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( ^ω^)千年の夢のようです
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9/24(水) 夕方より投下します
よろしくお願いします
前スレ
>( ^ω^)千年の夢のようです
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/13029/1401648478/
まとめサイト様(以下敬称略)
>ブンツンドー
http://buntsundo.web.fc2.com/long/sennen_yume/top.html
>グレーゾーン
http://boonzone.web.fc2.com/dream_of_1000_years.htm
作品フィールドマップ(簡易)
http://imefix.info/20140922/321215/rare.jpeg
http://imefix.info/20140922/321216/rare.jpeg
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まだ可能なら32,33,34のどれかを・・・!
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��
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っしゃきたぁ!
16,21、H,Jおなしゃす!
ってかA〜Jまで全部気になるわAAの顔のあるなしおもしろかったし
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6.13.42.44オナシャス
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I■[かがみ]の贄、つがい、壁
と
J■終末年の人々
を入力する!!
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■38 - 変えられないもの -
特級神官の( ФωФ)
【ふたごじま】話中の "天かける儀式" での神託によって、
祈り、しいては信仰を否定されてしまった。
彼を含めた島の人々は存在そのものすら拒絶された負の感情を抱いてしまい、
結果としてそれがアサウルスの招来を許してしまう。
しかしこの舞台裏で、一点の相克が行われていた。
とあるワンシーンから抜粋する。
(´・ω・`) 『海中はどんなものがあるんだろう』
( ФωФ) 『これ、集中しなさい』
(´・ω・`) 『ねえ、なにがあるの?』
( ФωФ) 『うむ、魚がいるのは確かだが…
か ーー …人間は水に潜れない。
誰も海の中をきちんと見たことはないのである』
-
『か ―― …』
ロマネスクは言い淀み、悟られぬように誤魔化しはしたが…
本当はこう発言するつもりだった。
『神のみぞしるのである』。
…信仰は終わっていなかった。
島の人々のなかにも同じような者は確かに居たが、
特級神官として携わっていたロマネスクのなかでは秘めた想いが特に大きく在り続けた。
アサウルスは感情を餌にし、感情目掛けて襲ってくる。
感情値が強ければ強いほどアサウルスは感知しやすくなり、
それが負の感情であればあるほどアサウルスという個体は強くなる仕組みだ。
御神体としての( ∵)が行った警告は
あくまでアサウルスの招来を防ぐためのものだった(終末年における人々のように無感情を求めた)が、
ふたごじまの民に蔓延した否定感の強さはビコーズの予想になかったといえよう。
アサウルスはこれによって一定の強さを手に入れるも、
ロマネスクを筆頭に、心の底からの純粋な祈りによって不完全な状態で降臨する。
その姿が "黒い槍" のアサウルスであり、
兄者とショボンを貫いた正体となっている。
<了>
-
■39 - 変えられるもの -
( ´_ゝ`)はかつて信仰教団としての責務は果たしつつ、
しかし ミセ*゚ー゚)リやζ(゚ー゚*ζ、
その他の信者による行き過ぎた勧誘を、それとなく止めるよう努めていた。
【ふたごじま】話中に記述された用語を紐解くとこうなる。
破折屈伏(はしゃくくっぷく)とは、いわゆる折伏を指す。
人をいったん議論などによって破り、自己の誤りを悟らせること。
摂受(しょうじゅ)は、
心を寛大にして相手やその間違いを即座に否定せず反発せず受け入れ、
穏やかに説得することをいう。
ミセリとデレは前者ばかりに気をとられていた。
兄者によって日頃から後者の心を説かれてはいたものの、
結局最後まで改善することはなかった。
とどのつまり、兄者は組織には馴染めても島の信仰に染まっていなかった。
そんな彼だからこそ、いの一番に価値観を変化させることができたのだろう。
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ふたごじまの信仰は以下の特徴がある。
・御神体(ビコーズ)を奉っていた。
・神、および天使や神の使いの存在を肯定していた。
・信者はみんな灰黒色の木札を持っていた。
…典型的な偶像崇拝。
崇めるべきは神であり、心のない依り代を用意してまで
"見えないものを、目に見える" まで追い求める。
突き詰めてそれは
"神を信じる" のではなく、
"神を信じている自分を盲信しているだけ" だと弟者は思った。
だから弟者は耐えきれず、追放に至る。
兄者は違う。
"神を信じる" ということは、
"同じものを信じる仲間も信じられるはず" なのだと、
信仰の先にある対人感情を求めていた。
-
天かける儀式から数年…。
大空洞の兄者の元に、かつての信者として以後毎日を過ごす沢山の迷い人が訪れていた。
『あれから夜も眠れません…。
陽が昇れば思えます、新しい朝が来た、と』
『…夜の帳がおりるたびに気持ちが塞ぐんです。
もう二度とあの日には戻れないのだ、と』
『自分には何もないことを思い知ったよ。
見続けていたのは幻で、身に付いたのは身体の贅肉ばかりじゃて…』
『こんなことなら、ああしておけば良かった…こうしていたなら……
そんな思いばかりが募るのよ、ねえ』
異口同音に語られる不安。
ロマネスクですら、時に口をついて溢すことがあった。
( ФωФ)『…我々の信仰とは、一体なんだったのだろうか』
( ´_ゝ`)『皆も、きっとおなじ気持ちなのでしょうね』
そこで彼はまず話を訊き、肯定し、相手の言葉を促す。
――摂受。
そうすることではじめて、人はこちらの言葉を求める時が来る。
彼は言葉を結ぶ。
――折伏。
( ´_ゝ`)『……しかし輝く過去も、薄暗い未来も、すべては貴方の心が作り出した執着でしかない。
貴方を否定しているのは、他ならぬ貴方自身です。
誰一人として貴方を否定していない』
( ФωФ)『…』
( ´_ゝ`)『好きだった頃の貴方はもう居ないことを認めましょう。
そうすれば、きっと誰かが助けてくれる。
…たとえばそう、昨日はじめて出逢った人が縁を結ぶこともあります』
-
いつか見たやり取りを、ここにもう一度記述しておこう。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ξ゚⊿゚)ξ「…儀式、結局はどう思ったの?」
( ´_ゝ`)
つ□~ 「…変わらんさ。 変われないよ」
無反応ではないが、やはり気落ちしているせいですべてを諦めたように彼は呟く。
( ^ω^)「神はまだ、兄者の中にいるかお?」
( ´_ゝ`)
つ□~ 「……どうなんだろうな」
( ^ω^)「……」
( ´_ゝ`)「…でももしかしたら、俺はもう町に居ても仕方ないかもしれないな」
そう言って彼は顔を伏せ、膝を折ってしゃがみこみ、祈るように少しだけ涙を流す。
それは海へ向けて…
かつて自分が追放した、もう会うことのできない弟へ向けて…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ここで兄者が流した涙は、失われた島の信仰に対するものではない。
人の心と向き合わなかった島民と己の末路に涙したのだ。
きちんと向き合えていたなら、
弱った彼らは互いを慰められるはずなのだから。
-
そしてもうひとつ。
兄者の葬儀でロマネスクはこう語った。
( ФωФ) 『肉体は朽ちても、魂がいく場所は我らの記憶の中なのだ』
( うωФ) 『彼はそう、我輩に説いてくれた… それで…良いのだろう?』
後年の兄者の生活は、時に挫けることもあれど、きっと充実していたのではないかと思う。
人は人と居ることで向き合う準備を整える。
人は人と触れ合うことで向き合える。
ふたごじまから三日月島へと名を変えたこと…。
それを物語る一端に、兄者を筆頭とする
"変われた者" たちが確かに居た。
世に蔓延る信仰を否定こそしないが、ないがしろにしてはいけないものも必ずあるはずだ。
遺されるものを考えて祈るべし。
本質として何が大切かを考えるきっかけになるだろう。
――願わくば、
死の間際に空っぽな記憶だけが灯び甦らないことを切に願う。
変われるものは救われる。
<了>
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■40 - 海に見た雪景色 -
"(´<_` )「よっ――こいせっ…と」
すっかり愛着のわいた小舟に荷を詰め込んで、弟者は背を伸ばした。
天に煌めく星々が彼の瞳を潤す。
ひんやりした空気が鼻孔を触る。
いま彼は一人、陸に面した低い崖下でたゆたう舟に揺られている。
月に照らされた海面がわずかながら彼という存在を知らせてはいるが、
それを知っているのは依頼人だけだった。
(´<_` )「重量オーケー、スペース問題なし。
…あとは到着を待つばかりだな」
今日の客は若い ――といっても同世代頃と思われるが―― 一組の男女。
まとめた荷物をひとまず弟者に預け、当人らは日没から夜明けまでに改めて来るという。
曖昧な指定時刻ではあるものの別段心配はしていなかった。
言い方は悪いが、人質ならぬ物質がこちらにはある。
金銭も共に受け取っているため、いざとなれば換金させてもらえばいい。
あまり考えたくはない待ち伏せという線も、自分が海にいれば逃げる自信もあった。
-
(´<_` )「…」
(´<_` )
(`<_,` )"
゚。('<. ` )「――えっくし!!」
息を吐き、ぶるるっと震えた身体を思わずさする。
防寒具として厚手の首巻きと手袋を装備してはいるがそれでも尚。
(´<_`;)「……この辺りは冷えるな」
大陸には二季がある。
空の彼方…太陽がもっとも放熱する夏と、その放熱が静まる秋。
しかしそんな秋の気候にしても、これほどの寒気を感じることは滅多にない。
ふと見上げた先に聳える大きな頂き。
ちりちりと宙に降り注ぐパウダースノウ。
天に近いほど色濃く主張し、しかし地に降り立つ頃にはかき消えてしまう儚い命。
(´<_` )「……まだかなぁ」
――アイスキャニオン。
それは古来より形成されし氷の山が鎮座する雪原地帯。
彼は棚氷の片隅に舟を止めて、いまか、いまかと依頼人を待っている。
-
大陸北西に位置するこの地域は気温だけでなく、風景も寒々しさを感じさせる。
草木の生えにくい土… 氷壁に覆われた獣道。
この山を登るための路は存在するのだろうか…。
背が高く分厚い氷が邪魔をして、なまじ歩くことも砕くこともできそうにない。
猛り吹くすきま風は迷路の入り口を連想させつつ、
その奥を見通すことすら許しはしない天然の要塞を思わせた。
(´<_` )「ワケアリ…駆け落ち… うーん、そんなところか?
暇をもて余し、なんとなく依頼人を思い起こす弟者。
悲壮感漂う雰囲気でもなかったが、どこか神妙な面持ちを残していった印象がある。
(´<_`;)「…あーくそ、ますます寒くなってきたぞ」
夜が深まってきた……。
波に濡れた舟には少しずつ氷霜が張り付きだす。
強くなる身体の揺れ。
それが冷気に凍える自分自身のせいだけではないと、
気付かされるまでそれほど時間はかからなかった。
《ド
::(´ : 》
「ぅお?!」 <_`;): ォン
――直後、吹雪空を衝く爆発音。
真横に噴き出す大量の雪土が彼方向こうへ飛んでいく。
(´<_`;)「おいおいおい…なんだよ、何が起き ――――」
-
凄まじい震動がここまで轟き伝わった。
方角は違ったものの雪崩が押し寄せる可能性を考え、
弟者はオールに手をかけた。
いつでも舟を動かせる心構えをもちながら空を仰ぐ。
(´<_`;)「…………」
…。
しかし閑静に時は流れる。
弟者がいくら待っても、
アイスキャニオンの動きは続くことなく、それきり日常を取り戻していた。
余韻としての粉雪が彼の頭をほんの少しだけ撫でていくだけ。
そんな固まった体勢のまま一時間が経とうとしている。
(´<_`;)( …早めに離れたいところだな、これは )
「待たせてしまってごめんなさい」
その時かけられた声は最後に聴いた音と同じだった。
視界の外から投げられる不意打ちの穏やかさ…。
先の爆発と比べての落差に、一瞬でも心身を強張らせてしまった己を自嘲する。
(´<_`;)「えっ――あ、ぁあ…あんたか」
ξ゚⊿゚)ξ 「約束通り残っていてくれて凄く助かるわ、ありがとう」
-
ツンは崖上まで来ると、片手でスカートの前を抑えながら舟へと飛び乗った。
カクッと揺れる足元にも弟者は平然と立ち、依頼人を支えようと腕を差し出す。
…しかし、どうやらいらぬ心配だったようだ。
彼女は慌てる様子もなく足場の感触を確かめると、
弟者の手を軽く握り返した。
そして振り向き、アイスキャニオンの麓を指差す。
ξ゚⊿゚)ξ 「あと一人ももうすぐ来るから待っててね」
(´<_`;)「いいけどあんたら…今まで雪山に居たのか?
さっき上のほうで爆発が――」
ξ゚⊿゚)ξ 「居たけど…大丈夫よ、ここまでは追ってこないはずだから。
でも念のためブーンが戻ってきたらすぐに出発しましょう」
(´<_`;)「…??」
煙に巻くようなやり取りから程なく、もう一人の依頼人であるブーンの姿が見えた。
挨拶もほどほどに、彼もまた崖から飛び乗る。
⊂( ^ω^)⊃ 「 ――っとう!」
ツンと違い、ブーンは体格に恵まれている。
ガク と大きく舟が傾いた。
ン、
…海上で荒波に揉まれることもある弟者ですら、さすがにたたらを踏む衝撃。
ξ゚⊿゚)ξ 「大丈夫?」
(´<_` )「ああ…それじゃあ行くぞ」
( ^ω^)「よろしくだお!」
弟者は掴んでいたオールに重心を落とすと、肩を回して舟を進める。
静かに…だがしかし速やかに岸辺を離れた。
-
ブーンもツンも、短い河を渡る時くらいにしか舟を動かしたことがない。
だから大海で舟を操るのは弟者の生業であり、得意分野だ。
細かな流氷を退かしつつ、
大きな流氷に行く手を遮えられぬよう、
器用にオールと舟頭を左右に操る。
( ^ω^)「うーん、さすがだお。
やっぱりお願いして良かったお」
ξ゚⊿゚)ξ 「実は誰に頼んでも断られていたのよ。
陸地経由も考えていたけれど、今日は少しでも退路を増やしておきたかったから……」
(´<_` )「退路…アイスキャニオンにはそんな危険なものがあるのか?」
ξ゚⊿゚)ξ 「一部の人にとってはね。
麓にいる分には何もないんだけど…私たちにはあそこが故郷だから」
弟者は内心驚きながらも「へえ…」と適当な相槌を打ち、
後ろにいる二人の表情を窺おうとした。
今はリラックスした様子のブーンとツン…。
しかしよく見れば、その額にはうっすらと汗が滲んでいる。
あのアイスキャニオンにいたにも拘わらず。
…走ってきた疲れとは明らかに異なる発汗の跡。
――なによりも。
今は遠くに見える、
彼らの背後の空に見えるのは――
-
(´<_`;)「――……」
弟者は生唾を飲み込み、前方へ注意を向け直す。
氷海地帯での余所見は命取りとなる。
自分だけならいざ知らず、今は二人の命を預かっている身…。
万が一、この舟が転覆でもして冷たい海に投げ出されてしまえば決して生きて帰れないだろう。
人の生が有限である限り。
ξ゚⊿゚)ξ 「……」(^ω^ )
そんな弟者の気持ちを二人が見抜いているかは分からない。
…彼らがアイスキャニオンで戦っていたのは、
かつて自分たちが産み出してしまった幻影。
今しがた弟者の見た、
この世のものとは思えぬ残像。
(´<_` )「…まあいいさ、命があるだけ俺は今日という日に感謝するよ。
さあ、ここからどこに向かえばいい?」
すでに氷の群れは抜けた。
ここからは水温も高くなり、
しかし代わり海底からの災害に注意を払わねばならない。
雪景色に背を向け、
三人を乗せた舟が少しの重みを取り戻して大海を走る。
-
( ^ω^)「西の孤島、"ふたごじま" まで」
(´<_` )「――!」
年に一度は必ずその地を告げる客がいる……まるで弟者の里帰りを願うかのように。
(´<_` )「…良かったらアンタらの話でも訊かせてくれるかな」
もうすぐ彼の故郷において、一つの歴史が刻まれる。
世界の構造と共に…。
(´<_` )「故郷…ね。
俺も実はその島の生まれでさ」
オールを漕ぐ手は止まらない。
むしろどこか急かすように力んでいるのを弟者当人は気付いてはいないだろう。
一度どこかの町で食料を…、
それと、先日までに飲みきってしまったコーヒーを補給しよう。
弟者は頭の中でぼんやりとそう考えて、次の瞬間には世界地図を浮かべる。
そうこうしているうち――。
アイスキャニオンで見た影のことを彼は少しずつ忘れてしまった。
悪い夢のように。
<了>
-
■6 - 初代モナーとの約束 -
ショボンが携えていた "隕鉄の刀" 。
彼がこれを所持し始めたのは赤い森での軍事侵攻時。
原材料となる隕鉄は、三日月島を発ってから
(アサウルス戦でブーンを助けるために海に散らしてしまった)蟻を捜しては殺し、
かき集めたもの。
隕鉄を加工した初代モナー(以下モナー)は、
かつて三日月島から大陸に移住した家系の生まれである。
彼らが初めて出会ったのは大陸戦争最初期。
モナーにとってのショボン。
祖父母、両親から言い伝えられていたとはいえ、
不老不死の存在を間近でみた驚きは大きかった。
それと同時――軍に所属しているという事実に対しても。
-
そんな彼が請けたショボンの依頼、
それが "刀の製造" 。
死なない人間が、殺し合いの避けられない戦争に関わっている。
死なない人間が、人殺しの道具を欲している。
たかだか一振りの刃であろうと、どれだけ生殺与奪を握れるのか…
モナーでなくとも理解できよう。
そして当時、大陸におけるモナーの人間関係は徐々に崩れていた。
とりわけ依頼に関して想定外の使い方をしてしまうケースが後を絶たず、
その内容もよりによって軍事利用に傾きつつある状況に、
いいかげん辟易としていた。
ともすれば不老不死が求めるほどの刃など、
当時、精神的に疲れていたモナーにとっては畏怖の対象そのものでしかない。
『ショボンは…その刀でどれだけの命を奪うつもりモナか?』
(´・ω・`) 『誰かを殺すためじゃあない。
普通の人たちでは太刀打ちできないであろう存在に立ち向かうに、
もっと適した力が欲しいだけさ』
依頼受理を渋るモナーに、ショボンはゆっくり諭すように話し始める。
-
(´・ω・`) 『モナー、君のこれまでの話は聞いているよ。
自分の意思とは裏腹に他人を傷付けたり死なせてしまう……
どうしようもなくて、やるせない気持ちならば僕にも理解できる』
(´-ω-`) 『だからせめて僕は、製造者となる君に誠意をもって応えたい。
僕の望む力を与えてくれるならば、君の望まない力は決して持たない。
…これを等価交換条件とでもいおうか』
(´・ω・`) 『この戦争には必ず裏がある。
人と人、国と国の単純な争いではない気がする…。
恐らくは、僕の捜しているものが関わっているような――』
二人きりの部屋。
やがてテーブルに置かれたショボンの手の中に一つのガラス瓶。
中にはぎっしりと黒い塊…いや、黒い虫の群れが詰められている。
(´・ω・`) 『僕からの条件はただひとつ、これを練り込んだ得物を頼めないか?
形状は問わないが…とりわけ扱いには注意がいる。
作業時には念のため僕も同席するよ』
-
…こうして二人はしばらくの時間を共に過ごす。
黒い虫の特性上、鍛練作業には困難極まる部分もあったが、
ショボンの手助けによってひとまずは無事に得物が出来上がった。
鈍色に、しかして刃の奥に潜ませる輝きは、反して光を発している。
「この世のものとは思えないモナ」
(´・ω・`) 「はは、なんだかそれ、自画自賛してるみたいだね」
「あの虫は一体なんだったモナ?
しかもそれがこんな刃になるとは夢にも……」
(´・ω・`) 「…」
"空から降ってきたのさ" ――。
このときショボンには、そう形容するのが限界だった。
それでもモナーはどこか満足げに頷き、
「ならこれは、天からの贈り物ってことモナね」
と納得した。
そしてショボンに向けて、刀を差し出す腕を途中で止める。
「……このあいだ話してくれたこと、覚えているモナ?」
-
等価交換条件。
そしてショボン自ら語った、刀の使い道。
「そのままそっくり約束して欲しいモナ」
…誰かを殺すのではなく、普通の人には立ち向かえない存在のためにこの刀を使う。
(´・ω・`) 「…わかった」
「約束なんて曖昧なもの…期待しているわけじゃないけど。
それでもこの刀はショボンのために造られたモナ」
人にも物にも、存在理由が必ずある。
鳥の翼は空を飛ぶために…人の足は歩くためにある。
レゾンデートルを否定してしまうのをモナーはなにより嫌がった。
だから――モナーは戦争が嫌いだ。
(´・ω・`) 「同感だね」
軽い口調。
しかし、刀を受け取ったショボンの腕から伝わる力強い返答をモナーは確かに感じとる。
その双肩に人の意志を背負い、若き不死者は礼を陳べて城へと戻っていった。
再びモナーを引き連れて、赤い森に旅立つのはこのあとの話。
そして10年…100年と月日が流れても、
ショボンはモナーとの約束を守り続けていた。
<了>
-
今日はここまで。
スレが埋まるまではリクエストにすべて答えます
-
■27 - 待ち続けて… -
【時の放浪者】にて、ミ,,゚Д゚彡と行動を共にしていた(*゚∀゚)
彼女は故郷に戻った十年後、
村の者とそのまま結婚し、子を育むという極々平凡な人生を歩む。
はじめの数年ほどはナナシがまた遊びに来てくれることを願っていたがやがてその想いも自然と消えた。
しかし彼と出逢うまでは年齢的問題(当時まだ14歳ほど)もあり、
それほど異性と付き合う意識は芽生えておらず、
ナナシの物腰柔らかな性格、
反して戦闘時にみせる勇ましさを目の当たりにしたことで人格形成に影響が出たのか、
彼女が人生の伴侶に選んだのはいわゆる "男らしい" 相手だったという。
自覚こそないがナナシが初恋の相手だった。
ところで。
話中にも記述した通り、曾お祖母さんの名前は "しぃ"。
-
【帰ってきてね】にて、(*゚ー゚)はすでに(´・ω・`)との子を宿している。
ラストでは無事出産してナナシの故郷へとその身を寄せた。
…やがて大陸戦争終結。
ナナシの故郷は戦乱の煽りを受けて壊滅。
村人は皆、他所の土地へと移り住み、しぃもまた一時は避難したものの帰還する。
ようとして知れないショボンの行方を捜しつつも彼女が行ったのが、ナナシの故郷復興だった。
子供を預け、ナナシの帰還を信じて、彼女はたった一人で村の建て直し作業を行い続けた。
( ^ω^)とξ゚⊿゚)ξが彼女の前に現れたのはその時期。
川をひき、草木を植え、ナナシの故郷は長い年月をかけて元の姿を取り戻していく。
――【老女の願い】における老女(村の長老)とは、(*゚ー゚)である。
一人きりで復興作業を続けるうち、彼女には
"生きる目的" こそあれど、
"生きたい願望" は薄まってしまった。
※顔表示に関してはTtips B (>>886) を参照
復興を遂げ、村の人々が戻ってくる頃、
しぃの中は別の達成感によって心地好く満たされている。
そのため生きる願望が再び戻ることはなく、そのまま後世に継いでこの世を去った…。
図らずもナナシは、
彼女の一族に密着して生きていることになる。
※おまけ
しぃの一族は女性が生まれると名前の意味を継ぐ(男は原則、名前の継承はない)。
4 → 3 → ナシ → 2
(*゚ー゚)→???→???→(*゚∀゚)
↑
婿養子が入る
この設定がとあるヒントにもなるが、それはまた後に解明される。
<了>
-
■H - かがみ -
生命体の住まう星に存在する精神的物質。
なぜ在るのか、なんのために在るのかは不明。
名前の由来は諸説ある。
・強い感情を持つ者が前にたてば、その想いを映し出す。
・強い感情を持つ者が飛び込めば、その想いを具現する。
・映し、具現するものは必ず何かが歪んで表される(実際の鏡が左右逆になるように)。
・[かがみ]が暴走するのは、その星のバランスが崩れた時(重力≠魔導力…など)。
4番の理由によって終末年までに暴走し、
2番の理由から[かがみ]を利用しようとするも、
3番の理由のためにメインキャラ各々が苦難を背負う羽目になっている。
1番の特性は現在从 ゚∀从が主なる案内人として使用。
ブーン系千年の夢の主な舞台は、
[かがみ]の向こう側で生きる者たちの物語だ。
ふたごじま、大陸、東方の島などがある。
[かがみ]の此方側の世界はグランドスタッフしかなく、残りはすべて海と化している。
それが崩れ去った今はm0ц――
Cワカ> �*オヌM・G
fサYス^N曚麈C*v徐・テ* Vl��Ci)ヨK・惚ラテ絎*・- ュ・L1隆モ゚晥L・*・タ駈モE
umメg*ァvョタ"*稠ー*トシ*C2ヌヨャ
*・・9ソ繝+・]1��ニ3オL・*・!XR*゙eЕ*iヲ゚
ゥb゙��ィゥ被)坿゙繕*ヘァ"*ホ・_盡rメ猤・ヨ捌
ハワ*鴎涯Vン\N・B*�\レ
-
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
emergency
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
-
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
この項目に関して、
これ以上の閲覧が現時点では許可されませんでした。
option画面に戻り、次の選択肢に自動移行します。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
-
■I -[かがみ]の贄、つがい、壁 -
【いつか帰る場所で】話中、
[かがみ]の贄として選ばれたのは
川 ゚ -゚)、ξ゚⊿゚)ξ、从 ゚∀从 の三名。
選ばれた理由は感情値の高さ。
そして[かがみ]に突入させ、生存した場合は子孫を繁栄させる可能性があることから。
…贄という呼び方は
所詮、評議会員からすれば人類の尖兵隊…悪く言えば捨てゴマに過ぎないため。
さらに、シミュレーションは行われていても、
実際は人類がまだ未体験となる事柄を押し付けた役割としての名称である。
( ^ω^)、('A`)、(`・ω・´)(後に( ∵)と入れ替わる) の三名は
雌三名を突入させるまでに起こりかねない物理的トラブル、
または突入時の実験のために駆り出されていた。
※具体例。
[かがみ]が人体に悪影響を及ぼすとなれば
雌が少しでも五体満足に突入できるよう
文字通り壁役として前面に差し出される…など
だがもしも[かがみ]そのものには悪影響がなく、雄も無事に突入できる場合。
別の世界で雌と共に子孫を繁栄させる役目を負ってもらうつもりだった。
西川はわずか数%でも良き可能性を信じて内藤に「つがい」と説明し、
鬱田の母親は可能性の高い結末であるとして息子に「壁」と説明した。
<了>
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■J - 終末年の人々 -
大部分の感情を失ってしまった人類のなれの果て。
読者にとって分かりやすく端的に言うならば
"哲学ゾンビ" がもっとも近い存在(そのもの、ではない)。
一見感情を表していてもそこに意識がない…というのが哲学ゾンビだが、
この世界においては行動原理のみを追従し、
喜怒哀楽を
出す→→出せる→出さない→出せない→持っていない
の順に失っている。
人格としての文化的特徴は機能美を追求し、無駄を省く。
デザインという概念すら持ち合わせなくなるため、服装や建築物、環境に対する関心度も薄い。
その代わり目的への道筋をたてやすいので、追求するという行為は得意。
…それが根本的解決に繋がるかどうかは全くの別問題ではあるが。
-
記述のあった登場人物については以下の立場が取られている。
西川→( ^ω^)の父親。
もし感情値が強くAA表示がされるとすれば ( ^ω^) な顔かもしれない。
鬱田の母→('A`)の母親。
もし感情値が強くAA表示されるとすれば J( 'ー`)し な顔かもしれない。
渡辺→从 ゚∀从の母親。
もし感情値が強くAA表示されるとすれば 从'ー'从 な顔かもしれない。
…なお、まだ人類が感情を持っていた頃に建築されはじめたものがグランドスタッフであり、
完成前に暴走した[かがみ]によって世界から魔導力が流れ出てしまっている。
グランドスタッフ設計図は感情を失う前なので建設そのものに問題なかったが、
感情のない人類には未知なる出来事に対して
『こういうときはこうすれば良い』
という行動がとれない。
結果として
『穴が空いたことが原因ならば、穴を塞ぐ』
という短絡的な解決方法を誤って追求してしまい、
それが[かがみ]暴走の真実、根本的な解決から人類をますます遠のかせてしまった。
<了>
-
考えてばっかだと感情ってなくなってくのこわいな
おつ。まだわかんないとこおおいけど次スレでもおわらなそうだなw
-
■32 - 戦士の生涯 -
東方出身の( `ハ´)。
彼が生まれてすぐ、一族は繁栄を求めて海を渡った。
しかしシナーが10歳の頃に大陸戦争が勃発し、戦火にて親を亡くす。
その後、lw´‐ _‐ノv に拾い育てられ、忍の技を学んだ。
使用武器の峨嵋刺は戦災孤児の彼にとって親の形見であり、護身武具。
シナーには生まれもったメンタルの強さと戦闘センスがあった。
同期のなかでもメキメキと頭角を現し、
ゆくゆくは立派な忍になるかと期待されていた数年後、シナーは突如里を抜けてしまう。
…とはいえ決して抜け忍というわけではなく、シュー許可を得られている。
(出生が他の者と異なることも、
土地に縛られてはならないというシューの気持ちが背景にあった)。
そして大陸戦争終結時まで戦場へと赴き、ひたすら戦いに明け暮れる日々が続いた。
軍に所属した時期もあったが、
組織的な規律よりも自分に化した規律に忠実な性格が影響し、
その大半が暗殺…または暴動のきっかけを作るような暗躍が主な内容だった。
-
得るものも多かったが、比例して心が渇いていく実感。
シナーの魂は常に飢餓を抱えていた。
特に一対一の戦いはその隙間を埋め、
対峙した相手と心の読み合いを行うことでその空腹を満たす。
この餓えは、シナーが生まれる約100年前。
東方のアサウルス…そして不死者が蔓延らせた闘争心の、
残り香のようなものが感染しているとみて良い。
軍から支給されるサラリー(給与)で酒を食らう毎日と、
退屈からなる刺激への渇望を天秤にかけた結果、
戦争も所詮は "ヒト対ヒト" ではないことにいつしか堪えきれなくなってしまった。
死に至らしめる瞬間に友とみなし、そして殺す。
彼はただ殺すことのみを目的にした戦闘で心踊らせたことは一度もない。
…女子供を殺めた朝は、
沈む己の気持ちを偽ってでも誇り高く次のステージに向かう。
そうすることで自身がもたらす他人の人生の結末を否定しない。
そんな矜持をシナーは是とした。
大陸戦争終結後は( ,'3 )の暗殺をきっかけに、
(-@∀@)の元で大陸東の地域を治める。
【その価値を決めるのは貴方】においてバルケンの屋敷に訪れたシナー。
それはシューから請けた依頼によるものである。
その理由は別の項目、または本編にて語られる。
<了>
-
■33 - コンプレックスの塊 -
領地世間ではバルケンの名を継ぐ形となった(-@∀@)。
彼自身は父バルケンを恨むこともなく、
バルケンもまたアサピーを邪険に扱うことなく、幼少期こそ普遍的な家族として過ごした。
だが一般家庭とは異なり、
バルケンは公人としての勤めに日々忙殺されていた。
アサピーが成長し、手がかからなくなるにつれて家族の時間も失われ、
二十歳を間近に控えたある日、バルケン夫妻は決別した。
( ,'3 ) 『…オヌシはどうする、無一文の女の元に行くか?
それともここでワシの仕事を覚えてみんか』
(-@∀@)『ついていきましょう。
そうまでして公人…いえ、女王に与する貴方の仕事にも興味がわいていたので』
アサピーは幼い頃から何事もこなす神童といえた。
体も頭もよく動く青年だった。
――その一方、人の情というものを心から理解していたかどうかは疑わしい。
バルケンや母から具体的にそれを教わるような教育を受けたことはなかった。
それを感じ取れるような生活を育んだことがなかった…。
-
彼が実の父であるバルケンに手をかけたのは、当時の情勢に基づいた客観的判断でしかない。
領民の心が離れても。
大陸戦争が終わっても。
バルケンは己に課せられた業務と欲望に向き合い、忠実に生きていた。
(-@∀@)
_つ◇ 『シナーさんにもさきほどお話し済みですが、これはあの御老公が隠していた過去の商売に関わる記録…』
(-@∀@)
_つ◇ 『つまりは帳簿ってやつです』
アサピーがそれを入手したのは他者への言い訳のため。
親殺しの責任から目をそらし、
あくまで世間が求めた結果であると言わんばかりに転嫁した。
( ↑∀"↑) 『だ、そうだよニダー。
私も彼には何一つ期待などしていなかった。
サラリー目当ての男なぞいずれこうなると思っていた』
彼からシナーへの報酬は多額だった……、一介の戦士に支払うにしては多すぎるほどに。
シナーは常々、複雑な思いを抱いたことだろう。
それほど高く評価されているならそれでよし……。
だが――対面してこそ感じる、奥底に情のないアサピーの瞳をシナーが見逃すことはない。
-
公人として人心を掌握できた彼は、
しかし個人間における人情というものを理解することができなかった。
表面的には合理的かつ才人。
…その実、知れば知るほど
節々で彼のアンバランスな性格は滲み出てしまう。
アサピーはある意味、[かがみ]の向こう側で形成された人類のなれの果て…
終末年の人々をわずかながら彷彿とさせるような人格であったといえる。
それでも彼がAA表示されていたのは情とは全く別物の――
"生きたい渇望" を色濃く抱いていたからに他ならない。
彼の欲望の一文。
それを最後に記そう。
「気分がいいんだ、あれを食べてから……
本気かって? 嘘をつく理由があるか?
自分を偽って生きることにもう疲れたんだ。
人生最後のひとときくらい良いだろう!
私利を!
私欲を!!
我が儘を叶える資格も私には無いのか!」
<了>
-
■34 - 風水の仕組み -
( `ハ´)と<ヽ`∀´>が主に使用していた風水術。
星や天地に備わっている魔導力を借りることが出来る東方の魔法。
人体が発しているものではないので、それ自体は偽りの湖にも感知されず発動できた。
ゲーム原作には登場しないため、魔法名はない。
この項目では
【( ^ω^)千年の夢のようです】における
風水の根源について説明する。
-
――風水とは?
困った時には神に頼み、感謝を陳べるも神に対して行われるような……
そんな神という存在を崇める地には、元々存在しえない概念である。
神に頼る…それは悪くいえば他力本願な印象を受ける。
ならば神を崇めない地域において、人が人の力だけで生きていけるかといえばそうはならない。
絶対的な負の境遇を弾き返そうとして何かを求めるのが "生きたい渇望" である。
いざ人の力が及ばない領域に出くわしてしまった場合はどうするか。
人は繁栄を求めて…自然、天地に頼るだろう。
良運気、極めれば奇跡。
果たして…悪意、穢れもすべてコントロールしようと思想する。
氣の流れを研究し相剋を纏うそれは
食物連鎖にも似て非なる概念だった。
-
【( ^ω^)千年の夢のようです】では
この風水術を自身の魔導力に乗せることで、
本来不可能である法則…
黒、・白魔法や呪術には具現不可能な現象を引き起こすポテンシャルを秘める。
※具体例
・バルケンの屋形→無限回廊
・偽りの湖→水の流れや重心を変化させる
居住および生活する上でこの風水術が活用される文化は、
大陸、東方のどちらにも育っていない。
あくまで特殊な魔法としての位置付けではあるが、一子相伝というものでもない。
"相剋" は風水術の範疇にある。
黒い槍のアサウルスとショボンの間に起こった、不可思議な現象も決して無関係ではない。
<了>
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おつ
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乙です!シナー達の見たかったので嬉しかった!ありがとうです!
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久々にブーン系読みに来て、まとめで一話から一気に読んでしまったよ
今後にも期待
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13、14、22、26、31、42、44
見たいです!
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冷静に考えてリクエスト多すぎるなwww
特に14と22が見たい!
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■22 - 視線の先に -
(゚、゚トソン 「お湯加減はいかがでしょうか?」
水の都。
円形を縁取る、左右対称の宮殿内部には至るところに水の姿を見ることができる。
兵士の詰所と、憩いの庭園があるフロア1階。
浮遊する円盤形のエレベータで一つ上がれば、十字に区切られた空中回廊。
それを繰り返し、最上階には女王の私室や大浴場がある。
「悪くないよ、いつもありがとう」
(゚、゚トソン 「なによりです」
観音開きの扉の向こうから、クーの声が柔らかに届く。
侍女の一人、トソンは見えるはずのないお辞儀をすると
ゆったりとした動作でその場を後にした。
(゚、゚トソン 「女王様の召し物を選んできますね。
その間、ここをお願いします」
('、`*川 「はい」
緊急時に鳴らされるハンドベルを手渡されたペニサスが代わりに扉の前に立つ。
スタスタと軽やかに離れるトソンの背中を見送ると、
ソワソワして場に留まっていた。
-
('、`*川 ( あぁ…クー様 )
呼び出されるまで静かに待つのが役目。
背中合わせの空間にいるはずの女王を想い、ペニサスはトソンの遅い帰還をかすかに願う。
武力的緊急事態でもなければこのフロアに他の衛兵は誰も立ち入らない。
手に持つベルが鳴るか、宮殿に対する衝撃が走らなければそれが平穏の調となる。
「いまそこにいるのはペニサスか?」
('、`*;川 「――はっはい!」
「先の食事は誰が?」
('、`*;川 「本日のメニューは僭越ながら私が決めました。
近海で獲れた貝類が最近とても美味だと、都で耳にはさんだもので…」
「そうか」
('、`*;川 「お…お気に召しませんでしたか?!」
「いいや違うよ。
言う通りとても美味しくて今も舌に心地好く残っているものだから」
('、`*;川 「はい、コック長にも伝えさせていただきます」
「うん、いつもありがとう」
-
ペニサスの思考が止まり、空を巡る間…。
クーの私室ではトソンが
あれでもない、これでもない、と、湯上がりの着物をコーディネートしている。
(゚、゚トソン 「宮殿内の気温、室内の湿度を考慮すると……」
(゚、゚;トソン 「ああ…でもそうすると女王が昨夜召した外套と色が似すぎているし……」
(゚、゚トソン 「そう、昨日はどんな夢を見たと仰っていたかしら。
今夜もよりよい安眠についていただくために…」
(゚、゚トソン 「思い出しました、汽車…汽車ですわ。
どこかも分からない場所に行くつもりだったのだと」
、゚トソン )) 「そんな不安な思いを抱かせてはいけません。
森のなか、それとも海辺でゆったりと癒されるような一時を
せめて夢の中でも過ごしていただかねば……」
侍女たるもの、どんな些細なことも見逃してはならない。
総てが女王のためになるように考え抜く。
一般市民の生活からはかけ離れているとしても、
これがトソンの毎日の日課だった。
(゚、゚トソン 「決まりました、これにしましょう」
薄すぎず、厚すぎず。
わずか数時間後にはまた催しを変えるであろうもののために、
トソンがかけた時間は小一時間にのぼった。
-
一日を終えたクーが、二人に語りかける。
川 ゚ -゚) 「なにか変わりなかったか?」
(゚、゚トソン 「事故や事件はありませんでした。
('、`*川 民からの嘆願書もすべて目を通しましたが、これといって…」
川 ゚ -゚) 「わかった。
でも少しでもひっかかることがあれば、いつでもなんでも伝えてほしいんだ」
「もったいないお言葉です」
――侍女二人の声が重なると、クーは満足げに微笑み、手招きする。
(゚、゚トソン 「!」 ('、`*川
寝る前に必ず行われる儀式の合図だ。
トソンとペニサスが跪き、クーの前に顔を近付ける。
クーもまた、彼女たちの瞳をじっと覗きこんだ。
二人にはそれが何を意味するのか分からない…。
だがいつもこの儀式を行った後のクーはとても嬉しそうに眠りについた。
そのためならば、どんな不可解な行為であっても甘んじて受ける気概を彼女らはもっている。
川 ゚ -゚) 「おやすみ」
(゚、゚トソン 「よい夢を」
('、`*川 「明日もまたよい日を」
そして二人はれーすのヴェールを隔てたすぐ隣の部屋へと帰っていく。
女王の私室に隣接して過ごせるのも、彼女たち二人だけに赦されし特権といえた。
そして万が一、
――有り得ないだろうが――
女王に害成さんとする者が侵入することがあれば、盾となり刃となることが義務付けられた。
選ばれし侍女になるためには女王の許可が必要となる。
今のところトソンとペニサス以外、その役目を承ることが出来た者はいない。
-
「お願いします、私も女王様のためにここで働かせてください!!」
都の民からの志願者は後をたたない。
誰もが皆、素晴らしき女王のためにその身を捧げる覚悟をもって懇願に現れる。
(゚、゚トソン 「貴方は以前もいらっしゃいましたよね?」
('、`*川 「名前はたしか…」
「ガナーです、一昨日に仕事もやめてきました」
(゚、゚トソン 「なぜそこまで?
貴方は子供を指導する公職に就いていたかと記憶していますが」
「ひとえに女王様と国を尊敬しているからです!」
('、`*川 「我を通すために仕事を放り出す人を、女王がお認めになると思いますか?」
(゚、゚トソン 「貴方を慕う子供たちを見捨てるのですか?」
「…」
少しだけ怒気を孕ませるガナーが、手提げ鞄からいくつもの白封筒を差し出す。
…子供たちからの寄せ書きだった。
たどたどしい文字で綴られるそれはいずれもガナーという人物に対する、
無垢で不器用な礼と応援のメッセージに埋めつくされていた。
「背を向けて逃げるような生き方はしていないつもりです。
今よりももっと大きな平穏をお手伝いするために、覚悟をもって来ています」
この時のガナー眼差しは曇りなく見えた。
偽っているとは到底思えない。
前回はクーの不在により日を置くこととなったが、その間に二人は彼女の身辺調査を完了していた。
少なくとも、ガナーという人物は客観的評価からも誠実に値している。
(゚、゚トソン 「わかりました、これ以上はなにも申しません。
女王の謁見手続きに入ります…どうぞこちらへ」
「あ、ありがとうございます!」
-
ガナーが謁見の間に入ると、一段高い場所からクーが見下ろしていた。
川 ゚ -゚) 「ここで働きたいと」
('、`*川 「侍女として、希望されております」
「女王様、何卒…何卒、この都の礎として務めさせてはいただけませんか!」
興奮するガナーに手で制すトソンを、さらにそれをクーが制した。
クーは優雅に立ち上がり、女王の座席からゆっくりと降りる。
侍女で二人が辞儀を促すまでもなく跪いてしまう緊張感が辺りを包んだ。
川 ゚ -゚) 「…」
「…………っ」
川 ゚ -゚) 「顔を上げてくれ、そうかしこまらなくてもいいんだ」
おそるおそる顔を上げたガナーの瞳が、クーとぶつかる。
川 ゚ -゚)
「……」
川 ゚ -゚)
「……」
-
――そして、クーは黙って立ち上がる。
そのまま座席へと戻り、こう言った。
川 ゚ -゚) 「君には今まで通り働いてもらいたい」
「…!」
答えは、ノー。
侍女の資格なしと断された彼女はがっくりと項垂れ、かき消えそうな声で礼を陳べると
それきり俯いたまま宮殿を後にした。
(゚、゚トソン 「クー様、お目にかないませんでしたか」
川 ゚ -゚) 「……」
トソンの問い掛けには答えず、ただ悲しそうにクーは微笑んだ。
-
クーも、ガナーの人格を否定するつもりはない。
侍女から渡された調査結果も、実際にみた印象にもなんら問題はない。
…しかし瞳の奥にある光沢に陰を視た。
誰にもわからないだろう、それはクーにだけ感じられる違和感でしかない。
川 ゚ -゚) 「このあと少し出掛けても良いかな」
('、`*川 「お忍びですか?」
川 ゚ -゚) 「個人的懸案事項があってな、出来ればフォックスたちにも黙っていてほしい」
(゚、゚トソン 「分かりました…都に何かあった際は?」
川 ゚ -゚) 「君たちが対処してくれ。
【ホワイトボア】の起動許可は出しておく」
川 ゚ -゚) 「それともし…私が一ヶ月以上戻らない時、どちらかは西の都の工房に来るように」
長くしなやかな指に一枚の地図が挟まれている。
トソンが恭しくそれを受け取ると、クーも自室へと戻っていった。
(゚、゚トソン 「……」 ('、`*川
-
クーが真っ直ぐに人の瞳を見つめるときは、光沢の真贋を判断しているときだった。
やましい思いを見破るものではない。
虚心坦懐に生きているかどうかを見抜くものでもない。
だが、陰が差した者にはいつか裏切りが訪れることをクーは学んだ。
記憶にないかつての悲劇も、
それを知っていれば違う現在がここにあったのではないだろうか?
川 ゚ -゚) 「……さて、四代目に逢ってくるか」
不死者の一人、クーがその過去を省みることは出来ないのだが。
(了)
-
■14 - 大陸戦争に馳せる想い -
(#゚;;-゚)は島から逃げたミルナと別れた後、後遺症に襲われた。
手に残る…子を殺めた感触が彼女を苦しめる。
島で使用した長刀を片手に、
憂さを晴らし、悪夢を散らすように、木々や岩草に切りつける。
三日月島に戻る選択肢は選べなかった。
宿のベッドに潜り込んでも、闇に浮かぶ灰蟻の黄色眼が眠ることを許さない。
夜な夜な叫んでは追い出されるのを繰り返すうち、やがて彼女は公共施設から遠ざかり野宿する身となる。
長い間、人目を避けて辿り着いた先は大陸南東に位置する[都]。
…後に[空の都]と対立する領地だ。
戦争と共に道中出現し始めたモンスターとの戦いがでぃを強くした。
都に着くまでに幾多もの傷を身体に残した。
だが全てが外的要因とは限らない。
傷の半分は自傷行為によってつけられ、そのおかげで彼女は自我を保つ。
大陸の端から端まで移動したのも、
傭兵となって戦争に志願したのも、
彼女が三日月島の悪夢からほんの少しでも離れたかった表れである。
-
でぃは他者の命を奪うことにそれほど抵抗がない。
他のキャラクターと比べ、軽薄に殺人を犯すことができる。
他人を斬ることで命を軽く考える。
人を斬るたび、『幼な子を殺した』ことが『日常』となる感覚を得られる。
日常ならば、その行動は特殊性を失すると同時に後悔も失わせると考えていたからだ。
しかしそれでも彼女は生涯、延々と苦しむこととなる。
孤児院の教会で(*゚ー゚)が出産したとき、
ナナシには見学を薦めつつ自分も中に入らなかったのは、
"自分には生まれた命を迎える資格がもう無いのだ" と思っていた証。
助産婦であったでぃは、もう2度と新しい命に関わることはなかった…。
彼女は死ぬまで、悪夢にうなされて生涯を終えた。
(了)
-
■13 - ナナシとの生活 -
三日月島を出た( ゚д゚ )は、目を覚ました (#゚;;-゚) に見放されて以来、
あてもなく大陸西部を放浪していた。
島を出たことのない無知さゆえに、アイスキャニオンへと迷いこんだこともある。
大陸戦争前は "生きた氷塊" を運び、[空の城]と往復することで金銭を稼いだ。
大陸に戦禍が拡がるころに南西部へと移り住み、孤児院で ミ,,゚Д゚彡 や (*゚ー゚) と出逢った。
そんなミルナが、ナナシと暮らすようになって気付かされたことがある。
ミ,,゚Д゚彡 「ねえ」
( ゚д゚ ) 「ん?」
ミ,,゚Д゚彡 「どうしていつも苦しそうに眠るから?」
-
本人に自覚はなかったが、ミルナはすでにアサウルスに感染していた。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
痛みがないせいで気付くのが遅かった。
パニックになり脚をいくら振り回しても、
赤ん坊を振りほどくことができない。
((; ゚д゚ )) 『くそぅ、離れろ! やめろ!』
地団駄を踏んでも、手で押し退けても、
赤ん坊の牙はミルナの皮膚を喰い破っていく。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
彼がなぜ蟻の尖兵にならなかったのか?
それは "生きたい願望" が他人よりも強いため、
僅かながら蟻化までに抵抗する時間があり、
さらには持ち帰った黒い槍が同族としてのカムフラージュを果たしていたせいだ。
※( ´_ゝ`)の場合は一撃で絶命したせいで蟻化しなかった。
もし手元に黒い槍がなければ、ミルナも蟻化しただろう。
-
( ゚д゚ ) 「心配かけてすまないな、俺は大丈夫だから…もう寝なさい」
ミ,,゚Д゚彡 「うん」
ナナシはよくミルナの顔色を窺った。
…捨てられて孤児に戻るのが怖いわけではない。
毎夜悪夢にうなされても、不平不満、愚痴というものを
ナナシの前で決して吐かなかったミルナを純粋に心配していた。
( ゚д゚ ) 「兄弟が欲しいか?」
ミ,,゚Д゚彡 「いらないから」
( ゚д゚ ) 「でも俺が仕事に行ってる間、寂しくないか?」
ミ,,゚Д゚彡 「ちゃんとここに帰ってくる?」
( ゚д゚ ) 「ああ、仕事こそ泊まりがけでもなければ必ず」
ミ,,゚Д゚彡 「じゃあ寂しくないから」
( ゚д゚ )
ミ,,゚Д゚彡 「きちんと待ってるから」
( ゚д゚ ) 「…」
「ありがとうな……」
-
当時、大陸戦争の終わりは見えず、激化の一途を辿っていた戦禍。
日に日に質素になる食事。
無骨な男の手料理など、彩りというものからは縁遠い。
ミルナは思った。
孤児院で過ごしていた方がよほどナナシの為だったのではないかと。
実際のところ、孤児院の仲間に馴染めなかったナナシの居場所は少なかった。
ナナシにとってはミルナが立派な育ての親と思えるほど、月日は流れ……――。
( ゚д゚ ) 「辺境にあるこの村も、もうすぐ巻き込まれてしまうかもしれん。
いざとなったら皆と避難するんだぞ」
ミ,,゚Д゚彡 「…………」
ミ,,゚Д゚彡 「帰ってくるから?」
( ゚д゚ ) 「約束する、……今までありがとう」
( ゚д゚ ) 「もし帰ってこられたら、今度こそ俺はお前に……」
こうしてミルナは戦争へと赴いた。
故郷を捨てた彼は、もはやナナシこそが心の拠り所だった。
彼は誰かのために自分を犠牲にしたかった。
少しでも早く戦争を終わらせるために。
ナナシが安心して生活できるように。
そして黒い槍を置いて発ったミルナは戦闘の最中、
アサウルスの感染が進行し、ついには還らぬ人となってしまった。
(了)
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■21 - 賢者の忠誠 -
――ある時は、名もなき平地で。
爪'ー`) 「……遅すぎた、か」
至る場所でわずかにあがる灰煙。
戦争が終わってもそれは怨念のようにくすぶり続け、もう十数年は経つ。
人の気はなく…しかし鼻をつく腐臭が本来そこに在ったはずの痕跡を報せる。
そんな残魂の匂いに囲まれ、一人の青年が溜め息混じりに呟いた。
そげた頬に細い肩。
いつもより渇いた川風に泳がされる伸ばしっぱなしの髪が
その身に蓄えた疲労を空に伝える。
脱力した身体にぶら下がる両腕がこんなにも重いのだと、
彼はその日はじめて知ることができた。
柱から崩れ、廃墟と化した小屋という小屋。
中には屋根を貫いた煙突が備わっていたものもいくつか見当たるが、
半ばひび割れ、もしくは倒壊してしまっている。
青年――若き日のフォックスはトボトボと、
自分の記憶に比べて変わり果てた故郷の風景を噛み締めるように歩き始めた…。
爪'ー`) 「ふは…ははは…なんだ、これ」
幾つもの村と人の命を巻き込み終結した大陸戦争――。
十五年という時の移ろいは、大地を削り、川を枯らし、歴史に大きな爪痕を残している。
フォックスの足元に転がる鏃の燃えかすも、この村においてその一端を担った戦犯だろう。
-
彼が生まれてすぐに拡がった戦禍は、一般市民にすら戦う力を求められた。
さもなくば最低限の自衛すらままならないほどに激しい戦であったことを物語るように。
両親と共に疎開した先でフォックスは魔法を習い、扱うようになる。
そしてその才能たるや、凡人の域に収まるようなものではなかった。
…とはいえ彼が更にその腕を磨き、
軍兵にも劣らぬ力を得る頃には戦争は終結してしまうのだが。
「この村の者か」
爪'ー`) 「――! …誰だ」
偲ぶフォックスの意識がひらける。
いつかの我が家…その壁の名残をなぞっていた指を慌てて離した。
川 ゚ -゚) 「誰?」
川 - ) 「……そうだな、なんと言えばいいのか」
爪'ー`) 「?」
川 ゚ -゚) 「…失礼、私はクーという」
今は大陸を旅している者だ……そう言葉を繋ぐと、
彼女は青年の警戒心を解くつもりで無防備に横へと並んだ。
その横顔は彫刻のように整い、殺風景なこの場所に似つかわしくない美しさを醸し出す。
火の粉が舞い上がるまでのほんの数秒…フォックスはクーに見惚れていた。
川 ゚ -゚) 「ひどい有り様だな」
――火の粉?
爪'ー`) 「…有り様だった、というべきかな」
《ゴウッ》――。
クーの口が動くよりも早く。
炎のオーロラが大地に踊り始め、辺りを一斉に赤く染めた。
盛え波打つ赤い帯は二人を避けて、村の痕跡を消し去るように拡がっていく。
-
クーは唇を閉じ、黙ってその光景を目に焼き付けた。
村を焼き付くす炎がいよいよ夕陽を押し退け、空模様を入れ替えていく。
爪'ー`) バチ バチ
川 ゚ -゚) バチ …
火は人為的な魔導力によってもたらされている。
寂しげで、しかし満足げな横顔から…クーはこれがフォックスの仕業であることを確信した。
川 ゚ -゚) 「いいのか?」
爪'ー`) 「こうも半端に遺されると余計に心苦しいんだ」
彼の育ったこの場所は、人口にして100人に充たない小さな村だった。
再建するにも踏み荒らされた水田は干からび、抉れ、使い物にならない。
何年…あるいは何十年とかけて土壌を甦らせることは不可能ではないかもしれない。
だが戦争中ずっと疎開していたフォックスには農耕の経験がなく、
そのための何かを学んだこともない。
……彼が手にいれたのは、村を助けるための力だった。
爪'ー`) 「邪魔な物をスッキリさせただけだ…リセットだよ。
空いている椅子であれば、またいつか座る人達がいるかもしれないだろう?」
川 ゚ -゚) 「…」
爪'ー`) 「独りになった私が、もうこの村を縛る謂れはない。
大切な思い出くらい自分の中で留めておけばいいさ」
思い出は――記憶。
その衝撃が強ければ強いほど、人に深く荒々しく刻まれる聖痕。
しかしそれを留めることが出来ない者は、どうすればいいのだろう…?
クーには、フォックスという名のまだ若い人生が羨ましく思えた。
-
――ある時は、砂漠の民の元で。
瓜#゚∀゚) 「なぜ我々が退くのか!!
失せゆく大地を自然の流れというならば、戻るのを待つもまた自然づ!」
太陽の下、甲高い怒声が轟き渡る。
草の芽吹きつつある土を踏み締める仲間。
それを目の前にして、地団駄を踏む娘の靴底からはばらばらと黄土が舞う。
大地の色を境目に、ひとつの民が崩壊を告げようとしている。
瓜#゚∀゚) 「貴方たちのいう "砂漠の民" とはなんづ?!
砂礫と生きる強き者ではないのか?
それともただ砂鉄と砂金を追い求む、我欲強き者だったのか?!」
瓜#゚∀゚) 「生き死にならばまず私たちが自ら閃き、
導きを経て継承してゆくべきではないのかづ!
そうやって民は何代も過ごしてきたではないか!」
蹴りあげた砂が、日差しに影を作ったのも一瞬。
荒く吐かれた言葉と息が虚しく木霊した。
それでも娘の癇癪は止む気配がない。
…離れていく仲間たちの行歩も、止まない。
瓜#゚∀゚) 「…」
-
仲間の背中が草木に隠れ、視界からいなくってもしばらく。
残された娘、づーは立ちすくみ…その場を動こうとはしない。
…やがてはまっすぐ射していた足先の影も左手に寄り添った頃。
川 ゚ -゚) 「すまない、道を尋ねたいのだが」
Σ 瓜;゚∀゚) 「!」
俯いていた顔をあげるとそこには女がたっていた。
仲間たちのいた場所で、入れ替わるように影も向き合う。
瓜゚∀゚) 「道を…?」
づーは後ろを見やる。
砂漠で構築された地平線。
間近に寄ればでこぼこと砂丘が視界を遮り、
隆起したキメの細かい砂山が行く手を阻む。
まさかこちら側では無いだろう。
そう問うが、女…クーは首を振ると案内を願った。
「伝統を積み重ねて生きる大地をこの目で見たい」のだと。
瓜゚∀゚) 「奇特な人だづ…」
つい先ほど、現住の民が手放したものこそ "伝統" であるというのに。
-
女の二人旅…デザートコースと呼ばれる天然路を辿る。
初めて逢った者同士なのに、彼女たちは不思議とウマがあった。
瓜゚∀゚) 「ここでは砂漠と高原が、ぐるぐると回るように入れ替わっていくんだづ」
砂漠化と緑地化がまぜこぜに進行する地域。
この砂漠では。
陽の出ているうちはその場にいるだけで灼熱が身を焦がす。
少なからずこの環境に慣れているはずのづーも、うっすらと額に汗粒を作った。
その横で、クーは涼しい顔を崩さない。
川 ゚ -゚) 「中心には何があるんだ?」
瓜゚∀゚) 「オアシスだづ。
それも他とは比較にならないほど、大きくて清んでいるづ」
川 ゚ -゚) 「豊富な水……それはいい」
瓜゚∀゚) 「そこで皆は身体を休めて次の目的地に向かうづ」
川 ゚ -゚) ( …いいや、少しの間でも人が住む場所は選べないな )
なにかを思案するクーに、づーは気付かない。
一方では砂漠が拡大し、しかしその一方で緑が蘇る輪廻の地。
百年という時間をかけて変わるその景色を、
一人の人間が同じ場所で観察できることは稀だった。
瓜゚∀゚) 「本来、親子で継がれるべき生きる道……なのに
瓜 ∀ ) ――私たちは…」
この日、づーの仲間は永住の地を移すべく旅立った。
中には最低限の知識だけ与えられた後、
単独でこの地を出るよう告げられた幼な子もいる。
-
瓜゚∀゚)
川 ゚ -゚) 「……」
二人は沈黙を背負っていた。
歩を進める足を砂にとられることも厭わず、しかし荒くなる呼吸。
疲労によるものだけではないだろう。
「いるべき人の消えた土地は、その姿を変えてしまうのではないか?」
そんな言葉がクーの耳に届いた。
川 ゚ -゚) 「人の消えた土地?」
瓜゚∀゚) 「誰しも皆、生まれた場所を選べないからこそ、故郷への想いも特別だと考えていたづ」
瓜゚∀゚) 「自然の成り行きを否定はしないづ。
もしかすると土地が人を拒絶することもある…、この砂漠のように」
川 ゚ -゚) 「ああ」
瓜#゚∀゚) 「それでも私たちは先祖代々この場所で生きてきた…。
苦しくても生きる力を手にいれてきたつもりづ……!
領地を隔てて高原で過ごす遊牧の民も、きっとその気持ちは同じだづ…!!」
次第にヒートアップするづーの口調。
もう戻らないであろう、仲間への憤りがつぎつぎ噴出する。
瓜#゚∀゚) 「生き辛い生活ならば、何度でも自ら変えてみせたら良いづ!」
瓜#゚∀゚)「生き難い環境ならば、一時だけでも離れたらいいだけだづ!!」
川 ゚ -゚)
瓜#;∀;) 「……決して!
束の間の休息と、綿々たる放棄は取り違えてはならんづ…!!」
瓜#;∀;) 「大地が人を突き放しているのではない!
住まう人が…! 民が……!!
他でもない私たちが、この砂漠を見棄ててしまったんだづ!!」
太陽光に遮られない慟哭は延々と空に舞い、クーはただそれを見つめていた。
故郷を失う…ましてやそこに生まれた子が自ら選択してまで、
生まれた場所…いわば親を。
失った者は次に何を成すべきか、づーの背中をさすりながらクーは考えていた。
-
――ある時は海上で。
爪゚A゚) 「命だけは助けよう…積み荷は戴くがぬ」
艶かしい声で言い放つ妙齢の男、ぬーが腕を高く振る。
それを合図とし、背後に控えていた乗組員がわらわらと散っていく。
続けてドカドカと乱暴な足音が甲板を乱れ叩き、異を唱える人の声をかき消した。
酒樽、木箱、銅筒…。
次々と運び込まれるその中身は本来、
とある港町から出港した船に積まれていたはずの品々。
爪゚A゚) 「ほかにも鋭利な物、鈍器、武器になりそうな物が見付かればすべて奪うんだぬ」
甲板にずらりと並ぶ、屈強な男の群れが例外なく後ろ手を縛られている。
――略奪を生業としている海賊たち。
悔しさを滲ませつつも睨む彼らの双眸が真に怯むのは、
歴然とした力の差を見せつけられた時しかない。
ぬーが外套をバサリと翻し、風になびくその奥で巨大なマストが後光を射した。
縦帆を3枚、横帆を1枚備える彼の船が、
一回り小さい海賊船たちの動きを封じたのはものの数分前のことだ。
爪゚A゚) 「おっと、この船もそのまま返すわけにはいかんぬ。
ボートならくれてやるからそれで陸まで戻るがよい」
爪゚A゚) 「……ぬ」
-
川 ゚ -゚)
縛られ悪態をつく海賊たち…その最後尾。
場に似つかわしくない美しい娘を見つけると、ぬーは思わず近付いた。
爪゚A゚) 「…君は一人だけ趣が違うぬ?」
もっと間近でよく見たい…突き詰めればそんな下世話な審美眼。
無意識の瞳が捉えた一種の神々しさがそうさせたことを彼が自覚するのはまだ後だ。
川 ゚ -゚) 「だろうな、私はこいつらとは関係ない」
「海に浮かんでたところを助けてやっただけの行きずりだよ」
舌を打ちながら頭目らしき海賊が言った。
隠し持つものなどなさそうな女の薄手の格好から判断し、
ぬーは縄をほどくよう部下に指示をし解放させた。
不慮の事故などにより海に落ちて溺れる者は少なくない。
だが水溜まりや河などと違い、
長い間浸かると人の身体が溶けてしまうという話をきいたことがある。
爪゚A゚) 「漂流者か、怪我はないかぬ」
手首をさすりながら頷き、クーは礼と自身の名を口にした。
川 ゚ -゚) 「やはり海は広すぎた」
爪゚A゚) 「??」
その真意が判る者は誰もここにいない。
彼女がなぜ大海原に漂っていたのか、後のぬーにも話されることはなかった。
-
推進力を得て動き出したぬーの船が海路を行く。
浅瀬に乗り上げぬよう…、荷を積みすぎぬよう…。
目的地を直接口にする者は誰もいない。
それでも皆、ひとつの目的をもって統率されていた。
爪゚A゚) 「陸地に戻るのはあと一度、稼ぎを得てからだぬ」
川 ゚ -゚) 「稼ぎ?」
爪゚A゚) 「なに、一般船は襲わぬよ、対象はあくまで海賊のみだぬ」
商船などを襲い金品を強奪するのが海賊とするならば、
更にそれを襲い収穫を奪い返すのもまた等しく海賊である。
もとはといえば大陸戦争中、避難する人々を襲う荒くれ者が多い事例を嘆き、
自ら海の世界へ飛び込んだという。
「虎穴に入らずんば虎児を得ず…だぬ」
そんなぬーの言葉を信じるには時間も事例が足りないが、適当な相槌をクーは返すだけだった。
そして見渡す。
運航中はもっとのんびりした装いを想像していたが、船内は忙しなく指示が飛び交っている。
爪゚A゚) 「そろそろ君は部屋に入っておくんだぬ」
川 ゚ -゚) 「出来ればここで見学させてもらえると嬉しいのだが…」
爪゚A゚)σ" クイッ クイッ
指し示す先の水平線。
大陸から距離をおけばおくほどに綺麗な蒼が広がる。
世界は広い。
キュイキュイと鳴く鳥も、ピチピチと跳ねる魚も――いない。
爪゚A゚) 「もうすぐ嵐が来るんだぬ」
ぬーは更に指示を飛ばし、自らも休むことなく船のなかを走り回っていた。
数年に一度あるかどうかの大嵐に船が巻き込まれるのは、この数十分後のこと。
世界は広く、まだまだ人智に至らぬことばかり。
人はそれにあやかり、そして従い生きる寄生者に過ぎない。
周囲の喧騒とは裏腹に、クーは自身の両手をじっと見つめていた。
-
――ある時は、名もなき岬で。
爪゚ー゚) 「僕はこうして風を浴びることに幸せを感じるんだじ」
きっかけは離れの町で耳にした噂話だった。
もう何年も…夜明けになると岬に立ち続けては、日が暮れる頃に姿を消す若き変人がいると。
川 ゚ -゚) 「君はいつからこうしているんだ」
爪゚ー゚) 「うーん……」
若者は顎を上げてこめかみを指差す。
思案する――素振りを見せてそのまま数分が経過した。
川 ゚ -゚) 「…いや、いい。 無粋な質問だったな」
爪゚ー゚) 「もう覚えていないじ」
彼は屈託なく微笑みを見せる。
性別は異なるが綺麗な顔立ちをしている、とクーは思った。
川 ゚ -゚) 「飽きないのか?」
爪゚ー゚) 「毎日違う風が吹くんだじ。
一度たりとも同じ風の声が聴こえることもないから、そんなこと考えたこともなかったじ」
爪゚ー゚) 「自ずと見える景色も変わる。
だからなんとなく…自分の視野が広まる気がするんだじ」
果たしてどうか。
遠くにいるだけでは、何かを成すことはできない。
川 ゚ -゚)
…近くとも成し遂げられないものも確かにあるのだが。
-
じーと名乗る若者はいわゆる世捨て人だった。
日がな一日を岬で過ごしては、眠る時間になるとふらりと何処かへ行く。
…雨さえ降らなければその場に寝転がり、そのまま夜を明かすこともあるのだという。
温暖な季節もそんな彼の習慣を増長させた。
魔物も近寄らない不思議な岬だった。
爪゚ー゚) 「悩みごとがあるのかじ?」
川 ゚ -゚) 「そう見えるか?」
爪゚ー゚) 「強いて言えば…なにかに悔いているような」
川 ゚ -゚)
爪゚ー゚) 「独りになりたい時はなればいいじ。
離れてみて、はじめて気が付くこともきっとあるじ」
彼の達観した言葉は奇妙な説得力をもった。
そこに生きた時間の長さなど関係のないことくらい、クーにも分かっているつもりだ。
それでも…少しだけ意地悪をしてみたくなる。
川 ゚ -゚) 「君はここにいて、何かを得ることができたか?」
爪゚ー゚) 「うーん…」
川 ゚ -゚) 「この土地で生まれたのか?」
首を横にふるじーの仕草は柳の葉を思わせた。
そしてまたニコリと微笑み、彼の日常へ戻ってしまう。
川 ゚ -゚) 「…」
岩地がオレンジ色に染まる。
水平線もまもなく月を映し出す頃だ。
-
爪゚ー゚) 「大陸戦争にまつわるこんな噂を聞いてるじ」
クーがその場を立ち去ろうとした時だった。
背中にかけられた唐突な言葉が彼女の足を止める。
川 ゚ -゚) 「噂?」
爪゚ー゚) 「紛争地域…とりわけ直接的な戦いが起こった場所ではその後、次々と星が降ったと」
爪゚ー゚) 「ここもかつては灯台が町を照らしていたらしいじ」
足下は長く続く断崖絶壁。
泡白い海が、絶え間なく灰淡い飛沫を岩肌に打ち付けている。
爪゚ー゚) 「戦争で失われたものはとても多かったと聞くじ。
ましてやその最中に注がれたという流れ星の輝きが、
かつて有ったいろいろなものを壊してしまったのだとしたら…」
明るいうちはまだ見えない粒子状の空星も、
夜になれば惑星のなり損ないとして、その渇いた存在を主張するだろう。
だがもし現実にそんなものが降ってきたのなら
この岬はとうに消滅していても可笑しくない。
……クーはそう口にしようとして、やめる。
なぜそんなことを知っているのか自分でも不思議だった。
川 ゚ -゚) 「……だとしたら?」
爪゚ー゚) 「その星を是非とも見てみたい」
じーが爽やかに微笑んだ。
破滅を求める顔ではなく、あくまで好奇心からくる笑顔。
爪゚ー゚) 「人智を越える現象こそ、世界のもつ最大の魅力だと思うんだじ」
-
魔導力を利用した魔法学は、戦争によって大きく進化した。
黎明期たる大戦の時代が終わる頃に迎えた成熟期は、
人々と土地土地の荒廃からリスタートしている。
川 ゚ -゚) 「本当にそう思っているのか?」
爪゚ー゚) 「悲劇があったことも承知しているじ。
それは痛ましくて、肯定するつもりもないじ」
爪゚ー゚) 「僕はただ単に知らないことを知りたいだけ。
誰もやらないことをやる…それがきっと好きなんだじ」
そういって若者はどこかに去っていく。
ざあざあと、さざ波がクーの意識を取り残した。
ふと見上げれば暗がりに浮かぶ月と目が合った。
……それはなんとなく、嗤っているようにも見える。
川 ゚ -゚)
記憶をなくしてからずっと。
姿なき罪悪感が、透明な剣となってクーの胸を刺している。
悟られない感触だけがひたすらにその重みを増している。
大陸戦争を引き起こしたという記憶を失って…。
しかし生々しい記録をその目に焼き付けるたび、彼女は思うのだ。
『私は一体、
いつまでここに居ればいい?』
-
―― 10年後。
癒えぬ戦争の爪痕は、隠しきれぬ生々しさを未だに露呈している。
土地の廃退、生活の困窮、文明の後退……。
そしてなによりも顕著なのは動物たちのモンスター化だった。
空には火の鳥が舞い、森にはトレントが息を潜める。
海に出れば水獣と成り果てた大魚が牙をむく。
クーが出逢った四人の姿はいまひとつの大森林にあった。
大地がぽっかりと開けた口に、密やかに浮かぶ島。
瓜゚∀゚) 爪゚A゚)
爪゚ー゚) 爪'ー`)
お互い面識はない。
散り散りに現れた面々が、しかし吸い寄せられるように島の中心へと並んで歩く。
道すがら風景に混ざる二足獣が好奇の目で見つめている。
襲ってくる気配はなく、ただただ目を合わせるに留まった。
モンスターにしては珍しい生体だと誰かが呟く。
やがてそれも過ぎ去れば、
見えてきたのは四人を出迎える樹冠のアーチ。
爪゚A゚) 「…この地形で多雨林などとは珍しいぬ」
爪゚ー゚) 「湿ってはいるけど、悪くない風の通り道があるじ」
ゆっくりと、しかし目的を持って彼らは歩く。
澄んだ空気に反して、いつの間にか…しとしと雨が降っていた。
-
頭上に展開される葉が雨避けとなってくれているため、皆の身体が濡れることはない。
同様に太陽の光も遮っているが、不思議と視界は明るみに満ちている。
不満があるとすれば。
樹々の多さと水捌けの悪さによって、道らしき道が用をなしていない。
このままでは往来には向かず歩きづらい…という点か。
瓜゚∀゚) 「でも、これだけの雨が降るなんて羨ましい限りだづ」
爪'ー`) 「そうかな…何事も過ぎたるは及ばざるが如しといえるがね」
一言、二言話すその様子から緊張感はみられなかった。
中には笑顔を見せる者もいる。
穏やかなムードが彼らを包む。
いつしか足音も重なりあい、
各々がバックボーンを推測できる程度の言葉を交わし終える頃…。
爪'ー`) 「そろそろのようだな」
-
先頭のフォックスが軽く手を上げ、三人を制した。
森はまだ抜けていない。 …しかし、拓けている。
空から差す陽光が彼らを神々しく見下ろした。
チキチキ…
瓜゚∀゚) 「ここはずいぶんと暖かいづ」
爪゚A゚) 「また海の上とはかけ離れた景観だぬ」
チキチキ…
空に木霊する、四人の感嘆と鳥の囀り。
苔むした岩や貧弱な細木は、
こうも輝かしく照らされているだけで生命の息吹を力強く感じさせるのかと思わせた。
チキチキ…
段差のある土に、がらごろと石畳だけが乱雑に敷かれている。
辺りにそのような物質は存在しないので誰かが置いたのは間違いなかろうが、
それがかえって人工的な匂いからますます遠ざけていた。
爪゚ー゚) 「…なるほど。 チキチキ…
これなら満遍なく空気も循環するはずだじ」
言い終わる前に、じーが腕を振るった。
流れる指先が白い風を纏い、木の葉を散らす。
パタタタタ ッ
――小鳥が異変を察して飛んでいく。
風は円を描き、やがて彼の前で上昇すると、
わずかながら視界を遮っていた枯塵も空高くに舞った。
爪'ー`)∂" 「…」
パチン、という音はフォックスのものだ。
…誰かが彼に向き直るより早く。
燃えたことすら悟らせない瞬きの間に蒸発する枯塵。
あとには火の粉の残滓が蛍のように浮かび揺れている。
-
爪゚ー゚) 「そこまでしなくとも…」
爪'ー`) 「いつかどこかで土になるんだ。
わざわざ人の手を加えるなら、片付ける手間もどのみち必然だろう」
労力を省いてやったのだと言わんばかりのフォックス。
その目の前で蛍火が橙から――蒼に変化していく。
爪'ー`) 「おや?」
気付いた時には、彼の魔導力の粒子がぽかんと間抜けに弾けた後だった。
爪゚A゚) 「そのわりに後始末が雑だぬ」
爪'ー`)y‐ 「最後はこのタバコに火をつけようと思ったのだがね」
爪゚A゚) 「屋内ではやらぬように頼みたいものだ」
フォックスはちらりと窺う。
口五月蝿そうに警告した男の手のひらがしっとりと濡れていることを。
魔導力は相剋に従う。
じーの風は彼の火に呑まれ、
今まさにぬーの水で打ち消されたように。
瓜゚∀゚) 「手の内の見せっこは私で最後かづ?」
少し高い声に、三人とも振り向いた。
紅一点の彼女は屈むと土を撫でる。
「でこぼこな大地だづ」という。
同じ自然に生まれたものが、
気候や人の手の有無…そして年月によってこうも姿形を変えるのか。
故郷の砂漠の匂いを思い出しながら、彼女は魔導力を放つ。
爪゚ー゚) 「――…おお」
-
しえん
-
吐息に音を乗せたのはじーだけではない。
ぬーも、フォックスも同じように…目の前の景色に目を奪われる。
爪'ー`) 「すごいな、私には思い付かない」
一度だけだ…足元をなにかが通り抜けたように感じられたのは。
地軸が滑り動く錯覚のあとには、
石畳が織り成す立派なメインストリートが地平線まで連なり出来上がっていた。
土壌は均され、樹木が並木道を倣う。
大樹の変移動に伴い、
大きく拓けた枝葉の隙間から天道様が堂々姿を現している。
あとは建造物さえあれば誰もが人の生活の気配を感じるだろう。
爪゚ー゚) 「これは誰かに?」
瓜゚∀゚) 「独学。
大地に生えるものはすべて深く根付いているづ。
土を揺らせばそれが丸ごと動いてしまうのも自然の摂理だづ」
爪゚A゚) 「ここが数分前まで鬱蒼とした森だったとはもう誰も思わんぬ」
一度は離れた鳥たちが仲間を連れて戻ってきた。
棲み処を失くさずに済んだ、嬉しそうな鳴き声がピィピィと響き渡る。
瓜゚∀゚) 「驚かせてすまなかったづ」
――吹かせ、燃やし、相殺する。
多くの魔導力は、経てして誰かを傷付けるためのものが主眼だ。
戦争が促進させたとはいえ、人は過剰な力を得る際、
たんなる暴力の延長線上をイメージしてしまうのかもしれない。
万物に宿りし魔導力。
多くの人間によって地水火風へと箱をわけられてはいるが、
その本質が想像によって創造を成すエネルギーであることを
このなかでづーだけが掴みかけている。
「ありがとう、ここまで来てくれて」
いっそう大きくなる鳥の声。 四人の視線もひとつに重なる。
空白のメインストリートの向こう側に小さな影がぽつりと現れた。
-
近付く影がその輪郭を明確にしたのと、空の色が同化したのは同時だった。
白きメインストリートだけが風景に浮いている。
瓜;゚∀゚) 爪;゚A゚)
爪;゚ー゚) 爪;'ー`)
《シャラン…》
鈴に似た音が全員に聴こえる。
星雲が渦をまき、天がますます暗くなる。
――だが反して眩いほどの星光。
闇をいいことに数多の存在を一粒残らず主張し始めた、魔導力の星。
「【パーティクル】」
その声主をここにいる誰もが知っていた。
まだ遠くに居るはずなのに何故だか分かった。
…しかし放たれた言葉と魔法を、これまでに見聞いたことがない。
・・・・・・
それは術者を境界線に、"街が創り出されていく" 奇跡を生み出していた。
一歩足を踏み出すたび、色が塗られていく。
殺風景だった島に新たな国が建造されようとしている。
爪;゚ー゚) 「…なんとも珍しい風に逢えたじ」
「それはよかった」
爪 ;ぅA゚) 「いよいよ平和に耄碌してきたかぬ…」
「それも良いことだと思うが」
超常現象的に創られている街。 扇状に拡がる影響。
返ってくる口ぶりから、それは一人の人間の手で行われていることが窺えた。
まるで不可視のベールが剥がされていくにつれ顕になる、その全体像が見えてくる。
-
瓜;゚∀゚) 「ど…独特のセン…じゃなくて、
色々な土地が混ざっているかのような多彩さだづ」
づーのいう通り、街と呼ぶには統一感というものがなかった。
木でできた平屋もあればビニール製のテント張りもある。
かと思えばそのすぐ隣で、
何倍も背の高い灯台や石造りの館が生まれている。
歪なのだ。
コンセプトはなにもなく、頭のなかで思いついたものを
片っ端から具現化しているような唐突さにも思える。
「づー…君の優しさは失われていないんだな、安心したよ」
爪;'ー`) 「…」
「フォックス、わかってるさ。 君たちを呼び出した理由だろう?」
爪;'ー`) 「……さっきまではね」
なにかを求めるように、彼だけが片足を踏み出した。
(( 爪;'ー`) 「もうどうでもよくなった。
なんだ、その魔導力は…??」
フォックスの胸中は穏やかでいられなくなった。
どうしようもなく惹かれていた。
未知の魔法…。
そしてそれによって創られたらしき、紛うことなき故郷の一角。
それはあの日、自分で燃やし尽くした彼の家だった。
(( 爪;'ー`) 「時間を巻き戻せるのか?」
爪;'ー`)つ 「十年という記憶のなかにある君が、
いま目の前にいる君と何一つ変わらない事実と、なにか関係があるのか?!」
わざわざ彼が歩まずとも陽の位置は変わっていく。
影が明るみの元に晒され、ようやくその姿を照らした。
川 ゚ -゚) 「私にももう無いんだ。 故郷だけでなく、家族すら」
-
その手には錫杖が握られている。
二つのリングがシャラリとぶつかり鳴り響く。
爪;゚A゚) 「……摩訶不思議な…歳を取らぬのか?」
川 ゚ -゚) 「どういうわけかは私にも判らないがね」
頷くクーはそう答えると一度だけ振り向き、隠れてため息をついた。
川 ゚ -゚) 「時は戻せないし…人の魂もどうにもならない」
言葉より、目に見えるクーの表情が何よりも物語る。
それでもなお、
『 』――。
四人は彼女の存在を神格化し、そして違う単語で…彼女を同じく形容した。
爪;'ー`) 「…そう、か…」
肩を落とす彼に追い付いた三人も、興奮した様子でクーを囲んだ。
爪;゚ー゚) 「こんな魔法があるなら…!」
瓜;゚∀゚) 「私たちにも扱えるのかづ??」
川 ゚ -゚) 「…いいや」
―― 【パーティクル】はクー自身の魔導力に依存しない。
ある条件下でのみ発動する、借り物の力。
爪;゚A゚) 「そこんな街を創ってどうする気かぬ?」
――長い沈黙。
クーは唇に指を当てしばし思案している。
ここに来るまで、彼女なりの選びに選んだ言葉ではあったが、
結局は一番シンプルな言葉を口にした。
川 ゚ -゚) 「皆さえ良ければ、しばらく私とここで暮らさないか?」
-
瓜;゚∀゚) 爪;゚A゚) 「――は?」
爪;゚ー゚) 爪;'ー`)
-
共同生活は楽ではなかった。
生まれも育ちも異なる五人。
考え方も合わなければ、欲するものもバラバラだ。
…だが、どこか似た境遇は目的意識を同じくする。
島中の森林が切り開かれる頃にはいつしか
[都]と呼ぶに相応しい街に生まれ変わることとなった。
瓜#゚∀゚) 「フォックス、どうしてあの橋を壊すんだぬ!!」
爪'ー`) 「あの構造のままでは船が通過できないだろう? 作り替えるために必要な作業だよ」
爪゚ー゚) 「船を小さくすることはできないのかじ?
船体の下半分を潜水させるとか」
爪゚A゚) 「面白い発想ではあるがぬ…。
ドックを宮殿に隣接させる以上はその他の設備も含めて、
遅かれ早かれやはり必要になるぬ」
川 ゚ -゚) 「すまないな、づー。 今回は橋を動かそう」
瓜#゚∀゚) 「〜〜、我慢を強いられるのは民の暮らしだづ!」
爪゚ー゚) 「…うごかす……――そうか。
フォックス、壊すのは橋の真ん中だけにできるかじ?」
川 ゚ -゚) 「いい案でも浮かんだか?」
爪'ー`) 「……ははあ、じーが言うならばなんとなく分かったぞ」
川 ゚ -゚) 「よし、作業期間は宮殿を一部開放しよう。
民への説明も、負担もすべて私たちが受け持つようにな」
-
クーは都の主として長く、そして安定した生活を維持した。
驕ることなく、騙ることなく。
四人は魔導力を磨き続け、そのほとんどを人々の生活向上に役立てた。
やがて民からは尊敬の意を評して "四賢者" と呼ばれるまでになる。
この都は一度だけ、水害に属する天災に見舞われたことがある。
都にも壊滅的な被害がでた。
四人は【パーティクル】を求めたが、
当時のクーはこれを詠唱することができなかった。
都の建造物が白を基調として作り替えられたのはこの頃を境としている。
修復時、泥に汚れた壁や道を払拭したいがための色選びではあったが、
結果としてクーとぬーの魔導力に浄化された周辺海域によく合い、
復興後は[水の都]のステータスとしてその清潔性を轟かすに担った。
四賢者がクーに忠誠を誓うには、何十年と積み重ねた実績が必要だった。
耳障りのよい言葉だけでなく、行動、そして結果がなによりも大事だった。
クーにとって、水の都とは…。
過去は取り戻せないが、少なくとも今その時を生きるに充足した信頼を得られた時代。
時間にして百年足らずではあるが、
憶えのない罪に罰を与えられたクーの心を助けていたのは
この四人の賢者たちが最も身近に寄り添っていたおかげである。
(了)
-
以上で千年の夢2スレ目を終わります
ここまで読んでくれた方、ありがとうございました
リクエストはまた次のスレのラストにて
次のお話までにしばらくお時間をいただきますが、また何卒よろしくお願いします
それでは良いお年を。
-
乙乙
来年の投下を楽しみにしてる
-
誤字修正について
>>957
川 ゚ -゚) 「個人的懸案事項があってな、出来ればフォックスたちにも黙っていてほしい」→×
川 ゚ -゚) 「個人的懸案事項があってな、出来れば他の者たちにも黙っていてほしい」→○
※このときすでにフォックスたちはいません。
年代的には【繋がれた自由】の直前です
>>946
ありがとうございます
まとめサイトからも来ていただけるというのはいっそう励みになります
この他にも誤字脱字があるかもしれませんが、当スレでは残りレス数が限られているため
これにて>>1からの発言を控えておきます
いつもご指摘くださる方にも感謝します
以下は残り話数です
----------
川 ゚ -゚)→幕間→川 ゚ -゚)→幕間→川 ゚ -゚)→エピローグ
----------
来年になったら次スレだけ建てて、投下準備にはいります
重ねてよろしくお願いします
-
乙
訂正入ってなくてミスかなと思った所置いとく
915の最初の弟者の台詞に」がない、918の遮えられぬ、919の代わり海底、928のTtips、936のシュー許可、自分に化した、
953のれーす、954のガナー眼差し、970のいなくっても、975の時間も事例が、986の声主、988のそこんな
あと過去話の方でも
( ^ω^):その価値を決めるのはあなた の562のかなのお、ミ,,゚Д゚彡:時の放浪者 の474のデータムロム、
( ^ω^):白い壁 黒い隔たり の332の二度と国に足を運びいれることは必ず、342の飛び出していきく
以上です 次スレ建てた後にでもいいのでそこミスじゃないよとかいう所あったら指摘してくだしあ
-
おつ!壮大なストーリー半端ねぇ…
-
おつー
読んでると時間忘れちまうなあ
うめうめ
-
乙乙
話のスケールと細かさがすごいなぁ
来年も楽しみにしてる!
-
睡眠時間削って全部読んできた
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