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安価でカオスSS作る

360以下、名無しが深夜にお送りします:2013/05/26(日) 17:17:17 ID:Y2S4KQgY
スケィス「断罪せよ!この男をこの場所から生かして帰してはならない!」
       ルシファーズハンマ-
スケィス「我ら堕天使の槌!我ら剣なり!我ら矢なり!槌を振り翳し!悪魔を屠る代行者なり!」

『我らは剣なり!我らは矢なり!槌を振り翳し!悪魔を屠る代行者なり!』


「し、しかしスケィス様……!」

スケィス「……白い悪魔だかなんだか知らねぇが、何年も前の話だろう?」

「それは……はい」

スケィス「強力な後ろ盾、腕の立つ部下がいて戦いってのは成り立つんだよ」

スケィス「……あの男にはそのどっちも今はねぇ」

スケィス「だったらその両方で勝る俺たちが負けるはずがねぇ」

スケィス「……それにそういう話はな、多少なり尾ヒレ羽ヒレつくもんだ」

「な、なるほど……」

バッ

スケィス「囲め!殺せ!人の形が分からなくなる程に鉛の玉をぶち込んでやれ!」

『はッ!』

アニキの怒号に合わせて、後ろに控えていた黒ローブたちがセルゲイを中心に扇状に広がった。

361以下、名無しが深夜にお送りします:2013/05/26(日) 19:02:00 ID:Q9pgwye6
尾ヒレ羽ヒレの方が少ないってオチの場合もあるけどな

362以下、名無しが深夜にお送りします:2013/05/27(月) 18:33:58 ID:ivvcQZd6
一方セルゲイは両腕を下げたまま何の構えも見せていない。

セルゲイ「……池田サン、危ないデスカラ伏せていテクダサイ」

振り返らずに俺たちに注意すると、殺気立つ信者たちに視線を巡らせる。

セルゲイ「…………」

セルゲイが彼らのエリアへと一歩を踏み出した。

―コッ

静寂の中のセルゲイの軍靴の足音。

これが戦闘開始の合図となった。


セルゲイに対して信者たちが一斉に射撃。アサルトライフルから軽く10を超えるマズルフラッシュが炸裂した。

先程の戦闘以上に、逃げ場のない銃弾の嵐が吹き荒れる。

だが――彼は退くどころか地を這うような低姿勢で『前へ』出た。

正面の信者が一瞬呆気に取られ少し動きを止めたが、すぐにセルゲイにポイントしフルオートで発射する。

セルゲイは雨のように降りかかる弾丸をまるでボールを避けるような最小限の動作で躱し、正面へ肉薄しつつ左右に発砲した。

サイドの信者2人を撃ち抜き、正面の信者へほぼゼロ距離まで接近――

――アサルトライフルの銃身部分を左から裏拳を当てて銃口を逸らし、右後方で同士討ちを恐れ射撃を躊躇っていた信者に銃弾を浴びせた。

363以下、名無しが深夜にお送りします:2013/05/28(火) 02:35:44 ID:56XXLOJk
――白い外套が舞い、次々と信者が地面に倒れ伏す。

床にはおびただしい数の薬莢が転がっているが、セルゲイはただの一つも被弾していなかった。

……アニキが率いる信者たちが弱いのではない。

銃を構える姿、そして彼に向けて容赦なく銃撃する彼らの強さは控えめに言っても傭兵クラスだろう。

セルゲイが別次元の――頬傷の男の言葉を借りるならば悪魔的な能力の持ち主なのだ。

兵士として積み重ねた技術が、経験が、そして何よりも才能が彼らを圧倒的に上回っている為に、弾を当てる事はおろか掠める事さえ許さない。

そして彼をして一層彼たらしめている動作――

――射撃と体術を同時に成立させる奇妙な武術が、攻防一体となり彼らを一瞬で屠り去る。

それは機能美を備えた一種の舞踏のようでもあった。

銃を持つ相手の至近距離まで敢えて接近する事によって、敵側の死角に回り込み、攻撃。

銃口の向きを瞬時に判断、弾丸の軌道を読み切り、同士討ちを誘い――あるいは発砲を躊躇させ、攻撃。

全ての所作に無駄はなく、洗練された動きには美しさすら感じる。

血を吹き昏倒する者がいる最中、傷一つ付かず優雅に、時に鋭く立ち回る白い服装の男。

セルゲイ・ソボレフという人間が一方的にすべてを支配する空間。

いつしか俺は幼い頃に公衆浴場で見た時代劇の殺陣を思い出していた。

364以下、名無しが深夜にお送りします:2013/05/28(火) 02:53:26 ID:2yHax/uw


365以下、名無しが深夜にお送りします:2013/05/28(火) 06:57:11 ID:O0eTKbM.
凄ぇ……文字から映画が視える

366以下、名無しが深夜にお送りします:2013/05/29(水) 04:51:52 ID:lYXiuPuo
――――

最後まで立っていた信者のアサルトライフルが沈黙する。

セルゲイの放った弾丸が眉間と心臓を撃ち抜いたからだ。

これで阿部さんとセルゲイを殺そうとしていた信者は全員いなくなり、

残ったのはケガをしている信者と頬傷の男、そして丸腰のアニキだけになった。


セルゲイは大きく呼吸を整えながら太極拳のように左右の腕を回し、

まだ赤熱しているハンドガンのマズルを、右は上へ向け、左は下に向け、ハンドガンで十字架を型作った。

そして深く呼吸をし、静止。

――残心。

剣道や居合道でいう、動作を終えたあとでも緊張を持続する心構え。

……見方を変えるならば、ここまでの戦いは型稽古に過ぎない、という事なのか。どこまでも底が知れない男だ。


コッ… コッ…

セルゲイ「スケィスサン」

スケィス「ひッ……こ、殺さなっ、殺さないでくれッ!たっ、頼むッ!」

367以下、名無しが深夜にお送りします:2013/05/29(水) 04:59:30 ID:lYXiuPuo
セルゲイ「マダ生きテいる方がいらッシャイマス」

スケィス「はッ、はぁ……」

セルゲイ「デハソノ方達の治療をお願いシマス。ソシテ今回はコレで手打ちにシマショウ」

スケィス「だっ、あ、そ……こ、断ったら?――」

―ジャキンッ

セルゲイ「今度は有象無象ノ区別ナく処理シマス」

スケィス「ひぃッ!わ、わっ分かった!退く!退くよ!」

頬傷の男の肩を借りて立ち上がるアニキ。

アニキがへたり込んでいた床には、謎の染みが広がっていた。

チビったのだろう。……ざまぁみろ。

店主「……おう、池田」

池田「親父さん、悪い事しちまったな。あんたの店なのに……だから片付けを――」

店主「それは気にするな。カップメンでどうとでもなるからよ」

店主「問題はそれじゃねぇ。このままここにいると危ないって話だ」

池田「! ……ああ。確かにそうだな」

368以下、名無しが深夜にお送りします:2013/05/29(水) 18:48:44 ID:lYXiuPuo
店主「さっさとここを離れな。そこのロシア人の……セルゲイだったか、あんたもだ」

セルゲイ「店主サンの仰る通リデス。彼らが報復に来る可能性がアリマス、場所を移シマショウ」

池田「まず知り合いの医者の所へ行こう。あそこなら近いし……何より阿部さんの容態があまり良くないからな」

阿部「…………」ハッ… ハッ…

店主「奴らが来たら見当違いの方角を教えて時間を稼いでやる。早い内にこのエリアを出た方がいいぜ」

池田「……親父、すまない」

店主「常連を大切にするのは商売人として当たり前だろうが。早く行きな」

池田「……ありがとう」タッ

店主「あ、おい!セルゲイ!」

セルゲイ「ハイ?」

店主「忘れ物だぜ」ヒュッ

パシッ

セルゲイ「……Столичная」

店主「口開けちまったんだ、最後まで飲んでやれ。勿体無ぇからよ」

セルゲイ「……アリガトウゴザイマス」

369以下、名無しが深夜にお送りします:2013/05/31(金) 15:47:12 ID:FTu.n9Bw
かっけぇーw

370以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/02(日) 19:10:25 ID:79tioz9g
ふむ。>>108さん、忙しいのかな?

371以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/03(月) 19:14:12 ID:61DcBnqg
――――

TDN「……そう。ごめんネェ、こんな遅くに働いてもらっちゃって」

「へへっ、姐さんの頼みとありゃぁ断る理由がねぇからよ」

TDN「あらヤダ嬉しい♪引き続きよろしくお願いできるかしら?勿論、報酬はたんと弾むわヨ」

「報酬なんて滅相もねぇ。それに姐さんに恩を返したいと思ってるの俺だけじゃぁねぇからな。顔見知りにも協力してもらうさ」

TDN「本当!頼りになるワァ〜。これはサービスよ♪」ンチュッ

――――

バタンッ

池田「……どうだった?」

TDN「池田ちゃん、悪い予感的中よ。教団の連中人海戦術でシラミ潰しに探してるみたい」

池田「やっぱりか……」

TDN「あたしのツテで嘘の情報あちこちバラ撒いてるから、ある程度は誤魔化せるけど……正直時間の問題よネェ」

池田「……すまない。厄介事を次から次へ持ち込んでしまって」

TDN「池田ちゃんが謝る必要はどこにもないわよ。悪いのはあいつらでしょ?それにあんなにカワユイ阿部ちゃんを悪魔呼ばわりとか私も許せないし!」

池田「……ありがとうドク」

372以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/03(月) 19:39:36 ID:61DcBnqg
コンコン

『ゴメンクダサイ。セルゲイデス。TDNサンのお宅はこちらでよろしいデショウカ?』

TDN「アラ、例のロシア軍人さん?」

池田「ああ。セルゲイ、合ってるぜ。鍵は開いてる」

ガチャッ

セルゲイ「失礼シマス」

池田「しかしよく迷わなかったな」

セルゲイ「池田サンの足跡を辿ればソコマデ難しくはアリマセン」

池田「……こ、この暗さでか?」

セルゲイ「念の為消しておきマシタ。アノ、池田サン、ソチラの方が……」

池田「そうか。2人は初対面だったな。紹介――」

TDN「ッありえなぁぁぁぁい!ちょっと池田ちゃんどういうことなの!?」

池田「なッ!急にバカデカい声出すなよ!何だよ!」

TDN「想像を絶するゴツイケメンじゃない!服の上から見ても分かるわ!何て美しい筋肉の持ち主なの……!」ブルブル

セルゲイ「オオ、やはりアナタが!初めマシテ。セルゲイ・ソボレフと申シマス」ペコリ

373以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/03(月) 21:09:23 ID:YSdicZJg
待ってました。支援

374以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/03(月) 22:32:47 ID:61DcBnqg
TDN「は、初めましてセルゲイさん。あたし、中松左馬之助光春って言います。あたしの事は気軽にミッチー♪って呼んでください///」

池田「…………」

セルゲイ「素敵なオ名前デスネ。私の事もどうかセルゲイと気軽に呼んでクダサイ、ミッチーサン」

TDN「セルゲイ……///」ポワァ

セルゲイ「アナタも美しい筋肉をシテイマスネ。ソノ大胸筋はドウヤッテ作りこんだのデスカ?」

TDN「アラやだ!さっきの聞こえちゃってたの!あたしったら超恥ずかしいわァ!ミッチー大失態!」

池田「…………」

――――

セルゲイ「周囲の地形をザッとデハアリマスガ、確認シテキマシタ」

池田「それで結構時間がかかったのか」

セルゲイ「視認が困難な場所に簡易のサウンドトラップ――日本で言うと鳴子を仕掛けるのに手間取りマシテ」

池田「……結構って部分撤回するよ」

セルゲイ「コノ家屋は明かりが漏れてイナイノデ隠れ家としてはカナリ優秀デス。ただミッチーサンの仰る通り、長時間の潜伏は厳しいデショウ」

TDN「目撃情報に頼ってる内ならまだいいけどねェ。デマばっかりって事に気が付かれたら、神様盾にして片っ端から家に押し入るのは目に見えてるもの」

池田「ここ以上に安全な場所が必要って事か……」

375以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/04(火) 00:13:21 ID:nsNvtel.
池田「…………」

池田「あるにはあるんだが……」

TDN「それって昼間阿部ちゃんと行ったシェルターの事かしら?」

池田「一応変な知り合いもそこにいるし、誰も入れる事自体を知らないってのは大きなメリットだと思う。けどな……」

TDN「阿部ちゃんのフラッシュバックが怖いのね」

池田「……いや、殺されかけた手前、他に選択肢はないよな」

セルゲイ「採掘場への道デシタラ明かり無しデモ先導デキマスヨ。見通しの悪い道を選ぶので、多少遠回りニハナリマスガ」

池田「どれ位かかるセルゲイ?」

セルゲイ「45分ト言ったトコロデショウカ。阿部サンを背負って移動スルナラ1時間は見た方がイイデショウ」

池田「分かった。ただ時間はあまりない。ギリギリまで阿部さんの意識が回復するのを待って――」

阿部「その必要はありません」

いつからそこに居たのか。彼女が部屋の入り口にもたれる形で立っていた。

顔色も悪く、まだ肩で息をしているような状態だ。ただでさえ線の細い体が強調され、まるで青白い幽鬼のように見える。

池田「……あ、阿部さん?」

彼女の体調を気遣う言葉が喉元で消え、名前を呼ぶだけに留まってしまった。

376以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/04(火) 02:05:08 ID:nsNvtel.
微かな違和感。

彼女が阿部さんである事に自信が持てなくなる――そんな奇妙な不安が漠然と胸の内を覆う。

目の前にいる人物が阿部さんである事は間違いない。美しい黒髪、顔立ち、姿形。どれも彼女である事を示している。

――そして俺は唐突に気付いた。

瞳。

彼女の瞳が、今日の昼間や昨日、もっと言うなら初めて会った時のものとまったく違っていることに。

記憶を取り戻したい、あるいは楽しい事や新しい事を知りたい――その感情を代弁するように大きく見開き、よく動いていた目。

それが閉じているのか開いているのか分からないほどに窄められている。

よく磨かれた琥珀のごとく太陽光を反射していた黒目は、目の細かい紙ヤスリをかけられたように輝きを失っていた。

阿部「状況は把握しています。ただまだ若干混乱を含んでいるので、整理が。……どこから話し始めて良いものか」

様々な思いを巡らせるには充分すぎる間を持って、昼間とは別人のように彼女は語りはじめた。

阿部「そうですね、まず……私は、『地上』――あなた達が『地下』と呼ぶ、外殻の遥か下から来ました」

冷たいながらも強い意思を宿した彼女の瞳を見て理解した。きっと、阿部さんは、欠けていた最後の記憶の歯車を取り戻したのだ。

同時に初めて彼女に会った時に感じた不気味さが足先から這い上がってきた。

その歯車が動かすのは、彼女と俺だけではない――遠くで、大きく複雑な何かが動き出す音を、聞いた気がした。

377以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/04(火) 19:40:48 ID:nsNvtel.
――――

池田「……阿部さんは、外殻の内側の人間」

セルゲイ「ソレナラ阿部サンが女性な事にも納得が行きマス。外殻の外での人という種を増やす方法はクローンに適宜頼っていく他アリマセン」

TDN「そしてクローンの媒体データに女性のものが一切ないのよねェ。だからここで女の子の阿部さんに会えたということは――」

阿部「そういう事です」

セルゲイ「……シカシ、驚きマシタ。外殻内の人類はトックに滅んだものと聞いてマシタカラ」

池田「セルゲイだけじゃないさ。皆そう思ってる。……でもそれは間違いだった」

阿部「ここからは少々長い話になります。……時間は大丈夫でしょうか?」

セルゲイ「保証はシカネマスガ、30分程はマダ安全デショウ。コノ区域に近づいテイル敵兵の気配もマダシマセン」

阿部「……猶予はありませんね。今のこの状況においても……やはりこの先のおいても」

池田「……この先?」

阿部「はい。出来るだけ簡潔に整理して話すよう心がけます」

阿部「まず、私は外殻の外側の人間に助けを求めにきました」

阿部「では何故助けを求めにきたのか?それを説明するにはまず外殻大地を巡る地球の歴史から話さなければなりません」

阿部「今から1000年近く前、全世界にある奇病が蔓延しました。俗称、正式名称ともに『男体化病』という病が」

378以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/05(水) 02:46:47 ID:/epCI.sY
池田「そこら辺なら誰でも聞いた事あるな。それを防ぐ為に外殻を作ったって話だろ?」
         
阿部「――シャイニングプラネット計画。外殻で地球全体を覆う、とてつもなく巨大なプロジェクト」

阿部「その内容は、世界規模で感染者と健常者を隔離し、男体化の主な原因である宇宙線から地球そのものを保護するという、途方も無いものでした」

TDN「……宇宙線って放射線とかよねェ。それを浴びただけで病気になっちゃうの?」

阿部「厳密には違います。大気圏内に入り込んだ宇宙線が遺伝子を傷つけ、生物の根幹であるミトコンドリアに変異を促し、新たに生まれたウィルスによって男体化を引き起こすのです」

セルゲイ「記憶違いデシタラ申し訳ナイノデスガ、地球は磁場と大気にヨッテ宇宙線の大半を防いでいるハズデハ?」

阿部「……残念ながら1000年前に事情が変わったのです」

阿部「当時地球の磁場が弱まり、一部の地域が宇宙線にさらされる事態に陥っていました」

阿部「諸説ありますが――世界中に張り巡らされた強力な電力網がインダクタの役割を果たし、地球規模の自己インダクタンスを導いたのが主な原因と考えられています」

池田「……ま、まるで分からねぇ」

阿部「単純に述べるならば……成長しすぎた人類の科学が破滅を呼び込んだということです」

池田「……なるほどな。それで男体化を止める事はできたのか?」

阿部「……ええ。男体化に対するワクチンは完成し、外殻によって新たなウィルスが発生する事もなくなりました」

TDN「馬鹿げたプロジェクトだと思ってたけど、効果はあったのネェ」

阿部「……ただこの病を克服する過程で、ある1人の人物が――いえ、結果的には外殻の内にいた人類すべてが大きな過ちを犯しました」

379以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/05(水) 03:36:25 ID:/epCI.sY
池田「過ち?」

阿部「……彼女の名前はイヴ。男体化に効果のあるワクチンを作成し――」

阿部「シャイニングプラネットの研究チームとNEATにも所属する――非常に有能な科学者でした」

池田「はぁーん、人類の救世主、ってやつか」

阿部「……違います」

阿部「彼女は救世主などではありません」

阿部「むしろ人という種を絶滅に追いやろうとしている『悪魔』ですッ!!」バッ

池田「…………」

阿部「……失礼しました。話を続けます」スッ

池田「……お、おう」

阿部「池田さん、そして皆さん。落ち着いて聞いてください」

池田・TDN「…………」ソワソワ

セルゲイ「…………」

阿部「今地上には、外殻の内側には……」ギュゥッ…


阿部「――男性が、存在、しません」

380以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/05(水) 23:22:18 ID:w5T93HZo
交流すればいい…って訳にもいかんか

381以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/06(木) 00:10:05 ID:jI2HFAdk
TDN「…………」

セルゲイ「…………」

池田「……どういう事だ、そりゃ」

阿部「彼女が男性が存在しない世界へと、極めてゆっくりな速度で地球全体を変貌させていったからです」

セルゲイ「……一体何の為ニ?」

阿部「……残念ながら分かりません。明らかになっているのは、彼女が男性に対する強い不信感と敵意を持っていた事だけです」

阿部「ミトコンドリアの権威であった彼女はワクチンを作ることによって、国家規模での信用と権力を手に入れました」

阿部「そして人類社会を大きく発展させる発明や開発を次々と成功させ、私の祖先は彼女に強く依存するようになったのです」

阿部「中でも最たるものはナノマシンでしょう」

TDN「……驚いた。あなたたちの場所では既に実用化されているものなのね」

阿部「――病気に対する耐性、細胞の最適化による延命、治癒能力の向上、脳内物質や感情の制御……まさに夢の発明でした」

阿部「彼女の賢者の石と言っても差し支えない発明は瞬く間に世界中へ広がり、新たな規格として浸透していったのです」

阿部「……それが、彼女が全人類に仕掛けた新たな枷とも知らずに」

池田「新たな、枷?」

阿部「……ナノマシンには人体そのものを飛躍的に強化させる事に加えて、体内に組み込まれた端末をネットワークに繋ぐ機能が搭載されています」

382以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/06(木) 02:26:35 ID:jI2HFAdk
阿部「従来のIRCなどのデバイスを必要とする通信技術と違い、脳内の電気信号をサーバーを介して他人のナノマシンに向けて送信できる画期的なテクノロジーなのですが……」

阿部「彼女はナノマシンの一部をブラックボックス化し、外部からナノマシンを操作できるように改変を施していたのです」

TDN「が、外部からって……それじゃぁ人類全体の生命を掌握した事と変わらないじゃない!」

阿部「仰る通りですTDNさん。人体にプラスの効果を及ぼす事が可能なら、またその逆も可能――彼女はその技術を利用し、自らの野望へと突き進んで行きました」

阿部「秘密を知った関係者を病死に見せかけて殺す事も、犯罪者の行動を操り、事件に見せかけて自らの政敵を消し去る事も……すべて彼女の意のままでした」

セルゲイ「……何と恐ろシイ」

阿部「そして彼女が必要とする研究の科学者や、彼女に好意的な関係者は手元に残し、自らの計画――イヴが構想する最後のプロジェクトに取り掛かりました」

阿部「それこそが『全人類女体化計画』。ナノマシンによって人体の構造そのものを作り変えるというプロジェクト」

池田「……その女体化計画は、病気でもなんでもなく……そのイヴって奴がやりたいからやったって事か?」

阿部「ええ。マスメディアも彼女の支配下でしたから、当時の男性も女性になる事に何ら違和感を感じていなかったようです」

TDN「……ナノマシンと合わせて洗脳済みってワケネ」

阿部「同時に彼女は自らの脳を含めたサイボーグ化も急いでいました。……永遠にこの世界を管理できるように」

池田「…………」

阿部「そのサイボーグ化の依頼を受けたのが、ロボット工学の権威リトル・イーモン博士です」

阿部「当時の数少ない男性の科学者で、最後までナノマシンを拒否した人間でもあります」

383以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/06(木) 03:07:45 ID:jI2HFAdk
阿部「イーモン博士はイヴ博士の企みに気付いていましたが、親友を人質に取られていた為にイヴ博士に逆らう事は出来ませんでした」

阿部「ロボットの研究は次々に成功していき、高度なAIを積んだガイノイドや、対暴徒用のガードマシンを市場に供給できるようになりました」

阿部「更に女性同士で生殖できるように最適化する実験が成功し――」

阿部「――イヴ博士は楽園を作り上げることに成功したのです。ナノマシン、ガイノイド、ガードマシン……必要だったすべてのものを手に入れて……」

池田「…………」

池田「……褒められたことじゃない」

池田「褒められたことじゃないが……それで人類は繁殖し、幸せに暮らせるようになったんだろ? 彼女が統治している世界で……」

阿部「…………」

池田「答えてくれ阿部さん。俺は……俺は本当のことが知りたいんだ!」

阿部「池田さん……」

池田「奪い合う事なく分け合える世の中なら、例え独裁だとしても俺は構わない。そんで管理者が頭がイカれてても構わねぇ。今よりずっとマシだからな」

阿部「…………」

阿部「……残念ながら、池田さんが思い描いたような理想の世界は訪れませんでした」

阿部「順調に思えた楽園プロジェクトですが、100年もすると異変が現れ始めました」

阿部「女性同士での生殖から誕生した子どもが、次々と謎の突然死に襲われたのです」

384以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/06(木) 19:38:14 ID:jI2HFAdk
勇者「領主のくれた情報と地図によると遺跡の西側部分に街の人たちが閉じ込められているらしい」カサッ

女戦士「デッケェ宮殿だったんだな。間取りを見る限り、本来召使いとかが寝泊まりする区画か?」

勇者「東側に王の間とあるから恐らくそうだろうな。見れば分かる通り、建物の周りに何もないから非常に見通しがいい」

女戦士「……見つからずに連れ出すのは困難ってワケか。できれば一戦おっ始める前に救出するのがベストなんだがなぁ……」

勇者「そこで私の作戦はこうだ。……真正面から切り込む」

僧侶「えぇぇぇぇ!?勇者さん何言ってるんですか?」

女戦士「あたしは大歓迎の血の毛たっぷりの作戦だな。……が、街の人たちの安全はどうするんだ軍師さん?」

勇者「まず私たちを救出班と陽動班の二手に分けて襲撃」スッ

勇者「陽動班は逃げ回りつつ出来るだけ敵を打ち倒し、敵に増援を呼ばせるように暴れ回る――救出班はその混乱に乗じて西エリアに乗り込み、手薄になった警備を突破し救出」

勇者「安全な場所まで誘導した後、陽動班合流し、大将に仕掛ける」

勇者「……無茶は承知だ。ただ人命を優先するならこの案しかないだろう」

女戦士「勇者、その案に乗ったぜ。少なくともあたしの作戦より勝ち目がありそうだ」

僧侶「女戦士さんの作戦ってどういうのですか?」

女戦士「片っ端から斬る」

僧侶「…………」

385以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/06(木) 19:40:50 ID:jI2HFAdk
単純に死にたい
誤爆

386以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/07(金) 00:41:42 ID:Ibze4Dlk
よくあること、どんまい!

387以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/07(金) 04:31:33 ID:QnLIRuzw
TDN「突然死……」

阿部「女性同士の生殖において何らかの不具合、歪みといったものが発生し、正常に我が子が育たなくなり……最後は突然死に至る」

阿部「イヴは持てる知識すべてを捧げ、専門分野の天才を何人も雇い、この病に取り組みましたが、突然死は止まりませんでした……」

阿部「……口には出さずとも皆彼女を除く科学者は理解をしていました。男性と女性の生殖から切り替えた事による影響であることに間違いはない、と」

阿部「それとは逆に、ありとあらゆる手を尽くし――疲弊し切った彼女が考えついた案は恐ろしいものでした」

阿部「理想的な状況で出会い、理想的な条件で生殖を行い、理想的な状態で母体を管理すれば、突然死のイレギュラーは避けられると判断したのです」

池田「……言ってる、意味がちょっと分からないんだが……」

阿部「池田さんは、ソードアート・オンラインをご存知ですか?」

池田「突然何を……いやまぁ知ってるよ」

阿部「あの作品の中で主人公たちは仮想現実へ現実世界からログインしていましたよね?」

池田「……ああ。それで?」

阿部「あの作品のような『仮想現実』を使って、人類を管理しようとしたのです」

池田「……!」

阿部「ええ。その為に仮想現実を作り上げ、人の精神をその中で暮らさせる事によって、脳波や体躯の末端に至るまでを完全にコントロールし――」

阿部「正常な『繁殖』をしようとしました」

388以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/07(金) 10:16:28 ID:QFVVB0fQ
イヴ……世界を完全管理する神にでもなったつもりだった様だが……

389以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/07(金) 12:29:50 ID:6j3.4Dsg
乙!
アルトネリコとBLAME!が混ざった様な世界になってるな

390以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/07(金) 20:00:51 ID:QnLIRuzw
池田「狂ってやがる……それのどこが正常だって言うんだ」

阿部「生活のすべてを彼女に掌握されていた私の祖先たちは為す術もなく、彼女の支配下に置かれました」

セルゲイ「ナルホド。ガイノイド、ガードマシン、数を揃えレバ統率の取れた軍隊に等しいデショウカラネ」

阿部「――人は生きたままカプセルに詰められ、培養液によって成長し、計画的な交配を延々と繰り返させられるのです」

TDN「……そしてイヴに管理された長い夢を見続けるのネ……」

阿部「今の地上に……人の尊厳、自由といったものはありません」ギュッ

セルゲイ「……シカシそうなるト気にナル事ガアリマス。阿部サン、アナタハ何処から来たノデスカ?」

池田「言われてみればそうだな。地上の人間はカプセルに閉じ込められているんだろ?」

阿部「彼女の計画が始まった直後、下層へと逃れて生き延びた人たちがいます」

阿部「彼女たちはレジスタンス組織『New Honest Keel』を結成し、イヴへのレジスタンス運動を行いながら、実にこの1000年近く抵抗してきました」

阿部「私はカプセルの中からNHKに救い出され、人類にもう一度自由をもたらす為の工作員として育てられたのです」

池田「……そう、だったのか……」

阿部「地上をイヴの支配から解き放つには、彼女が管理するサーバーの心臓部を破壊し、ナノマシンによる干渉を防ぐ必要があります」

阿部「ですがナノマシンに支配された我々では、心臓部にたどり着く事は愚か地表付近の行動もままなりません……」

TDN「……話がようやく見えて来たわ」

391以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/15(土) 01:39:17 ID:x.Hw/ilU
もうすぐ700番台まで下がっていたのでage支援

楽しみにして待ってます

392以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/15(土) 05:44:58 ID:X8qLRBRU
何がなんでも受信料を取ろうとする方とは全然違うなw

393以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/19(水) 01:41:05 ID:uyKqeFLE
保守あり。

安価1つ見落とす → >>390以降を全部変更
って大事故で止まってました。

結末までの見通しが立ったので、近日中に投下します。
お待たせして申し訳ない。

60/82

394以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/19(水) 16:47:16 ID:W6nfd5Jg
60もこなしてたのか…
ゆっくりでもいいのよ、完走さえして下されば

395以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/19(水) 19:46:41 ID:uyKqeFLE
>>393 修正 60/86

396以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/19(水) 19:47:11 ID:uyKqeFLE
阿部「だからこそ、男性の協力者が私には必要だったのです」

阿部「……焦るあまり、最初に出会った男性の危険性を見抜けず……その……」

池田「阿部さん……」

阿部「……安易に警戒を解くべきではありませんでした」

阿部「……話を戻しましょう。私の任務内容は主に2つです」

阿部「1つはナノマシンの影響を受けない男性の協力者を得ること」

阿部「もう1つはイーモン博士が外殻に残した兵器を手に入れることです」

池田「……兵器ってシェルターの地下にあった、あの戦闘機か?」

阿部「はい。プロジェクト名:ダーウィン4078。機体名:BEAS。博士がイヴに秘密裏に開発した超兵器です」

TDN「あの開かずのシェルターにそんな物騒なものがあったのねェ」

阿部「……地上にある兵器はすべてイヴの管制下にあります。彼女の支配が及ばないたった1つの兵器、それがBEASなのです」

池田「博士はあの戦闘機が必要になることを予期していたのか……」

セルゲイ「……阿部サン」

阿部「なんでしょう?」

セルゲイ「ソノ兵器はイヴにとってどれ程の脅威なのデスカ?」

397以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/19(水) 23:07:17 ID:43mfXqyI

それは俺も気になるなぁ。

398以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/20(木) 03:12:52 ID:15p/2NT6
阿部「博士は失踪する直前まで、このプロジェクトに心血を注いでいました」

阿部「ロボット工学の父である彼が、当時考えうる限りの最先端の技術と理論をもって作り上げた兵器――」

阿部「現在も稼働し続けるガードマシン等の戦闘力を見る限り、その能力は計り知れません」

阿部「イヴも我々と同じようにこの兵器を捉え、未だに地上で捜索が続けられているほどですから」

池田「……何百年も探し続ける位、重要ってことか」

阿部「過去に世界を統治するのに必要な力を、博士から得ていた彼女は……ある意味我々より兵器を恐れているはずです」

阿部「……そして同時に手に入れたいとも思っているでしょう」

セルゲイ「破壊シ、反乱分子によるイレギュラーが起こラナイヨウニデスネ」

阿部「……いえ、違います」

TDN「違うって……?」

阿部「イヴにはある目的があるからです」

池田「目的って……女性だけで繁殖とかの、アレか?」

阿部「……ええ、最終的にはそうなるのでしょうか。彼女にとっては、ですが」

池田「……それと戦闘機がどう関係あるんだ?」

阿部「それは彼女が――イヴが外殻大地に存在するすべての生命を……根絶しようとしているから、です……」

399以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/20(木) 04:14:16 ID:15p/2NT6
セルゲイ「…………」

TDN「それって……」

池田「嘘……だろ……」

阿部「……私が最初に時間がないとお伝えしたのは、教団員に追われている現状ではなく――」

阿部「彼女が地上への侵攻計画を進めている事実についてです」

ガタッ

池田「いや、待てよ……!だってそんなのおかしいだろ!?」

TDN「池田ちゃん落ち着いてっ!」

阿部「……いえ、TDNさん。池田さんでなくてもおかしく思って当然です」

TDN「阿部ちゃん……」

阿部「彼女は最早狂人です。今となっては、それを正す者も誰もいません」

池田「…………」

阿部「イヴは女性による単性生殖の改善点をずっと探していました」

阿部「それから気の遠くなるほどの歳月をかけて辿り着いた結論。……それが『蝶の羽ばたき』だったのです」

池田「蝶の、羽ばたき?」

400以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/20(木) 17:06:40 ID:bXpSdKMY
蝶☆効果か

401以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/20(木) 22:47:54 ID:15p/2NT6
阿部「A地点で蝶が羽ばたくことによって、B地点で雨が降る。蝶の羽ばたきの影響によって、結果的に別の場所で雨が降ってしまう」

阿部「蝶の羽ばたき――一般にはバタフライ・エフェクトと呼ばれているものです」

池田「聞いたことがあるような……カオス理論、だったか?」

阿部「はい。カオス理論における、通常なら無視できると思われるような極めて小さな差が、やがては無視できない大きな差となる現象のことです」

池田「……難しいな」

阿部「イヴはこの理論を自らの世界に当てはめて考えたのです」

阿部「つまり――一見無視できる程度の小さな障害が、私の計画を妨げているのではないか、と」


TDN「…………嘘。じょ、冗談でしょ。まさかその女、外殻に男性がいるからうまくいかないって――」

阿部「仰る通りですTDNさん。彼女はそう判断し、侵攻計画に着手したのです」

池田「……そんな……滅茶苦茶な……」

阿部「その観測装置も彼女は開発しました。……影響の連鎖はすべて外殻の外で収束するように設定されていますが」

セルゲイ「……彼女はモウ、自分が正常な判断能力を持っているカドウカサエ、分からないヨウデスネ」

阿部「……私たち工作員は、外殻大地を支える巨大なシャフト――その中空を通ってここまで来ました」

阿部「イヴは同じようにこのシャフトを使い、管理下にある航空兵器を外殻大地へ送り込むつもりです」

阿部「外殻大地を爆撃し、施設のすべてを焼きつくし、男性をこの世から絶滅させる為に……」

402以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 20:21:43 ID:5wCLw7Kg
全く、やれやれだな。

403以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/22(土) 04:06:52 ID:zBLeHNXs
池田「……だからイヴにも戦闘機が必要なのか。」

阿部「……はい」

TDN「そのシャフトとやらが、外殻を支えていたのネ。ってことは各エリアにあるシェルターの根本にはみぃんなシャフトがあるってことになるわねェ」

阿部「はい。私以外のNHK工作員メンバーは各エリアで任務を遂行していると思われます」

阿部「その問題のシャフトですが――シャフト内部は元々『外』の人間が安易に入って来れないように、防犯システムの巣になっています」

阿部「結果としてそのシステムが、イヴの侵攻を今阻み、時間を稼げているのが現状です」

セルゲイ「……その防犯システムを抜ける方法はアルノデスカ?」

阿部「我々NHKにはイーモン博士から託された『鍵』があります。部分部分で無効化をしつつ、外殻まで来れたので……勿論その逆も可能だと思います」

阿部「最も、地上へ帰るのに鍵は必要ありませんが」

池田「え?」

阿部「帰る為に、超兵器BEASを起動し、シャフトを高速機動で抜けます」

池田「…………」

TDN「…………」

セルゲイ「…………」

阿部「そしてイヴの航空兵器、マシンの工場を徹底的に叩き、イヴに通ずるサーバーというサーバー全てを完全に破壊します」

404以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/22(土) 05:02:01 ID:JfL3VP7c
阿部さん一人でか?

405以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/22(土) 06:27:29 ID:8E1UWlqU
スレタイからとんでもない方向にきてるな
支援

406以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/23(日) 14:44:51 ID:wFYr6al2

エヴォルって、説明文からすると魂の事としか思えんのだが

407以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/24(月) 23:48:45 ID:.YnDnVt6
もしかしたら教団の人達との共闘クルー?

408以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/25(火) 00:42:57 ID:kf3e.Ono
阿部「それが私たちNHKの工作員に課せられた任務です」

セルゲイ「……地上全土を掌握しているイヴに、BEAS単騎で対抗する事は可能なのデショウカ?」

阿部「……BEASの明確な性能が分からない以上、この任務の成功確率――」

阿部「いえ、そもそも我々に勝ち目がある戦いなのかさえお答えすることができません」

阿部「…………」

阿部「……それでも」

阿部「それでもっ、お願いですっ。私たちに力を貸してくださいっ!」

池田「…………」

阿部「外殻の外に隔離される――そんな差別にも等しい措置を受けたあなた達に対して、我々が助けを請う……」

阿部「身勝手なお願いだとは、思っています……」

阿部「でも……私たちには、あなた達に頼る以外に方法が――」

池田「阿部さん、何か勘違いしてないか?」

阿部「は、はい?」

TDN「そうねェ。その話し方だとあたし達が嫌がってるように聞こえるじゃない」

セルゲイ「ソウデスネ。私は最初から阿部サンに協力するツモリで、お話を伺ってイマス」

409以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/25(火) 00:55:59 ID:mDlVxz1M
きたぁぁ!!

410以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/25(火) 01:22:02 ID:kf3e.Ono
阿部「……え?」

セルゲイ「敵ガ教団であれ、イヴであれ、何れにセヨ我々の命が危険に晒されている事に変わりはアリマセン」

セルゲイ「合理的に考えたとシテモ……阿部サンに協力する事ハ、結果的に私たち自身の自衛になるのデス」

セルゲイ「ソレに何より――あなたは既に私の大切な友人デス」

セルゲイ「友の頼みでアルナラ、断る理由もアリマセン」

阿部「セルゲイさん……」

TDN「それにねェ阿部ちゃん。悪いのはあなたじゃないでしょ」

TDN「悪いのはイヴとか言う1000歳軽く超えちゃってるような性悪女でしょ?別にあなたが祖先の罪を背負う必要なんかないの」

TDN「何よりあたしがイヴを許せないもの。医者として生命を軽んじる行為を見逃す訳にはいかないわ」

TDN「あとアレよ!自分の目的の為にあたし達を皆殺しとかどんだけ自己中って話よ!理論がどうこう言う以前にモラルがなってないわよ!」プンプン

阿部「TDNさん……」

池田「じっとしてたら爆撃をいいように喰らって死んじまうだけだしな」

池田「だったらこっちから殴りこみかけて、そのイヴって親玉をぶっ飛ばしてやろうぜ」ヒュッ

阿部「池田さん……」

池田「で、ついでに人類救っちまおう。な?」

411以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/01(月) 05:12:38 ID:LDn0kMbE
阿部「…………」

阿部「……皆さん、私……」

阿部「私、何て言ったらいいのか……」

阿部「………ッ」

阿部「…………!」ゴシゴシ

阿部「……ありがとうございます、皆さん」ペコリ

池田「お礼を言うのは、まだちぃと早いぜ阿部さん」

TDN「すべて終えてから、よねェ」

セルゲイ「エエ、阿部サンは……」

阿部「……?」

セルゲイ「…………」

池田「ん、どうしたセルゲイ?」

セルゲイ「シーッ!……トラップが反応してイマス。南西の方角、直線距離で3Kmと言ったトコロデショウカ」

池田「……奴らか」

セルゲイ「……コチラにはマダ気付いてイナイヨウデスガ……移動シタ方が良いデショウ」

412以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/01(月) 05:26:00 ID:LDn0kMbE
――――

池田「……な、なぁセルゲイ」ゼェゼェ

セルゲイ「ハイ?何でショウ?」スッ スッ

池田「シェルターに、向かうなら、結構を道を、ソレちまった……ふぅ、気がするんだが」ゼェゼェ

セルゲイ「私は阿部サンの指示に従って、そこへ案内しているダケデスヨ」

池田「阿部、さんが?」フゥ

ガサッ

池田「ん?これは……トウモロコシ?」

セルゲイ「ハイ、野生モロコシの群生地デスカラ」

池田「って事は例の現場の近くじゃねぇか!な、何で阿部さんがココへ来る必要が――」

阿部「ここへ来る事が一番安全で確実だからです、池田さん」

池田「あ、安全?……どういう……」

阿部「……シェルターの正面ゲートの開閉音が、致命的なレベルで大きいからです」

阿部「この限界体制の中で開かずのシェルターが開き、轟音が辺りに響きわたってしまったら……」

池田「……それは全然考えてなかった。確かに無駄に派手だった気がするな」

413以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/01(月) 11:27:01 ID:QGf6DEa2
阿部さんがどうしても阿部高和顔の女の子で脳内再生されてしまうw

414以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/01(月) 12:19:15 ID:ffEJkDco
その辺から出て来てスケィスに襲われたんだもんな。
通路があって当然か。

>>413
そりゃ悲惨だなw

415以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/04(木) 18:19:30 ID:V4LmCH8.
>>412 修正
限界体制→厳戒態勢

416以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/07(日) 00:52:46 ID:tBxdx.sc
阿部「なのでこちらを使います」ガサガサ

TDN「……こちらって阿部ちゃん、どう見ても壁よコレ」

阿部「錆びと苔で周囲の壁と判別がつかなくなっていますが」ピタッ

バシュッ

TDN「……ワオ」

阿部「この様にまだセンサーが生きています。触れなければ反応しない程に劣化はしているようですね」

セルゲイ「とスルと……コレはシェルターへの通路デスカ」

阿部「はい。東西南北にそれぞれ伸びた非常用連絡通路の内の一つです」

池田「扉と言えばドアノブ、非常扉はバルブだからな。扉だとも知らずに云百年経っちまったと」

阿部「無論、ありとあらゆる人間の通行が許可されています。シェルターとしては当然の役割なのですが……」

池田「教団に追われている今だけは、ありがたくない話だな」

阿部「ええ。うまくすれば緊急用の防火シャッターが下ろせるかもしれません。足止めにはなるはずです」

池田「それに心強い……いや、ほんの少しだけ頼りになる奴が中にいるからな。あいつなら力になってくれるはずだ」

TDN「あら、ここにも池田ちゃんの友達がいるの?それってイイ男だったりする?」

池田「……悪い奴じゃない。あと男か女なのかは自分で聞いてくれ」

417以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/07(日) 02:04:41 ID:tBxdx.sc
――――

TDN「……あらヤダ///」

セルゲイ「? 何らかの兵器デショウカ?」

阿部「…………///」

池田「…………」

カンカンッ カンカンカンッ

スカポン「固定概念ヲ〜♪払イノケロ〜♪」

池田「……ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じゃねーか。完成度たっけぇーなオイ」

スカポン「オヤ?ソノ声ハ――」

プピーン

スカポン「イケタサンデハナイデスカ!アブサンモ!ソレニ……ムム?ソチラノ方々ハ初対面デスネ」

池田「俺は池田な。あと彼女は阿部さんで、彼らは俺の友達で仲間の――」

セルゲイ「セルゲイ・ソボレフと申シマス」ペコリ

TDN「あたしは天才ドクター中松、TDNって呼んでね♪」クネリ

スカポン「了解しました。ゲイサン ト タダノサン デスネ」
セルゲイ・TDN「え?」

418以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/07(日) 02:43:52 ID:tBxdx.sc
池田「ハァ……諦めてくれ。こいつは名前を覚えるのが壊滅的に下手なんだ」

スカポン「失礼ナ!ソノ言イ方ダトマルデワタシガ、 ポンコツノ様ニ聞コエテシマウデハナイデスカ!」

スカポン「『オワライロボ』トシテ必要ナ機能技能ハ顔ヲ覚エルコト。コレニ尽キマス。何故ナラ――」クドクド

池田「とりあえず、今はどうでもいいんだよスカポン」

スカポン「アア。ナルホド。マルデショートケーキニ鎮座マシマシテイル苺ヲ最後ニ食ベル如クワタシノ話ヲデザートノ様ニ聞キタイトソウイウ気持チデスネ?」

池田「違う!こりゃ何だって話だよ!」

スカポン「コレハネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲デスヨ」

池田「知ってるよ!じゃなくて何でネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲がシェルターの中央にででんって置いてあんのかって話をしてるんだ!」

スカポン「実ニイイ質問デス、イケタサン。……ワタシ、実ハアナタ達ガ帰ッタ後、深ク反省シテイタノデス」

池田「……は、反省?」

スカポン「アノシリアスナ雰囲気ヲ、ブチ壊シニ出来ル方法ガモットアッタノデハ、ト……」

池田「あれはあれで良かったんだよ。余計な事を――」

スカポン「ワタシハワライノ原点ヲ探リ始メ――」

スカポン「ソシテネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲ガ完成シタノデス」

池田「省くなよ!一番そこ大事なとこだろうが!」

419以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/07(日) 04:34:10 ID:VWL9Xc7M
なんだこのSS
完成度たっけぇ−なオイ。

420以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/07(日) 09:00:05 ID:HqU3QPxQ
乙!
まぁ顔と名前はちゃんと覚えてるんだろうがな。オワライ優先な表現になってるだけでw

後、サイクロンお笑い砲は教団の奴等にでも披露してやるんだなw

421以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/07(日) 19:00:08 ID:VWL9Xc7M
これ最後にくぅ〜疲きても感動できるな

422以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/08(月) 00:53:59 ID:EzoWNVUk
>>417 修正
了解しました→了解シマシタ

423以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/08(月) 02:50:52 ID:EzoWNVUk
スカポン「ワライヲ取ルニ当タッテ最モシンプル、カツ効果的ナ手段ヲ取ッタダケデス」

スカポン「男性器ヲ模シタオブジェヲ作リ、唐突ニ出ス事ニヨッテ、思ワズ笑ッテシマウ……ソンナ効果ヲ期待シテ、廃棄物デネオアームストロング――」

池田「長ぇよ!もういい!分かったから!」

スカポン「シカシ、イケタサン。アナタハ素晴ラシイ」

池田「何がだよっ!」

スカポン「アナタガネオアームストロングジェットサイクロンジェットアームストロング砲ヲ知ッテイタカラコソ、ワタシノオブジェガ輝カシイ意味ヲ持ツヨウニナッタノデス」

池田「ジェットが一つ多いっ!」

スカポン「ソシテ何ヨリ、コノ『ツッコミ』ノレスポンススピード……驚嘆ニ値シマス。ワタシト同期ノオワライロボデモ、ココマデノツッコミハ――」

池田「俺の事はもうどうでもいいんだよ!こっちは大事な話があって、なおかつ急ぎなんだよ!」

――――

スカポン「ナント……ワタシガネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲ヲ作ッテイル間ニ外デハソンナ事ガ……」

阿部「一時的で構わないですから……防火シャッターを閉じて、外部からの侵入を防いでいただけないでしょうかスカポンさん」

スカポン「オ安イ御用デスヨアブサン!――ト、言イタイノハ山々ナノデスガ……今防火シャッターヲ閉メル事ハデキマセン」

池田「何でだ?またあれか?三原則とかでできないのか?」

スカポン「違イマス。単純ニ コノシェルターノ メイン電力全テガダウンシテイル為ニ、シャッターヲ動カス事ガデキナイノデス」

424以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/08(月) 02:56:41 ID:EzoWNVUk
阿部「……電力が使えない?」

スカポン「正確ニ言ウナラ約57分42秒前程カラデスネ。シェルター地上施設ノホトンドノ設備、備品ガマトモに稼働デキマセン」

池田「何があったんだ?」

スカポン「サーバーニ問イ合ワセテモ応答ガナイモノデ……何ガアッタカ、ワタシ自身モ把握シテイマセン」

池田「……訳もなく突然使えなくなるなんて、妙だな」


阿部「……! スカポンさん」

スカポン「廃材デ作ッタオブジェニ夢中ニナッテイル内ニメイン電力ガダウントカワタシノ監督不行――ハイ、何デショウ?アブサン」

阿部「そのメイン電力の流れ――このシェルターで、一番電力が消費されている場所は何処か分かりますか?」

スカポン「ハイ、モチノロンデスアブサン。適当ニ床ニアル端末ニ端末ヲ繋イデト……ムーーーーン……」ペポペポ

プピーン

スカポン「〜〜〜ンッ!出マシタ!エエト……ドウヤラ地下ノ施設ニ、電力ヲマルゴト持ッテイカレテイマスネ」

阿部「……やっぱりそうでしたか」

スカポン「ソノ内ノ『不明ナユニット』ニ、毎秒 シェルター生活最低限電力20年分ヲ、絶エ間ナク貯メコンデイルヨウデス」

池田「! あの戦闘機か!」

阿部「皆さんっ。何故かは分かりませんが、離陸準備が始まっていますっ。急いで地下へ向かいましょうっ」

425以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/08(月) 06:47:48 ID:MdqH0eXs

イヴの方じゃなかったのが救いかな。

426以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/10(水) 21:48:52 ID:t7K0GO9k
遂に、起動するのか?ここからどうなる……?

427以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/16(火) 21:22:45 ID:6dAGtuNQ
支援

428以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 03:21:07 ID:Kw/l6ig2
――――

シェルターの真下――巨大な穴へと繋がる格納庫。

俺達は再びこの場所へと訪れていた。

「…………」

皆一様に口を閉じ、立ち尽くしていた。

――セルゲイ達は兵器自体を初めて見たのだから、驚いても無理はない。

だが俺と阿部さん、そしてスカポンはBEASを見るのは二度目だ。新鮮もないし、第一明るい。そこに何があるかさえも今は分かる。

そう。だから驚くような事は何もない。……そのはずなのだが。

変わり果てた――俺にとってはだが――目の前の光景に俺達は同じように立ち尽くし、衝撃を受けていた。


青白く小さな雷が、BEASの装甲から飛び出しては飲み込まれている。

1本や2本ではなく、数十、数百の小さな雷が、獲物を捕らえる蛇のような獰猛さをもって空中で火花を散らしていた。

壁に走る無数のパイプ、足元にのたうっている巨大なチューブに濃緑色の光が絶え間なく走り、そのすべてがBEAS目掛けて飛んでいく。

時折照明がチカチカと不安定になるのは、BEASが過剰にエネルギーを貯め込んでいるのが原因だろう。

……スカポンの言った通りだ。こんな調子じゃいつ地上の設備も使い物にならなくなるか分からない。

放電しながら、離陸準備を勝手に進める大飯喰らいには加減なんて言葉は通じそうになかった。

429以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 04:18:36 ID:Kw/l6ig2
空気の焦げた匂いが辺りに立ち込め、全身の毛が肌から浮き上がるようなむず痒さを感じる。

ドクン… ドクン…

大きな鼓動音が聞こえて軽く息を吐いた。

……情けない。

これからこいつに乗り込んでドンパチしようって時に、こんなんでビビってどうする。

とりあえず気持ちを落ち着ける為に、右手を胸に置いて――気付く。

手の平から伝わる心音は、早鐘のように早く打っている。

それこそ、前後の音の間隔はほぼない程に。

ドクン… ドクン…

体の内側からではなく、立っている地面を通して聞こえる鼓動音。

俺の心音ではない、大きな鼓動音。

視線を足元から正面へと移し、俺は目を凝らした。


青白い雷の派手さばかりに目を奪われ、見過ごされていた部分――機体の大部分を占めるプレート。

――その、表面。

鼓動音と共に脈打つBEASの『血管』が、そこにはあった。

430以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 09:19:10 ID:kZ4a7GS2
まったく、デコのゲームにはまいったぜ!

431以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 19:36:53 ID:8uAb01wY
BEAS……味方なのか敵なのか判断し辛い文だ

432以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/29(月) 21:21:23 ID:CLpm5EpU
阿部「……これが、BEASの本来の姿……」

池田「……なぁ、BEASってのは兵器じゃなかったのか?」

阿部「兵器です。……それも、恐らく地球上で最も優れた性能の戦闘機でしょう」

池田「……だけど、あの血管、いや血管みたいな物が何と言うかその――」

スカポン「生物ノソレデスネ。ワタシニハマルデ生キテイルヨウニ見エマス」

池田「……だよな」

TDN「……心拍数は30から40、あたし達の半分程ね」


阿部「BEASの仕様については、私も詳しい事は知らされていません」

阿部「そもそもが表向きには存在すらしない、極秘裏に進められたプロジェクトです」

阿部「それにBEASを完成させた後、博士自身の手によって全てのデータは破棄されていますし……」

セルゲイ「……存在ソノモノがブラックボックスというワケデスカ」

阿部「ただ、博士はプロジェクトに着手する寸前まで、ある研究に没頭していたそうです」

池田「……ある研究?」

阿部「ロボットに生命を、あるいは魂を与える研究です」

スカポン「……ロボットニ……魂ヲ?」

433以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/29(月) 23:12:21 ID:CLpm5EpU
阿部「もしその技術を応用したとすれば、この外観にも説明がつくかもしれません」

スカポン「…………」

阿部「……行きましょう皆さん」

――――

TDN「てっきり電気ビリビリで大変な事になるかと思ったけど、近付いたら収まってくれたわネ」

池田「そうでもしてくれなきゃ乗れないだろ。……しかし、まぁ……予想通りだな」

スカポン「エエ、外観ダケデナク、内部モ生物ヲ モチーフトシテ設計シテイルヨウデス」

TDN「見渡す限り機械――じゃなくて内蔵っぽい物体だらけなのが異様な雰囲気ねェ。怪物の胃の中にでも入った気分だわ」

セルゲイ「怪物と言う表現はアナガチ間違ッテいないかもマセンネ」


阿部「…………」

池田「どうした阿部さん?」

阿部「……これが電子戦術マップの上に置いてありまして」スッ

池田「何だこりゃ。手鏡……にしちゃぁ鏡の部分がないし」

阿部「いえ、これ自体は映像ログと呼ばれている機械です。映像を立体的に投影する装置なのですが……ここを見てください」

池田「えぇと……リ……トル……イー……モン?」

434以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/29(月) 23:38:26 ID:CLpm5EpU
スカポン「……ナンデスッテ?」

阿部「え、あぁスカポンさん。この戦闘機を発明したリトル・イーモン博士の映像ログが――」

スカポン「カッ、貸シテクダサイッ!」

スカポンは必死な形相――見た目に変化はなかったが――で阿部さんの手から映像ログを奪おうとして――

静止した。

スカポンの手が、まるで不可視の壁にでも当たったかのように空中で止まっている。

それはスカポンが俺たちに初めて見せた感情的な動作だった。

スカポン「……申シ訳アリマセン、皆サン。ワタシノ今ノ動キガ敵意、モシクハ攻撃性ト判断サレタヨウデス」

池田「ス、スカポン?」

スカポン「……阿部サン。オ手数デスガ、ソノ映像ログヲ再生シテイタダケナイデショウカ?」

阿部「は、はい。勿論そのつもりでしたが……」

阿部さんは多少動揺しつつも映像ログを床に置き、操作パネルに指を走らせた。

《 参照カイスウ 01 記録ニチジ 03:11/21/05/3991 再生 シマス 》

無機質な電子音声が映像ログを作成したと思わしき年代を告げ、湿った機内にくぐもったように反響する。

――程なくして、音もなく宙空にノイズ混じりの青白い人影が浮かび上がった。

435以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/30(火) 05:13:33 ID:noUvSzSE
スカポン「……オオ……博士……」

池田「……え?」

阿部「スカポンさんはイーモン博士を知っているのですか!?」

スカポン「……博士ハ……リトル・イーモン博士ハ、ワタシヲ開発シタ科学者デス……」

スカポン「ワタシニオワライヲ教エ、ワタシヲ息子同然ニ愛ガヲ注イデクレタ、父ト呼ブベキ存在デス……」

スカポン「博士……ナント……オ懐カシイ……オオ……」


《 ……――の――ッな―― 》


《 ……これで良いじゃろうか 》

《 ………… 》

《 ワシの名はリトル・イーモン。BEASを設計し、開発した科学者じゃ 》

《 ……今からワシが残すメッセージは本来、誰かに託すものなどではない 》

《 ――大きな力には大きな責任が伴う。それはBEASという新たな力を生み出したワシにも当てはまる事じゃ 》

《 ケリをつけるならばワシ自身か、あるいはこの時代の人間であるべきなのじゃから 》

《 ……後世にこの映像ログが必要とされるような事態にならぬよう、ありとあらゆる手を尽くすつもりじゃ 》

436以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/01(木) 17:31:49 ID:Yitml3u6
支援

437以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/08(木) 08:29:22 ID:LxQN5Ljo
乙!
スカポンにはもう魂がある様に見えるけどな

438以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/11(日) 16:10:33 ID:1F.oXJMA
脳内でロックマンXのライト博士のテーマが……

439以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/12(月) 18:42:51 ID:Ca1z2ywE
スカポンには感慨ひとしおだろうな

440以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/14(水) 15:46:50 ID:eJoTtds.
《 ……じゃがワシらが志半ばでこの世を去り、イヴを止める者が絶えてしまったその時の為に―― 》

《 このログを残そう。イヴに立ち向かう為の、唯一の手段と共に…… 》

《 ……君が――あるいは君たちが今搭乗している機体は、プロジェクト『ダーウィン4078』によって生み出された超兵器『BEAS』じゃ 》

《 プロジェクト名が示す通り『進化』を遂げる兵器――むしろ無機物の生命体と受け取って貰っても構わないじゃろう 》

池田「し、進化……だって……!?」

スカポン「…………」

《 ――生命を生命たらしめているものは何か?ワシは高密度の精神エネルギーがその核を成していると結論付け、日夜研究に励んでおった 》

《 そしてその仮説は正しいと証明された。高密度のエネルギーを重複させ、擬似的に精神の核を生み出す事に成功したのじゃ 》

《 ……皮肉にもワシの生涯の研究テーマは、兵器を作る過程で完成してしまったという訳になるのぅ 》

《 ……話を戻そうかのぅ 》

《 ワシはその魂の代替物を『EVOL』と名付けた。今の地上にあるほぼすべての戦闘、あるいはナビロボットに導入されている謂わば精神のインプラントじゃの 》

《 ……じゃがそれはロボットと人のコミュニケーションを円滑にするレベルで、魂と呼べる代物ではなかったのじゃ 》

《 当然じゃの。ワシらは『EVOL』の扱いを間違っておったのだから。……BEASを作成するまでワシはEVOLの本質に気付かなかったのじゃ 》

《 ……生命は他の生命を自らに取り込む事によって……あるいは取り込まれる事によって、遺伝子の螺旋に新たな情報を書き加えていく 》

《 ……そう、『EVOL』も生命と同じ性質を兼ね備えていたのじゃ。捕食と被食によって自らを変化させる――即ち『進化』を 》

441以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/14(水) 16:32:03 ID:eJoTtds.
《 BEASはEVOLを余すところなく使いきった兵器と言えるじゃろう。他者――他の兵器を捕食し吸収する事によって、自身を進化させ、より機体を強化させる 》

《 あるいは他の兵器に攻撃された事によって、その兵器に対する装甲や兵装を強化させる事が可能じゃ。それも極めて短期間の間にのぅ 》

阿部「超兵器と聞いていましたが、ここまでとは……」

《 BEASの基本機体性能は非常に高い。それだけでも充分に決定打になりうるかもしれん。……が、BEASの一番の強みはそこではない 》

《 地上の兵器ほぼすべてにEVOLが埋め込まれておるが……それらには進化を促す機能は何もない。捕食や被食による変化はできないのじゃ 》

TDN「……なるほどネェ」

《 つまり地上すべての兵器にとってBEASは『天敵』であり、BEASにとっては地上すべての兵器は『餌』であると言えるのじゃよ 》

《 後出しの食物連鎖の頂点――イヴに対抗する為にワシが出した答えがコレじゃ 》

セルゲイ「動きを読ませナイ為の単機。奇襲の面から見テモ合理的デスネ」

《 ………… 》

《 ……名前も知らぬ君たちに……このような事を頼むのは筋違いかもしれぬ…… 》

《 BEASを駆使し、イヴを倒してくれと頼む事は、間違っているのかもしれぬ…… 》

《 ……じゃが、一つだけ確実に分かる事がある 》

《 生命はバランスですべて成り立っておる。減りすぎても、増えすぎても、軽微な増減であっても全体に大きな影響をもたらすのじゃ 》

《 その危ういバランスの中で、たった一人のエゴによって生物が淘汰されるような事があれば――その未来は確実に破滅を迎えるじゃろう 》

442以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/14(水) 17:02:37 ID:eJoTtds.
《 ………… 》

《 ワシはこれからイヴとの対話に向かう 》

《 同じ科学者として意見を貰いたいと先程イヴから連絡があった。……まぁワルナッチを人質に取られているワシとしては断る術もないがの 》

《 恐らく最後の説得の機会じゃ。……うまくいけばBEASを使わなくとも、力に訴えかけることなく解決することもあるじゃろう 》

《 ……無論、可能性はゼロに近い。が、ゼロではない限りかけてみるつもりじゃ 》

《 見ず知らずの人間に託す前に、ワシ自身がやれる事をやらねばならぬからのぅ!ホッホ! 》

《 ………… 》

《 じゃが、罠と言う可能性も……いや、ほぼ罠と言って差し支えないかの 》

《 もし罠ならば、ワシはここへは二度と帰って来れぬじゃろう 》

《 ……その時の為に、君に、君たちにお願いがあるのじゃ 》

《 先程の話とは別でな。こちらはそんなに難しくない 》

《 このBEASが格納されているシェルターに、スカポンと言うナビロボットがいるはずじゃ 》

スカポン「ハ、ハカセ……!」

《 ……良ければその子にこのログを見せてあげて欲しいのじゃ 》

《 本来の仕事を取り上げてしまったあげく、いつ終わるともしれぬシェルター勤務を命じてしまったのじゃ……それが心残りでのぅ 》

443以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/14(水) 17:15:24 ID:eJoTtds.
《 ……スカポン、元気にしておるかの? 》

スカポン「ハ、博士……!元気ニシテマストモ!ワタシハ元気ダケガ取リ柄デスカラッ!」

《 お前には本当にすまない事をした……。お前の本業はオワライじゃと言うのにのぅ…… 》

《 じゃが理解して欲しいのじゃ、ワシが一から作り上げたロボットとなればイヴが黙っているはずもない 》

《 お前を守るにはナビロボットと偽装した上で、辺境のシェルターに配備する他なかったのじゃ 》

スカポン「エエ!エエ!博士ノ事デスカラキット意味ガアルト、ワタシハ思ッテイマシタヨ!」

《 もしこのメッセージがお前に届いておるならば、このログを後で体に取り込みなさい 》

スカポン「コノ、映像ログヲ……?」

《 そうすればお前の回路から三原則の干渉を取り除けるはずじゃ 》

スカポン「エ……?」

《 心配せずとも良い。お前は素直で優しい子じゃから、三原則なんぞなくたって平和に人と暮らせるわい 》

《 何をすべきか、何をしたいのか、これからはお前の好きにしなさい 》

《 それが生きる、と言うことじゃ 》

スカポン「ハ……ハカ……セ……」

《 ……さて、そろそろ時間じゃ。イヴに会いに行かなくてはのぅ 》

444以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 00:22:26 ID:MDLzX4L6
泣かせるじゃねぇか……!!

445以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 08:50:51 ID:B9oYrEeM
ワルナッチ博士、そうなってたのか

446以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 11:01:20 ID:5IJNQfm2
EVOLとかの設定の扱い方も絶妙よな

447以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 15:05:16 ID:oCJuTYrY
スカポンも……進化するのか?

448以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/18(日) 19:03:05 ID:DUtsiX9M
操縦って分担式なのかな?

449以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/20(火) 01:15:01 ID:EXMR7LOw
《 ……元気でな、息子よ 》

スカポン「ッ……!博士ッ!」

《 ……BEASがイヴはなく、心ある者の手に渡る事を祈っておる 》

《 ………… 》

《 ……どうか 》

《 どうか、この星の……未来を…… 》


―ブィン

スカポン「ハッ、博士ッ!博士ッ!」

スカポン「ワタシ、博士ニ駄目出シサレテカラ沢山ノ練習ヲ シタンデスッ!」

スカポン「待機中デモ、ネタヲ練ッテイタンデスヨ!ネタ帳ダッテホラ!メモリニコンナニイッパイ!」

スカポン「博士ノ好キナ落語モ一生懸命学ビマシタ!古典モ新作モ、何デモ……ワ、ワタシハ……!」

池田「スカポン……」

スカポン「タッタ……タッタ一度デイイノデス……モウ一度、博士ニ噺ヲ……」

スカポン「……父サンニダケノ……トッテオキノ、噺ヲ……ウゥ……」

―ポツッ

450以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/20(火) 02:17:58 ID:EXMR7LOw
池田「…………」スッ

スカポン「イケタサン?コレハ……化学繊維?」

池田「おう」

スカポン「オオ……イツノ間ニコンナニ冷却水ノ漏レガ……アリガトウゴザイマス、イケタサン」

スカポン「型ハ古クナリタクナイモノデスネ」フキフキ

池田「……悲しい時には泣いていいんだぞスカポン」

―ピタ

スカポン「……泣ク?」

スカポン「……デハ、コレハ……涙、ナノデショウカ……」

スカポン「イエシカシ、ワタシハロボットデスシ、ソノヨウナプログラムハ……」

池田「……なぁスカポン。俺はあんまり頭いい方じゃないから、よく分からないけどさ」

池田「EVOLってのは進化をもたらすんだろ?」

スカポン「ハイ、博士ノ説ニヨレバソウデス」

池田「だったらさ。外見や体の造りだけじゃなくて、精神とか心にも同じ事が言えるんじゃないか?」

スカポン「……!」

451以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/22(木) 07:51:16 ID:Ez/4y02E

博士だって、見聞きしたいのは山々だったろうな

452以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/22(木) 08:37:42 ID:WgwB7I4Q
こんなん見たら誰だって聞かせてやりたいと思うだろうよ

453以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/26(月) 15:39:05 ID:a9NtA.HE

まだ先だろうけど、>>1さんがイヴに与える結末はどんなものなのか

454以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/27(火) 14:22:24 ID:y12Sk4OI
イーモン博士の登場の仕方と言い冷却水の涙と言い……色々とアレがよぎりまくるんだが

455以下、名無しが深夜にお送りします:2013/09/02(月) 00:59:33 ID:T084XsUY
保守age

456以下、名無しが深夜にお送りします:2013/09/02(月) 07:02:01 ID:vSqp0sNI
>55 以下、名無しが深夜にお送りします[sage] 2013/04/16(火) 02:08:49 ID:fcmZZu42
>出たキャラ全てくぅ〜疲出演
こ  れ  は  感  動  す  る

457以下、名無しが深夜にお送りします:2013/09/02(月) 07:03:44 ID:vSqp0sNI
>81 以下、名無しが深夜にお送りします[] 2013/04/17(水) 22:20:24 ID:PcQpswkI
>>>1と阿部さんの濃厚なラブストーリー

これも良い感じじゃないか

458以下、名無しが深夜にお送りします:2013/09/02(月) 07:05:05 ID:vSqp0sNI
すヴァらスィいな
本当に

459以下、名無しが深夜にお送りします:2013/09/03(火) 13:23:42 ID:qpnGWoX2
なにしろ物語がちゃんと流れてるのが凄いよなww


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