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もしも牧野まりあんLOVEりんがブレードランナーだったら
17
:
名無し募集中。。。
:2018/03/24(土) 15:12:51
真莉愛を乗せた空を飛ぶパトカーはビルのあいだをたくみに縫って進んだ。
上昇しながら、ほんの少し車体をまわし真莉愛はコンソールに向き合った。
小型で実用的、きわめて進歩した空を飛ぶパトカーだ。
プロセシング・ユニットが作動し、受動推進器を使って自動で着陸する。
真莉愛は無線のマイクのスイッチを入れた。
休憩を伝え、現在地を報告する。指令所から了解との返事を確認した。
ちぃを起動する。助手席にちょこんと座ったちぃが真莉愛をまじまじと見た。
真莉愛の仕事が死と背中合わせのものだとは知っていたが、実際に“体験”したのは初めてだ。
「どこであんな撃ち方を習ったの?」ちぃが尋ねた。
ついさっき、有力情報があると言ってきたタレコミ屋と腹立たしくも銃撃戦になったのだ。
「習ったわけじゃないよ」そういう機能が備わっていることはちぃも分かっている。
「まあ、そうだけど」ちぃはそう言いながらも目を輝かせていた。
「でもさ、立ち止まりもしなきゃ、狙いを定めもしないで、あんな離れたところから1発でなんて」
「ちゃんと狙ったよ」
「だけど…プロみたいだった」
真莉愛は屈託のないちぃの顔を見て笑みがこぼれた。
ちぃはくすくすと笑い、話を続けた。外の世界がどれだけ刺激的かについて。
ひとしきり愉快な話をしてから真莉愛が言った。「仕事を始めるよ」
ちぃは深呼吸した。笑いすぎて出た涙をぬぐい、頭を横に振る。
「どこに向かうの?」ちぃが尋ねる。
「手がかりを追う。話を聞ける相手に会うの。令状も証拠もないから用心しなきゃだけど」
空に舞い上がり、空中で停止したパトカーの座席で真莉愛はきびきびと作業をした。
これまでの情報やスキャンの結果を瞬時にチェックする。
ちぃに向き直った。「安全運転するけど念のためベルトはしてね」
18
:
名無し募集中。。。
:2018/03/24(土) 17:53:16
ちぃは窓の外に目をやる。景色が過ぎ去っていく。単調で気の滅入る景色。
閉鎖された工場に代わって荒廃した家々が見えてきたと思ったら、また無人の工場群が現れた。
これから向かう地区は掃き溜めだ。警察官および捜査官を歓迎しない。
屈強な男ですら、夕方以降の通報には尻ごみする。
真莉愛が説明した。
「捜しているターゲットが売春宿にいるって情報があるの。
だからその女の子たちを操ってるポン引きに話を聞く。
誰かなにかを見たかもしれないから女の子たちにも話を聞くけど、その前にポン引きと話をつける。
そうしないと相手にされないから」
ちぃはゆっくりとうなずいた。
知らないうちに景色が変わっていた。
荒廃した一戸建ての代わりに塗装していない丸太小屋や掘っ建て小屋が並んでいる。
街に現存する工業地帯だ。鋳造所や機械工場は黒煙を吐き出し、有害な化学物質を垂れ流す。
大通りに点在する電波塔からは絶えずブーンという音が聞こえていた。
ここに住む人々は政府の援助を求めておらず、援助を受ける資格もない。
自力で、自分たちの持っているものだけでやりくりしているのだ。
下水道は未発達で真冬でも悪臭漂う空気で淀んでいた。
不快な汚染物質を喀出して真莉愛は咳きこんだ。
「大丈夫?」ちぃが尋ねた。「平気。すぐ慣れるから」真莉愛はゴホンと咳をしてから答えた。
それからボタンをひとつ押すと、パトカーのルーフから小型のドローンが分離して浮遊する。
目的の家の玄関ポーチは狭いが頑丈にできていた。
真莉愛が激しくドアを叩いたので窓がカタカタ鳴った。「開けなさい!」またしてもドアを叩く。
鍵とチェーンが外れる音がしてドアが小さく開いた。「なんの用だ?」
「ネオ・ニシオ警察署です。お話があります」真莉愛は胸のバッジを叩いた。
男の眉が大きく上がった。
怪しげな笑みを浮かべながらも、ちゃんとドアを開けた。
19
:
名無し募集中。。。
:2018/03/24(土) 19:15:49
家に入った真莉愛はぐるっと周囲を見まわす。
家を左右に分ける中央の廊下から階段が延びていた。フォーマルな応接間、ダイニングルーム。
どんな空間に入るときでも、まず危険がないか確かめる必要がある。
それにあとひとつ。内装と清潔さを判定し、目撃者や犯人に関する証言の価値を見積もるのだ。
床はきれいに掃かれ家具は整然としていた。この点に関しては合格だろう。
頭上でドンという大きな音がした。大きな足音が床に響く。
階段の上に現れたのは筋肉隆々の巨漢だった。
頭は身体に比して小さく、盛り上がった首の筋肉が余計に目立つ。
「なんの用か知らんが、さっさと帰ってくれ。そいつは警護のための人造人間でね。いくらあんたでも勝てないよ」男が言う。
「そうはいきません」真莉愛が答えると巨漢が近寄ってきて乱暴に真莉愛の肩を揺さぶった。
真莉愛はブラスターを抜いた。銃口はポン引きの顔に向けられている。
巨漢の手に銀色の光が走り、カチカチという音がして飛び出しナイフが握られた。
ポン引きは銃口を見つめた。
「よく聞けよ。その銃を俺の顔からどけろ。さもなきゃ死ぬことになるぜ」
巨漢が動いた。体重がかかって床がきしむ。
真莉愛が一歩前に出る。巨漢も一歩前に出る。真莉愛がもう一歩進む。
そのとき、ふたつのことが立て続けに起こった。
ポン引きの頭の半分が消えた。窓が割れた。
遠くから聞こえたライフルの発射音が真莉愛の頭でこだましている。
1発だけ。頭を狙った狙撃。
巨漢が真莉愛に飛びかかった。真莉愛が撃ったと思ったらしい。
ブラスターが手から叩き落とされ、床に倒された。
巨漢の手には飛び出しナイフが握られている。
動きを封じられた真莉愛の顔面にナイフが近づいた。
巨漢の手首を左手でつかみ、手探りでブラスターを握る。
長く鋭い刃が真莉愛の左目に突き刺さるのと同時に巨漢の頭が血しぶきを飛ばして消滅した。
20
:
名無し募集中。。。
:2018/03/24(土) 20:01:13
真莉愛の耳にちぃの悲鳴が届いた。
カチッ、カチッ、カチッ。もう銃弾は残っていない。
それでも真莉愛は引き金を引き続けた。
そのあとブラスターを床に落とす。ゴンという音がくぐもって聞こえる。
「まりあちゃん!まりあちゃん!」ちぃの泣き叫ぶ声が大きな音になった。
真莉愛はなんとか肺に空気を取りこもうとして胸を大きくふくらませた。
ナイフは目に刺さったままだ。柄がテントのポールのように前後に揺れている。
「まりあちゃん!」またちぃの声が聞こえた。
「この…」真莉愛は手を目に持っていこうとした。
「だめ!」ちぃが叫んだ。
「…ちぃちゃん」真莉愛がささやいた。「ひどい?…」
ちぃは自分に強いて、真莉愛の顔から突き出たナイフを見た。
真莉愛は射殺した巨漢の男の血にまみれている。
目からは透明な液体が流れ出て、血の気のない頬を伝い落ちていた。
「そんなにひどくない」ちぃは嘘をついた。
刃渡りは少なくとも15センチ。3分の1は目を貫き、3分の1は脳組織に達している。
ひどいのは分かっている。口に出して言わなかったのは奇跡だ。
真莉愛は首に筋を立てて頭を動かすまいとこらえている。
ちぃの人工頭脳は通信ユニットを使い現在位置に救援を要請するシグナルを送った。
徹底的にデータベースを検索し、できるだけ広範囲に。
いつでも攻撃できる状態で浮遊しているドローンから小型のガトリング砲とセンサーが突き出していた。
たったいま砲弾を放ったように焦げた銅と硫黄の匂いを漂わせながら。
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