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【艦これ】潜水艦泊地の一年戦争
44
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/11/19(月) 22:00:10 ID:t8gH6LFs
――――――――――
ここまで
プロットが整ったので再開します。
モチベが上がるので褒めたり貶したりしてください。
1スレで終わらせることを目標に頑張りますが、期待は厳禁。
あと、濡れ場が今後出てくるので、苦手な方は非推奨です。
45
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/11/19(月) 22:48:07 ID:o4wcyzrQ
待ってた!
乙!
46
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/11/19(月) 23:58:02 ID:ioYNWJjU
短編で終わってたと思ったらやるじゃん
47
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/11/20(火) 05:54:31 ID:UPrVGzmE
イムヤとの濡れ場はよ
48
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/11/20(火) 17:17:05 ID:Bwn3xEhk
乙
そういやSS速報VIPはRダメだけどRが大丈夫なSS速報Rもあるよ
49
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/11/21(水) 15:17:59 ID:Ukn2i8us
乙!
深夜は艦これスレ少なめだし是非とも完走してほしい
50
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/11/22(木) 16:35:08 ID:ZC7DR3ns
楽しみー
51
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/11/23(金) 00:51:06 ID:k8vQnJj2
「重巡洋艦、青葉です。階級は海士長。『艦娘通信』を発行してまして、名前くらいは聞いたことがあると自負しております」
「イムヤ二等海士です。艦種は潜水艦。伊号の168で、イムヤ。よろしくお願いします」
「同じくハチ。はっちゃん、とお呼びください」
「ゴーヤでち。食べ物じゃないよ?」
「はーい! イクなの! 青葉さんに会えてすっごい嬉しいの!」
夕食と聞いて降りてきたときよりも、随分と四人は嬉しそうだった。それだけ青葉のネームバリューが絶大だったということであり、俺はその点において、彼女を見縊っていたことを自覚する。
イクからは握手を求められ、ハチからはサインをねだられ、青葉は困ったような、それでいてまんざらでもなさそうな表情をしている。そろそろハンバーグが焼きあがるというのに席に着く気配すら見えない。
52
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/11/23(金) 00:51:56 ID:k8vQnJj2
「なんで青葉さんがここにいるんですかっ?」
興奮した様子でイムヤが言う。青葉は俺に振り返った。流石に弁えている。説明をするのならば、それは俺の仕事だった。
どのみち、少し長い話にもなる。立ち話で済ませるつもりはなく、ならば食事を摂りながらと、俺は着席を促す。
もとより四人に真実を明かすつもりはなかったけれど。
それに関しては、ある程度の大筋は青葉と検討してある。彼女もそうしたほうがいいと同意はくれた。殊更に詳らかにするメリットは、こと今回のような事態においては、皆無と言っていい。
未来のことはわからない。わからないことで不安にさせる必要がどこにある? それくらいならばいっそ黙ったまま、目の前の訓練に集中してもらった方が断然ましというものだ。
長期的な計画、中期的な計画、短期的な計画とあって、それらは戦略、戦術、戦法と対応している。あいつらはあくまで兵士であり、訓練生に過ぎない。今はとにかく短期的視野に基づいて、新環境に慣れること、その中の訓練を通して能力を上昇させなければ。
未来を見据える必要がないとは言わないが、現状その役目は俺だけのものだった。そのための「提督」の肩書だ。
53
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/11/23(金) 00:52:27 ID:k8vQnJj2
「今年度、一年を通して、青葉にはお前らの活動を追ってもらうことになった。潜水艦は現状では対外的には秘匿されているが、いずれお披露目の時が来る。どうやら上は、大々的に鳴り物入りで発表するつもりらしい」
四人が顔を見合わせた。緊張が生まれたのだとすぐにわかった。
「別に珍しいことじゃねぇだろう? お前らだって、中学高校とスポーツ記者に追われてきたはずだ」
「まぁそりゃそうだけどさー」
イムヤは頬を掻く。今更照れることには思えなかったが、ドキュメンタリーの材料にされるのは、少し勝手が違うのかもしれない。
「え、じゃあ、青葉さんもこの泊地に住み込みってことでちか?」
「そうなるな。部屋はいくらでも余ってるから問題はないし」
「新鮮ですね」
「あはーはーはー! 今日はお祝いの酒盛りなのー! 提督、ビール開けてもいーい?」
「座れ」
危うく冷蔵庫へと向かいそうになったイクを着座させる。お前は距離の詰め方が極端なんだよ。そもそもまだ未成年だろうが。
54
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/11/23(金) 00:53:17 ID:k8vQnJj2
「そんな堅っ苦しいこと、今更言うのはなしでちよ」
「記念日というのは何事においても大事だとはっちゃんも思います」
「お前らなぁ……」
青葉はお前らの取材に来ていると話した傍から飲酒をするやつらがいるか。勿論そんなことを記事になぞできないが、こいつらは世間と離れた生活が長いせいか、内輪の盛り上がりがそのまま世間に通用すると思っている節がある。それでは困る。
俺はため息をついたが、その実こいつらの飲酒はどうでもいいことだった。明日に響かない程度に、ゲロを吐かない程度によろしくやってくれるのであれば。
「イムヤ、助けてくれ」
唯一の良心に助け舟を求めると、困り顔で目を逸らされた。無慈悲。
「わかったわかった。ただし、飯を食ってからにしろ。青葉もお前らとシラフで話したいだろうし、俺も酒が入るまでの青葉と話したいことがある」
「えっ? あ、その、青葉お酒はちょっと……」
潜水艦たちから「えー」という抗議の声が上がる。
「なんだ、下戸か」
55
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/11/23(金) 00:54:23 ID:k8vQnJj2
「ていうわけではないんですが、すぐ寝てしまうたちでして。お風呂とか、その日のメモのまとめとか、全てを終わらせてからじゃないと飲まないように決めているんです」
なるほどな。確かに、ナラティブを重視する青葉にとって、単純に書き出された文字列はあまり意味を持たないだろう。ボイスレコーダーの音声も然り。
仕事の邪魔はできない。四人もそのことをわかっているようで、少し意気消沈しているようだ。
「いえ、でも、皆さんの言うことにも一理あります。全部が終わったら声をかけますので、その時皆さんの都合がよろしければ」
「いえーい!」
「でーち!」
イクとゴーヤが手を叩く。
「明日に残すなよ」
「大丈夫じゃない? 二人は強いし」
あたしは弱いけど、とイムヤ。まぁ、大した心配はしていない。形式的にでも声はかけておかなければ、というくらいだ。
「ほら、お前ら、さっさと飯にするぞ。冷めちまう」
ハンバーグのプレートを人数分用意して、俺たちは手を合わせた。
「いただきます」
56
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/11/23(金) 00:55:06 ID:k8vQnJj2
ナイフとフォークがぶつかりあう音をBGMに、俺はかねてより訊きたかったことを青葉に向ける。
「お前がやってる艦娘通信ってのは、結局広報部の仕事を肩代わりしてるのか? それとも従軍記者の扱いなのか?」
「んー、どっちでもない、って感じですかねぇ。厳密に言えば広報部の息はかかってるといいますか、検閲は入ってますよ。映しちゃだめな画像とか、文章とか、そのあたりは勿論確認してもらってます。
ただ、別に次の取材はどこどこで誰々を、ってのは無縁です。基本的には」
最後につけたしたのは、今回のようなことがあるからだろう。兵士なんてのは上層部の手足に過ぎない。青葉の言葉には少しばかりの悲哀と憤懣があった。
「広報部ってのは、海軍の」
「はい。防衛省広報部の下の、特務警備広報室、だったかな? 神祇省のことはよくわかんないです」
「提督、イクたちにもわかる話をするのねー」
「お前ら、座学でやっただろうが」
俺が教鞭を執った日々を忘れたとは言わせねぇぞ。
「あはーはーはー」
笑いでごまかすんじゃねぇ。
57
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/11/23(金) 00:55:40 ID:k8vQnJj2
艦娘は防衛省の海軍所属であるが、艦娘を生み出す方法――子女に嘗て存在した艦艇の付喪神を降ろすというもの――に関しては、完全に神祇省の技術となっている。ゆえに艦娘は単純に防衛省の旗下にあるわけではなく、寧ろ真逆で、極めてきわどいパワーバランスの上に成立している。
あるいは、最初から今まで、一瞬たりとも成立したことなどなかったのかもしれないが。
つまり、艦娘の運用は防衛省のみでは行えない。神祇省の技術供与がなければ、そもそもの根底が揺らぐことになる。
しかし人は強欲で、気を抜けばすぐに権力の虜になってしまうから。
防衛省も神祇省も、あわよくば艦娘を手中に収めたいと考えている。
艦娘の全権を握るということは、これから先の国防を一手に引き受けるということでもある。敷衍してシーレーンを、海運を、経済を牛耳る糸口となる。
嘗てならば一笑に付すことさえしなかったそんなお伽噺も、深海棲艦などという化け物が出没する現在では、それらは限りなく重要なトピックスだ。
58
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/11/23(金) 00:56:33 ID:k8vQnJj2
「……あの、なら青葉さんも、艦娘はやっぱり『兵器』だって思ってるんですか?」
「……あー……」
イムヤの質問は手探りのものだった。応ずる青葉も、返答を手探りで探している様子。
艦娘は「人」なのか「兵器」なのか。艦娘という存在が生まれた当初から喧々諤々の議論が交わされ続けているが、いまだに単一の、統一の、見解は出ていない。
「防衛省は――というか、海軍は、ですね。兵器として扱いたいって魂胆が丸見えです」
「……それは、まぁ、はい。感じてます。
でも、言ってもよかったんですか?」
「なにを仰いますやら。イムヤさんから訊いてきたんじゃないですか」
青葉の言葉には、少なくとも字面ほどの厭味は感じられなかった。
「独立した個人に戦いを任せられないというのは、組織ならば仕方がないことかもしれませんけどね。あくまで海軍が計画を定め、提督が実行し、艦娘はそれに従っていればいいというドクトリンは、ある程度の一貫性はあるでしょう。納得もできます。
――青葉が艦娘でなければ」
自らの手を握り、開いて、青葉は笑う。
「だって青葉、兵器じゃないですもん」
59
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/11/23(金) 00:57:48 ID:k8vQnJj2
兵士であり、兵器ではない。
そこには彼女なりの向き合い方、矜持が見え隠れしていた。
あくまで人間として生き、人間として職務を全うし、その上で殉ずる覚悟すらあれど、決して一発の弾丸、一山の火薬、一滴の重油ではないと。
「……でしょう? ねぇ、司令官」
背筋が凍る思いをしながら、俺は鷹揚に頷いて見せる。あぁ、その通りだ、などとのたまいながら。
左足が痛い。とっくに失って久しいそこが。
幻肢痛は今も俺を苛んでいる。それから逃げようとした結果が今の俺なのに、その痛みは俺の選択が誤っているのだと突きつけているようで。
「……提督? 大丈夫ですか」
「痛む、でちか?」
俺の演技も随分とお粗末だったらしい。脂汗が滲むのはさすがにどうしようもなかったか。
ハンバーグを最後の一切れ口の中へと放り込み、サラダ、スープで嚥下する。味なんてわからない。それでも喰わねば体がもたない。
60
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/11/23(金) 00:59:40 ID:k8vQnJj2
なるべくテーブルに体を預けるように立ち上がった。
「すまん、少し部屋で休む」
「肩、貸すでちよ」
「いや……」
俺の言葉が言い終わるより先にゴーヤが動いていた。俺の肩の下に体を入れて、全身で支えてくれる。
「悪いな。あとは女だけで仲良くやってくれ。
……酒盛りをするなら、一応声、かけてくれよな。調子も多分、すぐに戻るだろうから」
最後のそれは嘘だった。調子が戻るはずなどないと、俺自身が微塵も信じていないのだから。
「歩けるでちか? 反対側も支えてもらう?」
「なんとか」
ゴーヤの甘酸っぱい香りの中に、少しだけ汗のにおいも紛れ込んでいる。俺を心配そうに見上げて、視線が交わったことで安心したのか、ゴーヤはまた前を向きなおした。
一歩、一歩、確実に歩いていく。
61
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/11/23(金) 01:00:15 ID:k8vQnJj2
脚が痛む。
存在しない脚が。
吹き飛ばされたはずの脚が。
だが、痛みの根源はそこにはなかった。俺は知っている。知ったうえで、どうしようもできないでいる。
罪悪感。
愛してくれる彼女を、愛した彼女たちを、騙し、利用しているという事実が、俺にはどうしようもないくらいに耐え難かった。
62
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/11/23(金) 01:01:30 ID:k8vQnJj2
――――――――――――――
ここまで
説明回。設定自体は「ギャルゲー的展開ktkr」と同一……というか全作同一。
待て、次回。
63
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/11/23(金) 06:23:00 ID:cvn2rwYs
乙乙
しかし青葉以外は明石や大淀もいないらしい鎮守府で前回の描写からして艦娘の追加は無さそうな感じかな?
64
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/11/23(金) 19:49:17 ID:Uk.Mf12U
おつおつ
65
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/11/24(土) 10:37:44 ID:QA3bCZc6
復活乙なのです!
66
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/11/24(土) 13:45:40 ID:qFC3CPpU
おつでち
67
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/11/26(月) 17:44:27 ID:yUMidoCg
待つぞ!
68
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/02(日) 11:15:18 ID:QBYrAgBk
脚の痛みは悪夢を引き起こす。
あるはずのない左足が痛む。膝の少し上より下は、そっくりと義足に置き換わっていた。当然神経は通っていない。のに、痛む。
幻肢痛だと医者は言った。聞いたことくらいはあった。精神的な要因が大きく、薬は処方するが、それで治るわけではないらしかった。
それ以上のことを医者は言わなかった。具体的にどんな話をしたか、殆ど覚えていない。ただ診断の終了間際に「あなたがきちんと脚を失くしたことを認め、乗り越えられた暁には、その痛みはきっと引くでしょう」などと世迷言を言われたことははっきりと覚えている。
床に臥せて痛みをじっと堪えていると、そのうち次第に睡魔が襲ってくる。半覚醒、半睡眠状態。おぼろげながらも意識はきちんとそこにあり、そして夢を見ているのだ。
現実と夢の境界線がどこにあるのかはわからない。が、ある瞬間から、「ここは夢なのだ」と思うようになる。そのとき俺は意識だけの存在となって、過去や、現在や、あるいはもっと突拍子もない夢物語――文字通りの意味だ――を体験することとなる。
69
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/02(日) 11:16:01 ID:QBYrAgBk
「国村健臣」
「はい!」
俺の名前が呼ばれた。そのままスーツ姿の男性のもとへと歩いていき、少し前で止まる。踵をあわせて直立不動。
男性は手に賞状を持っていた。それを読み上げていく。男子個人、自由形、優勝。俺が三年の時の水泳の国体の記録は、高校新記録にあとわずかに及ばない範囲で、けれど優勝には十分だった。
自分で言うものでもないのだろうが、実際、俺は将来を嘱望されていた。誰もが、俺が水泳の選手として未来の五輪大会に出るものだと信じて疑わなかった。そして俺もそのつもりだった。
高校卒業後、特に水泳に強い大学の水泳部に入り、そこでも俺は一年目から実力者であり続けた。当然、高校とは比べ物にならないくらいにトレーニングは過酷だったが、それは望むところだった。
過酷なトレーニングは、ある種先輩たちからのやっかみやシゴキの要素もあったのかもしれない。俺はとにかく泳いだ。走った。肉体づくりに勤しんだ。それが俺の為すべきことだと信じて疑わなかったし、これまで努力が俺を裏切ったこともまたなかったからだ。
70
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/02(日) 11:16:46 ID:QBYrAgBk
記録は徐々にであるが確実に伸びていた。スランプもあったが、克服した。家は寝るための場所で、大学の単位は常にぎりぎりのラインだった。それでよかった。泳ぐことは嫌いではなかったし、何より、たった一つの目的にひたむきになることが、とても性に合っていたのだ。
雑誌の記者からの取材もいくらかあった。俺は今や日本水泳界の期待の星となり、雑誌に取り上げられる回数が増えるにつれ、愛想笑いのうまさにも拍車がかかる。
幸か不幸か見てくれは悪くなかったため、それも取り巻きが増える原因だったのだろう。ただ、その時の俺にとってはあまりにも邪魔だった。集中を乱される環境はごめんだった。
結果的にではあるが。
いまだからこそ言えることではあるが。
俺にあったのは水泳の才ではなかった。努力というべきか、集中というべきか。目の前のことに全身全霊を注ぐことが、どうやら俺は人よりもよほど得意だと気付いたのは、皮肉にも脚を失ってからなわけなのだが。
71
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/02(日) 11:17:44 ID:QBYrAgBk
大会の遠征の帰り。
俺の――俺たちの乗ったフェリーは、深海棲艦の襲撃に遭った
72
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/02(日) 11:18:34 ID:QBYrAgBk
醜悪な歯の生えた黒い球体。シャチほどもある金属質の生命。人の形をした、けれど明確に人ではない、なにものか。
船が揺れる。どこかの火災を告げる警報。遅れてスプリンクラーから放水が為され、なにがなんだかわからないままに外へと転がりこんだ。しかし外には悪鬼がわらわらといて……たった今閉じたばかりの扉を開く。
どこにも逃げ場などないと言うのに。
当時はいまほどには深海棲艦の周知もされておらず、艦娘の配備されていない地も多く、救難信号から初動到着まではゆうに三十分はかかった。
その時間は、俺が深海棲艦に襲われるには十分な時間。
揺れは断続的に、そして徐々に巨大になっていく。火災報知器が鳴り響く中、俺はスプリンクラーの放水を受け、ずぶ濡れになりながら走る。どこへ? 逃げ場がどこにある? どこかへ隠れたって、どうせこの船は沈むだけだぞ?
一際大きな揺れが船を襲った。脚を滑らせて肩から壁へと激突する。骨の軋む音。しかし、激痛よりも今は、割れた窓から放り出された人々の行方が気になった。思わず目で追って、そのことを後悔する。
俺もああなりたくはなかった。
73
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/02(日) 11:19:14 ID:QBYrAgBk
鵺のような声が耳を劈く。
顔を向けた先には、歯。
歯、歯、歯。空を飛ぶ歯の大群が。
「うああああああっ!」
左足は、奇怪な化け物の口の中へと呑みこまれていった。
今でも耳に残っている。皮膚が裂ける音、肉が千切れる音、骨が砕ける音。そして悪鬼たちの咀嚼音。
やめろ、やめてくれ、それは俺の脚だ。お前らのものじゃない。俺のものだ。お前らの餌なんかじゃない!
血の泡を吹きながら叫ぶ。これは夢であって夢ではなかった。辛く苦しい現実が、俺の前には確かに横たわっていて、それはいまだに長く尾を引いている。
見聞きしたくないことが生きる原動力であるというのは、あまりにも皮肉が効きすぎている。
カンカンカン、と硬質な金属音。何かで何かを叩きつけるような……例えば、デッキを靴底で勢いよく蹴飛ばすような。
「大丈夫ですか!?」
見てわからないのか。真っ先に沸いたのは、喜びよりも見当はずれな怒りだった。
74
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/02(日) 11:19:56 ID:QBYrAgBk
激痛に切られかけている思考の糸を手繰り寄せて、なんとか声の主を、人物の誰何を試みる。助けが来たのだ。途切れかけの意識の中で、それだけは確信が持てた。それだけで十分だったとも言える。
俺を助けてくれたのが「艦娘」の、「比叡」という娘だったことは後から知った。
乗客七十八名のうち、死者は五名。重軽傷者は十二名。
重軽傷者の中には、当然、俺の名前も。
命が残っただけでも儲けものだと、そんなありきたりな慰めは要らなかった。本質的には、それは俺の心を土足で踏み躙る行為に等しい。たとえ事実であったとしても。
脚を失った人間が、どうやってこれから泳いでいけるというのだ?
失意に底があるのだとすれば、あのとき俺のいた場所がそうに違いなかった。水泳はもう俺とともにはなかった。脚と一緒に、天国に、あるいは地獄に旅立ってしまっている。残されたのは国村健臣という、ただ右往左往するばかりのちっぽけな人間が一人。
周囲からの失望は皆無だった。日本水泳界の宝が、と嘆きながらも、深海棲艦に襲われた悲劇のインパクトに全てが霞んでいるのだろう。
75
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/02(日) 11:20:39 ID:QBYrAgBk
それは救いでもあったし絶望でもあった。泳げない俺にこの先を期待されることはこの上なく辛かったし、かといって泳げないという現実の重みに一人では耐えられそうにもなかったのだ。
いや、結局のところ俺は、単に全てに嫌気がさしていたに違いない。叱咤激励を望みつつも、実際にもらえば「俺のことなど何一つわからないくせに」と悪罵をぶちまける、そんな生き物が俺の正体だった。
泳ぎたい。泳ぎたかった。
それが叶わないのだとすれば、せめて俺に生きる希望を、誰か、くれよ。
寄越せ!
「いいだろう」
壁へと無造作に叩きつけたテレビのリモコンが、かしゃんと音を立てて地面に落ちた。裏蓋が外れ、電池が転がる。入ってきた人物は単四電池を拾い上げ、まるで俺の叫びなどなんでもないさと言うように、手渡しでそれを返してくる。
心の叫びを聞かれてしまった恥ずかしさはない。羞恥は未来があってこそだから。
76
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/02(日) 11:21:32 ID:QBYrAgBk
中年の男性だった。四十の半ばくらい、だろうか。ワイシャツに、スラックス。ネクタイは身に着けていない。色黒でがっしりしている。単なるサラリーマンとは少し雰囲気が違っていた。
なぜか白い手袋をはめている。潔癖症なのかもしれない。それにしては、右手だけなのが気になった。
「田丸剛二、という。はじめまして」
野太い声。不思議と通るその口調から、普段は多人数に向けて話す人間なのだと、なんとなく思った。
「……誰だ?」
「暴れるのは体に障るんじゃないかな」
俺の質問を頭から無視して、男は鼻を鳴らした。
「何しに来た? なんだ、あんた」
「きみに生きる希望をあげようというのだよ」
田丸という男は、自らが海軍の人間だと名乗った。
俺が乗ったフェリーを襲ったのは深海棲艦。そして助けてくれたのは「艦娘」と名付けられた海軍の兵器。新聞の片隅で見たことがある単語が矢継ぎ早に繰り出され、咀嚼と理解に時間がかかったものの、なんとか嚥下する。
深海棲艦―――俺が見た、あの化け物。現状、それほど話題にはなっていないが、それはあくまで報道管制が敷かれているからに過ぎない。深海棲艦の被害や目撃情報は顕著に増加しており、それに対応するための準備を、海軍では行っているのだという。
77
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/02(日) 11:22:17 ID:QBYrAgBk
「いずれ隠し通せなくなる時が来るだろう。それは最早時間の問題だ。ことが露見する前に、先手を打って海軍では、記者会見を開く。そちらのほうが主導権を握ることができる」
一体誰と争っているのか、その時の俺には判然としない。
というよりも、この目の前の男は、なにを語っているのか。
「……だから?」
「軍人にならないかね、きみ」
「……スカウトなんて、わざわざ、俺を……」
言葉はそれ以上出てこなかった。何を言えばいいのかもわからなかった。最もわからないのは、この田丸という男の魂胆だった。
「『艦娘』は兵器ではあるが、人間でもある。残念なことにね。メンテナンスが大変なんだ。導入コストは安くても、ランニングコストがかかる……そんな事例は枚挙に暇がない。
深海棲艦は艦娘がいなければ太刀打ちできない。これもまた、残念なことだ。だが、仕方がない」
「話が長いって言われないか?」
「性分でね。だが、言われたことはない。俺に意見をできる人間は、そう多くはない。
……長い話が嫌いだと言うのなら、可能な限り、端的に言おう。国村健臣くん、きみには教官になってもらいたい」
78
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/02(日) 11:23:13 ID:QBYrAgBk
「……」
教官。その言葉の意味。
話の流れからして、それは、俺が艦娘とやらに何かを教えるということに他ならなかった。だがなぜ俺だ? 俺の一体どこに惚れこんで、何を見込んで、この田丸とやらはわざわざ病室まで足を運んできたのだ?
こんな片足の無い男になにができるというのだ?
「何をさせるつもりだ」
「教官、だよ。呼んで字のごとくだ」
「誰かに何かを教えられるほどの学はねぇ。俺にはもう何もねぇ」
水泳さえも、手から――否、脚から、零れていった。
「泳ぐのが得意と聞いたが」
「――ッ! だからっ! 俺にはっ!
バカにしてんのか、片足なくして何ができるってんだ!」
「ならば用意させよう」
79
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/02(日) 11:23:47 ID:QBYrAgBk
「……はぁ?」
「世の中には出回らない逸品というものは、確かに存在するのだよ、きみ。作ったはいいが、生産ベースに乗らなかったもの、というものがね。俺たちは当然艤装を――あぁ、まぁ、兵器の呼び方とでも思ってもらえればいいさ。それを開発しているわけなんだが、その副産物として、義手や義足のノウハウもある」
それはあるいは、戦闘で四肢を欠損した「艦娘」たち用のものなのかもしれなかった。
「それをきみに供与しよう。過酷な訓練でも使用可能なのは実証済みだ。以前と同様に動ける。まぁ、水泳の大会に出ることはやめてもらいたいが……目立つと困るんでね」
俺は自らの左足に目を向けた。ズボンの膝から下が不自然に潰れている。ぺしゃんこに、真っ平らに、まるで中身が何もないかのように。
いまだにそこには俺の脚がきちんとあるように思われた。意識をせずとも、そこにあるはずの、勝手に動くはずの、俺だけの脚が。だが、全てはまやかしにすぎない。痛みはないことが余計に現実感を喪失させている。
80
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/02(日) 11:24:59 ID:QBYrAgBk
「……俺にそんなことをして、あんたに利益があるって言うのか」
「従順な犬が欲しくてね」
と、田丸はこともなげに言った。
ペットショップに行きやがれ、とは思っても言えなかった。
「『艦娘計画』はとっくに動き出している。第一次は無事終わり、第二次も半ば……いずれ彼女たちの存在は、深海棲艦とともに人口に膾炙するだろう。今は水上艦だけだが、恐らくそうはなるまい。
俺はね、きみ、将来的な優位を得たいのだよ。『潜水艦娘計画』を考えていてね、泳ぎの得意な少女たちも数人、見繕っている。俺が立ち上げる。俺が長になる。俺の息のかかった教官が――」
と、田丸は俺に視線をやって、意味ありげににやりと笑った。
「――彼女たちを教える。そうして巣立っていった艦娘たちは、全て俺の兵器だ。そのためには必要なものが多い。有能で従順な教官は必須だ」
81
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/02(日) 11:25:55 ID:QBYrAgBk
現実味のない話だった。それはこの男の夢物語が、というわけではない。いきなりやってきた権力闘争は、まるで別世界の出来事のようで、俺のことを話されているのに、全然我がことのような気がしないのだ。
潜水艦。そりゃあ、名前くらいは聞いている。あれだろう? 沈んだりするやつだろう?
泳ぎの得意な人間が必要な理由もなんとなくはわかった。だが、それだけでは理由には弱い気もする。自らに従順な犬が欲しいのだとは田丸の自己申告の通りだろうが、それくらいならば海軍の中からいくらでも探し出せるはずだ。わざわざ俺を択ぶ理由なんてない。
「……断ったら?」
恐る恐るの問いに、田丸は笑った。失笑だった。
「断らないさ、きみは」
なぜ? どうして? そう思えるんだ。
確かに義足は魅力的な話のように思えた。車椅子の無い生活。歩ける生活。動ける生活。失ったものはしょうがないと思えるほどに俺は達観はできなかったけれど、しかし、失われてしまったからこそ、嘗ての生活は宝石のように輝いて映る。
82
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/02(日) 11:26:57 ID:QBYrAgBk
「きみの脚は深海棲艦によって奪われた。未来も。水泳も。何もかもだ。軍人になれば、教官になって艦娘を鍛え上げることができれば、それは、きみの復讐となる。違うかい」
「復讐……」
俺の脚は失われたのではなかった。それは正確ではない。語弊がある。
俺の脚は奪われたのだ。
深海棲艦に。
未来とともに、水底に沈んだ。
「恨みはあるだろう。俺が部屋に入ったとき、きみは怒っていたね。壁にリモコンを叩きつけていたが、違うだろう。そうじゃない。怒りの矛先は、病室の壁なんかじゃあない。
ともに深海棲艦を駆逐しようじゃないか。痛みを受けたぶんだけ返す権利が誰にでも存在する。それに、きみが共感となって有能な艦娘を送り出せば送り出すほど、同じような犠牲者を減らすことができるんだ」
「……その過程で、あんたは昇進を果たす、か」
「些細なことじゃないか」
それはその通りだった。俺には、こいつの椅子がどれだけ豪華になろうが、さして興味はないのだ。
俺がしたいのは、俺の願いは……。
失われた脚の――奪われた脚の、熱量が、俺の体の、どこに潜んでいるかと言えば。
83
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/02(日) 11:28:38 ID:QBYrAgBk
心臓が熱い。不随意筋は熱を感じるはずがない。だからこれは、まったくの幻覚に違いなかった。
「……断ったら?」
再度の問い。
「断らないさ、きみは」
再度の答え。
「なぜわかる」
疑問であり、詰問だった。既に俺の答えは決まっていた。
田丸は狂乱に輝く瞳で、自らの右手の白手袋に指をかける。中指の先を摘まんで、一気に引き抜いた。
……その中には。
「さぁ、国村くん。潜水艦たちの教官になってくれるね?」
84
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/02(日) 11:30:12 ID:QBYrAgBk
――――――――――――
ここまで
ついに艦娘が出ない箇所が出てきてしまった。
「ギャルゲー的展開」のほうとは意図的に構成変えてあります。
待て、次回。
85
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/12/02(日) 20:09:43 ID:TyoCMhoo
待つ、次回
86
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/12/03(月) 01:30:40 ID:1Pa33EgE
ここまでガッツリ地の文の文章を深夜で読んだのは久方ぶりっすわ
でも良い感じの読後感なんで、なる早のおかわりプリーズです
87
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/12/04(火) 01:00:57 ID:stZbutlU
おつなんだぜ
88
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/12/04(火) 21:50:09 ID:8XxN41bw
今回も面白い、おつ
89
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/08(土) 23:18:23 ID:uiesM3ME
「今日からお前たちの教官となる、国村健臣だ。長い付き合いになるだろう。よろしく頼む」
目の前の四人に向かって、俺は頭を下げた。
きらきら瞳を輝かせながら四人、こちらを窺っている。実際に会うのは初めてだが、資料は穴が開くほど熟読してある。それ以前の問題として、彼女たちの顔と名前くらいは、水泳雑誌で見たことがあった。
どうやら田村の言った「才能がある少女を集めた」という言葉は本当だったらしい。
そして、それは俺に限ったことではないようだった。桃色の髪の毛に大きな飾りをつけた少女が俺を指さして、
「本物だー!」
と叫んだからだ。
本物も偽物もあるものかよ、と内心で呟く。俺が有名だったのは海難事故に巻き込まれるまで。あれからリハビリで一年、「提督」として必要な能力を得るために二年が経過していて、俺はすっかりと過去の選手になってしまっているらしい。
だが、それは寧ろちょうどよかったようにも思える。水泳は水底に沈んだ。それに気を向けることは、決して俺の利にはならない。
90
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/08(土) 23:19:16 ID:uiesM3ME
やるべきことはただ一つ。たった一つ。シンプルで、わかりやすいこと。
深海棲艦は殲滅しなければならない。
同期として、同じく「提督」を志す何人かと、俺は二年間共同生活を送っていた。彼らにもさまざまな理念があって、単純に興味があっただけというやつもいれば、実家が海沿いで被害にあったやつもいた。日本国民を守りたいのだという崇高な志しのやつも。
覚悟や誇りに貴賤はない。俺は自らが復讐心で動いていることをきちんと理解していたし、そのことを恥じるつもりも、ましてや誰かに言い訳めいたことを言うつもりもなかった。とはいえ、それはおおっぴらにするのとはまた異なる。戦いを私物化はできない。いわんや国防をば。
少女たちはそれぞれ自らの名を名乗った。潜水艦の名前ではなく、素体名を。本名を。除隊するまで別れを告げるそれらを。
元気な声だった。何より、健気な声だった。
こいつらの後ろにいる田丸や、俺なんかの、権力や憎悪やそういったどす黒い汚濁など、一切知らない彼女たちは、だからこそ輝いていた。それは新雪にも似ている。
気高くあろうと生きる人間は美しいものだが、汚れを知らない無垢な存在もまた、別のベクトルで美しいのだ。
91
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/08(土) 23:20:28 ID:uiesM3ME
俺はそのまっさらで真っ白な平原に、さてどうやって足跡をつけていくべきか、目の前にして悩んだ。いくらかシミュレートはしていたけれど、いざ往かんとしたときには、やはりそうはいかないらしい。
それでも後には退けないのだ。俺は最早、田丸の従順な犬と化した。それ以上に、自らの復讐心の鬼となっている。育てたのは俺だ。ならば、鎖で繋ぐのも俺であるべき。解き放したりしないのが最低限のマナーだろう。
左足に触れた。新素材のそれは、セラミックより軽く、硬い。カーボンナノチューブは柔軟性と弾力、そして伸縮性に優れ、関節のどんな可動域にも対応できる。
俺の新たな足は、恐らく肉と骨と皮と血よりも、性能はいいのだろう。入念なメンテナンスは必要だったが、ある一定以上の機能を維持する場合、そんなのは肉体でも変わらない。
それでも俺は本物が良かった。体温を感じる肉と骨と皮と血のほうが、何倍も何十倍も、俺のものであるような気がした。
92
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/08(土) 23:21:04 ID:uiesM3ME
この義足のメンテナンス費用なども、全て田丸が賄ってくれている。「先行投資だからね」とやつは底冷えのする笑いとともに言っていた。俺に求められているのは、提督としてこの少女たちをきちんと導いてやること。
正しく兵器に仕立て上げること。
そのためならば、あらゆる汚辱は被る覚悟があった。卑怯な手段も講じるつもりがあった。
艦娘はあくまで一つの駒にすぎない。戦略的には、勿論そうだ。何より、こいつらは俺の礎だった。俺の復讐と未来と義足と、その他諸々のための道具だった。
どうやって俺の言うことをきかせるか考えたとき、尊敬の念を抱かせたり、単純に立場から指示したり、選択肢はごまんとある。取り得る手段は一つきりではない。時には複合して、うまく手なずけていく必要がある。
だから、これもその一環に過ぎないはずだった。
恋愛感情を利用するのは、それこそ、最も手っ取り早いように思われた。
所詮高校生など、いくらでもやりようはあるはずだから。
――俺の脚が、ずきん、と痛んだ。
93
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/08(土) 23:21:50 ID:uiesM3ME
* * *
ひんやりとした心地よさを感じて、俺は薄ら目を開けた。ぼやけた視界が徐々に輪郭を取り戻していき、真っ先に視界のなかに、一杯の桃色が映る。
「……あ、おこしちゃった?」
心配そうにこちらを覗き込んでくるゴーヤの表情には、一切の衒いがない。こいつらはどこまでも真っ直ぐだ。全てに全力でぶつかるのは、若い者の特権なのかもしれないが、たまに行き過ぎることもある。
ただ、それが俺にはどうしようもなく眩しく見えるときがあって、そんなとき、俺はこいつらを直視できず、思わず目を細めてしまう。
顔を動かすと、額に置かれていた何かがずれ、視界の半分を覆った。ゴーヤが「もう」と軽く笑って、それをまた額に戻してくれる。硬く絞った濡れタオルのようだ。
「凄い苦しそうな顔、してたでち」
「……そうか」
94
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/08(土) 23:22:24 ID:uiesM3ME
「ゴーヤたちの名前、呼んでた気がしたけど」
そんなつもりはなかったが、ゴーヤが言うからにはそうなのだろう。
「……夢を、見ていた。昔の。お前らと会った時の、光景を」
「珍しいでちね。そんな感傷的な感じになるなんて」
「そうかな……」
「そうでち。だって提督は前を向きっぱだから。そういう、過去に頓着するのは、珍しいかもって」
「……」
言われてみれば、確かにそうかもしれなかった。
いや、前を向く原動力が過去にあるのだとすれば、俺は一体どちらを向いて生きていることになるのだろう。
「大丈夫? 脚」
「まぁ、ある程度は」
嘘だった。寧ろ痛みは増しているくらいだった。
見れば、ゴーヤの頬は紅潮していた。息から微かに甘い、アルコールの匂いがする。
時間はわからないが部屋は暗く、窓から見える外もまた暗い。深夜。食堂で話していた歓迎会がお開きになったのか、はたまた途中で抜け出してきたのか。
95
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/08(土) 23:23:00 ID:uiesM3ME
「他の奴らは?」
「多分寝ちゃったんじゃないかな? ゴーヤも、そろそろ寝ようと思って、最後にちょっとだけ様子見ようってだけだったから……」
となると、もうだいぶ夜も深いらしい。変な時間に眠ってしまったからだろうか、何もかもが判然としない。
いや、悪夢のせいか。
かぶりを振った。悪夢のせいですらなかった。俺は万事に通じているとは口が裂けても言えないけれど、それでも、幸いにも――あるいは不幸にも、俺自身のことは理解ができているから、この身に何が起きているかくらいは納得ができる。
「……大丈夫?」
「……」
ゴーヤの顔が、近くにあった。
酩酊が作り出した表情筋の弛緩は、暗闇の中では扇情さだけが際立っている。少女であり、女性でもある年頃。髪の毛は艶やかで、肌は透き通るほどに白く、制汗剤と虫除けの混じった匂いが僅かに首元から漂って……。
まるで夏の具現じゃないか、と俺は思った。塩素くさい25mプールと降り注ぐ陽光ばかりが俺の真夏ではあったが、創作の世界の中にしかないはずの情熱や熱気や、何より胸の高鳴りがここには確かに存在していた。春の東日本、田舎の廃校舎の一室に。
96
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/08(土) 23:23:54 ID:uiesM3ME
気づけばゴーヤの頬に手をやってしまっている。彼女は少し驚いて、だがすぐに勝ち誇ったように笑った。へへーん。わざとらしく鼻さえ鳴らしている。
ゴーヤはくすぐったそうに手から逃げ、その実ぎりぎりの、触れるか触れないかと言った感触を楽しんでいた。俺の指先に自らの肌を擦り付けているようにさえ見える。
手のひらが、指先が、手の甲が、彼女に触れられた箇所が熱い。
同意の上の白々しさによって、手が自然に/導かれて口元へと向かう。手はまだ頬にある。しかし、親指が口の端へとかかっている。
ゴーヤはそれをぺろりと舐めた。柔らかい、唾液に濡れた舌で。
「……えへっ」
笑う。
俺はもう、自らの屹立したものが痛いくらいだった。
97
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/08(土) 23:24:35 ID:uiesM3ME
どうしたらいいだろう。どうすべきだろう。俺は今すぐにでもこいつを抱きしめて、唇を貪り、唾液を啜り、押し倒しながら服をはぎ取って、前戯もほどほどに突っ込んでかき回してやりたい衝動に駆られるも、そうできないのだ。そうしてはならないのだ。
ゴーヤが手を伸ばしてくる。互いに、背中へ腕を回し、きつくきつく、抱き締めあう。
この冷えた体に気づかれないか、気が気でない。
なんでもすると言ったろう! 深海棲艦を殲滅し! この脚と、未来の借りを返すためならば! 小娘の四人くらいを手玉に取るのなんて、へいちゃらだと言ったろう!
そのために田丸の犬になり、そのためにリハビリにも耐え、苦しい教練を乗り越えたのではないのか!
脚が痛む。
あぁそうだ。だからそうした。そうしたじゃないか。その結果がこれだ。目的は果たした。田丸は、少なくとも俺の仕事には満足している。俺だってうまくやれている自負はある。
計画の頓挫は予想外だが、まだ決まったわけじゃあない。最善を尽くすつもりは十分に有る。でなければ報われない。
98
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/08(土) 23:25:17 ID:uiesM3ME
報われない? 誰が?
俺が?
こいつらが?
プランの完遂には、どうしても不幸な犠牲はついて回るものだ。
犠牲とは誰のことを言っている?
今更こいつらに情が湧いたか? と心の奥底で誰かが問うた。
俺は台風を恐れる子供のように、ゴーヤに回す手に力を籠める。
誰か、俺の代わりに、「あぁ」と答えてくれ。
どうやら俺はゴーヤのことを愛してしまっているらしい。
99
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/08(土) 23:27:08 ID:uiesM3ME
それはあまりにも致命的で、どこまでも致命的で、ことごとく致命的だった。綺麗に肋骨の隙間を抜けて心臓へと深々突き刺さる一本の薄刃。ゴーヤは夏の具現でもあり、そして暗器の具現でもあったのだ。
ミイラ取りがミイラになってしまったと気付いたのはいつごろだろう。挨拶を交わして、半年も経たぬうちに、自然と目で追ってしまっていたはずだ。快活でよく笑い、少しだけ面倒くさがりで、けれど責任感は誰よりも強い彼女は、いつだって俺の背中から「教官」と呼んだ。
復讐心が薄まっている自覚はあった。奪われた脚と俺の未来。深海棲艦をこの世から根絶やしにするという気持ちは、今も昔も変わらない。そのためなら全てを利用するつもりだった。いくらでも田丸に利用されてやるつもりだった。
そして俺は、利用するつもりで彼女に――彼女たちに近づいたのだ。
惚れさせてしまえば、どんな無茶でも聞き入れるだろうと高を括って。
こいつらは人間を既に止めた身だ。神をその体に降ろす、護国のための決戦兵器。だから俺たちがいかに扱ったって構いやしない。そうじゃないか?
そうだろう?
100
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/08(土) 23:27:38 ID:uiesM3ME
脚が痛む。
過去の気持ちが偽りだったからと言って、今の気持ちが偽りだとは限らない。恋人のなれ初めが常に相思相愛であるわけではない。わかっている。わかっているのだ。
それでも、偽りであった関係が、いつの間にか本当の関係にすり替わっているのだと都合のいい考えに徹することはできない。
奪われた脚への想いは、今でも俺の中心に、大きく居座っているから。
だから痛みを笑顔で隠し、大してなんでもないふうを装うのだ。
「ゴーヤ、愛してるぞ」
その言葉だけは、偽りではない。
101
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/08(土) 23:28:33 ID:uiesM3ME
―――――――――――――
ここまで
次回は濡れ場かな。
ゴーヤと寝てこないと……。
待て、次回。
102
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/12/09(日) 00:38:16 ID:XaIVVgOg
待つぞ
103
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/12/09(日) 02:37:40 ID:jQYWcUK2
いくら提督としてのガワを身につけたとはいえ、元がひたすらに水泳一筋だった人が搦め手に手を出したら、そりゃあなぁ
104
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/12/09(日) 16:16:03 ID:CG5LPwJ6
溺れちゃってる
105
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/12/18(火) 23:56:07 ID:3bYJ.Pew
年明ける前には一回更新来るかねー?
106
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/21(金) 01:01:49 ID:Lq4003/Y
裸になることには抵抗があった。
年甲斐もなく恥じらいがあるわけではない。ただ、トレーニングを欠かさずとも、全盛期とはどうしたって筋肉のつき方が違う。身体の衰えがある。醜くなる己の体は嫌だったし、比較して否応なく過去は輝いて見えて、それもまた嫌だった。
なにより義足を外したその痕が、奇怪な凹凸の断面が、俺にはどうしても自身の身体の末端であるとは信じられなかったのだ。
だから、俺の上にゴーヤが跨ってくれるのは、口にはしないがありがたいことだった。下半身は彼女の向こうに隠れて見えない。ただひたすらに快感だけが俺のそこを支配している。
引き締まった腹筋と、控えめな乳房があった。比較して、尻や太ももの肉づきはいい。片手で握って少し余るくらいのボリュームは、いくらでも、いつまでも、触っていたくなる。
107
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/21(金) 01:02:49 ID:Lq4003/Y
俺の陰毛とゴーヤの陰毛が、汗なのか汁なのか最早わからなくなったものによって、てらてらと濡れそぼっている。彼女が腰を俺の腰へと打ち付けるたび、飛沫が跳ね、また汗なのか汁なのかわからない何かがにじみ出ていく。
ゴーヤは随分と軽かった。150にも満たない小柄さのせいだけではなく、しなやかさがその肢体にはあるように感じられた。彼女は俺の腰骨に手を衝いて、その細い腰を持ち上げ、降ろす。そのたびに少し粘ついた音が聞こえるのは、勿論向こうの耳にも届いているだろう。
俺のものを自らの最奥にまで納めると、一度抽送を止め、ゴーヤは身震いした。長い吐息。魂まで出ていってしまわないか心配になるくらいの。
正直、少しだけ助かった。あと少し往復を続けられていれば、あっけなく果ててしまうところだったからだ。ゴーヤは寧ろそれこそを楽しみにしている節があったが、俺にも矜持というものはある。そう易々と音を挙げては沽券に係わる。
108
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/21(金) 01:03:48 ID:Lq4003/Y
ゴーヤを抱きしめてやる。さりげなく尻を揉むと、自慢げに笑った。
いつもとは違ってゴーヤは俺を抱きしめ返しはしなかった。ただ為されるがまま、俺の腕の中で、俺に身を預けている。心までもと言ってしまうのは自惚れが過ぎるかもしれないが、行為の最中くらいは誰が咎めるだろうか。
俺が萎えないように少しずつ刺激を与えながら、桃色の髪の毛が俺を窺うように揺れる。どちらが精神的な優位に立つのかを、ゲームとして楽しむ癖がこいつにはあった。俺はそれがこいつなりのスパイスなのだと考えていた。
俺から余裕を奪おうと百戦錬磨のように振舞ってみたかと思えば、俺に組み敷かれて意思と関係なしに犯されることに奮えているときもある。それを「好きもの」の一言で片づけるのは、きっとこいつには失礼なのだろう。
……「恋人」という言葉と出会わないように、俺はひたすらに回り道を、回り道をと辿ってきた。それは鬼門だ。鬼門以外のなにものでもない。
109
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/21(金) 01:04:44 ID:Lq4003/Y
上下が揺らぐことは、有り得ることだ。ゴーヤがその揺らぎを楽しんでいるのは、裏を返せば、恐れていると見ることもできる。揺らぐのは人と人の関係だけだから。
教官と教え子の関係が、提督と艦娘の関係が、揺らぐことはない。何故ならば、その関係性はそもそも上下によって定義づけられている。教え子が上で教官が下、そんなことは有り得なかった。
揺らげば揺らぐほどに、俺たちは提督と艦娘の関係から逸脱している/いくのだ。ゴーヤはきっとそれを望んでいる。
田丸はきっと激怒するのだろうな、と思った。
艦娘は兵器だ。兵士ではない。
青葉は夕食時に、自らを兵士であると語った。俺はその点について価値判断をする気はない。すれば、俺は自身に田丸の影を見るだろう。それはとても腹立たしいことのように思えた。
無論俺はやつに対して深い感謝と恩義を感じている。犬になることに否やはない。ただ、全てがやつの思想に染まれるわけでもない。
110
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/21(金) 01:05:27 ID:Lq4003/Y
防衛省と神祇省の縄張り争い。艦娘の技術と指揮権の綱引き。
戦力を最大限効率化するのは当然のことで、そのために統一されたドクトリンは必要で……ならば艦娘たちが兵器と化すのは必然。それをそうとわからないように、うまく艦娘たちを手なずける術が提督には叩き込まれる。
俺もそうだ。
兵士に恋愛感情を抱くことはあるだろう。だが、兵器に恋愛感情を抱くのは、ただの異常者でしかない。
人間は銃を愛さない。剣を愛さない。火薬を愛さない。
「こーら」
俺の顔を両手ではさみ、ゴーヤは眉を顰める。
「他のことを考えるのはマナー違反でちよ」
「……そうだな」
その通りだった。俺は訴追を防ぐため、ゴーヤの口を自らの口で塞いだ。舌を絡めながら、尻を両手で軽く支える。
ゴーヤは俺の胸板に頬を擦り付けるようにしなだれかかってきた。俺はそこに揺らぎを見る。最早彼女は主導権を握る気はないようだった。
111
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/21(金) 01:06:12 ID:Lq4003/Y
抽送を開始する。「あっ、んっ」という小刻みな嬌声が、俺の首筋から聞こえてくる。
ゴーヤの中は熱く濡れ、充分に柔らかくほぐれていた。奥を衝けば俺のものを離さないかのように収縮し、引けば逆に全身から力が抜けていく。
全力で腰を打ち付けたい衝動に駆られるも、本能の荒波に曝されながら、理性はなんとか体勢を残していた。俺はあえて焦らすかのように、ゆっくりと、これまで何度も味わい楽しんできたゴーヤの中の、新たな個所を探る。
「ん、はぁ……」
ゴーヤが背筋を震わせた。僅かに視線が揺らぎ、口元から涎が垂れる。俺はそれを吸い取ってやるが、向こうには反応の余力も残っていない。
遅々とした速度で引き抜かれる俺のものを、ゴーヤの中は襞の一つ一つが離そうとしないようで、くびれをいやらしい感触が襲う。それでも見る限りではゴーヤのほうが快楽は上のようだ。こちらの鎖骨に顎を乗せて、手さえもだらりと流れ落ちている。全ての体重が、尻に回した俺の手にあった。
112
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/21(金) 01:07:03 ID:Lq4003/Y
「あぁー……あぁ……」
呂律も怪しい。
「気持ちいいか?」
「んー? へへ、ふふっ、うへへぇ……きもちー、いー、でちー」
蕩けた表情は眩暈がするくらい扇情的だった。理性が崩落していく最中で、それでももっとこいつの陶酔を見ていたいとも思う。
太腿と陰部の間で、粘ついた糸が長く、豆電球の灯りで輝く。
「どこが?」
「んー? えぇー? もぅ、てーとくはぁ、変態さん、んっ、んぅ、……ちょっと、話してる途中でキスはずるっこ、でちよぉ」
ゴーヤは俺の耳朶に息を吹きかけた。むず痒いような感覚と、甘美な音。世界から彼女以外の存在が締め出されたかのような。
「……てーとくのおちんちんで、ゴーヤのおまんこきもちよくしてもらって、とっても幸せ、でち」
それだけでは飽き足らず、首筋を甘噛みしてくる。
柔らかく暖かい舌が肌の上を這いずる感覚に、そろそろ昂ぶりを抑えられそうにない。
角度を少し変え、またもゆっくりと、しかし今度はゴーヤの奥に向かって進めていく。瞬間、ゴーヤは体をびくりと震わせ、先ほどの弛緩はどこへやら、爪先までぴんと伸ばして俺の肩へと爪を立ててきた。
113
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/21(金) 01:07:57 ID:Lq4003/Y
「――っ、んぅ、ん、ふぅううぅ……!」
「動くぞ」
「んっ、んっ!」
それが了承の返事だと都合のいい解釈をして、俺は一気にゴーヤの中へと身を埋めた。
「んーっ!」
流されないように、呑まれないように、ゴーヤが俺に必死にしがみつく。俺としてはいくらでも流されて、呑まれて、いいと思っていた。遠慮をするつもりはない。そのままゆっくりと引き抜いて、また勢いよく中へと己の欲望を叩きつけていく。
ぱちん、ぱちんと肌が鳴った。淫猥な音。汗や粘液の音も、暗闇の中でははっきりと聞こえる。
「ん、んっ、あっ、ふ、ぁ、やぁ」
「気持ちいいか?」
「んっ、うんっ! きも、きもちー、でち……!
てーとく、はぁ?」
返事の代わりに最奥を衝いた。ゴーヤの体が一際大きく跳ね、自分の力ではどうしようもないのか、俺の胸に顔を埋める。ちゅ、ちゅっと啄むような口づけが胸板に降る。
その姿が愛しくて愛しくてたまらない。
114
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/21(金) 01:08:34 ID:Lq4003/Y
「あっ、やっ! だ、だめっ、だめだめっ、ずる、い、よぅ……! てーとく、もっ、いっしょに……」
「お前が先にイけ」
少しの悪戯心は行為のスパイスだろう。
「いっしょに、イきたいなぁ……」
「っ」
あぁ、もう、こいつは!
いや、俺が単純すぎるだけか? ――これだから男ってやつは! と苦し紛れに責任を拡大して転嫁。
脳髄がぴりぴりする。腹の奥底がむず痒い。白く真っ赤に滾る本能が、あぶくを立ててふつふつ唸る。
酸欠気味になりながらもゴーヤの唾液や、肌に浮かんだ珠のような汗を、どうしたって啜らざるを得ない。密着が足りなかった。このまま溶けて交じり合ってしまいたかった。
「ふぅ、ぁ、あぅ、っ!」
ぐちり、ぐちゅり、愛液と先走りが交じり合ったものは、既に俺たちの太ももを濡らし、シーツに染みを大きく作っている。
殆ど力任せにゴーヤを犯す。小さく軽いゴーヤの体は、一突き一突きで面白いくらいに跳ねる。
115
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/21(金) 01:09:12 ID:Lq4003/Y
「てーとく、てーとくっ! いいでちか!? ごめっ、ごめんなさい、あの、もう、ゴーヤ、イってもいいでちかぁっ!」
俺が快楽を貪るためにゴーヤを動かしているように、ゴーヤもまた、快楽のために自ら腰を上下させていた。引き抜くに合わせて腰を落とし、奥へ、もっと奥へと貪欲に俺のものを咥えこむ。
許可を乞うゴーヤに対して、何かを言おうとしたのだが、意識は言葉にならない。掠れた吐息が月光の中で際立つ。
最早我慢が利かなかった。込み上げてくる「それ」は、感情よりももっとずっと明確ななにか。
ゴーヤの尻を一際強く掴んだ。なるたけ爪を立てないように配慮しつつも、実際、そうできたかは自信がない。
その柔らかな肉を、俺は殆ど力任せに自分の腰へと叩きつけた。最奥をめざして先ほどのゴーヤのように、強く、強く。
116
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/21(金) 01:09:48 ID:Lq4003/Y
視界が爆ぜる。
下半身が別の生き物のように膨れる。堪えきれなかった俺の中の欲望が、決壊した堤防のように、容赦なくゴーヤの中へと流れ込んでいく。
音さえ聞こえてきそうな射精。小さなゴーヤの体の、小さな最奥にはすぐに入りきらなくなって、粘液とはまた違ったぬめりが逆流してくる。
しがみついたゴーヤの体がぶるり、震えた。伴って中も。
零れ出ていく精子を惜しむようなその動きに、思わず変な声が出てしまった。
絶頂はまだ続いているのか、時折痙攣しながら、ゴーヤは唇を噛み締めている。眼もきつく瞑って、この現実から放り投げられないように。
そんな彼女の頭を撫でてやった。俺はここにいる、と言外に伝えたつもりだった。
たっぷりと十秒近い射精。そしてゴーヤもようやく快楽の波が収まりつつあるようだ。口はいつの間にか半開きになり、吐息が俺の肌を焼く。視点も、いまいち定まっていない。
「んん……」
ゴーヤが体重を預けてきた。受け止めようとして、けれどうまく力が入らない。そのまま抱きしめる形でベッドへと横になる。
萎えつつあるものとゴーヤの隙間から、精子がどろりと零れ出て、陰毛や太もも、シーツを汚した。それ以前に既に体液まみれだ。不快感というか、危機感というか、あぁ拭かなければという意識はあるのだが、そんな現実的な思考はこの場には不必要だった。
117
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/21(金) 01:10:56 ID:Lq4003/Y
余韻。
ふわりふわりと漂う香り、汗で貼りつく肌と肌、心音、吐息、それら全てが愛おしい。
この小柄な桃色の少女の全てを感じていられさえいれば、いまの俺には他になにもいらない。そう断言できるほどに満ち足りている。
「……てーとくぅ」
胸板に頬摺りしてくる。火照った体が少し冷えてきて、俺は毛布を引き寄せた。そのままゴーヤを抱きしめて、彼女ごと包む。
「ね、ね」
「ん?」
ごそごそと動いて何をするのかと思えば、毛布の中に潜り込んで、だいぶ柔らかくなった俺のものを舌先でぺろぺろとやり始める。
「きれいにしてあげる、でち」
……そんなことまで教えたつもりはないのだが、甘んじて受け入れることにしようか。
118
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/21(金) 01:14:59 ID:Lq4003/Y
―――――――――――――――
ここまで
濡れ場、ちょー疲れる。遅れてすいません。
この部屋の防音は完璧です。
あと個人的に身長と胸のサイズ感は
身長 19>168>8>58
胸 8>19>58>168
こんな感じです。あくまで妄想の範疇で、各自ご自由にお楽しみください。
待て、次回。
119
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/12/21(金) 02:12:13 ID:8qFdKMe2
お疲れ様です
かわいいなぁ
120
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/12/22(土) 00:57:29 ID:C9H2Flck
おつおつ、今回もいいねぇ
121
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/12/22(土) 01:38:52 ID:UBSwyBes
イムヤちゃんのちっぱいprpr
122
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/12/24(月) 03:23:27 ID:kTEtsZeo
またひとつブクマが増えてしまった
是非完結させてくれ
123
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/30(日) 10:45:13 ID:i8Z1BkWE
「……」
朝日が眼に沁みて、そこでようやく朝が来たことを知った。どうやらまぐわいのあと、疲労のままに寝入ってしまったらしい。
俺の隣には暖かさはなかった。シングルベッドには俺しかいない。当たり前の話ではある。だが、そんな当たり前が、少し寂しくも思った。
悪夢の記憶はない。ゴーヤのおかげだ。
彼女は自分の部屋に戻ったのだろう。そう結論付けて、上体を起こす。あまり未練たらしいのは情けなくなるから。
時計を確認すれば、現在時刻は朝の六時。昨夜は随分と早寝だが、起きる時間に変化はない。そういうものだ。体内時計は既に、常に、セットされている。
まだ少し疲労感が残っている。それが、我が潜水艦泊地の置かれている状況から来るものなのか、それとも昨晩のゴーヤとの行為から来るものなのかはわからない。ただ、そんな頑張った気はしなかったけれど。
惰眠を貪りたい欲求を頭の奥底にしまいこんで、体温に慣らされた寝具へお別れを告げる。ゴーヤを抱いた後、シャワーも浴びていない。下半身を重点的に不快感が途轍もない。
124
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/30(日) 10:46:04 ID:i8Z1BkWE
ベッドの脇においていた義足を装着する。ぱちん、ぱちん、ぱちん。三か所の留め金で固定して、俺は立ち上がった。一刻も早く体液を流したかったからだ。
本当に体表を流す程度に抑えておいて、俺は手早く下着を吐き、通気性のいいジャージを上下身に着けた。
規則正しい生活、そして日常的な運動は、これまでの俺の人生の中で鮮やかに息づいている。他の皆よりも少しだけ早く目覚め、散歩ともランニングともつかない速度で、辺りをぐるりと回るのが俺は好きだった。
準備運動は念入りに。靴ひもの結びもきちんと確認して、俺は朝の空気の中へ身を躍らせる
この泊地は廃校となった施設を利用している。グラウンドも、さほど大きくはないがある。しかしそれではあまりにもつまらないだろう。潮風の匂いのする方へと、俺は脚を向けた。
いくつかの例外はあるものの、泊地や鎮首府といった建物は、おおよそ海の傍に建っている。周囲に古めいた民家や車が多いのは、海が近いことの証左だった。塩分は金属の大敵だから。
木の種類も俺が暮らしていたところとは違っているように思えた。気候のせいだと断定できるほど、俺は植物に詳しくはない。
125
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/30(日) 10:46:46 ID:i8Z1BkWE
早朝では車通りはなかった。信号機が誰もいない交差点で働いている。俺は一応律儀に守って、視覚障碍者用の音を追い抜いて走る。
商店街はシャッターばかりだった。営業時間外だからなのか、そもそも畳んだ店なのか。
そのままアーケードを抜け、時間にして十五分ほどか、俺は泊地へと戻ることにする。
少し速度を落とす。クールダウンも兼ねて、てくてくと歩く。駐車禁止の標識がひしゃげていた。誰か事故でも起こしたのだろうか。
泊地の入り口には門がある。嘗ては学び舎を守っていたのだろうが、今はもう錆のせいでびくとも動かなくなってしまっている。黒い塗料はところどころが禿げ、赤茶けた錆の浮いた下地が目立つ。
青葉はそこにいた。
126
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/30(日) 10:47:33 ID:i8Z1BkWE
カメラを構えて、地図からも消えて久しい学校の名前をぱしゃり、空を見上げて晴天をぱしゃり、振り返って校舎に据え付けられた大きな時計をぱしゃり。
「朝から仕事熱心だな」
俺が声をかけると、青葉は「恐縮です」と答えた。
「朝は早いほうか」
「夜討ち朝駆けは記者の基本、ですから」
「お前は艦娘だろう」
「あはは、そうでした。ついうっかり」
青葉は笑って舌を出す。なんと返したものかわからずに、俺は話題を変えた。
「昨日はだいぶ飲んだんじゃないのか?」
いや、「あいつらに飲まされたんじゃないのか?」が正しい表現なのかもしれないが。
あいつはとにかく人懐っこい。誰に対してもそうだ。俺との出会いからそうだった。
その性質があの四人特有のものなのか、それとも年頃の女子は大抵あんな感じなのか、よくわからない。俺自身の青春を紐解いてみても見つかりはしなかった。
127
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/30(日) 10:48:52 ID:i8Z1BkWE
「えぇ、まぁ。とは言っても、青葉はそれほど強くないので、缶ビール二本くらいで十分満足でした」
「話は聞けたか?」
「はい。ただ、酒の席の話は半分くらいに聞いておかなければならないですけどね。人という生き物は、とにかくすぐに話を盛りますから」
「体験者は語る、だな」
「そうですね。あちらにも悪気がないのがまた悪い、と言いますか。折角、わざわざ、遠方から話を聞きに来てくれているんだから、つまらない話ばかりじゃ申し訳が立たない……そう考えてしまいがちなんです」
「まぁ、うまくヨイショしてくれよ。鳴り物入りで配属された期待の新人なんだから」
それは事実であって事実ではなかった。潜水艦泊地は方々から良くも悪くも注目の的ではあるが、その大部分は田丸の根回しによるものである。
「勿論ですとも、大船に乗ったつもりでいてください。
司令官は、ランニングですか? 朝の日課でしょうか」
「そんなもんだ。椅子に座って事務仕事、堤防に腰かけて指揮……そんなんじゃ腹が出るばかりで、どうにもな」
「なるほど。体型を気にしてらっしゃる、と」
「新しくできた艦隊の司令が、だらしのない格好のおっさんじゃあ見栄えが悪いだろう」
「――と、田丸三佐がおっしゃっていた?」
「……まぁ、な」
128
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/30(日) 10:49:23 ID:i8Z1BkWE
青葉の脇を抜けようとした俺を、青葉は真正面から逃すまいと立ちふさがる。
魂胆はわかっていた。昨日の続き。仕切り直し。
結局あのあと、俺は悪夢に魘されて、青葉は酒が入って……碌な会話はできなかった。再開しようというのだ、いま、ここで。
恐らくカメラで周囲を撮影していたのはブラフなのだろう。あそこに張って、俺が帰ってくるのを待っていたに違いない。
青葉、こいつの魂胆はわかったけれど、しかし胸中を見通せているかと問われればノーだ。その理由や理屈、言い換えれば信念といったものらは、言動の端々からはまるで透けてこない。
俺の本心が聞きたい? ナラティブ――限りなく本人の生活史から紡ぎだされた言葉たち。
129
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/30(日) 10:49:58 ID:i8Z1BkWE
俺が悪漢でも別に構いやしない。青葉は確かに昨晩そう言った。だが、本当にそうだろうか? 初対面の人間の言葉を鵜呑みにして、痛い目を見た人間の話など腐るほどある。案外俺が伝えたことをそのまま四人に喋ることだって有り得るのだ。
かといって極端なごまかしが通用する相手だとも思えなかった。少なくとも、姿勢はプロのそれのように見える。言葉の端々にフェイクを差し込んでいくくらいならばばれなかろうが、全くの虚構を事実のように述べてみても、眉を顰められるだけだろう。
いや、考えていても埒が明かない。きりがない。結局、こいつとは今だけの付き合いではないのだから、ある程度お互い腹を割って――少なくともお互いが腹を割ったと認識できるくらいには、頭を使ったやりとりをしなければ。
130
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/30(日) 10:54:33 ID:i8Z1BkWE
「何が聞きたい。俺は何を言えばいい」
「田丸の犬には理由があります」
耳に痛い単語が聞こえてきた。青葉を見る。真っ直ぐに俺を射抜くその瞳は、思っていたのとは違っていた。糾弾や批判の色が見えない。
「餌をちらつかせて、人を飼い慣らします、あの男は。だから、司令官。あなたにもきっとそういう事情がおありなのだと、青葉は考えます」
「……だから?」
それがどうした。お前に関係のあることではない。
それでも訊きたいというのなら、相応の覚悟が必要だろう。
田丸は決して手放しで褒められた人間ではないが、ある種どこまでも人間らしい人間であると俺は思っていた。善人も悪人もこの世にはいない。俺はそもそも善悪の判断をなるべくならしたくない。
出世を願うのも、失った右手の復讐を誓うのも、限りなく人間らしい感情によるもの。目的を達成できたかどうか、あるいは途中で何人が犠牲になったか、それらはまた別の評価軸だろう。
131
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/30(日) 10:56:35 ID:i8Z1BkWE
少なくとも俺はあいつの出世欲、そして復讐心のおこぼれを預かっている身だ。あいつがいなければ、俺は殆ど廃人だったに違いない。そして……こう言うのは実に恥ずかしいのだが、ゴーヤにだって会えていなかった。
そう言う意味で、田丸は俺にとっての恩人だった。どれだけ悪人であったとしても、そこを認めないことには、俺が俺ではいられない。
「話が長いのは、青葉、お前もあいつと同じだな。お前がそうやって俺のことを訊くのは、記事のためか? それともゴーヤたちのことが心配か?」
軽口交じりの言葉が以外にもクリティカルだったらしく、青葉は何かに驚いた、怯えた顔を作る。
「……」
「……急に黙るんじゃねぇよ、困っちまうだろうが」
132
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/30(日) 10:57:06 ID:i8Z1BkWE
「理由、は」
そこまで言って、一度言葉を切る。
下唇を噛んで、逡巡しているようにも見えた。だがすぐに吹っ切る。
「単一ではありません。記事のこともそうです。あのコたちのこともそうです。そして、何より、青葉もあなたと同じ、あいつの犬です。潜水艦泊地を成功へと導かなければならない理由があって……。
司令官。復讐は何も生まない、なんて知った口を利くつもりは毛頭ありません。深海棲艦との戦いに赴くわけなんて、金か、復讐か、大体どちらだと青葉は知っています」
知っている、ね。思っているではなく。
「経験則なわけだ」
「はい。特に田丸三佐はそういうかたでした。だから司令官もそうであることは知っています」
「なら、話が早いな」
俺はジャージの裾を太腿のあたりまで捲り上げた。白く、ところどころ銀色の、俺のものであって俺のものでない脚がそこにある。
青葉は無反応だ。当たり前だが、驚きはない。嫌悪も同情も浮かんでいない。
それは実に助かる反応だった。復讐は何も生まないとたった今青葉は言ったが、嫌悪や同情だって随分と非生産的。
133
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/30(日) 10:59:39 ID:i8Z1BkWE
「脚と人生を奪われたら、躍起にもなるさ。いまだに夢に見る。本物の脚がきちんとくっついていて、俺はいつかの五輪で、表彰台に立っているんだ。夢の中では幸せの絶頂で、だからこそ目が覚めたときの落差に……まぁ、そうだな、死にたくなる」
こんな目に合わせてくれたやつらを殺したくなる。
「そのためならば、年端もいかない子女を利用してもいいと?」
「利用? なんだそりゃ。ゴーヤたちのことか?」
「違いましたか」
「ん……」
俺は応えようとして、一拍置いた。青葉の問いへの回答を持っていないことに気付いたからだ。いま、そのはざまで揺れ動いている最中なのだから。
とはいえそれを馬鹿正直に告げるつもりもない。そんなことをしたってびた一文の得にもなりゃしないだろう。
利用しようとした。あぁ、そうさ。高校生などガキだ。俺自身のことを思い出しても、思慮に欠ける、浅はかな生き物だった。あいつらだってそうだ。
だが、いまや俺の手には負えない。
……否。俺の手に負えなくなっているのは、俺の心のほうかもしれないが。
134
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/30(日) 11:00:49 ID:i8Z1BkWE
昨日の青葉の問いに対し、俺は意識が重要であると答えた。意識。何が為せたかではなく、何を為すつもりだったのか。ならばやはり、俺は自らを断罪すべきなのだろう。業を背負って生きていくべきなのだろう。
ただ、ゴーヤのあの、晴れ晴れとした笑顔が曇ることだけは許されなかった。
それで罪が雪げるのならば、率先して俺は……。
「……今回の作戦の遂行には、あいつらの協力が必要不可欠だ。寧ろあいつらが主役と言ってもいい。俺たちは所詮裏方さ。あいつらが気持ちよく踊ってくれるように下準備をすることが、利用ってんなら……そうだな、俺は四人を利用していることになるのか」
「復讐のためにあのコたちを使っているのでは?」
「滅多なことをいうもんじゃねぇぞ、青葉」
努めて冗談めかしたつもりだったが、果たして本当にそんな声音で、そんな表情で言えているかは怪しい。
135
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/30(日) 11:02:02 ID:i8Z1BkWE
「深海棲艦は殲滅する。それが、例えば国のためだとか、故郷においてきた女のためだとか、そう言えりゃあ恰好いいわな。だが実際、お前の言った通り、俺は田丸の犬で……復讐のために提督になった」
厳密に言えば、俺の復讐心を田丸に嗅ぎつけられた。
「だけど、そこまでだ。それだけだ。やるこたぁちゃあんとやるよ。あいつらを死なせやしない。その上で、俺は潜水艦娘計画を成立に導かなきゃならん。どっちもとる。それでいいじゃねぇか。不服か?」
「いえ、まったく。寧ろ、司令官のお気持ちがわかって嬉しい限りです」
「本当かよ」
「はい。生半な気持ちではないことがわかりました。『利用している』と開き直って口にしてくれた方が、青葉としてはスタンスが明確で助かります」
「お前、さっき言ったな。お前も犬か」
俺が復讐心を見初められたように、青葉、彼女もまたこの計画に乗らなければ理由があったとしたら。失敗できない理由があったとすれば。
136
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/30(日) 11:09:45 ID:i8Z1BkWE
「えぇ、まぁ」
と青葉は困ったように笑う。
「何があった」
「んー……まぁ、こちらだけ聞くのはフェアでないというか、イーブンではないというか、ですかねぇ」
「いや、言いたくないなら言わなくていいぞ。トラウマを掘り起こす真似はしたくない。
金か、復讐か……」
彼女自身が言った、「金か、復讐か」。経験則。勿論取材を重ねる中での統計的なものもあるだろうが、そもそもの体験談なのではないか。自らの話なのではないか。
「え? 違いますよ」
違うのかよ。
「別にいいですけど……口外しないでくださいね?」
「しねぇよ」
「本当に?」
「本当だっつーの」
「殺されても知りませんからね?」
137
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/30(日) 11:18:09 ID:i8Z1BkWE
「は?」
「実は青葉、軍の上層部から命を狙われておりまして」
今朝の星座占いのことを話すかのように、
「田丸三佐が失脚すると、後ろ盾がなくなって、東京湾に沈むことになってるんですよね」
あっけらかんと、青葉は言った。
「……はぁ?」
話題の急展開に、俺は頭がついていかない。
なんだ? こいつ、いま、何を言った?
138
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/30(日) 11:18:58 ID:i8Z1BkWE
「トラック泊地での不正の証拠を、ばっちりスクープしてしまいまして」
139
:
◆yufVJNsZ3s
:2018/12/30(日) 11:20:10 ID:i8Z1BkWE
――――――――――
ここまで
一作目で回収できなかったストーリーラインを二作目で回収するという暴挙。
とはいえ本線からは外れるので、次回こっきりですが。
待て、次回。
140
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/12/30(日) 18:06:05 ID:rQpVnUXk
待つぞ
141
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/12/30(日) 18:08:27 ID:BTL5UElg
おつおつ
この青葉は有能だな・・・
142
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/04(金) 02:58:46 ID:Y6ueOFBM
おっつおっつ
ようやく追いついた。今後も楽しみにしてる。
143
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/08(火) 19:31:12 ID:AXHd8WvY
おっつおつ
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