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これを魔女の九九というようです
1
:
名も無きAAのようです
:2015/04/28(火) 09:59:57 ID:SOhsxYKs0
汝、会得せよ。
.
2
:
名も無きAAのようです
:2015/04/28(火) 10:00:40 ID:SOhsxYKs0
一を十と成せ
.
3
:
名も無きAAのようです
:2015/04/28(火) 10:01:35 ID:SOhsxYKs0
じぃじく、じぃじくと切れかけの白い照明が悲鳴をあげる。
小煩いその声は、真夜中のトンネル内に静かに響いた。
ほんの百数メートルほどの短いトンネル。
車がやっと二台すれ違えるほどの狭いトンネル。
ああ、息苦しい。
思わず僕は溜め息を吐きたくなった。
トンネルの上はちょっとした小山になっていて、都市部へと通じる電鉄の線路が張り巡らされている。
山ばかりのこの町に、初めてまともな交通機関が出来た時には皆大喜びでそれを祝ったという。
しかし間もなくしてそれは苦情へと変わっていった。
一日に通る電車の本数が多すぎたのだ。
今まで電車がなかった町、交通機関といえば市営バスに自家用車、それから自転車と徒歩くらいなもの。
結果開かずの踏み切りによってあちこちの道が隔たれ、大渋滞が発生してしまった。
こうなると開通祝いなどと言ってられず、電鉄は慌てて線路の立体化に励んだのだという。
そして唯一踏み切りもなく反対側に通れる道がこのトンネルだったというわけだ。
若者の肝試しくらいにしか使われていないトンネルにも、役に立った時代はあったのだ。
で、さっきからどうしてこんな話をしているのかというと僕はここから動けないのであった。
いきなり轢き逃げされたのだ。
背後から、ドンと一息に。
おかげさまで手足はあらぬ方向に折れ曲がり、首はそっぽを向いていた。
よれよれのスーツは血を吸ってさぞかし重くなっているだろう。
まったくもって馬鹿らしい話だが、きっとこうだ。
季節外れの肝試しに来た誰かが、僕を幽霊と勘違いしたのだろう。
残業帰りで疲れきっている僕を、わざわざアクセル全開で!
悪意しか感じられない仕業である。
馬鹿だ、本当に馬鹿だ。
オカルトなど信じない主義の僕からすると、よく見てから轢けと言いたくなるくらいの馬鹿だ。
ああまったく、腹に据えかねる。
4
:
名も無きAAのようです
:2015/04/28(火) 10:02:37 ID:SOhsxYKs0
(´・_ゝ・`)「…………」
側溝に積もった落ち葉しか眺めるものがないというのは実に退屈であった。
いったい何時間こうしているのだろう。
朝になるまで誰にも見つけてもらえないんだろうか。
昼間ですら人通りが少ないのに?
いやでもきっと誰かが見つけてくれるだろう、ほら多分犬の散歩してる人とか。
……待てよ、一昨日から近所で工事の看板を見かけたな。
トンネルを抜けてすぐそこで、水道管だかガス管の工事とかなんとか。
もしかして皆さん、迂回してここのトンネルを通らないんじゃないか?
出勤するにしろ帰ってくるにしろ、工事してる場面を見たことがなかったもんだからすっかり失念していた。
なんてこったい、ずっとこのままだっていうのか?
たしか工事が終わるの二ヶ月後だったぞ。
二ヶ月もこんなところで腐っていられるかよ。
物理的にも、精神的にも。
じぃじく、じぃじく。
ああ、この点滅している照明が鬱陶しい。
というかなぜ僕は成仏しないんだ。
そんなに日頃の行いが悪かったのか?
いつも駅前のスーパーで見切り品の弁当を買っているからか?
あまつさえ見切り品のシールが貼られていない弁当を差し出して、貼ってくれと店員に催促したのがいけないのか?
というか今日の弁当はカキフライだったんだぞ。
給料日だから奮発したっていうのにどうして一口も食べられぬまま轢き逃げになんかあうんだ。
なんでだ。
ふつふつと怒りが湧いてくる。
どうしてこんなことになってしまったのだろう、そればかりが頭の中を駆け巡った。
5
:
名も無きAAのようです
:2015/04/28(火) 10:03:56 ID:SOhsxYKs0
なんて、理不尽なのだろう。
理不尽だ!と叫びたくなったその時であった。
「見つけた」
不釣り合いな少女の声がした。
僕が死んでいる事などまったくどうでも良さそうな、冷徹で気まぐれさを孕んだ声だった。
それを聞き、はたと冷静になった。
こんな時間にいったい誰が、ここに?
さり、さり、と歩く音。
少女は問う。
「これ、あなたのお夕飯だったの?」
そうだ、カキフライを食べながらビールでも飲もうとしたんだ。
糖質控えめの発泡酒だけれども。
口がきけたなら、僕はそう返していただろう。
しかし生憎それはできない話であった。
「首、折れちゃってるのね」
視界が少し揺れた。
どうやら少女がしゃがみこみ、僕の首を触ったようだった。
おそらく血塗れであろうに、触るのに抵抗はないらしい。
肝っ玉が据わっているなと思った。
6
:
名も無きAAのようです
:2015/04/28(火) 10:04:44 ID:SOhsxYKs0
再び視界が揺れ、少女の手は僕の体から離れていったようだった。
しかし代わりに今度はボソボソとした声が聞こえてきた。
「 、 、 」
一体何を話しているのだろうか。
聞き取ろうとしたが、それは無理だった。
耳から脳へと介す過程で、霧散してしまうような感じがしたのだ。
(´・_ゝ・`)「……………」
ひんやりとした熱が足首を包んでいた。
今までなんの感覚もなかったというのに。
そのうち、ひくりと、喉がなった。
喉を通り、水が胃へと落ちていく。
(´・_ゝ・`)「あ……?」
声が出た!
(´・_ゝ・`)「えっ、えぇ?」
掠れた声と息が口から漏れていく。
「で、できた……!」
安心したような、驚くような声。
状況が飲み込めなかった。
無意識に僕はねじ切れそうになっていた首を動かし、その声の主を探した。
7
:
名も無きAAのようです
:2015/04/28(火) 10:05:44 ID:SOhsxYKs0
(´・_ゝ・`)「うわ、」
動いてしまった。
まるで生きているかのように。
さっきまで死んでいたというのに!
ものすごい衝撃であった。
僕は混乱しつつ、思い出したかのように瞬きをした。
乾きつつあった眼球に、ほんの少し潤いが戻る。
ひどく目がしばしばする。
思わず目薬が欲しくなりつつも、何度も瞬きをするうちにそれは和らいでいった。
さて、ようやく起き上がった僕はようやく少女と対面することができた。
彼女はなぜか僕の足首を握りしめ、じっとこちらの様子を伺っていた。
年は十六才くらいだろうか。
長い黒髪に混ざる赤い髪の毛は、わざと染めたものなのだろうか。
血のように赤いそれは、不思議と似合っていた。
('、`*川「こんばんは、死体さん」
(´・_ゝ・`)「死体じゃないよ。いや、死んでたけどさ」
自分でも訳のわからないことを口走りながら、僕は息を吸った。
意識して呼吸をしないと、忘れてしまうような気がしたのだ。
現に少し息苦しくて、少し噎せてしまった。
('、`*川「大丈夫?」
(´・_ゝ・`)「お気遣いなく」
咳払いを一つして、ようやくそれは治まった。
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