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( ^ω^)は嘘をついていたようです
452
:
名も無きAAのようです
:2013/03/18(月) 22:47:07 ID:xpo/I0No0
乙乙
人間関係が思わぬところでつながっていておもしろかった
453
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/07(日) 15:46:25 ID:kxRdfcGY0
トリップが変わっているかもしれませんが、時間があいたので忘れてしまったためです。
続編を投下します。
454
:
序章
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/07(日) 15:49:36 ID:kxRdfcGY0
私は弱かった。
正直を言えば、死ぬことは恐怖だ。
だが、信じていることのために
生きなければ
何の価値があるだろう。
〜( ・∀・)探偵モララーは信じているようです〜
455
:
序章
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/07(日) 15:52:23 ID:kxRdfcGY0
K大学は某県の南にある、木々に囲まれていた大学だ。
森の中と言っても差し支えないかもしれない。
敷地内にいる分には、周りの雑音もシャットダウンできるし、空気も澄んでいる。
1994年。
徐々に地球温暖化が騒がれてきていた時代だ。
この国特有のじめじめした気候の中で
生活をいくらか過ごしやすいものにしてくれる木々は、貴重なものであった。
K大学は東西に分断されており、中心を学生通りが伸びている。
通りの名前は正式名称ではない。学生と地域住民がそう呼んでいるだけだ。
大学と駅を結ぶその道では、主な通行人は学生であり、立ち並ぶお店も学生のためのものであった。
景観を重視したその通りは、整えられた街路樹を自慢としており、時折メディアにも取り上げられる。
「21、22、23……」
お前と彼女はよくその道を歩いていた。
一緒にいたのは、春から夏の間だけ。
「34、35、36っと」
「両側にしたら倍だな」
「じゃあ、72!」
賑やかな商店街に影響されていたのか、その声は快活だった。
もっとも、普段がどんな声なのかをはっきり知っていたわけではない。
「それとロータリーの真ん中にもう3本」
「よくもまあ、そんなに植えたことで」
456
:
序章
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/07(日) 15:53:35 ID:kxRdfcGY0
この会話が交わされた時は、おそらく初夏だ。
梅雨の空気も切れ切れになり、ようやく日差しの強さを実感できたころ。
陽光は彼女を照らしていた。
从 ゚∀从
高岡ハイン。
髪はやや長く、明るい。
季節のこともあり、薄い柔らかそうな服をよく着ていた。
そして会うときはいつも、銀のロザリオを首から提げていた。
从 ゚∀从「どうしたのかな、探偵さん。
難しそうな顔をして」
「難しい?」
从 ゚∀从「遠いところを見てるみたいな」
「ずいぶん詩的な表現だなあ」
その言葉を受けて、ハインはカラカラと笑っていた。
屈託のない、その顔をお前はよく覚えていた。
今なら言える。
お前は遠くを見ていたんだ。
遠い将来まで、その笑顔が見えることを、心のどこかで思っていたんだ。
457
:
序章
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/07(日) 15:55:15 ID:kxRdfcGY0
彼女にはお気に入りの場所があった。
学生通りから少し外れたところにある、小さなカフェだ。
学生ばかりな道沿いのカフェよりも、外れた方が落ち着けるというのがその理由だった。
彼女が学生ではないという意味でもあるし、また、彼女が大学を出ていなかったという意味でもある。
そのカフェで、彼女はホットモカを頼む。
いくら外が暖かくなっても、彼女はホットであることを譲らなかった。
从 ゚∀从「だって、コーヒーは温めて飲むものなんだよ」
理由を聞いても、彼女はそればっかりだった。
从 ゚∀从「アイスコーヒーなんて頼んだら、ブラジル人がびっくりするよ」
「いいよ、ブラジル人に会う予定は今のところないし」
そう言って、お前は自分で頼んだアイスコーヒーにマドラーを差し込んだ。
200円の安いコーヒー。
ホットモカならもう50円高くなる。
それでも、落ち着いた店内の様子を踏まえたら、十分良好な値段だった。
458
:
序章
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/07(日) 15:56:21 ID:kxRdfcGY0
落ち着いた時間、お前はよく話した。
会ったばかりの頃は、真面目な話をしていた気がする。
だけどいつの間にか他愛ない話をするようになった。
そしてその方が長く、楽しく会話することができた。
彼女の仕事の愚痴が一段落したところで、有線から音楽が流れてくる。
ポップな曲調、だけどどこかに陰を感じる、不思議な雰囲気を感じる。
从 ゚∀从「あ、あたしこの曲好きなんだよね」
そういうと彼女は眼を閉じて、曲を追うのに集中し始めた。
店内は静かな方だし、聴き取りやすいことだろう。
「スピッツって言ったっけ」
从 ゚∀从「そう。もっと売れてもいいと思うんだけどな」
『空も飛べるはず』というのがその曲のタイトルだった。
彼女の呟いた通り、数年後にドラマの主題歌となり、息の長いヒットとなる。
459
:
序章
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/07(日) 15:58:11 ID:kxRdfcGY0
お前と彼女は人ごみが嫌いだった。
さすがに、この世界をごみできらめくだとか、そんな風には評価はしないけど。
『ずっとそばで 笑って いてほしい』
そのフレーズを聴き、胸の奥がざわついたのを覚えている。
あえて言えば、そのざわつきがきっかけだったのかもしれない。
从 ゚∀从「モララー、コーヒー無くなってるよ」
言われてようやく、お前は気付く。
( ・∀・)「あれ、ぼーっとしてた」
从 ゚∀从「さっきから大丈夫か?」
日付も思い出せない、よくある夏の一日。
ハインはいつものように笑っていて、お前はそれをただ見ていた。
そして「いつも」が積み重なって、お前は彼女を好きになった。
460
:
序章
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/07(日) 16:02:06 ID:kxRdfcGY0
その不思議な会合は春から夏の間行われていた。
そして一年間、お前はハインを追い求めた。
これは1994年の話。
お前の話。
今でも忘れられない話。
『( ・∀・)探偵モララーは信じているようです』 第一章 邂逅 へ続く。
461
:
名も無きAAのようです
:2013/07/07(日) 16:06:19 ID:8mpVoKYg0
おお!続編きたか!
スレはここのままなのか?
462
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/07(日) 16:09:54 ID:kxRdfcGY0
本日の投下は以上です。
前作、「ブーンは嘘をついていたようです」を支援していただきありがとうございました。
今回の作品はその中の登場人物、モララーの過去に焦点を絞ります。
ブーンたちは全く関係しません。前作未読者用の説明も加えてあるので、気軽に読んでいただければ幸いです。
次回はできれば次の土日に行いたいと思います。
前回のような毎日投下はできません。一週間に1,2回だと思います。
全体では残り15回になる予定です。
書き忘れましたが、冒頭の文はキング牧師の言葉です。
それでは。
463
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/07(日) 16:11:03 ID:kxRdfcGY0
>>462
せっかく余っているのにもったいないので、ここを再利用します。
いっぱいになりましたら次スレを立てようと思います。
464
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/07(日) 16:11:58 ID:kxRdfcGY0
>>461
安価ミスです。すいません。
465
:
名も無きAAのようです
:2013/07/07(日) 16:20:55 ID:8mpVoKYg0
前作とほとんど接点ないんだったら次スレ立ててもいいと思うんだけど、まあそのつもりなら。
週一だろうと投下が見込まれるなら大歓迎だわ。とりあえず乙
466
:
名も無きAAのようです
:2013/07/07(日) 16:29:38 ID:pWOOfn8s0
続編待ってた
乙
467
:
名も無きAAのようです
:2013/07/07(日) 20:21:02 ID:BevsE2b6O
やっと戻って来たか、待ってたよ
それと同時に俺以外の書きこみが多いのに驚いたよ
468
:
名も無きAAのようです
:2013/07/08(月) 00:04:35 ID:y1fdLk8c0
今全部読んで面白すぎすごい…
週一とかはやいほうだろ楽しみにしてる!おつ!
469
:
名も無きAAのようです
:2013/07/08(月) 00:36:19 ID:g/7m87nw0
待ってたよ!乙!
これからの楽しみが増えた!
470
:
名も無きAAのようです
:2013/07/08(月) 03:11:07 ID:K.j1q/8.O
ω・)いまごろキターwww
471
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/08(月) 13:59:04 ID:pKdTLMKc0
投下はまだですが、ご報告を。
Boon Roman様がさっそく今作もまとめてくださいました。
どうやら前作もまとめられていたようで、当時は気付かなくてすいません。
本当にありがとうございます。今回もよろしくお願いします。
472
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 15:30:50 ID:nB57iS0A0
投下始めます。
473
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 15:32:44 ID:nB57iS0A0
〜主な登場人物(随時追加予定)〜
( ・∀・)……分手モララー
【備考】
K大学在籍中。
从 ゚∀从……高岡ハイン
【備考】
474
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 15:34:21 ID:nB57iS0A0
1993年 12月15日――
冬の夜の冷え込みは日に日に強くなってきていた。
ましてや海辺なんて、この寒さで気軽に出歩くような場所では無い。
空気は澄んでいて、夜の闇が港を包む。
月明かりはよわよわしい。しかししばらく暗闇を歩いていれば、物を識別するのは容易になった。
モララーの目には今、二人の黒服の男が映っている。
一人は背の低く弱弱しそうな男、見た目はごく普通のサラリーマンだ。
背が高くずんぐりした、おそらく、男。こちらのスーツは強めのストライプが入っており、只者ではない雰囲気がある。
本来、モララーは背の低い方の男を尾行していた。それが彼の仕事だった。
背の低い男がへこへこと頭を下げている。
ストライプの男はそれに応えもせず、ただゆっくりと、その片手にもった鞄を掲げ、何事かを話した。
声のトーンからして、やはり男で間違いないようだ。それも多分、この国の人間ではない。
これはいよいよ怪しい現場に遭遇してしまったようだ、モララーはそう思った。
475
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 15:35:37 ID:nB57iS0A0
モララーはとある事情から探偵のようなことをしている。
今回、モララーはある女性からの依頼を受けて行動している。その女性とは、背の低い男の妻である。
その女性が言うには、最近夫の挙動がどうも怪しいとのことで、何をしているのか気になるから調べてほしいというものだった。
浮気調査とは言わなかった。夫はそんなことする人ではないとその女性がはっきり言っていたからだ。
だからこそ、挙動不審さが目立ったのだとか。
モララーはとりあえずその夫の素行を調べることにし、その結果が今暗がりの中で展開されている。
怪しい場所で、怪しい異国の大男と、怪しげな取引をしている。
モララーは段々と落ち着きを取り戻してきていた。
そもそもこの光景を見た瞬間にショックを受け過ぎたのだ。
冷静に考えた。怪しい取引を目の当たりにしている自分。
身体はほとんどコンテナの陰に隠れているが、それでも危険な状況には変わりない。
そう、自分は危険な状況にある。
きっとこのまま深入りすれば碌な目に合わない。
476
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 15:36:49 ID:nB57iS0A0
結論が出たとたんに、モララーはどっと汗をかいた。
逃げなくてはならない。
仕事はもうすんでいる。お宅の夫はこれこれこういう怪しいことをやっていました。あとはご家庭の問題ですと奥さんに伝えればそれでいい。
わざわざ事件に首を突っ込む必要もない。
モララーは音をたてないように慎重に、ゆっくりと、身体を180度回転させた。
頭の中は、この港に置かれたコンテナ群をどう走り抜けるかでいっぱいだった。
しかし余計なことを考えすぎていたためか、自分と誰かの目が合っていることに気づくまでに時間が掛かってしまった。
顔は良く見えないが、雰囲気でわかる。
この男はあのストライプの男の仲間だ。
顔が見えないのはフードを被っているせいもある。寒いからだろうか、それにしても目深にかぶりすぎだ。
唯一見える耳元と鼻に、銀のピアスがある。
モララーが走り出すのと、その銀ピアスの男が叫ぶのはほとんど同時だった。
モララーは男を突き飛ばして、コンテナ群を駆けぬけた。
477
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 15:38:44 ID:nB57iS0A0
走り抜けるルートは想定したとおりにはいかなかった。
人影が見えるたびに、モララーは走る道を変えた。
そのたびに聞き慣れない叫び声をきいたが、それがどこの国の言語かも確認している暇などなかった。
付き合ってられるか、こんなの。モララーは口にも出してそう言い続けた。
とにかく逃げる。遅れてしまえばつかまってしまうだろう。そうなったらどんなことになるか。
想像している暇すらない。
相変わらず叫び声が聞こえてくる。
確かにかなりの人影を目撃している。たまに至近距離で遭遇してしまい、慌てて突き飛ばすこともある。
無抵抗のままですんでいるのは運が良かったからだろう。
全力で暗闇を走ってくる男相手に、対処できる人間などそうそういなかった。
それにしても、果たしてこんなに叫び声が聞こえるほどに人と出会っただろうか。
疑問を浮かべたのとほとんど同じ頃合いで、モララーはとうとう足を止めた。
目の前に赤々とパトランプの光が届いている。
もう数メートル先に、パトカーが数台停まっていた。
478
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 15:39:48 ID:nB57iS0A0
何故パトカーがそこに来ているのか。自分は呼んだ憶えなどない。
だがそんなことはどうでもいい。自分が助かる可能性が目の前に転がっている。
すぐにでも助けを請わねばならない。立ち止まっている暇などない。
安堵から動きをやめていた足をもう一度奮い立たせ、モララーはまた力強く足を踏み出す。
しかしその足がしっかり地面に定着する前のことだ。
横のコンビナートが鋭い音を響かせる。
こんなのテレビドラマの中でしかきいたことがない。
銃声だった。
耳にやかましい声も後ろから聞こえてくる。
たとえ言葉はわからなくても、そこに声に乗せられた意味はよくわかった。
動いてほしくないのだろう、わかってる、動きたくもない、モララーは顔をひきつらせた。
後ろから足音がする。どうも背後にいる人物が近付いてきているようだ。
彼はなるべく意識を後ろから遠ざけた。
目線は前のパトカーに集中する。
中に誰も乗っていないのだろうか。銃声が響いた時も何の動きも無かった。
目を凝らしたいが、暗闇に馴れた目にパトランプの明滅はきつく、識別しにくい。
だがどうにも人の気配はしない。
パトカーに乗り込んでいた警察の方々は、この非常事態にどこへ行ってしまったのだろう。
479
:
名も無きAAのようです
:2013/07/13(土) 15:41:22 ID:2IbjZVMs0
今boonroman 見て気づいた、、、お帰りーまってたよー
480
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 15:41:57 ID:nB57iS0A0
彼はいくつか非難の言葉を思いついたが、冷静さをもたせるためには効果が薄かった。
何せ足音は段々と大きくなってきているので、意識の反らしようがなくなってきていたのである。
ああ、どうしてこんなことになっていしまったのか。
あの依頼のせいにしてもいいだろうか。依頼を受けたのは先週のこと、ここまで男の素行を調べるのに時間をかけた。
男は至って平凡な人生で、事実今日までのほとんどの時間は仕事と家と、通勤とにつかっていた。他には何もない。
今日何かあると思ったのは、明らかに今日の彼がいつもと違ったからだ。
いつも以上にそわそわしていた。しきりに時計を確認し、何度もメモ帳を確認していた。
貧乏ゆすりもいつもの倍の頻度で行われていたし、目線は常に泳いでいた。
そして、何より、何故か彼は今日だけいつもと違う鞄を持っていた。
そう、先程の現場で大柄な男が持っていた鞄、あれは小柄な男が渡したものだ。
その鞄はとても怪しかった。何故ならば――
思考は、再び乾いた破裂音で途切れた。
しかも一度だけでは無い、三発ほど連続して発射音が聞こえて来た。
481
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 15:44:41 ID:nB57iS0A0
なにが起こった……
どうも彼が固まって今日一日の反芻をしているうちに、背後の状況が激変したらしい。
足音はもう聞こえない。大丈夫だろうか、振り向いてもいいのだろうか。
その疑問に答えるように、ひとつ聞き慣れない声が聞こえてきた。
「いいぞー、もう動いても」
金縛りが解けたような感じをモララーは受けた。
押し出すようにして溜息をつき、肩を落とした。
思った以上に自分の心臓が早鐘を打っていることにモララーは気付いた。
身体というものは正直にできているようだ。
呼吸を整えてから、モララーは振り返った。
目に映ったのは、にやりと笑った女性だった。
歯を剥き出しにした獰猛そうな笑顔。
そしてその服は確かに、警察のものだった。
482
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 15:45:54 ID:nB57iS0A0
从 ゚∀从「逃亡お疲れ様。もう安心していいぞ。
あんたを追ってきていた奴らは全員、のしておいたから」
のしておくなんて、随分と簡単な言葉を使うものだ。
彼はそう思ったが、ふと彼女の背後に目をやると、もののみごとにのされている男たちが目に入った。
ぴったり三人、先程の銃声と同じ。
( ・∀・)「お、おいあんたそこの奴ら……」
从 ゚∀从「ん? あー、大丈夫。死んじゃいないよ。
銃で脅したら勝手に慌ててたから、ちょっと痛い目に合わせただけさ。
あんたには平気で銃を向けてたのにな、自分らに向けられるのは苦手だったんだろ」
何がおかしいのか、彼女は高らかに笑いだす。
モララーはどうしていいかわからず、顔を引きつらせるしかない。
483
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 15:46:51 ID:nB57iS0A0
从 ゚∀从「さてと、ちょっと来てもらってもいいかな」
( ・∀・)「へ?」
なんだかすごく間抜けな声を出してしまったと、心の片隅で彼は思った。
从 ゚∀从「現場検証だ」
( ・∀・)「い、いや自分関係ないんで」
从 ゚∀从「んー? 助けてやったろー?」
彼女の笑みは止まらない。
それどころか先程よりもさらに口の端がつり上がっているようだ。
まるで悪魔のように。
( ・∀・)「……はぁ」
从 ゚∀从「よし、来い!」
気の抜けた声を肯定と判断したらしい、彼女は彼の腕をしっかりとつかむ。
得体の知れない力強さだ。とてもじゃないがふりほどけそうにない。
観念するしかない。モララーはたどたどしく彼女について行くしかなかった。
484
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 15:48:42 ID:nB57iS0A0
現場、例の二人の男が話しあっていた場所だ。
警察の方々はどうやら人知れずコンテナ群に紛れ込んでいたらしい。
現場にも数名のがっしりした頼れる方々がいた。
ストライプの男は、隅の方で座っている。
顔に大きな痣が出来ているので、派手に抵抗したのだろう。
今は手錠をかけられて、おまけに何人かの警察官にしっかりと監視されている。
もはや逃げることはできないようだ。
そして小さい男は、倉庫の壁にもたれかかっていた。
从 ゚∀从「状況教えてくれる?」
彼を引っ張ってきた彼女が、近くにいた警官に声をかける。
警官と彼女が話し込んでいる間、彼は小柄の男を観察した。
尾行はしていたが、こんなに間近で見るのは初めてだ。
近寄ればはっきりと、その弱弱しさがわかる。
今はさらに元気を無くし、まるで枯れ木のように壁に背中を当てて呆然としていた。
485
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 15:49:45 ID:nB57iS0A0
この弱弱しい男に奥さんの話をしてもいいのだろうか、唐突に彼は不安を感じた。
まさか奥さんに疑われていて、彼が尾行していたなんて、今の男に伝えたらどれだけショックを受けることだろう。
とてもその衝撃に耐えられるとは思えない。精神的によくないだろう。
( "ゞ)「……しが……」
不意に何事かを呟く。
( ・∀・)「え?」
彼は少しだけ顔を近づける。
警官と、先ほどの笑顔の彼女の声も止んだ。男が何かを言っているのに気付いたのだろう。
( "ゞ)「私が……やりました」
やった、とは、取引のことだろうか。
男の細々とした口から、再び同じ言葉が繰り返された。
( "ゞ)「私が、やりました。
私がこの取引の首謀者です」
486
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 15:51:17 ID:nB57iS0A0
从 ゚∀从「んーと、あんたがこの取引をもちかけたってことでいいんだな」
彼女が覗き込むような形で男を見る。
男は一瞬びくっとして、それから慌てるように首を縦に振った。
肯定である。
モララーは違和感を感じた。
何を言っているのだ、この人は。
从 ゚∀从「そうかそうか。いろいろ気になるとこはあるけど、詳しいことは警部補のとこできくよ。
よし、とりあえずこの人を署に連れて行こう」
彼女は傍にいた警官に声をかけた。
咄嗟に、モララーは声を出す。
( ・∀・)「ちょっと待ってください!」
彼女たちが動作を中断するのを横目に、モララーはその弱弱しい男をじっと見る。
男は目をそむけた。反射的に目を反らしたようだ。
487
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 15:52:06 ID:nB57iS0A0
( ・∀・)「なあ、あんた一つ聞かせてくれよ」
从 ゚∀从「おいおい、何を始めてくれているのかな」
( ・∀・)「気になることがあるんですよ」
さっきまでは気押されていたのだが、今では不思議とあらがえる。
気になることがあると途端に強気になるのが、彼の性分だった。
彼女もそんなモララーの変化に気付いたのか、やや不満げだが抵抗はしなかった。
从 ゚∀从「気になることって?
そういえばまだあんたのことも詳しく聴いていなかったね」
( ・∀・)「ええ、俺は分手モララ―。K大学の学生です」
すると、急に彼女の目が輝いた。
好奇心に駆られた目という表現がぴったりだった。
从 ゚∀从「学生がこんなところで探偵のまねごと?」
( ・∀・)「いえ、探偵というか、活動というか」
モララーは言い淀んだ。
実際なかなか説明しにくかったからだ。
488
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 15:53:21 ID:nB57iS0A0
( ・∀・)「僕はこの男の奥さんに頼まれて、今日一日この男をつけていました」
モララーは軽く経緯を説明する。
彼女は実にすんなりと聞く側になってくれた。それも真剣な顔つきで。
( ・∀・)「この男は、いつの間にか鞄を持っていたんです」
从 ゚∀从「そこの大きな野郎がもっていたやつか?」
モララ―は頷く。
小柄な男の顔が青ざめるのが見て取れた。わかりやすい反応だ。
从 ゚∀从「いつの間にか……どこで手に入れたかわからないのか?」
彼女は質問をする。
( ・∀・)「はっきりと持った瞬間は見なかったってことです。
彼はおそらく、会社の中であの鞄を手にした。朝の通勤のときに見た鞄と、帰る時に色が変わっていたんです。
だから俺は気になったんです」
どうも敬語に馴れない……心の中でモララーは思った。
彼女の接し方のせいでもある。
彼女の年齢はわからないが、警察官なのでモララーと同じかそれ以上の歳ではあるはずだ。
その彼女は初対面の自分ともかなり近しい距離感で話していた。
489
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 15:54:07 ID:nB57iS0A0
彼女は暫く考え、それから軽く頷いた。
モララーは彼女を見つめていたことにようやく気付き、少しだけ身を引いた。
从 ゚∀从「もうちょっと言いたいことがあるんだろ?」
もちろん、とモララーはこたえた。
( ・∀・)「この人はここ最近ずっと挙動不審でした。奥さんが怪しんで私みたいな学生に調査してもらうくらいに。
奥さんが言うにはこの人はとても気弱で、浮気さえもできないような人だということです。
そんな彼が今日、このような怪しい場所で怪しい取引をしていた」
( ・∀・)「取引に使われたのはその鞄ですが、それは彼が途中で手に入れたもの。
初めからもっていたのならもちろん彼が首謀者である可能性は高い。しかし彼は会社でそれを手に入れた。
もし会社に隠していたのであれば、ちょっと不自然です」
( ・∀・)「だって、もしそれが大事なものであれば、なるべく自分から離れたところに置かないはずだ。
たとえ離れていても、誰の目にも触れないような安全な場所に置くでしょう。会社だとその危険は大きい。
彼が会社に隠していたというより、彼が会社で誰かから受け取ったと考える方が自然でしょう」
(;"ゞ)「いや、首謀者は私だ」
小柄な男は遮るように言った。言葉の端はしが震え切っている。
490
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 15:55:21 ID:nB57iS0A0
(;"ゞ)「そ、その鞄は私が友人にあ、預けておいてもらったんだ。
だから会社で受け取ったんだ。それで何の問題もないはず」
( ・∀・)「ちょっと待ってくださいよ」
モララーは首を横に振る。
( ・∀・)「まあ、もし違っていたら僕の恥なんですけどね。
ただあなたの発言が嘘かどうかなんてすぐにわかりますよ。
もしその証言を他の警察に話したら、きっと警察は会社を調査しますよ。いや、その前にあなたを尋問するでしょう。
いったいその相手とは誰だって」
( ・∀・)「その相手を適当にでっち上げたとしても、もちろん会社に聞けばすぐにわかってしまう。
嘘がばれた場合、どうなるんですかね。警察に怒られる? もちろんそれだけじゃないんでしょう?」
モララーはじっと小柄な男を見据えた。
ひとつの確信が生まれていた。
奥さんから気弱な人と言われている男。見た目からして、それは正しいようだ。
今もまだ顔を蒼くさせ、震えている。
そんな彼が気丈にも自分の犯行だと言い張る理由。
( ・∀・)「あなたは恐らく家族を庇っているんだ。違うかな?」
491
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 15:56:39 ID:nB57iS0A0
言葉を聞くと、小柄な男は目を見開いた。
口をあいたり閉じたり、どうも言葉がすぐに出て来ないようなので、モララーは語りつづける。
( ・∀・)「もし取引の相手にこの失敗がばれたら、家族に危害が及ぶとあなたは考えている。
順番を変えてみよう。もしこの取引の首謀者があなたなら、どうなるか。
犯行はあなたが考えた者となる。あなたに協力した人などおらず、あなたと、そこの大柄な男が裁かれるだけ」
( ・∀・)「でも実際は違う。あなたには必ず協力者がいた。首謀者と言っていいだろう。そしてそいつこそがその鞄を与えたんだ。
あなたはきっとその首謀者から、もし捕まった場合自供するように教わっていたんだ。
さもなければ家族が危険な目に遭うぞ、とでも脅されていたんだろう」
( ・∀・)「でもな、よく考えてみよう。そんなことしても警察はきっとすぐ真実に気づくはず。
そんな脅しに実効性は無い。第一、メリットが無い。殺人だのなんだのはそんな軽くできるもんじゃない。
その脅しは、本当はこの取引の成功率を高めるためだったのさ。そう脅せば、あなたはとにかく成功させようと頑張る、そうだろ?」
小柄な男は微かに呻いていた。
彼が挙動不審だった理由、それはどうしてもこの取引を成功させなければならないというプレッシャーから来ていたのだ。
男の小刻みな頷きが、それに応えていた。
492
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 15:57:44 ID:nB57iS0A0
( ・∀・)「ていうわけです」
モララーは彼女を向き直る。
( ・∀・)「急いでこの男の家族を保護してください。
万が一ってこともありますし。
それからそこのストライプの男とその仲間は絶対逃がさないようにしないといけません」
从 ゚∀从「随分急に喋りが達者になったな」
彼女はにやっとしてモララーを見た。
モララーも確かに、と思って顔を緩める。
从 ゚∀从「もちろん言われたとおりにするさ
あんた、なかなか面白い奴だ」
彼女はそう言って、他の警官に指示を出した。
493
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 16:00:45 ID:nB57iS0A0
程なくして、現場の状況は把握された。
コンテナ群に潜んでいた連中はやはり異国の人間だったらしい。
あの場にいた全員を確保できたわけではないそうだ。
それでも事件は一段落した。
警察の初動の早さについても深いことは教えてもらえなかった。
ただ、以前より目をつけていたような意味合いのことだけ聞かされた。
何の取引かについても当然、モララーには教えてもらえなかった。
民間人を巻き込むのはさすがに不味かったのだろう。
モララーからわかることは、少しだけ現実離れした世界に入っていたということだけ。
494
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 16:03:01 ID:nB57iS0A0
モララーは警察署まで同行した。
事情聴取をする必要があったからだ。
大したことは教えてくれないくせに、なんでこんなにと思うほどこってりと絞られた。
彼を絞ったのは彼女とは違い、恰幅の良い警部補だった。
見た目はかなり老けていたが、聴いてみたところモララーと10しか離れていなかった。
(´・ω・`)「ふむ、これくらいか」
警部補がそう呟いたときには、もう夜も更け、朝が目前にせまっていた。
どうもこの人は気に食わない、モララーは疲れで霞む目で警部補を睨んでいた。
从 ゚∀从「ショボンさーん、終わりましたか?」
突然取調室の扉が開いた。ノックすらもない。
ショボンはやや非難めいた眼付で彼女を睨んだ。
(´・ω・`)「ああ、終わったよ」
从 ゚∀从「そいつはよかった。じゃあこの探偵さんはあたしが送っておきますね」
そういうと、彼女はモララーの襟を掴んだ。
495
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 16:03:46 ID:nB57iS0A0
なんでこんなに急いでいるのか、モララーにはわからなかった。
とにかく彼女はそそくさと取調室を後にする。
モララーが去り際にちらっと見たショボンの顔は、明らかに不機嫌そうだった。
署の出口で、彼女はようやく立ち止まる。
从 ゚∀从「探偵さん、名前、モララーだっけ」
( ・∀・)「え? ええ、そうです」
ようやく首が自由になって、モララーは目を瞬いた。
从 ゚∀从「あたしは高岡ハイン。きっとまた会うと思うから、そのときはよろしくな」
ハインはそう言って、手を差し出した。
握手のようだ。モララーは少し遅れてからそれに応えた。
496
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 16:05:41 ID:nB57iS0A0
( ・∀・)「またって?」
从 ゚∀从「ああ、また」
ハインはにやっとしてそれだけ答えた。
それっきり、後は追いだすようにモララーを外に出した。
急に寒空のもとに押し出されてはたまったものではない。
モララーは非難しようと振り返ったが、すでにハインは引っ込んでしまっていた。
……なんなんだ今日は。
モララーはあまりにも疑問が多くて固まっていたが、寒い北風を感じて身をふるわせた後、素直に帰ることにした。
それが、モララーとハインの出会いだった。
『( ・∀・)探偵モララーは信じているようです』 第二章 再開 へ続く。
497
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 16:09:10 ID:nB57iS0A0
本日の投下は終了です。
明日の夕方か夜に第三章投下できると思います。
それでは。
498
:
名も無きAAのようです
:2013/07/13(土) 17:40:33 ID:ULUai2Q.0
面白すぎてここまで一気に読んでしまった!
明日の投下が楽しみだー
499
:
名も無きAAのようです
:2013/07/14(日) 00:54:37 ID:HxO5g3Q.O
スレタイは嘘つきだが作者は嘘つきじゃなかった
明日の続き待ってる
500
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:26:45 ID:HwtNlSEU0
感想等のレス、感謝します。
投下します。
501
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:28:50 ID:HwtNlSEU0
と、その前に
第二章のタイトルが誤りです。
×再開
○再会
502
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:29:45 ID:HwtNlSEU0
〜主な登場人物(随時追加予定)〜
( ・∀・)……分手モララー
【備考】
K大学在籍中。
从 ゚∀从……高岡ハイン
【備考】
某県警捜査第四課(組織犯罪対策)巡査部長。
(´・ω・`)……所部ショボン
某県警捜査第四課警部補。そろそろ昇進しないとまずい。
503
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:30:29 ID:HwtNlSEU0
分手モララーには記憶が無い。
彼は1987年の夏に川を流れているところを、分手夫妻に拾われた。
夫妻は元々厭世として山で暮らしていた。
彼らは後にこっそりとモララーの両親と会い、モララーを養子に授かった。
もっとも子どもの頃のモララーはそのことを知らなかった。大学に入った頃からどうもおかしいとは感じていたが。
モララーは某県の南にあるK大学に、兄弟分である分手マスと共に進学した。
分手マスは元々学業優秀であり、加えて彼には経営、物理、工学等様々な分野に対する関心がかなりあった。
モララーはそんな聡明な兄弟分からの指導もあって、県内の有名校に進学することができた。
K大学はキャンパスの中に自然がある。
山で暮らした記憶しかないモララーは都会の喧騒を嫌っていたので、この環境は大いに満足していた。
504
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:32:14 ID:HwtNlSEU0
季節は冬。あの年末の大取り物についてはもう騒がれていない。
いや、実はあの事件は本当に最初から全く騒がれていなかった。
モララーが確認した限りだと、新聞にもほとんどとりあげられず、わずかにニュースキャスターが多少の喧騒があったと紹介しただけだった。
あの発砲や叫び声を喧騒ですましていいものかとモララーは憤り、その時は警察に再度訴えかけようかとも思った。
しかしすぐに、警察から決して広めるなと念を押されたことを思い出した。
だいたい自分でも広めちゃいけないと言っていたのだ。モララーは憤りを誰にもぶつけずにいた。
ただ一人、同居している分手マスにだけは事の次第を話していた。
同居人だから、というのもあったし、彼に限って言えば絶対に知らないところで広められてしまう恐れは無い。
マスに対する信頼は大きかった。
マスはモララーが巻き込まれた事件に対し、疑問を呈していた。
人が危ない目にあったというのに、と文句を言うモララーをよそに、マスは興味ありげに感想を述べた。
その取引は妙に脆弱な気がする。
( ・∀・)「それは確かに俺も思うよ」
モララーも同意見だった。
505
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:33:00 ID:HwtNlSEU0
( ・∀・)「なんでわざわざあんなひょろひょろのおっさん捕まえて取引につかったのか。
本当に大事な取引だったら、あんなトリッキーな方法は使わない。確実に物が相手に届く補償なんてない。
まあ、あの取引の詳しい事情も何も俺には全く教えてくれなかったけどなー」
( <●><●>)「首を突っ込むのも憚られるんですね」
そう言って、マスは溜息をついていた。
そうして、何事もないまま年が明けた。
大学の無駄に多い休みが一旦終わり、まるでテストのためだけのように空いた授業期間が始まった。
このテストが終われば今度は春休みである。
モララーはテスト前の最後の熱の入った授業を流し聴きしていた。
そもそも本当は、モララーはすべての単位を取り終えている。
真剣に聞く必要はないので、モララーは軽い気持ちで授業に臨んでいた。
そして頭の中では、やはり事件のことが渦巻いている。
ちょっと日常から離れた世界、なんて表現したら大げさだろうか。
でもそれに憧れてしまうのは人間の性分な気がする、などどモララーは自分なりに納得していた。
506
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:34:14 ID:HwtNlSEU0
彼が探偵に興味を抱き始めたのは、マスの影響が大きかった。
マスと彼が暮らした分手夫妻の山の家には、たくさんの本があり、とりわけ推理小説がやまほどあった。
それらの小説を買い集めたのは分手夫妻であり、元々マスがそれを読み耽っていた。
マスは推理小説に大いに傾倒し、それを新しい家族であるモララーにこれでもかと進めていた。
モララーもそれを必死に読み耽っていた。
記憶が無いという寂しさを埋めるかのようにも見えた。
モララーが探偵業に興味を抱くのにそう時間はかからなかった。
無論、彼は現実の探偵が小説の中のとは違うものだというのはわかっている。
彼は別に小説の中の人物のように活躍したいわけではなかった。
探偵という職業がもつ特徴、それは相手の過去を、真意を探ることだとモララーは思った。
自分の知らないものがどんどんわかってくる。見えていなかったものが見えてくる。
モララーが惹かれたのは、小説の中に描かれるそうした側面であった。
記憶を失った彼が、記憶を紡ぐ仕事に興味を持ったのは、ある意味繋がっていることなのだ。
授業が終わり、知り合いを何人かあしらった。
この時期はモララーのところによく相談が舞い込んでくる。もちろんテストのことだ。
モララーのヤマは当たるともっぱらの評判だった。
情報は金になる。
モララーはこのために授業に出席していた。
507
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:34:58 ID:HwtNlSEU0
人を捌き切ったのち、モララーは満足顔で教室を出た。
从 ゚∀从「やー、大人気なんだなーさすがさすが」
途端に満足げな顔は、衝撃を受けて真顔になる。
声はすぐ隣で聞こえて来た。入口の前で誰かが待っていたのか。
聞き覚えのある声だ。モララーはすぐに振り向いた。
从 ゚∀从「やっほー」
彼女、ハインがそこにいた。
( ・∀・)「……え?」
从 ゚∀从「またって言ったじゃん」
久しぶりにみるにやっとした笑みをみて、モララーはかつて彼女と会った日のことを思い出した。
この一見すると不気味な笑みが、彼女のトレードマークだった。
以前会ったような制服姿ではない。
おそらく私服なのだろう。控え目な色遣いの、まるで大学生のような姿だ。
そしてその胸には、銀のロザリオが煌めいていた。
从 ゚∀从「少し歩くぞー」
508
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:35:39 ID:HwtNlSEU0
( ・∀・)「何か話すんですかい?」
从 ゚∀从「ああ、それも人にはあんまり聞いてほしくない話」
( ・∀・)「あんまり怪しいのには巻き込まれたくないなあ」
モララーは率直な感想を述べて、目線を反らす。
それでもハインからは逃げられそうにないことは、なんとなくモララーにはわかっていた。
从 ゚∀从「そうかな、ちょっとは気になるネタを持って来たんだけどな。
あの取引の話とか、聴いてみたいとは思わないかい?」
さすが、彼女はもう俺の特徴に気づいているんだ、モララーはそう思った。
学校の外に出た。
冬の日差しはとても弱いが、幸い風は無かったので歩くのに辛いことはない。
从 ゚∀从「ずいぶんたくさん木があるんだなーここは」
大学の中を、ハインは物珍しそうに観察する。
( ・∀・)「大学の中にしては、珍しいですよね」
从 ゚∀从「まんざらでもない顔だな。あんたも気に入ってるのか」
( ・∀・)「ええ、まあ」
509
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:36:42 ID:HwtNlSEU0
どことなくぎこちないのはモララーにもわかっていた。
正直なところ、どこまで気持ちを緩めていいのかわかっていない。
あの事件の話をするというのなら、それなりに緊張感があって然るべきだ。
しかし、相手のハインには全くそんな小難しい話をしようという気概が感じられない。
从 ゚∀从「枯れ木なのが寂しいね」
きょろきょろと目線を動かしていくハイン。
寒々とした広葉樹の姿を見て、何を考えているのか、モララーにはつかめなかった。
あるいは純粋に景色を楽しんでいるのか。
从 ゚∀从「あの鞄の中身な、クスリだったんだ」
クスリという言葉が、一般的なものではなくことは、語調から伝わってきた。
( ・∀・)「クスリ、麻薬ですか」
从 ゚∀从「細かいことは調査中だけどな。なかなか大きな組織が絡んでいるみたいだ。
あの男の人は気付かないうちに密売人になっていたわけだ」
( ・∀・)「いったい誰がそんなことを」
从 ゚∀从「誰だろうな。会社にもそれなりに影響力があったのかもしれない。
それか、まったく別の誰かが、たまたま会社を舞台として取引を行っていた」
( ・∀・)「目星は付いているんですか?」
从 ゚∀从「いや、別に」
510
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:37:27 ID:HwtNlSEU0
二人はゆっくりと学校を周っていった。
大学の裏には、小高い丘がある。
ほとんど学校に隣接する形で、やや雑多な林がある。
丘はその林に囲まれていた。とはいえ鬱蒼としているわけでもない。
林の中にあるものは外からでもはっきりみえる。小さな神社だ。
そもそも神社の方が先にこの土地にあった。
何十年も前に大学は表れ、神社はまるで押しやられるようにその陰になってしまった。
近代化の波にのまれた、なんて文章は聊か壮大過ぎるだろうか。
モララーはその神社もまた好きだった。
学内の木は、その神社から移したものも多い。よそ者に寛容な神社なのだ。
林の深さは浅いが、都会の騒ぎを遮るには十分だった。
鳥居を潜ると、一対の狛犬が待ち構えている。
ハインはまたもや急にはしゃいで狛犬を眺めに行ってしまった。
从 ゚∀从「はー、犬はかわいいなあ」
狛犬を犬と呼ぶのはちょっとおおざっぱ過ぎる気もした。
511
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:38:22 ID:HwtNlSEU0
( ・∀・)「ここを知っていたんですか?」
从 ゚∀从「来る前に外から眺めてたんだ」
そんなに準備して大学に乗り込んできたんだろうか。
俺と事件の話をするために?
腑に落ちない感じがした。
从 ゚∀从「あの取引はな、きっとクスリを完全に届けることが目的じゃなかったんだよ」
ハインがそう言う。
それを聞いて、モララーはマスが先日抱いていた疑問を思い出した。
あの取引は脆弱すぎる。
( ・∀・)「どういうことなんですか?」
从 ゚∀从「予測だけどな、練習じゃないのかなと」
( ・∀・)「取引がちゃんといきわたるかの?」
从 ゚∀从「そうそう、あれだけ届ける主体が変わる方法は相当めんどくさい。
あの方法が本当に成功するかを試しただけだったんじゃないかって、思うんだ」
512
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:40:27 ID:HwtNlSEU0
( ・∀・)「……今までも何かしら取引はあった。
だけど新しい方法を使う必要が出てきた。
だから今回の取引で実験をしてみた、そういうことですか?」
从 ゚∀从「おそらく。
あのめんどくさい方法、何がメリットだと思う?」
( ・∀・)「それは、関係者のかかわりあいが薄くなる分、首謀者が分かりづらくなるのかな」
从 ゚∀从「そうだな。責任の分散だ。
果たして、どうしてそんなことをする必要があるのかねえ」
从 ゚∀从「で、興味は湧いてきた?」
突然話が自分のことになって、モララーは返答に窮した。
なにせ図星だった。モララーはまたも目を反らす。
見透かされている感覚もまた同じ。
513
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:41:09 ID:HwtNlSEU0
( ・∀・)「何か協力するようなことでも?」
気取っているが、その言葉には大きな期待が隠れていた。
隠し切れていないのが、言った傍から本人にわかっていたから、始末が悪い。
从 ゚∀从「おうおう、ずいぶん嬉しそうだね」
堪え切れなくなって、モララーは噴き出してしまう。
( ・∀・)「そんな顔に出てますか」
なんとかそう応えたが、嫌に震えているため情けないことこの上ない。
从 ゚∀从「おー、わかるわかる」
そう応えるハインの顔も、相当嬉しそうであった。
そのまま、二人は神社を後にする。
寒々とした風が二人を見送った。
514
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:41:53 ID:HwtNlSEU0
場所は学校の傍の喫茶店に移された。
太陽も下降を始め、気温が下がっていく。
外をうろつく人はあまりいなくなってきていた。
从 ゚∀从「実際協力とか、そういう要るかははっきりわかんないよ」
ハインは簡潔に述べた。
从 ゚∀从「ただなんとなく、あんたが知りたそうにしていたから、言ってみた」
( ・∀・)「……えらいあっさりですね」
从 ゚∀从「直感だ直感」
( ・∀・)「うーん……」
从 ゚∀从「刑事の勘」
( ・∀・)「いや、言葉を変えればいいってもんじゃないですよ」
とはいえ本当にハインには理由がなさそうにみえた。
そう繕っているのか、どうか、わかりにくいだけのようでもあった。
515
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:46:09 ID:HwtNlSEU0
日常とちょっと離れた世界。
この世の隠された真実。
陳腐な言い回ししかぱっと思いつかないのがモララーはちょっと悔しかった。
でも、そういう隠れた真実の香りを味わうのが楽しいのもまた事実だった。
それが自分の特性、そうモララーは思っていた。
理解した上で、それでもその欲求を満たしたい。
モララーが探偵のまねごとをやっている理由の根底にも通ずるものだ。
ハインはそれを理解している。
理解して、試そうとしている、モララーにはそう思えた。
もっとも、ハインの真意など本当に読めない。
ハインのことを、自分を操るちょっと性の悪い女と評価するにはまだ早すぎた。
モララーとて最初からそんな疑心暗鬼で生きていたくもない。
あくまでそういう可能性もある、として想定をしたまでだ。
从 ゚∀从「探偵さん、とにかくね、あたしはお前に情報を与えてみるんだ。
それがきっと良い結果に繋がる、そんな予感がしたんだ」
516
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:46:58 ID:HwtNlSEU0
( ・∀・)「情報、ですか」
从 ゚∀从「そう。それだけ。
将来的にあたしがあんたと協力するか、あるいは利用するか、それはわからない」
モララーは少し驚いた。
モララーを利用する可能性についても、ハインがあっさりと言及したからだ。
普通相手と協力したいときは、なるべく相手の機嫌を損ねたくない。
だから操るなんていう不穏な言葉は出てくるはずがない。
しかしハインは隠さなかった。
そのことが逆説的に、ハインに悪意が無いことを示していた。
( ・∀・)「本当に賭けなんですね」
思ったことがそのまま口をついて出た。
言いながら、ハインに対する疑いが薄くなるのも感じていた。
ハインはそれを見てとったのかはわからない。でもちょっとだけ満足そうな笑みを浮かべていた。
いろんな種類の笑い方をする女だ。
モララーはだんだんと余裕を感じてきていた。
自分にとって害がない人ならば、仲良くなってもよさそうだ。
どことなく相手を自分の手中に収める感覚を感じ、モララーは心の隅でにやけていた。
人の謎を追求するときは、多かれ少なかれこういう感情を伴う。
モララーはそれをわかっていたし、あまり良い感情でもないことは理解していたが、止めることはできなかった。
そう、思っていた。
517
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:47:49 ID:HwtNlSEU0
从 ゚∀从「探偵さん、率直に言ってあたしはあんたを碌でもない奴だと思ってるよ」
( ・∀・)「え?」
虚を突かれて、モララーは目を瞬かせる。
今まで止めることができないと思っていたものが、急にとまる。
从 ゚∀从「あたしはごまかせないよー」
そのとき、注文していたコーヒーが運ばれてくる。
ホットコーヒーの深い香りが、徐々に空間を満たしていく。
モララーがコーヒーを飲むようになったのはつい最近のことで、だからその香りもまだまだ馴れていない。
从 ゚∀从「あんたはまだ子どもだよ」
モララーは一瞬、何を言われているのかわからなかった。
咎めるようなコーヒーの香りと相まって、見えない壁をハインに感じた。
途端に、ハインの笑みが別のものに見えてきた。
意図的に変えたそぶりはない。
それでも、さっきよりもずっと不気味なものにモララーは思えた。
さっきまで抱いていた親近感は急速に遠ざかっていく。
518
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:48:30 ID:HwtNlSEU0
从 ゚∀从「どうも上から目線というか、大人ぶっているというか、そんな印象を受けるんだよな」
警戒心と羞恥心の入り混じった感情が湧きあがってきた。
複雑な感情を表現できるほどに、顔の筋肉は自由じゃない。
結果としてモララーは、顔を引きつらせることしかできなかった。
( ・∀・)「そ、そんな風に見えましたかね〜」
从 ゚∀从「うん」
元気の良い返事が返ってくる。
从 ゚∀从「ひねくれてるな」
さらにハインはモララーに畳み掛けてくる。
( ・∀・)「……」
从 ゚∀从「なんというか、あれだ。
世界は自分を中心に回っているって思ってそう」
モララーは何も言えなかった。
顔が紅潮しているのが自分でも感じ取れた。
実際、自分の抱いている感情をしっかりと分析したことはなかった。
でもこうして他人に指摘されて、こうして反応しているということは
自分でもどこかしら、自分だけが特別だという気持ちを抱いていることの証明ではないだろうか。
519
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:49:19 ID:HwtNlSEU0
モララーは言い返そうとした。
自分だけが、という気持ちを抱く理由だって、ちゃんとある。
でもどう言葉を紡げばいいかわからない。
从 ゚∀从「まあ、若さだよ若さ」
ふと、ハインが気軽に評してくれた。
あまりにも簡単にまとめられてしまった。あっけない。
そう感じると、モララーの頭の中で散々暴れまわっていた言葉たちが、ふっと消えてしまった。
モララーはため息をつく。
空気が変わった。
ハインは以前のような親しみをもった目でこちらを見ている。
( ・∀・)「若さって……ハインさんそんな離れてないですよね?」
从 ゚∀从「社会人と大学生だ」
( ・∀・)「……はぁ」
結局のところ、社会人に精神的にいじられたという感触だけが残っていた。
520
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:50:13 ID:HwtNlSEU0
警戒心が瓦解すると、僅かばかりの恥じらいが奇妙な感情を醸成する。
格が上の相手に対して抱くものだが、尊敬などと呼ぶのは大げさすぎる。
目上に対する親しみと呼んで、果たして区別がつくだろうか。
さっき潰えたばかりの自分勝手な親近感とは性質を異にする親しみだ。
モララーは次第にハインの顔をちらっと見た。
ハインはモララーを責め立てるのに飽いたのか、コーヒーをくるくるとかき回していた。
なんだか気持ちを張り詰めるのにも疲れてきた。
それに、目の前にいる人はそういう気配りが最も必要でないタイプの人だ。
そう思い、力が抜ける。
( ・∀・)「……俺ね、記憶がないんですよ」
唐突に口から言葉が出てきた。
後から思い返せば、それはつまり、自分がちょっと他人と違うと感じる理由だったのだ。
从 ゚∀从「へえ?」
ハインは手を止めてモララーを見る。
再びその眼に好奇心がやどっているのを、モララーは見てとった。
521
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:51:03 ID:HwtNlSEU0
( ・∀・)「高校生までの自分の記憶が、すっぽりと」
モララーは自分の記憶の話を進めていった。
今の記憶になってからの話。
ハインは頷いたり、たまに話を掘り下げたりした。
会話の比率は、やや自分の方が多いくらい。話慣れていない事柄だから、相応の難しさはあった。
それでも、自分の中の、真実を追求したいという思いはどうしても説明したかった。
自分自身の過去が謎であることからくる、その欲求を。
実際会話の中でなんどもそのことに触れた。
モララーなりの自己表現であり、信条だった。
ハインはちゃんと聞いてくれた。
从 ゚∀从「今探偵の真似ごとをしているのも、関係はあるのかな」
( ・∀・)「ええ、この話詳しくするとまた長くなるんですが……」
モララーは首を振ったのち、喋り疲れてコーヒーを飲んだ。
もうほとんど残っていなかった。いつの間にこんなに飲んだのか。熱中し過ぎて気づいていなかった。
从 ゚∀从「ようやくあんたというやつが見えてきた気がするよ」
ハインは言う。
522
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:52:01 ID:HwtNlSEU0
モララーは、ハインのその顔が優しそうなのに驚いた。
ハインの笑顔は何度も見たが、どれも過剰で異様な雰囲気を帯びていた。
その点、今彼女が見せている笑顔は、ある意味で普通の笑顔だった。
モララーは暫し呆然として、それから慌ててまたコーヒーカップを口に向ける。
もう中身は無いことを再確認する。
从 ゚∀从「良い考えだと思うよ。ホント」
ハインは自然と口の端をあげた。
もはやおなじみな笑い方だ。
でも、それもどこか優しさを帯びている、柔らかな笑い方だった。
从 ゚∀从「そうだ、探偵さん」
ハインは閃き顔で提案した。
从 ゚∀从「ちょっと寄りたいところがあったんだ。
探偵さんがいるとなお良いから、ついてきてくれよ。割と近いからさ」
523
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:52:46 ID:HwtNlSEU0
冬の夕暮れは短い。
さっき陽が傾いたと思ったら、もう空の端が紫色に染まりつつある。
二人は外に出て、電車に乗り、数駅と離れた場所に移動した。
街からは離れ、集合住宅が立ち並ぶ地域だ。
そこまで田舎というわけでもない、暮らすだけなら不便はしないだろう。
从 ゚∀从「そうそう、気になってたんだけど、敬語使わなくていいよ」
( ・∀・)「いいんですか?」
从 ゚∀从「その方が話しやすいだろ?」
( ・∀・)「まあ……」
確かに、と口に出しそうになって、そこまで言ったら悪い気がする、と僅かばかりの良心が止めに入った。
とはいえハインがそんなこと気にするとはとても思えなかったが。
从 ゚∀从「あたしも普通の大学生気分を味わいたかったなー、あんたみたいに」
( ・∀・)「……結構異端ですよ?」
从 ゚∀从「あたしが普通の大学生活送れると思う?」
確かに、と喉まで出かかって、また良心が仕事してくれた。
524
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:53:28 ID:HwtNlSEU0
ハインはなんで警察官になったのだろう。
ふとそんな疑問が湧く。
冷静に考えて、自分と同じ年代の警察官をあまり見たことが無かった。
ハインの年は近いのだろう。ほとんどモララーと変わらない。
いったいいくつで刑事になれるのか、その点に関する知識はあいにくモララーには無かった。
大学生活に憧れるということは、高卒なのだろうか。勉強する期間を考え、警察学校にも行かなきゃならない。
それでいて現場では他の人に命令できる立場だった。ハインの人柄という面も無きにしも非ずだが。
もし、ハインがモララーと同じ大学にいたら同じ世代にいたのだろうか。
モララーは考える。
ひょっとしたら、毎度自分のところにノートをせびりに来る人たちに紛れていたのだろうか。
いや、ハインにはそんなもの必要はなさそうな気配がある。
接点は会っただろうか。
それ以上を考えるには、まだモララーは、ハインのことを何も知らなかった。
从 ゚∀从「着いた」
ハインが急に足を止める。
ごく普通のアパートの入口だ。
525
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:55:19 ID:HwtNlSEU0
他のと見比べてみても、かなり似ている。知らなかったら見分けがつかないだろう。
ハインはその中を一度も止まらずに来た。
( ・∀・)「ここ、来たことあるんですか?」
从 ゚∀从「いや、初めてだよ」
( ・∀・)「初めて……よく迷いませんでしたね」
从 ゚∀从「確認はしてたんだ。つか、おい敬語」
自分が無意識に敬語を使っていたことに気付いた。
最初に根付いた距離感を取っ払うのはなかなか難しいようだ。
( ・∀・)「……で、どこに連れていくんだ?」
よしよし、というふうにハインは頷いた。
从 ゚∀从「もうちょい内緒な。会えばすぐわかる」
二人はエレベーターで目的の階まで登っていった。
西日が強い。もうじき最後の輝きを見せて、消えるだろう。
辿り着いた扉の表札を見て、モララーは思い当たる。
526
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:56:07 ID:HwtNlSEU0
( ・∀・)「これって……」
从 ゚∀从「思ってる通りだよ」
ハインはそう応えて、呼び鈴を押した。
挨拶の声。やはり聞き覚えがある。
すぐに扉は開いた。
( ‘∀‘) 「……あら、あなた相談事務所の」
女性がモララーを見て、きょとんとした。
彼女こそ、モララーに夫の挙動不審の原因を調べてほしいと頼んだ、奥さんだった。
モララーは軽い会釈をする。
( ‘∀‘) 「どうかしました? お金の方はちゃんと振りこんでおきましたけど」
不安そうな声を出すものだから、モララーは慌てて否定した。
( ・∀・)「いえいえ、それは大丈夫です!
今日はただ、その、寄ってみただけというか……」
527
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:57:04 ID:HwtNlSEU0
从 ゚∀从「あたしが連れて来たんです。奥さん」
ハインが言う。
奥さんはその姿を見て、あっと驚いた。
( ‘∀‘) 「刑事さん! お久しぶりです。その節は大変ご迷惑を」
深々とお辞儀する奥さん。
ハインもまた深く頭を下げて、「もういいんですよ」と言った。
从 ゚∀从「それよりも、今の生活、不自由ありませんか?」
( ‘∀‘) 「いえ。本当に、警察の方が大変気を配ってくださったものだから。
突然引っ越すことになったのは驚きましたけど」
( ・∀・)「引越し、ですか」
从 ゚∀从「そう、あのまま同じ場所にはいれないだろ」
そうか、警察はそこまで配慮してくれたのか。
確かに、いかに身を守るといっても、相手の正体がつかめないままでは、とどまっているのはまずい。
報復は何度でも来る可能性がある。そうなればまともな暮らしはできないだろう。
場所を移動するのは安全だし、この街なら暮らすのにもそこまで不自由じゃない。
528
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:58:10 ID:HwtNlSEU0
話を聞くと、どうやら夫の方も新しい仕事場に就いたそうだ。
そしてこの新しい居住場所も、怪しいことがあればすぐに警察に連絡が行くシステムになっているらしい。
この夫婦の新しい生活を支えるために、様々な手段がなされていたのだ。
( ‘∀‘)「生活のこと、ずっと不安でした。
子どもにも普通の生活を送ってもらいたいし」
( ・∀・)「お子さん、ですか」
( ‘∀‘)「ええ、まだ小学生になったばかりの。
あれくらいの年齢って、ちょうど世間体もわかりだしてくる頃ですし。
こういう話題に左右されてしまうとすごくかわいそうだったんで……」
( ‘∀‘)「本当は子どもにとってもあんまり動かない方がいいんでしょう。
でも主人のことも考えたら、生活をガラッと変える必要がありましたから。
それであの人が守られるなら、構わないですけどね」
奥さんはふふっと笑う。
そうか、モララーはあの事件の記憶を思い起こしていた。
自分があの小柄な男のことを無実だと思ったのは、この奥さんの態度からだったんだ。
529
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:59:02 ID:HwtNlSEU0
自分は直感で無実を前提に考えたからあの男の本当の気持ちに気付いた。
でも、自分が気付いたのはもっと深いものだったのかもしれない。
自分が守ったものは案外大きいのかもしれないと思うと、気持ちが高揚した。
奥さんと別れてから、ハインと一緒に帰路についた。
空はもうとっぷりと黒く、星が遠くに見えている。
寒さは強くなる一方で、帰宅への歩みを速めていた。
今は駅前、モララーはバスを待っている。
ハインはバスに乗る必要はなかったが、そのときまでモララーと一緒にいることにしたらしい。
从 ゚∀从「気に入った?」
ハインが突然、感想を聞いてくる。
( ・∀・)「……まあ、ああして結果どうなったか知って、良かったら、嬉しいな」
たどたどしい応えだったが、ハインは満足したらしい。
530
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 17:00:21 ID:HwtNlSEU0
从 ゚∀从「いつもこうなるとは限らないんだろうけどなー」
ハインはそういって、空を見上げていた。
( ・∀・)「どういうことだ?」
从 ゚∀从「へへ、内緒だよ」
反応は速かった。
それだけで何かを推し量るのは無理だ。
ハインはなぜこの場所に俺を連れてきたのだろう。
ふと、モララーは思った。
从 ゚∀从「内緒」
もう一度、ハインが言う。
目線がモララーと合った。
モララーの方が、背が高い、
目線は自然と角度をおび、ハインがやや上目遣い。
でも、その目の力強さは変わらない。
( ・∀・)「そう、か」
内緒か、ならしかたない。
口には出さなかった。
言ってから、少しだけ、頬が熱気を帯びるのを感じた。
531
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 17:01:18 ID:HwtNlSEU0
モララーは目線をそらし、時計をみた。
もうじきにバスがくる。
从 ゚∀从「まあでも、あんたは本当に良い奴だよ」
ハインの言葉で、またモララーは目を向ける。
今度は相変わらずのハインの笑顔が見えた。
从 ゚∀从「あの現場であの旦那さんを庇った時からそう思った」
( ・∀・)「え? そうなの?」
从 ゚∀从「本当だよ。
でなきゃ、今日一緒に歩いたりしないさ」
( ・∀・)「良い奴ねえ」
急に、ライトが向けられる。
バスが来たらしい。
从 ゚∀从「きっとまた会いにくるよ」
ハインはそう言った。
532
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 17:02:53 ID:HwtNlSEU0
( ・∀・)「大学また休みに入っちゃうけど」
从 ゚∀从「それでも会うよ」
どきっとした。
突然だった。
なんでハインがこんなことを言ってくるのか。
そして自分の心臓が、なんで急にその存在を主張し始めたのか。
( ・∀・)「なんでさ」
从 ゚∀从「……へへ」
モララーはバスを見ていた。
もう数メートル先。減速をはじめている。
数秒後、あのバスは止まる。
なんでだろう。
できれば、バスに速く来てほしい。
そんな臆病な心が顔をのぞかせる。
533
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 17:04:04 ID:HwtNlSEU0
从 ゚∀从「モララー」
ハインが呼んだ。
モララーは逆らえるはずもなく、すぐに向いた。
自分でも驚くほどすぐ。
臆病な心のすぐ下で、期待していた自分がいた。
暖かい感触が唇に触れた。
一瞬のことだった。
534
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 17:05:55 ID:HwtNlSEU0
目を瞬かせて、事態を見つめ直す頃には、もう何も残っていなかった。
从 ゚∀从「会うよ」
ハインがにやっと笑った。
呆然とするモララーは、ゆっくりと、自分の心臓が早鐘をうつのをのをひしひしと感じていた。
そのときのモララーには、ハインのその笑顔の下に何を考えているのか、知る由も無かった。
『( ・∀・)探偵モララーは信じているようです』 第三章 図書館、パソコン、カツカレー① へ続く。
535
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 17:15:58 ID:HwtNlSEU0
本日の投下は終了です。
長くなるので目次
>>454-460
序章
>>473-496
第一章 邂逅
>>502-534
第二章 再会
次回はまた次の土日。
二日かけて第三章を投下しきろうと思います。
ご意見ご要望等ありましたらどうぞ。
ただ、作品の内容そのものに関するものは答えられないことも多いです。
それでは。
536
:
名も無きAAのようです
:2013/07/14(日) 18:33:34 ID:GWaKnn7Y0
おつ
ハインいいキャラしてんなー
楽しみにしてる
537
:
名も無きAAのようです
:2013/07/15(月) 08:15:02 ID:Q.JZE.SY0
乙
538
:
名も無きAAのようです
:2013/07/16(火) 00:00:17 ID:T8duNe4kO
続き、はよっ!
539
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 16:37:26 ID:kef0s2oI0
投下します。
540
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 16:38:34 ID:kef0s2oI0
〜主な登場人物(随時追加予定)〜
( ・∀・)……分手モララー
K大学在籍中。法学部。
探偵の真似ごとをしている。
从 ゚∀从……高岡ハイン
某県警捜査第四課(組織犯罪対策)巡査部長。
モララーに好意を寄せる?
(´・ω・`)……所部ショボン
某県警捜査第四課警部補。そろそろ昇進したい。
( <●><●>)……分手マス
K大学院在籍中。法学を専攻。情報工学、物理学、経営学にも傾倒。
541
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 16:39:26 ID:kef0s2oI0
会場にいる人々の顔はやつれている。
まだ春になったばっかりだというのに、雰囲気はまだまだ冬のようだ。
モララーは周りを観察する。
ここにいる連中はたぶん、ほとんどが自分の一つ下だ。
同い年もまだいるのかもしれない。
でもどんどん数は減っていくだろう。
そもそも数年前ならば、この時期に人が集まること自体、おかしかったのだ。
いつだったか、マスが言っていた言葉を思い出す。
これからは氷河期がくる。
経済は悪化し、何人もが枠から外れる時代がくると。
周りを見回しながら、言いえて妙だと思う。
どいつもこいつも、とても温かみのある表情ではない。
なんで自分がこんな目に、そんな顔をしている。
ここはとある企業の説明会だった。
542
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 16:40:42 ID:kef0s2oI0
別に企業の名前に重要な意味があるわけでもない。
ちょうど時期が空いていたから来てみただけ。
名前も知らなくていいようなひとつ。
モララーにもそれはわかっていた。
でも、来なくてはならない。
だって、そうしないと不安だったから。
粗方説明が終わり、お昼頃には開放された。
モララーは薄暗いホールから出て、エントランスのソファに座る。
今日は別に待ち合わせはしていなかった。
ただ疲れただけだ。
一時間半も、目を凝らして、しかつめらしい男の顔を見ていた。
話自体があまりにもありきたりだから、聴く意欲もわかなかった。
日本がどういう状況か、この会社は何を目的としているか、どうしてその仕事が素晴らしいのか。
どこだって言うことは同じだ。
まあ、それすら言わなかったら、それはそれで怪しいところなのだけど。
543
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 16:41:43 ID:kef0s2oI0
(-@∀@)「あの、すいません」
突然声を掛けられて、モララーは振り返る。
はて、だれか知り合いでもいたのかなと思いつつ。
見てみても、やはり知らない人物だった。
少しだけ癖のある髪に、黒い太い縁の眼鏡。
いかにも気弱そうな青年だ。
(-@∀@)「さっき、あそこの説明会にいた人ですよね?
これ、落としましたよ」
青年が差し出したのは、薄い桃色のハンカチ。
少し可愛らしすぎるそれに、モララーには確かに見覚えがあった。
昔ある女性の後輩からもらったものだった。
( ・∀・)「あれ、落としたかな」
そういえば一度トイレで使ったかな、とモララーは思い出す。
それで拭きながら椅子に戻って、うっかりしまいそこねて下へ落ちたか。
544
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 16:42:38 ID:kef0s2oI0
(-@∀@)「もしかして彼女さんのですか?」
え、とモララーは首をかしげる。
若干口元を緩めている青年を見て、彼が想像していることに気付いた。
そしてもちろん、それは違った。
( ・∀・)「いやいや、違いますよ」
それからは成り行きだった。
お互いの立場は同じなので、話は続いた。
そうして二人は少し食事でもしようということになり、ホールの外に出た。
東京のとあるビジネス街だった。
ここの食事はどこも高い。
少し電車に乗れば繁華街に出られて、安い定食にありつけたが、さすがにそこまで元気ではなかった。
少しくらい奮発してもいたしかたないだろう。
それに、ひどくお腹もすいていた。
545
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 16:43:29 ID:kef0s2oI0
比較的安く和食を提供してくれるお店にありつけた。
80年代の曲が流れる店内で、二人は席についた。
(-@∀@)「いやあ、今日は疲れましたねー」
彼の名はアサピーと言うらしい。
(-@∀@)「どうです、そちらは上手くいきそうですか?」
彼が指しているのは全般的な就職活動のことだというのは、話の流れから理解できた。
( ・∀・)「いえ、なかなか……」
(-@∀@)「もうじき今年度も終わりますし。こりゃあ来年も頑張らなきゃですかね」
そう力なくアサピーは言う。
(-@∀@)「まあ一留でなんとかなってほしいものですね」
(;・∀・)「いえ、実は俺は……」
(-@∀@)「あれ」
モララーは言い淀んだが、静かにピースサインをする。
546
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 16:44:31 ID:kef0s2oI0
(-@∀@)「二、ですか」
( ・∀・)「その通り」
(-@∀@)「いや、なれなれしくてすいません」
( ・∀・)「いや別にいいよ」
とはいえその青年、アサピーはどうも普段からやや緊張している性質のようであった。
たとえモララーが同い年でも、きっと敬語は続けていただろう。
(-@∀@)「しかし二留の人を久しぶりにみました。
数年前は、それこそ変わり種の人しか留年してなかったし」
( ・∀・)「時代の流れってやつですよね。
まったく、先輩たちはいい気なもんだ」
二人の就留生は、かすかに笑い、同時にため息をついた。
料理は意外と速く作ってくれた。
味ももちろん、ボリュームも十分にある。
何よりできたての温かさが、今の二人の身にしみた。
547
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 16:45:32 ID:kef0s2oI0
(-@∀@)「僕はね、話すのすごい苦手なんですよ」
アサピーが味噌汁をすすりつつ、言う。
(-@∀@)「本当は出版業界に行きたかったんですけどね、どこへいっても上手くいかなくて。
向こうからはよく、もっと個性出して、とか好き勝手に言われましたよ」
( ・∀・)「ああ、なんか言われますよね、それ」
(-@∀@)「個性って、何ですかね。
僕、その時一発芸やれなんて言われていたんですよ。
もうほんとに、そんなのやったことないし、何もできなくて」
( ・∀・)「勝手ですよね……あ、鮭おいしい。
ほら、食べてくださいよ。冷めちゃいますよ」
(-@∀@)「気を遣わせてすいません」
( ・∀・)「謝りすぎですって」
(-@∀@)「いや、ほんとに、いただきます。
……ところで、モララーさんはどこか志望はあったんですか?」
過去形なのが、物悲しい。
548
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 16:46:36 ID:kef0s2oI0
ふと探偵のことが頭をよぎるが、口にはださない。
( ・∀・)「いやあ、あんまり考えていないんですよね」
(-@∀@)「考えていない? 本当はフリーターになりたいとか?」」
( ・∀・)「社会にとらわれない自由人って意味の?」
(-@∀@)「そうそう」
( ・∀・)「そんなんじゃないですよ。
ただやることが見つからないだけです」
(-@∀@)「そうなんですか。フリーター、かっこよさそうなのに」
( ・∀・)「いろいろと面倒な面もあるらしいですよ。
兄弟の受け売りなんですけどね……」
(-@∀@)「やめてくださいよ、そんな、夢も希望もない。
お、これ茶碗蒸しだったんですね」
( ・∀・)「夢も希望も、ねえ」
549
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 16:47:24 ID:kef0s2oI0
ぼやーっとした言葉だなあと思う。
このぼやーっとしたものに、いつまで翻弄されるのだろうとも思う。
また溜息が重なる。
二人はそれなりに馬が合った。
連絡先の交換を持ち出してきたのはアサピーだ。
なるほど、社交性が無いわけじゃないんだなとモララーは思った。
話しているときも意外と饒舌だったし、個別で付き合うなら良い人なのだろう。
こういう人間は取材をするときかなり有利なのではないか。
少なくとも一発芸が得意なだけの人間よりは、組織に有用な気がした。
550
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 16:48:27 ID:kef0s2oI0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
春になってからも、ハインとは会っていた。
春休みの間も、大学の新学期が始まってからも。
モララーとハインは一週間に一度、電話で連絡し合っていた。
それで会うのはひと月に二回ほど。
大抵は平日の昼下がり、K大学の周辺だ。
どうして休日じゃないのかハインに聞いたところ、休日の方が休暇が取りづらいのだという。
それ以上の詳しい事情は聞かなかった。
モララーとしても平日に授業があるわけでもなく、大抵はハインの提案した日付で約束をした。
本当は努力しなければならない時期だ、というのはモララーにももちろんわかっていたのだが。
ハインは最初のうち、あの取引の調査状況を教えてくれていた。
しかし捜査は難航しているため、会うたびに情報量が少なくなっていった。
証拠の隠滅等が綿密に図られており、相当計画的に事が行われていたらしい。
割と大きな組織がクスリの密売に絡んでいるように思われた。
551
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 16:49:32 ID:kef0s2oI0
それで、話題に困ったらハインは別の事件の話もしてくれた。
もちろん警察官として話してよい範囲の中でだ。
モララーもそれは十分承知していたし、実際の仕事の内容は興味深かった。
ただ、ハインは警官になる以前の話をしようとはしなかった。
意図的に話そうとしていないのか、大した話題が無いのかは判断しかねた。
だけど本人が言いださない限り、追及する必要もないだろう、と思い、モララーは触れずにいた。
モララーからは、記憶が無いため自然と大学の話がメインとなった。
後は、取りとめのない世間話もちらほら。
世の中新しいものが次々と現れてくる。新しい音楽、本、機械、出来事。
急速な経済成長は終わったものの、まだまだ賑やかで、話題には事欠かなかった。
モララーは次第に敬語をやめた。
ハインと同年代であることがわかったし、ハイン自身もやめるように何度も言ってくれていたからだ。
接し方はより自然になっていった。
そうして気付いたころには、会うことが習慣になっていた。
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