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('A`)は撃鉄のようです
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__ ,、
く_;:::ハ /::ヘ
(_厂 ヒコ
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1〜15話 >>2
第十六話 仲間を求めて >>6-24
第十七話 Waste Land >>33-71
第十八話 限りある世界 >>89-134
第十九話 ドクオは泥を見た。ミルナは星を見た >>149-173
第二十話 説明をする回>>194-199 >>240 >>200-233
第二十一話 不治のくらやみ その1 >>247-285
第二十二話 不治のくらやみ その2 >>291-363
第二十三話 不治のくらやみ その3 >>374-405
第二十四話 幼年期の終わり >>413-438
第二部終わりです 次回からの第三部で完結予定です
書き溜めは出し切りました 今は25話を書いています
恐らく8〜9月まで逃亡します 頑張って書き溜めます(^ω^)('A`)
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おつー
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クールからの卒業か
続きが気になって仕方ない
待ってるぞ乙
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乙乙、一番気になってる現行だ
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乙!
すごく熱い展開だな
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おつ
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乙
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乙
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(^ω^)こんなのが9ヶ月前からあったんだね('A`)
http://notepad.cc/share/LrIFrDyTbB
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おもしろい
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もうすぐかなぁ?
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明日の夜に投下します
>>447はわたしです| ^o^ |
書き溜めの進捗が見たい人はこれ見てね(^ω^)
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いえぇぇぇぇぇぇす!!
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イリス症候群にかかっててワロタ
楽しみに待ってる
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すごいわかるあらすじ!前回までの撃鉄!
( ゚д゚ )「母さん! 俺もう飽きてやめたりしない!
進研ゼミ(tanasinn)から逃げたりしない! 勉強する(戦う)よ!」
('A`)「マジ無理・・・別にハッキリした理由はないけど人を信用できない・・・」
ミセ*;´ー`)リ「ゲホゲホ! ひーつらい!」
('A`)「なんか困ってる人が居る・・・鬱だけど助けとこ・・・」
( ゚д゚ )「進研ゼミ(tanasinn)から分かりやすい教材(闇堕ち描写)が届いたぞ!」
( ゚д゚ )「これでもう勉強(戦闘)でみんなに置いていかれることもない! うおお!」
('A`)「うっわつよでもがんばろ」
川 ゚ -゚)「がんばれドクオ。あと私には秘密があるけど気にせず戦ってくれ」
('A`)「なにそれ気になる」
( ゚д゚ )「うおおお! これなら期末もばっちりだ!」
('A`)「うおりゃ。あーもう撃鉄落としちゃう」
第二部 おわり
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≪1≫
('A`)「――お前らは、信用出来ない」
(,,゚Д゚)「……じゃあ決まりだ。さっさと失せろ、部外者」
言いながら、ギコはダディクールに視線を送った。
俺の口車に乗れ。ギコの双眸はハッキリとそう語っていた。
|(●), 、(●)、|「……まぁ、どうするかは自由だ。
仲間が必要なのはお互い様だと思っていたが、残念だ」
('A`)「……なんかあったら知らせに来るよ。
関わった手前、それぐらいはさせてほしい」
ドクオは俯いて歩き出し、部屋を後にした。
彼を呼び止めようとする者は、誰も居ない。
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ノパ⊿゚)「……ぬるい奴ら」
ドクオが消えてから最初に喋ったのはヒートだった。
彼女はソファに腰掛けると、暗い雰囲気に対抗するべくテレビを点けた。
録画されていた適当な番組を再生し、音量を上げていく。
|(●), 、(●)、|「……あれが普通の反応だろう。
我々の様子に違和感を覚えて、不信に思うのも仕方ない」
|(●), 、(●)、|「私だって出来れば止めたかった。
しかし、あんな目で訴え掛けられてはなぁ……」
ダディは嫌味たらしい微笑みをギコに向けた。
(#,,゚Д゚)「うるせぇぞ」
ギコがそっぽを向き、悪態をつく。
(,,゚Д゚)「大体な、人死にくらいでビビる奴なら最初っから要らねぇんだ。
ガキが消えて清々したくらいだ。食費も浮くしな」
ノパ⊿゚)「だよなぁ。でなけりゃ、こんな状況で外に追い出したりしねぇよなぁ」
ノパ⊿゚)「訂正するぜ。ひっでえ奴らだ。あんなガキ、いつ殺されてもおかしくねぇわ」
(,,゚Д゚)「……」
.
-
(,,゚Д゚)「……ちょっと行ってくる」
|(●), 、(●)、|「……どこに?」
(#,,゚Д゚)「便所だッ!! 聞くなクソ野郎!」
早足で歩き出し、ギコも部屋を出て行った。
ノパ⊿゚)「……結局追うのかよ。あいつごと殺されるかもな」
|(●), 、(●)、|「……それはないさ」
表情から笑みを消し、ダディは冷たく言い切った。
|(●), 、(●)、|「棺桶死、ヒート、話がある。
ギコにも後で話すが、とりあえず聞いて欲しい」
.
-
【+ 】ゞ゚)「……俺はギコの時でいい。もう少し、休みたい」
部屋の片隅で蹲っていたオサムが、ダディを一瞥して言う。
オサムの顔色はすっかり青ざめており、今にも倒れそうなほど衰弱した様子だった。
|(●), 、(●)、|「……なおるよなら、まだ生きてる」
【+ 】ゞ゚;)「――ッ!?」
そんな彼に対して、ダディは一切の装飾無しで真実を語った。
|(●), 、(●)、|「ギリギリだったが、一命を取り留めた」
ノパ⊿゚)「……お前、やっぱムネオのとこに行きやがったな」
|(●), 、(●)、|「ああ。他に頼る当てが無かった」
【+ 】ゞ゚;)「まっ、待て!」
話に割り込み、オサムは椅子を蹴飛ばして立ち上がった。
【+ 】ゞ゚;)「あいつが生きてるって……」
|(●), 、(●)、|「……そうだ、生きている。あの時だって心臓はまだ動いてた。
お前が第一発見者だが、確認しなかったんだな」
.
-
【+ 】ゞ゚;)「……なおるよは今どこだ」
|(●), 、(●)、|「まず私の質問に答えろ」
ダディは語気を強めて言った。
|(●), 、(●)、|「あの状況で、どうして彼が死んだと思った?」
【+ 】ゞ゚;)「……見て明らかだった」
|(●), 、(●)、|「お前はそんな思い込みで喋る奴じゃない。
何か、彼が死んだと確信するようなものを見てしまったんだろう」
|(●), 、(●)、|「例えば、自分より強い誰か、とか」
【+ 】ゞ゚;)「……」
ノパ⊿゚)「……じゃあコイツ、なおるよをやった犯人を見てるのか?」
|(●), 、(●)、|「……私はそう思っているし、もう犯人の見当もついている」
.
-
|(●), 、(●)、|「棺桶死オサム。
お前はミルナを探しに行って、なおるよを見つけたな」
【+ 】ゞ゚;)「……」
|(●), 、(●)、|「そこで一つ聞きたい。
もしかして、ミルナとなおるよは一緒に居たんじゃないのか?」
|(●), 、(●)、|「だからミルナを探す過程でなおるよを見つけられた。
そうであるなら、犯人は殆ど決まったようなものだろう」
【+ 】ゞ゚;)「……」
畳み掛けるような追求に、オサムは口ごもって言葉を返せなかった。
オサムは隠すことをやめ、ダディの言葉に頷いた。
【+ 】ゞ-;)「……やった所は見てないが、『俺がやった』と奴は言った」
|(●), 、(●)、|「……ミルナは、他に何か言ってなかったか」
【+ 】ゞ゚;)「……俺を殺したら他の奴には手を出さない、と言っていた。
恐らくミルナは、あの姿を見た奴は全員殺す気でいる」
.
-
ノパ⊿゚)「……おい、お前の能力って確かスゲー強かったよな。
当然、勝ったんだよな?」
ノパ⊿゚)「勝ったからお前はここに居て、ミルナは居ないんだよな?」
まさか――と思いながら、ヒートはオサムに問い掛ける。
【+ 】ゞ゚)「……いや、負けた。俺はミルナに殺された」
【+ 】ゞ゚)「死んだふりをして――というか、俺は実際しばらく死んでいた。
ミルナはその間に消えた。俺が今生きてる理由は……」
ノハ;-⊿-)「……不可能を可能にする能力。てめぇも大概だな」
【+ 】ゞ゚)「……ああ。心臓は今も再生中だ。三日もあれば、何とかなる」
オサムは自身の胸に手を当てた。
【+ 】ゞ゚)「……だが、どおりでなおるよを蘇生出来なかった訳だ。
まだ生きていたとは、思ってもみなかった……」
.
-
|(●), 、(●)、|「ミルナが今どこに居るか、分かるか?」
【+ 】ゞ゚)「……時間をくれ。感知する」
目を閉じ、オサムは右目の眼帯に集中した。
ノハ;゚⊿゚)「……まさか今からヤりにいくのか?」
|(●), 、(●)、|「当然。敵は誰であれ早々に消す」
【+ 】ゞ-;)「……居た。商店街の外れだ。誰かと戦ってる」
|(●), 、(●)、|「相手は誰だ?」
【+ 】ゞ-;)「……駄目だ、分からない。俺よりは善戦しているが……」
ノハ;゚⊿゚)「――おいダディ! あっち方角だ!」
その時だった。
ヒートが窓を開けて外に身を乗り出し、遠くの空を指差した。
呼ばれて見に行くと、雨雲の一部が黄金色に輝いているのが目に入った。
そして、光り輝く空の中には黒い影があった。
影は何かの追跡を振り切ろうとしているのか、凄まじい速さで空中を飛び回っている。
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-
「――勝手に、失礼するよ」
誰もが外に目を向けていた、その時。
声は、唐突に彼らの背後に現れた。
|;(●), 、(●)、|「――――ッ!」
ダディは振り返りながら超能力を発動し、視界に入った人影に向けて火炎を打ち出した。
しかし炎は容易くよけられ、空中で四枚の紙切れに変化する。
¥・∀・¥「……四万か。はした金だが、まぁ頂いておこう」
タキシード姿の男は床に落ちた紙切れを拾ってから、ダディ達に面と向かった。
¥・∀・¥「……全員ザコだな。話にならん」
ノパ⊿゚)「……あぁ?」
¥・∀・¥「フン」
ヒートの威嚇に対し、男は生意気に鼻を鳴らした。
.
-
ふと、男が指をパチンと鳴らした。
すると空中に黒い渦のようなものが生まれ、その中から二つの物体が落ちてきた。
\(;^o^)/「――またかよッ!」 ドテッ
(;,,゚Д゚)「おおおッ!?」 ドテッ
床に落ちた二人を見て、ダディ達は揃って目を丸くした。
¥・∀・¥「こいつ、お前らの仲間だろう。
ドクオとやらを追って戦いに行こうとしていたから、止めてやった」
男は拾った紙切れで顔を扇ぎ、得意気に言った。
|;(●), 、(●)、|「……片方は知らんが、片方は確かにそうだ。
だが、お前は一体何者だ……?」
すると正体不明の二人組は一度顔を見合わせ、
¥・∀・¥「瀕死の金持ち」
\(;^o^)/「死にまくってる貧乏人……」
とだけ答えた。
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('A`)は撃鉄のようです
第三部 荒野の果てに
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――雨は止み、雨雲も消え去り、夜が間近に迫っていた。
夕日が、少しずつ地の底へと落ちていく。
( ゚д゚ )「…………」
( A )
意識を取り戻したミルナが最初に見たのは、血だらけで気絶したドクオの姿だった。
ミルナは周囲を一望し、壊滅した街の光景を見て理解した。
tanasinnを制御出来ず、求めた以上の破壊をしてしまった事実が目の前に広がっている。
しかし、ミルナの心に後悔はなかった。
( ゚д゚ )(……間違ってても突き通したいものがあるなら、やるしかない。
そうする事でしか自分を救えないなら、悪と呼ばれる覚悟をして前へ……)
( ゚д゚ )(……この力を選んだ俺も、この考えすらも、間違っているかもしれない。
だが、もうそれでいい。俺は決めた)
ドクオに背を向け、一歩、夕闇に向かって踏み出す。
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( ゚д゚ )(俺はこの間違いを貫く)
( ゚д゚ )(正しさの為に立ち止まるくらいなら、俺はもう、間違ってでも生きていく)
己の正義に殉じた自分。
理想の為に、己の生き方すら忘れた自分。
それらを全て捨て、ミルナは果てしない荒野を一から歩き始める。
身体一つとまっさらな信念を持って、いつか辿り着くその場所へと――
( ゚д゚ )(この道の向こうにしか俺の居場所は無い。
どれだけこの手が汚れていようと、俺はもう一度だけ手を伸ばす……)
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プロローグ 「Another Heaven」
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またあとで一話分投下します('A`)
深夜になるので待ってたら駄目だよ('A`)
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待ってた
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待ってる
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待つぞ��
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期待!
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≪1≫
――暗闇に立っていた。
――果ての無い闇の中に、俺は居た。
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「――ようこそ、歓迎するぜ」
その声に遅れて、目の前に人型の霞が漂い始めた。
「……ほお、二度目にしては居心地が良いな。
実体を持てんのは、ちと残念だったが」
霞は色んな動きをして自分の体を確かめてから、こちらを向いた。
頭らしき部分には僅かに影がついており、辛うじてそこから表情が読み取れた。
霞は、とても楽しそうだった。
「回りくどいのは性に合わん」
「だからハッキリ言うが、俺はtanasinnの、こう……使い魔的なものだ」
ハッキリ言うと宣言した割りに、大雑把だった。
「仕方ないだろ。俺の飼い主には形はおろか意思も無い。
俺自身、俺が何なのかよく分からん。それらしい自己紹介をしただけだ」
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「とりあえずアレの一部って程度の理解で十分だ。
あと、姿は無いが名前はある。自分でつけた」
「今後、俺の事はテンプターって呼んでくれ」
「ま、長い付き合いをしようぜ。お前はミルナより話が出来そうだしな」
腰に手を当てて得意気に言った途端、霞は風に吹かれたように揺らめいた。
「――残念、時間だな」
「次はもっと長話が出来ると最高だ。お前の声も聞いてみたいしな」
霞は最後に片手をビシッと構え、ドクオを見送った。
「そんじゃあな。また話しかけるからヨロシク!」
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第二十五話 「老兵集う」
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≪2≫
昨日発生した殺戮の現場には、翌朝、多くの花が手向けられていた。
レムナントの環境は花を育てるのにそぐわない為、花は全て造花だった。
ハハ ロ -ロ)ハ「……皆さん、こういう所は律儀なんですね」
現場に出来上がった造花のカーペットを見通しながら、金髪の秘書・ハローは呟いた。
「これは鎮魂の花ではなく、報復の決意表明だよ」
スーツ姿の初老の男が反応し、ハローを一瞥する。
「今回の被害はどのくらいだ」
ハハ ロ -ロ)ハ「二十人以上、六十人未満らしいです」
曖昧な返答に、男はムスッとした表情をハローに見せた。
「検証班に伝えてくれ。ハッキリ数えろとな」
ハハ ロ -ロ)ハ「現場に残った挽き肉の総量から、そう推測したらしいです」
「……今の発言は無しだ。あと、野菜の輸入量を増やしておけ。しばらくは野菜が流行る」
ハハ ロ -ロ)ハ「分かりました。普段の三倍で発注します」
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降り注いだ雨と造花のおかげか、現場の血生臭さは大分和らいでいた。
それでも時折鼻につく異臭は、彼らに凄惨な現実を強く認識させる。
「生存者の様子は」
ハハ ロ -ロ)ハ「少女の方は目覚めました。しかし記憶が無いようです。
青年は医療班が交代で看病していますが、運び込まれた当初は酷い有様だったと聞いています」
「聞かせろ」
青年の状態をあえて伏せたハローは、男の反射的な要望に肩を跳ねた。
彼女は平静を装ってから、事務的な口調で彼に答える。
ハハ ロ -ロ)ハ「一言にまとめると、全身がズタズタだったそうです。
肉、骨、内臓。その全てが致命的な破壊を受けていました」
「……それは、死んでいて当然だと思うのだが」
ハハ ロ -ロ)ハ「そういう超能力だというのが医療班の見解です。
彼の場合、回復速度というより生命維持能力が異常です。
だからこそ、この惨劇を生き延びたのかと……」
男は彼女の推測に同意し、軽く頷いた。
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「帰って雑務を済ませるぞ。二人の見舞いに行きたい」
ハハ ロ -ロ)ハ「余った造花でも持って行きますか?」
「私の家のを持って行く。枯れ気味だが、偽物よりは誠意が伝わるだろう」
ハハ ロ -ロ)ハ「……ええ、きっと」
「荒巻スカルチノフには帰ってもらえ。この事件を先に終わらせる」
男は颯爽と振り返り、歩き出す。
「――私の街を荒らしたからには、犯人は確実に殺す」
ハハ ロ -ロ)ハ「……市長、言葉を選んでください」
男の名前は『佐藤』。
都市・クソワロタを実質的に取り仕切る、レムナント最古参の男である。
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携帯電話で録画された動画には、自分の姿が映っていた。
記憶の手掛かりになる物が無いかと思って開いたが、私はどうやら用意周到な女だったらしい。
ミセ*゚ー゚)リ「――はい、こんにちは。
最低限の知識を持った、子供の頃の私」
ミセ*゚ー゚)リ「私がその状態になったのは、何らかの理由で死んだからです。
ほら、輪廻転生って言葉があるでしょう? それを個人規模でやりました」
記憶が無くても分かった。
この人は、とてもブッ飛んだ事を言っている。
ミセ*゚ー゚)リ「記憶は全部ありません。
若返ったのは個人的な願望です。若さは日々失われていきます」
ミセ*゚ー゚)リ「私は、貴方は、色んな超能力を持った凄い人です。
ケータイのメモ帳に能力の一覧・概要を書いておいたので読んでください」
ミセ*゚ー゚)リ「しかし、すぐに迎えが来るので心配ありません。
迎えの人と一緒に帰って、私の部屋に入ったら記憶が戻ります」
ミセ*゚ー゚)リ「そういう感じなので、よろしくお願いします」
他でもない自分からのメッセージに、私はとりあえず、心の中で「はい」と返事した。
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携帯電話をたたみ、部屋を一望する。
目が覚めてから何度も繰り返した行為に、いい加減飽きを覚えてきた。
ミセ*゚ー゚)リ(……ただの病院、って設定なのかな)
私は、この『空間』が普通ではないと何となく理解していた。
澄み渡る風、揺らぐカーテン、草原が見える大窓。
白いベッドに白い天井。
壁際には本棚があって、質素な食事がベッド近くのテーブルに用意されている。
ここまで分かりやすい作り物で満たされていると、自分が人形劇の舞台に立っているような気になってくる。
不愉快ではないけれど、常に視線を感じるのは快適ではない。
ミセ*゚ー゚)リ(これが、善意によって作られた客室であればいいんだけど……)
私は反対側のベッドに目を向けた。
現状、そこに寝ている恩人を見るのが一番楽しい。
生きてるんだか死んでるんだか分からないけれど、横にあるピッピ言う奴がずっと鳴っているので、多分生きている。
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ミセ*゚ー゚)リ(……ま、記憶が無いっていうのも同じくらい生死不明だけどね)
少なくとも、今の私に生きている実感は無い。
自分を定義するだけの記憶が無い以上、今の私は個人として成立していない。
よって今の私はただの物体なのだし、生きている実感が無いのも割りと当然なのでは? と思う。
暇なので考え込んでいる。
動画の私が言った通り記憶は無いが、考え込めるだけの知能はあるようだった。
でもベッドの横にある鳴ってるアレの名前が思い出せないのはダメだと思った。
元々の私がアレの名前を知らないなら仕方ないけれど、それはそれで残念な気持ちになる。
ミセ*;゚ー゚)リ(……私は残念な人だったのかもしれない……)
私はすぐさま本棚を漁り、アレの名前を調べた。
心電図モニターで合っている、はず。少なくとも、ピッピするアレという表現に頼る事はもう無い。
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ミセ*゚ー゚)リ(……起きないなぁ、この人)
私は改めて向かいの恩人を見つめた。
死んでて当然の状態でも、彼はしっかり生きていた。道理は分からない。
まあ、超能力が普通に存在しているらしい世界でそれを考えるのは不毛だろう。
何か出来ないか、と一抹の義務感を覚える。
恐らく彼は命の恩人で、あの火災と黒い影から助けてくれた人だ。
恩返しはまた別としても、彼が死なないよう働く義務が私にはある。
頼る当てとしてまず浮かんだのは、携帯電話のメモ帳だった。
私にあるというスーパーパワーがどんなものか、少し興味もあった。
ミセ*;゚ー゚)リ「……うわ」
早速メモ帳を開くと、そこには恐るべき長文が十分な改行もされずに羅列されていた。
内容はなんだか凄そうだったが、凄さが伝わる前に気が滅入った。
掻い摘んでまとめると、動画内の私には七つくらい能力があるらしかった。
どれもいちいち名前が長く、気が滅入った。
動画の私は二十歳半ばくらいだろうか? あの人がコレを考えている様子を思うと、残念な気持ちになった。
.
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ミセ*;゚ー゚)リ「……これなら使えるかな」
【一つ残らず木偶人形(ワンサイド・アウトサイダーズ)】。
その長い名前を脳裏に読み上げ、能力の内容を確認する。
これは、周囲の物質を何でも操作出来るらしい。
ミセ*゚ー゚)リ(これなら心臓が止まっても動かせるし、止血も出来る)
ミセ*゚ー゚)リ(傷を治したりは出来ないけど、瀕死状態を維持する事はできるよね)
しかし、私はそこまで考えて思い止まった。
彼はとりあえず生きている訳だし、急いでこれをやる必要はない。
というか、瀕死状態を維持するという発想がまずおかしい。かなり嗜虐的だ。
ミセ*;゚ー゚)リ(……別の案を考えよう)
私は 『常識的に』 という言葉を念頭に置き、彼に対して出来る事を考えた。
それじゃあ体を使って奉仕しようかな? と考えたが、恐らくこれも前の私の思考回路なのでボツだ。
.
-
――その時、ノックが聞こえた。
私の返事を待たず、部屋の扉が大きく開け放たれた。
¥・∀・¥「……」
ミセ*゚ー゚)リ「……どなた?」
私は振り返って声を掛けた。
なんだか敵っぽい。一応、心の準備だけはしておく。
¥・∀・¥ 「……ああ、失礼」
来訪者は私に気付き、申し訳程度の断りを入れた。
¥・∀・¥「……状況が、変わったか?」
彼は私達二人を見比べて呟く。
意味は分からなかったが、嫌な感じがする。
私自身ではなく、『前の私』がそう告げているのだ。
.
-
¥・∀・¥「……状況が変わった。
これは立ち回りを変えるべきだな」
¥-∀-¥「……まぁまぁ。今は感動の再会を喜べよ」
両手を挙げ、彼はヘラヘラした様子で振り返った。
独り言ではなく、誰かに向けた言葉と共に。
/ ,' 3 「……佐藤よ。私は今、とても不愉快だ」
「……こっちの台詞だ。これは誰だ」
現れた三人は、互いに威圧的な視線を送り合った。
私はこっそりベッドを出て、命の恩人の傍で身構えた。
何が起きてもせめて盾になる。それぐらいしか、出来ることが思い浮かばなかった。
ふと、老人の双眸が私を捉えた。
/ ,' 3 「……久し振りだが、初めましてだな」
ミセ*;゚ー゚)リ「……」
/ ,' 3 「……こりゃあ、本当に一から考え直しか……」
老人は困った様子で言い、天井に向かって嘆息した。
.
-
≪3≫
/ ,' 3 「佐藤、ワシらはあっちで話をする。
用が済んだらお前も来い」
¥・∀・¥「茶菓子は勝手にもらうぞ」
二人は雑に言い残して部屋を出て行った。
「――初めまして。君を保護した、佐藤という者だ」
そして、次に私に話しかけてきたのは白髪交じりのスーツの男。
さっきの老人よりは一回り若く見える。
高身長で頑強な体付きをしているおかげで、とても怖い。
ミセ*;゚ー゚)リ「……」
「……まだ具合が悪いか?」
佐藤が一歩、こちらに近づいた。
到底人を心配しているとは思えないマーダーフェイスだったが、そういう顔の人なんだなと恐怖を納得に変換する。
そうしなければ恐怖で口が動かせなかった。
.
-
ミセ*;゚ー゚)リ「……いいえ、大丈夫です」
「大丈夫、とは耐えられるという意味か?」
ミセ*;゚ー゚)リ「いえ、健康そのものです。ご心配なく」
「そうか。ならば病み上がりで悪いが君の話を聞きたい。どうだろうか」
佐藤は椅子を持って私のベッド近くに移動し、こちらで話そうと促してきた。
私は大人しく従い、自分のベッドに戻る。彼のもとを離れると、少し不安になった。
「……さて。まず、君の事を聞かせてくれ。自己紹介だ」
椅子に座った佐藤は、股座で手を組んでじっと私を見つめてきた。殺されるかと思った。
ミセ*゚ー゚)リ「……ミセリ、と言うそうです」
「……なるほど。その口振りなら自分の状況を分かっているな。
記憶が無いと聞いているが、それは本当か?」
ミセ*゚ー゚)リ「はい。私自身、私が誰か分かりません」
私は端的に答える。
.
-
「ではなぜ、自分の名前が分かった?」
ミセ*゚ー゚)リ「ケータイがあったからです。
中に、自分のことが記録されてました」
ケータイのことを話すのは危険かとも思ったが、無駄な隠し事は無駄な疑念を生んでしまう。
今は平和的な方向へ向かって話を進めるべきだ。
「……ここに担ぎ込まれた時点で身体チェックは完了している。
その段階では携帯電話を持っていなかった筈だが、なぜ持っている?」
ミセ*;゚ー゚)リ「え、そうなんですか? 分からないです」
「……なら、それでいい。では、その携帯電話を見せてもらいたい」
ミセ*;゚ー゚)リ「……ごめんなさい。出来ません」
「……分かった」
非協力的な答えが連続しても、佐藤は顔色を変えなかった。
実際、自分がどうしてケータイを持っているかは分からないし、唯一の記憶の手掛かりを気安く渡す事も出来ない。
.
-
「健康そのものだと、さっき言ったな」
佐藤は追求せず、手早く話題を変えた。
ずいぶん呆気ないと思いながら、私は肯定の相槌を打つ。
「君の傷は全治一年は確実だった。
もっとも、あの状況で即死以外の状態というのも不自然だが」
ミセ*゚ー゚)リ「……私、疑われているんですね」
「いや、君は犯人ではない。
さっきの老人にキッパリ否定されているし、私もそれに納得した」
「話を戻す。君の復活の速さから推測するに、恐らく君は治癒能力を持っている。
その能力を使って、彼を治すことは出来ないか?」
佐藤は、命の恩人を一瞥して言った。
「私のところには治癒能力者が居なくてな、あのくらいの対処しか出来なかった。
生命維持は出来ているが、あの状態は見るに堪えない」
.
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ミセ*;゚ー゚)リ「あの、すみません……。
メモを見た限り、私に治癒能力はありません」
人を刺すような佐藤の視線が私に向く。
怖い。今にも両目を抉りにきそうで怖かった。
「なら、それも仕方ないな。荒巻に頼むとしよう」
そしてまた呆気なく、佐藤は話題を終わらせた。
「私からの質問は次が最後だ。君が見たものについて、聞きたい」
ミセ*゚ー゚)リ「見たもの、というと……」
「あの状況で起こったこと、君が見たもの、全て」
ミセ*゚ー゚)リ「……はい。分かりました」
私は回想する。黒い影と、あれと戦っていた少年の姿を。
ミセ*゚ー゚)リ「……あの人の名前、分かりますか?」
恩人を見つめ、佐藤に問い掛ける。
彼を語るのに彼の名前を知らないのでは、あまりに不便だ。
「ドクオ、と言うらしい」
ミセ*゚ー゚)リ「……では、ドクオさんが私の前に現れた所から、お話します」
私は、私として覚えている記憶を、一から語り始めた。
.
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≪4≫
リビングに出ると、油断した様子のハローと目が合った。
彼女はそそくさと取り繕い、読んでいた雑誌を背後に隠して言った。
ハハ ロ -ロ)ハ「お話は済んだのですか?」
/ ,' 3 「これからだ。席を外してもらえるか」
ハハ ロ -ロ)ハ「どうぞ、使ってください」
テーブルに散らかした菓子の包装紙をグシャっと鷲掴みにし、席を立つ。
ハローはすぐさまその場を離れ、どこかに消えた。
.
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¥・∀・¥「さあて、何から話す」
マニーは奥の席に座ると、わざとらしく大仰に足を組んだ。
/ ,' 3 「なんで生きてる。こないだ殺しただろ」
荒巻はあえて立ったまま、上から鋭くマニーを睨んだ。
マニーは不敵に笑み、下からそれを睨み返す。
¥・∀・¥「逆に聞くが、あの程度で私が死ぬとでも?」
/ ,' 3 「当然。あの程度で死ぬ程度の男という認識だった」
¥・∀・¥「であれば先の答えは自明だろう。
単に君の認識が間違っていたのだよ、荒巻くん」
/ ,' 3 「……まあ、いい。で、今度は何をしにきた」
マニーの煽りを言い返せなかった荒巻は渋々本題に移った。
それを分かった上で、マニーは微笑んだまま答える。
¥・∀・¥「私の目的は変わらない。貴様の打倒、ただ一つ」
/ ,' 3 「……」
¥-∀-¥「……と、言いたいんだが、残念ながら今は貯金が少なくてな。
とても貴様相手に戦える状況ではない。だから貴様とは戦わん」
マニーは背もたれに体を預け、だらけた姿勢で片手を振った。
降参の素振りにしては極めて不快だったが、荒巻はそれを見逃してやった。
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¥・∀・¥「しかし、だ」
¥・∀・¥「身を潜め、表舞台から消えたままというのは性に合わん。
私も密かに行動を続け、まぁまぁの手札を三枚、用意した」
マニーはしたり顔で言い、続ける。
¥・∀・¥「――『敵の情報』、『tanasinnの倒し方』、『人生オワタ』」
¥・∀・¥「今日は新たに『ドクオ』という手札を揃えるつもりだったが、まあ、状況が変わった」
/ ,' 3 「……目的を言え、という質問だったのを忘れたか?」
¥・∀・¥「そう急くなよ荒巻くん。負けた気がして悔しいのかな?」
/ ,' 3 「貴様――」
¥・∀・¥「今回の目的はひとつ。ドクオを回復させること。
これは必要な立ち回りでな、誰かがやらねばならん」
荒巻が言い返してくる前に、マニーは口早に質問に答えた。
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¥・∀・¥「ま、理解力の低いお前の事だ。いくらか説明が要るだろう」
/ ,' 3 「貴様の説明に無駄な表現が多いだけだ。
不快な語彙を記憶ごと添削しても構わんのだぞ」
¥・∀・¥「いいや的確な表現だね。
お前は強いが結構バカだ。だから私にも騙される」
語気を強めたマニーの発言に、荒巻は呆れたようだった。
マニーに対してというより、彼との再会にはしゃいでいる自分を自覚し、呆れていた。
荒巻は大きな溜め息の後、すとんと肩を落として言った。
/ ,' 3 「分かったよ、マニー。もう好きなだけ話せ」
椅子に腰掛け、荒巻は気だるそうに頬杖をついた。
マニーも真似して頬杖をつき、最初の微笑みを保ったまま言った。
¥・∀・¥「そうか? じゃあ遠慮なく 『ThisMan』 の穴埋めからいこうか」
/ ,' 3 「勝手にしてくれ……」
¥・∀・¥「そう自棄になるなよ。
主役は私じゃないが、そこそこ楽しめる事は約束しよう」
マニーは、それはそれは楽しそうに語り始めた。
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16〜24話 >>439
プロローグ Another Heaven >>454-467
第二十五話 老兵集う >>473-495
次回は多分来月です('A`)
細かい進捗は上のやつを見てね('A`)
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乙乙。マニー生きてたんかい!
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おいおいここで切るのかよ
次はいつだ楽しみすぎる
乙
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おつ!
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乙
続き待ってるよー
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乙乙
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今週土曜日くらいに投下します('A`)
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きったきたきた
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≪1≫
\(^o^)/(……暇すぎる。有能過ぎるのも罪だわ……)
人生オワタは屋上での戦闘を回避し、残業に励んでいた。
時系列は('A`)は撃鉄のようです第八話5レス目まで遡る。
後に『面汚しの夜』と総括される一夜の中、オワタは人生最大の敵に遭遇していた。
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第二十六話 「面汚しの夜 その3」
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午後6時にもなると街には 『ThisMan』 の感染者がうろついていた。
当然その頃にはオワタの会社も機能を停止しており、会社の中には同じ顔の『ThisMan』ばかりが居座っていた。
\(;^o^)/(な〜〜〜〜にが起こってんだよバカ!)
そんな会社から誰よりも先に逃げ出したオワタ。
彼は一目散に自分の車に立て篭もり、膝を抱えて逆ギレしていた。
彼が篭城場所に選んだのは地下の駐車場。
人気は少なく、隠れるには丁度いい環境である。
しかしその有様はまさに無力な小市民。
救助をじっと待つ木の上のネコそのものだった。
\(;^o^)/(誰か助けに来いよ! ケーサツ! おい!)
\(;^o^)/(こっちは税金払ってんだぞ! 働け! おい! 助けて!)
強気な救助要請をひらすら内心で唱え続ける。
それに応えてか、地下駐車場にコツン、コツンと足音が響いてきた。
\(;^o^)/(誰か来た! 普通の人であってほしい!)
オワタはそっと頭を上げ、窓から外を覗き見た。
\(^o^)/
すると、窓越し数センチ先に『ThisMan』の顔が迫っていた。
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\(^o^)/(やっべ)
オワタは即座に姿勢を正してハンドルを握った。
同時に外の『ThisMan』が窓ガラスを殴り始め、たった二発でガラスに亀裂を走らせた。
\(;^o^)/「おおおおおおッ!!」
アクセルとかレバーをガチャガチャして車を急発進させ、出口に最速で突っ込んでいく。
バックミラーを見ると、陸上選手ばりの迫力で『ThisMan』が追走して来るのが見えた。
\(;^o^)/(こうなりゃタワーまで突っ走るしかねえ! あそこなら確実に無事だ!)
しかし地上に出た瞬間、オワタはその考えがどれだけ困難であるかを理解した。
夕闇の中、見渡す限りに『ThisMan』の顔がある。その数十人分の同じ顔が、一斉にオワタの車を捕捉した。
\(;^o^)/(――轢かれても知らんからな!!)
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素直キュートが自身の超能力を自覚した時、彼女はその能力をひどく虚しいと一蹴していた。
o川*゚ー゚)o(まあ、この能力が色んな虚しさを誇張させたのは事実だけど)
最初、超能力は夢という形で現れた。
夢を見たのは算数のテストの前日。夢の中には、テストの答えが全て浮かんでいた。
翌日テストに見たままを書き込むとこれが全問正解。以降、彼女は時折こうした夢を見るようになった。
夢の次は幻覚だった。
じっと一点を見つめていると、そこに音付きの立体映像が見えてくるのだ。
しばらくは映像の意味が分からなかったが、ある日、自宅のリビングで見た映像が彼女の理解を早めることとなった。
リビングで見たのは両親が大声で口喧嘩をしている様子だった。
どちらも自分の手元にお金が欲しいらしく、適当な口実を作ってはそれをぶつけ合っていた。
最終的に取っ組み合いの喧嘩が始まり、けっきょく父親が暴力に打って出る。そういうものが見えてしまった。
映像を見てから数日後の深夜、キュートは両親の怒鳴り合いで目を覚ました。
静かにリビングを覗くと、そこには先日見たものと同じ光景があった。
口喧嘩の一言一句も違わず、まったく同じ展開がそこにあった。
それを見た彼女は直感した。自分の能力が 『未来予知』 である事を自覚してしまった。
そして、一番欲しくない力が来てしまったと、彼女は子供ながらに大きな虚脱感を覚えた。
自覚と同時に見えた彼女自身の未来は、この家族の為に歪みきっていたのだから。
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o川*゚-゚)o「……ああ」
素直キュートは回想を止め、電子レンジに入れた弁当に意識を戻した。
残り数秒を頭の中で数え、チンと鳴ると同時に弁当を取り出す。
蓋を外すと十分に温められた食材から湯気が沸き立ち、彼女の食欲をそそった。
だが、それは食欲というよりも義務感だった。
彼女にとって食べる事は作業でしかなく、味や見栄えは度外視された概念だった。
未来予知のせいで向こう数ヶ月分のご飯の味が分かってしまう。
だから食べるのが楽しくない、という訳ではない。
彼女の作業的な食事風景は、単にコンビニ弁当を死ぬほど食べ続けた結果の飽きだった。
弁当を半分ほど食べてから、キュートは時計の針を確かめた。
3分後、このコンビニに人生オワタという人が来る。
キュートは人生オワタに出会う未来を数年前に予知していた。
彼に出会い、最期を一緒に過ごす未来。
素直キュートは、今日ここで死ぬ事になっていた。
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\(;^o^)/「……お〜い」
三分後、人生オワタがおそるおそる店内に入ってきた。
自動ドアの開閉に反応し、入店の音楽が店に鳴りひびく。
キュートは数年振りに、自然に笑みを浮かべて言った。
o川*゚ー゚)o「こんばんは、人生オワタさん」
\(;^o^)/「……お前、だれ?」
o川*゚ー゚)o「素直キュートって言います。ずっと、あなたを待ってました」
\(;^o^)/(……なに言ってんだコイツ)
ひるんだオワタが一歩退くと、キュートはハッとして体裁を整えた。
軽く会釈をしてから、彼女は店内を一望して言った。
o川*゚ー゚)o「ここ、しばらくは安全ですよ。棚で入り口を塞ぎましょう」
\(;^o^)/「……分かった」
警戒を見せながらも、オワタは彼女の提案に乗っかった。
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二人は窓のブラインドを全て下ろし、商品棚を動かしてコンビニの出入り口を封鎖した。
そこまでやってようやく一息つき、二人は奥から持ってきたパイプ椅子に腰掛ける。
\(^o^)/「なんか大変な事になってるよなぁ……」
o川*゚ー゚)o「今夜中に終わる話ですし、特に被害も出ません。大丈夫です」
\(^o^)/「……だといいケド」
妙に自信あり気に断言されてしまい、オワタは口先に出かかった愚痴を飲み下した。
o川*゚ー゚)o「……あの、私。お話したいです」
\(^o^)/「……すれば? とりあえず聞いててやるよ」
不気味なほどニコニコしている彼女に対して、オワタはぶっきらぼうな返事をした。
安全な場所を共有させてくれた分は彼女に協調するが、それ以上に深入りする気は毛頭ない。
それは決して彼女に限った話ではなく、誰に対しても、オワタは必要以上の人間関係を作ろうとしないのだ。
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o川*゚ー゚)o「……嬉しいです。あの、馴れ馴れしくしてごめんなさい」
o川*゚ー゚)o「いちおう理由があるんです。私の能力、予知能力なので……」
\(^o^)/「……俺に会うのを知ってた?」
o川*゚ー゚)o「あ、そうです。この会話も一言一句その通りに予知してます」
\(^o^)/「……つまらなくないか? 俺ならそんな顔で喋ってられねえわ」
o川*゚ー゚)o「はい、すごくつまらないです。
でも今日だけは、今だけは特別なんです」
\(^o^)/「ふうん……」
o川*゚ー゚)o「私、今日ここで死ぬんです。
普段だったら、私こんなに喋らないです」
\(^o^)/「……そら災難だったな。知りたくもなかったが」
o川*゚ー゚)o「いいじゃないですか! 最後ですし、いっぱい話したいんです!」
人生オワタは、彼女の言う事を大体信じていた。
信じるかどうかで何かが変わる訳でもないので、善意的に受け止めてあげたのだ。
信じた上で、オワタは彼女の歪さを早々に察知していた。
彼女の表情はなぜか希望に満ちていて、とても今日ここで死ぬ人間の顔には見えない。
人間誰しも死ぬのは怖い。
しかし、彼女はそういう当然の感性を育てる事が出来なかった。あるいは、してこなかった。
そういう人生だったのだと、薄々分かってしまった。
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o川*゚ー゚)o「色々あって、私が自分語りを出来る時は今しかないんです。
なのでいっぱい話します。本当、聞くに堪えないのは承知の上ですが……」
\(^o^)/「……」
o川*゚ー゚)o「……最後なんです。落ち着いて、話しますね」
哀れむような視線に気付いたのか、キュートは声色を落として改めて言った。
o川*゚ー゚)o「物心ついた時には、私は私の一生を予知していました」
o川*゚ー゚)o「えっと、私思うんです。夢や希望って、分からないから意味があるって。
でも私は、人生における夢や希望にあたるものを全部見ちゃって……」
o川*゚ー゚)o「別に悲しいとかは思いませんでした。
ただ、なんだろう……」
o川*゚ー゚)o「ああ、こういう感じで生きて終わるんだなぁって。そう思うようになりました。
自分の身に起こるすべての事が、まるで他人事のようになってしまったんです」
用意された言葉を読み上げるように、彼女は淡々と語る。
しかしオワタは彼女の言葉に耳を傾けていなかった。聞いてはいたが、聞き流していた。
聞くに堪えないという言い訳を用意してくれた以上、オワタはそれに従っていた。
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o川*゚ー゚)o「多分どこかで未来を変える努力をすれば、
何かが変わっていたと思いますが……まだ子供なので、早々に諦めました」
\(^o^)/「……」
o川*゚ー゚)o「そもそも未来を変える気すらありませんでした。
私が予知のとおりに生きると、両親はすごい喜んだので。
基本的に完璧に生きてきました。自慢の娘だったと思います」
o川*゚ー゚)o「親は賭け事が好きでした。ギャンブル中毒とか、そういうんだと思います。
家庭は酷かったですね。およそテンプレ通りの、壊れた家庭です。
でも虐待とかはありませんでしたよ。私は数ある宝くじの一枚に過ぎないので」
o川*゚ー゚)o「で、私が予知を使って宝くじも競馬もパチンコも勝たせてあげると、環境は変わりました」
o川*゚ー゚)o「私の家には札束が溢れかえって、両親も幸せそうにしてくれました」
o川*゚ー゚)o「まぁ世間的には親に利用される子供ということで悲劇的に見えるでしょうけど、
やっぱり子供なので、どんな形であれ、親に信じて喜んでもらえるのは嬉しいんです」
o川*゚ー゚)o「これは、子供という役割に与えられた義務だと思います。
親のために生きるという義務。私はそれを全うしました」
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o川*゚ー゚)o「ただやっぱり、これがいつまでも続くのは私も嫌でした。
嫌だという根拠の無い感覚だけが、今日私をここに運びました」
o川*゚ー゚)o「別に大した意思があったわけじゃないです。
ただ家を出てここに来て、予知のとおり死ぬ。そうしたかったんです」
\(^o^)/「……親は止めなかったのか?」
o川*゚ー゚)o「両親ですか? 別にとめませんでしたし、むしろ見送ってくれました。
『生きて帰れるから大丈夫』って言ったら難なく出られました」
o川*゚ー゚)o「きっと探しにも来ませんよ。
だって、親が子供の言う事を信用しない訳がないじゃないですか」
o川*゚ー゚)o「子供を信用しないっていうのは、子供の責任から逃げたい人の言い分です。
子供が何かやらかした時、自分に対して言い訳をする為です」
o川*゚ー゚)o「あとあと『私に責任はありません』っていうことを主張する為に言質を揃えておきたいんです。
信用とか、耳障りのいい言葉を利用して」
信用、という言葉が完全に破綻している。
オワタは彼女に対して同情を思うより先に、不気味さを感じた。
.
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o川*゚ー゚)o「その点、私の両親は私を信じてくれてます。
私の家は、私を信じる事で回っています」
o川*゚ー゚)o「なのでまあ、私がこうして死を選んだ時点で、私の家は終わりだと思います。
みんな首吊って死ぬのかな、悲しいな、なんて……」
o川*゚ー゚)o「……まあ、そんな感じです。要はここで死ぬ、というだけの話です」
o川*゚ー゚)o「貴方なら話を聞いてくれると知っていたので、今までの分を簡単に話しちゃいました」
o川*゚ー゚)o「一方的に話してごめんなさい。初対面で私が何者かも分からないのに」
\(^o^)/「……嫌な気分になった」
o川*゚ー゚)o「……ごめんなさい。じゃあもう行っていいですよ」
\(;^o^)/「……なんか急に嫌な言い方だな」
o川*゚ー゚)o「……早く行かないと巻き込まれちゃいます。
私を殺す人がもうすぐ来ます。あと五分くらいかな」
\(^o^)/「……聞くまでもないんだろうが、逃げないのか?」
o川*゚ー゚)o「はい。死んだ方がマシなので」
彼女はたやすく断言し、店の裏口へ行くようオワタを促した。
o川*゚ー゚)o「……正直に言います。私の予知で、あなたは死ぬ事になってます。
でも私はその未来だけは変えたい。なので、お願いします」
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\(^o^)/「……俺の能力は、予知してないのか?」
o川*゚ー゚)o「……あなたが何故かここに留まって、私と一緒に殺される。
今までも、その未来しか見たことないです」
\(^o^)/「……じゃあそれで正解だよ、俺の中では」
オワタはよっこらせと呟いて腰を上げ、商品棚から適当なお菓子を持って椅子に戻った。
\(^o^)/「俺ここで死ぬわ。あともう話しかけないでくれ」
\(^o^)/「俺はお前が嫌いだ。人間が合わない」
o川*゚ー゚)o「……はい。ごめんなさい」
\(^o^)/(……こいつ、努力をした事がねえんだな)
人は、努力の積み重ねによって今を生きている。
それは未来に何が起こるか分からないから、人生が未知だからこそ努力なんていう面倒な事が出来るのだ。
しかし彼女の場合、素直キュートの場合は違う。
未来が分かってしまう以上、彼女の中ではそもそも努力が意味を成さない。成立しない。
生きる努力をしなくても生きていけると分かれば、どんな人間であろうと綻びが生まれてしまう。
彼女は未来を知る代わりに、生きる上でのあらゆる動機を失っていた。
未知に立ち向かう機会もなく、求めなくても与えられ、努力せずとも正解が分かる。
一生分のテストの答えを全て安全にカンニングできる状態で、一体誰がテスト勉強をするのだろうか?
宝くじの当選番号が毎回確実に分かるなら、そもそも勤労に意味はあるのか?
好きな人ができたとして、その人に一生振り向いてもらえないと分かっても、その人を好きで居続けられるか?
努力が報われないと分かっているのに、それでもなお努力は続くのか?
分からない、未知だからこそ人は努力に意味を見出す。
無駄かもしれない努力に懸命になれる。
しかし、彼女にはそれが出来なかった。努力をする動機が何一つとして無かった。
努力によって正解を見つける必要が、彼女にはまるで無かったのだ。
それは、人として余りにも大きな欠落だった。
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\(^o^)/(ま、俺にはぜんぜん関係ねーけどな)
\(^o^)/(あと数分でなんか来て殺されて終わり。
次はこんなクソガキに会わないよう行動するだけだ)
人生オワタの超能力は二つ。
その両方が、人生オワタの死亡を条件として発動する。
一つは【生前体験/ニア・ライブ・エクペリエンス】。
能力者が死亡すると、その死因を回避できる時点まで時を巻き戻す。
もう一つは【死後後悔/ルック・バック】。
死亡するまでの記憶、死んだ後の記憶。
その両方を過去の自分に送信する能力。
人生オワタはこの二つの能力を使って幾多の危機を脱してきた。
持って生まれたスペランカーボディと超不運もあって死んだ回数は無数(千回死んだ頃に数えるのを止めた)。
しかし、だからこそ現れた 『死を回避すること』 そのものに特化した超能力。
彼は強い意志をもって死の運命を回避し続け、その結果として平穏で幸福な人生を実現してきた。
素直キュートとは正反対に、生きる努力を人一倍、人の何百倍も積み上げてきた。
素直キュートが運命を肯定するなら、人生オワタは運命を否定する男。
そんな二人が相容れる訳もなく、オワタは先程の言葉どおり、素直キュートを大嫌いになっていた。
\(^o^)/(なにが運命だ。そんなもんはゼッテー無いね)
\(^o^)/(俺は何度でも運命を変えてきた。
だから断言できる。変わらない運命なんかない)
\(^o^)/(親のためだと? くだらねえ)
\(^o^)/(自分も他人も幸せな完璧な人生なんてまっぴらごめんだぜ。
どんな時であろうと、俺は俺自身の幸福のために生きてみせるぞ……)
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――五分後、素直キュートが宣告した時間になった。
o川*゚-゚)o「……来ました」
どうせ死ぬので確認する必要もなかったが、オワタはコンビニ店内をぐるっと見回した。
しかし中に居る人間は二人だけ。だったら外か? と思ってガラスから距離を取り、じっと待ち構える。
それでもしばらく音沙汰はなく、オワタは拍子抜けして肩の力を抜いた。
\(^o^)/(……もしかしてこいつの話、嘘か?)
オワタが油断してキュートを一瞥したその瞬間。
入り口を塞いでいた商品棚が、自動ドアのガラスもろとも巨大な衝撃に破壊された。
\(;^o^)/「……」
破壊が落ち着くと、瓦礫の山を踏み越えて一人の男が入ってきた。
男は袖のない黒の道着を着ている以外、何一つとして武器になる物を持っていなかった。
体一つで強化ガラスを破壊して余りある一撃を実現したとなれば、その正体は明白。
\(;^o^)/(……格闘家かぁ……)
男は一呼吸を置いてから、オワタ達に目を向けた。
古傷にまみれ、既に目としての機能を持たないその器官を。
( ФωФ)
オワタは、素直キュートを連れて壁際に下がった。
.
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\(;^o^)/(……格闘家は嫌いだ。
バトル大好きな人種の中でも特に話を聞かん)
\(;^o^)/(俺でも何とか出来るレベルなら予知変えてドヤ顔してやろうと思ったけど、これは無理!)
\(^o^)/(無理なものは無理! 諦めた!)
o川*゚-゚)o「……なにか、話しますか?」
キュートはオワタの制止を無視して前進し、男の前でそう口走った。
殺される未来を知ってなお、彼女は台本通りであり続ける。
( ФωФ)「……不要であろう。すぐに済む」
o川*゚-゚)o「……後ろの人だけは逃がしてくれませんか」
( ФωФ)「……言葉を交わす気は、ない」
男はゆっくりとキュートの首を掴み、その細い管をキュッと握り締めた。
すると彼女の体は一瞬痙攣してから脱力し、まったく動かなくなった。
( ФωФ)「……」
男は首を絞めたまま片手で拳を作り、それを彼女の心臓に突き刺した。
どぷ、という殺しの音が鼓膜の奥にゆっくりと入り込んでくる。
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素直キュートの死体を床に寝かせ、彼女に向かって手を合わせ、瞑目する。
男はその所作を終えると、振り返ってオワタを見据えた。
( ФωФ)「……逃げるなら、追わんが」
\(;^o^)/「チッチクショーー」
オワタは一方的に彼女を殺された悔しさから男に殴りかかった。
しかし実際のところ悔しさなど微塵も無かった。
自分が死ねば無かったことになる現実など、まともに受け止める気にもならない。
\(^o^)/(次は別のとこに逃げっか)
その思考の直後、オワタもサクッと殺されて超能力が発動した。
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≪2≫
\(^o^)/(……二週目スタートか)
人生オワタは屋上での戦闘を回避し、残業に励んでいた。
時系列は('A`)は撃鉄のようです第二十六話1レス目まで遡る。
\(^o^)/(まぁとりあえず、さっさと逃げ出すか)
オワタは残りの仕事を適当に仕上げて会社を出た。
上司から多少の嫌味は聞かされたものの、普段の優秀な仕事振りから大きな足止めをくらうことは無かった。
地下駐車場の車に乗り込み、エンジンを唸らせる。
\(^o^)/(フッやれやれ、またしても運命に勝利してしまった……)
オワタはしたり顔で勝利宣言を掲げ、ステーション・タワーに向けて一直線に車を走らせるのだった。
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第二十六話 「面汚しの夜 その3」
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\(;^o^)/
ステーション・タワー付近の駐車場に車を停め、車を降りたところで体が固まった。
オワタは、こちらをじっと見つめる少女に気付いてしまった。
o川*;゚д゚)o
だが、驚きのあまり硬直していたのは彼女も同じ。
二人は一分ほど、その場で口を開けたまま見つめあった。
\(;^o^)/「いや」
\(;^o^)/「……いやいやいやいや」
オワタは緊迫した表情で少女に詰め寄り、いまだに驚いている彼女の両肩を掴んだ。
\(;^o^)/「お前、違うよな? 別人だよな?」
o川*;゚д゚)o「……え?」
\(;^o^)/「名前だよ名前!! お前の名前、素直キュートじゃないよな!?」
o川*;゚д゚)o「……素直キュートです……」
\(;^o^)/「え?」
o川*;゚д゚)o「私の名前は素直キュートです……」
\(;^o^)/「……」
<(;^o^)>「うそだろ……」
オワタは頭を抱え、弱々しく呟いた。
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\(;^o^)/(どういうことだ? このガキはコンビニで俺を待ってたハズだろ?)
\(;^o^)/(『人生オワタがコンビニに来る』っていう未来予知はマジだった。
一週目でそれは確認済みだ。ならなんでコイツはここに居る?)
\(;^o^)/(ピンポイントで予知が変わったのか?
なんにせよ色々確かめねぇと……)
o川*;゚ー゚)o「あの、なんで私の名前、ていうかなんでここに……」
\(;^o^)/「お前、未来予知の詳細を言ってみろ」
o川*;゚ー゚)o「え、いや、なんで能力のことまで」
\(;^o^)/「いいから! 俺は殺されるのか!?」
一週目で彼女は『人生オワタは殺される』という予知をしていた。
今回行動を変えたのはその未来を回避する為であり、そもそもその原因となる彼女に出会わない為だった。
オワタが強く問い掛けた肝心な質問に、キュートはしどろもどろに答える。
o川*;゚ー゚)o「えっと、はい。そのはずでした……さっきまでは……」
\(;^o^)/「……どういう意味だ?」
o川*;゚ー゚)o「……貴方はコンビニに行って、そこで私と会うはずでした。
そういう予知を見たんです。でもそうすると私と一緒に殺されちゃうので、その……」
o川*;゚ー゚)o「それを回避しようと思って、こっちに来たら貴方も来て、今になります……」
.
-
とたん、オワタはキュートに背中を向けて熟考した。
\(;^o^)/(予知そのものに変化はナシ。
変わったのは俺とコイツの行動だけか……)
\(;^o^)/(……とにかくもう一度、こいつに『未来予知』をとやらをさせてみるか)
そして最後に、まったく信用しちゃいねーけどな、と付け加える。
オワタは振り返って再びキュートの両肩をがっしり掴み、力強く言った。
\(;^o^)/「もっかい未来予知して!! お願い!!」
成人男性から少女への、体裁を捨てた本気のお願いだった。
o川*;゚ー゚)o「……あの、それが……その……」
\(;^o^)/「どうだった!?」
o川*;゚ー゚)o「……私達、あと十秒で狙撃されます」
\(^o^)/
\(^o^)/(オワッタアアアアアアアアアアアアwwwwwww)
ドキューンバーンwwwwwwwww二人とも死んだwwwwwwwww
.
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≪3≫
\(;^o^)/(世の中って理不尽!!)
人生オワタは屋上での戦闘を回避し、残業に励んでいた。
時系列は('A`)は撃鉄のようです第二十六話19レス目まで遡る。
\(;^o^)/(……よし! 次は時間を合わせよう)
\(;^o^)/(さっきは早く動きすぎた。
あいつがコンビニに居た時間まで待って、それから移動開始だ!)
\(;^o^)/(同じ顔の奴らからは逃げられないかも知れないが、
いま俺はもっとヤバイものに関わってる気がする!)
オワタは六時過ぎまで会社に残り、『ThisMan』が動き出した頃合で逃げ出した。
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第二十六話 「面汚しの夜 その3」
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≪4≫
\(^o^)/(……ダメだった、ふつうに出くわした)
\(^o^)/(同じ顔の奴らから逃げてたら曲がり角でぶつかった……)
\(^o^)/(一緒に逃げてたら知らん間に殺されてた……)
人生オワタは会社で目覚め、('A`)は撃鉄のようです第二十六話24レス目まで遡って反省した。
\(^o^)/(……もう会社に立てこもるか。
さすがに会社までは来ないだろ)
\(^o^)/(この騒動も収まってるかもしれないしな。
動かないのが一番だ。そうしよう……)
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第二十六話 「面汚しの夜 その3」
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\(;^o^)/
o川*゚ー゚)o「あ、こんばんは!」
深夜二時ごろ、素直キュートは会社に来た。
彼女はとても元気そうに挨拶すると、オワタに駆け寄ってきて満面の笑みを見せた。
o川*゚ー゚)o「よかった、予知は変えられたんですね!」
\(;^o^)/「……え、そうなの?」
o川*゚ー゚)o「はい! 貴方は私と一緒に殺される筈でしたけど、助かりました!」
\(;^o^)/「……今、もう一回予知してくれる?」
o川*゚ー゚)o「はい、いいですよ! でも終わったら私の話をっ」
そこまで言って、彼女のハツラツとした言葉が止まった。
o川*;゚ー゚)o「……あの」
\(;^o^)/「……」
o川*;゚ー゚)o「……逃げてください」
.
-
≪5≫
\(;^o^)/「もおおおお!! またかよ!! 死ねッ!!」
五週目に突入したオワタは社内で大声を発した。
周囲から憐憫の眼差しが突き刺さるも、今の彼にそれを気にする余裕はない。
\(;^o^)/(じゃあもう逆に街から出ちゃう!)
\(;^o^)/(飛行機とか乗ってアメリカ行っちゃうんだからな!)
オワタはさっそく空港に行って飛行機に乗った。
シートに深く腰をうずめ、たっぷりと息を吐き出す。
\(;^o^)/「ふぅ…………」
o川*゚ー゚)o「あ、失礼しまッ」
隣の席に現れた少女を見て、オワタは未来を察した。
離陸後、飛行機は何者かの攻撃によって墜落した。もちろんオワタは死んだ。
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≪6≫
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≪9≫
≪10≫
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≪11≫
\(^o^)/「……はあ」
会社で目覚めると同時に、オワタは両腕を組んで椅子にもたれかかった。
この現状は場当たり的な行動では解決しないのだと、十分に理解した。
オワタは、これまでの10週分の体験をもとに考察する。
口元に手を当て、思考の逡巡に立ち向かう。
\(^o^)/(どうやら、俺とアイツが会うのは確定事項らしい……)
\(^o^)/(あんまり使いたくない言葉だけど、運命とでも言うのか……。
元々信じてない言葉だったが、今はその存在を否定できない……)
\(^o^)/(どうすりゃ俺は生き延びられる?
あいつに巻き込まれて死ぬなんてゴメンだぞ……)
\(^o^)/(……次はシンプルに動くか)
今回の行動方針を決めたオワタは、一週目と同じように過ごしてタイミングを待った。
彼は一週目と同じように行動し、あえて彼女が待つコンビニに足を踏み入れるのだった。
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\(^o^)/「……おーい」
コンビニに立ち入ると、入店の音楽が鳴り始めた。
店内をざっと見回し、彼女の姿を目視する。
彼女はレジに立ち、コンビニ弁当をゆっくり食べ進めていた。
オワタの存在には気付いているだろうが、彼女は構わず食事を続けている。
\(^o^)/(……話しかけてこない)
\(^o^)/(『こいつの話を絶対に聞かない』つもりで来たが、それだけで何か変わったのか?)
一週目とは違う状況に、ほんの少しの動揺を覚える。
\(^o^)/(……俺から話しかけるべきか、このまま去るべきか)
彼が訝しげに表情をしかめていると、キュートの視線がようやくこちらを向いた。
o川*゚-゚)o「……行かないんですか?」
\(^o^)/「……」
o川*゚-゚)o「貴方は裏口から出て行って、そのままタワーに行く筈なんですけど……」
\(^o^)/「……それに従えば、生き残れるのか?」
o川*゚-゚)o「貴方はここを通り過ぎるだけの人。
なので確実に生き残れます。今は、ですけど……」
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……結果的に、オワタの死亡条件は素直キュートと会話することだった。
しかし無理に逃げようとすれば 『運命』 のようなものが働き、彼女と一緒に殺されてしまう。
そこでオワタはあえて彼女に出会い、そして一切の関わりを持たずに彼女と別れることにした。
彼女の話を聞いて時間を無駄にし、変に接点を持ってしまったのが一週目の死亡理由。
彼自身は不服だったが、今回と一週目の彼女が促した 『逃げる』 という選択によって死を回避したのだ。
コンビニを出て、ステーション・タワーに向けて車を走らせる。
『ThisMan』による妨害も多少あったが、オワタは難なく安全圏であるタワー内部に入れた。
タワー内部には混乱した市民達の雑踏が溢れていた。
市民救助や謝罪、現状報告を求める大声が絶えなかった。
\(;^o^)/(うるっせえなゴミ共が……)
オワタは耳障りな雑音が無い場所を求め、ステーション・タワーの非常階段を上り始めた。
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\(^o^)/「……」
長い階段をひたすら歩き、上る。
階段に設けられた簡易照明がオワタを感知しては点灯し、時間の経過と共に消灯する。
階が上がるごとにそれを繰り返しながら、オワタは胸中の不快感と向かい合っていた。
\(^o^)/(……最初に死んだのは子供の時か……)
オワタは取り出した煙草に火をつけ、独白する。
\(^o^)/(別に特別な死に方じゃなかった。ただの交通事故だった)
\(^o^)/(ボールを追って、道路に出て、車に跳ねられた)
\(^o^)/(俺を殺したのはバカの乗った車だった。その車は止まらなかった。
俺を轢いて殺しても、その車はどこかへ走り去っていった……)
\(^o^)/(……俺はそれが心底悔しかった。
一方的に殺されて、何も出来ずに終わるのが許せなかった……)
\(^o^)/(意識が無くなりかけて、このとき初めて死を感じた)
\(^o^)/(だけど次に目覚めた時、俺の時間は数日前に巻き戻っていた)
\(^o^)/(それが最初だった。俺が能力を使った、初めての事件は……)
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\(^o^)/(事故を回避してからも俺は死にまくった。残機は無限だが、まあ疲れた)
\(^o^)/(時には辛くて死にたいと思ったこともある。
でも死ぬに死ねないから普通に生きていくことを選んだ)
\(^o^)/(常識を身につけ、安全を徹底し、今に至る)
\(^o^)/(そうだ、この現状は俺の生き方による当然の結果だ。
不服に思うところなんか、一片もありゃしねえ!)
\(^o^)/(そうだ! 俺はこの力を自分の為に使うって決めてんだ!)
\(^o^)/(世の中には交通事故が溢れてる!
初めて死んだ時は 『この世から交通事故を無くそう』 と思って奔走したが、まったくもって無駄だった!)
\(^o^)/(死にたい奴は死ねばいい! 俺は生きて、そして老衰で死ぬ。
老衰なら確実に死ねる。能力を持った本人だからこそ、そういう確信がある!)
\(;^o^)/(……今の俺は完璧なんだ。
植物の心のような人生を歩んでいく……それを実現し、実行できる状態なんだ)
\(;^o^)/(……でも、敵が現れた。『遂に』と言っても良い。過去最大の敵だ。
どんな運命だろうとクソッタレだと馬鹿にしてきた俺の前に……)
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