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みんなで文才晒そうぜ part2

452(2/2):2016/02/05(金) 00:36:35 ID:zec.FbLA
 「できた?」
 「まだもうちょっと」
 「手伝うよ」
 「制服、汚れるよ」
 「いいよ」

 彼がつい先程まで握っていたスコップの柄は驚くほど冷えていた。思わず彼の指先をみると暗がりの中でいっそう白く浮き上がっている。その白さは確かに鉄の冷たさを思わせた。
 スコップの先を穴の底に突き刺すと、思ったよりも大きく、歪な音がした。それは彼の音とは根本から違い、この空間にとって明らかな異物だった。ただそれだけで僕は、彼の作っていた精緻な構造物を壊してしまったような気分になってしまった。
 恐る恐る彼の様子をみると、しかし、彼はまったく頓着することなくしゃがみこんで、ただ彼の足元だけを愛でている。
 僕はすっかりやけになって、何度もスコップの先を穴に叩きつけ、十分にほぐれると力まかせに底の土を放り出す。決まった動きもなく、感情に任せ、猥雑にただスコップを使った。僕はただ穴を掘ることに熱中した。日は沈んだというのに、スコップの先は不思議とよく見え、目一杯身体を動かしているのに、身体は芯まで冷えていく。
 いつしか彼は僕の隣に立ってなんども繰り返し同じ言葉を言う。

 「深く」
 「もっと深くだよ」

 穴の底に星が映り、僕達の足元は一層黒々とした暗さで横たわっている。


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