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投下用SS一時置き場

715姫の決意 竜の怒り 商人の思い 3/7:2006/07/16(日) 01:25:17 ID:hsz5z07I
「………………アリアハンが見えるか、トルネコ」
「ここから、ですか?…………そうですねぇ…ここからでは、少し遠すぎるようですな…」

おぼろげな月の光を頼りに、男達は一枚の紙切れを睨んだ。
この薄い一枚の紙切れが、自分たちの命綱と言ってもいいような事体に、
アレンは自嘲するかのような笑みを浮かべる。

「…ロト生誕の地と言われたアリアハンが、いまや地獄と同義だとはな…」
「……………………アレンさん………」
「……勇者の出身地が、邪悪なる神の復活に使われるとは誰も思いもしなかっただろうに…」

皮肉げな笑みを浮かべながら、迂回ルートを探るアレンを前にして、トルネコは困ったような笑みを浮かべた。
彼の目の前で地図を眺めるこの男は、魔族として人と対峙する関係にあった事は想像に難くない。
だがトルネコは、青白い肌と老獪な瞳の色を持つこの男を嫌うことは出来なかった。
それは彼自身、あの銀の髪を持つ魔族の皇子と共に旅をしたことがあったからかもしれない。
人間と魔族……。
種族が違っても、お互いにわかりあうことができると言う事を経験として実感できたのだから…。

「私は、魔族だ………だがな…同じ魔族とはいえ、あやつのやり方は気に入らん……!」
「…………………………………………」
「真の破壊神とやらの手先となり、自身の手を汚さずに魂を集めようというような男が、
 この世界を…我等を支配している…………それが私には我慢できぬ」

一言一言噛み締めるように紡がれる言葉は、表面上はとてもとても静かなものだ。
だがその根底には、熾火のように燃え続ける怒りがあることに、トルネコは気が付いた。
邪神の姿を意匠とする玉座に腰掛け、自らは動くことなく、安全なる高みで事体を傍観する……。
自らの手で、愛する王女と希望の象徴である光の玉を奪い去り、
あくまでも自分の手で望みを叶えようとしたかつての自分とは正反対の行動を取る者――ハーゴン。
まるで、手の中にある『何か』を捻り潰すかのように……。
骨ばった手を握り締めた孤高なる竜(ドラゴン)は、何もない虚空を睨みつけた。
それは、かつては『竜王』として全魔族の頂点に立っていた彼の矜持の現れであり、
『竜王』である彼すらをも手駒と考えている者に対する反抗の証でもあった。




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