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投下用SS一時置き場

1名無しさん:2006/05/10(水) 23:41:46 ID:OKj1YCQ2
規制にあって代理投下を依頼したい場合や
問題ありそうな作品を試験的に投下する場所です。

965私は、誰にもなれないのなら9/21:2006/12/11(月) 20:36:25 ID:nCh3u9QY

まずは全体を見渡せる位置に立ち、邪魔者はどこかを見極めることが先決だと思った。
それさえわかれば、いくらでも対処のしようがあるというものだから。
ピサロは視野を広げ、気配を探る。
新たに人の気配が増えた感じは…ない。と、すれば…一体、さきほどの気流は…?
すぐに答えが導き出せないピサロの前で、その答えがゆっくりと起き上がった。
正直、意外だった。確かにずっとそこにはいたが、はなから考慮になど入っていなかった。

「そうか…貴様か、フォズ」
「ダメです…ピサロさん。いけません、そんなことをしては…」
「お前だったのか。そう言えば長い間、顔を突き合せてはいたが
 お前の戦う姿を見たことはなかったな…そうか、その杖の力か」

まだ睡魔が抜けきらないフォズが杖を支えにして立ち上がる。その杖をピサロは見た。
天罰の杖だ。確か道具として使うことで、バギ系の風の力を巻き起こせるアイテムだったか
それで私とあいつとの間に気流の壁を作った…と。
本気で使えば、小規模の竜巻を起こす力にもなるはずで、致命傷とはいかないまでも
二人を吹き飛ばしてしまうくらいの勢いを生むことも可能だったはずだ。
が、睡魔から立ち直ったばかりの精神力では、この程度が精々で
この際はそれが効を奏した…と。

(それにしても、改めて思えば天罰の、とは笑わせる)

誰が誰に下す天罰だ?誰に?私にか?誰が?神がか?
こんな狂った状況をのうのうと見過ごしておいて、何が天罰か。
神とやらも今さら立場もなく、恥ずかしくて顔も出せまいに。
そんな、いつもならどうでもいいと捨て置いたようなことまで、
今のピサロには不愉快で、苛立ちを感じさせるものでしかなかった。

966私は、誰にもなれないのなら10/21:2006/12/11(月) 20:39:37 ID:nCh3u9QY

「ダメです…ピサロさん…お願いです。もうやめてください、こんなこと」
全てが忌々しく思えるピサロの耳に、再び少女の小さな哀願の声が響く。

「やめろ…か、何故そう言う?自らの命惜しさか?」
「…素直に言えば、それもあります。誰だって、あえて死にたいなんて思いません。
 でも…いえ、だからこそ、死にたくもない人を無理やり死なせてしまうような
 そんな恐ろしい人に、あなたをさせたくないのです」
「ほう…それは、私のためを思ってか?」
「はい………いいえ、半分は、多分、私のためです。
 あなたが殺戮者となるのを見たくないという、私の願いのゆえにです」
「そうか。まあ、私のためだろうと、自分自身のためだろうと、どちらでもいい
 はっきり言わせてもらう。余計なお世話だ」

鋭い瞳で、ピサロはフォズを睨んだ。そして静かに、だが重い口調で告げた。
睨まれただけでも恐ろしかったが、さらにその言葉が、フォズの脳裏を強く揺さぶった。

「余計な…お世話…?」
「お前を傍に置いたのが間違いだったのだ。私の目的を果たすため、と思ったが
 とんだ勘違いだった。もうお前に用はない」
「でも…でも…ピサロさん!あなたは先ほど、私を身を挺して助けてくださいました。
 絶対逃げられなかった、あなたがいなければ、私は確実に死んでいました!
 先ほど、咎めるような口をきいたことがいけないのなら謝ります。
 あなたは、私の命の恩人なのです。それなのに…それなのに…どうして」
「何度も同じことを言わせるな!だから、それが間違いだったというのだ!」
「!そんな…そんな…」

静から一転、と言うよりその薄い仮面の下に隠されていたピサロの激情が露になる。
ピサロが灼熱した。かたや、フォズは全身を寒波に襲われたような心地にさらされた。

967私は、誰にもなれないのなら11/21:2006/12/11(月) 20:40:45 ID:nCh3u9QY

「私の目的は…まずはこの戦いに生き残ることだ。全てはそこから始まるのだ。
 お前を傍に置いたのは、私の目的を達成するために、
 その力が役に立つやもしれぬと思ったからだ。
 …お前自身の身など、どうでもよい。どうでもよかったのだ…
 だというのに…私は、私としたことがくだらぬ情にほだされ、一時の感情に流され、
 あげく、このザマだ!」

激発する精神とは裏腹に、体は改めて見れば見るも無残な姿になっていた。
アレフは、先程あれでよくあのスピードで動けたものだと今さらながらに驚いた。
精神が肉体を凌駕していたとでもいうのか?それほどの怒りを内に秘めていたのか?
この男の異常なまでの執念の片鱗を感じて、アレフは戦慄を覚えた。
そして、フォズは打ちのめされた。あれほどまでに冷静で堂々としていたこの人が
今はこんな姿になって、そしてこれほどまでに憤怒に身を焦がして…
私を守ったために…私の、せいで…!

「私は…自らの力で生きる。誰にも邪魔はさせん。誰の運命にも左右されもせん。
 生きるならば、自らの意思で生き、滅びるならば、それもまた己の意志によってだ。
 もはや誰の助けも借りぬ。邪魔も要らぬ。お前など、もういらぬ」
「でも…でも…ピサロさん!」
「うるさい!その名で呼ぶな!
 あまりわめき散らすのならば、今すぐ永久に黙らせてやってもよいのだぞ!」

そこまで声を張り上げて、一度ピサロは姿勢を変えた。
アトラスから受けた一撃と、アレフを殺害しようとした時のオーバーワークによる反動。
さすがに無視できなくなってきた痛みで、同じ調子を続けるのが苦しくなってきたのだ。

968私は、誰にもなれないのなら12/21:2006/12/11(月) 20:42:47 ID:nCh3u9QY

「フン…わめこうがわめかまいが、どのみちこの場で2人とも始末するはずだったのだがな。
 さすがに私も深手を負い、無理をしすぎた。いったん退くとしよう。
 まずは体力を回復させるほうが先だ。ある程度それが成った暁には、行動を起こす。
 これまで共にいたよしみだ。この場だけは見逃してやる。
 しかし、再びお前が私の視野に入る時があれば…有無を言わさず、今度こそ殺す」
「ピ…ピ、サロさ、ん…わ、わ、たし、は…あ、あな、たに…お、お、れ」

フォズは完全に涙目になっていた。おそらく「助けてもらったお礼が言いたくて」と
言いたかったのだろうが、声が詰まって、まともな発音になっていなかった。
もっとも言えたとして、もはやピサロは聞く耳を持ってなどいなかっただろう。
その様を無視して、闇の衣を翻し、ピサロは再び2人の前で背を向ける。

「ま、まって…い、いかない、で…いや…!おいて、いかないで…!」
「そう言えばお前はよくこんなことを言っていたな。
 『ひとは、誰かになれる』…だったか?娘よ」
涙交じりに懇願するフォズに、ピサロは振り返って言った。そして最後にこう付け加えた。

「ならば、私は全てを滅ぼす魔王となろう。それが、お前の導きに対する私の答えだ」

少女にとって、ある意味とどめとなる一言を残して、今度こそ本当にピサロは去った。

969私は、誰にもなれないのなら13/21:2006/12/11(月) 20:44:54 ID:nCh3u9QY

「大丈夫かい…君は…」

ピサロが消えた後、アレフはフォズを気遣って声をかけた。
対して、フォズは彼の呼びかけに何も答えず、虚ろな瞳のまま立ち尽くしていた。

『ひとは、誰かになれる…だったか?娘よ』
頭の中をピサロの言葉が幾度となくリフレインする。

『ならば、私は全てを滅ぼす魔王となろう。それが、お前の導きに対する私の答えだ』
もう涙も出なかった。
自分がどれだけちっぽけな存在だったかを徹底的に、思い知らされて。

(結局…私は、何だったの…私は…誰なの…?)

誰かを導くことができたのか?…できなかった。
ここへ連れてこられて最初にしたこと、アルスを探すことは果たせなかった。
彼女がダーマの教えを説いた二人、サマンサは既に息絶え、ピサロもまた修羅の道へ堕ちた。
それが全て…自分の言う導きだった…とでもいうの…?

一体、今日、ここに至るまで、自分は何をしてきたのだろう。
誰かのために、少しでも何かの役に立つようなことがあっただろうか。
そんな記憶は見当たらなかった。
どこまでも独りよがりで、どこまでも無力で、どこまでも役立たずで。

(私は…人を導く神官なんかじゃ、ない)

そう思えてならなかった。いもしない観客が見てくれていると信じて、
ひたすら暗闇の中を踊りのたうちまわる哀れな道化以外の何者でもなかった。

970私は、誰にもなれないのなら14/21:2006/12/11(月) 20:46:34 ID:nCh3u9QY

私は…神官などではない
私は…あの人の心を溶かす、優しい心を持った女性でもない
私は…あのアルスさんのような、勇気を持って邪悪に立ち向かえるような戦士でもない
私は…誰でもない
私は…誰にも…なれない

(私は、誰にもなれない)
ならば、せめて私が、私としてできることは…?何か、ないの?何も…ないの…?

「おい!気づいているか!しっかりするんだ!大丈夫か!うっ!」
そこでフォズは我に返った。何度も自分を呼ぶ声よりも、最後の苦悶に反応した。
はっとなって見れば、アレフがすぐ真横にいる。そして今はうずくまっている。
その足には、まだ先ほど受けたピサロのアサシンダガーが突き刺さっていた。
ろくに処置する余裕がないのなら、下手に抜かないほうがマシと言うこともあるとはいえ、
自分の方がよほど重傷であるというのに、ずっと彼女を気遣っていたのだ。

「あ!ああっ!ごめんなさい!安静にしてください!手当てをしますから!」
フォズはアレフの体をできるだけ刺激しないよう注意を払いながらダガーを抜く。
当然、酷い出血が後に続いたが、いまさら怯む彼女でもなかった。
止血し包帯を…と思ったが所持品の中に包帯はないので、自分の法服の一部を引きちぎる。
程よい長さに調節すると、アレフの患部に丹念に巻いて、回復と念のため解毒の魔法を施す。
処置が適切だったのか、だんだんと彼の顔色の悪化が収まっていくのがわかったが
それでもまだ十分とはいえなかった。
ここでは回復魔法の効果が薄いのは既に知れていたことだし、
肝心要のフォズの魔力もまた、尽きかけているのだ。

(何か…気休めでもいい。魔力が不要で、もっと長時間にわたって回復を施せるものは…)
フォズはもう一度自分のザックを漁ってみたが、そんな都合のよいものが
今になっていきなり出てくるはずもない。

971私は、誰にもなれないのなら15/21:2006/12/11(月) 20:49:00 ID:nCh3u9QY

(・・・あら?)
何かないかと辺りを見回して、ふとある物に気がついた。
今は亡きサマンサ、その傍らに一つの固体が零れ落ちている。
あの時か。あのアトラスの攻撃を受けた時に落ちたのだろうか?
フォズは歩み寄ってその固体を拾い上げた。見覚えがあったのだ。

奇跡の石だ。元々、彼女の住んでいたダーマの近辺でたまに用いられるもので、
ことこの道具に関しては、支給品の説明よりよほど彼女のほうが詳しかった。
この石に念じ、それによって発する力を受ければ、怪我の治癒を行うことが出来る。
もっとも効果はホイミと同程度。回復魔法の制限が大きいここでは
即効性という点においてはあまりあてになるようなものではない。
だけど、これだとフォズは思った。この石の特性は、使用する誰かの祈りさえあれば、
石自体が持つ癒しの力は無尽蔵であること。この場合この点が重要なのだ。
効き目は微々たるものでも、それをゆっくりと当て続けることが出来れば
いずれ全快とは言わなくても、それほど不自由なく歩き回れるくらいにはなれるはずだ。

フォズはアレフを回廊の壁を背もたれにするようにして座らせる。
そして奇跡の石に出来る限りの強い念を込め、酷い傷跡の残る左足の真横に置いた。
やはり、回復能力はスズメの涙ほどでしかない。だけど

「悪く…ないね」
「本当ですか?」
フォズの顔に安堵の笑みが漏れた。アレフも憔悴しきった顔ながらそれに返す。
「ああ、何だかこう、ぬるま湯に浸ってるみたいだ。ほっとするよ…」
「そうですか…」
気遣いもあっただろう。でも、そんな彼の反応が、今のフォズには素直に嬉しかった。
(あったんだ…私にも、できること…)
よかった。少女は大きく息を吐いた。

972私は、誰にもなれないのなら16/21:2006/12/11(月) 20:50:22 ID:nCh3u9QY

…そして表情を変えた。ひとたび目の前のことが落ち着くと、意識は再び元の処へ飛ぶ。
(何もできないなんて…そんなこと、ないよね…?)
私にできること、私にしかできないこと…きっと、あるはずだ。
今、これから私がなすべきこと、自分が心からしたいと思うことは…何?

フォズは、自分を振り返る中で、ここに至るまでの道程を思い起こした。
見知らぬ場所、険しい道、孤独、遭遇したいくつものアクシデント。
死にかけたことがあった、見捨てられたこともあった、大切な人を失い嘆いたこともあった。
辛いことばかりだった。悲しいことばかりだった。
でも、それならば何故?何故、私は今まで生きのびてこられたの?
辛いことばかりだった。悲しいことばかりだった。
それでも絶望せずに、私が今ここにいられた理由は…

(そう、だ…やっぱり、そうです)

一人の男の顔がよぎった。その姿を思い浮かべた瞬間、フォズの手が今は恐怖で震えた。
しかしそれを押し殺してしまいたくて、彼女は固く拳を握った。

(やっぱり…嫌だ…このままじゃ、終われません…)
あの人は言った。私の言っていることは綺麗事だって。
多分、いや、きっとそうなんだろう。自分でも思う…綺麗事なんだって。
あの人は何度も私の言うことを耳障りに思っていたようだった。無理のないことだった。
でも、綺麗で何がいけないというのですか?綺麗事の、どこが悪いのですか?
あの人が、これから殺戮の道を歩むことの、何が正しいとでも言うのですか?

(違う…違う違う!誰が、あの人自身が何と言おうと、やっぱり違う!
 私を命がけで助けてくれたあの人が、平気で罪もない人の命に手をかけるだなんて!
 嫌…そんなの違う…絶対に違う!)

973私は、誰にもなれないのなら17/21:2006/12/11(月) 20:51:32 ID:nCh3u9QY

『納得できぬか』

(!?)
何か、声が…聞こえてきた気がした。
これは…そうだ、あの時だ。アトラスとの戦いの時、あの人が言ったことだ。
そして、続けて彼はこう言ったのだ。

『ならばそれを貫いてみせろ……泣くばかりでは何も出来ん』

(……)
そうだ。私は、貫かなくてはならない。
嫌だと言っているだけでは始まらない。泣くばかりでは、何もできない。
誰でもない私の、私だけの気持ちを証明するために、私は、動かなければいけない…!

(………そう、ですね。わかりました。私、決めましたからね。もう、迷いません)

フォズの頭の中で、一つの道が光明となって見えた気がした。
それを境に、彼女の顔から不安が消えた。
…見えた唯一のそれが、この上もない茨の道だと、わかっていても。

974私は、誰にもなれないのなら18/21:2006/12/11(月) 20:53:19 ID:nCh3u9QY

そして、フォズは静かに声をかけた。

「アレフさん…様子はいかがですか」
「ん?ああ…ちゃんと動くにはまだ時間がかかりそうだけど、痛みはほとんどないよ。
 単に麻痺してるだけかもしれないけどね」
「心配ないですよ。さっきより血色が随分良くなられていますから。
 ちょっと待ってくださいね。改めて石に念を入れなおしますから…ン…これでよし。
 これでまたしばらくはもちます。あとは私がいなくても、時が解決してくれるはずです」
「ああ……と、何だって?何て言った?私がいなくても…?どこかへ行くつもりなのか?」

アレフが問うた。フォズは決然とした面持ちで立ち上がった。
その視線の先は、彼が、去った先。
「あの人の…ピサロさんの後を追います。そして、あの人を止めます」
「な!?なんだと?」
アレフが大きく目を見開いた。驚きを隠しようもなかった。

「…すみません。こんなところに一人ぼっちにさせてしまうことを許してください。
 でも、今しかないんです。まだ、ここにはあの人が通った痕跡が残っている」
それはピサロの足跡や血痕、そして魔力の痕跡。
魔力を元に探し人を見つける…ピサロが、かつてフォズの前で実演してみせたことだ。
精度はおよそ比べ物にはならないけれど、ダーマで魔の道に通じる職の伝授をも
担った経験のある彼女だったから、全く不可能なことでもなかった。

「怪我の深いあの人なら、そう遠くへは行けないから、今なら私の足でも追いつけます」
「待て!追いついて、どうするっていうんだ!君にあいつを止めることができるのか?」
「わかりません…いえ、おそらくはできません。
 でも、できるか、ではないのです。したいのです…だから、行くしかありません」

975私は、誰にもなれないのなら19/21:2006/12/11(月) 20:55:20 ID:nCh3u9QY

フォズが歩き始めた。アレフは慌てて止めた。

「やめろ!本当にそのつもりだとしても、君だけで行くな!
 もう少し待つんだ!俺も、すぐに歩けるようになるから!」
「ありがとうございます。嬉しいです…でも、ダメなんです。
 急がないと、あの人の気配を見失ってしまいます。
 それに、あなたとピサロさんとの話、私もおぼろげながら聞こえていました。
 あなたも、守りたい大切な方がおられるのでしょう?
 いずれ治るその足と、その強く優しい心は、どうかその方のためにお使いください」
「あいつの話を聞いていなかったのか?行けば、確実に…殺されるぞ!」
「かもしれません。ですが、それならば尚更行かないわけにはいきません。
 どのみち私のこの命は、一度あの人にいただいたものです。返さなければなりません。
 あの人が、本当に手遅れになってしまう前に」
「何を莫迦な…あっ…行くな!待つんだ!待て!」
「ありがとうございました。最後まで、わがままでごめんなさい…
 足、治してくださいね。お気遣い本当に、本当に、感謝しています。
 死ぬまで、いえ、死んでも忘れませんから、絶対に」

フォズは目を潤ませ、何度も頭を下げた。
そして、アレフの元を離れると、ピサロが去った後を追って、駆け出した。
背後から聞こえたアレフの、あんなに自分を心配してくれた人の、最後の叫びに、
心を痛ませながら。


「待て!だから、待てと…!ちくしょおおおおおおおお!!!!」

976私は、誰にもなれないのなら20/21:2006/12/11(月) 20:57:49 ID:nCh3u9QY

フォズは懸命に走っていた。ピサロの後を追って。
そして、その過程の中で考えた…たぶん、私はそう遠くないうちに死ぬだろう、と。
もちろん殺されたいとも、望んで死にたいとも思わないけれど。
この魔力の匂いの先…あの向こうに、あの人がいる。
あの人はもう私に気づいているのだろうか。
再び顔を会わせたら、どんな反応をするのだろうか。
怒るだろうか、嘲笑うだろうか、あるいは有無を言わさずその場ですぐに…

いずれにせよ、もはや言葉だけであの人の心を動かすことはできないだろう。
危害を加えてもいけない。私にできるのはただ、この身を挺して受け止めることだけ。
そう、あの人が、私にしてくれたように…
しかし、たとえそこまでできたとしても、
あの人を思いとどまらせることができる保証は、どこにもない。

…仕方がない。私は、あの人を包んであげられるような優しさを持った人ではない。
あの人の行く手を阻める強さを持った人でもない。
私は、誰にもなれなかった。だけど、それでもやるしかない。私自身が、そうしたいから。
死ぬのは恐い。でも、それでも、私は、あの人に…逢いたい…

(もし、死ぬ前に、あの人を正気に戻すことができたなら…)
フォズは懐かしい、今は戻らぬ顔を思い微笑んだ。
アルスさん、私を誉めてくださいますか?とひとりごちて。

(そして、もし何もできないまま、このまま消えていったのなら…)
今度は自嘲するように口元を緩めた。そして彼女は一しずくの涙をこぼす。
口からはいつも悪態ばかりだったけれど、心根はとても優しかった、あの姿を思い浮かべて。

(誰にもなれなかった私を…思い切り、莫迦にしてくださいね…マリベルさん)

977私は、誰にもなれないのなら21/21:2006/12/11(月) 21:01:11 ID:nCh3u9QY
【E-3/岬の洞窟・地下回廊・ナジミの塔下部/早朝(放送直後)】

【アレフ@DQ1勇者】
[状態]:HP1/4 MP1/3 背中に火傷(軽) 左足に刺傷(重) 疲労 全身打撲 一時歩行不能
[装備]:竜神王の剣 ロトの盾 はやてのリング 風のアミュレット
[道具]:鉄の杖 消え去り草 ルーシアのザック(神秘のビキニ) 奇跡の石
[思考]:ローラ姫を探し、守る このゲームを止めたいが止められない苦悩

【ピサロ@DQ4】
[状態]:HP1/8 MP1/2 右腕粉砕骨折 重度の全身打撲 中量の出血(既に止血)
[装備]:鎖鎌 闇の衣 炎の盾 無線インカム
[道具]:エルフの飲み薬(満タン) 支給品一式  首輪二個
[思考]:参加者を皆殺し優勝(現時点では体力回復を優先)
     ロザリーの仇討ち ハーゴンの抹殺 

【フォズ@DQ7】
[状態]:MPほとんど0 精神の衰弱からは立ち直る(最後の意地)
[装備]:天罰の杖
[道具]:アルスのトカゲ(レオン) 支給品一式
[思考]:ゲームには乗らない ピサロを命がけで止める(ただしピサロに危害は加えない)

978 ◆9Hui0gMWVQ:2006/12/11(月) 21:03:26 ID:nCh3u9QY
以上です。乱文乱筆失礼いたしました。

冒頭の放送に関する記述は、
実際の2回目放送に至るまでのエピソードの関係で変わる可能性がありますので
それ以外で、記述の間違いや不整合な点があれば、教えてください

979ただ一匹の名無しだ:2006/12/11(月) 21:08:37 ID:KmtosfI6
よい、いや素晴らしいと思う。
正直侮ってました。本スレではしゃぐ様子にとても不安を感じていました。

ごめんなさい。

素直に謝罪します。そして新たな書き手の参戦に心からの歓迎を。
読んだ限りでは特に問題らしい問題は感じませんでした。
後は機を待つだけですね。
井戸組やマルチェロ、宿組、エイト・ローラとまだ書ける余地のあるパートはあるので
もしかすると数週間待つ事になると思いますが。

てゆーか、マジごめん。こんな反省したのは久しぶりだ。

980 ◆9Hui0gMWVQ:2006/12/11(月) 21:24:57 ID:nCh3u9QY
>>979
こちらこそすみません。
深夜の変な寝不足状態と、やってやるぞー!てな感じで
我ながら妙なハイテンションでした。

快く受け入れていただけてありがとうございます。
でも何か気がついたら、よろしくお願いしますね

981ただ一匹の名無しだ:2006/12/11(月) 21:37:17 ID:/o4uWo8g
…おまいら!昨日から俺を涙で脱水症状にする気ですか!!
またフィオお姉さまから紅茶を貰わねばならないじゃないか!!
――俺が奢ってやるから、皆で飲もうぜ!!

982ただ一匹の名無しだ:2006/12/11(月) 21:54:30 ID:.7ZFIgpg
「。」が抜けてるとか、サマンサの支給品に関する但し書きとか
推敲すればすぐ解決できるレベルの問題以外は本投下時に解決できる問題として。
ってーかクオリティ高え。びっくりした。

ちょっと気になるのがアサシンダガーの解釈。
8にて毒針を練成して作れるアイテムであることから考慮すると、ゲーム中の即死効果=猛毒によるものという可能性が高い。
となると、たとえ足に刺さってても毒による二次災害は避けられないと思われます。
で、アレフは勿論フォズもキアリー使えず、奇跡の石はホイミ効果だけ。となると……。

せっかく時間あるし、今後の為にも少し武器の効果について共通認識を持ちたいところ。

983ただ一匹の名無しだ:2006/12/11(月) 21:55:58 ID:.7ZFIgpg
ちょっと日本語が変だった。
一部の「。」抜けとかは推敲時にしっかり直しといてくださいねって話です。

984 ◆9Hui0gMWVQ:2006/12/11(月) 22:22:24 ID:nCh3u9QY
>>982
ご指摘ありがとうございました。
書き込みしてる時なんかもそうですが「。」は確かについ忘れる癖があるので
気をつけたいと思います。

アサシンダガーについては、私もどう説明つけようかと悩みました。
一撃で倒すことがある、という短剣ですから、やっぱり毒が含まれている可能性がありますよね。
だから、毒については何とかクリアする要素がないと、このままではアレフを殺してしまいかねません。

・・・で、思ったのですが、フォズの特殊能力は転職でして
7本編で転職させる時、死亡以外の状態異常、たとえば毒とか麻痺とかそんなのがあっても
死んでさえいなければ転職できます。そして転職の儀式終了後はHP・MP共々
その新しい職についた段階で、フルの状態になるのです。

と、いうことから、今回の話の中で転職の技術をうんぬん言うことはしませんでしたが
その技術の一部を使えば、毒を治癒させることも、フォズには決して不可能ではないだろうと
そういう判断をさせていただきました。
なので「念のために解毒の魔法を施す」という一文があるのです。あえてキアリーとは言わずに。

985ただ一匹の名無しだ:2006/12/12(火) 01:23:27 ID:eVkP7TI2
>>984
チャットで出てきた一つ案なのですが、いかがでしょう?

ダガー投げる→アレフ避ける→なんと避けた先に鎖鎌の攻撃!→バギマで方向狂う→足グサー
これなら怪我ありで毒なし 。フォズの転職能力を無理に出す必要も無くなる

986ただ一匹の名無しだ:2006/12/12(火) 03:14:58 ID:fgSYF.B.
>>985の補足。
毒状態をクリアするためには、ピサロの攻撃がアサシンダガーじゃなくて鎖鎌による
ものであったとするのが妥当だと考えます。しかしアサシンダガーという武器そのものが
ピサロのマーダー化をより深く印象付けていると感じたので、これも外せないと思いました。
そこで、アサシンダガー→鎖鎌 の二段攻撃 を思いつきました。
ピサロは本気でアレフを殺しにかかってるのでそういう攻撃法もアリかなあ、と。
(でも投げて避ける、てのが今の流れからすると少ししんどいかも?)
良かったら一つの案として考慮してみてください。

987ただ一匹の名無しだ:2006/12/12(火) 06:33:16 ID:3Bf4x4to
もちろん、実際アサシンダガーで切りつけて毒状態に、ひいてはアレフ死亡に追い込んでも構いません。
殺しちゃいけないわけじゃないので、殺してしまいかねない……とそこら辺を禁忌に思う必要はないです。
(初投下で今まで積んできたキャラを殺すのは勇気が要ることとは思いますが)
「アレフを看取り、決意を固めピサロを追うフォズ」というのも構図としては十分見所になると思います。

まあ何にせよ時間はまだたっぷりありますので、作者さんの書きたいように仕上げていただければ。
大筋は文句なくよい物ですので、是非本投下してくださいね。

988ただ一匹の名無しだ:2006/12/12(火) 06:45:55 ID:9XtJfIfg
うーん、俺はフォズが毒の治癒できても別におかしくないと思うけどなぁ。
確かに考えようによっちゃ、毒を無効にしてくれる場面があるといえばあるんだし
(中ボスと戦う前に死者も含めて全快にしてくれる場面もある)

それに、ゲームではフォズは一時期とは立派に戦闘要員だったし、
その頃に限ってのことだけど、主人公を上回るくらい強かったくらいだった。
もっともここまで話が進んだ今、今更戦闘に長けてるとか言われても
違和感たっぷりになっちゃうから、それはいいとして
回復・治療の分野くらい、ある程度のスキルを持たせてやってほしい気がするね。

989ただ一匹の名無しだ:2006/12/13(水) 00:16:33 ID:y4KnaacY
一応、本スレより>ピサロメモが支給品から消えてる

990ただ一匹の名無しだ:2006/12/14(木) 18:58:37 ID:btcITQZc
>>989
ピサロメモは無効化したから消したんじゃね?

991 ◆9Hui0gMWVQ:2006/12/14(木) 21:57:19 ID:PUAsIPog
フォズの毒の対処の如何について、ご意見どうもありがとうございました。
私としてましては、>>988で言われた考え方に近く
仮にも大神官という職にいる者なのだから、毒の治療くらいはできるだろうという考えです。
そう言えば、転職の技術がうんぬん言うまでもなく、
プレイヤーを一斉に回復させてるような場面もありましたっけ。確か
でも、アサシンダガーには毒が含まれている可能性が極めて高いので
本投下の際には、「念のため」程度ではなく、もう少し解毒について言及しておきたいと思います。

>>989-990
ピサロメモは、素材自体はただの紙のはずですから、
破いたのでなければまだ持ってるはずですね。書き足しておきます。

992★管理者:2006/12/15(金) 00:54:45 ID:hRW/iZHA
レス数を2000まで増やしました。
とりあえず完結まではこのスレを使っていきましょう。

993ただ一匹の名無しだ:2006/12/15(金) 01:15:12 ID:naU1E0Wk
「〜だし、使えるだろう」という「意訳」を適用するのは、ちょっと賛同しかねます。
じゃあ同じく神官なんだしマルチェロもベホマ使えるようにしていい?とか、バランスが崩れてしまう可能性があります。

そういうのを防ぐために、設定を共有しあう「情報確認スレ」っていうのが存在してる。…と自分は思っています。

※イベントでプレイヤーたちを全快してたから、全快能力もOKだろとかは、メタ要素が強すぎて特にイヤです。
 百歩譲って使えたとしても、制限の対象として使用不可能でしかるべきだと思います。

ちなみにピサロメモは通っている最新の話からも消えてたりする。
実は破られたんじゃないかともちょっと考えてしまうw

994 ◆9Hui0gMWVQ:2006/12/15(金) 05:17:26 ID:aKWr528c
>>993
ふーむ、なるほど。それも一理ありますね。
「フォズはキアリーが使えない」が皆さんの総意だとしたら、もちろんそれに従います。
初めからアサシンダガー使わせずに、元々の鎖鎌に変えればいいわけですしね。
毒を受けず、かつ歩けない深手を負ってしまった方向にしますが、どうしましょう。

どちらにせよ、フォズに全体回復能力まで持たせる考えは毛頭ありません

995ただ一匹の名無しだ:2006/12/15(金) 05:55:09 ID:uJCSyiFU
>>993
使えるだろうだけならともかく実際全快させてるからなぁ。イベントでも転職の場面でも
そんな今後を左右してしまいかねない大きな魔法ってわけでもなし、
キアリーを使う程度でそこまで目くじら立てなくても、って気もする。

ま、これも俺個人の意見に過ぎないから、全体の総意に従ってくれ>>994

996ただ一匹の名無しだ:2006/12/15(金) 06:32:23 ID:uJCSyiFU
>>993
それから一つ付け加えておくと
マルチェロがベホマ使えてもいいのか、という話だけど
使用できると匂わせる場面が原作中にあったのはなら、それは構わないと俺だったら思う
あったかどうか記憶にないけど。

997ただ一匹の名無しだ:2006/12/15(金) 06:33:34 ID:uJCSyiFU
あったのはなら→あったのなら、だね

998ただ一匹の名無しだ:2006/12/15(金) 17:15:10 ID:8G2TIl22
アサシンダガーは原作では即死か通常ダメージ
毒状態はロワオリ解釈なんだから毒状態をなしにすれば済むことでは?

999ただ一匹の名無しだ:2006/12/15(金) 20:17:39 ID:f9posWCk
>>993
M字禿は神官ではなく聖堂騎士であり、信仰よりも野心を選んだ男だから
魔法より剣、癒しより破壊を取ったのではないのだろうか?
まぁ、それを言ってしまえば飲む打つ口説くの破戒層ククールがなぜ
ベホマ、ザオリク、ベホマラーという回復呪文をとく意図するのか問題だけどなw

1000ただ一匹の名無しだ:2006/12/15(金) 23:24:16 ID:5EMrHp4c
1000ならこのロワは来年内に感動の完結

1001ただ一匹の名無しだ:2006/12/15(金) 23:33:18 ID:f9posWCk
>>1000
よくやった!十字勲章ものだ!後で処女の血をおごってやる!

1002ただ一匹の名無しだ:2006/12/16(土) 01:21:08 ID:w9Kru9gI
>>998
ヒント:ルーシア

1003ただ一匹の名無しだ:2006/12/16(土) 01:29:54 ID:oBUKh0g6
>>1002
ありゃどくばりだろ。
何故毒と名のつくアイテムと同仕様でなくてはいけんのだ。

1004ただ一匹の名無しだ:2006/12/16(土) 02:03:01 ID:w9Kru9gI
>>1003
毒針は原作では即死か1ダメージ
毒状態はロワオリ解釈なんだから、アサシンダガーも毒状態にできていいのでは?

鸚鵡返しで悪いが、同じ事が言える。
>>982で「8では毒針と錬金する」って指摘した通り、毒が入ってる可能性は非常に高いんだし。
即死のギミックを説明する上で猛毒があるという解釈は実に分かりやすい。

まあ総意には従うよ。
毒がないならそれでもいいです。(アサシンダガーが著しく弱体化するだけだし)
マルチェロがどうのってのは冗談だし、ゲーム中で使えないものを展開の為に使わせるつもりは私にはないしね。

1005ただ一匹の名無しだ:2006/12/16(土) 04:16:23 ID:8e.Qz3Gs
>>1003
まあ、そもそも「ヒント:○○」とか言い出すやつはろくなやつがいないしな。

気にしたら負けだ

1006ただ一匹の名無しだ:2006/12/16(土) 07:32:10 ID:jyY6BqpI
>>1004
錬金術ってのは、ドラクエ的には複数の物を用いて全く別の新たな物に変える術のことを指すので
元の素材がそうだからといって、できた品まで同じ効果を持っているとは限らないよ
まあ、持ってるのもあるけど

言いたいことはわかるとして、
なんで即死状態がある→毒があるに違いないという解釈はよくて
仲間を全快・蘇生してくれる→それなりの治癒魔法の使い手のはずという解釈はダメなんよ

1007 ◆9Hui0gMWVQ:2006/12/16(土) 08:59:11 ID:Y4/Yg4pA
まさか「ちょうどそれっぽいの持ってるから使わせよう」
ぐらいにしか考えてなかったアサシンダガーで、こんなに意見が分かれるとは思いませんで。
書いた本人はそこまで色々考えてませんでした。浅はかだったかな。

どう判断するのが適切なのか、私ではまだちょっと決めかねますが
どのような解釈が採用されるにせよ、それに対応できるようにしておきたいと思います。
それにしても、ホント、一つのアイテムの使い方でこんなに意見が出るなんて。
これもまた様々な人の手によるリレー小説ならではの醍醐味でしょうか。

1008ただ一匹の名無しだ:2006/12/16(土) 13:21:12 ID:QyvBWW/U
>>1006
>仲間を全快・蘇生してくれる→それなりの治癒魔法の使い手のはずという解釈はダメなんよ
一言で言えば、「強力すぎるから」だと思う
転職時のことをそのままロワ内に適用すると、フォズは
「コスト0で蘇生・HPMP全回復」なんてとんでもない特殊能力持ちになってしまう
で、そんな力があるなら今まで投下された作品でちまちまベホイミ使ってるのは不自然
フォズは7ゲーム中のアントリア戦で戦闘参加するキャラなんだし、
そこで確認出来る戦闘能力(ヒャダルコ、ベホイミ)以外は使えないとするのが妥当だと思う
アントリア戦で主人公たちが死んでもフォズは蘇生してくれないしね

1009ただ一匹の名無しだ:2006/12/16(土) 20:59:44 ID:VYM0yOXk
そういえばアサシンダガーは、どのDQでも攻撃1だった??

1010ただ一匹の名無しだ:2006/12/16(土) 21:52:22 ID:pilTUCHc
>>1009
よっしゃ、明日ゼシカに装備させて調べてみる。短剣スキル0だけど

1011ただ一匹の名無しだ:2006/12/16(土) 22:31:47 ID:jyY6BqpI
>>1008
いや、ちょいまち。話が飛躍しすぎ
ここで言われてるのはあくまでキアリーレベルであって
別にザオリクだのベホマズンだのを使わせろって言ってるわけじゃないだろ。

1012 ◆9Hui0gMWVQ:2006/12/16(土) 23:14:43 ID:rxnks7cg
どうしたらよいかわかりかねたのでちょいと調べてみました。公式ガイドブックで。

アサシンダガーが登場する作品はリメイク版3・7・8の3つ
初登場の3では盗賊用の暗殺武器として紹介され、
一撃で敵を昇天させることもあると解説されていました。
おおっと思ったのは7版。
この解説では、はっきりと「刃先に猛毒が塗りこまれている」と明記されています。
なるほど、それならアサシンダガーに毒があるというのはオリ解釈じゃなかったんだなぁ
最後、一番新しい8版
これは別の意味であれっと思いました。錬金に毒針を使うのは事実ですが
このアサシンダガーには従来にはあった即死効果がないのです。
あくまで暗殺者が隠し持ちやすい武器という位置づけのようで。

・・・とまあ、こんな感じでした。7のアサシンダガー設定を採用するならば
毒に侵されてしまうという展開も、十分にアリでしょうね。
但し最新設定である8のを用いるとすると、毒が仕込まれている可能性はほとんどなさそうですが・・・
まあ、アレフが毒に侵されたままの状態になるのを回避したければ
素直にアサシンダガーを使わせないほうが無難でしょうか?

1013 ◆9Hui0gMWVQ:2006/12/16(土) 23:20:51 ID:rxnks7cg
ついでに言っておくと、どの作品にも
敵を即死させることはあっても、猛毒に侵された状態にする効果はないようです。

1014ただ一匹の名無しだ:2006/12/16(土) 23:38:55 ID:jyY6BqpI
>>1012
なるほど、よくわかった。考えようによってはアリな設定なんだな。
よく調べもしないで、いい加減なことを言ってしまったかも。失礼した>>1006

どっちにしても、キアリーくらい使わせてやれよって気はしないでもないけど。

ま、どの作品の設定を採用するかによるけど、
結局「毒があるなら解毒させる」か「解毒する方法がないのなら使わせない」で、
「毒を受けたままの状態にする」という選択肢は、君にはないのね?

1015ただ一匹の名無しだ:2006/12/16(土) 23:39:05 ID:oBUKh0g6
じゃあ今まで使われてないんだから8仕様で毒なしにすれば解決

1016 ◆9Hui0gMWVQ:2006/12/16(土) 23:48:53 ID:rxnks7cg
>>1014
はい。すっぱり言ってしまえば、ないです。
あくまで私のイメージによるものにすぎませんが
今後の展開において、アレフがそれなりに重要な意味を持っているので・・・
今、ここで倒れさせるわけにはいかないのです。

1017ただ一匹の名無しだ:2006/12/16(土) 23:54:55 ID:jyY6BqpI
ごめん、>>1006じゃなくて>>1004だった。
自分に対してレス返してどうするよorz

>>1016
了解。やっぱりそうなのな

1018ただ一匹の名無しだ:2006/12/17(日) 03:06:40 ID:LqrieNEw
>>1007
「あれがいい、これがダメ」という考え方ではなく、アサシンダガーの刃に何の特徴もないのに
即死効果だけは発揮できるというのはありえないのではないか、と考えていての提起でした。
その上で提案したのが猛毒による即死…という仮説だったわけで、別に毒以外でも「即死を説明できる能力」なら何でもよかったんです。

しかし>>1012の調査で「そもそも即死効果のないverがある」と証明されたようですので
今までアサシンダガーが人に突き立った描写が本編でなかった以上、
アサシンダガーを毒なしのverにするかは作者さんの一存で決まるようになったといえると思います。

#おぼろげに覚えていた猛毒設定は7のものでしたか…。
 こちらこそ、もう少し自身のほうで調べてから提起するべきでしたね。
 お手数をおかけしたことをお詫びします。

1019ただ一匹の名無しだ:2006/12/22(金) 20:36:39 ID:GLOJWS/w
今、人大杉。

1020ただ一匹の名無しだ:2006/12/23(土) 03:39:41 ID:Q0CT6Rp2
エイトが上にいるから別に毒状態でもいいんじゃね?

1021 ◆UUnHCwOa2s:2006/12/24(日) 18:53:45 ID:tsa5TG9Y
アリスは暫く、窓越しに井戸の入口から見える空を眺めていた。
少しづつ光を帯びて来たそれは、幼い頃から優しかった故郷の空と微塵も変らない。

そしてまた、瞳を閉じる。
――今は待つ事しか出来ない。
寒さがこたえ、睫毛ひとつ動かすのも億劫になってしまう。
だが、触れた肌部分からの更なる冷たさが付きまとう度に、恐怖が襲いかかるので眠る事が出来ない。

そう、怖いのだ。
隣で揺れる命の炎が正に今かき消えんとして居るのが。
またその悲しみを味わうのが。

(昔から私は何も出来ません。――酷く無力です。)
先程から瞼の奥にちらつくのは、父の姿だった。
いつも死人の事を考える度に思うのは、自身への酷い自己嫌悪だ。

アリスは学んでいた。
死を悲しむ人がいる者が、時に、死に追いやられることを。
だからこそアリスは仲間や母、通じ合える人達との今生の別れを覚悟で地下の世界に身を置くことにした筈だった。
未だ闇を湛えた土地を周り、一人でも多くの人を救うことが、「ロト」の名を冠した自身の責務だと感じたから。
それと同時に仲間には頼らないことも決めていた。
この役目は魔王討伐のように仲間を巻き込んではいけない、と。
各々が別個の人生を歩めるように、と。
思ってのことだった。

――フィオ、サマンサ、デイジー、スピル―・・・
一人は既にこの地に居ない者、一人は未だこの地に居る者、二人はかの地に残してきた者、いずれも仲間の名前が零れる。
アリス自身、自分が無鉄砲なことは自覚していたので散々迷惑をかけたのは容易に想像出来た。
そして、彼女達無しでは自分は魔王どころか孤独にも、打ち勝て無かったであろう自信がある。
今更ながら仲間の存在が骨身に沁みて来た。

――そう、この少女も仲間なのだ。
失ってはいけない、失いたくない大切な人。
そこまで考えると、再び恐怖がアリスの全身を駆け巡った。
自然、マリアと繋いだ手に力が入る。
握り返して来る意思が見られない手はやはり冷たい、その感覚がちくりちくりとアリスの心を蝕んだ。

そして、心に反応するようにカンダダやレックス、リアといった目の前で死んでいった者の死顔のその瞬間、刹那が写真をひとつひとつ現像していく様に甦る。
もちろん、最後に思い出すのは、殺人さえ厭わなくなったあの僧侶。
あの時の狂気を多分に含んだ瞳と、歪まされた感情が忘れられない。
せめてルビスの加護の元、彼とその大切な人が再び巡り逢うことを祈ることぐらいしか出来ない。

クリフトがアリスに二つ残したものがある。
――ひとつは誓い。
真の元凶である主催者を討つ事。
そしてもうひとつは――罪の意識。

もしかしたら殺さずにすんだかも知れない。そんな考えが頭をもたげる。
過去にifはないと分かってはいるが、そんな考えばかりが浮かんでしまう。
無駄だと分かっていても。
分かっている。
だが、その拭い去れない意識は孤独感と共に膨らみ、今にも弾けそうだった。

その時、

――カツーン。

外の方から音がした。
床冷えする身体に緊張が走る。
再び窓越しから井戸の入り口を見ると、人影があるのが分かる。
どうやら先程の音は上から小石が投げ込まれた音らしい。
しかし、此処からではいくら朝に向かって少しずつ光がともって来たといっても、十分ではなく、誰かまでは判別出来ない。
敵か、味方か。
判断がつかずに迷っている時だった。

「・・・誰か居るのかっ?!」

聞き慣れない声。
警戒心が普段の何倍も強い今、判断材料はそれだけだけで十分だった。

1022守るべき仲間を ◆UUnHCwOa2s:2006/12/24(日) 18:56:00 ID:G5ybBZY2
「・・・トロデさん、乱暴な運び方ですいません。」
そういってキーファは、井戸らしきものの近くに、トロデを降ろす。
たしか、この辺りからだった筈だ。
そう思いぐるりと辺りを見回してみる。
しかし見えるのは戦闘があった形跡のみで、ひとっ子一人見当たらない。

可能性があるとすれば、この井戸の中。それ以外はあるまい。
井戸の中に入るとなると、流石に運べないのでトロデを再び担ぎ上げ、安全な所まで移動した。
それから、警戒の為、試しに井戸の中にそこらの小石を放り込んでみた。
――反応はない。
今度は井戸の中を覗いてみる。
すると、薄明かりに人が倒れているのが分かった。

「・・・――誰か居るのかっ!?」
くわんっと、声が反響した。が返事は、無い。

「生きてる・・・よなっ!」
そういうが早いかロープを伝って降りて行く。
途中火傷した手の痛みが気になったが、そうも言ってられなかった。


下に降りた時、最初に眼に飛び込んで来たのは緑の緑色の僧侶の服を来た男の死体だった。
それは無残にも斬られ、飛び散った血が、服を赤と緑という不気味なコントラストにしている。
そして、次に見たのは幼い少女――これもまた、既に生き絶えた骸だが――だった。
やはり、可憐なドレスだったであろう服はあちこちが擦り切れ汚れていて、に深い傷があった。
いずれも死を惜しむ施しがなされており、二人が死した後に人がいた形跡を残している。

キーファをゾクリとさせたのは後者の遺体だった。
キーファは嫌な予感を抱きながら少女の骸へと近付き、そっと、今は熱を持たない組まれた手にそっと自身のそれを重ねる。

まさか間に合わなかったとは思いたくない。
だが、目の前の現実は事前の情報と余りにも符合していた。

「そんなっ・・・嘘だろ・・・?」
友を裏切ったと言う現実の前に、一人の少女さえ守れなかった己の腑甲斐無さが突き付けられた。

気が付けばいつもこうだ。
全てが砂の様にさらりと手から零れ墜ちて行く。
胸を締め付けられる思いから自然手に力が入った。

と、その瞬間、風が凪ぐ。
キーファは、途端に研ぎ澄まされたその空気に殺気が含まれているのを悟り、より強い方――キーファにとっての後ろ――を見る。

そこには細身の剣を構えた少女が立っていた。

1023守るべき仲間を ◆UUnHCwOa2s:2006/12/24(日) 18:58:15 ID:G5ybBZY2
アリスが家の外に出ると、そこには金髪に赤い服を着た少年が、リアの遺体の側にいた。
何をしているのかはこちらからだと伺い知れないが、ひょっとしたら支給品を探しているのかもしれない、アリスはそう思った。
そして、もしそうなら。と、手にした隼の剣を深く握り込む。
まだ足元がふらつくが関係ない。
私がマリアを守らなければ、誰が――その思いが今のアリスを支えていた。

アリスとキーファの間にピンと張り詰めた空気が差し込まれる。
相手は少し前から気付いていたようだが、行動は起こさなかった。

「その子から離れなさいっ!!!」

じりっと、アリスの足元から音がする。
重心を取るために足を少しずらしたのだ。
――体力も少しだけだけど、回復している。
その音を頭の端で聞きながら、確認を取る。現に、先程は立つのもやっとだったが、今は虚勢を張れるぐらいには動けるようになっていた。

「ま、待てよっ。俺は――」
「問答無用っ!!」

そのままパッと攻撃に転じる。いつもと違い力が入らない斬撃だが、はなからアリスの狙いは相手の予想を裏切れる第二次の攻撃だから関係ない。

二手目。
しかし、当たると確信していた攻撃に今の精一杯の力を込めるが、それは空しく空を斬るだけになってしまった。
そのまま体勢を崩してしまう。

――殺られる。
刹那、そう思い無理に体勢を立て直そうとするが、今のこの身体では事態を悪化させる一方だった。
余計にバランスを崩し、地面に倒れ込みそうになる。しかし、その瞬間に来るべき筈の斬撃・衝撃はどちらも来ない。
アリスの誤算、それは相手が素早さを上げていた事だったが、もう一つは幸いにも彼女を救う事になる。

それは、キーファに彼女を傷付ける気が毛頭ないことだった。

キーファもまた、アリスを支えるところまでは良かったのだが、とっさのことでバランスを崩しそうになる。が、こちらは何とか止めることが出来た。
しかし、ちょうどアリスを抱き込むような状態になってしまう。

「――取り敢えず落ち着いて下さい、俺はトルネコさんに頼まれて貴女達を助けに来たんです。」
アリスは少し上の方から降って来た言葉の中の一つの単語に反応した。
本来の救助を待つ相手の名前が出て来たからだ。

「・・・それは本当ですか。」
「勿論です。」

高ぶった感情が、戦闘を中断したことで平常心を取り戻して行く。
アリスはこの時、まずい、と思った。
この少年は信用出来る。何故なら自身が隙をみせた時も、今でさえ殺すチャンスがあるのにそれをしないからだ。
それと、何の根拠もないが彼の言葉には自分と同じ、人を守ろうとする強い意思が見られる。

そうなると、いくら警戒していたからといって、味方を攻撃していいわけが無い。
避けてくれたから良いものの、傷付けなどしてしまったら――と思うと、非常に申し訳ない。

「すいませんでした。敵と勘違いして・・・」
「あ、いえ、気にして無――」

――そこで、キーファが続きをいうのを止める。

そう、悪夢のような放送が、井戸の空気を震わせたのだ。

1024 ◆UUnHCwOa2s:2006/12/24(日) 19:05:17 ID:EApQu/zA
一次投下。

若干アリスが回復しているだけで、状態に変化はありません。

・・・ただ、自分が勘違いしてるところが在りそうで怖いのと、キーファが敬語でいいのかが不安です。

1025ただ一匹の名無しだ:2006/12/24(日) 20:05:12 ID:yAo2Bw6g
エイトに敬語禁止令を出し、アレフにもタメ口だったキーファが、
トロちゃんやアリスに敬語使ってるのは違和感あるなぁ。
キーファが敬語を使っても年上のお姉さま限定だと思われw
それ以外は特に問題はないと思います。

1026ただ一匹の名無しだ:2006/12/24(日) 20:21:37 ID:Ld9hxA7k
ちょいと前の話を読み返したら
トロデにはさんづけはしているものの、普通の話し方してるね。
そこらへんだけ調整するのと、話が終わった後の状態告知を考えておくのとで
いいんじゃないかな。

ていうか、十分うまいよあなた。新規参入乙でした。

1027ただ一匹の名無しだ:2006/12/24(日) 20:35:30 ID:Ld9hxA7k
ああ、ちょっと待って。
間違いと言ってよいのかわからないけど二点ほど記述で気になったことが

>死を悲しむ人がいる者が、時に、死に追いやられることを。
「死を悲しむ人がいる者」って表現が少しピンときません。

あと、>彼女達無しでは自分は魔王どころか孤独にも、打ち勝て無かったであろう自信がある。
そういう書き方をすることもあるけど、負ける時に自信があるっていう表現の仕方もどうかな。
素直に「打ち勝てなかっただろう」でいいような気もしますね。

気づいたのはそんなところですが、全体の流れとしては申し分ないかと思います。
キーファがリアの遺体を確認して、
ランドとの約束を果たせなかったことを悔やむ描写は秀逸でした。

1028 ◆UUnHCwOa2s:2006/12/24(日) 21:18:18 ID:A/psdvXE

>キーファの敬語
彼が田舎の王子なのを失念してました。あと、なんとなく思ったのですが、アレフにも普通って、DQM+のクリオ 以 下 じ ゃ な い か っ!?(まぁ、彼は勇者を尊敬してましたが)
さらに、お年寄りは大切にしないと。

勿論、きちんとタメ語に修正します。ご指摘有り難うございました。


>死を悲しむ人がいる者
正直、自分でもピンと来ません。(爆
実はここは何度も改ざんを重ねた所で、自分の表現力の限界がここにあります。
他にも、擬音語の部分などが、思い当たる日本語が見つからなかったところなので、やたらにそういうのが多いのはそんな理由なのです。

頑張って捻り出してみます。

>彼女達無しでは〜
有無を言わず直します。
有り難うございました。

1029ただ一匹の名無しだ:2006/12/24(日) 21:25:10 ID:yAo2Bw6g
ちょwwwwwww田舎の王子ってwwwwwwwwwww
せめて小島の王子に昇格させてあげてwwwwwwwwwww
どんな王子でもチャ○スよりマシwwwwwwww

1030 ◆YO3pXcw7Kc:2007/01/10(水) 16:49:01 ID:bo9K1f7Y
 できることをやろう。
 竜王アレンに諭された商人トルネコの目には、今までとは異なる、決意の光が宿っていた。
 とはいえ。
 散らばった仲間達の「帰る場所」であるために、居残るべきとは重々理解していれど、
 いかんせん、ただ黙って座っているだけ……というのは、なんと居心地の悪い話でもあった。

 元々、トルネコは好奇心が旺盛な人間である。
 貯蓄したゴールドを一ゴールドたりとも魔物から奪われないようにできる鉄の金庫があると聞けば
 大岩の転がる危険な洞窟へも平然と飛び込んで行ったし、
 高値で売れる女神像があると聞けば、水の流れる洞窟を筏一つで攻略してみたりもした。
 「未知のダンジョン」「未知のお宝」があれば、動かずにはいられない。
 そんなトルネコにとって、ただ待つだけという時間は、無駄な時間にさえ思えるものだった。

 アレンの負傷は軽いものではなく、放送後は自らの回復呪文による治療を続けていた。
 そんな状況で悪いと思いつつも、ファルシオンの火傷の治療も頼んであった。
 手負いの二人を見張りに、自分だけ眠ってしまうというのはいくらなんでも情けない。
 かといって、このまま何もしないというのも落ち着かない。
 ならば今の自分にできることは何か。暫し考えた末に、一つの案にたどり着く。
 それは現状の把握。そして「帰る」為の推理。落ち着いた今だからこそ、できることであった。

 ばさばさと、ザックの中身をぶちまける。
 突然の奇行を怪訝そうに見つめるアレンには引き続き回復を促し、トルネコはメモと鉛筆を取り出した。
 鉛筆を握ったところで、アレンもしようとしていることを察したようで、再び回復に集中しはじめた。

 元々、トルネコは頭脳労働が得意だった。
 武器屋としての道具知識に始まり、かつての道中では、ブライと参謀役を二分することもあった。
 戦闘こそライアンやアリーナのような屈強な戦士に譲ったが、その分頭脳で仲間を支えた自負があった。
 思えばあの頃から、仲間のためにできることを必死に手探りで考え、実践していたような気がする。
 ふっと笑みがこぼれる。何だ、ならば状況は今までとあまり変わっていないではないか。
 改めて、そのことを思い出させてくれたアレンに感謝したかった。

(さて、まず整理すべきは、放送からでしょうか)
 唯一のハーゴン側からの情報提供である、半日に一度行われる定時放送。
 今まで二度行われたそれからは、一見死亡者と禁止エリアの通達以外の情報提供はないようにも思える。
 しかしトルネコはそれ以外にも、情報を手に入れることに成功していた。
 それは、声。
 一度目は、低く冷淡な印象を受けた男の声。あれは確か、ルール説明をした神官と同じものだった。
 対して先ほどの二度目は、ハスキーでおしゃべり――無駄口が多いともいう――な女の声。
 これにより少なくとも、ハーゴンには二人以上の側近がいることが分かった。
 ルール説明や放送を任せるのだ、それなりに地位を任されている者と見て間違いないだろう。

 次にトルネコは、自身がされているだろうと推理した「盗聴」を管理する人件を加味する。
 一つの首輪につき一匹の魔物が担当していると仮定すると、最大で四十三匹。
 参加者の会話を監視する役割ともなれば、こちらもそれなりに頭のいい魔物であると考えられた。
 更に自らこの地に降り立ち、殺戮を行ったあの三匹の魔物を加えると――その数は約五十匹。
 あの三匹こそ撃破したとはいえ、いまだ相当数の魔物が、この惨劇に加担している事になる。
 かつてのピサロの城「デスパレス」が生温く見えるような数字に、トルネコは戦慄を隠せなかった。

 トルネコは、ここから脱出するにあたって最も重要なのは、ハーゴン側の戦力だと分析していた。
 もしその戦力が僅かであれば、打倒せずとも脱出(逃走という表現が正しいか)できる可能性が生まれ
 逆にその戦力が強大なものであれば、打倒する以外に脱出の可能性を見出すのは難しくなるからだ。

(ですが今のところは、ハーゴンの打倒の他に、脱出の術は無いと見るべきでしょうな)
 少なくとも異国・異世界の人間たちを一同に集わせるほどの力を持つものが相手だ。
 万に一つ逃げ出す事が出来たとしても、ハーゴンが存命である限り、脅威は消える事はない。
 いつか再び、この地に呼び戻されるかもしれない。今度はネネやポポロにも、危害が及ぶかもしれない。
 それだけは、絶対に避けなければならなかった。

1031 ◆YO3pXcw7Kc:2007/01/10(水) 16:49:38 ID:bo9K1f7Y
 すらすらと、支給されたメモに考えをまとめながら、気付く。
 このままではこのメモだけでは足りなくなるかもしれないと。
 やむなくトルネコは宿屋のカウンターから宿帳を拝借し、そこに改めて考えをまとめることにした。

(気を取り直して……改めて禁止エリアも見直してみますか)
 地図を開く。
 それは放送内容が反映され、一部エリアが黒く塗りつぶされていた。
 実は一度目の放送でトルネコ自身が情報を記した地図は。クリフトに奪取され手元にないため
 やむなくトルネコはアレンの地図を借り、それに禁止エリアを記述していた。

 一度目の放送で禁止エリアとして潰されたのは、外海であったり、人の寄りにくい山地であったり
 あまり自分たちにとって影響が無い部分であったために、深く考えることはなかった。
 しかし二度目の放送では、一転して拠点「レーベの村」が封鎖されようとしていたのは聞いての通り。
 更によく見直せば、東の祠や洞窟に向かう道も大きく制限される予定であるようだった。
 もしその周辺に生存者がいたとすれれば、大きな影響を及ぼすだろう。
 これが何を意味するのか。名簿と睨めっこしながら、トルネコは一つの結論を出す。

(やはり、アリアハンへの誘導というのが一番可能性が高そうですね)
 今度は名簿を開く。
 線の引かれていない十二名の生存者に、ざっと目を通す。
 生存者のうち、アリアハン周辺にいるのがトルネコとアレンを含めて七名。
 またピサロも最後の連絡状況からしてアリアハン寄りにいる可能性は高く、加えれば八名。
 こうなると、アリアハンを封鎖しこの八名を散らすよりも、残る者をアリアハンに集わせるほうが楽に見える。
 もっともそれは、裏を返せば「アリアハンから逃がさない」という意味にも取れるのだが、
 ともかく人が多く集まるほど、火種が生まれるという事をハーゴンたちはよく分かっているようだった。

(ローラ姫はアレンさんとアレフさんの知り合いとして、残る三人が果たしてどういった方々なのか)
 名簿ではエイト、マルチェロ、フォズと記された三人。写真を見る限りはどれも無害そうに見えるが
 彼らがどういった経緯でこの地で一日を過ごしてきたかは分からない以上、油断はできない。
 近いうちに遭遇する事もあるだろうが、警戒するに越した事はないように思えた。

(それにしても、これではまるで私たちの位置を元に禁止エリアを決めているような……まさか)
 浮かんだ一つの可能性。
 もし「盗聴」だけでなく「監視」もされているとしたら?
 ぶんぶんと首を振り、それは否定する。
 首輪一つ一つに居場所を知らせるような、何らかの呪詛がかけられているだけと信じたい。
 だがもし本当に監視されており、足掻く生存者をほくそ笑みながら見下ろしているとしたら。
 アリアハンへの道中、秘密裏に行ってきた筆談も、全て看過されているとしたら。
 その時は、文字通りお手上げである。
 我々が希望に満ちて首輪を外す瞬間にでも、笑いながら起爆スイッチを押すだろう。

(どの道、動かなければ何も変わらないのなら。ひたすらに足掻いてみるまでですな)
 放送から得られた情報を一通りまとめ終えたところで、ひとまず一息つくことにした。
 ザックから支給されていたパンを取り出し、齧る。――少しだけ、ネネの弁当が恋しくなった。

 ○

「もう、大丈夫なんですか?」
「いつまでも泣き言は言ってられんからな。それに、ファルシオンも治療してやらねば」
「私が僧侶であれば、あなた一人に負担をかけることにはならなかったでしょうが」
「構わぬ。おぬしだからこそ出来ることもあると、先に言ったばかりではないか。
 ……では少し、表に出てくる。話はその後だな」
「分かりました。ファルシオンをお願いします」

 簡単な治療を済ませたアレンを見送り、トルネコも休憩を終えることにする。
 再び宿帳のページをめくり、考えを巡らせる。

(次に考えるべきは、この首輪を外す方法ですね)
 首筋に手を伸ばせば、冷たい感触が伝えられた。
 ハーゴンを倒すためにも、この世界から脱出するためにも、まずこの首輪を何とかしなければならない。
 今まで考えていた禁止エリアも、無視することができるようにもなるだろう。
 夜の森で筆談した内容を思い出しながら、文字を走らせる。

1032 ◆YO3pXcw7Kc:2007/01/10(水) 16:50:32 ID:bo9K1f7Y
(首輪にかけられた強力な呪詛を解くには、『聖なる光』が必要……)
 ザックから放り出した、もう主のいない――元々はビアンカかバズズのどちらかの――首輪を手に取る。
 あの時見た、ラーの鏡の力で具現化した禍々しい呪詛。あれは生半可な光では取り除けそうもなかった。
 言った自分でさえ、そんな光が本当に存在するのかとさえ思うほどに。

 それでもアトラスとの戦中にて、トルネコは一つの可能性を見出していた。
 それは、デインの光。
 選ばれし者のみが使える聖なる雷であれば、あの呪詛を除去できるかもしれない。
 使い手である天空の勇者はいなかったが、アレンらがあの剣をかざした時に放たれた雷。
 あれはまごうことなきギガデインであったように見えた。ならばあれを、呪詛にぶつければ。

(しかし、これには致命的な問題があります)
 それは、外すべき首輪は人体につけられているということ。
 取り外された首輪の呪詛であれば、いくらでもギガデインの直撃を浴びせる事もできるだろう。
 しかし人体につけられた首輪の呪詛を取り除くとなれば、そうもいかない。
 ラーの鏡で具現化した呪詛は、首輪の主のすぐ側にあるはずだった。
 それにギガデインの直撃を与えれば、当然、首輪の主もひとたまりもない。
 失敗すると首輪が爆発するとか、そういう以前の問題だった。
 呪詛を取り除くための聖なる光は、人体には無害なものでなければならないと考えられた。

(聖なる光だけを、確実に放てるような道具……何があるでしょうか)
 ぱっと思い立ったのが、太陽の光。日光といえば、闇を振り払う象徴と言ってもよいものだ。
 しかし、トルネコはすぐに否定する。
 ただの日光に当てたところで、あの強烈な呪詛に効果があるとは思えない。
 そんな甘っちょろい細工で外せるなら、この首輪には何の拘束力もないだろう。

 ならラーの鏡で日光を受け、呪詛をピンポイントに狙ってみてはどうだろう?
 いや、それもダメだ。
 反射すればそれだけ密度の濃い光は生まれるだろう、しかしその分温度も膨大だある。
 呪詛を祓う前に、体が焼き払われてしまう。ギガデインと同じ結論だった。
 太陽の光を放てる道具があればあるいはといったところだが、それは森で否定されたばかりだ。

 ――結局、森での筆談から進歩がないではないか。
 ぐしぐしと頭をかきながら、トルネコは独りごちる。独りではこれが限界なのだろうか。
 気分転換にと、首を回してみる。目に付いたのは、先ほど拾った錬金釜だった。
 それとなく拾い上げ、商人独特の手つきで調べてみる。

(「錬金」という響きからみるに、複数の道具から、新たな道具を生成する道具……ですかね)
 壺のような形状からして、中に道具を放り込めばよいのだろうか。
 ためしに聖なるナイフとプラチナソードを入れてみれば、しばしごとごと動いた後、ぽんと排出された。
 突然の飛び出しに、中を覗こうとしなくて良かったと肝を冷やしながらも、分析を続ける。
 どうやら組み合わせは決まっているらしい。正しくない組み合わせでは、釜に拒否されてしまうようだ。
 正しい組み合わせを見つけた場合、それは受け入れられ、新たな道具となって出てくる仕組みだろうか。

 なるほど調べれば調べるほど不思議な仕組みで、探究心をくすぐられる道具であった。
 詳しい使い方をトロデから聞いていなかったのが悔やまれる一方で、疑問も沸く。
 何故こんな地で、こんな使い方の限られる道具が支給されたのだろうか?

(……ふむ。これも何かのヒントなのかもしれません)
 もしこの錬金釜によって、支給品から何か新しい道具を生み出せるようになっているとしたら。
 もしかしたら、聖なる光を放てる道具が作れる可能性もあるのではないだろうか。
 もちろん、可能性は低いだろう。
 ハーゴンが、わざわざそんな『抜け道』を用意しているかどうかも疑わしい。
 だが絶対にない、とも言い切れないのではないように思えた。

(例えば、『光を放つ道具』と『光を持つ道具』の二つを――)
 この二つを錬金釜に入れてみれば、強力な光を放つ道具が出来上がったりしないだろうか。
 ――ぞくぞくと、好奇心がくすぐられるのが分かった。
 冒険に出かける直前のようなわくわくする感覚が、トルネコの全身を駆け巡る。
 今のところ、手元にそれらしい道具はない。
 だが人が集えば、本当にそれらの道具を持つものが現れるかもしれない。
 あるいは本当に、聖なる光を生み出す事もできるかもしれない。

 錬金釜の可能性を、しっかりと宿帳に書き記しておく。
 もし今後自分やトロデに何かあったとしても、仲間たちへと繋ぐ事ができるように。

1033 ◆YO3pXcw7Kc:2007/01/10(水) 16:51:07 ID:bo9K1f7Y
(さてと。自分ひとりで考えられるのは、このあたりが限界でしょうか)
 大きく息を吐いて、ぱたんと宿帳を閉じる。結構な量を書き綴ったような気もする。

 本当はもう一つ、「ハーゴンが一体どこにいるのか」という問題があった。
 これについては、以前リアから聞いた「ハーゴンは幻術が得意だ」という話から推測する限り
 ハーゴンと同じ世界から呼び出された者達――今となってはマリア一人だが――から話を聞かない事には
 トルネコ一人では分かりそうもなかったため、深く考えることはしなかった。

(後は皆が無事に集ってから、もう一度話をしてみることにしましょう)
 ほんのわずかではあるが、進展したような感覚にトルネコは満足していた。
 窓から射し込む朝の日差しは暖かく、気持ちも相俟って、実に心地よいものだった。

 ○

 たった独りで歩むラダトーム王女ローラが、流れた放送にて最も身を案じたのは
 大切な思い人のことでも、大好きな竜の仕えた竜の王のことでもなく
 目の前で川に流された、バンダナを巻いたとあるお国の兵士長のことだった。

 祈るように聞いた十三名の死亡者の中に、エイトの名前が無かった事に涙を流して喜び
 そしてサマンサとドラゴンの名前があったことに、少しだけ消沈する。

 戦に疎い自分でも、レーベの村でゴンを惑わせた犯人がサマンサであることは理解していた。
 つまり彼女がゴンの死の原因を作ったと言っても過言ではなく、恨みがないといえば嘘になった。
 一方で、こうも思う。彼女も彼女なりに、やらなければいけないことがあったんだろうと。
 そうでなければ、共に歩いた道中、あんな悲しい目をしていたことに説明がつかない。
 できることならもう一度、会って話をしたいとローラは考えていた。
 恨み辛みをぶつけるためではなく、彼女をもっと分かりたかったから。
 それが叶う事はなくなってしまったこと。それがただ、残念だった。

(……あっちでゴンさんと、ケンカしてたりしないでしょうか)
 せめて現世でのいがみ合いは忘れ、仲良くしていてくれればと、ローラはささやかな祈りを捧げた。


 ローラは川沿いを歩いていた。
 アリアハンに向かうためには、そうしていてはやや遠回りになる。
 しかしもしかしたら、岸にエイトが流れ着いているのではないか、という期待が捨てきれなかったからだ。

 結局、城下町が見えるようになっても、エイトを見つけることは叶わなかった。
 生きているという希望のお陰で悲しみは振り払えたが、とにかく心配だった。
 きっと反対側、あの塔の在る小島の方に流れ着いたのだろう。――未だ溺れているとは考えたくもない。
 ならば泳いで向こう岸へ、というわけにも当然いかない。今はただ、彼の身を案ずるしかなかった。

 暫く小島を見つめた後、ローラはそれに背を向けた。
 別れた時に、強くなると決めたのだ。それはエイトが生きていると分かった今も変わらない。
 むしろ再会したときに安心させてあげたいという気持ちのお陰で、その想いがかえって強まっていた。

 今は独りでも、城下町へと向かおう。決意の目を持って、ローラは歩き出した。
 どこからともなく吹いた一陣の風が、歩み始めた彼女の背中を優しく撫でる。
 ローラにはそれがまるで、誰かがその背を押してくれたように感じられた。
 ――杖を持つ右手が妙に軽かったのも、きっとそのせいだったのだろう。

 ○

 元気になったぞ、とでも言いたいのか。
 繋がれたままにぱかぱかと足踏みの真似をするファルシオンを認め、竜王アレンはぐいと背伸びする。
 目に入ってきた日差し眩しくて、思わず目を細める。
 だがそれは、とても美しかった。
 とてもいくつもの悪夢が、そして惨劇が行われてきた地に登るものとは思えないほどに。

「闇に生きた者にも、太陽の光は平等に注がれるか」
 光を忌み嫌い、闇を牙城として地下に潜んできた竜王としての日々。
 その頃は太陽など、ただの敵でしかなかった。むしろ人々から奪いたい、象徴そのものであった。
 事実かつての魔王は人々から太陽の光を奪い、アレフガルドに永遠の闇をもたらせたこともあると言う。
 そんな先祖を持つはずの男が、この光を心地よいと感じる事は、本来考えられないことに思われた。

1034 ◆YO3pXcw7Kc:2007/01/10(水) 16:51:41 ID:bo9K1f7Y
 だが、悪くなかった。
 太陽を肯定できるようになったのも、取り巻く環境や、あるいは考え方の変化が理由だろうか。
 ならばもう一度、本当のアレンに感謝しておく必要がありそうだった。

「アレフよ、何故戻らぬ」
 ふと、その男の先祖である、因縁の男のことを考える。
 放送によってアレフがアトラスの追撃を果たし、勝利した事は分かっていた。
 その事実にどこかで安堵していた自分がいたことも、渋々ながら認めてやったというのに。

(負傷したか、それとも)
 新たな戦乱に巻き込まれ、未だ引くとも出来ぬ状況に陥っているか。
 なまじ一度出会い共闘を果たしていただけに、この情報の欠落が歯がゆかった。
 いっそ今から援軍へ向かおうと思っては、先のトルネコに自分の告げたことを思い出して留まる。
 何度と無く一歩を踏み出しては留まるその姿は、はたから見れば滑稽なものに映ったかもしれない。

(……中に戻るか)
 「自分たちは居場所であるべきだ」と述べた矢先に、うろたえていてはトルネコに示しがつかない。
 苛立ちを押し殺し宿屋へと戻ろうとしたアレンは、一陣の風の流れに乗った、懐かしい匂いを捕らえた。
 反射的に振り返った彼は、城下の入口に佇む一つの人影に、その目を釘付けにする。

 それは光だった。おぼろげでも、見間違えようがなかった。
 それはいつも、暗黒の心の中で場違いに輝く、太陽のような存在だったから。

「……ローラ?」
 その名を呟けば、無意識のうちに足が動いていた。
 まるで誘われるように、アレンは光の射す方へと進んでいた。


 その光は、アレンにとってあまりに眩し過ぎたのだろう。
 だから、大通りに潜む闇には、未だ気付いていなかった。

 ○

 トルネコがザックをぶちまけた際に、一つの石が宿屋の隅へと転がった。
 それぞれのすべきことに集中していた二人は、ただの石だと見向きもしなかった。

 この石に、異変が起きていた。
 それはまるで、近付く何かに反応するように。
 ほんのり熱を持つその石は、今その熱をさらに増し、その体を僅かに赤く染めていた。

 かつて石は、ぐうたらな男にホットストーンと名付けられ、ナンパの材料にされることもあった。
 希少品として大富豪に買い取られ、コレクションの一つになることもあった。
 しかし本当は、その石は伝説の英雄が封印されている、魔法の石だった。
 それを知ったある冒険者達は、世界一高い塔の上で石を掲げることにした。
 無事に伝説の英雄は復活し、それと同時に石は消えてなくなった。

 石はこの地で、当時と変わらぬ姿で、大蛇の荷物に紛れた。
 しかし封印を解かれた英雄も、石に封印されることなくこの地に呼ばれていた。

 英雄と石は、共にあるものではなかった。
 石は英雄の封印のためにその世界に存在し、英雄の復活と共に消えたものだったから。
 英雄が復活している今は、この石は存在するはずがないものだった。

 ならばこの石は、果たしてなんなのだろうか?
 ――本当に、英雄を封印していたそれと同じものなのだろうか?


 石は、何も語らない。
 ただ静かに、胎動を続けていた。

1035 ◆YO3pXcw7Kc:2007/01/10(水) 16:52:12 ID:bo9K1f7Y
【E-4/アリアハン城下町宿屋/朝〜午前】

【トルネコ@DQ4】
[状態]:HP3/4
[装備]:無線インカム 破壊の鉄球 宿帳(トルネコの考察がまとめられている)
[道具]:支給品一式(食料と水は半分) ホットストーン?(異変中) 聖なるナイフ 錬金釜
    プラチナソード 折れた皆殺しの剣 ラーの鏡 マジックシールド 魔封じの杖 首輪×2
[思考]:宿帳に記した考察を仲間に伝える 仲間の安否を気遣いいずれ合流 対主催への強い決意
※トルネコの道具は、宿屋内に広げられています。
※ホットストーンに、何か異変が起き始めています。

※【ファルシオン@DQ6馬車馬】
[状態]:右後ろ脚に火傷(回復) 宿屋の外に待機
[装備]:縞模様の布切れ

【E-4/アリアハン城下町大通り/朝〜午前】

【アレン(竜王)@DQ1】
[状態]:HP1/4 MP1/8
[装備]:さざなみの剣
[道具]:なし
[思考]:あれは…… この儀式を阻止する アレンの遺志を継ぐ

【E-4/アリアハン城下町入口/朝〜午前】

【ローラ@DQ1】
[状態]:HP3/4 火傷  気丈な決意
[装備]:光のドレス 雨雲の杖
[道具]:ロトの剣 炎のブーメラン 支給品一式
[思考]:アレフを探す 竜王にゴンの事を伝える エイトが心配 ゲームを脱出する


※備考:トルネコが宿帳に記した内容は以下の通り(全てトルネコの推測です)
1、首輪による盗聴・監視の可能性。また、そこから考えられるハーゴンたちの戦力について
2、アリアハン周辺に全生存者が集いつつある
3、首輪はラーの鏡に照らすと禍々しい呪詛を生み出す。これを消さない限り首輪は外せない
4、消すためには、人体に無害で、強い聖なる光に照らす必要がある
5、「錬金釜」を使えば、もしかしたら聖なる光を生み出せる道具を作れるかもしれない

1036ただ一匹の名無しだ:2007/01/10(水) 23:47:58 ID:jGbJwxHE
乙&gj!
光を受け入れた魔王vs魔剣に魅入られた僧侶が見れるのかな。
この後の展開が楽しみな話ですね。

1037ただ一匹の名無しだ:2007/02/10(土) 00:26:53 ID:oVjPS1tg
.

1038未題  ◆jOgmbj5Stk:2007/02/13(火) 07:06:42 ID:lq3hT5Jo
一歩足を進めるたびにどくん、どくんと心臓が脈打つ。
それとともに激痛がピサロの全身を駆け巡った。
脂汗を垂らし、壁に身体を寄せながら創痍の魔王は塔の階段を昇っていた。
右腕は完全に破壊され使い物にならず、
血は止まったとはいえ巨人の拳による傷痕は未だ彼の身体に刻まれたままだ。
断続的に唱える回復呪文によってかろうじて彼の意識は保たれている。
先ほどのアレフとの戦闘で更に状態は悪化したようだ。
(無様だな……)
そう自嘲し――途端血を吐いた。

「がふっ」

びしゃびしゃと石段の上に胃液雑じりの血を吐瀉する。
朱に染まる唇を乱暴に拭い、それでも銀の魔王は進んだ。
この場では敵に発見された場合、的にしかならない。
なんとか四方を見渡せ、且つ落ち着ける場所を探さなくてはならなかった。
その条件に最も近いと目星をつけたのが塔の頂上だった。
回復呪文を繰り返しようやく動悸が安定して来た頃、ピサロは塔頂に到着する。
そこには一戸の家屋が建っており、中には寝具なども揃っていた。
「ふん、都合がいい」
力なく笑いベッドに腰を下ろすと自身の回復に集中を始める。
しかし右腕は完全に破壊されていて最早完全に回復は不可能であった。
いっそのこと切り落とそうかとも考えたが、血の足りない今の状態でそんなことをすれば
失血死という間抜けな死に様を晒すことになるだろう。
今は部屋のカーテンを引き裂いてサラシにし、右腕を身体に固定するのが精一杯であった。
動かす度に激痛が走るがその都度ベホマで鎮痛し、なんとか処置を完了する。
内臓へのダメージは今までの回復治療で幾分か和らいでいた。
緩慢に込み上げていた吐き気は徐々に治まり、気分も落ち着いてくる。
だからといって食欲は全くなかったが、ピサロはパンを口にすると水で強引に胃の中に流し込んだ。
受け付けず、逆流してくるモノを喉を押さえつけて飲み下す。
多少無理をしてでも今は血を造るために栄養を取らねばならなかった。

1039未題  ◆jOgmbj5Stk:2007/02/13(火) 07:07:15 ID:lq3hT5Jo
数度、その拷問のような食事を繰り返しようやく彼は一息をつく。
彼の診断では戦闘可能領域への回復まではまだしばらくかかる。
他にもう一人回復呪文の使い手がいればまだ違うがそれは求めてもしようがなかった。
先ほどアレフと相対した時のように無理をすれば現段階でも戦闘は可能だがその分命を縮めてしまう。
残り10人以上いる今、それは良策とはいえない。
(いましばらくはここで回復に専念するしかあるまい)
いつでも動けるように横にはならず、ベッドの奥に腰掛けて壁に身体を預けるように身を休める。
回復呪文の連唱で魔力も底が見えてきている。回復させねばならなかった。
ザックに入っているエルフの飲み薬を使おうかとも考えたが、
即効性のある薬はいざという時の切り札となる。時間的猶予のある今はまだ温存するべきだと考えた。
そして眠りに入ろうとゆっくりと瞳を閉じた時、ヘッドセットから耳障りな音が聞こえてきた。

『ザザ……ブッ、ええー聞こえますか? ピサロさん、聞こえたらどうか返答を……』




放送の後エイトは感情にその身を任せていた。
昂ぶり、知らず紫炎のオーラをその身に纏うと力のままにその拳を燃える炭塊へと叩きつける。
エイトの胴回りの二倍はあろうかという元は巨大な流木だったそれは
ハイテンションの一撃によって粉々に砕け散り、周囲の砂浜に黒い炭屑を撒き散らした。
そのまま膝をつき、今度は砂地に拳をたたきつける。
何度も、何度もたたきつける。
砂が衝撃を吸収してくれたおかげで拳にさほどダメージはない。
しかし今のエイトにはそれすら疎ましかった。
ゼシカが、ククールが死を賭して戦ったに違いないのに何故自分はのうのうとここで立ち止まっているのか。
アリーナ姫も、ローラ姫も、誰も守れずに一人この場に佇んでいるのか。
そんな自分自身を殴り飛ばしてやりたかった。
彼は歯を喰いしばり、涙を拭う。
(そうだ、もうこれ以上休んでなんていられない!)
放送ではローラ姫の名は呼ばれなかった。

1040未題  ◆jOgmbj5Stk:2007/02/13(火) 07:07:51 ID:lq3hT5Jo
ならばアリアハンへと向かっている筈である。
(急いで合流しないと!)
それにトロデ王もアリアハンにいる可能性はある。
ともかく一刻も早く向かわなければならなかった。
エイトは入り口を探して塔の外周を回る。
その時、視界の隅に赤いものが目に入った。
見慣れたその色彩に思わず目を奪われ凝視する。
それは見覚えのあるマントに覆われた一つの死体だった。
「!? まさか!」
顔を青褪めさせながら駆け寄る。
しかしその背格好は彼の脳裏に浮かんだ青年の姿とはかけ離れていた。
恐る恐る手を伸ばし、マントを捲る。
そこには黒い髪をした青年の顔があった。
知った顔でないことに安心し、同時に落胆する。
(ククール、君はいったいどういう最期を迎えたんだい? 僕にはそれを知ることさえ叶わないのか)
名簿を開いてみるとこの青年はアレンという名前らしい。
ふとみると青年の死体には二つの傷跡がある。
肩の矢傷。そして胴を横薙ぎにされた太刀傷。
胴の傷に触れるとそこには僅かな魔力の残滓が感じられた。
その力は彼がよく知る剣の波動。
(まさか……竜神王の剣?)
周囲を見渡すと落雷によると思われる焦げ跡がいたるところにある。
そのことも彼の推測を裏付けていた。
そして死体の脇に添えられている一輪の花に気づく。
彼のマントが掛けられていることといい、この青年はククールが看取ったということなのだろう。
エイトはゆっくりとマントを元に戻すと手を組んで祈りを捧げる。
「人違いでした……どうか安らかにお眠りください」
できうるなら埋葬したいが今はその時がない。
エイトは立ち上がるともう一度深々と頭を下げ、その場を立ち去った。
(竜神王様の剣で彼を殺した者がいる……ククールじゃない。彼は剣に拒まれていた。
 なら……誰が?)

1041未題  ◆jOgmbj5Stk:2007/02/13(火) 07:08:22 ID:lq3hT5Jo




「トルネコか?」

『ああ、ようやく繋がりましたな。突然繋がらなくなってしまったので心配しましたよ。
 こちらもいろいろとあって早く交信しようとしていたのですが……』

「何があった」
ピサロはダメージを受けていることを隠そうと言葉少なに尋ねる。

『ええ、あれから巨人アトラスはなんとか撃退したものの城の地下通路から逃げられてしまいまして……
 それをアレフさんという方が追っていかれてしまったのですよ。
 放送から判断するかぎり、どうやら無事に止めをさせたようですがアレフさんは戻られません……。
 こちらはアレンさんが重傷を負われ、宿に戻れば誰も居ず、アリスさんたちは戻ってこない。
 もうどうしたらいいやら……途方に暮れておるのです。ピサロさんたちは今どちらに?
 早く合流したいのですが』

どうやら向こうも状況が好転しているとは言い難いようだ。
今襲撃をかければ容易く全滅できる……が、今の自分の状態ではそれは不可能だった。

『ああ、そういえばピサロさん達が地下通路を通られたのならアレフさんやアトラスと
 遭遇されませんでしたかな?』

ピサロの目が細められる。
「何故、我らが地下を通ったと?」

『いえ、インカムが通じなくなったのはおそらくそれが原因なのではないかと思いまして。
 レーベとアリアハン間で通じたものが近づくにつれて通じなくなるというのもおかしな話ですしね。
 アレンさんから地下通路の存在は聞いていましたし、レーベの方角にもその通路は延びていたそうなので。
 そして今繋がっているということは……アリアハンに到着されたか途中のナジミの島にでも?』

1042未題  ◆jOgmbj5Stk:2007/02/13(火) 07:09:01 ID:lq3hT5Jo

短い期間の付き合いだがこの時ほどトルネコの聡い部分を疎ましく思ったことはなかった。
あのユーリルといた時も戦闘能力では他の仲間に遅れをとっていたがその知恵はブライの知識とならんで
重宝されていた。僅かな情報から全体を見通し真実に辿りつくその能力。
彼は普段は間抜けな一面も見せるがこういう場面では特に頼りになる人物だった。
だからこそピサロも僅かなりトルネコを認めていたのだ。
だが今は……。
「お前の推測どおりだトルネコ。私は今ナジミの塔にいる。
 そしてアレフという男にも巨人にも遭遇した」
ピサロには二つの選択肢があった。
自分がゲームに乗ったことを隠し、不意をついて彼らを急襲すること。
もう一つは自分が乗ったことを伝え、正面から彼らを打ち破ること。
今の傷ついたピサロにとって前者をとった方が有利なのは当然だった。
実際、そうしようと思っていた。
だが気が変わった。
人を愚者と笑うからには自分はそれよりも高みに存在しなければならない。
ならば人が使うような姑息な手段はとることは出来ない。
誇りを持って彼らを冥府へと導いてやろう。

『おお、やはり。それではアレフさんは今どちらに?
 お側にいるなら一度話をさせてもらいたいのですが』

「フン、さて何処にいるか……手酷い傷を負わせてやったからな。今頃は死んでいるかもしれん」

『ーーっ!?』

そのあからさまな侮蔑の声に狼狽する音がインカムごしに耳に伝わる。
陰湿な愉悦がピサロの唇を僅かに歪ませた。

『……何故です?』

数秒の沈黙のあと、トルネコは搾り出すような声を上げた。

1043未題  ◆jOgmbj5Stk:2007/02/13(火) 07:09:47 ID:lq3hT5Jo
彼は先ほどの答えだけで全てを察したようだった。
「貴様らに人間には失望させてもらった。貴様のそばにいたクリフトという神官然り、私のそばにいた魔女も然り。
 この期に及んでの愚昧なる行動、もはや信に値せん。もう人間などあてにはしない。
 私一人でハーゴンへの道を切り開いてやるということだ」

『ピサロさん……』

「その名で私を呼ぶな……我が名はデスピサロ。貴様ら人間を冥府へといざなう魔族の王だ」




『その名で私を呼ぶな……我が名はデスピサロ。貴様ら人間を冥府へといざなう魔族の王だ』

デスピサロ。かつてトルネコのいた世界を恐怖へと陥れた魔王の名。
再びその名を耳にするとは思わなかった。その名を彼はすでに捨て去ったはずだった。
彼はすべての戦いが終わった後一人の魔族として、ただのピサロとしてロザリーと共に生きていくはずだったのだ。
だが彼は今そう名乗っている。そしてそれがピサロにどれほどの絶望を味合わせたのかが窺い知れた。
(ど、どうする……どうすればいいんですか?)
デスピサロの音に触れ、トルネコは激しく動揺する。
彼は本気だ。でなければ一度捨て去ったはずの名を再び冠するはずはないだろう。
止めなければならない。しかし……今の彼が話を聞いてくれるだろうか?
自分は一度クリフトの説得に失敗している。もうあんな失敗はできなかった。
トルネコは必死に知恵を振り絞って考える。
今はまだ通信は繋がっている。だが次の瞬間には切られるかもしれない。
こちらから交信を呼びかけてもインカムを外されてしまえばそれまでだ。
なんとか、なんとか彼の心に届く呼びかけを――なんでもいい、彼の心を揺さぶる言葉を――

「そんなことをしてもロザリーさんは喜びません!」

自分ではピサロの心に届く言葉をかけることはできない。
ならば彼女に、彼が心を許したただ一人の女性に託すしかない。

1044未題  ◆jOgmbj5Stk:2007/02/13(火) 07:10:32 ID:lq3hT5Jo

『フ、そうだな……ロザリーは喜びはすまい。だが、……悲しみもせん!
 彼女はもうなんの感情も現さない、笑わない、泣かない、怒りも、喜びもしない!
 貴様が、貴様ごときが賢しらにロザリーの名を口にするな!!』

効果はあった。
インカム越しに伝わる彼の怒号。ロザリーの名は確実にピサロの心を揺さぶった。
(怯んではいけない――! 押して押すこと、これぞ商いの極意!!)
やはりあのエルフの少女こそが突破口。
(ロザリーさん、どうか……どうかピサロさんを導いてください!)
「そうです。確かにロザリーさんは死んでしまいました。
 しかしピサロさん、あなたの心の中からもロザリーさんは消え去ってしまったのですか?
 いいえ、そうではないでしょう。あなたの思い出の中にロザリーさんはまだ存在する筈だ!
 あなたの心にいる彼女は今笑っていますか!?」
誰だって心の中心には大切な存在がある。
あの神を捨てた憐れな神官にも最後まで信じていた光があったのだ。
もう彼と同じ過ちを繰り返させないためにも、その光と向き合って欲しい。

『貴様に……何がわかる!!』

「わかりますとも。私の心の中にも愛しい妻と子がいる。
 私はいつも思っています。そして常に妻と子にとって誇りである存在でいたいと思っています。
 ピサロさん、あなたは違うのですか? あなたの心のロザリーさんが永久に笑わなくなったとしても……!
 あなたは魔王となるのですか!?」

『黙れぇッッ!! どんなに奇麗事を吐いたところで貴様らに何ができた?
 人間は悪戯に殺し合い、貶めあい、人数を減らしただけではないか!
 愚かな人間どもにもう付き合っては居られん……もうこのゲームは止まらん、なら……私が勝ち残るまで!
 くだらぬ感傷でもはや私が道を違えることはない!』

言葉の一つ一つに込められた憎悪が、絶望が、トルネコの心に突き刺さるようだった。
だが彼は退けない。もう退き下がるわけにはいかない。

1045未題  ◆jOgmbj5Stk:2007/02/13(火) 07:11:14 ID:lq3hT5Jo
彼の能力の全てを持って、この商売を成功させると決めてしまったのだから。

『この忌々しい首輪を外す術も潰えた。もはや私も貴様も逃れられんのだ!
 待っていろ、今に貴様の首を貰いに行く……!』

ここだ、と思った。攻撃をかけるならここしかない。
ピサロがどのような手段でもって首輪を取り去ろうとしていたのかは解らない。
だが自分達にはまだ可能性が残されているのだ。
そのことを伝えれば――
しかし……その方法がない。インカムで伝えれば主催側にそのことが知られてしまう。
遠く離れたこの場所では筆談で伝えることも出来ない。
だが今しかない。今を逃せばもうピサロが自分の声に聞き耳を持つことはないだろう。
僅かな逡巡の後、トルネコは決断した。
(ネネ、ポポロ! 父さんは、父さんは……最期まで強く生きたぞ!!)
「私が知っています! 戒めを解く方法を私が知っています!!」

『!?』

音に聞こえる動揺の気配。
この言葉は確かにピサロに伝わった。だが、それと同時に主催側にも――
ガタガタとトルネコの手が震え、嫌な汗が全身を伝う。

『愚かな……貴様は取り返しのつかない真似をしたのだぞ……』

どうやらピサロのほうも盗聴の可能性に気づいていたらしい。
「し、承知の上です!」

『知っていて言の葉に乗せたというのか!』

「わ、わわ私が例えここで消えようと、き、希望は残ります!
 わたた、しの望みは唯一つ! この情報をあなたに買ってもらいたい!!
 代価はあなたの『信じる心』です!」

1046未題  ◆jOgmbj5Stk:2007/02/13(火) 07:12:05 ID:lq3hT5Jo

次の瞬間には自分の首が飛んでいるかもしれない。
しかしそれでも譲れないものがあった。
彼を突き動かす何かがあった。

「あ、アリアハン城下町の宿にくれば私がいなくともその情報は手に入れられます。
 ピサロさん……どうか!」

『私に魂を売り渡せというか……ククク、まるで悪魔との取引よな』

「ピサロさん――!」

『トルネコよ……確かに私はかつて人を認めた。信じるに値するものとしてな。
 だがそれはこの世界にて裏切られた。人間とは実に愚かな存在だということを思い知らされた。
 お前が、ユーリルが信じられようと他の大多数の人間を信じることなどできぬ。
 お前一人では何もできない。殺し合いを止める事も、私を止める事もな――』

「待っ――ッ!」

『話は終わりだトルネコよ。私はもう迷わぬと決めた。
 お前の命を賭けた売り物だが代価は渡せん。今死なずともいずれ私がお前を殺しに行く。
 ……さらばだ』

ブッという音がして交信は切れた。
それからは何度スイッチを押しても通じない。どうやらインカムを外されてしまったようだ。
それと悟るとトルネコもまたインカムを外しザックに放り込む。
そして宿の階段を駆け下りた。
(まだ私の首はついている。ならば最期の瞬間まで私は諦めませんぞ!)
アレンに事情を説明し、自分ひとりでだけでもナジミの塔へ向かうのだ。
「うおおおぉおおおおおおおお!! この商人トルネコ、最後まで戦いますぞぉおお!!」
咆哮とともに彼は宿を飛び出し、アレンの姿を探した。

1047未題  ◆jOgmbj5Stk:2007/02/13(火) 07:12:39 ID:lq3hT5Jo


「……さらばだ」
ピサロはインカムを頭部から外すと部屋の隅へと放り投げた。
もう必要はない。もう誰とも話すことはない。
トルネコの言葉が思い返される。彼に放った自分の言葉も。
そう、一人の人間が信じられたとてそれに意味はない。
このゲームが止まることはもはやあり得ないのだから。
だがもし……そこまで思考に上らせ――ピサロは自嘲した。
「下らぬ」
既に我が道は定まった。
あとは行動に移すまでの間鋭気を養うのみ。
だが彼の眠りは二度までも邪魔されることになる。
一度目はインカムからの通信。二度目は……扉を開き朝日とともに現れた訪問者によって。

「何をしにきた……」

ピサロは訪問者に怒気を孕んだ声をかける。
それでも訪問者は――フォズはしっかりとピサロを見据え手を差し出した。



「あなたを……導きに」

1048ただ一匹の名無しだ:2007/02/13(火) 07:14:31 ID:lq3hT5Jo
特に問題のあると思った一部分を投下します。
エイトの検死、首輪盗聴関連、Pの思考、この三つの部分が大丈夫かどうか判断をお願いします。

1049ただ一匹の名無しだ:2007/02/13(火) 20:38:08 ID:FsgEIsWM
>>1048
い…一部分!?ならば完全版を読まないことには何とも言えませんが、
エイトの検死、首輪盗聴、Pの思考については無問題だと思われます。
普通に完全版だと思って読んで『ん?何か話が飛んでる!』と思ったら…やられたぜ!

1050ただ一匹の名無しだ:2007/02/13(火) 22:16:04 ID:XHas1znA
良いと思います。

あとは誤字とレス数とか気をつけてくださいね。
私、以前間違えて恥ずかしかった事があるもので・・・。

1051ただ一匹の名無しだ:2007/02/13(火) 23:03:01 ID:i2TWHMOo
乙です。
 気になったのは、「エイトが地下通路の存在を知っているのか?」という事です
下手に搭を登るより泳ぐ>歩く方が短距離に感じると思うのです。
搭の周辺や搭の入り口付近を「周囲(奇襲)の警戒」もしくは「参加者探し」で調べるのは分かるのですが、急いでいるのに搭の中を捜索してまで時間を割くかどうか。
 ピサロが搭の頂上に居るのを見つけて、トロデやローラよりも優先させるかどうか。
見つけた場合、エイトはモンスターの善悪が判別出来ますから、どう見えたのかの描写が必要のような気がします。

1052ただ一匹の名無しだ:2007/02/13(火) 23:29:51 ID:FsgEIsWM
FFDQ1stのパパスは泳いでたなぁ。しかも二回くらい。
でも橋が落ちて海流が変わったとかって書いていたから、泳ぐのは無理っぽい。
本人もついさっきまで凍えかけてたから。

1053ただ一匹の名無しだ:2007/02/13(火) 23:36:01 ID:i2TWHMOo
>>1052
なるほど。
海流変わってもエイトなら泳げそうな気も若干しますが、一理ありますね。
とすると、

>>1040
>ともかく一刻も早く向かわなければならなかった。
>エイトは入り口を探して塔の外周を回る。

の部分に何か補助的な言葉を補えば良いのかな。
後は次の書き手さんにエイトの行動を委ねればOK・・・かな?

1054ただ一匹の名無しだ:2007/02/13(火) 23:38:08 ID:FsgEIsWM
地下の戦いでのすさまじい覇気とか闘気とか邪気とか魔力とかを感じ取って、
それをたどっていくとか…無理があるかorz

1055ただ一匹の名無しだ:2007/02/13(火) 23:42:10 ID:i2TWHMOo
>>1054
まあ、全部じゃないから、ひょっとしたら作者様が、最後まで書いてるかもしれませんね。

>>1048
問われた3箇所については問題無しと思われます。

それにしても文章レベル高いなぁ。すげぇ。

1056修正案:2007/02/13(火) 23:42:26 ID:lq3hT5Jo
ならばアリアハンへと向かっている筈である。
(急いで合流しないと!)
それにトロデ王もアリアハンにいる可能性はある。
ともかく一刻も早く向かわなければならなかった。
アリアハン城下町の方角を望む。
微かに視認できる距離ではあるが、その間には広い内海が道を閉ざしている。
通常の体力ならば泳ぎきる自信はあったが今の彼ではかなり危険な泳行となる。
下手をすれば自殺行為となりかねない。
地図を見ればここは道なき孤島。四方は内海に囲まれている。
(船……などあるはずもないか。だけどこのままでは身動きは取れない。
 筏を作るか……いや、ククールはここにいた。彼はどうやってここを移動したんだ?)
彼もまた泳いで渡ったのか、船か空を飛ぶアイテムでも支給されたのかそれとも……
(どこかに通路があるか、だ)
考えてみれば殺し合いをさせようというのにともすれば安全圏ともなり得る孤立するような場所を
作るとも思えない。禁止エリアにでもなればそれこそ殺し合いとは無縁な場所だ。
探してみる価値はある。そしてもしあるとするならば……エイトは塔を見た。
(人口的な通路が存在するならばそれは人口的に作られた場所の中が最も可能性が高い)
エイトは入り口を探して塔の外周を回る。

1057ただ一匹の名無しだ:2007/02/13(火) 23:43:03 ID:lq3hT5Jo
このような感じではいかがでしょう。

1058ただ一匹の名無しだ:2007/02/13(火) 23:46:47 ID:i2TWHMOo
「死体発見」>「ククールがここにいた」>「どうやって移動したんだ?」と順番を変えれば問題ないかと。

1059ただ一匹の名無しだ:2007/02/13(火) 23:49:09 ID:lq3hT5Jo
しまった……orz
はい、そう修正します。

1060ただ一匹の名無しだ:2007/02/13(火) 23:49:20 ID:i2TWHMOo
・・・そろそろダウン。眠気が襲ってクルー。

近日のSS投下を心待ちにして、今日は寝ます。

GJ!!!!

1061ただ一匹の名無しだ:2007/02/13(火) 23:50:06 ID:FsgEIsWM
エイト「そうか!ミラクルムーンで海を飛び越えたんだ!!…でもアイツ格闘スキル殆どないし…」
クックル「あるあ…ねーよwwwwwwwwww」

1062ただ一匹の名無しだ:2007/02/18(日) 02:05:59 ID:IEBB356w
age

1063影が光に追いついた 1/22:2007/03/25(日) 03:48:33 ID:EN1v37rk
 路地裏に隠れた魔族と娘はまだ姿を見せない。
まさかこのまま逃がしてもらえると思っているわけではなかろうが、あまり策を練る時間を与えれば後々面倒なことにもなりかねない。

 ならば、燻り出してくれようか。

 掌に意識を集中させ、口の中で力ある言葉を唱えれば、小さな炎の渦が巻き起こる。
だがそれが巨大な火球を成す前、ごうと風を切る音にマルチェロは横へ跳んだ。
家並みの一部を打ち崩しながら叩きつけられた宵色の尾は石畳を深々と抉り、
途中で集中を欠いた炎は空しく四散する。

「なるほど、そちらが本性か」

 現れた宵色の鱗に覆われた巨大な竜の姿に、マルチェロは一人ごちる。
気の弱い者なら一目で威圧されてしまうであろう、圧倒的な存在感を放つ巨竜。
しかし、よくよく見ればその巨大な身体を覆う鱗はあちこちがひび割れ、あるいは傷付き、
先程の巨人との戦いの激しさ、消耗の大きさと、竜と言えども無敵でも不死でもないのだということを如実に物語っていた。
 傷の治療が完全でないこと、小回りの利く人型ではなく頑健な竜の姿を選んだところからして、魔力もそう残ってはいまい。

 ちらりと竜の背後を窺う。
予想通り、娘と白馬の姿は無い。

(これで目的の半分は達成されたわけだ)
 竜が娘たちを逃がすことも、彼らの行き先も予想のうち。
両者を引き離すことには成功した。あとは各個撃破を狙うのみ。

 内心の笑みを隠して、マルチェロは刃を振るった。

1064影が光に追いついた 2/22:2007/03/25(日) 03:49:33 ID:EN1v37rk
「今の音は――?」

 小さな丸い目を不安に曇らせて、トルネコは空を見上げた。
ピサロの元へ行くべく宿を飛び出したものの、
すぐ外でファルシオンの治療に当たっていたはずのアレンの姿は見えず、加えて今の轟音。
 何者かとアレンの間に戦端が開かれたことは、どうやら間違いない。

「まったく、一難さってまた一難どころか……」
 リアの救出に赴いた少女たちと、トロデ、キーファは放送時に生きていたことのほか
全く行方が知れず、アトラスを負ったアレフはピサロの口振りからするに浅くない負傷の様子。
ピサロの乱心だけでも手一杯なのに、新たな襲撃者まで現れるとは――

「考え込んだところで始まりませんな」
 どうにも悲観的になりがちな思考を振り払い、轟音の源へ向かって大きな身体をゆすりゆすり走り出す。
ピサロの元へ向かうことを伝えるにしろ、加勢するにしろどのみち行き先は変わらない。
一刻も早く襲撃者を説得するなり、撃退するなりしてピサロの元へ向かわなければ、
本当に彼は“戻れなくなってしまう”。

『お願いです、どうかピサロ様の、いいえ――』
 彼を一途に想って涙を流した、やさしいエルフの娘はもういない。
彼女自身に殺されるに値する罪など何一つない、理不尽な死。
ピサロの憤りも、何としてでも復讐を、と望む気持ちも分からないでもない。

 だが、トルネコは覚えている。

 これ以上彼の手を血に染まらせないでくれ、と泣き崩れた震える薄い肩を。
思わず、といった風に手を伸べた勇者の少年の掌で音もなく砕けた紅玉の涙の哀しいほどの美しさを。




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