[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
1-
101-
201-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
( ^ω^)_______のようです
1
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 22:54:23 ID:bwtyxfCA0
レベルが無いからスレ立て無理と言われて来ました!
2
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 22:55:10 ID:bwtyxfCA0
『プロローグ』
「いってきまーす!」
と、元気な声がこだまするのは日本の片隅、どこかの三丁目。
早朝がもつ特有の清涼感を、もうじき過ぎ去ろうとする冬の名残が色濃くした。
太陽は東から昇ったばかりで穢れなく、遥か向こうにうっすら月が見える。
その中間あたりには、点があった。
団地が続く路地には、集団登校する学生の群れやがあったり、
それを軽快に避けながら駆けていく自転車あったり、なんとも平穏な光景だ。
まだ新しいセーラー服を着た彼女もまた、その世界に居た。
3
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 22:55:53 ID:bwtyxfCA0
「おはようツンちゃん!」
と、そんな彼女へと友人らしき子等が声をかけた。
ξ゚ー゚)ξ「あ、ちん子じゃない、珍しく早いね?」
(*'ω' *) 「うん、今日はあの二人置いてきちゃったからね」
それにしても色んな意味でのっけから卑猥だった。
だが、その名に異を唱えるものは特に無く、果たして慣れなのか、
あるいはこの世界において、チンコは男性器を意味しないのかもしれないが、
「あー…昨日シコり過ぎてマジチンコ痛ぇ」
「エロゲし過ぎだろjk」
道行く小学生の言葉を聞くに、残念ながらそんな事はないので悪しからず。
4
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 22:56:38 ID:xDXW4.a60
しえーぬ
5
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 22:56:44 ID:bwtyxfCA0
「おーいぽっp……チンコちゃーん! 待ってほしいんですー!」
そこへ更なる、というか今度は文字的に隠そうともしないチンコ発言。
この際チンコはいいとして、とにかく彼女、チンコだけど彼女達を呼ぶ声がした。
(;><)「ひ、酷いんです!昨日家の前で待っててって言うから待ってたのに!」
( <●><●>)「あなたが裏手から出て行ったのはわかっています」
(*'ω' *) 「あんたらが悪いんでしょ? 恥ずかしいから下の名前はやめろって言ってるのに呼ぶからよ!」
(;><)「で、ですが…」
( <●><●>)「何がそんなに嫌なのか理解しかねます」
(*'ω' *) 「だって嫌じゃない……ぽ行って…」
ξ゚⊿゚)ξ「そうなのか?」
比較的どうでもいい事を承知で補足すれば、ちんが上の名前で、ぽっぽが下の名前である。
6
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 22:57:20 ID:QDDg8sqY0
story editor使ってる?ぽっぽちゃんの目とかフィレンクトの目は半角になっちゃうよ
7
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 22:57:39 ID:bwtyxfCA0
とりあえず、このままでは話が一切進むことなくチンコについて語り続ける羽目になりそうなので、
少年少女と一本はいつもの通学路を談笑しながら歩いていく。
年を越すたび、春と秋はどこ行ったと言われ続けて早十数年。
ついには言われることさえ無くなって、当然のように冬と夏を繰り返す世界、
冬と夏の中間であるこの日は五月、進級したばかりのピカピカ一年生。
それが彼等の正体である。具体的には中学生。
もうじきクラスがテロリストに占拠される妄想が始まる頃である。
早咲きした桜はとうに散り、舞わない桜を踏みしめて入学した彼らは、
新たな学校生活にも慣れ始め、徐々に友達もできて平穏な毎日を過ごしていた。
リンゴロンカンコロン。
ではなく、キンコンカンコンチャイムが鳴れば、今日もそんな学校が開催され、
校門や構内を埋めていた喧騒も静まり返り、教師が扉に仕掛けられた黒板消しを避けながら、
軽やかなステップで教壇へとたどり着き、出席簿を開いて名を呼んだ。
8
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 22:59:11 ID:bwtyxfCA0
('、`*川 「田中、えーと…たしか…柔隊符(にゅうたいぷ)くん」
田中「見える!」
('、`*川 「ちん子ちゃん」
(*'ω' *) 「はい!」
そう、つまりチンコをもう一度書きたかっただけである。
同時に、とりあえずネタがないからってチンコに頼るのはやめようと思った。
そして休憩時間、いや休憩は10分で短い、お昼だ、お昼がいいや、昼休みの時間。
ξ゚⊿゚)ξ「はあ……」
窓際の席の彼女は、グラウンドを駆けるサッカー少年等を横目に、
アンニュイなため息をつき、外見的には相当な美少女である彼女を見守る一人は、
その周囲に花とか光をちりばめながら、天使だと呟いた。
9
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:00:10 ID:gssUpSxg0
今夜作品豊富すぎ支援
10
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:00:15 ID:bwtyxfCA0
と、そこへクラスメイトの一人が心配したのか声をかける。
('、`*川 「なにため息なんかついてるのよ?」
ξ;゚⊿゚)ξ「あれ?あんた教師じゃなかったっけ?」
('、`*川 「はあ…何馬鹿なこと言ってるのよ……どっか悪いの?」
ξ゚⊿゚)ξ「うん、ごめん…なんか華麗に黒板消し避けてたのが印象的でつい…」
('、`*川 「で? どうしたのよ?」
ξ゚⊿゚)ξ「……うん、なんか…ホームシックで」
('、`*川 「あんた実家住まいだろう」
ξ;-⊿-)ξ「そうだけどー……ああ、帰りたいなぁ…」
('、`*川 「今日ってなんかあったっけ……? ん?」
('ー`*川 「ああ、そういう事……」
ξ゚⊿゚)ξ「…なによー」
('ー`*川 「そういえば、今日はあんたのお兄さんが帰ってくるって言ってたもんね」
11
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:01:59 ID:bwtyxfCA0
意地悪そうに言う彼女は、ツンデレ応答テンプレートにより、
ツンの返事をシュミュレートした。
関係ないわよ、と言う彼女にハイハイと応える簡単な作業だ。
だが意外にもツンは目を輝かせ、両手を組んでだらけた姿勢をピンと伸ばした。
ξ*゚ー゚)ξ「うん!! そうなの!! やっと会えるんだよ!」
('、`;川 「……くっ」
敗北感に打ちのめされるペニスはお構い無しに、
ツンはそのまま兄への期待をペラペラ語る。
いわゆるテンプレ外し、殻をぶち破り新たな道をという企みである。
しかし、ツンがツンで無ければキャラ崩壊というか最早ツンじゃ無い、
つまりお兄ちゃんと呼ぶ方が「ナニカ」である。
12
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:03:54 ID:bwtyxfCA0
(;・∀・)「まーたやってるよ、このブラコン妹は」
ξ゚⊿゚)ξ「何よ、家族大事にして何が悪いってのさ」
( ・∀・)「別に、勿体無いって話だよ」
ξ゚⊿゚)ξ「何がさ」
( ・∀・)「見た目はいいのに、中身が残念だって言ってんのよ」
ξ゚⊿゚)ξ「そりゃどうも、でも女子の制服着てるアンタにだけは言われたくないわ」
('、`;川 「本当だよ、何で女装しとるんだアンタ、変態か」
ξ゚⊿゚)ξ「変態だよ」
(;・∀・)「いやいや、誤解しないでくれよ、僕は普通に女の子好きだよ?」
ξ゚⊿゚)ξ「なら何故女装する」
(*・∀・)「だから、女の子が好きだから、服だって女の子の服を着たいだけさ!」
まるで、常に女の子に包まれているようだ、と変態は自分を抱き締めながら言う。
なんとなく納得しそうになる自分を、ツンは落ち着けと制止して、
後ろの方で「なるほど、その手が」と聞こえてきた声に突っ込みを入れた。
13
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:05:17 ID:bwtyxfCA0
そんなこんなで、その日も無事に授業は終わり、生徒はみな帰路につく。
夕焼け小焼けの赤とんぼ、前者も後者もまだ無く、陽はまだ西の空にて地上を照らす。
ツンはようやく終わった通学という名の作業を経て、帰りを急ぐ。
何か黒い点が見える空は、まだ日中を差して明るく。
このあとはどこかへ遊びに行こう、とこの日の出来事に期待を馳せる。
ξ*゚⊿゚)ξ「もう来てるかなぁ…」
内藤ツンの兄、名は旧姓、西川ホライゾン。
理由は詳しく知らないが、彼女の父親は遠距離恋愛の末、彼の母親と再婚した。
生まれて間もなく母を亡くした事と、彼女が持つ生来の前向きな性格。
そして、何度も何度も会って、遊んだ結果として、
ツンは西川の家族をとても信頼しており、家族になると聞いた時は飛び跳ねて喜んだ。
14
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:06:26 ID:bwtyxfCA0
今日という日は、その西川家族がこちらへ引っ越してくる記念日だった。
ホライゾンの希望もあり、卒業を待ってから始まったこの引越しは、
既にこちらの高校を受験し、通っている彼の、向こうでの最後のお別れの日でもある。
ツンに対して、それを寂しがる素振りは見せず、いつも優しかった彼の真意はわからないが、
それでも寂しいに決まっている、だから今日は思い切りもてなそう、と決めていた。
ξ*゚ー゚)ξ(ケーキもあるし、プレゼントだって用意したもんね)
喜んでくれるだろうか、という不安もあるが、
それ以上に楽しそうな顔が浮かんで、頬が緩むのを止められなかった。
並木道を抜けると、大きなモニターやショーウインドウのテレビも、
これまた愉快なCMやら番組を流していたが。
ふと見上げた空には、太陽と、先ほどよりも大きくなった黒い点。
ξ;゚⊿゚)ξ「あれ?」
と、それを不思議に思った時だった。
15
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:08:00 ID:bwtyxfCA0
全てのテレビの全てのチャンネルが、一斉に切り替わった。
16
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:08:43 ID:bwtyxfCA0
「番組を中断して、緊急のお知らせを致します」
男性レポーターは息を荒げて言った。
放送のスタジオ内では沢山の人が右往左往したり、怒声が飛んだりしている。
何事かと見守る繁華街の人の群れ、その中でツンは呆然と見ていが、
やがてレポーターが告げる言葉を聞いて、わけもわからず空を見た。
点はいつのまにか、太陽よりもよほど大きくなっていた。
ξ゚⊿゚)ξ「…………………え?」
「…再度、繰り返します」
「巨大隕石が接近中……日本全域に、避難勧告が発令されました」
17
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:09:41 ID:bwtyxfCA0
そうして、パニックの中。
その日、関東を中心とした巨大な煙の柱が、日本に発生した。
被害は隕石の規模が予想よりも小さかった事もあり、
五つの都道府県が消滅し、他七つが半壊するに留まった。
総被害者は五千万人にも及ぶとされるが、地区完全閉鎖により確認は不可能。
こうして世界最大の大災害は、数え切れないような不幸を生み。
それでもなお、今へと続いていく事になる。
世論の間では、それにしても被害が小さすぎるのではないか、という疑問を持つ物が多かったが、
それを投げる事は風評に悪く、問いかける事は愚か、3年が過ぎた今も明確にはされていない。
18
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:11:05 ID:bwtyxfCA0
――――立ち昇る巨大な柱を、呆然と眺める姿があった。
(;゚ω゚)「………」
無人の車がつくる渋滞が、見果てぬ先まで続く道なりの先に、
大きな、大きな柱が空のすべてを塞いでいる。
音は、耳が馬鹿になったのか耳鳴りだけが響いていた。
人が逃げ惑う。
空が地上の日に照らされ、赤く曇る。
遠方にはナニカ、エタイノシレナイモノガミエル。
地獄という表現がこれほどに似合う様を、彼、
内藤ホライゾンは初めて目撃した。
やがて呆然とそれを見据えたまま、小さく言葉をこぼした。
(;゚ω゚)「………………ツン?」
19
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:12:26 ID:bwtyxfCA0
握り締めたのは、履歴に彼女の名が記された携帯。
見えたのは。
遠方から迫る、ナニカ。
それは、雲と。
蜘蛛に見えた。
20
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:13:57 ID:bwtyxfCA0
( ^ω^)は勇者クオリティのようです
プロローグ 終
.
21
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:17:20 ID:bwtyxfCA0
第一話 「覚醒のC2ドライブ」
.
22
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:18:05 ID:bwtyxfCA0
ふと我にかえると、煙が見えた、出店が放つただのおいしそうな煙だ。
あの事件以来、こんな些細な煙でさえ、見るたびにあの日の光景を思い出す。
3年以上過ぎた今でも、脳に焼き付いて離れない惨状。
当然ながら、それは彼だけでなく、あの日を体感、目撃した人間全てがそうだ。
時折、夢物語だったかのような錯覚を感じるが、世に今ある沢山のものが、
それを真実であったと思い知らせ、打ちのめされる。
( -ω-)「……」
母親の再婚に伴い、上京するはずだったあの日。
失ったものは、多くない。
金目の物はこれから持っていく所だったし、母も無事存命している。
けれど、間違いなく失った大きな物がある。
これから得るはずだった、一つの未来だ。
23
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:18:34 ID:Gx9SALpQ0
凄い急展開だな
支援支援
24
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:19:54 ID:bwtyxfCA0
それを象徴するように、あの日、柱を眺めた直後の記憶を失っている。
何故かは分からない、気付けば病院に居て、事件から一月あまりが経過していた。
胸には大きな傷があるが、気付いた時には痛みもなく塞がっていたので、
果たしてどうしてついたものなのか、それすらも分からないままだった。
母親からは、割れたガラスが刺さった、と聞かされている。
しかし、それにしては傷はあまりにも、丸い、穴のように見え、
記憶の無さも相まって、得も知れない不安に駆られる事がある。
だからだろうか。
「ごめん、待ったかな?」
何か、すがれる物を求めてしまったのは。
(;^ω^)「あ……い、いえいや、今来たとこですお!」
ζ(゚ー゚*ζ「フフフ、しかし私にはそれが嘘だと分かってしまうのだよブーン君」
25
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:21:11 ID:xDXW4.a60
しえしえ
26
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:22:53 ID:bwtyxfCA0
ζ(゚ー゚*ζ「何故なら30分前からあそこの影で君を見守っていたからね!」
(;^ω^)「いや何してんのこの子」
内藤はあれから、姓だけは頂いたまま、地元へ戻って違う高校へ編入した。
あの災害により、難民学生もたくさん生まれ、学校側が国と提携して受け入れ態勢を取った。
彼女はそんなな内藤が通う、綾鷹高校の同級生だった。
容姿を例えればマジ天使、しかし性格がどこか変で、妙に男らしい所が有名だ。
しかし、それはさておき可愛い、すごく可愛いので内藤もすっかりほの字。
熱烈なアピールの末、ついにデートの約束をこぎつけたのが二月ほど前。
それ以来、よく遊びに出かけるようになった二人だが、特に進展もなく、
現状としては仲の良い友達でしかなかった。
けれど、内藤は気付いていた。
可愛いという言葉を逃げ口にして、本当の理由から目を背けていると。
二つに分けたウェーブのかかるブロンド、その姿が。
初めて彼女を見たときに思った事が。
27
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:24:24 ID:bwtyxfCA0
笑っていて欲しかった女の子に重ねている事を。
ζ(゚ー゚*ζ「それじゃ行こうか、今日はまずアイスを食べるよ!」
(;^ω^)「いいけど……何でアイス…」
しかし、それもあくまで最初だけ。
共に過ごすうちに、いつしかそんな淀んだ想いも薄れて、
ただ、単純に彼女と過ごす時間を楽しめるようになってきていた。
そんな休日の昼下がり、駅前のアウトレットへと続く道を、
二人は自然な距離で歩いていく。
そんな彼らが行く街は、賑わいを見せている。
人というのは逞しいもので、僅か三年の間で驚くべき発展ぶりをみせている。
都市部のほとんどを失った事で、主要となる地は他へと広がり、
田舎と呼ばれた地の開発が一気に進むことになった。
28
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:26:03 ID:bwtyxfCA0
政治に携わる者は、人その物を含めほとんどを失い。
富も地位もなく、一から立ち上がるための政治が始まった。
全てがうまく行っている訳ではないし、他国からの支援も大きい。
世は混迷を極めているし、物価や税も馬鹿みたいな事になっている。
昨今は食料不足と、地形が変わった事による運搬ルートの問題が特に、
これからの問題としてよく騒がれている。
だがそれでも、立ち上がろうとする人の強さが、
そういったあらゆる面を支えていると、誰もが感じていた。
内藤もそういった見えない何かを感じながら、
ソフトクリームの屋台へと駆けて行く彼女の背を見送った。
29
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:28:24 ID:bwtyxfCA0
その後姿に、どこか懐かしい感覚を覚えながら、
そういえばまた奢ってあげるタイミングを逃したと思う。
もっとも、仮に言ったところで返ってくるのは、
ζ(゚ー゚*ζ「まあまあ、ここは私に任せなさい」
と言う言葉と共に、あまり育って無い胸を張るだけなので無意味なのだが。
そうして、気付けばアイスを両手に内藤へと笑いかける姿へ歩み寄った。
―――そして、ここから遠く離れた地にて。
隕石の落下後、関東はそのほとんどが荒野と化し、
その中心部には海水が流れ込み、巨大な海岸となっている。
衛星がその地域を捉えれば、青の穴がぽっかりと開いた形だ。
誰が言い出したのかは不明だが、いつしかこう呼ばれるようになった。
皮肉にも、世界各地にあるという海のダイビングスポットと同じ名前、ブルーホールと。
30
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:29:29 ID:bwtyxfCA0
そんなブルーホール近辺は今も閉鎖されているが、
当時に比べれば規制も緩和され、安全であるとまで言われるようになった。
ならば、未だ広大に広がる土地を、このまま捨て置くわけにはいかない。
新たに開発を目指し、今では各地からの派遣により、観測や工事が行われていた。
その中に、奇妙な者達が居る。
本来ならば作業着や防護服を着た人間がくるべき場所へ、
まるでその辺を散歩するかのような軽装で行く者たちが居るのだ。
「しかし何にもないな、本当に連中の反応があったのか?」
「ああ、でも一瞬だったからなぁ…」
「はぁ…誤反応じゃねぇのそれ? だいたいもう三年目だぜ? 今更沸いてくるもんかねぇ」
「知らん、だからこうして調べているんだろう?」
「それに、何事もなければ、それはそれでいいではないか」
31
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:29:40 ID:Gx9SALpQ0
しえ
32
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:32:22 ID:ZrbRMzpkO
支援だ
33
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:33:12 ID:bwtyxfCA0
組み合わせは、三人の男と、一人の少女だ。
広げたノートPCを持った男と、それを上から覗く男。
そんな二人の様子に頭をかきながら、やれやれ、と呟く男と。
どこか遠くを見据えたまま、微動だにしない無表情な少女だった。
「ま…そりゃそうか、なあガキんちょ、お前はどうよ?」
「……」
と、その時だった。
「……」
「ん?なんだ?」
少女が遠い海を指差し、ポツリと呟いた。
「………イーバ」
「「!? ガキンチョ(クー)が喋った!?」」
「え!? あ、反応が…!?」
ややあって、海が大きく波打った。
34
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:35:06 ID:bwtyxfCA0
―――そんな一方。
太陽は頂点に昇り、もう黒い点は無い澄み切った空は正午を伝えている。
内藤たちは食事を済ませ、デレの思いつくがままに街を彷徨っていた。
ζ(゚ー゚*ζ「さて、次はどうしようかなー」
(;^ω^)「……」ゴクリ
そんな内藤には、今日、決めていた事があった。
(;^ω^)(今日こそは……やってやるお)
ζ(゚ー゚*ζ「あ、あそこ何かやってるよ、何だろう?」
それは、彼女と手を繋いで歩くことである。
傍から見れば、仲睦まじく寄り添う二人は恋人にしか見えず。
本人に「これデートだよね?」と聞けば「そのとおりだ」と返される、
それほどにカップルな筈なのに、それ以上の事がまったく無い。
35
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:36:02 ID:xDXW4.a60
どうなるんだろうか……楽しみ
36
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:36:28 ID:bwtyxfCA0
このままでは、キスなどもっての外、デレとイチャイチャもできない。
それではいくらなんでも生殺しすぎるよ。
ζ(゚、゚*ζ「ブーンはイチャイチャしたいの?」
(;^ω^)「ぶっ!?」
どうやら一人称になった部分が聞かれていたようだ。
内藤は大慌てで誤魔化そうとするが、彼女はふと考えるような素振りを見せ、
そして、少し照れるように俯いて、上目遣いに内藤を見た。
ζ(゚ー゚*ζ「……じゃあ…しよっか?」
(*^ω^)「……ま、マジで?」
ζ(^ー^*ζ「マジマジ、んで、ブーンはどうしたい?」
(*^ω^)「そ、そそs、それじゃあ………」
手を、と言いかけた時だった。
37
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:37:50 ID:bwtyxfCA0
遠巻きに、花火のような音が響いた。
それほど大きくはない音だった。
気にしなければ気にならないような音だったが、
二人は音のした方へと向きなおした。
向きなおし、内藤は身を硬直させた。
(; ω )「……っ!」
ζ(゚ー゚;ζ「あれ…? なに、火事?」
見えたのは、遥か遠くに立ち昇る煙だった。
周囲にも、それに気付いた者も居る、だがその多くは気にも留めず、
しかし、チラホラと何かを思い出すように固まる人々が居た。
内藤もその中の一人だった。デレが心配そうに覗き込むが、反応は無い。
ζ(゚ー゚;ζ「ブーン!ちょっと、しっかりしてってば!」
(;^ω^)「え…? あ…」
38
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:38:59 ID:Gx9SALpQ0
しえん
39
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:39:39 ID:bwtyxfCA0
身体を揺すられ、ようやく我に返った内藤だったが、
そこへ再び、先ほどと似たような轟音がこだまする。
しかも、先ほどよりも大きい。
内藤は、酷く嫌な予感を覚えた。
(;^ω^)「……デレさん、行こう」
ζ(゚ー゚*ζ「え? 行くって、どこに?」
どこでもよかった、内藤はとにかく、この場を離れたい衝動に駆られていた。
気付けば、彼女の手を取って、先導した。
ζ(゚ー゚;ζ「ちょちょちょ、強引だなぁ」
(;^ω^)「あ、ごめんお……でも今は…」
音は、止まない。
周囲の人々も、流石に不審に思ったのか、足を止めている。
その中で、内藤だけが逃げるように人波を掻き分けていく。
40
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:40:40 ID:bwtyxfCA0
やがて、悲鳴があがった。
ζ(゚ー゚;ζ「え!? うそ……」
しかし、内藤は振り返らなかった。
デレだけが手を引かれたまま振り返り、驚きに声を殺した。
何か、恐ろしいまでの音がした。
爆発だ。
それも遠くない、並木がざわめき、地が揺れる。
だが内藤はそれ以上に、不安に押し潰されそうになっていた。
ζ(゚ー゚;ζ「ブーン!ブーンってば!! ちょっと待って!!」
(; ω )(駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ)
立ち止まってはいけない、振り返ってはいけない。
そんな焦燥に煽られ、聞こえる悲鳴も、制止の声も無視して歩き続ける。
ζ(゚、゚;ζ「もう!!」
(; ω )「!?」
と、そこで繋いだ手が強引にふりほどかれ、内藤が反射的にふりかえると。
41
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:42:08 ID:bwtyxfCA0
そこには、赤く染まる空と、地を這う巨大な蜘蛛の群れが居た。
.
42
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:43:11 ID:bwtyxfCA0
(;゚ω゚)「ひっ!!??」
しかし、その映像は一瞬のことで、すぐに消え去り、彼女と街並み、青の空を映した。
思わず飛びのくように倒れこんでしまった内藤は、今の映像に自問する。
(;゚ω゚)(……い、今の……なんだお…?)
ζ(゚ー゚;ζ「うーん、怖いのは分かるけどそれはちょっと情けないかなぁ」
(;゚ω゚)「へ?」
と、そこでようやく自分の置かれた立場に気付いた。
周りには、悲鳴をあげて逃げ惑う人々が居る。
そして、その奥にはやはり、煙と、爆発めいた音が響く。
大通りだが、道路の先には特にこれといった異変は無い。
ただ、遥か後方、反対側の建物の上から、今も煙があがっている。
そしてのん気に歩いて居たのは、いつの間にか内藤だけだった。
(;^ω^)「ご、ごめんお……ところで、これは一体…?」
ζ(゚ー゚;ζ「もう、何も分からず逃げてたの? さっきね、見えたの」
43
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:44:55 ID:bwtyxfCA0
(;^ω^)「何が?」
ζ(゚ー゚;ζ「わかんないけど……何か、ものすごく大きい何か……あ」
と、そこで彼女は見つけた、と言わんばかりに指を向けた。
(;゚ω゚)「はいーーーーーー!?」
見えたのは、煙が上がる建物の上。
20メートルは軽くあろうかと言うその建物の上にあった。
そいつは例えるなら、蟻や蜂の頭だった。
三角よりの形の両側に複眼を持ち、下に顎のような部位が見える。
そんな姿が、長細いビルをすっぽり覆うような大きさで、顔を覗かせていた。
(;゚ω゚)「なんじゃありゃあああああああああああああああーーーーー!!」
ζ(゚ー゚;ζ「どちらかというとハチっぽいかなぁ」
(;゚ω゚)「ははは早く逃げようデレさん!」
ζ(゚ー゚*ζ「うん、そうだね」
44
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:46:28 ID:bwtyxfCA0
だが振り返りざまに、内藤は見た、見てしまった。
あのハチのような頭が、グルリと向きを変え、複眼の奥にある赤い光を一斉にこちらへ向けた瞬間を。
「ギィィィィィィィィッァアアアアアアアアアア!!!!!」
聞こえたのは、鳥肌が立つような、不快な金切音。
遅れて、砕かれ割れる破砕音。
あの頭から聞こえてきた事は、容易に想像がついて、
内藤は恐怖をふりはらうように叫びながら、再び彼女の手を引いて走り出した。
ζ(゚、-;ζ「ちょ、ブーン!? 早い、早いよ!」
何故だか、内藤には先の叫びがこう聞こえていた。
『見つけた』と。
それゆえ、後ろを走る彼女のペースすらも考えられず、ただ、全力でその場から逃げようとしていた。
それゆえ、当然の結果はすぐに訪れた。
45
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:48:20 ID:bwtyxfCA0
ζ(゚ー゚;ζ「どわ!」
と、あんまり女の子らしくない悲鳴をあげて、デレがつまづいた。
パニック状態の内藤は、離れた手を好機に、このまま走り抜けたい衝動に駆られてしまう。
けれど。
また、失ってしまう、という恐怖が上回り、内藤は歯を食いしばって足を止めた。
そして振り返った先には、倒れこむ彼女と、そのすぐ上。
先ほど見た、あの巨大な目が、その複眼全てに内藤を捉えていた。
その全容は二足歩行、まるで人のようにも見える。
だが色々な部位があまりにも違っていた。
頭もさる事ながら、腕らしき物が肩とわき腹と腰の辺りから、左右に計6本生えており、
そのどれもが昆虫のように多節でなりたち、無数の刃が毛のように生えている。
しかし胴体は鉄板が形をなすようにして、胸部と腹部、腰を作り、
脚部に至っては、覗き見える"部品が"完全に一つの答えを示していた。
(;゚ω゚)「こいつ………」
その姿は怪物に他ならないが、もう一つの言葉がある。
(;゚ω゚)「ロボット……なのかお!?」
46
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:50:27 ID:bwtyxfCA0
ζ(゚ー゚;ζ「うん、惜しい、かなぁ……あとこれ、まずいかも……」
寝そべったまま、デレが上を向く。
排気の音と共に怪物の身体から煙が噴き、その様を見上げて、それでも尚、彼女は笑みを作った。
そして、怪物が動いた。
腕とも足とも取れる部位を内藤と、目下の彼女に向けたのだ、
瞬間、内藤は飛び出していた。
ζ(゚ー゚;ζ「え!?」
怪物は刃のついた腕を振るう、それだけで、無数の刃が落とされるように射出され。
対する内藤が取った行動は一つ、彼女の前へと躍り出る事だった。
結果、内藤の身体を、無数の刃が貫いた。
ζ(゚、゚;ζ「!!!!!!!!」
(;゚ω゚)「………ぁ、が…」
幸いにも痛みは、ほんの一瞬だった。
47
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:52:13 ID:bwtyxfCA0
一度だけ、痺れの中に猛烈な嗚咽感が混ざり、吐き出せば大量の血が溢れ、
ドバドバと落ちては、意識も流れていく。
ζ(;ー; ζ「!!!!!」
デレの泣き叫ぶ声も、怪物の金切音も。
全てが遠く、何も見えなくなっていく。
( ω )(これで、おわり、か、お)
自分の生涯は、これで終わる。
だから内藤は最後に、自問した。
( ω )(……これで、いいのかお?)
48
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:53:05 ID:Gx9SALpQ0
しえん
49
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:54:06 ID:xDXW4.a60
しえしえ
50
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:54:32 ID:bwtyxfCA0
霞んでいても、まだうっすらと見える世界は、酷い有様だった。
怪物は何か満足したのか、辺りを破壊しながらこちらに背を向ける。
そして、自分を抱えるあの子の姿があった。
泣いていた。
( ω )(…知ってるお)
失うことの辛さを、内藤も知っていた。
だから問う。これでいいのか、と。
何が起きているのかなんてわからない。
何で怪物が暴れてるのか、なんて理由はどうでもよかった。
ただ、一つだけ許せない事があった。
彼女だけじゃない、このままではまた繰り返す。
51
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:55:57 ID:bwtyxfCA0
一つの景色があった。
遠くに見える柱と、煙に覆われる空。
炎に染まる雲と、地を這う―――大きな蜘蛛。
( ω )(あの時もそうだった、蜘蛛みたいな、あのロボットが)
次から次へと、人に襲い掛かっては、真っ赤な血を撒き散らしていた。
そして、ついにその蜘蛛の化け物は自分の下へとやってきた。
金属的な音を響かせながら。
( ω )(あの時も……僕は…………化け物に………)
ドクン、と。
もはや何も聞こえぬ鼓膜に、見知らぬ鼓動が響いてきた。
自分の内から聞こえてくるその鼓動は、胸の奥から聞こえてくる。
とても温かくて、心強く思える鼓動だった。
52
:
名も無きAAのようです
:2011/11/08(火) 23:58:16 ID:bwtyxfCA0
「?」
ふと、怪物は何かを察したように足を止めた。
ζ(;ー;*ζ「あ……れ…?」
デレは、抱えた彼の身に起きた変化に、戸惑いの声を上げた。
それは、光だった。
穴が開き、血にぬれる内藤の胸元から、青白い輝きが溢れていく。
やがて内藤は目を開く、そして、抱えられた身体を起こし、
戸惑う彼女をよそに、何事もなかったかのように立ち上がった。
( ω )「………」
ζ(゚ー゚;ζ「ぶ…ぶーん……?」
怪物が内藤へと向きなおす。
そうする間に、内藤の身体に刻まれていた傷跡が、次々に消えていく。
まるで青白い光が、その傷を癒していくかのように見えた。
53
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:00:32 ID:0lSni0Cg0
支援
54
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:00:52 ID:frlYkhIk0
ζ(゚ー゚;ζ「な、なんだか分からないけど、逃げないの…?」
( ω )「……」
内藤は虚ろな表情のまま、近くに乗り捨てられた車へ、
吸い込まれるように近寄っていく。
ζ(゚ー゚;ζ「あ、車? 車で逃げるの?」
そして、青い車に手を添え、言った。
( ω )「クオリティコード―――トランス」
青の発光が、一際強く輝き。
車体と内藤の姿を覆い隠した。
―――――。
,
55
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:02:44 ID:frlYkhIk0
海岸に居た者達が、倒壊した建物の合間をぬうように駆けて行く。
その誰もが憔悴した様子で、しかしよく見れば内二人は奇妙な姿をしていた。
「くそ、なんだよあのでかいのは!!」
「……!!」
先を行く男の右手には、大きなチェーンソーのような物。
後を追う少女の両手は、やはり大きな杭撃ち機のような物が見える。
しかし、二人はそれを手に持っている訳ではない。
まるで腕そのものが変質したかのように、直接繋がっていた。
「だいたいイーバは蜘蛛みてぇな奴じゃなかったのかよ!?」
「わからない、3年の間に進化したとでも言うのか……」
「……いや、ちょっと待て、なんだこれは!?」
と、一人が急に立ち止まり、困惑を示す。
ノートPCを持つ男だった、彼はPCを広げ、
けたたましい警告音と、モニタされる赤の点と青の点を凝視した。
「これは……まさか、Cドライブの第二駆動!?」
―――――。
,
56
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:04:32 ID:frlYkhIk0
あ、ちょいとミス見つけたので修正しますです、15ふん以内には前向きに検討します
57
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:06:03 ID:tsRfWuCA0
期待してるよー
58
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:29:38 ID:frlYkhIk0
( -ω-)「……」
(;^ω^)「……ん、あれ?」
ふと、目を開けば視界が変わっていた。
正面にあるのはビルだ、ガラスの奥にはオフィスのような場所が見える。
そして地面は、遥か下のほうにあった。
(;^ω^)「高っ!?」
ζ(゚д゚;ζ「ぎょっ!? その声……アナタ、ブーンなの!?」
ついでに後方から彼女の凄い声が聞こえてきた。
しかし振り向けば、なぜか彼女は視界の隅にこじんまりとしている。
(;^ω^)「あ…あれ…? デレさん、なんか縮んだ?」
ζ(゚ー゚;ζ「ううん、ブーンが大きくなったのよ、というとちょっち語弊があるけど、そんな感じ?」
自分が、と言われ。内藤は自分の身体を見回した。
そこでようやく、自分の身体に何が起きたのかを悟った。
59
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:30:24 ID:frlYkhIk0
(;^ω^)「ちょ……これ、ええぇ…?」
身体を捻れば、うぃぃ、と響く駆動音。
ついでに両手は大きくゴツゴツしい。
そういえば、と怪我をした筈の胸を見れば、そこにも大きな青い装甲板と、
中心部には何か、宝石のように煌く塊のような物が見えた。
あと、先ほどまで覗いていたオフィスは、ビルの三階にあった。
詰まる話が。
(;^ω^)「……僕、なんかロボットになってる…?」
ζ(゚ー゚*ζ「そうね、あと巨大、とかもつけるべきかもね」
内藤は、なんだか居た堪れない気持ちになった。
確かに生きたいとは願ったが、その結果が巨大ロボになりました、
ではその、色々と、困る……。
60
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:32:41 ID:tsRfWuCA0
おかえりー
61
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:33:04 ID:frlYkhIk0
と、そこへあの嫌な音が割り込んできた。
(;^ω^)「デレさん!!」
ζ(゚ー゚;ζ「うわ!?」
あの怪物が、先ほどとはまるで違う仕草で、音を荒げながら、
同じくらいのサイズになった内藤へ向け、路面を砕き割りながら駆けてくる。
咄嗟に内藤は彼女を手のひらに乗せ、その場から横っ飛びの跳躍をする。
あまりの反動にデレが苦悶の声を漏らし、内藤は車線を飛び越え、反対へと移る。
そして振り上げた六足の一つは、内藤とデレが今しがた居た場所を砕いていた。
明らかに先とは違う。
刃を振り落とすだけの生ぬるい攻撃ではない姿に、内藤は戦慄を覚えた。
更に、続けて怪物が威嚇するように顎を鳴らしながら跳躍する。
内藤は彼女を抱きかかえる様にしながら、再び跳躍。
手のひらの中から苦悶が漏れるのを気にしつつ、また反対へと着地した。
62
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:35:41 ID:frlYkhIk0
ζ(゚、゚;ζ「うえぷ……何か生まれそう…」
(;^ω^)「ええ!?」
ζ(゚ー゚;ζ「ていうか、何で逃げてばかりなの? 戦わなきゃ、現実と!」
(;^ω^)「現実とは戦ってるお…! 明日からマジどうしようこれ…ご飯とかどうなの?ガソリン?」
ζ(゚ー゚;ζ「それよりあっちでしょ!」
(;^ω^)「むむむ……ていうか、デレさんさ、怖くないの?」
ζ(゚ー゚;ζ「え?そりゃあんな大きいかいぶつ、怖いけど……」
(;^ω^)「いや…それ以前に…僕が、さ、だってこんな……」
ζ(゚、゚*ζ「そりゃあね、驚いたよ、でも……」
ζ(゚ー゚*ζ「あなたは、守ろうとしてくれたでしょ?」
63
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:37:17 ID:frlYkhIk0
だから。
と、未だ聞こえてくる悲鳴や、落ちる瓦礫に混ざる破壊音が響く中で、
それでも彼女ははっきりと、内藤の手のひらの上に小さな手を添え、笑みを作り言った。
ζ(゚ー゚*ζ「そんなあなたがブーンなら、ブーンの事が怖いなんて、ありえないよ」
言葉に。
ドクン、と。
内藤は再び、先ほど夢うつつに聞いたあの鼓動を感じた。
ζ(゚ー゚;ζ「…て、あ、あれ? ブーン?なんか光って…?」
( ω )(ああ……もう、何でもいいや、僕は)
そして続くのは、胸のうちに感じる熱と、
目下、機械と化した胸元から溢れ出るように輝きを放つ、蒼の光。
64
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:39:38 ID:frlYkhIk0
けれどそれさえ気にならない程に、強く、強く、強く、強く、願ったのは。
( ^ω^)(この子を、デレを守ろう……何があっても、何があっても)
一つの、あらゆる感情を『 超 過 』した、戦う事への決意だった。
(#^ω^)「……何が、あっても!!」
瞬間、辺り一面を青色が埋め尽くした。
声も、景色も、全てが蒼に染まり、ただ、自身の鼓動に全てが溶けていく様な錯覚に、
内藤はただ身を委ねながら、身体中を埋め尽くすような充実感を感じていた。
果たしてそれは時間にして一秒だったのか、あるいは一時間だったのか、
それすらも分からないままに、やがて青は霧のように薄れ始めた。
65
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:41:36 ID:frlYkhIk0
( ^ω^)「……お」
ふと、目を開ければ、そこにも青は広がっている。
だがそれはよく見知った色、空だ。
そう気付いたとき、内藤は彼女の声を聞いた。
声は言う。
(;^ω^)「………え?何?北斗?」
ζ(゚Δ゚;ζ「あ、た、た、た、たたたた……!!」
どうにもこうにも百裂拳で反応に困っていると、
子犬のように震えながら縮こまった彼女は、機械の腕をぽかりと叩いた。
(;^ω^)「ていうか……あ、あれ?」
ζ(゚Δ゚;ζ「いくらなんでも高すぎるーーーーーーーーー!!」
そう言って、おろせーと叫ぶ彼女の姿は、決して気のせいではなく小さい。
縮こまってるとかそういう次元の話じゃない、もっと違う片鱗がなんたらかんたら。
66
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:42:50 ID:frlYkhIk0
つまる話、先ほどまでとは比率が違った。
手のひらにちょうど収まるようだった姿が、今ではすっぽりと収まり、
そういえばと見渡せば、その視界の全てが変わっていて、まず見えた空の理由を知った。
(;^ω^)(ああ……いよいよもって人間失格だおね、これ)
広がるのは、建築物の屋根や屋上がつくりだす平野だ。
内藤は、己の背丈がついに夢の180センチを越えた事を知る。
しかしこれでは逆にダンクシュートが決められない。
バスケには、リングより高い位置でボールに触れてはいけない、
というルールがある事を内藤は知っていた。
そんな傷心に暮れていると、眼下で彼女が悲鳴をあげた。
ζ(゚Δ゚;ζ「ぎゃあ! 前見てブーン!」
(;^ω^)「!」
見れば、威嚇するようにガチンガチンと金顎を打ちつけながら、
蜂のような怪物がこちらへと突っ込んでくる。
67
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:43:55 ID:frlYkhIk0
続けざまに、怪物は道路を砕きながら跳躍し、六足を広げて飛び掛ってきた。
咄嗟に内藤は後ろへ下がろうとして。
急速に流れた景色に、デレの悲鳴(?)がかき消された。
(;^ω^)「……デレさん、今、なんかさ…ものすごい声ださなかった?」
ζ(/Δ//;ζ「うるさいばかっ」
先に結果を語れば、内藤と怪物の距離は、瞬く間にて数十メートル離れていた。
互いの間にあるのは、二本の黒い線だ。
内藤の脚部から展開された、ローラースケートのような形状をした部品。
線の正体は、それによって作られた、今も土煙を上げるタイヤ痕。
そして内藤は敵を視界に収めながら、デレを地上へと降ろした。
ζ(゚ー゚;ζ「……ブーン?」
( ^ω^)「うん、心配いらないお」
68
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:45:29 ID:frlYkhIk0
そして内藤は、周りの風景同様に、ひどく小さく見える敵の姿へと向きなおし、
己の中から溢れる自信と確信を言葉にして、全てに向かって言った。
( ^ω^)「もう、あいつには負ける気がしないんだお」
ζ(゚ー゚*ζ「うん、なんだか私でもやれる気がしてきたよ!」
( ^ω^)(たくましい子だなぁ……)
ζ(゚ー゚;ζ「でもここは任せるよ!」
言って、彼女は握った拳をふりあげる。
けれど内藤は知っていた、元気に振舞うその行為が、
足の震えを誤魔化すものである事を、その気高さを。
ζ(゚ー゚*ζ「だから、やっちゃえ!ブーン!!」
( ^ω^)「うん、任されたお!!」
そのやりとりに割り込む影があった。
影の正体は、先と同様に飛び上がった怪物の姿だ。
69
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:46:43 ID:frlYkhIk0
(#^ω^)「……よくも、好き勝手してくれたおね」
対する内藤は、今度は後退することなく、躊躇もなく、
金属の拳を握りしめ、雄雄しく構えを取る。
(#^ω^)「こいつはお礼だ! 取っとけお!!」
「ギイイイイ!!!」
そして、豪風纏う渾身のアッパーカットを、怪物の胴体にぶち込んだ。
瞬間。
衝撃波めいた轟音と共に、両者の動きが停止した。
音は一度、大きな爆発音のように響き、建物の間を反復しながら駆け抜けていく。
そして、ほんの一時の間を置いてから、変化は起きる。
まず、怪物の胴体が陥没したことに始まり、
怪物の身体がふわりと浮き上がった所で、一気に結果が生まれた。
70
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:48:07 ID:frlYkhIk0
「ッギ…!??!?!!!?!!!??!?」
(#゚ω゚)「ぶっ飛べぇえええええええええええええええええええええええええ!!!!」
陥没した部位にジジジと火花が散り、続けて、爆発が起きた。
振りぬかれた拳と共に怪物の姿は天へと舞い上がり、空中でゆっくりと回転しながら落下していく。
内藤の振り上げた機械腕から、排気が煙と共に吐き出され、
転がった怪物は土煙の中に半身を埋めた。
ふと見れば、デレは耳を押さえてしゃがんでいる。
このままでは彼女の膜がやばい、とまで考えて、膜がヤバイってなんかエロイと気付いた。
(;゚ω゚)「……デレ、早くここから離れるお」
ζ(゚ー゚;ζ「う…うん、そうだよね、命がいくつあっても足りないもんね」
冗談はさておき、多少の欠損であの結果だ。
このまま怪物を倒すことは可能でも、被害は今の比でない事は容易に想像できる。
ならばどうするか。
(;゚ω゚)(……どうしよう………)
だが、そんな事は知る由もなく。
71
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:50:30 ID:frlYkhIk0
土煙の中からゆっくりと身を起こす怪物の身体は、今も小さな爆発に包まれている。
目ではなく、センサーが捉えるデレは未だ遠くない場所を駆けていた。
と、前方の怪物がついに立ち上がり、赤く染まった複眼の光点を全て内藤へと向ける。
果たしてそのような感情があるのかは不明だが、その姿は怒りに震えるかに見えた。
それを見て、再び身構える内藤だったが、
(;゚ω゚)「…く」
彼女だけではない、建物自体も、そしてまだ居るかもしれない生き残った人も、
自らが破壊し、殺めてしまうのでは、という恐れがその身を固めてしまう。
と、怪物は地を蹴り、今度は直線に突っ込んできた。
対する内藤は、反応できなかった。
距離はあっても、その差は明らかだ。
「ギィイイイイ!!!」
(;゚ω゚)「やばっ…い、づぁ!?」
そして、ついに怪物の六足が内藤の全身を絡めとった。
72
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:51:43 ID:frlYkhIk0
ただ掴むのではない、怪物の腕の先は虫のように尖っており、内側へと向けられている。
見れば鎌のような形状をした部位が、無数となって生えているのが分かる。
(;゚ω゚)「あだっ!あだだだだ!!! こ、これは……!!」
何となく、カブトムシを顔にくっ付けられた幼き日を思い出した。
だが、これはそれよりも痛かった。
(;゚ω゚)「こ、この…! 離れろ!! ってででで!!??」
更に引き剥がそうとすればするほど、背中へ刺さった爪は余計にめり込んでいく。
内藤は苦しんでいたが、地味過ぎて痛みの表現がコミカルで辛い。
だが事実として、怪物の爪は内藤の背中へと突き立っているが、刺さってはいない。
装甲を多少削り取り、へこんだ箇所へと引っ掛けているに過ぎなかった。
しかし毛のように生えた爪は大量に抉りこみ、もがいた所で外れることはなく、
何より問題なのは、あがけばあがくほど、怪物の身体から迸る火花が大きくなっていく事だ。
(;゚ω゚)(こいつ…まさか!?)
73
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:52:26 ID:frlYkhIk0
考えている間にも、一際大きな爆発が起きて、落下した足の一本が路面を砕く、
そして、ややあってから火花と共に爆散した。
それだけで、路面に大きなクレーターを作り、周辺に残されたガラスを粉として。
振動によって瓦礫は更に崩れ、ひび割れた建物が土煙を上げていく。
このまま自爆でもされよう物なら、自分も含め、ここ一帯が吹き飛ぶかもしれない。
(;゚ω゚)(何でもいい…! 何か、何か無いのかお!?)
内藤は周囲を見渡した、だが、そこには崩れかけた景色があるだけで、何も無い。
自身を探した所で、特にこれと言った便利機構は見当たらない。
と、まで考えた所で、ようやく気がついた。
(;゚ω゚)(……あれ?)
最初に怪物から距離を取ったときもそうだった。
後ろへ避けようとして、足を出すでもなく、跳躍するのでもなく、別の行動をした。
極自然に、脚部のローラーを展開しての『走行』をしたのだ。
74
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:53:32 ID:frlYkhIk0
つまり内藤は。
今の自分に備えられた機械としての機能を、己が手足の様にに把握していた。
(;^ω^)(……全く、これじゃ完全にロボじゃないかお……)
どうにもこうにも、こんな時だと言うのに苦笑いがこぼれる。
だがしかし、今頼りにできるのはそれだけだと、再び内藤は意識を向けた。
(;^ω^)(使えるのは……タイヤと各スラスター……クレーンアーム…? ターボに…)
(;゚ω゚)「あ、こ、これだぁ!!!」
と、そこで怪物が動きを見せ、内藤は流石に青ざめた。
(;゚ω゚)「って……ちょ、おま……」
それは、怪物の尾だ。
蜂のように縞模様が描かれた部位は大きく膨らみ、その先端には剣のような部位が見える。
剣からは今も泡立った紫の液体が滴り、地に落ちる度に不気味な煙を立てた。
だが、内藤が恐れたのは毒ではない、その位置だった。
75
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:53:58 ID:tsRfWuCA0
ロボットぉっぉおぉおお!!!
合体とかんあんのかなwktk
76
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:55:15 ID:frlYkhIk0
何故なら内藤と怪物は今、抱き合うような形になっている、
そしてあの尾の長さとか対比した位置関係とか、あらゆる点を考慮した上で、
どう考えてもこのままでは、あの刃が股座へと突っ込んでくる事になるのだ。
前か後ろか、新たに真ん中ができるのか、選択肢はもはや無く。
(;゚ω゚)「待て!ちょっと待て! 絵的にそれは駄目だろ!?ねえ!?ちょっとおおおおおおおお!?」
悩む暇も、無いと知り。
(#゚ω゚)「ああもう! ターボウイング!」
言葉どおりに、内藤の背中が中央から大きく開かれ、
二翼の扉がガルウイングの如く展開され、銀の翼を象る。
その下から覗くは、いくつも並ぶスラスターユニット。
鈴のような形状の端には既に輝きが灯り、円状に青い炎が帯を作り。
胸元から、再びあの青い輝きを放ちながら。内藤は空を見上げた。
(#^ω^)「どでかい打ち上げ花火だ、行かせてもらうお!」
「――――――――-!!!」
77
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:57:34 ID:frlYkhIk0
そう言った軽い言葉は、すぐさま音に掻き消され、怪物の叫びも風に巻かれた。
内藤の背面スラスター部位から、凄まじいまでの炎が溢れ、それを煙が包んでいく。
煙は彼らを中心として、外部にある物を風圧と共に吹き飛ばす。
そして怪物は断末魔にも似た雄叫びを上げ、尾を向けた。
案の定、尾は見事に股に入り込み、青く輝く尻を貫く。
( ゚ω゚)「アッー!」
同時に、内藤の視界の隅に警告灯が点く。
差し込まれた刃から、毒が体内に侵入しているのだ。
(;゚ω゚)「こ、の……」
尋常じゃない激痛が主に尻に走るが、内藤はもう一度天を仰ぐ。
同時に、背面から爆発めいた火煙を上げながら二つの巨体が浮き上がり、
一息に上へと向けて加速した。
上昇は早く、一秒を待たずして辺りの建物を飛び越え、その身を空へと届かせる。
78
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 00:59:17 ID:frlYkhIk0
(#゚ω゚)「にぎぎぎぎ、いい加減、離れろこのクソヤロウがぁああああ」
あああ、とした叫びが宙に響き、交差させた両腕を全力で振りぬき、
弾かれるようにして、怪物の残った足が全てがもぎ取られていく。
二つの巨体が宙で離れ、未だからみついたままの足が爆散した。
だが、その爆発を以ってして尚、内藤の装甲に損傷を与えることは叶わず。
内藤はそのまま更なる上昇を続け、怪物はその場で降下を始める。
ついに足を全て失くし、怪物はビクビクと痙攣するように火花を散らす、
そんな落下する姿へ、内藤は左腕を伸ばし、行けと言葉を繋いだ。
( ゚ω゚)「クレーンアンカー!!」
そんな言葉と共に機械腕から射出されたのは、鉄線で繋がれた鉤爪だ。
一度怪物を通り過ぎた鉤爪は、鉄線を引っ掛けるようにして回転し、その身に絡みつく。
続けて、身体ごと左腕を回し、怪物を再び空高くへ放り投げた。
79
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 01:01:38 ID:frlYkhIk0
( ゚ω゚)「クレーンアンカー!!」
そんな言葉と共に機械腕から射出されたのは、鉄線で繋がれた鉤爪だ。
一度怪物を通り過ぎた鉤爪は、鉄線を引っ掛けるようにして回転し、その身に絡みつく。
続けて、身体ごと左腕を回し、怪物を再び空高くへ放り投げた。
(#^ω^)「こいつで……とどめだあああああああああああああああああ!!」
そして伸びきった鉤爪は排気煙と共に左腕へと収納され、今度は右腕を向ける。
右の機械腕から展開されるのは、計八つのスラスターと姿勢制御のウイングだった。
(#゚ω゚)「タァアアアアアボスマッシャァーーーー」
ボボボボボ、と連続した熱音と。
ピピピピピ、と響く電子音が重なり、上空の怪物へと狙いを定め、
(#゚ω゚)「パァアアアアアアアアアアアアンチ!!!!」
右腕を中心に炎の円を作り、爆音と煙の尾を引き連れながら、
握りこぶしを作る機械腕を射出、発射した。
80
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 01:03:15 ID:frlYkhIk0
「ギ」
既に身動き一つ取れぬままの上空の怪物は、それを避ける事も叶わず、
今度は衝突に弾かれる事も無いまま、胴体を撃ち、貫かれた。
そして、怪物の胴体に空いた穴から空が覗き。
二度、三度と大きな火花を散らしてから、その姿が上空にて、爆炎に包まれた。
上空に歪な丸を描きながら、炎は大きく広がって周囲を照らし、
片手を上げる巨大な影へとそれより小さな影が飛来し、片腕へと装着された。
目を地上へと向ければ、ブルーホールから続く怪物が起こした被害の痕跡がよく見える。
しかし自分の真下から、その被害はピタリと収まり、ふと、食い止めたのは何かと自問した。
やがて遠巻きに赤のランプが大量にやってくるのを見つけると、
破片が舞う中を影がゆっくりと降下して、大地に立つ。
81
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 01:05:41 ID:frlYkhIk0
その姿は多くの人間に確認されている。
頭部、額には金色のアンテナのような物が三本。
車のヘッドライトのような瞳は緑に輝き、その下を白のマスクが覆い隠している。
胸部から両肩にかけて、銀の車を二つに割ったかのようにも見える巨大な装甲は、
その中心に輝く結晶体を覗かせ、青に輝くその深部には何かを象るような柄がある。
両の機械腕は、特に大きな装甲に覆われ、黒でありながら輝きを見せ、
両の機械脚部は更に大きな装甲に覆われ、膝と脹脛の辺りにローラー状の部品を覗かせている。
と、そこで変化が起きた。
巨大な姿が青の輝きに覆われて、その影を見る見るうちに小さな物に変えていく。
と、やがて光が収まれば、そこに巨人の姿は無く、
多くの車両が積み重ねられた不思議な光景だけが広がっていた。
遠くから、サイレンの音が響く。
未だ怖れと緊張に支配されるその空間で、やがて誰かがポツリと呟いた。
「あれは……間違いない…VIP…」
勇者の再来だ、と。
82
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 01:08:28 ID:frlYkhIk0
―――そして内藤は、積み重ねられた車両の山の中腹に居た。
先ほどまで身体にあった充足感は既に無く、なんとも気だるい感覚に負け、
そのままボンネットに身を委ね、自身の腕を陽にかざす。
あるのは、機械の手ではない。
柔らかく、頼りない人の手だった。
残念と喜々のどちらも感じながら、内藤は笑みをこぼす。
何にせよ、これで今度は、乗せるのではなく繋ぐことができそうだ。
思いながらもう一度身を起こす。
けれどそれより、今なにより思うのは一つだ。
さて、どうやって降りよう……。
( ^ω^)は勇者クオリティのようです
第一話「覚醒のC2ドライブ」 おわり
83
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 01:09:19 ID:tsRfWuCA0
乙
84
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 01:20:33 ID:frlYkhIk0
( ФωФ)「始めましてだな諸兄等、私がAGEのリーダー、ロマネスクだ」
( ФωФ)「それでは挨拶も程ほどに始めよう、次回予告!!」
(,,゚Д゚)「お前だな? あのデカイーバをやったVIPは」
(;^ω^)「デカ…え?」
怪物を退けたブーンの前に現れた謎の男…。
彼はエイジと名乗る謎の組織の一員だった!
( ФωФ)「やあ、君の事はよく知っているよ、内藤君」
(;^ω^)「僕を知ってる……? どういう事だお?」
( ФωФ)「君の父……に、なるはずだった男は旧知でね、君が望むなら……」
( ФωФ)「君の知り得ぬ過去のすべてを教えよう!!」
半強制的に連行された先で、内藤が知る事になる真実とは…!
そして、再び現れる怪物を前に、内藤が取る行動とは!?
次回、第二話「叫べ!その名は勇者クオリティカイザー!!」
( ФωФ)9m「この次も…VIPクオリティ!!」
85
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 01:25:29 ID:frlYkhIk0
という感じで、久しぶりなのでやりたい放題やってみた。
しえんありがとうね、おかげで楽しかったよ。
86
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 02:30:31 ID:Iww2SqLgO
乙じゃ
87
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 02:39:10 ID:BFtQNx.oO
乙
ガガン?
88
:
名も無きAAのようです
:2011/11/09(水) 20:22:02 ID:V1BaF9.Q0
乙
あっちの方も待ってるよ
89
:
名も無きAAのようです
:2011/11/11(金) 16:44:08 ID:AcpWez1w0
ttp://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_009.jpg
ロボむずい、かなり適当だけど主人公機(?)
あとうpった時にエラー吐いて何度かやったら連投してもうた、ああごめんなさいごめんなさい
90
:
名も無きAAのようです
:2011/11/14(月) 10:53:27 ID:AlSWAoUAO
音無かと思ったが違った
91
:
名も無きAAのようです
:2012/10/18(木) 23:59:03 ID:nvwbDGog0
あれ?なんかおかしくね?俺時空越えたの?
92
:
名も無きAAのようです
:2012/10/19(金) 00:04:56 ID:DiriSevo0
お前…タイムリープしてねえ?
93
:
名も無きAAのようです
:2012/10/19(金) 00:07:31 ID:U9k86UKs0
>>92
>>89
ってチャネラーのだよな?ビックリしたんだが
94
:
名も無きAAのようです
:2012/10/19(金) 00:09:24 ID:DiriSevo0
よくわからんけど、ロダのURLが変わって別の画像が表示されてるんじゃないのか?
ロダが勝手に古い画像を消して番号がずれたとか、誰かが古い奴消して番号ずれたとか
95
:
名も無きAAのようです
:2012/10/19(金) 00:20:44 ID:U9k86UKs0
マジか、そんな事あるんだ。知らなかったよ。
後すまない、興奮してsage てなかったよ。ありがとう。
96
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:05:12 ID:YuEAbayY0
規制には勝てなかったよ……
97
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:05:58 ID:YuEAbayY0
三年前、大衆の心には隕石落下という忌まわしい記憶が刻まれた。
しかし一部の人間達にとって、それは一連の事件の一つに過ぎなかった。
イーバ襲撃戦、結果として宇宙からやってきた侵略物との戦いは、
期間としては非常に短く、およそ二週の間に終着した。
当然だ、いかに不可思議な存在であろうとも、相手はただの機械。
それもたった一つの行為だけをする機械だ。
生物特有の生き残るための知恵を持たない物達の動作は、
人に近づき、一定の距離で飛び掛るだけの、お粗末なプログラム。
あまりにも単調で、直線的。
人を上回る速度と力をもっていたとしても、同等の力をもち、
知恵をもって立ち回る新たな人類の敵には、成り得なかったからだ。
そして、そんな彼らを、ロングコートの男はこう呼んだ。
98
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:06:43 ID:YuEAbayY0
(;^ω^)「勇者……ビップ、クオリティ……」
ζ(゚‐゚*ζ(かっこいい……)
(;^ω^)(……て、ことは、つまりだお?)
普段からケツみたいな口でニヤケ顔の内藤だが、
そう鈍くはない、ここまでの話と、自分の置かれている状況。
踏まえれば、つまりこのコートの男が自分に何を言いたいのかを理解した。
そして同時に、対する答えも浮かんでいた。
( ω )(願ってもない、ってやつだお)
今、モニタされた映像に見える忌まわしい姿。
先日に見た、あの巨大が街を破壊する姿。
そして何よりも。
あの日に、立ちすくむ事しかできなかった自分自身の姿。
それら全てを、悔しいだけの思い出にさせない為に、
自分にできる事があるのならば。
(*゚ー゚)「イーバ群、第二防衛線を突破」
(;*゚∀゚)「あ、反応多数…!まだ増えてる!?」
( ФωФ)「ふむ……やはり、か」
99
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:07:32 ID:YuEAbayY0
(;*゚ー゚)「十、二十、何これ…こないだと同じ…!?」
( ´_ゝ`)「二人とも、現地に入電を」
( ´_ゝ`)「増援を送る、順次徹底せよ、だ」
( ФωФ)「クー君は、あとどれくらいで到着できそうかね」
(;*゚ー゚)「あと15分ほどかと」
( ^ω^)「……ギコさん!」
俯いていた顔を上げ、内藤は声を張り上げた。
呼ばれた人物は、今まさに出口へ向かう最中であった。
( ,,゚)「……なんだよ」
横目にギコは内藤を見据えた。
薄暗い場所から見る出口は、廊下から差し込む光に照らされ、
姿は陰り、彼の表情を伺いみることはできない。
しかしその向かう先は、内藤にとってなんだかとても眩しい物に見えた。
過去という暗がりに居る自分と、光に向かう相手。
思う。自分も、と。
100
:
◆6Ugj38o7Xg
:2012/10/31(水) 23:09:14 ID:YuEAbayY0
( ^ω^)「……お願いですお、僕も、連れて行ってください!」
ζ(゚Δ゚;ζ「ブーン!?」
( ,,゚)「……言ってる意味がわからねぇ」
(;^ω^)「あそこに、行くんですお? 奴等をやっつける為に…」
( ,,゚)「……だったら何だ、帰り口なら俺じゃなくて他あたりな」
(;^ω^)「だったら、僕も戦う……! 手伝わせてほしいんですお!」
言葉に、映像に釘付けだった誰もがその姿を見た。
オペレータの二人はその様にふと笑顔を見せ、二人の異人兄弟は頷く。
新たなVIPとして呼ばれた者が、今全てを受け入れ、戦う意思を見せたのだ。
しかし。
(#,,゚Д゚)「クソガキが、ふざけた事抜かしてんじゃねえ!!」
(;^ω^)「…!?」
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板