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安価でカオスSS作る
260
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/09(木) 00:03:25 ID:hBfF611g
――――
スカポン「着キマシタ。イケタサンノリクエスト、食料品ト飲料水デス」
スカポン「今オ開ケシマスネ。少々オ待チクダサイ」
スカポンが腕らしき部分を、壁面に埋め込まれた端末に差し込む。
虫の羽音みたいな音が天井あたりから聞こえたかと思った瞬間。
――よりかかっていた壁が突然無くなった。
池田「……え?」
唐突すぎる壁の消失に呆気に取られている内に、重力に従って体が傾き始めた。
受け身を取ろうとする――が
折り悪く手はポケットの中。
池田(――仕方ない)
一瞬の逡巡の後、覚悟を決めて強めに顎を引き、体を軽く横に捻る。
思った通りの床の硬さと、思った通りの痛みが左半身に広がる。
声を上げるのもみっともないので、そのまま転がり天井を仰いだ。
阿部「い、池田さん!?大丈夫ですか?」
261
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/09(木) 00:41:38 ID:IQMuW2fs
知らなきゃ良かったそんな事実……は傷付くもんな。心が
262
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/09(木) 01:47:30 ID:hBfF611g
心配そうな顔の阿部さんが駆け寄ってくる。
池田「…………」
スカポンに文句の一つも言ってやろうかと思ったが、止めよう。
これはこれで良かった。痛み以上の価値があった。
池田「大丈夫。これ位何ともない」
阿部「ほ、本当ですか?」
スカポン「アレレ?イケタサン、何デソコデ寝テルンデスカ?」
池田「…………」
……やっぱり文句を言おう。
そして思いっきり引っぱたいてやろう。
何が第一条だ。気付かなきゃ意味がないじゃないか。
内心毒づきながら、起き上がる為に床に手をつく。
だが――俺は立ち上がれず、うつ伏せの中途半端な姿勢で固まってしまった。
妙な物体が視界に飛び込んできたからだ。
いや……妙、と言うより、ありえない、と言った方がいいのだろうか。
263
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/09(木) 01:49:30 ID:hBfF611g
目をこすり、もう一度ありえない物体を確認する。
阿部「い、池田さん……?やっぱりどこか強くぶつけ――」
池田「嘘だろ……」
震える手を伸ばし、怖々と指先を閉じる。
――掴める。
つまり、本物。
俺の幻覚でもなんでもない。
つるつるとしたビニールの包装の感触。
思ったより軽い重量感。
傾けると手の中で小さく響く乾いた音。
心臓が高鳴り、額と耳がカッと熱くなる。
唾液がとめどなく口内に溢れ出す。
これは。ひょっとしてはこれは――
池田「カップ……ヌー……ドル……?」
スカポン「ハイ。『カップヌードル』デスヨ。コロ・チャー増々ノ一品デス」
264
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/09(木) 03:16:33 ID:hBfF611g
阿部「カップヌードルって――」
池田「マジかぁぁぁぁぁぁ!ヒャッホォォォォォォォウ!!」
阿部「い、池田さん!?」
池田「カップヌードルってアレだぞ!お湯を注ぐと3分でアレで何それ超すごい!」
阿部「し、知ってますよ。池田さん落ち着い――」
池田「落ち着けるかよ!これ一個でどんだけの価値があるかってもうそりゃ一財産できる位――」
スカポン「一個ジャアリマセンヨ、イケタサン」
池田「……な……に……?」
スカポン「一日三食換算デ、カップヌードル一年分アリマスヨ」
池田「――ッ」パクパク
スカポン「勿論、カレー、シーフード、塩、トマト、シーズン限定ノ商品ニ至ルマデ――」
スカポン「スベテノ商品ガ一年分備蓄サレテイマス」
池田「はァァッ!?」
スカポン「ア。日清ニ限ラズ、他メーカーモ同様デスヨイケタサン」
俺は気絶した。
265
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/09(木) 04:01:37 ID:hBfF611g
――――
池田「う、うーん……」
阿部「池田さん!良かった意識が……!」
池田「あぁ……阿部さん……ふとももが気持ちいいなぁ……そうだ……俺は夢を見ていたんだ……」
阿部「夢、ですか?」
池田「カップラーメンが食い切れない位ほどあるっていう夢で――」
スカポン「夢ジャアリマセンヨ、イケタサン」
池田「…………」
バッ
阿部「あっ、ちょ、急に動いちゃ駄目です池田さんッ!」
池田「じゃぁ目の前のこのタワーみてぇなのは……」
スカポン「ラーメンニ限ラズ、様々ナ食料ガ詰マッテイマス」
スカポン「今見エテイルノハ地上部分ダケデスノデ、量ガ少ナク見エマスケドネ」
池田「こ、これで量が少ないってか……!」
池田「……いや、ここに避難する人数を考えれば……妥当な数なのかもな……ハハ……」
266
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/09(木) 08:26:04 ID:GJ.duXBI
むっちゃ贅沢なカップヌードル一年分だな。正直欲しいんだけど
267
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/09(木) 18:07:08 ID:vSRQhwVw
その時代のカップラーメン一個は
現代のお金でいう
いくらぐらいになるんでしょうか…?
268
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/09(木) 19:17:10 ID:hBfF611g
――――
スカポン「水ハ、タンクノ酸素ト水素ヲ反応サセ作成。サラニ無菌状態デミネラルヲ添加シテイルノデ……美味シク、安全ナ飲料水ヲ飲ムコトガデキマス」
池田「……なるほど。わからん。ありがとうスカポン」
スカポン「ソレジャァ次ハ、アブサンノリクエストデスネ」
阿部(……セキュリティレベルが高いエリアなら今度こそ何か手掛かりがあるかもしれないです)ヒソヒソ
池田(というかそこ以外食い物かトイレだったからな……)ヒソヒソ
スカポン「地下ニ行キマス。階段ヲ使イマスノデ、注意シテクダサイ」
池田「……何に注意するんだ?」
スカポン「ワタシニデス。ウッカリコケルト、頭ガカナリノ速度デ飛ビ出シチャウノデ」
池田「…………」
――――
スカポン「着キマシタ。ココガ、アブサンノリクエストシタ エリア デス」
池田「…………」
阿部「…………」
位置的には居住区クレーター中央の、まさに真下の位置。
269
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/09(木) 19:20:29 ID:hBfF611g
スカポンが案内してくれた場所の正面に扉はあった。
壁と明らかに作りが違う、ピカピカに輝く金属の合板。
その硬そうな複数の合板が、カメラの絞りのようにぎゅっと閉じている。
……きっとドリルが何千本あったとしても足りない奴だ。
スカポン「一般ノ方ハ立チ入リ禁止デス。セキュリティレベルハココガ一番高イデスヨ」
スカポン「権限ヲ持ッタ人デナイ限リ通行スル事ガデキマセン」
池田「スカポンじゃ開けられないのか?さっきの備蓄庫みたいに」
スカポン「無理デス。一介ノナビロボノワタシニハアクセス権限ガ与エラレテイマセン」
阿部「スカポンさんでも駄目かぁ……」
スカポン「マァ、先日ココヲ通ッタ方ト一緒ナラ、イケタサン達モ行ケナクハナイノデスガ」
池田「……何?」
スカポン「アレレ?ワタシ言ッテマセンデシタッケ?」
スカポン「ワタシカラ見テ、昨日、実時間ニシテ4日ト2時間19分47秒前ニソノ方ニオ会イシマシタ」
スカポン「ヨク覚エテマスヨ。何シロ154年振リノ オ客サンデシタカラ」
池田「スカポン、そいつはどんな奴だった?そいつの力が借りたい。このゲートの向こうに、どうしても俺たちは行きたいんだ」
270
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/09(木) 19:28:00 ID:hBfF611g
スカポン「ソレハ身体的特徴デヨロシイデショウカ?」
池田「何でもいい。そいつを探す為の手掛かりが欲しい」
スカポン「ソウデスネ……女性ノ方デシタ」
池田「何!?女!?阿部さん!ひょっとして仲間とかじゃ――」
スカポン「ソシテアブサン、アナタニ瓜二ツノ顔デシタヨ」
阿部「……え?」
池田「……は?」
スカポン「顔ダケナラ実ニ99.9894%一致シマス。髪型ハロングデシタケド」
阿部「…………」
池田「…………」
スカポン「デスガマァ顔ダケノ話デス」
池田「顔、だけ?」
スカポン「ワタシ、腐ッテモ錆ビテモオワライロボデス。一度会話シタオ客サンノ顔ト性格、決シテ忘レマセン」
スカポン「アブサン、見タ目ハソックリデスガ、性格ガマルデ違イマス」
池田「それは、どんな風にだ?」
271
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/09(木) 19:43:22 ID:hBfF611g
スカポン「モット内向的ナ方デシタ。今ノアブサンミタイニ笑ッタリ焦ッタリモナク――」
スカポン「ドチラカト言ウトワタシ達ロボットニ近シイモノヲ感ジマシタネ」
阿部「感情に乏しいってことかな?」
スカポン「ソウデス。無機質トイウカ……オーヤダヤダ、仏頂面ノガードマシンミタイニハナリタクナイデス」
スカポン「ソレニ、ソノ方、何カニ怯エテイタヨウデス」
池田「怯える?何にだ?」
スカポン「サァ?コノシェルターニ近イ居住区ニツイテ ワタシニ2,3尋ネルトスグ出テ行ッテシマッタノデ」
池田「…………」
スカポン「オワライロボニアルマジキ シリアスナ空気ヲ感ジタノデ」
スカポン「ワタシノ一番ノ体ヲ張ッタ持チネタヲ披露シタノデスガ……クスリトモ笑ッテクレマセンデシタ……」プペー
スカポン「オオソウダ。ソレニアブサン、ワタシト初対面ダッテ仰ッテマシタヨネ?」
阿部「……は、はい」
スカポン「ダカラワタシ、他人ノ空似ト解釈シマシタ」
スカポン「確率的ニハ非常ニ低イデスガ、ワタシノオワライロボトシテノ経験ノ方ガズット信用デキマスカラネ!」プピーン
阿部「私にそっくりの、女性……」
272
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/09(木) 19:51:44 ID:hS76E5P6
スカポン、良い愛嬌してるなぁ
ちっちゃいお菓子が給料の世界なら、そりゃあカップヌードルは大変な価値だよな
量はたっぷり味は濃厚、栄養もそこそこあり。ちょっと消化が早いのが物足りない所か
273
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/09(木) 20:13:54 ID:zNuk3d/E
記憶喪失も捨てたもんじゃないね
もしかしたら本当に他人とか双子の可能性もあるけど
274
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/09(木) 23:07:59 ID:hBfF611g
池田「……スカポン、このシェルターの出入り口は何箇所ある?」
スカポン「マズ1番大キイゲートガ1ツ。イケタサン達ガ開ケタ場所デスネ」
スカポン「ソレカラ非常用ノ連絡通路ガ東西南北ニソレゾレ1ツズツ。ソノ4ツハ地下道デスガ」
池田「分かった。じゃぁそのすべての入口が開閉した回数は調べられるか?」
スカポン「エエット、ソレハ建設当初カラデスカ?」
池田「いや、5日前から今に至るまででいい」
スカポン「ソレデシタラ……ハイ、2回ダケデスネ」
池田「俺たちが開けたのも含めてか?」
スカポン「含メテ2回デス。ソレ以上前デスト、154年前マデ遡ル必要ガアルノデ、メインサーバーニアクセススル必要ガ――」
池田「いや、大丈夫だ。それさえ分かればいい」
阿部「……池田さん?」
池田「俺たちが開けて1回。5日前に1回。変だろ、それ」
阿部「……あ!」
池田「その、『阿部さんにそっくりな女性』がここへ入って出たなら――」
阿部「開閉した回数は3回のはずですよね」
275
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/09(木) 23:17:39 ID:hBfF611g
池田「そうだ。……それに……」
阿部「ええ、そうですね。分かってます」
池田「…………」
阿部「私にそっくりな女性……」
阿部「記憶を失う前の『私』だったんでしょうね……」
スカポン「……何ヤラ、シリアスナ空気ヲ感ジマス。一ツ噺デモ打チタイ気分デス」プペー
――――
スカポン「記憶喪失!?ソレハ大変デスネ!医療センターヲ……アァ、ワタシタダノナビロボデシタ」プペー
阿部「心配してくれてありがとうスカポンさん。でもお医者さんだったらとっても便りになる人がいるから平気だよ」
スカポン「ソウデスカ。シカシ、アブサンハ強イオ人デスネ」
阿部「強い?」
スカポン「ワタシ、自分ノメモリガ一部分デモマッサラニナッタラ絶対ニ自暴自棄ニナル自信ガアリマス」
阿部「……1人だったら、私もそうだったかもしれない」チラッ
池田「……な、何だよ」
阿部「ふふっ。なんでもないよ池田さん」
276
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/09(木) 23:24:34 ID:hBfF611g
スカポン「オオ!アブサン!」プピーン
阿部「はい?」
スカポン「モシ5日前ノ人物ガアナタナラ、ココノ扉ヲ開ケラレルノデハ?」
池田「……だな」
池田「それに『5日前の阿部さん』は……まぁまともに入り口を使ったとしての話だが」
池田「開閉回数を見る限りじゃ、シェルターの外から入ったのではなく――」
阿部「『中から来た』んですよね」
池田「……そう。そしてスカポンが入る事も見る事もできない扉が目の前にある」
スカポン「面目ナイ限リデス……」プペー
阿部「大切な事を忘れる前の私は、ここから……」
池田「……無理するなよ」
阿部「え?」
池田「どんどん事態はデカい方に傾いてきてる。ここまで来たら何が起こるか俺にだってさっぱりだ」
阿部「…………」
池田「ドクにも言われてるんだ。記憶を戻すなら徐々に徐々にってな。体に負荷がかからないようにだ」
277
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/09(木) 23:36:06 ID:hBfF611g
阿部「池田さん……」
池田「だから焦らなくていい。今日これだけの収穫があったんだ。日を仕切りなおしたって別に――」
阿部「いえ、開けます」
阿部「スカポンさんから聞いた前の私の印象を聞く限り、のんびりしている暇はないと思います」
池田「……まぁな」
阿部「それに、池田さん。一緒にいてくれますよね?」
池田「……それとこれとどういう関係が――」
阿部「池田さんが一緒なら私、怖くないです」
池田「……そう、か」
阿部「私と一緒に……いてくれますか?」
池田「俺は――」
プピピーン!
スカポン「オ2人共!見テ下サイ!コンナ所ニ隠シ端末ガアリマスヨ!」
池田「スカポンッ!お前なぁ!」
阿部「ふふっ。じゃぁ行きましょうか、池田さん」
278
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/09(木) 23:47:23 ID:q3a.nr4U
二人と一体の進む先に待ち受けるものとは……
279
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/10(金) 01:34:55 ID:ab0FLUX2
慣れた様子で、掌紋認証や網膜認証を済ませる阿部さん。
そう、今日までに思い出した記憶はどれも『手段』にあたるものばかりだ。
『目的』や『自らの過去』に関する記憶はどれもはっきりしない。
『この場合の記憶喪失は人にとって自己防衛の一つなのヨ』
『あまりにつらく、そのまま受け止めてしまうと精神が崩壊しかねない記憶や情報から身を守っているの』
『阿部ちゃんはね。口には出さないけど、とても焦っているわ』
『くれぐれも無理はさせないでね。……まぁ池田ちゃんのことだから、私が注意しなくたって――』
――そんなの、言われなくてもな。
無茶したら気絶させてでも何とかするさ。
<< 個人情報の照合……完了。管理者権限を確認しました >>
やたら滑らかな電子音声が端末から響いた。
ほぼ肉声に近い発音だ。が、感情が篭ってない分妙にメカメカしい。
……こっちのノイズだらけの丸っこちい奴より遥かに手間がかかってそうなのにな。
スカポン「イケタサン、何カ失礼ナ事ヲ考エテマセンカ?」プピーン
280
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/10(金) 02:30:04 ID:ab0FLUX2
<< ゲート。解放します >>
ゲートの中心に小さい穴が現れ、それが無音で瞬時に広がる。
ゲートの向こうにはまた同じタイプのゲートが幾重にも重なっており、それも同様に次々と広がっていく。
1つ。2つ。3つ。4つ……
……10から先は数えていなかった。
1つでかなりの厚さ、それもやたら硬そうな金属を使用していて――この数だ。
このゲートの奥で待っているものの重要さが、嫌でも伝わってくる。
開ききった後も俺たちはしばらく動けずにいた。
不気味な静寂の中で、無意識に拳を握り締め、皮膚が軽く突っ張った感触で我に返る。
阿部さんを見やると、心なしか青ざめた顔をしているように見えた。
……何やってるんだ俺は。
池田「行こう」
阿部「……はい」
こちらを見ずに阿部さんが左手を差し出す。
右手で細い指先を取り、俺たちは未知なる世界へ一歩踏み出した。
282
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/10(金) 18:48:46 ID:ab0FLUX2
――――
ゲートの先はシェルターの1Fに比べると更に薄暗く、少し肌寒かった。
シェルターを維持する為の装置が近くなったののか――あるいは別の何かが近くなったのか。
若干耳につく駆動音が空気と床から伝わってくる。
それ以外に響くのは俺と阿部さんの足音と、時おり出るスカポンの気の抜ける音だけだ。
長い長い廊下を抜けると少し視界が開けた場所に出た。
天井の低さからくる圧迫感から解放されたことに、軽く息をつき――そして息を呑んだ。
目の前の欄干から先が、ない。
まるでそこだけを、綺麗に切り抜かれたかのように。
――真っ暗で巨大な穴が、ぽっかりと目の前に現れた。
池田「……掘ってて空洞にぶち当たる経験は何度かしてきたが……こんなにデケぇ穴は初めてだ」
阿部「うぅ……底がまるで見えませんよ」
スカポン「アブサン!身ヲ乗リ出シテハ危険デスヨ!」カタカタ
池田「……スカポンは壁に張り付いて何をやってるんだ」
スカポン「ワタシ、高イ所苦手ナンデス!覗キコムナンテトテモトテモ!」プペー
283
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/10(金) 18:55:08 ID:ab0FLUX2
――――
池田「――で、反対側までグルっと回ってきた訳だが」
阿部「これ、道路ですかね?」
池田「多分滑走路だとは思うんだが……何だってこんな地下にあるんだ?」
スカポン「大キイ穴マデ続イテマスネ。何ノ為ノモノナンデショウカ?」
池田「……この奥にこれが必要な何かがあるってことか?」
阿部「こっちも真っ暗でよく見えないですけど」
声の反響具合からして、かなりの広さがある。
だが他の場所と違って壁や床に光源がまるでない為、こちらも闇に包まれている。
スカポン「操作パネルガ16m先ニ見エマス」
池田「……こんなに真っ暗で何故分かる?」
スカポン「暗視モードニ切リ替エテミマシタ。ア、ダカラ強イ光ヲ出サナイデクダサイ」
池田「んなもん持ってたら最初から使ってる」
スカポン「アー、駄目デス。駄目駄目デスヨイケタサン」
池田「……何が駄目なんだ?」
284
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/10(金) 19:19:54 ID:BXKYrvPc
ふむ。何となく分かったかも知れないぞ
285
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/10(金) 19:28:09 ID:ab0FLUX2
スカポン「今ノハ『振リ』デス。『押スナヨ!絶対押スナヨ!』ト言ッタラ押スノガ正解ナンデス」
スカポン「デスカラ、今ノ正シイ『返シ』ハ多少無理ヲシテデモイケタサンガ発光シ、ワタシヲビックリサセルベキデシタ」
池田「……さっさと照明を点けてくれ」
スカポン「了解シマシタ」
本当に見えてるのか怪しいものだったが、特に危なげなくスイスイと進んでいくスカポン。
しばしの間の後、俺の場所だけピンポイントで照らされた。
……何故。
池田「……スカポン」
スカポン「スポットライトモ可能ミタイデスネ。イケタサンガマルデ銀幕ノスターノヨウニ――」
池田「……全部、照らしてくれ」
池田「……了解シマシタ」
俺たちのいる場所から奥へ奥へと天井の照明が次々と明かりを取り戻す。
――ぶら下がったクレーン。壁や床に走る色鮮やかなチューブ。荷が積まれたままのフォークリフト。
白光に照らされ、様々な設備が現れる。
――そして最奥の照明が灯った時、そいつは姿を現した。
286
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/10(金) 19:37:40 ID:Rl/6BtHU
シリアスな空気を少しでも和らげようと尽力するスカポンの芸人魂は見上げたものだな。スルーにも慣れている
さて、いよいよ大詰めな雰囲気になって来たが……
287
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/10(金) 20:11:22 ID:KAsqWvYg
新たな技 シャイニングスカ か
しかし池田に光れって随分な無茶振りだなww
288
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/10(金) 20:50:38 ID:2iIrsthQ
格好良いのが来そうな予感にワクワク
289
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/10(金) 23:04:29 ID:ab0FLUX2
池田「……ワオ」
少なめに見積もって全長30m程の戦闘機――らしき物体が側面をこちらに見せて鎮座していた。
パールホワイトに薄っすらサクラ色を混ぜたような光沢のあるボディ。
全体の7割程を占めるプレートは、直線よりも曲線を意識して作られているようで、どこか生物的に見える。
またパーツの節目節目に鮮血のように赤い機巧が見え隠れし、それがより拍車をかけている。
剣先を思わせる鋭い先端を両端に持つ一番大きなプレートは、機体後部から前部まで被さる形で覆っていた。
遠目に見ると巨人が持つサイズの超規格外の槍が、ただ置かれているようにも見えた。
らしき――と今いち確信が持てなかったのは図鑑やデータで見た戦闘機とあまりにデザインが異なっていたからだ。
第一視界を確保する為の窓がまったく見当たらない。
コックピット周辺までプレートで覆われている辺り完全に意味不明だ。
――ただ、こいつが戦う為に生み出されたのは間違いないだろう。
素人目にも分かる攻撃的な意思をデザインの端から見て取れる。
ただ飛ぶだけならば必要のない角度に付いた複数のスラスター。
広げるどころか、獲物を捕える寸前の隼のように窄められた主翼。
武器らしい武器を目にするまでもなく……この機体が自在に宙を舞い、戦う様子を容易に想像できた。
290
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/10(金) 23:37:39 ID:Etl60TI6
多分ダーウィンの自機だよなこれ。スタイリッシュな文で出してくれてありがとう!
291
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/11(土) 07:02:43 ID:LhylH4fg
ホントすげーなー…かこうとおもった心意気に感謝!
292
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/11(土) 19:39:37 ID:oX0hgpUY
問題なのは、コイツがどういう役割を持っているのかという事だが……
293
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/11(土) 19:50:41 ID:tKyl/49w
スカポン「何ダカ、イカ、ミタイデスネ」
池田「…………」
スカポン「チョット色ガツイテイルノデ……一夜干シ、モシクハスルメイカナ印象ヲ受ケマス」
――こいつがオワライロボットとして優秀か否かはさっぱりだが、一つだけ確実な事が分かった。
何かをダイナシにすることにかけてはピカイチだ。
許さんぞスカポン。こんなにカッコいいのにイカだと。
……見えなくもない辺りが、余計に腹立たしいのも多少あるが。
阿部「……ビー…ス……」
池田「……阿部さん?」
彼女が機体の方へふらりと一歩近づいた。
眼の焦点が宙空のどこか遠くに合っているようで、心ここにあらずといった感じだ。
ビース
阿部「BEAS。プロジェクト『ダーウィン4078』によって生み出された機体の基礎パターン」
阿部「……やっと、見つけた……うん……?二度目?ああ……機体だけじゃ駄目、そう、協力者を……」
池田「あ、阿部さん?おい大丈夫か?」
阿部「情報は本物、だった。博士はやはり、これを完成……、私は外へ、でも中にイる」
294
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/11(土) 19:55:01 ID:i1gG7GE2
おっとぉお?
295
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/11(土) 19:55:08 ID:tKyl/49w
阿部「私、外へ出て、それかラ、出テ私は、使命ヲ外、デ…何故ここへ戻っテ……ェゥ」
池田「おい阿部さん!どうした!?」
阿部「逃げナきゃ、何から、駄目ッ、こんナ事デワタし……ッア、ぐッ!」グラッ
阿部さんは額を押さえ、その場にうずまってしまった。
彼女の尋常じゃない反応に急いで駆け寄り、肩をささえる。
……体が恐ろしく冷たい。
顔面は血の気が引き、瞼が激しく痙攣している。
阿部「怖い……助けて、誰か、お願い、こんナ場所で、立ち止ま、うっ、あァッ!」ギクンッ
池田「阿部さん!聞こえるか!」
阿部「あ、ァ……う……?」
池田「俺だ。こっちを見るんだ」
阿部「いけ……だ、さん……?」
池田「そうだ。側にいるぞ。怖くない。もう何も怖いことはないんだ。……もう、全部終わってる事だから」
阿部「……あり、がとう……」
阿部さんはそう一言だけ告げると、俺の腕の中で意識を失った。
296
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/11(土) 20:06:52 ID:oX0hgpUY
おぉ、確かゲーム開始時点の機体名がビースだったか?
それより被弾後のピスタの方が記憶にはよく残ってるがw
297
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/11(土) 20:50:23 ID:s9z71CYk
安部さん……大丈夫かなぁ
298
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/11(土) 20:56:06 ID:LhylH4fg
まさか
>>1
も題名からして
こんな壮大なssになるとは思わなかっただろうな…
299
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/12(日) 02:05:38 ID:Izr0mY9U
――――
阿部「…………」
池田「…………」
声をかけようとして口を開き、そのまま口を閉じる。
先ほどからそんな事を繰り返してばかりいる。
意識を取り戻した阿部さんは目に見えて分かる程衰弱していた為、探索を打ち切って今は帰り道だ。
当たり前のようについてこようとしたスカポンはシェルターから出れず、ハンカチを振って見送ってくれた。
阿部「…………」
池田「…………」
目を覚ました時から阿部さんは一言も喋っておらず、今も下を向いたまま黙って横を歩いている。
胃が痛くなるような沈黙を紛らわす為に、頭を軽く掻きながら首を捻る。
――何と、声をかけるべきなのか。
俺は彼女の記憶を取り戻す為に努力を重ねてきた。
大切な記憶や思い出を取り戻す――それは自然な事で、阿部さん自身の為だと強く思っていたからだ。
……それがどうだろう。その結果が、彼女をこうやって苦しめている。
300
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/12(日) 02:15:32 ID:Izr0mY9U
――つらくて、心が折れそうな記憶を呼び覚ます事が、本当に自然な行為なのか?
――今彼女がああやって以前みたいに笑えなくなることが、正しい行いなのか?
――それならいっそ全部忘れたままで――
阿部「……ごめんなさい、池田さん」
池田「……へ?」
阿部さんが……謝ったように聞こえた。
阿部「……ごめんなさい」
もう一度、今度は俺の顔をはっきり見て阿部さんは言った。
池田「……何で、俺に謝るの?」
阿部「後少しで……」
池田「…………」
阿部「後少しで、思い出せそうでした」
池田「…………」
阿部「でも、私、逃げちゃいました。……思い出すことから」
阿部「自分がバラバラになりそうで、怖くて……」
301
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/12(日) 02:27:30 ID:Izr0mY9U
池田「それがどうして――」
阿部「池田さんが一緒なら、怖くない、って……自分で言ったのに」
池田「!」
阿部「だから、その、ごめんなさい」
――ッ。
この娘は、阿部さんは、俺を信じれなかった事に対して謝っている。
――クソッ。
目の奥がカッと熱くなる。
――だったら俺のしてやれる事はなんだ?
阿部さんが俺を信じようとしたように、俺も彼女を信じればいい。
彼女が困難と戦おうとする意思を持っているなら、俺も一緒に戦えばいい。
それを俺は……
池田「……飯だ」
阿部「……え?」
池田「飯だ、飯」
302
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/12(日) 02:36:28 ID:Izr0mY9U
阿部「ご、ご飯ですか?」
池田「おう。晩飯だ」
池田「物事がうまくいかない時ってのはな、疲れているからうまくいかないんだ」
池田「そういう時は何やったって駄目なんだよ。とにかく休まなきゃ駄目なんだ」
池田「で、疲れを取るにはたっぷり食って、たっぷり寝る。それが一番なんだ」
阿部「…………」
池田「だから、まず飯。それでその後目一杯昼までぐずぐず寝る」
池田「だから飯食いに行こう。551まんありったけ注文してさ。もう食えないって位食おうぜ」
阿部「池田さん……」
池田「その、なんだ。昼食った時、気に入ってたみたいだしな」
阿部「……はい。私551まん好きです。たくさん、食べてみたいです」
阿部「……あの、池田さん」
池田「ん?」
阿部「……ありがとう」
池田「……おう」
303
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/12(日) 06:22:00 ID:5au.qJlY
良い想い合いだな
今頃はさっきのシェルターに人が殺到してるんだろうか?
304
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/12(日) 07:07:28 ID:rHODJDww
スカポンが閉めるんじゃないのか?
305
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/12(日) 16:19:38 ID:Izr0mY9U
――――
店主「いらっしゃい!……って池田じゃねぇか。どうした?忘れ物か?」
池田「普通に飯食いに来たんだよ」
店主「へぇ!ケチ臭いお前さんが一日に二度もウチにねぇ」
池田「……悪いかよ」
店主「悪かねぇよ。対価さえ払ってくれるなら立派なお客様さ。後輩さんもいるみたいだし、奥のテーブル席にするかい?」
池田「そうだな。そっちの方が……ん?」
カウンターの端に座る人物にふと目が止まる。
季節外れの白のロングコートが目立ったのも勿論だが、何よりその顔に見覚えがあった。
白髪に碧眼。大きな体格に見合わぬ柔和な顔つき。
池田「……ロシア兵さん?」
ロシア兵「ハイ?」
池田「やっぱりそうだ!ロシア兵さんじゃないか!」
ロシア兵「……オオ!池田サンじゃないデスカ!」
阿部「?」
306
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/12(日) 16:23:42 ID:Izr0mY9U
――――
池田「紹介するよ。ちょっと前に職場で一緒に働いていたロシア兵さんだ」
阿部「あ!ハイチュウの人ですか?」
池田「……そういや、名前聞いてなかったな」
ロシア兵「ソウ言えば名乗ってもいませんデシタ」
ロシア兵「私はセルゲイ。セルゲイ・ソボレフと言いマス」
阿部「初めましてセルゲイさん。私は阿部って言います」
池田「珍しいな。姓と名両方持ってるのか」
セルゲイ「本当はソボレフの姓だけなのデスガ……部隊の皆が付けてくれたTACネームを名として名乗ってマス」
池田「って事はセルゲイさんと呼んだ方がいいか?」
セルゲイ「ハイ。私としてもそちらの方が嬉しいです。あとサン付けしなくても結構ですよ池田サン」
池田「ハハッ!あんただって俺をさん付けしてるじゃないか」
セルゲイ「言われてみれば確かニ」
池田「親父、とりあえず偽551まん3つ頼む」
店主「あいよ!」
307
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/12(日) 16:29:33 ID:Izr0mY9U
――――
阿部「熱っ……ふーっ、ふーっ」
セルゲイ「奢ってもらって何だか申し訳ナイデス」
池田「…………」
池田「すまなかったな、セルゲイ」
セルゲイ「? 何がデスカ?」
池田「……あんたが失職したのはほぼ俺のせいだ」
セルゲイ「アア、その事デスカ」
池田「俺が給料受け取る時にあんなワガママ言わなければ――」
セルゲイ「ソレは違いマス」
セルゲイ「……李下に冠を正サズ。勘違いをされるヨウナ状況デ個人的なプレゼントをした私がいけないのデス」
池田「……でもな」
セルゲイ「ソレに私は後悔も何もしてイマセンカラ」
池田「……え?」
セルゲイ「一日一善。私の流儀に従ったまでの話デス。ダカラ池田サンが気を病む必要は何もアリマセン」
308
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/12(日) 16:50:17 ID:Izr0mY9U
池田「……そうか」
池田「……なぁ、あんたは酒、好きか?」
セルゲイ「エ?勿論好きデスガ……」
池田「ロシアの酒っつーとウォッカか……この店にあればいいが」
セルゲイ「池田サン?」
池田「なぁ親父、この店にウォッカって置いてるか?」
店主「一本だけならあるぜ。……値は張るぞ。一本しかねぇしな」
池田(親父、ちょっと屈め)ヒソヒソ
店主(あん?)ヒソヒソ
池田(……絶対に大声出すなよ)
店主(……お前何言って――)
チラッ
店主「なッ!!」ガタッ
池田(大声出すなっつったろ!)
店主(お前、これ、カップヌードルじゃねぇか!どこで手に入れたんだこんなモン!)
309
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/12(日) 16:55:43 ID:Izr0mY9U
池田(詳しくは言えないが……どうだ?ウォッカのボトルでもお釣りが来るだろ?)
店主(……お釣りどころじゃねぇぞ。い、いいのか?受け取ったらもう返さねぇぞ。やっぱやめってのもなしだぞ)
池田(おう。今日の支払いはこれで頼むぜ。だからウォッカくれ)
池田「……じゃぁ親父、ウォッカをくれ。ボトルでな」
店主「あいよッ!」
セルゲイ「……池田サン、流石にお酒まで奢られる訳ニハ――」
池田「一日一善だっけか。まぁ、俺もそれをやってみたくなっただけだ」
セルゲイ「池田サン……」
店主「はいウォッカお待ち。ストリチナヤって銘柄だ。まぁ、店にはこれしか無いんだが」コトッ
セルゲイ「Столичная……故郷の、お酒デス……」
封を切り、グラスへ透明な液体を注ぐ。
アルコール度数の高い酒独特の鼻をつく香りが、ふわりと広がった。
池田「俺も少し貰うかな」トクトク
セルゲイ「……アリガトウ、池田サン」
池田「セルゲイ、乾杯しようぜ」
310
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/12(日) 17:13:46 ID:Izr0mY9U
セルゲイ「……За встрe'чу 」チン
池田「За встрe'чу 」チン
チビリ
池田「……結構キツいな、コレ」
グイッ
セルゲイ「ッハァ!生き返りマス!我々ロシア人にとってウォッカは命の水デス!」
池田「そりゃ良かった!」
セルゲイ「……何とお礼を申し上げれば良いノカ、生きている内にこのお酒が飲めるとは思っていませんデシタ」
池田「……思ったんだが」
セルゲイ「ハイ?」
池田「あんた前より日本語流暢になってないか?」
セルゲイ「……アア、その事デスカ」
セルゲイ「職場ではわざと訛らせて喋ってマシタカラ」
池田「?」
セルゲイ「外国人は外国人らしくシテイナイと、色々と不便ナンデスヨ」
池田「……滑らかに話せた方がうまく行くような気がするんだがな」
311
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/12(日) 17:32:36 ID:5au.qJlY
失業云々を除けば、手放しで良い話と言えるんだがなぁ
312
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/12(日) 19:26:26 ID:Izr0mY9U
セルゲイ「ココのエリアを管理する者が我々に求めているのは単なる労働力デス」
セルゲイ「ソシテ地元の人間に取って代わるような外国人は排除対象にアリマス」
池田「……使えない地元の連中より、やる気のある優秀な奴を雇うべきだと思うが」
セルゲイ「私が優秀かどうかはさて置き、地域の雇用を減らす事は得策ではナイデショウ。最終的にソレは私たち外国人にも牙を向くことにナルノデスカラ」
セルゲイ「……デスガ、一番問題なのは私がロシアの元軍人という点デショウ」コトッ
池田「国がロシアだと何かマズいのか?」
セルゲイ「……池田さん、数年前のカカオ戦役をご存知デスカ?」
池田「北の人工降雪地帯の?氷の下から見つかったチョコレート倉庫の利権争いとか、そういうのだった気がするが」
セルゲイ「ソレデス。……管理者を名乗る連邦と飢えに苦しむ民衆との戦いデシタ」グイッ
セルゲイ「……祖国は心から愛シテイマス。タダ、発見した食料を分け合う事なく独占しようとした連邦の判断は愚行と言う他アリマセン」
セルゲイ「……最も、当時私がテロリストと断じ、民衆と敵対した私が言える事ではないのデスガ」
池田「……じゃぁあんた――」
セルゲイ「お察しの通りデス池田サン。私はその連邦側の兵士、チロルチョコを管轄する指揮官デシタ」
池田「…………」
セルゲイ「攻めやすく守り難い地形。ソシテ貯蔵量の多さ故に、カカオ戦役の中で最も熾烈な戦いが繰り広げられた場所でもアリマス」
313
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/12(日) 20:21:32 ID:3.KblPgM
チョコは美味いからな……困窮した状況なら戦争になっても仕方ないか
314
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/12(日) 20:36:11 ID:rHODJDww
カップラーメン>>>>>>ウォッカてwwww
315
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/12(日) 23:23:02 ID:Izr0mY9U
セルゲイ「……国に忠を尽クス。ただソノ為に私の部下たちは命を捧げ、敵を駆逐し……そして散って逝きマシタ」
セルゲイ「私や同志たちが倒してきたテロリストが、単なる一般市民だという真相が分かったノハ……瀕死で担ぎ込マレタ野戦病院の中での事」
セルゲイ「管理局は祖国を鎖国化し、誤った知識を兵士に植え付ケ、愛国心を体の良い餌にして利権を握っていたダケデシタ」
セルゲイ「私の任務には正義も大義も、何も存在していなかったノデス……」
池田「…………」チビリ
グイッ
セルゲイ「……最終的に倉庫は陥落シ、ソレが決定打とナッテ管理局は解体されマシタ」
セルゲイ「今ではソノ戦いは『聖戦』と呼ばれていマス。……国民が自らの手デ国家を取り戻し、実際多くの人々を飢えから救いマシタカラ」
池田「こいつの流通が多いのは、それが理由だったのか……」
セルゲイ「……私は決して祖国へ帰る事はデキマセン」
セルゲイ「国からスれば管理局の生き残リなど逆賊でしかナク、また祖国の外でハ私は単なる元殺戮者ダ」
セルゲイ「真実も知らズ散っていた同志たちを思エバ、兵としての過去も捨テル事も出来ナイ」
セルゲイ「……ダカラ、故郷のお酒を飲む事も、二度とナイと思ってイマシタ」
池田「…………」コトッ
セルゲイ「……改めてお礼を言わセテクダサイ。спасибо、本当に、アリガトウ」
316
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/13(月) 03:36:41 ID:yDksmxrs
セルゲイ「フフ。シカシアルコールが入ると暗くナルのが私の悪い癖デス。コンナに美味しいお酒なのに本当に申し訳ナイ」
池田「…………」スッ
セルゲイ「……池田サン?」
池田「亡き同志に」
セルゲイ「池田サン……」
セルゲイ「亡き同志ニ。……そしてアナタに――」
セルゲイ「За дружбу」チン
池田「За дружбу」チン
阿部「……ザ・どるージブ?で合ってるかな、池田さん、セルゲイさん」スッ
セルゲイ・池田「…………」スッ
セルゲイ「За дружбу!」チンッ
池田「За дружбу!」チンッ
阿部「ざっ、За дружбу!」チンッ
グイッ
コンッ!
池田「――ッカぁ!効くなぁコイツはァ!」
阿部「ハーーッ!く、口がッ!喉がッ!焼けそうですっ!?」
セルゲイ「Хорошо……素晴らシイ」
317
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/13(月) 19:40:58 ID:yDksmxrs
――――
阿部「むにゃむにゃ……にひひ///」
池田「っへー!あんたがマンガ好きだとはね!」
セルゲイ「ヨク言われマス。見た目のイメージと全く噛み合わナイ、と」
池田「でさ、でさ。それでどうして一番好きなのがドラゴンボールなんだ?」
セルゲイ「私は初期のRR軍と戦っていルぐらいが好きナンデス。ウパのエピソードが特ニ。後半の戦う部分はアンマリ、デスネ」
池田「俺はベジータ編だと思うんだけどな……まぁその続きが見つかってないのが問題だけど」
セルゲイ「ベジータ編のラストですか?」
池田「ああ、結局悟空が勝ったのかベジータが勝ったのか、分からないままでさ……」
セルゲイ「ソレならウチにその巻がアルと思いマス。……ロシア語デスケド」
池田「マジかッ!?ロシア語でも何でもいい!続きが見れるなら何だっていいさ!」
セルゲイ「池田サンは本当にマンガ好きなんデスネ」
池田「『面白い』ならな。面白いんだったらどんなもんでも首突っ込んで確認しないと気が済まないんだ」
セルゲイ「……フフ、故郷を思い出しマスネ」
池田「あ……何か、俺マズいこと言ったか?」
318
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/13(月) 19:46:48 ID:yDksmxrs
セルゲイ「イエイエ、違いマス。思い出したノハ近所の幼馴染デスヨ」
セルゲイ「アナタと同じくアニメやマンガが好きで堪らない人デシタカラ……池田サンを見てタラふと、思い出したんデス」
池田「へぇー、じゃぁ俺と同じで相当『オタク』だったんだな」
セルゲイ「エエ。アア、ソウソウ。彼には面白い話があるんデスヨ」
池田「面白い話?」
セルゲイ「彼はトビキリ優秀な数学者デシテネ。失われてシマッタ公式をこの世蘇らセル、ソンナ研究を続けてイルとらしいデス。私にはよく分かりまセンガ」
池田「……頭が良さそうな人だな」
セルゲイ「実際頭は良いのデショウガ、彼の出した論文がケッサクでシテ」
池田「ろ、論文?俺はエンタメ以外はからきしだぞ?」
セルゲイ「『ドラゴンボールはこの世にいくつ存在するのか?』」
池田「…………」
セルゲイ「ネ。面白いデショ?」
池田「……それ論文なのか?」
セルゲイ「論文デス。検索をかければライブラリにもあるハズデスヨ」
池田「ぷっ……あっはっはっは!た、確かにそりゃ傑作だ!」
319
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/14(火) 07:17:20 ID:ARxoMkyQ
3.14だ…!
320
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/14(火) 17:38:26 ID:VHmfi536
セルゲイ「難しい事はよく分かりませんが、最終的にドラゴンボールは約3.14個。円周率とほぼ同じになるそうデス」
池田「ハハッ。何をどうやったらそんな数字が出るんだかな」クピッ
セルゲイ「デスヨネ。私は何かのジョークかと思っテ盛大に笑い飛ばしてマシタガ、本人は至っテ真面目デシタ」
池田「いやー、頭の良い連中が何を考えてるのかなんてさっぱり分からねぇな」
セルゲイ「……タダネ、池田サン」
池田「ん?」
セルゲイ「彼が何を思っテ数を割り出ソウとシタかは定かデハアリマセンガ……」
セルゲイ「意外とその数字には信憑性がアルと思いマセンカ?」
池田「んー、そりゃどういう理屈でだ?」
セルゲイ「ドラゴンボールは7つ揃えて初めテ、願イが叶うモノデス」
セルゲイ「……彼が出シタ答えは3.14個。7つに満たナイ」
セルゲイ「ツマリ、現実には願いが、アルイハ奇跡と言ったモノは起こり得ナイ――」
セルゲイ「ソウイウ結論を暗ニ示しているのではナイカト私は感じマシタ」
池田「……なるほどねぇ。そういう物の捉え方もあるかぁ……」クピッ
セルゲイ「……ト言ウト?」
321
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/14(火) 17:50:33 ID:VHmfi536
池田「俺は逆に3.14個『も』ある、と感じたからさ」
セルゲイ「『モ』?」
池田「ああ。割合にして半分弱あるって事だろ?」
セルゲイ「…………」
池田「0じゃないなら、いいんじゃねぇのか」
池田「そいつが半分しかないと思ったのか、半分もあると思ったのかは……まぁ分からないけどよ」
セルゲイ「……要スルに3.14個しかナイと言うのは確率の数値で、極所的ニハ7つに成り得ルと?」
池田「まぁ、だとしたら十分すぎる位だ」
池田「何よりドラゴンボールが『ない』んじゃなくて『ある』って話だからな」
池田「3.14個しかなくても、ひょっとしたら小さい神龍でも呼び出せるかもしれないしな」
セルゲイ「……池田サン、アナタは面白い人デスネ」
池田「よく言われるよ。……変人だとか図々しいだとかな」
セルゲイ「イエ、イイ意味で言ってるンデス。彼もアナタと話せたらきっと喜ぶデショウ」
池田「……やっぱり同類扱いしてるじゃないか」クピッ
――バァンッ!
322
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/14(火) 19:30:13 ID:VHmfi536
入口の扉がけたたましい音を立てて開け放たれた。
店内の客の視線が一斉にそちらへ向かい、そしてすぐに離れていく。
見慣れた作業着を着た男が、両手を広げてニタニタと笑みを浮かべている。
――貧相な下半身とムキムキな上半身、そして脂ぎったゴリラ顔。
できれば顔を合わせたくない男がそこにいた。
池田「……セルゲイ、場所を変えよう」
折角の酒がまずくなってはかなわない。椅子から軽く腰を浮かし――
アニキ「よォ、池田」ニィ
……あっさり見つかった。
アニキ「ン?もう帰るところか池田ァ」
池田「……そうですよアニキ。明日早いんで、もう帰ります」
アニキ「まぁまぁ、多少融通利かせてやるから一緒に飲もうぜ、なァ?」
池田「お気持ちはありがたいですが、結構です」
アニキ「……そうか、じゃぁ言い方変えるぜ。黙ってそこに座り直せ池田」
池田「……はい?」
323
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/14(火) 19:41:13 ID:VHmfi536
アニキ「池田だけじゃねぇ。ここにいる連中全員そこから動くな」
ザワザワ…
池田「……アニキ、一体何が――」
アニキ「黙ってろってのが聞こえなかったのか池田」
アニキ「オイ、入って来いお前ら」
アニキの背後から音もなく複数の男たちが現れた。
全員が全員、真っ黒なローブを纏っている。
目深にかぶったフード。胸元に赤い刺繍で邪神のモチーフ。
ルシファーズハンマー
――堕天使の槌?
何故ここに。それもこんなに大勢で――
店主「……おい困るぜ旦那。店で勝手な事されちゃよ」
アニキ「なぁにすぐ済むさ。それに善意でやってやるんだ。勿論無償でだぜ?」
店主「? 何をだ?」
アニキ「――『悪魔狩り』だよ」
アニキ「善人をかどわかすクソッタレを退治しに来てやったのさ」
324
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/14(火) 20:26:57 ID:ZADczBsc
アニキィ…
325
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/14(火) 21:16:49 ID:ITzyWluU
こんなのはアニキじゃねぇ……クソアニキだ!
326
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/15(水) 02:36:35 ID:PcY6XfoA
スッ
アニキ「――天にまします我らの父よ、邪神ケイオスよ」
『我らの父よ、ケイオスよ』
アニキ「あなたが抱く神の園を悪魔の血で汚す行いを、我らの罪をどうか赦したまえ」
『我らの罪を、彼らの罪をどうか赦したまえ』
アニキ「我は神罰の代行者。御手を煩わせることなく、我らが剣となり矢となり、あなたの、我らの敵を討ち果たさん」
『我らは剣なり。我らは矢なり。槌を振り翳し、悪魔を屠る代行者なり――』
ギュッ
唐突に左腕を強く掴まれた。
見れば阿部さんがひしとしがみついている。
池田「……え?」
阿部「あ……あ……ぅ……」
池田「阿部さん?」
俺は顔を見て、何が起こっているか即座に理解した。
焦点の合わない大きく見開かれた目。青ざめた表情。
327
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/15(水) 04:00:25 ID:PcY6XfoA
――今、阿部さんは『思い出している』。
何かを切っ掛けにして――
彼女は青ざめた唇を小さく動かし、
阿部「……わ、私を……私が最初に、助ケを求めタ、ぅ……」
池田「落ち着いて阿部さん。助けって誰を――」
阿部「そシて私ヲ、ぐっ、うっ襲った、あノ、あァ……」
冷たく、震える指先で、彼女は1人の人物を示した。
……黒衣の集団の中でたった1人、薄汚れた作業着を着ている男を。
男は片膝をついた姿勢を取り、さらに祈りの口舌を続ける。
ルシファーズハンマー
アニキ「――我、堕天使の槌階級第三位、洗礼名スケィスの命を持って、神罰を代行する」
スケィスと名乗ったアニキは、工業用の特殊な手袋を緩慢な動作で引き抜き、
手の甲をこちらに向け、胸に手をかざす奇妙な格好を取る。
池田「――ッ!」
――アニキの右手の甲には、『C』の焼印が、醜く、黒く浮かび上がっていた……
328
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/15(水) 09:04:01 ID:TKhROi8k
おいおい、流石にヤベーだろこれ。どうすんだ?
329
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/17(金) 18:15:12 ID:YU58070.
――――
連続強姦事件の犯人は顔を隠し、複数の人物を犯し続けた。
その犯人に繋がる唯一の情報は右手に焼印があることのみだった。
だが、もう1つの確実な情報が存在したのだ。
……『声』、という実に有力な情報が。
襲われた被害者にしか分からない、もう1つの証拠。
阿部さんもあの日聞いたであろうその『声』の主が、目の前にいる。
手袋で隠れていた焼印。背格好。体臭。行動範囲。声。……すべての要素がパズルのようにするすると当てはまっていく。
――アニキが、こいつが、犯人。
池田「…………」
――震えている。
彼女は恐怖で。
俺は――
奥歯がぎちりと妙な音を立て、口の中に鉄の味が広がった。
330
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/17(金) 18:36:05 ID:YU58070.
――――
スケィス「――っとまぁ、決まりなんでね。形式ばらせてもらったけどよ」
池田「…………」
スケィス「池田ァ、俺ァな、堕天使の槌の幹部さまなんだよ。どうだ?驚いたか?」
池田「…………」
スケィス「おっかねぇ顔すんなよ池田ァ。折角のカワイイ顔が台無しだぜェ?」
スケィス「幹部っつっても俺のポジはお忍びでよ。表立って司教さまみたいなことはできんのよ」
スケィス「何しろ俺は『スケィス』!死の恐怖を司る実行部隊の長だからよ!死神って呼ばれて恐れられてるんだぜェ?」
スケィス「格好いいだろ?ん?」
池田「…………」
スケィス「……ノリ悪いなテメェ。……まぁいいや、俺の邪神の目を持ってすれば悪魔を探すなんざ朝飯前だからな」ハン
池田「…………」
スケィス「むーん……どうやらこの店内のどこかに悪魔が潜んでいるようだなァ……」ヌーン
スケィス「む、近い。近いぞ」ヌーン
スケィス「……見つけたぞォ!おい、そこのポニーテールの奴!」
331
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/18(土) 01:29:47 ID:XSXkTWL2
阿部「…………」ビクッ
スケィス「そうだテメェだ。俺の目に狂いはねぇ、テメェが悪魔だ」
『――おぉ……あれが悪魔……』
『やはり地の底より神の園を――』
『――まるで人ではないか……何と卑劣な……』
スケィス「店にいる野郎ども!よく聞け!ここに悪魔がいる!」
スケィス「外殻の遥か地下深くからやってきた悪魔、つまり『女』だ!」
スケィス「女は俺たちを誑かし、地の底へと引きずり込もうとする恐ろしいバケモノだ!俺たちはそいつを退治しにここへ来た!」
ザワザワ…
「女だって!?そんな馬鹿な――」
「――お、女なんて、め、迷信だろ?な、なぁ?」
「魅入られたら最後、骨と皮になるまで精気を吸い取られるって話を――」
スケィス「――とは言ってもすぐには信じられねぇ奴もいるだろうな」
スケィス「……だがそいつは、間違いなく女だ!悪魔だ!存在するだけで俺たちを蝕む災厄だ!」ビッ
スケィス「嘘ではない証にこいつを今この場で処刑し、悪魔である事を証明してやる!」
332
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/18(土) 03:04:38 ID:XSXkTWL2
池田「アニキてめぇ……!このッ、クソ野郎……ッ!」
スケィス「おーおー。可哀想になぁ池田ァ……お前は悪くない。何も悪くないんだ……」
池田「……何を――」
スケィス「俺は知ってるぜ。お前は可愛くて従順な俺の後輩だ。だから分かるんだよ……」
スケィス「お前はその悪魔に操られているだけなんだろう……なァ?」ヒククッ
池田「……アニキ、まさかマジで堕天使の槌に――」
スケィス「俺に任せておけ池田ァ。教団には魅入られちまった人間を浄化する方法だってあるんだ」
スケィス「だから何も心配ない。今すぐ横にいるバケモノを俺たちが退治してやるからよ……」
スケィス「……おうお前ら」
『はっ』
スケィス「写真で一応確認してるとは思うが、池田には傷つけるなよ。……他はまぁ殉教者で片付けちまっても構わねぇが」
『はっ。スケィス様の仰せのままに』
池田「――ッ」
控えていた男たちのローブの裾がゆっくりと持ち上がり、彼らの不自然な膨らみの正体が明らかになった。
――アサルトライフル。全自動射撃が可能な自動小銃。詳細までは分からないが、人1人を蜂の巣にするには十分な代物だ。それが、約10丁。
黒々とした銃口がこちらに一斉に向けられる。阿部さんただ1人へと。
333
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/18(土) 06:17:24 ID:nkVi2PEc
本気で、絶体絶命じゃねーか……
334
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/19(日) 16:09:42 ID:pjqgWOtM
本気で彼女を殺すつもりだ。
守らねば――でも、どうやって?
こっちは丸腰。しかも相手は交渉が通じないイカれた狂信者どもだ。
――アニキがゆっくりと右手を上げた――
俺が弾避けになったとしても、気が動転した今の彼女では――
――笑みを浮かべながらその右手を――
クソッ!考えている時間はない!こうなったら彼女だけでも――
ドンッ
突然俺は左から右に向かって猛烈に突き飛ばされた。
継ぎ接ぎだらけ鉄板の床にしたたかに背中を打ち付け、悶絶する。
更に息をつく間もなく、今度は阿部さんがこちらに落下してきた。
ワケも分からず慌てて彼女を抱きとめる。
―― 一体、何が――
轟音。銃声ではなく、金属がひしゃげたような音だ。
音のした方角を見れば、再利用合金製の重いテーブルが不気味なほどあっさり宙に浮いている。
335
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/19(日) 16:45:29 ID:pjqgWOtM
池田「セルゲイ……?」
テーブルを浮かした主は、想像を絶する速度で俺たちに駆け寄り、
飛んでいるテーブルの縁を掴むと、そのまま床に叩きつけて床にめり込ませた。
白いコートが重力を思い出したかのように、ひらりと舞い落ちる。
続いて、立て続けの銃声が店内を引き裂いた。
金属製のテーブルに銃弾が当たり、破裂音が至近距離で響き渡る。
――遮蔽物。
遅まきながらに気付いた。
この男は一瞬で俺たちを守る為の砦を作り上げたことに。
守れる位置に俺たちを突き飛ばし、テーブルを蹴りあげ、それを防壁にしたのだ。
セルゲイ「予告も無シに手荒な事ヲシテスイマセン。コノ手以外思いつかなカッタモノデ」
先ほどと変わらぬ穏やかな表情で俺に語りかけてくる。
銃弾の雨の中にも関わらず、セルゲイは極めて落ち着いた様子だ。
池田「……そうか。あんた元兵士だったな。ありがとう、助かったよ」
セルゲイ「いえ、まだ助かッテイマセンヨ池田サン」
336
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/19(日) 17:18:36 ID:/75ytXOE
即死は免れた……ってところだな
337
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/19(日) 22:24:32 ID:pjqgWOtM
ババババッ―
キン キンキンキンッ―
アニキ「――ッ――撃つのやめろっつってんのが聞こえねぇのかボンクラども!池田にも当たっちまうだろうが!」
『…………』
アニキ「ハァ……おい池田ァ。聞こえるか?」
池田「…………」
アニキ「2,3発当たっちまったかもしれないがよ、こっちに悪気はねぇんだ。そもそも的が動かなきゃ当たらなかった話だからなァ」
池田「…………」
アニキ「そこにいる真っ白いのは用心棒かなにかかよ……チッ、面倒臭ぇ真似しやがってまぁ」
アニキ「いいか、よく聞けよ池田ァ。こっちは銃をたっぷり持った集団で、そっちはたった3人だ。そこに立て籠もったってお前らには万に1つの勝ち目もねぇ」
アニキ「それにだ。……お前ら全員皆殺しにしようって言ってるワケじゃないんだぜ?」
アニキ「俺たちは悪魔狩りに来ただけだ。無用の血が流れるのは大司教様もケイオス様もお望みにならないだろうしな」
アニキ「ただその悪魔を俺たちに引き渡せばそれでいいんだ。間違っても池田――あとついでにその真っ白い奴にも危害は加えねぇさ」
アニキ「何だったらお前らに報酬として食料を与えてやってもいい。悪魔を逃さずに見張っておいてくれたってことにしてな」
アニキ「ん?どうだ池田ァ?悪い話じゃぁないだろう?」
338
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/19(日) 22:41:51 ID:pjqgWOtM
――――
池田「……万事休す、か」
池田「…………」
池田「……セルゲイ」
セルゲイ「ハイ?」
池田「頼みが、ある」
セルゲイ「…………」
池田「阿部さんを助けて欲しい」
セルゲイ「……阿部さんヲ?」
池田「兵役を退いたあんたに……戦いで色んなものを失ったあんたに……こういう頼み事はしたくない」
池田「でも今俺に頼れるのはセルゲイ、あんたしかいないんだ」
セルゲイ「…………」
池田「無論対価は払う。与太話でも何でもなく、大量に食料のある場所を知ってる。それを全部あんたにやるから、阿部さんを助けて欲しいんだ」
セルゲイ「……池田サンは?」
池田「……この状況を無傷で切り抜けられるなんて思っちゃいないさ」
339
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/19(日) 22:43:28 ID:/75ytXOE
食料なら、これから十二分に間に合う様になるのかな?
340
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/19(日) 23:41:18 ID:pjqgWOtM
池田「俺が何とか時間を稼ぐ。だから彼女を脱出させて欲しい」
セルゲイ「…………」
池田「食料の場所は開かずのシェルターだ。開け方は阿部さんに聞けば分かる。飲料水に食料、何だってある」
池田「そうだな、あんたの職を取り上げちまった……せめてもの罪滅ぼしだ」
池田「……代わりに教団と敵対しちまうおまけが付いちまうが……一生食うには困らなくなるはずだ」
ガンッ
アニキ「――なァ!!聞いてんのかよ池田ァ!!」
池田「!」
バッ
池田「この通りだ。頼む!」
セルゲイ「…………」
セルゲイ「池田サンは、アナタは助かりたくないのノデスカ?」
池田「……助かりたい。できればな」
セルゲイ「デハ、何故彼女を優先スルのデスカ?」
池田「……一週間前だったら、自分を優先しただろうな」
341
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/20(月) 00:01:39 ID:/wNcbKrU
池田「ここじゃそれが当たり前だし、俺だって生に齧り付いて生きてきた」
池田「……でもな、今はもう駄目なんだ」
池田「俺はもう……自分より何より、阿部さんが大切なんだよ」
池田「俺だって死にたくはない。死にたくはないが……俺が犠牲になる事で阿部さんが少しでも長く生きられるなら――」
池田「――命は惜しくない」
セルゲイ「……本気で言っテいるのデスネ?」
池田「……ああ。阿部さんを犠牲にした人生に意味が、幸福があるとは思えない」
セルゲイ「…………」
セルゲイ「分かりマシタ。引き受けマショウ」
池田「……セルゲイ。ありがと――」
セルゲイ「アナタと阿部サンを助けマス」
池田「……え?」
セルゲイ「池田サン、アナタは嘘ツキデスネ」
池田「は、あ……え?う、嘘つき?」
セルゲイ「エエ。さっきアナタは自分の事を変人デ図々シイと言っテイマシタ」
342
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/20(月) 03:41:10 ID:/wNcbKrU
セルゲイ「本当に図々シイ人ナラ、最初カラ自分も含メテ私ニ頼むハズデス」
セルゲイ「……ソシテ変人でもナイ。アナタが阿部サンを想う気持ちハ、気高く愛に溢れてイマス」
池田「……セルゲイ」
セルゲイ「アナタは阿部サンの為なら自分がどうナッテモ構わナイと言う、迷いなき覚悟を見セテクレタ」
セルゲイ「大切な人を思いやる優しさの心。自己を犠牲に、殉じようとする勇気……」
セルゲイ「私はアナタの魂ニ、黄金の精神を見マシタ……誇り高く、崇高で、犯しがたい精神を……」
セルゲイ「……イイ人が損をスル世の中を変エル。ソレは私にはできナイ事デスガ――」
セルゲイ「イイ人のアナタ達を救う事はデキるかもシレマセン」
池田「……! セルゲイ、まさか――」
優しく青い眼で微笑みながら、セルゲイは立ち上がった。
彼は膝の埃とガラス片を軽く払うと、アニキ達の方へと歩き出す。――ふと思い出したように肩越しにこちらに振り返り、
セルゲイ「アア、ソレと食料の件デスガ……私はイリマセンヨ」コッ…
セルゲイ「Столичная――ウォッカ。故郷の酒。アレだけデ有り余ル程の対価デス」コッ…
セルゲイ「……ソシテ何よリ」コッ…
セルゲイ「私には素敵な友人ヲ守るという、己を捧げるに足ル理由がアリマスカラ」コッ…
343
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/20(月) 07:03:03 ID:dy6zoLJo
セルゲイさん……どうするつもりなんだ?
344
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/20(月) 21:08:51 ID:Dic4SXhk
黄金の精神…
安価のこなし方が秀逸過ぎてwktkが止まらない
345
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/21(火) 00:06:37 ID:n/WCvE4g
>>337
修正
アニキ→スケィス
346
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/21(火) 00:11:38 ID:n/WCvE4g
――――
スケィス「おっとそこで止まりな、真っ白いの」
セルゲイ「…………」
スケィス「どっかで見たと思ったら……ハッ、ちょっと前にウチの現場にいたロシア兵か」
スケィス「失職して用心棒ってところか。まァ、お前さんの経歴からすりゃァ再就職先なんてそんなもんだよなァ」ヒククッ
セルゲイ「…………」
スケィス「おゥ。投降したいなら条件があるぜ。池田を説得して悪魔をここに連れてこさせるんだ」
スケィス「そうすりゃお前もさっき逆らったのチャラにして無罪放免だからよ?なァ?」
セルゲイ「私は……話合いに来まシタ」
スケィス「……話合いだァ?」
セルゲイ「エエ。悪魔をスグ処刑トイウ形ではナク、何か別の方法デ穏便に済ませラレナイカト思いマシテ」
スケィス「……何言ってんだお前?」
セルゲイ「アナタたちの説法の中ニモ『例え誰もが許さぬ罪人であろうと、我々は赦す』とアリマス」
スケィス「……まさか悪魔に改心させるとか……そういう事言ってるのか、テメェは?」
セルゲイ「仰る通りデス」
347
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/21(火) 00:30:19 ID:n/WCvE4g
スケィス「……ハァ……お前ははまともだと思ったんだがなァ……」
スケィス「悪魔は悪魔なんだよ。罪人どころか人ですらねぇんだ。さっき言っただろ?存在するだけでアウトなんだよ」
スケィス「まァお前も悪魔に魅入られちまったんだろうが……池田と違ってお前に良くしてやる義理はねぇな」
スケィス「そんなワケでよ。悪魔に加担した罪で、お前処刑な」
セルゲイ「……ソウデスカ」
スケィス「……意味分かってんのか?お前をぶっ殺すって、そう言ってるんだ、俺はよ」
セルゲイ「…………」
スケィス「ああ、そうだ、丁度いいや。冥土の土産に教えてやるよ」
スケィス「――お前をクビにしたの、俺なんだわ」
池田「なッ……!?」
セルゲイ「…………」
スケィス「知ってるぜ。池田に給料オマケしてやったんだってなァ?勝手に俺の池田に色目使いやがってよォ……クソが」
スケィス「……まァ、いいか。こうして殺せるワケだしな」
アニキの脇に控える黒ローブ二人がこちらから銃口を外し、セルゲイに向ける。
スケィス「――死ね」
348
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/21(火) 01:43:30 ID:f1YLnb4s
死なないでくれ、セルゲイさん……!
349
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/21(火) 03:43:23 ID:n/WCvE4g
虫を払うような手付きで、アニキの手が振り下ろされた。
瞬間――視界に入るすべての出来事がスローモーションのように流れ始める。
――セルゲイに向かって手を伸ばそうとする――意識だけで、手が前に出ない。
――セルゲイの方に駆け寄ろうとする――やはり意識だけで、足も動かない
それならば声を、と腹部に力を込め、
池田「セル――」
ババッ――
名前を完全に呼び終える前に、黒ローブの手元でマズルフラッシュが炸裂した。
近距離での銃撃。
当然、近くの遮蔽物へ隠れる時間など、ありはしない。
銃身の中で加速を得、セルゲイに向けて放たれた弾丸は――
・・・・・・
――何もない宙空を通過した。
350
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/21(火) 22:50:19 ID:PU3LSAQA
!?
351
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/22(水) 03:07:14 ID:KdCKBP/s
――――
アサルトライフルを構えていた二人はさぞ戸惑ったはずだ。
目の前のロシア兵は白い残像を残して、目の前から掻き消えてしまったのだから。
……勿論セルゲイは消えたのではない。
彼らも視線を少し下げれば――あるいはフードを取っていれば理解できたかもしれない。
――セルゲイが銃弾を『避けた』という事実を。
アサルトライフルのトリガーが引かれる直前、セルゲイは片足を軸にして独楽の如く高速回転し、異様に低く腰を落とした。
更に両手を遠心力を利用して左右に広げ、腕を虚空に突き出し、開手。
刹那、――金属音。
コートの右袖と左袖から、ハンドガンが視認できない程の速さで飛び出し、ぴたりとセルゲイの掌に吸い付いた。
回転運動を終え、敵を正面に捉えた彼は、空でも見上げるかのような自然さで斜め上を見上げた。
――発砲しているアサルトライフルの銃口を眺めている?――
視覚から微かに意識をそらしたその直後――
2発の銃声が店内に響き渡り、黒ローブの2人が床へと崩れ落ちた。
352
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/22(水) 06:50:14 ID:MKXU4ZL2
スタイリッシュや
353
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/23(木) 09:54:10 ID:xdFCEZzw
だれかいますかー
354
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/23(木) 10:08:12 ID:8dftAswQ
頑張れ。完結まで見てる
355
:
108
:2013/05/23(木) 18:35:24 ID:48finqVI
>>353
ageていただけるのは嬉しいのですが……
そのレス内容だと私がレス催促してるように見えるので、勘弁してください。
それだけでROMってる方が(いるとすれば)そっ閉じする可能性あるので。
>>354
モチベ上がります。
ついでに
>>248
安価をまとめると展開の予測が容易になる(かもしれない)ので、使った数だけ書いておきます。
現在52個消費 52/86
続きは夜投下します。
一度に投下する数が少なくて申し訳ない。
356
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/23(木) 19:43:06 ID:wJfpumN.
おお来たか
ROM専だが楽しみに待ってるぜ
357
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/24(金) 02:56:31 ID:ekXK1jis
スケィス「なッ……」
一瞬の内に仲間が2人倒されたことに絶句するアニキ。
セルゲイは構えていたハンドガンを下ろし、アニキの方に向き直った。
セルゲイ「私の心臓、腹部付近にポイントし、射撃――」
セルゲイ「明確な殺意と敵性ヲ確認したノデ、反撃シマシタ」
セルゲイ「……タダ、命までは奪っテイマセン。適切な処置をスグにスレば助かるデショウ」
池田「……え?」
よく見れば黒ローブの2人は右手を押さえて地面に屈み込んでおり、足元には小さな血溜まりが広がっている。
どうやらセルゲイは先程の2発の銃撃で2人のそれぞれの利き腕を撃ち抜いたらしい。
つまり、あの状況で敵を殺さずして無力化したというワケだ。……いよいよもって人間技じゃない。
彼は一体――
『悪魔だ……』
アニキの後ろに控えていた男がぼそりとつぶやいた。
「白コート、白髪、二挺拳銃……あ、悪魔……」
男は震える手でフードを取り、素顔が露わにする。
358
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/24(金) 04:41:42 ID:ekXK1jis
右頬に目を引く大きい傷跡があり、それがスキンヘッドの側頭部にまで届いている。
体格と銃を持つ構えが他の者より様になっている様子から鑑みるに、元傭兵か何かだろうか。
恐れるものなどなさそうな――むしろ見る者が恐れるであろう男が、明らかに恐怖の表情を浮かべている。
スケィス「あァ!?悪魔に決まってるだろうが!俺たちは悪魔狩りに来てるんだからよォ!」
動揺を隠す為なのか荒い口調でアニキが叫ぶ。
頬傷の男は青ざめた顔で慌てて首を横に振った。
「ち、違いますスケィス様。あの男です、あの男が悪魔なのです」
「頭髪、肌、服装に至るまで白ずくめの男……二挺拳銃の名手……間違いない……管理局の、白い悪魔……」
スケィス「白い、悪魔だと……?」
「……最後の聖戦で、解放軍の死体の山を築き上げた管理局の歩兵、セルゲイ・ソコロフ……」
「白い死神、白い悪魔、災いをなす白き者、呼び名は様々ですが、言葉の意味するところはすべて同じ――」
「――即ち、敵対すれば死あるのみ、と」
スケィス「ッ!こッ、こいつがそうだってのか……!?」
「銃弾を回避し、トリガーにかける指だけを狙撃する――そんな腕を持った男を、私は他に知りません」
スケィス「クソッ!何だってそんな奴がこんなところに――」
359
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2013/05/26(日) 17:04:06 ID:Y2S4KQgY
セルゲイ「話し合いにしまショウ、スケィスさん」
スケィス「!」
セルゲイ「私を殺そうとシタ事は水に流しマス」
ザワザワ…
スケィス「…………」
「ス、スケィス様……」
スケィス「……こいつは悪魔を庇った」
スケィス「……こいつは俺たちの同胞を傷つけた」
スケィス「……許される事か?いや、断じて許されないッ!」
スケィス「聞け!我が同胞たちよ!我らの身は邪神ケイオス様に捧げている!」
スケィス「そう!我らの血と肉はケイオス様の御身そのものだ!」
スケィス「その我らを傷つけたこの男は、神の体を傷つけたことに他ならない!」
『おお……!』
『そうだ……!我らの体はケイオス様に捧げている……!』
『あの男は神に対して反逆したのだ……!』
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