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( ^ω^)千年の夢のようです
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9/24(水) 夕方より投下します
よろしくお願いします
前スレ
>( ^ω^)千年の夢のようです
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/13029/1401648478/
まとめサイト様(以下敬称略)
>ブンツンドー
http://buntsundo.web.fc2.com/long/sennen_yume/top.html
>グレーゾーン
http://boonzone.web.fc2.com/dream_of_1000_years.htm
作品フィールドマップ(簡易)
http://imefix.info/20140922/321215/rare.jpeg
http://imefix.info/20140922/321216/rare.jpeg
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── アサピーの広間。
寝酒を誘う老師が、老公人の横で片膝を立てながら升酒を揺らす。
喉をならすのは彼一人。
(-@"∀@) 「…気分は優れてはいるんだがね…。
飲み交わすにはまだ辛いよ」
( `"ハ´) 「気にするな」
日課…とまではいかずとも。
シナーがこうしてアサピーの元でじっと酒を飲むのは、幾度となく繰り返されてきた習慣だった。
バルケン公の没日から数十年……
人生の大半を二人は常に、共に歩んだ。
アサピーは常に村々を想い領地を治め、
シナーは彼を手助けて報酬を得る。
世間の評判は他の領地に比べ、すこぶる良いものだったといえる。
人々は強く騙し合うこともなく、
大きな反乱も起こさず、
比較的穏やかな日々を享受しながら…
こうしている今も順調に、歴史は世代を引き継ごうとしている。
そんな文字通りの平和を作り上げたのは他ならぬ、アサピーの無利無欲、理想思想。
そしてシナーの頑固な自制心と行動力が合わさったことによる、たゆまぬ努力の結果といえよう。
-
( `"ハ´) 「…」
(-@"∀@) 「お互い歳はとったけど…君は恐ろしく若々しいな」
(-@"∀@) 「……羨ましいよ」
うつむき加減なシナーの顔を、アサピーは遠くを見るかのような表情で迎え入れる。
だからこの行為には気付いていない。
眼球を動かさず、しかし鍛えられたシナーの視野は、抜け目なく部屋の四隅を観察していた。
( `"ハ´) 「身体なぞ、努力と鍛練で手に入れるものアルよ」
シナーが捉えるのは、天井端に4巣構える鳥の棲みか。
自然界には有り得ない…すべてが同じ形をしている。
(-@"∀@) 「相変わらずだねえ」
(-@"ц@)."∴ 「けほっ! けほっ!」
_,
(-@"∀@) 「……私は、いまになって父の気持ちがわかる気がする」
アサピーの日常において、奉公人が傍らに立つことを昔から許さなかった。
出来ることは自分でやる、というのが彼の方策であり、人手が必要なとき以外、奉公人を呼びつけることはなかった。
どんな雑用も自分で済ませたかった。
老バルケンとは違うのだ、と。
-
( `"ハ´) 「お前は今まで必死にこの領地を守ってきた。
バルケンのジジイの代わりとなり、自分の価値よりも、限りなく大勢の価値を守ってきた」
シナーは升に口づけて、一呼吸置く。
( `"ハ´) 「俺には到底無理なことアル」
(-@"∀@) 「…単なる結果じゃあないか」
その大勢とやらに入れなかった者を、あえて見て見ぬふりをしてきたこともある。
外枠の上に立ち、治める立場となって、アサピーがはじめて分かったこと…。
それは善悪が個に依存する以上、
誰の目にも明かな平和や公平などというものは、存在しなかったということだ。
(-@"∀@) 「過程があって、今がある」
( `ハ´) 「もちろんそうだ」
飢えが発生しないよう
食料を貯蔵する倉を造らせた。
……盗みを働くものがいた。
賊に襲われても身を守れるよう
警隊を組み、すべての村に派遣した。
……その警隊が略奪を起こした。
意見、希望が聞けるよう
村々で定例の進言会を開催させた。
……やがて誰もが真意を隠しだす。
(-@"∀@) 「私だけが多くを望んでも。
私だけがいくら手を差しのべても。
……それを受けとる人が居なければならなかったんだ…」
-
若かりし頃であれば貫けた信念。
だが満ち満ちた身体に、誰しもいずれ来たる不自由という名の枷が嵌められるたび、心は弱くなっていく。
( `"ハ´) 「俺ならそんなくだらん輩なんぞ放っておくがね」
(-@"∀@) 「父を…バルケンを討った時点で決めていたんだよ。
私は彼のようにはなるまいと」
(-@"∀@) 「なのに……」
白無垢の心と触れ合っているつもりが、なにかを成し遂げんとする己の色が交ざっていく感触…。
それは意図せぬ染色を引き起こす。
従うのは楽なものだ。
誰かの創り歩いた道をついていけば良い。
…アサピーが、バルケンの後釜を継いだ頃のように。
(-@"∀@) 「いまの僕は…、どうなった」
……名君の最後が得てして悲哀に見舞われるのは、自らの道を創り出す過程において、常に孤独という闇に立たされるからだろうか。
( `"ハ´) 「背負いすぎアル、お前は」
たとえサラリーが目的だったとしても、
隣には長年の相棒…片腕として寄り添う者が在っただけでも、バルケンとは違う。
── だが、それだけだ。
-
やはり己も独裁者の一人だった。
( -@"∀ )
人の行動には必ず伴ってしまうその概念が、
年月の果てに淀みない魂すらも蝕む。
善悪とは形のない毒のようなものだ。
彼の価値は、理性という殻を溶かし、確実に変質してしまった。
人が生きる以上、
時の流れから避けることはできない。
( `ハ´) 「アサピーよ」
(-@″∀@) 「……わかっているさ」
_,
(-@″∀@) 「だがそれでも」
( `ハ´) 「もうワカッテマスに協力するのはやめろ」
使いもしない奉公人を集い、ワカッテマスの元に出した。
その後、人々がどうなったのかは分からない。
……アサピーは、分からないままなのだ。
「私は生きるよ、シナー」
-
----------
<ヽ`∀´> 「ワカッテマス殿がどこにいるか知らないニダか?」
「某が見たのは三日ほど前ですが…」
「お出掛けになって以降は、まだ戻られていないかと」
残り僅かなサクラ咲く玄関口でのやり取り。
見張りの剣士から帰ってきた答えは肩透かしたものだった。
客人として迎えられたワカッテマス。
住み着いてからずっと、屋形から離れることなく過ごしていた。
とはいえ、シナーの張った無限回廊によって、屋形内ですれ違うことは滅多にない。
だがアサピーに聞いても、奉公人に聞き回っても、ようとして所在が知れない…。
こうして見張りから聞いたのが最後となった。
<ヽ`∀´> 「…分かったニダ…ありがとう」
ざわめく心中。
── これほど早いとは予想外だった。
-
ニダーは踵を返して屋形に入ろうとして…
踏みとどまり、サクラの下に置かれている機械[ホークアイ]の基のパネルをタッチする。
キュイィ ──と、雀の鳴くような起動音に伴い、画面が映し出された。
分割される屋形内の映像は、すべてホークアイからの視点。
アサピーの広間にある
あの鳥の巣も[ホークアイ]だ。
紫色に光るワカッテマスの監視装置は時を経て進化していく。
<ヽ□∀□> カチ… カチ…
…映し出される限り、
やはりどこにもワカッテマスの姿はない。
廊下にはまばらながら奉公人が通る。
無限回廊は解除されているため、開けっ広げの襖の間が覗かれた。
アサピーはシナーと二人、自室で向かい合って座って待っているようだ…。
部屋四隅のホークアイから監視の眼が ──
<ヽ□∀□> 「…四隅すべて?」
── あるのはおかしい。
<ヽ`∀´> 「これを最後に触ったのは誰ニダ?!」
その半数は、ワカッテマスが居なくなったその日、シナーが潰しているのだから。
-
「恐らくは拙者ですが…」
はて何を、といった表情で、見張りの剣士はニダーを見返してくる。
その佇まいはいつもと変わり無く思えた。
──それがおかしいのだ。
何故、"彼らはそれを報告しなかった" ?
何故、″客人の外出を伝えない" のか。
<ヽ;`∀´> 「ここ数日でモニターに変わったことは?」
「私がみる限りでは。
引き継ぎもおなじく、いつも通り異常はありませんので」
<ヽ;`∀´> 「……分かった、…」
項垂れるニダー。
釣られるように、二人の剣士も項垂れた。
── その身を縛る炭素鋼の反動のせいで。
「ぐおっ」
「?! ニダー殿、なにを」
<;`∀´> 「きつね! 御師に伝えるニダ!
〈後手〉と!」
《かしこまりマシタ》
呼び声に応え、どこからか若い声がする。
しかし同じ名前の奉公人よりも幾分低く。
-
( `"ハ´) 「!」
イ从゚ ー゚ノi、 「シナー様。 ニダー様よりお伝えに」
( `"ハ´) 「…〈後手〉か?」
イ从゚ ー゚ノi、 「ハイ」
( `"ハ´) 「応。 お前は残るホークアイを潰せ。
…アサピーに接する必要はない」
シナーの判断と指示は早い。
次の瞬間には姿を消すきつね。
屋形の外では剣士達のどよめきがあがり、
屋形の内では奉公人達のざわめきが蔓延っている…。
( `"ハ´) 「…棄てたか、既に拾った後か」
彼のなかに迷いはない。
だが後悔はある。
シナーの目線はいつしか固定されたまま、じっと正面を見据えていた。
-
(-@"∀@) 「…」
自室となる広間で、もはや人の道を踏み外してしまった老人。
…誰にそう教えられたわけではないが、シナーには半ば判ってしまっている。
( `″ハ´) 「あの日、金にもならぬお前の慈悲を素直に聞くべきではなかった…」
( `″ハ´) 「…あんな得たいの知れぬ者を掬い上げるべきではなかったのだ」
(-@″∀@) 「…」
( `″ハ´) 「その瓶底眼鏡を外せ」
(-@″∀@) 「私をどうするのだ?」
( `″ハ´) 「外せ」
(-@″∀@)
(つ-@∀@)スッ…
-
トレードマークであった眼鏡を外し ──
( ;`″ハ´) 「…………、 やはりそうか」
その奥に潜む眼睛。
そして流れ消えていく紅い泪を露にする。
こうして裸眼に見つめられるだけで、どこか頭がクラクラしてくるのは何らかの違和か、ただの思い過ごしか。
( ;∩ハ´) 「故郷に残る文献で読んだことがあった。
数百年もの昔から、この世界の人間に宿る禁忌を犯したものに表れると……」
よもや己の代にその片鱗を…
ましてや友にその片影を見てしまうとは。
( ;`″ハ´) 「……そこまでしてお前は」
( ↑″∀↑)
(#`″ハ´) 「踏み込んだか、アサピー!」
-
------------
〜no road***〜
( ↑"∀↑)
HP / #D
streeenth ゝ ∩
viτality / E
agilit〆 / D
〓P / C
-agic ¢oMer / D
ma--c speed , D
wa\ic regisбЭnce ! ゐ
(推奨BGM:DarkSaint)
ttp://www.youtube.com/watch?v=wUNNGv5oELM&sns=em
------------
-
<ヽ`∀´> 「御師! 後はウリ達だけ ──
<ヽ;゚∀゚> ── にだぁ?!」
ワカッテマスの手が掛かっていそうな全員を縛りつけ、駆け付けたニダーが見たものは…。
( `"ハ´) ( ↑∀"↑)
<ヽ;`∀´> 「あれは…」
服装も、髪型も、座り方も…
紛れもなく彼が知るアサピー公。
── だが顔つきだけは別人。
( ↑"∀↑)「……ニダー、お前も」
( ↑"∀↑)「お前も私を責めに来たのか?」
<ヽ;`∀´> 「…なに……?」
若き風水師がここに来たのは
長く不審でありながら目的が不透明だった、ワカッテマスの失踪…その始末をどうするのか。
師であり父であるシナーの指示を仰ぐためだ。
アサピーの、このような異変など考えもしなかった。
( ↑"∀↑) 「お前も私が生きることに反対か?」
-
戸惑うニダーにしびれを切らしたか、アサピーの存在が変容し始める。
空
邪 熱
殺 妖
瘴 豪
怒
放たれるそれらは総てが "気" だ。
"氣"" に敏感な風水師の二人の肌を灼きしだかんと、今はまだ弛く波を打つ。
( `"ハ´) 「お前…」
( ↑"∀↑)「君が悪いんだよ、シナー。
君が私を…私を見限ろうとするから」
( `"ハ´) 「ワカッテマスに何をされた?」
アサピーの膝が伸びる。
曲がっていた背筋も。
心なしか、口から大きく吐き出した息は灰色のモヤがかかる。
…シナーが問い質す前とはうって代わり、
弱々しく見えた老人は何一つ恥じることなど無いように胸を張った。
( ↑"∀↑)「何かをされたなんて人聞きの悪いことを言わないでくれ。
彼は彼なりの誠意をもって、私に接してくれていた」
( ↑"∀↑)「私の愚かな話を聞いて、ただ純粋にそれを叶えようとしてくれたんだ」
( `"ハ´) 「だったら何故それを俺達に話して ──
( ↑"∀↑)「…そうだな。
君にとっては何気ない一言だったのかもしれない」
( ↑"∀↑)「あの日………──
-
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
( <●><●>) 『── しかし貴方達は…偽りの湖へ一体何のために?』
(-@"∀@) 『水の都がまだ復旧していないうちに、恩を売ろうかとケホッ、思ってね。
…蔓延る穢れとやらを落としたかったのだが…』
( `"ハ´) 『俺の風水魔法ですら、お前を助けるので精一杯だった。
お前、どうやって生きてたんだ?』
この日、
ワカッテマスが真実を答えることはない。
それより…呪われた彼が嗅ぎ取ったのは、
迫り来る死に脅えた老人の心の闇だった。
土塊だったはずの彼は
以前よりも艶やかに、
他人を観察できるようになっていた。
( <▲><●>) 『いえ、私にもなにがなんだか……』
空っぽな彼に、
10年の愉しみ… 20年の悦び…
30年の苦悩…… 40年の諦め……
"穢れ" と身勝手に名付けられた
様々な魂が、湖のなかで輪転し、
何度も生き死にを体験させたために。
-
(-@"∀@) 『…長寿の法?』
( <●><●>) 『ええ。 湖にそんな噂がありましたので、私は調査のために』
( `"ハ´) 『そこを湖につけ込まれたか…間抜けな奴アル』
(-@"∀@) 「…」
( <●><●>) 『…危うく取り込まれるところを救って頂けたご恩もあります。
どうでしょう? 貴方達は湖に眠る収穫物を持ってくる、私はそれを解読して貴方達に差し出す…』
( <●><●>) 『私のような一介の研究者には、領地同士の繋がりや…いうなれば人類発展のためなどという大義名分は畏れ多くも抱きません』
『もしも利が一致するのであれば ──』
…そんな初対面での荒唐無稽な甘言に
耳を貸すほど、アサピーとシナーは
落ちぶれてはいなかった。
確かに鼻で笑い、一度別れたのだ。
( `"ハ´) 『人はどうせ死ぬ時に死す。
死に場所くらい自分で決めるアルよ』
(-@"∀@)
( <▲><▲>)
だから、付け入る隙を遺す。
淀み滓を湖から与えられたのか、
土塊の意思で【ドレイン】したのか…
ともかく
湖は一つの魂を創り代えた。
命短き運命に、
千年の猶予を与えてしまった…。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
-
( `"ハ´) 「……」
( ↑"∀↑) 「なんの不都合があろう?
湖の穢れを解呪できれば、その土地の人々に恩を売れた。
国力の下がっている水の都に恩を売れた!」
( ↑"∀↑) 「…あわよくば、収穫物次第で私は不老不死になれた。
── いや、もしや既になれたのだろうか?」
<ヽ;`∀´> 「……アサピー殿…なにを…
本気で、言っているニダ?」
まだ若きニダーには理解できなかった。
小さくとも人の生活を纏める苦悩が。
……こうして生きていることが、誰かに用意された人生の辿り路であることを。
当たり前過ぎる暮らしの影に、
必ずどこかで
誰かの犠牲が成り立っていることを。
( ↑"∀↑) 「気分がいいんだ、あれを食べてから……
本気かって? 嘘をつく理由があるか?
自分を偽って生きることにもう疲れたんだ。
人生最後のひとときくらい良いだろう!
私利を!
私欲を!!
我が儘を叶える資格も私には無いのか!」
( `"ハ´) 「無いな」
-
── わずかばかりの沈黙。
それが、場を埋め尽くさんとしていた氣を霧散させる。
シナーの言葉は同情の色なく真っ向の否定。
たった三文字…
時間に換算すれば一秒に満たない発言は、
しかして高揚し、更に捲し立てようとしていたアサピーの思考をぶつりと停止させるには充分だった。
( ↑"∀↑) 「 ……なに?」
( `"ハ´) 「無い。
お前が選んだ道はそういうものアル。
本来ならば人の上に人はいない……。
にも拘わらず、望んで人の上に立ったのはお前だ」
<ヽ;`∀´> 「御師…」
( `"ハ´) 「死ね。 お前の天寿はもしかすると数年前、既に全うしていたのかもしれん」
( ↑"∀↑) 「…シナー」
( `"ハ´) 「人でない者が………」
シナーの震えた口許は…ある種の感情を携え、彼との70年間に訣別を告げる。
-
( う"ハ;) 「人の世界で生きていても、後は歪むだけだ」
⊂( ↑"∀↑) ⊃ 「歪みなんて誰にでもあるじゃないか…それを私にだけ押し付けて。
自分はまた晴れやかな気持ちで人生リスタートか?」
ピッ ,⊂( `"ハ´)
⊂( ↑"∀↑)⊃ 「するものか、しやしない、させや ──ツ?!
アサピーの頭がひとつ分、大きく逸れる。
後ろの壁にドスッと重い何かが穴を開けた。
<ヽ;`∀´> 「お、御師! アサピー殿!」
⊂( ↑"∀↑) 「…」
⊂( `"ハ´) 「…いつものお前なら避けられるとは思わなかっ ──
狼狽するニダーの視線の先。
涙を振り拭ったシナーの手が
同時に放った峨嵋刺。
振り上げられたアサピーの腕。
似たように動いたシナーの頭。
(- `"ハ ) …─⊂("∀↑-)
…スパッ …スパッ
⊂( ↑∀"↑) 「…おやおや」
⊂( ↑∀"↑) 「いつもの君なら避けられると思っていたなあ」
-
一度の交錯を合図に、その戦いは静かに始まった。 広間はさながら能の舞台上と化す。
舞を演じるかのように踊る二人の姿は微塵も老いを感じさせない。
ニダーの目に映るのは、幾つもの光の筋が軌跡となり、互いの身をすり抜けていく峨嵋刺と炭素鋼の織り成すレーザー光。
背後が瓦礫となりて破壊されていく雑な摂理音が響き渡るのとは対照的に、芸を披露する二人の空間は無音に感じられる。
得物を放る指先、
体重を移動させる腰の運び、
宙に浮く爪先、
次の対象を見据える眼差し。
もし人間の動き、芸というものを点数や数値化するような無粋なシステムがこの世界に存在するならば、きっとニダーの方が彼らに勝るだろう。
そんなものとは別次元の概念がここにある。
彼らの動きひとつひとつが、
観る者の思考を気付けば領犯してゆく…。
-
そうして呆けていると、
交差するレーザー光の一線が頬を横切った。
<ヽ-`∀´> 「…」
ツウ…
無意識に一歩下がる。
背中の太極図が風圧になびく。
椅子も用意されない…しかし、特等席で観覧する闘の能は、ニダーの拳に汗をかかせる。
そうしてふと……袖口に隠す暗鬼の重みが気になった。
炭素鋼と峨嵋刺を組み合わせたニダーの武器。
そもそも隠し武器として使用する性質上、単一で完成度の高い暗鬼を組み合わせる必要はない。
それでもその両方を併せて使いこなす道をニダーは選びたかった。
かつて尊敬した二人の武器を使いたいがために、幼い頃から、シナーとアサピーの二人から手解きを一身に受けてきた。
<∩`∀´> ゴシ…
思い出せばむしろ、実の父親でなかった分だけアサピーの方が優しく接してくれていたような気がする。
…広間の節々に、赤い色が飛び散り始めた。
-
----------
('A`)「…〜〜♪」
('A`) 、 ぺっ
地に唾するポイズン。
彼の立つ場所はいずこかの山中であり、木々の間からはアサピーの屋形が、薄紅の花を屋根にして佇んでいるのが見下ろせる。
('A`)「〜♪… …あれか」
止む鼻唄。
ワカッテマスを追って部屋を出たのは良いが、見知らぬところへと放り出されてしまった。
あれから既に数日経っているため、恐らく、ワカッテマスがのうのうと屋形に居座っているとは考えにくいことも承知している。
('A`)「おい」
ハハ ロ -ロ)ハ 「ハイ」
ポイズンの背後の視界がスライドする。
その陰に重なっていたのは女…
金色の髪をもつ忍。
('A`)σ「そいつ必要か?」
ハハ ロ -ロ)ハ 「私が承ッタ指示に含まれてマスので」
-
ワカッテマスの波動を追う道中、ポイズンが出逢った忍はハローと名乗った。
彼女も荷物を取りに、隣接する村からアサピーの屋形へと帰るところだったのだという。
土地勘のなかったポイズンにとっては僥倖であり、ハローにとってはもののついでとして、断る理由なく同行している。
……問題はその荷物。
背負うことも憚れるせいで、彼女達の足取りは速くなかった。
('A`)「俺はもう行くから置いてくぜ」
返事を待たず ──
言い放ってポイズンだけが崖を跳んだ。
急勾配を跳ねて降るその姿は、忍も顔負けの身軽さを見せ付ける。
ワカッテマスに付けられた怪我など、まるでなかったかのように。
ハハ ロ -ロ)ハ 「…」
土埃も舞うことなく消えていく背中を追い掛けはしない。
ハローは荷物と共に見送った。
ハハ ロ -ロ)ハ 「アノ唄は……」
山道を歩くなか、ポイズンが途切れ途切れ、思い出したように口ずさんでいたのを隣で聴いていた。
しかしそれを彼女が問いただすことはない。
忍として、不用意な質問を他人にする躾は受けていないからだ。
それも…なんの変哲もない、ただの子守唄。
彼はどこで覚えたのだろうかと、疑問は心のなかに仕舞い込むことにした。
----------
-
(;;`"ハ´) ハアハァ…
(↑∀"↑) 「……凄いな、これは」
<ヽ;`∀´> 「御師…!」
(;;`"ハ´) 「手を出すな」
息を切らしたシナーが膝をつく。
はじめこそ互角に見えた戦いも、今となっては一方的な結末を迎えようとしている。
一人の足元には血溜まりが生まれていた。
ぬかるみに足をとられつつも、アサピーは炭素鋼の投擲を止めない。
防ぐシナーの両腕はボロボロと布切れを散らし、その下からは無数の傷が露わになる。
(;;`"ハ´) 「糞!」
…致命傷は必ず避けていた。
むしろシナーの峨嵋刺こそ、アサピーの身体中を刺して離さない。
⊂(↑∀"↑)⊃ 「…みろ、彼は約束を違えていない。
痛みのない身体…これはもはや不死と呼べるのではないかな?!」
…腕を大きく広げた格好は、まるで不出来なサボテンだ。
伸ばしきった指先は五本。
子供のように喜んだ表情を全身で表現しているらしく、甦る肉の弾力が峨嵋刺を押し返す。
⊂(↑∀"↑)⊃ 「それに比べて……いくら鍛えてもやはり限度があるようだね。
君の何十年を、私は勇気をもって踏み込むことにより数日で入手した事実をどう思う?」
-
乾いた音をたて、峨嵋刺が畳の上に転がる。
<ヽ;`∀´> 「アサピー殿、もう止めるニダ!
貴方も手当てしないと…」
⊂(↑∀"↑) ⊃「不要」
(↑∀"↑) 「そもそも…彼は私を明確に殺しに来てるじゃあないか。
ここに来て止めるとでも?」
(;;`"ハ´) 「その通りだ、ニダー。
何度も言わせるな…手を出すなアル」
<ヽ;`∀´> 「うぅ…」
ニダーの心中は相剋している。
指示に背いてでもシナーに荷担したい気持ちと、しかし出来るならば戦いをやめて貰いたいという思いが強く在った。
このまま黙っていても、いずれどちらかは倒れるだろうことは想像に難くない。
考えたくはないが…アサピーの様子を見る限り、シナーのほうが死に近い。
<ヽ;>∀< > 「……」
しかし選べない。
どちらも……ニダーにとっては尊敬する人生の師であるがために。
選ぶことが、できない。
-
(;;`"ハ´) 「コイツはここで死んだ方が世のためだ。 俺が必ず殺す」
<ヽ;`∀´> ( ──嘘だ)
シナーはよく嘘をつく男だった。
他人から彼への第一印象は
容赦がなく、とりわけ修行や鍛練に関わる分野においては実直な誠実さを見せる。
…だが一方、暗躍という名の慈悲も見せる。
アサピーに関してもギリギリまで陰で動き、どうにかワカッテマスとの関係を断ち切らんと行動した。
ホークアイによる監視の目を逃れるため、
ワカッテマスも知らないようなジェスチャーで、表向きの言葉から欺こうと提案したのもシナーだ。
彼は誰かのためなら自身にも嘘をつける。
時にそれが思い込みだとしても。
…今回のような結果を招いたことは、
シナーの中でどれだけ葛藤があろうか。
-
( ↑∀"↑) 「だ、そうだよニダー。
私も彼には何一つ期待などしていなかった。
サラリー目当ての男なぞいずれこうなると思っていた。
出来れば…君のように若い人材にこれから働いて貰いたいんだ」
( ↑∀"↑) 「命尽きるまで、私の元で」
<ヽ;`∀´> ( ──それも嘘だ)
アサピーは嘘をつかない男だった。
初対面であろうと柔らかな物腰でスッとテリトリーに入り込み、人心の掌握に長けた。
シナーの現金な性格も、アサピーだからこそ長く続いたのだ。
報酬の先に潜む誠意を見たがるシナーを、誰よりも重宝した。
誠意には情で返すシナーの性質をわかっていた。
彼でなければこの領地を長く平穏に治めることなぞ出来はしなかっただろう。
…ワカッテマスに出逢いさえしなければこれほどの事件にならず、大陸の東半分は誰もが彼を讃えたまま人生の終わりを迎えただろう。
-
(( <ヽ;`∀´> 「…」
(;#`"ハ´) 「おい!」
もう…それも無理な話なのだろうか。
まだ間に合うのではないか?と考えれば考えるほど、ニダーは諦めきれない。
気が付けば、二人の間を遮るように立ち竦んでいた。
<ヽ;`∀´> 「ウリの望みは "和解" 。
もう、二人とも止めるニダ…」
( ↑∀"↑) 「私は止めてもいいよ。
…だが、それで何が解決する?
僕はこれまで通り、自分が思い描いたように周囲を動かしていく」
(;#`"ハ´) 「ニダーどけ!
餓鬼がでしゃばるな! 失せろ!
お前が死のうが誰も悲しまぬわ!」
「説得は無駄だ!」……シナーの怒声が、辺りの空気を静かに凍らせた。
<ヽ;`∀´> 「…」
……冷えた沈黙。
これが仲睦まじく語り合うかつての三人であったなら、天使が通ったとでもぽつりと囁き、笑いあえたのだろう。
── 残念。
褪めきったシジマは天使の笑みでなく、
世に孤立した悪魔の笑い声を運んできた。
-
(↑∀"↑)ボソッ
「…なに?」(↑∀"↑)
ド
ン
ッ
(↑∀"↑)
「……あれ」 ( Γ ∀"↑)デロん
( Γ ∀"↑)'A`) 「ふひ」
( 'A`)
《ドサリ……》
…そう大きな音がしたかは分からない。
糸が切れた人形のように倒れるアサピーの真後ろ。
五体満足に舞い戻ってきたポイズンの姿がそこにはあった。
(;;`"ハ´) 「アサピー!」
<ヽ;`∀´> 「アサピー殿!!」
('A`)「ひ……ふひひ」
手には血塗られた峨嵋刺が握られている。
…しかし、問題はそこではなく。
-
(;#`"ハ´) 「…アサピーに何をした」
何故、シナーの攻撃を受けても倒れるどころか、痛みさえ訴えなかったアサピーが伏したのか?
<ヽ;`∀´> 「ドク…戻ってこれたニダか」
('A`)「ぉ〜久し振りだなぁニダー。
つってももう時間の感覚がわかんねえけど」
('A`)「こんな半端な不死…
半死か? なんざ余裕だ、 よ・ゆ・う♪」
::( Γ"∀↑):: 「ガッ ── ガハァ……」
ポイズンが貫いた首の穴は貫通している。
喉から傷口から…アサピーの流血はその蛇口を止められない。
('A`)「…ぁん? なんでまだ生きてんだ…
よっ!」
'.;( Γ Д"↑(# 「おごっ?!」
ポイズンのブーツ底は血に染まりつつ
ミ゙ヂィッ!
と、アサピーの横面を踏み潰し、捻り回す。
ゴリゴリと頬の奥から軋みを鳴らし、アサピーの口許からは真っ赤に染まった固まりがこぼれ落ちた。
人生に一度しか生え替わらない硬い骨が、無惨にも寄生宿から永久に見放される。
<ヽ;`∀´> 「!!」
⊂(;#`"ハ´) 「やめろ!!」
-
(= ('A`)「おっとぉ」
(;#`"ハ´) 「くっ!」
不死者の影上を空しくなぞった峨嵋刺。
だが疲労したシナーの投擲が不完全なのではなく、ポイズンが素早いのだ。
踏みつけていた足はアサピーから離れるも、身体を蝕む痛みにシナーはそれ以上立ち上がれず、追撃できないでいる。
そんなシナーに目もくれず、ポイズンはアサピーに向けて言葉を続けた。
('A`)「…おめぇ、喰ったのは肉だけじゃねえな?」
伸ばした両腕はブラブラと膝の上…
しゃがみ込んだポイズンが、半死の顔を不気味に覗き込む。
(; Γ "Д↑) 「…は〜っハビュ、…はハビュ〜っ」
(; `"ハ´) 「喰った、だと?」
('A`)「コイツの顔、見たろ?
喰いながら願ったんだよ
いや、渇望するって言葉が正しいのか?」
('A`)「並大抵の願望じゃねえが、しょせんは媒体も借り物…」
('A`)「だから "半死" っつったんだ」
-
「なあ?」
…その問い掛けに、アサピーは答えない。
シナーの知る文献には
"人間の禁忌" の具体的な中身、方法まで記されていたわけではない。
"肉" ……その単語が耳についた。
単純で最も連想しやすい物質。
そして確実なのは
ワカッテマスがそれを知り、
ドクと呼ばれた収穫物もそれを知っている、
……ということ。
(;;`"ハ´) 「…!」
目まぐるしく、老師は思い出す。
ポイズンの戯言を真に受けるつもりはない…
だがアサピーはどうだ?
真実ならば、事実の確定に至っていない一つの隙がある。
('A`)「お前をォ殺す〜ってか」
…ならば無駄ではないかもしれない。
己がきつねに指示したホークアイの処理と、それに伴う荷物の輸送は。
目の前の男に展開を任せてはいけない。
どこの馬の骨ともつかない若造に、アサピーを殺させるわけにはいかない。
-
('A`)「まあいいや、も「 待ってくれ 」
('A`)「?」
(;;`"ハ´) 「アサピーを殺すんだろう?
それは構わん…だが少し待て」
<ヽ;`∀´> 「…」
('A`)「… "待て" 、だと?」
よろけながらシナーは気丈に立ち上がり言った。
負傷は軽くないとしても、ここで立ち上がらなければならないという決意の元に。
対して考える素振りすら見られないポイズンはじっと、自身に歯向かう糞ジジイの目を見ているだけだ。
('A`)「なーんか勘違いされてるなぁ〜」
('A`)「ひひっ」
アサピーは激痛からの唐突な解放に戸惑いながらも、ゆっくりとシナーを見る。
── 同時、
彼に飛び掛かる黒い獣…悪魔に似た
ポイズンの後ろ姿も。
-
------------
〜now roading〜
<ヽ`∀´>
HP / C
strength / C
vitality / B
agility / C
MP / C
magic power / C
magic speed / D
magic registence / B
(推奨BGMおわり)
------------
-
敵から振り下ろされた己の武器が、己の頭上を掠めていく煩わしさ。
(;/;`"ハ´) 「ぐうっ!」
反撃にまっすぐ突き出した峨嵋刺は、大きく屈んだポイズンの髪を僅かに引きちぎるのみ。
次の瞬間、空いた脇腹に響く衝撃。
思わずシナーはたたらを踏むも、転ぶ。
そして濃い影がシナーを覆い尽くした。
('A`)「アサピーだのなんだの…殺すのに誰かなんて関係ねえ」
(;/;`"ハ´) 「…」
見下ろしたその顔はつまらなそうで…しかしどこか嘲笑っている気がする。
もしかしたら怒りを孕んでいるのかもしれない。
(;/;`"ハ´) 「…」
── わからない。
人が誰しも持つはずの "氣" が無いのだ、ポイズンには。
だから老師にはその男の動きも、思考も、感情も、何一つ読みきれない。
('A`)「てめーに命令される筋合いもねー」
唯一ポイズンの声から、それが本気であることだけは感じ取れる。
…見た目は20代の若造から、自身より遥かに長く生を明かしたかの如き超然感に気圧される。
"('Д`#)「餓鬼がでしゃばるな! 失せろ!」
::(;/;`"ハ´ii):: ビクッ
── ポイズンの恫喝に、80年近く戦士を自負していたシナーが人生ではじめて慄いた。
尻餅をつき、無意識ながら腕の力でじたばたと退く姿は滑稽で…
まるでカラクリ人形が音に反応するかのようにカタカタと。
-
ハアッ、ハアッ、ハアッ…ハアッ……
自身の息遣いが、耳元で爆竹でも鳴らしているのかと錯覚するほど大きく痺れる。
久しくなかった己の命の危機。
有言実行の気概、無感情に人を死せる殺意が目の前にそそり立つ。
怪我をしているだけで、こんなにも身体は言うことを聞いてくれないのかと魂が縮み上がった。
いつの間にか安全圏で生きていたことを嫌でも思い知る瞬間が、ついにシナーにもやってきてしまったのだ…。
-
('A`#)
('A` )「…なんてな」
「ひひひ!」と、書物の頁をめくる気軽さでガラリと雰囲気を変えたポイズンは踵を返し、シナー達に背を向け悠然と壁際に歩いてゆく。
( )「ジジイの今の姿をみても」
( 'A)「…御師様ぁ〜ってか?」
(;/;`"ハ´) 「?」
ひととき、シナーにはそれが何のことか分からなかった。
…だがポイズンが壁に身を預けて座り込むと、弾かれたように真横を向いて…その意味に気が付いた。
<ヽ`∀´> ('A`)
(;/;`"ハ´)
ポイズンを見上げた時よりも高い位置にその顔があった。
<ヽ`∀´> 「それ以上はウリが相手ニダ」
…不出来な自慢の弟子。
甘えを捨てるべく、いつの日か父と呼ぶことを禁じた最後の息子。
-
('A`人) - ☆「いいねぇ〜、カッコイー」
=⊂('A` ) 「ほっ」
(;/;`"ハ´ii) 「!」
ぱちぱちと小馬鹿に手のひらを叩く様子から一転、ポイズンの不意打ち。
音よりも速い峨嵋刺の光線が。
《カラン…ッ》
/'∩
<ヽ`∀´> ⊂('A` )
∪,/
果たしてシナーを貫くことはない。
その眼前で方向を変え、力なく宙を舞う。
…ニダーの炭素鋼がそれを阻んだのだ。
('A` )「…やるじゃん」
点の攻撃を線で防ぐのは易くない。
むしろ非効率的でもあるその手段は、しかしそれ以外の得物を携帯しないニダーにとって唯一ともなる。
<ヽ`∀´>「あくまで御師を狙うニダか?」
('A`)「あー、んじゃこっちでいいわ」
( Γ ∀"↑ii)「!」
次にポイズンは逆腕を振るった。
間近で横たわるアサピーの鼻先三寸で
《ギャリン──ッ》
…不快な金属音が木霊する。
-
<ヽ`∀´>つ 「させないニダ」
今度は峨嵋刺同士の衝突。
ポイズンの意図を読み切り、守りに徹する風水師。
(;/;`"ハ´) 「ニダー……」
( Г ∀↑ ) 「……」
"б('A`)「ん〜??」
ポイズンの心は煮え切らない。
ニダーは構えるもののそこから動く気配が無い。
純粋な意味での戦闘を行っていないとはいえ、ポイズンにはそれが納得いかない。
なにをまどろっこしいことをしているのか?
これほどの腕があるならば、果敢に攻めてきても良さそうなものを。
まるで時間稼ぎだ。
-
『アサピーを殺すんだろう?
それは構わん…だが少し待て』
-
('A`)
あぁ…と、
誰にも聴こえない吐息が漏れた。
('A`)「…面白くねぇ」
ポイズンは勘が良い。
だから想像する経過は違えど、予想した結果は同じだろう。
これは自己満足。 理解されない美徳。
そう考えながら、胸元のタバコを取り出そうとして…湖に漬かると消失したいつかの過去の現象を思い出し、吸うのを諦めた。
-
('A`)「おい」
<ヽ`∀´> 「…?」
('A`)「シナーが死ぬのは嫌か?」
<ヽ`∀´> 「嫌ニダ」
答えははっきりしている。
誰しも目の前で親が死ぬことを望みはしない。
('A`)「アサピーが死ぬのは?」
<ヽ`∀´> 「嫌ニダ…けど」
('A`)「この姿じゃ仕方ねえから迷ってる、か?」
<ヽ`∀´> 「…元に戻れるならきっと大丈夫ニダ。
だからそれまでは……」
('A`)「俺が元に戻す方法を知ってるなら?」
Σ <ヽ;`∀´> 「ほ── 本当ニダか?!」
('A`)「さっきみた通り、ダメージを与えることもできるんだから元に戻せたって不思議じゃねえだろ?」
「不死の仕組みがわかってりゃどーってことねえ」と、ポイズンは痰を吐き捨てた。
今このときでなければ、
『掃除するのはウリなのに…』というニダーの声が聴こえなくもない。
-
('A`)「俺が死ぬのは?」
<ヽ`∀´> 「…」
<ヽ`∀´> 「二人にこれ以上危害を加えないなら、ドクも嫌いになれないニダ」
懸命に本音を語る人間は、観察力が落ちる。
真摯であればあるほど。
その時ポイズンの目付きが鋭くなったことを…ニダーは気付かなかった。
<ヽ`∀´> 「ウリがドクを救ったせいで、こんなところに来させてしまったのが気になっていたニダよ…
考えてみれば、君はただ巻き込まれただけニダ」
<ヽ`∀´> 「それに…ドクの眼は。
どこかウリに似ることがあったニダ」
('A`)「…」
お人好しの言葉は止まらない。
<ヽ`∀´> 「そうでなくとも、一度知り合った仲なら良くしたいと思うニダ。
アサピー殿も、御師も、根は悪く ──
-
('A`)「あーそーかい」
耳が腐りそうになり、思わず遮る。
ポイズンからの問いはそれっきり…。
そのまま静かにうつむき、目を閉じたまま動かなくなった。
親子二人はしばらく様子を窺うが、時間がただ流れるだけ。
<ヽ;`∀´> 「……??」
(;/;`"ハ´) 「……。
ニダー、奴にはもう敵意はないようだ」
震えの止まった身体を立たせながら、広間のある一点を目指して足を引きずり歩きだす。
(;/;`"ハ´) 「それよりも、そろそろきつねから荷物が届く。
迎えにいってくれ」
<ヽ`∀´> 「し、しかし…」
(;/;`"ハ´) 「こちらは気にするな。 往け」
そう背中で語るシナーの姿が、なんだか小さく見えた…そんな気がした。
不安げにポイズンを一瞥してから
── 彼は置き物のように動かないが ──
ニダーは広間を後にする。
何度も、何度も…振り向きながら。
-
('A`)
(;/;`"ハ´) 「…」
(↑∀"↑ii) 「…ハア…ハア」
…しばし沈黙が流れる。
ポイズンは目を瞑り、アサピーの視点は先程よりも定まっていない。
やがてシナーは目的地に屈み、その手にかつての友の面影を拾い上げた。
(;/;`"ハ´)つ-@@ 「かけておけ」
(↑∀"↑ii) 「…いらないよ、まだ眼は見えてる」
(;/;`"ハ´)つ-@@ 「これは頼みだ。
どうであれ、来たるべき末路のために」
(↑∀"↑ii)
@@-⊂(↑∀"↑ii)スッ
横たわりながら…アサピーは眼鏡を掛け直す。
するとどういうわけか、その心に平静が訪れた。
(ii@∀"@-) 「…」
(;/;`"ハ´) 「好」
-
シナーは緊張の意図が切れたのか、その場にがっくりと座り込んで話し始めた。
並んで向かうはポイズンの方角ではあるものの、声を掛けるのはあくまで友に向けて…
小弱々しく…静かな…しゃがれた会話。
(;/;`"ハ´) 「お前は本当に、一度たりとも隠居は考えなかったアルか?」
(ii-@"∀@) 「……そりゃあ任せられる者がいるなら任せたいと常に思っていたさ」
(;/;`"ハ´) 「お前の息子にやらせれば良かっただろう。
若い奴には未来がある。
行動力も可能性も、俺達より遥かに ──」
(ii-@"∀@) 「まだまだ経験が浅い…
それに、近年の仕事ぶりではダメだ。
だからこそ村に派遣していたのに…グッ」
(ii-@"∀@) 「ま、だだよ…私がやれる内は ──げほっげほっ!
……私が、やるさ」
(;/;`"ハ´) 「その身体でか?」
(ii-@"∀@) 「そのために君といた」
「俺はいらないんじゃなかったか?」
そう鼻で笑うと、喉の奥から鉄の味がした。
口内からは出さず、それを舌で押し返す。
そもそも何年前から同じことを言っているのかと、少し歳上の風水師は重く息を吐いた。
二人がバルケンを討ったのはアサピーの息子よりも若い年の頃…
サクラのみならず、色とりどりの花々が咲き乱れる季節だったはずだ。
-
(ii-@"∀@) 「だが、何十年も共にいて、どうやら信用しきれなかったんだなあ……」
人は死に近付くにつれ猜疑心が増長する。
鈍くなった脳神経の伝達を補うための防衛本能の一種であるとすれば、やはり死は孤独への一歩を着実に踏み出させるのだろう。
アサピーの場合はここ数年で特にそれが顕著になったものだと、屋形の誰もが感じている。
実の息子ですら彼の傀儡でしかない。
(;/;`"ハ´) 「この期に及んでまだ諦められないのか?」
…にも拘わらず。
それまでの功績と、まったく破綻したわけではない人格などから彼に強く進言できる者はいなかった。
したところで、シナーの言葉にも頭越しに否定的な場面がよくみられたのだから、それも当然と言える。
(ii-@"∀@) 「なら君は…諦めたからニダーを生かしたのか?」
(;/; "ハ ) 「………」
アサピーがシナーを信用しきれなかったのは、こさえた子を悉く死に追いやっていたからに他ならない。
厳しさを履き違えた戦士は加減を知らず、また愛の与えかたもわからないまま子に接していただけ。
それは人としてどこか欠落していたのではないかと、アサピーはシナーを評価していた。
彼もまた、真意を隠す人々と同じだった。
-
これ以上言えば余計に自分が意固地になることが分かって、シナーも口をつぐむ。
もっと早く、お互い提言しておけば良かったのかもしれない。
……もはやその年月は経ち過ぎた。
麒麟も老いれば駄馬に劣るる ──。
自然の摂理に逆らったがために、アサピーも、シナーも、どこかで引き際を誤ってしまった気がしてならない。
時計は朽ちる準備を始めている。
次に取り付けるための新しい時計が、同じように動いてくれる保障はないのだ。
(ii-@"∀@) 「ウォール高原を治める領主が世代交代したのは…いつか君に言ったか?」
こんな風に、アサピーとの会話は常に政り事を軸としていた気がする。
もっと人として、子をもつ親として、彼と語り合えることがあったのではないだろうか。
-
(;/;`"ハ´) 「…数年前、一度顔合わせにきたことがあったな」
(ii-@"∀@) 「そう。
見た目以上に血気盛んな若者だ。
あれ以来、視察の名目で少しずつこちらの領地を削りに来ている」
(ii-@"∀@) 「…息子の役目ではないのだ……矢面に立つのは私でなければならない」
(;/;`"ハ´) 「だからといって、ワカッテマスを利用したつもりだったか?」
対する返事はない…だが、そうなのだろう。
いつからかアサピーの中では手段と目的が刷り変わってしまうほど、欲望を越えた渇望に抗えなくなっていた。
(ii-@"∀@) 「シナー、私は」
(ii-@"∀@) 「…まだ生きたいんだ。 どんな手を使ってもね」
(;/;`"ハ´) 「…」
(ii-@"д@) 「── げほっげほっ」
(;/;`"ハ´) 「…己の身体を労われない奴が言って良いセリフではないな。
……もう、俺も同じだろうが」
('A`) 「あーだめだ待てねえ」
-
シナーとアサピーが意識したとき、
いつしかポイズンは立ち上がっていた。
老いぼれ二人の時世の句…
それを求めたのはシナーであり、アサピーも薄々は気が付いていたのかもしれない。
生きたくとも、生きられない者がいる。
どれだけ求めても手に入らない物が、この世には絶対的に存在することも。
(ii-@"∀@) 「ワカッテマスを引き入れた時点で、お前が此処に来ることも運命として決まっていたのだろうか?」
('A`)「どーだろうなあ〜」
(;/;`"ハ´) 「まったく……最後の最後で余計なことをしたものだ。
アサピー、奴の次はお前アルよ」
彼らも立ち上がり、そして対峙する。
誰一人として思想や目的は一致していない。
だが…生きるために。
('A`)「せいぜい育んだ友情にすがりな」
それでも……生きるために ──
-
なんてな、ふひひ。
-
(推奨BGM:A Return, Indeed... (Vocal Version)
http://www.youtube.com/watch?v=p77DfHa2Ndo&sns=em
-
----------
ドタドタと…長い廊下のどこにいても響くほどの足音が3つ、広間へと近付いてくた。
広間を隔てる布の幕が盛大にめくられる。
<ヽ;`∀´> 「御しっ ──
<ヽ;゚∀゚> ──!!」
-
その肩に、めくられた幕の一部がパサリと降りかけられた。
ニダーの身体はそこで一切の活動を停止する。
足も、手も、胸の鼓動も、開いた口も…
視線すら硬直し、その身を伝う涙だけが一筋こぼれ落ちるのを見たものは居ない。
ハハ ロ -ロ)ハ 「ニダーさ…ッ」
ホークアイ破壊と荷物輸送を任された女も息を呑む。
ニダーの後ろから声をかけた彼女の鼻孔をくすぐったのは…腐臭。
それは彼女が生業上で嗅ぎ馴れた血の臭いよりも更によく知る、内臓や消化気管を傷付けた際に発される臭気と同じだった。
⊂ハハ ;ロ -ロ)ハ 「……そこデお待ちクダサイ」
ハローが "背後" に制止の声をかけ、歩を進めた。
努めて冷静に状況を把握しようとするも、その惨劇が覆らないことは明白に過ぎる。
-
<ヽ;∀;> 「……ぁ…ぉ、あ……」
がっくりと膝をつく若人…。
横たわる二体の首なし死体。
ハハ ;ロ -ロ)ハ 「…」
むせ返る血生臭さよりも、その場を支配するニダーの嗚咽だけがハローの頭のなかを延々と巡りめぐった。
一通り死体をまさぐってみたものの、やはりシナーとアサピーの身体的特徴に相違ない。
忍である彼女の今の雇い主はシナーであったため、こうなってしまっては任務終了の旨を報告すべく忍の里まで戻らねばならない。
「きつね、もう入っていいかい?」
広間の前…荷物から声が上がった。
── その声は若き日の
アサピーによく似ている ──
少しだけ悩みながらニダーを見るも、現実に打ちのめされた者から返事を得られないため、ハローは独断で肯定しておいた。
……隠し様など無いのだから、そうするしかなかっただけなのだが。
-
( ・∀・) 「…」
ハハ ロ -ロ)ハ 「モララー様、オ気を確かに」
入室した三人目…ハローが輸送してきた荷物とはアサピーの息子を指した。
彼はもはや肉塊と化した父の姿をただ呆然と眺める。
( ・∀・) 「いや、僕は平気だよ」
シナーの指示通りホークアイの破壊に向かったハロー…それは領地内に張り巡らされたものも含まれていた。
父からは屋形を与えられず、言われた通りに周辺地域の村々を転々とするだけの傀儡。
それがアサピーからの、息子への評価…。
( - ∀ - )
( ・∀・) 「…公務の引き継ぎを行う。
すまないけれど、里に帰る前に一仕事頼まれてくれないかな?」
ハハ ロ -ロ)ハ 「わかりマシタ」
だがそれはホークアイの "誤った映像" により植え付けられた、不当な評価を多分に含めたものだ。
本来、モララーは父に似た才覚をもつことを…アサピーの胸には届くことがないままだった。
<ヽ;∀;> 「うぅぅぅ〜………」
( ・∀・) 「ニダー」
-
少しだけ歳上のモララーの手のひらが、がっしりとした風水師の肩に乗せられる。
( ・∀・) 「これが父と、シナーさんの末路であるならば、まずは甘んじて受け止めよう」
<ヽ;∀;> 「…ぅ……」
( ・∀・) 「これから忙しくなる。
領地内の統括も、ウォール高原の領主との駆け引きも、きっと僕だけじゃ無理だ」
バルケンの背中をみて育ったアサピーは
父のように決してなるまいと誓い、
自らの手を汚してまで名君を目指した。
( ・∀・) 「だから……君の力を貸してくれないか?」
( ・∀・) 「シナーさんが、僕の父に尽力してくれたように」
アサピーの背中をみて育ったモララーは
父のように名君たれと憧れ、
自らの手をこれから汚していくのだろうか。
<ヽ;∀;> 「……」
<ヽう∀;> グイッ
( ・∀・) 「そして、いつか二人でこの仇を討とう。
たとえ父の最後が誉められたものではなかったとしても、僕の誇りは父であり、君の誇りはシナーさんだった」
<ヽう∀´> 「…そう、ニダね」
ハハ ロ -ロ)ハ 「…」
<ヽ゚∀゚> 「ドク……赦さないニダ」
-
----------
── 刻は一週間後。
街道のない路をひたすら歩き続け、
彼はいま高原の丘を登っていく。
('A`)「〜♪」
上機嫌な様子で振り回すその手には、
何重にも巻く布に納められた首が二つ。
('A`)「…ひひ!」
月明かりの下、 ──彼は独り。
('A`)「………」
── 草木茂る丘の上で、独り。
('A`)「… 〜〜♪」
── 鼻唄の音だけが、哀しそうに。
('∀`)「〜♪」
── ポイズンだけが、嬉しそうに笑う。
-
《…寄せては返す波》
('A`)「…〜♪」
《…必ず訪れる朝と夜》
('A`)「……あんだっけか…?」
('A`)「〜…♪」
《…貴方の優しさで
頬がぬくもりに満たされても》
('A`)「…ぷっ」
('A`)「〜〜…〜〜♪」
《…幸せな時の中で震えている》
('A`)「…」
《それでもいつかはきっと… ──》
('A`)「… ──ひひ、」
('∀`)「 ふひ、ひひひひひ…!」
-
「…いつか、なんて
来やしねえよ」
-
-
夜が明けて…。
ウォール高原を治める領主の元には
二つの御首級が届けられた。
差出人は名乗らず、
特に領主への面会も求めなかった。
ただ一言、
『ここに瞳孔の大きな男が来ただろう?』
と質問をして、その姿を消したという。
問われた兵士は述懐する。
守秘義務により回答は差し控えたものの、
その男の眼光の前では
表情まで偽ることは出来なかった、と。
-
かつて山人と呼ばれた男は孤独を探す。
孤独でなければ戦えない男。
誰かを誰を 誰のため誰が 誰に向け
護る、庇う、救う、 赦す、求める?
莫迦莫迦しい。 ──五月蝿い。
そんなものは家畜の餌にも成りはしない。
《山人、どこや?》
-
('A`)y-~
「逃がさねえよ……ふっひひ」
A`)y-~
「ワカッテマスの野郎が目をつけるなら、恐らくは」
)σ ⌒ 、 ピンッ
不死者の行く先、争いの跡在りて──
-
《なあ山人》
それでもいつかはきっと
闇に光が生まれ
《うたうとぅてくれ》
悲しみのなかにきっと
微笑みが生まれるはず
《そう、それや》
それでもどこかできっと
闇に心が生まれ
悲しみのなかに必ず
《くすす、下手やなぁ》
本当が生まれるはず
あなたはいつか帰ってくるから…
《山人、たのむ》
あなたはいつか
帰ってくるから…
《山人とまた…遊びたいなあ》
(了)
-
これで今回の投下を終わります
投下中の支援ありがとうございました
(´・ω・`)ω・´): 傷痕留蟲アサウルス >>6
('A`) :東方不死 >>170
-
--------------------------------------------------
※千年の夢 年表※
--------------------------------------------------
-900年 ***********
→信仰の概念がうまれる
( ∵)は偶像生命体として同時に生誕。
-400年 ***********
→結婚(結魂)制度のはじまり
-350年 ***********
【ふたごじま】→魔導力の蔓延
-312年 ***********
【銷魂流虫アサウルス】→前半
→ "隕鉄" が世界に初めて存在しはじめる
【東方不死】→山人の夢 ☆was added!
→('A`) がアサウルスと相討ち ☆was added!
-220年 ***********
【銷魂流虫アサウルス】→後半
【傷痕留蟲アサウルス】
→騎兵槍と黒い槍が融合
→('A`) がアサウルスから解放 ☆was added!
-210年 ***********
→大陸内戦争勃発。
【帰ってきてね】→前半
-200年 ***********
【帰ってきてね】→後半
【死して屍拾うもの】
→ "赤い森の惨劇"
-195年 ***********
→大陸内戦争終了。
【はじめてのデザート】
-190年 ***********
【その価値を決めるのは貴方】
-180年 ***********
【老女の願い】→復興活動スタート
-
-150年 ***********
【老女の願い】→荒れ地に集落が出来る
→川 ゚ -゚) が二代目( ´∀`)に指輪依頼
-140年 ***********
【老女の願い】→老女は間もなく死亡
→指輪の暴走。 川 ゚ -゚) が湖に封印。
-130年 ***********
【人形達のパレード】
【此処路にある】
→(´・ω・`)( ゚∀゚)川 ゚ -゚) の三人が集結
→二代目( ´∀`)死亡時期
→偽りの湖から( <●><●>)が引き揚げられる ☆was added!
-120年代 ***********
【命の矛盾】
【東方不死】 ☆was added!
-100年代 ***********
【繋がれた自由】
【遺されたもの】
【時の放浪者】
-40年代 ***********
【老女の願い】→集落→町になる
00年代 ***********
【老女の願い】→( ^ω^)が
官僚プギャー、炭鉱夫ギコに再会
-
★作中MAP更新
大陸戦争前
http://imefix.info/20141016/91070/rare.jpeg
大陸戦争後
http://imefix.info/20141016/91071/rare.jpeg
※あくまで大陸戦争が大きな区切りであるため、戦前・戦後の名称は便宜上の分け方です
9番のように厳密に言えば一部そぐわないものもあります
-
乙
-
相変わらずの濃密な内容乙でした。
-
平日始めにも関わらず読レスありがとうございます
前回のように文字化けがあればご報告ください
以降から特殊コードor代理文字使用にて対処します
-
乙
ワカッテマス許すまじ
そういえばドクオ初登場時も唄歌ってたんだっけか…?
なんかドクオのキャラにどっぷりはまっていく
-
やっと読み終えた。大量投下乙
ワカッテマスは土塊が本物に成り代わったって認識でいいのかな
そういえばドクは最初鼻唄って呼ばれてたし、ずっとそれを歌ってたのか
-
きつねにも2代目がいたけどヒートは生きてるのかな
おつ
-
ありゃごめん
ドクオがアサウルスと相討ちってどこだっけ?
-
多分だが
最初に山人の夢で黒い太陽の大きな虫(アサウルス)と戦って、
>>121でハインが
先に東でアサウルスを処理したけどそのザマって言ってドクが助けられたから、そこが相打ちと解放の時期だと思う
つーか安価探していますげえことに気が付いた
ハインとアサピーが同じ目してる
-
前の話を読み直すとまた新しい発見があったりするからついつい何度も見返しちゃうな
-
>>318
そうですね、湖の【ドレイン】によって赤い森の一族の儀式をここで済ませる→生命の循環によって土塊が土塊でなくなった…
という流れです
あくまで元は本体の右腕から【カース(呪い)】で製造した土塊なので、その魂に和香やジョルジュ(慈夜)のような善い成分はほぼ存在しません
>>319
年齢に換算するとノパ⊿゚) はこの時120歳ほどになります
生死はさておき、ハハ ロ -ロ)ハ には頭領の証(数珠)が渡されていません
>>320
おおむね>>321さんの回答で相違ありません
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120歳のヒート想像してワロタ
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今年中の投下は良くてあと一度できるかどうか、になりそうです
その時にはまたよろしくお願いします
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楽しみに待ってるぜ!
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了解。待ってるぞい。
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待ってる
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( ^ω^)千年の夢のようです
- 白い壁 黒い隔たり -
(推奨BGM:Ruins of the East)
http://www.youtube.com/watch?v=v9PRpIezoUY&sns=em
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「さあ、歩きなさい。 罪には罰が与えられるのが決まりだ」
首から頭の先まですっぽりと覆う布兜。
他と異なる特徴的な格好の男が、二回り以上も細い腕を引っ張っていた。
ヽ/ ゚、。 / 「……?」
膝をつき、布兜の男へと懇願する母親を見て、
何が起こっているのか分からないという表情をした子供。
自分の足は動いていないのに景色だけが少しずつ傾いていく、そんなことのほうが興味深いように。
「フィレンクトさん、お願い、やめてください!
その子が居なくなったら私はどうすればいいんですか!」
母親は怒りを露にし、もはや泣き叫ばん勢いで男に掴みかかる。
…だがフィレンクトと呼ばれた布兜の男は動じることなく、母親に捕まれた別の腕を強く振り払って言った。
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「…両親も、法を守って貴女という一人娘を大切に育てたんじゃあないのか?
それを貴女は、貴女だけの都合で、規則を破り、国を想わず…
あまつさえ己の親をも冒涜するのか?」
── この国は訪れることのない充足感と常に戦っていた。
領地は広く、人口も多い。 …だがいくら作物を植えても豊作の年を迎えた事はない。
土壌や気候に問題があるわけでは無かった。
豊かなその高原地域は、人の過ごしやすい恵まれた大地と呼ぶに、一見して相応しい。
隣接する砂漠とは比べるべくもない。
「こ、子供がお腹にいると知った時、そそ…それを、殺せというの?!」
ただ不思議と…一定量を超える農作物は収穫できない。 不作の時期はあれど、豊作を迎えた史実がこの国には無かった。
他国との物品流通もどういうわけか滞り、資源が国内に溢れることはない。
月日を経て、それに逆らうように人口だけが増え続けた。
人はやがて個々の裕福さを願うようになる。
不足なく家族を養える豊かな生活にしたければ、他の土地へと移住するか、口減らしでもしなければその願いも成立しない。
それなのに──
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「……子作りをしなければ良かった。
一つの家庭において子は一人のみ。
昔からそう定められているにもかかわらず、産んだのは貴女の責任だ」
「違うわ! 避妊もした!
それでも子供は望んで私の元に産まれてくれたんです!」
フィレンクトはわずかな沈黙の後、言う。
「刑法20番列9記に基づき、ここに罪状を言い渡す」
「フィレンクトさんっ!」
「《罪人は二人目を産んだ時点で一人目の子を事実上破棄したと見なし、国家はそれを回収する。》
《これに従い、回収された子は国の恩情により、破棄まで一週間の猶予が与えられる。
面会は自由。
ただし、回収した子への物品受け渡しについては公務員監視のもと、許可されれば通すことができる。》
……以上」
国は対策として、育てられる子の数に制限を設けた。
…二人以上産めば罰せられる。
それに加え、〈汝の国を愛せ〉と叫ぶパトリオティズム。
その糾合のもと、一度でも居住を構えた人々は国から出ることを禁じられていた。
さもなくば、これも罰せられる。
二度と国に足を運びいれることは必ず、見つかり次第拘束されるだろう。
ウォール高原に領地を構えるのは、そんな国だった。
( ^ω^)「…」
とある安宿場の窓辺。
ブーンは嫌でも見聞きできる広場で繰り広げられるやり取りを、物憂げに眺めているところだ……。
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ブーンが街にたどり着いたのは昨日のこと。
見渡す限りの草原を有した丘と、街を仕切るようぐるりと囲む白い壁が、もうすぐ終わりを告げる晴れた秋空によく映えた。
壁の背丈はブーンが見上げても首が痛くなる程に高い。
それにひきかえ、まるで猫が入るためとでも揶揄できそうな…
だが単体で見ればそれでも巨大な門扉を正面にして、入国を求める人々が集っていた。
「おやあんたはあの時の…もうオアシスから戻ってきたんですか?」
声がする方にブーンは振り返り──それが自身に向けられたものではないことを知る。
「ええ、売り物が無くなっちまったんでね。
なにせ運べる量はどうしたって限られてるでしょう?
そもそもの供給が足りなきゃ親父の代にあった荷を運ぶ車も、今じゃお役御免です」
「ハハッ違いない! おっとと、すみません」
商人同士の語らい。
ブーンを挟んで行われるも、頭ひとつ飛び抜ける彼の視線に気付いたことで間もなく止んだ。
「では、またあとで」
仲間に別れを告げると、商人はこちらにも愛想を振り撒いた。
咎めるつもりは毛頭無かったが、余計な気を遣わせてしまっただろうか。
ブーンも軽く手を挙げ会釈をしつつ、ゆるく笑おうとして……しかし表情筋がうまく動かなかった。
-
銅鑼を鳴らす門番の合図音。
次いで大袈裟にカタカタ音をたて扉がせり上がる。
…しかしまだ誰も動かない。
ブーンが訝しく眉を細めた頃、二度目の合図が鳴った。
ようやく群れをなしていた待ち人達が歩き出す。
規律があったのだろう、ブーンも群れの一粒としてそれに倣った。
( ^ω^)「…おっ」
城壁とも見間違う白い壁の向こう側は、まばらに古家が建ち並んでいただけの荒れ地だった。
土はかたく、草もない。 だから路もない。
群れの大多数はそれに気を留めるでもなく散っていき、背後では門扉の閉まる音がゴリゴリと響いた。
「……前にも増して、がらんどうになったもんだ。
この国もそろそろ……──」
群れからはぐれた老人が隣で呟いた言葉。
ブーンには見えない郷愁の景色が重ね映し出されているのだろうか。
「お前さんは余所者だろう? こんな街に何か用かね」
( ^ω^)「…捜しものに」
「そうかい。 そろそろ陽も暮れる。
ここを左手沿いに歩けば、安くて、そのくせまだ使い込まれてないベッドの旅宿にありつけるよ」
向かい合わせた表情はどこか空虚に、老人はそのままどこかへ行ってしまった。
何を言いたいわけでもなかったらしい。
老人にとって話し掛ける相手は誰でもよく、それでも共有せずにはいられない言葉は淋しさの表れなのかもしれない。
-
それと思わしき宿が見えてくると、歩みが自然と遅くなる。
晴天空に泳ぐ雲が同じスピードで離れていく。
もしかすると夜には一雨来るかもしれない…と、ブーンはどことなく思い、視線を戻した。
なるほどたしかに安い宿だ。
屋根の一部は崩れたまま。
壁を白く染める塗装は剥がれ、灰色を暗く際立たせた。
窓から見える部屋の具合からは客が入っている様子もない。
つい先ほど交わした会話を思い出すに、使い込まれてないベッドとはジョークのつもりだったのか。
…とはいえなんら構うことなく、ブーンは入り口の扉へと近付いた。
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磨かれ清潔感を保つ両開きの扉には、
来客を告げる役目であろう、素材そのものの古さを塗り潰すかのような黄色のベル。
目を凝らすとどこか規則性のある凸凹のついたドアには、
可愛らしいピンク色のペンキでメッセージが書き込まれていた。
[☆Welcome Back! Dear Brother☆
(おかえりなさい、お兄様)
☆You Are Welcome! My Loving Family☆]
(私の大切な家族ですもの、また来てね)
もう少し顔を上げると目に飛び込む宿看板。
店名は──
( ^ω^)「[pO・Od]……なんて読むんだお?」
暗号か? 発音に困って動きを止めた時、宿の向かいに建つ小さな医院から声がした。
高く小さな声、揺らぐ静かな声、
そして…ハキハキとしつつも、しゃがれ声。
「せんせー! ありがとー!」
「本当にお世話になりました。
他のお医者さんには診てもらうことすらできなかったのに…なんとお礼をいったら良いか」
「いいんです、それが私の仕事なんですから。
お子さんに何かあればいつでも来てください。 夜中でも、朝一番でも」
一組の親子が手を振りながら医院を後にしていた。
微笑ましく見ていると、しばしの間をおいて、白衣の老人がその姿を見送るように顔を出す。
その視線は…横に歩く親子ではなく、正面からブーンを捉え、
「…どうしたんです? 貴方もなにかお困りですか?」
-
ブーンが辺りを見回しても人影は他にない。
先ほど出てきた親子も、別の古家の向こうへと行ってしまった。
( ^ω^)「いや、僕は……」
「患者ではない」 ──そう答えようとして、言葉は紡がなかった。
あれからどれほどの時を過ごしたか。
あれからどれほどの出来事に気を囚われていただろうか。
あの日、確かに彼は言っていた。
ブーンもツンも、そのために時間を共にした。
あの迷い道で。
あの瓦礫にまみれた渇き路で。
『うん! 高原が近いかもしれません!』
息子の面影を彼に重ねた、辛くも心地よき、デザートコースでの記憶。
(,, ><)「いいんですよ。 どんなことでも話くらいなら聞けるんですから。
さあ、どうぞこちらへ」
ブーンの視界のなか…開け放たれた扉を背に、彼は奥へと引っ込んでいく。
しゃりしゃりとスリッパの音が耳に届いた気がした。
誘われたブーンは空を見上げ、そしてその足先を医院へと向ける。
……勘は外れていたのだろうか?
いつの間にか、
雲ひとつない空っぽの晴天。
-
(,, ><)
つ□ 「すみません、お茶を切らしているので白湯ですが」
長居するつもりはないから、と
断りをいれながらも礼を述べ、湯呑みを受け取った。
その際に少しだけ触れた指と指から年月の刻みを感じつつ、記憶の面影を残した老医師を観察する。
(,, ><)「いやあちょうどお昼時ですね。
もうご飯は食べたんですか?」
事務テーブルの上…
老医師は探るように腕を泳がせ、やがて小さな包みを手を取ると膝元に寄せる。
可愛らしい黄色いハンカチ。
結び目をほどくとその中から握り飯がふたつ。
年老いているとはいえ、目の前の医師が食すにしては少なすぎる量だ。
( ^ω^)「…お弁当、可愛らしい包み布は奥さんかご家族の趣味かお?」
(,, ><)「いえいえ! 私は独身です。
家族ももういません。
これは先の患者さんが差し入れてくれたんです」
( ^ω^)「……」
(,, ><)「そうですか、可愛らしいですか…では、お返しする時そう伝えなくては」
-
握り飯を何度か掴み直し、彼は口に運ぶ。
ブーンなら一口で含んでしまいそうなそれを、少しずつ、少しずつ、味わうように噛み締めている。
(,,*><)「うんめー! 胡麻塩が丁寧にまんべんなく効いていて、疲れが吹っ飛びますね」
( ^ω^)「おー、それは良かったですお」
(,, ><)「……あっ、すみません…年甲斐もなく興奮して」
「お金よりもなによりも、気持ちを込めたこういうものが一番嬉しいんです」
と彼は言った。
ブーンは笑みを浮かべて頷いたが、反射行動にすぎない。
-
時間をかけて握り飯を食べ終わると、彼は手のひらとひらを
パンっパンっ
とはたき、白衣に米粒がついていないかを確かめるように手探る。
…膝元にポロポロと散らばる胡麻には気付かない。
( ^ω^)「まだ取れてないお」
(,, ><)「あれっ? そうですか」
ブーンはそれをはたこうと腰をあげかけ──やめた。
目の前の彼は子供でもあるまいに、言葉で伝わるのだから充分だと考え直した。
(,, ;><)「恥ずかしいです、この歳になっても食べ物をこぼしてしまって…」
(,, ><)「察するところ旅の途中ですか?
もし寝床がまだなら、隣の宿で部屋を用意させますよ」
( ^ω^)「おっ、貴方の宿でしたかお?
ちょうど行こうと思ってたんだお」
さっきまで身ぶり手振り動かしていたその身を、老医師は一瞬だけこわばらせる。
-
(,, ><)「んー私のというか、妹が作って建てたんです。 若い頃にね。
……10年前の流行り病で亡くなってからは私が経営してますが」
(,, ><)「なにぶん医療と二足のわらじ。
なかなか手入れも行き届かないところはありますが、ベッドだけは毎日綺麗にしてます」
(,, ><)「あたたかく柔らかいベッドは、私達兄妹の幼い頃からの夢だったんです」
医師は気まずそうに…
同時に照れるように頭をかき、言った。
( ^ω^)「……そう、かお」
( ^ω^)「なら宿の部屋をひとつ借りるお。
よろしく頼んでいいかお?」
(,, ><)「もちろんです、改めて自己紹介させてください。
私はビロード…この街で医療行為を行っているしがない鍼師です」
(,, ><)つ‡ 「受付にこれを渡してもらえればいいですよ、部屋の鍵です。
数十分後にはのんびりできるようにしますから」
( ^ω^)つ‡ 「ありがとうだお」
(,, ><)「良い夢を」
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-
そして翌日、窓ガラスの向こう側……
広場ではいままさに幼子が布兜の男に手錠を掛けられ、連行されていく。
ブーンにとってなかなか見逃し難い場面に遭遇しているはずだった。
だが──
( ^ω^)「…一週間の猶予」
胸中に制止の声をかける。
ツンがここに居れば、
今にも飛び出していきくのではないか…そんな風に考えつつも、窓に背を向ける。
見知らぬ街で無闇に暴れる訳にはいかなかった。
人々が住む土地には、その住人によって培われたルールが存在する。
個人の倫理的にはどんな悪法であっても、全体を通せば利に適うものもある。
その場に残され咽び泣く母親の腕のなか、
幼子に買い与えたとおぼしき、動物のぬいぐるみが寂しげに抱かれていた。
(▼・ェ・)
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「…さあ、こっちだ」。
等身の高い場所から発される、警官フィレンクトの低い声。
ヾ/ ゚、。/ 「……ママは?」
警官とは国の公務員。
治安を維持する役目をもつ尖兵。
定められた法を犯す者を見逃さないこと…それが彼の役目だ。
それを示すはずの声色は、しかし、どこか揺らぎを感じさせた。
「いま行くのは…君だけだ」
なにかを噛み締めるようなフィレンクトの返答。
──ウォール高原。
ここでは情よりも、常人と罪人を隔てる法が優先される。
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公共の場で他者に迷惑をかけた者
…禁固1年。
他者の所有物を盗んだ者
…禁固2年。
他者に危害や暴行を加えた者
…禁固5年。
他者の命を奪った者
…禁固10年。
罪人を庇う者
…禁固15年。
そして多重育児は
…財産刑。
職務を放棄した公務員は
…生命刑。
── どちらも死刑。
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