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( ^ω^)は嘘をついていたようです

551第三章 図書館、パソコン、カツカレー①  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 16:49:32 ID:kef0s2oI0
それで、話題に困ったらハインは別の事件の話もしてくれた。
もちろん警察官として話してよい範囲の中でだ。
モララーもそれは十分承知していたし、実際の仕事の内容は興味深かった。

ただ、ハインは警官になる以前の話をしようとはしなかった。

意図的に話そうとしていないのか、大した話題が無いのかは判断しかねた。
だけど本人が言いださない限り、追及する必要もないだろう、と思い、モララーは触れずにいた。

モララーからは、記憶が無いため自然と大学の話がメインとなった。
後は、取りとめのない世間話もちらほら。
世の中新しいものが次々と現れてくる。新しい音楽、本、機械、出来事。
急速な経済成長は終わったものの、まだまだ賑やかで、話題には事欠かなかった。

モララーは次第に敬語をやめた。
ハインと同年代であることがわかったし、ハイン自身もやめるように何度も言ってくれていたからだ。
接し方はより自然になっていった。

そうして気付いたころには、会うことが習慣になっていた。

552第三章 図書館、パソコン、カツカレー①  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 16:50:19 ID:kef0s2oI0
ある五月の日、モララーとハインは図書館にいた。
K大学から歩いて十数分にある、県立の図書館だ。

その図書館は、蔵書も豊富だったが、それ以上に静かな環境がモララーのお気に入りだった。
おそらくやかましい人たちがたむろする要素がほとんどなかったからこその静かさだと思われる。
施設の中だけでなく、外にある小さな広場にも、落ち着いた雰囲気が漂っていた。

図書館でモララーは、同居人であるマスから頼まれた本を借りた。
マスはどういうわけだが最近理系の本を借りる。
近頃名前を聞くパソコンに多大な興味があることも聞いていた。

借りた電子工学の本を眺めても、マスが何を考えているのかはわからなかった。
昔から、あらゆる方面に興味がわく男であり、計り知れない人間であることはモララーにもわかっていた。
それでも、なんとなく自分からどんどん離れていくような、そんなさみしさも感じられた。

それからハインとモララーは図書館の広場のベンチに腰掛けた。
広場には枝の広い広葉樹が多く、暖かくなってきたこの時期は木陰を多く作っていくれている。
広場には三体の、文学をモチーフにした石造が置かれ、知的な景観を作り出している。

553第三章 図書館、パソコン、カツカレー①  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 16:51:56 ID:kef0s2oI0
二人は一息ついた。
歩いている途中で、ハインは調査内容を粗方話し終わってしまっていた。
もう硬い話は終わり、これからは雑談の時間だ。

二人はだんだんと口数を増やし、会話を進めていった。

从 ゚∀从「サークル?」

( ・∀・)「そう、サークルにつけた相談事務所が、始まりだった」

話題が、探偵の真似ごとの件になったので、モララーは自分がそれを始めたきっかけを説明し始めた。

( ・∀・)「俺とマスは大学に入るまで山で暮らしていたんだ。
 そこで街に出て、アパートに暮らすことになって、そこで気付いた。
 普通の狭い部屋でどう料理すればいいのか、いまいちわからないって」

从 ゚∀从「山ではそんなに豪快な料理を毎回していたのか」

( ・∀・)「まあ、まったくわからんってわけでもないけど。
 煙とかさ、あんまり出すと警報が鳴ったりするわけだ。
 そういうのを何度もしちゃうと迷惑だから、どうしようかって話になった」

从 ゚∀从「ああ、わかるわかる」

( ・∀・)「わかるんかい」

从 ゚∀从「で? 続けて続けて」

554第三章 図書館、パソコン、カツカレー①  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 16:53:07 ID:kef0s2oI0
( ・∀・)「いなくなった飼い猫を探してほしいって、相談だった。
 料理サークルに入ってきた新入生、当時新入生だから、今は四年生だな、そいつが相談してきた」

从 ゚∀从「ずいぶん可愛らしい相談じゃないかー」

( ・∀・)「ところがだ、なかなか見つからなかったんだ。
 それで俺とマスは意地でも見つけたくなって、学校や周りの住民、お店にも聞き込みをした。
 できる限りの大捜索を行った、それでも見つからなかった」

( ・∀・)「結局、その事件は今も未解決。
 だけど、俺らが必死に捜査している姿は周りの奴らにたくさん見られていた。
 それで一気に知名度が上がった。大学だけじゃなくて、周りの人たちにまで」

( ・∀・)「そこからはあっという間だよ。
 口コミに俺たちの相談受け付け仕事が広まっていって、知り合いの知り合いから相談を聞くようになった。
 そこでマスが面白がって、ちゃんとした体系を立てた。
 専用の銀行口座も作るようにして、まるで副業のように稼げるようにした」

( ・∀・)「そうして、その相談受け付け業が、いつの間にか探偵の真似ごとになっていった。
 まあ、その間に境目があるものでもないけど、普通に社会人から依頼を受けたりするようにまで拡大していったんだ。
 あの冬の日に関わった事件の、奥さんも、そうしている中で知り合った人だったんだよ」

555第三章 図書館、パソコン、カツカレー①  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 16:54:37 ID:kef0s2oI0
ふっと、背後に何かを感じた。
視線のような、何か。

咄嗟に振りかえるモララー。
しかし何も見当たらない。

そもそも茂みが多い。風も多少あり、草木が揺れている。

从 ゚∀从「どうした?」

( ・∀・)「いや、なんか……」

気のせい、だろうか。
モララーは首をかしげたが、ハインに向き直る。

从 ゚∀从「あれ、でも」

ハインが言う。

从 ゚∀从「サークルに入って、三年目に新入生だった子が、今もう四年生。
 てことは、モララーは」

556第三章 図書館、パソコン、カツカレー①  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 16:55:56 ID:kef0s2oI0
ああ、やはりその話題になるか。
モララーは顔をこわばらせた。
でも、観念したように首を縦に振る。

(;・∀・)「六年、です」

なぜだか敬語に戻ってしまう。
なかなか言いにくい単語だ。

从 ゚∀从「あれ、そうなのか」

( ・∀・)「就活留年ってやつだよ」

从 ゚∀从「つまり、仕事が見つからない?」

( ・∀・)「タイミングを逃したというか。
 そもそも自分のやりたいことってなんだろうって」

从 ゚∀从「なんだろうって、悩んでいたら、六年生」

( ・∀・)「モラトリアム真っ最中です」

モララーは頭をかく。

557第三章 図書館、パソコン、カツカレー①  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 16:57:11 ID:kef0s2oI0
从 ゚∀从「なんで悩んでるんだ?
 あれだけ探偵の真似ごとできるんだから、それを仕事にすればいいじゃん」

( ・∀・)「まあ、それもそうなんだけど……
 好きなことではあるけど、仕事にするとどうなのかなって」

それがここ数年、モララーを悩ませていることでもあった。
実際探偵稼業には興味があるし、調べてもいる。
だからその稼ぎが大変であることも知っている。

そもそも自営業の一種なので、安定して仕事があるわけではない。
堅実に生きるためには、いささか不安な仕事である。

( ・∀・)「まあ、ギリギリまで自分で考えようと思ってる。
 どうせ探偵をやるにしても、いつ始めても言いわけだし、もうしばらく大学生でいようかなと」

ただ、そうのんびりもしていられないのではないか、ともモララーは感じていた。
大学にいる彼の知り合いは、ほとんどすべてが後輩だ。
もう同じように就活留年をしている人間はいないか、いてもどこか遠くに行ってしまっていた。
それこそどこか就職活動のない遠くの国へでも行ってしまったり。

好景気に就職を逃してしまったのが痛い。
その手の話題は最近ニュースでよく耳にする。
次第に雇用情勢が悪化してくる。ニュースでもそうだし、マスだってそう予言していた。

558第三章 図書館、パソコン、カツカレー①  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 16:58:12 ID:kef0s2oI0
从 ゚∀从「ふーん」

ハインは急に、小さく何度かうなずく。
そのまま顔を、わずかにうつむかせた。
別に何かを隠しているわけでもなく、考え事をしているようだ。

目線が再びモララーと会う。

从 ゚∀从「あれだな、目的が無いんだろうな」

ハインが端的に言う。

从 ゚∀从「探偵は好きだけど、それをやって何がしたいのかわからない、そんなところかな」

( ・∀・)「……うまいなあ」

的を射ている、とモララーは素直に感心した。

好きであることが志望動機とならないことは、モララーにも十分理解できる話ではあった。
人間は目的が無ければ、行動を続けていくことはできない。
モララーが今やっていることは、人から問題解決という目的を与えられて、それを解いているに過ぎない。

559第三章 図書館、パソコン、カツカレー①  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 16:59:28 ID:kef0s2oI0
謎を解くことが好きだ。でも、それをして何をしたい?
たとえ面接等のない、自営業の話でも、その目的が思いつかないことが足かせとなっていた。

从 ゚∀从「まあ、目的がないこと自体は悪いことでもないよ、うん。
 これからでも見つけていけばいいわけだし」

ハインはモララーから目線をずらす。
なんだか言葉以外の意味が込められている、そんな印象を受けた。
でも、それに言及する前に、ハインはさっと笑顔に戻る。
あまりの変わり身の早さに、モララーは眼を瞬かせる。

从 ゚∀从「ところでさー、探偵さんは何か趣味は無いの?」

突然話題を変えたように感じたのは、気のせいだろうか。

でも、モララーは追求する気分ではなかった。
そうする必要も無かった。
だからごく普通に、質問に受け答えした。

( ・∀・)「趣味か、実は野球が好きなんだ」

560第三章 図書館、パソコン、カツカレー①  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 17:00:40 ID:kef0s2oI0
从 ゚∀从「そうなのか! スポーツしなさそうだから意外だなー」

( ・∀・)「基本は観戦だよ。
 自分でもよくわからないけど、なんか懐かしいというか」

从 ゚∀从「あれだろ、カキーンって金属バットの音鳴らして」

(;・∀・)「いや」

从 ゚∀从「ん?」

(;・∀・)「金属バットは……嫌なんだ。
 なんかこう、生理的に無理というか」

从 ゚∀从「なんだそれ」

ハインが不可解そうな顔をしているのを見て、モララーはなんだか安心する。
よかった、いつものハインに戻ってくれた。

561第三章 図書館、パソコン、カツカレー①  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 17:01:23 ID:kef0s2oI0
このような経験が、たびたびあった。

ハインの表情が若干曇ると、モララーはなんとかハインに別の話題を振る。
それで会話は十分に弾む。

ハインも元の楽しそうな顔をする。

モララーはそれを見て安心する。

それが、モララーにとっての正常だったから。

その日も会話は続いていった。
いつもと変わらない、春の日。

562第三章 図書館、パソコン、カツカレー①  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 17:02:13 ID:kef0s2oI0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お前とハインの会合は、しばらく続いていた。

お前はその関係を壊したくは無かった。

だから会話をつづけていたし、ハインの顔色も窺っていた。

春から夏にかけて、ずっと。

だって、お前は……





『( ・∀・)探偵モララーは信じているようです』 第三章 図書館、パソコン、カツカレー② へ続く。

563第三章 図書館、パソコン、カツカレー①  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 17:05:34 ID:kef0s2oI0
いったん終わり。

目次
>>454-460 序章
>>473-496 第一章 邂逅
>>502-534 第二章 再会
>>540-562 第三章 図書館、パソコン、カツカレー①

②は今夜の8時か9時頃になると思います。
第三章は長いめなので三分割してあります。

それではー。

564第三章 図書館、パソコン、カツカレー②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 20:24:11 ID:kef0s2oI0
テンポもゆっくりだし早めに投下してしまおうと思います。

565第三章 図書館、パソコン、カツカレー②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 20:25:10 ID:kef0s2oI0
〜主な登場人物(随時追加予定)〜

( ・∀・)……分手モララー
K大学在籍中。就職し損ねて六年生。
相談事務所を開き、探偵の真似ごとをしている。
野球が好き、金属バットは嫌い。



从 ゚∀从……高岡ハイン
某県警捜査第四課(組織犯罪対策)巡査部長。
モララーに好意を寄せている?



(´・ω・`)……所部ショボン
某県警捜査第四課警部補。そろそろ昇進したい。



( <●><●>)……分手マス
K大学院在籍中。法学を専攻。情報工学、物理学、経営学にも傾倒。
相談事務所に協力している。



(-@∀@)……文屋アサピー
就留一年目。癖っ毛で厚い眼鏡。
モララーの知人。話すことに苦手意識あり。

566第三章 図書館、パソコン、カツカレー②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 20:26:04 ID:kef0s2oI0
六月、モララーは久しぶりにサークルの部屋を訪ねた。

料理サークルの人に、何か荷物が来ているから見てくれと頼まれたからであった。
料理サークルでは見覚えが無い荷物だから、相談事務所の方の荷物ではないかということなのだろう。

元々その部屋には相談事務所窓口が設置されていた。
一般人と交流するようになってからは、あまり使われていなかったが
それでも相談事務所の物置として、部屋の一角が利用されていた。

そして今、サークルの部屋には大きなクリーム色の箱が置かれていた。

( ・∀・)「……パソコン?」

名前は聞いたことがあったが、実際に目の前にするのは初めてだった。

( <●><●>)「そうなんです」

( ・∀・)「お、いたのかマス。
 パソコンの奥で見えなかったぞ」

マスはカタカタと、何事かを行っていた。
キーボードを叩いて何かを入力しているのだろうか。

567第三章 図書館、パソコン、カツカレー②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 20:27:03 ID:kef0s2oI0
マスはモララーに比べて背が低い。
もっとも、モララーとは血縁ではないわけだし、分手背の低い体質だったのだろう。
ともかくマスは、この当時のパソコンと比べると際立って小さく見えた。
少し高めのテーブルの上に置かれれば、隠れてしまうくらいに。

( ・∀・)「それで、これどうしたんだよ?」

モララーはそういって、パソコンを顎で指した。

( <●><●>)「教授が新しいのを買うといってくれたので、お下がりでもらったんですよ」

( ・∀・)「教授って、お前が仲良くしていたあの人?」

( <●><●>)「そう、物理科の教授さんです」

( ・∀・)「まったく、その交友関係はどこで作ってくるんだか」

( <●><●>)「好きな分野を追求していたら、自然とですね」

( ・∀・)「お前らしいや。
 しかしまあ、文系なのによく理系の教授と仲良くなれるなあ」

( <●><●>)「学問そのものが好きなんですよ。
 それに、パソコンを使うのに理系も文系もありませんよ」

568第三章 図書館、パソコン、カツカレー②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 20:28:04 ID:kef0s2oI0
( ・∀・)「お前最近やたらとパソコンのこと調べているよな。
 いつだったか、電子工学の本も借りていたし」

( <●><●>)「五月頃ですよね、あのときは借りてきてくれてありがとうございました」

( ・∀・)「いやいや。俺には何が何だかわからなかった。
 しかし、これからパソコンがどんどん広まっていくのかな。
 なんか扱える気がしないな」

( <●><●>)「慣れですよ。
 何もこれを最初から作れというわけじゃないです。
 ある程度のやり方だけ知っていれば十分使いこなせるんです」

( ・∀・)「そんなもんかな」

( <●><●>)「たとえば、言葉なんて難しいとか特に意識せずに使っているでしょう。それと同じです」

569第三章 図書館、パソコン、カツカレー②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 20:29:03 ID:kef0s2oI0
( ・∀・)「言葉……でも英語はすらすらとはいかなくないか」

( <●><●>)「それは、気にしすぎているんです」

( ・∀・)「簡単に言ってくれるね」

( <●><●>)「君は英語話せるようになりたいんですか?」

( ・∀・)「なりたいというか、ならなきゃいけない雰囲気を最近感じる」

( <●><●>)「就職で、ですか」

( ・∀・)「まあ、一応な。就留しているわけだし調べはするよ。
 世の中どこでもグローバルって使い始めてきている。
 日本にとどまっていたら限界だって急に騒ぎ始めている」

( <●><●>)「そのうち世界中を出張で回る日常がやってくるかもしれないですね」

( ・∀・)「やれやれ」

570第三章 図書館、パソコン、カツカレー②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 20:30:24 ID:kef0s2oI0
( <●><●>)「ところで、その就職は上手くいきそうなんですか?」

( ・∀・)「え? あ、ああ。そろそろ目星つけなきゃなって」

( <●><●>)「つまりまだ決め手はないと」

(;・∀・)「え、ええ」

( <●><●>)「……ちなみに今年おいくつで」

(;・∀・)「24、ですね」

( <●><●>)「就留?」

(;・∀・)「二年目」

( <●><●>)「……」

(;・∀・)「ねえちょっと無言やめて」

571第三章 図書館、パソコン、カツカレー②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 20:31:09 ID:kef0s2oI0
( <●><●>)「世の中どんどん厳しくなっていくんです」

(;・∀・)「……」

( <●><●>)「株価がはじけ、地価がはじけ、不動産が軒並み倒産し、この国にはたくさんの不良債権が残りました。
 かつて踊り騒いでいた先輩方は、いったいどこへいったのやら。
 とりあえず面接に行けば受かるという就職はもうはるか遠い話です」

(;・∀・)「……マス、さん?」

( <●><●>)「日本だけじゃありません。経済の綻びは世界各地で兆しを見せています。
 アメリカでもヨーロッパでも20年もしないうちに不景気の波が発生するでしょう。
 それに発展途上国が急速に経済成長させている今、
 バブルの再来は容易く予想できるんです」

( <●><●>)「就職はきっとさらに厳しくなるでしょう。
 かつて栄華を誇っていた企業は競争の波に飲み込まれ、
 人材を確保するのにも厳しい選考を課すようになるんです。
 理不尽な要求を繰り返し、本当についてこれる人だけを選別する時代がやってくるんです」

( <●><●>)「きっとパソコンも普及すれば、就職に使われるんです。
 情報は氾濫し、やがてそれをまとめる企業が現れ、あることないこと噂を流し、学生を翻弄していくんです。
 それはやがて社会問題となり、就職が競争と化し、
 失敗した事に対する自責の念から自殺を図る人も増え、やがては政府をも動かざるを得なくなり」

572第三章 図書館、パソコン、カツカレー②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 20:32:02 ID:kef0s2oI0
 ・∀・)「ちょっと未来を先読みしすぎじゃないですかね」

( <●><●>)「すいません熱くなってしまいました」

( ・∀・)「いえいえ」

( <●><●>)「で、君はいったい何をやっているんでしょうか」

(;・∀・)「……が、頑張って企業を探すところから」

( <●><●>)「いや、問題はそこじゃないです」

(;・∀・)「え?」

( <●><●>)「実はある方から興味深いお話を伺いまして」

( ・∀・)「…………」

573第三章 図書館、パソコン、カツカレー②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 20:33:09 ID:kef0s2oI0
( <●><●>)「モララーが最近妙に楽しそうだと」

( ・∀・)「は、はあ」

( <●><●>)「それである日尾行してみたと」

Σ(;・∀・)「は!?」

「そしたらなんだか女性と待ち合わせしていたと」

(;・∀・)「おい誰だその尾行したやつ」

( <●><●>)「答えられません」

(;・∀・)「なんで」

( <●><●>)「守秘義務です」

Σ( ・∀・)「……あ」

( <●><●>)「どうしたんです?」

( ・∀・)「いやなんか、この前図書館で人影をみたような」

574第三章 図書館、パソコン、カツカレー②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 20:34:02 ID:kef0s2oI0
( <●><●>)「ほう、図書館なんてところもいくんですか」

( ・∀・)「あ、いや」

( <●><●>)「お散歩ですか。いいですね」

( ・∀・)「いやいやそんな滅相もない」

( <●><●>)「ぽかぽかしてますものね」

( ・∀・)「えっと、今は梅雨なんすけど」

( <●><●>)「ですよね。梅雨時にそんな遠くまで散歩なんてしないですよね」

(;・∀・)「……ぐ」

( <●><●>)「結構会ってるんですね。春ごろにはもうすでにですか」

(;・∀・)「……」

( <●><●>)「いいじゃないですか、ははは」

(;・∀・)「……」

( <●><●>)「何か言い返すことはないんですか?」

(;・∀・)「返す言葉もありませんので」

575第三章 図書館、パソコン、カツカレー②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 20:35:03 ID:kef0s2oI0
( <●><●>)「それでは話を続けてもいいですか」

(;・∀・)「どうぞ」

( <●><●>)「その前に、つまりは会っていたのは認めるということですね?」

(;・∀・)「ええ」

( <●><●>)「もう鼻の下伸ばしてでれでれと」

(;・∀・)「は、そ、そんなことねえよ」

( <●><●>)「尾行した方の証言です」

(;・∀・)「だから誰なんだよそいつ」

( <●><●>)「写真もありましたよ」

(;・∀・)「え」

( <●><●>)「というか大学構内でも普通に君らのことを見かけていた人はいましたよ」

576第三章 図書館、パソコン、カツカレー②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 20:36:01 ID:kef0s2oI0
( <●><●>)「あんまり見かけない女の人でしたけど
 まあ誰かと会いに来ていたなら、そういうことかと思って気にすることも無かったと」

( <●><●>)「結構な頻度でお会いしていたみたいですねえ。証言を集めててびっくりしました」

(;・∀・)「……」

( <●><●>)「どうなんですか。楽しくお会いしてましたか」

(;・∀・)「……」

( <●><●>)「えっと……」

(;・∀・)「……」

( <●><●>)「話を聞いた限りだと楽しそうですね」

(;・∀・)「うう」

577第三章 図書館、パソコン、カツカレー②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 20:37:04 ID:kef0s2oI0
( <●><●>)「本当に」

(;・∀・)「そうですか……」

( <●><●>)「ちなみに君と同い歳の人たちはもうとっくに社会人となりました」

(;・∀・)「え……」

( <●><●>)「もう新入社員としての甘い時期が終わったころ合いです。
 最初のうちは、みんな希望を胸に入社し、あんなことやこんなことがしたいと語りあったりしていたことでしょう」

( <●><●>)「ところが現実はそうはいかないのです。
 会社組織の中で生きるためには、夢ばかり追うわけにはいかないのです。
 そのため人々はいったん絶望を感じます。何もできないんじゃないのかという漠然とした不安です」

( <●><●>)「それでも、身を粉にして働けば何か見つかるかもしれないと
 きっと自分なりのやりがいが見つかるはずだと思い直し、会社という存在そのものに意義を見出そうと努力し始めます。
 それがちょうど今の時期でしょう。
 君の同期はそうやって社会に順応していくんです。良い悪いではなく、成長していくんです」

578第三章 図書館、パソコン、カツカレー②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 20:38:11 ID:kef0s2oI0
( <●><●>)「モララー?」

(;・∀・)「……」

( <●><●>)「へんじがない ただのしかばねのようだ」

(;・∀・)「生きてる生きてる」

( <●><●>)「僕は直接人を叱ることが苦手なので遠回しな言い方になっちゃいます。すいません」

(;・∀・)「いやもっとすごい技術身につけてると思うけど」

( <●><●>)「黙ってなさい」

(;・∀・)「はい」

( <●><●>)「身の程を知りなさい」

(;・∀・)「はい」

579第三章 図書館、パソコン、カツカレー②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 20:39:02 ID:kef0s2oI0
( <●><●>)「今僕は君と同じアパートで暮らしているんです」

( ・∀・)「はい」

( <●><●>)「だいたい君と僕のバイトや相談事務所の収入で生きているんです」

( ・∀・)「はい」

( <●><●>)「割合はどれくらいでしょうかね」

(;・∀・)「俺とマスで4:6くらい、すかね」

( <●><●>)「……」

(;・∀・)「3:7かな」

( <●><●>)「2.275:7.725」

( ・∀・)「細かいな」

( <●><●>)「おい」

(;・∀・)「……すみません」

580第三章 図書館、パソコン、カツカレー②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 20:40:02 ID:kef0s2oI0
(;・∀・)「ていうか今口調変わりました?」

( <●><●>)「ふふふ」

(;・∀・)「へ、へへ」

( <●><●>)「僕は院生だけど、今年である新興企業の法務部に行くことになりました」

(;・∀・)「お、おめでとうございます」

( <●><●>)「で、今年中には出ていきます」

(;・∀・)「……」

( <●><●>)「アパート」

(;・∀・)「マジでおめでとう」

( <●><●>)「……」

(;・∀・)「で、出ていくんですねーへー」

581第三章 図書館、パソコン、カツカレー②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 20:41:02 ID:kef0s2oI0
( <●><●>)「言いたいことわかる?」

(;・∀・)「うん」

( <●><●>)「楽しんでる場合じゃないって」

(;・∀・)「はい」

( <●><●>)「じゃあもう言わないでもわかりますね?」

(;・∀・)「イエス」

( <●><●>)「働きましょう」

(;・∀・)「……はい」

( <●><●>)「と、いったところで就留してるときつい面もあります」

( ・∀・)「? おっしゃるとおりで」

582第三章 図書館、パソコン、カツカレー②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 20:42:18 ID:kef0s2oI0
( <●><●>)「そこでこのパソコンです」

( ・∀・)「え?」

( <●><●>)「これからは情報化の時代です。
 このパソコンを譲ります。もしどうしても方策が思いつかなかったら、僕に言ってください。
 そうですね、八月が終わるころ、もう君が切羽詰まってどうしようもなくなったら理由を話します。
 パソコンを商機につなげる方法を教えます」

そういうと、マスはパソコンの電源を落とした。

( <●><●>)「このパソコンを入れる箱を教授の部屋に忘れていました。
 今から取って持ってくるんです。
 必ず君が持って帰ってくださいね」

( ・∀・)「え、こんなに大きいのに?」

( <●><●>)「これでも小さくなってきた方なんですよ」

( ・∀・)「この暑さでこれは……」

( <●><●>)「ちなみに値段聞きたいですか?」

(;・∀・)「やめてください」

( <●><●>)「それじゃ」

583第三章 図書館、パソコン、カツカレー②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 20:43:02 ID:kef0s2oI0
マスがそそくさと部室の外に出ていく。
モララーはしばらく呆然として、気持ちのおきどころに困っていた。

目の前の箱は何も言わない。

モララーは思考を巡らせた。

とりあえずマスにちくったある方とやらを捕まえたいが、どうしたらいいものか。
マスの交友関係は広い。
特に文系理系の隔たりも無く人と接している。
まさかと思うが教授ではなかろうか。

考えはまとまらない。
部室の椅子で一息つく。

584第三章 図書館、パソコン、カツカレー②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 20:47:41 ID:kef0s2oI0
部室の机の一つが、そこが相談事務所用に使われてる。
こうした場所を作ってくれるのは、このサークルが寛大である証拠だろうか。

それとも昔トラブルを解決した恩義があるからだろうか。
それにしたって、時間が経っている。
結局は風習みたいなものだろう。

窓の外からじめじめした梅雨の終わりを告げる、暑そうな日差しが差し込んできている。
物憂げな六月の雨とやらはどこにいってしまったんだ。

マスに言われたこと、今年中に自分のやりたいことを見つけなければならないことを考えながら
それでも暑さのため、思考は鈍くなる。

将来に不安がないわけじゃないんだ。
モララーは言い訳がましく自分に言い聞かせた。

自分自身のことを考えると、考えがまとまらない。
いつかハインに似たような話をしたことを思い出した。

結局は目的が見つからないんだ。
いくら自分を見つめなおしても、それが見つからない。

どこかから流行りの歌が聞えてくる。どうせ勝手にカセットテープでも流しているのだろう。

mr.myself

そもそもそいつはどこにいるんだ。

585第三章 図書館、パソコン、カツカレー②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 20:49:07 ID:kef0s2oI0
ぼんやりした愚痴だけが思い浮かぶ。

それだけ。

まどろみの中、考えるのをやめ、早めに土から出てきた蝉の声だけが耳に残った。





『( ・∀・)探偵モララーは信じているようです』 第三章 図書館、パソコン、カツカレー③ へ続く。

586第三章 図書館、パソコン、カツカレー②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 20:53:45 ID:kef0s2oI0
いったん終わり。

目次
>>454-460 序章
>>473-496 第一章 邂逅
>>502-534 第二章 再会
>>540-562 第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
>>565-585 第三章 図書館、パソコン、カツカレー②

二時間ほどしたら③を投下します。
それでは。

587第三章 図書館、パソコン、カツカレー③  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 22:52:15 ID:kef0s2oI0
本日最後の投下です。

588第三章 図書館、パソコン、カツカレー③  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 22:53:48 ID:kef0s2oI0
〜主な登場人物(随時追加予定)〜

( ・∀・)……分手モララー
K大学在籍中。法学部。
探偵の真似ごとをしている。



从 ゚∀从……高岡ハイン
某県警捜査第四課(組織犯罪対策)巡査部長。
モララーに好意を寄せる?



(´・ω・`)……所部ショボン
某県警捜査第四課警部補。そろそろ昇進したい。



( <●><●>)……分手マス
K大学院在籍中。法学を専攻。情報工学、物理学、経営学にも傾倒。



(-@∀@)……文屋アサピー
就留一年目。癖っ毛で厚い眼鏡。
モララーの知人。話すことに苦手意識あり。

589第三章 図書館、パソコン、カツカレー③  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 22:55:23 ID:kef0s2oI0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

モララーとマスには、クーという後輩がいた。
いろんな協力者がいたものの、彼女ほど熱心に相談事務所に協力してくれる者は他にいなかった。

クーは農学部の三年生であった。
別に農家というわけではなく、食物に興味があって学んでいるんだと話していた。
特にもやしが好きなのだという。
理由はきいてもよくわからない。

彼女とモララーが出会ったのは、料理サークルだ。
そして、探偵事務所が知名度を上げるきっかけとなった、猫探しの相談をしたのが、クーだったのである。

彼女は食べることが好きだったようだ。
話事があれば、必ず食堂か、外のお店に誘ってくる。
そしてまずは真剣にメニューを眺める。
表情には乏しかったので、本当はどれだけ真剣にかわからなかったけど。

「揚げ物が食べたいんですよ」

その日は外の定食屋だった。
まだ昭和の雰囲気が色濃く残る、賑やかなお店の一席。

590第三章 図書館、パソコン、カツカレー③  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 22:57:17 ID:kef0s2oI0
「結構揚げ物食べてない?」

「気温にもよって感触が全然違いますね」

「よく食欲あるな。この暑さで」

「だからこそ良い揚げ方をしたのが食べたいんですよ。
 ここはそのあたりの塩梅がしっかりしていると調べはついてます」

「食べ歩いてるなー」

「学生街は競争も盛んですし、調べ甲斐がありますよ。
 例えばこのところ駅前のファーストフード店の戦いは熾烈を極めています」

「熾烈て」

「食うか食われるかです」

「そりゃあ、食われるんだろうに」

「あ、面白いですね」

「メニューにくぎ付けでそんなこと言われても」

591第三章 図書館、パソコン、カツカレー③  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 22:58:10 ID:kef0s2oI0
AA忘れてたので少し置いてからまた投下します。

592第三章 図書館、パソコン、カツカレー③  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 23:10:48 ID:kef0s2oI0
改めまして第三章③投下開始です。

593第三章 図書館、パソコン、カツカレー③  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 23:11:43 ID:kef0s2oI0
〜主な登場人物(随時追加予定)〜

( ・∀・)……分手モララー
K大学在籍中。法学部。
探偵の真似ごとをしている。



从 ゚∀从……高岡ハイン
某県警捜査第四課(組織犯罪対策)巡査部長。
モララーに好意を寄せる?



(´・ω・`)……所部ショボン
某県警捜査第四課警部補。そろそろ昇進したい。



( <●><●>)……分手マス
K大学院在籍中。法学を専攻。情報工学、物理学、経営学にも傾倒。



(-@∀@)……文屋アサピー
就留一年目。癖っ毛で厚い眼鏡。
モララーの知人。話すことに苦手意識あり。

594第三章 図書館、パソコン、カツカレー③  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 23:12:41 ID:kef0s2oI0
モララーとマスには、クーという後輩がいた。
いろんな協力者がいたものの、彼女ほど熱心に相談事務所に協力してくれる者は他にいなかった。

クーは農学部の三年生であった。
別に農家というわけではなく、食物に興味があって学んでいるんだと話していた。
特にもやしが好きなのだという。
理由はきいてもよくわからない。

彼女とモララーが出会ったのは、料理サークルだ。
そして、探偵事務所が知名度を上げるきっかけとなった、猫探しの相談をしたのが、クーだったのである。

彼女は食べることが好きだったようだ。
話事があれば、必ず食堂か、外のお店に誘ってくる。
そしてまずは真剣にメニューを眺める。
表情には乏しかったので、本当はどれだけ真剣にかわからなかったけど。

川 ゚ -゚)「揚げ物が食べたいんですよ」

その日は外の定食屋だった。
まだ昭和の雰囲気が色濃く残る、賑やかなお店の一席。

595第三章 図書館、パソコン、カツカレー③  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 23:13:51 ID:kef0s2oI0
( ・∀・)「結構揚げ物食べてない?」

川 ゚ -゚)「気温にもよって感触が全然違いますね」

( ・∀・)「よく食欲あるな。この暑さで」

川 ゚ -゚)「だからこそ良い揚げ方をしたのが食べたいんですよ。
 ここはそのあたりの塩梅がしっかりしていると調べはついてます」

( ・∀・)「食べ歩いてるなー」

川 ゚ -゚)「学生街は競争も盛んですし、調べ甲斐がありますよ。
 例えばこのところ駅前のファーストフード店の戦いは熾烈を極めています」

( ・∀・)「熾烈て」

川 ゚ -゚)「食うか食われるかです」

( ・∀・)「そりゃあ、食われるんだろうに」

川 ゚ -゚)「あ、面白いですね」

( ・∀・)「メニューにくぎ付けでそんなこと言われても」

596第三章 図書館、パソコン、カツカレー③  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 23:14:51 ID:kef0s2oI0
川 ゚ -゚)「よし、カツカレーだな」

( ・∀・)「お前聞いてなかっただろ」

川 ゚ -゚)「モララーさんは?」

( ・∀・)「俺はそばでいいや」

六月も終わりの頃。気温からしてもう季節は夏だと言ってよい。
蝉の声もやかましく、日射しでのんびり歩いていようものなら肌を焼かれる。
オゾン層の破壊だとか紫外線という言葉が出回り始めたころだった。

他愛ない話を軽く交わしたのち、食べ物が運ばれてくる。

( ・∀・)「それで、今日はどんな相談?」

このような質問をするのは、クーが相談事務所の依頼の窓口となっていたからだ。

597第三章 図書館、パソコン、カツカレー③  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 23:15:42 ID:kef0s2oI0
もっとも相談事務所はもともとモララーとマスが勝手に始めていたことだ。
サークルの目的とは違う。本来サークルは和気藹藹と料理を楽しむところだ。
だから、別に協力者を募ったりはしていなかった。

だけど、たまには料理サークルに所属していながら、相談事務所の方の協力をしてくれる不思議な人もいる。
クーもその一人だった。
詳しく聞いたことは無いが、最初の猫探しが未解決ということもあり、その縁もあって協力しているのかもしれない。

クーは何故か顔が広い。
表情は薄いが、裏表があんまりないという意味では接しやすいのだろうか。
とにかく彼女はその顔の広さで、学校中から相談事を集める役回りになっていた。

一般人と交流するようになった今でも、相談の多くはクーが運んで来てくれる。

だからモララーと話すときは、専ら相談事の話だったのである。

川 ゚ -゚)「今日は相談というか、噂話なんですけどね」

( ・∀・)「噂?」

598第三章 図書館、パソコン、カツカレー③  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 23:16:40 ID:kef0s2oI0
川 ゚ -゚)「そうです。
 実はですね、農学部の研究棟があるじゃないですか」

( ・∀・)「ああ、あるな」

「あそこにね、出るらしいんですよ」

( ・∀・)「出るって?」

ここで、クーは意味ありげに周りを見回す。
そんな聴かれて困ることでも話すというのだろうか。

クーは手を口元に持ってきて、囁くように言う。

川 ゚ -゚)「幽霊」

( ・∀・)「……」

599第三章 図書館、パソコン、カツカレー③  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 23:17:51 ID:kef0s2oI0
川 ゚ -゚)「きこえなかったんですか?
 幽霊ですよ、ゆ・う・れ・い」

( ・∀・)「聞こえてるけど……」

川 ゚ -゚)「農学部生の間で噂になってるんですよ。
 夜中に研究で棟に籠っていると、なんだか不穏な気持ちになると」

( ・∀・)「うん」

川 ゚ -゚)「で、突然ラップ現象がおこるんです」

( ・∀・)「ラップ現象?」

川 ゚ -゚)「ガタガタって、壁の奥から音がしたり、なんだりするんですよ」

( ・∀・)「ほおー」

川 ゚ -゚)「そんな噂があるんです」

600第三章 図書館、パソコン、カツカレー③  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 23:18:46 ID:kef0s2oI0
( ・∀・)「老朽化してんじゃないの?」

川 ゚ -゚)「それはそうかもしれませんが」

( ・∀・)「他にも、例えば欠陥工事とか」

川 ゚ -゚)「あー、ありえますね」

( ・∀・)「じゃあ問題はないだろう」

川 ゚ -゚)「いえいえ」

( ・∀・)「ん?」

川 ゚ -゚)「理屈じゃ測れないのが恐怖ってもんですよ」

( ・∀・)「何言ってんだお前」

601第三章 図書館、パソコン、カツカレー③  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 23:19:47 ID:kef0s2oI0
川 ゚ -゚)「とりあえず話を続けます」

( ・∀・)「はいはい」

川 ゚ -゚)「夏休みに泊まりがけで研究しなきゃならなくなりました」

( ・∀・)「……?」

川 ゚ -゚)「私が」

( ・∀・)「……クーが?」

川 ゚ -゚)「そう」

( ・∀・)「ああ、農学部棟へ」

「その通り、さすが飲み込みが早い」

( ・∀・)「ふうん」

602第三章 図書館、パソコン、カツカレー③  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 23:20:47 ID:kef0s2oI0
川 ゚ -゚)「遊びに来ませんか?」

( ・∀・)「は?」

川 ゚ -゚)「研究室へ」

( ・∀・)「あー……怖いというわけ?」

川 ゚ -゚)「はい」

( ・∀・)「怖いから、俺を呼べばとりあえずまぎれるかなと」

川 ゚ -゚)「そうそう」

( ・∀・)「いやでも、他にも人がいるでしょ?」

川 ゚ -゚)「それが、一緒に泊まる予定の子が問題でしてね
 寝付きがすごくいいんです」

( ・∀・)「寝付きが?」

603第三章 図書館、パソコン、カツカレー③  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 23:21:35 ID:kef0s2oI0
川 ゚ -゚)「はい。そりゃもう、一部で有名になるくらい凄く寝付きが良いんです」

( ・∀・)「んー、もっと具体的に言って」

川 ゚ -゚)「とあるサークルで合宿に行ったとき、これから花火だーってときにスッと寝ちゃって
 てだれの喧しい先輩たちが起こそうとしてもどうにもならず、朝まで起きなかったくらい」

( ・∀・)「ほーう」

川 ゚ -゚)「そんな人と一緒に夜泊まったら
 寝てしまって、わたしは一人になる」

( ・∀・)「……」

川 ゚ -゚)「……ヘルプミー」

( ・∀・)「……」

604第三章 図書館、パソコン、カツカレー③  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 23:22:52 ID:kef0s2oI0
川 ゚ -゚)「ミー」

( ・∀・)「すいませーん、水くださーい」

川 ゚ -゚)「……」

( ・∀・)「……どうもー」

川 ゚ -゚)「……ミー」

( ・∀・)「アホか」

川 ゚ -゚)「お、お、こわいんですか?」

( ・∀・)「んなわけあるか」

川 ゚ -゚)「じゃあどうして」

( ・∀・)「めんどくさいだけだよ」

605第三章 図書館、パソコン、カツカレー③  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 23:23:52 ID:kef0s2oI0
川 ゚ -゚)「先輩」

( ・∀・)「うん?」

川 ゚ -゚)「暇でしょう? 夏休み」

(;・∀・)「う」

川 ゚ -゚)「もう友達もみんな社会人ですものね」

(;・∀・)「おう、妙なこと言うんじゃないよ。
 つい最近似たようなこと追求されたばかりで」

川 ゚ -゚)「へーそうなんですかー」

( ・∀・)「……」

川 ゚ -゚)「それでも行きたくないなんて、それ以外に何が
 ……あ。ははあ」

( ・∀・)「なんだよ」

川 ゚ -゚)「さてはまたあの女の人ですか」

606第三章 図書館、パソコン、カツカレー③  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 23:24:50 ID:kef0s2oI0
Σ( ・∀・)「え?」

川 ゚ -゚)「いやね、この前マスさんにモララーがほんとに頑張っているのか調べてほしいと言われまして
 尾行したんです」

(;・∀・)「……あっまさかマスが言ってたのって」

川 ゚ -゚)「ふふふ」

(;・∀・)「こいつ……」

川 ゚ -゚)「で、もしかして夏休みの間あの人にずっと会いに行く気なのかなあと。
 だから大切な後輩である私を助けにこれないのかなあと、思いまして」

(;・∀・)「さ、さすがにそんな頻繁に会うつもりはねえよ」

川 ゚ -゚)「ほほう、何度かは会うんですね」

(;・∀・)「それくらい……いいだろ」

川 ゚ -゚)「まあ多少はいいんじゃないですかね〜
 ちなみにそのことマスさんには?」

607第三章 図書館、パソコン、カツカレー③  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 23:25:47 ID:kef0s2oI0
( ・∀・)「言う必要ないだろう」

川 ゚ -゚)「言えないんじゃないんですか〜」

(;・∀・)「……」

川 ゚ -゚)「就職活動してるって思われなくちゃまずいんじゃないですかねえ」

( ・∀・)「何が言いたい」

川 ゚ -゚)「不利益な情報を流されたくなければ遊びに来てください」

( ・∀・)「……」

川 ゚ -゚)「良い交渉でしょう?」

( ・∀・)「こういうのは交渉じゃない、脅迫というんだ」

川 ゚ -゚)「感性の違いです」

608第三章 図書館、パソコン、カツカレー③  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 23:26:58 ID:kef0s2oI0
( ・∀・)「……1日だけ?」

川 ゚ -゚)「はい、夜に来ていただければ」

( ・∀・)「わかったよ。行ってやるよ」

川 ゚ -゚)「やったーありがとうございます! カツあげますね」

( ・∀・)「いらねえよ」

どうもマスにいろいろ吹き込まれたらしい。。
モララーはクーを見つめながらそう思った。

クーがくれたカツをなんとか胃に収める。
確かに味はしっかりしているし、衣も硬すぎず、サクサクしていておいしい。
クーの食堂調査の精度は正確なようだった。

609第三章 図書館、パソコン、カツカレー③  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 23:27:58 ID:kef0s2oI0
川 ゚ -゚)「モララーさん」

クーがふと、声をかける。

( ・∀・)「ん?」

川 ゚ -゚)「本当にラップ現象って、大したことないんですかね」

( ・∀・)「……さあな。
 そういうのが話題になって、調べられたりすると、案外なんでもないってだけだけど」

川 ゚ -゚)「……教授の」

そう言ったところで、クーは急に首を横に振る。

川 ゚ -゚)「いえ、なんでもありません」

( ・∀・)「なんだよ、突然」

川 ゚ -゚)「ちょっと気にしすぎているだけです」

610第三章 図書館、パソコン、カツカレー③  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 23:29:04 ID:kef0s2oI0
( ・∀・)「何を?」

川 ゚ -゚)「心霊現象。
 やっぱりそういうのって、よくないこと起こるのかなーっていう目線で語っちゃうでしょ?」

( ・∀・)「そういう現象が起こると、何か良くないことの前触れなのかと思っちゃうってこと?」」

川 ゚ -゚)「そういうことです」

( ・∀・)「んー、そう」

クーの表情は乏しい。
でもどことなく、元気が無い。
モララーも長い付き合いだし、なんとなくクーの機微がわかってきていた。

川 ゚ -゚)「あ」

( ・∀・)「ん?」

611第三章 図書館、パソコン、カツカレー③  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 23:29:53 ID:kef0s2oI0
川 ゚ -゚)「そのハンカチ」

クーがモララーの手を指さした。

モララーはちょうど手をハンカチで拭いていた。
カツの衣とかが軽くついていた気がしたからだ。

薄い桃色のハンカチ。

川 ゚ -゚)「私のあげたのですよね」

( ・∀・)「おう」

川 ゚ -゚)「まだ使ってたんですねー」

( ・∀・)「そりゃあ捨てるわけにもいかないし」

川 ゚ -゚)「猫探しのときに渡したんですから、ずいぶん前ですよ?」

( ・∀・)「何年前だろうと気にしないよ」

612第三章 図書館、パソコン、カツカレー③  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 23:31:07 ID:kef0s2oI0
川 ゚ -゚)「ふふ、モララーさんらしい」

( ・∀・)「え?」

川 ゚ -゚)「何でもないですよー」

( ・∀・)「なんだよ、変な奴」

川 ゚ -゚)「いいんです」

クーが少しだけ明るくなった気がした。

やがて二人は食堂を後にした。

もうすぐ夏が来る。
空には、ややせっかちな気がする入道雲が、高く高く伸びていた。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

613第三章 図書館、パソコン、カツカレー③  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 23:32:00 ID:kef0s2oI0
バイトはまだ続けていた。
大学一年の時から今まで、アパートの最寄駅の傍の書店で働かせてもらっている。

別に豪勢な書店というわけではない。
どこにでも見かけるチェーン店だ。

六年ともなればもう周りのバイトから随分と慕われている。
若い大学生からすれば存在自体が珍しいのだろう。
おまけに暇なものだから、たくさんシフトを入れることができる。

仕事自体が楽しいわけでもないが、お金は手に入る。
それに本屋という性質上、喧騒が無いのがいい。
夜ともなれば特に。

カウンターの対応をしていたときだ。
本を差し出してきた客を見て驚いた。

( ・∀・)「アサピー?」

(-@∀@)「あれ、モララーさん」

614第三章 図書館、パソコン、カツカレー③  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 23:32:56 ID:kef0s2oI0
( ・∀・)「奇遇だなー」

仕事中なので、会話はほどほどにしておく。
幸いすぐにその日の分の仕事が終わる予定だったので、アサピーには店内で待ってもらうことにした。

七月になりたてだというのに、もう外の気温は暑かった。
それに湿っぽい空気もいやらしい。
外で待たせるのはかわいそうだろう。

やがて今日の分の仕事が済むと、アサピーを見る。
アサピーも気付いたようで、出口へと向かっていく。
モララーはそのあとを追うように外へ出た。

(-@∀@)「住居がこの近くなんですか」

( ・∀・)「ああ、そうだよ。
 教えたことは無かったよな」

(-@∀@)「そりゃあまあ、そういうの追求すると変な人みたいですし」

615第三章 図書館、パソコン、カツカレー③  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 23:34:00 ID:kef0s2oI0
アサピーはそういっておどけるが、全体的に覇気が無いのは見て明らかだ。
疲れているのだろうか。

アサピーを駅まで送る。ほんの5分程度の道だ。

モララーにはどこかアサピーから不安定な印象を受けた。

そんなモララーの考えを察したのか、アサピーは真顔になり、そして短く溜息をついた。

(-@∀@)「うまくいってないんですよ、やっぱり」

( ・∀・)「今日もこの近くのビルで説明会だったんです。
 でもなんか、もう雰囲気からしてあわなそうというか。
 もうそんなこと言ってられる時期じゃないとはわかっているんですけどね」

アサピーはよくしゃべった。

口をあけるたびに、自分がいかにダメなやつかを語る。
よほどひどい目にあったのだろうか。
日ごろのストレスがたまっているのだろうか。

616第三章 図書館、パソコン、カツカレー③  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 23:35:12 ID:kef0s2oI0
(-@∀@)「せっかく必死に勉強したのに、なんなのかなあって、思うんですよ。
 ここまで努力してきたのに、たった数年生きた時代が違うだけでこんなに状況が変わるのかって」

( ・∀・)「先輩にでも会ったのか?」

(-@∀@)「ええ、そうです」

そうか、そりゃあ、傷つくだろう。
とは思った。
でもとてもそんなことは口には出せなかった。

(-@∀@)「あまりにも上手くいかないから、どうしたらいいですかねって相談しに行ったんですよ。
 そしたら、俺は経験してないからわからんって、あっさり」

(-@∀@)「もうね、不公平だなーって思うんですよ。
 言ってもしかたないんですけどね」

アサピーはどこを見つめるでもなく、空中をにらんでいた。
眼鏡が分厚くて、よくはわからなかったが、不安定な印象はますます強くなるばかりだ。

( ・∀・)「アサピー」

(-@∀@)「はい?」

617第三章 図書館、パソコン、カツカレー③  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 23:36:15 ID:kef0s2oI0
( ・∀・)「まさか電車止めたりしないよな」

その言葉の真意をやや考えてから、アサピーは噴き出した。

(-@∀@)「さすがにそこまではしないですよ!」

まだ冗談が通じることに、モララーは一安心した。

(-@∀@)「ただ、誰かに救ってほしい気はしますけどね。
 神様でも、なんでも」

( ・∀・)「神様、か」

(-@∀@)「この世は平等なんでしょ? 神様とやらが言うことには」

たいそうな言葉を使う。
でもそのフレーズは頭に残る。

そういえばそんなフレーズの入った歌を最近どこかで聴いたと、ふと思い出す。

( ・∀・)「さてと」

駅についた。

618第三章 図書館、パソコン、カツカレー③  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 23:37:19 ID:kef0s2oI0
モララーはアサピーに手を振る。

( ・∀・)「じゃあな、またいつか会おう」

(-@∀@)「今度は良い知らせとともにありたいですね」

アサピーは力なく微笑んで、それからホームへと向かっていった。

幸い、その後特にアサピーがどうなったという連絡もなかった。
とはいえこれからしばらく、アサピーと会うことはなかったが。

世の中は不平等だ。
あの日アサピーが愚痴っていた内容を集約すれば、つまりそういうことだ。
その点、モララーは否定もできない。

619第三章 図書館、パソコン、カツカレー③  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 23:38:50 ID:kef0s2oI0
そしてそのことにみんなが気付き始めている。
だからどことなく、世間は暗くなってきている。
閉塞感といえばいいのだろう。

昔どこかできいた。
欧米人の心には神様がいる。
たとえ一人になっても、最後はその神様を信じて行動すれば良い。

じゃあ無宗教の自分たちはどうなるのだろう。
モララーはその文章を呼んだ時、別になんとも思わなかった。
きっと現代を生きる人はそれぞれ何かを信じて生きている。
むしろそれが神である必要などないだろう、と。

でも、こうも閉塞感のある世の中では
神にすがりたくなる気持ちもわからなくはないと、最近思い始めていた。

620第三章 図書館、パソコン、カツカレー③  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 23:41:24 ID:kef0s2oI0
七月もだんだんと過ぎていく。
時間の経過はぞっとするほど早い。

夏は深まり、蒸し暑い日々が続いた。




『( ・∀・)探偵モララーは信じているようです』 第三章 図書館、パソコン、カツカレー③ へ続く。

621第三章 図書館、パソコン、カツカレー③  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 23:42:10 ID:kef0s2oI0
『( ・∀・)探偵モララーは信じているようです』 第四章 教会 へ続く。

でした。ミスった。

622第三章 図書館、パソコン、カツカレー③  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/20(土) 23:44:37 ID:kef0s2oI0
目次
>>454-460 序章
>>473-496 第一章 邂逅
>>502-534 第二章 再会
>>540-562 第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
>>565-585 第三章 図書館、パソコン、カツカレー②
>>593-621 第三章 図書館、パソコン、カツカレー③

本日の投下は以上です。
明日は第四章を投下します。短めです。

それでは。

623名も無きAAのようです:2013/07/21(日) 02:20:22 ID:wavxcPNEO
レス数一気に進んだな、まだまだ序盤みたいだけど

624第四章 教会  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/21(日) 20:23:45 ID:Yz9fwqUU0
序盤、というか、第六章までが前半です。

それでは、投下します。

625第四章 教会  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/21(日) 20:26:02 ID:Yz9fwqUU0
〜主な登場人物(随時追加予定)〜

( ・∀・)……分手モララー
K大学在籍中。就職し損ねて六年生。



从 ゚∀从……高岡ハイン
某県警捜査第四課(組織犯罪対策)巡査部長。



(´・ω・`)……所部ショボン
某県警捜査第四課警部補。そろそろ昇進したい。



( <●><●>)……分手マス
K大学院在籍中。法学を専攻。情報工学、物理学、経営学にも傾倒。
交友関係は広い。モララーをよく世話している。



(-@∀@)……文屋アサピー
就留一年目。癖っ毛で厚い眼鏡。
モララーの知人。話すことに苦手意識あり。



川 ゚ -゚)……素直クー
K大学農学部在籍中。三年生。料理サークルに所属し、相談事務所にも協力。
揚げ物ともやしと猫が好き。

626第四章 教会  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/21(日) 20:28:03 ID:Yz9fwqUU0
/ ゚、。 /「おや、モララーじゃないか」

ある昼下がり、声をかけられた。
大学から少し離れた場所にある、教会の前である。

その男性は教会に通っていた。
といっても、敬虔な信者というわけではない。

( ・∀・)「久しぶり、おじさん。
お店の方は元気?」

/ ゚、。 /「どうだかねえ」

彼の本職は古本屋である。
昔から、大学生向けに小さな書店を営んでいた。
書店は大学通り沿いに構えられている。

( ・∀・)「今日もボランティア?」

/ ゚、。 /「そうだ。暇なんでな。
そちらの方は?」

男性はモララーの隣の人を指す。

627第四章 教会  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/21(日) 20:30:27 ID:Yz9fwqUU0
こういう聞かれ方をされると、モララーは少し困る。
友達とも言いづらい。
だから言いよどんでしまう。

そんなモララーを見かねて、彼女は切り出す。

从 ゚∀从「高岡ハインと言います。モララーの知り合い、といえばいいかな」

聞いたことのないくらい丁寧な言葉遣いに、モララーは違和感を覚えた。
別に悪いわけではないのだけど。

/ ゚、。 /「これはどうも。私はダイオード。
モララーとは長い付き合いなんだ」

教会の塀の上で、猫が一声、鳴いた。

( ・∀・)「長いといっても、大学生になってからだけどな」

三人は教会の隣にある公園にきていた。
ちょうど木陰に、木質のテーブルと椅子があったのでそこに腰かけた。
初夏であり、木陰に入れば涼しさも感じられる。

628第四章 教会  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/21(日) 20:32:39 ID:Yz9fwqUU0
/ ゚、。 /「それでも、もう6年目だ。
全く、最初からよく古本屋に入り浸っていたよ、君は」

( ・∀・)「本が好きだったんだよ」

/ ゚、。 /「人よりもか」

( ・∀・)「人にもよる」

モララーとハインがこの公園に来ていたのは、まったくの偶然だった。
もう大学の周辺にあるお店や、休める場所は大方回ってしまっていた。
そのため新しい場所を探そうと思い、この教会に思い当ったのである。

キリスト教系の教会であり、かなり前からこの場所にあったらしい。
大学とどちらが古いのか、そのあたりの詳しい事情はモララーはよく知らなかった。

なんにせよ、このあたりまでくる大学生はあまりいない。
ほとんどの大学生は駅と学校を往復して帰宅してしまうからだ。

教会に来るのは、本当のクリスチャンか、社会福祉に興味がある人くらいだ。
ダイオードもボランティアで来ているように、教会にはよく無償の奉仕を行う人たちが来ていた。
教会の管理者が寛容な人のようで、市民の活動にも好意的なのだと聞いたことがあった。

629第四章 教会  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/21(日) 20:34:35 ID:Yz9fwqUU0
从 ゚∀从「なんだ、今と大差ないじゃないか」

もうハインは元の口調に戻っていた。
丁寧な口調も短命になったものだ。

( ・∀・)「だから人によるって」

/ ゚、。 /「その人も粗方卒業してしまって」

从 ゚∀从「一人寂しく町をさまよう」

(;・∀・)「おいおい」

/ ゚、。 /「お嬢さん、なかなかわかってるね」

从 ゚∀从「もう半年くらい会ってますからね」

(;・∀・)「酷い話だ」

そう、ハインと出会ってもう随分経つ。
初めて会ったのは去年の冬。
頻繁に会うようになったのは、控え目に見積もっても二月ごろから。

もう春はすぎ、夏が訪れていた。
一年の半分を、モララーは彼女と共に過ごしていた。

630第四章 教会  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/21(日) 20:36:52 ID:Yz9fwqUU0
公園の遊具で子どもたちが遊んでいる。
高い楽しげな声が遠くから聞こえている。

公園の遊具を撤去するという動きが最近活発になってきている。
ブランコだとかの整備不良による事故や、幼児の誘拐殺害などが目立ってきたためだ。
とはいえ少なくともこの公園はまだ遊び場として機能しているようであった。

子どもと猫が多いのが、この町の特徴だった。
学生街ということもあり、賑やかさもそれなりにある。
もちろん少子化の噂は聞いているし、その影響で年々人が減っているそうではあるが。

/ ゚、。 /「しかしここでモララーを見かけるとは思わなかった」

ダイオードは心底驚いたようだった。

( ・∀・)「そりゃ、だって、縁がないもの」

/ ゚、。 /「お前さんは悩んだりしなさそうだものなあ。
 のらりくらり、口が達者で、何からもひょいと逃げて」

( ・∀・)「聞え悪いこと言うなって」

/ ゚、。 /「本当だろう。一年生の頃からよくしっとるぞ」

631第四章 教会  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/21(日) 20:39:48 ID:Yz9fwqUU0
ダイオードは、年齢的には壮年だが、おじいちゃんとは言いきれない。
見た目に清潔感があり、肌にも張りがある。
ただ、実際には一度大きな会社を退職するという経験をしていた。

定年ではない。途中で辞めたそうだ。
理由は深く聞いたことはないが、古本屋に籠っているその姿をみる限り、モララーにはなんとなくその理由がわかる気がした。

ダイオードは大きな企業で野望に満ちて働くよりも、身近な世界を大切にしたいと思う人だったのだろう。
教会に通うその姿を見聞きして、モララーはそう感じていた。

だからこそ、モララーはダイオードの書店に良く通ったのかもしれない。
自分に近い雰囲気を感じて。

/ ゚、。 /「私はね、良くこの教会でボランティアをしているんですよ」

ダイオードはハイン相手に会話を進めていた。
自己紹介の一環だ。モララーはしばらくその会話を聞くことにした。

从 ゚∀从「ボランティア?」

/ ゚、。 /「ええ、読み聞かせているんです。
教会にいる子どもたち相手に、毎週ね」

632第四章 教会  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/21(日) 20:42:37 ID:Yz9fwqUU0
从 ゚∀从「今日もその読み聞かせを?」

心なしか、ハインの声が明るい気がした。
いつも話を興味津々で聞く人だというのは、モララーにもわかっていた。
でも今回は、もっと純粋に、声が軽い。

/ ゚、。 /「ええ、ちょうど今日も読み聞かせをしてきたところでした」

从 ゚∀从「へえー、始めたきっかけはなんなんですか?」

/ ゚、。 /「なんでしょうね、あんまり深い理由はないんですよ。
しいていうなら、物を聞かせるのが好きだったからですかね」

从 ゚∀从「聞かせるって、本とか、物語とか」

/ ゚、。 /「いや、それ以前に、人と関わりたかったのかもしれない。
本を通して、いろんなことを教える中で」

从 ゚∀从「……人が好きなんですね」

ハインがそういうと、ダイオードはふっと笑みを溢した。

/ ゚、。 /「つまるところそうなのかもしれないですね。
昔いろいろありまして、人を避けてた時期もありましたが。
それでも人は好き。こういうと複雑ですね。そんなつもりはないのですが」

633第四章 教会  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/21(日) 20:45:37 ID:Yz9fwqUU0
从 ゚∀从「なるほど」

そういって、ハインはにやっとモララーを見る。
モララーは不意に自分に向けられた視線に、やや首をかしげた。

( ・∀・)「なんだ?」

从 ゚∀从「いやあ、なんとなく」

にやっとするのを見て、言いたいことはだいたいわかった。
どことなくモララーと似ている、そういいたいのだろうとモララーは思った。
事実、自分でもそう思うのだから、嫌な気持ちじゃない。

人ごみは嫌い、人は好き。
その矛盾する感情は自分でもよく理解していた。
この気持ちはこれから何十年先でも抱いていそうな気がした。

634第四章 教会  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/21(日) 20:48:40 ID:Yz9fwqUU0
公園で遊んでいるのは教会に通っている子どもたちかもしれない。
教会に通うのは、近所の子どもの場合もある。親が宗教家だったりすれば、小さいうちに通うこともある。
あるいは、身寄りのない子どもが住んでいたり。

从 ゚∀从「私も教会に通った時期がありますよ」

突然のハインの台詞に、モララーは軽く驚いた。

( ・∀・)「え、そうなの?」

从 ゚∀从「ああ、なんか迷っててさ。いろいろ」

/ ゚、。 /「ほう、迷いとは、いったいどんなことですかな?」

ダイオードも興味が湧いたらしい。
もちろん詮索して、噂話の種子に、とかそういう様子ではない。
あくまで人の悩みを聞くように、優しい態度で聞いていた。

ハインにもそれが伝わったらしい。
話の筋を思い浮かべるためなのか、少しの間上を向いていた。
それから、口を開いた。

635第四章 教会  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/21(日) 20:51:43 ID:Yz9fwqUU0
从 ゚∀从「私の両親、あんまり私に優しくなかったんです。
自分のことばかり考えている人たちで、家族っていう繋がりも感じられなくて。
それで、まあ寂しかったんでしょうね。いつの間にか近所の教会に通うようになっていました」

さらっと、ハインは言ってのける。
曖昧な言葉でぼかしているが、わざとなのだろう。
その凝縮された言葉の奥に、随分とたくさんの事情が潜んでいるように、モララーは聞いていて思った。

ダイオードはゆっくりと、申し訳なさそうに首を横に振った。

/ ゚、。 /「そうだったのですか……
ご両親は、今はどうしてらっしゃいます?」

すると、ハインはただ否定した。

ダイオードはその様子を見て、目を見開き、それから「すまない」と詫びた。

从 ゚∀从「いえ、別にそれはいいんです。
元々好き勝手に生きてた人たちが、勝手にクスリに手を出して、勝手に死んだ、そんな話ですよ」

636第四章 教会  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/21(日) 20:54:55 ID:Yz9fwqUU0
从 ゚∀从「でも、葬儀のときに、もう二度と話せないんだなって気づいちゃって。
そうしたら、なんだか急に悔しくなっちゃって。
今まで気にしたこともない人たちだったのに」

言葉を丁寧に置いていく、そんな話し方だ。
慎重に伝えようとしていることがわかる。

あまり人に言ったことのない話なのだろう。
初めて人に何かを伝えるとき、人は自然と丁寧な口調になる。
今のハインはまさにそれだった。

从 ゚∀从「そのときになって初めて、両親が可哀想って思ったんです」

ハインはそういって、短く自分の気持ちを表した。

可哀想、なんだかハインが言うには幼すぎる言葉のような気がする。
子どもの頃から抱いてきた気持ちだからだろうか。

モララーはハインを眺めていた。
隣に座っていたものの、距離があった。しかし心理的距離はいつもより短いように思えた。

637第四章 教会  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/21(日) 20:58:15 ID:Yz9fwqUU0
ハインの横顔はいつもと変わらない。
少しだけうつ向いている、ただそれだけだ。

だけど、いつもと違うハインだった。

モララーには、そのときようやくハインの心の一端が見えた、そんな気がした。
だから質問が浮かんだ。

( ・∀・)「それって、ひょっとして警察を目指した理由?」

モララーは思い付いたことを聞いた。

ハインは多少驚いた様子があった。
モララーの質問を受けて、ハインとしても何か感じたのかもしれない。

从 ゚∀从「まあ、理由の一つなのかもな」

ハインはモララーを見て、ぎこちなく微笑んだ。

( ・∀・)「そんな深い事情があるとは知らなかった」

638第四章 教会  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/21(日) 21:01:56 ID:Yz9fwqUU0
モララーは率直に述べた。

从 ゚∀从「まあ、言ってもないし。
言っても楽しい話でもないし」

そういって、ハインは「でも」と話を続けた。

从 ゚∀从「ただなんとなく、どんな人でも生きてるんだなって思っただけ。
それを勝手に奪われるのは、どんな事情でも癪だろうなって」

ハインの過去を、モララーは聞いたことがなかった。
だからそういう感想自体も、モララーにとっては新鮮だった。

親近感というほどでもないが、ハインという人間に迫ることができたと思った。

ハインはモララーから目を離した。
そしてその目線はダイオードに向かった。

从 ゚∀从「読み聞かせ、どれくらい続けてるんですか」

次の話題に移行した。

639第四章 教会  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/21(日) 21:05:27 ID:Yz9fwqUU0
/ ゚、。 /「実はな、六年前なんだ」

( ・∀・)「あれ、じゃあ……」

/ ゚、。 /「そう、お前が大学に入学した年からだよ。
だからこそ、なおさらお前のことは印象に残っているんだ」

( ・∀・)「はあ、そう考えると、長い付き合いですね」

/ ゚、。 /「最初に言っただろう。長い付き合いって」

自分が大学生になったころ、初めて赴いた古本屋でダイオードに出会った。
そのときにはすでにダイオードは読み聞かせを始めていた。

モララーはつい、ダイオードがずっと昔から読み聞かせをしているものだと思っていた。
それがモララーにとってのダイオードに対する認識だったからだ。

/ ゚、。 /「今ばかりを必死に見ているから、小さな誤解を招くんだ。
たまには過去を振り替えってみなさい。物事を冷静に見返すために」

( ・∀・)「神父みたいなこと言うなよ。
高尚な話をする柄じゃないだろう、あんたは」

/ ゚、。 /「そうか? まあここの教会の人にはよく会っているからなあ。
通っているうちにうつったのかもしれないな」

640第四章 教会  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/21(日) 21:08:09 ID:Yz9fwqUU0
从 ゚∀从「毎週ですものね」

/ ゚、。 /「ああ、そうですね。すっかりここの管理をしている人々と仲良くなってしまった」

ダイオードは楽しそうに言う。
聞いているモララーまでほっとしてしまう口調だった。
本心から楽しいことをやっているからこそできる話し方だ。

ハインをふと見ると、こちらも顔を緩めている。

从 ゚∀从「ボランティア、頑張って下さいね。
きっと子どもたちは楽しみにしてますので」

/ ゚、。 /「頑張るよ。
こればかりが生き甲斐なもので」

ダイオードは目を輝かせていた。

どこかから猫の声がする。
子どもの嬌声もする。

会話の最中も絶えることがなかった。
その明るい声がこの公園を包んで、さらには教会の雰囲気にも影響を与えていた。

641第四章 教会  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/21(日) 21:11:23 ID:Yz9fwqUU0
しばらく涼んだ。
会話はちょくちょく続いたが、それよりも日陰が心地よいので、眠気を誘った。
静かに風の音に耳をすませることもできた。

時間が経ち、夕方が迫ってくる。
眠気をふりはらい、三人は別れることにした。

/ ゚、。 /「それではな、モララー、ハインさん。
また元気で会おう」

ダイオードは勢いよく手を振った。
年齢を感じさせない素振りだった。

ダイオードを見届けたのち、モララーはハインを見て気づいた。
ハインがまだ笑顔でいることに。
いつもいつも笑っているが、今日はもっと自然な顔だ。

モララーは少しの間、呼吸をするのさえ忘れていた。

从 ゚∀从「なんだよ」

モララーの視線に気づいたのだろう。
ハインは目をほそめて、モララーに言った。

642第四章 教会  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/21(日) 21:14:25 ID:Yz9fwqUU0
モララーは熱いものがこみ上げてくるのを感じた。
すでにそのような感情を自分が抱いていることは、十分にわかっていた。

でも、何も言わない。

思わず見とれていた、なんてとても言えなかった。

( ・∀・)「いや、別に……」

目線を反らして、ハインの追求を避ける。
ハインの不服そうな顔が、見ていなくても、思い浮かぶ。

モララーは、そこでふと思いついた。
今なら、言ってもいい気がした。

また、ハインを振り返る。
思った通り怪訝そうな顔があって、笑ってしまった。

( ・∀・)「なあ、ハイン」

夕暮れになりつつある。
陽光は赤みを帯びる。

( ・∀・)「ハインはどうして俺に会いにくるんだ?」

643第四章 教会  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/21(日) 21:17:45 ID:Yz9fwqUU0
口に出したら、もうハインに会えなくなる。
そんな直感があったから切り出せないでいた。

从 ゚∀从「……」

ハインの顔から、自然さは消えていた。
いつの間にか笑顔は性質を変えていた。
もっと固く、無機質なものに。

ああ、そうか。まだ駄目だったのか。

前のハインに戻ってしまった。

モララーは悲しみを感じた。

(;・∀・)「あ、いや、ごめん」

元の、あの言いようのない距離間が出来上がっている。
決して自分の過去を語ろうとしないハインに。

644第四章 教会  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/21(日) 21:21:00 ID:Yz9fwqUU0
モララーは急速に後悔した。

読み誤ってしまった。
いまさら謝罪しても何の効果もないだろう。

でも、そのときハインはまだ声をかけてくれた。

从 ゚∀从「モララー、あんたに会いに来ているんだ」

ハインはまず、そう答えた。

モララーはハインの顔を見つめた。
顔つきが真剣になっているのは、すぐにわかった。
でもそれが答えになっているとは、モララーには思えなかった。

从 ゚∀从「それしか言えない」

ハインは顔をうつ向かせた。
表情は伺い知ることができない。

645第四章 教会  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/21(日) 21:23:54 ID:Yz9fwqUU0
从 ゚∀从「モララー、疑問はあると思うんだ。いろいろと。
でも今は言うことはできない。あんたのためでも、あたしのためでもあるんだ」

それから、ハインの溜息が聞えた。
顔は相変わらずわからない。髪が邪魔をしている。
感情も読み取れない。

「 私は酷いことをしているのかもしれない」

その言葉の指す意味は、わからなかった。
いったいハインが何をしているというのか。
誰に対してひどいというのか。

モララーはハインの横に立っていた。
人通りは少ない、道路の片隅。
影がどんどん延びていく。

カラスの鳴き声が聞えた。
静かだからこそ、耳に残る、不快な音だった。

646第四章 教会  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/21(日) 21:26:55 ID:Yz9fwqUU0
急に、ハインは顔を上げた。
何かを決意したのだろうか、妙に弾みのついた動きだった。

从 ゚∀从「それなのに、おこがましいけど、一つだけ忠告することがある」

ハインはモララーと向き合った。

ぎらぎらした目。

その目に、なぜかモララーは言いようのしれない怖さを感じた。
この目は自分を見ていない、どこか遠くをにらみつけている。
それも決して良くない感情を纏わせて。

从 ゚∀从「もしかしたらもう少ししたら、私はあんたと会わなくなるかもしれない。
 そうなったら、直接には、私を探そうとはしないでくれ」

ハインは目の力を変えず、モララーに告げた。
予言とも言える、はっきりした物言いだった。

言っていることはそれなりに衝撃的だったが、今のモララーはハインの目線を受け止めるので精いっぱいだった。
とても、ハインに対して何事か言及する余裕はなかった。

モララーは自分の頬を冷や汗が流れるのを感じた。

647第四章 教会  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/21(日) 21:29:58 ID:Yz9fwqUU0
ハインの胸の銀のロザリオは、西日を受けて赤く輝いていた。
遠くで猫が鳴いた。
寂しそうに。

この光景を俺は見たくなかったんだ、モララーは後になってようやくわかった。
だからこの質問をしたくなかったんだ。
ハインが変わってしまうと思ったから。

その日、ハインとモララーはゆっくりと歩いて駅へ向かった。
道中ではいくつか話したが、決して会話は弾まなかった。

八月のある日のでき事であった。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

648第四章 教会  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/21(日) 21:32:12 ID:Yz9fwqUU0
このときのハインの感情をお前はまだ知らない。
だからお前はこの先大変な目にあう。

でもな、実のところハインはこのときの話を良くするんだ。
あいつにとっては忘れられない日なんだろう。

このときのお前に、そのことを伝える術が無いのは、本当に、辛いことだと思う。






『( ・∀・)探偵モララーは信じているようです』 第五章 農学部棟① へ続く。

649第四章 教会  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/21(日) 21:35:22 ID:Yz9fwqUU0
目次
>>454-460 序章
>>473-496 第一章 邂逅
>>502-534 第二章 再会
>>540-562 第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
>>565-585 第三章 図書館、パソコン、カツカレー②
>>593-621 第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
>>625-648 第四章 教会

本日の投下は以上です。

次の金土日で、第五章、第六章を投下し、前半が終了します。
そこからは少し休んでから、後半が始まります。
気長にお待ちください。

それでは。

650名も無きAAのようです:2013/07/21(日) 22:05:33 ID:EJVApB760

投下量多くて読みごたえあるな
ハインの目的と過去が気になる

651名も無きAAのようです:2013/07/24(水) 11:38:10 ID:dcKrrEMQ0
おつ!待ってる

652  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/26(金) 19:32:42 ID:jJqxqsR60
投下します。

653第五章 農学部棟①  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/26(金) 19:34:32 ID:jJqxqsR60
〜主な登場人物(随時追加予定)〜

( ・∀・)……分手モララー
K大学在籍中。就職し損ねて六年生。


从 ゚∀从……高岡ハイン
某県警捜査第四課(組織犯罪対策)巡査部長。


(´・ω・`)……所部ショボン
某県警捜査第四課警部補。そろそろ昇進したい。


( <●><●>)……分手マス
K大学院在籍中。法学を専攻。情報工学、物理学、経営学にも傾倒。
交友関係は広い。モララーをよく世話している。


(-@∀@)……文屋アサピー
就留一年目。癖っ毛で厚い眼鏡。
モララーの知人。話すことに苦手意識あり。


川 ゚ -゚)……素直クー
K大学農学部在籍中。三年生。料理サークルに所属し、相談事務所にも協力。
揚げ物ともやしと猫が好き。


/ ゚、。 /……鈴木ダイオード
K大学近くの古本屋の店長。おじいちゃん。足腰が気になる。
教会によく赴いて読み聞かせボランティアをしている。

654第五章 農学部棟①  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/26(金) 19:38:11 ID:jJqxqsR60
農学部の伝統、というものがあった。
毎年の夏休み、数人のグループで泊まりがけで、酵素だとか菌の観察をする。
それがこの年のクーの代にも回ってきたというわけだ。

彼女が観察するのはもやしらしい。
モララーには果たしてもやしの何を観察するのか、皆目見当はつかなかった。

内容に興味があるわけではない。
夜にちょっと遊びに行く、それで十分なのだそうだ。

( ・∀・)「俺一応男なんだけどいいの?」

と、一度聴いてみたところ、クーはただ噴き出すだけだった。

もちろん不埒なことをするつもりはなかった。
しかし仮にも相手は女性である。
大学生なのだからひょっとしたらあらぬ間違いを犯してしまうかもしれない。

だから誰か別の人を誘いたいところではある。

655第五章 農学部棟①  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/26(金) 19:41:10 ID:jJqxqsR60
しかし、残念ながら、今大学に通っていて親交のある人間はマスしかいなかった。

マスは、モララーがいまだに就職先を決定しないことを気に病んでいる。
気に病みすぎてそのうち強硬手段に出るかもしれない。あれでいて怒ると何をするかわからない。
もうすでに片鱗が表れている。

この前の口ぶりからして、アパートを本気で出なければならない。
もう一人で生きてくださいなどと言われれば、モララーには何も言えない。
路頭に迷いながら、その日暮らしで転々と生きていくしかないのだろうか。

いまだに悩んで、それでいて現実から逃げているモララーがほとんど悪いのだが、今は悔やんでも仕方ない。
今は農学部棟の方が現実に迫ってきている。協力者を見つける方が先だ。

从 ゚∀从「で、頼ってきたのが私と」

ハインはモララーの経緯をしっかりと聞いたうえで、これでもかというくらい口の端を釣り上げた。
モララーはその様子に不気味さを感じながらも、頭を下げる。

(;・∀・)「お願いします」

656第五章 農学部棟①  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/26(金) 19:44:10 ID:jJqxqsR60
从 ゚∀从ニヤニヤ「ふふふ、飛んで火に入る夏の虫よ」

(;・∀・)「…………」

从 ゚∀从「何かつっこめよー」

ある夏の日の夕暮。
外には暗雲が立ち込めている。
大気がとても不安定だ。もうじき天気は崩れ、雨が降り出す。

昼間はいつものように散歩をしていた。
大学の裏のお寺から、軽い坂道を上って、小高い丘まで。
今となっては街の起伏の一部に過ぎない。
しかしそれでも街を眺めることができる場所をじっくり眺めることは新鮮でもあった。

それからお寺の保有している林をしげしげと眺めているうちに、天気が悪くなった。
それでいつもの、学生通りの喫茶店へと向かったわけである。

从 ゚∀从「協力者と言われてもな。私も仕事があるからな」

(;・∀・)「警察だしな、むしろよくここに来れているなと」

657第五章 農学部棟①  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/26(金) 19:47:12 ID:jJqxqsR60
从 ゚∀从「いろいろと工夫を重ねているのさ。
 これでも普段は働きたくて仕方ないくらいなんだ。
 休みなんて、この用事以外はとりたくないくらいに」

ハインは目を閉じて、ホットモカの香りを楽しみ始める。
ハインの用事に関しては、もう答えが返ってこないのはわかっていた。
だからモララーはとりたてて質問しなかった。

( ・∀・)「働かないと不満?」

モララーは率直な気持ちで質問した。

从 -∀从「なんかな、別に休みなんて無くてもいいんだ。
 私としてはただひたすらに、がむしゃらに働きたい。
 働かないと生きていけないってのは、昔もう身についているんだよ」

やや早口にハインが捲し立てる。
その結果、真に迫る雰囲気が醸し出されていた。

658第五章 農学部棟①  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/26(金) 19:50:11 ID:jJqxqsR60
( ・∀・)「…………」

从 ゚∀从「どうした?
 私そんな怖い顔してる?」

Σ( ・∀・)「あ、いや、怖いわけじゃなくて……」

触れがたいものを感じたのは事実だ。
ハインの目の奥底にある、ぎらぎらした感情。
以前それを垣間見た。

先ほどのセリフから、あの目に近いものを感じたのである。
だから怖かった、いや、それが怖いのかはわからない。

だいたい怖かったらまじまじと見たりしないんじゃないか、なんて一瞬モララーは思いついた。
でも恥ずかしいから言わない。

言い淀んだまま、モララーはコーヒーをすすって目線を反らした。

659第五章 農学部棟①  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/26(金) 19:52:10 ID:jJqxqsR60
从 -∀从「ま、いいや。
 悪いけど協力者は思いつかない。ごめんな」

ハインはあっさりと頭を下げた。

( ・∀・)「ああ。まあいいんだ。
 それなら仕方ないし」

从 ゚∀从b「とりあえず、変なことしなきゃ大丈夫さ」

( ・∀・)「変なことって」

从 -∀从「若気の至りにならないようになー」

(;・∀・)「な、ならねえよ!」

从 ゚∀从「そんなむきにならなくてもいいだろうに」

それきりもう、ハインとは農学部棟の話はしなかった。

660第五章 農学部棟①  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/26(金) 19:55:10 ID:jJqxqsR60
喫茶店での会話は、軽かった。
決して解決を求めているわけではないのだから。
会話を続けるための話題が出て、特に動きもなく消える。それが普通であった。

他愛ない話。
それが続くこと自体に安らぎを感じてきているのを、モララーは気付いていた。

ハインがどうして会いに来るのか、いまだにわかっていない。
彼女もそれを言いたがらない。
モララーもそれを聴きたがらない。

もし聴いてしまったら、他愛ない話がそうではなくなってしまうかもしれないから。
もう普通にハインと会うことができなくなってしまうかもしれない、それが怖かった。

ハインが同じことを考えているかはわからなかった。






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

661第五章 農学部棟①  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/26(金) 19:58:17 ID:jJqxqsR60
それでも。

俺はお前に心の中で言う。

それでもお前は、そろそろ気付き始めていたんだ。
 ハインの取り繕いはもう剥がれてきていることに。

それは、ハインの目の奥に潜む、言いようのないぎらつきに気付いた時からずっと。

俺はお前に言うし、わかってもいる。
あの目を見て何もできなかったのは、俺だって同じだったのだから。






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

662第五章 農学部棟①  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/26(金) 20:00:41 ID:jJqxqsR60
夏休みのある日のこと。
マスが久しぶりにアパートに帰ってきた。

このところ彼は家を空ける。
どうも勤める予定の新興企業に顔を出しているらしい。
帰れないのは相当厳しい職場なんじゃないかとも思ったが、どうやら自分からその会社のシステムをチェックしているらしい。

( <●><●>)「サービス残業というより、サービス監査みたいなものです」

( ・∀・)「疲れないの?」

( <●><●>)「いえ、興味のあることをひたすらやっているだけです。
 自分の理想を追い求める、それが就職で一番大事なんですよ」

就職という言葉に、漫画のようにびくっと反応してしまって、モララーは焦る。
むろん、モララーを追い詰めるつもりはマスには無かっただろう。

663第五章 農学部棟①  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/26(金) 20:02:45 ID:jJqxqsR60
( <●><●>)「そんなに就職するのが怖いんですか? その年で」

(;・∀・)「歳は関係ないだろう。
 ただ、まあ、そろそろ安定はしなきゃなんだよな……」

月日が経つごとに、得体のしれない不安が増えてくる。
記憶が無いにしても、その不安はおそらく過去最大のものであったはずだ。

( <●><●>)「じゃあ、やりたいことはどうなのですか?」

( ・∀・)「やりたいこと?」

( <●><●>)「ええ、そっちの方から考える方が君には合っているんじゃないですか?」

( ・∀・)「そりゃあ、お前」

664第五章 農学部棟①  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/26(金) 20:04:43 ID:jJqxqsR60
マスとは高校二年のときから今までの付き合いだ。
モララーが分手家の養子になってから今まで、マスはずっとモララーの世話をしてくれていた。

だから、マスだってよくわかっているはずだ。

( ・∀・)「探偵」

そういうと、マスはにっこりと笑う。

( <●><●>)「僕もそれが合っていると思います」

( ・∀・)「でも、やっぱり自営業だし厳しいものがあるんじゃないか?」

モララー自身、探偵という仕事を調べたことがないわけではなかった。
ただ調べるうちにわかったのは、現実の探偵はかなり狭き門であることだ。

探偵になるには三つの方法がある。

665第五章 農学部棟①  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/26(金) 20:07:10 ID:jJqxqsR60
まずは、探偵学校に入学して数か月の講習を受け、探偵社へと就職すること。
かなり多くの探偵がこのルートで夢をかなえる。
ただし、正直なことろ値段の割にはあまり評判が良くないのが現状だ。
モララーとしてはこのルートはあまり通りたくないと考えていた。

次に、直接探偵社へ入社すること。
このルートを通る多くの人が自分のつてを頼りに入社する。
探偵業は信頼が大事だし、知らない人にとってはほとんどチャンスが無い。
むろん、モララーもマスにもこのつてはなかった。

最後、自分が直接開業することだ。
探偵業には許認可が無い(2009年の法改正で必要となる)ので、開業するのに手続きも必要ない。
なので、モララーはとるとすればこの最後の方法を考えていた。
ただし、この場合評判が上がるかどうかは自分の腕次第だ。

評判が良くなければ仕事がまわってこない。逆に人気になれば大手から仕事が舞い込んでくる。
そのためのは何年も足腰をつかわなければならない。
そうして努力を重ねて、ようやく仕事として成り立つ。

なんにせよ、すでに知識を有している方が有利なのは確かだ。
実際探偵を営んでいる人も、元経営者であったり、元警察官などもいたりする。
何もない大学生が飛び込むには狭き門なのである。

666第五章 農学部棟①  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/26(金) 20:09:43 ID:jJqxqsR60
( <●><●>)「ところが、今の時代はそうでもないんですよ」

( ・∀・)「それは、どういうことだ?」

( <●><●>)「情報のアクセスの方法に、バリエーションが増えたからです」

そういうと、マスは部屋の隅に置かれた大柄な箱をさす。
パソコンである。

( ・∀・)「情報化社会ってこと?」

( <●><●>)「そういうことです」

( ・∀・)「バリエーションが増えたって、具体的にいうと?」

( <●><●>)「今急速に、インターネット回線が普及しているところなんです。
 この回線は、いわばここと世界をつなぐ回線、世界中のあらゆる情報を発着信することが可能なんです。
 多くの人々が情報を欲する時代がくるんです」

667第五章 農学部棟①  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/26(金) 20:11:43 ID:jJqxqsR60
( <●><●>)「ユーザーの立場としてみても、かつてはつてを使わなければならなかった情報収集を、
 もっとコストを下げて行うことができるんです。
 それにネットを使って新しい人脈づくりだって考えられるんです。
 こちらからわざわざ赴かなくても、相手にアクセスできる機会が増えると考えてみるんです」

( <●><●>)「さらにいえば、探偵って言うのは、いわば情報そのものを扱うお仕事なんです。
 顧客に対して情報に付加価値をつけて、提供する、その価値はこれから高くなるはずなんです。
 ですのでこれからの時代、探偵業は一気に増えるだろうし、魅力も高まると思うんです」

( ・∀・)「価値が高くなる、ねえ。
 まだちょっとわかんないな。パソコンが普及したら、探偵はいらなくなるんじゃないか?
 誰でも自分で検索しちゃえば答えが出てくるわけなんだし」

( <●><●>)「そうとも限りませんよ。
 だって、それが正しい情報だなんて、誰も証明できないんですから」

( ・∀・)「嘘の情報も混じっているということ?」

668第五章 農学部棟①  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/26(金) 20:13:44 ID:jJqxqsR60
( <●><●>)「そうなんです。
 それに加えて、情報が氾濫する社会が到来すればいずれ人々は受け身になってしまうんです。
 正しい情報を得られるまでに時間と手間がかかる、それならば嘘の情報でも妥協してしまう
 そんな人がこれから先増えてくるんです」

( <●><●>)「そうなれば正しい情報を直接見つけるために存在する探偵業は、これから先注目されるはずです。
 だって、探偵の探した正しい情報により、その依頼者は正しい行動を取れるんですから」

( ・∀・)「ん、でも探偵が正しいかどうかも、結局は主観によるんじゃないの?」

( <●><●>)「はいなんです。
 でも一つの指標になれるはずなんです。探偵が信じたことが、依頼者の指標となる。
 いってみれば助けになる、これだけでもやりがいはあると感じませんか?」

( ・∀・)「ずいぶんと、聞えがいいな」

( <●><●>)♪「僕自身、探偵は好きですから」

669第五章 農学部棟①  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/26(金) 20:15:43 ID:jJqxqsR60
自分もそうだ。
口には出さなかったが、モララーは笑みを浮かべていた。

マスにはそれで十分に伝わったようで、彼もまた頷く。

( <●><●>)σ「僕がこの前言おうとしていたのは、つまりこういうことです」

マスはパソコンを指した。

( <●><●>)σ「このパソコンを使って、探偵業をやる、それを僕は勧めているんです」

突飛な話、というわけでもなかった。
話の流れが探偵になったときから、そういう話題になるのではないかと思っていた。

( <●><●>)「探偵については、僕も調べました。
 探偵になるためには、場所と広告さえあれば大丈夫なんです。
 場所についてはどこか部屋を借りるとして、広告もネットを使えば安価で済むんです」

670第五章 農学部棟①  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/26(金) 20:17:44 ID:jJqxqsR60
σ( ・∀・)「調べたって、俺のために?」

( <●><●>)「何をずうずうしいこと言ってるんですか。
 自分のためにですよ。それをたまたま君に教えただけです」

( ・∀・)「自分のため?」

( <●><●>)「いろいろと実験している最中なんです。
 ネットを使って、どんなことができるのか。
 そのうち探偵のことも知る機会がありまして、その可能性を知って、君に教えているんです」

( ・∀・)「なるほど……」

正直なところ、イメージははっきりとはしていない。
でも、マスが言ったことは一つの行動指標になる気がした。

本来、人間は目的意識なんてほとんど持ち合わせずに行動している。
就職に際して突然その目的意識を聞かれ、動揺する人が大勢いるのもそのためだ。
そしてモララーはその意識を律儀にも欲していた。

嘘の中の真実を見つけ、人を助ける仕事。

671第五章 農学部棟①  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/26(金) 20:20:43 ID:jJqxqsR60
モララーの描く探偵像は、抽象的にだが、目的意識を有したものとなってきた。
あとはこれをどう具体化させるか。
まだ、決め手となるには薄い気がした。

( ー∀ー)「ありがとう、マス。
 俺はもう少し考えてみる」

( <●><●>)「そうですね、今はまだいろんな人と交流した方がいいんです。
 まだ自由に動き回れる学生のうちに」

交流。

モララーは別に、そこまで大した交流があるわけではなかった。
この半年ほどで、新しくできた交流など、それこそ指で数えるほどしかない。

そして自由と言うのも疑問だ。
その交流のうちの一つに、モララーは今まさに心奪われているところなのだから。

でも、それをいってしまってはさすがにマスに申し訳ない。
だからモララーはそのことを伏せ、マスに礼を言うだけにとどめておいた。





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

672第五章 農学部棟①  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/26(金) 20:23:43 ID:jJqxqsR60
その数日後の夜、モララーはK大学の農学部棟に来た。
結局彼一人である。


エレベーターを使って、のぼる。

ついたその階は高く、窓から大学を一望できた。
遠くの方では、都市の明かりが煌々としている。

時間と部屋は指定されている。
以前クーと出会ったときに、メモをしておいた。

通信機器の無い時代、いや、あっても高額で手が出せない時代である。
ポケベルははやりつつあったが、本格的に文字の送受信ができるようになるにはまだ数年かかる。

モララーは時間を確認して、廊下を進んでいった。

農学部棟は暗い。
外も暗いわけだが、それ以上に雰囲気が暗い。

そういえばお化けの噂があるんだったと、モララーは思い出していた。
今更のようだったが、実際に入ってみて思い知らされたというほうが正しい。

673第五章 農学部棟①  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/26(金) 20:26:43 ID:jJqxqsR60
モララーはようやく教室にたどりついた。
実験室と書いてある。

廊下では物音はしない。防音がしっかりされているのだろう。
音と農業にどう関係があるのかはわからなかったが、やかましいより静かな方がいいものに育ちそうな気はした。
ただのイメージなのだけど。

モララーは実験室の扉をノックした。

「どうぞー」

クーの声がする。
入れということなのだろうか。

モララーはドアに手をかけて、あけた。

広い実験室だ。メタリックなコの字型の大きなテーブルがスペースを占めている。
コの内側に、クーはいた。一人である。

( ・∀・)「あれ」

674第五章 農学部棟①  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/26(金) 20:28:43 ID:jJqxqsR60
モララーは部屋に入って、見回した。
独特のにおいがする、土の匂いだ。
照明は若干うす暗く、目に優しい。
植物にもあまり強い光はよくないのだろう。

そんなことより、

( ・∀・)「他に人はいないようだけど」

モララーはクーに確かめた。
ひょっとしたらもう寝てしまったのか。ずいぶん早く寝るとは聴いていたが、早すぎではないか。

それともどこかにいるのだろうか。
たまたま、この部屋にいないだけで、どこかに買い出しにでも出かけたり。
軽い気持ちで、モララーは首をかしげた。

ところが、クーは口元を緩めるだけ。
そそくさとコの字から出て、モララーのほうに近づいた。

川 ゚ -゚)「いませんよ」

675第五章 農学部棟①  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/26(金) 20:30:44 ID:jJqxqsR60
クーは何事もないように、モララーの脇を通り、扉の前に立った。

( ・∀・)「…………ああ、ここにはいないな」

川 ゚ -゚)「ふふ、どこにも、いませんよ」

流れるように、クーは扉の鍵を閉めた。

(;・∀・)「何してんだ?」

川 ゚ -゚)「気付かれないように」

クーは相変わらずにやけている。

得体のしれないものを、モララーは感じた。

(;・∀・)「へ?」

クーはモララーを見つめた。
ぎらっと輝く、それは、どこかで見た輝きに似ていた。

『若気の至りにならないようになー』

冗談めいたその言葉が、急に現実味を帯びてくる。

676第五章 農学部棟①  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/26(金) 20:33:55 ID:jJqxqsR60
川 ゚ -゚)「モララーさん」

クーは急にかしこまった。
にやけたまま、両の手でモララーの腕をつかむ。

それが、夜の始まりだった。




『( ・∀・)探偵モララーは信じているようです』 第五章 農学部棟② へ続く。

677  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/26(金) 20:36:02 ID:jJqxqsR60
目次
>>454-460 序章
>>473-496 第一章 邂逅
>>502-534 第二章 再会
>>540-562 第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
>>565-585 第三章 図書館、パソコン、カツカレー②
>>593-621 第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
>>625-648 第四章 教会
>>653-676 第五章 農学部棟①

本日の投下は以上です。
また明日投下します。
それでは。

678名も無きAAのようです:2013/07/26(金) 21:10:54 ID:wAQCKda20
明日も楽しみにしてるよ!

679名も無きAAのようです:2013/07/26(金) 23:11:18 ID:1lRuXH.UO
今日の分が明日投下だと思ってたよ、乙

680  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/27(土) 19:25:01 ID:5G1hqGa60
投下します。

681第五章 農学部棟②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/27(土) 19:27:07 ID:5G1hqGa60
〜主な登場人物(随時追加予定)〜

( ・∀・)……分手モララー
K大学在籍中。就職し損ねて六年生。


从 ゚∀从……高岡ハイン
某県警捜査第四課(組織犯罪対策)巡査部長。


(´・ω・`)……所部ショボン
某県警捜査第四課警部補。そろそろ昇進したい。


( <●><●>)……分手マス
K大学院在籍中。法学を専攻。情報工学、物理学、経営学にも傾倒。
交友関係は広い。モララーをよく世話している。


(-@∀@)……文屋アサピー
就留一年目。癖っ毛で厚い眼鏡。
モララーの知人。話すことに苦手意識あり。


川 ゚ -゚)……素直クー
K大学農学部在籍中。三年生。料理サークルに所属し、相談事務所にも協力。
揚げ物ともやしと猫が好き。お化けが嫌い。


/ ゚、。 /……鈴木ダイオード
K大学近くの古本屋の店長。おじいちゃん。足腰が気になる。
教会によく赴いて読み聞かせボランティアをしている。

682第五章 農学部棟②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/27(土) 19:29:09 ID:5G1hqGa60
川 ゚ -゚)「お化け、見つけましょう」

モララーはクーの言葉を理解するのに時間がかかった。

(;・∀・)「……へ?」

川 ゚ -゚)「何を間抜けな声出しているんですか。
 お化けですよ、お化け。この前話したでしょう」

あいかわらず、意味がわからない。
モララーは目を瞬かせる。

(;・∀・)「この前って、食事した時の?」

何をあたりまえなことを、とでもいうようにクーは大きくうなずいた。

川 ゚ -゚)「前にも言ったように、夜中になると突然ラップ現象が起こるんです。
 ここにいればどういうことなのかわかりますよ」

683第五章 農学部棟②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/27(土) 19:31:09 ID:5G1hqGa60
気軽に話すクーの口ぶりを聴き、モララーは急に力が抜ける。

(;ー∀ー)「びっくりさせんなよ……」

川 ゚ -゚)「何がですか?」

(;・∀・)「いや……
 急に鍵まで閉めるから何事かと思って」

川 ゚ -゚)「そりゃあ、人に邪魔されたくありませんからね。
 それに、閉めた方が音が出るのわかりやすいですよ」

( ・∀・)「あー、待ってくれ」

ようやく落ち着いてきたので、モララーは状況を整理することにした。

( ・∀・)「つまり、お前は最初から嘘をついていた。
 俺と一緒にお化けの正体を探るため、俺をここに呼び出したと」

684第五章 農学部棟②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/27(土) 19:33:09 ID:5G1hqGa60
川 ゚ -゚)「その通りです」

( ・∀・)「なんで嘘をつく必要がある」

川 ゚ -゚)「逆に聞きますが、お化けの正体を知りたいから協力してくれーって言って、協力しましたか?」

( ・∀・)「まあ、しないだろうな」

川 ゚ -゚)「ですよね。なんもメリットがありませんものね。
 そこで、怖がる私を助けるためという話にすり替えちゃいました」

( ・∀・)「ふむ」

川 ゚ -゚)「そうすれば、メリットは無いにしろ、仮にも後輩であり親交もある私を助けられない理由を述べる必要が出てくる。
 でもモララーさんには碌な理由は無いはず。だって、どうせ就職もしてなくて暇ですし。
 あとは、そこでしどろもどろしている時にあの女性の話をして、マスさんの話ちらつかせれば約束成立です」

あまりにしっかりした話ぶりに、モララーはくらくらとした。
つまり、話の重点をすり替えることにより、クーは自分をはめたらしい。

685第五章 農学部棟②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/27(土) 19:35:13 ID:5G1hqGa60
(;・∀・)「…………お前どこでそんな交渉術覚えたんだ」

川 ゚ -゚)「いやあ、マスさんがいろいろお詳しいので。
 それに元々話すことは得意ですしね」

(;・∀・)「にしたって……恐ろしい奴だ」

川 ゚ -゚)「ふふふ」

( ・∀・)「他の、実験を一緒にするって言ってた人は?」

川 ゚ -゚)「後日ちゃんと行いますよ。
 むしろ、そのために今のうちに正体を突き止めておきたいんです」

( ・∀・)「後日怖くならないために?」

川 ゚ -゚)「その通りです」

686第五章 農学部棟②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/27(土) 19:37:35 ID:5G1hqGa60
( ・∀・)「はー、手の込んだことをするね」

川 ゚ -゚)「恐怖には打ち勝たないと気が済まない性分なんです」

( ・∀・)「そりゃまた、立派なもんで」

川 ゚ -゚)「だいたい、モララーさんが来たところで怖いもんは怖いでしょうに。
 むしろ普段いろんな相談うけて、いろいろ調べる能力を身につけているでしょう。
 それをここで活かしてくださいよ。期待してますよ」

( ・∀・)「淡々と言うけど、なかなかひどいこと言ってない?」

川 ゚ -゚)「良い暇つぶしでしょう?」

( ・∀・)「だからそれも皮肉だって。
 まあ、否定できない」

687第五章 農学部棟②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/27(土) 19:39:40 ID:5G1hqGa60
実験室は今のところ静かである。
窓の外はK大学を囲む森が見えているはずで、今ではただの真っ暗闇だ。
ときどき虫や、夜行性の猛禽類の声が聞こえてくる。

クーとモララーは実験室の椅子に座っていた。
今夜はこの部屋には誰も来ないらしい。

実験室の張り紙には、意味ありげな農作物の写真が飾られている。
畑に植えられたものや、実験用に比較されているもの。

( ・∀・)「前から思っていたのだけど、なんでもやしばっかり研究してるんだ?」

川 ゚ -゚)「……前提として、もやしは成長がものすごくはやいんですよ。
 それこそ誰がやっても失敗しないといわれるくらい、育てやすいんです」

( ・∀・)「そんなに早いの?」

川 ゚ -゚)「今の時期なら種を買って三日もすれば生えますよ」

( ・∀・)「ほんと早いな」

688第五章 農学部棟②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/27(土) 19:41:36 ID:5G1hqGa60
川 ゚ -゚)「ちなみに市販のものより、手前の方がおいしくなります」

( ・∀・)「なんで?」

川 ゚ -゚)「市販のは大量に作る上で、ものすごい蒸すんです。
 そこで雑菌ができてしまうので、それを殺す処理をしなきゃならないんです。
 だから手前のとは味が違ってくるんです」

( ・∀・)「へえー」

川 ゚ -゚)「心底興味が無さそうですね」

( ・∀・)「いやあ、もやしで盛り上がるのは厳しいと思うよ」

川 ゚ -゚)「ええ、だって。
 先輩どうせ就職の話とかするとしょげてしまうし」

( ・∀・)「しょげるって、そこまで情けない表現するなよ」

689第五章 農学部棟②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/27(土) 19:43:52 ID:5G1hqGa60
川 ゚ -゚)「オブラートに包んだと言ってください」

( ・∀・)「包まないで表現したら?」

川 ゚ -゚)「先輩の心に刺さる、先輩の生きる意欲が消える、先輩の」

( ・∀・)「はい、もういいです」

川 ゚ -゚)「マスさんからききましたよ」

( ・∀・)「何を?」

川 ゚ -゚)「探偵事務所の話」

(;・∀・)「ああ、あいつ話してたのか」

川 ゚ -゚)「今でもたまに学校で会うので。
 よく物理学棟にいますしね」

690第五章 農学部棟②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/27(土) 19:45:45 ID:5G1hqGa60
( ・∀・)「仲のいい教授のとこに行ってるんだろうな」

おそらくは、アパートの部屋の隅にあるパソコンの元の持ち主だ。

川 ゚ -゚)「農学部棟とは近いですし、そこでたまに会って話しました。
 で、探偵事務所やるんですか?」

( ・∀・)「ううん、どうだろう。
 形式的には、確かに就職はうまくいってないし、
 マスが用意してくれているなら、それに乗っかるのも手なんだけど」

川 ゚ -゚)「けど?」

( ・∀・)「実感がわかないというか」

川 ゚ -゚)「実感、ですか」

( ・∀・)「やりたいことってのが、いまいち見えてこない」

691第五章 農学部棟②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/27(土) 19:48:36 ID:5G1hqGa60
川 ゚ -゚)「ははあ、繊細ですねえ」

( ー∀ー)「まいったね」

川 ゚ -゚)「でも、正直甘い考えな気もしますよ」

( ・∀・)「甘い?」

川 ゚ -゚)「ええ、だってそんな、みんながみんなやりたいことに向けて邁進しているわけでもないでしょう。
 とりあえず働く人だっていたはずです。特に数年前までは、簡単に就職できたわけですし」

( ・∀・)「とりあえず働く、か」

川 ゚ -゚)「まあ、私もこれからなんで、人のこといってる場合じゃないですけどね」

夜は少しずつ更けていく。

692第五章 農学部棟②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/27(土) 19:50:33 ID:5G1hqGa60
( ・∀・)「農学部だと、就職先はどうなるんだ?」

川 ゚ -゚)「案外普通ですよ。もちろん食品に興味ある人は多いですから、そちらに向かう人も多いですが
 もっとスケールを大きく見て商社だとか、お金に興味があれば銀行にも行くし、それこそ公務員もいます」

( ・∀・)「結構バラエティに富むんだな」

川 ゚ -゚)「結局本人の興味しだいですからね。
 もやしの研究のことを言うかどうかも本人次第です」

( ・∀・)「クーは?」

川 ゚ -゚)「実はまだ定まってなくて」

( ・∀・)「そうか、まあ、そうだよなあ」

川 ゚ -゚)「逆にモララーさんは」

( ・∀・)「ん?」

川 ゚ -゚)「似合ってると思いますけどね、探偵」

693第五章 農学部棟②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/27(土) 19:52:51 ID:5G1hqGa60
( ・∀・)「そう?」

川 ゚ -゚)「だって、なんだかいろんなものを調べたがってそうですし」

( ・∀・)「そう見えるのか。
 そりゃあ、自分の過去を知りたいとかはあるが」

川 ゚ -゚)「それ以外にも、です」

( ・∀・)「それ以外って、他人もってこと?」

川 ゚ -゚)「そうですよ。だってそうでなきゃ相談なんて受けないでしょう?」

( ・∀・)「言われてみれば……」

川 ゚ -゚)「モララーさん、覚えてます? 私の相談」

694第五章 農学部棟②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/27(土) 19:54:33 ID:5G1hqGa60
( ・∀・)「初めに話した時の?」

川 ゚ -゚)「そう、あのサークルで、相談を受けてもらったときの」

( ・∀・)「ああ、猫探しの。
 結局いまだに見つからなくて申し訳ないな」

川 ゚ -゚)「いえいえ。最近猫が減っているので、ちょっと不安ですが」

( ・∀・)「減っている?」

川 ゚ -゚)「なんか、街全体から猫がいなくなっている気がします」

( ・∀・)「そうなのか」

川 ゚ -゚)「猫好きですからね、気になるんですよ。
 まあ、今はそんなことより、あの時は真剣に調べてくれましたよね」

( ・∀・)「一応受け持ったからな。
 学校中、街中、住宅街、関係ありそうなところはあらかた調べた」

695第五章 農学部棟②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/27(土) 19:56:33 ID:5G1hqGa60
川 ゚ -゚)「そうそう。
 まさかそこまでしてくれるなんて思っていなくて
 私、なんだかおかしくなって噴き出しちゃいましたよ」

( ・∀・)「ああ、覚えている。
 せっかく人が調査結果まとめてやったのに、ずっと笑い転げてるんだものな」

川 ゚ -゚)「……ハンカチ、あのときあげたんですよね」

( ・∀・)「え? あ、あのピンクの」

川 ゚ -゚)「今も持ってるんですか?」

( ・∀・)「いや、たぶん今日はアパートの方」

川 ゚ -゚)「なんだ、残念」

( ・∀・)「使っていたら使っていたで、お前どうせまた笑ったろ」

川 ゚ -゚)「おそらくは」

696第五章 農学部棟②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/27(土) 19:58:33 ID:5G1hqGa60
( ・∀・)「ハンカチ、返しそびれたままだったな」

川 ゚ -゚)「え? 何言ってるんですか、あげたんですよ」

( ・∀・)「いやでも、あのとき何も言わなかったし」

すると、クーはため息をつく。

川 ゚ -゚)「モララーさん、突然汗だくの男が現れたとして、私が何も感じなかったと思うんですか?」

( ・∀・)「え?」

川 ゚ -゚)「ハンカチくらい、あげますよ。そんなの見たら」

クーは目線をモララーから反らした。

川 ゚ -゚)「モララーさん、もっと自分を大事にしなきゃだめですって」

697第五章 農学部棟②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/27(土) 20:00:33 ID:5G1hqGa60
( ・∀・)「大事にって」

川 ゚ -゚)「もっと自分のやりたいことやってくださいってことですよ。
 ハンカチのことなんか、忘れてくださいよ、もう」

何か遠回りに指摘されている気がする。
でもモララーは正直よくわからなかった。

「まあでも」と、クーは切り返し、またモララーを見る。

川 ゚ -゚)「でもあのとき汗だくになって私の猫探してくれたときは、本当にうれしかったんですよ」

( ・∀・)「嬉しがりながら、笑っていたの?」

川 ゚ -゚)「まあ、当時は、楽しさの方が上だったかなー。
 でもそれがあったから、私その相談事務所好きになったんですよ」

( ・∀・)「そんなに気に入ってもらえて光栄ですね」

川 ゚ -゚)「お世辞じゃないですからね。
 でなきゃ今まで協力してこないですよ」

( ・∀・)「そうかそうか。確かに今でも――」

言葉が途切れた。

698第五章 農学部棟②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/27(土) 20:02:33 ID:5G1hqGa60
聞こえたからだ。

モララーとクーは顔を見合わせる。

お互い確かめる言葉を掛け合う前に、再び

壁の奥で何かがきしむ音がする。

空気が張り詰める。

じっと動かないまま。

また、きしむ。

ただし、本当に小さな音だ。
耳を澄まさなければ、そして怪しい現象が起きているという意識がなければ
きっと無視されてしまうくらいの音だ。

699第五章 農学部棟②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/27(土) 20:04:33 ID:5G1hqGa60
川 ゚ -゚)「…………これです」

クーが怯えがちに言う。

モララーは腕時計を確認する。

夜の10時だ。

( ・∀・)「……今、なりだしたよな」

川 ゚ -゚)「た、たぶん」

さっきまでの威勢は無い。
どうも本当に怖がっている。そこは嘘ではなかったようだ。

きしむ音は何度も聞こえてくる。

( ・∀・)「これが、噂の心霊現象か」

700第五章 農学部棟②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/27(土) 20:06:34 ID:5G1hqGa60
大きすぎず、小さすぎず

耳に一番残るトーン。

川 ゚ -゚)「本当にあったんですね。噂でなく」

また、きしむ。

( ・∀・)「…………等間隔、だな」

モララーは時計を確認する。

( ・∀・)「30秒置き」

川 ゚ -゚)「よく聴いてますね」

( ・∀・)「それに、時間がぴったりだ」

川 ゚ -゚)「何かわかります?」

( ・∀・)「うーん、この建物が原因かなあ」

701第五章 農学部棟②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/27(土) 20:08:34 ID:5G1hqGa60
川 ゚ -゚)「どういうことです?」

( ・∀・)「この建物の中で何かの装置が作動して、それで共鳴している。
 そう考えるのが自然かなと思うんだ」

川 ゚ -゚)「装置、でも建物全体に反応が行き渡るような装置なんて」

( ・∀・)「いや、別に大きく無くてもいいんだ。継続的に、一定の周期で動いてくれていれば」

川 ゚ -゚)「……だったら、装置を動かせそうな人を探したほうが早い気がします」

( ・∀・)「誰かいるんだっけ?」

川 ゚ -゚)「研究室はここにしか人がいないはずなんです。
 私とモララーさんしか。
 それ以外でしたら、警備員の方々とか、あるいは……教授」

702第五章 農学部棟②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/27(土) 20:11:03 ID:5G1hqGa60
教授のときだけ、クーの声に翳りがあった。
気になったが、モララーは質問を続ける。

( ・∀・)「教授いたのか?」

川 ゚ -゚)「お泊りで研究するときは、教授もここに泊っているんですよ。
 研究室には昼間しか来ないんですけどね。生徒の自主性を重んじるとかで。
 今日は、私は友達と一緒に研究をじっくり取り組みたいので泊まるって、言ってありますが」

( ・∀・)「まるで宿泊施設みたいな使い方するなあ」

川 ゚ -゚)「泊まり込みで研究することはわかってましたしね。そのあたりは寛容だったんです」

( ・∀・)「で、だ。教授か」

川 ゚ -゚)「怪しいってことですか」

703第五章 農学部棟②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/27(土) 20:13:57 ID:5G1hqGa60
( ・∀・)「なんとなく、警備員ってのはちょっとずつ人が変わるけど。教授は変わらない。
 何らかの装置を稼働し続けていることも、噂の方向性を修正することもできる」

川 ゚ -゚)「修正?」

( ・∀・)「ひょっとしたら、ラップ音以外にもよくないものが最初は広まっていたり」

川 ゚ -゚)「そんなの……あったんですかね」

( ・∀・)「憶測だけど。よし、調べてみるか」

川 ゚ -゚)「え?」

( ・∀・)「教授のところへだよ」






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

704第五章 農学部棟②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/27(土) 20:16:11 ID:5G1hqGa60
二人は研究室の外に出た。

教授室があるのは一回、そこまでエレベーターで向かうことにする。
上ってくるのを待ちながら、モララーはクーに質問した。

( ・∀・)「この棟、結構古いんだっけ?」

川 ゚ -゚)「はい、老朽化も進んでいるし、最近は地震も怖いので
 もうじき建てなおすときいています」

( ・∀・)「勝手なイメージだけど、古い建物ほどよくきしみそうな気がする」

川 ゚ -゚)「建て替えたら、音はならなくなるんですかね」

( ・∀・)「そうかもしれないな。
 そうしたら変な噂も立たなくなるだろう」

川 ゚ -゚)「そうだと良いんですが」

705第五章 農学部棟②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/27(土) 20:18:18 ID:5G1hqGa60
エレベーターが一階がら上って到着して、二人は乗り込んだ。
そのまま一階に降り、クーの誘導で研究室へ向かう。

川 ゚ -゚)「モララーさん、実は私言ってなかったことがあるんです」

歩きだして間もなく、クーが切り出す。

川 ゚ -゚)「最近の教授、少し近寄りづらかったんです」

モララーはクーを見る。
少しだけ、青い顔をしている。
何かに脅えているように。

( ・∀・)「どうして?」

川 ゚ -゚)「教授、最近怖かったんです。
 雰囲気といいますか、思いつめているといいますか」

706第五章 農学部棟②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/27(土) 20:22:56 ID:5G1hqGa60
( ・∀・)「思いつめているって……」

川 ゚ -゚)「すごく辛そうな、感じです」

( ・∀・)「それで、あんまり会いたくなかったと」

モララーは、食堂でクーが何か言おうとしていたことを思い出す。
もしかしてそのとき、クーは教授の話をしようとしていたのだろうか。

川 ゚ -゚)「ええ。
 でも、できることなら、教授が何に悩んでいたのか知りたいんです」

( ・∀・)「……」

教授は何かをしているのだろうか。
ここに来る前は、大した事件ではないと思っていた。

707第五章 農学部棟②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/27(土) 20:24:58 ID:5G1hqGa60
ラップ現象についても事前に軽く調べていたし、そのほとんどが自然現象として説明が付されていた。
先ほど説明した共鳴も、その原因の一つだ。
だから、適当にどこかの装置の振動の結果引き起こされているのではないかと目算していた。

でも、その原因については深く考えていなかった。
クーが言うことには、教授は最近思いつめていたという。

もし教授が何かをしていたならば、夜中にひそひそと何をしていたというのか。
そしてどうして思いつめているのか。

その理由が知りたくなった。

Σ( ・∀・)「!!」

ふと、気配を感じて、モララーは振り返った。

708第五章 農学部棟②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/27(土) 20:26:57 ID:5G1hqGa60
(;・∀・)「誰だ!」

思わず、叫んだ。
声が反響する。

川 ゚ -゚)「どうしたんですか、急に」

おびえた声で、クーが言う。

何か人影が見えた気がした。
でも、反応は無い、足音もない。

( ・∀・)「何もいないか」

川 ゚ -゚)「どうしたんです、お化けでも見ました?」

( ・∀・)「いや……とりあえず研究室へ向かおう」

709第五章 農学部棟②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/27(土) 20:29:50 ID:5G1hqGa60
歩きだして、ようやく研究室の扉が見えてきたときだった。

川;゚ -゚)「モララーさん」

クーは歩きながら、言う。

川;゚ -゚)「私、ちょっと気付いちゃったんですけど」

クーの声は、震えており、か細いものだった。

( ・∀・)「……言ってみろよ」

川;゚ -゚)「怖いんですけど」

(;・∀・)「いいから、言えって」

川;゚ -゚)「……はい」

二人はゆっくりと、扉に近づきつつあった。

川;゚ -゚)「この棟には、私たちと、教授と、警備員しかいないんです。
 警備員は入口のところで見張っているし、教授は一階にいるはずなんです」

710第五章 農学部棟②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/27(土) 20:33:10 ID:5G1hqGa60
扉の前に立つ。

川;゚ -゚)「そしてモララーさんはエレベーターに乗って、上ってきた。
 じゃあどうしてエレベーターは、さっき上ってきたんですか。
 私たち以外、誰も一階に向かうことのできる人はいなかったのに」

クーの言おうとしていることがようやくわかった。
同時に寒気が襲ってくる。

モララーとクーは顔を見合わせる。
クーはすっかり青い顔をして、モララーにしがみついていた。
こんなに感情をはっきり出す彼女を見るのは初めてだった。

モララーは顔をひきつらせ、目を扉に向ける。
とにかく、教授と会おう。
そうすれば何かわかるかもしれない。

711第五章 農学部棟②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/27(土) 20:37:03 ID:5G1hqGa60
ドアノブに手をかけて、押す。

目の前に飛び込んできたのは、人の体だった。

入口から見てすぐわかるように、これ見よがしに、その体はぶらさがっている。

横でクーが悲鳴を上げる。
耳をつんざくその音は、モララーの耳に嫌というほど届いていた。

そのぶらさがった死体は、まぎれもなく教授のものだった。





『( ・∀・)探偵モララーは信じているようです』 第六章 公園 へ続く。

712第五章 農学部棟②  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/27(土) 20:41:58 ID:5G1hqGa60
目次
>>454-460 序章
>>473-496 第一章 邂逅
>>502-534 第二章 再会
>>540-562 第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
>>565-585 第三章 図書館、パソコン、カツカレー②
>>593-621 第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
>>625-648 第四章 教会
>>653-676 第五章 農学部棟①
>>681-711 第五章 農学部棟②

本日の投下は以上。
明日投下して、一区切りです。
最後まで書きためてみて、スレが足らない可能性が出てきたので、
しばらくしたら後半用のスレを立てようと思います。
それでは。

713名も無きAAのようです:2013/07/28(日) 01:11:30 ID:.KZcD4MQ0

すげー展開!ゾクゾクした

714名も無きAAのようです:2013/07/28(日) 02:06:29 ID:fLhtfuHwO
ちょっと盛り上がってきたな、ここから前作っぽくなっていくのかな、期待

715  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/28(日) 21:13:37 ID:jLJ4g5vE0
投下始めます。

716第六話 公園  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/28(日) 21:16:14 ID:jLJ4g5vE0
〜主な登場人物(随時追加予定)〜

( ・∀・)……分手モララー
K大学在籍中。就職し損ねて六年生。


从 ゚∀从……高岡ハイン
某県警捜査第四課(組織犯罪対策)巡査部長。


(´・ω・`)……所部ショボン
某県警捜査第四課警部補。そろそろ昇進したい。


( <●><●>)……分手マス
K大学院在籍中。法学を専攻。情報工学、物理学、経営学にも傾倒。
交友関係は広い。モララーをよく世話している。


(-@∀@)……文屋アサピー
就留一年目。癖っ毛で厚い眼鏡。
モララーの知人。話すことに苦手意識あり。


川 ゚ -゚)……素直クー
K大学農学部在籍中。三年生。料理サークルに所属し、相談事務所にも協力。
揚げ物ともやしと猫が好き。お化けが嫌い。


/ ゚、。 /……鈴木ダイオード
K大学近くの古本屋の店長。おじいちゃん。足腰が気になる。
教会によく赴いて読み聞かせボランティアをしている。

717第六話 公園  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/28(日) 21:18:17 ID:jLJ4g5vE0
あの日、モララーは急いで警備員室へと向かった。
教授の死体が見つかったことを報告するためだ。

喚いているクーを置いておいたのは気の毒だった。
しかしどのみちクーはあのときとても動けそうな状態ではなかった。

人が錯乱する姿を見るのは、めったにない経験である。
ましてあの表情の薄いクーならば、なおさら衝撃があった。

それから警備員室の人たちがきて、モララーとクーは別室へ移動させられた。
クーはずっと教授の名前を叫びながら、半ば強制的に連行されていった。

こうして農学部棟での夜は終わった。
でも、事件はむしろここから始まった。

718第六章 公園  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/28(日) 21:20:20 ID:jLJ4g5vE0
農学部の某教授の首吊り死体が見つかってから、モララーの周囲はにわかに騒がしくなった。

警察が彼の事情聴取を綿密に行い、二回、三回と署に呼び出された。
その度にモララーは、なんで農学部棟にいたのか、どんな状況だったのか話さざるをえなかった。

クーに呼び出されたこと、ラップ現象の正体を探ろうとしていたこと。
エレベーターの話もした。
誰かがあの農学部棟に潜んでいた可能性があったからだ。

ちらっと見かけた黒い服の話もした。
隠すべきではないと思ったからだ。

事件は事件なのだから、しっかり知っていることを伝えるべきだと感じていた。
義務感もあるし、クーのことも頭に入っていた。

取り乱したクーが、下手に警察の追求にあうのはどうしても避けたかった。
クーが警察の取り調べに慣れているとは思えなかったからだ。
ただでさえ、混乱した人は嫌疑をかけられやすい。精神的ショックを負ったクーにそれは重い。
まして自分がちょっと変なことを言って、クーに疑いでもかけられたらたまったものではない。

719第六章 公園  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/28(日) 21:22:17 ID:jLJ4g5vE0
( ・∀・)「クーは無事なのか?」

死体発見から二日ほど経って、モララーはようやく警察から解放された。
アパートに帰ってきてモララーはマスに質問した。

( <●><●>)「まだ家で休んでいるときいています」

マスからより詳細に聞いた。
結局クーはまともに事情聴取ができないほどに発狂してしまったらしい。

警察は、本件について自殺が濃厚ということもあり
クーを必要以上に追求することはやめたそうだ。
マスはこれらの話をクー本人ではなく、その両親から聞いたらしい。

ずっと身近にいた人が、亡くなるというのは、どういう気持ちになるのか。
モララーはその答えを目の当たりにしていた。

720第六章 公園  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/28(日) 21:24:18 ID:jLJ4g5vE0
( <●><●>)「クーさんは、教授のことをまるで親のようにしたっていたそうなんです」

( ・∀・)「……そうなのか」

教授室に向かったときの、クーの様子が思い浮かぶ。
あの態度は、本当に教授を心配していたのだと、今さらながら思い付く。

( ・∀・)「あの日な、クーにラップ現象の正体を突き詰めるように頼まれていたんだ」

( <●><●>)「ええ、そうらしいですね」

( ・∀・)「そのときは、ただ興味本位でそんなことを調べているんだと思っていた。
 でもひょっとしたら、クーは教授のためにも現象を止めたかったのかもな。
 自分は怖いくせして」

721第六章 公園  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/28(日) 21:26:17 ID:jLJ4g5vE0
( <●><●>)「彼女に聞くことができれはわかりますね。
 そのうち、元気になってくれたら」

三年半、一緒にいたつもりだった。
でも、意外とクーのことはなにも知らない。
割りと身近にいてもそうなのだ。

人は人のことがわからない。

そのはっきりとした事実に、今更ながら気付かされた。

( <●><●>)「そういえば、あのあとも軽い騒ぎがあったみたいですよ」

( ・∀・)「騒ぎ?」

( <●><●>)「あの死体が発見されて、騒いでいた日の夜のことです。
 学校の林でボヤがあったらしいんですよ。
 それで農学部棟の温室の一つが完全に焼失してしまったとか」

( <●><●>)「それが自殺した教授のものだったので、関係性もあるのではとちょっと気になりましてね。
 とはいえ君がこうして解放されているんだし、警察はほぼ自殺と断定したようですが」

マスはそういいつつも、どこか釈然としていない様子だった。

722第六章 公園  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/28(日) 21:28:17 ID:jLJ4g5vE0
事件から二週間ほどたち、気持ちの整理もついたころだ。
そこで、モララーにとってはっきりとした事実が突き付けられた。

ハインと連絡が取れなくなっていたのである。
連絡先も、繋がらない。
モララーにかかってくることもない。

だから農学部棟での事件の話をすることはできなかった。
モララーとしては、ハインの意見も聞きたかったのに、それがかなわなくて残念だった。

ただしこの頃はまだ、きっとしばらくしたら会えるようになる、とモララーは楽観視していた。
むしろ今まで継続的に会っていたのが不思議だったのだ。
相手は社会人なのだから、そうモララーは自分に言い聞かせる日々を送った。

しかし悪い予感は的中した。

十月になり、学期が新しくなっても、もう待ち伏せしていることはなくなっていた。

723第六章 公園  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/28(日) 21:30:20 ID:jLJ4g5vE0
何もわからないまま、時が過ぎていく。
モララーは日々、魂の抜けたように暮らしていた。

ハインはいったいどうしたのだろう。
なぜ何も連絡をよこさないのだろう。

不安ばかりが募る。

そして、新たに疑問が浮かんだ。

農学部棟のその事件と、ハインの失踪は、はたして無関係なのだろうか。

モララーは農学部棟で見かけた影をときどき思い返した。

今にして思えば、あれはハインだったのではないか。

理由と呼べる大したものはないが
ハインと会わなくなりはじめた時期とぴったり一致するのは、偶然とは思えなかった。

しかしハインがもしあのとき農学部棟にいたとして、何をしたというのか。
そこから先の思考はまだ不明瞭だった。
情報が少なすぎた。

724第六章 公園  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/28(日) 21:32:18 ID:jLJ4g5vE0
ぼーっとすることが多くなった。
暇さえあればあの日のことを考えてしまう。

教授の死そのものにも疑問があった。
おそらくあの日マスの釈然としない顔もこのためだ。
聞いたところによると、教授が死ぬ理由がまったく見当たらないそうだ。

教授の仕事仲間にしても、むしろあの教授は最近羽振りがよくなったという話だけしていた。
それと自殺だけを無理やり結びつければ、教授が勝手に危ないお金に手を出して
その責任を感じて自殺した、などというストーリーさえ組み立てられそうではあった。

しかし実際にはそのような証拠はまったく見当たらなかった。
誰かが消した可能性も無くはない。
むしろモララーの証言もあり、警察はその線でわずかだが捜査を続けていると聞く。
人が死ぬときには、必ず理由が無ければならない。理由も無く命を絶つはずがない。

モララーはそのことを感じつつも、実際に何か自分なりに捜査をすることはなかった。
すべてが億劫に感じていた。

725第六章 公園  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/28(日) 21:34:18 ID:jLJ4g5vE0
十月が半ばになった。
学校が始まってしばらくたつ。
ハインはもちろんだが、クーもまだ顔を見せてこなかった。

元々勉強は出来ていたので、単位には余裕があるはずだ。
亡くなった人のゼミに所属していたはずだが、そのあたりの処理がどうなっているのかはわからない。

クーのことならば、また無事に大学に通えばなんとかなる。
問題は通うまでだ。心が落ち着かなければ、農学部棟にも近づけないのではないか。

モララーはまだクーに会う気にはなれなかった。
もし自分が会ってしまったら、クーはあの日のことを思い出してしまう気がした。
だから、会わない方がいいと思ったのである。

ただその気持ちの裏で、気だるさが蔓延していることも隠しようが無かった。
就職活動の方も身が入らず、アサピーとも連絡を取っていない。
そうしていつのまにか月日は経つ。恐ろしいほどにあっという間に。

ある休みの日。
モララーはふらっと、外に出た。
家の中には誰もいない。マスはこの頃休みの日もどこかへ出かけていた。

726第六章 公園  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/28(日) 21:36:18 ID:jLJ4g5vE0
教会にきた。
いつの日かその前に、ハインと歩いたことを思い出す。
あのときはダイオードとも会った。
そこでモララーは、ハインの自然な笑顔と、ぎらぎらした目を見た。

もう、ずいぶん遠い日のことにきこえてくる。
実際は三か月ほどしかたっていないのに。

その日はダイオードと会わなかった。
教会の事務室に、読み聞かせのことについて聞いてみた。

ハソ ゚−゚リ「ダイオードさんですか?」

( ・∀・)「ええ、毎週こちらで読み聞かせをしていると伺ったので」

ハソ ゚−゚リ「ええ、そうでした」

( ・∀・)「でした?」

727第六章 公園  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/28(日) 21:38:21 ID:jLJ4g5vE0
教会の事務室で、その職員はどうも言い方を考えている様子だった。
何をそんなに思慮する必要があるのだろうとモララーは首をかしげた。

ハソ ゚−゚リ「どうも九月頃から体調が思わしくなかったらしくて、来られてないんですよ」

ショックを受けた、といったら大げさだろうか。
でも、モララーはあの書店の店長が床に伏す様子が想像できなかった。
確かに健康そうな人ではなかったが。

六年書店に通いつめた。その間ずっとあの人は教会でボランティアをしていた。
それがモララーの思う書店の日常だった。
ずっと変わらないものだと思っていた。

(;・∀・)「そう、なんですか」

そういって、モララーは頭を下げた。
職員さんはどことなく申し訳なさそうな顔をしていた。

モララーはなんだか、みんなが遠くなるのを感じた。

728第六章 公園  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/28(日) 21:41:34 ID:jLJ4g5vE0
何も知らなかった。
人は人がわかりきれない。

公園についた。
空は曇っている。
子どもはいない。今が平日だからだろう。

猫は、聞こえる。
ただ、確かにクーがいっていたように少なくなったのかもしれない。
前に来た時よりも明らかに声が小さい。

前に、そう、前にきたときはハインがいた。
あの頃はまだハインに会っていた。
あの初夏の日。

729第六章 公園  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/28(日) 21:43:33 ID:jLJ4g5vE0
頭の中では、ハインがいた。
にやにや楽しそうな顔をしている。
その顔しかモララーは覚えていない。
今にしておもえば、笑顔が崩れそうになるたびに彼女は顔をうつ向かせていた。

そしてハインの笑顔が消えそうになるたびに、モララーは合いの手を入れていた。
全てはその笑顔を崩さないために。そしてそれをずっと見ているために。
モララーは自分の行いを想起する。それが全て無駄に終わったとは考えたくなかった。
でも、ハインのどことなく隠された、あのぎらぎらした目が、モララーをしばしば苛んだ。

続いてクーを想起する。取り乱してたのは見た。
でもすぐにモララーは警備員を呼びに行ってしまった。
死体の横に置かせてしまい、今更のように後悔していた。
もしかしたらあのとき、クーは自分の心に深い傷をおったかもしれない。

クーは言いたいことをはぐらかす癖があった。
目線を反らして、それから遠回しに何かを言う。
モララーはそこまではよくわかっていた。
でもそこから先のクーの言いたいことは、結局よくわからないままだった。

730第六章 公園  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/28(日) 21:45:33 ID:jLJ4g5vE0
知らないところで人が変わっていく。

マスは、いつも難しいことに取り組んでいる。
ダイオードが体調を崩した。

なんともいえない寂しさがある。
それはそれで仕方のないこと。
それはよくわかっている。当たり前のことだ。

人間は移り変わる生き物なのだから。

だけど……

「邪魔するよ」

声がする。
中年というには、まだ若い。男の声だ。

731第六章 公園  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/28(日) 21:47:34 ID:jLJ4g5vE0
モララーはいつかの木のテーブルに突っ伏していた。
いつの間にか眠っていたのだ。

目を擦って、顔をあげる。

(;ー∀・)「……あんたは」

(´・ω・`)「久しぶりだな」

(;・∀・)「あのときの事件の、警部補さん」

(´・ω・`)「そう、ショボンという。
 ちなみに、来年には警部になる」

モララーは顔をぼんやりさせていた。
目を細める。笑顔を向ける気はしない。

ショボンの方も、あまり好ましい顔つきではなかった。

(´・ω・`)「酷い顔をしている」

732第六章 公園  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/28(日) 21:49:34 ID:jLJ4g5vE0
モララーは鼻で笑った。

(;・∀・)「……ずいぶんな言い様ですね。
 確かに寝てたから、痕がついてるかもしれないですが」

(´・ω・`)「それだけじゃないよ」

にこりともせずに、ショボンは言う。

( ・∀・)「わかってますよ」

 自分でもわかるくらい、イライラしていた。
 ショボンの嫌みについ食ってかかってしまった。

( ・∀・)「もう話すことはなんもないと思います」

(´・ω・`)「事情聴取は終わったよ。
 事件のこと以外の話をききたい」

( ・∀・)「話したい気分じゃないんです」

733第六章 公園  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/28(日) 21:51:33 ID:jLJ4g5vE0
モララーはもうショボンに目を向けていなかった。
関心もない。はやく一人になりたい。
それだけだった。

(´・ω・`)「ハインのことでもか?」

耳の中で、その名前が反響される。
音の響きと、その顔が結び付くまで、時間がかかった。

(;・∀・)「え?」

(´・ω・`)「会っていたんだろう、彼女と」

ショボンは木のテーブルの向かいに腰かけた。
モララーは、ショボンの真意がわからなかった。
どこまで話していいのか、ハインにとって不都合は無いのか。

734第六章 公園  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/28(日) 21:53:33 ID:jLJ4g5vE0
しばらく黙っていたが、嘘をついてもすぐばれると思い、肩の力を抜いた。
ただ、モララーの表情は冷めたままだ。

(;・∀・)「春頃から、夏まで会ってた」

(´・ω・`)「そうか……」

(;・∀・)「でも、それがどうしたんだよ。
 あいつはちゃんと休みをとって来てるって」

(´・ω・`)「とってないよ」

唐突に、否定するショボン。

(´・ω・`)「とってない」

735第六章 公園  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/28(日) 21:55:33 ID:jLJ4g5vE0
(#・∀・)「じゃあなんですか。
ハインは無断で仕事サボって俺に会いに来ていたって」

(´・ω・`)「いや、そうじゃないんだ」

ショボンはずいっとモララーを見つめる。
重要な話をするときの、彼なりの行動なのだろう。

(´・ω・`)「彼女は警察をやめていたんだ。
 春にはもう、な」

一瞬、理解ができなかった。
思考が追い付かない。
これまでの常識が崩れる。

(;・∀・)「どういう、ことだよ」

(´・ω・`)「ハインは君と会っていた。
 どうやら、君に、素性を隠してな」






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

736第六章 公園  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/28(日) 21:57:33 ID:jLJ4g5vE0
お前は何も知らなかった。

お前が一番知りたかった人のことを、最初から、お前は何も知らなかったんだ。






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

737第六章 公園  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/28(日) 21:59:36 ID:jLJ4g5vE0
(´・ω・`)「彼女は唐突に警察をやめた。
 その理由が知りたかったが、私にはわからなかった」

(´・ω・`)「たまたまこの前の首吊り事件でこのあたりに来たとき、K大学の傍を調べた。
 そこで、ハインを最近見かけたという話をきいたんだ。
 大学に入ってきていた不思議な女性の話として」

(´・ω・`)「やがてその女性、ハインが誰かと会っていたこともわかった。
 それが君だ。モララー。
 だから、君に会えば事情がわかるかと思ったが、その様子だと無駄足だったようだ」

一気に事情を説明されて、モララーは目をしろくろさせた。

(;・∀・)「ハインは、なんでそんなことを」

(´・ω・`)「君こそ、何かきかなかったのか」

738第六章 公園  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/28(日) 22:01:33 ID:jLJ4g5vE0
(;・∀・)「俺はただ……何も……」

思考が巡る。
そうか、ハインは
会っていることにしてほしいのか。

今、気づいてしまった。
教会の帰り道で、ハインが告げた、モララーに会いに来る理由。

『お前に会いにきているんだ、モララー』

あれはつまり、モララーに会っていたことにしたいという意味だったのだろうか。
そんな、そうだとしたら、俺は……

(´・ω・`)「君は、彼女に騙されていたのか」

(; ∀ )「…………」

739第六章 公園  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/28(日) 22:03:39 ID:jLJ4g5vE0
モララーは言い返せなかった。
それがくやしくて、ショボンを睨み付けた。
あまりにも、情けない対抗策だった。

ショボンはもう興味を無くしたように、姿勢を正して顎を引いた。
俯き加減で、目をつぶり、小さく唸るように話しだした。

(´・ω・`)「彼女はな、高卒で警察官になった。
 それまで随分荒れた経験をしたらしくてな、ときどき話をきいた。
 そしてな、昔の話をするとき、彼女は決まって目を輝かせていた
 いい意味ではなくてな」

ショボンの言わんとしていることが、モララーにもわかった。

(; ∀ )「ぎらぎらした目、ですか」

ほう、とでも言うようにショボンは息をはいた。

740第六章 公園  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/28(日) 22:05:34 ID:jLJ4g5vE0
(´・ω・`)「なかなか上手い表現だ。
 あの目は確かにぎらぎら、野心に溢れていた」

猫の声が聞こえない。
弱すぎるのだろうか、もう元気もないのだろうか。

(´・ω・`)「彼女には何か目的があった。
 警察をやめ、君をだまし、それでも遂げたい目的が」

(# ∀ )「騙されていたわけじゃない!」

思わずモララーが言う。
ほとんど叫んだに近い形となった。

唐突に話の腰を折られたショボンだったが、その目はすぐに好奇のものとなった。

(´・ω・`)「ほう」

興味があるというふうだ。
モララーはその態度が気に食わなかった。
でも、話すしかなかった。

741第六章 公園  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/28(日) 22:08:54 ID:jLJ4g5vE0
(  ∀ )「俺はただ、知るのが怖かった」

モララーはどうしても、否定したくなった。
だから声を出した。多少、大きくなったが、気にしない。

(  ∀ )「騙されているかもって、もちろんわかってたさ。それくらい。
 明らかに、おかしいさ。知らない女が突然会うようになるなんて。
 でも、たとえ俺を利用していても、俺は別にそれでも構わないと思ったよ」

モララーの頭の中に、ハインが浮かぶ。
わかっていた、そうとも。
彼女の目が、自分よりもっとずっと遠いところを見ていたことくらいわかっていた。

それでもモララーは、彼女を想い、求めていた。

(  ∀ )「俺はさ、暇で、それでいて不安なんだ。
 記憶はねえし、親や兄弟や友達は、この数年で急にできた関係なんだ。
 それが慣れないうちに、将来のことまで考えなきゃならなくなった。
 自分の正体すら不明確なのに、何がしたいかなんて、わかるかっての」

742第六章 公園  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/28(日) 22:10:54 ID:jLJ4g5vE0
目頭が熱くなる。
自分の感情を口に出すなんて、なかなかあることではない。

思っていたことを口にだしてしまえば、誰かを傷つけてしまうかもしれない。
記憶が新しくできた今のうちは、そればかり気にして、生きてきた。
せっかくできた関係を壊してしまいたくは無かったからだ。

人は感情を晒せば傷つけあう。
モララーはそれを心の奥で理解していた。
そしてまた何もない状態に戻るのが怖かった。

(  ∀ )「アイデンティティっていうんだろ、こういうの。
 それが見当たらない不安さ。
 そんなときに、俺のことを必要としてくれている人が現れた」

ずっと会っていたかった。
だから何も言わなかった。
自分の感情を出せば、何らかの形で彼女を傷つけてしまうかもしれないから。

743第六章 公園  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/28(日) 22:12:55 ID:jLJ4g5vE0
(  ∀ )「会っていたら、不思議と寂しさが紛れたんだ。
 それが楽しかった、それを、ぶち壊す気分には慣れなかった。
 好きとか愛してるとかじゃない、そんな立派なもんじゃない。
 一緒にいて、関わっていたい、ただそれだけだったんだ」

特にショボンに向けて話していたわけではない。
それは独白というほうが相応しかった。

沈黙が流れた。
鉛色の空が、モララーとショボンを包む。

(´・ω・`)「雨が降りそうだ」

切り出したのはショボンだった。
もう帰る、そういうことだろう。

(´・ω・`)「モララー、はっきり言おう」

744第六章 公園  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/28(日) 22:14:54 ID:jLJ4g5vE0
(´・ω・`)「私は君の過去は知らないし、君の考えにそれほど興味があるわけではない。
 だから同情の言葉をかけるつもりはない」

随分と丁寧に説明してくれるものだ。
モララーはもう思ったことを口には出さなかった。

(´・ω・`)「ただ、ハインは私の大事な部下だった。
 だから本意を知りたがっている。
 その点については君も同じだと思っている」

モララーは俯いた。
もうショボンと顔を合わせるのも疲れていた。

(´・ω・`)「僕は警部になってね、来年度から数年間本庁の方へいかなければならないんだ。
 だからハインのことを探るならいまのうちなんだ。
 つまり、なんとか彼女の行方を探りたいと思っている」

ショボンは何も言わず、ずいっと何かをモララーに見えるように突き出した。
白い紙、名刺である。

(´・ω・`)「何かあったらここへ連絡してくれ」

745第六章 公園  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/28(日) 22:16:54 ID:jLJ4g5vE0
モララーはショボンの名刺を受け取った。
名前と連絡先を見せるためだけの簡素なものだ。
そういえば警察って名刺を持つ印象はないな、まあ、配る必要ないものな、
なんて思いながら、しげしげと眺めていた。

(´・ω・`)「それじゃあな」

ショボンは帰っていった。
モララーは返事をしなかった。

木のテーブルの上に、白い名刺だけ置かれていた。

ややあって、その名刺をポケットにしまった。
そのとき、ぽつぽつと、テーブルに斑点ができ始めた。

雨が降り始めた。
それを防ぐ手立ては無い。

モララーはよける気さえ起きなかった。

746第六章 公園  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/28(日) 22:19:04 ID:jLJ4g5vE0
雨は一気に勢いを増す。

公園で、モララーは一人、震えていた。

猫の声も聞こえない。
子どもたちもいない。

クーも、マスも、ダイオードも、変わってしまった。

そしてハインはいない。

みんなどこへいっちまったんだ。

開いた口から何かを叫んでも、全ては雨音に飲み込まれてしまった。

747第六章 公園  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/28(日) 22:21:20 ID:jLJ4g5vE0
それから、何もなかった。
いや、何をする気も起きなかった。

ハインとの連絡が取れないまま。






『( ・∀・)探偵モララーは信じているようです』 第七章 球場 へ続く。

748  ◆MgfCBKfMmo:2013/07/28(日) 22:27:39 ID:jLJ4g5vE0
目次
>>454-460 序章
>>473-496 第一章 邂逅
>>502-534 第二章 再会
>>540-562 第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
>>565-585 第三章 図書館、パソコン、カツカレー②
>>593-621 第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
>>625-648 第四章 教会
>>653-676 第五章 農学部棟①
>>681-711 第五章 農学部棟②
>>716-747 第六章 公園

本日の投下は以上。
前半が終わり、必要な描写はすべて書き終えました。

一週間お休みして、次回の投下は8月10日(土)を予定。
土日で第七、八、九章を投下します。

いつも支援ありがとうございます。
今しばらくお付き合いください。
それでは。

749名も無きAAのようです:2013/07/29(月) 12:38:53 ID:D/6Tl8kcO
ハインにも謎の影の部分か、後半に期待

750名も無きAAのようです:2013/08/04(日) 19:37:43 ID:.OrIwGoI0
乙!

751名も無きAAのようです:2013/08/10(土) 21:06:12 ID:aJzsIbacO
そろそろだな

752  ◆MgfCBKfMmo:2013/08/10(土) 21:59:35 ID:zY0bf3Qg0
スレが足らないので新スレにて投下します。

( ・∀・)探偵モララーは信じているようです
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/13029/1376135025/


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