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('A`)は撃鉄のようです
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__ ,、
く_;:::ハ /::ヘ
(_厂 ヒコ
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炎の揺らめきの中に、黒い影が立ち上がった。
彼女は黒い影に途轍もない恐怖を感じた。
しかし体は動こうとせず、恐怖もやがて諦めに染まった。
ミセ* - )リ(……このまま、死ぬのかな……)
そう思った直後、彼女はまた懐かしい感覚を覚えた。
同じような場面で同じような事を言った、そんな気がした。
黒い影が少しずつ近づいてくる。
ガチャ、ガチャという重苦しい金属音が、歩に合わせて聞こえてくる。
じっと待てば、終わらせてくれるのだろうか。
光を失った目で、彼女は黒い影が自分のもとに来るのを待ち侘びた。
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その時、何かが彼女の視界を遮った。
一瞬焦点が合わず、ぼんやりと二つの棒があると彼女は錯覚した。
「……お前か」
小さな声がして、彼女は視線を持ち上げる。
そこにあったのは小さな背中と、鋼鉄に覆われた左腕――
( A )「――お前がやったのか」
私ではない、あの黒い影に言っている。
雨に濡れた体を震わせて、今にも消えそうな声で。
( A )「……違ってもいい。でも、この女に手は出させない」
( A )「……誰かを守るなら、償いになるだろ」
少年は空虚に向かってそう言い、拳を構えて腰を落とした。
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≪2≫
――夢の中で彼女に出会うのは、もう何度目だろう。
満天の星に覆われた、荒野の夢だった。
ドクオはそこにぽつんと立ち、彼女もまた、ドクオの前にぽつんと立っていた。
彼女には顔が無かった。
彼女の表情は、黒い雨が滲んだように跡形も無くなっている。
口の無い顔が話し始める。
「――色んな人に、会ったみたいだな」
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「素直に嬉しいぞ。お前には、私以外の誰かが必要だったから……」
(;'A`)「――――!」
彼女の口振りに疎外感を覚えたドクオは、彼女を引き止めようと口を開いた。
だが、言葉は何も出てこない。
「もう一度エクストに会え。そして、本当の事を知ってほしい」
「……そして、本当の事を知った君に向けて、少しだけ」
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彼女の顔に、はっきりとした表情が浮かび上がった。
素直クールは困ったような笑みをしながら、最後に言った。
「弱い私に付き合ってくれてありがとう」
「貴方を騙して、引き止めてしまって……ごめんなさい」
「出来れば、もう二度と、私に会おうとしないでくれ――」
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(; A゚)(――――ッ)
一秒にも満たない、生き死にを左右する瞬間の連続。
思考を繋げる間もなく、息をする間もなく、反発するような直感だけが体を突き動かしている。
ドクオの右腕は、もうとっくに使い物にならなくなっていた。
左腕は装甲があるだけマシだったが、生身の右腕は黒甲冑との攻防には耐え切れなかった。
右腕はあらぬ方向にひしゃげ、赤く腫れ上がり、骨が飛び出していた。
もはや感覚すら通っておらず、彼の右腕はただの肉塊に成り果てている。
この腕は、もう二度と使い物にならない。
一瞬、突き刺すような黒甲冑の拳撃が止まった。
ドクオは反撃の好機を見逃さず、背の撃鉄を叩き落した。
彼の背中で閃光が爆発し、拳に渾身の力を送り込む。
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(# A゚)「お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙ッッッ!!」
絶叫して放たれた左拳が黒甲冑の兜を叩く。
それと同時に、マグナムブロウの装甲に亀裂が走った。
限界なのは右だけではない。左腕が動かなくなるのも時間の問題だった。
頭を全力で殴られた黒甲冑は即座に後退し、離れた所からドクオを見据えた。
(; A゚)(……効いてねえか)
二人は暗黙し、数秒の休憩を挟んでから、戦いを再開した。
「――――■■■■■■■!」
地面が響いた直後、黒甲冑の影から黒い液体が噴き出した。
液体は膜状に薄く大きく広がり、ドクオに向けて槍状の物を一斉に発射した。
(; A゚)「ッ!」
形振り構わず、ドクオは勢いよく瓦礫の陰に飛び込んだ。
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しかし、瓦礫が楯になるという期待は軽率だった。
放たれた槍の威力・鋭利さは凄まじく、瓦礫は絹綿も同然の盾だった。
(; A )「がッ――――」
陰に飛び込んで間もなく、咳き込むような悲鳴を漏らす。
自分の体を見る前に、ドクオは瓦礫の陰を転がり出た。
マグナムブロウで地面を殴り、着地も考えずにどこかへ体を吹っ飛ばす。
しかし、それだけでは轟音を伴って掃射される槍からは逃げ切れなかった。
(# A゚)「――――」
地面に腕を突き立てて勢いを殺し、即座に立ち直る。
ドクオは息を止めて目を見開き、飛来する槍に向かって次々と拳を振るった。
直撃するものだけを選んで打ち落とし、最低限の身動きで槍をかわしていく。
時間にして十秒、数にして百本近い槍。
それを左腕一本で凌ぎきったドクオは、瞳孔の開ききった目で自身の体を一瞥した。
(; A゚)「……」
左肩に一本、腹に二本、使えなくなった右腕に一本。
他に直撃は無かったものの、体の至るところの肉が抉り取られている。
痛いとか、怖いとか、引き下がるとか……そういう感覚はすっかり麻痺していた。
ドクオは、ここまで来ても死を感じられない自分を滑稽に思った。
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――このまま死んでも、きっと俺は何も思わない。
何も成し遂げていない人生でも、きっと後悔は無いんだと思う。
俺は、自分というものを持っていないから――
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「■■■■■■■――!!」
黒甲冑が咆哮する。
散漫しかけたドクオの意識が現実に戻る。
目の前には、見たくも無い現実が立ち塞がっていた。
(# A゚)「……上等だッ……!」
ドクオは体に刺さった槍を抜き捨て、黒甲冑に向かって走り出した。
傷口から血が噴き出し、意識は混濁を深めていく――
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――けっきょくの所、俺自身には戦う理由なんか無い。
あの人は俺の生きる理由そのものだ。決して、戦う理由なんかじゃない。
あの人がどこかで死んでしまっても、俺は死ぬほど泣いて……きっと、それで終わる。
好きな人が死んだって、けっきょく俺は、それを乗り越えて生きてしまうんだと思う。
心の中の素直クールを都合の良いように塗り替えながら、勝手な開き直りで前に進んでいく――
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今でこそ思う。人は、どうしても強くなってしまう生き物だ。
俺も強くなってしまった――悲しみの一つや二つ、乗り越えていけるほどに。
心のどこかで、もうとっくに、俺は彼女の事を諦めていたのかもしれない。
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――いつしか俺は、一人でも生きていけるようになってしまっていた。
素直クールが居なくても十分生きていけるほど、強くなってしまっていた。
だけど俺は、あの人が過去の存在になっている事をどうしても受け入れられなかった。
あの人の顔すら忘れかけているのに、俺はどうしても――それを認めたくなかった。
だから他人を、ギコ達を拒んでしまった。
これ以上他人を受け入れたら、いつか本当に彼女を忘れてしまうと思ったから……。
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――他人を知る度に自分の中の神が薄らいでいく。
敵味方に関わらず、他人という存在は俺に夢を忘れさせた。
そして何度も、あの頃に死んでおけばよかったと思っている。
子供のままで死んでおけば、きっと夢から覚める事もなかったのに――――
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――バキン、と音が鳴った。
左腕の装甲が崩れ、空に舞った装甲は光の塵になって消えていく。
(;゚A゚)「――――」
この瞬間にも、無数の黒槍が目の前に迫ってきている。
体力は底をつき、限界を超えている。
なんとか数本撃墜出来ても、残る数十本は確実にこの体を貫くだろう。
(;゚A゚)(――ダメだ)
視界を覆い尽くした黒槍の弾幕。
逃げ場があったとしても、この足ではとても逃げ切れない。
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終わったと、確信した。
(; A )「ぐ、うッ……」
途端、失われていた感覚が一気に息を吹き返し、ドクオは全身の激痛に嗚咽を吐いた。
死を前にした生存本能が最後の力を振り絞り、ドクオの脳に生きろと命令する。
(; A )(でも、どうすりゃいい……)
考える時間は十分にあった。
本来その時間は走馬灯を見る為に用意された時間だったが、肉体がそれを許さなかった。
終わるのはまだ早いと、本能が最後の意地を張っていた。
(; A )(相手は訳分かんねぇ化け物、腕っ節でも歯が立たねぇ……)
(; A )(撃動が直撃しても無傷……どうしたって無理だ……)
(; A )(何一つ、勝てる気が――)
――まだ一つ、あるじゃねえか。
その時、ドクオの思考に割り込むように、心の中で誰かが囁いた。
彼は心に湧いた声に従い、まだ自分に残されているという “一つ” を模索する――
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――背中に、異物感があった。
思わず振り返ってみると、ドクオは“二つ目の撃鉄”に目を奪われた。
(;゚A゚)(――――いや、でも、こいつは)
ドクオは咄嗟にミルナの言いつけを思い出す。
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( ゚д゚ )「……最終的に俺と同じなるか、存在そのものがtanasinnに呑み込まれる。
強過ぎる力を扱うなら、それを制するだけの精神が必要なんだ」
( ゚д゚ )「少しずつ慣らして使うなら問題ないだろうが、一個目の撃鉄と同じような使い方は絶対にするな。
もしそんな使い方をすれば、tanasinnはお前の全てを燃料にして暴れ回るぞ」
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(;゚A゚)(……でも、今使わなきゃここで死ぬ……)
(;゚A゚)(……それだけは絶対に嫌だ。このまま、何一つ遂げずに死ぬのだけは……)
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(; A )(……俺は死にたくない)
(; A )(ここで死んだら、俺は独りぼっちのままだ……)
視線を前に戻し、心の中で囁く。
目の前には変わらず黒槍の雨。
止まったように少しずつ動く時間の中で、ドクオは心を決めた。
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……もう一度会えるなら誰でもいい。
もしもこの戦いを生き残れて、もしも誰かに会えたなら、
少しは心を開く努力をして、めいっぱい笑う努力をしてみたい。
器用には生きられないけど、せめて、自分が生きる理由を守れるようになりたい。
生きる理由をあの人に押し付けるのも、この戦いで最後にする……。
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この先何を理由に生きればいいかは分からないけど、
とりあえず、色んな人の思い出と一緒に生きてみようと思う。
ちょっとしかない思い出を大切にして、生きる理由を沢山作って、
そのせいでいつかの夜を忘れたら、あの夜を想って夜明けまで泣こう。
だから今だけは、この時だけは――――生きる為に戦う。
俺が俺自身として生きる為に、この死線だけは、絶対に越えて行く――――
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――ドクオの背で、二つ目の撃鉄が落ちた。
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第二十四話 「幼年期の終わり」
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≪3≫
その瞬間、ドクオの自我は消滅した。
肉体の隅々まで根を張っていた心が、するりと引き抜かれる感覚があった。
(; A゚)「――――あ」
心臓の鼓動が、激痛と共に全身に響き渡る。
痛みは一瞬で飽和し、五感が精神との接続を放棄する。
ドクオという人間は、この体から完全に切り離された。
やがて、別の存在が彼の体内で起動した。
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ドクオの体から、マグナムブロウが剥がれ落ちる。
限界を超えて使役された武装は、呆気なく光の塵となって消滅した。
降り注ぐ無数の黒槍。
その全てが必殺――これを前にした時点で、あらゆる防御が無意味となる。
ならば、真っ向からの衝突以外に活路は無い。
より強く、誰よりも強く。
tanasinnは彼の願いに強く共鳴し、願いを具現化し始める。
背中を押すように、風が吹いた。
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左手を振り上げ、呟く。
あらゆる力を超越しうる絶対の力の名を。
幼年期の始まりに見た、あの夜空の象徴を。
“アルター
「≪天の光は――――」
だが、名を呼ぶ最中、脳に――心に亀裂が走った。
何かが不快感を伴って心身に染み込んでくる。
取り除こうにも、それは一瞬の内に彼の肉体を支配してしまった。
( ∀`)「……へえ、いい感じじゃねえか」
再び、ドクオの体を動かすものが変化した。
その存在を一言で表すなら、それは――悪魔だった。
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1〜15話 >>2
第十六話 仲間を求めて >>6-24
第十七話 Waste Land >>33-71
第十八話 限りある世界 >>89-134
第十九話 ドクオは泥を見た。ミルナは星を見た >>149-173
第二十話 説明をする回>>194-199 >>240 >>200-233
第二十一話 不治のくらやみ その1 >>247-285
第二十二話 不治のくらやみ その2 >>291-363
第二十三話 不治のくらやみ その3 >>374-405
第二十四話 幼年期の終わり >>413-438
第二部終わりです 次回からの第三部で完結予定です
書き溜めは出し切りました 今は25話を書いています
恐らく8〜9月まで逃亡します 頑張って書き溜めます(^ω^)('A`)
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おつー
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クールからの卒業か
続きが気になって仕方ない
待ってるぞ乙
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乙乙、一番気になってる現行だ
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乙!
すごく熱い展開だな
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おつ
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乙
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乙
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(^ω^)こんなのが9ヶ月前からあったんだね('A`)
http://notepad.cc/share/LrIFrDyTbB
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おもしろい
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もうすぐかなぁ?
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明日の夜に投下します
>>447はわたしです| ^o^ |
書き溜めの進捗が見たい人はこれ見てね(^ω^)
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いえぇぇぇぇぇぇす!!
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イリス症候群にかかっててワロタ
楽しみに待ってる
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すごいわかるあらすじ!前回までの撃鉄!
( ゚д゚ )「母さん! 俺もう飽きてやめたりしない!
進研ゼミ(tanasinn)から逃げたりしない! 勉強する(戦う)よ!」
('A`)「マジ無理・・・別にハッキリした理由はないけど人を信用できない・・・」
ミセ*;´ー`)リ「ゲホゲホ! ひーつらい!」
('A`)「なんか困ってる人が居る・・・鬱だけど助けとこ・・・」
( ゚д゚ )「進研ゼミ(tanasinn)から分かりやすい教材(闇堕ち描写)が届いたぞ!」
( ゚д゚ )「これでもう勉強(戦闘)でみんなに置いていかれることもない! うおお!」
('A`)「うっわつよでもがんばろ」
川 ゚ -゚)「がんばれドクオ。あと私には秘密があるけど気にせず戦ってくれ」
('A`)「なにそれ気になる」
( ゚д゚ )「うおおお! これなら期末もばっちりだ!」
('A`)「うおりゃ。あーもう撃鉄落としちゃう」
第二部 おわり
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≪1≫
('A`)「――お前らは、信用出来ない」
(,,゚Д゚)「……じゃあ決まりだ。さっさと失せろ、部外者」
言いながら、ギコはダディクールに視線を送った。
俺の口車に乗れ。ギコの双眸はハッキリとそう語っていた。
|(●), 、(●)、|「……まぁ、どうするかは自由だ。
仲間が必要なのはお互い様だと思っていたが、残念だ」
('A`)「……なんかあったら知らせに来るよ。
関わった手前、それぐらいはさせてほしい」
ドクオは俯いて歩き出し、部屋を後にした。
彼を呼び止めようとする者は、誰も居ない。
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ノパ⊿゚)「……ぬるい奴ら」
ドクオが消えてから最初に喋ったのはヒートだった。
彼女はソファに腰掛けると、暗い雰囲気に対抗するべくテレビを点けた。
録画されていた適当な番組を再生し、音量を上げていく。
|(●), 、(●)、|「……あれが普通の反応だろう。
我々の様子に違和感を覚えて、不信に思うのも仕方ない」
|(●), 、(●)、|「私だって出来れば止めたかった。
しかし、あんな目で訴え掛けられてはなぁ……」
ダディは嫌味たらしい微笑みをギコに向けた。
(#,,゚Д゚)「うるせぇぞ」
ギコがそっぽを向き、悪態をつく。
(,,゚Д゚)「大体な、人死にくらいでビビる奴なら最初っから要らねぇんだ。
ガキが消えて清々したくらいだ。食費も浮くしな」
ノパ⊿゚)「だよなぁ。でなけりゃ、こんな状況で外に追い出したりしねぇよなぁ」
ノパ⊿゚)「訂正するぜ。ひっでえ奴らだ。あんなガキ、いつ殺されてもおかしくねぇわ」
(,,゚Д゚)「……」
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(,,゚Д゚)「……ちょっと行ってくる」
|(●), 、(●)、|「……どこに?」
(#,,゚Д゚)「便所だッ!! 聞くなクソ野郎!」
早足で歩き出し、ギコも部屋を出て行った。
ノパ⊿゚)「……結局追うのかよ。あいつごと殺されるかもな」
|(●), 、(●)、|「……それはないさ」
表情から笑みを消し、ダディは冷たく言い切った。
|(●), 、(●)、|「棺桶死、ヒート、話がある。
ギコにも後で話すが、とりあえず聞いて欲しい」
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【+ 】ゞ゚)「……俺はギコの時でいい。もう少し、休みたい」
部屋の片隅で蹲っていたオサムが、ダディを一瞥して言う。
オサムの顔色はすっかり青ざめており、今にも倒れそうなほど衰弱した様子だった。
|(●), 、(●)、|「……なおるよなら、まだ生きてる」
【+ 】ゞ゚;)「――ッ!?」
そんな彼に対して、ダディは一切の装飾無しで真実を語った。
|(●), 、(●)、|「ギリギリだったが、一命を取り留めた」
ノパ⊿゚)「……お前、やっぱムネオのとこに行きやがったな」
|(●), 、(●)、|「ああ。他に頼る当てが無かった」
【+ 】ゞ゚;)「まっ、待て!」
話に割り込み、オサムは椅子を蹴飛ばして立ち上がった。
【+ 】ゞ゚;)「あいつが生きてるって……」
|(●), 、(●)、|「……そうだ、生きている。あの時だって心臓はまだ動いてた。
お前が第一発見者だが、確認しなかったんだな」
.
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【+ 】ゞ゚;)「……なおるよは今どこだ」
|(●), 、(●)、|「まず私の質問に答えろ」
ダディは語気を強めて言った。
|(●), 、(●)、|「あの状況で、どうして彼が死んだと思った?」
【+ 】ゞ゚;)「……見て明らかだった」
|(●), 、(●)、|「お前はそんな思い込みで喋る奴じゃない。
何か、彼が死んだと確信するようなものを見てしまったんだろう」
|(●), 、(●)、|「例えば、自分より強い誰か、とか」
【+ 】ゞ゚;)「……」
ノパ⊿゚)「……じゃあコイツ、なおるよをやった犯人を見てるのか?」
|(●), 、(●)、|「……私はそう思っているし、もう犯人の見当もついている」
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|(●), 、(●)、|「棺桶死オサム。
お前はミルナを探しに行って、なおるよを見つけたな」
【+ 】ゞ゚;)「……」
|(●), 、(●)、|「そこで一つ聞きたい。
もしかして、ミルナとなおるよは一緒に居たんじゃないのか?」
|(●), 、(●)、|「だからミルナを探す過程でなおるよを見つけられた。
そうであるなら、犯人は殆ど決まったようなものだろう」
【+ 】ゞ゚;)「……」
畳み掛けるような追求に、オサムは口ごもって言葉を返せなかった。
オサムは隠すことをやめ、ダディの言葉に頷いた。
【+ 】ゞ-;)「……やった所は見てないが、『俺がやった』と奴は言った」
|(●), 、(●)、|「……ミルナは、他に何か言ってなかったか」
【+ 】ゞ゚;)「……俺を殺したら他の奴には手を出さない、と言っていた。
恐らくミルナは、あの姿を見た奴は全員殺す気でいる」
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ノパ⊿゚)「……おい、お前の能力って確かスゲー強かったよな。
当然、勝ったんだよな?」
ノパ⊿゚)「勝ったからお前はここに居て、ミルナは居ないんだよな?」
まさか――と思いながら、ヒートはオサムに問い掛ける。
【+ 】ゞ゚)「……いや、負けた。俺はミルナに殺された」
【+ 】ゞ゚)「死んだふりをして――というか、俺は実際しばらく死んでいた。
ミルナはその間に消えた。俺が今生きてる理由は……」
ノハ;-⊿-)「……不可能を可能にする能力。てめぇも大概だな」
【+ 】ゞ゚)「……ああ。心臓は今も再生中だ。三日もあれば、何とかなる」
オサムは自身の胸に手を当てた。
【+ 】ゞ゚)「……だが、どおりでなおるよを蘇生出来なかった訳だ。
まだ生きていたとは、思ってもみなかった……」
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|(●), 、(●)、|「ミルナが今どこに居るか、分かるか?」
【+ 】ゞ゚)「……時間をくれ。感知する」
目を閉じ、オサムは右目の眼帯に集中した。
ノハ;゚⊿゚)「……まさか今からヤりにいくのか?」
|(●), 、(●)、|「当然。敵は誰であれ早々に消す」
【+ 】ゞ-;)「……居た。商店街の外れだ。誰かと戦ってる」
|(●), 、(●)、|「相手は誰だ?」
【+ 】ゞ-;)「……駄目だ、分からない。俺よりは善戦しているが……」
ノハ;゚⊿゚)「――おいダディ! あっち方角だ!」
その時だった。
ヒートが窓を開けて外に身を乗り出し、遠くの空を指差した。
呼ばれて見に行くと、雨雲の一部が黄金色に輝いているのが目に入った。
そして、光り輝く空の中には黒い影があった。
影は何かの追跡を振り切ろうとしているのか、凄まじい速さで空中を飛び回っている。
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「――勝手に、失礼するよ」
誰もが外に目を向けていた、その時。
声は、唐突に彼らの背後に現れた。
|;(●), 、(●)、|「――――ッ!」
ダディは振り返りながら超能力を発動し、視界に入った人影に向けて火炎を打ち出した。
しかし炎は容易くよけられ、空中で四枚の紙切れに変化する。
¥・∀・¥「……四万か。はした金だが、まぁ頂いておこう」
タキシード姿の男は床に落ちた紙切れを拾ってから、ダディ達に面と向かった。
¥・∀・¥「……全員ザコだな。話にならん」
ノパ⊿゚)「……あぁ?」
¥・∀・¥「フン」
ヒートの威嚇に対し、男は生意気に鼻を鳴らした。
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ふと、男が指をパチンと鳴らした。
すると空中に黒い渦のようなものが生まれ、その中から二つの物体が落ちてきた。
\(;^o^)/「――またかよッ!」 ドテッ
(;,,゚Д゚)「おおおッ!?」 ドテッ
床に落ちた二人を見て、ダディ達は揃って目を丸くした。
¥・∀・¥「こいつ、お前らの仲間だろう。
ドクオとやらを追って戦いに行こうとしていたから、止めてやった」
男は拾った紙切れで顔を扇ぎ、得意気に言った。
|;(●), 、(●)、|「……片方は知らんが、片方は確かにそうだ。
だが、お前は一体何者だ……?」
すると正体不明の二人組は一度顔を見合わせ、
¥・∀・¥「瀕死の金持ち」
\(;^o^)/「死にまくってる貧乏人……」
とだけ答えた。
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('A`)は撃鉄のようです
第三部 荒野の果てに
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――雨は止み、雨雲も消え去り、夜が間近に迫っていた。
夕日が、少しずつ地の底へと落ちていく。
( ゚д゚ )「…………」
( A )
意識を取り戻したミルナが最初に見たのは、血だらけで気絶したドクオの姿だった。
ミルナは周囲を一望し、壊滅した街の光景を見て理解した。
tanasinnを制御出来ず、求めた以上の破壊をしてしまった事実が目の前に広がっている。
しかし、ミルナの心に後悔はなかった。
( ゚д゚ )(……間違ってても突き通したいものがあるなら、やるしかない。
そうする事でしか自分を救えないなら、悪と呼ばれる覚悟をして前へ……)
( ゚д゚ )(……この力を選んだ俺も、この考えすらも、間違っているかもしれない。
だが、もうそれでいい。俺は決めた)
ドクオに背を向け、一歩、夕闇に向かって踏み出す。
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( ゚д゚ )(俺はこの間違いを貫く)
( ゚д゚ )(正しさの為に立ち止まるくらいなら、俺はもう、間違ってでも生きていく)
己の正義に殉じた自分。
理想の為に、己の生き方すら忘れた自分。
それらを全て捨て、ミルナは果てしない荒野を一から歩き始める。
身体一つとまっさらな信念を持って、いつか辿り着くその場所へと――
( ゚д゚ )(この道の向こうにしか俺の居場所は無い。
どれだけこの手が汚れていようと、俺はもう一度だけ手を伸ばす……)
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プロローグ 「Another Heaven」
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またあとで一話分投下します('A`)
深夜になるので待ってたら駄目だよ('A`)
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待ってた
-
待ってる
-
待つぞ��
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期待!
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≪1≫
――暗闇に立っていた。
――果ての無い闇の中に、俺は居た。
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「――ようこそ、歓迎するぜ」
その声に遅れて、目の前に人型の霞が漂い始めた。
「……ほお、二度目にしては居心地が良いな。
実体を持てんのは、ちと残念だったが」
霞は色んな動きをして自分の体を確かめてから、こちらを向いた。
頭らしき部分には僅かに影がついており、辛うじてそこから表情が読み取れた。
霞は、とても楽しそうだった。
「回りくどいのは性に合わん」
「だからハッキリ言うが、俺はtanasinnの、こう……使い魔的なものだ」
ハッキリ言うと宣言した割りに、大雑把だった。
「仕方ないだろ。俺の飼い主には形はおろか意思も無い。
俺自身、俺が何なのかよく分からん。それらしい自己紹介をしただけだ」
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「とりあえずアレの一部って程度の理解で十分だ。
あと、姿は無いが名前はある。自分でつけた」
「今後、俺の事はテンプターって呼んでくれ」
「ま、長い付き合いをしようぜ。お前はミルナより話が出来そうだしな」
腰に手を当てて得意気に言った途端、霞は風に吹かれたように揺らめいた。
「――残念、時間だな」
「次はもっと長話が出来ると最高だ。お前の声も聞いてみたいしな」
霞は最後に片手をビシッと構え、ドクオを見送った。
「そんじゃあな。また話しかけるからヨロシク!」
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第二十五話 「老兵集う」
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≪2≫
昨日発生した殺戮の現場には、翌朝、多くの花が手向けられていた。
レムナントの環境は花を育てるのにそぐわない為、花は全て造花だった。
ハハ ロ -ロ)ハ「……皆さん、こういう所は律儀なんですね」
現場に出来上がった造花のカーペットを見通しながら、金髪の秘書・ハローは呟いた。
「これは鎮魂の花ではなく、報復の決意表明だよ」
スーツ姿の初老の男が反応し、ハローを一瞥する。
「今回の被害はどのくらいだ」
ハハ ロ -ロ)ハ「二十人以上、六十人未満らしいです」
曖昧な返答に、男はムスッとした表情をハローに見せた。
「検証班に伝えてくれ。ハッキリ数えろとな」
ハハ ロ -ロ)ハ「現場に残った挽き肉の総量から、そう推測したらしいです」
「……今の発言は無しだ。あと、野菜の輸入量を増やしておけ。しばらくは野菜が流行る」
ハハ ロ -ロ)ハ「分かりました。普段の三倍で発注します」
.
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降り注いだ雨と造花のおかげか、現場の血生臭さは大分和らいでいた。
それでも時折鼻につく異臭は、彼らに凄惨な現実を強く認識させる。
「生存者の様子は」
ハハ ロ -ロ)ハ「少女の方は目覚めました。しかし記憶が無いようです。
青年は医療班が交代で看病していますが、運び込まれた当初は酷い有様だったと聞いています」
「聞かせろ」
青年の状態をあえて伏せたハローは、男の反射的な要望に肩を跳ねた。
彼女は平静を装ってから、事務的な口調で彼に答える。
ハハ ロ -ロ)ハ「一言にまとめると、全身がズタズタだったそうです。
肉、骨、内臓。その全てが致命的な破壊を受けていました」
「……それは、死んでいて当然だと思うのだが」
ハハ ロ -ロ)ハ「そういう超能力だというのが医療班の見解です。
彼の場合、回復速度というより生命維持能力が異常です。
だからこそ、この惨劇を生き延びたのかと……」
男は彼女の推測に同意し、軽く頷いた。
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「帰って雑務を済ませるぞ。二人の見舞いに行きたい」
ハハ ロ -ロ)ハ「余った造花でも持って行きますか?」
「私の家のを持って行く。枯れ気味だが、偽物よりは誠意が伝わるだろう」
ハハ ロ -ロ)ハ「……ええ、きっと」
「荒巻スカルチノフには帰ってもらえ。この事件を先に終わらせる」
男は颯爽と振り返り、歩き出す。
「――私の街を荒らしたからには、犯人は確実に殺す」
ハハ ロ -ロ)ハ「……市長、言葉を選んでください」
男の名前は『佐藤』。
都市・クソワロタを実質的に取り仕切る、レムナント最古参の男である。
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携帯電話で録画された動画には、自分の姿が映っていた。
記憶の手掛かりになる物が無いかと思って開いたが、私はどうやら用意周到な女だったらしい。
ミセ*゚ー゚)リ「――はい、こんにちは。
最低限の知識を持った、子供の頃の私」
ミセ*゚ー゚)リ「私がその状態になったのは、何らかの理由で死んだからです。
ほら、輪廻転生って言葉があるでしょう? それを個人規模でやりました」
記憶が無くても分かった。
この人は、とてもブッ飛んだ事を言っている。
ミセ*゚ー゚)リ「記憶は全部ありません。
若返ったのは個人的な願望です。若さは日々失われていきます」
ミセ*゚ー゚)リ「私は、貴方は、色んな超能力を持った凄い人です。
ケータイのメモ帳に能力の一覧・概要を書いておいたので読んでください」
ミセ*゚ー゚)リ「しかし、すぐに迎えが来るので心配ありません。
迎えの人と一緒に帰って、私の部屋に入ったら記憶が戻ります」
ミセ*゚ー゚)リ「そういう感じなので、よろしくお願いします」
他でもない自分からのメッセージに、私はとりあえず、心の中で「はい」と返事した。
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携帯電話をたたみ、部屋を一望する。
目が覚めてから何度も繰り返した行為に、いい加減飽きを覚えてきた。
ミセ*゚ー゚)リ(……ただの病院、って設定なのかな)
私は、この『空間』が普通ではないと何となく理解していた。
澄み渡る風、揺らぐカーテン、草原が見える大窓。
白いベッドに白い天井。
壁際には本棚があって、質素な食事がベッド近くのテーブルに用意されている。
ここまで分かりやすい作り物で満たされていると、自分が人形劇の舞台に立っているような気になってくる。
不愉快ではないけれど、常に視線を感じるのは快適ではない。
ミセ*゚ー゚)リ(これが、善意によって作られた客室であればいいんだけど……)
私は反対側のベッドに目を向けた。
現状、そこに寝ている恩人を見るのが一番楽しい。
生きてるんだか死んでるんだか分からないけれど、横にあるピッピ言う奴がずっと鳴っているので、多分生きている。
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ミセ*゚ー゚)リ(……ま、記憶が無いっていうのも同じくらい生死不明だけどね)
少なくとも、今の私に生きている実感は無い。
自分を定義するだけの記憶が無い以上、今の私は個人として成立していない。
よって今の私はただの物体なのだし、生きている実感が無いのも割りと当然なのでは? と思う。
暇なので考え込んでいる。
動画の私が言った通り記憶は無いが、考え込めるだけの知能はあるようだった。
でもベッドの横にある鳴ってるアレの名前が思い出せないのはダメだと思った。
元々の私がアレの名前を知らないなら仕方ないけれど、それはそれで残念な気持ちになる。
ミセ*;゚ー゚)リ(……私は残念な人だったのかもしれない……)
私はすぐさま本棚を漁り、アレの名前を調べた。
心電図モニターで合っている、はず。少なくとも、ピッピするアレという表現に頼る事はもう無い。
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ミセ*゚ー゚)リ(……起きないなぁ、この人)
私は改めて向かいの恩人を見つめた。
死んでて当然の状態でも、彼はしっかり生きていた。道理は分からない。
まあ、超能力が普通に存在しているらしい世界でそれを考えるのは不毛だろう。
何か出来ないか、と一抹の義務感を覚える。
恐らく彼は命の恩人で、あの火災と黒い影から助けてくれた人だ。
恩返しはまた別としても、彼が死なないよう働く義務が私にはある。
頼る当てとしてまず浮かんだのは、携帯電話のメモ帳だった。
私にあるというスーパーパワーがどんなものか、少し興味もあった。
ミセ*;゚ー゚)リ「……うわ」
早速メモ帳を開くと、そこには恐るべき長文が十分な改行もされずに羅列されていた。
内容はなんだか凄そうだったが、凄さが伝わる前に気が滅入った。
掻い摘んでまとめると、動画内の私には七つくらい能力があるらしかった。
どれもいちいち名前が長く、気が滅入った。
動画の私は二十歳半ばくらいだろうか? あの人がコレを考えている様子を思うと、残念な気持ちになった。
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ミセ*;゚ー゚)リ「……これなら使えるかな」
【一つ残らず木偶人形(ワンサイド・アウトサイダーズ)】。
その長い名前を脳裏に読み上げ、能力の内容を確認する。
これは、周囲の物質を何でも操作出来るらしい。
ミセ*゚ー゚)リ(これなら心臓が止まっても動かせるし、止血も出来る)
ミセ*゚ー゚)リ(傷を治したりは出来ないけど、瀕死状態を維持する事はできるよね)
しかし、私はそこまで考えて思い止まった。
彼はとりあえず生きている訳だし、急いでこれをやる必要はない。
というか、瀕死状態を維持するという発想がまずおかしい。かなり嗜虐的だ。
ミセ*;゚ー゚)リ(……別の案を考えよう)
私は 『常識的に』 という言葉を念頭に置き、彼に対して出来る事を考えた。
それじゃあ体を使って奉仕しようかな? と考えたが、恐らくこれも前の私の思考回路なのでボツだ。
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-
――その時、ノックが聞こえた。
私の返事を待たず、部屋の扉が大きく開け放たれた。
¥・∀・¥「……」
ミセ*゚ー゚)リ「……どなた?」
私は振り返って声を掛けた。
なんだか敵っぽい。一応、心の準備だけはしておく。
¥・∀・¥ 「……ああ、失礼」
来訪者は私に気付き、申し訳程度の断りを入れた。
¥・∀・¥「……状況が、変わったか?」
彼は私達二人を見比べて呟く。
意味は分からなかったが、嫌な感じがする。
私自身ではなく、『前の私』がそう告げているのだ。
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-
¥・∀・¥「……状況が変わった。
これは立ち回りを変えるべきだな」
¥-∀-¥「……まぁまぁ。今は感動の再会を喜べよ」
両手を挙げ、彼はヘラヘラした様子で振り返った。
独り言ではなく、誰かに向けた言葉と共に。
/ ,' 3 「……佐藤よ。私は今、とても不愉快だ」
「……こっちの台詞だ。これは誰だ」
現れた三人は、互いに威圧的な視線を送り合った。
私はこっそりベッドを出て、命の恩人の傍で身構えた。
何が起きてもせめて盾になる。それぐらいしか、出来ることが思い浮かばなかった。
ふと、老人の双眸が私を捉えた。
/ ,' 3 「……久し振りだが、初めましてだな」
ミセ*;゚ー゚)リ「……」
/ ,' 3 「……こりゃあ、本当に一から考え直しか……」
老人は困った様子で言い、天井に向かって嘆息した。
.
-
≪3≫
/ ,' 3 「佐藤、ワシらはあっちで話をする。
用が済んだらお前も来い」
¥・∀・¥「茶菓子は勝手にもらうぞ」
二人は雑に言い残して部屋を出て行った。
「――初めまして。君を保護した、佐藤という者だ」
そして、次に私に話しかけてきたのは白髪交じりのスーツの男。
さっきの老人よりは一回り若く見える。
高身長で頑強な体付きをしているおかげで、とても怖い。
ミセ*;゚ー゚)リ「……」
「……まだ具合が悪いか?」
佐藤が一歩、こちらに近づいた。
到底人を心配しているとは思えないマーダーフェイスだったが、そういう顔の人なんだなと恐怖を納得に変換する。
そうしなければ恐怖で口が動かせなかった。
.
-
ミセ*;゚ー゚)リ「……いいえ、大丈夫です」
「大丈夫、とは耐えられるという意味か?」
ミセ*;゚ー゚)リ「いえ、健康そのものです。ご心配なく」
「そうか。ならば病み上がりで悪いが君の話を聞きたい。どうだろうか」
佐藤は椅子を持って私のベッド近くに移動し、こちらで話そうと促してきた。
私は大人しく従い、自分のベッドに戻る。彼のもとを離れると、少し不安になった。
「……さて。まず、君の事を聞かせてくれ。自己紹介だ」
椅子に座った佐藤は、股座で手を組んでじっと私を見つめてきた。殺されるかと思った。
ミセ*゚ー゚)リ「……ミセリ、と言うそうです」
「……なるほど。その口振りなら自分の状況を分かっているな。
記憶が無いと聞いているが、それは本当か?」
ミセ*゚ー゚)リ「はい。私自身、私が誰か分かりません」
私は端的に答える。
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-
「ではなぜ、自分の名前が分かった?」
ミセ*゚ー゚)リ「ケータイがあったからです。
中に、自分のことが記録されてました」
ケータイのことを話すのは危険かとも思ったが、無駄な隠し事は無駄な疑念を生んでしまう。
今は平和的な方向へ向かって話を進めるべきだ。
「……ここに担ぎ込まれた時点で身体チェックは完了している。
その段階では携帯電話を持っていなかった筈だが、なぜ持っている?」
ミセ*;゚ー゚)リ「え、そうなんですか? 分からないです」
「……なら、それでいい。では、その携帯電話を見せてもらいたい」
ミセ*;゚ー゚)リ「……ごめんなさい。出来ません」
「……分かった」
非協力的な答えが連続しても、佐藤は顔色を変えなかった。
実際、自分がどうしてケータイを持っているかは分からないし、唯一の記憶の手掛かりを気安く渡す事も出来ない。
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「健康そのものだと、さっき言ったな」
佐藤は追求せず、手早く話題を変えた。
ずいぶん呆気ないと思いながら、私は肯定の相槌を打つ。
「君の傷は全治一年は確実だった。
もっとも、あの状況で即死以外の状態というのも不自然だが」
ミセ*゚ー゚)リ「……私、疑われているんですね」
「いや、君は犯人ではない。
さっきの老人にキッパリ否定されているし、私もそれに納得した」
「話を戻す。君の復活の速さから推測するに、恐らく君は治癒能力を持っている。
その能力を使って、彼を治すことは出来ないか?」
佐藤は、命の恩人を一瞥して言った。
「私のところには治癒能力者が居なくてな、あのくらいの対処しか出来なかった。
生命維持は出来ているが、あの状態は見るに堪えない」
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-
ミセ*;゚ー゚)リ「あの、すみません……。
メモを見た限り、私に治癒能力はありません」
人を刺すような佐藤の視線が私に向く。
怖い。今にも両目を抉りにきそうで怖かった。
「なら、それも仕方ないな。荒巻に頼むとしよう」
そしてまた呆気なく、佐藤は話題を終わらせた。
「私からの質問は次が最後だ。君が見たものについて、聞きたい」
ミセ*゚ー゚)リ「見たもの、というと……」
「あの状況で起こったこと、君が見たもの、全て」
ミセ*゚ー゚)リ「……はい。分かりました」
私は回想する。黒い影と、あれと戦っていた少年の姿を。
ミセ*゚ー゚)リ「……あの人の名前、分かりますか?」
恩人を見つめ、佐藤に問い掛ける。
彼を語るのに彼の名前を知らないのでは、あまりに不便だ。
「ドクオ、と言うらしい」
ミセ*゚ー゚)リ「……では、ドクオさんが私の前に現れた所から、お話します」
私は、私として覚えている記憶を、一から語り始めた。
.
-
≪4≫
リビングに出ると、油断した様子のハローと目が合った。
彼女はそそくさと取り繕い、読んでいた雑誌を背後に隠して言った。
ハハ ロ -ロ)ハ「お話は済んだのですか?」
/ ,' 3 「これからだ。席を外してもらえるか」
ハハ ロ -ロ)ハ「どうぞ、使ってください」
テーブルに散らかした菓子の包装紙をグシャっと鷲掴みにし、席を立つ。
ハローはすぐさまその場を離れ、どこかに消えた。
.
-
¥・∀・¥「さあて、何から話す」
マニーは奥の席に座ると、わざとらしく大仰に足を組んだ。
/ ,' 3 「なんで生きてる。こないだ殺しただろ」
荒巻はあえて立ったまま、上から鋭くマニーを睨んだ。
マニーは不敵に笑み、下からそれを睨み返す。
¥・∀・¥「逆に聞くが、あの程度で私が死ぬとでも?」
/ ,' 3 「当然。あの程度で死ぬ程度の男という認識だった」
¥・∀・¥「であれば先の答えは自明だろう。
単に君の認識が間違っていたのだよ、荒巻くん」
/ ,' 3 「……まあ、いい。で、今度は何をしにきた」
マニーの煽りを言い返せなかった荒巻は渋々本題に移った。
それを分かった上で、マニーは微笑んだまま答える。
¥・∀・¥「私の目的は変わらない。貴様の打倒、ただ一つ」
/ ,' 3 「……」
¥-∀-¥「……と、言いたいんだが、残念ながら今は貯金が少なくてな。
とても貴様相手に戦える状況ではない。だから貴様とは戦わん」
マニーは背もたれに体を預け、だらけた姿勢で片手を振った。
降参の素振りにしては極めて不快だったが、荒巻はそれを見逃してやった。
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-
¥・∀・¥「しかし、だ」
¥・∀・¥「身を潜め、表舞台から消えたままというのは性に合わん。
私も密かに行動を続け、まぁまぁの手札を三枚、用意した」
マニーはしたり顔で言い、続ける。
¥・∀・¥「――『敵の情報』、『tanasinnの倒し方』、『人生オワタ』」
¥・∀・¥「今日は新たに『ドクオ』という手札を揃えるつもりだったが、まあ、状況が変わった」
/ ,' 3 「……目的を言え、という質問だったのを忘れたか?」
¥・∀・¥「そう急くなよ荒巻くん。負けた気がして悔しいのかな?」
/ ,' 3 「貴様――」
¥・∀・¥「今回の目的はひとつ。ドクオを回復させること。
これは必要な立ち回りでな、誰かがやらねばならん」
荒巻が言い返してくる前に、マニーは口早に質問に答えた。
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¥・∀・¥「ま、理解力の低いお前の事だ。いくらか説明が要るだろう」
/ ,' 3 「貴様の説明に無駄な表現が多いだけだ。
不快な語彙を記憶ごと添削しても構わんのだぞ」
¥・∀・¥「いいや的確な表現だね。
お前は強いが結構バカだ。だから私にも騙される」
語気を強めたマニーの発言に、荒巻は呆れたようだった。
マニーに対してというより、彼との再会にはしゃいでいる自分を自覚し、呆れていた。
荒巻は大きな溜め息の後、すとんと肩を落として言った。
/ ,' 3 「分かったよ、マニー。もう好きなだけ話せ」
椅子に腰掛け、荒巻は気だるそうに頬杖をついた。
マニーも真似して頬杖をつき、最初の微笑みを保ったまま言った。
¥・∀・¥「そうか? じゃあ遠慮なく 『ThisMan』 の穴埋めからいこうか」
/ ,' 3 「勝手にしてくれ……」
¥・∀・¥「そう自棄になるなよ。
主役は私じゃないが、そこそこ楽しめる事は約束しよう」
マニーは、それはそれは楽しそうに語り始めた。
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16〜24話 >>439
プロローグ Another Heaven >>454-467
第二十五話 老兵集う >>473-495
次回は多分来月です('A`)
細かい進捗は上のやつを見てね('A`)
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乙乙。マニー生きてたんかい!
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おいおいここで切るのかよ
次はいつだ楽しみすぎる
乙
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おつ!
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乙
続き待ってるよー
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乙乙
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今週土曜日くらいに投下します('A`)
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きったきたきた
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≪1≫
\(^o^)/(……暇すぎる。有能過ぎるのも罪だわ……)
人生オワタは屋上での戦闘を回避し、残業に励んでいた。
時系列は('A`)は撃鉄のようです第八話5レス目まで遡る。
後に『面汚しの夜』と総括される一夜の中、オワタは人生最大の敵に遭遇していた。
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第二十六話 「面汚しの夜 その3」
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午後6時にもなると街には 『ThisMan』 の感染者がうろついていた。
当然その頃にはオワタの会社も機能を停止しており、会社の中には同じ顔の『ThisMan』ばかりが居座っていた。
\(;^o^)/(な〜〜〜〜にが起こってんだよバカ!)
そんな会社から誰よりも先に逃げ出したオワタ。
彼は一目散に自分の車に立て篭もり、膝を抱えて逆ギレしていた。
彼が篭城場所に選んだのは地下の駐車場。
人気は少なく、隠れるには丁度いい環境である。
しかしその有様はまさに無力な小市民。
救助をじっと待つ木の上のネコそのものだった。
\(;^o^)/(誰か助けに来いよ! ケーサツ! おい!)
\(;^o^)/(こっちは税金払ってんだぞ! 働け! おい! 助けて!)
強気な救助要請をひらすら内心で唱え続ける。
それに応えてか、地下駐車場にコツン、コツンと足音が響いてきた。
\(;^o^)/(誰か来た! 普通の人であってほしい!)
オワタはそっと頭を上げ、窓から外を覗き見た。
\(^o^)/
すると、窓越し数センチ先に『ThisMan』の顔が迫っていた。
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\(^o^)/(やっべ)
オワタは即座に姿勢を正してハンドルを握った。
同時に外の『ThisMan』が窓ガラスを殴り始め、たった二発でガラスに亀裂を走らせた。
\(;^o^)/「おおおおおおッ!!」
アクセルとかレバーをガチャガチャして車を急発進させ、出口に最速で突っ込んでいく。
バックミラーを見ると、陸上選手ばりの迫力で『ThisMan』が追走して来るのが見えた。
\(;^o^)/(こうなりゃタワーまで突っ走るしかねえ! あそこなら確実に無事だ!)
しかし地上に出た瞬間、オワタはその考えがどれだけ困難であるかを理解した。
夕闇の中、見渡す限りに『ThisMan』の顔がある。その数十人分の同じ顔が、一斉にオワタの車を捕捉した。
\(;^o^)/(――轢かれても知らんからな!!)
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素直キュートが自身の超能力を自覚した時、彼女はその能力をひどく虚しいと一蹴していた。
o川*゚ー゚)o(まあ、この能力が色んな虚しさを誇張させたのは事実だけど)
最初、超能力は夢という形で現れた。
夢を見たのは算数のテストの前日。夢の中には、テストの答えが全て浮かんでいた。
翌日テストに見たままを書き込むとこれが全問正解。以降、彼女は時折こうした夢を見るようになった。
夢の次は幻覚だった。
じっと一点を見つめていると、そこに音付きの立体映像が見えてくるのだ。
しばらくは映像の意味が分からなかったが、ある日、自宅のリビングで見た映像が彼女の理解を早めることとなった。
リビングで見たのは両親が大声で口喧嘩をしている様子だった。
どちらも自分の手元にお金が欲しいらしく、適当な口実を作ってはそれをぶつけ合っていた。
最終的に取っ組み合いの喧嘩が始まり、けっきょく父親が暴力に打って出る。そういうものが見えてしまった。
映像を見てから数日後の深夜、キュートは両親の怒鳴り合いで目を覚ました。
静かにリビングを覗くと、そこには先日見たものと同じ光景があった。
口喧嘩の一言一句も違わず、まったく同じ展開がそこにあった。
それを見た彼女は直感した。自分の能力が 『未来予知』 である事を自覚してしまった。
そして、一番欲しくない力が来てしまったと、彼女は子供ながらに大きな虚脱感を覚えた。
自覚と同時に見えた彼女自身の未来は、この家族の為に歪みきっていたのだから。
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o川*゚-゚)o「……ああ」
素直キュートは回想を止め、電子レンジに入れた弁当に意識を戻した。
残り数秒を頭の中で数え、チンと鳴ると同時に弁当を取り出す。
蓋を外すと十分に温められた食材から湯気が沸き立ち、彼女の食欲をそそった。
だが、それは食欲というよりも義務感だった。
彼女にとって食べる事は作業でしかなく、味や見栄えは度外視された概念だった。
未来予知のせいで向こう数ヶ月分のご飯の味が分かってしまう。
だから食べるのが楽しくない、という訳ではない。
彼女の作業的な食事風景は、単にコンビニ弁当を死ぬほど食べ続けた結果の飽きだった。
弁当を半分ほど食べてから、キュートは時計の針を確かめた。
3分後、このコンビニに人生オワタという人が来る。
キュートは人生オワタに出会う未来を数年前に予知していた。
彼に出会い、最期を一緒に過ごす未来。
素直キュートは、今日ここで死ぬ事になっていた。
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\(;^o^)/「……お〜い」
三分後、人生オワタがおそるおそる店内に入ってきた。
自動ドアの開閉に反応し、入店の音楽が店に鳴りひびく。
キュートは数年振りに、自然に笑みを浮かべて言った。
o川*゚ー゚)o「こんばんは、人生オワタさん」
\(;^o^)/「……お前、だれ?」
o川*゚ー゚)o「素直キュートって言います。ずっと、あなたを待ってました」
\(;^o^)/(……なに言ってんだコイツ)
ひるんだオワタが一歩退くと、キュートはハッとして体裁を整えた。
軽く会釈をしてから、彼女は店内を一望して言った。
o川*゚ー゚)o「ここ、しばらくは安全ですよ。棚で入り口を塞ぎましょう」
\(;^o^)/「……分かった」
警戒を見せながらも、オワタは彼女の提案に乗っかった。
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二人は窓のブラインドを全て下ろし、商品棚を動かしてコンビニの出入り口を封鎖した。
そこまでやってようやく一息つき、二人は奥から持ってきたパイプ椅子に腰掛ける。
\(^o^)/「なんか大変な事になってるよなぁ……」
o川*゚ー゚)o「今夜中に終わる話ですし、特に被害も出ません。大丈夫です」
\(^o^)/「……だといいケド」
妙に自信あり気に断言されてしまい、オワタは口先に出かかった愚痴を飲み下した。
o川*゚ー゚)o「……あの、私。お話したいです」
\(^o^)/「……すれば? とりあえず聞いててやるよ」
不気味なほどニコニコしている彼女に対して、オワタはぶっきらぼうな返事をした。
安全な場所を共有させてくれた分は彼女に協調するが、それ以上に深入りする気は毛頭ない。
それは決して彼女に限った話ではなく、誰に対しても、オワタは必要以上の人間関係を作ろうとしないのだ。
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o川*゚ー゚)o「……嬉しいです。あの、馴れ馴れしくしてごめんなさい」
o川*゚ー゚)o「いちおう理由があるんです。私の能力、予知能力なので……」
\(^o^)/「……俺に会うのを知ってた?」
o川*゚ー゚)o「あ、そうです。この会話も一言一句その通りに予知してます」
\(^o^)/「……つまらなくないか? 俺ならそんな顔で喋ってられねえわ」
o川*゚ー゚)o「はい、すごくつまらないです。
でも今日だけは、今だけは特別なんです」
\(^o^)/「ふうん……」
o川*゚ー゚)o「私、今日ここで死ぬんです。
普段だったら、私こんなに喋らないです」
\(^o^)/「……そら災難だったな。知りたくもなかったが」
o川*゚ー゚)o「いいじゃないですか! 最後ですし、いっぱい話したいんです!」
人生オワタは、彼女の言う事を大体信じていた。
信じるかどうかで何かが変わる訳でもないので、善意的に受け止めてあげたのだ。
信じた上で、オワタは彼女の歪さを早々に察知していた。
彼女の表情はなぜか希望に満ちていて、とても今日ここで死ぬ人間の顔には見えない。
人間誰しも死ぬのは怖い。
しかし、彼女はそういう当然の感性を育てる事が出来なかった。あるいは、してこなかった。
そういう人生だったのだと、薄々分かってしまった。
.
-
o川*゚ー゚)o「色々あって、私が自分語りを出来る時は今しかないんです。
なのでいっぱい話します。本当、聞くに堪えないのは承知の上ですが……」
\(^o^)/「……」
o川*゚ー゚)o「……最後なんです。落ち着いて、話しますね」
哀れむような視線に気付いたのか、キュートは声色を落として改めて言った。
o川*゚ー゚)o「物心ついた時には、私は私の一生を予知していました」
o川*゚ー゚)o「えっと、私思うんです。夢や希望って、分からないから意味があるって。
でも私は、人生における夢や希望にあたるものを全部見ちゃって……」
o川*゚ー゚)o「別に悲しいとかは思いませんでした。
ただ、なんだろう……」
o川*゚ー゚)o「ああ、こういう感じで生きて終わるんだなぁって。そう思うようになりました。
自分の身に起こるすべての事が、まるで他人事のようになってしまったんです」
用意された言葉を読み上げるように、彼女は淡々と語る。
しかしオワタは彼女の言葉に耳を傾けていなかった。聞いてはいたが、聞き流していた。
聞くに堪えないという言い訳を用意してくれた以上、オワタはそれに従っていた。
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