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( ^ω^)達はアインクラッドを生きるようです。

1 ◆dKWWLKB7io:2013/10/28(月) 22:13:10 ID:6CCOWjXw0

どーも作者です。

新しく作らせてもらいました。
設定だけ作っておいて最初の二話で終わる予定だったこの話がこれだけ続くことになろうとは。

半分くらいは終わっている予定なので、もう少しお付き合いいただければ幸いです。


話の投下の前に、各人の見た目データと大まかな設定を載せておきます。


この話は
川原礫著
『ソードアート・オンライン』シリーズのアインクラッド編を基に書かせていただいています。
基本的に設定を順守しているつもりですが、拡大解釈とまだ書かれていない設定に関しては想像で書いているので、その旨ご容赦の上、お楽しみいただけますようお願い申し上げます。


まとめ

ブーン芸VIP様
http://boonsoldier.web.fc2.com/

大変お世話になっております。

.

745 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:35:18 ID:Am.mXpzk0

(JB)「……よくもやってくれたね」

(XX)「二人がかりの 奇襲とは いえ 俺達を だしぬいた」

自分達の後ろに悠然と構えているPoHを感じつつ、
余裕を持ったふりをしながら武器を構える。

その前にブーンの威嚇で簡単に動いてしまっていた四人が立つ。

(XX)「邪魔。退け」

しかしすぐに髑髏マスクの男が左右に追い払った。

情報よりも強くしたたかだった同じ顔の二人。
情報以上に強いと思われる追加の二人。
確実に殺すためには、快楽を得るためには四人は邪魔だと考えていた。

もう一人、黒マスクの男は同じことを思いつつも、違うことに考えを向けていた。

(JB)「まだ、いるよね」

先に集めた情報から、突進してきた男が素早いことは理解している。
そしてもう一人の黒ずくめの男が、戦闘では飛びぬけている事も分かっている。
だが、もう一つのピースが、欠けていた。

(  )

それに他にも仲間はこの場にくるだろうと思い口にした言葉だったが、
それを聞いた、自分が崇拝する、
心酔していると言ってもよい男が、
笑ったように感じた。

(JB)?

その真意がつかめず、
振り返りたいが目の前の標的から目を離すことも出来ず、
ただ武器を構える黒マスクの男。

しかしその対峙は長く続かなかった。

醜態を見せてしまった四人が、
耐え切れずに剣を振り上げて突進した。

.

746 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:39:24 ID:Am.mXpzk0

(;^ω^)!

('A`;)!

(;´_ゝ`)!

(´<_`;)!

それはブーン達四人にとっても意外な行動であり、
反射的に武器を向ける。

(XX)

(JB)

そしてそれは骸骨と黒マスクの二人にとっては好機。
自分が彼らの意識から外れたのが分かった二人は、
武器を構えて一歩踏み出そうとした。

しかしそれは出来なかった。

いつの間にか視界の隅に映る右手。
それは自分達の支配者の手。
その手は自分達が動くことを望んでいないことが、
今までの経験から分かったから。

(XX)!

(JB)!

そして目の前に起きた出来事に、驚きを隠せなくなる。

獲物であるブーン達に向かって襲い掛かった四人の手下が突然倒れたのだ。

視線だけで状況を確認する骸骨と黒マスクの男。
その目には、四人の首に刺ささるナイフが映った。

.

747 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:40:26 ID:Am.mXpzk0

麻痺属性の毒を付加させてあったようで、
四人の黄色に変わったHPバーの上には黄色い稲妻のようなマークが点滅している。

獲物であるはずの四人は再び自分達に向かって武器を向けている。
前の二人が苦しそうな顔をしているように見えた。

(XX)「………何が 起きた」

(JB)「投擲?」

情報で読んだ投擲使いの存在。
今ここにに欠けていたそれを思い出し、黒マスクが呟く。

(´・ω・`)「これ以上、戦う意味は無いと思うけど。
今ならだれも死なないで済む」

四人の後ろから、頭の上に浮かぶカーソルをオレンジにしたショボンが現れた。

( ^ω^)「」

('A`)「」

( ´_ゝ`)「」

(´<_`;)「」

(´・ω・`)「僕達は、ここにいる誰一人として死ぬことは望まない」

そのまま仲間達の前に立つショボン。
倒れた四人を気にすることも無く、前にいる三人、
いや、フードの男をじっと見る。

再びフードの男が笑った気がした。

(JB)「ヘッド?」

(XX)?

フードと男がウインドウを出すが、数度操作をするとすぐに消し、踵を返す。

.

748 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:41:53 ID:Am.mXpzk0

(JB)「ヘッド!?」

(XX)「殺らないのか!?」

立ち去ろうとするフードの男を追いかけるように振り返る二人。

その視線の先で男は立ち止まり、右手の親指だけを折り、指を振った。
指先は、地面に向けて。

(XX)「…チッ」

(JB)「分かった」

三人が視線を外したその数瞬の間に、ショボンの指示により四人は後ずさっていた。
しかし、ショボンはその位置を動かない。

再び振り返る髑髏と黒マスクの男。
その手の武器が、あやしく光ったような気がした。

(´・ω・`)「………」

髑髏の男がまず動く。

(;^ω^)「ショ!」

しかし髑髏の男の武器は地に倒れた仲間の身体を貫いた。

「!!!!」

麻痺状態は、意識がなくなるわけではない。
自分の身に何が起きたのかを認識し、
視界の隅の自分のヒットポイントバーの光が減るさまをただ見つめる。

一人の男が、薄いガラスが砕ける様な音と共にポリゴンと化した。

(´<_`;)「な!なにを!」

(;^ω^)「仲間を!?」

ショボンの周りを髑髏の男が更に走り、剣で地に倒れた男たちを切り刻む。

(´・ω・`)「……こいつらに、そんな意識があるもんか」

.

749 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:43:33 ID:Am.mXpzk0

聞こえないほど小さな声で呟いたショボン。

そしてその言葉通りに、髑髏の男が三人を、黒マスクの男が一人をポリゴンと変えた。

( ´_ゝ`)「…………」

('A`)

(´<_`;)「……」

(#^ω^)「ひどいお…」

一歩踏み出そうとするブーンを止めるドクオと兄者の手。
怒りに我を忘れそうになったその思考を、ギリギリのところで踏み止まらせた。

('A`)「落ち着け」

( ´_ゝ`)「あいつの覚悟を無駄にするな」

拳を握る二人の震える手。
ブーンの前にはいつの間にか弟者が立ち、その手の斧は大地を突き刺していた。

(´<_`#)

震える肩が、その思いを物語るようだ

( ^ω^)「みんな…」

(XX)「…チッ」

(JB)「よく訓練されてる。六人も殺れるかと思ったのにな」

動かない五人をつまらなそうに一瞥してから後ろを向く二人。
そしてまるで散歩をするかのような軽い足取りで去って行った。

.

750 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:45:07 ID:Am.mXpzk0

(´・ω・`)

('A`)

( ´_ゝ`)

(´<_`#)

(#^ω^)

黙ってその後ろ姿を見送っていた五人。
そして三人の姿が消え、頭上のカーソルも消えた。

すると茂みからクーが現れた。

川 ゚ -゚)「みんな、…大丈夫か?」

(´・ω・`)「うん。大丈夫だよ」

クーにしては珍しく。
といっても彼女をよく知っていなければわからない程度だが、
どこか怯えた様に声をかける。
それにショボンが返すと、四人の緊張も少しだけ緩くなった。

('A`)「クーが来てたんだな」

川 ゚ -゚)「ああ。ツンが追いかけようとしたがショボンが止めた。
それで私が来た。ツンはジョルジュ達と少し前の安全エリアにいるはずだ。
……来なくて正解だった。
ツンならあの瞬間飛び出していただろう」

武器を持たない左手で、自分の身体を抱くようなしぐさを見せるクー。
少し震えていた。

ここにいる六人は、見たことが無かったわけではない。

人が、ポリゴンに変わる瞬間を。

けれどそれはモンスターとの戦闘でのことで、
今見たような人同士の殺し合い、いや、虐殺ではなかった。

.

751 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:46:06 ID:Am.mXpzk0

クーが飛び出さなかったのはツンより正義感が劣るわけではない。
ただその瞬間を見た衝撃により、身体の前に心が凍ってしまっただけだった。

そして、彼女よりはショボンの背中を長く見ていたからだった。

川 ゚ -゚)「大丈夫か?ショボン」

(´・ω・`)「僕は、大丈夫」

いつもと変わらないその表情に、逆に違和感を感じつつ、口を開くのを止めてただ頷いた。

四人もそのやり取りを見て、自分の心を落ち着かせようとする。

(´・ω・`)「とりあえずみんなと合流しよう。
はぐれないように気を付けて進むよ。
ブーン、ドクオ、先頭を宜しく。
クーはその後ろで地図を開いて道案内を。待ってる皆には僕が連絡を入れておくよ。
続いて兄者と弟者。
しんがりは僕が務めるよ。
ドクオ、ブーン、あとでアライアンス回復用のクエスト、手伝って」

ショボンに頼まれ、ドクオとブーンが快諾する。
兄者と弟者もやると言い出し、
当たり前の様にクーがこの後の予定に自分を含めて組み込んだ。

いつも通りのショボンに安心しつつ、言われた通りの陣形で進み始める五人。

一歩遅れて歩き始めたショボンは、ツン達にメッセージを送りながら、
ついさっき届いたメッセージに目を通した。




.

752 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:48:17 ID:Am.mXpzk0




二日後。
深夜。

真夜中でも、プレイヤーがいなくはならない。

同じ場所でも時間の経過で現れるモンスターが変わるため狩りに出るプレイヤーは多く、
またそのプレイヤー目当ての生産系職業を選択したプレイヤーも数多く活動している。

しかし最前線でもなく低層でもないフロアの特色の少ない街などには、
やはりプレイヤーの数は少なく、夜ともなれば静けさが街を包み込む。

(´・ω・`)

ホームでもないその街の公園に、ショボンはいた。

大きくも小さくも無く特徴も無い噴水を見ながら、
背凭れのあるベンチに座っている。

そして二つのタンブラーを取り出すと、一つを自分の右横に置き、手に持った一つに口を付けた。

三人は余裕をもって座れるベンチの中央に座っているショボン。

そしてもう一口啜ってから、横に置いたタンブラーと今持っていたタンブラーを交換した。

そして今手に持っているタンブラーに、口をつけた。

(  )「うまい」

それは闇から浮かび上がった人影。

ショボンの右斜め後方、背凭れに背を向けて、少しだけ寄りかかるように立っている。

その手には、いつの間にかベンチに置かれたタンブラーが持たれていた。

(´・ω・`)「……ありがとう」

褒められたことに対して形だけの謝辞を伝える。

.

753 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:49:23 ID:Am.mXpzk0

(  )「自分で淹れたのか?」

(´・ω・`)「もちろん」

たわいもない会話。

こんな夜中にわざわざ待ち合わせてする必要もない他愛もない会話。

一見緊張感も無いだらだらとした会話。

そしてその空気を一変させたのは、ショボンだった。

(´・ω・`)「で、何の用?」

その一言で、空気が変わる。

(  )「わかっているだろう?」

二人とも口調は変わらない。
けれど空気は変わった。

(´・ω・`)「分かる訳が無い」

ショボンの言葉は、氷のように冷たい。

(´・ω・`)「だいたい、僕を目の前に引きずり出すためだけに、
メッセージを送るためだけにあんなことをする。
更に仲間を四人も簡単に殺すような奴の考えることなんて、
分かる訳がない。
…………分かりたくもない」

(  )「『ギルドV.I.P』のギルマスはモンスターの動きを読むと聞いた。
そして戦略家で、中小ギルドのギルマスでいさせるのは惜しいという噂だ」

そんな冷たさを全く意に反さず、軽く返したフードの男の声は重く響く。

(´・ω・`)「自分の事をモンスターと同列に扱うのは勝手だけど、
あいにくと僕の目は節穴らしくてね、プレイヤーにしか見えないよ。
少なくとも見た目は」

そしてショボンもその重さを受け流し、何とか自分のペースに持っていくための言葉を紡ぐ。

.

754 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:50:50 ID:Am.mXpzk0

(  )「お前の姿が人に見えている以上、俺の姿が人に見えるのは当然だな」

どこか面白そうに言葉を返すフードの男。

二人は視線を合わさない。
互いに百八十度逆側を見ている。

しかし意識はお互いと周囲に向けられていた。

(´・ω・`)「申し訳ないけど、僕は明日も早いんだ。
用があるのなら、さっさと言ってもらいたい」

まるで痺れを切らしたかのように、言葉早に話題を変えて返答を促すショボン。

(  )「切り替えの早さも想像以上だ」

(´・ω・`)「……早く言ったら」

(  )「ふっ…」

吐息のように一息吐き出すフードとの男。
それは笑ったようにも聞こえ、ほんの少しだがショボンの心に波を起こす。

(  )「おまえは、俺と同じ。こちら側の人間だ」

そして唐突に放たれた言葉。
それは先ほどほんの少しだけ揺らめいたショボンの心の水面を、
大きく波立たせた。

(  )「仲間を壁にしてナイフを敵に突き刺す冷酷さ。
剣を囮にして相手の油断を誘い、投擲のナイフを急所に突き立てる度胸と技能。
目の前で人が消えても表情一つ変えないその胆力。
自分が手を汚すことに躊躇しない豪胆さ。
すべてが物語っている」

(´ ω `)「………」

(  )「おまえは、守る側じゃない。殺す側だ」

フードの男の声はショボンに重く響く。
けして押し付けるような重さではなく、包み込むようなバリトンの音。
声は音と化し、ショボンを包む。

.

755 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:52:44 ID:Am.mXpzk0

(  )「こちら側に来い。
おまえの本質は、そんな場所よりもこちらの方が活かされる」

それは悪魔の誘い。
言葉だけを理解し反応するのであれば一笑に付すことの出来る様な内容。

だがフードの男の声はそれを許さない。

心の奥を揺さぶり、思考の隙間を縫うように染み渡る。

自分でも感じていた自分の冷酷さ。
『敵』に対して、たとえ仲間を守るためとはいえどこまでも残酷になる自分。
『仲間』以外の『敵』が目の前でポリゴンに変わった時、
仲間が息を飲むのを背後で感じながらもまったく動じなかった自分の心への恐怖。

それらすべてをフードの男は知っていて、分かっていて、自分を認めてくれているという錯覚。

それは心を揺れ動かすには充分な錯覚だった。

しかしショボンはそこで踏み止まった。

.

756 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:53:38 ID:Am.mXpzk0




(´・ω・`)「僕は友達を守る」





.

757 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:54:44 ID:Am.mXpzk0

ブーンの顔が、
ドクオの顔が、
ツンとクーの顔が、
流石兄弟の顔が、
ジョルジュ、フサギコ、モナー、ビーグル、クックルの顔が、
心に浮かんでは消え、
自分の心を支えてくれるのが分かる。

(´・ω・`)「今の僕は、そのために生き、その為に考え、動いている」

心の中で澱んだフードの男の声を、洗い流す様に。

(´・ω・`)「『敵』を殺すために生きているんじゃない。
『人』を殺すことに喜びも感じていない」

ゆっくりと、確実に、自分を取り戻す。

(´・ω・`)「彼らと共に生きたい。ただ、それだけ。
確かにその為にならどんなこともするけれど、
その為以外の事で、誰かを殺すことなんてしたくない。
殺さずに済むのなら、殺さないで済ませたい」

立ち上がり、振り返るショボン。
鋭い視線で、フードの男の後ろ姿を見る。

(´・ω・`)「だから僕は、そっちにはいかない」




.

758 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:56:42 ID:Am.mXpzk0




フードとの男が動いたのは、どれくらい経ってからだろう。

ショボンの視線に射抜かれていることを感じつつ、
動かないでいた男。

数秒のような、数分のような、数十分の様な沈黙と止まった空気。

そして男は肩を震わせた。

(´・ω・`)?

(  )

声を立てずに笑う男。

それは傍から見て笑っていることが分かるように意識した肩と身体の揺れ。

その芝居がかった動きに一瞬心奪われるが、すぐに手の中に隠れるナイフを装備するショボン。

(  )「あの男ほどではないが、おまえも面白い」

身体の演技はそのままに、乾いた声で呟く男。

(  )「圏内で武器を構えても仕方ないだろう?」

(´・ω・`)

答えずに、ただナイフをいつでも投げられるようにする。

(  )「食料と、POT。あと武器と防具、装備もだ」

(´・ω・`)?

(  )「必要なものは、追って連絡させる」

(´・ω・`)「何を言って…」

(  )「断るのなら、おまえのギルドのメンバーを一人ずつ殺す」

.

759 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:59:02 ID:Am.mXpzk0

(´・ω・`)!

(  )「対価として、お前達ギルドは狙わない。殺さない。
だが断るのなら、一人ずつ殺していく。
おまえは殺さない」

(´・ω・`)「……対価はギルド『V.I.P』、およびギルド『N−S』全メンバーを狙わないという保証。
それはお前たちが手に入れた、他のレッドプレイヤーの情報も含まれる」

(  )!

(´・ω・`)「メンバーの誰かがプレイヤーに殺された時、
僕は君たちを疑う。
それは君にとっても本意ではないはず」

(  )

男の肩が揺れる。
それは先ほどの様な演技ではなかった。

(  )「本当に、おまえは面白い」

腕を振った男の前に現れたウインドウ。
そして数回操作をして、消した。

(  )「うまかった」

振り返ることなくタンブラーをベンチの上に戻し、歩き出す男。

ショボンは目の前に現れたウインドウに、軽く舌打ちした。

.

760 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 22:00:13 ID:Am.mXpzk0



【「PoH」さんからフレンド申請が来ています】

【YES】 【NO】



.

761 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 22:02:23 ID:Am.mXpzk0

忌々しげにYESを触るショボン。

フードの男。
殺人ギルド『Laughing Coffin』ギルドマスター。
アインクラッド最強最悪のレッドプレイヤー。
『PoH』

その後ろ姿が、闇に溶けて消えた。









.

762 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 22:05:40 ID:Am.mXpzk0

すみません。30分ほど席を外します。

763名も無きAAのようです:2014/11/09(日) 22:10:02 ID:2L2DNo0g0
支援
久々に更新連打して待つくらい楽しんだわ…
と思ったらまだ更新あるんですか!やったー!

764 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 22:57:30 ID:Am.mXpzk0
支援ありがとうございます。

それでは、再開します。





焼肉食べたい。

765 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 23:01:22 ID:Am.mXpzk0

7.君とボクと



2024年5月

ギルドV.I.P.のホームで開かれた食事会は、二時間ほど前に終了していた。
二ギルド合同で行うことが決定した『朝霧の洞窟』の探索は、
パーティーを三つに分けて最終的にゲットしたアイテムの数とレア度で優劣を競うイベントとなり、
久し振りのお祭りイベントの決定に、メンバーも楽しげだった。

そしてここは人気のない公園。

40層のホームから転移門を使用して移動してきた彼は、
三人掛けのベンチに座った。

ストレージからタンブラーを二つ取り出すと、
一つを右横に置き、もう一つに口を付けた。

公園の暗がり。
街灯の陰から現れる一つの影。

フードを被って顔を隠したその影がベンチに近寄り、タンブラーを手に取る。

そしてそのままタンブラーの有った場所に座った。

.

766 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 23:02:33 ID:Am.mXpzk0

('A`)「おせえよ。自分で指定しておいて」

(´・ω・`)「…時間通りだよね?」

('A`)「お前の事だから早く来ると思って、二十分も待っちまった」

(´・ω・`)「ちゃんと時間書いたのに」

( ^ω^)「おっおっお!ぎりぎりセーフだお!」

('A`)「アウトだボケ」

( ^ω^)「すまんこ、すまんこ。道に迷っちゃったんだお」

(´・ω・`)「転移門のある公園からまっすぐ一直線なのに」

( ^ω^)「おっおっお」

風のように駆けてきたブーンが逆側に座り、にこやかに話す。
彼が来ただけで場の空気が和むのは、昔からだった。

自然とドクオとショボンの顔も柔らかくなる。

ショボンから差し出されたタンブラーを手にするブーン。

口を付け、ニッコリと微笑んだ。

( ^ω^)「今日のも美味しいお」

(´・ω・`)「ありがと」

('A`)「まったくこいつは」

( ^ω^)「三人で話すのも久しぶりだおね」

('A`)「…そういや、そうか?ん?」

(´・ω・`)「そうだね。三人だけってのは久し振りかも」

ブーンの言葉に考え込む二人。

.

767 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 23:04:31 ID:Am.mXpzk0

('A`)「……へたすりゃ、一年以上前か?」

(´・ω・`)「そうだね。ここ一年は必ず他の人がいたかも」

( ^ω^)「学校帰りはいつも三人だったのに、懐かしいお」

(´・ω・`)「うん」

('A`)「だなー。よくバーボンハウスに寄ったよな。
シャキンさんが謎のお菓子出してくれて」

( ^ω^)「今やバーボンハウスと言えばショボンやフサの店ってイメージだから、
すごく不思議な気分だお」

('A`)「店の名前をバーボンハウスにしたのは、
シャキンさんと会えるかもってことだったしな」

(´・ω・`)「うん。ギルド名は学校名。
店は兄さんの店の名前にして、
耳に入った時に、目にした時に近くに寄ってきてもらうためだから」

('A`)「学校の方は結局おれ達だけだったけど、
バーボンハウスの方は狙いが当たったな」

( ^ω^)「会えて良かったお」

(´・ω・`)「うん」

言葉少なげな友の顔を両サイドから訝しげに見るドクオとブーン。

その視線を感じつつ、ショボンが口を開く。

(´・ω・`)「今日さ、N−Sのホームで、兄さんに怒られちゃった」

('A`)「あー」

( ^ω^)「おー」

ショボンの言葉に、納得する二人。

.

768 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 23:05:40 ID:Am.mXpzk0

( ^ω^)「ショボンは昔からシャキンさんには弱かったおね」

('A`)「っていうかショボンをちゃんと叱れたのって、
小父さん小母さん以外だとシャキンさんくらいだったよな」

( ^ω^)「中学の時の真鍋先生」

('A`)「いたなー。重箱の隅をつつこうとして返り討ちにあったバカ。
新卒だったのにすぐ辞めちゃった」

( ^ω^)「小学校の音楽の…」

('A`)「雪下のババア!いたいた!」

( ^ω^)「ショボンにやり込められたのを見た時は胸がすっとしたお」

('A`)「あの腹黒ババアにはみんな辟易してたからな」

( ^ω^)「コンビニの店長とか」

('A`)「マルエイスーパーのクソおやじも」

( ^ω^)「ゲーセンで絡んできた大学生」

('A`)「最終的には涙目になってたな」

( ^ω^)「スクランブル交差点の角の駐在」

('A`)「映画見に行くときにのったバスの運転手」

( ^ω^)「駅前で話しかけてきた宗教の人」

('A`)「市営体育館の受付のじじい」

(;´・ω・`)「ちょ、ちょっと二人とも」

('A`)「ん?」

( ^ω^)「なんだお?」

(;´・ω・`)「僕、そんなになんかした?」

.

769 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 23:06:58 ID:Am.mXpzk0

('A`)「自覚無いとか」

( ^ω^)「大丈夫だお。だいたい理不尽なことを言い出した人に言い返していただけだお」

('A`)「ああ、そんな感じだな」

( ^ω^)「だいたい」

('A`)「だいたい」

(´・ω・`)「なんか釈然としない」

一瞬の沈黙の後、噴き出して笑いあう三人。

大声ではないが少し声を上げて、楽しそうな笑顔を見せる。

('A`)「というか、だいたいおれとかブーンが目を付けられてなんか言われて、
それに対してショボンが怒るって図式だな」

( ^ω^)「嬉しかったお」

('A`)「だいたいだけどな」

( ^ω^)「だいたいだお」

(´・ω・`)「だいたい『だいたい』って言いすぎだよ二人ともだいたい」

笑顔のまま、それでも少し困った様に眉を下げて止めようとするショボン。
それでまた笑う二人。

そして笑顔のままドクオが疑問を口にした

('A`)「で、なんで叱られたんだ?」

(´・ω・`)「…ラフコフの事がばれた」

/

770 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 23:08:06 ID:Am.mXpzk0

空気が止まり、慌てて周囲を見回すドクオとブーン。

(´・ω・`)「大丈夫だよ。周囲に人はいないから。二人だって、とも来る時に見てきたでしょ?」

('A`)「念には念をだ」

(;^ω^)「……」

ため息を吐くドクオ。
ブーンは緊張した面持ちでショボンの顔を見る。

(;^ω^)「ショボン…」

(´・ω・`)「うん。アルゴさん経由だって」

(;^ω^)「おー。僕のせいだおね」

(´・ω・`)「アルゴさんへのリークは僕がギルマスとして決めたことだよ。
少し早い気もするけど、シャキンに知られてしまうのも想定内だし」

(;^ω^)「おー。でも…」

('A`)「でもでも言っても仕方ない。
で、どうするんだ?」

(´・ω・`)「どうするって?」

('A`)「シャキンに叱られて、切るのか?」

(´・ω・`)「そんなことをしたら、全員を守る自信は無いよ」

('A`)「だが、俺達は強くなったぞ。仲間も増えた」

(´・ω・`)「僕達全員が生き残れる確信。
彼ら全員を殺すか牢獄へ送る自信。
そんなものが無い限り、そんなことはすべきではない。
そしてそんな確信も自身も僕は持てないよ」

('A`)「……」

( ^ω^)「じゃあ…」

(´・ω・`)「うん。とりあえずこのままでいこう」

.

771 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 23:09:40 ID:Am.mXpzk0

('A`)「アルゴはどうする?
これ以上このことを外に触れ回るようでは…」

(´・ω・`)「アルゴさんにはこれまで通り僕達を疑い、見張ってもらう。
あと、別に情報を誰これ構わず売っているわけではないよ。彼女は。
シャキンに流したのは、おそらくシャキンが最初に何かを掴んで…なんだと思う」

('A`)「そっか…。
うん。そうだな。それが良いか。
あいつなら攻略組へのパイプも太いし、もしもの時には…」

( ^ω^)「エギルさんとは仲良くさせてもらってるお」

('A`)「ああ、斧使いで雑貨屋の。店やりながら攻略組、しかもタンクってすごいよな」

( ^ω^)「その上私財を使って中層プレーヤーの育成もしてるお」

(´・ω・`)「そうだね。僕達もそのお手伝いをさせてもらってるわけだし」

( ^ω^)「お、そうだったお。
ショボン、エギルさんが一回ゆっくり話したいって言ってたお」

(´・ω・`)「そうなの?じゃあ今度店に行ってみようかな」

( ^ω^)「昨日メッセージが来てて。
僕とは道具屋つながりで何度も会ってるけど、ショボンとも一度ちゃんと話をしてみたいって」

(´・ω・`)「そうだね。
ちゃんと話したのは育成の概略を決めた時で、それ以降は実務レベルの話ばかりだし。
っていうか、フレンド登録はしてるんだからメッセージで直接言ってくれればいいのに」

( ^ω^)「………」

('A`)「………」

(´・ω・`)「え?なにその沈黙」

( ^ω^)「………」

('A`)「………」

(´・ω・`)「ちょ、ちょっと?」

.

772 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 23:10:42 ID:Am.mXpzk0

( ^ω^)「………」

('A`)「………」

(´・ω・`)「ふたりとも?」

( ^ω^)「………」

('A`)「………」

(´・ω・`)「どうしたの?」

( ^ω^)「………そりゃあ」

('A`)「………やっぱり」

(´・ω・`)「ん?」

( ^ω^)「………稀代の」

('A`)「………戦略家様だし」

( ^ω^)「敷居が…」ブフォッ

('A`)「高いんじゃ」グフッ

(;´・ω・`)「ここでそのネタ引っ張る!?
そして笑うなら言わないで!」

笑い出す二人。
そしてショボンも笑顔になり、三人を柔らかい空気が包んだ。





.

773 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 23:13:25 ID:Am.mXpzk0

8.キミと僕と



2023年7月

PoHが去った公園に、一人佇むショボン。

近くの木陰で、影が揺らめいた。

(´・ω・`)「追わなくて正解だよ。
君は『VIP』でも『N−S』でもないから、殺されていた」

ベンチの上のタンブラーをしまいつつショボンが呟く。

「そうみたいね。居ることには気付いていたみたいだし」

どこからか聞こえる声。

「でも、よかったの?」

(´・ω・`)「とりあえずは、あいつの口車に乗るよ。
実際僕は『脅された』わけだしね」

「いや、そうじゃなくて、これを見てたのがあたしだけだってこと」

(´・ω・`)「きみに、見ておいてほしかったんだ。
多分、この世界で、僕をよく知りつつ赤の他人である君にね。
何事にもとらわれない、客観的な立場で」

「赤の他人とか、酷いなー」

(´・ω・`)「実際そうでしょ。あの時から、あんなに引き留めたのに、独りで動いているんだから」

「それを言われると痛いけどねー」

(´・ω・`)「……皆とは、会ってる?」

「ブーンの店に買い物には行くよ。その時ツンとかクーとかには時々会うかな。
他人のふり、知らないふりをお互いしてるけど。
あ、アルルッカバー君にも時々会うよ」

.

774 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 23:16:37 ID:Am.mXpzk0

(´・ω・`)「そうなんだ。顔をみて元気そうなのが分かればみんなも嬉しいよ」

「ショボン君も?」

(´・ω・`)「もちろん」

「うれしいなー」

(´・ω・`)「はいはい。……気を付けてね。
君が集めてきてくれる情報にはいつも助かっているけど、心配だよ」

「……ありがとう」

(´・ω・`)「まだ、ギルドに入る気にはなれない?」

「…………」

(´・ω・`)「また誘うよ」

「…………また、連絡するね」

独り言のような会話はそこで途切れ、ショボンは悲しげに周囲を見回した後、その場を去った。








第15話   終












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775 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 23:17:51 ID:Am.mXpzk0
以上、本日の投下終了です。

いつもありがとうございます。

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776 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 23:22:25 ID:Am.mXpzk0
以下、年表です。

2022年
≪11月6日SAO(ソードアートオンライン)サービス開始≫
12月
2023年
01月
02月ジョルジュ加入「五話 ここでも雨は冷たいから」
03月流石兄弟加入「十四話 双頭の鷹の旗の下で」
04月フサギコ加入「九話 君への手紙」
05月モナー・ビーグル加入「三話 それから」  
06月クックル加入「四話 緑の手」 
07月ショボン、ラフコフ(PoH)から勧誘される。
   →断るが、脅されてギルドとしての関わりを余儀なくされる
08月
09月モララー加入「十三話 ダイヤモンドだね」
   ギルドN−Sにハインが加入。(下旬 ハインがドクオに惚れる)
10月
11月
12月ギコ・しぃ加入「一話 ギルド「V.I.P.」へようこそ」「二話 聖なる夜のキャロル」
2024年
01月「六話・七話 数え歌がきこえる」
02月「八話 それぞれのチカラ」
03月
04月「十話 迷走」「十一話 疾走」「十二話 錯走」
05月「十五話  表とウラと」

.

777名も無きAAのようです:2014/11/09(日) 23:26:39 ID:TVUP7IzY0
乙!

つまりドクオは「俺、このゲームクリアしたらハインの気持ちに答えるんだ…」という死亡フラグが建ってるって事だな

778名も無きAAのようです:2014/11/09(日) 23:44:10 ID:g8/7tZPIO
待ちまくってました!
今から読む!!

779名も無きAAのようです:2014/11/09(日) 23:58:04 ID:FCMGHQBk0
乙乙
面白かったです

780名も無きAAのようです:2014/11/09(日) 23:59:00 ID:.8BC25XA0
おつ!
ひとつ胸のつかえが取れた。刺さりっぱではあるが……

781名も無きAAのようです:2014/11/10(月) 00:19:57 ID:bFBe/kfk0
乙です。
不安が1つ解消されて、ホットしてます。
ショボンを疑ってしまってた自分が恥ずかしい。

782名も無きAAのようです:2014/11/10(月) 00:36:28 ID:qvyZVGY.O
ω・)乙。初期メンバーは知ってたんだな。しぃ、ギコが暴走していらんことしそう

783名も無きAAのようです:2014/11/10(月) 00:46:06 ID:.umvIYQY0
来てた!


784名も無きAAのようです:2014/11/10(月) 00:55:36 ID:75sOPTL.0
乙 今回もじっくり楽しませてもらった
仕方ないとはいえきつい選択だな

78512312:2014/11/10(月) 11:46:56 ID:mgEzbA9g0
こんにちは
http://1su.net/dGQ8

http://1su.net/dGQA
http://1su.net/dGQC
http://1su.net/dGQF

786名も無きAAのようです:2014/11/11(火) 15:21:38 ID:Vhs3FMzk0
おつ。
クーがアルゴに詰め寄られた時、クーはしらを切ってたってことか。
ラフコフの件をクーが知らないわけは無いだろうし…

787名も無きAAのようです:2014/11/16(日) 21:10:38 ID:4Px/ALsI0

相変わらず雰囲気が好きだぜ

788名も無きAAのようです:2014/11/17(月) 21:59:45 ID:xRG/rO3YO
話忘れてたから久しぶりに1話から読んだけどやっぱ面白いな
後1回ぐらい年内投下あったら嬉しいね

789名も無きAAのようです:2014/11/17(月) 22:21:56 ID:wo7KxYmgO

しかしこんなに風呂敷広げてしまって無事に畳めるのか読者ながら心配になってくるな

790名も無きAAのようです:2014/11/18(火) 00:10:56 ID:I2asFtkw0
キリト達がクリアすれば終わりだからいくら広げても時系列合わせれば速攻で回収出来るんやで

791名も無きAAのようです:2014/11/19(水) 11:06:20 ID:u9mUuf3U0
ショボンをよく知りつつ赤の他人である人って誰の事だろうか?

792名も無きAAのようです:2014/11/21(金) 10:51:24 ID:ZeMtWnSM0
舞台は同じでもアナザーストーリーって手もあるからキリトクリアルートとは限らないかもよー?
何にせよ作者の思うように書いてほしい本当楽しい、楽しみにしてるよ

793名も無きAAのようです:2014/11/22(土) 13:02:38 ID:NMi5oEdk0
ずっと待ってた!相変わらず面白い

795名も無きAAのようです:2014/12/22(月) 12:34:31 ID:boaKq3no0
攻略組でギルメンを誰一人死なせてないのはクラインか
作戦の立案も出来るしショボンはあんな感じになりたいのな

796 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 13:50:45 ID:CsIsRGwE0
それでは、今年最後の投下を始めます。

よろしくお願いします。

797 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:04:01 ID:CsIsRGwE0




第十六話 思いと決意





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798 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:04:45 ID:CsIsRGwE0





0.見えたものと見えないモノ





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799名も無きAAのようです:2014/12/31(水) 14:05:47 ID:81x0MGrgO
きた!大晦日に来てくれるとは支援!

800 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:06:17 ID:CsIsRGwE0

西暦2024年6月下旬。
第52層 フィールドダンジョン 【ミクミエル草原】

【ミクミエル】と言う名の街を中心に置いたその草原は、
ミクミエルへはもちろん、周囲三つの街に行くにも必ず通らなければならない。
通常そういった『通行』を主な目的としたフィールドにはそれほど敵(質・量共に)は出ないのだが、
この草原は『フィールドダンジョン』扱いとなり、相応の数のモンスターがポップする。
しかし草原エリアということで視界が開けているのと、
一つ一つのエリアが広い為戦いやすいこともあり、
プレイヤーは特に気にかけてはいなかった。

だが戦いやすいと言ってもここは既に52層であり、
モンスターのレベルは相応である。

(*゚ー゚)「ギコ君!」

(,,゚Д゚)「ゴルァ!」

狼男Aの顔面を踏んで空へ飛んだしぃがギコの名を呼ぶ。
呼ばれたギコは左手に持った盾で狼男Bが振り下ろした曲刀を受け流す。

二人の距離は5メートルほど。

ギコはしぃを見ることなく叫びながら狼男Bの脇腹に片手剣を一閃させ、そのHPを黄色に変えた。

(*゚ー゚)「ロク!」

狼男Aの真上で短刀を水色に輝かせるしぃ。
そしてそのまま落下のスピードに剣技の加速を乗せ、
顔を踏まれたことによりバランスを崩していた狼男Aを縦に一閃、切り裂いた。

既にHPを赤くしていた狼男AのHPは光を無くす。

しぃは地面にぶつかる寸前に短刀を持たない左手で大地を叩き、
まるでトランポリンの上にいるかのように跳ねる。
そして体重を感じさせない身のこなしで着地してすぐさま駆け出す。

その間にギコは狼男Bに追撃を二発与えて距離を取っていた。

自分の後方にしぃが駆け寄ってくるのを感じる。

.

801 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:07:55 ID:CsIsRGwE0

雄叫びをあげ、曲刀を振り上げた狼男B。

曲刀が、赤く光る。

(,,゚Д゚)「しぃ!」

(*゚ー゚)「ギコ君!」

振り下ろされた曲刀を受け止めるギコの盾。
剣技であるその一撃は相当の威力があったが、
ギコは難無く受け止めた。
そしてそのまま盾を水色に輝かせて曲刀を押し返す。

(,,゚Д゚)
 「スイッチ!」
(*゚ー゚)

しぃが叫んでからきっかり六秒後、二人の声が重なった。




二匹の狼男を難無く倒した後に、二つのエリアで戦闘を重ねた二人は安全エリアに辿り着いた。

(*゚ー゚)「この次の次のエリアで採取できたら、依頼された内容は終了だよ」

(,,゚Д゚)「分かったぞゴルァ」

そしてそのまま進もうとするギコの上着をしぃが掴む。

(,,゚Д゚)「どうした?」

(*゚ー゚)「休憩も大事。
思ったよりハイペースで来れたから、休憩しよ」

(,,゚Д゚)「ゴルァ」

ニッコリと微笑んだしぃ。
ギコの服を掴んでいる逆の手には、既に地面に広げるための絨毯が持たれていた。




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802名も無きAAのようです:2014/12/31(水) 14:09:06 ID:8zrksYqw0
初遭遇だ支援

803 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:09:20 ID:CsIsRGwE0

畳二つ分の大きさを持ったその絨毯は、かなり座り心地が良い。
ゴザでもシートでもなく、『絨毯』と呼んでいるのはそのためである。

しかもその機能の割にかなり容量も軽いため、
持ち運ぶことによってストレージを圧迫することがほとんど無いという代物だった。

ツンとモララーが共同で作り上げたというそれの座り心地を噛み締めながら、
ギコは目の前に座っているしぃをみる。

もともと可愛かったが、最近更に可愛くなったと思う。

この世界には今のところ身体において【成長】も【老化】もない。
この世界に閉じ込めた男の拘りからか、
見た目の変化は髪型や瞳の色と言ったような、
ごく一部への自身の選択による変更のみだった。

けれど、可愛くなったと思う。

それはきっと、今の生活を楽しむことが出来ているから。

はにかんだ様な、どこか寂しげだったり泣くのをこらえるような笑顔じゃなく、
心の底からの笑顔をいつも見せてくれるようになったから。

それが自分の力だけで導けたのではないのが少しだけ悔しいけれど、
そんなことよりも、今の彼女の笑顔が嬉しい。

あの日、たまたま真横にいた彼女。
ゲームの世界に閉じ込められたことを知って泣き叫んだ彼女。
呆然としていて、実感がわかなくて、
なんとなく介抱して以来ずっと一緒にいる。
実感がうまれた時、もしそばに彼女が居なかったら、自分は今頃どうしていただろう。
考えたくない『もし』。
きっと自分は、彼女がいたから生きてこられた。

そんな彼女を、今が一番かわいく、心からいとおしいと思う。

そしてそんな思いは今よりも一秒後。
今日よりも明日。
明日よりも明後日。
少しずつ増えていくと感じていた。

(*゚ー゚)「どうしたの?じっと見て」

.

804 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:10:44 ID:CsIsRGwE0

少しだけ頬を染めたしぃが、ギコの前にカップを差し出した。

このティーセットもモララー製で、
外に出る時はパーティーの誰かが必ず持っていると言っても過言ではない。
飲むとHPが少しだけ回復するお茶はクーとクックルの共同制作。
食べるとたまに幸運度判定ボーナスが付加されるクッキーやカップケーキは、
ショボンだったりふさだったり。

(,,゚Д゚)「ありがとうだゴルァ」

心を休ませつつ、POTを飲むには躊躇する程度のHPを回復させ、
ついでにうまくすれば自身にプラスとなる効果を付ける休憩。

初めてVIPの一員としてダンジョン探索に出た時はこの『休憩』に驚いたが、
今はその重要性を何度も実感していた。

回復のお茶やお菓子を作れるようになる前から『休憩』はしているらしいけれど。

(*゚ー゚)「それで、どうしたの?ボーっとして」

(,,゚Д゚)「何でもないぞゴルァ」

まさか今まで考えていたことなど言えるわけがなく、
笑顔で流そうとするギコ。

いつものしぃならばもう一回は踏み込んできそうだが、
今日は違った。

(*゚ー゚)「そっか…。
わたしはね。ちょっとあるんだ」

(,,゚Д゚)?

口ごもるしぃ。

そのまま周囲を伺ってから、ギコを見た。

(*゚ー゚)「部屋で話そうかと思ってたんだけど、ここなら良いかな。
隠れるところないから近くにはいないだろうし」

隠蔽スキルを持つ者は、自らの身体を周囲に隠すことが出来る。
しかしそれは隠すことが出来るオブジェクトがあるからできる行為であり、
草原エリアなどで木や背の高い植物などのオブジェクトが無い場所では、
隠れて忍び寄ることは不可能だった。

.

805 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:12:20 ID:CsIsRGwE0

もちろん相応のアイテムを付ければ地面に隠れることも可能であろうが、
隠れたままエリア移動し来るのは不可能であろう。

(*゚ー゚)「……50層以上を二人で探索するの、初めてでしょ」

(,,゚Д゚)「ゴルァ」

(*゚ー゚)「確かに許されてるのは草原エリアだけだし、
内容も採取だけだし、
クエストとかはまだやらせてもらえないけどさ」

(,,゚Д゚)「ゴラァ」

(*゚ー゚)「うん。そうだよね。
それでもショボンさん達に認めてもらえたってことだし、
戦力に成れて嬉しい」

(,,゚Д゚)「ゴラァ」

(*゚ー゚)「本当、そうだよね。
やっと、一人前になれたのかなって、思うんだ」

(,,゚Д゚)「ゴラァ」

(*゚ー゚)「本当に、嬉しかった。
それで、昨日ツンさんの部屋に行って、
クーさんも来て、三人で喋ってたんだけど……」

喋るのを止めるしぃ。
口を開くのをためらっているように見える。

視線はギコから外され、手に持ったカップをじっと見ていた。

(,,゚Д゚)「……ゴルァ」

(*゚ー゚)「うん…」

ギコに促され、ふせていた視線を再びギコに向ける。

(*゚ー゚)「手袋がね、あったの。
濃い灰色の、男物くらいのサイズ」

.

806 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:14:33 ID:CsIsRGwE0

(,,゚Д゚)「ゴラァ」

(*゚ー゚)「ブーンさんのか、他の誰かのか、
でも普段から手袋をつけてる人いないから、誰のかなって思ってちょっとじっと見てたら……」

(,,゚Д゚)「ゴルァ」

(*゚ー゚)「ギコ君、ラフィンコフィンって知ってるよね」

(,,゚Д゚)「ゴルァ!」

(*゚ー゚)「このギルドに入った時に、座学で教えてもらった。
ラフィンコフィンのマーク。
全員が付けてる、棺桶の図……」

(,,゚Д゚)「ゴ……ゴルァ…」

(*゚ー゚)「手袋に、その図が……描いてあったの」

(,,゚Д゚)!!!!「ゴルァ!!」

(*゚ー゚)「もちろん、VIPの皆が殺人ギルドだなんて、思わない。
でも、ツンさんがそれを持ってた…。
ツンさんが作ったのか、
誰かが置き忘れたのか、
何かのサンプルなのか……。
私、わかんなくなっちゃって」

(,,゚Д゚)「……ゴルァ……」

(*゚ー゚)「ギコ君……」

見詰め合う二人。

(*゚ー゚)「ギコ君、」

(,,゚Д゚)「ゴルァ」

(*゚ー゚)「いくら私相手でもゴルァとゴラァだけで会話するのは止めよう」

(;,,゚Д゚)「す、すまなかったゴルァ…」

はっとしてお茶をすすったギコを見て、
しぃの表情にも笑みが戻った。

.

807 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:15:52 ID:CsIsRGwE0

(,,゚Д゚)「実はおれも、ブーンの店の倉庫で見たんだ」

(*゚ー゚)「!手袋を!?」

(,,゚Д゚)「ああ。数十個のPOTと一緒に保管してあった」

(*゚ー゚)「そんな……」

(,,゚Д゚)(けれど、なんとなく違和感を感じた。
わざと見せられたような…)

(*゚ー゚)「……やっぱり、そうなのかな…。
でも、みんなに限ってそんなこと。
でも、関係者で無ければそんなものが…」

(,,゚Д゚)「まずは採取だぞ、ゴルァ」

(*゚ー゚)「え?」

(,,゚Д゚)「そんなことよりも、まずはやるべきことをやるんだゴルァ」

立ち上がったギコ。
そして武器と装備を再確認し始める。
視線の先はしぃではなく、エリアの向こう。

(*゚ー゚)「ギコ君……」

そんなギコを見上げていたしぃだったが、ニッコリと微笑んで立ち上がった。

(*゚ー゚)「うん、そうだね!行こう!」

出していた休憩道具を片付けるしぃ。
そして装備を確認し、ギコにうなずく。

(,,゚Д゚)「行くぞゴルァ!」

歩き始めるギコ。
その背中はしぃが見続けていた彼との生活の中で、一番頼もしく感じた。

.

808 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:16:53 ID:CsIsRGwE0

(*゚ー゚)「ギコ君!」

(,,゚Д゚)「それで、終わったら聞きに行くぞゴルァ!」

(*゚ー゚)「ギコ君!」

(,,゚Д゚)「まずは採取だゴルァ!」

(*゚ー゚)「ギコ君!」

(,,゚Д゚)「どうしたしぃ!行くぞゴルァ!」

(*゚ー゚)「次のエリア、そっちじゃなくてこっちだよ」

ギコが進もうとした出口とは別の方向を向いているしぃ。

(,,゚Д゚)「……ゴルァ」

振り向いて正しい道に向かって歩き始めたギコの背中は、
少しだけ昔に戻っていた。






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809 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:18:29 ID:CsIsRGwE0



1.突きつけられた現実




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810 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:19:52 ID:CsIsRGwE0

流石武具店
質の良い武器と防具をそろえ、
オーダーにも十分に対応できる武器・防具店として人気の店である。

この『武器と防具』と言うのが人気店の秘密でもある。
武器を作るスキルと防具を作るスキルは別であるため、
通常プレイヤーの営業する一つの店ですべてをそろえることは難しい。
しかしこの店では一度にすべてを揃えることが出来る。

低層のプレイヤーはそこまで意識することは出来ないが、
上層になると武器防具の能力は勿論その見た目にこだわる者も少なくないため、
全てを同時に試着できるこの店は、
能力値だけでなく見た目にこだわるプレイヤーにも好まれていた。

また武器や防具への装飾もすることが出来るため、
一部では「コルがいくらあっても足りない武具屋」などとも言われている。

しかし攻略組の和風装備や装飾した剣なども手掛けている事実からも、
その実力は折り紙つきであった。

難があるとすれば店を営む兄弟の片方が変人だということくらいだった。

( ´_ゝ`)「………めんどくさいなー」

思わず呟いてしまった兄者の首元に突きつけられる細剣の先。

ξ゚⊿゚)ξ「ん?」

( ´_ゝ`)「……いえ、なんでもございません」

(´<_` )「あきらめろ兄者」

( ´_ゝ`)「むーーーー」

武具店の奥。
所謂『工房』と呼ばれる部屋には兄者とツンがおり、
弟者が部屋のドアを開けたところだった。

ξ゚⊿゚)ξ「あら弟者。店は大丈夫なの?」

突きつけた細剣を外しながら、
部屋に入ってきた弟者に声をかける。

.

811 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:21:12 ID:CsIsRGwE0

(´<_` )「ひと段落したから『マリアンナ』に任せてきた。
折角だから、それを見たいからな」

弟者の視線の先は、兄者の目の前の作業台の上。

ξ゚⊿゚)ξ「これ、そんなに珍しいの?」

(´<_` )「いや、何度か使ってオーダーの盾を作ったことがあるし、
兄者がブーンの剣を作っているのは何度も見てる」

ξ゚⊿゚)ξ「?」

(´<_` )「でも、そんなにいっぱい並んでいるのは見たことない。
良く手に入れたな」

台の上には十数個の原石素材が無造作に置かれている。

ξ゚⊿゚)ξ「ふさの作ったフォーチュンクッキー食べまくったわよ」

ツンの呟きに噴き出した弟者。
特にそれをとがめることも無く、ツンが疲れた様に首を振る。
腰に手を当ててしたその姿は非常に絵になった。

(´<_` )「こんど素材の発掘に行くときにはおれも持っていくかな」

ξ゚⊿゚)ξ「そうしたほうが良いわよ。
あの効果、結構効くから。
もんだいは大きさよね…。味も私にはちょっと甘すぎるし」

(´<_` )「でかいんだよな。あれ」

苦笑いの浮かべて会話する二人。
そのてもと、作業台の上では横にある炉から洩れる明かりを反射させて鉱石が輝いている。
基本的には赤や青に光っているが、中には紫やピンク色の物もあった。

(´<_` )「色だけ見れば、質もよさそうだな」

ξ゚⊿゚)ξ「だと良いんだけどね」

.

812 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:22:23 ID:CsIsRGwE0

鉱石の名は『コランダムオール』
色は違うが、すべて同じ種類である。

当初はその大きさと美しさとアイテムの説明文から装飾用と思われていたが、
高いスキルレベルを持った酔狂な武器鍛冶屋が武器への添加素材に使用してみたところ、
ランダムではあるがさまざまな効果を武器に追加することが出来た。
そして攻略が45層を超えた頃、各層の採取ポイントから大きな鉱石も発見されるようになった。
アイテムをクリックしたときに現れる説明文は同じであるため大きく注目はされなかったが、
再び前述の酔狂な武器鍛冶屋が試してみたところ、
一定のサイズ以上のコランダムオール単体からの武器精製が可能なことを発見した。

( ´_ゝ`)「めんどくさいんだよな」

ξ゚⊿゚)ξ「ブーンの方はもう全部終わらせてるから」

( ´_ゝ`)「はぁ…」

通常武器に精製できる鉱石は、スピードタイプやパワータイプ、
あるいは標準タイプといったように種類ごとにタイプが分かれている。
そしてスピードタイプの鉱石から出来上がる剣は軽く切れ味が鋭いが脆かったり、
パワータイプの鉱石から出来上がる剣は威力があり耐久値も高いが重すぎたり、
といったように出来上がる武器の特性に絡んでくる。

しかしこのコランダムオールは出来上がるまでどんな武器が出来るのか分からないため、
自分に必要な武器をよく理解しているプレイヤーは、
コランダムオールから武器を作ることはほとんどしない。
鉱石を自分で持ち込んだとしても作るのが鍛冶屋である以上、
それなりの金額を取られるのだから当然と言えば当然だろう。

( ´_ゝ`)「……やるか」

ため息を吐きつつ、一番近い鉱石を手に取る兄者。
そしてクリックをして鉱石のウインドウを出し、説明文を確認する。

いつの間にか出したのか、空いた片方にはボードが持たれていた。

( ´_ゝ`)「これは……多分スピードAタイプだな…。使えるっと…」

アイテムの説明文とボードに書かれた文章を交互に見ながら呟く。

.

813 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:23:48 ID:CsIsRGwE0

そして鉱石の説明文をコピーし、台の上に山積みにした紙束の一番上の紙に写す。
その紙を鉱石に貼ると、鉱石を台の隅に置いた。

( ´_ゝ`)「めんどくさいーーーーー。いや、うん、ちゃんとやるぞ」

首に刺さった細剣の感触を感じつつ、次の鉱石を手に取る兄者。

( ´_ゝ`)「なんで圏内なのに刺さるんだよ……。HPは減らないとはいえ」

ぼやきながらも作業をすすめる。

切っ掛けは偶然だった。

アイテム鑑定スキルレベルの高い道具屋が試しにコランダムオールを鑑定したところ、
通常とは違う説明文を読むことが出来た。
今までスキルレベルに伴いアイテム鑑定の是非や、
知ることの出来る情報量の違いは確認できていたので特に驚きは無かったが、
問題はその後だった。

道具屋が鑑定した後の鉱石を鍛冶屋が鑑定したところ、
最初に鍛冶屋が見た文章と微妙に異なる部分があったのである。

ただそれは改行の位置や句読点の位置などであったため、
鍛冶屋が気付いたのは見事だが、ただそれだけだと思われた。

しかし鍛冶屋と道具屋が所属するギルドのギルマスが、
そこに注目した。

『現実世界ならいざ知らず、ここデジタルの世界では、
基本的に偶然ってのはあり得ないと思うんだよね。
出現はランダムでも、何かしらの法則はあると思うんだ。
その文章の違いは、もしかするとその法則の尻尾なのかもしれない』

そんな思いつきですべての鉱石をまず道具屋が鑑定し、
その後鍛冶屋が鑑定した後武器を精製し、
そしてどんな武器が出来たのかをギルマスが整理をした。

その数は200を超える。

.

814名も無きAAのようです:2014/12/31(水) 14:24:59 ID:qlnrKJKM0
初リアルタイム遭遇だ!!!
支援

815 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:25:09 ID:CsIsRGwE0

『多分こんな感じだと思うよ。
これを基に基本鉱石にするか添加材に使うか装飾品に回すか決めてみて。
あ、もちろん装飾品にする場合はそっちでもまずは鑑定して説明文をコピーしてね。
あと、精度を上げていくためにもサンプルはもっと必要だから、
これからコランダムオールを使って武器を造る時は毎回作業宜しく』

データを整理して作成した細かいチェックリスト。
それでも分かりやすくチャート図にして判別できるようにしたそのリストを鍛冶屋に渡しながら、
ギルマスが笑顔で言った。
それを聞いた鍛冶屋は今までの作業を思い出して心の底から疲れを感じたという。

それでもそのリストを作るのが、
自分の行う作業よりもよっぽど大変であることは鍛冶屋にも分かっていたため、
言いつけ通りコランダムオールを使って武器を造る際は先の様な作業をこなしていた。

そしてギルマスは言う。

『まだもれとかありそうだよね。これ。
アルゴさんに情報を流すのは更にサンプルをいっぱい使って精度を上げてからかな。
……それまで必要な量の武器やコランダムオールを集めるのはしょうがないってことで。
今はほら、何が出来るか分からないから市場でも安いし。
装飾品を作る細工工房があるうちのギルドが集めていても不思議がられないし。
うん。そういう事で、みんなよろしく』

鍛冶屋と道具屋とギルマスが誰かと言うのは、
…まあ、そういう事である。

.

816 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:26:28 ID:CsIsRGwE0

( ´_ゝ`)「…これはパワーのBか」

ξ゚⊿゚)ξ「基本的にはブーンの剣に、使えないのはあげるから好きに使っちゃって」

( ´_ゝ`)「んー」

黙々と作業を続ける兄者。
文句は言うが、作業を始めると速くて正確なのは弟者もツンもよく知っていた。

ξ゚⊿゚)ξ「弟者には、これをあげる」

作業する兄者を邪魔しない様に弟者の横に移動するツン。
そして封筒を一通、弟者に差し出した。

(´<_` )「ん?なんだ?」

ξ゚⊿゚)ξ「クーから。例の件よ」

(´<_` )「ああ、ギコとしぃに…か……」

ξ゚⊿゚)ξ「そ。全てはサブマスターであるクーの独断であるっていう証拠。
なにかあった場合はそれを出して責任の所在を明らかにしろだって。
まったく……」

(´<_` )「心配することは無いと思うがな」

ξ゚⊿゚)ξ「私もそう思う。
でも、クーの気持ちも分かるから。
……あいつは一人で背負い過ぎるから、周りは大変よね。ほんと」

(´<_` )「んー。それはおれも同感だ。
あいつのそんなところに救われたおれが言うのもなんだが。
ま、これはとりあえず受け取っておくよ」

ξ゚⊿゚)ξ「よろしく」

小声で二人が会話していると、弟者が視線を左上に向けた。

(´<_` )「あ、悪い。呼んでるから店の方に行ってくる」

.

817 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:27:53 ID:CsIsRGwE0

ξ゚⊿゚)ξ「頑張って稼いでね。
私はあれが終わるまではここにいるから」

(´<_`;)「見張らなくてもちゃんとやると思うぞ?」

ξ#゚⊿゚)ξ「めんどくさいこと頼んでるから、終わるまで付き合ってあげるだけよ」

(´<_` )「おお、そうだったか。すまんすまん」

ξ゚⊿゚)ξ「まったく私の事をどう思ってるのかしら」

( ´_ゝ`)「(そういう風に)」(´<_` )

ツンの言葉に聞き耳を立てていた兄者と部屋を出ようとする弟者が全く同じ言葉を心で呟いたのを、
三人とも知らない。



弟者が店に戻ると、一人の客がカウンターにいた。

(´<_` )「お待たせしました。
武器の研磨でしたよね。
こちらへどうぞ」

長い黄色の髪をアップにしたメイド服の女性にカウンターを任せたまま、
弟者は店の隅に設置された小さな炉の前に客を誘導した。

(マリアンヌ)「お願いします。弟者さん」

笑顔で客と弟者に会釈をする女性。

NPC、ノンプレイヤーキャラクターである彼女【マリアンヌ】を、
店番として兄者と弟者は雇っていた。

/ ゚、。 /「…頼む」

すらっとした長身の男。
現実世界ならば全く力の無い、強い風が吹けば吹き飛ばされそうな細さだが、
この世界ではパラメーターが全てであるためその強さは未知数だ。

.

818 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:29:01 ID:CsIsRGwE0

(´<_` )「それでは、お預かりします」

片手で差し出された長柄の鎌を両手で受け取る弟者。

受け取った瞬間、両手にかかる重さを確認し、目の前の男のパラメーターを少しだけ推察する。

(´<_` )「基本設定を確認します」

武器をクリックし、ウインドウを出す。
基本の鑑定だけならば、武器であっても弟者は兄者と同レベルで行うことが出来る。

そこで情報を読み、
少しだけ武器作製スキルを上げてある弟者がメンテナンス出来る武器ならば、
そのまま横の炉でメンテナンスを行う。

武器にはそれぞれ耐久値が設定されている。
使用すれば、帯刀したり、モンスターを切ったり、プレイヤーを切れば耐久値が減り、
ゼロになると武器は壊れ、ポリゴンとなって消える。
それは防具や各種装備アイテムも同じで、
プレイヤーは自分の身に着けている武器や防具の耐久値を常に気にしていなければならない。

そして武器や防具の耐久値を最大値まで戻すことが出来るのは、
それぞれの武器と防具の作製スキルを持っている者だけである。

その耐久値を基に戻す作業をメンテナンス、あるいは研磨などと呼んでいた。

(´<_` )「あ、これは…」

メンテナンスは、基本的には失敗はしない。
この失敗というのは武器破壊や能力のレベルダウンを指す。
しかし高レベルの武器や防具をメンテナンスするのは、
やはり高レベルのスキル保持者の方が良いという流れがあった。

因みに武器のレベル、レア度の確認だけではなく、
武器によってメンテナンスの仕方も変わるためまずは基本情報を確認するのが通例である。

(´<_` )「これ、プレイヤーメイドですよね。
すみません、うちの店、原則メンテナンスはモンスタードロップ品かNPC店売り品、
そしてうちの店で売った物にしかやらないことにしてるんですよ」

情報ウインドウを見ながら残念そうに断りを告げる弟者。

.

819 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:30:50 ID:CsIsRGwE0

これは全ての鍛冶屋が行っているわけではないが、
弟者と兄者、そして鍛冶屋としての横のつながりで親しくしている何件かの店は導入していた。

勿論至急の場合や例外はあるが、今回は知り合いが作った品であったため、
弟者もすぐに対応する。

(´<_` )「買われたならご存知だと思いますが、グレンさんの店なら45層の」

/ ゚、。 /「…ない」

(´<_` )「え?」

/ ゚、。 /「さっき行ったら、空き家になってた」

(´<_`;)「え?無かったですか?移転したとか聞いてない…」

メッセージを送るため、慌てて自分のフレンドリストを呼び出す弟者。
そして目当ての名前が変色しているのを見付ける。

(´<_`;)「そんな……」

/ ゚、。 /「だからこっちに来たんだが、ダメか?」

(´<_` )「あ、いや、…こういうことであれば、やらせていただきます。
ただ自分ではレベルが低いため担当が変わるのと、
この炉のレベルもそれほど高くないので奥の工房でさせていただきますがよろしいですか」

/ ゚、。 /「構わない。どれくらいかかる?」

(´<_` )「…十分ほどで。よろしければ店内をご覧になっていてください。
マリアンヌ、こちらの方にお飲み物を」

(マリアンヌ)「かしこまりました」

/ ゚、。 /「分かった。待ってるからよろしく」

(マリアンヌ)「こちらからお好きなものをお選びください」

飲み物のメニューが四つほど書かれたプレートを指さすマリアンヌ。

客が店内の商談用応接セットに腰掛けるのを見届けてから、
弟者は工房へのドアを開けた。



.

820 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:32:15 ID:CsIsRGwE0



ξ゚⊿゚)ξ「あら弟者。店は大丈夫なの?」

( ´_ゝ`)「つーかーれーたー」

作業台の上の鉱石の鑑定は粗方終わったようで、
説明文をコピーした紙が貼っていないのは二つだけになっていた。

(´<_` )「兄者、研磨を頼む。
ツン、すまん、ちょっと中断させてくれ」

ξ゚⊿゚)ξ「もちろん良いわよ。っていうか弟者、顔色悪いけど…大丈夫?」

( ´_ゝ`)「この鎌がどうかしたのか」

両手で差し出された鎌を両手で受け取る兄者。

( ´_ゝ`)「ふむ。見た目より少し重いな。
基本重い方がレベルが高い風潮だが、どんなもんか。
まぁ重けりゃいいってわけでもないが」

さっと片付けた作業台の上に鎌を置く兄者。
そして鎌をクリックし、情報ウインドウを出す。

( ´_ゝ`)「おい弟者、これグレンさんの作った奴じゃないか」

(´<_` )「店が、空き家になっていたらしい」

( ´_ゝ`)「え?」

(´<_` )「メッセージを送ろうと思ったら、送れなかった」

青白い顔で無表情に話す弟者。
それを聞いた兄者とツンは顔を強張らせる。

そして兄者は自分のフレンドリストを開いた。

( ´_ゝ`)「……」

色の変わった名前を触るが、何も反応が無い。

( ´_ゝ`)「……弟者…」

.

821 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:33:42 ID:CsIsRGwE0

(´<_` )「兄者、すまん、店の方も頼む。店の方と…黒鉄宮を見てくる」

( ´_ゝ`)「ああ、わかった。ツン、すまんが付いていって」

(´<_` )「いや、一人で大丈夫だ。フィールドに出る訳でもないし。
ツン、悪いが店の方を頼む。
兄者の研磨と鑑定が終わるまでちょっと見ていてくれ」

ξ゚⊿゚)ξ「え、あ、うん。それは構わないけど、大丈夫なの?」

(´<_` )「悪いな、ツン。
じゃあ少し出てくる。
兄者、リズやアルたちへの連絡は、黒鉄宮を見た後におれがやるから。
もし先に聞かれたら、おれに回してくれ。
悪い………店の方は頼んだ」

青白い顔で入ってきたドアとは違うドアから出ていく弟者。

ξ゚⊿゚)ξ「……最近無かったから、この感じ、忘れてた……」

呟いたツンを意識せず、兄者はメッセージウインドウを開いた。

( ´_ゝ`)「ツン、今日プギャー達三人空いてるか知ってるか?」

ξ゚⊿゚)ξ「え?今日はギコしぃのサポートっていうか、
もしもの時用に後ろを付いていってるはずだけど」

( ´_ゝ`)「ってことは無理か…」

ξ゚⊿゚)ξ「弟者、見張っておいたほうが良いの?」

( ´_ゝ`)「…グレンさんってのは、鍛冶屋仲間では一番古い付き合いなんだ。
それこそ、お前達と合流する前の一ヵ月の間、鍛冶屋について色々教えてくれた。
気の良い親父で……。
お前たちと別れて少し不安定になっていた弟者を、おれと一緒に支えてくれた」

視線を伏せ、少しだけ肩を震わせながら話す兄者。

そんな兄者から視線を外し、ツンは既にいくつかのメッセージを飛ばしていた。

ξ゚⊿゚)ξ「フィールドに出ないなら、ぃょぅ君でも良いわね」

.

822 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:34:57 ID:CsIsRGwE0

( ´_ゝ`)「あ、ああ。いよう君って、ふさがメインで面倒見てる…」

ξ゚⊿゚)ξ「ええ。隠蔽スキル系だけなら既にドクオ以上よ。
あのマントを使えばプギャーたち同様に、
草原ですら溶け込めるらしいしそのまま移動も出来るっていうから、
今の弟者なら見破れないはず。
影から見守るだけなら彼でも…」

( ´_ゝ`)「頼む」

ξ゚⊿゚)ξ「弟者はそのグレンさんって人の店に向かったのよね。
位置情報送って」

( ´_ゝ`)「………。今送った」

ξ゚⊿゚)ξ「……ん。きた。ここね。
とりあえず見張るのと、圏外に向かいそうになったら連絡入れてもらうようにする」

( ´_ゝ`)「ああ、それで良い。」

一息つき、作業台に向き合う兄者。

そして目の前の鎌に優しく触れる。

( ´_ゝ`)「グレンさんの作った武器。
あの人らしい、実直で、芯の強い武器だな」

ξ゚⊿゚)ξ「その人、ギルドには?」

( ´_ゝ`)「入ってない。
おれらは合流して以降、自分達は勿論みんなが集めてきてくれた
高レベルの鉱石を使ってたから順調にスキルレベルを上げられたけど、
一人だったグレンさんは地道にやっていた。
……実は一回、ショボンにも相談して、ギルドに誘ったんだ。
でも断られた。
ゲームの中でくらい、自由気ままにやりたいって笑っていたな。
それからもよくしてもらって、鍛冶屋をやっている知り合いでグレンさんにお世話になってない奴は
いないんじゃないかってくらい、顔も広くて」

ξ゚⊿゚)ξ「さっき弟者が言ってた人は?」

.

823 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:36:02 ID:CsIsRGwE0

( ´_ゝ`)「リズベット、アルカン、ズモー、ずぎぞう…。
おれ達の知ってる一線級の鍛冶屋達みんな、グレンさんに世話になっているはずだ」

喋りながら、兄者の手が動く。

取り出したアイテムで、鎌の刃を撫で、炉の炎を操る。

( ´_ゝ`)「最近は、自分で採取も行けないくらい店が忙しいって言ってたんだけどな」

炎が揺れ、赤い光りの奔流に、ツンは顔をそむけた。

( ´_ゝ`)「……ゆっくり眠ってくれ」

澄んだ金属音が工房の中を響き渡る。

兄者の呟きと共に零れ落ちた白い輝きが、炎に巻き込まれて消えた。





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824 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:37:52 ID:CsIsRGwE0




3.からむ糸とほどく針





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825 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:39:10 ID:CsIsRGwE0

40層『バーボンハウス』

カウンターには二人の美女がいた。
だが外から見るとカップルに見えるため、やってきた客はどちらにも声をかけない。
そして悲しそうにカウンターの中の女性に会釈をしながら、店を出る男性一人客が数多くいた。

从 ゚∀从「……なあクー」

川 ゚ -゚)「なんだ?」

从 ゚∀从「もしかして私は男避けに呼ばれたのか?」

川 ゚ -゚)「もしかしなくてもそうだ」

从 ゚∀从「………」

カウンターの中に立つのは黒髪の清楚な美女。
カウンターの外で座っているのは男装の麗人。

VIPのクーと、NSのハインリッヒである。

从 ゚∀从「呼ばれたからなんだと思えば」

川 ゚ -゚)「ショボンに急に店番変わってくれって言われてな、
私が作れるのは簡単なものだけだから居ても居なくても別に良いかと思ったんだが、
今日はアレが来る日だったから」

从 ゚∀从「ああ、さっきのアレ?」

川 ゚ -゚)「そう。アレだ」

从 ゚∀从「少し話には聞いていたが、凄かったな」

川 ゚ -゚)「だろ?」

从 ゚∀从「テンション高かった」

川 ゚ -゚)「疲れるんだ。相手すると」

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826 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:40:44 ID:CsIsRGwE0

从 ゚∀从「魚置きに来ただけなのに、三十分くらい居座ってたな」

川 ゚ -゚)「うざいんだ」

从 ゚∀从「断れよ」

川 ゚ -゚)「そんなことをしたら、毎日のように押しかけてくる」

从 ゚∀从「…マジで?」

川 ゚ -゚)「マジで」

从 ゚∀从「それはきついな」

川 ゚ -゚)「ああ、きついんだ」

从 ゚∀从「で、私もそれにつき合わされたわけだが…」

川 ゚ -゚)「好きな物食べて良いぞ」

从 ゚∀从「好きな物って言ってもな」

川 ゚ -゚)「あと、ショボンはドクオと上の層の街に行ったから、多分二人ともここに戻ってくる」

从*゚∀从「好きなモノ…」

川 ゚ -゚)「それは本人同士の合意の上で好きな様にしてくれ」

从*゚∀从「さっき好きなモノを食べ良いって言ったのにー」

川 ゚ -゚)「私が言ったのは『物』であって『者』じゃない」

从 ゚∀从「ちぇー」

つまらなそうに目の前のグラスの中身をストローで飲み干す。
するとすぐに新しいグラスが差し出され、古いグラスが片付けられた。

从 ゚∀从「ありがと」

川 ゚ -゚)「どういたしまして」

从 ゚∀从「……いいなー」

川 ゚ -゚)「ん?」

.

827 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:42:13 ID:CsIsRGwE0

从 ゚∀从「あれ」

もともと小さな声で会話をしていた二人だが、
更に小さく、囁くような声でハインが呟き、
店の奥に視線を走らせた。

川 ゚ -゚)「…………え?」

从 ゚∀从「いいよな、ああいうの」

川 ゚ -゚)「…ああ、…うん」

視線の先には一組の男女。

ミセ*゚ー゚)リ「はい、フィレフィレ」

(‘_L’)「……ん……」

ミセ*゚ー゚)リ「はい、あーん」

(‘_L’)「あ、あーん」

ミセ*゚ー゚)リ「もっと大きな口開けてくれないと、入らないぞ」

(‘_L’)「ああーーーーん」

ミセ*゚ー゚)リ「はい。よくできました」

女はフォークの先に肉の塊を刺して男に差し出す。
男は口を極限まで開けてその肉を口に入れる。

ミセ*゚ー゚)リ「じゃあ次はねー」

(‘_L’)「も、もう許して…」

ミセ*゚ー゚)リ「ダメだよー。
目の前にこんなにかわいい子がいるのに他の女をチラチラ見たりしたんだから。
これはそのバツでーす」

.

828 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:44:22 ID:CsIsRGwE0

(‘_L’)「ご、ごかいだー」

ミセ*゚ー゚)リ「まあカウンターにいる人達もきれいだけどね。
でもでも、フィレフィレは私だけ見てなきゃだめなの」

(‘_L’)「ミセミセ…」

ミセ*゚ー゚)リ「フィレフィレだーいすきだよ」

(‘_L’)「私もですよ」

ミセ*゚ー゚)リ「それじゃあ次はこのハンバーグを丸ごとー」

(;‘_L’)「誤解です!
あれはあの時カウンターで話をしていた男の人達がうるさいなと思って見ただけで、
カウンターの女性を見たわけでは!」

ミセ*゚ー゚)リ「え?!そうなの!?」

(‘_L’)「そうです!
分かってくれましたか」

ミセ*゚ー゚)リ「フィレフィレが、男の人にも興味があるなんて…」

(;‘_L’)「そ、そうではなくて!」

ミセ*゚ー゚)リ「大丈夫、私がこっちの世界に戻してあげるから!」

(;‘_L’)「で、ですから!」

ミセ*゚ー゚)リ「これはその第一歩!はい、あーんして!」

(;‘_L’)「許して下さい―」

ミセ*゚ー゚)リ「はい、あーんしてね。フィレフィレ」

川 ゚ -゚)「……」

从*゚∀从「……」

.

829 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:45:39 ID:CsIsRGwE0

どうやら男性の方は、
先ほどカウンターに魚を置きに来た二名をうるさいなと思って様子をうかがっていたらしい。
それを女性はクーとハインを見ていいたと誤解し、色々と責めているようだ。

川 ゚ -゚)「ハインは、アレが良いのか?」

从 ゚∀从「良いよな。カップルって感じで」

川 ゚ -゚)「……ドクオと、ああいう事をしたいのか?」

从*゚∀从「えー。そんなはっきり言わなくてもー。クーったらもう」

川 ゚ -゚)「……前から一度真剣に聞きたかったんだが良いか?」

从 ゚∀从「え?なにを?」

川 ゚ -゚)「ドクオのどこが良いんだ?」

从*゚∀从「え!?」

川 ゚ -゚)「いや、ドクオは確かによいやつだ。
アホだしコミュ障だし変態だが、基本的には真面目で誠実で、その行動には好感が持てる。
だが、恋愛と言うと…その……。なぁ。
それにハインはほら、いままでレベルの高い人に囲まれてきたわけだし。
もちろんハインが本気なのは分かるんだが、その……」

从 ゚∀从「カッコいいところ」

川 ゚ -゚)「…………え?」

从*゚∀从「一目ぼれだったんだ。
今でもあの姿は忘れない。
キラキラしてて、かっこよかった」

川 ゚ -゚)「ドクオが……キラキラだと?」

.

830 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:47:01 ID:CsIsRGwE0

从*゚∀从「そのあと話したら真面目で優しくて、
私のことを真剣に考えてくれて」

川 ゚ -゚)「ドクオが、……キラキラ?」

从*゚∀从「武器の扱いとか優しく教えてくれて。
躓いたら助けてくれて」

川 ゚ -゚)「キラキラ…。え?キラキラ?え?だれが?え?ドクオが?キラキラ?」

从*゚∀从「私が好きって言うと照れて何も言えなくなっちゃって。
そんな可愛いところも大好きだ」

川 ゚ -゚)「キラキラ…。キラキラ…。キラキラ…」

从 ゚∀从「クー?聞いてるのか?」

川 ゚ -゚)「え?あ?いや、聞いてるぞ。うん。聞いてる」

从 ゚∀从「なら良いけど、恥ずかしいから二回は言わないぞ」

川 ゚ -゚)「質問なんだが……」

从 ゚∀从「なんだ?」

川 ゚ -゚)「モララーとかジョルジュはイケメンだと思うか?」

从 ゚∀从「ああ、思うぞ。顔は整ってるな。ドクオには負けるけど」

川 ゚ -゚)「……さっぱりもってわからん」

从 ゚∀从?

川 ゚ -゚)「一般的な審美眼とは別の感情的な審美眼。
やはり日常的にきれいなものを見る生活をしていると、
色々と我々とは違う感覚を身につけるのだろうか…。
いや、しかし……。
まあ中身は勿論見た目も好きになったのであれば私が心配することも無いのだが、
いやしかしそうだな…うむ………」

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831名も無きAAのようです:2014/12/31(水) 14:47:10 ID:8zrksYqw0
キラキラだと?

832 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:49:58 ID:CsIsRGwE0

少し悩んだクーが少しして考えることを放棄するのとほぼ同時に、店のドアが開いた。

('A`)「腹減った―」

从*゚∀从「どっくん!」

川 ゚ -゚)「噂をすればなんとやらだな」

('A`)「ハイン来てたんだ」

从*゚∀从「どっくんに会いに来た!」

('A`)「はいはい」

カウンター、ハインの横に座るドクオ。
ハインの前に置かれている物と同じグラスがドクオの前にも差し出される。

('A`)「サンキュー。で、今日のランチ残ってる?」

川 ゚ -゚)「ああ、大丈夫だ」

カウンターのパネルで準備を始めるクー。

从*゚∀从「どっくん、今日はどこ行ってたの?」

('A`)「ショボンと一緒に一番上の層の迷宮区」

川 ゚ -゚)「は?迷宮区?」

出来上がったワンプレートランチをドクオの前に出す。

川 ゚ -゚)「聞いてないぞ?……って、おい…」

('A`)「最初は手前のフィールドダンジョンでの採取と街での買い物で良い予定だったんだよ。
サンキュー。いただきます」

川 ゚ -゚)「あ、ああ。そう聞いてる」

プレートの上のサイコロステーキにフォークを突き立てるドクオ。

.

833 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:51:33 ID:CsIsRGwE0

('A`)「で、行ってみたら前線だけあって情報がこんがらがってたらしくてさ、
迷宮区って言ってもフロア三つ分くらい先のエリアで採取できるらしかったから、
行ってきた」

川 ゚ -゚)「行ってきたって…二人で?」

ステーキを口に運び、美味しそうに口を動かす。
そして隣のサラダに視線を移す。

('A`)「まさか。ジョルジュとブーンも呼び出したよ。
あ、ラドスの実だ。おれこれ苦手なんだよな」

緑入りの野菜の陰に隠れた、ミニトマトの様な野菜を見付けて眉間に皺を寄せた。

从*゚∀从「どっくん苦手だよなそれ。
おいしいのに」

川 ゚ -゚)「そうか…まあその四人なら、なんとかなるか」

('A`)「まあなー。ショボンが敵の情報は仕入れていたし。
初見のダンジョンでもショボンが居ればってやつだな。
ハインはこれすきだったよな。ほれ」

赤い実をフォークで刺し、ハインに向けて差し出す。

从*゚∀从「あーん」

口を大きく開いて実を食べるハイン。
満面の笑みだ。

川 ゚ -゚)「そうか…。で、ショボンはどうしたんだ?」

('A`)「ショボンとジョルジュは兄者のところに。
ブーンは店の前で別れたから、店にいるはず。
もう少ししたら腹減ったメッセージが来るんじゃねーかな」

川 ゚ -゚)「そうか…」

ミセ*゚ー゚)リ「ごちそうさまでしたー!」

(‘_L’)「いつもごちそうさまです」

ミセ*゚ー゚)リ「またきますねー!今度はマラガスのケーキも食べます!!」

川 ゚ -゚)「ありがとうございます」

.

834 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:52:59 ID:CsIsRGwE0

いつの間にか奥のカップルがカウンターの横まで来ており、そのまま外に出て行った。

('A`)「元気だなー」

川 ゚ -゚)「……ドクオ…」

('A`)「ああ、分かってる。大丈夫だ」

川 ゚ -゚)「そうか。ならばいい」

从 ゚∀从?

川 ゚ -゚)「ところで二人とも」

('A`)「ん?」

从 ゚∀从「なんだ?クー」

川 ゚ -゚)「実はもう付き合っているんだろ?」

('A`;)「な、な、な、な、んなわけねーだろ!!!!」

从*゚∀从「私はいつでもオッケーだぞ、どっくん」

('A`;)「おまえもバカなことを言ってるな!!」

从*゚∀从「こんなに好きなのにー。
さっきも間接キスしたし」

('A`;)「間接キス!!??」

从*゚∀从「さっきのフォーク」

('A`;)「あれは前にそうしないと飯を食べないって駄々をこねるから仕方なくやってやったのを!」

从*゚∀从「わたしそんなにこどもじゃないよー」

('A`;)「おいこら!」

カウンターでガタガタと音を立て小声のつもりだが騒いでいる二人。
店の客が何事かとチラチラとこちらを見ている。

川 ゚ -゚)「……もう勝手にしてくれ」

疲れた様に呟いたクーだった。



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835 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:54:10 ID:CsIsRGwE0




4.振り上げた拳の先に





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836 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:55:28 ID:CsIsRGwE0

モララー細工工房

カウンターの中、簡易作業台の前にはモララーがいた。
作業台の前ではあるが、作業はしていない。
目の前に座る人物に対し、接客をしていた。

ζ(゚ー゚*ζ「えー。モララーさんってそうなんですか?
ほんとにー?」

( ・∀・)「いやいやほんとほんと。
結構身持ち硬いんだよ。おれ」

この会話を接客と呼ぶのであれば、だが。

( ・∀・)「奥手だから、声とかかけられなくってさ。
彼女ない歴=年齢なんだよ」

ζ(゚―゚*ζ「絶対嘘ですよー。
あ、いままで付き合った人全員にそう言っているんじゃないですか。
君が初めての彼女だって」

( ・∀・)「そんなことないって。
えー。おれそんな風に見えるのか、ショックだー」

ζ(゚―゚*ζ「だってモララーさんカッコいいですもん。
彼女とか途切れたことなさそー」

( ・∀・)「すごいイメージだな、それ。
でもデレさんにカッコいいとか言われると照れちゃうな」

ζ(゚―゚*ζ「またまた。そんな事ばっかり。
だめですよー。彼女さんに怒られますよ」

( ・∀・)「だからいないって言ってるのになー」

ζ(゚―゚*ζ「はいはい。そういう事にしておきましょうか。
でも私は騙されませんよー」

( ・∀・)「嘘じゃないのにー」

二人の間にある台の上には二つ鉱石が乗っていた。

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837 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:56:36 ID:CsIsRGwE0

一つは黄色、一つは水色。
共に武器や防具の強化に使える素材アイテムだが、
単独でアクセサリーにすることも出来た。

ζ(゚―゚*ζ「さ、モララーさん、お仕事の話に戻しましょ」

( ・∀・)「もっとデレさんのこと知りたいのにな」

ζ(゚―゚*ζ「はいはい。また今度」

( ・∀・)「ブー」

すねた様に唇を尖らせるモララー。
ドクオがやったら一大事だが、モララーがやるとそれすらもさまになっている。

そんな顔をしながらも手元のアイテム、黄色い鉱石をタップするモララー。
ウインドウを出し、内容を確認する。
見ただけで見当は付けていた名前がそこにあった。

( ・∀・)「サシトリン。パワー系の強化アイテムだね。こっちは…」

今度は水色の鉱石を叩く。

( ・∀・)「アルパタイト。スピード系の強化アイテムだね。
でも…たしか、情報が追加されてたような。
他の鉱石と同時に使うことで、パワー系の強化アイテムにかわるとかなんとか…」

ζ(゚―゚*ζ「そうなんですか?知らなかった!」

( ・∀・)「両方ともレアってわけじゃないけど、結構人気だから売れば高額で買ってもらえるはず」

ζ(゚―゚*ζ「へー」

( ・∀・)「もしくは自分の武器の強化に使った方が良くないかな?」

ζ(゚―゚*ζ「上の階の狩りも行かないから、あんまり興味ないんですよ。
きれいな石だからブローチとかネックレスにできたら素敵だなって思って」

( ・∀・)「あーそうなんだ」

ζ(゚―゚*ζ「はい」

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838 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 14:59:14 ID:CsIsRGwE0

( ・∀・)「でも、武器を強化しておくのは良いことだともうけど」

ζ(゚―゚*ζ「んー。私パワー系の武器じゃないからなー」

横に立てかけた両手棍を見るデレ。
細長く、ピンクに塗られたそれは一見武器とは思えないほど装飾されていた。

( ・∀・)「みたいだねー」

ζ(゚―゚*ζ「二つとも、この前ツンさんに作ってもらった服と帽子に合いそうだなって思って」

( ・∀・)「そうなんだ!じゃあこれで何を作るにしても、服を着ているところを見てみないと。
良ければ奥の部屋で」

ζ(゚―゚*ζ「はい!今度着てきますね!」

( ・∀・)「着替えて……う、あ、うん、そうだね…」

ζ(゚―゚*ζ「じゃあこれ、モララーさんのところでも加工できるんですね」

( ・∀・)「うん、出来るよ。じゃあその打ち合わせもかねて食」

音を立てて開かれるドア。

(*゚ー゚)「こんにちはー」

(,,゚Д゚)「こんにちはだゴルァ」

ζ(゚―゚*ζ「お客さん来たみたいなので、またデザイン考えたら来ますね」

( ・∀・)「事でも……。うん。そうだね。あ、いやこいつらは客じゃ」

(*゚ー゚)「突然すみません。お忙しいならまた後できます」

( ・∀・)「!わるいなしぃ!それじゃあ」

ζ(゚―゚*ζ「私はもう帰るから大丈夫ですよ!
それではモララーさん、また宜しくお願いしますね」

流れるような所作で台の上の鉱石を自分のストレージに戻すデレ。
そして可愛らしくお辞儀をする。

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839 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 15:00:24 ID:CsIsRGwE0

ζ(゚ー゚*ζ「それじゃあ失礼します」

( ・∀・)「で、デレさん!」

ζ(゚―゚*ζ「はい?」

可愛らしい両手棍を片手に持って店を出ようとするデレに声をかけるモララー。
振り向いたデレの顔をじっと見る。

ζ(゚ー゚*ζ「モララーさん?」

見惚れているかのようなモララーの視線に、
デレは小首をかしげながら不思議そうに彼の名を呼ぶ。

( ・∀・)「あ、いやその、そ、そう!その鉱石、どこで手に入れたのかなって。
確か採取できるのは結構上の階層だからさ。
デレさんの行ってる階じゃなさそうだから」

ζ(゚ー゚*ζ「ああ、これですか。
公園で店を出してたプレイヤーさんから買ったんです。
ちょっとお話したらお安くしてくれて、すごく良い方だったんですよ。
だからそんなアイテムだったなんて知らなくって、びっくりしちゃいました」

( ・∀・)「あ、そ、そうなんだ。
良かったね」

ζ(゚ー゚*ζ「はい!ではまた来ますね」

モララーには笑顔で手を振り、
軽く会釈をしながらしぃとギコの横を通り過ぎて店を出て行った。

(*゚ー゚)「ギコ君、可愛い人にお辞儀されてニヤニヤしないの」

(;,,゚Д゚)「し、してないぞゴルァ」

(*゚ー゚)「すみませんモララーさん、お邪魔しちゃって」

( ・∀・)「お、おう。ほんとだぞおい。今日こそは落とせそうだったのに」

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840 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 15:01:55 ID:CsIsRGwE0

真剣な瞳でデレの後ろ姿を見送っていたモララーだったが、
しぃに声をかけられると普段の砕けた調子に戻った。

(*゚ー゚)「……それは申し訳ありませんでした」

(,,゚Д゚)「とてもうそういう風な相手には見えなかったぞゴルァ」

(;*゚ー゚)「ちょ!ギコ君!ホントの事でも言っちゃダメ!」

( ・∀・)「………お前ら二人とも出てけ」

(*゚ー゚)「あ!ご、!ごめんなさい!ほら、ギコ君も!」

(;,,゚Д゚)「す、すまなかった!」

( ・∀・)「なんだろう。謝られると更にムカつくこの感じ」

その後モララーの機嫌を直すのに、三十分の時が過ぎた。





( ・∀・)「で、なんだよ」

その三十分の間に二組の客もあり、
それなりに売り上げもあったためモララーの機嫌はある程度まで回復していた。

だが少し冷たさを残しているのは、
慌てたしぃとギコを見るのが面白いと思ったモララーの人の悪さである。

そしてそれはゆったりと来客用のソファーに腰かけているモララーと、
その横で直立不動で立っているしぃとギコという状況も作り上げていた。

(;*゚ー゚)「はい…」

(;,,゚Д゚)「ゴルァ…」

( ・∀・)「なんだ、言い辛いことなのか?
とりあえず言ってみろよ」

口を濁す二人を見て少し遊び過ぎたかと反省したモララーは笑顔で声をかけるが、
二人は互いの顔を見ながら言い出せないでいた。

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841 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 15:04:01 ID:CsIsRGwE0

( ・∀・)「どうした?
……なんかミスでもしたのか?」

(*゚ー゚)「一つ、知っていたら教えてほしいことがあります」

意を決したように口を開くしぃ。
その真剣なまなざしに、モララーも座ったままだが背筋を伸ばした。

( ・∀・)「…なんだ?」

(*゚ー゚)「…VIPとラフィンコフィンは、どういった協力関係なんですか?」

それは、しぃにとって一世一代の賭けだった。
今しぃが持っている情報から質問をするのならば、
『VIPとラフィンコフィンは繋がりがあるんですか?』
と聞くのが正しいのであろう。
だがしぃはあえて既に繋がりがあるという前提をもち、
更に自分がそれを知っているというミスリードを出来るような質問を必死に考えたのだ。

(,,゚Д゚)「ゴルァ!」

知識は、武器になる。
知らないという事実を隠し、
知っているという嘘を武器にしたしぃ。
それは全て会話の主導権を握り、自分の知りたい情報を、真実を手にするため。

そしてギコはそれに追随し、
自分らしくモララーに詰め寄った。

( ・∀・)「ラフィンコフィン…ね……」

しかしモララーはその言葉に慌てることは無かった。
落ち着いて素早く入り口のドアを見る。
続いてその横の飾り窓も観察。
こちらを伺う人影が無いのを自動発動したスキルを使って確認し、
一息ついた。

( ・∀・)「少なくとも、こんな外から覗かれまくり盗聴し放題の場所で聞くことじゃないな」

(*゚ー゚)!

(,,゚Д゚)!

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842 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 15:06:14 ID:CsIsRGwE0

腰に携えた武器を触れながら先ほどモララーが気にした方に身体を向ける二人。

( ・∀・)「大丈夫だ。ドアは閉まっているし、
ショボンの趣味でこの店の盗聴防止レベルは高めだからな。
お前らが話があるって時点で、レベルも上げてある。
今確認した限りじゃ、外で聞き耳を立てていたやつも覗いていたやつもいない」

モララーの言葉に緊張を緩める二人。

( ・∀・)「だが自分の言葉には責任を持て。
たった一言で、ギルドのメンバー全員が周りから非難され、
殺される可能性だってある」

声も無く、身体を強張らせる二人。

そんな二人を横目に店のドアを開け、閉店の表示を出すモララー。
そしてドアを閉めると鍵をかけ、操作パネルを出す。
外から中が伺える飾り窓が、不可視モードに変わった。

(*゚ー゚)「…すみません」

( ・∀・)「謝られても仕方ない。
今回はそんなことにはならなかった。
事実はそれだけだ」

改めてソファーに座るモララー。

背凭れに身体を預けてゆったりと腰かける。
足を組み、端正な顔を歪め、汚物を見るような視線を二人に向ける。

非難もフォローもしない。
事実をただ淡々と告げるだけ。

(*゚ー゚)「……」

(,,゚Д゚)「……」

そして何も言えないでいる二人をゆっくりと見る。

( ・∀・)「(………)」

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843 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 15:07:36 ID:CsIsRGwE0

モララーは、会話の主導権を握ることに成功した。

実のところ、しぃとギコがこの件に関して聞きに来る可能性があることを、
クーからの連絡で予想していた。

そこで幾つかの質問内容と状況のシミュレーションをしておいたのだ。

( ・∀・)「(……だが)」

この状況下でしぃが発した質問は、そのシミュレーションの中でも最低レベル。
モララーにとっては胸ぐらを掴んで殴りたいレベルであった。

( ・∀・)「(最悪のケースだな)」

自分の容姿が整っていることを認識しているモララーは、欠点もよく分かっていた。

それは、威圧感が無いこと。
整ってはいるがどこか中性的な自分の顔が、
凄みや迫力には欠けることをよく知っていた。

だから激情に任せて怒っても、怒鳴っても、
どこかただのヒステリーの様にみられてしまうことがあることを理解していた。

そしてそれはいつも人の顔色を伺っていた今までの生活の影響だということも。

( ・∀・)「(予想してなかったら、危なかったな)」

だからシミュレーションし、
人から敵意を向けられない様にいつも見せている笑顔を封印し、
怒っているように見える姿を工夫した。

だが、今回はその必要は無かった。

彼は、本気で怒っていた。

憤怒と言ってもよい。

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844 ◆dKWWLKB7io:2014/12/31(水) 15:08:36 ID:CsIsRGwE0

ショボンが、仲間が、自分が、必死で守っているこのギルドを、仲間を、
ほんの少しでも脅かす可能性のあることをしたこの二人に対し、
憎しみと言っても良い憤怒の気持ちを全く隠すことなく、
二人に向けて放出しているのだ。

失敗は誰にでもある。
仲間の事を、ギルドの事を思っていても、
空回りしてしまうことはある。
それは仕方ない。

だけどこの女は違う。

ギルドの事なんて、仲間の事なんて考えていない。
考えていたら、こんな場所で、こんなふうに、あんな質問を出来る訳がない。

自分の事と、隣にいる男の事しか考えていない。

そんなやつを、仲間だなんて認めることは出来ない。

そんな思いが、モララーの頭の中をぐるぐるとまわった。

( ・∀・)「お前を仲間だと認めない」

おもわず口にした言葉。

はっとした顔でモララーを見る二人。

モララー自身、その言葉に驚いていた。

だが一度口にしてしまった以上、その責任は取らなければならない。

( ・∀・)「このギルドとラフィンコフィンの関係…ねぇ。
関係があることは、もう確定なんだな、お前の中で」

(*゚ー゚)「そ、それは」

( ・∀・)「推測だけで、殺人ギルドとこのギルドが協力関係にあるだなんて、確定したのか?」

(*゚ー゚)「………」

( ・∀・)「自分の好奇心だけで、あんな質問をしたのか?」

(*゚ー゚)「違います!私はただ事実を知りたくて!」

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