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新・戦場スレ Part1

1 ◆tb48vtZPvI:2016/05/07(土) 11:08:38 ID:MYeZc9GQ
ということで心機一転立てました

2 ◆tb48vtZPvI:2016/05/08(日) 13:30:39 ID:BEARmQQ.
 第一話 ファースト・バトルズ


 ノイズまみれの通信がコロニー「サイラス3」の通信室へ届いた。
「……こちら共和国国防軍第9遊撃部隊。帝国軍の一部隊と交戦し、ここまで撤退した。受け入れを要求する」
 サイラス3は前線へ戦力を供給する補給網の中継地点であり、帝国には未だ知られていない基地が存在している。本来ここに救援を求めることすら適切とはいえない。
 しかし敗残兵たちは既にサイラス3の防衛圏内に入っており、この通信を無視するという常套手段は不可能となっていた。
 当然遊撃部隊の指揮官もそれを理解しており、ワープ時にジャミング措置は必要以上に施していた。
 敵は撒いた。そのはずだった。

「……来ました来ました、来ましたよっと」
 ダミー隕石に偽装していた偵察装備サイクロプスのパイロットがじっと望遠カメラに目をやりながら呟く。自戦隊とオンラインにし、無線を入れた。
「負け犬が従兄弟の巣に入りました。周辺警戒は手薄。俺らだけでも行けますぜ」
 帝国軍も決して愚かではない。この付近の宙域に共和国の基地が存在することは予想がついており、監視の目は絶えず張り付かせていたのだ。
 国防軍を追い詰め、あえて逃し、基地に追いやる。その基地がサイラス3だったのは、帝国側の僥倖といえる。あるいは執念の勝利と言うべきか。
「……先行せず味方の到着を待て? はいはいわかりましたよっと」
 コクピットの中にすっかり辟易していた偵察兵の予想よりずっと早く、味方はやってきた。攻撃が開始された。

 間もなくコロニー駐在部隊と帝国軍部隊の交戦が始まった。
 国防軍は数で押すが、練度では帝国軍が上回る。次々と撃破されてゆくスチュパリデスMK-2。
 伸び切った防御網は安々と食い破られ、戦闘はコロニー内部へと移っていった……

3 ◆h9Hr5c.eFE:2016/05/09(月) 19:45:32 ID:H3ynXwSI
「敵襲だと!? バカな、サイラス3の秘匿は完璧ではなかったのか!?」
回線越しに聞こえてくるのは、怒気を帯びた野太い男の声だった。
「どうも、敗走してきた部隊がヘマをやらかしたみたいですねぇ。情報戦の甲斐もなく、バレちゃったものかと」
モニターに大写しにされているのはガナルド・ドナール准将。近年国防軍の、引いては共和国全体の注目を集めている「フェアリー・フォース・プロジェクト」の統括責任者である。
恰幅のいい体格に白髪混じりの角刈り、色黒の髭面という風体は、およそプロジェクトの華やかさに似合うものとはいえず、多分に威圧的である。
「第5艦隊の無能どもめ…! これじゃ何のために辺鄙な民生コロニーでちまちまテストをしてきたのかわかりゃしない! 設備投資だけでいくら掛けたと思っとるんだ!」
そんな男の怒鳴り声にも眉ひとつ動かさず、ウェインライト・ウェーバー博士はほとんどモニターに背を向けるようにして、キーボードを叩き続けていた。
「ウェーバー! 今すぐシルキーを運び出せ! ワープ経路は手配してやる! あの小娘と貴様も、ぐずぐずしていないで脱出しろ!」
「無茶でしょ。帝国は港側から攻め込んできてるんですから。防衛ラインが持ちこたえてくれるのを信じて待つのが関の山かと」
「待つ? そんな僻地にすぐに救援は…」
「『オーダー』ですよ。さっき向こうから、加勢に来てくれるとの打診があったそうです」
『オーダー』。その名を耳にした途端、ドナールは目を剥いて、言葉に詰まるあまりにモゴモゴと口を動かした。
「き…貴様…! あんな連中を頼りにするなど…それでも誇り高き国防軍の科学者か!?」
「客観的に見て、我々だけじゃど〜やっても押し返せそうにないんですよ。市街地の方も荒らされ放題で、非常通路からコソコソ逃げるわけにもいかないみたいですし、ここは『正義の味方』の皆さんのご厚意に甘えましょうよ?」
深々と溜め息をつき、額を押さえて項垂れるドナール。
「何てことだ…これではますます騎士どもをつけ上がらせる結果に…!」
と、そんな彼を押し退けるようにして、モニターに横から別の人影が割り込んできた。
「市街地が襲われてるんですの?」
豊かな金髪をなびかせる、軍隊には不釣り合いともいえる妙齢の美少女だった。ドナールはぞんざいな扱いを受けたにも関わらず、恭しく自ら身を引いて、彼女にカメラの正面を開け渡す。
「そうなんですよ。どうやら民間のドックからも、何機かの機動兵器が忍び込んでるらしくて。退路を断とうって魂胆なんでしょうかねぇ」
「ふうん……」
人差し指を頬に沿えて、何やら思案し始める少女。ドナールは口を挟みこそしないが、気が気でないと言った様子でチラチラと彼女の顔色を伺っていた。
「シルキーは? 戦えて?」
「は…!?」
「まあ、機体の調整はほぼ万全ですし、有事に備えてツバサくんも搭乗させてます。でも、今現在彼女がどういう段階かは、お嬢様もご存知ですよね?」
「構わないわ、出撃準備をなさい」
「ちょちょ、ちょっ…ミレニアお嬢様、さすがにそのようなお考えは…!」
ドナールが狼狽のあまりに裏返った声を上げる。ミレニアと呼ばれた少女は目を細め、ふん、とそれを一笑に伏した。
「お節介なオーダー達には好きにさせてあげましょう。でも、今回のヒーローは決して彼らではないの」
「……! な…なるほど!」
わざとらしくポンと手を鳴らし、ドナールが頷いてみせる。
「戦禍の只中、逃げ惑う民の前に舞い降りる美しき妖精、フェアリー・フレーム……鮮烈なるデビューステージには、お誂え向きのシチュエーションでしょう?」
ウェーバーはそんな二人のやり取りを、丸眼鏡の位置を正しながら黙って見つめていた。
「…どうなっても知りませんよ、僕は」

4 ◆tb48vtZPvI:2016/05/09(月) 21:14:00 ID:faAz5A6E
 交戦より少し前!

 林立するビル街を光とするならば、路地裏は闇の部分であろう。
 新興宗教カルト。反共和国セクト。マフィア。電子物理を問わぬ違法ドラッグバイヤー、あるいはただのゴロツキ。陽の光を嫌う者たちはいつもそこにいた。
 少々スケールに関して見劣りはするが、サイラス3も例外ではない。
「ちょっとよォ、お嬢ちゃん、オチャしない?」モヒカンタテガミの馬パンクスが言った。彼が一番大柄だった。
「俺たちこう見えてもさ、ナカモチ・クランのメンバーなんだよ。ワカル?」タンクトップの豹パンクスが言った。一番暴力的アトモスフィアを発散していた。
「いいからさァ、ちょっと直結しようよォ」人工ドレッドヘアパンクスが言った。彼はヒューマンだったが明らかな違法電子ドラッグのオーバードーズであった。
 3人のパンクスの勢いに少女は困惑の表情を浮かべている。落ち着いた色のロングヘアーは、いかにも荒事に慣れていない様子だ。彼女の胸は豊満であった。
「ねェ〜、だからさァ〜、いいお店知ってるよォ? 俺たち」馬パンクスが少女に詰め寄った。顔が近い!
「ちょっとだけでいいンだよ、ちょっとだけでさァ」豹パンクスの目は充血していた。ひょっとしたら食人嗜好でもあったかも知れない。
「直結しようよォ、お願いだよォ」人工ドレッドヘアパンクスが首の後ろから生やしたケーブルを振り回した。
 清楚ロングヘアー少女のなんかが危ない! その時!
「チョットスミマセン」3人のパンクスの背後から逆光を背負った陰が声をかけた。
「アァン?俺たちはこの子と友好関係を築きたいだけなンですけど」馬パンクスは意外なボキャブラリーを披露した。
「スッゾテメッコラー!」豹パンクスが牙を剥いて凄んだ。ヤクザスラングだ、コワイ!
「何アンタ? ひょっとしてアンタもこの子と直結したいの? …横取りは良くないよねェ」人工ドレッドヘアパンクスは威圧めいてケーブルの回転数を早めた。
 陰が路地裏へ入ってきた。ハンチング帽にトレンチコート。背は高くないが、声は渋い。
「その娘、あまりお前たちに好感を抱いてはいないようだ。これ以上はやめた方がいいのでは?」
「ザッケンナコラー!」
 豹パンクスが殴りかかった。彼は宇宙ボクシングのハイスクール選手権で6位、素人を容易に殴り殺す自信がある! 彼は拳を握り締めて肉迫し「イヤーッ!」
 鋭いシャウト! その場にいる誰もが反応出来なかった。次の瞬間、豹パンクスは地面に叩きつけられたまま、完全に失神していた。
「ア…ア?」「何? 何があったの?」
「次にこうなりたいのはどちらだ? あるいは二人共か?」ハンチング帽の下で青い瞳が二人のパンクスを射抜いた。パンクスたちはしめやかに失禁した。
「「ア、アイエエエエ…」」「さっさと友達を連れて帰るがいい」「「ヨ、ヨロコンデー!」」
 パンクスが撤退したのを見送り、彼は少女の方を見た。少女の背中は既に遠ざかっていた。彼は意に介さず、再び雑踏へと消えた。

5 ◆h9Hr5c.eFE:2016/05/09(月) 21:59:28 ID:H3ynXwSI
帝国軍・飢狼軍団の手によって、サイラス3の居住区は炎に包まれていた。
多くの建造物が倒壊し、ひび割れた路面には無惨にも力尽きた人々の亡骸が転がっている。
住民たちはコロニー内に4ヵ所存在する非常シェルターへと急ぎながらも、その多くは寸断された交通網に行く手を塞がれ、避難を完了した住民は未だ全体の20%にさえ達していなかった。
中でも、工業エリアに隣接する第4シェルター近辺は最悪の状況にあった。シェルターへの入口の一つが、避難を試みていた100名以上の住民達の目の前で破壊されたのである。
彼らは複数機のサイクロプスが繰り広げる破壊活動の中、散り散りに逃げ惑う恐慌状態にあった。
「逃げろ! 逃げるんだよ! 早く!!」
「おい、道を開けろよ!!」
「どこに逃げるっていうの! 最寄りの入口だって3kmも先なのよ!? 」
「もう駄目だぁ…おしまいだぁ…!」
そして、密集した人々の頭上高く、ビルの壁面へとヒートクロスボウの矢が深々と突き刺さった。
「ひぃっ!?」
降り注ぐ瓦礫から一瞬遅れて、衝撃で屋上に据え付けられていた大型の貯水タンクが脱落。無情にも一同を目掛けて落下を始める。
「…うわあああああーっ!?」
「ぎゃああああああああ!!」
巨大な影に覆われた、その誰もが死を確信した、その時であった。

「危なーいっ!!」

不意に横合いから飛び込んできた大きな『掌』が、タンクを思いきり払い除けた。
一瞬の後、タンクは数m離れた地面に激突、恐ろしい轟音と共に破裂し、大量の水を噴き上げていた。

「……なっ……?」
「あ、あれって…!?」
「あの時…あの時式典にいたロボットだ…!」
「フェ、フェアリー・フォースが来てくれたんだ!!」

絶望的なムードから一転し、人々の間で歓声が上がる。
「ま…間に合ったぁ……」
勢い余ってビルに突っ伏しているのは、桜色に彩られた水鳥の羽根のごとき装甲に身を包んだ、可憐な少女型の機動兵器。
近頃国防軍が大々的にお披露目したフラッグシップ部隊、フェアリー・フォースの所属機『シルキー』だった。
その華美ともいえる美しいフォルムと、高らかに唱われる最新鋭機としての卓越したスペック、そして何よりパイロットが民間人からの選抜メンバーを含む美少女達であることから、共和国内で物議を醸しつつも、大いに注目を集めていた。
「…み、みなさん! お怪我はありませんか!?」
スピーカーを通して呼び掛ける。人々の返答の声はコックピットまでは届かなかったが、足下の人々の元気そうな姿に、パイロットはほっと胸を撫で下ろした。
「あちらの通りに、国防軍の方々が救助ビークルを用意してくださってます! みなさん、避難を急いでください!」
そして、シルキーは踵を返し、矢を放ったであろうサイクロプスを正面に捉えた。

間もなく、シルキーを取り巻く飢狼軍全機へと、共通回線を通じて映像通信が送られてきた。
「え…えぇっと……」
まるで決闘を所望するオーダーの戦士のごとき行いだが、そこに映っていたのは騎士でも何でもなく、艶やかな青緑色の長髪をポニーテールに纏めた、年端もいかない少女の姿だった。
「て……帝国の方々! そこまでにしてください!」
モニターの中の少女がビシッと正面を指差すポーズを取ると、シルキーも全く同時に同じ姿勢を取ってみせる。宣伝に違わない、きわめて高精度のモーショントレースシステムの賜物である。
「ここは、民間人のみなさんが平和に暮らしている場所です! こういう場所を攻撃することは、条約で禁じられてるはずなんです!」
眉を吊り上げ、険しい表情を作って必死に呼び掛ける少女だったが、垂れ目がちのつぶらな瞳とあどけない顔つき、可愛らしい声質と要領を得ない発言のために悲しいぐらい迫力がない。むしろ、飢狼たちの視線は別の場所に向かっただろう。
少女の服装は国防軍の一般的なパイロットスーツではなく、光沢のあるゴム質のハイレグレオタードのような特異なものだった。肩口から二の腕、太股から鼠径部にかけてが大胆に露出している。純白のスーツそのものもへそのラインが浮き出るほど身体にぴっちりとフィットし、顔立ちの幼さとは不釣り合いの肉感的なボディラインを顕にしていた。
加えて、目に留まる特徴は出で立ちだけではない。
「こ、ここから立ち去らずに攻撃を続けるのなら、この私が……国防軍特殊遊撃部隊フェアリー・フォース所属、シルキーのツバサ・ウィークリッドが、あなたたちを成敗しますっ!!」
彼女の耳は、横長の錘形をしていた。
それは美しい容姿共々、彼女が銀河系の希少種であり、ある分野において非常に高い価値を有する『セレニアン』である証左であった。

6 ◆tb48vtZPvI:2016/05/09(月) 22:36:31 ID:faAz5A6E
 戦場から遠く離れて、半壊したハイウェイに一つの影があった。
 ハンチング帽とトレンチコートを身につけた白ネズミ獣人だ。彼は戦火の地を見ていた。機械化なしの裸眼で、双眼鏡もなく。
 彼は懐の端末を取り出し、通信をオンにする。
「ドーモ、エミリー=サン。ジン・ミックです。常駐部隊から出撃許可が降りた。ユウセイ=サンとライオ=サンは? …そうか。では、個別に行動することとしよう。私は先行する」
 通信相手からの応答。
「そうだ。今私の手元には人型兵器はない。だが問題もない」
 ミックはコートを翻した。なんと……彼は一瞬にして蒼いイクサ装束をまとっていた!
 何故なら……ジン・ミックはニンジャ、シバラク・ニンジャの異名を持つニンジャだからだ!
 やがて背後から一台の大型バイクが走ってきた。流線型のボディに目に鮮やかな青と赤のペイントが施され、その上に意匠化された「天狗凄」の金エンブレムが輝く。シートは無人、オートジャイロだ。
「オミヤ・ファクトリー」謹製インテリジェント・アームドバイク「テングスゴイ」。
 そのスタイルは共和国国防軍制式バイクである「シュゲンザ」と共通シルエットを持っている。それも当然だ。「シュゲンザ」はこの「テングスゴイ」をコストカット&デチューンすることで作られた。
「イヤーッ!」シャウト一つ、ミックはテングスゴイに飛び乗り、今や不整路と化したハイウェイを疾走開始した。戦地へ向かって。


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