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( ^ω^)は嘘をついていたようです
1
:
第一話
:2012/03/03(土) 23:42:04 ID:bGISCg5A0
わたしは不幸にも知つてゐる
時には嘘によるほかは語られぬ真実もあることを
―――――芥川龍之介
〜〜( ^ω^)は嘘をついていたようです〜〜
703
:
第五章 農学部棟②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 20:13:57 ID:5G1hqGa60
( ・∀・)「なんとなく、警備員ってのはちょっとずつ人が変わるけど。教授は変わらない。
何らかの装置を稼働し続けていることも、噂の方向性を修正することもできる」
川 ゚ -゚)「修正?」
( ・∀・)「ひょっとしたら、ラップ音以外にもよくないものが最初は広まっていたり」
川 ゚ -゚)「そんなの……あったんですかね」
( ・∀・)「憶測だけど。よし、調べてみるか」
川 ゚ -゚)「え?」
( ・∀・)「教授のところへだよ」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
704
:
第五章 農学部棟②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 20:16:11 ID:5G1hqGa60
二人は研究室の外に出た。
教授室があるのは一回、そこまでエレベーターで向かうことにする。
上ってくるのを待ちながら、モララーはクーに質問した。
( ・∀・)「この棟、結構古いんだっけ?」
川 ゚ -゚)「はい、老朽化も進んでいるし、最近は地震も怖いので
もうじき建てなおすときいています」
( ・∀・)「勝手なイメージだけど、古い建物ほどよくきしみそうな気がする」
川 ゚ -゚)「建て替えたら、音はならなくなるんですかね」
( ・∀・)「そうかもしれないな。
そうしたら変な噂も立たなくなるだろう」
川 ゚ -゚)「そうだと良いんですが」
705
:
第五章 農学部棟②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 20:18:18 ID:5G1hqGa60
エレベーターが一階がら上って到着して、二人は乗り込んだ。
そのまま一階に降り、クーの誘導で研究室へ向かう。
川 ゚ -゚)「モララーさん、実は私言ってなかったことがあるんです」
歩きだして間もなく、クーが切り出す。
川 ゚ -゚)「最近の教授、少し近寄りづらかったんです」
モララーはクーを見る。
少しだけ、青い顔をしている。
何かに脅えているように。
( ・∀・)「どうして?」
川 ゚ -゚)「教授、最近怖かったんです。
雰囲気といいますか、思いつめているといいますか」
706
:
第五章 農学部棟②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 20:22:56 ID:5G1hqGa60
( ・∀・)「思いつめているって……」
川 ゚ -゚)「すごく辛そうな、感じです」
( ・∀・)「それで、あんまり会いたくなかったと」
モララーは、食堂でクーが何か言おうとしていたことを思い出す。
もしかしてそのとき、クーは教授の話をしようとしていたのだろうか。
川 ゚ -゚)「ええ。
でも、できることなら、教授が何に悩んでいたのか知りたいんです」
( ・∀・)「……」
教授は何かをしているのだろうか。
ここに来る前は、大した事件ではないと思っていた。
707
:
第五章 農学部棟②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 20:24:58 ID:5G1hqGa60
ラップ現象についても事前に軽く調べていたし、そのほとんどが自然現象として説明が付されていた。
先ほど説明した共鳴も、その原因の一つだ。
だから、適当にどこかの装置の振動の結果引き起こされているのではないかと目算していた。
でも、その原因については深く考えていなかった。
クーが言うことには、教授は最近思いつめていたという。
もし教授が何かをしていたならば、夜中にひそひそと何をしていたというのか。
そしてどうして思いつめているのか。
その理由が知りたくなった。
Σ( ・∀・)「!!」
ふと、気配を感じて、モララーは振り返った。
708
:
第五章 農学部棟②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 20:26:57 ID:5G1hqGa60
(;・∀・)「誰だ!」
思わず、叫んだ。
声が反響する。
川 ゚ -゚)「どうしたんですか、急に」
おびえた声で、クーが言う。
何か人影が見えた気がした。
でも、反応は無い、足音もない。
( ・∀・)「何もいないか」
川 ゚ -゚)「どうしたんです、お化けでも見ました?」
( ・∀・)「いや……とりあえず研究室へ向かおう」
709
:
第五章 農学部棟②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 20:29:50 ID:5G1hqGa60
歩きだして、ようやく研究室の扉が見えてきたときだった。
川;゚ -゚)「モララーさん」
クーは歩きながら、言う。
川;゚ -゚)「私、ちょっと気付いちゃったんですけど」
クーの声は、震えており、か細いものだった。
( ・∀・)「……言ってみろよ」
川;゚ -゚)「怖いんですけど」
(;・∀・)「いいから、言えって」
川;゚ -゚)「……はい」
二人はゆっくりと、扉に近づきつつあった。
川;゚ -゚)「この棟には、私たちと、教授と、警備員しかいないんです。
警備員は入口のところで見張っているし、教授は一階にいるはずなんです」
710
:
第五章 農学部棟②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 20:33:10 ID:5G1hqGa60
扉の前に立つ。
川;゚ -゚)「そしてモララーさんはエレベーターに乗って、上ってきた。
じゃあどうしてエレベーターは、さっき上ってきたんですか。
私たち以外、誰も一階に向かうことのできる人はいなかったのに」
クーの言おうとしていることがようやくわかった。
同時に寒気が襲ってくる。
モララーとクーは顔を見合わせる。
クーはすっかり青い顔をして、モララーにしがみついていた。
こんなに感情をはっきり出す彼女を見るのは初めてだった。
モララーは顔をひきつらせ、目を扉に向ける。
とにかく、教授と会おう。
そうすれば何かわかるかもしれない。
711
:
第五章 農学部棟②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 20:37:03 ID:5G1hqGa60
ドアノブに手をかけて、押す。
目の前に飛び込んできたのは、人の体だった。
入口から見てすぐわかるように、これ見よがしに、その体はぶらさがっている。
横でクーが悲鳴を上げる。
耳をつんざくその音は、モララーの耳に嫌というほど届いていた。
そのぶらさがった死体は、まぎれもなく教授のものだった。
『( ・∀・)探偵モララーは信じているようです』 第六章 公園 へ続く。
712
:
第五章 農学部棟②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 20:41:58 ID:5G1hqGa60
目次
>>454-460
序章
>>473-496
第一章 邂逅
>>502-534
第二章 再会
>>540-562
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
>>565-585
第三章 図書館、パソコン、カツカレー②
>>593-621
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
>>625-648
第四章 教会
>>653-676
第五章 農学部棟①
>>681-711
第五章 農学部棟②
本日の投下は以上。
明日投下して、一区切りです。
最後まで書きためてみて、スレが足らない可能性が出てきたので、
しばらくしたら後半用のスレを立てようと思います。
それでは。
713
:
名も無きAAのようです
:2013/07/28(日) 01:11:30 ID:.KZcD4MQ0
乙
すげー展開!ゾクゾクした
714
:
名も無きAAのようです
:2013/07/28(日) 02:06:29 ID:fLhtfuHwO
ちょっと盛り上がってきたな、ここから前作っぽくなっていくのかな、期待
715
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:13:37 ID:jLJ4g5vE0
投下始めます。
716
:
第六話 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:16:14 ID:jLJ4g5vE0
〜主な登場人物(随時追加予定)〜
( ・∀・)……分手モララー
K大学在籍中。就職し損ねて六年生。
从 ゚∀从……高岡ハイン
某県警捜査第四課(組織犯罪対策)巡査部長。
(´・ω・`)……所部ショボン
某県警捜査第四課警部補。そろそろ昇進したい。
( <●><●>)……分手マス
K大学院在籍中。法学を専攻。情報工学、物理学、経営学にも傾倒。
交友関係は広い。モララーをよく世話している。
(-@∀@)……文屋アサピー
就留一年目。癖っ毛で厚い眼鏡。
モララーの知人。話すことに苦手意識あり。
川 ゚ -゚)……素直クー
K大学農学部在籍中。三年生。料理サークルに所属し、相談事務所にも協力。
揚げ物ともやしと猫が好き。お化けが嫌い。
/ ゚、。 /……鈴木ダイオード
K大学近くの古本屋の店長。おじいちゃん。足腰が気になる。
教会によく赴いて読み聞かせボランティアをしている。
717
:
第六話 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:18:17 ID:jLJ4g5vE0
あの日、モララーは急いで警備員室へと向かった。
教授の死体が見つかったことを報告するためだ。
喚いているクーを置いておいたのは気の毒だった。
しかしどのみちクーはあのときとても動けそうな状態ではなかった。
人が錯乱する姿を見るのは、めったにない経験である。
ましてあの表情の薄いクーならば、なおさら衝撃があった。
それから警備員室の人たちがきて、モララーとクーは別室へ移動させられた。
クーはずっと教授の名前を叫びながら、半ば強制的に連行されていった。
こうして農学部棟での夜は終わった。
でも、事件はむしろここから始まった。
718
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:20:20 ID:jLJ4g5vE0
農学部の某教授の首吊り死体が見つかってから、モララーの周囲はにわかに騒がしくなった。
警察が彼の事情聴取を綿密に行い、二回、三回と署に呼び出された。
その度にモララーは、なんで農学部棟にいたのか、どんな状況だったのか話さざるをえなかった。
クーに呼び出されたこと、ラップ現象の正体を探ろうとしていたこと。
エレベーターの話もした。
誰かがあの農学部棟に潜んでいた可能性があったからだ。
ちらっと見かけた黒い服の話もした。
隠すべきではないと思ったからだ。
事件は事件なのだから、しっかり知っていることを伝えるべきだと感じていた。
義務感もあるし、クーのことも頭に入っていた。
取り乱したクーが、下手に警察の追求にあうのはどうしても避けたかった。
クーが警察の取り調べに慣れているとは思えなかったからだ。
ただでさえ、混乱した人は嫌疑をかけられやすい。精神的ショックを負ったクーにそれは重い。
まして自分がちょっと変なことを言って、クーに疑いでもかけられたらたまったものではない。
719
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:22:17 ID:jLJ4g5vE0
( ・∀・)「クーは無事なのか?」
死体発見から二日ほど経って、モララーはようやく警察から解放された。
アパートに帰ってきてモララーはマスに質問した。
( <●><●>)「まだ家で休んでいるときいています」
マスからより詳細に聞いた。
結局クーはまともに事情聴取ができないほどに発狂してしまったらしい。
警察は、本件について自殺が濃厚ということもあり
クーを必要以上に追求することはやめたそうだ。
マスはこれらの話をクー本人ではなく、その両親から聞いたらしい。
ずっと身近にいた人が、亡くなるというのは、どういう気持ちになるのか。
モララーはその答えを目の当たりにしていた。
720
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:24:18 ID:jLJ4g5vE0
( <●><●>)「クーさんは、教授のことをまるで親のようにしたっていたそうなんです」
( ・∀・)「……そうなのか」
教授室に向かったときの、クーの様子が思い浮かぶ。
あの態度は、本当に教授を心配していたのだと、今さらながら思い付く。
( ・∀・)「あの日な、クーにラップ現象の正体を突き詰めるように頼まれていたんだ」
( <●><●>)「ええ、そうらしいですね」
( ・∀・)「そのときは、ただ興味本位でそんなことを調べているんだと思っていた。
でもひょっとしたら、クーは教授のためにも現象を止めたかったのかもな。
自分は怖いくせして」
721
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:26:17 ID:jLJ4g5vE0
( <●><●>)「彼女に聞くことができれはわかりますね。
そのうち、元気になってくれたら」
三年半、一緒にいたつもりだった。
でも、意外とクーのことはなにも知らない。
割りと身近にいてもそうなのだ。
人は人のことがわからない。
そのはっきりとした事実に、今更ながら気付かされた。
( <●><●>)「そういえば、あのあとも軽い騒ぎがあったみたいですよ」
( ・∀・)「騒ぎ?」
( <●><●>)「あの死体が発見されて、騒いでいた日の夜のことです。
学校の林でボヤがあったらしいんですよ。
それで農学部棟の温室の一つが完全に焼失してしまったとか」
( <●><●>)「それが自殺した教授のものだったので、関係性もあるのではとちょっと気になりましてね。
とはいえ君がこうして解放されているんだし、警察はほぼ自殺と断定したようですが」
マスはそういいつつも、どこか釈然としていない様子だった。
722
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:28:17 ID:jLJ4g5vE0
事件から二週間ほどたち、気持ちの整理もついたころだ。
そこで、モララーにとってはっきりとした事実が突き付けられた。
ハインと連絡が取れなくなっていたのである。
連絡先も、繋がらない。
モララーにかかってくることもない。
だから農学部棟での事件の話をすることはできなかった。
モララーとしては、ハインの意見も聞きたかったのに、それがかなわなくて残念だった。
ただしこの頃はまだ、きっとしばらくしたら会えるようになる、とモララーは楽観視していた。
むしろ今まで継続的に会っていたのが不思議だったのだ。
相手は社会人なのだから、そうモララーは自分に言い聞かせる日々を送った。
しかし悪い予感は的中した。
十月になり、学期が新しくなっても、もう待ち伏せしていることはなくなっていた。
723
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:30:20 ID:jLJ4g5vE0
何もわからないまま、時が過ぎていく。
モララーは日々、魂の抜けたように暮らしていた。
ハインはいったいどうしたのだろう。
なぜ何も連絡をよこさないのだろう。
不安ばかりが募る。
そして、新たに疑問が浮かんだ。
農学部棟のその事件と、ハインの失踪は、はたして無関係なのだろうか。
モララーは農学部棟で見かけた影をときどき思い返した。
今にして思えば、あれはハインだったのではないか。
理由と呼べる大したものはないが
ハインと会わなくなりはじめた時期とぴったり一致するのは、偶然とは思えなかった。
しかしハインがもしあのとき農学部棟にいたとして、何をしたというのか。
そこから先の思考はまだ不明瞭だった。
情報が少なすぎた。
724
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:32:18 ID:jLJ4g5vE0
ぼーっとすることが多くなった。
暇さえあればあの日のことを考えてしまう。
教授の死そのものにも疑問があった。
おそらくあの日マスの釈然としない顔もこのためだ。
聞いたところによると、教授が死ぬ理由がまったく見当たらないそうだ。
教授の仕事仲間にしても、むしろあの教授は最近羽振りがよくなったという話だけしていた。
それと自殺だけを無理やり結びつければ、教授が勝手に危ないお金に手を出して
その責任を感じて自殺した、などというストーリーさえ組み立てられそうではあった。
しかし実際にはそのような証拠はまったく見当たらなかった。
誰かが消した可能性も無くはない。
むしろモララーの証言もあり、警察はその線でわずかだが捜査を続けていると聞く。
人が死ぬときには、必ず理由が無ければならない。理由も無く命を絶つはずがない。
モララーはそのことを感じつつも、実際に何か自分なりに捜査をすることはなかった。
すべてが億劫に感じていた。
725
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:34:18 ID:jLJ4g5vE0
十月が半ばになった。
学校が始まってしばらくたつ。
ハインはもちろんだが、クーもまだ顔を見せてこなかった。
元々勉強は出来ていたので、単位には余裕があるはずだ。
亡くなった人のゼミに所属していたはずだが、そのあたりの処理がどうなっているのかはわからない。
クーのことならば、また無事に大学に通えばなんとかなる。
問題は通うまでだ。心が落ち着かなければ、農学部棟にも近づけないのではないか。
モララーはまだクーに会う気にはなれなかった。
もし自分が会ってしまったら、クーはあの日のことを思い出してしまう気がした。
だから、会わない方がいいと思ったのである。
ただその気持ちの裏で、気だるさが蔓延していることも隠しようが無かった。
就職活動の方も身が入らず、アサピーとも連絡を取っていない。
そうしていつのまにか月日は経つ。恐ろしいほどにあっという間に。
ある休みの日。
モララーはふらっと、外に出た。
家の中には誰もいない。マスはこの頃休みの日もどこかへ出かけていた。
726
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:36:18 ID:jLJ4g5vE0
教会にきた。
いつの日かその前に、ハインと歩いたことを思い出す。
あのときはダイオードとも会った。
そこでモララーは、ハインの自然な笑顔と、ぎらぎらした目を見た。
もう、ずいぶん遠い日のことにきこえてくる。
実際は三か月ほどしかたっていないのに。
その日はダイオードと会わなかった。
教会の事務室に、読み聞かせのことについて聞いてみた。
ハソ ゚−゚リ「ダイオードさんですか?」
( ・∀・)「ええ、毎週こちらで読み聞かせをしていると伺ったので」
ハソ ゚−゚リ「ええ、そうでした」
( ・∀・)「でした?」
727
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:38:21 ID:jLJ4g5vE0
教会の事務室で、その職員はどうも言い方を考えている様子だった。
何をそんなに思慮する必要があるのだろうとモララーは首をかしげた。
ハソ ゚−゚リ「どうも九月頃から体調が思わしくなかったらしくて、来られてないんですよ」
ショックを受けた、といったら大げさだろうか。
でも、モララーはあの書店の店長が床に伏す様子が想像できなかった。
確かに健康そうな人ではなかったが。
六年書店に通いつめた。その間ずっとあの人は教会でボランティアをしていた。
それがモララーの思う書店の日常だった。
ずっと変わらないものだと思っていた。
(;・∀・)「そう、なんですか」
そういって、モララーは頭を下げた。
職員さんはどことなく申し訳なさそうな顔をしていた。
モララーはなんだか、みんなが遠くなるのを感じた。
728
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:41:34 ID:jLJ4g5vE0
何も知らなかった。
人は人がわかりきれない。
公園についた。
空は曇っている。
子どもはいない。今が平日だからだろう。
猫は、聞こえる。
ただ、確かにクーがいっていたように少なくなったのかもしれない。
前に来た時よりも明らかに声が小さい。
前に、そう、前にきたときはハインがいた。
あの頃はまだハインに会っていた。
あの初夏の日。
729
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:43:33 ID:jLJ4g5vE0
頭の中では、ハインがいた。
にやにや楽しそうな顔をしている。
その顔しかモララーは覚えていない。
今にしておもえば、笑顔が崩れそうになるたびに彼女は顔をうつ向かせていた。
そしてハインの笑顔が消えそうになるたびに、モララーは合いの手を入れていた。
全てはその笑顔を崩さないために。そしてそれをずっと見ているために。
モララーは自分の行いを想起する。それが全て無駄に終わったとは考えたくなかった。
でも、ハインのどことなく隠された、あのぎらぎらした目が、モララーをしばしば苛んだ。
続いてクーを想起する。取り乱してたのは見た。
でもすぐにモララーは警備員を呼びに行ってしまった。
死体の横に置かせてしまい、今更のように後悔していた。
もしかしたらあのとき、クーは自分の心に深い傷をおったかもしれない。
クーは言いたいことをはぐらかす癖があった。
目線を反らして、それから遠回しに何かを言う。
モララーはそこまではよくわかっていた。
でもそこから先のクーの言いたいことは、結局よくわからないままだった。
730
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:45:33 ID:jLJ4g5vE0
知らないところで人が変わっていく。
マスは、いつも難しいことに取り組んでいる。
ダイオードが体調を崩した。
なんともいえない寂しさがある。
それはそれで仕方のないこと。
それはよくわかっている。当たり前のことだ。
人間は移り変わる生き物なのだから。
だけど……
「邪魔するよ」
声がする。
中年というには、まだ若い。男の声だ。
731
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:47:34 ID:jLJ4g5vE0
モララーはいつかの木のテーブルに突っ伏していた。
いつの間にか眠っていたのだ。
目を擦って、顔をあげる。
(;ー∀・)「……あんたは」
(´・ω・`)「久しぶりだな」
(;・∀・)「あのときの事件の、警部補さん」
(´・ω・`)「そう、ショボンという。
ちなみに、来年には警部になる」
モララーは顔をぼんやりさせていた。
目を細める。笑顔を向ける気はしない。
ショボンの方も、あまり好ましい顔つきではなかった。
(´・ω・`)「酷い顔をしている」
732
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:49:34 ID:jLJ4g5vE0
モララーは鼻で笑った。
(;・∀・)「……ずいぶんな言い様ですね。
確かに寝てたから、痕がついてるかもしれないですが」
(´・ω・`)「それだけじゃないよ」
にこりともせずに、ショボンは言う。
( ・∀・)「わかってますよ」
自分でもわかるくらい、イライラしていた。
ショボンの嫌みについ食ってかかってしまった。
( ・∀・)「もう話すことはなんもないと思います」
(´・ω・`)「事情聴取は終わったよ。
事件のこと以外の話をききたい」
( ・∀・)「話したい気分じゃないんです」
733
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:51:33 ID:jLJ4g5vE0
モララーはもうショボンに目を向けていなかった。
関心もない。はやく一人になりたい。
それだけだった。
(´・ω・`)「ハインのことでもか?」
耳の中で、その名前が反響される。
音の響きと、その顔が結び付くまで、時間がかかった。
(;・∀・)「え?」
(´・ω・`)「会っていたんだろう、彼女と」
ショボンは木のテーブルの向かいに腰かけた。
モララーは、ショボンの真意がわからなかった。
どこまで話していいのか、ハインにとって不都合は無いのか。
734
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:53:33 ID:jLJ4g5vE0
しばらく黙っていたが、嘘をついてもすぐばれると思い、肩の力を抜いた。
ただ、モララーの表情は冷めたままだ。
(;・∀・)「春頃から、夏まで会ってた」
(´・ω・`)「そうか……」
(;・∀・)「でも、それがどうしたんだよ。
あいつはちゃんと休みをとって来てるって」
(´・ω・`)「とってないよ」
唐突に、否定するショボン。
(´・ω・`)「とってない」
735
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:55:33 ID:jLJ4g5vE0
(#・∀・)「じゃあなんですか。
ハインは無断で仕事サボって俺に会いに来ていたって」
(´・ω・`)「いや、そうじゃないんだ」
ショボンはずいっとモララーを見つめる。
重要な話をするときの、彼なりの行動なのだろう。
(´・ω・`)「彼女は警察をやめていたんだ。
春にはもう、な」
一瞬、理解ができなかった。
思考が追い付かない。
これまでの常識が崩れる。
(;・∀・)「どういう、ことだよ」
(´・ω・`)「ハインは君と会っていた。
どうやら、君に、素性を隠してな」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
736
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:57:33 ID:jLJ4g5vE0
お前は何も知らなかった。
お前が一番知りたかった人のことを、最初から、お前は何も知らなかったんだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
737
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:59:36 ID:jLJ4g5vE0
(´・ω・`)「彼女は唐突に警察をやめた。
その理由が知りたかったが、私にはわからなかった」
(´・ω・`)「たまたまこの前の首吊り事件でこのあたりに来たとき、K大学の傍を調べた。
そこで、ハインを最近見かけたという話をきいたんだ。
大学に入ってきていた不思議な女性の話として」
(´・ω・`)「やがてその女性、ハインが誰かと会っていたこともわかった。
それが君だ。モララー。
だから、君に会えば事情がわかるかと思ったが、その様子だと無駄足だったようだ」
一気に事情を説明されて、モララーは目をしろくろさせた。
(;・∀・)「ハインは、なんでそんなことを」
(´・ω・`)「君こそ、何かきかなかったのか」
738
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 22:01:33 ID:jLJ4g5vE0
(;・∀・)「俺はただ……何も……」
思考が巡る。
そうか、ハインは
会っていることにしてほしいのか。
今、気づいてしまった。
教会の帰り道で、ハインが告げた、モララーに会いに来る理由。
『お前に会いにきているんだ、モララー』
あれはつまり、モララーに会っていたことにしたいという意味だったのだろうか。
そんな、そうだとしたら、俺は……
(´・ω・`)「君は、彼女に騙されていたのか」
(; ∀ )「…………」
739
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 22:03:39 ID:jLJ4g5vE0
モララーは言い返せなかった。
それがくやしくて、ショボンを睨み付けた。
あまりにも、情けない対抗策だった。
ショボンはもう興味を無くしたように、姿勢を正して顎を引いた。
俯き加減で、目をつぶり、小さく唸るように話しだした。
(´・ω・`)「彼女はな、高卒で警察官になった。
それまで随分荒れた経験をしたらしくてな、ときどき話をきいた。
そしてな、昔の話をするとき、彼女は決まって目を輝かせていた
いい意味ではなくてな」
ショボンの言わんとしていることが、モララーにもわかった。
(; ∀ )「ぎらぎらした目、ですか」
ほう、とでも言うようにショボンは息をはいた。
740
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 22:05:34 ID:jLJ4g5vE0
(´・ω・`)「なかなか上手い表現だ。
あの目は確かにぎらぎら、野心に溢れていた」
猫の声が聞こえない。
弱すぎるのだろうか、もう元気もないのだろうか。
(´・ω・`)「彼女には何か目的があった。
警察をやめ、君をだまし、それでも遂げたい目的が」
(# ∀ )「騙されていたわけじゃない!」
思わずモララーが言う。
ほとんど叫んだに近い形となった。
唐突に話の腰を折られたショボンだったが、その目はすぐに好奇のものとなった。
(´・ω・`)「ほう」
興味があるというふうだ。
モララーはその態度が気に食わなかった。
でも、話すしかなかった。
741
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 22:08:54 ID:jLJ4g5vE0
( ∀ )「俺はただ、知るのが怖かった」
モララーはどうしても、否定したくなった。
だから声を出した。多少、大きくなったが、気にしない。
( ∀ )「騙されているかもって、もちろんわかってたさ。それくらい。
明らかに、おかしいさ。知らない女が突然会うようになるなんて。
でも、たとえ俺を利用していても、俺は別にそれでも構わないと思ったよ」
モララーの頭の中に、ハインが浮かぶ。
わかっていた、そうとも。
彼女の目が、自分よりもっとずっと遠いところを見ていたことくらいわかっていた。
それでもモララーは、彼女を想い、求めていた。
( ∀ )「俺はさ、暇で、それでいて不安なんだ。
記憶はねえし、親や兄弟や友達は、この数年で急にできた関係なんだ。
それが慣れないうちに、将来のことまで考えなきゃならなくなった。
自分の正体すら不明確なのに、何がしたいかなんて、わかるかっての」
742
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 22:10:54 ID:jLJ4g5vE0
目頭が熱くなる。
自分の感情を口に出すなんて、なかなかあることではない。
思っていたことを口にだしてしまえば、誰かを傷つけてしまうかもしれない。
記憶が新しくできた今のうちは、そればかり気にして、生きてきた。
せっかくできた関係を壊してしまいたくは無かったからだ。
人は感情を晒せば傷つけあう。
モララーはそれを心の奥で理解していた。
そしてまた何もない状態に戻るのが怖かった。
( ∀ )「アイデンティティっていうんだろ、こういうの。
それが見当たらない不安さ。
そんなときに、俺のことを必要としてくれている人が現れた」
ずっと会っていたかった。
だから何も言わなかった。
自分の感情を出せば、何らかの形で彼女を傷つけてしまうかもしれないから。
743
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 22:12:55 ID:jLJ4g5vE0
( ∀ )「会っていたら、不思議と寂しさが紛れたんだ。
それが楽しかった、それを、ぶち壊す気分には慣れなかった。
好きとか愛してるとかじゃない、そんな立派なもんじゃない。
一緒にいて、関わっていたい、ただそれだけだったんだ」
特にショボンに向けて話していたわけではない。
それは独白というほうが相応しかった。
沈黙が流れた。
鉛色の空が、モララーとショボンを包む。
(´・ω・`)「雨が降りそうだ」
切り出したのはショボンだった。
もう帰る、そういうことだろう。
(´・ω・`)「モララー、はっきり言おう」
744
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 22:14:54 ID:jLJ4g5vE0
(´・ω・`)「私は君の過去は知らないし、君の考えにそれほど興味があるわけではない。
だから同情の言葉をかけるつもりはない」
随分と丁寧に説明してくれるものだ。
モララーはもう思ったことを口には出さなかった。
(´・ω・`)「ただ、ハインは私の大事な部下だった。
だから本意を知りたがっている。
その点については君も同じだと思っている」
モララーは俯いた。
もうショボンと顔を合わせるのも疲れていた。
(´・ω・`)「僕は警部になってね、来年度から数年間本庁の方へいかなければならないんだ。
だからハインのことを探るならいまのうちなんだ。
つまり、なんとか彼女の行方を探りたいと思っている」
ショボンは何も言わず、ずいっと何かをモララーに見えるように突き出した。
白い紙、名刺である。
(´・ω・`)「何かあったらここへ連絡してくれ」
745
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 22:16:54 ID:jLJ4g5vE0
モララーはショボンの名刺を受け取った。
名前と連絡先を見せるためだけの簡素なものだ。
そういえば警察って名刺を持つ印象はないな、まあ、配る必要ないものな、
なんて思いながら、しげしげと眺めていた。
(´・ω・`)「それじゃあな」
ショボンは帰っていった。
モララーは返事をしなかった。
木のテーブルの上に、白い名刺だけ置かれていた。
ややあって、その名刺をポケットにしまった。
そのとき、ぽつぽつと、テーブルに斑点ができ始めた。
雨が降り始めた。
それを防ぐ手立ては無い。
モララーはよける気さえ起きなかった。
746
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 22:19:04 ID:jLJ4g5vE0
雨は一気に勢いを増す。
公園で、モララーは一人、震えていた。
猫の声も聞こえない。
子どもたちもいない。
クーも、マスも、ダイオードも、変わってしまった。
そしてハインはいない。
みんなどこへいっちまったんだ。
開いた口から何かを叫んでも、全ては雨音に飲み込まれてしまった。
747
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 22:21:20 ID:jLJ4g5vE0
それから、何もなかった。
いや、何をする気も起きなかった。
ハインとの連絡が取れないまま。
『( ・∀・)探偵モララーは信じているようです』 第七章 球場 へ続く。
748
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 22:27:39 ID:jLJ4g5vE0
目次
>>454-460
序章
>>473-496
第一章 邂逅
>>502-534
第二章 再会
>>540-562
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
>>565-585
第三章 図書館、パソコン、カツカレー②
>>593-621
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
>>625-648
第四章 教会
>>653-676
第五章 農学部棟①
>>681-711
第五章 農学部棟②
>>716-747
第六章 公園
本日の投下は以上。
前半が終わり、必要な描写はすべて書き終えました。
一週間お休みして、次回の投下は8月10日(土)を予定。
土日で第七、八、九章を投下します。
いつも支援ありがとうございます。
今しばらくお付き合いください。
それでは。
749
:
名も無きAAのようです
:2013/07/29(月) 12:38:53 ID:D/6Tl8kcO
ハインにも謎の影の部分か、後半に期待
750
:
名も無きAAのようです
:2013/08/04(日) 19:37:43 ID:.OrIwGoI0
乙!
751
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:06:12 ID:aJzsIbacO
そろそろだな
752
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/10(土) 21:59:35 ID:zY0bf3Qg0
スレが足らないので新スレにて投下します。
( ・∀・)探偵モララーは信じているようです
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/13029/1376135025/
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