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投下用SS一時置き場

1022守るべき仲間を ◆UUnHCwOa2s:2006/12/24(日) 18:56:00 ID:G5ybBZY2
「・・・トロデさん、乱暴な運び方ですいません。」
そういってキーファは、井戸らしきものの近くに、トロデを降ろす。
たしか、この辺りからだった筈だ。
そう思いぐるりと辺りを見回してみる。
しかし見えるのは戦闘があった形跡のみで、ひとっ子一人見当たらない。

可能性があるとすれば、この井戸の中。それ以外はあるまい。
井戸の中に入るとなると、流石に運べないのでトロデを再び担ぎ上げ、安全な所まで移動した。
それから、警戒の為、試しに井戸の中にそこらの小石を放り込んでみた。
――反応はない。
今度は井戸の中を覗いてみる。
すると、薄明かりに人が倒れているのが分かった。

「・・・――誰か居るのかっ!?」
くわんっと、声が反響した。が返事は、無い。

「生きてる・・・よなっ!」
そういうが早いかロープを伝って降りて行く。
途中火傷した手の痛みが気になったが、そうも言ってられなかった。


下に降りた時、最初に眼に飛び込んで来たのは緑の緑色の僧侶の服を来た男の死体だった。
それは無残にも斬られ、飛び散った血が、服を赤と緑という不気味なコントラストにしている。
そして、次に見たのは幼い少女――これもまた、既に生き絶えた骸だが――だった。
やはり、可憐なドレスだったであろう服はあちこちが擦り切れ汚れていて、に深い傷があった。
いずれも死を惜しむ施しがなされており、二人が死した後に人がいた形跡を残している。

キーファをゾクリとさせたのは後者の遺体だった。
キーファは嫌な予感を抱きながら少女の骸へと近付き、そっと、今は熱を持たない組まれた手にそっと自身のそれを重ねる。

まさか間に合わなかったとは思いたくない。
だが、目の前の現実は事前の情報と余りにも符合していた。

「そんなっ・・・嘘だろ・・・?」
友を裏切ったと言う現実の前に、一人の少女さえ守れなかった己の腑甲斐無さが突き付けられた。

気が付けばいつもこうだ。
全てが砂の様にさらりと手から零れ墜ちて行く。
胸を締め付けられる思いから自然手に力が入った。

と、その瞬間、風が凪ぐ。
キーファは、途端に研ぎ澄まされたその空気に殺気が含まれているのを悟り、より強い方――キーファにとっての後ろ――を見る。

そこには細身の剣を構えた少女が立っていた。




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