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( ^ω^)達はアインクラッドを生きるようです。
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立ったら投下がある。
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('A`)「え?あ?そうだっけ?」
( ^ω^)「そうだお」
('A`)「……やってない……。ショボンさん、お願いします……」
(´・ω・`)「ちゃんと授業受けて勉強しないと、テストプレイも終了だよ」
('A`)「ちゃんとやるから教えてくれ」
(´・ω・`)「はいはい」
棚から教科書を出した本城。
(´・ω・`)「いまどこ?」
('A`)「確か、キャリーとジョンが痴話げんかしてるところ」
ξ□゚⊿゚)ξ「どんな教科書よ」
(´・ω・`)「ドクオ?」
('A`)「……何ページだっけ」
差し出された教科書をめくる徳永。
呆れた顔でその姿を見る四人の視線を気にすることなく、
前回の授業のページを見付けた。
そして本城に促され、長机の端に二人で移動する。
そんな二人をニコニコ見ていた内藤が、宇佐木と来島に話しかけた。
( ^ω^)「ツンと来島さんはSAOに興味ないのかお?」
ξ□゚⊿゚)ξ「んー。無いと言えば嘘になる。なんか色々凄そうじゃない」
( ^ω^)「お?」
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川 ゚ -゚)「ここにきて普通のニュース番組でも取り上げられ始めたからな。
昨日も見たが、あの映像は確かにすごかった」
( ^ω^)「だおね」
ξ□゚⊿゚)ξ「でも予約の抽選はもうどこも締め切ってるみたいだし、
一般で買おうと思ったら、多分前日の夜とか、
その前から並ばないと駄目そうな雰囲気だし」
川 ゚ -゚)「待ってればすぐ買えて安売りも始めるどっかの電話と違い、
当分は追加販売はしないと告知しているようだからな。
転売をする奴も含めて、熾烈な争いになりそうだ」
ξ□゚⊿゚)ξ「そこまではねー。
それに、私の家には父さんの買ったナーヴギアがあるけど」
川 ゚ -゚)「私は持ってないからな」
( ^ω^)「ネット環境はあるんだおね?」
川 ゚ -゚)「古い日本家屋だが、流石にそこら辺は完備している。
父や母ともそっちで連絡を取っているからな」
( ^ω^)「おっお。そうだおね」
ξ□゚⊿゚)ξ「で、ブーンは買うの?
あんただってナーヴギア持ってないでしょ?」
( ^ω^)「おーそれなんだけど……」
(´・ω・`)「来年の春に、ナーブギアがマイナーチェンジするんだって」
本城が、三人の会話に突然参加する。
英語の教科書を指さしているが、頭半分で会話を聞いていたらしい。
教わっていた徳永は全く何の話をしていたか聞いていなかったようであるが。
川 ゚ -゚)「マイナーチェンジ?」
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(´・ω・`)「今の時点でも価格を抑えるための工夫はされているんだけど、
更に無駄を省いて価格を安くするんだって。
廉価版とでもいうのかな。
もちろん安全面では今よりさらに厳しくするみたいだけどね。
内部バッテリーを低容量化するとか、機能は変えずにそれ以外を色々変えるみたい。
で、値段を三分の二以下に抑えて、普及率を更に増やすのが狙いなんじゃないかな。
あれは一人一台なうえにあの値段だからなかなかね。
さらにそれに合わせてSAOもプレーヤー人数を追加できるようにする予定みたい。
その頃には別のゲームも出るんじゃないかな」
ξ□゚⊿゚)ξ「ふーん」
川 ゚ -゚)「三分の二か……。
手は出しやすくなるかもしれんが……」
(´・ω・`)「で、うちには僕がテスターとして使ってたテストタイプ,プロトタイプ以外に、
汎用型、つまり今流通してるのと同じタイプが4台あるんだけど、
汎用型の内の2台は、そっちに変えて違いを確認する予定なんだ。
今年の冬には病院に入る予定」
('A`)「え?なんの話?」
(´・ω・`)「ドクオは英語」
('A`)「はい……」
(´・ω・`)「だから、あげることは出来ないけど、
早ければ今年の冬、遅くとも来年の春までには貸し出しは出来る」
川 ゚ -゚)!
( ^ω^)「それを貸してもらうつもりなんだお。
だから僕もSAOをはじめようかなーと思ってるんだお」
川 ゚ -゚)「それは確かに魅力的だが……」
ξ□゚⊿゚)ξ「ソフトは手に入るわけ?
さっきも言ったけど、抽選はもう終わってるみたいよ?
まさか並ぶつもりじゃ……」
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( ^ω^)「おっおっお」
(´・ω・`)「世界初の『VRMMORPG』。
初期ロットナンバリングされている1万本以外にも、
テレビ、出版社といったマスメディアはもちろん、
政府、研究機関、関係協力企業等にはサンプルとしてソフトはばらまかれる。
もちろんナンバリングはされてると思うけど、一般発売物とは別ナンバーじゃないかな」
ξ□゚⊿゚)ξ「あ」
川 ゚ -゚)「ふむ」
( ^ω^)「おっおっ」
(´・ω・`)「そ。僕はナーブギアのテストプレイヤーだし、
父さんはその研究や開発に一役かっている。
ということでうちも申請しておいたから、
研究所用、テストプレーヤー用で3本は送られてくる予定。
それで、あと2本くらいなら頼んでおけば貰えるかもしれないし、
父さんの伝手でその他の研究所とかから分けてもらえるかもしれない。
テストプレイヤーはやりたがるかもしれないけど、
研究機関とかはゲーム自体には興味ない所も多いだろうからね」
ξ□゚⊿゚)ξ「このぼんぼんめ」
(;´・ω・`)「え?今の話ってそこに流れ着くの?」
川 ゚ -゚)「流れ着くな。うむ。本城のせいではないが」
( ^ω^)「でもそのおかげでSAOを遊べるかもだお」
ξ□゚⊿゚)ξ「まあね。でも、それならやってもいいかな。
ただであの世界を体感できるのは魅力があるし。
久美子はどうする?」
川 ゚ -゚)「私も気にはなっているからやってはみたいが……。
本当に良いのか?ものすごく良い話過ぎる気がするのだが」
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(´・ω・`)「貸すのもタダだし、無料で配られるソフトだから、あげるのも別にかまわないよ。
どちらにせよ当分はうちの病院まで来ないと遊べないから、ばれても何とでも言い訳できるし。
ただまあ一つお願いはあるけど」
ξ□゚⊿゚)ξ「……なによ」
川 ゚ -゚)「うむ。聞かせてもらおう」
(´・ω・`)「ナーブギアを貸すまでの間、うちに来てプレイするときは、
脳波計るのと中で何をしたのかのレポートはお願いしたいって」
ξ□゚⊿゚)ξ「…………」
川 ゚ -゚)「…………」
(; ^ω^)「?」
(´・ω・`)「えっと……どうした?」
ξ□゚⊿゚)ξ「研究者の闇を感じた気がする」
川 ゚ -゚)「私もだ」
(; ^ω^)「おー」
(´・ω・`)「ずっと一緒に暮らしてると、こんなのはまだ良い方な感じなんだけどね」
('A`)「なあ、さっきからナーヴギアとかSAOとかなんの話してるんだよ」
(´・ω・`)「それが終わったら話してあげるよ」
徳永が課題を終わらせたのが昼休みの終わるギリギリの時間であったため、
今話されていた内容をちゃんと知るのは、かなり後になってからだった。
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8.バーボンハウス 三人と一人と一人
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『俺の名前は錦城 志也(きんじょう かずや)
ここ、≪バーボンハウス≫のマスターでオーナーだ。
え?この若さでオーナーなんてすごぉいって?
褒めても何にも出てきやしないぜ。
いや、おれの愛が欲しいのかな?
罪なかわいこちゃんだぜ。
この店はおれの城。
信頼できる仲間達に支えられて、今日もおれは珈琲を淹れる。
きみも、おれの淹れた珈琲を飲んだら、珈琲に対するイメージが変わるかもしれないぜ』
( ^ω^)「今日はオムライスにするお」
('A`)「ナポリタンで」
(´・ω・`)「僕は和風ロコモコにしよっかな」
(`・ω・´)「……」
(´・ω・`)「なに?」
(`・ω・´)「珈琲とか飲み物は?」
(´・ω・`)「食後のコーヒーは怜奈さんに淹れてもらう」
(`・ω・´)「…………」
本城、内藤、徳永の三人がいるのは、カフェ&バー『バーボンハウス』
昼でもほんのりとした柔らかい光源しか差し込まないよう工夫された店内は、
管理された空調と流れる穏やかな音楽と相まって、
夏の昼であるということを忘れさせてくれた。
『木目調』ではなく本当の木にこだわって揃えられている椅子やテーブルも、
ゆったりとした気分にさせてくれている。
三人はカウンターに座り、カウンターの中、本城の目の前には、
よく似た顔の青年がつまらなそうな顔をしていた。
( ^ω^)「いつもの光景だおねー」
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('A`)「料理は美味しいし、紅茶はちゃんと淹れられるのにな」
( ^ω^)「どうしてだろう。珈琲のあの不味さ」('A`)
|゚ノ ^∀^)「粉の量、お湯の温度、注ぎ方、全てがダメダメですから」
カウンターの中、店の裏側の厨房に続く扉から、一人の女性が現れた。
( ^ω^)「こんにちはだおー」
('A`)「ちわっすです」
|゚ノ ^∀^)「こんにちは。いつもありがとうね。武士君、俊雄君」
(´・ω・`)「こんにちは。怜奈さん」
|゚ノ ^∀^)「こんにちは。祥大君」
(`・ω・´)「ダメダメとか言うなよ」
|゚ノ ^∀^)「何度教えても勝手にアレンジするから変な味になっちゃうんですよ。
それよりはいはい。オーダー入ったんですから奥に戻ってさっさと作る」
(`・ω・´)「はいはい」
怜奈と呼ばれた女性が錦城を奥に押しやる。
年のころは二人とも二十代の中頃に見え、
その話しぶりや仕草から、親しくしているのが伺えた。
(`・ω・´)「あ、祥大!ちょっと話があるから食べ終わったら奥で待っててくれ」
(´・ω・`)「ん?分かった―」
|゚ノ ^∀^)「多分暇だから、カウンターで珈琲でも飲んでればいいわよ」
(`・ω・´)「暇とか言うな!」
あっかんべーをしながら奥に向かう錦城。
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|゚ノ ^∀^)「まったく。
あれで首席入学主席卒業、
法学部のエースとか言われていた人なんだから、
どうなってるのかしら」
(´・ω・`)「なんかすみません」
|゚ノ ^∀^)「親戚だからって、祥大君が謝ることないのよ」
本城に向かってウインクをする女性。
彼女の名前は森本 怜奈(もりもと れな)。
学年と年齢は一つ下だが錦城志也と同じ大学の同じ研究室出身で、
学生時代は才色兼備ともてはやされていた。
今もその美貌は健在で、パリッとした白いシャツに膝上のタイトな黒いスカートが良く似合っている。
グレーのエプロンでさえ、彼女のスタイルを引き立てるアクセサリーのようだ。
しかし何故か、今はこんな店でウエイトレスをしていた。
(`・ω・´)「こんな店で悪かったな!」
突然顔を出して四人に向かって叫び、そして厨房に戻る錦城。
呆気にとられる四人。
|゚ノ; ^∀^)「なに?今の」
(´・ω・`)「さあ……。志也兄さん、変だから」
(; ^ω^)「ショボンはシャキンさんには一段と厳しいおね」
('A`;)「手加減しないよな」
思わず本城の顔を見る内藤と徳永。
その視線にしれっとした笑顔で返す本城。
(´・ω・`)「でも怜奈さん、弁護士の仕事の方は大丈夫なんですか?
こんなところで油売ってて」
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ショボとシャキは名字が違うんだな
地方財閥のドロドロが透けて見える
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|゚ノ ^∀^)「ん?大丈夫だよ。今は弁護士も多いしね。
うちの事務所は所長が呑気だけど仕事は出来る人だし、
経営と人員配置の方は専門の有能な人達がいるから、空き時間がちゃんとあるの。
この店のスタッフも八割がうちの事務所の人間だってのは知ってるでしょ?」
(´・ω・`)「はい」
|゚ノ ^∀^)「結構いい社会勉強にもなってるんじゃないかな。
勉強ばっかできて弁護士になると、人間の黒いところ見て鬱になる奴もいるっていうし。
人間を知るには、客商売は一つの方法としてはありだと思う。
それに弁護士って威張っていても薄給なやつは多いからね。
こういう時間に融通の利くバイトは嬉しいのよ。
それに、この店で愚痴ついでに相談にのってあげて、
最終的に事務所に依頼しに来るって人も何人かいるのよ」
(´・ω・`)「なら良いんですけど」
('A`)「個人的にはシャキンさんも弁護士だってのが信じられない」
(; ^ω^)「おー。それは思っていても言っちゃだめだお」
(´・ω・`)「弁護士か検事になれたら家を継がなくていいって条件を小父さんと約束して、
とりあえず弁護士になった人だからね」
('A`;)「弁護士にとりあえずなれるってのがすごい」
(; ^ω^)「でもショボンもそういう理由でもなれそうだおね」
(´・ω・`)「ならないよー」
('A`;)「な『れ』ないじゃないんだな」
|゚ノ ^∀^)「そういえば前から聞きたかったんだけど、
錦城先輩はなんで『シャキン』って呼ばれてるの?」
(´・ω・`)「ああ」
.
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('A`)「それは……」
怜奈からの問い掛けに言葉を濁しつつ内藤を見る二人。
(; ^ω^)「おー。僕が名付けちゃったんだお」
|゚ノ ^∀^)「内藤君なんだ。でもどこから?」
(´・ω・`)「僕の『ショボン』が、
「「しょうた・ほんじょう」で、あたまをとって「しょぼん」だお!」だったよね」
('A`)「いつの間にか『ドクオ』って呼んでたよな。
「とくなが としお」で最初は「とくお」だったのに。
『ブーン』に関しては自己申告だし」
(; ^ω^)「おっおっお」
|゚ノ ^∀^)「あらあら。でも錦城先輩には、『キン』はともかく『しゃ』は……あっもしかして」
(´・ω・`)「初めて会ったのは僕等がまだ小学生で、
ちゃんと親戚の『かずや』兄さんだって紹介したのに漢字の話になって、
『志也』を『かずや』って読めなかったんだよね。ブーン」
('A`)「だったなー。
「ショボンがショボンだから、シャキンだお!シャキンだお!」
って喜んでたよな」
(; ^ω^)「おー。懐かしいお。
友達に『和也』君がいたから、『也』は『や』って読めたんだけど、
『志』は『正志』君の『し』しか分からなかったんだおね」
|゚ノ ^∀^)「あらあら」
( ^ω^)「でもシャキンさんも笑ってて、
「そうだ!おれはシャキンだ!シャッキーン!」って遊んでくれたんだお」
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('A`)「だった、だった。
ショボンの家の庭で大騒ぎして、
おばさんに怒られた思い出」
(´・ω・`)「そういえばそうだったね。
三人で飛び回って、志也兄さんが植木鉢を三つくらい割って……」
|゚ノ ^∀^)「先輩は昔からそういう人なのね」
(`・ω・´)「できたぞー」
|゚ノ ^∀^)「はい」
楽しそうに怜奈が納得した直後、厨房から錦城が声をかけた。
それに反応にして奥に向かう怜奈。
そしてすぐに二人がお皿を持ってカウンターに戻ってきた。
|゚ノ ^∀^)「はい、和風ロコモコ。お待たせしました」
(´・ω・`)「ありがとうございます」
(`・ω・´)「オムライスとナポリタンおまち。
トッピングのハンバーグはサービスだから気にするな」
('A`)「すみません。いつもありがとうございます」
( ^ω^)「ありがとうですお」
見るからに美味しそうな料理を前に、自然に笑顔になる三人。
それを見て笑顔になる二人。
「「「いただきます!」」」
三人の声が打ち合わせ無しに揃った。
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|゚ノ ^∀^)「ねえねえ、内藤君」
( ^ω^)「なんですかお?」
食後、本城は珈琲を怜奈に淹れてもらい、
内藤と徳永は悔しそうに怜奈を見る錦城に、炭酸飲料をグラスに注いでもらった。
そして二人がそろそろ帰ろうかとアイコンタクトをとっていると、
怜奈が声をかけた。
|゚ノ ^∀^)「私にだったらなんて名前を付ける?」
(; ^ω^)「お?」
(`・ω・´)「どうした?森本」
|゚ノ ^∀^)「いえ、前から思ってたんですよ。四人の名前っていいなって。
ブーン君に、ドクオ君に、ショボン君に、シャキン。
なんか初めて聞いた時から四人にピタってくる感じで。
だから私だったらどんな名前を付けてくれるのかなって思って」
(; ^ω^)「おー。そうだおねー」
(`・ω・´)「なんだ、昔おれが付けてやった『おもれーな』は不服だったのか?」
|゚ノ ^∀^)「たのしみー」
(`・ω・´)「スルーされた」
('A`)「今のはフォローできない」
(´・ω・`)「なぜそんな名前を」
(`・ω・´)「ん?こいつ学生の時酔うと面白かったんだよ。
なんか理想の彼氏がいるとか言って、ちょっといっちゃてるところが」
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|゚ノ ^∀^)「錦城先輩、この店って包丁多いですよね。
どのタイプが好きですか?お腹に刺してあげますよ?」
(`・ω・´)「あ、うん、なんでもない。全部嫌いだから許して」
|゚ノ ^∀^)「楽しみ楽しみ―」
(; ^ω^)「おー。森本怜奈さんだおねー」
じっと怜奈の顔を見る内藤。
そして彼女の名を何度も口の中で呟いていく。
( ^ω^)「もりもとれな…。もりもとれな…。
ももれな…。もりな…もれな…れなり…。れなも……れもな……。
れもな!?」
|゚ノ ^∀^)!
( ^ω^)「『レモナ』!『レモナ』とかどうですかお!?」
|゚ノ ^∀^)「うん!いいね!なんか今ピタってきた!」
カウンター越しにハイタッチする二人。
それを呆れた顔で見る三人。
|゚ノ ^∀^)「あー。なんか、うん。良い感じ。
先輩、これから先輩の事シャキン先輩って呼ぶので、
私の事は『レモナ』って呼んでくださいね」
(`・ω・´)「えー」
|゚ノ ^∀^)「呼んでくださいね」
(`・ω・´)「でも、そういうのってさぁ。自然に…」
|゚ノ ^∀^)「呼べ」
(`・ω・´)「はい。レモナさん」
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|゚ノ ^∀^)「はい」
ニコニコと笑う怜奈。
そして無理やり錦城とハイタッチをすると、徳永、本城に向けて掌を見せる。
('A`)「れ、レモナさん」
(´・ω・`)「レモナさん」
そしてハイタッチをしながら呼ばれると、ニッコリと微笑んだ
|゚ノ ^∀^)「うんうん。良い感じ」
( ^ω^)「おっおっ。喜んでもらえて嬉しいお」
|゚ノ ^∀^)「いえーい」
( ^ω^)「いえーい」
そして再びハイタッチをする二人。
笑顔な二人。
それを見る三人の表情は疲れていた。
内藤と徳永が帰り、本城が一人残ったバーボンハウス。
店の営業もそろそろお酒を飲む客が現れる時間だった。
(´・ω・`)「で?話って?」
アイスティーのストローに口を付けた後、本城が隣に座った錦城に話しかけた。
(`・ω・´)「ああ。ブーンの足はまだ悪いのか?」
(´・ω・`)「普通に歩くには全く問題ないよ。
でも、まだ走ろうとすると痛みがあるって。
足にも、頭にも」
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(`・ω・´)「足にも、頭にも……か。
精神的なモノじゃないのか?」
(´・ω・`)「10月まで様子を見て、11月からカウンセリングも始める予定。
まだまだカウンセリングって言うと敷居が高いからね。
もう真壁先生との会話は、録画して本永先生に達に見てもらってる」
(`・ω・´)「そうか」
(´・ω・`)「あと、今度のSAOでの経験が、
もしかすると良い方向に向かえるかもって言ってた」
(`・ω・´)「小父さんが言ってたな。
向こうで痛みなく走ることが出来れば、現実世界での痛みの消去に繋がるかもって」
(´・ω・`)「……願うよ」
(`・ω・´)「ああ……」
しんみりとした二人の会話。
カウンターの中の怜奈ともう一人の男性スタッフが、チラチラと様子を伺っている。
(`・ω・´)「で、SAOの事なんだけどさ」
(´・ω・`)「大丈夫だよ。兄さんの分も手に入るから」
(`・ω・´)「マジか!よし!よくやった!」
(´・ω・`)「まったく…」
(`・ω・´)「これで休みがちゃんと取れれば」
|゚ノ ^∀^)「11月初めの一週間の休暇!!」
(`・ω・´)「なんだよレモナ。急に。
つーか聞いてたのか?ダメだぞ、たとえ聞こえてても話に割り込むとかしちゃ」
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|゚ノ ^∀^)「確か家の都合って言って取ろうとしてませんでしたか!?」
(`・ω・´)「あ……」
(´・ω・`)「一週間?家の都合?」
(`・ω・´)「いや、ほら、こういうのはスタートダッシュでのレベル上げが大事だろ?」
|゚ノ ^∀^)「……所長に……。いや、裄丈さんにチクっておきますから」
(`・ω・´)「森本!それはやっちゃダメだろ!」
|゚ノ ^∀^)「レモナです」
(`・ω・´)「今はそういう事を言ってる時じゃなくてだな!」
|゚ノ ^∀^)「レモナです」
(`・ω・´)「だから!」
|゚ノ ^∀^)「レモナです」
(`・ω・´)「……レモナさん、あのですね。事務長に話すのはやめていただけませんか?」
|゚ノ ^∀^)「だいたい、既に所長から片腕扱いされてるのに、
一週間もゲームの為に休むとか何考えてるんですか」
(`・ω・´)「だから一か月以上前から調整してもらって……」
|゚ノ ^∀^)「本気で出てこないつもりですか?」
(`・ω・´)「え?」
|゚ノ ^∀^)「弁護士の方は雇われかも知れませんが、バーボンハウスはオーナーのくせに?」
(`・ω・´)「えと…その……」
|゚ノ ^∀^)「いくらなんでも無責任すぎませんか?」
(`・ω・´)「それはその」
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|゚ノ ^∀^)「無責任すぎませんか?」
(`・ω・´)「……店の方には一日一回は顔を出します」
|゚ノ ^∀^)「最低、開店時と閉店時はお願いします。
それに食事したりするためにログアウトするんでしょうから、
ちゃんとメールのチェックもして、返事もくださいね」
(`・ω・´)「いや、それは……」
|゚ノ ^∀^)「急を要する事務所の案件は店でお見せしますから、
指示や助言はしてくださいますよね」
(`・ω・´)「え?」
|゚ノ ^∀^)「してくださいますよね」
(`・ω・´)「……はい」
|゚ノ ^∀^)「まったく……。
でも裄丈さん、長くて五日間だって息巻いてましたから」
(`・ω・´)「まじかー」
頭を抱えてカウンターに頭を付ける錦城。
それを冷ややかに見つめる怜奈。
本城はカウンターで呆然と二人の会話を聞いていた男性スタッフと視線を合わせ、
同じタイミングで苦笑いをした。
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9. リンク・スタート 五人
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2022年11月6日
五人は、病室にいた。
病室の扉には、『ナーヴギアのお部屋』と書かれたプレートが取付けらている。
(´・ω・`)「変えてって言ったけどそういう意味じゃない」
小さくため息をつく本城。
しかし四人はそんなことを気にすることなく、
それぞれのベッドに腰掛けていた。
( ^ω^)「たのしみだおー」
ξ□゚⊿゚)ξ「発売日は凄い騒ぎだったわよね」
川 ゚ -゚)「ネットですごい金額で売られているのを見たぞ」
('A`)「結局ちゃんと金出して買ったのはおれだけなんだよな……」
(´・ω・`)「ぼく、ちゃんと誘ったよね?手に入るかもって」
('A`)「……もしかしたら、テストプレイヤーが優先券で買えば、
テストプレイありがとう的な武器のプレゼントとかあるかもって思って……」
川 ゚ -゚)「あったのか?」
('A`)「何も案内は無かった」
ξ□゚⊿゚)ξ「あらら」
( ^ω^)「で、でもほら、中に入ってから!」
('A`)「新アカウントでキャラも最初から作るから、テストプレイヤーって認識するのも無理だと思う」
( ^ω^)「おー」
ξ□゚⊿゚)ξ「ま、仕方ないわね」
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('A`)「……おれの買ったのは転売して、おれはショボンが手に入れたソフトで……」
(´・ω・`)「多分もう手に入らないよ。
っていうか、そんな転売とか僕が許すと思う?」
('A`)「ですよねー」
大きくため息をついた徳永。
それを見て、四人が呆れた顔で笑った。
(´・ω・`)「さて、皆には術着に着替えてもらったけど、何か問題はある?」
独りベッドとベッドの間の通路に立つ本城。
広い部屋には両側の壁沿いに三台ずつ、合計六台のベッドが置かれ、
そのうちの五台にナーヴギアが取り付けられていた。
しかしそのうちの二つは、他の三台とは少し趣の異なる機種が備え付けられてあった。
( ^ω^)「なんか僕のとショボンのが違うおね」
その趣の異なる機種の備え付けられたベッドに座る内藤が、
少しだけ不安気に本城に声をかけた。
(´・ω・`)「うん。ブーンが使うのはプロトタイプ。
僕が使うのがテストタイプ。
両方とも汎用型モデルの原型だよ。
今日は全員脳波とか心電図とか色々つけてもらうけど、
ブーンには僕がテストプレイヤーをしていた時の同じような、
みんなよりちょっと多く色々つけてもらうから、そっちを使ってほしくて。
機能的にはみんなが使うモデルと同じだから安心して。
違いは内臓電源とデザインくらいかな」
( ^ω^)「おっおっ。分かったお」
内藤が笑顔で頷いたのを見て、残りの三人に視線を向ける本城。
三人ともそれぞれに問題無しの合図をし、本城は一人一人に笑顔で頷いた。
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(´・ω・`)「もう少ししたら看護師さん達が色々付けに来るから。
そうしたらその後はベッドに寝たままになるし、すぐゲームを始めよう」
('A`)「了解」
( ^ω^)「わかったお」
ξ□゚⊿゚)ξ「トイレも行ったし」
川 ゚ -゚)「うむ。準備は万端だ」
徳永と本城以外の三人は少し緊張しているように見えた。
(´・ω・`)「やっぱり少し緊張する?」
川 ゚ -゚)「まあな。何回か別のゲームでナーヴギアは試させてもらったが、
やはり毎回少し緊張していた」
ξ□゚⊿゚)ξ「わたしもそうね。
あの中に入っていく瞬間が、吸い込まれるような浮遊感があって」
( ^ω^)「ゲームの中に入った後は良いんだけど、
入る時と出る時に少し違和感があるお」
('A`)「あー。確かにおれも慣れるまで少しあったな。違和感」
(´・ω・`)「そうだね。こう別次元に移動するっていうか、
妙な浮遊感と言うか……」
ξ□゚⊿゚)ξ「気持ち悪いとかじゃないけどね」
川 ゚ -゚)「そうだな。
あまり体験したことのない感覚だから、少し緊張する程度だ。
気にするほどではない」
(´・ω・`)「じゃあみんな大丈夫ってことで。
中に入ってからの事とか、ゲームを始めるまでの事についてはドクオにレクチャーしてもらったから、
それを守ってまずは『はじまりの街』に降り立つことを目指そう」
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('A`)「言ったけど、向こうでの体型を現実世界の体型と大きく変えると、
歩くだけでも慣れるのに大変になるから、
出来るだけ身長・体型は今の自分と変えないようにな」
徳永の言葉に頷く四人。
(´・ω・`)「無事に街に入ったら、まずは西地区の教会の前を目指す。
そこで、落ち合うってことで」
本城の言葉に頷く四人。
(´・ω・`)「みんな名前は決めた?
中ではアバターになって顔も声も変わるから、名前くらいしか決め手が無くなるからね」
( ^ω^)「ぼくは『Boon』にするお」
ξ□゚⊿゚)ξ「私は『T.U.N.』にする」
川 ゚ -゚)「私は『Qoo』だ」
(´・ω・`)「僕は『Shobon』にするよ」
それぞれにゲーム内での自分の名前を決め、最後に徳永を見る。
('A`)
( ^ω^)「ドクオ?」
('A`)「あー!おう!『DOKUO』だ!」
ξ□゚⊿゚)ξ「どうしたのあんた?」
(´・ω・`)「テストプレイの時は違う名前でやってたみたいだから、
そっちと悩んでたんじゃないかな」
川 ゚ -゚)「良いのか?そっちの名前じゃないくて」
('A`)「悩んだけどさ……みんなとやるなら、やっぱ『ドクオ』って呼ばれたいし……」
(* ^ω^)「どくお…」
('∀`)「えへへへ」
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ξ□゚⊿゚)ξ「なにやってんだか」
川 ゚ -゚)「友情だな」
(´・ω・`)「さて、そろそろ来る時間かな」
ξ;□゚⊿゚)ξ「あんたはのらないのね」
病室のドアがノックされ、看護師が何人かはいってきた。
それぞれに配線を取り付けられ、ベッドに横たわる五人。
ナーヴギアは鼻まで覆い尽くすようなヘルメット型の為、
全員口元しか外に出ていない。
(´・ω・`)「全員問題ないー?」
('A`)「ドクオ問題ないぞー」
( ^ω^)「ブーンもオッケーだお!」
ξ□゚⊿゚)ξ「つ、ツンも平気よ!」
川 ゚ -゚)「クーも問題なしだ」
(´・ω・`)「ぼく、ショボンも準備完了です」
それぞれに自分のゲーム内の名前を使って声をかける。
ベッドは床ずれ防止用のジェルと温度管理されたもので、
枕も含め身体をやさしく支えてくれており、
五人とも力を抜いてリラックスが出来ていた。
五人は、顔を覆い尽くすナーヴギアの中で、期待とほんの少しの不安に満ち溢れていた。
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そして、13時を告げるアラームが鳴る。
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五人はまだ、これからその身に降りかかる苦しみと悲しみを知らない。
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彼らは決めていた。13時のアラームが鳴ったら、同時に始めようと。
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彼らはそれぞれに口をひらき、仮想世界への扉を叩いた。
その言葉が、牢獄への扉を開く言葉だとは知らずに。
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「「「「「リンク・スタート!」」」」
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第十八話
終
第十九話に続く
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以上、第十八話でした。
十九話も順調にかけているので、
うまくいけば早めに投下できるかと思います。
乙も支援も指摘も考察も感想も、本当にありがとうございます!
ラストは決まっていますがラストまでの道は少し増えそうな気もするので、
もう少し?お付き合いいただけると嬉しいです。
ではではまた。
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おー乙ー
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乙乙
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乙
次回も楽しみ
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乙
ドクオの片手剣の冴えはゲーム慣れもあるんだろうが「父からの手ほどき」もある程度影響していそうだな
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ブーンの息切れはプロトタイプだからか事故の精神的なものなのか
>>261
クーさんちわっす
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断定君きっめ
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>>263
IDじゃね
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断定君って断定君きっめ
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〜かも〜じゃね?って話ほど無駄なものもないけどな
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何言ってんだこいつ
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で、でたー笑笑笑人は全部自分と同じ規格で出来てると思ってる奴ー笑笑笑
同じ出来の頭のオトモダチと四角い画面だけが現実の珍獣!ゲンダイニホンジン笑笑笑
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何処かの誤爆とはいえ、古代日本人がタイムスリップしてインターネットしたうえさらにレスまで・・・歴史的瞬間に感動するな
それ四角い画面じゃなくてぱぁそなるこんぴゅうたぁって言うんです先輩
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おいおい釣れた釣れたっていわれちゃうぜ
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きになったんだけど
>>126
( ´ー`)「あの時みんなが来てくれなきゃ、死んでただーよ」
プギャーのけだるい、けれど決意の籠った声を。
| ^o^ |「あの時のクエストボス戦が今回のボス戦とは別パターンで良かっただーよ」
ブームの真面目な、けれど出来るだけ軽々しくした声を。
この「プギャーのけだるい、けれど〜」って「シラネーヨのけだるい、けれど〜」が正しいんじゃないかな?
あとブームの語尾がだーよなのはしらねーよの真似してふざけてるだけ?
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>>269
ジョークの真意を理解出来ないって・・・東洋人ってやあね
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>>271
単なる書き間違いでミスリードを誘ったりではないと思う
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>>270
煽りスキル高いわけでもないのにしゃしゃり出て来た上に画面がPCしか想像つかない時点でお察し
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どーも作者です。
九月中に投下をと思っていたら、
うわわああああわわわあああああ!!
>>271 様
ご指摘ありがとうございます。
>>273 様
のおっしゃる通り、ただのミスです。
恥ずかしいです。
下が正しいですね。
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その明るい声は、次の声を呼ぶ。
( ´ー`)「あの時みんなが来てくれなきゃ、死んでただーよ」
シラネーヨのけだるい、けれど決意の籠った声を。
| ^o^ |「あの時のクエストボス戦が今回のボス戦とは別パターンで良かったです」
ブームの真面目な、けれど出来るだけ軽々しくした声を。
( ^Д^)「ほんとにそうだな」
そして、元気な、心の底から楽しそうに、けれど真剣な声。
( ´ー`)「だから、おれ達を甘く見るのはやめるだーよ」
('A`)「お前ら」
| ^o^ |「皆さんとラフコフとの因縁だとか、窮地に立つとか、我々には詳しいことはわかりません。
ですが、今までに受けた色々なことは、返したいのです」
( ´ー`)「貰いっぱなしは性に合わないだーよ」
( ^Д^)「そういうこった」
('A`)「お、おい」
( ^Д^)「きっと、おれ達よりもつらい道を選んだあいつも、同じ気持ちだろうよ」
| ^o^ |「どれだけ力になれるかは分かりませんが、やれることはやらせてもらいます」
( ´ー`)「もちろん死にたくないだーよ。
だから死なないギリギリまでやってやるだーよ」
| ^o^ |「だからこちらは、私達に任せてください」
( ^Д^)「こいつらが殺されそうになったら、ちゃんとおれらが逃がすからよ」
( ^ω^)「プギャー…」
( ^Д^)「ま、適材適所ってことだ」
('A`)「シラネーヨ」
( ´ー`)「だてにショボンのプログラムで鍛えてきたわけじゃないだーよ」
ξ゚⊿゚)ξ「………」
| ^o^ |
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ご指摘ありがとうございます。
そして、感想や乙も、本当にありがとうございます。
それでは、十九話の投下を始めたいと思います。
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第十九話
はじまりの日 VRMMORPG 〜SWORD ART ONLINE〜
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0.リンク・スタート
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0-1
彼が『はじまりの街』の広場に降り立った時、
一番最初にしたのは頬をつねる行為だった。
「……痛くない。
やっぱりこれは夢、仮想現実なんだおね。
すごいおー」
その癖のある語尾から幼いと思われがちだが、
こういう時に取る行動は本当に子どもだった。
まず、棒立ちのまま周囲をきょろきょろと見回す。
目に入るのは、イメージの中の中世ヨーロッパの石畳の街。
目の前には画像で見たパルテノン神殿の様な大きな建物がある。
そして次に意識を向けるのは、人々。
同じように初めてこの場所に、この世界に降り立った者達が、盛んに声を上げ、
身体を振り、地べたを触り、建物を触り、自分の体を触り、その『世界』を楽しんでいた。
中には踊っている者もいる。
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「これが、仮想現実。
ナーヴギアで入ってきた世界。
『ソードアートオンライン』の世界。
ゲームの中の世界。
なんだおね」
彼も手を握り、足を上げ、歩き始める。
「本当に自分の身体みたいだお……」
ゆっくりと、一歩一歩でその世界を楽しむように歩く。
そして広場を一周してから、西の空を見る。
「えっと、西地区の教会で待ち合わせだったおね。
みんなもう移動してるのかお」
周りの建物と、楽しげに、というより、道行くすべての人、
おそらくプレイヤーと思える人達が全て笑顔なのを見て同じように笑顔を見せながら、
内藤武士、いや、『ブーン』は、西に向かって歩いていった。
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0-2
(ブーン)「こ、これがぼく!?」
少女漫画の中で、
メガネを外して化粧をしてもらった少女が、
初めて鏡を見た瞬間に言うようなセリフを呟いたブーン。
教会に向かう道すがらの屋台に立てかけてあった姿見を見て、
一度通り過ぎ、
戻ってきて鏡の前で一回転し、
鏡の中の美青年が自分だと分かり、
顔を近付けて鏡の中の自分に呟いた。
路地裏であったため誰も近くにプレイヤーがいなかったのは幸いだっただろう。
鏡の中の自分とにらめっこをし、
精一杯の変顔すら色男であるその顔に、
スタート時に自分で選んだとは言え気恥ずかしくなる。
(ブーン)「な、慣れるお。
自分では見えないんだし」
無理やり納得し、鏡から離れる。
そしてそのスリムで均整のとれた身体を見て、
4回鏡に向かってポーズを決めてから、
再び歩き始める。
(ブーン)「みんなはどんな姿か楽しみだお」
自分の事を棚に上げることに成功したブーンは西に向かった。
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0-3
西地区 教会前
(ブーン)「着いたお―」
ルーベンスの絵でも飾られていそうな大きな教会の前。
中央広場からは離れているためプレイヤーはほとんどいなかった。
扉を背にして視界に入るのは3人。
先ずは女性。
ストレートの黒髪が肩にかからないくらいで切り揃えられたショートカット。
女性らしいメリハリのあるプロポーションを、初期設定の簡単な革と布の装備を包んでいた。
もちろん美人で、黒髪の似合う清楚な女性だった。
次も女性。
金髪のウエーブのかかった髪が、肩甲骨くらいまで伸びている。
先程の女性と同じようなプロポーションだが、
彼女よりは少し身長が高い為髪の色と相まって外国の女優の様に見える。
もちろんセレブな美人女優だ。
最後の一人は男。
自分と同じような身長で、同じような体つき。
黒い髪と、目にかかるくらいの長さも自分と同じだった。
おそらくは同じ『型』なのだと思うが、髪型が微妙に違っているので雰囲気は違った。
いや、顔が違うのでそう思えたのかもしれない。
彼も美青年なのだが、自分の方が美青年だった。
しいて言うならば、彼は街に居たら女の子が振り返りそうなくらいの美青年。
自分はハリウッドで主役をはっていそうな美青年。
(ブーン)「……あれくらいで、いいんだおね」
少しだけ自分のセンスを恥ずかしく思いながら、
ブーンは3人と同じように教会の扉が見える位置に移動した。
他にも数人のプレイヤーと思しき人が教会を訪れて中を覗いたりしているが、
ここに留まっているのは自分を入れて4人だった。
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(ブーン)「(ドクオは寄るとこがあるから少し遅くなるって言ってたし、
来たらすぐ合図をするだろうから、
多分この3人がツンとショボンとクーさんなんだおね。
声をかけたいけど、女の人に声かけて違ったら恥ずかしいし、
こっちの男の人は…)」
3人を観察しているブーン。
なんとなく女性二人は互いを意識しているように見えるので、
あの二人がツンとクーならその後こちらに声をかけてくれるだろうと思い、
もう一人の青年に視線を向けた。
一心不乱に右手を振っている青年。
おそらくはウインドウを見ているのだろう。
かなり真剣な表情だが、なにをそんなに真剣に見ているのか不思議だった。
(ブーン)「(お知らせがさっき一回来てたけど、
その後は来てなかったおね)」
暇つぶしに何度かウインドウは開いて見たが、新しいメッセージなどは来ていない。
ウインドウを出すことによって現れるメニューは重要と言えばすべて重要なんだとは思うが、
これから落ち合う頼れる男友達二人に教えてもらえばいいやと思っていた彼は、
すぐに画面を閉じた。
(ブーン)「(すごく真剣だから、話しかけられないお……)」
どうしようかと腕を組み、教会を見るブーン。
すると、教会の前の一本道の真ん中を歩いてくる人影が見えた。
(ブーン)「お?」
ドクオが来てくれたのかと思い、じっと見つめる。
身長は190近いだろう。
胸板も厚く、足も長い。
ガッチリといった表現が似合うが、太いと言ったイメージは持たない。
服装は自分達と同じ初期装備に見えるが、腰付けた剣が彼を更に引き立てていた。
顔も凛々しく、美青年と言うよりは美丈夫。
精悍で、爽やかな好青年と言った感じだった。
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(ブーン)「(……ドクオじゃないか)」
彼を見ていたブーンは、現実世界でドクオが言っていたことを思い出しつつ、
友人ではなかったことに落胆しつつもう一度ウインドウを真剣に見ていた青年に視線を移す。
そして、意を決して彼に声をかけようと一歩踏み出したブーン。
しかしそれとほぼ同時に、再程の美丈夫が、教会の扉の前に立ち、
剣を鞘から抜いて掲げた。
思わずその姿を見る4人。
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「ドクオ騎士団の諸君!我がもとへ!」
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張りのある、よく響くバリトンの美声。
それと台詞のギャップに思わず唖然とする四人。
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「ド、ドクオ騎士団の諸君!は、早く来るんだ!」
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美丈夫が、四人に目配せしながらもう一度声を張る。
しかし思考の停止した四人は動かず、
ただただ彼をじっと見つめた。
「あ、あれ?ブーンとショボンとツンとクーさんだよね?」
剣を下ろし、不安げに四人に視線を配りながら呟いた美丈夫。
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「「「「ドクオ!!!!????」」」」
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四人の叫び声が、教会前に響き渡った。
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支援
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1.はじまりの街
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教会の中に入った五人は、ドクオに案内させて奥の部屋に入った。
長机が七つほどあり、それぞれに椅子が四つずつついているその部屋は、
中規模なグループが会合をするにはちょうど良いくらいの広さだったが、
今は五人しかいない。
(ツン)「あんたねー。何考えてるのよ!
人には何度も何度も身長体型を変えるなとか言っておいて!」
黒髪の美女が、座って肩を竦めている美丈夫に詰め寄る。
絵になる光景だ。
(ドクオ)「お、おれはテストの時からこの姿で、
こっちではこの姿の方がなれてるからいいんだよ」
最初は声を張っていた美丈夫……ドクオだったが、
美女に睨まれるという現実では経験したことのないシチュエーションと、
中身がよく知っている『ツン』であるという現実に、
いつもよりおどおどとしていた。
(ショボン)「そういえば、最初の頃のレポートではよく転んだって書いてたよね。
そういう事だったのか」
(ドクオ)「そうなんだよ!
最初は歩くこともままならくってさ。
腕のリーチも違うから剣を振るタイミングとか距離感とか慣れるまで大変でさ!」
少し離れた場所に座った美青年……ショボンが、
相変わらず右手を振りながら会話に参加した。
分かってはいるが、ウインドウを自分しか見えない不可視モードにしているため、
その右手を振る動作が少しおかしい。
(ツン)「他のゲームでもそうだっていうんだから、
普段の身体サイズでやればいいでしょうが!」
(ドクオ)「そ、そそ、それは……さ……」
(ツン)「なによ」
.
-
(クー)「もしかして、理想、憧れなのか?
そういう体型が」
(ドクオ)「…… …… ああ。そうなんだ」
二人のすぐそばで見守っていた金髪美人……クーが口を開く。
彼女の頭の中では、祖母に見せてもらった昔の道場の写真が思い出されていた。
その写真には、ドクオの父が写っていた。
(ドクオ)「おれ、ちっさいし、飯一杯食べられないし、
多分あんまり大きくなれないだろうからさ。
太りたくはないけど、あんま筋肉とかつかない体質だし。
だからせめてここでは、理想の体型になりたかったんだ」
(ツン)「あんた……」
ドクオの悲しげな言葉に、思わず言葉を詰まらせるツン。
この世界では声も現実世界とは違っているが、
何故か今のドクオの言葉は、全員がドクオの声で聞こえた気がした。
(クー)「仮想現実は、
現実では叶えられないことを現実化させることの出来る世界。
と、何かに書いてあったのを読んだ。
そして、そうだなと納得した。
だから君の姿を非難したりはしないが、
せめて言っておいてほしかったな」
クーの言葉は現実世界と同じく感情を感じない無機質な響きを持っていた。
それゆえ誤解され、友人と呼べる者が少なかった。
だが何故か、この世界では、その言葉に込められた優しさが伝わっていた。
(ドクオ)「ありがとう……」
(ブーン)「おっおっお。
じゃあ早く外に行くお!」
不安げに会話を聞いていたブーンだったが、
なんとなくまとまったのを感じて笑顔で声をかける」
.
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(ツン)「そうね。せっかくだから楽しまないと」
(クー)「うむ。今日は7時までには帰ると言ってあるから、
五時半ごろには出ないといけないしな」
(ドクオ)「あ、ああ!
そうだな!
この街だけでも時間は潰せるけど、どうせなら戦闘もしようぜ!」
(ブーン)「だおだお。
そういえばショボンはさっきから何をしているんだお?」
それぞれに笑顔を見せながら扉に向かう。
しかしショボンが出遅れたため、
ブーンが振り返って声をかけた。
(ショボン)「あ、うん。
一応メニューバーが説明書にあったのと違いが無いか、
フルチェックをしていたんだ」
(ツン)「あんた、あの電話帳みたいなの全部読んだの?」
(ショボン)「読んだよ」
呆れ半分、感心半分と言った顔をしたツン。
それに対してショボンは当たり前のように普通に返した。
(ブーン)「おー。すごいお。
僕はスタートアップと簡易マニュアルの方しか読んでないお」
(ツン)「私も。
まあ所詮ゲームだし」
(ドクオ)「おまえら、ちゃんと読んどけよ」
(ツン)「何の為にあんたとショボンと一緒にゲーム始めたと思ってるのよ」
(ブーン)「頼りにしてるおー」
.
-
(ドクオ)「おまえら……。
クーさんは?」
(クー)「ちゃんと読んだのはブーンと同じ簡易マニュアルとスタートアップマニュアルだけだ。
正式マニュアルは流し読み程度だな」
(ツン)「とか言いながら、ちゃんと読んだんでしょ?」
(クー)「まぁ読みはしたが、ちゃんと覚えているかどうかと言うと、自身は無い。
だから『流し読み程度』だ。ショボンは全部覚えているのか?」
(ショボン)「多分ね。大丈夫だと思いよ」
(ツン)「どういう脳味噌してるのよ」
(ブーン)「昔から教科書とか一回読めば覚えてたおね」
(ツン)「そうなの!?」
(ショボン)「教科書程度ならね。
でも流石に今回のは2回全部読んで、気になるところは何回か確認したよ」
(クー)「それで覚えられるのか」
(ショボン)「うん。でも、覚えるだけならその本を持っていればいいだけだし、
今ならパソコンでもタブレットでもどうにかできる。
結局はその知識をちゃんと使うことが出来るかどうかなんだよ」
(ドクオ)「テストに持ち込みできません」
(ショボン)「そこに関しては何とも言えません。
頑張って覚えてください」
ぼそっと呟いたドクオに、
笑顔でショボンが返す。
.
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(ブーン)「おー。暗記物苦手だから羨ましいお」
(ツン)「で、記憶も活用も出来る新生徒会長さんは、
チェック終了したの?特に問題は無かったわけ?」
(ショボン)「……まあ、うん」
(クー)「?歯切れが悪いな」
(ショボン)「いや…うん。
細かい変更と言うか、順番が違っているところとか説明文の誤字とかがあったから」
(ブーン)「それくらいは許してあげてほしいお」
(ショボン)「うん。でも気になったから、GMにメールしておいた」
(ツン)「ジーエム?」
(ドクオ)「GM、GameMasterの略で、
こういったオンラインゲームでは管理者とか運営者とかを言うんだ。
つーか、それは簡易マニュアルにも載ってたはずだぞ」
(ツン)「しらなーい」
(ドクオ)「まったく」
(ツン)「でも、正式運営はじまった初日の、
まだ2時間も経って無い状態で説明文の誤字を指摘されるのは色々厳しいのは分かる」
(ブーン)「ツンもお手柔らかにしてあげて」
(クー)「そのGMへのメッセージだが、
それは誰でも連絡できるものなのか?」
(ドクオ)「ああ。メッセージ機能で送ることが出来る。
プレイヤー同士で送りあうことが出来るメッセージ機能だけど、
初期設定でGMにだけは送れる様に登録してあるんだ。
多分消去も出来ないはずだから、間違って消したりすることも無い」
.
-
(ツン)「ふーん」
(ドクオ)「ホントに興味ないんだな」
(ツン)「先ずは二人に聞くし、
そこで分からなかったらどちらかが連絡するでしょ?
私が使うことは無いと思うし」
(ドクオ)「……あてにしてもらえて嬉しいよ」
(ツン)「私がドクオを当てにすることなんて滅多にないんだから、
頑張る様に」
(ドクオ)「へいへい」
(クー)「しかし、何か聞きたいことがあって一万人がそれぞれメッセージを送ったら、
運営とはいえ混乱するんじゃないか?」
(ドクオ)「んー。スタッフ一杯用意してると思うし、大丈夫だと思うけど……。
それにスタッフが街に点在してるから、細かい質問はスタッフ捕まえて聞けばいいし」
(ツン)「それって連絡来てなかった?」
(ドクオ)「へ?」
(ツン)「なんか、最初は自分達の力だけで世界を楽しんでくださいとかなんとかで、
街にはNPCだけでスタッフはいないですよ的なメッセージ」
(ドクオ)「は?!」
慌ててウインドウを出すドクオ。
(ブーン)「向かってる時に突然チャイムと視界の端に何か出て、
ビックリしたお」
(クー)「ああ、どこを見ても視界の隅にチカチカ光る何かがあって、
何事かと思った」
.
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(ドクオ)「げっ!ホントに来てる!
なんでおれには通知が……。
なんで通知機能がオフになってるんだよ!
デフォルトはオンだろ!?
あー。こっちもオフだ。良かった。街の外出てなくてほんとによかった」
ウインドウを開いて独り言を言いながら操作しているドクオ。
(ツン)「ちゃんとマニュアル読まなきゃだめよー」
(ドクオ)「……マニュアル関係ないし」
ツンの言葉に、少しバツが悪そうに答えたドクオだった。
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1-2
教会を出た五人は、ドクオを先頭に路地裏を歩き、ある民家の軒先にやってきた。
(ドクオ)「到着―。
みんな、武器は何にするかちゃんと決めたか?」
(ブーン)「ここがお店なのかお?」
(ドクオ)「ああ。隠しショップだ。
他の店に比べると格段に安い。
ただ一日の販売量が決まってるみたいだから、
この店を知ってるβテスターが押し寄せてたら、買えないかもしれない」
(ツン)「なにそれ」
(ショボン)「無限に安価で売ってたら、他の店が売れなくなるし、
バランスが崩れちゃうってことなのかな」
(クー)「そういうものなのか?」
(ショボン)「いや、僕もオンラインゲームは初めてだから想像だけど」
(ブーン)「でも、オンラインゲームは、
普通の家庭用ゲームと色々違うっていうからそういうのもあるのかもだお」
(ツン)「RPGはほとんどやったことないのよね」
(ブーン)「ツンは格ゲーはうまかったおね」
(ツン)「隙をついたり、コマンドで技を出したり、
壁際に追いつめたりするのは好きだったわね」
(クー)「私はテレビゲーム自体やったことが無いからな」
(ブーン)「そうなのかお?」
(クー)「あまり興味も無かったからねだらなかったし、
両親や祖母もやらないから家にないんだ」
.
-
(ブーン)「おっおっ。ならやらないおね。
うちは家にあったから、小さいころからやってたんだお」
(ツン)「……父さんがゲーム機揃えてた」
(ブーン)「おじさん……」
(クー)「おじさん……」
(ドクオ)「何やってんだよ。
ほら、中入って」
家の前で三人が話していると、先に中に入っていたドクオが顔を出し、中に入るように促す。
そして三人も民家に入ると、壁に数種類の武器が並べられていた。
(ブーン)「おお!」
(ショボン)「ドクオが会話をはじめたら、段々と出してきたんだよ。
話す順番とか、聞く順番とかあるんだよね?これ」
(ドクオ)「そうそう。
決まった順番で、キーワードを入れた会話をしないと出てこないんだ。
まだ全種類あるけど、どうする?
一応片手剣、曲剣、槍なら、基本的な動きを教えられるけど」
(ブーン)「僕は片手剣で良いお」
(クー)「私は槍だな」
(ショボン)「弓は無いんだよね。じゃあ僕も槍にしようかな」
(ドクオ)「おれはさっき買った片手剣があるから良いとして、ツンはどうする?」
(ツン)「私は……この細いのも片手剣?」
(ドクオ)「これは細剣だな。やってないからちゃんとは教えてやれないけど、
基礎基礎くらいなら……」
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-
(ツン)「じゃあ、私はこれ」
(ドクオ)「了解。さっき預かった金でまとめて買っちゃうけど良いよな」
(ブーン)「よろしくだおー」
(美少女)「私には短剣を買って」
突然現れた美少女が、ドクオの服を掴んで彼を見上げながら小首をかしげていた。
(ブーン)「おっ!?」
(ツン)「えっ!?」
(クー)「いつの間に」
(ショボン)「知り合い?」
(ドクオ)「しらない!」
(美少女)「えー。酷いなー。あんなことやあんなことを、いっぱいしたのに」
(ツン)「あんた……」
(クー)「そういうやつだったのか?」
(ブーン)「え?お?え?ええっ?」
(ショボン)「βテスト時代の友達?」
(美少女)「……なんか一人冷静な人がいるとのれないよね」
ツンと同じくらいの身長だが、屈んでドクオの上着を摘まんでいたためかなり小さく見えた。
しかしつまらなそうに立ち上がると、狭い店の中で器用にお辞儀をした。
(美少女)「お久しぶり。
この店を知っていてその体格でその受け答えってことは、
アルルッカバー君だよね?」
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(ドクオ)「その名前を知ってるってことは……そうか!
その姿!お前『ミカゲ』か!?」
(美少女)「ピンポーン。お久しぶり。
あんなに仲良くしたのに忘れてたなんて、悲しいな」
ドクオに向かって可愛らしく微笑む美少女。
少し慌てながらも、βテスター仲間に会えたことを喜ぶドクオ。
二人が話す姿はかなり絵になる光景なのだが、
片方の中身を知っている四人には微妙な空気が流れている。
(美少女)「短剣二本と、片手剣一本も追加宜しくね」
(ドクオ)「なんでそんなに……もしかして!あいつらも!?」
(美少女)「大当たり!『ハクヒョウ』と『コクエン』も外にいるよ。
この店開放するのめんどうくさいから、助かっちゃった。
一人でいくつも買えるけど、一回買うと元に戻っちゃうなんてめんどくさいよね」
(ドクオ)「まったく……横着なのは相変わらずだな。
そんなことでちゃんとした忍者になれるのかよ。
ほら、先にコルよこせ」
(美少女)「はいはい。分かってますよ。
そして大丈夫!今度こそエクストラスキルの体術をとって、忍者になります!」
(ドクオ)「はいはい。頑張ってくれ」
(美少女)「はーい!」
二人の会話をただ聞くだけだった四人。
しかしドクオが隠し武器屋のNPCに声をかけると、美少女は四人に向かってお辞儀をした。
(美少女)「こんにちは。
アルルッカバー君のβテスト自体の友達です。
ここでは『くノ一』目指して頑張る予定です!」
.
-
四人にむかって可愛らしく挨拶をする美少女。
まだこの世界で表現することに慣れていない四人と違い、
それは自分の見た目を意識したうえで、
その可憐な容姿の魅力を最大限に引き出す仕草だった。
しかし女二人は勿論男二人にも感銘を与えることは出来ていないのが分かり、
眉間に皺を寄せた。
(美少女)「アルルッカバー君の友達ですよね?
宜しくお願いします」
可愛らしく手を差し出す美少女。
その手はブーンに向けられていたが、
手を握ったのはショボンだった。
(ショボン)「こんにちは。『ミカゲ』さん?
僕は彼の友達でショボンと言います」
(美少女)「『ショボン』さんですね。
宜しくお願いします」
ニッコリと微笑んだ美少女。
それに対し、儀礼的な笑顔で返すショボン。
(ブーン)「おーー」
それを見て小さく呟いたブーン。
ツンが耳元でささやく。
(ツン)「どうしたの?」
(ブーン)「ショボンが敵対モードに入ってるお」
(ツン)「敵対モード?
別に普通と変わらない様に見えるけど」
.
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(ブーン)「初対面の相手とか、
自分や僕達に敵意を向けたり難癖をつける相手には、
いつでも反撃できるように構えることがあるんだお」
(ツン)「今がそんな感じなの?」
(クー)「特に普段と変わらない様に見えるが」
こそこそと話す二人にクーが顔を寄せた。
(ブーン)「うう……。かなり警戒してる感じだお」
(ツン)「ふーん」
(クー)「ない……ブーンがそう言うのならば、おそらくはそうなんだろうが、
ショボンは彼女のどこにそこまで警戒しているんだろうな」
(ツン)「私達に難癖付けようっていうのかしら」
握手をしたまま笑顔で会話をする二人を見つめる三人。
すると買い物を済ませたドクオがやってきた。
(ドクオ)「悪いショボン、こいつはお前と一緒で悪知恵は働くけど悪いやつじゃないと思う。
ミカゲ、とりあえず外で渡すから出るぞ。
あ、あとおれ名前を変えたんだ。これからは『ドクオ』って呼んでくれ。
ブーン、ツン、クーさん、外に出よう」
(美少女)「悪知恵働くとか酷―い」
(ショボン)「お前と一緒って」
(ドクオ)「良いから良いから。ほらほら外に出て。
ここは買い物終わった後長居すると怒られるんだよ」
(美少女)「しょうがないなー。
分かったよ。ドクオ君。
因みに私も名前変えたんだよ」
(ドクオ)「それも外でな。
ほら、三人も早く」
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1-3
ドクオに促されて店の外に出る五人。
最後にドクオが出ると、民家の扉が静かに閉まった。
(ドクオ)「しかしショボンのアンテナはこちらでも健在だな。
こいつに関わると面倒くさいのに気が付くとは」
(美少女)「ドクオ君ひどーい。
もう遊んであげないぞ」
(ドクオ)「βテスト時代に敵に落とされた剣を盗みやがったのに、
よくそんなこと言えるな。
まだ返してもらってないぞ」
(美少女)「テスト時代の事は終わったことだよ」
(ドクオ)「まったく」
通りの真ん中に出た後、道のはじに寄るドクオと美少女。
ドクオの後ろに四人がいる。
(ドクオ)「で?ふたりはどこだ?」
(美少女)「二人とも、出てきていいよ!」
美少女が声をかけると、少し離れた路地から二人の青年が現れた。
二人は完全に同じ設定にしたらしく、
顔・背格好・髪型が全く同じだった。
違うのは肌の色で、片方は透き通るような白い肌をし、
もう一人は浅黒く焼けたような肌の色をしている。
そして髪型は二人とも短く刈り込んだ坊主に近いような髪型だが、
白い肌の青年は黒髪で、浅黒い肌の青年は白い髪だった。
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(ドクオ)「ハクヒョウ、コクエン、久しぶりだな。
アルルッカバーだ」
(白い肌の青年)「アルルッカバーか。久しぶりだな」
(浅黒い肌の青年)「おまえも始めたんだな」
どうやらドクオのβテスター時代の知り合いのようだが、
久し振りの再会にも笑顔は見せない。
(ドクオ)「当然だろ。
で、おれ名前変えたんだ。
これからは『ドクオ』って呼んでくれ」
(白い肌の青年)「そうか。おれもハクヒョウから『ビコーズ』に変えた。
これからはそう呼んでくれ」
(浅黒い肌の青年)「おれは『ゼアフォー』だ。間違えるなよ」
(ドクオ)「『ビコーズ』と『ゼアフォー』だな。
了解了解」
ドクオがウインドウを操作すると、二人の目の前にウインドウが現れた。
そしてそれぞれに短剣と片手剣が渡された。
(ビコーズ)「覚えていてくれたんだな」
(ゼアフォー)「今度は負けんぞ」
渡された武器を装備する二人。
βテスト時代からの所作であり、まったく迷いがない。
(ドクオ)「おれだってそう簡単には負けるつもりはない。
というか、そんな事よりもお前らにはお前らの目標があるだろ?」
(ビコーズ)「ああ!今度こそ『体術』を!」
(ゼアフォー)「まずはあの『鼠』を捕まえないことには」
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(美少女)「ねえねえ、私の武器は?」
ドクオと二人の青年が話している間に割り込む美少女。
その途端に二人の青年の表情がだらしなく緩む。
それに気付いてすぐ引き締めたが、
その表情の変化はそこにいた全員が確認していた。
(ドクオ)「相変わらずだな、お前ら。
ベータの時からこいつの事を姫とか呼んでちやほやしてたけど」
ドクオが指摘しつつ美少女に対してウインドウを開く。
(ビコーズ)「当り前だ!
我らは姫を守る忍び!」
(ゼアフォー)「姫に仕える忍者!
白と黒の影!」
(美少女)「もう二人ともったら」
(ドクオ)「あーはいはい。
ほれ、短剣」
(美少女)「ありがとう。ドクオ君」
ウインドウを閉じ、渡された短剣を装備する美少女。
(ビコーズ)「貴様こそ!」
(ゼアフォー)「我らが姫に恋心など抱いておらんだろうな!」
(ドクオ)「抱くか!
なんでおれがこんな奴を!」
(ビコーズ)「なにを!」
(ゼアフォー)「姫を愚弄するな!」
(ビコーズ)「可憐で美しくて可愛らしくて華やかな姫を好きでないわけがない!」
.
-
(ゼアフォー)「そうだ!姫の事を好きでないわけがない!」
(ドクオ)「なんなんだよお前らは!?」
詰め寄ろうとする二人におびえるように後ずさるドクオ。
その後ろの四人は少し引きながらその状況を見守っている。
(美少女)「もう、だめだよ。二人とも。
私はみんなの姫なんだからね」
(ビコーズ)「姫!」
(ゼアフォー)「姫!」
人差し指を立て、二人に可愛らしく分かりやすい怒った表情をする美少女。
二人は片膝をついてしゃがみ、彼女を見上げた。
(美少女)「二人は代わりの無い永遠の私の忍びなんだから、
あんまり変なことしないでね」
(ビコーズ)「姫!ありがたき幸せ!」
(ゼアフォー)「姫!ありがたき幸せ!」
首を垂れる二人を見て笑顔をみせた美少女。
呆れた顔でそれを見るドクオ。
その後ろで四人が完全に引いていた。
(美少女)「ごめんね。ドクオ君」
(ドクオ)「本当に相変わらずだな」
(美少女)「こういうのも、ゲームの楽しみ方だよ」
可愛らしく片目をつぶろうとして両目をつぶってしまう美少女。
ドクオの目には、それすらも計算のようにみえる。
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(ドクオ)「はいはい」
(美少女)「ドクオ君は昔からそんな感じだよね。
こっちの世界でそういったことを求めないのは、
後ろの友達のおかげなのかな」
(ドクオ)「おれはこのゲームで色恋を求めたりしてないから。
お前のそういった計算に惑わされないでいられたのは、
あいつらのおかげかもしれないけどよ」
(美少女)「そうなんだ。素敵な人達だね」
(ドクオ)「……何を企んでる?」
(美少女)「酷いなー。
言葉通りの意味だよ。
私だって、嘘ばっかりついてるわけじゃないもん」
(ドクオ)「はいはい」
(美少女)「そうだ!フレンド登録しておこうよ。
機会が合えばダンジョンも行きたいしさ」
(ドクオ)「あー。そうだな。
一緒にダンジョンはともかく、登録はしておくか。
おまえら『鼠』を探すんだろ?見付けたら教えてくれよ」
(美少女)「体術スキルの情報が欲しいから探すけど、
ドクオ君も何か欲しい情報があるの?」
(ドクオ)「あいつとは知り合いになっておいた方が得だろうからさ。
情報は重要だ」
(美少女)「ドクオ君だって情報溜めこんでるでしょ?
知ってるよ。結構上まで行ってたの」
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(ドクオ)「βテスターの中で、ちゃんとレベル上げが出来たり、
ゲームを楽しめていたのは2割もいなかったんじゃないか?
おれ程度の腕でボス戦に参加出来たぐらいだし。
終りの頃にはやってない奴も多かっただろ?」
(美少女)「……話反らすのが下手だよ。ドクオ君
でもまあそういう事にしておいてあげるね」
(ドクオ)「……ありがとうって言っておいてやるよ」
美少女とドクオの前にウインドウが開く。
(美少女)「これからも宜しくね」
(ドクオ)「んー。ああ、そういや名前変えたって言ってたな。
……これは普通に読めばいいのか?」
(美少女)「うん。可愛いでしょ?」
フレンド登録を済ませてウインドウを消した二人。
(ドクオ)「はいはい」
(美少女)「ねえねえ、名前呼んでよ」
(ドクオ)「はあ?」
(美少女)「だって二人は姫としか呼んでくれないんだもん。
折角名前変えたから、ちゃんと呼ばれたいなって思って。
最初に呼んでくれるのが、ドクオ君だったら嬉しいな」
(ドクオ)「……そうやって何人の男プレイヤーをお前は……」
(美少女)「こんなことは、アルルッカバー君だけにしか言いませんー」
(ドクオ)「おれの名前は『ドクオ』だ」
(美少女)「そう呼んで欲しかったら、私の名前も読んでよ」
(ドクオ)「……めんどくさ」
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(美少女)「ひどーい」
ドクオの熱い胸板をポカポカと叩く美少女。
(ドクオ)「ああ、分かった分かった。だから離れろ」
(美少女)「はーい」
半歩だけ後ろに下がり、ドクオを見上げる美少女。
(ドクオ)「もっと離れろこら」
(美少女)「はやくー」
(ドクオ)「まったく…」
小首をかしげながら微笑む美少女。
大きく一回ため息をつくドクオ。
そして名を呼ぼうと口を開いた瞬間、
跪いていた二人が立ち上がって美少女を挟むように並んだ。
(ビコーズ)「姫!」
(ゼアフォー)「姫!」
(美少女)「何よもう!」
(ビコーズ)「いまそこに!」
(ゼアフォー)「『鼠』のような人影が!」
(美少女)「なんですって!」
三人にとって後方を指さす二人。
美少女は振り返り、今までとは比べ物にならないような鋭い声を出した。
(美少女)「本当に鼠だったの!?」
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その声色の変化にドクオの後ろにいる四人は驚いたが、
ドクオと白黒の二人は全く気にしていない。
(ビコーズ)「背格好はβテストと同じでした!」
(ゼアフォー)「チラッとですが、頬に三本の線が!」
(美少女)「追うよ二人とも!」
(ビコーズ)
「はい!」
(ゼアフォー)
(美少女)「ドクオ君またね!」
美少女は最後にもう一度ドクオに向かって可愛らし声で声をかけると、
二人を従えて風のように走り去っていった。
それを普通に見送ったドクオだったが、
慌てて後ろを振り向く。
(ドクオ)「わ、悪い、皆、時間を取らせちゃって……」
ドクオと四人の距離は一区画分ほど。
それが今の彼らの心の距離だった。
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2.剣の世界
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2-1
(ドクオ)「だから、何にもないって!」
(ブーン)「おっおっお。ドクオにもああいう女の子の友達が出来て良かったお」
(ドクオ)「だから違うって!」
(ツン)「まったく……。
テストプレイの間、その身体で何をしていたんやら」
(ドクオ)「おれは無実だ!」
はじまりの街のそばの戦闘エリア。
それぞれにイノシシ型のモンスターを一匹ずつ倒すことが出来たため、
丘の上にのぼり休憩をしている五人。
移動の最中も似たような会話をしていたのだが、
やはり話題は先ほどのドクオと美少女達のやりとりに関してだった。
(クー)「不潔だな」
(ドクオ)「クーさんまで!」
(ツン)「不潔よねー」
(ドクオ)「お前は分かって言ってるよな!」
(ブーン)「不潔だお―」
(ドクオ)「ブーンまでか!」
(ショボン)「ねえねえ、『鼠』って何?
『エクストラスキル』は調べたときにあったから覚えてるけど、
『鼠』はMMORPGの公用用語じゃないよね?
あと『体術』スキルとか」
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丘の上、座ったドクオを囲む様に四人は座っていた。
街で、同じく通常売りより安価で買える道具屋で買ったHP回復ポーションを飲みつつ会話する。
(ツン)「あんたはもう少し空気読みなさい」
(ショボン)「いやだってさっきから同じ話をしてるだけだからさ。
もう良いかなって思って」
(クー)「そうだな。そろそろ飽きてきた」
(ツン)「それもそうね」
(ドクオ)「酷い!お前らやっぱり酷い!」
(ブーン)「ドクオがそんなことできない奴だってことは分かってるお」
(ツン)「中身がドクオじゃ、そんな度胸ないわよね。
それに、仮想空間のこの身体じゃ、そんなことできないでしょ」
(ショボン)「出来るよ」
(ツン)「え?」
(クー)「いや、確か『倫理コード』があって、
一般的に抵触されるような行動、
15禁レベルの動作は禁止されているはずではなかったか?」
(ドクオ)「あ、ああ。
そういった行動をすると、された方にメニューが出て、
はじまりの街にある牢獄に送ることが出来る。
それに確か目に余る行動はシステムが判断して牢獄に送られるはずだ」
(ショボン)「基本的にはね。
でもメニューの中の『倫理コード』を解除すれば、
当人達の合意の行動だってことでシステムが認識するみたいだよ。
流石に人目に触れる所でそういったことをしてたらシステムに弾かれると思うけど」
(ドクオ)「べ、βの時はそんなの確かなかったぞ!」
.
-
(ショボン)「正式サービスに移行するにあたって追加されたんじゃないかな。
何考えて付け足したのかは分からないけど。
……あれ?みんなどうしたの?」
ショボンの言葉を聞いて、四人とも別々の方向を向いて黙ってしまう。
(ショボン)「どうしたの?」
その空気を無視して声をかけるショボン。
(ドクオ)「さ、さてもう一匹ずつ倒してみるか!
まだ時間もあるし!HPも全快したし!」
立ち上がるドクオ。
(ツン)「そ、そうね!倒しましょうか!
それにしてもこのポーションってやつ、不味かったわね!」
(ブーン)「おっおっ!頑張って倒すお!
でもこっちの世界でも味を感じることが出来るのってやっぱり不思議だお!」
それに続いてツンとブーンが立ち上がる。
そしてクーが立つ。
(クー)「そうだな。時間まで楽しもう。
しかし、飲んだらすぐ回復しないんだな。
じわじわとHPバーのランプが戻るのはもどかしかった」
(ツン)「そうそう。
のんだらパッと戻ればいいのに」
(ドクオ)「ま、そういうところも考えながら戦うってことだな」
(クー)「すぐに増やせるアイテムは無いのか?」
(ドクオ)「あるけど一・二層では出てこない。
それに高いから、あんまり使えない」
(クー)「この世界も金が全てと言う事か」
.
-
丘を下りていくブーンとツンを追おうとするクーとドクオ。
(ドクオ)「そんな身もふたもない。
クーさんもなかなか辛辣だね」
(クー)「『クー』だ。『さん』はいらないぞ」
(ドクオ)「え?あ。それはその……」
(クー)「向こうの世界で苗字に『さん』を付けるのは仕方ないが、
こちらでは『クー』でよい。
いや、ブーンにもドクオにもクーと呼んでもらいたい」
(ドクオ)「が、頑張ります」
(クー)「うむ。そうだな。ちゃんと呼べるようになったら、プレゼントをやろう」
(ドクオ)「プレゼント?」
(クー)「お父さんは、そこまで背は高くなかったぞ。
そのアバター、顔は少し似ているが流石にそこまでの大男ではなかったようだ。
ドクオは小さい時に見上げたイメージでそれくらいの身長にしたのではないか?」
(ドクオ)「な、なんで父さんの事を!?」
(クー)「君の父親は私の家の道場の門下生だったそうだ。
君も来たことがあるようだ。その時に撮った集合写真が我が家のアルバムに残っていた。
それを渡す暇なく、お父上は事故にあわれてしまったようだが」
(ドクオ)「父さんが通ってた剣術の道場!
行った思い出は確かにあるんだ。
でも、どこかは分からなくって。
なんか、母さんにも聞けなくて……。
クーさんの家だったなんて……」
.
-
(クー)「世間は狭い物だな。
私の祖母も驚いていたよ。
祖母はずいぶんお父上をかっていたようだ。
君の名字を聞いただけですぐさまお父上の事を思い出していた」
(ドクオ)「父さんの……死ぬ前に撮っていた写真……」
(クー)「今度、持っていくよ。
良ければ我が家に来てくれても良い。
祖母が君に会いたがっていてな」
(ドクオ)「…… …… …… 父さん」
(クー)「ドクオ?」
(ドクオ)「あ、う、うん。分かったよ。ありがとう、クーさん」
(クー)「クーだ」
(ドクオ)「あ……」
口を押えるドクオをみて、笑うクー。
(クー)「頑張って呼んでくれ」
クーは笑顔を見せると、ツン達を追って丘を下りていった。
呆然と立ち尽くすドクオ。
今聞いたことが信じられないといった雰囲気であった。
.
-
2-2
(ショボン)「良かったね。ドクオ」
歩いていくクーの後ろ姿をぼんやりと見ていると、
後ろからショボンに声をかけられた。
(ドクオ)「おっ!」
(ショボン)「ごめんね。聞こえちゃったんだ」
振り返ると、柔和な微笑みを自分に向ける親友。
(ドクオ)「い、いや、それは良いけど」
(ショボン)「良かったね。お父さんの写真」
(ドクオ)「あ、ああ……。うん」
(ショボン)「頑張ってクーの事を呼び捨てにしないと」
(ドクオ)「……ハードル高い……。
っていうかショボン、なにいきなりあんな話してるんだよ!」
(ショボン)「あんな話?ああ、倫理コードの件?でも事実だし」
(ドクオ)「事実だとしても今言わなくても」
(ショボン)「ちょっとドクオに話があったんだよ」
(ドクオ)「え?」
ショボンの表情が引き締まり、真剣な瞳で自分を見ることに気付く。
顔の造形は普段と違っても、親友がどんな気持ちでいるかは分かった。
(ドクオ)「どうした?」
.
-
そして自分も気分を引き締めてショボンを見た。
(ショボン)「これを見て」
ショボンの右手が数度動く。
メニューウインドウは、通常自分以外には見られない仕様である。
そこでショボンはドクオにも見てもらえるように可視化したウインドウを出した。
(ドクオ)「もうおれよりうまいんじゃないか?」
(ショボン)「これ……ここ」
ドクオの軽口を流し、ショボンがメニューの一つを指さす。
そこは、空欄だった。
(ドクオ)「空欄?この位置は……え?」
(ショボン)「自分のメニューも見てもらえるかな」
ショボンに言われる前にドクオの右手が閃く。
そして現れたウインドウをほぼ確認なしで動かして、
ショボンが指示したメニューを呼び出す。
(ドクオ)「……おれもだ。こっちも無い」
(ショボン)「全メニューを探したけど、そこにあるはずのメニューはどこにもなかった」
(ドクオ)「おい……ってことは……」
腕を組み、じっとドクオの顔を見ているショボン。
(ショボン)「ログアウトボタンが無いってことは、
この世界から出られない。元の世界に戻れない……ってことだよね」
(ドクオ)「まあ、そうだな」
(ショボン)「入った後すぐに一回全部見た時は、ちゃんとあったんだ。
でも、そのあと記憶とのダブルチェックをしている時には消えていた」
.
-
(ドクオ)「マジかよ」
(ショボン)「その時点でGMには連絡を入れてる。
でも、返事が無い。
そろそろ3時間経つんだけどね。
いくらなんでもおかしいと思わない?
それに、1万人のプレイヤーがいるとして、
気付いたのがぼくだけとは考えにくい」
(ドクオ)「初期不良…だろ?
もうすぐアナウンスも流れるさ」
(ショボン)「それなら良いんだけど」
笑うドクオ。
しかし少し無理をしているように見える。
(ショボン)「ドクオ、マニュアルには無かったんだけど、
ログアウトボタン以外にログアウトする方法あるの?」
(ドクオ)「……いや。無い。
あとは現実世界で電源を落とされるか、ヘルメットを外されるか……。
一回予定時間を2時間オーバーした時にかーちゃんに電源落とされた時はびっくりした」
(ショボン)「そう……。
一応父さんに6時になっても誰も戻ってこなければ電源を切ってもらうようにお願いはしてあるけど」
(ドクオ)「なら、問題ないだろ」
(ショボン)「うん。だよね。
ところでドクオ、この世界で死んだことはある?」
(ドクオ)「また唐突だな。
何回か死んだけど、それがどうかしたか?」
(ショボン)「死んだら、どうなるの?」
(ドクオ)「んー。死んだら自分の体はポリゴンに変わって、消滅。
で、精神の方と一緒にいつの間にか黒鉄宮に戻ってる感じだな」
.
-
(ショボン)「復活までの時間は?」
(ドクオ)「一分はかからなかったと思う。
20秒から30秒くらいかな。多分。
なんだよ一体。そんなことを聞いて」
(ショボン)「マニュアルにも、死亡した際の事は
『システムによって自動的に復活する』
程度の事しか書いていなかった。
ゲームなんだし、戦うわけだから、死ぬと思うんだけど、そんなものなの?
MMORPGって」
(ドクオ)「んー。ゲームによって違うかな」
(ショボン)「再生は?
教会とかの場合じゃなくて、復活の薬とか」
(ドクオ)「βテストのときは無かった。
もっと上の階に行けばあるかもしれないけど。
なんか、どうした?」
(ショボン)「いや、死んでもログアウト出来ないんだなって思って。
もしこのままログアウトボタンが出てこないとしても、
わざと死ねばログアウトできるのかなって考えたから」
(ドクオ)「そういうことか。
ああ。出来ない。自動的に復活させられてから、ログアウトボタンでログアウトだな」
(ショボン)「そっか……」
組んでいた手を片方だけ外し、ショボンは顎に手を当てた。
(ドクオ)「おい、ショボ」
(ツン)「ねえ!モンスターは!?」
(ブーン)「二人ともなにしてるんだお!早く来るおー!」
(クー)「これでもう打ち止めなのか?」
.
-
ドクオの言葉をかき消すように、下から三人が声をかける。
どうやら下りてはみたものの、モンスターが現れない為焦れていたようだ。
(ドクオ)「ここは時間湧きのはずだから、もうちょっと待て!」
三人に向かって声をかけた後、ドクオはいまだ何かを考えているショボンにも声をかけた。
(ドクオ)「ゲームの中じゃ、何もできない。
とりあえず運営からの連絡かアナウンスを待つことにして、
今はゲームを楽しもう」
(ショボン)「……そうだね。
打てる手は全部したし。
楽しもっか」
(ドクオ)「よし!いくぞ!」
駆け降りるドクオ。
その後ろにショボンが続いた。
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