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男「モテる代わりに難聴で鈍感なキミたちへ告ぐ 〆!」

1以下、名無しが深夜にお送りします:2016/10/18(火) 23:24:07 ID:KppNpej6
ここが墓場だ



1、男「モテる代わりに難聴で鈍感になるんですか?」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1379798915/

2、男「モテる代わりに難聴で鈍感になりましたが」
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1380372236/

3、男「モテる代わりに難聴で鈍感になった結果」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1385750291/

4、男「モテる代わりに難聴で鈍感になったけど質問ある?」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1397082375/

5、男「モテる代わりに難聴で鈍感になるのも悪くない」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1406541846/

6、男「モテる代わりに難聴で鈍感になるならどうする?」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1420921537

7、男「モテる代わりに難聴で鈍感だった日々より」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1446919295/l50

2以下、名無しが深夜にお送りします:2016/10/21(金) 19:32:16 ID:IXkA8quc
男(異常じゃないか?)

男(文化祭の期間は、授業が止められるとはいえ、出席確認はクラス担任として義務だぞ。何故いない、体調不良かも、OK、で簡単に済ませるのもらしくない)

先生「お昼のあとで煩わしい話してごめんねー。でも、先生たちはみんな君らに最高の思い出作って欲しいわけでして」

男子生徒「先生大袈裟すぎますよ、他がやらかしたからって俺たち速効右に倣えとか噛ましませーん!」

女子生徒「そうです、そうです! 私たちなんてクラス発表の練習で盛り上がっててそれどころじゃないです!」

男の娘「み、みんな、思いは一つになれてるんだよね! 男、素敵だよね!」

男(条件反射気味で斜に構えようとした俺を嗅ぎ取ったらしい男の娘、その笑顔は無理があっても埃被った人間に眩しすぎる癒しビーム)

転校生「不穏、って言うのかしら。こういう時……あってる?」

男「俺に訊いてるのか? いつでも勉強好きだな」

転校生「何なのかな。落ち着いてられない気分が続いてて、先が怖くなっちゃってる自分がいるのよ」

転校生「こんな辛い事が、また何度も繰り返されるなんてことがあったら、私……」

先生「はいはい! 気持ちはしっかり受け止めましたんで、その情熱は午後の準備に回すように! 以上、散れ!」

「急いで取りかかるよ! 体育館占領してられる時間なんて限られるんだから!」

男「少し先生に用がある。どこ行ったか訊かれたら適当に誤魔化しといてくれ、転校生」

転校生「えっ、う、うん?」

3以下、名無しが深夜にお送りします:2016/10/21(金) 20:04:06 ID:IXkA8quc
男(張り切るクラスメイトたちをしばし眺め、先生は教室から退出。そんな憂いを纏う美人教師をかけ足で俺は追い掛け、並び歩いた)

先生「おサボりが過ぎる子にはそろそろお仕置きが必要なんじゃないかな?」

男「いえ、歩きながらで構いませんので、先生にお尋ねしたいことがありまして……」

先生「次の期末試験で出そうな問題教えてとかだったら、承知しないよ?」

男「疑ってばっかりじゃ疲れますよ、先生」

男(ニッ、と含み笑いして返す彼女、ではあったが、こちらがこれから持ち出さんとする話題を完全に予測していなかったらしい、意外だと気抜けを見せられることになった)

男「名無しがどうして休んでいるのか本当に理由を聞いてないんですか?」

先生「えっ、うん、そうだけど……男くんこそ知らないの?」

男「でしたら、朝の時点でアイツがサボりだと決め付けて、じゃ おかしいですよね。先生もさっき指摘されて始めて気づいてましたから」

男「欠席取らないんですか? 嫌な事件が立て続いてるこんな時に、何か事件に巻き込まれたとか疑わないんですか、先生」

先生「ま、待ってまって! 質問攻めはパス! 私だって気に掛けてるわよ、それなりに!」

男「だったら尚更…… (目を泳がす先生に迫るしかなかった。不可解の影響が、名無しなのであれば、彼はまた“企み”があると推測できる)」

男(わざと登校しなかった意味を探る行動に移れる。……どうしたって、俺の中では今朝の彼が気掛かりに変わりはなかったのだ)

先生「そ、そうだ! 君 あの子の連絡先知ってる?」

男「はぁ?」

4以下、名無しが深夜にお送りします:2016/10/21(金) 20:41:58 ID:IXkA8quc
男(……何を、言っているのだ……連絡先? ……アイツの連絡先を、俺に尋ねた? 個人の? いや、まさか)

男「俺詳しい事はわからないんですけど、生徒に関する連絡先名簿とか持たされるんじゃないんですか」

先生「世の中最近じゃあ個人情報がどうとかで配布もほとんどで撤廃されてるんだよ。携帯電話流行ってから連絡網とか聞かないでしょ?」

男「だ、だとしてもアイツの住まいに連絡ぐらいは叶うでしょう!? 携帯の番号だって、俺、何かのプリントで書かされたことありますよ!」

先生「うん……で、でも名無しくんのだけ何でか本当にわからなくて……」

男「どうしてそれを本人に訊こうとしなかったんですか!? 大事な事でしょうが!」

先生「大事、そうね、とっても大事……何でかな……」

男(詳しくと、詰め寄りしつこく訊き出そうとすれば、ボロが出た。驚くべきというか、信じられないというか、あり得ない)

男(名無しの個人情報は一切学校側に知られていない。信じられるか? 住まい、戸籍等の、学歴から何もかもの情報が伝わっていなかったのである)

男「……そんな奴を学校に区別しないで置いておくなんて、どう考えたっておかしくありませんか?」

男(俺は勿論、美少女たちにでさえ細かな設定を与えられ、当たり前の情報は開示されている中、名無しのみが不揃い。実体が、無い)

先生「正直、男くんに今日問い詰められてようやく変だと感じてるのも否めないかもしれない……なんでだろう」

先生「そもそも“あんな男の子”、ウチのクラスにいたっけ?」

男「いやいや、担任がそんないい加減でどうするんですか」

男(……奴だけ この世界にぞんざいに扱われている、錯覚ではない、それ故に彼の浮いた雰囲気と透明感が本物だったと思わせられた)

5以下、名無しが深夜にお送りします:2016/10/21(金) 21:19:43 ID:IXkA8quc
先生「名無しくんは素行も悪くないし、優等生だと私も思うんだけど……」

先生「ごめん、今の聞かなかったことにして! 自分が受け持った生徒を変に疑うとか教師失格だしね、あははは」

男(合わせ笑いしてやれる余裕もなく、投げかけた世間話に頷きつつ茫然と廊下の角を曲がろうとした時だ。懐かしい感触が体に当たってきた)

「――――いたっ!」

男「おぐっ、大丈夫ですか!! って……お前」

後輩「もう、先輩って車に乗ったら良くないタイプなんじゃないんですか? 前方不注意の罰金です」

男(スカートの尻付近を払ってしれっとジョークを噛ます彼女こそ、今遭遇したくなかったランキング一位の美少女。というか この俺とぶつかっておきながら、無事だったのか)

先生「怪我は、なさそうだから安心していいかな。この子の言う通り、考え事しながら歩いてたら危ないっての!」

男「俺ばかりに非があるのは気に食わないんだが」

後輩「そうですね。私も少し考え事しながら歩いてたかもしれません、すみませんでした」

後輩「だけど、不幸中の幸いかもしれませんね。こんな所で先輩と会えるなんて、ふふっ!」

男(コイツが俺を探していた?)

後輩「先生、この人を借りて行って構いませんか? 丁度用事がありまして……ありますよね? せーんぱい」

先生「ほうほう、モテる男は罪だねぇー? 少年くん?」

男(罪が転じて罰とならない事ばかりを祈る誘いだがな)

6以下、名無しが深夜にお送りします:2016/10/21(金) 22:04:07 ID:IXkA8quc
男(別れ際にウィンクを飛ばした教師には溜め息で返すのが常套句にも変わろうか。溜め息からの深呼吸)

男(体を満たした酸素が、目の前の不気味で綺麗な少女へ睨みつける勇気を与えてくれた)

後輩「とっても怖い顔してますね?」

男(変わらぬ様子で答えると、顔を寄せて魅惑的な耳打ちである。「あの人が待っています」。その表情は悪戯に笑っていた、吐き気を催す邪気に染まって)

男(きっと 先を行き出す後輩を追うこの体はバキバキに固まっていたかもしれない。あんなに距離が近づいたと喜べていた美少女が、ただただ遠く離れて去って行きそうな危うさを醸し出している)

後輩「私が怪しく見えるのなら正直にそう答えてくださっても構いませんけれど、先輩」

男「……」

後輩「あはっ、お喋りのあなたがダンマリですか? 何だかちょっぴり寂しいです」

後輩「文句もなさそうなので私のあとを着いて来てください。心配しなくても騙す気なんてありませんので」

男(心配などあるものか。怖いぐらい辺りは人の気配を感じさせず、特別、を意識させていた)

男(ここは、俺が先程までいた学校の中なのだろうか。異世界に落とされたように周りの背景はモノクロに見えて、視界に写るどれもが無感情であった)

後輩「お待たせしました。どうぞ、中へ入ってください」

男「お前は入らないのか?」

後輩「“主”はあなたとの一対一をお望みです。私に任されたのは道案内だけです、以上以下もなく」

後輩「さぁ、中へお入りください――――――」

7以下、名無しが深夜にお送りします:2016/10/21(金) 22:45:58 ID:IXkA8quc
男(――――散々、中へ入れと催されてはみたが そこが自分の居場所である教室であるとは思わなんだ)

男(窓の外は無。白に近く 一切合切視覚を楽しませる背景もなく、闇のような白が広がっている、なんてカッコつけた表現が思い付けど、彼が先に嘲笑ってくれた)

名無し「wwwwwwwww」

男「何だって?」

名無し「え、この表現じゃもう古いの? 恍けた面がお似合いだな、主人公気取り」

名無し「安心してくれ、この部屋の中なら完全にオレと男だけの世界だよ。邪魔な手出しもされずに、二人だけの時間を過ごせる」

男(座れ、と言わんばかりに元々の俺の席にあった椅子が動いてくれた。名無しは無礼上等で教卓に腰掛けて、手の中の物を遊ばせて見せた)

名無し「さぞかしオレが気に食わないんだろうな。お前にとってオレは不要だろうさ」

男(ふてぶてしく教卓にいた彼の姿が消え、周りを見渡すと、座った自分の席の机の中から憎らしく顔が覗いていた)

男「悪趣味だ……」

名無し「オレがいなければ、オレさえ現れなければ。お前が楽しめていた理想は音を立てて崩れてしまったな」

名無し「お前が繋げた想いが重たくなる日々はどれほど居心地悪いんだろう……共同のデメリットだな……」

名無し「ぶっちゃけ面白くなくない? こんなの?」

男「煽りたいなら、この程度とか生ぬるいんじゃないか?」

名無し「草草草草草草だ・・・w」

8以下、名無しが深夜にお送りします:2016/10/21(金) 22:46:31 ID:IXkA8quc
来週火曜日に続く

9以下、名無しが深夜にお送りします:2016/10/22(土) 01:19:38 ID:J1Y9fm0M
乙乙乙乙乙乙だ

10以下、名無しが深夜にお送りします:2016/10/22(土) 09:45:13 ID:poq9U5Q6
名無しうぜぇwwww

11以下、名無しが深夜にお送りします:2016/10/23(日) 20:33:13 ID:tQZyqF9E
人減ったなぁ。ssも下火なんだね

12以下、名無しが深夜にお送りします:2016/10/24(月) 15:57:15 ID:cOno9HVg
乙乙乙乙乙です
長いこと追いかけてたからこのスレで最後かと思うと悲しい

13以下、名無しが深夜にお送りします:2016/10/24(月) 19:21:41 ID:xumrXxWw
前スレぐらいからROMってた
リあタイ追うのは時間なくて社会人にはつらいわ

14以下、名無しが深夜にお送りします:2016/10/25(火) 08:27:36 ID:bURd3rjU


15以下、名無しが深夜にお送りします:2016/10/25(火) 20:35:35 ID:1l9UWWKY
名無し「やー! 鬱陶しくてごめん。やっとオレたちだけになれたのが嬉しくて、つい!」

男(狂気は無邪気から来るものか、さぁ、甲乙付けがたい。席を退き、彼から距離を置こうとすれば、背後から肩に手がトン、と。ホラー演出最高だな、ド最低だ)

男「よし、提案っちゃなんだが……遊んでもらいたいなら、素直にお願いしてみるべきなんじゃないか?」

名無し「どーせ、オレが誘っても心の底から男が楽しんでくれないだろ。無理強いするのが友だちかな?」

名無し「いまこの時でさえお前は、オレが何をしでかすのか、何を考えてるのか、ずーっと探っているんだ。落ち着かないよ」

男「はてしなく面倒臭いな、お前」

男(聞く耳持たずいつのまにやら窓の外でラジオ体操やっている名無しを放置し、見覚えある室内を見渡す。席の数も俺のクラスと変わらない)

男(“名無し”という男の存在意義を糺す前に、彼の影は現状極めて朧げだ。あの先生にまで拒絶を仄めかされてしまった具合である)

男(名無しの席は、確かにここにある。して、新たな疑問が浮かぶのだ。元々彼にはオリジナルとなった男子生徒がいた筈だろう)

男(初めこそモブの扱いではあったが、ある日急変して……だのに、何故情報は一切無いと聞かされるのか)

名無し「知りたいか?」

男「えっ!?」

名無し「だから、オレのことだろ? 気になってるなら別に教えても構わないのさ。男」

男(というか、この場所に呼び付けてどうしたいのかを先に教えてくれないのか、コイツ)

名無し「ポテチ食べるか? 美味いぞ、コーラもある。やー、コイツは格別だなぁー」

16以下、名無しが深夜にお送りします:2016/10/25(火) 21:19:16 ID:1l9UWWKY
名無し「遠慮しないで食えってば! 毒なんか盛ってないの食べてるオレが保障してるモンだろう」

男「分け与えられた物を口に運ぶって抵抗あるんだよ、信用置けない奴からは特に」

名無し「そっか、美味いのに残念だな……ぶっちゃっけ細かいこと気にしすぎだろ、男は」

名無し「オレが他の奴らやお前と違って不都合ある? オレが何者でもない、十分じゃないか、聞いてるんだろう?」

男(あの胡散臭い神との会話もどこかで盗み聞きしていたと? だからこそ、また接触して来た?)

名無し「オレは、オレがここに在る為に、どうでも良い一人の体を借りただけだよ。設定だって全部書き換えてるし、ソイツとイコールになる点もない」

男「オリジナルである俺の知る本人と繋がらない部分が多いのは、みんなだって同じだろ。でも、お前だけは」

名無し「お前がオレと深く関わる予定ある?」

男「は…… (深く、関わるだと。言葉の意味を、深層が一瞬にして巡った。巡って、一周回って、薄らと理解へ辿り着く)」

名無し「やー、男の娘みたいのならまだしもオレとどうこうなりたいって思うのか? 両方行けちゃうワケ?」

男「NO!! お前はダメだ、絶対ダメ!!」

名無し「だよなぁ〜、安心した。言葉足らずだったけど、何となく納得したんじゃないか?」

名無し「別に親友・悪友ポジがいたって同姓なら“チマい設定”要らねーだろ、お前らの色恋沙汰物語に何ら影響ないんだから」

名無し「作る意味もない。でも傍に立ち易くて、男の周りを動く意味に一々苦労しない。何より、変態からケツ追い掛けられずに済む」

男(美少女狂いには痛かった)

17以下、名無しが深夜にお送りします:2016/10/25(火) 21:47:13 ID:1l9UWWKY
男(だが、名無しよ。お前は爽やかイケメンという武器を持っているだけで、俺から相当危険視されたであろう事を忘れるなよ)

男(立ち回り易いだと。愚か、裏で何かされるのではと常に注意を払われて、い、いた筈なのだ)

名無し「確かに。もう少しぶっっっサイクな面に作り直すべきだったかもと後悔してる、でも」

名無し「お前に嫌悪感を与えられたのは、それはそれで気分が良かったから良しとしてるんだ!」

男(思い切りがいい、俺を気に食わない事実は変わらないという改めた宣戦布告だった)

名無し「騙されるんじゃないか? いや、有益じゃないが実はそんなに悪い奴でもないのでは? ……サンキューな、お前は後者を信じてくれた」

名無し「笑うしかないwwwwwwwww」

男「名無し……」

名無し「アイツ使って呼び出せばのこのこ大人しく着いて来て? 何か期待して待っててもオレからコケにされたままと?」

名無し「wwwwwwwwwwwwwww」

名無し「思わせぶりな真似してごめんwwwwww別に何でもないwwwwww」

男「……名無しよ…………」

名無し「やー、細かいこと気にしすぎだろ、男は」

名無し「なんつってwwwwwwやー、なんつてwwwwwwwww」

男「……窓の外で倒れてるあの子、何だよ…………おい……」

18以下、名無しが深夜にお送りします:2016/10/25(火) 22:16:03 ID:1l9UWWKY
名無し「えー?」

男(声を荒げるより先にこの外道の胸倉を掴み掛かっていた。次に「あ」でも「う」でも言葉を漏らした瞬間、貧弱でも拳を叩き込んでやる。二度と、口を聞けなくさせてやる)

名無し「……鼻息荒くしてどうした? “あの子”扱いじゃ他人行儀だろ、男」

名無し「生意気で可愛い世界に一人だけの、お前の兄妹じゃないか――――ん?」

男(振り上げた拳が空で制止され、頬が二、三と痙攣した。勢い凄んで捉えた糞は、悠々と目前で心ない言葉で煽るに煽りたてて来る。そんな、何でだ、あ)

男「……う」

名無し「ウソだと思うのは手前勝手、好きにしなよ。他人の空似って場合もあるし」

名無し「ただ、オレはこれからあそこの女子をどうにかしようと思っていて……男も楽しむか?」

男「卑怯だろ……お前っ、自分が何やってんのか分かってるのか!?」

男「妹!! 起きてくれ、すぐに目覚まして逃げろ!! ヤバいッ!!」

妹『         』

名無し「聞こえちゃいないよ、あの通りぐったりしてるんだから」

男「くそ、くそくそっ、どうして開かないんだよ! おい、名無し開けろ! アイツに何かしたらタダじゃおかないんだからなっ!?」

名無し「情けないと自分でも思わないのか? 虚像相手に夢中になって。恋愛の駆け引きだけ楽しんで報われていればこうもならなかったよ」

名無し「全部お前のやり放題の報いなんだぜ、男」

19以下、名無しが深夜にお送りします:2016/10/25(火) 23:04:11 ID:1l9UWWKY
男(報い、報い、報い。無意識の内に膝を着いていた俺は、窓の外へ移動を終えていた名無しを虚ろな目で捉えていたであろう、か)

男(さぞ満足なのだろう、ニンマリとした名無しが俺から離れて妹へ歩み寄って行く。叩けどたたけど窓はビクともせず、強固な牢の役割を果たす)

名fbん『どうしてこうなったんだ? ここまでに至ったお前が悪いのは分かり切ってる』

#n7無/『お前が悪い、お前がだらしないからこんなザマだ。お前が、悪いな』

男「!! (倒れた妹の制服を、見せつけるようゆっくりと上着から脱がしていく名無し。その光景に、反響する罪を認めさせようとする声に引っ張られ、頭の中が白に汚染されていく)」

sあf4#『さぁ、貴様の更生を続けよう……』

男(耐えろよ、俺。ここが踏ん張りどころだ)

男(奴が俺をあざけ笑い、緩やかであったモテモテ学園ライフを破壊しようとする動きは明確だ。ならば、破壊に意味があるとしか思えない)

男(今朝あのオカルト研が、と唆して来たというに、ここでまた二重に“絶望”の罠を仕掛けてくるのが謎である。絶望とは、俺にとっての絶望なり得る要素)

男(では、回避できたからこそ名無しは新たに手を打って来た……そういう見方がある)

男(……名無し、アイツ最初に自分で話していたが、どうなのだ? 『この部屋の中なら完全にオレと男だけの世界』って)

男(あの豹変振りからすべて信じろというのも難しいが、奴はやけに“この俺と二人のみ”を強調して聞かせてきた。何故?)

男(この場で、二人切り、を喜べるのはアイツの演じる名無しだけじゃないか。奴の言う通り、俺は一部例外を除き男色好まず――――)

男「やっぱり、あの子扱いで間違いなかったかもしれないな、名無し」

名無し「ん?」

20以下、名無しが深夜にお送りします:2016/10/25(火) 23:04:49 ID:1l9UWWKY
金曜日に続く

21以下、名無しが深夜にお送りします:2016/10/28(金) 21:20:52 ID:ua38moeU
男(スイッチが切り替わった、カチッと受け手に親切でシンプルな転回だ)

名無し「興味深い……」

男(名無しの身勝手な視野の中へ、ようやく俺を収めさせられた。剥ぐ手を止め、ゆっくりとこちらを振り向いた男は気味悪く、満足げである)

男(やはり、恐ろしい。もの怖じしない自信を奴へ見せつけたところで、底を掬われてしまっているような、疎ましい感覚に包まれたままなのだ)

名無し「見捨てるんなら結構。潔さよ、何事もよ、引き際の良さが大切さ」

男(途端に死角から聞かされる意味深らしさを含ませる言葉の連なりだ、窓の外から名無しは中へ戻って来たのだろう。あの少女は未だ体を起こさず、だ)

名無し「男に足りなかったのは、参った、を素直に吐けない心だと思わないか?」

名無し「『向上心のないやつはバカだ』なんて教科書によく載っているだろう。あれは違う、現状を認めてこそ成長だよ」

名無し「惨めじゃないんだ、皆そうやって自分を頷かせて生き様を見出す……大人になる」

男「嫌な奴……」

名無し「所詮合わせても小さいお前の手の中じゃ、あの子らは溢れてすぐに零れるよ。一々掬い取ろうとすれば、また落とすだけ」

男(顎で使うように名無しが首を動かすと、遮断されていた戸が横へスライドしてしまった。好きに、出て行けと?)

名無し「オレを間違わないでくれよ? 本気でお前の更生を願っているんだ、過ちは繰り返すべきじゃあない」

名無し「この祈りが成就されることをただ祈って待つよ、男。今日明日が穏便に、終えられるのを……ね」

男「ね、じゃねーよ、今更カッコついてないねーよ、恥ずかしい」

22以下、名無しが深夜にお送りします:2016/10/28(金) 22:06:20 ID:ua38moeU
名無し「その心は……?」

男(一杯食わしてやった。穏やかな自己紹介からの、眉ひそめ謎掛ける名無しにブざまぁと突き付けてやりたい、ブ男だから)

男「改心だどうだじゃない、俺は単純にあそこにいる女子を自分の家族じゃないって否定しただけ」

男「拒絶じゃない。だって、認めるわけにいかないだろう。偽者の妹をお前の見知った顔だ! だ、なんて良い聞かせられても……困る」

男(根拠はある、だが虚が勝る現状を踏まえれば真実と断言するには難しかった。あそこで寝転がった少女は、名無しが俺を惑わす為に用意した人形)

男(奴は俺をどこまでも憎んでいるのだろう。が、目的の裏が読み取れないままだ。俺を困らせて、果てに何を得たい? 個人の優越感? おふざけを抜かすな)

男「……名無し、お前が俺へ向ける執着は異常だ。“更生”なんて額面通りに受け取れば、聴こえは良いが」

男「死にかけの人間にするブラックジョークだろうか?」

名無し「あぁ?」

男「…………死」

名無し「あぁ!?」

男(………………死とな?)

n・1/5無"「「「あB$,%"%s%@!<%P#!! #!<$-K$)JFサ嵂ス$7$^℡$C$!f?〕

男(彼に呼応するよう、室内が大きく揺れ出す。何かに掴まっていなければ危険と思えるぐらい、現象は続き、大きくなっていた。付き合っていられるか)

男(戸は開いたままだ、一時退却も辞さない、というか逃れようとしか――――――また、揺れた。いや、揺れて、床に伏していたのは……俺か)

23以下、名無しが深夜にお送りします:2016/10/28(金) 22:47:20 ID:ua38moeU
男(されども男の性・エロスは囁く、瞬きも惜しいのだと)

男(翻ったスカートの中は、あどけない・・・・。大喝采―――――――――)

男「…………」

後輩「あっ……完全に沈黙ですね、打ち所が悪くなければ失神です。いかが致しましょう?」

名無し「掴まえておけ……悪いニュースだ。こんなのって、あぁ、信じられない……」

後輩「あなたの都合次第で対処が変わりますけれど」

名無し「黙っててくれよッ!!」

名無し「コイツは、違う、コイツが異常なんだ。どうかしている……!」

後輩「主様、あの……」

名無し「危害は加えるなよ!! 男は、大切だ。彼には幸せになって貰わなければ救われない」

名無し「夕刻前には離してやってくれ、この部屋からも。完膚無きまで壊すしか後がないと判断した……救いようないな……」

名無し「自我を失わせる他 方法はないと思わないか?」

後輩「たぶん、主の御心のままに」

後輩「…………狸寝入りしなくて平気ですよ、もう行きましたから」

男「お前いつからスパッツ派に寝返ったんだ……」

24以下、名無しが深夜にお送りします:2016/10/28(金) 23:25:26 ID:ua38moeU
後輩「これ? 派手に動き回るなら必要不可欠、恥ずかしさ軽減装備じゃないですか?」

男(あえてくるりと一回りして披露する黒き下半身に淫らを抱かん健全男子がおらぬものか。おまけだ、人をコケにする、挑戦的な笑みが彼女を彷彿させた)

後輩「ところで あなたの中にいる “私” 、上手に再現できていましたか?」

男「は?」

後輩「私って、多分あなたから見て三人目ですから」

男(そう言いながら、いつまでも床に座る俺へ差し伸ばされた手、もとい彼女を、疑う前から俺は拒んでしまったのだと思っている。あとを思い返しての話だが)

男「やめてくれ、一人で立てる……訊いても差し支えなさそうだが、あの」

後輩「あれあれ、もしかして助けられたとか思ってるんですか? 私があなた側に付いて、返り咲いてくれるかもと?」

男(一言で、彼女は『お花畑』と微笑み返していた。油断すれば、根っこも詰まれそうなこの状況下でも、俺はあの“後輩”を縋ってしまっていたに違いない)

後輩「私に縋っているんですか? お門違いじゃありません?」

男(腹が膨れたのだろうと言わんばかりの箸休めに、フフッ、とか彼女が妖艶に短く笑う)

男「話ができないわけじゃないとお前に見出せたんだから、情けなくても縋るしかない……」

後輩「情けないですね、先輩。恥ずかしくないんですか?」

男「靴を舐めるぐらいも容易い、いやむしろ……!」

後輩「恥ずかしくないんですか?」

25以下、名無しが深夜にお送りします:2016/10/28(金) 23:26:00 ID:ua38moeU
ここまd

26以下、名無しが深夜にお送りします:2016/10/31(月) 23:53:15 ID:iatSsynM
おつおつ
後輩、三人いたのか……

27以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/01(火) 05:25:33 ID:BcAgnAlo
あやなm

28以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/01(火) 20:18:23 ID:OoV10V2Q
男(それにしても気になる。何がと、言わずもがな 後輩殿よ。あなたの中にいる私? 再現だ?)

男(この俺から見て三人目だと? 思い巡らせど心当たりなど欠片も浮かばず、空回りだ。ふむ、これまでの印象から考えられる彼女の正体とは――)

後輩「いつまでこんな何もないところで寛いでるおつもりで? 先輩」

男「まず、台詞と動きが一致してないよね、お前」

男「(出口であろう場所に立ち塞がって後輩は笑う、では、挑発としか受け取ることしか出来ないのが人並みよ。痺れでも切らしたか) ……寝返ってくれないんだろ?」

後輩「どうなんでしょうね」

男「大人しく元いた学校の中に帰してくれとお願いして、こっちの思い通りに話が進むか?」

後輩「でしたら、まずは試してみないと」

男「そ、そうなんスね、ハイ……やってやろうじゃねぇかああああああぁぁぁ!!」

男(アクション映画を見終えて、さもアクションスターのスキルを身に付けた感覚を宿す。ダメで元々、ええいままよ、当たって砕けろ)

男(そして、結果はご想像のまま、砕けた俺が床に前のめっている)

男「絶対素人が打てる蹴りじゃないよな、今の……」

後輩「うーん、とりあえず足引っ掛けただけなんですけど――――何か落としましたよ」

男(情けなく転んだ時に懐から外へ出て宙を舞ったのは紙々、否。そして彼女の様子が)

後輩「あれ……?」

29以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/01(火) 20:45:25 ID:OoV10V2Q
後輩「……これは」

男(床に落ちた一枚、一枚、何度見直そうが 意味のない画である。拾って固まる後輩に俺まで固まった)

男(尋ねた誰もが頭上にクエスチョンマークを浮かばせ、ナンセンスを呟く品々を手に取って、始めて注目させていたのだから)

男「何か、そいつを見て思い当たる節とかありそうか?」

後輩「……」

男(完全に虜というか上の空に変わっているではないか。この隙を突けば楽々脱出することもできる、できるが、悪い癖だ)

男「説明しておくと、俺の物かよく分からん。気づいた時にはポケットに入っててな」

男「気味悪いし、他の奴らにも訊いて回ったが、こんな反応を見せられたのは初めてだよ」

後輩「何も、写ってませんけど……」

男(惹かれたか、と尋ねると首を横に振って後輩が答えた。では何故なのだと)

後輩「私の匂いがしたもので、つい」

男「え゛?」

後輩「どうでも良いですよね。気味悪いなら処分しちゃった方がいいですよ、呪いの写真かも? なーんて」

男「おいおいおい、何をワケのわからんことを……!」

後輩「頃合いですかね」

30以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/01(火) 21:07:31 ID:OoV10V2Q
後輩「どうぞ 先輩通ってくださいよ。今度は邪魔なんてしませんので」

男「通れって言うのは、この変な場所から出てもOKと?」

後輩「他にありますか? 一生この中で暮らしたいと考えているなら止めたりしませんけど」

男(どうやら可愛い通せんぼもここまでらしい。名無しも、夕刻までは、と命じてはいたが 然程時間が経過したとは思えないぞ。体感5〜10分ほど。ここが探し求めた精神と時の部屋か)

男「……出るぞ? 本気で出て行くからな、タンマないよね?」

後輩「えいっ!」

男「あ、うぉおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ〜〜〜〜〜〜!!?」

男(背中を押され、出口の外へ出た瞬間 急激なGの負担を全身に受けていた。落下、そう、俺は今現在どうしてか落ちている)

男(まるで不思議の国へ迷い込んでいた気分で、あるべき世界へ急速潜行だった。……この落ちる感覚、一度目じゃあないのだろうな)

?「――――――ゃん……――――――おにい……―――――ちゃ――――」

妹「お兄ちゃん!!」

男「はっ!? ……はぁ、はぁ……お前か、驚かせるな」

妹「驚いたのはこっちだよ!? たまたま私が通り掛かったら、何か廊下でぶっ倒れてるんだもん!!」

男「何か扱いなのかよ」

男「それより、今何時だ? どれぐらい寝てたのか気になる」

31以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/01(火) 21:45:53 ID:OoV10V2Q
妹「何時って! やれやれだな〜、お兄ちゃんだらしなさすぎ……」

男(出迎えてくれたのが偶然にしても妹だったとは、二重の安心である。向こう、仮想空間で見た彼女を偽りと見抜けたこの美少女アイに狂いはなかったやもしれん)

妹「丁度ティータイムだよ。あ、お兄ちゃんにもわかり易いよう言い替えたら、おやつの時間、だね」

男「親切な子が身近にいるとちょっぴり背伸びしたくなっちゃう男心をくすぐるらしい」

妹「ふーん、そうなんだ?」

男「ウザくね今の!?」   妹「あーウザいって言った! かわいい妹にウザいって言ったっ!!」

男「なーにがティータイムだ、野良犬に食わせとけ……特に 騒ぎは、何もなさそうだな」

妹「ちょっとー、私の心配他所に切り替え早くないかな!?」

男(妹の様子からして間違いはなさそうだ。問題が起きるならこの後か、オカルト研か、名無しがか、警戒を保つに越した事はない)

男(さて、高確率で俺はサボり認定を受けるのであろうが、こんな人気ない廊下で妹は何の用事があったのだろうか。答えは問うまでもなく、当人が口を開く)

妹「ていうか、本当にビックリしたんだからねっ! お化けの衣装道具取りに来たら、人倒れてたとか、もう!」

男「衣装? ……ああ、演劇部か」

男(となれば、ここは位置的に部室棟の中なのだろう。いつもラーメン愛好会直行ルートだった為か、新鮮な眺めと思ってはいたが)

男「……後輩とは、一緒じゃなかったのか?」

妹「むっ、どーしてそこで後輩ちゃんが出てくるのさ?」

32以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/01(火) 22:12:58 ID:OoV10V2Q
男「どうしてって、そりゃあ 普段学校の中だと毎度一緒にいたから気になるだけだろ」

妹「残念でしたー、お兄ちゃんベタ惚れの後輩ちゃんは留守でしたー! バーカ、バーカ!」

男「可愛いとは思うけど、そこまでじゃないっての。まぁ、別行動してたと受け取って構わないんだな」

男(後輩の監視役にはなり得なかったわけだ。そもそも二人の役割が異なっており、文化祭準備中は顔を合わせる方が珍しいらしい)

男「アイツにお前から今連絡入れるのって大丈夫かな?」

妹「……やらしー」

男「やらしさ満タンなら実の妹使ったりしてねーよ! 少しばかりアイツに用があっただけだ!」

妹「用って、お兄ちゃんから後輩ちゃんにって時点でアウトだよ。じゃ、私もう行くから」

男「おぉ、妹さまぁ〜!!」

妹「知るかアホお兄ちゃん! …………ん」

男(無視を決め込んで前進していった妹が、戸惑い半分で後退って来るのだ。そしてこの俺を盾にするように後ろへ隠れて、縮まっている)

妹「……暗い」

男「は?」

妹「ついでだからお兄ちゃんも付き合ってって言ったの! 文句あるかね!?」

男「怖いのね?」  妹「あ゛ー! あ゛ー!///」

33以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/01(火) 22:46:58 ID:OoV10V2Q
男(顔面に刻まれた引っ掻き跡がやけにヒリヒリ痛むが、たまに頼られる気分は悪くない。あの廃病院を乗り越えた俺にとって暗闇の部室棟など屁でもなし、温し)

妹「お願いだからおっかないこと話すとかしないでよ……」

男「昔、そこの部室辺りで凄惨無碍な生徒惨殺事件が」   妹「ぎゃあああー!?」

男「やれやれ、こんなの一々怯えてる方が馬鹿馬鹿しくないか?」

妹「だ、だって怖いものは怖いよ!! 平気ぶっといて実はお兄ちゃんの方がヤバかった、り、ああぁ〜〜〜〜!!!!」

男「いや、衣装が揺れただけだろ……」

男(深刻だな、と微笑しながら、こうしている場合かと葛藤を迫るもう一人の俺がいて、内心落ち着きはなかった)

男「お目当てのお化けは見つかったのか? 早いとこ出ないとお前の悲鳴で心臓マッハだぞ、お兄さん」

妹「知らないよ! 好きなの使えって言われたんだけど、全部好きじゃないし!」

男「嫌悪と恐怖を与えるのがお化けだろうに、例えば……ばぁあああああああああ!!」ガバッ

妹「いやあああああああああぁぁーー!?」

男「と、いうように見た目に頼らずとも意表を突いてやれば十分ビビらせてやれなくも、ありゃ?」

妹「ぶく、ぶく……っ」プクプク

男「泡吹いて倒れる人間ってリアルにいたのか……」

『意表を突く、言い得て妙だわ』

34以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/01(火) 23:24:58 ID:OoV10V2Q
男(咄嗟に、声の方向へ首を動かし 俺は異常を探った。聴き間違いかと思わせる沈黙が数秒続きながらも、倒れた妹へ寄り、逃走経路を確認する)

男(嫌な予感は沸々と留まり知らず、悪寒を帯びて、直にやって来るのであった。説明が遅れたが、ここは大体地下に当たる)

男(衣装の日当たりを避けた結果、演劇部部室の配置は通常とは異質なものとなっている。室内の角に下へ降りる小さな階段が用意されており、即ち)

男「(逃げ場は、強制的に一カ所に限られてしまう) ……誰か、いるのか」

『人が火のゆらぎを眺めると安心するのは、科学的に立証されている』

男(“火”という単語が出て来て浮足立った。妹を抱えて一気に駆け抜けなければならない、さもなければ……冗談ではない。何もかもだ)

『どうかしら? ここは好都合なぐらい火種に溢れているでしょう、男くん』

男「どこだよっ!? いい加減にしてくれ、取り返しがつかなくなるだけだぞ!」

『恐ろしいなら、私を探してみたらどうなの。脅えているあなたには酷な事でしょうけれど』

男(ああ、そいつは認めるしかない。この緊急事態に妹を抱えて“彼女”探しなど悠長にやっていられるかと、冷や汗って本当に冷えるのだな)

男「考え直してくれ! こんな事お前にはして欲しくない!」

男(今朝起こした血潮に掛けた努力のイベントは無駄になってしまうのか? この叫びも虚しく、淡々と彼女の 声 が響いている)

『時間切れ、残念だけれどお別れだわ。あなたさえ良ければ共に燃えて、灰塵と化してしまいましょう』

男「っー!? ――――何だって」

男(……共に燃える? やはり、おかしいぞ)

35以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/01(火) 23:27:53 ID:OoV10V2Q
日曜日に

36以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/02(水) 19:02:56 ID:2/Nn.VtI
乙乙
こんな妹ちゃんなら俺も一匹欲しい

37以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/06(日) 20:43:15 ID:d41A26Nw
男(言わずもがな“声”の主は彼女、オカルト研の物としか判断しようがない)

男(しようがない、というのに 先立つ違和感、このたっぷり違和感、私情を挟む。今朝の彼女が矢庭に自殺願望者? しつこく私情を挟むスタイル)

男「……俺たちと当分顔を合わせない志、貫かせてもらいます、だって?」

男「隠れてないで出て来てくれないか、オカルト研。顔も拝めないまま心中じゃあ面白くない」

男「それに、ここには俺やお前と無関係な女子生徒がいるぞ。巻き込めばロマンチックじゃないな」

『…………』

男「お前を何が物騒に追い立てたか知らんが、俺はこの子を命懸けで逃がす。火炙りは、誰だってゴメンだろう」

男(説得という名の拒否と受け取って貰えただろうか。愛の暴走がお前を凶行へ走らせようが、俺は付き合うつもりは一切ないのだと)

男(意が深ければ深いほど、この振舞いは 彼女に不快を与えると信じてみた。意中の相手とのラストダンスに、他の誰かがいるだけで 確実にぶち壊しである)

男(他の誰かを守っているのが……つまり、オカルト研が完全に悪役を担ってしまうだろう。さて、返事が返ってこない)

『…………』

男「どうした? 考え直す気になったなら、恥ずかしがらずに出て来い」

『覚悟が決まったようね、男くん』

男「……何だと?」

『いいわ、あなたならば私を裏切らないと信じていた。炎の匂いが鼻を突き始めたでしょう』

38以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/06(日) 21:16:14 ID:d41A26Nw
男「お前はさっきから一体誰と会話して……!!」

男(染み付いてむせる前に、辺りを確認し、今頃見抜いた。オカルト研の声が初めから一ヶ所で、鳴って、いる事に)

男(何故俺はすぐに彼女の姿を探さなかったか、向こうから現れるよう煽っていたのか、傍らの妹から一時も離れたくなかった為、言い訳で構わない)

男(迅速に退路へ飛び込むべきだった、いや、逃げた所で……未だ目を回したまま腕の中にいる妹へ視線を落とし)

男「どうしようもない、詰み……」

男(不審に漂う焦げた臭いが、ようやくして俺の鼻孔を通ってきた。目が、やけに乾く。しかも痛い。Q:アレは何だろう?)

男(A:ボヤである)

男「火だよ、火ッ!! おい起きろ! 死ぬぞ! オイッ!!」

妹「むにゃ……」

男「うっ!?」

男(臭いが増して、衣装に火が移ったことを嫌でもこちらに分からせる。こういう時はどうする? 何の為の避難訓練だ、消火器、119!!)

男「あ、あ……く、ぜんぶクソだああああああああああああぁぁぁぁ!!!!」

男(冗談では済まされない、火事場の冗談じみた馬鹿力が発揮するこの主人公である。背負った妹の重さもお構いなしに、階段を駆け上がり部室から脱出していた)

男(え、オカルト研? ……最初からアイツはあそこにはいなかった。後で知る話となるけれども)

男(今はとにかく、やかましくヤベーと吠え続ける火災報知機の音に、茫然とさせられたままでいさせてくれまいか)

39以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/06(日) 21:35:55 ID:d41A26Nw
妹「――――お兄ちゃん、なにこれ」

男(ノーコメント)

『これは避難訓練ではありません、現実です! 皆さんただちに校庭まで避難を!』

「マジの火事だって」  

「部室棟燃えてるとか聞いたけど、燃えてる?」

「点呼しますので騒がないでください!! クラスごとに集まって各自友だちがいるか確かめてください!!」

妹「なななな、何なのさコレぇー!?」

男「……うむ」

妹「わ、私目覚めたらいきなりこんな大騒ぎなってて、あの、そのー! 何っ!?」

男の娘「男っ!!」

男(定まらない精神状態を元へ引き戻すかの如し、駆け寄って来た男の娘が俺に抱き付いて来た。その背後には青冷めた転校生の姿も)

男の娘「無事でよかったよぉ……ほんとうに……」

男「いや、お前たちの方こそ……」

転校生「…………あんた、かなり不味いんじゃない?」

男(誰が? 勿論、転校生は俺を指していた)

40以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/06(日) 22:06:58 ID:d41A26Nw
男(しばらくして避難を終えた全校生徒たちは、輩は、事件に噂にと引っ切り無しに灯火を消さんとしないばかりに騒ぎ立てていた)

男(その反面 掻き消されそうになっているのが)

「アイツよ、アイツ! 火事の現場に偶然いたとかって子」

妹「ひっ」

「妹ちゃんだけだよね……演劇部に衣装取りに行ってたのって」

妹「ち、違う!! 私が火なんかつけるワケないじゃん!?」

「じゃあ他に誰がやれたの?」   「待って、もう一人傍にいたんだって、ほら」

男「…………確かに不味い」

男(幼き頃、家族で夢の国へ遊びに行った過去がある。心躍らせ、無我夢中にアトラクションを楽しんでいたら、大人へぶつかり、しかめっ面で舌打ちされてしまった)

男(それだけで上々であったテンションは下って、仕舞いには何も楽しくなくなっていた。そんな、幼かった自身の不快な思い出が不意に蘇る)

生徒会長「男くん、無事だったか」

男「! か、会長……それに先輩さん、と 不良女か」

不良女「ついで扱い止めろ。ていうか、結局オカルト研の関与あったのか? 男、どうなんだよ!」

男「ああっ……いや」

先輩「まーまー、ここは穏便にいきましょーや、皆の衆! 火も、何着か衣装燃やしたぐらいで済んだんだからサ」

41以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/06(日) 22:43:13 ID:d41A26Nw
生徒会長「ああ……しかし、起きてしまったな」

男(気に留めるなと励まされる空気は漂ってはいない。我に帰って「失言だった」と生徒会長が言葉を取り消そうが、取り消さまいが、重圧は覆い被さった)

先生「ごめん 男くん、ちょっと来てくれないかしら」

男「……はい」

男の娘「せ、先生違いますっ! 男は何も悪いことなんかしたりしてません!!」

先生「そうね、でも、疑うどうとかじゃないの。こういう時どうしたらスムーズに解決するかでしょ? 三分ぐらい話を聞きたい人たちがいるの」

先生「行きましょう、男くん」

男(返事も有耶無耶に、美少女たちから見送られつつ手を引かれる俺。ゆったりとした歩みの中、視界に塞ぎ込んだ妹が飛び込む)

男(――――逆境こそ、非現実じゃないか)

「火種に使われたのは乾電池だったよ。インターネットか何かで調べれば誰でも簡単に作れることができる時限発火装置だ」

「音声レコーダーらしき物が焼けて転がっていたんだけれど、君は何か知っている?」

男「……いいえ」

男(オカルト研、と答えるのは簡単だろう。機械の損傷具合も決して酷くはなかったと言われたが、彼女を差し出す真似は俺には出来なかった)

「そう。それじゃあ、一緒にいた女の子、君の妹さんはその時どうだったのかな?」

男「ボクがお化けのフリして驚かして、気絶していました。事実です」

42以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/06(日) 23:15:22 ID:d41A26Nw
男「ボイスレコーダー、演劇部の友だちが無くしたとか話していました。見つかったんですね」

男「自信がなくて、演技の練習用に保存して繰り返し使っていたらしいんですけれど……良かった」

「ありがとう、だいぶ疲れているみたいだし 向こうで休んでいるといいよ。協力してくれて感謝します」

男「…………」

先生「男くん、本当のこと話した?」

男(待ち伏せとは人が悪いではないか、美人教師。何だ? 無暗に肩に手を乗せるとは、豊満な胸が当たっているぞ、けれども)

男(不幸中の幸いかもしれない)

先生「大丈夫だよ、急な事でビックリしたよね、大丈夫だから。頭上げなさい」

男「……点呼の時に、名無しはいましたか?」

先生「名無しくん? ううん、今日は、欠席扱いだから、特には」

男「……そうですよね、分かっていました。く、クひ、くくく……ハハハ……」

先生「男くん?」

男「アッハハハハハハハハハハハハハハハ!! アァーーーーハッハッハッハッハッ、イヒッ、げほっげほ!!」

先生「ちょっと平気!? ――――――お、おとこくんっ?」

男(上等だコラァ……)

43以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/06(日) 23:15:55 ID:d41A26Nw
火曜日につづくのよ

44以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/08(火) 19:55:52 ID:ODTNGdBI
男(事故の規模は辛うじて小さく収まったらしいが、そういう問題ではない。当然ながら学校側もこの対処に追われる羽目になる)

男(午後の準備活動も足早に引き上げられ、全校生徒は下校を強制させられてしまったワケだった)

男の娘「男、妹さんの様子どうだったの?」

男「え? まぁ、一応気にするなって声掛けてはおいたけれど、なぁ」

男の娘「う、うーん。あのさ、最近やっぱりおかしいよ……ここのところ嫌な事立て続けだし」

男の娘「いくら皆浮かれてるからって、絶対ヘン! 男と転校生さんも僕と同じこと考えてるよね!?」

男「穏やかじゃないのは、同意」

男の娘「そうだよ! し、しかも今回はボヤ騒ぎだなんて、なんか 不安になってくる……」

転校生「心配しなくても私たちだって同じ気持ちだわ。だけど……ん?」

男(同時に三人の携帯電話が音を鳴らした。送り人も内容も完全一致である、我らが愛好会・部長さま。というか、愛好会で“部長”とはこれ如何に?)

先輩『メール本文:召集っす♪ めっちゃ緊急部内会議どぇーーーーす☆☆☆(≧ω・) 今からウチに集合だよ! いじょ!』

男の娘「うわ、なんか古臭っ!!」  男「こういう迷惑メールまだ届くけどナ」

転校生「ま、部長さんらしさはともかく、せっかくだし何かお菓子でも買って行ってあげましょ。丁度そこにコンビニもあるし」

男「おー、太っ腹だな、転校生」  男の娘「ごちそうさま、転校生さん♪」

転校生「あんたたちもお金出すに決まってるでしょっ!!」

45以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/08(火) 20:28:50 ID:ODTNGdBI
男「――――荷物持ち役、やっぱり俺なのかよ」

転校生「ふふん、ジャンケンで決めたんだから文句言わないでよね〜。ていうか、そんなに大荷物でもないんだからしっかりしなさいよ、モヤシ体系」

男「モヤシに労働させる人間様の考えが理解できませんわー……」

男の娘「ふふふっ、良かったぁ。いつもの[ピーーー]」

男「ん? 何嬉しそうにしてるんだよ、お前。敗者を笑うのは勝者の特権だって?」

男の娘「ち、違うちがうよ! 僕はただ、あんな事があっても男が[ピーーー]通りでいてくれてるから、ほっとしちゃったっていうか、[ピーー]い男、すごく[ピーーーー]なって……///」

男(止せやい、惚れ直すなよ。なんて癒しの下校トークも一旦の中断、目的地である中華料理屋へ俺たちは辿り着く)

男(午後の営業前でもあり、客の姿もなく、入口から入るのも躊躇っていたが、ドアガラスの向こうから粋なオヤジが招いている。丸太を軽々担げそうな逞しい腕を振って)

転校生「えへへっ、店長さんていつ見てもカッコイイわよね。誰かさんもあれぐらい鍛えた方が良いんじゃない? ねぇ〜?」ニヤニヤ

男「想像してくれ、俺が筋肉モリモリのマッチョマンの変態になっている姿を」

先輩「おーっ! 三人揃って来ちゃったねっ、待ってたよー! 早く早く!」

男の娘「あれ、生徒会長さんと不良女さんもう来てたんですか?」

生徒会長「やぁ、お疲れさま。不良女と共にお先させて貰っていた所だよ」

不良女「っくう〜!! オジさんっ! この中華丼かなり美味いねぇ! 気に入った!」

男「約一名は何フツーに飯食ってんだよ」

46以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/08(火) 21:00:41 ID:ODTNGdBI
不良女「いや、マジで冗談抜きの美味だぜ、美味! 早くお前らもあたしと一緒に虜になっちゃおう!?」

先輩「ウチの飯はそんじょそこらの危ないクスリより危険なのだよ〜!!」

転校生「売り文句が地上最悪レベルじゃないのよ……」

男(ともかく、営業時間までは自由に使って構わないとお許しを頂いた俺たちは各々自由に席へ着席し、緊急部内会議は始まるのであった)

生徒会長「部室外の活動という事で、店主のご厚意にまずは感謝すべきだな」

先輩「はっはっはー! まぁ、わたしが生徒会長ちゃんたちに色々迷惑掛けちゃったし、お父さんがお詫びにって」

不良女「つーかさ、ここで今話し合うったってそんなにすぐ気分切り替えられるかな? ……ていうか、だからこそ、みたいなヤツ?」

先輩「そうだよ〜。だからこそだよ、不良女ちゃん! グダグダ過ごしてたけど、文化祭まで時間ヤバいですしねっ!」

男の娘「その辺りの心配は最もなんだけれど、ほんとに大丈夫かな……?」

不良女「えぇ? 何の心配だよ、暗い顔させんなって。せっかくの中華丼 不味くなっちゃうだろー」

生徒会長「うむ、予定のまま開催されるかどうか気掛かりなんだな。実際 今日のような好ましくない案件が続いている」

男の娘「僕、こんな状態で文化祭なんてあって良いのかよく分かんなくなっちゃって……」

不良女「あー、気分になれない、とかはあたしも同感かもな。それに、片す問題が残ってる……っ!!」

生徒会長「由々しき事態、皆がそう考えているのは当たり前、か」

生徒会長「特に……君は、男くん。男くんはいま非常に危うい立場に追いやられ様としているぞ」

47以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/08(火) 21:39:44 ID:ODTNGdBI
男(この場全員が、心配そうな、あるいは哀れみの視線をこちらへ募らせていた。店主のオヤジ、貴方もか)

男(やれやれ、それもその筈だ。現場にはこの俺と妹の二人のみしか残っていなかった。怪しい音声レコーダーも転がっていたが)

男(妹か俺、犯人の疑いが掛かってくるのは当然である。現実から帰って来ても事件のど真ん中とは、忙しない人生を送らせてくれるではないか)

転校生「変態、あんたが無実だって事は私たち信じてるからそこは心配しないでよね」

先輩「なーんかツンデレ成分が台詞から感じられないんだよなぁ、今のじゃ……」

転校生「ツンデレ? つん、んー……あぁ〜!! よく分かんないけどっ、心配いらないの! 良いわね!?」

男「心配なんて、初めから疎まれてるんならココに呼ばれちゃいないだろう? でも、ありがとうな、転校生」

転校生「! う、うんー……///」

男の娘「転校生さんの言う通り大丈夫だよ、男。先生だって男が悪くないってきっと証明してくれる筈だもんね」

男(優しい世界が無限に広がるのだ、いくらトラブルが俺を揺らがせようと味方が付いていてくれる。しかも可愛い。それだけで十分じゃないか)

不良女「部内会議っていうか、これじゃあ男を励ます会じゃんかよ。切り替えてお菓子開けちゃおう」

先輩「――――――んじゃ オカルト研って子のことなんだけど、切り替えよっか」

不良女「は、はぁ!? 部内の、問題を相談する場じゃないのかよ。ブチョー!」

先輩「部員の悩みは部内の問題じゃんよう! つまり、わたしたち三年でも介入する余地があるわけですなっ、ね!」

生徒会長「だいぶナイーブな問題へ首を突っ込みそうではあるがね……その為に設けた場だ、君たち」

48以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/08(火) 22:30:54 ID:ODTNGdBI
男(俺も含め、二年生組が目を丸くさせているのを先輩さんが笑い、生徒会長が腕組で仕切り始める。不良女といえば、いても立ってもられず、というか文字通り椅子から立ち上がった)

不良女「何考えてんだよぉ、あんたら……」

生徒会長「おや? 珍しく君にしては察しが悪いな、たまには先輩風吹かさせてくれたって悪くないだろう」

不良女「悪いよ! 関係無いあんたたちまで変なことに巻き込んじゃったら、もう言い訳も思いつかねーじゃん!!」

男「俺もコイツと同意見です。あなたたち二人まで関わる意味がない、そもそも綺麗に処理できるかも分からないんです」

先輩「だからって後輩の悩みを放っておけるほどわたしたち神経図太くないないよ〜? わたし的には、恩返しでもあるんだよねぇ」

先輩「ここにいるみんながいてくれなかったら、部の相続なんて無理だったんだもん……困った時はお互いさま、じゃない?」パチッ

男(お世辞にも上手いと呼べないぎこちないウィンクを俺へ向けた先輩の表情は、有無を言わさせなかった。巡る、めぐるだろうか、こういうのは)

男(巡りめぐって帰って来たのだ、大きな何かが。始まりこそ邪な想いが生んだというに、どうして中々 温かい)

店主「繋がりだよ、アンちゃん。人は人と繋がってこそ恩恵を受けられるのさ」

男「店主!!」

店主「綺麗事語らせてもらうが、絆は手前を裏切らないさ。料理と同じだよ。しっかりした下ごしらえあってこそ奇跡の一品は一丁上がり……」

店主「人も料理も城みてぇなモンよ。土台作りが一番の肝心、手前の道は手前が作るんだぜ」

男「店主、いや、マスター……」

店主「ヒートアップの下準備だ。自慢のオレ炒飯、たんと食べろや」トン

49以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/08(火) 23:08:14 ID:ODTNGdBI
生徒会長「――――――バックグラウンドが読めないな」

男(優雅に口元をハンカチで拭った生徒会長が一言。今朝の事から、果ては俺が受けた仕打ちまで詳細に伝えての簡潔な感想である)

生徒会長「まず、間違いないのが君へ対する恋愛感情だけが彼女を突き動かしたとは考え難いかな」

不良女「だから手っ取り早く会って直接聞き出すしかない、ってのは通用しなかった……」

不良女「何考えてんのか抜きで、アイツらしくないことやってんのはマジ。元々口は汚ないし、人当たり最悪だったけど」

男の娘「ふ、不良女さんが口汚いってどの口が、あっ」

男(しばかれるのはご褒美だ、男の娘。ご褒美なのだ。そんな騒ぎを他所に、先輩が懐からメモ帳を机の上へ乗せる。コイツは?)

先輩「わたし、ちょーっくら聞き込みみたいな事してみたんだよねぇー。そもそもオカルト研ちゃんがどんな子なのか知りたくて」

男(彼女のメモ帳には、何も記されていなかった。多くのモブたちへ尋ねた成果が、オカルト研本来の人となりを痛く訴えて来るのだ)

転校生「ぶ、部活の、研究会の人たちからは何も聞けなかったんですか……?」

先輩「意味わかんないこと教えられたって参考にならないじゃん?」

男「何気なく酷いこと答えてますからね、先輩さん」

生徒会長「私も伝手を当たってはみたものの、詳細を知るには至らなかった。彼女の交友は極めて狭い。他に情報を知り得る人物がいるだろうか?」

男「……いる事には、多分いますけれどね。それもストーカーみたいなのが」

男の娘「あわわわ…」   不良女「よし、ダメ元でぶっつけ行くぞ! 男ぉー!」

50以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/08(火) 23:10:20 ID:ODTNGdBI
こ・こ・ま・で

51以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/11(金) 20:22:08 ID:e8lHl28o
黒服「――――――フゥ、ぬ…………」

生徒会長「打ち合わせ時間丁度に来たな。この期に及んでだが、男くんあの人物で間違いなかったか?」

男「ええ、まさか素直に俺たちの頼みを承諾してくれるとは思ってませんでしたが」

先輩「わたしも如何にもMIBってふいんきの怪しいのが来るとは思ってませんでした!」

転校生「部長さんってば雰囲気、正しくして雰囲気よ。ていうかあの人今朝の?」

不良女「あ〜、見間違えたりしねーよ、あんなオッサンじゃ……なぁ、マジで平気なのかよ男」

男「どうだろう? しかし、複数で会うのは避けた方が好ましいかもしれん。相手側にも失礼だし」

男(あんな嫌な奴でもと、本音付け足してやりたいものだ。日も完全に沈み、街灯に照らされた美少女たちと共に陰からオカルト研信者 もとい黒服を俺は追った)

男の娘「でも、どうして落ち合う場所がラーメン屋なの……? この疑問、変かな」

先輩「そりゃわたしたちラーメン愛好会と言えばラーメンに始まり、ラーメンで締めるから♪」

男の娘「こ、答えになってないようなぁ〜」

不良女「あたしは行かない組に分かれとく。あたしじゃあのオッサンから第一印象最悪に持たれてるだろーし」

生徒会長「そうか。ならば初見メンバーで行くか? と言っても最終的に約束を取り付けた張本人を抜きにできないが」

男(俺を筆頭にするという事らしい。それもそうだろう、このイベントまで場面を進めたのはこの俺だ)

男(そう、先程の部内会議で放った思いつきが採用されて現在達していたのである)

52以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/11(金) 20:49:11 ID:e8lHl28o
男(勝負へ挑む前の回想シーンは不吉な旗を立てると偉人はかく語りき、なんて――――)

転校生『――――結局このお屋敷に逆戻りするだけじゃない! もう!』

生徒会長『成程な、流石は男くんだな。事件の当事者の身辺を洗わずとも、当人に訊けば早いだなんて』

男『んなワケないっスよ……っ!』

男『大体まだ帰って来てるのかも、会ってくれるかも分からないんですよ? 生徒会長』

先輩『ナンデみんな大ゴーテイ前にして驚カナイ? ナンデ?』

生徒会長『ならば、彼女をよく知る人物というのは家族に? 気安く会って貰えるのなら助かる物だが、事件後の昨日今日では中々厳しくも』

男『いいえ。ご覧の通りオカルト研という奴は金持ちのお嬢様です、財閥がとか耳に挟んでますよ』

先輩『ケッコン!! 不肖わたし結婚申し込んで来ちゃいますので!!///』

男の娘『この人自分で不肖言っちゃってるよぉ……』

不良女『アホは放っておくとして、お嬢様は今更なんじゃねーの?』

男『身辺警護のスーツの大人たちにいつも守られてるのも今更だよな』

先輩『そっか、小市民に知らない世界はやっぱりあるんだね、ネ、皆さん』

生徒会長『……にっ、認識を改めさせられたのは良いとして、それが何か?』

男『実は、その中の一人と俺は面識があるんです。親しいとは呼べませんけれどね』

53以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/11(金) 21:09:09 ID:e8lHl28o
男の娘『えぇ!! そんな人がいたのにどうして早く頼らなかったの、男!?』

男『それなりのワケがあるからに決まってるだろ……』

生徒会長『ともかくその人物を当たってみれば何か掴める可能性があるのか。警護人ならば、彼女の周りを常に見張っているのだからね』

男『はい、ただ……その人一つ、二つ……数え切れない問題が、あって……』

転校生『あのねぇ、正直に自分に合わないって告白しなさいよ? 苦手だから出来れば頼りたくなかったんでしょ?』

男『好き嫌いで済むなら早くに動いてたんですけどねぇ』

不良女『じゃあさっさと会って協力してもらおうぜ。一応あんたの知り合いなんだから、会っては貰えるだろ』

男『いや、連絡先だけ教えてもらって引き返そう。そうしよう』

不良女『バカ肝心なとこで縮こまってんじゃねーよっ! 男だろお前!』

男『男だよ!! ……正直言うと成功する自信がない。確率も0%寄りだと思ってる』

先輩『すみませ〜ん、わたしたちオカルト研ちゃんの友達なんスよー、えへへへっ!』

『はぁ……』

男『あー!! なぁ、アレっ、あ゛ーーーー!!』

転校生『ずーっと渋ってたって何も始まらないわよ、変態。丁度良いじゃない! ほら、あんたも来て!』

男『……言い出さなきゃ良かったよな、俺よ』

54以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/11(金) 21:09:57 ID:e8lHl28o
男の娘『えぇ!! そんな人がいたのにどうして早く頼らなかったの、男!?』

男『それなりのワケがあるからに決まってるだろ……』

生徒会長『ともかくその人物を当たってみれば何か掴める可能性があるのか。警護人ならば、彼女の周りを常に見張っているのだからね』

男『はい、ただ……その人一つ、二つ……数え切れない問題が、あって……』

転校生『あのねぇ、正直に自分に合わないって告白しなさいよ? 苦手だから出来れば頼りたくなかったんでしょ?』

男『好き嫌いで済むなら早くに動いてたんですけどねぇ』

不良女『じゃあさっさと会って協力してもらおうぜ。一応あんたの知り合いなんだから、会っては貰えるだろ』

男『いや、連絡先だけ教えてもらって引き返そう。そうしよう』

不良女『バカ肝心なとこで縮こまってんじゃねーよっ! 男だろお前!』

男『男だよ!! ……正直言うと成功する自信がない。確率も0%寄りだと思ってる』

先輩『すみませ〜ん、わたしたちオカルト研ちゃんの友達なんスよー、えへへへっ!』

『はぁ……』

男『あー!! なぁ、アレっ、あ゛ーーーー!!』

転校生『ずーっと渋ってたって何も始まらないわよ、変態。丁度良いじゃない! ほら、あんたも来て!』

男『……言い出さなきゃ良かったよな、俺よ』

55以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/11(金) 21:41:35 ID:e8lHl28o
先輩『名探偵わたしが聞き込み調査したところ、今外に出てるんだって』

不良女『そもそも誰がコイツの知り合いなのか聞いてないだろ……』

先輩『じゃあじゃあ男くんこちらの素敵メイドさんに一言お願いちょーだいっ、さんはい!』

男『……く、黒服さんに折り入ってご相談がありまして、ご迷惑にならなければ連絡先をお尋ねして構わないでしょうか?』

『大変申し訳ございません。急を要していましても私の判断でお伝えするのは決めかねます』

不良女『えぇー! 減るモンじゃないんだし!』  生徒会長『無理で元々の話だったろう、我儘は止さないか』

『そういう事ですので――――ところで、皆様が着られている制服 お嬢様が通われている学校の……』

男の娘『そ、そうなんです。僕たちオカルト研さんの友だちで、えっと、心配が爆発しちゃって!!』

転校生『お願いします! あの子に何か出来ないか考えているんです、少しでも力になれたら良いなと思って!』

『ご友人! あぁ、でも最近はあのお嬢様がご友人をこちらに招いたとか……』

生徒会長『残念ながらオカルト研さん本人とは連絡がつかないもので。ですが、彼が警護で一人思い当たる方がいると言って聞かないのです。だった、ね?』

男『!! は、はい、そんなんですよ! 俺も子どもの揉め事で頼るのはどうかと思ったんですけど、事態が事態だったものでして……つい』

『いえいえっ! あのお嬢様がご家族以外の方へ心開くなんて、余程では無いのですね。あぁ……少々お待ちになって頂けますか?』

男『チョロ、んむうっ!!』バッ

男の娘『男?』  男『い、いや? 何でもないぞ? 別に?』

56以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/11(金) 22:10:49 ID:e8lHl28o
『……はぁはぁ、ふー。お、お待たせしましたっ、すみません、ご友人様方へお見苦しいところを……』

不良女『まさかの全力疾走だったもんな。で、例のヤツはお願いできる感じスか?』

『こ、これを……はぁはぁ……どうぞ!』

男(息も絶え絶え突き出されたのが恋文であればと惜しむ前に、メモ用紙に走り書きされた電話番号を確認し、安堵か憂鬱かの溜め息が俺から漏れた)

『お嬢様を、オカルト研お嬢様をよろしくお願いします!』

転校生「なんか託されちゃったけど、本当に大丈夫なの?』

男『無理矢理背中押した奴がかける言葉じゃないよな、それ』

先輩『まぁ、結果オーライ祈って無事完了をあとは祈るだけだよ! どうする? 願掛け行ってから電話しよっか?』

男『神頼みが一番頼りにならないと心の底から思うんですよ、俺。構いません。すぐに連絡を』

生徒会長『待ってくれ、男くん』

不良女『待てないから! 考え事の披露なら全部上手く行ってからにしてくれよな、カイチョー』

生徒会長『そうじゃないんだ。男くん 君と例の人は、いや、あの躊躇い方ではよほど関わり合いになりたくはないと思っていたんじゃないかな?』

男『……予言しましょう、俺が電話掛けて数秒で虚しい沈黙が起こります』

男の娘『……ひょっとして嫌われてたりするの?』

男『すまん、ゴキブリと新聞紙の関係だ』

57以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/11(金) 22:35:55 ID:e8lHl28o
不良女『……じ、じゃあ早い話男除いたあたしたちの内の誰かが連絡したら良いだけだろ?』

男の娘『こ、こういうの始めの一歩が肝心じゃないの!? 下手なこと言って相手にされなかったら終わりじゃないかなぁ』

生徒会長『かと言って、ここまで来て尻込んでいるワケにもいかないだろう。……私が掛けるで意義はないか?』

男『脅す様で申し訳ないんですけれど、“お嬢様”の話題に触れた途端に豹変しますからね』

転校生『空気読みなさいよ、ばかっ!!』

男『だから俺はあれだけ必死になって止めようと言っただろ!?』

転校生『どのタイミングでよ!?』

先輩『もしもしー、お忙しいところすみません。あっ、わたくし怪しい者ではありませんよ〜!』Prrrr!

『っ〜〜〜〜!?』

不良女『だ、誰だよ このド変人にケータイ持たせたの!! 詰む、マジで詰むから!!』

生徒会長『……いや、こうなれば信じよう。この子の意外性には昔から私も目を見張るものがあってね』

男の娘「そ、そんな。でも、だけどですよ!?』

生徒会長『ずば抜けた感性が齎すおよそ予想の付かない行動力の持ち主だ。彼女は時に天才と称され、あるいは天災と……」

不良女『ただの台風に変わりないだろ それ!!』

男『……先輩さん、切りの良い所で電話代わってもらえますか』

58以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/11(金) 23:09:01 ID:e8lHl28o
先輩『……ほいサ!』

男『ありがとうございます。もしもし、この声聴き覚えありませんか?』

黒服『聴き覚えだと……脳にまで刻まれた忌むべき憎たらしい小僧の声だ。畑の肥料の足しにもならないカスを彷彿とさせてくれる』

男『いまは車内ですか? あれから随分時間が経っているのに、まだオカルト研は』

黒服『貴様の腐乱漂う目的などたかが知れている! ネズミの分際が、まだウロチョロと気高きお嬢様の周りを……!』

男『そこにオカルト研はいますか。出来れば彼女には聞かれたくない話をあなたとしたくて、たまりません』

黒服『…………何だ?』

男『すぐに通話を切らないというのは、正直驚いています。ですが確信しました』

男『あなたも 今の“オカルト研”に対して何か思うところがあるんじゃないか、と……』

黒服『薄汚いガキの暇潰しに付き合ってやれる懐の広い大人じゃないか。用件は?』

男『可能なら実際に会って話ができたら嬉しいと思っているんですけれど、今夜じゃ忙しいですか? おニイさん』

黒服『……好きな時間を指定するがいい。で、場所は? さっき話した少女は?』

男『頼もしい限りです。でしたら場所と時間は――――――――』

男「(――――――――こうして現在だ) こんばんは、同伴に一人いますけれど構いませんかね?」

黒服「まずは座れ。……さ、今日はにんにくを多めに入れるとしよう」

59以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/11(金) 23:10:50 ID:e8lHl28o
日曜日につづく

60以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/13(日) 20:19:47 ID:yRuT1UbA
男(時間帯もマッチして店内は学生や仕事帰りのサラリーマンで溢れていた。賑やかな空気が俺へ場違いを突き付けてくる)

黒服「座れと言っているんだ。それとも私の横では不満か?」

男(黒服は見透かした様に憎たらしい態度を取り、お前の横かよと怯む俺を笑う。そんな険悪なムードを破ってくれることを見越して、彼女を選んだのだ)

先輩「どうもこんばんは! わたしなんかがお隣しちゃってもお兄さん良かったですかね〜、えへへ!」

黒服「……ふん、構わない。学生ならばこの店の暖簾をくぐる機会も多かろう。配慮に感謝してもらいたいなぁ、少年」

男「やれやれ、驚きました。あなたの口からラーメンでも食べに行くかなんて聞ける日が来るなんて」

先輩「ラーメンを前にして気難しいお喋りはナンセンスぅ〜、お二人〜。ラー欲を満たすっ! これ一番大事だから!」

男(先輩が間に入ってくれたことで話のし易さも抜群に変わったのは気のせいではないだろう。彼女持ち前の明るさと気軽さが、俺たちの緊張を適度に解している)

男(見越してなどと偉そうに語ってはみたが、実のところ ラーメン=先輩の計算式から得た短絡的に選択を得たのもあったりしちゃったり、なんて……)

先輩「ていうか男くんがこの店選んだんじゃなかったんだね。お兄さんはここの常連さんだったりするんですか?」

男(質問に、さっと財布からプラチナに輝くポイントカードを指に挟んでチラつかせる黒服。こいつがガチ勢だ)

黒服「ハッ、自慢する程でもないが! ……早く品を決めてしまえ。ロット乱しなど極刑だぞ」

男「は? (食券制だぞ、このお店。もう俺か彼 どちらが動揺しているのか分からん)」

男(しかし、どう話を切り出して良いか悩むな。黒服とは正に犬猿の仲でもあるし、だが意外にも向こうが歩み寄って来てくれた。意味不明に地雷原を歩いている気分である)

「お待たせしましたぁー、あじ玉らーめんカタのギトギト一丁!」 ト ンッ

61以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/13(日) 20:54:19 ID:yRuT1UbA
黒服「私が先か、まぁ当然だろう……君たちはここのラーメンを極上に仕立てあげる味わい方を知っているか?」

男(サングラスの向こうからも分かる怪しく光った瞳を前に先輩さんと顔を合わせていれば、この黒服卓上のおろしニンニク缶を掴み、勢い任せて逆さにしやがった)

黒服「コレが職務を全うする者だけに与えられるご褒美だ!」ボドォ・・・

男「うっわ、やりやがった!!」

先輩「この外道ッ!!」

先輩「いくら常連とはいえ、やって良い事と悪い事があるよニンニクリミットブレイクなんて卑怯技中の卑怯技だ!!」

黒服「何だ? 黙れ! ニンニクは食の楽しみへライブ感を与える優れた調味料の一つ、人の食い方にケチをつけて悦に浸るか!?」

先輩「確かにお兄さんの言う事には一理あるよ。でも、一缶分をラーメン一杯にぶち込むなんて本来の味を損なうし、ニンニク食べに来たのと一緒じゃん!」

黒服「なにを!?」

先輩「ここのラーメンはとんこつベースにマー油を混ぜた動物臭さを加速させた味を楽しめる……美味さとは舌を痺れさせること? 違うね、お兄さん!」

先輩「お兄さんの食べ方じゃ、牛脂にいっぱいのニンニクまぶして食べる方が現実的だよ。もうそれはラーメンじゃない。『ニンニクシチュー 〜冷蔵庫の余り物を添えて〜』だよ」

黒服「……ニンニク、シチューだと? ……あ、あぁ」

先輩「あなたは何を食べに来たかったのかなっ、麺、よく煮込まれたチャーシュー? 煮卵!? そう、ニンニクはメインじゃない! ニンニクこそ添え物!」

男「すみません。熱い説教遮りますけれど、明日はお仕事休みなんですよね、黒服さん」

黒服「はっ! 何故それを貴様が!!」   男「ニンニク臭漂わせて護衛するのが一流の警護ですかね」

62以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/13(日) 21:35:09 ID:yRuT1UbA
「ら、らーめん二つになります。他のお客様にご迷惑掛からないようお願いします」

男「まずは食べましょうか、先輩さん。俺のチャーシューいりません?」

先輩「ダイエットとかでいらないの!? 是非とも有り難くいただくっす〜!!」

黒服「ふー、ふー、ハムッ、ハフハフッ、ハム!! ズビズバッ! ズズーッ! ……お嬢様と一度この店を訪れたことがあってな」

黒服「お嬢様へこんな低俗極まる食事をさせるワケにもと必死に止めてはみたが、最後には熱意に負けてしまった。今では私が週一で通う醜態だ」

黒服「あの時のオカルト研お嬢様の表情の面白さたるや……フフッ、いかん。主に代わるお嬢様を思い返し笑うなど……」

先輩「ラーメンをバカにしちゃいけませんよ〜? どれだけ歴史重ねても大衆に好かれるお食事なんですからぁー、だよね男くん?」

男「カップ麺こそ人類が生み出した最高です。黒服さん、今日はオカルト研と一緒にどこを回っていたんですか」

黒服「代表、お嬢様のお父上へ謁見をしてきた。その後の挨拶回りはいわゆる顔見せだろう。財閥令嬢は苦労も耐えないな」

男「挨拶回り……俺、疎いからイマイチなんですがよくある事なんですか?」

黒服「お嬢様の場合ならば、非常に稀だと答えておく。今日の突然の日程もあの人ご自身によるご意向からだ」

男「何ですって?」

男(箸を止め、お冷を飲み干した黒服が俺を真っ直ぐ見つめて止まっていた。彼が上着を脱ぎ、椅子へ掛けると)

黒服「貴様から見ていまのお嬢様は普段とかけ離れてしまった。だからこそ、私へ声をかけてきた、か」

黒服「やはり、お嬢様は変わられてしまったのだな……」

63以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/13(日) 22:14:01 ID:yRuT1UbA
黒服「私が異を唱えようと部下はおろか、周りの人間は聞く耳を持たん……皆、お嬢様の変貌に気付いていないとでもいうのか」

男(名有りキャラクターこそが対応できる異変、この黒服もサブでありながら例外ではなかったのか。今朝のイベント内で兆候は見せていたが)

黒服「貴様に頼るのも不服だが、あの方は、あの子は学校でどんな表情を見せてくれていただろうか」

男「俺の知っているアイツは決まった人間にだけ愛嬌を見せる可愛い女の子です」

男(少しばかり変わっていたが、純情可憐、撤回、良き美少女であると強く主張しよう。その奇行も、決して人を陥れる事も傷つける事もなかった)

男「人に向かって毒も吐くが、それは大金持ちの自分を狙って近寄る不埒な輩を遠ざける為に身につけた術だった」

黒服「心の奥底では誰かへ歩み寄りたいと強く願っているに反し、常に態度が裏目に出てしまう不器用な子だ……」

黒服「難儀な少女だと私は思っていたよ。しかし、ある時下賤なガキを連れていたではないか。あの子の傍に立ってやれるのは私だけだった筈なのに!」

黒服「貴様だ、貴様ァー!! 貴様が私から平穏を奪い去って……このザマだ」

先輩「ち、違いますよ〜! 男くんは別にお兄さんに恨まれたかったんじゃなくって、もっと別の」

黒服「恨む? ほう、私の奢りが少年へ牙を剥いた。気に食わないが事実なのだろう……」

黒服「……お嬢様を中心にと一点を見定めることしか出来なかった瞳だ、君らの方が私よりもあの子に詳しかろう」

黒服「フン、謝礼のつもりで受け取ってくれ。学生には寄り道に掛かる金は安くないだろう」

先輩「あー、ちょい待ち願いますか!! おにいさん」

64以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/13(日) 22:50:23 ID:yRuT1UbA
先輩「っあ〜〜……う〜〜〜〜……」

先輩「店員さん、黒いお兄さんに替え玉ひとつっ!!」

黒服「替え玉!?」

先輩「男くん、あともうひと踏ん張りだよ! お兄さんあとちょっぴり押したら味方になってくれそうかも!」

男「先輩さん……黒服さん、俺たち今のオカルト研に手を差し伸ばしてやりたいんです」

男「その為に少しでもアイツの情報を集めたいと思っているんです。あなたでしか気づいてやれない事なんかも全て、貪欲に」

男「お願いします!!」

先輩「え、あっ、え〜っと、わたしからもお願いします!!」

男(先輩に捕まった黒服へ斜め45度も大袈裟ではない礼をした俺が気がつけばいた。安売りした覚えのないプライドは震えて握った拳に伝わり、抑えるのがやっとである)

黒服「……気楽だな」

黒服「面を上げろ、こんな所を見られて妙な噂が立っても私が困る! 食事を楽しむ場で無作法だとは思わないのか貴様らは!?」

男・先輩「お願いします!!」

黒服「知るか!! ……そういえば明日の話だ、お嬢様は○×にあるという廃病院に向かわれたいそうだが」

黒服「廃墟となれば、私がお傍に付かぬワケにもいかんな……おぉー、せっかくの麺が伸びてはいかん」

男(恩に着る、美少女へ忠誠を誓う変態騎士)

65以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/13(日) 22:51:19 ID:yRuT1UbA
ここまで

66以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/14(月) 11:59:26 ID:Digl9dQs
ほんと良キャラ多いな
乙!

67以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/14(月) 19:18:18 ID:tapN5Tx.

意外な組み合わせを見られたと思う

68以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/14(月) 20:11:39 ID:c/6RMa8A
何か笑った

69以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/14(月) 23:10:56 ID:A8RAfyB2
ニンニクリミットブレイクは文面から卑怯だろwwwww

70以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/18(金) 20:41:49 ID:Itku9HE6
天使「ありゃ、おかえりなさい男くん。自分が思ってたより随分お早い帰宅ですねえ」

男「そうか? まぁ道草もほどほどにするよう念押しされた事もあったし、叱られずに済むからな」

男(玄関に幼馴染の靴はなかった故に今晩の通い妻はお休みなのだろう。また無理に動かれるよりは安心だったが、顔を拝めないのは残念である)

天使「えー そうじゃなくって、サツの世話になってたんじゃなかったんですか?」

男「……はぁ? どうして人畜無害が取り柄の俺が警察にだよ、天使ちゃん」

天使「だってボスが。ただならぬ様相で帰って来たと思いきや、ヤバいとか、お兄ちゃんも巻き込まれた〜とか!」

天使「んもー、マジお騒がせ家族ですよねぇ。自分という清涼剤がいなかったらガタガタ崩壊ですよ! 男くん」

男(妹、アイツか。部室棟放火事件のショックはまだ響いていそうな予感はしていたが。本人の自覚なしに発生し、疑われたのだ。気持ち良くはなかろう)

男(天使ちゃん曰く、帰宅後は自室に篭もったまま出て来ようとしないそうだ。畜生ロリ天は心配を他所に、先程までは幼馴染宅で夕飯を頂いていたらしい)

天使「自分そんな冷たくねーんですがっ! 心配してますけど、そっとしておくべきかと思ったのですよ」

男「賢いじゃないか! 天使ちゃんが無理に絡んでいったら逆撫でしかねないしな」

天使「自分が無神経だって言いたいんですか! ケンカ上等ー!」ブンブンブンッ

男「怒るなって。風呂はあっちで入らせてもらったんだろ、歯磨きして寝なさい」

天使「やだっ! 録画したドラマの再放送消化するんです、ヒューヒューだよ!!」

男「強引に詰め込んできたな、お前」

71以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/18(金) 21:29:39 ID:Itku9HE6
男「……やれやれ、面倒だからシャワーで済ませるかしら」

男(空の湯船の中を覗くだけで幼馴染のありがたみを再確認させられる。不自由なかった生活に揺らぎが生じると、怠惰にいられたのも陰の支えあってこそだったのだな、と)

男(ふと、鏡越しにシャンプーの泡まみれになった自分と目があってしまった。酷い目付きだ。無意識に眉間へ皺を寄せて悪人面を作っている)

男「全っ然気楽なんかじゃねーよ。まったく……」

男(週末の夜を迎える気分は昔から高揚としたものだが、明日は明日でシリアスなイベントがきっと約束されているのだろう。憂鬱とは違った心労が肩にクる)

男「あの頃はもっと明日を楽しみに出来てたはずなんだがな。あの子と会って、別の子が待っていて、トキメキ連発よ……」

男「今の俺は、アレだ……」

男「物語を回す為にある歯車の一つみたいな……」

男(または駒とも呼べる。型に嵌まらない、妥協を許さなかったラブコメ主人公の日々が懐かしい)

男(この俺がいる“創造の世界”は形容しがたい脅威にじわじわ浸食されていき、ゆっくり内側から崩壊を進めているに違いない。神は死んだ、そして――――)

生徒会長『――――廃病院とはまた変わっているな。大体、放棄された建物は立ち入り禁止じゃないか?』

男の娘『じ、じつはちょっと前にみんなで肝試し目的で中に入っちゃってたりするん、ですけど……』

先輩『えー! なにそれ面白そうっ、どうしてわたしも誘ってくれなかったかな〜!?』

男「話、早速脱線しそうになってますよ。明日のことをみんなで考えるんじゃなかったんですか」

男(その為のスカイプに備わったグループ通話を活用した作戦会議なのである。PCちゃん、キリキリ唸る)

72以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/18(金) 22:11:21 ID:Itku9HE6
転校生『あんたは随分真面目なのね?』

男「いつも真面目で、更に真面目だ。黒服さんも悪戯に俺たちに時間を割いてくれたんじゃない。気合い入れて挑まなきゃウソじゃねーか、転校生」

不良女『いきなり熱血キャラかよ、つーか オカルト研がまたあそこに行きたがった理由とか何なのよ?』

先輩『聞けなかったんだよねぇ〜、男くん』

男「というか黒服さん自身も何故なのか知らなかったと思いますね。今日だってオカルト研が突然立てた日程に振り回されてたんですから」

不良女『うあぁ〜!! ほんと意味分かんないヤツだなっ、アイツ! 何したいのかさっぱりだよ……』

生徒会長『それを本人の口から聞き出すのが当面の目的だったろう。明日の予定時刻も把握していることだ。待ち伏せてやろう』

男の娘『あっ、僕は大人数だと返って話も聞けそうにないって思うけど……あの性格だし』

転校生『私も男の娘くんと同意見かも。問い質すのを目的に近づけば、オカルト研さん、きっとすぐ引っ込んじゃう』

先輩『いっしょに遊びに行こうって誘ってみたら違うんじゃない?』

不良女『それ、男か転校生ぐらいにしかできねーっての……やっぱりアイツ相手はタイマンが一番だと思うな、あたし』

男(オカルト研というキャラを考えればこその結論だろう。多勢で迫るなど以ての外、かといって 俺や転校生が詰め寄ることで上手く事を運べるかも疑問だ)

生徒会長『難しい問題だな……厄介ではあるが、ここは私や先輩ちゃんが出しゃばるより男くんたちに』

不良女『それじゃあ振り出しに戻っただけっしょ、カイチョー。あー、こんなのどうしようもないんじゃ……』

男の娘『えっと、振り回されるぐらいなら、僕たちが振り回す方になれば良いんじゃないかな?』

73以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/18(金) 22:49:49 ID:Itku9HE6
男(皆が頭を捻らせた中、沈黙を破ったのは意外な人物。モニターの前でどんなキョトン顔をさせているのだろうと胸弾ませたのは、まぁ俺だけだ、恐らく)

先輩『ほー逆転の発想じゃん。具体的には何か案とかあっちゃうのかな、男の娘くんや?』

男の娘『えっ、あ、ありません……だけど、オカルト研さんの興味を引くのが一番なんですよね。そしたらと思って!』

不良女『簡単に言ってくれてるけど方法が思い付かないんじゃ意味ねーの。興味っていうか、その……何つーの?』

転校生『それで合ってる、男の娘くん間違ってないわよ。まずはオカルト研さんの気を引かせてあげないと始まらないのよね』

転校生『だって面と向かって私たち言われちゃったんだから。顔も合わせたくない、関わるつもりなんてないって』

不良女『……へぇ、そうだっけ? あぁ 胸糞悪いナー胸糞悪いナー!』

男の娘『ねぇ、男ならこんな時どうしてみようって思う?』

『…………』

先輩『…………寝落ちかも?』

不良女『便所に行ってるとかのオチもあるから三分ぐらい待っててやろうぜ。別にアイツ抜きじゃ何も話合えないあたしらでもないんだし』

生徒会長『そうだな。彼が懸命に背負う負担を軽減できれば良いと考えた私たち自身の行動でもあるのだから』

先輩『うん! わたしも頑張って知恵絞っちゃうからねっ! おー!』

男(……黙って見守るだけ、無駄に男くん上げされて小っ恥ずかしいだけだとよく分かった美少女連合会話をお送りしている)

男(興味本位にマイクをミュートにしてみればご覧の有様よ)

74以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/20(日) 19:56:37 ID:sjz2XKQI
男(あと少しぐらい。もう少しこの俺抜きの会話を聞いてみたい。美少女たちだって人間同様生きているリアルだ。虚構ではない)

男(どうか当たり前の実感を与えてくれ、俺に――――――)


――――――――

――――――

―――


男「――――――あぁう…………おいマジか」

男(体が急が冷え込みを訴え、寝惚け眼を擦りながら数秒にして悟った。口元が涎で気持ちが悪いし、PCのキーボードを濡らしている)

男(首をパキポキ鳴らしながら前を見ると、画面に残されたままのグループ通話画面は全員のログアウトを報せており、時刻は半端に深夜まで進んでいた。これには苦笑い)

男「シャワー先に浴びてて正解だったかもしれないな。本気で眠りこけてたとか、ネタだぞ」

男(さぁ、愛する布団に潜って夢の続きを。と、洒落込む前に喉の渇きには勝てなかった。部屋を出て台所まで降りてくれば、照明とテレビの電源を付けっぱなしでソファーに沈む天使ちゃんである)

天使「ねむーい……ねーむーいー……」スヤァ

男「いや、既に行動移しちゃってるから」

男「無理に起こすのも可哀想か。おぉ、伊達にロリってないな。ていうか体重リンゴ5個分ぐらいしかないんじゃないか、コイツ?」

マミタス「なーん」

75以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/20(日) 20:24:26 ID:sjz2XKQI
男「出たな猫畜生、さては妹に部屋に入れてもらえなかったんだろ?」

マミタス「にゃん」

男(マミ公が、いくら雌といえど動物と意思疎通を取れる気はしないな。リンと首輪に付いた鈴を鳴らして現れた彼女は、何かウロウロ俺を中心に回っている)

男「落ち着け。お前の主だって一人になりたい時ぐらいあるんだろ」

マミタス「ふーーん」

男(時たまに人恋しさを感じたマミタスは嫌っている分類の俺へも脛を擦って甘えてきた事があった。抱きかかえようとした瞬間痛いしっぺを受けるまでがテンプレだ)

男(とりあえず、そんな一時の不安をここで紛らわせようとしているのかもしれない。着いて歩く彼女を特に相手もせず、天使ちゃんを両親の部屋へ寝かせて自室へ帰ろうとした、が)

マミタス「ふーーーーん」

男「何だよエサ貰ってないのか? いつものカリカリなら皿にまだ残ってたぞ、マミタス……」

マミタス「なーん!」

男「そうかい、猫じゃあ付き合い切れん」

マミタス「なーん!!」

男(すまんな、マミタス。可愛がってやりたい気持ちはあるが気分が乗らない。まずは体に残った疲労を回復するのが最優先なのだよ)

男「散歩なら明日の朝からにしてくれ。いつまでも玄関で待ってたって開けないんだぜ、俺って」

マミタス「んにゃあ〜〜〜〜〜〜……」

76以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/20(日) 20:58:21 ID:sjz2XKQI
男(部屋に入ってしまえば絶えず騒いでいたマミタスも黙りこんでしまった。助かる、これからという時に五月蠅く鳴かれても迷惑だろう、ご近所にも)

男(布団の上に転がりながら吊るされた紐を一、二回ほど引っ張ってしまえば最高のステージが完成してしまう。死ぬほど疲れているんだ……起こさないでくれよ……)


…………ガチャガチャ、ガチャ


男(………………何の音?)

男(静まり返ったあとは嫌に物音へ過敏となってしまいがちだ。聴覚が数倍も冴え渡った気にすらなる。俺は野生動物かよ)

男(されども蓄積した疲労は案ずるなと穏やかな眠りへ誘ってくる。きっと妹か天使ちゃんがトイレへ立ったのだろうと適当な安心を自分の中で納得させて)


ギィ……ギシ、ギシ、ギシッ、ギシ……


男(ほら、心配しなくともトイレだったじゃないか。恐らく妹だったな。誰よりも怖がりのアイツの事だ、恐る恐る脅えながら階段を上っている真っ最中であろう)

男(突然出て行って驚かせてやろうか? なんて、不安を抱えた兄妹へ対する仕打ちではない。近い内時間を作って彼女のケアもしてあげるべきだな。ところで)

男(用足し後に水も流せないほど恐怖なのか? 家の中が)


シ……ギシ……ギシ、ぃ…………ギシギシ、ギシ…………ギシ


男(俺の部屋の前で、音はぴたり止まってしまっていた)


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