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ξ゚⊿゚)ξツンちゃん夜を往くようです
1
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:03:05 ID:cQB6.m2k0
,、,,..._
ノ ・ ヽ
/ ::::: i
/ ::::: ゙、
,i :::::: `ー-、
| :::: i
! :::::.. ノ
`ー――――― '"
2
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:06:11 ID:cQB6.m2k0
大小なりに事件はあるが、とにかく世界は平和である。
知らない所でなにかは起こっているけれど、私の周りはすごく平和。
私は今日も学校に行く。
市立VIP高校で、すごく平和な日常を送るために――
.
3
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:07:03 ID:cQB6.m2k0
ξ;゚⊿゚)ξ「ぢごぐぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!!」 ダダダダダ!
しかし見ての通り私は遅刻寸前なのでこんな独白をしている場合ではない。
私はとにかく走っていた。爆走していた。
邪魔になるので鞄もろとも教科書の類も家に置いてきた。
身一つでの決死の走りのおかげもあって、私はなんとか遅刻を免れたのだった。
ξ;゚⊿゚)ξ「セーフ!」ガラガラッ
( ´∀`)「遅刻」
ξ゚⊿゚)ξ「はい」
先生の言葉の意味は分からなかったが、私は教室に着くなり速やかに着席し、そして挙手した。
ξ゚⊿゚)ξ「先生、教科書忘れました」
( ´∀`)「うん見るからに手ぶらだったもんね。
ツンさん、遅刻していいから次は教科書持ってこようモナ」
ξ゚⊿゚)ξ「はい先生」
私は颯爽と着席し、隣の席の生徒に一瞥を送った。
.
4
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:08:10 ID:cQB6.m2k0
(;'A`)「……なんか言えよバカ」
バカって言う方がバカ理論で言うところのバカである隣席の彼・ドクオ。
ドクオは机をこちらに寄せて教科書を見せてくれた。
バカなりに自分の仕事は分かっているようだった。
ξ゚⊿゚)ξ「授業中に喋らないでよ。空気が汚れるじゃない」
(;'A`)「後半ただの悪口じゃねえか。俺の息はクリーンだ」
ξ゚⊿゚)ξ「緑の吐息ってホントに毒性ありそう」
(;'A`)「グリーンブレスじゃねえって……」
ξ゚⊿゚)ξ「あー早く授業終わんないかしら……」
そう思った矢先、授業終わりのチャイムが鳴り響いた。
さすがに驚いた私はドクオの方を向いてひっそり問い掛ける。
ξ;゚⊿゚)ξ「終わるの早くない?」
('A`)「お前が入ってきた時点で9割終わってたからなぁ」
( ´∀`)「はい、それじゃあここまでモナ。解散!」
解散の合図と同時にクラスの雰囲気が軽くなる。
私は早速席を立った。二時間目にそなえて誰かから教科書を借りてこなければいけないのだ。
ξ゚⊿゚)ξ「ねえドクオ、二時間目って数学?」
('A`)「は? もう昼飯だよ」
ξ゚⊿゚)ξ
なるほどね、と心で呟いた。
.
5
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:08:51 ID:cQB6.m2k0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
一旦家に帰った私は自宅で昼食をたいらげてから学校に戻った。
不服だが教科書も持っていった。
まったくもって無駄な苦労だったが、世の中とは無駄なものを評価したがる性質なのだ仕方がない。
( ^ω^)
('A`)
程なくして教室に戻ると、私の席には内藤くんが座っていた。
べっべつに内藤くんの事なんて好きじゃないんだからねと言いたい所だが実際べつに好意は無い。
内藤くんと呼んだのもこの独白が初めてである。普段は『お肉』もしくは『ブーン』と呼んでいる。
ξ゚⊿゚)ξ「なに話してんの?」
( ^ω^)「おおっ! いいところに来たお!」
good placeという意味なら確かに私の席はいいところだ。窓際で寝やすい。
( ^ω^)「ちょっと面白い話を聞いたんだお。ほら、ボクのお爺ちゃんから」
ブーンの祖父とは私も仲が良い。
私はちょこっと期待して耳を傾けた。
.
6
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:09:58 ID:cQB6.m2k0
( ^ω^)「正義の味方とか悪者の人って、すごいパワーがあるお?」
('A`)「まあ、色々あるな」
(; ^ω^)「じつはそれ、誰にでもありうる話らしいんだお」
('A`)「……ありうるって、誰でもスーパーパワーに目覚めるってことか?」
ブーンは私とドクオにだけ、ひそひそと続きを話した。
(; ^ω^)「お爺ちゃんはそれを 『激化』 って言ってたお。
戦争の時代とかもうみんな激化しまくってたって」
(;'A`)「えぇ……」
ドクオは顔を引き、そんなの信じらんねぇと言わんばかりにブーンを訝しんだ。
ξ゚⊿゚)ξ「激化ねぇ……まあ、あっても不思議じゃないか」
(;'A`)「確かにそういうパワーについて俺らには情報回ってねえけどさ……」
(; ^ω^)「ていうか見せてもらったんだお!
お爺ちゃんがすごいパワー使ってるところ! 空気がドン! ってしたんだお!」
(;'A`)「……ネタ切れだからって嘘つくなよ」
(; ^ω^)「ホントだお! 激化の方は分かんないけど、お爺ちゃんがスゴイのは本当だお!」
.
7
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:10:38 ID:cQB6.m2k0
ξ゚⊿゚)ξ「見に行っていい?」
( ^ω^)「お? ぜんぜんオッケーだお!」
唐突に聞いてみると、ブーンは二つ返事で快諾してくれた。
ξ゚⊿゚)ξ「ドクオ、私いますごい熱があるの。早退するわね」
('A`)「お前今から行く気か? そろそろ教師に文句つけられんじゃね」
( ^ω^)「ツンはバカだから人目なんて気にしないお!
家の鍵貸してあげるお! お爺ちゃんに会ったら色々話すといいお!」
ξ゚⊿゚)ξ「ありがと。私の荷物ちゃんと家に届けてよね」
(;'A`)「自分で持ってけよ」
私は手ぶらで学校を飛び出し、ブーンの家へと走り出した。
.
8
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:11:29 ID:cQB6.m2k0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ブーンの家はそこそこ大きい屋敷だ。
私の家を基準にすると三倍くらいある。
庭が広い。小さい池もある。かつて池に増えるワカメを入れて怒られた事がある。
かくして私は鍵を使って裏口から進入し、ブーンの祖父を探し始めた。
進入の手口が円滑なのは、これが初めてではないからだ。
小さい頃からこうして忍び込んでは、
从 ゚∀从「おう。来たのかい」
ξ゚⊿゚)ξ
こうして先に発見され、背後に立たれている。
ブーンの祖父は異様に若々しく、そしてイケメンだった。
今でも50人くらいは愛人が居そうな雰囲気がある。
彼の名前はハインリッヒ=ヴァルケン・シュタイナー。
ハインリッヒ以降の部分は嘘だがすごく似合う。本当はハインリッヒ高岡という名前だ。
性別は男。彼にブーンと同じ血が通っていると思うと世界の不条理さを痛感する。
.
9
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:12:41 ID:cQB6.m2k0
私達は和室に移動した。
この和室はハインさんの私室でもある部屋で、広い庭が見渡せる。
从 ゚∀从「よっ、こらせ」
ハインさんは座布団に腰を下ろし、私にお茶を出してくれた。
私はそれを無視して自前の午後の紅茶を飲み始めた。
从 ゚∀从「で、またブーンの奴にそそのかされたか」
ξ゚⊿゚)ξ「うん。激化がどうこうって話を聞いたの」
从;゚∀从「……秘密だってんのに、そのまま喋りやがったなアイツ……」
ξ゚⊿゚)ξ「空気がドンができるんでしょ? やってくれる?」
从 ゚∀从「やらん。頼み方が気に入らん」
ξ゚⊿゚)ξ「できないじゃなくて?」
从 ゚∀从「そうだ。あんまりやると気付かれるからな」
ξ゚⊿゚)ξ「……何に?」
从 ゚∀从「昔の仲間にだ。まあいい、秘密だけど話してやるよ」
ξ゚⊿゚)ξ「ゴクリ……」
ξ゚⊿゚)ξ(この家の人、誰も秘密を持てないんだなぁ)
その後、私は呆気なく一時代の真実を聞いてしまった。
ハインさんの生い立ちや、色々なアレを大体知ってしまった。
正直その日の夕方には大体忘れたが、とにかく私はなにかすごいことを聞いてしまったのだ。
そして私は家に帰った。そして寝た。一日が終わった。
.
10
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:13:48 ID:cQB6.m2k0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ハインさんから聞いた話の九分九厘を忘れた翌日。
午後二時。昼過ぎまでぐっすり眠った私はカーテンを開け、日光を浴びた。
遅刻がどうこうの話はこの際省略する。
ξ-⊿-)ξ「……あ……?」
しかし、やけに暗いと思った。
カーテンを開けても太陽光の刺激がまったく無い。
私は渋々目を開け、外の様子を確かめた。
ξ゚⊿゚)ξ「……」
次に時計を確かめ、合点する。
時刻は午前二時だった。そりゃあ暗いに決まっている。
こんな時間に、すっきり目覚めてしまった。
私は途方に暮れてベッドに寝転がった。
ξ-⊿-)ξ「……」
そして寝た、と言いたい所であるが、私は既に寝るという気分ではなくなっていた。
とても嫌な気分だ。
この状況は、私の嫌な思い出をそのまま再現している。
中学生の頃の話になる。
こんな風にいきなり体内時計が壊れてしまった日の夜。
私は、『非日常』に出会ってしまったのだ。
.
11
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:14:28 ID:cQB6.m2k0
今でも鮮明に思い出せる。
同じように夜中に目が覚め、暇に耐えかねた私は散歩に出掛けた。
コンビニまで行って帰ろうと思い、十分足らずの道を歩いていく。
その帰り道だった。私は行く先の街路灯の真下に、異常な光景を見てしまった。
街路灯の真下には、既に息絶えた人間と、それの返り血に服を濡らし、ただ茫然と立ち尽くす女性の姿があった。
その手に凶器は無かったが、かわりに、彼女は人間の頭部を片手にぶら下げていた。
私は絶叫を飲み込んで息を殺した。しかし女に気付かれてしまい、彼女の視線がこちらに向いた。
音の無い真っ暗闇の中、唯一街路灯に照らされた私達は、まるで舞台に立つ二人の演者のようだった。
目を合わせたまま私は後ずさった。巻き込まれてしまう、と思ったのだ。
殺されるという恐怖は一切無く、ただ、この人と長く一緒に居たら駄目だと直感した。
言葉も交わしてはいけない。目を合わせる事すら駄目だと思い、目を伏せる。
無関係で居なければ日常が壊されてしまう。その感覚に体を任せ、私は一目散に逃げ出した。
決して追われはしなかったが、私はとにかく走り続けた。
……そういう経験が、こんな夜にあった。
.
12
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:15:26 ID:cQB6.m2k0
私はこの経験をハインさんに相談した事がある。
相談というよりはただ一方的に喋って不安を解消しただけだったが、彼はやけに真剣に話を聞いてくれた。
私は、彼が最後に言ったことを覚えている。
从 ゚∀从「引き込まれる、って感覚は恐らく正しい。
人は人にこそ恐怖するが、人外に対してはそういうことを思うんだよ」
从 ゚∀从「その感覚の正体は好奇心、怖いもの見たさ。
人間ってのは理解できないものには恐怖と同時に興味を持つ。
いや、近付かなくて正解だったぞ。お前は利口だ」
そのとき不意に褒められた私は、
ξ゚⊿゚)ξ「り、りこうっておま、オヒュウ」
みたいな気持ち悪い反応をしていた。今でも後悔している。
.
13
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:16:10 ID:cQB6.m2k0
この世界――というとまるで別世界があるような言い方だが、
とにかく私が生きてるこの世界における、大体の歴史をおさらいする。
端的に言うと、この世界には超能力があった。
文字どおり過去形で、今はリストアップされた極少数の人しか超能力は使えない。
そして五十年くらい前に超能力を用いたすごい戦争があり、色々あった。
それ以降、超能力の発生は減ってって今はすごい少ない。そして今に至る。
ここまでが一般人向け、つまり表向きの歴史。
色々あったけど今は平和だよ〜という、歴史の教科書に載せやすい形に脚色された物語だ。
中身が曖昧なのは私が歴史の授業中ダンゴムシと遊んでいたからだ。校庭で拾える友達と言えばダンゴムシだ。
しかしこの歴史にハインさんの話を加えるともう少しマシになる。
さっきは面倒臭かったので地の文から省いたが、今こそ一時代の真実を語ろうと思う。
.
14
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:16:52 ID:cQB6.m2k0
ハインさんが生きた時代は、『激化』と名付けられた超能力があった時代。
人類の歴史においてもっとも暴力が幅を利かせ、正義と悪が対立した時代らしい。
まず戦争の結果を言うと、悪が勝った。
これまで正義とされてきたものは秘密裏に抹消され、悪が世界を牛耳った。
しかし、悪が正義を倒しても、世界はそれほど変わらなかった。
悪は正義という隠れ蓑を獲得し、この世界を以前のとおりに運営し始めたのだ。
ただし、ひとつだけ変化があった。
悪は超能力の存在を一切認めず、人々の激化を未然に防ぎ始めた。
つまり正義になりうる――敵になりうる存在を、彼らは虱潰しに殺していった。
戦争終結後、超能力を持つ人が減っていった理由がこれだ。
悪は悪なりに戦争から教訓を得たのだ。戦うより、戦わない努力をするべきだと。
ハインさんいわく、あの戦争は悪の一団にも多大な被害を与えたそうだ。
特に魔王にあたる人物の戦死は、悪の在り方を大きく変えたらしい。
.
15
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:17:32 ID:cQB6.m2k0
――で、午前二時の現実に戻る。
ξ゚⊿゚)ξ
文章に飽き飽きした人のためにAAも出す。
ξ゚⊿゚)ξ(……ちょっくら出掛けるかい)
迷ったが、私はトラウマ払拭を兼ねて決心した。
日本中が秋になろうとしているこの季節、私は渾身の赤マフラーを巻いて外に出た。
目的はコンビニの肉まんである。あれは値段以上に青春の味がするから不思議だ。
あんなものでしか青春を感じられない不感症で本当に親に申し訳ないと思う。
.
16
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:18:12 ID:cQB6.m2k0
さりとて私は歩き出した。
夜風が生脚をなぞり、体温をごっそり奪っていく。(ツンはスカートをはいているぞ)
しかし私は寒さに負けず勇猛に歩いた。
テクテクよりザッザッという擬音が合う歩き方をした。
顔付きは自然と険しくなっていった。
そう、この時点で私はなんとなく分かっていたのだ。
同じことをすれば、同じ場所で同じことが起きると。
……現実は、私の思ったとおりになった。
.
17
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:19:14 ID:cQB6.m2k0
ξ゚〜゚)ξ(うわ居る)ムシャムシャ
コンビニからの帰り道、私は肉まんを頬張りながら昔懐かしい様子を目の当たりにした。
いくつか先の街路灯の下には、既に息絶えた人間と、それの返り血に服を濡らして茫然と立ち尽くす女性の姿があった。
その手に凶器は無かったが、かわりに、彼女は人間の頭部を片手にぶら下げていた。
私は数レス前の文章をコピペした。
あれと同じ出来事が起きているのだから別段問題はなかった。
ζ(゚ー゚*ζ「――――」
記号四つ分の沈黙。それはこの場からの逃亡を許された唯一の時間。
前回の私はここで目を伏せて逃げ出した。しかし、今回はそれをしない。
ξ゚⊿゚)ξ「……それってホンモノ?」
私はさっさと肉まんを口に詰め込み、彼女に向かって歩き出した。
動揺が無いのは、前と今とで私自身が大きく変わったからだ。
.
18
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:20:11 ID:cQB6.m2k0
ζ(゚ー゚*ζ「――これはホンモノ。貴方、何者?」
ξ゚⊿゚)ξ「ここで韻を踏めるのはラッパーだけ。貴方、ヒップホップね」
冗談を挟むだけの余裕、というかヤケクソはある。
さっき動揺が無いとは言ったが自分でも最早分からない。
動揺が振り切れてこうなったのかもしれない。
ζ(゚ー゚*ζ「たしか何年か前にも来たよね。
一応、ここ結界が張ってあるんだけど……」
鮮血を滴らせる生首をポイッと捨て、彼女は私に体を向けた。
私は、その軽やかな身動きに見とれて冗談を言う余裕さえ失ってしまった。
ξ゚⊿゚)ξ「……ッ」
想起する。あの時、自分の中で爆発した『非日常』への畏怖。
畳まれていた記憶の風呂敷が広がり始め、私は、ようやく後悔を思い出す。
.
19
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:20:51 ID:cQB6.m2k0
ζ(゚ー゚*ζ「……前は逃げたから見逃したけど、来ちゃったから」
彼女が歩み寄ってくる。
天使のような微笑みを引っさげて、私の体を裂きに来る。
殺される――そんな事は分かっていたはずだ。今更考えてもしょうがない。
高校生のバカな好奇心がここまで育ってしまったと、ただひたすら後悔するしかない。
ζ(゚ー゚*ζ「言い残すこととかある?
これ聞くと素直に死んでくれる人が多いから」
彼女はピッと片手を振るった。
その軌跡に沿って、誰とも知らない人の血が地面に曲線を描く。
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
助けを求めるのか、それとも夢オチを期待するのか。
私は後ずさり、停滞する思考が結論を出すのを待った。
.
20
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:22:16 ID:cQB6.m2k0
「――おう。来たのかい」
ξ;゚⊿゚)ξ「……ハ、ハインさんっ……!?」
その時とつぜん声がした。聞きなれた声と、聞きなれたセリフだった。
私は周囲を見回して彼の姿を探したが、それはどこにも見当たらない。
ζ(゚ー゚*ζ「……お早い到着で」
私より先に、血塗れの美女が彼を見つけて言った。
彼女の視線は私の背後に向かっている。つまり彼はいつも通り、私の背後に立っていたのだ。
从 ゚∀从「見過ごせんのは分かるだろう。殺されると堪らん」
ξ;゚⊿゚)ξ「――うわほんとに居る!」
私は振り返ると同時に驚き、目を丸くしてハインさんを見上げた。
从;゚∀从「うわって何だよ、この礼儀知らず」
.
21
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:23:16 ID:cQB6.m2k0
ζ(゚ー゚*ζ「その子の為に出てきたの?
なら、お礼にその子は生かしてあげなきゃね」
从 ゚∀从「冗談ぬかすな。わざわざ網を張ってたのはテメェだろう」
ハインさんの錆付いた声が彼女の言葉を一蹴する。
幾多の戦いを越えて来たハインさんは、既に彼女の狙いを見抜いているようだった。
ζ(゚ー゚*ζ「殺さないってば。大事な大事な、私達の未来なんだから」
ξ゚⊿゚)ξ(未来だと? なんだか意味ありげだぞ)
私は伏線の匂いを嗅ぎ取った。
从 ゚∀从「……ツンちゃん、走って逃げな」
ハインさんは私の前に出て優しい声でそう言った。
あの女に向けた殺意ある声ではない、いつも通りのハインさんの声。
从 ゚∀从「こういう面倒事になる前に色々教えときたかったんだが、ぶっつけ本番だ」
ξ;゚⊿゚)ξ「え、あの」
从 ゚∀从「走ることにだけ集中するんだぞ。
学校に遅刻するとか、そういう時の焦りを思い出して走れ」
ハインさんは私の狼狽を無視して言う。
だが私はもうとっくに走れるような状態ではない。実は腰が抜けて少しチビっていた。
.
22
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:23:56 ID:cQB6.m2k0
从 ゚∀从「大丈夫だ。お前は一度逃げ切ってる。
今度も同じ事をする、それだけだ」
ξ;゚⊿゚)ξ「……逃げなきゃダメ? 走れそうにないの」
从 ゚∀从「……じゃあいい。そこで目ぇ閉じてじっとしてな。迎えが来るから」
ξ;゚⊿゚)ξ「え、ハインさんは来ないの?」
从 ゚∀从「ああ。俺はアレを足止めせにゃあならん」
ζ(゚ー゚*ζ
ハインさんがアレを指差して言うと、アレはひらひらと手を振って答えた。
こちらは準備できてますよ、とでも言いたげだった。
从 ゚∀从「それじゃあツンちゃん、また明日な」
それを最後に、ハインさんがこちらを向くことはなかった。
目を閉じていろとは言われたが、私はこれから何が起こるのかをどうしても確かめたかった。
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
私は固唾を飲み、目を見開く。
.
23
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:25:14 ID:cQB6.m2k0
ζ(゚ー゚*ζ「――小競り合いは省きましょう」
瞬間、空気がドンってなった。
なんかあの女からすごいオーラが出て風も出てる。
从 ゚∀从「本番前だろう、後悔するぜ」
対照的に、ハインさんの戦闘準備はとても静かだった。
彼の右腕に優しく火が灯り、その中にするりと細長いものが姿を見せ始める。
ハインさんは火中に現れたそれを掴み取ると、火を払うように右腕を一振りした。
今まで幾度となく同じ所作を繰り返したのだろう、ここまでの動作は実に滑らかで迷いがない。
敵味方で地の文にかなり格差があるかもしれないが問題はなかった。
ξ;゚⊿゚)ξ(……刀だ。ベタだ……)
ハインさんが掴んだもの、それは博物館でしか見た事がないような立派な日本刀だった。
しかもなにかオーラが出ている。すごい。
( ^ω^)「あれは妖刀。呪物の類だお」
ξ;゚⊿゚)ξ「……お迎えってアンタなの」
( ^ω^)「そうだお。安心したお?」
ξ;゚⊿゚)ξ「気が抜けたって意味ならね……」
急に現れて話しかけてきたブーンに、私は普段通りの応答をした。
ブーンも何やら武装しているがそれの描写は次回以降に回すことにした。
.
24
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:26:49 ID:cQB6.m2k0
从 ゚∀从「いつでも来いよ、成れの果て」
ζ(゚ー゚*ζ「んじゃ遠慮なく」
――途端、私の目の前で風が爆発した。
ξ;゚⊿゚)ξ「――――ッ!」
( ^ω^)「おっ」
从;゚∀从「……せっかちだな」 ガチ、ギリッ・・・
私は現実を改めて認識する。
ハインさんが構えた日本刀が女の武器を受け止めている。
先の爆発は両者の激突が起こした余波みたいなものだったのだろう。
ζ(゚ー゚*ζ「せっかちって、誘ったのはオジサンでしょ?」
女の武器は、ハインさんの刀に比べればかなり見劣りした。
バカな中学生が持っているような十徳ナイフ、それが彼女の武器だった。
しかし彼女の力量の本質は武器には無いような気がした。彼女の強さはもっと別の所にある。
でなければ、日本刀と十徳ナイフが真正面からかち合える訳がないのだ。
.
25
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:27:37 ID:cQB6.m2k0
そこから先、私はただ目に映るものを脳で処理するだけだった。
現実となって展開しだした『非日常』に置いていかれないよう、現実に適応できるように。
从 ゚∀从「――――」
ζ(゚ー゚*ζ「――――」
月光を纏って闇夜を切り裂く二つの刃。
その激突の一つ一つが描く光の軌跡を、私はただ傍観している。
( ^ω^)「……終わるお」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
傍観者で居られるのは、きっとこれが最後なのだ。
私はなんとなくそれを理解し、戦いの終わりを見届ける。
.
26
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:28:17 ID:cQB6.m2k0
――戦いの終わりは同時に、私の日常にも終わりを告げていた。
.
27
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:29:15 ID:cQB6.m2k0
\
 ̄ヽ、 _ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
`'ー '´
○
O
,、,,..._
ノ ・ ヽ と思う鳩サブレであった
/ ::::: i
/ ::::: ゙、 また次回
,i :::::: `ー-、
| :::: i
! :::::.. ノ
`ー――――― '"
28
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:48:17 ID:1Xp6fD960
え
29
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:50:39 ID:8Cumm/dM0
おつ
期待してます
30
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 07:05:14 ID:5ew/Xj/o0
なんかすごい戦闘描写にすごい感動したんで続きもすごく楽しみにすごいです
31
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 07:14:09 ID:mM/IsR8Y0
適当な投げやり感がたまんねえな
32
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 08:21:12 ID:XB.xSiog0
この流れるような気持ちいい文章たまらない
33
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 10:37:36 ID:LArC2k7M0
この適当な感じ
壁殴り代行始めましたを思い出す
34
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 10:52:36 ID:hfJtWk4A0
すごく雑な感じがイイ
35
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 20:10:55 ID:1PEZEPfk0
ツンちゃん寝坊しすぎwww
ひ・・・ひよこまんじゅうではないんです・・・?
36
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 21:01:35 ID:NqmnIpHE0
乙
なんという読みやすさ
37
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 21:41:14 ID:ank312uMO
すさまじいツンちゃん愛を感じたぜ
38
:
名も無きAAのようです
:2015/10/15(木) 20:08:56 ID:GJxpEXi60
往け往けツンちゃんDonと往け
39
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:18:10 ID:yzbsae9w0
从 ゚∀从「あー終わった終わった」
ζ(x_x*ζ バタンキュ〜
戦いはハインさんの勝利に終わり、女は前時代的な敗北演出をして地面に倒れていた。
( ^ω^)「お爺ちゃん! すごかったお!」
ブーンのすごかったという一言には地の文数十行分の中身があった。
それは筆舌に尽くしがたく、しかしすごいの一言に表すことができる日本語の不思議だった。
从 ゚∀从「……ブーンちゃんよぉ、そいつ連れて帰れって言わなかったか?」
ハインさんは日本刀で自分の肩をトントン叩きながら言った。
どうやら事前に打ち合わせがあったらしく、ブーンはそれを無視して私と戦闘を観戦していたようだ。
( ^ω^)「言ってないお! お爺ちゃんいよいよ痴呆だお!」
从 ゚∀从「そうだっけか? あー覚えてねえ」
.
40
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:19:21 ID:yzbsae9w0
ξ゚⊿゚)ξ「……帰って寝ていい?」
( ^ω^)「いいお! 長話は明日にするお!」
バカが何も考えずに即答する。
しかしハインさんも同じ意見だったようで、彼はブーンの言い分に軽く頷いた。
从 ゚∀从「ブーン、ツンちゃんを送ってやれ。一人は危ないからな」
⊂( ^ω^)「よしきたお! ツンはバカだから僕が送ってあげるお!」
( と)
/ >
ξ゚⊿゚)ξ「別にいい」
( ^ω^)「分かったお!」
私は帰って寝た。
.
41
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:20:01 ID:yzbsae9w0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
,、,,..._
ノ ・ ヽ 鳩サブレーは、神奈川県鎌倉市の豊島屋が製造・販売するサブレー。
/ ::::: i 名前が示す通り鳩を模した形が特徴。
/ ::::: ゙、 主に鎌倉の鶴岡八幡宮に参詣した人の土産として有名。(wikipedia)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
42
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:20:43 ID:yzbsae9w0
あれから家に帰って寝直した私は、その日、学校を休んだ。
そもそも行く気にならなかった。眠い。
ξ゚⊿゚)ξ(あーヤクルトおいちー)チュー
つ臼
こういう甘えが許される内は存分に甘えていくのが私のスタンスである。
私は昼頃に起床し、そのままリビングで昨夜録画したアニメを見始めた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
,、,,..._
ノ ・ ヽ 『ここは市立ハトサブレ学園。俺の名前は鳩サブロウ』
/ ::::: i
/ ::::: ゙、
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ξ゚⊿゚)ξ(今期覇権候補、サブ学……)
つ臼
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
,、,,..._
ノ ・ ヽ 『やっやめろ鳩サブロクロウ! 兄弟でこんな!』
/ ::::: i
/ ::::: ゙、.
,、,,..._
ノ ・ ヽ 『なんで拒否するの!僕はサブにぃが好きなだけなのに!』
/ ::::: i
/ ::::: ゙、
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ξ゚⊿゚)ξ「……」
つ臼
ツンは前衛的な映像に衝撃を受け、そっとテレビを消した。
それは唐突に一人称が三人称になるくらいの衝撃だった。
.
43
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:21:24 ID:yzbsae9w0
⊂( ^ω^)「ピンピピンポーン!!」ダダダダダ!!
三 ( と)
三/ >
そのときバカがインターホンを押さずに家に駆け込んできた。
もうどうしようもないので私は慎ましく彼を迎え入れた。
( ^ω^)「お爺ちゃんが言っていた。うちに来いと」
ξ゚⊿゚)ξ「行かざるをえないようね」
44
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:22:04 ID:yzbsae9w0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ハインさんが居る屋敷に着いた。
前と同じ部屋に行くと、ハインさんと昨日の女が目に付いた。
从 ゚∀从「よおツンちゃん、昨日は眠れたかい」
ξ゚⊿゚)ξ「なんの話? 帰りたいんだけど」
私は出されたお茶を無視してオランジーナを飲み始めた。
从;゚∀从「帰りたがるな。お前には色々言っとかにゃならんのだ」
( ^ω^)「ツンはバカだから聞いといたほうがいいお!」
ξ゚⊿゚)ξ「……じゃあまずアレから」
ζ(゚ー゚;*ζ「くっ……」
私は部屋の片隅で「くっ殺せ」と言わんばかりに敵意を見せる彼女を一瞥した。
彼女の両手足はギチギチに縛ってあり、痛そうだなぁとおもった。
.
45
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:22:44 ID:yzbsae9w0
ζ(゚ー゚;*ζ「くっ殺せ! 生き恥を晒すくらいなら……!」
ξ゚⊿゚)ξ(うわホントに言った)
从 ゚∀从「あのセリフな、昨日今日とで6回目なんだぜ。
よっぽど言いたかったんだろうな」
( ^ω^)「あの人もバカだお!」
ハハハ、という哀れみを含んだ笑いがまばらに起こる。
私は飲みかけのオランジーナを女にぶっかけた後、ハインさんの話を聞き始めた。
从 ゚∀从「導入は昨日の話からだ。
昨日、お前に正義と悪の戦争について話したよな?」
ξ゚⊿゚)ξ「あーなんか」
私はあんまり覚えていなかったので適当に合わせた。
从 ゚∀从「簡単に言うと、その女は正義側の人間だ。
超能力っぽいことができる。ほら、空気がドンってしたろ?」
ξ゚⊿゚)ξ「なるほど」
.
46
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:23:24 ID:yzbsae9w0
从 ゚∀从「……なんで正義の味方が人殺しを? とか聞いて欲しかったんだが」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあそれ教えて」
从;゚∀从「お前さぁ〜〜〜〜〜〜〜〜」
( ^ω^)「じゃあそこから先は僕が説明するお!」
( ^ω^)「戦争のさなか、わずか数十名の部隊で正義の味方を壊滅させた集団があった。
それが悪者の方。辛うじて戦争に勝利した悪者達は正義の力を恐れ討伐に乗り出した。
今、本当の忍空を知る者は少ない。」
ξ゚⊿゚)ξ「すごくわかる」
わかりやすいナレーションが脳裏を過ぎり、私は状況をなんとなく把握できた。
ξ゚⊿゚)ξ「……で、その女はどっち側なの?」
从 ゚∀从「それ数秒前に言ったよな?」
ξ゚⊿゚)ξ「え?」
从;゚∀从「……分かりやすく言えば、正義の味方の敗残兵ってトコだな。
もっとも、今じゃ正義なんて名乗れた集まりじゃねえが……」
ξ゚⊿゚)ξ「そのくだりも聞いたほうがいい?」
从 ゚∀从「聞いて欲しい」
ξ゚⊿゚)ξ「わかった」
.
47
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:24:05 ID:yzbsae9w0
ハインリッヒ高岡はお茶をすすり、はるか昔の思い出たちをゆっくり想起した。
戦争は長く苦しい戦いだったが、彼にとっては戦場こそが青春の舞台だった。
悲しみの青い春。彼はそれを思い出し、穏やかに語り始める。
从 ゚∀从「……あの頃から『正義』は腐り始めていた。
力を持ちすぎた結果、あの集団は『完璧な正義』が実現可能だと知ってしまった」
从 ゚∀从「可能ならそれをせずにはいられない。
人間の愚かな性の集大成が、あの戦争の真実だ」
( ^ω^)「お爺ちゃん……」
ξ゚⊿゚)ξ「ゴクリ……」
私はオランジーナを飲んだ。
从 ゚∀从「元々、『正義』には決定的な存在が欠けていた。
『悪』の魔王に匹敵する唯一の存在、勇者だ」
从 ゚∀从「勇者無しでも奴らは十分に強かった。しかし魔王には遠く及ばない。
魔王以外は滅ぼせても、諸悪の根源を絶つことが奴らにはできなかった」
从 ゚∀从「……そこで奴らは思い至った。勇者を作る、という結論にな」
ξ゚⊿゚)ξ「ゴクゴク……」
.
48
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:24:45 ID:yzbsae9w0
从 ゚∀从「勇者の製造に必要なもの、それは悪の技術力だった。
魔物を作る――生命を生み出すという技術が、正義にはなかったんだよ」
从 ゚∀从「後日、正義は悪に対してなりふり構わない略奪と殺戮を開始した。
ゴールは見えてたからな、あとは全速力で突っ走るだけだった」
从 ゚∀从「そして、その過程で正義の腐敗が決定的なものになった。
生命を生み出す過程で、正義は狂気を内包する存在に変貌した」
ξ゚⊿゚)ξ「サブ学見た?」
( ^ω^)「見たお! サブレ食べたいお!」
从 ゚∀从「狂った正義はやがて勇者を作り上げた。そりゃもう大成功よ。
で、その結果戦争が始まった。
完成した勇者と魔王の図をもって、この世に完璧な正義を――っていう魂胆でな」
从 ゚∀从「前に話したとおり戦争は悪が勝った。
だから正義の目論見は失敗した……んだが、実は殆ど奴らの目的は成功していた」
从 ゚∀从「魔王を殺すこと。悪を殺すこと。そして、世界を正義で支配すること。
この三つのうち、中途半端にも三つ目以外を果たしちまった」
.
49
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:25:25 ID:qANEyHLQ0
続きキテる支援!
50
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:25:26 ID:yzbsae9w0
从 ゚∀从「急造でも勇者には変わりなかったのか、
運命とでも呼べるものに魔王は倒された。目的1達成」
从 ゚∀从「壊れた正義を目の当たりにし、遂には魔王まで殺された悪もその在り方を変えた。
『悪』は自分達以上の『悪』を前にして、『悪者』としての役柄を殺された。目的2達成」
从 ゚∀从「だが、戦争そのものに負けた正義に世界を支配するだけの余力はなかった。
それだけが正義の誤算だった。魔王を容易く倒せると踏んだ、奴らの油断だった」
ξ゚⊿゚)ξ「帰って寝たい」
( ^ω^)「もうちょっとだから聞いてあげてほしいお!
お爺ちゃんこれ言う為にすごい頑張ってたんだお!」
从 ゚∀从「あとは昨日話したとおりだ。
悪が世の中を動かすようになって、二度と『正義』という間違いが起きないよう働き出した」
.
51
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:26:07 ID:yzbsae9w0
ζ(゚ー゚;*ζ「ふふ、なにが間違いよ……」
ハインさんの話がやっと終わったと思ったら、今度はオランジーナまみれの女が口を開いた。
ζ(゚ー゚;*ζ「そもそも『悪』が時代錯誤なのよ!
魔王や魔物さえ居なければ、私達も激化に頼ることはなかった!」
ζ(゚ー゚;*ζ「……それは貴方が一番分かっているはず。
だって、元は『正義の味方』だったんだから……」
ξ;゚⊿゚)ξ「……えっ、ハインさんが……?」
私が反射的にハインさんの顔を見ると、彼は微笑んで私に答えた。
从 ゚∀从「おうともよ。ただし、正義を見限って悪についた裏切り者だ」
( ^ω^)「その頃ブーンは生まれてないから無関係だお!」
.
52
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:27:03 ID:yzbsae9w0
从 ゚∀从「……ま、一通り全員の立ち位置が分かったところで」
从 ゚∀从「今度はお前の番だ、ツンちゃん」
ξ;゚⊿゚)ξ「えー私が魔王の子孫とかだったら嫌なんだけど」
从 ゚∀从
( ^ω^)「ツンにしては頭がいいお! その通りだお!」
ξ゚⊿゚)ξ
从 ゚∀从「じゃあ次。お前、実はすげー狙われてるんだぜ。
お前ブッ殺して魔王の血を絶やしてしかも次の勇者の素体にする為にな」
ξ゚⊿゚)ξ「待ってすごい重要なのに二行」
从 ゚∀从「これから色々狙われるだろうけど頑張って生き延びて欲しい」
ξ゚⊿゚)ξ「行数の配分がおかしい」
.
53
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:27:43 ID:yzbsae9w0
なんか急にテキパキ進み始めた話に私はついていけなかった。
分かりやすくはあったが、事実を受け止めるだけの時間は一切無かった。
从 ゚∀从「で、今後のためにもこの女から色々情報を聞き出したいんだが……」
ζ(゚ー゚;*ζ「何されたって答えないわよ。それは昨日の夜で分かったでしょ」
从;゚∀从「尋問も無駄で困ってたんだわ。二人とも、なんか名案ねえかな」
ξ;゚⊿゚)ξ「待ってそれどころじゃないの」
( ^ω^)「あーツンはバカだから」
从;゚∀从「コイツ自分の名前すら答えねえんだよ。
若者の相手は若者にと思ったんだがなぁ……」
ξ;゚⊿゚)ξ「じゃあ抱けば? それより私、家に帰んなきゃ」
私は胸のざわつきに従って立ち上がった。
ハインさんの話が本当なら、お母さんがなにか知っているはずだ。
从 ゚∀从「あーその手があったか」
ζ(゚ー゚;*ζ「えっ」
.
54
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:28:23 ID:yzbsae9w0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
走って家に帰った私はリビングに駆け込み、キッチンに向かって叫んだ。
ξ;゚⊿゚)ξ「おーかさん! ちょっと聞きたいんだけど!」
@@@
@@@@
( ФωФ)「あらあら、どうしたの」
ξ;゚⊿゚)ξ「うちって魔王の血統なの!?」
@@@
@@@@
( ФωФ)「そんな訳ないじゃない」
ξ゚⊿゚)ξ「まあそうか」
母の言う通りだった。この御時世に魔王がどうこうの話が出てくるものか。
私は納得し、そして安心して言った。
ξ゚⊿゚)ξ「よし寝るぞ」
そして一日が終わった。
.
55
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:29:03 ID:yzbsae9w0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
,、,,..._
ノ ・ ヽ もみじ饅頭は、饅頭の一種。
/ ::::: i もみじをかたどった焼饅頭の一種であり、広島県の厳島(宮島)の名産品である。
/ ::::: ゙、 職人が店頭で焼き型を使って手焼きし、販売している店舗もある(wikipedia)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
56
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:29:48 ID:yzbsae9w0
――翌日、学校。
たっぷり寝たおかげか、今日ばかりは朝にパッチリ目が覚めた。
私とて普通に目が覚めれば普通に学校に行く。
ここ数日の遅刻欠席はやんごとなき不可抗力であって、決してサボリではないのだ。
ξ゚⊿゚)ξ「しかし、早く来すぎた」
時刻、午前6時。
私の独り言に反応する者は教室内に一人も居なかった。
('A`)「……」
ξ゚⊿゚)ξ「……無視するの?」
(;'A`)「……いや、お前がこんな時間に居るとか信じられなくて」
反応こそなかったが、私の独り言を無視する男は一人居た。
そいつの名前はドクオ。生ゴミと見間違えられた回数なら誰にも負けない・・・すごい漢だ。
.
57
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:30:29 ID:yzbsae9w0
ξ゚⊿゚)ξ「あんたこそ何で居るの?
生きる価値ないじゃない」
(;'A`)「早めに登校しただけで存在否定か」
ξ゚⊿゚)ξ「……それが?」
(;'A`)「……なんでもねーよ」
ドクオはそう言って顔をそらした。
彼の顔は真正面から見ていられる顔面ではないのでとても助かる。
( 'A`)「……誰も居ない教室、二人きりか……」
この生ゴミは急に気持ち悪いことを呟いた。
吐き気がする。
ξ゚⊿゚)ξ「あんたが消えれば一人きりになれるんだけど」
('A`)「……俺だってそーしたい。だけどな、今はちょっと面倒だ」
ξ゚⊿゚)ξ「両脚ちぎれた?」
(;'A`)「……お前さ、もうちょい危機感持ってくれよ」
.
58
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:32:19 ID:yzbsae9w0
その時、私のケータイが鳴り響いた。
メロディはアイドルマスターシンデレラガールズのOP「Shine!!」だった。
ξ゚⊿゚)ξ「あっ最終回見た?」
(;'A`)「……見たけど先に電話に出ろ。たぶんハインさんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「あれもう過呼吸で死ぬかと思った」
(;'A`)「感想は後で聞いてやるから出ろって!」
ξ゚⊿゚)ξ「ほんともうみんな一段ずつ階段を上ってきたんだなって」
(;'A`)「ああもう俺が出るから貸せ!」
生ゴミの手が私のケータイに伸びてきた。
私は反射的に生ゴミのチンコを蹴り上げて電話に出た。
( ^ω^)『おっすおっす! 今どこだお!』
電話の相手はブーンだった。やはり生ゴミの予想など当てにならない。
しかしブーンの声はノイズまみれで、激しい物音が向こうから聞こえてきていた。
それは刃物同士がぶつありあう金属音。戦闘の音なのはすぐに理解できた。
ξ゚⊿゚)ξ「……学校だけど。なんか用?」
( ^ω^)『さっきあのメス豚の尋問終わったらしいお!
で、とりあえず隠れてろってお爺ちゃんが言ってるお!』
メス豚というと、先日ハインさんに倒されたあのメス豚に違いない。
.
59
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:32:59 ID:yzbsae9w0
( ^ω^)『なんか刺客が来るから頑張ってほしいらしいお!』
ξ;゚⊿゚)ξ「マジで!? すごい大変じゃないの!」
( ^ω^)『でも全部ドクオに押し付ければ大丈夫だお! じゃ!』
ブーンはそれを最後に通話を切った。ここまでブン投げられるととても清々しい。
私はしばし呆然としたままケータイを見つめた後、生ゴミもといドクオに視線を送った。
('A`)「……そーいう事だ。そろそろシリアスになれ」
ξ;゚⊿゚)ξ「……もう来てるの?」
( 'A`)「一人来てる。俺で対処するから、お前はとにかく逃げてろ」
やけに自信たっぷりに言い切ったドクオ。
言ったからには、こいつにもブーンやハインさん同様のスゴイパワーがあるはずだ。
既に来ているという敵がどの程度かは知らないが、今はドクオのスゴイパワーに頼るほかない。
.
60
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:33:39 ID:yzbsae9w0
(;'A`)「――来たぞ!」
そして、心に余裕を作る時間はもう残っていなかった。
私は周囲に警戒し、じりじりと壁際に下がっていく。
空気の流れが止まり、浮き足立った体がストンと床に落ちる感覚。
現実を強く認識させながら、しかし現実離れした『死の恐怖』が近付いてくる感覚。
その感覚に、私は覚えがある。
ξ;゚⊿゚)ξ(ほんと、嫌な感じ……)
カタン、という音と共に教室のドアに誰かが手を掛ける。
私はドクオの背中ごしにそれを見つめていた。
今の私にできることは何もない。ひたすら逃げる事だけを考え、私は身を強張らせる。
「……それが、魔王の孫娘か」
やがて言葉と共にドアが開き、白い鎧の女が教室に入ってきた。
女は黒い長髪をひるがえし、堂々と教壇に立って私達を見下した。
彼女の高圧的な雰囲気にはドクオも気圧されたらしく、私達は思わず一歩下引きがった。
.
61
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:34:43 ID:yzbsae9w0
川 ゚ -゚)「――素直四天王が筆頭、素直クール。
すまないが、お前達にはここで死んでもらう」
女、素直クールは腰の鞘から剣を引き抜き、それを空中で一振りした。
戦闘シーンを全カットされ、次回開始時には負けているとも知らずに――
.
62
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:35:28 ID:yzbsae9w0
\
 ̄ヽ、 _ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
`'ー '´
○
O
,、,,..._
ノ ・ ヽ と思うかえるまんじゅうであった
/ ::::: i
/ ::::: ゙、 また次回
,i :::::: `ー-、
| :::: i
! :::::.. ノ
`ー――――― '"
63
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 07:49:43 ID:qANEyHLQ0
かえる饅頭……?
相変わらずスピーディーな展開に驚天動地なツンのダメっぷりだな
64
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 09:12:00 ID:kIoPdem20
乙
いやはや、デレの扱いがなかなかどうして
65
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 11:25:21 ID:EIDpdI8g0
乙
戦闘全カット宣言かよ
66
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 11:31:47 ID:VhYt/u7.0
おもしろい
67
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 15:37:18 ID:Oiynk6wc0
サブ学のくだりでわろた乙
68
:
名も無きAAのようです
:2015/10/18(日) 18:37:05 ID:nTKGo4cU0
面白い
69
:
名も無きAAのようです
:2015/10/19(月) 14:00:41 ID:udnS5/0k0
一人アホがいるだけでこうなるのか…
70
:
名も無きAAのようです
:2015/10/21(水) 21:14:14 ID:/H99ywC60
ツン母魔王顔だな
71
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 00:56:00 ID:ICVMj68k0
まってる
72
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 11:50:52 ID:4g.XOfMIO
ツンちゃん最高だわ
73
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 14:21:20 ID:HywJ6Hdg0
せんせー!デレちゃんの尋問内容が気になりまーす!
74
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 20:26:25 ID:d5Oqci1Y0
素直クールは魔物化したドクオに倒された。
すごい戦闘があり、私はドクオをちょっと見直した。
おわり。
.
75
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 20:27:06 ID:d5Oqci1Y0
( ^ω^)ノ 「おいす〜」
午前8時ごろ、やっとブーンが教室に現れた。
危機感をそぐ気の抜けた挨拶。
二時間前にすごい戦いを終えた私にとって、それは日常を思い出させてくれるすごいあれだった。
('A`)「おー。なんか素直四天王とかいうの倒しといたぞ」
ドクオはさっそく先程の戦いをブーンに伝え始めた。
( ^ω^)「誰が来たお?」
('A`)「素直クールだってさ。知ってるか?」
( ^ω^)「知らんお。たぶん使い捨ての雑魚だお」
('A`)「筆頭とか言ってたけど、たしかに強くはなかったな」
( ^ω^)「向こうも人員不足なんだお。お察しだお」
.
76
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 20:27:49 ID:d5Oqci1Y0
ξ゚⊿゚)ξ「それより」
と言って、私は会話に割り込んだ。
ξ;゚⊿゚)ξ「ドクオまで正義だ悪だの関係者だったとか、知らなかったんだけど」
('A`)「そりゃ教えてねえもん」
ξ;゚⊿゚)ξ「なんで教えてくれなかったの? ブーンもだけどさ」
( ^ω^)「ツンはバカだから教えると面倒臭いんだお!
ってお爺ちゃんが言って決めたんだお! 秘密にするって!」
ξ;゚⊿゚)ξ「えぇ〜……激化の話はポロッと話したくせに……」
('A`)「この際バラしちまえばな、お前は今までも魔王軍に守られてたんだぜ。
お前を探しに来た正義の連中を撃退したり、身辺警護したり」
( ^ω^)「まあ大体ドクオが一人でやってたけどNE!」
ξ;゚⊿゚)ξ「は? つまりストーカーじゃないの死になさいよ」
(;'A`)「こないだの女、中学の時に相手したの俺なんだぞ。
すげー強くて相打ちが限界だったけどよ、俺が居なけりゃなあ……」
ξ;゚⊿゚)ξ「変態! どうせ風呂とか覗いてたんでしょ! オゲェェェ!!」
(;'A`)「ブーン、こいつめんどくせえよ……」
( ^ω^)「だから言ったお」
.
77
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 20:28:41 ID:d5Oqci1Y0
しかし、私の日常からどんどん逃げ場がなくなっているぞ。
ただでさえ日常を構成するものが少ない孤高スキル持ちとして、この現状は致命的と言える。
頼みの綱はお母さんだけだ。
もし本当にウチが魔王のアレだった場合、もう完全に逃げ場はない。
( ´∀`)「おはよぉ〜〜」
その時ふとモナー先生の声がして、私は教室の時計を一瞥した。
もうすぐ朝のあれが始まるくらいの時間だった。
他のクラスメイト達も着々と教室に集まりつつあった。
( ´∀`)「適当に出欠とるから答えてってモナ〜〜」
(;'A`)「でもよぉー、ほんとにまったく気付かなかったのか?
自分がそういうのと関わってるってさぁ」
モナー先生が一人ずつ生徒の名前を読み上げ始める。
その一方で私達は声をひそめ、会話を続けた。
ξ;゚⊿゚)ξ「そんなの、完全ノーヒントで分かる訳ないじゃない!」
(;'A`)「……分からないのが自然だったかぁ」
( ^ω^)「……」
.
78
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 20:29:21 ID:d5Oqci1Y0
( ´∀`)「じゃあ次、魔王城さん〜」
ξ゚⊿゚)ξ「……あ、はい」
会話に気をとられて返事しそこねそうだったが、私は咄嗟に振り返って返事をした。
私の名前は魔王城ツン。どこにでも居るタイプの女子高生だ。
(;'A`)「……」
ξ゚⊿゚)ξ「ほら、次アンタが呼ばれるからね」
( ´∀`)「魔物部く〜ん」
(;'A`)「……はい」
( ^ω^)「ドクオ、ツンはバカなんだお」
苦い表情のドクオに、ブーンは優しくそう言っていた。
.
79
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 20:30:09 ID:d5Oqci1Y0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【ξ゚⊿゚)ξ:魔王城ツン】 ごく普通の女子高生。その正体は一体・・・?
【('A`):魔物部ドクオ】 ごく普通の男子。まものべと読むぞ。その正体は一体・・・?
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
80
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 20:32:26 ID:d5Oqci1Y0
【interlude:1】
妖刀・首断ち。
その刀は、戦時中のハインリッヒ高岡が魔王軍的なあれの中ボスくらいの奴を殺して奪った刀。
刀身の切れ味もさることながら、目を見張る能力は毒性付与・呪術展開・精神操作の三つ。
もともと悪の側で製作された一振りであるため、刀は十全なる悪意に満ちていた。
从 ゚∀从「……お前の名前は」
ζ( ー *;ζ「……デ、レ……」
从;゚∀从「……まだ抵抗できんのか。俺の時より洗脳教育がひでぇな」
妖刀を得たハインが最初に行ったのは自分自身への精神操作。
当時から正義の一団は半ば洗脳に近い教育を行っていたため、そうでもしなければ彼は自分を保てなかったのだ。
もし妖刀を手にするタイミングが少しでも遅れていれば、彼もこのメス豚のように従順な存在に変えられていた。
ζ( ー *;ζ「こ……殺せッ……!」
从 ゚∀从「このまま精神操作に耐えてりゃ勝手に死ぬ。精神崩壊だ。
死にたいなら頑張って我慢するといい。それが出来れば、の話だが……」
ハインは妖刀・首断ちをメス豚――デレの首に当て、ゆっくりと肌を切り裂く。
これで全身三十ヶ所目の切り傷、三十回目の精神操作。
デレの精神は、もう間もなく壊れようとしていた。
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81
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 20:33:15 ID:d5Oqci1Y0
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,、,,..._
ノ ・ ヽ 五平餅は、中部地方の郷土料理。潰したご飯を串焼きにしたものである。
/ ::::: i 醤油または味噌に、胡麻など油脂を含むものをあわせてタレを作る。
/ ::::: ゙、 むかし食べたけどすごくおいしかった(wikipedia)
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82
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 20:34:02 ID:d5Oqci1Y0
( ´∀`)「みんな揃ってるから、次は転校生を紹介するモナ!」
ξ;゚⊿゚)ξ「ねえねえ、やっぱ今日みたいなのってまた来るの?」
( ^ω^)「そりゃもう来まくるお。
お爺ちゃんの居場所がバレた以上、もう逃げてらんないお」
私達はなお先生を無視して小声で話し続けた。
ありがちな転校生の話より、今は私の身の安全の方が大事なのだ。
( ´∀`)「転校生はなんと四人! すごいモナ!」
ξ;゚⊿゚)ξ「うそだーいやだー……」
('A`)「お前も自衛くらい出来るようにならねぇとな。
いつ第二、第三の刺客が来るか分からねぇ。放課後に特訓でもするか?」
ξ;゚⊿゚)ξ「いやだ帰ってアニメ見る」
( ^ω^)「でもお爺ちゃんが今日も呼んでたお。学校終わったら三人で来いって」
ξ゚⊿゚)ξ「行く」
ハインさんはカッコイイので会いに行くのもやぶさかではない。
少なくともドクオと特訓なんて死んでも嫌だ。
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83
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 20:37:03 ID:d5Oqci1Y0
( ´∀`)「みんな注目モナ〜」
私達の雑談に気付いたのか、モナー先生がやんわりと注意を発した。
普段から気高い生き様を見せる私は素直に先生の意図を汲み取り、黒板の方を見る。
( ´∀`)「……よしよし。それじゃあ四人とも、入るモナ!」
先生が廊下に向かって言うと、教室の扉が開いて四人のメスがぞろぞろ入ってきた。
ξ゚⊿゚)ξ(なんだどいつもこいつもメスか)
ジョン・トラボルタあるいはシド・バレットを期待していた私は本当にガッカリだった。
( ´∀`)「四人は姉妹で転校してきたんだモナ。
長女のクールさんから、自己紹介をお願いするモナ」
私は教壇に立ち並んだ四人を死んだ目で眺める。
もう本当に興味がないので早く終わってほしかった。
.
84
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 20:37:44 ID:d5Oqci1Y0
川(#)"-゚)「第一刺客ノ高校から来ました。素直クールです」
ノパ⊿゚)「第二刺客ノ高校から来ました。素直ヒートです」
lw´‐ _‐ノv「第三刺客ノ高校から来ました。素直シュールです」
o川*゚ー゚)o「第四刺客ノ高校から来ました。素直キュートです」
('A`)
( ^ω^)
ξ゚⊿゚)ξ「……ドクオってあの長女とか好きそう」
長女の素直クールは傷だらけで、おそらく自傷癖があるメンヘラだろうと私は名推理した。
そしてドクオはこういう女が好きだろうと女の感が告げている。
('A`)「……お前さ、まず人の話をしっかり聞こうな」
ξ゚⊿゚)ξ「……?」
( ^ω^)「ツンはバカだから」
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85
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 20:39:06 ID:d5Oqci1Y0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
――VIP高校某所、素直四天王アジト。
お昼休み。
屋上の給水タンクの裏に設置されたテントの中で、素直四天王は第一回作戦会議を行っていた。
某所という描写は単にそれっぽさを演出する単語でしかなく、アジトは普通に屋上だった。
川(#)"-゚)「ククク、これで四天王全員が揃ったな……」
転校初日からボロ雑巾スタイルで登校する事になった長女・素直クール。
不敵に笑ってはいるが彼女は地の文一行でドクオに敗北している。
彼女は四天王最速の騎士であったが、その描写は諸般の事情で全カットされた。
ノハ;゚⊿゚)「姉ちゃんなんでボロボロなんだ!? 転んだ!?」
次女・素直ヒートは力持ち。
lw´‐ _‐ノv「…………」
三女・素直シュールは手先が器用。
o川*゚ー゚)o「いやいや負けたんでしょ。一人で戦いに行ってさぁ〜」
四女・素直キュートは普段は生意気だけど真面目に戦うとすごい強いタイプの敵。
たぶん彼女の戦闘シーンが一番複雑になるので、既にカット候補だった。
以上が、四天王それぞれのポジションであった。
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86
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 20:40:24 ID:d5Oqci1Y0
川(#)"-゚)「こ、これは敵の実力を知る為に、あえて尖兵としての役割を……」
o川*゚ー゚)o「そりゃ強いに決まってんじゃん。
私達って別に正義悪のアレじゃないんだよ?」
負け惜しみを語るクールに対し、キュートは爪の手入れをしながら生意気に答えた。
彼女の言う通り、この素直四天王(自称)は別に作中の面倒な設定とはまったく無関係だった。
確かに作品を読み返してみると素直クールが正義の側である描写は一行もない。
そして彼女の戦闘シーンは一行(20字)しかない。
扱いの酷さを考えるに、彼女達が特別重要な存在ではないのは明白だった。
o川*゚ー゚)o「私達、ちょっと身体能力が高いってだけで凡人じゃん?
それで傭兵紛いの事してるけどさ、あんなマジ連中になんか勝てないって、ムリムリ」
川(#)"-゚)「だ、だけどお姉ちゃん、みんななら出来ると思って……」
o川*゚ー゚)o「みんな? 最初から一人で行動してたのに?」
川(#)"-゚)「いや、だって本当に危なかったらみんなを巻き込めないし……」
o川*゚ー゚)o「あーはいはい。またそれね、分かった分かった」
川(#)"-゚)「キ、キュート……」
ノハ#゚⊿゚)「おいキュート! ねえちゃんイジメるなよ!」
o川#゚ー゚)o「……は? トーゼンのこと言ってるだけでしょ?」
川(#)"-゚)「あ、喧嘩はダメだといつも言ってるだろう……」
素直クールは姉妹に対してはヘタレだった。
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87
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 20:41:56 ID:d5Oqci1Y0
lw´‐ _‐ノv「…………わ」
ノハ;゚⊿゚)「――ッ!! 待て、シュールが何か言うぞ!!」
o川;*゚ー゚)o「ッッ!!」
川(#)"-゚)「シュール……」
lw´‐ _‐ノv「わ、わ…………」
lw´‐ _‐ノv「――――私が天に立つ」
ノハ;゚⊿゚)「…………」
o川;*゚ー゚)o「…………」
川(#)"-゚)「おお、シュール。なんて頼もしい……」
lw´‐ _‐ノv「先ずは紅茶でも 淹れようか」
第三刺客ノ高校・素直シュール。
彼女が今、ツンちゃん討伐第二の刺客として動き出そうとしていた。
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88
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 20:43:28 ID:d5Oqci1Y0
\
 ̄ヽ、 _ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
`'ー '´
○
O
,、,,..._
ノ ・ ヽ と思う支倉焼であった
/ ::::: i
/ ::::: ゙、 また次回
,i :::::: `ー-、
| :::: i
! :::::.. ノ
`ー――――― '"
89
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 20:43:59 ID:7Qob8PCE0
乙
90
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 20:47:59 ID:xp.lNWsQ0
おつおつ
91
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 21:10:09 ID:AtmrqgXQ0
乙
クーぼっこぼこじゃねえか
92
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 21:29:50 ID:PO7V9kks0
ツンちゃんの半端じゃないお馬鹿さが可愛い
素直姉妹は正義側でも悪側でもなかったのかよwwwww
乙でした!
93
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 22:01:09 ID:IFViHNBg0
ツンが本当に馬鹿だ
94
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 22:41:52 ID:.5KNHCjs0
鳩サブレみたいな鳥いいな
95
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 22:49:52 ID:7Qob8PCE0
五平餅は美味いよね
中部地方だからたまにおやつとかに食べるけど飽きない
96
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 22:49:55 ID:RMtD0kb.0
新しいな
97
:
名も無きAAのようです
:2015/10/24(土) 23:45:56 ID:1g0rBq0.0
まるで緊迫感はない
98
:
名も無きAAのようです
:2015/10/25(日) 01:43:15 ID:FS7CgB3.0
乙
ツンとドクオの名字がダイレクトすぎてワロタ
99
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名も無きAAのようです
:2015/10/25(日) 01:52:35 ID:kqe6L8L60
都城王土
100
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名も無きAAのようです
:2015/10/28(水) 01:10:39 ID:JhpYg7NAO
支倉焼www唐突な地元の銘菓にフイタwww
久しぶりに食べたい(´・ω・`)
101
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名も無きAAのようです
:2015/10/29(木) 06:22:13 ID:OmzQ/CLU0
【interlude:2】
かつて『勇者』と定義された物質があった。
その物質は思考能力を持ち、自我も十分に発達した完璧な生命だった。
しかし人工物である以上、それが純然な生命として認められることはなかった。
人間にとって、人間から生み出されるもの以外はすべて『物』として定義される。
ゆえにその『勇者』はただの物であり、人間が使役する道具の一つでしかなかった。
勇者が誕生したことにより、『正義』は物質としてこの世に受肉した。
これまで形を持たず、単なる思想・法則・所属の名前でしかなかったものが形状を得た。
最早、それは神を人造することと同じだった。
正しくあろうとする意思は、全人類が共通して持っている『野性』。
人類の野性は遂に理性を超越し、あらゆる行為を正当化する物質を完成させた。
人間は、自分の正しさを主張・実行する時にこそ、理性を捨てて他人を傷つける。
ならば正義は野性の別称に他ならないと、かつての魔王は一考していた。
【interlude:out】
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