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ダンゲロス流血少女:01事前応援スレ

1流血少女GK:2015/07/25(土) 00:33:26
事前応援スレです。

59仔狐クリス:2015/07/31(金) 02:36:51
【仔狐クリスと十星迦南】 

自分より、格上の存在にノックダウンされた次の日。
私は体力回復に努め、勝てる算段を練った。

昨日の戦闘では、大きな傷を負うことはなかったが、体力の回復には時間が掛かりそうだった。
人の気配がない閉ざされた世界で、私は一人、校舎を背に座って休んでいた。
ぼんやりと、今夜また起きるであろう戦闘での戦法を考えつつ、空を見上げて土星先輩のことも考えていた。

――私が消えた後、先輩はどうなっただろうか。
――無事だろうか。
――また白いフードを被った少女に襲われたりしてないだろうか。

そんな思いが頭に浮かび、ただここで何もすることができないまま回復に勤しむしかない我が身を恨みながら、虚空を睨んでいた時のことだった。

「――星を見るのが好きなんですか?」

その声を聞いた瞬間、私は跳ねるように身体を起こした。

いつの間にか近くに立っていたのはカジュアルな服装をした銀髪の少女。

戦闘が始まるのは夜からだと無意識の内にそう決めつけていたが違ったのだろうか。まだ体力は回復仕切っていない。このまま戦闘するのは些か危険だ。なんとかして逃げる算段を立てなくては――

そんな焦る思考を打ち切る様に、その少女は口を開いた。

「あはは。まだ夜じゃないから戦いませんよ。わたしとしても今戦うのは本意じゃないし、リラックスして欲しいです」
「そんな言葉で隙を突こうとしたって無駄です」

私は警戒心を解かずに強めの口調で応えた。
少女は困ったように頭を掻いてから、言った。

「んー困ったなぁ。暇つぶしの相手になってもらおうと思ったんですけど、随分疑り深い人みたいですね。まぁいいや、そこで立ったまま話相手になってくれるだけでも構わないです。応じてくれればお礼に昨日貴方が戦ったあの強敵の情報を提供してあげちゃってもいいですよ」

それから彼女は私のさっきまでの行動を真似るかのように、校舎を背にして座った。
私は目を見張った。
明らかに臨戦態勢をとっている私を前にくつろぐように座るとは何事かと。
どれだけの余裕があればそんなことができるのだろう。
昨日私が破れた敵について知っているということは、その仲間かとも疑ったが、どうにも私と同格の匂いしかしない。
ならば、この座るという動作は彼女なりの譲歩というやつだろうか。それに昨日の敵の情報を得られるというならば、ぜひ知りたいところだ。

「……分かりました。話相手でいいなら応じましょう」

私は構えを解き、立ったまま校舎に背を預けた。
立った状態ならば、何か相手が仕掛けてもある程度対処できるだろうと思ったからだ。それにずっと警戒したままでは心身ともに疲労し、回復がおぼつかなくなる。
ある種の賭けだったが、一応相手を信用してみることにしたのだ。

銀髪の少女はそれを見てにっこりと笑い、こちらに話を振ってきた。

「多少は信じてもらえたようで嬉しいです! まずは自己紹介しません? 私、迦南っていいます! 十星迦南!」
「……仔狐クリスといいます」
「こぎつねクリス……成る程、クリスさんって呼びますね! で、クリスさんにもう一度聞きたいんですけど、星を見るのが好きなんです?」
「いえ、私は別に……知り合いに一人、星を見るのが好きな人はいますけど」
「あれれ、空を見上げてたから好きかな―と思ったのに。でも、その知り合いの人とは仲良くなれそうですね!」

この銀髪の少女と土星先輩が果たして仲良くなるだろうか。……仲良くなれそうな気はする。土星先輩は、誰隔てなく仲良く慣れるタイプの人間(惑星?)だ。更に趣味が合うとなれば、私とアンジーちゃんの話題で花咲かせたようにきっと仲良く話すのだろう。
迦南と土星先輩が楽しそうに会話している様子を想像して、少し胸が痛くなった。

60仔狐クリス:2015/07/31(金) 02:37:21
「……空を見ていたのは考え事をしていたからですし、多分私の知り合いと貴方は仲良くなったりしないと思います」
「あれ? なんか発言に棘ありません? もしかして何か怒らせちゃいましたか?」
「気のせいでしょう。それより情報提供してくれるんじゃなかったですっけ。昨日の敵について知ってるのであれば、教えてください」
「えぇー? 星の話題で盛り上がりたかったのに! 夕方に見る星とか、綺麗じゃないですか?」
「情報を」
「はいはい。風情がないですね、もう! 分かりましたよ―。昨日貴方が戦った敵、アレは『転校生』と呼ばれる存在です」

転校生。
魔人から進化したと言われる存在……だと聞いたことがある。身体的にも能力的にも魔人と比べ遥かに優れている、と。
確かにそれならば昨夜のあの強さも理解できる。
えげつない程の攻撃力、私の気力を削ぐほどの存在感。それらは転校生だからこそ持ち得たものなのだろう。

「成る程。転校生については聞いたことがあります。……けれどその転校生である彼女がなんで私の前に現れたんですか? いや、そもそも今行われているこの戦いはそもそも何なのですか? なぜ私達“同格”の成長性を持った魔人達が隔離されたようにこの人気のない世界に飛ばされたのですか?」
「んー質問が多いです! そんな一気に聞かれても答えられませんよ! もう!」
「あっ。ごめんなさい……」

沸々と湧き上がった疑問をそのまま迦南にぶつけてしまっていた。反省しなくては。

「えへへ、素直に謝れる人は好きですよ。ポイント一点!」
「えっ、何のポイントですか……?」
「んーと、まずは私達がなんなのかということから説明しなきゃですかねー」

あ、スルーされた。

「クリスさん、自分が少々特殊な魔人だということは、自覚ありますか?」
「……はい。多少は」

私は身体能力の高い魔人であると同時に、更に高い成長性を持っている。
通常の魔人も鍛えれば成長していく可能性はあるだろうが、それはある程度の期間を経てじっくりと成長していくものだろう。
だが私は、昨日の戦闘で格段に成長した。それまでの私とはまったく違うということを感覚で理解していた。
そしてこの高い成長性は私だけでなく、昨日戦った二人の少女や迦南も持っている特性なのだろう。

「クリスさんや私などがどのように特殊であるかに関しては、恐らくクリスさんが考えている通りなので説明は省きます。この閉じた世界に居る転校生以外の私達は……そうですね、『準転校生』とでもいいましょうか。そんな感じの存在です」
「準転校生……私が、私達が転校生に準ずる存在、なのですか?」
「はい。まぁ現段階は、ですけどね。今後の成長によってはもしかしたら転校生を越える程の実力を持つことになるかもしれません」

転校生を越える実力を得る可能性。
昨日転校生に破れた際に、成長すれば転校生と互角に渡り合えるかもしれないと感じたのは、間違いではなかったようだ。

「成る程……でもなんでそんな存在がこの世界に集められたのでしょうか?」
「んー、それは各々人それぞれの理由によるものじゃないですかね。多分巻き込まれたのでなく自主的にやってきた人も居ます。でも、集められたというよりは元々妃芽薗に居た、と言う方が多分正しいですね」
「妃芽薗に居た……? 貴方も妃芽薗学園の学生なのですか?」
「そうですよ。多分今この世界に居る準転校生のほとんどが妃芽薗学園の生徒だと思います」
「なぜそんな、転校生に近い存在が妃芽薗に集まってるのですか……?」
「さぁ……? 高二力フィールドが何か影響してるのかもしれないですね。でも詳しいことはさっぱりわかりません」
「では準転校生が戦っている理由は? 私はよくわからない戦闘衝動に突き動かされて戦ったのですが……」
「それもよくわかりません。貴方が戦闘衝動に駆られたのは、もしかしたら誰かによる精神操作能力かもしれないですね。ただ、準転校生が戦うことになっているのはどう考えても準転校生を鍛える為でしょう。何の為に鍛えるのか、と聞かれたらそれも分かりませんが」
「ふむ……」

61仔狐クリス:2015/07/31(金) 02:37:55
一応、現段階で分からないことは全て尋ねることができた。
じっくりと咀嚼するように情報を噛み砕いていく。
と、そこでふと気になることが出てきた。

「……貴方は、迦南さんは、どうしてそんなに情報を知っているのでしょうか?」
「えー、そこ聞いちゃいますか? んー、そうですね。とある組織に所属しているから、とだけ言っておきます」
「組織、ですか。その言い方だと詳しくは教えてくれないんでしょうね」
「ですね。言っちゃったらわたし先輩に怒られちゃいますし。……さて、と」

迦南さんは立ち上がり、伸びをした。
それから砂を払うように軽くホットパンツを叩いて言った。

「暇つぶしのお付き合いありがとうございました。いつの間にか良い夜空になりましたね」

夜になった。
その事実は、戦闘の開始を示していた。

「――では、始めましょうか」

薄暗い景色の中で、コバルトブルーの瞳だけが戦意に燃えて光っていた。

◇◇◇

――夜が来て、また戦闘が始まる。

再び戦闘衝動が全身を駆け巡る。
今まで会話していて、かつ情報提供してくれた相手と戦わなくてはならないことは少し心苦しいが、そうも言っていられない。
私には生き延びて元の日常に戻る目的がある。
迷いを振り払って、臨戦態勢になった。

今回の敵は武器が見当たらない。
今のところ、手の内を隠しているようだ。
迦南さんは同じ準転校生だが、今までの敵より強敵の気配がする――そう考え警戒したのは、実際間違いではなかった。

――この銀髪の少女に、私は苦戦を強いられることになる。

まず最初の動作では、私は精神を集中し、相手は回避に備える態勢を取った。
お互い様子見ということである。

痺れを切らした私は、必殺技である「エナジーフィスト」を放った。
私の戦法は、基本的に昨日と変わっていない。
昨日の調子ならば、大敗を喫したあの少女はともかく、他の同格の存在ならばそこそこ戦えるのではないかという算段からだ。
そして恐らくこの戦法が一番ダメージ効率が高いと思われるという理由も、基本戦法を変えない原因になっていた。

しかし相手も攻性行動をしてくるだろうと見込んでの大技であったが、見込み違いであったようだ。
弾速も決して遅くはないはずのエナジーフィストが回避された。
二度目のエナジーフィストも同じく躱される。
昨日戦った虎の仮面を被った少女といい、私よりも速度の速い敵が多いように感じる。
もっと鍛えて、速度で追いつけるようにもならなくては――そんな事を考えていると、カウンターからの四連撃を食らった。

思い出すのは、転校生の攻撃。
彼女も四連撃で攻撃を放ってきた。
トラウマが私の動きを鈍らせたのか、防御も回避も出来なかった。昨日の戦いで少しは防御に動きを割くことも覚えたはずなのに。

昨夜負けた相手と違う点といえば、威力が昨日の相手より小さいということと、攻撃手段が違うということだろうか。
迦南さんは、十字架を召喚して放ってきた。

十字架。
基督教の象徴であり、人を磔に処す為の刑具でもある。
どのような思いでこの十字架を振るっているのだろうか。
戦意に満ちた表情からは伺い知ることはできない。

62仔狐クリス:2015/07/31(金) 02:38:11

私は精神集中を行い、追撃に備える。

続く十字架の四連撃。
計算され尽くされた、美しささえ感じる十字架落としは、四分の一を防御するのが精一杯だった。
咄嗟に放ったエネルギー弾も回避され、気力を削がれる。

次に放ったエナジーフィストはもはや自棄だったが、相手が回避に失敗した為、当てることができた。

そして、エネルギー弾と十字架が数回交差した。
お互いの身体に傷が増えていく。

埒が明かないと思い、密かにエナジーフィストを当てる算段を立てる。
迦南さんは私より動きが速い。
そこは認めよう。
だからこそ、大技であるエナジーフィストを当てる為に行動を起こさねば、削り負けてしまうだろう。

もう一度、エナジーフィストを打ってみる。外れた。

カウンターの十字架が飛んでくるが、うまく防御に成功する。
私は敢えてここで焦って反撃に移らずに精神集中を行った。
必殺技を打つ隙を見極める為だ。
直後、その隙はやってきた。

「あ……」

乱発しすぎたせいだろう。
迦南さんは十字架の召喚に失敗した。
それは戦闘中に於いて、致命的な隙だった。

「――はァッ!!」

裂帛の気合と共に、エナジーフィストを放つ。

大き目のエネルギー弾が腹部に命中し吹き飛んだ迦南さんは、校舎の壁に激突した。

「……あはは。また負けちゃった。これは先輩に怒られちゃう……なぁ……」

そして蹲る様に意識を失った。
少しだけ心苦しく思ったが、まだ私には次の戦いが控えている。
私は後ろ髪を引かれる思いに苛まれながらもその場を離れ、次の対戦相手を探しに行った。

【END】


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