[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
1-
101-
201-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
( ^ω^)_______のようです
1
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 22:54:23 ID:bwtyxfCA0
レベルが無いからスレ立て無理と言われて来ました!
2
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 22:55:10 ID:bwtyxfCA0
『プロローグ』
「いってきまーす!」
と、元気な声がこだまするのは日本の片隅、どこかの三丁目。
早朝がもつ特有の清涼感を、もうじき過ぎ去ろうとする冬の名残が色濃くした。
太陽は東から昇ったばかりで穢れなく、遥か向こうにうっすら月が見える。
その中間あたりには、点があった。
団地が続く路地には、集団登校する学生の群れやがあったり、
それを軽快に避けながら駆けていく自転車あったり、なんとも平穏な光景だ。
まだ新しいセーラー服を着た彼女もまた、その世界に居た。
3
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 22:55:53 ID:bwtyxfCA0
「おはようツンちゃん!」
と、そんな彼女へと友人らしき子等が声をかけた。
ξ゚ー゚)ξ「あ、ちん子じゃない、珍しく早いね?」
(*'ω' *) 「うん、今日はあの二人置いてきちゃったからね」
それにしても色んな意味でのっけから卑猥だった。
だが、その名に異を唱えるものは特に無く、果たして慣れなのか、
あるいはこの世界において、チンコは男性器を意味しないのかもしれないが、
「あー…昨日シコり過ぎてマジチンコ痛ぇ」
「エロゲし過ぎだろjk」
道行く小学生の言葉を聞くに、残念ながらそんな事はないので悪しからず。
4
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 22:56:38 ID:xDXW4.a60
しえーぬ
5
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 22:56:44 ID:bwtyxfCA0
「おーいぽっp……チンコちゃーん! 待ってほしいんですー!」
そこへ更なる、というか今度は文字的に隠そうともしないチンコ発言。
この際チンコはいいとして、とにかく彼女、チンコだけど彼女達を呼ぶ声がした。
(;><)「ひ、酷いんです!昨日家の前で待っててって言うから待ってたのに!」
( <●><●>)「あなたが裏手から出て行ったのはわかっています」
(*'ω' *) 「あんたらが悪いんでしょ? 恥ずかしいから下の名前はやめろって言ってるのに呼ぶからよ!」
(;><)「で、ですが…」
( <●><●>)「何がそんなに嫌なのか理解しかねます」
(*'ω' *) 「だって嫌じゃない……ぽ行って…」
ξ゚⊿゚)ξ「そうなのか?」
比較的どうでもいい事を承知で補足すれば、ちんが上の名前で、ぽっぽが下の名前である。
6
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 22:57:20 ID:QDDg8sqY0
story editor使ってる?ぽっぽちゃんの目とかフィレンクトの目は半角になっちゃうよ
7
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 22:57:39 ID:bwtyxfCA0
とりあえず、このままでは話が一切進むことなくチンコについて語り続ける羽目になりそうなので、
少年少女と一本はいつもの通学路を談笑しながら歩いていく。
年を越すたび、春と秋はどこ行ったと言われ続けて早十数年。
ついには言われることさえ無くなって、当然のように冬と夏を繰り返す世界、
冬と夏の中間であるこの日は五月、進級したばかりのピカピカ一年生。
それが彼等の正体である。具体的には中学生。
もうじきクラスがテロリストに占拠される妄想が始まる頃である。
早咲きした桜はとうに散り、舞わない桜を踏みしめて入学した彼らは、
新たな学校生活にも慣れ始め、徐々に友達もできて平穏な毎日を過ごしていた。
リンゴロンカンコロン。
ではなく、キンコンカンコンチャイムが鳴れば、今日もそんな学校が開催され、
校門や構内を埋めていた喧騒も静まり返り、教師が扉に仕掛けられた黒板消しを避けながら、
軽やかなステップで教壇へとたどり着き、出席簿を開いて名を呼んだ。
8
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 22:59:11 ID:bwtyxfCA0
('、`*川 「田中、えーと…たしか…柔隊符(にゅうたいぷ)くん」
田中「見える!」
('、`*川 「ちん子ちゃん」
(*'ω' *) 「はい!」
そう、つまりチンコをもう一度書きたかっただけである。
同時に、とりあえずネタがないからってチンコに頼るのはやめようと思った。
そして休憩時間、いや休憩は10分で短い、お昼だ、お昼がいいや、昼休みの時間。
ξ゚⊿゚)ξ「はあ……」
窓際の席の彼女は、グラウンドを駆けるサッカー少年等を横目に、
アンニュイなため息をつき、外見的には相当な美少女である彼女を見守る一人は、
その周囲に花とか光をちりばめながら、天使だと呟いた。
9
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:00:10 ID:gssUpSxg0
今夜作品豊富すぎ支援
10
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:00:15 ID:bwtyxfCA0
と、そこへクラスメイトの一人が心配したのか声をかける。
('、`*川 「なにため息なんかついてるのよ?」
ξ;゚⊿゚)ξ「あれ?あんた教師じゃなかったっけ?」
('、`*川 「はあ…何馬鹿なこと言ってるのよ……どっか悪いの?」
ξ゚⊿゚)ξ「うん、ごめん…なんか華麗に黒板消し避けてたのが印象的でつい…」
('、`*川 「で? どうしたのよ?」
ξ゚⊿゚)ξ「……うん、なんか…ホームシックで」
('、`*川 「あんた実家住まいだろう」
ξ;-⊿-)ξ「そうだけどー……ああ、帰りたいなぁ…」
('、`*川 「今日ってなんかあったっけ……? ん?」
('ー`*川 「ああ、そういう事……」
ξ゚⊿゚)ξ「…なによー」
('ー`*川 「そういえば、今日はあんたのお兄さんが帰ってくるって言ってたもんね」
11
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:01:59 ID:bwtyxfCA0
意地悪そうに言う彼女は、ツンデレ応答テンプレートにより、
ツンの返事をシュミュレートした。
関係ないわよ、と言う彼女にハイハイと応える簡単な作業だ。
だが意外にもツンは目を輝かせ、両手を組んでだらけた姿勢をピンと伸ばした。
ξ*゚ー゚)ξ「うん!! そうなの!! やっと会えるんだよ!」
('、`;川 「……くっ」
敗北感に打ちのめされるペニスはお構い無しに、
ツンはそのまま兄への期待をペラペラ語る。
いわゆるテンプレ外し、殻をぶち破り新たな道をという企みである。
しかし、ツンがツンで無ければキャラ崩壊というか最早ツンじゃ無い、
つまりお兄ちゃんと呼ぶ方が「ナニカ」である。
12
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:03:54 ID:bwtyxfCA0
(;・∀・)「まーたやってるよ、このブラコン妹は」
ξ゚⊿゚)ξ「何よ、家族大事にして何が悪いってのさ」
( ・∀・)「別に、勿体無いって話だよ」
ξ゚⊿゚)ξ「何がさ」
( ・∀・)「見た目はいいのに、中身が残念だって言ってんのよ」
ξ゚⊿゚)ξ「そりゃどうも、でも女子の制服着てるアンタにだけは言われたくないわ」
('、`;川 「本当だよ、何で女装しとるんだアンタ、変態か」
ξ゚⊿゚)ξ「変態だよ」
(;・∀・)「いやいや、誤解しないでくれよ、僕は普通に女の子好きだよ?」
ξ゚⊿゚)ξ「なら何故女装する」
(*・∀・)「だから、女の子が好きだから、服だって女の子の服を着たいだけさ!」
まるで、常に女の子に包まれているようだ、と変態は自分を抱き締めながら言う。
なんとなく納得しそうになる自分を、ツンは落ち着けと制止して、
後ろの方で「なるほど、その手が」と聞こえてきた声に突っ込みを入れた。
13
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:05:17 ID:bwtyxfCA0
そんなこんなで、その日も無事に授業は終わり、生徒はみな帰路につく。
夕焼け小焼けの赤とんぼ、前者も後者もまだ無く、陽はまだ西の空にて地上を照らす。
ツンはようやく終わった通学という名の作業を経て、帰りを急ぐ。
何か黒い点が見える空は、まだ日中を差して明るく。
このあとはどこかへ遊びに行こう、とこの日の出来事に期待を馳せる。
ξ*゚⊿゚)ξ「もう来てるかなぁ…」
内藤ツンの兄、名は旧姓、西川ホライゾン。
理由は詳しく知らないが、彼女の父親は遠距離恋愛の末、彼の母親と再婚した。
生まれて間もなく母を亡くした事と、彼女が持つ生来の前向きな性格。
そして、何度も何度も会って、遊んだ結果として、
ツンは西川の家族をとても信頼しており、家族になると聞いた時は飛び跳ねて喜んだ。
14
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:06:26 ID:bwtyxfCA0
今日という日は、その西川家族がこちらへ引っ越してくる記念日だった。
ホライゾンの希望もあり、卒業を待ってから始まったこの引越しは、
既にこちらの高校を受験し、通っている彼の、向こうでの最後のお別れの日でもある。
ツンに対して、それを寂しがる素振りは見せず、いつも優しかった彼の真意はわからないが、
それでも寂しいに決まっている、だから今日は思い切りもてなそう、と決めていた。
ξ*゚ー゚)ξ(ケーキもあるし、プレゼントだって用意したもんね)
喜んでくれるだろうか、という不安もあるが、
それ以上に楽しそうな顔が浮かんで、頬が緩むのを止められなかった。
並木道を抜けると、大きなモニターやショーウインドウのテレビも、
これまた愉快なCMやら番組を流していたが。
ふと見上げた空には、太陽と、先ほどよりも大きくなった黒い点。
ξ;゚⊿゚)ξ「あれ?」
と、それを不思議に思った時だった。
15
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:08:00 ID:bwtyxfCA0
全てのテレビの全てのチャンネルが、一斉に切り替わった。
16
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:08:43 ID:bwtyxfCA0
「番組を中断して、緊急のお知らせを致します」
男性レポーターは息を荒げて言った。
放送のスタジオ内では沢山の人が右往左往したり、怒声が飛んだりしている。
何事かと見守る繁華街の人の群れ、その中でツンは呆然と見ていが、
やがてレポーターが告げる言葉を聞いて、わけもわからず空を見た。
点はいつのまにか、太陽よりもよほど大きくなっていた。
ξ゚⊿゚)ξ「…………………え?」
「…再度、繰り返します」
「巨大隕石が接近中……日本全域に、避難勧告が発令されました」
17
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:09:41 ID:bwtyxfCA0
そうして、パニックの中。
その日、関東を中心とした巨大な煙の柱が、日本に発生した。
被害は隕石の規模が予想よりも小さかった事もあり、
五つの都道府県が消滅し、他七つが半壊するに留まった。
総被害者は五千万人にも及ぶとされるが、地区完全閉鎖により確認は不可能。
こうして世界最大の大災害は、数え切れないような不幸を生み。
それでもなお、今へと続いていく事になる。
世論の間では、それにしても被害が小さすぎるのではないか、という疑問を持つ物が多かったが、
それを投げる事は風評に悪く、問いかける事は愚か、3年が過ぎた今も明確にはされていない。
18
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:11:05 ID:bwtyxfCA0
――――立ち昇る巨大な柱を、呆然と眺める姿があった。
(;゚ω゚)「………」
無人の車がつくる渋滞が、見果てぬ先まで続く道なりの先に、
大きな、大きな柱が空のすべてを塞いでいる。
音は、耳が馬鹿になったのか耳鳴りだけが響いていた。
人が逃げ惑う。
空が地上の日に照らされ、赤く曇る。
遠方にはナニカ、エタイノシレナイモノガミエル。
地獄という表現がこれほどに似合う様を、彼、
内藤ホライゾンは初めて目撃した。
やがて呆然とそれを見据えたまま、小さく言葉をこぼした。
(;゚ω゚)「………………ツン?」
19
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:12:26 ID:bwtyxfCA0
握り締めたのは、履歴に彼女の名が記された携帯。
見えたのは。
遠方から迫る、ナニカ。
それは、雲と。
蜘蛛に見えた。
20
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:13:57 ID:bwtyxfCA0
( ^ω^)は勇者クオリティのようです
プロローグ 終
.
21
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:17:20 ID:bwtyxfCA0
第一話 「覚醒のC2ドライブ」
.
22
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:18:05 ID:bwtyxfCA0
ふと我にかえると、煙が見えた、出店が放つただのおいしそうな煙だ。
あの事件以来、こんな些細な煙でさえ、見るたびにあの日の光景を思い出す。
3年以上過ぎた今でも、脳に焼き付いて離れない惨状。
当然ながら、それは彼だけでなく、あの日を体感、目撃した人間全てがそうだ。
時折、夢物語だったかのような錯覚を感じるが、世に今ある沢山のものが、
それを真実であったと思い知らせ、打ちのめされる。
( -ω-)「……」
母親の再婚に伴い、上京するはずだったあの日。
失ったものは、多くない。
金目の物はこれから持っていく所だったし、母も無事存命している。
けれど、間違いなく失った大きな物がある。
これから得るはずだった、一つの未来だ。
23
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:18:34 ID:Gx9SALpQ0
凄い急展開だな
支援支援
24
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:19:54 ID:bwtyxfCA0
それを象徴するように、あの日、柱を眺めた直後の記憶を失っている。
何故かは分からない、気付けば病院に居て、事件から一月あまりが経過していた。
胸には大きな傷があるが、気付いた時には痛みもなく塞がっていたので、
果たしてどうしてついたものなのか、それすらも分からないままだった。
母親からは、割れたガラスが刺さった、と聞かされている。
しかし、それにしては傷はあまりにも、丸い、穴のように見え、
記憶の無さも相まって、得も知れない不安に駆られる事がある。
だからだろうか。
「ごめん、待ったかな?」
何か、すがれる物を求めてしまったのは。
(;^ω^)「あ……い、いえいや、今来たとこですお!」
ζ(゚ー゚*ζ「フフフ、しかし私にはそれが嘘だと分かってしまうのだよブーン君」
25
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:21:11 ID:xDXW4.a60
しえしえ
26
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:22:53 ID:bwtyxfCA0
ζ(゚ー゚*ζ「何故なら30分前からあそこの影で君を見守っていたからね!」
(;^ω^)「いや何してんのこの子」
内藤はあれから、姓だけは頂いたまま、地元へ戻って違う高校へ編入した。
あの災害により、難民学生もたくさん生まれ、学校側が国と提携して受け入れ態勢を取った。
彼女はそんなな内藤が通う、綾鷹高校の同級生だった。
容姿を例えればマジ天使、しかし性格がどこか変で、妙に男らしい所が有名だ。
しかし、それはさておき可愛い、すごく可愛いので内藤もすっかりほの字。
熱烈なアピールの末、ついにデートの約束をこぎつけたのが二月ほど前。
それ以来、よく遊びに出かけるようになった二人だが、特に進展もなく、
現状としては仲の良い友達でしかなかった。
けれど、内藤は気付いていた。
可愛いという言葉を逃げ口にして、本当の理由から目を背けていると。
二つに分けたウェーブのかかるブロンド、その姿が。
初めて彼女を見たときに思った事が。
27
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:24:24 ID:bwtyxfCA0
笑っていて欲しかった女の子に重ねている事を。
ζ(゚ー゚*ζ「それじゃ行こうか、今日はまずアイスを食べるよ!」
(;^ω^)「いいけど……何でアイス…」
しかし、それもあくまで最初だけ。
共に過ごすうちに、いつしかそんな淀んだ想いも薄れて、
ただ、単純に彼女と過ごす時間を楽しめるようになってきていた。
そんな休日の昼下がり、駅前のアウトレットへと続く道を、
二人は自然な距離で歩いていく。
そんな彼らが行く街は、賑わいを見せている。
人というのは逞しいもので、僅か三年の間で驚くべき発展ぶりをみせている。
都市部のほとんどを失った事で、主要となる地は他へと広がり、
田舎と呼ばれた地の開発が一気に進むことになった。
28
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:26:03 ID:bwtyxfCA0
政治に携わる者は、人その物を含めほとんどを失い。
富も地位もなく、一から立ち上がるための政治が始まった。
全てがうまく行っている訳ではないし、他国からの支援も大きい。
世は混迷を極めているし、物価や税も馬鹿みたいな事になっている。
昨今は食料不足と、地形が変わった事による運搬ルートの問題が特に、
これからの問題としてよく騒がれている。
だがそれでも、立ち上がろうとする人の強さが、
そういったあらゆる面を支えていると、誰もが感じていた。
内藤もそういった見えない何かを感じながら、
ソフトクリームの屋台へと駆けて行く彼女の背を見送った。
29
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:28:24 ID:bwtyxfCA0
その後姿に、どこか懐かしい感覚を覚えながら、
そういえばまた奢ってあげるタイミングを逃したと思う。
もっとも、仮に言ったところで返ってくるのは、
ζ(゚ー゚*ζ「まあまあ、ここは私に任せなさい」
と言う言葉と共に、あまり育って無い胸を張るだけなので無意味なのだが。
そうして、気付けばアイスを両手に内藤へと笑いかける姿へ歩み寄った。
―――そして、ここから遠く離れた地にて。
隕石の落下後、関東はそのほとんどが荒野と化し、
その中心部には海水が流れ込み、巨大な海岸となっている。
衛星がその地域を捉えれば、青の穴がぽっかりと開いた形だ。
誰が言い出したのかは不明だが、いつしかこう呼ばれるようになった。
皮肉にも、世界各地にあるという海のダイビングスポットと同じ名前、ブルーホールと。
30
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:29:29 ID:bwtyxfCA0
そんなブルーホール近辺は今も閉鎖されているが、
当時に比べれば規制も緩和され、安全であるとまで言われるようになった。
ならば、未だ広大に広がる土地を、このまま捨て置くわけにはいかない。
新たに開発を目指し、今では各地からの派遣により、観測や工事が行われていた。
その中に、奇妙な者達が居る。
本来ならば作業着や防護服を着た人間がくるべき場所へ、
まるでその辺を散歩するかのような軽装で行く者たちが居るのだ。
「しかし何にもないな、本当に連中の反応があったのか?」
「ああ、でも一瞬だったからなぁ…」
「はぁ…誤反応じゃねぇのそれ? だいたいもう三年目だぜ? 今更沸いてくるもんかねぇ」
「知らん、だからこうして調べているんだろう?」
「それに、何事もなければ、それはそれでいいではないか」
31
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:29:40 ID:Gx9SALpQ0
しえ
32
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:32:22 ID:ZrbRMzpkO
支援だ
33
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:33:12 ID:bwtyxfCA0
組み合わせは、三人の男と、一人の少女だ。
広げたノートPCを持った男と、それを上から覗く男。
そんな二人の様子に頭をかきながら、やれやれ、と呟く男と。
どこか遠くを見据えたまま、微動だにしない無表情な少女だった。
「ま…そりゃそうか、なあガキんちょ、お前はどうよ?」
「……」
と、その時だった。
「……」
「ん?なんだ?」
少女が遠い海を指差し、ポツリと呟いた。
「………イーバ」
「「!? ガキンチョ(クー)が喋った!?」」
「え!? あ、反応が…!?」
ややあって、海が大きく波打った。
34
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:35:06 ID:bwtyxfCA0
―――そんな一方。
太陽は頂点に昇り、もう黒い点は無い澄み切った空は正午を伝えている。
内藤たちは食事を済ませ、デレの思いつくがままに街を彷徨っていた。
ζ(゚ー゚*ζ「さて、次はどうしようかなー」
(;^ω^)「……」ゴクリ
そんな内藤には、今日、決めていた事があった。
(;^ω^)(今日こそは……やってやるお)
ζ(゚ー゚*ζ「あ、あそこ何かやってるよ、何だろう?」
それは、彼女と手を繋いで歩くことである。
傍から見れば、仲睦まじく寄り添う二人は恋人にしか見えず。
本人に「これデートだよね?」と聞けば「そのとおりだ」と返される、
それほどにカップルな筈なのに、それ以上の事がまったく無い。
35
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:36:02 ID:xDXW4.a60
どうなるんだろうか……楽しみ
36
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:36:28 ID:bwtyxfCA0
このままでは、キスなどもっての外、デレとイチャイチャもできない。
それではいくらなんでも生殺しすぎるよ。
ζ(゚、゚*ζ「ブーンはイチャイチャしたいの?」
(;^ω^)「ぶっ!?」
どうやら一人称になった部分が聞かれていたようだ。
内藤は大慌てで誤魔化そうとするが、彼女はふと考えるような素振りを見せ、
そして、少し照れるように俯いて、上目遣いに内藤を見た。
ζ(゚ー゚*ζ「……じゃあ…しよっか?」
(*^ω^)「……ま、マジで?」
ζ(^ー^*ζ「マジマジ、んで、ブーンはどうしたい?」
(*^ω^)「そ、そそs、それじゃあ………」
手を、と言いかけた時だった。
37
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:37:50 ID:bwtyxfCA0
遠巻きに、花火のような音が響いた。
それほど大きくはない音だった。
気にしなければ気にならないような音だったが、
二人は音のした方へと向きなおした。
向きなおし、内藤は身を硬直させた。
(; ω )「……っ!」
ζ(゚ー゚;ζ「あれ…? なに、火事?」
見えたのは、遥か遠くに立ち昇る煙だった。
周囲にも、それに気付いた者も居る、だがその多くは気にも留めず、
しかし、チラホラと何かを思い出すように固まる人々が居た。
内藤もその中の一人だった。デレが心配そうに覗き込むが、反応は無い。
ζ(゚ー゚;ζ「ブーン!ちょっと、しっかりしてってば!」
(;^ω^)「え…? あ…」
38
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:38:59 ID:Gx9SALpQ0
しえん
39
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:39:39 ID:bwtyxfCA0
身体を揺すられ、ようやく我に返った内藤だったが、
そこへ再び、先ほどと似たような轟音がこだまする。
しかも、先ほどよりも大きい。
内藤は、酷く嫌な予感を覚えた。
(;^ω^)「……デレさん、行こう」
ζ(゚ー゚*ζ「え? 行くって、どこに?」
どこでもよかった、内藤はとにかく、この場を離れたい衝動に駆られていた。
気付けば、彼女の手を取って、先導した。
ζ(゚ー゚;ζ「ちょちょちょ、強引だなぁ」
(;^ω^)「あ、ごめんお……でも今は…」
音は、止まない。
周囲の人々も、流石に不審に思ったのか、足を止めている。
その中で、内藤だけが逃げるように人波を掻き分けていく。
40
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:40:40 ID:bwtyxfCA0
やがて、悲鳴があがった。
ζ(゚ー゚;ζ「え!? うそ……」
しかし、内藤は振り返らなかった。
デレだけが手を引かれたまま振り返り、驚きに声を殺した。
何か、恐ろしいまでの音がした。
爆発だ。
それも遠くない、並木がざわめき、地が揺れる。
だが内藤はそれ以上に、不安に押し潰されそうになっていた。
ζ(゚ー゚;ζ「ブーン!ブーンってば!! ちょっと待って!!」
(; ω )(駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ)
立ち止まってはいけない、振り返ってはいけない。
そんな焦燥に煽られ、聞こえる悲鳴も、制止の声も無視して歩き続ける。
ζ(゚、゚;ζ「もう!!」
(; ω )「!?」
と、そこで繋いだ手が強引にふりほどかれ、内藤が反射的にふりかえると。
41
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:42:08 ID:bwtyxfCA0
そこには、赤く染まる空と、地を這う巨大な蜘蛛の群れが居た。
.
42
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:43:11 ID:bwtyxfCA0
(;゚ω゚)「ひっ!!??」
しかし、その映像は一瞬のことで、すぐに消え去り、彼女と街並み、青の空を映した。
思わず飛びのくように倒れこんでしまった内藤は、今の映像に自問する。
(;゚ω゚)(……い、今の……なんだお…?)
ζ(゚ー゚;ζ「うーん、怖いのは分かるけどそれはちょっと情けないかなぁ」
(;゚ω゚)「へ?」
と、そこでようやく自分の置かれた立場に気付いた。
周りには、悲鳴をあげて逃げ惑う人々が居る。
そして、その奥にはやはり、煙と、爆発めいた音が響く。
大通りだが、道路の先には特にこれといった異変は無い。
ただ、遥か後方、反対側の建物の上から、今も煙があがっている。
そしてのん気に歩いて居たのは、いつの間にか内藤だけだった。
(;^ω^)「ご、ごめんお……ところで、これは一体…?」
ζ(゚ー゚;ζ「もう、何も分からず逃げてたの? さっきね、見えたの」
43
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:44:55 ID:bwtyxfCA0
(;^ω^)「何が?」
ζ(゚ー゚;ζ「わかんないけど……何か、ものすごく大きい何か……あ」
と、そこで彼女は見つけた、と言わんばかりに指を向けた。
(;゚ω゚)「はいーーーーーー!?」
見えたのは、煙が上がる建物の上。
20メートルは軽くあろうかと言うその建物の上にあった。
そいつは例えるなら、蟻や蜂の頭だった。
三角よりの形の両側に複眼を持ち、下に顎のような部位が見える。
そんな姿が、長細いビルをすっぽり覆うような大きさで、顔を覗かせていた。
(;゚ω゚)「なんじゃありゃあああああああああああああああーーーーー!!」
ζ(゚ー゚;ζ「どちらかというとハチっぽいかなぁ」
(;゚ω゚)「ははは早く逃げようデレさん!」
ζ(゚ー゚*ζ「うん、そうだね」
44
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:46:28 ID:bwtyxfCA0
だが振り返りざまに、内藤は見た、見てしまった。
あのハチのような頭が、グルリと向きを変え、複眼の奥にある赤い光を一斉にこちらへ向けた瞬間を。
「ギィィィィィィィィッァアアアアアアアアアア!!!!!」
聞こえたのは、鳥肌が立つような、不快な金切音。
遅れて、砕かれ割れる破砕音。
あの頭から聞こえてきた事は、容易に想像がついて、
内藤は恐怖をふりはらうように叫びながら、再び彼女の手を引いて走り出した。
ζ(゚、-;ζ「ちょ、ブーン!? 早い、早いよ!」
何故だか、内藤には先の叫びがこう聞こえていた。
『見つけた』と。
それゆえ、後ろを走る彼女のペースすらも考えられず、ただ、全力でその場から逃げようとしていた。
それゆえ、当然の結果はすぐに訪れた。
45
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:48:20 ID:bwtyxfCA0
ζ(゚ー゚;ζ「どわ!」
と、あんまり女の子らしくない悲鳴をあげて、デレがつまづいた。
パニック状態の内藤は、離れた手を好機に、このまま走り抜けたい衝動に駆られてしまう。
けれど。
また、失ってしまう、という恐怖が上回り、内藤は歯を食いしばって足を止めた。
そして振り返った先には、倒れこむ彼女と、そのすぐ上。
先ほど見た、あの巨大な目が、その複眼全てに内藤を捉えていた。
その全容は二足歩行、まるで人のようにも見える。
だが色々な部位があまりにも違っていた。
頭もさる事ながら、腕らしき物が肩とわき腹と腰の辺りから、左右に計6本生えており、
そのどれもが昆虫のように多節でなりたち、無数の刃が毛のように生えている。
しかし胴体は鉄板が形をなすようにして、胸部と腹部、腰を作り、
脚部に至っては、覗き見える"部品が"完全に一つの答えを示していた。
(;゚ω゚)「こいつ………」
その姿は怪物に他ならないが、もう一つの言葉がある。
(;゚ω゚)「ロボット……なのかお!?」
46
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:50:27 ID:bwtyxfCA0
ζ(゚ー゚;ζ「うん、惜しい、かなぁ……あとこれ、まずいかも……」
寝そべったまま、デレが上を向く。
排気の音と共に怪物の身体から煙が噴き、その様を見上げて、それでも尚、彼女は笑みを作った。
そして、怪物が動いた。
腕とも足とも取れる部位を内藤と、目下の彼女に向けたのだ、
瞬間、内藤は飛び出していた。
ζ(゚ー゚;ζ「え!?」
怪物は刃のついた腕を振るう、それだけで、無数の刃が落とされるように射出され。
対する内藤が取った行動は一つ、彼女の前へと躍り出る事だった。
結果、内藤の身体を、無数の刃が貫いた。
ζ(゚、゚;ζ「!!!!!!!!」
(;゚ω゚)「………ぁ、が…」
幸いにも痛みは、ほんの一瞬だった。
47
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:52:13 ID:bwtyxfCA0
一度だけ、痺れの中に猛烈な嗚咽感が混ざり、吐き出せば大量の血が溢れ、
ドバドバと落ちては、意識も流れていく。
ζ(;ー; ζ「!!!!!」
デレの泣き叫ぶ声も、怪物の金切音も。
全てが遠く、何も見えなくなっていく。
( ω )(これで、おわり、か、お)
自分の生涯は、これで終わる。
だから内藤は最後に、自問した。
( ω )(……これで、いいのかお?)
48
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:53:05 ID:Gx9SALpQ0
しえん
49
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:54:06 ID:xDXW4.a60
しえしえ
50
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:54:32 ID:bwtyxfCA0
霞んでいても、まだうっすらと見える世界は、酷い有様だった。
怪物は何か満足したのか、辺りを破壊しながらこちらに背を向ける。
そして、自分を抱えるあの子の姿があった。
泣いていた。
( ω )(…知ってるお)
失うことの辛さを、内藤も知っていた。
だから問う。これでいいのか、と。
何が起きているのかなんてわからない。
何で怪物が暴れてるのか、なんて理由はどうでもよかった。
ただ、一つだけ許せない事があった。
彼女だけじゃない、このままではまた繰り返す。
51
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:55:57 ID:bwtyxfCA0
一つの景色があった。
遠くに見える柱と、煙に覆われる空。
炎に染まる雲と、地を這う―――大きな蜘蛛。
( ω )(あの時もそうだった、蜘蛛みたいな、あのロボットが)
次から次へと、人に襲い掛かっては、真っ赤な血を撒き散らしていた。
そして、ついにその蜘蛛の化け物は自分の下へとやってきた。
金属的な音を響かせながら。
( ω )(あの時も……僕は…………化け物に………)
ドクン、と。
もはや何も聞こえぬ鼓膜に、見知らぬ鼓動が響いてきた。
自分の内から聞こえてくるその鼓動は、胸の奥から聞こえてくる。
とても温かくて、心強く思える鼓動だった。
52
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:58:16 ID:bwtyxfCA0
「?」
ふと、怪物は何かを察したように足を止めた。
ζ(;ー;*ζ「あ……れ…?」
デレは、抱えた彼の身に起きた変化に、戸惑いの声を上げた。
それは、光だった。
穴が開き、血にぬれる内藤の胸元から、青白い輝きが溢れていく。
やがて内藤は目を開く、そして、抱えられた身体を起こし、
戸惑う彼女をよそに、何事もなかったかのように立ち上がった。
( ω )「………」
ζ(゚ー゚;ζ「ぶ…ぶーん……?」
怪物が内藤へと向きなおす。
そうする間に、内藤の身体に刻まれていた傷跡が、次々に消えていく。
まるで青白い光が、その傷を癒していくかのように見えた。
53
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:00:32 ID:0lSni0Cg0
支援
54
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:00:52 ID:frlYkhIk0
ζ(゚ー゚;ζ「な、なんだか分からないけど、逃げないの…?」
( ω )「……」
内藤は虚ろな表情のまま、近くに乗り捨てられた車へ、
吸い込まれるように近寄っていく。
ζ(゚ー゚;ζ「あ、車? 車で逃げるの?」
そして、青い車に手を添え、言った。
( ω )「クオリティコード―――トランス」
青の発光が、一際強く輝き。
車体と内藤の姿を覆い隠した。
―――――。
,
55
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:02:44 ID:frlYkhIk0
海岸に居た者達が、倒壊した建物の合間をぬうように駆けて行く。
その誰もが憔悴した様子で、しかしよく見れば内二人は奇妙な姿をしていた。
「くそ、なんだよあのでかいのは!!」
「……!!」
先を行く男の右手には、大きなチェーンソーのような物。
後を追う少女の両手は、やはり大きな杭撃ち機のような物が見える。
しかし、二人はそれを手に持っている訳ではない。
まるで腕そのものが変質したかのように、直接繋がっていた。
「だいたいイーバは蜘蛛みてぇな奴じゃなかったのかよ!?」
「わからない、3年の間に進化したとでも言うのか……」
「……いや、ちょっと待て、なんだこれは!?」
と、一人が急に立ち止まり、困惑を示す。
ノートPCを持つ男だった、彼はPCを広げ、
けたたましい警告音と、モニタされる赤の点と青の点を凝視した。
「これは……まさか、Cドライブの第二駆動!?」
―――――。
,
56
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:04:32 ID:frlYkhIk0
あ、ちょいとミス見つけたので修正しますです、15ふん以内には前向きに検討します
57
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:06:03 ID:tsRfWuCA0
期待してるよー
58
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:29:38 ID:frlYkhIk0
( -ω-)「……」
(;^ω^)「……ん、あれ?」
ふと、目を開けば視界が変わっていた。
正面にあるのはビルだ、ガラスの奥にはオフィスのような場所が見える。
そして地面は、遥か下のほうにあった。
(;^ω^)「高っ!?」
ζ(゚д゚;ζ「ぎょっ!? その声……アナタ、ブーンなの!?」
ついでに後方から彼女の凄い声が聞こえてきた。
しかし振り向けば、なぜか彼女は視界の隅にこじんまりとしている。
(;^ω^)「あ…あれ…? デレさん、なんか縮んだ?」
ζ(゚ー゚;ζ「ううん、ブーンが大きくなったのよ、というとちょっち語弊があるけど、そんな感じ?」
自分が、と言われ。内藤は自分の身体を見回した。
そこでようやく、自分の身体に何が起きたのかを悟った。
59
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:30:24 ID:frlYkhIk0
(;^ω^)「ちょ……これ、ええぇ…?」
身体を捻れば、うぃぃ、と響く駆動音。
ついでに両手は大きくゴツゴツしい。
そういえば、と怪我をした筈の胸を見れば、そこにも大きな青い装甲板と、
中心部には何か、宝石のように煌く塊のような物が見えた。
あと、先ほどまで覗いていたオフィスは、ビルの三階にあった。
詰まる話が。
(;^ω^)「……僕、なんかロボットになってる…?」
ζ(゚ー゚*ζ「そうね、あと巨大、とかもつけるべきかもね」
内藤は、なんだか居た堪れない気持ちになった。
確かに生きたいとは願ったが、その結果が巨大ロボになりました、
ではその、色々と、困る……。
60
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:32:41 ID:tsRfWuCA0
おかえりー
61
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:33:04 ID:frlYkhIk0
と、そこへあの嫌な音が割り込んできた。
(;^ω^)「デレさん!!」
ζ(゚ー゚;ζ「うわ!?」
あの怪物が、先ほどとはまるで違う仕草で、音を荒げながら、
同じくらいのサイズになった内藤へ向け、路面を砕き割りながら駆けてくる。
咄嗟に内藤は彼女を手のひらに乗せ、その場から横っ飛びの跳躍をする。
あまりの反動にデレが苦悶の声を漏らし、内藤は車線を飛び越え、反対へと移る。
そして振り上げた六足の一つは、内藤とデレが今しがた居た場所を砕いていた。
明らかに先とは違う。
刃を振り落とすだけの生ぬるい攻撃ではない姿に、内藤は戦慄を覚えた。
更に、続けて怪物が威嚇するように顎を鳴らしながら跳躍する。
内藤は彼女を抱きかかえる様にしながら、再び跳躍。
手のひらの中から苦悶が漏れるのを気にしつつ、また反対へと着地した。
62
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:35:41 ID:frlYkhIk0
ζ(゚、゚;ζ「うえぷ……何か生まれそう…」
(;^ω^)「ええ!?」
ζ(゚ー゚;ζ「ていうか、何で逃げてばかりなの? 戦わなきゃ、現実と!」
(;^ω^)「現実とは戦ってるお…! 明日からマジどうしようこれ…ご飯とかどうなの?ガソリン?」
ζ(゚ー゚;ζ「それよりあっちでしょ!」
(;^ω^)「むむむ……ていうか、デレさんさ、怖くないの?」
ζ(゚ー゚;ζ「え?そりゃあんな大きいかいぶつ、怖いけど……」
(;^ω^)「いや…それ以前に…僕が、さ、だってこんな……」
ζ(゚、゚*ζ「そりゃあね、驚いたよ、でも……」
ζ(゚ー゚*ζ「あなたは、守ろうとしてくれたでしょ?」
63
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:37:17 ID:frlYkhIk0
だから。
と、未だ聞こえてくる悲鳴や、落ちる瓦礫に混ざる破壊音が響く中で、
それでも彼女ははっきりと、内藤の手のひらの上に小さな手を添え、笑みを作り言った。
ζ(゚ー゚*ζ「そんなあなたがブーンなら、ブーンの事が怖いなんて、ありえないよ」
言葉に。
ドクン、と。
内藤は再び、先ほど夢うつつに聞いたあの鼓動を感じた。
ζ(゚ー゚;ζ「…て、あ、あれ? ブーン?なんか光って…?」
( ω )(ああ……もう、何でもいいや、僕は)
そして続くのは、胸のうちに感じる熱と、
目下、機械と化した胸元から溢れ出るように輝きを放つ、蒼の光。
64
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:39:38 ID:frlYkhIk0
けれどそれさえ気にならない程に、強く、強く、強く、強く、願ったのは。
( ^ω^)(この子を、デレを守ろう……何があっても、何があっても)
一つの、あらゆる感情を『 超 過 』した、戦う事への決意だった。
(#^ω^)「……何が、あっても!!」
瞬間、辺り一面を青色が埋め尽くした。
声も、景色も、全てが蒼に染まり、ただ、自身の鼓動に全てが溶けていく様な錯覚に、
内藤はただ身を委ねながら、身体中を埋め尽くすような充実感を感じていた。
果たしてそれは時間にして一秒だったのか、あるいは一時間だったのか、
それすらも分からないままに、やがて青は霧のように薄れ始めた。
65
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:41:36 ID:frlYkhIk0
( ^ω^)「……お」
ふと、目を開ければ、そこにも青は広がっている。
だがそれはよく見知った色、空だ。
そう気付いたとき、内藤は彼女の声を聞いた。
声は言う。
(;^ω^)「………え?何?北斗?」
ζ(゚Δ゚;ζ「あ、た、た、た、たたたた……!!」
どうにもこうにも百裂拳で反応に困っていると、
子犬のように震えながら縮こまった彼女は、機械の腕をぽかりと叩いた。
(;^ω^)「ていうか……あ、あれ?」
ζ(゚Δ゚;ζ「いくらなんでも高すぎるーーーーーーーーー!!」
そう言って、おろせーと叫ぶ彼女の姿は、決して気のせいではなく小さい。
縮こまってるとかそういう次元の話じゃない、もっと違う片鱗がなんたらかんたら。
66
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:42:50 ID:frlYkhIk0
つまる話、先ほどまでとは比率が違った。
手のひらにちょうど収まるようだった姿が、今ではすっぽりと収まり、
そういえばと見渡せば、その視界の全てが変わっていて、まず見えた空の理由を知った。
(;^ω^)(ああ……いよいよもって人間失格だおね、これ)
広がるのは、建築物の屋根や屋上がつくりだす平野だ。
内藤は、己の背丈がついに夢の180センチを越えた事を知る。
しかしこれでは逆にダンクシュートが決められない。
バスケには、リングより高い位置でボールに触れてはいけない、
というルールがある事を内藤は知っていた。
そんな傷心に暮れていると、眼下で彼女が悲鳴をあげた。
ζ(゚Δ゚;ζ「ぎゃあ! 前見てブーン!」
(;^ω^)「!」
見れば、威嚇するようにガチンガチンと金顎を打ちつけながら、
蜂のような怪物がこちらへと突っ込んでくる。
67
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:43:55 ID:frlYkhIk0
続けざまに、怪物は道路を砕きながら跳躍し、六足を広げて飛び掛ってきた。
咄嗟に内藤は後ろへ下がろうとして。
急速に流れた景色に、デレの悲鳴(?)がかき消された。
(;^ω^)「……デレさん、今、なんかさ…ものすごい声ださなかった?」
ζ(/Δ//;ζ「うるさいばかっ」
先に結果を語れば、内藤と怪物の距離は、瞬く間にて数十メートル離れていた。
互いの間にあるのは、二本の黒い線だ。
内藤の脚部から展開された、ローラースケートのような形状をした部品。
線の正体は、それによって作られた、今も土煙を上げるタイヤ痕。
そして内藤は敵を視界に収めながら、デレを地上へと降ろした。
ζ(゚ー゚;ζ「……ブーン?」
( ^ω^)「うん、心配いらないお」
68
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:45:29 ID:frlYkhIk0
そして内藤は、周りの風景同様に、ひどく小さく見える敵の姿へと向きなおし、
己の中から溢れる自信と確信を言葉にして、全てに向かって言った。
( ^ω^)「もう、あいつには負ける気がしないんだお」
ζ(゚ー゚*ζ「うん、なんだか私でもやれる気がしてきたよ!」
( ^ω^)(たくましい子だなぁ……)
ζ(゚ー゚;ζ「でもここは任せるよ!」
言って、彼女は握った拳をふりあげる。
けれど内藤は知っていた、元気に振舞うその行為が、
足の震えを誤魔化すものである事を、その気高さを。
ζ(゚ー゚*ζ「だから、やっちゃえ!ブーン!!」
( ^ω^)「うん、任されたお!!」
そのやりとりに割り込む影があった。
影の正体は、先と同様に飛び上がった怪物の姿だ。
69
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:46:43 ID:frlYkhIk0
(#^ω^)「……よくも、好き勝手してくれたおね」
対する内藤は、今度は後退することなく、躊躇もなく、
金属の拳を握りしめ、雄雄しく構えを取る。
(#^ω^)「こいつはお礼だ! 取っとけお!!」
「ギイイイイ!!!」
そして、豪風纏う渾身のアッパーカットを、怪物の胴体にぶち込んだ。
瞬間。
衝撃波めいた轟音と共に、両者の動きが停止した。
音は一度、大きな爆発音のように響き、建物の間を反復しながら駆け抜けていく。
そして、ほんの一時の間を置いてから、変化は起きる。
まず、怪物の胴体が陥没したことに始まり、
怪物の身体がふわりと浮き上がった所で、一気に結果が生まれた。
70
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:48:07 ID:frlYkhIk0
「ッギ…!??!?!!!?!!!??!?」
(#゚ω゚)「ぶっ飛べぇえええええええええええええええええええええええええ!!!!」
陥没した部位にジジジと火花が散り、続けて、爆発が起きた。
振りぬかれた拳と共に怪物の姿は天へと舞い上がり、空中でゆっくりと回転しながら落下していく。
内藤の振り上げた機械腕から、排気が煙と共に吐き出され、
転がった怪物は土煙の中に半身を埋めた。
ふと見れば、デレは耳を押さえてしゃがんでいる。
このままでは彼女の膜がやばい、とまで考えて、膜がヤバイってなんかエロイと気付いた。
(;゚ω゚)「……デレ、早くここから離れるお」
ζ(゚ー゚;ζ「う…うん、そうだよね、命がいくつあっても足りないもんね」
冗談はさておき、多少の欠損であの結果だ。
このまま怪物を倒すことは可能でも、被害は今の比でない事は容易に想像できる。
ならばどうするか。
(;゚ω゚)(……どうしよう………)
だが、そんな事は知る由もなく。
71
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:50:30 ID:frlYkhIk0
土煙の中からゆっくりと身を起こす怪物の身体は、今も小さな爆発に包まれている。
目ではなく、センサーが捉えるデレは未だ遠くない場所を駆けていた。
と、前方の怪物がついに立ち上がり、赤く染まった複眼の光点を全て内藤へと向ける。
果たしてそのような感情があるのかは不明だが、その姿は怒りに震えるかに見えた。
それを見て、再び身構える内藤だったが、
(;゚ω゚)「…く」
彼女だけではない、建物自体も、そしてまだ居るかもしれない生き残った人も、
自らが破壊し、殺めてしまうのでは、という恐れがその身を固めてしまう。
と、怪物は地を蹴り、今度は直線に突っ込んできた。
対する内藤は、反応できなかった。
距離はあっても、その差は明らかだ。
「ギィイイイイ!!!」
(;゚ω゚)「やばっ…い、づぁ!?」
そして、ついに怪物の六足が内藤の全身を絡めとった。
72
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:51:43 ID:frlYkhIk0
ただ掴むのではない、怪物の腕の先は虫のように尖っており、内側へと向けられている。
見れば鎌のような形状をした部位が、無数となって生えているのが分かる。
(;゚ω゚)「あだっ!あだだだだ!!! こ、これは……!!」
何となく、カブトムシを顔にくっ付けられた幼き日を思い出した。
だが、これはそれよりも痛かった。
(;゚ω゚)「こ、この…! 離れろ!! ってででで!!??」
更に引き剥がそうとすればするほど、背中へ刺さった爪は余計にめり込んでいく。
内藤は苦しんでいたが、地味過ぎて痛みの表現がコミカルで辛い。
だが事実として、怪物の爪は内藤の背中へと突き立っているが、刺さってはいない。
装甲を多少削り取り、へこんだ箇所へと引っ掛けているに過ぎなかった。
しかし毛のように生えた爪は大量に抉りこみ、もがいた所で外れることはなく、
何より問題なのは、あがけばあがくほど、怪物の身体から迸る火花が大きくなっていく事だ。
(;゚ω゚)(こいつ…まさか!?)
73
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:52:26 ID:frlYkhIk0
考えている間にも、一際大きな爆発が起きて、落下した足の一本が路面を砕く、
そして、ややあってから火花と共に爆散した。
それだけで、路面に大きなクレーターを作り、周辺に残されたガラスを粉として。
振動によって瓦礫は更に崩れ、ひび割れた建物が土煙を上げていく。
このまま自爆でもされよう物なら、自分も含め、ここ一帯が吹き飛ぶかもしれない。
(;゚ω゚)(何でもいい…! 何か、何か無いのかお!?)
内藤は周囲を見渡した、だが、そこには崩れかけた景色があるだけで、何も無い。
自身を探した所で、特にこれと言った便利機構は見当たらない。
と、まで考えた所で、ようやく気がついた。
(;゚ω゚)(……あれ?)
最初に怪物から距離を取ったときもそうだった。
後ろへ避けようとして、足を出すでもなく、跳躍するのでもなく、別の行動をした。
極自然に、脚部のローラーを展開しての『走行』をしたのだ。
74
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:53:32 ID:frlYkhIk0
つまり内藤は。
今の自分に備えられた機械としての機能を、己が手足の様にに把握していた。
(;^ω^)(……全く、これじゃ完全にロボじゃないかお……)
どうにもこうにも、こんな時だと言うのに苦笑いがこぼれる。
だがしかし、今頼りにできるのはそれだけだと、再び内藤は意識を向けた。
(;^ω^)(使えるのは……タイヤと各スラスター……クレーンアーム…? ターボに…)
(;゚ω゚)「あ、こ、これだぁ!!!」
と、そこで怪物が動きを見せ、内藤は流石に青ざめた。
(;゚ω゚)「って……ちょ、おま……」
それは、怪物の尾だ。
蜂のように縞模様が描かれた部位は大きく膨らみ、その先端には剣のような部位が見える。
剣からは今も泡立った紫の液体が滴り、地に落ちる度に不気味な煙を立てた。
だが、内藤が恐れたのは毒ではない、その位置だった。
75
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:53:58 ID:tsRfWuCA0
ロボットぉっぉおぉおお!!!
合体とかんあんのかなwktk
76
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:55:15 ID:frlYkhIk0
何故なら内藤と怪物は今、抱き合うような形になっている、
そしてあの尾の長さとか対比した位置関係とか、あらゆる点を考慮した上で、
どう考えてもこのままでは、あの刃が股座へと突っ込んでくる事になるのだ。
前か後ろか、新たに真ん中ができるのか、選択肢はもはや無く。
(;゚ω゚)「待て!ちょっと待て! 絵的にそれは駄目だろ!?ねえ!?ちょっとおおおおおおおお!?」
悩む暇も、無いと知り。
(#゚ω゚)「ああもう! ターボウイング!」
言葉どおりに、内藤の背中が中央から大きく開かれ、
二翼の扉がガルウイングの如く展開され、銀の翼を象る。
その下から覗くは、いくつも並ぶスラスターユニット。
鈴のような形状の端には既に輝きが灯り、円状に青い炎が帯を作り。
胸元から、再びあの青い輝きを放ちながら。内藤は空を見上げた。
(#^ω^)「どでかい打ち上げ花火だ、行かせてもらうお!」
「――――――――-!!!」
77
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:57:34 ID:frlYkhIk0
そう言った軽い言葉は、すぐさま音に掻き消され、怪物の叫びも風に巻かれた。
内藤の背面スラスター部位から、凄まじいまでの炎が溢れ、それを煙が包んでいく。
煙は彼らを中心として、外部にある物を風圧と共に吹き飛ばす。
そして怪物は断末魔にも似た雄叫びを上げ、尾を向けた。
案の定、尾は見事に股に入り込み、青く輝く尻を貫く。
( ゚ω゚)「アッー!」
同時に、内藤の視界の隅に警告灯が点く。
差し込まれた刃から、毒が体内に侵入しているのだ。
(;゚ω゚)「こ、の……」
尋常じゃない激痛が主に尻に走るが、内藤はもう一度天を仰ぐ。
同時に、背面から爆発めいた火煙を上げながら二つの巨体が浮き上がり、
一息に上へと向けて加速した。
上昇は早く、一秒を待たずして辺りの建物を飛び越え、その身を空へと届かせる。
78
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:59:17 ID:frlYkhIk0
(#゚ω゚)「にぎぎぎぎ、いい加減、離れろこのクソヤロウがぁああああ」
あああ、とした叫びが宙に響き、交差させた両腕を全力で振りぬき、
弾かれるようにして、怪物の残った足が全てがもぎ取られていく。
二つの巨体が宙で離れ、未だからみついたままの足が爆散した。
だが、その爆発を以ってして尚、内藤の装甲に損傷を与えることは叶わず。
内藤はそのまま更なる上昇を続け、怪物はその場で降下を始める。
ついに足を全て失くし、怪物はビクビクと痙攣するように火花を散らす、
そんな落下する姿へ、内藤は左腕を伸ばし、行けと言葉を繋いだ。
( ゚ω゚)「クレーンアンカー!!」
そんな言葉と共に機械腕から射出されたのは、鉄線で繋がれた鉤爪だ。
一度怪物を通り過ぎた鉤爪は、鉄線を引っ掛けるようにして回転し、その身に絡みつく。
続けて、身体ごと左腕を回し、怪物を再び空高くへ放り投げた。
79
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 01:01:38 ID:frlYkhIk0
( ゚ω゚)「クレーンアンカー!!」
そんな言葉と共に機械腕から射出されたのは、鉄線で繋がれた鉤爪だ。
一度怪物を通り過ぎた鉤爪は、鉄線を引っ掛けるようにして回転し、その身に絡みつく。
続けて、身体ごと左腕を回し、怪物を再び空高くへ放り投げた。
(#^ω^)「こいつで……とどめだあああああああああああああああああ!!」
そして伸びきった鉤爪は排気煙と共に左腕へと収納され、今度は右腕を向ける。
右の機械腕から展開されるのは、計八つのスラスターと姿勢制御のウイングだった。
(#゚ω゚)「タァアアアアアボスマッシャァーーーー」
ボボボボボ、と連続した熱音と。
ピピピピピ、と響く電子音が重なり、上空の怪物へと狙いを定め、
(#゚ω゚)「パァアアアアアアアアアアアアンチ!!!!」
右腕を中心に炎の円を作り、爆音と煙の尾を引き連れながら、
握りこぶしを作る機械腕を射出、発射した。
80
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 01:03:15 ID:frlYkhIk0
「ギ」
既に身動き一つ取れぬままの上空の怪物は、それを避ける事も叶わず、
今度は衝突に弾かれる事も無いまま、胴体を撃ち、貫かれた。
そして、怪物の胴体に空いた穴から空が覗き。
二度、三度と大きな火花を散らしてから、その姿が上空にて、爆炎に包まれた。
上空に歪な丸を描きながら、炎は大きく広がって周囲を照らし、
片手を上げる巨大な影へとそれより小さな影が飛来し、片腕へと装着された。
目を地上へと向ければ、ブルーホールから続く怪物が起こした被害の痕跡がよく見える。
しかし自分の真下から、その被害はピタリと収まり、ふと、食い止めたのは何かと自問した。
やがて遠巻きに赤のランプが大量にやってくるのを見つけると、
破片が舞う中を影がゆっくりと降下して、大地に立つ。
81
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 01:05:41 ID:frlYkhIk0
その姿は多くの人間に確認されている。
頭部、額には金色のアンテナのような物が三本。
車のヘッドライトのような瞳は緑に輝き、その下を白のマスクが覆い隠している。
胸部から両肩にかけて、銀の車を二つに割ったかのようにも見える巨大な装甲は、
その中心に輝く結晶体を覗かせ、青に輝くその深部には何かを象るような柄がある。
両の機械腕は、特に大きな装甲に覆われ、黒でありながら輝きを見せ、
両の機械脚部は更に大きな装甲に覆われ、膝と脹脛の辺りにローラー状の部品を覗かせている。
と、そこで変化が起きた。
巨大な姿が青の輝きに覆われて、その影を見る見るうちに小さな物に変えていく。
と、やがて光が収まれば、そこに巨人の姿は無く、
多くの車両が積み重ねられた不思議な光景だけが広がっていた。
遠くから、サイレンの音が響く。
未だ怖れと緊張に支配されるその空間で、やがて誰かがポツリと呟いた。
「あれは……間違いない…VIP…」
勇者の再来だ、と。
82
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 01:08:28 ID:frlYkhIk0
―――そして内藤は、積み重ねられた車両の山の中腹に居た。
先ほどまで身体にあった充足感は既に無く、なんとも気だるい感覚に負け、
そのままボンネットに身を委ね、自身の腕を陽にかざす。
あるのは、機械の手ではない。
柔らかく、頼りない人の手だった。
残念と喜々のどちらも感じながら、内藤は笑みをこぼす。
何にせよ、これで今度は、乗せるのではなく繋ぐことができそうだ。
思いながらもう一度身を起こす。
けれどそれより、今なにより思うのは一つだ。
さて、どうやって降りよう……。
( ^ω^)は勇者クオリティのようです
第一話「覚醒のC2ドライブ」 おわり
83
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 01:09:19 ID:tsRfWuCA0
乙
84
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 01:20:33 ID:frlYkhIk0
( ФωФ)「始めましてだな諸兄等、私がAGEのリーダー、ロマネスクだ」
( ФωФ)「それでは挨拶も程ほどに始めよう、次回予告!!」
(,,゚Д゚)「お前だな? あのデカイーバをやったVIPは」
(;^ω^)「デカ…え?」
怪物を退けたブーンの前に現れた謎の男…。
彼はエイジと名乗る謎の組織の一員だった!
( ФωФ)「やあ、君の事はよく知っているよ、内藤君」
(;^ω^)「僕を知ってる……? どういう事だお?」
( ФωФ)「君の父……に、なるはずだった男は旧知でね、君が望むなら……」
( ФωФ)「君の知り得ぬ過去のすべてを教えよう!!」
半強制的に連行された先で、内藤が知る事になる真実とは…!
そして、再び現れる怪物を前に、内藤が取る行動とは!?
次回、第二話「叫べ!その名は勇者クオリティカイザー!!」
( ФωФ)9m「この次も…VIPクオリティ!!」
85
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 01:25:29 ID:frlYkhIk0
という感じで、久しぶりなのでやりたい放題やってみた。
しえんありがとうね、おかげで楽しかったよ。
86
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 02:30:31 ID:Iww2SqLgO
乙じゃ
87
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 02:39:10 ID:BFtQNx.oO
乙
ガガン?
88
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 20:22:02 ID:V1BaF9.Q0
乙
あっちの方も待ってるよ
89
:
名も無きAAのようです
:2011/11/11(金) 16:44:08 ID:AcpWez1w0
ttp://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_009.jpg
ロボむずい、かなり適当だけど主人公機(?)
あとうpった時にエラー吐いて何度かやったら連投してもうた、ああごめんなさいごめんなさい
90
:
名も無きAAのようです
:2011/11/14(月) 10:53:27 ID:AlSWAoUAO
音無かと思ったが違った
91
:
名も無きAAのようです
:2012/10/18(木) 23:59:03 ID:nvwbDGog0
あれ?なんかおかしくね?俺時空越えたの?
92
:
名も無きAAのようです
:2012/10/19(金) 00:04:56 ID:DiriSevo0
お前…タイムリープしてねえ?
93
:
名も無きAAのようです
:2012/10/19(金) 00:07:31 ID:U9k86UKs0
>>92
>>89
ってチャネラーのだよな?ビックリしたんだが
94
:
名も無きAAのようです
:2012/10/19(金) 00:09:24 ID:DiriSevo0
よくわからんけど、ロダのURLが変わって別の画像が表示されてるんじゃないのか?
ロダが勝手に古い画像を消して番号がずれたとか、誰かが古い奴消して番号ずれたとか
95
:
名も無きAAのようです
:2012/10/19(金) 00:20:44 ID:U9k86UKs0
マジか、そんな事あるんだ。知らなかったよ。
後すまない、興奮してsage てなかったよ。ありがとう。
96
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:05:12 ID:YuEAbayY0
規制には勝てなかったよ……
97
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:05:58 ID:YuEAbayY0
三年前、大衆の心には隕石落下という忌まわしい記憶が刻まれた。
しかし一部の人間達にとって、それは一連の事件の一つに過ぎなかった。
イーバ襲撃戦、結果として宇宙からやってきた侵略物との戦いは、
期間としては非常に短く、およそ二週の間に終着した。
当然だ、いかに不可思議な存在であろうとも、相手はただの機械。
それもたった一つの行為だけをする機械だ。
生物特有の生き残るための知恵を持たない物達の動作は、
人に近づき、一定の距離で飛び掛るだけの、お粗末なプログラム。
あまりにも単調で、直線的。
人を上回る速度と力をもっていたとしても、同等の力をもち、
知恵をもって立ち回る新たな人類の敵には、成り得なかったからだ。
そして、そんな彼らを、ロングコートの男はこう呼んだ。
98
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:06:43 ID:YuEAbayY0
(;^ω^)「勇者……ビップ、クオリティ……」
ζ(゚‐゚*ζ(かっこいい……)
(;^ω^)(……て、ことは、つまりだお?)
普段からケツみたいな口でニヤケ顔の内藤だが、
そう鈍くはない、ここまでの話と、自分の置かれている状況。
踏まえれば、つまりこのコートの男が自分に何を言いたいのかを理解した。
そして同時に、対する答えも浮かんでいた。
( ω )(願ってもない、ってやつだお)
今、モニタされた映像に見える忌まわしい姿。
先日に見た、あの巨大が街を破壊する姿。
そして何よりも。
あの日に、立ちすくむ事しかできなかった自分自身の姿。
それら全てを、悔しいだけの思い出にさせない為に、
自分にできる事があるのならば。
(*゚ー゚)「イーバ群、第二防衛線を突破」
(;*゚∀゚)「あ、反応多数…!まだ増えてる!?」
( ФωФ)「ふむ……やはり、か」
99
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:07:32 ID:YuEAbayY0
(;*゚ー゚)「十、二十、何これ…こないだと同じ…!?」
( ´_ゝ`)「二人とも、現地に入電を」
( ´_ゝ`)「増援を送る、順次徹底せよ、だ」
( ФωФ)「クー君は、あとどれくらいで到着できそうかね」
(;*゚ー゚)「あと15分ほどかと」
( ^ω^)「……ギコさん!」
俯いていた顔を上げ、内藤は声を張り上げた。
呼ばれた人物は、今まさに出口へ向かう最中であった。
( ,,゚)「……なんだよ」
横目にギコは内藤を見据えた。
薄暗い場所から見る出口は、廊下から差し込む光に照らされ、
姿は陰り、彼の表情を伺いみることはできない。
しかしその向かう先は、内藤にとってなんだかとても眩しい物に見えた。
過去という暗がりに居る自分と、光に向かう相手。
思う。自分も、と。
100
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:09:14 ID:YuEAbayY0
( ^ω^)「……お願いですお、僕も、連れて行ってください!」
ζ(゚Δ゚;ζ「ブーン!?」
( ,,゚)「……言ってる意味がわからねぇ」
(;^ω^)「あそこに、行くんですお? 奴等をやっつける為に…」
( ,,゚)「……だったら何だ、帰り口なら俺じゃなくて他あたりな」
(;^ω^)「だったら、僕も戦う……! 手伝わせてほしいんですお!」
言葉に、映像に釘付けだった誰もがその姿を見た。
オペレータの二人はその様にふと笑顔を見せ、二人の異人兄弟は頷く。
新たなVIPとして呼ばれた者が、今全てを受け入れ、戦う意思を見せたのだ。
しかし。
(#,,゚Д゚)「クソガキが、ふざけた事抜かしてんじゃねえ!!」
(;^ω^)「…!?」
101
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:10:06 ID:YuEAbayY0
( #゚Д゚)「戦う? 手伝う? 何を勘違いしてるのか知らねえが、
手前はただの一般人だ、それがなに関係者顔して妙な気おこしてんだコラ」
( ´_ゝ`)「…おいおいギコギコ」
(;^ω^)「勘違いなんかじゃない! 僕は昔も今も、ずっと関係してる、してたんだお!!」
( ,,゚Д゚)「それが勘違いだと言ってるんだ、言っておくが、自分だけが特別だなんて思うなよ、
あの事件で機械人間にされちまった奴なんざそこら中に居る、手前だけじゃねぇんだよ」
(;^ω^)「…!!」
ζ(゚Δ゚;ζ「そ、そうなの?」
( ´_ゝ`)「…この地区だけでも、百人は超えてるかな」
(´<_` )「不思議に思った事はないかい? この街の……
いや、この国の、都市復旧速度はいくらなんでも速すぎる、と」
言われてみれば、と二人は思い返す。
先日の二対の巨人による争いによって、建物や道路はひどい有様だった。
地面の補修程度ならともかく、崩れかけた建物の補修など、そう易々と行える物ではない。
だが、先日流れていたニュースではこう報じていた。
"順調に復旧が行われている"と。
それに何より、現在の街並み。
僅か三年ばかりの間に、一つの都市を完成させてしまう、魔法のような技術力。
内藤含む沢山の人が信じた"人間の力"とは、果たして本当に人の力だったのだろうか。
102
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:10:54 ID:YuEAbayY0
(;^ω^)(じゃあ……その戦いってのが終わってからも、VIPの人達は、ずっと…!?)
ζ(゚‐゚*ζ(そういえば……壊れたビルに沢山の人がよじ登ってるとか言う都市伝説があったような)
( ,,゚Д゚)「いいか、お前は今回何も知らないまま、偶然巻き込まれた、
しかも過去の事すら知らないときてる、だからまつわる過去の事を教えた、
知らないままじゃ、今後余計な混乱を招きかねないからな」
( ^ω^)「余計な混乱って、なんですお……あんたが言うように、
僕が本当に関係ないんだったら、放っておけばよかったんじゃないのかお?」
( ,,゚Д゚)「手前が自分の体について周りの人間に触れ回るような事をされたら困るって話だよ」
(;^ω^)「そんな事するわけ…!」
( ,,゚Д゚)「つまり、だ」
( ,,゚Д゚)「手前をここに連れてきたのは、他でもない、口止めする為だ」
( ,,゚Д゚)「仲良く一緒に戦おう、なんざくだらない理由じゃねえ、
それに手前も、どうせ中二めいた考えで物を言ってるんだろうが、そいつは迷惑だ」
そんなギコの言葉に、内藤の背後から猛反発する声が響く。
やれそんな事無い、あんなの気にするな、そんな言葉だった。
しかし、当の内藤はそんな声援がなぜか耳に入ってこない、
ただ不思議と、自分と相対する男が言わんとしている事が理解できた。
言葉面では単純に否定を繰り返しているが、どこか矛盾している。
何がどう違うのか、明確な言葉にできる物ではなかったが、それでも思う。
( ^ω^)(……この人は、僕を止めようとしている)
103
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:11:57 ID:YuEAbayY0
それも、きっと優しさからくる物だ。
まだ戻れる、平和な暮らしを続ける事ができる。
お前は、こちら側に来るべきじゃないと、暗に言われている。
だからこそ、きっと生半可な言葉では、認めてもらう事はできないだろう。
ζ(゚‐゚*ζ「……ブーン?」
( ω )(僕は……僕が、戦いたいと思ったのは)
デレ、彼女を守りたいと思った。
けれど、それはあの状況があっての話だ。今ではない。
そう思う一方、内藤を挟んでの口論は激しさを増し、
ついに持ち場を離れる者まで現れ、ギコを非難している。
「「ぶーぶー!!」」
( #゚Д゚)「うるせえ!! 大体なぁ! あのでかい図体じゃいつまでも隠し通せるものじゃねぇ、
お前ら平穏に暮らしたい連中がどうなってもいいのかよ!」
「「ぐぬぬ」」
(;*゚∀゚)「痛いとこつくなぁ」
( ´_ゝ`)(別に今まで隠してやっていけてるんだから、知らんって言えばいいだけじゃね?)
(´<_`;)「なぜひそひそと喋るんだ兄者? 弁解するならちゃんと」
( ´_ゝ`)ノシ「ja.イーンダヨ、グリーンダヨ」
104
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:12:48 ID:YuEAbayY0
( ´_ゝ`)(ま、この程度で折れる意思なら、それも有りだよなぁ)
(;*゚ー゚)『ちょっと皆さん! 残念だけどここ会話中は時間がとまる素敵世界じゃないですよ!
しっかり流れてますからね! みんなモニタに注目!』
(*゚ー゚)『パイラー、目標と接触!』
と、唯一真面目に取り組んでいたオペレータの片割れが、
マイクの音量を上げて室内へと叫び、あわあわと各自が持ち場へと戻った。
(*゚∀゚)「パイラー、聞こえてる!?」
返事は、ざ、と小さなノイズが一度。
大きなモニタの一つ、レーダーの役割を果たす箇所を見れば、
おびただしい数の赤い光点に、一つの青い光点が凄まじい速度で迫っていく。
(;*゚∀゚)「……またっ、クーちゃん! 相手は数が多い、突っ込んじゃ駄目だよ!!
ちゃんと現場の人たちと連携して…!」
( ,,゚Д゚)「たく、しょうがねえガキんちょだ……俺もいい加減行くぞ」
(;*゚∀゚)「うー、話は後だね……クーちゃん、今増援が行くからね、
え?要らない?どうしてすぐそういう事を…!!」
105
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:13:57 ID:YuEAbayY0
こうして、状況は始まった。
場の誰もが自らの成すべきを行い、戦っていた。
ギコは俯く姿を一瞥することなく、部屋を出た。
対する内藤は「あ」と小さく声を漏らすも、すぐにまた俯いてしまう。
( ω )「……」
ζ(゚‐゚*ζ「ブーン…?どうした?」
言葉が、見つからなかった。
漠然とした思いを形にすれば、正義の味方、といった類が出てくる。
ならばそれになりたいのだろうか、当然、なれるのならばとは思う。
けれど、これは現場を知らない者が語っていい物ではない。
何故なら正義の味方とは、結果がつける名前だから。
戦うという事がどういう物なのか、何を意味するのか、
辛く、苦しいものなのか、あるいは簡単な物なのか、
( ω )(僕はまだ知らない、何も知らない)
覚悟はある、しかし、"そのつもり"がつく。
何キロあるか分からないマラソンを、スタートする前に完走できるか分からない。
106
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:14:38 ID:YuEAbayY0
その覚悟を明確にするには、何と言えばいいのだろう。
必ずやり遂げます、なんと薄っぺらい言葉だろう。
それなら、やはりそもそも戦う必要などないのでは。
しかしそれでも、戦いたいと思う、なぜだろう。
( ω )(僕は、単に戦いたがっている?)
金色の巻き毛の、可愛らしい少女の姿が浮かんだ。
もう、どんな表情をしていたのか、思い出せない。
だけどきっと、大事な人。そうなるはずだった。
そこにきっと、とても小さく、幸せな生活があったのだろう。
だが奪われた、イーバという化物が落ちてきて、全てが狂った。
あの子も、世界も、僕の心も、体も、全て。
( ω )(やつらに、復讐をしたい?)
けどそんな理由では、きっと誰にも認められない。
そればかりか、内藤自身の本心ですらない。
107
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:16:20 ID:YuEAbayY0
確かに許せないという気持ちはあるが、それは今現在の物だ。
何故なら内藤は、殺されはしたが、直接それ以上の何かを受けていない。
ツンの事は、隕石による被害、事故として心の整理はついている。
自身の事は、そもそも明確に覚えていない、何を思うより早く、すでに殺されていたから。
( ´ω`)(僕は……どうしたいのだろう)
胸に手を添え、答えを求めるように念じてみる。
しかし応えは無く、輝きも無い。
願えば応えてくれていた青い光が、ここに来て無反応。
なぜ、とは思わなかった。
( ФωФ)「……その様子では、ギコ君の真意は理解しているようだな」
( ^ω^)「……」
ζ(゚‐゚*ζ「ちょっと乱暴でしたけど、さすがに」
気付けば、コートの男が隣で腕を組んでいた。
デレは変わらず、付かず離れず、内藤の隣に佇んでいる。
こうして、三人だけがぽつんと、遠巻きに映像を眺めていた。
( ФωФ)「ギコ君、彼はかつての戦いを生き抜き、尚も同じ道を選んだ…言わば本物の勇者だ」
( ФωФ)「故に言葉は真実、君が選べば、そこには苦難という道が待っているのだろう」
108
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:17:45 ID:YuEAbayY0
( ^ω^)「……」
( ФωФ)「だが、本音を言えば……私は、君の力が欲しい、あの巨体をも圧倒したあの力を」
(;^ω^)「…それはまた、正直ですお」
( ФωФ)「ふ、隠し事はしても、嘘は語らぬよ」
( ФωФ)「それで内藤君、君はどうなのだ? その意思はあるのか?」
( ω )「僕は……」
( ФωФ)「…………ふむ、では想像したまえ」
( ^ω^)「…想像?」
( ФωФ)「その道を選んだ時、君が辿ることになる姿だ」
言って、コートの男は周りへと指示を出した。
受けた者達は了解と応え、いくつかの確認を投げた。
「定点カメラ反応無し、可能なのはヘリからの望遠映像ですが、よろしいですか?」
( ФωФ)「うむ」
(*゚ー゚)「メインモニタ、出ます」
109
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:21:13 ID:YuEAbayY0
そして映し出された映像に、内藤は言葉を失った。
荒野と化した地上を見下ろす代物だったが、そこにおぞましい物が見える。
物凄い数の蜘蛛が、群れを成して地上を這う様だった。
全体を写す映像と、小さなコマに映る拡大映像。
そのどちらにも、見覚えがある。
何度もフラッシュバックして見た、あの機械蜘蛛だ。
背筋に冷たいものが走り、鳥肌が立った。
なによりまず、恐ろしいと、そう思う。
震える手をデレが取らなければ、その場に座り込んでいたかもしれない。
( ФωФ)「……それが、今この場にVIPが居ない理由だよ、内藤君」
(;゚ω゚)「お…?」
( ФωФ)「先ほど話にあったとおり、機械人種は数多く生活している、
だが、そのほとんどが一度、イーバによって殺された経験をもっている」
ゆえに、そうしなければならなかった、限界状態の過去を越えた今。
尚もイーバに関わろうとする者は、決して多くない。
( ФωФ)「異端なる怪物と、死への恐怖、それらはそう簡単に拭える物ではない、
恥じること無いぞ、それは当然の反応なのだから」
110
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:23:13 ID:YuEAbayY0
(;^ω^)「……っ」
そんな事はない、怯えてなんて居ない。
そう言いたかった、言えなかった。
(*゚ー゚)「……第三ラインまで後退、定点カメラ、出ます」
告げる声と共に、映像が再度切り替わった。
今度は正面、地上からの様子だ。
迫ってくる蜘蛛の群れ、しかしそこに一つ奇妙な姿があった。
( ФωФ)「そして、あれがVIPと呼ばれる者の姿だ」
ttp://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_297.jpg
小柄な、やたらとフリフリのドレスを纏う少女だ。
先ほどここで見た、あの寡黙な少女が、何か大きな獲物を手に戦っている。
しかし妙なのは、腕に見えるその武器だ。
時折、青い輝きを見せるそれは、少女の身の丈ほどもある大きな銃剣にも見える。
だが銃口と思わしき部位には剣状の刃が差し込まれ、当の刃部位は渦をまいた杭となっていた。
そして銃口に差し込まれた杭が、噴煙を上げて蜘蛛の胴体を貫き砕く。
いわゆる、杭打ち機。パイルバンカーと呼ばれる代物だ。
111
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:24:05 ID:YuEAbayY0
どちらにせよ、少女の見た目も手にした物も、まともに行動できるようには見えない。
どこぞのゲームで見るような、巨大な盾とセットで扱うのがしっくりと来る代物だ。
だが、彼女の動きは俊敏で、かつ正確無比だった。
飛び、駆け。
払い、殴りつけ、打ち抜き。
杭が放つ青光が、残光となって筋を作る。
それら動作が行われるたび、蜘蛛の形が砕け散り、宙を舞う。
しかし破片がばら撒かれた世界を物ともせず、更に少女は突き進む。
数の差など無かったように、その姿に不安は一切感じられない、
ただひたすら、圧倒的。少女が動くたびに破片が飛び、破壊だけが行われていく。
そしてその映像は、吹き飛ばされた破片がレンズを砕くまで続き、
砂嵐まみれになったモニタはすぐにレーダーへと切り替えられた。
二人はすっかり見入ってしまっていたが、それでようやく一息つく。
ζ(゚‐゚;ζ「す、凄い…」
(;^ω^)(今の……あれが、本当にあの時の子なのかお…!?)
怪物と、それに立ち向かうヒーローの姿は、まるでアクション映画のよう。
あと何度かパンツが見えた。白だった、余談である。
112
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:24:51 ID:YuEAbayY0
そしてコートの男は問う。
あの場所に、立つ意思はあるか。
対する内藤は応えられなかった。
あの場所に、自らを当てはめることができなかったからだ。
更に、最後にその意思を支えていた、自分にしかできない事という一点。
それすらも、先の映像によってすっかり払拭されしまった。
しばしの沈黙。周囲からは様々な言葉が飛び交っていく。
それらはどれも、自分とはおよそ関わりのない事ばかりだ。
場違い、言葉にすればそんな感情が内藤の中にようやく芽生え、
ギコという男がくれた、おそらく最後の機会を思う。
ここで帰ると、そう言うだけで、今まで通りの平穏な生活に帰れるのだ。
それなのに、ここに残る意味はあるのだろうか。
そこに誰が。そこに何があるのだろうか。
気付けば内藤は俯いていた。
と、その時だった。
すっかり意気消沈する内藤を他所に、どこからかサイレンのようなアラートが鳴った。
113
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:25:38 ID:YuEAbayY0
「イーバ反応、更に増だ……いや、違う、これは…!」
(;*゚∀゚)「何の話!?」
ざわめきたつ室内は、明らかな異常事態を報せている。
突然のことに、隣に佇むコートの男を内藤が見やるが、男はただ目を細めるばかり。
(´<_` )「識別反応自体はそのまま、けどクオリティが桁違いと来てる」
( ´_ゝ`)「やはり第二駆動……前回のは偶然じゃなかったか」
異人兄弟がモニタを見据えてそう言った。
次いで、オペレータが映像出力をアナウンス。
そして現地の状況が再び、高度からの映像によって映し出された。
―――――――。
114
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:26:54 ID:YuEAbayY0
―――――――。
隕石落下によって大きく削られた大地は、
一度は海に沈んだものの、やがて潮引き干上がって、
今では何もない、しかし異様なまでにデコボコの荒野と化している。
航空からでは分かり辛いが、地表には沢山の抉れ痕が見えた。
それはもちろん、過去からつづく戦いによる物だ。
先ほどのアラートが鳴る少し前。少女もそこに居た。
時折その身めがけて飛び掛ってくるものは少数で、
基本的に彼女を避けていく蜘蛛たちは、ただ蹂躙されるばかり。
数十は居たであろう姿も少なくなり、逃げるように都市部を目指す姿もあった、
しかし容赦も、慈悲も無く、また一つ打ち抜かれた蜘蛛が爆散する。
115
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:28:03 ID:YuEAbayY0
その脇を抜けようとした蜘蛛に対し、続けざまに少女が巨大銃剣をぶん回す、
小柄な人間がすっぽりと納まってしまいそうな代物だが、しかし軽々と、
まるでただ腕を振るような仕草と速度で放たれ、
衝突。
結果、蜘蛛は鉄足をひしゃげさせながら吹き飛ばされて、
その先に居たもう一匹と事故りながら絡み合って転がった。
ぎ、ぎ、と関節部から悲鳴のような音を上げながら蜘蛛がお互いを離そうと足掻くが、
それよりも早く、二匹の頭上に影が落ちた。少女が追いかけ、飛び上がったのだ。
機械蜘蛛の複眼に、人の足と、ニーソの先にある白い布が映る。
次いで、少女は銃剣を振り下ろし、反動でぐるりと前転、銃口を下に向けた。
そして一筋の青光が地上へと伸びれば、地響きと、砂煙を生む。
煙が晴れると、少女が銃剣をかるく上に向け、立つ姿が見える。
銃剣の先端には、二匹の蜘蛛が砲口から突き出た杭に刺さっていた。
川リリ ゚)「……」
少女はそんな姿を一瞥し、HAKFD6ZL3:@ GVVS 5ん64T^@Q
次いで、銃剣のリボルバー部位から青光が溢れ、杭の先にて弾けた。
116
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:29:48 ID:YuEAbayY0
音は火薬類、爆発めいた衝撃が響けば、機械蜘蛛の身が千切れ飛び、
幾重の破片が弾けた光と混ざり合いながら宙にばら撒かれた。
不思議なことに、落ちた破片も輝きの中、溶けるように地面に消えていく。
これが、今なお続く戦いの荒野を、ただの何も無い平地とたらしめる理由でもあった。
原因は不明である。
だが想定される話では、消滅ではなく、この場合は無への変化を意味するとの事。
この性質変化が、果たして人の感情による物か、それとも別の要因なのかは分かっていない。
ともあれ、戦闘はこうして続いていた。
しかし不変ではない、ちょうど内藤たちが警報を聞いた頃、
その異変をあらわす現象がこの場に発生した。
川 ゚ -゚)「…!?」
それは、ついに最後の一匹を破壊するや否やの時だった。
まず起きたのは、地鳴り。
足元から微かに伝わってくる音が、振動として鼓膜に届いた。
どこか遠くで、大型車が通り過ぎたような、大きな揺れの前触れだ。
117
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:30:44 ID:YuEAbayY0
少女はその隙に逃げ出さんとする蜘蛛を大地に打ち付けたのち、
辺りを見回し警戒の姿勢をとるが、畏怖ではなく、あくまで敵の追加を探すための行為だ、
そうこうする間にも異変は尚も続き、遠い海に光が生まれ。
始まりは波打つように、そして一部が大きく膨れ上がった。
何か巨大なモノが、競り上がって来る。
最後に、ピタリと固まったまま少女は瞬きを一つ。
川 ゚ -゚)「………………………」
そして見たのは。
川;゚ -゚)「かに?」
小さく、確かめるように呟いた通り、現れたのは巨大な蟹だった。
分厚い装甲に覆われた二対のハサミを正面に、横長の体からは四本の足が見える。
単純な形状を説明すれば、それだけの物だ。
しかし異常なのは、遠目にも分かる山のようなそのサイズ。
と、呆然と見据える少女の耳に、ノイズ混じりの通信音声が届く。
『(;*゚∀゚)ざ、ざざ――く―ゃん、どうしたの!? 何が起きてるの!?』
川 ゚ -゚)「おかしい……カニなのに、よこむきにあるいてない」
『(;*゚∀゚) 何の話!?』
118
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:31:52 ID:YuEAbayY0
川 ゚ -゚)「ううん、でもわかる、あれってこないだのとおなじ」
ズン、と多脚が地を叩くたび、今度は地響きが鳴る。
遠巻きに伝わる振動に身を委ねるかのように、少女が体を左右に揺らし、
薄目にどこか惚けたような表情で、しかし怒気を含めた声色で言って。
川 ゚ -゚)「あれも、イーバ」
川 ゚ -゚)「こんどこそ、こわす」
言って。
駆け出した。
対する巨大蟹も、やはり真っ直ぐに少女へと向かって行った。
―――――。
119
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:33:37 ID:YuEAbayY0
―――――。
高度から望む拡大映像が、その巨体の全貌をあらわにした。
紫を基調としたカラーリングの刺々しい胴体からは、
ショベルカーのようなくの字の機械足が四つ。
分厚い装甲から覗き見える連結部のパイプを伸縮させ、排気煙を上げながら前に行く。
動作としてはゆったりした物だが、何せその巨大、一歩の幅が大きい、
浮上をはじめた姿は一気に上陸を果たし、内陸を目指して進む。
駆ける小さな姿との差は、物の数分で無い物とした。
ζ(゚Δ゚;ζ「あれ知ってる! シェンガオレンだ!」
(;^ω^)「や、違うと思うお……」
120
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:34:45 ID:YuEAbayY0
ζ(゚Δ゚;ζ「そう、弱点は足……!」
(;^ω^)「話聞いて!?」
そんなデレの言葉はともかく。
距離を詰めた少女がまず狙ったのも足だ。
正面からやや横へと進行方向を変え、腕を引き銃剣を前に向け突撃する。
だが巨大蟹も明確な迎撃の意思を見せた。
近づく姿に対し、胴体だけを回して狙いを定め、片鋏をふりあげ、
少女の進む先へと向け、振り落とす。傍目にも完璧なまでのタイミングだ。
室内にいくつかの悲鳴にも似た声が作られ、
次いで、地面に鋏がめり込んで、粉塵が上がって大きな亀裂が生まれる。
―――――。
121
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:35:48 ID:YuEAbayY0
―――――。
何か特別なことをした訳でもない、ただの腕振りだ。
だが圧倒的な重量は、それだけで小さな人体を容易く踏み潰す。
故に少女は全力で回避運動を取っていた。
見えている単純な動作ならば、避けるのはそう難しい物ではない、
だが、その一撃に付与される効果までは予測できなかった。
空を覆うような巨大物が落ちてくる姿に、不慣れな少女は一瞬の硬直を得て、
近距離を避けた際に発生した衝撃と風圧に体制を崩され、
弾けとんだ地面の欠片が四肢を打ち、たたらを踏みつつ膝をつき。
川#゚ -゚)「……っ」
銃剣を支えにすぐさま身を起こすが、割れた額から二筋の赤い線が頬をつたう。
そして、そうさせた敵を睨みつつ、ふたたび地を蹴った。
122
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:37:45 ID:YuEAbayY0
巨大蟹は半分以上埋もれた鋏をゆっくりと持ち上げ、
まとわりつく虫を払うかのように、再び少女へと向け打ち下ろす。
先ほどより溜めが無い、その分速度は増していた。
今度こそ、ただ飛んで走ってでは間に合わない。
少女は銃剣を使い、棒高跳びの要領で自らを浮き上がらせ、瞬間、青光が弾けた。
杭打ちによる衝撃を、すべて自分側へと向け身体を正面に吹っ飛ばしたのだ。
一歩間違えれば、肩から先が千切れかねない危険な避け方だ。
通信からは非難の声が飛び、実行した少女も苦悶の声を漏らした。
だが速度は充分、先ほどまで少女が居た箇所を巨大鋏が埋め、
少女は避けた勢いそのままに、機械脚へと肉薄。
川メ゚ -゚)「っっ……うちぬく!!」
更に一歩、助走をつけ。構えを取り。
巨大蟹の右脚の一つへ、銃剣の先を突きたてた。
123
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:39:41 ID:YuEAbayY0
次いで青光、次いで激音。
リボルバー部位が光を漏らして二度回り。
がおん、がおん、と獣の咆哮にも似た音が二度響く。
次いできぃ、と輝きが収束し。
多脚の一本の装甲が弾け飛び、中の鉄パイプと大量の管が剥き出しにされた。
更にその先端、鉤爪状の足付近は大きな穴を中心に、
ひび割れと欠損が激しく、身じろぎと共に火花と青色の液体を漏らしている。
見れば巨大蟹の中心、飛び出した目の下にある口のような部位から、
青色の揺らめきを作る泡がぶくぶくと生まれていた。
そして少女は既につぎの行動を移している。
奥に見えるもう一本の足を狙う挙動だった。
少女は腹の下へともぐりこみ、影の隙間を抜かんとする。
と、それを嫌がるように巨大蟹が多脚でじだんだを踏んだ。
同時に大き目の泡が一つ、浮かんだ。
124
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:40:59 ID:YuEAbayY0
さておき、巨脚での足踏みはそれだけでも脅威だ。
触れれば即行動不能、下手すれば即死。更には飛んでくる石が身を穿つ。
そして多足、内側へと入り込んだ彼女は、文字通り四方を封じられた。
銃剣を盾に堪えるが、全てを守ることはできない。
すぐに側頭部を大きめの石ころが打ち、少女はついに身体をよろめかせた。
蟹は更に泡を浮かべながら、多脚の動きをより激しくさせ
そして姿勢を崩した姿を、大きな脚の影が覆った。
その時、多脚が踏み抜く地鳴りの中に、違う轟音が混ざった。
音は頭上から聞こえてくる、それも一度ではなく多段。
規則性の無い轟音が、腹の下で反響する。
更にはいくつかの破片が落ち、大きな煙が立ち込めた。
揺れる視界の中、少女が横目に見えたのは、
いくつかの煙がつくる道筋だ。
それを辿れば、先に多数の人間が壁を作るように並ぶ姿があった。
彼らは一様に黒いごてごてしい衣服を纏い、手には銃火器の類が見える。
中には、スコープがついた太目の銃らしき物がある、
だが銃口はあまりに太く、内部は空洞で、しかし大きな硝煙を纏っていた。
125
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:42:39 ID:YuEAbayY0
川;゚ -゚)「……?」
「この野郎!!美味しそうな形してる癖に小さい子虐めてんじゃねえ!!」
「よおし撃て撃て幼女を守れ!! 第二波、構え―――」
「死ねよやーーーー!!」
すでに退却を始めたはずの、防衛陣の人々である。
彼らは少女の不利を察し、要はロケランぶっぱして援護したのだ。
だが大きな爆炎をあげた蟹の装甲は、一部の損傷程度に防がれた。
しかし動きは止まった、少女はその隙をついて腹の下からの回避を試みる。
駆けながら、少女はちらりと上を見た。
泡が、さらに増えて漂っている。
こうして、どうにか足元から離れる頃には、少女は血に塗れていた。
傷自体はそう深くは無いが、いくつもの裂傷が行動を鈍らせ、
機械の身体故、上がるはずの無い息を荒げていた。
126
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:43:30 ID:YuEAbayY0
蟹は、そんな事などお構いなしに進行を続け、
先にて並ぶ人々も、わあと蜂の子散らすように逃げ出した。
「あかんわ、撤退ぁーーい!!」
「おーい、君も一旦引きなよ! もう無理だよこれ!」
そして、少女にも逃げるよう促すが、
当の本人はまるで聞く耳持たず、感謝の意すら込めぬまま、
再三、蟹脚めがけて突貫した。
立ち位置は蟹の真横、がら空きの足は狙い放題、の、はずだった。
「……お、おいおい、まじかよ!?」
ふと、蟹は進みを止め、代わりに旋回運動に入ったのだ。
狙いは、言うまでも無く自らへと近づく少女だった。
そして陣の男が驚いたのは、その行為に対してだ。
何故なら。
――――――――。
127
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:44:51 ID:YuEAbayY0
――――――――。
( ´_ゝ`)「……たーだ進路を変えた、って訳じゃあないよな、流石に」
(´<_`;)「まさかイーバが、あの子を敵として判断したのか!?」
( ´_ゝ`)「体が体をあらわす、だっけか? あの日本語の通り、普通じゃない、か」
望遠の映像を見据えながら、兄弟は元から細い目を更に細めた。
辺りの様子も、どこか尋常ならざる事が起きていると伝えている。
もちろん状況は異常だが、内藤はなぜそうまで困惑が生まれるのか分からなかった。
(;^ω^)「……?イーバが横向いたのが、そんなに不味いのかお?」
ζ(゚‐ ゚*ζ「分からないの? ブーン……」
(;^ω^)「へ?」
ζ(゚Δ゚;ζ「蟹が横向いたら、本当の姿になってもっと早くなるって事だよ!!」
( ^ω^)「ああ、そういう……」
( ´_ゝ`)「それはそれで困るが、違うぞ」
128
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:46:51 ID:YuEAbayY0
(´<_` )「イーバには、昔からとある習性があってね」
( ^ω^)「習性……人を襲うってやつですかお?」
(´<_` )「ああそうだ、何よりも奴等が重視するのはそれなんだよ」
だから、イーバは市街地を目指す。
たとえ自分たちを壊そうとする者が立ちはだかっても、
遠回りはすれど、足を止め、振り返るような真似は決してしなかった。
特にそれが、既に人ならざる者であれば尚の事だ。
それがここに来て、新たな動きを見せた。
( ´_ゝ`)「そもそも"最初"の奴も、変な動きしてたしなぁ」
(´<_` )「内藤君が倒した奴か…やはりあれは」
しかし何より、内藤は兄弟がふとこぼした言葉に引っかかった。
問いかけると兄の方が、口の端をあげて問い返す。
その仕草には、どこかわざとらしさが含まれていた。
129
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:48:14 ID:YuEAbayY0
( ´_ゝ`)「なにかね?」
(;^ω^)「や……最初の? って、どういう意味ですお…?」
( ´_ゝ`)「最初は最初だろ、あの手のデカブツが初めて現れ、お前が倒した、その最初だ」
(;゚ω゚)「はじめて!? え? じゃあアレは!? てか、今までは!?」
(´<_` )「君の言う今までは、スパイディ、蜘蛛以外のイーバは確認されていない」
(´<_` )「初めて確認されたのが、君が倒したあの鎌をもった巨大イーバ」
(´<_` )「そして二度目が、今、あの場所に居る」
(;゚ω゚)「ちょ、ま、それって……!!」
( ´_ゝ`)「最初のは足が速くてなぁ、蜘蛛も居たし、先手を打たれて焦ってたんだが……
どういう訳か、デカブツはいつものように人間を襲おうせず、街を徘徊した」
( ´_ゝ`)「そん時は不思議なことに、何がどうなるより先に、更なる強大な力によって倒されたが、
あのデカブツの目的は、あの通り……もういい加減明らかだ」
130
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:50:26 ID:YuEAbayY0
そして皆、モニタを見た。
内藤は息を飲んで、その言葉の先を思う。
つまり、あの巨大イーバの狙いとは。
( ФωФ)「故に、先の言葉をもう一度言おう」
内藤は映像を注視したまま、その言葉を聞いた。
映るのは、蟹が再びハサミを振り、地面に穴を穿つ姿。
小さな影が煽られるように、吹き飛ばされた。
( ФωФ)「内藤君、私は君の力が欲しい、あの巨体をも圧倒した、あの姿が」
映像を見上げたまま、内藤は下げた両手を強く握った。
喉から出かけた返答を、しかし押し込み。
(;^ω^)「で…でも、何でだお!? それなら他の人だって、同じことをすれば…!」
131
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:51:46 ID:YuEAbayY0
( ФωФ)「まだ自覚を持てないのかね?」
( ФωФ)「君はヴェルタースオリジナル……特別なのだ」
(;゚ω゚)「……!」
(´<_` )「むしろ僕らが問いたいね、どうすれば、あんな変質が可能なんだい?」
( ´_ゝ`)「二つのクオリティクリスタルが共鳴し、あるいは反作用を起こし、
通常駆動を遥かに上回る出力からの変質を生む、言わば、限界を超えた―――超過駆動」
( ´_ゝ`)「まあ局長の話で、およその仕組みは理解できたが……
真似できるかと問えば、そうでもない、理不尽なまでの不確定要素の塊だ」
( ´_ゝ`)「だからまあ……俺も、もうちょい見てえなぁ、アレ」
(´<_` )「ああ、可能ならば、共に傍で」
(; ω )「……」
気付けば、室内の誰もが内藤を見据えていた。
(;*゚∀゚)「私からもお願いだよ、あっち、かなりヤバそうなんだよ…!」
(*゚ー゚)「既に騒ぎは市街地にも届きつつあります、情報規制は入っていますがいつまで持つか……」
132
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:53:58 ID:YuEAbayY0
そして誰もが、助けを請うていた。
ふと、内藤は遠い日を思う。
( ω )(………ああ、そうだ、そうだったお、僕はただ)
色々と、あれこれ考えすぎだったのだ。
正義がどうとか、平穏がどうとか、そんなのはもう全て手遅れ。
とある少女を、何もできないまま、遠くで失ってしまったあの時に。
既にその意思は、決まっていた。
ζ(゚ー゚*ζ「どうするの、ブーン」
( ^ω^)「……うん、一つ思い出した」
( ^ω^)「僕は、何もしないのが、やっぱり耐えられないみたいだお」
( ^ω^)「だから……僕も戦うお、VIPとして、勇者として…!!」
言うなり、青の輝きが胸に灯った。
そして室内に歓声が起きた。
133
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:56:23 ID:YuEAbayY0
そしてコートの男、
( ФωФ)「ならば、今こそ名乗ろう」
( ФωФ)「ようこそ新たな勇者よ、
ここは対イーバ対策本部エイジ、そして私は局長、名は」
こと、ロマネスクは、声高々に宣言する。
( ФωФ)「内藤君、君に世界と、VIPと、人々の希望を託す」
( ФωФ)「出撃せよ!! 勇者クオリティ!!」
( ^ω^)「了解ですお!!」
今度は強く返答をし、内藤は出口へと駆けた。
その際、兄者がその背に向け何かを投げ寄越す。
134
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:57:53 ID:YuEAbayY0
(;^ω^)「カプセル薬剤……? これは?」
( ´_ゝ`)「通信用の端末だ、飲めば体内で再構成される」
( ^ω^)(飲むのか……)
若干どころじゃない抵抗があったが、やむなく内藤は怪しい薬を口にした。
幸いとくに味も無く、喉を通る頃にはすぐに違和感もなくなっていく。
( ´_ゝ`)「さ、行きなよ、あとはオペ子が案内してくれる」
そうして促されるまま、内藤は扉を抜け、明るい廊下へと飛び出した。
何処に向かえばいいのか不明だが、とにかく来た道を戻ろうと進む、
「ざ」
(;^ω^)「…?」
と、ふとノイズが鼓膜をたたいた。
何やらムズムズするので方耳を塞げば、唐突に声が響いた。
『内藤君、聞こえる?』
(;^ω^)「おわ!? なんだお!?」
135
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:59:54 ID:YuEAbayY0
『(*゚∀゚)ああよかった、それじゃ案内するよ!』
(;^ω^)「え、あ、はい……」
(;^ω^)(つ、通信って、こういう事かお)
『(*゚∀゚)とりあえず廊下のどっかに、三角看板のビックリマークあるかな』
( ^ω^)「えっと、はい、ありますお」
『(*゚∀゚)じゃあとりあえず、そこの扉を開けて?』
言われるがままに開けば、そこには一人分程度のスペースがある。
覗き込めば、マッサージチェアめいた椅子があった。
『(*゚∀゚)緊急時用の移動シェルターだよ、そこに座ったらベルトを締めて』
しっかりと捕まるように、そう促された。
何だか嫌な予感しかしないが、やむなくそうするなり、
扉が閉じ、強烈な圧力が上から襲い掛かってきた。
(;゚ω゚)「ぬ、お、お、お、お、お……!?」
136
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/01(木) 00:01:17 ID:6pXeuMd.0
『(*゚∀゚)ああそうそう、言い忘れてたけど、これから君の事はカーズと呼ぶね』
『(*゚∀゚)通信が漏れたときのプライバシー保護の為にね、本名は避ける決まりなの』
矢継ぎ早に話はつづくが、正直それどころではない。
落ちない分恐怖感は薄いが、代わりに頭がぐらつき耳が痛い。
『(*゚∀゚)本当は空路で運んであげたいんだけど、君はちょち特別みたいだから』
やがて速度が緩むのを感じて一息つくと、
ポーンと音が鳴って扉が開いた。
『(*゚∀゚)代わりに、プレゼントを用意したよ』
(;´ω`)「う、うーん……クラクラするお…」
よろめきながら立ち上がると、そこはこれまた広い空間だった。
床にはいくつもの線が引かれており、宙にはPの看板が見える。
またしても駐車場、それも入ってきた時とは別の場所のようだった。
137
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/01(木) 00:02:39 ID:6pXeuMd.0
だが、車は一台しか見当たらない。
黒いスポーツカーだ。
低めの車高に流線ボディ、ボンネット左右タイヤの部位が膨らんでいる。
扉は観音開き、シートはバケット、リヤにウイング付だ。
そして後ろに文字がある。
(;^ω^)「あーるえっくす……はち?」
『(*゚∀゚)それが君への贈り物だよ、レッツビギン』
車は疎いのでよく分からないが、なんだかとても高そうだった。
そんな印象も手伝ってか、内藤は誰も居ない空間にむけ、両腕を交差させてバツを作る。
(;^ω^)「ええ!? でも、僕乗れませんお?! 免許も無し!!」
『(;*゚∀゚)そうじゃないよ!? 君、車のクオリティなんでしょ!』
(;^ω^)「あ、そ、そっか、変身すれば……!」
言って、内藤は車に手を当てた。
そして目を閉じ、少し溜めてから目を見開き、告げる。
( ゚ω゚)「変身!!」
138
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/01(木) 00:04:56 ID:6pXeuMd.0
,
139
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/01(木) 00:05:55 ID:6pXeuMd.0
少女戦闘続行中。
傷だらけになりながら、それでもクーは躊躇い無く突き進む。
戦果としては、右脚二本の装甲と部位破壊、左足一本の装甲破壊だった。
どれも、機能停止にまでは至っていない。
だが確実に、ダメージを蓄積させ始めた。
彼女にしても初めての巨大な敵との戦闘だ、間合いから何まで不明瞭。
それらを理解するまでに、かなりの時間を要してしまった。
ようやく慣れては来たものの、受けたダメージが自由な動作を許さない。
血を垂らす手指には青白い火花が散り、脚は鈍重、幾度か血が視界を奪った。
援護射撃もついに弾切れ、防衛陣も完全な後退を余儀なくされた。
だが。
川メ゚ -゚)「……こんどこそ、こわす…!」
果たして何がそうさせるのか、クーは一切、戦意を惑わせない。
140
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/01(木) 00:07:29 ID:6pXeuMd.0
およその速度は身体が覚えた、行動パターンも頭に入っている、
そしてこれまで、敢えて避けていた事がある。
だから少女は行った。
正面から真っ直ぐに、釣られて、蟹がハサミを振りかざす。
もう何度も行われた一連の流れの一つだ。
少女の動きを予測して放たれる攻撃は、機械故か、狂いが無い。
そしてこれまでの戦闘で、相手がこちらの動きに合わせて動いているのは目に見えている。
川メ゚ -゚)(……ここ!)
ゆえにクーは見切りをつけた。
回避できるギリギリの距離と、蟹が攻撃に移る境界線。
その場でブレーキをかけ、杭打ちを利用した無茶な方向転換。
蟹は狙い通り、少女の進もうとしていた先を穿つ。
141
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/01(木) 00:09:09 ID:6pXeuMd.0
少女の身体が後方へと吹き飛ぶように宙を舞う、
だが自ら行った行為ゆえ、くるくると回りながら姿勢を変え、
着地するや否や、地面に埋まるハサミへ向かって駆けた。
川メ゚ -゚)(ねらいは……)
瞬く間に距離を詰め、ハサミを足場にして、一気に本体を目指し。
ある程度のぼったところで、大きく飛び上がり、中心点へ。
川メ゚ -゚)(……め!)
頭頂部から飛び出した、二本の目玉部位。
分厚いバラボラアンテナのような形の、おそらく最も柔そうな箇所。
あれが少なくともレーダーの類であるならば、潰せば優位に立てる。
そして少女の狙いは正しかった、間違いなく、その二本は目であり、探知機でもあった。
川メ゚ -゚)「……え?」
誤算だったのは。
142
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/01(木) 00:10:50 ID:6pXeuMd.0
いつからか、蟹が吹いていた、青色の泡だった。
それはクーが腕を駆け上がると同時にばら撒かれた、シャボン玉。
目玉部位の下、口元で膨らんでいた泡が大量に宙に浮き上がり、
それを邪魔と見た彼女が、銃剣で打ち払った瞬間。
低音の、しかし大気を震わせるような衝撃が空に生まれた。
泡は幾度か浮かんでいたが、すぐに消えていた為、クーは警戒を怠った。
しかしシャボン玉の正体は青色エネルギーの塊。
対象が触れた場合、激しい衝撃波を発生させながら弾け散る、一種の強力な武装だった。
川; - )「っっ…ぁ……!!」
至近距離から全身に衝撃を受けた彼女が、蟹の反対へと身を流す、
ダメージとしては、そう大きな物ではなかったが、瞬間的な痺れが、全身麻痺を引き起こす。
更には吹き飛ぶ過程でいくつかの泡に触れ、身体が左右に跳ねながら、
ついには大きく、後方へと吹き飛ばされる形となった。
143
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/01(木) 00:12:32 ID:6pXeuMd.0
意識は、既に飛んでいた。
腕の武器は青の輝きの中に消え、少女のか細い腕に変わる。
そしてしばらくの浮遊を終え、頭から落下を始めた。
朦朧とする中、微かにクーが身じろぐが、
もはや何の意味も持たない。
生身と化した今の状態で落ちれば、まず助からない。
地表はみるみるうちに近づいて、そして。
落下する身体を、空中で受け止める影が割り込んだ。
144
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/01(木) 00:14:16 ID:6pXeuMd.0
落下する身体を、空中で受け止める影が割り込んだ。
( ,,゚Д゚)「だから一人で突っ走るなって言ってんだろうが」
川メ゚ -゚)「……?」
ギコと呼ばれた男だった。
彼は少女の身体を抱きとめ、労わる様にして着地した。
そのまま見据えるのは、巨大な蟹だ。
( ,,゚Д゚)「おいお前ら、こいつ連れて此処から離れろ」
そして後ろを追いかけてきた隊員と思わしき男に、少女を受け渡す。
クーはまだ諦めていないのか、拒否しようと足掻くが、
もはや力なく、されるがままに抱きかかえられた。
( ,,゚Д゚)「さて、と……」
向きなおし、空いた片腕を突き出す。
すると青い光が腕を包み、形を歪ませていく。
145
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/01(木) 00:15:49 ID:6pXeuMd.0
次いで光が剥がれ落ち、現れたのは、刀のシルエット。
だが刃となる部位は空洞であり、三角の頂点を切り取ったような形状をしている。
およそ武器には見えない代物だったが、変化はすぐに起きた。
空洞だった部位に、根元から光が立ち昇っていく。
青い輝きだった、やがて光が空洞の全てを覆うと、更に形を歪ませ、
いくつもの刃を象るような形状と貸した。
そして幾度か排気音が響き、刃が激しく上下運動を繰り返す。
動きは時と共に激しさを増し、やがて一つの線と化した。
高速旋回刃、チェンソーと言うより、電動ノコギリ。
男の名は、その存在から名づけられた。
そしてギコは回転刃を正面に向け、相対する存在へと言葉を投げた。
( ,,゚Д゚)「切り刻んでやるさ、覚悟しろよデカブツ」
146
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/01(木) 00:17:15 ID:6pXeuMd.0
.
147
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/01(木) 00:18:51 ID:6pXeuMd.0
変身。
と、声がむなしく響き渡る。
しかし、何も起こらない。
(;^ω^)「………あれ?」
『(;*゚∀゚)……どうしたの?』
問われ、内藤は嫌な汗をかいて狼狽した。
そう、実はあの初戦以来、なんだかんだで再度の変身を試したことが無い。
しかも緊急時に何が何やら分からない状態でやった事だ。
果たしてどうしていたのか、さっぱり分からなかった。
『 ナンカ、デキナイッテ!! ザワザワ エー ナンデ 』
そして、遠巻きに戸惑うむこうの様子が聞こえる。
かっこよく飛び出した手前、とても恥ずかしい物があったそうな。
『( ´_ゝ`)しょうがないな、教授しよう』
(;^ω^)「…す、すみませんですお」
148
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/01(木) 00:20:02 ID:6pXeuMd.0
『( ´_ゝ`)とは言え話は簡単だ、お前は今何をイメージした?』
(;^ω^)「えと、あの時のロボに変身を…と」
『( ´_ゝ`)ああそれじゃ駄目だ』
『( ´_ゝ`)いいか、クオリティクリスタルの力は、人の願いを形にする物ではない
突き詰めれば、人の感情を動力源にして物体を変質させる事にある』
( ^ω^)「……感情を、力に?」
『( ´_ゝ`)姿カタチはその結果に過ぎない、想像を心に、言葉で促し、感情を乗せろ』
( -ω-)「イメージ……」
思えばあの時は、ただ巨体に対抗できることを望んだ。
ゆえの巨大化、ゆえのあの姿。
ならば今必要なのは。
( ^ω^)(そういえばあの時は……)
ただ真っ直ぐに、立ち向かうための力を願ったのではなかったか。
より確固たるものとするため、選んだ言葉はあの時と同じ。
( ^ω^)「クオリティ、コード……」
手を車に添えた、いつの間にか輝いていた胸の光がより一層強く。
ついには触れた部位からも、光線のように青が溢れる。
「トランス」
――――――。
149
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/01(木) 00:22:39 ID:6pXeuMd.0
――――――。
「ご、おお―――」
雄叫びとも取れる声が、甲高い金属音の中に混ざる。
おびただしい量の火花が散り、回転刃が金属装甲を抉り削る。
そして。
( #゚Д゚)「るああああああああああああああ!!!!!」
音が、澄んだ音と共に消え、ギコの叫びだけが残り。
巨大蟹の全体が一度、大きく傾いた。
遅れて、大地に巨大な脚が横たわり、端から青い粒子となって消えていく。
装甲の割れた脚の一本を、ギコの回転刃が断ち切った。
( ;゚Д゚)「一本目……っとと、あぶねっ!!」
落ちた脚の傍らに着地したギコを目掛け、別の脚が襲い掛かってくる。
いぜんクーに対して行ったように、巨大蟹がその場で地団駄をはじめたのだ。
150
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/01(木) 00:26:05 ID:6pXeuMd.0
そして同じように、ギコの四肢を弾けた石ころが穿つ。
腕を掠め血が漏れる、だがお構いなしに、
ギコは地面を踏み抜いた瞬間の脚を目指す。
そして上がる脚を掴んだまま、己の身を宙へ投げ出し、
落下する勢いそのままに、もう一本、装甲の剥げた箇所に回転刃を押し込んだ。
火花は、軽く5,6メートルは上がった。
そして数秒を待たずして、更にもう一本の脚をも斬り落とした。
片側四本のうち、前部二本を切り落とされ、
機械蟹はついにバランスを崩し、斜めに倒れこむ。
( ,,゚Д゚)「―――はっ、殻の割れた甲殻類なんざ楽勝だね、
でかい癖に、あんな小せぇガキんちょにやられ過ぎなんじゃねえの?」
ギコは刃の背を肩に乗せたまま、そう言った。
だが逆を言えば、未だ装甲の残る部位はそう易々とは斬れないという事。
短い戦闘の最中、既に先行きに不利を感じていた。
151
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/01(木) 00:28:25 ID:6pXeuMd.0
だがやるしかない。
先陣を切った少女とうまく連携すれば、もっと良い手もあっただろうが、
それも今では適わない、それにあの少女が素直に従うとも思えない。
蟹が再び身を起こすまでの間、ギコは思案に暮れる。
今が好機ではあったが、少女の戦いを見ている限りでは、今近づくのは得策ではない。
近づけば、おそらく先のシャボン玉が再びばら撒かれ、痛い目をみる羽目になる。
それにその気になれば、残った脚を振り回すことも可能だろう。
現に蟹の目玉は常にギコの姿を追い、口元には泡が液状になって溢れている。
( ,,゚Д゚)(んー……)
せめてもう一手、鋏と脚を封じるか、あのシャボンを封じる手があれば。
思う間に、蟹がついに立ち上がった。
( ,,゚Д゚)「……地道にやるしかねえ、が」
ため息を一つ、現状できるのはやはりそれだけだ。
特定の行動パターンがあるならば、やはり同じ工程を行うしかない。
152
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/01(木) 00:29:50 ID:6pXeuMd.0
ふとハサミ部位を見れば、いくつもの裂傷が見える。
幾度と無く、回転刃をぶつけた痕だ。
だが、まるで砕くには至らない。
ギコのクオリティは、瞬間的な破壊力という点に置いて、
クーの杭打ち銃剣には至らない、つまり、奴の装甲を抜く手段が無い。
時間をかければ可能かもしれないが、動く相手に刃を当て続けるのは不可能に近い。
( ,,゚Д゚)(どうしたもんかね…)
『おうい』
と、そこへ一つの通信が入った。
『( ´_ゝ`)よう兄弟、調子はどうだ?』
( ,,゚Д゚)「最悪だな、斬れねぇんじゃ話にならん、何か手は?」
『( ´_ゝ`)おう、それなんだが――――とびきりのがある』
( ,,-Д゚)「そいつは楽しみだ、詳しく教えな」
153
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/01(木) 00:31:41 ID:6pXeuMd.0
『( ´_ゝ`)そろそろ増援が来るぞ、新顔のな』
( ,,-Д-)「………あー……」
( ,,゚Д゚)「……そうかい、やっぱそうなっちまうのか」
『( ´_ゝ`)そう言うなよ、大助かりだろ?』
( ,,゚Д゚)「……お前らは、わかってねぇんだよ、イーバと戦うってのが何を意味するのか……」
『( ´_ゝ`)わかってるさ、それより到着だぞ、迎えてやりな』
言って、ギコは遠くから響くエンジン音を聞いた。
ふと気付けば、巨大蟹もすでにギコを見ていない。
どこか遠く、とある一点を注視している。
次いで、蟹がハサミを振り上げ威嚇の姿勢を取った。
これも初めての行為だ。まるで、その存在を待ち構えていたように。
154
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/01(木) 00:32:54 ID:6pXeuMd.0
そして荒野へと飛び出してきたのは、青いカラーリングのRX-8。
運転手不在のその車は、タイヤに青光を纏い、荒れ果てた大地を物ともせずに駆ける。
『ギ、ギギ』
( ;゚Д゚)「!?」
と、そこでギコは不思議な声を聞いた。
蟹の方から、スピーカー越しに響くものだ。
『y……ャ…ヴ…ヴィ……ップ…………』
それは、途切れ途切れで非常に聞き取りづらい物ではあったが、
確かに、人の言葉を喋ろうとしていた。
しかしその音すら遮って、エンジン音がギコの正面にて停止、
ギコはただその姿を見据え、奥に見える蟹と正面の車を見比べた。
( ,,゚Д゚)(なんかよくわからん光景だな……)
155
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/01(木) 00:35:34 ID:6pXeuMd.0
『あ、あの……』
と、我慢しきれなくなったのか、今度は正面の車から声。
スピーカー越しで濁っているものの、やはり聞いた覚えがある。
だからギコは静かに問う。
( ,,゚Д゚)「何故来た?」
車の姿のまま、内藤が答えた。
(;^ω^)『……戦うため、ですお』
( ,,゚Д゚)「そうか、なら失うぞ、お前が培ってきた色々な物をな」
そこへ、蟹が新たな動きを見せた。
両のハサミを突き出し開いて、口から大量のシャボン玉を吐き出す、
次いで、ふわりと漂っていたシャボンがハサミの前へ出ると、一気に前へと押し出された。
( ,,゚Д゚)「走れ!!」
(;^ω^)『り、了解!!』
156
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/01(木) 00:36:33 ID:6pXeuMd.0
見るなり、ギコは車の屋根に飛び乗り指示を叫ぶ。
まず突風が吹き、その後を大量のシャボン玉が追いかけ、地面に当たって荒野に穴を開けた。
走りながら、内藤は言った。
(;^ω^)『違うお、僕は……失わない為に、ここに来たんだお!!』
( ,,゚Д゚)「だがお前は、ここに来て、既に平穏な今という日を失っている」
(;^ω^)『でもここに来なければ、きっと多くの何かを失った!!』
( ,,゚Д゚)「恨まなくていいのか、お前は他人の勝手な都合で既に家族を失ったのだろう」
(;^ω^)『だけどトーチャンの求めた物が、僕の命を救った! 力をくれた!!』
( ,,゚Д゚)「……何故、自分である必要がある? 他人に任せればいいんじゃないのか」
(#^ω^)『失いたくないから、自分がやるんだお、そんなのは当たり前の事だお!!』
( ,,゚Д゚)「……知らなければよかったと、後悔する日が来るぞ…!!」
(#^ω^)『関係ない、何を知っていようと、知らなかろうと、僕は……!!』
157
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/01(木) 00:39:11 ID:6pXeuMd.0
車が減速し、代わりに青い輝きに包まれた。
屋根から飛び降りたギコは、その姿が大きく変化していく様を見た。
起き上がり、手と、足を象る。
大きな、人の形をした機械だ。
(#^ω^)『失いたくないと思った物がそこにあれば、必ず僕は手を伸ばす……!!』
そして内藤は、再び青いロボットの姿へと変質。
旋回しながら泡を吐き続ける蟹へと向きなおすと、
迫ってきたシャボン玉のいくつかを叩き落す。
(#^ω^)『それだけだお!!』
破裂音がつづけて響くが、内藤は物ともせず、衝撃をすべて受け止めた。
全身を装甲で覆われた今の姿に、もはやシャボンは通用しない。
もう何を言われても曲がらない、そんな意思も込めた行為だった。
そして内藤は何を言われるかと身構えながら、返事を待つ。
158
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/01(木) 00:43:34 ID:6pXeuMd.0
( ,,゚Д゚)「そうか、なら行くぞ」
(;^ω^)『……あ、あれ…? いいんですかお?』
が、あまりにもあっさりとした受諾の言葉に拍子抜け。
思わず力が抜けて聞き返してしまう。
( ,,゚Д゚)「…敵を目の前にして、身内喧嘩おっ始めるほどアホじゃねえよ」
( ^ω^)『えと……じゃあ』
( ,,゚Д゚)「ああ―――」
まず、ギコが前に出た。そして真っ直ぐに回転刃を正面へ。
次いで内藤がその巨体で大地を踏みしめ、拳を前に。
ttp://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_300.jpg
( ,,゚Д゚)「さて、そんじゃ…クオリティを上げて行くぞ、内藤!!」
( ^ω^)『了解だお!!』
159
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/01(木) 00:46:25 ID:6pXeuMd.0
書き溜め分おわり。
あとは所謂ながら投下。
160
:
名も無きAAのようです
:2012/11/01(木) 08:33:47 ID:ZHohGYvMC
乙
挿絵は自作なの?
161
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/02(金) 02:25:52 ID:iAKp35520
二時間しか経ってないと思ったら翌日だったという言い訳、そして続き。
>>160
自作らしいです
162
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/02(金) 02:26:34 ID:iAKp35520
そしてそんな隙間を、青白い光線が通りすぎた。
_,
( ,,゚Д゚)「………おい、何だ今」
次いで、光が通った筋を爆発という結果が通り過ぎた。
の、と言う言葉が、お、という言葉に変わって二人が叫ぶ。
粉塵が舞う中、吹き飛ばされながらもギコが着地。
反対側では内藤が地面をえぐり頭からスライディング。
( ;゚Д゚)「っぶねえ…! どうなってん…!?」
そして、光線が伸びていった先を見れば、
数十メートル先の市街地にまで到達した爆発が、
立ち入り禁止の策をぶち抜き、奥の建築物までを破壊する様が見える。
光が通った道は黒く焼け焦げ、逆に辿れば巨大蟹、
見れば、飛び出した二本の目玉部位から大きな硝煙を上げている。
(;^ω^)『ビーム! ビームですかお!? あいつビーム撃ったのかお!?』
163
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/02(金) 02:28:13 ID:iAKp35520
『( ´_ゝ`)え? 何? 蟹がビーム撃ったの?』
『 ザワザワ カニコウセン!? ワイワイ ヤルトオモッタ ナンデモアリダナー ガヤガヤ』
内藤の言葉に、ガヤがにわかにざわめき立つ。
とりあえずギコは静かに通信機能をオフに切り替えた。
( ,,゚Д゚)(…? あの蟹、急に動きが変わった…)
(;^ω^)『ギコさん、大丈夫ですかお?』
( ,,゚Д゚)(……こいつが、居るから?)
言う間に、巨大蟹が再びハサミを展開、泡を射出した。
目玉の煙はまだ上がっており、よくよく見ればほのかに赤熱している。
( ,,゚Д゚)「来るな内藤! お前はそっちから周り込め!!」
(;^ω^)『は、了解!!』
市街地を背にするのは不味い、そう判断したギコはすぐさま行動に移した。
対する蟹は脚を失いよろめきながらも旋回し、敵の姿を追った。
狙いは、やはり内藤側である。
164
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/02(金) 02:29:40 ID:iAKp35520
( ,,゚Д゚)「こっちは相手するまでも無いってか…!?」
悪態をつきながらも肉薄し、空いた片側の脚へと斬りかかる。
ぎいい、と凄まじい音が鳴り火花が散った。
だが、切断には至らず。
装甲の一部を浅く抉り取ったに過ぎない。
( ;゚Д゚)(硬ぇ!!)
( ,,゚Д゚)「こうなりゃ……!!」
一方、蟹の正面に躍り出ることになった内藤は、
迫り来るシャボン玉を弾き割りながら、更に接近。
しようとするが、泡の数が多すぎた。
叩き落してしまえば容易く防げる代物であっても、
やはり直撃すれば身体は揺れ、複数喰らえば倒れてしまう。
(;^ω^)(……ち、近づけないお!?)
165
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/02(金) 02:30:46 ID:iAKp35520
そうこうする内、蟹の目玉に変化が起きた。
包むように青い光が生まれ、続けて先端のバラボラ状の部位へと収束していく。
(;゚ω゚)(嫌な予感!!)
次いで、懐中電灯を照らされたような感覚。
咄嗟にその場を大きく跳躍した直後、蟹光線が正面の内藤目掛けて放たれた。
直線状の光が、周囲のシャボンを蒸発させながら地面を打ち抜き黒く焦がす。
そして地が膨らんだかに見えた次の瞬間、隆起した荒野から爆炎が上がった。
宙に居た内藤はどうにか回避するも、爆発の衝撃をもろに受け、
もんどりうって地面を転がって、大地に大きな跡を残した。
(;^ω^)『いてて……ビームはずるいお…って』
そして間髪居れずにシャボン玉が襲った。
破裂音が連続して響き、内藤の体が大きく揺れる。
威力こそ大した物ではないが、動きを封じるには充分だ、
隙をつくように、巨大蟹が泡を吐きつつ前進、内藤の下へと向かう。
(;^ω^)『っっ……これじゃ、埒が明かんお…!』
166
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/02(金) 02:32:05 ID:iAKp35520
やはり、このままでは駄目だと。
どうにかして、もう一段階。
あの姿へと変わる以外、突破口は無い。が。
既に内藤は、頭の中で幾度と無く試そうとしていた。
だが胸の光と、攻撃や防御の際に纏う腕の輝きが強まるばかりで変化が無い。
ついでに蟹がもう目前まで迫っていて、ハサミを持ち上げており、
げ、と言った類の言葉が出る頃には、既に振り下ろされていた。
慌てて身を起こし、青色全開の両手で受け止めるが、堪えきれず膝をついた。
(;゚ω゚)『ぬ、おおおおおお!!??』
腕の装甲がひしゃげて、いくつかの火花が散った。
脚がどんどん地面にめり込んでいく、おかげで踏ん張りも効かない。
そして、激しい金属音が鳴った。
(;^ω^)『お?』
聞こえてきたのは、巨大蟹の左側面。
同時に巨体が大きく傾き、奥に脚が一本横たわった。
167
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/02(金) 02:33:15 ID:iAKp35520
( ,,゚Д゚)「三本目…!」
クーが遺した最後の部位破壊ポイント。
ギコが蟹の腹の下を突っ切って、勢いそのまま回転刃にて断ち切ったのだ。
バランスを崩した蟹鋏が重心を変え、内藤はその隙をついて離脱した。
(;^ω^)『ギコさん! 助かりましたお!』
( ,,゚Д゚)「そのまま正面、抑えられるか?」
その隙に脚を狙う、とギコが提案しようとするが、
続きを言うより先に内藤は、ひしゃげた両腕を見せつけながら無理と叫んだ。
( ;゚Д゚)「はええな……つーか、お前、早くあのでかいのになれよ」
(;^ω^)『どうしたらなれるんですかねぇ……』
( ;゚Д゚)「は?」
と、その時。
傾きかけていた蟹の目玉が再び青光を纏い、バラボラ部位を内藤へと向けた。
ギコが叫び、内藤は咄嗟にジャンプして回避を試みる。
168
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/02(金) 02:34:33 ID:iAKp35520
次いで、眩い発光と共に正射。
先と同じように、光線は一度地面を穿ち。
( ;゚Д゚)「馬鹿野郎!! 飛ぶな!!」
(;^ω^)『!?』
今度は薙ぎ払うようにして、光線が斜めに空を切り裂く。
間をおいて、内藤の左脚部のつけねから右肩にかけて、赤熱の線が生まれた。
そして、苦痛の声が爆発音にかき消され。
内藤の姿は空中の炎を伴う爆煙の中に埋もれ。
粉塵と煙を撒きながら、破損したロボットが地に転がった。
( ;゚Д゚)「内藤!! おい! 無事か!?」
(;´ω`)『う、うう……』
何とか五体無事には済んだものの、腰周りと胸部の装甲が半分吹き飛び、
光線を喰らった各所が剥がれ、内部機械が剥き出しになっている。
青い火花が呼吸するように散り、内藤は視界にノイズが走るのを見た。
通信が入り、安否を求める声がいくつも響くが、とても返事をする余裕が無い。
169
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/02(金) 02:35:49 ID:iAKp35520
だが、生きていた。
(; ω )(ぐ、ぬ)
死ぬかと思って死ぬほど痛かったが、徐々に体の感覚が戻ってくるのを感じる。
我が事ながら、自らの頑丈さに苦笑した。何故ならこれ、普通死ぬ。
しかし腕は動くし、足も抵抗は感じるが依然と稼動している。
そしてあの場所で見た物や、聞いた言葉を思い返す。
(; ω )(負けられない……! )
あの巨大蟹は尋常じゃない、あの体躯で手足を振り回すだけでも脅威なのに、
変なシャボン玉に、ちょっとやそっとの攻撃を跳ね返す装甲。
そして、ついにはこのとんでも破壊光線だ。
生身でどうこうなる相手じゃない、身を以って知った。
だから、と。
(; ω )(ロマネスク、あの人も言ってた、僕の力が必要なんだって…!)
それはこんな所で諦めたり、ましてや負けるなんて許される筈が無い。
皆が期待していた、そして同時にそれは願いでもあった。
170
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/02(金) 02:37:03 ID:iAKp35520
そして何より、何よりも。
(#^ω^)(デレが見てるのに…ここで負けたら、かっこ悪いじゃないかお……!!)
石ころを握りつぶし、内藤が身を起こした。
動けばそれだけで火花が舞うが、お構いなしだ。
と、息を巻いたはいいものの。
凝らした視界に、嫌な物が映る。
親切に待ってくれていたと思われた蟹の目玉が、再度青く輝いている。
(;^ω^)『や、やば…!!』
しかし、まだ素早く動けるほど体の抵抗は軽くない。
連射は卑怯だと思う一方で、内藤は見た。
光を蓄える蟹の目玉は未だ赤熱し、煙を吹いているばかりか、
幾度か火花を散らし、小さな爆発さえも見て取れた。
明らかにオーバーヒート、連射できる代物では無いという事。
そもそもすでに三本の脚を切り落とされ不安定。
そう、あの巨大蟹とて、必死なのだ。
171
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/02(金) 02:38:56 ID:iAKp35520
だからと言って、それはこちらも同じこと。
内藤はどうにか身を起こそうと足掻くが、
無常にも、それよりも先に、蟹光線が再び放たれた。
「おおおおおおお――――」
そんな両者の間に、躍り出る姿があった。
(;゚ω゚)『ギコさん!!?』
( ;゚Д゚)「ぐ…っ……!!!」
あろう事か、ギコは内藤を庇うように前に出ると、
光線に対して発光を強めた回転刃にて受け止め、切り裂かんとする。
同色の光が混ざり合い、裂かれるように光線が周囲へ散開、
あたりにやたらめったな焦げ後が描かれていく。
( #゚Д゚)「お、おいいいぃ!! 呆けてねぇで……! とっとと逃げやがれ!!」
ギコが叫ぶ。
文字通り、その背を呆然と見詰める内藤の目には、回転刃の峰が赤熱を始め、
受けきれない部分から漏れた光線が、ギコの足やわき腹を焼いていく姿が映る。
172
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/02(金) 02:40:09 ID:iAKp35520
(; ω )(駄目だ、このままじゃ、このままじゃ……!!!)
強烈なまでの死の匂い、このままでは共倒れだ。
意外と自分はまだ生き残るかもしれないが、ギコはそうもいかない。
最早、あの巨大な姿へと変わる以外に、助かる道は無い。
(; ω )(変われ、変われ、変われお……! 早く早く早く早く……!!!)
だが願えば願うほど、光が強まる、それだけだった。
何故、という自らへの憎しみにも似た疑念が浮かぶが、
そんな暇も無いとさらに強く願う、それでも変化は現れない。
(; ω )(何でだお!? どうしてなんだお!!!??)
苦悶の声が前から聞こえてきた。
そして。
(# ω )『とっとと変われって……言ってんだおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』
ついに願いが叫びとなって、外へと溢れ出す。
同時に、胸元の青い光が塊となって、二人の姿を覆い隠した。
――――。
173
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/02(金) 02:41:12 ID:iAKp35520
――――。
モニターに出されるのは、グラフィックにいくつかの光点。
敵と思われる赤い点と、少し離れた箇所に一つの青い点、
そして、二つあった点が重なり合い、一つとなっていく。
あたかも、一つが消えていくかのように見えるが、
彼らの状態を示す計器は、うち全て生きている。
そればかりか、単純なエネルギー総量を現す箇所が、完全に振り切っている。
(;´_ゝ`)「これは……超過駆動、やったのか…!」
(´<_`;)「だけど……何だいこの反応は? 何が起きてるんだ?」
(*゚ー゚)「映像、出ます!」
「……!!」ザワッ
( ФωФ)「………これは」
そして映された光景を前にして、誰もが言葉を失った。
―――――。
174
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/02(金) 02:42:46 ID:iAKp35520
―――――。
( ω )「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
音が割れた。
それは声というには、あまりにも単調で、ノイズ混じり。
大きく響くのは高音、きいんと響く。
その奥に声がある、しかしスピーカー越しの割れ音のよう。
今のブーンに呼吸は感覚、あるいは概念としてしか存在しない。
故に叫びは無限、絶え間なく続く。
そして、叫ぶという行為は、どうしても感情を奮わせる代物だ。
ゆえに、呼吸の代わりに行われるのは、動力炉への供給。
感情を奮わせる叫びとは、エンジンに注がれるガソリンのようなもの。
彼ら機械人種において、叫ぶ事はそのまま力の発動を意味する。
そしてブーンは、自の声を聞いた。
どんな思いも、迷いも、どうでもよくなっていくような感覚を覚えた。
どれほど叫んだのだろう、自分が何をしているのかも、痺れて分からなくなった。
175
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/02(金) 02:44:09 ID:iAKp35520
その果てに、やがて音がなくなっていった。
行為は理解できているのに、訳がわからない。
気が狂いそうだった、しかし、止める事もできない。
ただ気付けば、目の前が青く染まった。
その果てに、二つ目の、光を見つけた。
(;^ω^)「っ……!!」
そして視えた物を前にして、咄嗟に声が止まる。
気付けば、世界は何も無い、一面の青に染まっていた。
地面の荒野も、敵の姿も、あの光線でさえも。
(;゚Д゚)「……耳がいてぇー…なんだ、どうなったんだ?」
ギコは耳を押さえながら、よろめきながら問いかける。
ブーンは、ぼんやりと光る腕を眺めながら小さく頷いた。
( ^ω^)「…………分かったんだお」
(;゚Д゚)「何が……つーか、何だこれは?」
176
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/02(金) 02:45:47 ID:iAKp35520
( ^ω^)「……ギコさん、もう一度、ちゃんと聞きたい事があるお」
(,,゚Д゚)「…何だよ」
( ^ω^)「僕と"一緒に"戦ってくれるかお?」
(,,゚Д゚)「ああ、まあ、そりゃいいんだが、それよか」
( ^ω^)「よかった」
青色が、更に濃くなった。
ブーンは理解した、あの時と同じように。
自分に秘められた力ではない、自分に"搭載"された"機能"をだ。
最初の超過駆動の際、辺り一面を埋め尽くした青の空間。
そして、元に戻った際に残された、大量の車。
この二つが意味する事、それは。
( ^ω^)「それじゃ、行きますお」
(;゚Д゚)「……は?」
(#^ω^)「クオリティコード―――――」
内藤の体が、青色に包まれていく。
そして更には、相対するギコの姿さえも。
(# ω )『トランス!! フュゥウウウウウウウウウウウウウウジョン!!!!!!』
177
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/02(金) 02:46:28 ID:iAKp35520
.
178
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/02(金) 02:47:08 ID:iAKp35520
蟹イーバは、突如として現れた物体に、止めた後ろ足の一つを下げる、
青い塊は内藤たちを包むなり肥大化を続け、ついにはイーバの背丈を越えた。
そして市街地付近、立ち入り禁止看板が張られた柵の側。
監視用のコンテナハウスの中から、その場所を眺める者達が居た。
「お、おい、何だよあの変な青いドームみたいなのは…!!」
先には、球状の青い塊がある。
それも相当な大きさだ。
先ほど戦っていた、巨大蟹の全身を覆い隠さんばかりの球体は、
やがて光帯を纏って収束を始めると、何かの形を象っていく。
「全員呼んで来い! コイツはやべーぞ!!」
川メ゚ -゚)「……?」
ここに収容されていた少女も、遠巻きにそれを見た。
川;゚ -゚) 「……!!」
179
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/02(金) 02:48:44 ID:iAKp35520
先ほどのダメージが抜けていないのか、まだふらつく身体を壁に預けながら、
しかし現れた姿を前にして、言葉もなく驚愕の表情を示した。
その姿は。
川; - ) 「…………きょ、じん?」
大きな、人を模すような姿。
そして巨大蟹は、響く声を聞いた。
スピーカー越しの、自分よりも高みから。
『超・過・合・身……!!』
最中、内藤は一つここに来るまでに話した事を思い返す。
それは車の姿になって、街中を爆走していた時の事。
(カーズ、カーズクオリティだって、かっこいいねぇ)
(な、なんか恥ずかしいお……)
(そんな事ないよブーン、あ、そういえばもう一つの方の名前は?)
(もう一つ?)
(あの大きいのの、もっと大きいやつの名前だよー)
(ない…んじゃないかなぁ……)
180
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/02(金) 02:49:58 ID:iAKp35520
青い巨人が両腕を持ち上げ交差すると、
身体のあちこちにひびが生まれ、光線が溢れ出る。
(じゃあ私が考えるね?)
(とにかく凄いの、だね、特別で、とにかく凄いやつ)
(なら、そうだなぁ―――)
そして、両腕の振りぬきと共に、光が拡散。
剥がれ落ち、粒子となって舞い飛ぶ青い吹雪の奥から姿を現すは。
(#゚ω゚)『クオリティィィ!! カイ、ザァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!』
いつかと同じ超・巨大ロボットが、青雪舞う大地へと叫び立った。
しかし前回と違う箇所がある、左腕だ。
大きく重厚な腕があった箇所は、およそ手と呼べる代物では無く。
『な、な……なんじゃこりゃああああ!!!』
型は剣、しかし刃にあたる部位は空洞。
代わりに青い輝きを纏う刃が幾重にも分かれ、呼応するように回転し火花を散らす。
181
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/02(金) 02:51:03 ID:iAKp35520
その姿は、ギコのクオリティ、回転刃剣その物であった。
( ;゚Д゚)「………っ」
(#^ω^)『さあギコさん、とっとと片付けるお!!』
( ,,゚Д゚)「合身、ね…そうかい、そういうアレか」
お互いの姿どころか、自分の姿すら見えないが、言葉がどこからか響いてくる。
視界は共有のものとなり、二つの思考のやり取りが一瞬で行われ、最適な物が選択される。
本来であれば、大量の媒体を必要とするこの姿も、
三つ目の核を受け入れたことで、むしろ出力の増加は止まらない。
その力は、もはや小規模な衝撃波を生むシャボン程度では意にも介さず。
あれほど苦難を強いられた、巨大な鋏でさえも。
( ,,゚Д゚)「来るぞ…!」
(#^ω^)「こんなもの…!!」
街まで届くほどの高音を伴わせながら、一刀の下に斬り伏せた。
そして断たれた大バサミが宙を回り、粒子となりながら地に伏せる。
182
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/02(金) 02:52:35 ID:iAKp35520
蟹は火花を散らしながら、慌てたように泡を噴出させ、後退。
しながら、目玉に青光を集め、そのまま発射。
皇帝を名乗ったロボットは、身じろぎせずにそれを受けた。
そして直撃を受けた姿が、大きな煙に包まれる。
が、右腕の一振りで煙は払われ、そこには傷一つ無いロボットの姿があり、
代わりに命中したと思われる箇所が、青い光に包まれている。
次いで、ロボットが動きを見せた。
右腕を上げ、腕の各所からスラスターが展開される。
そして排熱が周りの景色を歪ませながら、
( ,,゚Д゚)『はっ、お返しだ―――ターボスマッシャ―――』
(#^ω^)『パアアアアアアアアアアアアアアアンチ!!!!!!』
爆発めいた音を響かせて、殴りつけるような仕草で射出された。
青い炎を噴出する腕は、一瞬のうちに加速し、
蟹の頭部、バラボラ部位を砕き、装甲を削って火花を散らしながら通過。
183
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/02(金) 02:55:11 ID:iAKp35520
いくどか火花が散ってから、頭部で爆発が起きた。
( ^ω^)『これでもう、ビームは撃てないお…!』
ロボットは掲げた右腕に、戻ってきた拳を装着。
今度は腰溜めに、巨大な回転刃を構えた。
( ,,゚Д゚)『これで、ケリをつける…!』
(#^ω^)『了解…! ぬぅぅ…、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!』
ロボットの胸元、二枚の装甲が左右に開き、青の結晶が露となる。
更には各部位にあるスラスター、排熱口、背の翼までもが展開され、
結晶に輝きが宿るのを筆頭に、火がつき煙を噴き、回転する刃が肥大する。
(#^ω^)『必ィィィィィィィィィィ殺ゥ!!!』
蟹は最後の抵抗を示すように、残ったもう片方の鋏を振り上げ、
ロボットへと迫る、対する姿は剣に全ての光を集め。
(#^ω^)『ヴィップ旋刃斬りィィィィィィィィィ!!!!!!!!!!!』
下からの、昇竜モーションでの斬撃を、襲い来る蟹へとぶち込んだ。
そしてそのまま飛び上がり、蟹を飛び越え、後方にて着地。
184
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/02(金) 02:59:09 ID:iAKp35520
展開されていた各所が閉ざされ、剣に宿っていた光が消え、
開いたままの排熱口からは大量の煙が吐き出された。
蟹は後方で、身体の中心に青い線を描きながらも、
そのまま前進を続ける、が、動きが徐々にぎこちなくなっていく。
ロボットの持つ剣から、ついには回転刃も消えていく、
代わりに、膨大なエネルギーの残光が、雷のように刀身に宿る。
蟹の動きは、ついにコマ送りのようになり、そして。
ttp://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_301.jpg
天を衝くような炎と青光の柱の中で、爆発、四散した。
185
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/02(金) 03:00:59 ID:iAKp35520
そして。
遠く、市街地の方から微かに聞こえてくる歓声と。
通信先から届く賛辞の言葉は、しばらくの間、止むことはなかった。
――――――――。
186
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/02(金) 03:03:03 ID:iAKp35520
――――――――。
(´<_` )「ギコは……色々と苦労してるからさ、態度は悪いけど、あれで根は良い奴なんだ、
だからアレコレ言われてたけど、許してあげてほしいな」
( ^ω^)「いや、別に最初から怒ったりはしてないですお?」
( ´_ゝ`)「そもそも、最初に迎えに行った時だってさ、車の中でうるさかったんだから、
平和に暮らしてる奴をどうこう、なんか黄昏てさぁ、言うわけよ」
ζ(゚ー゚*ζ「窓にひじをかけて顎をのせるアレですか?」
(*´_ゝ`)「そうそう、それそれ、そんな資格は……とかって、なんかチョーカッケーんすよ
ぶふーー!! 傑作だ、笑えてきた、ぶひゃひゃひゃひゃ」
( ,,゚Д゚)「……誰が何だって?」
187
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/02(金) 03:04:22 ID:iAKp35520
( ´_ゝ`)「おっと、何だ居たのか、とか言ってみる」
( ,,゚Д゚)「この暇人が、それはそうと弟の方、おっさんが呼んでるぞ」
(´<_` )「ん、わかった、ありがとう」
( ´_ゝ`)「え? 俺は?」
川 - )「……」
( ^ω^)「…お?」
ζ(゚ー゚*ζ「どうしたの?」
( ^ω^)「いや、今出てったの、あの時の子、かお?」
( ,,゚Д゚)「ガキんちょがどうかしたか?」
188
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/02(金) 03:06:08 ID:iAKp35520
( ^ω^)「…もう、身体はいいんですかお?」
( ´_ゝ`)「気になるかい? 性的な意味で?」
ζ(゚‐ ゚;ζ「――――!!」
(;^ω^)「このご時世に怖い冗談やめてくださいお! てかデレさん、絶句しないで!?」
( ,,゚Д゚)「俺ら機械人種は、体が千切れでもしない限り寝れば治るさ」
( ^ω^)「そういうもんですかお……」
( ,,゚Д゚)「気になるのか?」
(;^ω^)「まあ、同じVIPだし、そもそも何であんな小さい子が……って」
( ,,゚Д゚)「…………」
( ´_ゝ`)「……………まあ、そうだろうねぇ」
( ^ω^)「それに、何だかろくに話もできていないし」
189
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/02(金) 03:07:53 ID:iAKp35520
( ^ω^)「それに、何だかろくに話もできていないし」
( ,,゚Д゚)「ああ、それについては気にすんな、どうせ話しにならん」
(;^ω^)「へ?」
( ´_ゝ`)「笑ってるとこすら、だーれも見た事無いような子さ」
( ^ω^)「それって……」
ζ(゚‐ ゚*ζ「…………」
( ´_ゝ`)「……いや、ギコはよく見るんだっけ?」
( ,,-Д-)「あー……」
( ,,゚Д゚)「アレを、子供の笑顔と言っていいのか知らんが、な……」
190
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/02(金) 03:09:53 ID:iAKp35520
(*゚∀゚)
(*゚ー゚)「ツー? どうしたの?」
(*゚∀゚)「……ん、何でも、ないよ………」
(* ∀ )「…………………」
ttp://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_302.jpg
to be なんちゃら
191
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/02(金) 03:12:54 ID:iAKp35520
おわり、挿絵はどこまで描くべきなのかわからぬ。むずい。
次回 第四話 「少女の檻」
今度は多分近いうちに
192
:
名も無きAAのようです
:2012/11/02(金) 08:45:42 ID:/RQDw.BkO
面白い。支援
193
:
名も無きAAのようです
:2012/11/02(金) 22:58:15 ID:zCKVT5YE0
乙!
スーパーロボット物とは熱い
それに異世界絵上手くなったな
194
:
名も無きAAのようです
:2012/11/03(土) 09:49:41 ID:fIwal7QsO
きてたんかい
195
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 01:00:30 ID:.wU4MnIE0
さる長すぎワロタ
196
:
名も無きAAのようです
:2012/11/16(金) 01:06:23 ID:MDT/DdTM0
お?こっちで続けるの?
197
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 01:11:17 ID:.wU4MnIE0
もうちょっと待ってみるよ!迷惑かけてすまないねぇ
198
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 01:26:19 ID:.wU4MnIE0
よし、諦めよう。
まだ半分くらいなのにこれ以上さると戯れてる場合ではないので、
こちらに途中からで非常に申し訳ないですがちょっと置いていきますね。
199
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 01:27:35 ID:.wU4MnIE0
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1352984912/l50
これまでのおはなし↑ ↓以下本文
200
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 01:29:02 ID:.wU4MnIE0
――――――――――――。
( ,,゚Д゚)「……んで、あのガキんちょと合体すんのか?」
(;^ω^)(……他意は無い! この人に他意は無い筈だお……!!!)
基地にやってきて、しばらくのこと。
あれから気付けば少女は居なくなっており、まずは本日の事件をデレに説明。
しばしマッタリとしたあと、モニターが並ぶ本部から、やや離れた場所の地下喫茶店。
非戦闘系のVIPが主人のこちらの店は、内藤やギコたちの溜まり場となっている。
( ;゚Д゚)「なに焦ってんだ?」
(;^ω^)「何でもないです! それで、えーと、まあ、約束みたいなの、しちゃいましたし」
( ´_ゝ`)「合体の約束……いいねぇ、いいじゃないか…」
しかし別に存在する他意の塊、兄者がお茶をすすりながら言った。
突っ込んだら負け、そう思った内藤はスルーを決め込む。
201
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 01:29:53 ID:.wU4MnIE0
( ´_ゝ`)「しかも兄と妹プレイと来たもんだ、いい、実にいい……すごくいい」
ζ(゚ー゚*ζ「ふふ、姉をお忘れですね? あいにく3Pですよ?」
(;´_ゝ`)「姉……姉かぁー……姉はなぁ……なんだか鏡を見るようで…」
(´<_`;)「……どうでもいいけど、君もすごい乗ってくるね」
内藤は思った。
突っ込みたい、特に兄者さんあんた確か妹居たよね。と。
なんとなく察しては居たけれど、やはり危ない系の人なのではないだろうか。
ζ(゚ー゚*ζ「それにしてもクーちゃん、いつも可愛い服着てますよね、
なのになんだか、髪の毛とかぜんぜんお手入れしてないみたいだし……」
( ´_ゝ`)「服はどれも俺が用意してるんだけどな、髪は流石に本人の意思が必要だからなぁ」
(;^ω^)「……え?」
だんまりを決め込むつもりが、思わず聞き返してしまった。
ていうか、ないだろうかじゃなかった、完全に危ない人だった。
( ^ω^)「えぇ……? あのドレスみたいな、ヒラヒラしたやつですか……?」
( ´_ゝ`)「そうとも」
202
:
名も無きAAのようです
:2012/11/16(金) 01:30:53 ID:4fk3F65A0
こっちにしたのか支援
203
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 01:30:59 ID:.wU4MnIE0
(;^ω^)「……趣味なんですかお?」
(;´_ゝ`)「ja、そうだけど……何? 何か言葉が悪意に満ちてない?」
(´<_` )「兄よ、恐らく彼はこう言いたいのだと思う、HENTAIと」
(;´_ゝ`)「馬鹿な……! 可愛い子を可愛く着飾ることは悪い事だと言うのか…!?」
(;´_ゝ`)「そうなのか兄弟!?」
( ,,゚Д゚)「知らん」
ζ(゚ー゚*ζ「ううん、大丈夫、普通です、コモンセンスだよ!」
( ´_ゝ`)「oh…そいつはよかった」
(;^ω^)「そうかなぁ……」
と、兄者は咳払いを一つ。
茶碗を置くと、お茶らけた表情を素に戻した。
異国の顔立ちは、真面目な顔をすれば鼻も高く迫力がある。
同時におふさげ空気が一点する。
( ´_ゝ`)「まあ冗談はともかく、あの子には必要以上にそういった事をさせるべきだと思っている」
( ,,゚Д゚)「ま、その辺については止める理由がねぇからな」
204
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 01:31:59 ID:.wU4MnIE0
( ^ω^)「必要以上…って?」
(´<_` )「…もういい加減、きちんと話すべきかもしれないな……空子のことを」
ζ(゚ー゚*ζ「くうこ……あの、クーちゃんの事ですか?」
(´<_` )「ヤ、どうしてあの子がVIPとなり、そしてああまで戦い続けるのか」
(´<_` )「これから話すのは、僕らが知る限りの、その理由と」
(´<_` )「そこへ繋がるための、もう一つの、かつての真実さ」
―――――。
彼女が生まれたのは、三年前の隕石落下事件から二日目の正午。
敢えて誕生を意味する言葉を使ったのも理由がある、
何故なら、それ以前の少女を知る人間は、もはやこの世に存在しないからだ。
あの事件によって家族、親類、友人、身の回りの人間すべてを、
本当に失ったのかどうかさえ、未だ分からないほどに、探す手段ごと失ってしまった。
205
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 01:33:16 ID:.wU4MnIE0
しかしそういった存在は、さほど珍しい物でも無い。
それは特に、イーバ襲撃戦が終わりを告げた頃に大きな問題となった。
首都部がまとめて吹き飛んだ影響で、個人を証明するデータバンクを大量に消失し、
身元不明なまま、と言った類の人間は同じく大量に現れる事になった。
そしてその際、特に被害を被ったのは、難民の子供たちだった。
蜘蛛ことイーバの有無に限らずとも、当時の混乱と世紀末ぶりは凄まじく。
自己証明できる大人ですら、自殺や他殺に自然死と、平然と命を落としていく時代に、
生き延びるための手段を持てない子供たちが、どんな運命を辿るかなど、想像に易い。
(´<_` )「特に、同じ境遇含めて知り合いが居ない人々は、それはもう悲惨だったそうだよ」
(;^ω^)「でも……確かそれって、国がすぐに動いたんじゃなかったですかお?」
そう、首都と首脳を失ったものの、それぞれの地区に残った人間たちが結託し、
本当の意味での、新たな政策を始めたのだ、そして内藤自身もまたその恩恵を得ており、
おかげで今もこうして、学校生活を送るに至っている。
206
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 01:35:56 ID:.wU4MnIE0
(´<_` )「だがそれは、君に配偶者が居て、かつ知人も多く、早急な自己証明が可能だったからだ」
(´<_` )「そうでない人々が群を成し、かつそこら中に溢れ、情報伝達の術さえ無い」
全てを覆うことなど、できるはずが無かった。
ζ(゚ー゚;ζ「じゃあ…残った人たちは…?」
(;^ω^)「まさか皆…!?」
(´<_` )「いや、もう一つあったのさ、受け入れてくれる場所がね」
それは。
( ´_ゝ`)「それが、今俺たちが居るここ、エイジという組織だ」
かねてより計画、開発が進んでいた、広大で莫大な土地をほこる地下施設。
まだ何も無かった場所へと、一人の男が人々を先導し、その場へ募った。
207
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 01:37:25 ID:.wU4MnIE0
(´<_` )「そして、皆を集めてその人は言ったそうだよ」
( ,,゚Д゚)「ああ……おっさんの演説か、俺も居たよ、そこに」
(´<_` )「僕は立ち会えなかったよ、今でも口惜しい」
( ^ω^)「何て、言ったんですかお?」
( ,,゚Д゚)「ああ……」
( ФωФ)『己を失った者、そして行く宛てを失った者たち、私にはそれをお返えしする術が無い』
( ФωФ)『しかし約束しよう、代わりに―――居場所と、役割を、その全てに与えると』
( ФωФ)『取り戻すことはできずとも、やりなおす事はできるはずだ、その手ならばここにある』
( ФωФ)『皆、力を貸して欲しい、そしてまた、共に創ろうではないか、皆の―――自分自身を』
ttp://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_312.jpg
広がる暗い地下空洞に、ライトに照らされた一人の男はそう、高々に言った。
208
:
名も無きAAのようです
:2012/11/16(金) 01:37:49 ID:mAP05EZY0
支援
209
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 01:39:23 ID:.wU4MnIE0
全てを失った絶望のさなか、自分を必要とし、かつ拠り所を与えると言った男の言葉に、
人々が希望を得たのは必然とも言え、沸き起こる賛同の中、涙を流すものも居た。
ζ( ー *ζ「……っ」
ふと、デレは肩を揺らして顔を背けた。
その気持ちは、内藤にもよく理解できた。
( ,,゚Д゚)「まあ、反発もあったみたいだがな、あのおっさん、その全部を説得して回ったよ」
そして尚、先頭を行く姿に、人々は強く応え。
わずか三年の間に、この巨大地下施設はこうして誕生した。
( ^ω^)「つまり……ここの人たちは、皆?」
( ´_ゝ`)「俺と弟は違うけど、8割以上はそうだな」
(;^ω^)「ギコさん……も?」
( ,,゚Д゚)「まあな……んな顔すんなよ、お前も同じだろ」
(; ω )「………」
210
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 01:40:42 ID:.wU4MnIE0
そして、一つ思い立つ。
ギコと言う名は、機械人種化した際の、あの回転刃からつけられた。
かつてそう聞かされている、そして誰もがそう呼んでいる事と、
詮索を避けたことで聞きそびれていたが、それはつまり、そういう事なのだろう。
( ,,゚Д゚)「おい、勝手に人のことで暗くなってんじゃねえ」
(;^ω^)「う……」
( ,,゚Д゚)「……別に、本名失くしたわけでも、隠してるわけでもねぇよ」
( ,,゚Д゚)「ただもう、使う必要がないだけだ」
別の名と、別の役割がある今、もはやそこに意味は無い。
ギコはそう言って、戸惑う内藤をぽかりと叩いた。
( ,,゚Д゚)「つーか、俺のことはどうでもいいんだよ、それよりガキんちょの事だろ?」
(´<_` )「そうだったね、話を戻そう」
211
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 01:42:15 ID:.wU4MnIE0
そして、クーと言う少女もまた同じようにして、組織に迎えられる事となった。
だが、そもそもの保護された時の状況が、数多の状況とは違っていた。
(´<_` )「あの子が助け出されたのは、イーバ襲撃から二、三日後のことだだったそうだよ」
当時はまだ組織も発起前、少女は近隣の非常病棟へと搬送される。
発見されたのは、既に目覚め始めたVIPが勇者として蜘蛛を掃討する戦場の近隣。
ほとんどが死に絶え、あるいは機械人種として生まれ変わる中だった。
見つけたのは、とある勇者の一人。
彼はその姿を見つけると、驚きに皆を呼ぶ。
当初は、ハエの群がるただの亡骸だと思われた。
何故なら少女の半身は、血溜まりの海に沈み、肉の塊の下敷きになっていたからだ。
そしてピクリともしない、時折まばたきをするだけで、身じろぎもせず、そこに居た。
見れば被さる肉の正体は、背中から中身をぶちまけた人間である事が分かる、
ひんまがった骨の向きや形から、どうにか姿勢を判断すれば少女を抱きしめる形だ。
親か、身内か、わからないが、彼女を守ろうとしたのだろう。
212
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 01:44:03 ID:.wU4MnIE0
破裂した頭からは、赤黒くなったものと、薄汚れたオイルのような粘着性の黄色。
それらは少女の全身をくまなく汚し、異臭と腐臭を漂わせる。
よく見れば嘔吐物と思われるものが幾度と無く、頬を伝って乾いた跡がある。
早く助け出さねば、使命感に駆られた勇者たちが引っ張り出そうとするが、
まるで固形物のように、肉塊もずるずるびちゃびちゃと引きづられるばかり。
よほど強く、しっかりと抱かれているのか、中々離れない。
やがて触れるのも躊躇われる両者の姿をどうにか引き離すが、
それでも千切れた両腕は、最後まで少女の衣服を掴んだままぶら下がる。
本来であれば、優しさを象徴し、惜しみない愛情の証であるはずのそれは、
姿を変えてしまった今では、ただの執念、あるいは怨念として映る。
男に抱えられながら、少女は力ない表情で、その腕を眺めていた。
やがてもう一人が、ごめんよ、と呟き、その腕を落とす。
213
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 01:45:45 ID:.wU4MnIE0
それでも、少女に変化は無い。
光の無い瞳に、涙の痕はあるが、もう流すことは無く。
口からは、呼吸音以外の一切が出てこない。
そしてそれは、助け出されてからしばらくしても変化無し。
肯定せず、しかし否定もしない。
ご飯も自分からは食べようとしないが、誰かが口に運べば咀嚼する。
その他も、ありとあらゆる事を、そのまま受け入れた。
中身の無い人形のようにベッドの上から動かない。
心無く、虚ろなまま、何の感情も示さない。
本当に、全部をあそこに置いてきちゃったんだな、誰かが言った。
やがて調査によって、少女の名前が判明する。
名は空子。
以来、それまで世話をしていた人や、その他の人の間で、
やがて少女はこう皮肉を受けるようになった。
214
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 01:46:47 ID:.wU4MnIE0
あの空って名前は、きっとソラじゃない、カラなのね。と。
からっぽの子供、カラ子、そう呼ばれ。
どうせ何も感じない人形なのだから、と、それ相応の対応をされた。
かつての事さえ、今では話として語る意外に存在しない為、
果たしてどんな目に合わされたのかも不明なままだ。
ただ、その様は殺されないことが不思議なほど、と誰かが称したと聞く。
だが、その人たちを攻める事はできない。
彼らとて、応えを得ることで、勇気を得たかったのだ。
喧嘩でもいい、それでも互いを認め合う術が必要だった、
そうでもなければ、苦しむ人ばかりの中で生きてはいけない。
ゆえに、その象徴のような少女の存在は、他を酷く苦しめていたのだ。
215
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 01:48:11 ID:.wU4MnIE0
だが、それを見かねた人間が一人。
少女を背負い、あてもなくその場から立ち去る者が居た。
( ^ω^)「助け出した、って事でいいのかお…?」
( ´_ゝ`)「ja、そしてその人間ってのが、君もよく知っている子だよ」
(;^ω^)「……えーと、ギコさん…?」
( ;゚Д゚)「子って言ってんだろ……つーだよ」
(;^ω^)「ツーって、あの、いつものオペレータの…!?」
同時に、その場に居たことの意味を思えば、
彼女もまた同じなのであると、否応なしに理解してしまう。
(´<_` )「幸い機械人種化……無事に二人とも蜘蛛からは逃げられたようだけど、身の上は一緒さ」
(´<_` )「ツーもまた、あの事故で、居場所と、両親と……妹を失っている」
216
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 01:49:54 ID:.wU4MnIE0
恐らくは、クーにその妹の姿を見たのだろう。
彼女は必死に少女を守ろうと、生きる場所を探した。
そして辿りついたのが、この地下組織だった。
ζ(゚ー゚;ζ「……あれ、二人、とも?」
(;^ω^)「お……クーちゃんと、ツーさん? あれ?ってことはまだ…?」
(´<_` )「そう、この時点では、あの子はまだVIPではなかった」
(;^ω^)「じゃあ、何で…! 何があったんだお?」
( ,,゚Д゚)「……あのガキが望んだからだろ、だからそうした―――そうだったな?」
( ´_ゝ`)「―――――……」
(;^ω^)「そう、した……? したって、どういう意味ですかお?」
(´<_` )「……順に話そう、まずはその後のことだ」
二人はやってきて、すぐに割り振りが行われた。
そしてツーは必死になって少女の世話をしながら、日々の中に身を投じた。
217
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 01:51:09 ID:.wU4MnIE0
幸いにも周囲はそんな二人を暖かく迎え、あるいは傷を舐めあうように、
やがて、二人はあの隕石落下の真実と、少女を抱いた肉塊の正体を知る。
寡黙な少女も、両親にまつわる話と、
画像に出された蜘蛛の姿に大きく反応を示し、
ついに言葉を放つ、ようやくぶりの事だった。
聞き出せたのは、両親と共に赤い空の下を逃げる話。
まず母親は、父親が見るな、と叫んで以来はぐれてしまった。
残る父親は、やがて自分に覆いかぶさりながら倒れこみ、最後に、
――空子、せめてお前は、おまえだけは――
言い残して、自らを抱きしめたまま、化物みたいな姿に変わってしまった。
そして化物になった姿を理解できず、他に居るはずの両親に助けを請いながら、
どうやっても離してくれない怪物から逃れようと、ひたすら泣き叫んでいた。
218
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 01:52:41 ID:.wU4MnIE0
そして、ついには、今の少女が涙を零し、暴れた。
落ち着かせようとツーも抱きしめるが、少女は狂ったように叫びまわり、
しばらくして、ようやく疲れ果てたのか、深い眠りについた。
だがその夜だけでも、十数回に渡り、
ふと目を覚ました少女の悲痛な声が、辺りに響いていた。
その翌日、ツーは少女にとある事柄を伝える決意をした。
して、しまった。
(; ω )「もしかして……勇者の…VIPの、事を? その時に…?」
(´<_` )「その頃には、きっともう理解していたんだろうね、両親は……殺されたのだと言う事を」
219
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 01:54:46 ID:.wU4MnIE0
( ´_ゝ`)「んで…ツーがそれを話した、すぐの事だってさ」
少女は、自らもVIPになると、なりたいと強く願いを示した。
だが、守ろうとしている少女のそんな真似を許せるはずもなく、
ツーは絶対に駄目だと言って、先ほどの発言を酷く後悔した。
なり方も伝え聞いたが、流石にそこまでは話さなかったものの。
しかし、その日の内に少女は自室から姿を消し、
出口を探して彷徨っているところを、付近の人間によって保護された。
聞けば、どこから知ったのか、既にVIPが蜘蛛によって生まれる事を踏まえ、
このまま外に出て、今もつづく戦場に向かい、自らの身を差し出そうと言うのだ。
反射的に、ツーは思わず手を出してしまった。
だが少女は怯まず、迷わない。
220
:
名も無きAAのようです
:2012/11/16(金) 01:55:18 ID:mAP05EZY0
クー……
221
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 01:55:40 ID:.wU4MnIE0
ツーはその姿に驚き、たじろいだ。
ベッドの上に居た頃の、弱々しく、無気力な姿はもうどこにも無く、
あるのは、強い意志を瞳に宿し、まっすぐな視線だけを向ける姿。
消えてしまいそうな儚さも消え、困惑の中に安堵を得るが、
しかしすぐに冷静になった心に新たな恐怖が芽生える。
遠くへ行ってしまう、少女の存在をむしろ拠り所としていた彼女に、
それはとても恐ろしいもので、どうにか止めようと試みる。
だが、少女の行動力はそれを上回り、ついに一つの可能性を得た。
( ´_ゝ`)「とある場所で、人工の変質結晶…クオリティクリスタルの研究が行われている、と」
( ,,゚Д゚)「んで、当時のそこの主任として派遣されてきた外人に、ガキは自分で試すよう言った、と」
( ω )「それって……もしかして…」
( ´_ゝ`)「…ああ、俺だよ、俺が、あの子にクリスタルを埋め込み、VIPとした」
222
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 01:57:42 ID:.wU4MnIE0
(; ω )「どうして……だお、だってそんなの」
( ´_ゝ`)「カラの子の話はわりと有名でね、当然こっちの耳にも入ってきていた、
その子が空子だと気付くのに……そう時間はかからなかった」
(;^ω^)「なら尚の事じゃないかお…!? 止めなかったのかお!?」
( ´_ゝ`)「止めたさ」
いくらなんでも、年端もいかぬ少女に人体実験など行えるはずもない。
その場の誰もが少女を止めた、現に彼女がVIPとして目覚めたのはそれから三月が過ぎた頃だ。
しかし、そこでふと内藤は気が付いた。
(;^ω^)「? 三ヶ月? あれ、でも確か…イーバとの戦いって、一、二週間だったって…」
( ´_ゝ`)「……大規模な掃討が終わった頃、通い詰めてくる少女に俺たちは言ったよ、
もう戦いは終わったと、敵はもう居ないから、必要もないのだと」
すると、毎日来ていた少女は、以来パタリと姿を見せなくなった。
当の兄者たちも、その後始末やら、勇者たちの今後の身の振り方やらと、
忙しい日々に追われ、いつしか記憶からも薄れていった。
223
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 02:00:21 ID:.wU4MnIE0
そして一月後、兄弟はとある場所で少女に再会することになる。
(´<_` )「……病室のベッドの上、点滴のケーブルに繋がれて、横たわる姿だった」
( ´_ゝ`)「はは、聞けばさ、あれからまた空っ子に戻って、今度は飯も食わないんだとよ」
( ´_ゝ`)「言われてる気がしたよ……つか寝てる姿から聞こえるんだよ、お前らのせいだって、
そして、願いが叶わないのであれば、生きていてもしょうがないんだって」
(; ω )「……………っ」
( ´_ゝ`)「だから二つの事柄を伝えた、一つは、まだ蜘蛛が完全に居なくなった訳じゃない、と」
( ´_ゝ`)「そしてもう一つは………君の願いを叶えてみせる、と言った事だ」
すると、生気を失っていた少女に、再び活気が戻り、
それから更に一週間ほどが過ぎた頃、少女が兄者たちの下を訪ねた。
(´<_` )「そこから先は、今とそう変わらないよ、時折蜘蛛があらわれては、
まだ何人か居たVIPたちと共に、それを蹴散らす日々だ」
224
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 02:02:14 ID:.wU4MnIE0
( ´_ゝ`)「ちなみにあの子の武装だけど、重火器の効果が薄いからと試作してた代物でね、
数ある中から選んだ理由は、大きくて強そうだから、だ……可愛らしいだろ?」
(´<_` )「それと…あの子が倒れるまで、そしてそれから、何があったのかは知らないが、
ツーは後を追うようにして、本部のオペレータに志願した」
( ,,゚Д゚)「あと違いがあるとすれば……VIPに嫌気が差して、何人か出てったくらいか」
ζ(゚‐ ゚*ζ「……………」
( ω )「…………」
手のひらで顔を覆い隠し、なんだか自嘲するように話を続ける兄者の姿に、
内藤もデレも、浮かぶ言葉もなく、返事もできず黙り込んでしまった。
と、ため息を一つ。
一度目を閉じ、兄者は初めて聞くような優しい声色で、呟くように言った。
( ´_ゝ`)「内藤、俺はね……今でもわからないんだよ、いったい、何が正しかったのか」
225
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 02:03:50 ID:.wU4MnIE0
今ある形なのか、それとも、もっと前に。
あるいは、全てただの延命処置にすぎず、本当は。
本当は何もかも、とおに―――。
( ´_ゝ`)「それに、こうも思った、たとえ歪んでいても、生きる目的さえあればいつか……」
( ´_ゝ`)「いつかは空でも……機械にも、心は芽生えるのではないか、と」
(´<_` )「だけど、そうはならなかった……ならなかったんだよ」
組織と言う鳥かごの中、イーバという餌が来るのを口を開けて待ち。
今はただ、その存在を喰らい、決して許さない。在るのは、それだけ。
(´<_` )「だから、この話はここでおしまいなんだよ」
けれど、と。
(;^ω^)「……おしまいなんかじゃ、ないお…」
226
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 02:06:10 ID:.wU4MnIE0
(;^ω^)「だってあの子は、僕を頼って、わざわざ学校まで来たんだお…!」
( ´_ゝ`)「違うね、あの子がやっているのは、当時から変わっていない……ただの、力の要求だ」
( ´_ゝ`)「奴らを倒すために必要だから……必要としているのはお前じゃない、お前の力、それだけだ」
自分たちの下を訪ねてきた時と、何ら変わりない。
同じ過ちを犯して、罪の意識に苦しむような真似する必要はないのだと、
そう言って、兄者は内藤の考えを一蹴する。
( ω )(違う、違うお……そんなはずないお…!!)
( ω )(本当の理由なんて関係ない…! だって大事なのは必要とした、その思いのはずだお…!!)
( ,,゚Д゚)「それでも……力を貸して、今度はガキんちょと合体するか?」
(;^ω^)「だって、手を伸ばしたんだお……必要として、頼ったんだお、それは嘘じゃないはずだお…!!」
( ,,゚Д゚)「それに、約束したから、か? なら悪いがキャンセルだな」
( ,,゚Д゚)「…悪いことは言わねぇ、やめておけ」
227
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 02:07:54 ID:.wU4MnIE0
(;^ω^)「どうしてだお……別に、やめる理由なんて」
( ,,゚Д゚)「聞いたろ、あのガキんちょにはな、イーバへの憎しみしかない、
空っぽの中に、それだけを詰め込んで動いてるようなもんだからだ」
( ,,゚Д゚)「俺も、身をもって試したから分かる、あの力はな、心とか感情まで一つにしちまう代物だ、
それを、あんなガキとやってみろ……お前、引っぱられるぞ」
(;^ω^)「………それは…」
( ,,゚Д゚)「何がどうなるかまでは知らんがな、良い結果なんざ、出るわけがねぇ」
とにかく、やめるべきだとギコが言った。
確かにどう転んでも、少女の気を晴らす結果にしかならないだろう。
後に、何が残るのだろう。
内藤は考えながら、すっかり冷めてしまったカップを眺める。
果たしてどうあるべきなのか、いくら考えても、やはり答えは出ないままだった。
――――――。
228
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 02:10:34 ID:.wU4MnIE0
――――――。
そしてここではない、どこかの海上。
一隻の大型クルーザーが白波を立てて進んでいく。
甲板には旅行客がそれぞれ、カモメを追ったり、海を眺めたり、
それぞれが楽しみを見出し、穏やかな時間をすごしていた。
中に、一際目を引く姿がある。
???「なあ、一体いつまでこんなトロ臭いもんに乗ってりゃいいんだ?」
陽光を映すような長髪をなびかせる、人影だった。
その者は、手すりにだらしなく身体を預け、後ろの姿に声を投げる。
???「ははは、まだまだ先は長いぞ、まあゆっくりしようじゃないか」
???「だーかーらー、それが耐えられないんだって…てか、そうだ」
???「いいじゃん、もうさ、飛んでっちまおう? いや、もう行くぜ」
???「いやいや待って、やめろくださいお願いします」
ちえ、と口を尖らせ、暇そうに長髪の人物はまただらりと両手を下げた。
背後では、眼鏡姿が椅子に深く腰掛け、いくつかの書類を掲げた。
???「やれやれ、そんなに空が好きかね」
???「当然だろ、空はいい、すごくいい」
空に透ける紙面には、いくつもの文字列が並んでいる。
その中には、変質結晶の文字が大きく描かれていた。
―――――。
229
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 02:12:14 ID:.wU4MnIE0
―――――。
そして隕石落下が作り上げた巨大なクレーター、ブルーホール。
荒野を進んだ先には、海面がまだ残っている。
そこにもまた、長髪の人物が一人、佇んでいた。
???「ここに立つのも、久しぶり」
正面から吹きぬける潮風を受け、ふと目を閉じる、
何かを思い返すようで、しかし、表情は眉をしかめ苛立ちを示す。
この場所に、許せない何かがあるのか。
しばらく海を眺めた後、やがて一人、市街地へと向かう。
背を打つ風が、人物の表情を隠し、もはやその感情は読み取れない。
ただ一度だけ、両の瞳が同じ色に輝いたように見えたのは、
果たして、空を映したことによるものだったのだろうか。
―――――。
230
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 02:14:28 ID:.wU4MnIE0
そして数日が過ぎた。
今日もまた、平和に授業を終えた生徒たちが帰路につき、
内藤たちもそこに混ざり、談笑しながら校庭を横切っていた。
(´・ω・`)「そういえば、妹さんは元気?」
校門を抜けたところで、ショボンは思い出したように言った。
は?妹?と思わず聞き返しそうになったが、寸でのところで気付き、
内藤は内心あわてて取り繕うように返事をした。
あれからイーバは姿を見せていない。
毎日のように基地には顔を出しているが、
何事もなければそう長居する理由も無く。
あの少女とも、特にこれといった会話もできていない。
なるべく意識しないように、とは思っているが、やはりそうもいかず、
ついつい遠慮する心が邪魔をしている事も一因している。
あと、もう一つ。
231
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 02:15:15 ID:.wU4MnIE0
(私と、合体して欲しい)
その願いに、果たしてどう応えるべきなのか。
内藤はまだ答えを見出せない。
いや、違う。
答えは出ている。
( ^ω^)(……叶えてあげる、べきだお)
そして心を一つとできるなら、いっそ変えてあげればいい。
言葉では通じ合うことができないとしても、もっと深い部分でならばあるいは。
それに、あの日に困惑する少女の姿は、とてもそんな、
歪んでしまった代物には見えなかったのだ。
なら、思うようにしてあげればいい、そして受け止めればいいのだ。
だから、迷っているのはまた別のこと。
232
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 02:16:22 ID:.wU4MnIE0
やめておけ、と言ったのが、他ならぬギコだったからだ。
できることなら、彼の言葉に対して、もう裏切りで返すような真似はしたくない。
そう心から思えるほどに、内藤はギコに対して信を寄せていた。
( ^ω^)「うーん……」
ζ(゚ー゚;ζ「ブーン?」
こうして悩むまま、に自宅へと戻り、お風呂につかってご飯を食べる頃になると、
そろそろ思考が疲れに変わってきて、やがて楽観的な姿勢に落ち着くことになる。
( ^ω^)(………まあ、基本はその時の状況だお、だから)
次が出てきたときに、それは考えることにしよう。
内藤はやがてそう結論付け、食卓に並ぶお皿を前に手を合わせた。
( ^ω^)「いただきまー」
同時に、着信を示す感触が鼓膜を叩いた。
233
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 02:17:23 ID:.wU4MnIE0
(;^ω^)「ん、なんだお?」
J( 'ー`)し「どうしたの?」
( ^ω^)「う、うん、なんか通信が、ちょっとごめんお」
J( 'ー`)し「あらあら、忙しないわねぇ」
(;^ω^)『はい、こちらカーズ、なんですかお?』
『(*゚ー゚)夜分にごめんね、悪いんだけど……』
(;^ω^)『……もしかして』
『(*゚ー゚)うん、適性巨大イーバ反応確認、カーズクオリティ、出撃を―――』
(;^ω^)『……了解…!』
何度か目の前のお皿と、時計を見比べながら、すぐに諦めたように返事をする。
そしてすぐさま立ち上がる息子を前に、母親は手を頬に添え。
J( 'ー`)し「あらやだ、また行くの? ご飯どうする?」
(;^ω^)「急いで行って、すぐ戻ってくるから、取っといてくれお…!」
234
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 02:18:40 ID:.wU4MnIE0
J( 'ー`)し「はいはい、それじゃ飛び出しには気をつけなさいね、あと局長にもよろしくね」
( ^ω^)「うん、んじゃ、行ってきますお!!」
こうして、内藤はまるで遊びに行くかのような挨拶を経て、
玄関へと向かうと、庭先に止めてある車へと駆け寄った。
尚、車には遮光マットが被せられている。
内藤はその中へ潜り込み、車に触れながら何かを呟いた。
微かに青い輝きが漏れ、次の瞬間には、マットがふわりと浮き上がり、
青色の車が姿を現し、ぶぉん、と一度大きくエンジンを噴かせ、
そのまま市街地を抜け、ブルーホールへと駆け抜けていく。
時刻は、ちょうど9時を過ぎた頃のことだった。
―――――――――。
235
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 02:20:31 ID:.wU4MnIE0
―――――――――。
( ;゚Д゚)『間違いじゃねえのか!? 今何時だと思ってんだよ!』
『(*゚ー゚)しかし、実際に強大な反応があります、それも、もしかすると、今まで一番……』
ギコは悪態をつきながらも、自室で横になっていた姿勢を起こし、
いくつかの着替えを羽織って、廊下へと飛び出した。
以前にも語ったように、イーバはあくまで、人間を標的とする。
そのためか、人の動かない夜間において、彼らの動きは非常に鈍いものとなる。
特に残党を狩るようになってからは、それは特に顕著に現れ、
これまで、夜にイーバが発生した事案は限りなく少なく、無いに等しい。
ゆえに、このタイミングでの襲撃に、ギコは何だか嫌な予感を得た。
( ,,゚Д゚)『カーズに連絡は?』
『(*゚ー゚)すでに現場に向かってます』
( ,,゚Д゚)『相方と違って仕事はぇえな、てか、そのツーはどうした?』
236
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 02:21:49 ID:.wU4MnIE0
『(;*゚ー゚)ええと……よく聞いてないです、けど、お休みらしいです』
( ,,゚Д゚)『休みぃ? アレが?』
『(´<_` )それよりギコ、変だと思わないか?』
( ,,゚Д゚)『思ってるよ、だが、行くしかねぇだろ?』
『(´<_` )違いない……何か分かったらすぐに連絡する、通信、また切るなよ?』
( ,,゚Д゚)『ヘイヘイっと』
ギコは以前にも内藤が使用した、地上行きのエレベーターへと向かった。
そして三角マークが示すその場所へやってくると、重たい扉が開かれ、
中にはベルト付きの椅子が一つ、だが入り込もうとした瞬間、小さな影が割り込んだ。
( ;゚Д゚)「っと……って何してんだお前」
川 ゚ -゚)「私も行く」
心なしか饒舌な、近頃話題の少女だった。
クーは脇を抜けて中へ入るとすぐさま椅子に腰掛ける。
237
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 02:23:07 ID:.wU4MnIE0
( ,,゚Д゚)「あのなぁ……」
川 ゚ -゚)「一緒に行かなきゃ、早く」
先に行きたくてそうしたのか、と思いきや、
クーは呆れた素振りで立ちすくむギコを手招きした。
そして二人は、狭い中に詰め込まれ、圧に耐えながら上を目指す。
( ;゚Д゚)(……ん?)
だがその途中、クーが止まる階を示すボタンの一つを押した。
ややあって、速度が緩み、ポーンと鳴って停止する。
ドアが排気音を立てて開かれ、先には暗闇の空間が広がっていた。
エレベーターから漏れる光がうっすらと内部を照らせば、棚とダンボールが見える、
それも相当な数で、資料室か、倉庫か、そういった類の場所のようだ。
( ;゚Д゚)「は? 何やってんだよこんな時に…!?」
川 ゚ -゚)「奥のほう見て」
( ,,゚Д゚)「奥? 何かあr」
言いかけた所で、ギコは背中を何かで押された。
突き飛ばすような力ではなく、まるで、壁が迫ってくるような。
238
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 02:24:27 ID:.wU4MnIE0
振り向いてみれば、クーが腕を銃剣に変質させており、
その大きな武装によって、押し出されたのだと分かる。
分かるが、なぜ剣先がギコへと向けられているのかは、わからなかった。
故に反応が遅れ、リボルバーの回転に伴う小さな破裂音が、暗闇の空間に反響する。
溢れた光も小さなもので、威力としてはそう高いものではなかった。
だが、それでもギコを外へと弾き飛ばすには充分だった。
( ;゚Д゚)「……てめ、何しやがる!?」
よろめきながら何歩か進み、棚を支えに振り返れば、
今度は銃剣を上にむけ、壁へと突き立てるなり、
先とは比べ物にならない量の光と音が、空間を埋め尽くした。
次いで大きな亀裂が壁を縦横無尽に走り回り、青光を漏らしながら天井まで到達。
瓦解した。エレベータの入り口を落下してきた瓦礫が埋めていく。
239
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 02:25:40 ID:.wU4MnIE0
見れば少女はすぐさま中へ乗り込んでおり、再び上を目指し、急速に上昇していった。
そしてついには、その箇所を山盛りの瓦礫が埋め尽くしてしまった。
ちなみにギコは呆然とそれらの犯行を見ているばかり。
だが、少女が何故あんな真似をしたのか、狙いも考えもわかっている、
分かってはいるが、まさか実行されるとは夢にも思わなかったギコはただ。
「や……やりやがった……」
「あんの……クソガキィィィィィィィィ!!!!!!!!!」
自分の姿さえ見えなくなった、真っ暗闇の中、
閉じ込められた怒りをひたすら叫んでいた。
――――――――。
240
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 02:26:36 ID:.wU4MnIE0
その日は、やけに月の映える夜だった。
珍しく一番乗りで、現場である荒野へとやってきた内藤は、
すぐさま人型へと姿を変え、敵の姿を探した。
だが、ここに来るまでにも、辺りにも、その姿は見当たらない。
(;^ω^)「あれ……居ない」
背後には夜景、遠目には海のせせらぎが月に照らされている。
潮騒の音がゴォと小さく響き、風は穏やかに吹いていた。
だが本来であれば違和感があった、しかしそれはあくまで人の身においての話、
機械化しているゆえに、内藤はそれに気付くことができなかった。
しばし呆然と立ちすくんでいると、通信が届く。
『(*゚ー゚)どうしたの?』
(;^ω^)『しぃさん、えっと……居ないんですけど』
『(;*゚ー゚)ええ? でも反応は確かに……うん、あるよ、すぐ近く』
(;^ω^)『近くって……でも……』
241
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 02:27:44 ID:.wU4MnIE0
見渡したところで、やはり姿は無い。
ただ、ふと、海の音がおかしい事にようやく気が付いた。
音は、空気を揺らすかのように、ゴォ、と響いている。
『( ´_ゝ`)もしかしたら、姿を消しているのかもしれん、気をつけろ』
(;^ω^)『それ、どう気をつければいいんですお!?』
『( ´_ゝ`)目に頼るな、感じるのだ、敵が持つ悪しきエネルギーを…!』
( ^ω^)『感じ取る…!!』
『(´<_`;)真に受けない方がいいぞ、兄は先ほどまでダイの冒険という漫画を読んでいた』
(;^ω^)『空裂斬かお…!!』
『( ´_ゝ`)だが、潜んでいる可能性は高いぞ、注意したほうが……え?何?』
と、そこで通信先がなにやら騒がしくなった。
聞き取りづらいが、出られないとか、出口がどうとか。
242
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 02:28:43 ID:.wU4MnIE0
そのまま立ち呆けていると、やがて視界の中に妙なものを見た。
月が照らし、地表に落ちる影だ。
雲の流れに合わせて動いていた影の中に、一つ、動かない大きな影がある。
それが、移動する影の中にいつの間にやら生まれていた。
ハッとして、内藤は空を見上げた。
ぼんやりと見える星空の中、それは居た。
(;゚ω゚)『……鳥…!』
『(*゚ー゚)どうしたの?』
(;゚ω゚)『鳥だお、上に、馬鹿でかい鳥が居るんだお…!!!』
内藤が鳥といった姿は、まさに翼を大きく広げた鳥の姿が、空に浮かんでいる。
それにしても異様な光景だった、飛ぶというにはあまりにも動かない、
あたかもそれは、たまに見かけるトンビを巨大化させて、空に固定したような。
243
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 02:30:05 ID:.wU4MnIE0
『(;´_ゝ`)空を……イーバが、飛ぶのか!?』
(;^ω^)『ていうか、そうだとして、アレどうすりゃいいんだお!?』
こうしてお互い動かないまま、もうしばらくの時が流れた。
そして、遅れてクーが現場に到着し、内藤が伝えようと指を差した、その時だった。
空の鳥が、突然青い光を広げた翼から噴出させた。
そして旋回するように空を回りはじめた。
(;^ω^)『何なんだお…?』
川 ゚ -゚)「内藤さん、とりあえず合体を」
(;^ω^)『え…いきなり?』
川 ゚ -゚)「何をしてくるか分からない、整えておくべき」
(;^ω^)『それはまあ、確かに……』
と、空の鳥はまたしても動きを変え、今度は急降下。
市街地側の空から、内藤たちへと向け、凄まじい速度で迫ってくる。
244
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 02:31:02 ID:.wU4MnIE0
(;^ω^)『来た…!!』
川 ゚ -゚)「合体を、早く…!」
(;^ω^)『……』
するべきだと、内藤自身も分かっている。
何より考えた末に、そうしようと決めたはずだった。
しかし、何を話すよりも先に要求を続ける姿を前にして、
内藤は聞いたことを思い返し、ためらってしまう。
頼っているのではなく、利用しているだけ。
その様と、存在は、どこか恐ろしいものに思えたのだ。
しかしそんな葛藤は通じるはずも無く、鳥が迫る。
だが、突撃でもしてくるかと思えた姿は二人の上を通過し、
海を背に、ぐるりと身をひねって一回転すると、そのまま低空にて停止した。
245
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 02:32:27 ID:.wU4MnIE0
次いで、おかしなものが聞こえてきた。
『どうした、早く見せてみろよ』
言葉、そして人の声だ。
不意のことに、思わず周囲を探ってしまうが他に姿は無い。
その声はやはり、あの鳥から聞こえてくる。
『それとも、三人揃わないとあの変身はできないのかい』
川 ゚ -゚)「内藤さん…!」
(;^ω^)『っ……な、何言ってんだお…!! お前は何なんだお!!』
『私が何かって? お前こそ何を言っているのだ?』
(;^ω^)『お前、お前も……イーバ、なのかお!?』
『イーバ、か……ふふ、だとしたら、どうするんだ?』
(#^ω^)『なら、戦うだけだお…!!』
『なぜ?』
246
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 02:33:49 ID:.wU4MnIE0
(;^ω^)『なぜ…? 何故って、お前らが……イーバが、僕らを、人を襲うからだお!!』
『私はしていないぞ、それでも私を倒そうと言うのか?』
問われ、内藤は動けなかった。
だがお構いなしに、鳥は更に言葉を続ける。
『いや、そればかりか、お前たちが殺してきたイーバ達とてそうだ』
『まだ人を襲ってはいないのに、お前たちは殺してきたんだろ?』
『おかしいじゃないか、何故殺されなければならなかったんだ?』
(;^ω^)『でも、イーバは、お前たちは、実際にそれを行ってきた…!!』
(#^ω^)『街を破壊し、たくさんの人の命を奪ってきたじゃないかお……!!!』
『なら何故、お前は人間を殺さない?』
(;^ω^)『…はぁ!?』
247
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 02:34:47 ID:.wU4MnIE0
『壊されるかもしれない、殺されるかもしれない、それを理由とするなら』
『人間だって同じじゃないか、他人を傷つけ、物を壊す』
『お前の言い分はおかしいな、狂っているとしか思えない』
やはり、内藤は動けなかった、そして答える事もできなかった。
あの鳥の言い分を認めるわけでも、納得するつもりも無かったが、
それでも、返せる言い分は、一つしか無かったからだ。
川 ゚ -゚)「……うるさい」
そしてそれは、代わりに隣に佇む少女が代弁した。
川 ゚ -゚)「私は……私はイーバを許さない……」
川 ゚ -゚)「だから壊す、絶対に壊す、一つだって逃がさない」
対し、鳥はしばしの沈黙の後。
空に響くほどの音量で、笑い声を上げた。
『ははははは!!!! 流石は紛い物、人間の玩具だけあって言う事が違うぜ!!』
248
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 02:35:57 ID:.wU4MnIE0
『やはりこうだ、やはりそうだ!! これが人間というものだよなぁ!!!』
『だから私も、お前たちが同胞に対してするように、人間と、それに組する物を殺すよ』
告げて、鳥の全身を青い光が衣のように包んだ。
そして行く道に光の粒子を残しながら、再び空へと昇った。
声は遠いが、言葉はまだ続く。
『横の大きい方、そんな人の姿の真似はやめて、考え直したほうがいい』
『でなければお前もいつか、こういう人間に殺されてしまうぞ!?』
『もっとも――――今この場で、死んでしまうかもしれんがなあああああああああああ!!!』
鳥は空中にて縦に旋回し、内藤たちへと向けて飛翔した。
巨体とは思えないほど速く、そして縦横無尽で、
そして、空から内藤たちへと向けて翼を振るった、
すると無数の青く輝く羽根がばらまかれ、まっすぐに地表を穿つ。
249
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 02:37:07 ID:.wU4MnIE0
二人が立つ前方、数メートル先にまず着弾した羽根は、
地に触れた瞬間、青い閃光と、大きな爆炎を上げた。
内藤は咄嗟に少女をつかむように抱き上げ、その場を離れた。
直後、降り注いだ羽根が背中で爆発、凄まじい衝撃が背を打った。
(; ω )(……こいつ…まさか!)
空に見えた青をまとう姿に、内藤は圧倒されるような迫力を感じた。
同時に、その力にはどこか覚えがある、似通った物がある事に気付く。
それは、まさに自分自身の。
超過駆動を行った際のモノと、よく似ていた。
更にもう一つ気がかりな事がある。
250
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 02:38:20 ID:.wU4MnIE0
『ザ、−−−−』
(;゚ω゚)『しぃさん…!? 誰か…! 返事してくれお…!!』
(;゚ω゚)(何だお…!? なんで、なにも返事がないんだお!?)
それは、あの鳥が降りてきた辺りからだっただろうか。
本部との通信が、ノイズにまみれて全く聞こえなくなってしまったのだ。
.
代わりに内藤は走りながら、抱えた少女の声を聞いた。
「どうして…? 約束……嘘だったの……?」
空からは、降り注ぐ羽根の奥から、あの声が聞こえてくる。
『おい、どうした勇者様!! なってみせろよ、あの姿に!!!』
そして何故か、両者共に、自分に対して一つの行動を望む。
251
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 02:39:10 ID:.wU4MnIE0
先ほどの言葉と、この状況、二つのことから混乱状態の内藤だったが、
とにかく、今はこの場を切り抜ける事だけを考えるべきだと結論付け。
(; ω )「…! クーちゃん、行くお!!」
川 ゚ -゚)「!」
飛ぶように駆けながら放った言葉に、少女が強く頷く。
次いで青い空間が内藤を中心として、風になびく黒髪の姿を包み込んだ。
そして内藤は、青い世界の中。
奥から溢れ出てくる、赤色を見た。
―――――――。
252
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 02:43:32 ID:.wU4MnIE0
「おいおい………」
「何だよ…なんなんだよあれは……っ!!!!」
( ;゚Д゚)「あの……馬鹿、まさか…!」
都市部と荒野の境目で、ギコは遠方に見える光景に目を疑った。
まわりには見送りの防衛隊の人間が並ぶが、皆一様に言葉を失っている。
先の方に、二つの輝きが見える。
空にある大きな青い光と。
地上から煙のように立ち昇る――――赤い光だった。
『――ううううううううおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
そして声が聞こえる。
それは内藤のものだったが、ただ叫んでいる、なんて代物ではなく、
鬼気迫るような雄叫びは、まるで気が狂ったように続く。
そして、その場に居た誰もが、夜の闇に浮かぶ赤色に、
何か得体の知れない、恐怖を感じていた。
253
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 02:48:07 ID:.wU4MnIE0
ttp://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_313.jpg
254
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 02:49:45 ID:.wU4MnIE0
「……あの子、遅いわねぇ……」
すっかり冷めてしまった料理と、壁の時計を見比べて女性は呟いた。
現時刻は九時三十分、帰りの遅い息子のことを、母はただ、待つことしかできなかった。
そして、これから起きる事になる大きな事件を。
ギコだけが"知っていた"
つづく
255
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/11/16(金) 02:53:16 ID:.wU4MnIE0
長い眠い、お疲れ様でした。
次回 第五話 「赤い焔とライオン」
今度こそ短くまとまりますように。
256
:
名も無きAAのようです
:2012/11/16(金) 03:07:47 ID:Vh06of.Y0
長時間乙
257
:
名も無きAAのようです
:2012/11/16(金) 03:07:47 ID:UUj9zZGsO
長時間おつかれさまでした
258
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 19:36:50 ID:Tt8q6OW.0
王道で燃える
乙
259
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/12/08(土) 02:28:46 ID:QfJIXxGs0
第五話 赤い焔とライオン
260
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/12/08(土) 02:29:26 ID:QfJIXxGs0
青色の壁が、赤色に染められていく。
既に互いの姿は見えないが、その存在は強烈なまでに認識される。
寄り添うように、手を繋ぐように体が連なり、やがては感情までも。
まず感じたのは、強烈なまでの全能感。
想像し得るあらゆる物が、触れただけで容易く潰せてしまうような、
そう錯覚させるだけの自信と力が、全身から溢れ出てくる。
けれど、視界を染めていたもの全てが赤に染まる頃、
( ^ω^)「……?」
不意に内藤は、何も無い空間に自分の存在を見た。
世界は目も眩むような真っ赤に包まれ、先には一人、誰かの姿がある。
261
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/12/08(土) 02:31:37 ID:QfJIXxGs0
川 ゚ -゚)
意味の分からない状況。
だがこれに対して、疑問は一つも沸かなかった。
どこか現実味の無い世界は、まるで夢を見ているよう、
そして夢を見ている最中に、何かを不思議に思うことがないように、
あたかも当然のことであるように、二人は対面する。
( ω )「…………」
内藤は少女と顔を合わせているうち、胸焼けのような感覚を得た。
堪えきれず上を見れば、そこには赤枠で切り取られたいくつもの鏡が並ぶ。
形は大小まばらなステンドグラス、絵はそれぞれ違う柄を象っているがどれも見覚えがある。
平穏な日々、大切に思える人、自分の居場所と、それを支える沢山の人々。
そこには、今ある様々な記憶が映されていた。
( ^ω^)「そうだお、僕は、これを守るために、ここに居る」
262
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/12/08(土) 02:32:36 ID:QfJIXxGs0
川 ゚ -゚)「でも、それを壊すやつが居るよ」
言って、少女は天を指差した。
するとそこに小さな亀裂が生まれ、一息で広がっていく。
破片が割れ落ち、いくつもの赤い穴が開いた。
更に、穴から細長い脚のような物が出てきた。
機械仕掛けの蜘蛛だ。
それは穴から這い出てくると、鏡にいくつもの傷を生んだ。
その度に、内藤は胸を抉られるような痛みを得た。
通う校舎に穴が開き、知人の顔が傷だらけになっていく。
亀裂はいつしか至る所に生まれ、破片がパラパラと舞い落ちる。
そして降り注ぐ欠片の中、内藤は苦しそうに膝をつく。
( ω )「うぅぅ……」
もやもやとした感情が胸中渦をまき、ぐるぐると眩暈がする。
胸焼けのようなものは更に酷くなり、何かを吐き出したい衝動に駆られた。
263
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/12/08(土) 02:34:14 ID:QfJIXxGs0
これらの感覚の正体は、抑圧された苛立ちの感情からくるものだ。
そして、あとからあとから沸きあがる全ては、その想いが与えている、
自信も力も、そういった錯覚の全てが一度蓋を開けば、詰まる所、我を忘れるほどの、
川 ゚ -゚)「あいつらだよ、あいつらが、全部壊したんだ」
( ω )「……あいつ、らが……」
(# ω )「ああ……そうか、そうなんだお……」
(#゚ω゚)「あの、蜘蛛が、何もかも……!!」
川 ゚ -゚)「うん」
怒りと。
264
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/12/08(土) 02:35:38 ID:QfJIXxGs0
(#゚ω゚)「許さない……許すもんかお……!!」
川 ゚ー゚)「うん」
(#゚ω゚)「…思い知らせてやる、奴らがした事がどういう事か!」
川 ー )「うん、同じめにあわせてやろうよ」
憎しみと。
265
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/12/08(土) 02:36:57 ID:QfJIXxGs0
(#゚ω゚)「そうだお、ぶっ壊してやる」
(#゚ω゚)「潰して、苦しめて、苦しめて、苦しめて、苦しめて! そして」
川 ゚ー゚)「あいつらがそうしたように」
「殺してやる」
殺意によるモノ。
――――――――――。
266
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/12/08(土) 02:38:10 ID:QfJIXxGs0
市街地とクレーターの境目。
ギコが遠く先を眺めながら声を荒げた。
( ,,゚Д゚)『内藤、おいこら返事しろ!! 内藤!!』
『ザ―――――ザ、ザ――』
( ;゚Д゚)(なんも聞こえねえ…! どうなってんだ!ジャミングでもされてんのか!?)
( ,,゚Д゚)「くそ、しょうがねえな…!!」
「な、おい!?」
「ギコ、おま、どこ行く気だよ!!」
( ,,゚Д゚)「あ? 通信が駄目なんだから、直接行くしかねえだろ!!」
「バカヤロ死ぬ気か!! どうみたってあれ、まともじゃねえぞ!?」
「止めろ止めろ!!」
( ;゚Д゚)「てめ邪魔すんなゴルァ、この、離せ!!」
267
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/12/08(土) 02:39:40 ID:QfJIXxGs0
そんな騒ぎが起こる一方、彼らの視線の先、広がる荒野に二つの大きな姿がある。
一つはブルーホールの上空、鳥を模した大型の機械が空にシルエットを映す。
月光と、自身が放つ青光に照らされた全身には、いくつもの可変式噴射口がある。
特に広げた翼部位には大型の物が仕込まれ、今も粒子状の輝きを放出していた。
だが、鳥は空に固定されたまま、動かない。
つい先ほどまで、凄まじい速度で旋回していたが、
地上にて、青い塊が赤く染まるのを見るなり、飛行を止めたのだ。
???『……あの輝き…嘘だ…』
???『これは、これではまるで………!!』
そしてもう一つは。
(#゚ω゚)『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!』
全身から蠢きたつ赤い光を纏う、人型の大きなロボットの姿。
268
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/12/08(土) 02:40:44 ID:QfJIXxGs0
だが片腕は人間の代物ではなく、幾度か見かけた少女の手にした銃剣。
だが全容は今も揺らめいたまま、赤いシルエットだけが夜闇に映える。
やがて遠方、市街地側から眺める人々は、空に輝く青に向かって、
うごめく赤い光が強く輝き、空をも色付けながら飛び上がった姿を見た。
速度はまるで流星のよう、瞬く間に距離が詰まる。
だが、鳥型ロボットはそれを視認するなり、大きな残光を放ちながら、
更に上空へと昇り、遅れて、残った青の粒子を巨大な銃剣が貫いた。
鳥はその場で縦旋回、上昇しながら、首の部位だけを背後へ向ける。
その先には、赤いロボットが火の玉のような輝きを纏わせ空を行く姿がある。
両肩から展開された大きなウイングと、脚部に多数あるスラスターにて姿勢制御を行い、
空中にて、あらためて鳥へと向きなおす姿はその巨体とも合わさり、異質な物に映る。
特に異様なのは、右椀部。
ロボットの全長にも迫る大きさの、巨大な杭打ち銃剣、のようなもの。
ギコとの合体がそうであったように、相方のクオリティを形とした物ゆえ、
それがクーの持つ武装である事はわかるが、見た目には大きな違いがある。
269
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/12/08(土) 02:42:37 ID:QfJIXxGs0
何故なら、ロボットの姿は形として見えるにも関わらず、
腕の途中から銃剣にかけては、未だぼんやりとした赤い塊のまま、
纏わり付くような輝きを放ちながら、輪郭を留めない。
密かに、鳥はその存在に恐怖した。
アレにだけは、決して触れてはならないと。
(#゚ω゚)『おおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!』
そして巨大は再び吼え、更に鳥を追撃する。
???『…わざわざこっちの領域へやってくるとは愚かな! 落ちろぉ!!!!』
対する鳥はちょうど下降の軌道へと差し掛かり、更には身を捻って正面へ。
次いで、両翼から粒子と共に大量の青い羽根をばらまいた。
270
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/12/08(土) 02:43:42 ID:QfJIXxGs0
それも一度ではなく、飛行に伴い継続したもの。
鳥の通った後を花びらのように舞いながら、青色が埋めていく。
しばしの追いかけっこの間に、気付けば空は晴天と化していた。
内藤は依然として、狂ったように雄叫びを上げて突っ込む、
あの羽の事はすでに知っている筈だが、迷いは無く、止まる様子も見られない。
次いで、青空の中に飛び込んだロボットの姿が、閃光と爆煙の中に消えた。
――――――。
若干の間を置いて、地上を爆音が殴りつけた。
打ち上げ花火の音というにはあまりにも大音量。
ついには市街地にまで衝撃は届き、見上げた人々は空の光を見た。
「びびったー、何だよ今の、地震?」
「まさかまた何か落ちてきたんじゃないだろうね……」
「おいおい、冗談でもやめろよ……てか」
271
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/12/08(土) 02:44:49 ID:QfJIXxGs0
「ザワザワッ」
「なんだあれ!!??」
遠く、夜空に広がる異色。
雷が光り続けたような光景に、誰もが恐怖を得た。
そして群衆は、主に逃げ出そうとする者、情報を集めようとする者に分かれ、
賑わいどよめき立っていく、だがその最中に妙な姿があった。
(;-@∀@)「ぜえっ、ぜえっ、ああーーもう! 先走るなって言ったですのに!!」
アタッシュケースを持った眼鏡の男だ。
彼は白衣のようなロングコートをなびかせながら、街中を全力で駆ける。
体力のなさそうな見た目に違わず、やがてよろよろと街灯に寄りかかり、
肩で息をしながら、遠い空にみえる輝きへと目をやれば。
赤い流星が、空を裂く。
(;-@∀@)「……これは、ちょっと不味いですぞ……」
(;-@∀@)「く、せっかくここまで秘密裏にやってきたといいますのに……!」
言って、男は息を整え、再び駆け出した。
向かう先は、やはり青色の空の下。
戦場へと、向かっていた。
272
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/12/08(土) 02:46:00 ID:QfJIXxGs0
―――――――――。
???『……ぐ、なんでだ、何故落ちない!!?』
(#゚ω゚)『ぐぅぅ……おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!』
上空にて、鳥は困惑していた。
当然、あの爆発で仕留められるとは思っていなかった、
しかしダメージは与えられる、あわよくば地上に叩き落せる。
そう考えていたからだ。
けれどロボットは爆発を物ともせず、赤い暴風となって青を吹き飛ばし、
見えない障壁を携えながら、傷一つないまま突っ込んでくる。
鳥は近寄らせまいと、更に羽の噴射を強め、
全速で後退しつつ、扇状に沿って青空を広げていく。
そんな青空を赤い光が貫いては、侵食するように夜闇へと返す。
けれどそこに均衡は無く、徐々にであるが互いの距離が離れていく。
273
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/12/08(土) 02:47:01 ID:QfJIXxGs0
と、ロボットは先を行く鳥に向かって左手を伸ばした。
差し出した腕の奥では、瞳が赤く輝く。
(#゚ω゚)『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!』
???『は、ははは…!! アホゥめ、空でオレに追いつけるわけがないだろう!!!』
鳥から見たその様は、届かぬことを悔しがる仕草に見えた。
が。
次いでロボットは飛翔したまま右肩を下げ、銃剣を溜めるように構えた。
左腕は、捕まえようと伸ばしていたのではなく、あくまで動作の延長。
振りかぶった銃剣からは、溢れだした赤い奔流が爆発めいた勢いで尾を引く。
(#゚ω゚)『ぅううううううううううううううううううううううううううう』
???『な、なんだ…何をしている!?』
(#゚ω゚)『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』
そして、ロボットが赤い銃剣にてまっすぐに空を打つ。
続けて、先端に閃光が生まれ、大気に強烈な振動が発生。
ロボットと鳥の間に広がる青い空間を、見えない何かが切り裂くように貫いていく。
鳥は、放出する羽たちが左右に断たれる光景を見た。
274
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/12/08(土) 02:48:35 ID:QfJIXxGs0
瞬間、鳥型巨大イーバの胴体を、不可視の衝撃が殴りつけた。
???『が……っ!!』
鳥はその反動で姿勢を崩し、ぐらりと傾き身を捩りながら進路を変えた。
装甲板には、何か尖ったものがぶつかったようなクレーター状のへこみが生まれ、
青い火花といくつかの煙を噴出させながら、降下していく。
対するロボットは銃剣を払うように振り、ウイングから光を放ち、
落ちる姿を追撃せんとその身を飛ばした。
未だ残るいくつもの羽が行く手を阻むが、やはり進行は止まらない。
下降する鳥はその姿を見つけると、両翼を羽ばたくように一度、大きく広げ、
再び大きな青光を纏わせ、縦回転の旋回と共にかたむいた身体を立て直す。
???『こ、の野郎ォ…!! 舐めるなああああああ!!!』
続けざまに、後を追う姿に向かって飛翔する羽を放つが、
やはり赤色の障壁に阻まれ、ロボットの装甲に触れることすら適わない。
275
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/12/08(土) 02:50:07 ID:QfJIXxGs0
???(……っ、相殺、いや、変質させられている……!?)
???(なんて馬鹿げたフォトンコンバートだ、まずアレを何とかしないと…!!)
鳥は更に旋回行動を続ける、縦に、横に、小さな円を描きながら、
そんな姿を、ばら撒かれた羽が追いかけ空にいくつもの道を描く。
と、更に回転が小さくなると、後を追っていた羽が一部に収束を始め、
すぐに大きな青色の塊となって宙に浮かび上がった。
(#゚ω゚)『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』
???『クソ、クソ、うるさいんだよさっきから!!!』
ノ???『空はオレの世界だ、お前なんかが居て良い場所じゃねえんだよお!!!!!』
ロボットは赤い尾を引きながら、銃剣を振りかぶって鳥に迫る、
対するは、鳥が旋回と共につくりだした青い球体、計四つ。
???『こいつで黙らせてやる!! 撃ち落せフォトンバレットォ!!!』
そして、真っ向から飛び込んでくるロボットに向かって、
鳥の羽ばたく仕草と共に、四つの球体が稲妻を纏って飛翔した。
276
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/12/08(土) 02:52:25 ID:QfJIXxGs0
次いで。
(#゚ω゚)「!!!!」
球体の一つは、銃剣の先端に触れたその瞬間、凄まじい勢いで収束し、
バン、という音を空に響かせ弾き割れ、最後に炎と黒い煙を混ぜ合わせた爆炎となった。
ロボットは、自らの右腕の先、赤い銃剣が砕かれ炎に消えていく姿を見た。
続けざまに三連、先と同じ衝撃が全身を叩く。
音と光が空を幾度か染め上げ、その度にロボットの姿が損なわれていく。
???『は、ははは!! 落ちろ落ちろぉぉおおお!!!』
そして炎と煙の中、ついに内藤であるロボットは動きを止め、空中にて停止した。
炎の灯りによって照らされる姿は、全身から火花を散らし、見るも無残な姿となっている。
突き出した右腕部は根元から吹き飛び、肩の装甲も半分が融解。
胴体は大きくひしゃげ、胸部装甲が破損し傷ついた結晶があらわとなり。
脚部に至っては二つとも、第一連結部から先が存在していない。
277
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/12/08(土) 02:54:06 ID:QfJIXxGs0
唯一残った左腕部はだらりと下げられ、背面ウイングからは赤い光子がまばらに落ちていく。
けれど。
???『いいザマじゃないか勇者さまよぉ! なあ、今どんな気持ちだい? 教えてくれよ!』
( ω )『…………』
???『ダンマリとか、嫌だね、少しは喚いてもよさそうなもんだが……それどこじゃないかな?』
唯一変わらない箇所があった。
???『……? いや、待て、何だ? 何でお前、まだそこに居るんだ…?』
???『気を失って…? いや、それなら余計に……』
それは、今も変わらず、全身にて揺らめく赤い光。
278
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/12/08(土) 02:55:48 ID:QfJIXxGs0
???『な…!?』
(#゚ω゚)『う、』
内藤、ロボットの両目が一瞬、赤でも青でも無い色に輝いた。
そして、全身を包んでいた光子が色濃くなり、収束すると共に、
何かを象るようにして、全身の、それぞれの破損箇所へと集っていく。
次いで、内藤の雄叫びと共に赤い塊がはがれ落ち、
再びロボットが元の姿を取り戻し、銃剣を大きく振り上げた。
(#゚ω゚)『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!』
ロボットが背にした空には月が浮かぶが、放つオーラに被さって、赤く染まる。
影になった正面からは、二つの目だけが禍々しく輝き、輪郭の無い全身がさらに歪む。
化物か、と鳥が言った。
そして、ロボットが行った。
279
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/12/08(土) 02:57:28 ID:QfJIXxGs0
背面ウイングから大量の光子をばらまき、空を更に赤く染めながら、
憎き相手を殲滅するため、あくまでも真っ直ぐに。
鳥はその姿に戦慄を覚え、躊躇した。
迎撃するか、逃げるか。
その迷いが命取りだった。
???『っっっ!!!!!』
既に目前。ロボットが銃剣を突きこんでくる。
回避。しかし間に合わず翼部位に激突。
だが、正確には激突という表現にさえ至ることなく、
先端が触れた瞬間、その部位に大穴を穿って片翼を潰した。
280
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/12/08(土) 02:58:58 ID:QfJIXxGs0
鳥が地上に降下する。
ロボットはそれを追った。
地上すれすれで、鳥はもう片翼のブースターを全開に、急激な方向転換にて回避。
真横へと旋回飛行、だが途中、その姿に変化が起きた。
鳥の全身が、青い輝きに覆われ、収縮を始めたのだ。
そしてロボットが、銃剣にて大地を穿った。
???「……!!」
低空を飛翔しながら、鳥、、、彼女は見た。
???「な…なんだよ、これ…!」
281
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/12/08(土) 02:59:48 ID:QfJIXxGs0
そこには、地上数十メートルに渡るほどの、巨大なクレーターが生まれていた。
中心にあるのは、やはりあのロボットだ。
だが、あのおぞましい赤い光は失っており、本来あるべき姿へと戻っていた。
そして地面に銃剣を突き立てたまま、寄りかかるように動きを止めている。
???「………………」
今ならば、という思いもあったが、
それよりも今は、単純な恐怖が勝ったのだろう。
彼女はだらりと下げた右腕から、大量の血を流しながら、
やがてその腕を抱え、よろよろとその場を後にした。
だがその道すがら、彼女の口から漏れていたのは怯えの類のものではなく、
ただただ、復讐することを決意する、恨みつらみの言葉たちだった。
―――――――。
282
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/12/08(土) 03:02:08 ID:QfJIXxGs0
五話のプロローグ的なノリでとりあえずここまで。
以下本編、また近いうちに。
・・・そういえば挿絵忘れた。
283
:
名も無きAAのようです
:2012/12/08(土) 08:32:00 ID:r6CV67ncO
クーが
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板