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戦場スレpart2

22アカリ&リリー ◆Tg./UqnJ52:2012/08/06(月) 07:39:15 ID:q8hQi1wc
>>20
艦長という指揮系統の大元が役に立たない以上、艦を指揮できるものといえば他にはCICしかない。
だがそのCICも不可視の能力を持つ敵機の解析に忙しく、艦全体を指揮できているかと言えば答えNOである。
解析の陣頭指揮を執っているのはエレミーラ・タイデグリー中尉であるが、未だに有効な打開策を見つけられてはいないようだ。

「少尉……我々はこのまま解析を続けてよいのでしょうか?」

そんな状況に疑問を持った下士官の一人の言葉に、リリー・スノウフェイル少尉の手が止まった。
止めた手で青みがかった銀色の髪を払い、ディープブルーの瞳を戦況の映る大型ディスプレイに向けたリリーは、「そうですね……」と呟く。
リリーは見た目、どう見ても中学生ほどにしか見えない少女ではあったが、この場においてエレミーラに次いで階級の高い士官である。
彼女もまたカイオウ大将によって集められた人材の一人であるが、彼女の元々の職場がイスルギ重工の息の掛かった試作兵器運用試験部隊であることから、
彼女はイスルギの駒としてこの艦に置かれたのではないかと、密かに噂になっていた。
だが、そんな噂も戦場で、しかもこんな状況では特に意味をなさない。尉官としての彼女に疑問をぶつけた下士官の行動は、まあ真っ当な行為であったと言えよう。

「はっきり言ってあの艦長は、今は役立たずでしかありませんね。あなたの危惧も当然です。
 この状況は艦長戦死と同じく、武田中佐に指揮能力なし、と認められるケースであると言えますね。
 緊急事態につき、臨時にこのCICを艦の指揮中枢とします。あなたは何人か、人員を集めて下さい。
 ダイデグリー中尉が何か言うかも知れませんが、無視して結構です。今はこの艦の維持を最優先事項と定めます」
「りょ、了解です」

同じ尉官、しかも上官を無視しろと言ったリリーの言にたじろぎながらも、下士官はそれを承諾し、CICの人員に声をかけるべく席を立っていった。
それとほぼ同時に、リリーのヘッドセットから、気になる報告が漏れ聞こえた。
何でも、艦を狙っている敵機とは別の機体の方向から、巨大なエネルギー弾が飛来してきているとのこと。
味方機バルクレイスがそのエネルギー弾を迎撃し、軌道を変更することに成功し直撃は免れるものの、艦の右舷側を削るコースだという。
リリーは急いでコンソールに向き直り、

「ブリッジ、こちらCIC。すぐに右舷側のスラスターを最大にして艦を左舷側に流して下さい。
 グラビティ・ウォールを右舷側に集中して展開するのも忘れないようにお願いします」
『CIC!? 艦長からまだ指示は……』
「今の艦長に指揮能力は皆無です。戦時特例によりCICを指揮中枢として定めました。
 今は艦の維持を最優先しなければならない状況です。了解であれば復唱を」
『……了解しました。右舷側スラスター最大、グラビティ・ウォールを同時展開します』
「結構です。よろしくお願いします」

すぐさまリリーの指示は実行された。甲斐の艦体がスラスターによって左舷側へと平行移動を始め、
同時に甲斐の姿がゆらめくほどの強度を持ったG・ウォールが右舷側へ展開される。
そこへ、黒く巨大なエネルギー弾が飛来し、G・ウォールと接触、凄まじい火花を上げた後、右舷側へと大きく逸れていった。
バルクレイスの援護とCICからの指示によって甲斐は事なきを得たが、この一連の流れは、武田姫という女性の胸に、「無能」の二文字を強く刻みつけた。
つい先日までデスクワークでしか戦場を知らなかった彼女に、いきなりこんな状況を捌けというのも無理はあったのだが、それとこれとは別の問題なのである。


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