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月明かりのネコのようです

27名も無きAAのようです:2015/03/30(月) 23:21:46 ID:O305c2PI0
(*・∀・)「じゃ、一回生もいるから自己紹介!上からな!」

モララーが手を向けた先の一人、髪を結んだ女性が立つ。
どうにも口下手なようで、周りを見渡しては口ごもる。

(゚、゚;トソン「…、あ、えー、あ……………………あれ、あの…………」

( ・∀・)「頑張れトソン!!」

(゚、゚*トソン「………つ、つ、都村、トソン、です…。え、と、三回生ですよろしくおねがいします…」

最後は早口になり俯きながら座った女性と入れ替わりに、痩身の男が勢いよく起立した。
すでに随分酔っているようだ。

(*´_ゝ`)「二回生、流石兄者ですっ!自分こう見えてかなーりオタクなんで、話分かる方よろしく!」

(*゚∀゚)「んな奴いねーよ!」

(*´_ゝ`)「うっせー!レトロゲー好きなんだけど誰か分かって!!」

28名も無きAAのようです:2015/03/30(月) 23:23:24 ID:O305c2PI0

次は、茶々を入れた小柄な女性。
またも元気良く立ち上がる。

(*゚∀゚)「はい!二回生、猫田つーです!気軽につーって呼んでね!!」

(*´_ゝ`)「つーちゃん可愛い!!」

(*゚∀゚)「うわあキッモ」

(;´_ゝ`)「辛辣ゥ…」

(;・∀・)「はい一回生どうぞ!二人だけどよろしく!」

二人の間でどちらが先に自己紹介をするか、という視線の相談が起きる。
程なく解決したようで、男性のほうが頷いて立ち上がった。

(´・ω・`)「呉島ショボンです、よろしくお願いします」

( ・∀・)「しっかり者オーラがヤバイ」

ζ(゚ー゚*ζ「井出デレです!お願いします!」

( ´_ゝ`)「かわい子ちゃんオーラがヤバイ」

29名も無きAAのようです:2015/03/30(月) 23:24:05 ID:O305c2PI0
( ・∀・)「まー今日は先輩のオゴリだから、遠慮せず飲み食いしなよ!」

ζ(゚ー゚*ζ「はい!」

( ´_ゝ`)「まぁ俺の財布のヒットポイントはもうないんだが」

(゚、゚トソン「…な、なんか、使ったの?」

( ´_ゝ`)「ちょっと昔の化石ハードを」

(;*゚∀゚)「またかよ…」

( ´_ゝ`)「化石といってもグラもかなり進化してんだぞ。今でもギリギリ通用すると思う」

(´・ω・`)「へー…」

( ´_ゝ`)「2250年ちょっと過ぎにできたもんだがな、あるとこにはあるもんだ」

(゚、゚;トソン「…、いつも思うんだけど、使えるの、それ?150年前の機械だよ…」

( ´_ゝ`)「使えますよ、マニアが改装して丈夫にしたらしいんで。だからこそ骨董品としての価値はありませんけど」

ζ(゚ー゚*ζ「すごいっすね!」

30名も無きAAのようです:2015/03/30(月) 23:24:54 ID:O305c2PI0
(;*゚∀゚)「もういいよーお前の話わかんねーもん…」

( ´_ゝ`)「ゲームとかやんないっけお前。今度何か貸してやるよ、最近のを」

(*゚∀゚)「そういって前借りたの卑猥なのだったからな、信用できねー」

( ´_ゝ`)「じゃお前好きなジャンルとか言えよ、例えばファンタジーなら、最近随分昔のがリメイクされててな―――」

熱く自分の趣味を語り始めた兄者をよそに、モララーが一回生の近くに寄る。

( ・∀・)「いやー新入生が来るとはなー。来なかったらこのサークル潰れてたかも」

(´・ω・`)「地球に興味がありまして…」

ζ(゚ー゚*ζ「楽しそうだったんで!」

( ・∀・)「こんなご時世だもんねー、就職もアレだし大学ぐらい好きなことしたいよね!」

(゚、゚トソン「卒業さえしとけばいいしね…」

31名も無きAAのようです:2015/03/30(月) 23:26:04 ID:O305c2PI0
(´・ω・`)「今はどんな事してるんですか?」

( ・∀・)「今ねー、通信機作ってるよ」

(´・ω・`)「通信機」

ζ(゚ー゚*ζ「地球とお話できるんですか?」

(゚、゚トソン「………、向こうに、あの、あれ、そ、じ、受送信の、方法があればね…」

( ・∀・)「僕と兄者がそういう学部だから割とできるけどね、なかなか出力が出ないんだ。部品も足りない」

(゚、゚トソン「…あ、あと、あんまり出力大きすぎる通信機は、規制されてるんだ。まあ、まだ、作ってないからセーフなだけで」

( ・∀・)「まぁバレないように作るんだけどね。バレないだろうし」

大変ですね、と言おうとしてショボンが口を開こうとしたところに兄者が割り込む。

(*´_ゝ`)「なーに辛気臭い話してんですか!」

(;・∀・)「酔い過ぎだよ…活動の概要さ」

(*゚∀゚)「あーそれな。どっかで部品拾えねーかなマジで。金ねーってな」

ζ(゚ー゚*ζ「大変ですねー」

( ・∀・)「まー有り余るロマンでようやくチャラだね」

32名も無きAAのようです:2015/03/30(月) 23:27:09 ID:O305c2PI0
(*´_ゝ`)「ま、それについても追い追いな。まずはホラ、飲め」

(´・ω・`)「頂きます。あと、通信機の部品足りないんですか?」

(*゚∀゚)「足りないよー、手にいれようにも最近あんまし手に入らないんだなあ。売ってないったら」

酒を一口飲み、ショボンが少し考える素振りを見せた。
彼は未成年なのだが、あまり気にしていないようだ。

(´・ω・`)「僕の家、中流なんですよ。皆さん大抵上流ですよね」

( ・∀・)「ま、そうだろうね。中流の方々が大学に来るのは少ないよ」

(;´・ω・`)「…あ、すみません、嫌味ったらしくて」

(;・∀・)「いやいやいや、大学も中層にあるんだから。で、どうしたの」

(;´・ω・`)「僕も噂に聞いただけなんですが…」

(´・ω・`)「最下層に、機械の墓場があるそうなんです。いつか行ってみたくて」

(*´_ゝ`)「その話、詳しくお聞かせ願おうか…」

(*゚∀゚)「お前は寝てろ」

(*´_ゝ`)「あれ、今の俺マジモードだったのに…」

(゚、゚トソン「顔、真っ赤…」

33名も無きAAのようです:2015/03/30(月) 23:28:12 ID:O305c2PI0

―――――――――

それから四日後。
動きやすい服装で広い部室に集まるいくつかの姿があった。

( ・∀・)「皆の者、準備はいいかー!」

( ´_ゝ`)「おー!」

( ・∀・)「いい返事だ!じゃ、これから機械の墓場に行くぞ!」

彼らが向かうのは、件の墓場。
衛生画像で位置を調べ、足りない部品を書き出し、準備は万端のようだ。

窓が鳴った。
誰かが軽く叩いたような音。

(゚、゚トソン「あ」

トソンが急いで寄り、開け放つ。
するりと入ってきたのは、一匹の黒猫だった。

「にゃー」

ζ(゚ー゚*ζ「ねこ!可愛いー!!」

(*゚∀゚)「お、ダストだ」

トソンが持ってきたキャットフードを、一声鳴いてから食べはじめた。

猫はここではダストと呼ばれている。

34名も無きAAのようです:2015/03/30(月) 23:29:27 ID:O305c2PI0
(´・ω・`)「ダスト?」

( ´_ゝ`)「猫の名前だよ。ゴミ置き場の近くに住んでるからダストにした」

( ・∀・)「英語にするだけでオシャレになんだから不思議だよな、本来ゴミ猫だぞ」

(*゚∀゚)「兄者の命名にしちゃ普通な感じだよな」

( ´_ゝ`)「猫者にしようか丸一日悩んだからな、そう言われると迷った甲斐があるってもんだ」

ζ(゚ー゚*;ζ「それは…どうでしょう…」

(´・ω・`)「キャットフードあげてますけど…飼ってるんですか?」

(゚、゚トソン「いや…野良。わ、私の自腹」

(;´・ω・`)「あ、やっぱし野良なんですね」

(゚、゚*トソン「だ、だって…可愛いよ」

ζ(゚ー゚*ζ「確かに可愛いですね!」

(;・∀・)「猫もいいけど行くぞー」

35名も無きAAのようです:2015/03/30(月) 23:30:30 ID:O305c2PI0
大学を出て、バスに乗り、降りた終点で中層の街の端を歩いていく。
だんだんと雑多な建物が出てきて、景色も灰色が増えていく。

ある地点で、デレが何かに気づいた。

ζ(゚ー゚*;ζ「なんか…ここから急に、何と言うか」

( ´_ゝ`)「汚いな」

デレの言うとおり、彼らの立つ目の前からあからさまに景色の質が変わっている。
地面で眠る者、ゴミを漁る野良犬などはこれまでの場所では見られなかった。

まるで見えない壁が空間を隔てているかのようだった。

( ・∀・)「ここから最下層ってことだ。そして、こっからがややこしいんだ。何が起こるか分かったもんじゃない」

(*゚∀゚)「写真で見たら入り組んでましたよね」

( ´_ゝ`)「この辺分かる?」

(´・ω・`)「いや、流石に来たこともないですね…」

( ・∀・)「まー余裕余裕。財布スられんなよ」

少し迷いながらも、わいわいと進んでいく。

36名も無きAAのようです:2015/03/30(月) 23:31:41 ID:O305c2PI0
歩くにつれ、口数が減ってきた。
やがてモララーが立ち止まり、言い放つ。

( ・∀・)「迷ったわ」

(゚、゚トソン

( ´_ゝ`)

(*゚∀゚)

(;´・ω・`)

ζ(゚ー゚*;ζ

(;・∀・)「なんだよその目は!!」

( ´_ゝ`)「余裕余裕…」

(;・∀・)「ここまでとは思わなかったんだよ!見ろこの写真!最早ダンジョンだぞ!!」

(゚、゚トソン「みんな、飴あげる」

(;・∀・)「聞けや!チクショウ!」

37名も無きAAのようです:2015/03/30(月) 23:33:16 ID:O305c2PI0
その後全員で衛生写真を見てみたが、位置は分からない。
誰ともなしに座り込んだ。

( ・∀・)「あーあ、現在地が分からないんじゃなー。あーしかもここ圏外だ。汚ねーし電波ねーし最悪だなクソ」

( ´_ゝ`)「残念みたいに言ってるけどそれモララーさんのせいですからね」

(゚、゚トソン「…よし」

トソンが立ち上がる。
全員の目線が自然と集まった。

(゚、゚トソン「…だ、あー、ダストに聞いてみよう…」

(;*゚∀゚)「いるんすか?」

(゚、゚トソン「いる…何故か私たちより先に」

(;´_ゝ`)「何でだよ…俺らバス乗ってきたのに、こいつ凄いな」

トソンが指差した先には、先程見た黒猫。
人の言葉が話せれば、僕?とでも言いそうなきょとんとした顔をしている。

トソンがしゃがみ、猫に顔を近づける。

(゚、゚トソン「…機械の墓場っていう、とこ…。たっ、たくさん鉄があるんだ」

38名も無きAAのようです:2015/03/30(月) 23:34:35 ID:O305c2PI0
( ・∀・)「無理無理、猫なんだから…」

ζ(゚ー゚*ζ「あ、どっか行きますよ!」

(*゚∀゚)「ついて行くぞー!」

( ´・∀・)

( ´_ゝ`)「元気出して下さい」

(*゚∀゚)「よし行けダスト!」

猫はゆっくりと歩き、人間を連れて行く。
路地を何回か曲がり、汚れた水たまりを飛び越える。
人間はようやく着いていく。

やがて、数枚の薄汚れた段ボールの上に飛び乗った。

「ぐおぅ!」

(゚、゚;トソン「!?」

段ボールの下から浮浪者らしき者が出てきた。
不機嫌そうに頭を掻いている。

【+  】ゞ゚)「…んだ、この猫ぁ…?……おう、飼い主か」

(゚、゚;トソン「え!…あの、あ、え、えっと、あー…ち、ち違い、ます…」

【+  】ゞ゚)「…どんだけ驚くんだ…」

39名も無きAAのようです:2015/03/30(月) 23:35:28 ID:O305c2PI0
【+  】ゞ゚)「全く…ん、あぁこいつか…またかよ」

( ´_ゝ`)「その猫知ってるんですか?」

【+  】ゞ゚)「たまに見る…」

( ・∀・)「へー…あ、そうだ。機械の墓場って知りません?」

【+  】ゞ゚)「…は?」

(´・ω・`)「鉄の廃材が沢山あるとこです」

【+  】ゞ゚)「…あー。そんな名前なのかあそこ…。そこを曲がれば遠くに見えた筈だが」

意外な方法で、墓場の場所を知ることができた。
礼を言って、そこを去ろうとする。
トソンが振り返り、浮浪者に向き直った。

(゚、゚;トソン「あ、あの」

【+  】ゞ゚)「…?」

(゚、゚;トソン「飴、どうぞ」

【+  】ゞ゚)「……貰おうか」

40名も無きAAのようです:2015/03/30(月) 23:36:18 ID:eeR82nAI0
トソンが吃りキャラとは珍しい

41名も無きAAのようです:2015/03/30(月) 23:37:08 ID:O305c2PI0
(*゚∀゚)「…着きましたね」

彼らの目の前に、鉄の山。
ふわふわとした不安定な足元だ。
他にも、何人か作業をしている者がいた。

ζ(゚ー゚*;ζ「じゅ、重力が…弱いんですかね。おっとと」

( ´_ゝ`)「行政は何をしてんだかな。まぁこんなゴミみたいなとこに金かけるのも無駄っちゃ無駄か」

( ・∀・)「好都合だ。いらん物をどかしやすい」

( ・∀・)「とにかく、配った紙にそれぞれ担当の部品があるからな。二人一組になって頑張ってな」

(*゚∀゚)「うーっす」

( ・∀・)「兄者はデレちゃんとで、トソンとショボンで、俺とつーで組んでな」

( ・∀・)「じゃ、解散ーっ!」

威勢良く返事をして、めいめい散りはじめた。
スラムには全く不似合いな、明るい雰囲気だ。

42名も無きAAのようです:2015/03/30(月) 23:38:50 ID:O305c2PI0
ーーーーーー

三時間後。
墓場の入り口に座り込む彼らの姿があった。
休憩をとっているようだ。
心なしか、雰囲気が暗い。

( ・∀・)「はい、中間発表ーっ…まずは俺たちから…」

(*゚∀゚)「…銅線8本」

( ´_ゝ`)「壊れたラジエータ一つ」

(´・ω・`)「パラボラ一つです」

( ・∀・)「うん、皆よくやったよ……でもな」

( ・∀・)「…キリがねぇな、これ…」

(;*゚∀゚)「三時間でこれじゃ終わらないですね…」

( ・∀・)「無理だろ…何だよもう…」

(´・ω・`)「案外見つかりませんよね…」

(゚、゚トソン「…も、もっとあっさり見つかるかと思ったら、壊れてるの、ばっかだったね…」

( ´_ゝ`)「墓場ですし、一応」

( ・∀・)「もういいよ、帰ろうぜ…帰って寝よう…」

( ´_ゝ`)「メンタル弱過ぎるでしょう」

43名も無きAAのようです:2015/03/30(月) 23:40:06 ID:O305c2PI0

ζ(゚ー゚*ζ「あの、思うんですけど」

(*゚∀゚)「ん?」

ζ(゚ー゚*ζ「あの人に聞いてみたらどうでしょうか」

デレが指差す先にいるのは、手慣れた感じで作業を進める男。
誰かと話しているようだが、よく見えない。

(゚、゚トソン「あ…、成る程、先人に聞くわけだね…」

( ・∀・)「その発想はなかった。兄者、行くぞ」

(;´_ゝ`)「俺すか!?」

( ・∀・)「お前だよ。助力を頼むのもお前だよ」

(;´_ゝ`)「えー…」

( ・∀・)「部長命令」

(;´_ゝ`)「えー!!最低!!!」

( ・∀・)「はははははっ!何とでも言うがいい!」

(;´_ゝ`)「…一応ついて来て下さいよ」

( ・∀・)「ああうん、そんぐらいはするよ」

44名も無きAAのようです:2015/03/30(月) 23:40:51 ID:O305c2PI0
再び鉄の山を登る二人を不安気に見送り、ややあってデレが言った。

ζ(゚ー゚*;ζ「なんか普通に送り出しちゃいましたが大丈夫でしょうか…」

(*゚∀゚)「身包み剥がれるんじゃね?」

(;´・ω・`)「あり得るんですけど…」

(゚、゚トソン「…だ、うん、大丈夫…多分、おそらく…」

二人が話しているようだが、死角になって見づらい。
ややあって、二人がまた鉄の山を降りてきた。
少し浮かない顔だ。

(;・∀・)「ダメだった!」

(゚、゚トソン「あー…」

( ´_ゝ`)「いや、向こうもそういう商売でやってるらしく…また事務所来てって言われました」

(*゚∀゚)「商売かー。儲かるのかこれ」

( ´_ゝ`)「なんでも金ですねー」

( ・∀・)「金取れる程面倒だって事だな。帰ろう、疲れたよ」

45名も無きAAのようです:2015/03/30(月) 23:41:51 ID:O305c2PI0
( ・∀・)「…」

(゚、゚トソン「…?か、帰ろうよ」

( ・∀・)「どっちだっけ、帰り道」

( ´_ゝ`)「え、あっちから来ましたよね?」

兄者が通りを指差す。
確かに、見覚えのある道。

( ・∀・)「そうそう。で、そこ曲がったら汚ねーホームレスいたじゃん?そこからは?」

ζ(゚ー゚*ζ「…あれ…」

(*゚∀゚)「ダストの後をつけてきただけだから…わかんないですね」

(´・ω・`)「え、猫いないんですか?」

ショボンの声に全員が周りを見渡す。
黒猫の姿はない。

(゚、゚トソン「……いないね…」

(*゚∀゚)「本格的に迷子っすねー」

(;´_ゝ`)「いや…例のホームレスに聞けば…」

(;・∀・)「また?」

(;´_ゝ`)「仕方ないですよ…」

46名も無きAAのようです:2015/03/30(月) 23:42:54 ID:O305c2PI0
ほんの少し増えた荷物を持ちいざ出発、という時に何かの音が近づいてきた。
ゆっくりとした足音だ。

ζ(゚ー゚*;ζ「誰でしょう…」

( ・∀・)「この辺の住人だろ」

角を曲がって彼らの方にやってきたのは、一人の女性。
若いようだが、ぼさぼさと伸びた髪や汚れた服に女性らしさなどは感じられない。

黙ってそちらを見つめていたのが悪かったのかもしれない。
その女性の姿にモララーがほんの少し顔を顰めたのを見られていたのかもしれない。

原因はともかく、女性ははたと立ち止まり、彼らの姿をじっと舐めるように見た。

イ从゚ ー゚ノi、「……」

(;・∀・)「…何ですか」

モララーの問いには答えずに、小さな声で呟く。

イ从゚ ー゚ノi、「………この辺の奴じゃない」

47名も無きAAのようです:2015/03/30(月) 23:44:19 ID:O305c2PI0
答えない他の者の代わりに兄者が返事をする。
モララーは女の青白い腕をじっと見ていた。

( ´_ゝ`)「はい、そうですけど…あ、中層ってどっちか知ってますか?」

イ从゚ ー゚ノi、「知ってるよ」

(;´_ゝ`)「え」

兄者は後ずさった。
ふらふらと女性が近づいてくる。
その手に、何か光るものが見えた気がした。

(;・∀・)「兄者!!」

モララーが叫び、乱暴に兄者の腕を掴んで引き倒した。
兄者が姿勢を崩したことにより、その首筋を狙った大振りのナイフは、少し外れて彼の肩を切り裂いた。
尻餅をついた兄者は状況を理解できていない。

(;´_ゝ`)「痛ってぇ!?」

(;*゚∀゚)「こいつヤバイ!!逃げるぞ!!」

咄嗟の判断でつーが落ちていた酒瓶を投げつける。
緑色の瓶はまともに顔面に命中し、鈍い音を上げた。

イ从;゚ -゚ノi、「っく…」

たまらず女性がしゃがみ込んだ隙をついて、全員一目散に駆け出す。

48名も無きAAのようです:2015/03/30(月) 23:46:03 ID:O305c2PI0
しばらく走り続け、デレやトソンの体力に限界がきたのをきっかけに、女性が追って来ないのを確認してから足を緩める。

後ろをちらちらと振り返りながら歩き、程なく先程の浮浪者を見つけることができた。
兄者の血はまだ止まらず、少し辛そうだ。

【+  】ゞ゚)「…あ?出口?」

(;・∀・)「ええ…」

【+  】ゞ゚)「……出口か知らんが、…中層はあっちの方だ…」

浮浪者が汚らしい路地を指差す。
兄者の負傷に触れない辺り、よくあることなのかもしれなかった。

(;・∀・)「ありがとうございます!!」

【+  】ゞ゚)「うるさい…」

ζ(゚ー゚*ζ「でも本当ありがとうございます…もう大変で…」

【+  】ゞ゚)「…目当てのものは…あったのか」

(*゚∀゚)「ありませんでした。だから何でも屋さん?みたいのに頼むことにしたんすよ…」

【+  】ゞ゚)「………あれに…」

(゚、゚トソン「…?」

含みのある言い方だ。
トソンの方をちらりと見て、ゆっくりと話し始めた。

49名も無きAAのようです:2015/03/30(月) 23:47:29 ID:O305c2PI0
【+  】ゞ゚)「鬱田ドクオ……あいつ、気をつけろ。金が入るたびに上層に行ってる……何のためかは知らん」

(;´・ω・`)「え、ちょ、何ですか?」

(;´_ゝ`)「いや……早く行きましょうよ…恐いし痛いし…」

【+  】ゞ゚)「そもそも、俺たちみたいな奴らは上層には入れない筈だ…身なりで弾かれる…」

ζ(゚ー゚*;ζ「そんな事ないですよ」

男は少し笑った。
嘲るような、可笑しがるような笑い方だ。

【+  】ゞ゚)「ま、普通は知らない…」

( ・∀・)「だから、その…何でも屋さんが入ってるのは変だと」

【+  】ゞ゚)「…良いやつではあるがな……まあ、仕事なら大丈夫だろうさ…」

(゚、゚;トソン「え、な、何でそんな…」

【+  】ゞ゚)「…飴の礼だ」

包み紙を見せ、また笑う。
今度は、その汚らしい容姿に似合わない程の純粋な笑みだった。

50名も無きAAのようです:2015/03/30(月) 23:48:09 ID:O305c2PI0
はい次

51名も無きAAのようです:2015/03/30(月) 23:49:28 ID:O305c2PI0
『スラムその2』

ドクオの家のソファーに、汚い身なりをした女性が足を組んで深く座っている。

襤褸のような服から伸びる足は泥で汚れ、髪も伸び放題という出で立ちだ。
にやにやとした笑みを湛える目には隈ができ、白い腕には青痣が見える。
ここ最下層でも、ここまでの者はあまりいない。

ドクオが包帯の巻かれた腕を見せる。

('A`)「…ともかく、俺は警察にも行った。こっちはここまでだ」

イ从゚ ー゚ノi、「そうかいそうかい」

('A`)「そっちはメインの方は始末した訳だ。下層と中層のターゲットは?」

イ从゚ ー゚ノi、「下層は殺った。中層はこの辺の馬鹿そうな大学生をちょっと。死んでないけどまあいい、騒ぐだろうしな」

('A`)「殺し損なったのかよ」

イ从゚ ー゚ノi、「うるせえよ」

('A`)「にしても思い切った政治家もいたもんだな…。ライバルを殺すカモフラージュに他のもやるか」

イ从゚ ー゚ノi、「いいだろ、どうせ受けるのは私だ」

52名も無きAAのようです:2015/03/30(月) 23:50:07 ID:/CcVIN060
おつしえん
クールが気になるねえ

53名も無きAAのようです:2015/03/30(月) 23:50:16 ID:O305c2PI0
イ从゚ ー゚ノi、「なあ、ほら…」

彼女に名前はない。
最下層を徘徊する宿無しの浮浪者だが、ドクオと同じく頼まれたことは何でもする事で金を得ている。

違うところがあるとすれば、殺人などの過激な仕事も二つ返事で請け負うこと。
もう一つは管理能力の低さ故、ドクオに依頼や金銭関係の全てを委ねていること。

イ从*゚ ー゚ノi、「ともかくホラ、金と!あれ!」

(;'A`)「ああ…」

まず封筒を渡す。
今回の仕事の報酬だ。
封筒を奪い取り中身を改め、途端に女が不機嫌になる。

イ从゚ ー゚ノi、「…今回てめーどれだけハネた?」

('A`)「俺は最下層のターゲット役やって腕怪我したんだぞ。それでも十分だ」

女は露骨に舌打ちをした。
が、次に細長い箱を見せるとぱっと笑顔になった。

イ从*゚ ー゚ノi、「よし!寄越せ!!」

54名も無きAAのようです:2015/03/30(月) 23:52:25 ID:roiUGs9Y0
支援

55名も無きAAのようです:2015/03/30(月) 23:52:34 ID:O305c2PI0

('A`)「おい、毎回ここでやんな。出ろ」

イ从゚ ー゚ノi、「いいだろ別に」

('A`)「くたばれ」

勝手に戸棚を漁りコップと水を用意する女は聞く耳を持たない。
震える手で箱を開けて、中の粉末をコップに溶かした。
手荒く混ぜた後注射器で吸い上げ、左腕の痣の中心に打ち込む。

イ从*゚ ー゚ノi、「よし…じゃ…ふふ……」

イ从* ー ノi、「…ふ……」

何か意味不明な事を少し呟き、恍惚とした表情になる。
程なくその目を閉じ、軋むソファに沈みこんだ。
眠ったようだ。

(;'A`)「くそ…」

ドクオが仕入れ、彼女に渡しているものは麻薬だ。
彼女からの依頼であるため、その分の報酬もしっかり取ってある。
彼女や売人曰く、「これを打って眠った時に見る夢で最高の体験ができる」そうだが、真相は定かではない。

ただ、こういった薬自体も最下層にしか流れていないため、上層などからの依頼がドクオに来ることも稀にある。

イ从 ‐ ‐ノi、 …

(;'A`)「…」

だらしなく脚を開いたまま眠る浮浪者を一瞥し、部屋の奥に声をかける。

('A`)「行くぞ」

56名も無きAAのようです:2015/03/30(月) 23:53:46 ID:O305c2PI0
――――――――――――


川 ゚ -゚)「…あいつは毎回ああだな」

('A`)「放っておけ」

川 ゚ -゚)「それにしても通信機、か」

汚らしい路地を二人で歩いている。
ドクオとクーは、大学生の依頼を受けて廃材置き場に向かうところだ。
通信機を作りたい、と言っていた。

('A`)「地球と通信ね。物好きだ」

川 ゚ -゚)「夢があると言ってやれ。…あ、あいつらじゃないか?」

クーが指差す先には、大学生の一団。
その足元に黒猫もいた。

モララーというリーダーの男が手を振っている。
以前仕事の話をしにきたうちの一人がいないが、特に支障はない。

川*゚ -゚)「おお、クロも手伝うのか」

('A`)「誰にでも懐くな、この猫は」

( ・∀・)「こんにちは。この猫、知ってるんですか?」

('A`)「たまに事務所に来る。どこの猫かは知らん」

(*゚∀゚)「野良ですよこいつ」

('A`)「まあ飼い猫じゃないだろうな。…さて、探すぞ」

(;´・ω・`)「は、はい!」

57名も無きAAのようです:2015/03/30(月) 23:56:03 ID:O305c2PI0
本来、廃材探しの時に限らず、仕事の現場に依頼主は来ない。
わざわざ犯罪現場に居合わせる事もない。

しかし彼らはここにいる。
やり方を知りたい、と言っていた。
構わないので見させておく。

('A`)「まず導線だとよ」

川 ゚ -゚)「よし。お前らもしっかり見ているがいい」

( ・∀・)「お願いしまーす」

ドクオがやることはいつも通り、機械を蹴り飛ばし、こじ開けて中を改める。
クーも変わらず、鉄くずに見当をつけて指差すだけ。

ζ(゚ー゚*ζ「なんか無駄がないですねー」

(゚、゚トソン「な、慣れてるね、やっぱ」

皆、同じ事を考えていた。
やっていることはほぼ同じなのに、格段に二人の方が速い。
弱重力下においてもしっかり足を踏みしめているあたりに違いが顕著に現れている。

川 ゚ -゚)「アンテナ…」

('A`)「それは必要ないってよ。マイクは…流石にないか」

川 ゚ -゚)「…あれ、放送機器じゃないか」

(;'A`)「おー…本当に何でもあるな、ここは…」

背中の袋に戦利品を放り込んでいく。
少しづつ紙の項目に横線を引いて、消して行った。

58名も無きAAのようです:2015/03/30(月) 23:57:32 ID:O305c2PI0
――――――――――――


鉄の山を歩き回り、目当てのものを見つけて行く。
何度か溜まった荷物を置きに戻り、そろそろ時間も遅くなってきた頃、作業も終わりに差し掛かった。

こじ開けた中から錆びた鉄の箱を拾い上げる。

('A`)「発電機、四つ目と。終わりだな?」

川 ゚ -゚)「終わりだ、今日は時間かかったな」

('A`)「量が多かったしな。帰るぞ」

廃材から降りていき、置いてある戦利品に最後のパーツを足す。
確認していたモララーが立ち上がった。

( ・∀・)「…よし、ありがとうございます!助かりました」

('A`)「報酬は明日取りに行くからな。台車も貸そうか」

( ・∀・)「いえ、台車あるんで大丈夫ですよ」

川 ゚ -゚)「用意周到なことだ」

59名も無きAAのようです:2015/03/30(月) 23:58:52 ID:O305c2PI0
('A`)「…通信機って、これだけのもんでできるのか?」

足元にはかなりの部品が転がっている。
が、地球まで電波を飛ばそうとなると、それも膨大なものになりそうなものだ。

( ・∀・)「これまで僕らが集めてきたものとか、市販品も使いますから」

川 ゚ -゚)「なるほどな」

( ・∀・)「よかったら見にきます?多分一週間ちょいでできますから」

川 ゚ -゚)「どうする?」

('A`)「暇なら行ってみるか」

( ・∀・)「分かりました。なら試験放送は十日後にしますよ」

(*゚∀゚)「あ、大学の場所、分かります?」

川 ゚ -゚)「私は知らないが」

('A`)「ああ、知ってる。大丈夫だ」

( ・∀・)「じゃ、僕らはこれで…。ありがとうございました」

ζ(゚ー゚*ζ「ありがとうございました!」

60名も無きAAのようです:2015/03/30(月) 23:59:55 ID:O305c2PI0
路地に消えていく数人を、その場で見送る。
猫はクーの足元に寄り添ったままだ。

川 ゚ -゚)「帰れるんだろうか」

('A`)「金持ちだろうし、そこらでタクシーでも拾うだろ」

川 ゚ -゚)「地球と通信か。まぁ誰もやってない事はないんだろうが…本当に見に行くのか?」

('A`)「お前が見たいんだろ」

川 ゚ -゚)「流石だな。よく分かっている」

('A`)「分かりやすい」

狭い路地を二人で歩く。
頭上に見える地球は、綺麗な青と白のマーブル模様だ。
人が住んでいると言われると確かに納得できるが、実感は湧かない。

皆、綺麗な天体程度にしか思っていない。

川 ゚ -゚)「海というのは、間近で見てみたいな。一度画像を見たことがある」

('A`)「諦めな」

川 ゚ -゚)「いや別に地球に行きたいとは思わないが」

61名も無きAAのようです:2015/03/31(火) 00:00:47 ID:dud1U5co0
川 ゚ -゚)「さあ、帰ろう。クロもお腹を空かせている」

呼応するように猫が一声鳴いた。
廃材置き場で作業していた他のスラムの住人も帰ったようで、もういない。

('A`)「いや…先に帰ってくれ。他にすることがある」

川 ゚ -゚)「何を…」

('A`)「いいから帰れ」

クーが溜息をついた。
追及は無駄だと悟ったらしい。

川 ゚ -゚)「早く帰って来いよ。私は料理ができないんだ」

クーと猫が連れ立って路地の向こうへ去って行く。

ドクオはそれと逆方向に歩く。
やがて行き止まりにたどり着き、振り向いた。

('A`)「…どうしても事務所には来たくないんだな」

刺すような視線の先には、一人の男。
スラムに不似合いなスーツに、何かのケースを持っている。

(`・ω・´)「…」

いつか見た、テロ組織の幹部だった。

62名も無きAAのようです:2015/03/31(火) 00:01:54 ID:dud1U5co0
(`・ω・´)「あそこは、人の出入りがあります。姿はあまり見られたくない」

('A`)「臆病だな。…いや…臆病でなければ、一つの組織の頭は務まらないか」

('A`)「呉島シャキン。月虎のトップで間違いないな」

呉島と呼ばれた男は感心したように息をついた。
少し置いて、話し始める。

(`・ω・´)「なるほど、スラムも侮れない。正体に関しては今日明かすつもりでしたが、もう知っていたとは」

('A`)「何でわざわざお前が出てきたんだ。仕事の依頼は下っ端でいいだろうに」

(`・ω・´)「私なりの誠意です。つまり、それほど確実に仕事をこなして頂きたい」

('A`)「…まあいい。仕事の内容を聞こう」

静かに二人が話している。
周りには一切の人気がなく、空気は張り詰めている。

63名も無きAAのようです:2015/03/31(火) 00:03:37 ID:dud1U5co0
(`・ω・´)「住むところもない。重力制御はおろか、道の整備もされていない。人の意識も私達を見下すものに尽きる」

手を広げ、朗々と話し出す。
堂々としたその様子は、さながら演説のようだった。

(`・ω・´)「最下層への差別はあんまりだ。あなたもそう思いませんか?」

(`・ω・´)「私は最下層の出です。私の兄が中層に行ったようですが、はじめは差別がひどかったとか」

(`・ω・´)「…私達がやるのは、公の場での首相の殺害。それと声明発表です!」

('A`)「…」

(`・ω・´)「私達は何代もの首相に、メッセージを送り続けてきました。民衆間の格差を是正しろと!」

(`・ω・´)「しかし、誰もそれをしない…!マニフェストにそれを掲げていたとしても平気でねじ曲げ、なかったことにする始末!」

(`・ω・´)「もう、限界です。一度私達の存在を大きく示す必要がある!」

呉島は一度息をついた。
さっきまでとは正反対に落ち着いた声でまた話す。

(`・ω・´)「……今度、首相の演説がありますね。中層の放送塔に首相が来て、それが全国に中継されます」

(`・ω・´)「そこを乗っ取り、テレビに映った前で首相を殺します。そして直接、差別について訴える」

64名も無きAAのようです:2015/03/31(火) 00:04:32 ID:dud1U5co0
('A`)「それでいいのか」

黙って話を聞いていたドクオが割り込むように意見を述べた。

('A`)「そのままお前がトップに立つとでも言うのか?それじゃ単なる恐怖政治だろう」

(`・ω・´)「話は最後まで聞いてください。私が政治に関わろうとは思いません。こんな考えの人間が政治をしてはいけない事ぐらい、分かります」

(`・ω・´)「私達は、そのまま消えます。そうすることで、真に民衆の事を考えている政治家が活動しやすくなる」

(`・ω・´)「今の首相に裏から潰されている者もたくさんいるんですよ。…警察とも繋がっていますから、それだけでもなくせればと」

('A`)「…まあ、いいけどな。何にせよ仕事は受ける」

(`・ω・´)「では、これを…」

呉島がケースを差し出す。
大きく、地面に置いた際に重い音がした。

65名も無きAAのようです:2015/03/31(火) 00:06:27 ID:ZFxe55vU0
良いわ

66名も無きAAのようです:2015/03/31(火) 00:06:43 ID:dud1U5co0
('A`)「これは何だ」

(`・ω・´)「爆弾です」

ドクオの表情が固まった。
慎重にケースを持ち上げ、重さを確かめる。

(`・ω・´)「貴方にして頂きたいのは、首相の逃げ道を奪うこと。車を爆破して下さい」

('A`)「車を…」

(`・ω・´)「どうです?」

ドクオは答えない。
ただ、何かを思案している。

(`・ω・´)「問題は、周りの人間です。陽動や道路の破壊も兼ねていて、その爆発の規模はかなり大きい。つまり…」

(;'A`)「………関係ない人が巻き込まれるかもしれない」

(`・ω・´)「可能性の話ですが…こちらとしても遺憾ですが、そういうことです」

(`・ω・´)「…ただ、断る選択肢はありません。首相の放送…つまり十日後に決行です」

(`・ω・´)「細かい手段は問いません」

呉島は、さらに厚い封筒を差し出す。
中には普段の彼の稼ぎからは到底想像もつかない金額の紙幣が詰まっていた。

(`・ω・´)「仕事を終えて頂ければ、倍は払えます。では…」

(;'A`)「…」

呉島は去って行く。
ドクオは、封筒をじっと見たまま動けない。

67名も無きAAのようです:2015/03/31(火) 00:07:51 ID:dud1U5co0
――――――――――――――――――

建て付けの悪い扉を開く。

('A`)「ただいま」

川 ゚ -゚)「ああ、お帰り」

クーと猫が出迎えてくれた。
いつものことだ。
ソファーで眠る薬物中毒者を蹴落とし、そこに座る。
寝言は上がるが、起きる気配はない。

('A`)「夕飯までは…まだ少しあるな」

川 ゚ -゚)「まあな。ただどこかに出かける程はないと思う」

('A`)「今日はどうしようか。卵はあったよな」

川 ゚ -゚)「…」

クーの視線に気付き、少し黙る。
何を聞きたいのかは分かっていた。

('A`)「…十日後だ」

川 ゚ -゚)「何をするんだ。そのケースは何だ」

68名も無きAAのようです:2015/03/31(火) 00:09:19 ID:dud1U5co0
('A`)「…」

川 ゚ -゚)「何だ」

('A`)「……、爆弾だ。今度の演説の日、車を爆破しろ、だと」

川 ゚ -゚)「…そうか。大学に行くのと同じ日だったか」

('A`)「どうでもいい」

川 ゚ -゚)「私はよくない。あと」

クーが詰め寄る。
見つめられた彼は視線を逸らした。

川 ゚ -゚)「…できるのか、仕事」

('A`)「…」

ごまかすように猫を撫でるドクオにさらに近づく。
その目を強引に覗き込む。

川 ゚ -゚)「…なあ」

('A`)「何だ鬱陶しい」

川 ゚ -゚)「これまで、殺人が絡む仕事は全部この女に丸投げだったな」

('A`)「今回はそこらの依頼とは違う…失敗できない」

川 ゚ -゚)「人を殺したこと、ないだろう」

('A`)「…どうにかなる。どうにかする」

69名も無きAAのようです:2015/03/31(火) 00:10:06 ID:dud1U5co0





('A`)「この金は逃せない」


('A`)「全部、全部、お前の為だ」


川 ゚ -゚)


猫はただじっと撫でられながら、何か不穏なものを感じていた。
何か大きな事が起こるような気がした。





.

70名も無きAAのようです:2015/03/31(火) 00:11:30 ID:dud1U5co0
ここまでじゃ
オムニバスというか、そういう感じ。もう一視点ぐらい増やすかもじゃ
ここから少しずつ投下という形になるから気長に待って欲しいのじゃ

71名も無きAAのようです:2015/03/31(火) 00:12:41 ID:4ImwKwic0

待つのは任せろ

72名も無きAAのようです:2015/03/31(火) 00:18:29 ID:.l5C16M20
乙 
おもしろい

73名も無きAAのようです:2015/03/31(火) 00:23:46 ID:LGvfkQDQ0
引き込まれた
乙、待ってる

74名も無きAAのようです:2015/03/31(火) 00:36:28 ID:NatQvGdc0
読みやすいね
おもしろいし続き気になる乙!

75名も無きAAのようです:2015/03/31(火) 02:18:16 ID:y4.e4vmk0
おつ
期待値高い

76名も無きAAのようです:2015/03/31(火) 04:43:13 ID:BnGPU/Fw0
いいね!
薄汚れたダークさが良いかんじ

77名も無きAAのようです:2015/03/31(火) 08:06:51 ID:NatQvGdc0
しかしモララー達勇気あるな
いきなり友達切られて、そんなおっかないとこ二度と行きたくねぇよ

78名も無きAAのようです:2015/04/03(金) 10:24:37 ID:Gdnxffc20

いいSF

79名も無きAAのようです:2015/04/06(月) 19:51:08 ID:0wAG8pQA0
『正義その1』


(,,゚Д゚)「えーーーっ、と。話をまとめますよ、鬱田さん」

中層。
警察署で、二人の男が書類を挟んで話している。
片方は警察官の根子ギコ。
もう片方は、鬱田と名乗るスラム出身の汚い男だった。

('A`)「はい」

(,,゚Д゚)「鬱田さんが夜、お仕事の帰りにVIP街のはずれを歩いていたところに通り魔が来たと」

(,,゚Д゚)「ナイフを持っていたのを見た鬱田さんは、咄嗟に腕で防御、と。顔は見てないんですね」

('A`)「はい、暗かったので」

(,,゚Д゚)「ナイフは見えたんですか」

('A`)「大きなナイフでしたし、少しの明かりに反射してましたから」

鬱田の腕を見る。
薄汚れた包帯が袖から見える。
傷自体は先程見せてもらったが、あの包帯で妙な菌が入らないかが心配になる。

80名も無きAAのようです:2015/04/06(月) 19:51:51 ID:0wAG8pQA0
(,,゚Д゚)「顔じゃなくても、背格好の特徴とかは」

('A`)「え…髪が長かったです。身長は僕より高かったですけど、女性かもしれません」

(,,゚Д゚)「なるほど」

あまり参考にならない。
これまでに目撃されている通り魔と同一人物であることは分かったが、それまでだ。
あのスラムで、人物の断定には至らないだろう。

(,,゚Д゚)「とりあえず…これで結構です。また調査に伺うかもしれませんので、住所など聞いてもいいですか」

聞いた途端、鬱田は申し訳なさそうに言った。

(;'A`)「あー…住所ですか」

(,,゚Д゚)「?」

(;'A`)「ないです、住所」

スラム出身。
ありがちな話だ。

(,,゚Д゚)「あ、なるほど。じゃあ…そうですね、結構です」

81名も無きAAのようです:2015/04/06(月) 19:52:36 ID:0wAG8pQA0
そのあと二、三の事柄を確認し、鬱田への質問は終わった。
鬱田を帰し、事前に集めていた情報と照らし合わせる。

(,,゚Д゚)「………」

やはり、思うことがある。
上司に報告しなければ、と思ったところで、ちょうど扉が開く。

ミ,,゚Д゚彡「おう」

男が入ってきた。
髭面で強面、という子供が泣きそうな面構えの男は彼の上司にあたる。

(,,゚Д゚)「あ、フサさん、例の通り魔でちょっと気になることが」

ミ;,゚Д゚彡「帰ってきて一発目にそれか…ちょっと茶だけでも飲ませろ」

フサが休憩とばかりに熱い茶を入れて座り込んだところに近づく。
机に資料を置くと、少し渋い顔をされた。

(,,゚Д゚)「四人目の最下層の人にも話を聞いたんですけど」

ミ,,゚Д゚彡「あー」

82名も無きAAのようです:2015/04/06(月) 19:53:25 ID:0wAG8pQA0
(,,゚Д゚)「無差別通り魔の話、生きている被害者と目撃者に話を聞きましたが、犯人は共通の一人です」

(,,゚Д゚)「で、恐らくはスラムの住人です。目撃者もいますし、大学生の被害者がやられたのは普通は辿り着けないスラムの奥でした」

(,,゚Д゚)「ここまでは話しましたね」

ミ,,゚Д゚彡「おう。ただ『髪の長い恐らく女性のスラムの住人』なんてキリがない。髪に至っては切られたらそこまでだ」

ミ,,゚Д゚彡「…まだなんかあんのか?」

(,,゚Д゚)「前々から思っていたんですが、これは無差別ではないと思います」

ミ,,゚Д゚彡「…」

フサの表情は読めない。
返事もないので、話を続けることにした。

83名も無きAAのようです:2015/04/06(月) 19:54:06 ID:0wAG8pQA0
(,,゚Д゚)「わざわざ上層、中層、下層、最下層に住む人々を一人づつ。そもそもここからおかしいんです」

(,,゚Д゚)「ただ無差別に人を殺したいのなら、人口の多い中層か犯行が見つかりづらい最下層に行くはずです」

(,,゚Д゚)「最下層の人を見つけ次第マークするような上層に行くこと自体が危険なのに、何故か犯人は行きました。で、殺したのが偶然にも政治家だった」

(,,゚Д゚)「明らかに不自然じゃないですか」

ミ,,゚Д゚彡「……」

(,,゚Д゚)「……政治家を殺したときの目撃者は一人いましたが、『執拗に切り刻んでいた』そうです」

(,,゚Д゚)「下層の被害者の傷跡は一つでした。最下層と中層の被害者に対しては殺意すら見えない!」

フサはまだ喋らない。
資料に目を落としてはいるが、読んでいる様子もない。
反応の無さに焦れ、ギコの口調も荒くなる。

84名も無きAAのようです:2015/04/06(月) 19:55:06 ID:0wAG8pQA0

(,,゚Д゚)「こんなの、子供でも分かりますよ!」

(,,゚Д゚)「他の三件はカモフラージュです!本命は政治家一人!!どうせ対抗する別の政治家の仕業でしょうよ!!」

(,,゚Д゚)「なのに何で警察が大きく動かないんですか!!」

フサが大きな溜息をついた。
座り直して、ゆっくりと話し出す。

ミ,,゚Д゚彡「……」

ミ,,゚Д゚彡「……いや、な」

ミ,,゚Д゚彡「……今日は本部に行ってきたんだが」

ミ,,゚Д゚彡「それに関する捜査を打ち切れ、と言われた。テレビには只の無差別通り魔として公表したようだ」

(,,゚Д゚)

(,,゚Д゚)「え」

85名も無きAAのようです:2015/04/06(月) 19:56:14 ID:0wAG8pQA0
驚いて間抜けな声が出た。
どういうことか知りたかったが、それを察したフサがまた話し出す。

ミ,,゚Д゚彡「金が動いたんだろ、どうせ」

(;,゚Д゚)「それって、政治家が金で揉み消したって事ですか!?」

ミ;,゚Д゚彡「そんなはっきり言うんじゃねぇよ」

ミ,,゚Д゚彡「……世の中、金だな」

(;,゚Д゚)「…………」

何を言っていいか分からなかった。
自分の調査全てをかき消されたこともさることながら、身近にそのような事が起こっているという事実が信じられなかった。

ミ,,゚Д゚彡「……言っておくが、お前一人で調べても無駄だ。テレビ局にも手は回してるだろうし、最悪クビだぞ」

(,,゚Д゚)「…フサさんは、それでいいんですか」

ミ,,゚Д゚彡「慣れた。生憎お前より色々経験してるんでな」

ミ,,゚Д゚彡「まあ、養う家族が居るんなら、逆らわないほうが得だ」

すぱりと言い切られた。
少し悲しげに聞こえたのは、気のせいだろうか。

86名も無きAAのようです:2015/04/06(月) 19:57:23 ID:0wAG8pQA0

今日はもう帰れ、と言われたので、正直に帰宅することにした。

(,,゚Д゚)

あったことが理解できない訳ではなかった。

街のビルにある、大きなスクリーンがニュースを映し出す。
今は新技術の開発やら、芸能人の不倫やら、他愛もないことを映している。

あそこに、いずれ通り魔のニュースも映る。
犯人は依然捕まっておりません、で済むのだろうと思った。

ただぼうっとしながらバスに乗り、やがて家に帰り着いた。
ドアを開けると、料理の匂いが漂ってくる。

(,,゚Д゚)「ただいま」

(*゚ー゚)「おかえり!」

笑顔で出迎えてくれたのは、恋人のしぃだ。
まだ結婚はしていないが、数ヶ月前から同棲している。

(*゚ー゚)「今日はカレーだよー」

(,,゚Д゚)「おっ、嬉しいな」

少し気が楽になった。
理由は分からない。

87名も無きAAのようです:2015/04/06(月) 19:58:32 ID:0wAG8pQA0
食卓を二人で囲む。
少し辛いカレーを食べていると、視線が気になった。
顔を上げると、しぃがじっとこちらを見ている。

(*゚ー゚)「何があったの、今日は?」

(,,゚Д゚)「……何もないぞ」

(*゚ー゚)「いーや、あるねっ」

しぃは視線を外さない。

内心で情けなくなった。
隠し事ができない性格は、昔から変えられていないようだ。
そこが好きだと言われたが、ギコ自身としては直したいところではある。

(,,゚Д゚)「こういうのは言っちゃいけないんだよ」

(*゚ー゚)「へえ…」

そのまま黙り込んでしまった。
申し訳ない気持ちになる。

(;,゚Д゚)「…」

(*゚ー゚)「…」

88名も無きAAのようです:2015/04/06(月) 19:59:30 ID:0wAG8pQA0

(*゚ー゚)「何かあるんなら、相談乗りたいんだけどなぁ」

小さく呟かれた。
大きく心が揺れる。

(;,-Д-)「…………ああ、もう」

(;,゚Д゚)「話すよ」

(*゚ー゚)「ふふ」

頭を撫でられた。
恥ずかしい。

『相手』は、犯罪ひとつの真相を隠すような反則を行っている。
ならば、こちらも話すぐらいの反則を行ってもいいのかもしれない。

無理やりそう思うことにした。
ただ、ばれることはないだろうが、少し怖い。



(*゚ー゚)「あれだね、警察組織の闇ってヤツ。こう言っちゃ何だけど、仕方ないかも」

(,,゚Д゚)「覚悟はしてたんだがなあ」

当たり前だが、話すことで解決はしない。
しかし、心なしかすっきりした。

89名も無きAAのようです:2015/04/06(月) 20:00:27 ID:0wAG8pQA0

(*゚ー゚)「そういえばね」

今度はしぃの話を聞く。
最近来る野良猫の話が熱いようで、今日もそれだった。

黒い毛並みの猫で、どこから来るのかも分からない。
ただやたらと人懐っこく、しぃも餌をやることがあるとか。

(,,゚Д゚)「俺は見たことないなあ」

(*゚ー゚)「だいたいお昼なんだよねー、ほんとかわいいの」

携帯の写真を見せられる。

猫だ。

(,,゚Д゚)「猫だな」

(;*゚ー゚)「わかってないなー」

(,,゚Д゚)「名前は?」

(*゚ー゚)「わかんない。野良だし」

(,,゚Д゚)「病気とかもらうなよ」

(*゚ー゚)「もらわないよー」

くだらない会話に力を貰い、明日も頑張ろうと思える。
我ながら単純だが、これでいいと思う。

90名も無きAAのようです:2015/04/06(月) 20:01:15 ID:0wAG8pQA0
今日はここまで

勝手にギコとか出して大丈夫なのか、本来のプランにないぞ
でもこれが書き溜めなしの醍醐味だよね、きっとそうに違いない

91名も無きAAのようです:2015/04/06(月) 20:51:08 ID:UIIzn.iM0

予定との脱線もブーン系の醍醐味だと思う
ぬこが今後どうなるか気になるぜ

92名も無きAAのようです:2015/04/06(月) 21:08:56 ID:PfmqmLrA0
おつおつ
新キャラが出て来るとわくわくするもんだよな

93名も無きAAのようです:2015/04/06(月) 22:15:53 ID:LE4oz7N.0

話の基盤がちょっとずつ出来てきてるな

94名も無きAAのようです:2015/04/06(月) 22:19:15 ID:mG9HFcWY0
おつ

95名も無きAAのようです:2015/04/08(水) 23:52:24 ID:.7T4o3yE0

『挑戦その2』


スラムに行って一週間。

(;・∀・)「ふーーむ……」

モララーが唸っている。
目の前には、部室の半分を埋め尽くす大きな機械。
ところどころ配線が剥き出しになり、ランプが明滅している。

モララーをはじめとする全員が困っている理由はそこではない。
スピーカーから断続的に出ている、ざざあ、という音にある。
その音しか出ていない。

(;´_ゝ`)「出力かな…」

(;・∀・)「月から出てるその辺のラジオとかを拾わないようにしたから、それは成功してるってことだけど……」

携帯にメッセージが入った。
部室棟の屋上にいるつーとショボンからだ。

『アンテナ問題ありません』

屋上には自作のアンテナを設置してある。
学校にばれたら撤去されるだろうが、誰も屋上に行かないことが幸いしてか今のところはばれていない。

96名も無きAAのようです:2015/04/08(水) 23:53:27 ID:.7T4o3yE0

(;・∀・)「パワーが足りない」

ζ(゚ー゚*;ζ「こんなに大きいのに、ですか?」

(;・∀・)「…地球は遠いな」

(゚、゚;トソン「こ、これ以上、機械増やすの?」

(;´_ゝ`)「そうなりますね」

全員が黙り込んだ。
もはや言わずとも分かることだが、場所が足りない。
これだけ大きな機械を置けて、かつ隠せそうところ。
今の部室では後者をクリアしていなかったが、今や前者も怪しくなってくる。

ζ(゚ー゚*;ζ「地球と交信って、どれだけの大きさが要るんでしょう…」

(;´_ゝ`)「やってるところがないんだよね…偉い人達は地球に人はいないって言ってるし」

(゚、゚;トソン「そもそも、あの、地球に通信機があるのか…って」

(;・∀・)「それなんだよなーーーーーーーーーーー……」

97名も無きAAのようです:2015/04/08(水) 23:54:52 ID:dWOWBBHc0

(;´_ゝ`)「いや、そこはあるものとして考えましょうよ」

(;・∀・)「ううーーん……確証がないのは怖い……」

話が行き詰まりかけ、モララーが菓子に手を伸ばした、その時だった。

小さく断続的に流れていた砂嵐の音が、揺れた。

全員が息を呑み、目が自然と機械に集中する。


「ーーーーーーーーーーーー…カ…ーーーーーー」

「ーーーー、、、ァーーーーーーーーーーーーー」

「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

一様に呆気にとられていたが、すぐさまモララーが叫ぶ。

(;・∀・)「音量あげろ!!」

兄者がボリュームを捻ると、砂嵐の音は耳が痛くなる程に大きくなる。
隣の部室が苦情代わりに壁を殴るが、お構いなしに雑音を聞く。

98名も無きAAのようです:2015/04/08(水) 23:56:05 ID:dWOWBBHc0
(;・∀・)「……………………」

それからは、変化はなかった。
兄者がボリュームを下げていく。

ζ(゚ー゚*;ζ「今の………」

モララーがファイルをひっくり返し、中の資料を手に取る。
菓子の皿が床に落ちたが、モララーは気にも留めない。

(;・∀・)「月から出てる放送は全部弾いたよな?そうだよな!?」

(;´_ゝ`)「はい、何回もみんなで確認しましたよ!」

(;・∀・)「まさか、まさか…」

(゚、゚;トソン「え、え、じゃ、じゃあ、今のって」

ζ(゚ー゚*;ζ「あー、おかしが…」

ちょうどショボンとつーが帰ってきた。
ただならぬ部室の雰囲気に目を丸くしている。

(;´_ゝ`)「おまえら、アンテナに触れたか!?」

(;´・ω・`)「触れてません、えっと、なんですか…?」

(;*゚∀゚)「分からんけど決定的瞬間を逃したことは分かる」

99名も無きAAのようです:2015/04/08(水) 23:57:08 ID:dWOWBBHc0

(*・∀・)「決定的だ!!!!!」

モララーが両手を挙げて飛び跳ねる。
子供のように、感情のままに。

(*・∀・)「地球には、少なくとも電波を出す機械がある!!!!それも、月まで届く…おそらく、月と話すためのものが!!!!!」

(;*゚∀゚)「は!?」

(゚、゚;トソン「あの、ち、地球から、ちょっとだけ音が入ったの。多分ね」

(;´・ω・`)「え!?」

ζ(゚ー゚*;ζ「そんなにすごいんですか?」

(;´_ゝ`)「割とヤバい事ではある」

付いていけない部員を置き去りに、モララーは一人騒いでいた。

(*・∀・)「ついにだ!!!ついに見つけたーー!!!!!!」

(*・∀・)「もっと大きな場所が要る!!あと、ここからは電波制限法をぶっちぎることになるから…見つからないような!!そんな場所が要る!!!」

(*・∀・)「機械もだ!!部品!!もっと!!!!」

100名も無きAAのようです:2015/04/08(水) 23:58:43 ID:dWOWBBHc0

五分かけて騒ぎまわるモララーをどうにか全員でなだめ、これからの方針を考え直すことにした。
まず、場所が要る。

(*゚∀゚)「倉庫とかレンタルします?」

(;´_ゝ`)「うーん…すごい大規模な倉庫借りないといけないだろうから、金が…」

(;´・ω・`)「それに、見つかっちゃいそうですね」

( ・∀・)「場所…場所…………」

(;・∀・)「…」

(;・∀・)「スラム?」

(;*゚∀゚)「スラム…」

ζ(゚ー゚*;ζ「イメージ的に空き地自体はありそうですけどー…」

(;´_ゝ`)「もう行きたくない…」

(゚、゚;トソン「でも、そっ、そこ以外ないような…」

(;´・ω・`)「またあの人に相談してみます?行って…」

(;・∀・)「……だな」

101名も無きAAのようです:2015/04/09(木) 00:00:16 ID:szvJOWe20



('A`)「置き場所?」

その日の午後、すぐにモララーと兄者がスラムへ向かった。

兄者は終始びくびくしている。
無理もないことだが。
何故かこの家にいた黒猫が足元に寄ってくるので、それを撫でてどうにか気を落ち着けている。

(;・∀・)「ないですかねー」

(;´_ゝ`)「…」

('A`)「あー…アレか、地球と通信だっけ、ついこの前の」

鬱田という男は椅子に座り、二人にも座るよう促した。
二人が慎重にソファにかける。
壊れそうに軋むのが不安だ。

('A`)「割と広いなー…」

考え込んでいる。
伝えた広さに見合う立地を、脳内のスラムの中で探しているのだろう。

102名も無きAAのようです:2015/04/09(木) 00:01:24 ID:szvJOWe20

(;・∀・)「そもそも、そういうのって…いいんですか?」

('A`)「何が」

(;・∀・)「置いたり…」

('A`)「いいんじゃない?あのゴミ山が放置されてんだし」

(;・∀・)「あー…確かに」

(;'A`)「まあ、探しておくよ。多分見つかる。三日後にまた来てくれ、今日は帰りな」

(;´_ゝ`)「はい!帰ります!」

二人が立ち上がったところで、家のドアが開いた音がした。
黒猫が走って見に行き、すぐに帰ってきた。

ぺたぺたと裸足で歩く音で、ゆっくりと一人の人が入ってくる。
後ろのドクオの顔が少し曇ったが、二人は知る由もない。

103名も無きAAのようです:2015/04/09(木) 00:02:42 ID:szvJOWe20

イ从゚ ー゚ノi、「?」


(;´_ゝ`)「あ……」


忘れもしない、あの女。
怖がりこそすれ、まさか遭うとはおもっていなかった。
遭いたくもなかった。



(;'A`)「あー…」

(;・∀・)「え、あ、あの、鬱田さん、あの人って…お知り合い…とか……?」

兄者の顔が恐怖に歪む。

(;´_ゝ`)「うっ、うわああああああああああああ!!!!!!!」

震える手で鞄を探り、包丁を取り出した。

(;´_ゝ`)「くく、来るな!ああ、えっと、さ、刺すぞ!」

イ从゚ ー゚ノi、「あー、あの時の!」

女はやっと思い出すことができたようで、少し笑った。
余裕がある。

104名も無きAAのようです:2015/04/09(木) 00:04:02 ID:szvJOWe20

(;'A`)「えーっと…今は無害だから大丈夫だぞ」

(;´_ゝ`)「も、も、モララーさん!通報!!」

(;・∀・)「けっ、携帯つながんない……」

イ从゚ ー゚ノi、

イ从゚ ー゚ノi、「あの時はよくもやってくれたね」

(;´_ゝ`)「うわああああああ!!ごめんなさい!!!ごめんなさい!!!でも俺じゃないです!!!」

(;'A`)「怖がらせんな!めんどくさい!!」

イ从*゚ ー゚ノi、「ふふふっ」

狭い家の中が大混乱に陥る。

意外にも、女に殺意はない。
兄者を見て面白そうに笑う姿は、この前とは大違いだ。
そう観察するモララーは、兄者が真横で騒ぐために逆に冷静になれていた。

(;´_ゝ`)「たすけてダスト!!」

「にゃー」

(;・∀・)「鬱田さん、これは……」

(;'A`)「とりあえず座れ」

105名も無きAAのようです:2015/04/09(木) 00:06:13 ID:szvJOWe20

十五分後。

通り魔と被害者が対面に座る、奇妙な絵面が出来上がった。
鬱田より、事のあらましを話された。

(;´_ゝ`)「………仕事?通り魔が?」

イ从゚ ー゚ノi、「そうだよ、細かいことは言えないけどね」

('A`)「話したくはなかったが…当たり前だが内密にしろよ。バレたらお前達を真っ先に疑うからな」

(;´_ゝ`)「犯罪じゃないですか…それで俺怪我したんですか…下手したら死んでたんですか……」

イ从゚ ー゚ノi、「殺す気ならもっと追ってた」

('A`)「そもそもここをどこだと思ってる」

( ・∀・)「兄者、この際順応しよう」

(;´_ゝ`)「何でお前平気なのぉ…」

( ・∀・)「なんか逆に」

('A`)「とにかく、俺たちのすることに口を出すな。お前らの使う場所を見つけてやる対価はそれだ」

(;´_ゝ`)「はい…」

今度こそ帰れ、と言われて二人で家を出る。
兄者は終始震えていた。

106名も無きAAのようです:2015/04/09(木) 00:07:58 ID:szvJOWe20

鬱田の店を出る。
一応、道はもう覚えた。

(;´_ゝ`)「もう散々ですよ…」

( ・∀・)「これからもここに通うことになるんだぞ」

(;´_ゝ`)「えーーー…」

( ・∀・)「逆にあの女の人はもう安全ってことだろ?」

(;´_ゝ`)「そうですけどぉ………」

(;´_ゝ`)「モララーさんはそう言えますけど…俺にとってはトラウマもんなんですよ…」

話しながらいくつかの角を曲がる。
黒猫もついてきていた。

( ・∀・)「兄者は怖がりだなー、ダスト。俺はもう慣れたよ」

(;´_ゝ`)「もう来たくない…」

そうは言っても、また来る必要はあるのだが。
話をするうちに、だんだん兄者も落ち着いてきた。

107名も無きAAのようです:2015/04/09(木) 00:09:14 ID:szvJOWe20

一つの角を曲がった時だった。
同じく向かいから曲がってきた男と、モララーがぶつかってしまった。

(;・∀・)「あ、すんません…」

(;,゚Д゚)「あ、こちらこそ申し訳な……あ」

(;´_ゝ`)「あ」

ミ,,゚Д゚彡「お?」

いつかの警察官だ。
兄者の通り魔事件を調べていた人だった。
が、もう一人は知らない。

(;´_ゝ`)「あ、根子さん…と、」

ミ,,゚Д゚彡「房田フサだ。誰だ?」

(,,゚Д゚)「えーっと、件の通り魔の被害者の方です」

ミ,,゚Д゚彡「あー」

( ・∀・)「犯人、捕まりそうですか」

(,,゚Д゚)「…捜査中だ」

108名も無きAAのようです:2015/04/09(木) 00:09:57 ID:szvJOWe20

ミ,,゚Д゚彡「今はちょっとな、別件だ」

( ・∀・)「別件?」

(,,゚Д゚)「指名手配……とまではいかないが、呉島シャキンというやつを探している」

(;´_ゝ`)「知らないですね…」

ミ,,゚Д゚彡「この辺で目撃報告があったもんでな、見回りさ」

( ・∀・)「誰ですか、その人」

(,,゚Д゚)「テロリストだよ。月虎とかいう」

( ・∀・)「あーー、聞いたことあるような…でも知らないですね……」

( ・∀・)「じゃ、僕らこれで」

(,,゚Д゚)「待て」

(;・∀・)

(,,゚Д゚)「最近、お前らの大学からよく分からん電波が検出されてる」

(,,゚Д゚)「お前ら、どこ行ってた?何故こんなとこにいる?」

109名も無きAAのようです:2015/04/09(木) 00:10:54 ID:szvJOWe20

(;・∀・)「…探検です」

(;´_ゝ`)「……」

ミ,,゚Д゚彡「…」

(,,゚Д゚)「…」

嫌な沈黙が流れた。
根子が横の、おそらくは上司に視線をやった。
こいつらどうしますか、といったところか。

房田は少し笑った。
その意図は分からない。

ミ,,゚Д゚彡「……」

ミ,,゚Д゚彡「…ま、いいだろ」

(,,゚Д゚)「いいんですか」

ミ,,゚Д゚彡「探検なら仕方ない」

(;・∀・)「あ、ありがとうございます…信じてくれて」

(;´_ゝ`)「なんで、そんな…」

兄者が聞くと、房田が顎をかきながら悩む。

ミ,,゚Д゚彡「そうだなあ」

110名も無きAAのようです:2015/04/09(木) 00:11:36 ID:szvJOWe20

ミ,,゚Д゚彡「抵抗だな」

(;・∀・)「え?」

ミ,,゚Д゚彡「いや。あ、近いうちに大学に電波の調査に行く予定だぞ」

(;´_ゝ`)「え、え」

訳が分からない。
呆気にとられているうちに、二人はさっさと行ってしまった。

取り残されたモララー達は、ただ立ち尽くしていた。
何かから助けられたのかも、と気づいたのは、随分後の事だった。

111名も無きAAのようです:2015/04/09(木) 00:12:19 ID:szvJOWe20
ミ,,゚Д゚彡「房田フサだ」

フサさん適当な苗字にしてごめんなさい
狐娘が可愛く見えてきたよ

今日はここまで

112名も無きAAのようです:2015/04/09(木) 00:14:35 ID:YfwzYn6E0

なんか妙にかっこいいドクオだな

113名も無きAAのようです:2015/04/09(木) 00:45:16 ID:22o9nhXY0
味方かなー?
おつ

114名も無きAAのようです:2015/04/09(木) 00:59:34 ID:TBbG7Ebg0
おつ

115名も無きAAのようです:2015/04/09(木) 01:37:17 ID:HNS8tj520
地球との交信、ロマンだな
好きだよ乙

116名も無きAAのようです:2015/04/09(木) 07:48:52 ID:PU9T3sp20
乙!
「抵抗」ってのがいいなぁ。

117名も無きAAのようです:2015/04/09(木) 15:44:53 ID:4q7l.upg0

いいわぁ、面白いわぁ

118名も無きAAのようです:2015/04/16(木) 19:11:55 ID:BPLGjDYU0

『スラムその3』


上層、その中でも一際大きな建物。
この地域の首相の仕事場だった。

今は深夜だが、建物の窓はところどころが明るい。
熱心なことだと思った。
音を立てないように駐車場に回る。

('A`)「……」

懐中電灯を持った警備員が三人見られた。
目当ての車がどこにあるかは、昼間に見つけてある。
手元の機械に小さく声を吹き込む。

('A`)「駐車場に着いた」

応えたのは、あの名前のない女。

『やっとか。こっちは準備できてる』

('A`)「やってくれ」

少し待つ。
綿密な計画と言うほど考えてある訳ではないが、自信はあった。

119名も無きAAのようです:2015/04/16(木) 19:12:41 ID:BPLGjDYU0
『いくぞ!』

瞬間。
建物の灯りが全て消えた。
窓のものも、駐車場を照らしていた電灯も。
光源は警備員の持つ懐中電灯のみとなるが、そちらにも異変が訪れた。
光が慌ただしく振り回され、警備員達が『浮きかけている』。

女が行ったのは、送電塔の破壊だった。
破壊といっても制御室にある機械を叩き壊すだけなのだが。

(;'A`)「……」

これにより起きたことは、ドクオのいる辺りを含む上層五分の一ほどの停電。
停電の結果は、暗くなるだけでも、建物内の職員の夜勤が無駄になるだけでもない。

周辺の重力を司る重力制御装置も、無効になるのだ。

目当ての車に素早く近づき、軽くなったその後部をそっと持ち上げて角度を作る。
鞄の中から爆弾を取り出し、粘着テープで固定し、車を地面に戻す。

(;'A`)「一つ終わった」

『私はもう逃げてるぞ』

警備員が落ち着きを取り戻し始めている。
首相が使う可能性のある車は複数ある。
二つ目の車に近づいた。

120名も無きAAのようです:2015/04/16(木) 19:14:27 ID:BPLGjDYU0



ふらふらとよろめいていた職員の首をナイフで突き刺し、そのまま横に投げ飛ばした。
これで五人目。

通信が入る。

『一つ終わった』

イ从゚ ー゚ノi、「私はもう逃げてるぞ」

上層の重力制御装置は、送電塔の真下にある。
ドクオのいる地域はほんの少し他の制御装置の影響を受けているが、ここは違う。
つまりこの送電塔が、今の地域で一番重力が弱いということになる。

ドクオと女は弱重力に慣れている。
スラム暮らしで廃材置き場を漁ることもあり、ある程度は対応できる。
上層の警備員との決定的な違いだ。

床に手を突き壁を蹴りながら階段まで向かう。
途中で何人かの邪魔な職員に切りつけたが、構いはしない。

イ从゚ ー゚ノi、「!」

正面から強い光で照らされた。

「と、止まれ!!」

眩しい光で分からないが、銃を構えているのだろう。
仕方がなしに、奪い取った銃を構える。

イ从゚ ー゚ノi、「……」

警備員と女が同時に発砲した。

121名も無きAAのようです:2015/04/16(木) 19:15:12 ID:BPLGjDYU0

「が…ッ!!」

イ从゚ ー゚ノi、「よし」

警備員が倒れるが、女に怪我はない。
それもこれも、この状態に慣れているかどうかの差だった。

手早く銃を奪い、階段を降りる。
止めろ、だの、殺せ、だのといった怒号が上がる。
追いつけるとは思えない。

程なく、建物から出られた。

イ从゚ ー゚ノi、「…」

ナイフを使った為か、返り血がべっとりとついている。
荷物から大きなコートを出し、着込んだ。
ドクオに貰った上質なものらしいので、これを着ていれば返り血は見えないし、職務質問もされない。
血の匂いを嗅がれなければ、だが。

イ从゚ ー゚ノi、「こっちは大丈夫だ」

『上層の5番出口で合流するぞ』

何にせよ、問題なく作戦は成功。
送電塔で奪い取ったものを思い出しながら、悠々と帰路につく。

122名も無きAAのようです:2015/04/16(木) 19:15:58 ID:BPLGjDYU0



翌朝、ドクオの家。
決行は明日だが、そちらには一人で行くので女からは荷物だけを受け取って別れた。
中身を確認する。

拳銃が三丁。
女に使わせてもいいが、大きな音がするものである為に使いどころには困る。

二回、ノックの音がした。
ドクオが扉を開ける。

(`・ω・´)「よろしいですか」

('A`)「…やっと、店の場所を覚えてくれたようで」

(`・ω・´)「明日のことについてです。爆弾の準備はよろしいですか」

('A`)「夜に終わらせてきた」

(`・ω・´)「爆弾が見つかる可能性は?」

('A`)「さあ。ただ見つかったら演説は延期だろう」

123名も無きAAのようです:2015/04/16(木) 19:17:07 ID:BPLGjDYU0

(`・ω・´)「これは、銃を使うんですか」

シャキンの目の前、机の上には銃がある。
不思議だという顔をしている。

('A`)「使わない。仲間が持ってきた」

(`・ω・´)「いいお仲間だ。よければ買い取りましょうか」

('A`)「そうだな、二丁は買ってくれ。一つは残すが」

さて、と前置きをして、呉島が向き直る。
小さな通信機を取り出した。

(`・ω・´)「明日は合図を受けてから車を爆破して下さい。これを渡します」

('A`)「ああ」

(`・ω・´)「私達とて、すぐに目標を捕まえられる訳ではありません。警備隊に阻まれますし、ある程度は逃げられます」

(`・ω・´)「その逃げ道を奪うのが仕事だと思って下さい。演説がはじまってすぐに決行します」

('A`)「分かった」

124名も無きAAのようです:2015/04/16(木) 19:17:50 ID:BPLGjDYU0

(`・ω・´)「……」

('A`)「…」

無言の時間が生まれた。
表情は読みづらい。

(`・ω・´)「気分が優れませんか」

('A`)「…」

(`・ω・´)「以前、爆破で人を殺してしまうかもしれない、と言いましたね。それですか」

('A`)「…」

ドクオは答えない。
呉島は肯定だと解釈したようだ。

(`・ω・´)「…やはり。殺人絡みの依頼は他に流していると聞きますから」

(`・ω・´)「……これはどうでしょう。あなたの仕事をここで終わりにするというのは」

('A`)「…は?」

呉島は少し笑った。

125名も無きAAのようです:2015/04/16(木) 19:18:53 ID:BPLGjDYU0
(`・ω・´)「あとは、もう起爆装置を押すだけです。爆弾の設置だけとはいえ、あなた…いえ、あなた達には非常に助けられました」

(`・ω・´)「今日来たのは、それを持ちかける為でもありまして。報酬を少し減らして…と思っていましたが、銃があるならその方がいい」

呉島は続ける。
親切なようだが、ボタンを押す事と金を秤にかけた、一種の取引だった。

法で厳しく規制されている銃は、流通がかなり限られている。
武器として使うことは勿論、裏で必要とするところに売れば、相当な額がつく。
国の警備隊が持っているような精度の高い上質なものであれば、尚更だ。

(`・ω・´)「拳銃三丁を渡すか、爆破か。選んで下さい」

('A`)「…」

呉島の考えていることは分かる。
ドクオが爆破を躊躇ったことによる計画の破綻を恐れているのだろう。
あわよくば貴重な銃を受け取りたいのだろう。

しばし沈黙の時間が流れる。

126名も無きAAのようです:2015/04/16(木) 19:20:45 ID:BPLGjDYU0
('A`)「…いや」

('A`)「爆破もやろう」

爆破もすることに決めた。

呉島の思惑通りになるのが癪だったのもある。
しかし、何より金の為だった。
呉島は小さくため息をついた。

(`・ω・´)「…なら、分かりました。当初の通りに、明日はお願いしますね」

('A`)「分かった」

(`・ω・´)「銃は今で大丈夫ですか?」

('A`)「そうだな、今買ってくれるんならその方がいい」

しばらくの値段のやり取りの後、銃二丁を売った。
今回のテロ支援の報酬の四分の一程の金額だが、充分な値段となった。

(`・ω・´)「それでは、私はこれで失礼しますが、ドクオさん」

('A`)「?」

(`・ω・´)「あなたがやろうとしていることは、立派な正義ですから」

(`・ω・´)「例えば…今、ニュースになっている無差別通り魔、あれも恐らく、裏での政治家同士の確執が原因でしょう。
そういったことをなくす為に私達が動くのです。それをお忘れなく」

('A`)「…ああ」

127名も無きAAのようです:2015/04/16(木) 19:21:46 ID:BPLGjDYU0

呉島は去った。
残されたのは、大量の金。
合図に使うという機械。

('A`)「…」

それと、殺人を手助けすることによる罪悪感。

決行は明日。
よりリアルに感じられた。

鞄に大雑把に金を詰め、立ち上がった。
呉島の計画に正当性があろうがなかろうが、賢い計画であろうがなかろうが、どうでもよかった。

('A`)「…この金で、一つはクリアだ」

呟いた。

もとより、全て金の為にやっていた。
人が死のうが生きようが、どうでもいい。

どうでもいい、と思いたい。
思わなければ。

('A`)「…………」

スラムで生きるのに向いていないのかもしれない。
人を切り捨てなければ生きていけない。

危険な橋を渡って、普通の生活をする以上の金を手に入れるのなら、尚更。

128名も無きAAのようです:2015/04/16(木) 19:23:18 ID:BPLGjDYU0

('A`)「…」

家を出る。
ドクオは上層に行く為の服に着替えていた。

視線を感じて家の方を振り返る。
いつの間にか、クーが立っていた。

川 ゚ -゚)「…本当にやるのか」

('A`)「……」

川 ゚ -゚)「私は…」

言葉を遮って歩きだす。
クーは着いてこない。

代わりにどこから現れたのか、黒猫が歩いてくる。
しかしただならぬ雰囲気を感じ取り、やがて引き返して朝靄の中に消えていった。

129名も無きAAのようです:2015/04/16(木) 19:24:07 ID:BPLGjDYU0
ここまでっす

130名も無きAAのようです:2015/04/16(木) 19:36:17 ID:3tr7AzfA0

無事テロが成功するの祈ってる

131名も無きAAのようです:2015/04/16(木) 19:36:39 ID:ZRhYnieE0

どうなるんだ…

132名も無きAAのようです:2015/04/16(木) 19:40:25 ID:ESiCCWt20
おつ

133名も無きAAのようです:2015/04/16(木) 23:58:35 ID:soqc8UMc0
おつ

134名も無きAAのようです:2015/04/30(木) 23:33:35 ID:NSjhEXvk0
待っているんだ
http://iup.2ch-library.com/i/i1426788-1430404365.jpg

135名も無きAAのようです:2015/05/01(金) 23:29:39 ID:qL1cOIiAO
海外小説の表紙みたい

136名も無きAAのようです:2015/05/02(土) 09:08:08 ID:WdEiwErA0
分かる
この作品のイメージとまるっきり一緒だった


137名も無きAAのようです:2015/05/03(日) 18:51:56 ID:oUUP7r7E0
>>134
見れないのは俺だけ?

138名も無きAAのようです:2015/11/25(水) 19:30:54 ID:jFCv16tI0

『交差1』


最下層、朝。
早い時間だが、事務所のソファにはドクオが座っていた。
横には黒猫がいて、ドクオの飲むコーヒーを、何それ、とでも言いたげに見ている。

今日が、決行の日。
時間にはまだ早いが、そろそろ準備だ。
手始めに、廊下へのドアを開けた。

('A`)「……」

ドクオは顔を顰めた。
浮浪者が廊下で寝小便を垂れながら眠っていれば、そうもなろうものである。

('A`)「おい」

眠る頭を蹴り飛ばす。
唸り声がして、少ししてから立ち上がった。
大きく伸びをする。

イ从゚ ー゚ノi、「…あぁぁぁぁぁぁ…ふー…」

イ从゚ ー゚ノi、「……いい朝だ」

('A`)「死ね」

139名も無きAAのようです:2015/11/25(水) 19:32:28 ID:jFCv16tI0

今回の作戦には、確実に実行する為に誰も連れて行かないつもりだった。

が、深夜になってこの女がやって来た。

偶然にも呉島と出会い、仕事を貰ったらしい。
曰く、警備員と増援の警察の排除のサポート。
ドクオよりも遥かに血生臭い、しかし報酬も高い仕事。

こうはなれないし、なりたくないと思った。
こっちは、この仕事だけでも一大決心なのに。

('A`)「その格好で中層行くのか」

イ从゚ ー゚ノi、「どうせ汚れるから」

今日の女の格好は、より一段と酷かった。
擦り切れたパーカーだったものは土色に汚れ、ズボンだったものの股の辺りは濡れて異臭を放っている。
スラムに慣れた黒猫すら、少し離れてドクオの後ろにいる程だ。
ドクオの蔑むような視線に気づいたようで、笑った。


イ从゚ ー゚ノi、「薬やって起きたら大体こうだろ、許せ。また綺麗なのを拾ってくるよ」

('A`)「薬やめろ」

イ从゚ ー゚ノi、「無理言うね」

('A`)「せめて俺の家で漏らすな」

イ从゚ ー゚ノi、「寝てる私に言ってくれよ。大じゃないだけいいだろ」

('A`)「そっちも何回かやってんだろ。もう薬回さねえぞ」

イ从゚ ー゚ノi、「掃除するって」

140名も無きAAのようです:2015/11/25(水) 19:34:25 ID:jFCv16tI0

家を出る前に、持ち物の最終確認をする。
とはいえ、する事がする事だけにシンプルなものだ。

通信機。これで爆破命令を受ける。
爆破スイッチ。言わずもがな。
あと、護身用ナイフ。
こんなものだろうか。

女の持ち物は、さらに少ない。

イ从゚ ー゚ノi、「ナイフ。銃もあれば、一応」

('A`)「ほら。無駄弾撃つなよ」

武器、それだけだ。
互いに、金も何も持たない。
こんな浮浪者を連れて公共の交通機関は使えないし、使う気もない。

イ从゚ ー゚ノi、「腹減った」

('A`)「自分の糞でも食ってろ」

イ从゚ ー゚ノi、「根に持つね」

仕方がないのでパンを与えたところ、贅沢にも文句をつけてきた。

イ从゚ ー゚ノi、「腐ってる」

('A`)「お前なら食える」

イ从゚ ー゚ノi、「食えるけど」

141名も無きAAのようです:2015/11/25(水) 19:35:58 ID:jFCv16tI0

女の食事の間は、猫を撫でていた。
心を落ち着ける。

('A`)「…」

クーは、いない。
どこかへ行っているのだろうか、少し前から姿が見えなかった。

好都合、という訳ではないが、それでもよかった。
人を殺しに行く姿など、見られたくない。

('A`)「よし」

覚悟を、決めた。
この仕事で、一つの大きな区切りがつく。

ドクオが立ち上がると、猫と女の視線が自然とそちらに向く。




('A`)「行くぞ、お前ら」

イ从゚ ー゚ノi、「おーう」

「にゃあ」




女が、また大きく伸びをした。

142名も無きAAのようです:2015/11/25(水) 19:37:49 ID:jFCv16tI0

―――――――――

モララーが大きく伸びをした。

彼とトソンは、中層の街中を歩いている。
向かっているのは、電気系統の部品を扱っている店。
本来なら鬱田に通信のお披露目をする日だったが、何故か来れないらしい。

(;・∀・)「まーったく!ついてないよなぁ!こんな朝から…」

(゚、゚トソン「そ、そう言わないでよ」

(;・∀・)「せっかく出力上がると思ったのに…しかも機械の大きさすら変えずに…」

(;・∀・)「故障って!しかも発電機の簡単な故障!なーんか拍子抜けだなー…」

(゚、゚トソン「まぁまぁ」

(;・∀・)「結局鬱田さんも来れないみたいだし…せっかく上手くいってるのに、こう、勿体無いよなあ」

(;・∀・)「…」

(;・∀・)

(;・∀・)「ねえ」

(゚、゚トソン「?」

(;・∀・)「…本当に、上手くいくだろうか」

(゚、゚トソン「え?」

唐突に言うなり、モララーは黙り込む。
少しの間、無言で歩いた。
ただの無言ではなく、モララーが重ねるべき言葉を探している風だった。
トソンはそれを待つために黙っていた。

143名も無きAAのようです:2015/11/25(水) 19:39:18 ID:jFCv16tI0

(;・∀・)「………わからない」

(゚、゚トソン

( ・∀・)「いつもはさ、できなかったら、なんて考えなかったけど、最近は君と同じ。考えるんだ」

(゚、゚;トソン「え、べ、別に私は」

( ・∀・)「知ってるよ。不安で仕方ないでしょ」

( ・∀・)「……、規模が大きくなってきたよね。これがダメなら、スラムを使うことになってる。…場所があれば」

( ・∀・)「これがダメなら、これ。それもダメなら、次はあれ。そうやってやってきたよな」

(゚、゚トソン「うん…」

( ・∀・)「はじめは、僕ら二人でラジオをいじくるだけのサークルだったのに。育ったもんだよ」

二人は、部に入った頃を思い出していた。
一応先輩はいて、「サークル」ではなく「部」である以上、それなりに前から設立されていた筈だった。
しかし、活動はほぼなし。
その先輩も、幽霊部員ならぬ幽霊部長だった。

二人だけで部に入って、ただやりたいことを漠然と語ったのを憶えている。
そして、言い出してからは早かった。
行動力こそが、モララーの最も大きな力だった。

144名も無きAAのようです:2015/11/25(水) 19:40:07 ID:jFCv16tI0

( ・∀・)「今から買ったもので発電機を修理して、それでも足りなかったら?」

( ・∀・)「地球がもう、電波を飛ばすのを諦めていたら?」

( ・∀・)「信号をキャッチしたと思っていたけど、何かのノイズだったら?」

( ・∀・)「規模が大きくなる毎に、退路はなくなるんだ」

( ・∀・)「昔は、代替案も打開策もいくらでもあったのに、今や随分絞られてきた」

トソンが何かを言いかけたのを、目で制した。
強い目だとトソンは思った。

( ・∀・)「分かってるよ。勿論諦めはしないさ。『次の手』はある。今はある」

( ・∀・)「…でも、『さらにその次の手』を、僕はもう思いつかない」

( ・∀・)「……本当に、上手くいくだろうか。だから、僕は今、不安だ」

(゚、゚トソン「…」

145名も無きAAのようです:2015/11/25(水) 19:41:39 ID:jFCv16tI0

(゚、゚トソン「…」

(゚、゚;トソン「……」

(゚、゚;トソン「あ」

( ・∀・)「?」

(゚、゚;トソン「えっと」

(;・∀・)「?」

(゚、゚;トソン「えーーーっと」

(;・∀・)「な、なに」

トソンは大きく息をついた。
はっきり意見を言うのも、長く話すのも苦手な彼女には、少し準備の時間が必要だった。

でも、話さなくてはならないとも分かっていた。
ここでしっかり自分の考えを言えなかったら、モララーは潰れてしまう、そんな気がしていた。

話す前から、話すことを心の中で大雑把に組み立てるだけで、胸が痛いほど緊張していた。
何かが喉に張り付き、何故か吐きそうだった。

(゚、゚;トソン「ちょっと、座りましょう。そ、そこのベンチに」

(;・∀・)「あ、うん」

146名も無きAAのようです:2015/11/25(水) 19:42:38 ID:jFCv16tI0

(゚、゚;トソン「あの」

(゚、゚;トソン「あの、ですね」

(゚、゚;トソン「き、きみが入部した頃、こんなことになると思いましたか」

(;・∀・)「あの頃?そりゃ、思わなかったよ」

(゚、゚;トソン「後輩が、は、入るとは思ってましたか」

(;・∀・)「いや…それも期待してなかった」

(゚、゚;トソン「あ、おおきな機械を、作るかも、とは?」

(;・∀・)「それは思ってた…というか、いずれ、そうなるだろうと」

(゚、゚;トソン「…、そ、そうです。そうなんです」

(;・∀・)「?」

モララーは、まだ分かっていない。

当たり前だと思った。
まだ、何の中身も話せていない。
改めて、自分の話の出来なさに嫌気がさす。

147名も無きAAのようです:2015/11/25(水) 19:44:38 ID:jFCv16tI0

(゚、゚;トソン「そうです。いつでも、そうだった」

(゚、゚;トソン「い、一寸先は、見えないんです」

モララーの目には、まだ疑問の色がある。
まだ、話さなくては。
半端では終えられない。

(゚、゚;トソン「今からスラムに機械を構えてどうなるか、なんて」

(゚、゚;トソン「わ、あ、分からなくて当たり前です」

(゚、゚;トソン「今から分かる事なんて、す、少なくて当たり前です。機械を修理してどうなるかも、分からないのに」

(゚、゚;トソン「見えない物を怖がって、不安にならないで下さい」

(゚、゚;トソン「きみが、きみが、モララーが怖がっていたら、私は」

( 、 ;トソン「私は、わ、私は、私はどう、どうしたらいいんですか……」

知らず涙が流れた。
もう話せないと思った。

確かに話したいことの中心は話したが、まだ、話したいことは山程ある。
ただ、もう嗚咽しか出てこなかった。
何も浮かばない、言葉が纏まらない。

こんな自分が情けない。
相手任せではいけないことは知っているが、何故かもう話せなかった。
モララーに頼りきりのこれまでだったのを悔いた。

148名も無きAAのようです:2015/11/25(水) 19:46:08 ID:jFCv16tI0

しばし、二人は黙っていた。
街の雑音の中にあって、痛いほどの沈黙。

トソンが落ち着いてきた頃に、おずおずとモララーが話し出す。

(;・∀・)「なんか、ごめん…。大丈夫?」

(゚、゚;トソン「あ、だ、大丈夫です…すみません」

(;・∀・)「やーー…端から見たら痴話喧嘩だな、これは」

(゚、゚;トソン「で、ですね…ごめんなさい…」

( ・∀・)「僕は、もう大丈夫」

(゚、゚;トソン「あ…ほ、本当に?」

( ・∀・)「本当に。なんかスッキリした!」

( ・∀・)「ありがとうね、話聞いてくれて」

トソンは、彼が不安がる様子をあまり見たことがなかった。
いつも隠していたのかもしれない、と思った。

149名も無きAAのようです:2015/11/25(水) 19:47:05 ID:jFCv16tI0

(゚、゚;トソン「…あの」

(゚、゚;トソン「えと」

(゚、゚;トソン「また、な、何かあったら話してください」

自分自身の会話の拙さにまた辟易する。
これでは何も伝わらない、と思った。

しかし、モララーは今度は大きく頷いてくれた。
大真面目に。

( ・∀・)「うん、よろしく」

今度は僕が泣くかもね、と冗談めいた調子で言う。

モララーがベンチから勢いよく立ち上がった。

( ・∀・)「なんか人が多いと思ってたが、アレか。あの放送塔?テレビ塔?で演説があるんだっけ?」

トソンも立ち上がり、テレビ塔を見た。
大きなモニターは、待機状態だ。

(゚、゚トソン「ま、まだ始まらないみたいですけど、人は集まってますし、多分そうです」

( ・∀・)「…いや、もう始まる感じかな?」

(゚、゚トソン「……?」

人々のざわめきが大きくなる。


モニターの画面が揺らいだ。

150名も無きAAのようです:2015/11/25(水) 19:48:48 ID:jFCv16tI0

――――――

モニターが揺らいだ。
まだ画面はつかないが、群衆がざわめく。

(,,゚Д゚)「もうすぐじゃないすか?」

ミ,,゚Д゚彡「かもなあ」

(;,゚Д゚)「やる気出してくださいよ…」

ギコとフサは、警備に駆り出されていた。
二人はもちろん警察官であり、警備員ではない。

フサは今ひとつお気に召さないらしく、堂々と煙草を吸っている。

ミ,,゚Д゚彡「お偉いさんだか何だか知らないがよ、演説を何でここでやるんだよ。演説といえば駅だろ」

(,,゚Д゚)「仕方ないですよ。この規模ですから」

随分前に、首相は建物内に入っている。
ギコとフサは、その建物入り口付近の担当のうちの二人だった。

ミ,,゚Д゚彡「だいたいこんな事して、狙ってくださいと言ってるようなもんだ。このご時世に」

(,,゚Д゚)「三、四年前だかもありましたよね、テロ」

ミ,,゚Д゚彡「あー。あれは下層で、目的も組織も全く違ったがな」

151名も無きAAのようです:2015/11/25(水) 19:50:20 ID:jFCv16tI0

ミ,,゚Д゚彡「早く終わってくれねえかな」

ざわつく人々をぼうっと見ながら、ギコも別の事を考えていた。
この前の揉み消された通り魔事件。
犯人は、十中八九、犯罪の温床スラムにいるだろう。
もう、本当に自分一人には手を出せない位置だ。
そのうち、こんな裏の根回しにも慣れてしまうのだろうか。
そう思うと少し悲しい。

(,,゚Д゚)「スラムがアレなんだよなー、そもそも…」

あんな場所があるからよくないのであって、首相がどうにかすべきだと思っていた。
それこそ支持率も上がるだろうに、とか。

ミ,,゚Д゚彡「なあ」

(;,゚Д゚)「あ、はい?」

唐突にフサが話しかけてきた。
少し驚いてしまった。

ミ,,゚Д゚彡「いや、この前のスラムにいた大学生」

(,,゚Д゚)「ああ、あの…」

ちょうどスラムのことを考えていたので、驚いた。

通り魔に遭った大学生達が、何故かスラムにいたことについてだろう。
怪しさ満点だ。

152名も無きAAのようです:2015/11/25(水) 19:51:06 ID:jFCv16tI0

ミ,,゚Д゚彡「あいつらは、いいな。気に入った」

(;,゚Д゚)「は?」

ミ,,゚Д゚彡「夢があるだろ」

(;,゚Д゚)「犯罪の匂いしかしなくないですか?」

ミ,,゚Д゚彡「何してるかは知らないし、確かに罪かも知れないが、何というか」

フサが一度煙を吐く。

ミ,,゚Д゚彡「目的があって、危険を承知であんなところにいるんだ、って感じがする」

(,,゚Д゚)「…まあ、確かに」

ミ,,゚Д゚彡「ああいう若者は、好きだ」

(,,゚Д゚)「好きそうですね、フサさん特に」

ミ,,゚Д゚彡「ああ、好きだ。大人より、よほど真っ直ぐだ」

通り魔事件の揉み消しのことを言っているのだろうが、ギコは何も言わなかった。

153名も無きAAのようです:2015/11/25(水) 19:52:08 ID:jFCv16tI0

ミ,,゚Д゚彡「奥さん元気か」

(;,゚Д゚)「話題コロコロ変えますね…。奥さんじゃないですよ」

ミ;,゚Д゚彡「暇なんだよ。…で、いつ結婚すんだよ」

(;,゚Д゚)「あやーーー…それは、まだ…早いかなーって…」

恋人、しぃの姿を思い浮かべる。
結婚という言葉は、確かにちらついてはきている。

しかし、踏ん切りがつかない。

(;,゚Д゚)「でもこう…なんというか」

ミ,,゚Д゚彡「なんだよ」

(;,゚Д゚)「……それよりフサさんどうなんすか」

ミ;,゚Д゚彡「イヤミか。俺はモテねえんだよ」

(;,゚Д゚)「そんなことないでしょー…」

ミ;,゚Д゚彡「あーもう…トイレ行ってくる」

(,,゚Д゚)「あ、はい」

154名も無きAAのようです:2015/11/25(水) 19:52:51 ID:jFCv16tI0

(,,゚Д゚)

俄かに暇になる。

あの大学生達は、ギコも好きだった。
フサと同じような理由で。
やはり、夢を追う姿は、眩しく見えた。

夕飯時に、何度もしぃに話した覚えがある。

彼らは、何かに成功するだろうか。
何をしているかは知らないが、スラムまで使う以上、大掛かりなことをするのだろう。
部外者ながら、密かに楽しみだ。

(;,゚Д゚)「ふう…」

ざざ、と、頭上のスピーカーからノイズが走った。

(,,゚Д゚)「はじまったか。フサさん帰ってこないけど」

頭が、仕事用に切り替わる。
と言ってもただの警備だし、とりあえずは立っているだけだ。

首相の声がうるさいぐらいの音量で流れてくる。
これから一時間スピーカーの真下は、辛いかもしれない。

カレーが食べたい、と思った。

155名も無きAAのようです:2015/11/25(水) 19:54:04 ID:jFCv16tI0

(,,゚Д゚)

遠くに帰ってくるフサの姿を見つけた、その矢先だった。



何故か、目の前が真っ白になった。




何故か、音が何も聞こえなくなった。




身体中から力が抜けた。どうしてか視界がぐるぐると回る。




気づけば、周りの人と一緒に地面に倒れていた。




だんだんと、音が帰ってくる。体は何故か痛くない。




まず聞こえたのは、悲鳴。次いで爆発音。




テロだ、と思ったところで、ギコの意識は闇に落ちた。

156名も無きAAのようです:2015/11/25(水) 19:54:53 ID:jFCv16tI0
逃亡ぶっこいてました申し訳ねぇっす
あと頂いた絵は消えるまえにキッチリ見てアヘってました
あと1、2話で終わる予定です

157名も無きAAのようです:2015/11/25(水) 21:18:27 ID:e5cR.zrE0
来てたな、乙
次も楽しみにしてる

158名も無きAAのようです:2015/11/26(木) 13:05:25 ID:rcFaH/9Q0
おかえりなさい!!!

159名も無きAAのようです:2015/11/26(木) 14:16:41 ID:o4zITdt.0
乙!待ってたよー
大学生サイドもドクオサイドも気になるな

160名も無きAAのようです:2015/11/26(木) 18:40:45 ID:zJeuJZEgO
皆さん、オワコン社長をよろしくお願いします。気に入ったらチャンネル登録!!
http://www.youtube.com/watch?v=XJBsJBnlHRQ
http://www.youtube.com/watch?v=aSMLi2uOkvk
http://www.youtube.com/watch?v=cbwrnLKERpA
http://www.youtube.com/watch?v=gPevsHpSj-Y
http://www.youtube.com/watch?v=9ekKaVB5uHg
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http://www.youtube.com/watch?v=hekgfuTcX6o
http://www.youtube.com/watch?v=1uzYFjN7z5E

161名も無きAAのようです:2015/11/27(金) 00:07:41 ID:H0LSJ.T20
内容忘れたから最初から読む

162名も無きAAのようです:2015/11/27(金) 00:13:33 ID:MKc9orrU0
おっ!久しぶりだな!

163名も無きAAのようです:2015/11/27(金) 22:22:26 ID:kGOiR2..0

『交差その2』


(;,゚Д゚)

一度目を閉じて、また目を開けただけの、短い時間だと思っていた。
現実はそうではなかった。
気を失っていたようだ。

スピーカーからは、がんがんと声が聞こえる。
聞き取れない。
それどころではない。

周りの状況を見る。

車が燃えている。
人が走り回っている。
人が倒れている。
武装した人が、建物内に入っていく。

動かなければ。

(;,゚Д゚)「……っ!!!」

ふらつきながら、どうにか立ち上がった。
身体中が引き裂かれるように痛い。

トランシーバーに手をかけたが、無駄だと分かった。
完全に壊れてしまっている。

考えなければ。
冷静にならなければ。
自分一人で。

164名も無きAAのようです:2015/11/27(金) 22:23:30 ID:kGOiR2..0

(;,゚Д゚)

横に倒れている警備員を見る。

首を切られて、『殺されている』。
その横も同様だ。

(;,゚Д゚)「…なんだってんだ!?」

フサの姿を最後に見た地点は、車のすぐ横だった。
その車は、今やごうごうと燃え上がっている。

一瞬だけ見えた記憶だと、あの車が最初に爆発していた。

(;,゚Д゚)

生きているか、どこにいるか分からないフサよりも、目の前に沢山見えている人を助けるべきだ、と冷静に判断できた。

自分の体は、動かせる。
今は、それだけ分かれば、いい。

視界の端に、救急車が映った。

(;,゚Д゚)「あれか」

165名も無きAAのようです:2015/11/27(金) 22:25:04 ID:kGOiR2..0

救急車に駆け寄り、中の救急隊員に声をかける。
隊員はギコの姿を見て少し驚いたようだった。
救急車の中でやっているのは、緊急的な止血のようだ。

(,,゚Д゚)「おい!!あんた!!」

(-@∀@)「警備員の方ですか?」

(,,゚Д゚)「そうだ!俺はどうすればいい!」

(-@∀@)「ここから一番近いのはビップ病院、次いでソウサク病院です。両方に連絡はついていますので、そこに怪我人を運び込んでください!往復する救急車では足りなければ、他の車でもなんでも構いません!」

(,,゚Д゚)「分かった!」

急な質問にも、しっかりと返してくれた。
目標が見えたのはありがたいことだ。
踵を返して、周りを見渡す。

酷い様子だ。

人々は悲鳴をあげるか倒れるか。
建物の中からは時折発砲音が聞こえる。
爆心地には、もはや目を向けることもできない。

(,,゚Д゚)

できることを、しなければ。

166名も無きAAのようです:2015/11/27(金) 22:27:01 ID:kGOiR2..0

(;,゚Д゚)「あれは…?」

放送塔の、大きなモニターを見る。
見たことのある顔が大写しにされていた。

テロ組織の長。
指名手配犯。

(#,,゚Д゚)「クソが!!あいつらか!!」

怒りが沸き起こるが、それどころではないと思い直す。
とにかく、あそこに機動隊が入ったのは見た。
今の目的は、人命救助だ。

それからは、ただ走り回っていた。

一人を救急車に放り込み、二人目を運転してくれるという人の車に担ぎ入れる。
同じように三人目を助けようと思ったが、その人は既に死んでいた。

(;,゚Д゚)「………!」

厳しい話だが、死人を運んでいる余裕は、今はない。
断腸の思いでそこを離れた。
一人でも多く助ける必要がある、仕方ない、と自分に言い聞かせながら走った。

また数人助けたあたりで、急激な眩暈に襲われた。

改めて、自分の体を見る。

大火傷だ。
これまで気づかなかったのが不思議なほどの、恐ろしい出血だった。

167名も無きAAのようです:2015/11/27(金) 22:28:06 ID:kGOiR2..0

(;,゚Д゚)「く、そ…」

出血を意識した瞬間、視界が大きく歪む。
体のバランスが崩れるのを感じる。
抗えずに、道路に倒れてしまった。

もう、体は一寸たりとも動かない。

強制的にテロリストの演説が聞こえてくる。
もはや繋がった言葉の意味は分からないが、耳がひとつの単語を拾った。

(;,゚Д゚)「何が…何が」

(#,,゚Д゚)「何が『平等』だ……」



彼の意識は、ここで再び途切れた。

168名も無きAAのようです:2015/11/27(金) 22:29:09 ID:kGOiR2..0

――――――

(゚、゚;トソン「モララー!!モララー!!!だ、大丈夫ですか!!」

目の前の恐慌状態など、目に入らなかった。



(; ∀ )

モララーが、腹から血を流して倒れている。



原因など探っている暇ではないが、トソンにも、そしてモララーにも分からなかった。
二人は、放送塔を取り巻く群衆の、一番外側にいたのに。
真横のトソンは、せいぜい尻餅をつくだけで済んだのに。

(; ∀ )「が…げほっ…」

モララーが辛そうに咳をする。
口から血が吹き出た。

(゚、゚;トソン「あ、あ、あ、あ…う…」

対処法が分からない。
救急車が来てくれるとは思えない。
周りの人が助けてくれる見込みもない。

目が回る。
言葉も出ない。
何も分からない。

逃げ惑う群衆の中、二人は孤独だった。

169名も無きAAのようです:2015/11/27(金) 22:30:33 ID:kGOiR2..0

(; ∀ )「…ごほっ!ごぼっ…」

モララーが辛そうなのだけは分かっていた。
それだけ分かってもどうしようもなかった。

(゚、゚;トソン「ど、ど、どうしたら…!も、モララー!!大丈夫ですか!?モララー!!!!」

間抜けな言葉だと思った。
大丈夫なわけがないのに、そう言うしかない自分に腹が立った。

左手でモララーの手を握り、右手で丸めた上着を傷口に押し当てている。
止血のつもりだった。
背中側から血だまりが広がってくるあたり、何かが貫通したのだと理解できた。
理解できても、どうしようもない。

何をすれば、どうしよう。
無意味な言葉だけが頭をぐるぐると回る。
何もできない。

涙が溢れた。
私は無力だ、と思った。

考えなければならないのに。
動かなければならないのに。
何もできない。

(;、; トソン「ああ…ううう…モララー…」

(; ∀ )「と… そ」

激しく咳き込みながら、モララーが何かを言おうとする。
聞くべきだと思った。
一言一句、漏らさず。

170名も無きAAのようです:2015/11/27(金) 22:31:46 ID:kGOiR2..0

(; ∀ )「け…げぼっ…ごっほ…ぁ…」

(;、; トソン「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…うぅぅぅ…ぅ…」

(; ∀ )「け、が…は、」

また咳き込む。
口からも、お腹からも、血は止まらない。

(; ∀ )「け が…は、……ない、かッ…?」

(;、; トソン「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

自分が不甲斐なかった。
この状態の彼に心配されるなんて。

(;、; トソン「だ、ぁ、誰か、だれかぁぁぁぁぁぁぁ…だれかぁぁぁぁぁ…」

助けを呼ぶことしかできない。
それも満足にできていない。

一緒にいたのに、肝心なときに助けられない。

(;、; トソン「まってよおぉぉぉぉぉぉぉぉ…あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

(;、; トソン「なんでぇぇぇぇぇぇぇ…あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………」

泣くことしかできない。
誰も来ない。

171名も無きAAのようです:2015/11/27(金) 22:32:57 ID:kGOiR2..0

「―――」

何か聞こえた。
話しかけられていると気づくのに少しかかった。

血塗れの男性が、こちらに叫んでいた。

(;,゚Д゚)「おいッ!!!!」

(;、; トソン「ぁ…」

(;,゚Д゚)「怪我はないかと聞いてるんだ!!!」

(;、; トソン「かれが、かれがぁぁぁぁぁ…」

(;,゚Д゚)「それは分かる!!あんただよ!!!!」

(;、; トソン「な、な、ないですぅぅ…」

言う間にも、男性はモララーを担ぎあげる。
しっかりとした声で、私に言葉を叩き込む。

(;,゚Д゚)「いいな!!無事なら!!怪我人を!!!ここから近いビップ病院か!!ソウサク病院に運べ!!!!その辺の車でもなんでもいい!!いいな!!!!」

(;,゚Д゚)「救急隊員は来てるが、限界がある!!聞いてるな!?」

(;、; トソン「はいぃぃ…」

172名も無きAAのようです:2015/11/27(金) 22:33:49 ID:kGOiR2..0

男性は行ってしまった。
迅速で、力強かった。

ふらふらと立ち上がる。
男性の後を追おうとして、転んだ。


(;、; トソン「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」


涙は拭っても拭っても、流れる。

やらなければ、と思った。

怪我人を積み込んでいる車が何台も見えた。
救急車と、隊員が見えた。

やらなければ。

泣いている暇はない。


(;、; トソン「うぅぅぅぅ…ぁぁぁぁぁ…」


助けられた。


今度こそ、自分がやらなければ。


しかし、体は動いてくれなかった。

173名も無きAAのようです:2015/11/27(金) 22:34:29 ID:kGOiR2..0

――――――
―――



最下層。
一人の男が、ふらふらと歩いていた。
大きな鞄を持っている。
その後ろには、猫。
不安そうに男の背中を追っている。

(;'A`)

思考がまとまらなかった。
スイッチを押してすぐ、鞄を持った呉島の部下がやって来た。
報酬らしい。
中身は確認したが、かなりの額と重量だ。

同時に、別の路地から女が矢のように飛び出し、起き上がりつつある警備員の首を片端から掻き切っていった。
五人までは見ていたが、そこから先は影に隠れて見えなかった。

(;'A`)

自分がやったのだ。
あの大騒動の、火付け役を。

174名も無きAAのようです:2015/11/27(金) 22:35:43 ID:kGOiR2..0

見通しが、甘かった。
たくさんの人が、吹き飛んだ。
怪我をし、そして死んだ。

思っていたよりも、爆発は大きかった。


あの中層を、さながら地獄のような場所に変えたのは、他ならぬ自分だ。

息が荒い。
どうしても呼吸がおさまらない。


しかし。
しかし、金は手に入ったのだ。

(;'A`)「これでいい」

口に出す。
どうしても、達成するべき目的があった。
クーの為だ、と自分に強く言い聞かせた。

しっかりしなければ、と思った。

だが、そのクーの姿は見えない。
どこにもいなかった。

不安が募る。

175名も無きAAのようです:2015/11/27(金) 22:37:35 ID:kGOiR2..0

イ从゚ ー゚ノi、「…よう。お疲れだね」

細い路地から、名無しの女が出てきた。

服も髪も、べっとりと赤黒く染まっている。
出発前の饐えた臭いは、今やむせ返るような血のそれに変わっていた。
また地獄を思い出し、吐き気がした。

(;'A`)「…、…早かったじゃないか」

イ从゚ ー゚ノi、「応援の奴らは真っ先に塔に入っちまったからね。警備員十三人、なかなかだろ。あと、あんたの歩きが遅いんだ」

女は、行動と撤退は速くするに限る、と付け加えた。

(;'A`)「…着替えてこい」

イ从゚ ー゚ノi、「言われなくとも」

また、違う路地に女が消えていった。
去りゆく赤い背中は、彼には同じ人間には見えなかった。

また一人と一匹で歩く。
とりあえず、目的の金は手に入ったのだ。
これでいい、と自分に言い聞かせ続ける。

176名も無きAAのようです:2015/11/27(金) 22:38:54 ID:kGOiR2..0

(;'A`)

誰かが道を塞いでいる。

ここ最下層において、道に人が寝ていることなど日常茶飯事だった。
それでも道が『塞がれている』と感じたのは、その寝ている本人と強く目が合うからだった。

【+  】ゞ゚)「……よう」

(;'A`)「…よう」

名前も知らない、浮浪者。
段ボールの中から、ゆっくりと立ち上がった。
彼に懐いている筈の猫も、何故か今はじゃれつかない。

【+  】ゞ゚)「テロ」

(;'A`)「……」

【+  】ゞ゚)「お前…だな?」

何故わかった、というドクオの考えを読むように続ける。
会話の意図が見えない。
濁った目に全て見透かされているようで、彼は怖くなった。

【+  】ゞ゚)「簡単だ…。呉島が、お前の家に、行くのを見た」


【+  】ゞ゚)「放送塔、あそこでは、俺の…兄が、働いている」

(;'A`)「…」

【+  】ゞ゚)「縁は、切られたが、兄だ」

177名も無きAAのようです:2015/11/27(金) 22:40:08 ID:kGOiR2..0

(;'A`)「……何だ。口止め料か」

当然、違うのは分かっていた。
が、何か言わずには、心が保たなかった。

【+  】ゞ゚)「…この際だ。はっきりさせろ」

(;'A`)「何、を」

沈黙の時間が流れた。
単なる空白ではなく、きりきりと張り詰めた、恐ろしい静寂だった。

【+  】ゞ゚)「お前が…たまに上層に金を持って行っている、あれは何だ」

(;'A`)「…」

答えられない。


【+  】ゞ゚)「…そうか」

【+  】ゞ゚)「質問を、変えよう」

178名も無きAAのようです:2015/11/27(金) 22:40:55 ID:kGOiR2..0

【+  】ゞ゚)「薬は、やってるのか」

(;'A`)「やってない…何が言いたい」

質問の意味がまだ分からず、苛ついてきた。
浮浪者がため息をついた。

【+  】ゞ゚)「おまえが、…狂っているか、狂っていないかを知りたい」

【+  】ゞ゚)「狂っていれば…それまで。言うことはない」

【+  】ゞ゚)「狂って…もしも狂っていなければ、そこまでして…金に執着する、理由を聞きたい」

【+  】ゞ゚)「俺の兄を、殺してまで。…というのは、私怨だがな」

(;'A`)「狂ってなんかいない。だから、これだけ稼げるんだ」

鞄を見せる。

断言できた。
自分はまともだ。

【+  】ゞ゚)「狂人…は、皆、そう言う。判断するのは、俺だ」

【+  】ゞ゚)「最後の、質問だ」

【+  】ゞ゚)「今は、いないみたいだが、な…その様子から」

(;'A`)「…なんだ」

179名も無きAAのようです:2015/11/27(金) 22:41:43 ID:kGOiR2..0











【+  】ゞ゚)「お前は、いつも、……誰と話していたんだ?」











.

180名も無きAAのようです:2015/11/27(金) 22:42:25 ID:kGOiR2..0
つぎでおわりかも

181名も無きAAのようです:2015/11/27(金) 22:47:02 ID:tr5rinVk0
ええええええ
続き気になり過ぎて禿げた

182名も無きAAのようです:2015/11/27(金) 22:50:52 ID:Wh9DjhHg0

慌てて読み返したが、クー会話してるようでドクオ以外と話してないな……
まじかよ

183名も無きAAのようです:2015/11/27(金) 23:10:31 ID:qKPj91lQ0
最終回たのしみ

184名も無きAAのようです:2016/03/22(火) 19:30:38 ID:ZDx3VL.Q0

『交差3』


病院の廊下を、二人が歩いている。
片方の体には包帯が残り、痛々しい姿を晒している。
しかし、見た目よりは余程しっかりとした足取りだ。

やがて二人がある病室の前で立ち止まり、かかる名札を確かめてから開けた。


(,,゚Д゚)「…フサさん?起きてます?」

(*゚ー゚)「こんにちは」

根子ギコ。
横にいるのは、その恋人だ。

ミ;,゚Д゚彡「おうおう」

呼ばれた男性が、ベッドから上体を起こした。
瞬間、慌てて二人が駆け寄る。

(;,゚Д゚)「いやいやいや!なんで起きようとするんですか!!」

ミ;,゚Д゚彡「呼んだろ」

(;,゚Д゚)「横になってていいんですよ!大怪我どころじゃないんですよ!」

185名も無きAAのようです:2016/03/22(火) 19:32:06 ID:ZDx3VL.Q0

房田フサは、五体無事に生きていた。
件のテロ、その爆発の付近にいながら、である。奇跡としか言いようがなかった。
長期入院が必要となってはいるものの、入院五日目には意識を回復させた。二度目の奇跡であった。
本来なら動く筈もないのにのっそりと起き上がろうとするミイラ男を見て、看護婦が一人気絶したのはまた別の話である。
ともかく、入院から一週間経つ今日、ようやく面会を許された。

ミ,,゚Д゚彡「体だけは強いんだ、問題ない」

(;,゚Д゚)「ありますって…」

フサが横の女性を見て、またギコを見る。
誰だ、と問いたげだ。

(*゚ー゚)「こんにちは…」

(;,゚Д゚)「えっとですね、彼女、といいますか、そんな感じの…。しぃです」

ミ,,゚Д゚彡「自慢かコラ」

(;,゚Д゚)「だってほら、果物持ってきたけど俺ひとりじゃ皮むけないんですよ…」

ミ,,゚Д゚彡「そのまま食うから構わんぞ」

(;,゚Д゚)「いやいや…」

186名も無きAAのようです:2016/03/22(火) 19:32:59 ID:ZDx3VL.Q0

(*゚ー゚)「ふふ」

二人のやりとりに微笑みながら、しぃは林檎の皮を剥き始めた。
フサは、ギコの話の中に何度となく出てくる。
彼の話の通り、不器用を体現したような温かな人だと感じた。

(;,゚Д゚)「……あー、それで、ですね」

ギコが何かを切り出す。
やたらと言い辛そうだ。

ミ,,゚Д゚彡「?」

(;,゚Д゚)「今日二人で来たのはですね、果物もそうなんですけど、紹介っていうか、報告っていうか」

(;,゚Д゚)「そういう、なんというか、あの」

ミ,,゚Д゚彡「結婚すんのか」

(;,゚Д゚)「なんで言うんですか!」

ミ,,゚Д゚彡「今の調子でどう言い切る気だったんだ」

(;,゚Д゚)「いやまぁ…そういうことなんです」

187名も無きAAのようです:2016/03/22(火) 19:34:27 ID:ZDx3VL.Q0

ミ;,゚Д゚彡「はぁー…」

(*゚ー゚)「…?」

フサは不思議そうにしぃを眺める。
しぃも少し緊張気味に姿勢を正した。

ミ;,゚Д゚彡「アンタ、本当にこいつでいいのか?何なら部下のいい奴紹介するが」

(;*゚ー゚)「えっと」

(;,゚Д゚)「やめて下さい!」

フサは冗談めいたように笑う。
ギコがため息をついた。

(,,゚Д゚)「式とかはほら、ほんと小さいんですけど、フサさんが退院したらやろうかなって」

ミ;,゚Д゚彡「別に俺を気にしなくてもいいんだが」

(;,゚Д゚)「何言ってんですか…」

少しの間、誰も話さない時間が過ぎた。
ややあって、フサが静かに口を開く。

188名も無きAAのようです:2016/03/22(火) 19:36:09 ID:ZDx3VL.Q0

ミ,,゚Д゚彡「しかしアレだ、安心した」

(;,゚Д゚)「?」

ミ,,゚Д゚彡「潰れてるんじゃないかと思ったんだよ、テロで」

(;,゚Д゚)「それは…」

ミ,,゚Д゚彡「そこの奥さんのお陰か」

(;,゚Д゚)「…まぁ、はい」

ミ,,゚Д゚彡「奥さんよ」

(*゚ー゚)「はい」

ミ,,゚Д゚彡「こいつは弱い。昔から何かある度やたらとへこたれるわ、俺が小突けばすぐ泣くわ」

(;,゚Д゚)「泣いてません!」

ミ,,゚Д゚彡「きっとこいつはあんたを必要としてるんだろうよ。少しでも横にいてやれ」

(*゚ー゚)「はい、勿論です」

ミ,,゚Д゚彡「あと子供早く作れよ。このご時世、いつ死ぬか分からんぞ」

(;,゚Д゚)「ちょっと!!」

(*゚ー゚)「うふふ」

189名も無きAAのようです:2016/03/22(火) 19:38:07 ID:ZDx3VL.Q0

(;,゚Д゚)「全くもう…面会時間ももうないんで、今日は引き取ります。明日も同じぐらいの時間に来ますね」

ミ,,゚Д゚彡「おう、…あ、ラジオつけてけ。そこのやつな」

(;,゚Д゚)「はい……はい。これで、と。じゃあ、失礼しました」

(*゚ー゚)「失礼しました」

二人が去っていく。
ドアが閉まり、足音が遠退き、部屋は静かになった。



ミ,,゚Д゚彡「…」

ラジオでは、ちょうど先週のテロのことを放送している。
死者が何人、怪我人が何人。
首相が死んで、テロリストがどうこう。

結局テロリストは演説をするだけして、すぐに去った。
首相の殺害よりも、演説すること自体が目的だったようだ。
民衆の格差についてどうこう言っていたらしいが、正直なところどうでもいい。

ミ,,゚Д゚彡「…かなわんな」

しかし、負けを認める形になるが、警察ではどうしようもなかった。
守るよりも、壊す方がずっと簡単らしい。

190名も無きAAのようです:2016/03/22(火) 19:39:04 ID:ZDx3VL.Q0

ミ,,゚Д゚彡

何人もの部下と上司が死んだが、自分はあまり気にしていない。
その術を身につけている。

それをまだ持たないギコが心配だった。
横の恋人にも限界はあるし、何より最後は自分自信の力で立ち直る必要があるだろう。
それができなければ、いずれ潰れてしまう。

この世界で、その上この職業で、ギコは過剰に図太く生きていけるだろうか。

ミ,,゚Д゚彡「……そのうち、どうにかなるか」

ラジオは、まだテロに夢中だ。


気分を変えたかったのに、この調子ではどこの局も同じだろう。
手を伸ばし、ラジオを切った。

191名も無きAAのようです:2016/03/22(火) 19:39:46 ID:ZDx3VL.Q0

――――――


『中層で起きた大規模なテロ事件による爆破、及び首相の殺害から一週間、未だにその爪痕は――――――』


(゚、゚トソン

手を伸ばし、ラジオを切る。
言われなくても、皆知っていた。

最下層。
スラムにぽっかりと空いた土地に、大きな機械が座り込んでいた。

テロから一週間。


モララーが死んでから、一週間。

192名も無きAAのようです:2016/03/22(火) 19:40:27 ID:ZDx3VL.Q0

( ´_ゝ`)「トソンさん、余ったケーブルどこに置けば」

(゚、゚トソン「あ、こ、こっちに纏めて」

(*゚∀゚)「設置だいたいOKです!」

(゚、゚トソン「あ、ありがとう」

少し前から部室の機械をスラムに移し始め、今それが終わったところだ。
直すはずだった発電機も、しっかり直っている。

トソンは現場監督ということになっている。
実際、毎夜テロの光景を思い出しては寝不足になり、作業どころではなかった。

全員が気を使ってくれるのは、申し訳ないがありがたかった。

(゚、゚;トソン「いたっ」

ケーブルを運ぼうとして、傍の部品で手の甲を切ってしまった。
血が滲むとともに、あの日の様子が嫌でも思い出される。

全身から力が抜け、その場に座り込んでしまった。

(;´・ω・`)「大丈夫ですか」

(゚、゚;トソン「あ、うん…だ、だ、大丈夫…」

193名も無きAAのようです:2016/03/22(火) 19:40:47 ID:/E/GZrPU0
http://is.gd/4twCxM

194名も無きAAのようです:2016/03/22(火) 19:41:25 ID:ZDx3VL.Q0

(゚、゚;トソン

もとの椅子に座る。
大きく深呼吸をして、トラウマを遠ざける。

(゚、゚;トソン

そう、モララーは、死んだ。
病院に着いて間もなく、息を引き取ったらしい。

らしい、というのは、あれから誰もモララーの顔を見ていないからだった。
家族以外、遺体と会うことは許されなかった。

彼の家は上層とはいえ大きな葬式などが行われる程ではなかったようで、モララーの家族を除けば、トソンが見た顔が、彼の最後の表情だった。


苦しみに満ちたあの表情を、忘れることはないだろう。


その後、部員に話をした。
何故か上手く話せた。

決意は固まっていた。
その部員も、彼女に向かって大きく頷いた。


『通信機を完成させよう』


トソンは、モララーのできなかったことを完成させることが、彼の為になると話した。

195名も無きAAのようです:2016/03/22(火) 19:44:22 ID:ZDx3VL.Q0

モララー抜きだと、様々なもののスピードが、がくりと落ちた。
喪う前からもその後も、彼は大きな存在だった。
それでも、不安を振り切るように作業を続けてきた。

彼は今の自分達をどう思い、何を言うだろうか、と考えてみた。

ζ(゚ー゚*ζ「運搬終わりました、組み上げましょう!!」

(゚、゚;トソン「あ、うん」

ふと、デレの声で現実に引き戻される。
トソンは大きく息を吐き、立ち上がった。
今からの新しい発電機を使ってのテストをしてからも、課題は残るだろう。

仮に、もし仮に通信が繋がったとしても、一分も持たない。
機械の発熱と発電機の大きさが原因だった。

だから今からのことに関わらず、これからも作業は続く。

特に、鬱田とはこれからも関わることになるだろう。
まだ、あの店に住んでいて、もちろん何でも請け負ってくれる。
スラムの土地のことも含め、随分世話になっている。

196名も無きAAのようです:2016/03/22(火) 19:45:46 ID:ZDx3VL.Q0

夕方には、機械は組み上がった。
外装も何もない歪な形だが、今の所はこれしかない。
構造は全て自分達が知っているもので、組み上げ自体に苦労はなかった。

( ´_ゝ`)「トソンさん」

名前を呼ばれた。
自分が号令をかける必要がある。

(゚、゚トソン「じゃ、じゃあ、はじめようか」

部員が返事をする。

これで終わる訳ではないのに、心臓は痛いほどに脈打っている。
あまりの緊張に視界が揺れる。
なるべく平静を装うが、できているかは定かではない。

機械の前に立った。

197名も無きAAのようです:2016/03/22(火) 19:46:34 ID:ZDx3VL.Q0


(゚、゚トソン


震える手で、一つ目のスイッチを入れる。
機械の唸りが、大きくなる。

二つ目のスイッチを入れる。
辺りが、ざざあ、というノイズで満たされる。


兄者が慣れた様子で、少し離れて繋がれた画面、そこに映る波形を調整する。

音がだんだんとクリアになっていく。


少しずつ、少しずつ。


頭上に見える地球が、近づいてくる。

198名も無きAAのようです:2016/03/22(火) 19:47:21 ID:ZDx3VL.Q0

(゚、゚;トソン

いよいよ、ノイズが小さくなる。




何か、聞いたことのない音が走った。


全員と目が合う。

今だ、と思った。

何か話さなければ。

台詞はずっと前から決めていた。
簡単な台詞。

しかし、上手く言えるかは分からない。



(゚、゚;トソン「…あ、あー…」


(゚、゚;トソン「聞こえますか、こちらは、月。き、聞こえたら、返事をして、ください。こちらは、月…」


頭上では、いつものように地球が青く輝いていた。

.

199名も無きAAのようです:2016/03/22(火) 19:48:05 ID:ZDx3VL.Q0




















.

200名も無きAAのようです:2016/03/22(火) 19:48:53 ID:ZDx3VL.Q0

――――――


猫の頭上で、いつものように地球が青く輝いている。


ここは最下層。
どこかへ向かってふらふらと歩く男を、猫はなんとなく追っていた。


この男の家に寄るようになって、もう何年になるだろうか。
別にこの男がいなければ死んでいた、という程ではないが、少しは感謝している。

猫には不思議なことがあった。


いつも男の横にいた女性がいない。
ここ一年間ぐらいだろうか、姿を見ていない。
彼以外とは決して話さない、話しかけられもしない、奇妙な人だった。


それにしても、彼はどこに行くのだろうか、と思っていると、一人の人が出てきた。
いつも妙な臭いのする、あの女の人だった。
少し苦手だ。

長話になりそうな雰囲気を感じ、猫は彼らとは違う路地へ向かった。
最近、中層にいい寝床を見つけられたので、そこへ行くことにした。

勝手知ったる最下層を捨てる気はないが、中層に住み着くのも悪くはないと思った。

201名も無きAAのようです:2016/03/22(火) 19:49:35 ID:ZDx3VL.Q0

――――――


最下層。
ドクオの前に、名無しの女が立っている。
今日は、幾分かまともな格好だ。

('A`)「何だ」

イ从゚ ー゚ノi、「これを、返しに」

銃だ。
使わなかったらしい。

('A`)「そうか。じゃあな」

横を通り抜けて去ろうとするところを、女が止める。
手を伸ばした訳でも踏み出した訳でもなく、視線だけの制止だった。

イ从゚ ー゚ノi、「…待ちなよ。話をしよう」

('A`)「行くところがある」


イ从゚ ー゚ノi、「上層だろ。それも、上層の病院だな、その金を持って」

('A`)「…」

イ从゚ ー゚ノi、「悪いね、この前後をつけてみたんだ。気になってね」

202名も無きAAのようです:2016/03/22(火) 19:50:18 ID:ZDx3VL.Q0

イ从゚ ー゚ノi、「そこで、話も少し聞いてみたんだ。警察の真似事だ」

ドクオは話さない。
ただ、女をじっと見ている。
その目に、感情は見えない。

イ从゚ ー゚ノi、「四年前」

イ从゚ ー゚ノi、「…四年前のテロから、らしいね?…一人の女が、ずっと眠ってる。目を、覚まさない」

イ从゚ ー゚ノi、「そいつを、…生かすためのものかな。それ、金は」

イ从゚ ー゚ノi、「健気じゃないか。似合わないよ」

('A`)「…だから何だ」

イ从゚ ー゚ノi、「感動的だ」

女が笑う。
底意地の悪い笑い方だった。

203名も無きAAのようです:2016/03/22(火) 19:51:34 ID:ZDx3VL.Q0

イ从゚ ー゚ノi、「なあ。…最近、あれが無いな?」

('A`)「…」

イ从゚ ー゚ノi、「何もないところに話しかける、あの癖。幽霊か何か知らないが、誰かがいたんだね。知らなかったよ」

イ从゚ ー゚ノi、「…それが、無い。さては、さては……さては、だが」




イ从゚ ー゚ノi、「もう見えないんだね? その女」

('A`)「黙れ」

女に銃を突きつけた。
だというのに、女は怯んだ様子もない。

('A`)「銃を持ってる奴に最下層で喧嘩を売るとは、いい度胸だな」

イ从゚ ー゚ノi、「…お前には撃てない」

('A`)「…」

イ从゚ ー゚ノi、「ほらな。臆病者」

204名も無きAAのようです:2016/03/22(火) 19:52:15 ID:ZDx3VL.Q0

ドクオは、舌打ちをして銃を下ろした。

('A`)「…らしくないぞ。そんなにペラペラ喋って、何が言いたい。何の薬だ」

イ从゚ ー゚ノi、「薬じゃないさ」

女は、ゆっくりと答える。
女の考えが読めないが、こちらの考えが読まれている気がする。
普段のこの女とは、確実に違う。

イ从゚ ー゚ノi、「…その幽霊だかが見えない理由、分かるよ。医者じゃないがね」

イ从゚ ー゚ノi、「あんたが、人を殺したからさ」

イ从゚ ー゚ノi、「もう、見えるようにはならないだろう。あんたは、これからは死体に金を送り続けるのさ」

イ从゚ ー゚ノi、「…今回の仕事でだいぶ入ったようだが、それもまた尽きる。そうしたら、どうするか」

イ从゚ ー゚ノi、「当然、また人を殺すことになる。いずれね」

イ从゚ ー゚ノi、「知ってるか? 人を殺すのに慣れると、ガラリと世界が変わるんだ」

('A`)「…」

イ从゚ ー゚ノi、「……うふふふ、次からは罪悪感もないさ。安心しなよ」

205名も無きAAのようです:2016/03/22(火) 19:53:12 ID:ZDx3VL.Q0

('A`)「もう一度聞く。何が、言いたいんだ」

イ从゚ ー゚ノi、「そりゃ、あんたにここを離れられちゃ困るからさ。そんな気を起こさないように」

('A`)「…どうあろうと、そのうち出て行く」

イ从゚ ー゚ノi、「お前には、できない」

女は断言した。
初めて、この女を怖く思った。

また、この目だ。
寝転がる浮浪者と同じ目で、こちらを見る。
隈のひどい濁った目で、見透かされている。

イ从゚ ー゚ノi、「あんたはもう、ここに染まりきった。ここ以外では、生きられない」

イ从゚ ー゚ノi、「…だって、見えないのかい、それ」

女が、ドクオの手元を指す。
腕を上げて、その手首を見る。


鎖があった。
太く、錆びつき、しかし尚頑丈そうな鎖。


(;'A`)


手首にしっかりと巻きついている。
伸びていく先は、灰色に淀む路地の暗がり。

206名も無きAAのようです:2016/03/22(火) 19:53:55 ID:ZDx3VL.Q0










イ从゚ ー゚ノi、「ようこそ、『最下層』へ」


イ从゚ ー゚ノi、「これからも、よろしくな。相棒」











.

207名も無きAAのようです:2016/03/22(火) 19:54:36 ID:ZDx3VL.Q0















月明かりのネコのようです














.

208名も無きAAのようです:2016/03/22(火) 19:55:34 ID:ZDx3VL.Q0
ひっそりとおわり
最終話に決定的な矛盾を見つけてどうにかしようとしてたらこんな季節だったからとにかく完結させた、申し訳ないです
SF楽しいからまた書きたい

209名も無きAAのようです:2016/03/22(火) 20:16:58 ID:Edef0ufs0

最終話ずっと待ってた
じっとりと胸に何かが残る終わり

210名も無きAAのようです:2016/03/22(火) 21:22:35 ID:jbkRL/iM0
乙、今回上がってきて初めて一気に読んだけど凄く好き。やるせない感じ

モララーたちの感じはフリーダムを思い出した。カップヌードルのアレ

211名も無きAAのようです:2016/03/22(火) 22:26:56 ID:JGmBuRfs0

最終話待ってたよ

212名も無きAAのようです:2016/03/22(火) 22:44:31 ID:j8sPI2UA0
いい世界観だった
フサが生きてたは救いだわ…


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