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ロゼッタ「マリオカートに参戦…ですね、是非!」

1Mii:2019/03/31(日) 10:37:38 ID:iLEqj1bw
このスレは

 ロゼッタ「マリオカートに参戦…ですか?」

を前スレとする続編となります。
前スレをご覧になられていない方はそちらを先にどうぞ。

遅い進行のスレですが引き続き頑張っていきたいと思います。
よろしくお願いします。





パルテナ「そのほか、いくつか注意点があります。

     ・スレ主のスマブラfor経験は、CPU(Lv.9)とのタイマンで
      勝ち越せない程度の実力しかありません。
      戦闘描写に過度な期待をすると酷いことになります。
      むしろ、『うわあ、この描写ニワカだな』と粗探しするくらいの気持ちで
      読むようにしてください(最重要)。

     ・前スレ同様、いろいろとパロデイ、メタ発言が散りばめられています。
      キャラが自分たちの背景情報を活用する…みたいなご都合主義は
      白ける方もいらっしゃると思います。そんな時は…
      別のスレに移って、このスレのことは忘れましょう。
      
     パルテナお姉さんとのお約束ですよ♪うふふふふ」

58Mii:2019/05/05(日) 22:06:39 ID:7C2DmCl6
ルフレ「……ん?んん?んー?」クンクン



僕は、足を止めてしまった。
――いや、止めることができて、僥倖だったというべきか。



なんだろう。…この、臭い。
闇夜のどこかから、また闇夜のどこかへと吹いていく風に乗って、
微かに感じられる、この臭いは。

店の中から漂ってくる、酒の匂いじゃない。
そのあたりからほんのり漂ってくる、泥の臭い、ごみの臭い、とかでもない。



ルフレ「――――――――――――――――っ!」



これでも、戦場を駆け回った一軍師として――。一瞬で、五感が、冴える。
――血の、臭いだ。

たまらず、僕は真剣に駆け出した。

ルフレ(どっかの馬鹿が、酒に酔って殺傷沙汰でも起こしたか!?
    変な勢力争いでも影で起こってるんじゃないだろうな!?
    たくっ、キノコ王国といえど、全部が全部順風満帆じゃ、ない、みたいだっ!!)

59Mii:2019/05/05(日) 22:09:53 ID:7C2DmCl6
ちょっとくらいのいざこざなら、僕1人で対処してしまうしかない。
こんな僕でも、一般人よりはよほど腕っぷしが強い自信はあるからね。

人間ってのは不思議なものだ。
入り組んだ裏通りに迷い込んだまま出口を見つけることができないくせに――
袋小路が怪しくないか?と闇が深まる方へ、深まる方へ進んでいくことは
案外簡単にできたりする。

……『事故現場』を見つけることは、恐ろしくすんなりできた。



ルフレ「――――――――っ!!!!」

1人の青髪の女の人が、夥しい量の血を全身から流して、うつぶせで倒れている。
まるで、ここで斬り合いが起こっていたかのような有様だ。
意識は――ない。



……ああ、でも。虫の息ながら、辛うじて呼吸はしているみたいで、よかった!



傍に血濡れの剣が落ちているのを見たところ、剣士、だろうか。…いや、そんなことどうでもいい。
一体全体、どうしてこんなことに!そして、どうして誰も気づかなかったんだ!?

60Mii:2019/05/05(日) 22:11:52 ID:7C2DmCl6
ルフレ「と、とりあえず病院だ!この王国の病院なら、きっとなんとかしてくれる!」



できる限り慎重にゆっくりと、彼女を背負う。
関節の可動域としてありえない方向に…黒ずんだ腕が曲がっている気がするが、今は無視。
そのあたりも、病院に全て丸投げしてしまうことにする。僕にはそれしか術がない。

背負ってわかる、その軽さ。鎧込みなのに軽すぎる。まともに食事を摂っているのだろうか。
――おかしい。この王国で、こんな事態がそうそう起こるとは思えない。



ルフレ(だああっ!だから、余計なことを考えるなよ、馬鹿軍師っ!
    今は一刻も早く走れっ!一分一秒が命取りだぞっ!!)ダダダダダッ!!



シンプルイズベストとはよく言ったもので、
愚直に一方向だけに全力疾走することで…案外簡単に迷路を抜けられた。
若干遠回りになってしまったかもしれないけれど。
流石にもう迷わない、キノコ城へ直行だ!

もう、日付が変わってしまったのだろうか。
満身創痍の女性を背負って全力疾走する僕とすれ違う人が殆どいなかったのは、
幸運なのか不幸なのか。…間違いなく不幸だな、この女性にとっては。

61Mii:2019/05/05(日) 22:14:43 ID:7C2DmCl6
ルフレ「すいません!大会参戦者のルフレといいます!
    重傷人を発見してここまで連れてきたんです、開けてください!!」ドン ドン ドン!

警備の人が僕の選手カードを…そして、背負った女性の具合を確認して、
慌ただしくどこかに連絡をしているようだ。…頼む、はやく回復してあげてくれ…!



スピーカーから、途端に女性の澄んだ声。



ピーチ『ルフレね!オッケー、おおよその状況を把握したわ、そのままその人を背負って救護室まで入ってきてくれる!?
     私もすぐに向かうから!怪我人の護送、感謝するわ!』

ルフレ「うわっ、ピーチ姫に直通連絡か、凄いなあ…でも本当にありがたいです!
    そ、それで、ええっと、救護室ってどこですか!?」

ピーチ『……ああもう!説明する時間も惜しい!じゃあ、門を入ったところで待機!
    私が全力でそっちに駆け付けた方がきっと早いっ!また後でっ!』プツッ



ルフレ「…………えっ」

62Mii:2019/05/05(日) 22:16:57 ID:7C2DmCl6
〜30秒後〜

ピーチ「お待たせぇーーーーっ!」ドッズゥン!

ルフレ「は、はやっ!?どこから飛び降りてきたんですか!!」

ピーチ「城の上を適当に伝って…ま、そんなとこよ。私がまだ起きていてよかったわね、
    もしも寝ていたら到着が1分は遅れていたわ」



ニヤリと笑うピーチ姫だったが、たちまち顔を引き締めて見せる。



ピーチ「酷い怪我ね…!でも……うん、特異な状態異常にはなっていないし、
    私が来たからにはもう大丈夫!
    
    1UPキノコ、救護室にしかなかったから…魔法で回復させるわよっ!
    その人には悪いけど、地べたにちょっと寝かせてちょうだい!」

ルフレ「わ、わ、わかりました!はい…どうか、お願いします!」

ピーチ「それええええええええええっ!!」パアアアアアアアアア!!




ルフレ(すごい…これが、ピーチ姫の回復魔法か…!)

63Mii:2019/05/05(日) 22:20:01 ID:7C2DmCl6
「…………………………………………っ!」パチッ

ピーチ「…よし!これで、もう心配はないわ。
    ねえ貴方、どこかまだ痛むところがあったら教えて頂戴ね」



――その女性は、ゆっくり、ゆっくりと目を開けていき、ボーッとした後…
――たちどころに目を見開いて、上体を起こした。
――見かけこそ全身が血で染まっているものの、今の魔法で血はとっくに止まったらしく。
――痛みだとか、動作の支障だとかもないらしい。本当にすごい回復魔法だ!

僕も一瞬で緊張が解けてしまって…つい、ヘナヘナと尻餅をついて座り込んでしまった。
一気に汗が湧き出してくる。



――固まっていた女性が、次の瞬間にまず、やったことは。



周囲の確認、状況の確認……ではなく。
身体に異常がないかの確認……でもなく。
鞘の方向に、腕をやり――何も掴めないことを知り、腕を止め蒼白になること、だった。

64Mii:2019/05/05(日) 22:23:37 ID:7C2DmCl6
ピーチ「あれ?どうしたの――」

ピーチ姫の問い掛けに反射的に飛びのき、警戒心全開で戦闘の構えをとる。
…あれ?なんだか、ちっとも穏やかじゃないぞ?



「――――――――どこに」

ピーチ「え?なんて?」

「私の剣を……何処にやったァ――――っ!!!」

なんだか知らないが、ピーチ姫が自分の剣を奪った悪者と認識しているらしい!
無防備なピーチ姫の懐に、颯爽と拳を叩きこむっ!





ピーチ「てい」バシィッ



……こと叶わず、かわしてからのビンタで空高く吹き飛ばされて地面に叩き付けられた。

ルフレ「わー、人ってビンタで空を飛べるんですね」トオイメ

ピーチ「かんっぜんに剣士一本槍の崩れ体術って感じね、熟練度が低すぎるわ」ハァ

65Mii:2019/05/05(日) 22:26:46 ID:7C2DmCl6
ルフレ「回復した傍から大ダメージを受けちゃってるよ…容赦ないですね」

ピーチ「事情は分からないけれど、攻撃してくる方が悪いわ」

ルフレ「まあ、それはそうかもしれないですけど…キノコ王国のお姫様、恐ろしや……!
    えーっと、おーい?君、大丈夫?生きてる……よね?これで即死とかしたら…僕泣いちゃうぞ?」



女性は、強かに打ち付けた体を押さえて鋭い眼光でよろよろと立ち上がり…
今更ながら、僕の顔を見やって…………またもや目を見開いて固まった。
あ、そういや、向かい合うのは初めてだったかな。顔にも結構な傷があって…痛々しい。
でも、固まられるのも困るんだけど。そんなに変な顔かなあ、僕の顔。傷付きます。





「――――ル…………ルフレ、さんっ!?」

ルフレ「!?」





彼女は――僕のことを、知っている!?どうして!?

66Mii:2019/05/05(日) 22:29:04 ID:7C2DmCl6
……………いや、待て。

確かに、彼女の防具……なんだか、似た意匠を見た覚えがあるぞ。



ルフレ(まさか…僕と同じ世界の、大陸の…戦士…なのか?)



彼女は厳しい表情から……一転して泣き顔になって、僕のところに駆け寄ってきた。
ピーチ姫のことなど目もくれないで、僕の右手を両手でしっかり握りしめ、小さく笑った。

…不穏な空気は去ったと言えど、蚊帳の外に置かれたピーチ姫が不満そうにしています。
……なんだか後で僕がとばっちりを受けそうなので、だれか何とかしてほしい。



ルフレ「……あー、すまない。傍に血濡れの剣が転がっていたのには気付いていたんだけど、
    一刻を争う状況だったんで…とりあえず剣はその場に放置して、此処まで担いできたんだ。
    何だったら、すぐに拾ってくるよ」

「……あ、いえ!在処が分かっているということでしたら、別に急ぐことはありません!
 ルフレさんの手を煩わせずとも、私がしっかりこの手で回収しに行きます!」

67Mii:2019/05/05(日) 22:35:29 ID:7C2DmCl6
ルフレ「あー、それと。勘違いしていたんだと思うけれど。
     今、攻撃をしようとして反撃されたお姫様は、実は命の恩人だったりするから。
     おまけにとっても強いんだ。しっかり謝っておいた方がいいよ?ささやかな助言だ」

彼女は慌て飛び退き、ピーチ姫の方を申し訳なさそうに見る。

「…そ、そうなのですか!?そ、それは失礼いたしましたっ!
 私としたことが、とんだ無礼を…!大変申し訳ございません!
 瀕死の状態の私を慈悲深く救ってくださり、誠にありがとうございました…!


 
私、イーリス聖王国の第一王女、ルキナと申します!貴方のお名前を伺ってもよろしいでしょうか…!」













ルフレ(………………………ん?)

68Mii:2019/05/05(日) 22:37:38 ID:7C2DmCl6
ピーチ「私は、このキノコ王国の元首にしてキノコ城の城主…ピーチよ。
    ま、堅苦しいのは嫌いだから、呼び方は好きにして頂戴。
    察するに、ルフレと親しいようね。ルフレが真っ先に発見したというのも運がよかったみたい。
    …あの怪我の具合だと、5分遅かったら命は無かったわよ」

ルキナ「そうなのですか…重ね重ね、ありがとうございます…!」



――――なんだ、この感覚。
――――喜ばしいはずなのに、動揺が抑えられない、この…不安感。
――――何かが、喉の奥に張り付いたまま離れない。



ルキナ「私もあまり――どうやって、キノコ王国とやらに迷い込んだのか、
    よく把握していないのですが。
 
    それにしても、まさかルフレさんが――こちらで、生き永らえている、だなんて!
    亡くなられたと、ばかり……!

    ああ、まだ我々も……僅かな希望を捨てなくともよい、ということですね!
    久方ぶりの……吉報です――っ!!」グズッ



――――おかしい。
――――歯車が、どこかずれていて…絶望的に噛み合っていない。

69Mii:2019/05/05(日) 22:39:57 ID:7C2DmCl6
ルキナ「ああ、それで、こんなことを私が言えた義理ではないのですが…。
     ルフレさんも、なにかこちらで準備を整えることに必死であることは
     容易に想像ができるのですが…!それ、でもっ!

     一刻も早く、我々の元拠点へ戻りましょう!闇を光で…照らすためにっ!」



涙を零しながらも、明るさを隠さずに、握り拳を作ってそう…宣言する、彼女。













――だが。

――非常に残念で残酷な話、なんだけれども。
――僕は…彼女に、伝えなければならないことが…ひとつ、ある。

70Mii:2019/05/05(日) 22:42:09 ID:7C2DmCl6
ルフレ「…なあ。落ち着いて、聞いて、くれないか」



ルキナ「……はい?」












ルフレ「僕、いや僕ら自警団が知る限りの『ルキナ』って人は――
    自警団長クロムの愛娘で齢5つにも満たない『ルキナ』、ただ1人なんだけど。



    君みたいな姿の『ルキナ』に、僕は会った記憶がない。



    君は一体――何者、なんだい?」

71Mii:2019/05/05(日) 23:41:07 ID:7C2DmCl6
リンク「ふわあああああ……さってと、今日からルフレの奴を鍛えてやるかー」ノビー



大きな欠伸ひとつして、ゆるゆると身支度を始める。
さてと、どこで朝ご飯を食べようかな。
もちろん、登録選手として専用食堂で食べるのも悪くない。
美味しいし栄養バランスはお墨付き。

でも、ちょっとつまらない気もする。
せっかくだから、この時期に張り切ってる喫茶店とかに誘われれば、
思いもよらぬ絶品コーヒーとかにありつけるかもしれない。
そんな夢を見て、城下町に繰り出すのもまた一考だ。

リンク「今日も、いい天気ですねーっと……」



ダダダダダダダダッ!!



ルフレ「ハアッ!ハアッ!ハアッ!ハアッ!…やっと、見つけましたよっ!」ゼェゼェ

リンク「うおっ!?は、張り切ってるなあ、ルフレ!?
    まさか朝一でお出迎えされるとは思ってなかったぞ!?
    そんなにやる気十分か!こりゃあ、鍛えがいがありそう――」

72Mii:2019/05/05(日) 23:44:40 ID:7C2DmCl6
ルフレ「リンクさんっ!この…この通りですっ!!」ガバッ

リンク「え、なんだよ突然!?」



朝っぱらからジョギングするオジサン、にこやかに会話する主婦。
そんな周り含めて、場が凍る。
な、何を思って、いきなり土下座なんかしでかすんだ、ルフレの奴!?





ルフレ「せっかく色々と考えて頂いておきながら、申し訳ないのですがっ!
    一旦、僕の特訓の話はおいといて…!

    どうか、どうか彼女を救ってくれませんか!お願いしますっ!
    貴方だけが…頼りなんですっ!!」





――そう血気迫るルフレの前に…訳の分からないまま、
――俺は、首を縦に振ることしかできなかった。

73以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/05(日) 23:47:45 ID:6rHOsjWM
そっちの本編とも絡むのね

74Mii:2019/05/05(日) 23:47:56 ID:7C2DmCl6
先導されるまま、王国病院へ。

面会謝絶の表示を無視して、ルフレはズンズンと…とある一室に入っていく。



リンク「お、おい。いいのか?」

ルフレは、ただただ無言。



やれやれと肩をすくめて、病室へ入っていく。

アイクやマルスが辛気臭い表情で集まる中で…
何故か、医者姿のマリオがいる中で…



1人の女性が、傾斜の付いた医療ベッドに横たわっていた。



…妙に、空気が張りつめている。



そんな中でも、最初は、「ふぅん、病人か」程度に軽く考えて覗き込み……。

75Mii:2019/05/05(日) 23:51:15 ID:7C2DmCl6


















ルフレ「――――や、やめ…て、ください、リン、ク、さんっ!」

リンク「――ルフレ。お前、彼女に――何を、やったぁっ!?」



気が付いた時には、刹那に振るった右腕でルフレの首を絞めている、俺がいた。

――彼女の虚ろな目は――そう。
一切の光を宿していないことが、俺には分かってしまったのだから。

76Mii:2019/05/05(日) 23:54:36 ID:7C2DmCl6
Dr.マリオ「落ち着け、リンクッ!これはルフレのせいじゃないっ!」

リンク「――――っ!!」ガバッ

一気に、思考が舞い戻る。
反射的に動かしていた体を、緩和させて、ルフレを開放する。



ルフレ「ガハッ、ゴホッ……む、むちゃ、くちゃな速度、でしたよ…」

リンク「とりあえず、悪いなマリオ。どうやら俺、気が立っているみたいだ。
    現状で分かってること、洗いざらい吐いてもらうことってできるか?」

Dr.マリオ「心得た。…茫然自失状態の彼女から聞き出すの、苦労したんだぞ?
      ――彼女の名前は『ルキナ』。
      ルフレの所属する自警団の団長クロムの娘であり、
      『本来ならば』まだ幼子だ」

リンク「…さっそく矛盾が生じてるな。
    俺の経験とかから推測するに…時間経過速度の加速、あるいは未来からの時間遡行だな?」

Dr.マリオ「ご名答。話が早くて助かるぞ。

      彼女は、希望となる仲間が悉く葬り去られ、世界を闇が支配した絶望の未来から、
      『自分たちの世界の過去』に向かって時間遡行をどうにかこうにか行って…
      状況を打破しようと考えたらしい」

77Mii:2019/05/05(日) 23:59:03 ID:7C2DmCl6
――俺は、ひとまず頷いて見せる。

Dr.マリオ「彼女の生きていた世界を苦しめていた張本人、『ギムレー』。
     そいつとその手下たちによって、世界全体が滅茶苦茶にされちまったらしい。
     ちなみに、ギムレーという存在は…このルフレも戦った強敵、とのことだ」



…何故か、苦虫を噛み潰したような顔をして、ルフレが頷く。



ルキナ「――――みんな、みんな、死んで…いきました。
    同期が…親たちが…支えてくれた兵たちが…ひとり、またひとり、と…
    それも、『未来』と『過去』で、2回も――」

リンク「――っ!!」



――光の無い目を開けて中空を見つめていたルキナが、
――横たわりながら…唐突に呟き始めた。
――あまりにも力弱く、か細く…誰に語り掛けようとしているのかもわからない。



ルキナ「父、上も…母、上も……ルフレ、さんも……!
    全てを投げ打って、縋って追い求めた、『過去の安寧』。
    それは結局失敗に…終わったの、でしょうか――」

78Mii:2019/05/06(月) 00:03:14 ID:GkZ4yLvE
そこへ、『ここにいる』ルフレが待ったを掛ける。

ルフレ「…でも、おかしいんですよ。

    確かにルキナはクロムの娘として『僕がいる時代』に生まれましたが、
    僕は護衛団の活動中に…ここにいる成長ルキナが、リンクさんが来られる前に述べていた…、

    『自警団の危機に、仮面偽装した成長ルキナが駆け付けて間一髪助ける』だとか
    『正体を明かした成長ルキナが団の一員となって行動する』とかの出来事に
    一切遭遇していません。

    その後、迫り来る危機について知らないことばかりで、後手に回りがちではありましたが、
    どうにかこうにか…その…ギムレーを封印して、決着を付けることができました」



ルキナ「そんなはずは……な、い…の、です」

ルキナは信じられないらしく、布団の裾を握りしめる。



…ええっと。要するに。

ここにいるルフレの体験としては、成長ルキナに遭遇しなかったものの…
自力で、世界をとりあえずは平和にした。つまり、ハナから絶望の未来はなかった。

一方、成長ルキナが知る『ルフレ』の体験としては…
絶望の未来が待っているうえに、そのことを伝えに来た成長ルキナの尽力があってすら
…………未来が覆らなかった?

79Mii:2019/05/06(月) 00:09:05 ID:GkZ4yLvE
ルフレ「そもそも、戦闘で亡くなることが滅多になかったですから。
    しっかり治癒治療に専念すれば、なんとかなりました。
    少しは僕の撤退策も功を奏したということでしょうか」

ルキナ「そ、んな…!お父様たちは、確かに、戦場で、命を次々と――」











リンク「………………………………………………ちょっと、待て」










かちり、と。
ピースが、繋がった、気がしてしまった。
…これは、マリオでは気付かない類の、ことかもしれない。

80Mii:2019/05/06(月) 00:10:50 ID:GkZ4yLvE
リンク「2人ともっ!ちょっと、俺の目を見ろっ!」グイッ

ルフレ「えっ!?どうしたんですか、急に?」

ルキナ「…………っ」

やや強引に腕を引っ張り、動転するルフレ、そして未だ生気のないルキナの目を見る。





見る。

見るっ!!

見るっ!!!!





そして…ああ、見えてきた。諸悪の根源が。

81Mii:2019/05/06(月) 00:18:35 ID:GkZ4yLvE






REFLET    難易度:ノーマル        モード:カジュアル

LUCINA    難易度:ルナティック+     モード:クラシック






リンク「…………」

リンク「…………」

リンク「…………なんて、こった」ガクッ

82Mii:2019/05/06(月) 00:22:50 ID:GkZ4yLvE
――それからのことは、語りたくもない、のだが…。



何か気付いたのか、と急かされてしまい…口を割ってしまったのが、まずかった。

おそらく、ルキナが時間旅行をすることをトリガーとして…
勝利の女神に愛された世界線と、運命に悉く見放された世界線…
2つの世界に枝分かれしたんだと、そう伝えてしまった。

誰が悪い、とか議論できる話じゃない。
強いて言うなら、運が悪かったとしか言いようがない。
正直、何がトリガーとなって世界線が分岐しうるかなんて、碌に研究は進んでいないらしいから。



だが、難易度だなんて概念がわかりっこないルキナは、呆然と泣き腫らすまま――

「普通に救われた結果もあったはずなのに、自分がとんでもないことを仕出かしたせいで
 親しき者たちを倍苦しめた」という、一番やっちゃいけない受け止め方をした。



慟哭し泣き叫ぶルキナを、ため息を付いたDr.マリオが手刀一発食らわせて気絶させる。

Dr.マリオ「とりあえず、点滴と鎮静剤は処方しておくぞ。
      …最後のは、あまりにも軽率だったな。リンクも悪気があったわけじゃないだろうが」

リンク「…………すまないっ!」

83Mii:2019/05/06(月) 00:27:02 ID:GkZ4yLvE
Dr.マリオ「お前たち、今日のところは一旦帰った方がいい。
     俺はまだ…いち患者として彼女を扱えるだろうが、
     関わりのあるFE勢や、責任を感じてるリンクが残ったところで
     頭の混乱を抑えきれないで状況を悪化させるだけだろう」

マルス「……………わかった。その言葉に甘えさせてもらうよ。…よろしく、頼む」

アイク「…たしかに、そのようだ。俺も、このやりきれない気持ちをどうにかしたくて
    壁という壁を叩き壊して回りたいくらいだぞ」

Dr.マリオ「……病棟で、絶対やらないでくれよ、それ?情状酌量してやらんぞ?」

アイク「わ、わかってるさ!

    …おいリンク、そんなに気負うな。状況解析してくれただけでも有り難いさ。
    また色々とお世話になりそうだし、今日のところは解散といこうじゃないか。
    ゆっくり頭を休ませてくれ」

リンク「……………………ああ」



…………退出する2人…いや、ルフレ含めて3人に釣られて、俺も無言で、病室を出ていく。
……ここまで自信なく、重い足取りになる時間は…何十年ぶり、だろうか。
俺は、自分自身に、途轍もなく腹を立てていた。

84Mii:2019/05/06(月) 00:33:55 ID:GkZ4yLvE
ピーチ「……………………ふう、たんなるオフザケ、ハプニングじゃなくて…
    誰かが不幸になるようなイベントは、勘弁して貰いたいものね…
    大会の方の進行自体が順調なのは、喜ばしいところだけど…」

ピーチ「…よしっ!とりあえず、書類は片付いたわね!
    観戦とかお忍びとかやりたいところではあるけれども、
    しばらくは責任者として城に待機しておきましょうか――」  

キノじい「有り難いお言葉でござますのじゃ、姫様…」



バーンッ!



キノじい「な、何事じゃ!?」

キノピオ「ひ ひ ひ 姫様――!
      た た た 大変です――!」ダダダダダッ

ピーチ「…………」スゥッ・・・

キノピオ「…あれ?身構えて、どうされたのですか?」

ピーチ「いい加減、身構えたくもなるわよ!…まあ、今回は『姫様』でいいのかしらね。
     …………それでキノピオ、どうしたの?そんなに慌てて…」

85Mii:2019/05/06(月) 00:35:57 ID:GkZ4yLvE
キノピオ「な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      なんと…窃盗事件が発生してしまいました!
      ファルコ選手のブラスターが、何者かに盗まれてしまったそうです!」

ピーチ「――なんですって!?」

…まだまだ、問題は尽きそうにない。

86以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 02:46:57 ID:GkZ4yLvE
ファルコ「…………」イライライライラ

フォックス「ま、まあ落ち着けってファルコ。
      もしかしたら、自分でどっかに置き忘れたかもしれないだろ?
      こう…机の上にでもポン、と置いてから立ち去ったとか!
      ほかの選手を疑うのはよくないって、なっ!」

ファルコ「んなわけないだろうが!そもそもホルダーから外した覚えがねぇよ!
     バトル時だって、開始前と終了後にしつっこくチェックしてらぁ!
     待機中に…誰かに掠め取られたとしか考えられねえっ!
     どうなってんだよ、ここのセキュリティーはよぉ!」ガンガン!

ピーチ「はいはーい、物に当たるのは止めてくださる?
    とりあえず、そんなことが本当に起こったのならキノコ王国として名折れもいいところだから…
    適切かつ迅速に、全力で解決させてもらうわ。落ち着いて、状況を教えてもらえないかしら?」

フォックス「おおっ、さすがピーチ、仕事が早くて助かる!
      じゃあファルコ、今日のお前の行動…ささっと説明してみろって。
      ほい、今日のスケジュール表」バサッ

ファルコ「…フン。別に、いいけどよ。解決しなかったら承知しねぇぞ。

     ……そうだな、この時間帯は参戦中、そっからここまでは控室で観戦、
     あとはちょいと街で一服して、そのあと絡んできた不良をボコって、
     戻ってきてまた5戦ほど観戦して…」

ピーチ(ファルコクラスにボコられた不良の行く末が割と気になるわ…頭痛い…)

87Mii:2019/05/06(月) 02:50:00 ID:GkZ4yLvE
ピーチ「それぞれの時間帯、出会った人とかは覚えてる?
    ファルコクラスのファイターから…一般人が物を盗めるとは思えないわ。
    相当な手練れか…あまり考えたくはないのだけれど、ほかのファイター、としか正直考えられない」

ファルコ「ま、そうだろうな。他の選手とは結構すれ違ったと思うが…逐一覚えているわけじゃないからな…
     覚えている範囲でいいなら、とりあえず並べてみるけれどよ…」





ピーチ「むう……………………むむむ……………………」

ファルコ「わかったかよ、お姫様」

ピーチ「ううん、全然」

ファルコ「おい」

ピーチ「だって私、別に探偵じゃないもの。ある程度のアリバイ確認くらいしかできることがないわ。


  
    …でも、あの子ならきっと何とかしてくれる!うん!」

ファルコ「あの子ぉ?」

88Mii:2019/05/06(月) 02:52:20 ID:GkZ4yLvE
〜とあるバトルフィールド〜

ゼルダ「…!!あれ、誰か来ました、ロゼッタ」






ピーチ「…あ、いたわね!」

ロゼッタ「えいっ!えいっ!はっ!」バシッ! バシッ!

ゼルダ「まあ、この通り。私が今度こそしっかり監視しながらのもと、
    こつこつ地道にレベル上げしているところですよ、ロゼッタは」

ピーチ「…だったら貴方が直接指導してあげればいいのに。
    私が見る限り…あれ、まだまだ動きがなってないわよ?」

ゼルダ「……私が教えると、ついつい力加減を誤ってしまうもので」

ピーチ「…ふぅん……?

    あ、こんな会話をのんびりしている暇じゃなかったわ!
    ちょっとロゼッタ、一旦修業は中止してもらえるかしら!
    貴方に、やってもらいたいことがあるのよ!」

ロゼッタ「なんでしょうか、ピーチ姫」テクテク

89Mii:2019/05/06(月) 02:54:28 ID:GkZ4yLvE
ピーチ「こんなこと、起こってほしくはなかったのだけれど。盗難事件が発生してしまったの。
    …それも、招いた選手の持ち物を奪うという大胆な事件が」

ロゼッタ「…………ま、招いた選手の持ち物を!?なんて酷い!」

ピーチ「具体的には、ファルコのブラスターね。それで、お願いがあるのだけれど…
    ロゼッタって、空間魔法で失せ物探しとか、できたりするかしら?」

ロゼッタ「…………うーん…………失せ物探し、というわけには行きませんが…
      似たような形状のアイテムがあるなら、それと似た存在を付近から探し出す、
      そしてその場所を追い続けるという芸当なら、できなくはありませんが。

      ただ、空間転移とセットではないので、離れていた場合は…
      場所を突き止めたとしても取り返しに行く必要がありますよ?」

ピーチ「……!今回はそれで構わないわ!フォックスのブラスターを借りましょう!
     どのくらいの距離までなら追跡できる!?」

ロゼッタ「そうですね、とりあえず半径10kmといったところでしょうか。
     それで検索に引っ掛からないのなら、FPをより多く消費して
     まだまだ範囲を広げることができます!」

ピーチ「ナイス!上出来すぎるわ!それじゃあ早速、お願いするわね!!」

90Mii:2019/05/06(月) 02:57:08 ID:GkZ4yLvE
――控室に移動してきた、私たち。
――ロゼッタの空間魔法を一目見ようと、ファイターたちがゾロゾロと集まってくる。



ロゼッタ「ええっと、緊張してきましたが、さっさと済ませてしまいますね!」

クッパ「うむ、とっとと不届き者を炙り出してしまうのだ!」

ルイージ「えーっと、もしかして、ここに集まってきていない人の中に
     犯人がいるってことなのかなあ」

サムス「…リンクもいないんだが…まさか、アイツが…!?そ、そういえばマリオも…」

マルス「あ、いや、アイツはちょーっと塞ぎ込んでるだけですから…」

ピーチ「マリオは、今は仕事中だから…コホン。
    それじゃあロゼッタ!

    どこかに隠したのか、はたまた隠し持ってるのか…どちらにせよ、
    暴かれた犯人が逆上して暴れ出した時のことは考えなくていいから!
    サクッと答え合わせをしてちょうだい!ズルい気はするけれどね!」

ロゼッタ「は、はい!」

91Mii:2019/05/06(月) 03:02:16 ID:GkZ4yLvE
ロゼッタが……杖を片手に目を瞑り、詠唱を行っていき…
杖を、すぅっと一振り。

ブゥン、と鈍い音が断続的に小さく響き続けるだけの、静寂が部屋を支配する。
誰もが、固唾をのんでその様子を見守っている。



30秒ほどして、何かを悟ったようにロゼッタが目を開ける。



ピーチ「…どうだった?それとも、もっと調査範囲を広げる必要がある?」



ロゼッタは首を振り、少し悲しそうな顔をして――二、三度、周囲を見渡した。



ピーチ「…本当に、この中に犯人がいた…のね。はあ…。
    名指しされたところで、盗んだ犯人が悪いんだから。
    さあ、堂々と犯人を暴いちゃいなさい」

ファルコ「そうだぜ。万が一、逆恨みしたソイツがロゼッタに危害を加えようとしてきたら
     俺がブラスターでハチの巣にしてやるってもんだ」

ロゼッタ「…………では――」

92Mii:2019/05/06(月) 03:05:10 ID:GkZ4yLvE
つか、つか、つか。

皆が注目する中、ロゼッタは――ゆっくり、ゆっくり歩を進め、ある一点で立ち止まって。
持っている杖を、コツンと当ててみせた。



――虫取り網に、対して。



ガシャンと、ファルコのブラスターが零れだしてくる。
慌てて、ファルコが駆け出して、本物かどうか確かめる。

ファルコ「…間違いねえ、まさしく俺のブラスター、そのものだ。恩に着るぜ、ロゼッタ。
     で?なんか言い残すことあるかよ、お前は」

ファルコが、親の仇を見るかのような…侮蔑の目で、暴かれた犯人を見やる。
犯人とは――。





むらびと「…え?ええ??えええええええっ!?」

目を白黒させた、むらびとだった。

93Mii:2019/05/06(月) 03:06:41 ID:GkZ4yLvE
むらびと「ちょ、ちょ、ちょっと待って!
     僕、ファルコのブラスターを奪うなんてこと、絶対にしてないよっ!?」

ファルコ「現に…お前の虫取り網から出てきただろうがあ――っ!!!」

血が一気に上り、鬼の形相で殴りかかろうとするファルコ。

ピーチ「ちょ、ちょっと待ちなさいっ!――あ」

フォックス「ファルコ、落ち着けっ!そう出ると思ったぜ!
      お前の喧嘩っ早さは熟知してるからなっ!」ガシッ

ピーチ「フォックス、ナイスタイミング!そのまま、抑えといてっ!

    …むらびと、一応、釈明は聞いてあげる。
    一体どうして、皆を裏切るようなことをしたの?
    何か深刻な事情があるというのなら、罰を軽くすることも考えるのだけれど…」
    
むらびと「だ、だからっ!僕何も知らない!そもそも何もやってない!」アワアワ

94Mii:2019/05/06(月) 03:08:36 ID:GkZ4yLvE
ファルコ「往生際が悪いぞ、てめえ!」



周囲の目も、明らかにファルコを応援し、むらびとを糾弾する雰囲気を呈している。
耐えきれず、むらびとは徐々に、徐々に後ずさる。

むらびと「ぐずっ…ふええ…本当に…やって、ないもん……」

ピーチ「…はあ。子供の容姿だからって、それだけじゃ擁護することもできないのよ?
    ここまで決定的な証拠を見せつけられたら、私も主催者側として…
    厳格な対応、判断を下さざるを得ない。

    今のままじゃあ、貴方…どんどん立場を悪くしていること、わかるでしょう?」



むらびと「やって……ないもん……」ジワァ



ピーチ「私の立場も、分かって頂戴!いい加減に――」

ロゼッタ「もう、やめてあげてくださいっ!!」ガバッ



せっかくの大会を台無しにされた――そのせいか、私のボルテージまで、ついつい上がる。
そんな私から、むらびとを守るように…涙顔のロゼッタが、むらびとを抱きしめた。

95Mii:2019/05/06(月) 03:10:50 ID:GkZ4yLvE
ロゼッタ「どんな顛末でブラスターを持ち去ったのかわかりませんがっ!
     子供のやったことではないですか!

     もちろん、いち大会参加者として参戦している以上、
     そんな甘ったれたことを言うなとピーチ姫は…皆さんは仰るかもしれませんがっ!
 
     かといって、大の大人たちが寄ってたかって責め立てる、なんてこと…
     私には耐えられませんっ!!黙って見ているなんてこと、できませんよ!!」

ルイージ「…あー、確かに…あんまり見栄えのいい光景じゃあ、なかったよね…」ポリポリ



ロゼッタは涙目のまま、ファルコに向き直る。

ロゼッタ「ファルコさん、どうか、どうかお願いいたします!この通りです!
      私に免じて、水に流してもらうことはできないでしょうか……!」ズサッ

ファルコ「うえっ!?ななな、なんでアンタが土下座する必要があんだよ!?
     というか、それはアンタが決めていいことでもなければ、
     俺が許してそれで済むってことでもないだろ!?」アワワ

96Mii:2019/05/06(月) 03:13:17 ID:GkZ4yLvE
ピーチ「……ふむぅ。落ち着くのよ、私。
    私としては、できるだけ穏便に済ませられるに越したことはないから…そうねえ。

    もともと『今大会の参戦停止+成績剥奪+任天堂に報告』くらいに考えていたのを、
    『数週間の参戦不可ペナルティ』くらいに緩和するって処置にしてもいいわよ?
    被害者のファルコが、この場でむらびとを許すっていうのならね」

ロゼッタ「…ああ、それでも重めのペナルティは与えられるのですね…」

ピーチ「あったりまえよ!馬鹿にしないでもらえるかしら!
    これでもだいぶ譲歩したつもりなんだからね!?
    
    …で、どうする?ファルコ?」



皆の注目が、今度はファルコに…集まった。



ファルコ「う、ぐ…なんで被害者の俺が――こんな選択を迫られなければならねぇんだ…」

フォックス「ファルコ―、いつまでロゼッタを涙目のまま地べたに這いつくばらせてるんだー?
      男として恥ずかしくないのかー?」ニヤニヤ

ファルコ「その脅迫は卑怯だぞフォックス!……だが、やっぱり、納得がいかねえ…」ギリッ

97Mii:2019/05/06(月) 03:14:45 ID:GkZ4yLvE







――ちょっと、待ってくれ!








ファルコ「なんだ!?」クルリ







ピカチュウ「私だ」

ファルコ「」

98Mii:2019/05/06(月) 03:16:40 ID:GkZ4yLvE
ピカチュウ「私の格好が探偵っぽいって?
      確かによく間違えられるが…違うな、それは誤りだ。

      私は…探偵じゃない、『名探偵』さ!」ババーン!

ファルコ「」

フォックス「ピカチュウが…人語を話している!?」





トコ トコ トコ…。





ピーチ「あ、あなたは……!」

ポケモントレーナー「…………」スクッ

99Mii:2019/05/06(月) 03:18:47 ID:GkZ4yLvE
クッパ「今回は参戦していないはずの…ポケモントレーナーじゃないか。
    応援にでも駆けつけてくれたのか?いい心掛けなのだ」



ポケトレ「…………」ポイッ

ポケトレは ニャースを くりだした!▼



ニャース「ニャースでニャース!」

ピーチ「!?」



ポケトレ「…………」キラーン



ニャース「『さっきのは、ピカチュウがしゃべっているように見せかけた俺の腹話術だ』
      …と言ってるニャ!」

ポケトレ「…………」コク

100Mii:2019/05/06(月) 03:21:35 ID:GkZ4yLvE
ピカチュウ「まあ、そういうことにしておいてくれ。
      この謎は、ズバッと私が解決してみせようじゃないか!」



ポケトレ「…………」パチパチ



ニャース「『がんばれピカチュウ、あと俺もこの調子で頑張ろう』と言ってるニャ」

デデデ「さっきからひたすらに回りくどいぞい!?」

ピーチ(えっと、ちょっと待って。
    そもそも不参戦の彼が、どうしてこの場所に居られるのかしら?)



ポケトレ(……………)



ニャース(『もともと背景的存在だから、任天堂のさじ加減で画面内に映りこむことくらい
     わりと余裕だ』、と思ってるニャ)

ピーチ(…………………………………………あ、そうなんだ)

101Mii:2019/05/06(月) 03:23:45 ID:GkZ4yLvE
ピカチュウ「さて、本題に移るとするか。

       フォックス君、そこに転がってる…むらびと君の虫取り網、
       ちょっと持ってもらえるかな?
       本当はむらびと君本人に実演してほしかったのだが、
       とてもそんな雰囲気ではないのでね」

フォックス「お、おう、この虫取り網か?これでいいか?」シャキッ

ピカチュウ「知っての通り、むらびと君の虫取り網は…
       かぶせる、あるいはキャッチすることで、なんでもしまうことのできる
       便利アイテムだ。むらびと君の戦力の要だな。

       大事なものだから、ファルコ君のブラスター同様、
       常日頃から身に着けており…どこからともなく取り出せる代物だ」

フォックス「ああ、そうみたいだな」

ピカチュウ「このような仕掛けの代物は、時たま…使用者本人も知らない場面で、
      使用者と外界との界面から当該領域を露出させる可能性があってな」

フォックス「…え、なんだって?」

102Mii:2019/05/06(月) 03:25:52 ID:GkZ4yLvE
ピカチュウ「端的に言うと、使用者が気付かないまま当たり判定が出現していて、
      効果を発揮してしまうことがあるということだよ、フォックス君」

ファルコ「そう…なのか!?」

ピカチュウ「私の推理は、こうだ。
      
       午前中に試合を終えて、のんびりしていたファルコ君。
       一方、たしか…むらびと君も、午後に遊びに繰り出していたな?」

むらびと「…う、うん」

ピカチュウ「きままに歩き回っていたファルコ君、
       そして目新しさにはしゃぎ回っていたむらびと君。

       おそらく、ファルコ君の斜め後ろあたりから、注意力散漫だった
       むらびと君がぶつかったのさ。

       2人とも、誰かにぶつかられた・ぶつかった覚えがあったりしないかい?」

ファルコ「…確かに、大通りは凄い賑わいだったからな。
      注意してても、ちょくちょく人ともぶつかった気がするし…
      いちいち顔の確認をしたわけでもねえよ」

むらびと「う、うん!たしかに、ちょっと他の人とぶつかりすぎちゃったかも…!」ハッ

103Mii:2019/05/06(月) 03:28:28 ID:GkZ4yLvE
ピカチュウ「オッホン。さて、フォックス君。

       むらびと君くらいの体格を想定して虫取り網を装備したとき――
       網の先はどのくらいの高さに来るかな?」

フォックス「……あ!ちょうど、ファルコの腰のホルダーあたりに来てもおかしくない位置関係だな…!」

ファルコ「なんだと!?」

むらびと「ええっ!?」



ザワザワ……。

ピカチュウ「ま、あとは語らなくとも…お分かりだろう。
       運悪くぶつかった拍子に、運悪く当たり判定を持っていた虫取り網が…
       ファルコ君の持っていたブラスターを掠め取った。

       お互い、全く気付かないまま…
       ブラスターは、ファルコ君からむらびと君へ。その所在を移した、という寸法だ」

104Mii:2019/05/06(月) 03:30:30 ID:GkZ4yLvE
シーン…………!

ポケトレ「…………」グッ

ニャース「『これにて一件落着だ』、と言ってるニャ」

ファルコ「…………」

むらびと「…………」ソワソワ

ファルコ「…………チッ。言っとくが、俺は謝らねえからな。
     結局のところ、お前の不注意が主な原因でこうなったってことなんだから」

むらびと「う、うん。でも、わざと盗んだりなんかしてないってこと…
     それが分かってもらえただけでも、いいや。
     えっと…ブラスター、盗んじゃって、ごめんなさい」ペコリ

フォックス「ファールーコー?」

ファルコ「……だあああ!悪かった、悪かったよ疑いすぎたりして!
     こら!お前もとっとと泣き止め!
     このままだと逆に俺の方が悪者になるじゃねえか!」

むらびと「う、うん!…あはは」ニコリ

ロゼッタ「わあ…!これでめでたく、みんな仲直り、ですね!」

105Mii:2019/05/06(月) 03:33:39 ID:GkZ4yLvE
ロゼッタ「……あれ?ど、どうしたのですか、みなさん?
      急に、私を見つめられて…」

サムス「ロゼッタ、戦いが不得手と聞いていたが…お前は凄いな!
    あんな気概、凄腕の戦士でもそうは見せられるものではないぞ!」

ファルコ「まったくだな、俺を一瞬でも怖気づかせることができる女は、
     そうそう居るもんじゃないぜ!」

むらびと「本当にありがとうね、ロゼッタさん!すごく、嬉しかった!」

ピーチ「ふふふ、言ったでしょう!
     ロゼッタは凄いんだから!戦いだって…ポテンシャルを持ってるはずだし!
     今後、一層頼れる存在になっていくわよ!
     …あ。もうちょっとむらびとのペナルティ、弱くするべきかしら…」

ネス「なるほど、ピーチが自慢したがる理由もわかるなあ!」

ロゼッタ「あ、あは、ははははは…………や、やめてください、恥ずかしい、ですので…
      ……………………」

ピーチ(ロゼッタの大活躍のおかげで。
    ブラスター窃盗事件は、特に大事にすることなく…
    収束を迎えられることとなった。
    めでたし、めでたし。

                   …めでたし、よね?)

106Mii:2019/05/06(月) 03:41:12 ID:GkZ4yLvE
〜居酒屋〜

リンク「………………………………………はぁ」ガコン

アイク「…………なんだか、その、ええとだな…」

リンク「…なんだよ?」ギロッ

アイク「あ、いや、その、なんでもないぞ!?」

マルス「はは、リンク、そうアイクを睨まないでやってくれるかな。
    アイクは、自分が――いや、僕たちが、リンクの調子をすっかり狂わせてしまったことに、
    ちょっと…いや、かなり負い目を感じているのさ」

アイク「ななな、そんなわけあるかマルス!」

マルス「わっかりやすいなあ」

リンク「おいマルス、誰が調子を崩してるって?冗談も大概にしろよ」ギロッ

マルス「なけなしの集中力すらルフレの特訓で消費しつくしているせいで…
    とんでもない戦績を積み上げているじゃないか…。今はこうして、慣れないお酒をがぶ飲みしちゃってさあ。
    僕、リンクが2回も4位で終わる試合日の記憶、どれだけ歴史を遡ればいいか分からないんだけど」

リンク「…………」ゴクゴク

マルス「すいませーん!彼には今後、水だけ持ってきてくださーい!」

107Mii:2019/05/06(月) 03:44:35 ID:GkZ4yLvE
アイク「…本当は、FE勢のことはFE勢だけで解決すべきことだったのかもな」

マルス「…そうか?結果論になってしまうが、僕は……
    リンクがわが身のことのように真剣に考えてくれて、
    『リンクに伝えてよかったなあ』って思ってるんだけれど」

リンク「…………あの目は――昔の俺を思い出すんだ」

マルス「昔の……リンク、か。なるほど」フムフム

リンク「…いや、そんなこと言ったら、彼女に失礼かな。
    彼女は本当に――救いのない状態が、決定してしまっているし」



アイク「…なあ。今のルキナが俺たちの大陸に、王国に帰ったとして…
    そこは、『今のルフレ』が帰ろうとする王国ということになるのか?

    それとも、ルキナだけ…国境を跨ぐあたりでフッと消えてしまって、
    ルフレ含め大勢が亡くなった世界線の王国に改めて送られるのか?

    リンク、お前なら…もしかして、どっちになるか、わかるのか?」

108Mii:2019/05/06(月) 03:48:20 ID:GkZ4yLvE
リンク「…………お前たちも知ってる通り、ルキナが希望するなら…
    ルフレに従い着いていくだけで、『平和な方』の王国に辿り着くことはできる、と思う。
    道しるべがあるなら、時間軸を選ぶのって…そんなに難しいことじゃないんだよ。

    でも、その王国は…ルキナが守れた結果の王国じゃあ、ない。
 
    誰も…成長したルキナのことを知らない。
    自分の無力さ、周囲からの疎外感を目の当たりにし続ける拷問が待っている。

    そして、既にいる子供ルキナが順調に成長していけば
    …居座ることすらできなくなるだろうな。

    ルキナ自身、最初から選択肢にはないだろう。
    たぶん…きっと…絶望の世界線の方に、自ら舞い戻るんじゃないか、と」

アイク「それって大丈夫なのか!?」

リンク「大丈夫なわけ、ないだろう!心折れた状態でそんなことして、
    死にに行くようなもんだぞ!」ドンッ!

アイク「じゃ、じゃあどうするというんだ!」

リンク「……それが、わからない。わからないんだ…………」ガクッ



マルス「……あ、店員さん、やっぱり――お酒もばんばん持ってきちゃってください。
    彼には、逆に徹底的に飲ませて…心の底にあるもの、全部吐き出させた方が
    いいみたいですから、はい」

109Mii:2019/05/06(月) 03:51:11 ID:GkZ4yLvE




リンク「うー、あー、……………………頭が、ガンガンする」





ほとんどマルスに背負われる形で住居に舞い戻り。
爆睡している間に、マルスは去っていったらしい。
時計を見やれば日付変わって、午前2時。うわあ、これは酷い。





リンク「勇者だってのに、だっさいなあ、俺」





またゴロンと寝転がって、もう少し、酒の影響がなくなるのを待つ。
横目で、窓の外をぼんやりと眺める。
月が綺麗だ、以上。

110Mii:2019/05/06(月) 03:53:35 ID:GkZ4yLvE
リンク「…………」

リンク「確かに、調子が絶不調なんだから…参戦なんてせず、
    おとなしく精神安定に努めていた方が賢かったよなあ。
    惰性で参戦し続けたばっかりに、優勝…えらく、遠のいちゃったなあ」



リンク「……………………」

リンク「まあ、あれだよ。変に俺が絡んで、よその国に干渉するってのも…
    未来を大きく変えちゃうってのも問題だしさあ。これでよかったんだよ、うんうん」



リンク「……………………………………………」

リンク「マルスも、アイクも、ルフレだっているし…ま、なんとかしてくれるだろ、FE勢の中で」



リンク「……………………………………………………………………………………
    ……………………………………………………………………………………
    って、納得できるような奴じゃねえんだよ、俺ってさあ!!」ガバッ!

リンク「ええいっ!とりあえず頭を空っぽにするかっ!!
    とりあえず真夜中のキノコ城城下を適当にマラソンだ!
    うおおおおおおお――――っ!!!」ダダダダダダッ!!

111Mii:2019/05/06(月) 03:55:13 ID:GkZ4yLvE
リンク「うおおおおおおおおおりゃああああああああ!!」ダダダダッ!!





住民「馬鹿野郎っ!近所迷惑だぞっ!!」ダッ!

リンク「御免よーっ!!」ダダダッ!!





住民「どこの誰よ、下品な足音奏でてるのはっ!!」

リンク「アーアー、オレダヨ、ナクコモダマル ガノンドロフサマダヨー!!」ウラゴエ





居酒屋店主「うおおおおぉい!誰か、勝手に屋根を走ってやがるのか!?
       轟音と共に天井が陥没してるんだがっ!?
       うおっ!?玄関前の石畳まで滅茶苦茶だっ!?」

リンク「いっけねー!お宅に大緑ルピー、投げ込んでおきますからーっ!!」ブンッ!

112Mii:2019/05/06(月) 03:57:18 ID:GkZ4yLvE
〜1時間後〜



リンク「……よし、汗は結構かいたけれど…すっきりした。
    のべ100kmくらい走っただろ、うん。さすが俺、エネルギッシュ!」



まだまだ、夜は更けようとはしていない。
まあ、これ以上近所迷惑をするというのもなんだから、終わりにしておこう。
まったく、自分勝手な勇者なこった。

月灯りが、ぼんやりと頭上に。
見上げれば、すぐそばにキノコ城。そして、すこし首を後ろにやれば、王国病院。



リンク「ルキナの奴、大丈夫かな……
    えーっと、位置関係的に…病室、あのあたりだったっけ。
    ま、俺ができること、考えてみるか」



そう自分に言い聞かせて、振り返るのをやめる。
月灯りに反射して、窓際がきらりと光っていた…気がした。

113Mii:2019/05/06(月) 04:03:46 ID:GkZ4yLvE
〜病室〜

ルキナ「…………………………………………」



無表情、無感情で見つめるのは、ぼんやりと光る…お父様譲りの聖剣、ファルシオン。
血濡れた剣ではなくなり、汚れ一つなくなった剣。

私は――明かりも付けず、何も考えず、剣だけを見つめている。



涙はもう…枯れ果てた。
体力こそ回復したが、今の私は、壊れ果てているのだなと、自覚した。
自業自得過ぎて、弁解する気も起こらない。



私を庇うあまり命を落としていった人たちの…怨が聞こえてくる。



――ねえルキナ、あなた、なんということをしてくれたのですか?
――あなたを産んだこと、大間違いだったみたい。
――私の娘だなんて…クロム様の娘だなんて、あってはならないことでした――っ!

ルキナ(…………っ!)

猛烈な、吐き気。

114Mii:2019/05/06(月) 04:07:35 ID:GkZ4yLvE
――わたし、知ってるよー。
――ルキナお姉ちゃんみたいな…ううん、ルキナみたいな悪役は、
――ヒーローによってしっかり滅ぼされなきゃいけないよねー!

――ものども、であえー!絆の力で、あの女をやっつけるよー!
――倒したみんなが、正義の味方だー!世界の救世主だー!

ルキナ(ち、違うっ!そんなこと、言う子じゃ…ないっ!)





――ええっ?僕がギムレーに…呑み込まれることを分かってた?
――だというのに、失敗したの?うわっ、それってすっごく恥ずかしいね。
――模範解答を貰ったのにテストで0点を取ったような大馬鹿ってことだねえ。

ルキナ(あなたは、そんな悪人ではない!
    私は…抗い切ってくれることを、ただ、信じて――)

115Mii:2019/05/06(月) 04:08:34 ID:GkZ4yLvE








――いつまで、目を背けて生き恥を晒しているんだ?
――俺を…俺たちを二度も殺したのは、お前だぞ、おい。









ルキナ(…………………………………そう、ですね。その通りです、お父様)






完全に、心が、折れた。

116Mii:2019/05/06(月) 04:10:56 ID:GkZ4yLvE
月灯りが窓から差し込む中、おもむろに立ち上がって…聖剣を掲げる。
刀身にうっすら映った自分の姿は、最期だけあって…そこそこ美しく見えました。

できれば、あまり醜くならないまま――
幾多の敵を葬ってきたのと同様、私の介錯もしてほしい。
5秒と経たないうちに、腕の震えもピタリと収まった。

そして――トン、と無機質に、力を込めた。















ガッシャアアアアアアアアン!!!

リンク「こんの、バッカヤローがああああああああぁ――――――――――っ!!」

一人の勇者が、ガラスを突き破って病室に飛び込んできて、
鋼の拳で私の剣を殴打し、正確に吹き飛ばす、1秒前のことでした。

117Mii:2019/05/06(月) 04:13:51 ID:GkZ4yLvE
ルキナ「――いたっ……!」

ただの、パンチ。とんでもない、威力。
病室の反対側の壁まで吹き飛んだ剣は壁にグサリと突き刺さり、
持っていた腕も慣性を完全には無効化すること叶わず、強く後ろ側に反らされる。
――よくて脱臼、もしかしたら骨折しているかもしれません。

リンク「おい、ルキナっ!お前、今、なんてことしようとしたんだ!
    必死に命を助けたルフレやピーチ。
    散々心配してくれた、マルスやアイク…ついでに俺!
    その他、大勢の人たちに対する冒涜、侮辱行為だぞ、分かってるのか!?」

ルキナ「……………………」

リンク「まったく、俺が第六感で駆け付けなかったら確実に死んでたぞ…。
    おー、今更ながら…ガラスが何枚か突き刺さってるな、いってぇ。
    そんなに簡単に命を捨てるな!足掻ける間は足掻いてみろよ!」



ルキナ「あなたに……なにが、わかると、いうのですか」



リンク「…なんだって?」

ルキナ「…あなたに、何が分かるというのですかっ!私は、世界を…実質!二度も!滅ぼしたっ!
     こんな疫病神のどこに、生きている価値があるというのですかっ!」ボロボロ

118Mii:2019/05/06(月) 04:15:35 ID:GkZ4yLvE
リンク「だから、別にルキナのせいで世界が滅んだわけじゃないって。
    そこんところ、勘違いしないでほしいなあ。
    つーか、滅んだって言い方、やめようぜ。挽回が効かないって決まったわけじゃ」

ルキナ「決まっていますっ!
     味方は全員亡き者となり、
     ギムレーは益々勢力を強固たるものとし、
     人々は生きる気力を完全に失っているっ!」

リンク「…………」

ルキナ「私、は…っ!
     これ以上、自分だけのうのうと生き永らえることに、耐えられません…!
     後生です…もう、放っておいて…くだ、さい……」ポロポロ



――なにもかもが、どうでもいい。
――床に座り込んで俯いたまま、ひたすら女々しく泣いている。
――そんな自分が、ますます一層、嫌になる。

119Mii:2019/05/06(月) 04:17:33 ID:GkZ4yLvE



リンク「……………………ははっ、懐かしいなあ」ククッ



――えっ。



突然の笑い声に、思わずキョトンとなって、顔を上げる。

リンク「ああ、悪い悪い。
    俺もさ、かなり昔の話になるけれど、ルキナみたいに
    自暴自棄になってた時期があったなーって、ふと思ってさ」



ルキナ「…あなたが?」

リンク「おうよ。今や三強と呼ばれるまでになった俺でも、な。
    自分の境遇を恨んで、自分の実力の無さに泣けてきて…
    そんなときが、確かにあったんだぞ?
    ま、それも…俺がルキナをほっとけない理由の一つかな」



――信じられない。マルス様すら、実力負けを認めるというこの男が。

120Mii:2019/05/06(月) 04:19:50 ID:GkZ4yLvE
リンク「…で、放っておいてほしい、とは言うけれど。
    ルキナは…このまま、境遇から逃げるのか?

    ぶっちゃけると、昔の俺も似たような考えに陥ろうとしたのは事実だから
    全くもって強く言える立場じゃないかもしれないけど…
    それって、要するにただの現実逃避だよな?」

ルキナ「…………っ!」

唇を、血が滲むほど強く噛む。

リンク「自分では為す術なくなったから自ら命を絶つ、だあ?
    責任を取るといえば聞こえがいいけれど、
    ルキナを救ってきた人たちの想い、一切合切踏みにじってるよな?
    想いを無駄なものにしてしまう…それこそ大恥だと思わないか?
    
    そんなことするくらいなら、もう一度、死に物狂いで戦おうぜ。
    いきなり挑むことが余りにも無謀っていうのなら、
    希望の目が見えるまでいくらでも修行すりゃあいい。
    幸い、キノコ王国は環境が整いまくっていることだし。
    なんせ、生きた証人がここにいるしな」

121Mii:2019/05/06(月) 04:21:47 ID:GkZ4yLvE
ルキナ「…………無理、です。
    私は、そんなことができる才能も、甲斐性も、持ち合わせていないようですから。
    王家の血筋でありながら、このありさま…失望していただいてかまいません。
    …私1人、地獄の世界に舞い戻ったところで…何も、成し遂げられない」

リンク「…………へえ?」

ルキナ「…いま、このキノコ王国で催されている大会のこと…少し、伺いました。
    かつての英雄のマルス様や、アイク様と話をすることができたことは、
    とても光栄でした。…とても、暖かい人たちでした。

    …この大会が終われば、みなさん、元の世界に、
    元の時代にお帰りになられてしまう。

    ルフレさんに付いていくことも、私には考えられない。
    彼には…彼の、彼らの守り上げた世界がある。
    それを私が享受することなど、絶対に許されません。

    今の私には結局…絶望のままここで命を絶つか、
    足掻こうとしてみて無残に魔物たちに惨殺されるか、の二択しか残されていない。
    だったら――」



――はっと、する。
――私を厳しい目で睨んでいた彼が、とても穏やかな表情であったから。

122Mii:2019/05/06(月) 04:24:48 ID:GkZ4yLvE
リンク「なるほど。纏めると――」

――一旦、彼は、思案顔となり。



リンク「ルキナは…自分の置かれた絶望感に押し潰されるほど、ヤワな戦士じゃない。
    ただ…誰にも頼れない、頼っちゃいけないっていう孤独に耐えられないんだな。
    いやあ、俺にもかつてあった心情のはずなのに、気付くのが遅くなって申し訳ないっ!」ピコーン

ルキナ「えっ…?」

何かに合点がいったのか、人差し指をピン、と突き立てる姿に、目を見開く。
何を…言っているのでしょう。

リンク「わかる、わかるぞその気持ち!
    俺も、マリオやピーチの存在にどれだけ救われたことやら!」ウンウン

私の理解し切れない状況のまま――。



リンク「……よし、決めた。
    そんなに一人が怖いっていうんなら、俺がタッグ、組んでやるよ。
    魔物がなんだ!邪竜がなんだってんだ!
    みんなまとめて成敗して、ルキナの世界にも平和を取り戻そうじゃないか、なっ!」



――私は、固まることしかできませんでした。

123Mii:2019/05/06(月) 04:27:19 ID:GkZ4yLvE
リンク「というわけで、ルフレには悪いけれども…
    ルキナを鍛えることが最優先事項となりましたーっと。
    …あ、今の精神状態からすると、いきなりは無理っぽいか。
    まずは、ルキナが普通に笑えるくらいまで励ますことにするか。



    という訳で、抱えている不安や愚痴があったら、いつでも俺にぶつけろよー。
    変な遠慮、躊躇はお呼びじゃありません。ただの迷惑ですから。
    吐き出した分だけ、ルキナの心は絶対に軽くなるからな。
    まあ、専門知識持ってるDr.マリオやピーチにも色々尋ねてみるといい」



――景色が、歪む。

124Mii:2019/05/06(月) 04:30:04 ID:GkZ4yLvE
リンク「俺なんかが想像もできないくらい、辛いこと、悲しいこと、あったんだよな。
    歯痒くて、夢にまで出て、だけどどうにもならなくて。
    ルキナの性格だから、表の顔では必死に堪えて、陰で散々泣いてきたんだろ?

    …よくここまで、一人で――たった一人で、頑張ってきたな。お疲れさん。
    だけど、今後は…俺や、他の人を頼っても、いいんだ。むしろ頼れ。
    そうすりゃきっと……希望だって見えてくるはずさ」



――ポン、と頭に手を置かれる。
――限界、でした。





ルキナ「うわあああああああああああああああああぁぁぁ――――……」



――堰を切ったように感情が、爆発して、彼に抱き着いて。
――月灯りの元で、嗚咽を漏らしながら泣き叫ぶこととなったのでした。

125Mii:2019/05/06(月) 04:32:58 ID:GkZ4yLvE
リンク(…………俺、勇者リンク。

    昔、女性に抱き着かれたことがあったようななかったような気もするけれど、
    それほど慣れているプレイボーイじゃないんですけれどもっ!
    さすがに引き剥がすのはルキナが傷つくだろうからしないけれど、
    ファイ、これ浮気じゃナイカラネ!?そこんとこヨロシクッ!)ダラダラ









〜とある一室〜

ファイ「…ふむ。私は子を生せませんし、マスターに人間の伴侶が居ても…
    それはそれでよいと思うのですが。分け隔てなく接してくださるでしょうし。
    マスターの子供の才能が楽しみです」

任天堂スタッフ「…いきなりどうしたんですか、ファイさん?」

ファイ「…申し訳ございません、電波をダウジング…いえ受信してしまったもので。
    ……それで、この区画をこのように開発してですね…」ピッ

任天堂スタッフ「ほほう、これは中々思い切った改造を…」

126Mii:2019/05/06(月) 04:34:37 ID:GkZ4yLvE
〜病室〜

ルキナ「……見苦しいところを、お見せしました」カァァ

リンク「は、はは。大丈夫、当たってはなかったから」

ルキナ「なくはないですっ!!!」

リンク「…はい?なんのことだ?」

ルキナ「……ななななんでもありません!」

リンク「お、おう」

ルキナ「…………」

リンク「うん、よかった。だいぶ、元気は出たみたいだな」

ルキナ「……私の自覚としては、まだまだ絶望の中にいるつもりなのですが」

リンク「…いや、そんなことはないぞ?なんとかなるかもしれないっていう心が、
    目に光を宿らせることになってる。…もう自殺未遂なんてやめてくれよ?」

ルキナ「……はい」コク

127Mii:2019/05/06(月) 04:36:04 ID:GkZ4yLvE
――――でも、やっぱり。
――――視線は再び、下を向く。

ルキナ「ここまでしていただいて、本当に情けない話なのですが。
    すこし考えてみれば、あなた1人が加わったところで。
    …いくら、あなたが素晴らしい戦士だった、ところで。
    
    …状況が大きく変わることなど、ありえない。
    そう、自覚して…冷め切ってしまう自分が、いるのです」

――敵は、あまりにも強大。
――取り返しのつかないところまで、成長してしまった。





リンク「…………言ったな?」





ゾワッ…。



ビクッと一瞬恐怖して、動転して、何事かと顔を見上げて。
…彼の全身から迸る威圧であることに気付きました。

128Mii:2019/05/06(月) 04:37:16 ID:GkZ4yLvE
リンク「…じゃ、証明してやるとしますか。
    俺の力があれば、きっと問題を綺麗さっぱり解決できるって…
    ルキナが認めざるを得なくなるまで」

ルキナ「…そ、それは、どういう…」

リンク「じきにわかるさ。
    …身体面としては、もうどこも悪くないんだよな?
    今日は、出かける準備をしておけよ。
    明日も、明後日も、明々後日もだ」



彼が、部屋から出て行こうとします。

――よく、わかりません。
――でも、なにか…とんでもないことを、私のためにやってくれる…
――そんな気がして、なりません。



ルキナ「あなたは…どうして、私のために、そこまで…!」



私の投げかけに、彼は振り向きはせず、ただ少し立ち止まり――。

129Mii:2019/05/06(月) 04:38:45 ID:GkZ4yLvE
リンク「俺さー。正直、勇者って肩書き、好きじゃないんだよね。
    色々と苦難の道を強引に歩まされてきたからさ。
 
    まあ、それでも。
    勇者ってなんだろう、自分は何ができるんだろうって、
    最近は考える余裕も出てきた。
    
    …で、アバウトながら俺が出した結論がある。




    勇者ってのは、溢れんばかりの勇気を持って冒険する奴…ではあってほしくない」



ルキナ「…えっ!?」



私の驚きなど気にも留めず、背中を向けたまま。
背中の盾をビシッと親指で示してみせる。

130Mii:2019/05/06(月) 04:40:25 ID:GkZ4yLvE
リンク「俺が目指す勇者ってのは…

    どんなにカッコ悪くたっていい。時には怖気づいたっていい。








    『誰かに勇気を与えて、冒険したくさせる奴』だからな!!」






ルキナ「――――っ」



息を、飲む。
今度こそ、彼は…病室を出て行った。

131Mii:2019/05/06(月) 04:45:16 ID:GkZ4yLvE
リンク「おっ?ピーチじゃないか。見回りか?」

ピーチ「ごきげんよう。ルキナを助けてくれて、ありがとうね。よっ、この色男!」

リンク「色男は余計だ」



小悪魔的笑いを浮かべるピーチの横を、訝しみながら通り過ぎる。



ピーチ「それで?ここから、大逆転優勝でも狙うつもり?
    いくらなんでも、マリオとクッパを舐めていないかしら?
    いくら同情したくなるからって、手加減する2人じゃないわよ?」

振り返りもせず、ピーチは語り掛けてきているのだろう。
横目で悪戯っぽく様子を伺うピーチが容易に想像できた。

リンク「舐めてなんかいないさ、2人の強さは十分すぎるくらい知ってる。
    …だからこそ、だ。

    実力が拮抗しているからこそ――
    勇気を与える使命に燃えた勇者を舐めてると…
    痛い目に遭うからな?」ニヤリ

ピーチ「わあ、怖い。じゃあ、そんなリンクに…去る前に、ひとつ、言っておくことがあるわ」

リンク「へえ?」

132Mii:2019/05/06(月) 04:48:57 ID:GkZ4yLvE
ピーチ「ルキナに請求する訳にもいかないから…







     壊した壁代とガラス代、後で請求書出しておくからね?
     特に意匠が施されたガラスは…高くつくわよ?」




リンク「………………………………………………………
    …………………………保険とか効かない?」タラリ

ピーチ「効きません」シレッ

133Mii:2019/08/17(土) 20:30:37 ID:u/po2OBc
〜翌日…観客席〜



ルキナ「えっと…Qの101、Qの101…」キョロキョロ



チケットに記載されている座席番号だけを頼りに、
人波をかき分けて、あちらへフラフラ、こちらへフラフラ。
体調が芳しくないわけではなく――単純に、人が多すぎます。

…ああ、ようやく、手を振っているルフレさんが見つかりました。
よかった。間に合わないかと思いました…。



ルフレ「ルキナ―、こっちこっち!」

ルキナ「お待たせして申し訳ありません、ルフレさん。
    
     …これが、試合会場ですか。改めて、圧倒される広さですね。
     それにしても…このエリアって…初見の私でもわかるのですが、
     相当な特等席なのではないですか?」

そう呟くと、同じことを思っていたらしいルフレさんが、非常にばつの悪そうな顔をします。



ルフレ「そ、それがさ…」

134Mii:2019/08/17(土) 20:33:52 ID:u/po2OBc

・・
・・・

リンク「すいません、S級席ってまだ空席ありますか?
    1つ…いや、2つほど確保したいんですが」

受付「申し訳ございません、全て完売しておりまして…
   …って、リンクさんですか?一体どうされたのですか?」

リンク「急遽、ちょっと招待したい人たちができてですね…そこをなんとか!
    席の増築とか、できませんかね!このとーり!」テヲ アワセル

受付「い、いきなりそう言われましても…。
    と、とりあえず本日分のキャンセル待ちということで…」





リンク「あ、大会終了までの残り2カ月分、固定席が欲しいです」

受付「」

135Mii:2019/08/17(土) 20:35:34 ID:u/po2OBc
リンク「とりあえず、前金でこれだけ支払っておきますから。
    確保してくれたら更に同額払います」





大金ルピー×100「」ドドン

受付「」





・・・
・・


ルフレ「…という感じだったらしい」

ルキナ「…………そ、そうなのですか。
    …あ、確かに座席が急ごしらえっぽい感じです」

ルフレ「ぼ、僕たちのお尻の下に、
    数年は豪遊して暮らせるお金が眠っている…」ガタガタガタガタ

ルキナ「み、身の毛もよだつようなことを言わないでください!」ブルッ

136Mii:2019/08/17(土) 20:38:07 ID:u/po2OBc
――来ました。来てしまいました、リンクさん。
――指示されるまま会場に来てしまい、ルフレさんと共に縮こまりながら…
――会場の中央を、ぼんやりと眺めます。

――試合が始まるのを、待っています。




マスターハンド「さあさあ!今日も絶好の試合日和!
         いつも以上に晴れ晴れと――試合開始のカウントダウンですっ!」



リンクVSマルスVSトゥーンリンクVSブラックピット



ブー!ブー!
リンク、イイカゲン、マジメニヤレェー!!コラー!



ブラックピット「フンッ!絶不調の今なら、リンクといえど恐るるに足らず!
         徹底的にボコってやるか、クックック…!腕が鳴るぜ!」シュッ シュッ



ピット「おーいブラピさん!ご都合主義な地獄耳ってことで忠告しておくけどっ!
    お前今、変なフラグ立てたぞ!立てちゃったぞぉ!」

137Mii:2019/08/17(土) 20:40:54 ID:u/po2OBc
マリオ(控え室)「…こ、こいつは――」

クッパ(控え室)「…どうなっている」





マルス「…………」ジッ

トゥーンリンク「あ、わ、わわわわわ…」ガタガタ

マルス「…君も、感じるんだね?トゥーンリンク?」

トゥーンリンク「あ、あれの、ことだよね、うん。
        マルスさんの戦士としての直感というよりは、
        同じ『リンク』としての共鳴のおかげなんだけど、ね。

        も、もともと『本体』と『分身』の差があるから、
        勝てるとはさらさら、思ってなかった、けど……」

マルス「なるほど、『リンク』だけに共鳴ってことか、うまいなあ!」

トゥーンリンク「そ、そんなネタで笑っている暇じゃないよう…」チラッ

138Mii:2019/08/17(土) 20:45:29 ID:u/po2OBc



リンク「スゥ―…………」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…



リンクは 闘志を 燃やしている!
リンクの やる気は 満 タ ン だ!▼



ブラックピット「んー?なーにをお目々を瞑ったまま剣を突き立てて、
        微動だにしないのかなー?リンクさーん!
        もしかして、俺にビビった?ビビったかなー?」ケラケラ

トゥーンリンク「ブ、ブラックピットさーん…
        本体さんを煽ってないで…早く逃げた方が…いいよー?」コゴエ

マルス「いやまあ、しかし…不謹慎かもしれないけど、僕は幸せ者だな。
    最高のコンディションの…最強の相手の先鋒を任されるなんて。
    ぼろ負けすると分かっていても、武者震いで疼きが止まらないよ。

    ああ、アイクの羨ましそうな顔がありありと浮かんでくるよ」ゾクゾクッ

トゥーンリンク「…マルスさんも、たいがい思考が戦闘狂寄りにひん曲がってないかな…?」

139Mii:2019/08/17(土) 20:51:52 ID:u/po2OBc
マルス「ははは、何を言っているんだい。僕は何時だって戦闘狂だよ?
    相手が強ければ強いほど、ね。伊達に長生きしてないし。
    …あ、生きてるって表現は微妙に間違っているのかな?」ゾクゾクッ

トゥーンリンク「うう…そうこう言ってるうちにも、本体の覇気に、飲まれそう…
         っていうか、既にガブリと飲み込まれ噛み砕かれてるぅ…!」ガタガタ



観客「ファイブ!」

観客「フォー!」

観客「スリー!」

観客「ツー!」

観客「ワン!」

パアアアァァン!!

実況「――――さあ、バトル開始です――!」

ブラックピット「ボーっとしてるなら遠慮しないぜ!食らいやがれ!」ダダッ




リンク「……………………20秒」カッ

140Mii:2019/08/17(土) 20:53:36 ID:u/po2OBc
私には、何が起こっているのか、わかりません。
目の前で起きたことが、頭で理解できません。

…ああ、どうやら、その感想は少し、間違っていたようです。
「私には」では、ありませんでした。

手にしていた「そふとくりーむ」とやらをポトリと下に落として、
口をあんぐりと開けたままの隣に座っていたルフレさんも。

周りの…いえ、会場全体に詰めかけている観客の皆さんも。
実況解説の人…人?たちでさえも。
しぃんと、静まり返っています。理解を放棄しています。

そして、10秒ほど経ったころ。





――ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァ!!!!!!!



たちまち、会場は…爆発的な歓声に包まれました。
これでも、称賛には控えめと思わされます――!

141Mii:2019/08/17(土) 20:57:43 ID:u/po2OBc
マスターハンド「じゅ、じゅ、17秒!?…これ、は、夢ではありませんっ!
          試合開始からわずか17秒です、信じられますでしょうか!?

         リンク選手、突進体勢のブラックピット選手を小ジャンプからの神速の強弓で返り討ち!
         衝撃波を纏いながら、なんと、開始2秒で奈落の底へ!

         間隔も空けずブーメラン投擲、トゥーンリンク選手とマルス選手、辛うじて回避!…したつもりが、なんとしたことだ!
         投擲直前に繰り出されていたと思われるバクダンが括り付けられており背後で爆発ぅ!

         あまりの早業にたたらを踏んだ両選手に、今度は怒涛の勢いで正面強攻!
         トゥーンリンク選手は2合で、マルス選手すら4合で斬り伏せられたぁ!!
         最後は威風堂々、迫力満点の大回転斬りで締めましたぁーーーーっ!!

         た、たった今入った、お知らせですっ!
         初代スマブラ――マリオ選手によってもたらされた、『28秒』が1試合の最短記録でしたがっ!!
         今回、それを大幅に更新する奇跡の1戦となりましたぁ!!」バクバク



マルス「ぐふっ…………剣先鍔迫り合いなんて狙う暇すら…なかった………」チーン

トゥーンリンク「集団虐められ、はんたーい……」チーン

ブラックピット「」チーン

観客「」

142Mii:2019/08/17(土) 21:01:49 ID:u/po2OBc
ルフレ「す、すごい……!!なんて、強さだ…!」

ルキナ「…………!!」

強い、なんて表現では足りなすぎます。
…これが、勇者の、底力…!!

何か、私の心に、確かに灯るものが、有る気がします――。



ここ最近は、リンクさんの戦績がよろしくなかったようです。
…主に私のせいであるということを知り、申し訳ない気持ちで一杯です。

ま、まあ。そのこともあってか、
突然の復活に、会場のどよめきは収まることを知りません。
彼の名を連呼し続ける、観客のみなさん。
会場全体の雰囲気が、天を駆ける龍のように、躍動しています。

143Mii:2019/08/17(土) 21:07:07 ID:u/po2OBc
……さらに、リンクさんは、己を、私を、奮い立たせる行動に出ました。



マスターハンド「…あのー、リンク選手?控室に戻られないのですか?」

リンク「あー、次の試合を待っているだけの俺のことは気にしないで。
    フィールド整えたいならどうぞどうぞ、邪魔はしないから」

マスターハンド「ま、まさか休憩を取らず連戦されるつもりですか?
        リンク選手といえど、明らかに不利になってしまいますが?」

リンク「このまま気持ちを途切れさせず、テンションを維持することによるメリットの方が
    デカいと勝手に考えてるので、お構いなくー」ググッ

リンクは まだまだ はりきっている!▼


        
マスターハンド「なんと!?素晴らしい気合いの入りようであります!
          ……では、そのようにさせていただきます!」

ウオオオオオオオオオオオォォォォォ――――!!!

リンクさんの挑戦的な意志に、会場は一層沸き立ちます…!



リンク「…さあ――俺と戦いたい奴、不調に付け込もうと思ってた奴。
    いくらでも、掛かってこいやぁ!!」ドンッ!

144Mii:2019/08/17(土) 21:11:58 ID:u/po2OBc
〜夕方、控え室〜

リンク「どっはーぁぁぁ…………ち、ちかれた……。
    よ、よーし、今日はこのくらいにしておくかー。
    いわゆる、勇気と無謀は違うって状況だよな、うん!

    …お、マリオにクッパ!どうよ、俺の活躍見てくれたかー?
    ここ最近で最高に最強だったと我ながら思ってるんだけど」ゼェゼェ

マリオ「…滅茶苦茶なブーストが掛かってたな。
    1000ポイント以上差が開いて、もはやリンクは優勝圏外かと思ってたが。
    今日だけでポイント荒稼ぎして、100ポイント縮めやがった」ゴクリ

クッパ「あれだけ圧勝試合を繰り返したからな。…これはまだまだ油断ならんな。
    だが、リンク。別にお前が強くなったわけではない。
    一時的なテンションの高まりで戦闘力が底上げされているだけなのだ」

リンク「それで結構。理解してるし、気にしないよ。
    現に、今はこうして反動でグロッキー状態だ、しな…。

    でも、だからこそ、だ。分かっているからこそ――この底上げのおかげで――
    今回の大会、俺が、ぜぇったいに、勝ぁつっ!
    勝利に、ただひたすら、貪欲に!行ける所まで突き進んでやるっ!」ビシィッ!

145Mii:2019/08/17(土) 21:15:50 ID:u/po2OBc
マリオ「言ったな、リンク!」ゴゴゴゴゴゴ

クッパ「生意気な!その言葉、のし付けて返してやる!!」ゴゴゴゴゴゴ

リンク「なんの、それこそ返り討ちってもんよ!」ゴゴゴゴゴゴ



受付「」ブクブク

ディディーコング「」ガクブル

ルイージ「怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない
     怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない」

ピーチ「3人とも!さっさと覇気を鎮めなさいよ!
    強烈すぎて受付どころか他の選手まで失神者が続出してるんだけど!」

パルテナ「うう…まともに…立って、いられま…せん。
     キャプテンファルコンさんは、よく仁王立ちしていられます…ね…?」フラッ

キャプテンファルコン「」

パルテナ「……??」チョン

キャプテンファルコン「」バターン

パルテナ「……………………あ、あれ?立ったまま気絶してた?
      もしもし?もしもーし?」ユサユサ

146Mii:2019/08/17(土) 21:18:39 ID:u/po2OBc


特に取りこぼしらしい取りこぼしもなく、先を行くマリオ、クッパ。



日程の3分の1が過ぎた頃にようやく、猛追を始めたリンク。



まだまだ大勢控える、歴戦の戦士たち。



さて、栄冠は誰の手に――――

147Mii:2019/08/17(土) 21:21:49 ID:u/po2OBc
マスターハンド「相変わらず、雨知らずの天気っ!晴男でもいるのでしょうか!?
          満員御礼も相変わらずなのは大変うれしいことです、ありがとうございます!
          それでは、今一度、気を引き締めて――試合開始のカウントダウンですっ!」



クッパVSリザードンVSワリオVS Wii Fit トレーナー

ワー!ワー!
クッパ、オウエン シトイテヤルゾー!



クッパ「フンッ、生意気な声援を浴びせる市民どもだ。身の程をわきまえろ」

ワリオ「と言いつつ、内心嬉しいクッパさんでありましたとさ」

クッパ「……そこ、うるさい」

ワリオ「でもよ、俺は納得いかねーのよ。お前に対する声援の方が大きいってのがよー。
    俺様がお前に劣ってるってか?そんな評価、糞くらえってんだ」

クッパ「ほほう、ならば実力を以って知らしめれば良かろう、単純な話なのだ」

ワリオ「まー、そーゆーこったな、分かってるじゃねーか」

148Mii:2019/08/17(土) 21:25:13 ID:u/po2OBc
リザードン「グルルル…」

クッパ「おっと、リザードン。お前も、もちろん強者であることを忘れてはいないのだ。
    ぶっちゃけると、ワガハイとマリオとリンクは別格だが…
    その少し後ろから…淡々と着実に迫ってきている…くらいの実力は、しっかり認めているのだからな。
    パワータイプであったり、炎を吐いたりという共通点もあることだし」

リザードン(グッ)

ワリオ「俺より評価高くね?それ。ムカつくんだが。
    悪気はねーが、リザードンなんて所詮は…
    数多のポケモンのうちのとある1体に過ぎないじゃねーか。

    言ってみれば『通行人A』みたいなもんだぜ?
    選ばれし戦士でも、ラスボスでもないんだぞ?いやまあ赤版の顔ではあるけど」

リザードン「……」イラッ

149Mii:2019/08/17(土) 21:28:27 ID:u/po2OBc
クッパ「ワリオ、口が過ぎるぞ」

ワリオ「悪い悪い…そりゃ、俺もこいつの強さは認めてるけどよー。
    というか、なんでこいつ、こんなに強いわけ?おかしくねぇ?」

クッパ「強いものは強いでよいではないか、本人たちの努力の結果なのだ」








パルテナ(観客席)「リザードンは…というか初代ポケモン勢は、その――

            バージョン違いの本編ソフトが各世代、
            外伝ソフトも割とあり、果てにはポケスタ系統にバトレボと
            それこそキノコ王国メンツに劣らないくらい、
            プレイアブルとして出まくってますよね…」

ピット(観客席)「え、赤版とファイアレッド版以外もカウントされるんですか!?
          さすがにアーケードは含んでいないことを祈りますよ!?」

150Mii:2019/08/17(土) 21:32:21 ID:u/po2OBc
クッパ「で」

ワリオ「だ」



Wii Fit トレーナー(女性)「今日も 一日 頑張りましょう!」ビシッ



クッパ「…どちら様?」

ワリオ「表情が読めん」



観客「ファイブ!」

観客「フォー!」

観客「スリー!」

観客「ツー!」

観客「ワン!」

パアアアァァン!!

実況「――――さあ、試合開始――!戦いの幕が…切って落とされたー!」

151Mii:2019/08/17(土) 21:35:41 ID:u/po2OBc
Wii Fit トレーナー「……」スゥゥゥゥゥ

クッパ(よく分からんが、精神統一を始めたな。ヨガの類か?
    まあ、すぐに動かないというなら、彼女は放置でいいだろう)

クッパ「よし、リザードン!まずは一発景気づけに、
    灼熱ブレス対決と行こうではないか!怖気づくなら無理強いはせんがな!」ボオオオォォォォ!!

リザードン「ガオオォォォ!」ブオオオオオオォォォォ!!

リザードンの かえんほうしゃ!▼



ワリオ「うおっと、退散退散っと!バイビー!」スタコラサッサ

マスターハンド「フィールドど真ん中でブレスと火炎放射のいきなりのぶつかり合い!
          これは会場の熱気以上に、熱い熱い戦いになりそ――」ゴクリ

152Mii:2019/08/17(土) 21:42:20 ID:u/po2OBc





ワリオ「そこ、試合開始前からせっせと溜めてた――
    超可燃性ブレンドの透かしワリオっぺ(威力MAX)あるぞ」





ドッゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!

実況「大爆発が決まったぁ――――――――っ!!!!!」

クッパ「」

リザードン「」

Wii Fit トレーナー「」ガフッ

153Mii:2019/08/17(土) 21:52:08 ID:u/po2OBc
マスターハンド「一目散に退避したワリオ選手を除き、不意の大爆発で、
          全員…壁や足場に叩きつけられましたぁっ!!」

ワリオ「ガハハ…ざまあみやがれ。続けて…ニンニクの息っ!!」ムハーッ



クッパは 毒を 浴びた!▼

リザードンは そらたかく とびあがった!▼

Wii Fit トレーナーは 猛毒を 浴びた!
代謝が 良すぎて 毒の巡りが 早い!▼



実況「いきなりの激しい攻防で、状態異常の選手が続出ですっ!
    いきなりの大乱戦となりましたっ!」

クッパ「ぬおお!!ワリオ、流石に卑怯だぞ!!」ボロッ

ワリオ「いやあ照れるぜ」

クッパ「褒めてない!…うぐ、不快すぎる臭いまで充満して…」

リザードン「フッ!!」アセリ

クッパ「くそっ…そうだなリザードン。
    もうこれ以上、下品な攻撃は食らっていられないのだ!」

154Mii:2019/08/17(土) 21:59:08 ID:u/po2OBc
クッパJr.「パパ、頑張れー!そんな、いろんな意味で汚いやつなんか、
      けちょんけちょんにしちゃえー!」

ラリー「オイラ達の偉大なるクッパ様がお前なんかに負けるかー!」

ロイ「まあまあ。強者同士の対決、暖かく見守ろうよ。どっちも頑張れ!
   …あ。その前に、体操のお姉さんが…あまりにも強烈なニンニクの匂いに
   顔を一層白くして痙攣しだしてるけど…あれ、大丈夫かなあ……」

ウェンディ「ねぇイギー、ロイってこんなに身長高かったかしら?
      こんな立派な剣も持ってなかった気がするんだけど」ヒソヒソ

イギー「ん〜…………イメチェン?……強そうだからまあいいんじゃない?」ヒソヒソ

モートン「オラ…あのワリオってヤツ、嫌い。ナマイキ」

レミー「クッパ様が本気を出したらオマエなんてかーんたんに吹き飛ぶぞ!」

ルドウィッグ「皆、そんなに騒ぎおって…。我々は、ただ悠然と構えて
        約束された勝利を目に焼き付ければいいだけだ」シレッ

155Mii:2019/08/17(土) 22:02:14 ID:u/po2OBc
ピーチ「あーあ、クッパが激怒しちゃってる。知らないわよ…?
    …それにしても、ゼルダもヒルダもロゼッタも付き合い悪いわね、
    ちょっとくらい観戦に付き合いなさいよー。

    というより、せめてゼルダはとっとと1戦くらい戦いなさいよ、
    なーにを日和ってるのかしら」ブツブツ

マリオ「八つ当たり気味に借り出された俺がいるけどな。
    …よし、次はどのドリンクバーを混ぜてくるかなー」

ピーチ「子供かっ!」ビシィッ

マリオ「いやいや、残さないから問題ないし。
    このくらいの糖分なら、1分足らずでらくらく消費できるしな。
 
    …それに、俺は至極真面目に挑戦してるぞ?
    HPやFPを回復する画期的な組み合わせが見つかった例もあるからな」

ピーチ「なにそれもっと聞きたい!」ワクテカ

マリオ「…また今度な」

156Mii:2019/08/17(土) 22:05:21 ID:u/po2OBc
キノピオ「ひ ひ ひ 姫様――!
     た た た 大変です――!」ダダダダダッ



マリオ「…………げげっ」

ピーチ「…………また来たぁ」ガクーン

キノピオ「すすすすいません!なんとお詫び申し上げればよいか!」

ピーチ「…………………………………………で、今度は、なぁに?
    できれば、悪いお知らせでないといいんだけれど」

キノピオ「…………」

キノピオ「えっとぉ、そのぉ。それが…」オドオド

ピーチ「……………………で、どんな悪いお知らせかしら?」

マリオ「どうせまた、ろくでもないことが起こったんだろ…?」ヤレヤレ

157Mii:2019/08/17(土) 22:07:55 ID:u/po2OBc
キノピオ「な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      なんと…
      Mr.ゲーム&ウォッチさんのハンマーが――何者かによって持ち去られてしまった模様で、
      悲しみのあまりオイルパニックになったMr.ゲーム&ウォッチさんのせいで
      修羅場になったんですよ!……はぁっ!言えたあ!」

ピーチ「また窃盗事件ですって――!?いい加減にしなさいよ!」ウガーッ!!


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