ヘルメットを外し、人々の注目を余所に一人デパートの中に入っていく。


 風除室の時点で、既に電気は消えていた。
 その奥に見える店内も、当然真っ暗。
 何も見えないわけではないが、不安が煽られる暗さだ。
 
 ましてや、この中にアンデッドがいるかもしれない。


(;'A`)「ッ……どこにいるんだよ……!」

(;'A`)「モララーさん!モララーさん!!」


 暗闇の中、大声でモララーの名を叫ぶ。



「……クオ……!」

65323話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:17:10 ID:iHA3g/GI0


('A`)「モララーさん…?」

「ドクオ……!!下だ……!」


 はっきりと、モララーの声が聞こえた。
 その声は、崩れ落ち穴の空いた床を通して下の階から聞こえる。


('A`)「地下か…!」


 周囲を見渡し、頭上に光る緑色のランプを発見。
 瓦礫が落ち足場の悪くなった床を慎重に歩きながら、非常階段へと辿り着く。

 地下に繋がる階段をゆっくりと下り、一階より視界の悪い地下へと出た。


('A`)「モララーさん!!」

( ; ・∀・)「ドクオ…こっちだ……!」


 モララーがかざすスマホの光が、暗闇の中場所を示した。
 足元に注意を払いながらも駆け寄るドクオ。


「………」

「誰か来たぞ…!」


 その周囲に見える、逃げ遅れた人々の姿。
 ドクオの姿を見ると、救助隊ではないことにひどく落胆する人もいた。

65423話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:17:57 ID:iHA3g/GI0


( ; ・∀・)「何故来た、とは言わない。お前を待たせておきながら、みっともないな……うっ!」

('A`)「モララーさん、腕にケガを…!」


 アンデッドに負わされた怪我だろうか。
 服を裂かれ、左腕からは血を流していた。
 モララーの背後には、庇ったであろう母と小さい女の子の親子が動けぬまま座っていた。


( ; ・∀・)「俺の心配はするな……それより注意しろ」

( ; ・∀・)「まだどこかにいるかもしれない、また現れる前にこの人達を逃がせ!」

('A`)「………はい」

( ^ω^)「モララーさん!ドクオ!」


 そこに、後から駆け付けたブーンの声が響いた。
 すぐに非常階段から下りてきたブーンは、ドクオ達のもとへ駆けつけようとする。

 だが、足元より現れた存在によって足止めを余儀なくされてしまう。


『コオオオオオオオオォォォッッ!!』

( ^ω^)「ッ!?」

65523話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:18:22 ID:iHA3g/GI0


 床を突き破り現れたのは、以前取り逃がしてしまったモグラのアンデッドだった。
 
 そう、このデパートの崩壊はすべてこのアンデッドの手によるもの。
 デパートの内部を暴れ回り、多くの人々がいる中で存分に戦うことの出来ないギャレンをも追い詰めた張本人。

 そして今、再びその姿を現した。


( ^ω^)「アンデッド…!」

「きゃああああっ!!」

「ひいっ……!!」


 恐怖に怯える人々。
 ブーンはバックルを装着し、ゲートを射出しながらアンデッドへと突進した。


( ^ω^)「変身!」


    【 -♠TURN UP- 】


( OwO)「ドクオ!僕が抑えてる間に早く避難させるんだお!!」


 ブレイドに変身し、モグラのアンデッドを強引に押し出す。
 壁を崩壊させ、アンデッドが掘ったであろう空洞に突き抜けながら、人々の前よりその脅威を一時的に無くした。

65623話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:19:14 ID:iHA3g/GI0


( ; ・∀・)「今のうちだ、ドクオ……頼む!」

('A`)「は、はい!」


 恐る恐る、モララーが背後に匿っていた親子に手を差し伸ばす。


('A`)「こ、こっちです…!俺が地上まで案内します!」

「あ…ありがとうございます…!」

('A`)「よしよし……もう大丈夫だからな、お兄ちゃん達が助けてあげるから…」

「うん…!」


 女の子を抱え上げ足場の安定した場所に立たせ、母親の手を握り身体を支えるドクオ。
 スマホのライトで足元を照らすよう指示すると、また別の人物のもとへと手を伸ばす。


('A`)「歩けますか?」

「はい…!」

('A`)「こっちです、もう大丈夫ですよ!」

「ああ……ありがとう!本当にありがとう!」


 老いた男性からは、手を握られながら感謝を。
 ドクオに助けられた人々が皆、頭を下げながら感謝の言葉を述べていく。

65723話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:19:47 ID:iHA3g/GI0


 地下で動けない人々は、ドクオの手によって次々と助けられた。
 残るは、モララーを除き奥のほうに見える一人だけ。


('A`)「待たせてすみません!今から――」

「……ドクオ……!」

('A`)「………!!」


 ドクオの名を紡ぐのは、一人の男性。
 その顔がはっきりと見えた途端……ドクオの差し伸べたはずの手が、引き戻された。 
 

('A`)「お前は……」

( ;´ー`)「……そうだよ。お前を昔いじめてた、白根だよ」

(;'A`)「ッ……!」


 そこにいたのは、ドクオが苛まれ続けてきた忌々しい過去を作り出した張本人。
 白根と名乗るその人物は、小学や中学に渡って、いじめ集団のリーダー格として動いていた。

 ドクオの中に、トラウマが蘇り始める。


( ;´ー`)「ドクオ……俺のことなんて助けたくないだろ?だから助けなくていい」

(;'A`)「なに……?」

( ;´ー`)「そのかわり……聞いてくれ」

( ;´ー`)「ドクオ、本当に悪かった…!」

65823話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:20:21 ID:iHA3g/GI0


( ;´ー`)「俺、お前に散々ひどいことしたよ。今更謝ったって許されるとは思ってない」

( ー )「けど……俺、ずっとそのこと後悔しながら生きてきたんだ!
    お前に、謝りもしないでのうのうと過ごしてきたこの時間……お前のことを忘れたことはなかった!」

('A`)「………」

( ;ー;)「本当にごめんな…!俺がバカだった、愚かだったよ…!これは俺への天罰だと思ってる!
     今更お前にとっちゃムカつくよな……遅すぎるよな……」


 涙を見せながら、ひたすら謝り続ける。
 そんな白根を見つめるドクオは、拳を握り締め、歯を食いしばり……今までの怒りを露にした。


(# A )「ッ……当たり前だろ!!!」
     
( ;ー;)「ぐすっ……」

(# A )「俺は……俺はお前らのせいで、この長い時間ずっと苛まれ続けてきたんだ!!
    俺みたいな人間に価値なんかないって、俺みたいなのが頑張ったって……報われないって!」

(# A )「俺みたいな人間は、誰にも感謝されず……誰かを助けることが出来るような人間じゃないって……!
    そうやってずっっっと思い続けてきたんだよ!!お前らにその気持ちが…今更分かってたまるか!!」

(# A )「ッ……けどな……!!」



(#;A;)「ぐすっ…俺みたいな人間を、見捨てずに……向き合ってくれる人がいるんだよ!
     俺みたいな人間でも、やれば出来るって……お前が必要だって言ってくれる人がいるんだ!!」

( ; ・∀・)「……ドクオ……」

(#;A;)「……ここでお前を助けなきゃ、俺は変われない」


 言って、ドクオは引いた手を再び差し伸べる。

65923話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:20:54 ID:iHA3g/GI0


( ;ー;)「っう……本当に悪かった!ドクオ…許してくれ…!」


 泣きながら、白根はドクオの手を掴んだ。
 ゆっくりと立ち上がり、ポケットからなにやら取り出す。


('A`)「……早く行けよ」

( ´ー`)「待ってくれ……これ、受け取ってくれ」

('A`)「??」


 一枚の紙切れ。
 折りたたまれながらも、くしゃくしゃになった紙。
 めくると、そこには電話番号らしき数字が並んでいた。


( ´ー`)「いつかお前に逢った時の為にと思って、長い事持ち歩いてたんだ」

( ´ー`)「みんな俺と同じ気持ちなんだよ……だから、ちゃんと全員で謝らせてくれ!
    そして、やり直そう…!あの時を、ちゃんとやり直させてくれ!」

('A`)「………」


 今までずっしりと、重たいものが圧し掛かっていた心が、一気に軽くなった。
 心の中に差し込んでいた光は大きな光となり……あたたかい光が、広がっていた闇を包み込んだ。




('∀`)「……ああ!」


 無意識に湧き出る笑顔。
 互いに笑いながら、力強く握手をする。

66023話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:21:16 ID:iHA3g/GI0


 白根と共に地上に上がると、表にはたくさんの人々が拍手で二人を迎えた。
 先に逃げ出していた人や、ドクオに救助された人々。

 たくさんの人達の笑顔に、感謝に溢れていた。


「よかった…!本当によかった!」

「君、すごいよ!ありがとう!」

「助けてくれてありがとうございました…!」

('A`)「い、いえ……」


 誰かを助けて感謝される喜びを知らないドクオは、困惑すら覚えた。
 けれど、胸にあたたかく広がる嬉しさ、喜びは確かなものだった。
 
 最初に助けた親子の母がドクオに近付き、深々と頭を下げる。


「本当にありがとうございました…!あの、お名前は…?」

('∀`)「……無事でよかったです!」


 名を語らず、ドクオは再び建物の中に戻る。

 未だ地下で負傷したままのモララーのもとへ戻り、今度こそモララーを助けた。

66123話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:21:55 ID:iHA3g/GI0


('A`)「これで全員です!」

( ・∀・)「ドクオ……強くなったな」

('A`)「……いえ、俺一人だったらあいつに謝られてもきっと許せなかった」
 
('A`)「モララーさんや、ブーンが……俺に気付かせてくれたからです」

( ・∀・)「そうか……なら、何をすればいいか分かるな?」

('A`)「分かってます……俺は――」


 ポーチよりレンゲルバックルを取り出す。
 カードを装填し、バックルを腰に装着。

 曇りのない、真っ直ぐな瞳が、モララーを見つめる。


('A`)「俺は戦います!人を守る、仮面ライダーとして!」

( ・∀・)「そうだ……お前ならやれる!行け!」

('A`)「はい!!」


 大きく頷き、ドクオは走り出す。
 突き破れた壁の奥に広がる闇の中へ。
 けれど、怖くは無い。

 ドクオの頭の中に浮かぶ、人々の笑顔。感謝の言葉。
 みんなの笑顔が、眩しいくらいに輝いて見えた。


('A`)(俺は守りたい……あの笑顔を)

('A`)(みんなの笑顔を、光を守りたい…!!)

66223話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:22:43 ID:iHA3g/GI0

 ――――――
 ――――
 ――


( ; OwO)「ぬうううッ!!!」

『シュウウウゥゥッ…!』


 その奥では、モグラのアンデッドと戦うブレイドの姿が。
 アンデッドの顔面に備わったドリルの放射攻撃を受け、防ぎながらも押されていた。
 大きな右手で側面を殴打され、吹き飛ばされる。


( ; OwO)「うぐっ…!」


 そこに、己の戦う目的を見出した、新たな戦士が現れる。


('A`)「ブーン!!」

( OwO)「ドクオ…!」


 アンデッドを前にしても怯まぬ姿勢。
 腰に光る金色と紫のバックル。鳴り響く待機音が与えるのは、もう絶望ではない。希望だ。


( OwO)「仮面ライダーとしての使命、お前にも背負えるようになったみたいだな!」

('A`)「どうかな……まだ俺にもわからない。でも……!」





('A`)「俺は、仮面ライダーとしてみんなの笑顔を守りたい!!」

66323話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:24:22 ID:iHA3g/GI0


 ♪レンゲル、天地を揺るがし - https://www.youtube.com/watch?v=OsZlNyvhAjI


 両手をパッと前面に構える。
 右手をゆっくりと下げ、変身の構えを取った。


('A`/)「変身!!」



    【 -♣OPEN UP- 】


 強く叫び、両腕をクロスすると勢いよく下げた。
 開いたバックルより射出するゲート。紫色の光が辺りを照らす。
 
 接近するゲートを見つめるドクオの脳内に、一つの言葉が過ぎる。

 "あなたのお名前は?"

 その答えは、ドクオにとって単純なようで複雑。
 一体自分が何者なのか、それすら分かっていなかったことに気付いた。
 思い出に怯え、一歩を踏み出せず、自分などありもしないくせに、仮面ライダーになりたがっていた。
 


('A`)「けど……今なら、俺は自分の名を堂々と言える!」

('A`)「俺は三葉ドクオ!そして……仮面ライダー……」

(#'A`)「仮面ライダー、レンゲルだ!!!」

66423話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:24:44 ID:iHA3g/GI0


 ゲートがドクオの身体を包み込み、レンゲルへと変身させる。
 レンゲルのスーツを纏った両手を力強く握り締め、地を駆けた。


( #OHO)「うおおおおおおおおおおおおッッ!!!」


 腰に提げたレンゲルラウザーを掴み、シャフトを伸長。
 ブレイドに襲い掛かるアンデッドの後頭部を、すべての力を乗せ叩き込んだ。


『ゴギャアウゥッ!!』

( OHO)「大丈夫か!?」

( OwO)「へっ……お前に心配されなくても、僕の方が慣れてるお!」

( OHO)「……そうだったぜ、先輩!」


 差し伸べられた手を掴まず、意地を張り素早く起き上がった。

 拳をぶつけ合うブレイドとレンゲル。
 親友として過ごしてきた二人の関係は、レンゲルを通して崩れかけてしまっていたかのように思われた。
 しかし、無視をせず取り乱し、自分に辿り着いたことで、ブーンとの絆は再び堅く結ばれた。


( OwO)「行くぞ!」

( OHO)「おう!」


 アンデッドに立ち向かう二人。
 モグラのアンデッドは、ドリルを放射し二人の動きを牽制。
 すると、地面を掘り起こしまたも姿を隠してしまった。

66523話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:25:23 ID:iHA3g/GI0


( ; ・∀・)「……ドクオ、剣藤…!」 


 腕を抑えたままのモララーが、崩壊した壁を跨ぎ現れた。
 二人との距離を取り、戦いを眺めている。
 
 ギャレンへ変身しようと思えば出来た。
 だが、腕を負傷したまま戦ったところで足手まといになるだけ。
 二人を信じていればこそ、その決断が出来た。


( OwO)「ドクオ、足元も頭上も注意しろお!」

( OHO)「っ……」


 どこから襲い来るか分からない。
 周囲を隈なく警戒する二人。

 しかし、こちらから見えずとも、モグラのアンデッドは二人の存在を地中の中から察知出来る。
 背中を向けているつもりはなくても、アンデッドにとって背後を取ることは容易だった。


『コオオオオッッ!!』

( ; OHO)「うああっ!?」

( OwO)「ドクオ!!」


 背後を取られ、左手に装着した大きな盾で背中を斬りつけられた。
 モララーのもとへと吹き飛ばされ、地面を転がる。


( ・∀・)「ドクオ!大丈夫か!?」

( OHO)「大丈夫です…!こんな程度じゃやられねぇ!!」

66623話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:25:50 ID:iHA3g/GI0


 地面を叩き起き上がり、手放してしまったレンゲルラウザーを拾い上げる。
 強く握り締め、諦めずにアンデッドに立ち向かうレンゲル。


『フシュウウッ!』
 
( OHO)「ふッ!どりゃあっ!」


 再び放たれるドリル攻撃。
 目の前から接近するそのドリルが、スローで接近する野球の球に見える。
 放たれたドリル全てをレンゲルラウザーで払い落とし、怯むことなく突き進む。


( OHO)「うおおああァッ!!」


 振るいながらしっかりと持ち直し、距離が縮まったアンデッドを尖端の三枚刃で斬りあげた。
 

( OwO)「ふあッ!」

『ググウウゥッ!?』


 ブレイドとレンゲルの波状攻撃。
 レンゲルが大振りな一撃で斬りつけては、ブレイドが懐に入り細かな斬撃を繰り出す。
 アンデッドの背後に回ったレンゲルが背中を叩きつけては、ブレイドは剣を思うままに振り続ける。

 肩を並べる二人。目の前のアンデッドに向け、同時に蹴りを放った。


( OwO)「はあッ!!」

( OHO)「うおおりゃああッ!!」

『コシュウウウゥゥッ…!!』

66723話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:28:01 ID:iHA3g/GI0


 同時に蹴りを受け、アンデッドは尚強く吹き飛ばされる。
 二人の攻撃を受け、アンデッドは弱っている。
 トドメを刺すなら、まさに今が好機。


( OwO)「今だドクオ!」

( ・∀・)「やれ!!」

( OHO)「……よし!」


 ブレイドとモララーに促され、ドクオはカードケースから三枚のカードを引き抜いた。
 縮小したレンゲルラウザーを逆手に持ち、後端のラウザー部分にラウズする。


    《-♣4 RUSH-》 《-♣5 BITE-》 《-♣6 BLIZZARD-》

          《-♣BLIZZARD BREAK-》 


 ラウズしたカードが紋章となり、力となりてレンゲルの身体に宿る。


( OHO)「はっ!!」

『ググッ!?』


 伸ばした手から吹雪を繰り出し、アンデッドの身体を氷結させ動きを封じる。
 両足に冷気を纏いながら、駆け足でアンデッドに向け接近。
 高々と跳躍し、向ける両足から冷気を噴出。
 氷結状態のアンデッドを更に冷気で包み、生み出した氷解の中に閉じ込めた。


( #OHO)「ウオオオラアアアアアァァッッ!!!!」


 "♣4 RUSH"で強化された突進力と"♣5 BITE"で強化された脚力。
 ばたつかせるように動かす両足で、氷を強引に砕きながらアンデッドに強烈な二段蹴りを叩き込んだ。

66823話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:28:31 ID:iHA3g/GI0
 

『グコオオオオオォォッ!!』


 迫り来る蹴りをただ氷の中で見ることしか出来なかったアンデッド。
 ようやく動けた時には、既にレンゲルの必殺技を受け吹き飛んでいる最中。
 
 地面に叩きつけられ転がった後、モグラのアンデッドは起き上がらない。
 ぐったりと倒れたまま、アンデッドのバックルが左右に展開された。


( OHO)「はぁ……はぁ……倒した、のか……?」

( OwO)「そうだお!倒したんだ、お前の意志で!」

( OHO)「……やった……!」


 拳を突き出し、喜びを露にする。
 自分の意志で、自分の戦い方でアンデッドを倒した。その事実が、嬉しくてたまらなかった。


( ・∀・)「ドクオ!ライダーは、倒したアンデッドを封印するものだ」

( OHO)「……でも、俺……モララーさんからカードを奪おうとしたりして……」

( ・∀・)「何言ってんだ!お前が倒したアンデッドだ、お前の手で封印しろ」

( OwO)「ほら、早くやれお」

( OHO)「……分かった」

66923話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:29:41 ID:iHA3g/GI0


 二人に促され、ドクオは引き抜いたカードをモグラのアンデッドに向け投擲。
 倒れたアンデッドの身体に突き刺さったカードが、みるみる吸収を始め瞬く間に封印した。

 レンゲルの掌中に帰還したカードには、"♣3 SCREW"と記され、モグラの絵が描かれた。


( OHO)「ブーン、それにモララーさん……」

( OwO)「ん?」

( OHO)「……ありがとうございました!」


 二人を交互に見渡し、頭を下げる。
 そんなレンゲルに近付き、モララーは肩を叩いた。


( ・∀・)「浮かれるのは早いぞ」

( OwO)「そうだお。覚悟は決まったのか?」

( ・∀・)「お前にはこれから、アンデッドと戦う辛い日々が待ち受けている。それに臨む覚悟は出来たのか?」

( OHO)「はい、覚悟は出来てます」


 ブレイドとレンゲルの変身を解く二人。
 もとの姿に戻り、三人はそれぞれ向かい合った。

67023話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:30:59 ID:iHA3g/GI0


('A`)「俺も戦います。レンゲルとして、人を守るために!」

( ・∀・)「お前には仲間がいることを忘れるな。俺達が、共に戦う仲間だということを」

('A`)「……はい!」

( ^ω^)「じゃあ、三人でこれやっときますか?」


 笑顔を見せながら、ブーンは拳を突き出す。
 それを意味するものが分からず、ドクオとモララーは顔を見合わせた。


( ^ω^)「ライダーが三人揃ったんだから、結束のグータッチだお!」

( ・∀・)「……よし!」


 ブーンが突き出す拳に、モララーが拳を合わせた。


('A`)「ええ……?随分臭いことさせるな。……でも」

('∀`)「そういうの嫌いじゃないぜ!」


 言って突き出す拳。
 三人の拳が合わさり、それぞれ頷く一同。

 こうして、カテゴリーAの邪悪な力を乗り越え、ドクオはレンゲルを自分のものにする事が出来た。
 
 全てのライダーの力は揃った。
 世に蔓延るアンデッドを全て封印する……いつかその日が来るまで、ブーン達はこれからも戦い続ける。

67123話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:31:40 ID:iHA3g/GI0





     【 第23話 〜輝く勇気〜 】 終




.

67223話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:32:10 ID:iHA3g/GI0

=========

 【 次回予告 】 https://www.youtube.com/watch?v=Yyh12l21WkA


ミセ*゚ー゚)リ「私達は他のアンデッドの姿を借りる力なんて持ってないわ。それはカテゴリー2も同然」

ミセ*゚ー゚)リ「それなのに……何故かしらね??」

(; ゚д゚ )「姿は確かにカリスだった……俺が間違えるはずもない」


 ミルナと接触するミセリ。
 謀略のため、再び動き出す。


ミセ*゚ー゚)リ「人間どもが作ったライダーシステム、それと同じものだとしたら?もしくは――」

ミセ*゚ー゚)リ「――あいつの正体が、"ヤツ"だとすれば……?」

67323話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:33:31 ID:iHA3g/GI0


 人間をアンデッドへと変貌させてしまう上級アンデッドが出現。
 アンデッドと孤独に戦う、一人の男と出会う。


( ^ω^)「死んだ人をアンデッドに変化させる力…!?」

(,,^Д^)「そうだ。奴は何らかの力を殺害するときに送り込み、亡骸をアンデッドとして操っている」

(,,^Д^)「ここ最近動き出したアンデッドで間違いない。あんな力を持つアンデッドは他にいない」

('A`)「そんな……じゃあ、そのアンデッドを野放しにしとけば被害者がこれからもたくさん……」

(,,^Д^)「そういうことだ」

( ・∀・)「何故そんなことを君が知っているんだ?君は何者だ?」

(,,^Д^)「……人を守るのはお前達仮面ライダーに任せる。俺は一人で奴を追う」

67423話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:33:57 ID:iHA3g/GI0


 ミルナと対峙するクー。
 カテゴリーAのカードを奪われ、その真実が明るみになる。


(; ゚д゚ )「まさか……あの女の言っていたことは、本当だったのか……!?」

川 ゚ -゚)「貴様……」

(; ゚д゚ )「……お前は何者だ?怪しいとは思ったが、そもそもその姿もカテゴリー2のものだ!」

(; ゚д゚ )「カリスの姿を借り、カテゴリー2の姿をも借りたお前は何者だ!!
     他のアンデッドに変身出来る力……お前が……お前が本当に"ヤツ"なのか!?」

川 ゚ -゚)「………」

67523話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:35:46 ID:iHA3g/GI0


 そして、戦う力を失くしたクーを救うべくブーンが立ち上がる!

    。
ミミ/ ゚王゚)『フッ……人間がアンデッドを守り、またアンデッドも人間を守る。か……。
      まさかお前が人間に媚びを売り生き残ろうとするヤツだったとは、呆れたぞ!』

( ^ω^)「クーは……自分がアンデッドと知りながらも、家族のように接してくれるみんなを心から愛している!」

( ^ω^)「自分が守りたいと願ったものを命懸けで守ろうとしてる。その素晴らしさに、人間もアンデッドも関係ない!!」

( ^ω^)「アンデッドの使命に苦しみながらも、変わることが出来たクーを僕は守りたい!」

( #^ω^)「だから……そんなクーを蔑むようなことは、僕がさせない!!」

川 ゚ -゚)「………お前……」
    。
ミミ/ ゚王゚)『この戦いの中で愛など語るようなアンデッドに、勝たせるわけにはいきませんね!』
 

 人間とアンデッド……時には傷つけ合い、相容れなかったブーンとクー。

 今こそ、二人は力を合わせることが出来るのか!?



 次回、【 第24話 〜大切なもの〜 】


 ――今、その力が全開する!


==========

676 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:38:46 ID:iHA3g/GI0
しおり

>>9 第15話
>>84 第16話
>>152 第17話
>>234 第18話
>>308 第19話
>>372 第20話
>>454 第21話
>>530 第22話
>>605 第23話

677名無しさん:2018/01/28(日) 11:55:40 ID:YyYvT.WY0

ドクオかっけえよお

678名無しさん:2018/01/28(日) 19:48:40 ID:F.b.KnK.0
乙!

679名無しさん:2018/01/29(月) 01:38:00 ID:nQGUhrtM0
第2ラウンド来てたか!
おつ!今から読む

680名無しさん:2018/02/04(日) 11:16:20 ID:2qbBk9dg0
( OwO)…今日は来ない…?

681名無しさん:2018/02/05(月) 03:46:50 ID:rQ/S9e2k0
この文量を欠かさず毎週とはいかんか

682第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:08:19 ID:jvu.zAqQ0





     【 第24話 〜大切なもの〜 】




.

683第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:08:51 ID:jvu.zAqQ0


 夜の街、人で賑わう大きな交差点。
 青の信号の合図と同時に、歩道の人溜まりが一斉に道路へと歩き出す。
 交差点の中心にあっという間に出来る人込み。
 その中に、人の姿をした人ならざる者の姿もあった。


ミセ*゚ー゚)リ(さて、次はどんな手を打とうかしら……)

ミセ*゚ー゚)リ(……そういえば、あのアンデッドは今だ健在なのかしら。気配すら感じないけれど、一体どこに……)


 次なる策を考えている。
 自分の手を汚さず、他者を利用するやり方を。
 そのためなら、どんな面をすることも厭わない。

 ミセリが紛れ込む人込みの中には、"同じ"者がもう一人いた。
 そいつは、ミセリの対向側より歩いてくる。


( ゚д゚ )「――おい」

ミセ*゚ー゚)リ「……あら」


 流れる人込みの中、逆らうように動きが止まる。
 交差点の中心で、二人は向かい合った・

684第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:10:52 ID:jvu.zAqQ0


ミセ*゚ー゚)リ「この間はありがとう、邪魔してくれて」

( ゚д゚ )「偽りの話で俺を欺こうとした分際で、何を偉そうに」

ミセ*゚ー゚)リ「ふふ、私よりカリスを信用してるみたいね?」

( ゚д゚ )「お前などと比べるのも虫唾が走るくらいにな」

( ゚д゚ )「裏でこそこそと手を回し、汚いやり方で勝ち残ろうなどと……自分を恥ずかしいとは思わないのですか?」

ミセ*゚ー゚)リ「ごめんなさい、私はあなた達のように誇り高き戦士ではないの。
      カテゴリーQだからと言って虎女と一緒にされても困るもの」

ミセ*゚ー゚)リ「そんなことより……また新たな疑問が生まれたわ」

( ゚д゚ )「聞くつもりはありませんよ。次カリスに手を出せばお前を真っ先に付け狙う」


 ミセリの横を通り過ぎようとするミルナ。
 だが、不本意にもその足は止められることとなる。


ミセ*゚ー゚)リ「♥のカテゴリー2。あなたも知ってるわよね?」

( ゚д゚ )「……何?」

ミセ*゚ー゚)リ「あれはカリスじゃないと言った私の話を信じないのは勝手だわ」

ミセ*゚ー゚)リ「でも……」



ミセ*゚ー゚)リ「あの女の姿――カテゴリー2の姿から、何故カリスに変身出来るのかしら?」

( ゚д゚ )「――!!」

685第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:11:43 ID:jvu.zAqQ0


ミセ*゚ー゚)リ「私達は他のアンデッドの姿を借りる力なんて持ってないわ。それはカテゴリー2も同然」

ミセ*゚ー゚)リ「それなのに……何故かしらね??」

(; ゚д゚ )「姿は確かにカリスだった……俺が間違えるはずもない」

ミセ*゚ー゚)リ「カテゴリー2の説明はどうつけるつもり??」

(; ゚д゚ )「……何が言いたい?」

ミセ*゚ー゚)リ「人間どもが作ったライダーシステム、それと同じものだとしたら?もしくは――」

ミセ*゚ー゚)リ「――あいつの正体が、"ヤツ"だとすれば……?」

(; ゚д゚ )「ッ……!……まさか……ありえない……!」

ミセ*゚ー゚)リ「どうかしらね?ありえない話でもないと思うけれど」

(; ゚д゚ )「……俺がこの目で確かめる。手出しはしないでください」

「「!?」」


 冷静を保っていたミルナに、戸惑いの色が見え始める。
 背中に生える翼。
 骨と化した翼を羽ばたかせ、ミルナは空へと舞い上がった。


ミセ* ー )リ「………ふふ、もちろんよ」


 静かに不敵な笑みを浮かべ、無数の花びらに包まれる。
 僅かに吹く夜風に乗り、ミセリもまた交差点から姿を消した。

686第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:12:11 ID:jvu.zAqQ0


 同じ夜空の下、別の場所での事。
 

「ハハハハハ!お前それマジか!」

「マジだよ、やべえだろ!?」

「やべぇなそれ!」


 夜の街を歩く三人の若者。
 いかにも不良らしさを主張した服装、髪型、そして態度。
 向かいから人が歩いているにも関わらず、横一列に並び避けようともしない図々しさ。
 配慮のない大声での会話や笑い声は、周囲の人の視線を悪い意味で集め、避けられていた。

 人の目など気にもせず、我が物顔で立ち振る舞い続ける。
 ぶつかりそうになってもお構いなし。ぶつかれば、弱そうな相手を威嚇するだけ。
 
 そんな三人の前に、また一人近付いて来る。


「でよぉ、アイツが見たときには――」



 ドンッ!


 
「って……!」

687第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:12:39 ID:jvu.zAqQ0


「チッ、おい待てコラ!」

「おいおい何ぶつかってんだよてめぇ!」


 一人に対して三人がかりで責めかかる。
 まくし立てながら、ぶつかった相手の肩を掴み強引に振り返らせる若者。


(,,^Д^)「………」


 振り返った顔を見ると、どうやら相手も男のようだ。
 だが、若者たちの威嚇に臆する様子もなく、ただ静かに三人を見つめる。


「おい、ぶつかったんだから謝罪くらいさっさとしろやボケ!」

「怪我してたらどうすんだよ?ああ?金払えや金!!」

(,,^Д^)「………」

「何ダンマリ決め込んでんだ?なめてんのかてめぇ!!」

 
 男の胸倉を掴み、更に脅しをかける。
 それでも男は微動だにせず、見開いた若者たちの目を見続ける。

 そして、口を開いた。


(,,^Д^)「お前達」

「んだコラ?」

(,,^Д^)「気を付けろ、狙われてるぞ」

688第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:13:17 ID:jvu.zAqQ0


「はあ?何言ってんだてめぇ!」

(,,^Д^)「お前達が襲われないことを祈るよ」

「うおっ!?」


 胸倉を掴む手を強引に払い、男は走り去る。
 男が残した謎めいた言葉に、若者たちは怒りを忘れ困惑。


「何だあいつ?」

「頭おかしいんじゃね??」


 あっという間に姿を消した男の背を見ながら、小馬鹿にした言葉を漏らす若者たち。
 後を追う気も失い、再び正面を向き歩き始めようとした。

 だが、謎めいた男の言葉の意味を、すぐに思い知る事になる。



「おい、なんかいるぜ?」

「あ?」


 街灯が薄く照らす道路。
 その薄い明かりに照らされた何かが、目の前から迫ってくる。

 遠目からでも見て分かるのは……黒光りした身体と、全身を覆う爪のような飾り。
 微かに聞こえてくる、荒い呼吸。

 そして、腰に煌く金色のバックル。

689第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:13:51 ID:jvu.zAqQ0


彡,,   彡『フー……フー……』

「……おい、何かコスプレっぽくなくね?」

「だよな……声かけてみるか?」

「マジかよ!ちょっとやばくねぇか…?」

「大丈夫だろ!ちょい行ってみるわ」


 身の程を知らない人間が、異形の者に近付く。
 自分より背丈も身体も大きい相手に向かい、顔を覗き込みながら語りかける。


「おい、こんな時間に何そんなもん着てウロウロしてんの?迷惑考えろや!」

彡,,   彡『フウー……フウー……』

「聞いてんのかよコラァ!!」


 片手を伸ばし、その複雑な形をした胸板を突き飛ばす若者。
 しかし、突き飛ばした痛みを負ったのは相手ではなく、自分の手。


「いって!……は??」


 掌を見ると、突き飛ばした時に当たった装飾部分の形がくっきりと、切り傷として残った。
 血が滲み、血液が溢れ出す。

 そして、目の前の存在から感じる違和感。途端、感じたことのない恐怖に襲われる。


「………」


 ゆっくりと、恐る恐る顔を見上げる。

690第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:14:32 ID:jvu.zAqQ0

  (
彡,,メ皿゚彡『ガルアアアアアアアアアッ!!!』


 異形の咆哮。
 人ではないその声、その存在をようやく把握し、恐怖に陥る若者たち。


「うおおおぉぉっ!?」

「ばっ、化け物…!!」
  (
彡,,メ皿゚彡『哀れな人間共…!恐怖を知らぬ愚か者共め!!』


 目の前の若者の首を掴む。
 人外の力が喉をきつく締め付け、伸びた爪が肌を突き破りそうな程に食い込む。
 口を開き、狼が如く鋭い牙を見せ、露にした若者の喉元に食らいついた。


「ひっ……!た、たすけ……ぎゃあああああああッッ!!」

「ッッ……!!!」


 断末魔の叫び。
 肉が破れ、血が迸る生々しい音が薄暗い夜に響く。
 喉元を食い破られ、息絶えた若者は道路に投げ捨てられる。

  (
彡,,メ皿゚彡『だが……』

「うっ…うわああああああ!!!」

「はっ、はっ、はっ……死にたくない、死にたくない……!」
  (
彡,,メ皿゚彡『傀儡となる貴様等に、恐怖など知る必要はない!』

691第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:15:09 ID:jvu.zAqQ0


 仲間の残酷なる死を目の当たりにし、一目散に逃げ出す若者たち。
 先程までの勢いや傲慢さは無く、死を前にして生にしがみつき恐怖に震える愚か者へと変貌する。
 

「誰か助けてくれー!!」

「誰か!化け物が――」
  (
彡,,メ皿゚彡『ガアアッ!!』

「がっ――」


 走る若者の頭上を飛び越え、すれ違いさまに喉を掻っ切った。
 鋭い爪は、頚動脈など諸とも断ち切る程喉を深く斬り裂き、若者は血を噴出させながら倒れた。
 

「ああああああっ!いやだ、いやだいやだいやだ!!助けてくれええええッ!!」


 一人取り残され、パニックに似た衝動に駆られる。
 諦めかけている自分。それでも生きたいと願う自分を捨てきれず、涙で顔を濡らし失禁しながらも助けを請う。

  (
彡,,メ皿゚彡『死ね!そして俺のために蘇れ!!』


 しかし、無情にも若者の胸を貫く鋼鉄の右手。
 骨を砕かれ、内臓をも引きちぎられた。

 アンデッドに命乞いなど不毛なこと。
 今宵、一体のアンデッドによって三人の若者の人間としての生涯は、無惨な最期と共に閉ざされた。

692第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:15:45 ID:jvu.zAqQ0

 ――――――
 ――――
 ――


 アンデッドの反応を聞き付け、三人のライダーが現場に到着した。
 ブルースペイダー、レッドランバス、グリンクローバーが立ち並び、それぞれの運転者がバイクより降りる。

 だが、時すでに遅し。
 これまで人がアンデッドに襲われてきた中でも、悲惨な光景が薄明かりの下広がっていた。

 肉が散らばり、臓器が見え、血は飛び散っている。


( ; ^ω^)「ッ……ひどすぎる……!」

( ; ・∀・)「…………」


 アンデッドに襲われた人の姿は一番見てきたであろうモララーでさえも、思わず言葉を失ってしまう光景。
 耐え切れず、ドクオは口を抑え嘔吐しそうになる自分を抑えた。


(;'∩`)「うっ……おええっ!!」

( ・∀・)「目を逸らすな!これがアンデッドだ……その目で現実を見ろ」

(;'A`)「ッはぁ…はぁ……、はい……」


 ブーンとモララーは、静かに目を閉じそっと掌を合わせた。
 グロテスクな光景に思わずえずいてしまったドクオも、込み上げてくる吐き気を堪えながら掌を合わせる。

 
( ^ω^)「サーチャーが捉えた反応は、♥のカテゴリーJだった。一体どんな上級アンデッドなんだ……」

( ・∀・)「これまでの傾向だと、上級アンデッドは目的がない限り人を襲わないはず」

( ・∀・)「けど……この殺し方に目的があるようには見えない……」

693第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:16:30 ID:jvu.zAqQ0


(;'A`)「……そ、そろそろ、連絡すべきとこにしましょうよ。警察とか――」


 ドクオが言いかけたその時。


「うっ……」

( ・∀・)「!?」

(;'A`)「な、なんだ!?」


 突如、緑色に発光を始める目の前に転がる遺体達。
 同時に、死んだはずの遺体が意識を取り戻し、呻きに似た声を上げ始めた。


「うううううううう……ッ!!」

「ぐうう……ガ……ガルル……!」

( ; ^ω^)「!?!?」


 発光する遺体の身体が、生まれ変わったかのように瞬時に変化。
 人の色を保っていた肌は灰色にくすみ、服越しでも分かる程に筋肉が膨張。
 小さな口は裂かれたように大きくなり、開いた口から見える、生え並ぶ狼の如く牙。
 頭や腕は毛で覆われ、手には鋭い爪が伸びる。

 人ではなくなった三つの遺体は、新たな生を受け蘇る。
 ゆっくりと立ち上がり、赤黒く大きな瞳が不気味に蠢き目の前の獲物を睨んだ。
 
 まるで、狼人間のような姿。
 死んだ人間が、狼人間となり蘇ったのだ。


( ; ^ω^)「死んだ人が……アンデッドになったのか……!?」

694第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:16:50 ID:jvu.zAqQ0


「ウギャアアアアアッ!!!」

「アオオオオォォォォンッ!!!」


 疑問を余所に、アンデッドらしき化け物に変貌してしまった人間はブーン達に襲い掛かる。
 雄叫びを上げ、遠吠えのような声を張り上げ、三体は同時に動き出した。


('A`)「来る!!」

( ・∀・)「考えるのは後だ!迎え撃つぞ!」

( ^ω^)「どうなってんだお……!」


 揃ってバックルを取り出す三人。
 ありえないことが起きているが、今更ありえないと驚いてばかりでは詮無き事。
 戸惑いを抱きながらも、手に持ったバックルにカードを装填しようとした。


「ギェアアアッ!!」

「グギャアアッ…!」

('A`)「今度はなんだよ!?」


 しかし、三人に襲い掛かろうとした狼人間は、何者かの手によって動きを止められた。
 どこからか響く、銃声らしき音。
 狼人間に被弾したのか、撃たれたと思わしき箇所からは緑色の血を噴出させ、三体の狼人間は悲鳴をあげながら地面に倒れた。

 狼人間が倒れ見通しの良くなった目の前。
 そこに、拳銃らしきものを構えた人間が立っていた。

695第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:17:44 ID:jvu.zAqQ0


(,,^Д^)「大丈夫か?」

( ^ω^)「え……」

(,,^Д^)「さっきの奴ら……化け物の兵隊と化してしまったか」


 先刻、若者の集団に因縁をつけられていた男だ。
 銃を下ろし、狼人間となってしまった亡骸に歩み寄るとしゃがみ込みその身体を撫でた。


( ・∀・)「なんだ、君は」

(,,^Д^)「俺のことなんかより、怪我はないのか?」

( ^ω^)「は、はい……僕達は全然――」

( ・∀・)「君はなんなんだ?この状況の何を知っている?」


 ふと、ブーン達が手に持ったままのバックルに男の目はとまった。


(,,^Д^)「……!それは……仮面ライダーのベルト……!」

(,,^Д^)「そうか……お前達が仮面ライダーだったのか」

( ・∀・)「聞いているのか?俺の問いに答えろ」

(,,^Д^)「ああ…すまない、俺の名はタカラ。お前達が仮面ライダーなら話は早い。
      お前達に話さなければならないことがある」

696名無しさん:2018/02/25(日) 10:17:57 ID:p6SPU4NI0
おーおーおー!第2ラウンド来てるじゃんかよ!

697第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:18:37 ID:jvu.zAqQ0

 ―――――
 ―――

 
 警察が現場に到着し、辺りはたくさんの赤い明かりに照らされた。
 狼人間へと変わってしまった亡骸は発火し、服のみを残して消滅してしまった。
 モララーが仮面ライダーであることを警察に告げると、ブーン達は事なきを得たようだ。

 現場から少し離れた場所で、タカラと名乗る男の話に三人は耳を傾けていた。


( ^ω^)「死んだ人をアンデッドに変化させる力…!?」

(,,^Д^)「そうだ。奴は何らかの力を殺害するときに送り込み、亡骸をアンデッドとして操っている」

(,,^Д^)「ここ最近動き出したアンデッドで間違いない。あんな力を持つアンデッドは他にいない」

('A`)「そんな……じゃあ、そのアンデッドを野放しにしとけば被害者がこれからもたくさん……」

(,,^Д^)「そういうことだ」


 タカラの話に、真剣に耳を傾けるブーンとドクオ。
 だが、モララーだけは違った。


( ・∀・)「何故そんなことを君が知っているんだ?君は何者だ?」


 むしろ、アンデッドについて詳しいタカラの正体を怪しんだ。
 人間に擬態する能力を持つ上級アンデッド。
 目の前のこいつも、アンデッドの可能性は高い……そう睨んでいた。


(,,^Д^)「………」

( ・∀・)「答えられないのか、なら信用は出来ない」

698第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:20:05 ID:jvu.zAqQ0


 答えを出し惜しむタカラだったが、ついにその口を開いた。


(,,^Д^)「……俺の家族は、奴に殺された」

( ^ω^)「……!」

(,,^Д^)「そして、奴は俺の家族を俺の目の前で………あのアンデッドと同じ姿にした……!」
 
( ・∀・)「………」

(,,^Д^)「最近よく報じられる化け物の件は知っていた。だが、信じてなどいなかった。
      そんなものは、退屈な世の中に誰かが流し込んだ真っ平な嘘だと……」

(,, Д )「だが………嘘じゃなかった……!忘れもしない、九ヶ月程前……化け物は俺の前に現れ、両親や妹を殺した!」

(,, Д )「化け物になってしまった家族を撃ち殺す感覚が、光景が……脳裏に焼きついて離れない!」


 腰に提げた、特異な形状をした拳銃を手に取るタカラ。


(,,^Д^)「この銃は、BOARDに携わっていたある女から譲り受けた銃だ。
      普通の銃ではない。アンデッドを倒すことの出来る特殊な銃弾を扱った銃だ」

( ・∀・)「BOARDに携わっていた女……?」

(,,^Д^)「俺は復讐を決意した……この手で、俺の家族を殺したあのアンデッドを倒すと!」

(,,^Д^)「……人を守るのはお前達仮面ライダーに任せる。俺は一人で奴を追う」

699第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:21:16 ID:jvu.zAqQ0


( ^ω^)「待ってください」

(,,^Д^)「……?」

( ^ω^)「タカラさん……その決意を止めるような真似はするつもりはないですお。でも……」

( ^ω^)「僕達と共に、戦ってくれませんかお?」

( ・∀・)「剣藤!?」

('A`)「お前何言ってんだ!?生身でアンデッドと戦うなんて危険だろ!」

( ^ω^)「わかってる。だから僕達と一緒に戦うんだお」

(,,^Д^)「……どういうつもりだ?」

( ^ω^)「分かりますお。大切なものが奪われそうになった時の悲しみや怒り……。
      タカラさんはそれを奪われてしまった、それ以上に深い怒りも悲しみを抱えてるでしょう」

( ^ω^)「でも、もしその復讐を果たして……その先に待ってるものに、一人で耐え切れますかお?」

(,,^Д^)「そんなことどうでもいい!俺はただ、家族の仇を取れればそれで…!」

( ^ω^)「仇をとっても、タカラさんが元気で生きていなきゃご家族は浮かばれない!」

( ^ω^)「確かにライダーの力は、アンデッドに対向出来る大きな力です。でも一番重要なのはライダーの力じゃないんです!
      共に戦う仲間がいなければ……一人だけで戦い抜くことは出来ない!」

( ^ω^)「行動を共にしろとは言いませんお。けど、タカラさんの力になりたいんです。
      アンデッドに果敢に立ち向かうタカラさんの力も、僕達には必要だって感じてます」

(,,^Д^)「………何故、俺にそこまで肩入れしようとする?」

( ^ω^)「人間なら、当然のことですお」

700第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:21:49 ID:jvu.zAqQ0


( ・∀・)「………確かに、君一人でアンデッドに対峙させるのは危険だ。
      それにその銃、BOARDが関係していると言ったな?なら尚更見過ごすわけにはいかない」

(,,^Д^)「………」

('A`)「あの……意外といいもんですよ、こう言ってくれる人がいるってのは」


 それまで強張っていたタカラの表情が、一気に緩んだ。


(,,^Д^)「……ふっ、ライダーの力を持っていながら俺みたいな小さな力が欲しいのか。ライダーってのも、存外大したことないんだな」

( ^ω^)「そんなもんですお」

( ・∀・)「力が全てじゃない。戦いを通して学んだよ」

(,,^Д^)「いいだろう、そこまで言うなら手を貸してやる。
      だが俺は俺の行動をする、あのアンデッドも俺の手で倒す。それだけは忘れるな」

( ^ω^)「はい!」



(,,^Д^)「まったく……お人良しな奴らだ。その甘さが命取りになることだってあるぞ」

( ・∀・)「俺達はともかく、剣藤は人を信じている。どれだけ自分が馬鹿を見ても」

( ・∀・)「百回嘘をつくような人間より、百回騙されて馬鹿を見る人間の方が俺は好きだな」

(,,^Д^)「………」

701第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:22:09 ID:jvu.zAqQ0





 ―――――




.

702第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:22:37 ID:jvu.zAqQ0


 翌日。朝を迎えた栗沢家でのこと。

 
从'ー'从ノシ 「行ってきま〜す!」

(#゚ -゚)ノシ 「行ってきまーす」

川 ゚ -゚)「行ってらっしゃい」

(´・ω・`)「気を付けて行くんだよー」


 ショボン達に見送られながら学校へ向かう渡辺達。
 最近はでぃも小学校へ通うようになり、子供として失われていた時間を取り戻しつつあった。
 今では姉のような存在でもある渡辺と一緒に、毎日学校へ通うのが当たり前だ。


(´・ω・`)「ふう……」


 子供達を学校に向かわせ、今日も一息。


川 ゚ -゚)「食器洗ってきます」

(´・ω・`)「ああ……ありがとう」


 家の中に戻っていくクーに、ぎこちない返事。
 先日の一件から、クーとの距離を無意識に置いてしまっている。

703第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:23:24 ID:jvu.zAqQ0


 以前から、クーの謎めいた外出や行動には疑問を抱いていた。
 けれど、それは触れてはならないと自分に言い聞かせていた。
 正体など知らずとも、今が幸せだったからだ。

 しかし、アンデッドという化け物が世に存在することを知った今。
 クーの口から、アンデッドという言葉を聞いてしまった今。
 あの謎が深まる会話を聞いてしまった今では、クーの正体を知る必要がある。

 ショボンは、意を決していた。


(´・ω・`)「………」


 リビングに戻って見えるのは、食器を一枚一枚丁寧に洗うクーの姿。
 カウンターテーブルの前に立つショボンに、クーが気が付いた。


川 ゚ -゚)「……どうかしましたか?」

(´・ω・`)「……いや、その……」

川 ゚ -゚)「あの、今日の昼頃なんですが――」

(´・ω・`)「クー」

川 ゚ -゚)「?」

(´・ω・`)「答え難ければ答えなくていい。ただ、聞きたいことがある」

川 ゚ -゚)「はい」





(´・ω・`)「………君は、何者なんだ?」

704第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:24:35 ID:jvu.zAqQ0


(´・ω・`)「ごめん、この間聞いてしまったんだ。君がスーツを着たお客さんと話していること……」

川 ゚ -゚)「……!」


 食器を洗う手がピタリと止まった。
 目が露骨に泳ぎ出し、戸惑っているのが分かる。


(´・ω・`)「僕達も被害にあったけど、アンデッドって化け物が関係してるのかい?
      君はアンデッドについて何を知っているんだ?あの化け物と君は何の関係があるんだ?」

川 ゚ -゚)「………それは……」

(´・ω・`)「一万年前、って……どういうことなんだ?」

川;゚ -゚)「………」


 とうとう核心に迫られた。
 隠し続けてきた事実に触れられそうになって、はじめて焦りが生まれる。
 
 本当の姿を暴かれたら、居場所を失う。
 愛するこの家には、もう居られなくなる。
 

(´・ω・`)「答えられないのかい?」

川 ゚ -゚)「………買い出し行ってきます」


 質問を濁らせる行為ほど、疑惑を深めさせるものはない。
 しかし、今のクーにはこれが精一杯の避け方だった。

 食器とスポンジをシンクの上に置き、泡だらけの手をそのままにリビングを出た。

705第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:25:00 ID:jvu.zAqQ0


(´・ω・`)「待ってくれクー!」


 クーの後を追って外へと出る。
 それでも足を止めず無言を貫きバイクへと跨るクーの前に、ショボンが立ちはだかった。


(´・ω・`)「頼む、クー。僕はただ真実が知りたいだけなんだ!君が何者でも構わない!」

川 ゚ -゚)「………」

(´・ω・`)「僕は……いや、あまねやでぃだってそうだ。みんなクーを信用してる。
      クーは僕達の大事な家族だから!」

(´・ω・`)「だから頼むよ、せめて僕には本当のことを話してくれ!」

川 ゚ -゚)「………でも」


 本当のことを話せば、切り捨てられるのが目に見えている。
 自分がアンデッドであることを知れば、その事実を隠し通してまで大事にしてきたものが全て壊れてしまう。
 
 ショボンを信じたいけれど、怖い。怖くてたまらない。
 全てを失う恐怖から、クーは答えられずにいた。







「よしましょうよ、無理に答えを聞き出そうとするのは」

706第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:25:55 ID:jvu.zAqQ0


 割ってはいるように声が聞こえる。
 ショボン達が視線を向けた先に、その男はいた。


(´・ω・`)「あなたは……あの時の?」

( ゚д゚ )「彼女、答えたがっていないじゃないですか」

川 ゚ -゚)「貴様、何の用だ……!?」


 ミルナだ。
 眼鏡を一本の指で上げながら、ショボンに不敵な笑みを見せる。


(´・ω・`)「……すみません、今大事な話をしてますので――」

( ゚д゚ )「その必要はない。あなた達に知る義務はありません」


 眼鏡を外すミルナ。
 同時に、人に擬態する異形の正体をショボン達の前で露にした。 

    。
ミミ/ ゚王゚)『カリスの正体が何なのか……答えを知るのは俺だけでいい!』

(;´・ω・`)「ッ……アンデッド……!?」

川 ;゚ -゚)「貴様ッ……ぐうっ!」


 バイクから降り掴み掛かろうとしたクーを、鈎爪の背で殴打し弾き飛ばす。
 そして、驚いたまま身体を硬直させるショボンの後ろ首を掴み、鋭い眼光で睨み付けた。

    。
ミミ/ ゚王゚)『人間とは不思議な生き物ですね。共存すべき命と共に過ごそうとはせず……ふっ!』

(´ ω `)「うっ……!」

707第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:26:26 ID:jvu.zAqQ0


 ショボンの腹部に叩き込まれる膝。
 瞬時に気絶こそしないが、痛みにうずくまるショボンをミルナは軽々と肩に抱え上げる。


川 ;゚ -゚)「ショボンさん!!」
    。
ミミ/ ゚王゚)『カリス、俺を追ってください。あなたが来るのを待ってます』

川 ;゚ -゚)「待て!どこへ行く!?おい!!」


 翼を羽ばたかせ、宙に浮き空を飛翔する。
 見上げるクーに背を向け、そのまま何処かへと飛び去って行ってしまった。


川 ;゚ -゚)「チッ…!」


 再びバイクに乗り直し、アクセルを踏む。
 まるで追って来いと言わんばかりに放っているミルナの気配を、強く感じる。
 

川 ゚ -゚)(何の真似だ、あのアンデッド……!)

川 ゚ -゚)(カテゴリーA……約束を交わしたと言うカリスに関係があるのか?)

川 ゚ -゚)(いや、そんなことより今はショボンさんを……!)


 ヘルメットを被り、気配に導かれながらバイクを走らせる。
 
 自らがアンデッドでありながら、抱く感情の不可思議さに疑問を抱くこともない。
 たとえ罠であろうが何であろうが、ショボンを助ける。
 
 ただ、その想いだけがクーを動かした。

708第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:26:50 ID:jvu.zAqQ0

 ――――――
 ――――
 ――


 クー達が一悶着起こす少し前に時間は遡る。
 この日もブーン宅には、三人のライダーが集っていた。
 ブーンとドクオが隣合わせに座り、テーブルを挟んで向かいにはモララーが座っている。
 
 テーブルの上に並んでいるのは、トランプとラウズカード。
 中央に並べられたトランプのカテゴリーに合わせ、三人が持つラウズカードが並べられている。


( ・∀・)「まず、カテゴリーA。このカードの力でライダーに変身することが出来る」

('A`)「ふむふむ」

( ^ω^)「ふむふむ」

( ・∀・)「それ以外のカードは、ラウズすることで効果を発揮するものばかりだ。
      このカテゴリー2は武器の威力を強化し、カテゴリー3は腕力を強化する。カテゴリー4は自分の動きを強化するもの」


 カテゴリーを指差しながら、各カテゴリーごとの能力を説明しているようだ。


( ・∀・)「カテゴリー5は脚力、俺達がトドメとして愛用してるカードだな。
      カテゴリー6は属性をもたらす力を持つ。このカードを軸にして戦うことも多いだろう」

('A`)「ふむふむ」

( ^ω^)「ふむふむ」

( ・∀・)「カテゴリー7は、剣藤が前に使ったな。物質の特性を得ることが出来る。
      カテゴリー8は敵の動きを抑制する力を持ち、カテゴリー9は高速移動や分身と言った戦闘力の補助だ」

('A`)「ふむふむ」

( ^ω^)「ふむふむ」

( ・∀・)「……剣藤は聞かなくてもいいだろ?」

( ^ω^)「いやぁ何となくで使ってたから、改めて聞くとなるほどな〜って感じですお」

709第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:28:47 ID:jvu.zAqQ0


( ・∀・)「そしてカテゴリー10、超能力的な力を得ることが出来る」

( ^ω^)「カテゴリー10って使ったことない……ていうか持ってないお」

('A`)「………俺は持ってる」

( ・∀・)「そうだ。特にこの、♣のカテゴリー10」


 トランプのカテゴリー10に合わせて並べられた、"♣10のREMOTE"。
 封印されたアンデッドを解放し操ることが出来るという、危険過ぎる力を持つ。


( ・∀・)「このカードについては、もうお前達も理解してるよな?」

( ^ω^)「はい……もう散々でしたお」

(;'A`)「……すみません」

( ・∀・)「カテゴリーごとの能力はこんなものだ、使い方は追々覚えればいい。
      だがドクオ、お前は特に気を付けろ。このリモートの力だけは安易に使うな。いいな?」

(;'A`)「はい……あの、二人が封印した上級アンデッドの力は?」

( ^ω^)「ああ……これか」

( ・∀・)「ラウザーのポイントがチャージされるだけだ、今のところはそれ以外使い道はない」


 ブーンは♠のカテゴリーQを、モララーは♦のカテゴリーJを手に取る。

710第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:30:13 ID:jvu.zAqQ0


('A`)「そうなんですか……じゃあ、カテゴリーAは一体なんで俺に♣のカテゴリーKを封印させようとしたんだ?」

( ^ω^)「♣のカテゴリーK……!?また新しいカテゴリーKが現れたのかお!?」

('A`)「あ……いや、その」


 ブーンはまだ知らない。ヒッキーが♣のカテゴリーKであるという事実を。
 思わず口が滑ってしまい、しどろもどろになる。


( ・∀・)「……けど、戦いを忌み嫌う変わったアンデッドだったな。そういうアンデッドは、今は無理に構う必要はない」

(;'A`)「そ、そうですね!」

( ^ω^)「へえ……まるでモスみたいなアンデッドだな」


 モララーの機転が効いてか、話は何とか上手く収まった。
 ドクオは一息つき、胸を撫で下ろす。


('A`)「……俺にも上級アンデッド、倒せますかね?ブーンはまた新しい上級アンデッドに逢ったんだろ?」

( ^ω^)「逢ったけど……何だか良く分かんないお。クーさんと関係してるのか何なのか。
      人間を好んで襲うようなことはしないアンデッドというか……何かこう、紳士的なアンデッドだったような」

( ・∀・)「上級アンデッドは確かに強い、無理に戦いに挑んだところで危険だ。そう焦らなくていい」

('A`)「でも、倒せるようにならないと……じゃないと足手まといになっちゃうし、ブーンだけに任せるのは……」

( ・∀・)「大丈夫だ。剣藤は強い」

( ・∀・)「お前はカテゴリーAに操られ……俺は恐怖心に負け、ライダーシステムの弊害に呑み込まれた。
      けど剣藤は最初からライダーシステムを使いこなし、アンデッドとの融合係数も高い」

( ・∀・)「俺達にはない力が、剣藤にはあるんだろう」

( *^ω^)ヾ「フ……フヒヒwwそう言われると照れるお」

711第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:31:12 ID:jvu.zAqQ0


('A`)「はは、まったく頼りにしてるぜ」

( ^ω^)「お前も頼りにしてるお」

d('A`)「おう、任せとけ。こう見えて俺はヒーローの素質があるっておばあちゃんに言われながら育ってきたんだ」
 _
( ゚∀゚)「すぐ調子に乗るんじゃねーよバカ」

('A`)「おばあちゃんが言っていた…ってやつだよ!知ってるだろ?カブトムシのヒーロー!」

('∀`)/ 「俺もああなりてぇな〜、こう手をかざしてクールに決めてさぁ」

ξ゚⊿゚)ξ「そんなことしなくても、もうドクオはみんなのヒーローよ」

(*'A`)「えっ…?そうかい??お、俺がみんなのヒーローなのかい??」
 _
( ゚∀゚)「ヒーローなんだからもっとみんなのために頑張ってくれないとなぁ?」

( ^ω^)「そりゃそうだ、ヒーローはみんなのために頑張るもんだお」

(*'A`)「お、おう!任せておけよ!ツンちゃん身体凝ってないかい?ひ、ヒーローが揉んで差し上げるぜ??」

ξ#゚⊿゚)ξ「むり」



( ・∀・)「どうやって空飛びながら揉むんだ?」

(*'A`)

('A`)「は??」

( ・∀・)「ヒーローは空飛ぶものだろ?飛びながらマッサージじゃ相手が落ちちゃうだろ」

ξ;゚⊿゚)ξ「何言ってるの?」
 _
( ゚∀゚)「ヒーローが空飛ぶイメージを当たり前みたいに言わないでくださいよ」

712第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:32:00 ID:jvu.zAqQ0


 その時、和気藹々とした空気を切り裂く無情な音がリビングに響き渡る。
 全員の視線は一斉にPCに向けられ、ツンは直ぐにサーチャーの反応に目を通した。


ξ゚⊿゚)ξ「カテゴリーJの反応をキャッチ!場所は……バーボンハウスに近いわ!」

( ^ω^)「バーボンハウス!?」
 _
( ゚∀゚)「おいおいまたかよ!?」

ξ゚⊿゚)ξ「この間の蜻蛉アンデッドのときみたいに、バーボンハウスから離れてってる……まさか」
 _
( ゚∀゚)「また誰か攫われたか…!?」

( ^ω^)「カテゴリーJ……もしかして、あのアンデッドがそうなのか!?」


 カリスを守った鷲のアンデッドを思い出す。
 クーとの関係性に疑いが残る中、バーボンハウス付近に出没したとなれば可能性は高いと読んだ。


( ^ω^)「行ってくる!二人は待機しててくれお、また例のアンデッドが出たときのために!」

( ・∀・)「あっ、おい!」


 呼び止める声は届かず、既に玄関の扉が開かれた音が聞こえる。
 後を追うことはせず、窓からブルースペイダーを走らせるブーンを見送った。

713第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:32:20 ID:jvu.zAqQ0





 ―――――




.

714第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:32:54 ID:jvu.zAqQ0


 ミルナの気配を追ってクーが到着したのは、観光スポットとしても有名な吊り橋のある崖。
 見下ろすことで見ることが出来る、岩崖に打ち付けられる波はとても迫力がある。
 
 バイクから降り、足場の悪い岩を素早く踏み進んで行く。
 崖まで進むと、そこに奴はいた。


( ゚д゚ )「カリス、待っていました」


 だが、ショボンの姿が見当たらない。
 ミルナは確かにショボンを背負い、クーから逃げていたはず。


川 ゚ -゚)「貴様……ショボンさんは何処だ」

( ゚д゚ )「あの人間のことでしょうか……カリス、何故人間を庇おうとする?」

川 ゚ -゚)「貴様には関係ない。何の目的があってこんな事をする?」

( ゚д゚ )「あなたの正体を探っていたからですよ。邪魔だろう?そんな奴。
     人間如きが、俺達の神聖な戦いを汚している……許せなくはないか?」

川 ゚ -゚)「ショボンさんは何処にいる?」

( ゚д゚ )「カリス……目を覚ましてくれ、俺達はこの戦いに誇りを持っていたはずだ!」

川 ゚ -゚)「居場所を吐かぬのなら力ずくで聞き出してやる」


 腰にカリスラウザーを召喚。
 ミルナを睨み、取り出したカテゴリーAのカードを構えた。

715第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:33:50 ID:jvu.zAqQ0


( ゚д゚ )「……!ふっ!」

川 ゚ -゚)「ッ!?」


 ミルナが投げ飛ばした羽根手裏剣。
 構えたクーの右手に直撃し、カテゴリーAのカードを掴んだ羽根はミルナのもとへ帰還した。

 奪ったカードに目を通すミルナ。
 そして、大きな衝撃を受けることになる。


(; ゚д゚ )「……!!……これは、マンティスアンデッド……カリス!!」

(; ゚д゚ )「まさか……あの女の言っていたことは、本当だったのか……!?」

川 ゚ -゚)「貴様……」
 
(; ゚д゚ )「なんてことだ……!!カリス、あなたは……こいつに封印されてしまったというのか!?」


 カテゴリーAのカードを、"カリス"と呼び続けるミルナ。

 カリスとは、クーがカテゴリーAに変身した姿を指すものではなかった。
 ♥のカテゴリーA・マンティスアンデッド。カテゴリーAの中でも最強と謳われたアンデッドの、呼称に過ぎなかったのだ。

 カードを前に動揺を隠せず、悲しげにカマキリが描かれた絵柄を指の腹で撫で続ける。
 しばらくカードと向き合った後、ミルナはゆっくりとクーを睨み付けた。


(; ゚д゚ )「……お前は何者だ?怪しいとは思ったが、そもそもその姿もカテゴリー2のものだ!」

(; ゚д゚ )「カリスの姿を借り、カテゴリー2の姿をも借りたお前は何者だ!!
     他のアンデッドに変身出来る力……お前が……お前が本当に"ヤツ"なのか!?」

川 ゚ -゚)「………」

716第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:34:34 ID:jvu.zAqQ0


(#゚д゚ )「答えないのか……お前が"ヤツ"だろうと構わない。カリスを利用し、その名と力を騙った罪は重い!」

(#゚д゚ )「カリスの仇だ……!俺達の約束の邪魔をしたお前には――」
    。
ミミ/#゚王゚)『罰を受けてもらう!!』

川 ゚ -゚)「チッ……!」


 アンデッドの姿となり、背後に浮遊させた羽根手裏剣を一枚ずつ射出。
 クーは手裏剣による遠距離攻撃を瞬時に避け、岩場を器用に飛び移りながら後退。

    。
ミミ/#゚王゚)『お前だけは許さん…!』
 
川 ゚ -゚)「アンデッド同士に友情など抱く方が間違っている」
    。
ミミ/#゚王゚)『黙れ!ならば人間と仲良く過ごすお前は何だ!?アンデッドであるはずのお前が!!』

川 ゚ -゚)「ッ!!」


 ミルナ自身が飛翔し、空いた距離を一気に詰める。
 反射的に両腕を構え防御の姿勢を取るクーだが、頭上を通過しながら鈎爪を振るわれ腕を斬りつけられた。


川 ゚ -゚)「くっ……」
    。
ミミ/ ゚王゚)『どうした、何故あの姿にならない?戦うつもりはないのか!?』

川 ゚ -゚)「なるつもりはない」
    。
ミミ/ ゚王゚)『何……?」

川 ゚ -゚)「だが、相手はしてやる……別の力で」

717第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:35:18 ID:jvu.zAqQ0


 戦いの火蓋は切って落とされた。
 そこに、ミルナの反応を辿って急行したブーンが駆けつける。
 クーのバイクの横にブルースペイダーを停め、足場を慎重ながら急いで歩き渡る。


( ^ω^)「クーさん……あいつ、この間のアンデッド!」


 ミルナと向かい合うクーの姿が見える。
 腰に見えるカリスラウザーから、まさに今戦いが始まると察した。

 だが、カリスへ変身すると思われたクーに、異変が起きる。





川 ゚ -゚)「変身」
  っ□

    【 -♥REFLECT- 】


 カリスへ変身する時のように発生する透明のオーラ。
 飛沫となってはじけ飛ぶオーラの中から現れたのは……。


( ; ^ω^)「!?!?」
    。
ミミ/ ゚王゚)『貴様、どういうつもりだ!?』



( ; ^ω^)「どうなってんだお…!?モスに変身したっていうのか!?」

718第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:35:58 ID:jvu.zAqQ0


 クーが変身したのは、カリスではなく別のアンデッドの姿。
 "♥8のREFLECT"のカードをラウズしたことで、モスの姿へと変身した。
 腰にはアンデッドバックルではなく、カリスラウザーが巻かれている。


( ; ^ω^)「……んぐぐ、悩むのは後だお!変身!」


    【 -♠TURN UP- 】


 カリス以外の姿への変身を目の当たりにし、驚きを隠せないブーン。
 困惑を押し殺し、装着したブレイバックルのハンドルを引きブレイドへと変身した。

 ブレイドの存在に気付いたミルナは、羽根手裏剣でブレイドを牽制しつつクーを攻撃。


( OwO)「うおっ!?」
    。
ミミ/ ゚王゚)『仮面ライダーのおでましですか、アンデッドでありながら人間の助けを得ようとは!』

ノ( ゚ニ>)『チッ……カリスに比べれば、やはり力が劣る……』


 発生させた鱗粉でダメージを軽減しながら抵抗を試みるも、下級アンデッドであるモスの力ではミルナに太刀打ちは不可能。
 通す攻撃一発一発を当てたところで、ミルナは怯む様子はない。
 翼で起こす風で鱗粉を吹き飛ばされ、胸部を両腕の鈎爪で二度裂かれた。


ノ( ゚ニ>)『うぐっ…!』

( OwO)「クッソ…!鬱陶しいお!」


 ブレイラウザーを抜き、二枚のカードを選択。
 次々と迫る羽根手裏剣を突破する方法を思いついた。


    《-♠4 TACKLE-》 《-♠7 METAL-》

719第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:36:45 ID:jvu.zAqQ0


 身体を鋼の力で硬化させ、強化された突進力で羽根手裏剣を強引に押し退ける方法。
 日の光を受け身体を輝かせながら、ブレイドは岩場を駆け抜ける。


( OwO)「おおおおおおおおおおッ!!!」


 身体に当たる羽根手裏剣をもろともせず、ことごとく跳ね落とす。
 クーを攻めるミルナに接近すると、肩から体当たりを狙い全ての体重を乗せ突進した。

 しかし、ブレイドに気付いたミルナはクーを蹴り飛ばし素早く宙に浮遊。
 突進を容易に躱したまま、宙に浮いたままカリスのカードを二人に見せ付けた。


( ; OwO)「わああっ!」
    。
ミミ/ ゚王゚)『カリスは俺がもらう!必ず封印を解く手段を見つけてみせる……あの人間は返してやる、ついてこい!』

( OwO)「おい!待てお!」

ノ( ゚ニ>)『チッ……』


 ミルナはそのまま宙を移動し、崖の下へと飛び去った。
 モスは毒蛾。空を飛ぶことは可能だが、鷲であるミルナに到底追いつけるはずもない。

 ブレイドは、ミルナの背を見つめるクーのもとに近付き、モスである姿を怪訝な目で見つめる。


( OwO)「クーさん、どういうことだおこれ……」

ノ( ゚ニ>)『カテゴリーAを……いや、まずはショボンさんを助けなければ』

( OwO)「え……ショボンさんに何があったんだお!?」

ノ( ゚ニ>)『お前に構ってる暇はない!』


    【 -♥SPIRIT- 】

720第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:38:13 ID:jvu.zAqQ0


 ブーンを余所に、クーはバイクのもとへと走った。
 ブレイドの変身を解除し、バイクに跨るクーの前の行く手を阻むように立ち塞がる。


( ^ω^)「ちょっと待ってくれお!もしかしてまた攫われたのかお?」

川 ゚ -゚)「あのアンデッドは人質を取るような事はしない、きっとヤツのもとに居るはず。退け!」 

( ^ω^)「あのアンデッドとまた戦うことになるお!カリスの力がないと無理だ!」

川 ゚ -゚)「お前には関係ない」

( ^ω^)「クー!!」


 怒号が、急くクーを静まらせた。
 合わせようとしなかった目線を向け、ブーンの目を真っ直ぐに見つめる。


( ^ω^)「関係あるとかないとか、僕はそんなつまらないことで動いてるわけじゃない!!」

( ^ω^)「いいか?カテゴリーAは僕が取り返す、クーはショボンさんを助けるんだお」

川 ゚ -゚)「何故お前がカテゴリーAを取り返す?何のために?」

( ^ω^)「そうしなければ、クーが傷付いてしまうから」

川 ゚ -゚)「私が傷付くから……?私はアンデッドだ、人間の敵だ。何故アンデッドの心配などする?」

川 ゚ -゚)「人間の敵の心配などして、何の意味がある。私はただアンデッドであることを証明するために――」

( ^ω^)「そうやって自分に言い聞かせて、本当の心に嘘をついてるんだろ?」

川 ゚ -゚)「何…?」

721第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:39:20 ID:jvu.zAqQ0


( ^ω^)「アンデッドであることを証明するために戦うって言いたいんだろ?アンデッドなら、そんなことを考えながら戦ったりしないお」

川 ゚ -゚)「………」
 

 図星を突かれたことが、自分でも痛いほどに感じる。
 確かに、人間と共存する前までの自分は、アンデッドとしての証明のために戦ってなどいなかった。

 それほどまでに、人間に毒されてしまったのか。
 ブーンが言うように、本当の心に嘘をつこうとしているのか。
 アンデッドでありながら、誰にも言えぬ許されない思いを抱いてしまった己の心に。


川 ゚ -゚)「……いつまたお前達に襲い掛かるか分からないんだぞ?
     カテゴリーAを取り返して……アンデッドの手助けなどして、お前に何の得がある?」

( ^ω^)「人を愛する心に、平和を愛する心に人間もアンデッドもないお」

( ^ω^)「アンデッドはみんな敵だと思ってた、人間を襲う絶対的な悪だと……。
      でも、クーやモスと出会ってその概念に疑問を持ち始めたお」

( ^ω^)「僕は仮面ライダーとして人間を守る義務がある、だから戦い続けなきゃならない。
      けど、クーやモスのようなアンデッドと戦おうとは思わない。むしろ、守りたい!」

( ^ω^)「それに、ショボンさん達を想うからクーさんを信じるんじゃない。僕はクーさんを……いや、愛川クーを信じるんだ」

川 ゚ -゚)「……何故だ、何故そんなに私を信じようとする……?」

( ^ω^)「信じたいから信じる、それだけ。形に捉われてしまったら、本当に大事なものは見えてこないお」

川 ゚ -゚)「……!」


 真っ直ぐ過ぎるブーンが、眩しくも見えた。
 自分の心に素直になることが、どれ程心地良いものだろう。
 人間もアンデッドも関係ない……その言葉に胸を打たれてしまった自分がいることを、認めたくはなかった。

722第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:39:50 ID:jvu.zAqQ0


川 ゚ -゚)「……ヤツの気配を感じる。この崖を下った場所だ」

( ^ω^)「お?」

川 ゚ -゚)「ついてくるなら勝手にしろ、私は行く」

( ^ω^)「……おう!」


 アクセルを踏み道を遮るブーンを払い除ける。
 ヘルメットを被り、見られることを拒んだ己の表情を隠した。


川 ゚ -゚)「勘違いするな。別にお前と馴れるつもりはない」

川 ゚ -゚)「ただ……お前が私をアンデッドだと拒絶するつもりがないのなら、敵対もしないだろう」

川 ゚ -゚)「お前とはそれ以上も以下もない、それだけだ」

( ^ω^)「分かってるお、クー。……って、呼んでいいかお?」

川 ゚ -゚)「好きに呼べ」


 不器用に返答すると、ブーンを置き去りにバイクを走らせた。
 ミルナの気配がする崖の下へと向けて。


( ^ω^)「……よし」


 一人で大きく頷き、ブルースペイダーでクーの後を追い走り出す。

 クーの答えに希望と勇気が沸いてか、より一層前向きになった気分。
 ライダーとして戦っていた最初の頃の孤独感や迷いは、今のブーンには微塵も残っていなかった。

723第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:40:27 ID:jvu.zAqQ0

 ――――――
 ――――
 ――


 崖下の海に面した平らな陸地。
 その岩場には、連れ去られたショボンが気を失った状態で倒れていた。
 
 倒れたままのショボンに近付き、憎き心を押さえ込みながら見下ろすミルナ。

    。
ミミ/ ゚王゚)『……あなた方人間は憎き存在ですが、こんな卑怯な形で利用してしまったことは詫びましょう。
      己の信念を汚してまでも、確かめたい真実だったのです』

(´-ω-`)


 気を失ったショボンに言葉を掛けるが、当然反応はない。
 迫り来る二人の気配を感じると、ミルナは仁王立ちで自らが招いた客を待つ。

    。
ミミ/ ゚王゚)『もうすぐ帰しますので安心してください。敵だとしても、命は尊重されるべきですから』


 バイクの排気音は徐々に近くなり、明確になる。
 草が無造作に生え乱れた砂利道を通って、バイクに乗った二人は現れた。


( ^ω^)「ショボンさん!」


 並ぶように停めたバイクから降り、ヘルメットを外す。
 ミルナの背後で倒れたままのショボンが目に入ると、二人はミルナのもとへと走った。

724第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:40:59 ID:jvu.zAqQ0

    。
ミミ/ ゚王゚)『心配しなくても、この人間の命を取ろうなどとは思っていない』
    。
ミミ/ ゚王゚)『だが……お前達と共に元の生活に戻れるかと言われれば、そうとは限らない。
      お前達は、今ここで俺が倒す!』

( ^ω^)「そんなことはさせない!クーもショボンさんも僕が守る!」
    。
ミミ/ ゚王゚)『フッ……人間がアンデッドを守り、またアンデッドも人間を守る。か……。
      まさかお前が人間に媚びを売り生き残ろうとするヤツだったとは、呆れたぞ!』

川 ゚ -゚)「知ったことか」
    。
ミミ/ ゚王゚)『人間にアンデッドとしての魂を売り、腑抜けになったか!?』

川 ゚ -゚)「………」


 カテゴリーAの言葉が重なる。
 あの時もミルナと同じようなことを言われ、それを機に再び己を"アンデッド"だと強く思い込むようになった。
 まるで、己の存在を否定されたように感じたから――。

 ……だが、再び地に引きずり込もうとする言葉は全て、ブーンによって振り払われた。


( ^ω^)「違う!クーはそんな理由でショボンさん達と暮らしてるわけじゃない!」
    。
ミミ/ ゚王゚)『ふん、聞こうか』

725第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:42:03 ID:jvu.zAqQ0

 ♪大いなる力 - https://www.youtube.com/watch?v=d18HxqqREGk


( ^ω^)「クーは……自分がアンデッドと知りながらも、ショボンさんやあまねちゃん達との時間を大切に思い大事にしている。
      家族のように接してくれるみんなを、心から愛している」

( ^ω^)「そして、自分が守りたいと願ったみんなを命懸けで守ろうとしてる。全てを投げ出してまでも!
      その素晴らしさに、人間もアンデッドも関係ない!!」
    。
ミミ/ ゚王゚)『……ふん』

川 ゚ -゚)「………」


 クーがアンデッドと知り、激昂した過去を思い出す。
 あの頃は、アンデッドを憎み、アンデッド全てを倒すことだけを考えていた。


( ^ω^)「人間とアンデッド、全ての者が共存するのは……確かに無理かもしれない。
      お前のように人間を見下すアンデッドがいるように、人間もアンデッド全てを悪と見る人がいる。これは仕方のないことだ」

( ^ω^)「だから、これからも僕は野心を抱き、人間を襲うアンデッドと戦い続けるだろう」

( ^ω^)「けれど……中には争いを好まず、平和を愛す者がいる。
      人の愛を知ったアンデッドのように、アンデッドの愛を知った人間だっているんだ!」


 でぃとモスの互いに想い合う確かな愛に触れ、クーとショボン達の曇りなき愛に触れたことで、何が正しいのか…その答えを密かに求め続けていた。
 だが、答えはとうの昔から自分の心の中にあったのだ。
 人間とアンデッド……その形に捉われ、その答えが曇ってしまっていた。


( ^ω^)「自分が変われば世界は変わる!
      アンデッドの使命に苦しみながらも、それが出来たクーを僕は守りたい!」

( ^ω^)「だから……そんなクーを蔑むようなことは、僕がさせない!!」

川 ゚ -゚)「………お前……」

726第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:43:54 ID:jvu.zAqQ0

    。
ミミ/ ゚王゚)『……素晴らしい。愛を知った者同士が互いに現実から目を逸らし、傷を舐め合っているわけですね』
    。
ミミ/ ゚王゚)『悪いが、そんなものに興味はない……!俺は己が種族の繁栄のために戦っている。
      皆が万能の力を目指している。これは、その力に相応しい者を決めるための聖戦だ!』
    。
ミミ/ ゚王゚)『この戦いの中で愛など語るようなアンデッドに、勝たせるわけにはいきませんね!』


 両腕の鈎爪を研ぎ、臨戦態勢を取った。
 翼を広げたと同時に出現する羽根手裏剣が、翼の扇ぎを受けて一斉にブーン達のもとへ放たれる。


( #^ω^)「それがお前の限界だお…!変身!」

川 っ -゚)「ッ……!」


    【 -♠TURN UP- 】


 クーの前に立ち、庇いながら射出したゲートで羽根手裏剣を全て防御。
 落ちたことを確認すると、ブーンはゲートに向け走りブレイドへと変身した。


( OwO)「カテゴリーAを返せ!」
    。
ミミ/ ゚王゚)『無理な相談ですね、♣のカテゴリー10を持っているのは誰だ!?』

( ; OwO)「ううっ!!」


 再び宙を浮遊され、すれ違う瞬間に鈎爪で切り裂かれる。
 ブレイラウザーを抜き応戦するも、攻撃など届くわけもなくあっという間に防戦一方となった。

    。
ミミ/ ゚王゚)『あの力さえあればカリスの封印を解くことが出来るはず!お前か!?』

( ; OwO)「そんなこと言うわけないだろ…!うあっ!?」

727第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:45:09 ID:jvu.zAqQ0


 空中より羽根手裏剣を投擲され、防ぎ切れない羽根が身体を斬りつける。
 カードを使っても届かないどころか容易に躱されてしまうであろう空中を、どう対処すべきか。


( ; OwO)「クソッ!どうすればいいんだお……届かない!」

川 ゚ -゚)「これを使え!」
  っ□


 その時、クーが一枚のカードをブレイドに投げた。
 すかさずカードを掴み取り、カードを見る。
 渡されたカードは、"♥4のFLOAT"。蜻蛉のアンデッドのカードだ。


( OwO)「これは……」
  っ□

川 ゚ -゚)「その力で空を飛ぶことが出来るはずだ」

( OwO)「そいつは実にナイスだお!………閃いた!」


 受け取ったカード、それに加え展開したトレイから選んだ一枚のカード。
 二枚のカードを、ブレイラウザーにラウズする。
 

    《-♥4 FLOAT-》 《-♠9 MACH- 》


( ; OwO)「おおっ!?って……高いとこ怖ェお!!」
 

 カードをラウズした瞬間、ブレイドの身体が浮遊を始める。 
 原理は不明だが、自分が飛びたいと念じる方へ身体を浮かせることが出来ている。
 

( OwO)「ええい、駄目だ駄目だ…!こいつで一発逆転狙うんだお!」

728第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:45:38 ID:jvu.zAqQ0


 空を自在に飛び回るミルナの尻尾を追い、ブレイドも空を飛翔。
 自分を上回った速度で接近するブレイドに驚きを隠せず、思わずたじろいぐミルナ。

    。
ミミ/ ゚王゚)『なっ……!何故空を飛んでいる!?』

( OwO)「アンデッドの力を借りたのさ!はあっ!!」
    。
ミミ/;゚王゚)『ぐうっ…!』


 ミルナとの距離はすぐに縮まり、仕返しの斬撃を見舞った。
 鈎爪を払い、圧倒的な速度で何度も身体を切り刻み、とうとう空中での動きを制した。

 すると、ミルナの腰に備えられたカテゴリーAのカードを見つける。
 磁石のように羽根に密着しており、奪うのは簡単そうだった。

    。
ミミ/;゚王゚)『クッ……ちょこまかと!』

( OwO)「カードは返してもらうお!!」
    。
ミミ/;゚王゚)『なっ!?しまった……!!』


 空中での土俵から降ろすべく、背後に回ったブレイドは背に生えた翼を強引に両断。
 目に捉えられぬ速さからか、ミルナは対応出来ぬまま翼を切られ、支えを失い地上に向け落下。
 

( OwO)「もらったああああああ!!!」


 落下するミルナの腰に向け、ラウザーを振り下ろす。
 的確に腰に備わった羽根を斬りつけ、宙に舞ったカードを強引に掴み取った。


( OwO)「クー!!」


 そのままミルナの落下を見捨て、ブレイドは急いでクーのもとへと舞い戻る。
 そして、取り返したカテゴリーAと"♥4のFLOAT"のカードを差し出した。

729第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:46:12 ID:jvu.zAqQ0


( OwO)「ふう…!なかなか痺れたけど、これありがとうだお!」
   っ□

川 ゚ -゚)「………すまない」
   っ□
    。
ミミ/#゚王゚)『クッ…………おのれェ!!!』

( OwO)「さぁ、こっから形勢逆転だお!クーがいれば心強い!」


 カードを渡し、ブレイドは再び戦いへと戻る。
 地上に落下こそしたが、ミルナは未だ健在。むしろカテゴリーAを取り返され、怒り心頭の様子だ。

 クーは、カードを握り締めブレイドの背を黙ったまま見つめる。
 
 
川 ゚ -゚)(……何故だ)

川 ゚ -゚)(受け入れられるということが、こんなに嬉しいものなのか……)


 今まで、ただ拒んでいただけのブーンに対し心を開き始めている自覚がある。
 未だ素直になり切れないが、確かにクーの心は変わりつつあった。
 
 自分のこと、本当のことに向き合う度、心が騒ぎ出す。
 現実を忘れ、目覚めるほどに身体が熱くなる。


川 ゚ -゚)(この感情が何を意味しているのか……そんなことを考えるのは、もうやめていいかもしれない)

川 ゚ -゚)「疑問に縛られ不安になるくらいなら……心を求めて戦い続けるだけだ……!」
  っ□


 カテゴリーAのカードを構えたクーの腰に、カリスラウザーが召喚。
 目の前で起きる戦いを睨み、今度こそカリスへ変身しようとした。

730第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:46:39 ID:jvu.zAqQ0


(´-ω-`)「ん……ぐ……」

川 ゚ -゚)「……!!」


 その時、気絶していたショボンが唸り声を上げ始める。
 身体がゆっくりと動き出し、腹部を抑えながら上体を起こした。

 ショボンの意識が、戻ってしまった。


( ; OwO)「ふっ!……っぐうう!」
    。
ミミ/ ゚王゚)『どうした、アンデッドの力を借りなければその程度か!?』

(´・ω・`)「ッ……ブーン君!?」

( OwO)「ショボンさん…!?目が覚めたのか……ッ!」


 ショボンが目に入ったのは、ブレイドとミルナの争い。
 剣と鈎爪、殴り合う鈍い音と怒号が激しく繰り広げられ、見ている手に力が入った。

 ふと、違う視線を感じるショボン。
 視線を向け、そこにいるのは……今まさに変身しようとしたクー。


(´・ω・`)「クー…!?」

川 ;゚ -゚)「………」


 カテゴリーAをラウザーに当てた手が、止まってしまった。
 
 このまま変身してしまえば……今まで隠し通してきた事実が、全て明るみになってしまう。
 そう考えた途端、その後に待ち受けている事を想像するだけで、恐怖を感じた。

 クーの正体を怪しんでいたショボンも、この現場にいる事がクーに関連付いていると見ていた。
 腰に巻かれた謎のベルトと、手に持っているカード。クーに対する疑念は深まる一方だ。

731第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:47:11 ID:jvu.zAqQ0


( OwO)「ッ……クー!大丈夫だ!何も心配しなくていいんだ!」
    。
ミミ/ ゚王゚)『フン!ハアアアッ!』


 躊躇しているクーの姿が見えた。
 ブレイドは、ミルナの攻撃に晒されながらも躊躇いを抱くクーに言葉を掛け続ける。


( ; OwO)「うぐっ…!……誰も君のことを見捨てたりしない!僕達は仲間だ!」

川 ;゚ -゚)「………」

( OwO)「自分に自信を持て、誇りを持て!お前のすべてを今見せるんだお!!」

( OwO)「ショボンさんもあまねちゃんも、でぃちゃんも……お前が守るって決めたんだろ!!!」
    。
ミミ/ ゚王゚)『何をべらべらと話している!戦いの最中だぞ!』

( ; OwO)「がはっ…!」


 両の鈎爪の刺突攻撃が、ブレイドの胸部に直撃。
 胸を押さえながらブレイラウザーを振るうも、容易に弾かれ蹴り飛ばされてしまう。


川 ゚ -゚)「………私は……」

(´・ω・`)「クー、何をするつもりなんだ…?」


 ミルナに圧されるブレイドと、クーを見て離さないショボンを交互に見つめる。
 
 ショボンとの絆を取るか、ブーンの言葉を信じるか。
 二つの選択肢に迫られ、クーは深く悩みだす。

732第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:48:04 ID:jvu.zAqQ0


(´・ω・`)「君は、一体……」

川 ゚ -゚)「………」


 答えは決まった。

 ショボンに向けていた視線を外し、ブレイドと戦うミルナを睨み付ける。
 
 もしかしたら、これでショボン達との縁が切れてしまうかもしれない。
 その恐怖が、クーの心を強く締め付けてしまっていた。


 ……それでも構わない。
 ショボンさんやでぃちゃん……あまねちゃんが平和で笑顔に暮らせるなら、それで。

 傍に居れなくとも、みんなを守ることは出来る。
 みんなの幸せこそ……私の幸せなのだから。



 クーは選んだ。
 カリスとして、今ここで戦うことを。


川 ゚ -゚)「……変身!」
  っ□

    【 -♥CHANGE- 】


 ショボンの目の前で、カリスへと変身するクー。
 その一部始終は……しっかりと、ショボンの目に焼きつかれた。


(;´・ω・`)「……!!!」

(;´・ω・`)「クー……君は……!!」

733第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:48:31 ID:jvu.zAqQ0


( <::V::>)『ショボンさん』

(;´・ω・`)「ッ……!」

( <::V::>)『今まで嘘をついていてごめんなさい……これが私です』

(;´・ω・`)「………」


 ショボンに近付き、手を差し伸べる。

 だが、反射的に後退りしてしまうショボン。
 唖然としてしまい、言葉が出てこない。
 クーが恐ろしい姿へと変化してしまったことへの恐怖も、多少なりとも感じてしまっていた。


( <::V::>)『………ここは危険です、逃げてください。私が守ります』

(;´・ω・`)「君は……何者なんだ……?」

( <::V::>)『……私は、愛川クーです。言い訳はしません……けど、これが私なんです』

( <::V::>)『さぁ、早く逃げて!』

(;´・ω・`)「ッ……あ、ああ」


 脇下を掴まれ、強引に起こされるショボン。
 状況が読み込めず混乱したままだが、構わず背中を押し退避を促す。
 
 逃げ走るショボンの背を見届けると、左手にカリスアローを召喚。
 戦いの中へと目を向け、今度は自分がブレイドを助けるため、走った。

734第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:49:07 ID:jvu.zAqQ0

 ♪Rebirth - https://www.youtube.com/watch?v=SgXC5Z4R3-c

    。
ミミ/ ゚王゚)『デヤアアアッ!!』

( ; OwO)「くっ…!このォ!!」


 軽快な身のこなしで、ブレイドを蹂躙するミルナ。
 ブレイラウザーで左腕の鈎爪の一撃を弾き、ようやく腹部に蹴りを入れた。

    。
ミミ/ ゚王゚)『うっ…!ふん、甘い!』


 すかさず体勢を整え、再び羽根手裏剣を発生させる。
 だが、その構えは一瞬にして崩された。


( <::V::>)『ふっ!』

( OwO)「!?」
    。
ミミ/;゚王゚)『ぐふっ…!』


 ブレイドの頭上を回転しながら飛び越えたカリスが、着地すると同時にカリスアローでミルナを斬りつけた。
 斬りあげるようにして振り上げたカリスアローで胸部に斬撃を与え、素早く身体を左に回転させ右足による延髄切りを叩き込んだ。

    。
ミミ/;゚王゚)『ぐあっ!………!?』

( <::V::>)
    。
ミミ/;゚王゚)『か……カリス……!!』

735第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:50:07 ID:jvu.zAqQ0


 カリスの姿を見た途端、ミルナの動きが止まった。
 
 この瞬間を見逃さなかった。
 ブレイドは、ブレイラウザーのトレイを展開させ二枚のカードを選択。
 カリスも同様に三枚のカードを取り出し、それぞれ順番にラウズした。


( <::V::>)『行くぞ!』

( OwO)「オーケー!!」


    《-♠2 SLASH-》 《-♠6 THUNDER-》

    《-♥4 FLOAT-》 《-♥5 DRILL-》 《-♥6 TORNADO-》

    。
ミミ/;゚王゚)『いや、違う……!こいつはカリスじゃない!!』


 ふと我に返り、目の前のカリスが偽者であることを思い出す。
 ようやく動き出そうとするが、この窮地から逃れることは難しい。
 今まさに、両者によるトドメの一撃が放たれようとしていた。
 

     《-♠LIGHTNING SLASH-》 《-♥SPINING DANCE-》


 コンボ名を告げる電子音声。
 カリスは"♥4 FLOAT"の力で高々と宙に浮遊し、竜巻に包まれる。
 ブレイラウザーには青き雷光が纏い、ブレイドは両手でラウザーを構えた。

736第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:50:41 ID:jvu.zAqQ0


 カリスは空中移動を自在にすることで、竜巻の力を最大限に引き出せる。
 両足を揃え身体を高速で回転させ、地上に立つミルナに向け一気呵成に突進した。

    。
ミミ/;゚王゚)『クッ……なるほど、逃げ場はないというわけですか』
    。
ミミ/;゚王゚)『………認めたくはないが、負けですね』


 逃げようとはせず、その場に仁王立ちする。
 決してしまった勝敗を素直に受け入れ、自分にトドメが刺されるのを待つ。
 
 
( OwO)「はあああああああぁァァッ!!!」

( <::V::>)『ふんッ!!』


 雷と竜巻が共鳴し、竜巻に雷が帯び、雷に竜巻が纏った。
 上空より迫り来るカリスとタイミングを合わせ地を駆けるブレイド。
 強烈な錐揉み回転蹴りがミルナに直撃すると同時に、鋭い雷斬が一閃。
 ミルナの腹部は斬り裂かれ、カリスの一撃で大きな爆発が引き起こされた。
 
    。
ミミ/;゚王゚)『うあああああああァァァァッ……!!!』
 

 両者の必殺技を受け遠くへ吹き飛び、地を転がる。
 全身を感電させながら倒れ、アンデッドバックルは左右に展開された。
 バックルには、【♠ J】と彫刻されている。

737第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:51:10 ID:jvu.zAqQ0


 竜巻に身を包まれながら、ゆっくりと着地するカリス。
 ブレイドはブレイラウザーを振り雷を振り払い、トレイからカードを一枚取り出す。


( <::V::>)『お前の力だ、封印しろ』

( OwO)「クー……ありがとう」

( <::V::>)『………』

( OwO)「……へっ」


 視線を背ける。
 この行動が意味していることは、今でこそ分かる。
 だからこそ、背けられたことが妙に嬉しく感じた。


(; ゚д゚ )「ぐう………」


 だが、安心も束の間。
 二人の必殺技の前に倒れたはずのミルナが、人間の姿へとなりゆっくりと起き上がった。


( OwO)「!?まだ立てる力があるってのかお!?」

( <::V::>)『放っておけ、今だけだ』

(; ゚д゚ )「まったく……なんて、情けない負け方だ……一生消えぬ恥となるだろうな……」

(; ゚д゚ )「違うと分かっていたはずなのに……」

( <::V::>)

(; ゚д゚ )「カリスを見た瞬間、油断してしまった……」

738第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:51:50 ID:jvu.zAqQ0


( <::V::>)『聞く。お前とカリスの一万年前の約束とは何だ?』

(; ゚д゚ )「ッ……戦うことですよ、アンデッドにはそれしかないでしょう?
     俺とカリスは、あなた達のように友誼を結んでいた仲でした……」

(; ゚д゚ )「お互いに他のアンデッドを全て倒した後……最後に残ったアンデッドとして、雌雄を決しよう!
     最高の敵として、最後の舞台で戦おう!そう約束したんですよ……」

( <::V::>)『それが、カリスとの約束……最後に戦うのが約束だと?』

(; ゚д゚ )「ふっ……あなた達と同じですよ」


 不敵に笑みを見せるミルナ。
 意味深な言葉に、ブレイドは思わず反応を示す。


( OwO)「どういう意味だ!」

(; ゚д゚ )「人間とアンデッドが手を取り合う……そんなものが、いつまでも続くと思っているんですか?」

( OwO)「出来るさ、僕達が望みを捨てなければ!」

(; ゚∀゚ )「……フッ、フハハハハ!」

( OwO)「何がおかしい!?」

(; ゚д゚ )「無駄ですよ……あなた達人間も、再開されたこの戦いの"運命"に呑まれているに過ぎません」

( OwO)「何……?」

739第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:52:51 ID:jvu.zAqQ0


(; ゚д゚ )「人間とアンデッド、今は手を取り合っていても……俺達のようにいつかは戦う"運命"」

( OwO)「"運命"……?」

(; ゚д゚ )「ふっ、内心それを望んでいるのは……」

( <::V::>)

( OwO)

(; д )「あなた達かも……しれませんがね……―――」


 力尽き、吸い込まれるように地に倒れた。
 アンデッドの姿に戻り倒れるミルナを、二人は立ち尽くしたまま見つめる。

 ミルナが残した意味深な言葉が、深く突き刺さっている。
 先程までの喜びが、一瞬にして不穏なものへと変わってしまった。


( OwO)「………」

( <::V::>)『………』


 何も言わず、ミルナに背を向けるカリス。
 まるで言葉の意味を知っているかのように。

 ブレイドは静かにカードを投擲し、ミルナを封印。
 掌中に帰還したカードには、"♠J FUSION"と記され、鷲が大きな翼を広げる絵が描かれた。

740第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:53:43 ID:jvu.zAqQ0


 互いに変身を解除し、元の姿に戻る。
 打ち解けたと思われたはずの二人の間に、不穏な空気が流れる。


( ^ω^)「………」

川 ゚ -゚)「………」

( ^ω^)「……あんな奴の言うこと、気にする必要ないお。
      確かにちょっと紳士的な感じだったけど……苦し紛れの一言みたいなもんだお!あんなの!」

川 ゚ -゚)「………」

( ; ^ω^)「……あー、うん。先のことなんて今決め付けるもんじゃないしさ?」


 背を向けたままクーは反応せず。
 嫌な空気を払拭しようと必死に言葉を紡ぐが、全く効果がない。
 何より、ブーン本人が一番ミルナの言葉を気にしている。


( ^ω^)(………最後には戦う"運命"にある。だと……?)

( ^ω^)(考えもしなかった……アンデッド同士で行われるこの戦い。勝ち残った者は万能の力を手にする)

( ^ω^)(……その先には、何が待っているんだ?)

( ^ω^)   川 ゚ -゚)


 クーの背中を見つめる。
 アンデッドならば、その答えを知っているはず。
 だが、聞く勇気などなかった。


( ^ω^)(この戦いは、どこへ向かうんだ……?)

741第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:54:38 ID:jvu.zAqQ0


 沈黙が流れる中、クーに急かされ避難していたはずのショボンが姿を見せた。
 クーの名前すら呼ぼうとはせず、重たい足取りで近付いてくる。
 

(´・ω・`)「………」

( ^ω^)「ショボンさん!」


 ショボンに駆け寄り、その肩を支える。
 が、ブーンの肩をとんとんと叩き支えを拒んだ。

 ショボンを見たまま、近寄ろうとはしないクーへと自分の足で歩み寄る。


(´・ω・`)「……クー、君はずっと隠していたのか」

川 ゚ -゚)「……はい」

(´・ω・`)「僕達に内緒で、ずっとアンデッドと戦っていたのか」

川 ゚ -゚)「………はい」

(´・ω・`)「ブーン君、君は知っていたんだね?」

( ^ω^)「すみません……隠してたことは謝りますお」

(´・ω・`)「………」

川 ゚ -゚)「………ショボンさん、私は……」

川 ゚ -゚)「私は……私は人間じゃ――」

742第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:55:02 ID:jvu.zAqQ0


 言いかけたところで、優しく包まれた。
 ショボンは、クーが全てを話す前にそっと抱きしめたのだ。


川 ゚ -゚)「……!」

(´・ω・`)「僕達がいるのに、一人で頑張ってたのかい?アンデッドと戦って、何度も傷付いてたのかい?」

(´・ω・`)「そんなことをずっと隠しながら過ごして……辛かっただろう」

川 ゚ -゚)「………」


 あやすように、両手で優しく背中を叩く。
 ショボンの声はとても穏やかで、言葉が温かく心に染みる。


(´・ω・`)「初めて出会ったときから、何かあるとは思ってた。
      君が一体何者なのかを知りたがってた自分もいた」

(´・ω・`)「でも……改めて思ったよ」

(´・ω・`)「クーが何者でも、そんなことは関係ない。どうでもいいんだよ。
      一番大事なのは心なんだ。もう、僕達にとってクーは居なきゃいけない存在なんだよ」

(´・ω・`)「どんな姿をしても、クーはクー。愛川クーだよ。
      あまね達に知られたくないならそれでもいい、無理に打ち明ける必要はない」

(´・ω・`)「もう君は一人じゃない。君の居場所は、ここにあるんだから!」

川 ゚ -゚)「………ショボンさん」

(´・ω・`)「なんだい?」

川 ゚ -゚)「ありがとう………ありがとう、ショボンさん」


 目の奥が熱くなるのを感じる。今まで覚えたことのない感覚だ。
 

川 ゚ -゚)(これが、人間なのか……)

743第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:56:00 ID:jvu.zAqQ0


 クーを離し、肩に手を添える。
 真っ直ぐ目を見つめながら、口元に優しく笑みを浮かべた。


(´・ω・`)「一緒に家に帰ろう、クー」

川 ゚ -゚)「はい」

( ^ω^)「ショボンさん、よかったお……安心しました」

(´・ω・`)「ブーン君……君には、お世話になりっぱなしだな」

( ^ω^)「いやいや、僕は何も……クーもよかったな」

川 ゚ -゚)「……ああ」

( ^ω^)「ふっ」

(´・ω・`)「……ははは」


 クーを間に挟み、三人は肩を並べバイクのもとへと歩く。
 ミルナが残した意味深な言葉、その意味を考えることを後回しにする程に嬉しい気持ちに満たされる。
 この想いを持ち続ける限り、剣を交えることなどありえない。
 そう、強く思った。

744第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:56:22 ID:jvu.zAqQ0





 ―――――




.

745第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:56:49 ID:jvu.zAqQ0


 一方、モララーとドクオはアンデッド出現の報せを受け現場へと向かい到着していた。
 サーチャーが捉えた反応は、♥のカテゴリーJ。
 昨夜現れたそのの姿は誰も見ていないが、人間の死体をアンデッドと化す力を持つアンデッドということは既に把握済みだ。

 そして、その力がまた猛威を振るってしまった。

 到着した時には……既に、アンデッドと化してしまった何人もの人の姿が。
 両手を垂らしながら歩く姿は、まるで生きた屍。ゾンビそのものだ。


( OMO)「ふっ!」

「ギイイィエエエエエエェェッ!!」

( OHO)「ウオォラァッ!」

「グオオオォッ……」


 ギャレン、レンゲルへと変身していた二人は狼人間の掃討を開始。

 ギャレンが構えたギャレンラウザーが複数の敵を射撃しつつ、レンゲルラウザーを握ったレンゲルが次々と蹴散らしていく。
 狼人間の個々の力は下級アンデッドにも及ばぬ程のようで、倒すだけなら簡単だった。

 全滅を確認し、自分達の手で倒した転がる死体に目を向ける。


( OMO)「人を殺め、その亡骸を利用するとは……許せない」


 元は人間。致し方ない事とは言え、そう割り切ることの出来ない心が痛むギャレン。

 
( OHO)「封印できないアンデッドかぁ……倒すだけなら確かに楽だけど」

( OMO)「おい、口を謹め」

( OHO)「あっ……すみません」

746第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:57:19 ID:jvu.zAqQ0


 その背後で、倒したはずの死体が蠢く。
 ゆらりと起き上がり、ゆっくりと顔を上げ目の前の二人を睨む赤く充血した眼。


「ウウッ……ガアアアァァッ!!」

( OMO)「!?」

( OHO)「はっ…!」


 咆哮に気付き振り返ると、既に迫り来る死体の姿が。
 咄嗟に臨戦態勢に入る二人だったが、死体は二人に手を伸ばすことなく倒れた。


「ギャアウッ!」

( OHO)「え……?」

(,,^Д^)「油断するなよ」

( OMO)「お前は……」


 そこには、銃を構えたタカラの姿があった。
 ギャレン達に触れる前に、タカラが放った銃弾が死体の後頭部を撃ち抜いたようだ。


(,,^Д^)「アンデッドは見たのか?」

( OHO)「いや……見てません、来たときにはもう」

(,,^Д^)「そうか……」

( OMO)「何故此処が分かった?」

(,,^Д^)「奴についた家族の血の臭いは、今も消えることはない」

747第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:57:45 ID:jvu.zAqQ0


(,,^Д^)「気を付けろ、奴は至るところに現れる。いつでも動けるように心掛けておけ」


 言って、タカラは去って行く。
 変身を解いた二人。モララーは、タカラの背中を怪訝な目で見つめた。


( ・∀・)(……あいつ、やっぱり怪しいな)

('A`)「タカラさん、相当恨んでるんですね……本能的にアンデッドの気配感じてるってことでしょ?」

( ・∀・)「ドクオ」

('A`)「はい」

( ・∀・)「あいつに注意を払え」

('A`)「え……タカラさんに?」

( ・∀・)「確証は無いが……どうも気掛かりだ」

('A`)「どういうことですか?」

( ・∀・)「………」

748第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:58:18 ID:jvu.zAqQ0


 そして、その光景を遠くから見つめるミセリがいた。


ミセ*゚ー゚)リ「へぇ……面白いことしてるのね」


 背後に感じる、アンデッドの気配。
 突然現れた気配にも臆することなく、ミセリは背後の存在に語りかける。


ミセ*゚ー゚)リ「私と手を組めば、もっと面白くなると思うわ」

『断る』


 影が差し、その全貌が明らかにならない。
 荒い呼吸が聞こえ、今にもミセリに襲い掛かりそうな凶暴さすら感じ取れる。


ミセ*゚ー゚)リ「何故?」

『貴様等は所詮――』


 ミセリに歩み寄り、影に覆われる場所から抜け出た。
 日が当たり、全貌が明るみとなる。
 青い毛並みの身体を包む真っ黒な革、その上から装着した鋼鉄の武器による防具。
 縦横無尽に備えられたナイフが、不気味に光を放つ。



  (
彡,,メ皿゚彡『――俺の敵だからだ』


 次なる刺客は既に、ブーン達を待ち受けている。

749第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:58:48 ID:jvu.zAqQ0





     【 第24話 〜大切なもの〜 】 終




.

750第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:59:20 ID:jvu.zAqQ0

==========

 【 次回予告 】 https://www.youtube.com/watch?v=Yyh12l21WkA


( OwO)「うおおおおっ!!!」

「ガウウゥゥッ!!」


 増殖を続ける狼人間。
 根源であるアンデッドを捕まえることが出来ず、狼人間達との戦いに明け暮れるライダー達。


(,,^Д^)「一体ずつ相手をしようとするな、一気に倒せ!」

( OMO)「ドクオ、こいつらの動きを封じろ!」

( OHO)「はい!」

751第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 11:00:04 ID:jvu.zAqQ0


ミセ*゚ー゚)リ「はぁ、残念ね。乱暴なことはしたくなかったんだけど…」
  (
彡,,メ皿゚彡『望むところだ…!』


 一触即発となるミセリとカテゴリーJ。


「おいお前ら、人のテリトリーで勝手に騒ぎを起こして……」

「……特別に許可してやる。さぁ、戦ってくれ」

ミセ*゚ー゚)リ「お前は……!」
  (
彡,,メ皿゚彡『貴様……!?」

( ゚∋゚)「いいからいいから、どちらかが潰れるまで戦ってくれ」


 また新たなアンデッドが現れることに。
 屈強な肉体をした男。上級アンデッドとしてのその正体とは?

752第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 11:00:42 ID:jvu.zAqQ0


 三体のアンデッドが揃う中、ブーン達三人のライダーが集結!


ミセ*゚ー゚)リ「フフフ、一旦お預けね。三対三でどうかしら?」
  (
彡,,メ皿゚彡『仕方ない……仮面ライダーを葬るまたとない機会だ』

( ゚∋゚)「勝手にやってくれ」


( ・∀・)「上級アンデッドが三体……やれるか?」

('A`)「はい、せめて一体は封印してやる!」

( ^ω^)「やるしかないお…!」


 上級アンデッド三体という、かつてない脅威に立ちはだかるライダー達。
 はたして、ブーン達はアンデッドに打ち勝つことが出来るのか!?

753第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 11:01:25 ID:jvu.zAqQ0


(  w )「たくさんの人を手にかけ、尊い命をお前は一体いくつ奪った……?」
  (
彡,,メ皿゚彡『フン!さぁな、数など数えるわけないだろ?』

(  w )「それだけじゃない……亡骸を化け物に変えて、操って……」

(  w )「人の命を奪うだけに留まらず、その命を蹂躙し冒涜した……」 
  (
彡,,メ皿゚彡『なら、お前はどうする?』

(  w )「許さない……」



( #OwO)「――お前だけは……絶対に許さない!!!」


 遂にカテゴリーJの尻尾を掴んだブレイド達。
 激しい怒りと共に、ライダー達の逆襲が始まる!


 次回、【 第25話 〜血を呼ぶ嘘〜 】


 ――今、その力が全開する!


==========

754 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 11:03:53 ID:jvu.zAqQ0
しおり

>>9 第15話
>>84 第16話
>>152 第17話
>>234 第18話
>>308 第19話
>>372 第20話
>>454 第21話
>>530 第22話
>>605 第23話
>>682 第24話

細々と書いてますがなかなかまとまった時間が取れず・・・しばらく毎週は無理そう
申し訳ない

755名無しさん:2018/02/25(日) 11:59:31 ID:XPQUlbVo0
乙!いつも楽しませてもらってます
無理せずゆっくりどうぞ〜

756名無しさん:2018/02/25(日) 12:19:30 ID:8uUjVOAY0
乙です
毎週じゃなくても生きて投下してくれればそれでいいよ
最近じゃ一番の楽しみよ

757名無しさん:2018/02/25(日) 22:20:51 ID:dEr5JJPE0
乙津

758名無しさん:2018/02/25(日) 23:31:06 ID:4eaPjfsE0
待ってた!最近ブレイドの口調が荒い時多いね

759名無しさん:2018/02/26(月) 18:48:46 ID:SSuX3xU20
モララーの天然は原作準拠っぽいww
次回更新楽しみにしてる

760名無しさん:2018/02/26(月) 21:27:56 ID:CWnQ7qDA0
ミルナとの決着は思ったより早かったな

761名無しさん:2018/03/31(土) 00:49:05 ID:T.2NByG60
待ってるぜ

762名無しさん:2018/03/31(土) 12:40:33 ID:s2NU0MvQ0
そういやもう1ヶ月投下ないのか…

763名無しさん:2018/05/10(木) 00:38:59 ID:kpn2vQYE0
俺は待ってるんだぜ

764名無しさん:2018/05/12(土) 17:39:11 ID:L2m9Z4q20
俺も待ってる

765名無しさん:2018/06/03(日) 22:31:10 ID:2S8pjJ4I0
最近こねえな

766名無しさん:2018/06/07(木) 03:02:06 ID:p2kuEwck0
( OwO)待ってるウェイ!

767 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/06(金) 02:14:17 ID:YRrjfChQ0
( ^ω^)< 夏だお

( ^ω^)< 7/8(日)

768名無しさん:2018/07/06(金) 05:51:23 ID:wEg5hjNE0
投下予告!?
生きてたのか!久々のニチアサブーン系楽しみに待っとるぞ

769名無しさん:2018/07/06(金) 05:52:05 ID:Dg3J09N60
おっ!?

770名無しさん:2018/07/07(土) 11:41:32 ID:lyJ317AA0
待ってた!

771名無しさん:2018/07/08(日) 07:38:43 ID:QmaM35bM0
待ってたぞ!

77225話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:01:20 ID:wQXRKlTg0





     【 第25話 〜血を呼ぶ嘘〜 】




.

77325話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:01:55 ID:wQXRKlTg0


 ミルナを倒してから数日。
 上級アンデッドをまた一体封印したブーン達だったが、未だアンデッドの脅威は続く。
 ♥のカテゴリーJなる存在は、猛威を振るい続けていた。
 

( OwO)「うおおおおっ!!!」

「ガウウゥゥッ!!」


 次々と狼人間に成り果てる人間。
 アンデッドの反応をキャッチしても、共通点のない場所への出現は先読みをすることすら叶わない。
 反応を辿り到着すれば、既に変わり果てた人の姿しかなく、まさにトカゲの尻尾切りだった。


(,,^Д^)「一体ずつ相手をしようとするな、一気に倒せ!」

( OMO)「ドクオ、こいつらの動きを封じろ!」

( OHO)「はい!」


 ギャレンの指示を受け、レンゲルはカードを二枚レンゲルラウザーにラウズ。


    《-♣3 SCREW-》 《-♣9 SMOG-》


 "♣9のSMOG"。煙幕を発生させ、相手の動きを抑制する効果を持つ。
 それに合わせ、"♣3のSCREW"の力で右手をドリルのように回転させることで、煙幕を素早く広範囲に展開。
 狼人間達の視界を奪い、動きを封じた。

77425話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:02:34 ID:wQXRKlTg0


( OwO)「ナイスだドクオ!」

( OMO)「後は任せろ!」


    《-♠2 SLASH-》 《-♠9 MACH-》

    《-♦2 BULLET-》 《-♦9 GEMINI-》


 ブレイド、ギャレンはそれぞれ二枚のカードをラウズする。
 分身したギャレンは同時にギャレンラウザーを構え、強化された銃弾で煙幕に塗れた狼人間達を射撃。
 加速の力を身に着けたブレイドは、切れ味が倍増したブレイラウザーで光の如く速さで斬り捨てた。
 

「グギャアアアァッ!!」

「ギイイィッッ!!」


 狼人間から噴き上がる緑血。
 元々は人間だった彼等の血すら、アンデッドのものと化してしまった。

 ブレイド達の手によって、今のところ全ての狼人間は倒された。
 倒れた遺体は謎の発火を引き起こし、炎に包まれ焼失していった。


(,,^Д^)「さすがだな、仮面ライダー」

( OwO)「そんなこと言ってる場合じゃないですお……人を守るのが僕達の義務なのに!」

( OMO)「早く上級アンデッドの尻尾を掴まなければ、人類が皆アンデッドにさせられてしまう……」

( OHO)「………」

( OHO)(俺だって、こいつらくらいすぐに倒せるってのに……)

77525話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:03:12 ID:wQXRKlTg0


(,,^Д^)「そうだな……だが、奴の逃げ足が早いのも確かだ。全くイライラさせてくれる……!」

( OMO)「奴の行動パターンは分からないのか?」

(,,^Д^)「分かるものか、アンデッドのことなんか……奴は神出鬼没だ。それに一度現れた場所には現れない」

(,,^Д^)「せめて……俺にもお前達のようなバイクと、カードがあればな」


 ライダー達が乗るバイクへ目を向けるタカラ。
 通常のバイクとは比にならぬ性能を誇るライダー専用のバイクは、ラウズカードシステムを搭載。
 全てのカードの対応はしていないが、特定のカードの効果を得ることが出来る仕様となっている。

 それだけ言い残すと、タカラは背を向け静かに去って行った。

 変身を解除した三人。
 その中でも特に、モララーはタカラの背を見つめたままだった。


( ・∀・)(何故、ライダービークルの事を知っている……)

( ・∀・)(本当にただの人間か?一体、BOARDと何の関係が)

( ^ω^)「モララーさん、ずっとタカラさん見つめてどうしたんですかお?」

( ・∀・)「……いや、何でもないよ」


 ブーンの問いに首を横に振って答える。
 焼失した亡骸があった場所を向き、合掌するモララー。
 タカラへの疑いを心の中にしまいつつ、バイクのもとへと歩いた。

77625話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:04:42 ID:wQXRKlTg0

 ――――――
 ――――
 ――


 その日の夜。
 ブーン達五人は、バーボンハウスへと来ていた。
 今夜は酒を飲むためではなく、夕飯を食べに訪れている様子。
 ブーンとモララーの前にはカツカレー、ドクオの前にはオムライスがあり、ツンの前にはカルボナーラが。

 上級アンデッドの正体を掴めぬ中、お酒を飲んでは緊急時に向かうことが出来ない。
 そう考えると、自然と酒を飲みたい欲も無くなった。


川 ゚ -゚)「お待たせ致しました」


 注文を受けた料理をトレーに乗せ運んだ来たのはクー。
 トレーの上には、イカやエビ、ホタテが贅沢に使われた大盛りのピラフが乗っている。


川 ゚ -゚)「こちらシーフードピラフになります」
 _
( ゚∀゚)ノ 「はい……俺です」

川 ゚ -゚)「……どうぞ」
 _
( ゚∀゚)「……ども」


 気まずい雰囲気。
 二人が対面するのは、植物園の一件以来となる。
 ジョルジュは未だに根に持っていて、クーを見ると自分の不甲斐なさを思い出してしまうようだ。

77725話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:05:19 ID:wQXRKlTg0


( ^ω^)「お前まだ気にしてんのかお?」
 _
( ゚∀゚)「っせーな……散々俺のこと嫌ってる奴に助けられたんだ、しかも仮にも女に……男として立場がねぇよ……」

ξ゚⊿゚)ξ「あんたが今も元気にご飯食べれるのはクーさんのおかげなんだから、感謝してればいいの」
 _
( ゚∀゚)「へーい」


 ふてくされた態度を取り、スプーンをピラフの中に潜り込ませ、山盛り掬った米を口の中に頬張った。


ξ゚⊿゚)ξ「そういえば、例の上級アンデッドはどうなの?」

( ・∀・)「……どうしても正体が掴めずに終わってしまう」

('A`)「逃げ足が早いのか、俺達が遅いのか……どっちだろうな」

( ^ω^)「何にしても、このままだと誰一人守れずに次々と……」

ξ゚⊿゚)ξ「何か良い方法があるはず!みんなで考えて、必ず上級アンデッドを捕まえようよ!」

( ・∀・)「うん……そうだね」

('A`)「にしてもこう、次は俺がビシッと締めたいな!俺も成長したところ見せないと!」

( ^ω^)「お前は十分やってるお、協力して倒すことが一番の目的なんだから」

('A`)「まぁ、そうなんだけどさ……」


  ♪テケテンテンッテンテンテンテンテンッ


('A`)「あ、ちょっと待ってくれ」

( ^ω^)「はいお」

77825話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:05:57 ID:wQXRKlTg0


( ・∀・)「剣藤、タカラのことだけど……」

( ^ω^)「タカラさんがどうかしましたか?」

( ・∀・)「うーん……個人的にだけど、あまり信用出来ないんだ」

( ^ω^)「それは、どうして?」

( ・∀・)「変じゃないか?」

ξ゚⊿゚)ξ「何が?」

( ・∀・)「何で奴はいつも、的確にアンデッドが現れた場所に現れる?それも毎回、俺達が現れた後にだ。
      あれ以来、奴が現れなかったことがないし先に現れてたこともない」

( ・∀・)「尻尾を掴めない程に後を追えていないのに、何故場所が分かる?血の臭いを追っているなんて現実的じゃない」

ξ゚⊿゚)ξ「確かに……」

( ^ω^)「………でも、タカラさんは家族の仇を」

( ・∀・)「それが嘘だったら?」
 _
( ゚∀゚)「嘘って、何でそんな嘘つくんだ?」

( ^ω^)「……モララーさん、疑ってるんですかお?」

( ・∀・)「確証はないけどね……何だか、どうしても疑っちゃうんだよ。俺が疑うのも皮肉な話だけどね」

( ^ω^)「ふむ……」


 自虐を交えながらも、歯切れの悪い返答。
 サクサクの衣のカツにカレーを被せ、大きな口を開け一口。

 モララーの言葉に賛同し切れぬブーンは、浮かない顔で同じようにカレーを口に含んだ。

77925話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:06:28 ID:wQXRKlTg0


('A`)「悪い悪い」


 電話を終えたドクオが席に戻る。
 手を振りながら謝罪するが、その顔はどこか緩んでいるように見える。


( ^ω^)「何ニヤニヤしてんだお気持ち悪い」

('A`)「うるせぇロリコン、実はな……」

('A`)「この間助けた同級生からの電話でさ、同窓会やらないか?って」

( ^ω^)「おお、行くのかお?」

('A`)「うん、みんながちゃんと謝りたい場でもあるから……来てくれると嬉しいってさ」

ξ゚⊿゚)ξ「ドクオ、その人達のこと許せるようになったの?」

('A`)「どうだろうな……もうしばらく顔合わせてないし、顔見たらあの時の感情が蘇るかもしれない。
   でもさ、あの時助けたアイツの顔忘れられないんだよ。だから俺はいつまでも過去に引っ張られるのはもうやめた!」

('A`)「そろそろ前向いて、次のステップ踏まないとさ」

ξ゚⊿゚)ξ「……うん、そうだね」
 _
( ゚∀゚)「お前もしっかりしやがってよぉ……何か俺だけ取り残されたみてぇじゃん」

('A`)「自覚あるんだな?」
 _
( ゚∀゚)「あん??」

( ・∀・)「ドクオ、よかったな」

('A`)「モララーさん達のおかげですよ、これも」

78025話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:06:55 ID:wQXRKlTg0


( ^ω^)「なんだか嬉しいこと続きだな〜!やっと僕の苦労が報われてきたって感じだお」

ξ゚⊿゚)ξ「本当ね、最初はどうなるかと思ってた」

( ^ω^)「モララーさんとはちゃんとした関係が出来たし、ドクオは自分をしっかり持つことが出来たし……」


 そこに、再びクーがやってきた。
 今度は飲み物を運んできたようで、五つのグラスがトレーの上に並んでいる。


川 ゚ -゚)「お待たせ致しました」

( ^ω^)「クーとも、やっと打ち解けられた気がするし……」

川 ゚ -゚)「勝手なことを言うな」

( ^ω^)「はいはい」


 笑顔で見つめるブーンに対し、作らずとも出来ていたはずの冷たい表情を作るクー。
 素気ない返事にも慣れた様子で、それがまたクーの調子を狂わせた。
 

ξ゚⊿゚)ξ「あれ?クーって呼んでる……いつの間に?」

( ^ω^)「んー、ちょっと前から?」

(#'A`)「お前……いつの間に親交深めやがったんだよ!?おい!!お前ばっかり抜け駆けしやがってェ!!」

(#'A`)「俺も」

(*'A`)「クー♪」

(#'A`)「って呼びたい人生なんだよ!!」

( ^ω^)「呼んでみれば?」

78125話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:07:26 ID:wQXRKlTg0


(*'A`)「ク……」

川 ゚ -゚)

(*'A`)「ク……ク……」

川 ゚ -゚)「気安く私を呼ぶな」

(;'A`)「駄目だ……」

( ^ω^)「残念だったな」

(#'A`)「残念だったなじゃねぇよ」




( ・∀・)「まぁ、今があるのも剣藤のおかげだよ」

ξ゚⊿゚)ξ「うん。ブーンがブレイドじゃなかったら、きっと私達バラバラだった」

('A`)「……ムカつくけど、俺も立ち直れなかっただろうしな」
 _
( ゚∀゚)「ギャレンがモララーさんでよかったとも俺は思うぜ、レンゲルもな」

( ^ω^)「要するに、誰一人欠けちゃいけないってことだお」

( ^ω^)「今はみんなと一緒だって強く実感出来るし……幸せな気持ちの方が勝ってるお」



( ^ω^)「……このまま、何もなければいいんだけどなぁ」

78225話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:07:50 ID:wQXRKlTg0





 ―――――




.

78325話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:08:12 ID:wQXRKlTg0


 数日後。
 この日は、ドクオが招待された小学校同窓会の日。
 ドクオは自分の家で、その支度を行っていた。


('A`)「んー……こんなもんでいいか」

('A`)「あまり決めすぎると、また何か言われるかな……?」


 洗面台の鏡を見ながら、髪型をセットする。
 ワクワクした気持ちを抱きつつも、あの頃のトラウマが消えたわけではない。

 また、何かされるかもしれない。

 無意識にそう思ってしまう自分がいた。


('A`)「いや……大丈夫だろ。何か言われたら言い返す!それだけだ」


 緊張で高鳴る胸を撫で下ろし、深呼吸。
 胸をとんとんと叩き、鏡に映る自分に頷いた。

 部屋に戻り、軽く荷物を纏める。


('A`)「そろそろ出るか……」

('A`)「……俺がこうしてる間にまたアンデッドが出たら、どうするかな」

('A`)「あの二人だけでもどうにかなるだろうけど……放っとけないよな」


 ライダーとしての自覚が芽生えてか、ブーン達が心配になった。
 机の上に置かれたレンゲルバックルを取り、バッグの中にしまう。
 忘れ物がないことを確認し、バッグを背負いドクオは部屋を出た。

78425話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:08:37 ID:wQXRKlTg0

 ――――――
 ――――
 ――


 だが、皮肉にもドクオの心配は、まさにその時に的中していた。
 ドクオが同窓会に向かうため早めに家を出たと同じ頃、アンデッドサーチャーが一つの反応をキャッチ。
 キャッチしたのは、もちろん♥のカテゴリーJ。

 ブレイド達は再び、アンデッドサーチャーがキャッチした反応のもとへ急行していた。


ξ゚⊿゚)ξ[もうすぐよ、何体いるか分からないから気をつけて] 

( OMO)「了解!」

ξ゚⊿゚)ξ[今のところ、カテゴリーJの反応はまだそこにあるわ]

( OwO)「みたいだな……今度こそアンデッドをとっ捕まえてやるお!」


 更にバイクを加速させ、目的地へと突き進む。


「おい、あれ仮面ライダーじゃないか!?」

「すげぇ!本当にいたのか!」


 公道を走る仮面ライダーの姿を見ては、指を差しスマホのカメラを向ける者が横目で何人も確認できる。
 

( OwO)(早くアンデッドを封印しないと、この人達もいずれ……)

( OwO)(それだけは、絶対にさせないお!)

78525話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:09:08 ID:wQXRKlTg0


 バイクを走らせて数分後。
 目的地は着実に近付いている。目の前に示されている反応もとても近くなった。


( OwO)「もうすぐ着くお!」

ξ゚⊿゚)ξ[……ああ!まただわ……]

( OMO)「なんだ?」

ξ゚⊿゚)ξ[……やっぱりだめ、また消えた]

( OMO)「なに!?」

( #OwO)「クソッ!毎回毎回見計らったかのように消えやがって……!!」


 サーチャーの反応をいち早く確認することが出来るツンは、カテゴリーJの反応が途絶えたことを報告。
 ライダー達の眼前に見えているサーチャーからも、確かに反応が途絶えた。
 もう少しというところで毎回途絶えてしまう反応は、まるでブレイド達の来着を監視しているようだった。


 悔しさを噛み締めながら現場に到着する二人。
 そこにはやはり……狼人間の群れが跋扈していた。


「グルルルル……」

「ワオオォォォォォン!!」

( OMO)「チッ……やるぞ……!」

( OwO)「はい……」


 バイクから降り、二人はそれぞれの武器を手に取る。
 アンデッドを捕まえることの出来ない無力さに苛まれながら、また罪のない人間を裁く。

78625話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:09:28 ID:wQXRKlTg0


ξ゚⊿゚)ξ[ちょっと待って!]

( OMO)「今度はなんだ?」


 狼人間の群れに向かおうとした二人は、ツンの呼び止める声に気を引かれた。


ξ゚⊿゚)ξ[カテゴリーJの反応を確認!そこから更に遠く離れた場所……!]

( OwO)「このタイミングで別の場所に現れたってのかお!?」


 再びカテゴリーJの反応を確認するアンデッドサーチャー。
 二箇所目に出現するのは此度が初めての事。
 ましてや、まだ目の前の狼人間を倒せていない時に。


( OMO)「剣藤、ここは俺に任せてカテゴリーJを追え!」

( OwO)「えっ!?でも、モララーさん一人じゃ……」

( OMO)「これ以上被害を増やさないことの方が先決だ、いいから行け!!」

( OwO)「……分かりました!気をつけて!」


 ギャレンの命令を受け、ブルースペイダーに乗り遠く離れた場所に出現したカテゴリーJを追い始める。
 背中を見届けることはせず、ギャレンは狼人間達に向けギャレンラウザーを構えた。

 その時、ひとつの疑問が頭を過ぎる。


( OMO)(何故タカラは現れない?このことを予測して先回りしているのか?)

( OMO)(いや……何の情報も得られない普通の人間に、そんなことは出来ない……)

( OMO)「ツン、カテゴリーJが消えても場所が分かるように剣藤が向かった位置の特定をしてくれ」

ξ゚⊿゚)ξ[了解!]

78725話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:09:49 ID:wQXRKlTg0





 ―――――




.

78825話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:10:13 ID:wQXRKlTg0


 ギャレンに最初の場を任せ、単身カテゴリーJを追跡するブレイド。
 ブルースペイダーの性能を以ってしても、そこそこ時間が掛かってしまった。

 ブレイドが到着したのは、隣町の遊園地。
 だが、既にカテゴリーJの反応はまたも途切れてしまっていた。
 遊園地にも関わらず人一人の影はなく、スタッフの存在すら見受けられない。


( OwO)「もしかして……アンデッドが!?」


 最悪の展開を想像してしまう。
 全員がアンデッドにやられてしまっていたとすれば……遊園地なだけに、人数の規模も今までとは桁が違う。
 警戒しながらも、無人の入り口を突破し、遊園地の内部へと進む。

 
 たくさんの遊具や乗り物が立ち並ぶ内部。
 何度も周囲を見渡すが、やはり人がいるような気配はない。


( OwO)「どういうことだお……みんな逃げれたのかお?」

「ぐっ……!」

( OwO)「!?」


 突如、人の呻き声。
 すぐに反応し、背後から聞こえるその声に警戒する。


( OwO)「……!?あなたは!?」

78925話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:10:36 ID:wQXRKlTg0


(,,メ;^Д^)「くっ……ブレイドか……」

( OwO)「タカラさん!!」


 そこには、大きく裂かれた腕を押さえながら苦しそうに歩くタカラがいた。
 服はボロボロに引き裂かれ、見える素肌には引っ掻き傷がたくさん形成されている。
 ブレイドのもとへ辿り着く前に力が尽きたのか、タカラは膝から崩れ落ちた。


( OwO)「タカラさん!!どうしたんですかこの傷は!?」

(,,メ;^Д^)「奴だ……!奴を、見つけた……!」

( OwO)「例のアンデッドのことですかお!?」

(,,メ;^Д^)「そうだ……うぐっ!」

( OwO)「タカラさん、傷がひどいですお……!」

(,,メ;^Д^)「構うな!」

( OwO)「………」

(,,メ; Д )「クソッ…!なんて無様だ……一矢報いることも出来ずに、このやられ様か……」

(,,メ; Д )「こんなものを持ってても、何も出来ないのか俺は……!!」


 家族の仇を果たせぬどころか、一方的に打ちのめされたタカラ。
 銃を置き、悔しさに歯を食いしばる。そして、硬い地面を拳で殴りつけた。

79025話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:11:03 ID:wQXRKlTg0


(,,メ;^Д^)「あいにく、ここにいた人は全員逃げることが出来たようだ……俺の仕事じゃないというのに」


 タカラの言葉は、タカラ自身が命を懸けて人を守ったことを意味していた。
 その言葉に安心してか、ブレイドは変身を解除。地に跪くタカラに向け、手を差し出した。


( ^ω^)「……タカラさん、命があっただけでもよかったですお」

( ^ω^)「安全な場所まで肩を貸します。痛むかもしれないけど、立ってください」

(,,メ; Д )「………大丈夫だ、自分で歩ける」


 ブーンの手を借り立ち上がる。
 肩を借りることを拒んだタカラは俯いたまま動かない。


( ^ω^)「着いてきてくださいお」


 タカラの心中を察するブーンは、それ以上の言葉をかけない。
 一言だけ告げると、タカラを背に遊園地内の安全な場所へと向け歩き出した。


(,,メ; Д )「………」

(,,メ^Д^)


 顔をあげ、ブーンの背中を見つめるタカラ。

 




(,,メ ゚∀゚)


 ――その表情が、変わった。

79125話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:11:25 ID:wQXRKlTg0


(,,メ ゚皿゚)Ш 「………」
   
( ^ω^)「タカラさん、大丈夫ですお。そのアンデッドは必ず僕達が捕まえます」

(,,メ ゚皿゚)Ш「……ああ」


 人間のものとは思えぬ鋭利な爪が伸びた右手。
 むき出しにする歯はとても鋭く、肉を食いちぎるのはとても容易だろう。

 ――目の前の、ブーンの肉も。


( ^ω^)(許せないお……カテゴリーJ……!)


 人間を次々と殺め、自分の駒として戦わせる残虐なアンデッド。
 その憎しみは日を重ねるごとに募っていく。
 

 憎んでいる存在が、背後に居るとも知らず。


(,,メ ゚皿゚)Ш「………ウヴヴゥ゙ゥゥッ!!!」


 低い唸り声を喉から鳴らす。
 そして、ブーンの背中を貫くために、構えた右手を勢いよく伸ばした。
 

 だが、間一髪でその腕は掴まれた。


(,,メ ゚皿゚)「ウヴッ!?」

( ^ω^)「!?モララーさん!?」

79225話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:11:46 ID:wQXRKlTg0


( #・∀・)「正体を現したな、タカラ……いや。カテゴリーJ!」

( ^ω^)「モララーさん……それにドクオ!?」


 ブーンが振り返ったそこには、タカラの腕と首を掴み押さえ込むモララーの姿。
 そして、同窓会へ向かうはずのドクオの姿があった。
 

(,,# ゚皿゚)「グウッ…貴様ァ……!!」

(#'A`)「てめぇ、俺達を騙してたのか!!」

( ^ω^)「……?どういうこと……」

( ; ^ω^)「!?!?」


 モララーが掴むタカラの腕。その右手を見た途端、ブーンは言葉を失った。
 タカラの右手は、人の手とは思えぬ形状と化していた。


( #・∀・)「貴様はあたかも俺達の味方のようなフリをして、俺達の動向を確認しながら動いていた。
      人間のフリをして、俺達に近付いたんだろう!?」

( #・∀・)「通りで俺達が辿り着く前に、アンデッドが都合良く居なくなる訳だ」

( ; ^ω^)「……嘘でしょ?タカラさん…!?」

( #・∀・)「家族が殺されたなどというのもでっちあげた嘘だ、俺達を信用させるためのな!
      貴様は人間社会に潜り込み、俺達の監視から外れた場所で効率よくアンデッドを倒すため……!」

79325話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:12:08 ID:wQXRKlTg0


(,,# ゚皿゚)「ンウグゥアァッ!!」


 強引にモララーの拘束を振り払う。
 再び俯くタカラ。
 だが、俯いていても分かる。


 タカラは、笑っている。


(,,メ Д )「……フッ、クククク……」

(,,メ゚∀゚)「フッハハハハハハハ!!」

(#'A`)「何笑ってんだお前!?」

(,,メ^Д^)「少しだけお前の言うことを訂正してやろう」

(,,メ^Д^)「家族が殺されたのは嘘じゃない、あれは本当にあったことさ」

(,,メ゚∀゚)「そう……この姿をした男の前で、確かに俺は家族を殺した。そして……この男さえも殺した!!」


 人間の姿の自分を見せつけながら話すタカラ。
 タカラが擬態している人間の姿は……タカラ自身が殺した人間の姿だった。


(,,メ^Д^)「だがな、あれはただの実験に過ぎなかった。失敗したが、俺が人間どもを下僕に変えるための力を試しただけだ。
       あの女が俺に授けた力をな……」

( ・∀・)「BOARDの女性の話か?そんなものも嘘だろう!」


(,,メ^Д^)「――いや?それは本当さ」

79425話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:12:31 ID:wQXRKlTg0


( ・∀・)「何……?」

(,,メ^Д^)「奴は俺の正体を知っていて近付いて来た。そして……普通ではありえないこの力を俺に授けた」

(,,メ^Д^)「あの女が何を考えてそうしたかは知らないが、そんなものには興味ない!
       俺はこの力を使って、あることを考えたんだ……」

(,,メ^Д^)「クククク……フハハハハ……!」


 不気味な高笑い。
 三人は、タカラをただ怪訝な目で睨み続ける。


(,,メ^Д^)「お前達……俺を追い詰めて、正体を明かしてそれで全てが済むと思ってるんだろう?」

(,,メ^Д^)「ヒャハハハハ!!馬鹿な奴らだ、お前らは本物の間抜けだなァ!!」

( #・∀・)「………」

(,,メ^Д^)「おい……この訳の分からない物が建ち並ぶ広い場所に、本当に人間が一人もいなかったと思うのか?」

(,,メ^Д^)「俺が手を掛けた奴らが一体どんな姿になってきたかは知ってるだろう?
       奴らは俺の思うままに動く、下僕に過ぎない」

(,,メ^Д^)「ただ……下僕でも腹を空かせるからなぁ、餌を与えないといけないんだ」

('A`)「さっきから何が言いたいんだ!?」


 痺れを切らし怒鳴りつけるドクオを見ては、目を見開き満面の笑みを浮かべる。


( #・∀・)「貴様……全員を殺したのか!?」

(,,メ゚∀゚)「大当たりだ!!全員俺の下僕に変わり果てた!それで、ちょっとばかり餌を食わせに行ったのさ……」

(,,メ゚∀゚)「お前らが大事にしてる、"仲間"って奴の肉をなァ……!!」

79525話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:12:54 ID:wQXRKlTg0


( ; ・∀・)「………!!」

( ; ^ω^)「まさか……!!」


 ポケットのスマホを取り出し、急いでツンへと発信するブーン。
 モララーも同様に、ジョルジュへと発信。
 耳に当てたスマホから、相手を呼び出す音が流れる。


 …………。

 …………。


( ; ^ω^)「ツン……!」


 …………。

 …………。


( ; ^ω^)「………」

( ; ・∀・)「出ない……」
 

 ツンもジョルジュも、二人の着信を取ることはなかった。


(,,メ^Д^)「今頃どうしてるんだろうなぁ……?奴らに捕まって、今にも食われそうになってるかもしれないなぁ」

( #^ω^)「貴様………!!」

79625話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:13:16 ID:wQXRKlTg0


(,,メ^Д^)「ヒヒヒヒヒ……!!でもひとつだけ助かる方法はあるぞ。
       奴らは俺の意思で動く、俺が止めろと命令すれば奴らは止まる」

(,,メ^Д^)「そうだなぁ、俺の条件を飲めば……助けてやらんでもない」

( ; ・∀・)「……最初からそれが目的だったのか!?」

(,,メ^Д^)「ご名答だ!貴様らの命も人間の命もどうでもいい、俺の目的はただひとつ……」

(,,メ^Д^)「ライダーのバイクとカードを俺に寄越せ。特にブレイド……♠スートの力は俺と相性がぴったりでな。
       お前のカードを寄越せ!そうすればお仲間の命は助けてやるよ」

( ・∀・)「なんだと!?」

(,,メ^Д^)「他のアンデッドは全て俺の敵だ!貴様が言った事は間違いじゃない。
       だが、封印する術は今のところ貴様らしか持っていない」

(,,メ^Д^)「なら、カードの力を発揮できるバイク……そしてそのカードを手にすればいい!そして俺はアンデッドとして最強になる!
       アンデッドを俺の手で全員ぶっ倒して、俺の力とする!そして最後に勝ち残るのは……俺だ!!」


 全ては、ライダーの持つ力を狙ったタカラの計算通りだった。
 悲劇の人間を装いブーン達に近付き、ライダーの動きを監視する。
 自分への疑いを無くすことで、監視から外れたタカラは自由に動き回ることが出来た。
 狼人間を常にライダー達に与えながら、自分の存在を警戒させながらも自分を信用させる。

 そして、最後は自分の正体が明かされても問題の無いように、ツンやジョルジュを人質に仕組む。

 モララーの疑念は、間違ってはいなかった。
 だが、ブーンはタカラを強く信用してしまった。

79725話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:13:40 ID:wQXRKlTg0


( ^ω^)「………分かった」


 カードデッキを取り出し、タカラに差し出すブーン。
 

(,,メ^Д^)「フッ、それでいい。物分りが良くて助かる」


 鼻を鳴らし、カードデッキを奪い取る。
 カテゴリーAを含む全てのカードを確認すると、タカラは口角を吊り上げる。


( ^ω^)「それで……それでツン達を助けてくれるんだろうな?」

(,,メ^Д^)「ああ、もちろんさ。俺は嘘をつかない……」

(,,メ゚∀゚)「……というのは嘘だ!」

( ^ω^)「何……!?」

(,,メ゚∀゚)「ハハハハハハ!!どこまでも馬鹿な奴らだ!生かしておくわけないだろう!!
      アンデッドを倒そうとする連中も、カードが手に入った今みんな邪魔だ!!貴様らの命などどうでもいい……わけないだろ!?」

( # ω )「ッ………!!!!」

( #・∀・)「貴様……!!」

(,,メ^Д^)「クククク……!」


 思うままに騙される人間共に、滑稽過ぎて笑いが止まらない。
 ブーンとモララーの怒りに満ちる表情が、タカラの笑いをより誘った。


(,,メ゚皿゚)「……フーッ、フーッ…!ウウウヴヴヴヴゥッ!!」

( ; ^ω^)「うっ!?」

79825話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:14:04 ID:wQXRKlTg0


 再び歯をむき出しにし、突如息を荒げる。
 ブーンを突き飛ばしたタカラは、軽々と宙を回転しながら人としての姿を消した。
 着地して現れたのは、全身に鋭いナイフを纏った狂気すら感じる姿のアンデッド。
 狼にも似た風貌は、まさに狼人間の生みの親であることを証明していた。

 ブルースペイダーへと一直線に疾走するタカラは、華麗に飛び乗る。
 人の文化を知らないアンデッドとは思えぬ程、器用にバイクのエンジンをかけた。

  (
彡,,メ皿゚彡『コイツも今から俺の力だ!』

( ・∀・)「待て!!」


 呼び止める声など意味を成さない。
 タカラは、そのままブルースペイダーを走らせ何処かへと去って行ってしまう。


('A`)「ブーン、大丈夫か?」

(  ω )「………モララーさんの言う通りだった」

( ・∀・)「剣藤……?」


 ドクオに差し伸べられた手を掴まず、ブーンは地に倒れたまま小声で囁いた。


(  ω )「僕のせいだお……僕があいつを、何の警戒もせず信じてしまったから……」

(  ω )「ツンもジョルジュも……モララーさんやドクオも、こんなことに巻き込んでしまった……!」


 酷く責任を感じ、自分を責めるブーン。
 同時に、アンデッドに騙されたことの悔しさでギリギリと歯を食いしばる。


( ・∀・)「……剣藤、立て」

79925話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:15:23 ID:wQXRKlTg0

 ♪大いなる力 - https://www.youtube.com/watch?v=d18HxqqREGk


( ・∀・)「お前だけの責任じゃない……俺にも責任はある」

( ・∀・)「BOARDの女性……奴が言った言葉に、希望を感じてしまっていた部分があった。
      奴を通じてその女性に接触すれば……所長達と力を合わせ、BOARDの再建も有り得ると思ってしまった」

( ・∀・)「全部一人で責任を負おうとするな。俺達は痛みを分け合っていく仲だろ」

( ^ω^)「でも……僕は、ただただ何回も何回も騙されて……」

( ・∀・)「百回人を騙す奴より、百回騙されて馬鹿を見る奴の方が俺は好きだ」

( ・∀・)「それに……どんなことがあっても、最後までお前と共に戦うと覚悟を決めた本当の仲間なら、此処にいる」

( ・∀・)「俺が府坂に騙されていた時のように、今度は俺がお前を導く。それが仲間だと、お前が教えてくれたんだ」

( ^ω^)「モララーさん……」


 手を差し伸べるモララー。
 既に掴むべき手は差し出されているにも関わらず、ドクオも再び手を差し伸べた。 


('A`)「そうだよ!あんな奴、俺達が一丸になればぶっ倒せる!ツンのとこにはジョルジュがいるんだろ?簡単にやられやしないさ」

('A`)「まぁ、これは根拠のない自信だけど……さっきまでツンはサーチャーの反応を送ってくれてたんだろ?
   それに狼人間の群れが本当に向かってたとしたら、俺達は途中でその群れを見てるはずだ」

('A`)「でも、あいつがはったりかましてるとも思えないし……とにかく急いでなんとかしないと!」

80025話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:15:46 ID:wQXRKlTg0


( ・∀・)「奴を倒せば、狼人間の動きも制御出来るはず。すぐに奴を追おう、今度こそ俺達で奴を倒すんだ!」

('A`)「協力して倒すことが重要。だろ?お前が言ったんだぜ?」

( ^ω^)「……へっ、お前に元気付けられるなんてな」


 両手を伸ばし、差し出された二つの手を掴む。
 二人に引っ張られながら自分の足に力を入れ、深く深呼吸。


( ・∀・)「カテゴリーAは渡さなかったんだろう?」

( ^ω^)「もちろん、あいつは力になるカードしか欲しくないだろうと思って」

( ・∀・)「なら問題はないな。俺の小型サーチャーを渡すから、後ろに乗って道を案内してくれ」
   っ■

( ^ω^)「分かりましたお」

('A`)「じゃあさっさと行こうぜ、とっとと倒して俺も同窓会に行くんだ」

( ^ω^)「よし、行こう!」


 アンデッド打倒に向け、一つになった心が共鳴する。
 タカラを追うため、三人はバイクのもとへと走って行く。






 ――その背中を、高い位置で宙吊りになった観覧車の上から見つめる、一人の少女。


o川*゚ー゚)o「………」

o川*゚ー゚)o「……お友達、なれるかなぁ」

80125話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:16:11 ID:wQXRKlTg0





 ―――――




.

80225話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:16:35 ID:wQXRKlTg0


 逃走したタカラは、人一人いない広々としたプールへと侵入。
 盗んだブルースペイダーで柵を越え、プールサイドに華麗に着地する。

 そして、ブーンから騙し取った♠スートのカードを懐より取り出す。

  (
彡,,メ皿゚彡『フッフッフッ……コイツがあれば、アンデッドの力を俺のものに出来る!』


 自身の左手と、ブルースペイダーに搭載されたラウザーシステムを交互に見つめる。

  (
彡,,メ皿゚彡『このバイクに俺のアンデッドウィルスを注入すれば、更に俺に適したマシンになる…!』
  (
彡,,メ皿゚彡『俺は強力な力で全てのアンデッドを倒し、自分でアンデッドを封印することが出来る…!最高だ!!』


 カードにブルースペイダー……そして、BOARDの女性と言う者から得た力。
 他のアンデッドには持つことの出来ない力を手にし、喜びに満ち溢れる。
 力を全て駆使し、アンデッドを封印する姿を想像する。笑いが止まらない。

 だが、喜びに浸るのも束の間。
 余韻を邪魔する、一人の気配を感じた。

  (
彡,,メ皿゚彡『………貴様から試してやろうか?』


 気配のする方へ視線を向け、ブルースペイダーから降りる。
 すると、その声に応じるように視線の先から現れた。

80325話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:18:57 ID:wQXRKlTg0


ミセ*゚ー゚)リ「ふふ、やっぱり面白いことしてるじゃない」


 現れたのはミセリ。
 タカラの一連の行動を陰から監視し、機を伺っていたのだ。
 

ミセ*゚ー゚)リ「私の予想は当たったわ、きっとそれが目的だと思った」
  (
彡,,メ皿゚彡『フン、だったらどうする?俺から奪おうと言うのか?』

ミセ*゚ー゚)リ「私と手を組めばそんなことはしないわ」
  (
彡,,メ皿゚彡『馬鹿な…俺は誰とも手は組まないと言ったはずだ』


 片手のみで扇形に綺麗にカードを広げ、ミセリに見せ付ける。
 

ミセ*゚ー゚)リ「はぁ、残念ね。乱暴なことはしたくなかったんだけど…」

ミセ*゚ -゚)リ「……お前がその気なら、力ずくで奪うまでだ……!」
  (
彡,,メ皿゚彡『望むところだ…!』


 交渉は決裂し、互いに敵意を見せ始め一触即発な状態へと加熱していく。
 睨み合いながら距離を取る両者。
 まさに今、戦いの火蓋が切って落とされようとした。

 その時。

 手を叩くような乾いた音が、パン、パン!とプールに響き渡った。

80425話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:19:28 ID:wQXRKlTg0


ミセ*゚ー゚)リ「……?」


 音のする方へ、睨み合っていた二人の視線は向けられる。
 
 プールの中心。
 繋がった広いプールサイドとは隔離されたように点在する、小さい子供用のプールだろうか。 
 その脇にビーチパラソルを差し、白いビーチチェアに寝そべる一人の男がそこにはいた。

 深々と被った麦わら帽子を僅かに上げ、視界を広げる。


「……ああ、まったくうるさいな」


 気だるそうにゆっくりと立ち上がった男。
 エスニック系の白い緩めの服で覆っている身体は、服越しでも分かるとても強靭な肉体。
 背丈は高く、その見た目だけで人を威圧出来る。
 帽子に手を当て、対岸で対峙しているミセリとタカラを見つめる。


「おいお前ら、人のテリトリーで勝手に騒ぎを起こして……」


 直後、スパンの無い跳躍で軽々とプールを飛び越え、対岸へと渡る屈強な男。
 二人の前に立ちはだかり、ようやく顔がはっきりと露になる。
 そして、気だるそうな表情で言葉を続けた。


( ゚∋゚)「……特別に許可してやる。さぁ、戦ってくれ」

ミセ*゚ー゚)リ「お前は……!」
  (
彡,,メ皿゚彡『貴様……カテゴリーJか!?』

80525話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:19:48 ID:wQXRKlTg0


 男を見た瞬間、威勢の良かったミセリが微かに萎縮している。
 タカラによって正体が判明した。
 この男もアンデッドであり、上級アンデッド。タカラと同じカテゴリーJだ。

 ブーンとモララーがそれぞれ封印したカテゴリーJ。
 残るカテゴリーJは二体で、そのうちの一体は♥スートのタカラである。

 と、すれば……残るカテゴリーJは、♣スートのみ。


( ゚∋゚)「いいからいいから、どちらかが潰れるまで戦ってくれ」


 二人の意識が男に向けられているにも関わらず、男は二人の戦いを促す。
 

ミセ*゚ー゚)リ「……あら、ごめんなさい。あなたのテリトリーだとは知らなかったの。
      あなたを怒らせるのは得策じゃないから、やめておくわ」

( ゚∋゚)「気にするな、俺は何もしない」
  (
彡,,メ皿゚彡『ハッ!今の俺なら、お前も倒せるかもしれんな。無敵の力を手にしたこの俺なら!』

( ゚∋゚)「フム……」


 上級アンデッドによる三つ巴。
 殺気を見せず落ち着いている男の隠し持った力を知ってか、ミセリは一歩引いている。
 それに対して、タカラは好戦的な態度を示すも、男は興味のない素振りを見せた。


( ゚∋゚)「…ん?」


 突如、近付く気配を感知する男。
 やがて近くなるバイクの排気音にミセリ達も気付き、その正体が何かを感じ取った。

80625話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:20:14 ID:wQXRKlTg0

  (
彡,,メ皿゚彡『フン、来たか』


 二台のバイクが到着し、ブーン達三人が現れた。
 モララーの後ろに同乗していたブーンが真っ先に降り、手に持ったサーチャーをポケットにしまう。
 そして、並び立つ面々を一人ずつ確認する。


( ・∀・)「貴様……」


 ヘルメットを取るモララー。
 言わずとも目に入ったのはタカラ。奪われたブーンのカードを手に持っている。
 先に降りたブーンが最初に目に入ったのは、ジョルジュを騙し母とでぃを人質に取られた因縁を持つミセリ。


( ^ω^)「義永ミセリ……!お前もいたのかお!」

ミセ*゚ -゚)リ「お友達は元気かしら?」

( #^ω^)「ふざけんな!!お前だけは許さない!!」

ミセ*゚ -゚)リ「ふん」


 冷たく見下した目が、ブーンを睨み付ける。
 グリンクローバーから降りたドクオは、面識のないもう一人の男に気が付いた。


('A`)「お前もアンデッドなのか!?」

( ゚∋゚)「仮面ライダーか……倒すならコイツらにしてくれ、俺は戦いが嫌いなんだ」

('A`)「そんなこと信じられるか!」

80725話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:20:38 ID:wQXRKlTg0


ミセ*゚ー゚)リ「フフフ、一旦お預けね。三対三でどうかしら?」
  (
彡,,メ皿゚彡『仕方ない……仮面ライダーを葬るまたとない機会だ』

( ゚∋゚)「勝手にやってくれ」


 臨戦態勢を取るアンデッド達。
 男だけは乗り気ではなく、立ち尽くしたまま。


( ・∀・)「上級アンデッドが三体……やれるか?」

('A`)「はい、せめて一体は封印してやる!」

( ^ω^)「やるしかないお…!」


 ドクオを真ん中に肩を並べる三人。
 上級アンデッドが三体という、かつてない脅威に立ちはだかる。
 独特な緊張感が漂うも、ブーンだけはアンデッドへの怒りで滾っていた。

 ブーンはバックルを取り出し、モララーがカードを装填し、ドクオはバックルを装着。
 三人一斉に装着したバックルから、三つの待機音が重複して複雑な音を奏でる。
 アンデッドを真っ直ぐ視界に捉えながら、同時に変身の構えを取る。

80825話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:21:01 ID:wQXRKlTg0

 

( ^ω^)ψ
    /

('A`/)       「「「変身!」」」


o( ・∀・)
 \


    【 -♠TURN UP- 】 【 -♣OPEN UP- 】 【 -♦TURN UP- 】

80925話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:21:25 ID:wQXRKlTg0


 バックルを展開し、三つのゲートが射出される。
 接近するレンゲルのゲートに、変身者の通過を待つブレイドとギャレンのゲートが二つ。
 ドクオの両サイドに並んでいたブーンとモララーがゲートに向け走り出し、ドクオは構えたままゲートを待機。

 ブレイトとギャレンへ変身しアンデッドへと向かって行った二人に対し、変身を終えたレンゲルが遅れて動き出した。


( OwO)「うおおおおおッ!!!」

ミセ*゚ー゚)リ「ふふ、そんなに私が憎いか…!?」


 ブレイドが狙いを定めたのは、因縁深いミセリ。
 自身を狙う理由は察しがついている。
 故に不気味に笑ってみせると、ミセリはアンデッドへと姿を変身しブレイドに応戦。

  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『ふっ!』

( OwO)「お前のっ!その攻撃にはもう乗らないおっ!!」


 ミセリが伸ばした幾つかのツルを、咄嗟の判断で抜いたブレイラウザーで斬り落とす。
 障害のなくなった道を突き進み、右手に持った剣でミセリを斬りつけた。

   ∧Λ
∠*゚`ー´)ゝ『うっ…!ふふふ、少し甘く見てたわね…!』


 胸部より流れる緑血を指で掬い、妖艶な唇から覗かせた舌先で舐め取る。

81025話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:21:45 ID:wQXRKlTg0

 
( OMO)「これ以上貴様の思い通りにはさせない!」
  (
彡,,メ皿゚彡『ハハハ!止められるものなら……止めてみろ!!」


 ギャレンは、今回の元凶であるタカラを攻撃。
 騙された事への怒りと、危険に晒されているツンを救うための焦りが生じていた。

 両手の拳で繰り広げるパンチをことごとく躱され、遂には右腕を取られてしまう。
 すぐに蹴り上げた左足で腕を振り解こうとするも、タカラは頭を下げたと同時に掴んだの腕を離す。
 蹴りの勢いで右へ回転するギャレンの背中を、両手に伸びる鋭利な爪で二度切り裂いた。


( ; OMO)「ぐうっ…!」
  (
彡,,メ皿゚彡『早速力を試してやる、どけ!』


 ギャレンの背中を蹴り飛ばし、ひと飛びでブルースペイダーのもとへ移動。
 カードを一枚取り出し、ラウザーシステムにカードをスライドさせた。


    《-♠9 MACH-》


 カードをラウズしてすぐ、左手をラウザーシステムへと突っ込む。
 本来ならブルースペイダーにしか付与されない力を、物理的に強引に自らへと付与させたのだ。

  (
彡,,メ皿゚彡『感じる……これがアンデッドの力を使うということなのか……!!』


 "♠9のMACH"の力を得たことで、タカラに高速移動の力が宿った。
 再びギャレンのもとへと走るタカラ。
 その速度は、もはや視界に捉えることが難しいほど。
 元々素早い動きを得意とするタカラに、高速移動の力が加わった事によって、この上ない速度を生み出す。

81125話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:22:08 ID:wQXRKlTg0


 圧倒的な素早さ。
 全身に備わったナイフを活かし、高速の体当たりをギャレンに見舞った。


( ; OMO)「うああっ!くっ……速過ぎる!」


 まるで、疾風の刃の如く。
 四方から飛翔する刃に切り刻まれるような攻撃に、ギャレンは為す術なく蹂躙される。

  (
彡,,メ皿゚彡『ヒャハハハハ!!最高だァ!!こいつは気分が良いぜ!!!』

( ; OMO)「ううっ…!!」

( OHO)「モララーさん!!」


 男へと立ち向かうも相手にされずにいたレンゲルが、ギャレンの危機に気付いた。
 戦おうとはしない男をそのままに、レンゲルラウザーに一枚のカードをラウズ。


    《-♣9 SMOG-》


 カードの力を得たレンゲルラウザーを突き出し、大量の煙幕を発生させる。
 素早く移動を繰り返すタカラを包み込み、ようやく動きを制御させることが出来た。

  (
彡,,メ皿゚彡『チィ…ッ!何だこの煙幕は!?』

( OHO)「大丈夫ですか!?」

( OMO)「ドクオ、すまない…っ!」

81225話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:22:31 ID:wQXRKlTg0


 果敢にもタカラに再び挑むギャレン。
 アンデッドの力の効力が切れ、タカラの攻撃は一旦の落ち着きを見せる。


( OHO)「戦う気になったのか!?」


 ギャレンを救ったレンゲルは、もう一度男に向け殴りかかった。
 しかし、男はレンゲルの拳を片手で受け止める。
 

( OHO)「!?うッ……!」

( ゚∋゚)「面倒だ……何故俺に突っ掛かる?」


 体感したことのない力が、レンゲルの拳を握り潰さんとする勢いでギリギリと締め付ける。
 その強靭な肉体から繰り出される力は、説得力十二分と言ったところか。
 表情一つ変えずレンゲルを青い瞳で見つめ続け、掴んだ片手のみで軽々と投げ飛ばした。


( ; OHO)「うわぁっ!?」


 地に叩き付けられ、何が起きたかも分からず困惑すら覚えるレンゲル。
 それでも男は追撃しようとせず、先程からプールサイドに着いた両足は全く動いていない。


( ; OHO)「コイツ……やばい……!」

( ゚∋゚)「フム……全く、まだ新たな顔ぶれが来るのか」

( ; OHO)「なに言ってんだ!?」

81325話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:22:52 ID:wQXRKlTg0


 ライダーとアンデッド、三対三で展開される乱戦。
 もはや収拾がつかず、いつ誰が先に倒れるかが読めない状況だ。


( OMO)「ふうっ!」
  (
彡,,メ皿゚彡『ぐうっ!?』


 腕を取り、素早く懐に潜り込むと一本背負いでプールサイドにタカラを叩き付けるギャレン。
 地にタカラを押し付けながら、ギャレンは激しく捲くし立てた。


( OMO)「BOARDの女性とは誰のことだ!!言え!!」
  (
彡,,メ皿゚彡『さぁな、名前なんて興味がない』

( OMO)「嘘をつけ!!」
  (
彡,,メ皿゚彡『そんなことより、自分のお仲間の心配でもしたらどうだ?』


 ギャレンに取り押さえられながら、タカラは静かに笑い始めた。

  (
彡,,メ皿゚彡『クククク……』
  (
彡,,メ皿゚彡『お前達の仲間の女、今頃食われてるぜ』

( OMO)「!?」

81425話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:23:16 ID:wQXRKlTg0

  (
彡,,メ皿゚彡『グアアアァアッ!!』

( OMO)「くっ……!」


 ギャレンの一瞬の気の緩みを突き、強引に払い除ける。
 仰向けのまま腰と両足を宙に浮かせ、タカラは勢い良く飛び起きた。
 
  (
彡,,メ皿゚彡『残念だったなぁ!俺が向かわせた狼人間は、さっきの場所の奴らだけじゃないんだよ!!』

( OwO)「なに!?」

( OHO)「!?!?」


 ミセリと交戦中のブレイド、男に投げ飛ばされたレンゲルも、タカラの発言に気が向いてしまった。

  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『ふん!』

( ; OwO)「うああぁっ!!」


 顔が入れ替わったミセリの口から、無数の花びらが放たれた。
 ブレイドの身体に纏わりつき、爆竹のように小さな爆発が引き起こされる。
 小さな爆発が無数に重なり、爆発に包まれたブレイドは痛みに声をあげながら体勢を崩した。

  (
彡,,メ皿゚彡『ククク…!確かにさっきの場所から向かわせたのは事実だが、それ以前にもっと近い場所から向かわせておいたのさ!』
  (
彡,,メ皿゚彡『そう、お前が下僕を相手にしていた場所からな…!』

( ; OMO)「……!?」


 ギャレンを指差すタカラ。
 タカラの反応を辿って最初に着いた場所。ギャレンは、ブレイドを先に行かせ一人でその場を受け持っていた。
 全ての狼人間を倒したつもりだったが……既に、取り逃がしていた狼人間が何体もいたのだ。

81525話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:23:40 ID:wQXRKlTg0

  (
彡,,メ皿゚彡『お前達は本当に馬鹿でどうしようもないマヌケだ!騙され踊らされ……お前達がこうしてる間にも、仲間の女は……!』

( ; OwO)「ッ……嘘だ!どうせそれも嘘なんだろ!?」
  (
彡,,メ皿゚彡『なら……今から戻ったらどうだ?きっと残ってるのは、食い荒らされた女の肉だけだぜ…!!』

( ; OHO)「………そんな………」

( ; OMO)「………」


 沈黙する三人。嘘かもしれない可能性を疑い切れない。
 絶望に打ちひしがれているのか、地に倒れたまま身動きが取れず、呆然としてしまう。

  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『あらあら……可哀想ね』

( ゚∋゚)「ふ、くだらん」 


 捨て台詞のように吐き出した男は、そのまま静かに立ち去った。
 だが、誰も男を追おうとはしない。
 
  (
彡,,メ皿゚彡『どうした…?悲しすぎて立ち上がることも出来ないか?』

( # w )「………貴様……」


 怒りや悔しさ、悲しみが渦巻く。
 握り締める拳が震え、あまりの怒りにそう呟く声も小さい。

  (
彡,,メ皿゚彡『安心するんだな。今からお前達も……仲間のもとへ送ってやる!』

81625話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:24:04 ID:wQXRKlTg0


 再び跳躍し、ブルースペイダーのもとへと移動。
 今度はブルースペイダーに乗り、選んだカードを一枚ラウズした。


    《-♠6 THUNDER-》


 ラウズした直後、先程と同様に左手をラウザーシステムへと突っ込んだ。
 途端、ブルースペイダーとタカラの身体に電撃が走り始める。
 ハンドルに両手を掛け、地に両膝を着いたままのブレイドへとブルースペイダーの正面を向かせた。
 何度もアクセルを吹かす行為は、己の存在を知らしめるかのように。

 そして、ブルースペイダーのアクセルを全開に急発進。
 青い閃光を描きながら、短い距離に位置するブレイドに向け突進した。
 
  (
彡,,メ皿゚彡『自分の持っていた力に倒される極上の気分を、味わえ!!』

( ; OwO)「ッ……!」

( ; OMO)「剣藤!!させるか――」
 
 
 右腰のギャレンラウザーを引き抜き、疾走するタカラに構える。

  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『邪魔をするな!』


 しかし、ミセリの花びらによる攻撃が視界を遮り、同じように小さな無数の爆発に巻き込まれた。
 

( ; OMO)「ぐああぁっ!!」

( ; OHO)「ううっ!!」
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『ブレイドを倒すまたと無い機会、逃がしはしないわ!』

81725話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:24:28 ID:wQXRKlTg0


( ; OwO)「うぐ……っ!」
  (
彡,,メ皿゚彡『死ねェ!仮面ライダー!!』


 殺意に満ちた狂気の声が、轟くバイクの音を掻き消す。
 ゆらりと身体を起こすブレイドだが、タカラの操るブルースペイダーは既に眼前へと到達。
 

( ;  w )「がはっ――!!!」
 

 正面からの衝突、更には電撃の力が加わり、ブレイドは身体を痺れさせながら吹き飛ばされる。
 激突したフェンスや壁を壊しながら、崩壊して生まれた瓦礫の上に崩れ落ちた。

  (
彡,,メ皿゚彡『終わりだ……!!』

( ;  w )「……ッぐ……」
 

 倒れたブレイドに向け、再びアクセルを全開にしたタカラ。
 用済みとなった、ただただ邪魔な仮面ライダーにトドメを刺せることに心が躍る。
 アンデッド討伐のために開発された正義のマシンは、アンデッドが操る殺戮マシンと化した。

  (
彡,,メ皿゚彡『アンデッドと戦う"運命"にあった己が生を憎むがいい!』
  (
彡,,メ皿゚彡『貴様ら全ての仮面ライダーを、俺の手で殺してやる!!!』

81825話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:24:48 ID:wQXRKlTg0


 瞬く間に接近するブルースペイダー。
 荒ぶる雷は排気音と共鳴し、轟音を鳴り響かせる。

 もはや、ブレイドに逃げる時間はなかった。
 

( ;  w )「………ッ!」


 間に合わない。
 そう確信せざるを得なかったブレイドは、反射的に両目を瞑る。
 両腕を顔の前に翳し、微塵の意味も成さない守りの構えを取りながら。




 ――だが、目を瞑り視界の途絶えた目の前で突如、タイヤが地面を急激に擦る音が響いた。
 

( ; OwO)「……?」


 音が鳴った途端、衝突は免れぬであろうと思われていたはずのブルースペイダーも、衝突する気配はない。
 気のせいでなければ、ブルースペイダーはブレイドに突進する前に、急ブレーキをかけている。

 そう思ってか、翳した両腕をゆっくりと下ろし、瞑った目を開く。
  
 開いた視界にまず映ったのは……ブルースペイダーに乗ったタカラの姿ではなかった。
 ブレイドに対し背を向け立つ女性。
 そこに居たのは……。

  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『チッ、厄介なのが来たわね…』
  (
彡,,メ皿゚彡『貴様……!何のつもりだ!?』

81925話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:25:09 ID:wQXRKlTg0


( OwO)「クー……!」

川 ゚ -゚)


 タカラによる突進から、ブレイドを守るようにして立ちはだかるクー。
 クーの介入は予想していなかったのか、タカラは特に驚いた反応を見せた。

  (
彡,,メ皿゚彡『退け!』

川 ゚ -゚)「退かぬと言ったら?」
  (
彡,,メ皿゚彡『何だと?何故貴様がこいつらを助ける!?』

川 ゚ -゚)「そう見えるならそれでも構わない。私はただ、お前達を倒すことにしか興味がない」


 クーの腰に、カリスラウザーが浮かび上がる。
 カテゴリーAのカードをコートのポケットより取り出し、タカラにそれを見せ付けた。

  (
彡,,メ皿゚彡『貴様……!』

川 ゚ -゚)「どうした?戦う準備なら出来ている。さっき狼の群れを狩り尽くして、腕を温めたばかりだ」
  (
彡,,;メ皿゚彡『!?!?』

( OwO)「クー、それ……まさか」

川 ゚ -゚)「……この間は私が助けられた。借りが出来たままなのが嫌なだけだ」

川 ゚ -゚)「安心しろ。ツンも、あの男も無事だ」

82025話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:25:29 ID:wQXRKlTg0


 サーチャーでは捉えられぬ狼人間の反応。
 だが、アンデッドであればその気配を感じ取ることが出来る。
 大勢の狼人間がツン達に迫っていたことを、クーは感知。
 そして、本人達の知らぬところで、すべての狼人間を排除していた。

 
( OwO)「……よかった……」
  (
彡,,#メ皿゚彡『貴様余計なことをォ……!!』


 想定外の邪魔者。それだけでなく、企みまで阻止される始末。
 タカラの怒りはすぐに爆発し、クーを睨みながら鋭い八重歯を光らせる。


川 ゚ -゚)「ふん、怒ったか?策士を気取った荒削りな企みなど、容易に打ち破れる。
     身を潜めてこいつらの動向を探っていたくせに、私に注意を払わなかった時点でお前の負けだ」
  (
彡,,#メ皿゚彡『グウウウウウ……!!!』

川 ゚ -゚)「くだらない余興はここまでだ。嘘をつき過ぎれば、誰ももうお前の言葉を信用しなくなる」

川 ゚ -゚)「変身」
  っ□


    【 -♥CHANGE- 】


 カリスへと変身した直後に召喚したカリスアロー。
 眼前のタカラへと構え、光の矢を数発射出。

  (
彡,,メ皿゚彡『クッ…!』


 矢を回避する為、咄嗟にブルースペイダーから降りたタカラ。
 受け身を取りながらプールサイド上で身を構えたところに、カリスは急接近する。

82125話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:26:01 ID:wQXRKlTg0

 
 軽く地面を蹴り上げ、宙に浮いた身体を勢いよく前に回転させながらタカラに斬りかかるカリス。
 タカラも咄嗟にこれを躱し、右足による回し蹴りを脳天目掛け放った。

 だが、カリスはタカラの右足を敢えて腕で防ぎ、右腕でタカラの脚をしっかりと掴んだ。


( <::V::>)『今だ!カードを奪え!』 
  (
彡,,メ皿゚彡『なっ…貴様…!』

( OMO)「ッ……!」


 カリスの声に真っ先に動いたのは、ギャレン。
 地面を拳で叩いて立ち上がり、カリスに掴まれたタカラに向け走り出す。
 カードを奪われまいと、タカラは何度も何度もカリスを殴打して抵抗するが、カリスは脚を掴んで離さない。

  (
彡,,メ皿゚彡『クソッ!離せ!離せェッ!!』

( OMO)「カードは返してもらうぞ!!」


 通りすがりに、タカラの腰に提げた巾着袋に手を伸ばし、強引に引きちぎる。
 カードを奪ったことを確認したカリスは、タカラの顔面に何度も肘を叩き込み、身体を翻し左足の踵を脳天目掛け叩き込んだ。

  (
彡,,;メ皿゚彡『ウグウゥッ…!』


 その隙に、ギャレンはブレイドへと袋を渡す。
 受け取ったブレイドは、袋の中からカードを出し全てのカードが揃っていることを確認する。


( OwO)「……大丈夫、全部ありますお」

( OMO)「そうか、ならよかった」

82225話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:26:27 ID:wQXRKlTg0


  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『これは……逃げたほうが良さそうね。ここはあなたに任せるわ!』

( <::V::>)『させるか!』


 状況不利と判断しては、タカラを残し逃走を図ろうとするミセリ。
 だが、そう何度も逃げることはカリスが許さなかった。

 目の前のタカラを蹴飛ばし、両足を揃え跳躍。
 空中で身体を回転させながらミセリの前へ着地し、振り返りながらカリスアローを斜め上に斬りあげる。

  *∧Λ*
∠*;゚`ー´)ゝ『ぐうぅッ…!』

( <::V::>)『貴様に借りは無いが、個人的な恨みはある。今度は私が貴様を追い回す番だ!』
  *∧Λ*
∠*;゚`ー´)ゝ『お前ェ……!!』

( <::V::>)『その狼はお前達にくれてやる、煮るなり焼くなり好きにしろ!』


 ミセリの背後に回り込み、首に掴み掛かったままそう言い放つ。
 ミセリは、カリスを振り払うことをしないまま、姿を消すための花びらを自身の周囲に発生させる。
 カリスもろとも花びらに包まれると、二人はその場から姿を消した。
 吹いていないはずの風に乗ったいくつかの花びらが、プールの水面の上に落ちる。


 優勢だったはずのタカラは、カリスたった一人の手によってあっという間に戦況を覆された。

 屈強そうな男はどこかへと去り、そのカリスもまたミセリと共に姿を消した。



 残されたのは、仮面ライダー三人に……アンデッドが一体。

82325話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:26:52 ID:wQXRKlTg0

  (
彡,,#メ皿゚彡『クウッ……カリスウウゥゥ!余計な真似をしやがってェ……!!』


 既に消えたカリスに向かい、怒りを爆発させる。
 全てが自分の思い通りに、順調に進んでいた計画が……たった一人の気まぐれで全て台無しにされた。
 そう思うと、腹の底が煮え滾ってどうしようもなくなった。

 しかし、この場にいない者への怒りを見せている余裕など、本来タカラにはない。

  (
彡,,メ皿゚彡『……!!!』


 怒りに捉われ、まったく気が付かなかった。
 振り返ったそこに……三人のライダーが立ち並んでいたことなんて。



( OMO)「……好きにしていいそうだ、どうする?」


 首を回し、掌で拳を包みながら指をポキポキと鳴らすギャレン。


( OHO)「どうするって……なぁ?」


 レンゲルラウザーを右手に持ち、シャフトを伸長するレンゲル。

 答えは既に定まっている。
 六つの眼が、タカラを睨んで離さない。
 それは、ブレイドも同じこと。

 だが、ブレイドは二人の問いかけには答えない。

82425話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:27:14 ID:wQXRKlTg0


(  w )「たくさんの人を手にかけ、尊い命をお前は一体いくつ奪った……?」
  (
彡,,メ皿゚彡『フン!さぁな、数など数えるわけないだろ?』

(  w )「それだけじゃない……亡骸を化け物に変えて、操って……」


 一度腰に収めたブレイラウザーを左手で逆手に持ち、引き抜いて右手に持ち変える。
 肩を並べていた二人から突き抜け、ゆっくりとタカラに近付く。


(  w )「人の命を奪うだけに留まらず、その命を蹂躙し冒涜した……」
  (
彡,,;メ皿゚彡『ッ………』


 僅かに俯きながら、声色静かに淡々と話すブレイド。
 その話し方や様子から、タカラ以上に燃え盛る怒りが垣間見えた。

 タカラの戦いに身を置く者としての本能が感じ取る、ブレイドが発するオーラ。雰囲気。
 そして、計り知れない怒りと、殺気。
 誤魔化し切ることの出来ない畏怖した心が、近付くブレイドに対して後退りする形で表れていた。
 
  (
彡,,;メ皿゚彡『……な、なんだ……お前は……!?』

(  w )「許さない……」



( #OwO)「――お前だけは……絶対に許さない!!!」

82525話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:27:35 ID:wQXRKlTg0


 顔を上げ、声を張り上げた瞬間、地面を蹴り走り出す。
 一向に縮まらない距離を一気に詰め、右手で逆手に持ったブレイラウザーを左へと横薙ぎに振り払う。

 タカラはこの攻撃を、背後へステップすることで躱す。

 回避行動を取られたブレイドは、それに応じた動きを見せた。 
 回避された直後に生じた距離を咄嗟に踏み出した右足で埋め、左足による後ろ回し蹴りを腹部に叩き込んだ。

  (
彡,,;メ皿゚彡『ぐふっ……!』


 重たい蹴りが直撃し、腹部を抑えるタカラ。
 その隙に、ブレイラウザーを再び横薙ぎに。手首をスナップさせ往復して振り払う。
 タカラの胸部に装備されたナイフの装飾もろとも斬り落としながら、その奥に潜む肉体を斬り刻んだ。


( #OwO)「うおらああぁッ!!」
  (
彡,,;メ皿゚彡『グウッ…!ウアアァッ…!!』


 緑血が迸り、ブレイラウザーの剣先から跳ねた血が赤いプールサイドの上に零れる。
 
  (
彡,,メ皿゚彡『クッ……この――』


 後方へと怯みながら後退りし、胸を抑え身体に作られた傷口を見遣る。
 反撃に転じんとするタカラだったが、ブレイドによるものではない違う攻撃が、タカラの身体に見舞われた。

  (
彡,,;メ皿゚彡『ウウゥッ!!』

 
 ブレイドの背後より、肉眼では捉えることの出来ない紅い銃弾が、真っ直ぐ弾道を描きながらいくつも撃ち放たれる。
 タカラへと的確に命中する銃撃は、黒い衣装を纏った身体から火花を散りばめた。

82625話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:27:55 ID:wQXRKlTg0


( OMO)「ドクオ!行け!」

( OHO)「よっしゃ!」


 ギャレンラウザーによる銃撃でタカラを牽制する中、ギャレンはレンゲルに攻撃指示を出す。

 両足で地面を押し飛んだと同時に、レンゲルラウザーの後端を思い切り地面に叩き付けるレンゲル。
 その力を利用して更に高く浮き上がり、ブレイドの頭上を飛び越える。


( OHO)「これ以上てめぇの思い通りにさせねぇっつったろ!!!」
  (
彡,,;メ皿゚彡『グフッ……!!』


 落下しながら右腕を目いっぱい延ばし、着地する寸前でレンゲルラウザーの尖端でタカラの腹部を貫いた。
 

( #OHO)「でええあありゃああアァァァァッ!!」


 突き刺したままのラウザーの柄を両手で握り締め、持てる力全てを出し強引にタカラを吊り上げる。
 そして、思い切り遠くへと放り投げた。

  (
彡,,;メ皿゚彡『ガアアァアッッ!?!?!』


 プールと外とを遮断する柵を飛び越え、タカラは施設外へと投げ出された。
 

( OHO)「やべっ!やりすぎたか!?」

( OMO)「追うぞ!」


 タカラが投げ飛ばされた方向へと走り、三人はそれぞれのマシンに乗ると、柵を飛び越え駐車場へと出た。

82725話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:28:46 ID:wQXRKlTg0


 誰一人いないどころか、車も多くは停まっていない駐車場。
 不運にも、駐車されていた車の上に、レンゲルに投げ飛ばされたタカラが落下。
 車のガラスは粉々に砕け散り、ルーフやボンネットは岩でも落とされたかのように大きくへこんでしまった。

 落ちた車の上から転げ落ち、負った傷に身体を痛めながらゆっくりと立ち上がる。

  (
彡,,#メ皿゚彡『グフッ……馬鹿な!俺が……俺が貴様らになど……ッ!』


 予想だにしなかった現状に、悔しさや怒りがこみ上げる。
 
 しかし、ライダーによる追撃はまだ終わらない。
 柵を飛び越え現れたブレイド達は、駐車場に着地しタカラの姿を確認すると、タカラに向け一直線に走り出した。


( OHO)「観念しろ!アンデッド!!」

( OMO)「もう貴様に逃げ場はない!」


 ギャレンによる銃撃を受け身動きの取れない状況の中、ブレイドとレンゲルが接近。
 
 ブレイラウザーで、タカラを横ぎりながら傷を負った胸部を斬り付けるブレイド。
 レンゲルラウザーを両手で振り回し、同じように横ぎりつつ殴打するレンゲル。
 タカラの背後に回った二人は、同時に武器の尖端をタカラの背に向け突き付けた。

  (
彡,,メ皿゚彡『グウウッ…!ま、待て!貴様ら…俺は別の下僕を放っている!俺を倒せばそいつらを止められないぞ!』

( #OwO)「……もうお前の言葉なんて、聞く価値もないお!!」

82825話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:29:12 ID:wQXRKlTg0


 見苦しくも、最後の悪あがきに出たタカラ。
 しかし……嘘に嘘を重ねたタカラの言葉に耳を貸す者は、もういない。
 この期に及んで未だ欺こうとする下劣な性根をしたタカラの言葉は、寧ろブレイドの怒りに油を注ぐだけだった。


( #OwO)「はぁっ!!」
  (
彡,,;メ皿゚彡『ヴウウゥッ……!!』


 幾重にも重なるブレイラウザーの太刀筋が、タカラを執拗に斬り刻んでいく。
 身体中に備えたナイフは全て斬り落とされ、黒の衣装はズタズタに引き裂かれた。
 肉が見え、身体の至るところより緑血を流している。


( #OwO)「命を命とも見ない、心無いアンデッド!僕はそんなお前達を絶対に許さない!」

( #OwO)「お前達がどれだけ謀略を巡らせようと、どれだけ力を誇示しようと!
      一丸となった僕達の前に、倒せない者はいない!!」
  (
彡,,;メ皿゚彡『ヌウウウウゥゥゥッ……!!黙れ!!俺はこの戦いを……"バトルファイト"を勝ち抜くために――』

( #OwO)「そんなことのために……!誰かのささやかな幸せを踏みにじりやがって……!!」



( #OwO)「お前は、今ここで必ず封印する!!」

82925話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:29:32 ID:wQXRKlTg0

 ♪Rebirth - https://www.youtube.com/watch?v=SgXC5Z4R3-c
 

( OwO)「モララーさん!ドクオ!」

( OMO)「ああ!」

( OHO)「おう!」


 ブレイドの掛け声と共に、三人は三角形の点線を描くように展開しタカラを取り囲む。
 そして、同時にラウザーを構えた。
 ブレイドとレンゲルは、オープントレイを展開。レンゲルは短縮したラウザーを脇に抱え、カードケースを開く。
 それぞれ二枚のカードを選び抜き、ラウザーへとカードをラウズした。


    《-♠5 KICK-》 《-♠6 THUNDER-》

    《-♦5 DROP-》 《-♦6 FIRE-》

    《-♣5 BITE-》 《-♣6 BLIZZARD-》

 
 一度に六つの電子音声が重なって流れる。
 三人の背後に紋章となったカードが浮遊し、計六つのカードがライダー達の身体に吸収され、力を与える。
 複雑な音を奏でた後、三人のコンボを告げる音声は、今度は重なることなく順番に流れた。


    《-♠LIGHTNING BLAST-》 《-♦BURNING SMASH-》 《-♣BLIZZARD CRASH-》


( OwO)「終わりだ!!」
  (
彡,,#メ皿゚彡『………ッッッ!!!ウガアアアアアァァァアァッッ!!!』


 自暴自棄とも取れる咆哮。
 両腕を広げ、天を仰ぎながら、やり場の無い感情を叫び声に乗せる。

 もう、逃げ場はない。

83025話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:29:55 ID:wQXRKlTg0


( OwO)「はっ!」


 両足を揃え、バネを伸ばすように地面を押しながら高々と跳躍する三人。
 
 ブレイドの右足に、タカラを断罪する為の青い閃光走らせる稲妻が。
 ギャレンの両足には、罪深きタカラを焼き尽くす地獄の業火が纏い始め、
 レンゲルの両足からは、タカラを磔にするための冷気が発生。

 身体を縮めた後、右足を伸ばすブレイド。
 宙で身体を反転させるギャレン。
 レンゲルの両足から放たれる凍て付く吹雪がタカラを覆い、氷の中へと閉じ込める。

  (
彡,,;メ皿゚彡『アッ……!ガ……!』


 身動きの出来なくなったタカラに、三人は落下を始める。
 雷が、炎が、冷気が。三つの相容れることのない属性が、空中で交差する。
 そして、三人の燃える闘志が遂に重なり――。



( #OwO)「うぇえええええええええいぃッ!!!」

( OHO)「ウオオオォアラアアァッ!!」

( OMO)「はあァッ!!」

  (
彡,,;メ皿゚彡『ウアアアアアァ"ァ"ァ"ッッ!?ガハアアアァッ!!!』
 

 突き刺すようなブレイドの蹴り。叩き割るようなギャレンの爪先。強引に砕くようなレンゲルの二段蹴り。
 三方から繰り出される強烈な蹴りが、同時にタカラに叩き込まれた。

83125話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:30:17 ID:wQXRKlTg0


 氷は砕け散り、逃げ場のない挟撃はより深いダメージを与える。
 タカラの身体に雷が感電し、炎が燃え移り、更に氷による凍傷。
 吹き飛ぶことも許されず、タカラは三方の蹴りを受け、その場に力無く崩れることしか出来なかった。

  (
彡,,;メ皿 彡『ガッ………ハ………』


 地面に大の字になるタカラ。
 三人による必殺技を同時に受けてしまえば、立ち上がることなど出来はしない。
 握りこぶしを作ることすら敵わず、そのままぐったりと倒れた。

 もう、起き上がることはないだろう。
 腹部のアンデッドバックルが左右に展開されたことが、何よりそれを証明した。


 着地したブレイドは、倒れたタカラに向け一枚のカードを投擲。
 ♥スートのアンデッドであるタカラは、♠スートのカードでは封印出来ない。
 代わりに、どのスートにも属さない所謂フリーのカードを用いれば封印出来る。

 タカラに突き刺さったカードが封印を終え、ブレイドの掌中に帰還。
 正体は♥のカテゴリーJで間違いないが、スートフリーのカードに封印されたタカラは♥スートとしての役割を果たしていない。
 その証拠として、"♥J FUSION"と記され狼の絵柄こそ描かれたものの、背後の風景は真っ黒のままだった。


( OwO)「もう二度と目を覚ますなお……!」


 封印したタカラを尚、ブレイドは睨んだ。

83225話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:36:43 ID:wQXRKlTg0


 タカラを倒した三人は、変身を解除。
 決して喜ぶことの出来ない勝利に、三人は後味の悪さを噛み締める。


( ・∀・)「これで、やっと人間が化け物にならなくて済むな……」


 ふぅ……、と深く溜息を吐く。
 アンデッドとの戦いはまだまだ続くが、ひとまずの収束を迎え安堵する。


('A`)「でも、大勢の人を守れなかった……」

( ・∀・)「………守れなかった言い訳をするつもりはないけど、あまりにも多くの人を犠牲にしてしまった」

( ^ω^)「痛みに変えるしかないお……辛いこと、悲しいこと全部バネにして生きていくしかない。それも、仮面ライダーの役目だお」


 気持ちはただただ沈む一方。
 全てを守ると豪語しておきながら、犠牲者が出るのを止められない。
 しかし、これもアンデッドと戦う者としての業である。受け入れ、進み続けるしかない。

 だが、ドクオはこれに異を唱えてしまう。
 


('A`)「……すべての人を守ることなんて、本当に出来るのかな」

83325話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:37:46 ID:wQXRKlTg0


( ^ω^)「出来る出来ないの話じゃない、やらなきゃ駄目なんだお」

('A`)「だって……今回のことは、はっきり言って俺達のせいでもあるんだぞ?
    一体何人犠牲にしてしまったんだ?正直、考えるのも怖いくらいだ」

('A`)「なんてったって、俺達はその犠牲者をこの手で倒したんだから……」


 自分の両手を見つめるドクオ。
 その表情は、悲痛の色に満ちている。
 化け物と言えど、元は人間だったはずの者を倒す。
 今こうして冷静になって考えれば、どれだけおぞましい事か……それを、強く実感している。


( ^ω^)「……それでも、立ち止まって良い理由にはならないお。
      誰かがやらなきゃならない、それを僕達が背負う以上どんなことがあっても」

( ^ω^)「すべての人を守る、確かに現実的じゃないかもしれない。けど、その想いを失くしたらいけないお」

('A`)「想いだけじゃ人は救えないだろ!?」

( ^ω^)「まず人を突き動かすのは、想いの力だお!」


 熱くなる二人。
 向き合い、互いの主張をぶつけ合う。
 今にも胸倉を掴み出しそうな雰囲気の二人の間に、モララーが割って入った。


( ・∀・)「よせ、二人とも!」

83425話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:38:07 ID:wQXRKlTg0


( ・∀・)「ドクオ、お前の言いたいことも分かる。確かに今回の件は間違いなく過去最大に酷い被害だ。
      しかもアンデッドに騙され……本当にすべてを守ることが出来るのか不安になってしまう。そうだろ?」

('A`)「……はい」

( ・∀・)「剣藤の言うことも分かる。現実的でなくとも、その気持ちが無ければ
      人一人の命のために戦うことなんて出来ない。そう言いたいんだよな?」

( ^ω^)「そうですお」

( ・∀・)「どちらの言い分も分かる。でも、ぶつけ合うことじゃない。
      過ぎてしまったことはどうにもならない……だからこそ、口だけにならないように今回のことを教訓にしなければならない。
      その上で、人間を守るために戦うという想いを強く抱けばいい。違うか?」

('A`)「……そう、だな」

( ^ω^)「うん……そう、それですお」

( ・∀・)「なら、揉めるのはもうやめろ。ほら握手して」


 互いの主張は、決して間違っているわけではない。偏ってしまった意見が衝突したに過ぎない。
 第三者の冷静な観点によって二人は落ち着いた。
 モララーは二人の手を取り、強引に握手という形に持ち込む。


( ^ω^)「悪かったお、ちょっと熱くなっちまった」

('A`)「いや、俺の方こそ……」


 無理矢理繋がれた手だが、素直に謝りながら互いに手を握り締める。
 その様子に、モララーは一人笑みを浮かべ満足そうだ。

83525話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:38:29 ID:wQXRKlTg0


 手を離し握手を終えたと同時に、ブーンのスマホに一件の着信が入った。
 着信を知らせるバイブレーションが震動している。

 ポケットの中に手を入れスマホを取り出し画面を確認する。
 画面には、『廣瀬ツン』と表示されている。
 電話をかけてきているのは、ツンだった。


( ^ω^)「ツンからだ!やっぱり無事だったんだお!」

( ・∀・)「そうか、よかった……」

 
( ^ω^)ロ 「ツン!大丈夫かお!?」

ξロ゚⊿゚)ξ 《え?》

( ^ω^)ロ 「アンデッドがそっちに向かったのを、クーが助けてくれたんだお!」

ξロ゚⊿゚)ξ 《……何の話?着信入ってたから掛けただけよ。
       あ、途中でサーチャーの反応送信出来なくてごめんね。なんか停電しちゃって……》

( ^ω^)ロ







( ^ω^)ロ 「……は?」

83625話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:38:52 ID:wQXRKlTg0


ξロ゚⊿゚)ξ 《スマホもどこに置いたか忘れちゃってすぐに掛け直せなかったの。それよりアンデッドは!?》

( ^ω^)ロ 「…………」

( ^ω^)「停電しただけだって……」

('A`)「は……??」

( ^ω^)「狼人間が向かってたことすら知らないってお……」

(;'A`)「んだよそれえええええええええええ!!!もおおお………」

( ・∀・)「はは……安心したよ、その程度のことでよかった」

ξロ゚⊿゚)ξ 《もしもし?何騒いでるの??》

( ^ω^)ロ 「あっ、いやなんでもないお。アンデッドならとっ捕まえて倒したお!」



('A`)「まぁ……一安心するとこはしていいみたいだな。クーさんに感謝だ」

( ・∀・)「うん。もう仲間を失うのはごめんだ……本当によかった」

('A`)「……じゃあ俺、今度こそ同窓会向かいます」

( ・∀・)「ああ、呼びかけに応じてくれてありがとな」

('A`)「いえ、また何かあったら呼んでください!すぐ駆け付けますよ」


 ブーンとモララーを残し、ドクオはグリンクローバーのもとへと駆け足で向かう。
 今度こそ、楽しくなると信じてやまない同窓会へと行くために。

83725話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:39:12 ID:wQXRKlTg0





 ―――――




.

83825話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:39:32 ID:wQXRKlTg0


 夕方になり日は沈み始めた。
 特殊なデザインをしたグリンクローバーを走らせるドクオは、人々の注目を一際多く浴びていた。
 ライダー専用のマシンを愛用車にしてから、それは常日頃感じていたことだ。


「ねぇちょっと見て、あのバイクやばくね?」 

「金と深緑って派手だなー」

('A`)「………」


 この後の同窓会でも、きっとこのくらい注目を浴びるんだろう。
 何せ、過去のことをみんなで謝りたいと言っていたくらいだから。

 そう思うと、楽しみにしていたはずの心が、緊張で震えてきた。
 元々注目されることには慣れてない。
 人目の届かないような端っこをずっと選んできたような人間だ。


(;'A`)(あーやべぇ……めちゃくちゃ緊張してきた)

(;'A`)(だ、大丈夫だ!落ち着けよ……ファーストコンタクトが肝心なんだ、最初さえ上手く行けば大丈夫だ)


 ざわつく心を落ち着かせようとすればする程、余計に緊張感を煽っている。

83925話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:39:54 ID:wQXRKlTg0


 頭の中で独り言を並べながら、あっという間にその時は来た。
 待ち合わせ場所に指定した、通っていた小学校。

 校門の前でグリンクローバーを停め、久しぶりの母校の姿をじっくりと眺める。
 あの頃の懐かしい記憶に想いを馳せ、ノスタルジックな気持ちになる。


('A`)「なつかしいな……少し建物増えたか?」


 外装は色褪せ年を取った校舎に対し、まだ出来て間もないであろう校舎が見えた。
 

('A`)「………さて、行くか」


 緊張が高まり、心臓の鼓動がドクン、ドクンと高鳴る。
 胸を撫で下ろしながら深呼吸。
 意を決して、まるで招いているかのように開かれた校門を、グリンクローバーで潜った。

 敷地内に入ると、あの頃と変わらない校庭のグラウンドが広がる。
 そして、校庭全体を見渡すかのようにポツンと存在する朝礼台。

 その朝礼台の前に……あの頃の面々はそろっていた。

84025話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:40:17 ID:wQXRKlTg0


( ´ー`)「ドクオー!」


 白根がドクオを呼ぶ。
 ドクオを呼ぶその声に、他の同級生の目も一斉にドクオへと向けられた。


(;'A`)「………」

「早くこっち来いよー」

(;'A`)「あ……うん」


 鼓動はより一層高鳴る。
 自分を呼ぶ声に返事をするも、ヘルメットの中にのみその声は響いた。

 緊張隠せぬまま、グリンクローバーでグラウンドを跨ぎ、五人の同級生達の前に停まった。
 そして、ゆっくりとヘルメットを外し、久しぶりに顔を合わせる。


「そのバイクどうしたの?特注?」

('A`)「え、あ……えっと、うん……そんな感じ」

「すげぇなドクオ、金持ちにでもなったの?」

('A`)「いやぁ、そんなんじゃないよ……うん」


 気さくに話し掛けて来る同級生達に対し、ぎこちない返事。
 彼らは緊張などしちゃいないかもしれないが、ドクオからすれば……過去に自分をいじめていた人間達だ。
 そう簡単に埋まる距離ではない。

84125話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:40:39 ID:wQXRKlTg0


「……ドクオ、もう白根から聞いてると思うけど」


 そのうちの一人の女性が、楽しそうな雰囲気の中ドクオに切り込んだ。
 

( ´ー`)「ドクオ……まず、来てくれてありがとうな。お前のおかげで、俺こうやって生きてるよ」

('A`)「いいよ……もうそのことは」

( ´ー`)「みんなこう見えて緊張してんだぜ」

「ドクオ……俺達、ずっとこの日のことを考えてたんだよ」

「俺達、本当に馬鹿だったよ。マジでどうしようもなかったよ……」

('A`)「………」

「あたし達が今更こんなこと言っても、すぐに許せるわけないと思う……でも」

「この場を借りて、ちゃんと謝らせてくれ!」


 全員が横並びになり、ドクオを真っ直ぐ見つめる。
 誰を見ていいか分からず、ドクオの目は泳ぎ落ち着かない様子。

84225話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:41:02 ID:wQXRKlTg0


( ´ー`)「本当に……本当に、すみませんでした!」

「「すみませんでした!!」」


 一斉に頭を下げ、ドクオへの謝罪の言葉を発する。


('A`)「………顔あげろよ」


 グリンクローバーから降り、頭を下げる白根の肩を叩く。
 約十年の時を経て、自分が腐ってしまった忌々しい過去に、ようやく光が差した。
 もう、苛まれなくて済む……そう確信したのだ。
 

('A`)「もう、いいよ」

(  ー )「……でも」

('A`)「言っただろ、俺。許すことが出来ないと自分を変えられないって」

('A`)「だからもう、過去にすがるのはやめるんだ。……信じていいんだよな?その言葉。だから信じるよ」


 未だ頭を下げたままの全員に対し、笑顔で答える。
 緊張感や抵抗感はない。
 これでいいんだ。と、言い聞かせることもしない。


('A`)「俺が言うのもアレだけどさ……あの頃をやり直そうよ、みんなで」


 これが、自分の答えだから。

84325話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:41:33 ID:wQXRKlTg0



(  ー )「………ありがとう、ドクオ」

('A`)「いいって」

「やり直そう、みんなで…」

「うん、みんなでやり直そうぜ」














「あの頃みたいに、みんなでやり直そう」

84425話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:41:55 ID:wQXRKlTg0


('A`)「……?」



「ああ……あの頃の続きを、みんなでやり直そう」




('A`)「……あの頃の、続き……?」









(  ー )「ああ、あの頃の続きをやり直すんだ。俺達と…………お前とで」



('A`)「………!!!」


( ´゚ー゚`)「大人になっても、馬鹿でどうしようもねぇお前とでよぉ!!!」

84525話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:42:21 ID:wQXRKlTg0


('A`)「………え………」

( ´ー`)「ブッハハハハハ!!おいおい!まさか……俺達が本当に謝りたくて呼んだと思うのかぁ!?」

( ´ー`)「なんで俺がお前みたいなゴミクズのために謝らなきゃならねぇんだよ!?なめてんのかぁ!?!?」

(;'A`)「ッ―――!!」


 突如、白根の態度が急変する。
 ドクオを罵り始め、髪の毛を乱暴に掴んだ。
 至近距離で見下すようにドクオを見つめる目は……あの頃と、いや……あの頃以上に残酷な目をしている。


「ハハハハ!おい聞いたか!?過去にすがるのはやめるんだってさ!俺達のこと許してくれるってよ!」

「聞いた聞いた〜、てことは過去のことは全部水に流してまた新しく始めていいってことだよな〜?」


 白根に続いて、他の同級生達もドクオに対し威圧的な態度を取り始める。
 ドクオを取り囲む五人。
 まるで、あの頃を思い出させるように。


(;'A`)「ッ……ど、どういうことだよ……?」

「あはは!あんたマジで馬鹿すぎない?考える頭ないわけ〜??」

( ´ー`)「全部お前を誘き寄せるための演技に決まってんだろうが、バーカ!!」


(;'A`)「……!!」

84625話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:42:44 ID:wQXRKlTg0


( ´ー`)「いやぁ、俺達大人になってさぁ、社会人として働いてるとどうしてもストレス溜まるわけよ」

( ´ー`)「だからみんなで話してたんだよ。いつかまたお前を見つけて、あん時みてぇにやっちまうか?ってな!」

(;'A`)「………そんな………」


 白根の言葉が、ドクオの心を抉るように痛め付ける。


( ´ー`)「しかしあん時は焦ったぜ、化けモンが暴れまわって俺まで巻き込まれるとはなぁ」

( ´ー`)「でも……あれは本当に運命だと感じたよ!まさかお前が助けにくるだなんてな!
     こんな絶好な機会は二度とないと思ったね!
     だから俺は、わざとあの状況でお前に謝りたいって嘘をついたんだよ!!」

(;'A`)「………」

「ったくよぉ、何調子こいてこんなバイク乗ってんだ?おい!」


 一人がグリンクローバーを蹴飛ばし、転倒させた。
 まくし立てながら倒れたグリンクローバーを、何度も何度も踏みつける。


(;'A`)「やっ、やめろ……!」

「うっせぇなコラ!!」

(;'A`)「ううっ…!!」


 別の一人が、ドクオの腹部に拳を叩き込んだ。
 髪の毛を掴まれたままのドクオは身動きが取れず、両手で腹部を押さえるだけ。

84725話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:43:06 ID:wQXRKlTg0


( ´ー`)「……おい、てめぇ逃げられると思うなよ?」

(;'A`)「ッ………」

( ´ー`)「お前の番号も、住所も全部特定したからよ。何かあったらいつでもお前んとこ行くぜ?」

「楽しみだなぁ、またあの頃みたいにお前をいじめれるなんてなぁ」

「あはは!あの頃みたいにわーわーまた泣くんじゃない?男のくせに、だっさ」

('A`)「………」


 髪の毛から手が離されたと思えば、その場に跪かせられる。
 ドクオを囲む同級生達は、一人一人罵声を浴びせ続けた。
 痛んで痛んで、ズタズタに裂かれたドクオの心など、お構いなしに。
 

( ´ー`)「ッは!じゃあ俺達さ、お前と再会を記念して飲みに行くからよ。とりあえず金出せや。
     10万くらいは欲しいなー、やっぱめでたい日にはパーッと金使わないとな?」

「いいねー、今日は飲みまくれるじゃん!」

( A )「…………」

84825話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:43:41 ID:wQXRKlTg0


 あの時……白根を助けた時。
 白根の言葉で、過去に苛まれ続けた自分を変えれると思った。
 
 みんなでやり直そう。あの言葉があったから、前を向けた。
 カテゴリーAの邪悪な力に惑わされず、仮面ライダーとしての戦いに向き合えるようにもなった。

 もちろん、ブーンやモララー達の後押しのおかげでもある。

 でも、何より一番のきっかけとなったのは………過去をやり直そうと言ってくれた、白根の言葉だった。



( A )(………なんで……)
 
(;A;)(なんでなんだよぉ……!!)



 無意識にこぼれる涙。
 両の拳を握り締め、悲しみがドクオの心を支配する。

 信じたのに。
 信じたそばから、裏切られた。
 変われると思ったのに……結局、俺は過去を振り切れないのか。
 また、苛まれ続けなければならないのか。





 ……どうして、こいつらは俺に固執するんだ?

84925話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:44:07 ID:wQXRKlTg0


 何故だ。

 何故、そうまでして俺をいたぶりたい?

 傷を負わせたい?

 痛めつけたい?

 悲しませたい?

 

 なんで。


 なんで……






(# A )(何で……俺を怒らせる……!?)


 ボロボロに傷付いた心に、暗闇が立ち込め始める。
 悲しみを越え、怒りと憎しみだけが心の中……ドクオの身体中に充満する。

 闇に満たされた時――"蜘蛛の声"は、再びドクオの心の闇に問い掛けるのだ。

85025話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:44:36 ID:wQXRKlTg0


 『――俺の声を聞け』


( A )「………」


 『――お前は、こんな奴らを守りたかったのか?汚くて、卑怯で、下劣で、生きる価値すらないこんな人間を』


( A )「………違う」


 『――馬鹿馬鹿しい!情けなくはないか?力がないあまりに、お前はこんなみじめな思いをしている。
    力がない故に、お前はこんな屈辱を受けている!』


 『――力無き者は、悪だ!力が無ければ、こうして踏みにじられるだけだ!
    力こそ全て。力さえあれば、お前は何者にも臆する事はなくなる!上級アンデッドでさえ、お前の手で倒すことが出来る!』


 『――こんな薄汚い奴らなど、すぐに打ちのめす力を持っているではないか。
    それはレンゲルだけの力ではない……この俺の力だ』


( A )「………」


 『――さぁ、もう一度俺を受け入れろ。俺の力はお前のものだ。
    お前の思うままに、俺とレンゲルの力を使え。そうすれば……お前は最強になれる!』


.

85125話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:45:16 ID:wQXRKlTg0





( A )「………俺は………」



 『――さぁ、受け入れろ』



( A )「俺は………!!」



 『――受け入れろ、俺の力を!!』




.

85225話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:45:43 ID:wQXRKlTg0













.

85325話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:46:08 ID:wQXRKlTg0


 ………日が沈み、辺りは闇に包まれた。
 

 校庭に、ドクオの姿はない。

 足蹴にされたグリンクローバーの姿もない。










 そこにいたのは、








 


 血を流し、校庭のど真ん中に積み重ねられた白根達だけだった。


.

85425話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:46:31 ID:wQXRKlTg0





     【 第25話 〜血を呼ぶ嘘〜 】 終




.

85525話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:47:04 ID:wQXRKlTg0

==========

 【 次回予告 】


 謎に包まれる少女が動き出す。


o川*゚ー゚)o「おともだちが欲しいの」

川 ゚ -゚)「アンデッドと馴れるつもりはない」

o川*゚ー゚)o「どうして?人間と仲良くするのはいいの?わたしたちはアンデッドなのに」

川 ゚ -゚)「何が目的だ?ここの人達に手を出すつもりなら、私はお前を許さない」

o川*゚ー゚)o「そんなことしないよ」

o川*゚ー゚)o「それに……人間に手を出すのは、わたしじゃないよ」

o川*゚ー゚)o「どちらかというと、人間に……いや、あなたが大切にしてる人たちに手を出すのは――」

o川*゚ー゚)o「―――あなただよ」

85625話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:47:37 ID:wQXRKlTg0


 プールサイドでの戦いの際に遭遇した、もう一人の上級アンデッド。
 ドクオは単身、アンデッドのもとへと乗り込むことに。


('A`)「あんた、♣のカテゴリーJだよな?」

( ゚∋゚)「だったらなんだ、人間。……いや、臭うな」

('A`)「何?」

( ゚∋゚)「昨日はそこまで気にならなかったが、今のお前からキツイ程臭うぞ」

( ゚∋゚)「――毒蜘蛛の臭いがな」

( ゚∋゚)「だが残念だったな。あいにく俺は戦うのは好きじゃない」

('A`)「だったら――」

( ゚∋゚)「と言えば、こちらから行くぞ。などと言い出すんだろうな。まったく面倒くせぇ……」

('A`)「俺の言うこと全部分かってんだったら、これからすることも分かってんだろ!?」

( ゚∋゚)「……ふん、見えるぞ。お前の背を這う蜘蛛の姿が」


 そして、遂にその正体が露になる!

85725話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:48:03 ID:wQXRKlTg0


бし゚益゚し『ただ試したかっただけなんだが……もしかして、今お前達を潰せるのかもな』

( ; OMO)「くっ……」

бし゚益゚し『俺は得体の知れない奴と真っ向勝負するのは嫌いでな。
       相手の力量が知れるまでは戦わない主義なんだ』

бし゚益゚し『ライダーとかいう奴らがアンデッドを次々と封印していると風の便りで知ったから警戒はしていたが…』

бし゚益゚し『さっきのガキといいお前達といい、思ってたより大したことはないのかもしれないな……?』

( ; OMO)「やはり、お前は俺達を試していたのか……!」

85825話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:48:50 ID:wQXRKlTg0


бし゚益゚し『お前がどれだけのアンデッドを相手にしてきたかは知らんが、他のカテゴリーJと一緒にされると困るなぁ』

бし゚益゚し『特に、昨日の狼野郎のような奴と一緒にされると……腹が立つんだよ!!』

бし゚益゚し『まずはお前達の力を測らせてくれた感謝の気持ちだ、受け取れ!』


 驚異的な力を誇るカテゴリーJの前に苦戦するライダー達……。


( #OHO)「ふざけやがってェ……!!」

( ; OwO)「うわああぁッ!!」

( ; OMO)「くうぅ……ッ!!!」

бし゚益゚し『俺の手によって死ね、仮面ライダー共!!』


 ブレイド達は、この苦境を乗り切ることができるのか!?
 そして、ドクオに何が起きたのか!?


 【 次回、第26話 〜完全なる敗北〜 】


 ――今、その強さが全開する!


==========

859 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:52:18 ID:wQXRKlTg0
しおり

>>9 第15話
>>84 第16話
>>152 第17話
>>234 第18話
>>308 第19話
>>372 第20話
>>454 第21話
>>530 第22話
>>605 第23話
>>682 第24話
>>772 第25話

860名無しさん:2018/07/08(日) 12:20:35 ID:I1PoxkUo0
乙!久しぶりー!

861名無しさん:2018/07/08(日) 14:10:46 ID:iinRX1lk0
乙!!ずっと待ってたぞー!!
つべのライダー配信もいつの間にか響鬼が終わってカブトになったからか、剣がやたら懐かしく感じる

862名無しさん:2018/07/08(日) 15:18:26 ID:chiB0Now0

そういやこの作品みて原作に手を出していつの間にか原作見終わってたわ

863名無しさん:2018/07/08(日) 21:46:58 ID:hzM94CsM0


864名無しさん:2018/07/25(水) 18:41:04 ID:j4athSg20
今更投下に気づいた

ドクオ…これは闇堕ちやむなしか

865名無しさん:2018/09/02(日) 17:40:43 ID:BNz/ys.I0
待ってるよ��

866名無しさん:2018/09/02(日) 17:41:09 ID:BNz/ys.I0
ありゃ文字化け

867名無しさん:2018/09/09(日) 02:27:14 ID:zR6B7vWM0
待ってる

868名無しさん:2018/10/13(土) 06:10:45 ID:oNWB5iM20
待ってるよ( OwO)

869名無しさん:2018/11/28(水) 01:25:05 ID:sHIzfnwM0
待ってるからね

870名無しさん:2019/01/27(日) 15:18:19 ID:FqIGyy4E0
CSMブレイバックル発売決定したぞ
続きはよ

871名無しさん:2019/01/27(日) 19:56:09 ID:Lm.mg6sc0
今でも俺は待ってるよ

872名無しさん:2019/04/05(金) 12:31:28 ID:vE.PkwIU0
今ジオウで剣回やってるぞ!復活せよ!


してください

873 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 01:39:50 ID:dVuufZLM0
( ^ω^)


( ^ω^)< 1/9(日) 迄に

874名無しさん:2022/01/08(土) 01:41:58 ID:EsF4TPA20
うおっえ

87526話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:01:46 ID:dVuufZLM0





     【 第26話 〜新たなる力〜 】




.

87626話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:02:45 ID:dVuufZLM0


川 ゚ -゚)


 日差しが心地良い休日の昼下がり。
 バーボンハウスの前にあるプランターを手入れするクーの姿。
 隣に寄り添う渡辺が、クーに手入れの仕方を指導している。


从'ー'从「寄せ植えするときは、奥と手前で高低差をつけた方がいいんだよ〜」

从'ー'从「これを、こうやって……高いのを奥に植えて、低いのを手前にって感じで」

川 ゚ -゚)「うん」

从'ー'从「はい!やって?」

川 ゚ -゚)「分かった」


 見様見真似で、背の高い花をプランターに植えていく。


川 ゚ -゚)「ん……なんか違う気がする」


 自分でやりながら、本能で感じた違和感に気が付いた。
 高低差に意識を集中し過ぎるあまり、配色に悪いムラが出てしまっていることに。
 人間が持つ感性のように研ぎ澄まされてはいないが、色合いが悪いことは、アンデッドである自分でも理解出来たようだ。


从'ー'从「うーん、ちょっと色がね〜……こうしたらどうかな?」

川 ゚ -゚)「……うん、こっちの方が良い。綺麗」

从'ー'从「ふふふ、でしょ〜?」

87726話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:03:25 ID:dVuufZLM0
从'ー'从「そういえば、もうすぐクーさんと出逢って一年になるね〜」

川 ゚ -゚)「一年……もうそんなに経つ?」

从'ー'从「うん、あの時は本当驚いたなぁ〜。あんな雷雨の中で人が道路に出てくるんだもん」

川 ゚ -゚)「………」

川 ゚ -゚)(あれから、もう一年か……)


 長い年数を経て、自らがこの世に再び解き放たれた時を思い出す。
 
 約一万年前とは、別世界となってしまったこの星。
 人間という種族が主となった世界。
 アンデッドである自分達が、まるで御伽噺の世界の住人のような扱いを受けている。

 そんな現世で、今、人として生きようとしている。
 あの頃の自分では、今の自分の有り様などとても想像も出来るものではなかった。


川 ゚ -゚)「"生きる"ということは……何があるか分からないな」


 無意識に、小さく声に出して呟く。


从'ー'从「ん?なぁに?」

川 ゚ -゚)「ん……いや、なんでもないよ」

87826話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:03:50 ID:dVuufZLM0
(#゚ -゚)「二人ともー、お昼ご飯出来たよ!」


 店のドアが開かれ、でぃの小柄な顔が覗いた。
 美味しそうな臭いが漂ってきているなと思えば、ショボンが昼飯を作っていたからのようだ。
 

从'ー'从「はーい!今行く〜!」

川 ゚ -゚)「先行ってていいよ、後は私がやってみるから」

从'ー'从「そう〜?じゃあ……お言葉に甘えちゃおっかなぁ。お腹空いちゃったし……」

川 ゚ー゚)「早く食べておいで」


 恥ずかしそうに空腹を訴える渡辺の背中を、土で汚れた手袋を外した両手で軽く押す。
 渡辺とでぃが店の中に戻るのを見届け、足元に投げた手袋に手を伸ばす。
 

川 ゚ -゚)「………?」


 手袋を掴んだ瞬間。
 それまでいなかったはずの存在の気配に、背中がざわつくのを感じる。
 
 気配の出どころは、背後から。
 決して気付かなかっただけ、ではない。
 ついさっきまで、其処には誰もいなかったはずなのに。

87926話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:04:12 ID:dVuufZLM0
川 ゚ -゚)(何だ、このざわめきは……)


 本能が、警戒心に強く呼びかけている。
 自分の持つ"何か"に、共鳴しているようにも感じる。
 
 恐る恐る、ゆっくりと、背後へと振り向いた。


川 ゚ -゚)「………」




















.

88026話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:04:32 ID:dVuufZLM0

























o川*゚ー゚)o「ひさしぶり」

88126話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:04:58 ID:dVuufZLM0
川 ゚ -゚)「………!!」

川 ゚ -゚)「お前は……」

o川*゚ー゚)o


 振り向いた視線の先に、少女の姿はあった。
 愛らしいはずの笑顔。しかし、どこか冷たさを帯びていて……。
 目だ。目に光がなく、笑っていない。

 少女の放つ異様な気配に、クーは警戒心を強める。


o川*゚ー゚)o「ねぇ、そんなに怖い顔しないでよ」

o川*゚ー゚)o「せっかく会えたんだもん、嬉しい顔してよ」

川 ゚ -゚)「何を馬鹿な……」


 悪寒すら感じさせる気配。
 親しげに接してくる少女とは対照的に、鋭い目付きで睨み続けた。


o川*゚ー゚)o「ねぇ、いまはその子の力を使ってるんだね。カリスの力を」

川 ゚ -゚)「……そうだな、お前はすぐに気付くだろうな」


 クーの正体を知っているかのような言葉。
 クーもまた、少女の正体を把握しているような、思わせぶりな言葉を返す。

88226話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:05:27 ID:dVuufZLM0
o川*゚ー゚)o「ねぇ、人間の子と仲良く暮らしてるの?」

川 ゚ -゚)「………」

o川*゚ー゚)o「ねぇ……わたしとも、仲良くしてほしいな」


 作られた笑顔が崩れることなく、ゆっくりと近付く少女。
 少しの変化も無い表情が、言い表しがたい不気味さを放っていた。


o川*゚ー゚)o「おともだちが欲しいの」

川 ゚ -゚)「アンデッドと馴れるつもりはない」

o川*゚ー゚)o「どうして?人間と仲良くするのはいいの?」

o川*゚ー゚)o「わたしたちはアンデッドなのに」

川 ゚ -゚)「何が目的だ?ここの人達に手を出すつもりなら、私はお前を許さない」

o川*゚ー゚)o「そんなことしないよ」

o川*゚ー゚)o「それに……人間に手を出すのは、わたしじゃないよ」

o川*゚ー゚)o「どちらかというと、人間に……いや、あなたが大切にしてる人たちに手を出すのは――」









o川*゚ー゚)o「―――あなただよ」

88326話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:05:50 ID:dVuufZLM0
川 ゚ -゚)「………」

o川*゚ー゚)o「ふふふ」

「クーさん!ご飯冷めちゃうよ〜!」


 二階の窓から顔を覗かせる渡辺の呼ぶ声が木霊する。
 

川 ゚ -゚)「今行くから!」

「はやく〜!」


 鋭くなった目付きを和らげ振り返り、にこやかな表情で答える。
 二階より見下ろしているはずの渡辺は、見えているはずの少女に触れようとはしない。

 顔が引っ込むと同時に、クーの視線も戻った。


 だが、そこに居たはずの少女の姿がない。
 思わず咄嗟に周囲に目を配るが、後ろ姿も見当たらなければ、気配も感じない。

 渡辺が少女について触れなかったことを考えると、閃光の如く一瞬の出来事だ。

 
川 ゚ -゚)「………」


 兎も角、近くに居ないことだけは分かった。

 結局、少女の行動の意図は読めず、何が目的だったのかも分からぬまま。
 分かったのは、後味の悪さだけ。
 胸の内に明確な不気味さを残したまま、手袋をプランターの上に投げ置き、店の中へと戻った。

88426話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:06:29 ID:dVuufZLM0





 ―――――




.

88526話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:06:49 ID:dVuufZLM0


 時を同じくして、ブーン宅でも昼食の時間を迎えようとしていた。

 _
( ゚∀゚)「おーい腹減ったぜ〜まだかよ〜」

( ^ω^)「もう完成するから後少し我慢しろお」


 キッチンに立ちご飯を作っているのは、家主であるブーン。
 作っているのは、味には自信があるらしい炒飯と卵スープ。
 ソファで横になっているジョルジュの催促を聞き流しながら、強火で熱されているフライパンを器用に振り、パラパラな炒飯を舞わせる。
 最後にまわすように入れた醤油の香ばしいかおりが部屋中に広がる。
 美味そうなにおいに、口の中には唾液が溢れ出した。

 用意しておいた四つの皿に炒飯を均等に分け、ツンがスープを注いでいく。
 

( ・∀・)「俺持っていくよ」

( ^ω^)「お願いしますお」


 出来上がった昼飯をトレーに乗せるモララー。
 スープを注ぎ終えたツンは、エプロンを外しながらソファに寝そべるジョルジュのもとへと歩いた。

        _
ξ#゚⊿゚)ξ ( ゚∀゚)
   u彡 パシンッ!
 _
( ; ゚∀゚)「ってー!!」

ξ#゚⊿゚)ξ「手伝え」

88626話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:07:30 ID:dVuufZLM0


ξ゚⊿゚)ξ「いっつも何もしないんだから!皿くらい洗わないとあんたの分のご飯作らないから!」

ξ゚⊿゚)ξ「一応居候の身だっていうのに、あんたはくつろぎすぎ!」
 _
( ゚∀゚)「チッ……へいへい分かりましたよ」

( ・∀・)「じゃあこれから皿洗いはジョルジュ担当だな」


 テーブルの上、4つの椅子の前に料理を配りそれぞれ着席。
 スプーンを持ち湯気立つ炒飯を掬い、口に頬張る。
 各自自分のペースで食事を進めていると、ブーンが手の動きを止め口を開いた。


( ^ω^)「今日、久しぶりに職場に顔出しに行こうかと思ってるお」

ξ゚⊿゚)ξ「ん…そっか、結構お休みさせてもらってるのよね」

( ^ω^)「うん、もう働いてた感覚すら忘れちゃったくらい。快く休暇を許してくれてるし、せめて挨拶くらいはしないと」
 _
( ゚∀゚)「ほんっと律儀な奴だよな。俺なら休めてラッキー!くらいに思って絶対行かないけどな」

ξ゚⊿゚)ξ「アンタがドクズなだけよ」
 _
( ゚∀゚)「いやいや、俺はいつだって自分に正直なだけだぜ?」

( ^ω^)「まぁ気持ちは分かるけど、そう思えるような理由で休みもらってるわけじゃないからなぁ…久しぶりにヘリカル達にも直接挨拶したいし」

( ^ω^)「これ食ったらちょこっと行ってくるお。何かついでに買ってきてほしいものあれば買ってくるお?」

ξ゚⊿゚)ξ「ほんと?そうね…じゃあ牛乳と卵2パックと、あと食器洗剤お願いしようかな」
 _
( ゚∀゚)「俺コーラな、でかいやつで」

( ^ω^)「分かったお。モララーさんは何かありますかお?」

( ・∀・)「ん、俺か。そうだな…じゃあ」

88726話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:08:30 ID:dVuufZLM0






( ・∀・)「ひまわりの種がいいな」

( ^ω^)「え…種?」

ξ゚⊿゚)ξ「何に使うの?」

( ・∀・)「使うというか…食べてみたいからかな、ハムスターも食べるだろ?
      いつ見ても美味しそうなんだよね」
 _
(;゚∀゚)「またこの人の天然炸裂かよ」

(;^ω^)「モララーさん、前から薄々感じてたけど…ちょっと変なとこあるお」

88826話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:10:39 ID:dVuufZLM0
 ――――――
 ――――
 ――

 
 食事を終えたブーンは早々に家を出て、早速VIPへと辿り着いた。
 

( ^ω^)「いやぁ、久しぶりだお…VIP」


 仮面ライダーとなってから、半年以上振りに来た。
 働いていた時は毎日のように、何の意識もなく目に入っていたこの景観。雰囲気。
 一度離れてから目にすると、何とも懐かしいような、胸の辺りがそわそわするような感覚を覚える。
 メットを外しバイクから降車、VIPに向け足を動かす。
 妙な緊張を抱いたまま、入り口の自動ドアを潜り風除室を抜けると、スーパー特有の有線が耳に入り、より懐かしい気持ちを膨らませる。


(゜д゜@「いらっしゃいませ……あらやだ!?」

( ^ω^)「あ、新谷田さん!お久しぶりですお」

(゜д゜@「ブーン君じゃない!あらやだ、久しぶりねぇ!元気してたの??」

( ^ω^)「あ、いや……まぁそこそこですお」

(゜д゜@「あらそう、でも元気そうで何よりだわぁ。今日ヒッキー君やヘリカルちゃんもいるのよ。挨拶はした?」

( ^ω^)「これから挨拶しようと思ってますお」

88926話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:11:00 ID:dVuufZLM0


 久しぶりの従業員との再会。
 新谷田おばさん以外にも、目に入る従業員は皆ブーンを見ては会釈をしたり手を振ったり、近付いてきたりした。
 一人一人丁寧に挨拶に回っていると、特に気心知れているヘリカルに遭遇した。


( ^ω^)「ヘリカル!」

*(‘‘)*「ん……え、え!?ブーン!?」


 品出し中の手を止め声のする方へと振り向くと、予想外の来客に目を丸くした。
 駆け足気味に歩み寄り、久々に見た同僚の姿にヘリカルは笑みを見せる。


*(‘‘)*「もう、今まで何してたの!?LINEしてもろくに返事もしないんだから!」

( ^ω^)「ごめんお、返すようにはしてたんだけど中々そんな時間がなくて…。元気かお?」

*(‘‘)*「私は元気、この職場は相変わらずだけど何とかやれてるわ」

*(‘‘)*「……ほら、ブーンが来たのを嗅ぎ付けてやってきたわよ」

89026話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:11:25 ID:dVuufZLM0


( ^ω^)「?」


 ヘリカルが顎をくいっとさせ、ブーンの背後を知らせる。
 振り向くと、顔馴染みである後輩が近付いてくるのが見えた。


( ^ω^)「おお、お疲れだお」

(-_-)「あれ?ニート満喫中のブーン先輩じゃないっすか。いよいよ辞表持ってきました?」

(;^ω^)「気まずくなる冗談を言うんじゃないお」
 
*(‘‘)*「えっ…そういうことなの?」

(;^ω^)「いやいや、そんなわけないお!騙されるなお」 


 半年以上振りの三人でのやりとりは、空白の期間を埋めるかのようにテンポ良く繰り出される。
 

*(‘‘)*「あ、丁度ウチら休憩入るところなんだけど、ブーンも時間あったらどう?」

( ^ω^)「おっおっ、そしたら先に店長に挨拶してくるお。後から合流するお」

(-_-)「先輩、先に言っときます。今まで本当にお世話になりました…」

(;^ω^)「まだ言う?お前がそんな弄りしてくるから絶対辞めてやらんお」


 他愛もない言葉を交わし、ブーンは一人でスーパーのバックヤードへと向かった。

89126話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:11:46 ID:dVuufZLM0


 店長への挨拶を済ませたブーンは、スーパーの外にあるベンチに座るヘリカルらと合流。
 昼食は既に終えていたため、お茶を片手にヘリカルとヒッキーの間に肩を並べて座る。
 話題は、ここ最近定期的に各媒体で報道される化け物の件――アンデッドの話になった。


*(‘‘)*「しかし最近物騒よね…見たことがないから本当にいるのかも分からないけど」

*(‘‘)*「仮面ライダーってのも見たことないのよねぇ、VIPの人はみんなないみたいだけど。ブーンはある?」

( ; ^ω^)「え……うーん、いやぁないお」

*(‘‘)*「やっぱないんだ。何か、マスコミに踊らされてる気がしちゃうよね。そんな戦隊ヒーローみたいなことあると思う??」

( ;^ω^)「ははは…本当だお」

(-_-)「いるかもしんないっすよ、意外と近くにね」

*(‘‘)*「え?」

(;^ω^)「おっ、おい!お前何言ってんだお…!」 ボソボソ

(-_-)「分かんないじゃないっすか、てか居たらカッコよくないですか?」


 ブーンの焦りの制止を気にすることなく、ヒッキーは真顔で話し続ける。


(-_-)「だってもしそれが本当にあることだとして、俺たちにその活躍を公にすることなく戦ってるんでしょ?
    そんなの滅茶苦茶にカッコいいでしょ。体張って、命懸けて俺らの為に戦ってくれてるんだから」

( ^ω^)「……」

*(‘‘)*「まぁ、本当にあることだとしたらね?本当にいるなら感謝もするし応援もしたいけど…」

(-_-)「ですよね。だから俺は誇りに思いますね、そんな人がいる素晴らしい世界で生きてるってことを」

( ^ω^)「ヒッキーお前…」


 ヒッキーの言葉に、思わず胸が熱くなってしまう。
 普段おちゃらけている彼の口から出る言葉だからこそ、尚のこと感動してしまった。

89226話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:12:10 ID:dVuufZLM0
*(‘‘)*「もう、まるで目の当たりにしたことがあるみたいな口ぶりじゃない?」

(-_-)「いや?ないですよ、あったら写真撮ってSNSに上げてるし」

*(;‘‘)*「さっきまで真剣に語ってた人が取る行動とは思えないわね」

( ^ω^)「ははは…」


 胸を撫で下ろし、下手くそな愛想笑いを漏らす。
 すると、ヒッキーがヘリカルに思いがけない話を切り出した。


(-_-)「ヘリカルさん、そういえばドクオさんとはどうなんですか?」

( ^ω^)「ドクオ?」

*(‘‘)*「え?……なんで?」

(-_-)「だってほら、年末は一緒に過ごすって言って喜んでたじゃないですか。
     あれからその話してこないなぁと思って」

( ^ω^)「え、そうだったのかお?アイツそんなこと一言も…」


 ヒッキーが間接的にドクオの現状を探ろうとする。
 ドクオが何をしているのか、何故ヘリカルが話をしてこないかの理由は大まかに把握はしていた。
 理由はただひとつ――レンゲルの"運命"を背負ってしまったから。
 
 ヒッキーがその話を掘り返すと、ヘリカルの表情はたちまち暗くなった。
 

*(‘‘)*「………結局行かなかったわ」

(-_-)「そうなんですか…何か連絡とかは?」

*(‘‘)*「ない、結局あとになってLINEが来て、謝ってきたけど…何か、最近様子が変というか…」
 
(-_-)「変?」

89326話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:13:22 ID:dVuufZLM0


*(‘‘)*「ちょっと前までは全然返事来なくて、ある時突然元気になったような感じになったかと思えば…。
     また暗くなったりとか、LINEの既読もつかないみたいな感じになったりして」

( ^ω^)「……」


 これの理由はブーンも何となく理解している。
 レンゲルになってからの苦しみや葛藤と戦った日々の間の事だろう、と予測できる。
 

*(‘‘)*「それに昨日も、同窓会行って夜には帰ってくるからまた連絡するって言ったっきり返事もないの」

( ^ω^)「え?そういや、確かに今日になっても何の連絡もないお…」

*(‘‘)*「ていうか、今朝のニュース見た?ドクオの出身の学校で、人が山積みになって倒れてたって…」

( ^ω^)「何だおそれ?どういうことだ…?」


 同窓会に行くと言っていたドクオ。相手は過去にドクオをいじめていた人達。
 今までのパターンでは、ドクオからの連絡がない時は、何かがあった時。

 ……嫌な予感がする。
 悪い予想を頭の中で巡らすブーン。
 言葉を発さないヒッキーは、何処か深刻そうな表情。


 ――そこに、足音が近付く。


( ^ω^)「……!」


 何気なく足跡の方へと視線を向けたブーン。
 悪い予想は、当たってしまった。

89426話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:13:50 ID:dVuufZLM0


( A )

( ^ω^)「ドクオ…!」

*(‘‘)*「え?……ドクオ!」


 全員の視線がドクオに向けられる。
 ヘリカルは思わず席を立ち、ドクオを見つめた。
 

*(‘‘)*「ドクオ、何してたの!?すっごい心配したんだから!」

( A )

( ^ω^)「……ドクオ?」

( A )


 立ち尽くしたまま、反応がない。
 昨日までの活き活きとした様子はなく、頭の重さに逆らわず首をだらんと下げ、どこか一点をボーッと見つめている。
 表情がよく見えないドクオの視線を、目で追うブーン。
 その先には……表情を合わせようとしない、ヒッキーがいた。


( A )「おい」

(-_-)「……俺ですか?」

( A )「来い、話がある」

*(‘‘)*「え、ちょ…ちょっとドクオ?ヒッキーに何か用があるの?」

89526話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:14:16 ID:dVuufZLM0


 状況が呑み込めない、ブーンとヘリカル。
 ヘリカルがドクオに積極的に言葉をかけるが、ドクオには一切聞こえていないかのよう。
 ドクオはヒッキーに近付き、片腕を掴み強引に引っ張り上げる。


( A )「来い」

( ^ω^)「お、おい!ちょっと待てお!」

*(‘‘)*「ちょっと、何やってんの!?」


 ドクオの乱暴な姿を見て、止めに入るヘリカル。
 ヒッキーを引っ張るドクオの腕を解こうと割って入った。


( A )「――せぇ……」

*(‘‘)*「…?」




(#'A`)「――うるせぇんだよ、クソが…!!」

*(;‘‘)*「……え……、きゃっ!?」


 ヘリカルを引きはがし、突き飛ばす。
 思わぬ行動に動揺し、突き飛ばされるがまま地面に尻餅を着いてしまう。


( ^ω^)「ヘリカル!?」

(-_-)「ヘリカルさん!?」


 倒れたヘリカルの体を咄嗟に支えるブーン。
 あまりにも暴力的かつ理不尽なドクオに、ブーンは怒りを見せる。


( #^ω^)「おい…お前何考えてんだお!?」

89626話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:14:40 ID:dVuufZLM0


 ドクオに問い詰めようとしたブーン。
 その前に、ドクオに突っかかられたヒッキーが立ち上がり彼の胸倉を掴んだ。


('A`)「ッ…!?」

(#-_-)「そうかそうか……お前はそうなっちまったんだな?
      闇を選んだ…いや、闇を選ばざるを得なかったというべきか」

(#-_-)「自己責任っちゃ自己責任だが、お前を焚きつけるクソ野郎共が居たってことだな…。
      こうなっちまったら、もう取り返しがつかないな」

( ^ω^)「ヒッキー…?」


 胸倉を離し、ドクオを突き飛ばす。
 何の話をしているのか訳が分からず、二人を交互に見つめるブーン。


(-_-)「ヘリカルさん、ちょっと此処で待っててください。
     俺、ドクオさんとどうしても大事な話があるの忘れてて…すぐ戻りますから」

*(‘‘)*「へ……ヒッキー……?」

(-_-)「…来いよ」

('A`)「ふん、やっとその気になったか」

( ^ω^)「おっ、おい二人とも!?」


 ヒッキーがドクオを連れ、どこかへと向かってしまう。
 何が起こったのか、何故暴力を振るわれたのか、何故あんなに豹変していたのか…。
 状況が飲み込めず、ただ呆然とするヘリカル。


*(‘‘)*「………」

( ^ω^)「ヘリカル、先に中に入ってるんだお。僕が二人を何も起こらないように見張っとくから!
       大丈夫だお、ドクオのことは僕に任せて!」


 ヘリカルの両肩を撫でながら、慰めの言葉を掛けるブーン。
 起き上がらせてベンチに座らせると、ブーンは二人の後を追った。

89726話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:15:12 ID:dVuufZLM0
――――――
 ――――
 ――


 VIPから少し離れた場所、路地裏に辿り着く二人。
 二人は距離を置き、互いを睨み合う。
 ドクオの目は、昨日までとは違い――とても、憎しみや怒りを抱いていた。


(-_-)「どうやら、俺が願った通りにはならなかったみたいだな」

('A`)「そうかもしれないな。だが、俺はこれでよかったのかもしれない」

(-_-)「何?」

('A`)「気付いたんだよ。弱さは罪だってな」


 ドクオの両の拳が、ギリギリと強く握られている。
 怒りからか、強く強く握りしめるせいで、手がプルプルと震えている。


(#'A`)「何が過去との決別だ…何が俺自身が変わるだ?
    俺が変わったからって、奴らは変わらない…俺が弱いことも変わってない…!」

(#'A`)「過去の俺に酷い仕打ちをした奴らをな、俺は助けた。
    あいつらは自分が死にそうな状況になった途端、この俺に助けを求めたんだ!無様だよなァ!?」

(#'A`)「俺にあんな仕打ちをしておいて…だけどそんな奴らを助けてやったんだ。
    そしたらどうだ!?アイツらはその恩も忘れ、また昔と同じことを、喜びながら俺に……ッッ!!」


 近くに積まれているビールケースを思い切り蹴り飛ばし、呼吸を乱す。
 

(#'A`)「フーッ…フーッ……!」

(-_-)「だから、その力を使ったのか?」

(#'A`)「ああ、これか!?」


 レンゲルのベルトを取り出し、口端を吊り上げ不敵に笑みを浮かべる。
 
 ――そこに、二人の後を追ってきたブーンが到着した。
 既に一悶着あったかのような現場の状況、更にはドクオの手に握られるレンゲルのベルトーー。

89826話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:15:41 ID:dVuufZLM0


( ^ω^)「おい、お前本当に何しようとしてんだお!?」

(#'A`)「黙れ!!」

( ;^ω^)「うおっ!?」


 制止しようとするブーンを振り切り、ベルトを腰に装着するドクオ。
 もう一度止めようとドクオを抑え込むが、遠慮のない力がもう一度ブーンを跳ね返した。


(#'A`)「そうだよ、俺はコイツを使ったさ。コイツだけじゃない…カテゴリーAの力も受け入れた」

( ^ω^)「えっ…!?」

(-_-)「……」

(#'A`)「俺に教えてくれたよ。お前はこんな汚い奴を助けたかったのか?ってな。
    お前が弱いからこんなことになる…力さえあれば、お前はこんな惨めな思いをしなくていいってな」

(#'A`)「――その通りだな、って思ったぜ…!変身ッ!!」


    【 -♣OPEN UP- 】


 バックルより射出されたスピリチアルエレメントが、薄暗い辺りを紫光で照らす。
 構えも取らずに、ドクオは接近するゲートを潜り抜け、レンゲルの装甲を身に纏った。


( ; ^ω^)「ちょっ…!!おい、お前何を…ッ!?」

( #OHO)「俺に触るなッ!!」

( ; ^ω^)「がふっ…!」


 もう一度掴みかかってくるブーンを、壁に向かい投げ飛ばすレンゲル。
 人間の姿であるブーンは容易に投げ飛ばされ、背中を壁に強打した。

89926話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:16:13 ID:dVuufZLM0


(-_-)「先輩、下がっててください」

( ; ^ω^)「なっ…何言ってんだおっ!ドクオやめるお!」


 痛む体で声を出し絞る。
 ヒッキーの言葉など届くわけもなく、まだレンゲルを制止しようとする。

 ――だが、次の光景を見て、ブーンは言葉を失う。


(-_-)「先輩…俺、先輩のこと嫌いじゃなかったですよ。
     俺のこの姿を見たら、さっきまでのような仲では居られなくなると思うけど…これが俺なんで」

(-_-)「ちょっとばかり、コイツの為に人肌脱ぎますよ…!」


 刹那、ヒッキーの体から別のシルエットが浮かび上がる。
 アンデッドとしての、禍々しく歪な姿が。ヒッキーの本来の姿が、ブーンの前で露になった。


( ; ^ω^)「ッッ!?!?ヒッキー……!?」

( #OHO)「そうだよ、その姿を待ってたんだよ…カテゴリーK!!」
    。
< \゚皿゚/>『レンゲルーーいや、ドクオ。お前を止めてやる』

 
 後退りをするブーン。
 ヒッキーが、アンデッドの姿に――次から次へと襲い掛かる理解不能な状況に、何をしたらいいか分からない。


( ^ω^)ロ[……ツン、今カテゴリーKの反応が出ても、誰にも何も指示しないでほしいお。頼むお]


 ブーンの困惑を他所に、レンゲルはレンゲルラウザーを装備し、ヒッキーに襲い掛かる。

90026話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:16:39 ID:dVuufZLM0


( #OHO)「ウォラアアァッ!!」


 振りかぶるレンゲルラウザー。
 身を翻しながら冷静に躱すヒッキーに対し、縦横無尽に、乱暴に振るい続ける。
 
    。
< \゚皿゚/>『どうした、そんなもんか?
      ――おい、カテゴリーA!聞こえてるんだろ?構ってやるから来いよ!』

( #OHO)「こんの、クソがアアァァッ!!」


 横薙ぎに払われた斬撃を、後方にステップし躱す。
 
 突如、レンゲルの額にある宝石が紫に強く光りだす。
 すると、力み切っていたレンゲルの体から、フッと力が抜けたのが見て分かった。
 ゆらり…と動き始め、ラウザーを握り締めたのち、的確にヒッキーを狙い振るい始める。

    。
< \゚皿゚/>『ようやくお出ましか、何で勿体ぶったんだ?コイツに期待してるのか?』

( OHO)『フン、相変わらず口が減らない奴だ。いつまでその余裕が続くかな?』

( ; ^ω^)「この声……カテゴリーA!?何で…!」


 レンゲルの声が、ドクオのものではないのが分かる……カテゴリーAに操られたあの時のように。
 
 ヒッキーはレンゲルに向け口から蜘蛛の糸の弾丸を射出。
 レンゲルはそのすべてをラウザーで払い落し、カードを2枚引き抜きラウズ。


    《-♣2 STAB-》 《-♣4 RUSH-》


( OHO)「ウオオオオッ!!」


 "♣2 STAB"の力で武器の攻撃力を上げ、"♣4 RUSH"の力で突進力を強化。
 ラウザーの矛先をヒッキーに向けるように構え、地を蹴り突撃。

90126話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:17:04 ID:dVuufZLM0

    。
< \゚皿゚/>『そんな戦い方じゃ、俺は倒せないぞ』


 眼前に右手を翳し、大きな蜘蛛の巣を展開。
 盾のように作った蜘蛛の巣はレンゲルの攻撃を防ぎ、且つラウザーに絡み付いて捕らえた。

 右手を握り締め拳を翻すと、大きな蜘蛛の巣がレンゲルをガバッ!と覆い出す。
 まるで巨大な怪物が獲物を捕食するかの如く、レンゲルのそのまま飲み込んだ。


( ; OHO)「ぐっ!?クソ…ッ!うああぁぁッ!」


 捕らえられた蜘蛛の巣の中で、無数の火花が散り始める。
 巣の中で、何かがレンゲルを蝕んでいるように見える。レンゲルは痛みに悶え、悲鳴を上げた。


    。
< \゚皿゚/>『フンッ!!』

( ; OHO)「ぐはあぁっ!」


 体の自由が利かない状態のまま、ヒッキーの異常に発達した左手がレンゲルを殴打。
 後方に吹き飛ばされ、ブーンの目の前に転がる。
 

( ; OHO)「んぐ……クソォ…ッ!カテゴリーK…お前の力を得れば、俺は絶対的な強さを得られるんだ…!」

( ; ^ω^)「カテゴリーK……前に話してた♣スートのカテゴリーKが、ヒッキーだっていうのかお…!」
    。
< \゚皿゚/>『俺を倒すだと…?その程度で往なされる程、俺はやわじゃねぇ』

90226話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:17:35 ID:dVuufZLM0


( ^ω^)「………ドクオ」

( ; OHO)「クッ……絶対、絶対にお前を封印してやる!覚えておけ…!!」


 ブーンを一瞥するレンゲル。
 地を乱暴に叩き付け、痛む体を起こす。
 これ以上の戦いは無駄だと判断したのか、レンゲルはフラフラとしながらブーン達を残し去っていった。

 残された二人の間に、沈黙が流れる。
 ブーンは立ち上がり、ヒッキーに怪訝な視線を向ける。


( ^ω^)「ヒッキー……説明しろお。何でお前がアンデッドなんだお!?」
    。
< \゚皿゚/>『…ま、そうなっても仕方ない』


 人間態に戻り、ヒッキーは事の顛末を話す。
 
 自分がカテゴリーKであること。再び生を受け、再開されたアンデッド同士の戦いから逃れる為に人間に化けていたこと。
 争う気は更々ないことなど、全て。

 始めはヒッキーを警戒していたが、話に耳を傾けている内に自然とヒッキーの存在を受け入れられていた。


( ^ω^)「そうかお……信じていいんだな?お前を」

(-_-)「信じてもらえるなら」

( ^ω^)「なら信じるお。アンデッドの中にも戦いを望まない者もいる、僕はそれを知ってるお」

(-_-)「……いいんですか?俺はカテゴリーKですよ」

( ^ω^)「だから何だお、お前が人を襲うような奴だったらとっくに襲ってるだろ?
       それに…まだ期間は短いけど、VIPで一生懸命働いてるお前を知ってるから」

(-_-)「……はは、流石ですね。やっぱ人間はすごいわ」


 ブーンの言葉に安堵したのか、ヒッキーは自然と笑みがこぼれた。

90326話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:18:00 ID:dVuufZLM0


(-_-)「それはそうと、ドクオのことです。あいつについて話しておきたいことがあります」

( ^ω^)「ああ、そうだお…ドクオについて何か知ってるのかお?」

(-_-)「実は――」


 ヒッキーは、ドクオに何があったかの一部始終を話した。
 白根達に裏切られたこと。♣スートのカテゴリーKから見た、カテゴリーAの影響力。
 ドクオとカテゴリーAは互いに適合出来ている為にジョルジュのような洗脳を受けないが、かつてのギコのように
 心の闇に漬け込み、凶暴さを増幅させていることを。


( ^ω^)「ドクオ、そんなことが……確かに、そうしたくなる気持ちも分かるけど……」

(-_-)「思ってる以上に状況は悪い。ゆくゆくはカテゴリーAによって人格を形成され、それがドクオを蝕んでしまうかもしれない」

( ^ω^)「そんな……!何か手はないのかお!?」


 ヒッキーの表情がより真剣さを帯び、険しさを増した。
 そして、真っ直ぐな眼差しでブーンを見つめる。


(-_-)「……先輩、ドクオをどうしたいですか?助けたいですか?」

( ^ω^)「当たり前だお!あいつは僕の親友だお、こんなことになって…何とか救ってやりたいお!」

(-_-)「ですよね。なら、ドクオを救い切るまで、諦めないことを誓えますか?」

( ^ω^)「ああ、誓うお。僕はあいつを、本当のあいつを取り戻すまで何があっても諦めないお!」

(-_-)「……分かりました。取り敢えず――ッ!」

( ^ω^)「どうしたお!?」


 ヒッキーが何かを察知する。
 路地裏を吹き抜ける風が、彼に遠くで起きている事を伝えている。

90426話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:18:28 ID:dVuufZLM0


(-_-)「先輩、♣のカテゴリーJ…ドクオがそいつのもとに向かってます。
     ガタイの良い、屈強な大男に擬態してます」

( ^ω^)「ガタイの良い大男…?まさか、あの時の…!」


 ヒッキーが紡ぐヒントには心当たりがある。
 ミセリとタカラ達と対峙した、あのプールにいたもう一人の男。


(-_-)「コイツはかなりの暴れん坊です、勝てるかどうか…」

( ^ω^)「僕が助けに行くお!反応出ればきっと知らせてくれるから…!」


 急いでブルースペイダーのあるVIPに戻ろうとするブーン。
 路地裏から出て姿の見えなくなったブーンが、まだヒッキーのいる路地裏を再度覗き込む。


( ^ω^)「ヒッキー、ありがとうだお!これからも頼むお!」

(-_-)「うっす」


 ぶっきらぼうな返事を見届けると、ブーンは今度こそVIPに向けて駆け出した。


(-_-)「……やっぱ、人間は守らなきゃいけないな。こんな俺を受け入れてくれたんだから」

(-_-)「――さて、腹括るか」

90526話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:18:52 ID:dVuufZLM0





 ―――――




.

90626話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:19:50 ID:dVuufZLM0


 ブーン達の騒動の裏では、別のアンデッドが"また"動き始めていた。
 そのアンデッドは今、人になりすまし、お昼に営業中の飲み屋の前に立っている。


ミセ* ー )リ「フフフ……」


 そう、バーボンハウスの前に――。

 ドアが開き、カランカランと鈴が鳴り響く。
 普段であれば、誰かが来客を迎え入れようとするところ。

 だが、そうはいかなかった。


川 ゚ -゚)「出ろ、貴様如きが踏み入っていい場所じゃない」

ミセ*゚ー゚)リ「あら、やっぱりいたのね」


 ドアを開けてすぐ。そこには、クーが既に立ちミセリの来訪を待ち構えていた。
 後退るミセリ、クーはじりじりとミセリとの距離を詰めていく。


川 ゚ -゚)「死に損ないが、今度こそ貴様を封印してやる」

ミセ*゚ー゚)リ「それはどうかしら?フフフ」


 突如、アンデッド態へと姿を変えるミセリ。
 右手に伸びるツタを振るい、クーへと襲い掛かった。
 咄嗟に頭を下げ躱すクーだが、ミセリの先制攻撃によって完全に火が付いた。

  *∧Λ*
∠* ゚`-´)ゝ『さぁ、私の後を追ってきなさい!』

川#゚ -゚)「ふざけた真似を…!」


    【 -♥CHANGE- 】


 カリスへと変身し、シャドーチェイサーを呼び寄せミセリを追跡。
 分かりやすい挑発、誘導行為ではあるが、散々機会を逃してきたミセリにケリをつけたい思いも強くあった。

90726話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:20:17 ID:dVuufZLM0


 ミセリを追跡した果てに辿り着いたのは、例のプール。
 ここまで連れてこられた時点で、カリスは何となく察しが着いた。

 ――敵は、一人ではない。と。


「いやいや、全く…またお前か」


 麦わら帽子を顔面に乗せ、顔を隠す大男が一人。
 離れのプールサイドにて横になりながら、カリスの来訪に溜息を吐いた。


( <::V::>)『貴様か、私を此処に呼び寄せたのは』

「何の話だ?」


 大きな片手で麦わら帽子を取り、上体を起こす。
 ゆっくりと気怠そうに立ち上がり、カリスを見た。


( ゚∋゚)「俺は戦う気はないぞ」

( <::V::>)『馬鹿を言うな、こんな所までおびき寄せておいて…。
      隠れているんだろう?繭女。2対1でも構わないぞ?』

( ゚∋゚)「ほう……なるほど、そういうことか」


 大男――クックルに、若干の苛立ちが見えた。
 そこに、カリスを此処まで誘引したミセリが背後より現れる。

  *∧Λ*
∠* ゚`-´)ゝ『――フッ!』

 ツタを伸ばし、カリスの体を拘束しようとした。
 カリスはシャドーチェイサーから跳躍して回避。
 ミセリの背後に着地し背を取ると、カリスアローで一太刀浴びせる。

90826話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:20:43 ID:dVuufZLM0

  *∧Λ*
∠* ゚`-´)ゝ『ぐうっ…!?すばしっこい奴…!』

( <::V::>)『一人では戦えないか、まぁいい…同時に相手をしてやる。来い』


 二体の上級アンデッドを目の前にし、構えを取る。
 臆しないカリスの姿勢を見て、ミセリは高らかに笑った。

  *∧Λ*
∠* ゚`-´)ゝ『アハハハハ!この状況で随分と威勢が良いわねぇ』
  *∧Λ*
∠* ゚`-´)ゝ『彼を前にして、本当に私を倒せる余裕があるのかしら?』
  *∧Λ*
∠* ゚`-´)ゝ『ねえ?カテゴリーJ――』
  *∧Λ*
∠*;゚`-´)ゝ『ッッ!?』


 背後のクックルを振り向いた瞬間、ミセリの胸部に被爆する爆弾。
 硝煙がミセリの胸元から沸き立ち、爆発の威力で転倒。

 そこには、大男の姿はない。
 立っていたのは、とても巨大なーー。


бし゚益゚し


 黒い装甲に覆われる緑色の地肌。3本指の手足。
 右腕の装備にはモーニングスターが数本吊るされており、その手にはハンマーが握られている。
 右肩から背中を伝い、左脚にまで垂れ下がる長いホース状のものは、まるで"象"の鼻にも似ている。

90926話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:21:10 ID:dVuufZLM0


бし゚益゚し『貴様か、この俺を無駄に争いに巻き込もうとした大馬鹿者は』
  *∧Λ*
∠*;゚`-´)ゝ『クッ…何を…!?共にコイツを潰せる良い機会でしょ!?』

бし゚益゚し『そうやって貴様は、他の連中を焚き付けて利用してきたんだろう。
      あいにく俺は、貴様の思い通りにはならない…フンッ!』
  *∧Λ*
∠*;゚`-´)ゝ『うあッ……!!』


 右腕のモーニングスターを飛翔させ、ミセリに追撃。
 鉄球がミセリの頭部に直撃すると、その重さからミセリは吸い込まれるように地に倒れ、転がりながらカリスの足元へ。

 一部始終を静観していたカリスだが、足元に転がってきたミセリの首を雑に掴み、強引に立ち上がらせる。
 そして、容赦のない斬撃を見舞った。


( <::V::>)『ふっ、予定外…といったような顔をしているな?』
  *∧Λ*
∠*;゚`-´)ゝ『ううッ…、こんなはずじゃ…!』

( <::V::>)『残念だったな、恨むなら己の所業を恨むことだ!』


    《-♥6 TORNADE-》 《-♥7 BIO-》


 二枚のカードをラウズ。
 突き出した右手から伸びる触手がミセリを捕らえ、動きを封じる。
 右手を引きミセリを強引に引き寄せると、風の力を纏ったカリスアローの両刃で斬り付けた。

  *∧Λ*
∠*;゚`-´)ゝ『うあぁァッ!!…ッ、ガハッ……』

бし゚益゚し『ふん』
 

 全身を風の刃で刻まれ、至る所から緑の血を流す。
 血反吐を吐きながら、ふらふらと立ち上がるミセリ。
 クックルはその様子を眺めながら、自業自得の末路を鼻で笑ってみせた。

91026話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:21:30 ID:dVuufZLM0

  *∧Λ*
∠*;゚`-´)ゝ『まだよ…まだ、終われないの…ッ!』


 顔面の表裏が入れ替わり、周囲に大量の花吹雪を撒き散らす。
 全身の力を振り絞って、ミセリはこの窮地からの離脱を図った。

 カリスとクックルが顔面を覆い、視界を眩まされる。その隙にミセリは逃走。
 フッ、と花弁が消失した時には、ミセリの姿がなかった。


( <::V::>)『この機は逃さない…確実に奴を仕留める。
      貴様の相手は後だ、それまで此処で余生を楽しめ』

бし゚益゚し『そうか、ならお言葉に甘えよう』


 カリスは、ミセリの消え切らない気配を辿りその場を後にした。
 


 人間態になり、一息吐くクックル。
 邪魔者がいなくなり、再び休息に入ろうとした……その時だった。


( ゚∋゚)「…今度は別の奴か」

91126話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:21:53 ID:dVuufZLM0


 近付いてくる気配を感じる。
 人間?アンデッド?どちらも感じ取れる気配。
 それは、プールと外を遮る塀を超えてすぐに現れた。

 緑と黄金に輝くバイクーーグリンクローバー。
 それを器用に乗りこなす、ドクオの姿が。

 バイクから降車し、足取りが覚束ないままクックルを鋭い目で睨みつける。


('A`)「あんた、♣のカテゴリーJだよな?」

( ゚∋゚)「だったらなんだ人間……いや、臭うな」

('A`)「何?」

( ゚∋゚)「昨日はそこまで気にならなかったが、今のお前からキツイ程臭うぞ――毒蜘蛛の臭いがな」

( ゚∋゚)「だが残念だったな、あいにく俺は戦うのは好きじゃない」

('A`)「だったら――」

( ゚∋゚)「と言えば、こちらから行くぞ。などと言い出すんだろうな…全く面倒くせぇなぁ…」

(#'A`)「俺の言うこと全部分かってんだったら、これからすることも分かってんだろ!?」

( ゚∋゚)「……ふん、見えるぞ。お前の背を這う蜘蛛の姿が」


 息を乱しながら、レンゲルバックルを装着する。
 先刻のヒッキーとの対峙で、体力・肉体的にかなり消耗しているが…今のドクオには関係ない。
 
 力が欲しい。上級アンデッドを倒し、強くなりたい。
 ただ、それだけ。

 ーーそう思い込むように、カテゴリーAがドクオに内側から呼び掛けていることにも気付かず。

91226話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:22:14 ID:dVuufZLM0


(#'A`)「変身…ッ!」

    
    【 -♣OPEN UP- 】


 レンゲルへの変身を果たした直後、クックルに向け駆け出す。
 ひと飛びで離れたプールサイドを飛び越えると、勢いそのままに右手で握り締めた拳をクックルに突き出した。


( #OHO)「オラアアァッ!!」


 胸部に確かにヒットしたが、クックルは微動だにせず。
 一瞬、レンゲルに怯んだ様子が垣間見えたが、何度も胸に向かい拳を叩き込む。

 だが、


( ゚∋゚)「お前、昨日より力が落ちているな。体が限界なんじゃないか?」

( #OHO)「クッ、黙れ!俺はお前を封印する!」

( ゚∋゚)「おお、そうか…。大人しく言うことも聞いてくれないみたいだなぁ。なら――」

бし゚益゚し『少し灸を据えてやろう』

( ; OHO)「!?ぐふっっ……!!」


 拳を掌で受け止めるクックル。
 左足の重たい一撃が、レンゲルの腹部に見舞われる。
 何かが吐き出そうな程の衝撃がレンゲルを襲い、思わず蹲る。

 クックルは追撃を止めない。
 右手のハンマーを高々と振り上げ、蹲るレンゲルの背中に勢いよく振り下ろした。

91326話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:22:41 ID:dVuufZLM0


( ; OHO)「がはぁっ!!」


 背中にとてつもない重力と衝撃が圧し掛かる。
 逆らえない重力に、レンゲルはそのまま地に伏せられた。


бし゚益゚し『他愛もない…フン!』

( ; OHO)「うああぁっ…!!うぐっ…!」


 脇腹を蹴り上げ、レンゲルの重たい体を蹴り飛ばす。
 まるでボールを蹴り飛ばすかのように。
 プールサイドには届かず、体を打ち付けプールに落下。大きな水飛沫が吹き上がり、辺りを水で濡らした。

 
бし゚益゚し『何だ、大したことないな…こんなものなのか?』

бし゚益゚し『しかし、ここの場所も大分知られてしまったな…そろそろ住処を変えるとするか』


 プールの中で沈むレンゲルなど気にも掛けず、この場を去ろうとする。
 戦い続きで、辺りの崩壊が目立って来た。狙われていては落ち着いて過ごすことも出来ない。
 
 しかし、それすらも遮ろうとする存在が、再び接近している事に気付く。
 

бし゚益゚し『ああ、面倒くせぇ…!』

91426話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:23:11 ID:dVuufZLM0


 次に現れたのは、ブレイドとギャレンだった。
 ヒッキーからの情報を得た通りにカテゴリーJの反応をキャッチ。
 この場所は覚えていたため、比較的早く到着できた。


( OwO)「やっぱりお前だったかお…!」

( OMO)「こいつ、この間の大男か?」

бし゚益゚し『何だって今日はこんなに客が多いんだ?』

( OwO)「ドクオ!」


 プールの底で沈むレンゲルを発見する。
 ブレイドが急いでプールに飛び込み、水圧に苦戦しながらもレンゲルを救い上げた。
 

бし゚益゚し『そろそろ静かにさせてもらおうか。
      俺は得体の知れない奴と真っ向勝負するのは嫌いでな。
      相手の力量が知れるまでは戦わない主義なんだ』

( OMO)「何だと?逃がさないぞ、アンデッド!」


 ギャレンラウザーを引き抜き、クックルに向け銃撃を見舞う。
 クックルの体に被弾し火花が散るが、効いている様子はない。


бし゚益゚し『全く、馬鹿な連中だ…!』

91526話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:23:35 ID:dVuufZLM0


 クックルが動いた。 
 重そうな体から繰り出したとは思えない跳躍。
 ブレイドらがいる対岸に着地すると、両足が着いた部分から地響きが起き、周囲に地割れが伝染。
 
 左手にハンマーを持ち替え、右腕の鉄球を振るいギャレンを雑にぶん殴る。


( ; OMO)「ぐあっ!…何て力だ…!?」

( OwO)「モララーさん!うおおおお!」


 ブレイラウザーを抜き、クックルに立ち向かう。
 接近し胴体を斜めに斬り付けるが、これもまた効いていない。


бし゚益゚し『んん?どうした、こんなものなのか?ライダーってのは』

( ; OwO)「何!?うわあぁっ!!」


 左手に持ち替えたハンマーで、下から打ち上げるように脇腹を殴打。
 更に振り上げ、ブレイドの顔面めがけ振り下ろした。


бし゚益゚し『フンッ!!』

( ; OwO)「ッ…!」

( ; OMO)「剣藤!!」

91626話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:23:58 ID:dVuufZLM0


 ハンマーがブレイドの顔面に直撃。
 その瞬間……ブレイドの顔面を覆う仮面が砕かれ、辺りに破片が飛散。
 中身が露呈されたブーンの顔には、頭部から出血した血が流れていた。


( ;|^/wO)「くっ……」

( ; OMO)「オリハルコンブレストが、破壊されただと…!?」


 120tの衝撃をも吸収するライダーの装甲。
 アンデッドの攻撃をも防ぎ切ってきたこの完全無欠の装甲が……遂に破壊された。
 この事実は、クックルがとてつもない力を誇るアンデッドであることを知らしめた。

 攻撃も通じず、一発一発の重みが桁違い。更にはアーマーを突き破る程の力。

 
( ;|^/wO)「ッ、まだまだだお…!」

( ; OMO)「よせ剣藤!このアンデッドは…今までの奴らとは違う!」


 顔面を割られても尚、立ち向かおうとするブレイドを阻止した。
 ギャレンは本能的に察した。
 こいつは、やばい。


бし゚益゚し『ライダーとかいう奴らがアンデッドを次々と封印していると風の便りで知ったから警戒はしていたが…。
      さっきのガキといいお前達といい、思ってたより大したことはないのかもしれないな…?』

( ; OMO)「やはり、お前は俺達を試していたのか……!」


 これ程の実力があっても自ら進んで戦おうとしない、その矛盾に違和感を抱いていた。
 先程の発言からしても、まだ本腰を入れて戦ってはないとも解釈できる。
 考えただけでも、自然と恐ろしさが沸き上がってしまった。

91726話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:24:19 ID:dVuufZLM0


( OMO)「クッ…剣藤、ここは撤退しよう。これ以上は危険だ!」

( ;|^/wO)「でも…!」

( OMO)「命を無駄にするな!今の俺たちでは…勝てない!」

( ;|^/wO)「……クソッ!」


 ギャレンの言葉を否定したいが、認めざるを得ない。
 現に、力の差を見せつけられてる。クックルに対抗できる手段が思いつかない。
 悔しさを滲ませながら、ブレイドは変身を解いたドクオを抱え、クックルの前から退散…。
 ギャレンは銃口を向けながら、撤退の殿を務める。

 しかし、クックルは追おうとはせず逃げる様を見ている。


бし゚益゚し『腰抜けめ、自分から仕掛けておいて逃げるか』


 自身の手を見つめ、クックルは感触を掴んだ。
 ライダーとの邂逅。実戦を交えたことで、明確になった。


бし゚益゚し『……これなら、奴らに勝てる!』


 不動を貫いてきた象が、己が名を上げる為に重い腰を上げ始めた。

91826話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:24:42 ID:dVuufZLM0





 ―――――




.

91926話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:27:27 ID:dVuufZLM0


 _
( ゚∀゚)「ふふふ〜ん」


 車道を一人、車で走るジョルジュ。
 ブーン宅で昼食を済ませた後、ジョルジュも単身外に出ていた。気分転換のドライブも兼ねて。
 車の窓を開けて、風を感じながら鼻歌を歌う。

 _
( ゚∀゚)「最近嫌なことばっかだったし、たまにはこういう気晴らしも必要だよな」


 賑やかな街並みを避け、自然溢れる静かな車道を走る。
 ドライブをする自分に言い聞かせるように、独り言を呟く。

 _
( ゚∀゚)「……しかし、どうやってアンデッドに向き合ったらいいか分かんなくなってきたな…」


 ぼそっ、と呟く。普段であれば口にしないであろう本音が漏れた。
 アンデッドは敵――それが当たり前だと思っていた。その概念を持って今までやってきた。
 だが、クーのような、モスのような例外もあるアンデッドの存在を知った。
 知ったことで、ジョルジュの中で複雑になっていた。

 しばらく車を走らせていると、前方に何かを確認。

 _
( ゚∀゚)「ん?何だあれ」


 減速し、ゆっくりとその前を通り過ぎようとする。
 徐々にはっきりとしてくる。そこにあるのは……うつ伏せに倒れている人だった。

 _
( ゚∀゚)「おっ、おい!大丈夫ですか!?」


 路肩に車を止め、倒れている人に近付く。
 よく見ると、倒れている人は女性だった。
 肩を揺さぶってみても反応がない。

 ジョルジュは、半ば無理矢理に体勢を仰向けに入れ替える。

 _
( ;゚∀゚)「ッーー!!」

92026話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:27:50 ID:dVuufZLM0


 顔がハッキリとした途端、ジョルジュがパッと手を放しその場から立ち上がる。
 ジョルジュが助けようとした女性、それは――


ミセ* ー )リ
 _
( ;゚∀゚)「義永…ミセリ…」


 アンデッドであるミセリだった。
 先の戦いで深くダメージを追い、ここで意識が途切れてしまった様子。
 ジョルジュはスマホを急いで手に取り、ブーン達に連絡しようとした。
 ……が、その手は止まった。

 _
( ;゚∀゚)「………」


 人間にしか見えない、綺麗な横顔。
 アンデッドであること、危険な目に合わされたことを覚えている。
 覚えているはずなのに…何故か、躊躇いを感じている。

 _
( ;゚∀゚)「……どうしたら……」


 迷いが生まれている。
 スマホとミセリを何度も何度も交互に見つめる。

 しかし、次の瞬間――急に体が勝手に動いた。

 _
( ゚∀゚)「ああもう…!知らねぇ!なるようになれだ!」


 スマホをしまい、ミセリを抱え上げるジョルジュ。
 車の中に乗せると、ジョルジュは人気のない場所へと車を走らせた。

92126話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:28:12 ID:dVuufZLM0

 ――――――
 ――――
 ――

 
 人気のない場所に車を止め、ジョルジュはハンドルに蹲る。

 _
( ゚∀゚)「ハァァ……、何やってんだ俺……」


 仮にもアンデッドを助けてしまった行動を今になって後悔。
 それと同時に、衝動的な自分を制御出来ない事に情けなく感じている。
 
 _
( ゚∀゚)「そりゃレンゲルにだってなれねぇし、ライダーには向いてないよな…」


 自虐に浸る。
 だが同時に、この行動を取ってしまったことを悔いていない自分もいる。
 どこか、不思議な感覚だ。


ミセ*゚ -゚)リ「何故私を助けた?」
 _
( ;゚∀゚)「うわああああっ!?」


 何の気配も音もなく、ミセリが突然口を開いた。
 驚いたジョルジュは跳ね上がり、ミセリから距離を取った。


ミセ*゚ -゚)リ「何のつもりだ、お前」
 _
( ;゚∀゚)「い、いや……それは、その……」

92226話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:28:38 ID:dVuufZLM0


ミセ*゚ -゚)リ「私はアンデッドだぞ?お前のことも殺めようとした」
 _
( ;゚∀゚)「そ……そんなことは分かってる!」


 ミセリの冷たい表情。繰り返し詰め寄られるジョルジュが、半ば自棄気味に返事をする。

 _
( ゚∀゚)「分かってるよ、そんなことくらい…あんたが俺に何したかなんてことくらい。
     アンデッドだってことも分かってんだよ!」
 _
( ゚∀゚)「でも……あんた、倒れてただろ?そんな姿見たら、何か…体が勝手に動いてたんだ!」

ミセ*゚ -゚)リ「今この瞬間、殺されると分かっていても?」
 _
( ゚∀゚)「ッ……ああ、そうだよ。分かってても動いちまったもんはしょうがねぇだろ!?」


 ミセリの言葉に身構え、恐怖を覚えるジョルジュ。
 しかし、強気な姿勢は崩さない。

 _
( ゚∀゚)「あんたは目的があって俺らに手を出したんだろ?
     もちろん許せることじゃねぇよ、でも…目的がなけりゃ人のことも襲わないってことだろ?」

ミセ*゚ -゚)リ「……何が言いたい?」
 _
( ゚∀゚)「アンデッドってのは自分の目的の為に戦ってるんだろ?中でもあんたらみたいな上級の連中はさ。
     要するに、身を削ってるってことだろ?」

ミセ*゚ -゚)リ「……」
 _
( ゚∀゚)「ずっと考えてたんだよ、俺…あんたらアンデッドは許せねぇよ、そんな戦いに俺たちを巻き込みやがってさ。
     でも、戦いを強いられて苦しんでるんじゃないかって…どっかでそう思うようになってた」
 _
( ゚∀゚)「アンデッドでも、人と暮らしてる奴がいるからな…」

92326話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:29:00 ID:dVuufZLM0


ミセ*゚ -゚)リ「フッ…まさか人間如きに憐れまれるとはな。
     だからと言って何故それが私を助ける理由になる?」
 _
( ゚∀゚)「分かんねぇよ、分かんねぇ!ただ…そう思ったら、あんたを助けたくなった!それだけだ!」


 逆ギレのように言葉を返す。
 ジョルジュに向けていた目線を、ミセリは逸らした。

 _
( ゚∀゚)「殺すなら殺せよ、あんたを助けた時点で分かってた展開だよ。
     こんな密室で、逃げられる訳がねぇ…」

ミセ*゚ -゚)リ「いいのか?そんなことを言って」
 _
( ゚∀゚)「ああ、いいよ!しょうがねぇだろ、自業自得だ…」

ミセ*゚ -゚)リ「…そうか。恨むなら自分を恨め」


 正面を見つめるジョルジュ。
 ミセリは両手を、ゆっくりとジョルジュの首元に向け伸ばす。
 きつく締め上げようとしたミセリだったが……。

 _
( ;゚∀゚)「ッ……」

ミセ*゚ -゚)リ「………」
 _
( ;゚∀゚)「へ……?」


 ミセリの手が止まった。
 呆然とするジョルジュを他所に、ミセリは車を降りる。

92426話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:29:33 ID:dVuufZLM0


 そして――自分を追ってきたであろう、狩人を見つける。
 

ミセ*゚ -゚)リ

( <::V::>)


 言葉を発さない両者。
 バックミラー越しにカリスの姿を視認すると、ジョルジュも急いで車を降りた。

 _
( ゚∀゚)「ク、クーさん……!」

( <::V::>)『この女を介抱したのか』
 _
( ;゚∀゚)「ま、待ってくれ。これには訳があるんだ…」

( <::V::>)『散々な目に合わされたくせに、よくも助けたな。
      やはり貴様とは分かり合えない』
 _
( #゚∀゚)「ッ……何が分かるんだよ、あんたに!!」


 カリスの言葉に、ジョルジュが声を荒げる。
 いつもはクーに対してどこか怯えて劣等感を感じていたが、そんなことを忘れさせるくらい、大きな声で。

 _
( #゚∀゚)「分かったような口ぶりで好き勝手に…そもそもあんたのせいだろ!?」

( <::V::>)『私が何かしたとでも言うのか』
 _
( #゚∀゚)「ああ、してるね。あんたはアンデッドなのにショボンさん達と仲睦まじく暮らしてるじゃねぇか!
     アンデッドなんて好きでも何でもねぇよ、でも……あんたみたいな奴もいるんだってことを知っちまった!」
 _
( #゚∀゚)「だから俺は、アンデッドはただの殺戮マシーンじゃないかもしれないって可能性を考えるようになっちまったんだよ!
     そんな俺の気持ちがあんたには分かるか!?分かんねぇだろうな!いつも人のこと浅く見て好き勝手言いやがって!」

( <::V::>)『………』


 ジョルジュの言葉が何故か、嫌というほど刺さる。
 いつもなら適当に躱す言葉を返せるが、この時ばかりは返す言葉が見つからなかった。

92526話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:30:18 ID:dVuufZLM0

 _
( #゚∀゚)「そんなわけでな、義永ミセリも本当は好きでこんなことやってるんじゃないって思っちまうんだよ。
     だから介抱した、これで殺されても自業自得だ。俺は誰も攻めやしねぇよ!文句あんのか!?」

( <::V::>)『……その覚悟があるなら好きにしろ。私はその女を封印しに来ただけだ』

ミセ*゚ -゚)リ「………」


 ミセリを指差すカリス。
 そのミセリは、隣でジョルジュの言葉を聞きながら…自然と、ジョルジュのことを見てしまっていた。

 感じたことのない感情が芽生える。
 
 これまで、戦いの中でしか生きてこなかったアンデッド達。ミセリも然りだ。
 己に課せられた"運命"、宿命であり、勝つことが全てだった世界。
 どんな卑怯な手でも使って、生き残ってやる。どんな手段を用いてでも、勝ち抜いてやる。
 そんな世界の中では、決して芽生えることのない感情。


ミセ* - )リ(ああ……これが……)


 ミセリの中で、何かが動いていた――。


ミセ*゚ -゚)リ「ジョルジュさん」
 _
( ゚∀゚)「……え?」

ミセ*゚ -゚)リ






ミセ*゚ー゚)リ「ありがとう」

92626話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:30:40 ID:dVuufZLM0

 
 ジョルジュの首に向けツタを伸ばし、首を絞める。
 ふっ、と口から吹いた花弁がジョルジュを包み

 _
( ゚∀゚)「へっ…!?……ミセ……リ……」
 _
(  ∀ )「さ―――」


 その意識を、遠ざけた。
 首に巻くツタを緩めると、力なく、だらんと地面に倒れるジョルジュ。


( <::V::>)

ミセ*゚ -゚)リ「……さぁカリス」


 自分を迎えに来た、目の前の死神を見つめる。
 ミセリは両手を広げ、その姿を歪なものへと変化させる。

  *∧Λ*
∠* ゚`-´)ゝ『これで終わりにしましょう…!』


 カリスは言葉を発さない。
 カリスアローにラウザーを装着し、カードを引き抜く。

 ミセリは、横目で倒れているジョルジュを見る。
 最期に、自分のことを初めて分かってくれようとした存在を目に焼き付ける為に――。

92726話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:31:09 ID:dVuufZLM0


    《-♥4 FLOAT-》 《-♥5 DRILL-》 《-♥6 TORNADO-》


  *∧Λ*
∠*#゚`-´)ゝ『……ウアアアアアアアアアアッッ!!』


         《-♥SPINING DANCE-》


 カリスの体が、宙に浮遊を始める。
 足先から発生する竜巻の威力はみるみると増幅し、やがて周囲の枯葉を巻き込みながら暴風へと変化。
 幾重にも回転する体を、カリスは足先からミセリに向かって突進。

 ダッシュでカリスに挑むミセリ。
 カリスは容赦なくその体に足を突き刺し、ミセリの体を貫通させるかのようにドリル状の攻撃を浴びせ続ける。


 やがてカリスは、ミセリの体を突き破り、そして――。















.

92826話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:31:40 ID:dVuufZLM0

 



 ―――――




.

92926話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:32:01 ID:dVuufZLM0


 命辛々逃げることに成功したブーン達は、自宅へと戻っていた。
 クックルに負わされた怪我を、ツンによって手当されている。
 頭部を狙われたブーンは頭に包帯を巻いていた。


ξ゚⊿゚)ξ「ブーンとモララーさんが二人掛かりでも勝てないアンデッドだなんて…」

( ・∀・)「アイツは今までのアンデッドとは違う。
      同じカテゴリーJの府坂やタカラとはタイプが違うにしても…元々のパワーが桁違いすぎる」

( ^ω^)「まさか、ライダースーツが破壊されるだなんて思いもしませんでしたお…」

ξ゚⊿゚)ξ「これからどうやって戦うつもりなの?」

( ・∀・)「そうだな…真っ向勝負では歯が立たないのは一目瞭然だ。
      何か、奴の弱点を得られれば――」

「そんなもんは奴にはない」

( ・∀・)「?」

ξ゚⊿゚)ξ「誰!?」


 突如、廊下の方からいないはずの誰かの声がした。
 声のする方へ視線を向ける3人。モララーとツンは、その声に警戒する。
 しかし、家主であるブーンだけはこの声に驚きはしなかった。
 
 声の主が、廊下からリビングに現れる。
 そこには、ブーンの後輩…カテゴリーKでもある、ヒッキーがいた。

93026話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:32:21 ID:dVuufZLM0


(-_-)「あの象の野郎に弱点なんかない。あの力、あの図体…そのまんまの力を持ったのが奴だ」

( ・∀・)「君は…」

( ^ω^)「ヒッキー?お前…勝手に入ってくんなお」

(-_-)「ああ、すんません。でも一大事だと思って駆けつけましたよ」

( ^ω^)「そうか…助かるお」

ξ゚⊿゚)ξ「え…ちょっと待って、どういうこと?」


 ブーンとモララーは、ヒッキーがアンデッドであることを既に認知済みである。
 此処にいる中で、唯一ツンだけがヒッキーの存在を詳しく知らない。


(-_-)「ああ、俺実は――」
    。
< \゚皿゚/>『これなんすわ』

ξ;゚⊿゚)ξ「ッッーー!?!?」


 驚き、息をのむツン。
 これ程至近距離で突然アンデッドを見たのは初めてで、思わず腰が抜けてしまった。


( ^ω^)「心配しなくていいお、ツン。コイツは僕らの味方だお」

( ・∀・)「剣藤、お前知ってたのか?彼がアンデッドだって…」

( ^ω^)「今日知ったばっかですお。モララーさん…知ってたんですかお?」

( ・∀・)「…ああ、実は…」

ξ゚⊿゚)ξ「……知らなかったの、私だけ?」

93126話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:32:42 ID:dVuufZLM0


(-_-)「とにかく、どんな力を持ってしても並大抵のものではアイツは倒せない」

( ^ω^)「かもしれない…だからお願いがあるお。お前の力を貸してくれないかお?」

( ・∀・)「そうだ、君はカテゴリーKだろう?レンゲル相手に一切臆しなかった」

(-_-)「うーん……そうじゃねぇんだよなぁ」


 二人の協力要請を、腕を組み首を傾げ拒むヒッキー。


(-_-)「並大抵の力では勝てないとは言ったけど…一つ、大事なことをしっかり持てば勝てるかもしれない」

( ^ω^)「もう、勿体ぶんなお!それってなんだお!?」

(-_-)「それは――」


 焦れる様子のブーン。
 ヒッキーが答えようとした矢先、インターホンが鳴り響く。
 

( ^ω^)「こんな時に誰だお…!」

ξ゚⊿゚)ξ「私が出るわ」


 苛立ちを見せるブーンを抑え、ツンは一人玄関へと向かう。
 玄関のドアを開けると、そこには



ξ゚⊿゚)ξ「所長…!」

93226話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:33:06 ID:dVuufZLM0


 そこに立っていたのは、ブーンの実父であり元BOARD所長・ロマネスク。
 その手には、一つ箱が。


( ФωФ)「廣瀬、ついに完成したのである」

ξ゚⊿゚)ξ「完成?とにかく、上がってください」


 ツンに招き入れられ、家の中へと入るロマネスク。
 リビングには既に役者は揃っていた。
 また、来客がまさかのロマネスクであったことを受け、ブーンは突如反抗的な態度を示し始める。


( ^ω^)「お前…!何しに来たお」

( ФωФ)「廣瀬、菱谷、ホライゾン。遂に完成したのである。
       ライダーの力を更に増強させる、新たなシステムーー」

( ФωФ)「"ラウズアブゾーバー"が…!」


 テーブルに置いた箱から取り出した装着型の機械のようなもの、
 "ラウズアブゾーバー"……そう呼ばれるものを、ロマネスクは手に取った。


ξ゚⊿゚)ξ「これって、この前言ってた上級アンデッドの力を引き出せるシステムですよね?」 

( ・∀・)「それが、遂に完成したんですか…!」

( ФωФ)「うむ。これを用いることで上級アンデッドの力を引き出し、更に強力な戦闘力を有すことが出来る」


 ロマネスクが以前、提唱していた新たなシステム。ラウズアブゾーバー。
 カテゴリーJからの上級アンデッドのカードに秘められた強大な力を、最大限に引き出すというもの。
 ブーン達が封印してきた上級アンデッド達の力を、このシステムを使えば引き出せるということだ。

93326話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:33:26 ID:dVuufZLM0


( ^ω^)「てことは…これを使えば、あのカテゴリーJも倒せるんじゃ…!」

( ФωФ)「恐らく。他のカードのようにラウズして力を得るのではなく、このラウズアブゾーバーは
       使用者自身に強力な力を付与されるように作られている。
       更なる強敵にも叶うように開発されたのが、このシステムである」

( ^ω^)「これ、早速使わせてくれお!どうしても倒したいアンデッドがいるんだお!」


 大きな可能性を秘めた物を前にして、希望を見出すブーン達。
 ロマネスクに懇願するブーンだったが…。

 ソファに腰掛け、一部始終を黙認して聞いていたヒッキーが、鼻で笑った。


(-_-)「フッ……新しいシステムねぇ、上級アンデッドの力を引き出すだって?」

(-_-)「要するに、それは誰の力なんだい??」


 ソファから立ち、ブーン達の輪に入る。
 そして、彼ら人間の顔を一人一人見渡した。


( ^ω^)「ヒッキー、どういうことだお?」

(-_-)「上級アンデッドの力を引き出して戦おうってんでしょ。だから、それって結果的に誰の力なのかって聞いてるんです」

( ^ω^)「それは……上級アンデッドの力だお」

(-_-)「でしょ?てことは、先輩達の力じゃないってことじゃないですか」


 謎にブーン達に突っかかるヒッキー。
 何を言っているんだ?と、ヒッキーを見る一同の目はそう物語っている。

93426話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:33:47 ID:dVuufZLM0


( ^ω^)「そうだお。僕達の力では及ばなかった、だからこの力を使って――」

(-_-)「――それって、ドクオとやってることはどう違うんですかね??」

( ^ω^)「……!」


 ヒッキーの核心をついたかのような言葉に、思わず言葉を詰まらせる。
 アンデッドの力を欲し、人間を捨てたかのように暴れ回っているドクオ。
 強くなりたい一心のそんなドクオを、ブーン達は心配していた。
 

ξ゚⊿゚)ξ「でも、ドクオさんとブーンは意味が違うわ!
      ブーンは、ただアンデッドを倒すという目的の為に――」

(-_-)「そうなんですか?先輩。先輩は何で仮面ライダーやってるんですか?」

( ^ω^)「それは…アンデッドを倒すため、人間を守るのが僕のライダーとしての使命だからだお!」

(-_-)「本当にそれだけですか?他に、先輩を動かすもっと大事なことは?」

( ^ω^)「ヒッキー、こんな間違い探しみたいなことしてる場合じゃないんだお!
       僕達はあのカテゴリーJを倒さないといけないんだお!」

(-_-)「先輩……俺も遊びでこんなこと言ってるわけじゃあない。腹括った上で首突っ込んでるんだよ」


 これ以上何と答えたらいいか分からない。
 ヒッキーの真剣な表情と声色に、ブーンは一瞬、言葉を失った。


(-_-)「今のところ残念っすね…先輩。見損ないましたよ。
     先輩達はアンデッドを倒すことに意識が行き過ぎて、もっと根本的なことを忘れてるんじゃないですか?」

(-_-)「とりあえず…コイツは俺がもらっとく」


 テーブルの上に置かれたラウズアブゾーバーを、ヒッキーは奪い取る。

93526話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:34:09 ID:dVuufZLM0


( ФωФ)「おい、君!何をしているのだ!?」

( ^ω^)「おっ、おいヒッキー!何してんだお、それを渡せお!」

(-_-)「こんなもの持ってても、次また倒せなくなったアンデッドが出た時におんなじこと言い出すだろ?
     新しい力を引き出してー、ってな。だから持ってたって何の為にもならないさ」

( #^ω^)「ヒッキー、お前いい加減に…!」


 苛立ちを覚え始めるブーン。
 何かと因縁づけるような口ぶりのヒッキーに対し、少々威圧的な態度になった。

 ――すると、そんな険悪な空気を切り裂くように鳴り響くアンデッドサーチャー。
 ツンが咄嗟にパソコンの前に立ち反応をキャッチ。アンデッドの正体を確認した。


ξ゚⊿゚)ξ「アンデッド出現!♣のカテゴリーJ、他の反応はない…街中で暴れているわ!」

(-_-)「ほら、暴れてますよあのアンデッドが。行かなくていいんですか?」

( ^ω^)「…言われなくても、僕はアンデッドを倒しに行くお!」

( ・∀・)「待て剣藤、俺も行く!」

( ФωФ)「ホライゾン、菱谷。気を付けるのである」

( ^ω^)「言われなくても分かってるお」

(-_-)「……じゃ、行きますか」


 ブーン達は、反応をキャッチした場所に向かい始める。
 ヒッキーの言葉に払拭しきれない何かを抱きながら、カテゴリーJの元へと急いだ。

93626話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:34:34 ID:dVuufZLM0


 同じ時、ブーンに助け出され一人家に戻っていたドクオにも、その知らせが入る。
 カテゴリーAを通して。


 『―――奴だ、奴が現れた』

('A`)「…そうか」

 『今度こそ奴を倒せ!でなければ、お前はこの地獄から抜け出せはしないぞ…!』

('A`)「うるせぇ…黙って俺に力を貸せ!」


 クックルの気配を感じる。
 彼に徹底的に打ちのめされたことを、もう覚えていないのか。
 ドクオは起き上がると、カテゴリーAが知らせてくる場所に向かうため、家を出た。





.

93726話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:35:04 ID:dVuufZLM0





 ―――――




.

93826話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:35:28 ID:dVuufZLM0


 ――ここは、したらばスタジアム。
 今日はサッカーの試合がこのスタジアムで開催され、席には両サポーター達がユニフォームを着て観戦に来ていた…はずだった。

 しかし、スタジアムの中でサッカーをしている者は誰一人としていない。
 中に響く声は、熱の籠った応援の声ではなく……阿鼻叫喚の声。


「きゃあああああっ!」

「うわあああぁぁっっ!?!?」

бし゚益゚し『オオオオオォォォッ!』


 クックルが、観客席で椅子や壁を破壊し尽している。
 巨大な怪物が暴れているのを目の当たりにし、人々はパニックになりながら逃げ惑う。


бし゚益゚し『さぁ来い、仮面ライダー共…!』

「うわああっ!!!………」


 後方に振りかぶったハンマーが、背後のコンクリートを粉々に粉砕。
 コンクリートの壁にひっそり隠れていた男の姿が露わになる。
 悲鳴を上げる男だが、次の瞬間――失禁をしながら、気を失い倒れた。

 そこに、接近する気配を感じ取り始めるクックル。
 待ち詫びた存在の到着に、胸を躍らせる。


бし゚益゚し『ふう…やっとお出ましか、待ちくたびれたぞ』

93926話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:36:06 ID:dVuufZLM0


 まず到着したのは、ブーンとモララー。
 その後すぐにドクオが合流。三人はそれぞれバイクを降り、クックルを睨んだ。


( ^ω^)「ドクオ!」

('A`)「アイツは俺の獲物だ、邪魔するな!」

( ・∀・)「ドクオお前…またカテゴリーAに操られてるのか!?」

бし゚益゚し『何をブツブツと喋ってる?とっとと俺と戦え!』


 三人はベルトを装着し、クックルに向かい合う。


    【 -♠TURN UP- 】 【 -♦TURN UP- 】 【 -♣OPEN UP- 】


 それぞれバックルを展開させゲートを射出すると、ライダーへと変身。
 まずはギャレンとレンゲルがクックルに勝負を挑む。

 
( OHO)「うおおおおおっ!」

( OMO)「今度こそ貴様を封印する!」


 ギャレンラウザーの銃撃を受けながら、接近し距離を詰めてきたレンゲルのレンゲルラウザーをも胴体で受け止める。
 だが、やはりどちらも効果が無い。

 ギャレン、レンゲルは交互に肉弾戦を挑む。
 クックルは一人、二人のライダーからの攻撃を受け切りつつも、しっかりと防御もしている。

 ここまではクックルのイメージ通りだった。
 ライダーとの戦いを元に、"仮面ライダーの倒し方"をイメージしていたクックル。
 そして次の行動に移ることも、イメージ通りだ。


бし゚益゚し『やはり、弱い…!』

94026話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:36:32 ID:dVuufZLM0


 レンゲルの攻撃を片腕で払い除け、右腕を振りかぶり鉄球でレンゲルの顔面を殴打。


( ; OHO)「ぐうっ!?」


 更にギャレンを右足で押し込むような蹴りを腹部に与え、左手に構えたハンマーを横薙ぎに振るい打ち飛ばした。


( ; OMO)「ぐはっ!!……ッ、クソ、やはりこいつ…!」


 胸を押さえながら徐々に立ち上がろうとするも、蓄積ダメージが大きくすぐに立ち上がれないギャレン。
 レンゲルもまた然りだった。
 顔面を殴打されたことで、脳震盪のような感覚が頭を襲い、しっかりと体勢を保つことができない。


( #OwO)「貴様アァァッ!!」

бし゚益゚し『何度来ても同じだ、お前達では俺には到底敵わない!』


 ブレイドがラウザー片手に突進。
 "♠6 THUNDER"と"♠8 MAGNET"のカードをラウズし力を放出。
 クックルを磁力の力で押さえつけ、雷の力を纏った剣で攻撃しようという算段だ。
 ――だが、


бし゚益゚し『ほう、俺を止めれるとでも思ったのか……フゥ"ン"ッ!!』

( ; OwO)「なっ…!?」


 クックルは、カードの力を強引に振り解き拘束を抜け出した。
 そして、向かい来るブレイドに向かって右手を翳すと、ぶら下がる鉄球から光弾を発射。


( ; OwO)「うああああッ!!」


 ブレイドに被弾した途端、多数の爆発を引き起こす。

94126話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:36:59 ID:dVuufZLM0


 シュウウ…と、音を立てながら装甲から吹き上がる煙幕。
 爆撃を受けてブレイドはその場に背中から倒れこんでしまう。


( ; OMO)「剣藤…ッ!」

( ; OwO)「こいつ、やっぱり他のカテゴリーJよりレベルが違うお…」


 ブレイドの言葉を耳にした途端、クックルの様子が変わった。
 今までは静かに闘う意志を燃やし、冷静にライダー達と戦っていたが…。
 クックルの鼻息が、どことなく荒くなった。


бし゚益゚し『お前がどれだけのアンデッドを相手にしてきたかは知らんが、他のカテゴリーJと一緒にされると困るなぁ。
      特に……昨日の狼野郎のような奴と一緒にされると……腹が立つんだよ!!』


 ハンマーを高々と振り上げ、全身の力を込めて、そのまま一直線に地に向かって振り下ろす。
 振り下ろされた地面からコンクリートで出来た辺り一面に、バキバキッ!と地割れが起きる。
 ゴゴゴゴゴ…と地鳴りのような不穏な音が響き渡ると、突然――、


( ; OwO)「おわぁあっ!!」

( ; OMO)「なっ…!!」


 地面は砕かれ、割れた部分からブレイド達は下の階へと落下する。
 叩き付けられ、更にクックルの追撃を受けスタジアム中央の広場へと放り投げ出される。


( ; OHO)「んぐっ…!このでかい会場を、崩落させただと…!?」


 ハンマーの一振りで、スタジアムの一部を崩壊して見せたクックル。
 とてつもなく強大な力を前にし、レンゲルは自然と心が恐怖に染まってしまっていた。

94226話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:37:20 ID:dVuufZLM0


 一方、この戦いを傍らで観戦している者がいる。


(-_-)


 ヒッキーだ。
 崩壊を免れた客席にて、椅子に腰掛け足を組みながらライダー達の戦いを見ている。

 その隣の席には、ロマネスク達が開発したラウズアブゾーバーが。


(-_-)「ん…?」


 戦いを見ていたはずのヒッキーだが、いち早く何かに気付いた。
 遠くからぼんやりと見える。物陰に隠れ、動けないでいる何かが。
 よく見ると……そこには、まだ10歳にも満たないであろう女の子が、恐怖で震えていたのだ。

 ヒッキーはこれに気付いたが、動こうとはしない。
 あくまで、傍観を決め込んでいる。


(-_-)「さて、どうなるかな…」



.

94326話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:37:42 ID:dVuufZLM0


( ; OwO)「くっ……こんなとこで、倒れるわけにいかないんだお…!」

бし゚益゚し『そうか。だが残念だったな、お前達は此処で終わりだ』


 拳を突き立て、立ち上がろうとするブレイド。
 クックルは見せしめにと言わんばかりに、片手でギャレンとレンゲルの首を掴み、軽々と持ち上げた。


( ; OMO)「ぐう…」

бし゚益゚し『これはお前達の力を測らせてくれた感謝の気持ちだ、受け取れ!』

( ; OHO)「ふざけやがってェ…!」


 鉄球から光弾を発生させ、吊り上げたギャレンとレンゲルに至近距離で発射。
 無数の火花が激しく散り、爆発が二人を巻き込んだ。
 

( ; OwO)「モララーさん!ドクオ!!」


 立ち込める煙幕の中から、二人の体が投げ出される。
 地面に落下した後、二人の変身はダメージを受けすぎたが故に強制的に変身を解除される。


( ; ・∀・)「かはっ…!」

(;'A`)「ううぅ…」

( ; OwO)「こんのォ……!!」


 痛む体を叩き起こし、二人を庇うようにクックルに立ち向かう。
 しかし、クックルのハンマーによる殴打によりいとも容易く吹き飛ばされてしまう。

94426話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:38:18 ID:dVuufZLM0


( ; OwO)「うぐ…っ!」

「きゃあああっ!!」


 壁にぶつかり崩れ落ちるブレイド。
 その壁の向こう側で、何か悲鳴のような声が聞こえた。


( ; OwO)「え…?」

「ぐすっ…!うううぅぅ…!」


 女の子の泣き声。
 ブレイドは壁に手を掛けながらゆっくり起き上がり、向こう側を覗いた。
 そこには、うずくまって震えている女の子が一人で隠れていた。


( ; OwO)「まだ、逃げきれてない人がいたのかお…」

бし゚益゚し『何だ、別の人間の声がするな。まだいたのか』


 クックルが、背を向けるブレイドの方へとゆっくり歩み寄る。
 すると、女の子がいると分かりながら、鉄球から光弾を発射。


( ; OwO)「ッ!?危ない!!」


 それに気付いたブレイドは、咄嗟に庇うように立ち上がり背中で光弾を受け止めた。


( ; OwO)「ッッぐぅっ…!!」

94526話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:39:20 ID:dVuufZLM0


 背中を襲う痛みに、歯が欠けそうな程に食いしばって踏ん張る。
 既に体はボロボロ、両脚もおぼつくが、ブレイドは倒れない。
 むしろ…涙を流す女の子に向けて、サムズアップしてみせた。


( ; OwO)「ッ……大丈夫、安心するんだお…!お兄ちゃんが守るから!
     今のうちにほら、お母さんのとこに逃げるんだお…!行けるね?」

「……うん」

( ; OwO)「よしよし、偉いお。さぁ、走って行くんだお!」


 女の子は、ブレイドの顔を見つめながら問いかけに頷いた。
 彼の言葉に安心したのか、女の子は立ち上がってすぐに出口の方へと駆けていく。
 その姿を見届けたブレイドは、ふと……気が付いたことがあった。
 いや、正確には…忘れていたこと。かもしれない。


( ; OwO)「そうか……」


 ヒッキーに言われたことが、頭を過る。

 ――先輩は何で仮面ライダーやってるんですか?
 ――先輩を動かすもっと大事なことは?
 ――先輩達はアンデッドを倒すことに意識が行き過ぎて、もっと根本的なことを忘れてるんじゃないですか?


( OwO)「……そうだ、分かったおヒッキー」

(-_-)「……」


 遠くから見守っていたヒッキーは、ブレイドの変化に気付き、僅かに身を乗り出す。

94626話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:40:15 ID:dVuufZLM0


( OwO)「僕の体を動かすのは、義務とか使命なんかじゃない…。
     そこにいる人を守りたいという思い、助けたいという思いが、僕の体を動かしているんだ…!」

( OwO)「アンデッドを倒す事だけじゃない、人を守るために戦う……僕は人間を愛しているから戦っているんだお!」

(-_-)「そうだよ…それが聞きたかったんだよ、先輩…!」


 柵に足を掛け、高々と跳躍するヒッキー。
 蜘蛛の糸をブレイドの元へ伸ばし、糸を伝い瞬時に移動。


бし゚益゚し『ん?お前は…』

(-_-)「やっと気付いてくれましたね、先輩」

( OwO)「ヒッキー、お前の言う通り…僕はアンデッドと戦うことばかりに意識が集中してたお。
     大事なことを忘れかけてた」

(-_-)「そう、その想いが力になる。アンデッドの力だけでは本当の強さは手に入らない。
    それは、先輩が今までの戦いを通してみんなに教えてくれたことじゃないですか」

(-_-)「俺も、先輩からの教えを先輩に叩き入れ直しただけですよ」

( OwO)「ヒッキー……」

бし゚益゚し『何をゴチャゴチャと喋っているんだ…カテゴリーK、お前も人間とつるむようになったのか?』

(-_-)「黙れ、デカブツ。残念だがお前の計画はここで終わりだ」

бし゚益゚し『ほう、それはどういうことかな?』

94726話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:40:38 ID:dVuufZLM0


 ヒッキーが、ラウズアブゾーバーをブレイドに差し出す。
 ブレイドがそれを受け取ると、ヒッキーは後退りしてその場を離れる。
 

( OwO)「これが、ラウズアブゾーバー……よし!」

( ФωФ)[ 聞こえるか、ホライゾン ]

( OwO)「ああ、聞こえるお」

( ФωФ) [ そいつを左腕に装着するのである。そしてカテゴリーQのカードを装填させ、カテゴリーJをラウズするのである! ]


 ロマネスクの指示通り、ブレイドはラウズアブゾーバーを左腕に装着。
 ブレイラウザーを引き抜き、オープントレイを展開させ、♠Jと♠Qのカードを選択。
 そして、ラウズアブゾーバーの中央部に、♠Qのカードを装填。


    〘-♠ ABSORB QUEEN-〙

 
 神々しい待機音が鳴り響く。
 そして、もう一枚の♠Jのカードを、ラウズアブゾーバーにラウズした。


    〖 -♠ FUSION JACK- 〗



( OwO)「!?」

94826話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:41:04 ID:dVuufZLM0

 ♪rebirth - https://www.youtube.com/watch?v=SgXC5Z4R3-c


 突如、♠Qのカードが黄金の光を放ち始め、辺りから羽根がひらひらと舞い落ちる。
 翼を広げた黄金の鷲が現れ、ブレイドの銀色の装甲を覆うように吸収。
 鷲を纏ったブレイド。黄金の光が消えた後に現した姿は――、


( ; ・∀・)「はっ……!」

(;'A`)「あ、あれは……?」


  ∧
( OwO)


 仮面のスペードシールド、胴体の装甲のオリハルコンブレストが、黄金に輝いている。
 胸部のスペードマークの中には、イーグル――鷲が紋章として浮かび上がり、背中には銀と紅の翼がマント状に装着されている。
 更に、ブレイラウザーの剣先には新たな刃が形成され、刃の長さが伸長。

 光り輝くその姿は、上級アンデッドの力を引き出した新たな力――ジャックフォーム。


бし゚益゚し『何だ、その力は…!?』


 無敵と言わんばかりにライダーを圧倒してきたクックル。
 ジャックフォームと化したブレイド、その姿から感じる力の脈動に…どこか困惑を隠せない様子。


( ; ・∀・)「あれが、新しい力なのか…!?」

94926話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:41:27 ID:dVuufZLM0

  ∧
( OwO)「何だこの力…感じるお、奥底から湧き上がる力を…」


 先程までボロボロになっていたのに、今はその苦痛も薄い。
 呼吸を整え、ブレイラウザーを構える。
 最大の敵であるクックルを前に、冷静さを取り戻した。


бし;゚益゚し『何なんだ、こいつは…!!』
  ∧
( OwO)「覚悟するお、カテゴリーJ…!」


 クックルに向かって駆け出すブレイド。
 翼を靡かせながら、瞬く間に距離を詰める。

  ∧
( OwO)「貴様を、倒す!!」


 そして、ブレイラウザーを――勇気の剣を、振り下ろした。

 新たなる力を得たブレイドの反撃が、今、始まる。

95026話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:41:48 ID:dVuufZLM0




 
     【 第26話 〜新たなる力〜 】 終




.

951 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:49:52 ID:dVuufZLM0
しおり

>>9 第15話
>>84 第16話
>>152 第17話
>>234 第18話
>>308 第19話
>>372 第20話
>>454 第21話
>>530 第22話
>>605 第23話
>>682 第24話
>>772 第25話
>>875 第26話


( ^ω^)< またそのうち

( ^ω^)< 中途半端だから多分次スレかも

952名無しさん:2022/01/08(土) 17:10:27 ID:GlcYoc5A0
乙ッッッ

953名無しさん:2022/01/08(土) 22:57:38 ID:7qO65VCA0
乙!
お帰り!!!


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