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みんなで文才晒そうぜ part2

428以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/07(火) 19:14:41 ID:c2Df7tbg
>>427
いいんじゃね
細かいことをいうなら
>もしも、この現象を擬人化できたら、思いっきりぶん殴ってやりたいくらいに大嫌いだ。
ここは最初の読点いらないだろ

>初めてできた彼女との初デート。
ここは文章と繋がるように少し変えた方がいいんじゃないか

読みやすい文体だし個人的にはさほど問題はない気がする

429以下、名無しが深夜にお送りします:2015/07/07(火) 19:15:49 ID:c2Df7tbg
前の文章と繋がるように、ね

430以下、名無しが深夜にお送りします:2015/08/26(水) 10:32:02 ID:Ns7nnJnk
あげ
あと、お題変えよか
下1

431以下、名無しが深夜にお送りします:2015/08/26(水) 12:14:14 ID:IAcnbxd.
金魚

432以下、名無しが深夜にお送りします:2015/08/27(木) 21:46:47 ID:jXlCzFgA
 子供の頃に見た金魚は、もう少しキラキラ輝いていたように思えた。
 こんなにもよどんだ子供用プールの中で、せわしなく動き回ってたっけ。
 一匹一匹がそれぞれ個性を光らせて、いつすくわれるのか……いつ救われるのかと、そんな風に人間達を見ていたような記憶が有るんだけどな。
 僕の記憶が曖昧なのか。
「ようあんちゃん、一回二百円だよ」
 店のおじさんにそう声を掛けられた。
 昔ならどうしていただろうか。
 母さんに「一回だけ」と懇願していただろうか。
 ……何でこんなにも魅力を感じないのだろう。
 もしかしたら、よどんでいるのは僕の心なのかな。


 このスレは初めて訪れました。
 宜しくお願いします。

433以下、名無しが深夜にお送りします:2015/08/28(金) 02:45:14 ID:QX3UT/aU
>>432
なかなかいいと思う
すれてしまった自分への苛立ちが見えるね
このスレだからこそ漢字をひらくこと無く使えばいいんじゃないだろうか
掬われる しかり 淀む しかり

434以下、名無しが深夜にお送りします:2015/08/28(金) 19:55:28 ID:ipJUGJ0w
むしろひらがなだからこそ小学生と現在の対比がわかりやすく見えるのかと思ったけど

435以下、名無しが深夜にお送りします:2015/08/29(土) 11:17:01 ID:pKuRXHJ2
>>432 です
 いろいろ助言をくださりありがとうございます。
 漢字に関しましては、あまり多いと、固くなってしまうのではと思いました。
 心の暗くなった青年の話なのですが、幼少期の回想を挟むとなると、どこか柔らかさを残しておきたかったので。
 漢字でも良かったですかね(笑)
「平仮名の方が何かここ落ち着きそう」みたいな軽いノリで書いたので、まさかそこがピックアップされるとは。

436以下、名無しが深夜にお送りします:2015/09/11(金) 19:59:46 ID:esPG1sHo
あげ
お題、書きやすいのでよろ
直下

437以下、名無しが深夜にお送りします:2015/09/11(金) 20:00:21 ID:esPG1sHo
あげてなかった。
お題下

438以下、名無しが深夜にお送りします:2015/09/11(金) 20:19:54 ID:TEeubCZ6
寂寞

439以下、名無しが深夜にお送りします:2015/09/18(金) 22:14:43 ID:o2aHWMoM
書いた方がいいかなぁ。
どうにも思いつかない。
誰かのを読みたいあげ

440以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/07(月) 22:39:41 ID:159KsLeg
 建物に足を踏み入れると、舞い散る埃が私を出迎えてくれた。淀んだ空気は新たに
侵入する者全てを拒むような、重苦しさと沈黙を長い間保ち続けていることを示していた。
 かつて、この建物は街の中心であり多くの人々が新たな出会いを待ち、出迎えるための
場所であった。しかし、次々に立ち並んでいく建物の中に埋もれるが如く、街の中心から
遠ざかっていき、やがて誰からも見向きされなくなったのだ。
 私がここを訪れたのは、単なる気紛れと偶然に過ぎなかった。たまたま遠出をして、ぼうっと
周囲を見渡していた時に見掛けた。以前にも訪れたことのある建物を見つけて、思わず足を運んだ。
ただそれだけであった。だが郷愁の念にも近い感情を持って訪れた私を出迎えたのは、この重く
湿った空気だけである。
 あれほど賑わっていた場所が閑散としている様子は、誰もいなくなったこの場所同様に、私の心が
寂寞感に侵されるのは無理からぬことだった。

 私の足音だけが響く。これ以上ここにいるのは無意味なように思えた。けれど願望に近い想いを
抱いていた。街の中心から遠ざかったとはいえ、まだこの建物は歴史の中に埋もれていない。
まだ現存している。それはまだこの建物が街の中心となることが可能であるということだ。
 愚かしい思考であった。人々がこの場所を望んでいれば、そもそもここまで埋もれることは
なかったのだ。結局の所、過去はともかく現在では望まれていない場所であることの証左だ。
 それでも私は未来に託す。これから誰かが訪れることを信じて、私が訪れた証を記す。
これからこの建物はどうなるのだろうか。埋もれていくだけなのだろうか。
 きっとそれは、次に訪れる者の意思によって決定付けられるだろう。

441以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/20(日) 19:46:17 ID:wCI.8kAE
あげ
人いないね、このスレももう
簡単なお題よろしく、直下で

442以下、名無しが深夜にお送りします:2015/12/20(日) 23:53:11 ID:ezb59T/Y
「うさぎ」

443以下、名無しが深夜にお送りします:2016/02/01(月) 22:39:13 ID:qNmTHJjw
あげ

誰か書いてくれんかね
さすがに連続で書き込むのは気が引けるし、他の人の文章を読みたいものだ
他の人が書いた文章の感想や批評をしても構わないんだ
もっと気軽に参加、しよう!

444以下、名無しが深夜にお送りします:2016/02/02(火) 00:54:03 ID:ajqtJTxE
>>440
文章が妙に重苦しくてバタ臭いし、長々書いているわりには結局は「過去の遺物が未来において復活することを望む」
程度のことしか言っていない
すなわち、叙述の見事さもなければ全く思想や哲学もない面白みのない文章

上から目線でスマソ でもこれが正直な感想だわ

445以下、名無しが深夜にお送りします:2016/02/03(水) 22:12:13 ID:VkRoJde2
>>444
まさか感想がくるとはな。構わんというか、真っ当な感想くれるなら嬉しい限りよ
ただ、全体に隠された意図(というほど大げさではないが)に気付いてもらず残念な限りだ
もう少し軽い感じの文章にすれば、読みやすさから気付いてもらえたかもしれんが
意図に気付いていたなら……うん、精進します

446以下、名無しが深夜にお送りします:2016/02/03(水) 22:17:04 ID:VkRoJde2
1つのお題につき、1人しか書いてはならないルールはない
なのでどんどん気軽に投稿してもらいたい

お題は >>442 です
賑わって、深夜VIPの中心になるといいな

447以下、名無しが深夜にお送りします:2016/02/03(水) 22:50:58 ID:DVoPpn/M
>>445
>>444だ なるほど「この建物」っていうのはこのスレのことか
うまいこと書くなあ

まあ文章はもうちょっと軽いほうがいいと思う
英語をそのまま和訳したような文章だからくどい

448以下、名無しが深夜にお送りします:2016/02/04(木) 00:55:54 ID:JzE6BIps
>>440
おおー、気付かなかった、そう見ると中々内容がありますね

ss深夜なんだし、もっと夜を描写に入れたらもっと伝わり易いし、もっとそれっぽくなりそうですね
淀んだ空気は〜示していた:は和文英訳でもないし、もう少し自然な日本語にした方が良いのでは?
私がここを訪れたのは〜ただそれだけであった:かなり個人の感覚に依るけども、リズムが微妙かも。『だが〜』に余韻を持たせるのにも、文書全体にある程度緩急を付けるにももう少し短文にして句読点打たない方が良いかも
あれほど〜無理からぬことだった:主述が噛み合ってない、致命的だと思います
文語調なんだから「けれど」を「けれども」にしたほうがベターかな
後半部分、現在から語るならちゃんと現在に文末を揃えましょう、ノリと雰囲気で過去形混ぜちゃダメだと思う
「であった」「である」「であろう」「だ」「だった」「だろう」も統一しましょう
あと「湿った空気」とあるけど、どうして閑散としたスレッドが湿ったという印象になるのか良くわからない。どちらかというと乾いたイメージなんだけど

あと、無生物を主語にするの好きっぽいけど、まずはちゃんとした日本語で練習してからそういう文に移行しましょう!
全体として結構上手だと思うから頑張ってください

あ、ど素人なんで、真に受けないでね

449以下、名無しが深夜にお送りします:2016/02/04(木) 22:33:26 ID:mA.rClQw
思いは伝わるけど言われなきゃ分からん
というドドドド素人の感想です

450以下、名無しが深夜にお送りします:2016/02/04(木) 22:43:16 ID:Lz33n1nE
「うさぎ」

「うさぎごっこ!」と、彼女はいった。
うさぎごっこって何?と聞くと、彼女はそれには答えずぴょーんぴょんと歌い出した。うさぎごっこがはじまった。
突拍子がないのはいつものことだ。この前だって道を歩いていたら急に郵便ポストと背比べを始めたくらいだ。
あれは傑作だった。
その時のことをぼんやり思い返している内に、歌にあわせた踊りが始まっていた。
踊りといってもやたらめったらに跳ねるだけで決まった形があるわけじゃない。
両手を耳の横にぴょこりと添えて前後左右に跳ねる、跳ねる。
とても楽しそうだ。いつにもまして常きげん。
なるほど、これがうさぎごっこ。
「ね、ね。いっしょにしよう?」
白い息と一緒にお誘いの言葉をうけるけれど、あいにくそこまで狂ってない。
断る言い訳をさがして視線を彷徨わせると、赤い自動販売機があった。
なにかあたたかいものでもいる? 買ってくるよ。
うん、じゃあニンジン!
ニンジンか、ニンジン。あるかなあ?
一人で跳ねる彼女をうしろに財布の小銭を漁ると、指先に冷たくずっしりした感触があった。ニンジンがあった。
はい、ニンジン、と振り向いて差し出すと白くて長い耳が2つ揺れていた。
どうもその耳は彼女の頭から生えているようで、思わずぎゅっと握ると、彼女はひゅるひゅる縮んで小さくて白いうさぎになった。
耳を持ってぶら下げても大丈夫なのかと心配だったが、うさぎはそんなことおかまいなしにニンジンをもとめていた。
いいからニンジン、ニンジンくれよ。
そう言わんばかりにニンジンを凝視して、鼻をヒクつかせている。
口元にニンジンをはこんでやると小動物らしく一心不乱にかじりはじめた。
ニンジンうまいぜ、ニンジン。
あんまり美味しそうだったので反対側の端をかじると、ニンジンはパチンと弾けて消えてしまった。
後はビックリした顔のうさぎと僕がいるばかり。

451(1/2):2016/02/05(金) 00:35:40 ID:zec.FbLA
 教室の窓から夕暮れの校庭を見下ろすと、もう人影は少ない。皆長い影をひいて思い思いに動いている。楕円のトラックをなぞる影を見つめるともなく追いかけていると、下校のチャイムが鳴った。結局進まなかった課題をカバンにしまって伸びをする。チャイムを聞いた校庭の人達も部室棟へ引き上げていく。
 その中にひとつだけ逆行する影があった。その影は用具入れから校庭の真ん中を横切ってまっすぐに飼育小屋を目指している。気になってよく見ると大きなスコップを抱えていた。

 鞄を持ち、コートを羽織る。階段を駆け下りて、スニーカーを履き、いそぎ足で飼育小屋へ向かう。校庭の一番隅にあるそこに行くのは久しぶりのことだった。先ほどの人影はもう見えなかったが、居る場所は分かっていた。
 独特の臭いがする飼育小屋の角を曲がると土を掘る音が聞こえた。その音は単調でいっそ機械的なほどに一定のリズムを刻んでいる。もうひとつ角を曲がり、裏へ回ると彼は視線を上げてちょっと目を見開いてからゆっくり挨拶をした。その間も土を掘る手は止まらない。

 「また、来たんだね」
 「そうみたいね」
 「うん」

 彼が土を掘っているのを見るのは二回目だった。
 一度目は随分動転したものだけれど、今日は不思議と落ち着いていた。彼が前と変わらないせいかもしれない。スコップを刺して、踏んで、起こす。持ち上げるときに骨ばった手指がわずかに白くなるのもまったく同じだった。

 「なんていうの?」
 「カフェオレ」
 「変な名前」
 「そうだね」

 それから少し会話が止まり、スコップの音だけが響いた。僕はスコップの先や足元やらをあてどなく見て、ただ呆けていた。夕暮れは深まって、空気が夜の冷たさをはらんできた。普段から日の当たらない飼育小屋の裏はますます暗い。
 しばらくして沈黙に飽き、次の言葉を探していると、一際大きな音のあとに、音がやんだ。スコップは穴のわきに突き立って、厳然とそびえている。穴は脛が半分うまるほどになって、掘り起こした土はちょっとした盛り上がりをみせていた。
 彼は穴から二歩離れ、出来栄えを確かめるように穴を眺めていた。

452(2/2):2016/02/05(金) 00:36:35 ID:zec.FbLA
 「できた?」
 「まだもうちょっと」
 「手伝うよ」
 「制服、汚れるよ」
 「いいよ」

 彼がつい先程まで握っていたスコップの柄は驚くほど冷えていた。思わず彼の指先をみると暗がりの中でいっそう白く浮き上がっている。その白さは確かに鉄の冷たさを思わせた。
 スコップの先を穴の底に突き刺すと、思ったよりも大きく、歪な音がした。それは彼の音とは根本から違い、この空間にとって明らかな異物だった。ただそれだけで僕は、彼の作っていた精緻な構造物を壊してしまったような気分になってしまった。
 恐る恐る彼の様子をみると、しかし、彼はまったく頓着することなくしゃがみこんで、ただ彼の足元だけを愛でている。
 僕はすっかりやけになって、何度もスコップの先を穴に叩きつけ、十分にほぐれると力まかせに底の土を放り出す。決まった動きもなく、感情に任せ、猥雑にただスコップを使った。僕はただ穴を掘ることに熱中した。日は沈んだというのに、スコップの先は不思議とよく見え、目一杯身体を動かしているのに、身体は芯まで冷えていく。
 いつしか彼は僕の隣に立ってなんども繰り返し同じ言葉を言う。

 「深く」
 「もっと深くだよ」

 穴の底に星が映り、僕達の足元は一層黒々とした暗さで横たわっている。

453以下、名無しが深夜にお送りします:2016/02/21(日) 14:42:49 ID:va1qHbnc
>>450
文章に息継ぎがなくて息苦しい感じ

>>451
重苦しいしよくわからん

454以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/22(火) 23:12:20 ID:CKDxuSL6
上げ
ついでにお題変えよう
頼む>>455

455以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/22(火) 23:18:14 ID:emWt4f8Y
中華料理

456以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/23(水) 16:30:12 ID:iqh.4PUY
一ヶ月も放置されたスレ上げんなよ
荒らしかよ

457以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/23(水) 23:43:35 ID:AkyO7F.E
>>456
このスレはこのぐらいで通常進行よ
半年ROMれ

458以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/24(木) 07:52:39 ID:mC43VlLQ
半年ROMっても100レス行かないんだよなあ…

459(1/2):2016/08/22(月) 20:53:02 ID:IbNCNskU
何か月も放置されたスレに初投下です。よろしくお願いします。


「中華料理」


 ある昼間、テレビの中で炎が上がる。蒸し器が中華鍋の上で炎上していた。
 どうやらシュウマイを作ろうとしていたらしい。中華鍋の中身は水ではなく油のようだが。

「そりゃ燃えるよ」

 画面では水をかけて消火しようとしたらしく、大きく火柱が上がった。さすがにスタッフが濡れ布巾で消火にかかる。
 当然完成品は表面が黒焦げで中身は半生という代物。友人による味見があったがどうやら味付けの段階で醤油を混ぜすぎたらしく苦さと塩辛さで涙目になっていた。

 馬鹿なことをしているなと思う反面、料理をしない人間が作り方の知らない料理を作るとどうなるかと考えるとこうなるのが現実なのだろうと納得もする。
 そして自分とて料理が得意とは言えない。作り方の知らない料理など山ほどある。もし自分がこんな場面に挑戦することになったなら、どうなるのだろうか。
 過去の自分を、子供のころ母に見栄を張り料理に挑戦した時のことを思い返す。

460(2/2):2016/08/22(月) 20:53:34 ID:IbNCNskU
 冷蔵庫のキュウリとネギとキャベツ、それに豚バラ肉とニンニク、冷凍庫に眠る切り餅がその時の自分が選んだ食材だった。
 余っていた調味料の中から適当に選び豆板醤と醤油を混ぜて味を見た。酢で割って餃子のタレに使うと美味しそうな味になったのを覚えている。

 キュウリを適当に乱切りに、ネギを斜め切りに、キャベツをざく切りにする。肉も一口大に切り、ニンニクを微塵切りにした。学校で教わった切り方を試してみたかったから。
 母親の動作を思い出しながらフライパンに油を引きニンニクを炒める、肉を炒める、ネギを入れ、キャベツを入れ、キュウリを入れる。先ほど混ぜた豆板醤と醤油を混ぜ、コショウも振りかけ炒め続ける。

 適当に火が通ったと思った段階で大皿に盛りつけた。味見もしなかった。切り餅を焼いて、その切り餅も膨らみすぎて金網にへばり付いていた。

「美味しく、ない」

 当然見よう見まねとうろ覚えと適当の三拍子で作られ出来上がった炒め物は別に美味しいわけでもなかった。切り餅を焼いている間に少し冷めたことも無関係ではなかったかもしれない。
 そして幼い自分には自分で作っておいてこの料理が何に分類されるのかがわからなかった。そして今でもわからない。

 あの時の自分とあの番組で失敗していた大学生の違いは何だろう。お題の有無? 知識の有無? 年齢の有無? 料理経験の有無? センスの有無? 観測者の有無?


 いつの間にか番組のコーナーは終わっていた。出演者たちがプロの作った美味しそうなシュウマイを食べている。
 それを見て思う。きっと、違いなどないのだろう。失敗は失敗だ。その程度が大きく、面白いが故に番組に採用された。
 あの時に自分が作った料理は、食べられなくはなかった。子供の微笑ましい失敗ではあったのかもしれない。だが面白くはない。そんな失敗料理。

 美味しい料理。今の世の中には溢れすぎているほどだろう。店が乱立し、料理作りを学ぶ機会を人々から奪うほどに。
 だが、きっとそれよりも前から世の中には美味しい料理は溢れていたはずだ。いつの時代も母は子の為に美味しい料理を作ってきたのだから。あの時、失敗料理に苦笑いしながらも頭を撫でてくれた母のように。次の日、大好物の餃子を作ってくれた母のように。

 電話が鳴る。ディスプレイに表示されていた登録名は――

「もしもし、え? 大丈夫、そろそろ実家が恋しくなってきたとこだったから」

461以下、名無しが深夜にお送りします:2016/08/22(月) 23:49:08 ID:D4sJa1dw
蝉の鳴き声、応援席からの応援、様々な音が入り交じり、暑い場内を焦がす。
誰がどう見ても熱く、そして拮抗した試合。お互いに譲れない一進一退の攻防。
場内にいる様々な人の様々な想いを、太陽は容赦なく焼き尽くす。
永遠にも感じられた試合は、些細なミスでダムを壊すかのように決定的なものになってしまった。
僕たちは負けた。大学生活で、これが最後の試合になった。

その日の夜、僕たちは近所の中華料理へと足を運んだ。いつも試合の後は、何故か決まってこのお店に来る。
少し汚いが、活気の溢れる賑やかな店内を見回す。ふとカウンター席の奥に、大きな火柱が見えた。
大きな中華鍋を、片手で軽々と扱う料理人。一瞬の間に熱せられ、油により調理されていく食材達。
その混沌とした食材達は、昼間の僕たちの様だと思った。

「お前なに泣いてんだよ、そんなに腹減ったか?」

ああ、この頬を流れる温もりは涙のものだったのか。
意味も分からない得心をし、視線を厨房に戻すと、もう既に食材達は

「お待たせ致しました!ご注文の品です!」

462以下、名無しが深夜にお送りします:2016/09/14(水) 01:58:53 ID:9GdztmdY
私は昨今のグローバル社会に諸手を挙げて歓迎したい。さらに言えば、井戸端会議ですら世界情勢と野菜の生産地を話題にするこの時代に感謝したい。
新装開店である。
私は古いのれんをわざわざ一度掛け直してから、開店時間に取り外した。常連たちのまばらな拍手が心地良い。
古いのれんは「中華料理屋」。新しいのれんは「台湾料理屋」だ。
ここに至るまで四十年。
先代の親父が日本に来たとき、この国では"日本人の口に合う"中華料理がブームだった。
四川も北京も広東も台北もひとまとめにして「中華」と呼ばれていた。
台湾人の味覚は日本人と似ているから、先代も「中華の和風アレンジ料理」を次々に生み出した。
以来、親子二代に渡り、お客様の求める油ぎった炒飯を作ってきた。
山椒と七味で劇薬のようになった麻婆豆腐をお出ししてきたのだ。
「今日からは、違う!」
台湾は海沿いの国である。料理の目玉と言えば海産物なのだ。
台湾の気候は夏夏夏冬である。辛味で無理やり血行を上げる必要はない。
ああ、さらば乾燥地帯。湿度と台風にまみれる我が祖国の味は、日本人のメジャー・ディナーとして一躍羽ばたくであろう!
「台湾料理になると、どうなるんだ」常連が問う。
「日本人好みの味になりますよ」
「じゃあ、今までと変わらないってことか」
その言葉が耳に残る。我々は日本人の舌に合う味を作るために苦心した。
そのために元の料理を根本から変えたこともある。
「もう炒飯、作ってくれないのかい」
私は少し考えてから、答えた。
「炒飯ではなく、台湾炒飯なら」
「なにが違うんだ」
「海老が入ってます」

463以下、名無しが深夜にお送りします:2016/09/14(水) 17:29:32 ID:E/O2.bko
KANSOU貼ります
>>450
ひたすらかわいいぜ…な文章
かわいいぜ…
主観になってる人物の感情が読み取れないので感情移入し辛いところがある
一人称が僕であることすら最後まで読まないと出てこないので余計にそう思ってしまった

>>451
意図する所はいまいち読み取れなかったけど
>「彼がつい先程まで握っていたスコップの柄は〜鉄の冷たさを思わせた。」
この文は質感が表現されててステキ
とりあえず最初の一行からして「人影」、「長い影」、「トラックをなぞる影」と似たような言葉が続いて冗長な印象を感じる
>「一際大きな音のあとに、音がやんだ。」
ここも同じく

464以下、名無しが深夜にお送りします:2016/09/14(水) 17:54:06 ID:E/O2.bko
>>459
文章も展開も丁寧という印象
料理フェイズのテンポがいいね
しかし回想と現在の切り替えがやや弱い気もする
あとは展開の話になるけど、不味そうな調理描写でジッサイマズイというのも文章に起伏がなくなってしまう
当時はそれでもベストを尽くしたのだろうから
美味そうな描写をして、一口食べてみたら泡を吹いた、ぐらいのほうがメリハリがつくかもしれない
>>461
短いけどやりたいことは伝わる、いい文章じゃないかしら
どうしても最後がぶつきりになっているように感じるので
炎天下のグランドと同一視したそれを、食べたのか食べなかったのかオチまでしっかり描写するだけで作品になると思う

465以下、名無しが深夜にお送りします:2016/09/15(木) 00:26:58 ID:iyTe1SSQ
ODAIください↓

466以下、名無しが深夜にお送りします:2016/09/15(木) 00:33:58 ID:QKJCsq.A
>>464
感想ありがとうございます。
次のお題の時はメリハリ意識してパンチのきいた物が書けるよう努力します。

467以下、名無しが深夜にお送りします:2016/09/15(木) 00:37:47 ID:QKJCsq.A
すみませんお題踏みました。

再募集でないなら「浮気」でお願いします。

468以下、名無しが深夜にお送りします:2016/09/15(木) 11:53:14 ID:sqTPwq0A
>>462
店長の意気込みに対して、常連さんの「今までと変わらないってことか」という台詞との食い違いに引っ掛かりを覚えたんだが
最後のオチに「いやそれ殆ど変わらないし」とツッコんでしまって更にモヤっとした
うまい

台湾料理を食べた常連に「あまり変わってないように思えるけど、何が変わったんだい」と言わせるのも微妙な後味の悪さが増してより効果的かもしれない

469以下、名無しが深夜にお送りします:2016/09/26(月) 00:43:57 ID:c/HX7Yog
 二人きりの放課後の教室で突然に「好きだよ」なんて言われたら、誰だって最初は戸惑うに違いない。
 クラスメイトという繋がり以外で、文芸部の中でも日陰役の私と運動部のエースの彼とに、接点なんてなかった。
「昼休みによく本を読んでるみたいだけどさ、いつも表紙が違うよね。なんだか大きくなってるし」
 机を挟んで喋る彼の目が私をまっすぐに見つめてくる。
 緊張とか恥ずかしさとか生きていることに対する申し訳なさとかがない交ぜになって、私にできたことは震えた呼吸すらも喉に突っかからせた不器用な相槌くらいだった。
 ろくな会話もできなくて、そのうえ顔を俯かせて机の表面のみに視線を向ける。
 私の行き来する視線が鉋(かんな)だったら、机なんてぺらぺらに削り取られていただろう。
「俺と付き合ってみないかな」
 彼が机に身を乗り出した、衣擦れの音がした。
なにかに驚いて動きを止める猫のように、私の体も瞬間的に強張って縮こまってしまう。
「あ……そ、わ、わたし……す、す……」
 頭の中では毛糸でセーターを編むように伝えたい気持ちがまとまっているのに、挙句の果てに口からは出る言葉は裁断機にかけられて、まるでひじきみたいになっていた。
「はい」のたった一言も返せないことが無性に情けなく思えてきて、目の奥からじわりと熱いものが溢れてきた。
 彼を遠くから眺めているのを隠したくなくて、学校に持ってくる本をお手軽な文庫本から、ちょっと重いけど顔を隠しやすい単行本に変えることまでした。その単行本を強く抱きしめて、泣くのだけは必死になって我慢する。
 彼にこんな醜態を晒し続けるくらいなら、付き合えなくなってもいいからすぐにでもこの場から逃げ出したい。
 それでまた彼との間に国境線が敷かれて、いつも通りに、繁栄している隣の国の王子様を覗き見る日々に帰るんだ。
 それが私にはお似合いなんだ。
 自棄になった自己嫌悪でもっと強く本を抱きしめると、急に本が反発して体から離れようとした。
「本が好きなのは知ってるけどさ。さすがに会話中にも抱きしめられると妬いちゃうよ」
 男子の力は想像以上に強くて、いとも簡単に私から引き抜いてしまった。
本を追いかけようとして咄嗟に動かした私の視線は、彼の笑顔と鉢合わせて止まる。
 彼が頭の上に本を掲げて言った。
「本が一番でいいからさ、間男のつもりで俺と遊んでみようよ」
 なんの悪もない提案に、私は口の中に溜まった唾液を飲み込んでから、頭を弾かれた赤べこみたく小刻みに何度も頷き返した。

470以下、名無しが深夜にお送りします:2016/10/06(木) 01:27:06 ID:nJz7/nJU
>>469
結構好きな雰囲気。ニヤニヤしながら読めた。
ただ接点がないって明言されてるけど男側の惚れた理由が気になる。
あと16行目のは「隠したくなくて」で合ってるのか「隠したくなって」なのか。

471以下、名無しが深夜にお送りします:2016/10/08(土) 21:31:04 ID:vhPeimec
>>469
好き
長編で読みたいね

472以下、名無しが深夜にお送りします:2016/10/09(日) 19:50:14 ID:TzO5eZL6
賑わう必要はない
アイディア枯渇系SS難民のために毎週お題を出せ

473以下、名無しが深夜にお送りします:2016/10/09(日) 20:25:22 ID:EC7W8T2I
お題サイトググるとか
酒場か休憩所で題募集すれば良いんじゃね

474以下、名無しが深夜にお送りします:2016/10/14(金) 08:26:38 ID:Vn/ZsEAE
過疎スレに毎週を求めるのは酷
お題↓

475以下、名無しが深夜にお送りします:2016/10/14(金) 12:46:07 ID:5CPomqRA
食欲の秋って事で、食レポ

476以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/02(水) 01:12:25 ID:BXQii2m6
お題↓

477以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/02(水) 01:52:06 ID:jfpskPVM
1ヶ月で見切り付けるのは早過ぎるだろ

引き続き食レポ

478以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/05(土) 01:43:28 ID:ctosQtfg
秋の終わりの温度を連れて帰ってきた妹はせっせと手をこすり合わせながら、テーブルに置かれたラーメンに目を輝かせた。
「食べたほうが早くあったまるよ」と教えてあげると、光明を得たりと目を見開いて箸立てから自分の箸を取り出した。

「にーちん、なると。なると入れたの珍しい。めんまもある。お店のラーメンみたい。すごいね、にーちん」

即席ラーメンなのにここまで嬉しそうにされると、なんだか騙しているみたいで逆に申し訳なくなる。
料理の腕を自慢するのは嘘くさく、かといって謙遜するのもずるい気がして無難にありがとうと答えておいた。
好き嫌いのない妹は料理を出せばなんでもおいしそうに食べてくれるし、実際に何度もおいしいと言ってくれる。

「そのラーメンの何が美味しい」

いつも通りのやり取りは、毎回決まって何が美味しいかから始まる。
妹はどんぶりから顔を上げると、ぱちぱちと瞬きをしてから箸をおいて目をつむった。

「なんだろうね。でもおいしいの」

問いかけにわざと眉根にしわを作って、難しそうな声を演技する。

「麺はつるつる食べれてぱくぱくで、おいしいの。スープもごくごく飲めておいしいの」

どこでそう覚えたのか、妹にとって腕組みをしながら話すのが一番評論家らしいポーズとのことだった。

「めんまもなるともおいしくて、どうしようもない」

今回は「どうしようもない」ときた。思わず噴き出しそうになるのを抑え込み、僕もそうだねと同意する。
妹の総評は独特で、まるで誘導をかけられているのかのごとく食事のたびに聞いてしまうのだ。

「にーちんが作ってくれる料理ってなんだかいつもどうしようもないの」

いくら楽しそうな笑顔を見せられても、いつもどうしようもないと言われると、さすがに苦笑しかできなかった。

479以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/05(土) 01:50:18 ID:9aZeMTP2
読みやすくて良い文章だな、妹可愛い

メンマとナルトってまた微妙なもんをチョイスしたなとは思ったけど

480以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/05(土) 13:45:44 ID:ChLboO8g
これは可愛い

481以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/09(水) 10:07:11 ID:UPqL.lM2
お題↓

482以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/09(水) 15:29:37 ID:mzUR/icQ
カイロ

483以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/10(木) 02:18:41 ID:.2mWMBL.
操舵室の扉が勢いよく開くと寒さに身を震わせた大男が駆け込んできた。

「ういー、寒い寒い。こんな時期に五分も甲板に出てたら死んじまうわ」

これまでも再三の注意を受けてもなお、大男は音を立てて愛船の扉を乱暴に閉めてくれた。
ただでさえ気が立っている中での無神経な行動に、考えるよりも先に舌打ちが鳴る。

「いくら聞かせても治らないなら、次は海に蹴落としてやるからな」
「怖い声だすなよ。買ったばかりの船なんだろ。ちょっと強く閉めたくらいじゃ壊れねえって」

なだめるつもりではなく、この大男は本気でそう思っているから質が悪い。
新品だからこそ丁寧に扱うというごくごく当たり前の感覚なんて、体に張りつく雪の一片ほども備わっていないらしい。
いくら会社の都合上とは言え、雪が吹き荒ぶ極寒の航路。
本人への説明はおろか事前通達もなしに決定事項として振り分けるとは、つくづく頭のイカレタ上司だと思う。
しかもその上司は別の船に乗って南国の穏やかな海を、しかも緩やかな期日でバカンス気分も半分に
仕事をしていると思うと、殺意なんていくらでも湧いて出てくるものだった。

「こちとらプライベート用の船として買ってんだぞ。手当は納得いく分が出んだろうな、ああ?」
「俺だって書類上は昨日から有給取ってんだよ。我慢が必要な世界と承知の上で入ったんだろ」

三日かけて積もり積もった苛立ちを大男にぶつけると、いかにも迷惑そうに手を振って答える。
憧れていた仕事だなんて他言したことはなかったけれど、しっかりと見抜かれているだけに反論はできなかった。
「そうだけどよ」と小声でぼやいて煙草に火をつける。情けないことしてんなと自虐的に思う。
煙を肺にたっぷりため込んでから吐き出すと、頭に上っていた血がゆっくりと全身に流れていくのを感じた。

「運び屋の真似がしたくて入ったわけじゃねえんだよ」
「それもお互い様だ。よく分からん機械の部品を運びたくて船乗りになったわけじゃない」

大男は持ち込んだ荷物の中から使い捨てのホッカイロを取り出すと、袋の端を握って豪快に振る。
所詮は使われる側ってのは振り回されるだけか、と考えていると、それも見透かしたように大男は鼻で笑った。

484長くなってすみません:2016/11/10(木) 16:22:17 ID:HXCQAHsk
「こちらからくじを一枚引いていただけますかー」

言われるがままに、黄色い箱の黒い亀裂に右腕を突っ込む。中でピンと立っている一枚にぶつかったので、それを引き抜く。見ると、なんか赤い。

「お、あたりですね〜。今すぐお持ちしましょうか?」

「あはい」

内容も知らずに条件反射で答えてしまう。
もちろん、ニコニコ顔の青年店員は頼まれたとおりにレジから出て景品を棚から探しにいくが、その間に自分の後ろには3人のパーティメンバーが連なる。まあ、面持ちは芳しくない。
2分くらい探してようやく見つけた店員からは「お待たせしてすみません」との一言をもらうが、肝心の賞が「ほかほカイロ2枚セット」という微妙なもので、数人待たせて探してもらった手前受け取らない訳にもいかずに

「こちらこそすみません」

と呟いてしまい、ニコニコの頭上に「?」のランプが灯った。そそくさとコンビニを出る。


立冬済みの夕空。寒くない訳ではないが、カイロを使うほどの移動距離ではない。とは思うもののレジ袋から一枚を破り出す。結局下駄箱の奥にでも置いて使用期限を過ぎるのがこういうものの末路なら、いろいろと合算すれば使った方が無駄にはならない。
そして結局、ほのぬくい程度の発熱量で家に着く。知ってた、と思いながら住み慣れた306号室へ階段を上ると、2階から3階にかけての踊り場で背後から「こんにちは」との挨拶。
見やると、202号室の夫婦の娘さんが居て、冷たいコンクリにへたれこんで寒そうにしていた。軽く話を聞くと、今日は両親が出かけることを忘れて家の鍵を置きっぱなしで学校に行ってしまったらしい。いつもはこんなに喋ったりしないのにと思っただが、見れば手元のスマホの画面が真っ暗だった。余程暇だったんだろうか。
二言三言の会話だったが、娘さんは俺が家に帰ろうとしていたのを思い出したのか、

「あ、寒いですよねごめんなさいどうぞおかえりくださいませ」

と震えた早口で違和感のある敬語を言われるものだから、思わず残りのカイロを出して「これ使って、じゃあ」とたかたか306号室へ上がった。ご近所さんからできる親切のベストアンサーだと、玄関前でガッツポーズするも。

「あれあったかくなるの遅いんだった」

熱々のカイロがダウンジャケットの右ポケットで無駄になっていた。踵を返し、もう一度下へ。あーかっこわるい。

485長くなってすみません:2016/11/10(木) 16:22:53 ID:HXCQAHsk
その後も何度か家と踊り場を往復し、冷え切った細い手にはやけどするくらいのカイロとココアを与え、彼女に暇だからと望まれたのでいくつか話をした。家にあげてくれないかとも言われたが、一人暮らしの男子大学生としての世間体を説くときゃははと笑われた。
バイトの時間が迫っていたので、家にあった適当なマンガを三冊持ち出して「つまんなかったら家のポストに突っ込んどいて」と言って階段を下りる。
後頭部あたりを目掛けて、声が飛んできた。

「ありがとねー。バイトがんばってね、カイロのお兄さーん」

だらしない顔してるのはなんとか自覚できたので、後ろ向きに手を振った。


二か月後、生活のルーティーンが揃わなかったか、彼女と再び会うこともなく202号室は空室になった。大家さんによれば、一軒家に引っ越したのだとか。
ふと彼女に貸した漫画を手に取ると、ちょうど中間のページに平たくなったカイロが挟まっていた。未使用の方か、と懐かしくなり、じろじろと眺めて裏っ返す。

マンガ 面白かったです
嫌じゃなければ続き 私の家のポストに入れてください

小さい字で、そう書いてあった。「うっわやっちゃった」、と呟いた。思わず深いため息が出た。なんならちょっと涙ぐんだ。気持ち悪、俺。
気落ちしているとインターホンが鳴る。半端な時間だからきっと勧誘系だとたかを括って「もしもし」とぶっきらぼうに答える。


「あ、え、いや、その……カイロの、お兄さん?」


思わず深いため息が出た。なんなら、ちょっと。

486以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/11(金) 00:02:48 ID:dXed6X5I
>>484-485
電車の中でチラ見。家に帰ってからもチラ見。
読み返せばいくらでも修正箇所が出てくるからそれだけでもったいない。
所々で1文の長さにこだわっているのか無駄に引き延ばしているような印象が……。
単語ひとつにまとめられるものはコンパクトに縮めてほしいな。
短くなった分を本来必要な状況描写で稼げるようになったら読みやすくなるんでね?

娘さんが可愛いし、メッセージに気付いてもらえなかったのが本当の本当にかわいそう。
最後に会えてよかったね、カイロの兄さん、娘さんに感謝だね、娘さんかわいい。
優しい緩い雰囲気が好きでした。
直せる部分が多いと思うから、だからこそ次のお題も楽しみよ。

487以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/11(金) 04:09:45 ID:wSYDnZAo
いつかここで投下してみたいんだが、
文才のある文が具体的にどういう文なのかすら分からない

488以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/11(金) 06:34:08 ID:kMqU5puA
文才があるかどうかじゃなくて今現在の文才を晒そうぜな場所だし
文才ゼロでも気にせず絶賛オールカモン

489以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/11(金) 14:31:28 ID:axnU0TMs
>>486
ありがとうございました いろいろすみません
今読み返すだけでもコンビニの下りが無駄すぎて恥ずかしくなります
ほんとすみません がんばります

490以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/13(日) 22:39:58 ID:p6burNx.
「はい、お手」

俺が靴を履き替え終わるのを見計らい、彼女が手を差し出した。
大好物の飴をせがむ孫娘のような愛おしい笑顔を見せながら……こいつ、今なんて言った。
掌を上に向けてこちらに伸びる手は、指をきれいに揃えていて行儀が正しい。
聞き間違いである可能性も無きにしもあらずと思い、彼女の顔に視線を移すと、
そちらもまた唇を尖らせて不思議そうに首を傾けた。
そんな顔をしたいのは、とてもとても俺の方なわけだけども。

「この手は何だ」
「お手」

なるほど。聞き間違いではない。スムーズな返答をありがとう。
理想的な意思疎通が行われていたとしても、これは決して会話ではない。
最近見たテレビでジャーナリストが『中国語は最も効率のいい言語だ』と
言っていたのを思い出したが、つまりはこういう会話術のことだろうか。
などと思考を巡らせた後、とりあえず俺は何も見聞きしていないことにして学校を出た。

無垢なくせして一人前に恥ずかしがり屋なところを本人が自覚するのはいつの日か。
クラスの女子から可愛い妹扱いされていると不機嫌に頬を膨らませるが、まあ妥当だろう。

「まだ鞄の中にホッカイロ残ってるだろ。それでも使ってろ」
「え、あ……ホッカイロは、友達に、あげて……」

言葉に詰まったときは嘘。隠し事にまったく向かない性格は、不本意だが愛らしい。

「お手」
「……いじわる」

悔しそうに唇を噛む彼女。この性格同士だから居心地がいいのかもしれないと思った。

491以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/16(水) 02:04:26 ID:7qbdZp3A
次いこか
解釈自由な下記やすいやつ
お題↓

492以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/16(水) 08:45:52 ID:Msxvk0hA
ウォーズマン

493以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/16(水) 17:10:08 ID:Hflw04lc
もう(キン肉マンしか)ないじゃん

494以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/16(水) 22:06:11 ID:i81SRcOE
版権ネタはさすがにな
書ける人が多数ってわけでもないだろし変えていいでしょ

お題↓

495以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/16(水) 22:16:07 ID:DhbGlPjs
月見

496以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/19(土) 22:40:12 ID:AU2pOmyU
sage

497以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/24(木) 00:56:46 ID:jnLSAqqc
今夜は月が一番明るく輝くらしい。ついでに大きく見えるとかなんとか。
そんなことを登校前にたまたま見ていたニュースで言っていたと教えても、
部長はまったく興味を示さず、ただキャンバスに鉛筆で線を描くだけだった。

巷の話題にはまったくと言っていいほどに疎く、自分のしたいことだけをする。
三年生たちが抜けても部員の新規獲得に乗り出さなかったのは、
若さが跳梁跋扈する騒々しい限りの学校の隅っこで居場所を作りたいが為だろう。

こんな不愛想を越えた無機質人間だから、当然、正式な部員は先輩一人だけ。
学校全体が黄色い声に包まれる四月の部活動見学会でさえ新入生たちが
唯一寄り付かなかったのだから、特有の陰気臭さはお墨付きと言えた。

美術部は外観からして暗い雰囲気を取り繕う気をまったく感じさせない。
だからとそれを開き直ったように逆手に取ることもしていない。
部室の入り口に『死語厳禁』の注意書きを張り付けている奇怪な行動は、
まるで新月でもないのに積極的に雲を纏いたがる捻くれた性格の月のようである。
不人気の改善よりも人払いに労力を惜しまない姿勢にはきっともぐらも目を見開く。

明りが夕日頼りとなる時間帯の部室は茜色で薄暗い。
蛍光灯を点けてはいけないなんて決まり事なんてないのに、
部長は何を考えてか頑なに人工的な光を疎むのだった。
まあ、部活動に取り組んでいるのは部長だけで、こっちはもっぱら部活動の見学のみ。
部長がいらないと言うのであれば、それに逆らう権利なんてこちらにはない。
それに部活動見学なんて口実で、部長を眺めることさえできれば他はどうでもよかった。

ちらりと時計を見る。もうすぐ日の入りの時間が来る。冬に入ってからの昼の短さは嫌でも実感する。
日暮れがやってくると部長は黙って立ち上がり、空から茜色が引くように帰り支度を始めた。

瞬く星がよく見える田んぼ道。月の光の誘いだけでは足元がおぼつかない。
振られる覚悟で部長の手を握って引くと、意外なことに抵抗はなく、月は長い髪にさっと顔を隠してしまった。

498以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/25(金) 19:30:58 ID:wk5Jg2wM
↓次題

499以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/25(金) 23:55:58 ID:49zESuoo
きつね

500以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/28(月) 08:36:57 ID:/qk9Y.oY
スレが立ってから3年目に入る勢いだな(勢いがあるとは言っていない)

501以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/28(月) 14:21:34 ID:tGx7ke6g
>>490
ラノベみたいな文体。意識して書いてるなら良いけど、そうじゃない場合は多少改めた方が良い。文章が安っぽくなるから

>>497
こちらは逆に小難し過ぎかな。多分、主人公は高校生ぐらいだろうから、それに見あった語句を使った方が良いね

502以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/29(火) 00:29:54 ID:/7TRxqmU
扉の前に誰かが立った気配がして目が覚めた。
昼寝の邪魔をされるのは心穏やかではないが、ないがしろにできる相手
ではないので、億劫に思いながらも出迎えるために体を起こした。
頭に残るもやっとした眠気にあくびが出る。

口から眠気が出ていき、感覚が戻ってくると、たんぽぽの
綿毛をまとめたような柔らかい雰囲気を扉越しに感じた。

「こんこん、起きてるかな」

扉が三度叩かれてからゆっくりと開く。
廊下から顔を覗かせたのは予想通りに、お世話になっている一家の長女だった。
家庭内にすっかり普及した『こんこん』なる呼び名の生み親もこの長女である。

「起きててお腹空いたでしょ。ご飯、持ってきたよ」

目の前までやってきた長女はそう言ってしゃがむと、
好物で山盛りにされた器をすぐそばに置いた。
差し出されたごちそうの量に唾を飲む。

どんなに健康な状態でお腹を空かしていたとしても、捌ける量には限度がある。
普段は欲深い私の本能と理性でさえ、これはさすがに無理だと警鐘を鳴らした。
長女を見上げて小さく鳴く。長女は嬉しそうに目を細めて私の頭を撫でた。

「我慢しなくていいんだよ。たあんとお食べ。まだあるからね」

まだあってもまだいらない。その気持ちを伝えたくて媚びるようにこん、と鳴く。
すると長女はまたもや嬉しそうに、私を真似て甘えるようにこん、と鳴いた。
寝起きで胃袋が重たくともせっかくの長女からの好意は邪険にできず、
結局、こん負けした私が折れてゆっくりとごちそうに口を付けたのだった。

503以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/29(火) 00:37:58 ID:/7TRxqmU
>>501
ありがとね

>>409は読みやすさとはなんやねんと考えながら書いた習作っぽいやつ
安っぽさが出ちゃったのは予想外だからべつの手法考えるわ

>>410は変人×変人を表すにはどう描くのがいいかなと模索した末路
年齢相応の表現って難しいやっちゃな

504以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/29(火) 00:39:01 ID:/7TRxqmU
突然の>>410
>>410じゃなくて>>497

505以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/29(火) 07:01:03 ID:xo9cMLfc
散々やね
>>490>>497

506以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/02(金) 05:02:22 ID:e.RGnkSA
土日目前にお題age
↓次題

507以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/02(金) 11:54:17 ID:CQmY3Gn6
ご当地ヒーロー



版権にはならないと思うが際どいなら安価下

508以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/02(金) 22:08:54 ID:rKjC0qBQ

「なんでウチの市のご当地ヒーローって、あんなにイケてないんだろうね」


たまたまTVで流れた地産地消を奨励するローカルCM、そこに登場した地元のヒーローキャラクターを指して妻が言った。

確かにそのデザインは古臭く、レトロ感を狙ったにしても成功しているとは言い難い。


「今のはデフォルメされたイラストだからまだマシ。このあいだ駅前で着ぐるみバージョン見たけど、百倍ヒドかったよ」

「なんだかヒーローにもゆるキャラにも、なりきれてないのよねぇ」


娘も妻の意見に賛同し、そして二人は揃って市の職員である私の方を向いた。


「あなた、なんとか意見できないの? あれじゃPR効果も何も無いわよ」

「そうだよ、お父さん課長なんでしょ? 部署が違うの?」

「駅前で着ぐるみに入ってたの、儂だよ」

「お茶淹れますねー」

「私、お風呂行ってくる」


次に娘を見かけたら、私は着ぐるみのまま声を掛けようと心に決めた。

509以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/07(水) 21:32:34 ID:MMyJR7zs
世界のいろんなところで争いがあったとしても、空が青いうちはなんてことはない。
いざこざが過ぎて鞘に収まり切らな問題だって、いつかは必ず丸く落ち着く。
だから、困ったときは闇雲に頑張ろうとするんじゃなくて、まずは空の色を見るんだよ。
祖母は生前、それを俺によく言い聞かせていた。

口調は穏やかでのんびりとした性格。
茄子を育てるのが趣味で、収穫期にはいつも背負い籠を紫色で
満たして「作りすぎてね」なんて言い訳しながら近所に配り歩く。
祖父が先に逝った翌年から、茄子の出来が悪いねえとこぼすようになったが、
優しい祖母が作る茄子はたいがい色艶がよくて、一般人に違いは判らなかった。

「どうやって茄子作ってたんだよ」
若い体力を持っていても鍬一本で畑を耕すのは骨が折れる重労働だった。
汗と土埃で汚れた顔を手ぬぐいで拭くと、あっという間に茶色に汚れた。
顔を上げて畑を見渡す。時間と体力をかけて拵えた畝は、想像以上に立派に伸びていた。
疲れていた顔が思わず緩む。祖母が毎年畑に夢中になる気持ちを知った気がした。

「若えもんや。こっちで飯食わんか」
声に振り向くと、三倍も歳が離れた近所の農夫が手を振っていた。
農夫は祖父との好みで、その孫である俺にも親身になって接してくれるいい人だった。
声をあげる元気を惜しんで手をあげて返事をした。
鍬を置いて畑を出ると、農夫は大きなおにぎりとよく冷えたお茶で出迎えてくれた。

「たまんねえだろ、畑仕事は」
農夫はおにぎりを頬張りながら遠くを見つめる。
「たまんないですね、色々と」と言うと、年齢を感じさせる含み笑いが返ってきた。
三年後、都市化の流れで畑を買い上げられてマンションが建つ予定らしい。
たったの三年。そうと知っていればもっと早くに祖母から継いでいただろう。
「ここにビルがおっ立てば都会と変わらんな」と農夫が言った。
本当にそうだと思う。あの空が追いかけてくると思うと、蒼色が滲んで見えた。

510以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/07(水) 21:41:28 ID:MMyJR7zs
お題では浮かばんくてフリースタイル
許せよ

>>508
読みやすくて好きよ
日常感があふれてて明るい
おとんがんがれ

511以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/08(木) 01:34:53 ID:PAxo4fkI
>>508
素人が地域活性化のために何とか予算捻り出して頑張ってるとこもあるんだよな
お父さんも間違いなくヒーローだよ…

>>509
ええやん
土のにおいがする

512以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/08(木) 22:38:55 ID:nsxXo7BQ
>>509
いいな 実にいい

513以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/11(日) 20:45:45 ID:tbUeI/Ss
お題をね
そろそろね


514以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/11(日) 21:27:10 ID:nYRokxcA
寒いから『寒さ』

515以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/11(日) 21:33:58 ID:nYRokxcA
>>508
文才晒すってより、ちょっとした小咄かな。面白かったけど。すっきりしてるのも文才の一つ

>>509
読みやすかったし、構成も良かった。文章にも内容にも味があるね。お見事

516以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/15(木) 04:41:30 ID:OYS2vv/A
「C組のあの子、彼氏とね、もうシたんだって」
「え、ウソっ。いつ、いつ?」
「はやーい。いいなあ」

私の苦手な会話が始まった。他人のプライバシーを晒しだしてまったく何が楽しいのやら。
煙草の煙を吹くように、吸い込んだ息を上に吐いた。

「私も早くシたいって言ってるのに彼氏がビビりで」
「わかるわかる。ウチもそう。……まあ、あんたはまだよねえ?」

会話の流れに従って、見下した流し目が私を向く。
よくご存じでという言葉を飲み込んで、受けのいい笑顔を作る。

「やめてよー。私、そうゆうお話はダメなんだってー」

恥ずかし気に耳を塞ぐポーズも付け加えると、机を囲む思春期乙女たちは
お互いの顔を見合わせて、やっぱりこの子はそうよね、と安心した顔になった。
私が経験したらいったい何がどうなるのか。まるで氾濫危険水位みたいな扱いだ。

「あ、そうだ。私、彼と帰る約束忘れてた。ごめんね」

そう言って席を立つと、思春期乙女たちは勝ち誇ったような笑みで手を振ってくれた。

校門で待つ彼を見つけて背中を弱くつつく。似合わないキャラだなと自分で思う。
未だ付き合っている感覚に慣れていないのか、固そうな声音で行こっかと言った。

「あのね。C組みの子……もう、シたんだって……」

彼の歩みが止まる。私が振り向くと、彼は赤くなった顔を横に向けた。
「もうちょっと俺たちが大人になってから」なんて言葉は、十二月にぴったりの寒さだった。

517以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/18(日) 22:29:08 ID:7PQAk1yU
クリスマス前ラストか……
お題↓

518以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/19(月) 08:46:29 ID:9AGXNaLw
クリスマスツリー

519以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/21(水) 19:33:29 ID:u677st4c
毎日、体験してるはずだ。
毎日、毎日、毎日、飽きることもせず、
繰り返し、僕らは目を覚ましてる。
眠ったら目覚める。昔、ママに買ってもらった車のおもちゃが
後ろに引っ張ったら、前に走り出すみたいに、
僕らは当たり前に、目を覚ましてる。
当たり前なのにおぼてない。いつもの朝がなにから始まるか。
枕の柔らかさだった気もするし、朝日の鋭さ立ったかもしれない。
パパの野太くて優しい声だったかもしれないし、
ママの作る朝ご飯のにおいかも。
ただ、今日だけは忘れない。


脂肪と髪の毛、それにむき出しになった血液を焦がす臭い
「よく眠れたかね」
神経質そうな兵隊さんは、そう声をかけ、わたしの隣に、
その大きな体を縮こませるようにして座った。
ボロボロにころされた街と対称的について、
昨日も当たり前の昨日だったように太陽は出てきて
わたしの吐く息を白く塗った。
お尻に付いた小石とか、砂を払おうと腰を浮かせると、兵隊さんは
「敵さんはすごいね、人殺しに自分の神様まで使うなんてさ」
目の前で焼ける、山積みになったパパやママを見ながら
ぼうっと言った。
わたしは何も、答えなかった。
ただ、ただ、山積みのパパやママはクリスマスツリーみたいだなって思った。

520以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/21(水) 22:22:06 ID:TphRbRdI
>>519
表現したい事は分かるけど、描写が全部雑です。
一人称が途中で変わったのは、視点が変わったからだろうけど、こういう短い文章でやるのは、わかり辛くなるだけだからやめた方がいいでしょう。
最後のクリスマスツリーの取って付けた感がかなり気になりました。
でも、雰囲気と前後半の対比はよかったし、
文章のテンポもすごいよかったです。
もっと、小説を読んで勉強してほしいです。

521以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/22(木) 11:39:56 ID:5ZGXf4qo
>もっと、小説を読んで勉強してほしいです。

意識高い系()がそうやって突っぱねるから過疎ってたんだろうな
もっと、スレを読んで勉強してほしいです。

522以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/22(木) 11:58:17 ID:nRt2OZtc
つスレタイ

523以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/23(金) 07:03:48 ID:9cu0lHsQ
「欲しがり屋さんは卒業しましたので」

アクリルケースに行儀よく収まったクリスマスツリーを見ながら彼女が言った。
暖色の間接照明のみで薄暗い寝室に置かれた、彼女が見とれているミニチュアの
ツリーは、飾れた赤と金のクーゲルを遠慮がちに輝かせていた。

「そのツリー、気に入ってくれるのは嬉しいけどさ。去年の思い出だよ」

ベッドで横になっている彼女のすぐ後ろの縁に腰を下ろす。
自分好みに伸ばされた長い黒髪を掬うと、防衛本能が働いたのか僅かに身を縮めた。
悪いことなんてまったくするつもりないんだけどな、と思いながら髪の毛を弄ぶ。
心なしか、いつにも増して黒髪の手触りが良いように感じた。

「私ってみんなが思っている以上に欲張りみたいで。だから、いい子じゃないんだ」

欲張りと聞いて思い出したのは、彼女と出会った去年のクリスマスイブだった。
三年間も付き合っていたかつての恋人を浮気相手に取られ、公園のベンチで
雪をかぶりながら缶チューハイを呷っていると、声をかけてきたのが彼女だった。
私も隣いいですか、と聞いてくると返事を待たずしてベンチに腰掛けてきた。
そして俺と似たように上を向いて、叫びたい感情と一緒に缶チューハイを一息で飲み干した。
誰も信用したくない、けれども誰かが隣に居て欲しい。
そんな都合のいい寂しさを彼女も抱えていたように見えた。

「もう去年との俺たちじゃないんだし。新しいのが欲しいでしょ」

ベッドに倒れて背中側から腕をまわすと、彼女は振り向いて「大きいのは欲張りだから」と答えた。
「いらない」と言われなかったことにひとまず安堵して、ベッドの下に隠していた鞄を取り出した。
彼女を起こして正面に座らせて、赤地に白い星が散った包装をされた箱を手渡す。
緊張気味に受け取って固まる彼女に「開けてみて」と促すと、小さく頷いて包装を剥がした。
彼女が既に持っている物と全く同じ型のツリーは、クーゲルの輝きに混じって自慢げに白い指輪を下げていた。

524以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/23(金) 07:08:27 ID:9cu0lHsQ
>>519
前半部分がいじりがいありそうね
もっと表現のしようがありそうでもったいないなあって思いました
全体的な内容は好きよ
だから読んでて惜しいなあって

525以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/23(金) 14:29:44 ID:EGnQJXr.
我が家にはクリマスツリーがある。

俺が幼稚園の頃に親父が買ってきたやつだ。当時の俺にはそのツリーは東京タワーぐらいにデカく思えたもんなんだが、今見ると別にたいした大きさじゃない。小市民という言葉がこれほど似合うツリーはないんじゃないかってぐらいの、『そこそこ』の大きさの平々凡々としたツリーだ。

ただ、このツリーには少し変わった思い出がある。

それを見て、無邪気にはしゃいでいた俺を横に、親父は真面目な表情でこんな風に言ったんだ。

「これはな、目印なんだ。柱の傷と一緒だ」

「はしらのキズ?」

「そうだ。父さんが子供の頃は一年ごとに背の高さにそって柱に傷をつけたもんさ。成長の記録ってやつだ」

ここは借家だから、柱に傷を残す事は出来ないからな。そう言った後で親父は不意に真剣な表情に変わり、

「このツリーより背が高くなったら、お前に我が家の大事な秘密を伝えようと思ってる」

今、俺はとうにそのツリーの高さを越えているんだが、親父はその事をすっかり忘れてしまったのか、未だに我が家の大事な秘密は謎のままだ。

526以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/25(日) 00:42:35 ID:5ZQItgR2
>>525
わざとか分かりませんが、文章が悪い意味でバカっぽいです。
例えが吐き気をもよおす程下手とか、『』の無駄遣いや、真面目な表情から真剣な表情っの違いがわかるって凄い表情に敏感な幼子だなあ、とかありますが、特に目についたのが下の一文です。
我が家にはクリスマスツリーがある
とありますが、この書き方だと「常にか?我が家のどこにだ?」
と思ってしまいます。
短い文章でも5w1hを忘れないでください。
またツリーの出てくる時期と一緒に、飾り付けがどうとか、臭いがどうとか書いてあげれば、文章が記号的ではなくなり、厚みがでます。
ストーリーもありがちというか、陳腐でこの文章の中に褒めれる所は見つかりませんでしたが、文章を書ききったというのは素晴らしいです。
昔使った国語の教科書のような、読みやすいものから読んでいくといいかもしれません。

527以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/26(月) 01:55:35 ID:LixYi5U2
お題:白

528(1/2):2016/12/29(木) 18:37:57 ID:W4OOGiVI
「白」


 冬休み、少し早めに行った高校の卒業旅行。その日東京に行くまで私はホワイトクリスマスという言葉を知らなかった。冬なんて雪が降るのは当たり前、積もらないほうが珍しい。そんな風に思っていた。雪かきの手伝いが面倒だから嫌だとすら思っていた。雪をありがたがる気持ちなんてわからなかった。

「ホワイトクリスマスだね」

 そう呟かれて隣を見る。空を見上げるその男の目は今まで私を映していた。でも今は雪の降る空を見ている。

 別にこの男が好きだなんて思ってはいなかった。ただ一人でいるよりはマシかなとデートに一回付き合うだけのつもりだった。それでも私は隣にいた。今も隣にいる。なのに、この男は私にではなく雪に目を奪われた。
 別に私だけを見てほしいだなんて重いことを言うつもりはない。だけど雪なんかに負けるのは我慢がならなかった。雪なんて、毎年のように人を殺しているような物なんかには。

「私、雪嫌いなんだ」

 少し早歩きで距離をとって振り返る。男は困惑の表情を浮かべている。そんなに私は今冷たい目をしているのだろうか。

「今日はもう解散ということでよろしく」

 有無を言わさず分かれる。これならデートを断ったほうがまだ誰も傷つかなかったかもしれない。
 だけど、雪はどうしても好きになれない。

529(2/2):2016/12/29(木) 18:39:34 ID:W4OOGiVI
 故郷よりも重く粗い雪が歩道を濡らす。今日のこの先の予定は決めていない。一人で何もないクリスマスを過ごして一日を終えるしかないかもしれない。それ以外に思いつくことも特にない。
 適当にコンビニでシュークリームを買って帰ろう。雪よりも幸せな白いクリームを味わって、それでクリスマスを終えよう。

 ふとメールが届いた。確かめてみると弟から小さな雪ダルマの画像が送られてきていた。嫌がらせでしかない。

「雪、雪、雪」

 溜息しか出ない。試しに雪に手を伸ばしてみても少し冷たいだけだった。

「うぉ!?」

 前方で誰かが転ぶのが見えた。あまり積もってないけどきっと雪のせいだ。

「いててっ……」

 追い抜く時に見てみると、まったく知らない男の顔。ただ、痛そうに表情を歪めているのを見ると少し心が軽くなった。雪が嫌いな仲間ができたかなと、思わず目尻が下がるのを感じた。
 気付けばお互いに見詰め合っていた。普段ではまず起きない異様な状況の中、私は先手をとられてしまう。

「あの、一目惚れしました」

 結局のところ雪嫌い仲間はできなかった。雪嫌い仲間は、できなかった。
 今はまだ、雪は好きになれそうにない。

530以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/31(土) 20:58:20 ID:TAgSOaHI
>>528-529
なんかストーリーから技術から、何もかもチグハグですね。
まず、その日東京に行くまでは、ってその後の陳腐なストーリーは
現在進行形に見える文章なのに、過去形の言い回しはやめて欲しいです。
まあ、おしゃれな言い回しだから使いたい気持ちはわかりますが、
どうしても現在進行形の書き方で使いたいなら、その日○○、の後に行間を3位開けて、
一拍開けた感が出せれば違和感ない気がします。
次にホワイトクリスマス、あんまりこういう言い方したくないですが、
これを知らない若い女の子なんてあまりにリアリティが無いです。
別にホワイトクリスマスを知らない女の子がいてもいいんですが
キャラの作りが小児用の風邪薬より甘いです。
普通の地方の女の子からホワイトクリスマスという単語を抜いただけっていえば伝わりますかね。
ホワイトクリスマスを知らないなら、それに付随してアホの子とか
一つのことに陶酔してそれ以外の常識等が欠如しているとかなら、
ホワイトクリスマスを知らないってことに納得できるんですが
あなたの書いた女の子はそれが無く、ザーメン臭くて薄っぺらいハリボテだなって感じちゃいます。
まだまだ言いたいことはありますが、完成させたのは偉いです。
頑張って書き続ければ読んでくれる人も増えるはずです。
根拠はありませんが頑張ってください。
よいお年を

531以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/31(土) 21:28:01 ID:JOHpJeOc
>>530
感想どうもです。お目汚しすみませんでした。
キャラ背景の描写に次から気をつけます。感想ありがたかったです。

532以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/02(月) 15:16:38 ID:Oc8YOVxY
年あけたし変えるか
お題↓

533以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/02(月) 16:53:39 ID:wvnOQ1QE
>>531
そいつ、嵐みたいなもんだから、触らなくていいよ

お題は、やっぱり正月で

534以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/02(月) 21:57:08 ID:T4GbhNu.
「正月」


 年が明ける。日の出を見る。それは新たな年への希望を胸に行う儀式。だというのに目の前の太陽は落書きのようにしか見えない。直視もできない輝きはただの赤い渦巻きに置き換えられていた。

 振り返ると山肌が見える。丸められた厚紙のような岩、薄い色紙の草花、ダンボールの樹木、眼下に広がる雲すらも歪な紙風船。少しずつ見づらくなっていく月も不自然な三日月型の紙にクレヨンで色を付けたようにしか見えない。昨日、海を見たときは細かく千切れた水色の紙片の中を厚紙の魚が泳いでいた。

「喉、渇いたな」

 紙、紙、紙……紙しか存在しない落書きの世界。悪い夢なのだろうか、人すらも紙を張り合わせ作った模型が動いている。紙でないものは自分自身のみ。
 気が狂いそうだ。もう既に狂っているのだろうか。狂ったからこんな世界になってしまったのだろうか。

 あまりの空腹に紙の草花を千切り、口に含む。噛めども噛めども紙の味しかしない。口の中の水分が奪われ余計に喉が渇いた気すらする。

 ――もう、疲れた。

 手首の皮を少し深めに噛み千切る。痛くて何度も失敗しながら、それでも必至に何度も牙を突き立てる。血が滲む、それでも噛む。痛くて痛くて涙が出る。自分で決めたことだというのに怖くて仕方がない。
 手首から明確な血の味が口内に広がる。いつの間にか涙だけでなく鼻水すら止まらなくなって息が詰まる。それでも必死に描いていく。折角手に入れた赤を無駄にしないように、覚えている限りのリアルを描いていく。

 いつの間にか、熱が頬を撫でていた。世界が、全て赤く染まっていく。息ができない、苦しい、だけどようやく開放されるのだとわかった。
 世界が全て白に染まるのを見届けることなく、私は黒い炭になっていく――

535『白』の方:2017/01/04(水) 22:26:01 ID:dTVCckZ6
ここに来れば忘れていたものを取り戻してくれるかもしれない。
この雪原に彼女の記憶が残っていれば、俺のこともきっと思い出してくれるはずだ。
すがる思いで困惑する彼女の腕を強引に引っ張って数百キロも越えてきたのに、
彼女の回答は一縷の望みを絶ち切る、言葉の無い困ったような笑みだった。

「ごめんね。やっぱり見覚えないや」

雪に手足をついて愕然とうなだれる俺の頭に彼女が言った。
奥手で奥ゆかしい彼女に惚れて俺が告白してから三年。
その三年間で最も多くの思い出を作ったのがこの雪原だったのに、
彼女を襲ったたった一回の事故がそのすべてを根こそぎ奪い去ってしまった。

「あーあ。じゃあ、もうどうしようもうないわ」

本当の彼女と築き上げた時間は、もう頭の片隅にも残っていないらしい。
そうでもなければこの人がこんなに戸惑うはずがない。
俺が好きになった人はこの世界から死なずに消えてしまった。
これほど辛い別れは、人類史を底の底からほじくり返してもそうないだろう

「帰ろうか。こんなとこまで無理矢理連れてきてごめんね」

言葉遣いから性格まで、しいては表情の使い方もまったく別人。
知らない人だと割り切れと、頭の中で誰かがささやいた。

「君の知ってる私って、たぶん私じゃないんだよね」
「そうね。知らない人よ。だから」
「やり直せないかな。ここで別れたら、元の私に悪いよ」

彼女の記憶が戻ったら、また好きになった人を失わないといけない。
そうなったらもう一度ここまで戻って来れる自信は、まだ俺にはなかった。

536以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/04(水) 22:51:23 ID:dTVCckZ6
>>528-529
擦れた感性をお持ちの女性やね
負けず嫌いな性格というか世界中を見下してる冷たい感じの、はっきりとしたキャラクターは好きよ
「人であれば雪が好き」を前提にした表現の「雪嫌い」と考えると色んなものが当てはまって面白く見えてくるし
あまり人からは好かれない方向に尖った子だけど俺は好きよ付き合ってほしい

「思わず目尻が下がるのを感じた。」
を自分で読み返して、ん?って思えば、文章内のたいていの違和感は直せると思うからがんば
頭がHappyなものしか書けない俺からすれば読み続けたい独特の視点で興味あるよ

537以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/04(水) 23:01:20 ID:dTVCckZ6
>>534
ずいぶんとスプラッタなお正月をご存じで
そっち方向には詳しくないから浅い感想になるけどご容赦を

一文一文が短くてテンポがよくて好きよ
世界を紙に置き換えて話しを進める斬新さはそうそう出るものじゃないからすげえよね、ぱねえ

お前さんの作風と書き方から察するに、「ここがおかしい」というと
「んなわけねえじゃん!」とか返ってきそうだけど、ひとつだけね
「余計に喉が渇いた気すらする。」
気すらするじゃなくてもっと言い切る形にした方がより強い飢えや渇きが出せるんじゃないかねって
全体の表現が押し付けるほどに強めだから一歩でも引いたような部分があると目立って勿体ナス

しかしスプラッタについては何が適切なのかが本当に分からん

538以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/04(水) 23:37:54 ID:pFsfw0L2
>>536-537
>>533で言われたのでむやみに誰かの感想に返答してもいいのかわかりませんが、感想どうもです。
細かい違和感に気付くのは難しそうですけど、少し時間を置いてから読み直す等で頑張ってみます。
あと世界観と主張の激しい作品はなるべく堂々とした書き方を貫けるよう気をつけてみます。
アドバイスありがとうございました。

539以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/06(金) 01:02:34 ID:KcGN5FVo
「あけましてええぇぇ、おめでっ、とおぅっ!」

年明けの挨拶から妙にテンションの高い幼馴染が振袖姿で何かの決めポーズを取った。
カマキリが鎌を振り上げたような上体とフラミンゴを彷彿とさせる片足立ち。

「今の私は縁起がいいよ。力がすごい。なんか、こう、縁起力がすごい」

インターホンに呼ばれた年明けの一発目にこんな奇怪な光景を見せつけられた俺の心境が、こいつに理解できるのだろうか。
幼馴染は奇妙な佇まいを維持したまま何やら企むような怪しげな顔でにやけた。
まだ午前八時。人の家の前で理解不能なポージング。もう既に不審者。
その不審者が意味あり気な笑みを浮かべるのだから、これは通報する以外の選択肢はないに等しい。

「お年玉ちょー」

全てを聞き終わる前に扉を締めて手早く鍵をかける。
チェーンを引っかける完全防備の時間まで許してくれたは、
相手の反応が遅れる程度には想定外の行動だったのかもしれない。

「お餅! お餅でいいから頂戴! お餅でいいからあ!」

自業自得のクセに半泣きになっている声が扉越しに聞こえてきた。
何年一緒にいても思い付きと好奇心に急かさせる幼馴染の行動パターンはまったく読めない。
いつまでも玄関前で騒がれているとさすがに近所迷惑になると思い、
施錠を解いて玄関を開き、幼馴染を中にへと引っ張り込む。
改めて幼馴染の振袖姿を見ると、まあなんというか、馬子にも衣装とはよく言ったものだと感心する。

「いきなり閉められたからびっくりした。さ、お年玉」

こんな思考回路でなければ可愛いとは思う。
つくづくもったいないことをしてるなと思いながら、幼馴染の顔面にのし餅を叩きつけた。

540以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/10(火) 22:44:33 ID:z8MNuiGQ


541以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/11(水) 01:34:30 ID:wF.RdGcU
そろそろお題変更かな


542以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/11(水) 09:50:54 ID:C553H5TM
かまくら

543以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/12(木) 21:43:46 ID:xGyuYHGY
「かまくら」


 雪が降り積もる中で妖精が遊んでいる。妖精は楽しそうに雪をすくい上げ、見つめる。見つめ終わると雪を宙に舞わせ、また楽しそうな表情を浮かべる。

 そんな光景を、ただ見つめる者がいた。周囲に足跡はない。長い時間その場に佇んでいたことがわかる。
 妖精は自分よりも何倍も大きなその人物に怯えることもなく、雪に目を輝かせている。雪の上に倒れこみ、雪のクッション性を確かめる。小さな足跡で覚えたてのひらがなを書いてみせる。大して積もっている訳でもない雪を、それでも小さな体で存分に楽しんでいる。

 今度は雪ダルマを作るようだ。小さな雪球を作り、重ねる。大きな雪ダルマを作ろうという発想がないのか、その小さな雪ダルマで妖精は十分満足した。作った雪ダルマを掲げ、自分を見つめる者に笑顔で差し出すのだ。

 雪ダルマの受け渡しが完了すると、今度は雪を大量に集め始める。小さな手ですくい上げた雪を少しずつ固め、壁のようなものを作ろうとする。サークル状の壁、それは見る者に竈のような形を思い浮かばせる。小さな体では思うように雪を集められないが、懸命にその小さな大仕事に取り組む。

 思わず、手が伸びたのだろう。その大きな手が雪を片手にひとすくい分、妖精の傍に積んだ。妖精が嬉しそうにその雪を固めて作品を仕上げていく。妖精のために、それは何度か続けられた。
 出来上がったのは小さく不恰好なかまくらだった。妖精は満足そうに笑顔を振りまく。

「先輩、ここにいたっすか」

 雪の上に大きな足跡が現れる。無言の世界に、声が戻ってくる。既に小さな雪ダルマは、体温で完全に溶けてしまっていた。

「……雪、娘さん、喜んだっすかね」

「あぁ、妖精さんは喜んでいるよ」

 妖精が抱きついた大きな手は、霜焼けで真っ赤に染まっていた。喜びに顔を赤くする妖精と、同じ色だった。

544以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/13(金) 00:27:44 ID:inaiQAdo
>>

545以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/13(金) 00:42:14 ID:inaiQAdo
>>543
やっぱり無邪気って可愛いわ
幼子や子供じゃなくて妖精と言われると純潔さが出ていいよねえ
俺もあの頃は自由だったわ……あの頃に帰りたい……
無言の世界に声が戻ってくるって表現が意図的に用いた比喩なら大好き
背丈相応の小規模な世界ってどうしてあんなに時間が詰まってたんだかね……

テーマのかまくらを冒頭に持ってくると使える行が減って苦しくなるから省いていいと思うよ
面白いお話なのにぎゅうぎゅう詰めで読まないといけなくなるからなんかもったいない
それと「私」とかを使ってはっきりとした一人称視点で書いた方が妖精の観察してる感じが際立ったかなあって

妖精が自然体でいる表現が上手でおいらは好きだよ
なんて言いながら書く側の意図を汲めてなかったらスマソ

546以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/13(金) 00:43:27 ID:inaiQAdo
空を見上げれば冬。
ふわりふわりと降りてくる雪に囲まれていると、いつもより一秒が長く感じられる。
バケツに雪をかき込む作業の手を止めて振り返ると、中庭に面した校舎がそびえ立つ。

創立80周年を迎えた名門校。名前を聞けば誰もが驚きに眉を持ち上げる。
独自の教育カリキュラムを組み上げることで有名大学への進学率では他校を圧倒。
運動部からも毎年のようにトップアスリートを輩出している登竜門的な存在。
『世界の牽引者の育成』にふさわしいトップレベルの学習環境の中にいながら、
なぜか俺は、水面が凍り付いた池の前でかまくら作りに加わっていた。

「本当に何故だ」

本来なら暖房の効いた図書館で難問奇問の並んだ入試問題に挑んでいたはずである。
それなのに、どうして今、手袋とマフラーと耳あての防寒三種の神器を身につけているのか。
握っているのはペンではなくてシャベルとバケツ。幼稚なお遊び道具に眩暈が起きそうになる。

「ギャザー(gather)! 動きが遅い! カーゴ(cargo)に待ち時間を作らせない!」
「はいはいはい!」

指揮を執る部長の怒号に突かれて慌ててバケツに雪を放り込む。
かまくら作り最短記録の樹立を宣言したレクリエーション部部長は、なまはげの形相だ。

「ギャザー! あんた、雪国を舐めてんでしょ!」

こちとら産まれも育ちも在住も関東圏。部長だって北緯36度線を越えた経験が無いのは知っている。
横目で製作部門に振られた女子部員に視線を向けると、寒さと冷たさと恐怖で目に涙を浮かべていた。

「ああもう! ギネスから2分遅れ! やり直し! 配置用意!」

挑戦的な部長の大声が冬休みの中庭に響く。築いたかまくらを崩す虚無感が白い溜息となって空へと昇って行った。

547以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/13(金) 21:40:56 ID:Kp8g4iP6
>>545
感想どうもです。次からお題は名前欄に書いておきます。
伝えたいことが伝わらなかったのはこちらの力不足なのだと思います。無言の世界は比喩じゃなかったです、ごめんなさい。
流石にこんな小さな妖精さんはいません。見えるのならそれは家族を失った誰かの妄想、ということです。

548以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/13(金) 21:41:16 ID:rh9dxZO6
>>543
妖精さんが可愛いだけに、後輩?の台詞が「楽しめた」じゃなく「楽しんだ」なのが
(深読みし過ぎだろうけども)最初の…も相まって、もしかして「娘さん」は亡くなっていて全て空想…?と思う程度にはひっかかったので
例えば妖精の頭を撫でながらとか、真っ赤な手に少し呆れたような声でとか、後輩の感情が分かる描写があればなお良いと思う
雰囲気は好き

>>546
実際ありそうな部活且つ居そうな先輩なのがまた

549以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/13(金) 21:44:14 ID:EJIICtYA
すまん被った
深読みじゃなかったのか…

550以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/13(金) 22:31:32 ID:Kp8g4iP6
>>548-549
感想どうもです。一応妖精さんのサイズが人間の子供とは思えないほど小さいように描写したつもりでした。
後輩が妖精さんに話しかけないのもお察しのとおりです。
次からは意図的にそういった部分を匂わせる文章をもう少し足してみることにします。

551以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/18(水) 22:48:30 ID:ouxW/CU2
お題↓

552以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/19(木) 12:37:51 ID:EW5.s8XM
苦味

553以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/19(木) 16:06:33 ID:M4RYfjU.
 そう新しくもない公立校だからか、教室内はともかく廊下や階段に暖房設備はありません。忍び込んだ一月の風が緩く吹き廻るこの一角は、建物の中だというのに吐息が白く染まる寒さです。それにこの旧校舎二階から三階は各科目の実習室が並ぶところ、木曜日の午後は全クラス共にこのフロアを利用する授業が無い事も解っています。真冬の今、昼休みとはいえ用も無くここを訪れる者など職員にも生徒にもいない事でしょう。たとえ誰かが近づいたとしても、その人がこの三階の階段ホールに辿り着くまでに足音で気づけます。だから、何も心配は要らないのです。

「見せてごらんなさい。ああ、もうこんなに苦しそう」

 私は制服のスラックス越しにその生殖本能が集中し昂った部分を指でなぞると、視線を上げて彼の表情を確かめました。頰

554以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/19(木) 16:09:50 ID:M4RYfjU.
 そう新しくもない公立校だからか、教室内はともかく廊下や階段に暖房設備はありません。忍び込んだ一月の風が緩く吹き廻るこの一角は、建物の中だというのに吐息が白く染まる寒さです。それにこの旧校舎二階から三階は各科目の実習室が並ぶところ、木曜日の午後は全クラス共にこのフロアを利用する授業が無い事も解っています。真冬の今、昼休みとはいえ用も無くここを訪れる者など職員にも生徒にもいない事でしょう。たとえ誰かが近づいたとしても、その人がこの三階の階段ホールに辿り着くまでに足音で気づけます。だから、何も心配は要らないのです。

「見せてごらんなさい。ああ、もうこんなに苦しそう」

 私は制服のスラックス越しにその生殖本能が集中し昂った部分を指でなぞると、視線を上げて彼の表情を確かめました。ほおが紅潮し、目は潤み、吐く息はさっきまで以上に白く湿り気を帯びています。彼は小さく呻くように「先生」と囁き、私を見つめ返してくれました。きっと今、その瞳に映る私は恍惚に塗れた雌の顔をしている事でしょう。

 スラックスの内で真上に反り返り脈を打つ充血した固い肉のスポンジを徐々に上に擦り上げてゆくと、それまでより少しだけ柔らかい部分に辿り着きます。その境い目である段差を指が乗り越える時、ぶるんとした感触と同時に彼の身体が一瞬強く脈を打つのが伝わりました。
 もう一度「見せてみなさい」と促すと、彼は酷く恥ずかしそうにファスナーを下ろします。しかし既に平常時の大きさでは無くなってしまっている彼の器官は、引っかかったように顔を出しません。私はそれを解放してあげるため制服のベルトを緩め、スラックスのホックをそっと外しました。次の瞬間、今まで彼自身と同じように恥ずかしがっていたはずのそれは牙を剥いたかの如く弾け出て私の顔を真っ直ぐに指したのです。
 形だけを見れば爬虫類の頭部に似たそれは、鼓動と同じ一定のリズムで僅かに上下しながら獲物を捉えようとしていました。今この時、彼にとっての獲物とは私自身。彼は相手を捕食するのではなく、その体内に侵入し己の遺伝子を撒き散らす事を望んでいるのです。彼の本能は私に対して『自分の分身を孕み、胎内で育て、産め』と言っている。私は恐怖と歓びが湧き上がるのを感じ、喉が鳴るほど大きく唾を飲み込みました。

 私はその付け根に指を当て、今度は布に遮られる事なく直接触れた状態で同じように指を伝せてゆきます。痛みと擽ったさの間、ちょうど心地よいと思ってもらえる強さを探り、それを維持するつもりで擦ります。硬直し、ほとんど弾力が無いと思えるほど硬直した茎にも、真裏に当たる部分に少しだけ柔らかいところがあるのは知っていました。そしてそこがこの周辺では最も敏感であることも。

555以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/19(木) 16:10:25 ID:M4RYfjU.
 茎の先には丸みを帯びた赤黒い果実がなっています。その先端には小さな割れ目があり、そこから透明な蜜が少量溢れていました。でも私は、それが本当は少量ではない事も知っています。茎を擦り上げた人指し指を果実に移し、残りの指を開いて包み込んで潰さない程度の力で握ると、また彼は小さく呻きました。そして果実の付け根から先端に向けて搾るように動かすと、更に多くの蜜が溢れ出してきます。私は親指の腹を先端の割れ目に当て、そっと円を描くように捏ねまわしました。にち、にち、と僅かな粘性を持つ事の判る水音がたちます。少しずつ溢れ続ける蜜はやがて私の親指の付け根に垂れるまでになり、それを五指に纏わせ果実全体を捏ねると更に大きく卑猥な音をたて始めます。

「ぬるぬるした方がずっと気持ちいいでしょう? でもこれは貴方の中から出てきたの。貴方、自分で出したもので気持ちよくなってるのよ?」

 そう嗜めると彼は羞恥あるいは悔しさからか、息遣いを荒くしたように思えました。でも本当は彼だけを責められる立場には無いのです。私には彼の出口よりもずっと大きな、でも形の良く似た入り口としての割れ目があります。私のそこは触れて音をたてずとも、彼とは比べものにならない量の蜜を溢れさせている事は解っていました。
 でもその入り口に彼を迎えてあげる事はできないのです。彼の本能がどんなに私に種子を植えつけたくとも、そして私の本能がそれを乞いているとしても。私と彼が教師と教え子である以上、今は彼の遺伝子を私のそれと交じらせる事はできません。

 絡む指を潤滑させていた彼の蜜は、互いの体温で次第に乾いてゆきます。音がたたなくなり、接着力の弱い糊のようにべたべたとし始めた茎と果実。本当は私の蜜が溢れる入り口に誘われたがっているそれを、せめて似た感触と温もりで包んであげたい。私はそう思いました。

 口の中にできるだけたくさんの唾液を溜めて、果実の先端に優しく口づけます。唾液が溢れないよう薄く唇を開き舌を伸ばしてそれを塗り広げると、彼の出口からも新しい蜜が滲んでくるのが判りました。私はそれを愛おしく吸い取ります。そして隙間を作らないよう唇をぴったりと彼の果実に沿わせて、少しずつそれを口内に飲み込んでいきました。
 彼が快感に震えながら「先生、あったかい」と呟きます。しかし口内を犯す彼の塊も、私には熱いものとして感じられました。なぜ互い共が温もりを感じられるのでしょう。一方が熱いと感じればもう一方は冷たく感じるのが普通であるはずなのに、とても不思議に思えました。
私は舌をできるだけ横に広げ、彼の裏側半面を包み擦るつもりで押し付けながら頭を前後に動かします。喉に当たるまで深く咥え込み、強く吸い上げながらゆっくりと引き抜いて。彼が一段階太くなる、最も敏感なその段差を唇で締め付けながら乗り越えました。そして撫ぞる相手を失った舌の先を彼の先端にある割れ目に少しだけ侵入させ、まだ出てくる前の蜜を味わいながらもう一度深く沈めてゆきます。

 1ストロークに数秒、でもだんだんと早くしてゆくとほんの十回目ほどで彼が艶やかな声をあげながら私の頭を両手で掴みました。女では抗えない彼の力で、今までで一番深く咥え込むよう引き寄せられます。彼の先端が喉を強く押し、私は若干の苦しさを覚えました。しかし次の瞬間、彼は私の口内で激しく暴れ狂いながら喉の奥に多量の粘液を撒き散らしたのです。それが少し落ち着きかけた時、彼は私の頭を掴んだまま自らの腰を前後に動かし始めました。最後の一滴まで出し切ろうとしているのでしょう、それは私の事を微塵にも気遣った動作ではありませんでした。でも彼が我を忘れてしまったのは紛れもなく私が与えた快感のせいであり、私の心には歓びの他に感情はありませんでした。

 彼が自身を引き抜くと、私の唇から少しだけ彼の白濁とした欠片が溢れました。自然界において苦味と辛味は有毒のサインであるといいます。しかし私は生臭さを帯びたその苦い粘液を、衝動のままに飲み干したのです。

556以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/19(木) 16:11:11 ID:M4RYfjU.
すまん、何回かミスった上に本文長すぎって言われて2レスに分かれた。また他の感想も書きにきます。

557以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/19(木) 19:21:29 ID:EW5.s8XM
官能ありだったのかここ

558以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/20(金) 00:20:43 ID:4o4BCuGE
そんだけ長いのを書きたければ自分でスレ立ててうんぬん
官能が禁止かどうかは知らん
知らないが触発されて官能が出てくるようならいらない

559「苦味」(1/2):2017/01/20(金) 19:29:32 ID:hUl4NPm6
 お客さん、これは今よりずっと昔から「昔々」と伝わるお話でさぁ。

 ある森に狼の群れがいやした。その狼の群れの頭は強くて賢く、おまけに格好いい。それはもう立派な狼だったんでさぁ。これがあまりにも凄い狼なもんで群れのメス皆がその狼にホの字になっちまいやしてね、他のオスの狼はモテないことモテないこと。

「おい、どうする。このままじゃ群れは子供が少なくなって滅んじまう」

「何、ボスならメス全員に子供生ませるくらい簡単だろうさ」

「お前さんそれでいいのかよ。俺はモテたいぜ」

「俺だってモテたいさ。モテモテになりたいよ」

 モテない狼たちは頭を悩ませる。するとこんな声があがる。

「そうだ! 婆様から聞いたことがある。なんでも森の沼にとんでもない木の実があるって」

「とんでもない木の実? なんだいそりゃ。食べたらモテるようにでもなるのか?」

「全部食べきることができたって話だがな」

 まさかまさかの凄い情報に狼たちは顔を見合わせる。デマじゃないのか、いやただ不味いだけの木の実ならこんな噂話出るはずがない。少しの間相談すると我先にと狼たちは駆け出しやす。
 そうして辿り着いたのが森の沼。森で一番大きな沼の真ん中にある小島に木が生えている。そしてその木には沢山の木の実がなってるんでさぁ。狼たちは沼を渡りなんとか木によじ登って木の実を手に入れる。ところがいざ食べてみると皆が吐き出しちまいやす。

「甘すぎる!」

 そう、木の実は尋常じゃないほどに甘かったんでさぁ。何とか食べようとしても甘すぎて吐き出しちまいやす。これは食べられたもんじゃない。頑張ってみる狼たちもどんどん諦めていくんでさぁ。
 だがまだ諦めていない狼がいやしてね。どうしてもモテたいんでしょうなぁ、この甘すぎる木の実を食べる妙案を思いつきやす。

560「苦味」(2/2):2017/01/20(金) 19:31:32 ID:hUl4NPm6
 その狼は木の実を木の枝に突き刺して口にくわえ、森を駆け抜ける。モテない仲間の狼たちもそれに続いて駆けていくと山に辿り着いた。暑い熱い火山でさぁ。そして狼は毛皮が焼けちまうほど熱い風の吹き出る穴の近くに木の枝を突き立てやした。
 しばらく離れて待っていると木の実はどんどん焼けていって黒くなっていきやす。そう、焼いているんでさぁ。よく焼けて炭になった外側の部分と一緒に狼は木の実を食べる。甘すぎる木の実に炭の苦味が足されて「これは美味い」と狼はとうとう木の実をひとつたいらげやした。

 凄いと賞賛し次々に木の実を焼き始める他の狼たちを尻目に木の実を食べた狼の姿が変わっていきやす。毛並みはどんどん美しくなっていって――

 ――狼はそりゃもう美しいメスになりやした。

 こうして狼たちに伝わる昔話は木の実の正しい食べ方が追加されるのと同時に訂正されやす。経験者曰く、「モテモテになるのではなく、モテモテになってしまう」ってな話に。
 お客さんらもモテないからといって美しいメスになった親友を襲わないようにしてくだせぇ。寝ている間に木の実を口に放り込まれても、あっしは知りやせんぜ……

561以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/21(土) 02:11:16 ID:Lno3w9Sg
>>554-555
手が込んでるのとこだわっているのは感じるけど、内容も量も場所を選べばもっとよかったかなあとね。
それだけ書けるなら自分でスレ立てた方がまとめられただろうし外の評価ももらえただろうし、
なんかもったいないことしてるねって。

ここで書くにしては……というのを抜きにすれば、中身は普通にいいよ。面白い。
全部を比喩で通してるけど読みやすいのは羨ましい。
10レス完結でいいからその内容でスレ立てちまえよ。読むよ、俺は。

>>560
落語かよ。
語り口調の軽さと会話のテンポの良さ、好き。
内容の童話っぽさとかオチの分かりやすさもええね。
俺は好き。

562以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/21(土) 02:12:35 ID:Lno3w9Sg
「なにが青春よ。学校は学校でも私にとっては職場だってのに」

デミグラスソースの染みた割り箸に、憎らし気に歯を立てて呪詛を唱える学年主任。
コンビニで買ってきたのだろうハンバーグは、そのトレーの中でサイコロ状に細かく切り刻まれていた。
恨み声から察するに、どうやら先ほどの昼休み中に人目を憚らない学生カップルと出くわしてしまったらしい。
大台の30歳を目前に控えていながら恋愛経験がないことを飲み会の席で嘆いたのがつい先日。
焦りと妬みが同時に襲い掛かって来れば、確かに不平等な現実への不平不満を吐き出したくなってしまう。

「どうせあの子たちだって私と同じよ。十年もしたらすぐに私みたいになるんだからね」

誰か彼女を止めろ、という無言の押し付け合いを含んだ視線が教務室内を飛び交う。
プレッシャーを感じているのは彼女だけではないので愚痴に付き合ってもいいのだけれども、
今話しかければ面倒な事態に発展してしまうのは火を見るよりも明らかなので、
手元にある小テストの採点を進めることで不毛な争いから抜け出すことを選ぶ。

「先生、なに一人で丸付けなんてしてるんですかあ」

しかしその努力も甲斐なく、質の悪い絡み酒のごとく面倒事が向こうからやってきてしまった。
願わくば勤務時間中は喋りかけられたくなかったし、彼女ともそう約束していのだが、
長年の鬱憤がここにきて許容限界を越えてしまったようだった。

「私のイライラの原因は先生にもあるんですからね。早く責任とって下さいよ」

教務室内の空気が全て抜かれたかのようのしんと静まり返る。
分かってる。お互いに酔った勢いと言えども、わりとまんざらでもなかったのは認める。
動かないのは逃げるための先延ばしではなくて、身を固めるための準備期間だからもう少しだけ待ってほしい。
などの言い訳にもならない無責任な言葉を出すわけにもいかず、押しつぶされそうな重い空気の中で手帳を開く。
次の空白は日曜日。サプライズで諸々の予定をこっそりと進めていく計画はご破算となり、
もう煮るなり焼くなり好きにしてくれと手帳を渡すと、彼女は黒ペンで予定を書き加えた。
筆圧強く刻まれた『指輪選ぶ』の四文字に、傷んだ林檎を齧ったような苦みを感じた。

563以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/21(土) 02:13:41 ID:Lno3w9Sg
被った感がすごいから違うのかこうかなあと思ったけど練り直し面倒だからいいやってなった

564以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/21(土) 22:09:22 ID:bQ4N6b6w
>>561
感想どうもです。色んな書き方試してるので次も褒めてもらえるような作品を作れるようにしたいです。

565以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/24(火) 08:00:03 ID:ngBDKrBQ
そ次題↓

566以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/26(木) 01:03:18 ID:jB9WGfSs
椿

567「椿」:2017/01/27(金) 19:17:27 ID:oFVgC8Gw
 虹椿により選ばれた勇者は毒の蛇を祓う。その話が伝説となった時代。しかし伝説の毒蛇は今一度復活した。八つの首から生える牙の毒は霧となって世界を覆い、この世の生き物の寿命を半分にまで縮めた。多くの動植物が絶滅の危機に瀕し、人もまた滅びようとしていた。
 だが一人の勇者が選ばれた。虹椿から枝を与えられ、その枝を燃やした灰を鋼に混ぜ、七色の聖剣を生み出した。勇者は聖剣を振るい谷を進む。そしてついに毒の蛇の前に辿り着いた。

「蛇よ、何故世界を毒で覆う?」

「恐怖こそが我が糧となる」

 蛇は世界が怯えるほどに力を増す。しかし勇者もその分力を増した。恐怖に対を成す人々の希望が勇者の力となっている気がした。
 戦いは八夜続いた。半日をかけ首をひとつ落とす。何故か毒の蛇は勇者が一時撤退しても追うことをしない。休み休み戦い、ついに九日目の朝に最後の首は聖剣により落とされた。それを見届けた勇者はその場で眠りに付いた。

 勇者が目覚めると、蛇の巨体は姿を消していた。残るのは薙ぎ倒された木々の切り株のみ。聖剣が勇者に語りかける。

「私を中央の切り株に突き刺せば、あなたの役目は終わります」

「それで毒の蛇を封印できるのですね?」

「八百年、毒の蛇は現れないでしょう」

 勇者は切り株に聖剣を深々と突き刺した。すると空に虹が現れ世界から蛇の毒が消えていった。こうして勇者は伝説の再来として語り継がれた。
 だがまた八百年後、毒の蛇は再び姿を現すのだろう。そして新たな勇者がまた伝説を紡いでいく。

 二百年後、誰もいないその場所に声が響く。

「あと六百年……」

 挿し木から成長した椿は、二股に分かれていた。

568以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/31(火) 01:06:47 ID:xRhkDFL2
私たち双子は似ているらしい。
鏡に映してるみたい、なんて笑われることもしばしばあったけれど、
私たちからすればお互いが全くの別人で、その言葉が理解できなかった。

「私たちって似てないよね」
「似てた方が嬉しかった?」

紙パックの残り少ないジュースをストローですする姉と、サンドイッチを両手でつまんで食べる妹。
保育園に入園してから大学に進学するまで同じ部屋、同じ教室、同じ友達と過ごしてきたのに、
食事の作法のひとつを取り上げてもこんなに違っていた。なのに周りは「似ている」と笑うのだ。
示し合わせたわけでもなく希望した大学の学部まで被ったときは「ああ、一卵性の運命なんだなあ」と
妙に納得してしまったけれど、それ以外に一卵性を意識する機会なんてまったくと言えるほどになかった。

「おしとやかに食べるよねえ。モテたいんだ?」
「違います。人の目を気にするべき場所だからです」

顔を覗き込んでからかわれても妹は雰囲気を崩さない。
それどころかテーブルに置いていたハンカチで姉の汚れた口元をさっと拭い取ると、
慣れた手つきて照り焼きのソースがついた面が内側に入るように畳んだ。
こんなに出来た子が姉に似ていると言われてしまうのが可哀想だと思わずにはいられない。

「私にはもったいないくらいのいい人紹介してあげるよ」
「なら私にも釣り合わないよ」

サンドイッチを食べ終えた妹は、ハンカチを開いて口を拭いた。
「気取らない優美さ」。今の妹には、好きだと言っていた赤いツバキの花言葉がそのまま当てはまる気がした。
じゃあ、今の私にはなんの花が似合うのか。椿に似た花を咲かせるサザンカだろうか。
気になってサザンカの花言葉を検索にかけると、答えを見つけるよりも早く妹がため息交じりに言った。

「私よりもきれいなのに、お姉ちゃんってもったいないよね」

569以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/31(火) 12:57:59 ID:nFfCAds.
>>567
oh…マッチポンプ…
オチは好きなんだが、椿である必然性が薄いのが残念
例えば油によって灯りが出来る→闇を祓う、とかいうこじつけや
首が落ちるように花ごと散る様及び血のように真っ赤な色から、犠牲者の無念の象徴とされる、なんて描写があれば
伝説に説得力増すし、最後の不穏さが増したんじゃなかろか

>>568
サザンカの花言葉:困難に打ち勝つ・ひたむき・素直・飾らない心
謙譲・あなたがもっとも美しい(赤)
愛嬌・あなたは私の愛を退ける(白)
…ほほう
コンプレックスの描写、花言葉の使い方が上手い
似ていないと思ってるだけで根っこは似てる気がするなこの双子

570以下、名無しが深夜にお送りします:2017/02/01(水) 00:48:33 ID:4KpRldZM
>>569
感想どうもです。見直しもしたのにご指摘されるまで完全に失念していました。
八岐大蛇を退治したスサノオの奥さんが二股の夫婦椿を植えたという逸話を見て衝動的に書いたせいだと思います。
今後は説得力を出すための描写を忘れるようなミスをしないように気をつけたいと思います。すみませんでした。

571以下、名無しが深夜にお送りします:2017/02/02(木) 20:28:35 ID:nF8xgnAc
そ(ry
お題↓

572以下、名無しが深夜にお送りします:2017/02/03(金) 00:42:51 ID:U0TimGTE
鬼やらい

573「鬼やらい」:2017/02/04(土) 01:44:16 ID:BwQylNTs
 人々が恐れを抱くほどに鬼は力を増す。だがそれも今は昔の話。
 鬼と聞き今の人々が思い浮かべる擬人化された姿は、人々から恐れを取り除くために陰陽師たちが世に広めたものだった。陰陽師たちは勝った。擬人化された鬼を追い払う儀式すらただの恒例行事に成り果て、鬼たちは陰陽師たちの広めた逸話のとおりの弱点を抱えることになったのだ。

 鬼は陰陽師に敗れたが、鬼は不幸そのもの。鬼は消えない。人々に不幸をもたらす己の役割を忘れたりはしない。

「おい! しっかりしろ! こんな見え見えの誘惑に負けるな!」

「くっ、この俺がこんな誘惑に、ひとつふたつみっつ、ああっ!?」

 若い鬼が庭に撒かれた煎り豆を数え始める。そして風が吹き豆が動き最初から数えなおしだ。若い鬼は己の役割を忘れ楽しそうに豆を数えている。
 酒、嘘、柊、申酉戌、そして豆。陰陽師に負け、背負うことになった様々な弱点。その弱点を突かれない限り己の役割を忘れたりはしない。しかし、今の世にはその弱点が多すぎる。

「若い奴は誘惑にやられたか。だが負けるわけにはいかない。この家の住人を不幸に」

「うわぁ!? いっ、犬だ!」

 窓から見える小型の座敷犬に怯える鬼たち。犬がお腹を空かせキッチンに餌を強請りに行っても鬼たちは怯えるばかり。勇気を振り絞り家に侵入できた鬼はわずか三名。

「お前らふざけんなっ! ちゃんとしろ!」

 飲み酔っているこの家の大黒柱の手元の酒に吸い寄せられる二名の鬼。そして大黒柱の酔った勢いに任せた大法螺に倒れ臥す。僅かな時間で残る鬼は一名のみとなってしまった。

「絶対に、絶対にこの家の者を不幸にっ」

 酒を飲んでいる大黒柱に不幸は届かない。だが鬼の誇りにかけてせめて一人でもこの家の者を不幸にしなければならないと決意し、最後に残った鬼は扉をすり抜ける。

「バレンタインとかマジ死ねよバレンタイン。チョコとか太るし、お菓子会社必死すぎ乙」

 鬼は目を逸らし部屋を出る。鬼は再び敗北した。だが最後に残った鬼だけは一人分の不幸により己が力を増していた。仲間から褒め称えられるが、その鬼の表情はおこぼれで一等賞を貰ったかのような微妙な表情であった。

574以下、名無しが深夜にお送りします:2017/02/05(日) 15:53:49 ID:9NRsXTTI
鬼ですらそっ閉じする嘘か…哀しいな…

575以下、名無しが深夜にお送りします:2017/02/10(金) 00:38:59 ID:ReLx1ed6
高校の入学式から一週間も待たぬ間に、兄の紹介によってとある部活の
マネージャーになった私でございますが、なにやらここ数ヶ月間で部活内の
雰囲気が変わりつつある気がするのです。

以前と何が違うのかと聞かれてもはっきりとお答えができないのですが、
先代の部長が抜けてから部活内の空気が落ち着いてしまい、目先の一勝に
対しての執着が剥がれかけているように感じ取れました。

「先代たちが築いてきた歴史が途絶えてしまう恐れがあります!」

危機感に駆られた私は、バインダーを机に打ち付けて立ち上がりました。
全国大会に出た回数こそ指折りで数えても片手に収まってしまいますが、
県大会で万年二位、稀に一位の成績を維持している私たちは、同地区内の
他校からすれば強豪校と称えられる立場に居るのです。居てしまうのです。

「そんなことを言われてもねえ。俺たちは楽しく部活がしたいだけだし」

ミーティング中だというのにガムを噛みながら話すのは現部長。
机の上に足を投げ出してスマートフォンを弄っている姿に、高校男児の
青春に欠かせない勝利への飽くなき渇望は見て取れませんでした。

「楽しく部活がしたいんですよね」

『自分に厳しく、部活は楽しく、ご飯は美味しく』が先代たちのモットーで、その言葉は
入部申請書を渡される前の見学希望を行っているときに聞かされているはずです。

「あー、そういうことね。だから俺の凡ミスで先輩方の引退試合が早まったのはメンゴって」

部長はいけしゃあしゃあと言ってのけました。この人の陰謀で負けた後、兄は部員に頭を下げたのです。
負けた後の見栄っ張りの笑顔を思い出して、私はあまりの悔しさにバインダーを強く握りしめました。

576以下、名無しが深夜にお送りします:2017/02/12(日) 00:28:41 ID:qmcYgHBQ
次かな?
お題↓

577以下、名無しが深夜にお送りします:2017/02/13(月) 08:37:57 ID:byf1CSmk
チョコ


時期だしな

578「チョコ」:2017/02/14(火) 22:23:10 ID:pP7jtXR6
 夏休みの自由研究。ボクはクラスメイトの観察日記をつけることにした。明日から色んな場所に行って、見かけたクラスメイトのことを書いていこうと思う。

 初日から凄いところを見てしまった。名前を出したらイジメになりそうだから書けない。ボクは変には思わない。周りは気にせず、二人が幸せになりますように。……見たぞ?

■■■■■■■■■■  ■■
  ■■■■■■■■■■
    ■■■■■■■■■■

 三日目、幼馴染のアイツが遊びにきた。そして勝手に観察日記を見てチョコアイスを落とした。二日目に書いたことが消えた。しかもそれを「バレンタイン、プレゼントってことで」と。アイツの中では今はまだ寒い季節らしい。くすぐってから布団で簀巻きにしておいたた。

 四日目、アイツそのままボクの家に泊まった。勝手にボクのバニラアイスも食べていた。「ホワイトデーのプレゼントってことで」とか。ヘッドロックかけておいた。

 〜(中略)〜

 夏休み最終日、なんでまたボクはコイツと一緒にいるのかわからない。クラスメイトの観察というよりもコイツの観察日記になってる。

 けど、アイツは最後の最後に、冷凍庫の奥をよく探してみてと言ってきた。冷凍庫の奥には、ラッピングがくしゃくしゃになって砕けたチョコがあった。手紙も入っていた。アイツの文字だ。信じられないくらい真剣な言葉が書かれてた。

 今、夏休みだぞ。家は冷凍食品多いから、こんな奥に入れたら気付けないよ。明日から新学期だ。アイツは何ヶ月も悩んだんだ。夏休みの最後だから勇気が出せたんだ。
 ボクとアイツは似ている。アイツは何かないと素直になれない。チョコも素直には渡せない。夏休み最後の日という魔法の日だから言えたんだ。ボクもきっと、今日しか言えない。
 外は夜で危ないって言ってたけど、どうしても今日しか言えない気がした。

 きっとボクたちはあんまり変わらない。でも日記を読んだ先生なら少し変わったってわかる。先生にだけ最初に教えます。だから先生、どうかこの日記は誰にも見せないでください。
 でないと登校日のアレ、バラします。

579以下、名無しが深夜にお送りします:2017/03/24(金) 11:14:01 ID:IzJtwU7Q
一月も止まってんのか
お題↓

580以下、名無しが深夜にお送りします:2017/04/02(日) 15:47:05 ID:nsfNRUtE
明かせない嘘

581「明かせない嘘」:2017/04/08(土) 01:06:16 ID:iWrTyoxU
 家族に嘘をついてしまった。今となっては明かすことのできない嘘だ。何故なら、

「なんであの子が……」

 死んでしまったからである。家族に私の姿は見えないし私の声も聞こえない。何故私は婚約者ができたから今度連れて行く、なんてすぐにバレる嘘をついてしまったのだろう。そして調べればすぐに嘘だとわかるだろうに何故家族は未だにそれを信じているのだろう。

「あの、婚約者の方のご親族が同時葬式を提案されているのですが、どうしますか?」

 ん? 何やら不穏な話になってきた。私の婚約者の親族? 同時葬儀?

「最期までこの子を守ろうとしてくれた人ですもの。二人もきっとそれを望んでいます」

 最期まで、私を守ろうとした? 私は、一人でバスに、

「この鍵、たぶん合鍵だと思うのでお返ししますね」

 やめて、やめてっ! 嘘ついたことは謝るから、だから同時葬儀なんてやめて!

「きっと、二人仲良く旅立ってくれることでしょう」

 私の姿は誰にも見えないはずなのに、後ろから視線を感じる気がした。

582以下、名無しが深夜にお送りします:2017/04/11(火) 21:54:40 ID:YdOfsw4A
ストーカーか?こええなあ

細かいけど、同時葬式より合同葬式のが良いかな、合同結婚式のごとくw

583以下、名無しが深夜にお送りします:2017/04/12(水) 23:10:57 ID:smlX6Fx2
>>582
感想どうもです。はい、ストーカーです。
合同葬式とするとバス事故だから他の人たちも一緒に埋葬するイメージとなってしまうかなと。
今思えばバス事故という設定自体を変えて死者を二人だけにすればよかったんですよね、次はもう少し頑張ります。

584以下、名無しが深夜にお送りします:2017/06/07(水) 00:40:48 ID:09JfhA7E
だいぶ滞っているね
お題↓

585以下、名無しが深夜にお送りします:2017/06/11(日) 20:41:20 ID:KDeEW5ks
梅雨

586「梅雨」(1/2):2017/06/12(月) 20:24:38 ID:da6ifwd.
 時に、雨が長く続く。暑い季節の前にやってくる。体が冷えるが、食べ物は多くなる。だが食べ物よりも楽しみにしていることがある。今日も、あの場所へと行く。

「やあ、おひさしぶり」

 あいつはいつも高いところにいる。この季節はずっとぶら下がっている。だから誰が来てもすぐに挨拶してくる。あいつより先に挨拶してやりたいが、あいつには熱がない。いつも先に見つけられてしまう。
 今日も、あいつと話をする。

「今年もカエルを食べにきたのかい?」

「何も食べない奴は気楽そうでいいな」

 軽口を叩きあう。それが楽しい。体は冷えるが、この季節は毎日のように通う。カエルを食べにくるという言い訳を用意して、次は何を話そうかと考える。冬眠中もよくあいつの夢を見る。

「君は、長生きするんだってね」

「変な虫や鳥よりも生きると思うけど、そっちは生きてすらいないだろ」

 長く生きた他の蛇は、結構死んでいる。あと何回かこの季節がきたらきっと自分の番だ。最初から生きていないあいつを残して死ぬことになる。

「生きてないんだから寿命もないんだろ? 羨ましい」

「君は自由に動けるだろう? 自分にないものは羨ましいものさ」

 どうでもいいような話ばかりを楽しむ。今日は少し寂しい話になったけど、明日もまたこよう。死んであいつに会えなくなるまで。そして、あいつの下で死のう。そう思っていた。

587「梅雨」(2/2):2017/06/12(月) 20:26:11 ID:da6ifwd.
 雨が続いていた。挨拶が聞こえない。あいつがいない。まだ雨が続いているのにあいつがいないなんておかしい。冷える体を動かしてあいつを探す。探して、みつけた。初めて近くで見たあいつは、泥だらけでボロボロだった。

「よう」

「……あぁ、こんにちは」

 初めて先に挨拶できた。けど、こんな形でなんて望んでなかった。

「もうお前自由じゃん。よかったな、喜べよ」

「そうだね、じゃあ、行きたいところがあるんだ。連れて行ってくれよ」

 何かを運ぶなんて、今まで全然やったことがなかった。泥だらけのあいつをくわえて、雨の中を行く。あいつは、晴れが見たいらしい。空が見たかった。雨の空はもう見ることができたから、晴れの空が見たい。
 晴れた場所になんて連れて行けない。けどこのままここにいたらあいつは人間に捨てられる。誰にも見つからない場所まで運ばないと。そう思って、あいつを巣に運んだ。

 雨は続く。もうあいつの体はグシャグシャだ。きっと、長くは持たない。命のない物に終わりが来るなんて考えもしなかった。雨だっていつか終わるって知っていたのに。
 翌日、晴れた。あいつはもう何も話さなかった。暖かい空の下で、あいつの残骸の傍で語りかける。見えているか? 晴れの空。
 もう、雨を楽しみに思うことはなくなった。

588以下、名無しが深夜にお送りします:2017/06/15(木) 19:12:04 ID:DgRQo.Wc
>>586 >>587
二回読み返してようやく蛇だと気付いた。わりとはっきり書いてあるのに……
読み方が雑になってるな……気をつけます

読後感が悪くない。梅雨のお題らしく、寂しげな結末になってるのも好印象。梅雨時の晴れの日という普通は前向きな要素が、別れを際立たせているのも面白いと思う。
地の文に短文が多いのは意図してなのだとは思うけど、もう少し改行すると読みやすくなると思う。……こういった書き方の文学作品に難癖付けるような感想だけど、正直他には改善点は見当たらなかったです。すっげえ
拙い感想ですがご容赦を。何せ初レスなもので……

589以下、名無しが深夜にお送りします:2017/06/15(木) 21:07:01 ID:zU7wks86
>>588
感想どうもです。お褒めいただけて嬉しいです。
改行に関しては、あまり改行しすぎると2レスにも収まらなくなっちゃうので。
もっと読みやすい形にできたのかもしれませんが、申し訳ないです。

590以下、名無しが深夜にお送りします:2017/06/18(日) 10:56:38 ID:OdstTLRw
僕は君の事を想う。
去年会った君とはまた別の、新しくて少し懐かしい君を。

去年の君は、それまでと同じようにやっぱりきまぐれで、冷たい時もあれば温かい時もあって。
人を笑顔にしたり、ため息をつかせたり。時に傷つけてしまう事もあったね。
それでも僕は毎年、君の事を想う。今年の僕は、今年の君を。

空調の利いたオフィスビルの中から見上げる空は、春の名残なんかこれっぽちもない抜けるような青空。
でもこの空の向こう、ずっとずっと南の空の下。君は今まさに、僕の方へと近づいてきている。

こんな風に言うと、湿っぽくて温かい君は「ありがとう、私も早く逢いたい」って言ってくれるかもしれない。
それともドライで冷たい一面もある君は「自意識過剰ね」って突き放すのかも。

ビルから外に出ると、からっとした暑さが僕を襲う。でもこれは、君に出会うために必要なこと。
大きく息を吸い込んで、排気ガスの臭いの中に君の香りを探す。
湿って、温かくて、懐かしい、あの夏の雨の香りを。

街頭に設置されたモニタでは気象予報士が当たらない予報を喚き散らしている。
そしてこの街に君がやってくる事が宣言された。

僕は君の事を想う。今まさに、生まれたばかりの君を。
おめでとう。おめでとう。お誕生日おめでとう。


「ハッピーバースディ、梅雨」

591以下、名無しが深夜にお送りします:2017/06/18(日) 14:06:28 ID:Qwy9QgiY
読みやすいね
途中でネタに気づいて、にやっとなったw

>そしてこの街に君がやってくる事が宣言された。
勿体をつけて「そして」のあとに「、」とか「ついに」とか入ってたら、好みだったかな

592以下、名無しが深夜にお送りします:2017/06/19(月) 21:10:03 ID:8ygAbkNE
>>590
電車の中でふふってなったじゃねーか!

593以下、名無しが深夜にお送りします:2017/06/19(月) 21:45:28 ID:28RzlaGg
今まさに生まれたばかり、という表現と去年の、って表現を両立するのがいい感じ
でも梅雨にこれだけ思い入れがあるなら毎年の梅雨明けの寂しく思う心情とかも書いたほうがより今の梅雨への思い入れが強く感じた気がする

他には視覚と聴覚と嗅覚と色々な感覚に結びつけた描写が割りとクオリティ高くて好きかも

594以下、名無しが深夜にお送りします:2017/06/22(木) 04:38:21 ID:zmtSALaU
羽を回す換気扇越しにしとしとと降る雨音が聞こえてくる。
雲のかかる空は薄暗く翳り、多湿になりがちな梅雨の時期は、どうにも気分もつられて陰鬱気味に下がってしまう。

「私としては、まだ希望が残されていると思うのです」

台所に立つ同居人が寸胴鍋を見つめて唾を飲み込む。
おそるおそる蓋の取っ手に手を延ばしてみるものの肝心の決心はまだ準備中のようで、すぐに手をひっこめる。

「諦めろ。二日も火を通してないんだからとうにカビてら」

しつこいほどに「数日間じっくりと煮込んだカレーを食べたい」と駄々を
こねるから作ってやったのに、毎朝毎晩の過熱を忘れていたらしい。
ペットをねだる子供みたいに「ちゃんとお世話するから」なんて甘えたあの潤んだ瞳はいったいどこに捨て去ってきたのか。
言うは易しの責任感の希薄さは、むしろ子供と同程度だろう。

「あ、あの」

「新しいのなんか作らねえぞ。そして、まずそれをお前が処理しろ」

「ううぅ……」

雨音に混じってかき消えそうな弱った呻き声。まるで俺が悪者だ。
外を吹く風に急かされて雨粒がガラスをバチバチと叩く。

「……ったく。片付けてやっから、どけ」

脇の下に手を差し込んで持ち上げ、布団の上に投げ飛ばす。
軽々と飛んで行った同居人は、うつ伏せに落ちてからぴくりとも動かない。
案の上白い毛を生やしたカレーをまったくやる気なく処分していると、冷めた声で「またカビさせちゃったね」と聞こえてきた。
片付けを止めて布団に倒れ込み、かびた同居人を抱きしめる。これだから本当に、梅雨ってのは苦手なんだ。

595以下、名無しが深夜にお送りします:2017/06/23(金) 02:00:29 ID:/GFlDqII
梅雨といえばカビ
同居人ということは一緒に住んでるはずなのに代わりに加熱はしてあげない
でも片付けるのはやってあげる、もしかして少しの間家を空けてた?
陰鬱なのは梅雨のせいだけじゃなくて会えなくて寂しかったからなのかなとか思うと、より微笑ましくて味が出ていいね

596以下、名無しが深夜にお送りします:2017/07/12(水) 00:04:40 ID:f7t8Lap.
そろそろ次いきますか
お題↓

597以下、名無しが深夜にお送りします:2017/07/12(水) 00:29:35 ID:Kg6U4B4I
うた

598「うた」1/2:2017/07/13(木) 21:30:20 ID:YSKM/2vI
 声を失った。今は機械仕掛けの人工声帯もあるから声を失う人なんていないと思っていたのに、健康なはずの喉から声が出ることはなかった。
 魔女に声を差し出した人魚姫を思い出す。もしも魔法で声を奪われたのならこうなるのかもしれない。
 ストレス性の失声症。そう診断された。一体どんなストレスを抱えているというのか。家族関係は良好、友人は少ないけど孤立はしていない、将来への不安も特別強いわけじゃない。なのに何故声を失うほどのストレスがあるというのか。医者が信用できなくなりそうだ。

「何に悩んでいるのか、わかるといいね」

 両親も、その程度しか言えない。原因も何も分からないのだから仕方がない。医者がストレス性だと診断した以上、素人が自己判断でそれを否定するのは危険だ。だから両親は仕方ない、けどどうしても自分ではそんなに強いストレスを抱えているなんて思えない。
 今はテキスト読み上げアプリでなんとかカバーしたりしている。クラスメイトも面倒そうな表情ながらも理解してくれた。ラインのやり取りも問題ない。声を失っても、案外問題なく暮らせた。
 声を失った影響は、ただ生活が面倒になっただけ。ただ変な目で見られるだけ。医者は自然治癒するから安心していいというけど、それが本当なら早く治って欲しい。

 そう思いながらも時は過ぎ、声を失った原因もつかめず治りもしないままに数ヶ月が過ぎる。自然治癒といっても個人差もあり年単位が必要だったりするらしい。
 とはいうものの、正直もうどうでもいい。面倒なだけで声が出ないことでそんなに不便に思うこともない。周囲は声が戻るといいねの一点張りだけど、最近は別に治らなくてもいいかなとすら考えている自分がいる。
 テキスト読み上げアプリがない時代ならともかく、今の時代で何故声の有無が重要視されるのかわからない。現に問題なく暮らしているのに、それでも声が戻るといいねとしか言われない。そんなに同情したいの? 皆が優しいのはわかったからもっと他の困った人に同情して助けてあげて欲しい。

 あと一月で一年が経つ。声は戻らない。けど、よく観察していると皆の様子が少し違う。正確に言うなら、声を失う前の皆と比べると少しずつ様子が違う。同情されているというのとはまた違う部分で、違う。
 先生は昔鈍かったはずなのに何故かイジメのような雰囲気に敏感になった。馬鹿やっていたクラスメイトは無難な話題しか話さなくなった。病院に行ったりでお金がかかっているのに、両親は何故かお小遣いを増やしてくれた。どれも、どこかおかしい。
 皆のおかしさに気付いてから、皆の言葉が金箔のように感じるようになった。キラキラしてて綺麗だけど簡単に破れてしまうような、薄い言葉に。何故だろう、皆の変化にはきっと理由がある。一年経つまでに調べてみようと思う。

599「うた」2/2:2017/07/13(木) 21:32:08 ID:YSKM/2vI
 一週間観察してみたけど、わからない。探偵でもない素人が調べても分かるはずがないのかもしれない。でも、気になる。
 少しでも手がかりはないかと昔のメールを読み返すことにした。日付を遡っていくと、大体一年前で途切れる。何で途切れたのだろうと考えるが、昔はガラケーを使っていたからこの時に機種変したのだろうと、納得しかけて、また疑問。何でそんな最近のことを忘れていたのだろう。声を失った時期と被るから、そのせいだろうか。
 机の引き出しから昔の携帯を探し出す。随分奥にしまわれていたそれは既に充電が切れていた。充電器は見当たらないけどガラケーの充電器くらいコンビニにも売ってる。使い続けるわけでもないから適当に買ってきて、早速中身を見る。見て、妙にメモ帳を使っていることに気付いた。

 『ずっと好きでいれば結ばれる。そんな世界なら結ばれたかな? 簡単に別れる人に恋人ができるのに、神様になれたらそんな人より一途な思いを応援したい。そんな人よりずっと愛し続けてみせるから。神様、どうか死んでください。一途な誰かが新しい神様になりますように』

 身に覚えのない詩(うた)が打ち込まれていた。うた? このポエムが? そう、ウタだ。覚えていないのにこのポエムが歌だと知っている。書いたときはただの詩だった。けど、あの日に詩は歌になった。急に雨に降られて、携帯が無事か確認しようとして、それを突然取り上げられて、返してもらえないまま、詩は歌になった。皆の前で。
 気が付けば歌は別人の悲鳴に変わっていた。右手の平に小さな赤い痕があった。ペンの後ろを手の平に、ペン本体を中指と薬指の間から突き出るように握って、拳を突き出す。ペンを深く突き刺すための握り方なんて何で知っていたのだろう。その瞬間まで意識もしたことない知識が無意識に発揮されたから、気付いたときに一瞬何があったのか自分でも飲み込めなかった。

 両親が急にスマホを渡してきたこと、声を失っただけなのにしばらく学校を休むように言われたこと、医者が無意味とも言える質問を何度も繰り返したこと、声を失っただけなのに皆が執拗なレベルで親切になったこと、最低限のデータしかスマホに移されていなかった事、一人少ないクラスに疑問を抱かなかったこと、記憶のない一月があるのに疑問に思わなかったこと、何故、声を失ったか、皆が悩みを自覚し声を取り戻せるといいねと言い続けた理由、あんなに好きだったあの人の事を今まで考えなかった理由。

 ――そんな真実を、思い出して、気が付けば右手に、ペンを――
 ――耳の奥で、焼きつくように、ウタが、リピートし続けている――

600うた:2017/07/13(木) 22:24:38 ID:MTx./ko6
 ウタの好きな彼女に愛を訴えようというのだから、僕もやはりウタをウタわなければならないだろう。
 しかし歌えども詠えども謡えども、どうにも上手く伝わらない。
彼女を謳う胸の高鳴りが、宴のように騒いでいる所為だ。
 水面をたゆたう泡沫のように、想いが先へ進まないのだ。
 自分の魅力を疑いながら、それでも彼女にウタい続ける。
 今日は歌おうか、詠おうか、唄おうか。

601以下、名無しが深夜にお送りします:2017/08/15(火) 01:36:33 ID:SDs16rLo
勢いも死んでるし惰性で行こうぜ
そ次題↓

602以下、名無しが深夜にお送りします:2017/08/15(火) 09:23:29 ID:fFiVcFTk
お盆の親戚

603「お盆の親戚」:2017/08/17(木) 22:33:33 ID:vb611qhE
「まずいっす。こんな、こんな……」

 パソコンのモニターの前で硬直する。目を見開きその表情が歪む。
 まさにピンチ。誰が見てもただ事ではないと判断するような顔色で何度もモニターを確認してはそれが間違いであって欲しいと願い、その度に現実を突きつけられ絶望する。

「お盆の親戚、ちょっと遠いから気軽に行けなくて、今年もやっぱり行ってないのに、このお題」

 書いてみようという気持ちを真正面から叩き折られ、キーボードに突っ伏す。そしてお題を取った人物に身勝手な恨み言を散々吐き出した後に自己嫌悪で再び崩れ落ちる。お題を出してくれた感謝ならともかく、お題を出した人にとって責められるいわれはない。
 やる気をなくしダラダラと寝転がっていると、思いついた。自分の体験をモデルに出来ないのならば他人の体験をモデルに書けばいい。

「こんな時こそ先輩の出番っす! このボクの役に立てるなんて先輩は幸せ者っすよ! うん」

 無駄に自信満々で自意識過剰な発想に突き動かされるようにしてメールを打つ。まだかまだかと返信を待っていると、ほどなくしてメールが届いた。そこには一言、こう書いてあった。

「メシマズの影響で親戚の家には、いけない」

 一言「ごめんなさい」とメールを返し、無表情のままに他の誰かの作品か、次のお題を待つことにした。

604以下、名無しが深夜にお送りします:2017/08/18(金) 00:46:44 ID:FcnESL8Q
やめておけばよかった、なんてのは薄っぺらい反省だと思う。
既読のつかないLINEを眺めながら、私は後悔の溜息をついた。

大学に進学を決めた姉貴を東京へと見送ったのが五年前。
都会に関する噂話でいいものを聞いた試しがなかった私は、
田舎から離れようとする姉を必死になって説得しようとした。

ひったくりや痴漢の類は日常茶飯事。
田舎から出てきたお上りは都会人の食い物。
打ちっぱなしのコンクリートに囲まれた生活に憧れるなんてまともじゃない。

どんな言葉をぶつけても姉貴は表情を崩さなかった。
感情に任せすぎた訴えには姉貴に対しての暴言も交じっていたかもしれない。
それなのに私の一方的な訴えを黙って聞き続けた姉貴は怒ることもなく、
たった一言、「知らないから怖いんでしょ」とだけ言って荷造りに戻った。

LINEの履歴を辿りながら遠く離れた姉貴との記録を反芻する。
オシャレなバーを見つけたこと。綺麗な色のカクテルの写真付き。
都会にだって自然が多い公園があること。はしゃぐ子供たちの姿。
大学の先輩と付き合いだしたこと。恥ずかしそうに笑う男の人。

『姉貴なんか帰ってくるな』

姉貴は都会に明るいものを見ていて、本当にそれがあった。
だけど私は受け入れることを拒否して理解しようとしなかった。
たぶん姉貴は今年も帰ってこない。私が言ってしまった通りに。
立ち上がりかけて視界がくらみ、手のついた先に置いてあったコップをはじく。
こぼれたジュースはテーブルに広がって、その端からカーペットへと滴り落ちる。
もしやり直すことができたらなんて都合のいい妄想を繰り返しながら、
ジュースを吸い取るカーペットを見つめ続けた。

605以下、名無しが深夜にお送りします:2017/08/18(金) 00:56:52 ID:FcnESL8Q
>>603
ノンフィクっぽい感じが面白くて好き
後半の切ない本音っぽさもシュールで好き
お題は出す側も出される側も難しいけど書けたら楽しいもんよね

606以下、名無しが深夜にお送りします:2017/08/18(金) 01:41:21 ID:aJ7mGnhk
>>604
帰ってこない親戚側の視点、なるほど。
こぼれた液体が戻らない様が後悔と重なる所とか、分かりやすいのにおしゃれな工夫ですね。

>>605
感想どうもです。お題には感謝するばかりです。本当です。本当ですよ?
他の人がどんな風に書いているのか想像する、ということをしてみるのが意外と楽しかったです。
今回のこの子は書けていませんでしたけど。次も誰かに褒めていただけるような文章が書けたらなと思います。

607以下、名無しが深夜にお送りします:2017/08/22(火) 00:59:00 ID:.XsV2kQQ
夏休みも後半戦が見えてきてるぞ
そ次題↓

608以下、名無しが深夜にお送りします:2017/08/22(火) 21:28:18 ID:70qzWbIU
制限時間

609「制限時間」(1/2):2017/08/28(月) 03:17:05 ID:H7G2QIvQ
 授業のチャイムが鳴る。次は現代文の時間だ。現代文の時間のはずだったのだが、何故か教師が和服で入室し、扇子で教卓を叩いて授業の始まりを告げた。今まさに、この場での最高権力者による気まぐれからデスゲームが幕を上げた。

「皆さんこんにちは現代文の時間がやってまいりました、教員の鹿井です」

 一気に授業というよりも休み時間に近い雰囲気に戻ってしまう生徒達。

「いい答えの人には座布団を差し上げます。悪いと取ります。座布団がなければ椅子も取ります」

 だが、いつもの授業と同じだと思ってはいけない。場合によっては座って授業を受けるという当たり前の光景すら遠いものとなる。絶対に避けなければならないのは、ジェノサイドの引き金となるような性質の悪い答え。

「人というのは普段答えられる問題でも制限時間がつくと急に答えられなくなったりしますよね」

「クイズ番組あるある」

「そこで皆さんには『制限時間』をお題に何か問題を作ってもらいます」

 生徒達に緊張が走る。

「その問題を聞いた後、で答えは? と訊きますので答えをどうぞ。制限時間は授業終了までです」

 誰も、手を上げない。急に言われてもそんな短時間で答えが浮かぶほどにこのような状況に慣れている生徒はいない。そして真っ先に答えを言うのは気恥ずかしいという独特な感覚もこの沈黙の要因となっていた。そしてそれが、悲劇を生む。

「田山先生全員の椅子取ってください」

「理不尽!? 待って、はい! はい!」

 鹿井の我慢の制限時間を越えてしまったようだ。ジェノサイドを回避するため咄嗟に挙手してしまう一人の生徒。こうなれば何が何でも答えを捻り出さなければ、椅子がなくなる。

610「制限時間」(2/2):2017/08/28(月) 03:17:50 ID:H7G2QIvQ
「はい。答えがあるのに絶対に答えられない問題とは何か?」

「で、答えは?」

「制限時間が1プランク時間な問題」

「プランク時間って言いたかっただけでしょ。まあいいや田山先生、倉野さんに座布団一枚」

 一人の成功を皮切りに生徒たちは少しずつ手を上げ始める。判定基準は意外と緩いのか、答えた生徒はほぼ座布団を貰っていた。そんな中、空気に乗せられお調子者の生徒が挙手をする。

「はい。この問題の制限時間は答える人によって変わります。この中では先生が一番少ないです」

「で、答えは?」

「制限時間=余命です」

「田山先生全員の全部持っていってください」

 地雷を踏んでしまった。しかしこの問題の制限時間である次のチャイムまであと僅か。少しの間立たされる位ならばどうということもない。既に生徒たちからは緊張感というものが抜け落ちていた。
 そしてスピーカーからは生徒たちが待ち望んだ音が流れる。

「では皆さん座布団も椅子もないようですが本日の現代文はここまでです。また来週」

 退室する教師と入れ替わるようにして、続く授業の教師が姿を現す。生徒たちが凍りつくのを尻目に、扇子が教卓に叩き付けられた。

「続いて数学の時間がやってまいりました。教員の合馬です」

611以下、名無しが深夜にお送りします:2017/09/24(日) 03:02:44 ID:5IAfWWf6
もう夏じゃないね
そ次題↓

612以下、名無しが深夜にお送りします:2017/09/24(日) 09:46:15 ID:fuRJpAUY
明治・大正

613{}:2017/09/25(月) 03:13:09 ID:xJgA0eSg
 犬は人類の友。犬と人間の関わりは西暦が始まるよりも遥か昔から始まったと言われている。
 猟犬として、番犬としての歴史はとても長い。ところが警察犬となると途端に最近の話になる。
 1896年、明治29年のドイツでのことだ。日本では大正元年にイギリスから購入した二匹が始まりとなる。

 当時の彼らは今のように犯人を追跡したり遺留品を探したりする役割というよりも、パトロールの友として防犯広報目的で運用されていた。その後戦争により一時廃止され昭和に至るまで警察犬が本格的な事件解決を担うようにはならなかった。

「もしも、その時代に生まれていたら、お前は幸せだったのかな?」

 警察犬の使命など忘れ、明治の終わりを悠々と散歩する姿を思い浮かべる。
 それとも警察犬が事件を解決した始めての例として名を残しただろうか。誇らしげな表情が新聞に掲載されたかもしれない。

 そんな、意味もないことばかりが頭をめぐる。

「偉かったな。先輩たちに沢山自慢してこいよ」

 初めての功績を褒めてあげられなかった不甲斐ない奴の事なんて忘れて、沢山褒めてもらえよ。

「先輩邪魔です。大人しくしててください」

「あっはい」

 両腕を骨折し、今回の功労者を撫でてやることもできない不甲斐ない奴の妄想は終了した。

614以下、名無しが深夜にお送りします:2017/10/24(火) 06:00:02 ID:XBIYBM4o
よし次いこう
そ次題↓

615以下、名無しが深夜にお送りします:2017/10/30(月) 02:29:29 ID:kB/LM24o
宇宙

616以下、名無しが深夜にお送りします:2017/11/01(水) 21:32:44 ID:fyLB7QdM
むかしむかしあるところに、ジャックというおとこのこがおりました。
ジャックはいつもそらをみあげて、よぞらのほしやおてんとうさまにむちゅうです。
ほしをつかみたい。おつきさまでうさぎとダンスしたい。でもどうすれば?
いくらなやんでも、いくらかんがえてもだめでした。
むらのちょうろうもだれもしりません、どんなほんにもかいてありません。

ある時ジャックはおもいました。
絵本のジャックと豆の木みたいにマメを植えよう。
高く、高く……ずっと高くのばして、それで星までとどかせよう!
ジャックはうらにわに豆をうえました。

豆の木は高く伸びていきます。ジャックの頭をこえ、屋根をこえ、でも星にはとどきません。
ジャックは考えました。考えて調べてまた考えて、分からない事は質問して、色々なことを学びました。

風で倒れないよう、蔓を硬くする方法を作り出しました。
飛行機がぶつからないよう、航空灯を設置しました。
空気がなくても育つように、太陽の光を電気に変えて貯められるように、まっすぐまっすぐ伸びるように、からみあう沢山の蔓の中を、弾丸のように列車が駆け抜けられるように。
何年も、十何年も、何十年も。夜空を見上げ、星に手を伸ばし続けました。

しかし、ジャックはついに星を掴むことは出来ませんでした。
豆の木に登って分かったことは、星はあまりにも遠くにありすぎると言うこと。
それでもジャックは諦めません。いつか、いつか自分の後ろを歩く誰かが――――

最期までそう言い続けたジャックの意志を継いだ誰かが今日も、36,000kmまでこの豆の木を昇ってくるのです。

星を掴むために。

617以下、名無しが深夜にお送りします:2017/11/02(木) 18:00:18 ID:rVlY302s
本当はかっこいい童話になっとるw
軌道エレベーター豆の木か…

618「宇宙」(1/2):2017/11/05(日) 02:06:33 ID:WIWPfjjU
 どこまでもどこまでも大地が続く世界。果てがない大地が続く世界。
 とある王は旅人に訊ねた。この大地に果てはあるのかと。この世界はどんな姿をしているのかと。

「さて、旅人はなんて答えたと思う?」

 付き合い始めて一月になるが、一体何度このような哲学的なようなそうでないような問いを聞いただろうか。軽く両手の指の数は超える。無論両手両足合わせてだ。

「そうだなぁ、まずその旅人は王様の質問の答えを知ってるの?」

「知らなかったら知らないって言うだけだから今回はそのパターンは考えません」

 果てのない大地を旅する旅人は大地に果てがないことを知っている。ならばひとつめの問いには果てがないと答えるのだろう。だが果てのない大地が続く世界はどんな姿をしているかは――

「旅をしているから、世界が丸くループしていることを知っている。だから旅人はそれを教えた」

「うん。現実ならそう。でも、本当に大地が無限に続く世界だったら?」

 今回の本題はこれらしい。本当に無限に大地の続く世界の姿とはどんな形か。

「空もどこまでも続くの? その上には宇宙も果てなく続くの?」

619「宇宙」(2/2):2017/11/05(日) 02:07:29 ID:WIWPfjjU
 無限の長さの大地という板に無限の長さの空を重ね、無限の長さの宇宙を重ねる。そんな形をしているのだろうか。
 しかし、本当にそんな世界だというなら、どのように大地に果てがないと知るのだろう。そこにある大地が無限であるという証明を、旅人はどのようにして行ったのだろうか。
 果てがない。だが果てを確認できないだけで本当は果てがあるかもしれない。大地が無限であることが真実だと仮定するこの場の二人とは異なり、旅人にはそれを証明する手立てなどないはずだ。

「――そうだね、本当に果てがないっていうのは想像しづらいから少しだけ現実に寄せよう」

「現実に寄せる?」

 まず考えるのは、宇宙の果てはどこにあるか。どこまでも広がる宇宙、その端に、大地がある。宇宙の中に星という大地があるのではなく、大地が宇宙を包み込む世界。

「こんな世界なら、面白いと思わない?」

 意味があるとは思えない問い。それでも自分なりに真剣に考えて答えを出してみる。なんだかんだでこの意味不明の問いを楽しんでいる自分がいるのだろう。ただ、一番楽しみなのは――

「そんな世界なら、旅してみたくなるかも!」

 楽しそうな、この笑顔を見ることだ。

620以下、名無しが深夜にお送りします:2017/11/05(日) 13:06:00 ID:uJkyIjIc
>>618-619
軽快な会話調が良いですね。
恋愛小説か青春を題材にした小説にありそうな文章だと思いました。

621以下、名無しが深夜にお送りします:2017/11/05(日) 20:43:45 ID:WIWPfjjU
>>620
感想どうもです。くだらない話でも楽しめる二人は書いているほうも気楽に書けた気がします。

622以下、名無しが深夜にお送りします:2017/11/07(火) 01:27:08 ID:Xvn7EHMU
陽が沈んで夜が巡ってくると、彼女は飽きもせず空を見上げた。
何をそんなに惹かれるものがあるのかと真似したこともあった。
けれども、満天の星空はいつもただ綺麗なだけで面白みなんてなかった。

「見えてるものが違うからかな」

星以外に見えるものなんて、ただ暗いだけの空しかない。
瞬いている星をまばらに散らしたような夜空の
大部分を占める、明るさなんて何一つない広大な
暗闇は、氷点下に保たれた恐ろしく寒い空間らしい。

「見上げてると安心するんだ。今日も私はちっぽけでしたって」

彼女は安心に和らいだ表情で空を見つめていた。
温かいお茶を手渡されたようなのどかな微笑みだった。
元気に白い歯を見せて活発に笑う姿をテレビ越しで
見せていた彼女とは思えない対照的な穏やかさは、
こちらが本来の性格に感じるほど自然なものだった。

「星にも寿命があるんだよ。超新星。爆発。どっかん」

とっくに使い古された表現だけれど、テレビに
映っていた彼女は確かに光り輝く星だった。
多くの人に明るさを振りまく、多くの星に紛れた星。
そのたったひとつの星の最後は、彼女の言葉通りに
誰よりも目立つだけ目立って世間を騒がせから消えていった。

「楽しかったけど、けど、宇宙は人の住める場所じゃなかったよ」

彼女の震える肩ごと胸に抱くと、ようやく地面を向いて涙をこぼした。

623以下、名無しが深夜にお送りします:2017/11/07(火) 23:44:54 ID:W2NmUmg.
>>622
芸能界を輝く星空のステージとたとえるのはよくあるけど、その負の側面まで宇宙でたとえるのは凄い。シンプルに凄い。

624以下、名無しが深夜にお送りします:2017/11/21(火) 20:05:56 ID:CclceaJk
2週動きないし、そろそろ次のお題っちゃう?


625以下、名無しが深夜にお送りします:2017/11/22(水) 23:48:46 ID:HjG28NUw
過去のお題の中から任意にひとつ選んで書く

626以下、名無しが深夜にお送りします:2017/11/23(木) 18:06:22 ID:eFu0YvWI
このクソスレをわざわざ掘り返すのか……

627「怖い話」:2017/11/25(土) 02:46:00 ID:fjsOt9Lw
 水の悪いとある町。水屋の百平は水を汲むために登る山で石を拾ってきては磨いて眺める趣味があった。綺麗に磨ければ暫し神棚にそれを飾り、新しく石を磨けば古い石は捨て値で小遣いに変えていた。
 ある日、百平がいつものように石を磨いていると手元を誤り磨いていた石を割ってしまう。すると石の中から毒虫が現れ百平に噛み付いた。
 百平はその場に臥しその命は尽きようとしていたが、百平の下に近所の悪餓鬼が訪ねてくる。悪餓鬼は拾った石みっつと磨いた石ひとつを交換する百平のお得意様だった。
 悪餓鬼は百平の指を喰らう毒虫に目をつけると神棚に供えてあった石を手に取り毒虫を叩き潰した。すると不思議なことに割れた石は砂となり指の形となり百平の手は元通りになった。
 百平は悪餓鬼に大変感謝して神棚の石を悪餓鬼に持たせ、いっそう心をこめて石を磨き神棚に石を飾るようにしたそうな――

○月●日
××府××市――村某金物屋で男性の遺体が発見された。
発見時点で既に死後数日は経過しており直接の死因はアレルギー反応によるアナフィラキシーショックであるとされるもアレルギーの原因は不明。
また遺体の一部が欠損しており欠損部位は今だ見つかっていないこと、未完成の金物一点が不自然に破損していることから警察は事件、事故両面から捜査を開始――
――また、最近ボランティア活動で男性と共に山へ登ったというDさんに話をうかがうと――

 ボクは学校では優等生と言われている。でも実は皆に内緒で悪いこともしている。
 ボクはスプレー缶が壊れたときのプシューって音が好きで、よくゴミ捨て場から缶を拾ってきては壊して音がなるかならないかを楽しんでから元の場所に戻している。
 大人に見つかったらきっと怒られるから誰にも見つからないような場所でこっそりやっている。
 自分で作った石斧はボクの宝物。何回も失敗しながら完成した石斧で缶を割ると凄く気持ちいい。
 今日も缶を拾ったから秘密基地で割っていこう。この缶は音がでるかな? 楽しみだなぁ――

628以下、名無しが深夜にお送りします:2017/11/25(土) 23:00:35 ID:Cc83zqUY
このクソスレをわざわざ掘り返したのか……

629以下、名無しが深夜にお送りします:2017/11/26(日) 00:08:37 ID:9SmyUFEU
真に申し訳ないことに安価とってしまったので責任は取らないとと思いまして、すみません……

630以下、名無しが深夜にお送りします:2017/12/18(月) 23:07:15 ID:dlyiAQ2M
流石にもう変えましょう。変なお題出してすみませんでした
次のお題↓

631以下、名無しが深夜にお送りします:2017/12/19(火) 15:47:08 ID:FSp9BzTM
灯台

632「灯台」:2017/12/20(水) 03:41:54 ID:9WJa9Bug
 説明しよう。この世界は危機に瀕していた。過去形だ。
 大いなる闇が現れ世界から全ての光を奪おうとしたが光の剣を振るう勇者により大いなる闇は倒された。
 だが大いなる闇はその強大さ故に倒れた後も夜という形で世界に残り続けた。
 全ての人々の中に睡眠という魔が根付き、人々の時間は大きく切り取られてしまった。

「光の剣の光を拡散して高い塔から放ち続ければ全て解決するんじゃね?」

 そんなノリで塔が建てられ鏡やガラス、歯車などにより空を巨大な光の刃で凪ぎ続ける仕掛けが作られた。勇者は喜んでその塔に光の剣を収めた。

 結論を言おう。全くの無意味だった。夜が消えても人々から睡魔が消えることはなかった。
 むしろ明るすぎて寝れないと苦情が来た。でも何か綺麗だったので年に数回、特別な日だけ祭りを行い塔に光の剣が収められることになった。

「そんな伝統のある塔なんだから、地震で倒壊したラッキーとか言うんじゃないよこの馬鹿!」

「えぇ、だって雨戸閉めてもまだ明るいし……てか大人たちが一晩中祭りで酒飲みたいだけ」

「うるさい! 普段ちゃんと稼いでる父ちゃん母ちゃんはあんたにとって勇者だよ! 敬いな!」

 自分を叱る親を見て、それでもやっぱり塔が倒壊してラッキーだったと思う。
 何しろ父親の臨時収入の出所が『闇祓う灯りの剣の台座となる塔』の再建という仕事なのだから。

「どうでもいいけど塔の名前長いよ。略して灯台でいいじゃん」

「この罰当たり!」

633以下、名無しが深夜にお送りします:2017/12/21(木) 21:02:13 ID:Az1vMx6A
このクソスレまだ続けんの?

634「灯台」:2017/12/21(木) 22:10:28 ID:5Ukbbvl2
 期待はしていなかった。久々の帰郷で感傷的になったのか、普段なら絶対にしないであろう思い出の場所巡りなんてのを始めたものの途中でやめようかと思ったくらいだ。とりあえず近いからという理由で向かったそのおんぼろ屋敷は子供の頃よりさらに老いていたがまだ生きていた。

「うわ!うまい棒5円のまんまじゃん」

 思わず当時の高揚感が蘇ってくる。たった5円。だが半額だ。謎のうまい棒のみ半額。すぐに売り切れるから学校が終わったらダッシュでここへ急いだ。5円のために。
 その田舎村の生態系が今も受け継がれているのかと思うと不思議な安心感に包まれる。と同時に、お会計をする時のひまわりのような笑顔が頭をよぎり、心臓が心地よいテンポを刻み始める。扉を開けようとしたが、変わり果てた自分がガラスに写り躊躇する。帰ろう。おんぼろ屋敷に背を向けるとクジラと瓜二つのゆったりとした時間を感じさせる目がこちらを見つめていた。

「いらっしゃい。今日は息切らしてないんだねえ」

「・・・夏休みだから」

「あーそうだったね」

 扉を開けてカウンターに向かうばあちゃんの後にいつも通りついて行った。いや、今日はペンギンみたいになった。店の中も昔とあまり変わっていなかった。あれ、商品名が読めない。

「ばあちゃん商品名滲んでて分かんないよ。書き直しときなよ」

「え?・・・そうかい。あとで直しとくよ。ふふふ」

 ばあちゃんは訝しげな顔をしたが、俺の目を見ると心底面白そうに目を細めて笑った。やはりお年寄りにこういうのは効く。なんてクールを装い、心の平静を保って視界を確保すると、奥の商品棚にはインテリアが飾られているのが見えた。

「あれ?イカゾーンは?」

635「灯台」:2017/12/21(木) 22:26:41 ID:5Ukbbvl2
左手奥にはイカ関連の駄菓子が一面にならんでたはずだ。あまりの種類の多さにイカゾーンと呼ばれていた俺のお気に入りの場所が。よく見ると右手奥のロシアンルーレットゾーンも無かった。

「もうないよ。あっても誰も買わないからねえ。子供がすっかり居なくなっちゃって」

 そうなんだ、の一言が出なかった。さっきまでここに来るのをやめようとしてたくせに胸が痛む。少子化の影響を最初に受けるのは田舎だ。言われてみれば当然のことだ。だけどそれだけで納得したくはなかった寂しい現実。

「おかげで毎月赤字だよ。大人買いのひとつやふたつしてっておくれよ」

 この陽気な感じが懐かしくて大笑いしてしまった。ばあちゃんは口の端をひくひくさせながらまた面白そうに目を細めた。

「じゃあここからあっちまで全部ちょうだい」

「1億万円ね」

「2万しかないや」

「ならうまい棒4本だけしか買えないねえ」

「じゃそれで」

 なぜか1万9980円のお釣りが返ってきた。99.9%OFFなんて聞いたことないぞ。俺はお釣りを財布にしまいながら、ある疑問を聞こうか聞かざるべきか悩んだ。けど、結局子供の頃のよしみに甘えてストレートに聞いてみることにした。

「ばあちゃんはなんでまだ駄菓子屋やってるの?」

636「灯台」:2017/12/21(木) 22:28:44 ID:5Ukbbvl2
「そうねえ。こうしてここに居ると時々、旅人さんが帰ってくるからね。やめるわけにはいかないのよ」

 ばあちゃんにそこまでの責任はないはずだ。しかし、俺は駄菓子屋という目印が無ければ子供時代に帰ることはできなかったかもしれない。都会の波に揉まれて、心が沈みかけていたからこそ、思い出の場所巡りなんて柄にもない行動に出たのだろうか。ばあちゃんの言葉がすっと染み込んできて俺は無意識のうちに感謝していた。 

「孤独でも旅人さん達を思えば寂しくなくなるの。いつか迷った時、帰れるようにを私がここを守ってるって思うと死んじゃいられないって元気が湧いてくるのよ」

 ここに来て良かった。ばあちゃんのしわくちゃな目尻を見て心からそう思えた。ばあちゃんは一流の灯台守だ。 
 ほんわかした空間に、ガラガラっと古い音が鳴り響いて俺は振り向いた。

「あ・・・」

「たーくん?」

「そうちゃんけ!?」

俺達は子供時代大陸に上陸した。

637以下、名無しが深夜にお送りします:2017/12/23(土) 00:54:28 ID:8lgCVS/w
サンタクロースなんかいない。
年齢不相応に本当のことを色々と知っている私は、夢のないやつだと言われてよく仲間外れにされてきた。
言動が子供っぽくない。可愛げがない。同年代から一歩引いた冷めた性格だと、大人たちはよく言った。

「私は悪くないんだけどなあ」

頬杖をついてココアをひと口含む。珈琲が苦くてまだ飲めない私は、こうして大人の真似っこをするのが好きだった。
口にたまった甘い海の中に少しでも苦いところがないものかと舌を漕ぐ。
牛乳に砂糖を足したお子様向けのココアなのだから、そんなものがあるわけない。
本物の珈琲が注がれたマグカップを傾けて飲むお兄さんを横目で盗み見る。
砂糖もミルクもシュガーシロップも使っていない正真正銘の珈琲。
どうしてあんなに苦いものを表情一つ変えずに飲めてしまうのだろうか。

「それって大人が悪いと思う?」

コップを置いてお兄さんは微笑んだ。私が好きなお兄さんの中で、たぶん一番好きな表情だ。
でもそれと同じくらい嫌いな笑顔かもしれない。だって笑顔の意味が分かってきてしまっているから。

「お兄さんがそうやって、私に難しい質問をするからいけないだよ」

テーブルに組んだ腕を敷いて頭を乗せる。下からお兄さんを見上げると、やっぱり年上なんだなと実感した。
私がその日の出来事を教えると、お兄さんはいつも不思議な質問をしてきた。
どれもが頭を使う内容で、お兄さんからすればまだ子供な私には意味を考えるだけで精一杯になってしまう。

「子供っぽくないと言う大人が悪いのかな。それとも大人びてきた君が悪いのかな」

今日のお兄さんはなんだかいつもより嬉しそうだった。
たぶん私がだんだんと変な方向に賢くなってきて、お兄さん好みに穿った視点で世間を見れるようになってきたからだ。
お兄さんの笑顔はそういう意味だ。私はまだお兄さんほど大人じゃないしえらくない。
珈琲の入ったコップに口をつけて眉をしかめると、お兄さんは楽しそうに笑った。

638以下、名無しが深夜にお送りします:2017/12/23(土) 00:56:19 ID:8lgCVS/w
思い付いたことを投げただけのフリースタイル
お題成分はとくになし

639以下、名無しが深夜にお送りします:2017/12/29(金) 12:53:42 ID:vu/R.rRk
いいね

640以下、名無しが深夜にお送りします:2018/01/02(火) 23:20:13 ID:dbOgreRI
「付き合ってあげましょうか」

顔を覆って唸っていると、頭の上から明るい声がした。
無邪気を声で表現した場合の模範解答のような声だった。
どうしてこんなにタイミングよく救済の手が差し伸べられるのか。
悩める者にとってその一声は、空腹に動けなくなったときに
与えられたひと玉の林檎のように感じられる――わけがない。

「お前はお呼びじゃない」

顔を隠したまま突っ張る。個人的には最も首を突っ込まれたくない相手だった。
こいつには個人的興味だけを的確に見つけ出す天性の嗅覚によって散々に苦しめられた。
癒えない傷を負わされた心は気配を感じ取るだけでチリチリキリキリと悲鳴を上げた。

「えー、だってどうせまた楽しくなるんでしょ」

根っこが腐り堕ちてそうな主観で語られると反論する気力も起こらなかった。
当事者にとって不幸以外のなにものでもないことを享楽にするのだからたまらない。
いったいどんな環境で育ったらこんなにも捻くれて育つのだろうか。

「今回ばかりは本当にやめてくれ。お前が絡むと拗れた問題がねじ切れる」
「諦めた方が早いのに。無理ってしってるくせにー」

追い払うつもりで言ったのに、何が面白いのかケラケラと笑い始めた。
歳の差を考えない無遠慮な手がわきまえず、髪の毛にわしゃわしゃとじゃれついた。
だからそういう人目を気にしない軽率な行動が誤解を生むのだからやめてくれ。
ほらもう視線が痛い。胃が痛い。逃げるように顔を伏せると、遠くの陰口が余計に鮮明になった。

だって周りが荒れているほど君のそばがよく落ち着くんだ。
まるで秘密の約束事をするように、他の誰にも聞き取れないような小声で言った。

641以下、名無しが深夜にお送りします:2018/01/02(火) 23:21:50 ID:dbOgreRI
みたいな

お題「内緒話」↓

642「内緒話」:2018/01/04(木) 19:05:53 ID:ds3NJXx6
 皆が内緒話をしているんだ。振り返るとなんでもないように振舞っているけど、分かるんだ。
 すれ違った人が、後ろを歩く人が、座っている人が、内緒話をしている。
 きっと嫌なことばかり話しているに違いない。皆、笑っている。

「い  しゃ  せ」

 内緒話はできても、お前と話す言葉はない。そんな嘲笑が透けて見える。
 見ていないところではハッキリと話していたのに、挨拶すらまともにしたくないのか。

「お 計   円   ま 」

 聞こえない。仕方がないから表示される金額を見て、その通りに支払う。

「           」

 とうとう何も言わなくなった。店を出る前に、また内緒話と嘲笑が聞こえた。
 店の外に繋がれている犬がこちらを見ている。
 しゃがんで撫でてやりながら、あいつらに仕返しをする。
 お前にだけ、内緒の話をしてあげよう。犬は、返事をするように首をかしげた。

643以下、名無しが深夜にお送りします:2018/01/21(日) 22:37:05 ID:2yHkzoG2
お題↓

644以下、名無しが深夜にお送りします:2018/01/22(月) 04:12:03 ID:.xL08G9o
ナルシスト

645以下、名無しが深夜にお送りします:2018/02/16(金) 01:08:53 ID:nb8bXdMg
「ごきげんよう」

屋上でひとり寝ころんで時間を潰していると、視界の端からおさげが割り込んできた。
長さの合っていないマフラーが鼻の頭をくすぐる。あまりにも絶妙な配置に悪意を感じる。

「ここに何の用だ」
「それは私が聞きたいんだけども。風紀委員長として」

眼鏡の奥で大きな瞳がギラリと光る。
お互いに望まない邂逅が増えたせいか、最近は特に肉食獣の表情が様になりつつある。
無論、そこに相手を震え上がらせる気迫がこもっているかどうかは別の話しだ。

「あーあ、せっかく休憩してたのに。『婦長』のせいで邪魔されちった」
「誰が『ふちょう』だ! 私は風紀委員長だ!」
「それを略せば」
「役職を略すな!」

苛立たし気に覗き込む顔を手で退けて、勢いよく跳ね起きる。
そして右足を基軸にして軽やかに婦長の後ろに回り込んで抱きこんだ。
予想していなかったであろう不意打ちに、腕の中で婦長がびくりとはねた。

「婦長は相変わらず不用心だよな。俺だから抱きしめるだけ済んだものの」

蛇に喉を噛まれたネズミのように、婦長は抵抗することなく内側に収まる。
年齢のわりには小さな頭を撫でると、シャンプーの香りがふわりとひろがった。

「よかったわね、私がか弱い美少女で。体育委員長だったら締め落とされてるところよ」
「叱るつもりなんかないクセによく言う。俺のことが好きだからいつも来てんだろ」

マフラーの半分を借りて首に巻く。風の少ない冬の空では雲がゆっくりと流れていった。

646以下、名無しが深夜にお送りします:2018/02/16(金) 01:10:03 ID:nb8bXdMg
消化してリフレッシュ
↓次題

647以下、名無しが深夜にお送りします:2018/02/18(日) 03:41:13 ID:YpezZsN.
残雪

648「残雪」:2018/02/24(土) 02:39:08 ID:hccBNE7k
「残ってない!」

 タイトルに反して悪いが、既に雪は残っていない。
 暦が春に移り変わるのと同時に雪は溶け去ってしまった。

「素直にバレンタインとかネタに書こう? な?」

「安価は絶対なんだよ! 何がチョコだ、ケツにチ○コ貰えやリア充!!」

 口汚いコイツはどうしても残雪というお題で書きたいらしい。
 仕方がないとキッチンに戻り戸棚の上を漁る。これで我慢してもらおう。

「……えっ、それ?」

「これで我慢しろ」

 夏の風物詩、カキ氷機が器に雪を盛った。
 無論、その雪はシロップかけて無理矢理コイツに食わせた。寒くても、知らん。

649以下、名無しが深夜にお送りします:2018/03/01(木) 20:02:37 ID:KySL4HE6
草にかぶさった雪を踏みつける。
手のひらほどもない残雪は土のつちのついた靴跡を綺麗にかたどった。

「ここはもうこんな季節になったんかい」

身の丈ほどもある銃を担いだ少年が言った。
そのすぐ隣。杵で突いたばかりの餅のような姿をした生物がぴょこんと飛び跳ねた。

「はやいね! もうあったかい季節になるんだ!」

興奮気味に大声で言った軟体生物は、少年の足に張りつくとずるずると昇り始めた。
体を這い上られる感触が好きではない少年はあからさまにため息をつく。
もちろん人間とはまったく別の感覚をもつこの生き物に感情など理解できるはずもない。
足を伝って背中を通り過ぎ、ついに頭の上にまで到達した白い生き物は、
遠くまでひらけた景色を見て、またぴょこんと跳ねた。

「頭の上で跳ねるな」

「すっごいすっごい! 僕の仲間が沢山いるんだ! あっちにも!」

賢くはないながらも抑えきれない感動を覚えた生き物が跳躍でもって喜びを表現する。
これまでも禁足事項として忠告をしてきた少年の我慢が限界を迎えるのはそれほど遅くはなかった。
体にひっついた時点ではたき落とすときもあるのだから、むしろよく耐えた方ではある。

頭上に居座る軟体な生き物を掴み取ると、すぐ傍の名残の雪にあらん限りの力を込めて勢いよく叩きつけた。

「ビャぎぃッ!!」

静かな森に悲鳴が響く。雪でなければ衝撃で体がはじけ飛んでいたはずだったので、それは少年の温情だった。
雪に紛れて全身を貫く激痛にもだえる白い生き物を置き去りに、少年は森の奥へと歩いて行った。

650以下、名無しが深夜にお送りします:2018/03/01(木) 20:03:29 ID:KySL4HE6
3月入ったし次奴↓

651以下、名無しが深夜にお送りします:2018/03/02(金) 00:03:56 ID:VAyS/HEI
イキ人形

652以下、名無しが深夜にお送りします:2018/03/10(土) 02:29:59 ID:QeyNLqCw
「おはようございます。今日の具合はどうですか?」
「特に問題はないよ」
 問い掛けに鷹揚に頷く。幾度となく繰り返された問答。もはや新鮮さなど何一つなかった。
返事をしなくとも良いだろうが、習慣でつい応えてしまう。

「暖かくなってきましたよ。どうです散歩でも」
 私は答えなかった。答える意味も必要もなかったのだ。
 散歩をするとしてどこへ行けば良いのか。外を歩く事など全くの無意味だと言うのに。

「私は貴方とずっと一緒に――」
「黙っててくれ」
 なおも喋り続けようとするのを遮り、私は感情の赴くままに叩き付ける。たやすく弾き飛ばされて
床に転がる。手足があらぬ方向に曲がっていた。
 何という事だろう。やってしまった……
 軽い自責の念が襲う。面倒な事が増えてしまっただけじゃないか。
 嘆息しつつ転がった女の姿をしたそれを抱えてベッドに寝かしつける。こうして一日放置して
おけばまた動き出すだろう。

「ふぅ。それにしても厄介な物だ」
 人類が、世界が崩壊した現状話し合える存在は有り難い、本来ならば。
だがこれは人形なのだ。気紛れに周辺の荒野を出歩いた時に奇跡的に残されていた建物の中で
遺棄されていた。
 初めは人間だと思ったがそうではなかった。ロボットと思ったがどうにも仕組みが全く異なる。
驚いた事に素材は人形そのもの。目はグラスアイ、身体は大きさは異なるがよくある球体関節だ。
 だが自律して会話でき、どういう仕組みなのか傷なども放置していれば修復される。
会話が出来て喜んでいたのは最初の内だけだ。会話の中身がとにかく少ない。同じ事しか言わない上に
学習機能もない。
 ただ動き続けるだけの人形。生き続ける人形――イキ人形というわけだ。
どこかへ捨ててもいつの間にか戻ってくる。どうにも厄介な代物である。
世界にたった一人ぼっちになっても煩わしい事があるなんて、物事はうまくいかないものだ。

653以下、名無しが深夜にお送りします:2018/03/10(土) 02:31:27 ID:QeyNLqCw
手直ししていたらageしてまったスマヌ

654以下、名無しが深夜にお送りします:2018/03/17(土) 23:56:53 ID:1ceeLE5Y
次↓

655以下、名無しが深夜にお送りします:2018/05/01(火) 01:29:22 ID:LK3wS1Ak
GWらしく「連休」で

656「連休」:2018/07/26(木) 20:25:46 ID:l0VzMjYs
 同僚が、たまに家に帰ると娘に「おかえり」じゃなく「いらっしゃい」と言われると愚痴る。
 それを私は他人事のように聞いていた。彼に比べれば私はまだマシだと思っていた。
 帰ればちゃんと「おかえり」と言ってくれる息子。いつの間にか料理も覚えていた。
 だから、気付かなかった。久しぶりにとれた長めの休日。

「久しぶりに遊園地にでも行く?」

 もう、そんな年じゃないよと言われた。

「久しぶりにキャッチボールでもしようか?」

 もう、そんな年じゃないよと言われた。

「久しぶりに一緒にお風呂にでも入ってゆっくり――」

 もう、そんな年じゃないよと言われた。
 タブレット端末を弄る息子の手は、よくよく見れば、もう私と変わらない大きさだった。
 身長も同じくらい。思い返せば、確かにそうなのだ。息子は、もう立派に育っていた。

 気付かなかった。息子は私を親として見てくれていたのに。私はそれに気付かなかった。
 思わず息子を抱きしめる私に、息子はまるで親が子にするように、仕方ないなという顔をした。
 時間はもう戻らない。でもそれは今から努力しない理由にはならない。
 遅くなってしまったけど、今気付いたから。これからの時間を大切に過ごそう。息子と一緒に。

657以下、名無しが深夜にお送りします:2018/07/28(土) 03:41:48 ID:u7FoUD4Y
忙しさゆえに子供の成長を正しく認識できなかった、ある意味時間が止まったままの父親
長い休日で時の流れを知ったせつなさと前向きに歩み寄ろうとする、読後感の良いSSですな

658以下、名無しが深夜にお送りします:2018/08/07(火) 00:37:57 ID:KzR64ivw
>>657
感想どうもです。上手く思いつかなかったのですがシンプルに纏めようと書いてみました。

659以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/08(土) 03:40:58 ID:8eahRa6w
次↓次↓

660以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/12(水) 08:13:39 ID:qo2.WOWg
お題ちょうだい

661以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/12(水) 22:43:30 ID:hSpCFKPM
じゃあ「台風」で

662「台風」:2018/09/21(金) 00:26:55 ID:SNG73sTc
「台風であぶないから学校休みだって〜」

 このお子様は何故うちにいるのだろう。台風で危ないから自宅に戻りなさい。いやそもそもベランダ伝いにこっちの部屋に来るのは台風じゃなくてもやめなさい。
 あとさっきから人の家で何を書いているんだろう。「だいかんげい」? 大歓迎?

「ねぇ手伝ってよ〜」

「何作ってるの」

「台風がまたきてくれるように旗作ってるの」

 台風の被害がシャレになってない人もいるというのにお子様は気楽な物だ。学校が休みになることを喜んでいるだけか。わざわざ旗まで作るのは不謹慎だと思うけど。

「ほ〜ら、台風は目がすっごく大きいから大きく書かないとダメなんだよ!」

「あぁ、台風の目ね」

 なるほど、台風の目では風も雨もないのは台風が物を見るためか。その発想はなかった。
 旗作りを手伝うことになったが、被災地の人に配慮して目潰し用の一味唐辛子も用意したので許して欲しい。

663以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/08(月) 17:10:29 ID:n6wi0WFs
子供らしい発想描けていてええやん

そろそろ次のお題をば↓

664以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/16(火) 03:16:43 ID:TfUTLrfM

目薬
冷え性

の内どれか任意

665「目薬」:2019/02/02(土) 17:23:49 ID:AXDv511Q
 花粉症の辛さは多くの人がわかってくれると思う。そして多くの花粉症患者は花粉症じゃない人を

羨み、嫉妬しているはずだ。別に心が狭いとかそういうのじゃない。たぶん。

「そんなあなたに」こちら。といって紹介された魔法の目薬(パン屋のポイントカードと交換)を手に

私は迷っていた。この目薬を一滴垂らした瞳で相手を見れば、たちまちその相手は花粉症になってし

まうという魔法(呪い)の目薬。

 本当に使ってもいいのだろうか。確かに私は毎年のように、この辛さを皆も味わえばいいんだと思った。でも、思ったこととそれを実行することとは別だ。この目薬を使えば、沢山の人が地獄を味わう。
 悩んだ末、私はその目薬をそっと机の引き出しに仕舞いこんだ。この辛さを知らない人の幸せを奪

う権利は誰にもない。私の分まで春を謳歌して欲しい。きっと、これでいいのだ――

 後日、

「あんたの机にあった目薬いつの? 全然効き目ないんだけど」

「わぁああ゛あ゛っ!? 何してんの糞姉貴ぃいい!!」

666以下、名無しが深夜にお送りします:2019/02/11(月) 00:13:10 ID:DY/2TerY
かわいいお話ですね
ただ説明や補足がどの設定にも無いから話全体が薄っぺらいと感じちゃいました
次のお題は隣でお願いします

667「隣」(1/2):2019/04/09(火) 18:46:46 ID:/aAF7he6
 事故物件に住むバイトという都市伝説をご存じだろうか。家賃どころか住んでてお金が貰えるなんて凄い話だが、冷静に考えるとまずありえない。法的なことに目を瞑ってもまだ問題があるのだ。
 問題となるのは期間。ひと月か二か月か、それくらい住んで何もなければ晴れて何もなかったと言い張れるとか。でも、住居が欲しくて始めたバイトなのに二か月住んだら職も住居も失う。バイトを続けても二か月ごとの引っ越し、不便すぎる。だから、私はそんなバイトが実在するなんて思いもしなかった……

「ここがそうです。一階につき四部屋、計八部屋。まずは102号室からお願いしますね」

 まさか今時あの程度の地震で部屋が倒壊するとは思っていなかった私はダメ元で後輩君に相談した。どこかミステリアス君だとは思っていたけど、割とすぐにこんな怪しげなバイトを見つけてくれた。正直怪しすぎるのだが、今の私に頼れる伝手は少ないし都合もよかった。
 まずバイト先の物件、なんとこのアパート全室が訳あり。101を除き一部屋二か月ずつ住んで、計一年と二か月。大学卒業までは足りないけど、住むこと自体が仕事なら他のバイトも掛け持ち可能。家賃は問題なく稼げる。
 不気味さはあったけど私から後輩君に持ち掛けた相談だということもあり、このバイトを受けてしまった。

 バイトを始めてから二週間目。何の怪現象も起きない。ただ、管理人室すらも人の気配がない。詳細は聞いてないけどそれ相応の何かはあったのだろう。気にはなるけどこれからも聞かないほうがよさそうだ。
 バイトを始めてから一か月目。心配になったのか後輩君が様子を見に来た。もっと早く来て荷物整理手伝ってくれるようだったら後輩君もモテただろうに。あと清めの塩とかいらないから。

 バイトを始めてから二か月、「この調子でよろしくお願いしますね」と不動産の人が隣の鍵を渡しにきた。103号室に移ってから一週間もすると早速102号室に入居者がきたらしい。何も怪現象は起きなかったし部屋は中々よかったから不思議ではない。
 三か月目、やっぱり怪現象なんて起きない。もしかして私に霊感がないだけ? ちなみにまた後輩君が来たけど後輩君も今までの人生で心霊体験とかはないらしい。

 バイト生活四か月目。新しく始めたバイトで覚えることが多くてすっかり忘れてたけど、不動産の人が隣の部屋の鍵を渡しに来た。隣の部屋に移る、104はないので105号室。履歴書に部屋番書けないよねこれ。
 バイト生活四か月と三日目。102の人は私が普通に103号室に住んでると思ってたらしく妙に驚かれた。バイト内容聞いても気分悪くするだけだろうし、単に全部屋に欠陥がないか実際に住んで試すバイトしてますとだけ言っておいた。

 バイト六か月目。今回は私が105号室に住んでる間に103号室の入居者は決まらなかったらしい。今回は隣に移るんじゃなくて二階だ。今回も何事もなく201号室の鍵を渡された。
 バイト六か月と一日目。荷物二階に上げるのがつらい。でも後輩君が覚えててくれて手伝いに来てくれた。後輩君最高ご飯奢ってあげる。あと手土産のおはぎ美味しかった。

 八か月目。このアパートの階段は何故か奥にあって、201号室が一番歩く。疲れたバイト帰りには設計者に殺意すら覚える。相変わらず怪現象起きないし、この適当日記も書くことないけど、一応変わったバイト経験談として記録しておく。隣の202号室に移ろう。
 八か月と一週間目。誕生日ということで腐れ縁どもが押し寄せてきた。事故物件だと知っていながら酔って騒ぐ馬鹿どもだ。下に人住んでるのに、102の人ごめんなさい。幸いリバースした奴もいないし、騒ぎで霊が怒って怪現象が起きたりもしなかった。102の人にはバイト先のアイスを渡してお詫びに行く。あと後輩君に強いの飲ませた馬鹿、アルハラで訴えられたら負けるぞ。

 十か月。いつの間にか101号室に管理人さんがいた。問題なさそうだからと住み始めたらしい。今回は管理人さんに鍵を渡された。あと103号室と105号室にも入居者が決まったらしい。下の部屋に誰も住んでない間は騒ぎ放題じゃね? とか言う馬鹿は首を絞めておく。あと隣の203に荷物を移すのを手伝わせる。今回は後輩君も手伝ってくれたのでかなり早く終わった。後輩君はこの馬鹿たちに染まらないで。

 今日で丁度一年。最後の部屋、205号室の鍵を渡される。正直管理人さんよりも102の人の方が付き合い長いから「折角仲良くなれたのに寂しくなるねぇ」とか言われても微妙だけどあと二か月でこのアパートからお別れだというのは事実だ。家賃払って住み続けてもいい気もしてきたけど、事故物件じゃなくなったらそんなに家賃は安くならないだろう。安い物件探さないと。

668「隣」(2/2):2019/04/09(火) 18:47:48 ID:/aAF7he6
 一年と、二日。102の人が亡くなったらしい。それで何故か管理人さんは私を疑ってる。事故が起こればまたこのバイトができるから? 流石に本当に人が死ぬような場所には住みたくない。警察の人は普通にお風呂での事故だといってたけど変に疑われるのも嫌だし、というか私にバイト続行の指示が出るとは思えないし予定通り二か月後には出ていくと宣言。
 一年と、六日。103の人も亡くなったらしい。さすがに変だと鑑識さんとかがドラマみたいに色々調べてたけど、結果は密室での事故。それでも私が合鍵作ったのではとか疑われ、警察に任意同行を求められた。断るなら断る理由があるとみなす、とか、行くしかないじゃん……
 一年と一週間。私の取り調べ中、また密室で105の人が亡くなったらしい。もう流石に私も偶然だとは思えない。一応、取り調べ中という完全なアリバイができた私は無事解放された。帰ると101号室に管理人さんはいなかった。正直もうここには住みたくなかったけど、不動産の人から電話で「バイトを降りたら違約金を払ってもらう」とか一方的に宣告される。いくらグレーゾーンとはいえバイトなのだから辞める権利はあるはずだけど、私はもう冷静ではいられなかった。怖かった。

 気づいたら、泣きながら後輩君に泊めてほしいと頼み込んでいた。

「先輩……あの、先輩は特に何もなかったんですよね? つまり、先輩は安全のための条件を満たしていた、ということなんじゃないんですか?」

 自分以上に取り乱している人を前にすると冷静になるというのは本当なのか、意外なほどに後輩君は頼りになった。何故私が無事だったのか、何故亡くなった人たちは今までは大丈夫だったのか、それがわかれば安全を確保できるかもしれない。私はその言葉に必死になってこの一年を思い返すけど、何も心当たりはなかった。
 私はいつ死ぬのだろう。最近はそんなことばかり考えながら怯えている毎日だ。もう少しの間は後輩君の所にお世話になれるけどいつまでも居るわけにはいかない……

 あれから三週間。私はいまだ無事に生きていたけど、恐怖は消えない。私が無事な理由、他の人が死んでしまった理由を考え続けていた。そんな有様ではバイトで接客中も上の空、クビかと思ったら店長さんと先輩たちに囲まれて何かあったのかと訊かれた。どうにも私より前にバイトしてた高校生の男の子がストーカー被害で重い後遺症を、ということがあったらしい。事情を説明すると皆が違約金払ってでも引っ越しなさいという。お金より命だと。

 後日、店長さんたちが事故にあった。トラックがお店に突っ込んだらしい。お店に突っ込んだトラックは思っていたよりも形が残っていて、逆にお店は外から見ても酷いことになっていた。トラックの運転手は病院で亡くなって、店長さんたちはまだ意識が戻っていないとか。私は、これが偶然だなんて思えなかった。

 事故物件バイト最終日、だったはずの日。一年と二か月の間、私は無事だった。きっとこのアパートは私を逃がしたくないんだ。別の不動産で新しく安い部屋を借りようとしたら火事でその部屋が駄目になったし、今まで住んでも私に直接被害はなかった。そして私が出ていくときになって新しく事故が起きて、違約金を払ってでも出ていくべきだと話した店長さんたちが事故にあった。きっとそういうことだろう。
 バイト最終日だというのに、ヤクザみたいな人を連れて事故物件バイトをまた初めから頼もうとしてきた不動産の人にそのことを話す。不気味で現実的ではない話。私はもうこんな事故物件とは関わりたくないけど、また周囲の人が傷つくかもしれない。

「だから、バイトじゃなくていいです。家賃を安くしてくれたら、住みますから……」

 結局私は、一応もう一回事故部屋を経て101号室に住むことになった。その後の入居者も含めあれから事故なんて起きていない。

「……先輩、ごめんなさい……あんなバイトを紹介したから、」

「大丈夫、きっと何とかなるって」

 不動産の人が言うにはこのアパートは近々取り壊して一軒家を建てるそうだ。取り壊し中に事故が起きず、アパートがなくなれば私は解放されるのだろうか。何にせよ一軒家なんて私には荷が重いから、そこからはもう私は関わらないほうがいいだろう。たとえ、その後一軒家で不審死している人をお隣さんが発見するようになったとしても……
 バイト前は大学卒業したら上京でもしようかと思っていたし、後輩君と、単位足りなくてまだ大学生やってる馬鹿どもの卒業に合わせて皆で上京するってのも、悪くはないかもしれない。今日も私は後輩君を隣に引き連れ店長さんたちのお見舞いに行く。

669以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/09(火) 18:49:25 ID:/aAF7he6
>>666
感想どうもです。遅くなりましたけど今回のお題は薄っぺらいと言われないよう意識して書いてきました。


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