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ダンゲロス流血少女:01事前応援スレ
95
:
雪月通訳
:2015/08/04(火) 09:24:35
>>85
続き、
続きます
衝動に身を任せて戦いに臨む。双方ともに、理由などないのだろう。
けれど、星座には衝動の正体がわかっていた。忍者と探偵の対立……なんて因縁めいたものでは無い。
家から逃げ出したか、家が滅んだか、違いはあるけれど。
家業が生き方を決定できるほど体に染みついてはいやしなかったから。
新興の探偵財閥、砲茉莉(つつまつり)に生を受けながら、父を狂わせ己も狂い果てた。
探偵等と微妙な関係であった内務省警察に星を献上し、百年後に追放された身になって気に病んでいないと言えば、嘘になるだろう。けれど、今は直近の怒りが身を焦がすようだった。
死体が立ち上がる。
足元に点々と散らばる星(骸)を繋げば、星座がどこに行こうとしているのかわかるのだろう。
『私たちが星座を盗んだ理由』、星座の名を冠した魔人能力は紛れも無く破格の物である。
けれど、それを一言で説明するのは難しく、今は起きた現象のみを追っていくのが精いっぱいだった。
敵を敵とも認識しえぬような唐突な邂逅を経て、先手を取ったのはタイガービーナスであった。
戦装束(?)に身を包んでいた時点で、これを予測していたのか。寅忍に誇りを持つべきか、それともと、複雑な思いを抱くには里の滅亡は早すぎた、それでも感謝と共に放たれる手甲の一撃はひらりと躱される。
いいや、先程立ち上がった人影は輝きをなくして崩れ落ちる。
そうして、代わるようにして立ち上がる死体のひとつは瞳に星の輝きを映す。
ここで言う星とは犯罪者の隠語であり、天空に上がった命の喩え――つまりは魂である。
魂を奪い、映し取る力。星座の魔人能力については、ひとまずそう理解いただければいい。
意表を突き、一見すれば絶好の好機をして雨月は次々と己の命の在処を替えていく、まるで何が出来るかを試すように。きっと、光速で飛び回る星群のいずれかに星座と言う人本来の星(魂)がいるのだ。
「不意を打つとは貴様、何者っ?」
凛々しく誰何するその声は自身を鼓舞した。それに、答える声としてひとつ。
「星座は、名を雨月星座と言います。百回前の催涙雨に生を受けたと言っておきましょうか?」
同じ顔をした死体に気を取られていたが、その手には望遠鏡がひとつ。
「僕(しもべ)達十二人は等しく惑い、同じ恒星を回る旅人なのです」
謎かけめいた言葉、まるで答える気がないような、いいえ実際ないのでしょう。
「故に号して『少女たちの羅針盤』。紅井影虎――勝ち星を頂きました」
瞬間、紅井影虎の世界は揺らいだ――。
ほうと吐き出される息は冷たい。星座はただの人ではない。
その肌の青白さは、精神と肉体を支える魂魄の片割れを失ったかのように半死と半生の境目を行き来する。で、なければ星座を二十も盗み取るなどと言う暴挙はしない。
「想い人を見捨て、一人逃げ出すような輩にはこれで二十分――」
踵を返し、海坂から常世――『メロウズ』に帰ろうとする。
あそこのポーチドエッグは絶品であると、どこかうきうきとした期待に鳴らない胸を高鳴らせた――
ような気がした。
魂を撫ぜられるような寒気を感じてなお、死神には遠い。転校生に準ずる者の力量がそうさせるのか。
「真・幻影虎陣形」
幻影と真なる影虎、合わせて数十の虎に背を向けた星は大きな痛みを受ける。結局、肉の檻から魂は逃れられないと当たり前のことを教えてくれる。星座は強い、けれど無敵ではない。
それは、幽世(かくりよ)に半ば足を踏み入れた星座にとって久々の感覚であった。
「何をしたかわかんないけど、敵に背を向けといて卑怯なんて言わないでよっ!」
一斉に唱和をするかのように見せ、その実一人きりの声に星座は動揺を隠せなかった。
それは力なき者の声ではない。それは、暴力だろうか? いいえ、愛の力である。
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