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( ^ω^)優しい衛兵と冷たい王女のようですζ(゚ー゚*ζ

410名も無きAAのようです:2013/08/31(土) 23:12:22 ID:m1INFahM0
明日夜か……
最近寒くなってきたし靴下だけは履いて待ってる

411名も無きAAのようです:2013/08/31(土) 23:25:07 ID:S2dFR5J6O
今日予告ということは1日でほぼ書き終わったということか 
ハイペースもいいけど無理するなよ

412 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/31(土) 23:39:10 ID:t8lg.qj.0
>>411
おっしゃるとおりです……
第四話でお話の前提がでそろうので、そこまでどうしても短期間で投下したかったんです。
そこからはもう少し余裕を持って臨もうと思います。腰も痛いし。
お楽しみに。

413名も無きAAのようです:2013/09/01(日) 03:32:49 ID:YE3GlqKM0
腰お大事に
ハイペースで嬉しいけど無理しないでね

414 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 22:28:37 ID:X94qherQ0
そろそろ投下を始めますね。

415 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 22:30:01 ID:X94qherQ0
ブーンはレジスタンスに加わった。

すでに彼はその活動に参加している。
暇をもらっているうちに、『三匹のカエル』に寄り、話し合う。
そして時折町で起きている魔人絡みのトラブルを解決していく。

解決と言っても、大それた事件があるわけではなく
お城によって揉み消されてしまいそうなものをしっかり成敗する、という役割だった。

情報を集めてくるのはシュール。
現場に赴くのはジョルジュやブーン。
もう少し大きな事件になればドクオやヒートも参加するそうだが、今のところその気配はなかった。

いずれにしろ、ブーンは新入りという立場上、比較的よく働かされている。

月は移った。
今は10月。

そろそろお休みの時期も終わりかな、これからは参加の間隔があいてしまうだろうな
そんなちょっとした不安をブーンが抱き始めていた頃。




     ☆     ☆     ☆

416 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 22:31:01 ID:X94qherQ0
ある日のお昼

(-@∀@)「号外だよー!!」

新聞屋が駆けまわっていた。
お城からスタートして、中央広場、商店街、住宅街
その背負った新聞を一枚一枚、道行く人々に配っている。

(-@∀@)「新嘗祭の日取りが決定したよー」

そのお触れが出されたのはつい先ほどのことだった。
政務官、貴族、町内会長、それに加えて国王が討議した結果だ。

(-@∀@)「ほら、お兄さんも」

('A`)「え? ああ、はい」

半ば押しつけられる形で、ドクオは新聞を手に入れた。
読もうとする間に新聞屋は走り去ってしまう。

('A`)「どれどれ……」

書かれている日付は、今日から3週間後。
もう秋が深まる時期になってようやく開催されるとのことだった。

417 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 22:32:01 ID:X94qherQ0
それじゃ新嘗祭の意味がないじゃないか。
そう突っ込みながらも、ドクオはそこに掲載された写真を見る。

満面の笑みを浮かべたショボンの写真。
よほど祭が行われることが楽しみなのだろう。
それにしても、相変わらず間抜けな顔をしている、とドクオは内心悪態をつく。

実際今のショボンはその人柄から、面白がられこそすれ、あまり尊敬されているとは言い難かった。

魔人をお城に入れなかった頃は、むしろ今とは逆に気の毒なほど暗くて棘のある人物だった。
その独特の雰囲気から、恐れられたり、時にはかっこいいと言われることもあったらしい。

しかし今のショボンは丸くなっていた。
人当たりが良くなったと言えば聞えもいいか。

こうして暢気に新嘗祭の日取りを決めているあたり、
親近感こそ湧くが、他もやることがあるんじゃないかなとも訝しんでしまう。

('A`)「あれ……」

そこで、ちょっとしたことにドクオは気付いた。

この写真はおそらく国王の部屋で撮られたものだ。
壁には数々の装飾品が飾られている。
その中には今時珍しい武器や防具なども見られた。インテリアとして飾られているのだろう。

418 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 22:33:02 ID:X94qherQ0
('A`)「これは、まさか」

ドクオが目を細める。
写真の中のそれが、自分の思い描いているものと同じか確認するために。

ドクオの気を引いた装飾品、それは壁に飾られた剣だった。
カラー写真なので、その色合いもよくわかる。

黄金色の柄に、赤い宝石がひとつ埋まっている。
大きなルビーの原石。

これと同じものを、ドクオは何度も目にしていた。



     ☆     ☆     ☆

419 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 22:34:01 ID:X94qherQ0









―― 第四話 猜疑の瞳と月下の告白 ――








.

420 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 22:35:02 ID:X94qherQ0
翌日の朝。

リ´−´ル「ツンちゃん、ツンちゃん!」

彼女が声をかけられたのは、G棟寄宿舎の廊下だった。
ツンは自分の部屋から出てきたばかりである。

ややふくよかな体系の、優しそうな女性。
何度か見覚えがあった。

ξ゚⊿゚)ξ「あれ、F棟の管理人さんじゃないですか」

主にブーンの部屋に寄るときに会っていた。
従者見習いが衛兵見習いの寄宿舎に入るためには許可が必要になる。
だから管理人とも知り合いになっていったのだ。

リ´−´ル「ツンちゃん、よくブーンくんに会っていたんだよねえ?」

ξ゚⊿゚)ξ「ええ、まあ。友達ですから」

リ´−´ル「実は、彼のことでちょっと困ってることがあって」

ξ゚⊿゚)ξ「え?」

寝耳に水だった。
ブーン、確かに最近彼に関して思うことはある。
でも決してネガティブなことじゃない。

421 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 22:36:01 ID:X94qherQ0
彼は最近妙に明るくなっていた。
モララーが亡くなったときはずっと悲しんでいたのに
それが、城下町に赴いた途端、変わっていったのだ。

何か町で楽しみでも見つけたのかな、とツンは思っていた。
それはそれで喜ばしいことだ。
そのためツンは特別彼に追求はしていない。

あの様子なら、きっと変なことには手出ししていないだろう。
そう思って、安心していたのに。

ξ゚⊿゚)ξ「……何があったんですか?」

やや慎重に、ツンは管理人の返事を待つ。
管理人は自分の口の傍に手を添える。

リ´−´ル「実はねえ、最近ブーンくんの帰りが遅いのよ」

発言をしっかり聞きいれて、ツンはわずかに安堵した。

422 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 22:37:01 ID:X94qherQ0
ξ゚⊿゚)ξ「それは……きっと町で遊んでいるからじゃないですかね?
 落ち込んでいたようだし、そういうことで遅くなってもしかたないんじゃないでしょうか」

リ´−´ル「それはそうなんだけど……こう何日も遅く帰られると私の立場としてもよくなくてね」

ξ゚⊿゚)ξ「そんなに、なんですか?」

リ´−´ル「ええ、もう1週間以上、毎晩遅くに帰ってくるの」

ξ゚⊿゚)ξ「え?」

これまた初めて聞く話。
思わず疑問符をつきつけてしまった。

思い返してみれば、ブーンを見かける機会は少なくなっていた。
以前よりもずっと。

リ´−´ル「ブーンくん、いっつも真面目で良い子だったのに。
 そんなに遅くまで何をやっているのか、怖いことにならなきゃいいなと心配で」

423 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 22:38:00 ID:X94qherQ0
ツンの耳に、管理人の言葉が届く。
その意味内容が、冷や汗を流させた。

ツンは顎の下に手をつけて「うーん」と唸る。

引っ込んでいた不安が浮かんでくる。
ブーンは何をしているのか。

何か危ないことに手を出しているんじゃないのか。

ξ゚⊿゚)ξ「それじゃ、ちょっと聞いてみます。
 あいつが復帰するときってわかります?」

リ´−´ル「ちょうど明日よ。お昼前の訓練に参加するはずだから
 訓練場に行けば会えるんじゃないかしら」

頼んだ、との意味で管理人はツンに頭を下げる。
ツンもまた同じように頭を下げた。



     ☆     ☆     ☆

424 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 22:39:05 ID:X94qherQ0
同日のお昼

衛兵見習い訓練場入口。

ξ゚⊿゚)ξ「という話があったんだけど」

さっそく、ツンは話題のブーンの前に立っていた。

(;^ω^)「……」

ブーンは黙って、目を泳がせている。
何か言い訳しなくては、だけど咄嗟には出てこない。
まさか復帰初日から、こんな追求をされるとは思っていなかった。

今二人は壁際にいた。
ツンが壁に片手をついて、ブーンの前に聳え立っている。
まるで尋問だとブーンは思った。

ξ゚⊿゚)ξ「何かいうことないの?」

(;^ω^)「うーん……遊んでいたじゃだめなのかお?」

425 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 22:40:01 ID:X94qherQ0
ξ゚⊿゚)ξ「管理人が納得しきっていなかったわよ。
 それに、いったいどんな遊びなのよ?」

(;^ω^)「それは、その……酒場とか」

ξ゚⊿゚)ξ「酒場!? あなたお酒のんでいたの?」

(;^ω^)「いやいや、違うお! 誤解だお!
 僕はちゃんとジュースしか飲んでないお!」

ξ゚⊿゚)ξ「……じゃあ、どうして酒場に?」

(;^ω^)「それは……その、実は知り合いがそこで働いてまして」

ξ゚⊿゚)ξ「だれ?」

(;^ω^)「あー、昔衛兵見習いやってて、やめちゃった奴だお。
 やめたあとに自分探ししていたらしくて、その酒場に落ち着いているんだお。
 この前城下町に降りたときに出会って懐かしくて、楽しんでいたんだお」

ここでジョルジュの名前を出したらややこしくなる。
ブーンはなんとか彼の名前を言わずにこの場を取り繕おうとした。

426 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 22:41:00 ID:X94qherQ0
(;^ω^)「ほらでも、酒場にいるなんてさすがに言えなかったんだお。
 そいつもお酒を飲んじゃいけないはずだし、
 もしかしたら言ったことで迷惑がかかっちゃうお」

(;^ω^)「だから黙っていたんだお。それで迷惑かけてしまったならごめんだお」

ξ゚⊿゚)ξ「……ふーむ」

ツンが訝しげな表情をする。
鋭い視線が突き刺さる。

ブーンは身を固くしてツンの裁決を待った。

ξ゚⊿゚)ξ「……筋は通っているわね」

ほっとする。
溜めていた息が口から洩れる。

( ^ω^)「そ、そうかお。よかったお」

ξ゚⊿゚)ξ「ただ、このことちゃんと管理人に報告しておくからね」

( ^ω^)「あ……うん。わかったお」

なんとか危機を脱した。
手を振って去っていくツンの、金色の髪を眺めながら
これはますます活動しにくくなると思い、ブーンは顔を青ざめていた。




     ☆     ☆     ☆

427 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 22:41:59 ID:X94qherQ0
3日後のランチタイム

『三匹のカエル』

復帰してすぐに休みを要求したことでかなり怪しまれたが、許可はもらえた。
ただ、雰囲気から察するに、これからは一週間に一度しか休みはもらえないだろう。

客は数人だけいる。
町の技術工のおやじたちで、このお店の常連だ。
彼らはお店の隅に集まって、何事かを賑やかに談笑している。

その対角線上にブーンは座っていた。
向かいにはドクオがいて、話を聞いている。

( ^ω^)「……という話があったんですお」

ブーンはツンから疑いの目をかけられたことを述べた。
ドクオは口を窄める。

('A`)「……このままで大丈夫だと思うか?」

(;^ω^)「いやー、厳しい気がしますお。
 もし僕がレジスタンスの仲間入りしていることがばれたらと思うと……
 絶対に上官からは良い顔をされないですお」

428 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 22:43:00 ID:X94qherQ0
('A`)「うまく立ち回る自信がないなら、少し控えた方がいいかもしれないな。
 しかし、今日もあっさり来てしまっているけどいいのか?」

( ^ω^)「まあ、外から見てればただの酒場ですし。
 お城の上官そのものに目をつけられるよりかはましだった気がしますお」

(;^ω^)「むしろドクオさんは今までどうしていたんですかお?」

('A`)「俺はばれないように動くのが得意なんだ」

(;^ω^)「……影が薄いだけですおね?」

( ゚∀゚)「ようよう、何の話だよ」

カウンターから出てきたジョルジュが、陽気に声をかけてきた。

( ^ω^)「お、仕事いいのかお?」

( ゚∀゚)「どうせあのおっさんらは話しているだけだしな。
 それで、何の話さ」

('A`)「それがなー、レジスタンスに入っているってことばれそうなんだってさ。
 お城側の人にさ。めんどくさそうだよなあ」

( ゚∀゚)「そうかそうか、やめちゃえよ」

( ^ω^)「ちょ」

429 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 22:44:00 ID:X94qherQ0
( ゚∀゚)「んなことよりさあ、最近輸入が滞っているんだけど、お城側でなんかわからない?」

あっさり話題を変えられて残念だったが、それはそれで興味のある話題だった。

( ^ω^)「輸入……それ自体はわからないけど
 世界のニュースが入りにくくなったとかぼやいている友達がいたお」

思えばその人が、ブーンを疑っている張本人。

( ゚∀゚)「んー? 外との関わりを絶ってる?
 でも、その割には外交にいってるよな」

( ^ω^)「あれは北のマルティア王国にいってるんだお。
 前々から親交があるとかで。大事なお得意様なんだろうお」

('A`)「この国は外交後進国だから、そういう繋がりは大事なんだな」

( ゚∀゚)「ふむむ、だったらなおさら、なんで輸入できないのかわからん」

430 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 22:45:00 ID:X94qherQ0
('A`)「あまり貿易しない国なんだろ。
 とりあえずここにいるうちはシュールの発明で我慢するしかないな」

lw´‐ _‐ノv「そうだ」

(;゚∀゚)「うおお、びっくりしたあ!」

(;^ω^)「というか、え、誰もカウンターにいないのかお?」

lw´‐ _‐ノv「大丈夫、すぐに連れていく」

シュールはジョルジュの襟首を掴み、引っ張っていく。
どうやら単純に、さぼっているジョルジュを持っていくためにきたらしい。

賑やかさが遠のく。

( ^ω^)「そういえば、ドクオさんの方こそ今日は来てほしいって話だったじゃないですか。
 なんなんですかお? そういう事情なんであんまり遅くまではいられないんですけど」

('A`)「ああ、今後の方針があってな。
 ひとつ大きな仕事を見つけたんだ。ランチタイムが終わるまで待ってくれ」

431 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 22:46:03 ID:X94qherQ0
技術工たちが帰ったのは午後3時。
ランチタイムの時間いっぱいまで居座られていた。

その集団が去って、さらに数分後になり

扉が開かれる。

ノパ⊿゚)「遅れたわー」

ぐだぐだな様相で、リーダーが入ってきた。

('A`)「言うくらいなら遅れるなよ……
 よし、みんな集合したな」

語り方からして、どちらがリーダーかわかったもんじゃない。

思うに、リーダーという肩書自体前の盗賊団から通して使っているというだけなのだろう。

432 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 22:47:00 ID:X94qherQ0
酒場には、レジスタンスのメンバーのみ。
ドクオは各自の顔を見回して、それから一枚の紙を取りだした。

( ^ω^)「新嘗祭の号外ですかお?」

('A`)「そう。このカラー写真を見てくれ」

写真に映る、ルビーの剣。

('A`)「……誰かこれを覚えている者はいないか?」

その剣を見たとき、ブーンはどこかに引っかかるものを感じた。
自分は確かにあれを見たことがある。何度も。

( ゚∀゚)「……ある」

カウンターからジョルジュが言う。

( ゚∀゚)「モララーさんの剣だろ?」

その言葉を聞いて、ようやくブーンは思い出した。
モララーが持っていたルビーの剣。
それが国王の背後に飾られているということは、今は国王の所有物なのだろう。

( ^ω^)「なんで、モララーさんの剣がそこにあるんですかお?」

433 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 22:48:00 ID:X94qherQ0
('A`)「理由は二つ考えられるな。
 一つは国王自身がそれを欲しくて、事件の際に奪ったというケース。
 もう一つは誰かが事件で盗んで、国王にそれを献上したというケース」

lw´‐ _‐ノv「それじゃ、モララーさんがいなくなったときも持っていっていたのか?」

('A`)「ああ。あの任務のときに確かに持っていた」

ノパ⊿゚)「それなら、最初のケースじゃないな。国王はその頃外交でいなかったわけだし。
 誰かがそれを奪って国王に献上したってことか」

( ゚∀゚)「また魔人か?」

('A`)「それはわからない。確かに俺たちは魔人に襲われたが……
 誰かがその魔人を操って奪ったのかもしれない。その操った人間が国王ということも考えられる」

('A`)「とにかく、あの剣はモララーさんの大切な家宝で、事件以後は行方不明になっていた。
 俺としてはなんとしてでもあれを取り戻したいんだ。モララーの大切な品を、あんなところに置いておきたくない。
 誰か、この考えに賛成してくれる者はいないか?」

ブーンはもう完全に思いだしていた。
モララーさんは衛兵になってからというもの、ずっとあの剣を携えていた。
家族を魔人に襲われたモララーさんにとって、家宝のそれは大切な思い出の品だったのかもしれない。

434 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 22:48:59 ID:X94qherQ0
それを取り戻したいというドクオの気持ちもわかる。
ブーンとしても、あの剣がひっそりとお城に飾られてしまっているのは釈然としない。
魔人と繋がっているあのお城に。

ノパ⊿゚)「あたしはやるぞ。
 結局は盗めばいいんだろ? お安いご用さ」

ヒートが勢いよく手を挙げて答える。
ドクオは「ありがとう」と言って、別の人々の目を見て回る。

('A`)「他は?」

( ゚∀゚)「他も何も」

ジョルジュが口を挟む。

( ゚∀゚)「このレジスタンスに、あの人に恩が無い人なんていないでしょうよ。
 どうせみんな行きたいはずさ。そうだろ?」

ジョルジュがそう言ってみんなを眺めた。
ブーンを含め、全員が首を縦に振る。

( ゚∀゚)「というわけですよ、ドクオさん。
 そうと決まれば奪還作戦の計画を練りましょうよ」

ジョルジュの目が次第に輝いていく。

お城に忍び込む、それだけ大それたことを行える機会がやってきたのが嬉しいのだろう。

435 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 22:49:59 ID:X94qherQ0
それはブーンとしても同じ事であった。
何せお城は魔人によりガードされている。
たとえ敷地内で暮らす衛兵見習いとしても、1階の講堂以外には入らない。。

他の場所は用が無い限り立入禁止だ。

もちろんデレがいるところも。

そこで一つ思いつきがあった。
ひょっとしたら、お城にいけば彼女に会えるんじゃないか。
いや、会うまではいかなくても、彼女の行動に関する手掛かりは見つかるかもしれない。

たとえば、部屋に入るとか。

('A`)「よし、じゃあ次回集まったときに詳しく決めようじゃないか。
 忍び込む目途だけでも決めておきたいんだが、いつがいいだろう」

( ^ω^)「あ、あの……」

若干気が引けるものの、ブーンは手を挙げる。

( ^ω^)「新嘗祭のときがいいんじゃないですかお?
 国王だって町を回っているだろうし、警備はそっちに行ってしまっているし」

lw´‐ _‐ノv「……いいな」

ノパ⊿゚)「うん、いいと思う!」

436 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 22:50:59 ID:X94qherQ0
賛同する声があがる。
ブーンは頬が熱くなった。
なかなかなれるものでもないが、素直にうれしい。

('A`)「よし、3週間後か。そうと決まれば新嘗祭の状況がどうなるか調べてみよう。
 各自できることを調べておいてくれ。1週間後ここで会おう」

そしてその場は解散となった。

( ^ω^)「僕早めに帰りますお」

ツンの話があってから、帰る時刻には気をつけている。
この時間なら文句はないはずだ。

玄関の扉を開け、外へ。
冷えつつある空気。
もうじき冬が来る、そんな予感を感じさせる。

そんな、道の上

437 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 22:52:00 ID:X94qherQ0
ξ゚⊿゚)ξ「……」









( ^ω^)「……」









( ^ω^)「……え?」

438 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 22:53:00 ID:X94qherQ0
(;^ω^)「ツ、ツンかお!?」

反射的に、ブーンは後ろ手で扉を閉めた。
バタンという強い音。

ξ゚⊿゚)ξ「あー、ここだったのか!」

ツンは扉周りをしげしげと観察して回る。

(;^ω^)「な、なんでここに?」

ξ゚⊿゚)ξ「いやね、あんたをこのへんで見かけたって話を聞いたから。
 このあたりの酒場ってどこだろうなーって、回っていたところなのよ」

(;^ω^)「なんでそんな探偵みたいなことするお!
 こんなの個人の自由だろうお!」

ξ゚⊿゚)ξ「何怒ってるの? 私のだって個人の自由じゃない。
 あれ、この看板どこかで」

ツンは店の軒先に掲げられた看板を見る。
三匹のカエルの絵。

レジスタンスのマーク

439 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 22:54:00 ID:X94qherQ0
(;^ω^)「ツン!! そろそろ僕も帰るし、一緒に帰るお!
 お店の場所もわかったことだし、今日のところはいいおね?」

ξ゚⊿゚)ξ「え? ああ、うん」

首を傾げるツンの背中をを押す。

ξ゚⊿゚)ξ「ちょっと、なおさら危ないって!」

(;^ω^)「ごめんだお!」

ξ゚⊿゚)ξ「なんか随分挙動不審じゃない?」

(;^ω^)「いつものことだお」

ξ゚⊿゚)ξ「……そんなこと、ああ、まあいつもそんなだったっけ」

眉を顰めるツン。

何か言葉をつづけなきゃと思った。

そのとき、背後の扉がわずかに開く。

440 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 22:55:00 ID:X94qherQ0
('A`)「おい、何騒いでるんだ」

顔だけを出して、ドクオが言う。

(;^ω^)「あ……」

ブーンはドクオの顔を確認し、慌ててツンを見る。
彼女は相変わらず顔をブーンに向けていた。

ツンはドクオを知らない。
よかった、ドクオを見て怪しがられたら言い逃れできないところだった。

('A`)「……あれ、おい」

何故か、ドクオが声をかけてくる。
冗談じゃない、これ以上ここにいたらぼろがでてしまう。

(;^ω^)「し、知り合いですお! ちょっと僕に会いに来たみたいで……
 とりあえずここは帰りますお!」

そう言って、さっきよりも必死でツンを押す。

441 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 22:56:00 ID:X94qherQ0
ξ゚⊿゚)ξ「ちょ、ちょっと! ちゃんと歩くわよ!」

苛立つツンも、ようやく帰る気になってくれたので、ブーンは安心した。

二人は急いでその場を退散する。

('A`)「あいつは……」

そのドクオの最後の言葉は、誰の耳にも至らなかった。

こうしてその場はひとまず収まった。

ブーンの心の中はおさまるどころじゃなかったが。

442 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 22:56:59 ID:X94qherQ0
本格的に良くないことになってきた。




せめて新嘗祭が始まる前までに対策を練らなければならない。




そう思い、この日からブーンは毎晩計画を練ることにした。




ツンをうまくはぐらかすために。





     ☆     ☆     ☆

443 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 22:58:08 ID:X94qherQ0
新嘗祭まであと2週間

ラスティア城、5階 貴族の間

お城には貴族が暮らしている。
国王であるショボンに近い親戚やその家族だ。
国王と王女が使っていないお城の部屋は基本的に彼らが使うことになっている。

彼らがお城に本格的に入ってくるようになったのも3年前からであった。
それまではごく少数の親族しか暮らせなかったので
その頃と比べれば現在は賑やかになったといえる。

貴族のほとんどは政治に務める。
かつては戦争にて率先して戦場に駆けつける役目もあったが、今時は無い。
わずかに衛兵隊長が貴族の血を引いているだけ。それだって、実力だ。

また、貴族全員がラスティア城にいるわけでもなく、
統治能力に長けた貴族はショボンの判断で地方の領主となることもあった。

そんなお城に暮らす彼らが、今日は貴族の間に集結していた。
お仕事を離れての、3か月に一度のパーティのためである。
たとえお祭りの日が近づいていようとも、従来通りに行われていた。

444 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 22:59:00 ID:X94qherQ0
ζ(゚ー゚*ζ「……なんだか久しぶりに参加したわ」

ショボンの隣の椅子に座って、デレが呟いた。
彼女がこのパーティに参加するのは、実に1年ぶりのことだった。

(´・ω・`)「いろいろあったからね、仕方ないね。
 他の貴族の人たちとは話してこないのかい?」

ζ(゚ー゚*ζ「いいわ。歩くと疲れてしまうし」

(´・ω・`)「そうか……
 デレは新嘗祭にも出ないのだから、もっと楽しめばいいのに」

ζ(゚ー゚*ζ「ふふ、私はそういう賑わいを外から眺める方が好きなんですよ。
 それに、お話合いのときはちゃんと出席しているでしょう?
 私にはあれで十分ですよ。どんなお祭りになるのか、それだけ聞けば十分」

そういって、デレは微笑みをショボンに向けた。

(´・ω・`)「……そうだね、また来週には町長たちを交えての話し合いもしなきゃだし……」

ショボンはそれ以外にも何かを言いたそうにデレを見つめたが、やがて何度か小さく頷いて目を離した。
パーティの様相を眺めるその顔は、どこか悲しげである。

445 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 22:59:57 ID:X94qherQ0
貴族たちは思い思いに部屋を歩き、談笑をしている。
立食パーティなので移動はしやすい。
自分と趣味があう人と一緒に会食をし、お酒を飲み、楽しんでくれている。

|゚ノ ^∀^)「ショボンちゃん、外交お疲れ様」

ふいに声を掛けられて、ショボンは振り向く。

(´・ω・`)「やあ、レモナさん。こちらこそ、お世話になったよ。
 あなたの文章力で私のスピーチはいつも助けられている」

|゚ノ ^∀^)「いえいえ、あれくらいお安いご用ですよ。
 あら、デレちゃんもお久しぶり! なんだか大きくなったわね」

ζ(゚ー゚*ζ「最後に会ったのはまだ私が小さい頃でいたから」

貴族の一人、レモナ。
ショボンにとっては従妹にあたる。

彼女は3年前にお城にたくさん入ってきた貴族のうちの一人だった。
それまでは北の、マルティア国との境目にある領土で生活をしていた。
デレははるかな昔、まだ母親が生きていた頃にそのお城を訪ねたことがあったのである。

まだ父親である国王が、外の世界を恐れていなかった頃。

|゚ノ ^∀^)「懐かしいわね。本当に」

446 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:00:59 ID:X94qherQ0
3年前に入ってきた人たちの入城理由は多々ある。
彼女のように、辺境の領土から越してくる者は多かった。
大概に置いてラスティア城の方が生活しやすく、活気もあったからだ。

より裕福で暮らしやすい生活をしたい。
それは人間の本能であり、決して悪いことではない。

でも、貴族の人たちは表立ってそんなことは言えない。
ショボンの身を案じてとか、世間の中心に立ちたいとか
好き勝手に建前を述べる必要があった。

このレモナにしろ、例外ではない。
そしてそのような人たちは、デレにとって心を開く対象にはなりえなかった。

|゚ノ ^∀^)「そうだ、私の息子もだいぶかわったのよ。
 ちょっと呼ぶね、おーい」

元気よく、レモナが声をかける。
パーティ会場の隅の方に、青年が座っていた。
彼がレモナの息子なのだろう。

(-_-)「……」

青年は、レモナとは対照的に物静かだった。
悪くいえば暗い。レモナと並んでも、とても親子とは思えないだろう。

447 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:01:57 ID:X94qherQ0
そして何より、その青年を見かけたことは今まで無かった。
3年間生きていてである。
よほど表に立たない人なのだろうか。だとしたら自分以上だ。

彼が近づいてくる間に考えたが、やはり思い出せない。

ζ(゚ー゚*ζ「えっと……ごめんなさい。
 以前お会いしたのかもしれないけど、もしかしたら私、忘れちゃったかも」

|゚ノ ^∀^)「ああ、いいのよ。本当に小さいときの話だし
 あれからこの子もだいぶ変わったからね」

そう言って高らかに笑いだす。元気な人だ。
やってきた静かな青年がますます対比されて映し出される。

|゚ノ ^∀^)「ほら、ヒッキー、挨拶しなさい」

催促されて、ヒッキーは頭を下げる。
しかしそこから言葉は続かず、そのままパーティの席へ戻ってしまった。

レモナが腰に手をついて溜息をつく。

|゚ノ ^∀^)「あの子もねえ、どうも人見知りなところがあるから。
 とても引っ込み思案だし、困っちゃったなあ。勉強はできるんだけどねえ」

軽く愚痴をこぼすレモナ。
それからデレとショボンに手を振って、別の場所へと行ってしまった。

448 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:02:58 ID:X94qherQ0
その背中をしばらく見ていたデレ。
やがて目線を手元のグラスに移した。

ζ(゚ー゚*ζ「あら、もう飲んじゃってたのね」

(´・ω・`)「ついでこようか?」

ζ(゚ー゚*ζ「さすがに平気よ、これくらい自分でやるわ」

微妙に顔を引きつらせながら、デレはショボンを手で払う。

ζ(゚ー゚*ζ「まったくもう、いつまでも子ども扱いして」

(´・ω・`)「そうかな? いやあ、ごめんね」

そう言ってとぼけた顔をする。
デレはまた口元を押さえて微笑み、それから飲み物を探しに歩いた。

宴会はますます賑やかになっていく。
大人たちはお酒が回り、声の音量が少しずつ大きくなっていく。
子どもも数人混ざっていたが、彼らもその雰囲気に巻き込まれ、上気してきていた。

449 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:03:58 ID:X94qherQ0
ミセ*゚ー゚)リ「あ、王女! 飲み物をお探しれすか!」

ジュースのグラスを持とうとしたところで、メイドのミセリに呼びかけられる。
そもそも彼女は王女専門の付き人のはずだが、いつの間にか宴会そのものに参加していたらしい。

ζ(゚ー゚*ζ「お探しというか、今ちょうど飲もうとしていたところなのだけど」

ミセ*゚ー゚)リ「そうれすか! これはうっかりしれした! えへへ」

デレは得体のしれない不安を感じた。

明らかにいつもの様子と違う。
いや、いつもどこかしらおかしな人なのだけど、今日は格別に違っている。

頬は赤いし、ろれつも回っていない。
目の焦点もあっていない。

ζ(゚ー゚;ζ「……ミセリ、あなた酔ってるの?」

ミセ*゚ー゚)リ「ふぇ? ジュースしか飲んれないはずなんれすけろ、なんれそんなことg」

言葉が中断されたのは、ミセリの側頭部を強烈な一撃が見舞ったからだ。
ミセリの身体は丸いテーブルに突っ伏し、ぴんと伸ばされた何者かの手だけが残る。

450 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:05:00 ID:X94qherQ0
(゚、゚トソン「お見苦しいところをお見せしました。王女」

手を引っ込めたのは、髪を結わえた清楚な女性。
流れるような動きでデレに頭を下げた。

ζ(゚ー゚*ζ「あら、メイド長のトソンさん。
 あなたもパーティにいらしていたの?」

(゚、゚トソン「はい。国王陛下と王女のためもありますし
 後輩だけに任せておくのが不安でしかたなかったものですから」

トソンはそう言って、一瞬突き刺すような睨みをミセリの後頭部に向けた。
顔はすぐに元の清らかなものに戻ったが、デレはわずかに聞えた舌打ちを聞き逃さなかった。

(゚、゚トソン「……ミセリ?」

首を傾げてミセリの頭を叩くトソン。
結構大きな音がしたが、ミセリはちっとも動こうとしない。

トソンは顔をミセリに近づけて確認する。

451 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:05:59 ID:X94qherQ0
(゚、゚トソン「……こいつ」

小さくトソンがぼやく。

ζ(゚ー゚*;ζ「ね、ねえ。ミセリは大丈夫なの?
 打ちどころが悪かったとか」

(゚、゚トソン「いえ、そんなんじゃ決してありません。
 寝てるだけです。すいません。今すぐ連れ出します」

そういって、トソンはミセリの腕をぐいっと持ち上げた。
真っ赤なミセリの顔が露わになる。

ζ(゚ー゚*ζ「……ずいぶん飲んでいたのね」

それはそれは酷い顔だった。

思わず口を手で押さえ、でもまじまじと彼女を見ながら呟いた。
呼吸はちゃんとしているので、トソンの見立て通り、彼女は寝ているだけのようだ。

(゚、゚トソン「よっと」

トソンはミセリの腕を肩に回した。
酔い潰れた後輩を居酒屋から連れ出す上司そのものであった。

452 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:06:59 ID:X94qherQ0
(゚、゚トソン「王女、ミセリは何かご迷惑をおかけしていませんか?」

ζ(゚ー゚*ζ「え?」

トソンがそんなことを突然言うものだから、デレはきょとんとした。

(゚、゚トソン「この子もまだここに来て日が浅いうちに
 王女の付き人になってしまったし、最初から不安はあったのです。
 もしご不満があるようでしたらすぐに別の者に変える準備はできていますが」

ζ(゚ー゚*;ζ「いえ……いえいえ、そんなことはないですよ!」

思わずデレは大きな声を出しそうになる。

ζ(゚ー゚*ζ「ミセリは本当によくやってくれています。その、一生懸命に」

(゚、゚トソン「こんなんでもですか?」

ζ(゚ー゚*ζ「それは……」

真っ赤なミセリを見ていても、何も思い浮かばなかった。
でも、とにかく言い繕おうとデレは口を開く。

ζ(゚ー゚*ζ「それはおいといて、包括的に見てです。
 だいたい、歳が近いメイドをつけるように頼んだのは私です。
 去年から、本当にミセリにはお世話になっていますよ」

453 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:07:59 ID:X94qherQ0
去年の夏、それまでデレの専属の付き人であった方が高齢のために退職した。
その抜けた役職を決める際に、デレはなるべく若い人を呼ぶように頼んだ。

そこでその年の従者見習いのうちで優秀な生徒から付き人を公募した。
デレ自身はその選ぶ場にいなかったが、その結果としてミセリが当選したのである。

(゚、゚トソン「そうですか。何分この子はまだまだ未熟な点があったので不安でしたが……」

まだトソンが納得のいかない顔をしていたので、デレは言葉を続けた。

ζ(゚ー゚*ζ「でも、たとえ成熟していなくても、見ていて楽しいですし
 そういう親しみやすさって大事だと思いますよ」

デレはそういって、寝ているミセリに笑いかける。

ζ(゚ー゚*ζ「歳も近いし、話し相手にもなってくれるし
 私はミセリで満足しています。そう不安に思わないであげてください」

不思議とお願いする形になってしまった。
トソンもまたミセリを見る。

少しだけ、笑みを漏らしていた。

(゚、゚トソン「わかりました。王女が言うならば、仕方ないです。
 本当に、王女はお優しいのですね」

454 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:09:08 ID:X94qherQ0
瞬間



思考が止まった。



お優しい



数秒にも満たない間だったが、



そのワードはデレの鼓膜を刺激し、



身体の動きも鈍る。

455 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:10:00 ID:X94qherQ0
(゚、゚トソン「?」

トソンが目を瞬かせる。

疑問符を浮かべている。

咄嗟にデレは首を横に振った。

ζ(゚ー゚*;ζ「なんでもないですよ! なんでも。
 早くミセリを介抱してあげてください」

(゚、゚トソン「あ、はい!」

急かすデレに促されて、トソンは軽々とミセリを運んでいく。

その場に残ったデレは、そっと自分の胸を触った。

鼓動がすっかり高くなってしまっている。

デレは息を吸い、長く吐いて、呼吸を整えようとした。

456 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:10:58 ID:X94qherQ0
トソンは不思議に思っただろうか。
どうかそんなことは忘れてしまってくれ。

デレは必死にそう祈った。

少しずつ、呼吸が落ち着いてくる。
自分の脈拍が正常に戻っていく。

ζ(゚ー゚*ζ「こんなんじゃだめ……」

誰にも聞えないくらい小さな声で、デレは呟いた。
自分に言い聞かせるために。

胸に置いた手のひらが、自然と拳を作り出す。
力が籠る。結びなれていない歪な拳。
でも、痛みは感じない。

もっともっと、強くあらねば。

あの程度で動揺していてはいけない。

どこから綻ぶかわからないのだから。

457 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:11:58 ID:X94qherQ0
瓶を握り、手持ちのグラスに注ぐ。
その飲み物を一気に飲み込んだ。

果汁の香りの混じった吐息。
グラスを置いて、目を閉じた。

こうしてデレは気合を入れようとしたのである。

しばらくは呼吸を整えるのに時間を割いた。
なぜだかなかなか脈がもとに戻らない。

「大丈夫ですかな」

声をかけられる。
落ち着いた、大人の声。

デレは反射的に顔を上げた。

( ФωФ)「私ですよ」

目の前にいたのは、衛兵隊長のロマネスク。
以前父に紹介されてから、知り合いだった。

458 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:13:01 ID:X94qherQ0
ロマネスクはグラスを掲げ、猫のような目をデレに向ける。

( ФωФ)「楽しんでおられますかな」

デレは答えなかった。

その代わり、彼を睨み据える。

その表情を見てから、ロマネスクが「やれやれ」と残念そうな声を出した。

( ФωФ)「おられないみたいですな」

ζ(゚ー゚*ζ「おかげさまで」

デレは短く畳みかけた。
目は変えず、首だけを動かしてなおのこと勢いをつけていた。
ロマネスクは虚を突かれたようで、微かに肩を震わせている。

それから、彼は目を細めた。
猫が知らない人を見るとき、相手を品定めするように。

459 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:14:00 ID:X94qherQ0
( ФωФ)「小娘め……」

他の人には伝わらないように、細心の注意を払って出した声だろう。
デレだけの耳に、それは届いた。

それをうけて、デレが鼻を鳴らす。
勢いづいていたためか、強気な態度になる。

ζ(゚ー゚*ζ「そんな言葉、私に向けていると牢屋に連れて行かれますわよ?
 特にあの偏愛なお父様は黙っていないでしょうね」

すると、ロマネスクは不可解そうに眉を寄せた。
それから嘆息をもらす。

やがて口を開こうとするも、デレの指がその前に立たされる。
ぴんとのびたそれを、寄り目で見て、それからロマネスクはちらっとデレを向いた。

デレはにたりと顔をゆがめてその目線を受け止めた。

ζ(゚ー゚*ζ「私の腕の傷のこともまだ言わないんだから、感謝しなさい。
 これだけでもあなたを虐め抜くには十分すぎるんじゃありませんこと?」

460 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:15:00 ID:X94qherQ0
そう言い切って、デレは指をロマネスクの口から離した。
ロマネスクは目を閉じ、肩を落とす。
側頭部に微かな汗があったが、それを拭った。

(;ФωФ)「……なんだかずいぶんと変わりましたな。
 あなたがそんな態度を示すとは、いやはや、何が何だか……」

やや言葉を選んだ様子で、感想を述べてくれた。

ζ(゚ー゚*ζ「そう? ありがとう。これであの人も喜ぶわ」

今度は無邪気な笑顔を浮かべ、デレが言った。
なぜだか不思議と気分がいい。
今なら好き勝手になんでも言える気がする。

ロマネスクはテーブルの上の瓶をつかむ。
ラベルには洋梨が描かれている。
グラスに半透明の液体が注がれた。

ζ(゚ー゚*ζ「そうだ、あなたに頼みたいことがありましたのよ」

注ぎきるのを待ってから、デレが提案した。
ロマネスクは数秒だけ顔をゆがませる。

461 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:16:00 ID:X94qherQ0
(;ФωФ)「……断らせない気ですな」

ζ(゚ー゚*ζ「このお城を追放されたくなければ」

(;ФωФ)「……わかりました。
 何ようですかな? あまりに突飛なことはできませんが」

ζ(゚ー゚*ζ「おそらく適役よ」

ロマネスクはデレの話に備えて、飲み物を一気に飲み込もうとする。

( ФωФ)「……ぬ!」

途中で止まり、ロマネスクが口をおさえる。

( ФωФ)「これはお酒ですな。
 洋梨のジュースかと思ったのに、すっかり騙されてしまいました」

ζ(゚ー゚*;ζ「…………え?」



     ☆     ☆     ☆

462 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:17:00 ID:X94qherQ0
新嘗祭まで、あと1週間

朝早く

城下町中央広場

ブーンはお城を早々に出てきていた。
一週間ぶりに『三匹のカエル』に向かうために。

目的は、ある提案をするためだ。

( ^ω^)「お?」

噴水の前で足を止める。

(〆  ヽ)
从´ヮ`从ト「あかねさす〜」

いつか見た魔人の迷子だ。
噴水の傍で座りこんで、何事かを歌っている。

463 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:18:01 ID:X94qherQ0
それは聞いたことのない文字だった。
きっとこの国のものではない。

もっとずっと、どこか遠くの国の言葉のように思われる。

(〆  ヽ)
从´ヮ`从トそ

少女とブーンの目があう。
はっとしたように、少女は反応して、それからさっさと走って行ってしまった。

( ^ω^)「なんだったんだお?」

あの子は毎日この噴水にきているんだろうか。

少しだけ考えたが、今は用事もある。
早く酒場に向かうことにしよう。

黒猫に横切られたのでもないし、不幸になるわけでもないだろう。

464 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:19:01 ID:X94qherQ0
朝8時半

『三匹のカエル』の扉を叩く。

わずかに開かれる。

('A`)「……早いな」

ドクオが小さな声で言う。
顔色は悪い。朝に弱いせいもあるし、話し合いが長引いているのだろう。

( ^ω^)「早く伝えたいと思いまして。
 提案があるんですお」

('A`)「本当か?」

眉根を寄せるドクオ。
それに応じ、頷くブーン。

('A`)「……よし」

ブーンはほっとし、足を進めようとする。

('A`)「あっと、ちょっとまって。
 ひとつ気になったことがあるんだが、最近魔人と会わなかったか?」

( ^ω^)「……え?」

465 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:20:02 ID:X94qherQ0
('A`)「ちょっとな、気になって」

ドクオは鼻を指さす。
魔人か人間か判別することができる鼻。

ああ、とブーンは納得する。

( ^ω^)「それなら、たぶん会いましたお。
 町にやってきてる魔人に何度か」

ブーンが頭に思い浮かべていたのは、先程噴水で会ったあの女の子だった。

('A`)「やってきてる?」

( ^ω^)「まあ、特に危害のある魔人とは思えなかったですお」

('A`)「……そうか。うん、まあいい。今は作戦のことを考えよう」

やや納得のいっていない表情のドクオであったが、ようやくブーンを招き入れてくれた。

466 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:21:01 ID:X94qherQ0




そうして、この日





ある作戦が敢行された。





都合上、ここでは先に時間を進めるとしよう。





     ☆     ☆     ☆

467 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:21:58 ID:X94qherQ0
同日 夜8時

ラスティア城、2階

会議室

今日はパーティではない。
新嘗祭へ向けての最終調整だ。

参加しているのは、町長を含めた城下町の代表者、お城の専属の司祭、
国王や王女、それに加えて政務官、執務官を含む各種大臣だ。

なぜ政治関係の人々も参加しているかといえば
この祭には他国からの使者も来賓として招かれることになっていたからである。

特に、ラスティア国は北のマルティア国との親交が深くなっている。
数年前にマルティア国から王女の誕生日を祝われて以来の付き合いだ。
ショボンの方からも何度も顔を出し、とある交渉を進めている最中なのである。

今回は日取りが急に変更になったため、他の国から来賓がくるかはまだ判断しかねる状態だったが
ラスティア国としてはどうしてもマルティア国王には参加してもらいたいと思い
積極的にアプローチを仕掛けていた。

その結果として、今回も今までと同様にマルティア国の王を迎えることになったのであった。

468 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:23:03 ID:X94qherQ0
その話し合いの中、デレはなるべく顔を無表情で保っていた。
真剣な会議であるので、下手に笑みを浮かべても意味はない。
むしろ訝しがられてしまう。

かといって退屈そうな様子を与えてもいけない。
だから顔には何も出さないでおく。

ショボンがデレを会議に参加させるのは、自分の血を受け継ぐ者がデレしかいないからだ。
たとえ将来の王を外から迎え入れるとしても、デレに仕事を知っておいてもらわなければ支障が生じる。
今のうちから学んでおいてもらわなければならないのだ。

しかし、デレはその気持ちの裏側も察していた。
これは自分に対する申し訳なさから来ているのだということを。

積極的に外交に参加させたり、人を触れ合わせたりするのは
今までずっと私を閉じ込めておいてしまったことに対する反省なのだろう。
そう、デレは感じていた。

ショボンはそれを決して口には出さなかったけど。

469 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:24:00 ID:X94qherQ0
その会議室に突然衛兵が走り込んできたのは、会議の終盤にさしかかった頃であった。

(√`ー´)「大変です! 南東の門が魔人に襲撃されました!」

南東の門というのは、基本的に来客が使う門であった。

(;´・ω・`)「何、本当かい!?」

ζ(゚ー゚*;ζ「!?」

ショボンが焦りの色を浮かべ、その場の全員に緊張が走る。
デレとしてもそれは同じ事であった。

(√`ー´)「ええ、それで城下町の代表者の方々の車が襲われまして……」

発言を聞きうけて、来客たちのどよめきはますます大きくなった。

(;´・ω・`)「落ち着いてください! 落ち着いて!」

ショボンが諸手を挙げてその場を治めようとする。
興奮した空気が少しだけ和らいだ。

(´・ω・`)「それで、魔人たちはどうなったんですか?」

470 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:25:07 ID:X94qherQ0
(√`ー´)「はっ! 実はある衛兵見習いがその場にいまして
 運よく無事、撃退することができたそうです!」

(´・ω・`)「なんだって!?」

ショボンはテーブルに身を乗り出した。
デレは横からしか見えなかったが、ショボンの目が輝いているのがわかった。

ショボンは昔から、衛兵の功労に目が無い。
それは性格が変わる前から共通していることであった。

以前モララーの武功を異様なほどに称えたのも、その性格ゆえ。

衛兵の情報を聞いて、他の来客たちは先ほどとは別の意味でどよめいている。
そんなことができるとは、いったいだれがやったんだ
感心と同時にその衛兵見習いに対する興味が湧いている。

(´・ω・`)「いったい誰なのかな、その衛兵見習いは。
 ぜひお会いしてみたいのだが」

(√`ー´)「はい、ご案内します。
 その人物は2年前に入城してきたブーンという若者でして」




     ☆     ☆     ☆

471 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:26:02 ID:X94qherQ0
ラスティア城 南東門守衛室

(;^ω^)「はい、そうなんですお。
 魔人たちは確かに、次は『デレ王女を狙う』と言ってましたお」

南東門での騒ぎの後に、彼はここに連れてこられた。
お城の直接の防衛をしている守衛班の控える部屋だ。

毎晩、常に各門につき4人の衛兵が門の警備に当たる。
2、3時間ごとに1人ずつが門の傍で張り込む。

今夜、ブーンを連れてきたのは南東門の警備をしていたうちの1人であった。

(√`△´)「次は王女を、か……なかなか不穏な言葉だ」

衛兵はそうボヤいた。

(√`△´)「その魔人、お前が追い払ったあとはどうしたんだ?」

( ^ω^)「ものすごい勢いで走って逃げましたお。
 衛兵さんもご覧になられたんじゃないですかお?」

(√`△´)「確かに、何やらすばしっこい影が走っていくのは見かけたな。
 あれが魔人だったのか……」

472 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:27:00 ID:X94qherQ0
衛兵は報告書にいくつかを書き込み、それから羽ペンをくるくるとまわしはじめた。

ブーンを連れてきてからすでに20分は経過している。
追求の声もとぎれとぎれになってきている。
そろそろ終わりなのではないか、とブーンが思い始めた頃だった。

守衛室の扉がノックされる。

(√`△´)「何用だ」

警備の衛兵は扉に向けて言う。

扉が開かれ、また別の衛兵が顔を出した。

(√`ー´)「国王様より伝言で、早急に報告をするようにと。
 それと、ブーンを連れてこいとのことです」

(√`△´)「なに、こいつもか?
 うーむ、国王の命令ならばしかたない」

そう言って、警備の衛兵がブーンを手で促す。
はやくいけ、とのことらしい。

( ^ω^)「それでは、失礼しますお」

丁寧に頭を下げ、ブーンはその場を後にした。

後から入ってきた衛兵に連れられて。

473 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:28:00 ID:X94qherQ0
まさかいきなり国王に接見できるとは思わなかった。
だから、いささか緊張もしている。

(√`ー´)「お前は2階の会議室に連れて行く。
 先程まで客人たちが来ていたのだが、すでにお帰りとなった。
 国王はその場に残ってお前の帰りを待っていたのだ」

( ^ω^)「そんなことまで……」

(√`ー´)「それに、国王だけではないぞ」

( ^ω^)「え?」

どういうことですか、と聞こうと思ったときに、衛兵は歩みをとめた。
観音開きの扉がある。会議室の入口だ。

ブーンは口を閉じた。
どうせ扉が開いたときにわかる、そう思ったからだ。

扉が開かれる。
中の光景が明らかになった。

474 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:29:00 ID:X94qherQ0
(´・ω・`)「やあ! 君がブーンくんだね!」

途端に、目の前で大御所が手を振ってきた。
不意打ちだったので、面を食らってしまう。

(;^ω^)「あ、はいですお……」

おずおずと頭を下げる。

ショボンは大きな声で笑って返してきた。

(´・ω・`)「硬くならなくてもいいよ、僕は君を称えたいんだ。
 君、報告書をこっちに」

ショボンが衛兵を指さした。
衛兵はすぐに歩んでいき、報告書をショボンに渡す。

その間に、声をかけられた。

475 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:30:01 ID:X94qherQ0
「お久しぶりね」

ちょうど、扉の陰に隠れた場所からだ。
誰かがいるのだとわかり、ブーンは慌てて扉を閉めようとする。

(;^ω^)「あっと、気付かなくてすいませんですお」

見えてもいない相手にぺこぺこと頭を下げる。

だけど、その姿が見えてきたとき
頭を動かしている余裕すら、ブーンには無くなっていた。

(;^ω^)「あ……」

ζ(゚ー゚*ζ「もう2カ月ぶりかしら」

デレがわずかに首を傾けて、微笑んでくる。

ブーンは顔を引きつらせた。

記憶がフラッシュバックする。

476 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:31:01 ID:X94qherQ0
南の山の事件。

モララーのこと。

その首の前でしゃがみこむデレ。

お城に近づいて、また会える機会はあるだろうかと思ったこともある。
まだ彼女のことを疑いきれていなかったから。

でも、こうして実際に目の前にすると
身体は硬直する以外の反応を示さなかった。

受け入れるわけでも無く、拒否するわけでもない。
じっと相手の出方を伺ってしまう、待ちの姿勢。

ζ(゚ー゚*ζ「……モララーさんのことかしら」

(;^ω^)「え」

477 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:32:00 ID:X94qherQ0
いきなりその名前が出てきて、ブーンの神経が緊張する。

その目の前で、デレは首を左右に振った。

ζ(゚ー゚*ζ「あれから一度もお会いできなかったけど
 きっとあなたもショックを受けたと思うの。でも、今は緊張しないで。
 ここでは魔人も何もいないし、安心してね」

そういって、デレははにかんで見せた。
どうやらブーンがあの日のことを思い出して怖がっていると思ったらしい。

ああ、そうか。彼女は僕が起きていたことを知らないんだ。

ようやくそのことに思い至り、ブーンは急いで体面と取り繕う。

(;^ω^)「あ、ありがとうですお。
 そう言ってもらえると安心できますお」

ブーンは頭をさすって、俯き加減になって頷いた。

ζ(゚ー゚*ζ「そう? 良かった。
 お父様はあなたのことを呼んでるの。こっちにきてね」

デレはブーンを手招きする。
その目はブーンの目線とぴったり一致していた。

478 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:33:00 ID:X94qherQ0
その瞳を、ブーンも見つめ返す。

妙な気がした。
恐怖とはまた違う。

デレの和らいだ目線の奥に、とても真剣なものを感じた。
笑っているのに、目は真剣。
そんなことってあるだろうか。

いったいどうしたらそんな顔になるんだろう。

その妙な引っかかりは、一瞬だけで終わった。
デレが国王の方を向いてしまったからだ。

( ^ω^)「あ、いきますお!」

デレの後をついていく。

ちょうど国王も報告書を読み終わったらしく、顔をあげていた。
衛兵に帰るように指示している。

479 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:34:00 ID:X94qherQ0
衛兵が外に出る。
扉も閉まる。

(´・ω・`)「驚いたよ」

まずそう言われた。

(´・ω・`)「君はデレを助けようとしたんだね」

デレを狙う魔人を追い払った。
そういう意味では、助けたともいえるかもしれない。

( ^ω^)「そうですお」

ブーンが言うと、ショボンは大きく頷いてくれる。

(´・ω・`)「ありがとう。
 なんだか君を見ていると、モララーくんを思い出すようだよ」

またあの人の名前だ。
そういえば、モララーがデレ王女を助けた話を聞いたことがあった。
あの人が昇進した理由でもある。

480 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:35:00 ID:X94qherQ0
(´・ω・`)「君には恩ができたようだ」

ショボンが身振り手振りで、ことの大きさをアピールする。

(´・ω・`)「どうだい、君の望むものならできる限りあげるよ。
 この国でもっとも権力のある私なら、大抵のものをそろえることができるだろう。
 なんなら衛兵にしてあげてもいいくらいだ」

(;^ω^)「い、いいんですかお?」

(´・ω・`)「いいんだとも。君はそれだけのことをしてくれたんだ。
 私にとって、命よりも大事なデレのことを守ってくれたのだから」

ブーンは顔を俯かせた。
しばらくの間沈黙する。
顔に冷や汗を浮かばせて。

その間、ショボンもデレも、静かにブーンに注目していた。

( ^ω^)「……ひとつだけ、希望があるんですお」

(´・ω・`)「なんだい? 衛兵になるかい」

( ^ω^)「いえ、それじゃなくて……あの」

481 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:36:01 ID:X94qherQ0
ブーンは慎重に、言葉を切る。
ちらっとだけ、デレの方を見て、それからショボンの方を向く。

( ^ω^)「新嘗祭の日、僕をデレ王女の監視役にしてほしいんですお」

比較的すらすらと、ブーンは言ってのけた。

その場がしんと静まり返る。
嫌な沈黙だ。

ブーンはじっとショボンの顔を見た。
ショボンの方は小さく頷いて、「ほうほう」とだけ言っている。

デレの方はわからない。
ショボンの方を見るので精いっぱいだったからだ。

もしこれで、怒ったような顔をしていたら
自分は今度こそデレに近寄れなくなるだろう
そんな恐怖が心の奥にあるのも確かなことだった。

(´・ω・`)「ふうむ、そうしたい気持ちはなんだね」

質問が帰ってくる。
ブーンの心臓が拍動を速めた。

(;^ω^)「……今回の魔人はまた現れる可能性が高いですお。
 それに、新嘗祭はお城の衛兵のうちのかなりの人数を国王や他国の来賓のために使わなくちゃなりませんお。
 だからお城の警備が手薄になってしまいますお。そこをしっかり守っていきたいんですお」

482 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:37:01 ID:X94qherQ0
やや早口気味に、ブーンは理由を述べた。

ショボンは手の甲を口につけて、「ううむ」と唸る。

(´・ω・`)「こういうときの王女の警備にはいつも人間を使わず、魔人で済ませていたのだが……
 人間に監視させるとどうもデレが嫌がるものでね」

ブーンの頭が白くなっていく。
もしデレが嫌がるのであれば、きっとブーンの要望は通してもらえない。

(´・ω・`)「だから、デレの意見も聞きたいんだけど」

ショボンが目線をブーンからデレへと移していく。
ブーンはそれを追わず、ただ下を向いていた。

ブーンの拳が握られる。
緊張のためだ。

483 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:38:00 ID:X94qherQ0
彼女の判断に全てがかかっている。





どうか、上手くいってくれ。





せっかくここまで計画どおりなのだから。





     ☆     ☆     ☆

484 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:39:00 ID:X94qherQ0
少し時間を遡る。

新嘗祭1週間前のこの日、朝の9時

酒場『三匹のカエル』開店前

この日まで、レジスタンスはずっと作戦を練っていた。

あのモララーの剣を取り戻すため、いかにしてお城に忍び込むか。

お城の警備兵は各門に4人。
それに、一旦見つかってしまえば警戒を強められてしまう。
もし強化されればもう入ることはできなくなってしまうだろう。

だから、警備兵を一挙に出し抜く方法が要る。
その方法は、どうするか。

(;^ω^)「思いつきましたお!」

お店に入ってきたばかりのブーンが勢いよく手を挙げる。

昨晩から集まっていたレジスタンスのメンバーの目が光る。
ブーンに視線が集中した。

485 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:40:11 ID:X94qherQ0
すでにブーンの座学の成績が優秀であることは知れ渡っていた。
それに、ヒートと追いかけっこをしたときから、彼の閃きが役立つことも分かってきた。

だから、自然とみんなの期待が高まっている。

ブーンはそれを感じながら、話した。

(;^ω^)「外からじゃどうやっても限界があるんですお。
 衛兵といっても簡単に倒せるわけでもないんですお。
 だから、内側に仲間を仕込んでおくんですお」

('A`)「仲間?」

( ^ω^)「そうですお。まず、ドクオさんはまだ衛兵の服が残ってますおね?」

('A`)「ああ」

( ^ω^)「それと、ジョルジュも」

( ゚∀゚)「え? あー……たぶん……」

それを聞いて、ブーンは一回深く頷く。

( ^ω^)「5人中3人が衛兵のふりをできる。
 これは活用するべきですお」

486 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:41:00 ID:X94qherQ0
( ^ω^)「その方法は後で教えるとして、前段階で僕が国王から信頼されていることが必要ですお。
 国王に信頼される人間になれば、衛兵だって無視できなくなる。隙を突くチャンスが生まれる」

ノパ⊿゚)「簡単に言うけど、信頼なんてそう簡単にしてもらえるの?」

( ^ω^)「ひとつだけ、知っているんですお。
 あの国王にとって最も大切なもの、それは王女ですお。
 僕らの手で力を合わせて狂言を設定するんですお、王女を狙う魔人が現れたという振りをして」

( ^ω^)「それで、その魔人を僕が追い払うんですお。
 上手くいけば、僕は国王に感謝され、取り入ることができるんですお。
 これが今朝、僕の思いついた作戦ですお」

('A`)「なるほど、モララーが衛兵になった理由を利用するというわけか。
 王女を助けて国王に認められ、それで昇格できたという」

( ^ω^)「着想はそこですお」

ブーンはそう言って、次にシュールの方を向いた。

(;^ω^)「シュールさん、次に国王が会議を開くときがいつかわかりますかお?
 たぶんお客さんがいるときならデレ王女も会議に参加しているから
 彼女を狙って襲ってきたという設定に説得力が増すんですお」

lw´‐ _‐ノv「今日」

シュールが即答する。さすがの情報力だ。

487 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:42:00 ID:X94qherQ0
と、同時に彼女はにやりと笑う。

lw´‐ _‐ノv「今日、やっちゃおう」

(;^ω^)「え、ほんとですかお? 準備とか」

( ゚∀゚)「大丈夫だって。聞いてみた感じだと問題はなさそうだった」

ジョルジュが組んでいた腕を解いて、上に伸ばす。

( ゚∀゚)「そうと決まれば今から準備だ!」

それから、細かい点は準備をしつつ決めていった。
時間が無いのだから、面倒なことはしない。

魔人のように見える衣装を即座にシュールが作り
逃げ足の速いヒートが魔人っぽい演技を練習する。

ドクオとジョルジュが話し合い、決行場所を決める。
南東の門、そこに客の荷物が集中している。

まずその荷物を狙い、捨て台詞で王女を狙うと吐く。
そうすれば客も帰るだろうし、国王も心配する。

488 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:43:00 ID:X94qherQ0
お店は閉められたまま
その中ではみんなが騒がしく準備を進めていった。

そろそろお店の運営はあぶなくならないのかな、とも思うくらいに。

ブーンはその間、思った。

これが上手くいけば、僕は王女を救うために頑張ったことになる。
それだけの功績が残れば、ツンだって納得してくれるんじゃないか。
あの猜疑の瞳を僕に向けてくるのをやめてくれるのではないか。

そうなれば、自分としては助かる。
一石二鳥だ。
レジスタンスのためにもなり、自分のためにもなるのだから。

と、そこまで考えたとき、別の目的も頭に浮かんだ。

デレのことだ。

お城に忍び込めば会えるかもしれない、その真意を知ることができるかもしれない
そう思っていたことは確かだ。

もしうまく付け入る隙があれば、なるべくデレに近づける方法を選ぼう。
もしもそんな選択ができればだけど。

この件に関しては、さすがにブーンも希望的観測しかもっていなかった。

489 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:44:04 ID:X94qherQ0
夜7時半

ラスティア城 南東門前

建物の建物の隙間に、人影が二人分

.ワ''""''フ
ノパ⊿゚)「よし、誰もいないな」

( ^ω^)「……ものすっごいふわふわしてますお」

.ワ''""''フ
ノパ⊿゚)「動物なら問題ないさ。ほら、やるぞ」

南東の門の前の通りに踊りでる。
門までは100メートルほどの距離だ。

(;^ω^)「うわあああああああ!!」

できるだけの情けない声を、ブーンは張り上げた。
門の傍でじっとしていた衛兵が身構え始める。

.ワ''""''フ
ノパ⊿゚)「お城襲っちゃうぞおらあああああああ!!」

さらに大きな声が響く。
周りの住民にもきっと聞えただろう。

490 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:44:59 ID:X94qherQ0
「な、なんだ、どうした!」

門番の慌てる声がする。姿もわずかだが見える。
ブーンはそれを確認してから、木刀を構える。

(;^ω^)「くらえお!!」

振りかざした木刀は、正しく空を切る。
それでもヒートは迫真の演技で負傷したように見せてくれた。

そのやり取りがもう二回ほど起きた。

これ以上やれば衛兵がこちらに飛んできてしまうかもしれない。

.ワ''""''フ
ノパ⊿゚)「くそお、次は王女を狙ってやるから覚えとけ!」

指をびしっとお城に向けたのち、ヒートは全力疾走で町を駆けていく。
衛兵だってちゃんとは見えないだろうに、凝った演技をしてくれる。
その後ろ姿はもはや魔人そのものであり、
あの本気の走りにはとても追い付けないとブーンは思った。

(√`△´)「お、おい君、大丈夫か!?」

ちょうどよく、衛兵が駆け寄ってきてくれた。

これで、上手くいった。
ブーンはそう安堵し、なるべく顔に恐怖の表情を浮かべて衛兵に向かい合った。

491 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:46:04 ID:X94qherQ0
(;^ω^)「お、追い払いましたお!!」

興奮しているからこそ、できる演技だ。
緊張はする、でもそれを超えて
自分の作戦が成功する昂揚感を、ブーンは確かに感じていた。

それからは流れに身を任せた。
衛兵が質問してきて、ブーンはあらかじめ用意してきた設定を語る。
そして、客人を狙い、王女の命を狙う魔人像が出来上がったときに、国王に呼び出された。

これで国王に取り入れる。
もうその時点で作戦は終わったようなものであり、あとは適当に流していればよかったのだ。
彼からの信頼は得られたのだから。

それゆえに、会議室に入ってからデレと直接出会うことになったのは完全に誤算だった。

まさかこんなところで、こんなときに、再会することになるなんて。



     ☆     ☆     ☆

492 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:47:12 ID:X94qherQ0
デレの傍になるべくいられるようにする。
部屋の中に当の本人がいるものの、このチャンスを逃したくはなかった。

とはいえこの打診は、上手くいけばいいという程度のものだ。
もしダメでも、作戦に支障はない。

門番をしている衛兵になれるだけの身分にはすでになったはずだ。
国王から注目されるという当初の任務は果たしたのだから。

でも、もし上手くいくなら、王女の傍にいたい。

そして彼女の真意を知りたい。

レジスタンスの目的を超えて
自分の興味から、ブーンはそう願っていた。

(´・ω・`)「……デレ?」

ショボンが答えを催促している。

ブーンは顔を少しだけ動かす。
怖い怖いとも言っていられない。

いい加減に、デレの方を見ようとした。

493 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:48:00 ID:X94qherQ0
ζ(゚ー゚*ζ「いいですよ」

言うときは、あっさり。

まるでさっきまでの沈黙が、何でもなかったとでもいうように。

ブーンはようやくデレの方をはっきりと向いた。

彼女は相変わらず柔らかい目をブーンに向けてくれていた。

ζ(゚ー゚*ζ「彼はね、あのモララーさんの大切な後輩だったのよ」

デレが父親に説明する。
国王が息をのむ音がはっきりと聞えた。

(´・ω・`)「なんだって、あのモララーくんの!
 それを早く言いなさいよ!」

ショボンがはしゃいで、椅子を叩いた。
ブーンはそれを、目を丸くしてみた。
入れ込んでいるとは聞いていたものの、ここまで極端に反応が変わるとは。

(´・ω・`)「それに、デレも彼が警備することを認めるんだね。
 だとしたら、僕はもう言うことはないよ」

494 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:49:00 ID:X94qherQ0
ショボンはもう考え込む顔をやめてくれた。

ブーンはほっとする。

ここまで上手くいっていいのかと思い、溜息が洩れそうになる。

( ^ω^)「あ、ありがとうございますお!!」

勢いよく、頭を下げた。
国王に向け、その後、デレにも下げる。

心のうちでは、その間に何回ものガッツポーズをしていた。
明日にでも手紙を出してレジスタンスのみんなに報告しなければ。

新嘗祭までになんとかあと一度でも休暇を取り、作戦を練らないと。
大まかには考えているものの、まだまだ詰めが甘い。
みんなと準備する必要もある。

あの剣を取り戻すための、大掛かりな潜入奪還作戦を。


     ☆     ☆     ☆

495 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:50:01 ID:X94qherQ0
ζ(゚ー゚*ζ「詳しいことは後でお知らせするって」

デレがそういってくれたのは、会議室を出た廊下だ。

国王は大臣の部屋に向かって行ってしまった。
明日にでも再び会議を開くらしい。
ただ、今度はデレを参加させないでの会議になりそうではあった。

ζ(゚ー゚*ζ「といっても、お部屋の前にいればいいからね」

デレがそう付け加える。
どこからどう見ても普通の少女だった。

( ^ω^)「はいですお。精一杯努力しますお」

定型的なセリフ。

ここで唐突に、デレの真意など聞いても上手くいかないだろう。
なんとか、そのチャンスは彼女の監視をしているときに見つけなればならないはずだ。

だから、この場は静かに去り、寄宿舎へ帰ればいい。
ブーンは逸る気持ちを抑えた。

496 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:51:01 ID:X94qherQ0
二人はゆっくり歩んでいく。

見た目が完全に普通の少女だからといって、100%信用できるわけではないだろう。

でも、少なくともブーンの前にいる少女は今
単純に、ブーンにどんな言葉をかけていいか悩んでいるだけのようにみえた。

疑ってばかりもいられない。
自分だってぼろが出ないようにしなければ。

自分はあのとき眠っていたことになっている。
デレを疑う気持ちがあるなどと、デレに思わせてはいけないのだ。

階段を降りていき、1階へ。

まっすぐに歩めば、玄関。
南東の門に一番近い場所。

ζ(゚ー゚*ζ「ねえ、ブーンさん」

デレが声をかけてくる。

( ^ω^)「なんだお?」

497 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:52:02 ID:X94qherQ0
ブーンが返事をしても、デレが続きを話すまでに時間がかかった。

ζ(゚ー゚*ζ「……何かあったら、ちゃんとくまなく探してね」

それをいうと、デレはすぐに扉に手をかけた。

ζ(゚ー゚*ζ「さ、早く行って!」

妙に、急かす。

( ^ω^)「はいですお! おやすみなさいですお」

疑問はあるものの、言われた通りに早く出る。
それから振り向いて別れのあいさつをしようとしたときには、既に扉は閉められてしまっていた。

中途半端に前に出た手が、固まってしまう。

( ^ω^)「……?」

首を傾けながら、しかたなく、寄宿舎へと歩んでいった。



     ☆     ☆     ☆

498 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:53:22 ID:X94qherQ0
寄宿舎F棟 玄関前

入ろうとした。
そのときだった。

腕を引っ張られたのは。

( ^ω^)「!?」

慌てている暇も無かった。
少しバランスを崩していたら、一気に脇に連れていかれた。

(;^ω^)「だ、誰だお!」

思わず叫ぶ。

目の前にいる人の背は低い。
大きい髪型が見えている。

よく、見たことがある。

499 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:54:04 ID:X94qherQ0
やや欠け始めた月が、その人の姿を映し出す。

(;^ω^)「……ツン」

小さく、名前を呼ぶ。

彼女の黄金色の髪が、月光により青白く輝いて見えた。

彼女は振り向きもせず、ぐんぐんと足を進めていく。

若干ふらついたため、ブーンは寄宿舎の窓にぶつかった。

(;^ω^)「あいたっ」

大きな音が出る。
ツンにだって聞えたはずだ。

それでもお構いなし。
ツンはまったく振り返ろうとしない。

毅然とした歩みが続く。

500 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:54:59 ID:X94qherQ0
そのまま、寄宿舎を通り過ぎ、林の中へ。

いつの日か、ジョルジュを追って入った場所へ。

( ^ω^)「……どうしたんだお」

言いながらも、予想はついていた。

突然知り合いをこんなところに、無言で連れてくるなんて普通じゃない。

絶対に良くないことが起きようとしている。
そんな不穏な予感だ。

やがて、開けた場所に辿りついた。

ツンの手が離れる。
その手が、今度は彼女のポケットに進んだ。

501 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:56:04 ID:X94qherQ0
ξ゚⊿゚)ξ「ブーン」

名前を呼んだのち、振り向く。
その腕がポケットから抜かれる。

一枚の紙が、ブーンの前につきつけられる。

三匹のカエルのマーク

そしてレジスタンスの文字

それは、いつの日かパフォーマンスの際に彼らが配布したものであった。

まさか、こんなにも堂々とヒントがあるとは。
油断していたと言うほかなかった。

502 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:57:14 ID:X94qherQ0
ξ゚⊿゚)ξ「……言い訳してみてよ」

ツンが突き刺してくる。
口調からして、端から信じる気もないことがわかる。

(;^ω^)「……」

何も思いつかない。
彼女の目を見ればわかる。
何を言っても無駄なことくらい。

ξ゚⊿゚)ξ「ねえ」

一歩、ツンが詰め寄ってくる。
ブーンは片足を引いた。

こつっと、背中に感触がある。
木だ。
場所からして、追い詰められていたのか。

503 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:57:59 ID:X94qherQ0
(;^ω^)「……遊んでいた、じゃだめかお?」

ξ゚⊿゚)ξ「うん。今度は私も納得できないからね」

相変わらず、答えが素早い。

( ^ω^)「……わかったお」

溜息の塊が、口から押し出される。
目を泳がせるも、猛烈な引力を感じる。
ツンの青い目に引き寄せられてしまう。

まったくもって、見ていたくない目なのに。

( ^ω^)「観念するお。
 僕はレジスタンスに参加していたお」

正直に言おう。
何を言ってもばれるなら、真実を言った方がいい。

504 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:59:00 ID:X94qherQ0
(;^ω^)「でも、これは別に国王に刃向おうって気持ちじゃないお。
 実はモララーさんもレジスタンスに協力していたんだお。
 あの人への恩義もあるし、それで初めはあの人の後を追っかけている形で近づいたんだお」

(;^ω^)「それに……それにあそこは魔人と立ち向かえるお。
 モララーさんを追いこんだのも奴らだお。
 もしちゃんとした戦い方を学べば、必ずや国王や王女を守ることにも繋がるお」

(;^ω^)「僕は、立場上微妙な立ち位置かもしれないお。
 でも何かを守りたいって気持ちでは変わってないお。
 そこはどうか、信じてほしいんだお」

そう言って、頭を下げる。

ξ゚⊿゚)ξ「やめてよ」

瞬時に、切られた。

ξ゚⊿゚)ξ「あたしにそんなかたっくるしいことやめて」

505 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/02(月) 00:00:05 ID:osgyY/P20
ブーンは汗を感じた。
自分の頬を伝う。

ツンの顔をゆっくりと見上げた。

ξ゚⊿゚)ξ「ブーン……」

彼女は、怒っていなかった。

ただ、悲しそうな顔をしている。

ξ゚⊿゚)ξ「誤解しているよ。
 あたしは別に、ブーンが国に刃向うなんて、思っていないもの。
 そんなことする人じゃないし」

その声は、酷く痛々しく聞えた。

( ^ω^)「……それじゃ、誤解って、なんだお?」

今度はブーンがツンを見つめる。

506 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/02(月) 00:01:02 ID:osgyY/P20
ξ゚⊿゚)ξ「……レジスタンスの目的は?」

いきなりの質問だった。

( ^ω^)「魔人に反対すること、かお」

ξ゚⊿゚)ξ「うん、あたしもそう思っている」

なんでこんなことを聞いたんだろう。
その疑問は浮かぶものの、ここはツンの言葉を待った方がいい気がした。

ξ゚⊿゚)ξ「あたしはね、違うの。
 国家よりももっと別のことで、ブーンを危惧していたの」

そう言って、ツンはブーンから離れる。

開けた場所の真ん中へ。

ちょうど月明かりの下に、彼女はいた。

507 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/02(月) 00:02:01 ID:osgyY/P20
彼女はその場でくるっとまわる。
その姿をブーンに見せている。

( ^ω^)「……ツン?」

胸の奥がざわついた。
直感が警戒信号を告げている。

これ以上、ここにいたら逃げられなくなる
なぜだかそう感じた。
何から逃げているのかもわからないのに。

ξ゚⊿゚)ξ「見ててね」

彼女はそれだけ言って

その場に立ち尽くした。

ブーンの目の前で。

508 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/02(月) 00:03:09 ID:osgyY/P20
彼女は大きく息を吸う。

瞬きしている、そのうちに

彼女の髪よりもはるかに大きい影が、目の前に現れていた。






/ヽ、 /ヽ
(/ξ゚⊿゚)ヽ) 「驚いた?」

斜めに伸び、先が垂れている。
月光に彩られた、ウサギの耳だ。

509 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/02(月) 00:04:02 ID:osgyY/P20
( ^ω^)「…………なんの冗談だお」




ぽつりと言う。

笑うこともできない。

こんなときに、さすがにこれは趣味が悪すぎる。

そう思った。




でも、そんなわずかのブーンの希望は

ツンの憂いを帯びた瞳を見たことにより、書き消えてしまった。


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