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( ^ω^)達はアインクラッドを生きるようです。
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立ったら投下がある。
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(ドクオ)「え?」
(ブーン)「ど、どういうことだお?」
(ショボン)「ナーヴギアは、
ヘルメット内部に埋め込まれている信号素子から電磁波を発生させて、
僕達の脳に疑似的な感覚信号を与えるんだ。
その信号が、この仮想空間での【感覚】を生んでいる。
これは最先端のテクノロジーだけど、基本原理はあれと一緒なんだ」
(ツン)「……あれって……なに」
(クー)「電磁波……だと……あれ、か?」
(ショボン)「そう、電子レンジ。
あれはマイクロ波で水分子を振動させて熱を持たせる。
ナーブギアと、基本思想はほぼ同じ。
電磁波の出力を上げれば、僕達の脳を煮沸……破裂させられる」
ショボンの言葉に息を飲む四人。
周囲の者達も何人かは言葉を無くしていた。
空からの声は続く。
『より具体的には、十分間の外部電源切断、
二時間のネットワーク回線切断、
ナーヴギア本体のロック解除または分解または破壊の試み、
以上のいずれかの条件によって脳破壊シークエンスが実行される』
(ツン)「電源切って、なんで電磁波出るのよ……」
(クー)「ナーヴギアには、内臓電源が付いている。
でも、所詮はゲームの内臓バッテリーのはずだが……」
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(ショボン)「不思議だったんだ。なんであんなに必要なのか。
マイナーチェンジで小さくされるって聞いて、
ああやっぱりって思った。
……汎用機の内臓バッテリーは、高出力を起こせる力を持ってる」
『この条件は、すでに外部世界では当局およびマスコミを通して告知されている。
ちなみに現時点で、プレイヤーの家族友人等が警告を無視して
ナーヴギアの強制解除を試みた例が少なからずあり、その結果
……残念ながら、すでに二百十三名のプレイヤーが、
アインクラッド及び現実世界からも永久退場している』
(ドクオ)「!……あの、プレイヤー」
(ブーン)「!」
(クー)「!」
ドクオの言葉に思い出す二人。
三人の脳裏には、先ほどまでいた草原で見た一人のプレイヤーが浮かんだ。
(クー)「――――!!」
声にならない短い悲鳴を上げるクー。
ツンがその肩を抱いた。
『諸君が、向こう側に置いてきた肉体を心配する必要はない』
(ツン)「クー!」
(クー)「す、すまん……」
『現在、あらゆるテレビ、ラジオ、ネットメディアはこの状況を、
多数の死者が出ていることを含め、繰り返し報道している。
諸君のナーヴギアが強引に除装される危険はすでに低くなっていると言ってよかろう。
今後、諸君の現実の体は、ナーヴギアを装着したまま
二時間の回線切断猶予時間のうちに病院その他の施設へと搬送され、
厳重な介護体制のもとに置かれるはずだ。
諸君には、安心してゲーム攻略に励んでほしい』
.
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(ドクオ)「何言ってやがる……こいつ……」
(ツン)「嘘……よね……」
(ブーン)「ドッキリ……だおね……」
(クー)「本当なのか……」
『しかし、充分に留意してもらいたい。
諸君にとって、≪ソードアート・オンライン≫は、
すでにただのゲームではない。
もう一つの現実と言うべき存在だ』
(ドクオ)「……」
(ブーン)「……」
『今後、ゲームにおいて、あらゆる蘇生手段は機能しない。
ヒットポイントがゼロになった瞬間、
諸君のアバターは永久に消滅し、同時に』
(ツン)「……」
(クー)「……」
『諸君らの脳は、ナーヴギアによって破壊される』
(ツン)「!」
(クー)「!」
(ブーン)「!」
(ドクオ)「!」
ほとんどの者が、息を飲んだ。
どこかでばかばかしいと思いつつも、どこかで言葉を受け入れ、
そして、恐怖した。
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声は続く。
『諸君がこのゲームから解放される条件は、たった一つ。
先に述べたとおり、アインクラッド最上部、第百層までたどり着き、
そこに待つ最終ボスを倒してゲームをクリアすればよい。
その瞬間、生き残ったプレイヤー全員が安全にログアウトされることを保証しよう』
抑揚のない、ただ事実を告げるだけの淡々とした語り口調。
呆然とした彼らの耳に、どこからかいくつもの叫び声が聞こえた。
その中にはβテストでの攻略数を嘆く声もあり、
それを聞いてドクオが頷く。
(ドクオ)「……二ヶ月で、六層。
七層の途中までしか、行けてない」
(クー)「二ヶ月で六層。
単純計算なら百層にかかるのは三十四カ月くらいか?」
(ツン)「約三年ってこと!?」
(ドクオ)「六層だって、何度もチャレンジして、
何度も何人も死んで、やっとだったんだ……」
(ブーン)「そんなこと……死ぬなんて……」
(ドクオ)「復活できるから、死なないから、
ゲームだからそんなことが出来る。
何度もチャレンジして、攻略方法を学んで、
……何度も死んで、敵を倒す。
RPGなんて、ゲームなんて、そうやって楽しむもんだろうが!」
ドクオの声は、ここにいる誰もが思ったことだろう。
けれどその思いが、言葉が受け取られることは無く、
声はさらに続いた。
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『それでは、最後に、諸君にとってこの世界が唯一の現実であるという証拠を見せよう。
諸君のアイテムストレージに、私からのプレゼントが用意してある。
確認してくれ給え』
(ドクオ)「プレゼント?」
ドクオがメインメニューを開く。
三人は勿論周囲の者達も同じ動作をしたため、
中央広場に電子的な鈴の音のサウンドエフェクトが響いた。
(ツン)「手鏡?」
(ブーン)「鏡?」
(クー)「なんでこんな?」
四人の中では一番操作が遅いツンがアイテム欄を開いた時には、
三人は既にその名前をタップしていた。
そして現れたメニュー内のオブジェクト化を選択すると、
効果音と共に小さな手鏡が出現した。
それを手に取る四人。
恐る恐る鏡を覗き込むと、自分が設定したアバターの顔が映った
(ツン)「ただの鏡じゃない」
(クー)「これからこの顔で、ここで生きろってことを確認しろってことか?」
(ブーン)「おーーー」
(ドクオ)「これが、なんだって言うんだよ」
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四人で輪になった状態で、鏡を持ったまま自分以外の三人を見る。
(ツン)「ちょっと!あんた達!」
突然、ツンを除く三人が白い光に包まれる。
そして数瞬遅れてツンも包まれた。
(ドクオ)「みんな!」
(ブーン)「ツン!」
(クー)「またどこかに飛ぶのか!?」
(ツン)「ブーン!」
そして数秒後、光が収まると、彼らはまだはじまりの街の中央広場にいた。
('A`)「お、おい、お前ら」
( ^ω^)「お?お?」
ξ゚⊿゚)ξ「ど、どういうこと?」
川 ゚ -゚)「ここは、ゲームの中だよな?」
見慣れた姿の自分達。
髪の色や瞳の色は異なっているが、その姿は見慣れた友人の姿だった。
手鏡はいつの間にか消えていたため自分の姿を確認することは出来ないが、
仲間達を見る限りは自分も【自分の姿】をしているのだと感じた。
(´・ω・`)「みんな、大丈夫?」
いつの間にか四人とは少し離れた場所に一人でいたショボンも駆け寄ってくる。
(;^ω^)「ショボン!これはいったい!」
(´・ω・`)「ナーヴギアは頭全体と顔の半分を包み込んでいる。
高密度の信号素子が頭と顔を包み込んでいるんだ。
顔全体の造形を読み取ることなんて、容易い」
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川 ゚ -゚)「身体はどうなっているんだ!?」
普段の身長に戻ったドクオを見る三人。
('A`)「!そうか……キャリ…ブレーション……」
(´・ω・`)「そう。キャリブレーション。
最初にナーヴギアを被った時に体全身をくまなく触ったよね。
あれによってこの世界での感覚と実世界の感覚を同期させているわけだけど、
あれは自分の体のデータをナーブギアに教えているんだ。
長さや太さ、おうとつといったね。
色以外のデータはすべてナーブギアに教えてある。
特に僕達は薄い術着を着ていたから、かなり正確だと思う」
冷静に、けれどどこか自嘲気味に自分の考えを告げるショボン。
しかしその姿は冷静過ぎていて、
まるでこのような状況になることを知っていたかのように見えた。
勿論それは邪推なのだが、
この中では一番彼をよく知らないツンの脳裏には少しだけ浮かび、
そしてすぐ消えた。
消えた理由は、自分の幼馴染達と親友が、
全くそんなことを考えていないことを感じたから。
そして自分も短いながらもこの数カ月で、
彼がそんなことをすることは考えられないと思えたからだった。
川 ゚ -゚)「ショボンは冷静だな」
('A`)「お前はほんとにいやになるくらいに冷静だよ」
( ^ω^)「でも、ショボンがショボンらしいと安心できるお」
ξ;゚⊿゚)ξ「まったくあんたは……」
先程まで戸惑い、狼狽えていたのが嘘のように落ち着いた四人。
勿論まだ動揺はしているのだが、
ショボンの姿が、信頼している友人が普段と同じ姿を見せてくれたことが、
彼らに落ち着きを取り戻すきっかけを与えてくれた。
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(´・ω・`)「そう?」
いつも通りの表情で、いつも通りの受け答えをするショボン。
ショボンの後ろに回された右手は強く握られ細かく震えており、
それを抑える為に右の手首を強くつかむ左手も震えていたが、
四人に隠すことは成功していた。
('A`)「ショボン、会ったことあるんだよな?
どんな奴だったんだ?
こんなことをするような奴に見えたか?」
(´・ω・`)「……茅場晶彦氏とは、ほんの少ししか話していない。
けれど、彼は言っていた。
『私の世界を作る手助けをありがとう』って。
それに違和感は感じたけれど、念願がかなうって意味なのかなって思った。
けど、きっと、それは正解だけど、正確ではなかったんだと思う」
川 ゚ -゚)「?どういうことだ?」
(´・ω・`)「それは……」
『諸君は今、なぜ、と思っているだろう』
ショボンの声に重なるように、空から声が再び降り注いだ。
『なぜ私は、
SAO及びナーヴギア開発者の茅場晶彦はこんなことをしたのか?
これは大規模テロなのか?
あるいは身代金目的の誘拐事件なのか?と』
空を見上げる五人。
今まで淡々と話していた声に、少しだけ表情を感じて怪訝に思う。
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『私の目的は、そのどちらでもない。
それどころか、今の私は、すでに一切の目的も、理由ももたない。
なぜなら……この状況こそが、
私にとっての最終的な目的だからだ』
(´・ω・`)「……やっぱり、そういうことか……」
川 ゚ -゚)「ショボン?」
『この世界を創り出し、鑑賞するためにのみ私はナーヴギアを、SAOを造った。
そして今、すべては達成しめられた』
そこで声は止まった。
中央広場にいる者の表情はまちまちだった。
呆然とする者、
怒りに満ちた者、
まだ現状が把握できていない者、
冷静な者。
けれど全ての者が空を見上げ、
空に浮かぶフードの男、
【茅場晶彦】
を見ていた。
それは、フードの中の闇の中に、
彼の姿を見ようとしているようだった。
『……以上で≪ソードアート・オンライン≫正式サービスのチュートリアルを終了する』
その中で降り注いだ声には、表情も感情も無くなっていた。
『プレイヤー諸君の―――健闘を祈る』
そして、その声を最後に空からの声は消えた。
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第十九話
終
第二十話に続く
※文中の【茅場晶彦】の『』内のセリフは、
一部区切りを変更させていただきましたが、全て
≪電 撃 文 庫 ソー ドア ートオ ンラ イン1 アインクラッド≫
より引用させていただきました。
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以上、第十九話でした。
今回は少し短めでしたが、その分二十話が長くなりそうです。
何とか詰めて、なるべく早めに投下できるよう頑張ります。
乙、しえん、感想、指摘、本当にありがとうございます。
終わりまで亀の歩みですが突っ走るつもりですので、
よろしくお願いいたします。
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乙
-
おつ
『ミカゲ』=十七話で出てきた忍者……かなあ
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「みんな、ごめん」
彼の謝罪が、波紋を生む。
「そうね。全部、あんたのせいだもの。当然よ」
突き刺さっていく、彼女の言葉。
「ナーヴギアを被ったのも、『リンク・スタート』と言って飛び込んだのも、
私だ。私なんだよ」
それは、全員の思い。
「でも、そんな状態だと、この世界では生きていけないと思う」
震える事実
冷静な観察から導き出された現実。
目指す理想。
「帰る日まで、みんなで頑張ればいいんだお」
五人の思いが、交差し、離れ、結びつく。
( ^ω^)達はアインクラッドを生きるようです
第二十話
はじまりの日 DEATH GAME 〜SWORD ART ONLINE〜
11月中には投下予定。
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乙!
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乙乙
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乙です!次回も楽しみにしてます!
一点だけ、335と336の間もしかして抜けてないかな?
読みとれてないだけならすまん
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どーもです。
>>381 様
ご指摘ありがとうございます!
抜けてました!
はぁああぁぁぁぁぁあああぁぁぁ…… ……。
今回こそは抜けはないようにと思っていたんですが……。
すみませんでした。
補完ねがいます。
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(クー)「ブーンの使っているプロトタイプは全く同じなのか?
その、信号の強さとか」
(ショボン)「実は、少しだけ強い。
でも僕のテストタイプよりは弱いし、
もともとはプロトタイプの強さで出そうって話もあったくらいだから、
違いは無いと思うよ」
(クー)「そうなのか。
先程のツンに追いついた走るスピードと今の話を聞いて、
もしやと思ったのだが」
(ショボン)「多分違うと思うけど……。
走るスピードに関しては、もともとブーンの記憶の中に
『これくらいのスピードで自分は走れる』
ってイメージがあると思うから、そこら辺に由来しているんじゃないかな?
もしくは、初期のパラメーター振り分けを素早さ重視にしちゃったとか」
(ドクオ)「バランスよく均等にしろって言ったのに」
(ショボン)「いや、もしかしたらだよ?」
(ドクオ)「さっきの走りは、もしかしたらそうかもしれん」
(ショボン)「まさかー。ブーンに限ってそんなことしないよ。
と、自信を持って言い切れないところが悲しい所」
(ドクオ)「あとで問い詰めるの手伝ってくれ」
(ショボン)「お手柔らかにね」
(クー)「本当に三人は仲が良いな」
ドクオとショボンの掛け合いを聞いていたクーがポツリと漏らす。
(ショボン)「今の会話のどこからその言葉が出てくるのかは分からないけど、
仲が良いのは三人じゃないでしょ?」
(クー)「え?」
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正確には、334と335が重複なので、
334→383→336と読んでいただけますようお願いします。
ではではまたー。
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乙乙
原作知らんから始まりの部分がよく分かって実に良かったわ
> (美青年)「兄者、これはいったい?」
> (美少女)「えー。兄者って誰ですかー?」
ネカマ全開兄者わろたwwwww
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おつです
やはり読んでいて楽しい
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乙
ジョルジュの眉毛がwww
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乙!ミカゲが15話あたりで出てきた謎の人物っぽいね
読み返すとミカゲ=デレ=黒装束の忍者と想像させられる伏線だけど違う展開でも全然おかしくないし良い意味でモヤモヤするな
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予想は控えようぜ
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期待
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まだかな?
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霜月終るぞこらあああ
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0.浮遊城
VRMMORPG 『SWORD ART ONLINE』の舞台は、100層からなる浮遊城である。
それぞれの層は円形大地であり、
第一層の上に第二層、そして第三層と基本的には少しずつ小さくなった円形台地が重なっている。
層と層は一つの迷宮によって繋がっており、
一番下の一層から一番上の百層を目指し、百層にいるとされる最後の敵を倒すのが、
このゲームのグランドクエスト、最終目的である。
迷宮の一番奥にはその層のボスがおり、ボスを倒さない限り次の層に行くことは出来ない。
層の一番端、岩壁を登ることは不可能であり、
また落ちればその距離に応じた衝撃が身体を襲う。
先に書いたが、この世界は『浮遊』城である。
つまり、天空に浮いているのだ。
層の端から外に向かって落ちるということは、
見えない大地に向かって落ちて行くことと同じであり、
そして、それは「死」を意味している。
βテスト時代に外の壁を登ろうとした猛者もいたということだが、
結局は失敗していた。
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円形の大地が層になっているため、
上を見上げてもそこには上の層の底しか見えない。
大地の端に行けば無限の空が見えるが、ただ空が見えるだけである。
太陽はこの浮遊城を照らし、光は外側から降り注いでいる。
地球と同じように太陽の周りをこの浮遊城が回っているのか、
浮遊城の周りを太陽が回っているのかは定かではない。
日本の標準時刻と同じペースで時は進み、
浮遊城の一日は、現実世界の一日と同等である。
常春の層。
常夏の層。
常秋の層。
常冬の層。
昼の層。
夜の層。
鉄の層。
花の層。
水の層。
牛の層。
鳥の層。
虫の層。
層には気候の固定された特色のある層もあれば、
季節によって気候が移り変わる層もあり、
更には出てくるモンスターやボスキャラクターの種類を特化した層もある。
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当初プレイヤーは浮遊『城』と呼ぶことに多少の抵抗を持っていた。
浮遊しているとはいえ、大地があり、湖があり、川があり、木々のあるその世界を、
【城】と呼ぶことに違和感があった。
しかしいつしかその違和感は消えていた。
無意識下で、心の奥底で、本当に理解したのであろう。
自分達のいるこの世界が、
天才【茅場晶彦】の創り出した世界であるということを。
彼の手の中の、彼の頭の中の『城』であるということを。
≪SWORD ART ONLINE≫は、
この浮遊城を舞台としたゲームである。
そして、
浮遊城は、
≪アインクラッド≫
と、
名付けられていた。
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( ^ω^)達はアインクラッドを生きるようです。
第二十話
はじまりの日 DEATH GAME 〜SWORD ART ONLINE〜
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1.はじまりの日
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2023年11月6日
デジタル時計は夕方六時を過ぎたことを教えてくれている。
夕闇の赤が血の様に見える真紅の世界。
ついさっきまで上空を覆っていた赤と黒の市松模様は消えている。
この世界の創造主である【茅場晶彦】から告げられた内容をやっと認識した人々が、
声を上げ、泣き、叫び、怒鳴り、嘆き、はじまりの街の中央広場には混乱の渦が生まれた。
だが、騒ぎの起きる前に五人は広場から外に飛び出していた。
('A`)「ショボン……どうするんだ?」
(´・ω・`)「まずは一度西の教会に行こう。
最短の道を先導してほしい」
('A`)「……分かった」
ドクオを先頭に、ブーンがツンを、ショボンがクーを支える様にして駆けていく五人。
少し動きがゆっくりしているのは、
先ほど告げられた現実の重さを考えれば仕方ないことだろう。
そして、後方の広場から聞こえるプレイヤーの声が、心を暗くさせる。
彼らが人の渦に巻き込まれる前に外に飛び出せたのは、
的確に指示を出したショボンのおかげだった。
('A`)「その後、どうする?」
(´・ω・`)「まずはとにかく教会に」
心細げなドクオの言葉に、しっかりとした声で答えるショボン。
その声に後押しされるように、ドクオの足取りがしっかりとしたものに変わった。
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しえ
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西区教会
つい先ほど、五時間ほど前に来た教会に、彼らは再び訪れた。
奥の部屋に入り、疲れた様に椅子に座る。
ツンとクーが肩を寄せ合い、二人を守る様にブーンが腰掛ける。
その前にドクオが座った。
(´・ω・`)「みんな、ごめん」
そしてドクオの横に立っていたショボンが、
座らずに頭を下げる。
腰を九十度に曲げ、テーブルに額当たる勢いで頭を下げた。
('A`)「!」
(;^ω^)「ショボン!なにを!」
(´・ω・`)「僕がナーヴギアを提供し、SAOというゲームも提供した。
皆が今ここにいるのは、僕の責任だ。
謝って済むことじゃない。
でも、まずは謝らせてほしい。
許してほしいともいえない。
ただ、謝らせてほしい。
みんな。ごめんなさい。
巻き込んでしまって、ごめんなさい」
('A`)「お前のせいじゃないだろ!
おれは自分で選んだ!
テストに自分でお応募して、自分で始めたんだ!」
(´・ω・`)「でも、ナーヴギアを使わせなければよかったんだ」
('A`)「おれがお願いしたんだろ!だからお前のせいじゃない!
それにバイトしてナーヴギアは買ってた!」
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(´・ω・`)「バイトの金額計算しても、
当日までには、スタートの今日までには溜まらないかもって言ってたよね。
同梱版の金額。最後のバイト代が出るのが、11月の10日だから。
夏休みにいっぱい入れたとしても、それ以外は週一回か二回じゃ、無理だって」
('A`)「それは……」
(´・ω・`)「だから、僕のせいなんだ」
('A`)「でも、おれが楽しそうにSAOをやらなければお前だってみんなを誘ったりしなかっただろ!?
だから、おれにも!」
(´・ω・`)「どちらにせよ、誘っていたよ。
僕は、友達皆で何かをやるってことに憧れていたから」
( ^ω^)「!」
('A`)「!」
(´・ω・`)「SAOは、五人で、友達でやる、特別なことに、最適だったんだ。
たった一万人の中に入れた、特別な五人。
世界で初のバーチャルゲーム。
それを楽しむ、特別な五人。
それが、したかったんだ」
('A`)「ショボン……」
( ^ω^)「ショボン……」
川 ゚ -゚)
ξ ⊿ )ξ
(´・ω・`)「僕の勝手な思いに巻き込んでしまったんだ。
だから、ごめんなさい」
.
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川 ゚ -゚)「……だが、やることを決めたのは自分だ。
術着に着替えたのも、ベッドに寝たのも、
ナーヴギアを被ったのも、『リンク・スタート』と言って飛び込んだのも、
私だ。私なんだよ」
( ^ω^)「そうだお!みんな自分で決めたんだお!」
('A`)「ああ、そうだ。自分で決めたんだ。
だから、きにすんな」
(´・ω・`)「でも、それでも。僕が誘わなければ、みんなは……」
川 ゚ -゚)「……」
('A`)「……」
( ^ω^)「……」
(´・ω・`)「だから、僕はここに誓う。
絶対に、みんなは生きて向こうの世界に戻す。
何に変えても、絶対に。
現実世界に戻れる日まで、絶対にみんなが生き残れるようにする。
だから、その日までみんな、僕」
ξ ⊿ )ξ「そうね。全部、あんたのせいだもの。当然よ」
ずっと黙っていたツンが、ショボンの言葉にかぶせるように呟いた。
川 ゚ -゚)「ツン!?」
(;^ω^)「ツン!?」
('A`#)「ツン!」
(´・ω・`)「うんそうだよ。僕のせいなんだ。だから」
ゆっくりと立ち上がるツン。
そしてショボンを睨む。
.
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ξ゚⊿゚)ξ「って、言えば、満足?
でも、絶対にそんなこと言ってやらない!
バカにすんな!バーカ!」
(´・ω・`)「え?」
(*^ω^)「ツン」
川 ゚ -゚)「……朋美……」
('A`)「うわぁ……」
ξ゚⊿゚)ξ「バーカ、バーカ、バーカ。
私の事をバカにすんなこの野郎」
('A`)「ショボンをバカとかよく言えるよな」
ξ゚⊿゚)ξ「良いのよ。だってこいつホントにバカなんだから」
川 ゚ -゚)「ツン」
ξ゚⊿゚)ξ「……そうね。
あんたの言葉に甘えて、
あんたのせいにして、
あんたを恨めば楽よ。
どうせあんたの事だから、
私達を安全な所に置いて、
何とかして帰還の日までもたせようとか、
考えているんでしょ。
私たち以外の使えるモノは何でも利用して」
(´・ω・`)「そんなことは」
('A`)「しそうだな」
( ^ω^)「やりそうだお」
川 ゚ -゚)「うむ」
.
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(´・ω・`)「いや、だから」
ξ゚⊿゚)ξ「でもそんなの、私は嫌。
ここには、自分の意思で来た。
その事実に蓋をして、あんたを恨んで生きるなんて絶対にいや!」
( ^ω^)「ツン……」
ξ゚⊿゚)ξ「………。
こんなところで死にたくない!
現実に戻りたい!
あの声を聞いて、ここに移動するまでの間、ずっと思ってた。
心が張り裂けそうだった。
でも、誰かを恨んでまで、
友達を恨んでまで、心の平穏なんて求めてない!」
ツンの叫びが部屋に響き、四人がツンを見た。
空気が固まり、誰も動けず、何も言えなかった。
ただ一人、ツンはショボンを睨みつけながら、口を開く。
震える身体を支える様に自分の体を抱きしめた彼女を、
クーが横から抱きしめようとした直前だった。
ξ゚⊿゚)ξ「あとあんた、
私達が無事に帰れるなら自分は死んでもいいって思ってるでしょ」
(´・ω・`)「!」
('A`)!
(;^ω^)!
川 ゚ -゚)!
(´・ω・`)「別に、僕はそんなこと……」
ξ゚⊿゚)ξ「いいや、思ってる!
どうせ本当なら死んでお詫びしたいけど、
でもみんなが帰るまでは死ねないとか思ってるのよ!
ブーンやドクオだって、分かってるでしょ!」
.
-
('A`)「……そうだな」
( ^ω^)「ショボンなら、……思っていそうだお」
ξ゚⊿゚)ξ「『いそう』じゃなくて、思ってるのよ。
だってこいつ、さっき『なににかえてもみんなは』って言ったもの。
きっと、自分の命は、二の次にしてる。
もちろん私達を活かすために頑張って生きるでしょう。
でも、私達を生き残らせるためになら、簡単に自分の命を捨てるつもりよ。
そして、私たち以外の命を犠牲にすることもいとわないわよ。こいつ」
右手の人差し指でショボンを指さすツン。
その指先は少しだけ震えていて、
それを見て我に返ったクーはツンを抱きしめた。
ξ゚⊿゚)ξ「久美子……」
川 ゚ -゚)「朋美。もういい。もういいよ」
ξ゚⊿゚)ξ「だって、あんた……」
川 ゚ -゚)「本城、私も朋美と同じ気持ちだ」
(´・ω・`)「……」
川 ゚ -゚)「私の家が本城の家に救ってもらえたから、
私は美ノ付に通うことが出来ているし、
不自由無い生活を送っていた。
高校で再会できた時、……恩返ししたいと、思った。
私がそれを言った時、困ったように笑って、言ってくれたよな。
『僕は何もしてないよ。そんな事考えないで、高校生活を楽しもう』って」
ξ゚⊿゚)ξ「!久美子、あんた……」
('A`)
( ^ω^)
(´・ω・`)「融資を決めたのもおこなったのも、父や母や祖父であって、僕は何もしていない」
.
-
川 ゚ -゚)「……来島家を救ってくれたのは本城家だが、
私を救ってくれたのは、本城、お前だ。
本城は覚えてないかもしれないがな。
私は、忘れない。
あの、あの日から、ずっと。
私は……。
だからこそ、『友達』にはなれないと思っていた。
借りが多すぎて、大きすぎて、対等である友達になんて、なれないと思った。
でも本城、言ってくれたよな。私達五人は、友達だって。仲間だって。
私はそれが、凄く、凄く、嬉しかったんだ。
ずっと、色んなことに引け目を感じていた私を、
友達だって言ってくれた、仲間だって言ってくれた、
本城が、朋美が、内藤が、徳永が、大事で、大好きなんだ。
一緒に笑って、バカな話をして、お弁当を食べて、勉強をして、
毎日が楽しかったんだ。
だから、自分が決めた事のせいで、大事な人を恨んだり憎んだりなんてできない。
したくない。でも私は弱いから、本城にそんなことを言われ続けたら、
心の片隅に思ってしまう日が来てしまうかもしれない。
だからもう、そんなことは言わないでくれ。
私は、私を嫌いになりたくないんだ。
だから、頼む」
(´・ω・`)「来島さん……」
顔を伏せ、互いの体を支えるように抱きしめあうツンとクー。
ブーンが近寄り、二人に椅子に座るように促した。
( ^ω^)「ショボン、ショボンはいつも僕達の事を考えてくれるけど、
僕達だってショボンの事を考えてるんだお。
ショボンが僕達の事を好きでいてくれるように、
僕達もショボンの事が好きなんだお。
いつもショボンに甘えちゃってるけど……」
('A`)「そうだな。
おれ達は、ショボンに甘え過ぎてた。
いつも笑って、おれ達の事を考えていてくれたから。
より良い道を、正解の道を指し示してくれたから、
それを普通に思ってしまっていた」
.
-
ξ ⊿ )ξ「甘えてたのはあんたたち二人でしょ」
('A`;)「お、おれ達ってのはおれとブーンの事であってだな、」
ξ ⊿ )ξ「分かってるなら良い」
('A`;)「お、おお」
なんとなく気まずそうに頭を掻くドクオ。
ブーンも困ったようにそんなドクオを見ている。
('A`)「で、まあ、何を言いたいかっていうと、
自分を責めるのは止めてくれってことだ。
おまえは今のこの状態は自分のせいだって思ってる。
でもおれ達は、自分が選んだ結果だって思ってる。
本当は、ショボンがそんなことを思うのを止めてほしいけど、
おれ達が何を言ったって、多分変わらないよな。
でも、ショボンがどんなに言っても、
おれ達も自分の選んだ結果だって意見は変えない」
(´・ω・`)「ドクオ……」
('A`)「でも、そんな状態だと、この世界では生きていけないと思う」
(´・ω・`)「!」
( ^ω^)「!」
ξ゚⊿゚)ξ「!」
川 ゚ -゚)「!」
俯いていた二人もドクオの顔を見た。
('A`)「おれはβテストのとき、ダンジョンどころかフィールドですら、
それこそさっき倒した青イノシシに負けて死んだことがある。
戦い方が分からないんだから、当然だよな。
自画自賛になるけど、もし俺がいなかったら、
お前ら全員もう死んでいたかもしれない」
.
-
四人の背中に冷たい物が走った。
('A`)「武道をやっていたクーですら最初はへっぴり腰だったもんな」
川 ゚ -゚)「……ああ。徳永のアドバイスが無かったら、
あの時に死んでいたかもしれない」
('A`)「まあおれも教えるのがそれほどうまいってわけじゃないし、
ショボンに言われてポーション飲んでなかったら、
あそこで与えられたダメージ総量を考えると、死んでいたかもしれない」
自分達に戦い方を指導しながら、
自分達を守るためにイノシシの攻撃を受けて傷を負ったドクオを思い出す四人。
( ^ω^)「……ドクオ」
('A`)「一番最初に突っ込むタイミングを掴んだツンだって、
そう思うだろ?」
ξ゚⊿゚)ξ「……ええ。
何回も攻撃受けたし、ドクオにも守ってもらった。
思い返せば、いつ死んでもおかしくなかったかも」
('A`)「ショボン、どんなにお前の頭が良くても、
多分この世界はそれだけじゃ生き抜くことは難しい。
よっぽどの『力』をもつ奴ならともかく、
本当に一人で生き抜く事なんて無理だと思う。
ましてや、自分以外に四人も守るなんて、無理だ」
(´・ω・`)「でも…ぼくは……」
('A`)「けれど、おれ達は一個一個を見ればかなり高スペックだと思う」
(´・ω・`)「?」
( ^ω^)「お?」
ξ゚⊿゚)ξ「?」
川 ゚ -゚)「どういうことだ?」
.
-
ドクオは全員の顔をゆっくりと見回し、そしてショボンを見た。
('A`)「ショボンの頭の良さ、記憶力。
更にテストタイプのナーヴギアを使っていることによる敵の出現をいち早く察知できる目。
これはかなりのアドバンテージになると思う」
(´・ω・`)「……」
ξ゚⊿゚)ξ「いち早く察知?」
川 ゚ -゚)「詳しくは後で話すが、
ショボンが使ってるナーヴギアはテストタイプのため、
私達より少しだけ早く敵が現れる場所を知ることが出来る様なんだ」
( ^ω^)「おお!すごいお!」
ドクオは視線をクーに移す。
('A`)「クーの武術と冷静さ。
槍捌き自体はいつかは他の奴もうまいやつが出てくるだろうけど、
現時点ではβテスターを含めてもトップクラスだと思う。
それに状況を掴む冷静さ、観察眼はショボンと同等、
いや、もしかしたらそれ以上かもしれない。
ショボンはさ、おれ達には甘すぎるから」
(´・ω・`)「……そう……かな」
川 ゚ -゚)「ふふふ。そうかもしれんな」
そしてツンを見る。
('A`)「ツンの持つ思い切りの良さと剣技のセンス。
それと歯にモノ着せない物言い」
ξ゚⊿゚)ξ「褒めてないわよね?」
('A`)「……大事だよ。
おれ達じゃ、ショボンが暴走したら止められないかもしれない。
さっきみたいに、ガツンと言ってやることが出来ないかもしれない。
それじゃ、ダメなんだけどな。友達に気後れするとかさ……」
.
-
( ^ω^)「おー。だおね。ショボンの方がちゃんと考えていてくれるから、
いつも甘えちゃってて、ショボンが言うなら間違いないだろうって思っちゃってるお」
('A`)「ああ。
それに、あの剣技の切れは、
今まで見たどの細剣の初期技と比べても、
トップクラスだったと思う。
もしかしたら、ツンの性格は細剣の剣技と相性がいいのかもしれない」
ξ゚⊿゚)ξ「性格と剣技の相性ねぇ……」
('A`)「剣技は技によっても武器によっても癖がある。
ツンが細剣の全部の剣技と相性が良いのかは分からないけど、
あの技にはかなり相性が良いように見えた。
技後硬直とか注意点も大きいけど、
自分の能力を格段に引き上げる剣技を使いこなせるのは、
かなりの強みだ」
ξ゚⊿゚)ξ「なるほどね」
('A`)「そしてブーン」
( ^ω^)「おっ」
('A`)「ブーンの体の動きと呼吸の合わせ方。
他のどの武器ともそれなりに合わせやすい片手剣ってこともあるけど、
おれやツンと共闘した時の呼吸の合わせ方は、見事だった。
ソロはともかく、パーティーで戦う時は大きな武器だ。
それに普段から運動をしていただけあって、
自分の体の動かし方がよく分かってる。
小学校の時に通ってた体操教室の動きも活かされてるのかもしれないな」
(*^ω^)「お!そうかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「で?あんたは?」
.
-
('A`)「ゲームの知識。お約束。
βテスターとしてこの世界を生きた経験と知識は、
一般プレイヤーには無いものだ。
モンスターの種類と特徴と出現場所。
抜け道を含めた細かいマップ。
街の中の店や細かい裏技。
いつかはみんなが分かることだけど、
最初からある程度分かっているというのはそれなりに力になるはずだ。
あと、古今東西のRPGや複数のMMORPGをプレイしたゲーマーとしての知識も」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
川 ゚ -゚)「……」
('A`)「ん?どうした」
ξ゚⊿゚)ξ「いや、確かに今の私達にとって、
生きる為の凄い武器だと思うんだけど……」
川 ゚ -゚)「少し引いた」
ξ゚⊿゚)ξ「昔からゲーム良くしてたもんね。
私達が誘わないと外出ないし」
('A`)「今は良いんだよそんなことは」
( ^ω^)「おっおっお」
川 ゚ -゚)「だが同時に、かなりすごいとも思う。
あの短時間で、私達の事をよくそこまで……」
('A`)「ああ、まあな。
パーティー組んで戦うには全員の長所と短所、
得手不得手、好きな戦い方嫌いな戦い方を知らないといけないからさ。
最終的には指揮をショボンに任せるとはいえ、
おれも意見できるようにしたほうが良いかなと思って」
そしてショボンに視線を戻した。
.
-
('A`)「おれ達がパーティーを組んで戦うとしたら、指揮はショボン、お前だ」
(´・ω・`)
('A`)「今みたいに一人一人の特性を見ることは出来ても、
それを組み合わせて、状況に合わせて動かす事なんて、
おれにはできない。
この五人の中でそれが出来るのは、
ショボン、お前だ」
(´・ω・`)「……来島さんも出来るよ」
川 ゚ -゚)「は?」
('A`)「ああ、そうだな。資質だけなら出来る可能性は高いと思う」
川 ゚ -゚)「いやちょっとまってくれ」
('A`)「でも、お前の目とクーの戦闘能力を充分に発揮させるなら、
お前が指揮を執るのが順当だろう?
悪いけど、戦闘能力はお前よりクーの方が上だ。
お前が前線に出るより、クーが前線に出た方が安全に敵を倒せる。
それにお前の持つ目の能力は、後方で全体を見渡すことで、
最大限に威力を発揮するんじゃないか?」
(´・ω・`)「それは……」
川 ゚ -゚)「二人とも私の声が聞こえているか?」
('A`)「お前だってわかってるはずだ。
自分の真価は、『人を使うこと』だってな。
だからお爺さんたちに」
(´・ω・`)「ドクオ!」
('A`)「……わるい。今はそれは関係なかったな。
でも、おれの言いたいことは分かるだろ?」
(´・ω・`)「……うん」
.
-
ドクオの言葉に、珍しく声を荒げるショボン。
その声にツンとクーは驚いてショボンの顔を見た。
ブーンは何も言えず、少しだけ悲しそうにショボンとドクオの顔を見ている。
(´・ω・`)「でも……やっぱり……」
項垂れるショボン。
( ^ω^)「帰る日まで、みんなで頑張ればいいんだお」
ブーンが朗らかに、事も無げに言い放つ。
(´・ω・`)「ブーン……」
頭を上げるショボン
その簡単な物言いに、ドクオとクーは苦笑いを浮かべながらも追従した。
('A`)「そうだな」
川 ゚ -゚)「それしかない」
出来るだけ簡単に、何事も無いように。
(´・ω・`)「でも、皆に命が危険にさらされるようなことは」
それでも異議を唱えるショボン。
ξ゚⊿゚)ξ「なら、私達が危険にならないように、考えなさい」
しかしすぐにツンの言葉によって遮られた。
それはまるで最初にショボンが提案しようとしたことを認めるような言葉だった。
(´・ω・`)「え?いや、じゃあ」
が、違った。
.
-
ξ゚⊿゚)ξ「ただし、私達は自由に動くわよ。
納得できる内容なら、従ってあげる。
でも、納得できなかったら指示になんて従わない。
どこかに閉じ込めるとか、この街から出ないなんてのはもってのほかだから、
それ以外で私達が出来るだけ死なない道を考えなさい」
(´・ω・`)「…………え?」
('A`)「……上から目線だ」
川;゚ -゚)「朋美……」
(;^ω^)「おー」
おもわず唖然としたショボン。
ツン以外の三人も同じような表情で二人を見た。
ξ゚⊿゚)ξ「だってそれしかないじゃない」
四人に対し、普段のツンと何も変わらない仕草で喋り続ける。
ξ゚⊿゚)ξ「本城の望みと、私達の思い。
そこら辺が折衷案でしょ?
本来なら自由に動いていい私達が、
納得できれば指示に従うって言ってるんだから、
喜んで欲しいくらいよ」
('A`)「うわ」
ξ゚⊿゚)ξ「ま、考えるのめんどくさいから、
細かいことは任せるっていうのもあるけど」
( ^ω^)「賛成だお」
ξ゚⊿゚)ξ「あと、自分の命も大切にして」
川 ゚ -゚)「ああ。私からも頼む。
自分の事も大事にしてほしい」
.
-
( ^ω^)「来る時と一緒だお!
五人皆で帰れる様に頑張るんだお!」
('A`)「ああ、そうだな」
川 ゚ -゚)「うむ。内藤の言うとおりだ」
ξ゚⊿゚)ξ「そういうことよ。わかった?」
(´・ω-`)「みんな……」
笑顔で告げる四人に、片目をこすりながら、やっと笑顔を見せるショボン。
(´・ω・`)「わかったよ。
皆で、生きて帰る。
その為に頑張るよ!」
('A`)「おう!」
( ^ω^)「だお!」
川 ゚ -゚)「うむ」
ξ゚⊿゚)ξ「やっとわかったか」
(´・ω・`)「償いは、帰ってからするよ」
('A`)「って、わかってんだが、わかってないんだか」
( ^ω^)「おっおっお。でも、ショボンらしいお」
川 ゚ -゚)「ならば私も帰ってから恩返し攻撃をしなければな」
ξ゚⊿゚)ξ「私鉄とバスとタクシー乗り放題くらいで良いわよ」
('A`;)「おいおい」
(;^ω^)「おっおっお」
川;゚ -゚)「朋美」
.
-
ξ゚⊿゚)ξ「冗談よ、冗談」
(´・ω・`)「了解」
ξ;゚⊿゚)ξ「いやいや、冗談だからね!」
五人全員に笑顔が戻り、会話を交わす。
それは生徒会室で昼ご飯を食べている時のようで、
五人の心に落ち着きを与えていた。
('A`)「さてバカ話もこれくらいにして、
ショボン、これからどうするのが良いと考えている?」
(´・ω・`)「うん……」
時折笑い声も出るような会話を30分以上した後、
全員が一呼吸置いた時に、ドクオが真剣面持ちで口を開いた。
(´・ω・`)「出来れば、早めにこの街を出たい。
今すぐにでも。
この街の情報収集もしたいけど、
ひとまずはドクオの知識があれば事足りるだろうし」
川 ゚ -゚)「何故この街ではいけないんだ?」
('A`)「広いし宿屋も多いし、当分は拠点にしてもいいと思うが?」
(´・ω・`)「宿屋を借り続けてずっと中に籠るならそれもいいと思う。
でも、その道を選ばないなら、着実に安全に早急にある程度までレベル上げをしたい。
おそらくそう考えたβテストをやっていないプレイヤーはこの周辺で狩りを、
戦闘訓練を、レベル上げを始めると思う。
この街の中にいるだけなら、規模でみれば1万人いても大丈夫だと思うけど、
周辺で狩りや戦闘を行うと考えると、キャパが足りないような気がする」
.
-
('A`)「そうか。ああ、そうだな。
そうなれば、この周辺のモンスターはすぐ狩られるだろうし、
狩場をめぐって争いが起こるかもしれない。
そうなると、まずは次の街か。
あそこにはアニールブレードのクエストもあるし、
早めに取りたかったからそれもいいか。
でも……いや……すぐはだめだ。最低でも一つはレベルを上げて」
ショボンの話を聞いて、考え込むドクオ。
最初は周りに聞こえるような声だったが、
だんだん小さくなり最後はぼそぼそと独り言になっていた。
ξ゚⊿゚)ξ「何がダメなのよ?」
('A`)「あ、いや、順当にいくとしても、まずは次の街
『ホルンカ』になると思う。
もともとそこには早く行きたかったから行くことには賛成だけど、
出来るだけ早くってのは、厳しい」
ξ゚⊿゚)ξ「なんでよ」
('A`)「行く途中にモンスターが出る。
さっき倒した青イノシシよりも強いやつが。
といってもそこまで変わらないけど、危険度が上がるのは事実だ。
それに、今はもう夜の時間だからモンスターの出現率も高くなってるし。
少し回り道をしてできるだけモンスターの出ない道を選ぶとしても、
『今すぐ』ってのは無理だ。
安全を考えるのであれば最低でもレベルを一つ上げてから行きたい」
川 ゚ -゚)「どれくらいかかる?」
('A`)「んー。夜はランダムで強いモンスターも出るから、
明日の朝から始めたとして、三日後の昼には全員出られるかな……」
(´・ω・`)「それだと遅い」
.
-
( ^ω^)「どうしたんだお?そんなに慌てて」
(´・ω・`)「……さっきのは、一つ目の理由。
もう一つは、おそらくこの街はこの先更なる混乱に包まれる。
自棄になったやつが、何をしでかすか分からない。
街の中は『圏外』といって戦闘行為は出来ないから僕達に命の危険は無いと思うけど、
出来れば早めに出ておきたいんだ」
('A`)「んなこと言われても……」
(´・ω・`)「今ドクオの言っていたのは、五人全員で動いた場合だよね」
('A`)「ん?ああ」
(´・ω・`)「ドクオ一人なら、次の街まで行ける?」
('A`)「おれ一人なら?ああ。行ける。
でも、おれ一人行ったって……」
(´・ω・`)「もう一人、僕以外の三人のうち誰かを連れていくとしたら?」
('A`)「二人……。まあそれなら行けるかな。
ブーンにせよツンにせよクーにせよ、
一人ならおれもフォローできるだろうし。
あ、ショボンでも大丈夫だぞ?
ああ、そうだな。それなら行けるな。
その方法で一人連れて行って、おれがまた戻ってきてまた一人連れていけば」
(´・ω・`)「いや、流石にそれは効率が悪いよ。
それに、ドクオの負担が大きすぎる。
長く続く緊張や疲れが、ミスを誘うよ」
('A`)「じゃあどうするんだ?」
(´・ω・`)「まず二人で行って、その一人を鍛えてほしい。
そして、ドクオが大丈夫と思えるところまで鍛えたら、
二人で迎えに来てくれ」
.
-
滑り込みで11月に来てたー
これから読みます
-
('A`)「!なるほど。それなら五人での移動がいけるかもしれない。
昼の移動なら二人で三人のフォローも出来るだろうし……。
それに、あのクエストをやれば戦いにも慣れるしレベルも上がるはずだ」
(´・ω・`)「できれば、明後日の昼頃までにお願いしたいけど、間に合うかな?」
('A`)「一緒に行くのが、鍛えるのが一人なら充分だ。
運さえよければもっと早くできるかもな」
(´・ω・`)「出来るだけ安全に。
間に合えば嬉しいけど、急がなくていいよ」
('A`)「でも、それくらいで大丈夫なのか?」
(´・ω・`)「……現実世界からすぐに救出があるとしたら、
おそらく明日の夜までには帰れると思う。
でも、……おそらくそれは無い。
茅場晶彦、あの人は良くも悪くも天才だから、そんな結果にはしないと思う。
そして、この街に居てただただ向こうからの救出を待っている人が大きく騒ぎ出すのは、
多分明々後日くらい……。
扇動者がいればもっと早くなるかもしれないけど、多分それくらいだと思う」
川 ゚ -゚)「……騒動になるまでそんなにかかるのか?
先程の広場では既に……」
(´・ω・`)「小さな騒ぎや騒動、小競り合いは勿論起きるよ。
当分は起き続けるさ。
今もあの広場では起きているんじゃないかな。
でも、全体を巻き込むような騒動は『指揮者』が、
『扇動者』いなければそう簡単には起きない。
一万人って数は、それなりの人数だからね。
無秩序な騒動にだって、引き起こす人や盛り上げる人はいるんだよ。
それに、こんな特殊な状況、だれも信じたくないからね。
『一回寝て、起きたら全部夢だった』って思いたい。
『壮大なオープニングイベントで、もうすぐネタばらしが来る』って思ってる。
それが大多数の人だと思う。
だから、受け入れたくない現実を受け入れて、絶望する。
大きな騒動が起きるのはこのタイミングだと思う」
.
-
川 ゚ -゚)「なるほどな……」
ξ゚⊿゚)ξ「!あんた、もしかして……」
(´・ω・`)「なに?宇佐木さん」
ξ゚⊿゚)ξ「……いや、なんでもない。
……それにしてもあんた、ほんと、やなやつね」
(´・ω・`)「褒めてくれてありがとう」
ξ゚⊿゚)ξ「……褒めたつもりはないわよ。
まあいいわ。それでドクオ、誰を連れて行くのよ」
('A`)「ああ、連れて行くやつだけど……」
(´・ω・`)「うん」
('A`)「ブーン、良いか?」
( ^ω^)「お?僕かお?」
ξ゚⊿゚)ξ「ブーンなの?」
川 ゚ -゚)「私でもいいぞ?」
('A`)「……移動の時に必要な戦闘力ではクーは勿論ツンでも大丈夫だと思うけど、
何かあった際におれの指示で安全な場所まで逃げてもらうのを考えると、
出来るだけ足の速いやつがいいんだ」
川 ゚ -゚)「そういうことか」
('A`)「それに、着いてからのレベル上げなんだけどさ、
ついでに街売りしてない片手剣をゲットする為のクエストをやろうと思う。
おれの分も含めて二本。
結構使える武器だし、そのままその武器を使える片手剣使いの方が良いだろ。
この先落ち着いてからならまだしも、
折角少しは慣れた今の武器を変えるのは時間の無駄だから。
そして、そのクエスト中に戦闘に慣れてレベルも上げられると思う。」
.
-
(´・ω・`)「うん。分かった。
ブーン、宇佐木さん、来島さん、良いね」
ドクオの説明に頷き、ショボンが三人に確認をした。
川 ゚ -゚)「問題ない」
( ^ω^)「……大丈夫だお」
ξ゚⊿゚)ξ「……しょうがないわね」
クーはすぐに返答したが、
ブーンとツンは互いの顔をちらっと見てから同意を告げる。
(´・ω・`)「二人を離すのは心苦しけど……」
ξ*゚⊿゚)ξ「な、何言ってるのよ!」
(* ^ω^)「おっおっお!
出来るだけ早くみんなを迎えに来られるように頑張るお!」
(´・ω・`)「危険だけど、頼むよ」
ξ゚⊿゚)ξ「ブーン、時間かかってもいいから。出来るだけ安全にね」
川 ゚ -゚)「徳永、内藤、頼んだ」
( ^ω^)「頑張るお!」
('A`)「ああ。おれも頑張るよ。
あ、でさ、さっきからちょっと気になってたんだけど」
川 ゚ -゚)「ん?なんだ?」
('A`)「いや、クーだけじゃなくみんなにさ」
(´・ω・`)「なに?」
('A`)「この世界では、リアルネームじゃなくてこちらの世界の名前を使ったほうが良い」
.
-
ξ゚⊿゚)ξ「そういえば顔が一緒だから普通に名前呼んでたわね」
川 ゚ -゚)「まずいのか?」
('A`)「んー。明確な理由があってまずいってことは無いと思うし、
リアルネームとこちらの名前を同じにしてる人もいるだろうから一概には何とも言えないけどな。
ただ、これから先この世界でそれなりの時間過ごすことを考えると、
こちらでの名前を使っていたほうが良いと思う。
こちらの世界で知り合う人もいるだろうし」
(´・ω・`)「そうなんだ。
そこら辺はよく分からないけど、ドクオがそう言うなら気を付けるよ。
ドクオとブーンはいいとして、ツンさんとクーさんだね」
ξ゚⊿゚)ξ「呼び捨てで良いわよ。
わたしもショボンって呼ぶから。
っていうか、あんたにツン『さん』とか言われるとむず痒くなる」
(´・ω・`)「酷いな」
川 ゚ -゚)「私も呼び捨てにしてくれ。
私も呼び捨てで呼ぶしな。
ブーン、君もそうしてくれ」
( ^ω^)「わかったお!」
(´・ω・`)「うん。僕もそうするよ」
('A`)「うん。それでいい。
それでショボン、おれ達が鍛えている間、
お前達はどうするんだ?」
(´・ω・`)「中央から離れた宿屋に籠ろうかと思う。
僕は、日中は情報収集の為に出たりするつもりだけど、
ツンとクーは部屋の中に居てもらうよ」
ξ゚⊿゚)ξ「やだ」
( ^ω^)「ツン、僕とドクオが戻るまではそうして欲しいお」
ξ゚⊿゚)ξ「うーーーー」
.
-
川 ゚ -゚)「仕方あるまい。
三人とも街の外に出たりしないのは当然として、
闇雲に部屋の外には出ない様にしよう。
ま、二日が限度だと思うがな」
('A`)「戻ってこれるとは思うけど。……あ。そうだ」
(´・ω・`)「どうしたの?」
('A`)「ショボン、別に宿屋じゃなくてもいいよな?
鍵がかかって外から守れれば」
(´・ω・`)「うん。それは良いけど」
('A`)「ならあそこがある!」
.
-
来ると思ってたから!
支援
-
以上、本日の投下は終了します。
二十話はこれくらいの長さがあと数回続くので、
修正しつつゆっくり投下する予定です、
よろしくお願いします。
支援等、いつもありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
次回、『2.出発』
ではではまたー。
.
-
作者、おむつー
-
乙津
-
乙乙
-
おお、きてた
おつおつー、また待ってるぜ
-
乙!
-
おつ
-
では投下を開始します。
今日もよろしくお願いします。
.
-
2.出発
.
-
ドクオの先導で教会を出た五人は、
何の変哲もない通路にやってきた。
街の外れに位置するその路地には店の看板を掲げている家も無く、
その通りには『民家』しかない様に見える。
( ^ω^)「なにもないおね……」
川 ゚ -゚)「またさっきの様な隠し店舗があるのか?」
('A`)「まあ見とけって」
ドクオの指示により、曲がり角に隠れる四人。
ドクオは一人角から十数メートル先の民家の前で立ち止まった。
ξ゚⊿゚)ξ「うわ。こっち見て笑った。
何あのドヤ顔」
川 ゚ -゚)「爽やかではないな」
(; ^ω^)「……許してあげてほしいお」
(´・ω・`)「なにするんだろ」
四人が見守る中、ドクオは大きく深呼吸すると目の前のドアを力強く蹴った。
(´・ω・`)「え?」
(; ^ω^)「ど、ドクオ!?」
ξ゚⊿゚)ξ「何してるのあいつ」
川#゚ -゚)「ああいう行為はいただけんな」
蹴るというよりはドアを踏みつける様に、
足の裏で全部で四回蹴ると、すぐに隣の家の門柱の陰に隠れるドクオ。
.
-
駆け寄ろうとした三人をショボンが
「とりあえず隠れて見ていてくれって言っていたし」
と言って制止していると、民家のドアが開いた。
女性が周囲を見回している。
そして誰もいないのを確認すると、ドアを閉めた。
それを確認したドクオが四人のもとに駆け寄ってきた。
ξ゚⊿゚)ξ「何やってんのよあんた」
('A`)「あれを後三回やるから、もうちょっと見ててくれ」
川#゚ -゚)「あと三回も?」
(; ^ω^)「おー」
(´・ω・`)「ドクオ、これはβテスターしか知らない内容なんだよね?」
('A`)「ん?ああ。っていうか、おれと数人しか知らないと思う」
(´・ω・`)「分かった。
ツン、ブーン、こちらに残って、誰か来たら声をかけて。
クー、僕と一緒に向こう側の角に移動しよう。
ドクオ、何をするのかは知らないけど、誰にも見られないようにしてくれ」
('A`)「え?あ。ああ。わかった」
(´・ω・`)「あと三回蹴ったらどうしたらよい?」
('A`)「終わったら呼ぶから、やってきてくれ」
(´・ω・`)「わかった。
じゃ、クー、向こう側に行こう。
ブーン、ツン、頼んだよ」
川 ゚ -゚)「う、うむ」
( ^ω^)「おっお。わかったお」
ξ゚⊿゚)ξ「わかった」
.
-
駆け出すショボンと、後に続くクー。
不思議そうな顔をした残った三人だったが、ドクオは気を取り直して民家の前に戻った。
同じようにドアに蹴りを入れるドクオ。
四回目の蹴りの後にドアを開けた女性は、
遠目で見てもイラついているのが分かった。
そして大きく音を立ててドアを閉めるのを確認すると、
ドクオが四人を手招きした。
ξ゚⊿゚)ξ「それで、これでどうなるってのよ」
('A`)「ショボン、これで中に入るとイベントが発生する。
基本どんな受け答えでも三日間はこの家の二階にただで寝泊まりさせてもらえるから、
この家を拠点にしてくれ」
(´・ω・`)「ここに?」
('A`)「ああ。この世界では、
宿屋の看板が出ているところ以外にも泊まれるところが結構あるんだよ。
ま、こんなフラグ立てをしなきゃいけないのはそんなにないし、
ただで泊まれるところはほんとに少ないけど。
ここも三日間泊まった後は、多分二週間くらいここにただで泊まることは出来ない」
( ^ω^)「全員分やらないとなのかお?」
('A`)「いや、パーティー設定している全員が泊まれる。
ここは元宿屋かなんかで、上にはリビング一つに寝室が二つあるんだ。
寝室にはベッドが二つあったから、三人なら充分だろ?」
(´・ω・`)「パーティー。
教会でやったあの設定?」
.
-
('A`)「そ。あれで今この五人はパーティー。
まあグループ設定されてるってわけだ。
って、早く入らないと最初からやり直しだから、ショボン、入ってくれ」
(´・ω・`)「う、うん。わかったよ」
詳しいことを聞きたそうなショボンだったが、
ドクオに急かされてドアの前に立ち、ノックをした。
『……誰だい?』
すぐに開かれるドア。
先程までの蹴りにより、
ドアの前に待機していたのだろう
(´・ω・`)「こ、こんばんは」
会釈をするショボンを上から下までじっくりとあからさまに見まわす女性。
同時にショボンも女性を観察する。
少しふくよかな体格。
身長もショボンより高いだろう。
そこまでは現実世界の人間と遜色ないが、大きな違いが一つ。l
頭の上に、エクスクラメーションマーク。
俗に言う『ビックリマーク』が浮かんでいた。
(´・ω・`)(これがクエスト受託マークなのかな)
『何か用かい?』
(´・ω・`)「え、あ、その」
('A`)「……え。会話が違う」
(´・ω・`)「い、色々とお話を伺いたくて」
『話……ね。あんたたち、旅行者かい?それとも冒険者かい?』
.
-
(´・ω・`)「ぼ、僕達は……冒険者です」
『その姿でただの旅行者ですとか言われたら、ドアを締める所だったよ。
立ち話もなんだ、中に入りな』
ドアが開け放たれ、五人を中に促す女性。
どうやら玄関という概念は無いようで、すぐにリビングの様になっていた。
八人は腰掛けることが出来そうなソファーセットがあり、促されて五人はそこに座った。
(´・ω・`)「ドクオ、この後はどうしたらいいの?」
('A`)「……任せる」
(´・ω・`)「は?」
('A`;)「βの時と、色々違ってるから掴めん」
女性が「ちょっと待ってな」と言って奥の部屋に行ったのを確認した後、
ぼそぼそと会話する二人。
その会話を呆れた顔で三人が聞いている。
('A`)「とりあえず生死にかかわる様な事にはならないはずなのと、
どこかに行くとか何かを選択する時にはウインドウが現れてキャンセルも出来るはずだから、
とりあえずは会話を進めてみてくれ」
(´・ω・`)「……分かったよ」
ショボンの言葉で会話が終わり、なんとなく黙り込む五人。
それぞれに部屋の調度を見回している。
部屋はかなり広いが、家具と呼べるものは彼らが座っているソファーセットぐらいだった。
奥に扉が一つと、二階に上がる階段があるくらいである。
しかし壁にはいくつもの絵画が飾られていた。
中には空に浮かぶ卵の様な絵もあるが、ほとんどは空と大地を描いた風景画だった。
壁にはアンティーク調の壁紙も貼られており、
βテスト時代に多くの民家や宿屋を見てきたドクオも新鮮な気持ちで観察していた。
('A`)(全然違ってる……)
.
-
『待たせたね』
帰ってきた女性がローテーブルの上にコップを置く。
テーブルの長辺には三人掛けのソファーがあり、五人は男女に分かれて座っていた。
そして短辺にある一人掛けのソファーに女性が腰を掛けた。
『それはサービスだ、飲むも飲まないも自由だよ』
(´・ω・`)「いただきます」
テーブルの上のカップを手に取り、口をつけるショボン。
一口啜ると、弱い苦みの中にほんのりと甘さのある味が広がった。
(´・ω・`)「初めて飲む味です。これは?」
一瞬顔をしかめたショボンを見てにやりと笑う女性。
そして自分も一口啜ってから、口を開いた。
『これは【ラウラ草】という薬草を乾燥して作ったお茶だよ』
(´・ω・`)「よく飲まれるんですか?」
『ここでは採れない草だ。飲むのはたまにさ』
(´・ω・`)「貴重なものをありがとうございます。
ここでは採れないとのことですが、どちらで採れるんでしょう?
次の街ですか?」
『……【ラウラ草】は、この層では採れない』
(´・ω・`)「そうですか」
女性に対し、ニッコリと微笑むショボン。
.
-
『私の名前は『アイネ=ハウンゼン』。
ここに来たということは勿論私の名前は知っていると思うが、
自己紹介をするのは当たり前だからね』
(´・ω・`)「申しおくれました。僕の名前は『ショボン』です」
チラッと横を見るショボン。
二人の会話を黙って聞いていたドクオが慌てて口を開く。
('A`)「ど、『ドクオ』です」
( ^ω^)「『ブーン』ですお」
ξ゚⊿゚)ξ「『ツン』です」
川 ゚ -゚)「『クー』と申します。
本日は夜分にお伺いして申し訳ありません」
(アイネ)『気にすることは無いさ。
こんな時間、まだ昼も同じだよ』
川 ゚ -゚)「そうですか」
(アイネ)『それで、話ってのはなんだい?』
('A`;)!
NPCとの会話。
通常NPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)との会話では、
一人一人に一定の会話設定がされており、
そのキャラクターに沿ったキーワードを与えることが出来れば、
会話が成立して話を進めることが出来る。
例えばある村の村長に『何かお困りですか?』といったようなセリフを言えば、
【村を襲うゴブリンを退治しろ】というクエストを始めることが出来るが、
『今日はいい天気ですね』と話しかけても、クエストは始まらない。
('A`;)(こんな状況で何の話をしろってんだよ)
.
-
(´・ω・`)「この世界の話をお聞かせ願いますか?」
('A`;)(はあ!?)
アイネの顔を見ながら迷うことなく告げるショボン。
焦った様にショボンの顔を見るドクオを見て、
残りの三人もショボンの顔を見た。
しかしショボンはそんなことは全く気にすることなくアイネの顔をじっと見ている。
すると、アイネの上に浮かんでいたエクスクラメーションマークの色が変わった。
('A`;)「え?」
思わず声を出してしまったドクオだったが、
アイネは気にすることなくショボンを見ながら笑い出した。
(アイネ)「合格だ。話してやろう」
('A`;)(はああああああ?)
豪快に笑いながらショボンの顔を値踏みするかのように見るアイネ。
そして笑い終わると、表情を引き締めた。
(アイネ)「私に話をさせる気にさせたのは、あんたが初めてだよ。
だが、全部を話すにはどれだけの夜を重ねればいいのか分からないほどこの世界は広い。
まずは自分で調べるんだね」
立ち上がるアイネ。
そして二階に上がる階段に向かった。
(アイネ)「ついてきな」
(´・ω・`)「はい」
立ち上がったショボンがアイネに続き、
その後を慌てて四人が続いた。
.
-
二階に上がると、人が二人余裕で通れる廊下の先にあるドアに連れて行かれた。
('A`)「おれが泊まったのは手前のドアだ」
川 ゚ -゚)「正式サービスで変わったのか?」
('A`)「分からない……。でも、この受け答えは無かったと思うから、
おそらくは変更したとおもう。
それか、テストの時は実装してなかっただけで、元からこうする仕様だったのか」
ドアは全部で四つ。
階段近くのドアを見ながらドクオは先に進んだショボンの後に続く。
(アイネ)「ここだよ」
アイネが奥の扉の一つを開くと中に入った。
その後をショボン達が続く。
(´・ω・`)「これは」
壁一面の本棚と、そこに収められた本。
ところどころに開いている個所はあるが、ほとんどが埋まっていた。
(アイネ)「ハウンゼン家が集めた知識。
『ハウンゼン=レコード』だ。
これが見たかったんだろ?」
(´・ω・`)「はい」
('A`;)「(えーーーー)」
(;^ω^)「(ショボン)」
ξ゚⊿゚)ξ「(この男)」
川 ゚ -゚)「(これが吉と出るか、凶と出るか)」
.
-
(アイネ)「ホントに度胸があるね。
そういうやつは嫌いじゃない」
ニヤッと笑ったアイネに笑顔で返すショボン。
('A`)「(どういうフラグなんだ?)」
( ^ω^)「(ショボンすごいお)」
ξ゚⊿゚)ξ「(うまくいきやがった)」
川 ゚ -゚)「(吉と出たようだな)」
(アイネ)「といっても、今お前達が読めるのはこの辺りだけだろう」
アイネが扉の近くの本棚に向かい、一冊の本を出した。
そしてそれをショボンに渡す。
(´・ω・`)「【はじまりの街】」
('A`)「この街の名前だな」
表紙に書かれた文字を読んだショボン。
開くと、そこには目次があった。
(´・ω・`)「これは……もしかしてクエストリスト?」
('A`)「なに!」
慌てて横から覗き込むドクオ。
そして目を輝かせた。
('A`)「うを!まじか!」
ξ゚⊿゚)ξ「クエストリスト?」
( ^ω^)「クエストっていうのは、
街や外にいるNPCから請け負うことの出来るアルバイトみたいなものだお。
街の中での簡単なお使いから、外に出て採取したりモンスターを何匹か倒したり、
あとは中ボスクラスのモンスターを倒すなんてのもあるお」
.
-
川 ゚ -゚)「クエスト……か。
それで、あの本にはそのリストが載っているのか?」
( ^ω^)「みたいだお。
通常は自分でNPCに声をかけて探さなきゃいけないから、
リストがあればすごく楽になるお」
ξ゚⊿゚)ξ「攻略本みたいって事?」
( ^ω^)「おっお。少し違うけど、そんな感じだと思ってくれていいお」
川 ゚ -゚)「なるほど。
それであんなにドクオが喜んでいたわけだな」
ξ゚⊿゚)ξ「でも、なんかテンション下がってない」
三人の視線の先、先ほどまで目をキラキラさせていたドクオが目に見えて項垂れていた。
('A`)「クエストタイトルしか書いてねーじゃん」
(´・ω・`)「どこで請け負えるかも書いてあるよ?」
('A`)「まあそれは少しは役に立つけどさ。
攻略方法はともかく内容も書いてないとか……」
(アイネ)「当たり前だ。
冒険者なら、冒険者らしく自分で埋めるんだね」
('A`)「そりゃそうだけど…」
棚の二冊目を手に取るドクオ。
その本の表紙には【ホルンカ】と書かれている。
('A`)「街ごと有るんだな」
本を開くドクオ。
しかし、今度はクエストネームも書かれておらず、目次には数字だけが並んでいた。
('A`)「……名前も無いとか」
.
-
(´・ω・`)「行くことは出来るけど、
行ったことが無い街の本は見られるけどクエストネームすら分からない。
っていうことかな?
それにほら、この棚の本は出す事も出来ない」
違う棚の本に手をかけるショボン。
しかし出す事すらできない。
('A`)「この部屋、意味あるのか?いやない」
(´・ω・`)「そう?
自分で記録を取ることを考えたらかなり楽だよ?」
('A`)「そりゃそうだけどよ」
(´・ω・`)「それに、ヒントもある。
例えばこのはじまりの街の本。
ここ、ナンバーは書いてあるけどクエストネームは書いてない。
つまり、隠しクエストがあるってことだよね。多分」
('A`)「!なるほど。
隠しが有るか無いかが分かるだけでもかなりの手間が省ける……か?」
(アイネ)「自分の力で埋めることが出来れば、
それは歴史であり、経験であり、知識であり、糧となる。
そして、それ以外にここに来ればいいことがあるかもしれんぞ。
私を始め、ハウンゼンの者は知識や話が好きだからな」
(´・ω・`)「そうですね。ここの本をすべて埋められるよう頑張ります」
(アイネ)「頑張ってくれ。
といってもそれだけじゃ、折角ここに一番最初に来たのにつまらんだろう」
そう言いながら懐から一冊の本を取り出し、ショボンに渡した。
(´・ω・`)「……【アインクラッド】?」
.
-
(アイネ)「このアインクラッドの成り立ちと歴史をしたためた本だ。
その本を受け継ぐことが『ハウンゼン家』の当主たる証だから
やることは出来ないが、ここに来ればいつでも読ませてやろう」
(´・ω・`)「ありがとうございます」
(アイネ)「さて、そろそろ夜も更けてきた。
お前達、今夜の宿はとってあるのか?」
(´・ω・`)「いえ……」
アイネに促されて部屋を出る五人。
そして向かいのドアを開けたアイネが、そこに五人を通した。
(´・ω・`)「ここは……」
('A`)「βの時より豪華だ」
ξ゚⊿゚)ξ「なかなかね」
川 ゚ -゚)「居心地が良いな」
一階の最初に通された部屋が嘘のような部屋だった。
中央に置かれたソファーセットは大きさこそ先ほどの部屋のもとの同じだが、
見ただけで格段に良いものであるのが分かる。
部屋には他にも暖炉や燭台があり、天井には小さいがシャンデリアまである。
壁沿いには水差しの置かれたテーブルや棚などが備え付けられていた。
(アイネ)「三日くらいなら、ただで泊めてやろう」
('A`)「(ここでこのルートか……)」
(アイネ)「実はお前達が来る前に玄関にいたずらをされてな。
冒険者がいると分かればいたずらする奴もいないだろう」
ドクオを見ながらアイネが話す。
思わず視線を逸らしたドクオを見て、唇の端で笑った。
(´・ω・`)「いえ、払わせてください」
.
-
('A`)「え?ショボン?!」
(アイネ)「……どういうことだい?」
アイネの表情から笑みが消え、
冷たくショボンを見下ろす。
(´・ω・`)「今はやられてはいないのかもしれませんが、
おそらくここは宿屋をされていたのではありませんか?」
(アイネ)「ああ。そうだ」
(´・ω・`)「でしたら、ちゃんと料金は徴収してください。
【ハウンゼン=レコード】を読みに来る度に泊まらせてもらうわけにもいきませんし、
これからあの部屋を使わせていただくにあたって、
出来るだけ対等でいられるようにさせていただきたい」
('A`)「お、おい……」
(アイネ)「悪いがこの部屋は、というよりこの宿はもともと特別室のみでね。
どの部屋もこの街の通常の宿屋とは格も桁も違う。
あんた達に払えるとは思えないよ」
(´・ω・`)「では、外に宿を取ります。
この本を読む間、一時間ほど先ほどの
【ハウンゼン=レコード】の部屋をお貸し願いますか」
冷たく見下ろすアイネと、臆することなく対峙するショボン。
数分誰もしゃべらずその状態が続き、
ドクオが意を決して話しかけようと口を開こうとしたその瞬間、
アイネが大きな声で笑い始めた。
('A`)「(へ?)」
(アイネ)「意地っ張りなやつは嫌いじゃない。
しかもこのアイネさんに、
元宿屋ギルド総元締めのアイネ=ハウンゼンに意地を通すとは、
気に入ったよ。あんた」
.
-
心底面白そうに笑っているアイネ。
(´・ω・`)「では……」
(アイネ)「だが、あたしにも意地はある。
気に入った奴から宿代を貰うなんて、
アタシの名に傷が付くからね。
しかも他の宿に行かれたなんてことは以ての外だ。
絶対にここに、ただで泊まってもらうよ」
(´・ω・`)「……」
(アイネ)「明日、用事をいくつかこなしてくれ。
それが宿代ってことで良いだろう」
(´・ω・`)「用事ですか?」
(アイネ)「もちろん、今のあんた達にできるレベルでだよ。
今回はこの街の中で色々とお使いをしてもらうだけさ。
勿論、この先出来ることが増えたら色々やってもらうけどね。
それでどうだい?」
(´・ω・`)「そうですね……」
(アイネ)「女の我儘を笑ってきくのも、男の度量ってもんだよ?」
(´・ω・`)「はい。分かりました」
(アイネ)「よし!成立だ!」
笑顔で右手を差し出すアイネ。
そしてショボンも笑顔でその右手を取り、握手を交わす。
(アイネ)「この部屋はいつでもこれから好きな様に使ってくれ」
五人の耳に、チャイムの様な電子音が響いた。
('A`)「クエスト完了!?」
.
-
(´・ω・`)「え!?」
( ^ω^)「お!?」
ξ゚⊿゚)ξ「どういうことよ」
川 ゚ -゚)「今のは?」
そして続いて同じような、けれど旋律の違う音が彼らの耳に別々に鳴っていた。
(アイネ)「それじゃまた明日朝に待ってるよ」
呆然とする五人に構うことなく、
アイネはもう一冊小さな本をショボンに手渡した。
(アイネ)「これは一番最初に辿り着いた報酬だよ。
大事に使うんだね」
アイネは今日で一番人の悪い笑顔を見せると、部屋を出て行った。
('A`)「ショボン、それは?」
(´・ω・`)「【アイネの手帳】」
川 ゚ -゚)「アイネの手帳?」
小さな本を開くショボン。
最初の数ページに幾つかの文章が書かれており、
その次のページには数字の羅列が書かれ、
その先のページは空白だった。
.
-
(´・ω・`)「これも基本的にはクエストを記録する手帳みたいだね。
多分明日の『依頼』を筆頭に、
彼女から請け負うクエストでこれを埋めていくんじゃないかな。
そして、最初のページに幾つか書いてあるよ。
この手帳を持って来た者は、
【アイネ=ハウンゼンの宿】を無料で使うことが出来る。
多分ここがその宿なんだろうね。
ただし、継続利用は最長七泊八日。
使用した後は、その直前に継続宿泊した日数分利用することは出来ない。
つまり最大泊数の一週間泊まったら、その後一週間は泊まることは出来ないってことみたい。
この手帳を持っている者は、【ハウンゼン系列の宿】に泊まる際に、
宿ごとのサービスを受けることが出来る。
この手帳を持っている者は、【ハウンゼン系列が売る建物】を購入する際に、
手帳を埋めている率に相応した割引価格で購入することが出来る。
他にもいろいろ書いてあるけど、
【ハウンゼン家】はアインクラッドで宿屋とか不動産業を営んでる、
大富豪って感じなのかな。
この手帳はハウンゼン系の店で使える割引パスポートってことみたい」
ξ゚⊿゚)ξ「あら、結構お得ね」
川 ゚ -゚)「うむ。役立ちそうだな」
('A`)「……」
(;^ω^)「……」
渡された手帳の内容を読んだショボン。
ツンとクーは部屋のソファーの座り心地を確かめながら素直に思ったことを口にしている。
川 ゚ -゚)「?どうした?二人とも呆けた顔して」
ξ゚⊿゚)ξ「締まりの無い顔が更にぼんやりしてるわよ」
(´・ω・`)「どうしたの?」
ショボンもソファーに腰掛け、
ツンとクーの二人とかけ心地について話しはじめても、
二人はぼんやりと立ちつくしていた。
.
-
(;^ω^)「……」
('A`)「……」
(´・ω・`)「ホントにどうしたのさ二人とも」
(;^ω^)「おーー……。
ねえドクオ、あの手帳って……」
('A`)「ああ。おそらく超レアアイテムだ」
(´・ω・`)「ふーん。そうなんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「あら、珍しいアイテムなの?」
川 ゚ -゚)「ふむ。まぁ全員がこんなのを持っていたら、
宿屋の商売はあがったりだな」
ξ゚⊿゚)ξ「それもそうね」
(´・ω・`)「そうだね。
商売にならないかも」
笑う三人をよそに、ドクオとブーンの表情は更に強張る。
('A`;)「っていうか、超レアアイテムなんてレベルを超えて、
武器で言うところの魔剣クラス、
いや、多分、伝説級(レジェンダリー)……」
(;^ω^)「伝説級武器(レジェンダリー・ウエポン)ならぬ、
伝説級アイテムかお?」
('A`;)「……サーバーに一個しかないやつかも。
さっきあの人【一番最初に辿り着いた報酬】って言ってたよな」
(;^ω^)「うわぁ……」
ξ゚⊿゚)ξ「さっきから何ぼそぼそ話してるのよ。
このソファー座り心地良いわよ。
座ったら?」
.
-
川 ゚ -゚)「レジェンダリー?伝説級?
その手帳がそんなにすごいのか?」
('A`;)「凄いなんてもんじゃない。
……多分」
(;^ω^)「サーバーに、この世界に一つしかないアイテムかもしれないんだお」
ツンの隣に腰掛けるブーンと、一人用のソファーに腰掛けるドクオ。
テーブルの上に開かれた手帳をこわごわ覗き込む。
(´・ω・`)「レアアイテムかなとは思ったけど、これってそんなに凄いの?」
('A`;)「多分な。
規格外だろ。こんなの」
(; ^ω^)「さっきも言ったけど、
もしかすると世界に一つだけのアイテムかもしれないんだお」
ξ゚⊿゚)ξ「ふーん」
川 ゚ -゚)「ほお」
('A`)「……相変わらず感動薄いなおい」
ξ゚⊿゚)ξ「まだそんなに恩恵受けてないし」
川 ゚ -゚)「実感が湧かないな」
('A`)「そうですか」
(´・ω・`)「あとさ、なんかレベル上がってるんだけど」
('A`)「え?あ、さっきの音!」
ウインドウを開いていたショボン。
慌ててドクオが開き、残りの三人もそれぞれに開いた。
.
-
('A`)「……レベル2。
っていうか、もうすぐ3?
なんだこれ……チートすぎる」
ξ゚⊿゚)ξ「ねえ、レベル上がったから一緒に行けるんじゃない?」
('A`)「え?ああ……。いや、ダメだ。
レベル上げってのは、戦闘の経験を積むってことでもある。
いくらレベルが上がっても、経験が無いのは恐い」
ξ゚⊿゚)ξ「そう……」
( ^ω^)「頑張ってくるから、待っててほしいお」
ξ゚⊿゚)ξ「うん。頑張ってね。
絶対戻ってきなさい」
( ^ω^)「はいだお!」
川 ゚ -゚)「それで、結局なんだったんだ今のは」
('A`)「おれがβの時には、
部屋をただで借りるための隠しイベントだったんだ。
まさか、こんな事になるなんて」
(´・ω・`)「もともとそうだったけどテストのときは隠していたのか、
正式サービスに際して変わったのか……」
川 ゚ -゚)「こういったイベントをするとレベルが上がるのか?」
('A`)「イベントやクエストでも経験値は入るけど、
ここまで入るのは……。
まあ今回のも、本当はもう少し経ってからクリアされるのを想定していたかもしれないな。
ある程度レベルが上がってからなら、
この量の経験値が加算されても簡単にレベルが上がったりしないだろうし」
ξ゚⊿゚)ξ「ねえ、明日頼まれるお使いをちゃんと出来れば、
また経験値が入るかもしれないのね?」
.
-
('A`)「そうか。そうだな。可能性はある。
宿代の対価だから、お金やアイテムは手に入らないだろうし」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ私達もやるからね?ショボン」
(´・ω・`)「……うん。分かった」
('A`)「大丈夫だろ。
街の外に出さえしなきゃ」
川 ゚ -゚)「ああ。気を付けるよ」
(´・ω・`)
( ^ω^)「お?ショボンどうしたんだお?
また難しい顔して」
ξ゚⊿゚)ξ「ダメだって言ってもやるわよ?」
(´・ω・`)「いや、それは一緒にやろう。
安全にレベルを上げられる可能性があるなら、やっておいたほうが良い。
経験も大事だけど、レベル、最大HPを上げられるチャンスを逃す手は無いからね」
( ^ω^)「じゃあどうしたんだお?」
(´・ω・`)「ドクオ、こういったβテストから変更ってのはよくあるのかな?」
('A`)「ん?ああ、そうだな。結構ある。
行けないところが行けるようになったり、クエストが増えたり。
今回みたいに分岐が増えたり」
(´・ω・`)「敵は?」
('A`)「敵?」
(´・ω・`)「見た目は同じモンスターだけど、動きが変わったり、
弱点が変わったり」
('A`)「!あ、ああ。そうだな。ある。…ああ、あるな。うん」
.
-
(´・ω・`)「それじゃあ、」
('A`)「ただ、ここ周辺のモンスターと、
次の街に行くまでの道すがらのモンスターは大丈夫だと思う。
まだ武器を持つタイプは出てこないから攻撃のバリエーションも少ないし。
もし出没モンスターが変わっていたら、一度撤退するよ」
(´・ω・`)「うん。気を付けて」
ξ゚⊿゚)ξ「ブーン、ドクオ……」
( ^ω^)「大丈夫だお。
頑張ってくるから、ツンとクーもクエスト頑張って!」
川 ゚ -゚)「ああ」
ξ゚⊿゚)ξ「まったく、能天気なんだから」
( ^ω^)「おっおっ」
('A`)「さて、じゃあそろそろおれ達は行くか」
立ち上がるドクオ。
続いてブーンが立ち上がり、
自然と残りの三人も立ち上がる。
('A`)「見送りは良いぞ。
外に出ないほうが良いだろ?」
(´・ω・`)「うん……。
ドクオ、一つお願いがある」
('A`)「ん?」
(´・ω・`)「出来るだけβテスターだってことが周りに知られないようにしてくれ」
('A`)「?ああ、わかった。
でも、何故だ?」
.
-
(´・ω・`)「……長くなるし、杞憂で終わる可能性もある。
……戻ったら説明するよ、だから」
('A`)「わかったよ。
おまえが言うなら隠しておいたほうが良いんだろう。
気を付ける」
(´・ω・`)「うん。よろしく」
ξ゚⊿゚)ξ「……いってらっしゃい」
( ^ω^)「行ってくるお」
川 ゚ -゚)「二人とも、気を付けて」
('A`)「ああ」
互いの顔を見て頷きあう五人。
そしてせめて下まで行こうとする三人をドクオが制し、
ドクオとブーンだけが部屋を出て行った。
扉のしまる音がツンの胸を苦しめ、
クーの心に不安を呼び、
ショボンに後悔を覚えさせた。
けれど三人はそれを外には出さず、
しばらくの間しまったドアを見つめていた。
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おつとおむつ、ありがとうございます。
以上、今回の投下を終了します。
次回、『3.武器』
また、よろしくお願いします。
ではではまたー。
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乙
>>452辺りのドクオとブーンの気持ちすげえわかるわ
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おつー!
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おつおつ
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そんなレアなアイテム持ってて大丈夫なんかな・・
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乙です
現実世界もいいけどやっぱゲームに入るとおもしろい
次の更新まってます!
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それでは、投下を開始します。
今日もよろしくお願いします。
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