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( ^ω^)は悪の教団に立ち向かうようです
1
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/08(木) 21:09:53 ID:afzt7yaQ0
自分の身長の半分くらいはあるビニール袋を引っさげて、
事務所に着くまでにツンは三回は同じような文句を言っていた。
一度目は商店街を出てすぐの信号機の前で。
二度目は中間地点の踏切で。
ξ#゚⊿゚)ξ「もう! 重いー! 買い物袋が手に食い込んで痛いー! 」
( ´ ω`)「だから、雪の日に買い出しなんてやめようって言ったんだお。」
控え目に反論を試みる。
金銭的にゆとりのない、我が探偵事務所では倹約はなにをおいても重きを置くべきだ。
しかしながら、何も気象庁がご親切に豪雪警報を出しているときにわざわざ出掛けなくたって良いだろうと思う。
2
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/08(木) 21:11:57 ID:afzt7yaQ0
ξ#゚⊿゚)ξ「今日は商店街の特売日なの! こんなチャンスを逃す手はないじゃない。特売は待っちゃくれないのよ! 」
( ^ω^)「僕がついてきたから良いものの、こんな重たいもの持って雪道を歩いたら、転んでしまうお。」
ξ#゚⊿゚)ξ「一人で大丈夫だったもん! 雪の日セールなんか急にやるから、予想外に荷物が増えちゃっただけだし……」
出掛けた時に降り出していた霙雨は、いつしか粉雪に変わっていた。
彼女は恨みがましげに宙を睨んでいたが、やがて早足で歩き出した。
道端で怒ることより、いち早く暖かい我が家に帰ることを優先したらしい。
ここから事務所のある古ビルまでもう幾分も距離はない。
異存はないので、僕も家に向かった。
3
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/08(木) 21:13:39 ID:afzt7yaQ0
***
ξ;゚⊿゚)ξ「やれやれ、やっと着いた。手が痛いったらありゃしな……ん? 」
ツンが三度目の文句を言おうと口を開きかけていたので、とっさに身構えたがその言葉が僕に向けて放たれることはなかった。
(;´∀`)「恐れ入りますが、ここは内藤探偵事務所で間違いありませんでしょうか? 」
一人の青年が扉の前に佇んでいた。
年頃は二十代後半くらい。
きっちりスーツを着こなし、一見すれば人の良い営業マンのような風貌をしていた。
4
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/08(木) 21:15:42 ID:afzt7yaQ0
( ^ω^)「そうですお。何かうちにご用ですかお? 」
(;´∀`)「あぁ、良かった! 場所を間違えたかと思って、不安だったんです。」
青年はほっと息を洩らすと、安堵した表情を浮かべた。
うちは看板も提げていないし、電話帳にも載っていないのだから、ここへ来るのに随分苦心したことだろう。
ξ゚⊿゚)ξ「寒いし、話は部屋の中でしましょ。ねぇ、おじさん唇が真っ青よ。」
おじさん、と呼ばれるにはまだ早いであろう青年は、ツンに指摘されて初めて身体が冷え切っていることに気付いたようだった。
慌ててコートの前を抱き合わせると、縮こまる。
コートを握る指先はわずかに震えていた。
5
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/08(木) 21:17:28 ID:afzt7yaQ0
(;^ω^)「これはとんだ失礼を。どうぞ中へお入り下さいお。」
(;´∀`)「いやはや、余計な気を使わせてしまって申し訳ない。」
ξ゚⊿゚)ξ「ごめんね。うちのオジサン気が利かなくて。すぐに温かいお茶入れてきてあげる。」
( ´∀`)「ありがとう、お嬢さん。」
ツンは青年を顧みながら言った。
扉を開けて、ソファーへ促す。
ゆっくりしていってね、声を掛けると台所へさっさと引っ込んだ。
(;^ω^)「ぼ、僕の出る幕がないお……」
ξ゚⊿゚)ξ「ブーンはおじさんのコートをハンガーに掛ける! 暖房を速やかにつける! 」
(;^ω^)そ「これ、ツン! さっきからおじさん、おじさんってお客様に失礼だお! せめて、お兄さんと呼びなさいお。」
慌ててツンをたしなめるが、そんなことはおかまいなしに指示がとんでくる。
最初青年はきょとんとした顔をしていたが、笑顔になるとぷっと、吹き出した。
ようやく強張った表情がほどけ、人好きのする顔がのぞいた。
6
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/08(木) 21:18:50 ID:afzt7yaQ0
(* ´∀`)「しっかりしたお嬢さんですね。」
(;^ω^)「情けない所をお見せして、お恥ずかしい限りですお。」
( ^ω^)「……ところで【柏木】さん、そろそろお話を伺いますお。今日は一体何のご依頼でいらっしゃったんですかお? こちらへはギコさんからのご紹介で? 」
(;´∀`)そ「どうして私の名前を? ギコさんから連絡があったんですか? 」
彼は心底不思議そうな顔をして、僕を見つめた。
格好悪いところを見せてしまった分は、どうやら取り返せたらしい。
これで少しは探偵としての信用を得られれば良いのだが。
( ^ω^)「おっお。種も仕掛けもありませんお。お名前は今、あなたが首から下げている社員証から。紹介の件は、うちにはギコさんの他にコネらしいものがないからですお。」
胸元を指して言う。
長いストラップ付きのカード入れには、『ワタナベ製薬営業課・柏木茂成』と顔写真付きの社員証が入っていた。
おそらく帰りがけにそのまま着けて帰ってきてしまったのだろう。
7
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/08(木) 21:20:18 ID:afzt7yaQ0
( *´∀`)「そういうことでしたか! 私はてっきり神通力か何かかと……」
( ´∀`)「……」
――神通力。
その言葉を口に出したとたん、青年は俯いてしまった。
いまだ指先は、細かに震えていた。
震えの原因は、きっと寒さのせいだけではないのだろう。
ξ゚⊿゚)ξ「手品のうちにも入らない子供騙しだけどね。」
盆を抱えて入ってくるなり、ツンはばっさり切り捨てた。
( ^ω^)「酷すぎやしませんか、ツンさん。」
ξ゚⊿゚)ξ「はい、お茶。温かいもの飲むと、落ち着くよ? 」
( ´∀`)「はは、ありがとう。さっきから君には気を使わせすぎてばかりだね。」
8
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/08(木) 21:21:41 ID:afzt7yaQ0
自分の込み入った事情を他人に話すのは、なかなか勇気のいることだ。
決心がつかず、結局依頼を取り下げたいと言う客は、たくさんいた。
こういった時、ツンは誰が教えたわけでもないのに、依頼人の緊張が解けるようさりげなく気を配ることができた。
青年はカップを受け取ると、温もりを確かめるように両手で包み込んだ。
( ´∀`)「自己紹介もきちんとしていませんでしたね。私は柏木茂成と申します。今日ご相談にあがったのは、私の抱える問題を解決して頂きたいからです。長い話になるとは思いますが、どうか聞いてやって下さい。」
青年は僕を見据えると意を決したように話し出した。
9
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/08(木) 21:25:30 ID:afzt7yaQ0
――今私は柏木姓を名乗っておりますが、以前は持南茂成という名前でした。
ええ、お察しの通り私は養子です。
柏木家に引き取られるまでの十年間、『おおかみ園』という児童養護施設で育ちました。
ギコさんにはその頃から面倒を見てもらいましたから、随分世話になりました。
今でもこうしてこちらを紹介して頂いたり、面倒の掛け通しですね。
ギコさんと私がどうして知り合ったかも、ついでにお話しします。
私がどうして施設育ちなのかも関わって参りますので。
ここまで一気に喋ると、茂成はふぅと息を吐いた。
迷いがなくなったからだろう、営業課に所属しているだけあって淀みなく口は動いた。
10
:
◆RwfHkdJwVg
:2012/11/08(木) 21:27:29 ID:afzt7yaQ0
( ´∀`)「内藤さん、私達は本当に初対面でしょうか? 」
(;^ω^)「は? 」
茂成の顔をまじまじと見つめた。
一度受けた依頼人の顔は、大抵覚えているという自負があったが、これといって心当たりがない。
(;^ω^)「……恐らく初対面ですお? 」
( ´∀`)「これを見ても、思い出せそうにありませんか? 」
胸元のポケットから折り畳んだ紙片を取り出すと、こちらへ寄越す。
広げてみれば、それは新聞記事の切り抜きのコピーだった。
黄色く劣化した記事の見出しには『F市母子殺傷事件』と書かれていた。
――F市母子殺傷事件。
今からおよそ十年前の1996年9月10日、S県F市の閑静な住宅街で起きた殺傷事件である。
被害者の女性と長男は、自宅アパートで鋭利な刃物で刺されていたところを、騒ぎを聞きつけた大家が発見した。
翌朝11日、女性は死亡。長男も重傷をおっていた。
犯行を行ったと思われる被害者の夫も首を吊った状態で発見された。
当時捜査にあたっていたF署は、男性が無理心中を図ったとみて捜査を打ち切った。
忘れもしない、僕がかつて勤務していたF署の管轄内で起きた事件だった。
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