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ダンゲロス流血少女:01事前応援スレ

1流血少女GK:2015/07/25(土) 00:33:26
事前応援スレです。

95雪月通訳:2015/08/04(火) 09:24:35
>>85続き、
続きます

 衝動に身を任せて戦いに臨む。双方ともに、理由などないのだろう。
 けれど、星座には衝動の正体がわかっていた。忍者と探偵の対立……なんて因縁めいたものでは無い。

 家から逃げ出したか、家が滅んだか、違いはあるけれど。
 家業が生き方を決定できるほど体に染みついてはいやしなかったから。
 
 新興の探偵財閥、砲茉莉(つつまつり)に生を受けながら、父を狂わせ己も狂い果てた。
 探偵等と微妙な関係であった内務省警察に星を献上し、百年後に追放された身になって気に病んでいないと言えば、嘘になるだろう。けれど、今は直近の怒りが身を焦がすようだった。
 
 死体が立ち上がる。
 足元に点々と散らばる星(骸)を繋げば、星座がどこに行こうとしているのかわかるのだろう。
 『私たちが星座を盗んだ理由』、星座の名を冠した魔人能力は紛れも無く破格の物である。
 けれど、それを一言で説明するのは難しく、今は起きた現象のみを追っていくのが精いっぱいだった。

 敵を敵とも認識しえぬような唐突な邂逅を経て、先手を取ったのはタイガービーナスであった。
 戦装束(?)に身を包んでいた時点で、これを予測していたのか。寅忍に誇りを持つべきか、それともと、複雑な思いを抱くには里の滅亡は早すぎた、それでも感謝と共に放たれる手甲の一撃はひらりと躱される。
 いいや、先程立ち上がった人影は輝きをなくして崩れ落ちる。
 
 そうして、代わるようにして立ち上がる死体のひとつは瞳に星の輝きを映す。
 ここで言う星とは犯罪者の隠語であり、天空に上がった命の喩え――つまりは魂である。
 
 魂を奪い、映し取る力。星座の魔人能力については、ひとまずそう理解いただければいい。
 意表を突き、一見すれば絶好の好機をして雨月は次々と己の命の在処を替えていく、まるで何が出来るかを試すように。きっと、光速で飛び回る星群のいずれかに星座と言う人本来の星(魂)がいるのだ。

 「不意を打つとは貴様、何者っ?」
 凛々しく誰何するその声は自身を鼓舞した。それに、答える声としてひとつ。
 「星座は、名を雨月星座と言います。百回前の催涙雨に生を受けたと言っておきましょうか?」

 同じ顔をした死体に気を取られていたが、その手には望遠鏡がひとつ。
 「僕(しもべ)達十二人は等しく惑い、同じ恒星を回る旅人なのです」
 謎かけめいた言葉、まるで答える気がないような、いいえ実際ないのでしょう。
 「故に号して『少女たちの羅針盤』。紅井影虎――勝ち星を頂きました」

 瞬間、紅井影虎の世界は揺らいだ――。
 ほうと吐き出される息は冷たい。星座はただの人ではない。
 その肌の青白さは、精神と肉体を支える魂魄の片割れを失ったかのように半死と半生の境目を行き来する。で、なければ星座を二十も盗み取るなどと言う暴挙はしない。
 「想い人を見捨て、一人逃げ出すような輩にはこれで二十分――」
 
 踵を返し、海坂から常世――『メロウズ』に帰ろうとする。
 あそこのポーチドエッグは絶品であると、どこかうきうきとした期待に鳴らない胸を高鳴らせた――
 ような気がした。
 魂を撫ぜられるような寒気を感じてなお、死神には遠い。転校生に準ずる者の力量がそうさせるのか。
 「真・幻影虎陣形」

 幻影と真なる影虎、合わせて数十の虎に背を向けた星は大きな痛みを受ける。結局、肉の檻から魂は逃れられないと当たり前のことを教えてくれる。星座は強い、けれど無敵ではない。
 それは、幽世(かくりよ)に半ば足を踏み入れた星座にとって久々の感覚であった。
 「何をしたかわかんないけど、敵に背を向けといて卑怯なんて言わないでよっ!」

 一斉に唱和をするかのように見せ、その実一人きりの声に星座は動揺を隠せなかった。
 それは力なき者の声ではない。それは、暴力だろうか? いいえ、愛の力である。

96雪月通訳:2015/08/04(火) 09:24:49


 
 幅広の砂利道に影法師が伸びる。
 西日が残酷に照り付ける中で立たされ、生と死の判別を付きにくくさせる。
 輝いているものが本物の星座だが、今は唇の動きを読むだけで精いっぱいだ。

 「星座の力なき輝きを誹るわけでなく……、愛ですか? 紅井、影虎様」
 「い、いやいや。影虎は寅忍なんかじゃなくて――、ってなんで愛!?」
 「存じておりますよ、タイガービーナス様。どうやら、あなたが美鳥様を見捨てるなんてことはあり得なかったようですね」
 ふふ、と常の余裕ある笑みに戻しつつ、算段が狂ったことを内心に溜め込む。
 翻って、随分のんきな返す言葉ですこと……いや久しく戦いから離れていたのは星座も同じことか。
 「ここで鍛え直せるなら僥倖、ですね」
 カランドリエの、あの御方の看板を背負っている以上負けは許されない。
 その上で、今起ころうとしている魂の収穫祭に乗り遅れるわけにはいかなかった。
 
 油断なく、星の光が飛び交う中で言葉を紡ぐのは探偵の倣いか、いいえ――違う。
 「さきほど、あまりにも腹が立ったもので――、ここは今現在外界との唯一の出入口になっていますが、通れるのは一人きりなのです。……勘違いにまず、謝罪しましょう」
 「閉鎖空間ってこと? 私が勝ったら洗いざらい教えてねっ!」
 幻影に混じる真実にしたたかに打たれ、砂利道に擦り付けた肌が血を流す。これが痛みであり生の実感かと、自然笑みがこぼれた。



97雨月星座:2015/08/07(金) 22:10:05

 未来は刻一刻積み重なる過去によって作られるのか?

 「百年……、重いなぁ。それをひっくり返すのは中々骨が折れる。いいえ……見えない」
 「じゃあ、私の勝ちってことで洗いざらい吐いてもらうよ、塩十字団の刺客!」
 「は?」
 タイガ―ビーナスこと紅井影虎は転校生「雨月星座」に辛うじて勝利し、立ち上がりながらも荒い息を吐いていた。茜色の夕日はいまだ健在で星座の星を塗り潰すようだった。
 魂の入っていない器を作り出し、魂を自在に移動させる『私たちが星座を盗んだ理由』。
 手に掴める距離だと思ったから、幾光年を隔てた恒星はここにいる。魂を盗み取れる。
 酷く身勝手な能力だったが、今の彼女に関係はなかった。

 認識とは何を置いても"見る"ことからはじまる。
 聞く/触る/匂う/味わう=感じる
 人間本位に観測して現実を好き勝手に改変する彼女にとって、認識を阻害する分身の術は相性が悪過ぎた。ふふふ……、と精一杯の虚勢を張るかのように嗤う星座を見て、少し不気味に思った。
 「僕は……星座は、連中とは関係ありませんが、約束はしていない気がしますが約束は約束。
 今、この学園は魂の草刈り場になっているのですよ。死者は黄泉がえり、声を上げようとも奪われているから届かない、歩むたびに激痛が走るマーメイド……、僕らはそんな状況に置かれているんですよ?」

 「どういうこと……! ここは平和な学園じゃないの?」
 一笑に伏すことは出来ただろう。けれど、戦いの中で感じた真剣さは嘘と感じさせない。 
 「そう思うなら来た道をお帰りなさい。元いた場所に帰れるでしょう。大切な友人を見捨てて逃げ出すなら先に進むがいい。今なら蜘蛛の巣から逃げられるから――。
 繰り返すが、星座は、紅井さん、あなたがそう言う輩と勘違いしたから怒っていた」

 そこまで言うと、星座は崖に身を躍らせた。
 「それでは紅井さん、メロウズでまた会いましょう」
 止める間は無かった。慌てて駆け寄ったところで間に合いはしない。
 落ちながら放たれた言葉が印象に残ったのが救いだったか。
 「あ、それと。紅井さん、あなたが図書室に推薦図書で勧めていた探偵小説――凄くつまらなかったです。あそこでクレーンは無いでしょう。あんなもの、三毛猫ちゃんなら怒りますよ?」
 妙に余裕があるのが――救いだった。

 「……帰ろう」
 傷はなく、勝利することが出来た。自分の理想とする姿に近づけた。
 あの先輩の言葉に従うわけではなかったけれど、今はただ美鳥の無事を見たかった。
 それだけは、何重とブレている私にとってたった一人の真実だったから――。

 ……この帰路にタイガービーナスはもう一人の変身ヒロイン「仔狐クリス」に襲われてあえなく敗北する。
 それはまた別の話であるのだが。



終了


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