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少女「私を忘れないで」

1 ◆WRZsdTgWUI:2018/02/17(土) 23:13:03 ID:SLrOQBwc
(プロローグ)
〜体育館裏・少女さん〜
男子「少女さん、わざわざ来てくれてありがとう!」

少女「……」

男子「えっと、その……明日から冬休みだね」

少女「そうですね」

男子「それでその……クリスマスの日は予定が開いてますか」

少女「クリスマスの予定?」

男子「は、はいっ!」

少女「ひとつ聞きたいのですけど、あなたと私は今日はじめて会いましたよねえ。それなのに、どうして教えないといけないんですか」

男子「それは少女さんのことが好きだからっ!」

少女「……?!」

男子「文化祭のときに笑っている少女さんを見て可愛いなって思って、それで一緒に話が出来たらいいなってずっと思っていたんです。だから、僕と付き合ってくれませんか!」

704以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/17(水) 02:32:03 ID:6eea0UUY
双妹「それじゃあ、容器を渡しに行ってくるわね。これで終わりなんでしょ」

男「そうなんだけど、その前に採精した時刻を書かないといけないんだ」


俺はそう言って、時計に目を向ける。
すると、いつの間にか1時間が過ぎていた。


男「あっ! もう約束の時間を過ぎてる!!」

双妹「じゃあ、急がないといけないんだ」


双妹は採精した容器に時刻を書き、俺たちはダッシュで脱いだ服を着た。
そして採精室を出ると、ちょうど様子を見に来た看護師さんが立っていた。

705以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/17(水) 04:16:47 ID:n.U5TMMY
いいぞ

706以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/18(木) 00:27:50 ID:wDQCGUN2
男「あの……今、終わりました」

看護師「終わったんだ、お疲れさま。ところで、双妹ちゃんも一緒に出て来たということは、もしかして二人でえっちな事をしちゃったの?」

男・双妹「は、はい……」


俺たちは怒られるのではないかと思い、恐る恐る返事を返す。
しかし、看護師さんは俺たちに変わらない笑顔を向けてくれた。


看護師「そっか、そういうことに興味が出てくる年頃だもんね。正直に答えてくれてありがとう。ただね、ここは男性の患者さんが多く出入りする場所だから、双妹ちゃんは外来患者さんのご迷惑にならないように気を付けてね」

双妹「は、はいっ。分かりました」

看護師「それで、初めての検査だったけど、精液は正しく採れたのかなあ。まさか、双妹ちゃんがお口を使ったりしてないよねえ」

男・双妹「おくち……ですか?!」

看護師「うん。採精検査をするときにお口を使ったりするとね、滅菌されている容器の中にお口の雑菌が入って検査が出来なくなってしまうの。だから、必ず清潔な手で採精しなければならないのよ」

男「ちゃんと綺麗な手でしたし、それは大丈夫です」

看護師「それなら良いんだけど、これからも気を付けてね」

707以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/18(木) 01:24:58 ID:wDQCGUN2
双妹「看護師さん。清潔な手ですることは分かったんですけど、お口を使ったりする人が本当にいるんですか?」

看護師「んー、まあ、それも性行為のひとつだからね。オーラルセックスとかフェラチオって言うんだけど、興味があるなら女医さんに相談してみたら? 私たちも双妹ちゃんの性行動や性意識について悩みがあれば素直な気持ちを聞かせてほしいし、産婦人科の先生だから詳しく教えてくれると思うよ」

双妹「そうですね。今度、女医さんに相談してみます」

看護師「それじゃあ、培養室まで案内してあげるわね」


俺たちは看護師さんに連れられて、培養室の窓口に容器を提出した。
そのときに優しい声で「大人になったね」と言われ、気恥ずかしいと思いつつとてもうれしい気持ちになった。


双妹「男ももう大人だね♪ さっきの精液には精子がいっぱいいて、セックスをしたら赤ちゃんが出来るのかなあ」

男「たぶん出来ると思う。双妹も生理が始まってるし、セックスをしたら妊娠するんだろ」

双妹「そっか。じゃあ私たち、赤ちゃんを作れるんだ。何だか信じられないけど、こうして大人の身体になっていくんだね」

男「そうだな。俺も双妹も、大人の身体になろうとしているんだよな」

708以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/18(木) 01:33:31 ID:ZBpkJKMg
今日は13歳の誕生日。
俺は射精が出来るようになったし、双妹はおっぱいが膨らんできてすでに生理が始まっている。
そして、これからも大学病院の双子調査を通じて実感していくのだと思う。
身体が成長していくことを、双妹と二人で一緒に――。


双妹「これからも私たちは二人一緒だよ♪」

男「ああ、これからも二人一緒だな」


俺たちは手をつなぎ、お母さんがいつも待っている喫茶店に向かうことにした。
そして検査結果を聞いた後、研究スタッフの人たちが誕生日のお祝いをしてくれて楽しい時間が過ぎていった。

709以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/18(木) 19:31:54 ID:VsbMl0ZM
いいぞ

710以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/22(月) 22:57:31 ID:LuamWNcg
・・・
・・・・・・
〜自宅・部屋〜
俺と双妹にとって、お互いの性欲を満たしあうことは普通のことだった。
一緒に性的な経験をしてしまい、それが気持ちいいと知ってしまった俺たちを止めるものは何もなかった。

毎日のようにお風呂で洗いっこをしたり、ベッドの中でいちゃいちゃしたり。
双妹と過ごすそんな時間はとても心地良くて、今まで知らなかった一面を発見出来たときはとてもうれしかった。

俺たちは異性一卵性双生児だから、双妹は性別が違うもう一人の自分自身。
きっと、性別が分かれてしまったのは双妹と愛し合うためなのだ。

だから今は赤ちゃんが出来るようなことさえしなければ、それ以外のことは何をしてもいい。
二人で一緒にえっちな事をしてもいい。
そして、もっともっとお互いのことを大切に想い合いたい。


少年(そうだ。これがお前たち兄妹の本当の姿なんだ!)


男「双妹……」

双妹「あんっ……ああっ、男……やっとその気になってくれたんだ//」

少女「男くん、どうして?! こんなのいやだよ、いやだよぉっ!!」

711以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/23(火) 03:13:38 ID:VyR3PDuA
おつ

712以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/26(金) 01:27:54 ID:sAL38Hs6
俺は双妹とベッドの上で向かい合い、唇を重ね合った。
そして、舌を絡めながらおっぱいに手を伸ばす。

そのFカップもある膨らみは手に余るほどのボリュームで、程よい弾力と張りがあって形がいい。
しかも、円を描くようにして愛撫すれば手のひらに吸い付き、おっぱいを揉んでいる充実感とともに興奮が湧き起こってくる。
俺はそんな半球型の膨らみに魅了され、その感触を楽しみながら双妹の性感を高めていく。
そして指先で乳輪をなぞると、双妹があまい吐息を漏らした。


双妹「……んんっ、んっ…………」


双妹は乳首を触ってほしいらしく、焦れったいような表情を浮かべている。
俺はその表情を見ながら、おっぱいを弄んで焦らし続けた。
そして、ツンと勃起した乳首を軽く弾いてあげると、双妹は可愛い声を出して身体をびくんと震わせた。


双妹「あんっ……ああ、いぃ…………//」

双妹「私たち、兄妹なのにえっちな事をしていて、すごくドキドキするよね」

男「そうだな。双妹は可愛いし、俺もすごくドキドキする」

双妹「えへへ♪ 男……好きだよ//」

713以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/26(金) 02:29:06 ID:ds1CJqMc
双妹は顔を赤らめながら言うと、上目遣いで見詰めてきた。
俺はそれで察して、仰向けになり脚を広げる。
すると双妹はその間に移動して座り込み、上体を倒してフェラチオを始めた。

まずは唇と舌を使って陰茎を横から舐めまわし、口の中に亀頭を入れてカリ首をくわえ込む。
そして頭を動かして亀頭を出し入れし、再び陰茎を横から舐めまわす。
しかも歯が当たることがないので、気持ちいい快感だけが脳髄へと駆け抜けていく。


男「双妹……それ、ヤバすぎる…………」

双妹「もっと、きもひよくひてあげふね//」


双妹が陰茎をくわえたまま声を出したので、それがくすぐったくて笑みがこぼれてしまった。
すると双妹はそんな俺を見て、機嫌よく竿をしごきながら頭を動かし始めた。
そしてその瞬間、急激に射精感が込み上げてきた。

舌が這うようにして裏スジを舐めまわし、ぷるんとした唇がカリ首に引っ掛かる。
さらに頬の内側まで亀頭が吸い付いて、温かい粘膜でねっとりと包み込まれているかのようだ。

じゅるじゅる、じゅぽじゅぽ――。
いやらしい音を響かせながら、よだれが溢れ出るほどくわえ込んでいる双妹。
俺はそんな双妹の姿が愛おしく感じ、右手を伸ばして頭を撫でる。

714以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/26(金) 02:57:51 ID:ds1CJqMc
双妹「男のおちんちん、はむはむ美味ひい//」


双妹はふいに動きを止めて扇情的な表情で見詰めてくると、舌先でチロチロと裏スジを舐めてきた。
そのおかげで射精感が治まり、程よい刺激をゆっくりと楽しむ。
しかし、そのタイミングを見計らっていたのか、双妹は頬をすぼめて根元近くまでしゃぶり付いてきた。

髪の毛を乱しながら激しく頭を振り、唾液で滑りが良くなった竿も手でしごく。
しかも上下だけではなくて頭を左右に回転させているので、敏感な場所のすべてが絶頂に向けて追い込まれていく。


男「うあぁっ、ちょっ!」

男「双妹……それヤバい!!」

男「いくっ! もう、いきそうっ!!」


どうすることも出来ない快感が全身を駆け巡り、ギンギンに勃起した陰茎に射精感が押し寄せてきた。
もう我慢出来ない!
そう感じたと同時、双妹は上体を起こして小悪魔っぽく微笑んだ。

715以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/26(金) 03:13:45 ID:IblpxyV2
男「はあはあ……」

双妹「ふふふっ、まだ射精したら駄目なんだからね//」


双妹はお姉さんぽい口調で言うと、俺に起き上がるように目で合図を送ってきた。
そして俺が身体を起こすと、双妹はヌルヌルになっている陰茎を優しく握って、俺たちは求め合うようにしてフレンチキスをした。
それは何となく甘酸っぱい味がして、官能的な刺激が蓄積して意識がとろけてしまいそうで。
俺はそんな快感を双妹にも味わわせてあげたくて、少しだけ腰を引いて双妹の乳首に吸い付いた。


双妹「あふん……//」

双妹「んんっ、あうぅん……」


双妹はもう一人の自分だから、俺の気持ちいいところを察して的確に責めてくる。
どこが気持ちよくて何をされたら嫌なのか、お互いの身体のことをよく分かっている。
だから、俺も双妹の気持ちいい場所を的確に愛撫してあげることが出来る。

716以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/26(金) 03:24:52 ID:sAL38Hs6
双妹「ひゃうんっ! んんっ……あぁっ…………//」


乳首を舌で転がし、右手は太ももを撫でながら陰裂へと向かわせる。
やがてふっくらとした大陰唇にたどり着き、割れ目に中にそっと指を滑り込ませた。
内側はすでにぬるぬるになって、小陰唇がぬるりと絡みつき、指の腹で膣前庭を優しく弄ぶ。
そして、濡れた指先でクリトリスの滑りを良くして、包皮の上からふわっと撫でてあげた。


双妹「あううぅっ!」

双妹「あふっ、あああんっ!! あぁっ…………それ、いぃっ//」


双妹が喘ぎ声を部屋中に響かせ、快感に身を捩らせる。
俺はそんな双妹の姿に興奮し、少しずつ刺激を強めながら執拗に責め立てる。
すると愛液が次々と溢れ出してきて、熱ささえ感じる膣口に指を入れるとくちゅくちゅと卑猥な水音が鳴り響いた。

717以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/26(金) 03:32:21 ID:sAL38Hs6
男「双妹、いやらしい音が聞こえる」

双妹「そんなこと……言わないでよぉ…………//」


双妹は恥ずかしそうに顔を逸らし、陰茎への刺激を止めて手を離した。
そして身体を仰け反らせ、両脚をやや閉じる。


男「いっぱい感じて、気持ち良くなっていいんだぞ」

双妹「あうぅっ……だめだめっ、それはだめえぇ…………//」

双妹「ぁん……あぅっ、ああぁぁっ…………いっちゃう、いっちゃうぅっ!!」

双妹「んんっっ//」


双妹は嬌声と吐息を漏らし、身体をびくびくっと震わせる。
そして恍惚の表情を浮かべて、押し寄せる快感の波に飲み込まれていった。

718以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/27(土) 08:42:10 ID:mHQ6HNCI
おつ

719以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/29(月) 21:45:01 ID:uF1rdSfs
・・・
・・・・・・
〜男くんの部屋・少女さん〜
双妹「はあはあ……」

双妹「すごく久しぶりで気持ちよすぎて……すぐいっちゃった…………//」


双妹さんが男くんとセックスをして、快感に身を委ねている。
なまめかしい声を出して、淫らに喘ぐオンナの顔になっている。
それは兄妹でしてはならないことのはずなのに――。

いくら叫んでも二人には声が届かない。
低級霊たちに取り押さえられ、それをただ見ていることしか出来ない。


少女「少年くん、こんなことはもう止めてよっ! これ以上、二人を傷付けないで!」

少年「うひゃっ! うひゃひゃひゃひゃっ!!」


必死に声を振り絞ると、少年くんが姿を現して高笑いをした。
そして蔑むような視線を向けてきて、にたりと笑った。

720以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/29(月) 22:03:06 ID:etenrXfA
少年「少女さんは憑依しているんだから、直に感じているはずだろ。こいつの欲望を――」

少女「それは……少年くんがそう思わせているだけでしょっ!」

少年「違う、これがこいつの本性なんだっ! 毎日のように妹とセックスをしていた変態野郎なんだっ!!」


少年くんが男くんから引き出した、双妹さんとの馴れ初めの記憶。
その日を境に、男くんと双妹さんはお互いに対して性的な関心を向けるようになってしまった。

しかし、今の双妹さんは男くんの恋愛を積極的に応援していたし、性的な関係を持つことよりも共感して分かりあうことを大切にしているように感じる。
だから、男くんと双妹さんがツインセストをしていたのは思春期の一時的な過ちで、すでに終わっていることなのだろうと思う。

それに、セックスをしたいという欲求は誰でも持っているものだ。
私が自殺をさせられたときと同じように、歪んだ感情を引きずり出されただけなのだと思う。
憑依されても無い袖を振ることは出来ないので、その気がなければ、男くんと双妹さんは最後の一線を越える前に思いとどまることが出来るはずだ。
そう信じたい――。

721以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/29(月) 22:08:21 ID:uF1rdSfs
少年「さあ、ここからが本番だ」

少年「一卵性双生児の兄妹がセックスをしているなんて、いろんなサイトで拡散されること間違いなしだぜっ!」

少女「――!!」


男くんと双妹さんの痴態は、すでにネット上に配信されている。
思いとどまってくれたとしても、もう取り返しが付かない状態になってしまっているんだ。


少女「私のせいだ」

少女「私が、男くんと双妹さんの人生を狂わせてしまったんだ――」


私がいなければ、双妹さんが少年くんに憑依されることはなかった。
集団パニックで男くんへの気持ちを再認識することもなかっただろうし、それを認めてもいいんじゃないかと考えることもしなかっただろう。
つまり、私さえいなければ男くんと双妹さんは普通よりも少し仲が良い兄妹でいられて、普通の高校生活を送っていけたはずなのだ。


少年「その顔だよ、少女さん。僕が見たいのはっ!」

少年「ああ、僕の想いがキミの魂に刻まれていく。僕だけが少女さんを永遠に愛することが出来るんだ!!」

722以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/30(火) 22:47:12 ID:27/mocLQ
・・・
・・・・・・
〜自宅・部屋〜
双妹「ねえ、男。ひとつに……なりたい//」


双妹はあまい声でささやくと、仰向けで寝転がった。
そして脚をやや開き、熱っぽい表情で微笑んだ。

俺と双妹は世界中でたった一組しか存在しない異性一卵性双生児。
誰よりも分かり合うことが出来て、誰よりも一緒にいたいと思える大切な女性。
その双妹が俺のすべてを受け入れ、『ひとつ』になろうとしてくれている。
だから、俺は双妹のすべてを感じたい。

それなのに、
心の奥底で何かが引っ掛かる――。

723以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/30(火) 23:11:08 ID:CPbYqU2o
双妹「どうしたの?」

男「そういえば、今は低温期だろ。今日は危険日じゃないのか?」

双妹「うん、そうだよ。風邪を引いて遅れているかもしれないけど、今日か明日が排卵日なの。膣内で射精したら、私たちの赤ちゃんが出来ちゃうかもしれないわね//」

男「それなら、ちゃんと避妊をしないと不味いよな」

双妹「それじゃあ、少し待ってて。部屋からコンドームを持ってくるから♪」


双妹はそう言うと、おもむろに上体を起こした。
そして、はっとした表情で俺を見詰めてきた。


双妹「……」

男「……」


コンドーム。
その言葉を受けて、俺と双妹は無言で見詰め合う。
それから数瞬後、心の隙間に何かが入り込んできた。

724以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/30(火) 23:32:30 ID:LB4E3nY2
男「……双妹」

双妹「もしかして、また少女さんを選ぶつもりなの」

男「あ、ああ……ごめん。俺は今は……そう、少女さんと付き合っているんだ」

双妹「少女さんはもう死んでいる人なんだし、私は別れたほうが良いと思う」

男「それでも約束があるし、勢いに任せて抱いてしまうと双妹を傷付けることになってしまうと思うんだ。だから、俺は今の双妹とは……しないんだ!」


そう気持ちが固まった瞬間、身体の中から大量の闇が噴き出してきた。
俺に憑依していた低級霊たちが強制的に弾き出されたのだ。
それと同時、全身の力が抜けて意識がすうっと落ちそうになった。


少女「男くん!」


身体の中に少女さんの気配を感じ、必死に意識を繋ぎとめる。
まだ落ちる訳にはいかない。
双妹と少女さんのために落ちる訳にはいかないんだ!

俺は気力を振り絞り、おぼろげな頭で少女さんの姿を探した。
すると混乱状態に陥っている低級霊たちの中から、少女さんが飛び出してきた。

725以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/30(火) 23:38:15 ID:MsP.tDV2
少女「良かった……。思いとどまってくれたんだっ!!」

男「少女さん、その……ごめん。俺は双妹のことが――」

少女「その話は後でいいから、今はまず双妹さんを助けないと!」


そうだ、双妹はまだ憑依されているのだ。
少年を除霊するまで安心することは出来ない。


少女「双妹さん、もうやめてっ! これ以上、自分を傷付けないでっ!!」

双妹「あなたが男と出会ってさえいなければ、あの日、私は男とひとつになれたはずなのに――」

少女「あの日?」

双妹「……負けたくない。もう死んでいる人なんかに負けたくないっ!」

726以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/30(火) 23:46:12 ID:MsP.tDV2
双妹は強く言い放つと、俺を押し倒した。
そして、そのまま覆い被さってきた。


双妹「私が気持ちよくしてあげる。少女さんには出来ないことを、私がいっぱいしてあげる//」

少女「双妹さんは本気なんだ。少年くんを除霊しないと、双妹さんは絶対に止まらないんだ――」


少女さんは苦々しい表情で言うと、少年を睨み付けた。
そして、棚の上に置いている除霊が出来る手袋に手を伸ばした。


男「少女さん、何をっ?!」


くそっ。
全身が脱力しているせいで上手く力が入らない。
そんなもどかしさを感じると同時、双妹の手が陰茎に触れた。

727以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/31(水) 00:38:56 ID:Jonf0YqE
双妹「男……挿入れるよ//」

少女「うぐうぅっ! ううっ……うううぅぅっ!!」


双妹がゆっくりと腰を下ろし、困惑した表情で俺を見る。
そしてその一方で、少女さんの呻き声が部屋中に響き渡った。


少年「ついに、ついにヤリやがった!!」

双妹「……」

双妹「ねえ、さっきまで硬かったのに小さくなってるんだけど」


騎乗位での挿入に失敗し、双妹はぬるぬるになっている割れ目をむにむにと押し付けてきた。
お互いの粘膜が擦れ合い、亀頭がぬるりと包まれる。
その感覚はとても温かくて、やっぱりどうしようもなく気持ちがいい。
しかし、陰茎が勃起しないので双妹は不満そうに頬を膨らませた。


双妹「……はくちゅん…………むうぅっ、元気がなくなっちゃった」

男「これで分かっただろ。俺はしないんだ」

双妹「こうなったら、本気ではむはむしちゃうもん。男がすぐにイっちゃう敏感な場所、私はぜ〜んぶ知ってるんだからね//」

728以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/31(水) 00:56:56 ID:awOX6XCA
少女「だめっ……だめえぇっ!!」


少女さんが声を張り上げると、双妹は不快そうな顔で少女さんを見据えた。
俺も少女さんに視線を向けると、彼女は手袋を嵌めて苦悶の表情を浮かべていた。


双妹「うざいから、私たちの邪魔をしないで欲しいんだけど」

少女「私に出来ることは、もうこれくらいしか残っていないと思うから……」

少女「だからっ、少年くんだけは絶対に許さない!!」


少女さんが怒声を飛ばすと、どす黒い低級霊たちが一斉に飛び掛かってきた。
少女さんは必死の形相で身構え、それを思いっきり払いのける。
すると低級霊たちが手袋に触れた瞬間、弾けるようにして身体が砕け散った。


少年「なにっ?!」

少女「ぜったい、絶対に除霊してやるんだからっ!!」


低級霊が少女さんに襲いかかり、次々と砕け散っていく。
まるで波紋が広がっていくかのように、闇が弾けて消えていく。
そして、ついに少女さんが少年を捕らえた。

729以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/31(水) 00:59:06 ID:Jonf0YqE
少年「く゛あ゛あ゛あ゛ああぁぁっっ……!!」


人の体をなしていた闇が不定形になり、どろりと崩れ落ちた。
少女さんはその様子を険しい表情で見届けると、力なく微笑んだ。


少女「やった……これで双妹さんは――」

少女「……!?」


双妹がゆらりとベッドから降り、少女さんに歩み寄る。
そして正気とは思えない言語を発しながら、少女さんの右手袋を掴んだ。

まさか、双妹はまだ憑依されているのか?!

そういえば、友が『少女さんクラスの力を持っている怨霊が相手の場合は、動きを抑えるだけで精一杯だ』と言っていたはず。
つまり、少年を除霊するにはその手袋では力不足だったのだ。

730以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/31(水) 01:02:30 ID:awOX6XCA
少女「うぐぅっ、ううぅぅっ……!」

双妹『&J%FVSB`_DQ`z!!』

男「くそっ! 少女さん、双妹っ!」


俺は何をやってるんだ。
少女さんが苦しんでいるときに、双妹が苦しんでいるときに――。
動いてくれ、俺の身体っ!


少女「……こっちも…………除霊しなく、ちゃ……」

少女「出来るっ! 私にも少年くんと同じことが出来るっ!!」


少女さんは力強く言い放つと、自分の身体を双妹と重なり合わせた。
すると、少女さんの身体が双妹の中に溶け込んでいった。

731以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/01(木) 10:11:05 ID:4SkcN7M6
おつ

732以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/05(月) 19:07:48 ID:DrzIvfzY
(2月17日)sun
〜兄妹の部屋・双妹13歳〜
とてもよく晴れた日曜日の夜。
お風呂から上がって部屋に戻ってくると、男がベッドの上でニヤニヤと妄想を膨らませていた。
買い物に行って帰って来たときから、ずっとそんな調子だ。


双妹「ねえ、今日は何か良いことでもあったの?」

男「本屋さんに行ったら、偶然、少女さんに出会ったんだ」


少女さんって、誰なんだろう。
そんな名前の人は、今まで聞いたことがない。


双妹「へえ、そうなんだあ。それで、少女さんって誰なの?」

男「隣のクラスの女子なんだけど、すごく可愛くて。今日、ついに一言だけ話すことが出来たんだ!」

双妹「ふ、ふうん……」

733以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/05(月) 19:58:06 ID:EO838fY6
男「そう言う双妹こそ、今日は何か良いことがあったんじゃないのか。ずっと落ち着かない感じだし」

双妹「やっぱり、そう見える? 実はね、凄いモノを買ってきたの!」

男「凄いモノ?」

双妹「ふふん// お父さんとお母さんには、絶対にナイショだからねっ」


私は念を押して、バッグから紙袋を取り出した。
そして、二段ベッドの上段に上がる。


男「それ、ドラッグストアで買ってきたのか。ということは、生理用品?」

双妹「いいから、開けてみて//」


私は男に紙袋を手渡し、開けるように促した。
すると、男は紙袋を開けて中身を取り出し、それを見て不思議そうに首を傾げた。

734以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/05(月) 20:49:18 ID:DrzIvfzY
男「これがそんなに凄いの?」

双妹「そうだよ。それがあれば私たち、セックスが出来るんだから!」

男「ええっ?! どういうことだよ!」

双妹「しーっ、声が大きいわよ」


想像以上に驚いてくれた男をたしなめて、得意げな顔で箱を受け取る。
そして、震える手で開封して中身を覗き込んだ。
箱の中には、連袋が2つと紙切れ1枚が入っているようだ。
私は3連袋を取り出し、1袋だけ切り離す。
それにはピンクいゴムが入っていて、触ってみるとぷにぷにしていた。


男「ごめん。それで、どういうこと?」

双妹「13日に大学病院に行ったとき、女医さんにセックスをして妊娠したらどうすればいいのか相談してみたの。そうしたらね、『自分の身体を大切にして新しい命に責任を持ちなさい』って注意されたんだけど、避妊法とか性感染症のことをいろいろと教えてくれたの」

男「あっ、ああ! あの話、本当に聞いたんだ」

双妹「うん。だって、したいんだもん。それでね、この『こんどーむ』を使えば妊娠する心配がほとんどないんだよ。ねっ、凄いでしょ!」

735以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/06(火) 02:39:51 ID:jsKJP1M2
男「へえ、そんなものが売ってるんだ」

双妹「すっごく緊張して、死ぬほど恥ずかしかったんだからね//」

男「でも、どうやって使うんだろ」

双妹「おちんちんに被せるらしいんだけど、どこかに使い方を書いていないのかなあ」

男「それに説明書は入ってないのか?」

双妹「ああ、そっか」


紙切れを取り出すと、ちゃんとそれに図解されていた。
どうやら、勃起しているおちんちんの皮を根元まで剥いて被せるらしい。
そして、こんどーむを巻き下ろしたら被せた部分を亀頭方向に引き寄せて、根元で余っていた皮がぴんと張ったら再びこんどーむを巻き下ろして被せれば良いようだ。

何だか、すごくドキドキしてきた。
これがあれば、6回もセックスが出来る。
6回も男とひとつになれるんだ。

そのとき、私はどうなっちゃうんだろう――。

私は好奇心を満たすために、あまい表情で期待の眼差しを向ける。
すると、男は一人の世界に入り込んでいた。

736以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/06(火) 21:58:41 ID:MZzSa1AQ
男は今、何を考えているの?
こんどーむを使えば、洗いっこよりも凄いことが出来るんだよ。
一人でオナニーをしなくても、私と一緒にセックスが出来るようになるんだよ。
あそこが大きくなっているし、男もひとつになりたいと思っているはずだよね。


双妹「ねえ、男……」


声を掛けると、男が無言で顔を上げた。
お互いの視線が交わり、私はいやらしく微笑む。
そして、こんどーむの袋を開けた。


双妹「今から一緒にセックスしようよ//」

男「……そうだな。俺もセックス、してみたい」

737以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/06(火) 22:01:08 ID:MZzSa1AQ
双妹「……」


男の言葉を聞いて、私は直感的に温度差を感じた。
なんとなく、私を見てくれていないような気がする。


双妹「その言い方、少し冷たいね」

男「どうしたんだよ、急に」

双妹「男がセックスをしてみたい人は、私じゃなくて少女さんなんじゃないの?」

男「それは……」

双妹「やっぱり、少女さんとしたいんだ。男はその人のことが好きなの?」

男「そ……そんな訳ないだろっ」


男は慌てた様子で否定し、耳まで真っ赤にしながら俯いた。
なんて分かりやすいんだろう。
男は今、少女さんのことが好きなんだ――。

738以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/06(火) 22:04:42 ID:jsKJP1M2
双妹「ねえ、男。私たちって、一卵性の双子でしょ」

双妹「だから私たちの間に隠し事をせずに、本当の気持ちを私に教えてほしい」

男「……分かったよ。誰にも言うなよ」


男はぶっきらぼうに言うと、恥ずかしそうに少女さんのことを話してくれた。

男が少女さんのことを知ったのは、先々週の土曜日に授業の一環で行った日帰りのスキー実習。
そのときに、ひと際目を引く女子がいることに気が付いたそうだ。
彼女は笑った顔がとても可愛くて、ゲレンデを滑る姿が妖精のように可憐だったらしい。

しかし隣のクラスということもあり、話をする機会がないまま今日の日曜日。
本屋さんで偶然、少女さんと同じ小説を取ろうとしてしまい、「すみません」と一言だけ話しかけてもらうことが出来たそうだ。
そのときにもっと話をすれば良かったのにと思ったけれど、少女さんが家族の人と一緒にいて、話しかけることが出来なかったみたいだ。

739以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/06(火) 22:06:59 ID:MZzSa1AQ
双妹「少女さん……か」

双妹「そういうのって、ゲレンデマジックって言うんじゃないの?」

男「そうかもしれないけど、とにかくスキー実習のときに少女さんと仲良くなりたいって思ったんだ」

双妹「ふうん、そうなんだ……」

双妹「もし……もしもね、少女さんが毎日のように家でお兄ちゃんや弟とセックスをしていたら、男はどう思う?」

男「少女さんがそんなことをしている訳がないだろ」

双妹「私はどう思うのか聞いてるの」

男「……それは…………嫌だな」

双妹「私たちは今、少女さんがしていたら嫌だなと思うようなことをしようとしているんだよ。もし少女さんにそのことを知られたら、私たちはどう思われるんだろうね」

男「……!!」

740以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/06(火) 22:08:10 ID:kn/BqMFY
双妹「私はそれでも男とひとつになりたい。だから、選んでほしい」

双妹「今から私とセックスをするか、それとも少女さんに告白をするか」

男「俺は少女さんに告白しようと思う」

双妹「そっか……そう答えると思ったよ…………」


男が乗り気ではないのならば、それは仕方がない。
だけど、このままだと昂ぶった私の気持ちが治まらない。

私は興奮した面持ちで、こんどーむを弄ぶ。
左手の人差し指と中指を寄せて、陰茎に見立てて被せていく。
そして新たに袋を開けて、上目遣いで男を見詰めた。


双妹「ねえ、私たちはどうして性別が分かれちゃったんだろうね」

男「……」

双妹「私は男とセックスをしてみたい。私たち二人だけの秘密にして、えっちなことを楽しもうよ//」

男「……ごめん。少女さんに告白するって決めたから」

741以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/06(火) 22:09:58 ID:jsKJP1M2
双妹「別に我慢なんてしなくていいのに。高かったんだからね、これっ!」


昨日のうちに勇気を出して買っていたら、男とひとつになれたのにな。
だけど、これで良かったのかもしれない。
セックスがどんな感じなのか興味はあるけど、今はまだ中学生だし不安もあったから――。


男「それじゃあ、来週の日曜日、お詫びにあまい物を食べに行こうか」

双妹「やったあ〜。もちろん、男の奢りだからね♪」

男「分かってるって」

双妹「じゃあ、私はもう下りるわね」


私は満面の笑みを浮かべてみせて、二段ベッドの上段から下りた。
そして開封したこんどーむをゴミ箱に捨てて、未開封のものは引き出しの奥に隠すことにした。

742以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/06(火) 22:11:32 ID:wWxBJFM2
双妹「ところでさあ、いつ少女さんに告白するの?」

男「今日会うことが出来た流れで、明日の放課後、体育館裏に呼び出して告白しようと思ってる」

双妹「え〜っ、それはやめたほうが良いんじゃないの? 少女さんは隣のクラスなんでしょ。ほとんど話をしたことがない人に突然告白をされたら、びっくりして困るだけなんじゃないかなあ」

男「言われてみれば、そうかも」

双妹「話す機会を増やすのが一番確実だと思うけど、クラスが違うから難しいし、2年生になったときに同じクラスになれるとは限らないよね」

男「そうだよな」

双妹「そうだっ、3月14日なら告白できると思わない?」

男「いいんじゃないか、それっ!」

双妹「でしょっ! びっくりされるかもしれないけど、ホワイトデーなら告白される理由がないこともないし。少女さんもそのほうが気持ちが楽なはずだから、気負わずに返事をすることが出来ると思う」

男「双妹、ありがとう。ホワイトデーに告白してみるよ」

双妹「うん。私も応援しているから、告白が成功するように頑張ろうね♪」

743以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/07(水) 09:54:38 ID:h61dnR66
おつ

744以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 21:52:13 ID:f2Gv9jLc
・・・
・・・・・・
〜自宅・部屋〜
少女さんが双妹の中に入り込んですぐ、双妹が苦しみ始めた。
少女さんは戦っているのだ、双妹の中で少年と――。

俺は気力を振り絞って、身体を起こす。
全身に虚脱感が残っているけれど、そんなことは言っていられない。
少女さんは除霊が出来る手袋をはめ続けているので、想像を絶する苦しみを感じているはずなんだ。


双妹「コレいジョウ……」

双妹「これ以上、私の気持ちに入って来ないでよおっ!」


双妹が悲痛な声を上げた瞬間、少女さんが双妹の中から弾き出された。
そしてそれに続いて、禍々しい闇が噴き出してきた。

745以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 21:59:54 ID:NlOyea7M
もしかして、少年が強制的に離脱させられたのか?!

そう思うと同時、双妹がずしりと倒れ込んできた。
全身が脱力していてぴくりとも動かない。
少年が離脱したので、双妹は意識を失ったのだ。


少女「うぐっ、うぅっ…………」

男「少女さん!」


少女さんの姿を探すと、彼女はミニテーブルの下に倒れていた。
苦悶の表情で丸くなってうずくまり、両腕を不自然に直立させている。
俺は急いで双妹をベッドに寝かせ、少女さんの介抱に向かった。

746以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 22:05:14 ID:kJi0RCSg
少女「……少年くんを…………」

男「分かってる。でも、その前に少女さんを!」


手袋を嵌めている限り、少女さんは霊的なダメージを受け続けることになる。
俺は目に付いた双妹のスマホを伏せて、ミニテーブルの上にある手袋を手に取った。
すると、女の子らしい細い指と華奢な手のひらの感触を感じた。


少女「あ゛あ゛あ゛ああぁぁっっ……!!」

男「ご、ごめん! すぐに外すからっ!」


俺は引き抜くようにして手袋を脱がせてあげて、少女さんの様子を窺った。
彼女は力なく崩れ、虚ろな表情でぐったりとしている。

少年――。
お前だけは許さない!
俺は手袋をはめて、少年を見据えた。

747以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 22:06:12 ID:NlOyea7M
お前さえいなければ、少女さんと双妹が苦しむようなことはなかった。
お前さえいなければ、少女さんは看護師になる夢を叶えることが出来ていたんだ!


男「うおりゃああっ!」


俺は力強く踏み込んで、拳を繰り出した。
確かな手ごたえを感じて、脇腹をえぐる。
それと同時、蠢いていた闇が弾け飛んで土手っ腹に風穴が開いた。


少年「グオオオォォォッ……!」


少年にダメージが通った?!
もしかしたら、これはいけるかもしれない。

748以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 22:07:37 ID:AJeh2fm6
少年「……ミンナ……ミンナ、コワシテヤルッッ!!」

男「これ以上、俺たちに関わるな! 一人で死んでろっ!!」


俺は声を張り上げて、少年を睨み付けた。
今まで友が霊的な力を使うときには、相手の鳩尾に触っていることが多かった。
おそらく、そこに霊的な何かがあるのだろう。
ならば、次は鳩尾に叩き込む!


少年「オマエサエイナケレバ、ボクハッ!」


少年が吼えると、右腕が触手のように伸びてきた。
それを左手で受け止めて砕き、懐に入り込む。
そして、鳩尾に拳を抉り込んだ。


少年「ク゛ア゛ア゛ア゛アアァァッ!!」

少年「・・・ボク゛ハシ゛ナ゛ナインタ゛アァッ!!」


全身が総毛立つような怨恨に満ちた断末魔。
少年はどす黒い闇を撒き散らし、音もなく砕け散った。

749以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/12(月) 22:11:39 ID:kJi0RCSg
男「終わった……のか?」


気配を探ってみたが、特に何も感じない。
低級霊たちも少年が除霊されたからか、まったく姿が見えなくなっていた。
これでもう少女さんが狙われることはないだろう。

俺は覚束ない足取りでミニテーブルに歩み寄り、双妹のスマホを手に取った。
それは背面が異様に熱くなっていて、液晶画面に『温度上昇を検知したためカメラを終了します』と警告が表示されていた。
どうやら、思った通りSNSには配信されていなかったようだ。

俺は手袋を外して動画を削除し、スマホをミニテーブルの上に置いた。
これで全部終わりだ……。


男「少女さん。これでもう――」

男「……?!」

男「少女さんっ! 少女さんっ!!」


呼びかけても返事はない。
ミニテーブルの下で倒れていたはずの少女さんは、いつの間にかその姿が見えなくなっていた。

750以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/13(火) 22:28:51 ID:2Lnkh.ds
男「急にいなくなるなんて、どういうことだよ……」


少年を除霊したから、思い残すことがなくなって成仏をした?
それとも、霊的なダメージが大きすぎて除霊されてしまったのか?!

俺は少女さんのぐったりとした姿を思い出す。
虚ろな眼差しと苦渋に満ちた声。
きっと今は危険な状態にあるはずだし、少しでも早く友に相談するべきかもしれない。


――ガチャッ!


そう考えていると、突然ドアが勢いよく開け放たれた。
俺は驚いて顔を上げると、そこにはなぜか巫女服姿の女性が立っていた。
女性は唖然とした表情になり、その視線が俺の下半身と裸の双妹に向かう。
そして後ずさり、勢いよくドアが閉められた。

751以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/13(火) 22:33:35 ID:d0pJtdi.
巫女『きゃあああぁぁっっ!』

巫女『どうしよう、どうしようぅっ!!』


ドアの向こう側で女性が取り乱す。
どうしようって言いたいのは、俺も同じだし。
今の女性は、たしか友の家の神社の巫女さんだよな。
どうして俺の家に――。

そう思っていると、ノックの音がしてゆっくりとドアが開いた。
その隙間から巫女さんが顔を覗かせて、恥ずかしそうに部屋の様子を窺っている。
そしてミニテーブルの下に目を向けると、真剣な表情に変わって部屋の中に入ってきた。


巫女「えっと、あなたは少女さんだよね!」

巫女「……私が分かる? そう、そうなのね」


姿が見えなくなった少女さんは、どうやらそこに倒れているらしい。
俺はなりふり構わずに、巫女さんに声を掛けることにした。

752以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/13(火) 22:42:05 ID:d0pJtdi.
男「あのっ、少女さんは無事なんですか!」

巫女「えっと、それはその……詳しく霊視してみないと分かりません」

母親「巫女ちゃん、さっきの悲鳴は何なの?!」

母親「……!」


母さんが部屋に入ってきて、俺の姿を見ると目を見開いた。
そして裸で横たわっている双妹に目を向け、うずくまっている巫女さんに目を向ける。


男「か……母さん…………」

男「これはその――」


俺はその先の言葉を飲み込んだ。
こんなの、どうやって説明すれば良いんだよ。

753以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/13(火) 22:46:19 ID:2Lnkh.ds
母親「……まあ、いいわ。話をするのは今度にしましょう」


母さんは溜め息混じりで言うとベッドに歩み寄り、双妹に毛布を被せた。
そして、巫女さんに真剣な眼差しを向けた。


母親「巫女ちゃん、悪霊の姿は?」

巫女「どうやら、男くんがその霊具ですべて除霊してくれたみたいです」

母親「男が……?」

巫女「はい。集団失神の件に関連して、友くんが護身用に渡されていたみたいですね。低級霊の気配がこの一帯から消えています」


ああ、そうか。
母さんは買い物に行く振りをして、神社に行っていたのか。
家に寄り付いている低級霊を祓ってもらうために――。


巫女「ただし男くんと双妹さんには強力な霊障が残っているみたいなので、それは祓ったほうが良いと思います」

母親「そうね。それじゃあ、申し訳ないけど今からお願いします」

754以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/13(火) 23:05:19 ID:SHRyY4gw
巫女「今からって、私はただの巫女ですよ?!」

母親「本当は宮司さんにお願いするべきなんだろうけど、今日は地鎮祭でお忙しいでしょうし。霊具を使えば、巫女ちゃんでも祓うことが出来るはずでしょ」

巫女「そうですね……分かりました。でも、その前にお召し物を着ていただけたらなあと//」

母親「ほら、男。若い女性がいるんだから、早く服を着なさい」

母親「巫女ちゃん、ごめんなさいね。うちの子たち、人前で裸になっても平気だから」

男「その言い方、微妙に誤解をされそうなんだけど……」

巫女「そ、そんなことはないです。その……ご立派だと思いますよ//」


巫女さんはよく分からないフォローを入れて赤面し、恥ずかしそうに顔を俯けた。
俺はそれを見て何だか申し訳ない気持ちになり、急いでパジャマを着ることにした。


男「すみません。服を着ました」

巫女「それではお祓いをするので、楽な姿勢になってください」


俺はそう言われ、ベッドに腰を下ろした。
そして、巫女さんが俺と双妹に残っていた霊的な痕跡を祓ってくれた。

755以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/13(火) 23:11:40 ID:SHRyY4gw
双妹「ん……んんっ……」


しばらくして、双妹が意識を取り戻した。
ぱちくりと瞬きをして、身体を起こす。


双妹「あっ、ああ……そっか…………」

母親「双妹、身体は大丈夫?」

双妹「……うん」


双妹は力なく答えると、ミニテーブルの下に目を向けた。
そして、少し不安そうな顔で巫女さんの様子を窺う。
どうやら、双妹には少女さんの姿が見えているようだ。


母親「巫女ちゃん。宮司さんには私が説明しておくから、ここで見たことは他言無用でお願いします」

巫女「そうですね、分かりました。では、私は帰らせていただきます」

756以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/13(火) 23:16:05 ID:SHRyY4gw
男「あのっ、少女さんは大丈夫ですよね!」

巫女「彼女はまだ四十九日を迎えていない幽霊ですし、しばらく休めば霊的な力が回復すると思います。それまで依り代への憑依を解いて、うちの神社で預からせていただきますね」

男「お願いします」

母親「それじゃあ、神社まで送って行きましょうか」

巫女「ありがとうございます」

母親「男、双妹。二人ともインフルエンザなんだから、ちゃんと温かくして寝てなさいよ」


母さんは言い含めるように言うと、巫女さんと一緒に部屋を出ていった。
そして裸の双妹と部屋で二人きりになり、気まずい空気が広がった。
外は相変わらず、ザーザーと強い雨が降っている。
やがて双妹は何か言いたそうな顔で俺を一瞥すると、ベッドから下りて脱ぎ散らかした下着とネグリジェを着始めた。

757以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/13(火) 23:19:40 ID:2Lnkh.ds
男「なあ、双妹……」

双妹「なに?」

男「中学2年生のときのことなんだけど、あの夜のことを覚えてるか?」

双妹「……覚えて…………いるよ」

男「俺は双妹のことを、もう一人の自分だと思ってる。どんなことがあっても俺たちは一緒だし、楽しいことも苦しいことも二人で分かち合いたいと思ってる」

男「今は双妹の気持ちに応えられないけど、それだけは絶対に変わらないから」

双妹「……」

双妹「私も男のことは、もう一人の私だと思ってる。かけがえのない存在だと思ってる。私もどんなことがあっても、その大切な気持ちだけは失いたくない」

男「ああ、俺もだ」

双妹「うん……男、好きだよ…………」


双妹は不安そうな様子で言い、俺の隣に座ってきた。
俺はそんな双妹の腰に腕を回し、気持ちが落ち着くまで優しく抱き寄せてあげた。

758以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/14(水) 23:26:47 ID:i9hQ0UrA
おつ

759以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/19(月) 23:10:08 ID:ZGeR4cxg
(3月13日)sun
〜神社・少女さん〜
男くんが少年くんを除霊してくれて、今日で4日。
無我夢中ではめた手袋の影響で苦しい日々が続いていたけれど、ようやく全身の虚脱感が和らいできた。
それなのに今日の空模様と同じで、私の心は晴れてくれない。

あの日、私は双妹さんを止めるために支配しようとして、いろんなことを知った。
双妹さんが大学病院の検査で男くんを射精させて、性に目覚めたこと。
セックスをしたいと思うようになったけれど、最後の一線を越えたことだけは一度もないらしいこと。

そして、男くんと双妹さんの暗黙のルールも知った。
『少女さん、つまり私がしていたら嫌だなと思うようなことをしないこと』

その割には今でも一緒にお風呂に入っているし、洗いっこのついでに性行為をすることさえあるようだ。
しかも、双妹さんはそれを兄妹のスキンシップだと考えているらしい。
もはや性に対する意識が違いすぎて、私には訳が分からない。

それでも既成事実を作ろうとは考えていないらしくて、SNSに生配信をしているという話はブラフだった。
そのことは、単純にほっとした。

760以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/19(月) 23:49:27 ID:ZGeR4cxg
双妹さんが男くんに対して抱いていた背徳的な気持ち。
それを恋愛感情だと自覚してしまったのは、どう考えても私のせいだ。

私がすぐに成仏していれば、双妹さんが集団パニックで襲われたり、少年くんに取り憑かれたりするようなことにはならなかった。
そうなれば抑えていた気持ちを自覚するようなことにはならなかっただろうし、男くんに好きな人が出来れば性的なスキンシップもしなくなっていただろうと思う。
きっと、普通の高校生活を送ることが出来ていたはずだ。

それなのに、双妹さんは告白をして引き返すことが出来なくなってしまった。
そんな双妹さんに対して、私は何をしてあげることが出来るのだろう。


友香「少女、いる〜?」


音がない世界で一人考え事をしていると、友香ちゃんの声が聞こえてきた。
日曜日だし、お見舞いに来てくれたのかもしれない。
私はそう思い、障子をすり抜けて外に出た。
すると、制服姿の友くんと友香ちゃんが立っていた。

761以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/19(月) 23:51:19 ID:qVog.H3g
少女「友香ちゃん、お見舞いにきてくれたんだ」

友香「うん、身体は大丈夫?」

少女「まだ本調子ではないけど、外に出られるくらい元気が出てきたよ」

友香「そうなんだ〜。元気そうで良かったよ」

少女「ところで、二人ともどうして制服を着ているの?」

友香「ああ、これね。今から友くんと学校に行こうと思っているの」

少女「友くんと学校に?」

友香「うん。男くんがあの悪霊を除霊してくれたから、少女はもう学校に行けるはずでしょ。だから、危険な低級霊がいないか調べてもらおうと思っているの」

762以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/19(月) 23:56:50 ID:qVog.H3g
少女「低級霊がいないか調べるって、どうしてそんな事を?」

友香「そんなの、決まってるじゃない。この1年間頑張ってきたことを最後までやり遂げようよ」

友「以前、俺の親父が『生きた証が見付かったとき、少女さんの救いがそこにあるはずだ』と言っていただろ。それを見付けるためにも、学校に行ってみたらどうかな」


私はこの1年間、看護師になるために勉強を頑張ってきた。
もうそれが叶うことはないけれど、こんな形で諦めるのは絶対にいやだ。


少女「私……最後までやり遂げたい。みんなと一緒に頑張りたいっ!」

友香「うん、頑張ろう♪」


友香ちゃんのうれしそうな顔を見て、私ははっとした。
そういえば、双妹さんだったっけ。
生きた証を考えているときに、学校に行ってみたら良いんじゃないのと提案してくれたのは――。

763以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/20(火) 21:25:51 ID:IwxCc8lA
(3月14日)mon
〜自宅・部屋〜
今日も相変わらずの雨模様。
俺はインフルエンザの出席停止期間中で部屋に引きこもり、ただぼんやりと風雨の音に聞き入っている。
すでに解熱していて体力が有り余っているせいで、じっとしていると気が滅入ってしまいそうだ。

今頃、少女さんは何をしているのかな――。
俺はスマホを起動し、昼過ぎに来た友のメールを読む。
それによれば、少女さんは霊的な力が順調に回復し、今日から友香さんと一緒に学校に行っているそうだ。
もしかすると、今日はお見舞いに来てくれるかもしれない。

だけど、何を話せば良いのだろうか。
少し気まずい。

とりあえず、友にお礼のメールを返す。
そして横になっていると、軽快なリズムで階段を上る足音が聞こえてきた。
どうやら、双妹が学校から帰ってきたようだ。

764以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/20(火) 21:31:20 ID:DfttHY9c
双妹「ただいま〜。身体は大丈夫?」

男「もう熱はないし、退屈してたところ」

双妹「そうだろうと思ったよ」


双妹はくすくすと笑うと、ミニテーブルの上にカップを並べて紅茶を淹れた。
俺はあまい香りに誘われてベッドから下り、お菓子の箱を手に取る。
それにはプレゼント包装がされていて、淡い水色のリボンが施されていた。


男「これ、誰かに貰ったのか?」

双妹「今日、ホワイトデーだったでしょ。それで、友くんが私と男に半分ずつお返しだって」

男「俺の分もあるのかよ。ネタに走ってるんじゃないだろうなあ」

双妹「あー、ありそうだね。クッキーだと言っていたから、変なお菓子ではないと思うんだけど……」

765以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/20(火) 21:37:56 ID:DfttHY9c
俺は双妹に包みを返し、何が出てくるのか様子を見守った。
友がくれたものなら油断は出来ない。


双妹「鈴塩のハーブソルトクッキーか。何だかおしゃれだね」

男「そうだな。というか、友にこんなセンスがあったのが驚きなんだけど」

双妹「うん。私もびっくりした」


もしかして、友は本気で双妹のことが好きなのか?
そう思いつつ、1枚食べてみた。
とてもサクサクしていて、ハーブの香りがほのかに広がっていく。
しかも塩気がくどいことはなく、紅茶の甘みを適度に引き出している。


男「これ、ガチで美味しいんだけど!」

双妹「本当にすごく美味しい。あとでお礼を言わないと」

766以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/20(火) 21:40:42 ID:iZ/3.48.
男「なあ、双妹」

双妹「それはないよ。友くんは幼馴染みたいなものだし、恋愛対象じゃないから」

男「でも、友が本気なら考えてみても良いんじゃないかな」

双妹「そんなの絶対にあり得ない。そもそも、友くんを好きになるとか想像できないし、考えることすら嫌だもん。まあ、いいお友達ってところかな」

男「そっか。それなら仕方ないな」

双妹「そうそう。私が好きなのは男だけなんだから//」


友には悪いけど、双妹は完全に脈なしだ。
俺も友と双妹が付き合うなんて想像できないし、もし好きならば諦めてもらうしかないだろう。

767以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/20(火) 21:46:07 ID:IwxCc8lA
双妹「それはそうと、男はどうするの?」

男「どうするって、何がだよ」

双妹「バレンタインデーのお返しに決まってるじゃない。理由はどうあれ、私たちは少女さんの前でセックスをしようとしたのよ。どんな顔をして会うつもりなの?」

男「そうだよな……」

双妹「とりあえず、私が先に会っておいたほうがいいよね。今は私が無害だってことを分かってもらわないといけないし」

男「いや、そういうことは俺が話すべきだろ」

双妹「でも、少女さんにとって私は油断が出来ない恋敵なんだよ。そんな相手が一緒に住んでいたら、男がいくら大丈夫だと言っても安心することが出来ないと思う」

男「そうなるのか」

双妹「そういうことだから、明日、学校の帰りに少女さんと話をしてみようと思う。それでダメだったら、潔く諦めてね」

768以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/21(水) 19:03:03 ID:EikZDiRA
おつ

769以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/28(水) 21:48:08 ID:FeU5lzV6
(3月15日)tue
〜学校・少女さん〜
火曜日になり、新しい1日が始まった。
学校に着いて慣れ親しんだ教室に入ると、今日も私の席に花瓶が置いてあった。
友香ちゃんによると、クラスのみんなが交代で水を替えてくれているそうだ。

学校の授業は私が死んで一ヶ月が経ち、今は平常通りに行われている。
看護関係の授業は楽しいし、実習の授業は参加できないことがとても悔しい。
そして、休み時間になったら友達のおしゃべりに耳を傾ける。

私はここにいるよ――。

その声が届くのは友香ちゃんだけだ。
だけどみんなを見ていると、それでも構わないと思えるようになってきた。

みんなの心の中で今も私が生きているから。
私の夢と目標がクラスのみんなに繋がっていると実感することが出来たから。

去年の4月にみんなと出会って、もうすぐ1年。
今となっては、最初の課題で書いた小論文が懐かしい。
そういえば、そのときに貰ったアレはどうなったのだろう。

770以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/28(水) 21:50:27 ID:FeU5lzV6
〜神社・少女さん〜
今日の授業が終わり、私は友香ちゃんと別れて神社に帰ることにした。
男くんの家の近くを通り過ぎ、ふわふわと住宅街を抜けていく。
ふと街路樹に目を向けると、今朝まであった雪吊りが取り外されていた。
季節はもう春になろうとしている。

私も役目を果たした雪吊りのように、もうすぐこの世からいなくなるんだろうな。
望む望まないにかかわらず、そのときが確実に迫ってきている。

その前に、男くんと双妹さんを交えて話し合わなければならない。
家に帰ることにも挑戦したいし、お姉ちゃんやお祖母ちゃんにも会っておきたい。
力が完全に戻ったらやりたいことが、まだいっぱい残っている。


少女「ただいま」

巫女「お帰りなさい。ついさっき双妹さんが来られて、社務所でお待ちになっていますよ」

少女「双妹さんが?」

巫女「ええ、あの日のことで話をしたいと」

少女「……分かりました。ありがとうございます」

771以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/28(水) 21:52:37 ID:wQVfAmzs
社務所に入ると、借り住まいをしている私の部屋で双妹さんが待っていた。
どうやら学校帰りに直接来たらしく、まだ制服を着ている。
私は双妹さんに声を掛け、ちゃぶ台を挟んで正座した。


少女「双妹さん、こんにちは」

双妹「こんにちは」

少女「……」

双妹「……」

双妹「あの日のこと、誰かに話しましたか?」

少女「あんなこと、誰にも言えないです」

双妹「……そう」

772以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/28(水) 21:54:38 ID:wQVfAmzs
双妹「ところで、もう察していると思うけど、私……振られたから」

双妹「兄妹なのに恋愛が出来ると思っていた私が、どうかしていたんだよね。そういうことだから、安心して。私はもう少女さんの邪魔をしない」

双妹「自分の気持ちだけを正当化して少女さんの恋愛を認めないのは、私自身、納得が出来ないし。まあ、少女さんが笑顔で成仏してくれたらそれが一番良いのかなって」


双妹さんは淡々と言い終えると、苦笑した。
その姿を見て、私は何だか申し訳ない気持ちが込み上げてきた。


少女「双妹さん、ごめんなさい……」

双妹「ごめんなさいって、何が?」

少女「あの日のことが原因で、男くんと双妹さんの関係が壊れてしまったんじゃないかと思って……。私さえいなければ、少年くんに憑依されてあんなことにはならなかったはずだから」

773以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/28(水) 21:59:08 ID:0AlqJkrE
双妹「あのさあ、何わけの分かんないこと言ってるのよ!」

少女「えっ……」

双妹「はっきり言わせてもらうけど、私と男は世界中にたった一つしかない特別な絆で固く結ばれているんだからね。あの程度のことで関係が壊れるとか、絶対にありえないし!」

双妹「そもそも少女さんさえいなければ、私は今頃、男と愛し合う関係になっていたはずなの。むしろ、出会って欲しくなかったくらいだわ!」

少女「……!」

少女「そっか、逆だったんだ」


私がいたから、男くんと双妹さんは最後の一線を越えなかった。
私が二人にとって、心理的なブレーキになっていたのだ。


少女「双妹さん。私は男くんを諦めないけど、だからと言って、双妹さんの恋愛観を受け入れるつもりはまったくないから!」

双妹「ふうん、私を否定するつもりなんだ。それじゃあ、私は男と少女さんの交際を認めたりはしない! それでも男と交際するつもりなら、少しでも早く成仏させていなくなってもらうから」

少女「双妹さんのほうこそ、本当に振られたのならば、私が成仏した後もずうっとただの妹でいてくださいね」

774以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/29(木) 21:24:11 ID:9Sj3pFhQ
双妹「……はあっ、なんだかなあ…………」

双妹「私たちの恋愛は性的マイノリティーかもしれないけど、好きな人を想う気持ちは普通の人と同じはずでしょ。だから少女さんが幽霊だとしても、それを受け入れて応援してあげようと思っていたんだけどな」

少女「確かに好きな人を想う気持ちは同じかもしれないけど、私と双妹さんでは関係性が違いますよね。私は兄妹で愛し合うなんておかしいと思います」

双妹「ひとつ聞きたいんだけど、LGBTの人たちは社会的に認知され始めているのに、どうして兄妹で愛し合うのはおかしいの? 人が人を好きになるのは理屈じゃないんだよ」

少女「男くんと双妹さんは兄妹だし、血が繋がっているから駄目なんです。好きだからって、何をしても許されると思っているんですか」

双妹「血が繋がっていたら、何だって言うの? そもそも少女さんは男にデートDVをしていたくせに、よくそんなことが言えるよねえ」

少女「それとこれとは関係ないじゃないですか」

双妹「はあ? 憑依霊なんて、ただのストーカーでしょ。好きだからって理由でそれが許されるのなら、私の気持ちも許されるんじゃないかなあ」

775以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/29(木) 22:15:59 ID:9Sj3pFhQ
双妹「結局のところ、同性愛者は好きな人が同じ性別だっただけ。私は好きな人が双子のお兄ちゃんだっただけ。同性愛者を性的指向で差別しないというのなら、近親性愛者も偏見をなくして受け入れるべきなんです」

双妹「まあ、結婚の話になると税金とかいろんな問題が関係してくるし、子どもを作れない同性愛者が普通の夫婦とまったく同じ権利で優遇されるのは、個人的にどうなのかなって思うんだけどね」

少女「同性婚に賛否両論があるのは分かるけど、その理屈だと不妊症のカップルや高齢者同士の結婚も駄目だってことになりますよねえ」

双妹「少女さんは法の下の平等を知らないの?」

少女「それくらい知ってるし! もしかして、双妹さんは兄妹で結婚が出来ないのは差別だとか言うつもりなんですか?」

双妹「正直に言うと、結婚したいなとは思うよ。だけど、家族だから色んな権利が認められているし、赤ちゃんも認知してくれれば大丈夫だと思うから――」

少女「えっ、赤ちゃんが欲しいと考えているの?!」

双妹「そうだけど、悪い?」

少女「悪いも何も、兄妹なんだよ! 劣性遺伝子病を発症するリスクがかなり高いと思います」

776以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/29(木) 22:33:55 ID:wlzHT1Ms
男くんと双妹さんは、常染色体と母親由来のX染色体が完全に一致している。
あまり想像したくはないけれど、そんな二人が赤ちゃんを作ってしまうと対立遺伝子がホモ接合になりやすく、もし双妹さんが劣性遺伝子病の保因者ならば4分の1の確率で発症することになる。
劣性遺伝子病の遺伝子は健康な人でも平均10個持っているといわれているので、双妹さんはなおのこと慎重になるべきだと思う。


双妹「えっとさあ、それを言うと高齢出産も染色体異常のリスクが高くなるし、先天的な障がい者に不妊手術を強制しろだとか、障がい児は産まれてくる前に中絶しろって話になりますよね」

少女「近親相姦がそれらと同じだって言うんですか」

双妹「そうだよ。もし障がい者にそんな事をしたら、絶対に社会問題になりますよねえ。それなのに近親相姦をすると障がい児が生まれやすいから駄目だとか言うのは、どう考えても矛盾していると思います」

双妹「それに私と男はもともと性染色体が3本あるトリソミーだったから、生まれてくる赤ちゃんの命を選別するような考え方は好きじゃないんです。普通の夫婦でも同じようなリスクがある以上、優生学上の理由で近親相姦を否定することは出来ません」

777以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/29(木) 22:53:11 ID:wlzHT1Ms
少女「確かに双妹さんの言う通りかもしれないし、優良な劣性遺伝子だけが発現して健康な赤ちゃんが生まれてくる可能性もあるだろうとは思います。だけど、子どもの気持ちを何ひとつ考えていないですよね」

双妹「どういうこと?」

少女「もし自分の両親が実の兄妹だと知ったら、心が深く傷付けられることになるはずです。学校でいじめられるかもしれないし、それ以上に恋愛観や家族観が大きく歪んでしまって健全に成長することが出来なくなってしまうと思います。もしそんなことになったら、子どもが可哀想だとか思わないんですか」

双妹「だからそういう偏見や差別をなくそうって、私は言ってるんです。そもそも、兄妹でセックスをして子どもを作ることは犯罪じゃないんだから、頑なに否定ばかりしている人は多様化している価値観に取り残されているだけだと思います」

少女「犯罪ではなかったとしても、兄妹でセックスをして子どもを作るだなんて倫理的におかしいです。だから、私は双妹さんの恋愛観を受け入れません」


そう言うと、双妹さんは小さくため息をついた。
そしてまだ言い足りないことがあるのか、目線を上に向けて何かを考え始めた。

778以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/29(木) 23:04:35 ID:aIvMxZbQ
双妹「これは実際にあることなんだけど、生まれてすぐ生き別れになった兄妹がそうとは知らずに出逢ったら、お互いに親近感が湧いて恋に落ちてしまうことがあるらしいんです」

少女「えっと……ジェネティック・セクシュアル・アトラクションのことですよね。それなら、テレビで見たことがあります」


それによると、両親の離婚や養子縁組などの理由で生後間もなく離れ離れになっていた近親者に対して、外見や性格などの類似点の多さから相手を魅力的に感じてしまう現象があるらしい。
しかもDNAの構造が近ければ近いほど好意的に感じて、お互いに強く求め合うようになるという説もあるそうだ。
それに対して、幼少期から一緒に暮らしてきた相手には性的な感情を持ちにくくなるという、ウェスターマーク効果も広く知られている。

そこまで思い出して、私ははっとした。

もしかすると、男くんと双妹さんはDNAの構造がほぼ完全に一致しているせいで、ウェスターマーク効果よりもジェネティック・セクシュアル・アトラクションのほうが優位に働いてしまっているのかもしれない。
健康な異性一卵性双生児は今まで前例がない訳だし、もしその可能性があるとしたら、私は男くんの彼女としてどのように向き合えば良いのだろうか。

779以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/29(木) 23:23:57 ID:9Sj3pFhQ
双妹「それを知っているのなら、話は早いですね」

双妹「結論だけ言うと、近親相姦は本能なんです。それなのに、兄妹で愛し合うことは倫理的におかしいんですか?」

少女「近親相姦が本能だとか、訳が分からないです。もしかして、双妹さんがお父さんとお風呂に入るのもそういうことなんですか」

双妹「はあっ?! 変なことを言わないでよ! そんなこと、絶対にあり得ないし!」

少女「ですよねえ! 家族なんだし、それが普通なんです」

双妹「つまり、少女さんは兄妹だから結婚が出来ないと苦しんでいる人がいたら、家族なのに気持ちが悪いと非難するつもりなんですね」

少女「そうは言ってないです。男くんと双妹さんの場合は生き別れになっていた訳ではないし、それとは状況が違うじゃないですか!」

双妹「それじゃあ、ちゃんとした理由さえあれば、私が男とセックスをしても受け入れてくれるってことですか?」

少女「それは、そう……かもしれないですね」


あまりにもしつこいので、私は仕方なく部分的に肯定することにした。
男くんと双妹さんが本能的に惹かれあっているのならば、今は関係を悪化させるよりも話を合わせておくほうが良いかもしれない。

780以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/30(金) 01:49:48 ID:yMi.6T6E
双妹「少女さんも結局はただの感情論なんです。この際だからはっきり言わせて貰うけど、少女さんはもう死んでいるんだから、生きていたときの常識で恋愛するのはやめた方がいいと思いますよ」

少女「私だってあんなことで死にたくなかったし、男くんと普通の恋愛をしたかった」


私の人生は本当になんだったんだろう。
少年くんに告白をされて断ったら呪い殺されて、幽霊になってなお粘着されて――。


双妹「この前ね、みんなで水族館に行ったでしょ。そのときに思ったの。少女さんの気持ちは誰に繋がっているんだろうって。それはきっと、私だったのかもしれないですね」


双妹さんがふいに優しい表情になった。
それに少し戸惑い、私は聞き返す。


少女「どういうことですか?」

双妹「ほらっ、私たちは同じ人を好きになったわけだし、何となくだけど」


男くんと双妹さんは一卵性双生児だ。
だから双妹さんのために生まれてきたということは、男くんのために生まれてきたと言い換えることが出来る。
そう考えると、私は何となくうれしく思えた。

781以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/30(金) 02:30:07 ID:PajYMzZ2
少女「そっか、私の気持ちは男くんと双妹さんにつながっていたんだ」

双妹「ええっ! そんな言い方をしてくるの?!」

少女「私、何か変なことを言いましたか」

双妹「そういう訳じゃないけど、男のことが本当に好きなんだなと思って」

少女「ああ……はい、好きです」

双妹「えっとさあ、自分でこういうことを言うのは気が引けるんだけど、私と男に性的な関係があることを知ったのに、どうしてまだ男のことを好きでいられるの?」

少女「男くんは双妹さんといろいろあったのかもしれないけど、それは私との交際が始まる前のことですよね。私と付き合い始めてからは一度もしていないし、私が見てきた男くんの頑張る姿を嘘だと思わないからです」

双妹「……ふうん」

少女「それに今の私の恋愛はマイノリティーだから、双妹さんの恋愛と同じで立ち止まるわけにはいかないんです。双妹さんのことは絶対に認めないけど、さっきの忠告は受け入れたいと思います」

782以下、名無しが深夜にお送りします:2018/11/30(金) 02:34:19 ID:cZ5PjTiQ
双妹「そっか、立ち止まるわけにはいかない……か」

双妹「そういうことなら、少女さんには1秒でも早く成仏してもらうしかないですね」

少女「……!」

少女「まさか、私がいなくなったら男くんに関係を迫るつもりですか」

双妹「言わなかったっけ。男と交際するつもりなら、少しでも早く成仏させていなくなってもらうって」

少女「あっ、ああ……それなら良いんだけど」

双妹「ふふっ、それではごきげんよう」


双妹さんは今日一番の笑顔でにこりと笑い、通学かばんを手に取って部屋を出た。
私も部屋を出て、社務所の入り口から双妹さんの後ろ姿を見送る。
もしかすると、私は本気で諦めるつもりだった双妹さんをその気にさせてしまったのかもしれない。
それが思い過ごしならばいいのだけど、それと同時に男くんと双妹さんの消えることがない絆をうらやましく感じた。

783以下、名無しが深夜にお送りします:2018/12/03(月) 12:30:28 ID:DGlYaMBU
おつ

784以下、名無しが深夜にお送りします:2018/12/04(火) 21:55:10 ID:GMmrwBHs
・・・
・・・・・・
〜自宅・午後〜
辺りが暗くなってきた頃、ようやく双妹が帰ってきた。
今日の帰りに少女さんと話し合ってみると言っていたけれど、上手くまとまってくれたのだろうか。
少し気になるけれど、双妹は晩ご飯の手伝いでキッチンに行ってしまった。
帰ってくるのが遅かったのだから、それは仕方がない。

さすがに今は聞くことが出来ないし、話してくれるのを待つしかないだろう。
やがて晩ご飯の時間になり、俺はリビングに行くことにした。


男「今日の晩ご飯はとり野菜鍋か」

双妹「もう下りてきたんだ。最後のシメは素麺だよ」

男「素麺? ああ、だいぶ前に少女さんが普及しようとしていたやつか」

双妹「お母さんが思い出したみたいに素麺を買ってきて、それで――。とりあえず、おこたに新聞を敷いといてくれる?」

男「分かった」

785以下、名無しが深夜にお送りします:2018/12/04(火) 21:56:21 ID:SfAJxSCE
コタツの上に新聞を敷くと、母さんがお鍋を運んできた。
そしてふたを取ると湯気が上がり、リビングにみその香りが広がった。
ここしばらくお粥がメインだったので、この匂いだけでご飯を何杯でも食べられそうだ。
俺はもう早く食べたくて、双妹が持ってきた茶碗に急いでご飯をよそい、コタツに並べた。


男「いただきます」


スープをすくって器に取り分け、七味を振って食べる。
野菜のうまみがみそと七味の相乗効果で引き出され、トリオを奏でているかのようだ。
相変わらず美味すぎるぞっ!


母親「ねえ。男、双妹。ちょっといい?」

男・双妹「いいけど、何?」

母親「今日ね、書斎のお掃除をしていて、久しぶりに昔のDVDを観てみたの」

男・双妹「昔のDVD?」

786以下、名無しが深夜にお送りします:2018/12/04(火) 21:57:37 ID:SfAJxSCE
母親「おつかい番組と2分の1成人式の番組に出演したでしょ」

男「懐かしいなあ」

双妹「……」

母親「今だから言うけど、男と双妹が小学生だった頃、苦しい思いをしていたことを覚えてる?」

双妹「……うん」


双妹の表情が陰り、食べる手が止まった。
あまり思い出したくないのだろう。

小学生の頃、双妹は性別に関する悪口を言われることが多かった。
保護者や教師に知識が足りず、『一卵性双生児は同じ性別しか生まれない』とか『女の子は性別を決める遺伝子に病気を持っている』などと教えていたからだ。
しかし小学校の2分の1成人式がテレビで放送されて、いじめがなくなった。


母親「一番ひどかったのが、小学校4年生のときだった。そのことを担任の先生から聞かされて、わたしとお父さんはテレビ放送をすることを思い付いたの」

双妹「えっ?」

母親「正しい情報を知ってもらうためには、異性一卵性双生児についてテレビ放送をするのが一番手っ取り早いでしょ。半分は賭けだったんだけど、成功してよかったわ」

787以下、名無しが深夜にお送りします:2018/12/04(火) 22:04:08 ID:GMmrwBHs
男「あれって、テレビ局の企画じゃなかったんだ」

母親「そうよ。おつかい番組の放送をしてくれた知り合いのプロデューサーさんに相談して、2分の1成人式の企画が決まったの。それから学校の先生方や双子研究のスタッフの方と打ち合わせを繰り返して、みんなで番組を作ったのよ」

双妹「そんなことがあったんだ……」

母親「人はみんなでみんなを支えている。男と双妹は気が付いていないかもしれないけど、多くの人に支えられて今があるのよ。そのことを忘れないようにしなさいね」

男「それは分かってる。でも、どうして急にそんな話を?」

母親「少し前に少女さんと付き合っているって言っていたけど、彼女はもう亡くなっているんでしょ」

男「どうしてそれを?! ……って、巫女さんから聞いたのか」

母親「黙っていただけで、もっと前から知ってたわよ。お母さんの情報ネットワークをあまく見ないことね」ドヤァ

男「ええっ?!」


いつから知っていたのだろう。
もしかして、少女さんと初めてデートに行った日か?!
あのとき、母さんが同じようなことを言っていたような気がするし。

788以下、名無しが深夜にお送りします:2018/12/04(火) 22:06:07 ID:SfAJxSCE
母親「とりあえず、今は少女さんを成仏させてあげることを考えなさい」

男「ああ、それは分かってる」

母親「そして、その後は高校生らしい普通の恋愛も経験してみなさいね」

母親「男も、そして双妹、あなたもね――」

男「……」

双妹「……」


高校生らしい普通の恋愛。
それは誰が聞いても、母さんが正しいと答えるかもしれない。
だけど俺は少女さんの未練を叶えてあげたいし、双妹の気持ちも大切にしたい。


母親「……」

母親「ほらほら、二人とも箸が止まってるわよ。冷める前に食べましょ」


母さんはにこやかに言うと、盛大に白菜と鶏肉をすくい取った。
ちょっと待て、これはマジで全部食べられるぞ!
俺と双妹は気を取り直し、晩ご飯の確保に尽力することにした。

789以下、名無しが深夜にお送りします:2018/12/05(水) 21:13:02 ID:I7DqvvXw
〜部屋〜
晩ご飯を食べた後、俺は部屋で一人、悶々と考え事をしていた。
母さんが今日に限ってとり野菜鍋のシメに素麺を入れたのは、少女さんのことを連想させるためだろう。
そう考えると、さっきの話は少女さんを成仏させるためのヒントでもあるのだと思う。

みんなでみんなを支えている。
少女さんは生前、誰を支えていて誰に支えられていたのだろうか。

普通に考えると、少女さんは友達や家族に支えられていたことになる。
だけどそのことについては、友香さんがすでに考えてくれている。
ならば、俺はそれ以外の方向性で考えるべきだ。
しかし、考えがまとまらない。


男「はあっ……今日はもう寝るか」


明日は学校に行かないといけないし、病み上がりだから早く寝るに越したことはない。
そういえば双妹から少女さんの話を聞くことが出来なかったけど、差し障りのないことなら明日の朝にでも聞けるだろう。
俺はそう思い、着替えを用意してお風呂に入ることにした。

790以下、名無しが深夜にお送りします:2018/12/05(水) 21:14:02 ID:3wK.qV6I
〜お風呂場〜
少女さんに憑依されたのが、バレンタインデーの次の日。
それから1ヶ月もの間、俺はずっと少女さんと一緒にお風呂に入っていた。
そして双妹と3人で入るようになり、今は一人で入っている。

浴槽がとても広くて、とても静かだ。
あの頃は少女さんと双妹がいい意味で賑やかだった。


男「何だかなあ……」


一人で入るお風呂は何だか物足りない。
いつの間にか、あれが当たり前になっていた。

791以下、名無しが深夜にお送りします:2018/12/05(水) 21:17:43 ID:8s0i8yO6
ガラララッ・・・
急に浴室のドアが開き、俺は顔を向けた。
すると、そこには髪を束ねた双妹が全裸で立っていた。


双妹「良いよね? 風邪が治ったんだから」


双妹は相変わらず無防備にさらけ出し、恥らう様子もなく入ってきた。
しかし以前とは違って、俺の視線をわずかに意識しているようだ。
それでもいつもの調子で湯舟に浸かり、向かい合って足を伸ばす。


双妹「はああ〜♪ やっぱり、男と一緒のときが一番落ち着くかも//」

男「母さんにあんなことを言われた後なのに、よく入ってこれたなあ」

双妹「あの話とこれは関係ないもん。今は双子の妹として、純粋に男のことが好きなだけだから//」

男「今は妹として純粋に――か」

792以下、名無しが深夜にお送りします:2018/12/05(水) 21:25:43 ID:8s0i8yO6
双妹「もしかして、男は私のこと……異性として意識してくれるの?」


双妹はあまい声で言うと、上目遣いで見詰めてきた。
その視線であの日のことを思い出し、胸がドキリと締め付けられる。


男「そう言う双妹こそ、俺のことを意識してるんだろ」

双妹「ふふっ♪ やっぱり、私たちは同じ気持ちなんだね//」


双妹は頬を緩めてはにかみ、胸を寄せて谷間を強調した。
俺は興奮してきたことを悟られないように、平静を装って視線を逸らす。
もうずっと抜いていないし、このままだとしたくなってしまいそうだ。


双妹「ねえ、男。私とセックスをしたいって思ってるでしょ〜//」

男「何言ってるんだよ。そんな訳ないだろ」

双妹「あそこが大きくなっていること、もうバレバレだよ。この前、少女さんがどうとか言ってたのにね。病み上がりでいっぱい溜まっているなら、私が抜いてあげても良いんだよ//」

793以下、名無しが深夜にお送りします:2018/12/05(水) 21:26:54 ID:8s0i8yO6
双妹はにんまりと笑い、右足を浮かせる。
そして何かをしようとしてバランスを崩し、湯舟の中に滑り込んでしまった。

ゴボッ!
バシャアアンッ・・・

双妹は浴槽の底に沈んでしまい、咄嗟に脚を蹴り上げる。
しかし状況は変わらず、俺の肩に両脚を預けて挟み込んできた。
しかもそのせいで身体を起こすことが出来なくなり、完全にパニック状態に陥っている。

もしかして、これはヤバいんじゃないのか?!

俺は慌てて双妹の脚を左右に開き、両腕を掴んで引っ張り上げた。
すると双妹は無我夢中で俺にしがみついてきて、大きく息を吸うと激しくむせ返った。
俺はそんな双妹をとっさに抱きかかえて、背中をさする。

794以下、名無しが深夜にお送りします:2018/12/05(水) 21:28:50 ID:I7DqvvXw
双妹「げほっげほっげふぉっ……」

双妹「……ん゛っ、んんっ…………オエエェッ…………」

男「大丈夫か?!」

双妹「ぜえぜえ……」

双妹「らい……じょうぶ。ありがと、死ぬかと思った――」

男「ったく、気を付けろよ。マジで死ぬんじゃないかと思って、本気で心配したんだからな! お風呂のお湯、飲んだんじゃないのか?」

双妹「……うん。ちょっと気分が悪い……かも」


双妹は力なく言うと、不安そうに身体を預けてきた。
俺はそんな双妹を優しく抱き締める。
すると双妹が安心したのか、気持ちが和らいでいくのを感じた。
そして、双妹は俺にとってかけがえのない存在だということを改めて実感した。

795以下、名無しが深夜にお送りします:2018/12/05(水) 21:38:15 ID:3wK.qV6I
やがて双妹は俺から離れ、しょんぼりと肩を落とした。
きっとあのとき、双妹は性的に興奮して気持ちが先走り、足を滑らせてしまったのだろう。
しかしそんな感情はお互いに消し飛んでいて、俺は落ち込んでいる双妹に寄り添い肩を並べた。


双妹「冗談のつもりだったんだけど、ごめんなさい」

男「いいって、俺も悪いし」

双妹「それは気にしないで。あれで何もなかったら、逆に心配しちゃうから。私は男が元気になってくれるとうれしいよ//」

男「そういう所が普通の兄妹とは違うんだろうな」

双妹「そうかもしれないけど、私はね、兄妹の在り方にもいろんな形があっても良いと思うの」

男「ああ、それは俺も分かってる。だけど、それが望まれない形だということも分かっているんだろ」

双妹「……うん」

男「まあ、俺たちが一緒にいることに、そんな理屈は関係無いんだけどな」

796以下、名無しが深夜にお送りします:2018/12/05(水) 21:41:21 ID:8s0i8yO6
双妹「あのね、私たちってさあ、もし双子の兄妹じゃなかったらどうなっていたんだろうね」

男「その場合は受精卵がクラインフェルター症候群のままだから、染色体異常で妊娠せずに化学流産になる可能性が高いんじゃないかなあ」

双妹「……」

双妹「うん、そうだよね。私たちが生まれてきたのは奇跡だもんね」

男「そう考えると、俺たちは奇跡的な確率で出会った人たちに支えられているってことになるんだよな」


その人たちの中には、俺と双妹が二卵性双生児だと判定されたままならば出会っていなかった人や違う人生を歩むことになっていた人がいるのだろう。
例えば、大学病院の看護師さんや友香さんのように。
そう考えると、出会いは大切にしないといけないなと実感させられる。

797以下、名無しが深夜にお送りします:2018/12/05(水) 21:42:32 ID:3wK.qV6I
双妹「ねえ、男。少女さんにも生前、支えあっていた人がいるはずだよねえ」

男「俺もそのことは考えてた」

双妹「私、ふと気になったんだけど、男は少女さんと同じクラスだったのに、未だに少女さんが死んだことを知らせる電話が掛かって来ていないでしょ。それって、おかしいと思わない?」

男「俺たちはお線香をあげに行ったんだから、電話が掛かって来ないのは当たり前だろ」

双妹「そうかもしれないけど、もしかしたら誰にも連絡してないんじゃないかなあ。私はクラスのみんなに教えてあげたほうが良いと思うんだけど」


言われてみれば、少女さんの友達は中学校の同級生の中にもいるはずだ。
学校が変わって会えなくなったとしても卒業するまで同じ教室で勉強してきた仲間なんだから、みんなに少女さんが死んだことを知らせることは生きた証を探すことにつながるかもしれない。

798以下、名無しが深夜にお送りします:2018/12/05(水) 21:45:08 ID:I7DqvvXw
男「いいな、それっ! だけど、少女さんのお葬式は家族だけでしたんだろ。俺たちがそんな事をしたら迷惑になるんじゃないのか」

双妹「それはそうなんだけど、少女さんの意向に沿うことが一番大切だと思うの。私たちは、あくまでも友達と情報を共有するだけ……だよ」

男「そういうことなら、まずは明日、少女さんに話してみるよ」

双妹「うん、それが良いと思う」

男「ところで、双妹は少女さんと上手くいったのか? 話しぶりを見ていたら、そう悪くないような気がするんだけど」

双妹「まあ良くも悪くも、それなりの形で収まったんじゃないかなあ」

男「そっか、ありがとう」

双妹「それでね、少女さんが言ってたの」

男「言ってたって、何を?」

双妹「私たちの恋愛はマイノリティーだから立ち止まるわけにはいかないんです、って」

男「立ち止まるわけにはいかない――か」

双妹「うん。だからね、私も私の気持ちを誤魔化さない。絶対に好きを諦めないから!」

男「そうだな。俺も双妹の気持ちを大切にしたいと思う」

799以下、名無しが深夜にお送りします:2018/12/05(水) 22:04:45 ID:8s0i8yO6
双妹「それじゃあさあ、久しぶりに洗いっこをしようよ。泡あわでいっぱい気持ちよくしてあげるから//」

男「いいけど、立ち上がるときに滑るなよ」

双妹「もう滑らないもん!」


俺は双妹と洗い場に移動し、風呂椅子に腰を下ろした。
そしてスポンジが背中に触れると、浴室にボディーソープの香りが広がった。
ふわふわの泡に包まれ、双妹と過ごす心地いい時間が流れていく。


双妹「ねえ、男。これからもずっと二人で一緒にいようね」

男「そんなの、当たり前だろ」

双妹「うん、そうだよね//」

800以下、名無しが深夜にお送りします:2018/12/06(木) 23:26:18 ID:jSYgWU/.
おつ

801以下、名無しが深夜にお送りします:2018/12/12(水) 20:51:29 ID:MiqjNRBE
(3月16日)wed
〜最寄り駅〜
インフルエンザの出席停止期間が終わり、ようやく学校に行けるようになった。
朝ご飯を食べて、双妹と二人で家を出る。
そして最寄り駅に着き、ホームで電車を待つ。

この1週間で多くのことが変わった。
少女さんは友香さんと学校に行くようになり、俺たちと一緒に通学していた友は自転車通学に戻っている。
街路樹の雪吊りも取り外されて、街並みが春らしくなっていた。


男「何だかすごく緊張してきた」

双妹「少女さんに会うのは放課後でしょ。まだ朝なんだけど……」

男「それは分かっているけど、大丈夫なんだよな?」

双妹「男を諦めるつもりはないって言ってたから、大丈夫だと思う。それに彼女はもともと憑依霊だし、何があっても男と別れるなんて決断をすることは出来ないんじゃないかなあ」

男「大丈夫なら良いんだけど、それは少し言いすぎじゃないか?」

双妹「……ごめん」

男「とりあえず、正直な気持ちを伝えてくるよ」

802以下、名無しが深夜にお送りします:2018/12/12(水) 20:52:42 ID:2YpJTCAA
双妹「それはそうと、ブレスレットは持ってきた?」

男「ああ、持ってきた」


俺はそう言って、ポケットに双妹のブレスレットが入っていることを確かめた。
これは双妹の魂の力を利用して作った霊具なので、一卵性双生児の俺ならば少女さんの姿を見ることが出来るようになるはずだ。
確証はないけど、そんな気がする。


双妹「昨日も言ったけど、効果が持続するのは3週間だから、少女さんが成仏するまで大丈夫だと思う」

男「成仏するまで大丈夫……か」

双妹「……うん」

男「まあ、今は出来ることをするしかないな」

803以下、名無しが深夜にお送りします:2018/12/12(水) 20:53:43 ID:2YpJTCAA
〜神社・放課後〜
放課後になり、俺は友の家の神社に向かった。
双妹のブレスレットを着けて準備し、鳥居をくぐる。
そして境内に入ると、授与所にいた巫女さんに声を掛けられた。


巫女「こんにちは」

男「こんにちは。少女さんはいますか」

巫女「まだ学校から帰って来ていないです。中で待たれますか?」

男「はい」

巫女「それではこちらにどうぞ」


巫女さんはそう言うと、授与所から出てきて歩き始めた。
俺もそれに並んで境内を歩く。


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